衆議院

メインへスキップ



第11号 平成31年4月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十一年四月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    井野 俊郎君

      小田原 潔君    奥野 信亮君

      鬼木  誠君    門  博文君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    中曽根康隆君

      百武 公親君    船橋 利実君

      古川  康君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      和田 義明君    黒岩 宇洋君

      松田  功君    松平 浩一君

      山本和嘉子君    源馬謙太郎君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   井野 靖久君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局次長)         福浦 裕介君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁長官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 志野 光子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大鷹 正人君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   宇波 弘貴君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           田畑 一雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大内  聡君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     村井 英樹君

  神田  裕君     百武 公親君

  古川 禎久君     八木 哲也君

  和田 義明君     船橋 利実君

同日

 辞任         補欠選任

  百武 公親君     神田  裕君

  船橋 利実君     和田 義明君

  村井 英樹君     堀内 詔子君

  八木 哲也君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  堀内 詔子君     小田原 潔君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     上川 陽子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房長井野靖久君、個人情報保護委員会事務局次長福浦裕介君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省保護局長今福章二君、出入国在留管理庁長官佐々木聖子君、外務省大臣官房審議官志野光子君、外務省大臣官房審議官大鷹正人君、財務省主計局次長宇波弘貴君、厚生労働省大臣官房審議官田畑一雄君、厚生労働省大臣官房審議官伊原和人君及び経済産業省大臣官房審議官大内聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鬼木誠君。

鬼木委員 おはようございます。自由民主党、鬼木誠でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 昨年、出入国管理法の改正によりまして、外国人材の受入れ、そして共生社会をつくっていくという大きな枠組みができ上がったところでございますが、ことし、留学生の就業支援に関する告示改正が行われようとしているということでございます。

 これは、私が思うに、大きな変化でございまして、しかしながら、告示の改正であるということで、なかなか国会などの場面でも議論されるところが少ないということで、この告示改正についてしっかり質疑をして、どういう課題があるのか、それに対して政府がどういう対応をするのか、そういったことを質問させていただきたいと思っております。

 ということで、まずは、この告示改正について、留学生の就業支援に関する告示改正、どういう現状に対してどういう改正が行われようとしているのか、概要についてお答えいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 近時、高い語学力を有する留学生は、インバウンド需要の高まりや、日本語能力が不足する外国人従業員や技能実習生への橋渡し役としての期待もありまして、幅広い業務において採用ニーズが高いものと承知をしております。

 これら留学生は、我が国の教育機関における教育を通じまして高度な専門性や日本語能力を有し、また、地域住民等と交流することにより我が国を深く理解をしていただける貴重な人材であります。

 この留学生に対する就職支援につきましては、日本再興戦略二〇一六や、昨年末に関係閣僚会議で了承されました外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策におきましても取り上げられているものでございます。

 これらを踏まえまして、本年三月十二日から、特定活動の在留資格に係る告示の改正案についてのパブリックコメント手続を実施したところでございます。

 その中身ですけれども、本邦の四年制大学や大学院を卒業、修了した留学生について、日本語能力試験N1レベル等の高い日本語能力を有すること、日本人と同等額以上の報酬を受けることなど一定の条件のもとで、その就労できる業務内容を現行の在留資格より幅広く認めることとしております。

 出入国在留管理庁といたしましては、パブリックコメントに寄せられました御意見も参考にし、本制度を本年五月末には実施できるよう、鋭意準備を進めてまいります。

鬼木委員 留学生の就業に対して一定の要件のもとに幅広い活動を認めていくということですが、その中の要件に、N1という日本語の語学レベルを求めておりますが、四年制の大学若しくは大学院を卒業してN1レベルの日本語ができるということが要件になるわけなんですが、じゃ、このN1という日本語レベルがどのぐらいのレベルなのか、また、N1レベル等というふうな、「等」ということも書いてありますが、具体的には何を指すのかということで、N1についてお答えください。

佐々木政府参考人 お尋ねの日本語能力試験のN1レベルとは、日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含め幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有している者と認められるレベルです。

 それから、N1レベル等の「等」に含まれるものといたしまして、現時点におきましては、BJTビジネス日本語能力テストで四百八十点以上の得点をとった方のほか、大学において日本語を専攻して卒業した方などを考えていますが、具体的にはガイドラインとして示すことを検討しております。

鬼木委員 このN1というレベルがレベルの中でいうと一番高いレベルということで、論理的にやや複雑な日本語ができるというふうなことが要件になっている。まあ、日本語コミュニケーションといいますか、論理的に複雑なところまでできるということで、そういう能力が期待されての要件であるということだと思います。

 そういう中で、特定活動という在留資格の中で告示が決まっていくわけなんですが、雇用契約がなくなった場合、外国人の方々はどうなるのでしょうか。

佐々木政府参考人 本件措置の対象は、本邦の公私の機関との契約に基づき、当該機関の常勤の職員として行う活動でありまして、当該契約がなくなった場合には、転職先が見つからない限り、在留期間の更新が認められないこととなります。

 なお、正当な理由なく、当該在留資格に該当する活動を継続して三月以上行わないで在留している場合には、在留資格の取消しの対象になります。

鬼木委員 雇用契約がなくなったら、もうそこで帰らないといけない、転職するときには変更申請が必要になるということだと思いますので、何を心配しているのかといいますと、期限がない、期限の上限がないということを心配しておりまして、外国人の数が際限なくふえ続けていくんじゃないか。

 概要の説明のときに、期限の上限がないということ、そして家族が帯同できるということについてのお答えはなかったですかね、今。

佐々木政府参考人 これは、在留資格、特定活動による在留でございますけれども、現行の技術・人文知識・国際業務等の在留資格と取扱いを同じくするものでございますので、在留期限の上限、ここの期間以上は在留が認められないという特定技能一号につくったような上限はございません。また、家族の帯同も、技術・人文知識・国際業務等と同列に認められるものでございます。

鬼木委員 ここを私は重要なポイントだと思っておりまして、移民か移民でないのかみたいな議論があるわけですね。

 移民の定義というのが、日本では、国際的にも明確な定義というのがきちんと決まっていないので、移民か移民じゃないのかというのをどれだけ話し合っても堂々めぐりになってしまう。定義がないからなんですが、日本人の潜在的不安として何を恐れているかというと、外国人の数がどんどんどんどん際限なくふえてしまって、そして、日本の文化、社会とあつれきを、対立を起こすんじゃないかということを、潜在的にみんな、移民は嫌だというふうな感覚で恐れているんじゃないかと思うんですね。

 その中で、外国人材受入れの中で期限そして上限が決まっているのかどうかというのが大事なポイントだと思いまして、昨年の法改正のときには、ちゃんと上限が決まっているのか、どういう条件で帰国いただくのかということを大いに議論したわけなんですが、この特定活動には期限の上限がない、そして家族の帯同ができるということで、それで、この制度の中でどういうインパクト、どういうことが起こり得るのかということを議論したいというふうに考えております。

 それで、では、期限がないので、期限があれば、期限が来たときに帰国していただく、来られた方がまた帰国していただくということで総数がふえていかないわけですけれども、期限がないとなると、ずっといることによって、毎年来る、それで総量がどんどんふえていくということが考えられるので、期限にこだわるわけなんですね。

 じゃ、この制度で、この改正がなされたら一年間でどのくらいの受入れ人数がふえるというふうに今予測されているかということで、一年の受入れ予想数をお願いいたします。

佐々木政府参考人 これはあくまでも大まかな試算にすぎませんけれども、試しに、平成二十八年度に我が国の大学や大学院を卒業又は修了した後、日本国内で就職を希望されたにもかかわらず就職できなかった留学生の数、それから、平成二十七年度における本邦の大学卒業者の日本語能力試験N1の合格率などの数を用いまして試算をいたしまして、最大で年間三千人の受入れが見込まれると一つの想定をしてございます。

鬼木委員 その試算も私聞かせていただいたんですが、外国人留学生の数が二万四千人、そのうち日本で就職したいという希望の方が六四%、その中で既に就職できている人が八千六百人ということで、残りの七千人の就業希望の方で、さらに、N1の取得率というのを掛けると、概算で三千人ぐらいだというふうな計算になるということで伺っております。

 なので、一年間で三千人ということは、期限なくずっとおられるとして、二年目、三千人入ってくれば六千人というふうに数は積み上がっていくわけでございますが、それでも、三千人の規模が十年ずっと続くと三万人というふうな計算になりまして、今、就労目的で在留が認められる者ということで二十七・七万人という、そのボリュームと比較しますと、そこまで、三千人というボリュームは大き過ぎるという数字ではないかなと思いますが、期限がないということで、しかも受入れの上限数なども決まっていないので、この三千人がまた大きな数字になってやってくるということもあるということがあり得ます。

 やはり、出入国管理というものをつかさどる法務省出入国管理庁には、その本分を果たし、しっかりこれからも適正な受入れというものに努めていただきたいと思います。

 続いて、彼らは、日本語もできて、大学も出て、そして何より、今、日本社会に受入れのニーズが高いわけですね。引く手あまたの人材だと伺っております。そういう意味で、日本人と職を奪い合うのではないかという懸念も外国人材受入れの議論の中で常に出てまいります。

 この日本人と外国人労働者が職を奪い合うという懸念について、特に、この告示改正の対象の外国人についてどのようにお考えになりますでしょうか。

佐々木政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、今回、高い語学力を有する留学生が、インバウンド需要の高まり、あるいは日本語能力が不足する外国人従業員への橋渡し役としての期待があって、採用ニーズが高いというお話を申し上げました。

 したがいまして、本件措置は、留学生が、大学、大学院において修得した知識、応用能力を活用することが見込まれ、かつ、日本語と母国語双方の語学力を生かして活躍することが期待できる業務において受け入れることとなるものでございまして、その意味では、日本人と職を奪い合うというような関係にはならないと考えております。

鬼木委員 今回の対象者が持つ能力、そこに対する経済界、現場のニーズというものがしっかり存在していて、そこで日本人との競合が少ない分野であるというふうな御答弁だったと思います。

 この告示改正は、日本では余り皆さん知らないというのが私の印象ですね。こういうふうな告示改正があるんですよと言っても、現場の皆さんは、余り日本では知られていない印象なんですが、中国では全国ニュースとなっているということもあります。そう考えれば、N1という日本語能力を達成できやすいのはやはり漢字圏の人々になりますので、特に、漢字ができて、そして人口も多い中国などの国からたくさん日本に、日本語を勉強して、日本で勉強して、そして働こうという人が来られるかもしれない。

 そこで、社会保障の問題についてちょっと問題を提起したいんですけれども、日本は海外と比べて社会保障天国のところがあります。海外の人がやってきて、そして負担する以上に受益を受けるとなると、日本人の中に、不公平感、損している感というのが出てくる。本来なら、労働者も不足している日本に海外の人が働きに来られて、社会保障の負担もして受益もするというのは、社会を支える一員がふえる、支える人がふえるという意味で、本来は歓迎すべきこと、社会保障においても歓迎すべきことになるはずなんですが、だけれども、海外の人がやってきて、受益の方をたくさん受けると、何か日本人が損している気がする。

 これはなぜかというと、ひとえに、日本の社会保障の受益と負担のアンバランスをあらわしているんじゃないかなと。実は、私たちが負担しているよりも、いろいろな制度をトータルで見ると、日本の社会保障は受益の方が実は大きいということを考えるわけですね。

 なので、これを機に、受益と負担のバランス、負担した分、受益があるというこの公平性が、もちろんそれは、日本人も外国人も同じ負担、同じ受益になるわけですね。誰もが損したという気持ちにならない、平等な社会保障の受益と負担のバランスというのをつくっていかなきゃいけないんじゃないかなということを考えております。

 そこで、厚労省と財務省に伺います。

 日本の社会保障は、低福祉・低負担、高福祉・高負担、そういう表現であらわせば何福祉・何負担だというふうにお考えになるかというのをお答えいただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保障の給付規模の国際比較に当たりましては、日本のように高齢化率が三〇%近くになる国と、アメリカのように一五%にとどまる国を単純に比較することは難しいと思われますけれども、あえて二〇一五年の社会支出の対GDP比をもとに単純に比較いたしますと、日本の数字は二二%という数字でございます。これは、三〇%前後のフランス、ドイツ、スウェーデンと比べて低い水準となっております。一方、約一九%のアメリカと比べれば高い水準にありまして、中程度の規模にあると考えております。

 他方、我が国の二〇一六年の国民負担率は四三%でございまして、五〇%を超えるフランス、ドイツ、スウェーデンと比べれば低くありまして、約三三%のアメリカと比べれば高い水準でございます。

 こうしたことからいきますと、負担面で見ますと、中負担にいくかいかないかというぐらいの水準ではないかと考えております。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 明確な定義があるわけではございませんけれども、今厚労省から御答弁があった国際比較という意味でいえば、社会保障支出の対GDP比は、OECD諸国、データがある中で、三十五カ国中十五番目、やや真ん中ぐらい、それから国民負担率という意味でいうと、OECD三十六カ国中二十六位ということで、下から数えた方が早いという状況にございます。

 また、社会保障給付費、急速な高齢化を背景として増大していく中で、予算という意味で申し上げれば、その給付費の約半分弱を公費負担で賄っておりますけれども、それを賄うための十分な財源を確保できておらず、赤字国債の累積という形で後代にツケ回しを行っている状態にございます。

 こうしたことを考えると、我が国は中福祉・低負担の状態にあるというふうに考えておりまして、委員御指摘のように、社会保障の持続性を確保していくための不断の改革が必要というふうに財政当局としては考えているところでございます。

鬼木委員 負担よりも受益の方が大きいとしたら、その受けている受益の部分は借金という形で次世代にツケ回しされているということにもなりますし、そこに対する国民の不公平感、世代の不公平感、いろいろな課題があると思いますので、ここは、外国人材を受け入れる、そして外国人材の方に対してそういう思いを我々が抱かないためにも、きちんと受益と負担のバランスを今後整理していく必要があると考えております。

 もう一問、大丈夫ですかね。

葉梨委員長 もうすぐ終わりです。簡単に。

鬼木委員 はい。じゃ、簡単に終わります。

 一度入ったら際限なく入ってくるのかということが心配されておりますが、それに対するお答え、そして、移民ではないと総理もおっしゃっていますが、何をもって移民でないと言えるのかということについて、お答えください。

葉梨委員長 佐々木長官、簡潔にお願いします。

佐々木政府参考人 際限ないというお話がありました。あくまでも、この在留資格につきましても、ほかの在留資格と同様に、その在留資格更新等の許可のポイントポイントでは、在留状況が適当かどうかということの審査を厳格に行います。そして、更新を認める理由がある者に限り更新をしていくという限りにおいて、無条件に際限なく在留が認められるというものではございません。

 それから、移民につきましては、政府といたしまして、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうといった移民政策をとる考えはございませんで、今申し上げました意味でも、今回の新しい措置、およそそうした政策ではございません。

鬼木委員 しっかり出入国管理、本分を果たしていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で鬼木誠君の質疑は終了いたしました。

 次に、松平浩一君。

松平委員 おはようございます。立憲民主党、松平浩一です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、破産者マップというものについてお伺いしたいと思います。

 この破産者マップ、ちょっと簡単に説明させていただきたいのですが、本当はウエブサイトを、キャプチャーをとってプリントアウトすればわかりやすいかなと思ったんですけれども、既にこのサイトは閉鎖していたので、ごめんなさい、それができませんでした。ですので、口頭で説明しますので、イメージいただければと思います。

 この破産者マップ、官報がございますね、官報で公開された破産者の情報、例えば氏名であるとか住所であるとか、それをデータベース化して、グーグルマップと連携させて、それでグーグルマップ上に破産手続した方の住所を、ピン、目印を置いて可視化するというサイトなんです。これは、官報の情報をデータベース化したというだけではなくて、破産者の住所をマップ上で一目で見ることができる、一目で、どこに住んでいるか、この辺に住んでいるなとわかるようにしたというサイトなんです。これは既にウィキペディアにも載っています。

 このサイト、もとになるデータが官報のいわば公開情報ということで、果たして問題がないのかどうかというところなんです。

 私がこのサイトを最初に見つけたのは先月の三月十四日でして、ただ、その後すぐにいろいろなところから問題視する声が非常に高まりまして、ネット上では炎上する騒ぎになりました。

 このサイト、破産者の氏名、住所という情報ということで、プライバシー、そして個人情報の観点から問題視する声が多く上がったということです。一部の弁護士からは、クラウドファンディングで資金を募って、それで対処をしようという動きさえ始まりました。

 この破産者マップについてですけれども、個人情報保護委員会さん、動かれたと思います。それで、行政指導を行われたと聞いております。こちらは間違いないでしょうか。詳しく教えていただければと思います。

福浦政府参考人 個人情報保護委員会としましては、当該ウエブサイトの運営者に対しまして行政指導を行ったところでございます。

 個人情報保護法第十八条及び第二十三条に照らし、同法に違反するおそれがあることから、同法に抵触しないように対応することを求めました。その結果、委員会におきまして、当該ウエブサイトが閉鎖されていることを確認したところでございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 個人情報保護法十八条と二十三条に照らして問題があるということで、対応を求めたということですね。

 私も、ちょっと確認しましたら、三月十九日に運営者がツイッターで、結果的に多くの皆様に御迷惑をおかけしたことは大変申しわけございませんでしたと謝罪されていて、それでサイトの閉鎖が発表されているということのようです。

 この破産者マップのもととなった情報、これは破産法で公告するというふうにされた情報なんですね。こちらの公告の趣旨というものを教えていただいてもいいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 破産法の三十二条一項によりますと、裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは直ちに破産手続開始の決定の主文あるいは破産債権の届出期間等を公告しなければならないものとしております。この趣旨でございますけれども、破産債権者等の関係人に対しまして、破産者について破産手続開始の決定がされた事実を知らせて権利行使の機会を与えること等によって、不測の損害を受けることを防止するためでございます。

 また、破産法十条一項によりますと、この公告は官報に掲載してするものとされておりますが、これは、官報が、法律等の公布を始めとして、国の機関としてのさまざまな報告や資料を掲載する国の機関紙であって、行政機関の休日を除いて、毎日発行されるからでございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 権利行使の機会を与えるということで理解いたしました。

 こちら、今回の破産者マップについてなんですけれども、これは大臣、今回のような使い方は、今おっしゃっていただいた趣旨に反するのかどうかという観点、いかがお思いでしょうか。

山下国務大臣 お尋ねの事案については、破産法の趣旨に反するかどうか、これは個別の事案における具体的な事実関係を踏まえて判断されるべきものであることでございます。法務大臣としてお答えすることは差し控えたいと考えておりますが、あくまで破産手続開始の決定について公告するものであり、破産債権者等の関係人に対して権利行使の機会を与えることのために行われるものだということは、やはり明確にしておくべきなんだろうと考えております。

 そして、一般論として申し上げれば、破産法に基づき公表された個人の情報に関して、その情報を取得した者がこれをどのように扱うべきかにつきましては、個人情報保護法の規律するところによるということと考えております。

松平委員 なるほどですね。どうもありがとうございます。

 公告されたという情報について、大臣がおっしゃられたように、公開情報だからといって、一般論としてですけれども、何に使ってもいいわけではない、個人情報保護法の規律によるという部分は、本当に大事なところなのかなと思います。

 今回の破産者マップは、公告された公開情報を自分で収集して編集して、ネット上の別のサイトで公開したということだと思います。

 それで、今、個人情報保護法という観点をおっしゃられたと思うんですけれども、私、こちらはプライバシーの侵害という観点も出てくるのかなというふうに思っておりまして、そういう意味で、プライバシーを侵害するという不法行為に該当する可能性、こちらについてはいかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの点につきましては、個別の事案における具体的な事実関係を踏まえて、裁判所によって判断されるべきものでございますので、一概にお答えすることは困難でございます。

 ただ、一般論として申し上げますと、個人に関する情報について、本人がみだりに開示されたくないと考えることが自然であり、そのことへの期待が保護されるべき場合に、本人の同意を得ることなく無断で第三者に開示する行為は、プライバシーを侵害するものとして不法行為を構成することがあり得るものと考えられます。

松平委員 もちろんです、裁判所が最終的に判断する。ただ、今おっしゃっていただいたように、プライバシーを侵害することも不法行為に該当することもあり得るということだと思います。

 私も、ちょっと調べてみました。

 例えば会社の登記、こちらは、登記謄本を見ると代表取締役の住所とか氏名というものが登記事項で書かれていて、もう見たら誰でもわかるんですね。それで、これはインターネットでも登記情報提供サービスというのがされていますので、閲覧可能になっています。

 これは、裁判例で、こういった登記上の公開情報、代表取締役の人の住所と氏名をインターネットで公開したという方がいて、これについて裁判例で、プライバシー侵害、不法行為を認めたという事例がございました。

 それから、ほかにも、ちょっと事案が違うんですけれども、ありまして、電話帳がございますね。電話帳に名前とか住所、電話番号とか郵便番号が書いてあります。それをウエブ上に公開したということで、やはり不法行為を認めた裁判例もありました。

 これは何と言っていたかというと、電話帳に載せる際には本人は承諾しているわけです。ですので、公開されることに同意しているのかなと思いきや、裁判所は、紙媒体の電話帳に掲載することを承諾していても、インターネット上のウエブサイトにおいて公開することまで承諾したものではないということを言っているんです。

 一方、逆の判例もありまして、約六年前に会社とその代表者が破産したということをブログに掲載した。それについて、結論としては違法ではないという裁判例もあったんです。

 これは何と裁判所は言っているかというと、利害関係者や取引に入ろうとする者が正当に関心を持つべき公共の利害に関することだよと。そして、官報や登記簿に掲載されていて、誰もが見ることができ、秘匿性が低い事項である、そういうふうに言っているんですね。そういうことを理由にしている。

 ということで、結局は事案によるということになると思いますが、事案を細かく見て、そして総合考慮して結論を出しているのかなと思います。

 こういった官報に掲載される情報、個人に関するものというのは、この破産情報だけではなくて、ほかにもいろいろあります。叙位叙勲の情報、それから褒章の情報、それから国家試験の合格者の情報であるとか、あと公務員の主な人事異動という情報も官報に掲載されるということです。ということで、こういった情報も公開すると違法になり得るので、利用には慎重さが必要ということになると思います。

 そして、今、プライバシーの観点から裁判例も御紹介させていただきましたけれども、もう一つの論点、個人情報保護法との関係、こちらもお聞きしたいと思います。

 先ほど、個人情報保護委員会が行政指導を行ったという話でした。つまり、今回の個人データ、同意なしに公開した。第三者提供ということになると思うんですが、第三者提供を行ったということで、個人情報保護法違反と。実は、破産者に関するデータベースとして、ほかにも、有料でデータベースを第三者に提供するというサービス、あったりするんです。結構行われていたりするんです。

 一つ有名なところを挙げると、破産者情報の約七百十六万件、官報情報に載っている七百十六万件を一枚のDVDに全て収録して販売している、そういう業者さんもあるようです。これは、企業の採用予定者の確認であるとか、そういった企業の危機管理の対策の一つとして利用されている場合があるということのようなんです。

 こういった官報の情報をデータベース化して、それで有料で利用できるビジネスというのは結構あると思うんですけれども、一般的にでいいんですが、官報に載った情報を事業者が個人情報のデータベースとして適切に取り扱うためにどういった条件が必要なのか、教えていただきたいと思います。先ほど破産者マップはだめで、ただ、一方で、有償で販売している事業者さんは既にあるということなので、そこの辺の要件の方を聞きたいと思います。

福浦政府参考人 お答え申し上げます。

 公開情報を編集してデータベース化した場合でありましても、それが個人情報データベース等に該当する場合には、その事業者は、個人データを第三者に提供するに当たりましては、個人情報保護法の規定を遵守する必要がございます。

 具体的に申し上げますと、原則としまして、一つとしては、個人データの第三者提供に当たって、あらかじめ本人の同意を得ること。二つ目としましては、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、第三者への提供を利用目的とすることなど個人情報保護法に定める項目について、あらかじめ本人に通知又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届出を行うこと、これらいずれかの方法によることが求められるわけでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 あと、ちょっともう一つお聞きしたいのが、個人情報データベースに当たらない場合もあると思うんですが、個人情報データベースに当たらない場合、個人情報保護法二条四項で、「利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるものを除く。」というふうに規定されていると思うんですけれども、こちらの要件についても教えてもらってもいいでしょうか。

福浦政府参考人 お答え申し上げます。

 個人情報保護法に定める個人情報データベース等とは、特定の個人情報を検索などができるように体系的に構成した、個人情報を含む情報の集合物を指します。この定義に当てはまらないものは個人情報データベース等には該当しないというわけでございます。

 また、この定義に当てはまる場合でありましても、利用方法から見て個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして施行令第三条第一項に定めるものについては該当しないものということでございます。

 具体的に申し上げますと、一つは、不特定かつ多数の者に販売することを目的として発行されたものであって、かつ、その発行が法又は法に基づく命令の規定に違反して行われたものでないこと。二つとしては、不特定かつ多数の者によって随時に購入することができ、また、できたものであること。三つ目として、生存する個人に関する他の情報を加えることなくその本来の用途に供しているものであることのいずれにも当てはまる場合については、個人情報データベース等には該当しないということでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 今のお話ですと、一番目と二番目ですね、不特定かつ多数の者に販売することを目的として発行されたもの、そして、不特定多数かつ多数の者により随時に購入することができ、又はできたものと。こちらの要件、簡単に言うと、有償で販売されるというような場合、その情報の集合物は個人情報データベースに当たらないという理解になると思います。

 だから、今の条件、つまり、有償で販売する場合は個人情報データベースに該当しないので、本人の同意は不要で公開できるということになると思うんです。ということは、先ほどのDVDの例、先ほど、もう既にそういう業者がいると言ったDVDの例と、冒頭で申し上げた破産者マップの例の端的な違いは……(発言する者あり)有償か無償かどうか、そのとおりです。有償か無償かどうか。DVDの場合は有償で販売しているものであるので、個人情報データベースに当たらないので、同意なくできる。破産者マップは無償で公開していたので、同意が必要であったということになると思います。

 あともう一つ、ついでに言うと、破産者マップの方は地図にプロットしているというので、先ほど、一号、二号、三号とおっしゃられました、三号の問題にももちろん該当するとは思うんですけれども、そういう有償か無償かという要件、こっちが重要なのかなと思いました。

 ただ、この有償かどうかという要件、私、個人的には非常に不思議なんです。無償で個人情報を第三者提供若しくは公開したら、同意が必要となって違反になる。有償で個人情報を公開したら、同意が不要で違反にはならない。自分の情報を、ほかの人が有償で公開するか無償で公開するかなんて、その本人、自分にとっては全く関係のない話というか、あずかり知らない話なんですよね。それなのに、その公開する人が有償だと本人同意が不要になるみたいな話というのは、ちょっと不思議なのかなと思いました。

 こちら、この有償の場合に個人情報データベースに当たらないというのはなぜか。この立法趣旨といいますか、そういったものを教えてもらってもいいでしょうか。

福浦政府参考人 お答え申し上げます。

 無償頒布されている名簿等を適用除外の対象としないという趣旨として申し上げますと、無償頒布されている名簿等につきましては、市販されている名簿等に比べまして、どの事業者が作成、頒布したのかが不明確であることが多いことなどから、入手した事業者において安全管理措置を講じる必要があるということが背景としてございます。

松平委員 無償の場合には安全管理措置を講じるから、同意が必要ということですか。無償の場合には安全管理措置を講じないから、同意が必要ということになりますよね。

 ごめんなさい、もう一度。済みません。

福浦政府参考人 もう一度御説明申し上げますと、無償頒布されている名簿につきましては、どの事業者が作成、頒布したのか不明確な場合が多いということなどから、入手した事業者においてちゃんと安全管理措置を講じないといけないということでございます。

松平委員 そういうことでしたら、その安全管理措置を講じているかどうかということをメルクマールとしてもいいのかなというふうに思いました。

 なぜならば、これが制定されたのが平成二十年と伺いました。今、制定当時とはやはり時代が違っていまして、無償でサービス提供して広告収入でもうけるみたいなサービスであるとか、フリーミアムみたいなサービスのビジネスモデル、どんどん出てきていると思うんです。だから、ビジネスのやり方というのも多様化していると。

 ですので、情報を提供したその者に対する対価があるかないかという、有償か無償かだけで単純に判断するというのは、だんだんと何か時代に合わなくなってきているのかなというふうに思いました。ですので、ここの部分、もうちょっと御検討いただきたいなと私は思っています。

 これは、三年ごとに個人情報保護法の見直しをされると伺っています。ですので、またそういった見直しの際であるとか、今の意見などを御検討いただければ非常にありがたく思います。この点、いかがでしょうか。

福浦政府参考人 今委員御指摘のとおり、当委員会では、三年ごとに見直しを行うという個人情報保護法附則の規定に基づきまして、現行法の施行状況について検討を行っているところでございます。

 現時点では具体的な方向性は決まっておりませんが、個人情報保護に関します国際的な動向、技術の進展、産業の発展等を勘案しながら、各方面の御意見も十分聞いてまいりたいと思います。

松平委員 ありがとうございます。

 それでは、次に行きます。

 この破産者マップの件ですけれども、運営者と称する方のツイッターアカウントがありまして、私、こちらを見てみました。そうしたら、この破産者マップをつくった理由について、こういうふうに言っています。

 官報は公開情報で、先ほどちょっと議論しましたところですけれども、誰もが図書館や大学等で自由に見ることができるため、破産者の住所や名前を誰もが自由に知ることができると。もう一点、国や自治体が持っているデータ、公表しているデータの表現方法、そういったものを変えれば、そのデータの持っている本質的な価値に近づけるのではないかと思いましたというふうに言っていたようです。

 もちろん、このツイッターアカウント、これがサイト作成者本人のものなのかどうかも不明ですし、今申し上げた理由というものも、それが本当の理由かどうかというのはわかりません。もしかしたら、何かのビジネスにつなげようとしていたのかもしれません。なので、ちょっとわからないんですけれども、このコメントを見て、私は、要は、政府の公開している情報というものが利用しにくいんじゃないかと。なので、自分の方で利用しやすいように加工して公開してみた、利用者の便宜を図ったというようなことを言いたいのではないかというふうに思いました。

 実際に、私、先ほどDVDの例も申し上げましたが、官報情報をデータベース化して販売するビジネスというのが散見している、こういう現状を見ると、官報が利用しづらいということがあるんではないかと思います。

 そこで、官報の利便性というものを高めるために何かされているようなこと、御検討の段階でもいいですけれども、あれば教えていただきたいと思います。

井野政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府では、国立印刷局に対しまして、紙の官報と同じ内容を無料で閲覧できるインターネット版の官報の配信を委託することによりまして、官報の周知機能の一層の充実に努めてきているところでございます。また、無料で閲覧できる過去の官報の掲載範囲を拡大するなど、利便性向上に努めているところでございます。

松平委員 なるほど、インターネット官報というものもあるということですね。

 ちなみに、いつぐらいからできたとかというのは御存じでございますか。

井野政府参考人 平成十一年からでございます。

松平委員 結構前からなんですね。

 紙媒体もあり、そしてインターネットによる官報もありということで、購買数であるとかネットでのアクセス数であるとか、そういったもの、あと、無料版と有償版があるとおっしゃったので、有料版の登録数というんですか、教えていただいてもいいでしょうか。

井野政府参考人 お答え申し上げます。

 紙の官報につきましては、平成三十年度でございますが、約八千部の定期購読数がございまして、それに年間の発行日数を掛けた数を発行部数として考えますと、年間約二百万部ということになります。

 次に、インターネットでの官報につきましては、先ほど申し上げました無料のサイトのほか、有料のサイトがございますけれども、無料のサイトのアクセス数は、平成三十年度で約四百四十万回となってございます。また、有料のアクセス数は、平成三十年度で約百八十万回となってございます。

松平委員 結構ありましたね。ちょっと驚きました。ちょっと私が存じ上げなかっただけのようでした。申しわけございません。結構あるんですね。

 私、今のアクセス数を聞いて思ったのは、実際にそういった形で、官報、紙の媒体、それからインターネットも、紙の媒体をPDF化したもののようなんですけれども、やはり現実問題としてこういったサービスが出てきているということは、検索のしやすさであるとか、データベースとしてどういうふうに蓄積するかであるとか、あと自分が知りたい情報をどのように取り出すか、そういったところからも、もしかしたら改善の余地があるのかもしれないというふうに思いました。

 引き続き、国民の利便性を高めるという意味で、さらなる検討をお願いできればというふうに思っています。

 もうそろそろお時間が来ましたので、私の質問はこのあたりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松平浩一君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 立憲民主党・無所属フォーラムの黒岩宇洋でございます。

 きょうは、恩赦制度について質問をさせていただきます。

 来月、五月一日から令和の元号の時代に変わるということで、直近でいいますと、平成の御代がわりのときにも、昭和天皇の大喪に即して、また平成天皇の即位に即して恩赦が行われた、こういった経緯があるわけです。

 ただ、この恩赦制度というのは、一般の国民の方も、イメージとしては湧くわけですが、なかなか詳細については御存じない方も多い、そのように私は聞いておりますので、これを契機に、実際、令和の時代に恩赦が行われるのかどうか、これは現時点ではわかりません。ただ、このタイミングで、この恩赦制度について確認をし、そして振り返り、また見直すべき点があるのかどうか、こんな点も質疑の中で議論を交わしていきたいと思っております。

 それでは、保護局長にお聞きしますけれども、まずは、戦前の恩赦制度の制度趣旨について、端的に説明していただけますか。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 戦前でございますが、恩赦の歴史は古くございまして、奈良時代にさかのぼることができます。主として天皇の即位、改元あるいは皇室の慶弔時に際しまして君主の恩恵として行われ、大日本帝国憲法下においても、恩赦は天皇の大権事項とされ、国家又は皇室の慶弔禍福に際して行われてきました。

 以上でございます。

黒岩委員 端的に言うと、君主の恩恵ということが目的だということでよろしいですか。

今福政府参考人 少なくとも戦前におきましては委員御指摘のとおりでございます。

黒岩委員 多分、一般の国民もいまだにそんなイメージだと思うんですよね。何で新たな天皇陛下が即位したときに罪が無罪放免になったり減刑されるのといったときには、イメージでは、言葉としてこの言葉を認識しているかどうかはともかく、まあ、お祝い事だし、恩恵をこうむらせてもらうんだ、そんなイメージがあると思うんですが、戦後になりますと、これは当然、制度趣旨も変わってきているわけです。

 では、戦後のこの制度趣旨、内容はちょっとまたあれにしますが、制度趣旨、何でこの制度が現存しているのか、これについて、これも端的にお答えいただけますか。

今福政府参考人 戦後におきます現行憲法下での恩赦でございますけれども、おおむね刑事政策的な観点から行われるというようなことが重視されているというふうに承知しております。

黒岩委員 ですから、君主の恩恵ということが制度趣旨ではない、目的ではないということですね。

 刑事政策だとおっしゃいましたけれども、その刑事政策について、昭和二十三年に恩赦制度審議会からの最終意見書が出されています。これに四つの意義がうたわれたわけですけれども、まずは一度、四つの意義をわかりやすく説明していただきましょうか。

今福政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十三年六月の恩赦制度審議会、この最終意見書で書かれておりますことは、恩赦の合理的な面、すなわち、第一に、法の画一性に基づく具体的不妥当の矯正、第二に、事情の変更による裁判の事後変更、第三に、他の方法をもってしては救い得ない誤判の救済、第四に、有罪の言渡しを受けた者の事後の行状等に基づく刑事政策的な裁判の変更若しくは資格回復の四点が重視されるべきと書かれております。

 以上です。

黒岩委員 さらっと言っていただくとなかなか理解しづらいので、後で一個一個確認していきますけれども、済みません、ちょっと順番を間違えました。

 その前に、皆さんに資料でこの「恩赦制度について」というものをお配りしているので、今の恩赦制度、私の方から説明をちょっとした方が簡単なので。

 やはり恩赦というのは、じゃ、何を根拠に行われるかというと、これはあくまでも憲法ですよね。憲法七条の天皇の国事行為、七十三条ということです。重要なのは、これは三権分立の例外中の例外なんですよね。ここに書いてありますけれども、行政権によって、これは司法権に対するある意味介入ですし、そして、立法府が法律を定めているわけですから、このことに対してもこれはある意味越権をするわけですから、大変、例外中の例外である。

 種類と書いてありますけれども、これはまず、方法による種類が二つありますよ。青い部分で示されている政令恩赦という、これはもう政令で画一的に、こういった法律のこういった罪については、これはもう当てはまる人全て、例えば無罪放免ですよ、これは大赦になりますけれどもね、例えば減刑ですよと。これは一律に、全て対象になりますよ。

 これに対する個別恩赦、これは、一人一人の人が、例えば刑務所の所長であったり保護観察所の所長を通して、あくまでも一人一人が自分を恩赦にしてくださいと言って、そして審査会で、じゃ、この人は恩赦にします、しませんと判断するというものが個別恩赦である。これは方法によります。

 個別恩赦の中に常時恩赦と書かれていますけれども、これは字のとおりです。今現在も常にこれは出願を受け付けている。常に、実は年間の数でいうと本当に数十件ぐらいですけれどもね、受け付けている。

 もう一つ、特別基準恩赦、これは後で議論しますけれども、これはちょっとわかりづらいんですが、一つ例を出すと、今言った政令恩赦のときに、例えば天皇陛下が亡くなった日、この基準日までに犯した罪だというような時期に、その翌日だったらどうなんだ、こういう微妙な人を、改めて、こういった人も救えますよというような、これも政令が出ます。ただ、これは余り区別しないでいただいて、あくまでも個別の恩赦ですよ。

 効力において、大赦、特赦、減刑、刑の執行免除、復権とありますが、皆さん、済みません、これは読んでおいてください。

 こういった種類で今行われているということなので、イメージしていただきたいんですが、そこで、重要なことは、君主の恩恵ではなく今行われている、あくまでも刑事政策だとおっしゃいました。

 では、一番目の、先ほどおっしゃられた法の画一性に基づく具体的不妥当の矯正、これをもうちょっとわかりやすく説明していただきたいのと、具体例で、例えば過去にこんな法律のこんな罪が刑事政策によって恩赦の対象になったというこの例を示していただければわかりやすいので、お願いします。

今福政府参考人 お答えいたします。

 法の画一性に基づく具体的不妥当の矯正でございますけれども、これは抽象的に申し上げれば、例えば、裁判官の裁量が著しく狭まっているというときに、個別具体的なケースにこの法規定を適用するのが不都合であると思われるような事案、例えば尊属殺重罰規定というのが昔ございましたけれども、それは既に違憲判決でその後改正をしておりますけれども、仮にそれがそのような形で法改正がされずにいた場合、当時、尊属殺重罰規定でありますと、死刑及び無期懲役ということのみ量刑の選択肢にございました。それだとなかなか具体的なケースに妥当するのに不都合を感じる、そのような例も一つ考え得ると思っております。

 それが適用された例ということでございますけれども、昭和天皇の御大喪恩赦の際に、外国人登録法違反の罪、不携帯、指紋押捺関係の罪が既に改正されて刑罰の対象でなくなったということを受けて行われた後の御大喪恩赦においては、そういう観点から大赦令に含まれたというふうに理解をしております。

黒岩委員 何か事前の説明とちょっと違うんですよね。事前の説明、尊属殺は二番目の事情の変更による裁判の事後変更だという例で、その隣にいる田中さんから聞いたんですけれども、違うんですね、法の画一性なんですね。

今福政府参考人 お答えいたします。

 今の例は確かに事情の変更による裁判の事後変更でございますが、先ほど申し上げましたのは、仮にそのような、この規定が違憲判決がないというようなちょっと仮の設定をいたして説明をしたところでございます。(黒岩委員「もうちょっとわかりやすく」と呼ぶ)はい。

 尊属殺重罰規定はその後改正をされておりますけれども、何ら改正が行われないで、そのまま規定が存続していたということが仮にあったとして、その際、この法定刑が死刑及び無期懲役というふうな形で非常に限定されているということになったときに、裁判官が量刑をする際に非常に範囲が狭いというようなこと、そういった例が、具体的なケースに妥当させるときに問題を感じられるというようなことがあるとすればという仮定の話でございますけれども、お答えしたものでございます。

黒岩委員 局長、多分皆さん、かなりわかりづらいし、済みません。

 この四つの意義があるので、私、一個一個確認しながら、私は何でこのことを聞いているかというと、去年の予算委員会の当時の保護局長畝本さんの答弁でも、四つある意義のうち、一、二、三、法の画一性と、あとは事情変更による裁判の事後変更、あとはほかに救い得ない誤判のものを救う、この三つはもうほとんど重要性、ないんですよ、まずは四番目の刑事政策ですよというので、僕は、時代が変わってきているわけだから、この四つの意義のうちの最初の三つは今時点ではもうそれほど意義がなくなってきているんではないんですかという確認がしたいんです。これは委員の皆さんに説明しているんですけれども。

 それで、あくまでも、先ほどの尊属殺の例は事情の変更による裁判の事後変更だと聞いていたんですよ。どっちなんですか。これなんですか、それとも法の画一性なんですか、どっちなんですか。

今福政府参考人 お答えいたします。

 尊属殺重罰規定の例を申し上げましたけれども、事実に関しましては、委員御指摘のとおり、事情の変更による裁判の事後変更の例でございます。

 私、先ほど、仮にというふうにちょっと申し上げて、失礼いたしました。

黒岩委員 私、もう説明を受けているので、法の画一性については具体例はないと。尊属殺は、もう刑法改正されて二百条はなくなっていますから、仮定だろうが何であろうが、もともと、もう尊属殺は今ないわけですから。

 だから、事情の変更の二番だとしても、尊属殺という重罰規定が仮にあればという、あれば、これは事情の変更によって、事情変更ですよ、だって、価値観が変わったわけだから。要するに、法のもとの平等に反するというわけですよ。要するに、親やおじいさん殺しが何で無期と死刑だけなんですかということで、事後変更になったわけでしょう。だから、これは二番目だと思いますよ。

 だから、一番目の例はないんでしょう。ないでしょう。

今福政府参考人 委員御指摘のとおり、現代、現行法制が非常に整備されているということで、裁判官の裁量が広く認められておりますことから、現状ではこの意義が発揮される場面は乏しいとは考えるところでございます。

黒岩委員 もう一つ、さっき大喪の恩赦での外国人登録法の話が出ましたけれども、外国人登録法も、これも法の画一性じゃないでしょう。二番目の事後変更でしょう。これは改めてだけれども、そうですよね。

今福政府参考人 大変失礼をいたしました。今御指摘のとおりでございます。

黒岩委員 そういうことなんですよ。

 ですから、事情の変更による裁判の事後変更について今聞きたかったんですけれども、大体、皆さん、やりとりでわかったと思います。一つの例が尊属殺のような例ですし、この後、さっき言っていた政令恩赦なので、直近の昭和天皇の御大喪の恩赦について確認していきますが、今言った外国人登録法についても、これも今廃止になっていますからね。

 だから、あくまでも、この二番目の事情の変更による裁判の事後変更というのは、わかりやすく言えば、社会変化に法律が追いついていない、その後、法改正がおくれてやってきたというものをイメージすればいいということでいいですよね。それは、一つの大きな例が尊属殺だったし、直近の昭和の政令恩赦でいえば外国人登録法などが、それはそうですよ、指紋押捺しなきゃいけないとか、もうそんな時代じゃありませんよということで、そういう人たちについては恩赦の対象にしますというのがこの二番目ですね。だから、これについては徐々に徐々になくなってきていますよ。

 今局長おっしゃったように、これはあくまでも、刑事手続が、刑事政策もどんどん整備されてきているから、こういった恩赦の必要性は徐々になくなってきていますねという、これが法務省の見解ですよね。いいんですよね。

今福政府参考人 お答えいたします。

 具体例としては乏しくなってきているというふうに考えております。

黒岩委員 三番目の誤判の救済、ほかの方法をもってしては救い得ない誤判の救済、これは皆さん理解できると思います、わかりやすいと思います。

 では、これの具体例、どんな例が、今までこれによって救済された例というのはあるんですか、もしもない場合はどういったものが想定されるんですか、これについて御説明ください。

今福政府参考人 済みません、実際にあった例について、今手元にございませんので申し上げられませんが、例えば、成人として無期懲役が確定した受刑者が実は犯時十八歳未満であったことが判明したような場合、これは少年法適用の前提事実としての少年年齢の誤認は再審事由にも非常上告事由にも当たらないとされておりますため、これを是正するために無期懲役を有期懲役に減刑するようなことはあり得ると考えております。

黒岩委員 局長、さらっとおっしゃいますけれども、犯行時に十八歳未満であったかって、これは事実認定ですよ。これは再審とか、要は裁判を経ずして、こんな、犯行時に十八歳であったかどうかの事実認定が覆ることってありますか。

今福政府参考人 ただいま例に挙げさせていただいたもの、戦後すぐですと、戸籍の整備状況も不備がございまして、そのようなこともあり得たかというようなことの、背景とした例を申し上げました。

黒岩委員 そうなんです。保護局長が苦しいのはわかるんですよ。何せ、これが示されたのは昭和二十三年ですから、この四つの基準というのは。

 それで、今のお話のとおり、あり得るとすれば、戦後の焼け野原で戸籍が消失したような場合とか、こういったことをイメージしているんですよ、これは。こういったものを出さなきゃいけないぐらい、今、恩赦で誤判を救うなんて、こんなことは今の刑事手続であり得ないですよ。こんなもの、再審請求で、しっかりと公の場で、公判でやる話であって。

 そうなると、この三番目の誤判救済というのは、今お聞きになった委員の皆さんは大体わかると思いますけれども、戦後の時代にこういったこともあり得るかと想定はしたけれども、現実には、今時点、それから七十年以上たって例がないわけですから。すると、この三番目の基準についても今やほとんど必要性が乏しくなっているんじゃないか、これは私の見解です。これについて保護局長にイエスかノーかなんて求めても、それは回答できないと思いますので。

 それで、今申し上げたとおり、大臣、この基準というのは、昭和二十三年の恩赦制度審議会の最終意見書、ここから何も変わっていないんですよ。何にも変わっていないんですよ、七十年間。今まで、代のかわり目で若干法務委員会等で議論されているときの答弁のベースも、全てこの最終意見書、ここから一ミリも動いていないんですよ。このことについて、大臣、率直にどう思われますか、この恩赦制度なるもの。

山下国務大臣 まず、昭和二十三年の意見書におきましては、先ほど局長が挙げた四点に加えて、国家の慶事に当たり喜びを分かつ意味で政令恩赦を実施することも何ら差し支えないものとされているところ、慶弔禍福に合わせて行われる恩赦には、慶弔禍福をきっかけとして国民が心新たにする機会に、犯罪をした者に対しても、恩赦に浴させ、その改善更生の意欲を高めさせる等の趣旨も含まれると考えられます。

 そして、先ほどおっしゃった四点について、まず、法の画一性に基づく具体的妥当性の矯正については、具体的事例については局長がおっしゃったとおりでございますが、従前、これは私が昔考えておりましたのが、例えば、昔は強盗致傷というのは懲役七年以上だったんですね。酌量減軽しても実刑にせざるを得ないというふうなことがございました。今は五年ということになりまして、執行猶予が付し得ることになったわけですけれども、そういう場合に具体的不妥当の矯正ということもあり得るのかなということも思っておりましたし、事情の変更による裁判の事後的変更ということは、これは今後もあり得るところであろうというふうに考えております。

 また、ほかの方法をもっては救い得ない誤判の救済について、先ほど局長は戦後の混乱期のことも挙げられましたが、例えば外国人について、戸籍が整備されていないような時代がある、あるいは、パスポートに依拠して年齢を認定したところ、そのパスポートの年齢が違っていて実は少年だったということもあり得るわけでございます。

 さらに、第四、刑事政策的な裁判の変更若しくは資格の回復といった点が挙げられておりますが、確かに、この第四の部分、これが重視されているというところはあると思いますけれども、第一から第三に掲げる例においても、依然、その意義は失ってはいないのではないかと考えております。

黒岩委員 大臣、大事なのは、大臣、聞いてください。

 大体、さっきの答弁はその次の質問について答えちゃっているんだけれども、それはいいんですけれども、大臣、重要なのは、今大臣がいみじくも、すらすらといろいろな御意見をおっしゃったじゃないですか。そういったものが、昭和二十三年、七十年前から何にも議論もされず、審議会だって議論されていないんですよ。しかも、付加もされていない。外国人等についてなんか何にも、当時、会話にも出ていない。

 だから、そういう意味で、大臣のおっしゃるとおり、時代は変わってきている中で、その四つの意義が失われていないことを別に強調する必要はないんですよ。私も、四つの意義をなくせなんて誰も言っていませんよ。

 だけれども、それに加えて、恩赦制度というものを見直す意味があるんじゃないですか、意義があるんじゃないですか、そういう時期に山下さんは大臣でおられるんじゃないですかということなんですよ。それについて、率直にお答えいただきたい。

山下国務大臣 冒頭、ちょっと間違えまして、実は、強盗致傷は無期又は六年以上の懲役ということで執行猶予が付し得る、このようになったと。先ほど五年と申しましたが、六年ということでございます。それは訂正させていただきます。強盗致傷です。(黒岩委員「さっき七年と言ったじゃない」と呼ぶ)いや、改正前が七年だったんです。だから執行猶予が付せなかったということが、六年になったということでございます。

 もとより、あらゆる制度について、不断に現代的な意義ということは検証していかなければならないと考えております。他方で、やはり、一般論として、その意義が失われていないものについてはその趣旨に照らして検討していかなければならないというふうに考えておりまして、恩赦の制度についてもその両面から検討する必要があるだろうと考えております。

黒岩委員 いま一歩、おもしろくないですね。もうちょっと、何というかな、突っ込んで御答弁いただきたいんですが。

 今何度も出てきましたけれども、国家又は皇室の慶弔禍福時に行われる。現実に、戦後もほぼこれですよ。先ほど申し上げた平成の御代がわりのときには大喪と即位と、そして、平成五年の当時の皇太子殿下の御成婚ですね。その前でいうと昭和四十七年の沖縄返還になりますけれども、これもある意味、国家の慶事だったという理解もできると思います。

 それで、お聞きしたいんですけれども、これは保護局長。

 まず、あくまでも刑事政策というんだったら、何で、刑事政策が制度趣旨で、刑事政策を目的として行われる恩赦が、なぜ国家又は皇室の慶弔禍福時に行われるのか。これは差し支えないのはわかっているんですよ、差し支えないのは、そのときに行われる。ただ、差し支えないという消極的な理由じゃなくて、この時期に行われる積極的な理由があるのか、この点についてお聞かせください。

今福政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、こういう慶弔禍福時に合わせて恩赦を実施しなければならないという定めはございません。

 一般に、恩赦を実施するか否かは、内閣において、恩赦制度の趣旨、先例、社会情勢、国民感情等、諸般の状況を総合的かつ慎重に勘案して判断すべきものでありますところ、その都度、大所高所からの判断によって行われたものと考えております。

 慶弔禍福に合わせて行われる恩赦には、慶弔禍福をきっかけとして国民が心新たにする機会に、犯罪をした者に対しても、恩赦に浴させ、その改善更生の意欲を高めさせるなどの趣旨も含まれると考えております。

黒岩委員 ごめんなさい、ちょっと聞き取りづらかったので。

 ちょっと聞き方を変えますけれども、先ほど大臣もおっしゃられていた、特に慶事に際しての恩赦は、この喜びを国民の間で分かち合うことは差し支えないと。ただ、この表現も、昭和二十三年のこの意見書そのままなんですよ。一ミリも動いていない、七十年間。

 聞き方を変えますけれども、この喜びを分かち合う、差し支えないのはわかりましたよ、でも、これは裏を返せば、喜びを分かち合うことが目的だともとれる。だから、喜びを分かち合うこととこの四つの刑事政策の意義、この整合性はどうなっているんですか。喜びを分かち合うことというのは、この四つの刑事政策の意義の中に、どこかに含まれているんですか。これについてお答えください。

今福政府参考人 お答えいたします。

 喜びを分かち合う時期、すなわち、人心が一新される時期あるいは感銘を与えられる時期というふうに考えておりますけれども、そういった機会に、犯罪をした人に対しても、恩赦に浴させて、これをきっかけに改善更生の意欲を高めさせる、そのような刑事政策的な意義を含んでいると考えております。

黒岩委員 ちょっとやはり飛躍に感じますね。この後やりますけれども、大喪の恩赦では、軽犯罪法でお風呂場をのぞき見した人とかが恩赦の対象になっているんですよ。こんな人と喜びを分かち合うことが刑事政策なのかという話になるわけ。僕は、喜びを分かち合って、それで前向きにというのはちょっと飛躍し過ぎていて、それだったら、日ごろの保護矯正でそういう意欲を高めていくというのが僕は刑事政策だと思っていますよ。

 僕がこだわっているのは、君主の恩恵ではなくなっているわけです、戦後で。何か、喜びを分かち合うというと今の国民も君主の恩恵をイメージするのは、そういった感覚がやはり定着しちゃっているからだと思うんですね。

 これは、もう既に昭和二十三年の時点でですよ、今後もこういったものについては合理的にやっていかなきゃいけないよと、恩赦制度は。なおかつ、刑事政策に特化していくんですよ、意義が遵守されていくんですよと。七十年前ですよ、もう既にそのときに、当時の審議会でこういった方向性がしっかり示されている。にもかかわらず、どうも七十年たってもそういった進歩は、私は、見られないとは言いませんけれども、遅いんじゃないかと思っています。

 きょう、ちょっともう時間がないからあれなんですけれども、委員の皆さん、この意見書、審議会の報告書ですよ、これは今、原本はないんですよ、どこにも。捨てられちゃって、今あるのは、それを後で編さんした保護局の冊子。そのコピーを見て、私、議論をしている。だから、原本もない中でずっと、過去、保護局長も答弁している。

 直近の大喪の恩赦令の政令の制定プロセス、じゃあ教えてください。何にもない。後で確認しますけれどもね、本当に廃棄したのか、燃やしちゃったのか。今の公文書管理だったら、こんなことは絶対に、法律上あり得ないですよ。当時、公文書管理法がないからそういったことができたということかもしれませんが。

 ただ、元号の制定もそうかもしれませんが、やはりこの恩赦というものも、大変、三権分立を侵すこの重大事について、何にも決定資料もない。これで三十年たって、今後、ともすれば令和で恩赦を行うかもしれない、こういう今の現状だということを、済みません、時間がないのでこの次、もう一回質疑でこれはやらせてもらいますけれども、こういったことを含めて、私は、この恩赦制度、大変重要な制度ですよ、あってしかるべき大変重要な制度であるから、より合理的に、国民に納得してもらう、そのための議論を深めていきたいと思いますので、次回、よろしくお願いいたします。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 大臣、本日もよろしくお願いいたします。

 まず、私、外国人材の確保にかかわる質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 外国人をこれから多数受け入れていく中で、やはり外国人に対する生活支援というものが非常に重要になります。

 そこで、法務省のネット上のホームページに既にあります外国人生活支援ポータルサイト、ちょっと拝見をさせていただきました。また、この外国人材の確保にかかわっている民間の事業者等からも私に、このポータルサイトについて御意見が既にございまして、簡潔に言うと二つございます。

 一つは、文章が難しくて理解が困難だと。これは別に外国人からじゃなくて、日本人の方から、そういう声が出ています。それからもう一つは、日本語と英語しかなくて、多言語化されていないと。実際、去年の審議でもそうでしたが、法務省として、政府として、多言語化を地方自治体にも行く行く要求をしていくというお立場でございますので、何で日本語と英語だけしかないのという声が上がっております。

 これらを改善する意向はあるか、どれぐらい早くやるかについてお答えをお願いします。

佐々木政府参考人 御指摘いただきましたように、本年四月からホームページに外国人生活支援ポータルサイトを開設をいたしまして、生活・就労ガイドブックや地域における相談窓口の一覧等を掲載をしております。

 現状では、御指摘のとおり、このポータルサイト、日本語と英語の二カ国語のみの対応となっておりまして、また、その内容につきましても、ガイドブックの文章等が難しいとの御指摘、真摯に受けとめさせていただきたいと考えております。

 法務省といたしましては、早急に、易しい日本語等の専門家に相談もしながら、ガイドブックの内容を外国の方にわかりやすいものにした上で、ほかの言語への翻訳を進めて、サイトをわかりやすいものにしてまいります。

遠山委員 法務省の職員の方は、私もおつき合いが長いんですけれども、みんな優秀で、時々、しゃべっていても言葉が困難な場合がございますので、わかりやすい言葉に、少なくとも日本語のところは、大臣、変えた方がいいと思います。佐々木長官も、よろしくお願いします。

 二問目でございますけれども、関連ですが、外国人に対する多言語での生活支援関連の情報発信というのは、これはもちろん、何も役所、行政だけではなくて、特定技能の外国人材の受入れ機関や、それから登録支援機関も、みずからの努力でやっていこうということは当然のことだというふうに思うんですが、そういう受入れ機関、企業とか登録支援機関が多言語で情報発信をしようと努力をすることに対して、政府としてどのようなサポートを行っていくか、お答えをください。

佐々木政府参考人 先ほどお約束申し上げましたように、このガイドブックにつきましては、順次、多言語を進めてまいります。

 このポータルサイトに掲載をしているもののほか、簡略化した冊子も作成をして、受入れ企業や登録支援機関等にも配付をし、それらの企業や登録支援機関の方々がそれを用いて外国人に情報提供をするなど、活用をしていただけるようにしたいと考えています。

 また、法務省の外国人受入環境整備交付金を活用して地方公共団体が運営する多言語の相談窓口、これは、外国人の方からの相談のみならず、外国人を受け入れている機関等からの外国人への情報提供をするための相談にも応じることとされておりまして、こうした地域の相談窓口も御利用いただきたいと思っております。

 このような取組を行いながら、受入れ機関の方々も含めた支援を行ってまいります。

遠山委員 ぜひ、しっかりと行っていただきたいと思います。

 次に、山下大臣にお伺いをいたしますが、これは、技能実習生の受入れについて実績のある民間の方から御指摘をいただいたのと、あと、最近、一部報道機関でも報じられておりますけれども、一言で簡潔に言うと、技能実習生の、まあ、これからは特定技能の外国人材も同様だと思いますが、在留資格認定証明書の申請のときに、もちろん学歴とか職歴を証明する書類というのが要求されております。ところが、既に一部の外国では、にせの在職証明書、にせの卒業証明書、それから最近報道されているのを見ますと、にせの日本語能力証明書、だから、にせの証明書三点セット、これが実際出回っているということなんですね。

 例えば、最近の一部報道によりますと、これは留学ビザを申請したベトナム人学生六千人を外務省が対面調査をしたところ、約一割、一割ですから、六千人ですから六百人ぐらいのベトナム人が、日本語能力の証明書をつけているのに、対面調査したら全くできなかったと。ということは、日本語能力の証明書が、例えばN5の資格を持っているという証明書が偽造だった疑いが深いんですね。

 ですので、これは、今まで技能実習生とか留学生でこういう実態が一部、一部ですよ、もちろん、一部あったと。これから特定技能となると、これは、まあ正直言うと、送り出し国の中で、にせの証明書をつくるプロが存在している可能性が高いんですね。これは今までこの委員会でも議論されてきた悪質なブローカーと、私は表裏一体の話なんだろうなと。つまり、にせの証明書を用意して日本に行かせてあげるようにするから、そのかわり百万円もらいますよと。だから、パッケージになっているんじゃないかなと私は疑っております。

 そこで、もちろん、送り出し国側の政府とか送り出し機関と連携をとって、この根っこを根絶していかなきゃいけないということもありますが、残念ながら、にせの証明書で通って日本に来る、上陸をする外国人がいる可能性も想定して対応しなきゃいけないということで、政府として、このにせの証明書問題にどう対応していく方針なのか、お聞かせをいただければと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まことに遺憾ながら、そういった、委員御指摘の偽造証明書等を行使して在留資格を得るといった事案があるというふうな情報にも接しているところであり、まことにあってはならないことだと思っております。

 そうした状況を踏まえて、地方出入国在留管理局においては、在留資格認定証明書交付申請に係る審査において、必要に応じて鑑識を行うなどして偽造証明書の発見に努めており、実際、発見もしているところでございます。

 また、必要に応じて、関係機関とも連携しながら、証明書の真偽の確認を行っているところでございまして、まず、在留資格認定証明書交付申請の審査の過程で偽変造文書が発見された場合には、これはもちろん証明書は交付しない。また、偽変造文書の行使が事後的に判明した場合には、在留資格の取消しを行うなど厳格な対応をとることになりますし、また、仲介業者がそういったものをやっているということになれば、関係機関などとやって適正な対応を、捜査機関も含め、対応をとることになるんであろうと考えております。

 引き続き、関係機関と密接に連携して、偽造証明書を発見し、これらの行使に対して厳格な対応をとっていく所存でございます。

 また、送り出し国との連携につきましては、技能実習制度や特定技能制度では、悪質な仲介業者を排除することなどを目的として、送り出し国政府との間で二国間取決めを作成し、相手国政府との連携を図っているところでございます。

 この二国間取決めの枠組みも十分に活用しながら、偽造証明書についての情報共有や調査依頼、協議等を行うことを通じて、偽造証明書対策に努めてまいりたいと考えております。

遠山委員 私は素人ですので全く詳細はわかりませんが、民間の事業者の中には、最新のブロックチェーン技術を使えば、このにせの証明書問題は解決に向かうというような御意見も聞いておりますけれども。

 いずれにしましても、いろいろな技術も進歩しておりますので、もちろん法務省は、水際対策で偽造パスポートの鑑識とか発見は従来からやってきているわけでございますので、ぜひ、この問題、しっかりと対応していただければと思います。

 それから、続けて大臣、恐縮でございますけれども、外国人材の受入れが、四月、今月からスタートしたわけでございますが、自前で雇用する外国人への支援を行える大企業が人材確保で先行をして、中小企業はなかなかついていけないという指摘をしている報道記事も目立ってまいりました。

 私は、地元が九州、沖縄なんですが、比例区ですので広域ですけれども、やはり都市部においても、大企業と中小企業で差がある。さらに、地方の、例えば九州の中小企業、沖縄の中小企業となると更に、外国人材は欲しいんだけれども、なかなか確保の道筋がつけられないという声が上がり始めております。

 そこで、私としては、まず、地方における登録支援機関の設立をしっかりと支援してもらいたい。報道によりますと、五月一日から登録支援機関になりたいといって法務省に申請を出したら、いや、ちょっと審査に時間がかかるので六月からにしてくださいとか言われたということも報道されておりますし、また、外国人材そのものの在留資格の審査にまた時間がかかるとなかなか稼働しないということでございますが、こういう地方の中小企業、まさに一番、深刻な人手不足で悩んでいる方々でございますので、この方々が都市部の大手企業に大きくおくれて人材確保できないという事態を避けるように、政府として努力をしていただきたいと思いますが、大臣の御答弁をお願いいたします。

山下国務大臣 まず、地方への配慮は極めて重要だと考えております。そういった中で、総合的対応策にも盛り込まれている施策として、地方公共団体を対象に一元的相談窓口の整備支援等を行うこととしておったり、また、外国人の方々に地方で就労することに魅力を感じてもらうため、地方で就労するメリットや、定着させるためのノウハウの周知、共有などの取組を行っているところではございます。

 また、御指摘の登録支援機関に関する支援につきましては、地域において外国人の支援にかかわる人材や団体の育成を図るための研修等の実施や継続的な情報提供等の施策が総合的対応策に盛り込まれているところでありまして、法務省としては、地方における登録支援機関の支援、これもしっかりと行ってまいりたいと思いますし、また、具体的なニーズを更に細かく拾い取って対応したいと考えております。

 また、地方企業の申請に当たっての負担軽減について、例えば、地方で既に生活している技能実習生が引き続き特定技能外国人として同一企業に雇用されるということ、引き続きその地方で働いていただくということも想定されておりますが、これらの方々の地方の定着を促進するために、在留資格変更手続、技能実習から特定技能外国人になるわけですが、審査資料の一部を省略するという取扱いもしておりまして、申請に当たっての負担軽減を図っております。

 法務省としては、これらの取組を通じて、また、さまざまなニーズや御意見を刈り取った上で、地方の中小の受入れ機関や登録支援機関に配慮した適切な受入れに努めてまいりたいと考えております。

遠山委員 大臣、ありがとうございます。そういう方向で結構かと思いますが、ぜひ、技能実習生がそのまま職場を変えずに特定技能とかに移る場合に、変な溝というかギャップというかが出てしまいますと、法治国家ですから、法律に基づくとあなたは一時的に在留資格がないとかいうことにならないように、適切な対応をとっていただければと思います。

 続いて、ちょっと外務省から、簡潔で結構でございますが、この特定技能が始まることで、日本語能力試験、JLPTにつきまして、海外の送り出し国で開催されている日本語能力試験の頻度と会場数をふやしてほしいという要望が強く出ておりますが、今後の方針についてお伺いをいたしたいと思います。

志野政府参考人 御質問いただきました日本語能力試験、JLPTでございますが、これにつきましては、国際交流基金が現地の共催団体の協力を得て既に実施してきておりまして、例えば平成三十年度は二回、その試験は八十五カ国・地域、二百四十九都市でやっております。

 また、JLPTに加えまして、昨年十二月二十五日の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の決定に基づきまして、国際交流基金が、アジアの九カ国を対象として、一号特定技能外国人の生活、就労に必要な日本語能力をはかる国際交流基金日本語基礎テストを実施する予定でございます。

 既に、その第一弾といたしまして、フィリピンのマニラにおきまして、四月の十三、十四の両日、第一回のテストを実施済みでございます。今後も、五月の二十五、二十六、二十七、六月の十五、十六、六月の二十二、二十三、二十四、この日々に同基礎テストを実施する予定でございます。

 さらに、フィリピン以外の国につきましても、実施環境が整い次第、順次基礎テストを実施していく予定でございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 今、フィリピンの事例でお話がありましたが、ぜひ他の国も含めて順次拡大をしていただき、機会をふやしていただければというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、刑事局長に聞こうと思っていた質問の答えは自分で申し上げますから。

 委員会でお配りしている朝日新聞の三月二十五日付の記事をちょっと見ていただきたいというふうに思います。

 これは、今、私、外務委員会の理事もやっておりまして、そちらでも行く行くテーマになる話ですが、日豪の安全保障分野における協力が緊密化している中で、オーストラリアの部隊が日本に来る、日本の自衛隊の部隊がオーストラリアに行く、それを前提に、訪問部隊地位協定とこの新聞上書かれていますが、外務省の方は仮に日豪円滑化協定という仮称で呼んでいる法案でございますけれども、この締結交渉をしております。

 この新聞記事のリードにありますとおり、日本の死刑制度が自衛隊とオーストラリア軍の訪問部隊地位協定の締結交渉に影を落としている、オーストラリアは死刑を廃止していて、日本は死刑を廃止していないために、恐らくオーストラリア側が難色を示していると。

 記事の三段目の中ごろにその中身がまた詳しく書かれておりますが、これは日米地位協定も同じでございますけれども、要するに、豪州の部隊が日本に来て、公務外で罪を犯した場合に、それが死刑に相当する罪だと死刑になる可能性が当然あるわけでございまして、それについて懸念を表明しているという内容の記事になっております。

 私、これは背景として指摘しておきますが、OECD加盟国、先進諸国三十四カ国のうち死刑を維持している国というのは実は三つなんですね。日本と韓国と米国となっております。しかし、韓国は事実上、死刑をもう行っていないので、事実上の廃止国と位置づけられておりまして、アメリカ合衆国は、死刑を廃止している州が二十、死刑を廃止していない州が三十。しかし、そのうち四州は知事の判断で執行停止ということになっておりまして、死刑を廃止している州と廃止していない州がほぼ五分五分なのが米国でございます。

 そうすると、世界の先進諸国の中で、純粋な意味で死刑制度を持っているのは日本だけということになっておりまして、こういう外交とか安全保障の司法制度がかかわる分野の協力になりますと、死刑制度が壁になるということで、この記事のとおりかというふうに思いますが、外務省、交渉が滞っているのが死刑制度が壁になっているという、この内容は事実ですか。

鈴木(憲)大臣政務官 先生御指摘のいわゆる日豪円滑化協定の交渉については、現在行っているところでありますが、さまざまな論点について議論をしているところであり、現在交渉中であるため、詳細については差し控えさせていただきます。

 いずれにしても、日本としては、豪州との間で引き続きしっかりと交渉を進めてまいりたいというふうに思います。

遠山委員 そういう答弁だと思って伺ったんですが。交渉中ですからね、詳細は言えないと思いますけれども。

 大臣、大臣の御見解、簡潔で結構でございますが、私、また次回、死刑制度の主な論点についてはプロコンやりますけれども、こういう死刑制度の存在が国際社会における日本の協力関係に影響を及ぼしているのではないかということについてどういうお考えでしょうか。

山下国務大臣 お尋ねは安全保障や外交協力に関する事柄でありますし、また、先ほど鈴木政務官の方からもお答えがありましたように、さまざまな論点について議論しているということでございました。

 ということでございまして、いずれにせよ、法務省として、その点に関してお答えできるということはちょっと差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

 死刑に関する考えにつきましては、基本的には、各国において、国民感情、犯罪情勢、刑事政策のあり方等を踏まえて独自に決定すべき問題であると考えております。

遠山委員 法務委員会ではそういう御答弁でいいですけれども、来年は京都コングレス二〇二〇がありますからね。そういう答弁だと多分耐えられなくなりますから、また、これから議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

葉梨委員長 以上で遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 まず初めに、特定技能と技能実習生の問題の一つであるブローカー対策についてお伺いしていきたいと思います。

 先日の委員会でも、ブローカー対策について途中まで質疑をさせていただきましたが、引き続き伺っていきたいと思います。

 まず、技能実習制度において、平成三十一年の先月、三月末時点で二国間取決めをしている国は、ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイの十三カ国あると聞いております。

 一方で、技能実習生の受入れ数が多い国は、一位はベトナムが圧倒的で五〇・一%。そして、二位の中国、三位フィリピン、四位インドネシアというふうに続いています。このうち、一位のベトナムについては二国間取決めをしていて、三位のフィリピンもしておりますが、二位の中国と四位のインドネシアが二国間での取決めをしていないということですけれども、まず、この二つの国、中国とインドネシア、受入れ数が多いにもかかわらず、二国間の取決めができていないんだけれども、このことについての御見解をお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 技能実習制度においては、不当に高額な手数料等を徴収する不適切な送り出し機関を排除することを主な目的として、送り出し政府との間に二国間取決めを行っており、委員の御指摘のように、現時点では十三カ国との間で作成済みでございます。

 御指摘の中国及びインドネシアとの間の二国間取決めにつきましては、昨年末に関係閣僚会議において了承された総合的対応策において、技能実習の在留資格について、不適切な送り出し機関の関与の排除等を目的とした二国間取決めの作成に至っていない送り出し国のうち、中国、インドネシア、タイについて、平成三十一年四月を目途として同取決めを作成することを目指すとされているわけでございます。

 このうち、タイとの間では本年三月末に二国間取決めを作成しているところであり、残る中国及びインドネシアとの間でも可能な限り早期に作成できるよう、現在、厚生労働省及び外務省とともに協議を進めているところでございます。

源馬委員 今御答弁ありましたとおり、平成三十一年四月を目指しているわけですが、これは間に合いそうなんでしょうか、中国とインドネシアについて。

門山大臣政務官 二国間取決めの作成に関する協議状況等については、相手国との関係上、お答えすることは差し控えさせていただきますが、先ほどもお答えしたとおり、可及的速やかに作成できるよう、鋭意協議を進めているところでございます。

源馬委員 やはり中国とインドネシアは、受け入れている数も多いわけなので、我々が技能実習生の個票のチェックをしたときも、やはり同国人のあっせん者がいたというようなアンケート結果も多くありましたので、一日も早く、やはりこれは目標どおり四月に向けて、あと少しですけれども、実現できるように取り組んでいただきたいと思います。

 同じく、特定技能についても、やはりこれはブローカーを排除するということは非常に重要なことで、これに対してもやはり二国間協定を目指すと、この委員会でもたびたびお話があったと思います。

 昨年十二月二十五日の日経新聞の夕刊において、特定技能において悪質なブローカーを排除するため、ベトナム、フィリピン、ミャンマーなど九カ国と来年三月までに、つまり、ことし、平成三十一年の三月までに二国間協定を目指すという記事もありました。

 一方で、現在、法務省のホームページによりますと、二国間協定を締結できているのは、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマーの四カ国であるというふうに理解をしております。

 この中で、やはり技能実習制度で受入れ数が多い国というのは、特定技能で来られる方も当然多くなると予想できるわけで、ベトナムそれから中国、インドネシアという国々はまだ結べていないということになります。

 特定技能についても、一刻も早く、目標は三月だったわけですけれども、二国間協定を結ぶべきである。四月に施行されているにもかかわらず、三月いっぱいで結べているのが目標より下回ってしまった、これの背景を教えていただきたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 二国間取決めの進捗状況でございますけれども、昨年末の関係閣僚会議で了承された外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策においては、特定技能一号の在留資格による外国人の送り出しが想定される九カ国との間で、悪質な仲介事業者の排除を目的として、情報共有の枠組みの構築を内容とする二国間取決めのための政府間文書の作成を目指すとされております。これを受けて、法務省においては、関係省庁と連携しつつ、ベトナム、中国、インドネシアとの間で鋭意交渉しているところでございます。

 ただ、相手国がある事柄なので、実際の締結時期を予断することは差し控えたいが、協議は着実に前進しているものと認識しているところでございます。

源馬委員 差しさわりない範囲で結構なんですが、何が一番問題になっているんでしょうか。難しいハードルになっているんでしょうか。

 一方では、ベトナムは、技能実習のときは締結できているんだけれども、今回はできていないということは、つまり、特定技能のところで問題が、何かハードルがあるのか、技能実習はよかったんだけれども今度の特定技能ではちょっと難しいよというハードルがあるのか。他方で、中国やインドネシアというのは技能実習のときもだめだったけれども今もだめということは、中国とインドネシア特有の何か難しさがあるのか。

 その二点、教えていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 先ほど大臣政務官が申し上げましたように、相手との交渉事でございますので、細かくは今つまびらかにできないわけでございますけれども、基本的にどの国とも共通の理解は進んでいます。その中で、各国のそれぞれの事情で、やはり自国民の保護のためにそれぞれの国が関心を持つところはさまざまでございまして、そういうところを緻密に聞き取りながら、また日本側の考え方も示しながら、協議を進めているところでございます。

源馬委員 細かなところをつまびらかにしろとは言いませんが、例えばさっきも言いましたベトナムは、技能実習のときは締結できて、今度、特定技能で、今、目標としていた時期よりずれてしまっているということは、特定技能の、今回の二国間協定について何かお互いにハードルがあるという理解でよろしいんでしょうか。

佐々木政府参考人 先ほど、どの国とも理解は深まっているということを申し上げましたけれども、ベトナムにつきましては実質的にはもう合意に至っているところでございまして、ただ、MOCのワーディングを含め、まだ詰めているところがございますので、着実には進捗をしているということは申し上げられます。

源馬委員 ありがとうございます。

 それでは、目標としている時期があるわけなので、できるだけ早く締結して、ブローカー対策にも取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、職業紹介業者について伺っていきたいと思います。

 これは、お金の流れから考えると、技能実習制度のときの送り出し機関と監理団体が合わさったようなもののように印象を受けますが、職業紹介業者が受入れ企業に外国人を紹介することによって、当然、紹介料というのが発生することになります。これは営利目的で職業紹介業者はやるわけであって、それを考えると、受入れ企業にとっては、技能実習生を受け入れるときよりもコストが、その紹介料の分だけ高くなるということがあると思います。これが、業績がいい、財務状況もいい会社だったらいいわけですが、そうでもない、ぎりぎりでやっている、外国人労働者の手も必要、そういった企業にとっては、コストが高くなる分、やはりその分、労働者に払う賃金を低くしようという負のモチベーションが生まれてきてしまうんではないかというふうに思います。

 この辺、受入れ企業側に今の時点で、四月から始まりましたが、しっかりと、職業紹介業者というのは監理団体とは違って紹介料も発生することになるということがきちんと周知をされているのかどうか、現状を伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 これまで出入国在留管理庁におきましては、全ての都道府県において特定技能制度に関する説明会を実施をしてきております。また、さまざまな機会を捉えて制度の御説明に努めているところでございます。

 今御指摘をいただきましたとおりに、その際、特にポイントとして、参加する企業の皆様等に対して、特定技能制度は技能実習制度とは違って監理団体が存在しないこと、それから、受入れ機関が外国人と雇用契約を締結するに当たって民間の職業紹介事業者による求職のあっせんを受けることも許容されるということなどにつきまして、細かく御説明を申し上げています。

 この点、やはり説明会等における御関心も高くて、今御指摘の、そうすると紹介料がかかるのですねというお問いをいただいておりまして、概要といいますか、事実について御説明をしておりますので、ここにおきまして職業紹介料が発生するということを説明会等に御参加の皆様には御認識をいただいているものと考えています。

 まだまだ、これから引き続き、制度の細かな周知に努めてまいります。

源馬委員 ありがとうございます。

 今御答弁がありました説明会なんかでもやはり企業側の関心はそこにもあるというふうに思うんですが、そういった場合、そういう職業紹介所を介した場合は紹介料がかかりますよと言っても、企業側としては、技能実習生よりも特定技能の人材を雇用した方がいいんだというインセンティブが働いているのかどうか。説明会の中でのやりとりも含めて、それだったら手数料がかかっても特定技能に移行した方がいいねというような反応があるのか、それとも、それなら技能実習生の方がいいんじゃないかというような受けとめ方なのか、その辺を伺いたいと思うんです。

 この手数料も、やはり現在はそのほとんどが上限手数料ではなくて届出手数料ということで、三〇%ぐらいの手数料がかかるということが多くて、中には、すごく求められる人材なんかだと五〇%ぐらいの手数料も普通にかかるというところもあると聞いています。これで、もしこの特定技能の外国人人材というのが、そういう、すごく優秀で、みんながとり合いたいというような人材になっていけばなっていくほど手数料は高くなっていくわけですけれども、そうしたことも考えて、先ほど冒頭に伺いました、その説明会の雰囲気も含めて、企業側にとって、それでも特定技能の外国人を雇いたいというインセンティブが働いているように見受けられているかどうか、政務官のお答えをいただきたいと思います。

門山大臣政務官 特定技能制度と技能実習制度というのは制度の目的が異なるものでございますので、受入れ機関の方がどのような目的で外国人を受け入れるかによって、活用する制度が異なってくるものと承知しております。

 すなわち、技能実習制度の目的は、人材育成を通じた開発途上地域等への技能移転による国際協力を推進することであり、一般に、入国当初はほぼ技能のない外国人が、計画的かつ効率的に技能を習得できるものであります。他方、特定技能制度については、深刻な人手不足に対応するため、真に必要な分野において、既に一定程度の専門性、技能を有している外国人を受け入れるものです。

 したがって、特定技能制度は、人手不足の分野においてでございますけれども、一定の専門性、技能を有する人材を必要としている、そういう受入れ機関の方々には活用していただけるものと考えております。

源馬委員 制度の設計上、特に法務省としてはそういう趣旨で設計しているということはそのとおりだと思うんですけれども、実際に企業側からしたら、技能実習生を本当に、これは技術移転のためなんだ、人材育成のためなんだというふうに思って雇用しているところというのは、そんなに多くはやはりないんじゃないかと思います。

 お金もそれほど、日本人を雇用するよりは安く済むかもしれないし、短期の雇用であるかもしれないし、そういったことも含めて、この技能実習制度と特定技能の制度とが趣旨が違うから、それに応募したいというふうに、受け入れたいというふうにする企業が全く違うというのは、やはり現実の認識とは違うのではないかなというふうに思います。

 そのあたりも含めてもう一度御見解を伺いたいんですが、今政務官が御答弁いただいたとおりであるなら、きちんとそれが受入れ企業にしっかり理解されているとお考えでしょうか。

門山大臣政務官 今回の特定技能というのは、やはり、もう一定程度の専門性を有しているという条件と、さらに、これはもう人手不足分野というふうに限られているので、その中でもやはり、受入れ企業の中では、それでもぜひとも欲しいという人たちは、多少紹介料とかがかかったとしてもやはりそれは雇いたい、そういう関心があるものと理解しております。

源馬委員 そうであればいいんですけれども、しっかりとこれからも、紹介料のコストが上乗せされたとしても雇いたいというような制度であるように、技能実習とは違うんだというようなことがしっかり周知されるように、運用面でしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それからさらに、この職業紹介業者について、もう少し伺っていきたいんです。

 国内の職業紹介会社の場合、国内法である職業安定法が適用されるというふうに理解をしておりますが、例えば受入れ機関が国内の職業紹介会社を利用した場合は、この国内法が適用されて、先ほどのような手数料が発生されていく、上限手数料あるいは届出制手数料ということのどちらかが選択をされるということになると思うんですけれども、例えば、受入れ機関が、技能実習生のときにあったような、送り出し機関のようなものを利用して外国人材をちょっと紹介してもらうというようなことも起きてしまうんではないかというふうに思うんです。

 このように、受入れ機関が、海外にあるそのような機関を職業紹介会社のように利用をして外国人材を受け入れるということが可能なのかどうか、伺いたいと思います。

田畑政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の特定技能外国人材の受入れにおきましては、海外の職業紹介会社も含めて、民間の職業紹介事業者を通じて外国人材を受け入れることは可能と承知しております。

源馬委員 その場合、海外の事業者を利用した場合でも国内の職業安定法というのが適用されるという理解でよろしいでしょうか。

田畑政府参考人 職業紹介につきましては、事業所の所在地にかかわらず、その一部が日本国内で行われる場合には、職業安定法が適用されるものであります。国外の職業紹介会社が国外から日本国内の求人者に直接職業紹介を行う場合も職業安定法が適用され、職業安定法の規定を遵守する必要があります。

 一方、求人者が外国を訪れて現地の職業紹介会社を利用して採用を行う場合など、職業紹介の全てが国外で行われる場合には、職業安定法の規定の適用はされないものとなっております。

源馬委員 今御答弁あったように、国外で、受入れ企業側が国外に行って職業紹介業者とやりとりをして、そこで紹介をしてもらった場合は、全て国外で完結しているなら国内法の職業安定法は適用されないということですけれども、そうすると、紹介料なんかの規定は余り関係なくなるということだと思うんです。

 そうすると、場合によっては物すごく高い紹介手数料がかかったりするケースもあるわけで、それも別に職業安定法に触れないということになるとすると、ますます企業が払うコストは高くなっていく。それで企業はどう考えるかといえば、その分、外国人の労働者に対する賃金をカットしていくという方向に走っていってしまうんではないかというふうに思います。

 このような、国外で行われた場合の紹介業で、違法な、違法ではない、国内法では違法なんだけれども、法外な手数料を取るなどのようなことが起こるのを防ぐ手段というのは仕組みとしてあるんでしょうか。

田畑政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、国外の職業紹介事業者が国外から日本国内の求人者に直接職業紹介を行う場合には、職業安定法の適用対象になります。

 他方、国外で職業紹介を行う場合は、当該事業者に対し職業安定法の適用がないということになるわけでございますけれども、このような中、厚生労働省におきましては、国内の求人事業主に対しまして、外国人労働者のあっせんを受ける場合には、職業安定法等の定めるところにより、職業紹介事業の許可等を受けている者から紹介を受けるよう、外国人の雇用管理指針、これは厚生労働省において定めておりますけれども、そういった規定を設けているところでございます。

 こうした許可事業者等にあっては、職業安定法上一定額以上の手数料を徴収する場合には、その額及び種類を厚生労働大臣に届け出ること、求人者等に対し、手数料に関する事項等をあらかじめ明示すること、手数料等の情報を厚生労働省の運営する人材サービス総合サイトに掲載すること等が義務づけられていることから、求人者にとっても適切な職業紹介事業者の選択に資するものとなると考えているところでございます。

源馬委員 つまり、国外で行われた場合は、有効なそれを防ぐ手だてはないということなのかなと、今、伺いました。

 そうなってくると、やはり、もちろん、国外で何らかの意図を持って海外の職業紹介業者のようなものに対して、わざわざ出向いていって、そこで交渉して、高い手数料を払ってまで雇いたいというインセンティブが働くかどうかはわかりませんけれども、そういう仕組みの穴があるというか、そうなった場合、国内法が適用されずに高い手数料がかかってしまう可能性もあるということは指摘をさせていただいて、これが今後起きないように、しっかりと引き続き見ていっていただきたいなというふうに思います。

 また、こうした海外にある会社が、先ほど、日本国内で紹介業をやれば職業安定法が適用されるというお話でしたけれども、これは少し聞き及んだお話ですけれども、例えば、海外にある人材紹介会社が、日本の営業会社に外国人の人材紹介の話をちょっと持ちかけて、そして、外国人人材を一人受け入れてくれる機関を紹介してくれるについて、こっそりと月数万円の手数料なんかをその営業会社の営業マンとかに渡すというようなスキームを考えている事業者もあるというようなお話を聞いたことがございます。

 こうしたように、海外の事業者が、自分たちが出ていってというよりも、日本に既にある営業会社を利用してこういうことがもし起こってくれば、そこにまた、職業安定法では実際に契約する手数料がマックスかもしれませんが、更に営業会社にお金を渡すということで、またコストが高くなって、これは人件費へのしわ寄せも来てしまうのではないかというふうに思いますが、こういった手だてに対応する対応策みたいなものが今考えられているのかどうか、伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 今回の特定技能の制度に盛り込まれている仕組みといたしまして、外国人材が日本人と同等以上の賃金を得るべきというのは大前提でございます。なおかつ、今御指摘の、紹介料を含めて、特定技能外国人の受入れに伴うさまざまな費用が、実質上、外国人本人に不当に転嫁をされることを防止をするということが極めて重要だと思っております。

 そのため、法務省令におきましては、受入れ機関による特定技能外国人に対する入国前の事前ガイダンスにおきまして、実際に本国で何らかのお金を取られていないかどうか等についての事情の聴取をすること、そして、その内容を報告をすること等々につきまして義務づけているところでございます。

源馬委員 そうしたしわ寄せが行かないように、ぜひしていただきたいというふうに思います。

 それからまた、この特定技能制度ですけれども、技能実習制度のときは、受入れ企業の半数以上が、従業員が十九人以下の零細企業というふうになっていたかと思いますが、今回、この特定技能においては、先ほども御答弁あったとおり、目的が違うのであれば、受入れ機関の会社の規模、これはどのようなものが多くなると想定されているんでしょうか。

佐々木政府参考人 今回の仕組みでございますけれども、受入れ機関の基準といたしまして、特定技能雇用契約の適正な履行に係る基準、それから受入れ機関そのものに関する基準、それから支援計画の適正な実施の確保に係る基準を定めているところでございまして、これらの基準に適合していただく限りにおいては、事業の規模を問わず、幅広い主体が受入れ機関となることを想定をしています。

源馬委員 もちろん、要件はそうだと思うんですけれども、どういう規模の会社が雇うケースが多くなるかというふうに思うわけですね。

佐々木政府参考人 受入れの分野によって事情は異なると思います。もちろん、農業という分野に関しては農家さんが受入れ機関になられるでしょうし、製造業あるいは造船等々、大規模の会社が、今でも技能実習を受け入れている会社さんが、その卒業生を活用するということも想定されますので、さまざまだと思います。

源馬委員 これはまた後ほど質問させていただきますが、技能実習生の調査、PTの調査の資料を見ていたら、やはり、倒産をしてしまった会社というのも結構あって、財務状況のチェックというのがありましたが、ちょっとこのあたりについても、チェック体制がどうなっているのか、それから今度の特定技能ではどういうふうに対応していくべきなのかということを改めてまた伺わさせていただきたいと思います。それがあったものですから、どのような規模の会社を想定しているかということを伺いたかったということです。

 最後になりますけれども、地域の偏在ということがずっと言われてきまして、その中の対応策の一つとしてワンストップセンターを全国に百カ所、十一言語で対応する、こういったお話があったと思いますが、今現在、現状ですね、補助対象は四十七都道府県と二十の政令指定都市、そのほかの四十四自治体を対象にしたとありますが、皆さん手を挙げているんでしょうか。どういう状況なんでしょうか。

佐々木政府参考人 今御紹介をいただきましたように、今回の交付金の対象となる地方公共団体は百十一団体でございます。これらのうち、整備費、いわゆる立ち上げのときのお金につきましては三十七団体、それから運営費につきましては六十二団体から申請があり、整備費又は運営費のいずれかあるいは双方について申請していただいたのが六十八団体となっております。これらにつきましては全て交付決定を行っておりまして、準備を進めていただいております。

 ただし、今申し上げました第一次募集の申請期間に、例えば、この受け取る交付金を予算に計上して地方議会の承認を得なければいけないなどの事情から申請に至らなかった団体もあると承知をしておりまして、現在、整備費、運営費の双方につきまして、四月一日から六月二十八日まで、相当の期間を置きまして、それぞれ二次募集を行っているところでございます。

源馬委員 時間が来ましたので終わりますが、半数ぐらいしか申請が今ないということだと確認をさせていただきました。

 また引き続き質問させていただきます。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは一般質疑でありまして、いわゆる報告書の集中質疑ではないわけですが、そこに向けて、具体的な事案を参考にしつつ、お聞きをしていきたいと思います。

 最低賃金以下というものが幾つになるのかというのはやはり一つ大きな論点だと思っております。それとの関係でいいますと、重層下請構造、下請が連なっている、そういう場合は、最賃が引き上がっていっても、それに見合ういわゆる取引代金、単価、元請から下請に払われるこの単価がそれに見合って引き上がっていかないと、なかなか、最賃が上がっても、労働者の手に渡る賃金は最賃割れということに結局はなってしまうということがあるわけであります。

 ですから、重層下請構造というのは、今回の技能実習もそうですし、特定技能もそうですが、業種であるんですけれども、やはりこの取引代金、これがどうなっているのかというのは、最賃との関係でも、あるいは最賃割れを防いでいくという関係でも、非常に重要だと思っております。

 この点で貴重な調査を政府がされておりまして、配付資料の一を見ていただければと思うんですが、これは、経済産業省の委託調査、平成二十八年度の取引条件改善事業(繊維業界における下請取引の実態等に関する調査)というものでございます。二〇一七年の二月から三月にかけての調査であります。

 お配りしているのは、問いの十四を見ていただければと思うんですが、「最低賃金が昨年十月から全国各地で改定され、平均で二十五円増の時給八百二十三円になりました。これまで最低賃金や最低工賃が引き上げられた際に、取引代金は引き上げられましたか。」という問いであります。

 これについて、下の三つがそうならなかったというものなんですが、「協議を行った結果、最低賃金・工賃の上昇分の一部のみ引き上げられた」というのが九・三%。「協議を行ったが引き上げてもらえなかった」が六・〇%。「特に協議は行っておらず、引き上げられていない」というのは六三・四%ということで、合計、要するに、十分は引き上がらなかった、あるいは全く引き上がらなかったというのを足しますと七八・七%になります。

 経済産業省にお聞きしたいんですが、八割近い事業者で、最賃の引上げに見合った、せっかく上げたのに、それに見合った取引代金の引上げはなかった。この調査から二年たちます。二年たって、例えば七八・七%が六八・七%になったとか、そういう具体的な改善は見られたんでしょうか。

大内政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省では、繊維業界におけるサプライチェーン全体にわたる取引改善や、下請等中小企業が賃上げできる環境の整備等の取組を進めてまいりました。

 具体的には、平成二十八年九月に世耕プランを取りまとめたほか、下請ガイドラインの改定や業界による自主行動計画の策定、これらの説明会の開催、また、関係業界団体等を構成員とする繊維産業技能実習事業協議会の設置や、取引適正化の一層の推進を含む取組の決定、さらには、大臣を始め幹部からの取引適正化の一層の推進についての要請などを進めてまいりました。

 昨年十二月の繊維産業の自主行動計画のフォローアップ調査結果におきましては、単価の決定、改定において労務費、原材料価格、エネルギー価格の変動を反映できたかという質問に対しまして、発注側、受注側ともに、おおむねできたが微増するなど、わずかに改善が見られてきております。

 引き続き、粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。

藤野委員 おおむねできたというのがわずかにふえたという答弁でしたかね。きのうのレクではちょっとそれはお示しいただかなかったんですけれども、後でまた資料を届けていただければと思います。

 いずれにしろ、この最賃以下というのが大問題になっているもとで、やはり、重層下請のもとでは、元請が下請にどれだけ払うか、適正に、見合って払うかというのが、どうしてもそこに左右されてしまうということであります。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、やはり大臣はいわゆる司令塔でいらっしゃる、関係閣僚会議で今後、受入れの司令塔として役割を果たされていくわけで、この分野、いわゆる最賃以下というのをなくしていこうという点で、重層下請構造における、先ほどのでいけばわずかな前進というものを、やはり着実に、七八・七%というのを少しでも下げていく、そういうフォローアップといいますか、やっていますというんじゃなくて、成果を確かめていく取組が必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたしますが、委員が問題とされている繊維産業の下請構造の改善、これは、これ自体は経済産業省から説明したとおりでございまして、法務省としてお答えする立場にないと言わざるを得ません。

 ただ、一般論として申し上げれば、特定技能制度の運用あるいはそういった総合調整機能を発揮するに当たって、この特定技能外国人の受入れが認められるのは、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上でなお人材を確保することが困難な状況にある、外国人により不足する人材確保を図るべき産業上の分野に限られているということでございまして、国内人材確保のための取組をしっかり行っているのか、この中には人材不足を踏まえた賃金や労働環境等の処遇の改善も含まれるということでございますから、その点も注視してまいりたいと考えております。

藤野委員 繊維産業のはあくまで例として出しまして、きょうはこのPTの報告書に入らないという前提で、あえてこれを持ってきたんですね。

 紹介だけしますけれども、このPTの報告書でも、十二ページの事例二というのがありまして、ここには、まさに私が今取り上げました、最低賃金の改定があったにもかかわらず実習機関において支払い賃金改定がなされなかったため、約六カ月間、最賃割れが起きたという事例が、不適切な例として、しかも、新たに見つかった例として皆さんが挙げているんですよ。ですから、あえて挙げませんでしたけれども、同じことなんです、趣旨としては。

 ですから、この問題は大臣がやるべきことであって、経産省の話ではないということは厳しく指摘しておきたいと思うんですね。

 更に言えばですけれども、経産省がやっていることを、この報告書の四十五ページでは天まで持ち上げているんですよ。いわゆる事業協議会のすばらしい例としてこの繊維産業を挙げて、もう六回も議論しているとか、皆さんが挙げているわけです。

 ですから、これはもう大臣自身の課題として、いいものとして挙げたんだから、そのいいものが、じゃ、結果を出すのか、改善しているというところまで見届けていくというのも、これは大臣のこの報告書を出した上での責任だということは指摘しておきたいと思います。

 次に、住居費の問題についてお聞きしたいと思っております。

 といいますのは、この住居費も最賃にかかわってくる。つまり、もともと最賃ラインぎりぎりで働かせている契約書というのが相当あるわけですね。そこから住居費とかいろいろな光熱費とかを抜くと、もう一気に最賃割れというのはざらにある例であります。

 きょう御紹介したいのは、配付資料の二では、これは東京新聞の記事ですが、いわゆる住居費の引上げが行われているんですけれども、母国で、やはり住むんだから実費として引きますよと言っていた、これはわかるんです。ただ、問題は、それが二万一千円だったのが、母国で、ベトナムで契約書としてサインしたのは二万一千円だったのが、日本に来たらいきなり三万一千円に書きかえられたという例であります。

 東京新聞がそれを紹介しているんですが、配付資料の三は、愛知の労働組合から私たちがいただいた、まさにその契約書そのものであります。真ん中ちょっと下あたりに活字で二万一千円と家賃が書いてあるのにもかかわらず、住居費が手書きで三万一千円というふうに変えられて、ここにサインをさせられたわけですね。何でこんなに引かれるんですかと聞いたけれども、答えてくれない、逆に、嫌なら帰国だぞとおどされて、無理くりサインをさせられたという事態であります。

 法務省にお聞きしたいんですけれども、その後のいろいろな当事者の、やはり組合も闘って、当事者も闘って、おかしいじゃないかということで改善に向けて動かれて、機構も頑張られて、二〇一八年の十月以降は、やはりこれは二万一千円だよねということで、もとの契約に戻ったというふうに聞いております。これは事実でしょうか。

佐々木政府参考人 毎回ながら恐縮でございますけれども、個別の事案の詳細につきましてはお答えを差し控えさせていただきます。

藤野委員 毎回ながらといいますか、答えないのは本当にけしからぬと思うんです。いや、皆さん方が不適切な事案を正したわけですよ。ですから、ちゃんと仕事されているということを確認したいということであって、当事者からも聞いているんです、私は。

 問題は、戻したことは結構なんですが、戻す前までに相当たっているわけであります。この方は、二〇一六年三月に来日されて、四月からここでこの契約のもとで働いていらっしゃるので、もう既に三年近くたっております。その間ずっと三万一千円なんですね。ですから、一万円ずっと上積みというか、不当に払っていた。皆さん方も、それはおかしいということで二万一千円にされたわけですね。

 ですから、住んでいる方との関係で事実認定はもう終わっている。後は、何でそういうことが起きたのかというのは実習機関とか監理団体の間で詰めてもらえばいいですが、要は、払わされていたこの若者との関係でいえば、その超過分をすぐやはり戻すべきだと思うんですけれども、これはそういう方針だということでよろしいですか。

佐々木政府参考人 個別の特定の事案について申し上げられませんけれども、一般論で申し上げますと、技能実習生からの相談や、あるいは外国人技能実習機構そして地方出入国在留管理局による実地検査によりまして不適正な金額が控除されているというような事案がありましたら、地方出入国在留管理局又は外国人技能実習機構におきまして、差額分の返済も含めた必要な指導等を行い、事案の内容に応じて、改善命令、技能実習計画の取消し等の厳格な対応を行います。

藤野委員 不当なとおっしゃいましたが、皆さん方がそれは不当だということで二万一千円に戻されたわけで、これは直ちにやっていただきたい。

 ことしの一月に名古屋入管とこの当事者が話合いを持たれていまして、そこで、検討する、調査すると名古屋入管もおっしゃっているんです。ただ、もう三カ月たっておりまして、早く、これは一刻も早く結論を出して、不当な利得は返還していただきたいということを求めたいと思います。

 これもやはり最賃割れに直結する問題ですから、この報告書でも十ページで、賃金からの不適当な控除として住居費が挙がっております。きょうはここには入りませんけれども、これとの関連でも、リーディングケースとして重要な意味を持っていると思っております。

 次に、失踪に関する報告書、ボリュームが大変多いわけですが、失踪が多い業種というのがはっきりしておりまして、農業と建設なんですね。この二つが圧倒的に、倍とか三倍ぐらい多い。なぜかというと、やはり、農業でいえば過酷な労働が長時間強いられるということでもあり、建設でいえば暴力という指摘もございます。

 きょうは、農業について、配付資料をお配りしているんですけれども、これは、愛知県の田原市の農家で働くミャンマーの女性、当時二十七歳、ことし二月に入国された方が御自分で記録されたものをいただいてまいりました。

 三月九日から実習を開始されておりまして、まさに三月九日からの作業、左側が労働時間、右側が具体的な作業ということになっているんですが、例えば右側を見ますと、三月九日七時四十分から十二時十分までセロリを切るとキャベツを切る、一時四十分から七時までキャベツを切ると詰める、八時から十時までキャベツを詰める。三月十日以降も、切って詰める、切って詰める。毎日、一回十キロとか十キロ以上のキャベツを一人で運んだり詰めたりしていた。

 キャベツは、大きいものだと一つ大体二キロぐらい重さがあるらしいんですね。それを段ボール一個に大体五個とか六個詰めるらしいんです。ですから、やはり非常に重いわけです、一つ持とうとかすると。それをこれだけの長時間にわたって女性にやらせている。

 実習生、この方は、休みがないと。三月九日からずっとつけていますけれども、午後休みのときはあるんですが、ほぼ休みなく毎日働かされて、四月十日にようやく、一カ月です、三月九日から働き出して、四月十日に雨が降って休みになったと。

 こういう連絡も来ているんですね。本日は雨のために初めて一日休みがもらえたみたいで、実習生がうれしそうに連絡してきましたが、やはり週一の休みはないという連絡というか情報が私のところにも来ております。

 これはやはり大変問題ではないか。失踪が多い一つの原因として、やはりこういう余りにも過酷な働かせ方があるというふうに思うんです。

 配付資料の五を見ていただきますと、これは厚労省がつくられた「技能実習生の労働条件の確保・改善のために」という資料でありまして、いろいろいいことが書いてあると思うんです。

 農業については確かに適用除外であります、労基法は。そこにも上の方に適用除外と書いてありますが、ただ、農水省としては、労基法に準拠してやってほしいということは通達を出しているんですね。当然だと思うんです。

 ですから、法務省としても、というか入管の立場として、労働局とはまた違って、労働時間については確かに労基法適用除外だけれども、それ以外に、やはり重いものを持たせるとか、きょうは紹介していませんけれども、厚生労働省自身が、重いものを持たせる作業のときの注意とかガイドラインも出しているわけです。何時間以上やっちゃいけないとか、持つときはちゃんとこういう角度で持てとか、腰はこうしろとか、かなり適切なことも出していて、ですから、総合的に見てやはり農業では他の業種に比べて圧倒的に失踪が多いということを踏まえれば、そういう失踪をなくしていくためにも、こういう労働実態の改善は必要じゃないかと思うんですけれども、法務省、いかがですか。

佐々木政府参考人 この農業の件につきましては、技能実習制度ができて早期のころからの、農業が職種に追加されたときからの問題でございます。

 今御紹介をいただきましたように、労働基準法上は農業が規制の対象外になっているけれども、技能実習制度の趣旨に鑑みて、農林水産省において、労働基準法の規定に準拠する雇用契約を締結するように指導を行っているところでございまして、そのような指導に反した内容の申請を受理した際には、地方農政局等の指導を仰ぐよう伝えるなど、慎重な審査を行わせているところでございます。

 また、外国人技能実習機構による実地検査の際に過重労働の事案があることが判明した場合には、例えば、技能実習計画において定めた労働時間に合致しないとして、技能実習計画とのそご事案として必要な指導等を行うとともに、更に悪質な事案につきましては、厚生労働省それから技能実習機構とも連携しつつ、改善命令、実習計画の取消し等の厳格な対応を行ってまいります。

藤野委員 これはまさに、一カ月近く、運んで、運んで、切って、運んでというやつですね、非常に単純作業であります。どういう技能が身につくのかという点からいっても、今、そご事案とおっしゃいましたけれども、やはりそうしたいろいろな角度からここを是正していく、改善していく。

 地方農政局にとおっしゃいましたけれども、地方農政局は本当に苦労されているんです、適用できないから、労基法が。困ってこっちに来ているという状況ですから、ぜひそこは今おっしゃったいろいろな角度からやっていただきたい。事案についてもフォローしていきたいと思っております。

 次に、今回、報告書で、中身に触れないんですが、ちょっと関係する問題として、監理団体についてちょっとお聞きしたいと思います。

 報告書九ページによりますと、今回の調査で基礎調査の対象になった失踪技能実習生は五千二百十八人、これに対応する実習実施機関が四千二百八十とあります。

 じゃ、この五千二百十八人に対応する監理団体は何団体あるんでしょうか、法務省。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 今回のPTにおける調査は監理団体を直接の対象としたものではありませんので、調査対象である実習実施機関、四千二百八十機関に対応する監理団体の総数については、正確な団体数の集計は行っておりません。

 その上で、取り急ぎ行った集計により、あくまで速報値として申し上げますと、お尋ねの監理団体の総数はおおよそ千二百団体でございます。

藤野委員 この千二百団体については基礎調査の対象にしておりませんが、政務官、なぜでしょうか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 今回の失踪事案に関する調査は、実習実施機関における労働関係法令違反や人権侵害行為といった不正行為の有無等を明らかにすることを目的として実施したものでございます。

 そこで、このような目的を達するため最も直接的な方法として、実習実施機関が保管している賃金等に関する記録を入手したり、実習実施機関の役職員から事情を聴取する方法により調査を行うこととしましたので、監理団体を直接の対象とした調査は行わなかったものでございます。

 ただし、今回の調査においても、例えば実習実施機関から必要な書類が入手できないといった場合には、監理団体から当該実習実施機関に関する資料を入手するなど、必要に応じ監理団体にも協力を得ながら調査を行ったところでございます。

 また、実習実施機関に不正行為等の疑いが認められる場合において、監理団体もこれに関与している疑いがあるときは、当該関与についての調査も行いました。

 なお、地方入国管理局が調査を行った事案のうち、監理団体からも事実確認や関係資料の入手を行った件数は三十件強でございます。

藤野委員 私、それはおかしいと思うんですね。監理団体というのは技能実習において不可欠の存在であって、実習実施機関がおかしなことをやっていても、監理団体がちゃんとやっていれば防げるケースがたくさんありましたとこの報告書にも書いてあります。ですから、監理団体も加えて調査を行わなければ全体として見えないような、そういうスキームになっているわけですよ。

 加えて指摘しますと、政務官が責任者の報告書で、例えば事例が十一ページから十五ページに七つ挙がっております。そのうち、実に五つで監理団体の関与が指摘されている。

 余りきょうは詳しく述べませんけれども、事例一でも、監理団体の関与がうかがわれることは調査続行。事例二でも、監理団体の監査の際に発覚したにもかかわらず、その監理団体と通じて事情を秘匿した、だから監理団体を含めて調査続行というやつですね。事例の五でも、これはもう監理団体は不正を認定されております。事例の六でも、監理団体の改善措置、されております。事例の七でも、監理団体の不正が認定されております。

 ですから、この報告書自体が、不正というのは監理団体がかかわらないと隠せないし、あるいは、監理団体が率先して隠しているものも指摘が実際にされているわけですね。にもかかわらず、わかったらやりましたというだけでは、到底その全体像が見えてこないと思うんですが、政務官、これは何で調査対象にしなかった、すべきじゃないんですか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 繰り返しになるんですけれども、今回の……(藤野委員「いや、繰り返しならいいです」と呼ぶ)

葉梨委員長 ちゃんと答えてください。(藤野委員「いやいや、時間」と呼ぶ)答えてください。

門山大臣政務官 今回の調査というのは、あくまで失踪調査ということで実習実施機関をやったものですけれども、その際に、やはり疑われる事案であるとか資料が入手できないというところの中では、やはりしっかりと監理団体に対する調査も可能な限り行ったということでございます。

藤野委員 いや、違うんです。技能実習制度という制度そのものが、三者があって初めて成り立つわけですよ。かつ、不正が起きた場合、失踪なり死亡のときは、監理団体が関与しているというのは皆さんの報告書で明らかになっているわけであります。ですから、なぜ調査しなかったのか。

 実際、配付資料の六を見ていただきたいんですけれども、これは、私も昨年紹介しましたけれども、二〇一四年、平成二十六年三月二十五日の法務省の通知でありまして、今回のこのプロジェクトチームの調査と同じく、失踪技能実習生に対する調査なんですね。いわゆる聴取票の大もとになった法務省の指示であります。一における「審査部門における措置」というのが私が今から話すやつで、この三枚目に当たる「警備部門における措置」というのがいわゆる聴取票に結実したものなんですね。

 要は、この法務省の指示というのは二階建てなんです。警備部門のやつと審査部門のやつ。審査部門の方では、ここに指摘していますように、監理団体と実習機関、これがもうメーンの聞き取り先になっているわけですね。監理団体に対し、失踪した技能実習生から、処遇等技能実習実施状況一般に関する不満、要望等の相談や申立てがあったかどうか。監理団体はどのように対応したか。監理団体の監査の体制についても、ア、イ、ウと事細かに調査を求めているわけであります。

 政務官、お聞きしたいんですけれども、これは同じ失踪に関する調査なんです。失踪はなぜ起きたか。その三枚目にある警備部門による措置は、失踪技能実習生に対する質問なんですね。それはそれでやったらいい。ただ、この審査部門でやっている聴取というのは、実習実施機関だけじゃないですよ。やはり失踪がなぜ起きたかという場合は監理団体も聞かなきゃいけないということで、皆さん方がやったわけであります。

 前回は監理団体をここまで詳細に調査したのに、今回はなぜ調査の対象にすらしなかったのか、もう一回お答えください。

門山大臣政務官 委員御指摘のこの通知に係る調査というのは、平成二十五年に失踪した技能実習生が増加したことなどを受けて、失踪に関する経緯を分析して、失踪を防止することを目的として行われたものと承知しております。

 その中で、監理団体に対する聴取は、失踪者の多発、監査、相談体制の不履行といった不正行為の有無について検討するために行う方針とされておったものでございます。

 他方、今回のプロジェクトチームにおける失踪事案に関する調査は、先ほども述べましたとおり、実習実施機関における労働関係法令違反や人権侵害といった不正行為の有無等を明らかにすることを目的として行ったものでございます。

 このように両調査の目的が異なることから、おのずと調査対象も異なるものと理解しております。

藤野委員 さっぱり理解できないんですね。

 要するに、失踪をなくしていこう、死亡事案をなくしていこうという調査じゃないんですか。実習実施者だけをやり玉に上げる、そういう調査なんですか。違いますよね。やはり失踪をなくしていこう、人権侵害はあってはいけないということなんですよね。違うんですか、政務官。

葉梨委員長 佐々木長官。(藤野委員「政務官に。長官が何をしゃべるの」と呼ぶ)手が挙がったから、事務的に説明させます。

佐々木政府参考人 一つ申し上げますと、この二十五年から行っている調査というのは、問題事案が発生をして、そのことを端緒として、地方入国管理局において個別の案件を深掘りをしていって、実際に不正行為の認定等につなげるということを目的としているものでございます。もとより、失踪の防止につながるような分析をするためということもありますが。

 今回のものは、まさに政務官も申し上げましたように、昨年からの経緯によりまして実習実施機関を全件調査をするというものでございますので、むしろ二十五年の方は、入管の仕事の、日々の仕事として不断に行っているものというもので、目的が違うものでございます。

藤野委員 時間が来ていますけれども、違うんですよ。この二十六年の調査自体が国会の決議に基づくものなんです。当時から、内外で、実習生がもう大変な人権侵害になっている、アメリカからも奴隷労働だと言われて、国会で問題になって、衆参の法務委員会でそれぞれ同じ附帯決議が上がって、改善をしなきゃいけないと。その改善の一環で、前年失踪がふえたから、じゃ、失踪を調査しようということで、国会の求めなんですよ。ですから、同じなんです。

 我々が今回も、このPTも、やはり国会で問題になって、失踪をなくしていかなきゃいけない、実習生をよくしなきゃいけないということであって、だから、大もとは全く同じであります。にもかかわらず、今回は監理団体は全くしていない。

 私も予算委員会で取り上げたフレンドニッポンという監理団体は安倍総理との関係も指摘されているわけで、しかも、この聴取票も監理団体のところだけ薄いんです。名前だけでいいとか、新しいやつ。ほかのやつは、名前、代表者、所在地とかいろいろ聞いているのに、監理団体だけやたらと薄い、新しい聴取票をつくろうとしているとか、全体として監理団体をなぜか非常に軽く扱っている。

葉梨委員長 おまとめください。

藤野委員 この点については次回も引き続き追及していくことを言って、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 ハーグ条約の実施法も成立をいたしましたが、これが一区切りではなくて、それこそ本格的に、国内も条約を遵守した、世界から非難されない国にしていかなければならないんではないかと思いますので、私は取り上げていきたいと思っております。

 一番最初に、小野瀬民事局長にお聞きをしたいんですけれども、法律婚でない場合は、一方は子を養育しなくてもいいんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法律婚でない場合、例えば事実婚の場合でありましても、例えばその父親が子の認知をしているということになりますと、これは当然、法律上の親子関係はあるわけでございますので、養育の義務等は負うということになろうかと思います。

串田委員 そうしますと、離婚した場合には親子関係はなくなるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 離婚しましても親子関係はなくなりません。

串田委員 そうすると、今の二つの答えを組み合わせると、離婚しても、双方ともに子は養育をしなければならないという帰結でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 離婚をしても、監護をしていない非監護親におきましても、例えば養育費の支払い義務を負うなどの一定の責任は負うということになろうかと思います。

串田委員 養育をするというのは、養育費を払う、お金を払えば養育をするという、そういう理解を民事局長はされているという理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 父母が婚姻中の場合ですと、共同親権ということになりますし、そこは原則として共同監護ということになります。

 ただ、離婚した場合には、現行の民法では、その協議で一方を親権者と定めなければならない、また、裁判上の離婚の場合には裁判所は一方を親権者と定めることになっておりまして、離婚後は、日本の民法では、監護権という意味では単独になるというふうに考えております。

 ただ、それでありましても、先ほど申し上げましたように、親であることには変わりはありませんので、例えば養育費の支払い義務があるということになりますし、また、例えば面会交流が認められる、そういうことで子供に対しては引き続きかかわっていくことになろうかと思います。

串田委員 私の質問は、お金を払えば養育になるんですかと聞いたんですよ。その答えを答えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 なかなか、お金だけかと言われますと、先ほど申し上げました面会交流ということもございますので、そういったようなかかわりもやはり親としてはしていくということが期待されているものだと思います。

串田委員 その面会も、例えば写真を、相手方が一方的に子供の写真を見せる、これは間接面会と言うんですって。それは、子供の成長を見ることはできても、その親は子供を養育しているとは私は思えないんですよ。

 お金を払っているから養育になるんだ、これでいいんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 面会交流の方法につきましては、どのような方法が子供の利益にかなうのか、こういった観点から判断されるべきものだと考えております。

 したがいまして、個別の具体的な事情に応じて、適切な面会交流が行われることが望まれるというふうに考えております。

串田委員 それでは、個別な具体例、よくある例を挙げますが、一月に一回、二時間面会ができる、それ以外は養育費を払うしかない、これは養育というふうになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 子供の利益にとってどういった程度のものが養育として望ましいのかというのは、これはまさにケース・バイ・ケースでございます。

 したがいまして、委員御指摘のような形態のものが子供の養育として望ましい適当な形態なのかどうかというのは、そこはやはり、子供の年齢ですとか、それぞれの生活状況といったものを踏まえた個別の事案における判断になろうかと思います。

串田委員 そうじゃないんですよ。子どもの権利条約を一九九四年に批准しているわけでしょう。そうしたらば、十八条で、共同で養育をすることになっているじゃないですか。個別の具体例じゃなくて、共同で養育をするという条約に批准しているんでしょう、日本は。違いますか。

小野瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の児童の権利条約の十八条でございますけれども、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するよう最善の努力を払うことを規定したものと理解しておりまして、離婚後における父母の共同監護の制度の導入については明文の規定はないものと承知しております。

 この条約の条項でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、非監護親が養育費の支払い義務を負っていることなどからいたしますれば、この原則についての認識を確保するための措置はとられているものと考えております。

 その上で、この条約には、面会交流に関する具体的な基準等、具体的な措置については規定はございません。面会交流が認められ得るということも、先ほど申し上げましたとおり、権利条約の十八条に適切に対応していることの根拠となり得るものとは考えておりますけれども、どのような頻度で面会交流を行うのが適切なのかは、やはり個別具体的な事案ごとに判断すべきものであるというふうに考えております。

串田委員 そうやって勝手に解釈するのはいいんですが、ことしの二月に国連から勧告を受けているわけでしょう、約束を守っていないと。

 これは私が何度も言うと、大臣も余り、耳も痛いのかもしれませんけれども、私が言わなくても、諸外国が特集を組んで、日本は条約を守らない国だ、子供の権利を守らない国だと思って特集を組んで、ずっと放映されているわけじゃないですか。世界じゅうの人たちが、日本は条約を守らない、子供の権利を守らない、こうやって、そのテレビを見て、何て国なんだとほかの国はみんな思っているわけでしょう。ですから、これを変えていきましょうという話を私はずっとしているわけです。

 ただ、私、非常に一つは前向きな回答をきのうの通告の段階で受けたんですが、諸外国がどういうようなことをやっているのかということに関して法務省は今どういう状況であるのかということをお答えいただけないでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、離婚後の共同親権制度に関しましてこれまでも外国法の調査等を行ってきたところでありまして、例えば平成二十六年度には、各国の離婚後の親権制度に関する調査研究を委託しております。

 これに加えまして、総理の方から、民法を所管する法務省において引き続き検討させてまいりますとの答弁がありました。その答弁を踏まえた大臣の指示に基づきまして、本年三月二十九日でございますが、外務省に対しまして、離婚後の親権制度や子の養育のあり方等について調査依頼をしたところでございます。

 今回依頼した調査でございますけれども、二十四カ国を対象とする広範なものであります上に、法制度の調査にとどまらず、例えば、親権の共同行使に関して父母の意見が対立して裁判所による調整が必要となる事案のうち、裁判官による判断が難しいのはどのような事例かといったような点ですとか、裁判所による父母の間の調整は例えば平均的にどの程度の時間を要するかといったような、実際の運用状況についても調査することとしております。

 離婚後共同親権制度の導入につきましては、父母の間の感情的な対立のために子供の監護、養育に必要な合意が適時に得られないおそれがあるのではないかというような指摘もあるところでございますが、法務省としましては、今回の調査によって得られます海外における運用状況等も参考にして、引き続き検討してまいりたいと考えております。

串田委員 山下大臣はやってくれる人だと私は思っていたんですよ。今まで随分失礼な発言をさせていただきましたけれども、そういう前向きなやはり答えを聞いて、本当に私は感動させていただいております。

 共同親権を認めない理由として、一つは高葛藤で話合いができないということと、もう一つはDVの問題がある。確かにそういう問題は私はあると思うんです。

 ただし、そうでない夫婦というのがいる。例えば、今、日本は協議離婚が九割だ。お互い、離婚はしよう、しかし子供たちは一緒に育てていこう、それぞれ時間を分けながらも育てていこう、こういう夫婦を、この夫婦の選択肢を奪うこともないんだと思うんです。あるいは、いや、今度はもう全部任せるよ、申しわけないけれども任せるよ、経済的には負担するから任せるよ、そういう選択肢もあっていいと思うんです。アメリカは、だから、単独親権と共同親権の選択ができる制度になっている。

 ですから、日本は、わざわざ、夫婦がお互い子供を養育しようよといって覚悟を決めた、その二人がいるのに、一人に決める必要は私はないと思うんです。

 この男女共同参画社会基本法も、双方が養育をしよう、それによって女性が社会進出を図っていこう、こういうようなことですから、そこで内閣府が事実婚は入るとか入らないとか、私はこれは入るのが当然だと思うんです。法律婚であろうとなかろうと、親子なんだから子を養育するのは私は当然だと思っておりますので、ぜひ、山下大臣、どんどんと進めていただきたいと思います。

 詳細的な質問は更に続けさせていただこうとは思いますけれども、ともに前向きな、ほかの政党の方もどんどんとこれを取り上げていただいているので、ともに進めて、子供の権利を守るためにやっていきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 きょうも、性犯罪、参りたいと思います。

 パネルと配付資料をごらんください。

 この資料は、刑法の強制わいせつ、それから強制性交等罪、準強制わいせつ及び準強制性交等罪、それから、一昨年新設されました監護者わいせつ及び監護者性交等罪の構成要件などを、これまで国会答弁いただいたものを踏まえて更に検討をしてみよう、そういうことで私が図式化をいたしました。

 この一番上の赤い三角なんですが、ここは「暴行脅迫 心神喪失・抗拒不能」と、強制性交等罪や準強制性交等罪、わいせつもそうですが、その処罰要件を挙げております。左側に括弧で「処罰対象」、これは処罰対象であることは、今月二日、刑事局長から答弁をいただきました。

 その下のオレンジの台形、「親子間」とありますが、これは、新設をされました被害者十八歳未満の監護者性交等罪。これは、監護の影響力があることに乗じてという要件がついている。当然これも処罰の対象である。

 その下の青い、「不同意」と大きく書いてある、不同意の性交というものは現実として起こっているだろう、その扱いがどうなのか。

 目線を左のグレーの矢印に移していただきまして、「処罰の対象となるのは同意がないことが前提」である。これも刑事局長の答弁です。

 ここで伺いますが、このグレーの矢印、「処罰の対象となるのは同意がないことが前提」、同意がないというのは、青、オレンジ、赤、この三段を私は示すと思っているんです。ただ、実際、処罰対象となっているのは上の二つ、赤とオレンジしかないんですが、この前提と処罰対象というものは、この図のとおり、異なるという認識でいいのか、それともイコールなのか、そのことについて、ちょっと教えていただきたいと思います。

小山政府参考人 お答えを申し上げます。

 資料をつくっていただきまして、けさ、拝見いたしました。

 まず、この「処罰の対象となるのは同意がないことが前提」と、これまでの国会の議論、ここの委員会の議論でもお話し申し上げた、その趣旨でございますが、これは、特にこの一番先の赤いところの暴行、脅迫がある類型と、心神喪失、抗拒不能、これはいわゆる準強制性交等の類型、ここの本質という議論の中で、同意がないことが前提とお話し申し上げたつもりでございます。

 それで、その下の、黄土色といいますかオレンジのところでございます、「親子間」と書いてあることでございます。これは、先ほど御紹介のありました監護者性交等罪についてでございます。

 委員はよく御存じですけれども、これは監護者がその影響力があることに乗じて十八歳未満の者と性交等に及んだ場合の罪でございますけれども、これは、十八歳未満の者が監護者との性交等に応じたように見えたとしても、その意思決定は、精神的に未熟で判断能力に乏しい十八歳未満の者に対して監護者の影響力が作用したものであって、自由な意思決定と言うことはできないことに着目して設けられた規定でございます。

 したがいまして、本罪の成否を論ずるに当たりまして、自由な意思決定による同意の有無というのがこのところの類型では問題にならないのではないかなと考えております。

 あと、そのブルーのところでございますが、確かに、現行の強制性交等あるいは準強制性交等、少なくとも一番典型的には強制性交等でございますけれども、こういうところの類型は、暴行、脅迫という要件をまだ要件として要求しておりますので、このブルーのところが、事犯に応じて、同意の問題と暴行、脅迫の程度の問題はあるかと思いますが、犯罪が成立しない可能性があり得るというところなのかなと考えております。

井出委員 ブルーのところは犯罪が成立しない可能性があると。

 もう一つ伺いますが、グレーの矢印の隣に、これも薄いオレンジ色の矢印で、保護法益ですね、刑法の性犯罪の。性的自由、性的自己決定権を侵害する性交と。私は、この概念は、赤、オレンジ、そしてブルー、ここを含んでいるのではないかなと思うんですが、この保護法益を侵害する性交というものは果たしてこの三段全てを含むのか、それとも、この不同意の部分で除かれるものが出てきてしまうのか、その見解を教えてください。

小山政府参考人 非常に難しいお尋ねでございます。

 少なくとも、現行法では、これまで累次御説明申し上げておりますとおり、この赤い三角の暴行、脅迫等の要件がある場合、あるいは、拡大されました監護者等の性交等の要件がある場合を処罰するということでございまして、保護法益というのは実際に処罰する構成要件をつくるときの要件でございますので、処罰要件があるときに、構成要件があるときに保護法益という考え方をするのではないかなと思いますので、保護法益を侵害しているのに処罰されない類型があるという言い方が適切なのかどうかは、ちょっと難しいところかなと考えております。

井出委員 構成要件をつくるときに保護法益をというお話があるとなると、やはりこのオレンジ色の矢印は一番下のブルーの、一番下のところまで届くのかなと。ただ、そこは、私自身も、多分届かないのではないか、そういうおそれがあって、はてなをつけておいたんですが、恐らくそれに近い答弁ではないのかなと思います。

 少しわかりやすい端的な例で、きょうは親子の間の性行為について取り上げます。

 これは大臣に伺いますが、実の親子の間でのわいせつや性交等というものは、社会通念に照らせば、当事者の合意があろうとなかろうと、また年齢のいかんを問わず、それは社会通念的には認められないと私は思うんですが、大臣の見解はいかがでしょうか。

山下国務大臣 お尋ねでございますが、実の親子間での性交等について処罰の対象となり得るかということを離れて、社会通念一般上、認められるか否かというお尋ねであれば、法務大臣としてお答えする立場にないということでございます。

 ただ、刑法百七十九条の監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪は、監護者の影響力がある状況下で行われた場合に、十八歳未満の者がそれに抵抗することなく応じたとしても、その意思決定は自由な意思決定と言うことはできないと考えられたことから設けられたものであるということでございます。

 いずれにせよ、平成二十九年、刑法一部改正法の附則においては、施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、改正後の規定の施行状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方について検討を加えることが求められているところでございますので、法務省においても、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設け、性犯罪被害の実情の把握等を着実に進めることとしておりまして、まずはそのような実情把握等にしっかり努めてまいりたいと考えております。

井出委員 法務大臣として答弁をしていただきたい部分で、民法の話を少しします。

 民法では近親婚が禁止をされております。その注釈民法、これは、平成元年の十二月に出ているものなんですが、親族について取り上げているその注釈民法を見ますと、婚姻関係の禁止と性関係の禁止というものは理論的には区別をして考えなければならないが、現代社会の近親婚禁止を見る場合、その区別を考える必要はないというような記述がありまして、民法上は、民事局長、親子間のそうした性行為というものは認められないと思いますが、いかがですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 民事上認められるか認められないか、その違法性といいますか、そういったことが問題となるケースとしましては、不法行為が成立するかどうかというのが一つ考えられるかと思います。

 お尋ねのような、例えばわいせつですとか性交等の行為が、実子のまず意思に反してされた場合には、これは性的な自由を侵害するものとして不法行為が成立するものと考えられます。他方、実子の同意がある場合について申し上げますと、一般的に、被害者の同意がある場合には不法行為は成立しないと考えられておりますけれども、その同意が真意に基づかない、あるいは公序良俗に反する場合には不法行為の成立は否定されないと解されております。

 その不法行為の成否につきましては、最終的には個別具体的な事案におけます事情を踏まえて裁判所によって判断されるべきものでございますけれども、あくまでも一般論として申し上げますれば、実子が未成年者であるような事案ですと、その親が、未成年の子に対して親権や懲戒権を有するということも考慮しますと、その実子の同意が真意によるものであるかどうかについては、慎重に判断する必要があるものと考えられます。

 また、民法上、近親婚が禁止されていることをも考慮いたしますと、実子が成年に達しているか否かにかかわらず、親の性行為等の求めに対して、実子が同意したとしましても、その同意は公序良俗違反に当たり得るものと考えられます。

井出委員 最初に、真の同意があれば民法上不法行為は問えない、しかしながら、未成年であるとかいろいろなお話があって、灰色だなというのが私の印象なんですが。

 これは刑事局長、刑法においては、監護者性交等罪ありますが、監護者の影響力がなく、同意があれば、親子間の性行為は当然罪には問えないと私は思うんですね。それは一体どうしてなのか、そのことを、もしちょっと知見があれば教えていただきたい。

小山政府参考人 済みません、準備がないお尋ねでございますので。

 今お尋ねのあったとおり、理論上、この強制性交等の罪は、完全な同意があれば成立しないだろうと考えております。ただ、もちろん、これは個別の事実認定問題でございまして、基本的に、その同意が真意に基づくものと本当に言えるのかどうかというようなものが出てくることはあろうかと考えております。

 結局は、性的自己決定権というような、このパネルにも書いていただきましたけれども、こういうものとの関係で、どの範囲を処罰対象とするかということから刑法の構成要件は定められているものと承知しております。

井出委員 なぜ刑法で近親相姦というものが非犯罪化されているのかというと、調査室にちょっと調べてもらいましたら、やはり、明治期に刑法をつくったときに、ボアソナードがかかわった議論において、親族間というものはモラルの教えに付して刑法に置かざる方よろしからんとなったというような記録があるというふうに聞いております。

 実は、先月、全国の各地裁で四つの性犯罪事件の無罪判決がございました。そのうち二つは、実の親子関係が、被害者、加害者であったものでございます。

 まず、一般論で、大臣に伺いますが、その判決の評価ですね。マスコミが論評したり、国民が批判をしたり肯定をしたり、それから、検事御出身であれば、当然控訴の検討ということで判決の分析をしなければいけないわけですが、私は、その判決の検証、評価というものは、まず法に照らして裁判官がきちっと判断をしているか、それから、もう一つはやはり検察官の立証が十分であったか、この二つは少なくとも欠かせないなと思うんですが、大臣のお考え、いかがでしょうか。

山下国務大臣 これにつきましては、これはあくまで一般論として申し上げれば、控訴の申立ては、訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り、刑の量刑不当、事実誤認等の事由があることを理由とするときに限りこれをすることができるものと承知しております。

 それ以上に、私が判決の検証、評価の際に何を重視すべきかについてコメントするということにつきましては、ちょっと、法務大臣の立場にあることも考えて、差し控えさせていただきたいと思っています。

 いずれにせよ、検察当局においては、個別具体的な事件の判決が言い渡された際に、先ほど申し上げた控訴事由に当たるか否かを判断するため、その判決が妥当であったか否かの検討を行っているというふうに承知しております。その中でどのような事柄を重視するかについては、それぞれの事件の証拠関係等によって異なるものでございまして、一概にお答えすることは困難であるということを御理解賜ればと思います。

井出委員 法令の適用の誤りというような一言はあったかと思いますが、一般論で。私は、裁判官が法令の適用にのっとってきちっとやっているか、当然、検察の立証が尽くされているか。裁判官がきちっとやっていて、検察官の立証も尽くしていて、それでもなおこの判決はおかしいんじゃないかということであれば、そのときになって初めて、法律の規定と社会の感覚というものを検討してもよいのではないかなと思っています。

 そこで、四判決のうちの三月二十六日、名古屋地裁岡崎支部の判決なんですが、被害者は十九歳のお子さん、加害者は実の父親。事件は、平成二十九年八月と九月に起こった準強姦の二件。ちなみに、監護者性交等罪が施行されたのはこの年の七月だったんですね。もし被害に遭われた方が十八歳未満であればというような思いもございます。

 この判決については、こんな判決を出す裁判官はおかしいというような批判もあるんですが、判決をよく読みますと、実は裁判官はその中で少し、検察の立証についても、その調書の作成のあり方、それから重要な供述部分のDVD録画、そこがなかった等の点を指摘し、最終的に、当裁判所の判断は、被害者が被告人に対して抵抗しがたい心理状態にあったことを前提にしつつも、その程度が法律上抗拒不能の状態に至っていると認められるかどうかについてはなお合理的な疑いが残るというもの、そういう記載に最後、なっております。

 この裁判官は、父親の主張はほぼ退けていて、二件の準強姦については同意がないことも認定をし、さらには、その準強姦の以前から性的虐待があったということも判決の中で認定をしております。ですから、私は、裁判官のその最後の結論のとおり、それでも法律上の抗拒不能の状態に認められるかどうかについて疑いが残っている、だから無罪なんだ、そういう判決を出されたのかなと思います。

 検察の立証の問題はきょうは触れませんが、ただ、裁判官がその務めを果たしたとするのであれば、少なくとも、例えば監護者性交等罪の年齢が本当にいいのか。年齢を問わず、親子間でそういうことがあってはならないというのは先ほど民法の方では少し話が出てきたんですが、じゃ、この親子の問題というのは、私は、これに特化してどうこうしようと、すぐに、じゃ、監護者性交等罪をつくったばかりなのに変えようという話ではないと思うんです、一つの例だと思うんです。

 ほかにも、配付資料の右側の方に、真ん中の下、四角で、被害者が障害者の場合はどうか、そういうことも挙げているんですが、これは昭和四十九年の法制審の答申で、改正刑法草案というものの中に、その条文の中で、精神障害の状態にある女子を保護し又は監督する者がその地位を利用し行う姦淫を処罰する規定を盛り込んでいる。これは一度、法制審、法務省としても、障害者がそういう被害に遭った、監督する者がその地位を利用してそういう犯罪をしたら処罰するぞ、そういう結論を一回出しているんですが、現行、そうした規定は、今刑法にない。

 この不同意のブルーの台形の中に、刑法というものは人を処罰することですから、明確なものを捉えなければいけないというのは私もわかっているんですが、例えば、親子間の年齢であったり、それから障害者であったり、ほかにもそういう、不同意なんだけれども明確な行為を捉えることができるものがあるんじゃないのかな、そういう検討を果たしてこれまできちっとやってきたのかな、そういう思いがあるんですが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 個別の事案について、ちょっと、大臣としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 他方で、最高裁の決定、昭和三十三年の六月六日の決定でございますが、これは、まず、刑法百七十七条にいわゆる暴行、脅迫というのが相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることをもって足りると判示しておりますが、その暴行又は脅迫の行為が、単にそれのみを取り上げて観察すればこの程度に達しないと認められるようなものであっても、その相手方の年齢、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情のいかんと相まって、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである、そういうふうに判示しております。

 ですから、個別の立証においては、そういったことも踏まえてなされているのではないかと考えております。

井出委員 今、そういうお話がありましたが、この三月の四件の無罪判決、二件は親子だったと。残りの二件は、一つは路上での、コンビニ付近での声かけ、まあナンパですね、そこから強制性交等致傷罪の裁判になった。もう一つは、サークルですね、大人数でお酒を飲む場であったと。

 それぞれ判決を読んだんですが、その抗拒不能、今大臣お話のあった最高裁の話もそうなんですけれども、私も改めて読んでみて、やはり、そういった場において明確に、曖昧であるとやはり罪としては認められないんだなと。その明確さの程度というのは、私の個人的な感覚ですと、やはり被害者にとって相当ハードルは高いんじゃないのかなというような感想を持っています。

 そこで、刑法の法改正、もうすぐ二年になって、来年見直しに入っていくわけですけれども、私は、実は平成二十八年の十二月からこの問題にかかわりを持って、私の中ではもう三年目なんですね。

 きょうの配付資料の中にあります、実は、障害者の問題、それからその下にあるんですけれども、今十三歳未満の被害者とそういうことがあればそれはもう即アウトだよと、十三歳だとわかっていれば。

 その性交同意年齢というものも引き上げたらどうかという議論があって、障害者と年齢については自民党の中で御議論があるやに聞いております。そこはもう大変進めていただきたいなと思うんですが、私が一番、党派を超えてやらなきゃいけないんだけれども、与野党の中で一番慎重意見があるなと思うのが、このるる述べてきている暴行、脅迫要件、その保護法益、同意がない性交、このあたりの議論だと、率直に思います。

 私のゴールは、まず、捜査機関にきちっと捜査を尽くしてほしいんですね。お酒、SNS、そういうもので知り合ったらなかなか難しいとか。まず、捜査を尽くしてほしい。在宅でもいいですし、結果として不起訴になることも出てくるかもしれません。不起訴になったら不起訴で、きちっと説明をしていただきたいと思っているんですね。

 そうであれば、もう絶対訴えたくないという人はそれを尊重しなければいけませんけれども、訴えたけれどもだめだった、訴えたいけれどもだめなんじゃないかと思っている人は、少なくとも手を挙げるようになるのじゃないか、そういうところを一つ、自分のゴールに置いているんです。

 その中で一つ、きょう伺っておきたいのが、不起訴になったとき、これは刑事局長に伺いますが、被害者等通知制度というものがあって、被害者等から通知制度の申入れがあれば、いろいろな日程だとか結果をお知らせする。その中に、不起訴裁定の主文、不起訴裁定の理由の骨子、こういうことも説明するよという通知制度、十一年から始まっていると聞いております。

 これは、起訴された方は、その後の公判日程とか状況をお伝えすればいいと思うんですけれども、不起訴になるということは、もうそこで一旦、一つの区切りになってしまう可能性が高いわけですね。そのときの説明というものはやはり物すごく丁寧なものでなければいけないと思いますし、不起訴になったケースについては、私はもう本当に、全件、説明してほしいなぐらいに思っているんですね。やるべきことを本当にやったと。

 それで少し救われる人もいるかもしれないと思うんですが、その運用状況について、少し聞いておきたいと思います。

小山政府参考人 今、議員から御指摘のありました被害者等通知制度でございます。

 こちらは、検察官等が被害者等の取調べ等を実施したときに、被害者等に通知の希望の有無を確認いたしまして、希望する方には通知を実施することとしております。不起訴事件につきましては、不起訴等の処理結果をお伝えするほか、被害者等が特に通知を希望される場合には、不起訴裁定の主文あるいは理由の骨子も通知しているものと承知しております。

 なお、平成二十九年における被害者等通知制度の通知希望者数、これは全体でございますが、これは七万三千五百三名でございまして、実通知者数としては十二万八千六百三十名であったものと承知しております。

 これは不起訴になった方だけではなく全体の通知の数でございますのと、複数の通知を行う場合がありますので、最初に申し上げた通知希望者数より通知者数の方がふえているというところでございます。

 また、中身でございますが、特に今、議員から御指摘のありました、被害者等の要望に沿う事件処理を行うことができない場合が特に問題かもしれません。その場合、検察当局におきましては、事案の内容、捜査、公判に支障を及ぼすおそれ、あるいは関係者の名誉、プライバシーを害するおそれの有無、程度等を考慮しつつ、必要に応じて、なるべく丁寧な御説明を行うように全国の検察官にも周知をしていると承知しております。

井出委員 きょうお話しした問題は、大臣、私、引き続きやります。

 年齢と障害のあるなしについては自民党で御議論があると聞いております。法務省としても決してうかうかしていられないと思いますが、最後、その御覚悟を、きょうの話を踏まえて、伺っておきたいと思います。

山下国務大臣 性犯罪被害の実態についてしっかり把握しつつ、また、国会の議論についてもしっかり見守ってまいりたいと思います。

井出委員 終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.