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   菅内閣不信任決議案(第一七四回国会、決議第一二号)

                        
 本院は、菅内閣を信任せず。
  右決議する。
     理 由
 菅内閣は、政権担当の資格と遂行能力において著しく適性を欠いているにもかかわらず、国民の期待感だけで選挙に臨もうとする卑劣な姿勢は、国民を愚弄しているとしか言いようがない。その存在が一日一日と続いていくことが、わが国に最大不幸社会を招くことになるのは明らかである。
 以下、菅内閣を不信任するに足る理由を挙げる。
 第一に、民意によって選ばれていない「正統性なき内閣」である。かつて民主党は、選挙を経ずに内閣が交代する事態を「たらいまわし」と批判していたが、今回の総理就任は言行不一致そのものであり、国民不在と言わざるを得ない。
 第二に、鳩山前政権の残滓を引きずる「不作為の内閣」である。菅総理は普天間問題に関する岡田外務大臣、北澤防衛大臣の留任、また口蹄疫問題に関する山田農林水産副大臣の昇格など、前内閣が迷走と無策を晒した人事をそのまま引き継いでいる。副総理として鳩山前総理とともに国政に混乱と停滞をもたらした連帯責任は極めて重いが、その自覚が全くない。
 第三に、国民の選択肢を奪う「政策隠し内閣」である。内閣交代により会期末に十日もの政治空白を作ったにもかかわらず、政府与党は野党が求める予算委員会を開催せず、国民に開かれた与野党論戦から逃げて新政権の説明責任を果たそうとしなかった。選挙目当てに、内閣支持率が高いうちに国会を閉じようとする不誠実な姿勢は断じて容認できない。
 第四に、政治とカネの問題に背を向ける「疑惑隠し内閣」である。菅総理は民主党党首であるにもかかわらず、鳩山前総理、小沢前幹事長、石川知裕議員、小林千代美議員の疑惑解明と政治的道義的責任につき、まったく指導力を発揮していない。荒井聰国務大臣の事務所費問題についても同様に消極的である。一連の疑惑を放置する姿勢は国民の期待にそむいており、この内閣では政治倫理の確立が図れないことが露呈した。
 第五に、政府提出法案成立への努力を怠る「責任放棄内閣」である。政府提出法案の成立は、政府・与党にとって、国民の負託に応える最大の責務といっても過言ではない。しかし、今国会、その成立本数・成立率は、通常国会としては過去最低レベルであり、到底国民の負託に応えられるような態勢ではない。これは、国民生活に利益をもたらさない問題点だらけの法案の強行採決を繰り返した挙句、国会運営が破たんし、国民の支持を失った結果である。郵政改革法案に至っては、菅内閣発足早々に成立への努力を放棄したが、その扱いを巡って連立与党内で収拾がつかず、発足四日目に大臣が交代するという前代未聞の醜態を国民に晒すこととなった。
 第六に、法案成立への責務を放棄したままで参議院通常選挙に突き進もうとする「国民愚弄内閣」である。菅内閣が、選挙の勝利を目的として法案成立を断念し、国会審議を行わないことで、国民の内閣に向けられた期待感を維持しようとしているのだとしたら、国民を愚弄すること甚だしい。堂々と、国会論戦と法案審議に臨むべきである。
 鳩山前政権は、普天間問題に象徴される主要政策の閉塞、および政治とカネに関する自浄能力の欠如によって瓦解した。かつて菅総理は自らの著作『大臣』において「政策的に行き詰まったり、スキャンダルによって総理が内閣総辞職を決めた場合は、与党内で政権のたらいまわしをするのではなく、与党は次の総理侯補を決めたうえで衆議院を解散し、野党も総理候補を明確にしたうえで総選挙に挑むべきだろう」と記している。菅総理が一国の指導者として最低限の見識と責任感を持つのであれば、その信念をすみやかに実行に移すべきである。よって本院は菅内閣を不信任し、一刻も早く国民に信を問うべきである。
 以上が、本決議案を提出する理由である。

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