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第一九八

衆第二六号

   手話言語法案

目次

 第一章 総則(第一条−第六条)

 第二章 基本的施策(第七条−第十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、手話がろう者にとって日常生活及び社会生活を営む上で重要な独自の言語であることに鑑み、ろう者の手話の習得の機会の拡大並びに手話文化(手話及び手話を用いて行われる活動の文化的所産をいう。以下同じ。)の継承及び発展を図るため、手話の習得及び手話文化の保存に関する施策(以下「手話の習得等に関する施策」という。)について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、手話の習得等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話の習得等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 手話の習得等に関する施策は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。

 一 ろう者が、その意向を尊重されつつ、手話を習得するために必要な支援を受けられること。

 二 手話がろう者にとって日常生活及び社会生活を営む上で重要な独自の言語であり、ろう者がこれを用いて豊かな文化を創造してきたことに鑑み、手話文化の継承及び発展が図られること。

 (国及び地方公共団体の責務)

第三条 国及び地方公共団体は、前条に定める基本理念にのっとり、手話の習得等に関する施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。

 (手話の日)

第四条 国民の間に広く手話についての関心と理解を深めるようにするため、手話の日を設ける。

2 手話の日は、九月二十三日とする。

3 国及び地方公共団体は、手話の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。

 (手話基本計画等)

第五条 政府は、手話の習得等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、手話の習得等に関する施策についての基本的な計画(以下この条において「手話基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 都道府県は、手話基本計画を基本とするとともに、当該都道府県の実情に即した手話の習得等に関する施策の推進についての基本的な計画(以下この条において「都道府県手話計画」という。)を策定するよう努めなければならない。

3 市町村は、手話基本計画(都道府県手話計画が策定されているときは、手話基本計画及び都道府県手話計画)を基本とするとともに、当該市町村の実情に即した手話の習得等に関する施策の推進についての基本的な計画(以下この条において「市町村手話計画」という。)を策定するよう努めなければならない。

4 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、障害者政策委員会の意見を聴いて、手話基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

5 都道府県(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下この項及び次項において「指定都市」という。)を含む。)は、都道府県手話計画(指定都市にあっては、市町村手話計画)を策定するに当たっては、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第三十六条第一項の合議制の機関の意見を聴かなければならない。

6 市町村(指定都市を除く。)は、市町村手話計画を策定するに当たっては、障害者基本法第三十六条第四項の合議制の機関を設置している場合にあってはその意見を、その他の場合にあってはろう者その他の関係者の意見を聴かなければならない。

7 政府は、手話基本計画を策定したときは、その要旨を公表しなければならない。

8 第二項又は第三項の規定により都道府県手話計画又は市町村手話計画が策定されたときは、都道府県知事又は市町村長は、その要旨を公表しなければならない。

9 第四項及び第七項の規定は手話基本計画の変更について、第五項及び前項の規定は都道府県手話計画の変更について、第五項、第六項及び前項の規定は市町村手話計画の変更について、それぞれ準用する。

 (法制上の措置等)

第六条 政府は、手話の習得等に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

   第二章 基本的施策

 (第一言語としての手話の習得に対する支援)

第七条 国及び地方公共団体は、ろう児(ろう者である児童をいう。以下この条及び第九条において同じ。)の言語の能力の涵養が十分に図られるよう、乳幼児期からの第一言語(出生後最初に習得する言語をいう。以下この条において同じ。)としての手話の習得に関するろう児並びにその保護者及び家族に対する必要な情報の提供、第一言語としての手話の習得に関するろう児に対する支援その他必要な施策を講ずるものとする。

 (音声言語習得後の聴覚障害に係る手話の習得に対する支援)

第八条 国及び地方公共団体は、音声言語を習得した後に聴覚の障害のため音声言語により意思疎通を図ること等に支障が生じた者に対し、手話の習得の機会の提供その他の手話の習得を支援するために必要な施策を講ずるものとする。

 (手話の能力を有する教職員の充実等)

第九条 国及び地方公共団体は、ろう児に対する教育を主として行う特別支援学校における教育において手話を習得する機会が十分に確保されるようにするため、ろう者である教職員の養成その他の手話の能力を有する教職員の充実に関し必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、特別支援学校においてろう児が互いに手話により意思疎通を図ることができる環境が整備されるよう必要な施策を講ずるものとする。

3 前二項のほか、国及び地方公共団体は、学校教育においてろう児が手話を習得する機会及び手話を使用する機会の確保に配慮するものとする。

 (調査研究等)

第十条 国は、手話の習得等に関する施策の推進を図るため、手話の習得及び手話文化の保存に関する調査研究、国の内外の情報の収集、整理及び提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (手話文化に係る国際交流)

第十一条 国は、できる限り多様な国の手話文化が国民に提供されるようにするとともに我が国の手話文化の海外への発信を促進するため、ろう者同士の国際交流、外国の手話に関する出版物の日本語への翻訳の支援、我が国の手話に関する出版物の外国語への翻訳の支援その他の手話文化に係る国際交流を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

第二条 国は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (障害者基本法の一部改正)

第三条 障害者基本法の一部を次のように改正する。

  第三十二条第二項に次の一号を加える。

  六 手話言語法(令和元年法律第▼▼▼号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。

 (内閣府設置法の一部改正)

第四条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三項第四十四号の三の次に次の一号を加える。

  四十四の四 手話基本計画(手話言語法(令和元年法律第▼▼▼号)第五条第一項に規定するものをいう。)の策定及び推進に関すること。


     理 由

 手話がろう者にとって日常生活及び社会生活を営む上で重要な独自の言語であることに鑑み、ろう者の手話の習得の機会の拡大並びに手話文化の継承及び発展を図るため、手話の習得等に関する施策について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、手話の習得等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話の習得等に関する施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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