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法律第九十四号(平二六・六・二七)

  ◎小規模企業振興基本法

目次

 第一章 総則(第一条−第十二条)

 第二章 小規模企業振興基本計画(第十三条)

 第三章 小規模企業の振興に関する基本的施策(第十四条−第二十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)の基本理念にのっとり、小規模企業の振興について、その基本原則、基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、小規模企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「小規模企業者」とは、中小企業基本法第二条第五項に規定する小規模企業者をいう。

2 この法律において「小企業者」とは、おおむね常時使用する従業員の数が五人以下の事業者をいう。

 (基本原則)

第三条 小規模企業の振興は、人口構造の変化、国際化及び情報化の進展等の経済社会情勢の変化に伴い、国内の需要が多様化し、若しくは減少し、雇用や就業の形態が多様化し、又は地域の産業構造が変化する中で、顧客との信頼関係に基づく国内外の需要の開拓、創業等を通じた個人の能力の発揮又は自立的で個性豊かな地域社会の形成において小規模企業の活力が最大限に発揮されることの必要性が増大していることに鑑み、個人事業者をはじめ自己の知識及び技能を活用して多様な事業を創出する小企業者が多数を占める我が国の小規模企業について、多様な主体との連携及び協働を推進することによりその事業の持続的な発展が図られることを旨として、行われなければならない。

第四条 小規模企業の振興に当たっては、小企業者がその経営資源を有効に活用し、その活力の向上が図られ、その円滑かつ着実な事業の運営が確保されるよう考慮されなければならない。

 (国の責務)

第五条 国は、前二条の小規模企業の振興についての基本原則(以下「基本原則」という。)にのっとり、小規模企業の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 国の関係行政機関は、小規模企業の振興及びこれに関連する施策の円滑かつ確実な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。

3 国は、小規模企業に関する情報の提供等を通じて、基本原則に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。

 (基本方針)

第六条 政府は、次に掲げる基本方針に基づき、小規模企業の振興に関する施策を講ずるものとする。

 一 国内外の多様な需要に応じた商品の販売又は役務の提供の促進及び新たな事業の展開の促進を図ること。

 二 小規模企業の経営資源の有効な活用並びに小規模企業に必要な人材の育成及び確保を図ること。

 三 地域経済の活性化並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に資する小規模企業の事業活動の推進を図ること。

 四 小規模企業への適切な支援を実施するための支援体制の整備その他必要な措置を図ること。

 (地方公共団体の責務)

第七条 地方公共団体は、基本原則にのっとり、小規模企業の振興に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 地方公共団体は、小規模企業が地域経済の活性化並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に資する事業活動を通じ自立的で個性豊かな地域社会の形成に貢献していることについて、地域住民の理解を深めるよう努めなければならない。

 (小規模企業者の努力等)

第八条 小規模企業者は、経済社会情勢の変化に即応してその事業の持続的な発展を図るため、自主的にその円滑かつ着実な事業の運営を図るよう努めるとともに、相互に連携を図りながら協力することにより、自ら小規模企業の振興に取り組むよう努めるものとする。

2 中小企業に関する団体は、小規模企業者に対してその事業活動を行うに当たっては、基本原則にのっとり、小規模企業者とともに、小規模企業の振興に主体的に取り組むよう努めるものとする。

3 小規模企業者以外の者であって、その事業に関し小規模企業と関係があるものは、国及び地方公共団体が行う小規模企業の振興に関する施策の実施について協力するようにしなければならない。

 (関係者相互の連携及び協力)

第九条 国、地方公共団体、独立行政法人中小企業基盤整備機構、中小企業に関する団体その他の関係者は、基本原則にのっとり、小規模企業の振興に関する施策があまねく全国において効果的かつ効率的に実施されるよう、適切な役割分担を行うとともに、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

 (法制上の措置等)

第十条 政府は、小規模企業の振興に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。

 (調査)

第十一条 政府は、中小企業政策審議会の意見を聴いて、定期的に、小規模企業の実態を明らかにするため必要な調査を行い、その結果を公表しなければならない。

 (年次報告等)

第十二条 政府は、毎年、国会に、小規模企業の動向及び政府が小規模企業の振興に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、中小企業政策審議会の意見を聴いて、前項の報告に係る小規模企業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

   第二章 小規模企業振興基本計画

第十三条 政府は、小規模企業の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、小規模企業振興基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 小規模企業の振興に関する施策についての基本的な方針

 二 小規模企業の振興に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

 三 前二号に掲げるもののほか、小規模企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 政府は、第一項の規定により基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、小規模企業者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、中小企業政策審議会の意見を聴かなければならない。

4 政府は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

5 政府は、小規模企業をめぐる情勢の変化を勘案し、及び小規模企業の振興に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、基本計画を変更するものとする。

6 第三項及び第四項の規定は、基本計画の変更について準用する。

   第三章 小規模企業の振興に関する基本的施策

 (国内外の多様な需要に応じた商品の販売又は役務の提供の促進)

第十四条 国は、小規模企業による国内外の多様な需要に応じた商品の販売又は役務の提供を促進するため、商談会、展示会、即売会その他これらに類するものの開催の促進、事業活動を行う拠点の整備の促進、情報通信技術の活用に関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (国内外の多様な需要に応じた新たな事業の展開の促進)

第十五条 国は、小規模企業が、国内外の多様な需要に応じて、自らが販売する商品又は提供する役務の価値を高め、又はその新たな価値を生み出すことにより、新たな事業の創出又は事業の革新を図るとともにその事業の展開を図ることに資するため、小規模企業の経営の状況の分析並びにそれに基づく指導及び助言の促進、小規模企業が販売する商品又は提供する役務の需要の動向に関する情報の収集、整理、分析及び提供の促進、新たな需要の開拓に必要な資金の円滑な供給その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (小規模企業の創業の促進及び小規模企業者の事業の承継又は廃止の円滑化)

第十六条 国は、小規模企業の創業を促進するため、創業に関する情報の提供の促進及び研修の充実、創業に必要な資金の円滑な供給、創業を支援する体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、小規模企業者の事業の承継又は廃止の円滑化を図るため、事業の承継又は廃止の円滑化に関する情報の提供の促進及び研修の充実、事業の承継のための制度の整備、小規模企業に関して実施する共済制度の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

3 国は、前二項の施策を講ずるに当たっては、創業及び事業の承継又は廃止が相互に密接な関連を有する場合があることに鑑み、必要に応じて、これらの施策相互の有機的な連携を図りつつ効果的に講ずるよう努めるものとする。

 (小規模企業に必要な人材の育成及び確保)

第十七条 国は、小規模企業の経営を担うべき女性や青年を含む多様な人材の育成及び確保を図るため、小規模企業の事業活動に有用な技能及び知識並びに経営管理能力の向上、創業を行おうとする者及び小規模企業の事業の譲渡を受けようとする者に対する技能及び知識の継承の支援並びに経営方法の習得の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、小規模企業に必要な労働力の確保を図るため、地方公共団体又は大学、高等専門学校、高等学校その他の教育機関と連携した職業能力の開発及び職業紹介の事業の充実、小規模企業の事業活動に関する広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (地域経済の活性化に資する小規模企業の事業活動の推進)

第十八条 国は、小規模企業が単独で又は共同して行う事業活動であって、地域経済の活性化に資するものを推進するため、小規模企業者と小規模企業者以外の者の交流又は連携の推進、小規模企業者と小規模企業者以外の者が共同して行う事業の助成その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (地域住民の生活の向上及び交流の促進に資する小規模企業の事業活動の推進)

第十九条 国は、小規模企業が単独で又は共同して行う事業活動であって、地域住民の生活の向上及び交流の促進に資するものを推進するため、小規模企業が地域の住民の生活に関する需要に応じて行う商品の販売若しくは役務の提供又は商店街その他の商業の集積の活性化に必要な資金の円滑な供給、助言、情報の提供、普及宣伝の強化その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (適切な支援体制の整備)

第二十条 国は、小規模企業がその事業の持続的な発展を図るための支援を適切に受けられるよう、独立行政法人中小企業基盤整備機構及び中小企業に関する団体その他の関係者と協力しつつ小規模企業を支援する体制の整備を図るため、これらの者が小規模企業の支援を行うに当たり達成すべき目標を明確化することの促進、これらの者相互間又はこれらの者と地方公共団体若しくは地域住民等との間での連携及び協力の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (手続に係る負担の軽減)

第二十一条 国は、小規模企業の振興に関する施策を実施するに当たっては、その実施に際して必要となる手続について簡素化又は合理化その他の措置を講ずることにより小規模企業者の負担の軽減を図るよう努めるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

2 政府は、この法律の施行後十年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (中小企業基本法の一部改正)

3 中小企業基本法の一部を次のように改正する。

  第二十九条第三項中「及び産業競争力強化法」を「、産業競争力強化法」に改め、「(平成二十五年法律第九十八号)」の下に「及び小規模企業振興基本法(平成二十六年法律第九十四号)」を加える。

(総務・財務・厚生労働・農林水産臨時代理・経済産業・国土交通臨時代理・内閣総理大臣署名)

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