衆議院

メインへスキップ



   有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案要綱


第一 目的                                      (第一条関係)
この法律は、有明海及び八代海が、国民にとって貴重な自然環境及び水産資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ、有明海及び八代海の再生に関する基本方針を定めるとともに、有明海及び八代海の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画を策定し、その実施を促進する等特別の措置を講ずることにより、国民的資産である有明海及び八代海を豊かな海として再生することを目的とするものとすること。
第二 定義                                      (第二条関係)
一 この法律において「有明海」とは、次に掲げる直線及び陸岸によって囲まれた海面をいうものとすること。
1 長崎県瀬詰崎から熊本県天神山に至る直線
2 熊本県染岳から高松山三角点に至る直線
3 熊本県天草上島恵比須鼻から大矢野岳に至る直線
4 熊本県三角灯台から中神島を経て三角岳に至る直線
二 この法律において「八代海」とは、次に掲げる直線及び陸岸によって囲まれた海面をいうものとすること。
1 熊本県三角岳から中神島を経て三角灯台に至る直線
2 熊本県大矢野岳から天草上島恵比須鼻に至る直線
3 熊本県高松山三角点から染岳に至る直線
4 熊本県天草下島台場ノ鼻から鹿児島県長島大崎に至る直線
5 鹿児島県長島神崎鼻から鵜瀬鼻に至る直線
三 この法律において「関係県」とは、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県及び鹿児島県をいうものとすること。
四 この法律において「指定地域」とは、関係県の市町村の区域のうち、有明海及び八代海の海域の環境の保全若しくは改善又は当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する施策を講ずべき地域で第三の一により指定されたものをいうものとすること。
第三 地域の指定                                   (第三条関係)
一 指定地域は、主務大臣が、関係県の申請に基づき、関係行政機関の長に協議して指定するものとすること。
二 関係県は、一の申請をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村に協議しなければならないものとすること。
三 主務大臣は、一の指定をしたときは、その旨及びその区域を公示しなければならないものとすること。
四 一から三までは、指定地域の変更について準用するものとすること。
第四 基本方針                                    (第四条関係)
一 主務大臣は、有明海及び八代海の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する施策を推進するため、有明海及び八代海の再生に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならないものとすること。
二 基本方針においては、次の事項を定めるものとすること。
1 有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する基本的な指針
2 第五の一の県計画の策定に関する基本的な事項
三 主務大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、関係県の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議しなければならないものとすること。
四 主務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係県に通知しなければならないものとすること。
五 主務大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとすること。
六 三及び四は、基本方針の変更について準用するものとすること。
第五 県計画                                     (第五条関係)
一 関係県は、基本方針に基づき、当該関係県の区域内の指定地域について、有明海及び八代海の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画(以下「県計画」という。)を定めるものとすること。
二 県計画においては、次の事項を定めるものとすること。
1 有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する方針
2 有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興のための次の事項
(一) 水質等の保全に関する事項
(二) 干潟等の浄化機能の維持及び向上に関する事項
(三) 河川における流況の調整及び土砂の適正な管理に関する事項
(四) 河川、海岸、港湾及び漁港の整備に関する事項
(五) 森林の機能の向上に関する事項
(六) 漁場の生産力の増進に関する事項
(七) 水産動植物の増殖及び養殖の推進に関する事項
(八) 有害動植物の駆除に関する事項
3 2の事項に係る次の事業の実施に関する事項
(一) 下水道、浄化槽その他排水処理施設の整備に関する事業
(二) 海域の環境の保全及び改善に関する事業
(三) 河川、海岸、港湾、漁港及び森林の整備に関する事業
(四) 漁場の保全及び整備に関する事業
(五) 漁業関連施設の整備に関する事業
4 有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興のための調査研究に関する事項
三 関係県は、県計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係市町村から意見を聴かなければならないものとすること。
四 関係県は、県計画を定めようとするときは、主務大臣に協議し、その同意を得なければならないものとすること。
五 主務大臣は、四の協議をするに当たっては、それぞれの県計画の調和が図られるよう配慮するものとすること。
六 主務大臣は、四の同意をしようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならないものとすること。
七 関係県は、県計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係市町村に通知しなければならないものとすること。
八 三から七までは、県計画の変更について準用するものとすること。
第六 事業の実施                                   (第六条関係)
県計画に基づく事業は、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとすること。
第七 促進協議会                                   (第七条関係)
一 主務大臣、関係行政機関の長及び関係県の知事(以下第七において「主務大臣等」という。)は、それぞれの県計画の調和を図りつつ、その実施を促進するために必要な協議を行うため、促進協議会を組織することができるものとすること。
二 一の協議を行うための会議(三において「会議」という。)は、主務大臣等又はその指名する職員をもって構成するものとすること。
三 会議において協議が調った事項については、主務大臣等は、その協議の結果を尊重しなければならないものとすること。
四 二に定めるもののほか、促進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、促進協議会が定めるものとすること。
五 一の協議を行う場合において必要と認められるときは、関係市町村及び学識経験のある者の意見を聴くものとすること。
第八 国の補助の割合の特例                       (第八条から第十条まで関係)
一 県計画に基づいて平成十四年度から平成二十三年度までの各年度において関係県が国から補助金の交付を受けて行う漁港漁場整備法第四条に規定する漁港漁場整備事業(同条第二号に掲げるものに限る。)のうち、有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善を図るために行う事業で政令で定めるもの(以下「特定事業」という。)に係る経費に対する国の補助の割合は、他の法令の規定にかかわらず、二に定めるところにより算定するものとすること。
二 特定事業に係る経費に対する国の補助の割合は、関係県ごとに当該特定事業に係る経費に対する通常の国の補助の割合に次の式により算定した数(小数点以下二位未満は、切り上げるものとする。3において「引上率」という。)を乗じて算定するものとすること。
  1+0.1×調整率
1 二の式において「調整率」とは、次の式により算定した数値をいうものとすること。
          0.46−当該県の財政力指数(財政力指数が0.46を超えるときは0.46)
   0.75+0.25×                                  
          0.46−すべての関係県のうち財政力指数が最低の関係県の財政力指数
2 1の式において「財政力指数」とは、地方交付税法第十四条の規定により算定した基準財政収入額を同法第十一条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値をいうものとすること。
3 農林水産大臣は、引上率を算定し、関係県に通知するものとすること。
三 一により特定事業に係る経費に対して国が通常の補助の割合を超えて補助することとなる額の交付に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
第九 地方債についての配慮                             (第十一条関係)
地方公共団体が県計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとすること。
第十 資金の確保等                                 (第十二条関係)
国は、県計画に基づいて行う漁業の振興のための事業その他の事業の実施に関し、必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
第十一 下水道の整備等                               (第十三条関係)
一 国及び地方公共団体は、指定地域において、下水道、浄化槽その他排水処理施設の整備その他有明海及び八代海の海域の水質の保全のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
二 関係県は、県計画に基づき、水質汚濁防止法第十四条の七第一項の規定による生活排水対策重点地域の指定その他の生活排水対策の実施を推進しなければならないものとすること。
第十二 漂流物の除去等                               (第十四条関係)
国及び地方公共団体は、有明海及び八代海の海域等において、漂流物の除去その他広域的な海域の環境の保全及び改善のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
第十三 河川の流況の調整                              (第十五条関係)
河川管理者及びダムを設置する者は、有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善を図るため、ダムの貯留水を利用して、当該ダムの目的に支障のない範囲内において、河川の流況の調整に努めなければならないものとすること。
第十四 森林の保全及び整備                             (第十六条関係)
国及び地方公共団体は、有明海及び八代海の海域における水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、森林の保全及び整備に努めなければならないものとすること。
第十五 水産動物の種苗の放流等                           (第十七条関係)
国及び地方公共団体は、有明海及び八代海の海域における水産動植物の増殖及び養殖の推進を図るため、水産動物の種苗の放流、養殖漁場の改善等の措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
第十六 調査研究の体制の整備等                           (第十八条関係)
国及び関係県は、有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興を図るため、赤潮の発生機構の解明及びその防除技術の開発に努めるとともに、総合的な調査研究の体制の整備、調査の実施及びその結果の公表、研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成等の措置を講ずるものとすること。
第十七 酸処理剤の適正な使用等                           (第十九条関係)
有明海又は八代海の海域において水産動植物の養殖の事業を営む者は、のりの品質の向上等のために使用する酸処理剤及び肥料の適正な使用等当該海域の環境の保全について適切な配慮をしなければならないものとすること。
第十八 自然災害の発生の防止                            (第二十条関係)
国及び地方公共団体は、自然災害の発生を防止するため、指定地域における河川、海岸、港湾、漁港、森林等の整備を推進するよう努めなければならないものとすること。
第十九 赤潮等による漁業被害等に係る支援                     (第二十一条関係)
国及び地方公共団体は、有明海又は八代海の海域において赤潮等による漁業被害が発生した場合においては、その経営に影響を受ける水産業者その他の関係事業者に対し、必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるものとすること。
第二十 赤潮等による漁業被害者の救済                       (第二十二条関係)
国は、有明海又は八代海の海域において赤潮等により著しい漁業被害が発生した場合においては、当該漁業被害を受けた漁業者の救済について必要な措置を講ずるよう配慮するものとすること。
第二十一 知識の普及                               (第二十三条関係)
国及び地方公共団体は、有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善を図るため、指定地域の住民等に対し、当該海域の環境の保全及び改善に関する知識の普及を図るよう努めなければならないものとすること。
第二十二 主務大臣                                (第二十四条関係)
この法律における主務大臣は、総務大臣、文部科学大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣及び環境大臣とするものとすること。
第二十三 施行期日等                                  (附則関係)
一 施行期日
この法律は、公布の日から施行するものとすること。
二 適用
第八は、平成十四年度の予算に係る国の補助金から適用し、平成十三年度までの予算に係る国の補助金で平成十四年度以降に繰り越されたものについては、なお従前の例によるものとすること。
三 見直し
この法律は、この法律の施行の日から五年以内に、この法律の施行の状況並びに有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する調査の結果を踏まえ、必要な見直しを行うものとすること。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.