衆議院

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第23号 平成26年6月11日(水曜日)

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平成二十六年六月十一日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大岡 敏孝君

      大見  正君    勝沼 栄明君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      小林 茂樹君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    三ッ林裕巳君

      宮崎 政久君    宮澤 博行君

      郡  和子君    田嶋  要君

      横路 孝弘君    高橋 みほ君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鈴木 基久君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    寺脇 一峰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 後藤 真一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 仲  浩史君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     大岡 敏孝君

  黄川田仁志君     宮崎 政久君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     勝沼 栄明君

  宮崎 政久君     黄川田仁志君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     小林 茂樹君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 茂樹君     門  博文君

    ―――――――――――――

六月十一日

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(津村啓介君紹介)(第一三三九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第一三四〇号)

 同(海江田万里君紹介)(第一五〇九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五七八号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(横路孝弘君紹介)(第一三四一号)

 同(田嶋要君紹介)(第一五七九号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五〇一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五〇二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五〇三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五〇四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五〇五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五〇六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五〇七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五〇八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第三〇号)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官鈴木基久君、警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君、公安調査庁長官寺脇一峰君、外務省大臣官房審議官新美潤君、財務省大臣官房審議官後藤真一君及び財務省大臣官房審議官仲浩史君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要先生。

田嶋委員 おはようございます。田嶋要です。

 きょうは、少し声を小さく話をさせていただきます。よろしくお願いします。

 法案に入ります前に、先週の井坂委員の御質問、やりとりを、多くの委員が興味深く、耳をダンボにして聞いていたような、そんな印象でございますが、そのときに政府参考人の御答弁が大変多くて、最後に大臣が御答弁されましたけれども、私の方からも、大変関心を持って聞かせていただきましたので、やはり可視化の問題は大事だなということを、昨年、副大臣とも御一緒にアメリカ視察もさせていただきまして、素人の私もそういうことを痛感して帰ってきたわけでございますが、大臣、改めて、可視化というのは何のためにやるのかということの大臣の御所見をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 可視化をいかに進めていくかということについては、今、法制審議会で御議論をいただいているわけですが、検察でも現在可視化の試行というのを行っております。

 そこで、どういうことを目的にしているかと申しますと、基本的に取り調べの適正を確保する、そして、特に検察の任務に引きつけてみますと、供述の任意性や信用性等々に関する立証責任を的確に果たす、そういうことを通じて適正な処分や裁判を実現していく、こういうことだろうと思います。

田嶋委員 その適正なというところだと思うんですけれども、そういたしますと、例えば被疑者の利益を守るとか、そういうことに当然なるわけでございますが、私はアメリカで非常に印象強く思ったのは、説明してくださる方々、例えば州の方もあればFBIの方もおいででございましたが、自分たちを守るんだということをおっしゃっておったんですね。

 要するに、しっかりと見せていかないと自分たちが疑われてしまうということで、確かに自分たちを守るとなると、やはり人間やる気になるわけですから、そこは何とか、被疑者の方の権利ということもあるんですけれども、ちゃんと見せていかないと、また暴力を振るっているんじゃないかとか、脅迫しているんじゃないかとか、要らぬことを国民に疑われても現場の御努力が非常に無になってしまうわけでありまして、先週、君らは取り調べの過程で随分おかしなことをしたんじゃないかと、大臣もそんな発言もございましたけれども、本当にそのとおりでありますので、ぜひともそういうことをしっかりと、現場のお一人お一人がその必要性ということをわかっていただくように、この可視化を進めていただきたいというふうに改めてお願いを申し上げます。

 それともう一つ、同じく井坂先生とのやりとりの中で告知事項の話がございました。この告知事項の明確化、それから確実な告知の必要性、これは大臣の御答弁の中に必ずしもはっきりと言われていなかったのかなというふうに思うわけでございますが、いろいろな指示を出しているとか、最高検察庁からの通達を出しているというような話がございましたが、改めて、この告知事項をしっかりと一般の方の方に伝えていくということを現場の方で強調していただきたいと思うんですが、大臣、改めて御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 何が任意捜査で、何が強制捜査であるかということについては、今までいろいろな最高裁判所の判例等々が積み重なっております。やはりそれをきちっと守っていかなければならないのは当然のことだろうと思います。それはいろいろな形で、検察内部の取り調べにおいても、いろいろな議論、あるいは上司の指導等々を通じて行われているというふうに思います。

 ただ、この間の井坂委員の御議論は、あらゆる場合にそれを告知せよということでありまして、これは捜査の実際から見るといささか、少し大きな御要請であり過ぎるかなと思わないでもございません。そのあたりはきちっと最高裁判所等々の判例も踏まえながら、検察でも取り組んでいかなければならないし、法務大臣としてもそういう指導をしたいと思っております。

田嶋委員 大臣が前回おっしゃった、周知徹底とか、いわゆる指示を出しているとか、通達を出しているというのは、大臣がとるアプローチとしてはよくある話ですね。そういった出したものが末端までしっかり届いているということだと思うんです。

 しかし、末端の方々が一般国民との間で本当にきちんとできているかということの保証はないわけでありまして、やはり情報の非対称といいますか、片方は素人でありますのでよくわからないということが本当にあるんだろうというふうに思います。任意かどうかというようなことに頭が回転するような人は多分国民の中には多くなくて、ふだん接したことのない人に突然来られれば、非常に極度の緊張感のもとに置かれるわけでありますので、そこはやはり冷静な判断がなかなか難しいので、さらに一歩踏み込んで、国民の側に立った対策が必要なのではないか。

 昨年の夏に、これも副大臣と一緒に視察をさせていただいたときに、先ほど申し上げた一点、すなわち自分たちを守るためにという点と、もう一つ、非常に繰り返し聞いた言葉にミランダ・ルールという言葉がございました。私は初めて知った言葉でございます、もちろん大臣はよく御存じかと思うんですが。ここではミランダ警告ですね。

 例えば、アメリカにおいて、黙秘権があなたにはありますよとか、あるいは取り調べ時の弁護士立ち会いが認められますよとか、それから取り調べを中断する権利があなたにはありますよということを事前にしっかりと伝えるということで、このミランダ警告の書かれたカードを常に携行しているという話。これが現地の複数の場所で、ミランダ、ミランダという言葉、最初は何のことを言っているのかなと思ったんですけれども、人の名前だそうでございますが、訴訟手続上に問題があって後に無罪となったミランダという方の関係でこういう名前がついたルールだそうでございます。これが捜査の原則として確立されているということです。

 これをそっくりまねるべきとは言いませんけれども、先ほどの通達を出したとか、それは大臣から末端の公務員までの話でありまして、末端の公務員から一般人にどういっているかというところがやはり一番重要。そこがまさに情報の非対称に基づく不安感の状況の中で、本当に現場では届いていないということにあるんじゃないか。

 このミランダ・ルールは、まさに一般の人に向けてしっかりとカードを用意して、話しましたねということをやっていくということで、いいやり方ではないか。まさに、井坂先生が前回おっしゃっていたようなこともそういうことではないかと私は思うんですが、そこら辺はいかがですか。

谷垣国務大臣 私も、司法修習生のころ刑事訴訟法を勉強いたしましたときに、そのミランダ、ミランダというのは耳にたこができるほど聞いた言葉でございますし、また、いろいろとどこまでがミランダ・ルールで、適用はどこなのかということも相当やかましい議論になっております。

 しかし、少なくとも、今、田嶋委員がおっしゃった中で、黙秘権の告知であるとか、あるいは弁護士をつける権利、選任をする権利というようなことは法も要求しておりますので、必ず行われていると存じますし、これが行われなければ違法ということになるわけでございます。

 さらにそこを超えて、どこまでが告知義務なのか、あるいは任意捜査としての限界なのかということになりますと、相当、先ほど申しましたように、判例等で細かなルールが積み重なってきておりますので、それはきちっと守らせなければいけないと思います。

 ちなみに、私が通達を出しているのではなくて、この問題に関しては、検察がやっております、最高検が出しております。それは、全体の指導としてもきちっと行き届かせるようにさせなければいけないと思っております。

田嶋委員 ぜひお願いをいたしたいと思います。

 前回、大臣は、巨悪に対決していく力も少し奪ってしまったのではないか、そういう逆側の懸念も表明されておりまして、それも確かにそのとおりかなとも思いますので、難しいかと思いますが、やはり日本はさらにもう一歩踏み出す努力が必要なのではないかなというふうに思いました。

 それでは、法案の方の質問に入らせていただきます。

 まず、法案の中身に入る前に、お手元の資料をごらんいただきたいと思いますが、これは法務省から昨日いただいたばかりなので、皆様にも御参考までにと思ってお配りいたしました。

 1の資料でございますが、平成十四年にそもそもこの条約を担保する国内法の整備が行われたということでございますが、一方、後で話に出てまいりますFATFの方では、こういうことをやってほしいというルールがその前の年に決まっているということでございます。

 すなわち、時系列的に言えば、我が国が、国内法、今回の改正ではなくて、新法としてつくるときには、FATFの求めているものというのはあらかたわかったわけでありますから、私、後ほど述べますが、そもそも新法としてつくる段階でFATFとの調整というのはしっかり行われたのかどうか。内容を詰めていくに当たって、例えば資金ということの定義とか、そういうことはもう少しうまくできたのかどうかということをまず確認したいと思います。刑事局長、お願いいたします。

林政府参考人 今回の法改正の理由ともなっておりますFATFの特別勧告2を含みますテロ資金供与に関するFATF特別勧告につきましては、平成十三年十月、これは九・一一テロの翌月だと思いますけれども、十月に公表されたものでございます。その後、今回、FATF特別勧告の履行状況に関する対日審査というのが平成二十年に実施されたものと承知しております。

 一方で、現行法でございますが、テロ資金供与防止条約を締結することを主たる目的として、平成十四年六月に成立しております。これが九・一一テロの翌年の六月ということになります。

 FATFの勧告につきましては、加盟国の相互審査によって初めて履行状況でありますとか評価というものが明らかになるものでございまして、平成二十年の対日審査に先立って、すなわち平成十四年の現行法の成立前後に、現行法が特別勧告2を履行する内容となっているか否かをFATFとの関係で調整するということは、なかなか困難であったと考えております。

田嶋委員 全てはということではないにしても、ある程度の調整が行われたのかどうか。恐らく何もなかったんだろうというふうに思いますが、今回、いろいろ、重要な法改正でございますが、私は、前回の入国管理のときも同じような内容ですが、国民の安全、特に世界を挙げてテロとの闘いをしていく中で、少しでも、一歩でも二歩でも、早目にやはり対応をとっておかないといけないし、そうじゃないと、役割を国際社会で果たしていることにならないのではないか、そういう懸念を持ちます。

 そこで、お伺いします。

 今日までに、FATFによるフォローアップ審査、我が国に対するフォローアップ審査ですね、つまり、我々は、我が国は今不合格の状況にあるというふうに伺っておりますが、そのフォローアップ審査は、何回、どのような頻度で行われてきたのでしょうか。

林政府参考人 二〇〇八年、平成二十年に対日審査が行われてから現在までの間に、我が国に対するフォローアップ審査でございますが、合計で八回行われてきたものと承知しております。

 審査の頻度についてでございますが、初回の審査は平成二十二年の十月、第二回が平成二十三年の十月、第三回は平成二十四年の六月にそれぞれ行われまして、その後は、四カ月ごとにFATFに進捗状況を報告し、審査を受けております。

 こういった形で、我が国が監視対象に置かれております。

田嶋委員 今最後に、我が国が監視対象に置かれているというような、何となくうれしくないような言葉でございますけれども、だんだんチェックされる頻度も上がってきて、実に八回も検査を受けている、しかし、相変わらず不合格だということでございます。

 お伺いします。この法案の成立が、この国会、わかりませんけれども、成立がおくれる場合に、FATFとの関係で今後想定される我が国のリスクというものにはどういうものがあるのか、まず法務省から伺います。(発言する者あり)財務省だけ。はい。

江崎委員長 財務省仲大臣官房審議官。

仲政府参考人 お答え申し上げます。

 FATFは、ハイリスク、非協力国のリストというのを公表しております。仮に、今回の、今御審議いただいている法案の成立がおくれまして、FATF勧告の履行に不備が現在ございますが、これがなかなか改善が進まない場合には、このハイリスク、非協力国のリストに我が国が掲載されるというおそれがございます。

 そのような事態に陥った場合ですが、海外の金融機関が我が国の金融機関との取引におきましてリスク管理を強化したり、あるいは我が国の金融機関との取引を回避したりといったようなことを通じまして、本邦金融機関、それから我が国の企業の国際金融取引に支障を来す、そういう可能性があると考えております。

田嶋委員 要はブラックリストに載るということだと思うんですが、ハイリスクの国だ、非協力国だと。本当に不名誉な事態で、そして、実業の世界においても、今おっしゃったような金融の世界で問題が起き得ると。それがどのぐらい切迫したリスクかというのはなかなか難しいわけでございますが、全ての判断はFATF側にあるわけですね。我々はまないたの上のコイでありまして、FATFがそう決めたらそういうリスクが現実のものとなるわけであります。

 そこで、私は、この国会の冒頭に谷垣法務大臣は所信の中で本法の重要性に関してはどのようにおっしゃっておったかというのを改めて見させていただきました。テロの資金等の防止の措置のために、この法案を審議の上、速やかに成立させてもらいたいと、非常に通り一遍の触れ方をされておるわけでございます。

 私は、今回、改めてこの法案の中身というものを見させていただいて、ちょっと今回の法案の審議のタイミングですね。これはもちろん、立法府の問題でもあるわけでございますが、そもそも政府の中で、いろいろな法案、重要な法案、私が昨年理事をやっていたときも審議をさせていただきましたハーグ条約に関する法律も少し似たような性格があったような気もいたします、国際社会との関係において。

 しかし、この法案に関しても、我が国の国益という観点から、このようなタイミングでの審査というのが本当に適切なのか、あるいはもっとスピードを上げてということに関して、法務大臣としてとり得ることはなかったのかどうか、その辺に関しての御意見を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 今いろいろ御議論がありましたように、そして、この法案の提案理由説明で申し上げたように、本法は、テロを許さない国際環境を日本としてもつくっていくことに努めなきゃいけないという観点から、FATFの指摘に対応して所要の法整備を行おうとするものでございます。

 それで、所信については、通り一遍的なことしか言っていなかったと田嶋委員に御指摘を受けましたが、私、今思い返しますと、あのことしの所信表明は、自分でも読み上げるのにくたびれたぐらい長かったという記憶がございます。少し短くならないかというようなことを考えながらやったわけでございますが、相当中身が、いろいろなことが今問題になっておりまして、実はFATFにも、ハイレベルミッションというのが日本に参りまして、昨年の秋ぐらいにお目にかかっていろいろ話をしております。また、書簡もFATFから、私、法務大臣宛てにいただいておりますので、決して私は、重要性を意識しなかったということはございません。

 ただ、所信が余りにも膨大であったので、あのような、今から考えると少し、通り一遍と田嶋さんに言われてしまうような表現でございましたけれども、しかし、あの中でも十分な審議と速やかな成立をお願いしていたと存じます。

 それから、タイミングにつきましては、これは国会でお決めいただくということになるわけですが、しかし、私自身もかなり努力をいたさなかったわけではございません。特に、昨年の国会にこれを出しますときに、余り我が党の国会対策のことをここで申し上げるのは筋ではないかもしれませんが、我が党の国会対策としては、法務委員会は随分法案がたくさんあるのでもっと限定してほしいという相当強い御注文がありましたけれども、FATF等の要請もあるので、とにかく、ここから先はちょっとお叱りを受けるかもしれません、出すだけでも出させてくれという表現がよかったのかどうかわかりませんが、そういうようなことを随分我が党の国会対策とも議論をいたした記憶がございます。

田嶋委員 正直な御答弁だと思うんですが、これはやはり、私も、昨年理事をやりながら、十分その切迫感は届いていなかったと思うんですね。

 国会がお決めになることとおっしゃいますが、やはり閣法ですから、一番の所管の大臣が、これが本当にやらないと、先ほどの国際社会における信用の問題、そして金融界における実害の問題の切迫度を一番やはりわかるのは所管大臣ではないかなと私は思うわけですね。

 だから、よく、国会におりますと、これは日切れ法案だとか、これは予算関連だというのはすごく強調されて、何とかこれは早く審議してもらわなきゃと思う話が伝わってきます。そういうことは割と当たり前になっちゃっておるわけでございますが、私はむしろ、むしろというか、それと同じぐらいに、まさるとも劣らず大事なことは、国際社会において日本という国の信用を失墜させてはいけないし、ましてやこういう経済的なリスクがあるものであれば、それはもちろん法務委員会も法案は多いですから大変なのはよくわかりますが、やはり一義的には、行政府の長である法務大臣の方から、これはこういう我が国にとっての、国益上急がなければいけないんだということをもう少し私は強調していただかないと、なかなか届いてこないのではないかと。

 今回初めて私はこれだけのリスクがあるんだということを改めて認識をさせていただいたので、そこはやはり、もう一歩踏み込んだ法案の優先順位を、やはり閣法ですから、最初に決めるのは政府側であり与党でありますから、そこは大臣、もう一度、しっかりここは、今回ようやくここにたどり着きましたけれども、今後のこととしても、法務委員会にはこういう国際条約関係のものもいろいろ出てくると思われますから、ぜひともそこは御留意いただきたいと思いますが、改めてお願いいたします。

谷垣国務大臣 法案の必要性、切迫性等については、十分に御説明するように努めたいと思います。

田嶋委員 ぜひお願いいたします。

 それで、もう一点、今度は警察庁にお伺いしますが、他の不合格項目というのもいろいろあるわけでございまして、お手元の資料の四ページですかね、4と書いてある資料でございますが、これがFATFの今の四十プラス九の特別勧告の表でございますが、丸をつけてあるところが、要は我が国が不合格を得ているものでございます。

 警察庁にお尋ねします。

 現在のこの不合格の警察庁の所管の部分に関しての自己評価、今後の対応についてお伺いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 FATFによる指摘項目のうち、警察庁が担当しておりますのは、大きく二点、金融機関等における顧客管理、それからテロリストの資産凍結でございます。

 まず、このうち顧客管理につきましては、我が国は平成二十三年に犯罪収益移転防止法を改正するなどの取り組みを進めてまいりましたが、FATFからは依然として、顧客管理につきまして、継続的顧客管理などFATF基準で求められている義務の一部が我が国の法令で明記されていないなどの指摘を受けておるところでございます。

 このような情勢を踏まえまして、現在、警察庁において有識者懇談会を開催し、行うべき制度改正の方向性について御議論いただいているところでございまして、今後、その議論を踏まえ、関係省庁と連携しながら、FATF勧告に対応した実効性のあるマネーロンダリング対策に関する制度の整備に努めてまいるべく検討を進めているところでございます。

 それから二点目の、テロリストの資産凍結についてでございますが、FATF勧告は、関連する安保理決議に従いテロリストの資産を凍結するなどの措置を講じるよう求めているところ、我が国はFATFの審査において、国内居住者から海外のテロリストへの送金等については外為法により規制されているものの、国内居住者と国内に居住するテロリストとの間の取引は規制されていないなどの指摘を受けておるところでございます。

 こうした指摘を踏まえ、FATFと議論しつつ、必要な制度の整備について関係省庁と連携し検討を進めているところでございます。

田嶋委員 結果的に、今のところ我が国の国益が実際面ではダメージを受けていないわけでございますが、今のお話も同じことで、結果オーライですよね。結果として今は何もない。そして、大臣が、前回、法案を出すときに、出すだけでも出させてくださいと、これは正直にそうおっしゃったんだろうと思うんだけれども、それはちょっと僕はまずいと思うんですよね。

 これは、もしあしたそういうことが起きたらどうするんですか、FATFの判断として。我々はまないたの上のコイでありますから、やはりそこはもっと切迫度を大臣の口から伝えていただきたい。それから、警察庁の方にも、一日も早く結論を出していただきたいというふうに思います。

 それでは、内容に関して少し細かい点に触れさせていただきます。

 所信の中でも、原発施設等へのテロのこともあえて書いてございましたが、一つ質問を飛ばさせていただきまして、サイバーテロというのは本法の犯罪行為に当たるのかどうかお尋ねします。

谷垣国務大臣 本法の一条、公衆等脅迫目的の犯罪行為というのは、これは、テロ資金供与防止条約で犯罪化が求められております既存のテロ防止関連九条約上の犯罪行為などを包摂するようには規定されているわけですが、その中では、一般的な意味でのいわゆるサイバーテロについては、公衆等脅迫目的の犯罪行為の対象となる行為としては、一般的な形では規定されていないというのが率直なところでございます。

 ただ、個別具体的な事実関係によりますが、例えば、サイバーテロの対象となったデータベース等々が、今度の一条三号に定めているところのいろいろな施設の一部をなして、そのデータベースに攻撃を加えることによってその施設を破壊するというようなことになれば、当然、これは公衆等脅迫目的の犯罪行為に該当してくる可能性がある、こういうふうに考えております。

田嶋委員 最近は、電力システムなども、あるいは電力以外のいろいろな社会インフラが、二割、三割、付加価値の部分はITだというふうに聞きますね。

 要は、物理的な破壊ということと同じぐらい深刻な社会への影響というのは、物理的には何も壊れていないけれどもソフトがいかれちゃったということはこれから十分に考えられるわけで、テロリストなんというのは頭がいいと思わなきゃいけませんから、十分その辺を研究して、恐らくこの法律のたてつけも、はっきり書いていませんけれども、そういったケースがいろいろ起き得るんだ。一切動かなくなるということは、やはり破壊されているのと機能上は同じことだというふうに私は思いますので、ぜひ御留意いただきたい。

 同じく、客体の中に情報という言葉が入ってございませんが、資金を提供する、あるいは物を提供する、建物を提供する。しかし、形のない情報の提供ということも、私はこれは極めて重要な点だと思いますが、その点いかがですか。

林政府参考人 今回、利益という概念をつくっておりますが、利益とは、およそ人の需要、欲望を満足させるに足りるものを意味しております。

 その観点で、情報につきましても、例えば、空港等の重要施設への侵入方法でありますとか、あるいは武器の使用方法等の情報につきましては、人の需要、欲望を満足させるに足りるものとして、利益、すなわち、今回の提供罪等の客体にある利益に該当すると考えております。

田嶋委員 時間が来ましたので、最後の質問をさせていただきます。

 お手元の五ページに、今回の法務省からの説明資料の、よく見る紙をつけさせていただきました。

 私、どうも、この一次協力者という、これは色をつけていないですが、一次協力者というところに下からの矢印と右からの矢印が来て、それが懲役五年と懲役七年というふうに分かれておるわけでございますが、実際の具体のケースではどっちに該当するのかというのは非常にわかりにくいんじゃないかと私は思うんですね。

 だから、むしろ、私は、一次協力者に対する幇助は、どういった場合に新たな三条の三に適用されるのか、二に適用されるのか、あるいは四条の一に適用されるのかということ、その曖昧さ、要するに、ミシン目がはっきりしないということから、例えば、テロ企図者であるスタートの部分、テロ企図者から何人の人物を経た人間関係なのかということで、一律に量刑に幅を持たせて決める形の方がベターなのではないか。

 すなわち、二次協力者という右側のこの人間とこの人間は別に区別をせずに、量刑の幅を持って司法が判断をするという形にした方が私はいいのではないかというふうに思うわけでありますが、なぜこういうふうに二つの矢印が一次協力者に向かう形をとられたのでしょうか。あるいは、この方がいいという点を御指摘いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 田嶋委員の御指摘は、今度の改正案は、まず第一に、法定刑が懲役七年以下または罰金七百万円以下である、これは三条二項ですが、それからもう一つ、法定刑が懲役五年以下または罰金五百万円以下である三条三項と四条一項の罪、こういうふうな仕分けになっているわけですが、こういう法定刑が、異なる罪を設けるのじゃなくて、一次協力者とその他の協力者の間の資金の授受について、一律に同じ法定刑、一律かどうかわかりませんが、同じような法定刑を設けて、その法定刑の範囲内で柔軟に対応していった方が望ましいのではないかというお考えだと思います。そういう立て方も私は十分理由のある立て方だろうと思います。

 ただ、今回の考え方としては、一次協力者に協力する立場として、一次協力者と同じようにテロ行為の実行を容易にする目的を持つ者と、それから、そこまでは目的意識を共通にしないで、一次協力者による提供行為の実行目的を容易にする目的を持つにとどまる者の二種類があって、そして、かつ、テロ行為の実行を助長、促進する危険性の程度等には差異がございますので、そこに着目して異なる法定刑を設けた。

 だから、罪刑の均衡という観点からは、この改正案の決め方は、私はそれなりに合理性のあるものではないかなと思っております。

田嶋委員 何となく、今大臣の説明も、歯切れがいま一つ悪いような、本当に区別がわかっておられるのかな、失礼ながらちょっとそういう印象を受けたわけでございます。

 何を容易にするのがどっちで、何を容易にするのがどっちかよくわからないような、要するに、実際の事例では、どっちに当たるのかなんということがはっきり言えるのかな、それだったら、やはり、もう少し単純に整理をした方がいいのではないかというのが私の意見であります。

 時間になりましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛委員。

階委員 おはようございます。民主党の階でございます。

 まず最初に、この法案の立法事実を確認させていただければと思います。

 お手元に、先ほど田嶋先生から配られたものと同じ資料ではございますけれども、ポンチ絵を出させていただいておるんですが、今回、現行法の処罰対象、左上のものが真ん中から下のものに変わるということで、要は、今までは、一次協力者がテロ行為を容易にする目的で提供等をした場合が処罰対象だということなんですが、客体を資金に限っていたというものです。それを、改正することによって、客体を広げ、かつ主体も広げようということなんですが、私が聞くところによりますと、そもそも、現行法自体、検挙された例もなく、また、今回の改正で拡大される部分で検挙可能であった事例もこれまで把握されていないというふうに聞いております。

 こういう状況のもとで、なぜ立法しなくてはいけないのかということを確認させてください。

谷垣国務大臣 国内において、テロリストへどういう資金提供が行われているのか、あるいはきたのか、実態は必ずしも十分に解明されているわけではないんですが、確かに委員のおっしゃるように、現行法で検挙するとか、現行法で起訴をするといったような事案は、私の承知する限り、ございません。

 それに加えますと、実態は必ずしも明らかでない面がございますけれども、例えば国際手配されたアルカイダ関係者が我が国に出入国を繰り返していた事実は判明しております。それから、テロ資金等の提供、収集がこれまで行われてきた可能性というのも、そういうことになりますと必ずしも否定できませんし、今後もそういうことはないということは言えない、ないと断言することはできないだろうと私は思います。

 それから、国外におきましては、例えばアルカイダに対してマシンガンやプラスチック爆弾を提供するということを企てたという事例がいろいろ報告されております。

 それで、私どもが一番ポイントと思いますのは、テロ資金なんかの供与は、今は、高度に発達した通信技術とか国際的ないろいろなネットワークを最大限利用して、国境を越えてあらゆる場所で実行され得るわけでございますので、こういう国外でのテロ資金等の供与と同様の事実が国内においても発生することが懸念されます。

 それに加えまして、国際的にそういうテロ資金等の流れを押さえる枠組みができているけれども、我が国だけそこが抜けているということになりますと、そこが結局、何というんでしょうか、いろいろなことをテロリストが考えていくブラックホールのようなことにもなりかねない、抜け穴になりかねないという点も懸念されるわけでございます。

 確かに委員のおっしゃるように、今までこれで検挙したというものはございませんが、国際的な動向を勘案いたしますと、十分に立法理由はあるものというふうに考えます。

階委員 ただ、逆に、今までもその抜け穴があったにもかかわらず事例がなかったということですから、果たしてこのタイミングでどれだけの必要性があるのかということは慎重に考えて、これは、要は、国民に刑罰を科す範囲を広げるということですから、慎重な議論が必要ではないかと思っています。

 ただ、今まで、資金の範囲を我々の国内法では条約よりもちょっと狭く解し過ぎていたのではないかという問題意識があります。

 条約を見てみますと、「「資金」とは、有形であるか無形であるか、動産であるか不動産であるか及び取得の方法のいかんを問わず、あらゆる種類の財産及びこれらの財産に関する権原又は権利を証明するあらゆる形式の法律上の書類又は文書(電子的な又はデジタル式のものを含む。)をいう。」というふうになっていたわけですね。だから、今まで資金と言われると、条約では、あらゆる種類の財産というところと反するのではないかということを感じます。

 三点目の質問にいきなり飛びますけれども、現行法の資金という文言には、過去の国会答弁で、現金等に換価されることを予定して提供、収集される不動産等の財産を含むという解釈をしていたようなんですが、私は、これはちょっと一般国民からすると無理な解釈ではないかと思っています。

 過去に有名な最高裁の判例がありまして、徳島市公安条例事件判決、最判昭和五十年九月十日というのがありますけれども、そこでは、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものか否かの判断を可能とするような基準が読み取れることが必要と、いわゆる罪刑法定主義に基づく明確性の理論を明らかにしたものだと思っています。

 私は、今までの無理な解釈はちょっと問題があったのではないか、こういうような立法の仕方はおかしいと思っていまして、最初に資金とはこういうものであるという定義規定を設けるとか、そういうふうなことをやるべきではないか。

 これは今後のことといいますか、今回の法改正ではその問題点が解消されるのかもしれませんけれども、立法をつかさどる法務大臣として、これからの立法姿勢として、解釈で無理やり範囲を広げていくというよりは、ちゃんと定義を明確にする。児童ポルノの改正でも、我々はそこを十分意識して、今回、三号ポルノの定義も明確にしました。こうした態度をとるべきではないかと思いますが、大臣の御所見をお願いします。

谷垣国務大臣 資金の解釈をめぐっては、今、階委員がおっしゃったように、この前の立法のときにもいろいろ議論をされておりまして、当時の当局はそのような答弁をしていることは私もよく承知しております。それで、そのような答弁をしているということは、あるいは今後、仮に裁判上問題になったときにも、十分その解釈はある意味で参照される解釈なのかなと思いますが、ある意味でこの資金に含める解釈は文理上可能ではないかと私自身は思っております。

 ただ、今委員がおっしゃるように、できるだけ構成要件というのは明確にしなければなりませんので、今後、当然、立法のときにはそういうことは注意を払って用語を選択する必要があると存じます。

 それから、今、この資金という言葉がよかったかどうか、条約よりもある意味では少し引っ込んだ内容になっているんじゃないかというような御指摘もありました。

 これは、私、法務省に参りまして、法務省がそういうことを言っているわけではありません、今まで十数年見てきた私の感想でございますが、九月十一日、あのアメリカのワールド・トレード・センターがテロに遭いました。あの直後、私は国家公安委員長になりまして、その後、財務大臣になりますと、国家公安委員長はもちろんテロの対応をいろいろやっていく立場でございますが、財務大臣もテロ資金等の環流をどういうふうに防いでいくかということを考えなければならない立場でございます。

 それで、今度、国家公安委員長になりまして、国際的な、アメリカ等々の、ワールド・トレード・センターの攻撃があってから、テロ対策の法制度というのは大きく変わったように私は思うんです。ああいうことが起きますと、当然それに対応しなければならないということでございますけれども、同時に、ある意味では、余りに流れが速くて、我々も息を切らしながらついていった。ついていったと言うと言葉はよくありませんが、そういう面も多分にあったのではないかと、十数年たちまして、今になって思うと、そういう感じを持っております。

階委員 外務省、石原政務官にも来ていただいております。

 そこで、条約の解釈ということなので外務省にもお尋ねしたいと思うんですが、先ほど条約の文言について御紹介しました。今回、FATFの指摘を受けて法改正をするということなんですが、FATFの指摘のうち、客体部分については、アジトや武器等の物質的支援の提供等が犯罪化されていないということを問題視されているわけですね。

 ただ、先ほどの条約の文言からすると、そもそも、条約の解釈をする外務省が、アジトとかそういうものも読み込んでおくべきではなかったのかと思うんです。なぜ資金というものを、不動産であっても換価目的であれば含むというようなことは解釈で広げているようなんですが、そもそも、条約の当初の解釈が誤っていたのではないかなと私は思うんですが、この点、いかがでしょうか。

石原大臣政務官 解釈については、テロ資金供与防止条約上の資金には、不動産を含む現金以外の財産も該当し得る。他方、条約第二条一で規定されている条約上の犯罪に該当する行為は、当該財産が現金等の支払い手段に換価された上でテロ行為に使用されることを意図してまたは知りながら、当該財産を提供、収集する行為に限られている。

 アジトとしての不動産を提供する行為については、当該不動産が現金等の支払い手段に換価された上でテロ行為に使用されることを意図してまたは知りながら提供されたものと通常認められないことから、本条約上の犯罪には該当しないというふうに我々は解釈をしています。

 そもそも、では、その解釈に至った経緯なんですけれども、条約交渉の過程において、本条約の対象として、隠れ家、虚偽の書類、武器弾薬、致死装置または武器もしくは弾薬に関する訓練等の物質的支援を対象とすべきとの意見もありましたが、各国から本条約の対象が広がり過ぎることへの反対意見が相次いで出された結果、物質的支援に係る規定は削除された、そういう、交渉経緯の中でもアジト等は含まれないという議論があったということであります。

階委員 ということは、条約に反しているから今回の立法措置がされるとか、あるいは、勧告が、条約に反しているから日本が不適格だとか言っているわけではなくて、そもそもの条約は、資金というものはそういうものだというふうに決められていたわけですね。

 だから、今回は、そういう意味では、条約から論理必然的に法改正が必要だというよりは、国際情勢に合わせてということなわけですよね。だから、立法政策として裁量の余地があるといいますか、条約で要請されることをそもそもやっていなかったのであれば裁量の余地は余りないのかなと思うんですが、条約がそこまで要求していなかったものを国際情勢に合わせて変えるということであれば、やはりここも慎重に考えるべきではないかというふうに言えると思います。

 石原政務官、きょうはありがとうございました。御退席いただいて結構です。

 他方、客体だけではなくて主体も広げようということが、今回、内閣の法案には入っているわけです。これは、先ほどの資料を見ていただくと、田嶋委員からも御指摘がありましたように、主体の拡大ということで、一次協力者だけではなくて、テロ行為を容易にする目的で提供する準一次協力者みたいな人とか、二次協力者とか、その他協力者、さまざまな主体が、今回、犯罪行為の主体となるわけですね。これが果たして、法改正がなければ、こうしたさまざまな主体に対応できないのだろうかということを問題意識として持っています。

 刑事局長に聞きますけれども、この条約を見ますと、「直接又は間接に、不法かつ故意に、資金を提供し又は収集する行為は、この条約上の犯罪とする。」ということで、そもそも間接という文言も入っていましたよね。にもかかわらず、今までは、今回追加された間接的な主体については処罰する条文がなかったということはどうしてなのかということをお尋ねします。

林政府参考人 今、間接ということを指摘されましたが、テロ資金供与防止条約における直接または間接にということがございますが、この場合、この直接または間接にというのは、資金提供または資金収集の態様を意味しておって、第三者を介することなく資金を提供あるいは収集すれば直接、また、第三者を介して資金を提供または収集すれば間接に該当する、こう理解されてきました。

 そして、現行のテロ資金提供処罰法において、例えば共犯規定でありますとか間接正犯の理論によって、テロ実行企図者に対する間接的な資金提供やテロリストによる第三者を道具とした資金収集を処罰することができるために、間接という文言を明示した犯罪構成要件を別途規定せずとも、直接または間接に資金を提供し、または収集する行為の犯罪化を求めるテロ資金供与防止条約の要請は満たすと解されてきまして、そのために、間接の提供等を処罰する条文については設けてこなかったものでございます。

階委員 今、刑法総則の共犯規定で対応できるからということでしたけれども、そうすると、今回FATFの指摘はありますけれども、これからも刑法総則の共犯規定を適切に適用すれば対応できるということになりませんか。

林政府参考人 今御指摘のように、現行法のもとでも、刑法総則の共犯規定でありますとか間接正犯の理論によって、間接的な形でのテロ資金の提供等を処罰できる場合はあるものと考えます。

 もっとも、例えば、ある者がテロの一次協力者に対しまして資金の提供をした場合に、当該一次協力者がテロの実行企図者に対する提供の実行に着手しなければ、現行法では、この刑法の共犯規定等によったとしても処罰ができないわけでございます。これに対して、例えば、本改正案によれば、当該第一次の企図者がテロ企図者に対する提供の実行に着手しなくても処罰できるということになります。

 このように、現行法によっては、テロ資金の間接的な提供等を全てカバーできない、処罰できない場合がございますので、今回、本改正法案によって、犯罪主体を拡大することで、このような場合も処罰できることとするものでございます。

階委員 今おっしゃったのは、刑法総則で対応するには、一次協力者からテロ企図者まで資金を渡す、少なくとも実行の着手が必要だけれども、それがない、つまり資金の供与が一次協力者からテロ企図者にない場合は刑法総則では処罰できないということで、立法が必要なんだということなんですけれども、逆に言うと、だからこそ、テロ企図者にお金が行かないような行為でも処罰するからこそ、私は慎重に処罰範囲は確定する必要があると思っています。

 そこで、今回さまざまな主体が新たな処罰範囲に加わるわけですけれども、先ほど申し上げた、準一次協力者、二次協力者、その他協力者という三類型が新設されます。三類型、ここでは提供の方だけ取り上げますけれども、三類型の提供罪のいずれに該当するかは、この資料にもありますように、その他協力者というのは一次協力者に直接お金を渡さないので、相手方がちょっと違うのかなと思いますけれども、田嶋委員も御指摘になったように、二次協力者と準一次協力者は、一次協力者にお金を渡すという意味では全く同じですね。ただ、主観面が若干異なるかなと。そこも非常に微妙な表現ぶりです。また、その他協力者も、一次協力者であるということを知らないで一次協力者にお金を渡すケースもあり得ると思うんですね。そういう場合も、相手方は同じだけれども、ちょっと主観的意図が異なるということでその他協力者に当たるということで、要は、この三類型の提供罪のいずれに該当するかは、提供者の主観面だけで決まるということがあり得るわけですね。

 この構成要件における主観的要素が明確に区別できるのかどうかということは、田嶋委員も同じ問題意識だと思うんですけれども、条文の文言からすると、私は非常に微妙なのではないかというふうに思います。ちょっとここは、その問題意識を伝えた上で、大臣への次の質問に移らせていただきます。

 そういうことで、主観的要素によって刑罰の重さが異なります。先ほど大臣もおっしゃったとおりですけれども、そういう主観的要件で刑の重さが大きく異なる以上、被疑者の供述がどうなされるかということが重要になってきます。こうした類型の事件においては、なおのこと、取り調べの可視化ということが必要ではないかと思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 確かに、今度の立法では、主観的要件がある意味では犯罪の外延を画するものでもあり、それから、確かに、みずからテロをやる者、一次協力者、二次協力者、あるいは準一次協力者と申しましょうか、それぞれの犯罪類型を分けるものに主観的な要素というものが大きく意味を持っているわけですね。

 では、それをどう捜査の上で認定していくか、あるいは訴訟の上で認定していくかということになりますと、確かに、委員のおっしゃるように、主観的な要素ですから、供述によるという場合も随分あると思いますが、しかし、これは必ずしも、一般論としていえば、あらゆる証拠に照らして判断するということ。それから、主観的要素を使った犯罪類型はほかにもたくさんございます。ですから、そういう主観的要素を使った類型に比べて、特に可視化が大きな意味を持つということは私は言えないと思います。

 確かに、供述によるような場合は、その供述の信用性等を立証する意味でも可視化というものが役に立ったり有益な場合があると思いますけれども、そういう意味では、一般論の問題ではないかと思います。

階委員 今、図らずも大臣の方から、主観的要件を要求する犯罪はこれに限ったものではないというような御趣旨の答弁がありましたけれども、まさに、だからこそ取り調べの可視化の対象事件というのは広げていかなくちゃいけないということだと思うんですね。

 私も取り上げましたけれども、ことしの四月三十日の法制審特別部会で示された試案では、A案として、裁判員裁判対象事件を可視化の対象とするというものと、B案として、A案プラス逮捕、送検された全事件を対象とするという二つの案が示されていますけれども、いずれによっても、今回処罰対象が広がった部分については、警察段階からの取り調べの可視化は行われません。

 また、この法制審特別部会の設置の契機となった村木さんの郵便不正事件、あるいは虚偽の自白に追い込まれた人もいたパソコンの遠隔操作事件、あるいは、「それでもボクはやってない」という映画もありましたけれども、冤罪が多いと指摘される痴漢事件なども対象事件にならないということであります。

 この特別部会に加わっている有識者五名から、三月七日の意見書で、対象事件は広げるべきだということを言われているわけですけれども、やはり、本件の法案で処罰対象が広がった部分に限らず、広く可視化の対象とする事件は制度としてやっていくべきではないかと思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今、試案にA案、B案があるわけでございますが、これはまだ、事務当局として、取りまとめに向けての試案として出したものでございますので、さまざまな意見があると存じます。

 いずれにせよ、私としては、これで決め打ちというわけではございませんので、法制審議会の中でバランスのとれた結論を出していただきたい、このように思っております。

階委員 先般の大臣の一般質疑での御答弁の中で、可視化の問題に関して、これは井坂委員からの質問に、巨悪は眠らせちゃいけないというようなことを言われておりました。

 確かに私は、巨悪は眠らせちゃいけないと思うわけですけれども、ただ、その巨悪を犯すのは、一般国民だけではなくて、検察も犯す場合があるということが郵便不正事件で明らかになりました。だからこそ可視化によって取り調べの適正化を図る、この可視化の目的については大臣も御認識されていると思います。

 だから、巨悪を眠らせないという大臣のお立場に立てばこそ、可視化の範囲を広げていくべきだと思うんですが、どうですか。

谷垣国務大臣 実は今、審議会に審議をお願いしておりますので余り、申し上げにくい立場でございますが、私としては、今までいろいろな御指摘がございました、もっと進めるべきだというのもあれば、そこに一種の問題を見つけておられる御見解もある、しっかり詰めてよい結論を出していただきたい、こう思っております。

階委員 大臣はなるべく審議というか議論に影響を与えないようにという慎重なお立場をとっていらっしゃるということは、この委員会でも再三伺ってきました。

 ただ、私、この四月三十日の特別部会で、最近回ってきた議事録を拝見したところ、当の当事者である最高検察庁の公安部長の上野さんという委員からは、検察としてB案を受け入れることは極めて困難というような発言がありました。

 検察の信頼回復のために、まさに検察が巨悪を起こさないために、再発をしないためにこういうことをやっているのに、検察みずからが、B案、これは先ほども申し上げましたが、有識者からも不十分だと言われている案です、それすらも極めて困難と言うのは非常に問題だと思っています。

 少なくとも、当事者である検察庁からこういうことを言う立場でもないし、そういうことはまさにほかの委員の議論に委ねるべきだと思いますが、この点、いかがですか。

谷垣国務大臣 今の、上野委員ですか、御発言と同じようなことは、実は学者の方々からも出ているところでございます。

 私は、個々の委員のおっしゃったことをいい悪いと申し上げるつもりはございません。ただ、大きな目標でいいますと、やはり検察も、いろいろな問題が起きて、国民からいろいろな意味での不信感も、信頼も揺らいだということでございますから、こういう議論を積み重ねて、検察への信頼をきちっと取り戻せるような道筋を歩まなければいけないなと私は思っております。

階委員 ぜひ、巨悪を眠らせないという大臣の思いを足元の組織から実現していただきたいと思います。先ほど、学者の皆さんも同じようなことを言っているというのは私も承知していますけれども、学者ではなくて、まさに当事者、問題を起こした当事者である検察が言っているのは私は問題だと思います。そこはやはり、法務省のトップですから、十分目を光らせて、自分たちに都合のいいような、中途半端な改革にならないようにコントロールしていただければと思います。

 それから、また今回の法律にちょっと関連しますけれども、今回、FATFという国際機関の勧告が契機となって改正が議論されているわけですけれども、同じように、取り調べの可視化についてもたくさんの国際機関から指摘がある。例えば、国連人権B規約とそれに基づいた委員会からの勧告であるとか、私も以前取り上げたことがある拷問等禁止条約とそれに基づく勧告というのもあります。それから、国連人権理事会のUPRと称される普遍的、定期レビューでも可視化というのが求められていまして、いずれも、対象事件については限定を付さず、全過程の可視化ということを求める内容です。

 今回の法改正のように、国際機関の勧告なりを契機とした立法を速やかに行うべきというのは、それはそれで正しいことだと思いますけれども、それを言うのであれば、取り調べの可視化についても、これだけの複数の国際機関から過去に何度もやるべしという勧告がされている以上、ここも早期に、法制審議会の議論を待つというようなゆっくりしたスピードではなくて、早急にやっていくべきだという思いがあります。その点について、最後に御決意を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 決して、法制審議会の方でも、この可視化の問題、いつまでも議論を続けようと思っておられるわけではないと思います。結論を出すべきときには出さなければいけないわけでございます。

 今回の法案は、法制審議会の議を経ておりません。しかし、法制審議会にかけるかかけないかというのは、法制審議会に関する法律は、何といいましたでしょうか、所掌事務は法務省の組織令に定められておりますが、民事、刑事その他に関する基本的な法制ということになっておりまして、やはり可視化の問題は、刑事訴訟の根幹に触れる問題でございますので、法制審議会に議論をお願いするというようなものであろうと思います。

 今回の法案は、重要な法案ではございますが、いわゆる刑事、民事の基本法という範疇からは、必ずしもそこに含まれるものではないという観点から、こういう形で審議をお願いすることになったということは御理解いただきたいと思います。

階委員 本改正についても、法制審議会の議論を経ていない分、慎重な審議が必要だと思いますし、他方で、国際機関の勧告を尊重して、それに沿った立法をしていこうという趣旨であれば、ほかの分野、特に取り調べの可視化についてもそれは当てはまるのではないかということを大臣に強く申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、高橋みほ委員。

高橋(み)委員 維新の高橋みほでございます。

 きょうもよろしくお願いいたします。

 今までの田嶋委員そして階議員と質問がかぶるところがございます。ただ、やはり、この改正を見たときに、皆同じようなところを疑問に思うんだなというような印象がございますので、重複することをお許し願いたいと思っております。

 まず初めに、我が国に対する国際テロの脅威というものについて、ちょっとお尋ねしたいと思っております。

 普通、法改正が起こるというときは、何らかの事実があった、今までの法律ではうまくいかなかったというところがあって法律の改正を行うということが多いと思うんですけれども、では、テロの脅威というのはそもそもどのくらいあるのかというのが、私、そしてまた一般の方の思いだと思っております。

 もちろん、九・一一とか、いろいろ海外で大きな事件が起こったということは皆存じ上げて、テロというものはやはりちょっと怖いなというふうに思って、もし身近に起こったらどうしようと思われてはいると思うんですけれども、では、実際、日本にいる私たちはどのくらいの脅威にさらされているのかということを知りたい思いもございます。

 そこで、まず、我が国に対する国際テロの脅威というものはどの程度のものなのかということをお尋ねしたいと思います。

寺脇政府参考人 お答え申し上げます。

 国際テロの情勢につきまして申し上げますと、世界各地でテロが発生をしておりまして、依然として憂慮すべき状況でございます。我が国につきましても、過去に、アルカイダの幹部がテロの対象として我が国を名指ししたことがございました。また、国際テロ組織の関係者が過去に我が国への入出国を繰り返したという事実もございます。

 これに加えまして、二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されますので、我が国におきましても、国際テロの脅威を踏まえまして、引き続き警戒する必要があると考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 アルカイダが名指しで日本を標的にしたということとか、出入国を繰り返していたということは存じ上げております。

 実際に脅威というような具体的なものは、ほかにはないのでしょうか。再度お尋ねします。

寺脇政府参考人 お答え申し上げます。

 今、手元に詳細な数字がございませんけれども、例えば、公表ベースでございますが、私どもが把握しておりますだけでも、最近でも六千件以上のテロが発生しておりますし、死者の数も、一万四、五千人、三、四千人はいるのかなと思っております。

 私ども、さまざまな調査をしておりまして、さまざまな情報も入手はしております。今ここでお答え申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、そのような意味では、我が国における脅威というのは現在もあるというふうに認識をしておるところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 もちろん、そのような細かい情報をここで公表してしまったらテロの方を利することにもなるかと思いますので、わかるのですけれども、実際にどのくらいテロの脅威があるのかなというのは一般人の素朴な疑問だと思いますので、まあ、なければないにこしたことはないんですけれども、もしあるような場合がありましたら、それを公表することが可能かどうかはわからないんですけれども、ぜひ情報の収集というところに努めていただき、情報を出すことができるならば出していただければいいんじゃないかなと思っております。

 ちょっと今のことにつながるんですけれども、今回この法律を改正するということになりました場合、この法律が適用された例があるのでしょうか。あるならば、その事例をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

谷垣国務大臣 今の御質問に御答弁する前に、日本国内でテロの危険がどれほどあるのかという御質問でございました。

 私は今、法務大臣という仕事をしておりますが、やはり常に頭の中の片隅にございますのは、オウム事件という大きなテロ事件を我々は経験しているんだということでございます。現在も、長い間逃走を続けていて逮捕された者が、公判が行われている最中でございます。

 ですから、あれがまた繰り返されるかどうかは別といたしまして、我々も大きなテロ事件を経験しているんだということは私、申し上げておく必要があるのかな、このように思っております。

 その上で、今度の現行法の適用事例については、先ほども御答弁いたしましたが、適用されたような事例があるとは承知しておりません。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 確かに、オウムの事件は、きっと日本人はまだ誰も忘れてはいない本当に大きな事件だったと思っております。あのようなことが繰り返されないためには、本当にいろいろな手を尽くしていかなければいけない、そのとおりだと思っております。

 適用された例はないということなんですけれども、ちょっと通告の範囲を超えるかもしれないんですけれども、適用はされないけれども捜査をしたとか、そういうことはあるのでしょうか、この法律に関しまして。

谷垣国務大臣 ちょっと私、間違っていたら事務方から補足してもらいたいと思いますが、私は聞いておりません。

高橋(み)委員 ありがとうございます。理解いたしました。

 それでは、今回この法律を改正するということになった場合、今伺った点では、捜査の対象ともならなかったというようなイメージでとっているのですけれども、今回は、今まで資金だけに限っていたものを、物等を供与していた場合に拡大していくという法律だと思っているんです。

 では、資金ではなかった、実際に物を供与していた、つまり、今までの法律では構成要件に該当していなかったから処罰はできなかったけれども、物などを供与しているというような事実はわかっていた、今回の法律があればもしかしたら処罰できたかもしれないなというような場合があったのかということをお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 物などを供与していたような事案、そして現行法では処罰できなかったというようなこと、そういうことも私どもは承知しておりません。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私は、今回の改正はやはりするべきだと思っていますし、大事なことだと思ってはいるんですけれども、実際、これを拡大しても、それほど効果というか、日本にとって余り適用することもないかもしれないんだなというような法律の改正ではあるのかなという印象はちょっと持っております。

 でも、一応、こういうことをしなければ、国際協調という点から、テロに対して毅然とした態度を見せなければいけないという日本の立場からは、改正するのは妥当だとは思うんですけれども、日本では今のところ余り必要性がないのかなというような印象もちょっとございます。もちろん、私はこの法律の改正には賛成はしております。ただ、ちょっと印象を述べさせていただきました。

 次に、先ほどの田嶋議員とか階議員のところでも何回も話されていたんですけれども、FATFによる勧告についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 FATFによりまして、九つの特別勧告の方で不履行と認定された部分というのがありまして、それが「国境における申告及び開示」という部分だったということを伺っております。

 これをちょっと読ませていただきますと、「日本は、マネロン・テロ資金供与の疑いのある収益及び手段の差押えに関する規定を設ける必要がある。」という指摘があったり、「日本は、通貨等の源泉、仕向地、移動の目的を立証する観点で、外国と協力する能力を構築する必要がある。」とか、「日本は、通貨や譲渡可能な支払手段の越境移動に対するマネロン・テロ資金対策の執行能力を確立することが必要である。」等、いろいろなことが書かれております。

 これを見ますと、今回法律を改正したところももちろん重要なのかもしれませんけれども、ここの九つの特別勧告のうち不履行とされた「国境における申告及び開示」という方が、私のイメージからしますと、かなり重要なところではないかというイメージがございます。

 そこで、まず、今の指摘されたところ、「国境における申告及び開示」のところは、現行法上、既に対応されていて、このようにFATFによってこれから勧告される可能性はないのかということをお尋ねしたいと思います。

後藤政府参考人 お答えさせていただきます。

 財務省・税関にかかわる部分ということで申し上げますが、FATFが二〇〇八年に我が国に対して行った相互審査におきまして、現金等支払い手段の携帯輸出入、いわゆるキャッシュクーリエに係る特別勧告の実施状況につきまして、以下のような二点、通貨や譲渡可能な支払い手段の越境移動に対するマネーロンダリング・テロ資金対策の執行能力を確立することが必要である、また、税関は通貨等の出どころやその使途に関する情報を運搬人に要求する権限を必要とするといったような指摘を受けたところでございます。

 これらのうち、前者につきましては、FATFでは、デクラレーション、申告制度またはその他の開示、ディスクロージャーの義務のいずれかを求められているということでございますことから、二〇〇八年に行われました関税改正において、百万円相当額を超える通貨等の越境移動については税関への申告を義務化する制度を導入したところでございます。

 また、後者の、通貨等の出どころやその使途に関する情報を運搬人に要求する権限等につきましては、申告を受理する際に、税関職員が関税法第百五条に基づきまして運搬人に対し質問検査を行うことなどにより十分対応可能であると考えておるところでございます。

 いずれにしましても、税関としましては、今後とも、旅客の出入国時における円滑な税関手続を確保しつつ、適正な水際取り締まりを行うべく関係省庁と情報交換を積極的に行うなど、適正な対応に努めてまいる所存でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと詳しくお尋ねしたいんですけれども、先ほど私が読みました「日本は、マネロン・テロ資金供与の疑いのある収益及び手段の差押えに関する規定を設ける必要がある。」というところがあるんですけれども、これに関しましては、もう既に規定がある、先ほどの法改正によってこのような指摘を受けることにはならなくなったということでよろしいんでしょうか。

後藤政府参考人 お答えいたします。

 関税法違反ということになりますれば、当然のことながら差し押さえの対象になるということでございますので、対応できていると認識してございます。

高橋(み)委員 疑いがある場合でもそれは関税法によって対処できているということでよろしいんでしょうか。

後藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明いたしましたような、申告義務が実際に果たされないような場合については対応するということでございます。

高橋(み)委員 申告義務が果たされない場合というのは、私の理解をちょっと超えているので説明していただきたいんですけれども、これは、マネロン、テロの資金の供与の疑いがある収益とかの差し押さえに関する規定を設けたということで間違いないということでよろしいんですか。申告義務というのはちょっとよくわからないんですけれども。

後藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明しましたように、FATFの方から我が国の対日審査で要求されてございますことが、このデクラレーションの制度の導入ということでございましたので、そうした文脈におきましては、我が国としてはその水準を満たした対応を行っていると認識してございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 今のお答えだと安心したと言いたいんですけれども、それでは、再度確認になりますけれども、この九つの特別勧告のうち、「国境における申告及び開示」というところに適用されたことにつきましては、全て今の時点では対応されていて、これから同じようなことを勧告されることはないというふうに今御答弁いただいたということでよろしいんでしょうか。

後藤政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほどの御指摘の九番目の勧告が全て税関に関するものというわけではございませんけれども、少なくとも財務省の対応ということに関しましては、FATFの方から求められている水準を満たしているということで考えてございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 それでは、この九つの特別勧告のうち、「国境における申告及び開示」につきまして、財務省が関係するところは基準をクリアしているので、もうこれ以上勧告を受けることがないというふうに理解させていただきました。

 私は、今回のこの質問を考えましたときに、法務省さんがテロに関して規定をするというところと、財務省さんが担当してテロに関して法律などを改正して対応していくところと、いろいろばらばらになっているのではないかというようなイメージを持ちました。

 もちろん、テロの資金ということによって一つでくくれるかどうかはわからないんですけれども、関税の問題もあるし、そしてまた、銀行を通ってお金がマネーロンダリングされたりとかいろいろなことがあるとは思うんですけれども、このテロの資金ということに関しまして、例えば今回の法律などによって一括化した法律にした方が、資金に関しての点からテロを撲滅していくということに関してはいいんじゃないかというようなイメージがございます。

 そこで、谷垣大臣にお尋ねしたいんですけれども、テロの例えば資金に関してはこの法律一本で完璧だよというような法律をつくった方がいいのではないかと私は思うのですけれども、その点に関してはどのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 余り今まで考えたことがなかった御質問ですので適切にお答えできるかどうかわかりませんが、私も、過去、国家公安委員長のとき、財務大臣のとき、あるいは今は法務大臣として、いろいろな観点からテロ資金あるいはテロ対策というものを見てきたわけです。

 やってみますと、テロ対策に必要な手段あるいは資源というものは非常に多様でございまして、情報を集めるということも必要でございましょうし、それから、刑事的な取り締まりといいますか、警備、治安というようなものの取り締まりも必要でございますし、それから、特に金融などの対応になりますといろいろな、さまざまな側面があると思います。

 私は、今十分考え詰めたわけではございませんが、高橋委員のお問いかけに対しては、一本で、例えば基本法みたいなものはできないわけではないと思いますが、多様な実務がございますので、それを一本にまとめていくのはなかなか難しいのではないかなというのが今の私の感じでございます。事務方は今まで作業してどのように思っているのか、ちょっと私、そこまで確認いたしてはおりません。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 今回の法律改正では、この法律が条文数もすごく少ないんですよね。これだけのもので一本をつくるならば、もう少しいろいろ膨らませてきちんと対応するものの方がいいんじゃないかなというような素朴な疑問で質問させていただきました。ありがとうございます。

 次に行きまして、またこれも田嶋議員や階議員の質問とちょっとかぶってしまうんですけれども、新三条二項前段と新四条一項で処罰される者の違いというものが、私も初め説明を聞いたときになかなか理解しにくいなと思いました。

 そこで、やはりこれを分けるというのが必要ではないんじゃないかなというような印象を特に持っております。

 そして、とても問題だと思うのが、新三条二項の方では、懲役七年以下、そして七百万円以下になるんですけれども、四条一項の方では、懲役五年以下、五百万円以下と、二年と二百万の違いがあります。

 主観で分けるということになるとは思うんですけれども、そうすると、処罰される者がどちらに実際は行くのかというのは、捜査員の問いかけとかいろいろなことで変わっていくんじゃないかなというような印象を持ちました。

 つまり、本当は三条二項に当たるような人でも、捜査員の問いかけによって四条一項の方に行ってしまう、逆ですね、済みません、ちょっと逆になりました。つまり、五年の方なのに七年の方に誘導されてしまう可能性というのがかなり高いんじゃないかと思いました。なぜならば、テロ行為は、もしかしたら起こるかもしれないな、そのためにいろいろな協力をしているのですから、やはり、その主観というものはすごく微妙なことのように思います。

 そこで、主観で処罰が変わる可能性、また、捜査員、捜査の人たちの誘導によってどちらに分類されるかというのが変わってきてしまう可能性というのがあるかと思うんですけれども、その点はいかにお考えか、お尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 今の点は構成要件上は明確に区別がされている、まず結論から申しますと、そういうことだと思います。ちょっとそれだけでは、何を言っているんだ、こういうことになりますから。

 要するに、三条二項前段の提供罪と、それから四条一項の提供罪、これはどっちも、公衆等脅迫目的の犯罪行為と言うと長ったらしくなりますので後はテロ行為というふうに申し上げますが、テロ行為の実行を容易にする目的で、テロの実行を実際にしようと思っている者に資金等々を提供しようとするテロ協力者、すなわち、三条一項の提供罪の実行を考えているいわば一次協力者、この一次協力者がいる場合に、この一次協力者に対して資金などを提供する行為を処罰しよう、これはどちらもそういうことであります。

 このうち、三条二項前段の方の提供罪は、テロ行為の実行を容易にする目的をもって行う資金等の提供、つまり、いずれもテロ行為の実行を容易にする目的を有するテロ協力者の間における資金等の提供を処罰するものでございます。これに対して、四条一項の場合は、テロ行為の実行を容易にする目的までは有しないものの、一次協力者による三条一項の提供罪の実行を容易にする目的をもって行う資金等の提供を処罰するものでございます。

 それで、それぞれの目的の立証に当たっては、もちろん、被疑者本人の供述、これは大きな要素でございます。しかし、それだけではなくて、被疑者本人の主観面を推認させるようないろいろな客観的証拠、あるいは関係者の供述、こういうものを総合的に考慮して立証することになります。

 それで、それぞれの目的の違いは、冒頭に申し上げたように、法文上明確にされておりますので、私は、その区分は十分に可能であるというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 法文上明確というのは、もちろん言葉としては明確にはなっていると私は思います。ただ、テロ行為を容易にする目的という場合と、一次協力者を助けようとする目的というのは、実際問題的に考えたら、余り変わらないんじゃないかなと私は思っております。

 ですから、この法律が適用された場合、実際にどちらに適用されるかというのを、これは将来的にまたなければいけないのかもしれないのですけれども、やはり、できるならば、もう少しきちんとというか、先ほど誰か議員の先生もおっしゃっていましたが、同じ一つの条文というか、もので処罰してもよかったのではないかなと、私は印象を持っております。

 そして、次に新五条の方に行きたいと思います。

 新五条一項で処罰される者というものについてなんですけれども、これは、私が見たときに考えましたのは、処罰範囲が際限なく広がるのではないかなというような印象を持ちました。

 もちろん、テロというものは何としても撲滅しなければいけないものでありますから、それに関与している者をきちんと処罰するというのは本当に大事なことだと思ってはいるんですけれども、特別に、そのテロなどに余り関係ないように、まあ、ないということはないかもしれないんですけれども、余りにも広がってしまうと、処罰範囲が広がって、国民の普通の活動も阻害される、そこまでいくかどうかわからないんですけれども、ちょっと問題があるんじゃないかなというような気がします。

 そこで、処罰範囲が広がらない、広がる可能性というか危険性はないと言えるのか、そこについてお尋ねしたいと思っております。

谷垣国務大臣 今、五条のお話ですが、五条の罪を設けている趣旨は、テロ行為の実行を助長ないし促進する行為、これは極めて危険な行為でありますので、そこに着目して処罰をしようということですね。

 それで、実行のために利用されるものとして提供等を行ったという規定になっておりますが、そう言えるためには、テロ行為が架空のものであったり、あるいは単なる想像上のものにとどまっているということでは、これはもう成立しない、それだけでは足りないわけです。要するに、提供等々をする時点において、その資金が実行のために利用されるようなテロ行為が現実に実行される可能性といいますか危険性、こういうものがなければ、この五条というものは適用されないわけでございます。そういう、テロ行為が行われる現実的な可能性、危険性というものがきちっと認定できなければなりません。認識していなければなりません。

 それから、五条の罪が成立するためには、その行為をするとき、いわゆる公衆等脅迫目的の犯罪行為、つまりテロ行為が、何者かによって実行される可能性があること、それから、提供に係る資金等々が、何らかの形で当該テロ行為の実行のために利用されるものであることをきちっと認識、認容していることが必要でございます。そういう要件を満たす場合に初めて五条の罪がかぶりますので、どこまで広がっていくかと御心配でございますが、それをそもそも認識していないような人には処罰が及ばないという限定を設けているわけであります。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 先ほどから何度も述べてはいるんですけれども、本当にテロは撲滅していかなければいけない、それに関与する人を絶対に許さないというような姿勢というのは大事だと思っております。ただ、余りにも処罰範囲が不明確になっていると、やはりそれはよくないというふうに考えますので、実際、この法律に適用するような事件が起きないことを望むんですけれども、もしそういうのが起きたときには、きちんと今おっしゃっていただいたようなことを認定して、無実の人が出ないようにはしていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

 これで質問を終わらせていただきます。

江崎委員長 次に、小島敏文委員。

小島委員 おはようございます。自民党の小島でございます。

 途中、大臣が出られますので、早目に質問をさせていただきますけれども、今回の改正法案の内容につきまして質問に入る前に、私が日ごろ思っておりますテロ対策について何点かお伺いをしてみたいと思っております。

 テロというのは、多くの方々の人命が失われまして、もしそれが成功しますと、ますます図に乗ってそういう行為が広がっていくという可能性があるわけでありますけれども、テロ対策の要諦は未然防止にあるとされております。国境を越えて世界じゅうでテロが行われている今日、一国のみでは到底、国際テロ対策は行い得ません。各国との緊密な連携協力があってこそ効果があるというふうに考えておりますが、私は常々、いわゆるテロの関係につきまして、我が国のテロに対する情報収集、そして集約はどうなっておるんだろうかということを思っております。

 日本におきまして、国内において、こういう機関というのは、法務省、警察庁、公安調査庁、外務省あるいは税関、そして防衛省、内閣調査室、そして財務省、金融庁、海上保安庁など、たくさんあると思うんですけれども、それはそれで、役所に聞いてみましても、一体どこが全部をまとめているのかということはどうもはっきりしない。

 恐らく、全ての情報は、首相の方とか官房長官の方に上がっていくんでしょうが、この縦割り行政といいますか、そういうようなことの中で果たしてうまくいっておるんだろうかということを考えておりまして、この点をどのように取り組んでおられるのか、まずお伺いいたします。

 そして、昨今の国際的なテロ情勢と我が国のテロの脅威について、どのような分析が行われておるのか、まずお伺いをいたします。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

寺脇政府参考人 お答え申し上げます。

 国際テロの未然防止のためには、アルジェリアにおける邦人に対するテロ事件を受けた各種の報告書及び提言を踏まえまして、関係省庁が緊密に連携をし政府が一丸となって、「世界一安全な日本」創造戦略等を適時適切に実施していくことが必要と認識をしております。

 公安調査庁は、先生御指摘のとおり、テロ対策の関係機関の一つでございますから、国内外の関係機関との協力体制を一層強化するなどいたしまして、国際テロ組織等の動向に関する情報の収集、分析に努めますとともに、国内におきましても、国際テロとのかかわりが疑われている人物や組織の有無及びその動向に関する情報の収集、分析に努めているところでございます。これらの調査の過程で重要な情報を入手した場合には、必要に応じまして適時適切に関係機関に提供しておるところでございます。

 二つ目の御質問でございますけれども、国際テロの情勢について申し上げますと、中東アフリカからアジアにかけての地域を中心といたしまして、世界各地でアルカイダ関連組織等によるテロが発生をしております。また、欧米におきましても、アルカイダ等の主義主張に感化されて過激化をいたしましたホームグローンテロリストの脅威が懸念されるなど、依然として憂慮すべき状況にございます。

 我が国につきましても、過去にアルカイダ幹部がテロの対象として我が国を名指ししたことがございますし、国際テロ組織関係者が過去に我が国への入出国を繰り返していたこともございますので、我が国でも、国際テロの脅威を踏まえまして、引き続き警戒する必要があると認識をしております。

小島委員 特に今回の法案に関係しますと、いわゆる警察庁の方にJAFIC、犯罪収益移転防止管理官というのがありますけれども、このあたりで集約されると思うんですけれども、私が思うのは、今申し上げたのは、全体的な情報が一体どこに上がっているんだろうかと。これは公にできないかもしれませんけれども、やはりこのことは、私ももう少し調べてみたいと思うんですけれども、果たして、一体的に、役所の縦割り行政というものが弊害として出てはおらぬかなということを考えるものですから、質問をいたしました。

 次に、テロ資金供給処罰法を改正する理由についてお伺いいたします。

 平成十三年九月の米国での同時多発テロの発生を契機にしまして、我が国も、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約、いわゆるテロ資金供与国際条約の締結をし、それに伴いまして国内法を整備したわけであります。平成十四年に制定されたものでありますけれども、先ほどからるる質問がありますけれども、これまで、この法律に基づく摘発とか処罰とかはあったのかということですけれども、ないようです。

 特に、この中で、資金的な面で、実は以前、大分昔ですけれども、私の記憶では新潟県にアルカイダが一時潜伏しておったというふうな情報も聞いたわけですが、これはもう昔の話ですけれども、そういう面で、日本にそうしたテロ集団、人物が入らないとも限らないという中で、資金的なそうした摘発、利用とかはあったのか、御答弁をお願いいたします。

林政府参考人 これまで、国際手配されておりましたアルカイダ関係者が我が国に入出国を繰り返していた事実などが判明しているところでございますけれども、御指摘の資金供与などの摘発事例、今現行法が適用された事例につきましては、承知をしていないところでございます。

小島委員 その点では、日本という国は、世界に比べてまだまだ、テロに対するそういう安全はかなり整備されていると理解をしていいのかというふうに思います。

 今回の改正は、平成二十年のFATF、金融活動作業部会の対日審査で指摘されたことでありまして、処罰範囲が不十分であると指摘されております。昨年の通常国会に法案が提出されましたけれども、今から六年前にこのFATFのいわゆる指摘があったわけです。

 FATFの決まりには、相互審査の最終評価決定後から三年以内にフォローアップの対象から外れるような改善措置をとることが望ましいという一文があるわけですね。我が国がいわゆる世界の一員としてテロからしっかり守っていこうという姿勢がある中で、なぜ六年間もかかったのかということと、その原因は一体どこにあったのかということを聞きたいと思います。

 同時に、テロ資金供給処罰法の関係でいいますと、平成二十年のFATFの対日審査におきましてどのような指摘を受けたのか。そして、対日審査後にFATFに対してどのように対応してきたのか。さらには、いつごろこの法改正の方針を決定したのか。もう一つ申し上げますと、未対応勧告があるのか否か。

 この五点につきまして説明をお願いいたします。

林政府参考人 平成二十年のFATFの対日審査におきまして、我が国は、資金以外のいわゆる物質的支援の提供、収集や、また、テロリスト以外のテロ協力者による資金等の収集が処罰対象とされていないなど、こういったような点から、テロ資金供与の犯罪化に係る取り組みが不十分であるという評価を受けたところでございます。

 これに対して、我が国といたしましては、共犯規定や予備罪の適用により対処できる場合もあるという旨の説明をするなど試みてきたところでございますが、FATFの理解を得るには至らなかったものでございます。

 こういった経緯を踏まえまして、我が国としては、平成二十三年の十二月にはテロ資金提供処罰法の改正に向けた作業を行うという方針を決定したものでございますが、結果としては、相応の期間を要することになったものでございます。

 なお、FATFからは、テロ資金供与の犯罪化の分野についてのほか、パレルモ条約の締結、あるいはテロ資金の資産の凍結、あるいは顧客管理、各分野についてもこの不備を指摘されております。こういった事項につきましても、当省を含む所管官庁において、別途、適切に対応していく必要があると考えております。

小島委員 いずれにしましても、そうしたFATFのフォローアップ、三年以内ということ、これは、ほっておきますと、FATFは世界に公表しますよということを言われているわけで、大変時間がかかったことについて私は残念にも思っておるところでございます。

 次に、法務大臣にちょっとお聞きしますけれども、国際社会と協調してテロ対策を推進することは、我が国が引き続き取り組んでいくべき重要な課題であります。そういう中で、今回のFATF勧告の不備事項に対応することとどのような関係があるのか、説明をお願いいたします。

谷垣国務大臣 国際テロ組織は、国境を越えて活動しているというのが実態だと思います。したがって、テロ行為を抑止していくためには、国際社会が幅広い分野で連携して、緊密に協調していかなければ実効が出てこない。そういうことから考えますと、我が国も、国際社会と連帯してテロを許さないんだという手段を持ち、国内でもそういう動きを加速していく必要があるのではないかと思います。

 今回は、そういうテロ対策の一環として今回の改正案を提出しているわけですが、FATFとの関係で申しますと、これは、政府間の枠組みで、特に金融面からテロ対策の問題をいろいろ協議するところ、協議というか国際機関としてそれに当たっているわけでありますが、ここがテロ資金供与に関する勧告をつくって、テロ資金供与の犯罪化を各国に求めているというのも、先ほど私が申し上げた趣旨と同様なものだと思っております。

 ですから、FATFの指摘にきちっと対応していくということが、国際社会と協調してテロ対策に取り組むということになっていくのではないかと私は考えております。

 いずれにせよ、いろいろな技術面の進歩も激しいわけでございますので、日本だけそういうものがおくれているということになりますと、日本が一種の抜け穴になってしまう、そういうことはやはり避けなきゃいかぬと私は思います。

小島委員 このFATFの加盟国は、G8諸国を含む三十四カ国と二機関が入っていますけれども、そういう中で、先ほど大臣がおっしゃったように、日本だけがテロ対策の抜け穴になっちゃいけないということは、全くそうでありまして、しっかりと国際社会においての責任を果たしていくということが重要だと私も思います。

 それで、平成二十五年からFATFの第四次相互審査が開始をされていると聞いております。我が国への実施時期については一体どの時期になるのかの見通しと、さらに、今回のいわゆる関連法案の改正によって、フォローアップというんですけれども、このフォローアップは、ほっておくと先ほど申し上げたように世界へ公表しますよということですから、これは、もし公表されますと、日本は大変不名誉なことになります。そういう中で、今回の改正ができればフォローアップから外れることになるのかどうか、見通しを御答弁いただきたいと思います。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

林政府参考人 我が国は、FATF勧告の実施が加盟国の中でもおくれた国の一つとなっておりまして、厳しい監視の対象に置かれております。現在、四カ月ごとにFATFに進捗状況を報告するという状態となっております。

 御指摘のFATFの第四次相互審査でございますが、これについては、まだ開始されておりません。したがいまして、我が国への第四次相互審査の実施時期も決まっておらず、承知しておりません。

 本改正法が成立した場合にFATFの我が国に対する評価がどうなるかということについては、そのことについてはお答えしかねますけれども、少なくとも、テロ資金供与の犯罪化の領域におきましては、本改正法案の内容において、諸外国と比べても十分なものとなるものと考えております。

小島委員 それでは、法案の内容に入っていきたいと思います。

 今回の改正のポイントの一つは、提供罪等の客体に、資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益を追加することでございます。このうち、土地、建物、物品、役務のいずれにも当たらないその他の利益というものがございますが、これがどのようなものをあらわすのか、どうも私もはっきりしないので、お聞きします。

 例えば、空港など重要施設への侵入経路、あるいはセキュリティーシステムの解除方法といったものを、経済には関係ないけれども、経済的価値は認められないけれども、情報としてテロ行為などの実行に使われるというふうなこと、このようなこともその他の利益に含まれるのかどうか、御答弁をお願いいたします。

林政府参考人 ただいま御指摘のありました利益というものにつきましては、およそ人の需要、欲望を満足させるに足りるものを意味しておりまして、例えば、家屋、建物の無償貸与でありますとか担保の提供など、一切の有形無形の利益がこれに該当するというわけでございますが、本法案の罰則との関係におきますと、テロ行為等の実行に資する利益のみがその対象となっております。

 お尋ねのいわば情報というものでございますが、例えば、御指摘のような空港等の重要施設への侵入経路でありますとか、セキュリティーシステムの解除でありますとか、こういった方法についての情報については、これはその他の利益に該当するものと解されると思います。

小島委員 今私がこういうふうに例を挙げましたからこの例について答弁いただきましたが、これ以外で何かありますか。例えばこんなことだということはありますか。

林政府参考人 土地、建物、物品または役務のいずれにも該当しない利益としては、例えば、空港等の重要施設の警備員が、同施設のテロ行為の実行を企図している他の同僚警備員に対して、その実行予定日に警備を担当できるように勤務日日程を入れかえて交代するでありますとか、あるいは、テロ実行企図者が身分を偽るために他人に成り済まそうとしている場合に、自分に成り済ますことに同意してこれに協力するなどのこと、これらのことも考えられると考えております。

小島委員 ここで大臣が退席というメモが入りましたけれども、大臣、一言だけ。私、すぐ済みますので。

 大臣、もう全て内容はわかっていると思うんですけれども、こういう中で、弁護士会とかの意見がさっきからありましたね、そういう世間の懸念についての見解と、今後のテロに対する決意、ちょっとお考えをお聞きいたします。

江崎委員長 谷垣大臣、簡潔にどうぞ。

谷垣国務大臣 確かに、処罰が広がり過ぎるのではないかという御懸念は日弁連等々もおっしゃっていますし、また、きょうの先ほどの質疑の中でも、その辺に対する警戒の御意見、テロ対策は必要なんだとおっしゃりながら、そういう警戒の御意見はあったと思います。

 しかし、私どもは、構成要件は明確に、広がらないようにできていると思いますし、そして、何よりもこれはやはり、私ども、これが実際に起これば捜査を担当しなければならないんですが、濫用することによっていたずらに国民に対して権利を侵害することのないようにこれは努めなければならない、このように思っております。

小島委員 どうもありがとうございました。どうぞ。

 それでは次に、今回の改正のもう一つのポイントは主体の拡大にあるということであります。その結果、提供罪だけで四種類できておりますけれども、さっきからずっと質問がありますように、第三条一項の提供罪、三条二項前段の提供罪、四条一項の提供罪、五条一項の提供罪、詳しくは申しませんけれども、の四種類であるわけですね。それぞれ、目的が必要とされていたり、テロ行為の実行のために利用されるものとしてという要件が必要とされています。その内容や違いがなかなか私にもぴんとこないのが事実なんです。

 それぞれの罪において、具体的なテロ行為の実行計画を認識して、それを積極的に助ける意思までが必要なのか、あるいは、漠然と、テロ集団に資金等が渡るであろう、テロ行為を行うであろうという程度の認識で足りるのか、そこらはどうなんでしょうか。御回答をお願いします。

林政府参考人 改正法案におきまして、三条一項及び三条二項前段の提供罪につきましては、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的というものが要件とされており、また、四条一項の提供罪については、前条一項の罪の実行を容易にする目的、すなわち、三条一項の提供罪に当たる行為を容易にする目的というものが要件とされております。

 この両者の違いにつきましては、テロ行為の実行を容易にする目的があるか、それとも、そこまではないけれども、一次協力者による三条一項の提供罪の実行を容易にする目的であるかという点にございます。

 また、五条につきましては、目的要件はないものの、資金等の提供がテロ行為の実行のために利用されるものとしてなされることが要件とされておりますところ、この要件につきましては、提供に係る資金等が利用されるような公衆等脅迫目的の犯罪行為、すなわちテロ行為が実行される可能性がある状況において、その実行のために利用されるものであるとの認識のもとにという意味でございます。

 三条一項、三条二項前段及び四条一項の提供罪が成立するためには、提供者におきまして、提供の相手方、あるいは提供の相手方がさらに提供をしようとしている相手方におきましてテロ行為の実行を具体的に意図している、そういうところの事実まで認識、認容していることが必要となります。

 また、五条一項の提供罪におきましても、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を助長、促進する行為をその危険性に着目して処罰するものでありますので、テロ行為が架空のものでありますとか単なる想像上のものでとどまっているのでは足りず、提供の時点で当該資金等が実行のために利用されるようなテロ行為が現実に実行される可能性が存在することが必要でありまして、提供者において、提供時にそのことも認識、認容している必要があると考えております。

小島委員 五条、その他の協力者についてお伺いしてみたいと思います。

 三条二項、三項、四条一項の罪はいずれも、テロの一次協力者への資金等の提供や一次協力者による資金等の受領を処罰する犯罪ですが、それに加えて、なぜ五条の罪を新しくつくることにしたのか、お伺いいたします。

林政府参考人 本条一項で定義されております公衆等脅迫目的の犯罪行為として想定されておりますのは、いずれも大規模でかつ組織的な犯罪行為でありまして、その実行のための資金収集等は、長期間にわたって、あるいは広範囲において、しかも多数の関係者がこれに関与する形で行われることが少なくないと思われます。

 その一端として、資金等の授受がたまたま発覚したような場合、組織やその犯行計画の全容解明には少なからぬ困難を伴うことが予想されます。それにもかかわらず、この資金等がテロの実行企図者やテロ実行企図者に対する直接の資金等の提供企図者にとって利用可能と実際になったのか否かということを立証を厳格に求めるとなりますと、これに対する実効的な対処を行い得ず、国際的なテロ包囲網に対してほころびを生じさせることにもなりかねません。

 他方で、その資金等をテロ行為の実行のために利用されるものとして提供し、または提供させる行為は、提供に係る資金等が直ちにテロ実行企図者やその直接、間接の支援者にとって利用可能となるものではなかったといたしましても、当該資金等をテロ実行企図者の方向に向けて近づける行為と評価することが可能であります。

 また、こういった行為をそのまま不可罰としておきますと、テロ実行企図者やその直接、間接の支援者がテロ行為の実行のための資金等に容易にアクセスできる状況にもつながりかねないところでございます。そういった意味で、テロ行為の実行を助長、促進するものと言えます。

 以上から、このような五条の規定を設けることとしたものでございます。

小島委員 五条の罪を新しくつくるということは、処罰範囲が無限大に広がるというふうな懸念もという声もありますね。

 先ほどから話がありますけれども、特に、日本弁護士連合会の会長声明で、「処罰範囲は著しく広汎に過ぎる」、「恣意的な不当逮捕・勾留がなされる危険性が増大する」ということが言われていますけれども、私は、この対象者が拡大するということについては、FATFの対日審査でも指摘をされておりますし、まして、明らかにテロ行為の実行を助長、促進するような支援行為であれば、きっちり厳正に処罰されなきゃならないというふうに考えております。

 そこで、今、弁護士会等が懸念されていますけれども、そこらをどのように受けとめておられるか。

林政府参考人 今御指摘のありました五条については、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のために利用されるものとして資金等を提供し、または提供させた場合に成立するものでございます。

 この点につきまして、この五条の成立の要件を少し申し上げますと、まず、実行のために利用されるものとして提供等を行ったというためには、客観的な場面でございますが、このテロ行為が架空のものや単なる想像上のものにとどまっているのでは足りず、提供等の時点において、当該資金等が実行のために利用されるようなテロ行為が現実に実行される可能性が存在することが必要であります。これが客観的な状況でございます。

 その上で、この五条の罪が成立するためには、実際の提供者等におきまして、その行為時に一条各号のいずれかに該当するテロ行為が何者かによって実行される可能性があること、そして提供に係る資金等が何らかの形でその当該テロ行為の実行のために利用されるものであることを、この行為者、提供者等が認識、認容していることが必要となります。

 こういったことでございますので、以上のような要件を満たす場合に初めて五条の罪が成立することに鑑みますと、処罰範囲というものが無制限に拡大するということはないと考えております。

小島委員 では、最後ですけれども、奥野副大臣、きょうは法務大臣が留守と聞いていましたので、最後になりますけれども、オリンピックもあります、今後、向こう六年間で、どうしてもそうした水面下でテロに対する脅威というのは日本はふえてくるんだろうと思うんですね。

 そういうことで、改めて、奥野副大臣から決意と、もう一つは、冒頭申し上げました、どうも私、今の日本のいわゆる情報機関の取りまとめ、これが果たしてうまくいっているかな、これが非常に霧に隠れておってわからないものですから、そこら辺はやはり整備も要るんだろうと思いますが、あわせて御所見をお伺いします。それで終わります。

奥野副大臣 今、小島先生からいろいろ御質問を聞かせていただきました。

 日本の国でテロというと、余り最近は目立ったものはございません。しかし、テロという定義はともかくとして、私の人生の中でテロに近いものを呼び起こしますと、三菱重工爆破事件とかあるいはオウム真理教の地下鉄サリン事件、そんなものもあったわけであります。しかし、今は余りそういった騒動が起こらないということは、日本はそれなりに、警察権力を中心として、それを取り締まっていく体制というのはできているんだろうと思います。

 しかし、おっしゃるとおり、これから外国の人たちがいろいろ入ってくる中で、日本の国民が脅かされるというようなことも想像できるわけでありますから、それはやはり、関係機関がきっちり協調して、国際協調していく上でどうしても必要な対策というのは積極的にやっていかなくちゃいけない。

 しかしながら、疑わしきだけでしょっぴいてきていろいろ対策を講じるというよりは、本当に証拠があるからこの人は罰しなきゃならないんだということを確認した上で罰していくというようなやり方をしていかなくてはいけない。そのためには、やはり関係機関が協調することだろうと思います。そうすることによって、日本の安全、安定、安心という考え方というのは実現できていくんだろうと思います。

 いずれにしても、これからも世界が変わっていく中で、日本は何をするべきなのかということをやはり関係機関できっちり議論した上で、本当にこれはだめなんだ、この人は罰しなくちゃいけないんだということを確認した上で罰していくということをやっていくことが、これからの日本の治安対策ではないかな、こんなふうに考えておりまして、私どももそれに向けて頑張っていきたいと思っております。

小島委員 どうもありがとうございました。

 これで終わります。

江崎委員長 午前十一時五分から委員会を再開することとし、この際、わずかな時間ですが、休憩いたします。

    午前十時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時五分開議

江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑続行。西田譲先生。

西田委員 維新の会の西田譲です。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本法律案につきましては、私、法務委員会の理事を務めさせていただきまして一年半になるわけでございますが、昨年の通常国会に提出された当初から、なぜ審議しないのか、早く審議入りをすべきじゃないかということをお話ししてまいりました。当時は自動車運転処罰法という世論の関心も非常に高い法案等もメジロ押しでありましたが、ようやくここに来て本法案の審議に入ることができました。

 野党理事として余りふさわしくない発言であったのかもしれませんが、やはりこの法案の重要性ということを考えれば、先送りはできないという思いでございました。理事の先生方に感謝申し上げます。

 さて、質問に入らせていただきます。

 まず、大臣がいらっしゃる前に、若干条文的なところを何点かお聞きしていきたいなというふうに思っております。

 まず、第二条で出てきますけれども、その他の利益でございます。

 その他の利益は、括弧書きで「(資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益をいう。)」ここでまた、その他の利益の括弧書きにまで「その他の利益」と書いてあるわけでございますが、具体的に、その他の利益とはどういったものなのか。そしてその後も、第二条でさらに「その他の方法」ということも出てきておりますね。「提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法」。

 この、その他の利益やその他の方法、こういったことについて具体的にどういったものを想定されていらっしゃるのか、教えていただきたいというふうに思います。

林政府参考人 改正法案二条一項で、「その他利益」ということでございますが、「資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益をいう。」とされておりまして、ここに言う利益とは、およそ人の需要、欲望を満足させるに足りるものを意味しておりまして、この土地、建物、物品、役務は利益に含まれるものの例示でありまして、この利益には、例えば、家屋、建物の無償貸与、担保の提供など、一切の有形無形の利益がこれに該当するということでございます。

 本法案の罰則との関係におきますと、テロ行為等の実行に資する利益のみがその対象となります。資金以外の利益の具体例といたしましては、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行行為者をその犯行の前後においてかくまうためのアジトとして利用され得る土地、建物、また、テロ行為に利用され得る武器、そのような武器を使用できるように訓練を施す、こういったことなどが考えられるところでございます。

 「その他の方法」という点についてでございますけれども、その他の方法、これは、勧誘でありますとか要請、資金提供を勧誘し、もしくは要請し、またはその他の方法によりというところでございますけれども、具体例といたしましては、資金の提供を強要するような行為でありますとか、単に手元にある資金を別の資産に転換したというにとどまらず、運用により利益を得てこれを当該犯罪行為の実行のために使用しようとの意図で手持ち資金を積極的に運用し、それにより、単に資産を換価した以上の利益を得るような行為、こういったようなことが想定されると思います。

西田委員 ありがとうございます。

 先ほど田嶋委員の質問でも、その他の利益には例えば情報であったり建物の図面等も入るというようなお話がございましたが、この図面ということでひっかかったのでございますけれども、先日でございますか、グーグルから、中部国際空港や新千歳空港の図面が流出をしたということでございまして、それは要人警護に必要な通路であったりとか、そういったものまで流出をしてしまって、これは保安上不適切であったということが報道でございましたが、仮にこの流出してしまった図面がテロに用いられたといったことになった場合に、流出させた人間というのは処罰の対象に果たしてなるんでしょうか。つまり、過失が本法律の処罰の対象となっているのか、この点、確認をさせてください。

林政府参考人 まず、一般論として、例えば空港の図面、見取り図というようなことでありましても、当然、人の需要、欲望を満足させるに足りるものとして、その他利益に該当し得るものでございます。

 他方で、改正法案三条から五条の犯罪構成要件、これらを満たすためには、各条項に定められた目的または認識を持って故意に資金等を提供し、または提供させたことが必要でございますので、これらの要件を満たさない場合には、本法の適用対象とはならないということでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 過失はならないということでございますね。確認をさせていただきました。

 次でございますが、先ほどからオウムの地下鉄サリン事件の件が出ております。仮にでございます、仮に本法律があったとすれば、地下鉄サリン事件が起きましたが、オウム真理教の信者は間違いなくオウム真理教に寄附だとか、いろいろな自分の財産を寄附しているわけでございましょうけれども、こういった場合、オウム真理教の信者は本法律の処罰対象になるのでございましょうか、仮にの話でございますが。

林政府参考人 まず、前提として、本法につきましては、一条各号に規定されましたテロ行為との関係でこの処罰の対象を犯罪化しておるわけでございます。

 そうしますと、改正法案の例えば三条、四条などの提供罪が成立するためには、提供者において、提供の相手方でありますとか、あるいは提供の相手方がさらに資金等を提供している相手方において、この公衆等脅迫目的の犯罪行為、すなわち、一条各号のテロ行為の実行を具体的に意図しているという事実を認識、認容していることが必要となります。

 また、改正法案に五条がございますが、五条の提供罪が成立するためには、提供者が、当該資金等が実行のために利用されるようなテロ行為が現実に実行される可能性が存在するということがまず一つでございますが、そのことを認識、認容している必要がございます。

 そういったことでございますので、いずれにしましても、提供者においてこれらの認識、認容に欠けるところがあれば、本法の適用対象とはならないということになります。

西田委員 今の御答弁ですと、仮に、地下鉄サリン事件当時、この法律があったとすれば、オウム真理教が事件を起こすわけでございますが、その信者であったとしても、そういう地下鉄サリン事件を起こすと知らなかった信者は処罰の対象じゃないけれども、知っていて寄附をしていた信者は処罰の対象だ、こういう理解になろうかというふうに思うわけでございます。

 一方で、やはり、テロ資金というものの性質を考えれば、テロ資金収集の一番オーソドックスな手法というのは、大抵、民族的な活動だったりとか宗教的な活動であったりとか文化的な活動の一部からかすめ取っていくパターンが多いわけでございますね。ですから、未然に防ぐという意味では、やはり注意はしていかなきゃいけないということになろうかというふうに思いますので、ぜひ、恣意的な運用というのはあってはいけませんけれども、何のための法律かというこの本旨を失ってはいけないというふうに思います。

 さて、大臣、お戻りでございますので、本格的に質問に入らせていただきたいと思います。

 さて、これまでの質問で、この法律施行後もう十年以上たつわけでございますが、まだ適用事例が一件もないということでございましたし、捜査したことも、大臣の御答弁ですと、把握はしていらっしゃらないということでございましたが、一体どういう背景なのか。

 そもそも、二〇〇二年の法律が何かでき損ないの法律であったのか、あるいは、この法律が求めるだけの執行能力が行政機関になかったのか、それとも、もうこんな法律あってもなくても同じぐらいに、我が国はテロとは無縁の平和な日々がこれまで続いておったのか、いろいろな背景があるのかもしれませんが、どのように適用ゼロ、捜査ゼロという現状を分析されていらっしゃるのか、刑事局長にお伺いしたいと思います。

林政府参考人 現行法の適用例がない理由といたしましては、これについてはさまざまな事情があり得るところでございまして、お答えすることは困難だと思います。

 いずれにいたしましても、このテロ資金提供処罰法というものが条約の求め等に基づいてつくられているわけでございますけれども、各国の法制度上の対応の違いといいますか抜け穴というものを塞ぐという国際協力、協調の一環として、抜け穴を各国がそれぞれ塞いでいくということで立法されたものと承知しております。そういった中で、実際のところの適用例としてはこれまでは承知していないということでございます。

西田委員 適用例がないといいますけれども、私、この法律、改めてこの第一条の定義、公衆等脅迫目的の犯罪というものを見てまいりますと、人を殺害し、もしくは凶器の使用云々かんぬん、誘拐し、人質にしと。あるいは、航空機、いわゆるハイジャック等があったり、船舶に対する行為があったり、もしくは爆発等が定義されているわけでございますね。北朝鮮の拉致は当たらないのかというふうに思うわけでございます。

 日本人を拉致したテロ国家でございますし、もうテロ支援国家の解除はアメリカからなされておるんでしょうけれども、もう一度テロ支援国家に指定しようかという動きもありますが、この法律の公衆等脅迫目的の犯罪行為に、どう見ても北朝鮮による日本人の拉致は当たるわけでございますね。そうすると、北朝鮮にいまだに送金をしているグループや人たちは数多くいるやに伺うわけでございますし、また、あわせて、海上保安庁の船に体当たりをしてきた中国人の活動家、尖閣上陸を試みているわけでございますけれども、これも公衆等脅迫目的の犯罪行為の、船舶の航行に危険を生じさせる行為はまさに読めるわけでございますけれども、では、そういった活動家に資金ないし利益を供与した者がいたら、これは処罰の対象にもなるわけでございますね。

 今のような私の認識、北朝鮮の拉致ということに関して、いまだに北朝鮮に送金をしているようなグループや人物、あるいは尖閣上陸を試みてそういう野蛮な行為をしてくるようなグループに対する送金や支援、こういったものも本法律の処罰対象と考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。

林政府参考人 犯罪の成否につきましては、個別の事案に関して収集された証拠に基づいて判断されるべきものでございまして、一概にお答えすることは困難でございますけれども、一般論といたしまして、少なくとも、改正法案三条、四条の提供罪が成立するためには、先ほども申し上げましたが、提供者において、その提供の相手方あるいは提供の相手方がさらに資金等をこれから提供しようとしている相手方において一条各号に規定されたテロ行為の実行を具体的に意図している、こういった事実をその提供者の側で認識、認容している必要がございます。

 また、改正法案五条の提供罪が成立するためには、提供者が、当該資金等が実行のために利用されるようなテロ行為が現実に今後実行される可能性が存在するということを認識、認容しているという必要がございます。

 このような要件等がございますので、こういった要件を満たさない場合には、本法の適用対象とはならなくなるわけでございます。

西田委員 捜査もしないという状況には決してないように私は思うわけでございます。ぜひともこれは検討していただきたいというふうに思うわけです。

 といいますのも、昨年一年でも、在日朝鮮人が国外に約二千人超、出国をしているわけでございますね。行き先は、当然、北朝鮮なんということは書かないで、中国であったりとか書いて、そういったところを経由していくわけでございます。先ほど、キャッシュクーリエも問題になっておりましたが、まさしく今、北朝鮮への送金というものは、そういった在日朝鮮人による持ち運びであるというように指摘を受けているわけでございますから、こういったことをきちんとやはり捜査の対象とすべきなんじゃなかろうか。

 本法律、十分私は読めるんじゃなかろうかというふうに思います。こんなことを見過ごしておったら、我が国がテロ支援国家の支援国家になってしまうわけでございますから、このような怠惰や無責任といったものは看過してはならないというふうに考えます。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 また、これは、なぜそうやって在日朝鮮人の方がそうなるのかといいましたら、本国といいますか北朝鮮で親族、家族が人質にとられているわけですね。ですから、そういった背景も踏まえて、やはりきちんと、そういったことはさせないといったことが在日朝鮮人の方々を守ることでもあるという見方もあるわけでございます。ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 続いて、本改正は十数年たってからの改正になるわけでございますけれども、私は、もっともっと小まめに見直す必要があるんじゃなかったかなというふうに感じております。テロの情勢にしてみても、国際テロ要覧にもありますとおり、一部のホームグローンテロリストに対する脅威というものが明確に記されているわけでございますし、一匹オオカミ型が最近はいるんだ、こういった指摘もされております。こういった、刻々とテロの情勢は変わっているわけでございますから、今法律だって、やはりその実効性が果たして担保されているのか、抑止力は果たして効果的に働いているのかという検証をしていかなきゃいけません。

 そこで、また一方で、この法律というのは処罰の法律でございますから、例えば、捜査がその権限を不当に濫用していないか、恣意的な捜査になっていないか、そういった国民の自由を守る観点からのチェックだって頻繁にしていかなきゃいけない法律です。一度つくってしまえばもう後はいいやという法律では決してないわけでございます。

 私は、この法律、十二年ぶりの改正になるわけでございますか、つくったらほったらかしの印象をどうしても持ってしまうのでございますが、私は、もっと頻繁に、そして今改正後も頻繁にやはりその効果について見直し、検証等を行っていく必要があると考えますが、これは大臣にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 頻繁に見直せという西田委員の問題意識に直接お答えすることができるかどうかはちょっと別としまして、これは、平成十四年に、いわゆるテロ資金供与防止条約の担保法として現行法ができた。それで、一応、当時は、この条約が処罰することを求めている範囲については犯罪化されたという認識でいたわけです。しかし、平成二十年にFATF勧告の遵守状況について審査を受けまして、そこで、テロ資金供与の犯罪化を求める特別勧告2に係る指摘として、一部履行しているにすぎないという厳しい評価を受けました。

 こういう経過を踏まえまして、改正の必要性等も検討して、その結果、先ほど来申し上げておりますような、テロを許さない国際環境の醸成に努めていくのは、テロが国境を越えて活動している上から見ると、当然しなきゃいけないということで、改正を考えまして、昨年三月、本改正案を出させていただきました。

 先ほど来御答弁申し上げているように、直接この法案によって検挙する事例、あるいは、捜査したけれども起訴できなかったというような事例は、私は承知いたしておりません。もちろん、情報を集めることや何か、いろいろやらなければならないことはたくさんあるわけですが、必ずしもこの法案の当否を判断する機会がなかったと言えないこともないかもしれません。しかし、いずれにせよ、テロをめぐる国内外の情勢をきちっと踏まえながら、必要なテロ対策に今後とも取り組んでいかなければいけないと思います。

西田委員 御答弁ありがとうございます。

 どうしても、この法律のきょうの議論を聞いておりますと、もともとが条約の担保法からスタートしているわけでございまして、今回の改正も、国際機関から言われて、国際社会に体裁を繕う目的でつくっているような法律だったら、これは本末転倒であって、やはり、本法律そして本法律改正については、断固テロと闘うという強い意思がまずあってのものでなくてはならないと思います。その点を大臣に確認したいと思います。

谷垣国務大臣 おっしゃるとおり、おつき合いで、言われているからというだけでは、これは私は足らないと思います。

 繰り返しになりますが、やはりテロは国境を越えて行動しておりますし、どこか一つが抜け穴みたいなことになりますと、今の進んだいろいろな通信技術やいろいろな金融取引の実情から考えますと、そこから物がどんどん抜け落ちていくということになりますから、やはり国際的な連携というものが必要でございますし、我が国も、そういうグローバル化した環境の中でテロを許さない、このことはしっかり腹の中に置いておかなければいけないことだと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 今回の法改正で、テロに対する法的権限、法執行機関、捜査機関等の法的権限が拡大されるわけでございますけれども、幾ら法整備によって法的権限が拡大したといっても、執行する側にこれをきちんと行使しようという意思がなければ、全く意味がないわけでございますね。与えられた法的権限を執行機関が適正に行使しない、これはもう怠惰であり、無責任であって、我々立法府として、これは決して看過しちゃいけないというふうに考えるわけでございます。

 そういった観点から、今後の体制の整備あるいは捜査能力の向上、こういったことをどう図っていこうとされていらっしゃるのか、これは谷垣大臣とあわせて警察庁にお伺いさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 まず、やはりテロに関する内外の情報を幅広く収集していくという能力がなければなりません。私の担当しているところでいえば、公安調査庁の能力を高める、機能を高めるということが必要だろうと思います。

 それで、そういったものを分析した上で、これは公安調査庁だけが決してこういう情報を集めているところではございませんので、関係諸機関とも情報を共有しながら、その次は、法執行機関のテロ対策に対する捜査能力、それを迅速かつ的確に行うような、法執行機関の能力を高めていくということも必要不可欠であろうと思います。そういったことを念頭に置きながら、テロ対策にきちっと取り組んでまいりたいと思っております。

塩川政府参考人 お答えします。

 警察では、平成十六年の四月に警察庁に外事情報部を設置するなど、これまでも国際テロ対策への取り組みを強化してきたところであります。

 昨年一月には在アルジェリア邦人に対するテロ事件が発生しましたが、これを受けて、海外で邦人が巻き込まれたテロ事件などに対処する外事特殊事案対策官を新設し、アラビア語などの言語や各地域の情勢に通じた要員を確保するなど、国際テロリズム緊急展開班、TRT―2と申しますが、この事態対処能力を向上させ、また、外国治安情報機関との連携と、これを通じた情報収集、分析及び捜査協力を強化するなど、国際テロ対策をさらに強化しているところであります。

 警察としては、本法律が改正されたときには改正法も活用することとして、引き続き国際テロ対策を推進してまいりたいと考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 アルジェリアの事件を例示されましたが、まさしくあのときの、我が国に対外諜報機関がないことが背景に一切情報が入ってこないという経験をやはりきちんと踏まえなきゃいけないと思います。

 いまだにこの対外諜報機関を設置しようという動きはないわけでございますけれども、一方で、今御答弁にありましたとおり、この自由主義の諸国ときちんと連携をしていく。諜報機関がなくても、やはり捜査機関同士の連携というものは、本当に緊密に、時間がかかるかもしれませんが、ぜひやっていただきたいというのが一点。

 もう一つは、大臣が、うちでは公安調査庁というふうにおっしゃいました。これはやはり、習慣的な縄張り意識というものがテロ対策の足を引っ張っているようなことがあっちゃよくないというふうに思うわけでございます。つまらない功名心とか組織的利益を優先するようなことがないように、ぜひとも運用面で気をつけていただきたい、このように思うところでございます。

 次にですけれども、やはり未然に防ぐといったことが一番大切でございまして、テロ活動の疑いが濃厚になったという場合には、捜査、そして逮捕、勾留、尋問、こういった一連の流れが迅速になされることによって未然に防げるわけでございますので、私は、そういった、ある意味、法執行機関に対するある程度の自由度を、それが果たして適正だったかどうかの検証は当然しなければいけませんが、テロを未然に防ぐという意味では、捜査、逮捕、勾留、尋問、こういった一連の流れに対する法執行機関のある程度の自由度を担保させてあげる必要があるんではなかろうか、こういったことを考えるわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 二〇〇二年に、私は国家公安委員長をやっておりまして、その当時、関心を持っておりましたのは、アメリカの九月十一日以降のテロ対策立法といいますか治安対策立法というものを、相当関心を持って見ておりました。当時の日本のそれまでの法制度から見ますと、歯にきぬ着せず言えば、ここまでやれるのか、やるのかというような印象も、率直に言ってあったところでございます。

 それで、そういったものが、それ以降どのように活用されてきたのか、あるいは弊害を持ってきたのかということも、私、一度勉強しなければならないことだと思っているわけですが、ただ、日本で、今、法執行機関の活動、自由と申しますか、そういうものをもっと認めていくべきではないかという西田委員の御主張でございますが、しかし、我が国は、やはり憲法三十三条、三十五条というようなものをどうしても念頭に置いておかなければなりません。逮捕、勾留、あるいは捜索、差し押さえ、いわゆる強制処分は、原則として事前の司法審査を要するということにしております。

 もちろん、現行犯逮捕とか緊急逮捕、令状主義の例外もございますけれども、御指摘の点、こうした現行のあり方を踏まえながら、テロ対策についての効果的な法執行機関のあり方というのは考えていかなければならないのではないか、このように思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 こういったことがあるから、やはり私は、このテロに対する法律というのは、やはり頻繁な見直しをしていく、一方で、国民の自由が不当に侵害されてはならないといったことが非常に大切でございますし、この日本は、そういったことを行き過ぎないようにさせるための良識に満ちあふれている国だと思いますので、私は、頻繁な見直しをすることで、十分そういった恣意的な捜査、職権の濫用といったものは防止できるというふうに考えるわけでございます。

 昨年の法務委員会の視察で、FBIも訪問させていただきました。当時FBIのナンバーツーの国際局長のお話を伺うことができて、最後にメッセージを、フーバー回顧録の本に、私はいただいたわけでございますけれども、やはり、日米のこの捜査機関の協力というものは、秩序の安定のために不可欠だというようなメッセージだったことを記憶しております。

 最後に、一九七六年六月の二十七日でございましたが、エールフランス機がテロリスト四名にハイジャックをされるという事件がありました。その後、ウガンダのエンテベ空港に着陸をさせられて、イスラエル人以外の人質は解放されるんですが、約百名近いイスラエル人の人質がとられて、イスラエルに対して、イスラエルで勾留されているテロリスト四十名の釈放が要求されるわけでございます。

 その後、約一週間、いろいろな交渉がなされるわけでございますが、七月三日にイスラエル軍の対テロの部隊が急襲をして、そして見事人質を解放する、いわゆるエンテベ空港急襲作戦というのがあったわけでございますけれども、そのエンテベ空港急襲作戦でただ一人、イスラエル軍側で犠牲者が出ました。その犠牲者はヨナタン・ネタニヤフ氏でございまして、先日来日されたイスラエル・ネタニヤフ首相の実のお兄様でいらっしゃいます。

 ネタニヤフ首相は、首相の前はイスラエルの対テロリズム研究所の所長等をなされておりまして、私も議員連盟の関係で歓迎昼食会に参加をさせていただいて直接お話を伺う貴重な機会をいただいたわけでございますが、このネタニヤフ首相のテロに対する考えというものは本当にしみ入るものがございますので、きょうは最後に、このネタニヤフ首相の言葉を引用させていただきたいと思うんですね。こうおっしゃっています。

 テロリズムは、受け身や弱気な態度によってぽっかりあいた空白を埋めてどんどん広がっていくという不幸な性格を持っている。逆に、断固とした強い行動に出会えばそれに応じて小さくなっていく。確かなことは、テロリズムに立ち向かうにはそれと闘うしか方法はないということだ。指導者たちは市民的自由を侵害しているとか過剰反応だという非難の集中攻撃に遭うに違いない。しかし指導者たちはどんなに激しい非難に遭ってもやるべき勇気を持たなければならない。強敵を物ともしない政治家たちに狭量な者たちが投げつける石つぶてに対しては勇気ある行動こそが最良の答えだ。

 このエンテベの勇者の弟であって、そして御自身もこれまで幾度となくテロと対峙されてこられたイスラエルのネタニヤフ首相の言葉は、私、拳々服膺しなければならないというふうに思うわけでございます。

 先ほど大臣が、国際的な体裁というよりも当然テロと闘う断固たる意思というものが大切だというふうにおっしゃいました。ぜひとも、テロを未然に防ぐというその断固たる意思のもとに今回広げられる法的権限を有効に活用していただきたい、このように願うばかりでございます。

 以上で質問を終わります。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 本日、三十分質疑時間をいただきまして、この公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の改正案について伺ってまいりたいというふうに思います。

 先ほど来さまざま質疑がございまして、私自身の通告した部分と重なる部分もかなりございますので、重なる部分は御容赦いただければなというふうに思います。

 まず最初に、適用されたケースがどのぐらいあるかとごくごく簡単な質問をしようとしたんですけれどもるる出てきたので、これはケースがないということを確認したいと思います。今もって、この法律が施行されて以来ケースが一度もない、さらには、先ほど大臣も、捜査をした例もないということをおっしゃっていただきました。

 この法律について、日弁連から声明等出されているわけですけれども、特に一言、「現行法が適用された例を聞かない。これは、この法律を制定する立法事実がなかったことを示していると考えることができる。」こういうお言葉があるわけでして、これに対して十分に大臣から御反論をいただきたいなというふうに思います。

 本法施行後、ケースが一度もない、さらには捜査をしたことはないというと、問題事案を取り逃したとか、そういった事案も恐らくないんだろうというふうに思いますけれども、この点について、大臣、御意見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃるように、現行法が適用された事例、あるいは、捜査に着手したけれども法が十分使えなくて不都合が生じたというような事例も承知はしておりません。

 それで、今まで一度も使われたことがないというのは、立法事実が、そもそも必要性がないんじゃないかという御指摘もあります。だけれども、先ほどからるる申し上げておりますように、一つはFATFから指摘を受けたということがございますが、FATFから指摘を受けたということだけではなくて、要するに、国際テロというのは国境を越えて活動される、そういう性格のものでございます。そして今、科学技術、通信技術、いろいろなものが発達してきておりますから、やはり、国際的に連携してループホールなどがないような仕組みをつくっていかなければ、国際テロリズムというのと対抗できないんだろうと私は思います。

 そこで、日本も、そういう意味で、国際的に見ておまえのところはこれが欠けているという指摘を受けないようにしていくというのは必要なことではないか。そういうことをして、やはり日本もきちっとテロとは闘うんだということを示していく必要はあるのではないか。

 立法事実がないという御批判に対しては、もう少しつけ加えますと、日本国内でも、先ほど申し上げましたけれども、国際手配されていたアルカイダの関係者が出入国を繰り返していたということが事実としてございます。ですから、今後、そのアルカイダをめぐって日本は何もないとは、これは保証できません。

 また、国外では、マシンガンとかあるいはプラスチック爆弾を提供するような事例もあったことを考えますと、とにかく、穴をあけない、抜け穴をあけない、こういうことは極めて大事ではないか、それは十分立法の必要性を要請するものではないかと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 私自身も、昔、留学していたときにインテリジェンスという授業を受けていたりとかして、テロに対する対策を講じることの必要性というのは非常に重要であるというふうに感じております。

 国内においても、歴史的に見ても、先ほど奥野副大臣もおっしゃっていましたが、三菱重工事件を初めとして、赤軍の事件もそうですし、浅間山荘事件もそうですし、さらには中核派の件もそうですし、いろいろ、テロまたはテロに近しい行為というのは多々あるんだろうというふうに思います。そうであるからこそ、きちんと国際的に連携をしてやっていくことというのは非常に重要だというふうに思っております。

 そういう意味で、今回、FATFの勧告の遵守状況等に対して指摘を受けている、それに従って法改正をするということは、グローバルに見て私自身は賛成の考え方をしております。他方で、やはり刑罰法規ですので、刑罰法規に関しては当然ですけれども、その内容が明確であることということと、捜査の範囲について、不当な捜査等があってはいけないだろう、こういう二面から見ていくことが必要だろうというふうに私自身は思っております。

 そういった意味で、まず、このFATFの勧告に対する遵守状況についてというところについて、引き続き伺ってまいります。

 FATFの遵守状況に対する第三次相互審査の評価として、ノンコンプライアント、不履行、不遵守が十個、それから、ラージリーコンプライアント、おおむね遵守というのが十九個、パーシャリーコンプライアント、一部遵守というのが十五個、コンプライアント、完全にきちんと遵守しているというのが四個ということで、不十分な点が結構多いように見受けます。

 私自身、暗黙の信頼感なんですけれども、日本という国は、こういう国際条約についてはおおむね遵守していることが当然だと思い込んでいた節があって、ノンコンプライアントが十個とかパーシャリーコンプライアントが十五個とか、不遵守の部分が結構多いということに結構驚いたんですけれども、率直に、諸外国がどうなっているのかというところと、それから、それに対して現状どう評価しているかということについて、まず一点伺いたい。

 それから、本法改正において、特別勧告、具体的には特別勧告の2というところだと思いますが、それ以外にも1と3というところにも、資金の定義というところについて、それぞれ問題点を指摘している部分が表を見るとあるということでございまして、これらについて恐らく対応はされることになると思いますが、それ以外の、四十の勧告に関してと、それから九の特別勧告というところについて、既に対応された部分もあるでしょうし、それから、これはまだまだ問題があると指摘される部分もあるんだろうというふうに思いますけれども、このあたりについて、参考人もお呼びしておりますので参考人含めて、大臣と、それから警察庁、財務省の参考人をお呼びしておりますので、それぞれ担当のところについてお答えをいただければと思います。

仲政府参考人 お答え申し上げます。

 FATFには現在三十四の国と地域が加盟しております。第三次の相互審査で、不備事項がありますとフォローアップというのが行われます。そのフォローアップを終えた国というのが既に二十四ほどございまして、残された国というのは十ほどございます。その残された十の中で日本がどのようになっているかということなんですが、残念ながら、FATF勧告の遵守が最もおくれた国の一つということになっております。

 我が国としましては、今回御審議いただいております法案関連の勧告も含め、全ての指摘された勧告について所管省庁においてその対応に取り組んでいるところでございますが、できるだけ早期にこのような遵守がおくれているという事態から脱却していきたいというふうに考えております。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 FATFによる指摘項目のうち、警察庁は、先生御指摘の五番、NCとされておりますもので、金融機関等における顧客管理、それから、いわゆる特別勧告の方の、SR3でございますが、テロリストの資産凍結、これはPCとされておるものでございますが、これを担当しております。

 このうち顧客管理につきましては、我が国は平成二十三年に犯罪収益移転防止法を改正するなどの取り組みを進めてきたところでございますが、FATFからは依然として、継続的顧客管理など、FATF基準で求められている義務の一部が我が国の法令で明記されていないなどの指摘を受けているところでございまして、こういったことを踏まえまして、現在、警察庁において有識者懇談会を開催し、行うべき制度改正の方向性について議論をいただいているところであり、今後その議論を踏まえ、関係省庁と連携しながら、FATF勧告に対応した実効性あるマネーロンダリング対策に関する制度の整備に努めてまいりたいと考えております。

 また、テロリストの資産凍結についてでございますが、FATF勧告は、関連する安保理決議に従いテロリストの資産を凍結するなどの措置を講ずるよう求めているところ、我が国は、審査において、国内居住者から海外のテロリストへの送金等については規制されているものの、国内居住者と国内に居住するテロリストとの間の取引は規制されていないなどの指摘を受けております。こうした指摘を踏まえ、FATFと議論しつつ、必要な制度の整備について関係省庁と連携し検討を進めているところでございます。

谷垣国務大臣 FATFから指摘を受けておりますのは、先ほど財務省の仲さんから御説明があったとおりでございます。それで、その中に、テロ資金供与の犯罪化等々の問題がございましたので、テロ資金提供処罰法を所管する法務省としては、まずこれをきちっとやって国会で御承認をいただこう、こういうことで努力をしているところでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

椎名委員 ありがとうございます。

 日本が最もおくれている部類の一つだというのも結構意外なんですけれども、やはりテロは国際連携していかないといけない部分でございますので、今般の法律もずっとたなざらしにされていたところがありますので、ぜひ早急にやっていかなければならない部分の一つかなというふうに思っております。

 そして、金融機関の顧客管理の話を含めたところについては、私自身も金融法務を昔ずっとやっていたので、犯罪収益移転防止法の改正により、金融機関がいろいろばたばたしていたことはよく知っているわけですけれども、やはり、彼らのマインドセットとしては、役所が何か言うから、しようがない、やろうかみたいな程度の発想しかなくて、テロを防止していく、自分たちがテロの当事者になり得るということに対する認識というのはかなり欠けている気がします。私たちも、法律家として、犯収法の要求されている事情等を契約書の中にそれぞれ入れ込むという仕事をひたすらやっていた記憶だけがあります。

 やはり金融機関を通じてお金を動かしていくというのがマネロンの基本でしょうし、そのあたりについても引き続きテロの防止のために頑張っていただきたいなというふうに思っております。

 さらに、先ほど西田先生からも指摘がありましたけれども、現金を持ち出しするという、税関の問題がやはりあるところですので、このあたりについてもきちっと適用していただかないといけないというふうに思います。

 質問はしませんけれども、今現状、この指摘においてはノンコンプライアントというふうに指摘されていて、先ほど財務省の方から、私の質問に対してではないですけれども、一応対応はできているということですので、このあたりもきちんと見守っていかなければならないところかなというふうに思っております。

 引き続き財務省の参考人に伺いたいんですけれども、今回、この指摘事項がもし仮に改善しないとすると具体的にどういう制裁があるのかということ、それで、諸外国でこういった制裁を受けたことがある国というのは実際にあるのかというところについて伺えればというふうに思います。

仲政府参考人 お答え申し上げます。

 ハイリスク国、非協力国のリストに入りますと、FATFの加盟国の金融監督当局がそれぞれ自国の金融機関に対し、この国は非協力国です、あるいはハイリスク国ですという認定をFATFから受けましたという通知をいたします。これを受けて、金融機関の側では、自分が取引のある相手先国の金融機関についてマネロンあるいはテロ資金のリスクがどの程度あるかを判断し、その金融機関の判断として、場合によっては取引を中止したりということがございます。

 現在、ハイリスク国、非協力国のリストに入っている国でアフガニスタンがございますが、先般報道されたところによりますと、中国その他の国からアフガニスタンの銀行が取引を停止されるという事態に至っておりまして、これが日本に直ちにそのように当たるかどうかはわかりませんが、そういう事態が起き得るということが、FATFのこれまでの活動の結果起きている事態であるということでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 FATFのそういった御指摘によって日本がアフガニスタンのようになってしまうというのも、いささか不名誉なことではあろうかというふうに思いますし、日本の国の政府は十分に機能しているはずでございますので、やはりそのあたりについては、我々としても、立法府の側としてもきちんと対応していかなければならないというふうに思っております。

 引き続き法案の具体の内容について幾つか伺っていきたいというふうに思います。

 冒頭、私の方からも、法案の内容を含めてですけれども、大きな方向性としては基本的には賛成をしているということを申し上げた上で、やはり、刑罰法規である以上、きちんと法規、刑罰が受ける対象を明確化していかなければならないということを申し上げたところでございます。

 今回の改正で、FATFの勧告の相互審査の指摘のところで受けたものを受けて修正するわけでございますけれども、今までの質疑の中でもるるございましたが、客体が拡大をされる、その拡大されるものが、資金もしくはその実行に資するその他の利益であるということで、「資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益をいう。」ということで、かなり幅広に定められている。

 これ自体は、先ほど来指摘がありますけれども、その他の利益の中にその他の利益が入っていて、かなり構成要件の外延がわかりづらくなっているようにも見受けるわけでございます。これによって処罰範囲が広がることに対する懸念というのは、先ほど来指摘をされているところでございます。

 特に、テロ犯罪というのは、どうしても、犯罪を犯す側も政治的な意図を含んで行為を行うということが非常にあるわけでして、テロ犯罪そのものに対する、これがテロであるという判断そのものもかなり政治的な判断を含む犯罪類型ではないかというふうに思います。

 そうであるからこそ、やはりその構成要件の外延をきちんと明確化するということが必要だと思いますけれども、今回定められたこの客体の範囲について、構成要件の範囲の明確化という観点からどのようにお考えになっているか、大臣の御意見を伺えればと思います。

谷垣国務大臣 今のテロ資金提供処罰法は、資金のみを規制対象としているわけですが、改正法案は、資金以外の土地、建物、それから物品、役務その他の利益であって、公衆等脅迫目的の犯罪行為、つまりテロ行為等の実行に資するもの、これも処罰対象に含めようというものでございます。

 これは、テロ行為の実行行為者をその犯行の前後においてかくまう、例えばかくまうためのアジトとして利用され得る土地、建物、あるいはテロ行為に使用される武器、そういった武器を使用できるように訓練を施す、こういった、資金以外の利益であってテロ行為等々の実行に資するものを提供する行為、または提供させる行為についても、テロ行為の実行を助長、促進する危険性は、資金の提供、収集にかかわる場合と程度は同じである、このように考えまして、こういうふうに処罰対象を広げたわけであります。

 それで、資金に加えて、テロ行為等の実行に資するその他の利益を二条等々の客体に含めたわけですが、今度の改正法案は、テロ行為という重大な犯罪行為、一条に規定してございますが、そういった重大な犯罪行為の実行が単に想像されるとか予想されるということでは足りませんで、具体的にそれが意図されていることが必要である、こういう要件がございます。

 それから、テロ行為等々の実行のために利用する目的といった主観的要件を満たさなきゃならない、そういった場合だけを処罰対象としております。

 そしてさらに、提供罪等の客体となる資金以外の利益については、テロ行為等の実行に資するものというふうに限定しております。

 そういう限定がございますので、その他利益を客体に含めまして確かに拡大はしているわけですが、不当に処罰範囲は広がることはないのではないかと考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 例えば募金で、これが最終的に、二次協力者、三次協力者、さらに協力者に対する協力者みたいなところで、募金が最終的に回り回ってここに行ったりとかすることも間々あるだろうというふうに思います。こういったところの範囲を拡大していくと、やはり処罰範囲の拡大という懸念が非常にあるんだというふうに思います。

 しかし、今御指摘いただいたとおり、故意犯であることというのが一番大きなところであり、さらには、テロについてもきちんと企図されていることということが要件とされるということで、かなり処罰範囲が限定されるということを御答弁いただきました。

 やはり、これは現実的にきちんと縛っていかないといけない部分であるかなというふうに私自身は思っているところでございます。

 次に行きたいと思います。

 この法案の罰則、最大が十年以下の懲役または一千万円以下の罰金というふうに書かれております。テロの、特に一次協力者とか二次協力者とかいう形だろうと思いますけれども、法人が関与するということもあるのかなというふうに思います。

 この法律については、基本的には両罰規定が八条にあるわけでして、一応、法人自体も処罰をするということはあるんだろうというふうに思っています。

 そうした中で、法人が対象になり得ると考えたときに、罰金最大一千万というのは、へでもないというか、金額が安過ぎるということがあるんじゃないかというふうに思ったりしますけれども、この点について御意見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 二条一項それから三条一項の罪に係る罰金刑の多額は確かに一千万でございます。そして、両罰規定もございまして、法人が対象になるということも十分想定し得るところであります。

 それで、安過ぎるんじゃないかということでありますが、これは我が国の罪質、共通するところのあるものを見ますと、例えば、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律というのがございますが、そこでも、化学兵器を使用して、毒性物質を発散させる罪については、無期もしくは二年以上の懲役または一千万以下の罰金という法定刑でございますし、それから銃刀法ですね、ここに、営利目的での拳銃等の譲り渡し等々の罪、これは三年以上の有期懲役または三年以上の有期懲役及び一千万円以下の罰金、こういうふうになっておりますので、こういうものと比較いたした場合には妥当な水準ではないか、こういうふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 横の展開というか横の比較を見て、妥当だろうというふうに言われておりますけれども、日本の国内で見ると恐らくそうなんだろうと思いますが、対日相互審査報告書概要というのを見てみると、「この罰金刑は、法人に適用される際は、テロの脅威と釣り合いがとれておらず、抑制的と考えるには低すぎる。」というふうな指摘もあるところなので、やはり少し検討の余地のあるところなのかなというふうに私自身は思っております。

 次に、一次協力者と、先ほど準一次協力者というふうに言っておりましたが、一次協力者に対して協力をする人たち、これには二通りいるわけでして、準一次協力者と呼ばれる方々と、それから二次協力者と呼ばれる方々ですね。これがそれぞれ、新しい三条の二項の前段と、それから四条の一項なのかなというふうに思います。

 三条の二項の前段では「公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で、」というふうにあって、四条については「前条第一項の罪の実行を容易にする目的で、」というふうに、目的が違うというふうに規定されているところでございますけれども、この目的は、実際かなり重なり合う部分があるように思います。

 条文上、かなりきちんと線引きはされているものの、なかなかこの区別というのがわかりづらいなというふうに思って、事務方の方にもかなりしつこく聞いたんですけれども、このあたり、どのように考えたらいいのかというふうに思います。

 特に、この準一次協力者という人たちは、事実上、一項の人たちに対する、要するに一次協力者ですね、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で、実行しようとする人に対して、資金その他を提供する人。言ってみると、単純に共同正犯なんじゃないかなというふうにも思いますけれども、このあたりの区別、どういうふうに考えたらいいのかを含めて教えていただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 改正法の三条二項前段に規定されている公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的というのと、それから四条一項は、三条一項の提供罪の実行を容易にする目的、こうありまして、あくまで内容を別個にする、別個の目的であって、それぞれの目的に応じて、提供者の立場や、それに伴うテロ行為の実行を助長、促進する危険性が異なっているんだろうと考えております。

 つまり、改正法三条二項前段の提供罪と四条一項の提供罪は、いずれも、テロ行為の実行を容易にする目的で、テロ実行企図者に資金等を提供しようとするテロ協力者、つまり三条一項の提供罪の実行を企図するいわば一次協力者がいる場合に、この一次協力者に対し、資金等を提供する行為を処罰するものでございます。

 このうち三条二項前段の方の提供罪は、テロ行為の実行を容易にする目的をもって行う資金等の提供、すなわち、いずれもテロ行為の実行を容易にする目的を有するテロ協力者の間における資金等の提供を処罰するものでございます。

 これに対して四条一項の提供罪は、テロ行為の実行を容易にする目的までは有しないものの、一次協力者による三条一項の提供罪の実行を容易にする目的をもって行う資金等の提供を処罰するもの。

 このように、それぞれの目的の違いは法文上明確にされておりまして、その区別は十分に可能であると考えます。

 やや講壇設例的なことを申し上げるといけませんが、例えば、ある女性の交際相手の男性が一次協力者である、そういう場合、その女性としては、テロは怖いので、テロは嫌だ、テロ行為の実行を容易にしてやりたいとは思っていないが、交際相手の男性の提供行為は積極的に助けてあげたい、そう考えた場合に、テロ行為の実行を容易にする目的は認められないけれども、三条一項の提供罪の実行を容易にする目的は認められるという、やや無理して考えた設例かもしれませんが、そういうことはあり得ると考えております。余り長くなってはいけませんので。

椎名委員 ありがとうございました。

 時間もないので、そろそろ終わりますけれども、立証の部分というのも結構あるのかなというふうには思いますけれども、適切に運用されていくことを私自身は御期待申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 本日はありがとうございます。

江崎委員長 次に、遠山清彦先生。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 長時間、お疲れさまでございます。

 早速でございますが、けさからるる論点が出ておりますので、重なる部分もあるかと思いますが、御容赦をいただきたいと思います。

 きょうは資料を三枚配らせていただいております。最初の質問は、資料の1をごらんいただきながら、谷垣大臣にお答えをいただきたいと思います。

 FATF、ファイナンシャル・アクション・タスク・フォース、金融活動作業部会と訳されておりますが、従来から策定をしておりましたテロ資金供与対策に関する四十の勧告と九つの特別勧告に基づいて、二〇〇八年に日本の対策を審査した結果の一覧表が、この資料の1番でございます。

 評価については、Cが履行、これは四つしかないんですね。また、LC、おおむね履行が十七で、PC、パーシャリーコンプライドですか、一部履行が九で、NC、ノットコンプライド、不履行が九、こういう全体の審査結果でございます。

 そうしますと、四十九項目のうち、一つはNA、ノンアプリカブルで、適用外ということで、四十八項目について評価をされているわけでございますけれども、その四十八のうち、PC、一部履行が九、不履行が九で、十八ということでございますので、ここが恐らく問題になったのだろうというふうに思っております。

 まず、大臣に、総括的に、この審査結果全体を政府としてどう受けとめておられるのか、お聞きをしたいと思います。

谷垣国務大臣 残念ながら、このFATFの審査では日本は大変成績が悪くなっております。それはなかなか不名誉なことであるという以上に、先ほどからるる答弁しておりますように、テロリストの活動は国境を越えて活動している、今のいろいろな技術、通信技術や金融のいろいろなあり方から考えましても、一つ穴があいていると、全体のテロ活動を抑制していくこともその抜け穴を通じてうまくいかなくなってしまうということがあろうかと思います。

 やはり日本としても、こういうFATFからの御指摘は正面から受けとめる必要があるのかな、このように思っております。

遠山委員 ありがとうございます。私も同感でございます。

 それで、林局長に伺いますが、この一覧の中で、九つNC、不履行ということです。当然、今回の改正案もFATFからの厳しい指摘が背景にあると思いますので、具体的に、どこのNCの項目に対応した改善策と今回の改正案が位置づけられているのか、お伺いをしたいと思いますし、また、あわせて、今大臣にお聞きをした際に申し上げましたように、NCが九つ、PC、一部不履行が九つ、合計十八項目、ネガティブな評価を下されたわけでございますが、これが本改正案によってどの程度改善されることになるのかということをお伺いしたい。

 もちろん、局長の答弁の中で、実は二〇〇八年にこの指摘を受けておりますので、五、六年たっています。ですから、この間に、例えば運用の改善等で改善をされたものがあれば、あわせてお答えいただいても構いません。よろしくお願いします。

林政府参考人 FATFの対日審査におきまして、今回の本改正法案との関係で申し上げますと、この特別勧告の中の2というところに「テロ資金供与の犯罪化」という項目がございますが、これがPCとされたわけでございます。

 ここにつきましての指摘を言いますと、一つには、現行のテロ資金提供処罰法の資金の定義が限定的で物質的支援の提供、収集が犯罪化されていないこと、また非テロリストによるテロリストのための資金の収集が犯罪化されていないこと、間接的な資金の提供、収集がカバーされているか不明確である、こういったことが指摘されました。その結果、この特別勧告の2の部分については一部履行、PCという評価を受けたものでございます。

 これに対しまして、これはすぐれて法制度の問題に対する指摘でございますので、運用による改善というものではございません。

 したがいまして、本改正法案において、一つには、資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益であって、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行に資するものについても提供罪等の客体に含めることとし、また、テロ行為を実行しようとする者以外に対する資金等の提供やテロ行為を実行しようとする者以外の者による資金等を提供させる行為等についても一定の要件のもとで処罰し得ること、こういったことを本改正案に盛り込みまして、この特別勧告の2「テロ資金供与の犯罪化」というもののPCという部分については、これによって基準を満たすものになるものと考えております。

遠山委員 大臣、御答弁は要りませんけれども、そうすると、実はまだ、NCの評価をされている、十八項目のうち、間違いなく今回ので対応されているのが一項目だろうということでございますので、今後引き続き、全体観に立って、全部法的措置をとるかどうかは別として、改善を図っていただきたいと思います。

 さて、ちょっとここで外務省から一点説明を求めたいと思います。

 この二〇〇八年の対日審査結果が公表されてから五年半が既に経過をしておりますが、この間に、FATFあるいはテロ対策に関連する国際機関や国際会合の場におきまして、日本政府が継続的な批判とかあるいは指摘を受けたことがあるのか、概略、御説明いただければと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御質問ありました点について、一つは、まず、このFATF自身におきまして、二〇〇八年の対日相互審査以降、年大体三回FATFの会合におきまして議論されておりまして、そのたびに、FATFの事務局及び各国からは、我が国の取り組みが不十分かつ進捗が遅いということで、早急にこれら改善事項に対応すべきという、ある意味で批判を受けているわけでございます。

 そして、FATFの枠の外におきましても、例えばG8あるいはG20の首脳宣言等においても、FATFの勧告の実施の重要性が指摘されております。

 一例でございますが、昨年のG8のロックアーン・サミット、首脳間の会合のコミュニケにおいても、我々、これは日本も入っているわけでございますけれども、FATFの基準を完全に支持し、それらを効果的に実施することにコミットする、そして、全ての国がFATF基準を満たすことを確保するための措置を講じることを奨励するといったような記述がございます。G20でも同様の記述がございます。

 したがって、そういう意味でも、FATFの中にとどまらず、一刻も早くこの内容というのを日本として担保する、整合性が求められているということでございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 そうしますと、大臣、国際社会からも批判とか改善の要請は明確にあるということでございます。

 他方で、ちょっと視点を変えまして、国内におきまして、一部、現行法、今の状態のこのテロ資金に関する法律ですが、適用事例が一つもないと。適用事例がないのに、今回の改正で処罰を強化する必要がそもそもあるのかという声があるようでございます。

 適用事例がゼロということは、解釈として、日本でのテロ活動やそれを幇助するための支援活動が実は低調である、ほとんどないから適用がされていないのか、あるいは逆に、政府の監視の目が甘くて発覚していないという解釈も理論上成り立つわけでございます。

 ただ、いずれにしても大臣にとりあえずお答えいただきたいのは、一度も適用事例がないという中で、この改正の必要性について少し御説明をいただければと思います。

谷垣国務大臣 確かにこの法の適用事例は一つもございませんし、また逆に、これでやろうと思ったけれども、この法が不備でうまく処理できなかったというような事例についても、私は承知しておりません。

 それで、国内における、国際テロリスト、あるいは国際とは言わなくてもテロリストの資金提供等の実態、これはなかなか全容を明らかにするというのは難しゅうございます。

 しかし、例えば、これも何度もお答えしておりますが、国際手配されていたアルカイダ関係者が我が国に出入国を繰り返していた事実は判明しておりますし、それは、結局、イスラム過激派のネットワークが我が国にも及んでいることを示しているのではないかと考えております。それから、このほか、米軍に身柄拘束されたアルカイダ幹部が在日米国大使館などに対する攻撃を計画していた旨供述していたことも確認されております。

 こういうことに照らしてみますと、国内において、資金以外の利益の提供、収集、あるいはテロ協力者による資金等の収集、そういったことがこれまで行われてきた可能性、あるいは今後も行われる可能性、これを否定することは難しいんだろう、このように思っております。

 それから、国外におきましては、これも先ほど御答弁申し上げたことでありますが、アルカイダに対してマシンガンやプラスチック爆弾等を提供することを企てた事例、そのほかに、金融サービスとか通信装置であるとか、あるいは訓練、隠れ家、偽造文書等々、こういうものを提供してテロ行為を支援するなどした事例もいろいろございます。それから、テロ協力者が爆発装置を製造するための材料を調達したことによってテロ組織を支援した事例等も認められております。

 国外においてこういう事案が発生しているのが現状でございますから、我が国も、警察等々、大変このテロ対策、情報も集めてきちっと対応しておられますが、もし我が国のテロ対策に不備な部分がある、不十分な部分があるということになりますと、先ほど申し上げたことでありますが、そこが抜け穴になる、今の通信技術や金融のいろいろなあり方から見れば、なかなか、さっきもどなたか、テロリストは頭がいいと考えなきゃいかぬという御指摘もございましたが、そういう中では、テロ資金供与の拠点とされかねない、そういうおそれも私はあると思っております。

 ですから、本法の改正することを支える立法事実と申しますか具体的事例というのは存在しているんだ、私はこのように思っております。

遠山委員 立法事実は存在しているということについて、詳しく大臣から御説明いただきまして、ありがとうございます。

 最後の質問になるかと思いますけれども、法案の中身に関連をして、資料の2と3をごらんいただければと思います。

 2の方は、きょうずっと朝から議論されている法案の中身、ポイントでございます。処罰の対象となる客体に資金以外の利益を追加したということでございます。それからもう一つは、テロを企図する者に対する協力者による資金等の収集、また間接的な提供、収集の犯罪化が図られているということでございます。

 私がこの質問でお伺いをしたいのは、資金以外の利益について、法律の中で、土地、建物、物品、役務その他利益と表現されております。私の素朴な疑問は、このその他利益というものは、読み方によっては、何でもいい、利益を生むあるいは利益につながるものであれば何でも対象になるのかという疑問が一つあるわけです。

 そこで、大臣、資料3を見ていただきたいと思います。

 これは、新聞の記事ですが、東京新聞のかなりユニークな記事でございますが、私、これを見たときにちょっとびっくりしたんですね。実は、今回の改正案のことを、真ん中に書いてある、「カンパ禁止法」と書いてあるんですね。私も、これを見たときに、新聞がつけたあだ名でしょうけれども、どうしてこの法律がカンパ禁止法なのかなと思って中を読んだら、なるほどと。いや、なるほどというのは、私が同意しているわけじゃないですよ、なぜこういう名前をつけたか。

 つまり、この中でるる書いてあることは、要は、資料2にあるような、二次提供者、その他協力者まで処罰するよといったときに、この新聞の中に出てくるのは、例えば街頭でパレスチナの子供たちを救えという募金活動をやりました。当然、募金活動ですから、不特定多数の通行人とかが集まって、パレスチナの子供かわいそうだねと、そこにある写真を見てお金を出した。ところが、後から公安関係者が調べると、どうもこの募金の、寄附金の行き先が、パレスチナ自治区ガザの自治政府だと。この自治政府というのは、アメリカがテロ組織と認定している。そうすると、例えば、日本の東京の渋谷の街頭でパレスチナの子供を助けようといって募金した人たちはみんなテロ資金協力者、提供者になってしまうんじゃないかという、こじつけとは言いませんよ、という理論立てで記事が構成されておりまして、さらにこの後ろの方を見ると、私、個人的に存じ上げている方は一人もおりませんが、日弁連前事務総長の何とか氏がこれは共謀罪と共通するとんでもない法案だと言っていたり、いろいろ書いてあります。

 恐らく、この法案の中身を全く知らない普通の国民がこの記事を読むと、またとんでもない法案を出してきているのと。

 実際、これは当然、大臣、読んで、街頭でカンパした人が誰で、どこに住んでいるかなんというのは、街頭で情報はないですから、当然処罰されない、されないというか、誰だかわかりませんから、不特定多数ですからあり得ない話なんですけれども、ただ、こういう記事が出ていることに鑑みて、ここから質問になりますけれども、当然に、こういう街頭でのカンパとか募金活動をした方とかあるいはそういう企画をした人たちが今回の法律で処罰対象になるということは基本的にないのではないかと私は思っておりますけれども、明確な御答弁をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 街頭で、パレスチナの子供に寄附をしようといって寄附をした、それが罰せられるということは、これはありません。なぜ、ないか。それは、今度の改正法案は、資金の提供者等を処罰するためには、テロ行為の実行が、テロ行為というのは一条に定義してありますが、テロ行為の実行が具体的に意図されている、それから、資金の提供者等において、そういう事実を認識、認容していること、あるいは、公衆等脅迫目的の犯罪行為、これは一条に書いてあるテロ行為ですが、このテロ行為の実行を容易にする目的等々の主観的目的が、主観的要件が必要でございます。だから、テロの計画について全く知らないで募金をしたら罰せられるということはありません。

 それに加えますと、こういうテロ計画を認識しているかどうかというようなことは、すべて検察当局において、検察当局が立証しなきゃなりません。立証責任を負っております。その立証については、もちろん被疑者本人の供述ということだけではなくて、いろいろ、各種客観証拠等々も総合的に考慮することによって判定しなきゃならない。したがって、今委員がおっしゃったような御疑念は、無用の御心配であろうと思います。

遠山委員 再び丁寧な御説明ありがとうございました。

 カンパ禁止法ではないということで、理解をしていただけるように、また我々も努力をしていかなければいけないと思っております。

 本日は、採決はないという理解でございますが、先ほど来、外務省からもお話ありましたように、国際社会からも、特にG8あるいはG20という大事な枠組みの中で、早期に改善を図るべきだと指摘をされていることでもございますし、また、大臣の最後の答弁でありました。

 いずれにしても、テロの実行の意図あるいは計画を認識しているかどうか、そしてまた、その認識しているかどうかについてということと、あと目的、実行を容易にする目的等を主観的に持っているかどうか、それをまた当局が立証する責任を負っているということもあわせて、きちんとした運用がされるという前提で、しっかりとこういう改善措置をとるべきだということを申し上げた上で、少々時間が早いですが、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江崎委員長 これをもって本格的かつ重厚な質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせいたします。本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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