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法律第五十一号(令二・六・一二)

  ◎公益通報者保護法の一部を改正する法律

 公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)の一部を次のように改正する。

 題名の次に次の目次及び章名を付する。

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等(第三条−第十条)

 第三章 事業者がとるべき措置等(第十一条−第十四条)

 第四章 雑則(第十五条−第二十条)

 第五章 罰則(第二十一条・第二十二条)

 附則

   第一章 総則

 第一条中「無効等」を「無効及び不利益な取扱いの禁止等」に、「措置」を「措置等」に、「かかわる」を「関わる」に改める。

 第二条第一項中「労働者(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者をいう。以下同じ。)」を「次の各号に掲げる者」に、「その労務提供先(次のいずれかに掲げる」を「当該各号に定める」に、「)をいう。以下同じ。)」を「)(以下「役務提供先」という。)」に、「当該労務提供先」を「当該役務提供先」に改め、「役員」の下に「(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法令(法律及び法律に基づく命令をいう。以下同じ。)の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。)をいう。以下同じ。)」を加え、「労務提供先等」を「役務提供先等」に改め、「行政機関」の下に「若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者(次条第二号及び第六条第二号において「行政機関等」という。)」を、「次条第三号」の下に「及び第六条第三号」を加え、同項各号を次のように改める。

 一 労働者(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者をいう。以下同じ。)又は労働者であった者 当該労働者又は労働者であった者を自ら使用し、又は当該通報の日前一年以内に自ら使用していた事業者(次号に定める事業者を除く。)

 二 派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。第四条において「労働者派遣法」という。)第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)又は派遣労働者であった者 当該派遣労働者又は派遣労働者であった者に係る労働者派遣(同条第一号に規定する労働者派遣をいう。第四条及び第五条第二項において同じ。)の役務の提供を受け、又は当該通報の日前一年以内に受けていた事業者

 三 前二号に定める事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行い、又は行っていた場合において、当該事業に従事し、又は当該通報の日前一年以内に従事していた労働者若しくは労働者であった者又は派遣労働者若しくは派遣労働者であった者 当該他の事業者

 四 役員 次に掲げる事業者

  イ 当該役員に職務を行わせる事業者

  ロ イに掲げる事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合において、当該役員が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者

 第二条第二項中「労働者」を「者」に改め、同条第三項中「次の」の下に「各号の」を加え、同項第一号中「個人」を「この法律及び個人」に、「かかわる」を「関わる」に、「次号」を「以下この項」に改め、「事実」の下に「又はこの法律及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実」を加える。

 第二条の次に次の章名を付する。

   第二章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等

 第三条中「公益通報者」を「労働者である公益通報者」に、「掲げる事業者」を「定める事業者(当該労働者を自ら使用するものに限る。第九条において同じ。)」に改め、同条第一号中「労務提供先等」を「役務提供先等」に改め、同条第二号中「、又は」を「、若しくは」に改め、「場合」の下に「又は通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると思料し、かつ、次に掲げる事項を記載した書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。次号ホにおいて同じ。)を提出する場合」を加え、「行政機関」を「行政機関等」に改め、同号に次のように加える。

  イ 公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所

  ロ 当該通報対象事実の内容

  ハ 当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由

  ニ 当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由

 第三条第三号ホ中「又は身体に危害」を「若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。以下このヘにおいて同じ。)の財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る。第六条第二号ロ及び第三号ロにおいて同じ。)」に改め、同号ホを同号ヘとし、同号ニ中「(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)」を削り、「労務提供先等」を「役務提供先等」に改め、同号ニを同号ホとし、同号ハ中「労務提供先」を「役務提供先」に改め、同号ハを同号ニとし、同号ロの次に次のように加える。

  ハ 第一号に定める公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合

 第四条中「掲げる」を「定める」に、「事業者の」を「事業者(当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けるものに限る。以下この条及び次条第二項において同じ。)の」に、「同項第二号」を「第二条第一項第二号」に改める。

 第五条第一項中「掲げる」を「定める」に改め、「減給」の下に「、退職金の不支給」を加え、同条第二項中「掲げる」を「定める」に改め、同条に次の一項を加える。

3 第二条第一項第四号に定める事業者(同号イに掲げる事業者に限る。次条及び第八条第四項において同じ。)は、その職務を行わせ、又は行わせていた公益通報者が次条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、報酬の減額その他不利益な取扱い(解任を除く。)をしてはならない。

 第十一条を第十四条とする。

 第十条第一項中「公益通報者」を「通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関は、公益通報者」に改め、「第三条第二号」の下に「及び第六条第二号」を加え、「行政機関」を「場合に」に改め、同条第二項中「前項の公益通報」を「第一項の公益通報」に、「、前項」を「、前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

2 通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関(第二条第四項第一号に規定する職員を除く。)は、前項に規定する措置の適切な実施を図るため、第三条第二号及び第六条第二号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。

 第十条を第十三条とし、第九条を削る。

 第八条中「第三条各号」の下に「及び第六条各号」を加え、「労働者」を「者」に改め、同条を第十条とし、同条の次に次の章名及び二条を加える。

   第三章 事業者がとるべき措置等

 (事業者がとるべき措置)

第十一条 事業者は、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(次条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者(次条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。

2 事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。

3 常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。

4 内閣総理大臣は、第一項及び第二項(これらの規定を前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。

5 内閣総理大臣は、指針を定めようとするときは、あらかじめ、消費者委員会の意見を聴かなければならない。

6 内閣総理大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

7 前二項の規定は、指針の変更について準用する。

 (公益通報対応業務従事者の義務)

第十二条 公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。

 第七条中「一般職の国家公務員等の任命権者その他の」を削り、「掲げる」を「定める」に改め、同条を第九条とする。

 第六条第一項中「前三条」を「第三条から前条まで」に、「労働者又は派遣労働者」を「第二条第一項各号に掲げる者」に改め、「(法律及び法律に基づく命令をいう。第十条第一項において同じ。)」を削り、同条第三項中「前条第一項」を「第五条第一項」に改め、同条に次の一項を加える。

4 第六条の規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として第二条第一項第四号に定める事業者から役員を解任された者が当該事業者に対し解任によって生じた損害の賠償を請求することができる旨の他の法令の規定の適用を妨げるものではない。

 第六条を第八条とし、第五条の次に次の二条を加える。

 (役員を解任された場合の損害賠償請求)

第六条 役員である公益通報者は、次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として第二条第一項第四号に定める事業者から解任された場合には、当該事業者に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

 一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該役務提供先等に対する公益通報

 二 次のいずれかに該当する場合 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関等に対する公益通報

  イ 調査是正措置(善良な管理者と同一の注意をもって行う、通報対象事実の調査及びその是正のために必要な措置をいう。次号イにおいて同じ。)をとることに努めたにもかかわらず、なお当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合

  ロ 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。)の財産に対する損害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 三 次のいずれかに該当する場合 その者に対し通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報

  イ 調査是正措置をとることに努めたにもかかわらず、なお当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合

   (1) 前二号に定める公益通報をすれば解任、報酬の減額その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

   (2) 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

   (3) 役務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

  ロ 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。)の財産に対する損害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 (損害賠償の制限)

第七条 第二条第一項各号に定める事業者は、第三条各号及び前条各号に定める公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して、賠償を請求することができない。

 本則に次の二章を加える。

   第四章 雑則

 (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)

第十五条 内閣総理大臣は、第十一条第一項及び第二項(これらの規定を同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業者に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

 (公表)

第十六条 内閣総理大臣は、第十一条第一項及び第二項の規定に違反している事業者に対し、前条の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

 (関係行政機関への照会等)

第十七条 内閣総理大臣は、この法律の規定に基づく事務に関し、関係行政機関に対し、照会し、又は協力を求めることができる。

 (内閣総理大臣による情報の収集、整理及び提供)

第十八条 内閣総理大臣は、公益通報及び公益通報者の状況に関する情報その他その普及が公益通報者の保護及び公益通報の内容の活用による国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守に資することとなる情報の収集、整理及び提供に努めなければならない。

 (権限の委任)

第十九条 内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。

 (適用除外)

第二十条 第十五条及び第十六条の規定は、国及び地方公共団体に適用しない。

   第五章 罰則

第二十一条 第十二条の規定に違反して同条に規定する事項を漏らした者は、三十万円以下の罰金に処する。

第二十二条 第十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

 別表第八号中「かかわる」を「関わる」に改める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から施行する。

 (経過措置)

第二条 この法律による改正後の公益通報者保護法(以下「新法」という。)の規定は、この法律の施行後にされる新法第二条第一項に規定する公益通報について適用し、この法律の施行前にされたこの法律による改正前の公益通報者保護法第二条第一項に規定する公益通報については、なお従前の例による。

第三条 内閣総理大臣は、この法律の施行前においても、新法第十一条第四項から第七項までの規定の例により、事業者がとるべき措置に関する指針を定めることができる。

2 前項の規定により定められた指針は、この法律の施行の日において新法第十一条第四項の規定により定められたものとみなす。

 (政令への委任)

第四条 前二条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

 (検討)

第五条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、新法の施行の状況を勘案し、新法第二条第一項に規定する公益通報をしたことを理由とする同条第二項に規定する公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置の在り方及び裁判手続における請求の取扱いその他新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (消費者庁及び消費者委員会設置法の一部改正)

第六条 消費者庁及び消費者委員会設置法(平成二十一年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第二十二号中「に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進」を削る。

  第六条第二項第四号中「及び国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)」を「、国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)及び公益通報者保護法」に改める。

(内閣総理大臣署名) 

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