衆議院

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第19号 平成17年6月3日(金曜日)

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平成十七年六月三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      秋葉 賢也君    井上 信治君

      小野 晋也君    左藤  章君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      谷  公一君    葉梨 康弘君

      浜田 靖一君    松島みどり君

      水野 賢一君    柳本 卓治君

      加藤 公一君    城井  崇君

      佐々木秀典君    松野 信夫君

      松本 大輔君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           片桐  裕君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    麻生 光洋君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           高橋  満君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     浜田 靖一君

  柳澤 伯夫君     葉梨 康弘君

  小林千代美君     城井  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     柳澤 伯夫君

  浜田 靖一君     井上 信治君

  城井  崇君     小林千代美君

    ―――――――――――――

五月十八日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(中川治君紹介)(第一三四四号)

 同(藤田幸久君紹介)(第一三八七号)

 女性の人権確立を目指す法制定に関する請願(石井郁子君紹介)(第一三四五号)

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(金田誠一君紹介)(第一三八八号)

 同(城島正光君紹介)(第一三八九号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一三九〇号)

 同(藤田幸久君紹介)(第一三九一号)

 同(細川律夫君紹介)(第一三九二号)

 同(牧野聖修君紹介)(第一三九三号)

 同(松崎哲久君紹介)(第一三九四号)

 同(松野信夫君紹介)(第一三九五号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第一三九六号)

 同(伊藤忠治君紹介)(第一四二八号)

 同(池田元久君紹介)(第一四二九号)

 同(岸本健君紹介)(第一四三〇号)

 同(小林千代美君紹介)(第一四三一号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第一四三二号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一四三三号)

 同(田中慶秋君紹介)(第一四三四号)

 同(寺田学君紹介)(第一四三五号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第一四三六号)

 同(藤村修君紹介)(第一四三七号)

 同(松崎公昭君紹介)(第一四三八号)

 同(松野信夫君紹介)(第一四三九号)

 同(松本龍君紹介)(第一四四〇号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一四六四号)

 同(海江田万里君紹介)(第一四六五号)

 同(北橋健治君紹介)(第一四六六号)

 同(小泉俊明君紹介)(第一四六七号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第一四六八号)

 同(篠原孝君紹介)(第一四六九号)

 同(島田久君紹介)(第一四七〇号)

 同(手塚仁雄君紹介)(第一四七一号)

 同(永田寿康君紹介)(第一四七二号)

 同(羽田孜君紹介)(第一四七三号)

 同(細野豪志君紹介)(第一四七四号)

 同(堀込征雄君紹介)(第一四七五号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一四七六号)

 同(松木謙公君紹介)(第一四七七号)

 同(横光克彦君紹介)(第一四七八号)

 国籍法の改正に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一四二七号)

六月三日

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(稲見哲男君紹介)(第一四八八号)

 同(岩國哲人君紹介)(第一四八九号)

 同(大出彰君紹介)(第一四九〇号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一四九一号)

 同(鹿野道彦君紹介)(第一四九二号)

 同(小林憲司君紹介)(第一四九三号)

 同(近藤洋介君紹介)(第一四九四号)

 同(田島一成君紹介)(第一四九五号)

 同(中川正春君紹介)(第一四九六号)

 同(大谷信盛君紹介)(第一五〇四号)

 同(中村哲治君紹介)(第一五〇五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一五〇六号)

 同(計屋圭宏君紹介)(第一五〇七号)

 同(篠原孝君紹介)(第一五一三号)

 同(土井たか子君紹介)(第一五一四号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第一五二四号)

 同(奥田建君紹介)(第一五二五号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一五二六号)

 同(横路孝弘君紹介)(第一五二七号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第一五三七号)

 同(古川元久君紹介)(第一五三八号)

 同(鈴木康友君紹介)(第一五六五号)

 同(中川治君紹介)(第一五六六号)

 同(樋高剛君紹介)(第一六二一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一六六五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一六六六号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第一六六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六六八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一六六九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六七〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六七二号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一六七三号)

 同(山口富男君紹介)(第一六七四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一六七五号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(武山百合子君紹介)(第一五一二号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第一五三六号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第一六六四号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(津川祥吾君紹介)(第一五二二号)

 同(辻惠君紹介)(第一五二三号)

 同(上川陽子君紹介)(第一五三九号)

 同(笹川堯君紹介)(第一五四〇号)

 同(仙谷由人君紹介)(第一五四一号)

 同(伴野豊君紹介)(第一五四二号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第一五六七号)

 同(樽井良和君紹介)(第一五六八号)

 同(松野信夫君紹介)(第一六二二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一六七六号)

 同(石井郁子君紹介)(第一六七七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六七八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一六七九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六八〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六八一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六八二号)

 同(松本大輔君紹介)(第一六八三号)

 同(山口富男君紹介)(第一六八四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一六八五号)

 同(園田博之君紹介)(第一七一七号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(辻惠君紹介)(第一六六三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七五号)(参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長寺田逸郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上信治君。

井上(信)委員 おはようございます。自由民主党の井上信治です。

 本日は、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の改正案ということで、これは九六年の国際条約の批准に伴う国内法の整備ということでありますけれども、そもそも、所有者の責任制限ということでありまして、船主責任、そしてまた被害者の保護ということで、その相矛盾するような利益をどのように調整を図っていくのか、ひいては、我が国の海運産業の保護も図っていく、被害者の保護も図っていかなきゃいけないということで、それに関する法律だというふうに理解をしております。

 御承知のように、とにかく、我が国というのは海運国家と言って過言でないというふうに思っております。国際物流の九九%を外航船物流が占める、あるいは国内物流においても四割を内航船物流が占めるということで、日本経済を左右するような、そんな海運産業の帰趨であるというふうに思っております。

 そうした中で、我が国も国際的な努力をして、九六年の条約の改正ということに御尽力をいただいたわけでありますけれども、今回は、七六年条約から九六年条約に伴って責任制限というものの上限額を引き上げたということで、これはむしろ被害者保護にも資する改正になっているわけであります。

 こういったことで、相反する利益をどのように調整して今回の条約改正あるいは国内法の改正に当たったかということ、大臣の方から今回の改正案の趣旨についてお伺いしたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 お尋ねの件でございますが、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律、いわゆる船責法といいますのは、船主が船舶事故によって損害賠償責任を負った場合に、裁判所への申し立てによりまして、その責任を一定の限度額に制限することができるものとしまして、その限度額や手続等を規定した法律であるわけであります。

 現行の船責法は一九七六年の条約に準拠したものでありますが、この条約における責任限度額の引き上げ等を行う一九九六年の議定書が昨年の五月十三日に発効したために、船舶事故等における被害者の保護の観点から、我が国もこの一九九六年議定書を締結し、それに伴う船責法の整備を行うこととしたものであります。

井上(信)委員 その船責法の趣旨でありますけれども、七六年から九六年に改正をしまして被害者保護の趣旨を強化したということでありますけれども、他方で、まだまだ被害者保護に関しては不十分ではないかというような意見もあるところであります。実際にも、今、海運産業の方は非常に順調な業績を上げているということで、ここまで海運産業の保護の方に重点を置く必要があるのかどうか。

 むしろ、被害者保護という観点からは、ここ五年間においても、損害額が今の責任限度額を超えた代表的な事例が六例ある。そして、その中で、もし今回の改正をなされていたとしても、まだまだ二例については上限額を超えてしまうということで、被害者保護は十分ではないのではないか、そんな意見もあるところであります。

 そういう意味では、当然のことながら、船主というものは単に責任を満たすだけでなくて、きちんと通常は保険を掛けております。ですから、保険制度というものがまさに責任制限の上限の代替になるわけでありますから、そもそもこういった責任制限というものが必要なのかどうか。あるいは、過去の事例においてもすべてカバーできるような、もう少し上限額を引き上げる、そういった考え方もあるところであります。

 もちろんこれは、九六年の条約、この内容を敷衍したものでありますから、それ以上に国内法を改正するということは難しいと思いますけれども、これからの取り組みもあわせて、この点についてどのようにお考えか、御見解を伺いたいと思います。

寺田政府参考人 今委員からお尋ねがありましたとおり、この制度というのはもともと被害者側と加害者側の利害の調節という側面が非常に色濃く出ているところであります。

 元来は日本の商法においても委付制度、つまり、非常に危険な産業の保護という意味もありまして、船の資産を相手方に渡せばそれで責任が免れるという制度からそもそもスタートしたわけでございまして、次第に被害者の保護ということも念頭に置きつつ、金額で責任制限を決め、その金額を次第に引き上げてきた、こういう歴史があるわけでございます。

 おっしゃるとおり、現在のような状況を考えますと、そもそもが全額を被害者にとっては請求できてもおかしくないはずでございますので、そういう方向に進んでいくものだろう、また、我が国として今後、立場を考える上では、そういう方向をむしろ支持していくべきだろうというふうに考えているところでございまして、現に今度の九六年の議定書をつくる際におきましても、旅客の損害について各国がそれぞれ責任制限をしないということを認める手当てができましたけれども、これは、我が国もそれを強く主張した結果、そういうことになっているわけでございます。

 したがいまして、おっしゃるとおり、国際的統一という枠内でできるだけそういう方向を追求していくというのが考え方としては筋ではなかろうかというように思っておるところでございます。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 やはり被害者保護という観点が非常に重大であります。先般のJR西日本福知山線の事故でもわかりますとおり、本当に、大きな事故というものが一度起きてしまうと大変な損害を及ぼしますから、そういった事故が起きないように措置するのは当然のことながら、起きてしまったときにきちんと損害賠償ができるような、そんな制度の枠組みというのが私は大変必要だというふうに思っております。

 そして、そういう意味では、九六年の条約の交渉に関しまして、日本政府の方でしっかり旅客については無限責任というような取り組みをなされたということは、私も大変評価をさせていただきたいというふうに思っております。

 そしてまた、被害者保護という意味ではもう一つポイントがあると私は思っております。責任制限の阻却事由ということでありまして、これは改正法の三条三項にございますけれども、「自己の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為によつて生じた損害に関するもの」、こういったものに関しては責任制限というものを阻却される、こういった規定があるわけであります。

 これはいわば認識ある過失の場合ということでありますけれども、具体的にはどのようなケースが該当するのか、そしてまた、現行法上、この三項による責任制限を阻却された前例があるのか、お聞かせいただきたいと思います。

南野国務大臣 船責法三条三項によりますと、制限債権が、船主等の故意により生じた損害、または船主等が損害の発生のおそれがあることを認識しながら自己の無謀な行為によって生じた損害に関するものであるときは、船主等は責任制限をすることができないことといたしております。

 また、この規定に基づきまして責任制限が認められなかった事例はあるのかというお尋ねでございますが、そのような裁判例はこれまでのところないものと承知いたしております。

井上(信)委員 全くその前例もないということでありますけれども、そういった意味では、被害者保護に重点を置く場合には、この責任制限の阻却事由、これをもう少し拡大した方が適切ではないかというふうに思っております。

 被害者保護、そしてもちろん、その再発防止という意味でも、例えば、事故を頻発する海運会社、こういった海運会社に関しまして、先般も事故を起こしたパナマ船籍の、平成十五年七月に起こした韓国海運会社、この海運会社は実は二年間で五回も海難事故を起こしているということで、これは非常に重大な過失があるような気が私はいたしますけれども、例えばこういったようなケースについて、責任制限阻却事由、こういったものを拡大する必要があるというふうに私は思っておりますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 この責任制限の阻却事由につきましても、そもそも七六年条約をつくる際も、各国でどういう条約の内容にしてこのスキームを統一するかということが焦点になった事項の一つでございます。

 先ほど大臣から申し上げましたように、なかなか具体例というのは、現に起こっている例としてはございませんけれども、当然のことながら、船舶が必ずしも航海にたえられるようなものでない場合に、あえてその船を航海に出させるというような行為も一つ当たるというふうに思われますので、先ほど委員が挙げられました、過去に頻繁に事故を起こしているにもかかわらず何らの手当てもせずにまた航海に出させるというようなことも、一つの判断の材料にはなろうかというふうには理解をいたしております。

 ただ、全体といたしまして、これは何といいましても国際的な統一のスキームでございますし、もともとこの責任制限の阻却事由というものが、船主においては、船長に過失があるかどうかということで責任を負う場合が非常に多くて、自分の過失についてあるかないかを問わず責任を問われるということがもともとあって、そのことが前提になった上で、自分に重大な過失があった場合には責任制限ができない、こういう仕組みになっておりますので、必ずしも一般の過失ということと同等に考えることはやや難しいのではないか。それは別途、今のように、相対的には責任の制限というものを、阻却事由というものがある程度の幅があるということで、認めざるを得ない場合もあるのではないかというふうに思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、この問題も、先ほども申し上げたとおり、国際的な今後の統一をさらに追求するに当たっては、いろいろ検討をしていきたい事項の一つであるというふうに考えております。

井上(信)委員 お答えのとおり、本当に被害者の保護というものは大変重要なものだというふうに思っております。突然の事故で犠牲となられた方、そういった方々の悲しみ、そして怒りというものは本当に甚大なものがあると思います。そういったときに、この制度があることによって、納得ができないような、そんな賠償額であるということは、法の不備につながるのではないかというふうに私は思っております。

 そしてまた、もしそのような、事故を起こしても最大限この賠償金でおさまるということで何か事故の再発というものが頻繁に起こるようであっては、これはもう政府の責任というものも問われかねない、そんな危機感を持っているわけであります。

 もちろん、これは国際条約を受けての国内法の整備ということでありますから、その条約の枠内で大変な限界はあるというふうに思っております。しかし、旅客に関する、国内法で整備することができるといったような、そんな新しいスキームも今回導入したというわけでありますから、ですから、そういった意味で、その限界にとどまることなく、やはりこの国内法というものをしっかりと政府として考えていただきたい。

 そしてまた、あわせて、今後、さらなる国際条約の改正に向けてさまざまな議論がなされると思います。そういったときに、ぜひとも被害者保護の観点ということに重点を置いて政府で取り組みをしていただきたいというふうに思っております。

 本日は、大変ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。おはようございます。

 まず、南野法務大臣にお尋ねしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 この船責法の趣旨というのは、当該船舶の事故によって被害者に対して負う損害賠償について、事故の危険性が高いこと及び責任がしばしば巨額になることから、海運業の保護、奨励に当たる、こういうこととされておりますが、平たく言うと、損害はたくさんあっても全額払う必要はないよ、海運業の業者の保護、奨励のために被害者はちょっと泣いてよね、こういう法律になっているわけですね。

 ただ、海運の危険性が高かった昔ならばいざ知らず、今は技術も発達しておりますし、また保険という制度も大変発達しているわけですから、被害者の保護という観点から見れば、そもそも、今この法律をなおかつ維持していかなきゃならないのかなという基本的な問題があるんですが、法務大臣として、この船責法というのをまだ維持する必要があるんだという、この理由についてお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 先生のお考えもこれありというふうには思いますけれども、責任制限を認める実質的理由といたしましては、第一に、古くから各国において認められているという沿革があります。第二に、海運業が船舶の運航という危険性の大きな業種であり、一たん事故が発生いたしますと企業の採算性や保険への責任転嫁の限界を超える巨額の損害が生じますので、そのような海運業の適正な運営と発展のために必要であること、先生が今お話しになられたことでございます。また第三には、海運業の国際性から考えて、我が国だけが船主責任制限を認めないということは困難であろうかと思っております。

 こういう事柄を挙げることができますが、先生御指摘のとおり、船舶の性能の向上や情報通信技術の発達などがありまして、航海の危険性は船主責任制限制度が誕生した時代よりも低くなっているものと思われますが、そのような危険性が消滅したわけではない。また、他方におきまして、船舶の大型化や貨物の種類の多様化などによりまして、一たん事故が発生した場合の損害は、制度の発足時よりもむしろ大きなものとなっているというふうにも思われております。

 このような事情を勘案いたしますと、船主責任制限制度は、現在もなおその必要性を有しているのではないかというふうに思われるものでございます。

漆原委員 どうもありがとうございました。

 この制度の結果、実際の損害額と支払い額に大きな乖離があるというふうに指摘をされて、被害者の保護に欠けるのではないかという指摘もあるわけでございますが、実際に、平成十五年の七月二日に起きた第十八光洋丸の衝突事故がありました。これでは実際の損害は十二億円というふうに言われておるんですけれども、双方の弁護士が交渉しましたが、この船責法によって、法の上限に近い三億八千万で和解をせざるを得なかったというふうに報道で指摘されております。

 これまでの事故について、この法律によって、実際の損害額全額の支払いがなされていない割合というのは一体どの程度になるのか、教えてもらいたいと思います。

寺田政府参考人 今御指摘ありました平成十五年の事故につきましては、これは、加害船の船主が船主責任相互保険に加入していて、その保険金の支払いというのが責任限度額に抑えられていた、こういう例であろうかと思いますが、損害額が限度額を上回る割合全体はどうなっておるかと申しますと、日本の船主責任相互保険組合における保険金の支払い件数全体、約八千件から九千件の間でございますけれども、そのうち、損害額が責任限度額を超えている、そのために保険金が限度額に抑えられるというのは、ほんのわずか、全体の〇・一%前後であろうというふうに私どもは聞いております。

漆原委員 今回の法改正によって、責任限度額は一体どの程度引き上げられることになるのか、また、今〇・一%と言われましたように、この引き上げによって、実際の損害額が払われるようになる割合、これはどのくらいになるのか、どのように推定されておるのか、お尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 引き上げ幅でございますが、全体がSDR建てになっておりますけれども、五百トンの船につきましては六倍になっておりますが、トン数がふえるに従いまして、上がる割合というのはやや落ちます。全体といたしましては、二倍から三倍に引き上げられるというように御理解をいただきたいところでございます。

 引き上げられた後、その損害額がカバーされる割合はどうなるかということでございますけれども、最近五年間における損害額が責任限度額を超えた代表的な例が、先ほど井上委員の御指摘にもありましたとおり、六例ございます。そのうち四例においては、改正後の限度額が損害額の全体をカバーできるということに改善されるわけでございます。

漆原委員 今回の改正によって、旅客の死傷に係る債権については責任制限を撤廃するというふうになるわけでございますけれども、これはどんな理由によるんでしょうか、お尋ねします。

寺田政府参考人 旅客についての損害でございますが、これは船主といたしましても、おおむね、その契約責任に基づいて、船に乗っている乗客について損害賠償を負う、こういう関係になるわけでございますので、それについては、かねてから、損害が生ずるとしたら一体どのぐらいの損害になるかという見通しがつけやすいわけでございます、一般のケースに比べますと。

 そこで、我が国は、これについては別の扱いをすべきだということでかねてから主張をしていたわけでございまして、ただ、七六年条約のもとにおいては、それは全体的には認められないので、国際条約のいわば枠外にある内航船に限って、旅客の損害についての債権、これの責任の制限を設けないというスキームをとっていたわけでございます。

 九六年の議定書の議論の際には、先ほども少し御紹介申し上げたとおり、我が国のかねてからの主張というのを草案審議段階からいたしまして、その結果、外航船も含めまして、各締約国において独自に旅客の損害に関する債権についての責任限度額を規定し、これはもちろん一般の責任限度額を下回るようではいけませんけれども、上回る責任限度額を設定することはできることになり、また、責任限度額をそもそも設けないということも各国独自の判断でできる、そういうスキームに変わったわけでございます。

 先ほど申しましたような、旅客の損害に関する債権の性質あるいは人命尊重の見地から、このように各国の間で合意ができ、これに基づいて、我が国は当然のことながら、これまでの内航船に限って行われた措置を外航船にまで拡大して今回の法改正を行う、こういう経緯になるわけでございます。

漆原委員 今回、責任限度額を引き上げる、その結果、ほとんどの海難事故の損害を補てんできる結果になるというふうに先ほどお答えいただきましたけれども、仮に、責任限度額を引き上げても、そもそも限度額の支払いに見合う資力が船主になければ、これは引き上げた意味がないわけでありまして、限度額までの支払いを担保する制度はどんな制度があるのか、お答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、もともとは委付制度のもとで、船しか財産がないという船主が数多かったために、このような制度が認められてきたという背景がございます。今は、金額責任主義になっておりますので、その金額に見合うものとして保険を付すというのが通例でございます。

 そのために、先ほどから再三申しておりますが、船主責任相互保険、いわゆるPI保険と呼んでおりますが、それが海運業の業者の間に利用されているところでございます。これは世界的な組織に基づくものでございまして、それぞれ各国にこのような船主責任相互保険制度というのがあり、相互保険組合というのがその保険の運用をしているわけでございます。

 我が国においても、日本の船主責任相互保険組合、JPIクラブというのがあり、これの保険を付すというのが一般でございます。

漆原委員 この責任制限、余り我々には日常的にはかかわりのない制度でございますけれども、申し立てによって手続が開始されるというふうに聞いておりますが、全体的に、概略、どんなふうにしてこの手続が進んでいくのか、御説明いただきたいと思います。

寺田政府参考人 概略を申し上げます。

 まず、この我が国の船責法が適用されるためには、我が国に裁判管轄がなければいけないわけでございます。この裁判管轄は、通常は、船籍港あるいは事故発生地という形で我が国の裁判所に認められるということになります。

 その場合に、おっしゃったような、その裁判所に責任制限手続開始の申し立てをするわけでございますが、そういたしますと、裁判所から船主に対しまして責任限度額相当額の供託命令が出ます。この命令によって基金が形成され、その基金が形成されますと、責任制限手続の開始決定が行われる、こういう順序になるわけでございます。

 以後は、この基金の分配という手続になるわけでございますが、その分配を具体的に行いますのは、開始決定と同時に選任される管理人でございまして、この管理人が選任された際に、制限債権の届け出期間等の公告がされます。債権者は、その公告を見まして、届け出期間内に裁判所に自分の債権等はどのぐらいであるということを届け出るわけでございます。その後に、その具体的な債権があるかどうかの調査期日が設けられておりまして、債権の種別でございますとかその内容についての調査が行われ、それで申立人等の異議がなければ、その届け出どおり確定をする、こういうことでございます。以後は、確定された債権について管理人が制限債権者に配当をする、こういう手続になるわけでございます。

漆原委員 最後に、法務大臣に再度お尋ねしたいと思うんですが、今後、政府としては、この船責法あるいは船責制度の改正に関して、どのような方針を持ってお臨みになるのか、大臣のお答えをお聞きします。

南野国務大臣 我が国は、一九七六年条約の審議以来、人命尊重の立場から、人身損害について特に保護を厚くすべきであるとの主張を行ってきております。一九九六年の議定書におきまして旅客の損害につき責任制限の対象にしないという選択肢を許容する改正がされたのも、我が国が主張いたしまして採用された結果でございます。

 今後も、我が国としましては、船主責任制限制度に関する国際会議等の場におきましても、さらに人身損害についての保護の強化を主張してまいりたい、このように考えております。

漆原委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官片桐裕君、法務省刑事局長大林宏君、法務省保護局長麻生光洋君、厚生労働省職業安定局次長高橋満君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋葉賢也君。

秋葉委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の秋葉賢也でございます。

 四月の補欠選挙で初当選をいたしました。早速こうした一般質疑の機会をちょうだいしましたこと、心より御礼を申し上げたいと存じます。

 私も、この法務省の仕事というもの、改めて概括を勉強してみますと、想像していた以上に極めて広範囲な守備範囲を担っているなということを再認識するわけでございます。その所管しております法律を一つ一つ数えてみますと、実に二百三十三本にも及んでおりまして、我が国の法律全体の数が、数え方にもよりますけれども二千から三千ということを考えますと、その中核の部分を所管していると言っても過言ではないと思います。

 そういう意味で、行政の役割、行政の使命というものが国民の皆さんから行政の不作為だと言われることがないように、しっかりと国民ニーズというものにこれからこたえていくということが大事であろうというふうに思っております。

 とりわけ、法務省の事務事業の中でも、やはり治安の維持ということも大変重要な課題の一つでございまして、刑事司法に与えられた重要な役割でございます。長らく我が国も世界一安全な国だと言われておりましたけれども、ここ十年ほどの間に犯罪情勢は急速に悪化をしてきておることは周知のとおりでございます。検挙率の低下あるいは犯罪の認知件数の激増などが実態として見られるわけでございますけれども、特に犯罪者の再生を目指した処遇の改善充実というものが今問われているのではないかなというふうに思っております。

 言うまでもなく、我が国の保護観察行政は、約一千人の保護観察官、それから現場では約五万人の保護司が、いわば官民協働によってきめ細かな対応が行われ成果を上げてきているわけでございますけれども、残念ながら、ここ直近の事件を見渡しても、保護観察中の者による再犯が凶悪事件に結びつくというケースが少なくございません。

 そんな中で、五月の三十一日、月末、南野大臣が記者会見で示されました保護観察の充実強化についての声明といいますか記者発表というのは、大変時宜を得たものだと思います。おおむね三つの柱からこれからの保護観察行政の充実強化ということに言及されておりますけれども、いずれも重要な課題でございまして、きょうはそうしたそれぞれについての具体策なども後ほど伺ってまいりたいと思っておりますが、まず初めに、この大臣が発表されました方針というものの実現のためのこれからの取り組みと具体的なスケジュールというものを伺っておきたいと存じます。

南野国務大臣 御当選おめでとうございます。

 早速に御質問をいただきました。

 五月三十一日の火曜日、今先生から御質問ございましたことでございますが、重点的に取り組む課題として挙げた事項のうち、法改正にわたる問題につきましては国会における御議論を踏まえる必要があります。しかし、その上で、できるだけ早期に対応したいと考えていることでございます。

 また、その就労支援策ということも大切でございまして、できるだけ早く検討を進めさせたいと考えております。

 またさらに、更生保護制度全般の見直しということにつきましては大きな問題でございます。容易に結論が出るものばかりではございませんが、遅くとも一年以内に結論を出していただきたい、出させたいと考えております。

 安全、安心な社会の回復が喫緊の課題となっている中で、保護観察は犯罪を行った者の更生と社会復帰を促し、社会を犯罪から守る重要な役割を担っているということから、その充実強化のために真剣に取り組んでまいる所存でございます。

秋葉委員 ありがとうございます。

 一年以内をめどに結論を出して、速やかに対応していきたいという御回答がございました。結論の出たものから随時、速やかに本当に対応していっていただきたいなというふうに思います。なかなかこうした議会でのやりとり、期限を具体に明示するということは難しい部分もあろうかと思いますが、できるものから随時やっていくという姿勢も大事だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 やはり現場で更生保護行政の最前線を担っておりますのは、言うまでもなく保護司でございます。これは大臣が委嘱をされ、定員が五万二千五百人ほどでございますが、今現在は四万八千人ぐらいで、ずっと充足率も九二%から三%台で推移しているわけでございますが、大変優秀で精力的に取り組まれている保護司の皆さんは大変多うございまして、本当に私どもも頭の下がる思いなわけでございます。

 その一方で、保護司の果たしている役割が大きいことから、やはり適任者の確保策というものをさらに工夫をしていく必要があるだろう。例えば、公募制の導入でありますとか、幅広く告知をしながら適任者を募集していくというような、いわゆる多様な任用のあり方というものも考えていく必要があると思っておりますけれども、今後の方策について伺っておきたいと存じます。

麻生政府参考人 委員御指摘のとおり、保護司は無給で保護観察等の困難な活動に、文字どおり日夜従事されておりまして、更生保護の根幹から支えていただいている方々でございます。保護司に適任者を確保いたしまして保護司制度の充実を図ることは極めて重要な課題であると私どもも認識いたしております。

 しかしながら、近年、地域の連帯が弱まっていること、それから保護司の職務が困難化していることなどから、適任者を得ることがこれまでに増して難しくなっている実情にございます。

 従来は、退任される保護司の方が後任の方を推薦される例が多かったわけでございますけれども、今後は、委員御指摘になりましたように、より幅広い国民の層から保護司の適任者を得ることができるようにするために、例えば、地方公共団体、教育、福祉等の地域の関係機関、団体などと連携いたしまして、保護司にふさわしい候補者を開拓する方策を検討してまいりたいと考えております。

 また、保護司さんの諸活動について広く社会に知っていただくことも何よりも重要であると考えておりますので、保護司活動の積極的な広報にも努めてまいりたいと考えております。

秋葉委員 きょうは言及するいとまがありませんけれども、保護司の充実確保策についての御答弁をいただきましたが、一方で、やはりその取りまとめ役は紛れもなく保護観察官でございます。我が国の保護観察官も、御案内のとおり千人ほどはおりますけれども、実際現場で対応されている数となりますと六百三十人前後ということで、まさに少数精鋭の体制になっております。保護司の充実強化という課題とともに、庁内的な保護観察官の育成、増員ということも今後十分検討していっていただきたいということで要望しておきたいと思います。

 また一方、保護司の充実強化の中でとりわけ意を用いていかなければならないと思っておりますのは、やはり少年犯罪が増加をしているということでございます。

 保護観察中の再犯者数及び再犯率の推移、種類別に一号観察から四号観察まで分けられるわけでございますけれども、保護司が主に担っておりますのは四号観察が多いわけですが、再犯率が一番高くなっているのもこの四号観察なわけです。平成十二年、三六・四%の再犯率で、ここ十四年、十五年には三七%台を超える再犯率が示されてまいりました。そして、何といいましても、年間の保護観察の新規受理人員というものが八万人ぐらいいるわけですけれども、この八万人の保護観察事件の対象者のうち約七割が少年なんだという事実を私はやはり冷静に認識する必要があるんじゃないかと。

 もちろん、先ほども何度も繰り返し申し上げておりますように、現場の保護司さんは本当に頭の下がるような努力をしていただいているわけですけれども、その一方で、ややもすれば、年齢的なギャップがあることから円滑にいかなくなっている部分があるかもしれませんし、そして、何よりも保護司自体が多様な年齢構成の中で構成されているということが理想なわけでございまして、とりわけ保護司の若返り策というものにこれから本格的に取り組んでいく必要があると思っておりますが、どのようにお考えになっておりますでしょうか。

麻生政府参考人 委員の御指摘については、私どもも全くそのとおりだと思っております。

 先ほど御指摘がありましたように、保護司さんの平均年齢が大体、約六十三歳でございます。それから、保護観察の対象者の過半数が少年であるということも、これも事実でございます。そのようなことも含めまして、保護司さんの年齢の若返りを図ることが大変重要なことであると考えております。先般、保護司さんにつきまして、いわゆる定年制と申しますか、委嘱の上限を七十六歳未満といたしましたのもそのような観点からでございます。

 先生御指摘になりましたように、やはりできるだけ幅広い層、幅広い職種の方から保護司さんになっていただくということが重要だと考えておりますので、先ほど申しましたような方策をとりまして、より幅広い年齢層の方、より幅広い分野の方から保護司さんになっていただくように努力してまいりたいと考えております。

秋葉委員 具体的に、いわゆる公募制の導入というのは私は非常に効果があると思うんですね。つまり、現場では、地区の会長さんが会員の皆さんに諮りながら、推薦をして、そして委員会に諮られるというプロセスをとっているわけです。ですから、その一連のプロセスの中でリクルートメントにかかってこないという、そもそもそういう問題があると私は思っているんですよ。ですから、広く新聞で募集広告をして、意欲のある人というような、そういうやり方をぜひ私は近々導入してほしいと思うのですが、どうですか。

麻生政府参考人 保護司さんに適任者を確保する方策について、私ども、これまで何年間も検討してまいりました。公募制につきましても、もちろん検討課題の一つでございます。現在も別に法律的に閉ざされているものではなくて、やはりこれまで私どもの保護司さんについての広報が足りなかったのではないかというふうに反省いたしております。

 そのようなことで、先生御指摘になりました公募制というものについてももちろん視野に入れて、今後検討してまいりたいと思っております。

秋葉委員 私自身、公募で選ばれた候補者だったからこだわるわけじゃないんですけれども、やはり幅広くいろいろな方にチャンスを確立していくということが大事だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、保護司は、御答弁の中にもありましたが、現在無給で、まさにボランタリーの中で我が国では担われてまいりました。私は今後もボランタリーが基軸でいくべきだとは思っておりますが、その一方でやはり実費弁償の部分は充実強化をしていくということが必要だと思いますが、この点についてはどう対応されていくお考えでしょうか。

麻生政府参考人 この点も委員御指摘のとおりでございまして、基本的には無給で、ごくわずかでございますが実費弁償金をお渡ししているというのが実情でございます。

 保護司さんにお願いをいたしております事件の状況を見ますと、最近の犯罪情勢等の悪化を受けまして、保護観察事件それから環境調整事件、いずれも増加いたしております。また、事件の内容を見ましても処遇活動が困難化している状況にございますので、保護司さんの処遇活動の基盤を強化するという観点から、平成十七年度予算におきましては、事件数の増加分のほか、保護司さんの処遇能力向上のための保護司研修の充実等を図ることといたしまして、保護司実費弁償金に対前年度約一億四千三百万円増の約四十億三千万円を計上いたしております。

 実費弁償金の充実を初め保護司の待遇改善につきましては、法務大臣からの御指示もありましたところでありますので、関係方面ともよく協議させていただきまして、引き続き検討を進めてまいりたいと思います。

秋葉委員 ありがとうございました。ぜひ充実に努めていただきたいと思います。

 保護観察の実効性を担保する観点から、大臣が三十一日に記者会見で示されました方向というのは本当に高く評価できるものでありますけれども、やはり基盤整備そのものを強化していくということが大事だと思っております。

 とりわけ執行猶予者の保護観察については、先ほども言及しましたように、いわゆる四号観察の再犯率が特に高くなっているということがございます。そういう意味で、執行猶予者の観察のルールの見直しが必要ではないのかなと。

 具体的には、いわゆる犯罪者予防更生法で、仮出獄の場合には転居やあるいは旅行もすべて七日以上が許可制だったり、厳格なルールの中で保護観察行政が行われているわけですが、残念ながら、その一方で、執行猶予者保護観察法の中では、転居やあるいは旅行、移動ということについてはすべて届け出になっているという実態がございます。

 こういった部分、本来ならばある程度自由度を高めながら保護観察をしていくというのがもちろん私はあるべき姿だとは思いますけれども、しかし、現実に保護観察中の者の再犯率が高くなっているということを考えますと、もう少し、こうした届け出制というものを許可制にすることによって、当該者のいわゆる居どころを常に掌握をしながら、一定の制約を課していかざるを得ない面もあるんじゃないかと思いますけれども、大臣の御所見を伺っておきたいと存じます。

南野国務大臣 先生おっしゃったとおりだと思いますが、執行猶予者に対する保護観察では対象者に即した特別遵守事項の設定ができないことから、個々の対象者の特性に合わせた処遇を行うことが難しい状況にあります。また、今先生がお話しになられました転居、旅行が届け出制であり、しかも一カ月未満の旅行については届け出すら義務づけられていないということでございまして、再犯防止の観点から、果たしてこのままでよいのかという懸念も当然あると思われております。

 そこで、法改正を要する事項もあろうかというふうに思いますので、国会における御議論を踏まえながら、緊急に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

秋葉委員 どうもありがとうございます。

 特別遵守事項の新たな義務づけの中で、いわば連携とお互いの約束事がより密になる中で対応していくという観点から、私も届け出制から許可の方向で今後やはり検討せざるを得ないというふうに認識しておりますので、大臣にもぜひそういった方向で御検討いただければと思っております。

 また同時に、やはり保護観察を受けても、社会に復帰したときになかなか就労につけなくて、いわゆる無職での状況で、ついついまた窃盗を初めとする再犯に及ぶというケースが、中身を見たときには非常に多くなっておりますので、これは法務省だけの課題ではありませんけれども、やはり保護観察対象者の就労支援対策というものも、従来の取り組みにも増してきめの細かいチャンネルをいろいろ用意していかざるを得ないのかなというふうに思っておりますが、そういった点についてはどうお考えになっていますでしょうか。

麻生政府参考人 保護観察対象者のうち、無職である者の割合が年々増加している実情にございます。また、再犯率を見てみますと、職を持っている者と職を持っていない者とを比較いたしますと、職を持っていない者の再犯の割合が格段に高い、こういう実情にございます。そのような観点から、改善更生を図る上で、保護観察対象者の就労を一層促進するための方策を早急に講じなければならないものと考えております。

 従来から私どもなりに努力をしてまいったのでございますけれども、犯罪前歴のある人たちの雇用の確保は非常に厳しい状況にございます。そこで、この観点から、この件につきまして、厚生労働省と連携して検討チームを立ち上げまして、協議をいたしているところでございます。

 就労支援のためにはさまざまな課題がございますけれども、当局といたしましては、例えば、保護観察対象者の就労意欲を喚起し、適切な就職活動ができるように指導と援助を強化すること、それから職業安定所等と連携して的確な就職情報を提供すること、協力雇用主の拡大を図り就労先を開拓すること、就労を継続させるための環境を整備すること等の支援策を進めてまいりたいと考えております。

秋葉委員 今、検討チームを立ち上げて検討されているということですので、その取り組みに期待をしたいと思います。

 保護観察が終わった時点で無職だという人は年間一万二千人ぐらいいるわけですね。これは、無職者の場合は再犯率が有職者の五倍以上になっているわけです。ですから、こういうところにもっときめ細かなメスが入れば、おのずと再犯率の減少に成果が出てくるだろうと私は思っておりますので、よろしくお願いします。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、一部はしょるかもしれませんけれども、次に、近年、犯罪被害者に対する支援の拡充が求められておりまして、御案内のとおり、この四月からは犯罪被害者等基本法が施行されたところでございます。しかし、この法律も、基本法でございますから、これから具体の中身が詰められていくんだと思いますけれども、いわゆる刑事裁判における被害者の加害者に対する質問を認めるなど、被害者の権利の拡充というものがまだまだ不足をしているんじゃないかなというふうに思っております。

 そこで、被害者が刑事手続に関与する権利の充実、拡充をこれから図っていくことが大事ではないのかなと。この犯罪被害者等基本法の概要でも、第十八条には「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等」ということの規定が盛り込まれておりまして、この具体的な中身が明らかになるのはいつごろで、どういう方針で進めていこうとされているのか、伺っておきたいと存じます。

南野国務大臣 被害者の方々のお気持ちを真摯に受けとめながら、さまざまな面での保護、支援を図っていくことは、非常に大切なことだというふうに思っております。

 そこで、法務省といたしましては、これまでも、例えば法廷で被害に関する心情等を直接訴えたいという被害者の方々の御要望があるということも踏まえておりますが、そのための法整備を図るなどの施策を進めてきたところであります。

 御指摘の点を含めまして、被害者の方々が刑事手続に関与する機会を拡充、整備することにつきましては、昨年制定されました犯罪被害者等基本法に基づきまして内閣府に設けられました犯罪被害者等施策推進会議におきまして、基本計画の案が策定されることとなっております。

 そこで、法務省といたしましても、この基本計画の定めるところに従い、他の関係機関とも連携しながら、被害者のための制度や運用の充実を図るなど、さらなる施策を推進してまいりたいと考えております。

秋葉委員 今大臣から御答弁がありましたように、犯罪被害者等基本法の所管が内閣府になったということに私は極めて意義があるんじゃないかと。つまり、各省がてんでんばらばらに対応してきたものを一元的に対応させることによって総合力を発揮していこう、こういうことだと思うんですね。ですから、その中で、これからまさに基本法の具体策を私どもは打ち出していかなきゃいけませんので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 またちょっと別の角度になりますけれども、今現実に、被害者の方が、本来なら事件から目を背けたいというような心情もあるんだと思いますけれども、しかし一方で、しっかり事件と向き合わなきゃいけないということがございます。

 そこで、刑事記録を謄写して、加害者がどういった発言をしているのか、どういった状況になっているのかということで、情報公開といいますか、裁判記録を求めるという場合に、今、コピー代、いわゆる謄写代が一枚六十円も取られているわけですね。これは、私は、国民世論の感覚からすれば相当高額ではないかなと。いわゆる一般的な行政コストの計算式でいえば、二百円、三百円取ってもいいと思いますよ。しかし、そういった理屈は国民には私は通用しないと思う。

 実際、我が県の犯罪被害者の中にも、娘さんを亡くして、記録を見たいということで検察庁へ行って、閲覧をして謄写しようとした。一枚六十円で二千四百枚、全部謄写をしなきゃいけなかったので、十何万かかっているわけですね。

 私は、これは行政の一つの国民に対するサービスだと思いますし、それから、利害関係者じゃない人と価格を分けてもいいと思いますよ。やはり当事者については特段の配慮をすべきだと私は思っていますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 検察庁における刑事記録の謄写につきましては、その性質上、紛失や破損、情報漏えい等がないよう、慎重かつ厳重に取り扱う必要がありますので、謄写事務については、弁護士会の事務員やその他の謄写業者において行っていると承知しております。

 金額については、謄写を依頼される方とそれから今のように現実に謄写される人との契約関係といいますか、そういう問題で、必ずしも金額は固定されているものではない、このように承知しております。

 また、刑事記録の謄写につきましては、コピー機等による複写に限られておりませんで、閲覧者である被害者が閲覧室に持ち込んだカメラ、いわゆるデジタルカメラによる記録の撮影等も認めておるところでございます。今、このようなカメラが非常に技術的に進んでいるというふうに伺っておりますので、このような形の謄写ということも今後ふえてくるのではないか、こういうふうに考えております。

 なお、刑事記録の謄写費用を含めた国による損害賠償請求費用の補償等の問題につきましては、内閣府に設置された、今御指摘の犯罪被害者等基本計画検討会においても検討されているところでございまして、法務省といたしましても適切に対応してまいりたい、このように考えております。

秋葉委員 ちょっと時間がなくなってきて残念なんですが、検察庁として、全国的にどういった運用になっているのかということをやはりしっかり把握するところから始めなきゃいけないと思いますよ。それぞれ違って運用していますということ自体が私は大きな問題発言だと思いますし、現状で多くの団体が、結局弁護士会なんかに委任させて、その弁護士会が独自のルールを決めてやっている。検察庁の役割はただ閲覧させるだけ、そして、あとはいわば部外者にげたを預けていると言っても過言じゃない、そういった、ある意味でのやや無責任な状態にあるんじゃないかなというふうに私は思いますので、しっかり現状を掌握して、そしてこれからやはり検察庁としての方針の中で、閲覧だけじゃなくて、閲覧していますという姿勢だけじゃなくて、現場での運用についてのルールづくりについても関与していく、そういう姿勢が必要だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 あとちょっと二、三分しかなくて、この問題はここまでにさせていただきまして、最後に、警察官の増員の問題について取り上げたいと思っております。

 私も地方議員をさせていただいた関係上、やはり本当に現地、現場での治安状況というものが悪化をしておりまして、警察官の皆さんの御努力そしてまた負担感というのも、保護司の皆さんにも増して大変な高負担の中でお仕事をいただいているのが常態でございます。そんな中で、警察刷新会議の中で増員が打ち出されて、平成十七年度からも向こう三年間でさらに一万人の増員というのが決まっておりますので、本当に我が意を得たりなわけでございますけれども、その一方で、都道府県ごとの警察官の定員には大変大きな格差がある。

 これは、人口負担あるいは認知件数の負担、交通事故の処理負担、いろいろな指標がございますけれども、あらゆる指標を使って分析しても、例えば宮城県と京都でなぜ三百人以上の差があるのかとか、いろいろな、やはり納得のいかない、合理的な説明がなされないんじゃないかと思われるような格差、偏在がございます。こういったものを適正に配置していくべきだというふうに考えておりますが、なかなか条例で決められない、警察法の中で決めていくことでございますので、ぜひ適正な定員配置の問題についてお答えをいただいて、私の時間が参りましたので、初めての質問の終了とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 地方警察官につきましては、厳しい治安情勢に対応するために、平成十三年に緊急増員をいたしましたほかに、平成十四年度以降計画的な増員に努めているところでございます。増員に当たりましては、時々の治安情勢にかんがみまして、緊急に対策を講じるべき課題、これに対応するために必要な人員を積算いたしまして増員を図っているというところでございます。

 その具体的な課題でございますけれども、今年度で申し上げますと、一つには重要凶悪事件捜査の強化、二つには来日外国人組織犯罪捜査の強化、三つには街頭犯罪対策の強化、これにはパトロールの強化を含んでございます。四つには凶悪粗暴少年事件対策の強化、五つには大規模繁華街における犯罪対策の強化、また、六つには大規模テロ対策の強化が重要課題というふうに私ども認識をしているところでございます。

 そこで、各都道府県警察の具体的な増員数につきましては、これに各都道府県の人口であるとか、事件、事故の負担の状況であるとか、その他特殊な要因がございますので、そういったことを加味しながら総合的に判断をし、決定をしているというところでございます。

秋葉委員 時間がありませんので質問を終わりますけれども、今後の標準化の一層の推進を強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 きょうは、何回も大臣にお尋ねして、大変いい日だなというふうに思っております。

 まず、刑務所出所者等に対する就労支援について、このたび、先ほど大臣おっしゃっていました、法務省と厚生労働省の連携のもとで刑務所出所者等に対する就労支援対策検討チームを設置されたと聞いております。これは、大臣はどのような問題意識をお持ちになってこういうものを、法務省だけじゃなくて厚生労働省と連携するということになっていますね。どのような問題意識なのか、お尋ねしたいと思います。

南野国務大臣 その件につきましては、犯罪や非行を犯した人の生活を安定させ、再犯を防止し、そして改善更生を図るためには就労の確保が一番だというふうに考えております。何よりも重要であるという観点から、そうした人についての、その前歴のゆえに社会から排除されやすい、いまだに厳しい雇用情勢も影響しております。職を得ることが非常に困難となっておりますので、保護観察対象者を見てみましても無職の人が急増していることに加え、無職者の再犯率が有職者と比べて非常に高い現状であるということを憂慮いたしております。

 こうした状況のもとで、犯罪や非行した方の就労を確保することがもう喫緊の課題であろうというふうに思っておりまして、就労確保のための方策を多角的に検討、実施していきますために、雇用政策の専門機関である厚生労働省とそれから法務省の課長クラスの方々によりまして、刑務所出所者等に対する就労支援対策検討チームを発足していただき、鋭意、協議を進めているところでございます。

漆原委員 これは法務省がおつくりいただいた書類でございますが、「犯罪・非行をした者の雇用促進 再犯防止・治安回復を加速するために」、こういうペーパーがあります。これを見ますと、「有職者・無職者別の保護観察期間中の再犯率」平成十五年でございますけれども、まさに、有職者は七・六%、無職者は三九・七%という、五倍以上あるわけですね。

 それで、これには「再犯防止のためには就労確保が緊急の課題!」となっておるわけなんです。今回、厚生労働省と法務省が就労支援に積極的に取り組むことは大変高く評価をしておるんですけれども、問題は、「刑務所出所者等」の中に保護観察の人たちが、あるいは執行猶予による保護観察、少年も含みますね、こういう人たちが対象になっていないんじゃないのかなというふうに思っているんですが、この「刑務所出所者等」の「等」の中にはどんなものが入るのか、具体的に御説明いただきたいと思います。

麻生政府参考人 刑務所出所者等についてのお尋ねでございますけれども、刑務所の出所者につきましては、満期出所者とそれから仮釈放によって出た方、これは当然含まれるわけでありまして、そういう意味では保護観察の対象者も含まれるということでございます。そういう意味で、出所者につきましては、長期間刑務所に拘束されていたということもありまして、直ちに就職を得るのはなかなか難しいという状況がございます。この方たちについて、再犯防止の観点から就労支援をするということが大事だと考えております。

 しかしながら、無職状態で再犯に陥りますのは、刑務所の満期出所者、仮出所者に限りませんで、例えば刑の執行を猶予された者あるいは保護処分を受けた少年にも同じように当てはまる問題でございますので、このような者に対する就労支援についてもあわせて広く検討してまいりたいと思っております。

漆原委員 ぜひ、執行猶予を受けた者、それから少年の保護観察の者、この人たちも含めて就労支援を積極的に推進していっていただきたいというふうに思っております。

 どんな就労支援の内容になるのか、これは今後の検討チームやワーキングチームで議論されることになりますけれども、概略どのようなイメージをお持ちなのか、おのおの、これは法務省そして厚生労働省にお聞きしたいと思います。

麻生政府参考人 刑務所出所者等の就労支援のためにはさまざまな課題があると承知いたしております。

 ただいま御説明いたしましたけれども、刑務所の施設の中にいる段階から始まりまして、出所者につきましては、仮釈放等をされてからの問題もございます。そういういろいろな状況を踏まえまして、具体的には今後詰めていくわけでございますけれども、私どもといたしましては、例えば刑務所出所者等の就労意欲を喚起して適切な求職活動ができるようにするための指導と援助の強化、職業安定所と連携しての的確な就職情報等の提供、それから、雇用先の拡大及び就労を継続させるための環境の整備などを大まかに申しますと考えております。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども厚生労働省におきましては、従来から刑務所出所者等の就労支援という観点から、出所後就職して自立を目指そう、こういう方につきまして、刑務所あるいは少年院、さらには更生保護機関等と連携をとりまして、服役中からの求職登録でありますとか、あるいは職業相談、出所後の職業紹介、それから、必要な場合には職業訓練のあっせん等々行ってまいってきておるわけでございます。

 それで、検討チームでございますが、ただいま法務省の方からも御答弁があったとおりでございまして、私どもとしては、検討が始まったばかりでございますからよく詰めていかなければならないと思っておりますが、今申し上げましたようなスキームをベースに、ハローワークと刑務所等との連携の強化ということを中心に、より実効ある就職支援策というものを検討してまいりたいと考えておるところでございます。

漆原委員 一番大事なのは、やはり雇用の確保、拡大なんですよね。使ってもらえるかどうかがやはり一番大事で、そういう人はなかなか使ってもらいにくい今までの経緯だったんじゃないのかなと。法務省は、独自に、今までこの点については大変苦労されてきたと思うんですね。法務省が今までの就労支援について苦労されてきたその問題点と課題について御説明いただければと思います。

麻生政府参考人 まず、私どもで従来から行ってまいりました点について御説明させていただきます。

 刑務所、少年院におけます就労支援といたしましては、これまでも職業安定所から就職に関する講話をいただいたり、あるいは受刑者等の個別の相談に応じてもらうなどの協力を得ております。そのほか、職業紹介を希望する受刑者や少年院在院者がおりました場合には、その名簿を職業安定所に提出いたしまして、職業あっせんについて協力を依頼するなどしてまいりました。

 しかしながら、矯正施設在所中に就職内定に至っている事例は乏しい現状にございます。そこで、この原因を分析いたしました上で、関係省庁と連携して、より有効な職業訓練種目を選定するなど、実効性のある方策等について検討してまいりたいと考えております。

 また、保護観察処遇におきましては、保護観察対象者の就労意欲を喚起させ、早期就職と就労を継続させる指導を特に重視してきました。就労が困難な者につきましては、職業安定所の協力を得ますほか、協力雇用主と呼ばれる犯罪前歴を承知の上で雇用していただける事業主に雇用をお願いしてきたところでございます。

 しかしながら、就労意欲や経験、技能が不十分な者も多くなっておる実情にございますし、また、最近の厳しい雇用情勢の影響を受けまして、犯罪、非行した者の就職が思うように進んでいないのが現実でございます。また、協力雇用主などの善意にお頼りし、犯罪、非行した者を安定して雇用していただくための十分な対策がなされてこなかった面もございます。

 以上のような状況を踏まえまして、矯正施設在所中における就職援助の充実及び職業訓練、それから保護観察における就労指導の強化や関係機関との一層緊密な連携、さらには雇用の促進や就労の継続のための環境整備を検討する必要があるものと考えております。

漆原委員 今局長がおっしゃった、協力雇用主という話がありましたが、これはどんな人が全国でどのぐらいいらっしゃるのか、つかんでおられますか。

麻生政府参考人 協力雇用主というのは、今申しましたように、対象者に前科前歴があるということを承知の上で雇用していただける方でございますが、全国に約五千五百ぐらいの事業主の方がおられます。そういう人は承知で雇ってあげますよとおっしゃっているわけですけれども、現実に、常時、無限大に雇用していただけるわけではもちろんございませんので、実際に協力雇用主に雇用してもらっている対象者の数というのは五百数十名程度であったと思っております。

漆原委員 この協力雇用主、大体、中小企業のおやじさんというイメージなんでしょうか。大手の企業がこの協力雇用主になっているケースはあるんでしょうか。

麻生政府参考人 大企業、中小企業という観点で統計をとっておりませんので、その点は明確な御答弁を申し上げることはできないわけでございますけれども、実態としては、先生御指摘のように、中小企業の方が多いのではないかと思います。

漆原委員 私の感覚としては、そういう一対一、親方が直接に、全人格で雇い入れて、全人格で仕事を通じて指導していく、そういう志のある方が協力雇用主というふうになっていただいているところが多いんじゃないのかなと。また、だからこそ成果を上げてこられたのかなというふうにも思っておりますが、逆に言うと、こういう不景気が長くなりますね、そうすると、やはりその人たちの経済事情もうまくいかないから、雇い入れようということにはなかなかならないということにつながっていくと思うのですね。そこのところを一体どうするのかなというのが一番大きな課題であろうかと思うのです。

 それに関連して、厚生労働省に、同じ就職困難者と言われている高齢者とか障害者の皆さんに対する就労支援策及び予算、どのくらいの予算で国がこういう就職困難者に対する支援をしているのか、その辺を聞きたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の高年齢者あるいは障害者等々という方々、いわゆる就職困難な方々に対します就労支援として、いわゆる雇い入れ助成という形で、特定求職者雇用開発助成金制度というものがございます。

 これは、御案内のとおりかと思いますが、こういう就職困難な方々を安定所等の紹介によりまして継続した雇用という形で雇い入れをいたしました事業主に対しまして、一定期間、賃金相当額の一定部分を助成する、こういう制度でございまして、平成十七年度の予算でございますが、約四百六十四億円を措置いたしておるところでございます。

漆原委員 いい制度ですよね。やはり高齢者あるいは障害者はなかなか雇っていただけないというのが現状で、それに対して、国がこういう支援をすることによってその人たちの就労を確保する。大企業なんかで結構これはやっているわけですよね。

 私は、そういうものをヒントにして、この刑務所出所者等に対する就労支援、同じようにつくれないのかなと。今までは、さっきおっしゃったように、篤志家、意欲のある人、この者を何とかしてあげようという意欲に全部頼ってきたのではないのかな。国が全部善意におんぶしてきたんじゃないのかな。これだけ難しい時代になってきますと、篤志家の善意だけに頼っている制度というのはやはり限界があるなと。

 今、あえて厚生労働省にこの特定求職者雇用開発助成金という制度をお尋ねしたのは、まさにこれと同じような制度を犯罪予防という、治安の回復という観点から、法務省にもこれをヒントにして、うまく利用できないのかなという気持ちがあるものですからお聞きしたのですが、大臣、どんなお考えでしょうか。

南野国務大臣 本当に先生と同じような気持ちを持っておるわけでございますが、議論これあり、いろいろございます。刑務所出所者等の就労支援につきましては、今後十分に検討を深めていくことの重要性は認識いたしております。

 刑務所出所者等の給与の一部を国家が直接支給するなど、今、障害者のお話がありましたが、そういうような体制、そうした財政支出のあり方については、本当にいろいろな方の御意見もございます、議論をすべき多くの課題も残されているかというふうに考えておりますが、先生のお心は多としたいと思っております。

 いずれにいたしましても、刑務所出所者等の就労支援のあり方につきましては、今後さらに突っ込んで検討してみたい、これも厚生労働省とのかかわり合いの中で真剣に検討しなければならない課題だというふうに思っております。

漆原委員 今、法務大臣から、この制度を取り入れるについてはいろいろな課題がある、問題点があるという指摘もあったんですが、これは事務方で結構でございますけれども、この厚生労働省の同じような制度を法務省の就労支援策として採用した場合に、どんな課題があるのか、問題点があるのか、難しさがあるのか。どう認識されておりますか。

麻生政府参考人 これまでの当委員会等で、同じような御指摘を受けております。

 まず、障害者とか高齢者の場合は、自分に責任があってそういう事態に陥ったというわけではないわけでございます。ところが、犯罪や非行をした者につきましては、本人が何か自分の責任でそういうことをしてしまったということがあるわけでございます。そのような意味で、そういう自分に責任がない人たちと自分に責任がある人たちとを同じに考えていいのかというような御指摘があることは事実でございます。それから、そういう犯罪や非行をした人たちの就労ができない原因が、単に刑務所にいたことだけなのかどうかという問題もあろうかと思います。

 そういうような点が多々あることがございまして、そういうことも含めて検討し、かつ、国会の議論も踏まえながらいろいろ検討しているところでございます。

漆原委員 そうですよね。自分に原因がある場合と自分に原因がない場合、制度としては異なるというふうにおっしゃる、これはもっともだと思います。

 しかし、治安の回復という、これは小泉内閣の政策課題の大きな一つでございます。また、南野大臣も治安の回復ということをおっしゃって、自分の大きな役割だというふうにおっしゃっていましたね。

 今、国民は、この治安の回復という点については、本当に、日本がもう一度治安のいい国になってもらいたいという点については大きなコンセンサスを得ているんじゃないかなと思うんですね。そういう意味では、これは犯罪を犯した人に対して直接支援をするわけじゃないわけですから、国民全体の治安の回復という公益目的のために税金を使うという、この観点を見ていただければ、評価していただければ、この制度を何らかの方法で導入することは可能ではないのかなというふうに思っておりますが、いずれにしても、これはこれからの大きな問題であります。

 確かに、お金だけ払えば解決するという問題じゃない、犯罪者の意識も、労働意欲というのもあるわけですから。ただ、お金の問題が障害の一つになっているということであれば、そのとげは抜いてやった方がいいな、またそういう支援をすべきだなというふうに思っておりますから、どうぞ、今後法務省と厚生労働省の間でしっかり議論をして煮詰めてもらいたいというふうにお願いを申し上げます。

 次の問題に移ります。

 更生保護制度の見直しという点でございますけれども、法務大臣は、三十一日でしたか、記者会見で、更生保護制度全般を再検討し見直す必要があるというふうにお話しされております。私も全く同感でありますが、先ほどと同じように、大臣の問題意識、どういうお考えでこのような発言をされたのか、問題意識をお尋ねしたいと思います。

南野国務大臣 昨今の社会情勢の変化とか、また現在の治安情勢などを踏まえまして、保護観察対象者の再犯防止を図らなければいけない。そのためには、更生保護制度全般について、そのあり方を見直していく必要があるのではないかな、そのように考えました。

 例えば、更生保護制度における官民協働体制のあり方、保護観察処遇の充実強化のための方策、また保護観察の実効性を担保するために現在の体制で十分かどうかという、この問題点でございます。さらには、我が国の更生保護制度の根幹を支える保護司制度を充実させるためには、若くて活発な方々にも進んで保護司として活躍していただくための条件整備をどのように図っていくのかということも非常に重要な課題であろうと考えております。

 いずれにいたしましても、我が国の治安回復を図るためには、更生保護制度が果たすべき役割の重要性、本当に保護司の方々には頭が下がるわけでございますが、そのあり方をどのように検討していくかということも含め、その充実強化に向けて真剣に取り組んでいきたいと思っております。

漆原委員 これは朝日新聞の五月二十五日の社説ですけれども、「保護観察 これでは不安が広がる」という見出しなんですけれども、大変ショッキングな内容が書いてあります。

 ちょっと読みますと、「非行少年や犯罪者たちと定期的に会って、相談に応じているのは、約四万八千六百人の保護司である。報酬はなく、実費の支給も十分ではない。戦前から続く日本独特の制度だが、引き受け手は少なく、定員割れが続いている。平均年齢は六十三歳を超え、高齢化も目立つ。昨春から、再任する時の年齢を七十六歳未満とする定年制を実施したため、退任する人が増えている。」こんな内容でございまして、確かに、これを読むと暗たんたる気持ちがするわけですね。このような現状を大臣はどうお考えなのか。

 また、この保護司さんの後継者がいないんですね。平均年齢六十三歳というと、若い少年はとても世代が違って話が合わないですね。どうやって若手の意欲のある、農業の担い手と同じような言葉になるんですけれども、意欲のある若い人、後継者を獲得するかは大きな課題だと思いますが、大体今読ませていただいたことをお聞きいただいて、大臣はどう認識されて、どこにその原因があるのか、いかがでしょうか。

南野国務大臣 本当に御指摘のとおり、保護司の委嘱の上限年齢、これを七十六歳未満とするというようなところの保護司の定年制を平成十六年度から完全実施しておりますために、多数の保護司の方が退任されたということも一つあります。

 今年四月一日現在におけます保護司の数は四万八千六百五十七人であり、定員に対する充足率は、定年制の実施後低下傾向にあります。その原因につきましては、地域社会の連帯の弱まり、また保護司の職務の困難さなどが実情として考えられております。

 定年制の実施につきましては、保護司の高年齢に対する歯どめをかけるということもやむを得ない面がありましたが、これによりまして保護司の充足率がこれ以上低下することのないように、地方公共団体、教育、福祉等の地域の関係機関または団体と連携しまして、国民の幅広い層から保護司にふさわしい候補者を開拓する方策を鋭意検討してまいりたいと思っております。

 この前、保護司の方々とも、これは非公式でございますが、我々検討をさせていただき、実直なお話もお聞きいたしておりますので、保護司の方々の御苦労、保護観察との絡み合わせ、そういうものもしっかりとこれから検討していく中にそのアイデアを入れていきたいなというふうに思っております。

漆原委員 特に、平均年齢が六十三ということで、若い人が保護司にならない。この原因は、大臣、どんなふうにお考えでしょうか。

南野国務大臣 我々の方からの広報ということも少し欠けているのかもわかりませんが、やはり若い方々は、自分の生活がいっぱいであるのではないだろうか、他者への思いをはせるということが今生活面において難しい部分もあるのではないかな、そのようにも思っておりますが、逆に、保護されたい対象者の枠、域がうんと広がっておりますので、先生おっしゃるようなニーズは高まってきておるわけでございます。

 そういう意味で、やはり公募というようなことも一つの視野に入れながら検討はさせていただいておりますが、保護司の精神をしっかりと持っていただける方というところに大きなポイントがあります。現在、保護司でお働きの方々も、やはり家族の協力なくしてはできないという分野もございますので、そういうことも心に入れながら、どのようにして若い方たちの御協力を得られるものかというところで今苦慮いたしております。先生がおっしゃいましたお金という問題もそこにあるのではないだろうか。実費というような問題点も含めますと、この保護司の問題点につきましては、予算とマンパワーということになってくると思います。

漆原委員 大臣のおっしゃったこと、本当にもっともだと思います。

 保護局長にお尋ねしたいんですが、こういう現状というのは何も最近始まったわけじゃない、ずっと前から指摘されていることだし、これに対して保護局として、若い保護司の獲得、どうしたらいいのかということをどのように考えて、どのような行動をとってきて、今後どうするのかということ、いかがでしょうか。

麻生政府参考人 保護司の皆さん方の平均年齢が高齢化しているという実情につきましてのお尋ねですけれども、確かに、戦後間もなくこの制度が始まりましたころは、今よりも平均年齢が約十歳ぐらい若かったと承知いたしております。

 高齢化したことの原因は、一つは社会全体が高齢化したこともあるのかなというふうに思っております。

 それからもう一つは、保護司さんになっていただける方の職業構成を見ますと、昔は農業に従事されている方の割合が比較的多うございました。そういう方々は時間に余裕がある方が多い。それからもう一つは、お坊さんとか神職の方とか、そういう宗教関係の方が多いということもございました。そういう方も比較的若くて保護司になっていただける方が多い実情にあったと思います。それが、現在は無職の方が相当多くなっておりまして、これは、要は、例えば会社員か何かをされていて退職された方がなっていただける、そういう状況にございまして、私どもとしては、なるべく若い方になっていただこうということでいろいろ手を尽くしてきたわけでございますけれども、実情として高齢化しているということで、やはり保護司さんの活動についてもう少し理解をしていただく。

 それから、現在の保護司さんにやっていただいている活動の中心が、対象者に自宅に来てもらう、それから対象者の自宅を訪れる、こういうことがあるわけですけれども、自宅に来ていただく場合に、例えば、都会で三LDKのマンションに住んでいて、まだ子供さんが小さいというような状況だと、なかなか家族の理解が得られないというような問題がございます。

 そういうふうな点を何とかできないかというようなことを幅広く検討しているところでございます。

漆原委員 最後に一点だけ大臣にお尋ねしたいんですが、この保護司さん、犯罪者の社会復帰を担うという大きなとうとい仕事をされておりますけれども、やはりこれも善意だけに頼っている時代ではないんじゃないのかなと思います。とうとい仕事に見合うだけの報酬を払う、払ってもよいという政策転換が必要な時期になったんじゃないかというふうに思うんですが、大臣のお考えを最後にお尋ねしたいと思います。

南野国務大臣 保護司制度は、本当に日本においてはとうとい役柄として、ボランティアでやる、ボランティアだからこれがやれるんだという強いお考えの方がまだまだおられます。とうといその方たちのお心によって更生されていく方々も多いというふうに思っております。保護制度につきましては、そういう歴史がありますので、その考え方が定着しているという側面がございます。

 でも、今日は、さまざまな課題を抱えておりますし、いろいろな生活も多様化いたしておりますので、その課題解決のためには幅広い観点から取り組まなければならないというふうに思っており、事務当局にも指示しているところでございます。

 報酬制につきましては、御指摘のような御意見もあることは十分理解いたしておりますし、私の考えの半分はそのような考えでありますが、そういうようなところから、保護司の皆様方のお気持ちも伺いながら、その他の外部の御意見も伺い、どのように対処していったらいいのかということを今実際検討を進めております。また、先生のアイデアもいただき、検討の中に入れさせていただければ幸せだと思っております。

漆原委員 以上で終わります。大臣、大変ありがとうございました。

塩崎委員長 次回は、来る七日火曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時六分散会


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