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   スポーツ基本法案要綱


 スポーツは、世界共通の人類の文化である。
 スポーツは、運動競技その他の心身の健全な発達、健康の保持増進、体力の向上、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵養等のために個人又は集団で行われる身体活動であり、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠のものである。そのため、すべての国民がその自発性の下に、各々の関心、適性等に応じて、日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならない。
 また、スポーツの国際交流は、国際平和に大きく貢献し、国際競技大会における日本人選手の活躍は、国民に誇りと喜び、夢と感動を与え、国民の意識を高揚させるものである。スポーツの競技力の強化は、我が国の国際的地位の向上に極めて重要な役割を果たし、我が国社会に活力を生み出すとともに、国民経済の発展にも広く寄与するものである。さらに、スポーツの競技力の向上を不断に目指すことは、人間の可能性の極限を追求する有意義な営みであり、スポーツ選手の活躍は、人々のスポーツへの関心を高め、地域におけるスポーツの推進に寄与するものである。
 さらに、スポーツは、次代を担う青少年の体力の向上及び協同性、規範意識等の社会性の涵養に資するとともに、長寿社会において健康を保持増進する上で重要な役割を果たすものである。また、スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与するものである。
 このような国民生活における多面にわたるスポーツの果たす役割の重要性にかんがみ、スポーツ立国を実現することは、二十一世紀の我が国の発展のために不可欠な重要課題である。ここに、スポーツ立国の実現を目指し、国家戦略として、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。
第一 総則
一 目的
  スポーツに関する施策に関し、基本理念、国・地方公共団体の責務、基本的施策等を定めることにより、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、国民の心身の健全な発達、明るく豊かな国民生活の形成、活力ある社会の実現及び国際社会の調和ある発展に寄与することを目的とすること。(第一条関係)
二 基本理念
1 あらゆる機会とあらゆる場所において、国民が自主的にその適性及び健康状態に応じてスポーツを行うことができる機会が確保されるよう講ぜられること。(第二条第一項関係)
2 各地域において身近にスポーツに親しむことができ、すべての世代の人々の交流が促進され、地域間の交流の基盤が形成されるよう講ぜられること。(第二条第二項関係)
3 国際的な競技大会等において我が国選手が優秀な成績を収めることができるよう、計画的な育成、指導者の養成、施設又は設備の整備、科学的な研究等の諸施策相互の有機的な連携を図りつつ、効果的に講ぜられること。(第二条第三項関係)
4 青少年のスポーツ活動は、体力の向上、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心など人格の形成に大きな影響を及ぼすものであり、学校、家庭及び地域における教育活動の相互の連携を図りながら講ぜられること。(第二条第四項関係)
5 スポーツを行う者の健康の保持増進及び安全の確保が図られるよう講ぜられること。(第二条第五項関係)
6 障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ、講ぜられること。(第二条第六項関係)
7 国際交流を推進することにより、国際相互理解の増進及び国際平和に寄与するよう講ぜられること。(第二条第七項関係)
8 ドーピングの防止の重要性に対する国民の認識を深めるとともに、スポーツ活動が公正かつ適切に行われ、国民の幅広い理解及び支援が得られるよう講ぜられること。(第二条第八項関係)
三 国・地方公共団体・スポーツ団体の責務
1 国は、基本理念にのっとり、スポーツに関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有すること。(第三条関係)
2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、地域の特性に応じた施策を策定し、実施する責務を有すること。(第四条関係)
3 スポーツ団体は、基本理念にのっとり、スポーツの推進に主体的に取り組むよう努めること。(第五条関係)
四 国民の関心及び参加の促進
  国・地方公共団体・スポーツ団体は、スポーツに対する国民の関心と理解を深め、スポーツ活動への国民の参加の促進に努めること。(第六条関係)
五 関係者相互の連携及び協力
  国・地方公共団体・スポーツ団体は、基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めること。(第七条関係)
六 法制上の措置等
  政府は、スポーツに関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じること。(第八条関係)
第二 スポーツ基本計画等
一 スポーツ基本計画
1 文部科学大臣は、施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、スポーツの推進に関する基本的な計画(スポーツ基本計画)を定めること。(第九条第一項関係)
2 文部科学大臣は、スポーツ基本計画を定めるときは、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くこと。(第九条第二項関係)
3 文部科学大臣は、スポーツ基本計画を定めるときは、あらかじめ、関係行政機関の施策に係る事項について、スポーツ推進会議において連絡調整を図ること。(第九条第三項関係)
二 地方スポーツ推進計画
1 都道府県・市町村の教育委員会又は長は、スポーツ基本計画を参酌して、その地方の実情に即したスポーツの推進に関する計画(地方スポーツ推進計画)を定めること。(第十条第一項関係)
2 都道府県・市町村の教育委員会又は長は、地方スポーツ推進計画を定めるときは、あらかじめ、スポーツ審議会等の意見を聴くこと。(第十条第二項関係)
第三 基本的施策
一 多様なスポーツ活動の機会の確保のための環境の整備
1 地域におけるスポーツ活動への支援等
  国・地方公共団体は、各人の需要に応じたスポーツを行う機会に係る情報の提供、スポーツ団体等の自発的な組織の活動や指導者配置への支援、施設の整備など必要な施策を講ずるよう努めること。(第十一条関係)
2 スポーツ行事の実施及び奨励
(一) 地方公共団体は、運動会、競技会、体力テスト、スポーツ教室、各地域固有の文化を形成するスポーツ行事の実施に努め、団体等による実施の奨励をすること。(第十二条第一項関係)
(二) 国は、地方公共団体に対し、行事の実施に関し必要な援助を行うこと。(第十二条第二項関係)
3 体育の日の行事
  国・地方公共団体は、体育の日において、スポーツへの関心と理解を深め、意欲を高揚する行事を実施し、各地域及び職域における行事の実施について、必要な施策・援助を行うこと。(第十三条関係)
4 職場におけるスポーツの奨励
  国・地方公共団体は、勤労者が余暇を利用してスポーツを行うことができるよう、職場におけるスポーツの奨励に必要な施策を講ずるよう努めること。(第十四条関係)
5 野外活動及びスポーツ・レクリエーション活動の普及奨励
  国・地方公共団体は、野外活動、スポーツ・レクリエーション活動を普及奨励するため、コースの設定、施設又は設備の整備、行事の実施など必要な施策を講ずるよう努めること。(第十五条関係)
二 競技水準の向上等
1 優秀なスポーツ選手の育成等
(一) 国は、スポーツ団体が行う合宿、オリンピック、パラリンピックなどの国際競技大会、全国的規模の競技会への選手の派遣、優れた資質を有する青少年に対する指導等に対する支援など必要な施策を講ずること。(第十六条第一項関係)
(二) 国は、優秀なスポーツの選手・指導者等が、生涯にわたり、その有する能力を幅広く社会に生かすことができるよう、社会の各分野で活躍できる知識及び技能の習得に対する支援並びに活躍できる環境の整備の促進など必要な施策を講ずること。(第十六条第二項関係)
2 顕彰
  国・地方公共団体は、スポーツの競技会において優秀な成績を収めた者、スポーツの発展に寄与した者の顕彰に努めること。(第十七条関係)
3 国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会
(一) 国民体育大会は、(財)日本体育協会、国及び開催地の都道府県が共同して開催するものとし、都道府県ごとに選出された選手が参加して総合的に運動競技をすること。(第十八条第一項関係)
(二) 全国障害者スポーツ大会は、(財)日本障害者スポーツ協会、国及び開催地の都道府県が共同して開催するものとし、都道府県又は指定都市ごとに選出された障害者が参加して総合的に運動競技をすること。(第十八条第二項関係)
(三) 国は、国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会の円滑な実施及び運営に資するため、(財)日本体育協会又は(財)日本障害者スポーツ協会及び開催地の都道府県に対し、必要な援助を行うこと。(第十八条第三項関係)
4 国際競技大会の開催への支援等
(一) 国は、国際競技大会を招致し、又は開催する者に対し、国内外の関係機関との連絡調整、援助など必要な施策を講ずること。(第十九条第一項関係)
(二) 国は、(財)日本オリンピック委員会、(財)日本障害者スポーツ協会その他のスポーツ団体が行う国際的規模の事業に関し必要な措置を講ずるに当たっては、緊密な連絡に努めること。(第十九条第二項関係)
5 高度な競技水準を有する者の活用等
  国・地方公共団体は、高度な競技水準を有する者のスポーツ行事、学校教育活動、講習会における活用など必要な施策を講ずるよう努めること。(第二十条関係)
6 企業によるスポーツ活動の促進
  国は、企業によるスポーツ活動の促進のために必要な施策を講ずること。(第二十一条関係)
7 スポーツ産業の事業者との連携等
  国は、スポーツ団体とスポーツ産業の事業者との連携協力の促進など必要な施策を講ずること。(第二十二条関係)
8 ドーピングの防止活動の推進
(一) 国は、(財)日本アンチ・ドーピング機構と連携を図りつつ、ドーピングの防止に関する教育・啓発を行うとともに、国際的なドーピングの防止に関する機関等への支援など必要な施策を講ずること。(第二十三条第一項関係)
(二) 地方公共団体・スポーツ団体は、国が行うドーピングの防止活動と連携し、住民・スポーツを行う者等に対する教育・啓発など必要な措置を講ずるよう努めること。(第二十三条第二項関係)
三 スポーツの推進のための基礎的条件の整備等
1 指導者の養成等
  国・地方公共団体は、系統的な指導者の養成システムの開発や活用への支援、講習会、研究集会等の開催など必要な施策を講ずるよう努めること。(第二十四条関係)
2 施設の整備等
(一) 国・地方公共団体は、スポーツ施設(スポーツの設備を含む)の整備、運用の改善、指導者の配置など必要な施策を講ずるよう努めること。(第二十五条第一項関係)
(二) スポーツ施設の整備に当たっては、施設の利用の実態等に応じて、安全性の確保、障害者等の利便性の向上を図るよう努めること。(第二十五条第二項関係)
3 国際交流及び貢献の推進
  国・地方公共団体は、選手・指導者等の国際交流及び貢献を推進するために必要な施策を講ずることにより、競技水準の向上を図るとともに、国際相互理解の増進に努めること。(第二十六条関係)
4 スポーツ事故の防止
  国・地方公共団体・スポーツ団体は、スポーツ事故を防止するため、施設又は設備の整備、指導者の養成、事故防止に関する知識(スポーツ用具の適切な使用に係る知識を含む。)の普及など必要な措置を講ずるよう努めること。この場合において、6(一)の研究の成果その他スポーツ事故の防止に係る専門家の知見を活用するよう努めること。(第二十七条関係)
5 スポーツに関する紛争の迅速かつ円滑な解決
  国は、スポーツを行う者の権利利益の保護が図られるよう、スポーツに関する紛争の仲裁又は調停を行う機関への支援その他のスポーツに関する紛争の迅速かつ円滑な解決に資するために必要な施策を講ずること。(第二十八条関係)
6 科学的研究の促進等
(一) 国は、スポーツ団体、大学等との連携協力を図りながら、スポーツに関する自然科学、スポーツに関する経済、文化等に係る諸科学を総合して、実際的、基礎的な研究を促進するよう必要な施策を講ずること。(第二十九条第一項関係)
(二) 国は、競技力向上のための調査研究の成果・取組の状況、スポーツの実施状況その他の国内外の情報の収集・整理・活用について必要な施策を講ずること。(第二十九条第二項関係)
7 学校施設の利用
(一) 国立・公立学校の設置者は、教育に支障のない限り、学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めること。(第三十条第一項関係)
(二) 国・地方公共団体は、学校のスポーツ施設の改修、照明施設の設置など必要な施策を講ずるよう努めること。(第三十条第二項関係)
8 学校における体育の充実
  国・地方公共団体は、学校における体育が児童生徒の心身の健全な発達等に重要な役割を果たすことから、体育館、運動場、水泳プール、武道場等の施設整備、体育教員の資質向上、地域指導者の活用など必要な施策を講ずるよう努めること。(第三十一条関係)
第四 スポーツ推進会議
  政府は、文部科学省及び厚生労働省、経済産業省、国土交通省その他の関係行政機関の職員をもって構成するスポーツ推進会議を設け、スポーツに関する施策の総合的、一体的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うものとすること。(第三十二条関係)
第五 スポーツ審議会等及び体育指導委員
一 スポーツ審議会等
1 都道府県に、スポーツ審議会等を置くものとすること。市町村に、スポーツ審議会等を置くことができること。(第三十三条第一項及び第二項関係)
2 スポーツ審議会等は、諮問に応じて、スポーツの推進に関する重要事項について調査審議し、建議すること。(第三十三条第三項関係)
3 スポーツ審議会等の委員は、スポーツに関する学識経験のある者の中から教育委員会が任命すること。この場合において、都道府県の教育委員会は知事の、市町村の教育委員会はその長の意見を聴くこと。(第三十三条第四項関係)
二 体育指導委員
1 市町村の教育委員会は、地域におけるスポーツの推進を図るための体制の整備に努めるとともに、社会的信望があり、スポーツに関する深い関心と理解を有し、及び2の職務を行うのに必要な熱意と能力を有する者の中から、体育指導委員を委嘱するものとすること。(第三十四条第一項関係)
2 体育指導委員は、スポーツの推進のための事業の実施に係る連絡調整、住民に対するスポーツの実技の指導などを行うこと。(第三十四条第二項関係)
3 体育指導委員は、非常勤とすること。(第三十四条第三項関係)
第六 国の補助等
一 国の補助
1 国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、(1)国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会の実施・運営に要する経費であって、これらの開催地の都道府県において要するもの、(2)その他スポーツの推進のために地方公共団体が行う事業に要する経費であって特に必要と認められるものについて、その一部を補助すること。(第三十五条第一項関係)
2 国は、学校法人に対し、その設置する学校のスポーツ施設の整備に要する経費について、予算の範囲内において、その一部を補助することができること。(第三十五条第二項関係)
3 国は、スポーツ団体であってその行う事業が我が国のスポーツの振興に重要な意義を有すると認められるものに対し、当該事業に関し必要な経費について、予算の範囲内において、その一部を補助することができること。(第三十五条第三項関係)
二 地方公共団体の補助
  地方公共団体は、スポーツ団体に対し、その行うスポーツの振興のための事業に関し必要な経費について、その一部を補助することができること。(第三十六条関係)
三 審議会への諮問等
  国・地方公共団体がスポーツ団体に対し補助金を交付しようとする場合には、あらかじめ、政令で定める審議会又はスポーツ審議会等の意見を聴くこと。(第三十七条関係)
第七 施行期日等
一 施行期日
  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。(附則第一条関係)
二 スポーツに関する施策を総合的に推進するための行政組織の在り方の検討
  政府は、スポーツに関する施策を総合的に推進するため、スポーツ庁の設置等行政組織の在り方について、政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。(附則第二条関係)
三 その他
  経過措置その他所要の規定を置くこと。

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