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法律第百七十号(昭二四・五・三一)

  ◎貸金業等の取締に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、貸金業等の取締を行い、その公正な運営を保障するとともに不正金融を防止し、もつて、金融の健全な発達に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「貸金業」とは、何らの名義をもつてするを問わず、金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介をする行為で業として行うものをいう。但し、左に掲げるものを除く。

 一 国及び地方公共団体の行うもの

 二 国民金融公庫、復興金融金庫、金融機関(銀行、信託会社、保険会社、無尽会社、市街地信用組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫及び農業協同組合、水産業協同組合その他貯金の受入を行う組合をいう。以下同じ。)その他その業を行うにつき他の法律に特別の規定のある者の行うもの

 三 物品の売買、運送若しくは保管又は物品の売買の媒介を業とする者がその取引に附随して行うもの

2 手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付は、前項の金銭の貸付とみなす。

3 この法律において「貸金業者」とは、貸金業を行う者で第四条第二項の規定による届出受理書の交付を受けたものをいう。

 (貸金業の届出)

第三条 貸金業を行おうとする者は、あらかじめ左に掲げる事項を記載した届出書を大蔵大臣に提出しなければならない。

 一 氏名、名称又は商号

 二 住所又は営業所若しくは事務所の所在地

 三 法人又は法人でない社団若しくは財団であるときは、その資本金額若しくは出資金額又は寄附財産の金額並びにその代表者又は管理人の氏名及び住所

 四 業務の種類

2 前項の届出書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。

 一 法人又は法人でない社団若しくは財団であるときは、定款又は寄附行為、主要な株主又は出資者の氏名若しくは名称又は商号及びその者の有する株式の数又はその者のした出資の金額を記載した書面、代表者又は管理人の履歴書、戸籍謄本及び直前事業年度の貸借対照表及び損益計算書

 二 個人であるときは、その者及び法定代理人の履歴書、戸籍謄本及び大蔵大臣の定める様式により作成した資産に関する調書

 三 大蔵大臣の定める事項を記載した業務方法書

 (届出の受理)

第四条 大蔵大臣は、前条の規定による届出があつた場合において、その届出をした者が左の各号の一に該当するとき、又は届出書若しくはその添附書類に法令の規定に違反する記載若しくは重要な事項につき虚偽の記載があり、若しくは重要な事項の記載が欠けているときは、その届出を受理してはならない。この場合においては、大蔵大臣は、届出を受理しない旨を届出をした者に通知しなければならない。

 一 破産者で復権を得ないもの

 二 禁こ以上の刑又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがないこととなつた日から三年を経過するまでの者

 三 第十三条第一項若しくは第三項又は第十四条第二項の規定により二回以上業務の停止を命ぜられ、最後に業務の停止を命ぜられた日から二年を経過するまでの者

 四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの

 五 法人又は法人でない社団若しくは財団でその役員若しくは代表者又は管理人のうちに前各号の一に該当する者のあるもの

2 大蔵大臣は、前条の規定による届出書を受理したときは、その届出をした者に届出受理書を交付しなければならない。

 (貸金業の制限)

第五条 貸金業者でなければ貸金業を行つてはならない。

 (変更の届出)

第六条 貸金業者は、第三条の規定による届出書又はその添附書類に記載された事項について変更があつたときは、遅滞なく、その旨の変更届出書を大蔵大臣に提出しなければならない。

2 前項の規定による変更の届出が、新たに就任した代表者又は管理人に係るものであるときは、当該代表者又は管理人の履歴書及び戸籍謄本を変更届出書に添附しなければならない。

 (預り金の禁止)

第七条 貸金業者は、預り金をしてはならない。

2 前項の「預り金」とは、不特定多数の者からの金銭の受入で預金、貯金、掛金その他、何らの名義をもつてするを問わず、これらと同様の経済的性質を有するものをいう。

 (貸付の利率及び媒介の手数料)

第八条 臨時金利調整法(昭和二十二年法律第百八十一号)第二条から第五条まで及び第六条第二項の規定(金利の最高限度)は、貸金業者の金銭の貸付の利率及び金銭の貸借の媒介の手数料について準用する。

 (業務報告書)

第九条 貸金業者は、事業年度(事業年度の定がないときは、毎年四月から九月まで及び十月から翌年三月までとする。)ごとに業務報告書を作成して、当該事業年度経過後二月以内に、これを大蔵大臣に提出し、且つ、これを営業所又は事務所に備えて置かなければならない。但し、やむを得ない事由がある場合において期限を定めあらかじめ大蔵大臣の承認を受けたときは、その提出を延期することができる。

2 前項の業務報告書の様式は、大蔵大臣が定める。

 (報告及び帳簿書類の領置)

第十条 大蔵大臣は、貸金業の公正な運営を保障するため必要があると認めるときは、貸金業を行つている者からその業務及び財産の状況に関し報告を徴し、又はその任意に提出した帳簿書類を領置することができる。

 (検査)

第十一条 大蔵大臣は、貸金業の公正な運営を保障するため必要があると認めるときは、部下の職員をして貸金業を行つている者の営業所又は事務所に立ち入り、その帳簿書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。

2 当該職員は、前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、利害関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (貸金業者の届出事項)

第十二条 貸金業者が貸金業を開始したとき、三月以上の期間にわたつて休業しようとするとき、又は三月以上の期間にわたつて休業した後貸金業を再開したときは、遅滞なく、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。

2 貸金業者が左の各号の一に該当することとなつた場合には、当該各号に掲げる者は、遅滞なく、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。

 一 第四条第一項各号の一に該当することとなつた場合においては、当該貸金業者

 二 貸金業者であつた法人又は法人でない社団若しくは財団が解散した場合においては、その代表者又は管理人であつた者

 三 貸金業者であつた個人が死亡した場合においては、その相続人

 四 貸金業を廃止した場合においては、貸金業者であつた個人又は貸金業者であつた法人若しくは法人でない社団若しくは財団の代表者若しくは管理人

3 貸金業者が前項各号の一に該当することとなつたときは、その時から第三条の規定によりした届出は、その効力を失う。

 (業務の停止)

第十三条 大蔵大臣は、貸金業者がこの法律の規定又はこの法律の規定に基く大蔵大臣の処分に違反したと認めるときは、当該貸金業者に対し十日以上一年以内の範囲において期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

2 大蔵大臣は、前項の規定により業務の停止を命じようとするときは、あらかじめ貸金業者に対しその旨を通知し、当該貸金業者又はその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を与えるため、部下の職員をして聴聞させなければならない。

3 大蔵大臣は、前項の規定により通知をしてから一月を経過してもなおその者から答弁がないときは、十日以上一年以内の範囲において期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

 (脱法行為の禁止等)

第十四条 何らの名義をもつてするを問わず、又、いかなる方法をもつてするを問わず、第五条及び第七条並びに第八条において準用する臨時金利調整法第五条の規定による禁止を免れる行為をしてはならない。

2 大蔵大臣は、第五条の規定に違反して貸金業を行つている者を発見したときは、前条第二項及び第三項に規定する手続に準じて、その者に対し、その業務の停止を命ずることができる。

 (浮貸し等の禁止)

第十五条 金融機関の役員、職員その他の従業者は、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸付(第二条第二項に規定する金銭の交付を含む。)、金銭の貸借の媒介又は債務の保証をしてはならない。

2 小切手の呈示の時において自己の処分し得る資金のない者が、小切手を振り出した場合において、金融機関の役員、職員その他の従業者が、その情を知りながら、当該小切手の支払をし、これを買い入れ、又はこれによつて弁済を受けたときは、前項の規定の適用については、金銭の貸付をしたものとみなす。

 (非営業無尽の取締)

第十六条 第三条、第四条第二項、第六条、第十条、第十一条、第十二条第二項第二号及び第四号並びに第十三条の規定は、営業として行われない無尽(無尽業法(昭和六年法律第四十二号)第一条に規定する無尽をいう。)のうち、その規模が大きく公共の利益に影響を及ぼすと認められるもので大蔵大臣の指定するものについて準用する。

 (権限の委任)

第十七条 大蔵大臣は、財務部長又は財務部の支部長をしてこの法律に基く大蔵大臣の権限の一部を行わせることができる。

 (罰則)

第十八条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第五条の規定に違反して貸金業を行った者

 二 第七条第一項の規定に違反して領り金をした者

 三 第八条において準用する臨時金利調整法第五条の規定に違反した者

 四 第十三条第一項若しくは第三項(第十六条において準用する場合を含む。)又は第十四条第二項の規定による業務の停止の命令に違反した者

 五 第十四条第一項の規定に違反した者

第十九条 第十五条第一項の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、刑法による。

第二十条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第三条(第十六条において準用する場合を含む。)の規定による届出書又はその添附書類に虚偽の記載をした者

 二 第六条(第十六条において準用する場合を含む。)の規定による変更の届出を怠り、又は変更届出書若しくはその添附書類に虚偽の記載をした者

 三 第九条第一項の規定による業務報告書の提出を怠り、又は業務報告書に虚偽の記載をした者

 四 第十条(第十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 五 第十一条第一項(第十六条において準用する場合を含む。)の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 六 第十二条第一項又は第二項(第十六条において準用する場合を含む。)の規定による届出を怠つた者

第二十一条 法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務又は財産に関して第十八条又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

2 前項の規定により法人でない社団又は財団を処罰する場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表する外、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。

2 この法律施行の際現に貸金業を行つている者は、この法律施行後三月以内に、第三条の規定により届出書を大蔵大臣に提出しなければならない。

3 前項に規定する者に対しては、第四条に規定する大蔵大臣の処分の日までは、第五条の規定は、適用しない。

4 無尽業法の一部を次のように改正する。

  第一条に次の一項を加える。

  一定ノ給付金額ヲ定メ一定ノ期間内ニ掛金ヲ払込マシメ其ノ期間ノ中途又ハ満了ノトキニ於テ掛金者ニ対シテ金銭ノ給付ヲ為スモノハ無尽ト看做ス

5 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第十四条第一項中

金利調整審議会

日本銀行政策委員会の諮問に応じて、金利の最高限度の決定及びその変更又は廃止について調査審議すること。

 を

金利調整審議会

日本銀行政策委員会の諮問に応じて、金利(貸金業者の貸付の利率及び媒介の手数料を含む。)の最高限度の決定及びその変更又は廃止について調査審議すること。

 に改める。

(大蔵・内閣総理大臣署名)

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