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   小渕内閣不信任決議案(第一四五回国会、決議第四号)


 本院は、小渕内閣を信任せず。
  右決議する。
     理 由
 昨年の七月三十日に小渕内閣が発足して以来、一年が過ぎた。この間、国民の間には将来への不安と現状に対する閉塞感、無力感が急速に広がっている。小渕総理は昨年八月の所信表明で「一両年のうちに我が国経済を回復軌道に乗せるよう、内閣の命運をかけて全力を尽くす」と表明した。しかし、昨年十一月に二十三兆円にのぼる景気対策を実施し、今年度予算には九兆四千億円の公共事業費を盛り込んだが、経済の現状は堺屋経企庁長官が「夜明け前のほの明るさが見えているが、明けたら大雨ということもあり得る」と述べる状態で、依然として楽観できる状況にない。それどころか雇用問題は一段と深刻化し、失業者数、失業率は橋本前内閣の上半期と比べいずれも大幅に増加している。失業者数は今年の六月が三二九万人で昨年に比べ、五十八万人増え、完全失業率は昨年が四・〇%であったものが、今年は四・九%に上昇している。企業の倒産、リストラによる失業は日本社会の中心を担い、家庭の大黒柱である中高年層に深刻なダメージを与え、その影響は自殺者の増加や家庭の崩壊となって現れ、深刻な社会問題にまで発展している。また、少子・高齢化が進む中で医療・年金・福祉の将来像が全く示されていないことも国民の大きな不安要因となっている。
 こうした国民の閉塞感・不安感が強まっている中で、小渕内閣の支持率が上昇しているのは何とも皮肉な現象であるが、昨夏の参議院議員選挙で示された民意が反映されない政治の現状に対して、国民の怒りとあきらめの思いが渦巻いているとすれば極めて危険な現象である。
 小渕内閣は昨年末以来、政党間の数合わせに奔走し、「自自連立政権」を発足させ、さらに今国会中には、「自自公政権」へと発展させるべく、政策の一致もないまま、事実上の与党体制を確立して各種重要法案成立の梃子にした。昨年の第一四二回国会に提出され、問題法案として継続審議となっていた、いわゆる「盗聴法案」や「住民基本台帳法の一部改正案」など、国民の権利やプライバシーを侵害する法案であるとの懸念も一顧だにせず、圧倒的な数の論理で衆・参両院で強行可決、成立させようとしているのがその結果≠ナある。
 さらに提出するしないで散々逡巡した挙げ句、会期末直前に提出し、可決・成立させた国旗・国歌法案。産業再生に名を借りた「リストラ法案=産業活力再生特別措置法案」の可決・成立など、いずれも成立は延長国会会期末であり、会期を五十七日間も大幅に延長した挙げ句のことである。国民の疑念や不安を全く払拭することなく数の力で押し切る、これまでの政権になかった危険な体質を小渕政権は顕在化させている。
 さらに加えて小渕内閣の無責任さもまた際立っている。昨年秋の第一四三回臨時国会における「金融再生関連法案」の審議に際し、野党案を丸呑みして同関連法案を成立させた後、公党間の約束として文書で確認した「財政と金融の完全分離」の実施を今国会に至って物の見事に反古にした。さらには決して破綻しないと偽って両行合わせて二三六六億円もの公的資金を投入した日本長期信用銀行や日本債券信用銀行など金融機関の相次ぐ破綻。加えて日本債券信用銀行には日銀による八〇〇億円の出資金もある。国民の血税を湯水のごとく金融機関の救済に投入しながら、それに失敗しても政治家や行政の責任は全く問われない。構造改革なきバラまき予算を成立させ、今年度末には公債発行残高は三〇〇兆円をはるかに超える見込みとなった。後の世代に一段と思いツケを残すことになるが、一体誰が責任を取るのか。小渕内閣はひたすら現状を糊塗し、ツケを後世に回す驚くべき無責任内閣である。
 小渕内閣が今国会で強引に成立させようとしている「盗聴法案」や「住民基本台帳法の一部改正案」は日常的に国民を監視し、あるいは管理しようとするものであり、国民の権利やプライバシーを侵害する、到底容認することができない法案である。これらの法案の成立と予算委員会で行われた野中官房長官の「あなたについて申し上げることがたくさんある」という恫喝とも取れる発言とを重ね合わせると、極めて危険な管理国家が生まれようとしている危惧させ感じるのである。国民はまさにこのような小渕内閣の姿勢に窒息しそうな息苦しさを感じ、国家による主権者たる国民の権利侵害、管理強化に強い疑念を抱いている。
 したがって、本院が小渕内閣を不信任することが、国民を閉塞感・不安感から解放し、国民に明日への希望と活力を生みだし、世界における日本の信用回復と国民の政治への信頼を回復する唯一の道であると判断するに至ったものである。
 以上が、不信任の理由である。

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