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法律第二百七号(昭二八・八・一四)

  ◎日雇労働者健康保険法

目次

 第一章 総則(第一条―第五条)

 第二章 被保険者(第六条―第八条)

 第三章 保険給付(第九条―第二十七条)

 第四章 費用の負担(第二十八条―第三十七条)

 第五章 保健施設及び福祉施設(第三十八条)

 第六章 審査の請求(第三十九条・第四十条)

 第七章 雑則(第四十一条―第五十条)

 第八章 罰則(第五十一条―第五十六条)

 附則

   第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、日雇労働者の業務外の事由による疾病又は負傷及びその被扶養者の疾病又は負傷に対して保険給付を行うことによつて、その生活の安定に寄与することを目的とする。

 (保険者)

第二条 日雇労働者健康保険の保険者は、政府とする。

2 日雇労働者健康保険の事務の一部は、政令の定めるところにより、都道府県知事又は市町村長に行わせることができる。

 (用語の定義)

第三条 この法律で「日雇労働者」とは、左の各号の一に該当する者をいう。

 一 臨時に使用される者であつて、左に掲げるもの。但し、同一の事業所又は事務所(以下単に「事業所」という。)において、イに掲げる者にあつては一箇月の期間をこえ、ロに掲げる者にあつては所定の期間をこえ、引き続き使用されるに至つた場合(所在地の一定しない事業所において引き続き使用されるに至つた場合を除く。)を除く。

  イ 日日雇い入れられる者

  ロ 二箇月以内の期間を定めて使用される者

 二 季節的業務に使用される者。但し、継続して四箇月をこえて使用されるべき場合を除く。

 三 臨時的事業の事業所に使用される者。但し、継続して六箇月をこえて使用されるべき場合を除く。

2 この法律で「被扶養者」とは、被保険者又は被保険者であつた者の直系尊属、配偶者(届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、子及び孫であつて、これらの者と同一の世帯に属し、主としてこれらの者の収入により、生計を維持する者をいう。

3 この法律で「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働の対償として、事業主が日雇労働者に支払うすべてのものをいう。

 (賃金日額)

第四条 賃金日額は、左の各号によつて算定する。

 一 賃金が日又は時間によつて定められる場合、一日におけるかせぎ高によつて定められる場合その他被保険者が使用された日の賃金を算出することができる場合においては、その額

 二 賃金が二日以上の期間におけるかせぎ高によつて定められる場合その他被保険者が使用された日の賃金を算出することができない場合(次号に該当する場合を除く。)においては、当該事業所において同様の業務に従事し同様の賃金を受ける者のその前日(その前日において同様の業務に従事し同様の賃金を受ける者がなかつたときは、これに該当する者のあつたその直近の日)における賃金日額の平均額

 三 賃金が二日以上の期間によつて定められる場合においては、その額をその期間の総日数(月の場合は、一箇月を三十日として計算する。)で除して得た額

 四 前三号の規定により算定することができないものについては、その地方において同様の業務に従事し同様の賃金を受ける者が一日において受ける賃金の額

 五 前各号の二以上に該当する賃金を受ける場合においては、それぞれの賃金につき、前各号によつて算定した額の合算額

 六 一日において二以上の事業所に使用される場合においては、はじめに使用される事業所から受ける賃金につき、前各号によつて算定した額

2 前項の場合において、賃金中通貨以外のもので支払われるものについては、その価額は、その地方の時価により、都道府県知事が定める。

 (諮問)

第五条 厚生大臣は、日雇労働者健康保険事業の運営に関する事項であつて、企画、立法又は実施の大綱に関するものは、あらかじめ、社会保険審議会に諮問するものとする。

   第二章 被保険者

 (被保険者)

第六条 左の各号の一に該当する事業所に使用される日雇労働者は、日雇労働者健康保険の被保険者とする。

 一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第十三条第一号の事業所又は同条第二号の事務所

 二 健康保険法第十四条第一項の規定による認可のあつた事業所

 三 前二号に掲げる事業所以外の事業所であつて、緊急失業対策法(昭和二十四年法律第八十九号)第二条に定める失業対策事業又は公共事業を行うもの

 (適用除外)

第七条 日雇労働者は、前条各号に掲げる事業所において、引き続く二箇月間に通算して二十八日以上使用される見込のないことが明らかであるとき、健康保険法第二十条の規定による被保険者であるとき、その他特別の事由があるときは、前条の規定にかかわらず、厚生大臣の承認を得て、一定期間、被保険者とならないことができる。

 (日雇労働者健康保険被保険者手帳)

第八条 日雇労働者は、第六条の規定によつて被保険者となつたときは、被保険者となつた日から起算して五日以内に、保険者に日雇労働者健康保険被保険者手帳(以下「被保険者手帳」という。)の交付を申請しなければならない。但し、すでに被保険者手帳の交付を受け、これを所持している場合において、その被保険者手帳に日雇労働者健康保険印紙(以下「健康保険印紙」という。)をちよう付すべき余白があるときは、この限りでない。

2 保険者は、前項の申請があつたときは、被保険者手帳を交付しなければならない。

3 被保険者手帳の様式及び交付その他被保険者手帳に関して必要な事項は、厚生省令で定める。

   第三章 保険給付

 (受給要件)

第九条 被保険者(被保険者であつた者を含む。この章において以下同じ。)が療養の給付又は家族療養費の支給を受けるには、当該疾病又は負傷につきはじめてこれを受けようとする日の属する月の前二箇月間に、通算して二十八日分以上の保険料が、その被保険者について、納付されていなければならない。

2 保険者は、被保険者が前項の受給要件をそなえることを被保険者手帳によつて証明して申請したときは、受給資格証明書を交付するものとする。

 (療養の給付)

第十条 被保険者の疾病又は負傷に関しては、左に掲げる療養の給付を行う。

 一 診察

 二 薬剤又は治療材料の支給

 三 処置、手術その他の治療(歯科診療における補てつを除く。)

 四 病院又は診療所への収容

 五 看護

 六 移送

2 前項第四号から第六号までに定める給付は、健康保険法第四十三条第二項の規定に基く命令で定める場合及び保険者が必要と認める場合に限り、行うものとする。

 (受給方法)

第十一条 被保険者が前条第一項第一号から第四号までの給付を受けようとするときは、受給資格証明書を健康保険法の規定により指定された保険医(以下「保険医」という。)及び同法の規定によつて指定された保険薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)並びに保険者の指定する者のうち自己の選定した者に提出して、その者から受けるものとする。

2 前項の規定によつて給付を受ける者は、その給付を受ける際、健康保険法の規定により厚生大臣の定める初診料の額に相当する額を、一部負担金として、支払わなければならない。

 (療養担当者の義務)

第十二条 保険医又は保険薬剤師は、健康保険法第四十三条ノ四第一項の規定に基き厚生大臣の定めるところに従つて、被保険者及び被扶養者の療養を担当しなければならない。

 (費用の算定)

第十三条 保険医若しくは保険薬剤師又はこれらを使用する者が、療養の給付に関して保険者に請求すべき額は、療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額とする。

2 前項の療養に要する費用は、健康保険法第四十三条ノ六第二項の規定に基き厚生大臣の定めるところによつて算定する。

 (給付の期間)

第十四条 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病に関しては、その開始の日から起算して三箇月を経過したときは、行わない。

 (療養費)

第十五条 保険者は、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が緊急その他やむを得ない事由のため、保険医及び保険者の指定する者以外の医師、歯科医師その他の者の診療又は手当を受けた場合において、その必要があると認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給することができる。

2 保険者は、被保険者が、第九条第二項に規定する受給資格証明書の交付を受けないで保険医又は保険者の指定する者の診療を受けた場合において、受給資格証明書の交付を受けなかつたことが、緊急その他やむを得ない事由によるものと認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給するものとする。

第十六条 療養費の額は、療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額を標準として、保険者が、定める。

2 前項の療養に要する費用の算定については、第十三条第二項の規定を準用する。但し、その額は、現に療養に要した費用の額をこえることができない。

 (家族療養費)

第十七条 被扶養者が受給資格証明書を保険医、保険薬剤師及び保険者の指定する者のうち自己の選定した者に提出して、その者から第十条第一項各号に掲げる療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。

2 家族療養費の額は、療養に要する費用の百分の五十に相当する額とする。但し、現に療養に要した費用の百分の五十に相当する額をこえることができない。

3 第一項の場合においては、保険者は、療養に要した費用のうち、同項の規定により家族療養費として被保険者に支給すべき額に相当する額を、被保険者に代り、当該保険医、保険薬剤師若しくは保険者の指定する者又はこれらを使用する者に支払うことができる。

4 前項の規定による支払があつたときは、被保険者に対し家族療養費の支給があつたものとみなす。

5 第十条第二項、第十三条第二項及び第十四条から前条までの規定は、家族療養費の支給に準用する。この場合において、前条第一項中「療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額」とあるのは「療養に要する費用の百分の五十に相当する額」と、同条第二項但書中「現に療養に要した費用の額」とあるのは「現に療養に要した費用の百分の五十に相当する額」と読み替えるものとする。

 (他の社会保険による給付等との調整)

第十八条 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、健康保険法、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)又は国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定によつてこれに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。

2 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、健康保険法、船員保険法又は国家公務員共済組合法の規定によつて、この法律の規定による家族療養費の支給に相当する給付があつたときは、その限度において、行わない。

3 家族療養費の支給は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、健康保険法、船員保険法又は国家公務員共済組合法の規定によつて、これに相当する給付又はこの法律の規定による療養の給付に相当する給付を受けることができる場合には、行わない。

4 療養の給付及び家族療養費の支給は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、国民健康保険法(昭和十三年法律第六十号)の規定によつて、これに相当する給付があつたときは、その限度において、行わない。

5 前項の規定は、他の法律の規定によつて、国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給があつた場合に、準用する。

 (給付制限)

第十九条 被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生ぜしめたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。

第二十条 被保険者が、闘争、でい酔又は著しい不行跡によつて給付事由を生ぜしめたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部又は一部を行わないことができる。

第二十一条 被保険者が、左の各号の一に該当する場合には、その期間に係る保険給付は、行わない。

 一 日本国外にあるとき。

 二 少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。

 三 監獄、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。

2 保険者は、被保険者が、前項各号の一に該当する場合においても、被扶養者に係る保険給付を行うことを妨げない。

第二十二条 保険者は、被保険者が、正当な理由がないにもかかわらず、療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる。

第二十三条 保険者は、被保険者が、正当な理由がないにもかかわらず、第四十六条の規定による診断を拒んだときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

第二十四条 第十九条、第二十条、第二十一条第一項及び前二条の規定は、被扶養者に準用する。この場合において、これらの規定中「保険給付」とあるのは、「当該被扶養者に係る保険給付」と読み替えるものとする。

 (損害賠償請求権)

第二十五条 保険者は、給付事由が第三者の行為によつて生じた場合においては、当該給付事由について行うべき保険給付の価額の限度で、被保険者又は被扶養者がその第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

 (受給権の保護)

第二十六条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

 (租税その他の公課の禁止)

第二十七条 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。

   第四章 費用の負担

 (国庫の負担)

第二十八条 国庫は、毎年度予算の範囲内において、日雇労働者健康保険事業の執行に要する費用を負担する。

 (保険料の徴収)

第二十九条 保険者は、日雇労働者健康保険事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収する。

 (保険料額)

第三十条 保険料は、被保険者の賃金日額が百六十円以上の場合は第一級、百六十円未満の場合は第二級とし、その額は、一日につき、第一級にあつては十六円、第二級にあつては十三円とする。

2 被保険者の負担すべき保険料額は、一日につき、第一級にあつては八円、第二級にあつては五円とし、事業主の負担すべき保険料額は、一日につき、第一級及び第二級のいずれにあつても、八円とする。

 (保険料の納付義務及び納付の方法)

第三十一条 事業主(被保険者が一日において二以上の事業所に使用される場合においては、はじめにその者を使用する事業主とする。以下同じ。)は、被保険者を使用する日ごとに、その者及び自己の負担する保険料を納付しなければならない。

2 前項の規定による保険料の納付は、被保険者が提出する被保険者手帳に健康保険印紙をちよう付し、これに消印して行わなければならない。

3 被保険者手帳を所持する被保険者は、第六条各号に掲げる事業所に使用される日ごとに、その被保険者手帳を事業主に提出しなければならない。

4 事業主は、被保険者を使用する日ごとに、被保険者にその所持する被保険者手帳の提出を求めなければならない。

5 事業主は、第一項の規定により保険料を納付したときは、被保険者の負担すべき保険料額に相当する額を、その者に支払う賃金から控除することができる。この場合においては、事業主は、被保険者にその旨を告げなければならない。

 (帳簿の備付及び報告)

第三十二条 事業主は、その事業所ごとに健康保険印紙の受払に関する帳簿を備え付け、被保険者を使用するつど、これにその受払状況を記載し、且つ、翌月末日までに、保険者にその受払状況を報告しなければならない。

 (保険料の決定及び追徴金)

第三十三条 事業主が第三十一条の規定による保険料の納付を怠つたときは、保険者は、その調査に基いて、その納付すべき保険料額を決定し、これを事業主に告知する。

2 事業主が、正当な事由がないと認められるにかかわらず、第三十一条の規定による保険料の納付を怠つたときは、保険者は、厚生省令の定めるところにより、前項の規定によつて決定された保険料額の百分の二十五に相当する額の追徴金を徴収する。但し、決定された保険料額が千円未満であるときは、この限りでない。

3 追徴金を計算するにあたり、決定された保険料額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

4 第二項に規定する追徴金は、その決定がなされた日から十四日以内に、保険者に納付しなければならない。

 (徴収金の督促及び滞納処分)

第三十四条 保険料その他この法律の規定による徴収金を滞納する者があるときは、保険者は、期限を指定して、これを督促しなければならない。

2 前項の規定によつて督促をしようとするときは、保険者は、納付義務者に対して督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。

3 第一項の規定による督促を受けた者が、その指定の期限までに、保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、保険者は、国税滞納処分の例によつて、これを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の市にあつては区とする。以下同じ。)に対して、その処分を請求することができる。

4 市町村は、前項の規定による処分の請求を受けたときは、市町村税の例によつて、これを処分することができる。この場合においては、保険者は、徴収金の百分の四を当該市町村に交付しなければならない。

 (延滞金)

第三十五条 前条第二項の規定によつて督促をしたときは、保険者は、保険料額百円につき一日八銭の割合で、納期限の翌日から、保険料完納又は財産差押の日の前日までの日数によつて計算した延滞金を徴収する。但し、左の各号の一に該当する場合又は滞納につきやむを得ない事情があると認められる場合は、この限りでない。

 一 保険料額が千円未満であるとき。

 二 納付義務者の住所若しくは居所が国内にないため、又はその住所及び居所がともに明らかでないため、公示送達の方法によつて督促したとき。

2 前項の場合において、保険料額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる保険料は、その納付のあつた保険料額を控除した金額による。

3 延滞金を計算するにあたり、保険料額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

4 督促状に指定した期限までに保険料を完納したとき、又は前三項の規定によつて計算した金額が十円未満のときは、延滞金は、徴収しない。

5 延滞金の金額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

 (先取特権の順位)

第三十六条 保険料その他この法律の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぎ、他の公課に先だつものとする。

 (送達)

第三十七条 保険料その他この法律の規定による徴収金に関する書類の送達については、国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)第四条ノ九及び第四条ノ十の規定を準用する。

   第五章 保健施設及び福祉施設

 (保健施設及び福祉施設)

第三十八条 保険者は、被保険者又は被保険者であつた者及び被扶養者の疾病若しくは負傷の療養若しくはその健康の保持増進のために必要な施設をし、又はこれに必要な費用を支出することができる。

   第六章 審査の請求

 (審査及び再審査)

第三十九条 保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官の審査を請求し、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に再審査を請求することができる。

2 審査を請求した日から六十日以内に決定がないときは、請求者は、社会保険審査官が審査の請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に再審査を請求することができる。

3 第一項の審査及び前二項の再審査の請求に、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。

第四十条 保険料その他この法律の規定による徴収金に関する決定その他の処分に不服がある者は、社会保険審査会に審査を請求することができる。

   第七章 雑則

 (時効)

第四十一条 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。

2 前項の時効の中断、停止その他の事項に関しては、民法(明治二十九年法律第八十九号)の時効に関する規定を準用する。但し、保険者のなす保険料その他この法律の規定による徴収金の告知又は督促は、民法第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を生ずる。

 (期間の計算)

第四十二条 この法律又はこの法律に基く命令に規定する期間の計算については、民法の期間に関する規定を準用する。

 (印紙税の非課税)

第四十三条 日雇労働者健康保険に関する書類には、印紙税を課さない。

 (届出の義務)

第四十四条 被保険者を使用する事業主は、厚生省令の定めるところにより、被保険者の異動、賃金その他厚生省令の定める事項を保険者に届け出なければならない。

第四十五条 被保険者又は被保険者であつた者は、被扶養者に異動を生じた場合、療養の給付期間が満了した場合その他厚生省令で定める場合においては、保険者にその旨を届け出なければならない。

 (強制診断)

第四十六条 保険者は、療養の給付若しくは療養費の支給又は家族療養費の支給を行うにつき、必要があると認めるときは、当該被保険者若しくは被保険者であつた者又は被扶養者の診断を行うことができる。

 (報告の徴収等)

第四十七条 厚生大臣は、保険給付の決定又は保険料の徴収に関して必要があると認めるときは、被保険者を使用する事業主に対して、被保険者の異動、賃金その他必要と認める事項の報告を命じ、又は当該職員に、事業所に立ち入つて、事業主、被保険者その他の関係人に質問させ、若しくは帳簿その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定によつて質問及び検査を行う当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (診療録等の検査)

第四十八条 厚生大臣は、保険給付に関して必要があると認めるときは、当該職員に、診療、調剤又は手当をした者の診療施設その他の施設に立ち入つて、診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。

2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の場合に準用する。

 (職権の委任)

第四十九条 この法律で定める厚生大臣の職権の一部は、政令の定めるところにより、都道府県知事に委任することができる。

 (実施規定)

第五十条 この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。

   第八章 罰則

第五十一条 第三十一条第一項の規定に違反して、保険料を納付せず、又は第三十二条の規定に違反して、帳簿を備え付けず、若しくは報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は、六箇月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

第五十二条 第四十七条の規定に違反して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、六箇月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

第五十三条 第八条第一項の規定に違反して虚偽の申請をした者は、六箇月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

第五十四条 第四十八条の規定に違反して、当該職員の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。

第五十五条 第八条第一項の規定に違反して、申請をせず、又は第三十一条第三項の規定に違反して、被保険者手帳を提出しなかつた者は、五千円以下の罰金に処する。

第五十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前五条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、昭和二十八年十一月一日から施行する。但し、第二十八条の規定は、この法律の実施のためにあらかじめ必要な限度において、同年八月一日から適用し、保険給付及び保険料に関する規定は、昭和二十九年一月十五日から施行する。

 (厚生省設置法の一部改正)

2 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条第五十七号を次のように改める。

  五十七 健康保険及び船員保険に関し、療養に要する費用を定めること。

  第五条第五十七号の次に次の一号を加える。

  五十七の二 政府の管掌する健康保険並びに日雇労働者健康保険及び船員保険に関し、診療契約を締結すること。

  第五条第六十二号を次のように改める。

  六十二 政府の管掌する健康保険又は日雇労働者健康保険、厚生年金保険若しくは船員保険の保険料を徴収すること。

  第十四条中第三号を第四号とし、以下順次一号ずつ繰り下げ、第二号の次に次の一号を加える。

  三 日雇労働者健康保険事業を行うこと。

 (健康保険法の一部改正)

3 健康保険法の一部を次のように改正する。

  第五十九条ノ三、第五十九条ノ四及び第五十九条ノ五をそれぞれ第五十九条ノ四、第五十九条ノ五及び第五十九条ノ六とし、第五十九条ノ二の次に次の一条を加える。

 第五十九条ノ三 前条ノ規定ニ依ル家族療養費ノ支給ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シ日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)ノ規定ニ依ル療養ノ給付アリタルトキハ其ノ限度ニ於テ之ヲ為サズ

 (船員保険法の一部改正)

4 船員保険法の一部を次のように改正する。

  第三十三条を次のように改める。

 第三十三条 前条ノ規定ニ依ル家族療養費ノ支給ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関シ日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)ノ規定ニ依ル療養ノ給付アリタルトキハ其ノ限度ニ於テ之ヲ為サズ

 (国家公務員共済組合法の一部改正)

5 国家公務員共済組合法の一部を次のように改正する。

  第三十四条の次に次の一条を加える。

  (家族療養費の支給の制限)

 第三十四条の二 家族療養費は、同一の疾病並びに負傷及びこれに因り発した疾病に関し、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)の規定による療養の給付があつたときは、その限度において、これを支給しない。

 (国民健康保険法の一部改正)

6 国民健康保険法の一部を次のように改正する。

  第八条ノ十五第一項中第二号を第三号とし、第三号を第四号とし、第一号の次に次の一号を加える。

  二 日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)第八条ノ規定ニ依リ日雇労働者健康保険被保険者手帳ノ交付ヲ受ケ六月ヲ経過セザル者 但シ同法第七条ノ規定ニ依ル承認ヲ受ケ同法ノ被保険者ト為ラザル期間内ニ在ル者ヲ除ク

  第十四条第一項中第二号を第三号とし、第三号を第四号とし、第一号の次に次の一号を加える。

  二 日雇労働者健康保険法第八条ノ規定ニ依リ日雇労働者健康保険被保険者手帳ノ交付ヲ受ケ六月ヲ経過セザル者 但シ同法第七条ノ規定ニ依ル承認ヲ受ケ同法ノ被保険者ト為ラザル期間内ニ在ル者ヲ除ク

  第三十七条ノ四第一項中第二号を第三号とし、第三号を第四号とし、第一号の次に次の一号を加える。

  二 日雇労働者健康保険法第八条ノ規定ニ依リ日雇労働者健康保険被保険者手帳ノ交付ヲ受ケ六月ヲ経過セザル者 但シ同法第七条ノ規定ニ依ル承認ヲ受ケ同法ノ被保険者ト為ラザル期間内ニ在ル者ヲ除ク

 (社会保険審議会及び社会保険医療協議会法の一部改正)

7 社会保険審議会及び社会保険医療協議会法(昭和二十五年法律第四十七号)の一部を次のように改正する。

  第一条、第二条及び第七条中「船員保険事業」を「日雇労働者健康保険事業、船員保険事業」に改める。

  第三条第一項第一号及び第二号中「船員保険」を「日雇労働者健康保険、船員保険」に改める。

 (社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)

8 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「健康保険法(大正十一年法律第七十号)」の下に「、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)」を加える。

 (結核予防法の一部改正)

9 結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。

  第三十七条第一項中「健康保険法(大正十一年法律第七十号)」の下に「、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)」を加える。

 (印紙をもつてする歳入金納付に関する法律の一部改正)

10 印紙をもつてする歳入金納付に関する法律(昭和二十三年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項但書中「失業保険法(昭和二十二年法律第百四十六号)第三十八条の十一第一項」の下に「又は日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)第三十一条第一項」を加え、同条第二項中「及び失業保険法第三十八条の十二第一項に規定する失業保険印紙」を「、失業保険法第三十八条の十二第一項に規定する失業保険印紙及び日雇労働者健康保険法第三十一条第二項に規定する日雇労働者健康保険印紙」に改める。

  第三条第一項中「失業保険印紙」の下に「又は日雇労働者健康保険印紙」を、「労働大臣」の下に「又は厚生大臣」を加え、同条第二項中「及び失業保険印紙」を「、失業保険印紙及び日雇労働者健康保険印紙」に改める。

 (所得税法の一部改正)

11 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第八条第六項中第一号の次に次の一号を加える。

  一の二 日雇労働者健康保険法の規定により被保険者として負担する日雇労働者健康保険の保険料

 (地方財政法の一部改正)

12 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条の四第六号中「健康保険」の下に「、日雇労働者健康保険」を加える。

 (地方税法の一部改正)

13 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十二条第三号中「健康保険法(大正十一年法律第七十号)」の下に「、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)」を加える。

  第六百七十二条第三号、第七百四十四条第十一項及び第七百七十七条第四項中「健康保険法」の下に「、日雇労働者健康保険法」を加える。

 (国庫出納金等端数計算法の一部改正)

14 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第七条第一項第七号中「健康保険法(大正十一年法律第七十号)第十一条第三項」の下に「、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)第三十五条」を加える。

(内閣総理・大蔵・厚生・郵政大臣署名) 

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