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法律第二百六十八号(昭二五・一二・一五)

  ◎日本輸出銀行法

目次

 第一章 総則(第一条―第九条)

 第二章 役員及び職員(第十条―第十七条)

 第三章 業務(第十八条―第二十四条)

 第四章 会計(第二十五条―第四十一条)

 第五章 監督(第四十二条―第四十四条)

 第六章 罰則(第四十五条―第四十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 日本輸出銀行は、金融上の援助を与えることにより本邦の輸出貿易を促進するため、一般の金融機関が行う輸出金融を補完し、又は奨励することを目的とする。

 (法人格)

第二条 日本輸出銀行は、公法上の法人とする。

 (事務所)

第三条 日本輸出銀行は、主たる事務所を東京都に置く。

2 日本輸出銀行は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (資本金)

第四条 日本輸出銀行の資本金は、百五十億円とし、政府が一般会計及び米国対日援助見返資金特別会計からその全額を出資する。

2 前項の資本金のうち五十億円は、昭和二十五年度において、百億円は、昭和二十六年度においてそれぞれ出資するものとする。

 (定款)

第五条 日本輸出銀行は、定款をもつて、左の事項を規定しなければならない。

一 目的

二 名称

三 事務所の所在地

四 資本金

五 役員に関する事項

六 業務及びその執行に関する事項

七 会計に関する事項

八 公告の方法

2 日本輸出銀行は、定款を変更したときは、遅滞なく、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。

 (登記)

第六条 日本輸出銀行は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第七条 日本輸出銀行でない者は、日本輸出銀行という名称又はこれに類する名称を用いてはならない。

2 銀行法(昭和二年法律第二十一号)第四条第二項の規定は、日本輸出銀行には適用しない。

 (解散)

第八条 日本輸出銀行の解散については、別に法律で定める。

2 日本輸出銀行が解散した場合において、その残余財産は、第四条第一項の規定による出資の割合に応じ、一般会計及び米国対日援助見返資金特別会計に帰属する。

 (法人に関する規定の準用)

第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第五十四条(理事の代表権の制限)の規定は、日本輸出銀行に準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第十条 日本輸出銀行に、役員として、総裁一人、専務理事一人、理事三人以内及び監事二人以内を置く。

 (役員の職務及び権限)

第十一条 総裁は、日本輸出銀行を代表し、その業務を総理する。

2 専務理事及び理事は、総裁の定めるところにより、日本輸出銀行を代表し、総裁を補佐して日本輸出銀行の事務を掌理し、専務理事は、総裁に事故があるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行い、理事は、総裁及び専務理事に事故があるときには総裁の職務を代理し、総裁及び専務理事が欠員のときには総裁の職務を行う。

 (役員の任命)

第十二条 総裁及び監事は、内閣総理大臣が任命する。

2 専務理事及び理事は、総裁が任命する。

 (役員の任期)

第十三条 総裁、専務理事、理事及び監事の任期は、四年とする。

2 総裁、専務理事、理事及び監事は、再任されることができる。

3 総裁、専務理事、理事及び監事が欠員となつたときは、遅滞なく、補欠の役員を任命しなければならない。補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

 (代表権の制限)

第十四条 日本輸出銀行と総裁、専務理事又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合においては、監事が日本輸出銀行を代表する。

 (代理人の選任)

第十五条 総裁、専務理事及び理事は、日本輸出銀行の職員のうちから、従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (職員の任命)

第十六条 日本輸出銀行の職員は、総裁が任命する。

 (役員及び職員の地位)

第十七条 日本輸出銀行の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三章 業務

 (業務の範囲)

第十八条 日本輸出銀行は、第一条に掲げる目的を達成するため、左の業務を行う。

一 設備(船舶及び車りようを含む。)並びにその部分品及び附属品で本邦で生産されたもの(以下「設備等」という。)の本邦からの輸出及びこれに伴つてなされる本邦人又は本邦人からの技術の提供を促進するため、本邦輸出業者又は本邦輸出品製造業者に対して資金を貸し付けること。但し、銀行(銀行法に規定する銀行をいう。以下同じ。)が日本輸出銀行とともにその資金の貸付を受けようとする者に対して資金を融通する場合であつて、その者が銀行を通じて当該貸付の申込をするときに限る。

二 設備等の本邦からの輸出及びこれに伴つてなされる本邦法人又は本邦人からの技術の提供を促進するため、銀行に対して本邦輸出業者又は本邦輸出品製造業者のためにする手形の割引をすること。

三 設備等の本邦からの輸入及びこれに件つてなされる本邦法人又は本邦人からの技術の受入を促進するため、外国政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体、外国銀行又は外国商社に対して、外国為替の管理に関する法令の規定に従い資金を貸し付けること。但し、その貸付を受ける者が、当該貸付を受けることにより当該外国の法令の規定に違背することとなる場合を除く。

四 前各号に附帯する業務

2 前項第一号から第三号までに規定する資金の貸付又は手形の割引は、銀行が、通常の条件により資金の供給を行うことが困難な場合であつて、且つ、本邦からの設備等の輸出又は輸入(これに伴つてなされる技術の提供又は受入を含む。)の契約が締結され、又は当該契約の締結が確実になつた場合で、その契約に基く債務の履行及び当該貸付に係る資金の償還又は当該割引に係る手形の支払が確実であると認められるときに限り、行うことができる。

 (貸付利率及び手形割引歩合)

第十九条 前条第一項第一号から第三号までの規定による貸付金の利率及び手形の割引の歩合は、当該利率及び歩合により収入する貸付金利息及び手形割引料が日本輸出銀行の事務取扱費、業務委託費その他の諸費及び資産の運用損失を償うに足るように、銀行の貸付利率及び手形の割引歩合を勘案して定めるものとする。

2 前項の貸付利率及び手形の割引歩合は、貸付又は手形の割引の目的、貸付金の償還期限、割引に係る手形の支払期限、担保等においてその種類を同じくする貸付及び手形の割引に対しては、同一でなければならない。

 (貸付金の償還期限及び割引に係る手形の支払期限)

第二十条 第十八条第一項第一号から第三号までの規定による貸付金又は割引に係る手形は、その貸付金の償還期限又は手形の支払期限が六月をこえ三年以内のものでなければならない。

2 前項の貸付金又は手形の割引は、当該貸付金又は当該手形の割引を受けた銀行がその手形について融資した資金に係る設備等の輸出入又は技術の提供若しくは受入の契約に基く対価の支払の条件その他の事由により同項の規定によることが困難であると認められるときは、同項の規定にかかわらず、その償還期限が三年をこえ五年以内のものとすることができ、又は支払期限が三年をこえ五年以内の手形について行うことができる。

 (業務の期間)

第二十一条 日本輸出銀行は、設立の日から五年を経過した後は、新たに資金の貸付又は手形の割引をすることができない。

 (業務方法書)

第二十二条 日本輸出銀行は、業務方法書を作成し、これに資金の貸付又は手形の割引の方法、利率及び期限、元利金の回収の方法並びに業務の委託の要領等を記載しなければならない。

 (委託業務に従事する銀行の役員及び職員の地位)

第二十三条 銀行が日本輸出銀行の業務の委託を受けた場合においては、その業務の委託を受けた銀行の役員及び職員でその委託を受けた業務に従事するものは、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (金融機関との競争禁止)

第二十四条 日本輸出銀行は、第一条に掲げる目的にかんがみ、輸出金融について、銀行その他の金融機関と競争してはならない。

   第四章 会計

 (事業年度)

第二十五条 日本輸出銀行の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。

 (予算)

第二十六条 日本輸出銀行は、毎事業年度の事業の運営により生ずる収入及び支出の予算を作成し、これを大蔵大臣に提出しなければならない。

2 前項の収入は、貸付金利息、手形割引料その他資産の運用に係る収入及び附属雑収入とし、同項の支出は、事務取扱費、業務委託費、附属諸費及び資産の運用損失金とする。

3 大蔵大臣は、第一項の規定により予算の提出を受けたときは、これを検討して必要な調整を行い、閣議の決定を経なければならない。

4 内閣は、前項の規定による閣議の決定があつたときは、その予算を国の予算とともに、国会に提出しなければならない。

5 予算の形式及び内容並びにその作成及び提出の手続については、大蔵大臣が定める。

 (予備費)

第二十七条 予見し難い事由による支出予算の不足を補うため、日本輸出銀行の予算に予備費を設けることができる。

 (予算の議決)

第二十八条 予算の国会の議決に関しては、国の予算の議決の例による。

 (予算の通知)

第二十九条 内閣は、日本輸出銀行の予算が国会の議決を経たときは、大蔵大臣を経由して、直ちにその旨を日本輸出銀行に通知するものとする。

2 日本輸出銀行は、前項の規定による通知を受けた後でなければ、予算を実施することができない。

3 大蔵大臣は、第一項の規定による通知があつたときは、直ちにその旨を会計検査院に通知しなければならない。

 (追加予算及び予算の修正)

第三十条 日本輸出銀行は、予算作成後に生じた避けることのできない事由により必要がある場合に限り、追加予算を作成し、これを大蔵大臣に提出することができる。

2 日本輸出銀行は、前項の場合を除く外、予算の成立後に生じた事由に基いて既に成立した予算に変更を加える必要があるときは、予算を修正して、これを大蔵大臣に提出することができる。

3 第二十六条第二項から第五項まで及び前二条の規定は、前二項の規定による追加予算及び予算の修正について準用する。

 (暫定予算)

第三十一条 日本輸出銀行は、必要に応じて、一事業年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを大蔵大臣に提出することができる。

2 第二十六条第二項から第五項まで、第二十八条及び第二十九条の規定は、前項の規定による暫定予算について準用する。

3 暫定予算は、当該事業年度の予算が国会の議決を経たときは、失効するものとし、暫定予算に基く支出があるときは、これを当該事業年度の予算に基いてなしたものとみなす。

 (予算の執行)

第三十二条 日本輸出銀行は、支出予算については、当該予算に定める目的の外に使用してはならない。

第三十三条 日本輸出銀行は、予算で指定する経費の金額については、大蔵大臣の承認を受けなければ、流用することができない。

2 大蔵大臣は、前項の承認をしたときは、直ちにその旨を会計検査院に通知しなければならない。

第三十四条 日本輸出銀行は、予備費を使用するときは、直ちにその旨を大蔵大臣に通知しなければならない。

2 大蔵大臣は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちにその旨を会計検査院に通知しなければならない。

 (財務諸表)

第三十五条 日本輸出銀行は、財産目録及び貸借対照表を四月から九月まで及び十月から翌年三月までの半期ごとに、損益計算書をこれらの半期及び事業年度ごとに作成し、当該半期又は当該事業年度経過後二月以内に、これらの書類(以下「財務諸表」という。)を大蔵大臣に届け出なければならない。

2 日本輸出銀行は、前項の規定による財務諸表の届出をしたときは、その財務諸表を公告し、且つ、各事務所に備え置かなければならない。

 (決算)

第三十六条 日本輸出銀行は、毎事業年度の決算を翌事業年度の七月三十一日までに完結しなければならない。

第三十七条 日本輸出銀行は、決算完結後予算の区分に従い、毎事業年度の決算報告書を作成し、第三十五条第一項の規定により大蔵大臣に届け出た財務諸表を添え、遅滞なく、大蔵大臣に提出しなければならない。

2 大蔵大臣は、前項の規定により決算報告書及び財務諸表の提出を受けたときは、これを内閣に送付しなければならない。

3 内閣は、前項の規定により決算報告書及び財務諸表の送付を受けたときは、翌事業年度の十一月三十日までにこれを会計検査院に送付し、その検査を経て、国の歳入歳出の決算とともに、国会に提出しなければならない。

4 第一項に規定する決算報告書の形式及び内容については、大蔵大臣が定める。

 (利益金の処分)

第三十八条 日本輸出銀行は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、準備金としてこれを積み立てなければならない。

2 前項の準備金は、損失の補てんに充てる場合を除いては、取りくずしてはならない。

 (資金の借入の制限)

第三十九条 日本輸出銀行は、資金の借入をしてはならない。

 (余裕金の運用)

第四十条 日本輸出銀行は、左の方法によるの外、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債の保有

 二 大蔵省預金部への預金

 三 日本銀行への預金

 (会計検査院の検査)

第四十一条 会計検査院は、必要があると認めるときは、日本輸出銀行からその業務の委託を受けた銀行につき、当該委託業務に係る会計を検査することができる。

   第五章 監督

 (監督)

第四十二条 日本輸出銀行は、大蔵大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。

2 大蔵大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、日本輸出銀行からの報告又は第四十四条第一項の規定による検査の結果に基き、日本輸出銀行に対して業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (役員の解任)

第四十三条 内閣総理大臣は、日本輸出銀行の総裁及び監事が左の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任することができる。

一 この法律、この法律に基く政令又はこれらの法令に基いてする大蔵大臣の命令に違反したとき。

 二 刑事事件により有罪の宣告を受けたとき。

 三 破産の宣告を受けたとき。

 四 心身の故障により職務を執ることができないとき。

2 内閣総理大臣は、日本輸出銀行の専務理事及び理事が前項各号の一に該当するに至つたときは、総裁に対し当該専務理事又は理事の解任を命ずることができる。

 (報告の徴取及び検査)

第四十四条 大蔵大臣は、必要があると認めるときは、日本輸出銀行に対して報告をさせ、又はその職員をして日本輸出銀行の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。

3 第一項の規定による報告の徴取及び立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 罰則

第四十五条 日本輸出銀行の役員又は職員が、前条第一項の規定による報告すべき事項につき虚偽の報告をしたときは、三万円以下の罰金に処する。

第四十六条 左の場合においては、その違反行為をした日本輸出銀行の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。

一 この法律により大蔵大臣に届出をしなければならない場合において、その届出をしなかつたとき。

二 この法律により大蔵大臣の承認を受けなければならない場合において、その承認を受けなかつたとき。

三 第六条第一項の規定に違反して登記をすることを怠り、又は不実の登記をしたとき。

四 第十八条第一項各号に掲げる業務以外の業務を行つたとき。

五 第三十九条の規定に違反して資金の借入をしたとき。

六 第四十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

七 第四十二条第二項の規定による大蔵大臣の命令に違反したとき。

第四十七条 第八条第一項の規定に違反して日本輸出銀行という名称又はこれに類する名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 大蔵大臣は、設立委員を命じて、日本輸出銀行の設立に関する事務を処理させる。

3 設立委員は、定款を作成して大蔵大臣に届け出なければならない。

4 設立委員は、前項の届出をしたときは、遅滞なく、政府に対し資本金の払込の請求をしなければならない。

5 資本金の第一回の払込のあつた日において、設立委員は、その事務を日本輸出銀行の総裁に引き継がなければならない。

6 総裁が前項の事務の引継を受けた日において、総裁、専務理事、理事及び監事の全員は、設立の登記をしなければならない。

7 日本輸出銀行は、設立の登記をすることに因り成立する。

8 この法律施行後最初に任命される理事及び監事の任期は、第十三条第一項の規定にかかわらず、理事のうち二人及び監事のうち一人については、それぞれ総裁又は内閣総理大臣の定めるところにより、二年とする。

9 他の法令中「銀行」という場合には、日本輸出銀行を含まないものとする。

10 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

 第十二条第一項第四号の次に次の一号を加える。

 四の二 日本輸出銀行を監督すること。

11 貸金業等の取締に関する法律(昭和二十四年法律第百七十号)の一部を次のように改正する。

 第二条第二号中「住宅金融公庫、」の下に「日本輸出銀行、」を加える。

12 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「船舶運営会」を「日本輸出銀行」に改める。

13 予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項中「住宅金融公庫、」の下に「日本輸出銀行、」を加える。

(法務総裁・大蔵・農林・通商産業・内閣総理大臣署名) 

 

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