衆議院

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第2号 平成30年11月14日(水曜日)

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平成三十年十一月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 若宮 健嗣君

   理事 小野寺五典君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 武井 俊輔君

   理事 堀井  学君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      今枝宗一郎君    岩田 和親君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      金子 俊平君    黄川田仁志君

      高村 正大君    佐々木 紀君

      杉田 水脈君    鈴木 憲和君

      鈴木 隼人君    中曽根康隆君

      中山 泰秀君    三ッ林裕巳君

      宮路 拓馬君    山田 賢司君

      櫻井  周君    山川百合子君

      青山 大人君    高木 陽介君

      岡田 克也君    玄葉光一郎君

      穀田 恵二君    杉本 和巳君

      井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   法務副大臣        平口  洋君

   外務副大臣        あべ 俊子君

   外務副大臣        佐藤 正久君

   経済産業副大臣      磯崎 仁彦君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   防衛大臣政務官      鈴木 貴子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  清水 茂夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       金子  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大鷹 正人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 川崎 方啓君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 田村 政美君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 船越 健裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 赤松  武君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            岡   浩君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   三上 正裕君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    垂  秀夫君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   宇波 弘貴君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉永 和生君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  神谷  崇君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    米村  猛君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           高野  滋君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           小波  功君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 石川  武君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        斉藤 和重君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十四日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     今枝宗一郎君

  辻  清人君     三ッ林裕巳君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     小田原 潔君

  三ッ林裕巳君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     金子 俊平君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     辻  清人君

    ―――――――――――――

十一月十四日

 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

若宮委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長下川眞樹太君、大臣官房審議官大鷹正人君、大臣官房審議官川崎方啓君、大臣官房参事官田村政美君、大臣官房参事官船越健裕君、大臣官房参事官赤松武君、中東アフリカ局長岡浩君、経済局長山上信吾君、国際法局長三上正裕君、領事局長垂秀夫君、内閣官房内閣審議官清水茂夫君、法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、財務省主計局次長宇波弘貴君、厚生労働省大臣官房審議官吉永和生君、水産庁資源管理部長神谷崇君、特許庁総務部長米村猛君、国土交通省航空局安全部長高野滋君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官小波功君、防衛政策局次長石川武君、防衛装備庁プロジェクト管理部長斉藤和重君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。

武井委員 おはようございます。自民党の武井俊輔でございます。

 所信質疑のトップバッターということで、大変大役をいただきました。河野大臣を始め政務三役の皆さん、幹部の皆さん、どうぞよろしくお願いをいたします。

 先日の所信表明で大臣の決意をお伺いしたところでありますが、今国会は、本委員会としても、さまざまな法案審議に加え、国際情勢を見ましても、日米、日韓など難しい課題が続いております。

 こういった外交の状況につきましては後ほど同僚の高村先生から鋭く質問があるということでございますので、私の方からは、去年政務官で外務省にお世話になりましたので、その経験も踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 その前に一点、けさのニュースで気になるものがありましたのでちょっと取り上げたいと思うんです。

 実は、朝日新聞なんですけれども、キューバのペレイラ大使が福岡のヒルトンホテルに宿泊をしようとしたら、これは米系のホテルなんですけれども、米国の経済対象国である政府関係者等は泊められないということで、宿泊を拒否されたというニュースがありました。

 これは日本の旅行業法に明確に違反をしておることであります。外務省と厚労省で連携して、また最終的には福岡市が行政指導をしたということですけれども、これはあってはならないことであるというふうに思っております。外務省としてもよく関心を持っていただいて、こういったようなことが国内でないようにお願いをしたいというふうに思います。

 さて、河野大臣、今回、内閣改造で続投となられたわけであります。この一年余の御活躍は改めて申し上げるまでもないわけであります。私も、中南米とかアフリカ担当で、飛行機ばかり一年間乗っておったわけでありますけれども、河野大臣のスケジュールを見ますと、よく体を壊さずにこのハードスケジュールに臨んでおられるなと大変驚嘆するばかりでありますし、いずれこれは河野外交として高く歴史が評価するんだろうなというふうにも思うところであります。

 さて、続投ということですから、二年目、二期目と言ってもいいのかというふうに思うんですが、御自身で査定した予算も踏まえた運営ということにもなります。また、河野カラーがよりはっきり出てくるんだろうなと期待もするところでありますが、その上で、一期目といいますか、一年間の総括と、またこの一年でやり残したこと、加えて、また、それを踏まえて、今回の二期目、二年目にどのように臨もうとされるか、御決意をお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 ありがとうございます。

 外務大臣就任以来一年三カ月になりますが、最初に申し上げた、日米同盟の強化並びに友好国とのネットワーク、これを拡大していこうということ、それから、中国を始め近隣諸国との関係を強化していこう、自由貿易協定を始め経済外交をしっかりと進めていきたい、気候変動を始めとする地球規模課題、これにしっかりと取り組んでいきたい、そして、中東に関与する、これをしっかりやっていきたい、そして最後に、インド太平洋、自由で開かれたインド太平洋を実現する、この六つを柱、もちろん外交ですから、これ以外にもいろいろございますが、この六つを柱としてやってまいりました。

 おかげさまで、TPPですとか日本とEUのEPA、こうしたものは大きく前に進み、RCEPもかなりのところまで来ている。また、中東外交では、ヨルダンの国王が主催されているアカバ・プロセスですとか、あるいは国連のUNRWAの会合、あるいはEUのシリアの会合、そうしたものを、共同議長を務める、あるいは参加をする、そうしたことで、この中東外交におけるプレゼンスというのもだんだんと高まってきて、JAIPの一期目が成功し、今十三社が操業してくれている、そういう状況もつくることができるようになりました。

 他方、日朝間の平壌宣言にうたった懸念事項はまだ未解決でございますし、ロシアとの平和条約というのもまだ締結がされていないということで、やり残したことというのがまだ多々ございます。国連の安保理改革の交渉開始もまだ途上でございます。

 そうしたことがございますので、しっかり今後も取り組んでまいりたいと思いますが、ピーク時と比べて日本のODAは半減をしております。これはもう現在の財政状況を考えれば、これ以上ふやすというのは望むべくもない話でございますし、他国と違って、日本は外交に軍事力を使うということをいたしません。そういう中で、やはり裸の外交力が試されるという時代になってきたんだろうというふうに思っております。

 来年度予算の中で、財政当局には足腰の強化ということを訴えておりますが、この裸の外交力で勝負できる外交というのをしっかりとつくり上げてまいりたいというふうに考えております。

武井委員 ありがとうございます。

 裸の外交力、なかなか我々にとっても日本らしい、いいキーワードだなというふうに思ったところでございます。また、中東外交など、非常に河野カラーが出ているなということも思うわけでありまして、ぜひとも、そういった思いで、より一層河野カラーで推進していただきたいというふうに思います。

 次でございますが、河野大臣、ことしは、大臣を始め政務三役の皆様には積極的に海外を回っていただく、もちろんそうあっていただきたいと思うんですが、一方で、ことしは、国内に目を転じてみますと、六月末にはG20の日本初開催、また八月末には横浜でのアフリカ開発会議、TICAD7、これは三年置きに日本とアフリカでやることになりましたので六年ぶり、そしてまた十月末には即位の礼ということで、大変大きな、また多くの行事があるわけでありまして、対応していかなければいけないわけであります。

 私、三年前の政務官のとき、三年前のTICAD、ケニアのナイロビに行ったんですけれども、日本を出るときに、皆さんが働いているというので、私の秘書官が何か差し入れを持っていきましょうということを言いまして、そうか、じゃ、私は宮崎ですから、地元のお菓子でも持っていこうかなということを言っておりましたら、うちの秘書官が、いやいや、カロリーメイトを持ってきた方がいいんですよ、一番みんな喜びますからと。

 最初、何のことだろうかなと思いましたけれども、言われるがままにカロリーメイトを持っていったわけですが、行ってよく意味がわかりました。本当に夜遅い時間に、大きなナイロビのホテルを貸し切って、ホールいっぱい、大体二百人ぐらいいたでしょうかね、みんな夜中まで仕事をしておりました。

 もちろん、メーンのTICADの会議もそうなんですけれども、当然、そういう会議があれば、それぞれの国同士のセッション、バイが数多く立つわけでありまして、政務をされた両先生もいらっしゃいますが、さまざまなところに我々も出たわけでありまして、そういったようなもの、加えて、外務省だけではなくて他府省の三役なんかもたくさん行っておられて、そこもそういう会議をするということで、無数の会議があるわけであります。本当に、それを一つ一つさばいている姿というものを見まして、ロジを仕上げていくということがいかに大変なことかということを実感したわけであります。

 そういう意味でも、ことしはそういった多くのイベントを複数、しかも、ある程度並行してそういうものを進めていかなければいけないということになるわけで、そうしますと、各部署からの応援の要員、例えばほかの大使館とかからも出していかなければいけない。つまり、本来の業務も抱えながらやっていくということになる。しかも、今御案内のとおり、働き方改革というものも求められる。大変難しい一年になるんだろうなというふうに思います。

 河野大臣は、政治家として非常に、行革もまさにライフワークとして取り組んでこられたわけですが、非常に外務省にとって大変な一年になるというふうに思うんですが、外務省というこの組織のトップとして、このようなロジをどのようにさばいていくということについて臨まれようとされているか、お伺いしたいと思います。

河野国務大臣 外務大臣になりましてから、随分いろいろなところへ行きました。そのときに、少しロジを簡素化しないとこれはもたないなというふうに思いましたので、外務大臣の出張については、大分ロジの簡素化というのができたんだろうというふうに思っております。

 来年は、逆にこちらへ来ていただく、おもてなしをする側でございますから、余り簡素化して粗相があってはいかぬというふうに思いますが、かといって、余りやり過ぎということも控えなければいけないんだろうと思っております。

 来年は、おっしゃいましたようにG20があり、その中には首脳会合から閣僚会合があり、TICADがあり、そして秋の即位の礼、それからラグビーのワールドカップ、これは例えば、国によっては、ニュージーランドなんかは閣僚全員がこの期間に日本を、理由をつけて訪問されるのではないか、こっちで閣議をやるんじゃないかというぐらいの状況になっておりますが、そういう大勢来ていただける中で、やはり首脳外交、あるいは当然外相も大勢いらっしゃると思いますので、そうしたバイの外交というものをしっかりやっていかなければなりません。

 既に、G20を始め、さまざまな国際会議の事務局を立ち上げておりますので、これまで日本がやってまいりました非常に丁寧なロジ、しかし簡素化するところ、合理化するところは合理化する、そういう精神でしっかりと対応してまいりたいと思っております。

武井委員 ぜひそういった形でお願いをしたいと思います。本当に河野大臣の手腕に御期待をしたいと思います。

 続いて、領事業務についてお伺いをしたいと思います。

 先日、安田純平さんの解放というようなこともありました。詳細は存じませんが、さまざまな努力があったんだというふうに拝察をしております。それから、私も去年、たしか木原理事が副大臣のときに多分現場で対処されたと思うんですが、バングラデシュの邦人殺害事件の現場に事件以降最初に参りまして、大使館や在留邦人の方がその後いかに厳しい生活をされているかということを実感もしたわけであります。

 そのような邦人保護業務に加えまして、昨今、インバウンドの急増がありまして、特に中国などのビザ発給業務が大変膨大になっている、事務負担が非常に過大になっているという話も聞くわけであります。

 今後また、スタンプの省略とか、いろいろなものも変わってくる部分もあるというふうに思うんですが、この領事業務について、どのように円滑に進めていくか、取組をお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 昨年、既に二千八百万人近いインバウンドのお客様をお迎えし、東京オリンピックに向けて、この数が更にふえていくというふうに思いますし、ふえていかなければならないんだろうと思います。

 そういう中で、領事業務に関するITシステムを統合化したり、あるいは二〇二〇年から電子ビザを導入するというようなことを行います。また、中国では、今まで手数料をキャッシュでやりとりしていたものを銀行振り込みにしていただくとか、多少時代の流れに沿った効率化というのをやっていかなければならないというふうに思っております。

 他方、日本から外国へ行かれる方の安全対策として、たびレジなどの登録をして、しっかりと、スマホなどを使って安全情報を一人一人にお渡しできるような、そういう作業も進めておりますので、最先端の技術をしっかりと利用して、領事業務合理化というものを進めてまいりたいというふうに思っております。

武井委員 河野大臣は大変革新的な分野にも明るい大臣でいらっしゃいますので、ぜひそういったような形で、むしろこれは日本がリードしていく、スタンプレスなんかは、むしろほかの国が進んでいる部分もありますので、ぜひとも日本がリードできるように、また改革をお願いしたいと思います。

 続いて、核軍縮についてお伺いをしたいと思います。

 私は、岸田前大臣のもとで核軍縮の担当をしておりました。当時、オバマ前大統領の広島訪問などもありまして、核なき世界というところへの道が一歩進んだかなという思いがあったわけであります。しかし一方で、北朝鮮の厳しい状況、またそして、アメリカの政権交代などもありまして、道の険しいことも実感をしているわけであります。

 その中で、昨年の核禁条約、核兵器禁止条約の交渉会議が始まり、我が国がどう臨むかということに大変注目が集まりました。我が国は、御案内のとおり、実効性が担保されないということで、二〇一七年の三月、この条約の交渉会議には実質的に参加をしないということで判断をしたところでありました。当時はメディアからも大変厳しい声もありました。

 しかし、なればこそ、我が国として、我が国の思いとして、我が国のスタンスとして、この核兵器なき世界というものに対しての不断の努力を続けていくということは、もちろん取り組んでいかなければいけないわけでありまして、その決意をお伺いしたいということ。

 また、あわせて、非核三原則でありますが、これも昨今、議論の中で見直しなどという話も出ることがあるわけですが、これは、唯一の被爆国として私は堅持していかなければいけないものだというふうに思いますが、この核への取組、また非核三原則について、あわせてお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 非核三原則につきましては、政府としてこれを堅持していくというのが方針でございます。

 今御指摘いただきましたように、日本は、核兵器国と非核兵器国、そして非核兵器国も核禁条約をめぐって少し分かれてしまっておりますが、こうした間をしっかりと橋渡しをしていこうというのが日本の役割だろうというふうに思っております。

 私の前任の岸田前外務大臣は、広島出身ということもありまして、賢人会議を立ち上げて、核軍縮あるいは核廃絶のために何ができるか、日本として何をすべきかという議論をする場をつくっていただきました。きょう、あすと、長崎でこの賢人会議第三回目会合が開催されることになっております。

 また、日本としては、NPT、CTBTあるいはFMCTといった核に関する現実的な条約をしっかりと進めていこうということで、NPTに対しても、しっかりとこれを、いかにこの体制を発展させていくかということを常々議論しているところでございますし、CTBTに関しては、さまざまな国に、私からも、この署名そして批准ということを訴えかけてきているところでございます。

 また、毎年日本が国連に提出をしている核廃絶決議も、ことしは核兵器国の共同提案もあり、百六十カ国が賛成をしてくれる、そういう状況になりました。

 日本として、唯一の戦争被爆国でございますから、しっかりと現実的な核軍縮、核廃絶への道を歩んでいきたいというふうに思っております。

武井委員 ありがとうございます。

 確かに、今回はちょっと一歩進んだかなというような思いもあります。引き続き不断の努力をお願いしたいと思います。

 時間の関係もありますので、ちょっと最後になるかと思いますが、所信表明の中で、国連の職員の増強の話がございました。

 よく、我が国は拠出金の割合に比べて国連職員が少ないのではないかというふうに言われておりまして、G7各国が大体、国連の職員千人を超える中、我が国もJPOなどのプログラムを活用してふやしてはいますが、現在八百五十名ということでありますし、また、ニューヨークの国連の事務局の職員に関しては、国連が発表している望ましい職員数では百九十七名ということになっていますが、現在、日本人は七十九名ということになっております。

 言うまでもなく、国連の中枢に日本人職員を多く持つということは、これは情報の獲得にもつながるわけで、極めて大きな意義があります。

 私も、去年五月に国連安保理で演説をする機会がありまして、その際、日本人職員の方と意見交換をする機会がありましたし、また、国連職員になりたいという大学生なんかとも話す機会もあったんですが、ただ、国連というところは非常に、二年、三年の短い契約で仕事をするというのが大体主体でありまして、日本の採用の環境とはなかなか合致しないというところがあります。その際、国によっては、国連職員をやめた後、その国の国家公務員であるとか地方公務員として採用するという形で対応しているというような国もあるという話もあったところであります。

 確かに、国連職員をふやしていかなければいけないんですが、現状ですと、余りにもリスクが高いということで、どうしても若い人からも敬遠されるというところもあるわけであります。志は高くても、実際になかなかキャリアプランが描けないということは、なかなか苦しいのはそのとおりです。

 総務省に聞きますと、確かに、公務員になるには必ず試験をしなければいけないんだというわけですけれども、例えば、地方の公立病院の医師とか、公務員ですけれども、実際は、試験というよりは、むしろ首長が探して来てもらうみたいな事例もあるわけでありまして、そういう意味では、政治的な判断というものが、一歩踏み出して対応していくということも私はできないのではないかというふうに思います。

 日本の非常に国益にもかなうことでもありますので、こういったようなことについて知恵を出して前に進めていくということが重要ではないかというふうに考えますが、見解を求めたいと思います。

河野国務大臣 リスクが高いから嫌だというようなガッツのないやつは要りません。

 今の日本の国連の採用の最大の問題は、国連のやっている競争試験、これは英語ですから、まあ英語以外もありますが、日本人が英語でこの試験を受けてもほとんど通らないという英語の能力のなさというのが一番の問題で、結果としてJPOからの採用に道が限られている、そういうところにあるんだろうというふうに思っておりますので、これは文部省ともしっかり連携をして、日本の英語教育のレベルを高めてまいりたいというふうに思っております。

武井委員 大臣らしいなと思いまして答弁を伺ったところでございますが、さまざまな形で、ことしも歯に衣着せぬダイナミックな河野外交を御期待して、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

若宮委員長 次に、高村正大君。

高村委員 おはようございます。自由民主党、山口一区の高村正大です。

 きょうは、私にとって記念すべき四十八歳の誕生日ということであります。こんな記念すべき日に質問の機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。

 さて、私、この夏に、日本・AU友好議員連盟の一員として、アンゴラ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国へ議員外交の一環として訪れる機会をいただきました。

 現地では、議員外交であるにもかかわらず、多くの政府関係者や議会、与党の幹部の皆さんにお会いすることができました。彼らからは、日本の政務三役や国会議員にもっと我が国に来てほしい、自分たちの国の現状をもっと知った上での交流をしてほしい、こういう声を多く聞きました。外交というものは人と人が面と向かって信頼関係を築いていくことが大切なんだ、このことを痛感いたしました。

 河野大臣におかれましては、就任以来、活発な外国訪問を行われております。我々外交にかかわらせていただいている議員としても、本当にありがたい、こういう思いであります。心より敬意を表したいと思います。

 そこで、外務大臣、外相専用機の導入ということを主張されていました。今、本件に関する現状や進捗状況、大臣の見解などについてお願いします。

河野国務大臣 この一年三カ月で、延べ八十カ国、国の数でいくと五十五カ国を訪問いたしました。ことしはまた、TICADの閣僚会議をやりましたので、日本に来ていただいた先方の数は、多分七十六ぐらいになるのではないかと思います。ダブりがありますから、全部、足した数がそのままというわけにはいきません。

 実際、一年ちょっとやらせていただいて、外務大臣同士の個人的な信頼関係というのが、やはり物事を進めていく中で非常に大事だというふうに感じております。

 おかげさまで、ポンペオ国務長官始めG7の外相にそれぞれ相当な数お目にかかって、大体この人はこういうことを考えている、あるいは河野太郎はこういうことを考えているんだ、そういうのがわかって、会議の中でもサポートし合うということができるようになってきたかなというふうに思っております。

 また、万博の誘致ですとか国連の安保理改革、あるいはIWC、さまざまな国際会議で日本に対する支援を得るためには、やはり、SDGsじゃありませんけれども、どの国も取り残さないという精神が大事なんだろうと思います。そうなると、来ていただくのももちろん大事でありますけれども、こちらから出かけていくということもしっかりやっていかなければならないというふうに思っております。

 一年ちょっと頑張ってまいりましたが、やはり日本の羽田、成田から直行便が飛んでいる都市の数、国の数というのは非常に限られているのが現実でございますので、さまざまなところでトランジットをしながらたどり着かなければならない。あるいは、アフリカですとか島嶼国というのは隣同士の航空路線がなかなかなくて、ハブのところまで、アフリカでいえばヨーロッパまで、島嶼国でいえばハワイですとかオーストラリアですとかというところまで一々戻らなければ次に行けないというのがあって、残念ながら時間的なロスもございます。

 また、飛んでいる間、アメリカの国務長官は、保秘の電話回線で電話会談をやりながら、仕事しながら移動ができますけれども、商用機では残念ながらそういうことができませんし、チャーター機でもなかなか保秘の回線を使ってというわけにはいきません。ですから、外相の専用機があれば、更に外務大臣の仕事のやり方というのを効果的、効率的にやれるというのは、これは間違いないことだと思います。

 残念ながら、来年度の予算では飛行機の導入ということにはなりませんけれども、外務大臣の出張の仕方というのをもう少し効率的、合理的にやれる方法というのをしっかり考えてまいりたいと思っております。

高村委員 ありがとうございます。

 一部マスコミで、おねだりだとかスタンプラリーだとか、外交の本質を全く理解しない報道がありましたが、河野大臣におかれましては、どんどんと国益のため活発な外遊をしていただきたいと思います。この委員会に関しても、山田政務官のような優秀な方がいらっしゃいますので、ぜひ委員会よりも、国益のため外遊というのをしていただきたいなと思っております。

 続きまして、韓国に関してちょっと伺いたいと思います。

 先日、韓国の大法院で、旧朝鮮半島出身労働者問題について、強制動員による被害の慰謝料請求権を認め、日本企業に慰謝料の支払いを命ずる判決が出ました。私自身は、全くあり得ない、理解し得ない判決だと思いますが、日本政府の受けとめについてお願いいたします。

河野国務大臣 今般の大法院の判決は、日韓請求権協定に明らかに反する、日本の企業に不当に不利益を負わせるばかりか、一九六五年からの日本と韓国の両国関係の法的基盤、最も基本となるものを著しく毀損する、そういう判決であり、これは極めて遺憾と言わざるを得ないというふうに思います。

 このことについては、韓国政府がこうした国際法違反の状態を直ちに是正をすることを含め、適切に韓国側で対応していただきたいと思っておりますし、私は当然そうなるであろうというふうに思っておりますが、韓国側の対応ぶりをしっかりと見きわめていきたい、そう思っております。

 私は、韓国側がしっかり対応してくれるものと信じておりますけれども、万々が一にもそうしたことが行われない場合には、これはもう国際裁判を含め、あらゆる選択肢を視野に入れて、毅然として対応してまいりたいと思います。

高村委員 ありがとうございます。

 今まで韓国は、日本との関係において、今回の旧朝鮮半島出身労働者の問題にかかわらず、過去にもゴールポストを動かすようなことを多くしてまいりました。例えば、小渕総理と金大中の共同宣言、いわゆる従軍慰安婦問題など、彼らのこうした動きに対し、政府として日本の正当性を積極的に世界にアピールしていくべきだと考えますが、政府はどのように対応していらっしゃいますか。

 また、韓国は、日本以外の国に対してもこのような、ゴールポストを動かすような外交を行っているんでしょうか。もし日本だけに対して行っているんだとすれば、その原因はどこにあるとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

河野国務大臣 今般の判決が出た当日、外務大臣談話を発出すると同時に、その後、在外公館からも積極的に日本の立場を内外に対して説明をせよという指示を出して、大使からの働きかけ、あるいは公館のスタッフからの働きかけ、あるいはSNSなどを使った情報発信ということをやってきているところでございます。

 また、私も、海外からのメディアの取材を積極的に受けて、海外でもそうした発信が行われてきているところでございますので、この韓国の国際法違反の状況をしっかりと説明をしていきたいというふうに思っております。

 韓国側がどのようにゴールポストを動かしているかというのは、今ちょっと手元に情報がございませんので、必要ならば、それはまた改めてお知らせしたいと思います。

高村委員 ありがとうございます。

 もちろん、我々国会議員一人一人も議員外交等で国際社会に対して積極的に本件をめぐる日本の正当性を強く訴えていくべきだと思っておりますが、政府におかれましては、通常の外交ルートやアピールだけじゃなくて、より多くの言語で、より伝わりやすい形でアピールをしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 続きまして、十月十一日、韓国国際観艦式において、韓国政府が、我が国を含む関係国に対して自国国旗と韓国国旗以外の掲揚は認められない旨、統一的な方針を示した、このように伺っております。それにもかかわらず、文在寅大統領の乗艦した船には李舜臣を象徴する旗を掲揚した。こうした韓国側の対応は著しく外交儀礼上も失礼ではないか、このように考えておりますが、政府の受けとめ方をよろしくお願いします。

田村政府参考人 お答えいたします。

 先般の国際観艦式に際しては、韓国政府から、我が国を含む各国に対し、自国国旗と韓国国旗以外の掲揚は認められない旨の統一的な方針が示されました。

 我が国としましては、この統一的方針を受け入れることができないことから、やむなく本件観艦式への不参加を決定したところでございます。

 このような経緯がある中で、主催国の韓国自身が御指摘のような国旗以外の旗を掲揚したことは極めて残念であると認識しております。

 このような我が国の考え方につきましては、外交ルートでしかるべく韓国側にも申し入れたところでございます。

高村委員 続いて防衛省にも伺いたいと思います。

 個人的に、日韓防衛交流を一時的にとめるなど、韓国側に対しても何らかのペナルティーを科す、このようなことも検討するべきであると思いますが、本件を受けて、今後の日韓防衛交流、今後の見通しについて教えてください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国が主催しました国際観艦式のてんまつにつきましては、ただいま委員の御指摘のあったとおりでございます。

 防衛省としましては、このような事態になったことは非常に残念である旨は累次にわたり韓国側に伝えてきておりまして、十月二十日にシンガポールで行われました日韓の防衛相会談におきましても、岩屋大臣の方から、鄭国防部長官に対し、直接抗議を行った次第でございます。

 他方、日韓防衛協力の推進は、インド太平洋地域の平和と安定のため、極めて重要だと考えております。十月の日韓防衛相会談におきましても、岩屋大臣と鄭長官との間で、防衛当局間の意思疎通をより緊密に行い、両国間の困難な問題を乗り越え、今後も引き続き両国の防衛協力、交流を進展させていくことで一致をいたしました。

 防衛省といたしましては、北朝鮮問題を始めとするさまざまな課題に対し、日韓、日米韓で引き続き緊密に連携していくことが重要であると考えておりまして、韓国との間で、今後とも、言うべきことはしっかりと言いつつも、しっかりと意思疎通を図ってまいりたいと考えております。

高村委員 ありがとうございました。

 防衛省の見解もよくわかりましたが、韓国国際観艦式への自衛艦派遣の見送り、韓国国会議員による竹島上陸、そして今回の大法院の旧朝鮮半島出身労働者に対する判決など、韓国側はとても未来志向と言えない行動をとっております。

 そもそも、このような環境下で、韓国という国はまともな外交相手になり得ないんじゃないか、このような声も一部にありますが、今後、日本政府として、両国間の懸案をいかにマネージし、日韓関係をどう進めていくのか、よろしくお願いします。

河野国務大臣 ことしは小渕・金大中パートナーシップ宣言から二十年という節目の年でございますので、日韓関係を未来志向に動かしていこうということを、これは常々、ことしの初めごろから、外相間だけでなく首脳間でもそういうことを確認してきたわけでございます。

 ところが、この間、一連の、竹島エビとか、オリンピックにおける統一旗云々という話もございましたし、御指摘をいただいた自衛隊の旗の問題、それから韓国の国会議員による竹島上陸、こうした、とても未来志向とは言えないような動きが続いている。特に、この自衛隊の旗の問題は、これまで全く問題がなかったものを、今回突然向こうが一方的に提起をしてきたということで、ここは、一体全体、未来志向でやっていこうという中でこういうことが続くということは一体どういうことなんだろうか、いぶかしく思っているところでございます。

 ただ、今回のこの大法院の判決は、こうしたものとは全く性質が違う、つまり両国関係の法的基盤を根本から覆してしまうようなものでございますので、この大法院判決については、これはもう韓国側で直ちに適切に対処していただかなければ両国の関係が非常に厳しくなるという状況でございますので、まずこれに対して適切に対応してもらうと同時に、未来志向でやろうというこの精神に反するようなことについては、韓国側に適切に対応を求めるように、少ししっかりと強く話をしていきたいというふうに思っているところでございます。

高村委員 ありがとうございます。

 韓国も、引っ越せない隣の国ですから、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

 続きまして、北朝鮮問題について伺いたいと思います。

 安倍総理が金正恩委員長と直接向き合う決意を述べました。日朝首脳会談に向けた見通し、調整状況等について教えてください。

 また、拉致問題解決に向けてどのように取り組んでいかれるのかについてもお願いいたします。

河野国務大臣 北京の大使館ルートを始め、さまざまやりとりをしているところでございます。

 先般の国連総会では、日朝の外相会談というものを座った形で行いました。ただ、その内容につきましては、今後の交渉に影響を及ぼす可能性がございますので、公にすることは差し控えたいと思いますが、拉致問題についても、御家族も御高齢になる中、あらゆるチャンスを逃さずに、しっかりと対応してまいりたいと思います。

高村委員 昨今の米朝首脳会談などを受けて、融和ムードを過度に楽観視して、我が国に対する北朝鮮のリスクが減ってきている、このような論調が一部に見られますが、北朝鮮の核、ミサイル等を含む、北朝鮮の我が国に対する脅威に関する政府の現状認識をお願いいたします。

河野国務大臣 シンガポールの米朝首脳会談以降、核実験あるいはミサイルの発射ということは行われておりませんが、依然としてノドンミサイルを多数持っている、あるいは核兵器の開発は相当進んでいる、この状況に何ら変化はございません。

 引き続き、北朝鮮、国際社会への脅威である、この認識には変わりはございませんので、国際社会が一致して、北朝鮮の核、ミサイルのCVIDに向けて国連の安保理の決議を完全に履行する、この国際社会の足並みをそろえた状況を今後とも維持してまいりたいと思っております。

高村委員 大臣、ありがとうございます。

 北朝鮮の脅威の認識というのは全く変わっていない、このようなことだとわかりました。

 政府におかれましては、いろいろな雑音に惑わされることなく、外交、防衛一体となって、国民の生命財産を守るため、全力で頑張っていただくことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

若宮委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 おはようございます。公明党の遠山清彦でございます。

 先国会に続きまして、当外務委員会で理事をさせていただくことになりました。また、公明党の政調で外交部会長に就任をさせていただきましたし、党本部では引き続き党の国際委員長として党外交の責任を持たせていただいております。河野外務大臣を始め外務省の皆様に引き続きいろいろとお世話になるかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、所信に対する質疑をさせていただきますが、まず最初の質問、私も先ほどの高村委員に続きまして、韓国の大法院、これは日本で最高裁に当たるところになりますが、から日本企業に対しまして十月三十日に判決が出されて、原告一人当たり一億ウォン、約一千万円の損害賠償の支払いを命じたということについて伺いたいと思います。

 これにつきましては私は大臣と見解は一緒でございまして、特に日韓請求権協定の第二条には、明確に、「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」と、条約本文の中にこのことが書かれているわけでございまして、今回の判決は請求権協定そのものに違反をしているという意味でまことに遺憾に思っているわけでございます。

 ただ、今我々が直面している事態というのは大変難しい面がある。これは一般論でありますけれども、三権分立論でいえば、韓国の行政府が三権分立の一方である司法機関の判断を尊重せざるを得ないというのは一般論ではわかるわけでございます。しかし、韓国の行政府が所管している外交の分野においては、大臣が繰り返しおっしゃっているように、日本との二国間関係の法的基盤が揺らいでしまうような判決が出てしまったということでございまして、韓国政府の立場に立てば、外交上どうするのかということが問われる事態になっているわけであります。

 そこで、私は、大臣の答弁をいただく前に指摘をしておきますが、日韓請求権協定の第三条には何と書いてあるかといいますと、この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず外交上の経路を通じて解決すると定められているわけでございます。つまり、この日韓請求権協定で規定をされていることについて、日韓両国間で紛争があればまず外交上の経路で協議をしなければならないと書いているわけでありますけれども、それにも今回の経緯は反しているのではないかということかと思います。

 大臣、後ほど、これについてコメントがあればいただきたいと思いますが、また、この第三条には、では実際に紛争が生じたらどうするかということも、手続についても書かれておりまして、これは、仲裁委員会を設置してその決定に服することも条約自体が要請をしているということになっております。

 そうしますと、この日韓請求権協定の規定について、日韓両国で争いが、日本側から見ると生じていないわけですけれども、争いが生じた場合は、本来は、この請求権協定の三条に従って、仲裁委員会の設置を求めてその決定に服するというものがありますけれども、今回はそれと違う経路をたどっているということかと思っております。

 ただ、今この状態になりまして、請求権協定三条のとおりに今後物事が進んでいくのかどうか、懸念を持っている方は多いと思いますが、改めて、もう少し先ほどの答弁よりも深掘りして外務大臣の御答弁を求めたいと思いますし、今後、日本の政府として、こういった仲裁委員会の設置を求めていくのか、あるいは、既に新聞でも報道がありますけれども、ICJ、国際司法裁判所に訴えていくということもお考えなのか、今後の対処方針もお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 繰り返し申し上げているように、今度の判決は、日本企業に不当な不利益を負わせるものであり、何よりも、一九六五年の国交正常化以来の両国の関係の法的基盤を根本から覆すというものでございます。

 この国際法違反の状況を含め、韓国側には直ちに是正をするということを強く求めてきておりますし、適切に対応するように求めてきておりますので、私としては、韓国側が速やかにそうした適切な措置をとられるというふうに思っているところでございます。

 しかし、万々が一の場合には、先ほども申し上げましたように、あらゆることを視野に入れて対応せざるを得なくなるということも申し上げてきているところでございます。

遠山委員 大臣が韓国側に是正を求めるという是正というのは、より具体的に申し上げれば、韓国の司法機関は日本の企業に賠償命令を出している、それを是正するためには、韓国の国会において、立法措置で、その日本企業に対して判決が求めている賠償を、韓国政府が国内処理をするという意味で肩がわりをして賠償する、こういった措置を指しているんでしょうか。

河野国務大臣 我々が求めているのは、日本企業が不当に不利益をこうむることがないようにということと、一九六五年以来の両国の国交のベースになっている法的基盤がきちんと正しく維持されるということが大事でありまして、そのためにどのような対応をするかというのは、これはもう韓国側がお決めになることでございますから、それについて私がどうこう申し上げる立場にはないというふうに思っております。

遠山委員 わかりました。

 確かに、大臣がここで韓国側がどうすべきかを余り具体的に言い過ぎると、また違う、内政干渉だとか、そしりを受ける可能性もございますので、今の御答弁でよろしいかと思います。

 ただ、きのうの新聞では、韓国の国会は、そういう是正のための立法措置をとるのではなくて、日本側に賠償を求める決議案を出しているという報道もございまして、非常に懸念をしているところでございますが、外務大臣には毅然と対応していただければと思います。

 ちょっと時間の関係で一問飛ばしまして、次に、学校保護宣言という文書についてお伺いをしたいと思います。

 これは二〇一五年にノルウェー政府と国際NGOが策定した文書でありまして、法的拘束力はございません。ございませんけれども、この文書は、武力紛争時に学校や大学を保護する、つまり、攻撃対象にしないということをうたった文書でございまして、付随しているガイドラインとともに、世界各国に承認、英語で言うとエンドースメントですね、これを求めております。

 国際条約ではありませんので、このエンドースメントという手続は、国として支持する姿勢を示すオフィシャルレターをノルウェー政府等に送付すれば完了するという認識でおりますけれども、現在、欧州諸国を中心に八十カ国とパレスチナがエンドースをしておりまして、この策定したノルウェー政府や市民社会等からも、日本政府に対しても同様に承認の措置をとってほしいと求める声がございます。

 私は、個人的に、紛争下であっても、教育現場である学校の施設を軍事利用しない、また軍事攻撃の目標としないということは極めて重要な考え方であると思っておりますが、日本政府のこの文書に対する評価を聞きたいと思います。また、あわせて、もし政府としてエンドースできない理由があるのであれば、具体的にそれをお示しをいただきたいと思います。

河野国務大臣 この安全な学校宣言は、いつでしたか、小熊委員からも御提起をいただきました。それを受けて、外務省、防衛省を始め、政府内でエンドースできないかということで検討してまいりました。

 武力紛争下においても紛争当事者は学生の安全と教育を保護すべきであるというこの宣言の目的は、基本的にそのとおりで、日本政府も評価をしているところでございますが、例えば、この武力紛争下で学校や大学を軍事目的利用から守るガイドラインの中には、開校中の学校や大学を軍事上の努力を支援するためにいかなる形でも使用してはならないというふうにされておりますが、例えば国際人道法上、かかる義務は一般に課されておりません。また、このガイドラインの中には、自衛隊の部隊運用への影響を踏まえると、必ずしも日本の実態にそぐわない内容も含まれているというふうに考えられます。

 もちろん、このガイドラインには法的拘束力はないということは承知をしておりますけれども、このガイドラインをエンドースするということは、道義的あるいは政治的観点からその履行を目指すということを意味するようになるわけで、私としては、エンドースするならば、政府による履行の可否を念頭に置いてやはり対応していくのが責任のある対応だろうと。

 残念ながら、政府内の協議によれば、この目的自体は基本的に評価をいたしますが、先ほど申し上げましたように、我が国の実態にそぐわない部分もあるということで、エンドースというのは基本的に表明をしないということにさせていただいております。

遠山委員 大臣、一言だけ。

 今の考え方は私なりに理解はいたしましたが、先ほどの御説明の中で、ガイドラインの中に、戦時国際法で規定されていることをかなり飛び越えたという表現がいいのかわかりませんが、その戦時国際法の中でも義務づけられていない、禁止されていないことを禁止しているという意味で非常に厳格性が強いというところと、あと、自衛隊の運用面の整合性でというお話がありましたが、場合によっては、丸ごとエンドースするのではなくて、何か留保条件、保留条件を我が国として明示した上でエンドースするとかということができないのかということを個人的にはちょっと思っております。

 つまり、戦時国際法の範囲の中で、この保護宣言が重なる部分について、日本政府としては多分異論がないわけでありましょうから、その異論のある部分を逆にわかるように提示をした上でエンドースをしていくようなことができないのか、検討していただければということは私の要望でお伝えをしておきたいと思います。答弁は要りません。

 次に、日中関係についてお伺いをしたいと思います。

 本年は、日中平和友好条約締結四十周年の節目に当たります。年初から今日まで、さまざまなレベルでの交流を踏まえますと、四十周年の佳節にふさわしい二国間関係の関係改善の成果が積み上がってきていると、私自身、実感をしております。

 私もこの夏に、超党派の議連でございます日中次世代交流委員会の第六次訪中団の団長として、副団長は小熊さんでありますが、中国に行かせていただきました。六年連続、超党派で行かせていただいておりまして、大きな変化を与野党の国会議員で毎回感じてきているところでございます。

 また、本年十月に東京と北海道で開催をされました日中与党交流にも私参加をさせていただきまして、議員外交の次元ではありますけれども、中国側と率直な意見交換をさせていただく中で、あらゆる面で改善をしていこうという機運を感じておりますし、安倍総理の言葉をかりれば、競争から協調へ、こういう流れになっているんだろうと思います。

 その政治的にはクライマックスとも言えるのが、十月二十五日から二十七日の安倍総理訪中であったかと思います。

 同行された外務大臣として、今回の総理訪中の最大の成果とは何だったのか、簡潔にお答えをいただければと思います。

河野国務大臣 おっしゃられましたように、平和友好条約締結四十周年という節目の年に、日本の総理が訪中するのは七年ぶりということでございますが、成功裏に終わったと思っております。

 日中韓の三カ国のサミットに李克強国務院総理がお見えになり、総理がここで訪中をし、来年、習近平国家主席を御訪問いただくということで、日中関係が正常化するということの中で大きな一歩であったというふうに思っております。

 総理の訪問が七年ぶりという、間があいてしまって、その間はいろいろなことがございましたけれども、この訪問、三つのステップの二つ目として、日中関係の正常化に向けた大きな一歩であった、そう言ってよろしいかと思います。

遠山委員 ありがとうございます。

 首脳往来が最大の成果ということで、そのとおりかと思いますので、来年の習近平主席の訪日をぜひ成功裏に実現をしていければと思います。

 最後の質問、簡潔に。

 私がさきの通常国会から何度かお尋ねをしております自律型致死兵器システム、LAWS、これは市民社会ではキラーロボットとわかりやすく呼称されているわけでございますが、これにつきまして、私も同僚議員と院内勉強会を、第一回を先日開きまして、今度、第二回をまた今月二十日にも開く予定にしております。小野寺筆頭にも来ていただきますし、小熊さんも引き続きということで。そして、脳科学者の茂木健一郎先生や専門の佐藤丙午教授も院内勉強会に来ていただくことになっております。

 私が前回質問した後に、政府においては、八月末にCCWの締約国会議の第二回の政府専門家会合が開催されたと聞いておりますが、その概要と、それを踏まえた今後の政府の取組についてお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 八月に政府専門家会合が行われまして、LAWSの特徴あるいはLAWSの使用における人間の関与、国際人道法上の課題などについて議論が行われましたが、各国の立場の隔たりが大きく、一つの共通認識にはたどり着いていないというのが現実でございます。来年もさまざまな専門家会合が開催されて、議論が続くということでございます。

 日本は、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性兵器の開発を行う意図は有しておらず、兵器については人間の関与が必須であるという立場を表明をしてきているところでございますが、国際社会においてこのLAWSに関する共通認識が得られるよう、積極的かつ建設的に議論に参加をしてまいりたいと思います。

遠山委員 ありがとうございます。

 外務大臣御本人もかなりこのロボット、AI、兵器の問題には御関心が高くて、いろいろと個人的に研究されていると周囲から伺っておりますが、ぜひ大臣のリーダーシップで、この議論、日本らしい主張を国際会議の場でもしていただきたいと思います。

 あくまでも、人間の判断が全く介在せずに、人工知能の判断だけで攻撃目標を定め、捕捉をして実際に攻撃して破壊する、そういう能力を持っている兵器の開発は、私はこれは禁じていくべきだろう、こう思っているわけでございまして、ぜひともここは、外務省と私ども同じ考え方を持つ議員で協力していければということを申し上げて、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 今回から外務委員会に所属させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 先週、大臣から所信について表明いただきました。ですので、それについて質問させていただこうと思っておったんですが、その前に一点、きのうペンス・アメリカ副大統領とそれから安倍総理の会談があり、その後の共同記者会見もありましたので、そこで、日米FTAについてお尋ねをいたします。

 きのうの共同記者会見のときには、このペンス副大統領の発言について、NHKではFTAというふうに報道もされておりました。これまで安倍総理は、FTA交渉につながる交渉はやらないというふうに発言してきたわけでございますが、やはり今回のこの貿易協定の交渉、これはFTAなんじゃないんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 そうではないと申し上げております。

櫻井委員 あと、先月、十月四日に、ペンス副大統領はワシントンで講演をされております。そのときに、これは中国との話が主たる内容ではあったんですが、その話の中で、韓国ともFTAを結んだというお話をされ、さらに、ウイ ウィル スーン ビギン ネゴシエーティング ア ヒストリック バイラテラル フリー トレード アグリーメント ウィズ ジャパンというふうに発言をされています。つまり、FTAと発言をしているわけです。

 重ねてお尋ねいたしますが、これはやはり日米のFTAということじゃないんでしょうか。

河野国務大臣 そうではないと申し上げております。

櫻井委員 これは大臣もよく御理解いただいていることかと思いますが、最恵国待遇の例外としてガット二十四条があって、ガット二十四条の貿易協定、自由貿易地域を設定するということをFTAと一般的に呼んでいるんだろうというふうに理解をしております。ところが、世界の中で安倍政権だけがFTAじゃないというふうに言っているように聞こえるわけです。

 こういうふうに、安倍総理がアメリカに対して、FTAなのにFTAと言ってくれるなというふうにお願いしていること、このこと自体が既にアメリカに対して借りをつくっていることになって、交渉力を弱めていることになるというふうに懸念をするんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 その懸念は当たりません。

櫻井委員 大臣はそのように答弁されるというふうにも思っておりましたけれども、本当は、FTAかどうかというようなことで、言葉遊びで始終してしまいますと、論点を単純化させることになって充実した議論を妨げることになります。したがって、こうした言葉遊びで始終するのではなく、実質の中身の議論にするように、そしてアメリカ側に変な借りをつくらないように、交渉をぜひ進めていただきたいというふうに思いまして、大臣所信についての質問に移らせていただきます。

 先週の大臣の所信では、日米同盟の強化、それから、日中関係は最も重要な二国間関係、より一層積極的に自由貿易を推進というふうに発言されておりました。

 要するに、日本にとってアメリカは大事だ、中国も大事だ、自由貿易も大事、こういうふうにおっしゃっておられるわけですが、その日本が大事と言っているアメリカと中国との間で、今まさに貿易戦争とも言われるような激しい貿易摩擦が起きている状況でございます。

 ことしの七月に、アメリカが中国に対して知的財産権侵害ということで、それに対する対抗措置という名目で大規模な制裁関税を発動すれば、それに対して中国も対抗措置ということで報復関税、そしてそのようなやりとりを八月と九月にもやっている、三往復もやっているわけでございます。

 これ、世界の二大経済大国、ナンバーワンとナンバーツーの国がやりますと、その間に、まさに文字どおりその間にいる日本は大きな影響を受けるというふうに考えるわけですが、大臣はどのように想定されていますでしょうか。

河野国務大臣 おっしゃるように、世界一位、二位の経済大国が貿易をめぐってこのような状況になるというのは、日本だけでなく、ヨーロッパあるいはその他発展途上国を含め、全ての国に対して極めてネガティブな影響の強いものになると思います。

 特に、これだけサプライチェーンが複雑になっておりますと、アメリカ産のものだと思ってもそこに中国の部品が入っている、あるいは中国のものだと思ってもアメリカのソフトウエアが入っている、さまざまな影響が出てくる。しかも、これは一見しただけではわからなくて、何かとめてみたら、関係ないと思っていたものもそれにひっかかって入ってこなくなって、結果として自国の産業にも影響が出るということが恐らく米中間でも起こり得るんだろうと思いますし、その間にいるほかの国々からしてみると、影響がどの程度に及ぶのかというのがこれはなかなかわかりづらいという意味で、世界経済をいわば萎縮する可能性も非常にあるというふうに思っております。

 日本の立場は、あらゆる貿易に関する問題はWTOの枠組みの中で解決されるべきだというふうに思っておりまして、いかにWTOの枠組みの中へ米中を引き込んで、そこで問題解決をしてもらうかというところに注力をしてまいりたいと思っておりますが、現実は、御指摘いただきましたように、貿易戦争と言ってもいいような状況になってきております。

 日本として、日中関係が正常化する中で中国側とも話をし、同盟国であるアメリカともさまざまな場面で話をしてきているところでございますので、これがグローバルなサプライチェーンに影響を及ぼす、あるいは国際経済に大きな影響が出始める前に、日本としても、ヨーロッパを始めほかの国々とも協調して、両国に働きかけをしっかりやってまいりたいと思っております。

櫻井委員 一転して丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 まさに大臣がおっしゃられたとおりでございまして、我が国のみならず世界じゅうが大きな迷惑をこうむる可能性があるということ。

 それから、別の国際政治学者によれば、覇権国の争い。つまり、これまでアメリカが主たるメーンプレーヤーという状況の中で、覇権国というような形で振る舞っていたところに中国がチャレンジをしているのではないのか、それに対するアメリカの反撃ではないのか。こうしたケースにおいて、過去、歴史を見ると、戦争に発展したことも数多くある。そこまでいかなくても、やはりこうしたある種のレジームの変更、ゲームチェンジということが行われると、世界経済がそのチェンジのさなかに混乱するというようなこともあり得るということが歴史の教訓ではございます。

 したがいまして、そうしたことにならないように、覇権国とかというような概念そのもの、これは二十世紀以前の話として、二十一世紀においてはちゃんと世界市民として皆が協力していけるような体制を大臣も率先してつくっていただきたいということをお願いいたします。

 一方で、アメリカが中国に対して制裁関税を行った、発動した名目といいますか理由としまして、知的財産権を侵害されたというふうに言っております。そして、かなり大規模な制裁関税をかけたわけでございますが、そうすると、もしこれがアメリカの言っているとおりであるならば、この知的財産権の侵害、アメリカだけじゃなくて日本の企業もこうした侵害を受けている可能性があろうかと思いますが、この点、どのように認識をされておりますでしょうか。

磯崎副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 海外において日本企業が保有します知的財産権が侵害をされまして、模倣品が製作されたり、あるいはコンテンツ等のコピー、海賊版、こういったものが作成されて販売されることは、日本企業の稼ぐ力をそぐ行為でございますので、非常に重要な問題として認識をしております。

 知的財産権侵害による被害額、この全容につきましてはなかなか明らかになっていないわけでございますけれども、昨年、二〇一七年に実施をいたしました模倣品被害の実態のアンケート調査、これからの推計によりますと、日本企業が模倣被害によって失った利益、いわゆる逸失利益でございますが、これは全世界で少なくとも百五十億円を下らない、そのようなデータもございます。また、海外での模倣品の製造を確認した企業の約八割が、中国での製造であったというふうに答えております。

 ただ、これらのデータの中には、企業が知的財産権が侵害されているということにそもそも気づいていない、そういうこともございますので、その数字は当然含まれていないということでございますので、この百五十億円という数字は氷山の一角であるというふうに認識をしております。

 こうした状況を踏まえまして、経済産業省では、例えば知的財産戦略推進事務局、あるいは警察庁、文化庁、農林水産省、国税庁、こういった関係省庁と連携をしまして、日中間の政府間の定期協議の場を通じまして模倣品取締りの強化を要請しているところでございます。

 さらに、ジェトロの北京事務所には知的財産の専門家を配置いたしまして、企業からの相談への対応あるいは関係機関への働き方、こういうことを今実施しているところでございます。

 さらに、中小企業、小規模事業者におかれましては、なかなかコスト面で対応が厳しいというところもございますので、例えば、海外における侵害品の調査、あるいは模倣品業者に対して警告状を発出する、このような警告書の作成、こういったことについての費用の三分の二を助成しているということもございます。

 こういった取組を強力に推進いたしまして、日本企業の知的財産権をしっかりと保護してまいりたい、そのように思っております。

櫻井委員 副大臣、わざわざ来ていただきまして、ありがとうございます。

 今の御答弁で、模倣品について、百五十億円というお話でございました。百五十億円という金額は実態から見て氷山の一角というふうにおっしゃっていただきましたが、本当に、氷山の一角どころか、もっともっと、ほんの一部にすぎないのではないのかというふうにも思うところです。

 過去に、これは中国ではありませんが、韓国との間で、鉄鋼メーカー同士の、技術を盗み取るというようなことがあって、これも全く気がつかなかったのが、中国と韓国との企業の間で紛争があって、そのときに裁判で出てきたら、実はもともとの技術は日本にあったということで明らかになった。これ一件だけで百五十億円をはるかに上回る被害があったということでございます。

 こうしたこと、特に、模倣品についてはまだ表から見てわかりやすい部分ですけれども、例えば技術が盗まれた場合、特許侵害ということも、これはなかなかわからない、実際に中をあけてみなきゃわからないというようなこともありますから、見つからない。

 それからあと、そもそも日本で、ちゃんと適切に海外で権利を確保していくような努力を過去にしてこなかった。ことしも、平昌オリンピックのときにカーリングの選手がイチゴを食べている姿が報道されて、あれ、日本でつくられた品種なのに何で韓国でというようなところで、日本のそうした農産物に対する保護がちゃんと行き届いていなかったのではないのか、こうした問題も指摘されているところでございます。

 やはり、特にこうした知的財産の問題は、中国との関係において非常に大きな課題がある。アメリカが制裁で発動するというような、関税をかけるということが適切な手法かどうかは別としまして、やはりそういったものがあると、なかなか世界秩序ということもままならなくなってくるのかな。やはり各国ともお行儀よくやっていかなきゃいけないし、お行儀よくやるための、こちら側、権利を持っている側もしっかりと権利を確保していくというような仕組みをつくっていかなければいけない、そうした努力をしていかなきゃいけない。そして、それを政府もしっかりと支援していただきたいなというふうに思います。

 こうしたことはちょっとまた別な機会にも質問させていただこうと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 副大臣、ありがとうございました。

 次に、大臣の所信表明の中で、人間の安全保障というお話もいただきました。これは非常に重要な概念だと思います。既に、日本政府の数々の努力によって、国連においても共通の理解というものができているかと思います。

 ただ一方で、日本の国内で、人間の安全保障といって、広く国民の皆さん、ああそうかというふうに納得いただいているかというと、必ずしもそうではないと思いますので、いま一度ちょっと大臣に、この人間の安全保障について御説明いただけますでしょうか。

河野国務大臣 人間の安全保障は日本が打ち出した理念でありますが、二〇一二年に採択された国連総会決議の中で定義されておりまして、それを申し上げますと、全ての人々とコミュニティーの保護と能力強化に資する、人間中心の、包括的で、文脈に応じた、予防的対応を求めるものというふうに今定義をされております。

 こうした人間の安全保障の考え方は、誰一人取り残さないというSDGの持続可能な開発目標にも反映をされているところでございまして、この人間の安全保障に基づいて、TICADやらさまざま外交を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

櫻井委員 人間一人一人を大事にしていこう、平たく言えばそういうことかと思います。

 さらに、大臣は、今も御発言いただきましたが、TICADを来年横浜で開催する、アフリカの開発を力強く後押ししていきますという発言もございました。

 ただ、このアフリカの開発というのは、いろいろな面で難しいところがあろうかと思います。特に、日本から見ますと、先ほども出張の話でお話がありましたけれども、アフリカに行こうと思うと、一旦ヨーロッパ経由ということになろうかと思います。南の方ですと、南回りでヨハネスブルク等を経由して行くことになろうかと思いますけれども、そうすると、どうしても、日本から支援する、人を派遣して技術を伝えていくというようなことをやろうとすると割高になってしまうということも課題としてあろうかと思います。

 だったら、アフリカはヨーロッパに任せて、ヨーロッパに支援してもらうのがいいんじゃないのか、こういう考え方も、効率のことだけを考えればあり得るかと思いますが、日本として支援していく意味、そして日本が効率的に支援していけるというのはどういったところにあるというふうに大臣はお考えでしょうか。

河野国務大臣 アフリカというのは、やはり、何というんでしょうか、国のさまざまな機関、権限というものに対するその国の中での権威というのがまだまだないんだと思うんですね。ですから、国家に対して保護を求めるよりも、自分の所属する部族とかあるいは宗教的な固まりとか、そういうところに帰属意識があって、なかなか国としての開発が進まないというようなことがある。

 そういう中で、やはり、選挙とか司法とか国会とか税関あるいは国境警備、そういう国としての必要な機関をいかに立ち上げて強化していくかというところを少し日本としてはやらなければいけないのではないかというふうに思っておりまして、そういう意味でのネーションビルディングというのをやっていかなければいけない。

 やはり欧米型の民主主義とアジアのやり方というのは少し微妙に違うところもあると私は思っておりまして、さまざまな道筋で民主主義、あるいは開発というのがあってもいいのではないか。そういうことを考えると、少し、日本がアフリカに積極的に関与するということも出てくると思いますし、先進国から途上国へ支援をするだけでなく、南南協力を日本が助けるというようなことも、これからやはり日本外交としてやっていかなければいけないんだろうというふうに考えております。

 そういう中で、質の高いインフラですとか、産業のための人材とか、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとか、あるいは、エジプトのように、日本の教育をやってくれというようなところもありますので、この日本の得意分野でしっかり、人間の安全保障を中心に、アフリカの開発にこれからも関与していきたいというふうに思っております。

 御指摘いただきましたように、日本からアフリカへ行くのには距離もありますし、隣同士になかなか行けないということもありますので、そういうところは、やはり外相の専用機があるともう少し効率的に回れるかなということもありますので、これはまた皆様にも御相談を申し上げるところがあるかと思いますが、そうしたことで、来年のTICADを含め、アフリカにも、これはヨーロッパ任せにするのではなく、日本もしっかり関与していきたいというふうに思っております。

櫻井委員 詳しい御答弁、ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおり、ヨーロッパ型の援助というのは、ともすれば、こういういい仕組みがあるんだ、だからこの仕組みのとおりにやればうまくいくんだという、ある種、演繹的な考え方に基づくようなところが少なからずあるのかな。それに対して日本の援助の仕方は、現場が今どうなっているのか、その現場の細かい問題点を一つ一つ解消していくことによって少しずつよくしていく、ある種、経験則的な、そういうアプローチなのかな。

 まさに、アフリカの国の場合、国境線が直線的に引かれているところに象徴されるように、必ずしもコミュニティーの固まりとそれから国の枠組みが一致していないという中において、そうした日本的な、地元から、草の根から積み上げていくような開発のあり方というのは非常に有効ではなかろうかというふうに思いますので、ぜひそういった観点からも進めていただきたいと思います。

 他方で、例えばTICAD等を開催いたしますと、日本としても、アフリカを支援します、総額で幾ら支援しますというようなお約束をしたりすることになろうかと思います。そうしたお約束をしたときに、ただ、実際問題、支援しようと思っても、それから支援する必要性が高いと思っていても、まさに、現地の治安が悪いとなかなか日本から支援するというのが難しくなってこようかと思います。

 現実的な問題として、そうした危険な地域に職員等を派遣することができない、日本の開発関連の業者の方に行っていただくわけにはいかないということになってしまう。そうすると、治安のいいところに結果的に支援が集中してしまう、お約束した金額もあるからそれをしっかり達成しようとすると、治安のいい国にばかり支援が集中してしまうことになりはしないのか、こうした懸念もあるわけでございます。

 他方で、現実問題として、貧困な地域であるところは治安が悪くなりがち、やはり貧困が治安悪化の原因となることも間々あると思います。もちろん、貧困だからといって治安のいい地域もございます。ただ、貧困が治安悪化につながり、さらに、それが支援できない、支援できないから更に貧困がいつまでたっても解消できない、悪化していくということの悪循環というのもあろうかと思います。

 こうした悪循環を断ち切って、よい循環に持っていくためにはどうすればいいのか。まさに、日本の援助で治安の悪い国も、まあ、よい国もですけれども、悪い国であってもしっかり支援していくためにはどうしたらいいのか、大臣のお考えをお聞かせください。

河野国務大臣 アフリカの成長のためにはやはり治安というのは不可欠なんだと思いますし、やはり治安がいいというのが成長、開発につながるんだろうというふうに、多くの場合そうなるんだろうというふうに思っております。

 なかなか日本から人が行けないというようなところについては、国際機関などとも連携をして対応していきたい。特に、南スーダンとかソマリアなどの、例えば移民などに対する人道支援ですとか、あるいは、サヘル地域と呼ばれている、テロあるいは組織犯罪の脅威が極めて深刻になっているところについては、やはり国際機関などと連携をして、治安対策の支援とか機材の支援というのをしっかり行っていきたいというふうに思っております。

 また、人材育成の観点から、JICAを中心に、アフリカのフランス語圏あるいはスーダン、ナイジェリア、ニジェールなどを対象とした日本からのテロ対策の関連の研修ですとか、あるいは、ジブチなどでは沿岸の警備強化のための専門家の派遣ということをやっておりますし、逆にそういうところから安倍イニシアチブを通じて産業人材を育成する、そういう人材育成のようなこともしっかりやらなきゃいかぬというふうに思っております。

 また、最近は日本のNGOから、日本が注意喚起をして、NGO、退避してくださいと言うけれども、ほかの国のNGOが入っているケースがあったりするじゃないかと。一律全部出ろと言うのではなくて、少しNGOに対しても、きちんと治安の確保ができる能力のあるところを中心に、少し入ってお手伝いをするということができるんじゃないかというような問題提起もいただきましたので、例えば南スーダンなどに見に行っていただいて、それなりに治安に関する対策がとれるならば、少し日本のNGOあるいは日本の機関としても入っていくことを検討できる余地を残そう、そういうことも今やっているところでございます。

櫻井委員 職員の安全確保、職員だけではなく、そこで働く方々の、派遣される人たちの安全確保ということと、それから開発支援ということをなかなか両立させるところは難しい部分もありますが、丁寧に可能性を広げるようによろしくお願いします。

 続きまして、もう一つ、国内における人間の安全保障と言っていいのかどうかわかりませんけれども、人間一人一人大切にしていきましょうということに関して、きのう衆議院本会議で外国人労働者の問題、出入国管理法の審議が始まりました。

 この中で、例えば、立憲民主党からは山尾議員から、数々のこれまでの技能実習生の問題点についても指摘をさせていただきました。昨年一年間で七千名以上がいわゆる失踪という形で職場から逃げ出している。その逃げ出した理由としまして、最低賃金を大幅に下回るような低賃金で働かされていたとか、労働基準法に違反するような長時間の労働、残業をさせられたとか、いじめ、パワハラ、いろいろなことが指摘をされています。

 こうした問題がありますと、やはり日本の、外交の基礎というのは、究極、外交というのは一義的には政府間のものでございますが、しかし、その後ろにはそれぞれ国民がいて、国民同士のおつき合いでもあるわけです。そのときに、国民感情、日本に技能実習生として来られた方々が、日本でひどい目に遭った、日本というのはとてもひどい国だというふうに思って本国に帰られますと、やはりそれは日本の将来の外交に対して大きなマイナスになってしまうのではないのか、このようにも懸念するところでございます。

 技能実習生の問題、今回のこの法改正に際しましてさまざま問題が指摘をされているわけでございますが、大臣としまして、日本の外交に将来悪い影響を与えるのではないのか、こうした懸念についていかがお考えでしょうか。

河野国務大臣 この技能実習生の問題は認識を委員と共有しておりまして、相手国との関係とか、あるいは国際社会における日本の評価というものに影響を及ぼしかねないというふうに思っております。

 外務省としても、この技能実習生に関する問題については非常に重く受けとめておりまして、これはもう国内外双方で取組をやらなければいかぬというふうに思っております。ベトナムなどでは極めて悪質なブローカーみたいなものが存在をしておりましたので、これはもう悪質なものというものは全部大使館のホームページに記載をして、そこからの申請は一切受け付けないというようなことをやっております。

 これは当然、国内でのことにも波及をしますので、例えば留学生で日本語学校に来る、しかし、実は日本語学校で全然勉強せずに労働者として働いているのが大半というようなケースもあるわけですから、それはもう国内でも対応していかなきゃいかぬということで、政府内、関係省庁ともやりとりを始めているところでございますので、御指摘の点はまさにそのとおりだと思いますので、これはしっかり外務省としても対応してまいりたいと思います。

櫻井委員 御答弁ありがとうございました。

 もしかしたら、外務省は所掌外だからといって冷たい答弁をされるのかなというふうにも思っておったんですが、丁寧にしっかりやっていただける、外交問題にも発展しかねないということでございましたので、ぜひ大臣もしっかり話に加わっていただいて、頑張っていただきたいと思います。

 次に、ちょっともう時間もなくなってまいりましたけれども、国際機関の日本人職員増強ということも大臣おっしゃっていただきました。既に武井委員がこの点について質問されておりますので、ちょっと重ねての話にはなりますが、英語力の不足というのが最大の問題だというふうに大臣はおっしゃいました。

 もう一つ、国際機関の最近の傾向といたしまして、女性職員を登用していくんだ、どの国際機関も、男女半々にするということで、同じぐらいの能力だったら女性を優先的に採用するということがあろうかと思います。

 日本国内で男女共同参画が進んでいないことが、やはり職場経験のある、職務経験のある女性が日本人として少ない、そのことが国際機関で日本人職員に働いてもらうというような機会損失になっているのではないかというふうにも考えるんですが、この日本国内での男女共同参画のおくれとの関連では大臣はどのようにお考えでしょうか。

河野国務大臣 私の出張の折に、ニューヨークですとかジュネーブですとか国際機関が多くあるところ、あるいは国際会議に行った際には、そこへ来ている国際機関の日本人の職員の方、よく集まっていただいていろいろな意見交換をさせていただくんですが、国際機関、これはもうどの国際機関と言ってもいいんでしょうけれども、圧倒的に女性優位といいますか、女性が多いんですね。

 かなり、私が外務大臣になってから、国際機関に日本人を採れとプレッシャーをかけているんですけれども、国際機関が日本人を採用しようとすると、日本からは女性ばかりだ、こう言われて、むしろ、おっしゃるように、国際機関は今このジェンダーギャップを埋めようとしていますので、同じ能力なら女性を採るというような状況の中で、日本からは女性が多いというのはむしろ歓迎をされている状況になっておりまして、日本の男性にもうちょっとガッツを持って外へ出てもらうということは大事なのかなというふうに思っております。

 もう一つは、やはりこういうチャンスがあるんだということをもう少ししっかり周知徹底しなければいかぬと思っておりまして、日本人が留学している留学先でも日本人向けにこうしたガイダンスをやったり、あるいはソーシャルメディアを使って情報発信をしたりということをやっておりますので、女性に限らず、むしろ男性にもしっかり国際機関に応募していただきたいというふうに考えているところでございます。

櫻井委員 時間になりましたので質問をこれで終わらせていただきますが、国際機関というのは、外務省にヒアリングをさせていただいたときには国連職員の数字はいただいたんですけれども、国連職員以外の国際機関もたくさんありますので、そういったところについても、もしかしたら外務大臣は所掌外の分野もあろうかと思いますが、その点も含めて目くばせをよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

若宮委員長 次に、山川百合子君。

山川委員 立憲民主党の山川百合子でございます。

 前期に引き続きまして、また外務委員会として立ってまいります。どうぞよろしくお願いをいたします。

 河野大臣は、先週、所信を表明なされました。その中で、六つの重点項目の中で一つ目に挙げているのが、日米同盟の強化ということを挙げていらっしゃいます。そこできょうは、まず最初に、日米関係について二つほど、大きなテーマで伺っていきたいと思います。

 一つ目は、日米地位協定についてでございます。

 一般国際法と日米地位協定との関係について、前期の五月十一日の外務委員会で我が党の末松委員が、外務省ウエブサイトに記載されている考え方、すなわち、一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されないとの考え方は、国家主権と駐留軍に認められている特権との関係が主客逆ではないかという質問をされていました。その後、井上委員も同様の質問をされておられました。

 そこで、改めてお尋ねしたいのですが、一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されないという考え方は、実際に多くの国で採用されているのでしょうか。このような考え方は、外務省が示されているように、一般国際法上、慣習として確立されているのでしょうか。具体的な例を挙げて御説明いただきたいというふうに思います。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省のウエブサイトには、委員ただいま御指摘の記載と同時に、米軍の行為や、米軍という組織を構成する個々の米軍人や軍属の公務執行中の行為には、日本の法律は原則として適用されないが、公務執行中ではない米軍人や軍属、また米軍人や軍属の家族は、特定の分野の国内法の適用を除外するとの日米地位協定上の規定がある場合を除き、日本の法令が適用されるという記載、あるいは、一般国際法上、米軍や米軍人などが我が国で活動するに当たって、日本の法令を尊重しなければならない義務を負っているという記載も同時になされているところであります。

 このようなウエブサイトの記載は、一般国際法上、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員は、受入れ国の法令を尊重する義務を負うが、その滞在目的の範囲内で行う公務について受入れ国の裁判権等から免除されると考えられるという趣旨を述べたものでございます。

 免除の具体的内容については個々の事情により異なり、必要に応じて、こうした一般国際法上の考え方を踏まえつつ、当該軍隊の派遣国と受入れ国との間で個々の事情を踏まえて詳細が決定されると承知しております。

 軍隊の性質を踏まえましたこうした考え方は、国際的に広く共有されていると理解しているところであります。

山川委員 在日米軍の駐留に伴う不都合な事件や事故また事情が生じた場合は、政府は、日米地位協定の改定を提起するのではなくて、日米合同委員会で地位協定の運用の改善を求める形で、これまでも対応をされてこられました。

 しかし、日米合同委員会で確認若しくは決定された事柄は、守られるべき厳格な法規定というよりも、実態としては紳士協定のようなものではないでしょうか。しかも、発表された日米合同委員会の合意事項には多くのただし書きが散見されて、米軍にとって職務運用上必要と判断されれば確認事項は守られなくてもいいという暗黙の了解がその紳士協定の大前提になっているのではないかという印象を私は国民に与えかねないというふうに思っています。

 例えば、我が国の住宅街の上空において米軍機が低空飛行をしても罰せられない。これは、我が国の住宅地においてでも、米軍機が低空飛行訓練をするためであれば許される。しかも、そのことを担保するために航空特例法がつくられて、それが米軍機の低空飛行を許す国内法上の根拠になっているのだと私は認識しているんですが、この認識で間違いないでしょうか。この点については、国土交通省の政府参考人から、確認の意味で御答弁をお願いいたします。

 そして、あわせて、その認識が正しいとすると、そもそも一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別な取決めがない限り接受国の法令は適用されないという慣習があるのに、一般法である日本の航空法に特例を認める航空特例法が必要だという論理には、やはり矛盾があるのではないかというふうに思うわけであります。

 接受国の法令は適用されないといいながら、航空特例法の規定が必要なのだとすれば、米軍にも日本の航空法を遵守する義務が日米地位協定や日米合同委員会の合意事項のどこかで規定されているのでしょうか。それとも、米軍が遵守すべき個別的ルールが規定されているのではなくて、やはり日本国の主権を尊重し、国内法を遵守すべきという大前提が合意として定められているのでしょうか。この点の御答弁をお願いいたします。

 接受国の主権のもとで国内法を遵守する義務が大前提となっている中で、駐留を認められた外国軍隊の特権と地位を例外的に規定するのが諸外国における地位協定の考え方だというふうに私は理解をしています。しかし、外務省が立っている立場ではそもそも接受国の法令は適用されないという、やはりこれは主客逆の実態が日米地位協定の根本にあるのだとすれば、主権国家として、これを改定することを視野に入れた日米協議を始めるべきではないかというふうに思います。

 国民感情として、米軍が好きなように低空飛行訓練を行える等、感情が逆なでされるような具体的な事例について、実際は、米軍に対して、国内法、国際法上どのような規制があるのか、これをわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。

高野政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員の御質問のうち、米軍機には、航空法特例法により、航空法の規定に基づく最低安全高度の規制が適用されないという認識でよいかという部分についてお答えをしたいと思います。

 航空法におきましては、その第八十一条で、航空機は、いわゆる最低安全高度以下の高度では飛行してはならないという定めがございますが、米軍機につきましては、日米地位協定の実施に伴う航空法特例法に基づきまして当該規定の適用が除外をされておりますので、委員の御認識で正しいというふうに考えております。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍は、日米安全保障条約の目的を達成するため、軍隊としての諸機能に属する諸活動を一般的に行いますことを我が国の駐留の前提としているところでございます。

 同時に、委員御指摘いただきましたとおり、米軍は全く自由に飛行を行っているわけではなく、日米地位協定第十六条に基づきまして、航空法を含めまして我が国の国内法を尊重する義務を有しておるとともに、日米地位協定第三条に基づきまして、公共の安全に妥当な考慮を払って飛行を行うことになっております。

 また、まさに委員御指摘いただきましたとおり、平成十一年には、低空飛行訓練に関する合同合意につきまして合意しまして、その中で、在日米軍は、国際民間航空機関や日本の航空法により規定されております最低安全高度と同一の飛行高度規制を適用されるとともに、学校、病院等に妥当な考慮を払うこと等とされております。

 こうした形で、日米安全保障条約の目的を達成するための米軍の活動と地元に対する影響等を、非常にバランスをとりながら、様々な運用を行っているところでございます。

 また、御質問をいただきました航空法と日米地位協定の関係でございますが、日米地位協定の五条に関する合意議事録におきまして、航空法との関係について規定がございます。それに基づきまして、特別な規定がない限りは、通行に関するものについては日本の法令によるところというものを受けておりまして、航空法の特例を定めまして、航空法の九十六条、九十七条、九十八条については米軍に適用するという定めを行っているところでございます。

山川委員 では、今の御答弁が、在日米軍の活動に対しては日本側からも米軍に対して一定の制約や制限をかけているということであったかというふうに思いますが、繰り返される米軍機の事故に関しては日本側から米側に対して何を求めているのか、具体的に御説明いただければと思います。

船越政府参考人 米軍の事件、事故につきましては、米軍が駐留する以上、事件、事故があってはならないことは当然でございまして、まさに外務省、防衛省、一体となりまして、外務省におきましては河野外務大臣の御指導のもと、事件、事故の防止、万が一事件、事故が起こった際の再発の防止策の徹底等について累次申し入れているところでございます。

山川委員 では、この地位協定について河野大臣にお伺いしたいというふうに思います。

 日米地位協定こそが、駐留米軍が日本国の主権のもとで認められるべき限定的な例外を定める法だというふうに私は認識をしております。つまり、ここに定められていない事柄については、在日米軍も日本国の主権及び国内法をリスペクトしなければならないと私は考えます。

 英語で表現されるリスペクトは、外務省においては尊重するというふうに訳されているようでございますが、これは遵守すると訳されてもいい法律用語なのではないでしょうか。つまり、日米地位協定で在日米軍の権利として例外的、特権的に定められていない事柄については、米軍も日本国の主権を尊重し、国内法を遵守する義務を負っているはずです。ですから、この一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されないという外務省の説明が、いろいろ御説明はいただきましたが、私にはどうしても主客逆に聞こえるわけであります。

 もし駐留米軍に日本国の国内法が適用されないのであれば、在日米軍が日本で守るべき法やルールが明記されるべきではないでしょうか。これをせずに運用の改善という曖昧な対処を繰り返すことで、国民の在日米軍に対する反発のようなものを誘発させ、在日米軍の日本国内における地位がむしろ危ぶまれる事態にも発展しかねないというふうにも思われます。

 沖縄の問題は沖縄だけの問題ではないという認識も広がってきて、横田空域についても一般国民に広く知られつつある状況であります。

 この地位協定の存在意義と運用についての曖昧さが、日米同盟と呼ばれる日米関係そのものを曖昧にしているとは言えないでしょうか。日本国の主権のもとで在日米軍の限定的な地位を現実的に保障するルールとして日米地位協定を再認識すべきときが来たのではないかというふうに感じているわけであります。

 日米地位協定の改定に向けた全国民的な議論を喚起することは、むしろ日米両国の全国民レベルの相互理解を促進する上でも重要で、本質的な議論に発展するのではないでしょうか。

 ぜひ日米地位協定について必要な見直しを提起することについて河野大臣のお考え、御所見をお伺いしたいというふうに存じます。

河野国務大臣 日米地位協定上の事案につきましては、政府としては最も適切かつ効果的な方法で対処していく方針でございます。

山川委員 地位協定の改定について私たちは提起をしていきたいと考えているんですが、今後とも意見交換をしていきたいというふうに思っております。

 続きまして、日米関係の中で、FMSと防衛装備品の取得と後年度負担が増長する可能性についてお伺いをしたいというふうに思います。

 日米首脳会談において、トランプ大統領は、安倍総理に対して、アメリカからの武器輸出を受け入れるように要求をこれまでもしてこられました。

 来年度の防衛省の概算要求を見ますと、対外有償軍事援助、FMSですが、による防衛装備品の取得は六千九百十七億円、新規の後年度負担としては二兆五千百四十一億円が計上されています。FMSによる防衛装備品の取得に係る当初予算額の推移を見ても、二十九年度、三千五百九十六億、三十年度、四千百二億、そして三十一年度、六千九百十七億円と増加してきており、来年度の増額幅は特に大きくなっていて、安倍内閣がトランプ大統領の要請に予算上も応えているという形になっていることがわかります。

 そもそも、FMSによる防衛装備品の取得は、これに後年度負担が設定されたり、一般的な装備品の取得が組み合わされたりしているために、実際に何に幾らの税金を投入するのかがわかりにくいという現実もあります。

 FMSによる防衛装備品の取得額が増長している一方で、海上自衛隊が来年度の導入を計画していたP1哨戒機の導入が見送られたようだという声も聞いています。仮に、自衛隊の通常装備の導入や更新、また、予算委員会でも出ていましたが、トイレットペーパーのようなものも足りないとか制限されているとか、こういう問題も指摘されていましたけれども、自衛隊のイニシャルコストを削減してまでも防衛装備品の取得経費を捻出しているのではないかという疑義が国民の間に広がりつつあるというふうに感じています。

 来年度のFMSの大幅増額がトランプ政権からの要求に応えるものなのか、また、取得する装備品はどのように決定されているのか、その決定過程において通常装備の充足や自衛隊のイニシャルコストが犠牲になるようなことは果たしてないのかどうか、FMS本来の意義と来年度の増額理由をわかりやすく御説明いただきたいと存じます。

 また、あわせて、後年度負担については、イージス・アショアなどの開発途上である装備品が、完成に至るまでに増額されることはないのか、どれほどの増額幅が容認されるのか、これは一定の幅は容認されているのかどうかということもですね、それらについてどのような予算措置を講じていくルールになっているのか、具体的に御説明をいただきたいと存じます。

鈴木(貴)大臣政務官 山川委員からの御質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 FMSについてでありますが、FMSは、経済的な利益を目的とした装備品の販売ではなく、米国の安全保障政策の一環として、同盟諸国に対して装備品を有償で提供をするものであります。これにより、一般では調達のできない機密性の高い装備品でありますとか、若しくは、米国でしか製造していない能力の高い装備品を調達できる点で、FMSは我が国の防衛力を強化するために大変重要なものであると考えております。

 先ほど、米国によって要求をされているという御指摘を頂戴をしたところであります。そしてまた、増加傾向にあるという御指摘をいただいたところでありますが、F35A戦闘機、またイージスシステムといった、我が国を守るために必要不可欠な能力の高い装備品というのは、このFMSを通じてのみ調達をする、FMSでしか調達ができない、こういった特性もあるということをぜひとも御理解をいただきたいと思います。

 あわせまして、これら米国製装備品も、中期防衛力整備計画に基づき、我が国の主体的判断のもと、計画的に取得をしているところでもあります。米国からの要求により取得をしているわけではございません。また、我が国の厳しい財政状況を踏まえれば、我が国の防衛力を強化するに当たり、一層の効率化また合理化を進めることも、これまた重要であります。

 御指摘の海上自衛隊のP1哨戒機についてでありますが、現有のP3C哨戒機等の機齢、つまり機材の年齢でありますけれども、これを延伸することによって比較的低コストで運用の必要性を満たせるということから、平成三十一年度概算要求においては、このP1哨戒機の概算要求は計上しておりません。

 いずれにしましても、我が国の防衛に万全を期す観点から、防衛力の質と量を確保していく必要があります。年末までに行う防衛大綱の見直し、中期防の策定の検討において、現在の安全保障環境を踏まえ、真に必要な防衛力のあるべき姿というものをしっかりと見定めてまいりたいと思います。

山川委員 ぜひ、真に必要な防衛力のあり方について、本当に議論をしていきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 続いて、今度は日韓関係について、徴用工問題と、韓国における個人に対する支援策について伺いたいと思います。先ほども御質問もございましたが、私の方からもお伺いをしたいと思います。

 徴用工問題をめぐる韓国の大法院による判決について、我が党の枝野代表は記者会見で、判決は大変残念であり遺憾に思うと述べて、朝鮮による日本人拉致問題などの解決には韓国との連携が不可欠だということを指摘し、韓国政府には、一九六五年の日韓請求権協定を踏まえて適切な対応をとることを強く期待しているというふうに述べています。

 当然ながら、私も枝野党首と同じ立場に立っている一人でございます。

 その上で、国家間の協定や合意のはざまで個人が忘れ去られてはならないというふうに思います。国と国との話合いがありますが、それがどうであれ、救済されるべき個人がどのように支援を受けてきたかという課題について、私は民間の国際人道支援NGO出身者として大きな関心を持っているわけであります。

 一九六五年の日韓請求権協定から既に五十三年もの月日が経過しております。今日の徴用工問題に至る、韓国における個人への支援策について、時系列かつ具体的な御説明をお願いをいたします。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国政府の措置について、日本政府として説明する立場にはございませんが、我々が、韓国政府が発表した資料等を御紹介させていただきます。

 まず、韓国政府は、日本政府が日韓請求権協定に基づき供与した五億ドルの一部を使用する形で、一九七五年から一九七七年にかけて、日本国により軍人軍属又は労働者として徴集又は徴用され、一九四五年八月十五日以前に死亡した者の遺族を対象として補償を支給しております。さらに、二〇〇五年、韓国政府みずから設置した官民の共同委員会が、日本から受領した無償資金のうち相当額を被害者の救済に使わなければならない道義的責任があると発表したことを踏まえ、二〇〇七年及び二〇一〇年に関連の支援法を制定していると承知しております。

 この支援法等によって、死亡者の遺族だけではなく、行方不明者、負傷者、治療等が必要な生存者、未収金被害者又はその遺族も対象に含める形で給付が実施されたものと承知しております。

山川委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一つ、二国間の関係として非常に重要だという日中関係についても、一つお伺いをしておきたいというふうに思います。

 これは、対中ODAの変遷と新たな日中関係についてということで、安倍総理が訪中の際に、対中国のODAの終了を発表されました。今年度をもって全ての対中ODAの新規採択を終了とするということであると思うんですが、終了するに当たって、一九七九年の開始以来、日本のODAが中国の平和と安定、また発展や繁栄にどのように寄与してきたかということを総括しておくことが、日本国民に対する説明責任という意味でも、また日中関係の未来にとっても大事なことだというふうに思います。

 対中ODAの変遷について政府参考人に、そして、今後の新たな日中関係のビジョン、今や発展した中国が対外的に進める一帯一路など、日本政府はどのように中国との関係や協力を進めていかれるおつもりなのかを河野大臣に、それぞれお伺いしたいというふうに思います。

赤松政府参考人 お答え申し上げます。

 日中国交正常化以来、我が国は、長年にわたり、中国沿海部のインフラのボトルネック解消、環境対策、保健医療等の基礎生活分野の改善、人材育成等の分野でODAを実施してまいりました。これにつきまして、総額合計三兆六千億円等の供与をしてまいったわけでございます。

 これらの支援は、中国の改革・開放政策の維持、促進に貢献するとともに、日中関係を下支えする主要な柱の一つとして強固な基盤形成をしてきたと考えております。

 以上でございます。

河野国務大臣 今般の総理の訪中で、改革・開放四十周年を契機に日中は対等なパートナーとしてやっていこうということで、対中ODAを終了するということにいたしました。

 今後は、日本と中国の間の協力関係というよりは、日中が肩を並べて、さまざまな地球規模の課題に一緒に取り組んでいこう、その中には、SDGs、あるいは、気候変動、海洋プラスチックごみ、さまざまな地球規模の課題に日本と中国で協力して当たっていこうということになろうかと思いますので、こうした協力の実施に向けた調整を日中両国の関係部局間で進めてまいりたいと思っております。

山川委員 ありがとうございます。

 最後に河野大臣にお答えいただいたところで、時間がちょっとだけありますので、先ほどの日米地位協定のところで、大臣にもう一つだけお伺いしておきたいなと思いまして、お伺いいたします。

 参考人も含めてですが、御答弁の中で、米軍に対して全ての国内法が適用されないわけではなくて、国内法が一部適用されたり、合同委員会の合意や補足協定によってさまざまな制限がかけられているということの御説明があったわけですが、このことが余り日本国民に伝わっていないというふうに思います。このことは、日米両国の全国民的な相互理解を推進する意味においても問題があるというふうに思います。

 ですので、ホームページ等で合同委員会の決定事項を報告するだけではなくて、我が国の主権がどのように、日米交渉においても協議の中で主張され、守られているのかをきちんと説明する責任が政府にはあるのではないでしょうか。この点について、ぜひ河野大臣からの御答弁をいただければと思います。

河野国務大臣 御指摘のとおり、国民の皆様にそうしたことをお知らせするのは政府の義務だと思いますので、少し対応ぶりについて検討させていただきたいと思います。

山川委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

若宮委員長 寺田君。

寺田(学)委員 立憲会派の寺田です。

 大臣及び政務三役の所信に対する質疑ということで、大臣はもちろんのこと、副大臣、政務官にも御質問させていただきたいと思いますし、それ以外、外務省の概算要求について、あとは北朝鮮の脅威について含めて、時間の許す限り質問したいと思っています。

 午前中の議論を聞きながら思ったことを、ちょっと二つばかり冒頭に申し上げたいと思うんですが、外務大臣専用機の話がありました。結論から申し上げると、私は賛成です。

 やはり、日本全体の世論という意味でいうと、まだまだ日本は非常に経済的に強くて、マーケットバリューもあって、世界の中でのポジションが非常に高いと思っている方々も多いでしょうし、そう願っている方々も多いと思うんですが、一歩やはり海外に出てみますと、中国を筆頭として、物すごい勢いで他の国が外交攻勢もしかけていますし、経済的なことでいうと、中国にはもう本当に及ばないところまで来てしまっていると思いますけれども、差が広がってきている。

 そういう意味においては、それだけではありませんけれども、人材及び、外務大臣及び外交官を含めてフルスロットルで世界じゅう飛び回って、選挙と一緒と言っちゃ申しわけないですけれども、顔を合わせて、後でも質問しますけれども、ある種、いい日本食でも食べて、人間関係をつくって、長いこと同じ立場で繰り返し会って、情報をとり、及びお互いの合理性というものを図っていくということがますます必要になってくると思います。

 専用機自体の予算というのは詳しくわかりませんけれども、まあ百億弱、会計課とかも非常に頭を抱えているという記事を見ましたけれども、チャーター機というやり方はあると思いますが、私は中途半端だと思います。

 であるならば、私はすぐにかなうべきだと思いますけれども、大臣始め政府全体として、国民の皆さんに外交の必要性というものをしっかりと説いて、それに対する必要な経費であるということ、そしてまた、すぐには出ないかもしれませんけれども、その成果というもの自体がこのようにあるんだということを知らしめながら、必要な環境というのを整えていくべきだと思います。

 何か御答弁があれば。

河野国務大臣 ありがとうございます。

 やはり、おっしゃったように、日本が思っている日本のイメージと、外から見ている日本のイメージというのが少しいろいろな面で乖離があるというのはそのとおりなんだろうと思いますので、そこをいかに埋めるかというのが一つの外交の役割だと思っております。きちんとした成果を出して、日本の外交がしっかりやっておるという御評価をいただけるように、まず頑張っていきたいと思っております。

 また、アフリカとか中央アジアとか太平洋の島嶼国とか、なかなか商用機で行き来ができないところについては当面はチャーター機ということもあり得るかなと思って、今、財政当局とそこは相談をさせていただいているところでございます。

寺田(学)委員 あともう一点。

 同僚の櫻井委員が議論されている中でなかなか冷たい御答弁があったんですが、けさ、部門会議でもTAGとFTAの違いというのが議論になりました。なかなかそれは、政治的に捉えられて、質問やら議論、意見というのはあると思いますが、まずはっきりと何が違うのかということの正式的な、政府側としてのはっきりとした答弁というのも私はまだないと思いますし、その説明自体が行き渡っていないと思います。

 ちょっと朝方に追加通告で大変恐縮なんですけれども、大臣として、TAGとFTAの違いは何かと問われれば、何であるというふうにお答えされますか。

河野国務大臣 政府としてはTAGと言ってきたつもりでございまして、なかなかそこもあれなんでございますけれども、日本政府として、FTAというのは、特定の国や地域との間で物品貿易あるいはサービス貿易全般の自由化を目的とする協定という意味でFTAという言葉を使ってまいりました。

 今回のアメリカとの間の交渉は、トランプ大統領と安倍総理の間で合意をした枠内で、これは共同声明の中でうたわれている枠内での交渉をしようということでございますので、そういう意味で、物品・サービス全般の貿易の自由化を目指しているFTAとは違うというふうに御説明をしております。

寺田(学)委員 これは外務省にお願いしたいんですが、これから日欧のEPAの条約に対する質疑というものも提案を受けていますし、国会で付託されていますので、EPAとFTAとTAGの違いという、定義も含めてですが、それを理事会の方に提出していただきたいと思いますが、委員長、よろしくお願いします。

若宮委員長 ただいまの件については、理事会で協議させていただきます。

寺田(学)委員 それでは、用意していた質問に移りたいと思います。

 今回、大臣から今御答弁いただきましたが、外務大臣以下、副大臣二名、政務官三名の方が新たにつかれて、佐藤副大臣は留任ですけれども、これもちょっと誤解を恐れずに言うと、私は、他の役所の副大臣、政務官と外務副大臣、政務官というのは、持っている意味合いがかなり違うと思います。一概には言えませんけれども、他の省庁の例えば政務官であれば、日本国内を回って、関係団体の方々からやや恭しく扱われながら、フィジカルプレゼンスとしてそこのセレモニーに出たりということはあるかもしれませんが、皆さんは、もうよくよく御存じと思いますけれども、日本国政府の代表として海外に出て、海外の要人の方々と日本を背負いながらお話をされ、そしてまた何かを決めなきゃいけないときが出てくると思います。

 ですので、非常にそういう意味では他の副大臣、政務官とは違った重い重い役割を持たれていると思いますし、当然のことながら、海外の方々も、皆さんの考え方、素性、そういうことをしっかりとプロファイリングした上で会談に向かったりセレモニーで会話をされたりすると思いますので、そういう意味では非常に重い責任を持たれていると思いますので、皆さんのお考えについて時間の許す限りお聞きしたいというふうに思っています。

 何でもかんでも聞くわけにはいかないので、河野大臣の前任の大臣が、長いこと岸田大臣がされながら、核軍縮について非常に熱心にされていますし、河野大臣も非常にその点には強いこだわりを持たれていると思います。

 今回、政務三役の方々が着任をされて、図書館に頼みまして、皆さんが過去、核に対してどのような御発言をされているのかということを調べさせてもらいました。その結果は、非常に驚いたんですが、きょういらっしゃる政務三役、副大臣二名と政務官二名の中の三名の方が、過去、核武装に関して検討を始めるべき、国際情勢によっては検討すべきということを選挙の際の新聞のアンケートに答えられています。

 これから海外に出て、日本の考え方の中心軸である核軍縮及び核の、NPTにも入って諸外国に対しても働きかけてということですけれども、その政府の代表たる方々が核武装に関して前向きと捉えられるような発言を過去されているということは、私は非常に、何というんですかね、ゆゆしきという言い方がいいかどうかわかりませんけれども、私は、この点に関して看過できないというふうに思っています。

 あべ俊子副大臣は、二〇一二年の毎日新聞のアンケートに対して、核武装に関して検討を始めるべきとお答えになっていますし、佐藤副大臣は、一三年、最初の選挙のときの毎日新聞のアンケートに、国際情勢によっては検討すべきとお答えされています。山田政務官は、二〇一二年の最初の選挙のときに、検討を始めるべき、そして去年、一年前の選挙においても、今後の国際情勢によっては検討すべきと答えられています。

 山田政務官からお伺いをしたいんですが、核武装に関する考え方をぜひ教えてください。

山田(賢)大臣政務官 ありがとうございます。

 委員会におきまして、私は外務大臣政務官として答弁する責任がありますことから、個人の見解について述べることは差し控えたいと思います。

 その上で、非核三原則及び核武装について、一般論といたしましては、国の安全保障のあり方について、それぞれの時代状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的議論があり得るとは考えますが、いずれにいたしましても、政府といたしましては、非核三原則を政策上の方針として堅持しておりまして、これを乱すような考えはございません。

寺田(学)委員 あなたの御持論は変わったんですか、それとも変わっていないんですか。

山田(賢)大臣政務官 繰り返しになりますが、委員会におきまして、私は外務大臣政務官として答弁する責任がございますので、個人の見解について述べることは差し控えたいと思います。(発言する者あり)

寺田(学)委員 自民党側の委員席からそのような合いの手が入るというのは、正直、物すごい違和感を感じます。

 いや、私は、どのような考え方を持たれるかということに関して言うつもりはありませんが、このようにお答えになった方が政府の代表として政務官になり、海外にお出になられるわけです。海外にお出になられたときに、以前このようにお話をされていますがどうなんでしょうかと言われたときに、その場は国会でもありません、どのようにお答えされるのか、そのことをお伺いしたいと思います。

山田(賢)大臣政務官 同じ趣旨になりますけれども、政府として私が海外に出る場合も同じでございまして、外務大臣政務官として海外の方にもお答えする責任がございますので、その場で個人としての見解を述べることはございません。

寺田(学)委員 再度お伺いを後でしますけれども、あべ俊子副大臣にお伺いしたいんですが、あべ俊子副大臣は非常に他の方とは違っていて、二〇一二年、既に現職ですけれども、現職の場合に、核武装に関して検討を始めるべきと言われています。ただ、昨年の総選挙の際には、将来にわたって検討すべきではないと。答えの趣旨が変わっていますけれども、どのような考え方の変化があったんでしょうか。

あべ副大臣 お答えいたします。

 寺田委員におかれましては、総理の補佐官もされた、それはすなわち、一議員として活動することと政府の中に入るということ、それをわかって質問してくださっているんだと思いながら、私、お答えをさせていただきます。

 私がこの答弁の席に立たせていただいているのは、政府の立場で立たせていただいているわけでございまして、一議員として立たせていただいているわけではございません。そうしたときに、今、非核三原則に関して、寺田委員がおっしゃったことに関してでございますが、それに関しましては、議員として発言した内容、今、政府としては、私どもはやはり、みずから核兵器を持たず、つくらず、また我が国に核兵器持込みをしないということも含めたことを、一貫して私ども政府としては整理をさせていただいているところでございます。

 以上でございます。

寺田(学)委員 三原則のことじゃなくて、お答えになられた核武装について、もちろんそれはリンクする話ではありますけれども、お伺いをしたんです。

 政府の立場というもの、政府の考え方は累次にわたってさまざまな形でお伺いしていますので、政府の立場はどうであるかということはわかっているんです。ただ、以前お答えをされたことに関して、御自身としてどのようにお考えになられているんですかと。考え方は変わりましたと言うのもそうですし、考え方は変わっていませんけれども、今、政府の立場ですので、政府の立場にのっとって、そののりを越えない限りで自分自身として発言をしてまいりたいと思いますと言われるのも一つだと思います。

 そういう意味で、昨年、一年前ですから、山田政務官、日本にとって核武装を今後の国際情勢によっては検討すべきという判断を、私は、議員として選挙に出るときに発言されることは別に結構だと思いますよ。ただ、そういうふうに考えられている方が政府の中に入って核軍縮の旗振り役の先頭に立ったところで、どのような海外的な映り方をするのか、訴求力及び説得力を持つのかということに私は疑念を持っていたので、この場で、こういう機会ですから、所信に対する質疑ということでお伺いしているんです。

 佐藤副大臣は選挙を一回しかやられていませんので、そういうアンケートはまだ一度、あとは来年だと思いますけれども、二〇一三年のアンケートの中で、国際情勢によっては核武装を検討すべきとお答えされていますが、お考え、どのようになっているでしょうか。

佐藤(正)副大臣 お答えいたします。

 委員会においては、外務副大臣として答弁する責任がありますから、個人の見解については述べることは差し控えたいと思いますが、その上であえて申し上げれば、議論することは大事だと思いますが、私は、非核三原則、これは維持すべきだという立場であり、政府と同じだと思っております。

 そのためにも、非核三原則や原子力基本法、あるいは核兵器不拡散条約、あるいはアメリカの拡大抑止政策というものについて、内容を理解する必要があるというふうに思っております。

 以上です。

寺田(学)委員 済みません、御答弁の中で、議論することは大事だがというお話がありましたが、核武装に対して議論すること自体は一つ大事なことであるということでよろしいですか。

佐藤(正)副大臣 お答えします。

 非核三原則、核武装ともリンクすると思いますけれども、これは一般論としてもよく言われますけれども、国の安全保障のあり方、これについては、それぞれの時代状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的な議論があるというふうな認識のもとに、議論をするというのは、これはあり得るというふうに思います。

 ただ、私の立場としては、私は非核三原則を維持すべき立場だということであります。

寺田(学)委員 時間が限られていますので、鈴木政務官にお伺いしたいと思います。

 うちの妻と妻同士で仲がいいので、余りこう言うのもあれなんですけれども、ママ友同士で仲がいいんですが、TPPのことについてです。

 TPPに賛否はいろいろあると思いますが、事実として、TPP関連法案に対して鈴木議員が欠席をされています。

 今回、外務省の政務官として主担当になるかどうかはまた別としながら、アジア大洋州の中で貿易及び通商交渉を含めて関係は深い立場にあると思いますが、TPPに関して御欠席されていますけれども、そのことに関してどのようなお考えだったか、そして今どういう考えなのか、御答弁いただければと思います。

鈴木(憲)大臣政務官 御質問ありがとうございます。また、妻も仲よくさせていただきまして、感謝を申し上げます。

 今、寺田委員から、私の政務官就任前の行動も含めて説明をというお話がありましたので、少し経緯を説明させていただきますと、まず、二〇一六年十一月のTPP12協定の本会議の採決に際して私が退席をさせていただいたというのは紛れもない事実であります。

 これは、二〇一二年十二月の総選挙、私の初めての総選挙でありますが、この際に、TPPについては交渉参加に反対という公約で臨まさせていただいたということも踏まえて、そういう判断をさせていただきましたが、当時は、もちろんまだ交渉参加前でありましたし、交渉参加に当たっては原則として関税を全てゼロにする可能性があるという情報もありましたので、私自身、そういう公約をさせていただいたということであります。

 ただし、その後、実際に政府が交渉に参加をしまして、しっかりと交渉していただいたというふうに思いますし、その後、国内対策もしっかりと講じていただいて、それも含めて、TPPについては影響も最小限に抑えられるということで、私自身としては、本年五月のTPP11協定の際には賛成をさせていただきました。

 いずれにしても、TPPについては、貿易自由化の枠組みにとどまらず、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々が経済ルールをつくるものであります。これを通じて経済関係の強化をすることで地域の安定に資するものであるというふうに思いますし、戦略上も大きな意義があるというふうに考えております。

寺田(学)委員 他の機会もありますので、ちょっと時間がなくなってきて、ほかの省庁を呼んでいますので、きょうはこれぐらいでとどめたいと思いますが、絶えずその点に関しては、もちろん皆さん、緊張感を持ってやられていると思いますが、どんどんどんどん、やはり、物事になれて地が出始める可能性だってあると思います。そのことを含めて、しっかりと質問は重ねていきたいと思います。ありがとうございました。

 済みません、予定していたのはもう二つぐらいあるんですが、外務省の概算要求について、ちょっと財務省にも来てもらってあれなんですけれども、先ほど、大臣に冒頭申し上げたとおり、やはり、外交力を高めること、そのために必要な、私は、大きい、専用機もそうですけれども、物すごいミクロのことも含めて、しっかりと環境の改善及び武器を磨いていくということが大事だと思っています。

 一年ぶりに外務委員会に帰ってきましたけれども、その前ずっと毎年やっていたのは、公邸料理人の待遇をもっと充実化させること。当時、今は多少変わっているのかもしれませんけれども、国から出される公邸料理人のお給料が月十七万で、残りは大使からのポケットマネーでと。そういう中で頑張ってくださっている公邸料理人の方々にも頭も下がりますが、そういう方々の待遇をもっとよくすること、ないしは、もっといい人材を呼ぶために待遇をよくすることが大事だと思いますし、全体的な予算から考えたらそんなに大きな負担にならないと思います。

 公邸料理人の待遇改善のため、向上のための予算を毎年ふやすようにというお願いをしていますけれども、ことしも、前年度が六・五億から概算要求で八・一億。私は、もっともっと踏み込んで、海外で、ニューヨークだ何だはまだいいですけれども、ほかの公館で、やはり日本大使館の日本料理が一番おいしいよなと、その御飯目当てでいいからまず行ってみようというところでもいいから、人脈をフックしてつなげていくということは大事だと思いますので、もっとこれは踏み込んで要求をし、獲得するべきことだと思います。

 外務省から説明を受けてもなんなので、今、きょう財務省から、どうも忙しいのに済みません、一言頑張るぞと。

 そしてまた、もう一点言いますけれども、介護を抱えた職員に対する新規で〇・三億円、まあ新規ですのでロットが小さいですけれども、これも、私、会社時代の先輩が今あるところの、上司ですけれども、大使をしていまして、その何年か前に、何か改善すべき要点はないですかと聞いたところ、介護のための負担が結構重いんだという話でした。

 外務省に聞けば、やはり当然、大使なりなんなりで出ていくのは四十、五十、六十の方々が多くて、両親の介護を抱えていて日本に帰らなきゃいけないけれども、それを自腹で、それこそ近ければいいですけれども、アフリカ諸国だったり南米だったりそういうところだと、本当に一回一回が大変です。三千万という額自体は小さいと思いますが、私は大事な一歩だと思います。

 この二点を合わせて財務省からの御答弁をもらいたいと思います。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 二点ございました。

 まず、公邸料理人についてでございますけれども、公邸料理人につきましては、公的契約に基づく委嘱料理人という新しい形の制度、この配置を平成二十七年度から試験的に実施をして、この際、十公館行いましたが、これを平成三十年度、今年度の予算においては十六公館まで拡充するなど、取組の強化を図っているところでございます。

 財務省といたしましても、引き続き、外務省からの御要求、御要望をお聞きしながら、公邸料理人の果たす外交上の役割の重要性、これを踏まえながら適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

 それから、続けてお答えを申し上げます。

 もう一点、介護支援手当に関してでございますが、三十一年度の概算要求において介護支援手当の創設に関する予算要求をいただいております。

 介護を要する状態にある御家族を日本に残して在外公館で勤務する職員の方々への支援ということでございますけれども、これにつきましては、民間企業における仕事と介護の両立支援策というものの取組状況なども踏まえながら、予算編成過程において外務省とよく議論し、検討してまいりたいというふうに考えております。

寺田(学)委員 大臣、一番海外を回られているので御存じだと思いますし、できれば問題意識を共有してほしいなというふうに思っていますけれども、さきのチャーター機と専用機の話でもないですけれども、もちろん一歩一歩着実に改善をしていくことは大事ですが、それ以上に、はるかに速いスピードで、特に中国なんていうのは外交攻勢を強めているので、こういう予算のつけ方を含めてもっとドラスチックにやらないといけないと思っています。

 さすがに、百億近い専用機の話が、いきなり話ができ上がるというのはなかなか難しいのはわかっているんですけれども、公邸料理人だったり、あと介護のための帰国費用の負担であったり、やはり日本はまだまだ魅力がたくさんあると思いますけれども、とはいえ、それにあぐらをかいていたところで、どんどん追い抜かれているのはもう明らかですので、考えられるところを、改善をもっとドラスチックにやっていくべきだと思います。

 公邸料理人って、何か、私いろいろな人に言っているんですけれども、なかなかぴんとこないところがあるんですが、やはり人間ですから、食事をして、おいしいものを食べて、もちろん外交のためですよ、おいしいものを食べて、そして人間関係をつくって、情報をとれる関係になって、意見し合える関係になって、大事だと思います。

 今、十公館から十六公館に上がると言っています。そういうレベルじゃなくて、もう本当に、私は、恐らく今日本の本当のいい日本料理をやられる方だと月百万でも来ないと思います。

 今、最近は海外にかなり出て、例えば四谷のすし匠さんがハワイに出てリッツの中でやって、本当に日本料理というもののすばらしさを伝えたりしていますけれども、やはりああいう形でどんどん、本当の一流の人間及び一流の人間から学んでいる本当に番頭格の人間がどんどん海外に出て、三年やって箔をつけてきて帰ってきて、日本のマーケットの中でも物すごくブランドを持つ。三國さんとかは今そうだと思いますけれども。

 そういう形で、この公邸料理人の待遇改善は、やろうと思えばすぐできることだと思うんです。大臣、どうですかね。

河野国務大臣 やはり海外に行くと、日本の大使公邸の飯がうまいと。だから、大統領、首相を始め、いろいろな人が声をかければ来てくださるという状況になっている国が結構あるんです。ですから、これはやはり大きなツールだと思っています。

 一つは、予算を少しふやして公邸料理人の給料を上げていくということは今後もやっていきたいと思っておりますが、それだけではなかなかうまくいきませんので、例えば、ミシュランに公邸へ来てもらって、うまければ星をつけてもらう、星をとった料理人だといって日本に将来帰ってこられるとか、あるいは、アブダビの大使館を、冠をつけて三菱商事アブダビ大使公邸とか、何か少し民間の力を入れたやり方だって考えられなくはないんだろうというふうに思っています。

 極端なことを言えば、大使公邸をどこかの企業と共有してもらって、大使が使う日と、どこかの企業がお客さんをおもてなしをする日、こう分けたっていいんだろう。それで給料が上がって、いい料理人が来てくれるんだったら、そういうやり方だって当然あるんだろう。それはもう別にニューヨークだってパリだって、そういうことはやれないことはないだろうと思っていますので、さまざまなやり方を考えながら、この公邸料理人については強化をしていきたいというところは全く同じ問題認識であります。

寺田(学)委員 今回の概算要求自体は既に出し終わっている問題ですから、今度の予算審議というのはこの枠の中だとは思いますけれども、次の機会、どういう政権の形になっているかは別としながら、そこは大胆に踏み込んでほしいなと思います。

 あと、海外、仕事で、委員会派遣で回ったりしていると、若い人たちが本当に頑張ってくれています。赴任というんですか、駐在したときに、初年度の負担が物すごく自腹が多くて、後々ある程度補填されるんですけれども、大変だったり、あとは、インターナショナルスクールがないようなところに赴任する方々、若い人たちも大変な思いをしたり、学校教育をどういうふうにやったらいいのかということで、子供と一緒に来られない、単身赴任になってしまう。

 そういうこともあると思うので、本当に小さいことかもしれませんけれども、そういうところを意見交換しながら、ぜひとも大臣として外務省を引っ張って日本外交を強めてもらいたいというふうに思っていますので、よろしくお願いします。

 以上です。

若宮委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国民の小熊慎司です。

 まず初めに、遠山さんはいないんだけれども、この夏、武井委員とも一緒に中国に、超党派の、先ほど遠山委員からも御紹介あった六回目になる訪中をしてきましたが、北京、そして広東省、シンセン等を見て、その後、香港から出てくるときに、香港の大使館で大変いろいろお世話になり、また、これまで、大臣始め、また外務省だけではなくて、国際的な風評被害払拭のために政府を挙げて努力をしていただいているところは感謝を申し上げるところでありますし、香港の大使にもさまざま御説明をいただき、取組もしていただいたところでありますけれども、今月も福島県関係の物産展が香港で行われるのも、外務省に御支援をいただいているところでもあります。

 さきの通常国会でも質疑をして、大臣から前向きな答弁があったんですけれども、福島県以外のところは、科学的根拠のない規制が、香港については撤廃をされたところであり、また、福島県に関しても引き続き御努力をいただいているということは大変ありがたいことだというふうに思っています。

 インバウンドも増加をしていき、そしてまた農産物の輸出に関しても推進をしているところでありますが、日本の農産物の大部分、大部分というか、大きな割合で香港にも行っているというところでありますし、世界各国の訪日数を増加するといいながらも、やはり台湾、香港、中国、韓国といった方々が七割以上を占めているという現状であれば、このアジアの人たちをどう取り込んでいくかということが重要であるんですが、たびたび質疑しているとおり、これらの国と地域がまだ規制を、科学的根拠のない原発事故に対する規制をかけているところでありますので、改めて、これらの国や地域におけるいわれのない規制撤廃に向けた取組について、現状をまずお聞きいたします。

山上政府参考人 お答えいたします。

 福島第一原発事故を受けました日本産食品……(小熊委員「東電。福島といきなり言っちゃだめよ。東京電力福島第一」と呼ぶ)はい。

 御指摘の日本産食品に対する輸入規制の撤廃……(小熊委員「それは徹底しているはずなんですけれどもね。だめだよ。ちゃんと言い直して。ちゃんと東京電力」と呼ぶ)

 東京電力福島第一原発事故を受けました日本産食品に対する輸入規制の撤廃、風評被害の払拭は、政府の最重要課題の一つと認識しておるところでございます。外務省といたしましても、あらゆる外交機会を最大限活用し、規制撤廃に向けた粘り強い交渉を行ってきております。

 その結果、これまで輸入規制を実施した国は八十一カ国ございますが、このうち二十九カ国で規制が完全に撤廃されました。また、計五十カ国・地域で規制が緩和されたということでございます。

 今後とも、外務省の持つリソースを最大限活用し、関係省庁とも協力させていただきつつ、輸入規制の撤廃に向けた取組を強化してまいりたいと考えております。

 この関連で、最近の動きを二、三、御紹介させていただければ、先月、総理が訪中されました。この機会に、習近平国家主席及び李克強国務院総理の首脳会談を始め、さまざまな機会を通じて規制の早期撤廃、緩和を働きかけ、中国側からは、科学的な評価の基礎の上に、輸入規制を緩和することを積極的に考えたいという声明がございました。

 また、香港との関係では、ことしの七月に、茨城、栃木、群馬、千葉県産の野菜、果実、牛乳、乳飲料、粉乳の輸入停止措置を条件付で香港側が解除したところでございます。また、今月の二日来日したキャリー・ラム香港政府行政長官に対し河野外務大臣から直接働きかけを行うなど、ハイレベルを含む働きかけを継続しており、今後もさまざまな機会を通じて働きかけを行っていく所存でございます。

小熊委員 科学的根拠はもうそれらの国や地域もわかっていて、政治問題みたいにされているので、これは、今回香港でもお聞きしましたし、行政長官はわかっているけれども、議員の皆さんが一部あるということで政治問題化している。

 台湾も、野党の、私と同じ国民党の人たちが騒いで、規制撤廃に関しては抵抗している、何の根拠もなくですよ。単に与党、野党の言い争いでやっているということですから、そこをしっかり踏まえて対策を、とっているというのも聞きましたから、これは引き続きやっていただきたいというのと、とはいえ、その国や地域の国民、市民の皆さんの中にも、日本国内でも、科学的根拠とは違う判断で福島県産品を避けるといったことが風評被害につながっていますので、これをどうアプローチするかということは再三再四言ってきましたけれども、科学的根拠を示す情報発信ではなくて、まさに人の感情に触れるようなドラマや映画や旅番組といったバラエティー番組の誘致が必要だと言ってきました。

 その中で、大臣の指示があったやにも多少聞いていますけれども、ことしの夏の初めには、韓国の旅番組が宮城県と福島県を訪れ、番組をつくっていったということも聞いておりますし、また、過日、先ほど御紹介したように、香港に行った際にも福島県にまつわる映像を香港でも流したい、努力をしていくということと、また逆に、香港の番組を映像誘致を図って促進をしていきたいという話も聞いていますし、また、観光庁や外務省においても、こうした映像誘致また映像輸出に関しての支援を風評被害払拭のためにしていただいていることもわかりますけれども、まだまだ足りていないというふうに思っています。

 努力はしていただいています。実績も上げておられる。でも、ここをもっともっとふやしていかなければなりません。更にこれを拡充していくということに関しての考え方をお聞きいたします。

山上政府参考人 委員御指摘の点でございますが、外務省といたしましても、昨年十二月に策定されました風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略がございます。この戦略に基づきまして、外交機会を捉えた働きかけはもちろんのこととして、一般市民の方を対象としたソフトな情報発信にも全力で取り組んでいるところでございます。

 具体例を幾つか御紹介させていただきますと、例えば、独立行政法人国際交流基金を通じまして、途上国等の現地のテレビ局に対して、東北を舞台にした日本の放送コンテンツを無償で提供いたしまして、風評被害の払拭に向けた発信に努めております。まさに知ってもらう努力の一つでございます。また、各国からの報道関係者の招聘に加え、日本駐在の外国メディア関係者への被災地における取材機会の提供により、外国メディアを通じました映像の発信にも力を入れておる。これは、来てもらう、食べてもらうという趣旨でございます。

 今後とも、こうした外務省の持つリソース、在外公館もございます、人脈もございます、情報もございます、こういったものを最大限活用いたしまして、関係省庁と協力しつつ、輸入規制の撤廃に向けた取組を強化してまいりたいと考えております。

小熊委員 この予算をふやすように、大臣もしっかりリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、今、あらゆる手だてを最大限と言いましたけれども、先ほど御紹介させていただいた遠山委員においては、香港の俳優、エリック・ツァンさんにも話ができるわけですよ、映画をこっちで撮れとか。

 でも、そんな相談は多分まだ遠山委員にはしていないというふうに思っていますので、まさに党派を超えて、桜梅桃李、異体同心でこれは当たっていかなければなりませんので、ぜひ、あらゆる人脈、ソリューションを使ってさらなる拡充をお願いして、次の質問に移りたいというふうに思っています。

 風疹についてお聞きいたします。

 我が党でも、風疹の大流行を受けて、接種率を高めようということで、率先して、党本部において過日、議員また党職員、秘書の皆さんと一緒に集団接種をいたしました。これは増加する一方で、まだ底を打っていないということでもあります。

 そういった中で、オーストラリアでも風疹を撲滅されたということがWHOでは発表されましたし、同じ時期に、アメリカの疾病対策センター、CDCでは、この激増している日本の状況に関して、異常事態だとして、先月の二十二日に警戒レベルを、エボラ出血熱ですよ、エボラ出血熱と同じレベルの三段階のうちの二番目の勧告に引き上げ、また、妊婦、妊娠中の女性に対しては、日本に行くなという自粛勧告も出されているところであります。

 こうした中で、日本のこうしたニュースに関して、これは日本のいわゆるブランドイメージを下げてしまっているというふうに思いますけれども、この風疹大流行に関して、まず外務省にお聞きしますけれども、これは対外的に日本の評判というのを著しくおとしめているという現状認識はありますか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、事実関係でございますが、委員御指摘のCDC、これは、米国疾病予防管理センターというアメリカの保健福祉省のマラリア対策の外局でございます。こちらが、ことしの十月に、特に関東地方での風疹の届出数が大幅に増加していることを受けて、風疹が流行している間は、風疹ワクチン未接種で風疹に罹患したこともない妊婦、特に妊娠二十週以内の妊婦の方は日本へ渡航すべきでないといった内容を含む日本への渡航注意喚起、レベルツーと言われておりますが、これを発表したものと承知しております。ちなみに、CDCが日本の風疹の流行について渡航注意喚起を出すのは二〇一三年の流行時以来というふうに承知しております。

 我が国国内における風疹対策につきましては、厚生労働省が主に担当しているものでございますが、外務省といたしましても、引き続き、こうしたアメリカの関連動向を注視するとともに、関係省庁とも適切な形で連携してまいりたいと考えております。

小熊委員 今あったとおり、二〇一三年から一四年にかけても大流行しました。そのさかのぼること二〇〇三年から二〇〇四年にも大流行していて、これはワクチンで予防できる風疹に対して同じ議論をずっとしているだけで、結局また大流行しているんですよね。

 もちろん、日本国民の中にワクチンに対するネガティブなイメージがほかの国よりあるというのも、これは私も重々承知をしていますが、大流行するたびに、国民の理解がなかなか得られないから厚労省も踏み切れないというような、時の担当課長などのインタビュー記事も目にしていますけれども、だったら何でもっとしっかり国民に向けて理解を促すことをしてこなかったのか。できていないという状況にもあります。

 いずれにしても、日本に来た人がまた風疹にかかって、妊娠中のお母さんがかかって子供が障害を持つといったことは、大変不幸なことであります。その不幸の原因をつくらないためにも、先ほど裸の外交というすばらしい言葉も出てきましたが、人間の安全保障の中でも、この感染症対策は、日本はすばらしい成果を上げている国であるのにもかかわらず、保健外交の分野で他国にはこうやっているくせに、自分の足元がこんなでは、信頼性が揺らぎますよ。日本の進めている人間の安全保障に対して、ある意味足を引っ張っている状況にもなっています。これは繰り返される大流行です、日本においては。努力しているのはわかるけれども、成果が上がっていない。外交上もよくない。

 厚労省にお聞きします。

 これは一歩踏み出して対策をしっかりとるべきじゃないですか。繰り返しているんですよ、いろいろな。どうですか。

吉永政府参考人 お答え申し上げます。

 十月二十二日に米国疾病予防管理センター、CDCが発出いたしました注意喚起につきましては、先ほど外務省からの御答弁にもありましたけれども、米国民に対しまして、日本で風疹が流行しているため、予防接種を受けていないなど風疹に対して免疫がない妊婦につきまして、日本への渡航を控えるよう勧めたものでございます。

 前回、二〇一三年にも注意喚起が発出されておりますが、この時点では日本の患者発生数が一万人を超えた状況でございまして、今回は比較的早期に発出されたものというふうに理解してございます。

 厚生労働省といたしましても、この課題につきましては、迅速に対応すべき課題であるというふうに認識しているところでございます。

 国内の風疹患者数は、本年の七月以降、関東地方を中心に増加しているところでございますけれども、現在の新規患者数は毎週百五十から二百例程度で推移している状況でございます。前回のような大規模な流行になるかにつきましては、動向に注視する必要があると考えておりますけれども、妊娠中の女性が感染すると子供に目や耳等の障害を含む先天性風疹症候群、CRSを生じる可能性がありますので、それを防ぐことは最重要であるというふうに考えてございます。

 このため、厚生労働省におきましては、風疹に対する免疫を確認する抗体検査を受けやすくするよう補助を行っておりまして、特に患者数の多い東京、千葉、神奈川などで、妊娠を希望する女性などに抗体検査を受けていただくよう呼びかけを行っているところでございます。その上で、風疹に対する抗体価が低いことがわかった方が適切に予防接種を受けられるよう、体制の整備を図っているところでございます。

 今後の対策につきましては、風疹の感染状況や抗体検査の実施状況、ワクチンの需給状況等を勘案しながら、引き続き必要な対策につきまして検討してまいりたいと考えております。

小熊委員 最後のところだけ言えばよかったんです。長々と要らないんだけれども。

 最後のところも、だから、もう何年も前も同じことを繰り返して、検討していると言うのは、全然それは仕事していないのと一緒ですよ。

 接種率だって、八割、九割やらなきゃ効果が出ないというのはわかっているんだから、今の対策では全然追いつきませんからね。これはもっとしっかり本腰を入れてやっていただきたい。また数年後に大流行、今の答弁だったら、繰り返すことになりますよ。接種率は上がらないもの、そんなことじゃ。今の対策、知っていますよ。足りないからどうするのと言っているのに。これはしっかりやるようにしてください。

 次に移りますから、どうぞ退席していただいて結構です。

 また遠山さんの話ですけれども、配付した資料の一番最後のやつですが、先ほど遠山委員も言っていた自律致死兵器システム、いわゆるキラーロボット、LAWSというやつです。

 これは、今ほど遠山さんもやったので重複しないようにしますけれども、はっきり言うと、特定通常兵器使用禁止条約の締約国会合が来週行われます。ここで、公式交渉を二〇一九年に開始するということをマンデートにしなきゃいけないということで、いろいろな国が動いていますし、それはまだ理解を得られていない国もありますけれども、やはりこのCCWでこれをしっかり議論にのせるために、日本は賛成とするのか。長い答弁は要りません、賛成とするのか、とりあえずペンディングしておくのか、また違う第三の道を示すのか、三つに一つ、どれですか。

川崎政府参考人 お答えいたします。

 LAWSにつきましては、さまざまな課題について今議論が行われておりまして、各国の立場にいまだ大きな隔たりがある状況でございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、国際社会が共通の認識を得られるように更に議論を深めていくことが現時点では重要ではないかと考えております。

小熊委員 お配りした資料のとおり、これは主催者が、遠山委員と小野寺筆頭も入っていますので、これはもう党派を超えて何とかしなきゃいけないということですから、日本が積極的な取組をしていかなければなりませんし、先ほど大臣が言っていた、まさにこれが裸の外交でしょう。これは、そんな後ろ向きじゃなくて、日本が率先してやらなきゃいけないし、まさに我々、シンセンでAIとかいろいろなものを見てきましたけれども、今ちゃんとくさびを打っておかなきゃ、どんどんどんどん進んじゃって引き返せない状況になりますよ。そんな甘い状況じゃない。もう一日一日これは進んでいるんですから、技術が。こういうのにも流用されているのも事実ですから。

 これは、日本はやはりまさに裸の外交で、しっかりくさびを打っていくために来週のこのCCWの会合でどんな発言をするか。この会合でも言及したいと思いますけれども、しっかり取り組んでいくように。これは、防衛大臣もやった小野寺さんも入っているんですよ。これは本当に深刻に受けとめてください、対応をとってください。そんな慎重論じゃなくてね、腰が引けていないで。よろしくお願いします。

河野国務大臣 先ほども申し上げましたように、日本は、人間が介入しないAIを搭載した自律型の殺傷兵器については、これは禁止するべきものという立場をとっておりますので、当然にそういう形で呼びかけてまいりたいと思っております。

 ただ、キラーロボットの枠を超えたLAWS、つまりAIを搭載した兵器については、ここはさまざまな御議論があります。

 それは、多くは恐らくこんなロボットの形をしていないものだと思いますし、人口が減っている日本の中で、人工知能を搭載する、そのようなものというのは、むしろ、定員の充足率が達しない自衛隊にとっては有効活用すべきものであるかもしれません。今使われている兵器に比べれば、こうした兵器のコストは物すごく安くなる可能性もございます。

 他方で、もう既に多くの国がこの分野に多額の資金を投入して開発を進めているという中で、全てのものを全部禁止するのが現実的かというと、そういう場面でももはやないと言わざるを得ないんだろうと思いますので、人間が一切介在しないものについては日本は反対ということを申し上げてまいりますが、今、世界で行われている議論は、その枠を超えたものについてどうするかというところも大きな課題になっておりますので、そこについてはしっかりとコンセンサスを導けるように、日本としてもしっかり議論に関与していきたいと思っております。

小熊委員 ぜひ、時間があれば、この会合は大臣ものぞいていただければなというふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、限られた時間で、次に移りますけれども、増加する訪日外国人の課題についてですが、入管法の改正もあります。

 これは、ちょっともう時間がないので指摘にとどめたいと思いますけれども、移民とか移民じゃないとかじゃなくて、とにかく外国人が目の前にふえるということですから、地域におけるインパクトは、移民であろうと移民という言葉を使わないであろうと同じです。移民かどうかなんという議論、移民じゃないなんということもおかしいし、移民でしょうと認めさせる議論も、そんなのじゃなくて、とにかく目の前に外国人が数多くふえていく。地域にどうインパクトを与えていくか、影響を与えていくか、これをしっかり受けとめる対策をとっていかなきゃいけないということは、何ら変わりはありません。

 ですから、そこで、やはり地域によっていろいろな抱える課題は、今でももう生じているわけです。ごみ出しの仕方から、水道料金の踏み倒しから、医療費の踏み倒しなども今発生していますし、犯罪数も増加しているというのも事実でありますけれども、片や融和的に地域に溶け込んでいる事例もありますから、しっかりと、今後ふえていく中でやっていかなければいけませんし、あと、これは法務省がどう考えているか知りませんが、どうしても、やはり労働力不足で入れると言っていながら、都市部に集中してしまう懸念がありますよ、結局は。転職も、職場をかえることもできるんですから。

 結局、日本全体でどう外国人を受け入れて生産性を上げていくかという議論をしている中で、この都市集中をするという懸念に対して何かありますか、対策。そこはちゃんと対応をとっていますか。

平口副大臣 お答えいたします。

 人手不足が深刻化する中で、とりわけ地方における人手不足の対応は、政府として取り組むべき喫緊の課題であると認識しております。

 今回の新たな外国人材の受入れ制度においては、外国人材が自由に受入れ機関と雇用契約を締結することを前提としておりますが、制度の趣旨に鑑みましても、通常は、人手不足が深刻な受入れ機関において受け入れられるものと考えられるわけでございます。したがって、必ずしも大都市圏に限らず、地方においても受入れは進むもの、このように考えております。

 なお、地方の人手不足に的確に対応する方策については、引き続き政府全体として検討してまいりたい、このように考えております。

小熊委員 いろいろ、入管法の改正は、本当はもっと議論していかなければいけませんし、しっかり訪日の人材を受け入れるという意味では、ちょっと時間が足りない中で来年四月からというのは、これは国がやると言ったって、実際受けとめるのは地域ですからね、市町村ですから。この体制整備なんか、地域社会においてまだできていませんよ。これは拙速だと言わざるを得ません。

 ただ、限られた時間の中でも議論をしっかりしていかなきゃいけないということは、関係省庁を含め、またこれから議論していきたいと思います。

 残り数分になりましたが、訪日外国人にかかわって、今度、先ほどの武井さんの質問に移りますけれども、領事局、領事業務についてです。

 お配りの資料のように、海外渡航者数もふえている、訪日外国人数もふえている、進出企業も在留邦人もふえているというところで、大臣から先ほど、ビザの発給に関しても電子化をしてということですけれども、数年前には、その国の人はその国に設置されている大使館に行ってビザ発給を受けなきゃいけなかったのが、第三国でも受けられるようにということで、すごく業務が、いきなりふえている在外公館もたくさんあるわけです。

 ただ、電子化しても、今こうしていろいろな海外、来る人、行く人がふえている中で、邦人保護といった業務もふえています。テロも多発しています。また、いろいろな自然災害も世界じゅうで起きている中で邦人の保護をしなきゃいけないということで、業務がすごくふえています。

 先ほど大臣が言った電子化だけで、領事業務が今の人員で足りるというふうには思えません。まして、入管法の改正によってまたいろいろな外国人材が日本に来るという中で、現状においても、一つの国を挙げてやるのは本当は忍びないんですけれども、ベトナムなんかでは、この資料にあるとおり、急激に犯罪者数もふえていますし、また、申請する書類も、不備があるというんじゃなくて、ごまかしがあるということで、今、外務省では抜き打ち検査をやったら、一割、二割、日本語の証明書が大変怪しいというところが発見もされていて、そういったことにも対応していかなければなりません。

 これは今、現状として、領事業務が電子化されたとしても円滑に進むんですか。ますます増加していくんですよ。それだけじゃ足りないと思いますけれども、局長、これでやれるの、これは。

垂政府参考人 委員御指摘のとおり、近年の訪日外国人数の増加に伴い、ビザの発給件数も急増しており、直近の五年間で三倍以上となっています。

 そうした中、外務省としては、観光立国推進の観点から円滑なビザ発給に努める一方、テロ等、好ましからざる人物を排除するため、厳格なビザ申請を実施しているところでございます。

 委員御指摘のございましたベトナム大使館につきましては、昨年より、ベトナム人留学生の申請に疑義がある場合には面接を行うことをしております。ただ、必ずしも十分な体制ではない場合もございますので、体制が不十分な場合には東京より出張者を派遣するなどの対応をとっているところでございます。

 外務省としては、引き続き、査証業務の合理化を図るとともに、円滑かつ厳格な審査に遺漏なきよう期し、適正に行ってまいりたいと思います。

小熊委員 各国と比較しても領事の数は少ないです、日本は。五百人いっていません。人口の少ない英国では千六百人以上います。フランスでも千百人以上ですよ、日本より人口が少ない国で。

 まあいろいろな背景もありますけれども、これは足りていないし、まして、いろいろ計算してみると、海外の渡航者数はふえていますけれども、渡航する邦人に対して領事局の予算で割ってみたら、一人当たり三十円で邦人の命を守るということになるんですよ、これは極端な例かもしれませんけれども。領事数は五百人いないと言いましたけれども、大体三・三万人、三万三千人の方を一人の領事が面倒を見るというような状況で、足りていません。

 大臣、電子化されたとしても、これは各国と比較してですよ、大臣も、各国の大臣と比較して、もっと海外に行きたい、そのとおりですよ。日本は外交力をアップしなきゃいけない。大臣の、まさに専用機もそうだけれども、大臣のかかわることも外交力をアップするために支援もしていきたいと思いますけれども、この領事の一面をとったとしても、これからもっともっと進展しなきゃいけない外交力の中で、全然、ほかの国と比べても足りていないんですよ。

 インバウンドだって、もっともっとふえていくじゃないですか。電子化したって追いつかないですよ。もっと人員をふやして、しっかり体制を整えて、海外に進出もしっかりしていく、受入れもしっかりしていくということが重要じゃないですか。数字ばかり上がって、体制がとれませんよ、今の人数、人員であれば。

 ここは大臣、もっとふやしていくという考え方はどうですか。

河野国務大臣 領事の人数をふやすというのもそのとおりでございますが、現在の財政状況その他を考えれば、これを無尽蔵にふやすわけにもいきません。

 さっき電子化ということを申し上げましたが、何も電子化だけで全部できるとは思っておりません。

 ベトナムの例をとれば、もう既に悪質なブローカーからの申請は受け付けないということをやっておりますし、こちら側の、受入れをする日本語学校その他についても、悪質なものについては同じような対応をとってもらうように、今、政府内で協議をしているところでございます。

 また、入国の管理には、バイオメトリクスを始めさまざまな新しい技術がございます。顔認証といった技術もございます。そうしたものを駆使しながらいかにストレスなく領事業務をできるようにするかということは、これからも不断に見直しをしていかなければならないと思っております。

小熊委員 質と量、両面の充実化が必要であるということを御指摘申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

若宮委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青山大人君。

青山(大)委員 国民民主党の青山大人です。

 通告に従いまして、外務大臣、外務大臣政務官、法務副大臣に質問をさせていただきます。

 さて、国際社会において、難民や移民といった人の移動が大きな問題になっております。先月も、国連難民高等弁務官のトップでもありますフィリッポ・グランディ氏が来日されました。あべ俊子外務副大臣も面談されたと伺っております。また、そのグランディ氏が、日本記者クラブの会見において、難民問題のみならず、昨日法案が提出されました、現在検討中の我が国の外国人労働者受入れ拡大策についても言及されたというふうにも聞いております。

 我が国は、難民条約等に加盟し、難民認定手続を整備していますが、ほかの主要国に比べて、難民認定の申請者数、受入れ数ともに少ない状況にあります。例えば、国連難民高等弁務官事務所の資料を見ますと、二〇一六年、ドイツは二十六万三千六百二十二人、アメリカが二万四百三十七人、イギリスも一万三千五百五十四人を難民認定している一方で、日本は二十八人と圧倒的な少なさであります。

 国連人種差別撤廃委員会からも、我が国の難民の受入れ数が少ない、そういった指摘もたびたび受けております。

 一方で、外国人労働者の受入れの拡大が進められております。外国人労働者の受入れと難民の受入れを同等に扱うことは当然できませんが、先ほども同じ党の小熊議員も言及していましたが、長期にわたって日本に在留する外国人がふえるということには変わりありませんし、当然、日本語教育など、外国人が日本で生活するための支援策を進め、来日される外国人と受け入れる我々とが共生し得る社会をつくっていかなければいけません。

 しかし、きのうの本会議での出入国管理法改正案の政府の答弁を聞いていても、多くの問題点が浮き彫りになってきました。

 今回の外国人労働者の受入れ拡大策については、一度立ちどまって見直すべき、そのように考えております。劣悪な環境で働かされる外国人も多く、こういった状況を放置したままこの法案を突き進めれば、外務省がこれまで築いてこられた、海外から見た、外国人から見た日本のいいイメージが崩れるような、そんな危惧も抱いております。

 難民の話に戻しますが、私は、国際貢献や人道支援といった観点、そして当然日本のプレゼンスを高める観点からも、まずは難民の受入れに日本はもっと取り組むべきではないか、そのように考えております。

 今から二年後、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックのハイライトとして難民選手団の出場が決定していますが、難民選手団が注目を浴びる一方で、日本での難民処遇は厳しいままといった、日本が本音と建前の乖離を世界にアピールするようなことがあってはいけません。

 まずは、総論として、我が国として、難民問題、受入れについてどのように取り組んでいくのか。また、我が国の難民の認定率の低さ、我が国が難民の受入れに厳格な理由についてお伺いします。

平口副大臣 まず、この問題についての現状認識でございますけれども、我が国においては、難民、避難民の流入が国際問題化しているヨーロッパ等との状況とは異なって、アフガニスタン、イラク、シリアのような大量の難民、避難民を生じさせる国の出身者からの難民認定が少ない状況にございます。

 他方、難民認定申請によって庇護を求めることが主眼ではなく、我が国の就労等を目的とすると思われる濫用、誤用的な申請も相当数見受けられるところでございます。

 このような状況の中で、法務省においては、申請内容を個別に審査の上、難民と認定すべき者を適正に認定しているところでございます。

 また、条約上の難民とは認定できない場合でありましても、本国情勢などを踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を認めているところでございます。

 平成二十九年に難民認定申請によって庇護した者の合計は六十五人であって、その内訳は、難民と認定した者が二十人、人道上の配慮により在留を認めた者が四十五人でございます。

 そして、我が国は第三国定住による難民の受入れ事業も行っているところでありまして、二十九年に同事業によって受け入れた者の数は二十九名でございます。

 このように、二十九年に我が国が難民等として庇護した者は合計九十四人であります。

 法務省としては、これらの取組により、引き続き庇護を求める者の保護や人道上の措置を適切に講じてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 法務副大臣、御丁寧な答弁ですけれども、次にちょっと外務省の方に聞きたいと思います。

 難民の受入れということで、日本はアジアで初めて第三国定住による難民の受入れを二〇一〇年度から始めたということでございまして、外交青書というんですか、私も、今回初めて外務委員会ですので、これをしっかりと熟読させていただきました。難民については本当にごくわずかしか書いていないんですよね。百八十ページに、一ページの半分未満ですね。私は、ちょっとこれ、もう少ししっかりと難民問題に取り組むような姿勢をやってほしいなというところで、この外交青書によると、第三国定住制度は難民問題への日本の積極的な取組として国際社会からも高い評価と期待が集められていると書かれております。

 先ほどもちょっと、何度も話を出して恐縮ですけれども、グランディ氏が日本へ来たときに、その際に、この第三国定住制度を改正し、入国枠を拡大する方向で検討することを政府で決めたといった報道もございました。現行の年三十人を倍増するということでございますが、昨今の国際情勢や日本における難民認定申請者の数が増加傾向にある状況を踏まえると、数としてまだまだ少ないのかなとも思いますし、第三国定住制度により日本の教育を受けて、日本に定住し、日本で働く人々、こういった活躍は、現在困難な状況にいる難民の方々の希望となり、また、日本の国際貢献のアピールにもなると考えます。

 また、こういった日本に定住して働くようなノウハウは、今後ふえるであろう外国人労働者の受入れと日本人との共生社会をつくっていく上で、私は応用していくべきではないかというふうにも思っております。

 第三国定住制度の拡充の検討状況についてお伺いいたします。

山田(賢)大臣政務官 青山委員にお答え申し上げます。

 まず、青山委員におかれましては、外交青書を御熟読いただき、本当にありがとうございます。

 委員御指摘のように、我が国は、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRとの協力により、平成二十二年度から第三国定住による難民の受入れをアジアで初めて実施しております。当初の五年間は、パイロットケースとしてタイ国内に一時滞在しているミャンマー難民を受け入れ、平成二十七年度から、マレーシア国内に一時滞在しているミャンマー難民を年一回、約三十人受け入れております。

 一方、実施開始時から難民を取り巻く国際情勢等は大きく変化しており、第三国定住事業の受入れ対象の拡大等を議論するため、十月二十二日に難民対策連絡調整会議において第三国定住による難民の受入れ事業の拡大等に関する検討会の設置を決定し、十月三十一日に第一回検討会が、十一月九日に第二回検討会が開催されたところでございます。本検討会におきまして、有識者等の意見を聴取し、関係省庁及び有識者で議論の上、受入れ対象の拡大の要否、拡大する場合の範囲等について検討を行う予定でございます。

青山(大)委員 当初は結構首都圏なんかにその受入れの方たちが多かったと思うんですけれども、今後地方とかに拡充していくといった案も聞いていますけれども、そういった場合、地方自治体への負担軽減策とか支援策、そういったものはどのようにお考えなんでしょうか。

山田(賢)大臣政務官 お答えいたします。

 地方の負担軽減策等も含めまして、どのような問題があるか、この辺につきましても、関係省庁及び有識者で議論の上、検討してまいる所存でございます。

青山(大)委員 ぜひ積極的に支援の方をお願いします。

 また、今回の外国人労働者の受入れにつきましても、本当に地方自治体の負担が過大になってしまうおそれがある。今現在、私の茨城県でも多くのブラジル人ですとか、うちの土浦市もフィリピン人がたくさん来ておりますけれども、自治体の方でさまざまな独自の取組をやっています。

 そういった中で、本当に、難民と外国人労働者の受入れ、一緒くたにはもちろんしませんけれども、外国人を受け入れて日本で共生するということは、大枠は同じですので、ぜひ地方自治体の負担軽減の方を外務省もいろいろ考えてほしいなというふうに思っております。

 続いて、何度も言いますように、世界各地で紛争が絶えず、欧米の先進国では難民の受入れを減らす、そういった傾向の中で、日本があえて難民の受入れをふやす、これは世界に対して、日本が人権問題に積極的に取り組んでいる、国際貢献、人道支援に積極的に取り組んでいるというメッセージにもなります。

 もちろん、むやみに難民の受入れをふやせというわけではありませんが、しかしながら、我が国の難民の認定手続は適正手続の保障が十分でない、難民認定機関の独立性が保たれていないといった問題点がかねてから指摘をされております。

 ここは平口法務副大臣に聞きますけれども、法務省入国管理局は、難民認定機関であると同時に、入国の管理を目的とする組織でございます。今回、出入国管理法の改正を機に、法務省入国管理局が出入国在留管理庁へと組織変更されるとのことでございますが、この際、難民認定機関も独立させることも同時に検討をすべきではないでしょうか。法務副大臣の見解を伺います。

平口副大臣 お答えをいたします。

 難民条約が対象としている難民も外国人でありまして、難民の認定をする場合には在留資格の取得の許可が必要となるなど、難民問題と出入国管理行政とは密接に関連するものでございます。

 そのため、難民の認定に関する業務も出入国管理行政上の諸手続と有機的に関連して行われることが適当であると思われることから、その業務を出入国在留管理庁において行うことには合理性があるものと考えております。

 入国管理局においては、これまで、国連難民高等弁務官等の御協力を得て難民調査官の専門性の向上を図っているほか、難民不認定処分に対する審査請求において難民審査参与員制度を導入するなど、難民認定の判断における客観性、効率性、中立性を担保しております。

 出入国管理行政庁新設後も、引き続き適切に難民認定及び難民認定申請者への人道配慮に基づく在留許可に関する判断を行っていく所存でございます。

青山(大)委員 次の質問に行きます。

 受け入れた外国人の人権も尊重しながら日本人と共生できる社会づくりを目指すこともしっかりと議論していかなければいけません。これは、難民とか外国人労働者を問わず考えなければいけない重要な点でございます。

 先ほどのグランディ氏の記者会見でも、日本政府の今回の外国人労働者と日本人の共生の取組について、すなわち、外国人の受入れ拡大策について、歴史的な意味を持つということを言っておりましたが、同時に、日本にいる外国人の中で難民は一部でしかないが、難民の処遇をいかに改善するかも取組の一環として研究してはどうか、例えば、日本には包括的な難民法制がないが、検討してはどうかといったことを法務大臣へ提言したと語っております。

 こういった難民の処遇改善への取組を求められたことについて、政府はどのように受けとめているのか、伺います。

平口副大臣 難民の処遇の改善についてでございますけれども、法務省としては、包括的な難民法制については検討する予定はないというのが現状の結論でございます。

 他方、難民条約上の難民や第三国定住難民に対しましては、その特殊性に鑑みまして、難民認定後や入国後に、関係行政機関の緊密な連携のもと、既に定住支援プログラムを実施しているところでございます。

 本年八月には、法務省に外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策検討会を設置し、広く関係者の意見を聞きながら、外国人の受入れ環境整備に関する各種取組の具体化について、各界有識者及び関係省庁の協力を得ながら、検討を行っているところでございます。

 条約難民や第三国定住難民も、在留資格、定住者を持って我が国に生活する外国人であることから、定住支援プログラムに加えて、一般の外国人と同様に、今次の総合的対応策の対象となり得るものでございます。そうした観点で、難民のさらなる保護につながるものと考えてございます。

青山(大)委員 本当に、我々から見たら、どの外国人が難民で、どの外国人が労働者の受入れかというのは判別がつかないものでございまして、現在、難民や移民の受入れを積極的に行ってきたアメリカや欧州の各国でも、今、揺り戻しと言われる現象が起きている。その背景の一つに、やはり外国人と自国民の共生の難しさがあるというふうにも言えますし、やはり、難民、移民であろうと外国人労働者であろうと、共通する本質的な課題であるというふうに思っておりますので、ぜひ副大臣、しっかり取り組んでいってほしい、そのように思っております。

 また、現在議論されている外国人労働者の受入れに際して、我が国は、何度も言いますように、答弁にもあったように、外国人が日本社会になじむための対策や労働環境の確保や社会保障等の制度をきちんと整えていかなければいけませんけれども、これまで外務省が培ってきた制度も積極的に活用すべきとも思います。

 よく、今回の外国人労働者の受入れの方でも、日本に来た方たちに対して、日本の文化とか、当然、日本語そのものですね、教育も含めて、そういった教育の充実が幾つか柱になっていますけれども、私は、日本に来た外国人の方と同様に、それ以上に、海外においてもっと日本語の教育の普及啓発、充実に取り組んでいくべきではないか、そのように思っております。

 海外における日本語教育の充実についてどのように取り組んでいるのか、外務省にお伺いします。

山田(賢)大臣政務官 お答え申し上げます。

 外国人材が我が国において円滑に生活及び就労を行うためには、生活に支障がない程度の日本語の能力を来日前の段階から身につけていることが重要と考えております。

 このような観点から、外務省といたしましては、国際交流基金と連携しながら、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において決定された、日本語能力判定テストの実施、日本語教育カリキュラム、教材の開発、日本語教師の育成等の施策の着実な実施に取り組んでまいる考えでございます。

青山(大)委員 政務官、それで、日本語の普及ということで、またこの外交青書をよく読ませてもらったんですけれども、今やっているんですけれども、進めているんですけれども、なかなかそういった人材がいない、そういった課題があるというふうに伺っていますけれども、そういった日本語を教える人の人材不足についてはどういった対応をされているんでしょうか。

山田(賢)大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、今取り組んでおります、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において決定された施策を着実に実施していく考えではございますが、そのためにどのような人材が必要かということも含めて、これから検討してまいります。

青山(大)委員 ちゃんと事前に通告をしてあるので、もっと詳しい答弁が欲しいんですけれども。

 外務省の方で、そういった専門家の数が足りないということで、日本語なんかは、日本語パートナーズ事業ということで、その専門家ではないけれども、本当に若い学生からシニア世代まで、そういった新たな制度をつくって派遣されている、そういったことも聞きましたけれども、そのパートナーズ事業、そういった今の取組についてもう少し詳しく教えてください。

山田(賢)大臣政務官 お答えいたします。

 国際交流基金が実施する日本語パートナーズ派遣事業は、二〇一三年の日・ASEAN特別首脳会議において発表された新しいアジア文化交流施策、文化のWAプロジェクトの柱でございます。同事業は、日本の大学生等をアジアの高校等に派遣し日本語教育の補佐を行うもので、既に千三百名が参加し、日本とアジアのかけ橋として、参加者は帰国後もおのおのの学業、職業で活躍する等の成果を上げてございます。

 文化のWAプロジェクトは二〇二〇年まででありますが、パートナーズのような交流事業は継続して実施することで真の成果を出すものであるということを念頭に、今後のあり方につきましても真剣に検討してまいりたいと考えております。

青山(大)委員 ごめんなさい、事前に通告してあったのであれですけれども、ちょっと大臣に伺ってもよろしいですか。

 そういった外国人の受入れが今度進む中で、もちろん日本でそういった教育をするのは大事なんだけれども、もっと海外において日本語の普及とか啓発とかそういったことを広めていくべきだと私は思っているんですけれども、そういった取組について、大臣のお考えをもし聞かせてもらえれば、お伺いいたします。

河野国務大臣 日本のことを理解をしてもらう中で、この日本語教育というのは非常に大切なことだというふうに思っております。

 日本語が、かつては、八〇年代は、日本の経済ということから日本語を勉強しようという方が大勢いらっしゃいましたけれども、最近は、むしろそれよりは、アニメや漫画に啓発されて日本語を勉強したいという方がふえているようでございますので、せっかくの好機でございますから、これをしっかりつかまえて、日本語を勉強してくれる方が海外でもふえるような努力というのはしっかりやってまいりたいと思います。

青山(大)委員 御答弁ありがとうございます。

 それで、今、専門家を活用した日本語の普及と同時に、日本語パートナーズ事業というのがあって、私、今もですけれども、高校三年生、大学受験の予備校で世界史の先生をやっているんですね。中で必ず私が高校生に言うのが、大学へ入ったら必ず海外に行きなさいと私は言うんですよね。入ったのが目標じゃなくて、そこからですよという中で、たまたま今回、日本語の普及のところで、外務省さんたちといろいろなヒアリングをしていましたら、パートナーズ事業というのが、結構若い学生たちも行っている方が多い。二十代、三十代、女性の方が多いという話もあったんですけれども。

 こういった学生たちが例えば行く中で、大学生の単位の交換ができるとか、そういった使いやすい制度にして、むしろ、日本語を教える人材が足りないのであれば、そういった学生たちをもっともっと使っていくような事業にしていってもいいのかなと思いますけれども、大臣の見解を伺います。

河野国務大臣 日本語の教育をしっかりやろうというならば、それに必要な人材というのを育成しなければならない。大学生が行きました、それはもちろん、やらないよりはやった方がいいんだと思いますが、それがどれだけ日本語教育につながるかというのは、これはやはりしっかり検証した上でなければ何とも言えないと思います。

青山(大)委員 ぜひ、そういった若い方たちの海外に出ていくきっかけにもなると思いますので、御検討をしてもらえればというふうに思っております。

 では、次の質問に行きます。

 現在議論されています外国人の受入れ法案のことですけれども、我が国の歴史や地理的な条件等を考えますと、こういった、将来、本格的に移民の受入れを仮に開始する際においても、移民政策のお手本となる国はなく、我が国独自の制度をつくっていく必要があるというふうに思っております。

 過去には、ドイツは移民政策をとらず、一時的な滞在者として外国人労働者の受入れを認めてきましたが、その後、移民政策へと転換した経緯もございます。今回の入管法改正案があくまで外国人労働者の受入れに限っているとしても、ここで構築された制度が外国人の受入れという制度の基盤となることには間違いないと思います。

 政府は、今国会での改正案成立、来年四月の施行を目指していると聞いていますけれども、我が国の国内事情を勘案した受入れ制度をこの短期間で十分に構築できるとは考えにくいと私は思っております。

 今回の法案、外務省として、拙速であるとの認識はございますか、大臣。

河野国務大臣 現下の人手不足の状況は極めて深刻であり、これに対応することが喫緊の課題だと認識をしております。

青山(大)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わりにします。

若宮委員長 玄葉光一郎君。

玄葉委員 無所属の会の玄葉光一郎です。

 まず、米軍の再編、特に日米同盟の抑止力を維持しながら沖縄の負担を軽減していくということは、大変重要なテーマだというふうに思います。

 その関連で、特に、普天間の移設の問題とグアム移転、沖縄にいる海兵隊のグアム移転問題と、嘉手納以南の土地の返還の問題、この三つの相互関連性についてお尋ねをしたいというか、確認をまずしていきたいというふうに思います。というのは、十月だったと思いますけれども、菅官房長官が、この三つがまるでリンクをしているかのような発言があったというふうに記憶をしています。改めて確認をしていきたいというふうに思います。

 つまり、二〇一二年四月に2プラス2があったわけでありますけれども、それ以前は、今申し上げた普天間の移設の問題とグアム移転問題と嘉手納以南の土地の返還の問題は、まさに三つの措置はパッケージとして相互に関連をしていたというふうに承知をしています。

 普天間の移設が進展をしなければ、沖縄にいる海兵隊のグアム移転も進まない、あわせて嘉手納以南の土地の返還も進まない、そういう関連性があったというふうに思いますけれども、二〇一二年の四月の2プラス2の合意によって、このパッケージ、三つのパッケージを解いて、普天間の進展を切り離して、グアムの移転の問題、さらには嘉手納以南の土地の返還を進めていくということにしたというふうに私は認識をしているところでありますけれども、外務省にまずお尋ねをしたいと思います。

 グアムの協定改正議定書というのがつくられました。今申し上げた二〇一二年四月の2プラス2の合意を受けて、平成二十五年十月三日署名、平成二十六年四月二十三日国会承認、平成二十六年五月二十四日交換公文の交換が行われておりますけれども、この主な改正内容について御説明願います。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 改正されましたグアム協定の規定によりまして、まず、議員御指摘のとおり、日米安全保障協議会が二〇一二年四月二十七日付の共同発表におきましてロードマップにその概要が示された計画を調整することを決定し、並びにその調整の一部として、第三海兵機動展開部隊の要員の沖縄からグアムへの移転及びその結果生ずる嘉手納飛行場以南の土地の返還の双方を普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定したことを想起しという前文にさせていただきました上で、第三条、第九条の中で、移転は、ロードマップに記載された普天間飛行場の代替施設の完成に向けての日本国政府による具体的な進展にかかっている等の規定を削除したところでございます。

玄葉委員 今御説明がございましたけれども、グアムの協定改正議定書は今の説明どおりでありまして、その前の、いわゆる改正前の議定書というのは、手元にございますけれども、〇六年の再編実施のためのロードマップをもとにして、二〇〇九年に、たしか中曽根当時外務大臣とヒラリー・クリントンさんが署名をしている、たしか二〇〇九年にですね、そういうものだと思います。

 この改正前の議定書というか、この協定だと、今お話しのように、まさに、普天間が進展しなければ、グアムの移転、沖縄にいる海兵隊のグアム移転、八千人の海兵隊のグアム移転も、いわば、普天間の進展がなければ進まない、それに伴って、嘉手納以南の土地の返還も進まないという趣旨のことが、前文にも三条にも九条にもそれぞれ書かれているわけであります。

 しかし、二〇一二年四月、これは私も外務大臣でありましたけれども、2プラス2の合意がございました。きょう手帳を見てひもとくと、二〇一一年の十二月の十九日のようでありましたけれども、日米の外相会談がワシントンDCでありまして、この三つのパッケージを解くことについて局長間で検討をスタートさせようということで、ヒラリー・クリントン当時の国務長官と合意をしたことが始まりだったというふうに記憶をしています。そのときはプレス発表はいたしませんでしたけれども、その後調整が進んで、二〇一二年の2プラス2で合意を見たということであります。

 そのときの思いというのは、いわば膠着状況がありましたので、何とか打開の糸口を探りたいということもありましたし、本来この問題というのは沖縄の負担の軽減が先行されるべきなのではないかという思いもあって、もちろん日米それぞれの思惑が一致したということもあると思いますけれども、そういう思いの中で合意に至ったというふうに思っています。

 もう一つ確認ですけれども、それでは、嘉手納以南の土地の返還というのは、その後、進んだんでしょうか。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 嘉手納以南の米軍施設・区域につきましては、二〇一二年の2プラス2の合意の後、二〇一三年に沖縄統合計画を作成いたしました。

 その作成計画に基づきまして、具体的には、例えば、これまでに、西普天間住宅地区、これは約五十一ヘクタールでございますが、の返還が平成二十七年三月に実現したほか、平成二十七年十二月には、地元からの返還要望が特に強かった市道用地としての普天間飛行場の一部、これは約四ヘクタールでございます。また、渋滞緩和のための国道拡張を目的とした牧港補給地区の一部返還、約三ヘクタールの前倒し返還を決定し、平成二十九年七月、平成三十年三月に、それぞれ返還が実現しているところでございます。

 この返還は、それぞれ人口が非常に多い地域での返還であると承知しております。

玄葉委員 まさに、普天間の進展にかかわらず、嘉手納以南の土地の返還も進んでいるということでございます。

 ちなみに、先ほどの2プラス2、二〇一二年の2プラス2の合意後、三年後に、このグアム協定の改正議定書が署名されるわけでありますけれども、そのときの署名は、2プラス2ですから、小野寺さんもここでまさに署名をされているわけです。

 改めて外務大臣に確認をいたしますけれども、普天間の移設の進展と、沖縄にいる海兵隊のグアム移転と、嘉手納以南の土地の返還というのは、この三つのパッケージは、まさにパッケージではなくて、パッケージは解かれている、リンクしていないという認識でよろしいですか。

河野国務大臣 そういう認識でよろしいかと思います。

玄葉委員 私もそう思います。

 そのことで沖縄の負担をしっかりと軽減をしていって、沖縄の理解を得ていくということが大切だと思うのですが、なぜ菅官房長官は、まるで普天間の移設が進展をしなければ、グアムの移転の問題も、あるいは嘉手納以南の土地の返還も進まないぞ、三つはリンクしているぞというような趣旨の発言に聞こえたのでありますが、そういう発言をしたのでしょうか。

河野国務大臣 かつて普天間飛行場の移設問題がなかなか進展しない中、米国議会において、米国防授権法により、グアム移転事業に係る資金支出が凍結されたことがあり、また、当時の仲井真沖縄県知事が辺野古の埋立承認を出し、目に見える形で工事が進んだときに、米国議会において、米国防授権法による資金凍結が解除されたということがありました。

 御指摘の官房長官の話は、結果的にはリンクしているんではないかということで、官房長官がそうおっしゃったのではないかというふうに認識をしております。

玄葉委員 私は、その認識は間違いだというふうに思います。普天間の移設の進展とかかわりなく嘉手納以南の土地の返還とグアムの移転というのは進んでいくというふうに取決めがなされて、それは今なお生きているということでございます。

 ちなみに、二〇一四年の資金の凍結解除、これは議会のですね、というのはもともと、私も在職中、覚えておりますけれども、アメリカ政府が米議会にグアムの移転計画というものを出せと言われていたのを出さなかったという経緯が実はあったんですね。それを出したから資金の凍結解除がなされたのであって、そこは菅官房長官の認識が私は間違っているというふうに思いますし、そのことを殊さら、今、官房長官として、しかも沖縄担当として発言をしない方がいいというふうに思います。

 つまりは、まるで沖縄を恫喝するかのように、普天間の移設が進まなければグアムの移転もしないぞ、沖縄の海兵隊は減らないぞ、あるいは嘉手納以南の土地の返還も進まないぞというふうに聞こえてしまいますからね。ですから、私は、これは、官房長官は本来慎重な方ですけれども、不用意な発言だったなというふうに指摘をしておきたいというふうに思います。

 外務大臣、何かあったら御発言いただけますか。

河野国務大臣 しっかりと政府として、普天間飛行場の移設が行われ、返還ができるように努力してまいりたいと思います。

玄葉委員 ぜひ、普天間の移設の問題は問題として、先ほど申し上げたように、海兵隊のグアムへの移転、嘉手納以南の土地の返還、沖縄の負担の軽減、これをぜひ進めてもらいたいというふうに思います。

 次に、きょう与野党から、それぞれ外相専用機の話が出ておりました。

 先ほど聞いていて、お昼に質問通告というか、聞くかもしれないということで外務省に一報を入れたのでありますけれども、外務大臣の意見は私はよく理解をいたします。おっしゃったように、特に、島嶼国を訪問するとか、あるいはアフリカの横移動だとかというのは非常に効率が悪いということで、なかなか外務大臣が多くの国を回りにくい、トランジットに時間がかかるというのはそのとおりだと思います。外交力強化の一環として、あるにこしたことはないというふうに私も思っています。

 ちょっとお聞かせいただきたいのは、お昼に申し上げたんだけれども、ほかの国、特にほかの先進国なんかでは外相専用機というのはどういうふうになっているかわかりますか、答えられますか。

河野国務大臣 多くの場合、閣僚の飛行機というものを政府が何機か持っていて、それを使うというふうに承知をしております。

 ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、こうした国々は、政府専用機を首相、外務大臣あるいはほかの閣僚が共用する、アメリカの場合には、政府専用機を大統領以外の政府の人間、閣僚で共用しているというふうに理解をしております。

 カナダの場合は、通常は商用機でありますけれども、制度的には閣僚も政府専用機を使用できる、外務大臣も、商用機が利用できない場合に限定的に政府専用機を利用しているというのが、主なG7の外務大臣の専用機の利用方法というふうに承知しております。

玄葉委員 実際に閣僚が出張するというのは、首相以外でいうと、外務大臣が一番多いと思いますけれども、財務大臣も多い、経産大臣も多い、防衛大臣も多いと思います。ですから、例えば関係各省庁の予算を効率化して、外相専用ということではなくて要人専用という形で、兼用で持つ。結果としては外務大臣が一番使うことになると思いますけれども、それも一つの方策ではないかなというふうに提案をいたしますけれども、外務大臣、いかがお考えですか。

河野国務大臣 外務大臣専用機と言っておりますが、当然に、外務大臣が三百六十五日飛んでいるわけでもございませんし、御指摘ありましたように、防衛大臣、経産大臣、財務大臣、その他の大臣も今、海外出張が頻繁に行われる時代でございますから、これは閣僚の間で必要な者が使うということに、恐らくそうするのが一番自然なんだろうというふうに考えております。

玄葉委員 私もこれは、外務省にというよりは政府全体に善処を求めたいなというふうに思います。

 次の質問ですけれども、日米の、実質FTAだと私は思いますけれども、新しい通商交渉についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず結論的に一言、まず冒頭申し上げたいのは、ぜひ、言葉で逃げるのではなくて、私はこの間の議論を聞いていて、これはFTAだなと思いました。だとすれば、FTAだということを認めて、言葉で逃げないで、内容で勝負をするというのが本来だというふうに思っていますので、その観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今申し上げたように、なぜ、これは実質FTAなのに、何と言っているんですか、トレード・アグリーメント・オン・グッズ、TAGというふうに言っているのか、説明願います。

河野国務大臣 我が国はこれまで特定の国や地域との間で物品貿易やサービス貿易全般の自由化を目的とする協定をFTAというふうに呼んでまいりました。

 今回の日米の交渉は、トランプ大統領と安倍首相の間で合意をされた枠内で交渉するというものでございますので、これまで我々が申し上げてきたFTAという用語ではなく、TAGというふうに呼んでいるわけでございます。

玄葉委員 今、おっしゃったのは、安倍さんとトランプさんが交渉した範囲がそうだからということのようでありますけれども、多くの人がもう指摘をしていますけれども、日米共同声明の、日本語で読んでも、大体、英文で読めばそうだという指摘が多いんですけれども、日本語で読んでも、私は実質FTAだというふうに言わざるを得ないのではないかというふうに思います。

 つまり、日米共同声明の第三項では、物品プラスサービスを含めた早期に結果が出せる重要分野の二つの交渉を同時にスタートさせるということが三項に書いてあって、四項には、それが終わったら、今度はほかの貿易・投資の事項についても交渉する、こう書いてあるわけです。

 普通に考えれば、合わせわざ一本というか、普通ならFTAだというふうにいうわけでありますけれども、最初の部分だけを取り出して、TAGだということで、小手先というか目くらましというか、そういうことは私はやめた方がいいというふうに思いますが、これは担当は内閣府なのでしょうか、副大臣、来ていれば、答弁願います。

田中副大臣 お答えいたします。

 まず、九月末の日米合意でありますが、これは、日米交渉を進めるに当たっての基本的な枠組みですとかお互いの立場を確認したものであります。具体的な交渉はまさにこれからでありますが、今回のTAG交渉、これは基本的にはグッズ、物品、これを対象とするものであります。

 その上で、これとあわせて早期に結論が出るものについても交渉するということで合意しましたが、しかし、これは、例えば通関の手続ですとか貿易の円滑化に関する措置、あるいは輸出入の手続の透明性の問題など、物品と同じタイミングで結論が出せる分野に限定されているものと考えております。一方、金融とか保険などのサービス分野では、やはり、制度改正を要するものは、交渉に時間がかかって、交渉の対象にはならない。

 また、四項の部分でありますが、これは、物品の交渉が完了した後に協議することとした、その他の貿易や投資の分野についても、どの分野を交渉するか、これは、その交渉の範囲も決まっていませんし、この分野で協定を結ぶと決めたわけでもありません。

 したがいまして、今回の合意は、これまで我が国が結んできた多くの協定とは異なって、サービス貿易全般をカバーするFTA、さらにルール分野も含むEPAとは言えないものであります。その先のまた包括的FTA、これを前提とした合意でないというものも、この共同声明の内容からも明らかであると思っております。

玄葉委員 全く明らかじゃないと思います。

 経産副大臣もお務めなんでしょうかね、副大臣は。そうではない。

 経産省のホームページを見ますと、FTAについて何と言っているかというと、関税の撤廃、削減を定めるFTA、関税だけでなく知的財産の保護や投資ルールの整備なども含めたEPA。関税のFTA、より幅の広いEPA、こういうふうに言っているわけです。いわば包括的なFTAをEPAというふうに、ホームページでそう定義をしているんですね。だから、私は本当に、ある時期にもう言葉で逃げるのはやめた方がいいというふうに思います。

 ちなみに、WTOとの整合性を説明してください。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、WTOとFTAの関係でございますが、WTOの条文上は、FTA、フリー・トレード・アグリーメントということで、定義条項が設けられているわけではございません。ただ、ガット二十四条八項に、自由貿易協定ではなくて自由貿易地域ということで定義がございます。

 実際、この二十四条を満たしているかどうかという適合性の問題と、満たしているものをFTA、自由貿易協定と呼ぶかどうかという問題については、直接の関係はないと理解しております。

玄葉委員 これは当然、山上さんでもいいんですけれども、日米物品協定と例えば呼んだとして、ここで決まったことというのはWTOの例外として認めてもらう、つまりは、最恵国待遇、内外無差別、つまりは、日米に適用されるものであって、日米以外に全て適用されるものではないという意味で例外として認めてもらう、こういう理解ですね。

山上政府参考人 お答えいたします。

 TAGが一体どういうものになるのかというのは、まだこれから交渉していくものでございますので、交渉の結果次第であるということかと思います。

 ですので、もちろん、日本政府の立場としては、いかなる、どのようなものをつくるにしても、それがWTO協定と整合的でなければならない、こういう基本的な立場に立って交渉を進めてまいりたいと考えております。

玄葉委員 ちょっと冒頭の、初めの部分というのは、私、よく理解できませんでした。つまりは、基本的に、ここで決まったことはWTOの例外として認めてもらうという前提で交渉しているものだろうというふうに私は認識をしています。

 ちなみに、先ほどの説明でいうと、いわゆるWTO、ガットの中でいう自由貿易地域であることは、このTAGで定められる協定は自由貿易地域ということで認識していいんですね、それは。

山上政府参考人 お答えいたします。

 この点も、日米間でどういう交渉結果をまとめるかということでございますので、今の時点で、できるものがガット二十四条八項に言う自由貿易地域に当たるかどうかということは、予断することはできないと考えております。

 あくまでも一般論で申し上げますけれども、委員おっしゃるように、このガット二十四条八項というのは、ガットの一条にございます最恵国待遇の原則の例外として認められているものでございます。ですので、仮に、日米間で合意する内容、これを最恵国待遇を適用する、他の国にも均てんするということであれば、二十四条八項の問題にはならないという面もございます。

 こういったことも含めて、日米間で交渉して決めていくということを申し上げている次第でございます。

玄葉委員 ちょっと私、この点は驚きですね。ほかの国にも全て適用していくような協定を日米で今つくり上げようとしていると。物品の関税とかですよ。本当にそうなんですか。これは、担当副大臣、そういうことなんですか。

田中副大臣 まず、交渉は、今申し上げたように、まさにこれからということであります。そういった意味では、現時点での交渉の具体的な結果、これはやはり予見することは困難であるということでありますが、ただし、いかなる貿易協定も、やはりこのWTO協定と整合的である必要があるもの、そのように考えております。

玄葉委員 ちょっときょうの議論は驚いたんですけれども、私は、このTAGとやらは、WTO、ガットの例外として扱われることを想定しているのだろうというふうに認識をしておりました。WTO上例外を認めているのは、いわゆる自由貿易地域というものでありますから、当然、そういうこととして取り扱われるということを想定して交渉しているのだろうと思いましたけれども、それは違うということでありましたので、それはそれでそういう認識だということで、まず、きょうのところは受けとめたいと思います。

 もう時間が来ているのですけれども、いろいろな注文があります、この問題は。

 まず、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であることを、これは成果として政府は宣伝をされておりますけれども、逆の見方をすれば、これは逆に言えば、早くもそこまで譲歩したというふうにとれなくもない。ある意味、トランプさんに、中間選挙に向けてのプレゼントかなとすら私は思ったんですね。

 というのは、御承知のとおり、アメリカの畜産団体、これはかなり焦っています。つまり、オーストラリアとのEPAによって、牛肉はどんどんどんどん、オーストラリアから入ってくる関税は下がっています。今度、EUと日本がEPAを結びますので、デンマークから安い豚肉が入ってきます。そうすると、アメリカは、とにかく早く何らかの形で成果を得ないと不利になる、こういうことになるわけですね。

 ですから、ある意味アメリカの足元を見ながら、本来だったら交渉できるわけですけれども、その最大のある意味切り札を最初の段階で切っちゃったというふうにも言えなくもないと私は思っていますし、もう時間がないからやめますけれども、アメリカからTPP協定交渉の中でかち取ったというか、得られた二・五%の自動車の関税は当然いずれ〇%にする、トラックの関税はいずれ、今三〇パーですか、二五パーか、二五パーをゼロにするということは当然かち取らなきゃいけないというか、取らなきゃいけない分野だというふうに思いますので、この点は注文にきょうのところはとどめて、指摘に終えたいと思います。

 以上、私の質問を終わります。ありがとうございました。

若宮委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳であります。よろしくお願いします。

 きょうは、他委員会と質問時間がほぼ重複している関係で、共産党の穀田先生に御配慮いただき、また委員長、理事、委員の皆様の御了解をいただいて、ちょっと質問時間を先にさせていただくことを、おわびかたがた御礼を申し上げたく存じます。

 今も玄葉元大臣が質問をされておられました。そして、今外されましたけれども、岡田元外務大臣もここにいらっしゃって、私も政権交代のときに一議員でありましたけれども、政府・与党側にいさせていただいた記憶がございますけれども、まさしく分厚い委員会の議論が展開され、今も、普天間、沖縄の問題、あるいはTAG、FTAなのかというような分厚い議論がなされていて、大変僣越ですけれども、政権交代の意味というのは極めて私は大きかったと、今、横にいさせていただき、痛感した次第でございますので、正直、政治の、あるいは国会の緊張というものは極めて大切であって、政治の安定ということにも理解を示しますが、一方で、やはり緊張感ある国会で本当に分厚い議論を我々はしていかなければならないと思っています。

 そんな意味で、ちょっと僣越ですけれども、外交であれ安保であれ、あるいは社会保障、財政規律、こういった問題は、先日スウェーデンの改革の話を自分の党の勉強会でいたしましたけれども、こういった外交、安保、財政、そして社会保障の分野においては、特段、政権がかわってもその政策の変更を大きくしないということで、国民の皆様からの信頼を得るという政治が他国ではでき上がっているということがありますので、僣越ですけれども、そういった思考で、与野党議員に、緊張を持ちつつ安定した政治、あるいは共有する政策課題というものを持っていただきたいというふうに思っております。

 きょうも、外務大臣はこの後パプアニューギニアに御出張ということで伺っておりまして、金曜日までということなので、委員会質疑はないということも了解しておりますけれども、先ほど、私は一方的に申し上げますけれども、外務大臣経験の玄葉代議士から、大臣の、外務大臣だけではなくて、兼用で閣僚専用機があってもいいのではないかというような御提案をいただきました。

 これも思いつき的で恐縮ですけれども、ジャンボジェット機から787に総理の政府専用機はかわられるという段になっていて、私の認識では、かつ……(発言する者あり)777ですか、失礼しました。ありがとうございます。改めます。777が導入されるということですが、私の認識では、予備機というのが存在するという認識を持っておりますので、この御時世、予備機を常に並走させるという必要もわかってはいるものの、一方で、今、河野大臣から御説明があった他国の例を引けば、恐らくは、予備機的なものが他国に存在するのかどうかというのはいかがかなとも思いましたし、やはり、総理だけのものではなくて、総理の御了解が要るのは確かですけれども、政府専用機をもっと閣僚の御出張に御活用いただき、地球を俯瞰する外交と言われる外交を進めていただければというふうに、私の方からは提案をさせていただきます。

 そこで、きょう、冒頭の武井議員の質問に対して大臣は六つのポイントを挙げられて、日米、友好国とのネットワーク、三つ目が中国、近隣諸国、気候変動、中東、インド太平洋という六つを挙げられました。

 こういった点で、ちょっとこれもお願いというか激励というかですが、延べ八十カ国、訪問国が五十五カ国、そして来日された国が七十六カ国ということで、大変な数に上っていらっしゃることは存じ上げていますけれども、一方で、中国の王毅外相がそれ以上の数の国を訪問されているということも、外務大臣みずからおっしゃっていたような記憶もあるんですけれども、そういった事実もあるので、ぜひとも、歴代外相の数を上回る訪問とおっしゃっていた、裸の外交というか、日本のソフトパワーを使った外交を大いに展開していただいて、日本の外交を更に進めていただきたいというお願いを申し上げます。

 それともう一つ、来年六月のG20、これは、安倍総理に、私、予算関連質疑のときに財務金融委員会でお願いした記憶があって、それが功を奏したと思えれば幸せですけれども、G20の外相会合が私の地元の愛知県で開催いただくという段になっていると伺っています。この点についても、ぜひ大きな成果を、発信力を持った大きな成果、例えば、お話にありましたSDGsであるとか、そういったものの深化を我が国がリーダーシップをとって発信していただくというようなことをお願いしておきたいと思います。

 さて、質問に入らせていただきますけれども、総理大臣の所信表明演説の中で、「今こそ、戦後日本外交の総決算を行う。」というお言葉がありました。総理大臣のお言葉というのは極めて重たいというふうに、私も議員をさせていただく中で感じておりますけれども、一体、この戦後日本外交の総決算という言葉はいかなる意味を持つのか、どういった定義づけになるのか。

 一方で、地球を俯瞰する外交というお言葉がずっとあったというふうに記憶していますし、ちょっとこれは手前みそですけれども、私は、ゴルバチョフ・ソ連元大統領にお会いしたときに、君のような一般の人に会うことは大統領だったときはほとんどなかった、会う人間は大体五十人ぐらい決まっていて、核のボタンを持っているので、会う人間は限られていて、そんな中で、なかなか普通の人に会わないんだけれども、君のような人に会ったので、せっかくだから言っておくけれども、平和の構築というのは長い対話が重要だということを私に言ってくださいました。

 そういった意味で、レーガン大統領とレイキャビクというような象徴的な会談をゴルバチョフ元大統領はされておられますけれども、外交の継続性とか連続性とか、こういったものは極めて重要であり、また、活発な外相同士の人間関係構築というのも、先ほどお話がありましたけれども、極めて大切だというふうに私は認識しております。

 この総理大臣のお言葉の、戦後日本外交の総決算というのをいかに理解したらいいのか、あるいは、外務大臣はいかに御認識され、活動をされていられるのか、この点をお聞かせいただければと思います。

河野国務大臣 北東アジアは、依然として戦後の状況がまだ残っております。日本と北朝鮮との間の国交の問題、それから、日本とロシアの間の北方領土を含めた平和条約締結の問題、これら、戦後からまだ未解決であった問題を解決をする。

 例えば日ロ関係は、安倍総理とプーチン大統領の間の非常に長い継続した首脳会談によって培われた信頼関係の上でいわばこの日ロの問題を解決しようということでございますから、御指摘いただきましたように、連続性、継続性に基づいて信頼関係を構築し、そして、この北東アジアの二つの大きな問題を解決して戦後を総決算しようということだというふうに私は理解をしているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 私もちょっと、なるほどと、今御説明を伺ってわかりましたけれども、北東アジア、北朝鮮との関係であり、ロシアとの北方領土問題を含めた平和友好条約の関係というような意味合いから、この戦後日本外交の総決算を行うという言葉を総理が言われたという認識をさせていただきたく存じます。

 さて、先日の外務大臣の所信的発言という方に質問を移らせていただきたいんですけれども、河野四箇条というお話がございました。知的・人的貢献、人への投資、息の長い取組、政治的取組の強化、これを言われて四箇条ということかと思いますが、この先がありまして、大臣は、この方針のもと、経済面のみならず、中東への政治的関与を強化し、その平和と安定に向けて一層の役割を果たしていきますと述べられたということです。

 発表後、今日に至るまで、外務大臣が、大学の御卒業の関係で人脈を非常に強く中東各国にお持ちであるということも存じ上げさせていただいていますけれども、一年三カ月たちまして、二期目に入られてということで、これまでの成果、あるいは今後の展開、少しほかの方の質問にもあったかと思いますが、改めて御回答いただければと思います。

河野国務大臣 中東は、日本にとりましても、エネルギーの安定供給ですとか、あるいはシーレーンということから非常に重要でございますし、テロ、暴力的過激主義といったものの拡散を防ぐという意味でも、世界的にも非常に重要な地域になりつつあるというふうに思っております。

 これまで、日本としては、まず、長い間取り組んでまいりました、日本独自の取組でございます平和と繁栄の回廊構想を進めるために、日本、イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、この四者の閣僚会合を実施をしました。そして、ジェリコでやっているアグロインダストリアルパーク、JAIPと呼んでおりますが、これが今十三社操業をすることになり、第二フェーズ、ICTあるいは物流といったことに少し力を入れるJAIP構想を更に進めていこうということで、パレスチナの関係で日本がかなり積極的に力を入れているということを各国が認識をしてくれるようになりました。

 その結果、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合、CEAPAD、あるいはUNRWA支援会議といったものの共同議長を日本にやってほしいということで、私も行って共同議長を行いましたし、あるいはEUが主催をするシリアの会合にも日本が出かけていく。そのほかに、マナーマ対話ですとかローマ対話といったさまざまな中東の意見交換の場に日本がいるのが当然だという雰囲気がだんだんと醸成をされてきたと言ってよろしいかと思います。

 また、テロあるいは過激派対策、過激主義の対策として、これはヨルダンのアブドラ国王が主催をされてきたアカバ・プロセスの中でも、東アジアの問題を議論するときに、日本が共同議長として指名をされて私も行ってまいりましたが、そういう形でだんだんと、日本というのは経済あるいはエネルギーの分野のプレーヤーだということから、政治的な場面でも、中東のさまざまな場面で日本を入れる、日本もプレーヤーだ、そういう認識はしっかりと確立してくることができたのではないかというふうに思っているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 先ほどの御説明よりも更に詳しい説明をいただいたかと思いますけれども、JAIPの第二フェーズということで物流というお話がございました。

 これは、外務大臣が外務大臣に就任される前にヨルダン国王にお会いになったときに、これも予算委員会でこの春に一度質問させていただいたかと思うんですけれども、ちょっと改めて、その後の進展みたいなことで、答弁は重複する可能性があるかもしれませんが、ヨルダン国王の発言は、ヨルダン川東岸に、国内線なのか国際線なのか私もきちっと聞き取れませんでしたけれども、飛行場建設の話を外務大臣にされたかと記憶していますが、この部分での日本の貢献ということとか、あるいはこの四カ国の関係性での進展の状況等を教えていただければと思います。

河野国務大臣 このジェリコの農産加工団地、JAIPの製品は、パレスチナの中だけ、あるいはイスラエル国内市場ということだけでなく、できれば湾岸、あるいはもっと言えば日本やヨーロッパにも出していける、そういう可能性があるものだというふうに思っております。

 四月に行いました、先ほど申し上げた四者閣僚会合の中で、このJAIPから、ヨルダンとイスラエルの国境になりますキング・フセイン・ブリッジあるいはアレンビー橋と呼ばれているところへ直通の道路を引くということで合意をすることができましたので、今、ジェリコの農産加工団地からアレンビー橋までの直通道路を引くべく作業を進めているところでございます。

 そこからヨルダン側に製品を出して、そこからヨルダンのマーケットあるいは湾岸を含めた中東の市場に製品を出していきたいというふうに思っておりまして、国王がおっしゃっていた飛行場というのは、そのときにそこを使って湾岸へ物を持っていく、あるいはそこからヨーロッパへ物を持っていくということも可能になるのではないかと思います。

 まず、そのためには、アレンビー橋を越えてヨルダン側に物を出せるようにしなければいけませんので、まず当面この直通の道路をしっかりとつくると同時に、税関、このやりとりをどうするかというところをしっかり確保してまいりたいと思っているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 かなり具体的なお話で進んでいますし、日本が本当に具体的なところで貢献をできているというのを今大臣の答弁から聞き取れたのかなというふうに思っていますので、さらに、中東和平のために、やはり経済的な安定というのが各国必要だと思いますので、そういった意味でも更に御尽力いただければというふうに思っております。

 今、湾岸諸国というお話がございましたけれども、ここはちょっと大臣の御認識なのか当局の御認識なのか確認したいんですけれども、できれば大臣の御見解等伺いたいですが。

 いわゆる、今イランがアメリカから一つの措置を受けて大変経済的に厳しい状況になっている一方で、今もヨルダンの内陸の国々と湾岸の中東というのを、私も体感させていただいて違いを認識しているつもりでございます。そういった意味で、ちょっとアラブと一くくりにすること自体が、湾岸諸国と内陸の国とまた違うと思いますけれども、アラブとペルシャの長い歴史と対立という点はずっと古い昔からあったやに認識していますけれども、この点について、両民族の和解や融和に我が国が貢献できる可能性とか、あるいは現状の御認識といったものを伺えればと思っております。

河野国務大臣 御指摘のとおり、イランはペルシャ民族、中東はアラブ民族ということで、民族あるいは言葉が違うという状況がありますが、日本は、いずれにしても、宗教、宗派、あるいはこうした民族的な観点から見れば全く中立でありますし、アラブ、ペルシャを含めたこの地域で何らマイナスの歴史的な足跡というのはございません。

 その上で、日本は、アメリカとも腹蔵なく話ができるという関係にもありますので、この地域に入っていって、お互いの仲介をするということは非常にやりやすい。イランとも友好な関係がありますし、サウジアラビアとも友好な関係がある。

 そういう状況にありますので、こうした日本の持っている、何というんでしょうか、強みと言うとちょっとあれかもしれませんが、これを生かしながら、この地域で果たせる役割をしっかり果たしてまいりたいと思っております。

杉本委員 時間となりましたけれども、六つの中の一つの中東をあえてお伺いしましたけれども、大いに御活躍いただいて、日本のためにお仕事を頑張っていただきたいと思います。

 以上で終わります。

若宮委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは徴用工問題について質問したいと思います。

 韓国の大法院は、十月三十日、日本がアジア太平洋地域を侵略した太平洋戦争中に徴用工として日本で強制的に働かされたとして韓国人四人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、賠償を認める判決を言い渡しました。

 河野大臣は、この判決について、一九六五年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に終わった話であり暴挙だ、さらに、国際法に基づく国際秩序への挑戦だと、韓国側を強く非難する姿勢を示されておられます。

 改めて、この問題での河野大臣の所見を伺いたいと思います。

河野国務大臣 今般の韓国大法院の判決は、日韓請求権協定に明らかに反して、日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであります。そればかりか、今御指摘いただきましたように、一九六五年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的な基盤を一方的かつ根本から覆すものであって、極めて遺憾と言わざるを得ません。

 日本政府としては、韓国政府に対しまして、このような国際法違反の状態を直ちに是正することを含めた適切な措置を講ずるように強く求めているところでございまして、韓国政府が毅然とした対応をしてくれるというふうに期待をしているところでございます。

穀田委員 今の発言は、所信表明と、それから官房長官の記者会見と大体同じ内容でずっと言っておられると拝察しました。

 そこで、徴用工問題や強制動員の問題は、日本の植民地支配のもと、朝鮮半島や中国などから多数の人々を日本本土に動員し、日本企業の工場や炭鉱などで強制的に働かせ、劣悪な環境、重労働、虐待などによって少なくない人々の命を奪ったという重大な人権問題であります。

 本件の原告も、いわゆる、政府が言っていますけれども、募集などと言っておりますが、その実態は甘言や暴力を伴うものだった。一日八時間の三交代制で働き、月に一、二回程度しか外出を許可されず、月に二、三円程度の小遣いが支給されただけだった。賃金全額を支給すれば浪費するおそれがあると理由をつけ、本人の同意を得ずに、彼ら名義の口座に賃金の大部分を一方的に入金し、その貯金通帳と印鑑を寄宿舎の舎監に保管させた。賃金は結局最後まで支払われなかった。当初の話と全く違う過酷な条件で働かされ、逃げ出さないように厳しい監視下に置かれ、殴打されるなど体罰を振るわれたことが裁判で明らかになっています。

 そこで、外務省に聞きたいと思うんですけれども、元徴用工の請求権については、政府は、日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している、判決は国際法違反だとの姿勢ですが、私はそうした政府の姿勢に重大な問題があると思います。

 韓国大法院の判決は、元徴用工の個人の請求権は消滅していないと判定を下しています。この個人の請求権について、日本政府は国会答弁などで、請求権協定によって日韓両国間での請求権問題が解決されたとしても、被害に遭った個人の請求権を消滅させることはできないと公式に繰り返し表明してきたはずであります。

 私、当時の議事録を持ってきましたけれども、例えば一九九一年八月二十七日の参議院予算委員会で、外務省の柳井条約局長は、日韓請求権協定の第二条で両国間の請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたと述べていることの意味について、「これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。」と述べ、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。」と答えています。これは間違いありませんね。

河野国務大臣 個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございませんが、個人の請求権を含め、日韓間の財産請求権の問題は日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決済みでございます。

 具体的には、日韓両国は、同協定第二条一で、請求権の問題は完全かつ最終的に解決されたものであることを明示的に確認し、第二条三で、一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対する全ての請求権に対していかなる主張もすることができないとしていることから、このような個人の請求権は法的に救済されません。

 日韓請求権協定において、請求権の問題は完全かつ最終的に解決され、個人の請求権は法的に救済されないというのが日本政府の立場でございます。

穀田委員 日本政府の立場はそういうことだということを言っているわけですけれども、問題は、今の説明は、簡単に言うと、国と国との請求権の問題と個人の請求権を一緒くたにして、全て一九六五年の日韓請求権協定で解決済みだ、個人の請求権もないとしているところに、そこに重大問題があります。

 私が聞いているのは、請求権協定で個人の請求権は消滅したのか消滅していないのかということを聞いているんです。外務省、お答えください。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣より答弁申し上げたとおりでございますけれども、御指摘の柳井条約局長の答弁につきましては、個人の財産権、請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない旨述べるとともに、日韓請求権協定による我が国及び韓国並びにその国民の間の財産、権利、利益並びに請求権の問題の解決について、国際法上の概念である外交的保護権の観点から説明したものであるということでございます。

 韓国との間におきましては、日韓請求権協定により、一方の締約国の個人の請求権に基づく請求に応ずべき他方の締約国及びその国民の法律上の義務が消滅し、その結果、救済が拒否されるということになっております。

穀田委員 いろいろありましたけれども、一番最初に言ったところが肝心でして、消滅させたものではないということが肝心なんですね。

 それで、柳井条約局長は、一九九二年の二月二十六日の外務委員会でも「条約上は個人の請求権を直接消滅させたものではない」と答えて、今お話あったように、結局のところ、そういう、訴求したり、いろいろなことをしても無駄よという話は出ているけれども、関係者の方々が訴えを提起される地位までも否定したものではないとはっきり答えているわけですね。

 さらに、その訴えに含まれておりますところの慰謝料請求権等の請求が我が国の法律に照らして実体的な根拠があるかないかということにつきましては、これは裁判所で御判断になることだと存じますと答えているわけですね。

 このように、たとえ国家間で請求権問題が解決されたとしても、個人の請求権は消滅しない、そしてその訴えをどう判断するかは司法府の判断になると繰り返し言明してきた。これが政府の公式の立場だと言ってよろしいですね。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、柳井条約局長の答弁は、請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではないとしつつも、日韓請求権協定による我が国及び韓国並びにその国民の間の財産、権利及び利益並びに請求権の問題について、国際法上の概念である外交的保護権という観点から説明したものでございますが、同時に、その日韓請求権協定と申しますのは、先ほど大臣から答弁申し上げたとおり、完全かつ最終的に解決されたとか、一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対する全ての請求権に関していかなる主張もすることができないということで、明確に個人の請求権が法的に救済されないということを全体として書いているという理解でございます。

穀田委員 何度もおっしゃるように、そう意味はないと言っているだけで、消滅したとは言っていないというところが大事なんですよ。すぐ話をそらすわけだけれども、違うんですって。消滅していないというところが、今、私が問うている問題なんですよ。やっても意味がない、そういうことを言っているのは知っていますよ。

 そこで、強制連行による被害者の請求権の問題では、中国との関係でも問題になっています。

 二〇〇七年四月二十七日、日本の最高裁は、中国の強制連行被害者が西松建設を相手に起こした裁判で、被害者個人の賠償請求権について、請求権を実体的に消滅させることを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する機能を失わせるにとどまると判断しています。

 この判決は知っていますね。

三上政府参考人 はい、この判決は承知申し上げております。

穀田委員 この判決は、日中共同声明によって個人が裁判上訴求する機能を失ったとしながらも、実体的な個人の賠償請求権は消滅していないと判断し、債務者側において任意の自発的対応をすることは妨げられないとまでして、日本政府や企業による被害者の回復に向けた自発的対応を促したのであります。

 この判決が手がかりとなって、被害者は西松建設との和解を成立させ、西松建設は謝罪し、和解金が支払われたという経緯があります。

 たとえ国家間で請求権の問題が解決されたとしても、個人の請求権を消滅させることはない、政府が繰り返し言明してきたこの立場に立って、被害者の名誉と尊厳を回復し、公正な解決を図るために冷静な努力を今尽くすべきだ、このことを私は強調しておきたいと思います。

 そして、韓国大法院の判決は、原告が求めているのは、未払い賃金や補償金ではなく、朝鮮半島に対する日本の不法な植民地支配と侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員への慰謝料、これを請求したものだとしている。そして、日韓請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を根本的に否定したと指摘し、このような状況では、強制動員の慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれるとみなすことはできないと述べています。

 政府は、日韓請求権協定の締結に際し韓国側から提出された対日請求要綱、いわゆる八項目に、被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権と記されており、合意議事録には、この対日請求要綱の範囲に属する全ての請求が含まれているというけれども、その中に慰謝料請求権は入っているのですか。外務省。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 そういう請求権も含めて、全て対象となっているという立場でございます。(穀田委員「もう一度」と呼ぶ)

 そういった請求権も含めて、日韓請求権協定で全てカバーされており、解決済みという立場でございます。

穀田委員 慰謝料請求権は入っているかと聞いて、ばくっと答えて、入っていますと言われても困るんだよね。きちっと言ってほしいんですよ。

 一九九二年三月九日の衆議院予算委員会で、柳井条約局長は、日韓請求権協定上、財産、権利及び利益というのは、「財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいうことが定義されて了解されている」と述べ、慰謝料等の請求につきましては、「いわゆる財産的権利というものに該当しない」と答えています。

 つまり、請求権協定で個人の慰謝料請求権は消滅していないということではないんですか。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 請求権協定の二条でございますけれども、「両締約国は、両締約国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、」と書かれておりますので、請求権協定で財産、権利、利益と並んで、いわゆる請求権も入っているということでございます。

穀田委員 いつからそういうふうに範囲が拡大しているんですか。そんな話に書いていないですよ。

 柳井条約局長は、その後にまた、「慰謝料請求権というものが、この法律上の根拠に基づき財産的価値を有すると認められる実体的権利というものに該当するかどうかということになれば、恐らくそうではない」と答弁しているんですよ。

 そしてさらに、「昭和四十年、この協定の締結をいたしまして、それを受けて我が国で韓国及び韓国国民の権利、ここに言っております「財産、権利及び利益」について一定のものを消滅させる措置をとったわけでございますが、そのようなものの中にいわゆる慰謝料請求というものが入っていたとは記憶しておりません。」明確に慰謝料請求というものが入っていない、入っていたとは記憶していないと答えているわけですよ。

 したがって、個人の慰謝料請求権は請求権協定の対象に含まれていないということは明らかではありませんか。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと柳井条約局長の全文が手元にないものですから、そこはお許しいただきまして、先ほど申し上げたように、請求権協定の中には財産、権利及び利益並びに請求権ということで入ってきているわけでございます。柳井局長が実体的権利と申し上げたのは、その四つのうちの財産、権利及び利益、確定的に実体的に存在しているものということだと理解しております。それを日本国内法の措置法で消滅させたということを言っていると思うんですが、請求権、慰謝料の請求権はその消滅させた実体的権利の中に入っていない、ただ、請求権は請求権協定の中には入っているので、この請求権協定で全てが解決されているということでございます。

穀田委員 持っていないからというわけにはいきませんでね。そういうことを聞くと言っているわけだから。

 じゃ、念のためにもう一度お読みしましょう。

 一九九二年の三月九日に柳井さんは、「「財産、権利及び利益」というのは、「法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいうこと」が定義されて了解されているわけでございます。」と。「そして慰謝料等の請求につきましては、これは先ほど申し上げたようないわゆる財産的権利というものに該当しない」と。明らかにこの問題を問われて、これは該当しないということを答弁しているわけですよ。今ごろになってばくっと請求権の中に入ってますのやなんという話が通用せえへんほど明確に言っている。ここをちゃんと見なあきまへんで。

 さらに、もう一度言いますと、いわゆる慰謝料請求権というものが、この法律の根拠に基づき財産的価値を有すると認められる実体的権利というものに該当するかどうかということになれば、恐らくそうではないだろうと考えますと。

 更にあるんですよ。

 いずれにいたしましても、昭和四十年、この協定の締結をいたしまして、それで我が国で韓国及び韓国国民の権利、ここに言っております財産、権利及び利益について一定のものを消滅させる措置をとったわけですが、そのようなものの中にいわゆる慰謝料請求というものが入っていたとは記憶していませんと。

 だから、明らかに、この一連の請求権協定にかかわる交渉の過程で行われた問題について慰謝料請求権というものは入っていないということを二度三度にわたって明確にしている。これがこの間の答弁ではありませんか。その答弁を否定するということですか。

三上政府参考人 たびたび申しわけありません。答弁申し上げます。

 柳井局長の答弁を否定するつもりはございません。日本国内の法律をつくって、その実体的な財産、権利、利益については消滅させたわけです。しかし、請求権というのは、そういった財産、権利、利益のような実体的権利と違う潜在的な請求権ですから、それは国内法で消滅はさせられていないということを柳井局長は言ったと思います。

 国内法で消滅させたのは、実体的な債権とか、もうその時点ではっきりしている財産、権利、利益の方でございまして、その時点で実体化していない、請求権というのは、いろいろな不法行為とか、裁判に行ってみなければわからないようなものも含まれるわけですので、そういったものについては消滅はしていない。

 したがって、最初に申し上げたように、権利自体は消滅していない。しかし、裁判に行ったときには、それは救済されない、実現しませんよということを両国が約したということだと思います。

穀田委員 最後、いろいろ言っていますけれども、結局のところ、これは、それぞれの国内法において消滅したとか消滅していないと言っているけれども、明らかに、この問題については、その慰謝料の請求権というものは入っていないということは今の答弁で極めて明らかだと。しかも、当時の答弁はそのとおりだということを確認しておきたいと思います。

 最後に、河野大臣にお伺いしたいんですけれども、一九六五年の日韓基本条約及び日韓請求権協定の交渉過程で、日本政府が植民地支配の不法性について認めた事実はございますか。

河野国務大臣 ないと思います。

穀田委員 ありませんよね。

 そうすると、私は、日韓のこの基本条約、日韓請求権協定の交渉過程で、日本政府が植民地支配の不法性についてやらなかったことを、これを公式に大臣が述べたということについては重要な意味が私はあると思います。一切そういうことについては、一切と言っていませんけれども、なかったということですから、一切なかったということだと思うんですね。

 日韓基本条約は、一九一〇年の韓国併合をもはや無効と述べるだけで、日本側の責任や反省については何ら触れていません。

 そこで、私は思い出すんですが、私は京都に住んでいますから、小渕内閣で官房長官を務められた野中広務氏は、二〇〇九年の新聞インタビューに答えて、次のように語っています。

 子供のころ、鉱山で働く朝鮮人が、背中にたくさんの荷物を背負い、道をよろよろ歩く、疲れ切ってうずくまるとむちでぱちっとたたかれ、血を流しながら、はうようにまた歩き出す、そんな姿を見てきました。戦後六十四年が経過した今でも、戦争の傷は癒えていません。北朝鮮との国交回復、賠償の問題も残っています。多くの未解決の傷跡を見るとき、まだまだ日本は無謀な戦争の責任がとれていない。そのこと自体が被害者の方々にとって大きな傷になっていると思われ、政治家の一人として申しわけない思いです。こう語っておられます。

 同じ京都にずっと活動してきたもので、非常に重い発言だと思いますし、園部には、住んでおられたところにはマンガン鉱もありまして、そういうところで、こういう仕打ちを受けたということについて、政治家としての思いを語られておられます。

 その点では、外務大臣は、政治家としてのこういう点についての、どういう思いをされますか。

河野国務大臣 安倍政権として、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えでございます。

穀田委員 その歴代歴史認識ということについていいますと、そういう歴史認識について、韓国のこの間の問題について反省をしたということについて、今の安倍政権がその話を述べたことは、少なくともありません。

 ことしは、日本の韓国への植民地支配への反省、痛切な反省と心からのおわびということで、日韓両国の公式文書で、小渕恵三当時首相と、一九九八年ですね、そして金大中大統領による日韓パートナーシップ宣言から二十年の、二十周年の節目の年であります。日本政府が、私は、過去の植民地支配と侵略戦争への真摯で痛切な反省を基礎に、この問題の公正な解決方法を見出す努力を強く求めたいと思います。

 先ほど述べたように、多くの未解決の傷跡を見るとき、まだまだ日本は無謀な戦争の責任がとれていない、こうおっしゃっています。そういう意味でいいますと、私は、この問題の公正な解決、先ほど述べた努力をする際に、日韓双方が、この徴用工の、元徴用工の被害者の尊厳と名誉を回復するという立場から、冷静で真剣な話合いをすることが極めて大切だということを述べて、質問を終わります。

若宮委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 きょう最後の質問をさせていただきます。

 私は、持ち時間十分ですので、きょうは外務大臣も、終わった後、APECでパプアニューギニアに行かれる予定と伺っておりますので、太平洋島嶼国に関連して質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 外務大臣は、所信表明の中で、重点分野の六つ目にインド太平洋諸島について言及されておりまして、「インド太平洋地域を国際公共財とすべく、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて取り組んでいきます。」というふうにされております。

 太平洋島嶼国、これは十四カ国ありますけれども、外務省に資料をいただきました。この中でも重要性ということで幾つか書いておられまして、一つが地政学的重要性。豪州、ニュージーランドとのシーレーンに位置して、インド洋、南シナ海から太平洋へ抜ける非常に重要な拠点になっているということ。それから、天然資源としてLNG、石油等のエネルギー資源があるということで、特にLNGはパプアニューギニアから輸入をしており、日本の全輸入量の五%にも当たる。それから、カツオ、マグロの水産資源の供給地で、日本のカツオ、マグロ全漁獲量の四割も占めるということであります。それから、国連でも十二票を持っているということであります。ここは台湾との国交を有している国も六カ国あるということで、やはり中国との関係を考えても戦略的に非常に重要な地域であるというふうに思います。

 そこで、大臣、きょうもパプアニューギニアに行かれますけれども、太平洋島嶼国との連携強化についてどのように進めていかれるのか、御所見を伺いたいと思います。

河野国務大臣 おっしゃいましたように、さまざまな資源、水産資源を含めた資源、あるいはシーレーンといったことを考えると、非常にこの島嶼国は戦略的に重要な地域でございますし、国連を始め、さまざまな場面で一票を持っているという意味からも、日本としてしっかり重視をしていかなければならないというふうに考えております。

 こうした島国の中にも大使館を設置をし、今、実館で八つでしたか、ございます。今、余り大使館を速いペースで増設をしようとは思っておりませんが、島嶼国の中での、例えばバヌアツのようなところについては、少し今の事務所を格上げするというようなことを考えていかなければならないかなと思っております。

 それからもう一つは、それぞれに大使がおりますが、島における日本のプレゼンスを高めるという意味で、太平洋の島嶼国を面で担当をする大使というものを専属的に任命をいたしましたので、それぞれの個別の国と日本をつなげるだけでなく、島嶼国を面でこれから日本として見ながら、島嶼国全体と日本、あるいは周辺の同志国とどのようにつながっていくかということをしっかり考えていきたいというふうに思っております。

井上(一)委員 先ほど島大使の話がありましたが、非常にいいアイデアだと思いますので、これもやはり大臣のリーダーシップだと思います。

 ぜひ太平洋島嶼国との連携強化をやっていただきたいと思いますし、先ほどから政府専用機の話が出ていましたけれども、太平洋島嶼国、移動を考えると非常に時間もかかると思いますので、私はやはり、政府専用機というのは一つの有効な手段ではないかというふうに思います。

 それでは、次に中国軍。これは、太平洋に進出するなどの活動を活発化させておりまして、ことし四月には、太平洋上で、空母遼寧、これは外国産のワリャーグを改造した船というふうに承知していますけれども、これから艦載の戦闘機が飛行し、また、五月には、中国でつくられた空母、国産の空母が初の試験運航をしたというふうに承知しています。さらに、二隻目の国産空母を建造中というような指摘もあり、中国共産党幹部からは、将来的に少なくとも四隻の空母を保有するという発言もあるというふうに聞いております。

 やはり、太平洋上の防空体制の強化、これは課題となってくると思いますけれども、今の防衛計画の大綱においても、重視すべき機能、能力として、太平洋側の島嶼部における防空体制のあり方についても検討を行うというふうにしております。

 私自身は、防空識別圏、ADIZ、これの見直しを含めて、抜本的に太平洋側の防空体制を強化すべきというふうに考えておりますけれども、今年度策定を予定している防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画について、この太平洋側の島嶼部における防衛に関してどのように対応されるのか、お考えをお聞きしたいと思います。

原田副大臣 お答えをいたします。

 防衛省といたしましては、太平洋側も含めまして、我が国周辺の海域において、必要に応じてP3Cや護衛艦等を柔軟に運用して警戒監視活動を行い、我が国周辺における事態に即応する態勢を維持しております。

 他方、小笠原諸島など太平洋側の島嶼部は、これまで、固定式警戒管制レーダー等を含め、警戒監視に任ずる部隊を設置しておらず、いわば防空体制の面で空白地域となっております。

 このため、現防衛大綱及び中期防においては、太平洋側の島嶼部における防空体制のあり方について検討を行うこととされており、さまざまな検討を行っておるところでございます。

 その一環として、平成二十八年度から、部外委託により、レーダー等を設置するための適地に関する調査研究を実施しました。また、平成三十一年度概算要求においては、平成二十九年度補正予算に引き続き、硫黄島の地上レーダーを自動警戒管制システムに接続するための経費を計上しており、硫黄島周辺空域における警戒監視能力を向上させることといたしております。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、現在の防衛大綱の策定時に想定していたよりも格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しておるところでございまして、こうした状況を受け、本年度末までに新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画を策定すべく、これまで防衛省を含む政府部内で精力的に検討を進めてきております。

 太平洋側の島嶼部における防空体制のあり方につきましては、現時点で何ら決まったものではありませんが、一般的に、防空体制の強化として、警戒監視能力、情報収集能力、戦闘機部隊の展開能力、航空救難部隊の展開能力といった観点について検討していく必要があると考えております。

 いずれにしましても、年末に予定されている防衛大綱の見直しや次期中期防の策定に向けて、引き続き検討してまいります。

井上(一)委員 大使館の増設についてはもう先ほど大臣冒頭で触れていただいたので、次に、防衛省にもう一点、防衛駐在官に関して質問させていただきたいと思います。

 太平洋島嶼国には、今オーストラリアに三名の防衛駐在官がおりまして、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーが兼轄となっております。

 太平洋諸島では、さきの大戦で二十五万人が犠牲になられ、現在も多くの遺骨が眠っております。そういった遺骨収集事業や慰霊事業を進めていくため、それから防衛協力、こういうのを進めていくためにも、太平洋島嶼国での防衛駐在官、設置した方がいいのではないかと思いますけれども、防衛省にお考えをお聞きして、終わりとしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア太平洋地域における安全保障上の課題や不安定要因はより深刻化しており、太平洋島嶼国を含め、諸外国との防衛協力、交流は重要であると考えております。

 防衛駐在官につきましては、現在、世界各地において、四十五大使館、二代表部に六十七名を派遣しており、このうち、太平洋地域においては、豪州へ三名派遣しております。また、この豪州の駐在官がニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーを兼轄しておりますのは、委員御指摘のとおりでございます。

 太平洋島嶼国を含め、防衛駐在官の派遣のあり方については、次期中期防に係る検討の中で、要員の確保、養成の観点も踏まえつつ、兼轄等のさまざまな選択肢も含め、必要に応じた適切な配置となるよう検討してまいります。

井上(一)委員 終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

若宮委員長 次に、本日付託になりました社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣河野太郎君。

    ―――――――――――――

 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年十月以来、中華人民共和国政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成三十年五月九日に東京において、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国と中華人民共和国との間で年金制度に関する法令の適用について調整を行うことなどを定めております。

 この協定の締結により、年金制度への二重加入の問題の解決等を通じ、両国間の人的交流が円滑化し、ひいては経済交流を含む両国間の関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

若宮委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会といたします。

    午後三時三分散会


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