衆議院

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第6号 令和元年11月8日(金曜日)

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令和元年十一月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 越智 隆雄君

   理事 鬼木  誠君 理事 田所 嘉徳君

   理事 葉梨 康弘君 理事 稲富 修二君

   理事 山尾志桜里君 理事 浜地 雅一君

      井野 俊郎君    奥野 信亮君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    出畑  実君

      中曽根康隆君    藤井比早之君

      古川  康君    宮崎 政久君

      山下 貴司君    吉川  赳君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      落合 貴之君    高木錬太郎君

      初鹿 明博君    日吉 雄太君

      松田  功君    松平 浩一君

      山川百合子君    藤野 保史君

      串田 誠一君

    …………………………………

   法務大臣         森 まさこ君

   法務副大臣        義家 弘介君

   内閣府大臣政務官     神田 憲次君

   法務大臣政務官      宮崎 政久君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 太刀川浩一君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 河野  真君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            油布 志行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  菊池  浩君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 高嶋 智光君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  松田  功君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  初鹿 明博君     松田  功君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官太刀川浩一さん、警察庁長官官房審議官河野真さん、金融庁総合政策局審議官油布志行さん、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾さん、法務省民事局長小出邦夫さん、法務省刑事局長小山太士さん、法務省人権擁護局長菊池浩さん及び出入国在留管理庁次長高嶋智光さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高木錬太郎さん。

高木(錬)委員 おはようございます。会派略称、立国社に所属しています、立憲民主党の高木錬太郎です。

 森まさこ新大臣、よろしくお願いします。関係の皆様、よろしくお願いします。

 まず冒頭、このたびの台風、大雨による大変な被害が全国各地で発生しておりまして、その中でも、特に森大臣の御地元である福島県では、甚大な被害、そしてお亡くなりになられた方も多数いらっしゃいます。

 改めまして、私からも心からお見舞いを申し上げるとともに、お亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げたいと思います。

 そのことを申し上げた上で、まず最初に、私たち衆議院議員は衆議院の議席をお預かりさせていただく。お預かりしている根拠となるのは選挙です。その選挙を規定しているのは公職選挙法。この公職選挙法の違反を疑われて、河井前大臣は辞任なさいました。

 法務省というのは、法の番人と言われ、法令遵守をある意味国民の皆様に周知したりお願いしていく役所でありますし、そこのトップ、法務大臣が今申し上げた疑惑で辞任せざるを得ないという事態は、大変ゆゆしき事態だと私は感じております。

 先日、森大臣は、今後の決意についてはお話しになりましたが、この大臣辞任という、公職選挙法違反を疑われて辞任というこの事態をどのように受けとめられていますか。

森国務大臣 お尋ねの件については、河井前大臣のことでございますので、私の立場からはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

 私としては、これまでの法務大臣が進めてこられた取組についてしっかりと受け継ぎつつ、国民の皆様の信頼をいただけるように、新たな時代にふさわしい法務行政を着実に前に進めてまいりたいと考えております。

高木(錬)委員 大変ゆゆしき事態だと思うと同時に、私はいささか残念でもあるんです。

 先日、私、河井前大臣に一般質疑させていただきまして、素直にうれしいな、ありがたいなと思う答弁をいただきました。二点いただきました。

 一つが、災害に関連して、ニュースにもなりましたが、台東区におけるホームレスの方の避難所受入れ拒否の事案につきまして、前大臣は、ホームレスを支援している方々と意見交換をしたいと御答弁されました。

 そしてもう一つ、同じく災害に関連して、大臣も御地元で丁寧に避難所を回られている姿、ホームページで拝見いたしましたが、避難所の運営について、私は、人権問題ではないかと。その問いに対して、避難所における人権状況を改善するために、これもまた、ぜひ現場のさまざまな御意見などを聞き取るという御答弁をなさいました。河井前大臣の姿勢の一つである現場主義、徹底して行うということのあらわれだと私は受けとめました。

 この二点につきまして、新しく御就任されました森大臣にもその姿勢で取り組んでいただきたいなとお願いするところですが、いかがでしょうか。

森国務大臣 近時の相次ぐ台風、豪雨等により、私の地元のことも先ほど言及していただきましたが、福島県も含め、全国で数多くの皆様が被災する大きな被害が発生し、私も大変心を痛めているところでございます。

 また、福島県については東日本大震災の被災地でもございまして、やはり、追い打ちをかけるような今回の被災に対して、今まで頑張ってこられた、農業者を始めとした全ての産業の皆様が心が折れそうな状態になりながらも頑張っておられる中でございます。私自身も、被災地の復旧復興に力を尽くすとともに、避難所におられる皆様方の状況等も回りまして拝見をし、さまざまな問題意識も持っているところでございます。

 十月二十三日の衆議院法務委員会において、河井前法務大臣から、委員の質問に対して、先ほど御指摘のような答弁があったことは承知しております。法務省では、東日本大震災を契機として、震災と人権をテーマにシンポジウムを開催して、専門家から、女性や障害のある被災者に対してなど必要となる配慮について具体的な説明をいただくなどの取組もしてきたところでございます。

 今後も、シンポジウムの開催などさまざまな取組を通じて、ホームレスを支援している皆様方や避難所の運営支援にかかわっている皆様方の御意見にも耳をしっかりと傾けて、関係機関と連携して、避難所における人権状況の改善に取り組んでまいりたいと思います。

高木(錬)委員 ありがとうございます。シンポジウム等々でさまざまな意見、現場の意見、耳にすることはあるでしょう。大変お忙しい大臣でございますのでなかなか難しいかもしれませんが、ぜひ、現場で汗をかいていらっしゃる皆さん、お会いになって意見交換なり、お話はお会いになって聞くというのは非常に大事なことだと思いますので、改めましてぜひお願いしたいと思います。

 それでは、次に参ります。

 選択的夫婦別氏制度について伺っていきたいと思います。

 ことしの夏の参議院選挙、森大臣、御当選おめでとうございます。候補者アンケートがあり、その中で、夫婦が望む場合、結婚後の別姓を法律で認めるべきだという問いに対して、私が知る限りでは多くの御党の候補者の皆さんが反対だというところにチェックをされている中で、森大臣におかれましては、どちらでもないというところにチェックをなさっておられました。

 これについての真意を、森大臣のお気持ちをお聞かせいただけますか。

森国務大臣 委員御指摘の先般の参議院選挙のアンケートというのは、恐らく朝日新聞と東京大学研究室との共同調査におけるアンケートだと思いますけれども、夫婦が望む場合、結婚後の別姓を法律で認めるべきかどうかという問いに対して、どちらとも言えないというふうに回答をしたことは委員御指摘のとおりでございます。

 選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方に深くかかわる事柄でありまして、平成二十九年の世論調査の結果を見ても、国民の意見が大きく分かれている状況にございます。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、今後も引き続き、国民各層の意見を幅広く聞くとともに、国会における議論の動向を注視しながら、慎重な検討を要すると考えております。

高木(錬)委員 私が伺いましたのは、大臣としての、今御就任された、今後どうやって進めていくかは後ほど聞こうと思っておったんですけれども、そこではなくて、ことしの夏のこのアンケートについて、どういう真意でどちらでもないというところにチェックなさったのかを聞いておりますが、いかがですか。

森国務大臣 私は自民党で法務部会長を経験をしておりまして、その当時から、選択的夫婦別氏制度については党内でもさまざまな御意見を伺って検討してきたという経緯がございます。そのような中で、本当に、どちらの立場も、そして、その理由についても、また、そのあり方についても、さまざまに、多様でございます。

 そのような中で、私自身、参議院選挙のときのアンケートには、どちらでもないというふうに回答させていただいたというところでございます。

高木(錬)委員 それでは、二〇一二年、森大臣が初入閣されたときは、御担当は女性活力・子育て支援担当であり、内閣府特命担当ということで男女共同参画の担当もなさっておられました。当時のいろいろな議事録を拝見いたしましても、女性活躍の推進を積極的に図られようとなさっており、その思いはもう、大臣になろうがなるまいが、そもそもの森大臣のお気持ちの根底にあるものだと私は拝察しておるんですけれども、その思いは後任の女性活躍担当大臣にも恐らく引き継がれて、そして、平成二十七年十二月閣議決定されました第四次の男女共同参画基本計画にも恐らくつながっているんだろうなと思うところであるんです。

 また、現在の法務行政、法務大臣として、先日の所信表明でも、女性の人権問題ということにも触れられておりまして、さまざまな、女性の視点というところでの取組も前に進めていくんだろうなというところで期待するところであるんです。

 そこで、いま一度聞きたいんですが、まずは、平成八年に選択的夫婦別氏制度導入が提言された法制審の答申がありますが、その後の、この間のずっと経緯、今、御答弁の中でも、御党の法務部会長も務められたというお話もありました。さまざまな意見も聞いてきたと。さまざまな意見があるというふうにも御答弁されましたが、平成八年のこの答申が出て以降の、この間の経緯についてどのように感じていらっしゃいますか。

森国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、法制審議会は、平成八年二月に、選択的夫婦別氏制度を導入すること等を内容とする、民法の一部を改正する法律案要綱を答申をいたしました。法制審議会に諮問する立場にある法務大臣としては、法制審議会における審議及びその結果である答申については重く受けとめるべきものであると考えております。

 法務省においては、この答申を踏まえ、平成八年と平成二十二年に選択的夫婦別氏制度の導入等を内容とする法律案の提出に向けて準備をしましたが、それぞれ、その当時の与党内でもさまざまな意見があったことから、いずれも提出には至らなかったものと認識をしております。

 私が法務部会長のときもそうでございますが、やはり、さまざまな意見が多様にある、そして、難しい問題を多く含んでおるということから、慎重な検討を要するものというふうに考えております。

高木(錬)委員 それでは、今申し上げた第四次男女共同参画基本計画の中に、「第九分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備」というページがありまして、その中に、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し」の「具体的な取組」というところがあって、そこにはこう書かれています。国際機関である女子差別撤廃委員会の最終見解も考慮し、選択的夫婦別氏制度導入の民法改正の検討を進める。これは累次のこの基本計画でずっと書かれ続けているかと承知しておるんですが、検討を進めると毎回書いておりますが、現在、どのような検討内容で、どのように進んでいますか。お答えください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 選択的夫婦別氏制度の導入の問題につきましては、大臣からも答弁がございましたとおり、我が国の家族のあり方に深くかかわるものでございまして、国民の間にもさまざまな意見があることから、国民的な議論の動向を踏まえることが重要であると認識しております。

 そのような観点から、法務省におきましては、ホームページに選択的夫婦別氏制度という項目を設けまして、制度の概要や氏に関する歴史的な経緯、法制審議会の答申の内容などについて周知を行っているところでございます。

 法務省といたしましても、選択的夫婦別氏制度について国民的な議論が深まることが重要であると認識しておりまして、引き続き、制度の概要等についての周知を図るとともに、国会等における議論の動向を注視してまいりたいと考えているところでございます。

高木(錬)委員 前に大臣を務められていたときの国会答弁でありますが、平成二十六年四月三日、青少年問題に関する特別委員会で、やはり、当時、男女共同参画担当大臣として御答弁されておりますが、選択的夫婦別氏制度導入への考えを聞かれて、大臣は、自民党の公約では民主党法案には反対と記載していると、真正面からお答えにならず、とはいえ、「私は、女性がしっかりと社会で活躍できるような制度が必要である」と御答弁されています。

 私は、先ほども申しましたように、勝手にですが、森大臣はいろいろな思いを抱えていらっしゃるんだと思います。女性がしっかりと社会で活躍できるような制度をつくりたいという思いは、本当に心からそう思っていらっしゃるんだと思っています。

 そこで伺いますが、この「女性がしっかりと社会で活躍できるような制度」というものの中に、この選択的夫婦別氏制度導入は含まれていますか。

森国務大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、私は、平成二十六年四月三日の衆議院青少年問題に関する特別委員会において、「女性がしっかりと社会で活躍できるような制度が必要である」と述べました。

 これまで政府においては、今日の社会における女性の活躍や社会の多様化等を踏まえ、旧姓の使用を望む方がそれを使用できることができる機会の拡大に向けた取組などを進めてきたところであります。引き続き、国、地方、企業などが、それぞれの部門において、旧姓を通称として使用することができる機会を拡大するための措置を適切に講じていく必要があると思っております。

 お尋ねの選択的夫婦別氏制度については、先ほども私答弁をさせていただきましたけれども、選択的夫婦別氏制度と一言に申し上げても、さまざまに、主張する皆様方の中にも、単一な内容ではなく、多様な考え方がございます。そしてさらには、女性が社会で活躍する上で意義があるとの御意見もございますし、また他方で、我が国の家族のあり方に深くかかわる重要な問題であるという御意見もございますので、慎重な検討が必要であると考えております。

高木(錬)委員 正直申しまして、大臣としての御答弁ですからなかなか難しいのかなと思いつつも幾つか質問させていただきましたのは、若干、一歩でも一ミリでも前に進むような御答弁を、森大臣だったらと淡い期待を持っておりましたが、大変残念です。

 私がなぜここまで選択的夫婦別氏制度を聞いたかと申しますと、私、もともと片山姓だったんです。結婚して、妻はその当時さいたま市議だったので、妻の方が氏を変えなければいけなくなって、もう現職の議員でした、もう十六年前でした、なかなか大変でした。その後、私が養子に入ることになって、今度は、私の氏が変わることになりました。家族のあり方とか、私個人としてもいろいろな思いがある中で、決断をして養子に入って、氏が変わって、いろいろな思いを確かに抱えていました。いろいろなことがありましたけれども、これは、選択的夫婦別氏制度が導入されていたら、そこまでではなかったかなと思うところもあるんです、正直。

 うちの子供らが、小さかったので、思っていたかどうかわからないんですけれども、子供たちが、パパやママの名字が、氏が変わることで混乱し、家族崩壊につながるかというと、少なくとも我が家はそんなことはなくて、家族円満、夫婦円満でやっておるんですけれども、そこかなと、私は正直思っていまして。

 家族のあり方はいろいろあります、確かに。選択的夫婦別氏制度を導入することで、女性の方々のひょっとしたらあるかもしれない息苦しさとか、私も若干当時感じたんですが、アイデンティティーというんですかね、ずっとその氏で育ってきて、変わらなければいけないというときに感じる思いなども、女性の方々は多くの方々が結婚の際に感じていらっしゃる話なので、それもなくて済むんじゃないかなと思うわけであります。改めて、また次の機会で質問させていただきたいと思います。

 三番の、先日の大臣の所信的挨拶のところに入っていきます。

 これまた前回の質疑の中で、私はもう質疑のたびに自分のうちの話を披瀝しちゃって、何か若干言い過ぎかなという気もしないでもないんですけれども、自分の子育て経験を披瀝しまして、傷ついた子供たちのことを考えると、あるいは、悩みながら、苦しみながら、迷いながら子育てをやっていらっしゃる保護者の皆さんのことを考えると、私は、たたかうという言葉は、児童虐待を根絶したいという思いには共感しつつも、違和感がある、ひょっとしたらふさわしくない単語ではないかという指摘をさせていただきました。

 大臣だったらこの思いを共有していただけるかなと思いながら、今すぐ変えてくれとかは言いません、もう既に動いているプロジェクトチームですし、年明けには提言を出そうということで精力的に取り組んでいらっしゃるという話も聞いています。その職員の皆様の御努力を否定するつもりは全くありませんが、外に発信するメッセージとして、たたかうという単語はどうなのかなという思い、大臣、共有していただけませんでしょうか。

森国務大臣 私も、弁護士時代から子どもの権利委員会で子供たちを見てきたんですけれども、委員がおっしゃるように、虐待を受けて心に深い傷を負った被害児童を温かく包み込んで、社会全体でその安全、安心を守っていくという、その考え方についてはもう完全に共感をいたします。

 ただ、委員からも今御指摘ありましたように、児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチームというネーミングでございますけれども、その意味は、法務省が総力を挙げて児童虐待の撲滅に真剣に取り組んでいくんだ、そういう意味でつけたものだというふうに思います。

 そしてまた、こういうネーミングをつけるというのは本当に難しいものでございますが、そういう趣旨でつけた、強い決意を持って児童虐待をなくすんだ、そういう趣旨だという命名の趣旨も理解できます。

 そしてまた、委員も先ほどおっしゃっていただいたように、走り出しているプロジェクトチームでございまして、何よりも、やはり年内にしっかりとした中身を取りまとめるということに重点を置いていきたいというふうに思っているところでございます。

高木(錬)委員 大臣、ありがとうございます。温かく包み込むというところで共感していただけたので、とてもうれしく、ありがたく思います。

 次に行きます。

 児童虐待は子供たちへの人権侵害とも言えますし、所信の中でも、人権問題については大臣も触れておられます。そして、人権問題の中に障害者の皆様も当然、差別や人権侵害はあってはならない話でありますが、今回、今週、参議院の方で、重度の障害者である木村議員と舩後議員が御質問をされて、非常に大変意義深いことだと私も感じておるところであります。

 重度の障害者の方々が就労したい、働きたいという思いをお持ちで、それがかなわないということは、ある意味、私はもう人権問題ではないかというふうに、そういう側面もあるのではないかというふうに思っています。

 重度障害の方々への就労支援事業という細かい制度のことではなくて、重度障害を持っていらっしゃる方々が働きたい、それがかなわない現行制度を、人権問題として、大臣はどのようにお感じになっていらっしゃるでしょうか。

森国務大臣 お答えいたします。

 重度の障害をお持ちの方々がそれぞれの人格と個性が尊重される共生社会を実現することは、法務省の重要な施策の一つであります。

 お尋ねの重度障害者の方々への就労支援事業ということに関しては、法務省の所管外であるため、私からはお答えをすることができないのでございますが、法務省の所管の限りで申し上げれば、今申し上げましたとおり、共生社会の実現ということで、法務省の重要な施策に入っております。

 ですので、法務省として、障害者の方々を含むさまざまな人権課題についてしっかりと、人権啓発活動や人権侵害に対する救済活動を通じて、共生社会の実現を推進してまいりたいと思っております。

高木(錬)委員 この話、国の方ではなかなか就労支援事業は進まないんですけれども、私が住んでおりまして、私の選挙区の一部でもあるさいたま市では、全国初となる重度障害者の方への就労支援事業を市独自で、ことしの四月からスタートいたしました。

 我が党の仲間である小川寿士立憲民主党さいたま市議が粘り強く、長年にわたって市に提言し続けて、そしてさいたま市長の清水勇人市長の御英断で、ことしの四月からスタートした。一市民として大変誇らしく思いますし、仲間の市議が一生懸命取り組まれたことが実現したのは非常にうれしく感じておるんです。

 その皆さんの取組を見ていて、これは厚労省所管の支援事業という側面だけではなくて、人権問題であり、ひょっとしたら憲法の基本的人権であったり、個人の尊重だったり、幸福追求権だったり、あるいは、もっと言えば生存権だったり、国の社会的使命だったり、そういう話にもつながることではないかなというふうに私は感じておりまして、ぜひ大臣におかれましてもそういう視点で、障害者の方々への差別をなくそう、人権侵害をなくそう、啓発を進めていこうということであるならば、ぜひ、私が今申し上げたような視点も持っていただければなというふうに思います。

 次に、今、人権についていろいろ話しましたが、私の手元に、法務省人権擁護局がおつくりになられました冊子である「人権の擁護 みんなで築こう 人権の世紀」という冊子があるんです、パンフレットがあるんです。私、読ませていただきました。非常にいいパンフレットだ、冊子だと素直に感じています。わかりやすいし、丁寧に書いているし、経緯も書いているし、国際的なところも書いてあるし、これを多くの子供たちや若者たちにも読んでもらいたいな、のみならず、老若男女、みんなに読んでもらいたいなと、私、すごく思っているんです。

 これをつくられた当局の担当の方の御努力を多としたいところなんですが、ただ一点、けちをつけるわけではないんですが、改善したらいかがですかという提案なんですけれども、表紙、法務省人権擁護局と書いていますね。編集発行は確かにそうでしょう。でも、人権擁護というのは法務省全体で取り組んでいることじゃないでしょうか。オール法務省で人権を守っていこう、人権擁護だと、一生懸命やっていらっしゃるんじゃないでしょうか。

 表紙のクレジットは、私は法務省にした方が、決して人権擁護局だけで、そこだけでやっている話ではないでしょうから、ほかの局は関係ありませんという話ではないでしょうから、内閣全体で当然人権問題に取り組んでいく決意であられると思いますが、このパンフレットに関しては、表紙、全部今あるものを廃棄して新しいものにつくりかえろなんというむちゃなことは言いません、次、つくるときは考えてみてはいかがでしょうか。どうでしょうか。当局ですかね、お願いします。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の「人権の擁護」という冊子は、法務省において人権啓発に関する事務を所掌する人権擁護局が作成し、主として、法務省の人権擁護機関が行う人権啓発活動の場面において使用しているものでございます。

 もとより人権の擁護は、それぞれの所掌に応じて、法務省全体、さらには政府全体で取り組むべき課題であるとの認識でいることは言うまでもございませんが、ただいま申し上げた本冊子の主たる用途等に照らしますと、編集発行の責任主体を明らかにする上でも、また、人権啓発活動を推進し、人権擁護局の存在や業務を広報し、認知度を向上させる上でも、人権啓発を担当する人権擁護局の名義とすることがふさわしいのではないかと考えております。特に表紙は一番目につくところでもございますので、人権擁護局の名前とするのがふさわしいと考えているところでございます。

高木(錬)委員 だとしたら、法務省の方がいいんじゃないですかと思いますけれども、私は。まあ、考えてくれたらいいなと思いながら質問しました。

 次に行きます。

 外国人材の受入れと適切な在留管理についてですが、昨年末に取りまとめられました外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の中で、行政・生活情報の多言語化、相談体制の整備というところで、平成三十年度補正十億、平成三十一年度予算十億という記載があります。

 全国知事会からも提言があり、その中には、今申し上げたところの部分についての財政支援を求めておられます。地方公共団体、財政的な支援がないとなかなか前に進むことができない、進められないみたいなところもあるでしょうから、予算確保は大変重要なことだと思いますが、令和二年度の概算要求でこの分野はどうなっていますでしょうか。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 令和二年度につきましては、これまでの交付状況を踏まえまして、外国人受入環境整備交付金に必要な経費として、十七億五千万円を概算要求しているところでございます。

高木(錬)委員 現場の職員、地方公共団体の現場は大変苦労されていると思います。大臣、頑張って予算確保、職員の皆さんのためにも、地方公共団体のためにも、御奮闘を御祈念申し上げます。

 さて、続きまして、技能実習制度について話していきたいんですが、この技能実習制度、実習生を受け入れる企業は前職要件を満たした履歴書を提出しなければ入管当局から在留資格が認められないということになっていると思いますが、この前職要件というものについてちょっと説明いただけますか。

高嶋政府参考人 御指摘の技能実習制度では、日本で修得した技能を母国に帰って生かすという制度の趣旨に沿った運用を行うという観点から、御指摘の前職要件というふうに呼ばれることもありますが、一定の要件を設けているところでございます。

 具体的には、技能実習法施行規則第十条二項三号のホにおきまして、団体監理型技能実習の場合は、本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること、又は、外国において同種の業務に従事した経験がない場合でありましても、特別の事情がある場合には技能実習を認めるということにしておりまして、これが技能実習計画の認定の要件となっているところでございます。

高木(錬)委員 技能実習を終えた経験者、修了生が、この四月からスタートした新在留資格である特定技能の取得を、また日本で働きたいと思って申請するときに、再度、母国での職歴を記載した履歴書を提出することになっていると思いますが、その際、技能実習生として申請したときの履歴書と、特定技能で改めて日本に来て働きたいと思って申請したときの履歴書と、今申し上げた前職要件のところ、もし万が一食い違っていた場合、どのような対応になりますか。

高嶋政府参考人 お尋ねの特定技能の在留資格につきましては、技能実習制度におけるような前職についての要件はございません。したがいまして、技能実習の際の履歴書における職歴とそごが仮に認められたとしても、それのみをもって不許可とすることは基本的には想定しておりません。

 一般論で申し上げますと、過去の在留時と新たな今度の制度における在留に係る申請書類の内容にそごがあるということが仮にあったとしますと、今回の申請内容の信憑性の評価にかかわってくるという面がございます。したがいまして、審査の許否を判断するに当たっては、慎重に審査するということはございますけれども、前職と違う職歴を書いていたからといって、それで不許可にするということはございません。

高木(錬)委員 それでは伺いますが、一部報道に出ておりますけれども、新在留資格、特定技能の取得者の半数は技能実習の経験者を見込んでいるということは政府もおっしゃっているところでありますけれども、その監理団体が、技能実習の履歴書を、ひょっとしたら前職要件のところを本人の知らないところで書きかえているのではないかという疑いがあるという報道がなされていますが、そのような実態は当局では把握していますか、していませんか。

高嶋政府参考人 御指摘の報道については当庁におきましても承知はしておりますし、可能性としてはあるのだろうというふうには思いますけれども、事例の有無を一つ一つ把握しておりません。現在、特定技能の申請においてそのような事例があったという報告もございません。

 以上でございます。

高木(錬)委員 この問題は、きょうの答弁を受けまして、また質問させていただきますが、見込みより大変少ない取得者、申請者と現時点ではなっているかと思います。そういう報道も出ております。これは何でかなというところの一つの原因でもあるのかなという問題意識も私はありますので、また質問させていただきますが、本日はこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、松平浩一さん。

松平委員 どうもこんにちは。立憲民主党、松平浩一です。どうぞよろしくお願いします。

 今国会のトピックとして結構大きいのが会社法の改正の審議だと思うので、それに当たって、会社法関係でちょっと私が日ごろ疑問に思っている点、こちらを中心に審議させていただきたいなと思います。

 我が国の資本市場、非常に特徴的なのが上場子会社の多さなんです。いわゆる親子上場が非常に多いということで、前々からこの親子上場に関していろいろな声が上がっていました。

 それで、最近、この親子上場に関して結構注目されるトピックがありました。それが、ことしの八月にありましたヤフーとアスクルの事案です。

 両方とも東証一部上場していまして、ヤフーはアスクルの株四六%を持つ筆頭株主、それでアスクルはヤフーの連結子会社でして、両社は親子会社の関係にありますということで、それが前提として、アスクルはことしの八月二日に株主総会を開きました。そこでどうなったかというと、創業社長の再任案が否決されまして、独立社外取締役も三名が解任されてしまいましたということなんです。これは、筆頭株主のヤフーと、あと、二位の株主で一一%を保有する会社がありまして、その会社が両社とも再任に反対したためなんです。

 この親会社であるヤフー側の意見で創業社長と独立社外取締役が解任されたことについて、結構懸念の声が出されています。

 例を言います。

 日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク、何と言っているかといいますと、独立社外取締役の判断がみずからの判断とそぐわないからといって、支配株主が当該独立社外取締役の再任を拒絶できるとあっては、結局のところ独立社外取締役は、支配株主の意向を伺うことになり、本来期待される役割を果たすことができなくなることから、上場子会社において少数株主の利益を保護するための実効的なガバナンス体制を構築することなど不可能になってしまう、そういうことを言っています。つまり、簡単に言うと、少数株主の保護をどうするんだということですね。

 それから、日本取締役協会というのが、会長は宮内義彦さんですけれども、ありまして、こちらも何と言っているかというと、経営者の選任をめぐる意見の相違を根拠に、支配株主の横暴を牽制するために存在している独立取締役を緊急性も違法行為もない状態で解任できるのであれば、親子上場のガバナンスが成り立たなくなる、そういうことを言っています。つまり、独立社外取締役が株主の意向で解任されてしまうようなシステムでは、独立社外取締役の任務が果たせないんじゃないかということを言っています。

 ここでちょっとお聞きしたいんですが、ここで言われている独立社外取締役とは何だということなんですけれども、まず、これは会社法上、定義はあるんでしょうか、ないんでしょうか。簡潔にお願いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 会社法においては、社外取締役の定義と役割がございます。会社法における社外取締役は、株式会社の業務を執行せず、かつ、株式会社、それからその親会社、その子会社、あるいはその経営陣などとの間に一定の関係を有しない者をいうということでございます。

 社外取締役には、少数株主を含めて全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する立場にある者として、業務執行者から独立した客観的な立場から会社経営の監督を行い、また、経営者あるいは支配株主と少数株主との利益相反の監督を行うという役割を果たすことが期待されております。

 独立社外取締役は、これは有価証券上場規程上、一般株主と利益相反が生ずるおそれのない社外取締役とされておりまして、このように、独立社外取締役は、今申し上げた、一般株主と利益相反が生ずるおそれのないという要件が付加された社外取締役ということで、要件が異なっているということでございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 そうですね。最初にお教えいただいたのは社外取締役の要件ということで、独立社外取締役については、有価証券、何でしたっけ、ごめんなさい。

小出政府参考人 有価証券上場規程で定められているものでございます。

松平委員 済みません、有価証券上場規程ということですね。

 金融庁さんの方にもちょっと来ていただいているので、金融庁さんの方にもお伺いしたかったんですけれども、今の御答弁でよろしいでしょうか。

油布政府参考人 お答え申し上げます。

 東京証券取引所の有価証券上場規程において、独立役員、独立社外取締役の定義がございます。

松平委員 それでは、ちょっと簡潔にもう一度お願いしたいんですが、会社法上の社外取締役と独立社外取締役の違いを、もう一度ちょっと簡潔にお願いできますか。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおり、一般株主と利益相反が生ずるおそれのないという要件が有価証券上場規程で設けられておりまして、そこの部分が会社法上の社外取締役の定義と異なるところでございます。

 その一般株主と利益相反が生ずるおそれがないという要件につきましては、有価証券上場規程の解釈によるものだというふうに考えております。

松平委員 わかりました。ありがとうございました。一般株主と利益相反を生ずるおそれがあるかどうかというところなんですね。

 ということでは、じゃ、普通の、会社法上の社外取締役については、少数、一般株主と利益相反を生ずるおそれがないということは、これは、少数株主の保護という点については考慮されていないという現状なんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 社外取締役自体が、経営者あるいは支配株主と少数株主の利益相反の監督を行うという役割が期待されている職でございますので、少数株主の保護、あるいは一般株主の利益相反を、確保するという要件をというか、それが期待されていないというわけではございませんが、済みません。

松平委員 わかりました。ありがとうございました。じゃ、一般の少数株主の利益を保護する役割もあるということで理解しました。

 ちょっと、私はなぜこういうことを言っているかというと、例えば、上場子会社は稼ぎ頭のビジネスがありました、そのビジネスが、親会社が資本の論理で自分のものとしてしまう、そういうことがあった場合に、残った子会社の株主は、そんなはずじゃなかったなということになってしまうと思うんですね。ですので、一般の少数株主の利益を保護する役割というのは非常に重要だということだと思います。

 先ほど、独立社外取締役の定義をいただきました。ここでちょっと、経産省がグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針、ことしの六月に結構分厚い冊子を出しているんですけれども、ここでこういうふうに言っています。

 ちょっと紹介しますと、「上場子会社における独立社外取締役については、一般株主の利益保護という重要な役割を果たし、一般株主や資本市場からの十分な信頼が得られる必要があるため、少なくとも十年以内に親会社で業務執行を行っていた者は独立社外取締役としては選任しないこととすべきである。」と。つまり、今の社外取締役の要件それから独立社外取締役の要件よりも厳しいものにすべきというふうに言っているんです。だから、つまり、もっと独立性の要件を厳しくしろよということを言っています。

 このグループガイドライン、実務指針を受けてかどうかはちょっとあれですけれども、東証のルールもそのように厳しく変更する予定と聞いているんですけれども、この点、いかがでしょうか。

油布政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、これは経済産業省の文書でございますが、実務指針がございまして、その記載を踏まえて、東京証券取引所において検討がなされていると承知しております。

松平委員 つまり、今の会社法上の社外取締役の独立性からどんどんと厳しい条件になってきているんです。実務上の要請に従って、現場はどんどん独立性の要件を上げてきているんですね。つまり、今の法律上の社外取締役の要件では足りないということになっているという現状があると思います。したがって、会社法上も、社外取締役の親会社からの独立性の要件、これは強化していってもいいんじゃないかなというふうに思っています。

 そういう意味でいうと、経産省の実務指針、それから東証もルールを変更しようとしている、こういう状況を鑑みてどういう感想をお持ちか、大臣、お聞かせいただいてもいいでしょうか。

森国務大臣 委員の御指摘のとおり、経済産業省や東京証券取引所において、社外取締役の要件について、親会社から独立性を高める方向での議論等がされていることは承知をしております。

 社外取締役の親会社からの独立性の強化については、平成二十六年の会社法改正において社外取締役の要件が厳格化され、親会社の業務執行者や、いわゆる兄弟会社の業務執行者等についても、株式会社の社外取締役となることができないなどとされました。これは、親会社の関係者や、親会社から指揮命令を受ける兄弟会社の業務執行者等には実効的な監督を期待することができないこと等を踏まえたものであります。

 このように、平成二十六年改正法において社外取締役の要件が厳格化され、その施行がされたことなどから、実務的な運用等も進んできているところでありますので、引き続き、実務における運用状況や各方面での議論の状況を注視しながら、関係省庁とも連携して、必要な検討をしてまいりたいと思います。

松平委員 そうですね。前の会社法の改正から更に今現在では進んでいるよということなので、ぜひ検討の方をお願いしたいなと思います。

 そういう意味でいうと、今、結構、少数株主の保護の方策として実務上行われている例というのがありまして、それがTOBのときです。公開会社が他の会社に買収されるときにTOBが行われるときがあるんですけれども、そのときに、買収される方の会社の株主、だから、少数株主がいるわけですけれども、それを、マジョリティー・オブ・マイノリティー条件というのがありまして、それをつけて保護しているというようなことがあります。

 これは具体的には、TOBでの買い付け予定株式数、これの下限を設定する、そういった形でやっていて、今ちょっと申し上げましたマジョリティー・オブ・マイノリティーの賛成が必要ということにしているというわけなんです。

 私、これは非常にいい考えだと思っていまして、新規の買い付け者が会社を買収する、TOBをするに当たって、既存の少数株主の意見をちゃんと聞こうとする。本当にそういう役割を持っているんだなというふうに思います。

 そういう意味でいうと、この考え方を社外取締役の選任それから解任、そういった場面に導入したらいいんじゃないかなというふうにも思っています。

 先ほど社外取締役の役割をお聞きしましたけれども、少数株主の保護が入っているというふうにお聞きしました。そういう意味でいうと、やはり社外取締役、これは、選任するとき、解任されてしまうとき、少数株主の保護という役割を果たせなくなっちゃうんですね、解任されちゃうと。だから、例えば、解任にマジョリティー・オブ・マイノリティーの同意を必要とするですとか、そういう義務を設ける、当然、公開会社に限定してもいいと思いますし。

 そういう意味でいうと、上場子会社のガバナンス、それから子会社の少数株主の保護ということのためになるので、こういった施策を導入したらいいのかなと思うんですけれども、その点も、大臣、ちょっと感想はいかがでしょうか。

森国務大臣 委員の問題意識のとおり、上場子会社等における社外取締役は、経営者あるいは支配株主と少数株主との利益が相反する場合に、他の取締役等の監督を行うなど、少数株主の利益の保護を図る役割が期待されているものでありますので、上場子会社等において実質的にその役割を果たすことができる社外取締役を確保するための施策として、社外取締役の独立性を高めることや、少数株主の意見がより反映される仕組みを構築することなどについて、各方面で議論がされているところでございます。

 法務省としても、社外取締役の活用を含む上場子会社のコーポレートガバナンスのあり方は重要な課題であると認識しておりますので、委員の御指摘も踏まえて、引き続き、実務における運用状況や各方面の議論の状況を注視して、関係省庁と連携して、必要な検討をしてまいりたいと思います。

松平委員 どうもありがとうございます。

 今、独立社外取締役の話をしていましたけれども、これは前提として、親子上場が適法という前提だったんですけれども、簡単に、適法ということで間違いありませんでしょうか。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 会社法上、いわゆる親子上場に関する規制を定める規定はございません。親会社が存在する子会社が上場することは適法であると考えております。

松平委員 適法ということです。

 これは、米国でも親子上場は禁止されておりません。しかし、その数は非常に少ないんです。一度、親子上場の関係になっても、積極的に解消に向かうというふうに言われています。それはなぜか。なぜかというと、米国の場合には、支配株主は、判例法上、少数株主が不利益をこうむることがないよう配慮する義務という義務、これは忠実義務というんですけれども、そういうものを負っているからなんです。

 したがって、これはどういうことになるかというと、少数株主は支配株主に対して、忠実義務違反に基づく損害賠償請求をすることができる、そういう状況なんです。したがって、親会社としては、支配株主でいること自体がリスクになっちゃうんですね。

 ですので、こういう、いつ少数株主から訴訟を提起されるかわからない状態というのを長く続けるわけにはいかないということで、親子上場は解消に向かっているということなんです。これはドイツとかフランスもそうみたいなんですね。

 一方、日本では、これは会社法上も判例法上も、判例法というか、判例上も、支配株主の少数株主に対する忠実義務、これは認められていないというふうに理解しています。

 そこで、ちょっとやはり確認なんですけれども、親会社、支配株主の少数株主に対する忠実義務というのは、日本法では、判例なども含めて、認められていないという理解でいいでしょうか。

小出政府参考人 支配株主は、一種の付随義務として会社及び他の株主に対して誠実義務を負うという学説はございますが、現行法上、上場子会社の支配株主が少数株主に対しての忠実義務を負うということを定めた明文の規定はございませんし、そのような忠実義務を認めた判例も承知しておりません。

松平委員 ありがとうございます。

 ということで、日本の支配株主、親会社経営者は忠実義務がないということで、これは訴訟リスクを意識しないということで、では、どうなるか。経営に対する緊張感がなくなってしまうということになってしまいます。

 そういう意味でいうと、どうでしょう、大臣、会社法に、日本も、米国などと同じように、欧米諸国と同じように、支配株主の忠実義務というものを導入するというのはいかが思われますでしょうか。

森国務大臣 委員御指摘のとおり、欧米諸国において、上場子会社の支配株主が少数株主に対して忠実義務を負う場合があることや、我が国においても、支配株主は他の株主に対して誠実義務を負うとする学説がございます。

 もっとも、会社法にこのような規律を設けようとする場合には、法文上、要件を明確化することが難しいという点、また、義務違反があった場合に生ずる損害賠償責任をどのように考えるかなど、慎重に検討しなければならない課題が数多くあると考えております。

 もっとも、法務省においても、上場子会社における実効的なコーポレートガバナンスの体制の構築は重要な課題であると認識しておるということは先ほども申し上げたとおりでございますので、私としては、今後も引き続き、実務における運用状況や各方面での議論の状況を注視して、関係省庁と連携して、必要な検討をしてまいりたいと考えます。

松平委員 実際に欧米諸国でやっているわけなので、できなくはないと思うので、ぜひ検討をお願いしたいなというふうに思います。

 この点、先ほどちょっと紹介しました実務指針、これを書いたという、書いたんですかね、検討した、経産省が主催するCGS研究会、コーポレート・ガバナンス・システム研究会というものがありまして、そこの第二期の報告書において、こういった記載があります。

 支配株主を有する上場会社について、投資家から一般株主との利益相反リスクに対する懸念が示されているのは、米国及び一部の欧米諸国にあるような支配株主に対する事後的な責任追及等の制度的な裏づけがないこと、これが根本的な問題であることは明確にしておく必要がある、そういう意見もありましたという記載がありました。

 そうなんです。これは事後的な責任追及等の制度的な裏づけがないということなんですね。やはり、少数株主が何かあったときに訴訟で争う余地というのを残しておくというのは、私は本当に重要だと思います。そういった意味でも、支配株主の忠実義務というのは入れるべきというふうに私としては申し上げたいと思っております。

 それで、もう一つ、子会社の少数株主が親会社に対して代表訴訟を提起できる制度、こういう制度の考え方がありまして、これは私、調べたら、この制度の導入というのが二〇一四年の会社法改正の前の法制審で検討されたことがあるということでした。

 それで、これはどういう制度かというと、親子会社間の利益相反取引によって子会社が不利益を受けた場合に、親会社は子会社に対してその不利益相当額を支払うという、これは法定義務を負うという制度なんですけれども、これは議論の結果見送りになったという経緯があったようです。

 これは、先ほど言及しました、何度も言及しています、経産省が主催するCGS研究会、これでどういう意見があったかというと、上場子会社のガバナンス強化の仕組みとして、独立社外取締役を中心に対応していくことについては、独立社外取締役も支配株主によって選任される立場にあるため、その支配株主からの独立性といっても限界がある、独立性に限界がある、したがって、こうした対応のみで実質的に機能するか疑問がある、このため、補完的な手段としては、支配株主に対する事後的な責任追及や、親会社による上場子会社の意思決定への関与を外形的に制限する方法などが考えられる、そういう意見もあったというふうに言っています。

 やはり事後的に支配株主に対する牽制手段があった方がいいという意見、ガバナンスの観点からも望ましいという意見、これは強いんだと思うんです。

 そこで、一度見送りになったことはあるんですけれども、子会社の少数株主による代表訴訟、これを制度的に導入するということ、これは効果は本当に十分にあると思うので、どうなのかなと。これは、一度検討したからもうしないというんじゃない。時代というのはやはり変わっていると思うんですね。この実務指針、これはことしの六月に出ているんです。したがって、株式市場のグローバル化は結構進んでいます。これは、親子会社の問題について議論を進めていかなきゃいけないというふうに思っています。

 この研究会の報告書、こうも言っています。支配株主と一般株主との利益相反の問題は、グローバルなルールに合わせなければ結局は日本企業が不利になる、そういうことを言っているんです。

 したがって、これはもう一度検討に値するんじゃないでしょうか。どうでしょう、大臣。この点、御感想はいかがでしょう。

森国務大臣 今委員が御指摘なさったように、子会社の少数株主が親会社に対して責任を追及することができる制度に関しては、平成二十六年の会社法改正に先立つ法制審議会に設置された会社法制部会において検討をされた経緯がございます。しかし、親子会社間の取引に萎縮効果を及ぼし、合理的なグループ経営まで規制されるおそれがあるなどとして反対する意見も多く、結局、法制化が見送られたという経緯がございます。

 このような議論の経緯もあることですので、御指摘のような制度を設けることについては、さまざまな立場があるということで、慎重な検討が必要であると考えております。

 もっとも、私も先ほどから申し上げているとおり、上場子会社における実効的なコーポレートガバナンスの体制の構築、重要な課題であると認識しておりますので、しっかりと検討してまいりたいと思います。

松平委員 どうもありがとうございます。

 先ほどからこの実務指針を引き合いに出させていただいて質疑しておりますけれども、CGS研究会、これは法務省もオブザーバーとして入っています。この研究会、会社法の大家として名立たる先生方も名を連ねていらっしゃいます。したがって、ぜひともしっかり御検討いただきたいなというふうに思います。

 それでは、ちょっと次のトピックに行きたいなと思います。株主優待制度です。

 株主優待制度、これは何でしょうか。法務省として定義をお持ちでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主優待制度につきまして、これは会社法に定めのない任意の制度でございます。

 したがいまして、法務省として定義をしているわけではございませんが、一般には、株主優待制度とは、一定の数以上の株式を保有している株主に対して会社が物品・サービス等を提供する制度であると考えております。

松平委員 ありがとうございます。

 任意の制度ということですね。簡単に言うと、うちの会社の株を持ってくれてありがとうという気持ちを込めて、会社が株主に対して物などを送るものということだと思います。

 それで、内容ですね。自分の製品、今おっしゃっていただいたように自社の製品ですとかサービスであるとか、それから優待食事券とか、企業によっていろいろだと思います。

 この株主優待を導入する企業、今、大変ふえてきています。今、上場企業の約四割が導入しています。最近、しかも、この優待の内容が、金券とかクオカードとか、そういったものを配付する企業の割合がふえてきているんです。

 ことしの五月の会社四季報のデータによると、株主優待を導入している千四百九十一社のうち、五百十八社が金券等を配っているんです。つまり、株主優待制度導入企業の三分の一が金券等を株主優待で配っているんです。

 本屋さん、コンビニとかに行くと株関連の雑誌がありますね。これで、お得な株主優待の企業の特集とか、そういったものを合わせた、金券等を合わせた実質利回りは、じゃ、幾らになるんだとか、そういった記事が結構多く見られると思うんです。

 これは、それを目的とする個人の方にとってはいいのかもしれないんですが、機関投資家とか海外の投資家からは非常に憂慮する声も上げられています。例えば、株主優待目当てに株式を保有する、これは物言わぬ安定株主がふえてしまう、つまり、経営の規律がゆがむ、株主優待に係るコストがふえる、これは、当然、中長期的な企業価値が阻害される。

 この株主優待制度、日本ではかなり独特になってきていまして、ガラパゴス化していますということで、放置しては、コーポレートガバナンスの点から私は問題があるというふうに思っていますので、この点、ちょっと質疑させていただきたいんですけれども、この株主優待に関して、先ほどちょっと御回答いただきましたけれども、任意の制度ということで、法規制やガイドライン、これはないということでよろしいですよね。ちょっと確認だけさせてください。

小出政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、これは任意の制度でございますので、これに対する規制、あるいは法務省で作成したガイドラインというものもございません。

松平委員 じゃ、個別に、具体的に、クオカードなど金券を配付する場合、これを念頭にちょっと質疑させていただきます。

 会社法四百六十一条で、分配可能額を超える配当というのが禁止されています。簡単に言うと、利益がないと株主にお金を配当できないんです。しかし、利益がないのに配当、利益がなくて配当できないという企業も、今言った株主優待だったら行えてしまうんです。ルールが示されていないということなので、クオカードとか金券、これは実質的な配当ですよ、こういうことができてしまう。

 これは率直に、いいのかなと。やはり会社法が分配可能額に制限をかけていることの趣旨から考えて問題があるように思えるんですが、政府の考えはいかがでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 株主優待制度が実質的に株主に対する配当の代替手段として利用されていると評価される場合には、委員御指摘の配当に関する手続的規制や財源規制を潜脱するものとして許されないと解されると思います。

 株主優待が実質的に配当の性格を有するか否かにつきましては、一般に、会社事業の具体的状況におきまして、株主優待がされる趣旨、目的、優待の内容、方法、効果等を総合的に考慮して評価すべきものでございまして、最終的には裁判所において判断される事項でございますので、法務省において一定の見解をお示しすることは困難でございますが、その上でも、あくまで一般論として申し上げれば、分配可能額がないために剰余金の配当をすることができない状況にあって、また、その優待の内容が換金可能性が高いものであるといった事情は、株主優待が実質的に配当の性格を有するという評価に傾く要素であると考えております。

松平委員 今、規範を、規範的なものを言っていただいたように思います。非常にこれはありがたい話だと思いました。

 今、株主優待制度、これは導入企業がふえている状況にあると思います。それをあおるような雑誌もあると思います。したがって、そこに今競争というのが生じて、それが、優待競争というのが今後過熱していってしまう、そうなると、やはりどんどん増額していってしまうという可能性は十分あると思うんです。そうなると、やはり分配可能額がない会社の株主優待、これは特に問題になってくるんじゃないかなというふうに思います。そういう意味でいうと、今回の規範をしっかりと運用に当てはめていっていただきたいなというふうに思います。

 それから、株主優待の効果についてちょっと私は調べたんですが、それによると、株主優待の導入の発表を行った、株主優待をしますよということを発表した企業の株価、これはアナウンス後にやはり上昇しているんです。株主数の増加も見られています。逆に、株主優待を廃止しますよとアナウンスしたら、株価の下落があるんですね。つまり、株主優待は、株価の維持、上昇、株主数の獲得のために結構有用な手段だと言えるわけです。

 東証一部から二部への指定がえを回避するというために株主優待を導入したと考えられる企業、これも相当数あるという指摘もあります。さらに、最近では、この指定がえ回避だけじゃなくて、東証一部指定の基準の充足のためにも株主優待が使われているというふうにも言われています。

 つまり、株式として、投資対象として魅力がないけれども、株主優待の魅力によって何とか株主数を確保している、そういう企業があるというような状況、これが見えてきていると思います。やはり、こういった状況を放置すると、株の価値、すなわち、企業価値じゃなくて株主優待、つまり景品ですね、景品の価値によって株への投資がなされてしまうと、これは市場のゆがみが生じてしまうんじゃないかなというふうに思います。

 あと、もう一つ問題、株主優待を充実させるということは、それを目的に株を購入したい人というのを呼び寄せてしまうんです。つまり、優待の内容に興味がある、しかし経営には興味がない、そういう人も多い。だから、株主優待をしてくれる経営陣には賛成する、そういう考えを持っている人も多いんじゃないかなというふうに思います。

 したがって、金券等を配付して安定株主づくりを目的とする株主優待、これは、経営者を漫然と支持するという性質の株主、いわゆる物言わぬ株主、これをふやす懸念というのが非常にあります。

 この物言わぬ株主の増加、これは、経営者以外には有害無益というふうに言われています。経営陣の緊張感の低下、それから放漫経営を招くということです。この株主優待というものがあることによって、経営に規律を求める近年のコーポレートガバナンス改革に逆行するものじゃないかなという危惧もあります。

 そこで、先ほど大臣がおっしゃっていただきましたコーポレートガバナンス改革を強化しなければいけないという方向と一致するのか、それとも逆行するのかどうなのか。これはどうお考えでしょうか。大臣、教えていただければと思います。

森国務大臣 コーポレートガバナンス改革は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を達成することがその究極的な目的でございます。

 株主優待制度は、一般に、会社の広告宣伝や、個人株主による株式の長期継続保有促進を目的とし、会社の成長と中長期的な企業価値の向上に資する側面もあると認識されていると承知をいたします。

 他方で、株主優待制度については、委員も御指摘のとおり、近時、その目的や内容によっては、その利用による物品やサービスの取得のみを目的として株式を取得して経営者を漫然と支持する、そういう者が増加し、株主の経営者等に対する監督機能が弱められるおそれがあるのではないかという指摘もされております。

 株主優待制度については、このような指摘もされていることを踏まえて、コーポレートガバナンスにもたらす影響を注視する必要があると考えております。

松平委員 一応、海外のことを言っておきますと、やはり海外では、株主優待制度そのものが非常に少ないようなんです。株主優待は、機関投資家、海外投資家にとっては全くメリットがないと言われています。これは、投資家が株主優待の何かをもらっても、もらったものを換金したり寄附したり、若しくは受取拒否という対応をしていることが多いようなんです。

 今の日本企業、約三割が海外投資家です。これは、株主優待という日本国内の個人投資家だけが恩恵を受ける制度なので、海外投資家にとってもどのように映るかというものを考えていかなければならないのかなと。

 そういう意味では、先ほどちょっと大臣がメリットをおっしゃっていただきましたので、優待自体が全部悪いとは言わないんですが、やはり日本の株式市場はちょっと違うな、これからグローバル化を進めなきゃいけないなという中で、きょう質疑で取り上げたような弊害というのもあるのも事実なので、グローバルな観点から魅力ある株式市場をつくるという意味で、今後の株主優待のあり方、どういうふうに方向性として思っていらっしゃるのか、大臣の御所見を伺えますでしょうか。

森国務大臣 委員からグローバルな観点からの御指摘がございました。

 株主優待制度については、主に機関投資家の立場から、機関投資家や海外投資家にとってはメリットがないという御指摘がされていることは承知しております。

 そのような御指摘もされていることを踏まえつつ、私としては、社会的通念上許容される範囲で運用されることを期待しておりますが、株式市場にもたらす影響について、今後もしっかりと、関係省庁とも連携して、注視してまいりたいと思います。

松平委員 もうちょっとお聞きしたかったんですが、時間が来ましたので、これにて私のきょうの質疑を終わります。

 どうもありがとうございました。

松島委員長 次に、落合貴之さん。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 きょうは、法務委員会で初めて質疑をさせていただきます。

 まず冒頭、日ごろ、地元の人たちからたびたび聞かされていたことの中で、大臣も所信で触れていたことが幾つかありましたので、それについて質問をさせていただければと思います。

 まず、オウム真理教についての言及がありました。

 私の地元にも関連団体の拠点が現在もございます。それで、事件が起きたのがもう二十四年前ということで、今の学生にとって、地下鉄サリン事件始め、自分たちが生まれる前に起きた事件であるということでございます。だんだんと重要な問題として認識している人たちが減ってきてしまっているという中で、地元の世田谷では、かなりの数の地元の方々が、自主的に拠点を監視したりですとか、抗議デモを行ったり、あと勉強会をホールで開催したりですとかしております。もうずっと、二十年以上やっております。私もそういったものに、一緒に活動もしてまいりました。

 地元の人たちは危機感を持っているんですが、どんどん年数がたってきているという中で、今、法務省、改めて、これらの問題にどう対応していくのか、お聞かせをいただければと思います。

森国務大臣 委員が御地元で住民の皆様の意見を聞きながら御活動なさっていることに敬意を表したいと思います。

 二十五年前のあの事件は、私どもにとっては本当に忘れられない事件でございましたが、現在の若い皆さんにとっては生まれる前の事件だということもしっかり受けとめてまいりたいと思います。

 法務省としては、当該団体に対して、公安調査庁において観察処分を厳正かつ厳格に実施することにより、地域住民の不安感の解消と公共の安全の確保に努めているものと承知をしております。

落合委員 厳正厳格にということでございますので、法務行政のトップとしても、ぜひ関心を持って見ていただければと思います。

 それからもう一点、再犯防止のところで保護司のことにも触れていらっしゃいました。

 保護司の人員が、私の地元でもなかなかなり手がいないという声は本当に多く受けているんですが、全国的なものも調べてみたところ、全国的にもやはりずっと減ってきている。これぐらいいた方がいいという定員の全国平均でも、やはり一割ぐらいは割ってしまっているというような状況でございます。

 これは大変意義のある役割を各地域の皆様が担ってくださっているわけですけれども、やはり日本社会全体の傾向として、そもそも、共働きもふえていますし、それから自営業者の方々も減っていますし、そういった中で、ほかの役割もそうですけれども、地域で動ける人がだんだんと減ってきて、同じ人ばっかりが地域の顔役を、いろいろな役をやるようになってしまっている。それにプラスして、そもそも住民の地域に対する関心が希薄になってしまっている。

 いろいろ保護司の方々の対象も見てみますと、犯罪自体が複雑になってきているということで、負担がどんどんどんどん重くなって、かなりこの制度、限界に来ているという感もあるんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。

森国務大臣 委員の御指摘は、私も今まで地元を歩いて、保護司の皆様方のお話を伺う中で、同じ、共通の問題意識を持ってまいりました。

 保護司の皆様は再犯防止や安全、安心な地域を築くために欠くことのできない存在でありまして、大変重要な役割を担っていらっしゃるのですが、しかしながら、保護司のなり手確保は困難となってきておりまして、将来に向かって保護司を安定的に確保していくことが重要な課題であると認識しております。

 なぜ保護司のなり手確保が困難化しているか。その要因としては、委員からも御指摘がございましたように、人間関係の希薄化に伴って個人的な人脈による適任者の確保が困難化しているということでありますとか、保護観察対象者の抱える問題が複雑多様化し、処遇そのものが困難化している、又は自宅で保護観察対象者と面接することによって同居家族の理解が得られないなどという御指摘もございます。

 そこで、法務省においては、保護司活動の拠点として更生保護サポートセンターを設置し、地域の関係機関等の関係者を構成員とする保護司候補者検討協議会を設置するなどの取組を進めております。特に、更生保護サポートセンターについては、本年度において、全ての保護司会、八百八十六カ所に設置することとしております。

 さらに、地方公共団体の職員や職員OBのほか、経済団体、宗教団体、士業団体などに保護司に適当な方を紹介してくださるよう働きかけているところでございます。

 今後とも、これらの施策を着実に実施することにより、保護司の安定的確保に向けた取組を推進してまいりたいと思います。

落合委員 私も保護司の方々に詳しく聞いてみると、びっくりしたのが、保護司というのは、日本では伝統的に自宅に対象者を招いて、自宅で定期的にヒアリングをする。これは国際的に見ると、ないことで、海外のそういう専門家が聞くと、えっ、自宅に呼んでいるのというふうにびっくりするようなことだそうなんですが、それは日本が、温かく自宅に招き入れることで包み込むというような形で、それなりに歴史的には意義があったのだとは思います。

 しかし、もう生活も変わってきていますので、数十年前と社会とか我々の感覚も変わってきているという中で、だんだんこういう保護司の仕事の内容も、保護司不足、新たななり手不足につながっているのかなというふうに思います。

 大臣、今、更生保護サポートセンターについて言及されました。これは、自宅に招かないで、そこのセンターに呼んでヒアリングを行ったりとかできるようにしますという施設だということで、もうすぐ全部の地区にできるようになりますというふうなことを進めていますということでございます。

 普通に考えていくと、今までは自宅に招くことが当たり前だったのを、更生保護サポートセンターでのヒアリングが、原則的にはこっちの方がメーンになっていくのかなというふうに思うんですけれども、大臣、これについてはいかがですかね。

森国務大臣 御指摘のとおりでございまして、更生保護サポートセンターは、自宅で保護観察対象者と面接することについて同居家族の理解が得られないなどの場合に、面接場所として利用されております。

 一方、保護観察対象者に家庭的な雰囲気を味わってもらうなどの理由から、自宅で面接をすることに意義があると感じている保護司もおられるなど、保護司の間でもさまざまな意見がございます。

 今後とも、保護司の方々のさまざまな意見に耳を傾けつつ、全保護区に設置される更生保護サポートセンターを効果的に運用する上で必要な支援をしてまいりたいと思います。

落合委員 ぜひ、この保護司という仕組みは絶対に必要な仕組みで、しかもこれからも永続的に続かせていかなければなりませんので、このセンターについても力を入れていただければと思います。

 それからもう一つ、保護司の方々からヒアリングをして思ったのが、これは基本的にはボランティアで成り立っているということなんですよね。身分は非常勤の公務員ということで、交通費ですとか実費は出ているということなんですが、保護司だけではなくてほかにもいろいろな地域の役というのはあるわけですけれども、それをボランティアで成り立たせるということもだんだんと難しくなってきたのかなというふうにも、私は今回改めていろいろな方々に話を聞いて思いました。

 そもそも、政府としても、なるべく全員の方が七十歳まで働くようにしましょうということを働き方改革ですとか全世代型社会保障で言い始めているわけですし、あと、家庭にいる女性も働けるようにしましょう、それから、健康な方は七十五歳まで年金ももらわないで働けるようにしましょうというようなことも推奨している中で、要は、お給料をもらって働く人の割合というのがどんどんどんどんふえているわけですね。

 その中で、ボランティアというものを柱としてこういった保護司だけではなくていろいろな地域の重要な役割が成り立ってきて、数十年来ている。これも分岐点を迎えるところなのかなと。縮小するならいいんですけれども、維持していくためには分岐点を迎えていくところなのかなというふうに思うんですが、大臣、率直に、この点についてはいかがお考えでしょうか。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

森国務大臣 保護司の減少ということについて貴重な御意見を賜りましたけれども、お尋ねの点については、事務方とも相談しつつ、現場の皆様の御意見に耳を傾けて、どのような対応ができるか考えてまいりたいと思います。

落合委員 ぜひ、ここも、私もいろいろなヒアリングを重ねて、改めて大臣にもお伺いをできればと思いますので。今保護司をやっている方々は、本当に、どの地区もそうでしょうけれども、人格もあって、世の中のためにという精神もあって、しかも一人一人の相手に対するやりとりも大変立派な方々が自主的に受けている、本当に大きな役割を担っていると思います。こういう方々がいるからこそやはり我々の社会が成り立っているわけですので、ぜひ、重要な問題ですので注視をしていただければと思います。これは改めてまた取り上げさせていただきます。

 それでは、外国人労働者の問題、主に経済への影響について伺えればと思います。

 入管法が、昨年の秋、改正されました。私、そのとき、一年前、ちょうど経済産業委員会で筆頭理事を務めさせていただいていまして、経済産業分野にもかなり影響があるということで、できれば連合審査をお願いしたいとお願いしていたんですが、残念ながら、時間がないというような形で、連合審査はかないませんでした。

 まず、確認なんですけれども、入管法を改正して五年間で三十四万人を目標に外国人材を入れるということですので、これだけの人数の方々が入ってくるわけですから、働く職場の環境、それから生活の環境、これは我々日本人にとっても大きな影響を与えるものと思います。

 これは、関係する行政機関、基礎自治体もそうですし中央官庁も、かなり多岐にわたっているわけですけれども、この件でいう全体の総合調整機能、司令塔の役割、これは法務大臣が担うということで、前の法務大臣もそういう答弁もされていましたけれども、そういうことでよろしいですね。

森国務大臣 昨年七月の閣議決定「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」により、法務省は、外国人の受入れ環境整備に関する企画及び立案並びに総合調整を行うこととされましたので、委員の御指摘のとおりの役割を担うことになりました。

 この決定に基づき、昨年十二月、官房長官と法務大臣が共同議長として主宰する外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議により、関係省庁と調整の上、百二十六の施策を盛り込んだ外国人材の受入れ・共生に関する総合的対応策を決定し、さらに、本年六月には、その内容を充実させるための充実策を取りまとめました。

 法務省においては、共生施策の課題の把握のため、「国民の声」を聴く会を開催し、関係省庁とともに全国知事会等の幅広い関係者から継続的に意見を聴取するなどしながら、この総合的対応策及び充実策に掲げられた施策の推進に向け、関係省庁と協力して対応しているところであります。

 法務省においては、引き続きこの政策の総合調整を行うための司令的機能を果たすべく、関係省庁と連携して、外国人との共生社会の実現に向けた受入れ環境整備に万全を期してまいりたいと思います。

落合委員 私も、総合的な対応策について、いろいろな書類も見させていただきました。かなり多岐にわたっていますので、個別には改めて、重要だと思うところは取り上げさせていただければと思いますが、ちょっと、まずマクロに、経済への影響、日本経済への影響について質問をさせていただければと思います。

 そもそも、外国人材の話は抜きにしても、アベノミクスというのは賃金上昇が思ったよりも上昇してこないという、賃金のところが問題なんだということはたびたび指摘をされてきました。それは予算委員会等でもやっていますので、大臣も御認識をされていると思います。

 それを、昨年の初め、働き方改革ですとかそういうことが始まったときに、私もテレビで賃金の問題について指摘をさせていただきました。そのときに、CM中に、ある安倍内閣の応援団の一人であるエコノミストの方がそっと寄ってきて話してくれまして、もう労働力不足というのは決定的なので、単純にマクロで計算すると、来年の、二〇一九年の中ごろあたりから、もう賃金というのは反転して上昇し続けるんだというようなことを教えてくれたわけです。

 しかし、それから数カ月して、秋になって入管法が改正されて、ことし、上昇するとその人が予測をしていたことしから外国人材がどんどん入り始めてきているということです。

 恐らく同じようなことを主張していたエコノミスト、それから経済学者はたくさんいるだろうなと思って、調べてみたら、かなりたくさん、外国人材を、高度人材だけではなく、そうじゃないところまで拡大すれば、日本人の賃金の上昇圧力というのは弱まる、賃金の上方硬直性というのが起きるということは、多くの経済学者が指摘をしていて、しかも大手の民間のシンクタンクも試算も出していました。

 これは、外国人労働者、安価な外国人労働者を入れ過ぎると、その入れた分野で働く同じ仕事をしている日本人の賃金は上がりづらくなる、これはまあ普通に考えてもそうだと思うんですけれども、その分野の日本人の賃金の上方硬直性が生まれる。これは大臣も、まあそうだろうなというふうに考えているということでよろしいですね。

森国務大臣 特定技能外国人の受入れは、生産性の向上や国内人材の確保を尽くしてもなお外国人材の受入れが必要となる人手不足が深刻な分野に限って受入れを行うものであります。

 その分野の決定に当たっては、分野所管省庁から人手不足の要因等について可能な限り客観的なデータ等の提出を求め、それらを踏まえ、厚生労働省等と慎重に協議し判断したところであります。

 また、今回の受入れ制度では、以下のような厳格な管理を実施することとしております。

 受入れ機関に対し、受け入れる外国人材に日本人と同等額以上の報酬を支払うことを求めること、これらの外国人材を雇い入れるに際し、同様の業務に従事するほかの労働者を非自発的に離職させていないことを求めること。これらについて当局が確実に状況を把握し、受入れ機関が基準に違反した場合には、一定期間、受入れができなくなる措置をとること。

 加えて、受入れ分野を所管する分野所管省庁は、人手不足状況を継続的に把握し、生産性の向上や国内人材確保の取組の状況、人手不足の状況を適切に判断することとしております。その上で、分野所管省庁の長の要請に応じ、法務大臣が受入れの停止措置をとることとしております。

 したがって、人材不足が解消されたと認められるにもかかわらず、外国人材が国内労働市場に流入し続け、労働力の需給バランスを大きく崩すような事態になることは、制度上、考えられないと考えております。

 このように、本制度は、賃金等の労働条件を含め、日本人の雇用に影響を与えにくい制度設計となっているものと承知しております。

落合委員 そういう制度をつくっていますという御答弁をされるということは、そういう制度がなければ日本人の賃金が下手すると下がっていってしまうということは御認識をされているんだと思います。

 やはり、ここの部分でしっかりとたがをはめることができるのかということは、重要な、日本経済にとって大きな問題だと思います。やはり、総合調整機能、一番の最終的な責任者は大臣に、法務大臣にあるわけですので、ここはしっかりと見ていただければと思います。

 今の答弁書でも、これをやれば大きく崩れることはないとおっしゃっていますけれども、わざわざ大きく崩れることはないと言っているわけで、小さく崩れる可能性のあるリスクというのはもういろいろなところにあることは恐らくわかっているから、役人の方が、大きく崩れることはないというふうにおっしゃったんだと思います。

 そもそも、例えば、日本人と同等額以上の賃金をやりますというのでも、もし外国人材を入れなければ、来年何%上がって、再来年何%上がっていたにもかかわらず、同等額の賃金に設定されることで賃金の上昇率は下がってしまう、こういう可能性はかなり大きいわけでございます。

 それから、業界ごとに何人受け入れるとやっているわけですけれども、生産性の向上の試算ですとか、それも自分たちでやっているわけですから、経営者としては、設備投資するよりも安価な人を雇った方がいいというふうな考え方も多くあるわけですから、業界ごとに言ってもらって積み上げて全部で三十四万人という計算の仕方は大変危険があると思います。

 ここは今の現行の仕組み以上に厳しくやっていかなければ、全体としてアベノミクスは賃金が弱いと言われているのに、その弱いところを強くさせないような政策を目玉としてやっているんだということをしっかり認識をした方がいいと思います。

 人手不足というのは、機械化して生産性を向上したりですとか、IT化とか、賃金アップとか、そもそも、非正規雇用が多過ぎて、正規雇用になりたい人がまだいるという中でも、日本経済が分厚い中間層を取り戻すための大きなチャンスであったと思うんですね。それを、また大きなチャンス、よく変わるチャンスを逃してしまっている部分もありますので、ここは御認識をいただければと思います。

 ちなみに、今回、三十四万人入れますけれども、内閣府で出している子供・若者白書によると、若年の無業者は二十九万人います。それから、ことしからやろうとしている、三十五歳から四十四歳を就職氷河期世代として対策をやると言っていますけれども、就職したいのにできない人が四十万人いて、非正規雇用だけれども正規雇用に本当はなりたいんだという人も五十万人いるわけですね。あと、障害者雇用も、なかなか障害者における雇用が進まずに、水増しまで民間もしてきたというようなこともありました。

 これは、三十四万人入れる前に、ほかにもやるべきことが、しかも、優先した方がいいんじゃないかなという部分もあるということを踏まえた上でぜひ入管法の細かい部分を決めていってもらいたいですし、省令ですとかで変えるべきところがあるのであれば、これは厳しくやっていくべきだと思います。

 この雇用の件、賃金の件についてもっと厳しくやるべきであるということについて、大臣、いかがでしょうか。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

森国務大臣 外国人労働者の受入れの前提としては、まずは生産性の向上や、御指摘の障害者の皆様や就職氷河期世代の皆様を含め、国内の潜在的な労働力の活用を図ることが重要であるということは、政府としても認識をし、取組を行ってきているところでございます。

 人手不足対策を目的として施行された特定技能制度でございますが、生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、外国人材を受け入れる仕組みとなっております。

 又は、報酬額が日本人と同等以上であることを求めるなど、日本人の雇用や労働条件への影響にも十分配慮した制度となっていることも先ほど御説明したとおりでございますし、また、地方出入国在留管理局等における個々の外国人の審査においても、役職や職務内容等が同程度の日本人労働者の報酬と比較するなどの運用を行ってきております。

 法務省としては、引き続き、特定技能制度の適切な運用に努めてまいりたいと思います。

落合委員 まずは生産性向上というふうにおっしゃっていますが、生産性が上がっていないから、いろいろ安倍内閣もやっているわけです。

 例えば、二十一世紀に入ってITというのがかなり主力になって生産性向上に寄与しているわけですけれども、日本だけが、三十年間、バブルのころからITの年間の投資額はほとんどふえていない、インターネットができる時代の前と比べてもふえていない。二〇二五年に日本のIT設備の六割がもう使えなくなってしまうというような壁まで、二〇二五年の壁と言われているところまで来ているわけです。

 そういった政策も全然やってこなかったのに、生産性向上が追いつかないから外国人労働者を入れますと、これは経済全体にとっては大変マイナスのことが行われてきている。

 これは総合的に見なきゃいけないわけなんですけれども、それを総合的に見るのを法務大臣が任されているということも、私はこれでいいのかなとも思うわけですけれども。労働者の数を外国からふやしていくということは日本経済に大変影響を与えていて、しかも、法務省のつくっている答弁は実態に私は合っていないと思いますので、そこは指摘をさせていただいて、ちょっと改めて取り上げさせていただきたいと思います。

 では、ちょっと、入管法のところは準備していた半分ぐらいしかできていないんですけれども、会社法について、きょうは内閣府政務官にいらしていただいていますので、最後に触れたいと思います。

 会社法は、新しい、今国会で予定されている改正についてはまだ趣旨説明もされていませんので、現行法を取り巻く問題について伺えればと思います。

 会社のあり方について規定をしているのが会社法ですので、マクロ経済にも大きな影響を与えていると思います。

 今、経済政策として何をしなきゃいけないのかなということを考えることで、会社法の改正は何をするべきかということにもつながっていくと思いますので、きょう政務官にお伺いしたいのが、安倍政権で、先ほど申し上げたように、いろいろいい数字も出ていますけれども、一番問題の賃金、所得のところは上昇率が遅い。だから、ほかの数字が上がっているよりも所得の上昇率が低ければ、実質賃金はどんどん下がっていく。それが今問題なわけです。

 そういった中で、実質賃金が下がっているのに、保険ですとかそういうものの引いていく分はどんどんふやしましたので、可処分所得は年々更に減ってしまっている、実質可処分所得は更に減ってしまっている。だから、消費がふえずに、経済が自律的な上昇をしていかない。そういう中で、その弱い消費にもまた消費税増税ということを行っていて、どんどんどんどん問題の家計が痛んでいく政策を、残念ながらタイミング悪く、ことごとくしているという状況なわけでございます。

 最近、特に二年前ぐらいから、国民総所得を上げますですとか、国民総所得はどんどん上がっていますというような答弁が入っているんですが、国民総所得というのは国民の所得みたく何か感じてしまうんですが、国民総所得というのは企業の所得も入っているわけで、昔の国内総生産と余り変わらないわけですよね。

 国民総所得の中で、中長期で見ると、特に九〇年代と比べると、国民総所得全体における家計の部分の割合は残念ながら長期トレンドとして下がってきてしまっているという認識は持っているということでよろしいですね。

神田大臣政務官 お答えします。

 海外からの所得も含めた我が国居住者が受け取ります所得の総額をあらわします名目国民総所得、これに対します、家計が受け取る所得のシェアの推移ということで見ますと、一九九四年度は七二・五%であったものが、その後は、委員御承知のように、長期的にやや低下傾向で推移をしておりまして、直近の二〇一七年度は六三・二%となっておるところでございます。

落合委員 もう時間なので、改めて部下の方からレクを受けられればと思うので、どういう計算でやってきたか。私の計算でも、かなりずっと下がっています。リーマン・ショックとかで企業収益が減ったときだけ、その分、分母が減るので割合はふえるんですけれども、長期で見ればずっと下がっている。

 その中で、今回、会社法の改正があるわけですけれども、もう時間なのであれですけれども、財務省が法人企業統計、数字を出しています。二十年で限定で見ても、九〇年代後半から今の間で、設備投資もほぼ上がっていない、賃金は残念ながらちょっと下がっている、役員報酬は一・三倍ぐらいの中で、配当金はこの二十年で六・二倍にふえているわけです。労働者が働いた利益がうまく経済のために使われていない、これが日本経済のよくならない原因である。この中で、会社法のあり方、どう変えるべきなのかというところが重要なところだと思いますので、これを改めて取り上げさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

松島委員長 次に、初鹿明博さん。

初鹿委員 おはようございます。初鹿です。

 きょうは、法務委員ではないんですが、こちらに質問する機会をいただきました。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず最初に、この国会が始まってから、私が提出をした質問主意書について、幾つか答弁が戻ってきているんですが、確認を含めて質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、皆さんのお手元に資料をお配りをさせていただいておりますが、フリマアプリのメルカリで、復刻全国部落調査という本が販売をされていたという件について質問をさせていただきます。

 質問主意書を出させていただいたんですけれども、簡単に概要を説明すると、皆さん御存じのメルカリに、復刻全国部落調査という部落の地名を掲載をした本が出品をされていた。そして、三冊が落札をされていたところで、メルカリの方からこれを出品を取消しをするということになったということです。その後、これが報じられて、出品をしていた、高校生だったんですけれども、みずから県の方に赴いて、持っていたものは提出をしたということなんです。

 問題は、売られちゃった三冊、このままこれを買った人に持っていられても、これは、印刷をして、また流布をするということにもつながりかねないので、回収する必要があるのではないか、そういう趣旨で質問したところ、残念ながら、個別具体的な事案に関する事柄であるため、お答えすることは差し控えますということだったんですよ。

 でも、やはりこういう問題は個別のことからしか始まらないので、私はこの答えはいかがなものかなと思うんですね。やはり、きちんと回収する必要があると思うんです。

 そこで、まずお伺いしますが、この販売された三冊、今現状どうなっているでしょうか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事案につきましては、販売された三冊のうち、購入者が紛失したとされる一冊を除き、残りの二冊を事業者において回収したと承知しております。

初鹿委員 一冊は紛失していたけれども、二冊は事業者がちゃんと回収したということなんです。

 今後も同様のことが起こってくるかもしれません。要は、売れるということがこれでわかってしまったわけですからね。

 今は、昔の部落地名総鑑事件が起こったときと大きく違うところは、自宅で簡単に複製できちゃうことですよね。しかも、インターネットで流布されているから、それを入手することも可能だ、そういう状況ですから、やはり手元に残らないようにしていくということが非常に重要なんですよ。

 部落地名総鑑事件、昭和五十年に起こって、平成元年に一応終結宣言を出しましたけれども、その報告書を見ると、これは法務省が、法務局が積極的に回収に走って、六百六十三冊も回収しているんですね。やはり、今後このような事案が発覚をしたら、確実に必ず回収するということを約束をしていただきたいんですが、大臣、いかがですか。

森国務大臣 特定の地域を同和地区であると指摘する情報が国民の間に流通、拡散することは、人権擁護上、看過できない事態と認識しております。

 過去の事件に関しては、委員御指摘のとおり、法務省において回収等の措置を講じました。先ほど事務方から御説明した今般の事案については、関係事業者において、法務省の要請を受けて、回収措置を講じたと承知をしております。

 また、法務省としては、同種の事業者に対し、本事案及びその対応を周知し、先ほど申し上げたような情報の流通を防止するなど、部落差別を解消する必要についての啓発を行う予定でございます。

 今後、同種事案が発生した場合にも、関係事業者と協議の上、差別的な図書を回収するための措置を講じるなど、適切な対応に努める所存でございます。

初鹿委員 大臣、ぜひこれはしっかり取り組んでいただきたいというふうに思いますので、法務省の担当の方も、先ほども言いましたけれども、今、時代がやはり昭和五十年のころと違っていますから、自宅で簡単に印刷できちゃうわけですよ。

 このメルカリの事件も、高校生がインターネットのサイトでダウンロードしたものを自宅で製本して、売ってみたら売れちゃったから、では、もう一回出品しよう、もう一本出品しようといって売っていっている、そういう事案ですから、やはり、こういうことを防ぐためには、まず回収を絶対するんだということが、買う意味がないのかなというメッセージにもなるわけですから、徹底をしていただきたいと思います。

 それともう一つ、この質問主意書で、三番目の質問で、メルカリなどのフリマサイトとかオークションサイトにこういうものが出品されることがないように、運営会社によるガイドラインやルールの作成又は法整備が必要ではないか、そういう質問をしたんですよ。そうしたら、返ってきた答えが質問に全然答えていなくて、部落差別を解消するための必要な教育及び啓発を行ってまいりたいと。これは当然のことなんですよね、啓発や教育をするのは。

 私が聞いているのは、サイトに対してガイドラインをつくるように求めないのか、そういうのを求める必要があるんじゃないかということを聞いているんですよね。ちゃんと答弁してもらいたいんですよ。

 ですので、改めて聞きますけれども、こういうフリマサイトとかオークションサイトにこういう部落差別を明らかに助長するような書物や、それ以外のものもあるかもしれませんが、そういうものを出品をすることについて、一定のルールを設けるように求める必要があると思いますけれども、いかがですか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 特定の地域を同和地区であると指摘する内容の文書がオークションサイト等を利用して販売されることがないようにするには事業者の協力が不可欠であります。そして、事業者の協力を得るためには、部落差別があってはならないものであり、部落差別を助長するような文書が流布されてはいけないんだということについて、部落差別解消法等に基づいて地道に啓発活動を行う必要があると考えております。

 もとより、オークションサイト等を営む事業者において、自主的にガイドラインやルールが策定されていることは望ましいことでございますので、そのようなものの策定を求めることについても、関係省庁や関係機関、関係団体とも協議しつつ検討してまいりたいと考えております。

初鹿委員 検討をしていくだけじゃなく、今望ましいと言ったんだから、ぜひこれは実行していただきたいとお願いをさせていただきます。

 それで、先ほども申し上げましたが、この高校生がこの本を出すもとになったのは、インターネットのサイトに今でもこの部落地名総鑑のようなものが閲覧できる状態になっているんですよ。これは海外のサイトなんですけれども、これもやはり何とかして閲覧できないように削除をさせていく必要があるんだと思うんですね。

 海外の国のことですから、日本が削除要請してもなかなか聞いてくれないというのはわかります。わかりますが、このまま放置しておくわけにはいかないと思うので、ぜひ、そのプロバイダーのある国に対して協力を求めて、そして、その国の政府からそのプロバイダーに対してこれは削除すべきだというふうに言ってもらうように、ぜひ国としても積極的に働きかけを行っていただきたいんですけれども、いかがですか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、海外のサイトを使ってインターネット上に掲載されているものについて、その削除を求めるに当たりましてはさまざまな隘路がございまして、法務省の人権擁護機関も苦労しているというのが現状でございます。

 もちろん、海外サイトの利用というのが隠れみのになってはいけないのでございまして、海外サイトを利用したものの削除についてどのような方策が有効であるのか、委員御指摘のような方策も含めて、関係省庁、関係機関、関係団体と協議をしながら検討してまいりたいと考えております。

初鹿委員 ぜひ、大臣も、外務大臣とか関係する大臣にもこの旨を伝えて、前に進むようにしていただきたいとお願いをさせていただきます。

 では次に、もう一枚質問主意書をこちらに出させていただいておりますが、皆さん、これを見ていただきたいんですけれども、今、御存じだと思いますが、各入管施設で、仮放免を求めて、また長期収容に抗議をして、ハンガーストライキが起こっております。

 ことしの夏前ですかね、東京入管では三名の女性の被収容者がハンストを行ったんです。ハンガーストライキを行うと、一人一人の部屋に隔離をするというか、分離をして収容するというのがこれまでの何か通例のようになっているようなんですが、この女性三人が収容された部屋は、監視カメラがついていて、何の仕切りもなく、トイレの穴だけがあいているような、トイレがある部屋で、トイレをしている姿がずっとカメラに映っている、そういう状態であった。皆さん、想像してくださいね。トイレをしているところがずっとカメラに監視されているんですよ。カメラの向こう側で誰が見ているのかもわからない、そういう状態に女性が一人で置かれていた。これはどうなんでしょうか。

 私は非常にこれは問題だと思いまして、担当者に、これは改善をする必要があるんじゃないか、そういうことを求めて、現状でいうと、実は昨日、現在ハンストをして、その一人の部屋に収容されているフィリピン人の方の情報もいただきましたが、現状はパーティションがあるということなんです。改善をされたということなんですね。そのことを確認をしたんですけれども、答弁では、監視体制を明らかにすることは、保安上の支障を来すおそれもあることから、お答えは差し控えたいという残念な答弁だったんです。

 これは、もう一回聞いても答えてくれないと思うので、事実だけ確認をさせていただきたいと思いますが、まず、監視カメラがついている一人で入る部屋は、トイレがその部屋の中にあると思いますが、仕切りはない状態であったのかどうか、夏以前。今はそれが、仕切りがある、パーティションをつけているのかどうか。この点について、事実なので、答えてください。

高嶋政府参考人 お答えします。

 委員御指摘の案件につきましてどうかということにつきましては、一般的な施設の形状でございますが、いろいろな個室がございますけれども、一般的には、廊下側から見ますと、きちんと仕切りがありまして、その陰でトイレができるようになっているものであります。(初鹿委員「カメラ、カメラ」と呼ぶ)

 カメラの位置等につきましては、保安上の問題がございますので、ここでお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。

初鹿委員 いや、私が言っているのは、カメラに映るような状態で、仕切りがなくトイレはあるんでしょうと。それをちょっと答えてくださいよ。

高嶋政府参考人 部屋にもよりますが、トイレの部分が映る部屋もございます。

初鹿委員 大臣、女性の収容者が、トイレをしているところが映されている。これは人権上問題だと思いませんか。大臣が、もし自分がその部屋に何カ月間か住めと言われたらどう思いますか。これはやはり非常に不安ですよね。不安だし、やはり嫌ですよね。

 これは今、フィリピンの方、パーティションがあるということなんですが、どうも、カメラの位置からすると、部屋が狭いから映っているんじゃないかという心配もされているんですよ。

 そこで、大臣、ぜひ、やはり今後はきちんとカメラに映らない状態にするということを約束していただきたいのと、できれば、東京入管のその状況を、現地へ行って、自分の目で確認してきてください。それで、私も見たいですけれども、見に行くわけにいかないですから、それは映っていないよということをどこかでちゃんと明らかにしてくださいよ。そうじゃないと、入っている人たちは何かずっと監視されているんじゃないかと不安でしようがないので、これだけはぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 委員の御指摘、大変重要な御指摘だと思います。

 トイレのときにカメラに映らないようにするということは人権に配慮することでありますので、適正な処遇に努めたいと思います。

 自損行為の発生等にも必要最小限な部分に区切って、人権に配慮した状態であるということを私もしっかりと確認してまいりたいと思います。

初鹿委員 ぜひ、大臣、見てきて、状況がわかったら教えていただきたいと思います。お願いいたします。

 では、次に進みますが、また皆さんにお手紙をお配りをさせていただいております。

 実は、一昨日、私がお会いしたイラン人の四十一歳の男性が自分で書いた手紙ですね。ベヘザードさんという方で、見てください、非常にきちんと漢字も書いていて、日本語も堪能なんですよ。お話ししましたけれども、四カ国語だか五カ国語だかをしゃべれるということで、非常にクレバーな方でした。

 この方は実は三年ぐらい長期の収容をされていて、ハンストをして、二カ月間仮放免をされていました。私が会ったのはおとといなんですが、昨日、つまり私が会った翌日に出頭命令が牛久からあって、きのう出頭をして、その結果、また再収容をされることになったという方であります。

 この方はイラン人なんですけれども、皆さん御存じだと思いますが、イランという国は、強制送還をするとしても、それを受け入れてくれない国であります。ですから、日本の国が幾ら強制送還しようとしても、受け入れてくれないから、帰れないわけですよ、本人が帰ると言わない限り。

 この人は実は改宗をしているらしいんですね、イスラム教から別の宗教に。そのため、帰ったら、それこそ死刑になるかもしれないという状態だから帰れない、そういう方なわけであります。そういう方なんですけれども、これは帰れない状態なんですよね。

 では、国に帰れない、でも日本はこのまま収容し続けるということになったら、死ぬまでこれは収容し続けるということになるわけですけれども、それでいいんでしょうか。

高嶋政府参考人 今委員から御指摘のありました個別事案についてのお答えというのは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、退去強制令書の発付されている者について、出身国に帰れない事情があるような場合に、当該外国人の方から、被収容者の方からさまざまな主張あるいはその資料を提出されることがございます。その場合には、我々は、その主張あるいは請求等に応じて十分な検討を加えた上で、しかるべき措置をとることとしております。

 以上でございます。

初鹿委員 難民申請をされている方もいるし、そうではなく、難民申請はしないけれども、同じような事情で帰れないという主張をされている方もいるわけですが、基本的には、送還を拒んでいる人たちはずっと収容し続けている。

 それで、十月一日に、大村の報告書、餓死した報告書が出たときとあわせて、出入国在留管理庁が出している「送還忌避者の実態について」という資料を見ると、送還を拒んでいる人たちの多くが犯罪を犯した人だというような主張がされているわけですよ。

 ただ、仮に犯罪を犯していたとしても、皆さんは日本の刑罰で罰せられて、そして刑期を終えている人たちであります。そういう人たちを、資料で配っている文書を読むと、「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきではなく、一刻も早い送還を期すべき。」という、我が国の安全、安心を確保する観点から仮放免を認めるべきではないという主張なんですけれども、この理屈はやはりおかしいと思うんですよ。

 日本人が犯罪を犯して、刑期を終えて、その人が社会に出る。そういう人が社会に出ると我が国の安全、安心を確保するのに支障があるから出さないようにしようなんという主張にはならないですよね。これは事実上の予防拘禁ですよね。

 十月二十三日に藤野議員も、治安維持法よりひどいんじゃないかという、そういう指摘をしておりましたが、治安維持法も予防拘禁という制度はありましたが、二年の期限を切って、二年たつと、裁判所が入って更新の手続をしているというように、一応期限があって、第三者による更新の手続というものがあったわけですよ。

 外国人の長期収容の場合、その期限もないし、そして、長期収容をする判断も全て、第三者の目に入らずに、入管当局が行っているわけですよね。私はやはりこれはいかがなものかなと思うんですよ。

 ちょっとここでお伺いしますけれども、治安維持法で予防拘禁をされた方、何人いたんでしょうか。そしてまた、二年たって更新した人というのは何人いたんでしょうか。

小山政府参考人 治安維持法による予防拘禁制度が導入されてから廃止されるまでの間に予防拘禁に付された人員に関する正確な数字が記載された資料は、現時点では見当たらなかったところでございます。

 もっとも、公刊されている文献におきましては、昭和十六年五月十五日から昭和二十年五月末までの間に治安維持法による予防拘禁に付する決定が確定した人員は六十二名とされているところでございます。(初鹿委員「あと、二年更新の方」と呼ぶ)

 そのお尋ねの資料は見当たらなかったところでございます。

初鹿委員 私からファクスを流したところに、六十二人のうちの、ちゃんと更新拘禁中四人と書いてあるんですね。ちょっと見ていただきたかったなと思うんです。つまり、四年間で六十二人で、二年以上の人は四人なんですよ。あの悪名高き治安維持法でも、二年以上拘禁されたという人は四人しかいないんですよね。

 ところが、現状、入管の収容者、資料六ページにつけておりますが、令和元年の六月末現在で二年以上は二百五十一人もいるんですよ。予防拘禁が六十二人だとしても、四倍ですからね、二年以上の人が。二年以上が四人としたら、物すごい多くの人がこうやって拘禁されているというのは私は非常に問題だと思うんですよ。

 それで、私からの提案ですけれども、治安維持法と同じように、まずは収容の上限を決めて、そして更新をするという仕組みにする。例えば、六カ月を上限として、六カ月たったら更新をする。その更新も、内部で決めるんじゃなくて、例えば裁判所など第三者が関与する形で更新を決める、そういう形に変えることはできないのか、大臣にお伺いいたします。

森国務大臣 退去強制手続に含まれる収容については、その執行を担当する入国警備官とは別の官職である入国審査官による審査、特別審理官による判定、法務大臣に対する不服申立ての機会を経て、慎重に判断することとなっております。

 そもそも、退去強制手続における収容は、被収容者が退去強制令書に従い出国することで収容状態が解かれるという性質のものでございまして、被収容者は、退去強制手続に含まれる収容や仮放免に関する処分に不服があれば、行政訴訟を提起することができることになっております。この場合、収容や仮放免に関する処分に対し裁判所による判断がされることになりますので、収容に際して、あえて裁判所等の第三者の関与を経る必要はないと思っております。

 また、収容期間の上限を設けることは、それ以降の仮放免を期待するなど、送還忌避を誘発する可能性もあると考えております。

初鹿委員 そうなると、結局、自分では帰れない、帰ったら身の危険があるんだ、そういうふうに判断をしている方にとってみれば、ずっと長期で収容させられることになってしまうわけですよ。それがハンストを引き起こす原因になっているんじゃないんでしょうか。

 今、河井大臣の十月四日の記者会見などを見ていると、仮放免の申請についても、保証人の要件を厳しくするとか、また、保証金の金額を見直す、多分引き上げるということなんでしょうけれども、引き上げるとか、仮放免されづらくなる状況をつくるということですよね。

 皆さんたちは頑張っても仮放免されないんだから、諦めて帰りなということが言いたいんだろうと思うんですけれども、帰れない事情のある人はやはり帰れないですよ。イランに帰ったら死刑になるかもしれないという人に、どうぞ死刑になってくださいと帰すんですか。そちらの方が人道的にどうかという話になりますよね。

 だから、私は、上限を設けて、誰も彼も仮放免しろとは言いませんよ、帰れる人にはきちんと帰ってもらうというのが基本だと思いますが、やはりどうしても帰れない人というのはいるわけですから、その人たちについては、よほどの理由がない限り長期に収容し続けるということを見直す必要があるんじゃないかと思います。

 それと、おととい、ベヘザードさんとお話をして、初めて私も気がついたんですけれども、仮放免をされて一旦出ると、再収容をされたときに、収容期間はそこから、ゼロから始まるということなんですね。つまり、ベヘザードさんは三年以上長期収容されていたわけです。一旦出てしまうとその人はゼロになるから、仮放免される前は二年以上のカウントをされていたのに、再収容されると六カ月未満になるわけですよ。

 つまり、令和元年六月末現在で二年以上が二百五十一人となっておりますが、そして六カ月未満が五百七十四人となっておりますが、この五百七十四人の中には、二年、三年、長期で収容をされていながら、一旦仮放免をされて再収容されたことによって六カ月未満になっているという人が多数含まれているんじゃないか。私は、これは長期収容の実態を少し過小に見せるようになっているんじゃないかと指摘せざるを得ないんですよね。

 ですから、私は、これはきちんと、仮放免された場合でも、その前にどれぐらいの期間収容されていたのかということを通算した数字で収容期間をカウントするようにする必要があるんじゃないかと思います。

 この質問をするに当たって、担当の方に、では、六カ月未満の中で仮放免された経験がある人というのは何人いるのかといったら、わからないと言われました。一人一人当たらないとわからないと言われました。では、その中で二年、三年の人はいるのかといったら、それは当然わからないということなんですよね。

 確かに、入管施設というのは、収容されてすぐに出国される方もたくさんいるから、一万八千人ぐらいが収容されても、多くの人は出ていく人なわけで、全部それを確認していくというのはなかなか大変なのかもしれませんけれども、少なくとも今入っているこの数について、一度、仮放免の経験がある人、仮放免されたことがある人が何人で、その人たちが過去どれぐらいの期間入っていて、通算すると何人になるのかというのを調べていただいて、その上で二年以上の人が何人いるのかということを出していただきたいと思います。

 場合によっては、現在、収容期間が最長の人が七年一カ月となっていますが、通算したらもっと長い人が出てくるかもしれないですよね、わかりませんけれども。そうなったときに、では、十年という人がいたら、世界的にその数字を見てどういう評価をされるのかということもやはり考えないといけないと思うんですよ。

 それをちゃんと示すためにも、私は、仮放免されて一回出て再収容されている人が、実際にはどれぐらい入っていたのか、通算した期間をちゃんと調べて、その数字を加えた統計データを示していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

高嶋政府参考人 技術的なところから事務方の方からお答えさせていただきたいと思います。

 退去強制令書によって収容された場合の仮放免というのは、仮放免をしていながら、更にその仮放免の条件違反、あるいはその期間の満了により再収容するというものは極めて例外的でございまして、その分を通算して収容期間を算定するというデータはこれまでとってはおりませんでした。それは委員御指摘のとおりであります。

 それで、今回、委員も御承知のとおり、各地におきまして拒食事案というのが発生しており、健康上の状況の極めて悪化したような場合には、仮放免をし、期間が来た段階で健康状態に問題がなければ再収容するということがありましたので、そういうのが、極めてこれまでは例外的でありました事情が、極めて多い、数としては非常に多くなっていっているという状況がございます。

 これまではそういう状況でございましたので、あくまでも収容所に入ってから出るまでの期間ということで算定しております。データとしては全くないわけではございませんので、物理的には決して不可能というわけではありませんが、今そういう仕組みになっていないものですから、これをやるとすると膨大な作業になるということでございまして、本日お答えすることは到底無理でございますし、将来的にもこれはちょっと相当困難であるかというふうに考えております。

初鹿委員 千二百人ですから、一人一人調べれば、千二百人、時間をかければできますよ。無理だという決めつけをしないで、これはきちんと一回出してください。そして、今後は、仮放免された人が再収容される場合に、それがわかるように統計を整えるようにしていけば可能なはずですよ。

 大臣、これはぜひやらせてください。

森国務大臣 委員の御指摘も踏まえて、事務方からも実情をしっかり聞いた上で、必要性について検討してまいりたいと思います。

初鹿委員 どうもありがとうございます。

 日本は、この外国人の長期収容の問題、海外からかなり厳しく批判されているわけですよ。拷問禁止委員会からの勧告まで受けているんですよ、皆さん。恥ずかしいことじゃないですか。この現状をやはり改善をしていく。そして、やはり現状をちゃんと世の中に明らかにしていくということは私は非常に重要だと思いますので、一回仮放免されたらゼロにリセットされるようなことで期間を短く見せるようなことをしているとしたら、これは是正をする必要があるということを指摘をさせていただきます。

 ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、ベヘザードさんが指摘をされていたんですが、仮放免中に条件違反をして、そして仮放免が取り消される人がいる。先ほども答弁されていました。また、あと、仮放免期間中に逃亡する人がいたりもする。なぜかといったら、仮放免期間中に働けないんですよ。結局、生きていくのにお金が必要だから、働けないということになると、そのために窃盗をしたり何かをしたりということになってしまっているんだと。

 条件違反で大体働いている人が多いんじゃないかと思うんですけれども、そういうことを考えると、仮放免期間中に仕事ができるようにしていただきたいと思いますが、ぜひこの検討をお願いをいたします。

森国務大臣 お尋ねの仮放免は、退去強制令書の発付を受けて収容されている者について、諸般の事情を総合的に考慮し、一時的に収容を解く制度でございますので、仮放免中の者は退去強制処分を受けて送還されるべき立場のものであることは変わりはございません。

 入管法は、在留資格に対応して定められる活動のいずれかに該当する活動のみが認められておりますので、就労を許可することは適当ではない、許可をすることは在留資格制度の機能を著しく阻害することになると考えます。

初鹿委員 であるならば、在留特別許可を与えて在留できるようにすべきだというふうに私は思います。

 時間になりましたので、また機会がありましたら質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。

松島委員長 次に、日吉雄太さん。

日吉委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの日吉雄太です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も余りありませんので、早速始めたいと思います。

 河井前法務大臣の所信に対する質疑におきまして、私、質問をさせていただきました。その中で、河井大臣が法務省の職員の方に、伸び伸びと仕事をしてください、私が全て責任をとりますというような話があって、それについて質問をさせていただいたところ、どういった責任のとり方をされるのかというふうな質問に対して明確にお答えはされなかったんですけれども、今般辞任をされたということで、有言実行な方なのかなとは思いましたが、ただ、そのやめられた理由というのが明確にわかっていないというところも現状かなというふうに思っております。

 安倍改造内閣におきまして、今、二人の大臣が辞任をされております。一人は菅原前経済産業大臣、そして河井前法務大臣ということでございますが、お二方も、どちらの方も、公職選挙法にかかわるお金の問題、地元の有権者に金品を配ったという疑惑、そして選挙期間中の人件費の問題ということでございます。

 そういった中で、河井前法務大臣は、辞任の理由として、安倍総理に、法務大臣として国の基本法制、法秩序を所掌する者として、法務行政に対するその公正性に対して疑念を招くようなことは断じて避けなければならない、このように言って職を辞したいと、辞したわけでございますが、この一連の事態につきまして、安倍内閣の一員になりました森まさこ大臣に、どのような受けとめをされているのか、お伺いしたいと思います。

森国務大臣 閣僚の辞任については、それぞれの閣僚の御判断でございますので、私の立場からはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

 私としては、これまでの法務大臣が進めてこられた取組についてしっかりと受け継ぎつつ、新たな時代にふさわしい法務行政を着実に前に進めてまいることで、国民の皆様の御信頼をいただきたいと思っております。

日吉委員 では、一般論としてお伺いいたしますけれども、地元の有権者の方々に金品を配ったり、選挙期間中に、人件費、決められた上限を超えて支給する、これについて、法務大臣としてどのようにお考えになられますか。

森国務大臣 法令をしっかりと守ってまいる、そのことを法務大臣はしっかりと国民の皆様に啓蒙していく、そのような立場にあると考えております。

日吉委員 法令を守っていく、それを啓蒙していくということですので、今伺ったことは法令に違反することだという御認識の前提でお話をされたのかなというふうに受けとめましたが、こういった法令を違反する議員なりがいました、一般論ですね、一般論として、こういったこと、これは許されるということでしょうか。

森国務大臣 議員であっても、それ以外の国民の皆様であっても、全ての皆様が法令にのっとっていただきたいというふうに思っております。

日吉委員 いただきたいというよりも、のっとっていただかなければならないのかなというふうに思いますけれども。

 そういった中で、実際に、お二人の大臣がどういった理由でやめられたのかといったことが明確になっていない状況です。それについて説明をする必要があるかどうか、法務大臣としてのお考えをお聞かせください。

森国務大臣 閣僚の辞任については、それぞれの閣僚の御判断でございますので、私の立場からはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

日吉委員 しっかりと説明責任を果たしていかなければならないと思います。

 そして、総理も任命責任を認められているところでございますけれども、任命責任といっても、今回の二人の前大臣につきまして、以前からいろいろと、菅原大臣にしましても、地元で金品を配っていた、こういった話が出ておりました。

 そういった中で、実際に総理が任命するに当たって、そういった過去のことについてどういうふうになっているのか、そして今現在どうなっているのか、こういったことをしっかりと調査をした上で任命をしているはずだ、それがしっかり行われていなかったということであれば重大な過失がある、それこそが任命責任について責任をとっていかなければならないことにつながっていくのかなということを申し上げさせていただきます。

 続きまして、大臣の法務行政に対する姿勢について、ちょっとお伺いしたいと思います。

 弁護士でもある森まさこ大臣にお伺いいたします。

 就任直後の地元紙のインタビューでは、困っている人、弱い人を助けるために法がある、このように語っておられますが、この意味といいますか、この思いをお聞かせください。

森国務大臣 法務省は、まさに国民生活の安全、安心を守るための法的基盤の整備という使命を負っておりますので、その使命は国民の皆様からの信頼なくしては成り立たないと考えております。

 法務省は、法をつかさどる、本来とても身近な存在でございますけれども、国民の皆様が、一旦人権が傷つけられたり、虐待や犯罪の被害に遭ったり、法的な解決を要する事態に陥ったような場合には、これにより傷ついている皆様、困難を抱えている皆様を、本来あるべき状態、正義が保たれている状態に戻してさしあげる、法務省には縁の下の力持ちとしてそのような役割も期待されていると思っております。

 そういった困難を抱える皆様を一人でも減らしたい、正義を実現したいという意思を強く持って職務に取り組んでまいりたいという気持ちを述べたものでございます。

日吉委員 そのように、困っている人、弱い人を助けられたい、こういう気持ちがとてもお強い大臣なのかなというふうにお見受けいたしました。

 そんな中で、実は、私も子ども・被災者支援議員連盟の一員として活動させていただいているんですけれども、森大臣も発議者として、子ども・被災者支援法、この成立に御尽力をされていただいたと思いますが、その後、子供たちの健康や医療、そして自主避難者も含めた原発避難者支援についてどのように取り組まれているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

森国務大臣 委員御指摘のいわゆる子ども・被災者支援法については、平成二十四年に、自民党が野党時代でございましたが、私が提案者の一人として起草に携わった議員立法でございます。私は、子供の被災者の部分を起案をいたしました。そして、他党の議員の先生が、原発避難をしている皆様の部分を起案をなさいまして、それを合体して子ども・被災者支援法というものになった経緯は、委員も議員連盟の一員であるということでございますので、よく御存じいただいていると思います。

 その後の活動についてのお尋ねがございましたが、子供のことについては私も非常に思いが深いものでございますので、地元である福島県を始めとしました東日本大震災からの、被災地にいる子供についての支援については、さまざまな活動をしてまいりました。

 また、今般、同じ被災地が台風十九号と大雨によって再度被災するということで、特に、とりわけやはり精神面も含めて、大きな被災があったわけでございます。

 ちょうど昨日、私も参加した政府の令和元年台風第十九号非常災害対策本部会議においては、被災者の生活となりわいの再建に向けた対策パッケージが取りまとめられましたが、緊急対応策として、私がちょうど大臣に就任する前に、自民党の方で、そのパッケージの中に入れるべきだというふうに訴えてまいりました被災した子供の心のケアや子供の通学支援、授業料減免などを内容とする切れ目のない被災者支援も政府として盛り込まれたところでございましたので、これまでのこうした経験の上に立って、総理からの全閣僚共通指示にもあったとおり、閣僚全員が復興大臣、そして災害対応に当たるという意識を共有して、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

日吉委員 今の御発言の中で、子供の被災のところと避難にかかるところというのは何か別のようなところで、担当していなかったというように聞こえてしまったんですけれども、一体としてできている法案ですので、原発自主避難を支援するというようなところにもやはり大臣もかかわられていたというふうに認識しております。自主避難支援等を行うための法律ですというようなことをホームページでアピールされていたというようなことも伺ったことがございます。

 そういった中で、最後のこの支援が、住宅の支援が二〇一七年三月末に切れてしまいまして、それ以降、重要な支援が行われていないというのが実感であります。塩漬け、たなざらし、骨抜きというような、こういった批判もございます。ですので、弱い人、困っている人を助ける、こういった思いでしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げさせていただきます。

 続きまして、森大臣の所信にありました刑事司法制度の適正な運用と検察改革についてお伺いさせていただきます。

 具体的には、二〇一八年の十一月十九日に、日産自動車のカルロス・ゴーンさんが逮捕されたという事件が発生いたしました。これは、金融商品取引法違反ということで、有価証券報告書に役員報酬を過少に記載したという罪が問われた事件でございます。

 これが、二十一日に勾留が開始し、勾留期限は十一月三十日となっておりました。これを、十一月三十日に、十二月十日まで延長しております。そして、十二月十日、勾留期限が到達したときに、また金融商品取引法違反で再逮捕をされております。これも有価証券報告書に役員報酬の記載が過少であったという案件でございます。

 どこが違うのかというと、一回目の事件は二〇一〇年度から二〇一四年度の五年分、二回目の事件は二〇一五年度から二〇一七年度の三年分ということで、その期間が違うということです。そういった勾留延長を求めている中で、第三の事件ということで、今度は会社法違反、特別背任で十二月の二十一日に再逮捕されているというような、こういったことが続いている事件でございます。

 こんな中で、この一連の事件、日本の刑事司法制度について、世界各国からいろいろな批判や指摘がされております。特に、勾留の取調べ環境ですとか、その日数、今みたいに勾留を繰り返すというような逮捕、勾留の繰り返し、こういった手法を海外のメディアは大きく取り上げておりました。

 このような刑事司法制度について、弁護士資格をお持ちの大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

森国務大臣 個別事件における裁判所の判断ないし検察当局の捜査のあり方にかかわる事柄については、法務大臣として所感を述べることは差し控えたいと思います。

 その上で、御指摘のように、我が国の刑事手続における身柄拘束に関して、委員御指摘のような批判があることも一方で承知をしております。

 しかしながら、各国の刑事司法制度にはさまざまな違いがあり、それぞれの国において制度全体として機能するように成り立っており、制度全体のあり方を考慮せずに個々の制度の相違点に着目して単純に比較することは難しいものだと思っております。

 その上で、我が国の刑事司法制度について申し上げますと、被疑者の勾留は、捜査機関から独立した裁判官による審査を経て行われます。また、被疑者の勾留は、具体的な犯罪の嫌疑を前提に、罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合等に限って認められ、被疑者は勾留等の裁判に対して不服申立てをすることができます。被告人の勾留については、罪証隠滅のおそれがある場合などの除外事由に当たらない限り、原則として保釈が許可される仕組みとなっております。

 このように、被疑者、被告人の身体拘束については、法律上厳格な要件及び手続が定められており、適切な制度となっていると承知しております。

 また、あくまで一般論として申し上げますと、被疑者、被告人の勾留や保釈については、裁判所の判断により、刑事訴訟法の規定に基づき、個々の事件による具体的な事情に応じて適正に運用されているものと承知をしております。

 被疑者、被告人の身体拘束のあり方等を理由として、日本でビジネスをすることをためらう外国人の声があるということも承知しております。

 しかしながら、あくまで一般論として申し上げますと、被疑者、被告人の勾留や保釈については適正に運用されているものと承知しておりますので、御指摘のような懸念については、我が国の刑事司法制度について正確な情報を提供し、国内外の理解を得ていくことが重要であると考えております。

 今後とも、懸念の払拭に努めてまいりたいと思います。

日吉委員 今大臣は、適正に運用されている、こういうふうにおっしゃられました。それを説明していくということなんですけれども、海外等から非難があるということは事実であり、そういった場合に、いや、適正にやっていますと言うだけではなくて、やはりどこが問題なのかというのを立ちどまって考える必要があろうかと思います。

 そういった中で、人質司法というようなことも言われております。逮捕された被疑者、起訴された被告人が犯罪事実を否認し、潔白を訴えている間はずっと身柄が長期間拘束される、逆に、罪を認めた場合には保釈をされるというようなこと、こういった運用、こういったことが人権侵害だというふうに言われることもあります。

 こういった批判がある中で、具体的に、立ちどまってもう一度、適正かどうかということを見詰め直す、検討する、こういったことはお考えになられているでしょうか。

森国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、被疑者、被告人の身体拘束については、先ほど御説明したような法律上の制度になっており、厳格な要件及び手続が定められておりますので、適切な制度となっておると承知しておりますので、しっかりと説明をしてまいりたいと思います。

日吉委員 適正だと言っていても批判があるわけですから、説明をするだけではなく、みずからを振り返るということが大事なのかなということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、時間が余りなくなってきましたが、法務省の名称による詐欺事件についてお伺いしたいと思います。

 きのうのニュース、テレビのニュースでもやっておりましたけれども、法務省の名称を不正に使用して、架空請求による被害が出ているという報道がございました。

 訴えられているので裁判取下げの相談はしますといった内容のはがきや封書が送られてくるという事例でございましたが、把握されている実態、これについて教えていただけますでしょうか。どういった詐欺行為の手口というか事例があるのか、こういったことも含めて教えてください。

西山政府参考人 委員御指摘のような、法務省の名をかたったはがきが届くという事案につきましては、当省でも相談者からの相談という形で把握をいたしております。

 具体的手口についてですけれども、差出人が法務省管轄支局国民訴訟通達センター、あるいは法務省被告管理事務局相談窓口などなど、もとより法務省の名は冠していますけれども実在しない組織を差出人としまして、はがきの文面でございますけれども、財産の差押えを強制的に執行するなどと不安をあおって、受取人から連絡を求める内容になっているということでございます。また、そうして連絡をすると、弁護士紹介費用などと称して金銭を要求されるといった事案があるということが確認をされております。

 このような事案につきまして、もとより、被害の発生件数であるとか被害申告件数については当省で把握することは困難でございますけれども、このようなはがき等に関する当省への問合せにつきましては、平成三十年に月一千件を超えていたところでございます。ただ、本年に入りましてから、月数十件から百件前後で推移していたという経緯がございます。

 しかしながら、本年十月ころから、法務省が実際に使用していますロゴマークやあるいはホームページに掲載しています地図を用いた新たな手口の封書が送られてきているといった情報が数多く寄せられるようになりまして、再び問合せ件数が急増いたしまして、先月一カ月間で五百五十八件に及ぶというような状況になってございます。

日吉委員 ありがとうございます。

 このような状況でどうして最近ふえてきたのかな、改めてふえてきたのかなと疑問に思うのと、あと、それに対して法務省さんとしてはどのように啓発をしているのか、もう少し具体的に教えていただけますでしょうか。

西山政府参考人 急増した原因につきましては、当省としてもなかなか分析しがたいことがございます。

 それで、対策につきましてですが、法務省に相談してきた方に対しては、もとより、そのような内容が架空請求であるということは教示いたしますし、また、記載されている電話番号には電話をしないでくださいというような対応をお伝えしております。また、相談者から提供された情報につきましては、警察当局に情報を提供させていただいております。

 また、一般的な防止広報に関する取組としましては、法務省ホームページあるいは法務省公式ツイッターへの被害関係情報の掲載や、法の日フェスタなどを通じまして、啓発イベントの開催などの活動を行っております。

 さらに、平成三十年七月二十二日、消費者政策会議決定に基づく架空請求対策パッケージ、これに基づきまして、啓発資料を作成して、法テラス、法務局等における注意喚起の実施や、あるいは政府広報等、関係機関の協力を得た注意喚起の実施等の取組を行うとともに、複数回にわたり新聞やテレビでもこの問題を取り上げていただくなどして、被害防止広報を鋭意実施してきたところでございます。

日吉委員 ありがとうございました。

 時間がなくなってきましたが、あと一つ、用意していた質問、簡単にお答えいただきたいと思いますが、外国人労働者、留学生についてでございます。

 大臣の所信の中で、運用上の改善に取り組んでいくという言葉がございました。どのような課題をどのように改善していくのか、教えてください。

松島委員長 高嶋次長、簡潔にお願いします、短く。

高嶋政府参考人 既に策定されているものの御説明ということですので、こちらの方から答弁させていただきたいと思います。

 留学生につきまして、所在不明者がかなり出たというような案件がございました。これで、留学生の場合は、大学それから専門学校の場合と日本語教育機関の場合と、若干在留資格を取得する際の仕組みが違いますので、二つに分けて御説明をさせていただきます。

 留学生の所在不明者を多数発生させた事案を踏まえまして、大学の方につきましては、留学生の在籍管理の徹底を図るため、ことし六月に、留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針というのを文部科学省と共同で策定しまして、これを公表しているところでございます。

 それから、日本語教育機関の方でございますが、これは、日本語教育機関の質の向上と適正な管理を図ることを目的としまして、ことし八月一日に、留学生を受け入れることのできる日本語教育機関、これは告示で定めることになっておりますが、この告示に関する基準を改正して公表したところでございます。

 新たな対応方針につきましては、これを着実に実施するとともに、改正された日本語教育機関の告示基準を適切に運用しまして、留学生の適正な受入れに努めてまいりたいと考えております。

松島委員長 質疑持ち時間が終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし……(日吉委員「委員長」と呼ぶ)時間が過ぎていますから。(日吉委員「ありがとうございました」と呼ぶ)それはいいんです。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 審議に入ります前に、一言おわびを申し上げさせていただきます。

 午前の部の最後、日吉雄太議員の締めの挨拶の際に、私、本会議の時間に気をとられておりまして、発言を遮るような大変失礼なことをいたしました。今後、反省してまいりたいと思います。

 以上です。

 質疑を続行いたします。それでは、藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 早速質疑に入りたいと思います。

 大臣は、先日六日の所信質疑の中でこう述べられました。法務省は法をつかさどる役所であり、正義の実現のために力を尽くすべきであると。

 きょうも答弁されていらっしゃいましたけれども、改めて、この法務省に期待される役割について答弁いただければと思います。

森国務大臣 法務省は、まさに国民生活の安全、安心を守るための法的基盤の整備という使命を負っております。申すまでもなく、その使命は国民の皆様からの信頼なくして成り立たないと考えております。そして、社会や時代の変化に対応してこれにふさわしい法制度が整備され、これが適切に運用、執行されることによってこそ、法務行政が国民の皆様の信頼をいただけるのだと思っています。

 その上で、このような適切な法制度の整備や運用を通じて、例えば、一旦人権が傷つけられたり、虐待や犯罪の被害に遭ったり、法的な解決を要する事態に陥ったような場合には、これにより傷ついている皆様や困難を抱えている皆様に対して必要な保護、支援を行うこと、それがいわば正義の実現であり、国民から法務省に期待されている役割の一つであると考えております。

藤野委員 大臣は、同じ質疑の中で、法務省というのは、今回、多文化共生社会の実現に向けて総合調整機能を担うことになると。

 この多文化共生社会、つまり外国人についても、今大臣が述べられた正義の実現、これは当然求められると思うんですが、それでよろしいでしょうか。

森国務大臣 お尋ねについては、外国人であっても、犯罪や虐待等により傷ついている皆様や困難を抱えている皆様に対して必要な保護や支援が行われるべきであるということは同じでございます。

藤野委員 きょう初鹿委員も取り上げていらっしゃいましたけれども、外国人、とりわけ収容問題というのは、まさにこの正義がない状態なんですね。ですから、大臣にこの分野でも正義をぜひ実現していただきたいというふうに思います。

 私は、河井前大臣の所信質疑の際に、この問題に絞って質問させていただいたんです。それは、前大臣の所信の中に見逃せない文言があったからであります。

 配付資料の一をお配りさせていただいているんですが、河井大臣は上の方のところでそうおっしゃっていまして、「退去強制令書が発付されたにもかかわらず、さまざまな理由で送還を忌避している者がおり、その存在は、迅速な送還に対する大きな障害となっているばかりか、収容の長期化の大きな要因となっています。送還を忌避している長期収容者の問題は、我が国の出入国在留管理制度の根幹を脅かし、ひいては、我が国の社会秩序や治安に影響を与えることにもなりかねない深刻な問題です。」こういう発言がありまして、我が国の社会秩序や治安に影響を与えることを理由に仮放免を認めない、収容を継続すると。

 これは、先ほどもありましたけれども、戦前の治安維持法三十九条などで規定されていた予防拘禁、これを肯定するような発言だと思うんですね。これはやはり許されないというふうに思います。

 この論理というのはやはり大変危険なものでありまして、前科を持つ人とか仮釈放歴を持つ人というのは日本人にもいるわけですから、それが社会にとって危険だから収容していいんだ、収容を継続していいんだということになりますと、これは日本人にもはね返ってくる論理になってくる。何より、入管法という制度が認めている短期の収容というこの本来の趣旨にも著しく反しているということで、私は前大臣のときに質問をさせていただきました。

 この論理に関する部分、いわゆる秩序や治安というこの論理に関する部分が森新大臣の所信ではすっぽり抜けておりまして、私は、率直に言いまして、人権をつかさどる法務大臣の所信から予防拘禁を肯定するかのような文言がなくなったこと、これ自体は、個人的には前向きに評価したいと思うんです。

 ただ、言葉も大事ですが、やはり具体的にどう実践されていくのか、これが問われていると思うんです。

 前大臣は、こうした論理のもとに、私的ないわゆる懇談会、これがございます、法務省に。大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会、このもとに収容・送還に関する専門部会を設置されて、もう既に議論を進められております。来年三月には最終報告を行うというふうに伺っております。

 確かに、私も、入管法というものの整備は、改正は必要だと思うんです。これは本当に、いわゆる一九五一年にこの前身となる政令が制定されて以降、全く大きく変わっていないわけですね、とりわけ、この収容に関する部分というのは。ですから、私は、時代に合わせて、世界の人権の水準に合わせて、世界の収容のさまざまな制度に合わせて、これは改正が必要だと思います。

 しかし、今設置されている専門部会は、そういう方向ではなくて、先日の質疑でも、例えば仮放免の要件を厳格化するだとか、そういう方向で今議論が進められている。ですから、私は、この今の専門部会の検討というのはやはり問題があると思うんですね。

 ですから、大臣にお伺いしたいんですが、やはり、前大臣の私的懇談会のもとに今の専門部会は設置されております。その大臣がかわられたわけです。ですから、この際、この当該部会は一旦立ちどまって、メンバーとかテーマとか方向性、こういうものを再検討すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

森国務大臣 委員の御指摘に対して、先ほど私の冒頭の答弁でも申し上げましたとおり、社会や時代の変化に応じて制度を見直していくということもしてまいりたいと思いますが、お尋ねの収容・送還に関する専門部会は、送還忌避者の増加や収容の長期化等について御議論いただくために、本年十月二十一日に、法務大臣の私的懇談会である第七次出入国管理政策懇談会のもとに設置され、その第一回の議論が十月二十一日当日に行われたところでございます。

 送還忌避者の増加や収容の長期化を防止する方策やその間の収容のあり方についての検討は、私としても、出入国管理行政にとっての重要な課題であると認識をしております。既に検討が始まっているこの専門部会において、引き続き、さまざまな課題がございますので、委員の御指摘の部分も踏まえて、多様な角度から自由闊達な議論がなされることを期待しているところでございます。

藤野委員 確かに大臣は、所信や答弁等で前の大臣と違う御発言をされております。しかし、この専門部会での検討が続けば、前の大臣が敷いた路線、これが具体化されていってしまうわけです。つまり、予防拘禁に当たるような、現状でさえ当たるようなものが更に悪化していくということになるわけでありまして、これは私は許されないというふうに思うんです。

 この点については、専門部会での検討状況を見ながら、引き続き今後ともただしていきたいというふうに思います。

 きょうは、次に、選挙期間中の街宣におけるやじの排除問題、やじをした人を排除した問題についてお聞きしたいと思います。

 前提として、大臣に伺いたいんですが、やはり、市民がその政治的意見を表明するということは、表現の自由、憲法二十一条として保障されるものであって、とりわけ、選挙期間中の政治的意見の表明とかあるいはその自由な意見の交換というのは、民主政治及び自由選挙の根幹をなすものだというふうに思うわけであります。

 大臣は、二〇一三年の六月十八日の参議院内閣委員会で、政治的な活動への参加について答弁されていると思うんですが、どのような答弁で、その認識は今も変わらないかどうか、お聞かせください。

森国務大臣 二〇一三年の六月十八日、参議院の内閣委員会において、江口委員から、障害者の方々の政治参加を推進する取組ということについて、大臣はどのような考えをお持ちですかという趣旨の御質問をいただき、私の方で、障害者の皆様の政治参加についてるる述べた後、「このように、政治的、公的な活動への参加は民主政治の根幹でありますので、政治的、公的活動に障害者の皆様が参加できるような環境整備が重要であるというふうに認識をしております。」というふうに御答弁申し上げました。

藤野委員 この認識は変わらないということでよろしいですか。

森国務大臣 はい。今も変わりはございません。

藤野委員 私、予算委員もやらせていただいているんですが、先日六日の予算委員会では、安倍総理のやじが大問題になりました。昨日の本会議でもたくさんのやじが飛んでおりました。やじもやはり政治的な意思表示でありますし、政治参加の一形態だというふうに思うわけです。

 ところが、この間、全国各地で、安倍総理とか現職大臣が街頭演説中、それに対してやじを飛ばした等の行為をしたら、その個人が警察によって強制的に排除される例が相次いでおります。

 例えば、ことしの七月十五日、参議院選挙のさなか、北海道札幌市で安倍総理が街頭演説をされているときに、例えば、安倍やめろとかあるいは増税反対というやじを飛ばした人が排除されたり、あるいは、年金問題についてのプラカードを持っていただけの人が制服とか私服の警察官によって強制的に排除された。

 警察庁にお聞きします。これはどういう事案だったんでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの件は、七月十五日、札幌市で街頭演説が行われた際、北海道警察が現場において、トラブル防止の観点からの措置を講じたものと報告を受けております。

 他方、本件に関する告発状が検察庁に提出されていることであり、その処理の状況を踏まえつつ、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しており、これ以上のお答えは差し控えますが、いずれにしましても、このような形で警察の職務執行の中立性に疑念が抱かれたことは残念であり、今後とも、不偏不党かつ公正中正を旨として職務を執行していくよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤野委員 配付資料の二を見ていただきたいんですけれども、これは、やじで排除された人は少なくとも九人だというふうに現場での集会等で報告をされております。九人というのは、私、物すごい数だというふうに思うんですね。

 これは、警察庁、九人排除した、間違いないですか。

河野政府参考人 本件に関する告発状が検察庁に提出されているとのことであり、その処理の状況を踏まえつつ、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しており、お答えは差し控えさせていただきます。

藤野委員 私も、街宣などでの警備の必要性は認めております。警備しちゃだめだとか、そういうことは言っていないんですね。ただ、それが過剰だったのではないかということを問題にしているわけであります。

 実際、例えば、プラカードを膝に置いていたら、警官が寄ってきてその人を安倍総理の目が届かないところに連れていったとか、肉声で叫んだ市民を三秒後ぐらいにばっと十人ぐらいで取り囲んで一気に持っていったということだとか、本当に異様なことなんですね。

 北海道弁護士会連合会は理事長声明を出しておりますし、東京弁護士会も意見書を出して、いずれも表現の自由を侵害する重大問題であるというふうに指摘をしております。

 今、不偏不党とおっしゃったんですが、これは警察法二条二項だと思うんですね。警察法二条二項には、その責務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公平中立を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の人権及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならないと規定されております。

 警察法そのものは何度も改正されておりますけれども、この二条二項というのは、一九五四年に成立して以降、変わっておりません。

 一九五四年に、当時、国会でこの法律の趣旨を説明したのが、当時の法務大臣の犬養健大臣であります。

 配付資料の三を見ていただければと思うんですけれども、そのとき大臣はどう説明しているかといいますと、こう言っているんですね。この長官の権限がともすれば過大に陥らぬよう、その所掌する職務はこれを法律に明記して制限を加えたのみならず、長官の責務はあくまで不偏不党、かつ公平中立を旨とすべきことを規定して、仮にも政治警察の弊害の生ぜざるよう、厳格なる保障の措置を講じたのであります、こう答弁されております。

 警察庁にお聞きしたいんですが、この政治警察の弊害というのは何なんでしょう。

太刀川政府参考人 お尋ねの過去の答弁については、昭和二十八年二月に提出をされ、結果的に廃案になった法案の趣旨説明において述べられたものと承知しております。

 当時の犬養大臣の発言を補足する資料が残っておりませんので、政治警察の弊害という言葉につきまして、その意味をこの場で正確に御説明することは困難でございます。

藤野委員 別にこの答弁だけじゃなくて、似たような答弁があるんですけれども、聞いても答えないのはなぜなのかなと。

 いろいろな辞典に載っているわけです。例えば、三省堂の大辞林というのには、政治警察というのは何なのかといいますと、「既存の政治体制の維持のために、反体制的政治運動を取り締まる警察。」というふうに辞書に載っております。小学館の大辞泉ではこう書いてあります。「既存の政治体制の安全・安定のために、反体制勢力の取り締まりと治安維持を任務とする警察。ナチスのゲシュタポ、第二次大戦前の日本の特別高等警察などの類。」というふうに説明があるんですね。こういう理解で私はこの答弁も読んでおります。

 つまり、そういう既存の政治体制維持とか反体制勢力の取締りを、そういう政治警察の弊害が起きないようにするためにこの警察法二条二項がある、そういう理解でよろしいですか。

太刀川政府参考人 繰り返しますが、政治警察の弊害という文言につきましては、犬養大臣が御答弁された当時のこれを補足する資料が残っておりませんので、その意味を正確にお答えすることは困難でございます。

 他方、委員御指摘のとおり、警察法第二条におきまして、不偏不党、公平中正という文言が用いられておりますので、それについて御説明をさせていただきますと、警察法では、二条第一項におきまして、警察の責務を定めておりまして、「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ること」と定めております。

 一方、第二項におきまして、警察の活動は、国民の権利、自由に与える影響が大きいということに鑑みまして、それが厳格に第一項の警察の責務の範囲に限られること、責務の遂行に当たって、不偏不党、公平中正であるべきこと、そして権限を濫用してはならないことを確認的に規定しているというふうに承知しております。

藤野委員 やはり行政権力というのは執行力を伴うものであります。ただ、とりわけ警察というのは、まさに個人の人権に直接影響を与える、場合によっては侵害する、こういう作用ですから、だから、ほかの行政規定にはないこういう警察法二条二項のような規定がわざわざ設けられている。しかも、戦前の特高警察のような政治警察の弊害を起こさないための保障としてあるわけであります。しかし、この警察法二条二項の趣旨から見て今回どうだったかということなんですね。

 今回の事件については、幾つかの動画がツイッター等でたくさんアップされております。私も見てみました。

 ある若い女性は、消費税の増税反対と声を上げたら、すぐに取り囲まれた。その場を離れようとしても、ずっとついてくるんですね。その様子もずっと流れております。現場を離れて、その人はレンタルDVD屋さんに入ったんですけれども、そこにもついてくる。前に警官一人、両脇に一人ずつ、プラス周囲に二人ずつぐらい囲んでいた。レジの前にもついてきたというんですね。DVD屋を出たら、上司らしい女性警察官がいて、まだいたのと言われたそうです。こっちのせりふだという話なんですね。

 ですから、女性が移動する際のやりとりもずっと動画ですから録音されているんですけれども、女性がもう嫌だと言うんですね、何度も。そうしたら、警察官の方は、お願い、お願い、お願い、お願い、お願い、お願い、お願いと七回ぐらい繰り返すんです、もうきょうは諦めてと。名前も聞かないし家も調べないし、何もしないからと。一体何を言っているんだという話なんですよ。

 声を上げただけの人に対して、法的根拠もわからない、七回もお願いと言うことは、要するに、自分のやっていることが本当に道理のないことだとわかっているから、こういうふうに言うわけですよね。結局、一時間以上つきまとったということであります。

 プラカードを持っていたという人も、年金百年安心プランはどうなったという問いかけですよ、問いかけ、はてな。それを掲げようとしたら、ぱっと取り囲まれて阻止された。その方は、真ん前に立つから前も見れない、息が顔にかかるぐらいの近さでしたと。本当に恐ろしいと思うんですね。

 他方、安倍総理を応援します、こういうプラカードは、みんなばんばん掲げているわけです。なぜ、安倍総理を応援するプラカードはよくて、安倍総理を批判するやじとか政策を問うプラカードはだめなんですか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、本件は、北海道警察が現場において、トラブル防止の観点からの措置を講じたものと報告を受けております。

 いずれにしましても、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しているところであります。

藤野委員 今回のこの異常な排除行動の法的な根拠は何でしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しているところであります。

藤野委員 事実確認とおっしゃるんですけれども、七月十五日ですから、四カ月たっているんですよ。日本の警察の事実確認力というのはそういうものなんですか。そんなことはないですよね。

 結局、法的根拠すら、大臣、言わないわけです。これだけのことをやっておいて、概要も言わないし、法的根拠も明らかにしない。それでもう四カ月たっている。

 警察庁に聞きます。これは、北海道警が今事実確認中と言いましたけれども、四カ月たって、警察庁としては遅いと思っているんですか。けしからぬと思っているんですか。

河野政府参考人 繰り返しになりますけれども、北海道警察からは、本件に関する告発状が検察庁に提出されているとのことであり、その処理状況を踏まえつつ、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しております。

藤野委員 違います。私が聞いたのは、そういうことがあるにしろ、それならあなた方はいいと思っているのか、それとも四カ月は長過ぎると思っているのか、評価を聞いているんです。

河野政府参考人 北海道警察からは、告発状が提出され、現在、検察庁による捜査が行われているという状況を踏まえつつ、引き続き事実確認を行っているという報告を受けております。

藤野委員 私が聞いているのは皆さん方の評価です。プロセスは聞いていないんです。そういうことがあれば、四カ月間、法的根拠も示さずに、これだけの人権侵害を犯していいと警察庁は思っているのかということなんです。もう一回お答えください。

松島委員長 藤野さんに対する質問に答えてください。

 河野審議官。

河野政府参考人 警察庁におきましては、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しており、その事実確認の結果の報告を待っているところであります。

松島委員長 とめてください。

    〔速記中止〕

松島委員長 起こしてください。

 では、河野審議官。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 引き続き北海道警察において事実確認を行っておるところでありまして、その結果を待っているところでありまして、評価につきましては、その内容を見てみないと確たることは申し上げられないと考えております。

藤野委員 私は、内容についての評価じゃなくて、四カ月もかかっているということについて聞いているんです。

河野政府参考人 期間につきましても、その内容について事実確認の報告を受けてみなければ、評価は難しいと考えております。

藤野委員 結局、私は、これを事実上容認していると。警察庁が今回の事態について評価すらしない、評価すらしないわけですよ。これは、政治警察の弊害を防止するための警察法二条二項、不偏不党とおっしゃいましたけれども、この趣旨を警察庁自身が没却している。

 配付資料の四を見ていただきたいんですけれども、ことしの六月二十六日付、警察庁警備局長から全国の県警トップ等に宛てた通達であります。

 警察庁に確認しますけれども、こういう通達は、文言は多少違っても選挙のたびに出している、こういう理解でよろしいでしょうか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の通達は、本年六月二十六日付で第二十五回参議院通常選挙における警備諸対策について発出したものと思料いたしますが、警察においては、国政選挙等の前に選挙における警備諸対策に関する通達を発出しているところであり、御指摘の通達も通例に倣って発出したものであります。例えば、第四十八回衆議院総選挙、総選挙期間は平成二十九年十月二十二日でありますけれども、に際しても同様の内容で発出いたしております。

藤野委員 そうなんですね。これは、要するに、選挙のたびに通例に倣って出されている。二〇一七年のものも、私もいただきました。大体似たような文言だなというふうに思うわけであります。

 要するに、今回の北海道警もこれを根拠にああいう警備をした、そういう理解でよろしいですか。

河野政府参考人 本件につきましては、本件に関する告発状が検察庁に提出されているところであり、その処理の状況を踏まえつつ、北海道警察において引き続き事実確認を行っているものと承知しており、お答えは差し控えさせていただきます。

藤野委員 いやいや、これは、要するに、警察庁警備局長が、「第二十五回参議院議員通常選挙における警備諸対策について」という通達でありまして、まさに、これは六月二十六日に出されているんですが、この後、七月十五日に、北海道で先ほど紹介したような事案が起きているわけであります。

 この中には、文言を紹介しますと、例えば、「接近を阻止する」という文言もあるわけですね。別にやじを発した人は接近を目的にしていたんじゃない、接近しようとしていないんですけれども、例えばそういう文言があったり、あるいは、三というところですけれども、「違反情報の収集と違反行為の取締り」というのがありまして、違反行為の取締りに当たっては云々かんぬんとあるんですが、違反取締り本部の指揮のもと、悪質な違反に重点を置くことはもとより、軽微な違反行為については、警告等を積極的に行い、違反状態の早期是正と違反の続発防止を図るとか、こういうことがあるんですね。

 こういうことに基づいてやったんじゃないかというふうに読めるわけで、結局、要するに、警察庁が出した指示でやはり選挙の警備というのは毎回毎回行われているわけであります、通例としてとおっしゃったけれども。それが今回の一つの大きな背景にあると言わざるを得ないというふうに思うんです。

 私、こういう通達を出すこと自体を問題にしているんじゃないですよ。先ほど言ったように、警備は必要だというふうにも思います。ただ、これを根拠にして、過剰な、人権侵害に至るような警備が行われた、これがやはり今回の事案ではないかというふうに思うんですね。

 もう一点お聞きしたいんですけれども、これは選挙のたびに出されているんです。選挙のたびに出されているんだけれども、なぜかこの間、こういう、総理とか大臣に対してやじをしたら排除されるというものが起きている。これはなぜなんだということなんですね。

 これは警備局長名の通達なんですけれども、私は警備局長を参考人で呼んだんです。ところが、きょう来られなかった。

 警察庁、なぜ警備局長は来なかったんでしょうか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 委員会における政府参考人の出席は、国会でお決めいただくことであると承知しております。

藤野委員 いや、私は呼んだんです、きのう。ところが、来られない、まあ、検討するということでしたけれども、結局来られていないわけですね、きょう。その理由をお聞きしているんですけれども。

河野政府参考人 繰り返しになりますけれども、委員会における政府参考人の出席は、国会でお決めいただくことであると承知しております。

藤野委員 理由も言えないというのは何なんだというふうに思うんですね。

 今の警備局長は、ことし一月二十二日付で警察庁警備局長に就任されております。その前は、二〇一二年十二月に安倍総理が政権に復帰して以降、約六年間にわたって首相秘書官をずっと務めていた方であります。それが、ことし一月二十二日に警備局長になって、そして六月二十六日にはこの通達が出され、七月十五日には札幌でああいう事件が起きた。どういう関係があるのかわかりませんが、時系列でいうとそういうことなんですね。

 札幌だけじゃないんです。八月二十四日には、埼玉県知事選の街宣中に大宮でやじ排除事件が起きて、これは柴山当時文部科学大臣の街宣中に、例えば英語試験、あの民間試験導入ですね、今大問題になっていますけれども、あれに反対のやじを飛ばした大学生が警官に囲まれて排除されたということも起きております。

 大臣にお聞きしたいんですが、要するに、こういうことが繰り返されれば声を上げることができないわけですね。七月の札幌も八月の埼玉も、いずれも政権与党側を応援するプラカードは排除されていないんです。明確に、政権への批判、政策への批判は許さないという警察の行動なんです。

 法をつかさどる法務大臣として、国民の人権保障の観点からも、そして何より警察法二条二項、不偏不党を求めるこの法律の趣旨からして、これは看過できないと思うんですが、いかがでしょうか。

森国務大臣 冒頭の委員の質問にお答えしたとおり、政治的、公的な活動への参加は民主政治の根幹であります。その思いは変わりありません。

 ただ、個別の事案に関するお尋ねについては、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

藤野委員 もう終わりますけれども、要するに、政治警察の弊害を生じないために、わざわざ警察法二条二項が設けられているわけですね。そのもとで活動すべき警察が、四カ月たっても評価すらしない。評価しないこと自体が私は政治警察の弊害と言ってもいいんじゃないかと思うんですね。正義の実現のために力を尽くすとおっしゃった大臣も、これについては物を言わない。これは極めて深刻な事態なんですね。

 これは、事実確認中ということですから、絶対に看過できません。直ちに確認した上で国会に報告を求めたいし、その点について引き続き追及することを述べて、質問を終わります。

松島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三十六分散会


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