衆議院

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第一九三回

参第三五号

   世代間格差を是正するための公的年金制度の改革の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 公的年金制度の改革の基本方針(第五条−第七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、急速な少子高齢化の進展に伴い、現行の公的年金制度における負担と受益に係る世代間の格差(以下この条において「世代間格差」という。)が著しいものとなっており、その早急な是正が求められていること及び世代間格差の是正が公的年金制度を持続可能なものとする上で不可欠であることに鑑み、世代間格差を是正するための公的年金制度の改革(以下単に「公的年金制度の改革」という。)について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 公的年金制度の改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 公的年金制度を抜本的に見直し、高齢期にある国民の生活の安定に資するための公的年金について、被保険者の属する世代にかかわらず、被保険者が平均寿命に達した時点においてその負担と受益がおおむね均衡する仕組みとすること。

 二 公的年金制度について、保険料その他の費用の負担に関し各世代の理解を得られるようにするとともに、国民の就労形態の多様化等に適応できるようにするため、一元的で、かつ、簡素で透明性の高い仕組みとすること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、公的年金制度の改革を推進する責務を有する。

 (改革の実施及び目標時期)

第四条 政府は、次章に定める基本方針に基づき、公的年金制度の改革を行うものとし、このために必要な措置については、この法律の施行後二年以内を目途として講ずるものとする。

   第二章 公的年金制度の改革の基本方針

 (新たな公的年金制度の創設)

第五条 公的年金制度の改革においては、この条に定めるところにより、新たな公的年金制度を創設するものとする。

2 新たな公的年金制度は、被保険者が支払った保険料及びその運用収入をその者に係る公的年金給付を行うための積立金とする仕組みとするものとする。

3 新たな公的年金制度は、原則として、世代別年金被保険者集団(一定の期間ごとにその期間内に出生した者で構成される公的年金制度の被保険者の集団をいう。以下同じ。)ごとに、支払われる保険料及びその運用収入の総額と公的年金給付の総額とが均衡する仕組みとするものとする。

4 新たな公的年金制度は、全ての国民が加入する単一の制度とするものとする。

5 新たな公的年金制度において被保険者が支払うべき保険料は、その所得の額を基礎とする額に、就労形態等を問わず、世代別年金被保険者集団ごとに一律に定められる保険料率を乗じて得た額とするものとする。

6 新たな公的年金制度においては、被用者である被保険者に係る保険料について、事業主に負担させないものとする。この場合において、被用者である被保険者の保険料の負担の増加を考慮してその賃金が引き上げられることとなるよう、必要な措置が講ぜられるものとする。

7 新たな公的年金制度における積立金の運用は、安全で、かつ、物価の変動に対応できる複数の方法の中から被保険者が選択した方法により行うものとする。

8 新たな公的年金制度の財政運営は、特別会計を設けて行うものとし、次条第三項及び第七条の繰入れを除き、当該特別会計への一般会計からの繰入れは行わないものとする。

9 新たな公的年金制度の財政運営については、世代別年金被保険者集団ごとに経理を区分し、それぞれ前項の特別会計に勘定を設けて整理するものとする。この場合において、一の世代別年金被保険者集団に係る勘定から他の世代別年金被保険者集団に係る公的年金給付の財源に充当するための当該他の世代別年金被保険者集団に係る勘定への繰入れは、予測し難い事象の発生によりやむを得ない場合を除いて行わないものとし、当該繰入れを行ったときは、その内容が国民に明らかにされなければならないものとする。

 (新たな公的年金制度への移行を直ちに行うための措置)

第六条 新たな公的年金制度は、その実施前の公的年金制度(以下この条において「旧公的年金制度」という。)における被保険者期間を有する者にも適用するものとし、新たな公的年金制度の実施後に支給すべきその者に係る公的年金給付については、当該被保険者期間に対応する部分も含め、新たな公的年金制度に基づいて行うものとする。

2 前項の者に対する新たな公的年金制度の適用については、その者に係る新たな公的年金制度における公的年金給付のうち旧公的年金制度における被保険者期間に係る分として、旧公的年金制度における公的年金給付の額の算定方法を踏まえ、その者の旧公的年金制度における保険料の納付の状況等に応じて算定した額(当該額が一定の基準額を超える場合には、当該超える額の一部を控除した額)をその者に支給するために必要な積立金の額を算出し、これを新たな公的年金制度の実施時におけるその者に係る積立金の額とみなすものとする。

3 前項の場合において、新たな公的年金制度における個々の積立金の額とみなされた額を合計した額と新たな公的年金制度の実施の際現に存する旧公的年金制度に係る積立金の総額との差額については、長期間にわたり、毎年度一般会計から前条第八項の特別会計への一定の金額の繰入れを行うことにより、補填するものとする。

4 一の世代別年金被保険者集団に係る勘定において前項の繰入れが行われてもなお公的年金給付を行う上で積立金が一時的に不足する場合においては、当該勘定において国債を発行することができるものとし、当該国債は、他の世代別年金被保険者集団に係る勘定において引き受けることができるものとする。

 (低所得者の保険料の負担の軽減等)

第七条 新たな公的年金制度における低所得者の保険料の負担の軽減及び新たな公的年金制度において福祉的な給付が行われないことによる低所得者への影響の緩和については、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の導入により対応するものとし、その導入までの間に限り、保険料の減免の措置及びこれに伴う一般会計から第五条第八項の特別会計への繰入れの措置並びに福祉的な給付の措置を講ずるものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 急速な少子高齢化の進展に伴い、現行の公的年金制度における負担と受益に係る世代間格差が著しいものとなっており、その早急な是正が求められていること及び世代間格差の是正が公的年金制度を持続可能なものとする上で不可欠であることに鑑み、世代間格差を是正するための公的年金制度の改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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