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法律第百七十二号(昭二五・五・一一)

  ◎予算執行職員等の責任に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、予算執行職員の責任を明確にして、法令又は予算に違反した支出等の行為をすることを防止し、もつて国の予算の執行の適正化を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「予算執行職員」とは、左に掲げる職員をいう。

 一 会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第十三条の二第一項に規定する支出負担行為担当官

 二 会計法第十三条の二第一項に規定する支出負担行為認証官

 三 会計法第二十五条第一項に規定する支出官

 四 会計法第十七条の規定により資金の交付を受ける官吏

 五 会計法第二十条の規定に基き繰替使用をさせることを命ずる官吏

 六 前各号に掲げる者の代理官及び分任官

 七 会計法第四十八条の規定により前各号に掲げる者の事務を取り扱う都道府県又は特別市の吏員

 八 前各号に掲げる者からその補助者としてその事務の一部を処理することを命ぜられた職員

2 この法律において「法令」とは、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)、会計法その他国の経理に関する事務を処理するための法律及び命令をいう。

3 この法律において「支出等の行為」とは、国の債務負担の原因となる契約その他の行為、支出負担行為の認証(会計法第十三条の二の規定による支出負担行為の認証をいう。)、支出、支払及び会計法第二十条の規定に基く繰替使用をさせることの命令並びに小切手、小切手帳及び印鑑の保管、帳簿の記帳、報告等国の予算の執行に関連して行われるべき行為(会計法第四十一条第一項の規定による弁償責任の対象となる行為を除く。)をいう。

 (予算執行職員の義務及び責任)

第三条 予算執行職員は、法令に準拠し、且つ、予算で定めるところに従い、それぞれの職分に応じ、支出等の行為をしなければならない。

2 予算執行職員は、故意又は重大な過失に因り前項の規定に違反して支出等の行為をしたことにより国に損害を与えたときは、弁償の責に任じなければならない。

3 前項の場合において、その損害が二人以上の予算執行職員が前項の支出等の行為をしたことにより生じたものであるときは、当該予算執行職員は、それぞれの職分に応じ、且つ、当該行為が当該損害の発生に寄与した程度に応じて弁償の責に任ずるものとする。

 (弁償責任の検定、弁償命令及び通知義務)

第四条 会計検査院は、予算執行職員が故意又は重大な過失に因り前条第一項の規定に違反して支出等の行為をしたことにより国に損害を与えたと認めるときは、その事実があるかどうかを審理し、弁償責任の有無及び弁償額を検定する。但し、その事実の発生した日から三年を経過したときは、この限りでない。

2 会計検査院が弁償責任があると検定したときは、予算執行職員の任命権者(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第五十五条第一項に規定する任命権者をいい、当該予算執行職員が都道府県又は特別市の職員である場合にあつては、都道府県又は特別市の長とする。以下同じ。)は、その検定に従つて、弁償を命じなければならない。

3 各省各庁の長(財政法第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)は、予算執行職員が故意又は重大な過失に因り前条第一項の規定に違反して支出等の行為をしたことにより国に損害を与えたと認めるときは、会計検査院の検定前においても、その予算執行職員に対して弁償を命ずることができる。

4 各省各庁の長は、予算執行職員が前条第一項の規定に違反して支出等の行為をした事実があると認めるときは、遅滞なく、大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。

5 第三項の場合において、各省各庁の長は、会計検査院が予算執行職員に対し弁償の責がないと検定したときは、その既納に係る弁償金を直ちに還付しなければならない。

6 前項の規定により還付する弁償金には、当該弁償金納付のときから還付のときまでの期間に応じ、当該金額に対し大蔵大臣が納付のときから還付のときまでの期間における銀行の一般貸付利率を勘案して決定する率を乗じて計算した額に相当する金額を加算しなければならない。

 (再検定)      

第五条 会計検査院は、前条第一項の規定による予算執行職員の弁償責任の検定後において、その検定が不当であることを発見したとき、又は各省各庁の長若しくは予算執行職員がその責を免かれる理由があると信じ、その理由を明らかにする書類及び計算書を作製し、証拠書類を添えて再審の請求をしたときは、その都度再検定をしなければならない。但し、請求に基いて再検定をする場合において、当該請求が検定のあつた日から五年を経過した日後にされたときは、この限りでない。

2 会計検査院は、前項の規定による再検定のための審理をする場合において、各省各庁の長又は予算執行職員から請求があつたときは、口頭審理を行わなければならない。口頭審理は、当該職員から請求があつたときは、公開して行わなければならない。

3 各省各庁の長又はその代理官及び予算執行職員は、すべての口頭審理に出席し、自己の代理人として弁護人を選任し、陳述を行い、証人を出席させ、並びに書類、計算書その他のあらゆる適切な事実及び資料を提出することができる。

4 前項に掲げる者以外の者は、当該事案に関し、会計検査院に対し、あらゆる事実及び資料を提出することができる。

5 前条第一項本文、第二項、第五項及び第六項の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、前条第五項中「第三項の場合において、各省各庁の長は、」とあるのは「各省各庁の長は、」と読み替えるものとする。

 (懲戒処分)

第六条 会計検査院は、検査又は検定(前条第一項に規定する再検定を含む。)の結果、予算執行職員が故意又は過失に因り第三条第一項の規定に違反して支出等の行為をしたことにより国に損害を与えたと認めるとき、又は国に損害を与えないが故意又は重大な過失に因り同項の規定に違反して支出等の行為をしたと認めるときは、当該職員の任命権者に対し、当該職員の懲戒処分を要求することができる。この場合において、会計検査院は、適当と認める処分の種類及び内容を参考のため明示するものとする。

2 会計検査院は、前項の規定により懲戒処分の要求をしたときは、その旨を人事院に通知しなければならない。

3 任命権者は、第一項の規定による懲戒処分の要求を受けたときは、当該職員に対しその懲戒処分をすることが適当かどうかを直ちに調査してこれについて措置するとともにその結果を会計検査院及び人事院に通知しなければならない。

4 会計検査院は、第一項の規定による予算執行職員の懲戒処分を要求した後において、その要求が不当であることを発見したとき、又は当該職員の任命権者からその要求が不当であるとして再審の要求を受け実情を調査した結果、その要求が不当であることが明らかになつたときは、直ちにこれを取り消さなければならない。

5 第二項の規定及び第三項の規定中人事院に対する通知に関する部分は、予算執行職員が都道府県又は特別市の職員である場合には、適用しない。

 (弁償責任の減免)

第七条 第四条第一項本文(第五条第五項において準用する場合を含む。)の規定による弁償責任は、国会の議決に基かなければ減免されない。

 (予算執行職員の弁償責任の転嫁)

第八条 予算執行職員は、その上司から第三条第一項の規定に違反すると認められる支出等の行為をすることの要求を受けたときは、書面をもつてその理由を明らかにし、当該上司を経て任命権者(当該上司が任命権者(外局の長であるものを除く。)である場合にあつては直ちに任命権者、当該上司が外局の長である任命権者である場合にあつては各省各庁の長)にその支出等の行為をすることができない旨の意見を表示しなければならない。但し、予算執行職員が第二条第一項第七号に規定する者である場合にあつては、直ちにその事務を委任した各省各庁の長に、同項第八号に規定する者で都道府県又は特別市の職員であるものである場合にあつては、その事務の一部を処理することを命じた職員に、その支出等の行為をすることができない旨の意見を表示するものとする。

2 予算執行職員が前項の規定によつて意見の表示をしたにもかかわらず、更に、上司(前項但書の場合にあつては、その事務を委任した各省各庁の長又はその事務の一部を処理することを命じた職員)が当該職員に対し同一の支出等の行為をすべき旨の要求をしたときは、その支出等の行為に基く弁償責任は、その要求をした上司が負うものとする。

3 第四条第一項及び第二項、第五条並びに前条の規定は、前項の場合に準用する。

 (公団等の予算執行職員に対する準用)

第九条 法令による公団、連合国軍人等住宅公社、日本専売公社、日本国有鉄道、復興金融金庫、国民金融公庫、住宅金融公庫、商船管理委員会、持株会社整理委員会、閉鎖機関整理委員会及び証券処理調整協議会(以下「公団等」という。)の総裁、理事長、委員長又は議長(以下「公団等の長」という。)から公団等の予算執行の職務を行う者として指定された者(以下「公団等予算執行職員」という。)は、公団等の経理に関する事務を処理するための法律及び命令の規定、公団等の定款並びに公団等の経理に関する規程(以下「公団等に関する法令」という。)に準拠し、且つ、予算で定めるところに従い、それぞれの職分に応じ、公団等において行う第二条第三項に規定する支出等の行為に相当する行為(以下「公団等の支出等の行為」という。)をしなければならない。

2 第三条第二項及び第三項並びに第四条から前条までの規定は、前項の公団等予算執行職員について準用する。但し、国家公務員法の適用を受けない公団等予算執行職員については、第六条第二項の規定及び第三項の規定中人事院に対する通知に関する部分は、この限りでない。

3 前項の場合において、同項に掲げる準用規定中「予算執行職員」とあるのは「公団等予算執行職員」と、「法令」とあるのは「公団等に関する法令」と、「国」とあるのは「公団等」と、「支出等の行為」とあるのは「公団等の支出等の行為」と、「各省各庁の長」とあるのは「公団等の長」と、「任命権者」とあるのは「公団等の長又は公団等の職員の任免を行う権限を有する者」と、「懲戒処分」とあるのは、公団等予算執行職員で国家公務員法その他の法律による懲戒処分の規定の適用を受けないものにあつては「公団等の長の行う懲戒処分に相当する処分」と、第四条第四項中「大蔵大臣」とあるのは「主務大臣、大蔵大臣」と読み替えるものとする。

4 公団等の長は、公団等予算執行職員を指定したときは、遅滞なく、主務大臣、大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。

5 公団等予算執行職員がその職務の執行に関し疑義のある事項について会計検査院に意見を求めたときは、会計検査院は、これに対し意見を表示しなければならない。

 (公団等の出納職員の弁償責任)

第十条 公団等(日本国有鉄道を除く。以下本条中同じ。)において、公団等の長(日本国有鉄道総裁を除く。以下本条中同じ。)又はその委任を受けた者から現金又は物品の出納保管をつかさどることを命ぜられた職員(以下「公団等の出納職員」という。)は、公団等に関する法令の定めるところにより、現金又は物品を出納保管しなければならない。

2 公団等の出納職員が、その保管に係る現金又は物品を亡失き損した場合において、善良な管理者の注意を怠つたときは、公団等に対し弁償の責を免かれることができない。但し、公団等に関する法令により公団等の職員の使用に供した物品の亡失き損について、合規の監督を怠らなかつたことを証明した場合は、その責に任じない。

3 会計法第四十一条第二項、第四十二条、第四十三条及び会計検査院法第三十二条の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、当該準用規定中「出納官吏」とあるのは「公団等の出納職員」と、「各省各庁の長」とあるのは「公団等の長」と、「大蔵大臣」とあるのは「主務大臣、大蔵大臣」と、「国」とあるのは「公団等」と、「本属長官」とあるのは「公団等の長」と読み替えるものとする。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 会計検査院法の一部を次のように改正する。

  第十一条第五号及び第六号を次のように改める。

  五 第三十一条及び政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第十三条第二項の規定(同法第十四条において準用する場合を含む。)並びに予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)第六条第一項及び第四項の規定(同法第九条第二項において準用する場合を含む。)による処分の要求に関する事項

  六 第三十二条(予算執行職員等の責任に関する法律第十条第三項において準用する場合を含む。)及び日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第四十八条の二第二項並びに予算執行職員等の責任に関する法律第四条第一項及び同法第五条(同法第八条第三項及び同法第九条第二項において準用する場合を含む。)の規定による検定及び再検定

  第十一条第九号中「第三十七条」の下に「及び予算執行職員等の責任に関する法律第九条第五項」を加える。

  第二十九条第五号中「第三十一条」の下に「及び政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十三条第二項(同法第十四条において準用する場合を含む。)並びに予算執行職員等の責任に関する法律第六条第一項(同法第九条第二項において準用する場合を含む。)」を加え、同条第六号を次のように改める。

  六 第三十二条(予算執行職員等の責任に関する法律第十条第三項において準用する場合を含む。)及び日本国有鉄道法第四十八条の二第二項並びに予算執行職員等の責任に関する法律第四条第一項及び同法第五条(同法第八条第三項及び同法第九条第二項において準用する場合を含む。)の規定による検定及び再検定

  第三十二条第三項中「恩赦によらなければ」を「国会の議決に基かなければ」に改める。

3 経済安定本部設置法(昭和二十四年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。

  附則第二項中「国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律(昭和二十四年法律第百七十六号)」を

国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律(昭和二十四年法律第百七十六号)

予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)

 に改める。

(内閣総理大臣・法務総裁・各省大臣・経済安定本部総裁署名) 

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