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法律第九十六号(昭二八・七・三一)

  ◎有線電気通信法

 (目的)

第一条 この法律は、有線電気通信設備の設置及び使用を規律し、有線電気通信に関する秩序を確立することによつて、公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「有線電気通信」とは、送信の場所と受信の場所との間の線条その他の導体を利用して、電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。

2 この法律において「有線電気通信設備」とは、有線電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備(無線通信用の有線連路線を含む。)をいう。

 (有線電気通信設備の届出)

第三条 有線電気通信設備を設置しようとする者は、左の事項を記載した書類を添えて、設置の工事の開始の日の二週間前まで(工事を要しないときは、設置の日から二週間以内)に、その旨を郵政大臣に届け出なければならない。

 一 有線電気通信の方式の別

 二 設備の設置の場所

 三 設備の概要

2 有線電気通信設備を設置した者は、前項各号の事項を変更しようとするときは、変更の工事の開始の日の二週間前まで(工事を要しないときは、変更の日から二週間以内)に、その旨を郵政大臣に届け出なければならない。

3 前二項の規定は、左の有線電気通信設備については、適用しない。

 一 日本電信電話公社(以下「公社」という。)又は国際電信電話株式会社(以下「会社」という。)が設置するもの

 二 設備の一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。以下同じ。)又は同一の建物内であるもの(以下「構内等設備」という。)

 三 警察事務、消防事務、水防事務、航空保安事務、海上保安事務、気象業務、鉄道事業、軌道事業、電気事業、鉱業その他政令で定める業務を行う者が設置するもの

 四 次条第四号から第六号までの許可を受けて設置するもの

 五 前各号に掲げるものの外、郵政省令で定めるもの

 (有線電気通信設備の共同設置)

第四条 有線電気通信設備は、二人以上の者が共同して設置してはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。

 一 構内等設備を設置するとき。

 二 有線放送業務の運用の規正に関する法律(昭和二十六年法律第百三十五号)第二条に規定する有線放送の業務を行うための有線電気通信設備(以下「有線放送設備」という。)を設置するとき。

 三 公社と会社とが共同して設置するとき。

 四 二人以上共同して行う業務に必要な通信を行うため、その業務を行う者が郵政大臣の許可を受けて設置するとき。(第一号及び前号に規定する場合を除く。)

 五 相互に緊密な関係を有する業務に必要な通信を行うため、これらの業務を行う者が郵政大臣の許可を受けて設置するとき。(第一号及び第三号に規定する場合を除く。)

 六 前各号に掲げる場合の外、都市からの距離が遠く、公社が公衆電気通信法(昭和二十八年法律第九十七号)第二条第三号に規定する公衆電気通信役務を提供することが困難であると認められる地域であつて、郵政省令で定める基準に該当するもの(以下「特定地域」という。)に、郵政大臣の許可を受けて設置するとき。

第五条 前条第四号から第六号までの許可を受けようとする者は、申請書に左の事項を記載した書類を添えて、郵政大臣に提出しなければならない。

 一 設置を必要とする事由

 二 第三条第一項各号の事項

2 郵政大臣は、前項の申請書を受理したときは、その申請を審査し、前条第四号又は第五号の許可の申請にあつては、その設備により行う通信が二人以上共同して行う業務又は相互に緊密な関係を有する業務のため必要な通信であり、同条第六号の許可の申請にあつては、設置の場所の全部又は一部が同号の特定地域内であるときは、許可をしなければならない。

第六条 第四条第四号又は第五号の許可を受けて有線電気通信設備を設置した者は、前条第一項第一号の事項を変更しようとするときは、郵政大臣の許可を受けなければならない。第四条第六号の許可を受けて有線電気通信設備を設置した者が第三条第一項第二号の事項を変更しようとするときも、同様とする。

2 第四条第四号又は第五号の許可を受けて有線電気通信設備を設置した者は、第三条第一項各号の事項を変更しようとするときは、変更の工事の開始の日の二週間前まで(工事を要しないときは、変更の日から二週間以内)に、その旨を郵政大臣に届け出なければならない。第四条第六号の許可を受けて有線電気通信設備を設置した者が第三条第一項第一号若しくは第三号又は前条第一項第一号の事項を変更しようとするときも、同様とする。

3 前項の規定は、第三条第三項第三号及び第五号に掲げる有線電気通信設備については、適用しない。

第七条 第四条第四号から第六号までの許可を受けて有線電気通信設備を設置した者について相続又は合併があつたときは、相続人(相続人が二人以上あるときは、相続開始の日から三月以内にその全員の同意をもつて選定された一人の相続人に限る。)又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人は、許可を受けた者の地位を承継する。

2 前項の規定により許可を受けた者の地位を承継した者は、承継の日(同項の規定により相続人を選定したときは、その選定をした日)から一月以内に、その事実を証する書面を添えて、その旨を郵政大臣に届け出なければならない。

 (本邦外にわたる有線電気通信設備)

第八条 本邦内の場所と本邦外の場所との間の有線電気通信設備は、公社又は会社でなければ、設置してはならない。但し、特別の事由がある場合において、郵政大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

 (設備の接続)

第九条 有線電気通信設備を設置した者(公社及び会社を除く。)は、その設備と他人(公社及び会社を除く。)の設置した有線電気通信設備とを相互に接続させてはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。

 一 天災、事変その他の非常事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、災害の予防若しくは救援、交通、通信若しくは電力の供給の確保又は秩序の維持のために必要な通信の用に供するとき。

 二 第十五条第一項の規定により命令を受けたとき。

 三 一の構内又は一の建物内にある二以上の構内等設備を接続するとき。

 四 有線放送設備を接続するとき。

 五 二人以上共同して行う業務に必要な通信を行うため、その業務を行う者が設置した有線電気通信設備を郵政大臣の許可を受けて接続するとき。

 六 相互に緊密な関係を有する業務に必要な通信を行うため、これらの業務を行う者が設置した有線電気通信設備を郵政大臣の許可を受けて接続するとき。

 七 一の特定地域内にある二以上の特定地域設備(設備の一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の特定地域内である有線電気通信設備をいう。以下同じ。)を郵政大臣の許可を受けて接続するとき。

2 前項第五号から第七号までの許可を受けようとする者は、申請書に左の事項を記載した書類を添えて、郵政大臣に提出しなければならない。

 一 接続を必要とする事由

 二 接続する設備の設置の場所

 三 接続のための設備の概要及びその設置の場所

3 第一項第五号又は第六号の許可を受けて有線電気通信設備を接続した者は、前項各号の事項を変更しようとするときは、郵政大臣の許可を受けなければならない。第一項第七号の許可を受けて有線電気通信設備を接続した者が前項第二号又は第三号の事項を変更しようとするときも、同様とする。

 (他人の通信の用に供することの制限)

第十条 有線電気通信設備を設置した者(公社及び会社を除く。)は、業としてその設備を用いて他人の通信を媒介し、その他その設備を他人の通信の用に供してはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。

 一 前条第一項第一号に掲げる場合

 二 前条第一項第三号又は第五号から第七号までの規定により有線電気通信設備を接続した者が相互に使用するとき。

 三 第十五条第一項の規定による命令を受けたとき。

 四 その設備が第四条第六号の許可を受けて設置した特定地域設備であるとき。

 五 その設備が特定地域設備(前号に掲げるものを除く。)である場合において、郵政大臣の許可を受けたとき。

 六 公衆電気通信法第八条第一号の規定により公社の業務の取扱を委託されたとき。

 七 公衆電気通信法第九条の規定により会社の業務の取扱を委託されたとき。

 八 その設備が公衆電気通信法第百五条第一項の規定により設置したものであるとき。

 九 その設備が公衆電気通信法第百六条の規定により接続したものであるとき。

 十 有線放送業務の運用の規正に関する法律第二条に規定する有線放送を行うとき。

 十一 警察法(昭和二十二年法律第百九十六号)第四条第二項第一号但書の規定により自治体警察が使用するとき。

 十二 消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)第二十三条の規定により国家消防本部又は地方公共団体が使用するとき。

 十三 水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第二十条第二項の規定により建設大臣、都道府県知事、水防管理者、水防団長、消防機関の長又はこれらの者の命を受けた者が使用するとき。

 十四 郵便物運送委託法(昭和二十四年法律第二百八十四号)第十一条の規定により郵政省が使用するとき。

 十五 前各号に掲げる場合の外、公共の利益のため特に必要がある場合であつて、郵政省令で定める事由があるとき。

 (技術基準)

第十一条 有線電気通信設備(政令で定めるものを除く。)は、政令で定める技術基準に適合するものでなければならない。

2 前項の政令は、左に掲げるところによらなければならない。

 一 有線電気通信設備は、他人の設置する有線電気通信設備に妨害を与えないようにすること。

 二 有線電気通信設備は、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。

 (設備の検査等)

第十二条 郵政大臣は、この法律の施行に必要な限度において、有線電気通信設備を設置した者からその設備に関する報告を徴し、又はその職員に、その事務所、営業所、工場若しくは事業場に立ち入り、その設備若しくは帳簿書類を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。

3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (妨害等の防止)

第十三条 郵政大臣は、有線電気通信設備を設置した者に対し、その設備が第十一条の技術基準に適合しないため他人の設置する有線電気通信設備に妨害を与え、又は人体に危害を及ぼし、若しくは物件に損傷を与えると認めるときは、その妨害、危害又は損傷の防止又は除去のため必要な限度において、その設備の使用の停止又は改造、修理その他の措置を命ずることができる。

 (許可の取消)

第十四条 郵政大臣は、第四条第四号若しくは第五号又は第九条第一項第五号若しくは第六号の許可に係る有線電気通信設備について、その設置又は接続を必要とする事由がなくなつたと認めるときは、その許可を取り消すことができる。

2 郵政大臣は、第四条第六号、第九条第一項第七号又は第十条第五号の許可に係る有線電気通信設備の設置の場所の全部が特定地域でなくなつた日から五年を経過したときは、その許可を取り消すことができる。

 (非常事態における通信の確保)

第十五条 郵政大臣は、天災、事変その他の非常事態が発生し、又は発生するおそれがあるときは、有線電気通信設備を設置した者に対し、災害の予防若しくは救援、交通、通信若しくは電力の供給の確保若しくは秩序の維持のために必要な通信を行い、又はこれらの通信を行うためその有線電気通信設備を他の者に使用させ、若しくはこれを他の有線電気通信設備に接続すべきことを命ずることができる。

2 郵政大臣が前項の規定により有線電気通信設備を設置した者に通信を行い、又はその設備を他の者に使用させ、若しくは接続すべきことを命じたときは、国は、その通信又は接続に要した実費を弁償しなければならない。

 (有線電気通信の秘密の保護)

第十六条 有線電気通信(公衆電気通信法第五条第一項の通信たるものを除く。)の秘密は、侵してはならない。

 (聴聞)

第十七条 郵政大臣は、第十四条の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、相当な期間を置いて予告した上、公開による聴聞を行わなければならない。

2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内客を示さなければならない。

3 聴聞に際しては、当該処分に係る者に対し、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

 (異議の申立)

第十八条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による郵政大臣の処分に不服がある者は、その処分のあつたことを知つた日から三十日以内に、その理由を記載した書面をもつて、郵政大臣に異議の申立をすることができる。

2 郵政大臣は、前項の異議の申立があつたときは、前条の例により公開の聴聞をした後文書をもつて決定をし、その写を異議の申立をした者に送付しなければならない。

 (準用規定)

第十九条 第十一条から第十三条まで及び前条の規定は、有線電気通信設備以外の設備であつて、送信の場所と受信の場所との間の線条その他の導体を利用して、電磁的方式により、信号を行うための設備に準用する。この場合において、第十二条第一項、第十三条及び前条中「郵政大臣」とあるのは、「郵政大臣(鉄道事業及び軌道事業の用に供する設備にあつては、運輸大臣、政令で定める設備にあつては、政令で定める行政機関)」と読み替えるものとする。

 (国に対する適用)

第二十条 この法律の規定は、第十七条、第十八条及び次条から第二十六条までの規定を除き、国に適用があるものとする。この場合において、「許可」とあるのは、「承認」と読み替えるものとする。

 (罰則)

第二十一条 有線電気通信設備を損壊し、これに物品を接触し、その他有線電気通信設備の機能に障害を与えて有線電気通信を妨害した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第二十二条 第十条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第二十三条 第十六条の規定に違反して有線電気通信の秘密を侵した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

2 有線電気通信の業務に従事する者が前項の行為をしたときは、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

第二十四条 第二十一条及び前条の未遂罪は、罰する。

第二十五条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

 一 第四条又は第八条の規定に違反して有線電気通信設備を設置した者

 二 第六条第一項又は第九条第三項の許可を受けなければならない事項を許可を受けないでした者

 三 第九条第一項の規定に違反して有線電気通信設備を接続した者

 四 第十三条(第十九条において準用する場合を含む。)又は第十五条第一項の規定による命令に違反した者

第二十六条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項若しくは第二項、第六条第二項又は第七条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十二条第一項(第十九条において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十二条第一項(第十九条において準用する場合を含む。)の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十二条及び前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 この法律の施行期日は、別に法律で定める。

(運輸・郵政・内閣総理大臣署名) 

 

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