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法律第三百五十五号(昭二七・一二・二九)

  ◎農林漁業金融公庫法

目次

 第一章 総則(第一条―第七条)

 第二章 役員及び職員(第八条―第十七条)

 第三章 業務(第十八条―第二十一条)

 第四章 会計(第二十二条―第二十八条)

 第五章 監督(第二十九条―第三十一条)

 第六章 補則(第三十二条―第三十四条)

 第七章 罰則(第三十五条―第三十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 農林漁業金融公庫は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期且つ低利の資金で、農林中央金庫その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。

 (法人格)

第二条 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第三条 公庫は主たる、事務所を東京都に置く。

2 公庫は、主務大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (資本金)

第四条 公庫の資本金は、農林漁業資金融通特別会計の廃止の際におけるその資産の価額から負債の金額を差し引いた額と第三十二条第五項の規定により政府の米国対日援助見返資金特別会計から出資があつたものとされた金額との合計額とし、政府がその全額を出資する。

2 前項の資産及び負債の評価の方法については、政令で定める。

 (登記)

第五条 公庫は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第六条 公庫でない者は、農林漁業金融公庫という名称又はこれに類する名称を用いてはならない。

 (法人に関する規定の準用)

第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第五十四条(理事の代表権の制限)の規定は、公庫に準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第八条 公庫に、役員として、総裁一人、理事四人以内及び監事二人以内を置く。

 (役員の職務及び権限)

第九条 総裁は、公庫を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、総裁の定めるところにより、公庫を代表し、総裁を補佐して公庫の事務を掌理し、総裁に事故があるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。

3 監事は、公庫の業務を監査する。

 (役員の任命)

第十条 総裁及び監事は、内閣の承認を得て主務大臣が任命する。

2 理事は、総裁が主務大臣の認可を受けて任命する。

 (役員の任期)

第十一条 総裁、理事及び監事の任期は、四年とする。

2 総裁、理事及び監事は、再任されることができる。

3 総裁、理事又は監事が欠員となつたときは、遅滞なく、補欠の役員を任命しなければならない。補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

 (役員の欠格条項)

第十二条 左の各号の一に該当する者は、総裁、理事又は監事となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、政府職員(人事院が指定する非常勤の者を除く。)又は地方公共団体の議会の議員

 二 政党の役員

 (役員の兼職禁止)

第十三条 総裁、理事及び監事は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

 (代表権の制限)

第十四条 公庫と総裁又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合は、監事が公庫を代表する。

 (代理人の選任)

第十五条 総裁は、公庫の職員のうちから、従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (職員の任命)

第十六条 公庫の職員は、総裁が任命する。

 (役員及び職員の地位)

第十七条 公庫の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三章 業務

 (業務の範囲)

第十八条 公庫は、第一条に掲げる目的を達成するため、農業(畜産業及び養蚕業を含む。)、林業、漁業若しくは塩業を営む者又はこれらの者の組織する法人(以下「農林漁業者」という。)に対し、左に掲げる資金の貸付の業務を行う。

 一 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金

 二 造林に必要な資金

 三 森林の立木の伐採制限に伴い必要な資金

 四 林道の改良、造成又は復旧に必要な資金

 五 漁港施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金

 六 製塩施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金

 七 農林漁業者の共同利用に供する施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金

 八 前各号に掲げるものの外、農林漁業の生産力の維持増進に必要な施設の災害復旧に必要な資金であつて主務大臣の指定するもの

2 前項各号に掲げる資金の貸付の利率、償還期限及び据置期間は、別表の範囲内で公庫が定める。

3 公庫は、第一項に掲げる業務の外、第三十二条第一項及び附則第六項の規定により承継した権利義務並びに第三十三条の規定により譲り受けた債権の処理に関する業務を行うことができる。

 (業務の委託等)

第十九条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、農林中央金庫その他の金融機関に対し、その業務の一部を委託することができる。

2 前項の規定により業務の委託を受けた金融機関(以下「受託者」という。)の役員又は職員であつて当該委託業務に従事する者は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、公庫の貸付に係る債権につき、債務の保証をすることができる。

 (業務方法書)

第二十条 公庫は、業務開始の際、業務方法書を定め、主務大臣に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、また同様とする。

2 前項の業務方法書には、左に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 貸付金の使途、貸付の相手方、利率、償還期限、据置期間、貸付金額の限度、償還の方法、担保に関する事項等貸付に関する業務の方法

 二 業務委託の基準

 (事業計画及び資金計画)

第二十一条 公庫は、四半期ごとの事業計画及び資金計画を作成し、主務大臣に提出してその認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、また同様とする。

   第四章 会計

 (予算及び決算)

第二十二条 公庫の予算及び決算に関しては、公庫の予算及び決算に関する法律(昭和二十六年法律第九十九号)の定めるところによる。

 (国庫納付金)

第二十三条 公庫は、毎事業年度の損益計算上利益金を生じたときは、これを翌事業年度の五月三十一日までに国庫に納付しなければならない。

2 前項の規定による国庫納付金は、同項に規定する日の属する会計年度の前年度の政府の歳入とする。

3 第一項の利益金の計算の方法並びに同項の規定による国庫納付金の納付の手続及びその帰属する会計については、政令で定める。

 (借入金)

第二十四条 公庫は、主務大臣の認可を受けて、政府から資金の借入をし、又は外国の銀行その他の金融機関から外貨資金の借入をすることができる。

2 政府は、公庫に対して資金の貸付をすることができる。

3 前項の貸付金については、利息を免除し、又は通常の条件より公庫に有利な条件を附することができる。

4 第一項に規定する場合を除く外、公庫は、資金の借入をしてはならない。

 (余裕金の運用等)

第二十五条 公庫は、左の方法による外、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債の保有

 二 資金運用部への預託

2 公庫は、業務に係る現金を国庫以外に預託してはならない。

 (資金の交付)

第二十六条 公庫は、業務を行うため必要があるときは、受託者に対し貸付に必要な資金を交付することができる。

 (会計帳簿)

第二十七条 公庫は、主務大臣の定めるところにより、業務の性質及び内容並びに事業の運営及び経理の状況を適切に示すため必要な帳簿を備えなければならない。

 (会計検査院の検査)

第二十八条 会計検査院は、必要があると認めるときは、受託者につき、当該委託業務に係る会計を検査することができる。

   第五章 監督

 (監督)

第二十九条 公庫は、主務大臣が監督する。但し、公庫を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が監督する。

2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫に対して業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (役員の解任)

第三十条 主務大臣は、公庫の役員が第十二条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 主務大臣は、公庫の役員が左の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任することができる。

 一 この法律、この法律に基く命令又はこれらの法令に基いてする主務大臣の命令に違反したとき。

 二 刑事事件により有罪の宣告を受けたとき。

 三 破産の宣告を受けたとき。

 四 心身の故障により職務を執ることができないとき。

3 主務大臣は、総裁又は監事を前項第一号又は第四号の規定により解任しようとするときは、内閣の承認を得なければならない。

 (報告及び検査)

第三十一条 主務大臣は、必要があると認めるときは、公庫若しくは受託者に対して報告をさせ、又はその職員をして公庫若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。但し、受託者に対しては、当該委託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 補則

 (日本開発銀行からの農林漁業者に対する貸付に係る債権等の承継)

第三十二条 日本開発銀行が政府の米国対日援助見返資金特別会計及び復興金融金庫から承継した農林漁業者に対する貸付に係る債権並びに日本開発銀行の農林漁業者に対する貸付に係る債権で政令で定めるもの並びにこれらに附随する権利義務は、政令で定めるところにより、公庫が承継するものとする。

2 日本開発銀行が政府の米国対日援助見返資金特別会計から承継した農林漁業者に対する貸付に係る債権及びこれに附随する権利義務を、前項の規定により公庫が承継したときは、日本開発銀行法(昭和二十六年法律第百八号)第四十九条の二第二項の規定による同特別会計の日本開発銀行に対する貸付金のうち、公庫が承継した債権のその承継の日における帳簿価額の合計額に相当するものが、その承継の日において日本開発銀行から同特別会計に返済されたものとし、その返済されたものとされた貸付金の額に相当する金額が、第二十四条の規定にかかわらず、その承継の日において同特別会計から公庫に対し貸し付けられたものとする。

3 日本開発銀行が復興金融金庫から承継した農林漁業者に対する貸付に係る債権及び日本開発銀行が行つた農林漁業者に対する貸付に係る債権並びにこれらに附随する権利義務を、第一項の規定により公庫が承継したときは、その承継した債権のその承継の日における帳簿価額の合計額に相当する金額が、第二十四条及び日本開発銀行法第十八条の規定にかかわらず、その承継の日において、日本開発銀行から公庫に対し貸し付けられたものとする。

4 公庫は、毎事業年度、第二項の政府の貸付金及び前項の日本開発銀行の貸付金に対し、政令で定めるところにより、利子を支払わなければならない。

5 第二項の規定による政府の貸付金は、政令で定めるものを除く外、政令で定めるところにより、政令で定める時期において返済されたものとなるものとし、その返済されたものとされた政府の貸付金の額に相当する金額が、当該時期において政府の米国対日援助見返資金特別会計から公庫に対し出資されたものとする。

 (農林中央金庫からの債権の譲受)

第三十三条 公庫は、第十八条の規定にかかわらず、農林中央金庫が行つた農林漁業の生産力の維持増進に必要な資金の貸付に係る債権のうち主務大臣の指定するもの及びこれに附随する権利を譲り受けることができる。

 (主務大臣)

第三十四条 この法律における主務大臣は、農林大臣及び大蔵大臣とする。

   第七章 罰則

第三十五条 公庫の役員若しくは職員又は受託者の役員若しくは職員が、第三十一条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、三万円以下の罰金に処する。

第三十六条 左の場合においては、その違反行為をした公庫の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。

 一 この法律により主務大臣の認可を受けなければならない場合において、その認可を受けなかつたとき。

 二 第五条第一項の規定に違反して登記をすることを怠り、又は不実の登記をしたとき。

 三 第十八条に規定する業務以外の業務を行つたとき。

 四 第二十五条の規定に違反して業務上の余裕金を運用し、又は現金を国庫以外に預託したとき。

 五 第二十九条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。

第三十七条 第六条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。但し、附則第八項から第十一項まで及び附則第二十項の規定は、公庫の成立の時から施行する。

2 主務大臣は、設立委員を命じて、公庫の設立に関する事務を処理させる。

3 設立委員は、設立の準備を完了したときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出るとともに、その事務を公庫の総裁に引き継がなければならない。

4 総裁が前項の事務の引継を受けた日において、総裁、理事及び監事の全員は、設立の登記をしなければならない。

5 公庫は、設立の登記をすることによつて成立する。

6 農林漁業資金融通法(昭和二十六年法律第百五号)に基く資金の融通に関し、公庫の成立の際現に国が有する権利義務(農林漁業資金融通特別会計の資金運用部及び米国対日援助見返資金特別会計からの負債を含む。)は、その時において公庫が承継する。

7 前項の規定により公庫が権利義務を承継したときは、その承継の際における農林漁業資金融通特別会計の資産の価額から負債の金額を差し引いた額(資産及び負債の評価の方法については、第四条第二項の政令の定めるところによる。)が政府から公庫に対して出資されたものとする。

8 左に掲げる法律は、廃止する。

 一 農林漁業資金融通法

 二 農林漁業資金融通特別会計法(昭和二十六年法律第百六号)

9 農林漁業資金融通特別会計における昭和二十六年度及び昭和二十七年度の予備費の支出、決算その他会計に関する事務については、なお従前の例による。

10 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第十二条第一項第六号を次のように改める。

  六 農林漁業金融公庫を監督すること

11 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。

  第四条第十七号中「農林中央金庫」の下に「、農林漁業金融公庫」を加え、第八条第十三号及び第十四号を次のように改める。

  十三及び十四 削除

12 公庫の予算及び決算に関する法律の一部を次のように改正する。

  第一条中「及び住宅金融公庫」を「、住宅金融公庫及び農林漁業金融公庫」に改める。

13 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第三条第五号中「及び住宅金融公庫」を「、住宅金融公庫及び農林漁業金融公庫」に改める。

14 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二号中「住宅金融公庫、」の下に「農林漁業金融公庫、」を加える。

15 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条中第二号ノ四及び第二号ノ五をそれぞれ第二号ノ五及び第二号ノ六とし、第二号ノ三の次に次の一号を加える。

  二ノ四 農林漁業金融公庫自己ノ為ニスル登記又ハ登録

16 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条中第五号ノ三を第五号ノ四とし、第五号ノ二の次に次の一号を加える。

  五ノ三 農林漁業金融公庫ノ発スル証書、帳簿

17 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二十四条第三号及び第七百四十三条第三号中「住宅金融公庫、」の下に「農林漁業金融公庫、」を加える。

18 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「住宅金融公庫、」の下に「農林漁業金融公庫、」を加える。

19 予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項中「住宅金融公庫、」の下に「農林漁業金融公庫、」を加える。

20 退職職員に支給する退職手当支給の財源に充てるための特別会計等からする一般会計への繰入及び納付に関する法律(昭和二十五年法律第六十二号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「農林漁業資金融通特別会計、」を削る。

 別表

貸付金の種類

利率の最高

償還期限

据置期間

一 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金

年七分

十五年

五年

二 造林に必要な資金

年七分

二十年

五年

三 森林の立木の伐採制限に伴い必要な資金

年四分五厘

二十五年

四 林道の改良、造成又は復旧に必要な資金

年八分

十五年

二年

五 漁港施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金

年七分

十五年

三年

六 製塩施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金

年八分

十五年

五年

七 農林漁業者の共同利用に供する施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金

年八分

十五年

一年

八 前各号に掲げるものの外、農林漁業の生産力の維持増進に必要な施設の災害復旧に必要な資金であつて主務大臣の指定するもの

年七分

十五年

一年

(法務・大蔵・農林・内閣総理大臣署名) 

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