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法律第百十号(昭四二・八・一)

  ◎公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、公共用飛行場の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止、航空機の離着陸のひん繁な実施により生ずる損失の補償その他必要な措置について定めることにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定飛行場」とは、運輸大臣が設置する公共用飛行場であつて、当該飛行場における航空機の離陸又は着陸のひん繁な実施により生ずる騒音等による障害が著しいと認めて政令で指定するもの及び新東京国際空港をいう。

 (航行の方法の指定)

第三条 運輸大臣は、公共用飛行場の周辺における航空機の騒音により生ずる障害を防止し、又は軽減するため必要があると認めるときは、航空交通の安全を阻害しない限度において、当該飛行場において航空機が離陸し、又は着陸することができる経路又は時間その他当該飛行場及びその周辺における航空機の航行の方法を告示で指定することができる。

2 運輸大臣は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、当該指定に係る公共用飛行場の周辺地域を管轄する都道府県知事の意見をきかなければならない。

3 航空機は、第一項の規定による指定があつたときは、航行の安全を確保するためやむを得ないと認められる場合その他運輸省令で定める場合を除き、これに従わなければならない。

 (特定飛行場の設置者及び使用者の責務)

第四条 特定飛行場の設置者はこの法律の規定による措置、航空機の騒音により生ずる障害の防止に必要な施設の整備等を行なうことにより、航空機の離陸又は着陸のため特定飛行場を使用する者は航空機の航行の方法の改善、特定飛行場の設置者が行なう措置に要する費用の負担等を行なうことにより、ともに特定飛行場の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止等に努めなければならない。

 (騒音防止工事の助成)

第五条 特定飛行場の設置者は、地方公共団体その他の者が当該飛行場の周辺における航空機の騒音により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、次の施設について必要な工事を行なうときは、その者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の全部又は一部を補助するものとする。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校

 二 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条第一項に規定する病院

 三 前二号の施設に類する施設で政令で定めるもの

 (共同利用施設の助成)

第六条 特定飛行場の設置者は、当該飛行場の周辺地域をその区域とする市(特別区を含む。以下同じ。)町村で航空機の騒音によりその周辺地域の住民の生活が著しく阻害されていると認められるものが、その障害の緩和に資するため、学習、集会等の用に供するための施設その他の一般住民の生活に必要な共同利用施設で政令で定めるものの整備について必要な措置をとるときは、当該市町村に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の一部を補助することができる。

 (資金の融通等)

第七条 国は、第五条の工事を行なう者又は前条の措置をとる市町村に対し、必要な資金の融通又はあつせんその他の援助に努めるものとする。

 (国の普通財産の譲渡等)

第八条 国は、第五条の工事又は第六条の措置に係る事業の用に供するため必要があると認めるときは、地方公共団体その他の者に対し、普通財産を譲渡し、又は貸し付けることができる。

 (移転の補償等)

第九条 運輸大臣は、特定飛行場の周辺における住民のこうむる障害の軽減に資するため、当該飛行場の周辺の一定の区域を、政令で定めるところにより、指定することができる。

2 特定飛行場の設置者は、政令で定めるところにより、前項の指定の際現にその指定に係る区域(以下「指定区域」という。)に所在する建物、立木竹その他土地に定着する物件(以下「建物等」という。)の所有者が当該建物等を指定区域以外の区域に移転し、又は除却するときは、当該建物等の所有者及び当該建物等に関する所有権以外の権利を有する者に対し、予算の範囲内において、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償することができる。

3 特定飛行場の設置者は、政令で定めるところにより、指定区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときは、予算の範囲内において、当該土地を買い入れることができる。

 (損失の補償)

第十条 特定飛行場の設置者は、政令で定めるところにより、当該飛行場における航空機の離陸又は着陸のひん繁な実施により、従来適法に農業その他政令で定める事業を営んでいた者がその事業の経営上損失をこうむつたときは、その損失を補償する。

2 前項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失とする。

 (損失補償の申請)

第十一条 前条の規定による損失の補償(新東京国際空港に係るものを除く。)を受けようとする者は、運輸省令で定めるところにより、その者の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、損失補償申請書を運輸大臣に提出しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の申請書を受理したときは、その意見を記載した書面を当該申請書に添えて、これを運輸大臣に送付しなければならない。

3 運輸大臣は、前項の書類を受理したときは、補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には補償金の額を決定し、遅滞なく、これを都道府県知事を経由して当該申請者に通知しなければならない。

 (異議の申出)

第十二条 前条第三項の規定による決定に不服がある者は、同項の通知を受けた日の翌日から起算して三十日以内に、運輸省令で定める手続に従い、運輸大臣に対して異議を申し出ることができる。

2 運輸大臣は、前項の規定による申出があつたときは、その申出のあつた日の翌日から起算して三十日以内にあらためて補償すべき損失の有無及び損失を補償すべき場合には補償金の額を決定し、これを申出人に通知しなければならない。

 (補償金の交付)

第十三条 政府は、前条第一項の規定による異議の申出がないときは、同項の期間の満了の日の翌日から起算して三十日以内に、同項の規定による異議の申出があつた場合において同条第二項の規定による決定があつたときは、同項の通知の日の翌日から起算して三十日以内に、補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付する。

 (増額請求の訴え)

第十四条 第十二条第二項の規定による決定に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から三月以内に、訴えをもつてその増額を請求することができる。

2 前項の訴えにおいては、国を被告とする。

 (争訟の方式)

第十五条 第十一条第三項の規定による決定に不服がある者は、第十二条第一項及び前条第一項の規定によることによつてのみ争うことができる。

 (新東京国際空港に係る損失補償の手続等)

第十六条 新東京国際空港に係る第十条の規定による損失の補償については、当事者間の協議により定める。協議がととのわないとき、又は協議することができないときは、当事者は、運輸大臣の裁定を申請することができる。

2 運輸大臣は、前項の規定による裁定の申請を受理したときは、その旨を他の当事者に通知し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えなければならない。

3 運輸大臣は、第一項の裁定をしたときは、遅滞なく、その旨を当事者に通知しなければならない。

4 損失の補償をすべき旨を定める裁定においては、補償金の額並びにその支払の時期及び方法を定めなければならない。

第十七条 前条第一項の裁定のうち補償金の額について不服のある者は、その裁定の通知を受けた日から三月以内に、訴えをもつてその金額の増減を請求することができる。

2 前項の訴えにおいては、他の当事者を被告とする。

3 前条第一項の裁定についての異議申立てにおいては、補償金の額についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。

4 前条第一項の裁定のうち補償金の額について不服がある者は、第一項の規定によることによつてのみ争うことができる。

 (罰則)

第十八条 航空機乗組員が第三条第三項の規定に違反して、航空機を運航したときは、一万円以下の罰金に処する。

2 機長以外の航空機乗組員が前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、機長に対して、同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律の一部改正)

2 日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律(昭和二十八年法律第二百四十六号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「日本国内にある国際連合の軍隊」の下に「(以下「アメリカ合衆国軍隊等」と総称する。)」を加える。

  本則に次の一条を加える。

  (アメリカ合衆国軍隊等及び自衛隊の航空機以外の航空機の離着陸に対する適用)

 第七条 第一条第一項の規定の適用については、アメリカ合衆国軍隊等及び自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第一項に規定する自衛隊の航空機以外の航空機の離陸及び着陸であつて、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条又は日本国における国際連合軍隊の地位に関する協定第五条の規定によりアメリカ合衆国軍隊等が使用する飛行場を使用して行なわれるものは、アメリカ合衆国軍隊等の航空機の離陸及び着陸とみなす。

4

 (新東京国際空港公団法の一部改正)

3 新東京国際空港公団法(昭和四十年法律第百十五号)の一部を次のように改正する。

  第三十四条の次に次の一条を加える。

  (補助金等)

 第三十四条の二 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)の規定(罰則を含む。)は、公団の補助金等及び間接補助金等に関し準用する。この場合において、同法(第二条第七項を除く。)中「各省各庁」とあるのは「新東京国際空港公団」と、「各省各庁の長」とあるのは「新東京国際空港公団の総裁」と、第二条、第七条及び第十九条中「国」とあるのは「新東京国際空港公団」と読み替えるものとする。

 (防衛施設周辺の整備等に関する法律の一部改正)

4 防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第三章 損失の補償(第九条―第十四条)」を

第三章 損失の補償(第九条―第十四条)

第四章 雑則(第十五条)

 に改める。

  第五条第一項中「使用する飛行場」の下に「(公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和四十二年法律第百十号)第二条に規定する特定飛行場を除く。)」を加える。

  本則に次の一章を加える。

    第四章 雑則

  (自衛隊等の航空機以外の航空機の離着陸に対する適用)

 第十五条 第三条第二項の規定の適用については、自衛隊等の航空機以外の航空機の離陸及び着陸で防衛施設たる飛行場を使用して行なわれるものは、自衛隊等の航空機の離陸及び着陸とみなし、第九条第一項の規定の適用については、自衛隊等の航空機以外の航空機の離陸及び着陸で自衛隊の設置する飛行場を使用して行なわれるものは、自衛隊の航空機の離陸及び着陸とみなす。

(内閣総理・法務・大蔵・運輸大臣署名) 

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