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法律第百四十三号(昭三三・五・七)

  ◎けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法

 (療養給付)

第一条 政府は、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号。以下「特別保護法」という。)第十一条(同法第十三 条において準用する場合を含む。)の規定により療養を受け又は療養に必要な費用の支給を受ける者のうち、同法第十一条第一項に規定する期間が経過しても、なお療養を必要と する都道府県労働基準局長が認定した者に対しては、当分の間、療養給付として、必要な療養を行い又は必要な療養の費用に相当する額を支給する。

2 前項の療養の範囲は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第七十五条第二項の規定による療養の範囲による。

 (傷病手当)

第二条 政府は、前条の規定により療養給付を受ける者が、同条に規定する療養のため、労働することができず、かつ、賃金を受けない場合において は、その者に対して、その療養の期間につき傷病手当を支給する。

2 前項の傷病手当の額は、当該傷病手当の支給を受ける者が特別保護法第十一条第一項に規定する期間の経過する直前において、同法第十二条(同法 第十三条において準用する場合を含む。)の規定により受けていた休業給付の額に相当する額とする。

3 労働基準法第七十六条第二項及び第三項の規定は、前項の傷病手当の額について準用する。

 (国庫の負担)

第三条 国庫は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関して必要な費用の十分の八を負担する。

 (負担金の徴収)

第四条 政府は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関して必要な費用に充てるため、粉じん作業(特別保護法第二条第一項に規定する粉じ ん作業をいう。)に労働者を従事させる事業等の事業主から負担金を徴収する。

2 前項の負担金は、特別保護法の定めるところにより、同法第十五条に規定する負担金とあわせて徴収する。

3 特別保護法第十六条の規定は、第一項の場合に準用する。

 (不服の申立等)

第五条 第一条に規定する都道府県労働基準局長の認定を拒否された者は、医師の診断書及び労働省令で定める書面を添え、書面をもつて、当該都道府 県労働基準局長を経由して労働大臣に不服の申立をすることができる。

2 労働大臣は、前項の規定による不服の申立があつた場合において、その申立が理由があると認めるときは、申立の日から六十日以内に、療養を必要 とする旨の認定をしなければならない。

3 前項の場合には、特別保護法第三十一条第四項の規定を準用する。

第六条 特別保護法第三十二条及び第三十六条の規定は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関する決定についての審査の請求に関して準用 する。

 (労働大臣及び都道府県労働基準局長の権限)

第七条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関する処分並びにこれらに関する審査に関し必要がある と認めるときは、これらに係る事業の事業主に報告をさせ、又は当該職員に、その事業の事業場に立ち入り、関係者に質問させ及び帳薄書類を検査させることができる。

2 前項の場合において、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (公課の禁止)

第八条 租税その他の公課は、この法律の規定により支給を受けた金品を標準として課することができない。

2 この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関する書類には、印紙税を課さない。

 (差押の禁止等)

第九条 この法律の規定による療養給付及び傷病手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない.

 (時効)

第十条 この法律の規定による療養給付及び傷病手当の支給を受ける権利並びに負担金を徴収し、又は還付を受ける権利は、二年を経過したときは、時 効によつて消滅する。

2 前項の時効の中断、停止その他の事項に関しては、民法(明治二十九年法律第八十九号)の時効に関する規定を準用する。

 (罰則)

第十一条 第七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した 者は、五千円以下の罰金に処する。

第十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為 者を罰するほか、その法人又は人に対し同条の罰金刑を科する。

 (政府の義務)

第十三条 政府は、けい肺及び外傷性せき髄障害にかかつた労働者の保護措置について根本的検討を加え、昭和三十四年十二月三十一日までに、特別保 護法の改正に関する法律案を国会に提出しなければならない。

   附 則

1 この法律は、昭和三十三年六月一日から施行する。

2 第一条及び第二条の規定は、特別保護法第十一条から第十三条までの規定による療養給付及び休業給付を受ける期間がこの法律の施行前に経過した 者についても適用し、この法律の施行後において療養給付を行い及びこの法律の施行後の期間について傷病手当を支給する。

3 この法律は、昭和三十五年三月三十一日限りその効力を失う。

4 第一条及び第二条の規定により政府が行つた療養給付及び傷病手当の支給に関し必要な費用に充てるための負担金の徴収に関しては、第四条の規定 は、前項の規定にかかわらず、昭和三十五年四月一日以後においてもなおその効力を有するものとする。

5 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の一部を次のように改正する。

  附則に次の九項を加える。

  (負担金に関する臨時措置)

  26  けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百四十三 号。以下「臨時措置法」という。)第四条第二項の規定に基き第十五条に規定する負担金と臨時措置法第四条第一項に規定する負担金とをあわせて徴収する場合に関しては、第十 七条から第十九条まで及び附則第十六項の規定は適用しない。

  27  臨時措置法第四条第二項の規定に基きけい肺について事業主から第十五条に規定する負担 金と臨時措置法第四条第一項に規定する負担金とをあわせて徴収する場合の負担金の額は、その事業の賃金総額(第二十条に規定する賃金総額をいう。以下同じ。)に次項の規定 により定めるけい肺負担金率を乗じて得た額とする。

  28  けい肺負担金率は、粉じん作業に労働者を従事させる事業について、その種類の事業にお ける過去のけい肺の発生率を基礎として、その事業に関し政府が第十条から第十二条までの規定により行う給付に関して必要な費用の二分の一に相当する額とその事業に関し政府 が臨時措置法第一条及び第二条の規定により行う療養給付及び傷病手当の支給に関して必要な費用の十分の二に相当する額との合計額をまかなうように、労働大臣がけい肺審議会 にはかつて、事業の種類に応じ数等級に区分して定める。

  29  労働者災害補償保険法第二章に規定する保険関係の成立していない事業であつて前項の規 定によるけい肺負担金率が政令で定める率以下のものの事業主からけい肺についての給付及び傷病手当に関して徴収する負担金の額は、前二項の規定にかかわらず、第十条から第 十二条までの規定による給付に関しては政府がその事業によりけい肺にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して行つた当該給付に関する費用の二分の一に相当する額、臨時 措置法第一条及び第二条の規定による療養給付及び傷病手当に関しては政府がその事業によりけい肺にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して行つた当該療養給付又は傷病 手当の支給に関する費用の十分の二に相当する額とする。

  30  臨時措置法第四条第二項の規定に基き外傷性せき髄障害について事業主から第十五条に規 定する負担金と臨時措置法第四条第一項に規定する負担金とをあわせて徴収する場合の負担金の額は、次の各号に定めるところによる。

  一 労働者災害補償保険法第二章に規定する保険関係の成立している事業については、その事業の賃金総額に外傷性せき髄障害負担金率を乗じて得 た額

  二 労働者災害補償保険法第二章に規定する保険関係が成立していない事業については、第十三条の規定による給付に関しては政府がその事業によ り外傷性せき髄障害にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して行つた当該給付に関する費用の二分の一に相当する額、臨時措置法第一条及び第二条の規定による療養給付及 び傷病手当に関しては政府がその事業により外傷性せき髄障害にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して行つた当該療養給付及び傷病手当の支給に関する費用の十分の二に 相当する額

  31  前項第一号の外傷性せき髄障害負担金率は、過去五年間の外傷性せき髄障害の発生率を基 礎として、その種類の事業に関し政府が第十三条の規定により行う給付に関して必要な費用の二分の一に相当する額とその種類の事業に関して政府が臨時措置法第一条及び第二条 の規定により行う療養給付及び傷病手当の支給に関して必要な費用の十分の二に相当する額との合計額をまかなうように、事業の種類に応じ数等級に区分して、労働省令で定め る。

  32  第十五条に規定する負担金と臨時措置法第四条第一項に規定する負担金とをあわせて徴収 する場合においては、第二十一条第一項中「第十七条第一項」とあるのは「附則第二十七項」と、「第十九条第一項第一号」とあるのは「附則第三十項第一号」と読み替えるもの とする。

  33  第十五条に規定する負担金と臨時措置法第四条第一項に規定する負担金とをあわせて徴収 する場合においては、第二十六条第一項中「第十七条第二項又は第十九条第一項第二号」とあるのは「附則第二十九項又は附則第三十項第二号」と、「第十条から第十三条までの 規定による給付」とあるのは「第十条から第十三条までの規定による給付又はけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百四十三号)第一条 及び第二条の規定による療養給付及び傷病手当の支給」と読み替えるものとする。

  34  臨時措置法の施行の日の属する徴収年度にあつては、けい肺についての負担金のうち附則 第十六項の規定によるけい肺負担金率と附則第二十八項の規定によるけい肺負担金率との差に係る部分及び外傷性せき髄障害についての負担金のうち第十九条第二項の規定による 外傷性せき髄障害負担金率と附則第三十一項の規定による外傷性せき髄障害負担金率との差に係る部分については、第二十一条の規定は適用しない。

6 労働基準法等の施行に伴う政府職員に係る給与の応急措置に関する法律(昭和二十二年法律第百六十七号)の一部を次のように改正する。

  第一項中「又は船員法」を「、けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百四十三号)第一条及び第二条の規 定(国家公務員災害補償法第一条に規定する職員に係るものを除く。)又は船員法」に改める。

7 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。

  第二十三条第二項中「による療養給付及び休業給付」を「及びけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百四 十三号)による療養給付、休業給付及び傷病手当の支給」に改める。

8 労働者災害補償保険特別会計法(昭和二十二年法律第五十一号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(以下「特別保護法」という。)による給付」を「並びにけい肺及び外傷性せき髄 障害に関する特別保護法及びけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(以下「特別保護法等」と総称する。)による給付(傷病手当の支給を含む。)」に改め る。

  第三条及び第四条第二項中「特別保護法」を「特別保護法等」に改める。

9 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三十二号の四の次に次の一号を加える。

  三十二の五 けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百四十三号)に基いて、療養を必要とする者を認定 し、療養給付及び傷病手当の支給を行い、並びに負担金を徴収すること。

  第八条第一項第六号の三の次に次の一号を加える。

  六の四 けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法に基く療養給付、傷病手当の支給及び負担金の徴収に関すること。

  第八条第一項第十一号中「及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法」を「、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法及びけい 肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法」に改める。

  第八条第二項中「及び第六号の三」を「、第六号の三及び第六号の四」に改める。

  第十五条第一項及び第十七条第一項中「及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(これに基く命令を含む。)」を「、けい肺及び外傷 性せき髄障害に関する特別保護法(これに基く命令を含む。)及びけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(これに基く命令を含む。)」に改める。

10  地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十二条第八号の次に次の一号を加える。

  八の二 けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百四十三号)の規定により支給を受ける金品

  第六百七十二条第八号の次に次の一号を加える。

  八の二 けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法の規定により支給を受ける金品

(内閣総理・大蔵・労働大臣署名) 

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