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法律第九十七号(昭二六・三・三一)

  ◎公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法

 (目的)

第一条 この法律は、公共土木施設の災害復旧事業費について、地方公共団体の財政力に適応するように国の負担を定めて、災害の速やかな復旧を図り、もつて公共の福祉を確保することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「災害」とは、暴風、こう水、高潮、地震その他の異常な天然現象に因り生ずる災害をいう。

2 この法律において「災害復旧事業」とは、災害に困つて必要を生じた事業で、災害にかかつた施設を原形に復旧する(原形に復旧することが不可能な場合において当該施設の従前の効用を復旧するための施設をすることを含む。以下同じ。)ことを目的とするものをいう。

3 災害に因つて必要を生じた事業で、災害にかかつた施設を原形に復旧することが著しく困難又は不適当な場合においてこれに代わるべき必要な施設をすることを目的とするものは、この法律の適用については、災害復旧事業とみなす。

4 この法律において「標準税収入」とは、地方公共団体(地方公共団体の組合を除く。以下本条及び第四条において同じ。)が地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)に定める当該地方公共団体の普通税(法定外普通税を除く。)について同法第一条第一項第五号にいう標準税率(標準税率の定のない地方税については、同法に定める税率とする。)をもつて、地方財政平衡交付金法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十五条第一項の地方財政委員会規則で定める方法により算定した地方税の収入見込額をいう。

 (国庫負担)

第三条 国は、法令により地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)に基く港務局を含む。以下第四条を除き同じ。)又はその機関の維持管理に属する左に掲げる施設のうち政令で定める公共土木施設に関する災害の災害復旧事業で、当該地方公共団体又はその機関が施行するものについては、その事業費の一部を負担する。

 一 河川

 二 海岸

 三 砂防設備

 四 林地荒廃防止施設

 五 道路

 六 港湾

 七 漁港

 (国庫負担率)

第四条 前条の規定により地方公共団体に対し国が費用の一部を負担する場合における当該災害復旧事業費に対する国の負担率は、当該地方公共団体について、その年の一月一日から十二月三十一日までに発生した災害につき、第七条の規定により決定された災害復旧事業費の総額を左の各号に定める額に区分して逓次に当該各号に定める率を乗じて算定した額の当該災害復旧事業費の総額に対する率による。この場合において、その率は、小数点以下三位まで算出するものとし、四位以下は、四捨五入するものとする。

 一 当該地方公共団体の当該年度(災害の発生した年の四月一日の属する会計年度をいう。以下本条において同じ。)の標準税収入の二分の一に相当する額までの額については、三分の二

 二 当該地方公共団体の当該年度の標準税収入の二分の一をこえ二倍に達するまでの額に相当する額については、四分の三

 三 当該地方公共団体の当該年度の標準税収入の二倍をこえる額に相当する額については、四分の四

2 前項の災害復旧事業費の総額には、前条各号に掲げる施設に関する災害復旧事業で、国が施行するもの(北海道における災害復旧事業で国がその費用の全額を負担するものを除く。)の事業費(二以上の地方公共団体がそれぞれ事業費の一部を負担する場合においては、それぞれの団体について、その負担割合に応じその負担に係る事業の事業費をあん分した額)及び地方公共団体の組合又は港務局の施行するものの事業費で、組合又は港務局を組織するそれぞれの地方公共団体の負担すべきものを含み、第二条第三項に規定する災害復旧事業の事業費のうち、災害にかかつた施設を原形に復旧するものとした場合に要する金額をこえる金額(以下超過事業費という。)を含まないものとする。

3 地方公共団体の組合又は港務局の行う災害復旧事業の事業費に対して国が前条の規定により費用の一部を負担する場合における当該事業費に対する国の負担率は、当該組合又は港務局を組織する地方公共団体が当該組合の規約又は港務局の定款で災害復旧事業費の分担について定めた割合を、第一項の規定により算定した当該地方公共団体に対する国の負担率に乗じたものの和とする。

4 国は、第二条第三項に規定する災害復旧事業費のうち超過事業費については、第一項の規定にかかわらず、それぞれの施設に関する改良工事について、国が、他の法令又は予算の定めるところによりその費用の一部を負担し、又は補助する場合の例により、その費用を負担する。

 (直轄事業に対する地方公共団体の負担率)

第五条 第三条各号に掲げる施設について国が施行する災害復旧事業費で、地方公共団体がその費用の一部を負担するものについての当該地方公共団体の負担の割合は、他の法令の規定にかかわらず、当該地方公共団体又はその機関が施行する災害復旧事業で国が施行する当該災害復旧事業の原因となつた災害と同年に発生した災害に係るものに対し前条の規定により国が負担すべき割合を除いた割合によるものとする。

 (適用除外)

第六条 この法律は、左に掲げる災害復旧事業については適用しない。

 一 一箇所の工事の費用が十五万円に満たないもの

 二 工事の費用に比してその効果の著しく小さいもの

 三 維持工事とみるべきもの

 四 明らかに設計の不備又は工事施行の粗漏に基因して生じたものと認められる災害に係るもの

 五 甚しく維持管理の義務を怠つたことに基因して生じたものと認められる災害に係るもの

 六 河川、港湾及び漁港の埋そくに係るもの。但し、維持上又は公益上特に必要と認められるものを除く。

 七 天然の河岸及び海岸の欠壊に係るもの。但し、維持上又は公益上特に必要と認められるものを除く。

 八 災害復旧事業以外の事業の工事施行中に生じた災害に係るもの

 九 直高一メートル未満の小堤、幅員二メートル未満の道路その他主務大臣の定める小規模な施設に係るもの

2 前項第一号の場合において、一の施設について災害にかかつた箇所が二十メートル以内の間隔で連続しているものに係る工事並びに橋、水制、床止その他これらに類する施設について災害にかかつた箇所が二十メートルをこえる間隔で連続しているものに係る工事及びこれらの施設の二以上にわたる工事で当該工事を分離して施行することが当該施設の効用上困難又は不適当なものは、一箇所の工事とみなす。但し、当該工事を施行する地方公共団体が二以上あるものについては、この限りでない。

 (災害復旧事業費の決定)

第七条 第三条の規定により国がその費用の一部を負担する災害復旧事業及び第五条に規定する国が施行する災害復旧事業の事業費は、地方公共団体の提出する資料、実地調査の結果等を勘案して主務大臣が決定する。

 (国庫負担金の交付方法)

第八条 国は、前条の規定により災害復旧事業費を決定したときは、当該地方公共団体に対し、当該災害復旧事業が施行される各年度において、第四条の規定による国の負担率により負担金を交付する。

2 前項の場合において、国は、第四条の規定による国の負担率が決定する前でも、予算の範囲内において、当該年度において施行される災害復旧事業の事業費(超過事業費に相当する部分を除く。)の三分の二に相当する額を下らない額により、負担金を概算交付することができる。

3 国は、前項の規定により負担金を概算交付した場合において、第四条の規定による国の負担率が決定したときは、当該年度内に、その年度中に施行された当該災害復旧事業の事業費に対応する負担金との差額を交付する。但し、その負担金を交付するための支出予算額がその交付すべき差額に対し不足するときは、その不足額を翌年度において交付するものとする。

 (災害復旧事業の監督)

第九条 主務大臣は、災害復旧事業につきこの法律により国の負担金の交付を受ける地方公共団体に対して、当該災害復旧事業を適正に実施させるため、必要な検査を行い、報告を求め、又は事業の施行に関し必要な指示をすることができる。

2 主務大臣は、都道府県知事をして、当該都道府県の区域に存する市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の市を除く。以下同じ。)町村(市町村の組合及び港湾法第四条第四項第三号に掲げる港湾を管理する港務局を含む。以下同じ。)に対して、政令で定めるところにより、前項に規定する主務大臣の権限を行わせることができる。

 (災害復旧事業費の精算)

第十条 国の負担金の交付を受けた地方公共団体が負担金に係る災害復旧事業を施行したときは、遅滞なく、その事業費を精算して主務大臣の成功認定を受けなければならない。

 (負担金の還付)

第十一条 国の負担金の交付を受ける地方公共団体が、負担金に係る災害復旧事業を施行せず、又は負担金をその目的に反して使用したときは、主務大臣は、負担金のうちその施行しない災害復旧事業に係る部分を交付せず、若しくは返還させ、又は交付の目的に反して使用した部分の負担金を返還させることができる。

2 前項の規定により負担金の返還を命ぜられた地方公共団体は、その返還を命ぜられた金額を、遅滞なく、国に返還しなければならない。

3 第九条第二項の規定は、第一項に規定する主務大臣の権限について準用する。

 (剰余金の処分)

第十二条 地方公共団体は、国の負担金の交付を受けた災害復旧事業の事業費に剰余を生じたときは、遅滞なく、当該剰余金に第四条の規定による国の負担率を乗じた額を国に返還しなければならない。

2 前項の場合において、地方公共団体は、政令で定めるところにより、当該剰余金を主務大臣の認可を受けた災害復旧事業に使用することができる。

 (市町村の災害復旧事業費)

第十三条 国が市町村に対して交付する災害復旧事業費の負担金の額の算定、交付及び還付並びに災害復旧事業の成功認定に関する事務は、政令で定めるところにより都道府県知事が行う。

2 国は、政令で定めるところにより、都道府県知事が前項の規定による事務を行うために必要な経費を都道府県に交付しなければならない。

 (主務大臣)

第十四条 この法律において主務大臣は、第三条各号に掲げる施設の主務大臣とする。

 (実施規定)

第十五条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。

   附 則

1 この法律は、昭和二十六年四月一日から施行する。

2 左の法律は、廃止する。

  都道府県災害土木費国庫負担ニ関スル法律(明治四十四年法律第十五号)

  昭和二十五年度における災害復旧事業費国庫負担の特例に関する法律(昭和二十五年法律第百八十九号)

3 北海道における地方公共団体に対して第三条の規定により国がその費用の一部を負担する場合における当該災害復旧事業費に対する国の負担率は、当分の間、第四条の規定によつて算定した率が五分の四に満たない場合においては、同条の規定にかかわらず、五分の四とする。

4 この法律(第五条及び第六条を除く。)の規定は、第三条各号に掲げる施設について地方公共団体又はその機関が施行する災害復旧事業で昭和二十五年以前の災害に因るもののうち、主務大臣による事業費の決定があつて、国の負担金の全部又は一部の交付をまだ受けていないものについて準用する。この場合において、第四条第一項中「第七条の規定により決定された災害復旧事業費の総額」とあるのは「主務大臣が決定した災害復旧事業費の総額(昭和二十三年一月一日から同年十二月三十一日までに発生した災害については、当該災害復旧事業費の総額に政令で定める率を乗じて補正した額)」と、同条同項第一号中「当該年度(災害の発生した年の四月一日の属する会計年度)」とあり、又は同条同項第二号若しくは第三号中「当該年度」とあるのは「昭和二十五年度」と読み替えるものとする。

5 第五条の規定は、第三条各号に掲げる施設について昭和二十六年度以降において国がその全部又は一部を施行する災害復旧事業で昭和二十五年以前の災害に因るものについての地方公共団体の費用の負担の割合について準用する。

6 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和二十五年法律第百六十九号)の一部を次のように改正する。

  第七条中「この法律により国が補助を行う」を「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年法律第九十七号)により国が費用を負担する」に、「都道府県災害土木費国庫負担ニ関スル法律(明治四十四年法律第十五号)」を「この法律」に改める。

(内閣総理・大蔵・農林・運輸・建設・経済安定本部総裁署名) 

 

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