衆議院

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第一九三回

参第三八号

   国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 基本方針(第三条)

 第三章 第一種重要国土区域及び第二種重要国土区域の指定(第四条・第五条)

 第四章 重要国土基礎調査(第六条−第十二条)

 第五章 第一種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の規制等

  第一節 土地等の取引等の届出等(第十三条・第十四条)

  第二節 土地等に関する権利の国による買取り(第十五条・第十六条)

  第三節 土地等の収用又は使用(第十七条−第二十六条)

 第六章 第二種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の報告(第二十七条)

 第七章 雑則(第二十八条・第二十九条)

 第八章 罰則(第三十条−第三十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、その取引等が国家安全保障(我が国の防衛その他我が国の存立に関わる外部からの脅威等から我が国及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)の観点から支障となるおそれがある重要な土地等について、自由な経済活動との調和を図りつつ、その取引等に対し必要最小限の規制を行うこと等により、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「土地等」とは、土地若しくは建物又はこれらに定着する物件をいい、建物にある設備又は備品で当該建物の運営上これと一体的に使用されるべきものを含むものとする。

2 この法律において「取引等」とは、土地等について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転することその他政令で定める権利の変動並びに土地の区画形質の変更(通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるものを除く。)をいう。

   第二章 基本方針

第三条 内閣総理大臣は、国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等の意義に関する事項

 二 国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針

 三 次条第一項及び第二項の規定による指定に関する基本的な事項

 四 第六条第四項に規定する重要国土基礎調査に関する基本的な事項

 五 前各号に掲げるもののほか、国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関し必要な事項

3 内閣総理大臣は、あらかじめ関係行政機関の長と協議して基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

   第三章 第一種重要国土区域及び第二種重要国土区域の指定

 (第一種重要国土区域及び第二種重要国土区域の指定)

第四条 内閣総理大臣は、基本方針に基づき、次に掲げる区域のうち、その土地等の取引等が国家安全保障の観点から重大な支障となるおそれがある区域を、第一種重要国土区域として指定するものとする。

 一 防衛施設(防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第二条第二項に規定する防衛施設をいう。)、原子力施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二条第七項に規定する原子力施設をいう。)等国家安全保障上重要な施設及び設備の敷地並びにその周辺の区域

 二 国境離島(基線(領海及び接続水域に関する法律(昭和五十二年法律第三十号)第二条第一項に規定する基線をいい、直線基線(同項の直線基線をいう。以下この号において同じ。)の基点を含む。)を有する離島、政令で定めるところにより測定した当該離島からの距離が十二海里以内である離島及び政令で定めるところにより測定した直線基線からの距離が十二海里以内である離島をいう。)の区域

2 内閣総理大臣は、基本方針に基づき、前項各号に掲げる区域のうち、その土地等の取引等が国家安全保障の観点から支障となるおそれがあるため、当該取引等の状況等を把握する必要がある区域(第一種重要国土区域を除く。)を、第二種重要国土区域として指定するものとする。

3 第一項第一号に掲げる区域に係る同項の規定による指定は、同号の施設及び設備の敷地の地形、その周辺の状況等を勘案し、国家安全保障の観点から必要な最小限度の区域に限ってするものとする。

4 内閣総理大臣は、第一項又は第二項の規定による指定(以下「指定」という。)の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、資料の提出その他の必要な協力を求めることができる。

5 内閣総理大臣は、指定をしようとするときは、あらかじめ、内閣府令で定めるところにより、その旨を公告し、当該指定の案を、当該指定をしようとする理由を記載した書面を添えて、当該公告から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。

6 前項の規定による公告があったときは、関係市町村(特別区を含む。)の住民及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された指定の案について、内閣総理大臣に、意見書を提出することができる。

7 内閣総理大臣は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。

8 内閣総理大臣は、指定をするときは、内閣府令で定めるところにより、その旨及び当該指定の区域並びに当該指定の理由を公示しなければならない。

9 内閣総理大臣は、前項の規定による公示をしたときは、速やかに、内閣府令で定めるところにより、関係地方公共団体の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければならない。

10 指定は、第八項の規定による公示によってその効力を生ずる。

11 関係地方公共団体の長は、第九項の図書を当該地方公共団体の事務所において、公衆の縦覧に供しなければならない。

12 内閣総理大臣は、第一種重要国土区域又は第二種重要国土区域の全部又は一部が第一項又は第二項の要件を満たさなくなったときは、遅滞なく、当該指定の変更又は解除をしなければならない。

13 第四項から第十一項までの規定は、前項の規定による指定の変更又は解除について準用する。

 (調査のための土地の立入り等)

第五条 内閣総理大臣は、指定のために必要があるときは、現地において調査を行うことができる。

2 内閣総理大臣又はその命じた者若しくは委任した者は、前項の規定による調査のためにやむを得ない必要があるときは、その必要な限度において、他人の占有する土地若しくは建物内に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができる。

3 前項の規定により他人の占有する土地又は建物内に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、その旨を当該土地又は建物の占有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。

4 第二項の規定により宅地若しくは垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地又はその上にある建物内に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地又は建物の占有者に告げなければならない。

5 日出前及び日没後においては、土地又は建物の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地又は建物内に立ち入ってはならない。

6 第二項の規定により他人の占有する土地又は建物内に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

7 第二項の規定により特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見を聴かなければならない。

8 土地又は建物の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第二項の規定による立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。

9 国は、第二項の規定による立入り又は一時使用により損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

10 前項の規定による損失の補償については、国と損失を受けた者とが協議しなければならない。

11 前項の規定による協議が成立しない場合においては、国は、自己の見積もった金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服のある者は、政令で定めるところにより、補償金の支払を受けた日から三十日以内に、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。

   第四章 重要国土基礎調査

 (重要国土基礎調査の実施)

第六条 内閣総理大臣は、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長と連携して、第一種重要国土区域内及び第二種重要国土区域内に所在する土地の所有者(土地の全部又は一部について地上権その他の政令で定める使用及び収益を目的とする権利が設定されているときは、当該権利を有している者及び所有者。次項及び第九条第一項において同じ。)、地番及び地目、利用の実態その他内閣府令で定める事項に関する調査並びに境界及び地積に関する測量を行うものとする。

2 内閣総理大臣は、前項に規定する事項のうち所有者及び利用の実態に関する調査については、おおむね三年ごとに行うものとする。

3 内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、必要があると認めるときは、いつでも同項の調査を行うことができる。

4 前条第二項から第十一項までの規定は、第一項の規定による調査及び測量並びに前二項の規定による調査(以下「重要国土基礎調査」という。)について準用する。この場合において、同条第二項中「内閣総理大臣」とあるのは「内閣総理大臣(第十条第一項の規定により重要国土基礎調査の実施が市町村に委託された場合にあっては、内閣総理大臣及び市町村長)」と、同条第九項中「国」とあるのは「国(市町村が行う重要国土基礎調査にあっては、市町村。次項及び第十一項において同じ。)」と読み替えるものとする。

 (作業規程の準則)

第七条 重要国土基礎調査の作業規程の準則は、内閣府令で定める。

 (重要国土基礎調査の実施の公示)

第八条 内閣総理大臣は、重要国土基礎調査の開始前に、政令で定めるところにより、公示しなければならない。

 (土地の所有者等の把握に関する情報提供の要求等)

第九条 内閣総理大臣は、重要国土基礎調査の実施のため必要があるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長その他の関係者に対して、第一種重要国土区域内及び第二種重要国土区域内に所在する土地の所有者及び利用の実態の把握に関し必要な情報の提供を求めることができる。

2 前項に定めるもののほか、内閣総理大臣は、重要国土基礎調査の実施のため必要があるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対して、資料の提出その他の必要な協力を求めることができる。

 (重要国土基礎調査の実施の委託)

第十条 内閣総理大臣は、重要国土基礎調査を行おうとする場合においては、市町村にその実施を委託することができる。

2 前項に規定するもののほか、内閣総理大臣又は同項の規定により重要国土基礎調査の実施を委託された市町村は、重要国土基礎調査を適正かつ確実に実施することができると認められる者として内閣府令で定める要件に該当する法人に、その行う重要国土基礎調査の実施を委託することができる。

 (重要国土基礎調査の結果の提供)

第十一条 内閣総理大臣は、重要国土基礎調査の結果に関し、国土調査法(昭和二十六年法律第百八十号)の国土調査に該当する地籍調査を行う者に必要な情報を提供するものとする。

 (国土調査法の準用)

第十二条 重要国土基礎調査については、国土調査法第五章の規定(第二十二条、第二十二条の二、第二十三条第二項、第二十三条の三、第二十四条及び第三十四条の二の規定を除く。)及び第六章の規定を準用する。この場合において、同法第二十三条第一項中「国土交通大臣、土地改良区等を所管する大臣又は事業所管大臣」とあるのは「内閣総理大臣」と、「この法律」とあるのは「国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律(以下「国家安全保障土地取引規制法」という。)」と、同条第三項中「第十条第二項」とあるのは「国家安全保障土地取引規制法第十条第二項」と、「都道府県」とあるのは「内閣総理大臣」と、「第二十六条第一項」とあるのは「第二十六条第一項及び第三十二条」と、同法第二十三条の二中「地籍調査」とあるのは「国家安全保障土地取引規制法第六条第四項に規定する重要国土基礎調査」と、同法第二十五条第二項中「国の機関又は地方公共団体」とあるのは「者」と、同法第三十二条中「地方公共団体(第十条第二項の規定により地籍調査の実施を委託された法人が地籍調査を実施する場合にあつては、当該法人)又は土地改良区等は、第五条第四項若しくは第六条第三項の規定により指定を受け、又は第六条の三第二項の規定により定められた事業計画に基づいて地籍調査を行う」とあるのは「国家安全保障土地取引規制法第六条第四項に規定する重要国土基礎調査を実施する者は、これを実施する」と、同法第三十二条の二第一項中「地方公共団体又は土地改良区等」とあるのは「内閣総理大臣又は市町村」と、同法第三十三条中「この法律」とあるのは「国家安全保障土地取引規制法及び国家安全保障土地取引規制法第十二条において読み替えて準用するこの法律」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

   第五章 第一種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の規制等

    第一節 土地等の取引等の届出等

 (土地等の取引等の届出及び変更勧告等)

第十三条 第一種重要国土区域内に所在する土地等について取引等を行おうとする者は、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、当該取引等について、当事者の氏名又は名称及び住所、内容、当該土地等の利用の目的、実行の時期その他の内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に届け出なければならない。ただし、当該取引等が、相続その他のあらかじめ届出を行うことが困難である取引等として政令で定めるものである場合は、この限りでない。

2 前項の規定は、当事者の一方が国である場合には、適用しない。

3 第一項の規定による届出をした者は、内閣総理大臣が当該届出を受理した日から起算して三十日を経過する日までは、当該届出に係る土地等の取引等を行ってはならない。ただし、内閣総理大臣は、その期間の満了前に当該届出に係る土地等の取引等がその目的その他からみて次項の規定による審査が必要となる取引等に該当しないと認めるときは、当該期間を短縮することができる。

4 内閣総理大臣は、第一項の規定による届出があった場合において、当該届出に係る土地等の取引等が国家安全保障の観点から支障を来すおそれがある取引等(以下「国家安全保障に係る土地等取引等」という。)に該当しないかどうかを審査する必要があると認めるときは、当該届出に係る土地等の取引等を行ってはならない期間を、当該届出を受理した日から起算して五月以内に限り、延長することができる。

5 内閣総理大臣は、前項の規定による審査のため必要があるときは、第一項の規定による届出に関して必要な事項を調査するものとする。

6 内閣総理大臣は、前項の規定による調査を行うに当たっては、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他の必要な協力を求めることができる。

7 第五条第二項から第十一項までの規定は、第五項の規定による調査について準用する。

8 内閣総理大臣は、第四項の規定により土地等の取引等を行ってはならない期間を延長した場合において、同項の規定による審査をした結果、当該延長された期間の満了前に第一項の規定による届出に係る土地等の取引等が国家安全保障に係る土地等取引等に該当しないと認めるときは、当該延長された期間を短縮することができる。

9 内閣総理大臣は、第四項の規定により土地等の取引等を行ってはならない期間を延長した場合において、同項の規定による審査をした結果、第一項の規定による届出に係る土地等の取引等が国家安全保障に係る土地等取引等に該当すると認めるときは、当該土地等の取引等の届出をした者に対し、内閣府令で定めるところにより、当該土地等の取引等の内容の変更又は中止を勧告することができる。ただし、当該変更又は中止を勧告することができる期間は、当該届出を受理した日から起算して第四項の規定により延長された期間の満了する日までとする。

10 前項の規定による勧告を受けた者は、当該勧告を受けた日から起算して十日以内に、内閣総理大臣に対し、当該勧告を応諾するかしないかを通知しなければならない。

11 前項の規定により勧告を応諾する旨の通知をした者は、当該勧告をされたところに従い、当該勧告に係る土地等の取引等の内容を変更し、又はこれを中止しなければならない。

12 第十項の規定により土地等の取引等の内容の変更の勧告を応諾する旨の通知をした者は、第三項及び第四項の規定にかかわらず、同項の規定により延長された期間を経過しなくても、当該勧告に従った土地等の取引等を行うことができる。

13 第九項の規定による勧告を受けた者が、第十項の規定による通知をしなかった場合又は当該勧告を応諾しない旨の通知をした場合には、内閣総理大臣は、当該勧告を受けた者に対し、当該土地等の取引等の内容の変更又は中止を命ずることができる。ただし、当該変更又は中止を命ずることができる期間は、当該届出を受理した日から起算して第四項の規定により延長された期間の満了する日までとする。

14 内閣総理大臣は、我が国の安全保障に関する情勢の変化その他の事由により、第一項の規定による届出に係る土地等の取引等が国家安全保障に係る土地等取引等に該当しなくなったと認めるときは、第九項の規定による勧告を受けた者又は前項の規定により土地等の取引等の内容の変更若しくは中止を命じられた者に対し、当該勧告又は命令の全部又は一部を取り消すことができる。

15 第九項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による届出に係る土地等の取引等の内容の変更又は中止の勧告又は命令の手続その他これらの勧告又は命令に関し必要な事項は、内閣府令で定める。

 (土地等の取引等の報告)

第十四条 第一種重要国土区域内に所在する土地等について前条第一項ただし書の政令で定める取引等を行った者は、内閣府令で定めるところにより、当該取引等について、当事者の氏名又は名称及び住所、内容及び時期、当該土地等の利用の目的その他の内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に報告しなければならない。

2 前項の規定は、当事者の一方が国である場合には、適用しない。

   第二節 土地等に関する権利の国による買取り

 (土地等に関する権利の買取り)

第十五条 内閣総理大臣は、第一種重要国土区域内に所在する土地等に関する所有権その他政令で定める使用及び収益を目的とする権利(以下「土地等に関する権利」という。)を有する者で、第十三条第十三項の規定により当該土地等の取引等の内容の変更又は中止を命じられたものから、当該変更又は中止により当該土地等の利用等に著しい支障を来すこととなることを理由として、当該土地等に関する権利を買い取るべき旨の申出があった場合においては、特別の事情がない限り、当該土地等に関する権利を時価で買い取るものとする。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による申出を受けたときは、遅滞なく、当該土地等に関する権利を買い取る旨又は買い取らない旨を当該土地等に関する権利を有する者に通知しなければならない。

 (買取りを行った土地等に関する権利等の管理)

第十六条 国は、前条第一項の規定に基づき買い取った土地等に関する権利及びこれに係る土地等をこの法律の目的に従って適切に管理しなければならない。

    第三節 土地等の収用又は使用

 (土地等の収用又は使用)

第十七条 第一種重要国土区域内に所在する土地等(土地収用法第五条に規定する権利を含む。以下この節において同じ。)について、国家安全保障上特に重要であり、かつ、当該土地等を国が取得して管理し、又は使用することが適正かつ合理的であると認めるときは、この法律の定めるところにより、これを収用し、又は使用することができる。

 (資料の提出の要求等)

第十八条 内閣府において前条の規定による土地等の収用又は使用の実施に関する事務を担当する部局の長(以下「担当部局の長」という。)は、同条の規定による土地等の収用又は使用に係る手続の準備のため必要があると認めるときは、土地等の所有者(土地収用法第五条に規定する権利にあっては、権利者。以下同じ。)その他の関係者に対し、資料の提出を求め、又は当該職員をして質問させることができる。

 (土地等の収用又は使用の認定の申請)

第十九条 担当部局の長は、第十七条の規定により土地等を収用し、又は使用しようとするときは、担当部局の長の名称、収用し、又は使用しようとする土地等の所在等及び収用し、又は使用しようとする理由を記載した申請書(以下「認定申請書」という。)を内閣総理大臣に提出し、その認定を受けなければならない。

2 認定申請書には、収用し、又は使用しようとする土地等の所有者及び関係人の意見書その他政令で定める書類を添付しなければならない。

3 前項の意見書は、所有者又は関係人を確知することができないときその他これらの者からこれを得ることができない事情があるときは、添付することを要しない。この場合においては、意見書を得ることができなかった事情を疎明する書面を添付しなければならない。

 (土地等の収用又は使用の認定)

第二十条 内閣総理大臣は、認定申請書に係る土地等の収用又は使用が第十七条に規定する要件に該当すると認めるときは、遅滞なく、土地等の収用又は使用の認定をしなければならない。

 (関係行政機関等の意見の聴取)

第二十一条 内閣総理大臣は、土地等の収用又は使用の認定に関する処分を行おうとする場合において、必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び学識経験を有する者の意見を求めることができる。

2 関係行政機関の長は、土地等の収用又は使用の認定に関する処分について、内閣総理大臣に意見を述べることができる。

 (土地等の収用又は使用の認定に関する処分の通知、告示及び公告)

第二十二条 内閣総理大臣は、土地等の収用又は使用の認定をしたときは、遅滞なく、その旨及び当該認定をした理由を当該担当部局の長に文書で通知するとともに、当該担当部局の長の名称、収用し、又は使用すべき土地等の所在、当該認定をした理由並びに次項の規定による土地等の調書及び図面の縦覧場所を官報で告示しなければならない。

2 担当部局の長は、前項の通知を受けたときは、遅滞なく、収用し、又は使用しようとする土地等の所在、種類及び数量を担当部局の長が定める方法で公告し、かつ、当該土地等の所在、種類及び数量並びに内閣総理大臣が当該土地等の収用又は使用の認定をした理由を当該土地等の所有者及び関係人に通知するとともに、政令で定めるところにより、当該土地等の調書及び図面を、当該認定が効力を失う日又は全ての土地等について必要な権利を取得する日まで公衆の縦覧に供しなければならない。

3 内閣総理大臣は、土地等の収用又は使用の認定を拒否したときは、遅滞なく、その旨を当該担当部局の長に文書で通知しなければならない。

 (土地等の収用又は使用の認定の失効)

第二十三条 前条第一項の規定による告示があった後、土地等を収用し、又は使用する必要がなくなったときは、担当部局の長は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。この場合において、その事由の発生が同条第二項の規定による通知の後であるときは、土地等の所有者及び関係人にも、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による報告を受けたときは、土地等の収用又は使用の認定が将来に向かってその効力を失う旨を官報で告示しなければならない。

 (建物の使用に代わる収用の請求)

第二十四条 建物を使用する場合において、建物の使用が三年以上(使用期間の更新の結果三年以上となる場合を含む。)にわたるとき、又は建物の使用により建物の形状を変更し従来用いた目的に供することを著しく困難にするときは、建物の所有者は、その建物の収用を請求することができる。

2 土地収用法第四十六条の三、第八十一条第二項及び第三項並びに第八十七条ただし書の規定は、前項の規定による建物の収用について準用する。この場合において、同法第八十一条第二項中「土地」とあるのは「建物」と、同条第三項中「起業者」とあるのは「担当部局の長」と読み替えるものとする。

 (土地収用法の適用)

第二十五条 第十七条の規定による土地等の収用又は使用に関しては、この法律に特別の定めのある場合を除くほか、当該収用又は使用を土地収用法第三条に規定する事業と、担当部局の長を同法の起業者と、第二十条の規定による土地等の収用又は使用の認定を同法により国土交通大臣が行う事業の認定と、第二十二条第一項の規定による告示を同法により国土交通大臣が行う事業の認定の告示とみなして、同法の規定(第一条から第三条まで、第五条から第七条まで、第八条第一項、第九条、第十条の二、第十五条の十四から第二十八条まで、第三十条、第三十条の二、第三章第二節、第三章の二、第三十六条第五項、第三十六条の二第四項、第四十二条第四項から第六項まで、第五章第一節、第八章第三節、第百二十五条第一項並びに第二項第二号、第四号及び第五号、第百三十二条第一項、第百三十九条から第百三十九条の三まで並びに第百四十三条第五号の規定を除く。)を適用する。

2 前項に定めるもののほか、同項の規定による土地収用法の適用に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (収用又は使用に係る土地等の管理又は使用)

第二十六条 国は、第十七条の規定による収用又は使用に係る土地等をこの法律の目的に従って適切に管理し、又は使用しなければならない。

   第六章 第二種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の報告

第二十七条 第二種重要国土区域内に所在する土地等について取引等を行った者は、内閣府令で定めるところにより、当該取引等について、当事者の氏名又は名称及び住所、内容及び時期、当該土地等の利用の目的その他の内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に報告しなければならない。

2 前項の規定は、当事者の一方が国である場合には、適用しない。

   第七章 雑則

 (事務の区分)

第二十八条 第四条第十一項(同条第十三項の規定により準用する場合を含む。)の規定により地方公共団体が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (政令への委任)

第二十九条 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

   第八章 罰則

第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第十三条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして、土地等の取引等をした者

 二 第十三条第三項の規定に違反して、同項に規定する期間(同条第四項の規定により延長され、又は同条第八項の規定により短縮された場合には、当該延長され、又は短縮された期間)中に土地等の取引等をした者

 三 第十三条第十一項の規定に違反して土地等の取引等をした者

 四 第十三条第十三項の規定による変更又は中止の命令に違反して土地等の取引等をした者

 五 第十四条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第三十一条 第二十七条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第三十二条 第五条第八項(第六条第四項及び第十三条第七項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、土地又は建物の立入り又は一時使用を拒み、又は妨げた者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第三十三条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

 一 第三十条 一億円以下の罰金刑

 二 前二条 各本条の罰金刑

2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

第三十四条 第十八条の規定による資料の提出をせず、若しくは虚偽の資料の提出をし、又は同条の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

 (準備行為)

第二条 内閣総理大臣は、基本方針の案及び指定の案の作成のため、この法律の施行の日前においても、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長との協議その他の必要な準備行為をすることができる。

 (地方自治法の一部改正)

第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律(平成二十九年法律第▼▼▼号)

第四条第十一項(同条第十三項において準用する場合を含む。)の規定により地方公共団体が処理することとされている事務

 (内閣府設置法の一部改正)

第四条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三項第四十二号を次のように改める。

  四十二 国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律(平成二十九年法律第▼▼▼号)第三条第一項に規定する基本方針の策定に関すること、同法第四条第一項又は第二項に規定する第一種重要国土区域又は第二種重要国土区域の指定に関すること、同法第六条に規定する重要国土基礎調査に関すること、同法第十三条に規定する第一種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の届出及び変更勧告等に関すること、同法第十四条に規定する第一種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の報告に関すること、同法第十五条に規定する第一種重要国土区域内に所在する土地等に関する権利の買取りに関すること、同法第十七条に規定する第一種重要国土区域内に所在する土地等の収用又は使用に関すること並びに同法第二十七条に規定する第二種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の報告に関すること。

 (重要な水源を守るための規制等についての検討)

第五条 政府は、この法律の施行後三年以内に、重要な水源を守るための土地の取引、利用等に関する規制等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 我が国の平和及び安全の確保に資するため、その取引等が国家安全保障の観点から支障となるおそれがある重要な土地等について、自由な経済活動との調和を図りつつ、その取引等に対し必要最小限の規制を行う等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

衆議院
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