新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案要綱
第一 題名及び趣旨関係
題名を「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等及び離職者等の支援に係る措置に関する法律」に改めるとともに、趣旨を「新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置が労働者及び事業主に及ぼす影響の緩和を図るため、雇用保険法の特例等及び離職者等の支援に係る措置を定めるものとする」とすること。 (題名及び第一条関係)
第二 雇用保険法の特例等
一 基本手当の特例
1 基本手当の日額の特例
令和三年一月八日から政令で定める日までの間(2及び3において「特例期間」という。)における基本手当の日額を、賃金日額に百分の七十を乗じて得た額まで(賃金日額が一定額以下の者については、賃金日額まで)引き上げること。 (第三条関係)
2 賃金日額の計算の特例
特例期間における基本手当の日額は、令和二年二月以後に収入が著しく減少した月を除いた月の賃金を用いて計算することができること。 (第四条関係)
3 基本手当の所定給付日数等の延長の特例
特例期間において受給資格者である者の所定給付日数及び受給期間について、それぞれ九十日間延長すること。 (第五条関係)
二 雇用安定事業の特例等
1 雇用安定事業の拡充
(1) 政府は、「雇用調整助成金制度」において、新型コロナウイルス感染症等の影響により労働者を休業させる事業主(令和三年一月八日以後において労働者の責めに帰すべき理由等以外の理由により労働者を解雇した事業主を除く。)に対する助成を行うに当たっては、当該事業主がその休業させている期間(同日から政令で定める日までの期間に限る。)について当該労働者に支払う賃金の全額を助成するよう、必要な措置を講ずるものとすること。
(2) 政府は、(1)の措置が労働者の生活及び雇用の安定に資するものであることに鑑み、(1)の助成に係る制度が活用されるよう、周知を図らなければならないものとすること。
(第七条関係)
2 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等に係る企業規模要件を設けないことの明確化
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等に関し、大企業の労働者を支給対象とすること及び令和二年四月一日以後における休業について支給されることを明確にするため、政府は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等を支給しようとするときは、同日以後における休業について、事業主の資本金の額、常時雇用する労働者の数等を問わず支給しなければならない旨を規定すること。
(第八条及び第九条関係)
3 不利益取扱いの禁止等
(1) 事業主は、労働者が新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等の支給を受けようとしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
(2) 事業主は、国が実施する措置に積極的に協力するとともに、労働基準法その他の労働に関する法令を遵守しつつ、その雇用する労働者の雇用の継続等に配慮するよう努めるものとすること。
(第十二条関係)
4 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等の支給の申請に係る手続についての配慮
厚生労働大臣は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等の支給の申請が不当に妨げられることのないよう、当該申請に関する書類に労働保険番号の記載を要しないものとすることその他当該申請に係る手続について必要な配慮をしなければならないこと。 (第十三条関係)
5 助言等及び公表
(1) 厚生労働大臣は、3(1)の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができること。 (第十四条関係)
(2) 厚生労働大臣は、3(1)に違反している事業主に対し、(1)の勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができること。 (第十五条関係)
6 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等に関する制度の周知徹底等
(1) 政府は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等の支給の申請の機会が確保されるよう、労働者及び事業主に対し、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等に関する制度の周知徹底を図るものとすること。
(2) 事業主は、新型コロナウイルス感染症等の影響により労働者を休業させる場合において、その休業させている期間の全部又は一部について賃金の支払をしないときは、当該労働者に対し、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等に係る制度に関する情報の提供をするよう努めるものとすること。
(第十六条関係)
7 解釈規定
雇用保険法その他の労働に関する法令の規定の適用については、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等の支給の申請に係る手続において事業主が労働者を休業させたことを認めたことをもって、その休業が使用者の責めに帰すべき事由による休業であると解釈してはならないこと。
(第十七条関係)
第三 離職者等の支援に係る措置
一 臨時職業訓練受講給付金
1 国は、令和三年一月分から政令で定める月分までの職業訓練受講給付金の支給を受ける者に対し、当該支給を受ける月について臨時職業訓練受講給付金を支給すること。 (第十八条関係)
2 臨時職業訓練受講給付金の額は、一月につき、当該月分の職業訓練受講給付金の額に相当する額とすること。 (第十九条関係)
二 生活保護法の要保護者に対する支援措置
1 生活保護法の保護の実施機関は、新型コロナウイルス感染症等の影響等に鑑み、生活保護の開始の申請があったときは、要保護者及び扶養義務者の資産及び収入の状況の調査その他の要保護者に関する調査の一層の簡素化及び合理化を図るとともに、積極的に同法による保護を行うよう努めなければならないこと。 (第二十二条関係)
2 国は、新型コロナウイルス感染症等の影響等に鑑み、要保護者が生活保護の開始の申請をするまでの間においても、当該要保護者が生計を維持することができるよう、当面の生活に必要な短期の資金の融通その他の必要な支援を行わなければならないこと。 (第二十三条関係)
第四 施行期日等
一 この法律は、公布の日から施行すること。 (附則第一条関係)
二 相談体制の充実等
1 国及び地方公共団体は、新型コロナウイルス感染症等の影響により休業を余儀なくされた者であって賃金及び新型コロナウイルス感染症対応休業支援金等を受けることができないものからの相談に応ずるための体制の充実を図るよう努めるものとすること。
2 政府は、令和三年度末までに、1の者の生活の安定を図るための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
(附則第三条関係)
三 検討
1 政府は、令和三年度末までに、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた個人事業者に対して支給される給付金その他の金銭の支給の状況を踏まえ、被用者と類似した働き方をする個人事業者の生活を支援するための給付金制度の創設について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
2 政府は、令和三年度末までに、新型コロナウイルス感染症等の影響によりその雇用する労働者をやむを得ず休業させた事業主について賃金の支払を促進する観点から、賃金を支払った事業主に対する金融上の支援、税制上の優遇措置その他の措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
3 政府は、災害その他の事由により事業主がその雇用する労働者をやむを得ず休業させた場合における労働者の生活の安定を図るための恒久的な制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
(附則第四条関係)
三 その他所要の規定を整備すること。