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   過疎地域自立促進特別措置法案要綱


第一 総則
一 目的(第一条関係)
この法律は、人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域について、総合的かつ計画的な対策を実施するために必要な特別措置を講ずることにより、これらの地域の自立促進を図り、もって住民福祉の向上、雇用の増大、地域格差の是正及び美しく風格ある国土の形成に寄与することを目的とすること。
二 過疎地域(第二条関係)
次に掲げる要件に該当する市町村(地方税の収入以外の政令で定める収入の額が政令で定める金額を超える市町村を除く。)の区域を「過疎地域」とし、内閣総理大臣は、当該市町村を公示するものとすること。
@ 次のいずれかに該当すること。ただし、イ、ロ又はハに該当する場合においては、国勢調査の結果による市町村人口に係る平成七年の人口から当該市町村人口に係る昭和四十五年の人口を控除して得た人口を当該市町村人口に係る同年の人口で除して得た数値が○・一未満であること。
イ 国勢調査の結果による市町村人口に係る昭和三十五年の人口から当該市町村人口に係る平成七年の人口を控除して得た人口を当該市町村人口に係る昭和三十五年の人口で除して得た数値(以下「三十五年間人口減少率」という。)が○・三以上であること。
ロ 三十五年間人口減少率が○・二五以上であって、国勢調査の結果による市町村人口に係る平成七年の人口のうち六十五歳以上の人口を当該市町村人口に係る同年の人口で除して得た数値が〇・二四以上であること。
ハ 三十五年間人口減少率が〇・二五以上であって、国勢調査の結果による市町村人口に係る平成七年の人口のうち十五歳以上三十歳未満の人口を当該市町村人口に係る同年の人口で除して得た数値が〇・一五以下であること。
ニ 国勢調査の結果による市町村人口に係る昭和四十五年の人口から当該市町村人口に係る平成七年の人口を控除して得た人口を当該市町村人口に係る昭和四十五年の人口で除して得た数値が○・一九以上であること。
A 平成八年度から平成十年度までの平均財政力指数が〇・四二以下であること。
三 過疎地域自立促進のための対策の目標(第三条関係)
過疎地域の自立促進のための対策は、一の目的を達成するため、地域における創意工夫を尊重し、次の目標に従って推進されなければならないものとすること。
@ 産業基盤の整備、農林漁業経営の近代化、中小企業の育成、企業の導入及び起業の促進、観光の開発等を図ることにより、産業を振興し、あわせて安定的な雇用を増大すること。
A 道路その他の交通施設、通信施設等の整備を図ること等により、過疎地域とその他の地域及び過疎地域内の交通通信連絡を確保するとともに、過疎地域における情報化を図り、及び地域間交流を促進すること。
B 生活環境の整備、高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進、医療の確保並びに教育の振興を図ることにより、住民の生活の安定と福祉の向上を図ること。
C 美しい景観の整備、地域文化の振興等を図ることにより、個性豊かな地域社会を形成すること。
D 基幹集落の整備及び適正規模集落の育成を図ることにより、地域社会の再編成を促進すること。
四 国の責務(第四条関係)
国は、一の目的を達成するため、三に掲げる事項につき、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずるものとすること。
第二 過疎地域自立促進計画
一 過疎地域自立促進方針(第五条関係)
1 都道府県は、当該都道府県における過疎地域の自立促進を図るため、過疎地域自立促進方針(以下「自立促進方針」という。)を定めるものとすること。
2 都道府県は、自立促進方針を定めようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならないものとすること。
二 過疎地域自立促進市町村計画(第六条関係)
1 過疎地域の市町村は、自立促進方針に基づき、当該市町村の議会の議決を経て過疎地域自立促進市町村計画(以下「市町村計画」という。)を定めなければならないものとすること。この場合において、当該市町村は、あらかじめ、都道府県に協議しなければならないものとすること。
2 市町村計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
@ 地域の自立促進の基本的方針に関する事項
 A 農林水産業、商工業その他の産業の振興及び観光の開発に関する事項
 B 交通通信体系の整備、地域における情報化及び地域間交流の促進に関する事項
 C 生活環境の整備に関する事項
 D 高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進に関する事項
 E 医療の確保に関する事項
 F 教育の振興に関する事項
 G 地域文化の振興等に関する事項
 H 集落の整備に関する事項
 I その他地域の自立促進に関し市町村が必要と認める事項
3 市町村計画は、内閣総理大臣に提出することとし、内閣総理大臣は、計画の内容を関係行政機関の長に通知し、その意見を聴くものとすること。
三 過疎地域自立促進都道府県計画(第七条関係)
1 都道府県は、自立促進方針に基づき、過疎地域の自立促進を図るため、過疎地域自立促進都道府県計画(以下「都道府県計画」という。)を定めるものとすること。
2 都道府県計画は、二の2に掲げる事項について当該都道府県が過疎地域の市町村に協力して講じようとする措置の計画とすること。
3 都道府県は、一の過疎地域の市町村の区域を超える広域の見地に配慮して都道府県計画を作成するものとすること。
4 都道府県計画は、内閣総理大臣に提出することとし、内閣総理大臣は、計画の内容を関係行政機関の長に通知し、その意見を聴くものとすること。
四 関係行政機関の長の協力(第八条関係)
内閣総理大臣は、関係行政機関の長に対し、関係地方公共団体に対する助言その他の協力を求めることができるものとすること。
五 調査(第九条関係)
内閣総理大臣は、関係地方公共団体について調査を行うことができるものとすること。
第三 過疎地域自立促進のための財政上の特別措置
一 国の負担又は補助の割合の特例(第十条及び第十一条関係)
1 市町村計画に基づいて行う事業の国の負担又は補助の割合は、次のとおりとすること。
小中学校の統合のための校舎又は屋内運動場 十分の五・五
保育所                  二分の一〜十分の五・五(国又は地方公共団体以外の者が設置する保育所に係るものにあっては、三分の二)
消防施設                 十分の五・五
2 国は、市町村計画に基づいて行う小中学校の統合のための教職員住宅の建築事業について、その経費の十分の五・五を補助するものとすること。
3 国は、過疎地域の自立促進を図るため特に必要があると認めるときは、予算の範囲内において、市町村計画又は都道府県計画に基づいて行う事業に要する経費の一部を補助することができるものとすること。
二 過疎地域自立促進のための地方債(第十二条関係)
過疎地域の市町村が市町村計画に基づいて行う地場産業に係る事業又は観光若しくはレクリエーションに関する事業を行う者に対する出資及び次に掲げる施設の整備に必要な経費については、地方債をもってその財源とすることができるものとし、その元利償還費の一部については、地方交付税の算定に用いる基準財政需要額に算入するものとすること。
@ 交通の確保又は産業の振興を図るために必要な政令で定める市町村道、農道、林道及び漁港関連道
A 漁港及び港湾
B 地場産業の振興に資する施設で政令で定めるもの
C 観光又はレクリエーションに関する施設
D 電気通信に関する施設
E 下水処理のための施設
F 公民館その他の集会施設
G 消防施設
H 高齢者の保健又は福祉の向上又は増進を図るための施設
I 保育所及び児童館
J 診療施設(巡回診療車(船)及び患者輸送車(艇)を含む。)
K 小中学校の統合のための校舎、屋内運動場、寄宿舎、教職員住宅及び通学施設
L 地域文化の振興等を図るための施設
M 集落の整備のための用地及び住宅
N その他政令で定める施設
三 資金の確保等(第十三条関係)
国は、市町村計画又は都道府県計画に基づいて行う事業の実施に関し、必要な資金の確保その他の援助に努めなければならないものとすること。
第四 過疎地域自立促進のためのその他の特別措置
一 基幹道路の整備(第十四条関係)
過疎地域における基幹道路(過疎地域とその他の地域を連絡する基幹道路を含む。)で関係行政機関の長が指定するものの新設及び改築については、都道府県計画に基づいて、都道府県が行うことができるものとし、この基幹道路は、都道府県の道路とみなし、後進地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律(以下「負担特例法」という。)の適用があるものとすること。
二 公共下水道の幹線管渠等の整備(第十五条関係)
過疎地域における市町村が管理する公共下水道のうち、広域の見地から設置する必要があるものであって、過疎地域の市町村のみでは設置することが困難なものとして建設大臣が指定するものの幹線管渠等の設置については、都道府県計画に基づいて、都道府県が行うことができるものとし、この幹線管渠等は、都道府県の公共下水道とみなし、国の負担又は補助の割合は、負担特例法の規定の例によるものとすること。
三 医療の確保(第十六条及び第十七条関係)
1 都道府県は、過疎地域における医療を確保するため、都道府県計画に基づいて、無医地区に関し次に掲げる事業を実施しなければならないものとすること。
 @ 診療所の設置
A 患者輸送車(艇)の整備
B 定期的な巡回診療
C 保健婦による保健指導等の活動
 D 医療機関の協力体制の整備
 E その他無医地区の医療の確保に必要な事業
2 都道府県は、特に必要があると認めるときは、病院又は診療所の開設者又は管理者に対し、医師又は歯科医師の派遣及び巡回診療車(船)による巡回診療につき、協力を要請することができるものとすること。
3 国及び都道府県は、医師若しくは歯科医師又は看護婦の確保その他無医地区における医療の確保(医師又は歯科医師を派遣する病院に対する助成を含む。)に努めなければならないものとすること。
4 都道府県は、1及び2の事業の実施に要する費用を負担するものとし、国は、1の@からBまで及び2に要する費用の二分の一を補助するものとすること。
5 国及び都道府県は、過疎地域における医療を確保するため、過疎地域の市町村が市町村計画に基づいて1に掲げる事業を実施しようとするときは、当該事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとすること。
四 高齢者の福祉の増進(第十八条及び第十九条関係)
1 都道府県は、過疎地域における高齢者の福祉の増進を図るため、市町村計画に基づいて行う事業のうち、デイサービスを供与し、あわせて高齢者の居住の用に供するための施設の整備に要する費用の一部を補助することができるものとし、国は、予算の範囲内において、都道府県が補助する費用の一部を補助することができるものとすること。
2 国は、都道府県が都道府県計画に基づいて1の施設の整備をしようとするときは、予算の範囲内において、当該整備に要する費用の一部を補助することができるものとすること。
3 国は、過疎地域の市町村が市町村計画に基づいて高齢者の自主的活動の助長と福祉の増進を図るための集会施設の建設をしようとするときは、予算の範囲内において、当該建設に要する費用の一部を補助することができるものとすること。
五 交通の確保(第二十条関係)
国及び地方公共団体は、過疎地域における住民の生活の利便性の向上等を図るため、地域住民の生活に必要な旅客輸送の安定的な確保について適切な配慮をするものとすること。
六 情報の流通の円滑化及び通信体系の充実(第二十一条関係)
国及び地方公共団体は、過疎地域における住民の生活の利便性の向上、産業の振興、地域間交流の促進等を図るため、情報の流通の円滑化及び通信体系の充実について適切な配慮をするものとすること。
七 教育の充実(第二十二条関係)
国及び地方公共団体は、過疎地域において、その教育の特殊事情にかんがみ、学校教育及び社会教育の充実に努めるとともに、地域社会の特性に応じた生涯学習の振興に資するための施策の充実について適切な配慮をするものとすること。
八 地域文化の振興等(第二十三条関係)
国及び地方公共団体は、過疎地域において伝承されてきた文化的所産の保存及び活用について適切な措置が講ぜられるよう努めるとともに、地域における文化の振興について適切な配慮をするものとする。
九 農地法等による処分についての配慮(第二十四条関係)
国の行政機関の長又は都道府県は、過疎地域内の土地を市町村計画に定める用途に供するため農地法等による許可その他の処分を求められたときは、当該地域の自立促進が図られるよう適切な配慮をするものとすること。
十 国有林野の活用(第二十五条関係)
国は、市町村計画の実施を促進するため、国有林野の活用について適切な配慮をするものとすること。
十一 農林漁業金融公庫等からの資金の貸付け(第二十六条関係)
農林漁業金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫は、過疎地域において農林漁業者又は農林漁業者の組織する法人に対し、農林漁業の経営改善又は振興のための計画で都道府県の認定を受けたものを実施するために必要な資金の貸付けを行うものとすること。
十二 中小企業に対する資金の確保(第二十七条関係)
1 国は、過疎地域において事業を行う中小企業者が経営改善のための計画で都道府県の認定を受けたものに基づく事業を実施するために必要とする資金の確保に努めなければならないものとすること。
2 国及び都道府県は、1に定めるもののほか、過疎地域において中小企業者が行う事業であって第一の一の目的の達成に資すると認められるものの実施に関し、当該事業者が必要とする資金の確保に努めなければならないものとすること。
十三 住宅金融公庫等からの資金の貸付け(第二十八条関係)
住宅金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫は、市町村計画のうち集落整備の計画にのっとって過疎地域の市町村の住民が行う住宅の建設又は購入、土地の取得等が円滑に行われるよう必要な資金の貸付けについて適切な配慮をするものとすること。
十四 事業用資産の買換えの場合の課税の特例(第二十九条関係)
過疎地域以外の地域にある事業用資産を譲渡して過疎地域内にある事業用資産を取得した場合においては、租税特別措置法の定める特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例の適用があるものとすること。
十五 減価償却の特例(第三十条関係)
過疎地域内において製造の事業、ソフトウェア業又は旅館業(下宿営業を除く。以下同じ。)の用に供する設備の新増設に伴い新たに取得した建物等については、租税特別措置法の定める特別償却を行うことができるものとすること。
十六 地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置(第三十一条関係)
地方公共団体が、過疎地域内において製造の事業、ソフトウェア業若しくは旅館業の用に供する設備を新増設した者について、その事業に対する事業税、不動産取得税若しくは固定資産税を課さなかった場合若しくは不均一の課税をした場合又は過疎地域内において畜産業若しくは水産業を行う個人について、その事業に対する事業税を課さなかった場合若しくは不均一の課税をした場合においては、それらの措置による減収額について地方交付税により補てんするものとすること。
第五 雑則
一 過疎地域の市町村以外の市町村の区域に対する適用(第三十二条関係)
平成八年以降において最初に行われる国勢調査の結果による人口の年齢別構成が公表された場合においては、人口減少率、平均財政力指数等が第一の二の過疎地域の要件に該当する場合には、過疎地域の市町村としてこの法律の規定を適用するものとすること。
二 市町村の廃置分合等があった場合の特例(第三十三条関係)
 1 過疎地域の市町村の廃置分合又は境界変更があった場合には、当該廃置分合又は境界変更により新たに設置され、又は境界が変更された市町村の区域で総理府令で定める基準に該当するものは、過疎地域とみなして、この法律の規定を適用するものとすること。
2 合併市町村(過疎地域の市町村を除く。以下同じ。)のうち合併関係市町村に過疎地域の市町村が含まれるものについては、当該市町村の合併が行われた日の前日において過疎地域であった区域を過疎地域とみなして、この法律の規定を適用するものとすること。
三 政令への委任(第三十四条関係)
この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
第六 附則
一 施行期日等
この法律は、平成十二年四月一日から施行し、平成二十二年三月三十一日限り、その効力を失うものとすること。
二 経過措置
1 旧過疎地域活性化特別措置法(以下「旧過疎活性化法」という。)の規定に基づく国の負担又は補助のうち、平成十一年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき平成十二年度以降の年度に支出すべきものとされたもの及び平成十一年度以前の年度の歳出予算に係るもので平成十二年度以降の年度に繰り越されたものについては、従前の例により国の負担又は補助の特例等を講ずるものとすること。
2 旧過疎活性化法の規定に基づく基幹道路の新設及び改築に係る事業並びに公共下水道の幹線管渠等の設置に係る事業で、平成十二年三月三十一日においてその工事を完了していないものについては、平成十七年三月三十一日までの間に限り、従前の例により基幹道路の整備に関する特別措置及び公共下水道の幹線管渠等の整備に関する特別措置を講ずるものとすること。
3 地方公共団体が、製造の事業若しくは旅館業の用に供する設備を平成十二年三月三十一日以前に新設し、若しくは増設した者に係る事業税、不動産取得税若しくは固定資産税について課税免除若しくは不均一課税をした場合又は畜産業、水産業若しくは薪炭製造業を行う個人に係る事業税について同日以前に課税免除若しくは不均一課税をした場合においては、従前の例により地方交付税に係る減収額の補てん措置を講ずるものとすること。
三 特定市町村等に対するこの法律の準用等
1 旧過疎活性化法の規定に基づく過疎地域をその区域とする市町村のうち過疎地域の市町村以外のもの(以下「特定市町村」という。)については、平成十二年度から平成十六年度までの間に限り、第三の一(国の負担又は補助の特例)、第三の二(過疎地域自立促進のための地方債)、第四の一(基幹道路の整備)及び第四の二(公共下水道の幹線管渠等の整備)を準用するものとすること。
2 施行日の前日において市町村の合併の特例に関する法律第十二条の規定の適用を受けていた市町村のうち過疎地域の市町村以外のものについては、当該市町村の合併が行われた日の前日において旧過疎活性化法の規定に基づく過疎地域であった区域を特定市町村の区域とみなして、1を適用するものとすること。
3 合併市町村のうち合併関係市町村に特定市町村が含まれるものについては、当該市町村の合併が行われた日の前日において特定市町村の区域であった区域を特定市町村の区域とみなして、1を適用するものとすること。
四 関係法律の改正等
関係法律の改正その他所要の規定の整備を行うこと。

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