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法律第百六十一号(昭三二・六・一)

  ◎自然公園法

目次

 第一章 総則(第一条―第三条)

 第二章 国立公園及び国定公園

  第一節 自然公園審議会(第四条―第九条)

  第二節 指定(第十条・第十一条)

  第三節 公園計画及び公園事業(第十二条―第十六条)

  第四節 保護及び利用(第十七条―第二十四条)

  第五節 費用(第二十五条―第三十一条)

  第六節 雑則(第三十二条―第四十条)

 第三章 都道府県立自然公園(第四十一条―第四十八条)

 第四章 罰則(第四十九条―第五十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、もつて国民の保健、休養及び教化に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 自然公園 国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園をいう。

 二 国立公園 わが国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地であつて、厚生大臣が第十条第一項の規定により指定するものをいう。

 三 国定公園 国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地であつて、厚生大臣が第十条第二項の規定により指定するものをいう。

 四 都道府県立自然公園 すぐれた自然の風景地であつて、都道府県が第四十一条の規定により指定するものをいう。

 五 公園計画 国立公園又は国定公園の保護又は利用のための規制又は施設に関する計画をいう。

 六 公園事業 公園計画に基いて執行する事業であつて、国立公園又は国定公園の保護又は利用のための施設で政令で定めるものに関するものをいう。

 (財産権の尊重及び他の公益との調整)

第三条 この法律の適用に当つては、関係者の所有権、鉱業権その他の財産権を尊重するとともに、自然公園の保護及び利用と国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。

   第二章 国立公園及び国定公園

    第一節 自然公園審議会

 (設置及び権限)

第四条 厚生大臣の諮問に応じ、国立公園及び国定公園に関する重要事項を調査審議させるため、厚生省に、附属機関として自然公園審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、国立公園及び国定公園に関する重要事項について、関係行政機関に意見を具申することができる。

 (組織)

第五条 審議会は、委員三十七人以内で組織する。

2 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に臨時委員を置くことができる。

 (委員及び臨時委員)

第六条 審議会の委員及び臨時委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、厚生大臣が任命する。

2 学識経験のある者のうちから任命された委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 臨時委員は、当該特別事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。

4 委員及び臨時委員は、非常勤とする。

 (会長)

第七条 審議会に、会長一人を置く。

2 会長は、委員のうちから、厚生大臣が任命する。

3 会長は、会務を総理する。

4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 (幹事)

第八条 審議会に、その庶務を行わせるため、幹事を置く。

2 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、厚生大臣が任命する。

3 幹事は、非常勤とする。

 (政令への委任)

第九条 この法律に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。

    第二節 指定

 (指定)

第十条 国立公園は、厚生大臣が、審議会の意見を聞き、区域を定めて指定する。

2 国定公園は、厚生大臣が、関係都道府県の申出により、審議会の意見を聞き、区域を定めて指定する。

3 厚生大臣は、国立公園又は国定公園を指定する場合には、その旨及びその区域を官報で公示しなければならない。

4 国立公園又は国定公園の指定は、前項の公示によつてその効力を生ずる。

 (指定の解除及び区域の変更)

第十一条 厚生大臣は、国立公園の指定を解除し、又はその区域を変更しようとするときは、審議会の意見を聞かなければならない。

2 厚生大臣は、国定公園の指定を解除し、又はその区域を変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会の意見を聞かなければならない。ただし、その区域を拡張するには、関係都道府県の申出によらなければならない。

3 前条第三項及び第四項の規定は、国立公園又は国定公園の指定の解除及びその区域の変更について準用する。

    第三節 公園計画及び公園事業

 (公園計画及び公園事業の決定)

第十二条 国立公園に関する公園計画及び公園事業は、厚生大臣が、審議会の意見を聞いて決定する。

2 国定公園に関する公園計画のうち、保護のための規制に関する計画並びに利用のための施設に関する計画で集団施設地区及び政令で定める施設に関するものは、厚生大臣が、関係都道府県の申出により、審議会の意見を聞いて決定し、その他の計画は、都道府県知事が決定する。

3 国定公園に関する公園事業は、都道府県知事が決定する。

4 厚生大臣又は都道府県知事は、公園計画又は公園事業を決定したときは、その概要を公示しなければならない。

 (公園計画及び公園事業の廃止及び変更)

第十三条 厚生大臣は、国立公園に関する公園計画及び公園事業を廃止し、又は変更しようとするときは、審議会の意見を聞かなければならない。

2 厚生大臣は、国定公園に関する公園計画を廃止し、又は変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会の意見を聞かなければならない。ただし、その公園計画を追加するには、関係都道府県の申出によらなければならない。

3 前条第四項の規定は、公園計画及び公園事業の廃止及び変更について準用する。

 (国立公園の公園事業の執行)

第十四条 国立公園に関する公園事業は、国が執行する。

2 地方公共団体及び政令で定めるその他の公共団体(以下「公共団体」という。)は、厚生大臣の承認を受けて、国立公園に関する公園事業の一部を執行することができる。

3 国及び公共団体以外の者は、厚生大臣の認可を受けて、国立公園に関する公園事業の一部を執行することができる。

 (国定公園の公園事業の執行)

第十五条 国定公園に関する公園事業は、都道府県が執行する。ただし、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)その他他の法律の定めるところにより、国が道路に係る事業その他の事業を執行することを妨げない。

2 都道府県以外の公共団体は、都道府県知事の承認を受けて、国定公園に関する公園事業の一部を執行することができる。

3 国及び公共団体以外の者は、都道府県知事の認可を受けて、国定公園に関する公園事業の一部を執行することができる。

 (承認又は認可による公園事業の執行)

第十六条 前二条の規定による承認及び認可の手続並びにその承認又は認可を受けて行う公園事業の執行に関して必要な事項は、政令で定める。

    第四節 保護及び利用

 (特別地域)

第十七条 厚生大臣は、国立公園又は国定公園の風致を維持するため、公園計画に基いて、その区域内に、特別地域を指定することができる。

2 第十条第三項及び第四項の規定は、特別地域の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。

3 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては厚生大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、当該特別地域が指定され、若しくはその区域が拡張された際既に着手していた行為又は非常災害のために必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。

 一 工作物を新築し、改築し、又は増築すること。

 二 木竹を伐採すること。

 三 鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。

 四 河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。

 五 広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。

 六 水面を埋め立て、又は干拓すること。

 七 土地を開墾しその他土地の形状を変更すること。

 八 高山植物その他これに類する植物で厚生大臣が指定するものを採取すること。

 九 屋根、壁面、へい、橋、鉄塔、送水管その他これらに類するものの色彩を変更すること。

4 特別地域が指定され、又はその区域が拡張された際当該特別地域内において前項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定又は区域の拡張の日から起算して三箇月以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。

5 特別地域内において非常災害のために必要な応急措置として第三項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。

6 特別地域内において木竹を植栽し、又は家畜を放牧しようとする者は、あらかじめ、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。

7 次の各号に掲げる行為については、前四項の規定は、適用しない。

 一 公園事業の執行として行う行為

 二 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であつて、厚生省令で定めるもの

 (特別保護地区)

第十八条 厚生大臣は、国立公園又は国定公園の景観を維持するため、特に必要があるときは、公園計画に基いて、特別地域内に特別保護地区を指定することができる。

2 第十条第三項及び第四項の規定は、特別保護地区の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。

3 特別保護地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては厚生大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、当該特別保護地区が指定され、若しくはその区域が拡張された際既に着手していた行為又は非常災害のために必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。

 一 前条第三項各号に掲げる行為

 二 木竹を植栽すること。

 三 家畜を放牧すること。

 四 屋外において物を集積し、又は貯蔵すること。

 五 火入又はたき火をすること。

 六 植物又は落葉若しくは落枝を採取すること。

 七 動物を捕獲し、又は動物の卵を採取すること。

 八 道路及び広場以外の地域内へ車馬を入れること。

4 特別保護地区が指定され、又はその区域が拡張された際当該特別保護地区内において前項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定又は区域の拡張の日から起算して三箇月以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。

5 特別保護地区内において非常災害のために必要な応急措置として第三項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。

6 次の各号に掲げる行為については、前三項の規定は、適用しない。

 一 公園事業の執行として行う行為

 二 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であつて、厚生省令で定めるもの

 (条件)

第十九条 第十七条第三項及び前条第三項の許可には、国立公園又は国定公園の風致又は景観を保護するために必要な限度において、条件を附することができる。

 (普通地域)

第二十条 国立公園又は国定公園の区域のうち特別地域に含まれない区域(以下「普通地域」という。)内において、次の各号に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。

 一 その規模が厚生省令で定める基準をこえる工作物を新築し、改築し、又は増築すること(改築又は増築後において、その規模が厚生省令で定める基準をこえるものとなる場合における改築又は増築を含む。)

 二 特別地域内の河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。

 三 広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。

 四 海面を埋め立て、又は干拓すること。

2 厚生大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の風景を保護するために必要があると認めるときは、普通地域内において前項各号に掲げる行為をしようとする者又はした者に対して、その風景を保護するために必要な限度において、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

3 前項の処分は、第一項の届出をした者に対しては、その届出があつた日から起算して三十日以内に限り、することができる。

4 厚生大臣又は都道府県知事は、第一項の届出があつた場合において、実地の調査をする必要があるとき、その他前項の期間内に第二項の処分をすることができない合理的な理由があるときは、その理由が存続する間、前項の期間を延長することができる。この場合においては、同項の期間内に、第一項の届出をした者に対し、その旨及び期間を延長する理由を通知しなければならない。

5 次の各号に掲げる行為については、第一項及び第二項の規定は、適用しない。

 一 公園事業の執行として行う行為

 二 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であつて、厚生省令で定めるもの

 三 国立公園若しくは国定公園が指定され、又はその区域が拡張された際既に着手していた行為

 四 非常災害のために必要な応急措置として行う行為

 (原状回復命令等)

第二十一条 厚生大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の保護のために必要があると認めるときは、第十七条第三項若しくは第十八条第三項の規定、第十九条の規定により許可に附せられた条件又は前条第二項の規定による処分に違反した者に対して、その保護のために必要な限度において、原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代るべき必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

 (報告の徴収及び立入検査)

第二十二条 厚生大臣又は都道府県知事は、国立公園又は国定公園の保護のために必要があると認めるときは、第十七条第三項若しくは第十八条第三項の規定による許可を受けた者又は第二十条第二項の規定により行為を制限され、若しくは必要な措置をとるべき旨を命ぜられた者に対して、当該行為の実施状況その他必要な事項について報告を求めることができる。

2 厚生大臣又は都道府県知事は、第十七条第三項、第十八条第三項、第二十条第二項又は前条の規定による処分をするために必要があると認めるときは、その必要な限度において、当該職員をして、国立公園若しくは国定公園の区域内の土地若しくは建物内に立ち入らせ、又は第十七条第三項各号、第十八条第三項各号若しくは第二十条第一項各号に掲げる行為の実施状況を検査させ、又はこれらの行為の風景に及ぼす影響を調査させることができる。

3 前項に規定する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

4 第一項及び第二項の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (集団施設地区)

第二十三条 厚生大臣は、国立公園又は国定公園の利用のための施設を集団的に整備するため、公園計画に基いて、その区域内に集団施設地区を指定するものとする。

2 第十条第三項及び第四項の規定は、集団施設地区の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。

 (利用のための規制)

第二十四条 国立公園又は国定公園の特別地域又は集団施設地区内においては、何人も、みだりに次の各号に掲げる行為をしてはならない。

 一 当該国立公園又は国定公園の利用者に著しく不快の念をおこさせるような方法で、ごみその他の汚物又は廃物を捨て、又は放置すること。

 二 著しく悪臭を発散させ、拡声機、ラジオ等により著しく騒音を発し、展望所、休憩所等をほしいままに占拠し、けんおの情を催させるような仕方で客引し、その他当該国立公園又は国定公園の利用者に著しく迷惑をかけること。

2 国又は都道府県の当該職員は、特別地域又は集団施設地区内において前項第二号に掲げる行為をしている者があるときは、その行為をやめるべきことを指示することができる。

3 前項に規定する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

    第五節 費用

 (公園事業の執行に要する費用)

第二十五条 公園事業の執行に要する費用は、その公園事業を執行する者の負担とする。

 (国の補助)

第二十六条 国は、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、公園事業を執行する都道府県に対して、その公園事業の執行に要する費用の一部を補助することができる。

 (地方公共団体の負担)

第二十七条 国が国立公園に関する公園事業を執行する場合において、当該公園事業の執行が特に地方公共団体を利するものであるときは、当該地方公共団体に、その受益の限度において、その執行に要する費用の一部を負担させることができる。

2 前項の規定により公園事業の執行に要する費用の一部を地方公共団体に負担させようとする場合においては、国は、当該地方公共団体の意見を聞かなければならない。

 (受益者負担)

第二十八条 国又は地方公共団体は、公園事業の執行により著しく利益を受ける者がある場合においては、その者に、その受益の限度において、その公園事業の執行に要する費用の一部を負担させることができる。

 (原因者負担)

第二十九条 国又は地方公共団体は、他の工事又は他の行為により公園事業の執行が必要となつた場合においては、その原因となつた工事又は行為について費用を負担する者に、その公園事業の執行が必要となつた限度において、その費用の全部又は一部を負担させることができる。

 (負担金の徴収方法等)

第三十条 前三条の規定による負担金の徴収方法その他負担金に関して必要な事項は、政令で定める。

 (適用除外)

第三十一条 この節の規定は、公園事業のうち、道路法による道路に係る事業及び他の法律にその執行に要する費用に関して別段の規定があるその他の事業については、適用しない。

    第六節 雑則

 (実地調査)

第三十二条 厚生大臣又は都道府県知事は国立公園又は国定公園の指定、公園計画の決定又は公園事業の決定若しくは執行に関し、厚生大臣以外の国の機関は公園事業の執行に関し、実地調査のため必要があるときは、それぞれ当該職員をして、他人の土地に立ち入らせ、標識を設置させ、測量させ、又は実地調査の障害となる木竹若しくはかき、さく等を伐採させ、若しくは除去させることができる。ただし、道路法その他他の法律に実地調査に関する規定があるときは、当該規定の定めるところによる。

2 国の機関又は都道府県知事は、当該職員をして前項の規定による行為をさせようとするときは、あらかじめ、土地の所有者(所有者の住所が明らかでないときは、その占有者。この条において以下同じ。)及び占有者並びに木竹又はかき、さく等の所有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。

3 第一項の職員は、日出前及び日没後においては、宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入つてはならない。

4 第一項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

5 土地の所有者若しくは占有者又は木竹若しくはかき、さく等の所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入又は標識の設置その他の行為を拒み、又は妨げてはならない。

 (訴願)

第三十三条 この法律又はこの法律に基く命令の規定により、厚生大臣又は都道府県知事がした処分に不服がある者は、訴願法(明治二十三年法律第百五号)の定めるところにより、訴願することができる。ただし、次条の規定により土地調整委員会の裁定を申請することができる場合及び第三十六条の規定により裁判所に出訴することができる場合は、この限りでない。

 (土地調整委員会の裁定)

第三十四条 第十七条第三項、第十八条第三項又は第二十条第二項の規定による厚生大臣又は都道府県知事の処分を受けた者であつて、その処分に不服がある者は、その不服の理由が鉱業又は採石業との調整に関するものであるときは、土地調整委員会に裁定を申請することができる。

 (損失の補償)

第三十五条 国は、第十七条第三項若しくは第十八条第三項の許可を得ることができないため、第十九条の規定により許可に条件を附せられたため、又は第二十条第二項の規定による処分を受けたため損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。

2 前項の規定による補償を受けようとする者は、厚生大臣にこれを請求しなければならない。

3 厚生大臣は、前項の規定による請求を受けたときは、補償すべき金額を決定し、当該請求者にこれを通知しなければならない。

4 国は国立公園又は国定公園の指定、公園計画若しくは公園事業の決定又は国が行う公園事業の執行に関し、都道府県は都道府県が行う公園事業の執行に関し、第三十二条第一項の規定による当該職員の行為によつて損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。

5 第二項及び第三項の規定は、前項の規定による損失の補償について準用する。この場合において、第二項及び第三項中「厚生大臣」とあるのは、「主務大臣又は都道府県知事」と読み替えるものとする。

 (訴の提起)

第三十六条 前条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定による決定に不服がある者は、その通知を受けた日から起算して六箇月以内に訴をもつて補償すべき金額の増額を請求することができる。

 (負担金の強制徴収)

第三十七条 この法律の規定により国に納付すべき負担金を納付しない者があるときは、厚生大臣は、督促状によつて納付すべき期限を指定して督促しなければならない。

2 前項の場合においては、厚生大臣は、厚生省令の定めるところにより、延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金は、百円につき一日四銭の割合を乗じて計算した額をこえない範囲内で定めなければならない。

3 第一項の規定による督促を受けた者がその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、厚生大臣は、国税滞納処分の例により前二項に規定する負担金及び延滞金を徴収することができる。この場合における負担金及び延滞金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

4 延滞金は、負担金に先だつものとする。

 (権限の委任)

第三十八条 この法律に定める厚生大臣の権限は、政令の定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。

 (協議)

第三十九条 厚生大臣は、国立公園又は国定公園の指定、その区域の拡張、公園計画の決定若しくは変更又は特別地域若しくは特別保護地区の指定若しくはその区域の拡張をしようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

2 厚生大臣以外の国の機関は、第十四条第一項の規定により国立公園に関する公園事業を執行しようとするときは、厚生大臣に協議しなければならない。

3 国の機関は、第十五条第一項ただし書の規定により国定公園に関する公園事業を執行しようとするときは、都道府県知事に協議しなければならない。

 (国に関する特例)

第四十条 国の機関が行う行為については、第十七条第三項又は第十八条第三項の規定による許可を受けることを要しない。この場合において当該国の機関は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、国立公園にあつては厚生大臣に、国定公園にあつては都道府県知事に協議しなければならない。

2 国の機関は、第十七条第四項から第六項まで、第十八条第四項若しくは第五項又は第二十条第一項の規定により届出を要する行為をしたとき、又はしようとするときは、これらの規定による届出の例により、都道府県知事にその旨を通知しなければならない。

3 厚生大臣又は都道府県知事は、第二十条第一項の規定による届出の例による通知があつた場合において、当該公園の風景を保護するために必要があると認めるときは、当該国の機関に対し、風景の保護のためにとるべき措置について協議を求めることができる。

   第三章 都道府県立自然公園

 (指定)

第四十一条 都道府県は、条例の定めるところにより、区域を定めて都道府県立自然公園を指定することができる。

 (保護及び利用)

第四十二条 都道府県は、都道府県立自然公園の風致を維持するため、条例の定めるところにより、その区域内に特別地域を指定し、かつ、特別地域内及び当該都道府県立自然公園の区域のうち特別地域に含まれない区域内における行為につき、それぞれ国立公園の特別地域又は普通地域内における行為に関する前章第四節の規定による規制の範囲内において、条例で必要な規制を定めることができる。

2 都道府県は、都道府県立自然公園の利用のための施設を集団的に整備するため、条例の定めるところにより、その区域内に集団施設地区を指定し、かつ、第二十四条の規定の例により、条例で、特別地域及び集団施設地区内における同条第一項各号に掲げる行為を禁止することができる。

 (実地調査)

第四十三条 都道府県は、条例で、都道府県立自然公園に関し実地調査のため必要がある場合に、都道府県知事が第三十二条の規定の例により当該職員をして他人の土地に立ち入らせ、又は同条第一項に規定する標識の設置その他の行為をさせることができる旨を定めることができる。

 (損失の補償)

第四十四条 都道府県は、第四十二条第一項の規定に基く条例の規定による処分又は前条の規定に基く条例の規定による当該職員の行為によつて損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

 (土地調整委員会の裁定)

第四十五条 第四十二条第一項の規定に基く条例の規定による都道府県知事の処分を受けた者であつて、その処分に不服がある者は、その不服の理由が鉱業又は採石業との調整に関するものであるときは、土地調整委員会に裁定を申請することができる。

 (協議等)

第四十六条 都道府県は、都道府県立自然公園の特別地域の指定又はその区域の拡張をしようとするときは、国の関係地方行政機関の長に協議しなければならない。

2 都道府県が第四十二条第一項の規定に基く条例で都道府県立自然公園の区域内における行為につき規制を定めた場合における国の機関が行う行為に関する特例については、第四十条の規定の例による。

 (報告、助言又は勧告)

第四十七条 厚生大臣は、都道府県に対し、都道府県立自然公園に関し、必要な報告を求めることができる。

2 厚生大臣は、都道府県に対し、都道府県立自然公園の行政又は技術に関し、必要な助言又は勧告をすることができる。

 (国立公園又は国定公園との関係)

第四十八条 国立公園又は国定公園の区域は、都道府県立自然公園の区域に含まれないものとする。

   第四章 罰則

第四十九条 第二十一条の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第五十条 次の各号の一に該当する者は、六箇月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

 一 第十七条第三項又は第十八条第三項の規定に違反した者

 二 第十九条の規定により許可に附せられた条件に違反した者

第五十一条 第二十条第二項の規定による処分に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。

第五十二条 次の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。

 一 第二十条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第二十二条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第二十二条第二項の規定による立入検査又は立入調査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 四 国立公園又は国定公園の特別地域又は集団施設地区内において、みだりに第二十四条第一項第一号に掲げる行為をした者

 五 国立公園又は国定公園の特別地域又は集団施設地区内において、第二十四条第二項の規定による当該職員の指示に従わないで、みだりに同条第一項第二号に掲げる行為をした者

 六 第三十二条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による立入又は標識の設置その他の行為を拒み、又は妨げた者

第五十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

第五十四条 第四十二条又は第四十三条の規定に基く条例には、その条例に違反した者に対して、その違反行為の態様に応じ、それぞれ、前各条に定める処罰の程度をこえない限度において、刑を科する旨の規定を設けることができる。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、昭和三十二年十月一日から施行する。

 (国立公園法の廃止)

2 国立公園法(昭和六年法律第三十六号)は、廃止する。

 (経過規定)

3 この法律の施行の際現に国立公園法第一条の規定により指定されている国立公園又は同法第十一条ノ二第一項の規定により指定されている国立公園に準ずる区域は、それぞれ、この法律による国立公園又は国定公園とみなし、その区域は、それぞれ、この法律による国立公園又は国定公園の区域とみなす。

4 この法律の施行の際現に国立公園法の規定により決定されている国立公園計画若しくは国立公園に準ずる区域に関する計画又は国立公園事業は、それぞれ、この法律に基いて決定された国立公園若しくは国定公園に関する公園計画又は国立公園に関する公園事業とみなす。

5 この法律の施行の際現に国立公園法第八条第一項の規定により指定されている特別地域又は同法第八条ノ二第一項の規定により指定されている特別保護地区は、それぞれ、この法律に基いて指定された国立公園の特別地域又は特別保護地区とみなす。

6 この法律の施行前に国立公園法又はこれに基く命令の規定によつてなされた許可、認可、申請その他の行為は、この法律又はこれに基く命令に当該規定に相当する規定があるときは、当該相当規定によつてなされたものとみなす。

7 国立公園法若しくはこれに基く命令の規定によつて許可その他の処分若しくは届出その他の手続を要しなかつた行為でこの法律若しくはこれに基く命令の規定によつて新たに許可その他の処分若しくは届出その他の手続を要することとなつたもの又は国立公園法若しくはこれに基く命令の規定によつて届出をもつて足りた行為でこの法律若しくはこれに基く命令の規定によつて、許可その他の処分を要することとなつたもののうち、この法律の施行の際現に着手しているものについては、この法律若しくはこれに基く命令の規定による処分若しくは手続を要せず、又は従前の例による届出をもつて足りる。

8 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (厚生省設置法の一部改正)

9 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条中第十四号から第十七号までを次のように改める。

  十四 区域を定めて国立公園及び国定公園を指定し、及びその指定を解除し、並びにその区域を変更すること。

  十五 国立公園の公園計画及び公園事業並びに国定公園の公園計画の一部を決定し、並びに国立公園の公園事業を執行し、又はその一部を地方公共団体その他の者に執行させること。

  十六 国立公園及び国定公園の区域内に特別地域、特別保護地区及び集団施設地区を指定すること。

  十七 国立公園の特別地域及び特別保護地区内における一定の行為について許可を与え、普通地域内における一定の行為を禁止し、若しくは制限し、又はこれについて必要な措置をとるべき旨を命じ、並びにその処分に違反した者に対し原状回復等を命ずること。

  第八条第一項第十五号を次のように改め、同条同項第十六号中「国立公園及び」を「国立公園及び国定公園並びに」に改める。

  十五 自然公園を保護し、国立公園及び国定公園の公園計画を定め、並びに国立公園の公園事業を執行すること。

  第二十九条第一項の表中国立公園審議会の項を次のように改める。

自然公園審議会

厚生大臣の諮問に応じて、国立公園及び国定公園に関する重要事項を調査審議すること。

 (土地調整委員会設置法の一部改正)

10 土地調整委員会設置法(昭和二十五年法律第二百九十二号)の一部を次のように改正する。

  第四条中第十九号を第二十号とし、第十八号の次に次の一号を加える。

  十九 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第三十四条又は第四十五条の規定による異議を裁定すること。

  第二十五条第二項中「又は海岸法第三十九条第三項」を「、海岸法第三十九条第三項又は自然公園法第三十四条若しくは第四十五条」に改める。

  第四十五条中「命令」の下に「又は条例」を加え、「国立公園法(昭和六年法律第三十六号)」を「自然公園法」に改め、同条に次の二項を加える。

 2 前項の規定により自然公園法又はこれに基く条例の規定による許可があつたものとみなされる場合においては、委員会は、裁定で、自然公園の風景を保護するために必要な限度において、鉱業権者若しくは租鉱権者又は採石業者が守るべき事項を定めることができる。

 3 前項の規定により国立公園又は国定公園の風景を保護するために定められた事項は、自然公園法の規定の適用については、同法第十九条の規定により許可に附せられた条件とみなす。

 (土地収用法の一部改正)

11 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。

  第三条第二十九号を次のように改める。

  二十九 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)による公園事業

 (森林法の一部改正)

12 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)の一部を次のように改正する。

  第七条第四項第三号中「国立公園法(昭和六年法律第三十六号)第一条」を「自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第十条又は第四十一条に基く条例」に改める。

 (都市公園法の一部改正)

13 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。

  第二条第三項を次のように改める。

 3 次の各号に掲げるものは、第一項の規定にかかわらず、都市公園に含まれないものとする。

  一 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)の規定により決定された国立公園又は国定公園に関する公園計画に基いて設けられる施設(以下「国立公園又は国定公園の施設」という。)たる公園又は緑地

  二 自然公園法の規定により国立公園又は国定公園の区域内に指定される集団施設地区たる公園又は緑地

 第四条第一項中「建築面積」の下に「(国立公園又は国定公園の施設たる建築物の建築面積を除く。)」を加える。

 第二章中第十八条の次に次の一条を加える。

 (自然公園の施設に関する特例)

第十八条の二 国立公園又は国定公園の施設については、第五条第二項及び第三項並びに第六条第一項の規定を、自然公園法に規定する都道府県立自然公園の利用のための施設の設置及び管理については、第五条第二項及び第三項の規定を適用しない。

 第二十三条第一項中「第十四条まで」の下に「、第十八条の二」を加える。

(内閣総理・法務・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設大臣署名) 

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