衆議院

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第4号 平成30年11月28日(水曜日)

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平成三十年十一月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 若宮 健嗣君

   理事 小野寺五典君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 武井 俊輔君

   理事 堀井  学君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      木村 次郎君    木村 哲也君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      佐々木 紀君    杉田 水脈君

      鈴木 憲和君    鈴木 隼人君

      田畑 裕明君    中曽根康隆君

      中山 泰秀君    福山  守君

      古川  康君    本田 太郎君

      三浦  靖君    山田 賢司君

      石川 香織君    櫻井  周君

      山川百合子君    青山 大人君

      高木 陽介君    岡田 克也君

      玄葉光一郎君    穀田 恵二君

      杉本 和巳君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   外務副大臣        あべ 俊子君

   農林水産副大臣      小里 泰弘君

   総務大臣政務官      古賀友一郎君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  清水 茂夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局内閣審議官)         稲山 文男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 加藤 俊治君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松浦 博司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 齊藤  純君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山上 信吾君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 大矢 俊雄君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 吉井  浩君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         池田千絵子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       渡邊 厚夫君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           中田 峰示君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小川 良介君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           倉重 泰彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)          渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省生産局農産部長)           平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           富田 育稔君

   政府参考人

   (林野庁林政部長)    渡邊  毅君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           松尾 剛彦君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十八日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     木村 次郎君

  鈴木 隼人君     三浦  靖君

  辻  清人君     本田 太郎君

  中曽根康隆君     木村 哲也君

  櫻井  周君     石川 香織君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     佐々木 紀君

  木村 哲也君     中曽根康隆君

  本田 太郎君     古川  康君

  三浦  靖君     鈴木 隼人君

  石川 香織君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  古川  康君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     田畑 裕明君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     辻  清人君

    ―――――――――――――

十一月二十二日

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八三号)

 同(笠井亮君紹介)(第八四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第八六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第九〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第九一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九二号)

 同(宮本徹君紹介)(第九三号)

 同(本村伸子君紹介)(第九四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九七号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一一七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一三三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三四号)

 同(宮本徹君紹介)(第一三五号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三六号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第一一一号)

 非核法の早期制定を求めることに関する請願(吉川元君紹介)(第一二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


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     ――――◇―――――

若宮委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官松浦博司君、大臣官房審議官岡野正敬君、大臣官房参事官安藤俊英君、大臣官房参事官齊藤純君、経済局長山上信吾君、内閣官房内閣審議官清水茂夫君、内閣人事局内閣審議官稲山文男君、法務省大臣官房審議官加藤俊治君、大臣官房審議官佐々木聖子君、財務省大臣官房審議官大矢俊雄君、国税庁長官官房審議官吉井浩君、厚生労働省大臣官房総括審議官池田千絵子君、大臣官房生活衛生・食品安全審議官宮嵜雅則君、農林水産省大臣官房総括審議官光吉一君、大臣官房輸出促進審議官渡邊厚夫君、大臣官房審議官中田峰示君、大臣官房審議官小川良介君、大臣官房審議官倉重泰彦君、大臣官房国際部長渡邉洋一君、生産局農産部長平形雄策君、生産局畜産部長富田育稔君、林野庁林政部長渡邊毅君、経済産業省大臣官房審議官松尾剛彦君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中曽根康隆君。

中曽根委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の中曽根康隆でございます。

 本日は、貴重な質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず冒頭、河野大臣の日ごろからの積極的な活動に心から敬意を表する次第でございます。世界じゅうを飛び回り、また、御自身の言葉で、そして英語で、各国のリーダーに日本の立場をしっかりと伝えていただいていることというのは、確実に日本の世界におけるプレゼンスを上げていると確信しております。改めて、国民を代表して感謝を申し上げる次第でございます。

 本日は、日・EU・EPAについて質疑をさせていただきますけれども、その前に二点だけ、日韓関係と、そして外務省の予算、ちょっと細かいんですけれども、特に在外大使館の車についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 まず、日韓関係についてです。

 私も、韓国は非常に好きな国ですし、大切な友人もたくさんおります。近年の人的交流、また文化的交流がどんどん広がっていること、これは非常に喜ばしく思っております。だからこそ、この徴用工の問題というのは非常に残念で仕方がありません。

 大臣は、今回の十月三十日のこの新日鉄住金の大法院の判決、これについてまずどういうふうにお考えになっているか、そして、いわゆる慰安婦財団、この解散も発表されておりますけれども、こちらについての政府の対応というのをお教えいただきたいと思います。

河野国務大臣 委員御存じのとおり、ことしは金大中・小渕パートナーシップ宣言二十周年といういわば節目の年でございますので、首脳間、外相間、あるいはあらゆるレベルで、日韓、未来志向の関係を築いていこうということをことしの初めから約束し、韓国側、日本側、タスクフォース、有識者会議を立ち上げて、さまざまな提言もいただきました。そんな中で、残念ながら、この未来志向と全く逆行するような動きが続いているというのは大変残念なことだと思っております。

 さきの韓国の大法院におけるこの判決は、一九六五年の日韓国交正常化以来の両国関係のいわば法的基盤を根本から覆すようなことになってしまいまして、これはもう極めて遺憾な話でございますし、これはほかの問題と違いまして、日韓の両国関係を規定している、いわば一番の底が抜けてしまうような話でございますので、極めて深刻な状況にある。それを韓国側に、しっかりと韓国の政府に認識をしていただいて、適切な対応を至急とっていただく必要があろうかと思っております。

 また、先般、慰安婦問題に関する日韓合意のもとで設立された韓国側の財団を一方的に解散するという方針を韓国政府が発表いたしましたが、これはもう日韓合意に照らして到底受け入れられるものではございません。

 この日韓合意という国際約束は国際社会からも極めて高い評価を得ているものでございますので、日本側としてはこの日韓合意で定められた義務をしっかりと履行してまいりました。今、韓国側がこの日韓合意をしっかり履行してくれるかどうか、日本だけでなく国際社会も注視している中でございますので、引き続き韓国にはこの日韓合意を着実に履行することを求めてまいりたいというふうに考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 せっかく合意をしても、それが簡単に覆されるようであれば、外交も交渉も何も意味がなくなってしまいます。政府としてはしっかりと毅然とした態度で臨んでいただきたいと思いますし、また一方で、大臣がおっしゃったとおりで、切っても切れないお隣の国ですから、しっかりと両国の未来関係というものも追求をしていただきたいと思います。

 続きまして、外務省の予算についてちょっとお伺いします。

 実は私、議員秘書の時代にヨーロッパに出張に行きまして、その際に大使の車に乗せていただく機会がありました。その際に、大使が私にこうおっしゃいました。中曽根君、このレクサスは非常に地元のビジネスマンそして政府高官に受けがいいんだ、大変喜ばれる、ただ、予算の都合上、次に買いかえるときにはこのレクサスじゃなくて、もうちょっとグレードが低いものになるんですよという話を伺いました。

 ちょっと年数もたっていますので現状がどうかわかりませんけれども、私は、日の丸を車につけてなびかせながら、日本の技術とデザイン全てが詰まったレクサスが異国の地において走っていることは、非常に当時、誇らしく思いました。だからこそ、予算の都合上でこの車が数百万円安い車に格下げされる、これは非常に残念な気持ちになったのを覚えております。やはり、日本のトップセールスである大使の車、これが予算の都合で車のグレードが下がる、これによって海外の人たちに日本の技術とか力とか魅力を売り込むチャンスというのが失われるというのは非常に残念なことだと思っております。

 大臣は、このような現状についてどのようにお考えでしょうか。

河野国務大臣 大使の車は、いわば日本の顔でもありますので、これはそれなりの日本の車を使っていただく必要があろうかと思っております。

 今、大使車として配備されているのが百五十三車ございますが、そのうち百五十一車が日本車でございます。その国の事情で日本車を購入できなかったというところで二車、日本車以外のものを使っているところがありますが、次の買いかえでは、これはきちんと日本車に戻していきたいというふうに思っております。

 かつてレクサスを購入不可とするということがあったわけでございますが、平成二十四年から、これは財務省と協議の上、レクサスの購入も可能であるということになっておりますので、レクサスにするのか何にするのか、地域によっては、四輪駆動の、もっと、何というんでしょうか、場所に適したような車を使っているところもありますが、いずれにしろ日本車を使っているわけでございますので、しっかりと環境、省エネ技術といった日本の技術をアピールできるような日本車を、しっかりと顔として使っていきたいと思います。

中曽根委員 ありがとうございます。

 予算の制約とか大事なのはわかるんですけれども、やはり大臣がおっしゃるとおり日本の顔ですから、これはしっかり国益を考えた上で、使うべきところにはしっかりとお金を使っていただきたいというふうに思います。

 ここからは、本題であります日本、EUのEPAについて質問させていただきます。

 今、御案内のとおり、米国を始めとして、世界に保護主義がどんどん広がっている。そういった中で、今回日本が自由貿易の枠組みをリーダーシップをとって世界に広げていく、これは非常にすばらしいことであると思いますし、そういう意味においても、今回のEU・EPAにおいて、非常に重要な意義を持っていると感じております。

 改めて、この協定の戦略的な意図はどのようなところにあるのか、お伺いしたいと思います。

河野国務大臣 世界じゅうで保護主義が広がる中で、基本的な価値観を共有する日本とEUが自由貿易を力強く前進させていくという揺るぎない政治的な意思を改めて全世界に示す、そういう意味で極めて戦略的意義を有すると思っておりますし、また、この日・EU・EPAは高いスタンダードを定めるものであって、これからの二十一世紀の自由貿易のモデルとなるようなものというふうに考えております。

 日・EUのこのEPAの対象となりますのは、人口で合わせて六億人、世界のGDPの約三割、それを擁する巨大な経済圏をつくり出すということになりますので、TPPとともに、成長戦略の切り札として、我が国の経済成長をしっかりと牽引してくれるものというふうに思っております。

中曽根委員 TPP11もそうですし、今回のEU・EPAもそうですし、RCEPもそうですけれども、日本が自由貿易の枠組みにおいて外交を主導しているということは本当に誇らしく思いますし、この流れをしっかりと加速するべく、これからも御尽力いただきたいと思います。

 続きまして、英国についてお伺いしたいと思います。

 先日開催されましたEU臨時首脳会議において、離脱協定案と、そして政治宣言案が正式決定をされました。しかし、英国議会においてこれをもし否決した場合に、移行期間が設定されない合意なき離脱に陥る可能性もあると言われております。

 もし英国が実際離脱した場合、EU離脱後の英国とはどういった戦略的な関係を日本として築いていくつもりなのか、お伺いしたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 今、委員から離脱協定案に言及がございました。

 このイギリスとEU間の離脱協定案、公表されております。また、私ども政府といたしましては、EU及びイギリスの双方からいろいろな説明を受けておりますが、これらによりますれば、離脱協定が成立し、移行期間が設けられる場合には、EU、イギリスの両者は、移行期間中、日・EUのEPAを含むEUが第三国と締結している条約、国際約束をEU法の一部としてイギリスにも適用する意向であると承知しております。

 こうした点を含めまして、日・EU・EPAにおけます離脱後のイギリスの扱いにつきましては、イギリスのEU離脱をめぐる状況を踏まえつつ、必要に応じ、EU、イギリス双方と協議を行っていく考えでございます。

 一方、日・EU・EPAがイギリスに適用されなくなった後の場合でございますが、そのときの日英経済関係につきましては、昨年八月、日英首脳会談で意見が一致しましたが、日・EU・EPAの規定を踏まえまして、日英間の新たな経済的なパートナーシップの構築に向け速やかに取り組んでまいりたい、かように考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 日本からも多くの企業が英国に進出をしております。こういった企業に対しても影響が及ぶ可能性があると思いますので、しっかりと対応していただきたいと思います。

 次に、国産品の輸出について御質問させていただきます。

 本協定では、牛肉やお茶や水産物などいわゆる輸出重点品目を含むほぼ全ての品目で関税撤廃を獲得して、EU市場への我が国の農林水産物の輸出促進に向けての環境が更に整備されたと考えております。

 一方で、例えば、私の地元群馬県において盛んな養豚業でありますけれども、この豚肉については依然、EUに対しては輸出ができないということになっております。輸出するためにはEUの第三国リストに掲載される必要があるとされております。

 地元の意欲的な養豚を営む私の仲間たち、この輸出解禁に強い関心を持っております。この豚肉の輸出解禁について、現在の政府の進捗状況等ありましたら、教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の豚肉についてでございますが、平成二十七年に輸出解禁を要請しまして、積極的に協議を行っているところでございます。

 EUに豚肉を輸出できるようにするためには、御指摘の第三国リストに日本が掲載され、その後、EUの求める衛生管理基準に対応した施設がEUに登録されることが必要になっております。現在、第三国リストの掲載について協議しているところでございます。

 この第三国リストに掲載されるためには、質問票への回答、残留物質モニタリング計画の承認、現地調査の実施、それにEU加盟国間での協議が必要になってございまして、昨年十月、EUの現地調査が実施され、本年四月、調査結果が公表されているところでございます。

 他方、EUに豚肉を輸出するためには豚コレラ清浄国であることが求められている中で、本年九月、さらに十一月、岐阜県におきまして豚コレラの発生が確認されたところでございます。

 今般の岐阜県での豚コレラの発生確認につきまして、防疫措置を徹底することにより、まず清浄化に努めながら、第三国リストへの掲載について、食品衛生を担当する厚生労働省とともにEUと精力的に協議を行ってまいりたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 このリストに掲載していくためにも、科学的データもしっかりと積み上げて、必要な協議をしっかりすると同時に、やはり、豚に限らず、攻めの農業、この礎をしっかりとつくっていかなきゃいけないと思っております。

 最後に、ISDSについてお伺いをいたします。

 本協定では、投資保護に関する規律と紛争解決の手続については切り離されて、別途、投資協定を締結することとされております。

 我が国はTPPを含むこれまでの投資協定で採用しているISDSを主張しているのに対し、EUはICSを原則としていて、いまだ合意の見通しが立っていない。日本としては今後どのような道筋を描き、またどう妥結していくつもりなのか、教えていただきたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の投資紛争解決手続でございますが、我が国といたしましては、このISDS制度、これは中立的な国際投資仲裁に紛争を付託できる選択肢を投資家に与えるものであると受けとめておりまして、投資家の方々にとっては、海外の投資先の国におけるビジネスへのリスクを軽減できるツールである。したがいまして、海外投資を行う日本企業を保護する上で有効な制度であると考えておるところでございます。

 我が国といたしましては、ISDS条項が有するこうした意義も踏まえまして、投資家の保護と国家の規制権限との適切なバランスの確保などに努めつつ、交渉に取り組んできております。EUとの投資交渉におきましても、こうした考えに基づいて対応してまいる考えでございます。

 その上で、ISDS、種々の懸念も表明されております。そうした御懸念にも耳を傾けつつ、ISDS改革に関する議論にも建設的に貢献してまいりたいと考えております。

中曽根委員 ICSを規定している国もふえてきている中で、今回、日本がICSをもし認めた場合に、ISDSではなくICSが世界の主流となることもあり得ますので、そこら辺は慎重に交渉していただきたいと思います。

 いずれにしても、政府、外務省を始め管轄省庁の不断の努力によって、こうやって自由貿易の枠組みがどんどん広がっていく、日本が主導していくことに心から敬意を表するとともに、これからも国益を第一に置いた上でこういった枠組みを構築していただくことを御期待申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 おはようございます。公明党の遠山清彦でございます。

 外務大臣、私も、まず冒頭に、イギリスのEUの離脱問題の本協定に対する影響等について幾つか伺いたいと思っております。中曽根委員の御質問とかぶるところもございますが、お答えをいただければと思います。

 報道によりますと、今月の二十五日にイギリスとEUは離脱条件で合意をしたと。この詳細は私も全て理解をしているわけではございませんけれども、離脱後の英国・EU関係を当面維持する移行措置が定められた離脱協定というものと、英国とEU、両者の将来的な関係の大枠を示した政治宣言、この二つで合意をされたということでございます。

 もちろん、先ほども御指摘ありましたように、今後、この、今回執行部が、行政府が合意した二つの中身につきまして、それぞれの議会の承認をとれるかどうか、これは大きな政治的な焦点になるわけでございますが、まず現時点で、今回の英国とEUの間における合意、これは政府としてどのように評価をしているのか、河野外務大臣にお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 ブレキシットにつきましては、日本企業や世界経済への悪影響を最小化するために、一つは、予見可能性、透明性をしっかりと担保してほしい、それからもう一つは、移行措置、移行期間を設けるなどの法的安定性を保ってほしい、そして三つ目に、いわゆるノー・ディール・ブレキシットと言われているものは避けなければならないということを、これはもう首脳会談を含め、外相会談を含め、あらゆるレベルで申し上げてまいりました。

 今般の方向性としては、それに沿ったプロセスになっているというふうに評価をしているところでございます。委員おっしゃるように、議会の承認手続がどうなるのかなど、まだ見えないところはございますが、こうした予見可能性、法的安定性、そして、しっかりとした合意のもとでブレキシットが行われる、こういうことによって、日系企業あるいは世界経済への影響を最小限にするように、引き続き努力をしていただきたいと思いますし、政府としては、それをしっかり注視し、日系企業に必要な情報提供をしてまいりたいと思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 私も個人的に、外務大臣おっしゃった方向性で英国やEUと日本の政府は話し合っていくべきだというふうに思います。

 一点付言しますと、私、ことしの七月に英国に行ってまいりました。現地での印象は、日本で新聞の報道を読んでいますと、相当、英国はまずい状況にあるという印象を受けるわけでございますが、現地で邦人企業の代表の皆さんとお話をしたら、ブレグジットが決まった後にロンドンの金融シティーの地価が上がって、全く経済の勢いは衰えていないというお話を伺いましたし、また、鶴岡大使を始め現地の外務省の皆さんとも懇談をさせていただきましたが、必ずしもブレグジットを悲観的に見ている人たちだけではないという印象を受けました。

 そこで、今、外務大臣の御答弁の中にも最後にあったわけでございますが、英国には日系企業が多数あるというふうに言われております。まず、英国にどれぐらいの日系企業が拠点を置いて活動しているのか、お伺いをしたいと思いますし、また、今回の離脱問題を受けまして、ブレグジットを受けて、深い懸念を持っているであろう日本企業に対して、政府として、これまでどのような支援措置をとってきたのか、また今後どうするのか、この点について簡潔に事務方からお願いをしたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 イギリスに拠点を置く日系企業の数でございますが、平成二十九年十月一日現在で九百八十六社となっております。

 政府といたしましては、官邸におきまして、関係省庁横断のタスクフォースを設けまして、ブレグジットに係る情報を集約、分析いたしますとともに、各省庁の取組を取りまとめ、在外公館などを通じて、日系企業への情報提供等に努めてきておるところでございます。

 こうした情報提供の一環といたしまして、例えば最近では、ことしの十一月二十二日に、ロンドンの日本大使館において説明会を実施いたしました。また、イギリスの地方におきましても説明会を開催してきております。

 引き続き、日系企業の声にしっかりと耳を傾け、タイムリー、適時適切な情報提供、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

遠山委員 ありがとうございます。

 ぜひ、まあ先ほども申し上げましたように、悲観論一色では現地はないと私は印象を持ったわけでございますが、他方で、EUの関税協定から英国が最終的に完全に離脱をする、移行措置があるにしても、ということになりますと、英国で拠点を置いている企業の中には、EU側に行かざるを得ないというところも出てこようかと思いますので、適宜適切な支援をお願いをしたいというふうに思います。

 再び外務大臣にお伺いをしたいと思います。

 現時点では英国はEUにとどまっているわけでございまして、本日の委員会で議題となっておりますEPAまたSPAの適用対象国に、英国は現状ではなっているわけでございますが、しかし、予定どおり来年の三月二十九日に英国がEUを離脱した場合に、この適用対象から外れていくということになると思います。

 その後のことで恐縮でございますが、まだ完全に方針は決まっていないのかもしれませんが、英国がEUから完全に外れた段階では、今回のEPAは、英国との間においては、一般的に考えて無効になるわけでございまして、しかし、英国の経済規模、日本との関係を考えますと、このEPA、FTAのような関係を結ばなければならないと私は思っておりますが、この場合、英国との二国間のEPA、FTAの妥結に向けた交渉というものをしていくという政府の方針なのか。

 また、事前通告していませんが、大臣、私が英国で結構おもしろかったのは、EUを離脱したら英国がTPPに入るというお話もまことしやかに語られておりました。私が話した英国政府の関係者は、英国が、UKがTPPに入ったらTPPの名前を変えてくれと言ってきたんですが、実は、英国は大洋州に領土を持っているんですね。ですから、いや、あなたたちはアジア大洋州国とも言えるということで、こちらが名前を変える必要はないという会話もしたわけでございますが、EU完全離脱後の英国との交渉方針について、大臣の御見解をいただければと思います。

河野国務大臣 イギリスがEU離脱後は、昨年の八月でしたか、日英の首脳会談で一致をしたとおり、日・EU・EPAの規定を踏まえて、イギリスと日本の間で新たな経済的パートナーシップを構築すべく、取決めをしっかりと結んでいきたいというふうに思っております。

 また、委員がおっしゃいましたTPPにつきましては、現在のジェレミー・ハント外務大臣あるいは以前のボリス・ジョンソン外務大臣、お二人から、TPPに入りたい、そういうお申出をいただいているところでございますので、我が国としては、真剣にこれに取り組んでまいりたいと思っております。

 また、TPPは、トランスパシフィックという名前はついておりますが、地理的な前提条件はありません。また、委員御指摘のとおり、イギリスは太平洋の中にピトケアン島という島を持っておりますので、いずれにしろ、イギリスがTPPに参加してくれることには全く問題がないというふうに考えております。

遠山委員 外務大臣の最後の率直な御答弁、大変歓迎をしたいと思います。私も、もともと英国に留学を長くしていた者として、これは今、TPP11でアメリカがいないということが最大の課題でございますが、ここで、EUを抜けた英国がTPP11に入ってTPP12ということになりますと、いろいろな意味で世界に衝撃を与えると思いますし、日本が主導してきている自由貿易圏の拡充の中では、二国間のEPAを英国と結ぶよりもベターではないかと思っておりますので、ぜひ外務大臣のおっしゃった方向で交渉していただければと思います。

 この後、内閣官房に伺いたいと思いますが、英国抜きのEUとなりますと、今回のEPAの経済効果、先ほど外務大臣もみずからおっしゃっておりましたが、これは今示されている試算よりも当然に少ない、小さいものになるのではないかというふうに思いますが、英国が抜けたEUとの今回のEPA協定、抜けた後の経済効果についてどのようにお考えか、お示しをいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月に内閣官房が行った経済効果分析では、日・EU・EPAにつきましては、GDPの押し上げ効果が五・二兆円、二十九万人の雇用増が見込まれていると試算されておりますが、その時点ではイギリスがEUから離脱していない状況であり、イギリスを含めたEUを対象として実施いたしました。

 英国のEU離脱による日・EU・EPAの経済効果への影響は、もちろんマイナスであろうかと思いますが、離脱交渉の結果、将来いかなるイギリス・EU関係が構築されるか次第であり、現時点で客観的に予測することは困難と考えているところでございます。

遠山委員 現在では困難だという御答弁でございますが、きょうもどなたか別の方から聞かれるかもしれませんし、ある程度の試算というかそういうものを考えておかないと、これは来年三月の話ですからね、目前の話ですから。

 私が野党だったらもうちょっと厳しく言うんですが、きちっとこれは、英国のGDP規模とか貿易量とか客観的データはあるわけですから、多少なりとも、今示している経済試算よりもこの程度のマイナス影響はあるというぐらいのことは示せるように、ぜひ御研究いただきたいと思います。今十一月末で、もう来年三月末に抜ける、まあ移行期間はあるにしてもという直近の話でございますので、よろしくお願いいたします。

 時間的に最後になりますが、先ほど中曽根委員からもありました投資保護に関する問題につきまして、日本は従来からISDS制度、これがいいのだという立場で参りましたけれども、EU側は二審制とか多国間の常設投資裁判所の設置を求めているわけでございます。この両者の違いを説明をしていただきたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのISDS制度とそれから常設投資裁判所、この違いでございますが、例えば、一つは、仲裁人や裁判官をどういった手続で選任するかといったことがございます。ISDS制度のもとでは紛争当事者が仲裁人を指名いたしますが、これに対しまして、常設の投資裁判所では常任の裁判官を加盟国があらかじめ任命しておくという点がございます。

 また、上訴審、今、二審制というお話がございました。常設投資裁判所では上訴を認める、二審制になっておるわけでございますが、ISDS制度のもとではそういった上訴審がない、こういった違いがございます。

遠山委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、ぜひ、EUとの間では、投資保護に関する、あるいは紛争解決に関する手続については交渉継続中ということでございますので、日本の主張を明確にしながら、投資家対国の紛争解決の手続について適切な形に将来的になるように、政府の御努力を一層求めまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 先週の本会議に引き続きまして、質問をさせていただきます。

 先週の質問のときにはお尋ねすることができなかった省庁の部分について中心に質問させていただき、このEPA、特に影響が大きいというふうに言われております農業、酪農業それから林業、こうした分野については同僚の石川議員が後で質問させていただきますので、そちらにおおむねお譲りしたいと思います。

 まず、EPAの十六章に、貿易及び持続可能な開発という章がございます。この三条では、国際労働機関、ILOの加盟国であることから生ずる義務を再確認というふうなくだりがございます。

 EUの加盟国は、ILOの基本八条約全て批准しているという状況です。我が国はといいますと、ILOの基本八条約のうち、六条約については批准をしております。しかし、百五号の強制労働廃止と百十一号の差別待遇、雇用及び職業について、いまだ批准しておりません。

 そこで、お尋ねをいたします。

 EUとこのような約束をしている以上、批准に向けて手続を進めていくということだと理解をしておりますが、これまで、このことは随分何度も国会でも議論のあったところです。何が批准の障害になっていたのか、御説明いただけますか。

池田政府参考人 お答えをいたします。

 日・EU・EPAは、各締約国が自己の発意により批准することが適当と認めるILO基本条約等について、その批准を追求するための継続的かつ持続的な努力を払うことを規定しております。

 この協定は、我が国に対し、未批准のILO基本条約の批准を義務づけるものではございませんが、当該規定の趣旨も踏まえつつ、引き続きILO基本条約の批准の可能性について慎重に検討していく必要があるところでございます。

 先生御指摘の、我が国が未批准の第百五号条約及び第百十一号条約の批准に関しましては、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があるということで、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

櫻井委員 今までもそのような答弁で、質問は、何が障害になっているのか、つまり、我が国の国内法制とおっしゃいますが、どの法律が障害というか、ぶつかっているのかということについてお尋ねをしているので、どの法律、どの項目が国内法とコンフリクトしているのか、教えていただけますか。

池田政府参考人 第百五号条約及び第百十一号条約についてでございますが、第百五号条約におきましては、政治的見解を発表すること等に対する制裁や労働規律の手段としての全ての種類の強制労働を禁止しており、また、第百十一号条約におきましては、雇用及び職業における全ての段階において、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身による差別を禁止しております。

 これらの規定との整合性について、慎重に検討する必要がある国内法令等が存在するということでございます。

櫻井委員 まず、じゃ、百五号からお尋ねをしたいんです。

 百五号は、政治的主張をすることによる強制労働云々というところだと思いますが、もっと具体的に教えていただけますか。公務員が政治的な主張をしたときの、多分、公職選挙法とか公務員法に関するところだと思うんですが、これはILOの百五号条約とどうぶつかっているのか。もっと、今の話だと、どこがぶつかっているのかよくわからなかったものですから、教えていただけますか。

池田政府参考人 先生御指摘のように、公務員法におきまして、一定の政治的行為、あるいは行政的運営を確保する観点から設けられております公務員の政治的行為の制限に関する規定等について、慎重に検討する必要があるということでございます。

櫻井委員 百五号では強制労働が問題になっているということですから、これは懲役刑というところになってくると、その懲役の部分が強制労働になるのではないのかという意味なんだろうなと理解をさせていただきました。

 であるなら、例えば、懲役刑ではなくて禁錮刑であれば一応クリアできるのかなというふうにも思ったんですが、これはやはり何か工夫してクリアしていかないと、いつまでたっても慎重な検討ばかりで、もうずっと何年も慎重な検討をしていて全然進んでいないように見えるんですけれども、どうなんでしょう。何か工夫されているんでしょうか。

池田政府参考人 国内法制との整合性につきまして、慎重な検討をする必要があるという状況でございます。

櫻井委員 この数年、全然、一ミリも進んでいないんじゃないのかという印象でございます。それでは日本の姿勢といいますかが問われてくると思うんです。

 もう一つ、百十一号についてなんですが、こちらについても何が障害になっているのか。特に、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身、社会的出身などに基づいて差別するような法制度が我が国においてあるとは余り思えないんですが、具体的にどこがひっかかっているんですか。

池田政府参考人 繰り返しになりますが、公務員法制におきまして、行政の中立的運営を確保する観点から設けられている公務員の政治的行為の制限に関する規制等につきまして、慎重に検討する必要があるということでございます。

櫻井委員 つまり、公職選挙法に関連して公務員がかかわれないというようなところがひっかかってくるという意味かと思います。その部分についても、いろいろ工夫のしようがまだまだあるのではないのかというふうに思うんですね。

 そこでお尋ねしますが、やはり今回のEPAにも書いてある、EPAは別に拘束するものではないと答弁されていますけれども、確かに拘束するものではなくても、EU側は、これをちゃんとやってよというメッセージも込めてこの条約に盛り込んできているわけですし、また、EPAのみならず、後でまた質問いたしますが、SPAの方でも、民主主義なり人権、こういったものをしっかり世界に向けて広めていくんだと言っているわけですから、世界で広める前にまず日本でちゃんとやらないといけないじゃないですか。

 その意味でも、やはりちゃんと、どうやって進めていくのか、今までずっと国会で、慎重に検討、慎重に検討といって全然、一ミリも進んでいないという状況では、日本のやる気といいますか、人権に対する考え方、態度が問われてくると思うんですね。

 ですので、ぜひ、何を、いつまでに、どのように進めていくのかということについて、ロードマップを示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

池田政府参考人 我が国におきましては、個々のILO条約について、条約を批准することの意義等を十分に検討し、批准することが適当と考えられるものにつきまして、国内法制との整合性をきめ細かく確保した上で批准してきたところでございます。

 百五号条約及び百十一号条約の批准に関しましては、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があるということ、そして、しっかりと議論していかなければならない状況にあるということで、検討を終える期限につきまして具体的なタイムテーブルを示すことは大変難しいというふうに考えております。

櫻井委員 今の答弁ですと、何か全くやる気が感じられないといいますか、これまで、それこそSPAの二条で、法の支配とか人権とか、こういったものを世界に広めていくんだ、こういう話とも相反するといいますか、本当に、非常に残念な状況だと思うんですね。

 国会でなかなかまだ答弁しにくいという段階なのかもしれませんが、やはりこうやって世界に向けて各国について話をして、ある種のコミットメントをしている状況なわけですから、慎重に検討するといった同じ答弁を繰り返すのではなくて、一歩一歩着実に進めていく、こういうふうに進んでいるんですよということをちゃんと内外に向けて発信できるようにしていただきたいというふうに思います。

 この問題については、また今後も進捗状況をしっかりと見させていただきます。

 次に、SPAの方に移りまして、二条には、民主主義、法の支配、人権及び基本的自由という項目があります。この点について、本会議でも大臣に質問させていただきました。また、昨日の本会議で、山井議員が法務大臣不信任案の趣旨説明において、技能実習制度の問題点を丁寧に指摘をされておりました。

 先週の本会議の私の質疑において、外務大臣からは、技能実習生や留学生に関する問題については、外務省としても重く受けとめており、国内、国外双方での取組が重要と認識という答弁をいただいております。

 そこで、お尋ねをいたします。

 国内においてどのように取り組んでいるのか。特に技能実習生の問題、きのうもさんざん本会議でやりました。このことについて御説明をお願いいたします。

佐々木政府参考人 お答えをいたします。

 昨年の十一月に施行されました技能実習法の施行によりまして、技能実習計画につきましては外国人技能実習機構による認定制を導入し、計画の適正性及び賃金等の待遇の確認が図られる仕組みを設けました。

 また、受入れ企業に対する指導監督措置といたしまして、技能実習法上、外国人技能実習機構による実地検査等の権限が定められておりまして、実地検査等におきまして、受入れ企業に賃金の不払いあるいは労働関係法令違反が認められた場合には、同機構が指導を行うほか、労働基準監督機関とも情報連携をするなどの取組を行っているところでございます。

 法務省といたしましても、制度を共管する厚生労働省及び外国人技能実習機構と連携を密にいたしまして、これらの取組により、引き続き制度の適正化に努めてまいります。

櫻井委員 昨年十一月に法改正を進めて、以前に比べれば改善をしているんだ、こういう御答弁でした。

 改善の方向に進んでいるということ、こちらは、一ミリどころか大分、もう少し進んでいるかなというところではあろうかと思いますが、しかし一方で、技能実習生、ことしも、法務省いわく失踪ですね、我々の立場からすると、緊急避難ではないのか、このようにも思うわけですが、こうした方々が四千人とか数多くいらっしゃるということですから、まだまだ課題はたくさん残っているというふうに認識をしております。

 さらに、きのうの山井議員の本会議での発言がありましたとおり、調査票によれば、最低賃金割れで働いているという事例も少なくないように見受けられました。

 法令違反として取締りをしている、進めているというお話でございましたが、本当にちゃんと進んでいるのか。すごくたくさんあるので、なかなか取り締まるのも大変だなというふうに思うんですが、十分に取締りできているんでしょうか。

佐々木政府参考人 先ほど、外国人技能実習機構がこうした取組を行っているということを御報告申し上げましたけれども、ちょっとその様子につきまして御報告をいたします。

 本年九月末現在で、約三千七百回の実地検査を行っているほか、母国語相談といたしまして、千九百件以上の相談に対応しているところでございます。また、さまざまな問題がありまして実習先を変更するという場合に、この機構におきましてその支援を行っておりますが、この件数も四十件以上となっているところでございます。

 このような取組によりまして、今御指摘のようにまだ道半ばでございますけれども、この適正化を図っていこうと思っております。

 さらに、加えまして、今般、法務大臣より、法務大臣政務官をチーフといたします省内のこの取組のプロジェクトチームを立ち上げまして、今御指摘のありました、調査票において問題があったという事例につきまして、総ざらいをするという取組も含めてやっていきたいと思っております。

櫻井委員 政務官を筆頭にそうした取組、特に調査票で問題があった方、問題が発見されたという方、これはたまたま聞き取り調査にお答えいただいた方の分で、お答えいただいていないけれども緊急避難をされた方というのは、お答えいただいた方よりもはるかに多い数でいらっしゃるわけですから、ここについては手つかずなのかなというふうにも見受けられるわけですが、少なくとも調査にお答えいただいた方については取組を始めたということで、その点については、一歩前進ということで、評価させていただきます。

 ただ一方で、その政務官筆頭というのはすばらしい取組だ、すばらしいといいますか、着実に進んでいる取組だと思うんですが、例えば技能実習機構、人員が三百人ちょっとということで、技能実習生は三十万人ぐらいいらっしゃる中でいかにも非力ではないのか。技能実習生、普通の、日本で若者が働くということよりも、言葉も文化もいろいろ違う、初めての土地に来てということで、悩みもいろいろあろうかと思います。そうした中で、こうした取組を、ちゃんとできているのかどうかということを確認していくにはいかにも貧弱なのではないのか。

 この三百人余りの体制では実地検査は三年に一回ぐらいしかできないのではないのか、このようにも見受けられるんですが、やはり、ここをしっかりと充実させていかないと、いや、もう十倍ぐらいとりあえずふやさないと全然間に合わないんじゃないのかというふうにも思うんです。三年に一回のペースではなくて、三カ月に一回ぐらいのペースで回らないと、やはり問題というのはちゃんとしっかり把握できないのではないか。

 特に、毎年どんどん新しい方がいらっしゃるわけですから、その都度、特に来た最初の段階でどうなのかということも丁寧に見ていかないと、これは非常に問題の多いスキーム、制度なわけですから、我々はもうこれは段階的に廃止していくべきだとは思っていますが、少なくとも、政府の方ではこれはまだ残していくんだというのであれば、しっかりとチェックをする体制が必要だと思うんですね。

 この人員を含めて、十分な体制をとっていくべきだと考えるんですが、どうでしょうか。

佐々木政府参考人 外国人技能実習機構につきましては、私ども、それから厚生労働省が主務官庁になってございまして、また必要な人員の増などを予算でお願いをしていくことになります。

 それから、私ども役所そのものとしても、全てを外国人技能実習機構に任せているわけではございませんで、実地調査、特に監理団体それから実習実施機関、問題の端緒をつかみましたところにつきましては、職員が赴いて詳細な聞き取りを行うなどということの体制もまた強化をしていきたいと思っております。

櫻井委員 あと、先ほどの御答弁にもありましたが、労働基準監督署とも連携をしてということだと思います。

 やはり、実際問題として、最低賃金割れというのが非常にたくさんあるのではないのか。また、雇用する側も、外国人労働者、技能実習生は安い労働力だという認識でやっている節がある。また、雇う側は、それ以外の中間団体にいろいろお支払いをしているんだから、トータルのコストで見たら決して安いわけでもないというところで、実際に働いている方に対して支払いが少なくなってしまっている。いろいろな複合的な要因があるのではないのかと思いますから、少なくとも、しかし、現場で働いている方が最低賃金割れするような事態はあってはいけないと思いますので、この点、しっかりと進めていただきたいと思います。

 大臣にもお尋ねをしたいと思います。

 何度も何度も同じことを聞いて恐縮ではございますが、やはり外務省としても重く受けとめている。これはやはり、外交の基礎となる人と人との関係、そして、この外国人技能実習生の問題で日本に対して悪いイメージを持って帰国されている方が少なからずいるという現状、これを改善していかなきゃいけないという大臣の思い、それはよくわかります。その上で、しかし、取組としてまだまだ、重く受けとめている割には軽いのではないのか、不十分ではないのかと思うんですが、その点、大臣の御意見をお聞かせください。

河野国務大臣 外務省からも関係省庁に、重く受けとめるように、対策をしっかりとるように督促をしているところでございますので、政府として一体となってしっかり対応してまいりたいと思います。

櫻井委員 外務大臣の力強いお言葉で、こちらとしても非常に重く受けとめさせていただきましたので、引き続き見守らせていただきます。

 次に、SPA、民主主義、法の支配、人権及び基本的自由という観点で見たときに、これは世界に向けて広めていくんですというんですが、先ほど来申し上げているとおり、我が国においてどうなのかということがやはり常々気になるところです。

 最近ですと、今、世間のニュース、ずっと報道されているところでは、日産自動車のゴーン前会長が逮捕されて、今、勾留されて一週間たったところかと思います。日本の刑事司法制度にまさに世界じゅうの注目が集まっているところだと思います。

 これまでも、日本の司法制度については、人質司法ではないのか、こういうふうにやゆされるというか批判される、指摘されてきたところがあろうかと思います。

 逮捕、勾留で七十二時間、それから、被疑者として勾留が十日間、プラス延長で十日間で二十三日間。長期にわたって、場合によっては弁護士の立会いがなく、連日取調べが行われている、保釈制度がないというような状況はおかしいのではないのかということは、以前から指摘をされているところです。

 また、起訴後、被告人の勾留二カ月、さらに、一カ月更新ということで、ずっと更新し続ければ長期にわたって勾留されるということで、森友学園の事件のときには、籠池御夫妻が半年以上にわたって勾留されるというようなこともありました。

 そうしたことをしながら、被告人を肉体的、精神的に追い詰め、そして、捜査機関が釈放をちらつかせて自白を迫っているのではないのか、こうした批判もあるわけです。そして、こうした刑事手続が冤罪の温床になっているのではないのかというような問題提起もされているところでございます。

 世界的にも注目されているからただすというわけではないんですが、いわゆる人質司法というふうに批判もされている日本の刑事手続、これはフランスでも特に注目されているかと思いますが、EUの人権感覚から見ても、また、世界の人権感覚から見て、十分耐え得るものになっているかどうか、その点についてお聞かせいただけますでしょうか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の人質司法というような言葉は、いろいろな意味で使われていると思われますので、その点について申し上げるわけではないのですが、我が国の制度といたしましては、被疑者、被告人の勾留について、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるなどの厳格な要件が認められた場合に限り、法定の期間内で行い得ることとされておるものであります上、被告人については、一定の重い罪に当たるなどの除外事由がない限り、保釈を許可しなければならないこととされているなど、適切な制度が設けられているものと承知しています。

 また、あくまで一般論として申し上げれば、勾留や保釈の判断に当たっては、裁判所又は裁判官が適切な審査を行っているものと承知しているところでありまして、被疑者、被告人の身柄拘束については適正に行われているものと考えております。

 また、外国の制度との比較という観点から申し上げれば、刑事司法制度というのは、それぞれの国において全体として機能しているものでありますので、個別に身柄拘束の部分だけを取り上げて、どちらがすぐれている、劣っているといったことを論じるということは必ずしも適切ではないと考えております。

櫻井委員 一部を取り上げて、それでいいか悪いかというのは適当ではないというお話もございますが、ただ、やはり日本、このSPAでも、人権なり民主主義を世界に広めていくんだというわけですから、その前に足元、我が国がどうなのかということが常に問われているんだ。我が国でも、世界最先端のこうした、もちろん悪いことをした人はしっかりと罰していかなければなりませんが、一方で、悪いことをしていないのに罰せられるようなことがあっては絶対いけないわけですから、そうした疑われている人の防御の方法、身の潔白をしっかりと主張できるような手続についても、しっかり確保するようなことでよろしくお願いします。

 次に、EPAの方に戻りまして、十章では政府調達の話がございます。これまで、国、それから都道府県・政令指定都市まで含まれていたものが、今回のEPAでは、中核市についても国際競争入札の対象になってくるということでございます。

 三千万円以上の物品調達、中核市においても対象になるということなんですが、具体的にどういったものが想定されますでしょうか。

古賀大臣政務官 お答え申し上げます。

 物品調達というのは、建設工事あるいは設計、それ以外のもろもろの物品の問題でございますので、そういったものが対象になる、このように考えております。

 以上でございます。

櫻井委員 ちょっと今の御答弁ですと、具体的にどんなものが対象になり得るのかなと。中核市で三千万円以上の物品というと、例えば空調システムを入れかえるとか、コンピューターシステムを入れかえるとかなんとかというときに対象になるのかなとも思ったりもするんですが。

 ちょっと具体的な話はおいておいて、ただ、EU側にとってメリットはどうなのかということと、中核市にとって過重な負担にならないのか、この点についても少し気になるところです。中核市が対象になっても、結局、EUから買うことはない、応札するというようなことはないかなということであれば、何のために入れたのかということにもなってきますので、ちょっとその点、中核市について負担にならないのか、準備は整っているのかという点と、EUにとってのメリットについてお答えいただけますでしょうか。

古賀大臣政務官 お答え申し上げます。

 この日・EU・EPAにおける政府調達において、確かに中核市も対象となっているところではございますが、かなりこれは特別なルールといたしております。少なくとも公共工事は対象としておりませんし、それ以外の調達につきましても、これまでどおり、入札参加者の事業所の所在地を資格要件とするいわゆる地域要件、これを設定できることとしております。

 そういったもろもろの相当に配慮したルールとしているところでございまして、こうしたルールづくりにつきましては、これは地方公共団体の意向も十分踏まえておりますし、これまで適時適切に地方団体側にも説明をしてきているところでございます。

 EUとの関係につきましては、これは十分協議をした上でこうしたルールづくりをしているところであるということでございますので、中核市への影響はかなり限定的ではないか、このように思っているところでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 都道府県・政令指定都市においても、それほど国外からの調達の、WTOのルールに基づく実績が上がっているわけではないというふうにも聞いておりますので、中核市でそんなにたくさん事例が上がってくるとは思えないんですが、とはいえ、せっかく入れたのに一つもなかったというのであれば、何だこれは、ほかに何か闇のルールでもあるのかということで、いろいろ後で詮索されたりということがないようにはしていただきたいな、変な不信感を抱かないようにしていただきたいなというふうにちょっとお願い申し上げまして、次に行かせていただきます。

 最後に、EPAの第二章の物品貿易のところで、これはこれまでさんざん議論のありました、農業、酪農業、林業への影響が大きいというふうに言われております。特に酪農については非常に影響が大きいのではないのかというふうに言われております。

 そこで、農林水産省はこれまで、酪農家の体質強化策はどんどん進めているんです、こういう話でした。ただ、この体質強化策のためのいろいろな設備投資、国が上限半分まで負担しますよ、しかし、残り半分は事業者が負担することになっております。

 しかも、今、EPAもさることながら、TPPもありました。これから、日米のFTAなのかTAGなのか、こうしたものもあります。いろいろある中で、酪農製品の値段が下がっていくことが予想される中で、やはり随分重い負担になっていくのではないのかというふうに思うんですが、この点についてどのようにお考えでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、酪農の収益力や生産基盤を強化することにより国際競争力を強化するため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、畜産クラスター事業を実施しているところでございます。

 この事業では、平成二十七年度から二十九年度で、合計千九百六十億円を補正予算で措置しまして、現在、全国で八百八十一のクラスター協議会において取組が進められているところでございます。このうち、酪農につきましては、畜舎の整備や機械の導入に延べ約一万件、合計八百二十三億円の支援を行っているところでございます。

 また、この事業によりまして、平成三十年九月末現在で、酪農経営二千二百三十九戸において経産牛が二万頭以上増加するなど、着実に飼養頭数が増加しているほか、省力化機械の導入により飼養管理の効率化に取り組んだ経営においては受胎率や事故率が改善しているなどの効果もあらわれているところでございます。

 このように、本事業は、二分の一補助ではございますけれども、意欲のある酪農家に積極的に活用していただいておるところでございまして、引き続き、酪農の経営体質や収益力の強化を図ってまいりたいと考えてございます。

櫻井委員 時間になりましたので、これで終わらせていただきますが、やはりこうした体質強化策、これ自体の重要性は理解はするんですが、しかし、これだけではなかなかきついのではないのか。やはりこれから投資をしていく酪農家についても大変な負担ですし、今まで既に借金している部分もあるわけですから、やはり酪農用の戸別所得補償制度のようなものを導入していくべきではないのか。特にヨーロッパではそういった制度もいろいろ広く行われているところですので、十分そういったことも検討いただきたいと要望申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

若宮委員長 次に、山川百合子君。

山川委員 立憲民主党の山川百合子でございます。

 日・EU・EPAについて、まずは、本協定において我が国のかち取ったものと譲ったものということで伺いたいと思います。

 資料によりますと、政府の説明によりますと、この日・EU・EPAにより、日・EU間の貿易は、品目数ベースで、日本側について九四%、そしてEU側について九九%の関税が撤廃されることになります。

 これは交渉の結果であるため、どちらか一方の国だけが利益を得て、一方が譲るばかりということはないことは、もちろん理解をしております。

 しかし、我が国がこの協定においてかち取ったもの、譲ったものが何であったのかを明らかにしていただくことは、以前から河野大臣にお願いしているとおり、政府が国益をどのように守り、拡大する努力をしているのかという国民の疑問に答えるための説明責任にかかわることだというふうに私は思いますので、今回も、河野大臣から御答弁をいただければと存じます。

 この協定において、結局のところ、我が国は、EUから何をかち取り、何を譲ったのか、お答えいただければと存じます。

河野国務大臣 今回、日本の産品のEU市場へのアクセスに関して、工業製品について一〇〇%の品目及び農林水産品のほぼ全ての品目の関税撤廃を実現しました。特に、我が国のEU輸出に占める割合の高い乗用車の関税については八年目に撤廃、自動車部品の関税についても貿易額ベースで九割以上の即時撤廃をかち取ることになりました。

 EU製品の日本市場へのアクセスに関しましては、EUの関心の高かったソフト系チーズについて関税割当てを設定する、その一方で、米を関税削減、撤廃などの対象から除外し、麦、乳産品の国家貿易制度、砂糖、でん粉の糖価調整制度、豚肉の差額関税制度といった基本制度を維持し、関税割当てやセーフガードなどの有効な措置を確保するなど、農林水産品の再生産が引き続き可能となる国境措置を確保いたしたところでございます。

山川委員 ありがとうございます。

 それでは、続いて、本協定により見込まれる対EU自動車輸出について伺っていきたいと思います。

 政府は、本協定は我が国の実質GDPを約一%押し上げ、また労働供給を約〇・四五%増加させる効果があるとの試算を公開してはおられます。しかし、これはGTAPという経済モデルを使った試算に基づく結果であり、品目一つ一つの影響を試算して積み上げたものではないというふうに思います。我が国にとってEUとの貿易が占める割合がおおむね一一%程度であることや、また、EU市場のような成熟した市場に対して、多少関税が下がったからといって、それほど我が国の製品が売れるようになるのか、これほどの経済成長を促す効果があるのかは疑問が残ります。

 そこで、例えば我が国にとって重要な輸出品である自動車について、この協定により、金額にしてどの程度の輸出の増加があると見込んでいるのか、もしも金額ベースの試算が困難であるとすれば、本協定で見込まれる自動車関連産業への影響はどのようなことが想定できるかをお伺いしたいと思います。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、直近五年の我が国からEUに向けます乗用車の輸出実績でございますけれども、これは金額ベースにいたしまして、二〇一二年が六千四百億円、その後毎年増加をいたしておりまして、二〇一七年で約一兆二千億円ということになっております。

 本協定の結果でございますけれども、先ほど大臣からも御紹介がございましたように、乗用車につきましては現行税率一〇%の関税が八年目で撤廃をされる、加えまして、自動車部品につきましては九割以上が即時撤廃をされるということになっております。

 これによりまして、じゃ、実際どの程度EUへの自動車輸出が増加をするかということにつきましては、これは、EUの自動車市場の動向でございますとかあるいは個々の車種ごとの優位性など、さまざまな要因を勘案する必要があるというふうに考えています。

 そういう意味では、具体的な試算を行うことは困難でございますけれども、他方、本協定の成果によりまして、今申し上げましたように、例えば乗用車でこれまで一〇%かかっていたコストがかからなくなるということでございますので、当然、EU市場におきます日本の完成車メーカーの競争力の向上、あるいは自動車部品メーカーにとっての輸出機会の拡大につながるということは十分期待できるのではないかというふうに考えております。

 加えまして、一般に完成車一台で三万点の部品が使用されているというふうに言われております。自動車部品メーカーに部素材などを納入されます裾野の中堅・中小企業の方々に対しても、このEPAによりまして大きな受注拡大が期待できるのではないかというふうに考えております。

山川委員 ありがとうございます。

 今の御答弁、日本の強みではある自動車産業のプラスの影響、試算は具体的にはできないけれどもいろいろ期待しているというお答えだったと思います。

 では、逆に、すごく心配されている日本の農林水産、特にチーズ等の製品への影響の方について伺いたいと思います。後ほど石川議員が農林については質問されると思いますが、私はちょっと簡単に二点ほどお伺いをしたいというふうに思います。

 本協定がチーズ等乳製品に及ぼす影響につきましてですが、一つ目、まず、ソフト系チーズの関税割当ての数量について、政府が枠数量を国産の生産拡大と両立できる範囲にとどめたという説明をされているわけでありますが、その根拠を教えていただきたいと存じます。

 そして、あわせまして、政府は、ソフト系チーズの関税割当てが、協定発効初年度の二万トンから十六年目の三・一万トンへの増加について、これは、平成二十九年、昨年十二月十二日の衆議院農林水産委員会において、総消費量の伸び率で伸ばしたものとの説明を行っていらっしゃいますが、これから我が国では人口が減少し高齢化が進む中で、十六年後までチーズの消費が引き続き伸びると見込む根拠をお示しいただきたいと存じます。

富田政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPAの合意結果におきまして、ソフト系チーズの関税割当てにつきましては、十六年目の枠数量の設定に当たって、ソフト系チーズの国内消費の伸び率を採用して計算しまして、三万一千トンにとどめたところでございます。

 すなわち、ソフト系チーズの低関税での輸入量をソフト系チーズの国内消費の伸びの範囲内におさめることによって、輸入と国産の両方が拡大していける範囲にとどめたと考えておるわけでございます。

 これまで、我が国のチーズ全体の消費量は一貫して伸びており、昭和六十二年度の総消費量は約十三万トン、一人当たりの年間消費量が一キロにすぎなかったところでございますが、約三十年後の平成二十九年度の総消費量は約三十四万トン、一人当たりの年間消費量は二・五キロにまで増加しているところでございます。

 さらに、海外でのチーズの消費量を見ますと、フランスの一人当たりの年間消費量は約二十七キロと、日本の十倍以上の消費量でございます。日本でも、近年、カマンベールやモッツァレラなど、日本人の口に合うナチュラルチーズが一般家庭に普及するなど、チーズの消費量は引き続き伸びることが期待できるというふうに考えるところでございます。

山川委員 数字だけを聞けばそういうふうな試算もあるのかなと思いますが、やはり牛乳・乳製品についての影響を非常に心配しているわけでありまして、もう少し聞いてまいりたいというふうに思います。

 政府は、先ほどもちょっと質問でもありましたが、生産額は減少するが対策をとることにより国内生産量は維持されるというふうに御説明をされて、その対策について、先ほど櫻井委員からも御質問、そして御答弁がございましたけれども、私は、この政府の説明がよく理解ができません。

 例えば、国会審議において、チーズの国民当たりの消費量はEU諸国全体ではどれほどであって、我が国の水準はどうであるのか。ああ、今お答えにいただきましたね、済みません。

 今お答えにいただきましたが、我が国よりもヨーロッパの方が十倍も多いとか御説明はいただきましたけれども、しかし、もう少し伺っておきたいのは、牛乳製品について当初の影響はどの程度であり、そして、それに対してどのような内容の対策をとることにより影響がどれだけ軽減されるのか、もう少し具体的にシミュレーションをもってお示しをいただきたいというふうに存じます。

富田政府参考人 お答えいたします。

 日・EUの合意結果におきましては、ソフト系チーズは横断的な関税割当てとしまして、ハード系チーズは長期の関税撤廃期間を確保、バター、脱脂粉乳等につきましては国家貿易制度を維持し、関税割当てを設定、ホエーは関税削減にとどめるなどの措置を獲得したところでございます。

 このため、当面、輸入の急増は見込みがたく、乳製品全体の国内需給への悪影響は回避できると見込んでいるところでございます。

 他方で、長期的には、競合します国産の脱脂粉乳、チーズの価格下落も懸念されまして、生産額の減少が見込まれるところでございます。

 このため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、省力化機械の整備等による生産コストの削減や品質向上など、畜産、酪農の収益力、生産基盤の強化を進めますとともに、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金制度の対象に追加し、単価を一本化する補給金制度の見直しを、協定発効に先立つ平成二十九年度に実施し、特に、チーズにつきましては、国産チーズの競争力の強化を図るため、チーズ向け原料乳の高品質化、チーズ工房等の施設整備、国産チーズの品質向上、ブランド化等に支援するなど、万全の対策を講じているところでございます。

 こうした対策を引き続き実施をして、国産乳製品の競争力の強化を支援してまいりたいと考えております。

山川委員 特に、牛乳・乳製品に対する影響の大きさをとても懸念しているわけでございまして、対策をとるというふうにおっしゃってはいただいているわけでありますが、もう少し、この後、石川議員がその深掘りをして質問していかれることと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、英国のEU離脱について私からも、先ほど御質問もございましたが、簡単にお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、英国議会がEU離脱協定と政治宣言を承認した場合と、承認しないままEUを離脱した場合、それぞれの場合に本協定における英国の立場はどのようになると政府は想定しておられるでしょうか。

 また、合意なき離脱となった場合ですが、日英間の貿易に適用される関税率はどのようになるでしょうか。

 そしてさらに三点目としては、合意なき離脱となった場合に、英国に進出している日系企業がこうむる影響はどの程度のものであると見込んでおられるのでしょうか。

 英国のEU離脱に関して、日・EU協定と日英間の関係はどのような影響が想定できるのか、政府の御見解をお伺いしたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、イギリスとEUとの間で、離脱協定で移行期間が設けられる場合でございますが、この場合には、移行期間中は、日・EUのEPAを含めまして、EUが第三国と締結している国際約束は、EU法の一部としてイギリスに適用する意向であるというふうに承知しております。

 次に、合意なき離脱の場合でございますが、この場合には、日・EU・EPAはイギリスには適用されない一方、イギリスはWTO加盟国でございますので、それぞれ相手国との貿易では、原則として、WTOの協定、これが規律することが想定をされているところでございます。

 それから、合意なき離脱の場合の日系企業への影響をお尋ねでございました。

 既に幾つか懸念の声が聞こえてきております。イギリスとEUとの間での物流が滞留するのではないか、あるいは、人材の確保が困難になるのではないかといった懸念の声でございます。

 政府といたしましては、こうした懸念の声にしっかりと耳を傾けて、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えてございます。

 それから最後に、日系企業への影響ということでお尋ねになったのは、今お答えしたとおりでございます。失礼いたしました。

山川委員 では、続いて行きますけれども、この協定の締結後の食の安全がどのように守られるのかについて伺っていきたいと思います。

 我が国が、諸外国から農林水産品が大量に我が国に流入しようとするときに非常に高い関心は、食の安全についてだというふうに思います。

 かつてヨーロッパ発祥の狂牛病が輸入牛肉をめぐる大きな脅威となって、記憶にもあると思うんですが、牛丼店から牛丼が消えるといったショッキングな事件が発生をしました。

 狂牛病の原因とされたのは、肉牛を飼育する際に用いられた牛骨粉という飼料でありました。牛に、牛の骨を砕いた飼料を与えるということで、共食いをさせていたという衝撃的な事実として報道され、遺伝子レベルで奇病が発生する恐ろしさを人々に植え付けました。

 食の安全を語るときに、生産ラインでのチェックと製品のチェックだけでなく、種子法のときの問題としても指摘されてきた遺伝子レベルのチェックが必要な事態に本協定はどのように対応するのでしょうか。

 国内に輸入される食の安全がどのように担保されるのか、まずは厚労省にお伺いをしたいと思います。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の輸入食品に係ります安全確保につきましては、WTO衛生植物検疫協定、いわゆるSPS協定でございますが、これによりまして、科学的根拠に基づき必要な措置をとる権利が認められているところでございます。

 今回の日・EU経済連携協定の衛生植物検疫措置に関する章、SPS章につきましても、このようなWTO・SPS協定に基づく権利義務を確認し、同協定を踏まえた規定となっています。したがいまして、本協定により我が国の制度の変更を求められるものではなく、食品の安全が脅かされることはございません。

 また、BSEについて御指摘ございましたが、BSE対策につきましては、BSE発生以降、発生国からの牛肉の輸入を禁止していましたが、国内、国外の双方でBSEの発生リスクが低下したため、食品安全委員会の科学的な評価結果に基づきまして、EU加盟八カ国を含みます十四カ国からの牛肉の輸入再開等を行ってきたところでございます。

 こうした科学的根拠に基づく対応は、日・EU経済連携協定により変更が求められるものではないことから、引き続き、EU加盟国を含むBSE発生国から輸入される牛肉の輸入規制の見直しについては、食品安全委員会の科学的なリスク評価結果に基づき対応していくこととなりますので、食品の安全が脅かされることはございません。

 今後とも食品の安全確保に万全を期してまいります。

山川委員 では、逆に、輸出品目の方については、財務省に伺いたいんです。

 製造工程が異なるなどの理由から、日本製ワインがこれまではワインとして承認されない事態がEU側に存在していました。しかし、日本ワインとして、今協定では、EU市場に日本製ワインが投入できるようになるわけであります。これは、酒税法の観点から、農林水産省でも経産省でもなく、財務省の交渉成果だというふうに伺っています。

 関係国が貿易相手国の主張を受け入れて新たな貿易品目や基準が拡大された実例として、日本製品のブランディングというテーマにおける成功例の一つとして、この日本ワインの交渉経緯と中身についてお伺いをしたいと思います。

吉井政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の日・EU・EPAにおきましては、ワインに係る関税を相互に即時撤廃したほか、委員御指摘のとおり、EU側におけるワインの醸造方法に係る輸入規制の撤廃、それから地理的表示、いわゆるGIの相互保護などについて合意がなされたところでございます。

 輸入規制の撤廃につきましては、現状、EUにおきましては、EUワイン醸造規則に従って製造されたもの以外は流通できないこととされております。例えば、ワインの製造過程で添加できる糖の量や使用されるブドウの品種などが限定されているというところでございます。今般の協定によりまして、日本ワインであれば、そうしたこれらの要件にかかわらず輸出が可能となるということでございます。

 また、現状は、EUのワイン醸造規則に従っている旨の公的機関が発行した証明書の添付義務がございます。これが、今般の協定によりまして、日本ワインであることについての業者の自己証明によりまして輸出が可能となるということでございます。業者の、製造者の側の金銭的、時間的な負担を相当程度軽減できることとなると考えております。

 このように、日・EU・EPAは、日本ワインの輸出拡大の観点から非常に有意義なものになっていると考えておりまして、国税庁といたしましても、引き続き、関係省庁、関係機関と連携しながら、日本ワインの輸出促進に努めてまいりたいと考えております。

山川委員 では、続いて、この協定の締結後の我が国の食料自給率について伺っていきたいと思います。

 TPP11協定やこのEPAによって、我が国を取り巻く自由貿易圏は拡大の一途をたどっております。総じて、我が国が輸出する自動車などの関税枠が撤廃されることによって工業製品の販路が拡大される一方で、我が国が輸入する乳製品などの酪農製品や農林水産品が日本市場におけるシェアを拡大することが予測できる状況だというふうに思います。我が国の酪農業者や農林水産業の経営を圧迫し、彼らが国内市場から追い出されるのではないかという危惧がこれまでも切実な声として、議論として、国会でも論じられてきました。

 片側で政府は、平成三十七年度までに我が国の食料自給率をカロリーベースで四五%にするという数値目標を掲げておられます。仮に我が国の農林水産業がJAPANブランドとして世界に販路を広げることに成功したとしても、海外から自由貿易によって国内に輸入される酪農製品、農業水産品が増大したら、我が国のカロリーベースの食料自給率は低下するのではないかという懸念を持っているわけであります。

 TPPやEPA、FTAなど、自由貿易圏の拡大によって農林水産品の輸入が拡大する中で、どのように食料安全保障の重要な数値目標となる食料自給率を維持向上させていくことができるのか。スキームについては農林水産省に、そして、自由貿易圏の拡大と我が国の食料安全保障及び自給率との関連については、これは河野大臣からお伺いをしたいというふうに存じます。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 食料自給率につきましては、平成二十七年三月に策定いたしました食料・農業・農村基本計画におきまして、委員御指摘のように、平成三十七年度にカロリーベースで四五%に引き上げるとの目標を設定したところでございます。

 政府といたしましては、この目標に向けまして、国産農産物の消費拡大、食育の推進あるいは消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大ですとか飼料用米の推進、付加価値の高い農産物の生産、販売の促進、優良農地の確保ですとか、あるいは担い手の育成の推進、こういった各般の施策を総合的、計画的に講じてまいる所存でございます。

 なお、日・EU・EPAにつきましては、昨年十二月に影響試算を公表いたしましたが、その際、食料自給率についてもお示しをいたしたところでございます。

 具体的には、価格の低下による生産額の減少が生ずるものの、国内対策によりまして生産量が維持され、食料自給率につきましては、平成二十八年度、カロリーベースで三八%という水準と同程度になると見込んだところでございます。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、食料自給率の目標に向けまして、しっかりと各般の施策を講じていくという所存でございます。

河野国務大臣 お答えする立場にございません。

山川委員 では、最後に、SPAについてお聞きをしたいというふうに思います。

 我が国とEU諸国は、国家としても、経済面でも、高度に成熟した段階を享受していて、進むべき大きな方向性においても、また理念においても、共通した中で、個々の課題に信頼関係を保ちながらともに取り組んでいけるものと感じています。

 しかしながら、幾つかの文化的、歴史的価値観の相違があることも事実です。

 例えば三条。平和及び安全の促進について、本協定締結により、我が国の国内法や国内の議論を飛び越えて、やみくもに協力する事態になるおそれはないのか。

 例えば捕鯨問題について。長年、国際捕鯨委員会総会において、捕鯨支持国と反捕鯨国で意見が対立してきましたけれども、ことし九月の総会における我が国が提案した商業捕鯨の一部再開等は否決されましたが、IWC脱退も検討することになるのか。

 さらには死刑制度、これも大変重要な問題だと思うのですが、市民的及び政治的権利に関する国際規則の第二選択議定書に我が国は批准をしておりません。

 これらの日・EU間の相違点について、合同委員会で実務者協議が行われると思いますが、この合同委員会の構成はどのようになっているのか、そして、今の例示のように、どのように、意見の相違がある場合に協力していくことになるのか、具体的にお伺いをいたしたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日・EU・SPA第四十四条は、「この協定に基づく協力及び行動は、両締約者のそれぞれの法令に従って実施する。」旨、規定しております。日・EU間で制度や立場に相違がある場合でも、それらの変更を法的に義務づけるものではございません。

 その上で、本協定の適用が開始されれば、本協定に従って設置される合同委員会等の場において、日・EU双方が種々の問題を提起することが可能でございます。委員御指摘の捕鯨、死刑等についてもしかりでございます。こうした協議を通じて日・EU間の相互理解を深めていくこととなると考えております。

 平和及び安全の促進についてのお尋ねでございますが、繰り返しになりますが、本協定は、我が国とEU及びEU構成国のそれぞれの法令に従って実施するものでございますので、御指摘の規定が我が国国内法との関係で問題となるものではございません。

 合同委員会の構成でございますが、今後、日・EU間で調整していくこととなっております。

 以上です。

山川委員 質問を終わります。ありがとうございました。

若宮委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 立憲民主党の石川香織でございます。

 私、農林水産委員会に所属をしておりますけれども、このEPAが農林水産分野に非常に大きな影響があるということでして、きょうは外務委員会で質問の機会をいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、質問に移りたいと思っております。

 この協定の交渉に対しまして、衆参農林水産委員会において次のような決議がなされております。「交渉相手国・地域における畜産・酪農等をめぐる事情を十分勘案し、我が国の地域経済において重要な役割を果たしている畜産・酪農が今後とも安定的に発展できるよう、確固たる決意をもって臨むこと。」「内容よりも期限を重視するあまり国益が損なわれることのないよう、特に、豚肉、乳製品等をはじめとする農林水産物の重要品目の再生産が引き続き可能となるよう、必要な国境措置をしっかり確保すること。」といった内容であります。

 この協定の交渉に当たってどういった基本姿勢で臨んだのか、また、この合意内容と決議を照らし合わせてみて、整合性についてどう見ていらっしゃるか、そのあたりについてお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 日・EU・EPAにつきましては、政府としては、包括的で高い水準の協定を目指し、農林水産分野のセンシティビティーに配慮しながらぎりぎりの交渉を行ってきたところでございます。

 その結果、米は関税削減、撤廃などからの除外を確保したほか、麦、乳製品などの国家貿易制度、砂糖、でん粉の糖価調整制度や豚肉の差額関税制度といった基本制度を維持いたしました。また、そのほかの農林水産物の重要品目についても、関税撤廃などからの除外、関税割当てやセーフガードなどの有効な措置を獲得し、農林水産品の再生産が引き続き可能となる国境措置が確保できたものと考えております。

 御指摘の決議に沿ったものであるかどうかにつきましては、最終的には国会で御判断をいただくことになると考えておりますが、政府といたしましては、決議を踏まえて交渉に臨み、しかるべき結果を確保したと考えているところでございます。

石川(香)委員 大臣、ありがとうございます。

 個別の銘柄を挙げて御説明をいただきましたけれども、では、実際どういった懸念があるかということについて、ちょっと疑問に思っていることを質問させていただきたいと思っております。

 まず、このEPAによって農林水産物の生産額がどれぐらい影響があるかという試算についてお伺いをしたいと思います。

 農林水産額が千百億円減少するということの試算が出ております。この千百億円減少するということも非常に衝撃的でありますけれども、もっと衝撃的なのは、これらの試算が対策を講じた上での試算であって、なおかつ、国内対策の効果によって生産量への影響はゼロであるということであります。

 例えば、チーズを例に出して挙げますけれども、競争力のあるEU産のチーズがふえた場合、国内産の原料乳価は下がる、しかし、国内対策で農家の所得は減らず、生産量も維持できるという見立てでありますけれども、これは本当でしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 牛乳・乳製品に関する日・EU・EPAの合意結果におきましては、ソフト系チーズは横断的な関税割当てとしまして、枠数量は国産の生産拡大と両立できる三万一千トンの範囲にとどめるとともに、ハード系チーズにつきましては十六年目までという長期の関税撤廃期間を確保、バター、脱脂粉乳等は国家貿易制度を維持し、最近の追加輸入量の範囲内で関税割当てを設定、ホエーは関税削減にとどめるなどの措置を確保したところでございます。

 他方、委員御指摘のとおり、チーズやホエーの関税撤廃により、長期的には加工原料乳乳価の下落も懸念されるところでございます。

 このため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、省力化機械の整備等による生産コストの削減や品質向上など、畜産、酪農の収益力、生産基盤の強化を進めますとともに、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳補給金制度の対象に追加しまして、単価を一本化する補給金制度の見直しを、協定発効に先立つ平成二十九年度に実施すること等により、万全の対策を講じていくこととしております。

 これらを踏まえて影響を試算しますと、関税削減等の影響で、価格低下によりまして約百三十四億円から二百三億円の生産額の減少は見込まれるところでございますが、国内対策によりまして引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産は維持されるというふうに見込んだところでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 チーズの輸入枠などについては、後でまた質問させていただきます。

 この試算の方法でありますけれども、TPPの協定時と同様の方法をとっているかと思います。TPP協定の国会審議の際にも、ことし六月の参議院内閣委員会で、より精緻なものになるよう見直しに努めるという附帯決議がなされています。

 この試算に関してはしっかり見直しをしていくと言っているわけですので、しっかり見直しをしていかなくてはならないのではないかということを強く申し上げたいと思っております。

 では、先ほども触れていただきましたチーズについてもお伺いをしたいと思います。

 EPAでは、輸入枠をつくって、初年度で二万トン、十六年目に三・一万トンまで拡大する予定だということであります。そして、枠内の税率も段階的に下げまして、十六年目に撤廃するということであります。

 農水省によりますと、輸入枠を設けるカマンベールなどのチーズのEUからの輸入量は現在二・一万トンということでありまして、つまり、初年度からほぼ全量の関税が下がるということになると思います。

 このことへの影響はどうお考えでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 チーズに関する日・EU・EPAの合意結果につきましては、先ほど御説明しましたとおり、ソフト系は横断的な関税割当てとしまして、その枠数量につきましては、初年度に二万トンとした上で、十六年目の枠数量を国産の生産拡大と両立できる範囲にとどめまして、三万一千トンとしたわけでございますし、枠内税率は、十六年かけて段階的に撤廃するという長期の関税撤廃を確保したところでございます。

 このため、カマンベールやモッツァレラ等の現行税率は二九・八%でありますけれども、初年度の枠内税率は二七・九%ということで、一・九ポイントの削減幅ということになります。このように急激な関税削減を回避していることから、当面、輸入の急増は見込みがたく、国内需給への悪影響は回避できるというふうに見込んでいるところでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 チーズもそうでありますけれども、乳製品は、北海道が多く生産を支えているということでありまして、北海道が非常に大きな影響を受けるという試算も出ております。

 北海道における農林水産物の生産減少額というものがありますけれども、二百十四億から三百二十九億生産額が減少する、北海道だけでこれぐらいの数字が出ています。牛乳・乳製品に関しては、全体の百二十四億から百八十四億ということでありますので、全国の牛乳・乳製品の生産額減少のうちの九割が北海道に当たるということで、まさに北海道が直撃、影響が直撃されるということでありますけれども、このことに対してどういう意識をお持ちなのか。

 それから、北海道、私の地元でもありますけれども、生産者の方々にしっかりこういった現状を対策等も含めて説明をしているのか、そのあたりもお聞きしたいと思います。

富田政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省の影響試算におきまして、乳製品につきましては、ホエー、チーズの関税削減や関税撤廃等によりまして、長期的には乳製品向けの乳価の下落が懸念されるというふうにしておりまして、乳製品向けの生乳の約九割を占める北海道への影響が大きいものというふうに認識してございます。

 このため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、省力化機械の整備とか生産コストの削減、品質の向上等、諸般の対策を進めて、万全の措置を講じていくというふうに考えておるわけでございます。

 これらの対策の実施に当たりましては、北海道はもちろんでございますけれども、全国の酪農家の方々に対し、関係団体等を通じまして丁寧に説明してきているところでございます。

 今後とも、酪農家の方が安心して再生産に取り組めるよう、しっかり対応してまいりたいと考えております。

石川(香)委員 万全の対策をとっていただいているということですけれども、それは当たり前でありますけれども、しっかり、営農にどういった影響があるのかですとか、イメージできるような説明というのがなかなか現状なされていないのではないか、伝わっていないのではないかというのが私の実感ですので、引き続きしっかり、わかりやすい数字を示していかなくてはならないと思っています。

 また、チーズに戻りますけれども、十六年目の三・一万トンという輸入枠でありますけれども、この枠は、国内消費が年三%程度伸びるという想定で設定をしていると思います。これは、生乳換算ではおよそ三十九万トンということであります。単年で見ますとばらつきはありますけれども、二〇一六年度は、チーズの国内消費量、前年比と比べて〇・三%しか伸びなかった、こういう年もあります。

 今後の人口減少を考慮しますと、消費量は伸びていかず、実質全てが関税ゼロで輸入されることもあり得るのではないかと思いますけれども、この状況をどう見ていらっしゃるのでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 チーズの消費量につきましてでございますが、我が国のチーズの消費量は一貫して伸びてございます。昭和六十二年度の総消費量は約十三万トン、一人当たりの年間消費量が一キロにすぎなかったわけでございますが、平成二十九年度の総消費量は三十四万トン、一人当たりの年間消費量は二・五キロにまで増加しているところでございます。

 石川委員御指摘の、二〇一六年度のチーズの総消費量の伸び率は確かに〇・三%でございますが、前年の二〇一五年度は伸び率が七・五%、翌年の二〇一七年度の伸び率は五・三%となっておるところでございます。

 このようにチーズの総消費量が伸びている状況を踏まえまして、チーズに関する日・EU・EPAの合意においては、十六年目の枠数量を国産の生産拡大と両立できる範囲にとどめるとの考え方のもとで三万一千トンとしたところでございまして、消費量が伸びずに実質全てが関税ゼロで輸入されるようなことにはならないと考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 EU産のチーズというのは非常にブランド力があると思います。低価格で高品質ということで、非常に脅威といいますか、そういう側面もあると思います。無税で大量に輸入されれば、当然、国内に大きな影響があると思います。価格の面で申し上げますと、国産の需要をEUに奪われて国産価格が下がってしまうのではないかという懸念を持っている方は、関係者の方に多くいらっしゃると思います。

 日本の牛乳の生産の多くを支えている北海道でありますけれども、北海道の生産量のうち八割が加工用乳であります。この加工用乳というのは、飲用乳に比べて価格が低い加工乳と言われるものでありますけれども、北海道を中心に、乳価を下げざるを得ないという状況が生まれてしまうのではないか、そういった懸念を持っている方も酪農家の方にいらっしゃいますけれども、こういった状況になった場合、どういった措置を考えているのでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 チーズにつきましては、先ほども答弁させていただきましたけれども、ソフト系は横断的な関税割当てとしまして、ハード系は十六年目までという長期の関税撤廃期間を確保したところでございますので、当面、輸入の急増は見込みがたく、国内需給への悪影響は回避できると見込んでおりますものの、長期的には、国産チーズの価格下落が懸念されて、生産額の減少が見込まれるというふうに試算したわけでございます。

 このため、農林水産省としましては、既存の体質強化対策や経営安定対策に加えまして、特にチーズにつきましては、国産チーズの競争力強化や品質向上等を図るための対策を講じているというところでございます。

 その上ででございますけれども、チーズを含む乳製品向け乳価が下落した場合には、平成二十九年度に生クリーム等の液状乳製品向け生乳を対象に追加して拡充しました加工原料乳生産者経営安定対策事業、いわゆるナラシという事業でございますけれども、この事業によりまして、価格低下の影響を緩和し、経営の安定を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 今、需給が逼迫をしておりますので、今は心配ないかもしれませんけれども、国産チーズの需要が奪われてしまえば、需要と供給のバランスが崩れてしまって、生乳の行き場がなくなる可能性もないとも言えないと思っています。

 先ほどの答弁の中にもありました、いろいろな対策を打っていただいているということでありますけれども、チーズ向け生乳の品質向上に取り組んだ酪農家に一キロ当たり最大十五円の奨励金を支払うという緊急対策を打ち出していると思います。この内訳といたしましては、チーズ向け生乳に対して一キロ十二円、加えて、チーズ製造、販売に取り組む生産者に一キロ当たり三円ということで、合計最大で十五円ということであります。

 これは、二〇一七年度補正予算で決まったものでありまして、百五十億円ということでありますけれども、決して単年度の措置で終わってはいけないものだと思っています。このチーズの競争力強化対策予算というのは、今後どういう位置づけになるのでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPAの合意結果を受けまして、二十九年度補正予算によりまして、チーズ向け対策として、生乳の高品質化のための奨励事業を含め、約百五十億円の補正予算を確保したところでございます。

 今後どうなるかということでございますが、農林水産省としましては、平成三十年度の第二次補正予算におきまして、農林水産業の強化対策として、チーズ対策予算をしっかり確保してまいりたいと考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 一時的なものではなくて、引き続き生産者を支えていくという点では共通している部分もあると思いますので、引き続き生産者の方々を支えていくというような仕組みをつくっていただきたいと思っています。

 なかなか外務委員会でこういったお話をする機会もないので御紹介したいと思いますけれども、今、非常に酪農家戸数が減っているという現状があります。ただ、一方で、一戸当たり、非常に大規模化している農家もふえている。生産量をふやして頑張っているという農家も、北海道中心ですけれども、全国的に、頑張っている酪農家はたくさんいる。

 規模拡大するということになりますと、最近では、搾乳ロボットでありましたり畜舎の拡大、それに伴って、雇用をつくっていかなきゃいけない、従業員の雇用などということで、酪農家の投資というのは非常に、数億から十億、もう数十億かかる場合もあるということで、非常にお金がかかるということであります。

 そういった投資をする中で、これから子供の世代、孫の世代に引き継いでいくということに対して非常に不安に思っているということも現状として持っている方もたくさんいらっしゃいますので、ぜひ、まず生産者の方々、所得を支えるですとか、そういったことをまず念頭に置いていただきたいなと思っております。

 少し質問の順番を変えさせていただきます。次は、小麦についてお伺いをしたいと思います。

 TPPとEPA、ダブルで小麦に影響があると言われております。小麦のマークアップの収入が大幅に減る見込みでありまして、農家の所得が安定して確保できるか、非常に不安の声が上がっています。

 このマークアップの収入というのは、麦への数量払い、いわゆるゲタと言われます経営所得安定対策の財源になっておりますので、この財源が減ってしまうのではないかという懸念があります。

 現在のパスタの関税は一キロ三十円ということでありますけれども、これを段階的に削減をして、十一年目に撤廃をします。国内供給量のおよそ三十万トンの四五%は輸入品であります。そのうち六割は、イタリアを中心とするEU産であるということであります。

 関税が撤廃されますと、イタリア産のパスタは一キロ百七十円が百四十円程度に下落をすると言われておりますけれども、国内の製粉業者にどういった影響があるかということでありますが、今、国内の製粉業者が製造するパスタは一キロ百七十円以上と言われておりますので、この価格で非常に大きな激しい価格競争が生まれてしまうということが予想されるということであります。

 このマークアップの収入がなくなることで経営所得安定対策の財源がなくなってしまうのではないかという懸念に対して、農家の所得維持に関してどのようなことを考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 小麦のマークアップにつきましては、TPP11協定において九年目までに四五%削減し、また、日・EU・EPAに対応しまして、パスタ原料の小麦のマークアップを段階的に実質的に撤廃することとしているところでございます。一方で、国内麦に対しましては、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、引き続き、経営所得安定対策を着実に実施することとしております。

 農林水産分野の財源につきましては、同大綱において、「既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」とされており、これに沿って適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 農家の所得維持のために、引き続き、代替財源の安定確保についてぜひお願いをしたいと思っております。

 今、国内産も非常に質のいい小麦もたくさん出ておりまして、EU産も非常にブランド力もありまして品質もいいということもありますけれども、ただ、日本の小麦は品質では絶対に負けないと思いますので、農家の方が引き続き高品質の小麦をつくっていけるように、ぜひ所得維持をしっかり考えていただきたいと思っております。

 では、また順番を少し変えますが、欧州委員会では、加工食品の対日輸出が五一%増大すると試算をしております。この増加額でありますけれども、十億ユーロ、日本円にして千三百億円増大する。特に、重視する、私もさんざん質問してまいりました乳製品の対日輸出につきましては、二百十五億、七億二千九百万ユーロ、日本円にして九百四十八億円増大するというふうに試算をしています。一方、日本政府の試算では、乳製品は逆に日本では生産額が最大でも二百三十六億減ってしまうという計算がありますけれども、これらの試算についてどのように見ていらっしゃるでしょうか。

富田政府参考人 お答えさせていただきます。

 欧州委員会が本年六月二十九日に日・EU・EPAの経済効果分析を公表したことは承知しておりますけれども、どのような前提を置いているかなど試算の根拠が明らかでないため、本分析にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、一般論として申し上げますと、こうした試算は、前提条件や分析手法によりさまざまな結果が出るものと考えてございます。

石川(香)委員 これだけ数字の開きが出ていたのも、EU側が計算をしたということでありましたけれども、EUはそれでも、これだけ増大するというふうに考えているわけでありまして、一方、日本は生産額が減るということでありますので、ちょっとこの差の開きは気になるところでありますけれども。

 政府は、欧州産の農産物の輸入関税、それから低関税輸入枠の取扱いについて、協定発効後五年目に見直すというふうに規定をされていると思います。この見直しの対象は、EU側が日本への輸出拡大を狙うチーズなどの乳製品、それから豚肉、牛肉や砂糖菓子といった日本の重要品目を位置づけていると思います。

 この関税の引下げ又は撤廃の時期を早める、それから一層の輸入拡大を余儀なくされるのではないかという懸念も当然出ているわけであります。そういったことがないように、五年後の再協議で日本がEUに対して安易な市場開放を約束することはないか、また、情報をしっかり開示するか、そういったことも私たちもしっかり注視をしていかなくてはならないと思いますけれども、まずは、五年後の再協議でこれ以上の譲歩はないという決意をお聞かせ願いたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘のとおり、日・EU・EPAにおきましては見直しの規定がございます。協定の発効日の属する年の後五年目の年又は日・EU双方が合意する他の年のいずれか早い年に行うことと規定されているところでございます。

 ただ、これは見直しを行うという規定でございまして、見直しの結果について、どういう結果になるかということを今の時点で予断できるものではございません。また、例えば、見直しの結果として協定の改正ということまでに至るかどうか、こういうことまで義務づけられているわけでもないということでございます。

 いずれにいたしましても、政府としましては、国益に反するような合意を行うことはしないという立場でございます。

石川(香)委員 ぜひ強い姿勢で引き続き臨んでいただきたいと思います。

 時間もなくなってまいりました。日本ワインについてお伺いをしたいと思います。

 先日、農水委員会でもGI、地理的表示の審議がありました。

 日本ワインという名前が登録をされました。今、日本国内でもワイン市場は非常に活発な動きがあるということでありまして、今回の日欧EPAではEUからの輸入関税が即時撤廃になるということでありまして、EU産の質のいいワインがどんどん日本に入ってくるという側面と、逆に日本のワインが競争していくというチャンスにもなるわけでありますけれども、このあたりについて、日本ワインへの影響をどうお考えか、お答えいただけますでしょうか。

吉井政府参考人 お答え申し上げます。

 日本ワインは、近年、国際的なコンクールで受賞するなど世界的な評価が高まっているほか、国内における出荷量も拡大しているところでございます。

 また、国税庁におきましては、日本ワインのブランド価値向上の観点から、日本ワインの表示ルールの制定、施行、これはことしの十月からでございます。山梨、北海道についての地理的表示の指定、酒類業団体等との醸造技術等についての情報交換会の実施など取り組んでおります。また、酒類総合研究所におきましても醸造講習等を実施しているところでございます。

 こうした中で、日本ワインのブランド価値の向上が進んでおり、輸入ワインとは一定程度差別化が図られているものと私どもとしては認識しているところでございます。

 また、今般の日・EU・EPA協定におきましては、ワインに係る関税を相互に撤廃したほか、EU側におけるワインの醸造方法に係る輸入規制を撤廃、地理的表示、GIの相互保護など、先ほど山川委員にもお答え申し上げましたが、日本ワインの輸出拡大を後押しする効果が期待されるものと考えております。

 いずれにいたしましても、国税庁といたしましては、引き続き、酒類業振興の観点から、関係省庁、機関とも連携し、日本ワインを含めました日本産酒類の競争力強化、輸出促進、あるいはブランド価値の向上などに向けましてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 きょうは主に農林水産業の影響ということについて質問させていただきました。どうか、国内外の競争が激しくなるという仕組みだけではなくて、厳しい環境でも高品質の農作物をつくるために日々頑張っていらっしゃる生産者の方を後押しするような、そういった仕組みもぜひ考えていただきたいということをあわせてお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国民の小熊慎司です。

 日・EU経済連携協定についてお伺いをいたします。

 櫻井委員、また我が党の山岡議員が本会議でもちょっと質問したことと重なってはいきますが、本協定の第十六章「貿易及び持続可能な開発」には、ILO中核的労働基準の尊重、履行が盛り込まれているものの、我が国にはILO中核的労働基準八条約のうち二条約がいまだに批准されておらず、また、既に批准されていても十分に履行されていない条約も存在をしています。

 そこで、まずお聞きいたしますけれども、批准されていない二つの条約、第百五号、強制労働の廃止、第百十一号、雇用及び職業についての差別待遇について、早期批准に向けた具体的な対応についてお伺いをいたします。

松浦政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPAは、各締約国が自己の発意により批准することが適当と認めるILO基本条約等の批准を追求するため、継続的かつ持続的な努力を払うということを規定してございます。

 我が国においては、個々のILO条約について、条約を批准することの意義等を十分に検討し、批准することが適当と考えられるものについて、国内法制との整合性等をきめ細かく確保した上で批准してきたところでございます。

 お尋ねのございましたILO百五号条約及び百十一号条約に関しましては、国内法制との整合性についてなお検討すべき点がございますことから、現在、批准の可能性について慎重に検討を行っているという段階にございます。

小熊委員 先ほど立憲の櫻井さんが具体的なロードマップと言っていたけれども、それはまだ慎重に検討する段階で出せないという答弁もありました。

 今ほどあったとおり、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があるというのがありますが、その検討すべき点というのを具体的にお示しできますか。

松浦政府参考人 お答えいたします。

 現在、検討すべき点として、具体的な両条約の批准の障害として考えられてございますものは、例えば、百五号条約におきましては、政治的見解を発表すること等に対する制裁あるいは労働規律の手段としての全ての種類の強制労働を禁止しておる、この点を国内法制との整合性を詳細に検討する必要があるということでございます。

 また、百十一号条約においては、雇用及び職業における全ての段階において、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身における差別を禁止しているところでございますけれども、これについても国内法制との整合性について慎重に検討しなければならない。

 そのような国内法令が存在するということがございますので、現在も慎重に検討しているところでございます。

小熊委員 今、具体的に検討すべき点をお示しいただきました。

 その慎重に対応するという点については、それは了としたいんですが、今、具体的に検討すべき点が出されましたが、それについては、こんなに時間がかかるものなのかなというふうに思います。その点についてはしっかり精査をしなきゃいけないというのは理解しますけれども、どれだけ時間をかければそこは整理されるんですか。

松浦政府参考人 お答えを申し上げます。

 百五号条約及び百十一号条約は、委員も御存じのとおり、ILO基本八条約のうちの二つでございます。日本は、ILOの主要メンバーといたしまして、この二条約を含む八条約を重視してきております。

 したがって、かねてから慎重に検討を進めているところでございますが、これからも引き続き検討していくということでございまして、具体的、時間的なプログラムはございませんが、しかし、国内法制上の整合性を確保することが極めて重要でございますので、これからも、慎重にではございますが、検討を重ねてまいるという姿勢でございます。

小熊委員 今言われたとおり、ILOのメンバーでもあって、これを尊重しなきゃいけないという立場でありながら、整合性を図る。

 これはもう、答えは出ると思うんですよね。でも、日本の立場で批准しないとは言えないので先送りしているというのが現状だというふうに思いますが、しっかりとした検討の上、その整合性を図られるように知恵を出して、早目にこれは結論を出していただきたいなというふうに思いますので、今までの努力はしてきたのでありましょうけれども、なお一層の努力をして、スピード感を持って、これについての対応、前に進むようにお願いをして、次に移ります。

 同じように、これは批准済みではありますけれども、公務員制度においては履行されていない二つの条約があります。第八十七号の結社の自由及び団結権保護、第九十八号の団結権及び団体交渉権については、この履行について具体的な対応はどうなっておりますか、お伺いいたします。

稲山政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、個々のILO条約につきまして、国内法制との整合性を確保した上で批准してきたものと承知してございます。

 国家公務員につきましては、その地位の特殊性と職務の公共性に鑑みまして、労働基本権が制約される一方で、人事院勧告制度等の代償措置が講じられているところでございます。

 国家公務員の労働基本権の関係につきましては、多岐にわたる課題や議論があることから、引き続き慎重に検討する必要があると考えてございます。

小熊委員 それが通常どおりの見解なんですけれども、今、働き方改革とかいろいろ、これまた入管法の改正とかで、多分いろいろな、働く現場で変わってくる。また、公務員においてもそこはいろいろな改革をしていかなければならない。

 公務員の特殊性ということもあって、今説明のとおり、人事院でそこをちゃんと補填しているということもありましたけれども、やはりこれはいろいろな観点からまた見直しを図っていって、こうした条約の、ちゃんと批准しているものについて履行できるように、この公務員制度においても働き方改革というのを、今までどおりということではなくて、やっていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っています。

 これが、いわゆる今回の協定とかSPAなどにもかかわってくることで、こういう協定は、もちろんそれぞれの国の制度を尊重しながらも、ある意味では価値観を共有していくということにもなってきますので、そういう意味では、今までどおりということじゃなくて、新たな視点でこれももう一回見直していく。

 これは、条約、批准しているわけですから。していながら、ここの部分はみたいなことではなくて、新たに検討、研究してみるということについてはどうでしょうか。

稲山政府参考人 お答えいたします。

 公務員の働き方改革につきましては、内閣人事局といたしましても積極的に推進していきたいというふうに考えているところでございます。

 公務員の勤務条件につきましては、労働基本権の代償措置としての人事院勧告制度がございますので、そういった制度を尊重するというのが政府の基本姿勢でございますので、そういった立場に立ちつつ、先ほど申し上げましたように、基本権の関係については引き続き慎重に検討する必要があると考えてございます。

小熊委員 普通の民間のところより難しいんですが、ぜひ履行に向けて前向きな検討をお願いしたいというふうに思います。

 次に移りますけれども、この協定、第十六章に、貿易及び持続可能な開発における労働監督機能の実効性確保に向け、国内諮問機関及び市民社会との共同対話における労働者団体の参画を前提に、専門委員会も含めた体制整備が必要だというふうに思います。この取組についてはどう考えておられるのか、お聞きいたします。

山上政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の日・EU・EPAの第十六章でございますが、ここの規定ぶりといたしまして、各締約国は、自国の法令及び関連する政策が高い水準の環境及び労働に関する保護を定めることを確保するよう努める、並びに当該法令及びその基礎となる保護の水準を引き続き改善するよう努める、こう規定されているわけでございます。

 この協定におきましては、また、この十六章のもとで、貿易及び持続可能な開発に関する専門委員会という名称の委員会が設置されることとなっております。この専門委員会におきましては、市民社会と相互に協力することを含め、この十六章の規定の効果的な実施及び運用等について責任を負うこととなっている、かような仕組みになってございます。

 政府といたしましては、この専門委員会の設置等を通じまして、この十六章の規定の適切な実施及び運用に努めてまいりたいと考えております。

小熊委員 これは、しっかりその労働監督機能の実効性が上がるようにいろいろな対応をしていかなければいけないと思いますし、そういう意味では、この専門委の体制整備というのが、具体的にどうしていくのかというのをしっかりお示しをいただきたいなというふうに思っていますので、今後またこれは注視していきますけれども、しっかり対応をお願いしたいなというふうに思っています。

 この協定については、ほかの貿易協定もそうですけれども、大筋としては、自由貿易協定は、お互いの国、地域の貿易量が拡大をして経済をそれぞれ相互的に押し上げるということは、これは自明の理であり、否定すべきものではありません。

 TPP11のときもこうした議論をさせていただきましたけれども、一方で、やはりこれはいろいろな懸念がある。比較優位のところはいいわけですけれども、比較劣位の産業や業種、事業主に関して言えば、これは脅威なわけであって、ある意味、国際的な競争というよりは、逆に国内の優位なところと劣位なところの産業構造の調整とか、また所得補填などをしていかなければ、全ての人が自由貿易の恩恵を受けるということはあり得ないです。国全体としてはお互いに後押しをするというのはありますけれども、個々の産業別、業種別に見ていけば、これはやはりプラスマイナスがあって、これは国内の中でしっかり手当てをしていかなければいけませんけれども、これがしっかりなされていないという懸念があるから、さまざまな分野において反対の意見が出てくるということでもあります。

 そうしてみれば、今回、日・EUの場合は、先ほど来議論があるチーズ製品などは、まさに比較劣位で懸念が渦巻いている、そして国内対策も不十分だという形であるから反対者が出てくるということだというふうに思っています。

 これは、総合的には自由貿易は国益にかなうわけですけれども、その影の部分の手当てをしっかりしていかなければいけないという点についてはまだまだ足りていないと言わざるを得ません。

 一方で、次の質問に移りますけれども、これは、我々、私の福島県、また被災地にとっては、日・EUの部分については明るい材料でもあるのも事実です。

 農産物また食品などの輸出総額は八千億を日本は超えていますけれども、その半分以上が香港、中国、台湾、韓国。この四つの国と地域で半分以上を占めています。でも、この四つの地域、国こそがまさに科学的根拠のない輸入規制をしいていますので、我々はその一番大きいパイのところに売り込みができないんですね。福島県、またその周辺の隣県もそうですけれども。

 となると、EUは今のところ農産物、食品に関しては日本の輸出額の中の五%程度しか占めていませんけれども、ここにもきちっと我々、勝負していかなきゃいけないんです。ほかの規制のかかっていない県はアジアに向けて売り先がありますけれども、我々はこの半分以上、売り先がない。今回、日・EUの貿易が拡大していく中の、日本の取扱量としてはわずかなところでありますけれども、ここに色濃くやっていかないと攻めの農業もできていかないというところがあります。

 そこで、以前にこうした話を農林水産委員会に行ってしたら、げたを履かせてくれと言ったら、履かせない、全国一律で支援していきますと言われたんですが、それでは、だから我々は戦えません。そういう意味では、今回のこの協定の発効を見据えて、原発災害によって生じている風評被害のあるエリアに関して、輸出促進に関しての対応というのはどういうふうにしていただけるでしょうか。全国やはり一律なんでしょうか。

渡邊(厚)政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPAによりまして、EUへ輸出される日本の農林水産品の関税、輸出重点品目である水産物、緑茶、牛肉などを含め、ほとんどの品目で即時撤廃されることになっております。この関税撤廃等のメリットを生かして輸出拡大を図っていくことは重要であるということで、まさに委員御指摘のとおりだと思っております。

 諸外国・地域における食品等の放射性物質に関する輸入規制におきましては、東京電力福島第一原発事故直後、輸入規制が講じられた五十四の国・地域のうち、これまでに二十九カ国・地域で規制撤廃を実現されております。また、EUにつきましては、昨年十二月に福島県産の米などが放射性物質検査証明書なしに輸出が可能となったところでございます。

 御指摘のとおり、原発事故災害による風評被害対策は重要であるというふうに考えております。日本の農林水産物、食品の海外における風評被害に関しては、関係省庁、連携いたしまして、風評被害の払拭に向けたパンフレット、広報動画を作成いたしまして、在外公館、国際会議の場等での活用、メディアでの発信などの取組を進めてきているところでございます。

 また、農産品、食品の輸出促進を図る観点から、例えば、EUを含め数多くの海外バイヤーが来場いたしました、先月幕張で開催された“日本の食品”輸出EXPOにおきましては、例えば福島県の事業者が十七社出展するなど、被災地を含めた日本の農産品、食品のよさをアピールするとともに、輸出の商談が行われたところでございます。

 また、これらに加えまして、毎年EU各国において開催されている見本市や商談会におきましても、今後とも、ジェトロの出展支援などによりまして、被災地の産品を含めた日本の農産物、食品のPR、販売促進に努めてまいりたいと考えております。

小熊委員 今説明があったのは、もうやってもらっているのもありますが、被災地域じゃないところのこともやっているんですね。特段の配慮をいただきたいということです。特段の配慮をいただきたいということを私は言っているんですね。今言ったいろいろなPRは、ほかの県のこともやっています。だから、イコールなんですよ、我々も、ほかの地域の県も。これはある意味正しいんですけれども、我々は売り先が限られているから、色濃くやってげたを履かせてほしいという話なんですね。

 在外公館でも、我々、出張に行ったときにお食事をいただきますけれども、さっきのレクサスじゃないですけれども、日本のいいPRの場所です、食事場所というのも。

 重要な話は、先日、寺田委員もやっていましたけれども、行った先々で出てくる酒が獺祭だったりして、福島県の酒が在外公館で出ない場合も多いんですね。去年の予算委員会でこれを言ったら、総理は、もう獺祭はいいから福島の酒を使いたいですと言ってもらっていて、でも、現場に行ってみるとやはり獺祭が用意されていて、福島の酒はと言うと、あったかなみたいな公館もありましたけれども。

 だから、意識的にやってもらうというか、風化していますから、意識的にほかの県以上に、輸入規制がはまっている、EUは解かれたわけです、今言ったとおり。我々はそのハンデ戦なので、アジアで勝負できていないので、しっかりやらせてほしいということなんですね。

 だから、しっかり取り組んでいただきたいし、今、ちょうどきのうまで、香港で私の選挙区の会津のエリアの物産展が開かれ、商業施設でやっていたのも、総領事館がしっかり対応していただきました。この春先には大臣も行って、そのフェスティバルに御協力をいただき、輸入規制の撤廃に向けても努力いただいているところですが、まだ結果は出ていませんけれども、香港の総領事館でも、限られたものしか今輸出できていませんが、とりわけ福島県のものをどうやって売ろうかということは汗してもらっています。

 今回、日・EUのこの協定が発効すれば貿易量が拡大しますから、日本全体的にはそれは盛り上げていかなきゃいけないけれども、とりわけ、規制のかかっているところを意識して、げたを履かせてほしいという話なんです。

 もう一回答弁をお願いします。

渡邊(厚)政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、今月、日本オリンピック委員会主催ウエルカムレセプションにおきまして、欧州諸国を含めて多くの参加者が海外から来られたわけでございますけれども、この場におきまして、復興庁と協力して、福島の日本酒など被災三県の日本酒を提供し、福島の魅力をお伝えしたということでございます。

 あくまで一例でございますけれども、いずれにしても、今委員御指摘のとおり、私どもも、福島県始め被災三県の実情を踏まえ、また地元の声も聞きながら、風評被害対策に丁寧に対応していきたいというふうに思っております。

小熊委員 しっかりやってくださいね。

 この際、日・EUの協定が発効されますから、それぞれの在外公館でどんな、そうだ、小野寺さんのところの宮城県の酒も、僕は見たことないですよ、在外公館で。これはしっかりちょっと調べ直して、そういうところからしっかりやっていただきたいと思いますし、物産展に関しても、件数が、特に被災地域、また、輸入規制がほかのアジアでかかっている地域、北関東とかもかかっていますから、そういう地域の後押しを特段意識的にやっていただきたい。

 次に移りますけれども、一方で、今言った貿易量がある台湾ですけれども、残念なことに、先日の統一地方選と同時に実施された住民投票で、福島県など五つの県産品の輸入規制の継続を求める住民投票が成立をしてしまいました。

 これは、日本台湾友好協会の沼田代表を始め、盛んにここは努力をしていただいたところでありましたけれども、台湾の野党、国民党というらしいんですが、その国民党がいろいろな政治キャンペーンに使って、この住民投票が成立してしまったんです。

 外務省としては、いろいろな風評被害払拭のために努力していましたよ。また、科学的根拠のないそういう情報に関してもいろいろな打ち出しをしてくれていたし、いろいろなPRもしてくれていましたけれども、結局は台湾の人々には届いていなかった。この原因についてどう分析していますか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、十一月二十四日、台湾で我が国の五県産食品の輸入規制継続が公民投票にかけられまして、投票の結果、可決されたものというふうに承知しております。

 御指摘の公民投票が成立した原因につきましては、政府としてその原因について断定的に述べることは差し控えさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、日本産食品の輸入規制につきましては、委員御指摘のとおり、これまで、台湾側に対して、日本台湾交流協会等を通じまして、食品の安全性等に関する各種の情報を提供し、科学的根拠に基づき、早期の規制撤廃を働きかけてきたところでございます。こうした中、今回、台湾の消費者の皆様に十分御理解いただけていないという結果になったことは残念であります。

 政府といたしましては、今後とも、台湾の方々が日本産食品の安全性を正確に理解し、それが規制の早期撤廃につながるよう、日本台湾交流協会等を通じまして、あらゆる機会を捉えて、粘り強く働きかけてまいりたい、このように考えております。

小熊委員 だから、粘り強くやっていただいていたんですよ。交流協会の沼田代表始め、やっている。私も昨年行って見てきましたし、政府においても、これは中国政府がいろいろ文句を言ったけれども、総務副大臣まで派遣してやってくれていたんですが、結局だめで、私、去年行ったときに、この委員会でも紹介しましたけれども、民進党政権はこれを緩和しようとしたんですね。野党の国民党ですよ。本部まで私、行きました。やはり、これを政治利用されている人たち、かたかったです。私は、もう一回台湾に行ってこようと思っています。ただ、私、民進党から国民党になって、台湾の人から見るとすごいブラックユーモアになっているんですけれども、それでも行ってこようと思っているんですが。

 これは、ポスターまで何か食の安全みたいなポスターをやって、政治キャンペーン化していたんですね。だから、正攻法でいっても多分これはなかなか訴えにくくて、逆に、台湾の人、多くの人が日本に来て、日本に来たときに福島県のものだって食べているし、福島県にも大分戻ってきてくれています、観光客も。何も気にしないで食べているんだけれども、戻っちゃうと、またそこがわあっと政治問題化しているので、政治問題として捉えて、真正面というか、どう動かしていくかというのは、非常にハイレベルなところでありますけれども、これはもう、外務大臣が行くというのには、なかなかこれは、中国との関係で難しいんですけれども、高度な政治技術が必要だというふうに思います。

 そういう意味では、河野外交というのは、今までにないいろいろなアプローチをして成果も上げているので、この件に関しましても、私は、大臣のいろいろな英知を活用して、台湾の人々にアプローチすることをやっていかなきゃいけない。今までの努力は、私は正しいと思いますが、それで結果が出なかったんです。新たな手法が必要だというふうに思いますし、政治的な案件になっていますから、そういうところにどうタッチをしていくかという検討をしていただきたいというふうに思っています。

 協会の沼田代表は、かなりいろいろなことをやっていただいているし、蔡英文さんの前でもきついことも言ってこれを訴えてきたという場面も見ていますから、最大限努力をしてきたのは事実ですけれども、その最大限の努力が実らなかった。しかも、この住民投票が出たら、二年間政府はこの住民の意思を尊重しなきゃいけないので、もう二年間はこれは変わらないということなんですね。

 じゃ、この二年間変わらない間にどう努力をするのか、台湾の人々の誤解をどう解いていくのか、改めてもう一回質問いたします。

河野国務大臣 なぜこういう結果になったかというのは、この問題をしっかりフォローされていた小熊委員がよく御理解されているところだと思いますし、それにどう対応していくかということを今後考えなきゃいかぬということも、まさにそのとおりでございます。

 我々としては、正攻法で科学的な根拠を示して、それについての安全性というようなことについては、もう台湾政府はしっかりと、台湾当局はしっかり理解をしてくれているわけでございますので、こういう状況に至ったことについて、政府としても、さまざま対応を考えているところでございます。

 政治的というところを考えると、なかなかここで、どうしますと公の場で申し上げるわけにもなかなかいかないところは御理解をいただきたいと思いますが、この問題については、確かにルールでいえば二年間はということかもしれませんが、それにこだわらず、対応がしてもらえるようなことを含め、考えていきたいと思います。

小熊委員 これはぜひお願いします。大臣が台湾へ行くというようなことはできないと思いますから、逆に、日本に来た国民党幹部とかとは、我が党の幹部じゃないですよ、台湾の国民党の幹部とは積極的に接触していただいて、主張していただきたいと思いますし、我々は、これは、台湾はもう二年間足かせが決まりましたから、ほかの地域の輸入促進が成るように、さっきの農水省もぜひお願いしたいと思います。

 あと、これは大臣にお願いというか、一党員としてというか幹部としてお願いしたいのは、自民党青年局は毎年のように台湾へ行っていますから、行った際には、国民党本部に行ってしっかり抗議をしていただくということを党内に帰ったときに大臣の口から御提案をいただいて、実行していただきたいということをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 国民民主党の青山大人でございます。

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定について質問させていただきます。

 先ほども、櫻井委員ですとか、今も小熊委員、そして衆議院本会議でも、我が党の山岡議員の方からもありました第十六章のことですね。ちょっと済みません、順番を変えていきますけれども、第十六章ですね。

 これを見てみますと、本当に、一九九二年のいわゆるリオ宣言から始まって、一九九八年のILOの決議、そして二〇〇二年のヨハネスブルク会議等云々、しっかりこの協定の中にも明記されていて、二〇一五年ですか、まさにSDGsという中で、これをしっかり日本とEUでやっていこうというようなことが書いてある中にあって、先ほども何度も委員の方からも指摘があったように、まさに一九九八年のILOの宣言で最優先とされた八つの条約のうち二つが、日本が批准をしていない。

 先ほども、各委員からの質問に対して、例えば百五号に関しては公務員法、労働基本権との絡みがあってできないですとか、百十一号に関しては云々ありましたけれども、これは、もう一度ちょっと改めて、本当に同じ答弁かもしれませんけれども、特にこの第百十一号の方は、もう憲法十四条で保障されているものですし、これはしっかりと政府で取り組むという姿勢があればできるんじゃないかということを私は強く思っております。

 本当に、何度もこの質問を取り上げて恐縮ですけれども、我々、立憲民主党も国民民主党も、やはり人権、法のもとの平等をしっかり守っていくという立場から、改めて質問をさせていただきます。百十一号については前向きにもっと取り組むべきではないでしょうか。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 改めて申し上げますが、我が国におきましては、個々のILO条約について、条約を批准することの意義等を十分に検討し、批准することが適当と考えられるものについて、国内法制との整合性をきめ細かく確保した上で批准してきてございます。

 御指摘のございました百十一号条約につきましても、八大基本条約の一つでございますので、委員の御指摘のとおり、日本政府としても重視をしておりますが、なおこの整合性につきまして検討すべき点があるという観点から、引き続き慎重に検討を行っているところでございます。

 御指摘のとおり、日本国におきましては、憲法において平等が規定してございますし、さらには、人種差別撤廃条約にも日本は加盟しておるところでございます。

 したがいまして、基本的に、差別を伴う雇用が発生しているというわけではございませんが、しかし、この百十一号条約については、極めて詳細に加盟国が従うべき規則、基準を定めておりまして、それらの点を我が国の法制度が整合的に遵守し得るかどうか、その点について慎重な検討を行っております。

 この作業は従来から行っておりますけれども、今後も引き続き継続してまいりたい、このように考えてございます。

青山(大)委員 繰り返しですけれども、ILOで最優先というふうに決まったのは一九九八年、今が二〇一八年ですので、じゃ、これは二十年近くずっとそういう中で議論をされているんでしょうか。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 まさにそのとおりでございます。八つの基本条約の批准、実施の促進につきましては、毎年行われております政労使懇談会の場においても継続的に話題となっているというふうに承知しております。

 そのように、政労使の関係者の方々からの御指摘、御意見も踏まえながら、継続的に検討作業を慎重に進めておる、そういう状況が続いてございます。

青山(大)委員 二十年間も議論していると。

 今回、もし仮に国会でこの協定が通った場合としますと、もう来年からこれは発効されるわけじゃないですか。そういう中で、例えば第十六章の十七条とかを見た場合、こういった場合、一方の締結国、例えば、経済連携協定が締結された後、逆にEUの方から、何で日本がこれを批准しないんだ、そういった問合せがあった場合、どういった対応をされるんでしょうか。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今回御審議いただいております日・EU・EPAの規定に従いますと、各締約国は、すなわち日本及びEUでございますけれども、自己の発意により批准することが適当と認める条約、この百十一号条約を含むILO基本条約等でございますけれども、あくまで自己の発意により批准することが適当と認めるものについて批准を追求するための継続的かつ持続的な努力を払うということを規定してございます。

 したがいまして、この協定を批准したからといいまして、我が国に直ちに未批准のILO基本条約の批准を義務づけるということではないわけでございます。

 したがって、今委員から御指摘のあったような問いがEU側から発せられた場合には、その旨をお答えすることになるということでございますが、しかしながら、この規定の趣旨も踏まえながら、ILO基本条約の批准の可能性につきましては、慎重にではございますが、引き続き検討してまいりたい、そのように考えてございます。

青山(大)委員 私、ちょっと気になったのが、特に百十一号なんですけれども、いわゆるG7でまだ批准していないのが日本とアメリカということなんですけれども、アメリカとの関係、そういったものもやはり多少は、批准しない理由として関係はあるんでしょうか。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が条約を締結するに当たりまして、国際社会、なかんずく主要国の批准状況を参考にするということはもちろんございます。しかしながら、この百十一号条約の検討作業が批准にまで至っていないということの本質的な理由は、我が国の法制度との整合性確保、それを詳細に検討する必要があるということからきているものでございます。

青山(大)委員 もちろん参考人の方も御承知のように、ILO、一九一九年ですか、発足して、当時は、第一次世界大戦で日本も戦勝国ということで、本当にヨーロッパの列強と、最初から原加盟国のメンバーである。当然、その後、第二次世界大戦等を経ていろいろ紆余曲折があったんですけれども、いわゆるILOができてちょうど来年は、二〇一九年、まさに百年という節目になるわけでございまして、私は、今回この日・EU経済連携協定を発端にしてというのは適切かどうかわかりませんけれども、そういった節目に合わせて、ぜひ当然百五号も含めて未批准のものをやってほしいなと思います。せめてこの百十一号については優先的に議論できないのかな、そのように思っております。

 ましてや、昨日も、外国人労働者の受入れ拡大法案が衆議院を通過しましたけれども、今後、そういった海外の労働の方もふえるわけでございまして、やはりそういった日本の対外的な発信も含めて、日本の国際的な評価を含めまして、私は、この未批准の二つ、特に百十一号についてはスピードを上げて締結に向けて検討すべきだと考えますが、改めて、どうでしょうか。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまいただきました委員の御指摘、それからまた国会における議論も踏まえながら、引き続き検討をしてまいりたい、そのように考えてございます。

青山(大)委員 今言った八つの優先条約のほかにも、ILOで百八十九ですか、今は百八十四でしたかの条約があるんですけれども、たしかOECD加盟国の平均が大体みんな七十三ぐらいの条約を批准している。今現在の日本の批准している数は幾つでしょうか、状況は。

若宮委員長 お答えできますか。

松浦政府参考人 失礼いたしました。

 現在の批准数が約五十となってございます。

青山(大)委員 八つの最優先条約も二つ批准していない。ほかの百八十四の中でもOECD平均を下回っている状況があるので、今、日本としてもこの辺はしっかりと、OECD諸国の平均に上げていくように、これまでも議論をしていると思いますけれども、その議論のスピードを上げていってほしいな、そのように思っておりますので、この質問は以上で終わりにいたします。

 続きまして、この協定の第三章ですか、原産地規則及び原産地手続について質問をさせていただきます。

 原産地の証明制度として、これまで締結したEPAでは第三者証明制度が主に活用をされてきたわけでございますが、日本とオーストラリアのEPAの場合は第三者証明制度か自己申告制度、どちらかでいいですよということだったと思うんですけれども、今回の日・EU経済連携協定やTPPは自己申告制度の採用というふうに書いていますけれども、そもそも、第三者制度、これまでのメリットとデメリットをまずは教えてください。

山上政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPAにおきましては、まさに委員御指摘のとおり自己申告制度を採用したということでございまして、自己申告制度というのは、個々の事業者の方々が申告文をみずから書き、自社のビジネスの動向に合わせて機動的に作成できるようにするということがメリットでございます。

 他方、今までのまさに第三者によるものについては、こういった機動性というものはございませんけれども、しかるべく第三者が証明するということで、制度としてしっかり運用できる面はある、こういった違いがあるかと理解しております。

青山(大)委員 まさに今御答弁いただきましたように、確かに自己申告制度は、もちろんスピーディーな対応ができますけれども、一方で企業の負担も大きくなってしまう。逆に、第三者制度の方は、時間はかかってしまうけれども、やはりそういった政府なり関係機関のお墨つきが得られるという安心感やメリットがある中で、なぜ今回、両方併用しないで自己申告制度の採用だけにしたのかについて、もう少し詳しい理由をお聞かせください。

山上政府参考人 お答えいたします。

 やはり一番大きな理由は、事業者、これは輸出者の方もあれば生産者の方もございますが、こういった事業者の方々にとっての、自己申告制度によって利便性が高まるということであろうかと思います。みずから機動的に申告文を作成して申請をするということで、ちなみに、日本語での申告も可能となっているということでございます。

 こうした利便性が高まることによって、日・EU・EPAを活用した我が国からEUへの輸出の増加、これも期待されるわけでございます。

青山(大)委員 恐らく、多分、これまでは相手国からいろいろ問合せがあった場合は、そういった、間に入って、認証機関なりが対応したと思うんですけれども、今後は、本当に、中小企業でも、基本的にその企業が直接相手国からの問合せに対して対応しなければいけないんでしょうか。それとも、そういった中で支援策等は何かあるんでしょうか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まさにこういう自己申告制度を導入する以上は、中小企業の方々がこれを十分に活用して我が国の経済成長につなげていく、こういったことが大事だろうと考えております。

 そこで、中小企業の方々に対しましては、総合的なTPP等関連政策大綱、この大綱がございますので、大綱に基づきまして、一つには各業界や団体への説明、それからもう一つはジェトロや税関等によるセミナー、相談窓口の設置等を通じまして、丁寧な情報提供、そしてきめ細かな支援を引き続き行っていきたいと考えております。

青山(大)委員 今後、ほかの国とも経済連携協定を結んでいくと思われるんですけれども、今後もやはりそういった中で、基本的には、第三者証明制度ではなく、自己申告制度のみを採用していくということが方針なんでしょうか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 今、政府として、特にこれでいくという確たる方針を断定的に申し上げる段階にはございません。こういったTPP、日・EU・EPAの実施、運用を見て、検討を深めてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 ぜひ、本当に、中小企業の方で、そういった人材とかノウハウ等を含めてなかなかないと思いますので、そういったこともしっかり考えながら今後も進めてくださいということで、最後、第二章の物品の貿易について幾つか伺います。

 ちょっとその前に、輸出ということで、今回の経済連携協定とはちょっと異なるんですけれども、先ほど小熊委員の方からも御指摘がありました。ちょうど台湾で、せんだって台湾の統一地方選と同時に行われた住民投票で、福島や私の地元茨城県の農産物の輸入規制の継続が住民投票で可決されたというようなことがございました。

 先ほども小熊委員の質問に対して、これまでも、茨城産、福島産を含めまして、輸出解禁に向けて外務省としてもさまざまな取組をされたというふうにも御答弁をいただきましたけれども、本当にこれは茨城にとっても非常にゆゆしき問題でございます。

 先ほども答弁の中で、たしか大臣が、きちっと科学的な根拠も示してこれまでも行ってきたという御答弁もございました。台湾もWTOに加盟をされております。本当に、場合によっては、法的な措置も含めて具体的な行動をとることも視野に入れるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 あらゆる可能性を排除せず、しっかり対応してまいりたいと思います。

青山(大)委員 ちょうど、ことしの夏、七月ですかね、たしか東日本大震災原発事故以来輸入停止だった香港の方は、茨城県の食品の方は一部輸出が解禁されたわけでございまして、そういった中で、今回の台湾の対応については非常に驚く反面、茨城県としましても厳しいなというのが率直なところでございますけれども、まだまだ東アジアにおいても、中国ですとかほかの国も、茨城産や福島産を含めまして輸入を禁止している国も多々ございます。

 そういった近隣のアジア諸国に対して、今の現状、そしてこれまでの取組、今後についてどういった対策を行っているんでしょうか、お聞かせください。

河野国務大臣 台湾については、先ほど申し上げたとおりでございます。

 香港につきましては、ことしの七月に、茨城、栃木、群馬及び千葉県産の野菜、果実、牛乳、乳飲料、粉乳の輸入停止措置を、条件付ではありますが解除するということになりました。

 中国につきましては、先般の総理の訪中の際に、安倍総理、習近平国家主席あるいは李克強国務院総理との首脳会談を始めさまざまな機会を通じて、規制緩和あるいは早期の規制の撤廃ということを働きかけてきておりまして、先方からは、科学的な評価の基礎の上に輸入規制を緩和することを積極的に考えたい旨の表明がありましたので、中国についても、早晩何らかの動きが解除に向けて行われるだろうというふうに思っているところでございます。

青山(大)委員 ぜひ、この点については、これまで同様、更にこれまで以上に引き続き取り組んでほしいというふうに要望させていただきますし、事故から七年がたって、今までは、当然、日本産のもののスーパーの部分もほかのものにかわっていって、またそれを日本産に戻していくというのは、なかなか想像以上に大変な作業でございますし、やはり、二〇一一年以前のように、台湾とかのスーパーで日本産のものが、茨城産のものがたくさん出回るように、早期に輸入の禁止が解除されるように要望させていただきます。

 また、輸出ですけれども、今回、日本とEUの経済連携協定の中で、牛肉とか、これを契機にさまざまな輸出の増大に向けても取り組んでいくと思うんですけれども、やはり、EUの高い衛生基準に合わせるために、国内の生産者もいろいろな施設整備などをしていかなければならないわけで、そういった中で、当然政府の方もいろいろな対策をされていると思うんですけれども、改めまして、そういったEUの高い衛生基準に合わせるための国内生産者の施設整備への支援などを御質問させていただきます。

富田政府参考人 お答えいたします。

 農林水産物の輸出拡大につきましては、平成三十一年の輸出額一兆円目標の達成に向けまして、農林水産業の輸出力強化戦略等に沿って、政府全体で取組を進めているところでございます。

 食肉の輸出につきましては、HACCPなど、輸出先国が求める衛生条件等を満たす必要があることから、平成二十九年度補正予算に計上しました農畜産物輸出拡大施設整備事業も活用しながら、輸出拠点の整備を支援しているところでございます。

 引き続き、EUの高い衛生基準に対応できる、HACCP等の輸出対応型の施設整備を推進するため、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 そういった中で、さまざまな対応をされると思うんですけれども、多分、これまでそういった他国に、例えば牛肉とかで、牛肉の関税をかけて、その関税を財源としてそういった支援なんかも行ってこられたと思うんですけれども、今後もう当然、関税を撤廃していくわけですから、そういった関税の分の収入というのは減っていくわけじゃないですか。そういったもので、この分、失った牛肉の関税なんかの収入への補填としてはどのように考えているんでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 これまで、牛肉の輸入関税を財源としまして、畜産業、特に食肉の振興のために使わせていただいてきたところでございます。

 今後、関税が減少していくということはございますけれども、政府全体で検討していただいて、引き続き対応ができるように努力してまいりたいと考えてございます。

青山(大)委員 今回、日・EUですけれども、今後も、アメリカや東アジアを含めてそういった経済連携を進めていく中で、どんどんどんどんそういった牛肉の関税の収入は当然減っていくわけでありますし、これまでは本当に特定財源として、ちょっと批判的な面もあったんですけれども、でも、今後は確実にそれは減っていくわけじゃないですか。と同時に、国内の生産者も守っていくし、生産力もアップさせるために支援もしていく中で、やはり生産者としては、だんだんだんだん先細りの中で不安な気持ちになっていくと思うんですけれども、その辺はしっかり、かわりの財源というのは補填できるものなんでしょうか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、牛肉の関税が下がっていきますと、特定財源として利用させていただきました財源は減少していくわけでございますけれども、TPP等、あるいは日・EU経済連携等含めまして、国内で必要な財源については政府全体で確保していただくということで進めていただいておるというふうに理解してございまして、農林水産省としても、そのことを踏まえてしっかり財源を確保してまいりたいと考えてございます。

青山(大)委員 しっかりお願いいたします。

 ちょっと牛肉に絡めて。

 たしか、つい先日、ちょっと報道で私も知って驚いたんですけれども、何か、輸出禁止の和牛の精液が海外へ不正に持ち出されて、たまたま中国国内で流出する前に水際で何とかそれを確保できたというのがあったんですけれども、これは結構大きな問題だなと思っているので、ちょっともう少し、農水省の方で詳細を把握されていれば、この事件について、詳細について御説明ください。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 牛の精液や受精卵を海外に持ち出す際は、家畜伝染病予防法に基づきまして、動物検疫所の輸出検査を受ける必要がございます。しかしながら、先般、この輸出検査を受けずに海外へ持ち出し、中国当局に輸入をとめられたという事案がございました。

 なお、一部報道では精液とございますけれども、この申告者によりますと、受精卵ということでございました。

 農林水産省といたしましては、過去、同様の事例は承知していないところでございますが、この事例を踏まえまして、輸出者に厳重注意を行うとともに、再発防止策としまして、本事例について、航空会社、生産者団体、税関等に注意喚起を行い、同様の貨物を輸出しようとした者がいた場合には動物検疫所に連絡するよう要請を行ったところでございます。

青山(大)委員 ちょっと時間がないので。

 それは本当に大事なことなので、しっかりと取り組んでください。

 最後に、今後も、日米間の交渉ですとか東アジア地域包括的経済連携など、経済連携協定の交渉が進む中で、今回、これまで以上の譲歩がないように、しっかりとした姿勢で交渉に臨んでいただきたいということを重ねて要望し、質問を終わらせていただきます。

 以上です。ありがとうございました。

若宮委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩といたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

若宮委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。無所属の会に所属をしています。

 きょうは、議題となっております日本とEUのEPAと、例の日米の一月から始まるであろう通商協議、そして北方領土の問題について、三十分という限られた時間ではありますが、質問したいと思います。

 まず、日欧EPAについては一点だけでございます。データの取扱いについて気になっております。

 つまり、EUの規格というのは厳格でありますし、プライバシーの保護が重要視されているわけでありますけれども、今回の日本とEUのEPAの協定におきまして、このデータの扱いはどうなっているのでしょうか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘の個人データの越境移転の件でございますが、日・EUのEPA協定それ自体には具体的な規定というのは設けられてございません。ただし、日本とEUの当局間では、この協定、EPAとは別途、相互の円滑な個人データの越境移転を実現するための取組を進めております。

 ことしの七月でございますが、日本側においては個人情報保護委員会、EU側におきましては欧州委員会、この双方の委員会の間で、日・EU双方の個人データ保護の制度を同等のものと認定することで一致したところでございます。

 それを受けまして、現在は日・EUの双方で必要な国内内部手続を進めているところと承知しております。

玄葉委員 これは、データについてこれから大変大事な時代を迎えていると思うんですね。協定にはないということでありますけれども、ぜひ、これから日本はEUといわば上手に連携して世界全体のデータのルールをつくり上げる、そういう意味で、よいきっかけにしてもらいたいというふうに思っています。

 そのデータに関連して大変気になっていることがございます。それは、中国のいわばデータ囲い込み戦略ともいうべき、一種の私は長期の国家戦略だと思っておりますけれども、そういった問題でございます。

 つまり、GAFAと中国はBAT、いわゆるバイドゥ、アリババ、テンセントとありますけれども、例えば、アメリカは企業で囲い込み、中国は国家単位でデータを囲い込むということが起きているように思います。外国企業は中国で取得したデータを海外に持ち出すことは禁止をされ、これに対して、中国の企業は国外で取得したデータを持ち帰ることができる。さらに、衛星あるいはアンテナあるいは監視カメラなどを使って、さまざまな個人の情報が、中国の場合、結果として国家の手元にどんどん入ってくるという仕組みになっているのではないかというふうに危惧しております。

 アリババなどもいわゆる小口の貸出サービスなどが行われていて、決済の情報などは恐らく全て国家の手元に集まってしまうということが起きていて、現実にキャッシュレスで電子マネーの決済でありますから、それが日本にもどうも進出をするということのようでありますから、こういった中国のデータ戦略については、私は、日本国家として危機感を持って向き合わないといけないというふうに思っておりますけれども、この中国のデータの戦略についての認識とその対応策について、外務大臣に、これは事前に通告をしておりましたので、お伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 中国のサイバーセキュリティー法及びその関連規定の中には、中国国内で収集及び発生した重要データは中国国内で保存しなければならず、業務の必要により国外に提供する必要がある場合は、中国の規則などに従うことが求められております。

 日本の企業の中には、こうした規制は運用の仕方によっては中国市場における外国企業の活動を実質的に阻害することになると懸念があり、こうした懸念を踏まえ、我が国としては、中国に対して、日本企業の正当な権利を害することがないよう、関連する国際ルールなどに則した制度を透明性のある手続のもとで実施するよう求めてきております。

 また、二〇一七年十二月に開催された第十一回WTO閣僚会議において発表された電子商取引に関する共同声明に従って、将来の交渉開始に向け、いかなる事項を対象とし、いかなる形式で規律を作成するかなどについて、日本を含む有志国の間で準備段階の議論が行われているところでございます。

 また、二〇一七年十二月以降、特定の第三国を念頭に置いているものではありませんが、日米欧の三極で、市場歪曲的措置への対処について議論を行ってきております。ことし九月の第四回会合においては、デジタル貿易及びデジタル経済の成長を促進するための協力を行うこと、あるいはデータセキュリティーの促進を通じたビジネス環境の向上を図ることについても確認をしているところでございますので、御指摘の懸念については、政府としても、企業活動あるいは個人情報の保護その他の観点からきちんと対応してまいりたいと思っております。

玄葉委員 これはぜひ、経産大臣などとも連携をしてもらって、結局、例えばTPPなどは、現実に中国が行っているような技術移転の要求とかソフトの公開要求というのは明確に禁止をしています。つまり、公平なルールの中にぜひしっかりと組み込むということを、経産大臣などと連携をして、してもらいたいというふうに思います。

 次に、前回の質疑で積み残したというか、日米の通商協議のことでございますが、WTOとの整合性について、あのときに山上さんと議論をいたしましたけれども、もう一度しっかりと確認をしたいと思います。

 改めて議事録も確認をしておりますけれども、日米で通商協議を行って、そのでき上がるものがガット二十四条八項に言う自由貿易地域に当たるかどうかということは予断することはできない、仮に、日米間で合意する内容、これを最恵国待遇を適用する、他の国にも均てんするということであれば、二十四条八項の問題にはならないという面もございます、こういういわば一般論で答弁をされているわけであります。

 でも、論理的にはあり得ても、実際上はあり得ないというふうに私は思います。つまりは、日米でこれから協定が結ばれることになっているわけでありますけれども、その協定の内容が全てWTO加盟国、他の国にも均てんされる内容を想定しているとはとても私には考えられないわけであります。

 そういう意味で、例えば、聞き方を変えますけれども、これまで日本が二国間の通商協定、幾つも日本が持っている協定がございますけれども、日本が持っている二国間の通商協定で決められたことについて、いわゆるMFN、最恵国待遇で全ての国に開いた、そんな例はあるのでしょうか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 過去の例というお尋ねでございましたので、例えば、日米間で交渉をいたしまして一定の市場開放措置をとることとした、その措置をガットの最恵国待遇の原則に従って実施していくという形は、過去に例としてはございます。

 例えば、古い話でございますが、八〇年代、牛肉・かんきつ交渉などを行ったときは、日米間の交渉を踏まえて、日本は輸入数量枠の拡大あるいは関税の引下げといった措置をとることにしたわけでございますが、そこの日本側の書簡でも、ガットの最恵国待遇の原則に従い実施するということが明記されている、こういう例はございます。

玄葉委員 それでは、今回、日米で取り決める協定でございますけれども、協定で、先ほど申し上げたように、決められた税率、場合によっては、例えば農産物はTPP並みに、最大限の譲歩はTPP並みが最大である、こういうふうに決めているわけでありますけれども、仮にそうなった税率が他の国にも均てんされるということは本当にあり得るんでしょうか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの件は、このTAG、日米物品貿易協定の内容、どのような形でまとまるかということかと存じます。

 いかんせん、アメリカとの具体的な交渉は、今後、茂木大臣とアメリカ側のライトハイザー通商代表との間で行われることになるわけでございます。その結果につきまして、今、交渉が始まっていない現段階で予断することは困難でございまして、その点は差し控えさせていただきたいと存じます。

玄葉委員 私、本当にごまかしの答弁が続いていると思います。あり得ないと思います。現実にそんな協定なら、もうやめた方がいいと思いますね。そんな交渉ならですね。

 これは、確実に、でき上がったものについて、いわゆるWTO上の例外を求めていくということに必ずやなっていくはずであります。そうなると、これはもう実質FTA、RTAじゃないと例外って認められていないので、実質FTAなんですね。その実質FTAということを言われたくないために、こういうふうに、だらりだらりというか、そろりそろりというか、ごまかしの答弁が続いているということが実態であります。

 大変残念なのでありますけれども、やはり言葉で逃げないで、きちっと正面から内容で勝負をするというふうにしないと日本の政治が成熟をしていかないという面があると思うので、しっかりこれは正面から受けとめてもらいたいと思っています。

 北方領土の問題もやりたいので、時間がだんだんなくなってきますけれども、この間、農産物について、最大限の譲歩がTPP水準であるというのは早く切り札を切り過ぎたんじゃないかということを田中副大臣に言った記憶がございますけれども、改めてもう一言申し上げると、自動車分野の交渉が当然焦点にもう一つなるわけでありますけれども、TPPでは日本の農産物の市場開放と米国の自動車の関税撤廃がパッケージで合意をされているわけであります。

 日本からの自動車二・五%関税は二十五年かけて撤廃、トラックへの二五%関税は二十九年間維持し三十年目に撤廃ということで合意をしています。

 これ自体、かなり日本は譲っていると思いますけれども、最低限これは当然とりに行くというか、とるということでよろしいですね。

田中副大臣 今御質問がありましたTAGにおける自動車分野に関する件だと思いますが、これは日米の共同声明においては、パラグラフの五におきまして記載があるということについてのことだろうと思います。

 この記載は、あくまでも具体的な措置ではありません。米国がこれまで表明してきた基本的考え方をそのまま述べたものであります。

 日本としては、自由貿易の旗手として、やはり、自由で公正な貿易を歪曲するような、管理貿易につながりかねない措置については反対ということであります。その旨は米国にも明確に伝えているところであります。

 いずれにいたしましても、我が国として、いかなる国とも国益に反するような、そういう合意は行うつもりはございません。

玄葉委員 簡潔に答えてください。

 TPPで日本側が、相当譲歩していますけれども、いわばとったと言われている、自動車関税をいずれ撤廃するということについて、必ずとりに行きますねと聞いています。イエスかノーかで結構です。

田中副大臣 今御質問ありました件でありますが、具体的な交渉はこれからということであります。そういった意味では、交渉の結果を全て予見することは困難であると思いますが、今御質問あったような形で、国益に沿うような形での交渉は進めていきたいと思っています。

玄葉委員 そんな弱気でどうするんですか、これから交渉するのに。TPPでとったことは最低とらないと。

 もっと言えば、今申し上げたような自動車の関税の問題がとれないなら、当然、逆に言えば、農産物のTPP並みの譲歩もしちゃだめですよ、やっぱり。そういうことでいいですね。

田中副大臣 当然、交渉の内容ということに入っていくわけでありますが、我が国としては、やはり攻めるべきものは攻めて、そして守るべきは守るというスタンスであります。

 これは茂木大臣も発言しているところでありますけれども、例えばアメリカ側から農業問題について要求が来たということであれば、当然、自動車も含めた工業製品、こういうものに関してはTPPでも関税がゼロとなってくるというわけでありますので、しっかりとこのラインは守るべき、攻めるべきは攻めたいと思っております。

玄葉委員 正直、頼りない答弁でありますけれども、やはり、ある意味、農産物はあそこまで発言しちゃっているんですね、日本側は。それは、自動車の関税がせめてゼロにならないか、あそこまで、私は、最大限の譲歩であると言っているわけですから、最大限と言っているわけですから、別に全てにおいてそこまで譲歩する必要はないので、やはりきちっとほかのものでとれなかったらそこまで譲歩しないという決意でぜひ臨んでもらいたいというふうに思います。

 北方領土の問題でありますけれども、北方領土について、まず日ソ共同宣言。首相は、日ソ共同宣言にある交渉の対象は四島の帰属の問題だ、こういうふうに答えておりますが、対象は四島でよろしいでしょうか。

河野国務大臣 今回、総理とプーチン大統領は、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約の交渉を加速するということで合意をいたしましたので、その両首脳の合意に沿って交渉してまいりたいと思います。

玄葉委員 いや、安倍さんは、日ソ共同宣言の読み方として、交渉の対象は四島である、こう言っているわけでありますが、それでよろしいですね。

河野国務大臣 従来から、政府は、領土問題を解決して平和条約を締結するということを申し上げてまいりまして、それが基本方針でございます。

玄葉委員 何で四島と答えられないのかわかりませんけれども、首相も言っているわけであります。

 ちなみに、第九条、歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する、この引き渡すという意味はどういう意味でしょうか。

河野国務大臣 これから日ロの交渉を加速化しようということでございますので、政府として、交渉の場以外のところで政府の考え方、方針を申し上げるのは差し控えさせていただいております。

玄葉委員 これは基本中の基本だと思います。

 例えば、プーチン大統領はこの問題について発言をしています。そのことについて、日本国の立場が全く、いわゆる交渉以外の場で発言してはいけないということになると、むしろ交渉ポジションを弱めることになるのではないかというふうに思います。プーチン大統領も別に交渉の場で話をしたわけではございません。

 では、別の聞き方をいたしますけれども、例えば、この間、政府の中から、北方領土問題について、従来の方針とは変わらない、こういう発言が出ているわけでありますが、従来の方針とは何でしょう。

河野国務大臣 領土問題を解決して平和条約を締結するのが政府の基本方針で、この方針に変わりはございません。

玄葉委員 菅官房長官は、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、そういう従来方針に変わりはないと言っておりますが、それでよろしいですか。

河野国務大臣 領土問題を解決して平和条約を締結するのが我が国の基本方針で、変わりはございません。

玄葉委員 そうすると、外務大臣と菅長官は言っていることが違うということになりますけれども、それでもよろしいですか。

河野国務大臣 同じことを言っております。

玄葉委員 それではもう一度聞きますけれども、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのは従来の方針ですね。

河野国務大臣 領土問題を解決して平和条約を締結するのが我が国の基本方針でございますので、方針に以前と変わりはございません。

玄葉委員 先ほどの日ソ共同宣言の交渉対象が四島だと安倍総理が発言をしていて、外務大臣は答えない。今回、この基本的な基本でありますけれども、日本のこれまでの従来方針について、菅長官と外務大臣が違う答弁をしている。

 もう一回お聞きしますけれども、菅長官は確実におっしゃっています。四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのが従来方針であるということですが、これでよろしいですね。

河野国務大臣 政府の方針に変わりはございません。(発言する者あり)(玄葉委員「ちょっと時計をとめてやってください」と呼ぶ)

若宮委員長 ちょっと速記をとめていただけますか。

    〔速記中止〕

若宮委員長 では、速記を起こしてください。

 河野大臣。

河野国務大臣 菅長官の方針が政府の方針と同じでございます。

玄葉委員 それで結構です。

 内閣府のホームページに、政府の基本的立場、北方四島に対する我が国の主権が確認されることを条件として、実際の返還の時期、態様については柔軟に対応する、これが日本の政府の基本的立場だというふうにホームページで書いてございます。

 私も、かつて、北方四島の日本への帰属が確認されれば、そのいわゆる返還の時期であるとか態様であるとか、そういったことについては柔軟に対応するということを何度も外務委員会の場で答弁した記憶がございます。これが私は従来の方針だと考えておりますが、それでよろしいですか。

河野国務大臣 これから交渉を加速化しようというところでございますので、政府の考え方、方針を交渉の場以外で申し上げるのは、交渉を有利に運ぶことになりませんので、差し控えております。

玄葉委員 これは従来方針は変わっていないというふうにおっしゃるから、私は改めて聞いて確認をしているわけです。これが私は日本国政府としての従来の方針だと思います。仮にそうではないということであれば、従来方針は転換をされたというふうに言わざるを得ないと思いますけれども、いかがですか。

河野国務大臣 これから交渉に当たるわけでございますので、その中で、政府の考え方、基本方針というのは交渉の場で申し上げることにしておりますが、交渉の場以外で政府の考え方、方針を申し上げるのは、交渉を有利に運ぶことにつながりませんので、差し控えさせていただいているところでございます。

玄葉委員 いや、従来方針の説明ですから。今、交渉にどう向き合うかということを聞いているわけではありません。従来の方針を教えてほしい、改めて確認をさせてもらいたいと言っているわけですから、交渉に影響を与えるわけではありませんから、むしろ、言わないことが交渉のポジションを弱めるということにつながりかねないというふうに思います。いかがですか。

河野国務大臣 玄葉委員はそう考えていらっしゃるかもしれませんが、政府としては、そのように考えておりません。

 交渉の場以外で政府の考え方、方針を申し上げるのは、交渉の立場を弱めると考えておりますので、差し控えさせていただいております。

玄葉委員 だから、交渉の立場を言っているわけではない、聞いているわけではない。従来の方針を聞いている。従来の方針を言うことが、なぜ交渉と直接関係あるのか。今、ある意味、向き合い方が変わっているわけですから、新しいアプローチと言っているわけですから。ですから、従来の方針を説明してほしいと言ったときに、従来の方針が説明できないということであれば、明らかに従来の方針は転換されたということだろうと思います。

 ちなみに、予算委員会で不法占拠ということについて答えなかったということでありますけれども、法的根拠なく占拠し続けている、この言葉は言えますか。

河野国務大臣 これから日ロで交渉することでございますので、こうした一連のことについて、政府の方針、考え方を交渉の場以外で申し上げるのは差し控えております。

 平和条約が締結された際には、国会にお示しをして、しっかりと批准のための審議をしていただきたいと思います。

玄葉委員 それでは、また別の聞き方をしますけれども、日本国としては、北方四島は、何ゆえ、日本国の歴史的にも法的にも固有の領土だというふうに主張してきたのですか。

河野国務大臣 これから交渉するところでございますので、政府の考え方、方針を交渉の場以外で申し上げることは、交渉の立場を弱くすると考えておりますので、差し控えさせていただきます。(発言する者あり)

若宮委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

若宮委員長 速記を起こしてください。

 玄葉君。

玄葉委員 では、いろいろな質問の仕方はあると思うんですけれども、日本がなぜ固有の領土ということを主張しているのかということを聞いています。

河野国務大臣 これから領土問題を含む日ロの交渉を加速化させようということでございますので、交渉の場以外のところで政府の考え方、方針を申し上げるのは、政府の立場を著しく弱めると政府は考えておりますので、交渉の場以外でそうしたことを申し上げるのは今差し控えさせていただいておりますので、御理解をいただきたいと思います。

 平和条約が締結された折には、国会にそれを提出し、批准のための審議をしていただくことになりますので、政府のしっかりとした説明をその場で行わせていただきたいと思います。(発言する者あり)

若宮委員長 御静粛に願います。

 今、質問者……(発言する者あり)(玄葉委員「委員長、とめて。議論にならない」と呼ぶ)

 ちょっと速記をとめていただけますか。

    〔速記中止〕

若宮委員長 速記を起こしてください。

 河野大臣。

河野国務大臣 これから日ロ間の交渉が始まることになりますので、この交渉において我が国の立場をなるべく強くしておきたいと思っております。

 交渉の責任者として、いかにこの交渉をしっかりやるかというところに日々心を砕いているところでございますので、交渉の場以外で政府の考え方その他を申し上げると、これがまたメディア等を伝わってロシア側にも当然話が伝わることになります。それに対するリアクションもいろいろあって、それは交渉を進める上で好ましくないと政府は考えているところでございますので、交渉の場以外で政府の考え方を今申し上げるのは差し控えさせていただいているところでございますので、何とぞ御理解を賜りたいと思います。

玄葉委員 私も、もちろん外交に機微があるということは十分承知をしているつもりであります。

 他方、説明責任というのもやはり最低限あるわけであります。国民の理解を得ながら進めていかなければならない面もあるはずです。平和条約を締結をした後、説明するから、それまでは一切政府の原則的な立場も話せないということであっては、全く国会は要らないと言っていることに等しいじゃないですか。これは過度に臆病になり過ぎていると思います。

 私も、交渉以外の場での発言で交渉がうまくいかなくなるという懸念というのは常にあるというのはよくわかります。だけれども、過度に臆病になっていると、それは逆に、さっきも申し上げましたけれども、私は、日本の立場を弱めるということになります。だから、ここはバランスだと思うんですね。今、はっきり申し上げて、私の考え方では、河野大臣は臆病になり過ぎているというふうに思っています。

 原則的な立場、あるいは従来の方針、あるいは、なぜ日本の領土だと言えるのかということについての最低限の説明が日本の政府から国民に対して、あるいは国会議員に対してなされないというのは絶対あってはいけない話ではないかというふうに思いますけれども、自民党の議員の皆さんも、どう思われますか。そう思いませんか。

 それは、私も、本当に機微にわたるのはわかるんですよ。でも、交渉の突っ込んだ内容を聞いているわけじゃないんですから、はっきり申し上げて。原則的な立場を申し上げているので。いかがですか。

河野国務大臣 今度の交渉は、原則的な立場が違う二カ国間の間の交渉でございますので、原則的な立場を申し上げているだけでは、これは交渉にはなりません。

 そういうことで、政府の考え方、立場、方針、そうしたものは交渉の場で相手方とやりとりをする、そういうことにさせていただいているということを御理解いただきたいと思います。

玄葉委員 委員長、ぜひこれは理事会で、やはり過度に臆病になっていて、これでは国会で議論にならないということになってしまいます、今後もずっと、交渉中。だから、一体どこまで議論できるのかということについて、前向きな理事会での議論をお願いしたいんですけれども、いかがですか。

若宮委員長 かしこまりました。

 ただいまの件につきましては、理事会で引き取らせていただきます。

玄葉委員 委員長、最後に。

 ぜひこれは、最低限の説明責任は負っていただきたいと思います。それは確かに、機微だから、どこまで言っていいんだろうかということは常にある意味緊張した答弁を強いられることにはならざるを得ないと思いますけれども、それも外務大臣の私は務めだというふうに思います。

 私は、今のままいくと、今からもう予言しておきますけれども、二島で最終決着になる可能性がはっきり申し上げて高いというふうに思います。ですから、さまざまな懸念を持たざるを得ない今回の交渉であるがゆえに、しっかり国会で議論していく必要があるというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。

若宮委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 協定の問題について、河野大臣に質問いたします。

 大臣は、十一月二十日の衆院本会議で、これまで日本が結んできた包括的なFTAの中身について、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールが主な対象だと答弁されました。

 また、大臣は、ことし五月の十一日の本委員会で、「TPPが前へ進んでいるというのは、日本がやっているほかの自由貿易協定にも大きな後押しになってきた」と、自由貿易を進めていることを答弁しています。

 そこで、サービスについてお聞きします。

 大臣は、九月の日米共同声明では、交渉の対象として全てのサービス分野の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらずと答弁されています。しかし、日米共同声明では、「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する。」となっています。

 これは結局、サービス分野は日米貿易交渉のテーブルに上がったということですか。明確にお答えください。

河野国務大臣 九月の日米首脳会談の際の日米共同声明では、交渉の対象として全てのサービス分野の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで我が国が結んできた包括的なFTAとは異なるものであると考えております。

穀田委員 政府の国民への説明は、サービス分野は、答弁の、全てのサービス分野という表現か、あるいは、共同声明にある、サービスを含む重要な分野というだけの違いなんですね。結局、いずれにしても、サービス分野や投資等のルールが交渉のテーブルに上がる。それはすなわち、物品だけでなくて、サービスなどが主要な内容として含まれる、結局のところ、日米自由貿易交渉が始まるということになる。これが客観的な今の到達点だと言わざるを得ません。

 茂木大臣は、同じく十一月二十日の衆院本会議で、金融、保険など、制度改正を要するものは交渉に時間がかかると答弁しています。そこで、内閣府の副大臣に聞きますが、交渉に時間がかかる金融、保険は将来日米貿易交渉のテーマになるということかどうか、お答えいただきたいと思います。

田中副大臣 今回、交渉開始で合意をいたしましたTAGについてでありますが、対象は、基本的にはもちろん物品貿易である、それに加えて、今後の交渉結果によって早期に結果を生じ得るものは対象になり得るとしているところであります。

 そして、この早期に結果を生じ得るものについては、今後は、茂木大臣とライトハイザー代表で交渉して合意したもののみが入るということになります。これは、例えば通関手続など貿易円滑化に関する措置ですとか、物品貿易と同じタイミングで結論を出せる分野に限定されると考えておりまして、一方で、金融、保険などの制度改正を要するものは、交渉が時間がかかるということで、交渉の対象には想定されていないということであります。

穀田委員 それは同じ答弁を繰り返しているにすぎないんですよね。私が言ったのは、交渉に時間がかかると言うけれども、将来日米交渉のテーマになるということだなということを言っているんですよ。今、早期にやり得るものは入っているということで、相変わらず、時間がかかるという論を展開しているだけにすぎないわけですね。それだと、国会の本会議の答弁をもう一度繰り返しているにすぎないんですね。

 じゃ、聞きますけれども、USTRの報告書によると、金融、保険は十三項目ですね、これを持ってきましたけれども、十三項目のところにあるわけですけれども、「サービス障壁(日本郵政、保険)」こう書いていまして、「同社の国際急送便サービスを補助することを禁止することによる公正競争の向上のための措置をとることを求めていく。」だとか、「保険商品の流通機会への公平かつ透明性のあるアクセスの確保、」こう言っているわけですよね。相手の側は、このことについて強く要求しているわけじゃないのか。

 だから、今副大臣は早期となり得るものと区分けをしていますけれども、私が聞いているのは、将来はそういうテーマになるということだ、それを否定できないんでしょう、同時に、相手の側はそれを言っているでしょうということなんですよね。

 では、聞きますけれども、もう一度、USTRの報告書、もう一つ、三では、「牛肉及び牛肉製品」というところの項によると、米国は、全ての月齢の牛肉及び牛肉製品を受け入れ、市場を完全に開放するよう働きかけるとあります。農水副大臣に聞こうと思うんですけれども、アメリカの要求に従って市場を完全開放するのかということについてお聞きします。

小里副大臣 アメリカの要求に従って完全に市場開放するのかということでございますが、これは、これから交渉の行方次第によるものでありますが、今この時点で予断は許されないものと感じております。

 また、特に月齢制限の撤廃についてお尋ねであればお答えいたしますが、よろしいですか。

穀田委員 行方次第ということは、はなからこういう問題についてあかんという遮断をしているわけじゃないということですわな、簡単に言えば。それが外交の用語でしょう。結局、完全に否定していないということを極めて私は重大だと思います。

 政府は、こういうふうに質問しますと、大体、次に答えるのが決まっているんですよ。国益を考えて交渉する、今もありましたけれども、行方次第だと。こういう点で、やはり国民が懸念し、この間、譲歩とそして規制緩和の連続ではなかったのかと言わざるを得ません。

 それで、ハガティ駐日米国大使も今月十六日の講演で触れているように、結局は、日米双方は、物品・サービスを含むその他の重要分野、貿易と投資に関する項目の自由貿易交渉をするということで一致しているではないか。政府は結局のところ、いつも、今もお話があったように、行方次第とか協議次第とか言っていますけれども、しかし、国民は、今度は一体全体何を譲歩するのかということで大きな懸念を持っていることを指摘しておきたいと思います。

 そこで、次に、農水副大臣に日欧EPAに関連してお聞きします。

 本協定では、カマンベールなどのソフト系チーズに最大三万一千トンの関税割当て枠を設定し、十六年目に無税にするなど、TPPを上回る譲歩をEUに認めています。

 農水大臣は、十一月二十日の衆院本会議で、本協定の牛乳・乳製品に与える影響について、当面、輸入の急増は見込みがたいとする一方で、長期的には、競合する国産の脱脂粉乳、チーズの価格下落などにより生産額の減少が見込まれると答弁しています。本協定によってそうした影響が危惧されるということは事実ですね。

小里副大臣 今御指摘のとおりに、チーズにつきましては、ソフト系におきましては、横断的な関税割当てといたしまして、枠数量は国産の生産拡大と両立できるように、すなわち、消費量は伸びておりますし、一方で国内生産も若干伸びてきておりますが、これらと重ね合わせながら、生産が持続していくように、当面二万トンから十六年目には三万一千トン、この範囲にとどめるということを決めておるわけであります。

 ハード系はハード系で、十六年目まで長期の関税撤廃期間を確保しております。

 また、バター、脱脂粉乳等におきましては、国家貿易制度を維持して、追加輸入量の範囲内、すなわち需要の範囲内で関税割当てを設定をしております。

 ホエーも関税削減にとどめたところでありますが、こういった中で、チーズやホエーの関税撤廃によりまして、長期的には乳製品向けの価格下落が懸念をされるところであります。

 このため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきましてさまざまの国内対策を講じていく、このことによりまして万全の対策を講じていくということにしているところであります。

 これらを踏まえまして試算をしましたところ、関税削減等の影響で、価格低下により約百三十四億円から二百三億円の生産額の減少が見込まれるものでありますが、国内対策によりまして、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量は維持されると見込んだところであります。

穀田委員 相変わらず、生産が持続するということと、金科玉条のごとく、百三十四億円という話をしているだけなんですよね。

 そして、あと言うのは、総合的なTPP等関連政策大綱、これですよね、これを一生懸命言う。

 この間の答弁でも、この内容について、大臣は三回も使うわけですよ、同じ答弁をね。例えば、チーズの問題についての生産額の減少について、万全の体制を、これでやるんだと。それから、農林漁業者の不安や懸念、これをこのTPP等関連政策大綱でやるんだと。それから、小規模・家族農業の、そういう問題についての懸念、これもTPP関連政策大綱に基づいて、万全のと。このフレーズを三回使うわけですよね。

 こんな話をして、本当に懸念がなくなるのかという問題なんですよね。本協定によって、長期的には、競合する国産品の価格が下落し、生産額の減少が見込まれる。生産を維持すると言っているんだけれども、生産額は減少が見込まれる、こう言っているんですよ。そこに、全国の酪農家からの先行きへの不安や危惧が広がっているわけですよ。実際の方々の不安をしっかりつかまなければいけませんよ。

 EUは農産物の輸出に強みがあって、チーズでは、世界の生産量の約半分を占め、ブランド力と価格優位性があります。本協定によってEUから安い輸入品が大量に流入すれば、国産品の値崩れなどの事態も生じ、弱体化している酪農、畜産に追い打ちをかけることは明らかではないでしょうか。それはどうお考えですか。

小里副大臣 酪農、畜産全体についてのお尋ねでありますが、酪農、畜産分野における日・EU・EPAの合意結果におきましては、関税撤廃の例外をしっかり確保いたしまして、国家貿易制度、関税割当ての維持、セーフガードの確保、長期の関税削減期間などの有効な措置を獲得をしているところであります。

 それでもなお残る酪農家、畜産農家の不安を受けとめて、安心して再生産に取り組んでいただけるように、平成二十九年十一月に改定された総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、万全の対策を講じていくとしているところであります。

 具体的には、牛肉、豚肉につきましては、いわゆるクラスター事業等による省力化機械の導入等の体質強化策、牛・豚マルキンの補填割合を八割から九割に引き上げる等の充実を行いまして、また同時に、牛乳・乳製品については、生産コストの削減や品質向上など収益力、基盤強化を進めるとともに、加工原料乳生産者補給金制度の充実を協定発効に先立つ平成二十九年度に実施をすること等によりまして、対策を講じていくこととしておるところであります。

 こういったことで、関税削減等の影響で価格低下が見込まれますけれども、コスト削減、あるいは品質を向上させていくことによりまして、引き続き生産や農家所得が確保され、生産量は維持されると見込んだところであります。

穀田委員 今のお話は、結局、この総合的なTPP等関連政策大綱の部分をずっと読んでいるだけなんですよ、簡単に言うと。だから、何か目新しい話をして、私が質問したことに対して答えているわけじゃないんですよね。

 今もお話ありましたけれども、それは、ポンチ絵で出ています内容をずっと説明しただけなんですよ、ある意味じゃね。これとこれがセットなんですよね。

 それで、そこでいうと、私、よう見なあかんと思うんだけれども、結局、対策本部のこの大綱というのは、その内容が問題なんですね。それは、大型機械の導入による機械化、そして大区画化の設備規模の拡大、そして今お話ありましたように、原料面での、原料乳の低コストなどによる生産コストの削減などを迫るものでしかないわけで、そこは言ったとおりなんですよ。それを少し言いかえますと、そういうことなんですよね。

 それはちゃんとこのパンフレットに、そういう絵柄もつけまして、それで大型機械を書き、そして大区画化の幅を書き、草の問題でも大きくするんだと書き、そして原料面で低コストでやるんだというだけなんですよね。そして、今お話あったように、畜産農家の損失補填の割合を八割から九割に引き上げるということ。大体この三つなんですよね。だけれども、それは、これまで何度も繰り返されてきた農業振興策と本質的に変わらない。

 その結果、じゃ、どうだったかということについてお聞きしましょう。

 農水省がことし七月に公表した畜産統計によれば、乳用牛の飼育頭数は、ピークである一九八五年の二百十一万頭から本年は百三十二万頭まで減っています。酪農家も、八五年の八万二千戸から本年は一万五千七百戸に減少しています。こうした現状がつくられているわけですね。

 結果として、この十数年来、二十数年来やってきたという話が、全然、がたがたになっているじゃないかという現状について、どう認識されていますか。

小里副大臣 確かに生産量は減ってきているところであります。

 一方で、それぞれの畜産農家が創意工夫をしながら努力をして、規模を拡大しながら非常にいい経営をやってきているというのも目の当たりにするところでありまして、週末ごとに農業、農村、畜産農家を回っておりますけれども、例えば、親子二代、三代、現役で、非常にいい経営をやっている、そういう姿も見受けられるところでありまして、こういう畜産であればやってみようと思うようなモデル的な経営の姿が見え始めているな、そういう実感も持つところでありまして、しっかり理想を目指して国内対策また経営育成に励んでまいりたいと思っております。

穀田委員 副大臣、安倍さんと同じように、自分の都合のいいところを持ってきてやっている話をしているんじゃないんですよ。全体としてこれだけ大きく減っているじゃないか、大変な実情を抱えているじゃないか。そんなのはみんな、創意工夫してやっている。その御努力に対して我々が敬意を払っていないということはないんですよ。そういう努力があるからこそ、今、もっているわけですやん。

 その方々の努力さえも無駄にする。そして、その方向はといえば、結局、機械化と大型化とコスト低減ということになるじゃないか。そう言っているんだから、あなた方はこれで。まさにそういう努力、創意工夫とは違う方向にやっているじゃないか、その結果が、この一九八五年から今日までの下落が起きているじゃないかという話をしているわけですよね。そこを見てとらなあきまへんで。

 農水省がことし八月に公表した平成二十九年度食料自給率・食料自給力指標によれば、二〇一七年度の日本の食料自給率は三八%まで下落しています。米の凶作でタイ米を緊急輸入した一九九三年度の三七%に次ぐ、史上二番目の低さであります。

 食料自給率は、国内の食料消費が国内の農業生産でどの程度賄えているのかを示す指標ですが、国民の食料の六割以上が外国頼みというのは、国の存立、食の安定供給の土台を揺るがす事態ではないかと思うんですが、いかがですか。

小里副大臣 食料安全保障の基本的な指針として、食料自給率をしっかり確保していく、これは農政が心がけるべき一番の課題であると認識をしております。

 御案内のとおり、平成三十七年度に食料自給率をカロリーベースで四五%、生産額ベースで七三%に引き上げる目標を設定して取り組んできたところでございますけれども、直近の食料自給率は、カロリーベースで三八%、生産額ベースで六五%となっているところであります。

 今後、これまでの経緯をしっかり検証しながら、しっかりと対策を急いでまいりたいと思います。すなわち、国産農産物の消費拡大、食育の推進、消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大や飼料用米の推進、付加価値の高い農産物の生産、販売や輸出の促進、優良農地の確保、担い手の育成の推進といった各般の施策をしっかりと計画的に講じてまいりたいと思います。

穀田委員 今六十数%の話が出ましたけれども、それは飼料を除いた数値で、国際的にも最も広く用いられている、飼料を含む日本の穀物自給率は、近年、二八%前後で推移しているのが実情なんですよね。恐るべき事態なんですね。

 私は、食料自給率が、さっき三八%と言いましたけれども、下落した要因について、農水省の資料は、畜産物の需要増に対応して国産品が増加したものの、輸入品がより増加したことを挙げています。つまり、農産物の輸入拡大が生産基盤を弱体化させていることを物語っているということだと、これはそちら側も認めていることなんですね。

 各国の食料自給率を見ますと、アメリカは一三〇%、フランス一二七、ドイツ九五、イギリス六三などとなっていますが、日本は先進国の中で最低水準にあります。先ほど言いましたけれども、基礎食料である穀物の日本の自給率は二八%にすぎず、人口一億以上の国で三割を割る国は日本だけなんです。

 政府は、先ほど述べたように、一五年の食料・農業基本計画、先ほど副大臣言っていましたけれども、二五年までに自給率を四五%に引き上げると言うけれども、目標に遠く及ばないのが実際ではないですか。まさにそのとおりですわね。

 日本の食料自給率は、一九六五年度には七三%の水準にありました。それが今や、安倍内閣のもとで三八%にまで下落している。一九六一年には六百九万ヘクタールあった農地も、二〇一七年度には四百四十四万ヘクタールへと、七割も減っている。基幹的農業従事者も、二〇一〇年の二百五万人から、ことしの概算で百四十五万人まで減り、うち六十五歳以上が八割、百二十万を占める状況になっています。

 安倍内閣は、口を開けば攻めの農業などといって大規模化や効率化を強いているけれども、これでは、農業の担い手が更に減り、条件の不利な農地が切り捨てられ、国内の自給力は弱体化する一方じゃないかと思っています。

 そこで、欧米などでは、輸入規制とあわせて価格保障や所得補償制度を充実させています。イギリスでは、二度の大戦で深刻な食料不足に陥った経験から、国を挙げて農業生産の回復、自給率の向上に取り組んでいます。

 一方、日本は、農産物の輸入自由化政策で安い外国産との過酷な競争に農業をさらし続け、画一的な大規模化やコスト削減を迫っている。こんなやり方では生産基盤の崩壊を招くばかりと違うかと思うんですが、いかがですか。

小里副大臣 今、農政におきましては、これまでの反省も踏まえまして、生産拡大、規模拡大、輸出の拡大等々を進めているところであります。

 一方で、また、条件不利な地域、中山間地域のような、競争原理だけでは成り立ちにくい農業があるのも事実であります。そういったところは、また中山間地向けにルネッサンス事業ということで、中山間地払い制度を始め、いわゆる多面的機能支払いを中心にしながら、地域全体をしっかり守っていこうということで、また新たな取組も進めているところでございます。

 強いところ、弱いところ、しっかり踏まえながら、攻めるべきを攻め、守るべきを守って、大事な農業、農村を将来へつなげてまいりたい、そんなふうに思います。

穀田委員 これまでの反省と言いながら、結局、ずっと続けているやり方は大型化、コスト削減。つまり、攻めるところは攻めるじゃなくて、壊しに壊し続けてきたというのがこの農政のあり方だったと思います。

 そこで、農産物の価格保障は、農業に、凶作もあれば豊作もある、そういう変動は、価格の乱高下が避けられない中で、農業者に再生産を保障し、食料自給率を向上させる基礎的な条件だと思います。それゆえに、アメリカでさえ、主な農産物に生産費を農家に補償する仕組みを二重、三重に設けています。

 欧米のような農業支援策もないまま競争にさらすのではなくて、私はあなた方と反対で、小規模化、家族農業の役割を再評価し、農業政策の基本に据えることこそ行うべきだと考えています。

 そこで、最後に、河野大臣にお聞きします。

 国連では、二〇一二年を国際協同組合年に、二〇一四年を国際家族農業年に設定し、食料問題の解決と地域社会の安定にとって協同組合や家族農業が不可欠として、その役割を高く評価し、支援することを世界に呼びかけました。そして、昨年十二月には、二〇一九年から二八年を家族農業の十年とする議案を全会一致で採択しています。

 家族農業の十年は、二〇一四年の国際家族農業年を十年間延長し、家族農業を各国の農業政策の中心に位置づけるために設定されたと思うんですが、そういうことでよろしゅうございますか。

河野国務大臣 この国連総会において採択された家族農業の十年というものは、二〇一九年から二〇二八年までの十年間を家族農業の十年と定め、各国が家族農業に関する施策を進めるとともに、その経験を他国と共有すること、また、国連食糧農業機関、FAOなどの関連国際機関が関連事業などを展開することなどを求めるものであると承知をしております。

 世界の飢餓人口が増加傾向にある中、家族農業が果たす役割の重要性について国際社会で認識を共有することは、持続可能な開発目標、SDGsの目標の一つである飢餓撲滅の達成のためにも大変意義深いものと思っております。

穀田委員 まことに意義深いものだということが言われました。

 そこで、家族農業は農業労働力の過半を家族労働力で賄う農業と定義しています。家族農業は基本的に小規模経営で、雇用労働力に依存する大規模な農業とは正反対の定義なんですね。私はこれを言いたいわけですよ。

 家族農業の十年というのは、小規模・家族農業の今お話があったような重要な役割を認識し、国際社会に呼びかけているわけですが、実は、日本も共同提案に加わっているわけですよね。それはよく御存じですよね。共同提案に加わっているわけですから、決議の実行に責任があると言わなければなりません。

 したがって、そこの中でいいますと、今政府に求められているのは、食料の外国依存をますます深めるEPAやTPPによる輸入自由化や競争力一辺倒のやり方ではなくて、小規模・家族農業の重要な役割を今大臣がお示ししたように認識し、支援することだと考えています。

 土地の生産性は小規模農業が高いとか、決議では、家族農業が歴史的、文化的、自然遺産の責任と保全ということも考えておるようです。そういう立場から、私たちは、その立場に立って農産物を安心して食べ続けられる農政に転換すること、そのことを要求して、質問を終わります。

若宮委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳です。

 EPA、SPAの質問に入る前に、まず、先般はG20の外相会合を愛知県でというお礼を申し上げましたけれども、このたび、万国博覧会が大阪・関西ということの決定を見たというニュースが流れ込んできた中で、和装、着物を着た方が映像に映っているのを拝見いたしました。財務金融委員会等で御一緒させていただいた、現在副大臣のあべ俊子代議士が、先般、二十日から二十四日までフランスに御出張されていたということを確認しているわけでございますけれども、ちょっと確認事項というかで恐縮ですが、BIE総会出席の内容、あるいは成果、あるいはこんな雰囲気であったとか、そんなところを御開陳いただければありがたく存じます。

あべ副大臣 杉本委員にお答えいたします。

 今回のBIEの総会におきまして、二〇二五年の国際博覧会の開催国の選挙が実施されたところでございまして、ロシア、アゼルバイジャンと競った我が国が開催国に選出されたところでございまして、二〇二五年の大阪・関西における万博開催が決定されたところでございます。

 委員がおっしゃるとおり、私、和装をしておりまして、キティの和装と並んで和装していたわけでございますが、今回、私がその総会に先立ちましてパリに入らせていただいたところでございますが、これはやはり、何といいましても、厳しい選挙になるということを私ども本当に覚悟しておりまして、世耕大臣、また榊原経団連の名誉会長を会長とする誘致委員会のメンバーと手分けをいたしまして、この選挙におきましての実際の一票を投じる各国のBIEの政府代表に対しまして、最後の最後の最後の働きかけを行いに行ったわけでございます。

 このキーパーソンに対する働きかけ、特に、日本支持の立場を確実に投票につなげていくということが本当にされないと今回の選挙は厳しかったわけでございまして、このすばらしい成果の一助に、皆さん方、大阪の知事始め市長また政府一丸となって頑張らせていただきまして、また最後に、外務省といたしましては、在外公館も通し約百七十カ国のBIEメンバーの政府また経済界の関係者、また在京における大使館の方々にもあらゆる手段を通じて働きかけを行いまして、この成果を出させていただきまして、心から感謝申し上げます。

 以上でございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 選挙に強くない私の立場で、選挙に強いあべ代議士から、本当に一票一票をとるというのは、直近伺っていた情報では、競合相手国の方々がいろいろなサービスを提示されているやに伺いましたので、本当に一票の重さというのは我々は十分知っているわけでありますけれども、その中でかち取っていただいたことに敬意と感謝を申し上げたく存じます。

 あとは、二〇二五年という、二〇二〇年のオリパラの先の二〇二五年は、皆さん御案内のとおり、二〇二五年問題ということで団塊の世代が後期高齢者になられるというような、我が国にとっては、国内的には大変厳しい状況の中での次のエポックメーキングなイベントということに万博がなるかと思いますので、日本国のことでございますので、皆さんにも御理解、御協力をいただきたいと思います。

 次に、ちょっとまたもう一つだけそれて恐縮なんですけれども、きのう、ヨルダンの国王が安倍総理と会談をされて、それで、外務大臣も同席をされておられる中で、三億ドル、およそ三百四十億円を上限とする有償の資金協力を行うということで合意が見られたということでニュースを聞いておりますが、ザワタリ・キャンプなども私も拝見させていただき、シリアの難民およそ百三十万人を受け入れているという、ヨルダンがいかに中東和平に貢献しているかというのは、大臣が代議士でいらっしゃる、今でも代議士なんですけれども、大臣になられる前に御一緒を、キャンプ等で視察をさせていただいたときにもそれを痛感した状況ですけれども。

 そんな中で、ちょっとこれは委員長にも提案というか御相談で、事前に理事会とかでお諮りするべきことかもしれないんですが、ちょっと先の話で、外務委員会とかで考えられないだろうか、あるいは国会全体で考えられないだろうかということなんです。

 国会質疑では、国会のことは国会でお決めいただくという答えがよく返ってくるんですけれども、ちょっと昔のことを思い起こしますと、また民主党政権のお話をして恐縮ですが、その当時に、ブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王が御夫婦でいらっしゃって、国会で演説をされたということがありました。

 その経験を踏まえて、今般、ヨルダンのアブドラ二世・ビン・アル・フセイン国王が、今回の有償援助の話で来日されているわけではありますけれども、今回は当然難しい日程ということはわかっておるんですけれども、この先、極めて親日的で、お姉様も親日家とかいうふうに伺ってもおりますけれども、ヨルダン国王に、衆議院か参議院かは別としまして、国会で、我々は衆議院なので衆議院でと申し上げたいですけれども、中東和平についてのことを含めて、国会で演説をしていただけないものかなと。それが、我々日本の国会議員、日本のことが大事であるわけでありますけれども、世界のことも考えるこの外務委員会でもありますので、中東和平について議員各位に御認識を深めていただくというような意味からも、国会でのヨルダン国王の演説をお願いしてみてはいかがかというふうに私は考えておるんです。

 外務委員会であり、あるいは国会、衆議院であり、あるいは外務省全体であり、そういった点から、唐突な提案で恐縮ですけれども、そんな方向感は持てないものかどうか。我が国が中東和平に貢献するという意味からも、今後、先の話でありますが、お考えいただく必要が、委員長もでありますが、外務大臣、外務省としていかがなものかということで、急な話でございますけれども、どんな御見解をお持ちか、教えていただければと思います。

河野国務大臣 ヨルダンは、今、多数のシリア難民を受け入れ、中東でのテロあるいは過激主義者への対策にも、国王みずからアカバ・プロセスという会議を主催されて真剣に取り組んでいる、そういう国でございます。中東の中で、アブドラ国王は極めて卓越したリーダーシップを発揮され、我が国にとってもJAIPを一緒にやっている四カ国のパートナーということで、日本にとっても戦略的に極めて重要なパートナーである、そういうヨルダンで類いまれなるリーダーシップを発揮されているアブドラ国王というのは、もう何度も訪日され、極めて親日家でもいらっしゃいます。

 そういう国王に国会で話をしていただくというのは、私的には非常に有益ではないかと思いますが、委員おっしゃいましたように、国会のことでございますし、先方にそのような希望があるかどうかもわかりませんので、もし、ヨルダンのアブドラ国王から国会に対してそのような御希望を示された場合には、ぜひ好意的に考慮していただくようお願いをしたいというふうに思っております。

 これはどのようなプロセスでやるのか、外務省としてはちょっとよく、外務大臣としてよく把握をしていないものですから、理事会でお取り計らいをいただくのかどうか、そこはよくわかりませんが、外務省としては、ぜひ好意的に取り上げていただけたらと思っております。

杉本委員 ありがとうございます。

 あべ副大臣、御公務があれば、委員長、いかがですか、特に私はもう、以上で質問は終わりましたので。どうも、恐縮です。

 このヨルダン、中東和平、ぜひ委員長、御見識を、大島議長にもちょっときょうの話みたいなのを、どういう機会でお伝えいただくかわかりませんし、ブータンの成功例というのをひとつ我々ももう一回調べてみて、どんな形でアプローチをするとそういった中東和平についてのお話をヨルダン国王からいただけるかということは、私もちょっとまた調べてみますので、相談をさせてください。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。いよいよ質問に入ります。

 今回のEPA等について、数年前に私、フィンランドからバルト海をフェリーで渡って、これはプライベートの話で恐縮ですけれども、エストニアのタリンに入りました。フェリーで二時間半ぐらいで行けてしまう距離感でございますけれども、エストニアに入ったら、物価が安いのはありがたいんですけれども、トヨタの車、日産の車を見かけることがほとんどなかった。

 小さなバルト三国の一番北の国でありますので、ドイツ車が縦横無尽に走っているなという印象を受けたのが数年前で、直近は私は確認できていませんけれども、今次協定が我が国自動車業界に与える影響、プラス面、マイナス面等いかなる状況なのか、当局に御回答いただければと思います。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話ございましたエストニアにおきます自動車の販売台数でございますけれども、大体年間約三万台ほどでございます。このうち、トヨタ車でございますけれども、二〇一七年に約四千四百台ということでございまして、シェアでいきますと一四%。日本の国内におきますトヨタのシェアが三割程度でございますので、これに比べますと大分見劣りはいたしますけれども、一応エストニアでは今トップシェアをとっているということでございます。

 続きまして、本協定の効果ということでございますけれども、乗用車につきましては現行税率一〇%の関税が八年目には撤廃をされる、また、自動車部品につきましても九割以上が即時撤廃をされるということでございまして、このような成果によりまして、EU市場におきます日本の完成車メーカーの競争力向上、あるいは自動車部品メーカーにとっての輸出機会の拡大につながるということを期待しているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 それで、今次協定の、次の問題に移らせていただきますが、二十一世紀型のハイレベルなルールという中に、国有企業、補助金という項目で、国有企業というくくりがございます。

 それで、今次問題になっている事案であります、ルノー、日産、ゴーン前会長の問題等ありますけれども、フランス政府が一五%保有しているルノーという会社は、これは国有企業なのではないだろうかなというような単純な考え方をしてしまうんですけれども、ここで言っている協定の中の国有企業というのはどういう定義づけをされておられるのか。イメージとしては、東欧の、昔、共産圏だった国々が持っていた企業がまた引き続き国有的な経営をされているとか、そういうのがあるのかどうかも含めて、ちょっと教えていただければと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の日・EU・EPAでございますけれども、国有企業についての定義規定がございます。国有企業とは、商業活動に従事する企業であって、次の四つのいずれかに該当するもの、こういう定義でございまして、四つの要件、一つ目は株でございまして、締約国が五〇%を超える株式を直接に所有する企業。二つ目は議決権でございまして、締約国が持分を通じて五〇%を超える議決権の行使を直接又は間接に支配している企業。三つ目は役員の任命権でございまして、締約国が取締役会その他これに相当する経営体の構成員の過半数を任命する権限を有する企業。最後、四つ目として法的な関係がございまして、締約国が当該企業の活動について法的に指示する権限を有し、又は自国の法令に従って同程度に支配している企業。こういう四つの要件があるわけでございます。

 御指摘のルノーでございますが、今、株式について一五%という御指摘がございました。こういった公開情報等をもとに判断いたしますれば、この協定で言う国有企業には該当しないと解しております。

 ちなみに、欧州委員会貿易総局に確認いたしましたところ、EU側としても国有企業には該当しないと解釈しているという説明を受けているところでございます。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 今回、ルノーと対象になっている日産なんですけれども、日産もそもそも日本発祥の企業なんですけれども、ルノーが四三・四%の株を持っていて、外国人株式保有比率が六三%、解任前の状況で、取締役九人のうち四人が外国人、日産の世界生産台数は五百六十七万台、うち日本で九十九万台、生産比率は一七%というような状況で、日産について今申し上げましたけれども、日産、我が国発祥の企業であり、日本に雇用をそれなりに抱えているとは思いますけれども、なかなか、この企業体というのがやはりグローバルに展開しているという中で、国というものがいかにかかわるかというのは難しいなというふうに私は率直に思っております。

 そんな中で、ちょっと確認なんですけれども、ルノーの場合は、フロランジュ法というフランスの法によって、今おっしゃっていただいた議決権が株式保有二年以上で二倍になるといった点があるようなんですけれども、この点は十分外務省としては認識されておられるのかどうか、あるいは、私の認識にちょっと誤りがあったりするのかどうか。

 そして、今次交渉というか、日産とルノーあるいは三菱の状況を我々は冷静に見ていくしかないとは思いますけれども、どんな形でごらんになっておられるか、確認をさせていただければと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘のフロランジュ法については、委員御指摘の認識が政府の認識と一致しておるところでございます。

 政府といたしましては、日仏産業協力の成功の象徴である現在の日産、ルノー、三菱の間のアライアンスが安定的な関係を維持していくことは重要であると考えております。

 十一月二十二日、パリで会談を行った世耕経済産業大臣とルメール・フランス経済財務大臣との間でも、両国政府が、日産、ルノーのアライアンスそのものに対して、また、協力関係を維持していくという当事者の共通の意思に対して強力にサポートすることを再確認したと承知しております。

杉本委員 次に、ちょっと、今次協定発効に伴う、伴わないにかかわらずなんですが、この間、財務金融委員会で、私は、日本のいわゆる国力の低下に伴って、金融不安的なところができるだけ起きないようにしていくにはどうしたらいいだろうかというようなことをちょっと勝手に言わせていただく中で、国債マーケットについては何らかの持ちこたえができるけれども、為替マーケットについてはなかなか耐えるのがしんどいのではないか、それによって、急激か急激じゃないかは別として円安のリスクというのを考えておく必要があって、政府の外貨保有についてしっかりと持っておく必要があるのではないかということをちょっと質問したんです。

 改めてになるかもしれませんが、今次対象国となる国の通貨であるユーロ、このユーロの外貨準備の状況と今後の展望を確認させていただければと思います。

大矢政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の外貨準備についてお尋ねがございました。

 日本の外貨準備は、本年十月末時点で一兆二千五百二十九億ドルになっております。これは基本的には、過去に為替介入、これは主として外貨買い・円売りの介入を行ってきた結果、積み上がってきたものではございますが、将来の逆方向の為替介入、外貨売り・円買い等に備えまして保有しているものであります。

 一般論として申し上げれば、市場に急激かつ過大な変動が生じた場合に自国通貨を買い支えるために十分な額の外貨準備を保有しておくことは重要である、かように考えております。

 個別通貨の内訳につきましては、市場に不測の影響を及ぼすおそれがありますので、差し控えさせていただければと思います。

杉本委員 ちょっと時間となってしまいましたけれども、きょうは、ジオグラフィック・インディケーションという知財の農業分野等の質問もしたかったんですけれども、一つだけ。

 愛知発祥の八丁みそ、これが、歴史と伝統の工法の企業がちょっとはじかれて、そうじゃない企業群がGIをもらって、そして今次対象になっているみたいなことがありますので、このGIというものの定義についても我が国とEUとよくすり合わせをしていく必要があるのではないかなということを提起申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 以上であります。

若宮委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 よろしくお願いします。希望の党の井上一徳です。

 本日は、日欧EPA、それから日欧SPA、これについて質問をさせていただきたいと思います。

 日欧EPA、これは経済面での連携を強化していく、それから日欧SPA、これは政治面での連携を強化していくということで理解しております。特に、この日欧SPA、民主主義、それから法の支配、人権及び基本的自由という価値及び権利の擁護、これを基礎にしているというふうに理解しております。

 この日欧EPA、日欧SPA、ともに、二〇一三年四月以降に同時に交渉して、同時に締結したということでありますけれども、同時に進め、同時に締結した意義、これについて外務大臣はどのように評価されているんでしょうか。

河野国務大臣 EUは、経済、貿易面のみならず、共通外交・安全保障政策などの広範な協力を進める政治経済の統合体でございます。

 EUは、第三国との関係強化のため、政治分野におけるSPA又はそれと同様の国際約束と、経済分野におけるEPAやFTAを並行して交渉し、その締結を目指してきているわけでございます。

 日本としましても、価値及び原則を共有するEUと将来にわたる戦略的パートナーシップを強化するため、経済、貿易分野に加えて地球規模課題を含む幅広い分野で協力をEUと強化していくことが国益に資すると考えております。

 今後、日・EU・SPA、EPAを、日本とEU及びEUの構成国との間の協力の両輪として、日・EU関係のみならず、地球規模課題への取組においても一層連携を強化してまいりたいと思っております。

井上(一)委員 私も、やはり日本とEU、共通の価値観を有しておりますので、その日本とEUが一緒に自由貿易を推進して、そして、世界では保護主義的な動きが高まっている中で、日本、EUが自由貿易の主導的な役割を果たしていく、非常に重要なことで、戦略的にも意義のあることだというふうに私も思っております。

 それでは、地理的表示、GIについてちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 GIといいますのは、地理的原産地を示して、知的財産の一つとして保護していく。例えば、日本では夕張メロンとか神戸ビーフとか、EUだったらスコッチウイスキーとかゴルゴンゾーラチーズとか、そういうものでありますけれども、このGIの中で、私の地元、京都北部で万願寺甘とうというものをつくっておりまして、舞鶴、綾部、福知山、ここで生産が盛んなんです。トウガラシを更に大きくして、辛くなくて、全く甘いトウガラシなんですけれども、非常に人気があって、私もこれがGIで定められたというのは非常にうれしく思っておるんです。

 今回、具体的な品目を含めて、日本側で五十六品目、EU側で二百十品目、こういうような具体的な品目を定めてこのGIが定められているわけですけれども、この趣旨について御説明いただきたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 このEPAの交渉におきましては、委員御指摘の地理的表示の分野につきまして、日本側、EU側、相互の関心を踏まえまして、包括的で高いレベルの内容を目指しまして交渉を行った次第でございます。その結果、GI、地理的表示を保護するための保護基準や手続を確認し、農産品及び酒類のGIについて高いレベルでの相互保護を実現する内容とすることができたと考えております。

 先ほど、五十六件という御指摘を委員からいただきました。この協定の発効に伴いまして、日本側においては五十六件のGIがEUにおいても保護されることとなります。EU側の関税撤廃とあわせまして、EU市場というのは五億人を超える大きなマーケットでございますので、そういった大きな市場への日本産の農産品そして酒類の輸出促進に向けた環境を整備できたのではないかと考えております。

井上(一)委員 ありがとうございました。

 GIで定められたということで、具体的にこの日欧EPAのGIで保護されたことによる効果というんですかね、どういうようなメリットがあるのか、御説明いただきたいと思います。

倉重政府参考人 お答えいたします。

 GI登録の効果についての御質問でございますけれども、一般的に、模倣品が排除されるということがございます。また、国内における生産量の拡大や当該産品についての価格の上昇、あとは担い手の増加といったようなものが挙げられるところでございます。

井上(一)委員 これは、GIで地理的表示を示すことによってブランド価値も高まってくるというふうに思いますけれども、農水省としても農林水産物の輸出拡大に力を入れているというふうに承知はしております。先ほどの私の地元の万願寺甘とうを始め、日本の農産物をどのように輸出促進につなげていくのか、お考えを聞かせてください。

倉重政府参考人 お答えいたします。

 まず、日・EU・EPAに関することでございますけれども、このEPAが発効いたしますれば、EUにおきまして、先生御指摘の万願寺甘とうを含む日本の四十八のGI農産品の名称が、農林水産物の名称が保護されることになりますため、EUにおいて我が国GI産品の模倣品の排除が進んで、輸出機会の拡大につながると考えております。

 また、我が国のGI産品の輸出拡大のためには、我が国のGI産品が海外の消費者に認識をされるということが重要だと考えておりまして、海外における我が国のGI産品のPR活動を支援しているところでございます。

井上(一)委員 ぜひ、いろいろ農林水産物の輸出促進に今後とも努力していっていただきたいというふうに思います。

 最後の質問になりますけれども、GIで保護される品目、日本側が五十六品目、EU側が二百十品目というふうになっております。日本側の五十六品目のうち四十八品目が農産物で、EU側の二百十品目のうちの七十一品目が農産品です。これからも交渉で品目の数は増加していくというふうに聞いておりますけれども、今後どのような形でこの日本側品目の増加をしていくのかお聞きして、最後にしたいと思います。

倉重政府参考人 お答えいたします。

 EUにおきましては、このGI制度が確立されて非常に歴史が長うございます。これまでに、農産品でございますけれども、千三百以上の産品が保護されているというところでございますが、我が国のGI法は平成二十七年の六月から運用を開始したばかりでございまして、登録数もまだ六十九ということでございます。

 我が国としては、現在、三十六の道府県でGIが登録されているところでありますが、今後、平成三十一年度末までに、全ての都道府県で少なくとも一つのGIが登録されることをまずは目指しておりまして、今後一層、制度の普及、浸透に努めてまいりたいと考えておりますし、同時に、これらの追加登録されたGI産品につきまして、EUでの相互保護が受けられるように、生産者団体の意向を確認しつつでございますが、積極的にEU側との協議を進めてまいりたいと考えております。

 以上です。

井上(一)委員 では、終わります。

若宮委員長 これにて両件に対する質疑は終局をいたしました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。寺田学君。

寺田(学)委員 立憲民主党・市民クラブを代表して、日・EU・EPAに反対、日・EU・SPAに賛成の立場から討論をします。

 冒頭、両協定の委員会審議につき、趣旨説明から質疑、採決まで全てが委員長の職権で行われたことに関して抗議をいたします。

 まず、EUは日本にとって最も重要な地域の一つであり、そのEUと経済的な連携を深めていくことについては賛同しております。また、一般論として、EPAを含む経済連携協定の類いは、全て自国の要求どおりになることは皆無であり、両国の利益をぶつけ合いながら、交渉の結果として、双方にとって、かち取るところ、譲るところが折り合って妥結することも承知をしております。

 したがって、今回の日・EU・EPAが、EUにおける自動車等の工業製品の関税撤廃をかち取るかわりに乳製品を始めとした農林水産分野の関税を譲ったことだけをもって、本EPAを否定するつもりはありません。

 しかし、本EPAによる農林水産分野への影響額の試算は見通しが甘く、そして、その影響を最小化するための国内政策が不透明かつ不十分であることは事実です。

 例えば、政府の試算では、対策を講じた上でも農林水産物の生産額が価格の低下により最大で約一千百億円減少するものの、生産コストの低減や品質向上で国内生産量への影響はゼロとしています。その上、経営安定対策をもって農家所得は確保されると説明しています。全くもって、見通しが甘いと言わざるを得ません。

 中でも、牛乳・乳製品は、百三十四億円から二百三億円、生産額が減少するとされ、これらの影響のほぼ全てを北海道が受けることになります。しかし、何らの納得のいく具体的な対応策が提示されているわけではありません。具体的な説明がないまま、国内対策によって農家の所得が維持され、生産量も維持されるとだけ説明を受けても、生産者の不安を払拭することはできません。

 年内に発効される予定であるTPP11では、農林水産物の生産額が最大で約一千五百億円の影響を受けるとも言われ、本EPAと合わせて農林水産分野に与えるインパクトは相当なものとなります。

 以上述べたとおり、本EPAによる影響額の試算は見通しが甘く、そして、その影響を最小化するための国内対策が不透明かつ不十分であることが明らかであるゆえに、そのような状態では日・EU・EPAに賛成できないことを表明して、討論とさせていただきます。(拍手)

若宮委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日・EU経済連携協定及び日・EU戦略パートナーシップ協定に反対の立場から討論を行います。

 両協定は、農林水産、経済産業分野を始め、国民生活のなりわいに深くかかわるものであり、我が党は、関係委員会との連合審査と参考人の意見聴取を強く求めてきました。にもかかわらず、わずか一回、四時間余りの委員会審議で採決するなど、到底認められません。

 日・EU経済連携協定は、自由貿易の旗手を標榜する安倍政権が、成長戦略の重要な柱、アベノミクスの新しいエンジンと位置づける、過去最大級の自由化となる広域連携協定であり、海外の成長市場の活力を取り込むとして、牛乳・乳製品など農林水産分野でTPP水準を上回る譲歩を行うなど、多国籍企業の利益を最優先し、際限のない市場開放を推進するものであります。

 本協定によってEUから安い輸入品が大量に流入すれば、国産品の値崩れなどの事態を招き、酪農、畜産が大打撃を受けることは明らかです。

 政府は、体質強化や経営安定化などの国内対策を講じることで、農家の所得は確保され、国内生産量も維持されるとしていますが、その内容は、生産コストの削減や大規模化を画一的に迫るものであり、小規模農業経営の切捨て、食料自給率の一層の下落を招くことは必至です。

 二〇一五年に発効した日豪EPAは、日本が他国の協定で特恵的な市場アクセスを認めた際は、豪州に対しても同等の待遇を与えるための見直し規定が置かれています。本協定で日本がTPP水準を上回る譲歩をEUに行うことは、豪州からもさらなる市場開放を迫られかねないなど、対EUにとどまらない譲歩の連鎖を引き起こすことは明らかです。

 日・EU戦略パートナーシップ協定は、テロ対策や宇宙空間など四十分野にわたる協力を促進するとしながらも、その具体的内容は今後の検討に委ねられています。

 この十年、日本とEUは、ソマリア沖の海賊対処活動での自衛隊と欧州各国軍との連携や防衛装備品協力など、安全保障分野での関係を深めてきました。政府の国家安全保障戦略は、EUとの関係を、NATOとともに更に強化していく方針を打ち出しており、こうした経緯を見るならば、本協定が、EUとの軍事関連分野での協力を進めるための法的枠組みの一つと言っても過言ではありません。

 以上を指摘し、反対の討論とします。

若宮委員長 これにて討論は終局をいたしました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより採決に入ります。

 まず、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

若宮委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

若宮委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

若宮委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会


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