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法律第二百二号(昭二三・七・三〇)

◎歯科医師法

第一章 総則

第一条 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

第二章 免許

第二条 歯科医師になろうとする者は、歯科医師国家試験に合格し、厚生大臣の免許を受けなければならない。

第三条 未成年者、禁治産者、準禁治産者、つんぼ、おし又は盲の者には、免許を与えない。

第四条 左の各号の一に該当する者には、免許を与えないことがある。

一 精神病者又は麻薬若しくは大麻の中毒者

二 罰金以上の刑に処せられた者

三 前号に該当する者を除く外、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

第五条 厚生省に歯科医籍を備え、歯科医師免許に関する事項を登録する。

第六条 免許は、歯科医籍に登録することによつて、これをなす。

2 厚生大臣は、免許を与えたときは、歯科医師免許証を交付する。

3 歯科医師は、毎年十二月三十一日現在において、その氏名、住所(歯科医業に従事する者については、更にその場所)その他省令で定める事項を、翌年一月十五日までに、その住所地の都道府県知事を経由して厚生大臣に届け出なければならない。

第七条 歯科医師が、第三条に該当するときは、厚生大臣は、その免許を取り消す。

2 歯科医師が第四条各号の一に該当し、又は歯科医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて歯科医業の停止を命ずることができる。

3 前項の規定による取消処分を受けた者であつても、疾病がなおり、又は改しゆんの情が顕著であるときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第六条第一項及び第二項の規定を準用する。

4 厚生大臣は、前三項に規定する処分をなすに当つては、あらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならない。

5 第一項又は第二項に規定する処分がなされるに当つては、当該処分を受ける者に、厚生大臣又は都道府県知事の指定した官吏若しくは吏員又は医道審議会の会員に対して弁明する機会が与えられなければならない。この場合においては、厚生大臣又は都道府県知事は、当該処分を受ける者に対し、あらかじめ、書面を以て、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をなすべき事由を通知しなければならない。

6 前項の通知を受けた者は、代理人を出頭させ、且つ、自己に有利な証拠を提出することができる。

7 弁明の聴取をした者は、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作製し、且つ、処分の決定について厚生大臣に意見を述べなければならない。

第八条 この章に規定するものの外、免許の申請、歯科医簿の登録、訂正及び抹消、免許証の交付、書換交付、再交付及び返納並びに住所の届出に関しては、省令でこれを定める。

第三章 試験

第九条 歯科医師国家試験は、臨床上必要な歯科医学及び口くう衛生に関して、歯科医師として具有すべき知識及び技能について、これを行う。

第十条 歯科医師国家試験及び歯科医師国家試験予備試験は、毎年少くとも一回、厚生大臣が、これを行う。

第十一条 歯科医師国家試験は、左の各号の一に該当する者でなければ、これを受けることができない。

一 文部大臣の認定した大学において正規の歯学の課程を修めて卒業した者。

二 歯科医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後一年以上の診療及び口くう衛生に関する実地修練を経たもの。

三 外国の歯科医学校を卒業し、又は外国で歯科医師免許を得た者で、厚生大臣が前二号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有し、且つ、適当と認定したもの。

第十二条 歯科医師国家試験予備試験は、外国の歯科医学校を卒業し、又は外国で歯科医師免許を得た者のうち、前条第三号に該当しない者であつて、厚生大臣が適当と認定したものでなければ、これを受けることができない。

第十三条 禁治産者、つんぼ、おし及び盲の者は、歯科医師国家試験及び歯科医師国家試験予備試験を受けることができない。

第十四条 左に掲げる者については、歯科医師国家試験及び歯科医師国家試験予備試験を受けさせないことがある。

一 準禁治産者

二 第四条各号の一に該当する者

第十五条 歯科医師国家試験又は歯科医師国家試験予備試験に関して不正の行為があつた場合には、当該不正行為に関係のある者について、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。この場合においては、なお、その者について、期間を定めて試験を受けることを許さないことができる。

第十六条 この章に規定するものの外、試験の科目、受験手続その他試験に関して必要な事項及び実地修練に関して必要な事項は、省令でこれを定める。

第四章 業務

第十七条 歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。

第十八条 歯科医師でなければ、歯科医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

第十九条 診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

2 診療をなした歯科医師は、診断書の交付の求があつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

3 歯科医師は、死亡診断書を交付してはならない。

第二十条 歯科医師は、自ら診察しないで治療をし、又は診断書若しくは処方せんを交付してはならない。

第二十一条 歯科医師は、患者から薬剤の交付に代えて処方せんの求があつた場合は、これを交付しなければならない。但し、その診療上特に支障があるときは、この限りでない。

第二十二条 歯科医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。

第二十三条 歯科医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。

2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する歯科医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その歯科医師において、五年間これを保存しなければならない。

第五章 審議会及び委員

第二十四条 厚生大臣の諮問に応じて歯科医師国家試験に関する重要事項を調査審議させるために、厚生大臣の監督に属する歯科医師国家試験審議会を置く。

第二十五条 歯科医師国家試験に関する事務を掌らせるために、厚生大臣の監督に属する歯科医師国家試験委員を置く。

第二十六条 厚生大臣の諮問に応じて第十一条の規定による実地修練に関する重要事項を調査審議させるために、厚生大臣の監督に属する歯科医師実地修練審議会を置く。

第二十七条 歯科医師国家試験予備試験に関する事務を掌らせるために、厚生大臣の監督に属する歯科医師国家試験予備試験委員を置く。

第二十八条 歯科医師国家試験委員、歯科医師国家試験予備試験委員その他歯科医師国家試験又は歯科医師国家試験予備試験に関する事務を掌る者は、その事務の施行に当つて厳正を保持し、不正の行為のないようにしなければならない。

第六章 罰則

第二十九条 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。

一 第十七条の規定に違反した者

二 虚偽又は不正の事実に基いて歯科医師免許を受けた者

2 前項第一号の罪を犯した者が、歯科医師又はこれに類似した名称を用いたものであるときは、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

第三十条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

一 第七条第二項の規定による停止命令に違反した者

二 第二十八条の規定に違反して故意若しくは重大な過失により事前に試験問題を漏らし、又は故意に不正の採点をした者

第三十一条 第六条第三項、第十八条、第二十条、第二十一条又は第二十三条の規定に違反した者は、これを五千円以下の罰金に処する。

附 則

第三十二条 この法律は、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)施行の日から、これを施行する。

第三十三条 国民医療法(昭和十七年法律第七十号、以下旧法という。)又は歯科医師法(明治三十九年法律第四十八号、以下旧歯科医師法という。)によつて歯科医師免許を受けた者は、これをこの法律によつて歯科医師免許を受けた者とみなす。

2 旧歯科医師法施行前歯科医術開業免状を得た者のする歯科医業については、なお従前の例による。

3 昭和二十年八月十五日以前に、朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官、南洋庁長官若しくは満州国駐さつ特命全権大使又は満洲国の歯科医師免許を受けた日本国民に対する歯科医師免許及び試験については、この法律施行の日から五年間は、なお従前の例によることができる。

第三十四条 旧法第八条第二項の規定により許可を受け、又は国民医療法施行規則(昭和十七年厚生省令第四十八号)第七十二条の規定により許可を受けた者とみなされ歯科医業中充てん、補てつ及び矯正の技術に属する行為をなすことができる医師のする歯科医業については、なお従前の例による。

2 前項に規定する医師は、第六条第三項、第七条第二項(免許の取消に関する事項を除く。)、第十七条及び第十九条から第二十三条までの規定の適用については、これを歯科医師とみなす。

第三十五条 旧法第八条第二項の規定により許可を受け歯科専門を標ぼうすることのできる医師は、この法律施行の後も、なお従前の例により歯科専門を標ぼうすることができる。

第三十六条 この法律施行の際、歯学の課程を設ける学校において二年以上専ら歯学を修業し、又は現に修業中である医師は、この法律施行の後も、なお従前の例により厚生大臣の許可を受けて歯科専門を標ぼうし、又は歯科医業中充てん、補てつ及び矯正の技術に属する行為をすることができる。

2 前項の規定により厚生大臣の許可を受けて歯科医業中充てん、補てつ及び矯正の技術に属する行為をすることができる医師については、第三十四条第二項の規定を準用する。

第三十七条 旧法又は旧歯科医師法による歯科医籍の登録は、これをこの法律による歯科医籍の登録とみなす。

第三十八条 旧法又は旧歯科医師法によつてした歯科医師免許の取消の処分又は歯科医業の停止の処分は、これをこの法律の相当規定によつてしたものとみなす。この場合において停止の期間は、なお、従前の例による。

第三十九条 旧歯科医師法若しくはこれに基いて発する命令に違反した者又は右の命令に基いてした処分に違反した者の処罰については、なお旧歯科医師法による。

第四十条 旧法の規定により作成された歯科医師又は第三十四条第一項に規定する者の診療録は、これを第二十三条の診療録とみなす。

第四十一条 この法律施行の際従前の規定によつて歯科医師国家試験予備試験の受験資格を有する者は、第十二条の規定にかかわらず、歯科医師国家試験予備試験を受けることができる。

第四十二条 国民医療法施行令の一部を改正する勅令(昭和二十一年勅令第四百二号)附則第二項の規定に該当する者は、第二条の規定にかかわらず、歯科医師免許を受けることができる。

第四十三条 国民医療法施行令の一部を改正する勅令(昭和二十二年勅令第百三十七号)附則第二項の規定に該当する者は、第十一条の規定にかかわらず、歯科医師国家試験を受けることができる。

第四十四条 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十八条の規定により大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学又は専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校として、その存続を認められた大学又は専門学校は、第十一条第一号の大学とみなす。

(文部・厚生・内閣総理大臣署名)

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