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日本国憲法の改正手続に関する法律案要綱

第一 趣旨
この法律は、日本国憲法第96条に定める日本国憲法の改正(以下「憲法改正」という。)について、国民の承認に係る投票(以下「国民投票」という。)に関する手続を定めるとともに、あわせて憲法改正の発議に係る手続の整備を行うものとすること。

第二 国民投票の実施
 一 総則
  1 国民投票の期日
(1) 国民投票は、国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に行うものとすること。
(2) 内閣は、国民投票の期日に係る議案の送付を受けたときは、速やかに、総務大臣を経由して、当該国民投票の期日を中央選挙管理会に通知しなければならないものとすること。中央選挙管理会は、当該通知があったときは、速やかに、国民投票の期日を官報で告示しなければならないものとすること。
  2 国民投票の投票権
(1) 日本国民で年齢満20年以上の者は、国民投票の投票権を有するものとすること。
(2) 成年被後見人は、国民投票の投票権を有しないものとすること。
  3 国民投票の執行に関する事務の管理
国民投票の執行に関する事務は、中央選挙管理会が管理するものとすること。

 二 憲法改正案広報協議会及び国民投票に関する周知
  1 憲法改正案広報協議会
(1) 憲法改正案広報協議会の委員の員数は、憲法改正の発議がされた際衆議院議員であった者及び当該発議がされた際参議院議員であった者各10人とするものとすること。
(2) 委員は、各議院における各会派の所属議員数の比率により、各会派に割り当て選任するものとすること。ただし、各会派の所属議員数の比率により各会派に割り当て選任した場合には憲法改正の発議に係る議決において反対の表決を行った議員の所属する会派から委員が選任されないこととなるときは、各議院において、当該会派にも委員を割り当て選任するようできる限り配慮するものとすること。
(3) 憲法改正案広報協議会は、憲法改正案並びにその要旨及び解説等並びに憲法改正案を発議するに当たって出された賛成意見及び反対意見を掲載した国民投票公報の原稿の作成、憲法改正案に関する説明会の開催その他憲法改正案の広報に関する事務を行うものとすること。
(4) 憲法改正案広報協議会が、(3)の事務を行うに当たっては、憲法改正案並びにその要旨及び解説等に関する記載、憲法改正案に関する説明会における説明等については客観的かつ中立的に行うとともに、憲法改正案に対する賛成意見及び反対意見の記載、発言等については公正かつ平等に扱うものとすること。

2 国民投票に関する周知
(1) 総務大臣、中央選挙管理会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、国民投票に際し、国民投票の方法、この法律に規定する規制その他国民投票の手続に関し必要と認める事項を投票人に周知させなければならないものとすること。
(2) 中央選挙管理会は、国民投票の結果を国民に対して速やかに知らせるように努めなければならないものとすること。

 三 投票人名簿及び在外投票人名簿
  1 調製
市町村の選挙管理委員会は、国民投票が行われる場合においては、投票人名簿及び在外投票人名簿を調製しなければならないものとすること。
  2 登録
(1) 市町村の選挙管理委員会は、国民投票の期日現在で年齢満20年以上の日本国民(成年被後見人を除く。)で、国民投票の期日前50日に当たる日(以下「登録基準日」という。)において、当該市町村の住民基本台帳に記録されている者等について、投票人名簿に登録しなければならないものとすること。
(2) 市町村の選挙管理委員会は、国民投票の期日現在で年齢満20年以上の日本国民(成年被後見人を除く。)で、登録基準日において当該市町村の在外選挙人名簿に登録されている者及び国外に住所を有する者で在外投票人名簿の登録の申請をした者について、在外投票人名簿に登録しなければならないものとすること。

 四 投票及び開票
  1 一人一票
投票は、国民投票に係る憲法改正案ごとに、一人一票に限るものとすること。
  2 投票管理者及び投票立会人
投票管理者及び投票立会人に関し、必要な規定を置くものとすること。
  3 投票の方式
投票人は、投票所において、投票用紙の記載欄に、憲法改正案に対し賛成するときは○の記号を、憲法改正案に対し反対するときは×の記号を自書し、これを投票箱に入れなければならないものとすること。
  4 開票管理者及び開票立会人
開票管理者及び開票立会人に関し、必要な規定を置くものとすること。

 五 国民投票分会及び国民投票会
  1 国民投票分会及び国民投票会
国民投票分会及び国民投票会に関し、必要な規定を置くものとすること。
  2 国民投票の結果の報告及び告示等
(1) 中央選挙管理会は、国民投票の結果の報告を受けたときは、直ちに有効投票の総数、憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数並びに憲法改正案に対する賛成の投票の数が有効投票の総数の2分の1を超える旨又は超えない旨を官報で告示するとともに、総務大臣を通じ内閣総理大臣に通知しなければならないものとすること。
(2) 内閣総理大臣は、(1)の通知を受けたときは、直ちに(1)に規定する事項を衆議院議長及び参議院議長に通知しなければならないものとすること。

 六 国民投票運動
  1 適用上の注意
六(国民投票運動)及び七(罰則)の規定の適用に当たっては、表現の自由、学問の自由及び政治活動の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならないものとすること。
  2 投票事務関係者等の国民投票運動の禁止
(1) 投票管理者、開票管理者、国民投票分会長及び国民投票長は、在職中、その関係区域内において、国民投票運動(憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為をいう。以下同じ。)をすることができないものとすること。
(2) 中央選挙管理会の委員及び中央選挙管理会の庶務に従事する総務省の職員並びに選挙管理委員会の委員及び職員並びに憲法改正案広報協議会事務局の職員、裁判官、検察官、公安委員会の委員並びに警察官は、在職中、国民投票運動をすることができないものとすること。
  3 公務員等・教育者の地位利用による国民投票運動の禁止
(1) 国及び地方公共団体の公務員等は、その地位を利用して国民投票運動をすることができないものとすること。
(2) 教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して国民投票運動をすることができないものとすること。
  4 投票日前の国民投票運動のための広告放送の制限
何人も、国民投票の期日前7日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、5(1)による場合を除くほか、一般放送事業者、有線テレビジョン放送事業者又は有線ラジオ放送若しくは電気通信役務利用放送の業務を行う者の放送設備を使用して、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることができないものとすること。
  5 政党等による放送及び新聞広告
(1) 政党等(一人以上の衆議院議員又は参議院議員が所属する政党その他の政治団体であって、両議院の議長が協議して定めるところにより憲法改正案広報協議会に届け出たものをいう。以下同じ。)は、日本放送協会及び一般放送事業者のラジオ放送又はテレビジョン放送の放送設備により、憲法改正案に対する意見を無料で放送することができるものとすること。この放送に関しては、すべての政党等に対して、同一放送設備を使用し、憲法改正の発議に係る議決がされた際当該政党等に所属する衆議院議員及び参議院議員の数を踏まえて憲法改正案広報協議会が定める時間数を与える等同等の利便を提供しなければならないものとすること。
(2) 政党等は、憲法改正の発議に係る議決がされた際当該政党等に所属する衆議院議員及び参議院議員の数を踏まえて憲法改正案広報協議会が定める寸法で、新聞に、憲法改正案広報協議会が定める回数に限り、無料で、憲法改正案に対する意見の広告をすることができるものとすること。

 七 罰則
  1 組織的多数人買収及び利害誘導罪
(1) 国民投票に関し、組織により、多数の投票人に対し、憲法改正案に対する賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘し、その投票をし又はしないことの報酬として、金銭若しくは憲法改正案に対する賛成若しくは反対の投票をし若しくはしないことに影響を与えるに足りる物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与をし、若しくはその供与の申込み若しくは約束をし、又は憲法改正案に対する賛成若しくは反対の投票をし若しくはしないことに影響を与えるに足りる供応接待をし、若しくはその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処するものとすること。
(2) (1)と同様に禁止の対象となる行為を限定した上で、利害誘導罪及び買収目的交付罪を設けるものとすること。
  2 職権濫用による国民投票の自由妨害罪
(1) 国民投票に関し、国又は地方公共団体の公務員等が故意にその職務の執行を怠り、又はその職権を濫用して国民投票の自由を妨害したときは、4年以下の禁錮に処するものとすること。
(2) 国又は地方公共団体の公務員等が、投票人に対し、その投票しようとし、又は投票した内容の表示を求めたときは、6月以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処するものとすること。
  3 投票の秘密侵害罪
中央選挙管理会の委員等が投票人の投票した内容を表示したときは、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処するものとすること。
  4 投票干渉罪
(1) 投票所又は開票所において、正当な理由がなくて、投票人の投票に干渉し、又は投票の内容を認知する方法を行った者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処するものとすること。
(2) 法令の規定によらないで、投票箱を開き、又は投票箱の投票を取り出した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処するものとすること。
  5 投票事務関係者、施設等に対する暴行罪、騒擾罪等
投票管理者等に暴行若しくは脅迫を加え、投票所等を騒擾し、又は投票、投票箱その他関係書類を抑留し、損ない、若しくは奪取した者は、4年以下の懲役又は禁錮に処するものとすること。
  6 国民投票運動の規制違反
国民投票運動の規制(六の2及び3に限る。)違反の罪に関し、必要な罰則の規定を置くものとすること。
  7 その他
(1) その他必要な罰則の規定を置くものとすること。
(2) 国外犯に対し、必要な罰則の規定を置くものとすること。

第三 国民投票の効果
 一 国民の承認
国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が有効投票の総数の2分の1を超えた場合は、当該憲法改正について国民の承認があったものとすること。

 二 憲法改正の公布のための手続
内閣総理大臣は、憲法改正案に対する賛成の投票の数が有効投票の総数の2分の1を超える旨の通知を受けたときは、直ちに当該憲法改正の公布のための手続を執らなければならないものとすること。

第四 国民投票無効の訴訟等
 一 国民投票無効の訴訟
  1 訴訟の提起
国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、国民投票の結果の告示の日から30日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができるものとすること。
  2 国民投票無効の判決
1による訴訟の提起があった場合において、(ア)国民投票の管理執行に当たる機関(憲法改正案広報協議会を除く。)が国民投票の管理執行につき遵守すべき手続に関する規定に違反した場合、(イ)第二の六2及び3並びに七1から4までに違反する行為があり、多数の投票人が一般にその自由な判断による投票を妨げられたといえる重大な違反があった場合又は(ウ)憲法改正案に対する賛成の投票の数若しくは反対の投票の数の確定に関する判断に誤りがあった場合であって、そのために憲法改正案に係る国民投票の結果に異動を及ぼすおそれがあるときは、裁判所は、その国民投票の全部又は一部の無効を判決しなければならないものとすること。
  3 国民投票無効の訴訟の提起と国民投票の効力
訴訟の提起があっても、憲法改正案に係る国民投票の効力は、停止しないものとすること。
  4 憲法改正の効果の発生の停止
(1) 憲法改正が無効とされることにより生ずる重大な支障を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、憲法改正の効果の発生の全部又は一部の停止をするものとすること。ただし、本案について理由がないとみえるときは、この限りでないものとすること。
(2) (1)による憲法改正の効果の発生を停止する決定が確定したときは、憲法改正の効果の発生は、本案に係る判決が確定するまでの間、停止するものとすること。

 二 再投票及び更正決定
  1 再投票
国民投票無効の訴訟の結果、憲法改正案に係る国民投票の全部又は一部が無効となった場合(2の更正決定が可能な場合を除く。)においては、更に国民投票を行わなければならないものとすること。
  2 更正決定
国民投票無効の訴訟の結果、憲法改正案に係る国民投票の全部又は一部が無効となった場合において、更に国民投票を行わないで当該憲法改正案に係る国民投票の結果を定めることができるときは、国民投票会を開き、これを定めなければならないものとすること。

第五 補則
 一 費用の国庫負担
国民投票に関する一切の費用は、国庫の負担とするものとすること。

 二 その他
その他所要の規定を設けるものとすること。

第六 憲法改正の発議のための国会法の一部改正
 一 日本国憲法の改正の発議
  1 憲法改正原案の提出要件
議員が憲法改正案の原案(以下「憲法改正原案」という。)を発議するには、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要するものとすること。
  2 個別発議
憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとすること。
3 憲法改正の発議及び国民に対する提案
(1) 憲法改正原案について国会において最後の可決があった場合には、その可決をもって、国会が日本国憲法第96条第1項に定める憲法改正の発議をし、国民に提案したものとすること。
(2) (1)の場合において、両議院の議長は、憲法改正の発議をした旨及び発議に係る憲法改正案を官報に公示するものとすること。

 二 憲法審査会
  1 設置
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法の改正手続に係る法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設けるものとすること。
  2 憲法改正原案等の提出
憲法審査会は、憲法改正原案及び日本国憲法の改正手続に係る法律案を提出することができるものとすること。
  3 憲法改正原案の審査手続の特例
憲法審査会は、会期中・閉会中を問わず、付託された憲法改正原案を審査することができるものとすること(閉会中審査の手続不要)。
  4 合同審査会
各議院の憲法審査会は、憲法改正原案に関し、他の議院の憲法審査会と協議して合同審査会を開くことができるものとすること。合同審査会は、憲法改正原案に関し、各議院の憲法審査会に勧告することができるものとすること。
  5 その他
1から4までに定めるもののほか、憲法審査会に関する事項については、各議院の議決によりこれを定めるものとすること。

 三 憲法改正案広報協議会
一3(1)の憲法改正の発議があったときは、その国民に対する広報に関する事務を行うため、国会に、各議院においてその議員の中から選任された同数の委員で組織する憲法改正案広報協議会を設けるものとすること。

第七 附則
 一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して2年を経過した日から施行するものとすること。ただし、第六の規定は、公布の日以後初めて召集される国会の召集の日から施行するものとすること。

 二 その他
その他所要の規定を整備するものとすること。

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