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   厚生労働大臣柳澤伯夫君不信任決議案(第一六六回国会、決議第六号)


 本院は、厚生労働大臣柳澤伯夫君を信任せず。
  右決議する。
     理 由
 去る五月二十五日、与党は社会保険庁改革関連法案を強行採決した。本法案の審議では、いわゆる「消えた年金」問題の実態が徐々に明らかになり、更なる実態解明や社会保険庁のずさんな記録管理の被害者救済についての本格的な審議の緒についたばかりであった。政府案について言えば、社会保険庁の解体、新たな組織の在り方についての審議が全く不十分であり、さらに、政府案では、「非公務員」を定めているが、実態は給料全額が税金の「隠れ公務員」であり、天下りし放題の特殊法人をつくることにほかならない。その上、社会保険庁を「隠れ公務員」の特殊法人へ「カンバンの掛け替え」をすることによって、消えた年金記録問題の責任から逃げ切ろうとしている。
 国会での審議を阻害したのは、まさに柳澤厚生労働大臣である。野党が年金記録の調査を再三要求したにもかかわらず、政府は調査と情報公開を拒み、説明責任を果たそうとしなかった。そればかりか、国民の切実な願いを無視し、当該官庁に指示をしないことが、年金の給付不足を生んでいる。消えた年金記録、宙に浮いた年金記録が五千万件以上にのぼり、国民の不安が高まっているのを無視し続け、「受給者に納付履歴の送付はしない」「社保庁コンピュータのデータと紙・マイクロフィルムのデータの突合はしない」などと繰り返してきた。行政のミスに対して誰がどのように責任を取るのか、明確にしないまま逃げ切ろうとした。
 それが、マスコミや世論の批判が高まって来たと見るや否や、突如として方針転換し、五年間の時効を撤廃することを柱とする救済法案を提出することを決めた。しかし、提出された法案は政府提出の閣法ではなく、与党提出の法案である。何とかして自らの責任を回避しようとする柳澤厚生労働大臣の姿勢は極めて姑息だ。年金事業については、年金資金による膨大なムダづかい、職員による年金記録の覗き見、年金保険料未納率を低く見せるための不正免除手続きなど、社会保険庁をめぐる不祥事が続いており、年金に対する国民の信頼は地に堕ちている。柳澤厚生労働大臣は、年金に対する信頼を回復する重大な責任を負っていたが、その責任を全うできなかったばかりか、国民の不信をさらに増大させた。
 柳澤厚生労働大臣の説明責任逃れ、はぐらかし、国民無視の答弁は社会保険庁改革関連法案の審議に始まったことではない。パート労働法改正案の審議では、差別的取扱い禁止の対象となるパート労働者がいるのかどうか、再三にわたり質問が出たが、法案の根幹をなす問題であるにもかかわらず、大臣は推定で四%から五%だ、実態調査はできない、とまるで他人事のような答弁を続けた。
 また、野党に追及されている旧特殊法人「年金資金運用基金」幹部が設立した私的団体による裏金疑惑についても、のらりくらりとした対応で調査に時間がかかり、委員会審議では事態の全貌が明らかになっていない。
 さらに、柳澤厚生労働大臣は、安倍内閣の中でも、とくに子育てや女性の働き方を応援する立場にありながら、女性を「子どもを産む機械」などと人権を著しく傷つける発言をして、国政に対する極めて大きな不信を招いた。柳澤大臣の発言は、いまの少子化や出生率の低下に対して、国民が頑張れば、女性が頑張って子どもを産めば何とかなるのではないかという思いがにじみ出ている。すなわち、これまでの自民党政治のツケをすべて国民に押しつけるかのようなものであり、言語道断である。
 以上が柳澤厚生労働大臣の不信任の理由である。

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