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地球温暖化の防止等に貢献する木材利用の推進に関する法律案要綱

第一 総則

一 目的
 この法律は、木材利用を推進することが地球温暖化の防止、循環型社会の形成、森林の有する多面的機能の発揮及び山村その他の地域の経済の活性化に貢献するものであることにかんがみ、木材利用の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、木材利用の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、木材利用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。
(第1条関係)

二 基本理念

 《地球温暖化の防止に貢献する木材利用》
1 木材利用の推進は、地球温暖化を防止することが人類共通の課題であるとともに、我が国の緊要な課題となっていることにかんがみ、森林循環(森林に関し、植林、育林、伐採、木材利用及び再植林という循環が適正に行われることをいう。以下同じ。)を促進することにより森林の適正な整備及び保全が行われ、森林の二酸化炭素の吸収及び固定の機能が十分に発揮されるようにするとともに、木材の建築資材等としての利用を促進することにより二酸化炭素の大気中への排出等が抑制されるよう、行われなければならないこと。

《循環型社会の形成に貢献する木材利用》
2 木材利用の推進は、木材が森林から再生産することが可能な資源であるだけでなく、再使用、再生利用及びエネルギー源としての利用が可能な資源でもあることにかんがみ、その利用が積極的に行われることによって、限りある石油等の天然資源の消費が抑制されるとともに、木材の多段階の利用(できる限り、まず製品の原材料として利用し、再使用し、及び再生利用し、最終的にエネルギー源として利用することをいう。以下同じ。)の促進を通じて廃棄物の排出が抑制されるなど環境への負荷が低減されることにより、循環型社会の形成に貢献することを旨として、行われなければならないこと。

《森林の多面的機能の発揮に貢献する木材利用》
3 木材利用の推進は、地球温暖化に伴う気候の変動等により水害、土砂災害、渇水等の重大な自然災害が頻繁に発生している現状において、森林の有する多面的機能のうち国土の保全、水源のかん養等の機能を持続的に発揮させることの重要性が増大していることを踏まえ、木材の利用による森林循環を促進することによりその機能が十分に発揮されるよう、行われなければならないこと。

《地域経済の活性化に貢献するための木材利用》
4 木材利用の推進は、地域において生産された木材をその地域において利用すること等により、木材関連事業(林業、製材業、木材卸売業その他の木材の流通及び加工の事業並びに建設業、木製品製造業、パルプ製造業、紙製造業その他の木材を建築資材、製品の原材料等として利用する事業をいう。以下同じ。)を振興し、併せて安定的な雇用の増大を図り、山村をはじめとする地域の経済の活性化に貢献することを旨として、行われなければならないこと。
(第2条関係)

三 国の責務
 国は、二の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、木材利用の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること。
(第3条関係)

四 地方公共団体の責務
 地方公共団体は、基本理念にのっとり、木材利用の推進に関し、国との連携を図りつつ、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有すること。
(第4条関係)

五 事業者の努力
 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動等に関し、木材利用の推進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する木材利用の推進に関する施策に協力するよう努めるものとすること。
(第5条関係)

六 国民の努力
 国民は、基本理念にのっとり、木材利用の推進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する木材利用の推進に関する施策に協力するよう努めるものとすること。
(第6条関係)

七 民間における木材利用の推進に係る取組に対する支援
 国及び地方公共団体は、民間における木材利用の推進に係る取組を支援するために必要な財政上、税制上及び金融上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第7条関係)

 八 木材自給率の努力目標
   政府は、木材利用の推進に資するため、五年ごとに、達成に努めるべき木材自給率の目標を定めるものとすること。
(第8条関係)

第二 木材利用推進計画

一 政府木材利用推進計画
1 政府は、その事務及び事業(以下「事業等」という。)に関し、木材利用の推進に関し講ずべき措置に関する計画(以下「政府木材利用推進計画」という。)を策定するものとすること。
2 政府木材利用推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1) 計画期間
(2) 実施しようとする木材利用措置(公共施設等(次に掲げる施設をいう。以下同じ。)を木造の建築物とすること、公共施設等の内装材等として木材を使用すること、公共施設等の備品として木製品を使用すること、公共施設等に係る工作物に木材を使用することその他の木材利用に関する措置をいう。以下同じ。)の内容
 イ 道路、鉄道、空港、河川、公園等の公共施設
 ロ 庁舎、宿舎等の公用施設
 ハ 公営住宅及び教育文化施設、医療施設、社会福祉施設等の公益的施設
(3) 各省各庁の長が作成する木材利用措置に係る計画に関する基本的事項
(4) その他政府木材利用推進計画の実施に関し必要な事項
3 農林水産大臣は、政府木材利用推進計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。
4 農林水産大臣は、政府木材利用推進計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならないこと。
5 農林水産大臣は、3による閣議の決定があったときは、遅滞なく、政府木材利用推進計画を公表しなければならない。
6 3から5までは、政府木材利用推進計画の変更について準用すること。
7 政府は、毎年一回、政府木材利用推進計画に基づく措置の実施の状況を公表しなければならないこと。
(第9条関係)

二 地方公共団体木材利用推進計画
1 都道府県及び市町村は、当該都道府県及び市町村の事業等に関し、木材利用の推進に関し講ずべき措置に関する計画(以下「地方公共団体木材利用推進計画」という。)を策定するよう努めるものとすること。
2 地方公共団体木材利用推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
(1)計画期間
(2) 実施しようとする木材利用措置の内容
(3) その他地方公共団体木材利用推進計画の実施に関し必要な事項
3 都道府県及び市町村は、地方公共団体木材利用推進計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとすること。
4 国は、地方公共団体木材利用推進計画を策定した都道府県及び市町村に対し、当該地方公共団体木材利用推進計画の達成のために必要があると認めるときは、財政上の措置その他の措置を講ずるものとすること。
(第10条関係)

第三 木材利用の推進のための条件の整備に関する施策

一 木材利用の推進を図るための研究及び技術開発の推進等
1 国は、木材の利用可能な範囲の明確化及びその利用方法の多様化により木材利用の推進を図るため、木材の耐久性及び耐火性、木材の用途の拡大及び多段階の利用の可能性、木造の建築物の地震に対する安全性等に関する実証的な研究の推進並びにその成果の普及、木材の加工技術、木材の防腐措置、防蟻措置等に係る技術、木造の建築物の建築等に係る工法その他の木材利用に関する技術の開発の推進並びに民間におけるそのような研究及び技術の開発に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとすること。
2 地方公共団体は、住民がその地域で生産される木材の特質等について認識を深めること及びその利用方法の多様化により木材利用の推進を図るため、その地域で生産される木材の特質等についての研究の推進及びその成果の普及、木材利用に関する技術の開発の推進並びに民間におけるそのような研究及び技術の開発に対する支援その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第11条関係)

二 木造の建築物に係る規制の見直し
 国は、建築物に係る木材利用を推進するため、木造の建築物に係る建築基準法等の規制について、一の研究の成果、建築の専門家等の専門的な知見に基づく意見、諸外国における規制の状況等を踏まえて検討を加え、必要性に乏しい規制又は合理性を有しない規制については、当該規制の撤廃又は緩和のために必要な措置を講ずるものとすること。
(第12条関係)

三 人材の育成
 国及び地方公共団体は、木材利用の推進に寄与する人材の育成を図るため、高等教育機関における木材利用に関する教育の振興、木造の建築物に関する高度な知識及び技術を有する人材の育成のための機会の充実、林業の担い手を養成するための必要な技能及び技術の習得に関する研修等の支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第13条関係)

四 知識の普及
 国及び地方公共団体は、木材利用が二酸化炭素の吸収及び固定に果たす役割、心身の健康を増進する効果その他断熱性等の木材の有する特質について国民の理解を深めるため、学校における環境教育、学校をはじめとする公共施設等における木材利用を通じた広報活動、木材利用による環境への負荷の低減についての貢献度を評価する仕組みの整備その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第14条関係)

五 木材生産に係る生産性の向上及び木材の安定的な供給体制の構築
 国及び地方公共団体は、木材生産に係る生産性の向上及び木材の安定的な供給体制の構築を図ることにより木材利用を促進するため、森林の施業又は経営を集約的に行う組織の育成、作業路網の適切な整備及び高性能林業機械の導入による効率的な作業体制の構築の促進、森林における施業に関する技術の研究開発の推進、森林所有権の境界の明確化を促進するための措置、木材関連事業を営む者相互の連携を確保することによる事業規模の拡大及び集約的かつ効率的な事業活動の促進その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第15条関係)

六 木材利用と間伐の連携の促進
 国及び地方公共団体は、間伐材の利用が間伐の促進に資することにかんがみ、間伐材の利用と間伐とが有機的に連携しつつ行われるよう、その連携の促進のための支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第16条関係)

七 森林循環を確保するための持続可能な森林経営の促進等
 国及び地方公共団体は、木材利用の推進が森林循環を促進し、その結果、更に木材の継続的かつ安定的な利用が推進されることにかんがみ、森林循環を確保するための持続可能な森林の経営を促進するとともに、森林循環が確保された森林から産出された木材であることを明らかにするための仕組みの構築、そのような仕組みの普及に向けた取組のための国際的な連携その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第17条関係)

第四 重点的に推進すべき木材利用に関する施策

一 住宅における木材利用
 国及び地方公共団体は、木材が断熱性、調湿性等に優れ、紫外線を吸収する効果が高いこと、国民の木造住宅への志向が強いこと、木材利用が地域経済の活性化に貢献するものであること等にかんがみ、木材を利用した住宅の建築等を促進するため、木造住宅を建築する者に対する助成、税制上の措置及び金融上の支援、木材を利用した住宅に関する展示会の開催その他のその需要の開拓のための支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第18条関係)

二 小中学校、福祉施設等における子ども、高齢者等のための木材利用
 国及び地方公共団体は、木材を利用した建築物及び木製品が利用者を癒し、安らぎを与えるなど心身の健康を増進する効果を有することにかんがみ、次代を担う子どもの心身の発達に重要な役割を果たす小中学校、幼稚園、保育園等を子どもにやさしく、安心感を与える空間とし、また、高齢者や障害者等が利用する福祉施設等を生き生きと快適に過ごせる空間とすることができるよう、これらの施設(以下「小中学校等」という。)における木材利用を促進するため、小中学校等を木造で建築する者に対する助成、税制上の優遇措置及び金融上の支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第19条関係)

三 公共施設等に係る工作物における景観の向上及び癒しの醸成のための木材利用
 国及び地方公共団体は、木材を利用したガードレール、高速道路の遮音壁、公園の柵その他の公共施設等に係る工作物を設置することが、その周囲における良好な景観の形成に資するとともに、利用者等を癒すものであることにかんがみ、それらの工作物の設置における木材利用を促進するため、木材を利用したそれらの工作物を設置する者に対する技術的な助言、情報の提供等の援助その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第20条関係)

四 木質バイオマスの製品利用
 国及び地方公共団体は、バイオマス(動植物に由来する有機物である資源(原油、石油ガス、可燃性天然ガス、及び石炭(以下「化石資源」という。)を除く。)をいう。)のうち木に由来するもの(以下「木質バイオマス」という。)について、パルプ、紙等の製品の原材料としての利用等従来から行われている利用の推進を図るほか、その用途の拡大及び多段階の利用を図ることにより最大限活用することができるよう、木質バイオマスの製品の原材料としての利用を推進するため、木質バイオマスを化学的方法又は生物的作用を利用する方法等によって処理することによりプラスチックを製造する技術等の研究開発の推進その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
(第21条関係)

五 木質バイオマスのエネルギー利用
 国及び地方公共団体は、木質バイオマスを化石資源の代替エネルギーとして利用することが二酸化炭素の排出の抑制及び木の伐採又は間伐により発生する未利用のバイオマスの有効な利用に資すること等にかんがみ、木質バイオマスをエネルギー源として利用することを促進するため、公共施設等におけるその利用の推進、木質バイオマスのエネルギー源としての利用に係る情報の提供、技術等の研究開発の推進その他の必要な措置を講ずるものとすること。
(第22条関係)

第五 施行期日

 この法律は、公布の日から施行すること。

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