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法律第百十号(平九・一二・五)

  ◎内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律

 (目的)

第一条 この法律は、納税義務者の外国為替その他の対外取引及び国外にある資産の国税当局による把握に資するため、国外送金等に係る調書の提出等に関する制度を整備し、もって所得税、法人税、相続税その他の内国税の適正な課税の確保を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 国内 この法律の施行地をいう。

 二 国外 この法律の施行地外の地域をいう。

 三 金融機関 銀行その他の政令で定める金融機関をいう。

 四 国外送金 金融機関又は郵政官署が行う為替取引によってされる国内から国外へ向けた支払(輸入貨物に係る荷為替手形その他の大蔵省令で定める書類に基づく取立てによるものを除く。)をいう。

 五 国外からの送金等の受領 金融機関若しくは郵政官署が行う為替取引によってされる国外から国内へ向けた支払の受領(輸出貨物に係る荷為替手形その他の大蔵省令で定める書類に基づく取立てによるものを除く。)又は金融機関が行う小切手、為替手形その他これらに準ずるもの(国外において支払がされるものに限る。)の買取りに係る対価の受領(輸出貨物に係る荷為替手形その他の大蔵省令で定める書類の買取りに係るものを除く。)をいう。

 六 郵便局等 郵便局及び貯金事務センターをいう。

 七 本人口座 金融機関の営業所若しくは事務所(国内にあるものに限る。以下「営業所等」という。)又は郵便局等に本人の名義で開設されている預金又は貯金の口座(これらの口座に類する口座として大蔵省令で定める口座を含む。)で、当該金融機関の営業所等の長又は郵便局等の長が、政令で定めるところによりその本人の氏名又は名称及び住所(国内に住所を有しない者にあっては、大蔵省令で定める場所)を確認しているものをいう。

 (国外送金等をする者の告知書の提出等)

第三条 国外送金又は国外からの送金等の受領をする者(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第一に掲げる法人、銀行、証券業者その他の政令で定めるもの(次条第一項において「公共法人等」という。)を除く。)は、その国外送金又は国外からの送金等の受領(以下「国外送金等」という。)がそれぞれ特定送金又は特定受領に該当する場合を除き、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める事項を記載した告知書を、その国外送金等をする際、その国外送金等に係る為替取引若しくは買取り(前条第五号に規定する買取りをいう。以下この項において同じ。)に係る金融機関の営業所等(以下この条において「国外送金等に係る金融機関の営業所等」という。)又はその国外送金等に係る為替取引に係る郵便局等の長に対し(当該国外送金等に係る為替取引又は買取りが当該国外送金等に係る金融機関の営業所等以外の金融機関の営業所等の長による取次ぎその他の政令で定める行為に基づいて行われる場合には、当該行為をする金融機関の営業所等の長(以下「取次ぎ等に係る金融機関の営業所等の長」という。)を経由して、当該国外送金等に係る金融機関の営業所等の長に対し)提出しなければならない。この場合において、当該告知書の提出をする者は、当該告知書の提出をする金融機関の営業所等又は郵便局等の長(取次ぎ等に係る金融機関の営業所等の長を経由して当該告知書の提出をする場合には、当該取次ぎ等に係る金融機関の営業所等の長。以下この項において同じ。)にその者の住民票の写し、法人の登記簿の抄本その他の政令で定める書類を提示しなければならないものとし、当該告知書の提出を受ける金融機関の営業所等又は郵便局等の長は、当該告知書に記載されている氏名又は名称及び住所(国内に住所を有しない者にあっては、大蔵省令で定める場所。以下この項及び次条第一項において同じ。)を当該書類により確認しなければならないものとする。

 一 国外送金をする場合 その者の氏名又は名称及び住所、当該国外送金の原因となる取引又は行為の内容(次条第一項第一号において「送金原因」という。)その他の大蔵省令で定める事項

 二 国外からの送金等の受領をする場合 その者の氏名又は名称及び住所その他の大蔵省令で定める事項

2 前項に規定する特定送金とは第一号に掲げる国外送金をいい、同項に規定する特定受領とは第二号に掲げる国外からの送金等の受領をいう。

 一 その国外送金をする者の本人口座からの振替によりされる国外送金その他これに準ずる国外送金として政令で定めるもの

 二 その国外からの送金等の受領をする者の本人口座においてされる国外からの送金等の受領その他これに準ずる国外からの送金等の受領として政令で定めるもの

3 第一項前段の場合において、同項の告知書が取次ぎ等に係る金融機関の営業所等の長に受理されたときは、当該告知書は、その受理された時に国外送金等に係る金融機関の営業所等の長に提出されたものとみなす。

4 前項に定めるもののほか、第一項の告知書の提出の特例その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 (国外送金等調書の提出)

第四条 金融機関又は郵政官署は、その顧客(公共法人等を除く。以下この項において同じ。)が当該金融機関の営業所等又は郵便局等を通じてする国外送金等(その金額が政令で定める金額以下のものを除く。)に係る為替取引を行ったときは、その国外送金等ごとに次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める事項を記載した調書(以下「国外送金等調書」という。)を、その為替取引を行った日として大蔵省令で定める日の属する月の翌月末日までに、当該為替取引に係る金融機関の営業所等又は郵便局等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。

 一 国外送金の場合 その国外送金をした顧客の氏名又は名称、当該顧客の住所、その国外送金をした金額、その国外送金に係る前条第一項の告知書に記載されている送金原因その他の大蔵省令で定める事項

 二 国外からの送金等の受領の場合 その国外からの送金等の受領をした顧客の氏名又は名称、当該顧客の住所(国外からの送金等の受領がその者の本人口座においてされた場合には、住所又は当該本人口座が開設されている金融機関の営業所等若しくは郵便局等の名称及び所在地並びに当該本人口座の種類及び番号)、その国外からの送金等の受領をした金額その他の大蔵省令で定める事項

2 金融機関又は郵政官署は、政令で定めるところにより税務署長の承認を受けた場合には、前項の規定により調書に記載すべきものとされる事項を記録した磁気テープその他の大蔵省令で定める記録用の媒体(以下この項において「磁気テープ等」という。)の提出をもって前項の規定による調書の提出に代えることができる。この場合において、当該磁気テープ等については、これを国外送金等調書とみなして、この法律の規定を適用する。

3 前項に定めるもののほか、国外送金等調書の提出の特例その他第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 (当該職員の質問検査権)

第五条 国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、国外送金等調書の提出に関する調査について必要があるときは、当該国外送金等調書を提出する義務がある者(当該国外送金等調書に係る取次ぎ等に係る金融機関の営業所等の長を含む。)に質問し、又はその者の国外送金等に係る為替取引に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。

2 国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、前項の規定による質問又は検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (経過措置)

第六条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (罰則)

第七条 次の各号に掲げる違反があった場合においては、その違反行為をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項の告知書を国外送金等の際に金融機関の営業所等若しくは郵便局等の長に提出せず、又は当該告知書に偽りの記載をして金融機関の営業所等若しくは郵便局等の長に提出したとき。

 二 国外送金等調書をその提出期限までに税務署長に提出せず、又は国外送金等調書に偽りの記載若しくは記録をして税務署長に提出したとき。

 三 第五条第一項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

 四 第五条第一項の規定による検査に関し偽りの記載をした帳簿書類を提示したとき。

第八条 国外送金等調書の提出に関する調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、これを二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第九条 法人(人格のない社団等(法人税法第二条第八号に規定する人格のない社団等をいう。以下この条において同じ。)を含む。以下この項において同じ。)の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第七条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の罰金刑を科する。

2 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十年四月一日から施行する。

 (国外送金等調書の提出に関する経過措置)

第二条 第四条の規定は、平成十年四月一日以後にされる国外送金等について適用する。

(大蔵・内閣総理大臣署名) 

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