衆議院

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第一九五回

参第一八号

   ギャンブル等依存症対策基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第十条)

 第二章 ギャンブル等依存症対策推進基本計画等(第十一条−第十三条)

 第三章 基本的施策(第十四条−第二十三条)

 第四章 ギャンブル等依存症対策推進会議(第二十四条)

 第五章 ギャンブル等依存症対策関係者会議(第二十五条・第二十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、ギャンブル等依存症がこれを有する者等及びその家族の日常生活及び社会生活に様々な問題を生じさせるおそれのある疾患であり、ギャンブル等依存症の予防等(発症、進行及び再発の防止をいう。以下同じ。)及びギャンブル等依存症を有する者に対する良質かつ適切な医療の提供等によるその回復等が社会的な取組として図られることが必要であることに鑑み、ギャンブル等依存症対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル等依存症対策の基本となる事項を定めること等により、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健康を保持するとともに、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 ギャンブル等依存症対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 ギャンブル等依存症の予防等及びその回復を図るための対策を適切に実施するとともに、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すること。

 二 ギャンブル等依存症対策を実施するに当たっては、ギャンブル等依存症が、多重債務、貧困、自殺、犯罪、虐待等の問題に密接に関連することに鑑み、ギャンブル等依存症に関連して生ずるこれらの問題の根本的な解決に資するため、これらの問題に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされるものとすること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、ギャンブル等依存症対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 国の関係行政機関は、ギャンブル等依存症対策の効率的かつ効果的な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、第二条の基本理念にのっとり、ギャンブル等依存症対策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (ギャンブル等関連事業者の責務)

第五条 ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発に関連する事業を営む者(第十五条において「ギャンブル等関連事業者」という。)は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力するとともに、その事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の予防等に配慮するよう努めなければならない。

 (国民の責務)

第六条 国民は、ギャンブル等依存症問題(ギャンブル等依存症及びこれに関連して生ずる多重債務、貧困、自殺、犯罪、虐待等の問題をいう。以下同じ。)に関する関心と理解を深め、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うよう努めなければならない。

 (医師等の責務)

第七条 医師その他の医療関係者は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力し、ギャンブル等依存症の予防等に寄与するよう努めるとともに、ギャンブル等依存症に係る良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。

 (健康増進事業実施者の責務)

第八条 健康増進事業実施者(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第六条に規定する健康増進事業実施者をいう。)は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力するよう努めなければならない。

 (ギャンブル等依存症問題啓発週間)

第九条 国民の間に広くギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるため、ギャンブル等依存症問題啓発週間を設ける。

2 ギャンブル等依存症問題啓発週間は、六月二十六日から七月二日までとする。

3 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。

 (法制上の措置等)

第十条 政府は、ギャンブル等依存症対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

   第二章 ギャンブル等依存症対策推進基本計画等

 (ギャンブル等依存症対策推進基本計画)

第十一条 政府は、ギャンブル等依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、ギャンブル等依存症対策の推進に関する基本的な計画(以下「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 ギャンブル等依存症対策推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。

3 内閣総理大臣は、あらかじめ関係行政機関の長に協議するとともに、ギャンブル等依存症対策関係者会議の意見を聴いて、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 政府は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

5 政府は、適時に、第二項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

6 政府は、ギャンブル等依存症に関する状況の変化を勘案し、及びギャンブル等依存症対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

7 第三項及び第四項の規定は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について準用する。

 (関係行政機関への要請)

第十二条 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の策定のための資料の提出又はギャンブル等依存症対策推進基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。

 (都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画)

第十三条 都道府県は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県の実情に即したギャンブル等依存症対策の推進に関する計画(以下この条において「都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画」という。)を策定するよう努めなければならない。

2 都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画は、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進法第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画その他の法令の規定による計画であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。

3 都道府県は、当該都道府県におけるギャンブル等依存症に関する状況の変化を勘案し、及び当該都道府県におけるギャンブル等依存症対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するよう努めなければならない。

   第三章 基本的施策

 (教育の振興等)

第十四条 国及び地方公共団体は、国民がギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深め、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うことができるよう、家庭、学校、職場、地域その他の様々な場におけるギャンブル等依存症問題に関する教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じたギャンブル等依存症問題に関する知識の普及のために必要な施策を講ずるものとする。

 (ギャンブル等関連事業者の事業の実施の方法)

第十五条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等関連事業者の広告及び宣伝、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の原因となる事業が行われる施設への入場の管理その他のギャンブル等関連事業者の事業の実施の方法について、ギャンブル等依存症の予防等に資するギャンブル等関連事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等に配慮されたものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとする。

 (健康診断及び保健指導)

第十六条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症の予防等及び回復に資するよう、健康診断及び保健指導において、ギャンブル等依存症の発見及びギャンブル等依存症に関する指導が適切に行われるようにするために必要な施策を講ずるものとする。

 (医療提供体制の整備)

第十七条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症を有する者がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた良質かつ適切な医療を受けることができるよう、ギャンブル等依存症に係る専門的な医療の提供等を行う医療機関の整備その他の医療提供体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 (相談支援等)

第十八条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症問題に関し、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者及びその家族その他の関係者に対するその状況に応じた相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

 (社会復帰の支援)

第十九条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者の円滑な社会復帰に資するよう、就労の支援その他の支援を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

 (民間団体の活動に対する支援)

第二十条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者が互いに支え合ってその回復又は再発の防止を図るための活動その他の民間団体が行うギャンブル等依存症対策に関する自発的な活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。

 (連携協力体制の整備)

第二十一条 国及び地方公共団体は、第十七条から前条までの施策の効果的な実施を図るため、独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣が定めるもの、第十七条の医療機関その他の医療機関、精神保健福祉センター、保健所その他の関係機関、民間団体等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 (人材の確保等)

第二十二条 国及び地方公共団体は、医療、保健、福祉、教育、矯正その他のギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者について、ギャンブル等依存症問題に関し十分な知識を有する人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。

 (調査研究の推進等)

第二十三条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症問題に関する実態調査、ギャンブル等依存症の予防等、診断及び治療の方法に関する研究その他の調査研究の推進並びにその成果の普及に必要な施策を講ずるものとする。

   第四章 ギャンブル等依存症対策推進会議

第二十四条 政府は、内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、警察庁その他の関係行政機関の職員及び政令で定める関係地方公共団体の職員をもって構成するギャンブル等依存症対策推進会議を設け、ギャンブル等依存症対策の総合的、計画的、効果的かつ効率的な推進を図るための連絡調整を行うものとする。

2 ギャンブル等依存症対策推進会議は、前項の連絡調整を行うに際しては、ギャンブル等依存症対策関係者会議の意見を聴くものとする。

   第五章 ギャンブル等依存症対策関係者会議

第二十五条 内閣府に、ギャンブル等依存症対策関係者会議(以下「関係者会議」という。)を置く。

2 関係者会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 ギャンブル等依存症対策推進基本計画に関し、第十一条第三項(同条第七項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。

 二 前条第一項の連絡調整に際して、ギャンブル等依存症対策推進会議に対し、意見を述べること。

第二十六条 関係者会議は、委員二十人以内で組織する。

2 関係者会議の委員は、ギャンブル等依存症問題に関し専門的知識を有する者並びにギャンブル等依存症を有し、又は有していた者及びその家族を代表する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

3 関係者会議の委員は、非常勤とする。

4 前三項に定めるもののほか、関係者会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (内閣府設置法の一部改正)

2 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三項中第四十七号を第四十七号の二とし、同号の前に次の一号を加える。

  四十七 ギャンブル等依存症対策推進基本計画(ギャンブル等依存症対策基本法(平成二十九年法律第▼▼▼号)第十一条第一項に規定するものをいう。)の策定及び推進並びに同法第二十四条第一項の連絡調整の確保に関すること。

  第三十七条第三項の表中

原子力委員会

原子力基本法及び原子力委員会設置法(昭和三十年法律第百八十八号)

 

 を

ギャンブル等依存症対策関係者会議

ギャンブル等依存症対策基本法

 

 

原子力委員会

原子力基本法及び原子力委員会設置法(昭和三十年法律第百八十八号)

 

 に改める。


     理 由

 ギャンブル等依存症がこれを有する者等及びその家族の日常生活及び社会生活に様々な問題を生じさせるおそれのある疾患であり、ギャンブル等依存症の予防等及びギャンブル等依存症を有する者に対する良質かつ適切な医療の提供等によるその回復等が社会的な取組として図られることが必要であることに鑑み、ギャンブル等依存症対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル等依存症対策の基本となる事項を定めること等により、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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