衆議院

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第7号 平成31年4月12日(金曜日)

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平成三十一年四月十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 若宮 健嗣君

   理事 小野寺五典君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 武井 俊輔君

   理事 堀井  学君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      杉田 水脈君    鈴木 憲和君

      鈴木 隼人君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    宮澤 博行君

      山田 賢司君    岡田 克也君

      櫻井  周君    山川百合子君

      青山 大人君    源馬謙太郎君

      高木 陽介君    穀田 恵二君

      宮本  徹君    杉本 和巳君

      玄葉光一郎君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   外務副大臣        あべ 俊子君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 塚田 玉樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 桑原  進君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 齋田 伸一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       渡邊 厚夫君

   政府参考人

   (国土交通省航空局航空ネットワーク部長)     久保田雅晴君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 森田 治男君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 石川  武君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     宮澤 博行君

  中山 泰秀君     谷川 とむ君

  青山 大人君     源馬謙太郎君

  穀田 恵二君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  谷川 とむ君     中山 泰秀君

  宮澤 博行君     斎藤 洋明君

  源馬謙太郎君     青山 大人君

  宮本  徹君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     辻  清人君

    ―――――――――――――

四月十一日

 中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

若宮委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長下川眞樹太君、大臣官房審議官塚田玉樹君、大臣官房審議官桑原進君、大臣官房参事官長岡寛介君、大臣官房参事官安藤俊英君、大臣官房参事官宇山秀樹君、大臣官房参事官齋田伸一君、北米局長鈴木量博君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、農林水産省大臣官房輸出促進審議官渡邊厚夫君、国土交通省航空局航空ネットワーク部長久保田雅晴君、防衛省大臣官房審議官森田治男君、防衛政策局次長石川武君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。佐々木紀君。

佐々木(紀)委員 おはようございます。自由民主党の佐々木紀でございます。

 時間も限られておりますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 通告をしていないんですけれども、けさの新聞報道に、韓国の水産物の輸入規制、日本が逆転敗訴、WTO最終審とありましたけれども、この記事を受けて、外務省に事実関係及び日本政府の今後の対応についてお伺いしたいと思います。

あべ副大臣 佐々木委員にお答えいたします。

 まさにこの問題に関しまして、今、河野大臣が在京の韓国大使に本件の申入れを行っているところでもございます。

 今般のWTOの上級委員会、我が国が韓国に対して申立てを行っていた、韓国による日本の農産物の輸入規制に対しましての報告書を公表したところでございます。

 報告書におきまして、上級委員会は、本件の措置がWTOに非整合性であると認定したパネルの報告書判断に瑕疵があるとして取り消したところでございます。

 韓国の措置が協定に整合性があると認められたわけではないけれども、我が国の主張が認められなかったことに関しましてはまことに遺憾でございます。

 他方で、上級委員会は、韓国が輸入制限措置を強化した際の手続に瑕疵があったことについては、パネルの判断を支持いたしまして、WTOに非整合的であるとの判断をしたことに関しましては評価をしているところでございます。

 我が国といたしましては、上級委員会報告書の内容を分析し、今後の対応を検討していきます。

 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、韓国に対して規制措置全体の撤廃を求めるという立場に変わりはなく、上級委員会の今回の報告書を踏まえまして、韓国との協議を通じまして、措置の撤廃、緩和を求めていくところでございます。

 日本産の農林水産物及び食品に対して輸入規制措置を継続している国、地域に対しても、同様にそうした措置の撤廃、緩和を求めているところでございます。

 以上でございます。

佐々木(紀)委員 今ほどの御答弁では、韓国の措置が協定に整合的であると認められたわけではないというものの、我が国の主張も認められなかったということでございます。

 何となく曖昧な形になっておるわけでありますけれども、トータルで見れば、韓国にとっては輸入規制が継続をしていくということになろうかというふうに思います。

 これは、やはり日本政府としてもきっちり、こういう結果が出たとしても、強く規制の撤廃を求めていくべきだと思いますし、この審議過程においても、余りにも当たり前過ぎて、当然日本が勝つだろうというような少し油断もあったのではないかなというふうに思いますので、そういうことのないように、しっかりと結果を得るまで最大限の努力を続けるということをお約束をしたいというふうに思います。

 それで、同様に、韓国に対して、本当にこれはいろいろ今続いております。例えば、おとといの新聞にも、日本大使館の建てかえ宙に浮く、韓国、建築許可取消しみたいな、こういう記事まで出ているわけなんです。これは、韓国メディアは、日本は大使館新築を事実上放棄したと報じていたりとか、大使館前の慰安婦を象徴する少女像問題などで不満を表明したからだというふうに書いてあるわけなんです。

 この辺についても、事実関係等、日本政府の今後の対応についてお伺いしたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 在韓国日本国大使館の建設のために、二〇一五年三月に現地の鍾路区から建築許可を取得しておりましたが、検討、調整を重ねる中で、建築許可の期限となります二〇一七年、これは二年前でございますが、三月までに着工に至らず、その時点で当該建築許可は失効したということでございます。その後、年末から本年三月にかけまして、鍾路区から改めて建築許可取消しの連絡があったことは事実でございます。

 いずれにしましても、今後どうするかということにつきましては検討、調整中でございます。

佐々木(紀)委員 これもやはりちょっと理解に苦しむんですよね。こちらが建てかえしたいのでお願いしますと申請を出しておいて、わかりました、では、建てていいですよと許可をもらって、いろいろ検討しておって期限が来たから、それもちょっと説明としては何か理解に苦しむというか、もし明確にそこに何らかの意思があれば、はっきりと申し上げるべきだと思うんですよね。

 やはり今後、今から少し質疑を続けていきますけれども、元徴用工の訴訟のこともあります、本当に、韓国との問題というのは、やはり毅然と言うべきときに物事を言っていかないと、これはずるずるずるといって結果的に変なことになりますので、ぜひそういった厳しい姿勢で対応することを求めていきたいというふうに思います。

 そこで、続いての新聞記事、新聞記事ばかりで恐縮ですけれども、徴用工訴訟、近く差押申請、こんなような記事も最近多く見かけるわけでございます。元徴用工や元女子勤労挺身隊らが原告の訴訟で、日本企業、三菱重工や新日鉄住金、現の日本製鉄でありますけれども、不二越に対して資産差押えの動きが相次いでおります。

 この確定判決がどのような形で出ているのか、あるいは、資産の差押えの状況について御説明いただきたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、訴訟の状況でございますけれども、韓国大法院は、昨年十月三十日、日本製鉄に対し、慰謝料の支払い等を命じる判決を言い渡しました。また、昨年十一月二十九日には、三菱重工に対して同様の判決を二件言い渡しております。不二越に対する一連の訴訟につきましては、いまだ確定判決は出ておりませんけれども、本年一月十八日、二十三日及び三十日に、それぞれ第二審判決が出された状況と承知しております。

 次に、資産差押えの現状でございます。

 これらの訴訟について、原告側による各日本企業の資産差押えの動きが進んでいると承知しております。

 例えば、日本製鉄につきましては、原告側による資産差押えに関する通知が日本企業側になされております。また、三菱重工につきましても、確定判決に基づく資産差押えが、不二越につきましては、第二審判決に基づく資産差押えの仮執行、これを原告側弁護団がそれぞれ発表しているというふうに承知しております。

佐々木(紀)委員 確定判決が出たのは二社、そして、資産差押えがもう既にされているというのが三社あるということです。

 それに対して、では、日本政府はどのような対応をしてきたのかなというふうに思うんです。繰り返し、韓国政府が日韓請求権協定違反の状態を是正する具体的な措置をとっていないから大変遺憾ですみたいな、こんなことを都度発表しておいでですけれども、やはりそろそろ何らかの対抗措置を考えないといけない時期に来ているのではないか、そのように思うわけでもございます。

 これは本当にこのままの状況ですと、どんどんどんどんこんなような状況が助長されて、どんどん悪化をしていくのではないかなというふうに懸念をされているところでもございます。

 例えば、五日の新聞記事ですけれども、徴用工訴訟、今後も続出とか、元徴用工八件追加提訴、新たに日本コークスも対象、こうなっているんです。つまり、遺憾の意を発表してはいるんだけれども、何の措置もしていないから、どんどんどんどん向こうはちょっと調子に乗っているんじゃないかなというふうに思うんです。

 追加提訴のこの話も、中身を見ると、もう既に確定判決が出た、出たにもかかわらず、また更に同様の原告を探して追加提訴をしているわけなんですよね。今回は遺族まで引っ張り出してきてやっているんです。こんなことをしたら、いつ、どんな形で終わるのか全然見えてこないわけなんですよね。

 したがって、そろそろ対抗措置を講じないと、これはどんどん日本企業に損害というか、これは何も損害は発生していないんじゃないかみたいなことも言う人もいますけれども、決してそうではないですよね。訴訟対応するだけでもこれはリスクですし、資産の差押えももう既にされているわけで、資産を動かせないわけですから、これは事実上もう損害が発生していると言ってもいいんだなというふうに思います。

 そこで、対抗措置をとるべきではないか、あるいは、その対抗措置について検討状況、どのような内容で、いつされるつもりなのか、その辺についてお伺いしたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、旧朝鮮半島出身労働者をめぐる問題につきましては、現在に至るまで、韓国政府が日韓請求権協定違反の状態を是正する具体的な措置をとらず、加えて、原告側による差押えの動きが進んでいることは極めて深刻と考えております。

 我が国といたしましては、韓国による協定違反の状態を解決すべく、韓国政府に対し、協定に基づく協議を要請し、協議に応じるよう重ねて求めているところであり、韓国側は当然誠意を持って協議に応じるものと考えております。

 この協議要請に加えて、どのタイミングで何を行うかといった具体的な内容につきましては、政府内でさまざま検討しているところでありますけれども、我が方の手のうちを明らかにすることになるため、差し控えさせていただきたいと思います。

 それから、議員御指摘のとおり、日本企業の正当な経済活動の保護の観点からも、国際裁判、対抗措置を含め、あらゆる選択肢を視野に入れて適切に対応してまいりたい、このように考えております。

佐々木(紀)委員 もうそろそろその時期が来ていますから、しっかり準備して、速やかに対抗措置をとっていただきたいというふうに思います。

 実際、今回のこの元徴用工の訴訟のことだけじゃなくて、これまでもさまざまなことをやられているわけですよね。竹島に韓国の国会議員がたびたび上陸したりとか、その周辺に海洋調査船を出したりとか、和解・癒やし財団を一方的に解散したり、国際観艦式でのこともございましたし、火器管制レーダーの照射というのもありました。最近は、新札を出すというと、それにまで何かいちゃもんをつけているわけですから、本当にもう暴挙を繰り返しているわけなんです。これは国家間の合意も常識も国際法も全部踏みにじる姿勢ですよ。これは、もう既に僕は機が熟しているというふうに思います。ぜひ、この対抗措置を速やかにとるようにお願いをしたいというふうに思います。

 ですから、先ほどの大使館の話も、何か手続上こんなことになっていますと言っていますけれども、これはやはり明らかに、大使館の前の少女像、これを撤去しない限り、国際儀礼上無礼な状況を改善しないから我々は建設しないんですよと、私はこれははっきり言うべきだと思います。やはり、しっかりその都度その都度言って、対抗措置をとっていかないと、これはずるずるずるずると来ますから、下手すると日本がこれを容認しているみたいな話にまでなってくると、これは本当に困るわけなんです。しっかり国益に基づいた対応をとっていただきたいと思います。

 もうG20もすぐそこまで来ているわけでありますから、韓国の大統領もお越しになるんだというふうに思います。こんな状況で来られるのも、来られる方も本当に、何というか、つらいというか恥ずかしいという状況だと思うので、速やかに対抗措置をとるなりし、この幕引きを図っていただきたい、しっかりと毅然とした対応をしていただきたい、そのように申し上げておきたいというふうに思います。

 G20のことについて少しお伺いしたいというふうに思います。

 G20大阪サミット、あと、きょうからもう七十七日ということでございまして、我が国で行われる首脳会議としては史上最大規模ということでございます。

 G20大阪サミットのホームページを見ましたら、主要テーマというところが準備中というふうになっておるんですけれども、そのテーマについて、各国と調整をしているということだと思いますけれども、検討状況について教えていただきたいと思います。

塚田政府参考人 お答え申し上げます。

 六月のG20大阪サミットにおきましては、主催国として、世界経済の持続的な成長に向けたリーダーシップを発揮していきたいというふうに考えております。

 貿易におきましては、グローバル化によるさまざまな不安や不満、こういったものに向き合いまして、公正なルールを打ち立てるということで自由貿易を推進していく所存でございます。また、データガバナンス、電子商取引に焦点を当てる大阪トラックの開始を提案しまして、WTO改革に新風を吹き込みたいというふうに考えてございます。

 また、それ以外でも、女性のエンパワーメントですとか、あるいはジェンダーの平等、気候変動、海洋プラスチックごみ対策、質の高いインフラ投資、国際保健、こういったテーマを取り上げまして、国際社会における取組をリードしていきたいというふうに考えております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 最近、GAFAとかBATと言われるいわゆるデジタルプラットフォーマー、デジタル多国籍企業の台頭を念頭に、さまざまなことが話し合われるんだろうと思います。自由貿易の推進、データガバナンス、そしてデジタル課税ですね、そういった企業への課税のあり方、あるいは女性活躍、気候変動、そして地球規模課題への貢献、こんなようなことが話し合われるということでございます。

 海洋プラスチックごみの対策についても今触れていただきました。それで、私から申し上げたいのは、この海のごみというのも大事なんですけれども、今後、宇宙ごみ、スペースデブリについても問題になってくるというか、この機会にぜひ世界に発信して、問題提起してはどうかなというふうに思っています。

 御承知のとおり、今、ソサエティー五・〇ということで、宇宙利用が飛躍的にふえてきています。GPSとか通信、放送、観測、気象などの各種衛星、大体三千五百基ぐらい飛んでいるというふうに言われておりますけれども、宇宙利用は日常生活に不可欠な存在でございまして、安定的な宇宙利用の脅威となるのがこのスペースデブリというものであります。これは年々増加しておりまして、十センチ以上のデブリは約二万三千個を超えるとも言われています。JAXAの衛星に対してだけ見ても、毎日三百六十件のアラート、接近があって、年三回から五回、軌道変更して衝突回避オペレーションをとっているということであります。

 これは本当に、今後、衛星活用社会になっていくと、今、コンステレーションといって、数千基の衛星を打ち上げる計画もあるということでございますので、海洋プラスチック同様、このスペースデブリ、宇宙ごみについても大きな問題になってくるだろうというふうに思います。

 日本は、世界に先駆けて、このデブリ除去をする技術、人材、そういったものを、意思を有しています。世界に先駆けて、デブリ除去の実証実験を成功させようということで、今政府挙げて取り組んでいるところでもありますので、G20の場を活用して、このスペースデブリということについて国際的な認知度を上げていくというようなことも含めて、ぜひ発信していただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、スペースデブリの問題は、宇宙空間の安定的利用を確保する観点から極めて重要な課題と認識しており、外務省としても従来から積極的に取り組んでおります。

 例えば、国連の宇宙空間平和利用委員会、この場におきまして、日本の代表団からその加盟国に対して、既に策定されている国連の宇宙ごみ低減ガイドライン、これを各国が徹底的に遵守をするということを呼びかけるとともに、日本の先進的な宇宙ごみ除去の技術や取組についても発信をいたしたところでございます。

 また、先般開催されましたG7ディナール外相会合におきましても、そこの共同コミュニケにおいて、日本が主導する形で、スペースデブリの問題に対処するための協力を奨励するという趣旨の文言が共同コミュニケに入ったところでございます。

 こうした問題意識を踏まえまして、G20大阪サミットにおける宇宙ごみに関する問題についても、G20の議題との関連等にも留意しながら、何ができるか、関係省庁とも連携しながら真剣に検討していきたいと考えております。

 以上でございます。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 ぜひG20で発信をしていただきたいと思いますし、韓国の対応についても、もう既にそのときは来ておりますから、ぜひ毅然とした対応をお願い申し上げて、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 岡田克也です。

 まず、北方領土問題について幾つか質問したいと思います。

 まず、二月十二日の私と総理との予算委員会の質疑の中で、プーチン大統領と総理との二人だけの会談の記録について、総理は、メモ、これは通訳者のメモという意味ですが、メモが残っている以上、公文書になっているというふうに答弁されました。

 通訳者のメモそのものが公文書ということではなくて、通訳者のメモをもとにして作成された会談の記録が公文書として残っているという意味だと私は理解をいたしましたが、そういう理解で、大臣、いいんでしょうか。

河野国務大臣 安倍総理とプーチン大統領のテタテの中での外交上のやりとりにつきましては、外務省の職員である通訳者のメモをもとに記録が作成され、それが行政文書として残っているというふうに承知をしております。

岡田委員 当然、それは外務省の文書、公文書として保存されているというふうに理解をするわけですけれども、大臣はそれを全てお読みになっていますか。

河野国務大臣 読んでおります。

岡田委員 わかりました。

 次に、同じその予算委員会での総理と私のやりとりの中で、国境線を画定したことをもって平和条約を締結するという考え方にのっとっているというふうに総理は答弁されました。

 大臣も、この総理の答弁、総理が答弁された以上、こういう考え方であるというふうに理解してよろしいですか。国境線を画定されたことをもって平和条約を締結するという考え方にのっとっている。

河野国務大臣 北方四島の帰属の問題を解決し平和条約を締結するというのが政府の基本的な方針でございます。

 北方四島の帰属の問題を解決するわけでございますから、当然に国境を画定するということなんだろうと思います。

岡田委員 総理は国境線という言葉を使われたんですけれども、国境線を画定するということは、国境線を画定しないままでの平和条約の締結はないというふうに考えてよろしいですね。

河野国務大臣 国境と国境線の違いというのが法的にどういうものなのかというのはあれでございますが、北方領土の帰属の問題を解決をするわけでございますから、国境線というのか国境というのか、そこの定義は別でございますが、当然に、そこを画定をする、帰属を確定する、そして平和条約を締結する、そういうことだと思います。

岡田委員 ですから、例えば二島先行返還論などということがありました。二島先行返還論も、国境線を引いた上で先行返還、あとは後の交渉に委ねる、こういう考え方もあるんですが、国境線を引かないままで、例えば一部を先行的に返還する、残りはまだ今後の交渉に委ねるということになると、それは国境線は引けていないわけですから、そういう解決の仕方は考えていないというふうに、私は総理の答弁を聞いて理解したんですが、それでよろしいですね。

河野国務大臣 この平和条約交渉における政府の方針を対外的に述べるのは差し控えているところでございます。お許しいただきたいと思います。

岡田委員 ただ、総理の国会答弁は重いので、大臣も今確認をされたわけですけれども、国境線を画定して平和条約を締結するということは、国境線が画定しないままの、将来の交渉にそれを委ねたような形での平和条約というのはないということしか論理的にはあり得ないんじゃないですか。

河野国務大臣 交渉における政府の考え方、方針を対外的に申し上げるのは、我が国にとって有利なことになりませんので、差し控えさせていただいているところでございます。

岡田委員 一般論として大臣の言われることはわかるんですけれども、総理が国会で明確に述べられているわけですね。そのことについて、つまり、国境線を画定されたことをもって平和条約を締結するという考え方にのっとっている、こういうふうに、これは交渉の方針かもしれませんが、しかし、そのことを明確に国会で述べられているわけですから、そのことを外務大臣が否定する、あるいは言えませんというのは、それは通らないんじゃないですか。

河野国務大臣 平和条約交渉に当たっての政府の方針を今の段階で対外的に説明するのは差し控えさせていただいているところでございます。

岡田委員 ということは、総理の答弁を否定されるんですか。

河野国務大臣 そういうわけではございませんが、条約交渉に当たっての政府の方針を対外的に述べるのは差し控えさせていただいております。

岡田委員 これは総理にもう一回確認するしかないかもしれませんが、私も総理の答弁を聞いて、ちょっと、おっというふうに思ったんです。

 大臣も、領土を画定してという言葉を一回、寺田さんの質問のときに答えられていて、それまでは領土問題を解決してという言い方だったのが、領土を画定してというふうにおっしゃったんだけれども、総理は更に踏み込んで、国境線を画定するというふうに言われたので、随分、一歩踏み込んだ答弁をされたな、交渉の基本方針にかかわることについて言われたなというふうに思ったんですが、それについて、答弁は否定しないけれども、交渉の方針にかかわることは言わないというのは、極めて私は矛盾した態度で、やはり国会というところで総理が答弁した以上は、そこまではやはりちゃんと認めないとおかしいと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 交渉の最中に我が国の交渉方針を対外的に一方的に申し上げるのは、我が国にとって有利になりませんので、差し控えさせていただきたいと思います。

岡田委員 それなら、そう言わなきゃいいんですよ、総理が。

 では、総理がそういう交渉の方針を言ったことは間違っていたということですか。

河野国務大臣 交渉の方針について申し上げるのは差し控えているところでございます。

岡田委員 大臣の慎重な姿勢はわかりますけれども、なかなか、委員会で大臣と議論する気がだんだんなくなってくるんですよね。まだ総理と議論した方がましだ、そういうことになってしまいますので、この点はなお、しかし総理の答弁は答弁としてありますから、そのことを、私は方針の一端が示されたというふうに理解しているということは申し上げておきたいと思います。あとは、続きは総理とやるしかないかなというふうに思います。

 それでは、今後の交渉の展望ですけれども、これは事務方で結構ですが、ラブロフ外相は、例えば、二〇一八年の十二月七日あるいは一九年の一月十四日の記者会見で、第二次世界大戦の結果、南クリル諸島はロシアのものになった、この事実を安倍総理がまず認めるべきだという趣旨の発言をしておられると思いますが、事実関係としていかがですか。

宇山政府参考人 委員御指摘のラブロフ・ロシア外務大臣の発言につきましては、ロシア外務省のウエブサイトにその発言のスクリプトが掲載されていることを確認しております。

岡田委員 日本政府の主張というのは、従来、例えば、ヤルタ協定については、当時の首脳間で戦後の処理方針を述べたものにすぎない、そもそも我が国は協定に参加しておらず、拘束されることはない、サンフランシスコ平和条約については、日本固有の領土である北方四島は放棄した千島列島には含まれていないというのが、従来の外務省の考え方といいますか、外向けにアナウンスされた考え方だったと思いますが、現時点においてもこういう考え方自身は変わっていない、それを声高に言うかどうかは別にして、方針を変えたということはないということを事務的にちょっと確認したいと思います。

宇山政府参考人 委員お尋ねの件につきまして、政府の法的立場に変わりはございません。

岡田委員 ラブロフ外相はほかにも、例えば、これは大臣にちょっとお聞きしたいと思いますが、二月十六日の日ロ外相会談で、時期についていかなる制限も設けないというふうに発言したと伝えられていますが、これは事実ですね。交渉の時期。

河野国務大臣 済みません、どの場での発言かがよくわかりません。

岡田委員 二月十六日の日ロ外相会談。

河野国務大臣 交渉の中でのお互いの発言を対外的に申し上げるのは差し控えているところでございますので、お許しいただきたいと思います。

岡田委員 事前に通告していなかったので、私は会見でそう述べられたというふうに理解しているんですが、これ以上ちょっと申し上げるつもりはないですが。

 あと、一月二十二日の日ロ首脳会談でも、プーチン大統領は、解決には時間と両国民の支持が必要だという趣旨の発言をされていて、その後、ロシア側が行ったアンケート調査では、北方領土について、日本に返すということについては非常に否定的な結果がかなり出てきているということをもっても、ロシア側が近々、北方四島について、日本側の納得できるような返還を行うということは非常に難しいのではないかというふうに客観的には思われるんですが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 今おっしゃったことは、客観的ではなくて、岡田委員の主観的な御意見ではないかと思います。

岡田委員 私だけじゃなくて、多くの人はそういうふうに考えていると思いますが。

 もちろん、一対一で首脳会談、二十数回やっているわけですから、何らかの進展があると思いたいというふうに考えていますが、ただ、余りにもロシア側の発信が、私が外務大臣をしていたときとほとんど変わらない、そういう発信で、総理はいろいろと前向きなことを言われるんだけれども、それは本当に日ロ間の共通認識になっているんだろうか、そういうふうに考えざるを得ないわけですね。

 総理は、この北方領土問題を戦後日本外交の総決算と位置づけて、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意思を大統領と完全に共有したと。これは二〇一八年十一月十五日の日ロ首脳会談の後の会見で述べられていますが、プーチン大統領から、そういう強い意思を共有したという、そういう旨の答弁はどこにもないわけです。むしろ、先ほど言いましたような、非常に慎重な物言いに終始しているわけですね。

 このギャップは一体何なんだろうか。それはロシア側の交渉の手練手管だというふうに言われるかもしれませんが、だけれども、それにしても、余りにも、安倍総理の言われていることとロシア側の反応の間にギャップがあり過ぎるというふうに私は思うんですが、もう少し国民にそこのところについて説明すべきじゃないですか。

河野国務大臣 この平和条約の交渉は交渉の場で行っているわけでございまして、さまざまな人がマスコミに対して話をしていることにコメントをするというのは生産的ではないと思いますし、交渉に資するわけでもございませんので、さまざまな方がさまざまコメントすることに何か申し上げるのは差し控えたいと思います。

岡田委員 そうはいっても、これだけの違いがあるということは、総理の発言を聞いていると、何か進展があるような期待感を持ってしまうんですけれども、現実は本当にそうなのか。

 大臣、お願いしておきたいのは、今度、日ロ外相会談、2プラス2をやられると思います。そのとき、終わった後の記者会見で、ラブロフ外相と二人で並んで記者の質問に少し答えてもらいたいんですね。そのとき全く違ったことを言えば当然おかしいということになりますから、やはり適切な記者会見で、相手側の発信もあろうかというふうに思います。そういうことがなくて、結局、お互いが勝手にこうだったということを言っているというのは、幾ら交渉だといっても、私は余り健全じゃないというふうに思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 交渉は交渉の場の中で行っているものでございまして、外に向かって何か言って交渉が進むわけではありませんので、対応としてはおのずと限られてくるというふうに考えております。

岡田委員 そうはいっても、国民はやはり外相なり総理の発言があれば期待をいたしますし、特に申し上げたいのは、今度G20があって、その前後にも日ロ首脳会談があると思うんですね。そこで、記者会見で総理が、これだけの成果があったというようなことを言う、しかし、それが本当なのかどうかは実はわからない、その直後に参議院選挙がある。こういうことですから、やはり私は、後で参議院選挙のために政治利用したというふうに言われないように、もう少し、日ロ間の意見の余りにも違いというものを、お互いがしっかりと共通の記者会見をすることで埋めておく必要があるんじゃないか、そういうふうに考えているわけです。

 それからもう一つ、外務大臣にお願いしておきたいと思いますが、私は、この交渉はうまくいっていないし、よくて二島というふうに前に申し上げたことがあるんですが、その二島も非常に厳しいというふうに思います。私は、二島、つまり歯舞、色丹のところで国境線を引くということは、面積でいうとわずか七%ですから、それならやらない方がいい、決めない方がいいという意見ですけれども、外務大臣もかつては、二島と四島の間をとることを考えなきゃいけないとか、そういうこともおっしゃっていたわけです。

 総理が、プーチン大統領との一対一の交渉の中で、何らかの非常に日本の国益を損なうような合意に達しようとしたときに、それがとめられるのは外務大臣しかいないと思います、事務方じゃ無理なんですから。そういう重要な使命を外務大臣は負っておられるということを自覚していただいて、日本の国益に沿った、その国益の判断、考え方はいろいろあると思いますが、多くの国民が納得できるような国益に沿った結論がなされるのならそれは非常に結構なことですけれども、そうじゃないというときには、やはり、もし総理がのめり込んでということになれば、それをとめられるのは外務大臣だ、そういう御認識は持っていただいていますよね。

河野国務大臣 安倍内閣として、国益に反するようなことをするつもりは毛頭ございません。

岡田委員 次に、気候変動の問題について触れたいと思います。

 先ほども、事務方の答弁で、G20大阪サミットにおいても気候変動、地球温暖化の問題がテーマの一つとして述べられました。私は非常に重要なテーマとすべきだというふうに考えているんですが、大臣のお考えはいかがですか。

河野国務大臣 気候変動というのは、国際社会全体で取り組まなければいけない地球規模課題でございます。これは多くの国がそういう認識を共有していると思いますし、国だけでなく、自治体、企業、市民社会、さまざまなアクターがそういう気持ちを共有していると思いますので、当然にG20でも重要なテーマとして扱うべきだろうというふうに考えております。

岡田委員 四月二日に、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会、総理有識者懇談会と呼ばせていただきますが、その提言が安倍総理に提出をされました。一方で、河野大臣に提出された外務省の有識者会合の提言もございます。

 安倍総理は、この総理の有識者懇談会の提言を踏まえて政府としての長期戦略を決定するという決意を述べられましたが、私は、総理有識者懇談会の提言だけではなくて、河野大臣に提出された外務省の提言も含めて長期戦略に反映させるべきだというふうに考えていますが、いかがですか。

河野国務大臣 ちょっと質問の御意図がよくわからなかったんですけれども、昨年、外務省として、気候変動に関する外交というのが今非常に外交の中で重要な位置を占めることになっておりますので、外務省として有識者にお集まりをいただきまして、私あるいは担当部署が参加をして、さまざまディスカッションをやらせていただきました。

 また、その有識者の皆様から提言をまとめていただいたものを外務省が頂戴をして、それを外務省の政策あるいは我が国の気候変動外交の中に生かしていきたいというふうに考えているところでございます。

 今度の長期戦略に関する有識者、四月の二日でしたか、提言をいただきました。それをもとに今度は政府としての案をつくるわけでございまして、当然、外務省もそこに加わることになります。

 外務省がそこに加わって外務省としての議論をする場合には、外務省の有識者からいただいた提言あるいはその際のディスカッションを当然参考にして、外務省としてさまざま議論をしていきたいと思っておりますので、直接的にではございませんけれども、この外務省の有識者の御意見というのは、これから政府案をつくる中で、当然、外務省を通じて、取り入れるべきものはしっかり取り入れていきたいというふうに考えているところでございます。

岡田委員 私は、総理の有識者懇談会の報告書を読ませていただいて、どうもしっくりこないんですね。外務省の提言の方がいいというふうに考えています。

 特に、総理の有識者懇談会の最大の欠点は、気候変動問題の長期的解決としての非連続的イノベーションが必要だということを強調しておられるんですね。それはそれで重要なことだとは思います、例えばCO2の固定技術とか水素化社会とか。しかし、非連続的イノベーションというのは、十年、二十年の話ではなくて、もう少し先の話というふうにも理解できますね。

 大事なことは、十年、二十年、例えば二〇三〇年とか、場合によっては五〇年に向けて、具体的にどういう政策を日本政府としてとっていくかということだと思うんですね。そういうところの記述が、後で具体的に申し上げますが、かなり欠けているというふうに思います。そういう意味では、外務省の有識者の提言と今回の総理の提言というのは、ちょっと時間軸が違うというふうに思います。

 そして、二〇五〇年八〇%とか、あるいはもっとそれを深掘りすべきだとか、いろいろな議論がありますが、そういうことのためには、やはり今何をすべきかということをもっとしっかりと書き込まないと、例えばG20で長期的イノベーションが大事だといっても、それだけでは私は国際的にもリーダーシップをとることにならないというふうに思うんですが、いかがですか。

河野国務大臣 先ほどの質問の委員の御意図がよくわかりまして、ありがとうございます。委員からお褒めをいただいたことは、外務省の有識者のメンバーにしっかりと伝えたいというふうに思います。

 今回の政府のつくろうとしているものは、長期戦略という言葉のとおり、長期的にどうするかということが目標でございますので、当然に、二〇五〇年どうしようかということ、その先をどう見据えていくかということを中心にいわば提言をまとめようというものでございますので、短期的に当面どうするかというのは、これは今回の長期戦略とは少し別物なんだろうというふうに私は思っております。

 そう申し上げた上で、この間の有識者の提言を拝見をしますと、例えば、二度ではなくて一・五度を目指して世界に貢献をする、あるいは二〇五〇年に八〇%の削減といったことが明確にうたわれておりますので、二〇五〇年にそういうものを達成しようとすれば、非連続的なイノベーションも必要でございますが、今やらなければいけないことというのが当然に出てくるわけでございますので、その大きな目標に向かってまずどう歩みを進めるかということと、よく言われているのは、日本は見えるところだけを積み上げて目標を出すとかつて批判をされたことがございますが、今回は、見えているものを積み上げるだけで目標にするのではなくて、達成をしなければいけないゴールをきちんと出して、それを合意をした上で、今積み上げているものを伸ばしていってもそこには行けないわけですから、そこに非連続的なイノベーションを巻き起こして最後のゴールに行こうという、この方針が有識者会議からの提言の中にはっきり書き込まれているわけでございます。

 当然に、これから出てくる政府の長期戦略もそういう考えに立つということになろうかと思っておりますので、それはそれで非常に重要なことなんだろうというふうに思っております。

岡田委員 非連続的イノベーションが必要だというのはそのとおりですけれども、しかし、それは非常に不確定で、先ほどのCO2の固定技術にしても、あるいは水素社会、その水素も、化石燃料でつくった水素であっては意味がないわけですから、そうじゃない形での水素をつくって、そして水素社会をつくっていく。そういう不確定要素のあるものに多くを頼って、今やるべきことをやらないということはあってはならない、そういうふうに私は思うわけですね。

 そういう意味で、両方の提言を比較しますと、例えば、カーボンプライシングということについて、外務省の有識者提言では、「日本は、まだ有効な施策として活用できていない。」「日本においても早期に実効性のある水準で実現することが不可欠」というふうに指摘をされております。

 実は、カーボンプライシング、民主党政権時代に地球温暖化税を導入しまして、レベルとしては、いろいろな議論の中で、私は十分なものじゃないと思いますが、仕組みとしてはもう入っていて、今、段階を経て、既に完全実施されている。

 そういうものを更に改良して税をふやしていくとか、そういうことも当然考えられるというふうに思うんですけれども、総理の有識者懇談会の提言は、そういったことについては全く触れず、それだけではなくて、「国際的な動向や日本の事情、産業の国際競争力への影響などを踏まえた専門的・技術的な議論が必要である。」これが結論なんですね、カーボンプライシングについて。

 これは何も言っていないに等しい。議論しなきゃいけませんと言っているだけで、これは私は非常に説得力がないんじゃないかというふうに思うわけです。外務省の提言の方がずっといいと思うんですが、いかがですか。

河野国務大臣 カーボンプライシングという政策について、私が政府として申し上げる立場にはございませんが、当然に、気候変動対策に関して言えば、国際的に同じ方向を向いていくという必要はあるんだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、さまざまな国境を越える政策について、国際的な議論の中で、その潮流の流れに乗って日本も政策判断をしていくということが必要であるということは、そのとおりだというふうに考えております。

岡田委員 この地球温暖化税も、既に導入されて、段階を経て、一応の想定のところまでは行っているわけですから、これから更にそれを上げていくかどうかという議論は、私は政府の中でもちゃんとやるべきだというふうに思うんですね。

 そして、その税収をどう使うか。ヨーロッパなんかでは、そういったものをむしろ社会保障にも使っている。そういうことも私は考えていいというふうに思うんですが、政府の中で、この地球温暖化税の活用について問題提起するおつもりはありませんか。

河野国務大臣 税について私が政府を代表しているわけではないというのは、委員もよくおわかりだと思います。

 外務省としては、この気候変動というのは、国際的に大きな課題、地球規模課題でございますから、当然に外務省として言うべきことは言わなければならないというふうに思っておりまして、だからこそ、外務省も有識者会議を開き、議論に加わり、提言を頂戴をし、それに基づいてさまざま政策判断をしていこうというふうに考えているところでございますので、この気候変動の問題について、政府の議論に外務省は積極的に関与してきたつもりでございますし、これからも議論に積極的にかかわっていく、そういう意思でございます。

岡田委員 石炭火力について、その外務省の有識者会合での提言では、「パリ協定の二度C目標と整合しない。日本は石炭火力発電所の廃止を覚悟し、その基本姿勢を世界に公表していく。」というふうに述べられています。

 総理の有識者懇談会では、「石炭火力発電等への依存度を可能な限り引き下げる」という抽象的な表現にとどまっています。

 今でも、石炭火力についての、特に小規模な計画がたくさんある。きょうもどこかの新聞が、メガバンクがそれに対する融資をこれから減らしていくということを決めたというような報道もありましたが、私、下手をすると、石炭火力発電所をこれからつくるというふうに考えておられる企業も多いようですけれども、これは巨大な座礁資産になってしまう、大きな負担になってしまうというふうに思うんですね。

 ですから、政府としても、やはり石炭火力について、少なくとも、そういうリスクがあるんだということはきちっとアナウンスすべきじゃないか、経営者の中にわかっていない人がいるわけですから。結局、つくってしまったら、でも、それを使わないといけないということにもなりかねないので、きちんと現状をアナウンスするだけのことはすべきだと思うんですが、いかがですか。

河野国務大臣 国内における石炭火力については、これは所管する省庁がございますから、外務省が申し上げるべきことではないと思いますが、少なくとも、長期戦略における有識者が二〇五〇年に八〇%の削減ということを打ち出している。それを考えますと、当然、政府案の議論をする中で、石炭火力発電所というのを一度つくればそれは数十年にわたり運転されるわけでございます、その一方でこのCO2の削減目標があるわけでございますから、おのずと、どういう政策をとらなければいけないかというのは、これは議論の中で決まってくることだろうというふうに考えております。

岡田委員 私は、この総理の懇談会の委員の皆さんの認識がちょっと違っているんじゃないかなというふうに思えてならないんですね。

 今、国際的な、再生可能エネルギー、例えば太陽光とかあるいは風力のコストのトレンドを見ると、相当急激に下がっていて、日本は必ずしもそうじゃないのが残念なんですけれども、相当下がっていて、化石燃料や原子力に対して、むしろコスト的には有利な状況が生まれてきている。そういう認識に立って議論するのか、やはり再生可能エネルギーはいろいろな問題があって、もちろん問題は抱えているんですが、コスト的にも高いという前提で、ちょっと古い、五年、十年前の感覚で議論するのかで、随分議論の中身が違ってくると思うんですね。

 少なくとも、私は、日本国政府として、そういった再生可能エネルギーのコストの現状についての認識は、きちんと共通認識を持つべきだというふうに考えるんですが、いかがですか。

河野国務大臣 再生可能エネルギーのコストが急速に下落し、国、地域によっては、原子力はもとより、化石燃料よりも安いコストになっているという現実がございますし、それはさまざまなところで発表され、広報されているところだというふうに考えております。

 他方、我が国を見ると、残念ながら、再生エネルギーのコストがまだ高どまりをしているという現実はあるんだろうというふうに思います。

 そういう中で、この二〇五〇年に八〇%の削減というのを考える中で、再生可能エネルギーが果たす役割は非常に大きいと思いますし、今回の有識者の提言の中でも主力電源化ということがうたわれているわけでございますので、当然に、政府としても、議論の中で、再生エネルギーの主力電源化を目指し、どういう政策が必要なのかということは議論されることになろうかと思っております。

 外務省としては、再生可能エネルギーのコストの国際的なトレンドはしっかりと把握をしてきているつもりでございます。

岡田委員 主力電源化という言葉はいいんですが、本当に現状が正しく理解されているのかというのは私は甚だ疑問で、ぜひそこは、政府の中での議論でも、総理も含めて、しっかりと共通の認識を持っていただけるようにしてもらいたいなというふうに考えております。

 G20大阪サミットで温暖化問題についてリーダーシップを発揮するということを当然日本政府としては考えておられると思いますが、そのためには、カーボンプライシングについての考え方とか、石炭火力、日本は今でも一生懸命つくろうとしているけれどもどうなっているんだという国際社会の批判とか、そして、再生可能エネルギーについて、主要電源化ですか、という言葉はいいんだけれども、いまだに、先ほどの石炭火力とかあるいは原子力とか、そういうものにウエートを置いたような発言もいろいろ出てくるということでは、決して私はリーダーシップはとれないと思うんですね、大阪サミットでも。

 ですから、そういうことをきちんと整理をされて、内閣の中で共通認識を持った上で、しっかりとリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。

河野国務大臣 外務省としても、さまざまな場を通じて、国際的な流れを把握し、国際的な状況はこうなっているんだということを、国内でもその国際的なトレンドについて申し上げてきているところでございますし、そうしたものを受けて、政府内の議論にかかわってきております。

 日本がG20の中でこの分野でもしっかりとリーダーシップをとれるように、しっかりとした日本らしい政策を打ち出すことができるように、外務省としても、しっかり政府内の議論に関与していきたいというふうに思います。

岡田委員 もう一つ、私、日本政府というか、経済界も含めて誤解があると思うのは、日本の省エネ、エネルギー効率というのは、少なくとも産業界においては極めて高いという認識があると思うんですね。

 確かに、第一次オイルショックのときは、官民挙げて省エネに取り組んで、かなり国際的にも高い効率が達成されたし、それがむしろ経済成長につながった。だけれども、その後の状況を見ていると、必ずしも日本の産業界が、製造業なども含めて、国際的な比較においてエネルギー効率が高いという状況にあるかというと、私はそれは間違いだというふうに思っています。

 そこのところもよくわかっていらっしゃらない方が多くて、日本はその先頭を行っているんだというような議論がよくなされるんですが、大臣も私と同じ認識ですよね。

河野国務大臣 今委員がおっしゃったような議論は、外務省の有識者会議の中で有識者からも出されたわけでございます。

 この議論をするときに、やはり古いデータではなく、直近の、最近の、今現実、現状がどうなっているのかということをしっかりと把握した上で議論をするというのが大事で、さまざまな立ち位置において都合のいいデータだけ持ってくるということは、この問題の議論として避けなければならないことだというふうに認識をしておりますので、外務省として、正しい現実を見据え、データに基づいてしっかりと議論をできるように努力をしてまいりたいと思います。

岡田委員 終わります。

若宮委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、前にも河野大臣にお伺いしたことがあるんですが、カンボジアについてきょうも少しお伺いしたいと思います。

 御存じのとおり、カンボジアでは昨年夏に総選挙が行われまして、これについて、選挙前も私は取り上げさせていただきましたし、今も大変大きな関心を持ってカンボジアの動向を見ております。それは大臣も同じであると思います。

 お配りした資料の一枚目を見ていただきますと、これは外務省につくっていただいた資料ですけれども、去年の選挙の結果を見ますと、ここにあるとおり、二番のところですね、与党人民党が百二十五議席、下院の百二十五議席、全議席をとるということになりました。普通の民主国家だったらあり得ない、全議席独占する、こういう結果になりました。また、無効票も相当数出まして、五十九万票の無効票があったということになります。

 この結果をごらんになって、大臣、率直に、カンボジアの今の民主化への道の現状と、カンボジアの国内における政治情勢、どうお受けとめになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。

河野国務大臣 昨年七月のカンボジアの総選挙は、委員から今お話がありましたように、無効票が多く出るといったことを始め、さまざま残念な結果があったというふうに思っているところでございます。

 日本は、内戦後のカンボジアの復興を、いわばカンボジアの友人として支えてきたという歴史がございます。多くの日本人がカンボジアの復興にかかわり、また亡くなられた方もいらっしゃるわけで、カンボジアが今後民主的に発展をしていくというのは非常に大切なことだと思っております。

 今後、この総選挙を踏まえ、カンボジアがしっかりと民主化に向けて歩みを進めてくれることを我々としては期待をしたいと思っております。

源馬委員 今、残念な結果であったという御答弁がありましたが、つまり、今回の結果は民主的ではなかった、そういう御認識でよろしいでしょうか。

河野国務大臣 他国の内政でございますから、先ほど申し上げた以上のことを申し上げるのは差し控えたいというふうに思います。

 我々としては、民主主義という価値に非常に重きを置き、そういう価値観を世界の中に定着をさせようというふうに考えている、そして、志を同じくする国々と、そういう方向に向けてともに歩んでいきたいというふうに思っております。

 他方、それぞれの国にはそれぞれの国の成り立ち、歴史、構成といったものがございますから、民主化に向けての道は一本ではない、同じではない、それぞれの国なりの民主化の道筋というのが当然あってしかるべきだと思いますし、G7の外務大臣会合などでもそういうことを申し上げたことがございます。

 そういう意味で、カンボジアの民主化の道も平たんではないのかもしれませんけれども、しかし、そのゴールに向けて一歩ずつ着実に進んでいってほしいと思っておりますし、それに向けて我が国として必要な支援は惜しみなくやってまいりたいと思っております。

源馬委員 やはり、いまいちはっきりしないという印象をどうしても大臣の御答弁からは受けてしまいます。

 この資料の二枚目も、フン・セン首相表敬後の大臣の会見の御発言がありまして、私の方から日本政府の考えを申し上げましたとありますが、これは今大臣が御答弁いただいたような内容なんでしょうか、それとも、フン・セン首相に対して、もう少し踏み込んだ日本政府の考えをおっしゃったのか、そのあたりについてお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 外交上のやりとりを全て申し上げるのは適切ではないというふうに思います。

 フン・セン首相とお目にかかった後、対外的に申し上げたのは、このことにあるようなことでございます。

 我々としては、いずれにせよ、カンボジアがしっかり民主化の道筋を歩んでほしい、そう考えております。

源馬委員 済みません、しつこくなりまして申しわけないんですが、外交上、何か相手国と関係が変化してしまうとか関係に影響があるということならわかりますが、日本政府の考えを大臣が国会の場でも言えないというのは、これは何か少し、外交上だから言えないということと違うんじゃないかなというふうに思います。

 日本が今回の選挙も支援をして、日本人の税金を使って支援をした、その支援をした選挙について、そしてその結果について日本政府がどう考えているかということなので、特段、外交上、気を使って言えないということではないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 一般論を申し上げれば、日本政府の考えを先方に伝えるときに、先方と向き合って伝えることもあれば、対外的な広報を通じて、記者発表、大臣談話、さまざまな手法を通じてパブリックに伝えるという両方のやり方があろうかと思います。

源馬委員 では、少し質問の仕方を変えますが、例えば、今回の選挙の結果を受けて、今大臣がおっしゃったパブリックなやり方で意見表明をしている国はたくさんあるわけですね。

 例えば、EUなんかも声明を発表しております。今回のカンボジア当局は、同国の司法制度やその他の圧力手段を用い、市民社会を含む、政治的敵対勢力や批判、異議を表明する空間を制限してきた。これらの行為は、主要野党であるカンボジア救国党の強制的解散、同党のケム・ソカ党首の逮捕と長期拘束及び同党幹部百十八名の五年間の政治活動禁止に至った。自由で独立したメディアは非常に制限をされた。今回の選挙も正当性がないというふうに欧州連合外務理事会は強調した。この文脈において、EUは、カンボジア国家選挙委員会への経済支援を停止し、またさらに、今、開発途上国からの輸入に対して、無税で行うという取組をEUはしておりますが、カンボジアもその対象国だったんですけれども、その対象から外すということも表明をしております。

 それから、イギリスも、フェアでもないし、フリーでもない選挙だったというふうに報道で表明をしています。

 アメリカも、自由でもないし、フェアでもないし、国民の意思を反映しているとは思えない、正当性があるとは思えないというステートメントを発表しています。

 我が国としては、こういった対外的に向けたステートメントを発信するおつもりはないんでしょうか。

河野国務大臣 カンボジアに関して、これまでもさまざま日本政府の考え方は申し上げてきているところでございます。

源馬委員 では、他国がキーワードとして使っている、自由、公正、信頼性があったか、国民の意思を正しく反映していたか、この四点について、大臣、今回のこのカンボジアにおける選挙、自由であったか、公正であったか、信頼性があったか、国民の意思を正しく反映していたか、この点についてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、昨年七月のカンボジアの選挙については、無効票が多かったなど、残念なところが多々あったということを日本として申し上げているわけでございます。

源馬委員 わかりました。

 本来は、無効票が多かったことももちろんこれは問題なんですが、なぜ無効票が多かったかというと、与党である人民党の議員しかいない中で選挙が行われて、最大野党は解体された中で行われて、そして、それに批判するメディアなんかが弾圧された状況下で行われた選挙だから無効票が多かったわけなんですね。

 ですから、無効票が多かったことが残念なのではなくて、やはりその背景が私は残念だったと、しっかりと大臣にできれば発言をしていただきたかったというふうに思います。

 ちょっと細かな話を聞いていきますが、私は、大臣も恐らくそこが本当は問題意識はおありだと思いますが、その残念な結果になった今回の総選挙に対する、日本が支援してきた中身について、参考人に伺っていきたいと思います。

 確認になりますが、この残念な結果になったカンボジアの総選挙、日本は日本の税金を総額で幾ら使って支援したんでしょうか。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、昨年七月のカンボジア総選挙に対する支援として、無償資金協力については、日本製の投票箱等の選挙用品の供与、技術協力については、専門家の派遣等を通じ、選挙運営や有権者登録等に関する助言などを実施しました。

 本件無償資金協力の最終的な供与額は約七億六千万円であり、本件技術協力の費用は約二億円です。

 我が国の支援により選挙人登録や投開票作業の改善が図られ、選挙プロセスの信頼性向上に寄与したと考えております。

源馬委員 今、御答弁の中で、我が国の支援により選挙人登録なんかでも役立ったというお話がありましたが、具体的にそれはどう役立ったんでしょうか。

 投票箱の製造や輸送に六億円超、ピックアップトラック四十台で、これも相当な値段だなと思いますが、一億二千万、それから、調達の代理機関費、これは多分、運営費とか管理費だと思いますが、二千万、銀行手数料が七千五百万円、これの合計が七億六千万弱となっていますが、日本の支援によって選挙人登録なんかが円滑に進んだということは、どういった理屈でそういうことが行われたんでしょうか。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 実際、投票が行われたところを、監視委員会を通して、送ったわけではございませんが、有権者登録システムに関する技術指導を通じた有権者登録の精度の向上、選挙関連対策への助言を通じた選挙手続の改善、有権者教育の強化などを実施したところでございます。

源馬委員 それは、これまでの説明にもありませんでしたけれども、いつそういう支援を行ったんですか。それで、それに対する予算はどのぐらい使ったんですか。

桑原政府参考人 予算の合計は、先ほども申し上げたとおり、二億円でございます。(源馬委員「二億円」と呼ぶ)はい、約二億円でございます。技術協力については約二億円でございます。

源馬委員 済みません、それは、この対カンボジアの無償資金協力とは別の話ですか。

桑原政府参考人 別でございまして、無償協力の方が七億六千万円でございまして、二億円と申し上げたのは技術協力の方でございます。

源馬委員 それだけの、二億円の技術協力と八億円弱の無償資金協力を、この今回のカンボジアの状況での選挙になぜ支援をすると決めたのか。そして、それに見合う効果が、今回の結果を見て、どこにどういう効果があったと認識をされているのか伺いたいと思います。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の支援により選挙人登録や投開票作業の改善が図られ、選挙プロセスの信頼性向上に寄与したと考えております。

源馬委員 カンボジアで民主化を定着させるためにどのような効果があったのかということを聞きたいです。

河野国務大臣 民主化のプロセスの中で、選挙に対する信頼性というのは非常に大事だと思っております。

 ことし、TICADを開催をいたしますけれども、アフリカの中には、例えば選挙とか議会とか国境管理あるいは税の徴収、そうした国家の仕組みに対する信頼が著しく低く、結局、何かあったときに国家を頼るのではなくて部族や宗教を頼る、結果として、内戦を始めとする混乱が起きるということがあって、今、日本は、そうした国の制度に対する信頼性を少し向上するための支援というのをやらなきゃいかぬというふうに考えております。

 そういう意味で、カンボジアでも同じで、民主主義をカンボジアに定着をさせようと思ったときに、選挙で自分で入れた一票がきちんと正しくカウントされる、そういう選挙に対する信頼というものは民主化のための第一歩だと思っております。選挙に行って一票入れるけれども、それがすりかえられるのが常態化するようなところでは、とてもではありませんけれども民主化が定着するということにはならないわけでございます。

 今回、日本が送った投票箱というのは、少なくとも、きちんと入れたものがその中にあって、それを外から取り出したりすりかえたりすることが物理的にはできないような、そういう信頼のあるものでございます。これはむしろ、カンボジア側から、そういう投票箱がこの選挙の信頼性を高めるためにも必要だという意見があって、日本として、きちんとやろう、また、それをきちんと投票所に届けられなければ意味がありませんから、そのためにピックアップトラックをあわせて送ったわけでございます。

 少なくとも、選挙のプロセスに対する信頼性というのは日本の援助があったおかげで向上したということは、間違いなくそういうことは言えると思います。

源馬委員 カンボジアが今抱えている問題、それからカンボジアの民主化における信頼性ということは大事なんですが、それは今大臣が御答弁いただいたような小さな話ではなくて、やはり選挙の前に、大躍進をした野党を解党させて選挙に臨むとか、そういったことへの信頼性を回復しないといけない、これはもう大臣は十分御承知だと思います。

 投票箱に入れたらあけられないとか、それを運ぶピックアップトラックがあるとかということが信頼性というのは、話がやはり小さ過ぎると思います。八億円と二億円を使ってそれをやったから日本の援助は正しかったんだというのは、少し認識がずれているかなというふうに思います。

 残念ながら、投票箱を日本が送って、ピックアップトラックを送っても、各国は今回の選挙について信頼性がなかったといみじくも言っているわけで、これで信頼性が上がったんだから正しかったんだというのは、少し御認識が違うのではないかなと思います。

 さらに、そこまで、信頼性を高める必要があったんだ、日本が援助をする必要があったんだとおっしゃるなら、なぜ監視団を送らなかったんですか。

河野国務大臣 まず最初の御意見でございますが、私は全く違うと思います。

 それは、投票箱に入れた一票が確実に開票まで秘密保持をされ、そのとおりに保持をされ、開票されたときに自分の一票が正しくカウントされるというのが、選挙における何よりも信頼を高めるわけで、それが小さなものだったという委員の認識は全く間違っていると私は思います。どんなにそこまでのプロセスがきちんとできても、穴があいているような投票箱に入れてくださいというような選挙に対する信頼はないわけですから、私は今委員がおっしゃったことは全く違うと言わざるを得ないと思います。

 監視団を送らなかった理由でございますが、これは、我が国の政府としてさまざまなことを考慮し、総合的に判断をした結果、今回は選挙監視団の派遣を見送ったということでございます。

源馬委員 お言葉を返すわけではありませんが、そうしますと、大臣は、例えば一七年に行われたカンボジアでの地方選挙、これは無効票はもっと少なかったわけですが、こういった選挙や、その前の一三年の選挙、これは信頼性がなかったというふうにお考えなんでしょうか。日本は過去にも投票箱を送ったことがあると思います。その投票箱がある中で行われた選挙であるのに、これは信頼性がなかったというふうにおっしゃるんでしょうか。

 今回、投票箱を送ったから信頼性が上がったとは、私はやはり思えません。それよりも、その前に野党を解党するなどがあったから信頼性が下がったんだと私はやはり失礼ながら思います。その御認識をもう一回改めてお伺いしたいことと、それから、監視団を送らなかった総合的な理由をお伺いしたいわけです。

 なぜ、そこまで、日本はカンボジアの今回の選挙を支援するんだと言っておきながら、監視団を送らなかった、その総合的な理由は、どう総合的に判断されたのか、教えていただきたいと思います。

河野国務大臣 これまでも日本の支援があった、それがこの選挙に対する認識につながってきた。だからこそ今回も日本の支援の要望があって、日本はそれを送ることにしたわけでございます。

 監視団を送らなかった理由は、外交上あるいはさまざまなことを考慮した結果、今回は派遣を見送った、そういうことでございます。

源馬委員 一つ目、お答えいただけなかったと思いますが、やはり今回、投票箱を送ったことによって信頼性が上がった、それは決して小さなことではないというお話でしたけれども、私は、その前もそういった部分についての信頼性というのは確保されていたんじゃないかな、今回、日本が送らなかったら穴だらけの投票箱で信頼性が全くなかったとは言えないのではないかというふうに思います。

 それから、監視団についてお答えいただけませんが、やはり私は、これは今の日本の外交というわけではなくて、これまでもずっとそうだったと思いますが、こうした中途半端な、わからない対応をしてきたことが、他国から日本に対するいろいろな対応、こういったことにもつながってきているんじゃないかなと思います。

 ほかの国が、例えば、EUやアメリカや欧米諸国が、民主主義をしっかり定着させていくという価値観に基づいて懸念を表明しているのに、日本は、それはできないどころか、一方で、私はあえて言わせてもらいますが、投票箱等の小さな支援をしながら、他方で監視団を送らないという判断をする、この中途半端なやり方が、やはり日本外交が他国から今見られている現状につながっていくんじゃないかな、周辺諸国から見られた日本も、それに通ずるところが非常に大きくあるのではないかなというふうに思います。

 そうした中で、ちょっと同僚議員の時間を使わせていただくかもしれませんが、引き続き伺っていきたいと思います。青山議員の時間をもしかしたらちょっと使わせていただくかもしれません。

 この選挙が終わって、そして日本がカンボジアに対して行ってきた取組について参考人に伺っていきたいと思います。

 事前のレクでお伺いしましたが、民主化を定着させるためにカンボジアの若手政治関係者を日本に招聘したと伺いましたが、これの意義と、誰を呼んで、どんなことをしたのか、伺いたいと思います。

河野国務大臣 二〇一八年及び二〇一九年の三月、与党人民党、旧救国党、その他野党からの参加者を含むカンボジアの若手政治関係者それぞれ十名を我が国に招聘をいたしました。若手といっても年齢層はいろいろでございますが、かなり若い世代の政治家に参加をしていただきました。

 私は、恐らく一番この招聘事業がカンボジアの未来にもたらすことは、カンボジアの国内で口をきくこともなかった与野党の人間が、この日本に滞在している間、同じ釜の飯と言うとちょっとあれかもしれませんけれども、同じ場所に泊まり、同じ食卓を囲み、場合によっては一杯飲みながら、かなり長時間にわたってカンボジア人同士で話をすることができた、違う政治的な立場ではあったけれども、それを乗り越えてさまざま日本で活動をする中で、とにかくずっと四六時中一緒にいて、飯も一緒に食いということでございますから、そういう中でお互い話をかなり長時間にわたってすることができたというのが、これは参加したメンバーから伺ったことでもあります。

 これは我々が見ていても、かなり十人が普通にフランクに話をすることができるようになった、カンボジア語ですから外から聞いていてもよくわかりませんけれども、雰囲気的には明らかに来た当初と帰るときと変わっている。だから、これは非常に効果があるというふうに思って、これからもこういう招聘活動を続けていきたいというふうに思っております。

 また、この十名にいろいろなことをやってもらったり、いろいろな話を聞いてもらいましたが、例えば、我が国の議員連盟、与野党の議員の皆さんが一緒に活動をしている議員連盟というのを見て、与野党が一緒にこんなことをやるのかといって驚きましたという話もありました。それは、いろいろな議論をすることはあっても、例えば、議員立法のように与野党が集まって一つの目的のための法律をつくって成立をさせる、そういうこともあるんだねということをわかってもらった。いろいろな意味で、日本の国会のやり方、民主主義、これだけがいいというわけではないというふうに思いますけれども、そういうものを見ることができた。

 また、先日、日曜日の統一地方選挙では、選挙管理にかかわるカンボジアの方々をお招きをして、私の地元の茅ケ崎市の開票の状況を見てもらいました。カンボジアというのは、投票所で投票をすると、その投票箱を一カ所に集める、あるいは移動するということができない。それはむしろ信頼性を、その移動の過程で何か起きるのではないか、だから、その場で、投票所でそれぞれ開票をする。数百票という投票所もあるかもしれませんけれども、そこで投票用紙を一枚一枚そこにいる立会人にあけて見せる、それを何百回か繰り返すという開票作業をやっているんだそうですが、それぞれの投票所から一カ所に投票箱を集めて、そこで開票作業をやる、そういうことをやっているということに対して、カンボジアの方々からはかなり新鮮な驚きがあって、やはり民主主義が定着しているというのはこういうことなんだねということを現場で話をされていました。

 そうやっていろいろなものを見聞きしていただいて、またそこでカンボジア人同士がさまざま話をしてもらうというのは、これは非常に大事なことだと思っております。

 政治家、選挙管理にかかわる人、あるいは司法の関係者、メディア、さまざまな分野のカンボジアの人に来てもらって、いろいろなものを見ていただいて、カンボジアの次世代をつくっていく、そういう次世代の人に、いろいろなものを見聞きし、考え、またお互い話合いをする、そういうことをしっかりと続けてまいりたいと思っております。

源馬委員 十人の政治関係者とおっしゃいましたが、政治家でしょうか、どういう方ですか。

河野国務大臣 政治家もいれば、政府の要職についている人、あるいは野党の関係の方、いろいろな方がいらっしゃいます。

源馬委員 最後にいたしますが、カンボジアだけじゃなくて、周辺諸国の民主化というのはやはり日本にとって非常に大きなことだと思います。これは大臣の御認識と一緒じゃないかなというふうに思います。それを達成していくために、やはり、今回の問題は、そうした、投票箱の信頼性とか、与野党の人材が口をきく、飯を一緒に食う機会がなかったことではなくて、そもそも、与党がむちゃくちゃなやり方で最大野党を解党して、そして全員が与党の議員になった、その状況で選挙に突入して、上院も下院も全部与党の議席になったということがやはり問題だと思うんです。

 ここはしっかりと、繰り返しになりますが、日本の立場は、やはり価値観に基づいて海外に発信していってもいいと思うんです。そこで気を使って、何かオブラートに包んだような言い方をするのではなくて、日本は今回のカンボジアの選挙について非常に懸念を持っている、制裁までいかないにしても、そうしたことを強く言う、そういう外交をぜひ実現していただきたいと要望させていただきまして、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 青山大人です。

 二〇一一年の東日本大震災による原発事故で、韓国が地元茨城を含む八つの県で水揚げされる水産物の輸入を禁止している問題で、本日未明、世界貿易機関、WTOの最終審に当たる上級委員会は、韓国のこの輸入禁止措置を当初不当とみなしたパネルの報告書、第一審の判断を取り消したと発表をされました。

 まずは、今回のこの上級委員会の報告書について、大臣の御見解をお伺いいたします。

河野国務大臣 今回のWTOの上級委員会は、韓国が我が国の水産物等に関して輸入規制をしている、その一審に当たるパネルについて韓国が提訴をして、上級審が報告書を出したわけでございますが、今回のこの上級審で、日本産の食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとしたパネルの事実認定を上級委員会が維持をした、これは非常に喜ばしいことだと思いますし、我々として科学的に日本の食品は安全だということをずっと申し上げてきたわけでございますから、非常にこれは喜ばしいと思っております。

 他方、パネルは、韓国が是正措置をとらなかったときに日本として対抗措置をとっていいということを言っていたわけでございますが、その部分が取り消された。残念ながら、韓国が是正措置をとらなかったときに日本が対抗措置をとることが認められなくなってしまったということは非常に残念だと思っております。

 しかし、日本産の食品が科学的に安全であり、韓国の基準を十分クリアしているというパネルの事実認定が維持されたわけでございますから、日本として韓国に対し輸入規制を早期に撤廃するように求めていきたいと思いますし、けさ、駐日の韓国大使に外務省に来ていただいて、その旨、私から申し上げたところでございます。

 今後は、韓国との二国間協議を通じて輸入禁止の撤廃をしっかりと働きかけをしてまいりたいと思います。

青山(大)委員 済みません、私の認識ですと、要は、パネルの報告書が上級委で覆った、事実上、日本が逆転敗訴してしまったといった認識で私はいるんですけれども、そういったこととは違うようなことなんですか、大臣。

 それとも、もう少し言いますと、いわゆるパネルで決まったことがひっくり返った、私はそういった認識を持っていたんですけれども、なかなかこういった例は過去に余りないなというふうには思っているんですけれども、そういった、まずパネルがひっくり返ったという認識でいいのか、そして、過去にこういったことがあったのかについてお伺いをいたします。

河野国務大臣 日本として、日本産の食品が科学的に十分安全であり、韓国の基準も十分クリアしているというパネルの事実認定が維持されたというのは非常に大事なことだというふうに思っております。

 他方、パネルは韓国が是正措置をとらなかったときに日本が対抗措置をとることを認めていたわけでございますが、その部分は取り消されたというのは、日本にとって一つツールがなくなったわけでございますから、そこは非常に残念に思っておりますが、韓国の安全基準も十分クリアしているということを認めていただいたわけでございますから、これは二国間協議の中でしっかりと使い、輸入規制の撤廃を求めていきたいというふうに思っております。

 申しわけございません、こういう例が過去あったかどうかというのは、今資料もないものですから、ちょっとお答えができません。

山田(賢)大臣政務官 補足して御説明を申し上げます。

 今ほど委員から御質問ございました、過去にパネルの判断が上級委員会で覆った例はあるかとの御質問でございますけれども、一般論といたしまして、パネルの判断が上級委員会で修正されたり、上級委員会が判断を避けるということは過去にもあったものと承知しております。

 ただ、詳細の数字等につきましては、また改めてこちらの方で調べさせて、お答えさせていただきたいと思います。

 以上です。

青山(大)委員 当委員会でも、隣の小熊委員も私も、そういった、原発事故の後、日本産の農産物の輸入禁止措置ですとかをとっている他国に対して、撤廃ですとか緩和に向けて取り組むように提言し、大臣を始め、これまで外務省の方もそういった努力をされてきて、徐々にそういった撤廃や緩和がされてきたわけでございますけれども、今回のこのWTOの発表は、そういった我が国の今後の戦略に影響を及ぼすというふうにも思いますが、今後の戦略、練り直しが迫られると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 日本の食品が科学的に安全であるというところが極めて大事なことでございまして、つい先日も、バーレーンでしたかが輸入規制を撤廃をしてくれました。日本の主張である、日本の食品は安全だということを認めるというのが今国際的な潮流になりつつあるわけでございます。

 他方、まだ輸入規制が残っているところが若干ございますが、その中には、国内政治に残念ながら使われてしまっているところもあって、そこはさまざまな政治的な判断の中でこの輸入規制の撤廃をしてもらわなければならないわけでございます。

 そういうところはしっかりと働きかけをしていきたいというふうに思っておりますが、今回も、日本の食品が安全であるというところは認めていただいたわけでございますから、そこは何も輸入規制をする理由がないわけでございますので、そこはこれからも国際的にしっかりと理解を得られるように努力を続けていきたいというふうに思います。

青山(大)委員 わかりました。

 私も、大臣と思いは当然一緒ですので、だから、こういった発表を一瞬見ると、何かまるで日本の食の安全が否定されたみたいな、誤って広まってしまうおそれもありますので、今大臣も何度も答弁したように、あくまでも日本の食の安全については、それは認められているものだということですので、ぜひそういうふうにきちんと伝えるように、当然我々も努力しますけれども、大臣始め外務省の方でも引き続きそういった努力の方を重ねて要望し、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳であります。

 WTOの韓国訴訟の件については、既に佐々木委員、そして青山委員、そしてこの後恐らく玄葉元大臣も御質問されるかと拝察しておりますので、私はむしろそれ以外の、地球を俯瞰する外交として、きょうはちょっとアフリカに焦点を当てさせていただいて、質疑を進めさせていただければと思っております。

 冷戦という構造がありましたけれども、その冷戦という構造に至る前は、アフリカ大陸というのは、英国とフランス国という両国が国家をとり合って、しかも、その国境線に部族がいろいろあって、トライバリズムということを学んだ記憶があるんですけれども、その部族が分断されるということで、これは民族の分断という意味で例えは違うかもしれませんが、カーディッシュ・レフュジーと言われるクルド難民のことが、トルコであり、あるいはイラクであり、あるいはシリアという国にまたがって、国家として成立しない民族があるというような状況であります。

 そういった中で、冷戦構造になって米ソがまた、英仏がとっていた国々をとり合うというような中で、冷戦期からという認識を私はしていますけれども、中国は今、韓国ではなくて、話題になっているかもしれません、スーダンに冷戦期から結構肩入れをされていまして、それで、中国の支援は、ハルツームからポートスーダンという輸出港までの鉄道の敷設というのをかなり力を入れて昔からやってきたということを存じ上げているという状況であります。

 これ以外にも、きょうは、リビアが内戦状態であり、アルジェリアは先般から大統領が降板するというような流れが起きております。

 ちょっと話がそれますけれども、各国では総選挙ということで、スペインが四月二十八日で、インドもやって、五月十八日はオーストラリアが選挙だというような、地球はぐるぐる回っているという状況である中で、我が国はTICADの開催を決めていて、これは最初に大臣に質問させていただきますけれども、第七回のアフリカ開発会議は、本年の八月二十八日から三十日まで横浜で開催という予定が立っているようでございますけれども、この後質問させていただくような経済協定みたいな流れの中で、我が国に対しての、インフラ整備であったり、民間企業の投資拡大という期待があると思います。

 先ほど申し上げた中国はスーダンにかなり力を入れてきたという歴史があったりしますが、インドネシアの鉄道の問題などを見ても、結果的には、インドネシアは、たしか地下鉄が最近開通したというのを大変喜んでおられたというのがあったかと思いますが、本当に我が国が、これから大きなビジネスチャンスというか、あるいは持続可能性という意味でも、非常に、アフリカの国々の人々のために、日本としての存在意義というのが発揮できるチャンスが大きく控えているというふうに認識しておりますけれども、こういったアフリカからの期待に対する受けとめと、開発会議に向けての心意気というか、どういう御所存で臨まれるかという点を大臣に確認させていただければと思います。

河野国務大臣 TICADを横浜で開催をさせていただきます。

 これまでと違って、アフリカ各国は、支援というよりは、むしろ民間投資に期待をする部分というのが多くなってきて、日本の企業にも投資あるいは進出といったことをやってほしいというニーズは非常に強くなってきております。

 先般、私が共同議長を務めますTICADの官民円卓会議で議論をしていただいて、アフリカに企業が進出する上での課題、あるいは問題意識はこういうことだというものを提言に取りまとめていただいて、官民円卓会議の民間側から総理に提出をしていただきました。

 このような内外からの期待や提言をしっかり受けとめて、成長著しいアフリカに対して、官民が連携をして、貿易・投資、あるいは成長のための人材育成、そして、先ほども申し上げましたアフリカにおける国家制度のしっかりとした構築ということに向けて、積極的に手を差し伸べていきたいというふうに思っております。

杉本委員 ありがとうございます。

 人材育成という言葉もありましたし、国家の構築という意味では、アラブの春がまた、二度目のアラブの春になっているのかなという、懸念と言ったら語弊があるかな、動きがあるという感触を私は持っておりますけれども、これ以降は、冒頭申し上げたようなことを、ちょっと細かく確認を参事官の齋田さんにお願いしたいと思います。

 今申し上げたようなトライバリズム、これはかなりアフリカの歴史的には大きな問題であったかという認識を私はしておりますけれども、現状を、トライバリズムといった、民族というよりは部族の分断の状況というのを外務省さんとしていかに御認識をされておられるかを確認させていただければと思います。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 アフリカ大陸には約三千の部族があると言われております。委員御指摘のとおり、国境を越えて分布する部族も非常に多いということでございます。

 例えば、一九九四年の虐殺で有名となりましたルワンダにおけますツチ族、フツ族、この民族も、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国等、多数の国に分布して居住をしております。

 他方、そのルワンダでも、ジェノサイドが発生した後、その後、カガメ大統領のもとで二十五年間、民族対立を乗り越えるべく、国民融和に努め、目覚ましい経済成長を遂げているということでございます。

 したがいまして、外務省といたしましては、御指摘のとおり、部族主義というものが国民国家の形成に、あるいは維持の障害となるという例は歴史上ございましたけれども、ここ十年以上の間、顕著な改善が見られているというふうに認識しております。

杉本委員 私はやはり、民族自決という言葉が昔あって、最近は聞かないですけれども、そういった意味では、部族が分断されているということは決してその方々にとってはハッピーではないので、うまい形で、国家という形とうまくかみ合うような方向づけがなされればなということで、ここ十年問題ないという御認識を伺いましたけれども、長い目で見て、そういった方向感も必要ではないかと認識しています。

 次に、アフリカの経済共同体というのは複数あって、幾つかあるようで、この経済圏というか経済共同体をいかに外務省さんが把握しているかということです。

 まずはアラブ・マグレブ連合、これは北の方の国々だと思いますが、こういった国と、まずはじゃなくてまとめてお伺いしますが、あと、西アフリカ諸国経済共同体、十五カ国、ベナンだとかブルキナファソだとか。それと、もう一つが東南部アフリカ市場共同体、二十一カ国。これは、最初に申し上げたアラブ・マグレブとリビアなんかは重複していますけれども、また、リビアの中は内戦という状況ですけれども、東南部アフリカ市場共同体、二十一カ国。それと、南部アフリカ開発共同体、十六カ国、タンザニア、ザンビアほか。それに、アフリカ大陸自由貿易圏、AfCFTAというんですか、四十九カ国署名。

 こういった経済圏がいろいろあるようですけれども、これをいかに把握し、いかに我が国としてつき合っていくという方向にあるかを確認させてください。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、アフリカにおいては八つの地域経済共同体が存在しておりまして、地域レベルでの統合に向けた動きが進んでおります。

 これらの地域共同体は、自由貿易それから安全保障等さまざまな機能を有しておりまして、アフリカの発展に大きな役割を果たしております。我が国としても、これらの地域共同体と積極的に協力を進めておるところでございます。

 また、御指摘のアフリカ大陸全体を対象といたしました自由貿易協定でございますけれども、まだ未発効でございますけれども、二十二カ国の批准書寄託というのが発効の条件になっておりまして、そのうち十九カ国が既に批准書を寄託しています。したがいまして、五十四カ国が参加をする大陸ワイドの自由貿易協定も発効が間近という状況になっております。

杉本委員 ありがとうございます。

 今、御答弁を先にいただいてしまったかもしれないんですが、五十五カ国、五十四カ国、そのぐらいの規模で、経済規模で見て、GDP総額で、これは日経にあった試算額なので正確な数字かどうかはクエスチョンですが、二兆五千億ドル、約二百八十兆円のGDP総額があるということで、ASEANは、同じ情報ソースかもしれないんですが、ASEAN五カ国のGDP総額が二兆四千億ということで、ASEANを並ぶというよりは凌駕する水準のGDPの総額が試算されているようなんですけれども、外務省として、この経済規模といった点でどのような御認識にあるかを確認させてください。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 記事の数字はおおむね正確であるというふうに認識しております。

 IMFによりますと、二〇一八年、アフリカのGDP全体は二・三兆ドル、これに対しまして、ASEAN五カ国のGDPの総額は二・四兆ドルということで、両者はおおむね匹敵をしているということでございます。

杉本委員 次に、個別の国でちょっと確認しておきたいんですけれども、やはり規模からいくと南アフリカも大きいと思いますが、ナイジェリアという国がございますが、いいですか、話が飛んだような形になりますが。経済規模、人口、あるいは政治的な動向等を含めて、ナイジェリアの状況をちょっと確認させていただければと思います。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 ナイジェリアの人口は二〇一七年時点で約一億九千万人、アフリカ最大でございます。GDPも三千七百五十七億ドルということで、こちらもアフリカ最大でございます。経済自体は、原油価格の下落の影響もございまして、二〇一六年にはマイナスに陥りましたけれども、翌年回復をしております。本年二月には大統領選挙が行われまして、現職の大統領が再選されております。同大統領は、経済の活性化を最優先として取り組むということを表明しております。

 今後とも、アフリカ最大の経済大国として、我が国としても注目をしておるところでございます。

杉本委員 もう時間も押し迫っておりますので、最後の質問にさせていただきます。

 こういった経済圏、非常にビジネスチャンスというか、持続可能性も含めて非常に大切な地域で、ヨーロッパの庭というような感覚も、イギリスの新聞なんかを見ていますとそういう感覚で、日本から見ている雰囲気と違うというアフリカ大陸は、遠くない存在にしなければならないと私は思っていますけれども、このような規模のアフリカに対して、アメリカ、中国、あるいはインドなんかも動きを示しているようですけれども、こういった主要国の経済圏に対する取組を最後に確認させていただければと思います。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、欧州のみならず各国とも、二十一世紀のフロンティアであるアフリカに対して多大な関心を持って支援、そして経済進出を進めております。

 まず、アメリカでございますけれども、昨年十二月、新たなアフリカ政策を発表いたしまして、今後は、特に貿易それから投資、この関係を更に重点的に進めていくという立場と承知しております。

 中国は、インフラを中心といたしました巨額の投資を続けておりまして、昨年開催されましたFOCAC首脳会合では、三年間で六百億ドルの支援を行うという旨を表明しております。

 最後に、インドでございますけれども、東アフリカ地域と歴史的なつながりがございます。したがいまして、東アフリカにはインド系の民間企業が非常に多く進出しております。近年は、この民間投資を更に加速させたいという方針を打ち出していると承知しております。二〇〇八年以来、アフリカとの間で開催しているフォーラムサミットでございますが、こちらでは百億ドル規模の支援を表明しているというふうに承知しております。

杉本委員 ありがとうございます。参考になりました。

 以上で終わります。

若宮委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。

 まず、きょうは北方領土の問題を質問通告をしておりますけれども、冒頭、けさ公表されたWTO紛争解決上級委員会報告書について一言質疑をさせていただきたいと思います。

 なぜなら、東日本大震災由来の輸入規制の問題であって、大変日本にとって重要な問題であり、私にとっても地元の大問題になっているからであります。

 今回の上級委員会の報告書については、いわばパネルの判断が事実上覆ったような形になっていて、大変残念な事態だというふうに思っております。通常は、いわゆる上級委員会は、第一審の判断について、判断を保留するという例が比較的多かったのかなというふうに思うんです。このような形で、事実上覆るような形は余り例がなかったのではないかというふうに思いますけれども、なぜこのような異例な事態を招いたのか、今後の対処方針も含めてお聞かせをいただきたいと思います。

河野国務大臣 なぜ上級委員会でこのような判断になったかというのはよくわからないわけでございますが、いずれにせよ、日本産の食品の科学的な安全性、これはパネルの判断が維持され、韓国の安全基準も十分にクリアしているというところも維持されているわけでございます。

 我々といたしましては、だからこそ、韓国が是正措置をとらなかったときにしっかりと対抗措置がとれるというこのパネルの判断を維持したかったわけでございますが、残念ながら、この輸入禁止措置は必要以上に貿易制限的であるとのパネルの判断が取り消され、残念ながら、是正がない場合に対抗措置をとるというのがWTO上できないというのは、我々にとって、輸入規制の撤廃を迫るツールを一つ失ってしまった、韓国との関係で失ってしまったということは、非常に残念に思っております。

 ただ、いずれにしろ、この輸入規制というのは、本来、食品の安全の視点から、科学的な視点から議論されるべきものであって、そこについて、科学的な安全性については非常にクリアでございますので、我々としては、韓国政府に、科学的な根拠から輸入規制というのは行われるべきものであって、そこがクリアになった以上、我々が求めている二十八種類の水産物の輸入規制は早期に撤廃されるべきだということを、今後は引き続き韓国との二国間の協議の中で求めていきたいというふうに考えているところでございますし、また、けさ方、委員会の前に、韓国大使においでをいただいて、その旨私から申し上げたところでございます。

玄葉委員 今回、第二審、上級委員会で勝訴することで、韓国のみならず各国から輸入規制措置がしかれておりますので、それを解除してもらう、そういう戦略だったと思うんですけれども、こういう事態なので、これはこれで受け入れるしかないと思いますので、これを踏まえて、ぜひ大臣にお願いをしたいのは、おっしゃったとおり、日本の食品は科学的には安全だということと安全基準はクリアをしているということは認められていますので、ぜひ、事務方任せにしないで、首脳あるいは外務大臣レベルで、韓国のみならず各国の大臣にこれから強く働きかけをしてもらいたいと思いますけれども、いかがでしょう。

河野国務大臣 その点はしっかりやってまいりたいというふうに思っております。

 この輸入規制の問題は、先ほども申し上げましたが、科学的な根拠からの輸入規制というよりは、国内の政治に使われてしまっているところというのがございます。

 例えば、先般の台湾は、この問題が公民投票にかけられるということになってしまいました。そこは少し、科学的な議論というわけにはいきませんが、また、先般、香港のキャリー・ラムさんがいらっしゃったときに、残る福島の輸入規制についても私から申し上げました。先方は、四県の輸入規制の撤廃ということを先般やっていただきましたので、まずこの四県の輸入をふやそう、その上で次の議論をしようということでございましたので、我々としても、そうしたことをしっかりとやってまいりたいというふうに思っております。

 国ごとにさまざま、輸入規制がしかれている状況がそれぞれ違っておりますので、それぞれの国ごとにしっかりと戦略を立て、着実に前へ進めていきたいというふうに考えているところでございます。

玄葉委員 ぜひこれはお願いをしたいと思います。

 ところで、WTOの紛争解決のシステムそのものが今機能不全になるのではないかというリスクを持っているということに、私自身、強く懸念をしています。

 たしか、けさ確認をしましたらば、この上級委員というのは七名の定員でありますけれども、現在は三名しかいないということになっております。これは最低限必要な数が三名ということなので、一名を欠けば機能しなくなるという事態になるわけであります。

 これは従来から私、大変危惧をしていたわけでありますけれども、まず、このこと自体が今回の上級委員会の判決に影響した、そういうことはあり得るんですか。

河野国務大臣 報告書が出されたばかりでございますので、その背景その他については至急分析をし、対応を考えていきたいというふうに思っておりますが、委員が御指摘されましたように、この上級審の定員は、恐らくことしの十二月か何かに任期が来てしまって、定員を、必要な人数を割ってしまうことになる。当然、パネルから上級審に、上級委員会に行こうとすると、行けなくなってしまうということになりまして、これは多くの国が今懸念をしているところでございます。

 我々としては、この上級委員会によって、さまざまな国のWTOルールにそぐわない貿易慣行がひっくり返されて、いわばこの上級委員会がしっかりと機能していることによってメリットを受けている国に、そういうことがあったよねということをきちんと説明をして、この上級委員会について、しっかりと委員が補充されるように働きかけをしてまいりたいというふうに考えておりまして、今、その問題意識を共有する国が多くなってきておりますので、そうでない国に対してさまざま働きかけをしっかりとやってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、その際、必要とされるWTOのルールその他の改革についても、これは当然に議論すべきというふうに考えておりますが、この問題に関して言えば、期限があるわけでございますので、期限までにしっかりと対応できるように、引き続き働きかけをしていきたいというふうに考えております。

玄葉委員 これはたしか、二〇一八年三月までは、日本の外交官が議長をこの紛争解決手続の上級委員会で務めていたわけであります。大変優秀な方だったわけでありますが、残念ながら、機能不全に陥るリスクに今さらされている。最大の要因は、米国のトランプ政権による上級委員の再任のブロックあるいは指名のブロックだと思います。

 これも、この間の話ではありません、この間というのは、同盟国米国と我々がどう向き合うかということにもつながるのでありますが、やはり我々は、力による支配というのももちろん否定はできないわけでありますけれども、法とかルールによって国際システムを回していくということを日本として重視をする立場なわけでありますから、何としても、これは米国を説得してでも、もちろん構造的な問題はあるのかもしれませんけれども、しっかりとこの上級委員会を機能させる責任が日本にはあるというふうに思いますので、特に同盟国日本が米国に対して言うべきことの一つでもあるのではないかと思いますが、外務大臣の見解を伺います。

河野国務大臣 このWTOの件につきましては、ライトハイザー通商代表と、かなり最初のころから問題提起をしております。ライトハイザー通商代表も、WTOは非常によく熟知している方でございますから、問題について理解はされているというふうに思います。

 一部アメリカで、このWTOがアメリカにとって不利益をもたらしているんだという声があるのも承知をしておりますが、実際に見てみると、WTOの係争に持ち込んでアメリカが勝った例というのが多数あるわけで、むしろアメリカが、この紛争処理メカニズムでメリットを得ている方が多いのではないかというふうに思っておりますので、そうしたことをきちんとアメリカに伝えていきながら、アメリカも納得をし、この上級委員会の委員が任命を早期にされるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。

玄葉委員 これは日本の役割は大変大きいと思いますので、その責任をぜひ果たしてもらいたいと思います。

 次に、先日、米国によるゴラン高原におけるイスラエルの主権承認についてこの場で議論させていただいて、河野外務大臣から、米国が行った行為なので、米国が第一義的に説明をするべきものだ、そういう答弁をされてきたわけでありますが、私からは、もっと突っ込んだ、踏み込んだ発言をした方がよいのではないかということを申し上げ、恐らく、推測ではありますが、その後、外務大臣始め担当の外務省の幹部で相談をした結果として、先日、米国の主権の承認というのは国連の安保理決議と相入れないというふうに答弁をされ、また、G7の外相会合でその旨発出をしたというか、発言をされたというふうに推測をいたします。

 私は、それは、もしそうだとすれば、この委員会が非常に健全に機能したということであって、大変よいことだ、評価をすべきことだというふうに考えております。河野外務大臣らしく、特に中東の問題は踏み込んで、これからも発言をしてもらいたいというふうに思います。

 なお、一つ気になっているのは、米国によるゴラン高原におけるイスラエルの主権承認におけるポンペオ・アメリカ国務長官の記者会見での発言というのがありまして、お聞きになったかもしれません、あるいはごらんになったかもしれませんけれども、記者団から、強い国は国際法を超えて領土をとることができるという先例をつくるのかと問われ、よい質問だ、全く違うというのが答えだ、これは非常に特殊な状況のもとでのことである、ディス・イズ・インクレディブル・ユニーク・シチュエーションという言い方をしています。

 これは半分ほっとするんですけれども、でも、前回私が指摘したような、ロシアのクリミア併合の行為、あるいは中国の南シナ海での人工島建設という行為、ロシアも中国も、恐らくこれは特殊な状況だと言いますよね。

 だから、やはりこういうことは、同盟国米国であっても、非常に仲のいい日本だからこそ、きちっと、こういうことに対しては毅然と、やはり違うんじゃないの、これは安保理決議と相入れない、我々は力による現状変更というのは認めないということをしっかりと言い続けるべきだというふうに思いますけれども、外務大臣、いかがでしょう。

河野国務大臣 先日の外務委員会で玄葉委員からこの問題の御指摘をいただきまして、安保理決議と相入れないということを申し上げさせていただきました。ありがとうございます。そこは御礼を申し上げたいと思います。

 また、アメリカとは日本は同盟関係にございますので、こういう問題については、対外的に言う前にまずアメリカに直接話すというのがいいだろうと思いまして、G7の外務大臣会合、アメリカはポンペオ長官が欠席でしたのでサリバン副長官がいらしておりました、その場で日本側の立場を説明をし、この問題についてはアメリカと立場が異なるということを対外的にも申し上げざるを得ないということをアメリカ側に伝達をいたしました。

 この問題はG7の会合の中でも議題の一つとして議論が行われ、その中でも日本から、この問題については日本とアメリカの立場は違うし、日本はアメリカに追随することはないということを申し上げた次第でございます。

 力による現状の一方的な変更があってはならないということは、我々、常々申し上げてきたわけでございますし、今、戦後の国際秩序に対するさまざまな挑戦が行われている中で、やはりこの力による現状変更というのは一つの大きな課題というふうに思っております。日本といたしましては、しっかりと原理原則に基づいて行動をし、外交をしていかなければならないというふうに考えているところでございます。

玄葉委員 ありがとうございます。

 もう時間が来てしまいましたけれども、北方領土問題は主に次回質疑をいたしますが、頭出しだけさせていただきたいと思います。

 この問題は、なかなか平行線というか、かみ合わないところが多いのであります。ただ、非常に懸念すべき事態に私はなっているのではないかと考えますので、今後また質疑をしていきたいと思いますが、頭出しとして、河野外務大臣、平和条約についての一回目となる日ロ外相会談時、これは一月十四日でありますが、河野外務大臣は手応えを感じたというふうにおっしゃっていて、手応えとは、どんな手応えを感じたのか、お聞かせいただければと思います。

河野国務大臣 交渉の中で、日本側の考え方を明確にロシア側に伝えさせていただきました。ロシア側もロシア側の考え方というのを具体的に伝えてきて、そこはかなり真剣、率直な話合いをすることができました。そういう意味で、ロシア側も真剣にこの交渉に向き合っている、そういう手応えを感じたわけでございます。

玄葉委員 二回目、二月十六日、先ほども出ておりましたミュンヘンで日ロ外相会談を行われていて、このときも同様に手応えを感じておられますか。

河野国務大臣 手応えはあると申し上げてもよろしいと思います。

 それは、中での合意のスピード云々ということについて対外的には申し上げませんけれども、ロシア側も、首脳の平和条約の交渉を加速化させよう、そういう中でこの交渉に出てきているわけでございます。外務大臣同士の交渉だけでなく、特別代表同士の交渉も行われてきている中で、ロシア側が真剣に向き合っている、そういう手応えは感じていると申し上げてもよろしいと思います。

玄葉委員 では、本格的には次回にさせていただきたいと思います。

 きょうはありがとうございます。

若宮委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 希望の党の井上一徳です。

 本日は、今、日本とオーストラリア、それから日本とイギリスとの間で、訪問部隊地位協定、これが交渉というか、日豪、日英間でいろいろ議論されているという報道がありましたので、この件について聞きたいと思います。

 訪問部隊地位協定と申しますのは、日本とオーストラリア、それで、日本の自衛隊がオーストラリアに行ったとき、イギリスに行ったとき、それから、オーストラリア、イギリスの軍隊が日本に来たときに、お互いに滞在した際の軍人、自衛官の法的な地位を定めておこうというものであります。

 今この現状についてどうなっているか、教えていただきたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日豪間におきましては、自衛隊とオーストラリア国防軍との間の共同運用及び演習を円滑化すべく、行政的、政策的及び法的手続を改善する相互訪問に関する協定、いわゆる日豪円滑化協定の交渉を行っているところでございます。

 この協定につきましては、現在交渉中でございまして、交渉の詳細については差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても、日本としましては、豪州との間で引き続きしっかりと交渉を進めていく考えでございます。

 それから、日英間でございますけれども、本年一月の日英首脳会談の際に発出した日英首脳共同声明にございますとおり、将来のあり得べき交渉を見据え、自衛隊と英国軍の共同運用、演習を円滑にするための行政上、政策上、法律上の手続を改善する枠組みに引き続き取り組んでいるところでございますが、御指摘の訪問部隊地位協定の締結につきましては何ら決定していないところでございます。

井上(一)委員 ぜひしっかり日豪間、日英間でも今後進めていっていただきたいと思いますけれども、私はやはり、これはアメリカとの間でもぜひ必要なものじゃないかというふうに思っております。

 資料でつけさせていただきましたけれども、河野大臣のブログというんですか、公式サイト、この中で、二〇一一年の三月でこういうふうに言われています。ちょっと済みません、コピーでやや見にくいので読み上げますと、二〇一一年です。

 来年度予算の中に、自衛隊と米軍の訓練をグアム島で実施する訓練移転の経費が入っている。これが認められれば、自衛隊が継続的にグアム島に出かけていって米軍と共同訓練を実施できることになる。自衛隊員が米国内で訓練し、生活するわけだから、彼らの米国内における法的地位を定める必要がある。ちょうど日本国内に駐留する米軍の兵隊の法的地位を定めるように。

 ちょっと飛ばしまして、日米両国政府は、日米地位協定が定めている法的地位をちょうど鏡に映したような米日地位協定を制定すべきだ。それにより、米国の兵士に与えられていたのと同じ法的地位が自衛隊員にも与えられることになる。日米地位協定が変更されれば、米日地位協定も同時改定され、両国の兵士の法的地位が常にお互いの領土内でイコールになるようにすれば、地位協定が一方的に不公平だということもなくなり、地位協定の取扱いも変わってくるだろう。

 こういうことでありまして、新大臣には積極的にイニシアチブを発揮してもらいたいということで終わっておりまして、次の資料につけておりますけれども、国会でも、外務委員会でも同じような議論をされておりました。

 私も全く同感でありまして、ぜひ、こういった米日地位協定というんですかね、こういうのをつくるべきだと思うんですけれども、その前提として、まず、自衛隊が、米国領土内で現在どういうような訓練が行われているか、教えていただきたいと思います。

森田政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊は、戦術技量の向上及び米軍との連携強化を目的といたしまして、平素からさまざまな共同訓練を日米間で実施しております。

 米国領土内で実施する共同訓練として、例えば、陸上自衛隊が平成二十九年度において行った主なものを申し上げますと、六月にアラスカ州で行いました米陸軍との共同訓練、アークティックオーロラ、九月にワシントン州で行いました米陸軍との共同訓練、ライジングサンダー、十月から十一月にかけてカリフォルニア州で行いました海兵隊との共同訓練、ドーンブリッツ、同じく一月から二月にかけてカリフォルニアで行った米海兵隊との共同訓練、アイアンフィストといったようなものがございます。

 また、単独の訓練で、米軍の演習場を使用しまして射撃訓練などを行う場合もございます。

井上(一)委員 今までの外務省の説明でいけば、仮に米国領土内で自衛隊員が何らかの事件、事故を公務中に起こしたというような場合には、米国の裁判権からは免除されるということに一般的にはなるんだと思いますけれども、やはりそういうことをきっちり米国との間でも議論をしておくということが非常に重要だと思うんです。

 大臣、ぜひこの点については、一度米国とも話をしてみる価値があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 在日米軍は、日米安保条約に基づき我が国防衛の義務を負っており、同時に、施設・区域の使用を認められて我が国に駐留しております。日米地位協定は、このような目的で我が国に駐留する在日米軍の安定的な駐留を図る観点から、在日米軍等の法的地位を定めるために締結した国際約束であります。

 一方、自衛隊については、従来から米国において訓練を行ってきていると承知をしておりますが、その目的は、あくまで自衛隊自身の練度の維持向上のためであり、その規模も在日米軍のように大きくはなく、米国での滞在期間も一時的なものであるので、我が国防衛の義務を負って駐留している在日米軍と同列に論じることはできないという考え方もございますが、訓練もこれだけふえているわけでございますから、米国で訓練を行う自衛隊員の法的地位を定める、日米地位協定と同様の協定を締結すべきという考え方は、今申し上げた、米軍と自衛隊の相手国における滞在の目的や性格が違うわけですけれども、そういう違いを踏まえ、また、防衛省・自衛隊のニーズがどんなものがあるかということも勘案しながら、これは十分検討していくべき、検討に値する、そういう課題だというふうに認識をしております。

井上(一)委員 前向きな答弁、ありがとうございました。ぜひ、やはり検討を進めていっていただきたいというふうに思います。

 残り、もう一分しかありません。

 この間、横田空域について、これはやはり全面返還に向けて日本としてもぜひ取り組むべきだということで、河野大臣からも、米国と今後しっかり調整をしてまいりたいということでありました。ぜひしっかり調整をしていただきたいということで、どういうふうに調整を進めるのかというのを聞こうと思っていたんですが、ちょっと時間がありませんので。

 以前、平成二十一年度に横田空域の全面返還に関する条件について検討が既に終わっておりまして、この資料をぜひ提出していただきたいということだったんですけれども、それについては、米側との関係もあって、現時点では出せませんという回答でありました。

 これは今後の委員会の審議にもぜひ必要な資料だと思いますので、ぜひ提出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として、日米地位協定の運用を含む日米間のさまざまな外交上のやりとりについては、相手方があることではございますが、国民の皆様に丁寧に御説明する観点から、公表できるものは公表するよう努めることが望ましいと考えております。

 他方、その上で、御指摘いただきました、二〇〇六年のロードマップに基づく横田空域全体のあり得べき返還に要する条件に関する日米間の検討については、既にしかるべく完了しているところでございます。

 当該検討の結果については、関連空域の再編成や航空管制手続の変更のためのさまざまな選択肢に関する包括的な検討の一環に位置づけられるものでございまして、そのような位置づけの中で日米間で協議した内容でもあることから、現時点で当該検討の結果をお答えすることは差し控えたいというふうに考えております。

 以上でございます。

井上(一)委員 これはやはり米側と調整して、ぜひ資料として提出していただきたいと思うんですけれども、委員会としてもぜひ協議していただきたいと思いますが、委員長、どうでしょうか。

若宮委員長 理事会で後刻協議させていただきます。

井上(一)委員 では、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

若宮委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 初めに、穀田議員の続きの質問をさせていただきます。

 原田防衛副大臣にお越しいただいております。

 陸上自衛隊が参加した海外での共同訓練に関する日報問題について伺います。

 原田副大臣はこれまで、本委員会での我が党の穀田議員の質問に対し、陸上自衛隊が海外で実施する共同訓練では、基本的に演習場等で計画的に訓練を実施するものであることから、防衛大臣や上級部隊の指揮官の判断に資するような定時報告を求めることは一般的ではないと繰り返し答弁されてきました。岩屋防衛大臣も、三月十五日の記者会見で、共同訓練というのは、通常、一々日報をとっているものではないと述べられておりました。

 ところが、二〇一六年十月から十一月に行われたキーンソードと呼ばれる日米共同統合演習では、河野統幕長が発した実施計画に基づき、定時報告の様式まで定めて報告を行うよう指示されていたことがわかりました。

 資料を配付しております。防衛省が提出した実施計画、全体はもっと分厚いものでありますが、その当該部分であります。

 別紙七、定時報告様式ではどのような内容を報告するよう義務づけているか、原田副大臣、読み上げていただけますか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 まず、二〇一五年十月一日から二〇一八年三月三十一日に陸上自衛隊の部隊が海外で実施した共同訓練のうち、相手国との関係から公表しておらないものを除いた三十件の訓練について、防衛大臣の一般命令及び幕僚長指示について確認をいたしましたところ、定時報告について言及をされていたのは、平成二十八年度日米共同統合演習、実動演習のキーンソード17についての統合幕僚長指示のみでありました。

 現時点で把握している限り、陸上自衛隊の部隊が海外で実施する共同訓練については、防衛大臣の一般命令及び幕僚長指示において、防衛大臣や上級部隊の指揮官の判断に資するような定時報告を求めることは一般的でなく、通常、訓練終了後に成果報告をさせており、この点はこれまで御説明しておるとおりでございます。

 その上で、お尋ねの平成二十八年度日米共同統合演習、キーンソード17につきましては、統合幕僚長指示の別冊実施計画において、成果報告等のほか、訓練の進行管理を行う統裁部における統裁官、これは統合幕僚長でありますけれども、に対する定時報告を求めておりまして、その様式で、部隊の活動、安全管理、予定主要演習行動、その他を報告項目としておりまして、これらの内容に関し、前日十七時から当日十七時までの訓練状況及び自後二十四時間の訓練予定等をメール等により毎日十八時までに各主要部隊統裁部長等から統裁官宛てに報告することとされております。

宮本委員 私は、別紙七に何が書いてあるか読んでくださいと言ったんですけれども、そういう長々した説明は要らなかったんですけれども、共同訓練では、通常、一々日報をとっていない、定時報告を求めることは一般的ではないといいますが、今御答弁あったとおり、二〇一六年度の共同演習では、部隊行動や作戦方針など、まさに二十四時間ごとに定時報告するように義務づけていたわけであります。

 そして、通常、一々とっていない、一般的に求めていないといいながら、これまで本委員会で議論になったように、少なくとも三件の共同訓練では日報が作成されていた事実が判明しております。

 今回は、二〇一六年の共同演習では、統幕長の指示で、定時報告様式まで定めて、日報の作成を義務づけていたことが明らかになりました。

 これらの事実からいっても、日報を通常とっていないとか、一般的に求めていないという説明はもう成り立たないというふうに私は思います。通用しないというふうに思います。

 更にお伺いしますが、では、なぜ二〇一六年度の共同演習では日報の作成を義務づけていたんですか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 平成二十八年度日米共同統合演習、キーンソード17と呼ばれるものでありますけれども、陸上自衛隊の各方面隊、海上自衛隊の自衛艦隊、航空自衛隊の航空総隊など、陸海空自衛隊の部隊等が参加し、我が国周辺海空域、自衛隊施設や在日米軍基地に加え、米国グアム、マリアナ諸島において実施された最大規模の日米共同の実動演習でございます。

 本演習では、全国の陸海空自衛隊の部隊が同時期に国外を含む異なる場所で各種訓練を実施しており、統裁官が適切に訓練の進行管理を行う必要があることから、必要な報告の一つとして定時報告を求めていたものでございます。

宮本委員 大規模な演習だからだという話ですけれども、それだけじゃないんじゃないでしょうかね。

 実施計画を見ると、共同演習の目的について、武力攻撃等における島嶼防衛を含む自衛隊の統合運用要領及び米軍との共同対処要領並びに重要影響事態における対応措置要領を演練することを目的に演習を行う、こう記されているわけですね。

 これを見ても、この演習で日報の作成を義務づけたのは、安保法制に基づく初の共同訓練だった、だから、日米間の共同要領を検証する上で必要不可欠だから日報を義務づけたんじゃないですか。違いますか。

原田副大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、大規模な訓練であるということで、必要な報告の一つとして定時報告を求めていたものと承知をいたしております。

宮本委員 大規模な訓練はほかにもあるんじゃないですか。

 安保法制に基づく初の共同演習として実施され、統幕長の指示により作成を義務づけられていた、これは間違いない、事実の問題としてはそういうことなわけですよね。

 この共同演習の日報について、原田副大臣は、四月三日の本委員会で、該当文書が確認されていないと答えられておりましたが、その後どうなっていますか。発見されましたか。

原田副大臣 昨年四月二十六日、穀田議員からの資料要求につきましては、陸上自衛隊が二〇一五年十月一日以降に参加した海外での共同訓練に係る日報を含む定時報告の陸上自衛隊の部隊又は陸上自衛隊の機関の保有状況についてでございまして、これまで、防衛省では、陸上幕僚監部並びに陸上自衛隊の部隊及び機関に対して調査を実施してまいりました。

 そのうち、本演習、キーンソード17では、幕僚長指示に基づき、主要部隊の統裁部で定時報告文書を作成したと思われますが、これまでの調査においては、現時点で、陸上自衛隊においてこれを保有していることは確認をされておりません。

 しかしながら、委員会での御議論も踏まえて、防衛省においては、防衛大臣の指示のもと、対象となる文書の陸上自衛隊の作成、保有、廃棄に係る調査を改めて実施しているところでございます。

 対象となる訓練参加部隊が多数に上ることから、その確認には一定の時間が必要になりますが、できる限り早い時期に御報告ができるように今調査をしているところでございます。

宮本委員 まだ見つかっていないというのは、こんなおかしな話はないと思いますよ。だって、統幕長の指示に基づいて、添付資料にあるように、わざわざ報告様式まで定めて作成を義務づけていたわけですよ、この日報は。その日報がどこに行ったかわからない。およそ信じられない状況であります。

 防衛省が、我が党の穀田議員の求めに応じて、この共同訓練の日報の保有状況の調査を開始したのは昨年の五月十日なんですね。この時期は、ちょうど国会ではイラク日報が大問題になっていたさなかであります。

 こうした状況をそんたくした部署が、更に共同訓練での日報という新たな問題が発覚しないよう隠蔽を図った可能性、これはないんですか。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 今、委員会での御議論を踏まえてしっかりと対応させていただくべく、陸上自衛隊の部隊の海外での共同訓練に係る定時報告文書の保有状況調査に係る防衛大臣の指示を三月二十九日に発出をいたしまして、現在調査をしているところでございます。

 本調査においては、全国の陸上自衛隊の部隊等に対し十分な調査を行うため、一定の時間が必要となりますが、判明した内容については可能な限り早い時期に御報告ができるよう調査を実施してまいります。

宮本委員 南スーダンやイラクの日報問題では、防衛省には残念ながら前科があるわけですよ、前科が。

 自衛隊が他国との共同訓練の現場でどのような対応をしたか記録された一次資料として作成が義務づけまでされていた日報の所在が行方知れずというのは、極めて重大な問題だと言わなければならないと思います。

 自衛隊の運用で最も重要なシビリアンコントロールがきいていないんじゃないか、こういうことで、民主主義からしても本当に危機的な状況だというふうに私は思います。

 先ほど、判明したら報告するという話がございましたが、現在、防衛大臣の指示に基づいて行っているという内部調査の期限は六月二十八日ということですが、これでは国会が終わってしまいます。そのようなこそくな期限は直ちに撤回をしていただいて、前防衛大臣も行っていましたように、調査を通じて新たな事実が判明した時点で、大臣の記者会見の場などでその都度公表していく、これはお約束していただけますね。

原田副大臣 繰り返しになりますけれども、委員会での御議論を踏まえ、しっかりと対応させていただくべく、防衛省においては、陸上自衛隊の部隊の海外での共同訓練に係る定時報告文書の保有状況調査に係る防衛大臣の指示を三月二十九日に発出し、現在調査を実施しているところでございまして、本調査においては、全国の陸上自衛隊の部隊等に対し十分な調査を行うため、一定の時間が必要となりますが、判明したことについては可能な限り早い時期に御報告ができるよう調査を実施してまいります。

宮本委員 もう半月以上も指示を出してからたっているわけですよね。直ちに、わかったことは明らかにしていただきたいと思います。

 その上で、次の問題に移ります。

 外務省の予算書に記されていない不透明な支出があるのではないかということで、質問させていただきたいと思います。

 日本政府から、米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所、CSISへの支出であります。CSISのホームページを見ますと、ガバメントドナーズとして五十万ドル以上の貢献をしているドナーとしてジャパンと書いてあります。

 このドナーというのは、日本語で訳せば何なんでしょう、大臣。

河野国務大臣 CSISがどのような意味でドナーという用語を使っているかお答えをする立場にございませんが、一般に英語でドナーといえば資金提供者あるいは寄贈者という意味だろうと思います。

宮本委員 資金提供あるいは寄贈ということでございますが、このCSISの支出は資金提供、寄贈ということですけれども、予算書をひっくり返してもどこにも出てきませんでした。

 それで、改めて、この十年間における外務省の支出額を聞きました。そして、出てきたのが資料の三ページ目であります。平成二十五年度七百七十七万八千八百四十八円、平成二十六年度八百八十七万五千五百円、平成二十七年度三千四百三十二万三千五百二十円、平成二十八年度八千三百六万五百二十円、平成二十九年度七千九百六十八万一千八百円、平成三十年度八千五百六十九万八千九百二十八円ということでございます。

 私たちがCSISで研究経験がある方に聞いたところ、CSISには防衛省や外務省、あるいは警察庁から来ている研究員がいたそうであります。

 そこで、防衛省に長期出張者についての資料を出していただきました。それは次のページであります。四ページ目です。二〇一三年度から二〇一八年度まで、毎年一名ないし二名が交代で研究員となっていて、やっているのは安全保障、防衛関連分野の調査研究ということであります。毎年同じことしか書かれていないわけですが。

 防衛省、きょう来ていただいていますけれども、この安全保障、防衛関連分野の調査研究というのは、一体、具体的に何をやっているんですか。それとあわせて、防衛省からCSISへの各年度の支出があればお答えいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省は、これまで、米国の有力シンクタンクであるCSISに対しまして、安全保障、防衛関連分野の研究に従事するための職員を派遣してきております。

 派遣された職員につきましては、CSISの研究員との意見交換や、各種セミナーへの参加等を通じて、米国政治、日米関係、国際軍事情勢などに関する研究に従事しております。

 各分野における有識者との意見交換等を通じて培われた知見は、以後の防衛省における勤務において大変有益なものであると考えております。

 こうした研究員の受入れのための経費として、二〇一三年度から二〇一八年度につきまして、CSISに対しまして年間六万ドルを支出してきているところでございます。

宮本委員 防衛省もお金を出して、年間六万ドルということですから、今でいえば六百数十万ということになるでしょうか。

 それで、今の話では具体的に何を研究しているのか、意見交換をやっているということはわかりましたけれども、それ以上のことはわからないんですけれども、このCSISは、いわゆるアメリカのジャパン・ハンドラーと言われる人たちも集まっているわけですよね。アーミテージ・レポートを出しているわけですよね。

 まさか、このアーミテージ・レポートを、防衛省の職員が一緒になって作成過程にかかわっている、こういうことはないでしょうね。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになるかもしれませんけれども、派遣された職員につきましては、CSISの研究員との意見交換や、セミナーへの参加等を通じて、米国政治、日米関係、国際軍事情勢等に関する研究等に従事しているところでございます。

 細部につきましては、事柄の性質上、お答えは差し控えさせていただきます。

宮本委員 アーミテージ・レポートを一緒になってつくっているということを否定されないわけですか。

 これは恐ろしい話ですね。アメリカの対日要求だといいながら、実際は防衛省が一緒になってつくっている可能性もあるということじゃないですか。

 外務省にもお伺いしますが、先ほど、寄贈ないしは資金提供している額について読み上げさせていただきましたが、二〇一五年度以降、CSISへの支出が大幅に増加しておりますが、これは何に使っているんですか。増加している理由を明らかにしていただきたいと思います。

河野国務大臣 CSISとの間で公にしないことを前提としている情報が含まれており、公にすることによりCSISの正当な利益を害するおそれがありますので、詳細のお答えは差し控えたいと思います。

宮本委員 全く何に使っているか闇じゃないですか、それでは。

 それで、これは私も外務省から出てきた説明資料を見て本当に驚いたんですけれども、ちょっと三ページに戻っていただきたいと思いますが、二〇一七年度のCSISへの支出額七千九百六十八万一千八百円について、予算書のどの項目から支出しているのかと聞きました。

 そうしたら、外務省からは、該当ページ参照というのは五ページ目を見ていただきたいと思いますが、予算書の該当ページ、黄色いマーカーを引いて出てまいりました。組織は在外公館、項は分野別外交費、事項は国際の平和と安定に対する取組に必要な経費、目は諸謝金。ここは、要求額一千七百六十六万九千円とありますが、その内訳は右にあるとおりであります。CSISは書いていない。

 三ページ目に戻っていただきたいと思いますが、ここでも外務省の説明では、ここに当たるといいながら、平成二十九年度の要求額、CSISへの支出を想定した要求額はないと書いてあるんですよ。

 何でこんな全くつじつまが合わない説明をするのか。一体、このCSISへの支出は、予算書でいえば、どこから出ているんですか。示せないようなところから出ているんですか、これは。河野大臣、教えてください。

河野国務大臣 これは別にCSISへの支出を想定をして予算要求をしているわけではなくて、予算成立後に支出先を選定しているということなんだろうと思います。

宮本委員 予算成立後に支出を選定するということで、諸謝金の額は一千七百六十六万で、とても七千九百六十八万円は出ないんですよ、予算計上上は。もし、これを全部、この使い道は国会で示したものと違うことに使いますと仮にやったとしてもですよ、出てきようがないじゃないですか。

 大臣、これは一体全体どこから出てきているんですか。

河野国務大臣 そのほか、恐らくCSISは、広報文化交流及び報道対策費などから支出されているんだろうと思います。

宮本委員 私は外務省に資料請求して、どこから出てくるんだといって、出された唯一の予算書のページはここだけであります。河野大臣はそういうふうに説明されますが、違うんですよ。コード番号も示して、どこから出ているんですかと聞いて、出してきたのがこれなんですよね。

 ですから、河野大臣の説明、ちゃんと事務方から説明を受けていただきたいと思いますが、これしか出てきませんでした。あとこれはどこから出てきているのか。これは機密費じゃないかという疑いも持たざるを得ないわけです。

 これは、このままでは、一体どこからこのお金が出てきたのか、国民に対しても国会にも説明がつかない状況だというふうに思いますので、ちゃんと調べて、説明のつく、道理のある資料提出をお願いしたいと思いますが、大臣、いかがですか。

河野国務大臣 委員会からの求めがあれば、しっかりと対応したいと思います。

宮本委員 これは予算の支出にかかわる、予算の支出の透明性にかかわる問題であります。委員長からも、このCSISの支出が予算書のどの項目からどういう根拠に基づいて出されているのか、資料提出を指示していただけますか。

若宮委員長 その件につきましては理事会で協議させていただきたいと思います。

宮本委員 この問題は引き続き追及していきたいと思います。

 最後に、一問だけお伺いしたいと思います。

 F35戦闘機が墜落してパイロットの安否が気遣われる状況が続いております。防衛省は事故調査委員会を立ち上げました。

 私は、二月の予算委員会で、米国の国防総省運用試験・評価局やあるいは米検査院が指摘している欠陥を紹介しながら、F35は未完の戦闘機ではないかと当時岩屋大臣と議論をさせていただきました。

 米国の報告書を読みますと、二〇一七年に、飛行中のパイロットが酸欠になるという事案が頻繁に起きたと記されております。会計検査院の米国の報告には墜落の危険もあると書かれている、そのことも私は大臣とは議論をさせていただきました。

 さらに、米検査院の報告では、二〇一八年一月時点で未解決の欠陥が九百六十六あると。予算委員会で聞いた際は、リストは保有していないが、米側に確認したら、飛行の安全性に影響を及ぼす課題はない、こういう答弁でありました。しかし、今回は、ベテラン中のベテランのパイロットが乗っているF35が墜落するということになりました。

 事故調査に当たっては、まずは、米国防総省運用試験・評価局やあるいは米会計検査院が既に指摘しているF35Aの欠陥の詳細について、日本政府自身が入手することが必要不可欠ではないかと思いますが、いかがですか。

原田副大臣 委員御指摘のとおり、二〇一六年の米国防総省運用試験・評価局の年次報告において、F35A、B、C全ての型式全体で二百七十六件の未解決の課題があると指摘されております。また、二〇一八年の米国会計検査院の報告書においては、全体で九百六十六件の課題があると指摘されたことは承知をいたしております。

 その上で、防衛省としてその内容について米国政府に確認を行っており、その結果として、我が国が導入するF35Aの機体については、運用能力や飛行の安全性等に影響を及ぼすような課題はないこと、それ以外の比較的軽微なふぐあいについては、既に改善のための取組が開始されており、主にソフトウエアのアップデートにより、追加的な費用負担なく、随時改善をされていくことを確認をしております。

 今般の事故については、航空幕僚監部に設置した航空事故調査委員会において事故原因等について調査を進めており、御指摘のリストの保有の有無にかかわらず、必要に応じ米側に問合せをすることも含め、さまざまな角度から調査を実施してまいります。

宮本委員 アメリカ側はこのF35を、日本でつくったF35でありますが、一番最終点検のところは日本人を入れずにアメリカ側だけで検査をやっているということが報じられております。極めてアメリカは情報を出さない状況が続いているわけですよね、このF35については。

 ですから、この九百六十六の欠陥の詳細を皆さんは知らないわけですよ。アメリカ側に問い合わせて、大丈夫だと言われた、だから大丈夫だと確認しました、こういう答弁が続いているわけですよね。それではだめですよ。人の命がかかっている話ですからね。

 ですから、これは当然、アメリカ側に対して、一体どういう欠陥があるのかというのは、詳細について日本政府自身が手に入れないと、責任ある運用というのは防衛省の立場でもできないんじゃないですか。そのことを真剣に検討していただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

若宮委員長 次に、中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件、二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件及び二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣河野太郎君。

    ―――――――――――――

 中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件

 二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件

 二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この協定は、平成三十年十月にデンマーク王国イルリサットで作成されました。

 この協定は、健全な海洋生態系を保護し、並びに魚類資源の保存及び持続可能な利用を確保するための長期的な戦略の一部として中央北極海の公海水域における規制されていない漁獲を防止することを目的として、この水域における漁獲に対する予防的な保存管理措置の適用等について定めるものです。

 我が国がこの協定を締結し、その早期発効に寄与することは、このような目的に積極的に協力し、及び我が国の漁業の安定した発展を図るとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十三年三月に国際海事機関の主催によりロンドンで開催された国際会議において採択されました。

 この条約は、船舶からの燃料油の流出又は排出による汚染損害について船舶所有者の責任及び強制保険、締約国の裁判所が下す判決の承認等について定めるものです。

 我が国がこの条約を締結することは、船舶からの燃料油の流出又は排出による汚染損害についての責任を明確化し、及び適正で迅速かつ効果的な賠償の支払いを確保することを通じ、被害者の保護を充実させ、及び海洋環境の保護に寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十九年五月に国際海事機関の主催によりナイロビで開催された国際会議において採択されました。

 この条約は、危険をもたらす難破物の除去のための措置、難破物の除去に関係する費用についての船舶の登録所有者の責任及び強制保険等について定めるものです。

 我が国がこの条約を締結することは、難破物の迅速かつ効果的な除去を通じて航行の安全及び海洋環境の保護に寄与するとともに、難破物の除去に関する費用についての責任を明確化し、及びその支払いを確保することを通じて放置座礁船の減少につなげるとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

若宮委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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