衆議院

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第11号 平成30年4月18日(水曜日)

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平成三十年四月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊東 良孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君

   理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君

   理事 福山  守君 理事 佐々木隆博君

   理事 大串 博志君 理事 佐藤 英道君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      稲田 朋美君    上杉謙太郎君

      加藤 寛治君    金子 俊平君

      神田 憲次君    木村 次郎君

      岸  信夫君    小寺 裕雄君

      斎藤 洋明君    田野瀬太道君

      高木  啓君    長尾  敬君

      西田 昭二君    野中  厚君

      藤井比早之君    藤原  崇君

      古川  康君    細田 健一君

      本田 太郎君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    山本  拓君

      石川 香織君    大河原雅子君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      山川百合子君    後藤 祐一君

      佐藤 公治君    関 健一郎君

      緑川 貴士君    江田 康幸君

      金子 恵美君    田村 貴昭君

      森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       齋藤  健君

   内閣官房副長官      野上浩太郎君

   農林水産副大臣      礒崎 陽輔君

   農林水産大臣政務官    野中  厚君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    橋本 次郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 境   勉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           和田 純一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         横山  紳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           池田 一樹君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           別所 智博君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沖  修司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      長谷 成人君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           眞鍋  純君

   政府参考人

   (環境省大臣官房政策立案総括審議官)       米谷  仁君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     田野瀬太道君

  古川  康君     本田 太郎君

  石川 香織君     山川百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  田野瀬太道君     長尾  敬君

  本田 太郎君     高木  啓君

  山川百合子君     石川 香織君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     古川  康君

  長尾  敬君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     藤井比早之君

    ―――――――――――――

四月十八日

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

伊東委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官横山紳君、消費・安全局長池田一樹君、食料産業局長井上宏司君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長荒川隆君、政策統括官柄澤彰君、農林水産技術会議事務局長別所智博君、林野庁長官沖修司君、水産庁長官長谷成人君、内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、消費者庁審議官橋本次郎君、総務省大臣官房審議官境勉君、厚生労働省大臣官房審議官和田純一君、国土交通省大臣官房審議官眞鍋純君及び環境省大臣官房政策立案総括審議官米谷仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 おはようございます。自由民主党の衆議院議員の藤原崇であります。

 本日は一般ということで質問をさせていただきます。理事、委員の先生方、委員長に大変感謝をしながら質問をさせていただきたいと思っております。

 今国会、働き方改革ということで、一つ大きな柱ということにはなっておるんですが、もう一つ、私の方で大きな柱かなと思うのは、やはり所有者不明土地の問題、これに対する問題というのが非常にこの農水委員会でも議論されておりましたし、国交委員会を始め、さまざまなところで関連法が提出されております。そういう意味で、この所有者不明土地の問題というのも一つ大きな柱になっているのかなと思っております。

 本日は、所有者不明土地の問題と土地改良の問題、それから少し話をかえて中山間の山村振興法についてお伺いをしていきたいと思っております。

 現在、所有者不明土地について、所有権を取得する、あるいは農地に利用権をつけるという意味では立法的な手だてはなされているのでありますが、それ以外の分野で意外と隘路になっているというところがたくさんあります。

 昨今の例で申し上げますと、愛媛県の刑務所から受刑者が逃走して、小さな島なのになかなか見つからないという件がありますが、この向島というところには千軒ほどの空き家がある。空き家というのは、所有者の同意がなければ警察は立ち入れませんので、所有者不明というか、所有者が不在であると、その空き家を外から見ることはできるけれども、中に入って確認ができない、そういう空き家が千軒あるということになっております。その一方で、逃走犯の方は当然同意がなくても入れるわけですので、それは一つ大変だなと思っております。

 逆を申し上げますと、このように、何も所有者不明土地、所有権や利用権を設定すればいいというだけではなくて、そういうときの立会いの問題であるとか、そういう大きなところじゃないところで意外と隘路というのが出てくるのかなと思っています。

 そこで、まず前提としてお聞きをするんですが、土地改良事業、これを実施する際には、土地所有者の同意が必要でございます。所有者不明土地、所有者不明の農地というか、その場合の同意の取得の手続はどのようになるでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生から、土地改良事業を実施する際の所有者などの同意についてお尋ねがございました。

 土地改良事業につきましては、一定の土地ですとか水系のつながりによりまして、一定の地域を対象にいたしまして事業を実施するものでございますので、その地域全体の合意形成を図るという必要がございます。したがいまして、その実施に当たりましては、事業に参加する資格を持っておられる方、事業参加資格者と言っておりますが、その方々の三分の二以上の同意が必要というふうにしておるところでございます。

 この事業参加資格者でございますけれども、自作地の場合、いわゆる自分で持って自分で耕しておられる場合はその農地の所有者ということになりますが、貸借地の場合につきましては、利用権者、耕しておられる方又は所有者のいずれか一人ということになっておるところでございます。

 それで、同意徴集手続を行う場合におきます、所有者が不明な場合の取扱いでございます。これは、事業参加資格者が所有者であって、その所有者が不明のような場合ということが想定されるわけでございますけれども、こういう場合には、同意の意思表示をしていただけませんので、法律上の同意手続に当たりましては、未同意ということで取扱いをさせていただいておるところでございます。

藤原委員 未同意というのは不同意と概念としては一緒なんですかね、事実上なんですが。(荒川政府参考人「ちょっと違います」と呼ぶ)ちょっと違うということで、通告はしていないんですが、もしそこのところを少し説明できるんだったら、よろしいでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 未同意と不同意でございますけれども、不同意は、資格者が同意しないという意思を表示していただいた場合を不同意という扱いにいたしておりまして、それから未同意というのは、今申し上げましたように、何らかの事由がございまして意思表示がわからないという取扱いになっております。

 ただ、同意手続上は、分子は同意をしていただいた方の数になりますので、分母、分子の関係でいえば、未同意も不同意も、同意をしていただけないという意味では同じ効果になります。

藤原委員 ありがとうございました。実質的には同意がないということで、不同意と同じ扱いになるということでありました。

 今はそこまで大きな問題にはなっておらぬのですが、これから十年、二十年先、この所有者不明土地というのは残念ながらふえる可能性が高いだろうと思っております。そうなった場合に、本当に、この不同意あるいは未同意というものが改良事業を進めるに当たってのハードルにならないのかということが疑問点としてあります。

 今、土地改良法上、三分の二の同意があればオーケーということで、六六・六六ということで、そこまで高いハードルではないんですが、例えば県営事業、私が調べたところでも、実質的には、スムーズに事業を進めるためということで、ある県の県営事業については、実質ゴーサインが出た後の、直前の本同意で九五%以上を要求しているところ、あるいは、面整備の場合は同意一〇〇%で工事着手というところもございます。あるいは、事前の調査についての同意も九〇%であったり、仮同意九五%以上、これは要綱行政というふうに呼ばれるものなんだろうと思いますが、事実上、非常に高いハードルを課しているという地域もあります。そういうときに、この未同意、不同意というものが一つネックになってしまうのかなと思っております。

 それを踏まえて、今回、所有者不明土地については、利用権あるいは土地収用などでは大きな立法的対応をしましたけれども、土地改良法においても、今後を踏まえれば、所有者不明の場合の扱い、これを改良法上において何らかの取扱いをして、仮に不明土地がある程度出てきたとしても事業の実施に支障がない、そのような状況をつくることが必要かと思いますが、御見解を伺いたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御質問ございました、土地改良事業を実施する上での所有者不明農地が問題となる場合、幾つか想定をされるわけですけれども、先生が今御紹介されたような場合に一番該当するものといたしましては、所有者の方が事業参加資格者になっている場合でありまして、かつ、この所有者がかなり昔に亡くなっておられて、その相続手続なり相続登記が行われていないような場合が想定されるわけでございます。

 特に、相続人の方がたくさんいらっしゃって共有地になっているような場合について、どういうふうに同意をとっていくのかというのが、大変、事業執行上課題になっておったところでございます。

 昨年、土地改良法を改正させていただきまして、それまでは、共有者がいらっしゃる場合には、その共有者が一票ずつ持っておられて、例えば十人の方が共有の場合は十票、分母にも分子にも、同意をとるときに十票がカウントされていたところでございますけれども、昨年、国会で土地改良法の話を通していただいた中で、共有者の場合は、十票ではなくて、共有者全体で一票にするという法律をみなしでつくっていただいたところでございます。これによりまして、分母も十から一に縮むということで、同意の手続をとる上での支障が生じにくいという取扱いをさせていただいたところでございます。

 さらに、先生からお話ございました、今国会に農業経営基盤強化促進法改正法案を出させていただいておりまして、その中で、これは所有権ではなくて利用権になりますけれども、一定の手続を経れば中間管理機構に対して利用権が設定されるということになりますので、その中間管理機構に設定された利用権を更に転貸を受けて利用される方が事業参加資格者になっていただければ、その方がきちんとした法手続にも参加できるということで、今回の法律改正について、私ども、この土地改良事業の運営に当たっても大変有効なものではないかと考えておるところでございます。

藤原委員 こういう手続がありますということで、当面の対応として、先般の改正、あるいはまだ参議院は通っていないのかもしれませんが、農業経営基盤強化法の利用権の設定手続を拡充したというお話がございました。それはそのとおりなんだろうと思っております。

 ただ、共有者自身が代表者を一人選ぶというときに、完全な不在の場合、耕作放棄地なんか典型例で、基盤整備をやろうというときに、耕作放棄地というのはそれなりに条件がいいところですから、今はまだないのでありますが、仮にそういう地域、完全に誰もいないというところが出てきたり、あるいは、これはどの段階で同意権者が必要かにもよるんですが、例えば事業の事前の段階で、調査同意の段階から利用権者が、そこで設定をして、その後、調査をして、設計をして、事業採択に行って、実際に事業が終わってできるところまでというのを、利用権を設定してその段階からずっと待っていなさいというのは、なかなかちょっと酷なところもあるんだろうと思っております。

 ただ、利用権も今回五年から延長されるということで、これは仮に五年間だったら完全に無理だろうというところなんですが、そういう意味では、一つやり方としてはあるのかなと思いますが、ぜひ、今後、この所有者不明土地の問題は、これから十年後ぐらいには大きく地方では出てくると思いますので、きょう、そういう指摘もあったということを踏まえて、今後、事例については研究をしていただければと思っております。

 そのように人口減少が進む中においては、受益地の小さい改良区、これも維持が困難になっているというところもございます。私の生まれた町でも、改良区、職員の方はいらっしゃるけれども、ちょっと今のまま賦課金を、二十年後まで責任持って払えないということであれば、余力のあるうちに解散をしてしまった方がいいのではないか、そういうような議論も小さいところでは出てきているところであります。

 中でも、国営の造成施設を管理する、そういう改良区においては、もちろんそれの維持管理の分もあるということで負担が大きいというところもございます。それに対して、国の事業において支援はなされているんですが、なかなかそれでも維持ができない、そういう声もあります。

 こういう支援の拡充や、あるいは、一定程度の要件を満たした施設については、基幹水利施設管理事業という事業で、助成の主体や対象、これが制限されているんですが、それの拡充も今後、受益地が小さい改良区、これの対応という意味では必要かと思うんですが、この点についての認識を伺います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生から、国営造成施設の管理に関する維持管理の問題につきまして御質問を頂戴いたしました。

 農業水利施設の維持管理でございますけれども、これは土地改良法なり土地改良法施行令の中で規定が決まってございまして、基本的に、施設を利用してその便益を受ける農業者の方が農業経営の中で負担をしていただくという原則に法令上なっておるところでございます。

 一方で、水利施設は農業経営のものだけに使われるわけではございませんで、水資源の涵養ですとか洪水防止といった公共的、公益的な役割を有しておりますので、国といたしましては、これらの役割に着目をいたしまして、維持管理に係る一定の支援を行っているところでございます。

 今、先生から二つほど事業を御説明ございましたけれども、国営造成施設管理体制整備促進事業というものがまず一つございまして、これは、国営でつくりました土地改良施設を管理していただいている土地改良区の皆様方が、当該土地改良施設が多面的機能をしっかり発揮していただけるように、体制整備をしたり多面的機能発揮の活動をなさるといったような取組に対しまして、一定の支援をさせていただいております。

 また、そういった国営の施設の中でも、特に大規模で公益的、公共的機能が高いもので都道府県なり市町村が管理されておる施設につきましては、この維持管理費につきまして一定の助成をさせていただいておるところでございます。

 制度発足以来、一定の考え方に基づきまして対象施設ですとか要件といったようなものを定めておるところでございまして、これを急に上げるというのはなかなか難しいわけでございますが、私ども、この二つの代表的な事業のほかにも、施設の整備、補修をされる際の支援ですとか、もろもろ、いろいろな形でこの土地改良施設の維持管理に係る負担の軽減ということは大事だと思っておりますので、これからもしっかり対応してまいりたいと思っております。

藤原委員 ありがとうございました。

 地方の道路などがいい例なんですが、やはり、高度経済成長期に非常に多く道路あるいはインフラもつくったことによって、もちろんそれは大事だったし、今も維持しなければいけないんですが、その維持のコストというのが非常に大きくなっているというのは、国もそうですし、県、市もそうであります。それは、ある意味で、道路とかそういう公共施設だけではなく、公共施設といえばそうなんですが、国営のそういう造成施設等もそうであると思っております。

 なかなか、つくったときとは少し事情が変わってきているということを踏まえて、さはさりとて、誰かが維持をしていかなければだめだということで、恐らくこれもやはり十年後ぐらいにはもっと大きな顕在化の問題になってくると思っておりますので、ぜひ御配慮をいただければと思います。

 次に、同じく中山間の法律なんですが、山村振興法についてお聞きをしていきたいと思います。

 この山村振興法は、平成二十七年に有効期限が十年延長されました。その際に、二十七年度から山村活性化支援交付金制度、これが創設されましたけれども、三カ年の事業ということで、平成二十七年度の採択事業は、二十九年度、先月で終了となりまして、第一期の卒業生ということになりますけれども、これに関して、事業効果という点で、農水省の見解を伺いたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 山村活性化支援交付金についてのお尋ねでございます。

 今先生からお話ございましたように、この交付金、平成二十七年の山村振興法の改正の際に導入をされた制度でございまして、この法律に基づきまして指定されました振興山村におかれて持っておられます特色ある資源の商品化ですとか販売促進などの取組を支援するということでございます。

 先生御指摘ございましたように、二十七年度に最初の採択をいたしまして、最長三カ年間やっていただけるということで、最初の年に採択されました地区におかれましては御卒業されたという状況でございます。二十七から二十九年度まで、三年間で百二十地区を採択いたしまして、これまでに、三年を待たずに卒業されたところもいらっしゃいますけれども、七十三地区において事業が終了されたというふうに承知をしております。

 さまざまな優良事例、私ども承知しておりますけれども、特産品の開発による新たな販路開拓に取り組まれました岡山県矢掛町の場合ですとか、あるいは、新しい冷凍技術の導入による新たな雇用の創出につながった京都府の与謝野町の事例、それから、森林資源を活用して原料供給体制を構築された、先生御地元、岩手の西和賀町など、さまざまな取組が行われておるところでございます。こういった取組につきまして、さらに、今後、開発された製品ですとか販路を活用していただいて、ますます事業効果が発現できるように取組が進展していくものと思っております。

 私ども、一巡が終わりまして、今度また平成三十年度から新たな採択も予定いたしておりますので、引き続き、この事業につきましてしっかり対応してまいりたいと思っております。

藤原委員 言ったわけではないんですが、西和賀町も取り上げていただきまして、ありがとうございました。

 非常に、私は、この交付金制度はいいのかなと思っております。ハードでは使えないんですが、そして、額も定額で一千万円と大きいわけではないんですが、自由に使えるということで、自治体であるとかその地域によって、創意工夫によって、こういうことがやりたいんだ、そういうのは割と実現しやすい制度かなと思うんですが、少し気になるのは、直近、昨年度、平成二十九年度の採択数は十七件と、少し右肩下がりで採択数が減っているのかなと思っております。

 本来は、ある程度決まったお金を渡して、後は自治体で、今まであるような、箱物をつくるとか、よくわからない補助金で出すというだけではなく、そのお金を原資に自由に物事を進めていただくというために、たくさん利用してもらう方がいいんだと思うんですが、採択数がちょっと減少傾向にあることの要因について、農水省ではどうお考えでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 山村活性化支援交付金の採択の状況でございます。

 今先生お話ございましたように、この事業、最大三カ年間にわたりましてソフトな活動を支援して、いろいろな取組に使っていただける大変使い勝手のよい事業でございました。

 二十七年の制度発足当時からの推移を申し上げますと、二十七年度には七十一地区、二十八年度には三十二地区ということで新規採択されていますが、二十九年度においては先生御指摘ございました十七地区にとどまっているというのは事実でございます。

 新しい事業ができまして、いろいろ考えておられた地区の皆様方、我こそはということで手を挙げていただいて、初年度目、二年度目、かなりの数だったというようなこともあって三年目は十七地区にとどまっているのかなと考えておりますけれども、三カ年間のすだれの事業でございますので、縦で切って、総継続地区数で申しますると、二十七年度が七十一地区、二十八年度が百地区、二十九年度が百十五地区と、当然ながら毎年増加してきているところでございます。

 今般、一巡目が終わって卒業されるということでございまして、私どもも制度のPRなどにも努めまして、この三十年度におかれましては新たに五十地区の新規採択が予定されておるところでございますので、引き続き制度の普及などに当たってまいりたいと思っております。

藤原委員 初年度の地区が卒業したことを踏まえて、五十地区の新規採択に向けてというお話がございました。

 先ほど、前の質問と一緒なんですけれども、ちょうど三年間実施をした地区が終了となりますので、私も、資料をいただいて、実績のところは御紹介をいただいて、非常にいい取組だなと思いました。

 本来であれば、地域の基礎自治体あるいはその地域から、こういうのがやりたいんだということで手を挙げていくということが一番望ましい姿なんだとは思うんですけれども、やはりどうしても、地域にいればその地域のことしか見えないということもありますので、農水省の方でも、この平成二十七年度卒業組の事業の成果、あるいはどういう事業をやったかということは、もう情報提供なさっていると思うんですけれども、ぜひ他地域に横展開をできるような情報提供を強化していただいて、じゃ、僕の地域でも、私の地域でもやってみようか、そういう方々がふえるようにお願いをしたいと思っております。

 初年度七十二で、三年間残らなかった地域もあるとは思うんですが、今回、四年度目が五十地区ということで、やはり、一回目の分を引いても少し苦労しているとありますので、ぜひそこはよろしくお願いをしたいと思います。

 そして、この山村振興法では、二十七年度から導入されました山村活性化支援交付金のほかにも、税制の特例措置なども含まれております。こういうふうに、今、立派な法律を議員立法でつくりました。やはり大事なことは、これらの法律の仕組みをしっかりフルに、利用を地域の人にしていただくことだと思っております。

 先ほども申し上げましたが、まず第一義的には、各市町村あるいは山村振興地域が創意工夫を行って、その中でその制度に当てはめるということが重要なんですけれども、逆に、農水省からも、そのような働きかけ、これをしっかりとしていくことが大事だと思うんですが、その点に関して、農水省の見解を伺いたいと思っております。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 この山村振興法におきましては、先ほど来議論になっておりますが、この山村活性化支援交付金という支援措置に加えまして、今ほど先生からお話ございました、一定の計画制度の中に取組を書いていただくことで国税、地方税の租税特別措置が受けられるという優遇措置も盛り込まれておるところでございます。

 今、振興山村の区域を管轄しております市町村が七百三十四あるわけでございますけれども、そのうち百六十八で山村振興計画がつくられているということでございます。この山村振興計画の作成市町村をまずしっかりふやしていくというのが大事だと思っておりますし、さらに、この山村振興計画の中に、税制特例措置を受けるのに必要な産業振興施策促進事項というものを記載していただくというのが必要になってくるわけでございまして、実は、この市町村の数が残念ながらまだ十三ということで大変少のうございまして、ここを、税制特例を使っていただくためにもふやしていきたいなと思っておるところでございます。

 なお、私ども、市町村の担当者の方がしっかりやっていただくということが基本だと思っておりますので、市町村に対しまして、本省の人間、農政局の人間を派遣いたしまして直接制度の説明なりをするとともに、特に、担当者の方が本気になっていただくためには、市町村の首長さんがその気になっていただくというのが大事だということでございまして、主要な振興山村を抱える市町村の首長様方がメンバーになっておられます全国山村振興議員連盟など、そういう会合もございます。こういった機会を捉えましてしっかりとこの事業の説明をさせていただくということで、あらゆる機会を捉えて働きかけを行ってまいりたいと思っておるところでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 対象市町村七百三十四のうち百六十八で計画策定ということで、まだそこまで十分ではないという見方もできますし、逆を言えば、まだ深掘りの余地があるとポジティブに捉えればいけますので、そういう意味で、今お話をいただきました、やはり首長さんの意識の持ち方というのが一番大事なんだろうと思っています。

 どうしても、現場の職員の方ですと、三年交代というふうになれば、仮に意欲がある方がついたとしても、その間に完成させられなければ、次の方にうまく引き継がれないでそのままポシャってしまうということもあると思いますので、これは、議員立法で十年延長されて、まだまだ七年ございますので、ぜひ、まずは計画策定から大きく進めていただければということでお願いをしたいと思っております。

 そして、最後なんですが、やはりこの山村振興法もそうなんですが、やはり中山間の振興というもの、非常に大事なんだろうとは思っております。大事なんですが、これだけ人口が減っていく中で中山間を、振興というのはなかなか難しいというのも率直に感じるところであります。

 私が生まれた町は、十年前の人口ですと八千人おりましたけれども、十年たったら、二千人減って六千人ということになりました。恐らく、これはまた十年もとまらないで、五千、四千というふうに減っていくんだろうと思います。

 これは、外から人を入れない限りは、日本の人口は縮んでおりますので、その中で、なかなか中山間の振興というのは非常に厳しい。やはりどうしても条件のいい平場に行ってしまうということがあります。

 そういう中で、中山間の振興というのは、この山村振興法、このように議員立法でつくりましたけれども、それ以外にも、医療の面であるとかインフラの面、そういう面での政策も必要ですが、少しでも中山間の、私は振興とは申し上げません、中山間の衰退を少しでも食いとめるには、やはり第一次産業の振興が一番重要だというのは、これは間違いがないだろうと思っております。

 なかなか今は、中山間でお米をつくったからといって、平場にかなうくらいの収量がとれるわけでもないし、効率がいいわけでもない。野菜、つくれる地域もあれば、そもそもそんなに、ハウスで大きくやるくらいのスペースがないという地域もあります。

 そういう中で、どうやって第一次産業で食っていくんだというのも正直なところでありますけれども、ただ、その一方で、第一次産業以外に仕事がないということも事実でありますので、そういう中では、第一次産業の振興というのが非常に重要だと考えております。これに関して、大臣の見解をお聞かせいただければと思っております。

齋藤国務大臣 山村地域を含みます中山間地域は、農業産出額と耕地面積、ともに四割を占めるということでありまして、国土、環境の保全など多面的な機能の発揮の観点からも、実は重要な役割を果たしていると認識をしています。

 そのため、これまでも、日本型直接支払い等地域政策によって地域を下支えしつつ、中山間地農業ルネッサンス事業ですとか中山間地域所得向上支援対策による地域の特色を生かした多様な取組への総合的、優先的な支援、あるいは、今まで議論をやりました山村活性化支援交付金による振興山村における取組の支援ですとか、それから、鳥獣被害が深刻な地域が多いので、侵入防止柵の設置や捕獲わなの導入など地域ぐるみで行う総合的な取組に加え、有害鳥獣のジビエ利用を推進するためのモデル的な取組ですとか、あるいは、農泊を含む観光、教育、福祉等と連携した都市農村交流や農村への移住、定住促進ですとか、こういった多様な施策を講じて、特色ある地域資源を生かした取組への支援ということを行っているところであります。

 中山間地域は地域ごとに異なる特色を持っておりますので、対策も、画一的なものではなくて、それぞれの特色を発揮できるように組み合わせながら講じていくということが非常に重要だなと思っています。

 いずれにいたしましても、委員御指摘のように、厳しい課題だとは思っておりますので、挑戦ということがやはり重要になってくるんだろうと思います。それぞれの地域の特色に応じて、地域の所得向上や活性化に向けて挑戦をしていただく、そうした挑戦を進められるように、我々としてもしっかりと支援をしてまいりたいと考えております。

荒川政府参考人 恐縮でございます。

 先ほどの答弁の中で、私、山村振興議員連盟と申し上げてしまいましたが、山村振興連盟の誤りでございました。

 おわびして訂正させていただきます。

藤原委員 ありがとうございました。

 国の方に応援をお願いするだけでなく、やはり中山間の人間が意欲を持って挑戦できるようにという意味で頑張ってまいりたいと思いますので、ぜひとも、農水省、大臣始め皆様方の御支援もよろしくお願いします。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

伊東委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 初めに、漂流漁船対策について伺いたいと思います。

 昨年来、北海道を始め北日本の沿岸に北朝鮮からの漂着船が多数発見され、中には上陸し窃盗を働く者が出るなど、地域住民は大変に不安を抱えながらの生活を余儀なくされております。中には、漁船を装った不審船が覚醒剤や密輸品などを運んだ事例もあり、決して漁船だからと甘く見てよい存在だとは思いません。

 農水省は今年度、二隻の監視船の新造を決定しておりますが、今後、海上保安庁などとの協力による警戒監視体制の強化は、我が国の主権と国民の安全を守る上で必要不可欠であると考えます。

 昨年、海上保安庁がEEZから追い払ったこうした漁船等は計千九百隻にも上り、日本海で違法操業を行う外国漁船に水産庁が退去警告をした件数は五千百九十一件にも上るとも伺っております。本年二月時点では、二〇一七年下旬以降は外国漁船の侵入はほとんど確認されていないということではございますけれども、現在の状況と今後の見通し並びに必要な対策について見解を伺いたいと思います。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 日本海、特に大和堆周辺の我が国排他的経済水域における北朝鮮漁船等による違法操業は、我が国漁業者の安全操業の妨げにもなっており、極めて問題と考えております。

 昨年、海上保安庁と連携しつつ、漁業取締り船を大和堆周辺に重点配備するとともに、現場において放水等の厳しい対応を行ったところ、十一月下旬以降、外国漁船がほとんど確認されないようになり、イカ釣りの漁期の終了に伴い、現在に至っております。

 六月ごろより再開される今漁期においては、我が国漁業者が安全に操業できる状況を確保することを第一に、我が国イカ釣り漁業の漁期前より漁業取締り船を大和堆周辺に重点配備するとともに、北朝鮮等外国漁船の出現状況及び漁業者の要望等も踏まえて効果的な配置を行い、海上保安庁等の関係省庁とも連携し、万全の対策を進めてまいりたいと考えております。

 なお、外国漁船の違法操業対策強化のため、平成二十九年度補正及び本年度当初予算において、代船として大型化した最新鋭の漁業取締り船一隻の建造と新たに漁業取締り船一隻を建造するとともに、平成三十年度より漁業監督官も五名増加することとなったところでございます。

 今後とも、人員の増加も含めまして、漁業取締り体制の強化に努めてまいります。

佐藤(英)委員 ぜひ、万全な対策をよろしくお願いしたいと思います。

 さて、日本時間の本日未明に日米首脳会談が行われました。安倍総理の訪米中、これまでのTPPというマルチの場での交渉を飛び越して、FTAなどのバイ交渉を求められる可能性も指摘されているところでございます。

 我が国と米国の間には、多国間の非常に複雑な利害関係を長期間かけて調整してまとめ上げられたTPP合意という大きなルールがありまして、今後、日米間の貿易交渉は、第一に、TPP合意という公正な貿易ルールに基づいたものを前提としていくべきものと私は考えております。

 米中の摩擦によって米国内の農作物の輸出圧力は極めて高くなっており、農業分野における輸出拡大への米国の関心の高さは言わずもがなであると思います。三月三十日にUSTRが公表した外国との貿易障壁に関する年次報告書では、日本に対して、BSE対策として実施している米国産牛肉への輸入規制や米市場などの問題点を指摘しているとも聞いているところであります。米韓のFTA再交渉結果は、決して他人事とは思えない深刻な事態であったのではないかと私は思います。

 我が国農業は、大変緊迫した難局を乗り越えていかなければならない状況であり、生産者の営農意欲を維持し続けるためには、農業国との貿易交渉には細心の警戒が必要であると思います。

 農業分野を所管する大臣として、日米間のバイ交渉、日米FTAへのお考えについて、御見解を伺いたいと思います。

齋藤国務大臣 御指摘のように、今、総理が訪米をして、首脳間の会談を何回か行うことになっているわけでありますが、日米FTAがそのときどうなるかというのはやはり仮定の御質問だと思いますので、私の方から今この交渉中にその質問にお答えをするのは差し控えたいと思いますけれども、いつも申し上げておりますように、農林水産省といたしましては、我が国の農林水産業の維持発展を旨として、関係省庁と連携して適切に対応してまいりたいと思います。

佐藤(英)委員 よろしくお願いします。

 次に、北海道のてん菜についてお伺いしたいと思います。

 てん菜は、北海道の大規模畑作、輪作に欠かせない重要な作物であります。生産者だけでなく、産地の製糖工場や輸送関連業者も含めて、地域の経済と雇用を支える重要品目でもございます。

 てん菜は、長く生産量が少ない時期が続いておりましたけれども、長年にわたる生産者の地道な努力によって、平成二十七年産、二十九年産は大豊作となり、生産者も大変に喜んでいるところでございます。しかし、一方で、交付金の支払い上限が六十四万トンとなっていることもありまして、豊作を心から喜べない、生産意欲がそがれてしまうという声があるのも事実でありました。

 私自身、地元北海道から何とかならないのかとの要望を何度も伺っておりました。その都度、農水省の担当者の方々にはお願いをしてまいりましたけれども、全体のバランスの上でなかなか簡単ではないとの回答をいただいてきたところであります。地域を支えるという観点、そして国の食料自給率の維持向上という観点からも、今後も生産者が意欲を持っててん菜生産を継続できるよう、農水省には検討をお願いしたいと思っているところであります。

 そんな中、現在、精製糖企業やてん菜糖製造業者、てん菜生産者に農水省を含めた関係者の方々が意見交換を行っていると伺っておりますけれども、どのような検討状況になっているのか伺いたいと思います。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 てん菜の交付金につきましては、糖価調整制度の安定的かつ持続的な運営を図る観点から、精製糖企業、てん菜糖製造事業者、てん菜生産者の関係者の合意のもとで、御指摘のとおり、六十四万トンを交付対象の上限として設定しているところでございます。

 この上限数量を仮に撤廃するということになりますと、それによって交付金支出が増加する、そして調整金負担が増加する、それによりまして国内の砂糖価格が上昇する、結果、砂糖消費の減少を招くという負の連鎖になってしまいますので、結果として、てん菜の持続的な生産に支障が生じることから、適当でないと考えております。

 一方で、糖価調整制度の調整金収支の赤字解消を加速して、豊作になったような場合でも生産者が安定的に収入を得られるよう、てん菜の生産コスト削減のための生産構造対策を実施することにつきまして、現在、関係者間で検討が進められていると承知しているところでございます。

 農水省といたしましては、こういった関係者間の自主的な取組を尊重して、糖価調整制度の安定的な運営を図ってまいる所存でございます。

佐藤(英)委員 今、生産構造対策を検討されているというお話でございました。これは、てん菜の生産コスト削減のためになるということでありまして、生産者にしてみれば大変にありがたい政策であり検討状況であると思います。ぜひ、地域の方々、てん菜の生産者の方々が喜んで生産活動に取り組めるよう、その実現のためにしっかりと取り組んでいただきたいことをお願いしたいと思います。

 次の質問に移りたいと思います。

 昨日、農林水産省と環境省は、いわゆる食品ロスが二〇一五年度で六百四十六万トンにも上るとの推計値を発表したところでございます。この量というものは、国民全員が毎日お茶わん一杯ずつ、おにぎり一個分ぐらいの御飯を捨てているのと同じ量に当たるとも言われているところであります。

 世界では八億人を超える人々が今なお飢餓と栄養苦に苦しんでいるところでございます。我が国でも、七人に一人の子供が貧困に陥っているというデータもあるところであります。

 こうした中で、ことし二月に兵庫県のスーパーが、季節食品を前年の実績以上に店頭に並べる業界の慣習をやめて、前年と同数しかつくらない取組を行い、話題となったところでもございます。また、東京都は、民間企業との協力で、本年一月から二月の間で、賞味期限、消費期限に近くなった食品の購入にポイントを付与するEcoBuyという取組も行っているところでございます。

 こうした自治体や企業などの取組は年々積極的な展開が見られるようになったと感じますけれども、この食品ロスの半減は、ごみの削減や食料自給率の向上にもつながり、多方面での波及効果も非常に大きく期待をされるのではないかと思うところでございます。

 先日もお話をさせていただきました国連の持続可能な開発目標、いわゆるSDGsで食料廃棄の半減が定められていることを踏まえまして、国会では食品ロスの半減の実現に向けて議員立法の動きも進めておりまして、早期の成立が望まれているところでもございます。

 農林水産省では、フードバンクが食品ロスの減少に取り組む活動やサプライチェーンの商慣習の見直しなどを支援する事業を行っているとも承知をしているところでありますけれども、食品ロスの削減について今後農水省としてはどのように取組を強化されようとしているのか、御見解を伺いたいと思います。

野中大臣政務官 まず、御党におかれましては、食品ロス削減の推進に向けてプロジェクトチームを立ち上げていただきまして、日々活発な議論を積み重ねていただいているというふうに承知しております。

 先ほど先生がおっしゃられたとおり、世界では多くの十分に栄養を摂取できていない人々がいる一方で、多くの食品が廃棄されている。そのための、食品ロス削減に向けて、さまざまな取組が着実にこれから前進していくということは重要であるというふうに承知をしておるところであります。

 農水省としましては、いわゆる三分の一ルールでございますけれども、賞味期間の三分の一を経過していると小売業者が商品を引き取らないなどの商慣習の見直し、そしてまた、フードバンク活動を行うNPO法人等への支援、飲食店等における食べ残し対策に取り組むに当たっての留意事項の周知、また、関係省庁と連携した国民運動の推進などの取組を現在まで進めてまいりました。

 今後でございますが、商慣習の見直しについて取組企業や品目の拡大を推進するとともに、地域における食品ロス削減の取組が進むよう、事業者、消費者、自治体が連携した啓発活動等の取組を引き続き支援するほか、フードバンク活動について、近年の活動団体の増加に伴い、新設団体の課題となっている人材育成等を支援することとしております。

 今後とも、関係省庁と連携し、食品ロス削減のための取組を進めてまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 この問題は非常に重要な問題でございますので、ぜひ農林水産大臣の御見解も伺ってまいりたいと思っております。

 満足に食事をとることができない子供たちが先進国である日本ですら多く存在しているという現実に答えを見つけることこそ、政治が果たすべき役割の第一であると考えます。

 この委員会でも食品ロスの問題は各委員が御提言されているところでありますけれども、この対策について、子供の貧困対策につなげる取組としてよく知られているのが、いわゆる子供食堂でございます。現在、既に全国に二千二百カ所の子供食堂がありますけれども、運営にかかわる財政面や人材の確保、食品衛生や安全環境の面での課題、さらに食材の安定確保に苦慮されているとも伺っているところでございます。

 農林水産省としても、食育という観点から、食育活動事例集をつくって今月十三日に発表されたところでございます。現在、全国の関係者にお送りする準備を進めているとも伺っており、今後、全国の子供食堂でも積極的に活用をしていただければと思っているところであります。さらに、子供食堂とフードバンクや企業などとのマッチングなども視野に、両者の活動がうまく連携できるよう、事例集をフードバンクや企業にも積極的に広めていただきたいとも考えます。

 SDGsの第一の目標が貧困をなくすこと、また、飢餓をなくすことであります。そして、農とは食を育み命を養うものであります。その大切な農業を所掌する農林水産省が、齋藤大臣を先頭に、他省に先駆けてこうした取組を牽引していくべきと考えますが、食品ロスの削減と子供食堂などをつなぐ取組の推進について、齋藤大臣の御見解を伺いたいと思います。

齋藤国務大臣 食品ロスの削減は重要な課題だと思いますし、また、子供食堂を応援するというのも重要な課題だと思っております。

 子供食堂は、食育推進の観点からも、子供にとっての貴重な共食の機会の確保ですとか、それから、御指摘のように、地域コミュニティーの中での子供の居場所の提供等の重要な役割を果たしていると考えておりまして、農林水産省としては、この食育推進の観点から、地域において、自治体や食育関係者、事業者等が子供食堂の意義を理解し、子供食堂との適切な連携が図られていく、これが重要だと考えております。

 また、食料資源を有効に活用するという観点からも、食べ物を無駄にせず、食品ロスの削減に取り組むことが大切でありまして、JAや食品企業、フードバンク等と連携して子供食堂へ食材を供給する取組も既に行われ始めているというふうに承知をしております。

 農林水産省といたしましては、今委員御指摘の、先日公表した、子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集といった取組事例の情報提供、私の地元でも相当子供食堂はふえてきておりまして、私はこの活動事例集をぜひ配付してまいりたいというふうに思っておりますけれども、こういった形での情報提供、それから、子供食堂に食品を提供するフードバンク活動への支援ですとか、それから、共食の機会の確保を始めとする地域での食育活動、こういったものへの支援などによりまして、子供食堂の活動を後押ししてまいりたいと考えています。

佐藤(英)委員 意欲的な取組に大変に大きく期待をさせていただきたいと思います。

 きょうの日本農業新聞は、一面にも二面にも十六面にも、食品ロスの特集、また記事が掲載されておりました。その中で、二面に、FAOの駐日連絡事務所所長の食品ロス問題についてのインタビュー記事を掲載されておりました。チャールズ・ボリコ所長さんの、最後の、農業の現場でできることは何かということについて、このようにお話をされておりました。農作物は形や外観よりも健康によいことが大事、一生懸命生産したものは自分や環境に対する尊厳でもある、規格外品などもチャリティーに生かしたり加工したりと工夫してほしいということを述べられておりました。大変に示唆に富むインタビュー記事でありましたので最後に御紹介させていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 おはようございます。立憲民主党の石川香織でございます。

 きょうも質問させていただきたいと思います。

 通告をしておりませんけれども、冒頭質問させていただきたいと思います。首相案件と書かれた文書が農林水産省でも見つかったという件についてであります。

 首相案件と書かれた文書が農水省で見つかった。この文書が省内においてどのような認識で、どこまで広がっていたかということについてお伺いしたいと思いますが、お願いいたします。

齋藤国務大臣 この文書につきましては、少しきちんと説明させていただきたいと思います。

 九日の夜にNHKで、愛媛県が内閣府、文部科学省、農林水産省に愛媛県文書を配付したと報道されて、翌日にその文書の一部が新聞で報道されているということを受けまして、政府として、官房長官からの御発言があり、私ども、それを踏まえて調査をした。

 その調査は、四月の十日から十二日にかけまして、恐らく関係しただろうという部署の当時の職員、それから、その後そのポストについてそれから現在に至っている職員三十六名を対象に、これは局長級から係員まででありますけれども、ヒアリングをさせていただいて、こういう文書を受け取ったかどうか、保有しているかどうかについてヒアリングを行ったところでございます。この調査も、対象者一人一人ごとに、個室において、調査主体の課の複数名により調査趣旨を丁寧に説明した上で、当該文書を受け取ったかに加えて、見たことがあるか、それから、見たという話を聞いたことがあるか等も含めて聴取する形でヒアリングを進めました。

 そして、その結果ですけれども、課長補佐級の職員一名が該当する文書を保有していたということが判明をしましたので、その旨公表をさせていただいた。

 今御質問の状況ですが、この職員は平成二十七年五月に獣医師法等の担当に異動となりまして、前任者から紙ベースで受け取ったが、文書の内容が獣医師養成系大学の新設に関するものであり、農林水産省の所掌事務とは直接関係ないものと考え、行政文書としての管理は行わずに、いろいろな個人保有の雑件資料とともに自分用のファイルにつづっていた、そういうことがヒアリングで判明したということでございます。

石川(香)委員 一名の方が持っていたということで、三十六人の方を対象にヒアリングをされたということでありましたけれども、この首相案件という言葉は、やはりとてつもない威力を感じると思うんですよね。

 このことに関して、二十三日に予算委員会の集中審議も行われますし、その中で柳瀬秘書官の国会招致も実現をすることになっているということですけれども、いずれにしても、この不可解な加計学園の問題が、やはりそろそろしっかり真実をつかんでいかなくてはいけないという思いで私たちもこうやって追及をしているわけでありますので、この問題が少しでもその二十三日に進展するように、私も信じておりますし、農水省の皆様方もそういう気持ちでこれからも取り組んでいただきたいと、強く信じておりますし、要望しておりますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは、私は、外国人技能実習制度についてお伺いをしたいと思います。

 きょうは資料もお配りをしております。

 現在の日本において、どの業種、どの分野においても人手不足が大変深刻な問題であります。これは農業の現場でももちろん例外ではありません。

 安倍総理自身も、深刻な人手不足が生じている、専門的な、技術的な外国人受入れの制度のあり方について早急に検討を進める必要があると二月にも述べられておりましたけれども、これは農業の分野だけではなくて、既にさまざまな現場で外国人技能実習制度の導入が始まっております。昨年の十一月には介護の現場でも実習制度が解禁されたということでありまして、第一弾の方々が来月に来日をするということでありました。

 国内の農業に従事する外国人の方々は、二〇一七年の十月末で二万七千百三十九人ということでありました。そのうちの九割が技能実習生ということであります。

 私の地元の酪農が盛んな広尾町というところでは、毎年夏に農民運動会というものがありまして、私も毎年そこに参加をしておりますが、年々外国人の方の参加者が非常にふえている。私も毎年何かの競技に参加するんですけれども、昨年はリレーに参加しまして、一緒に走るコースのうちの二人が外国人の人だったということで、やはり外国の方の割合がふえているなと、そういうところからも非常に感じました。

 産地を保つ意味で、技能実習生、非常に欠かせない存在であるというのは、この二万七千百三十九人の中の九割が実習生という数字を見ても読み取れることだとは思います。しかし、この技能実習生の目的はあくまで、就労ではなくて研修であります。従事できる作業範囲が限られていましたり、分野によっては二年目以降は外国人技能実習生を受け入れることが認められていない分野があります。

 きょうお配りしたこの資料も、二号移行ということで、二年目以降認められている分野ということであります。

 この資料を見ますと、畜産農業と書いてあるところで、養豚、養鶏、酪農というのは書いてありますけれども、肉牛農家に関しては、現在のところ認められておりません。

 そこで、農林水産省にお伺いをしたいと思います。

 この現状をどう認識されているでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 外国人技能実習制度でございますけれども、我が国の進んだ技能、技術等を習得したいという開発途上国のニーズに応えまして、技能の移転を進めるための制度でございまして、技能の習得度合いに応じまして、技能実習の一号から三号まで、最長五年間の在留期間が認められる制度でございます。

 現行の外国人技能実習制度につきましては、技能実習二号、御指摘いただきました二年以降ということでございますが、に係る移行対象職種の追加につきましては、業界団体が業界内の合意を形成した上で国に申請する等の手続が定められてございます。

 肉用牛につきましては、現時点で、技能実習二号に係る職種の追加申請が業界団体からなされてございませんので、二年目以降の受入れはできない状況となっているというふうに承知をしてございます。

石川(香)委員 肉牛の業界団体から要望が上がっていないということでありました。

 しかし、私の地元であります十勝、肉牛農家がありますけれども、二年目以降もぜひこの技能実習制度を認めてほしいという声が大変多いという現状があります。何で一年だけなんだ、酪農や養豚、養鶏では二年目以降も認められているのに、肉牛は一年で終わりとなるとやはり外国人の方が集まらないという声がどんどん聞かれておりました。その中では、一年で技術を習得してそれで終わりというような世界に思われているのかというようなことを言っている方もおりました。

 酪農は、種つけから出産まで一年以上かかりますので、そういう論理で二年目も認められているのではないかと思いますけれども、繁殖農家も、種つけから子牛を競りに出すまで一年半ほどかかるわけであります。

 農水省として、団体からどのような意見、細かい意見が上がっているのか、またどのように認識をしているかということをお答えいただけますでしょうか。

枝元政府参考人 お答えを申し上げます。

 外国人の技能実習制度におきます肉用牛の三年間の技能実習が可能となる職種の追加について、肉用牛業界としての合意形成が必要でございますので、平成二十一年に、繁殖、肥育、登録などの関係団体が意見交換をまず行ったと承知をしてございます。

 その際には、肉用牛の繁殖また飼養管理技術を海外の実習生に移転しつつ、国内の肉用牛経営を支える技能者を確保すべきとの受入れに積極的な意見があった一方で、和牛の遺伝資源の持ち出しに加えまして、長年かけて築き上げられた飼養管理技術の流出にもつながり、大きなリスクを背負うとして反対する意見もございまして、合意形成には至らなかったというふうに承知をしてございます。

 また、平成二十八年の十一月に外国人技能実習制度の改正が行われましたけれども、平成二十九年三月に関係団体間で同様の意見交換が行われたというふうに承知してございますが、その際も、二十一年当時と同様の意見が二つございまして、業界として受入れ期間の延長申請の合意形成には至っていないという状況になっていると承知してございます。

石川(香)委員 和牛の技術が流出するのを懸念されているという意見があるということは、私も想像がつきますし、そのようなことがあるというのは認識をしております。

 ただ、そういう日本独特の技術だからこそ、外国の方に教えていくべきではないかという意見も多いというのは、私のいろいろな方のお話を聞く中での実感であります。

 肉牛の中でも、日本が誇るブランドと言われる和牛がある技術に関しては、代々農家の方々が築き上げてきた門外不出の技術であると思います。技術を自国に持って帰ってもらってそれを自国に生かしてもらうという制度では、確かにそれぞれの地域の考え方がありますし、技術を流出させたくないという方がいるということは想像ができますし、認識をしています。

 ただ、繁殖、肥育、それから地域それぞれの考え方も違うわけでありまして、繁殖と肥育を一貫して行う農家もいますけれども、種つけから妊娠、それから出産をさせて九カ月ほどまで育てる繁殖農家と、子牛を立派な大人に育てる役割を担う肥育農家を分けているのが今の主流であります。

 繁殖と肥育は、御存じのとおり全く違う技術であります。繁殖の技術こそ、外国人の人に知っていただくべきだと強くおっしゃっている繁殖農家の方がいらっしゃいまして、繁殖農家、種つけから子牛を競りに出すまで一年半ほどかかります、その間、牛を大事に育てているということであります。

 母親に種つけをして、おなかの子供を大きくするために、太らせてもいけないし、痩せさせてもいけない、このボディーコンディションというのが非常に難しい技術であるということでした。分娩の三カ月前から予定日まで行われる体重ですとか体調管理、これが和牛を育てる上で一番肝であるということでありました。

 そして、分娩後三カ月間は、母牛と子牛、一緒に生活をさせます。子牛にミルクを母牛が上げるわけですけれども、母親が栄養をとられ過ぎて、逆に母牛が痩せ過ぎないか、それから、カルシウムを母牛がとられ過ぎて、それがミルクに流出してしまうと、逆に子牛が下痢をしてしまうということで、下痢になってしまうと非常に体調管理も難しいということで、こういう管理こそが外国にはないきめ細やかさだということであります。

 そして、十カ月ほどたった子牛は競りに出されて、銘柄牛として肥育農家のところに行きます。ちなみに、この子牛の競りにおいて、十勝の出品牛が一番多いということであります。

 繁殖農家と肥育農家は、それぞれの技術があって、そしてそれぞれの大変さがあるということです。繁殖に関しては一人当たり五十頭、それから肥育は一人当たり百頭見ることができると言われておりまして、繁殖農家の方が、いわばつきっきりで管理をしなくてはいけない割合が多い、手がかかるということが言えると思います。

 この繁殖と肥育の技術の違いの認識と、それから、肥育と繁殖どちらかで例えば二年目以降を認めるですとか、また、地域ごとに反対するのであれば、地域で分けて外国人技能実習生を認めるというような道筋がないかということをお答えいただきたいと思います。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 委員も大変畜産にお詳しいようですから、私が答弁するのもはばかられるところでございますが、お答えを申し上げたいと思います。

 まず、繁殖につきましては、御承知のとおり、多様な血統の組合せによって最良の遺伝的資質を持つ子牛を生み出す技術でございまして、肥育に関しては、この繁殖技術により生み出された子牛の遺伝的資質を最大限に発揮し、独特の飼料設計と給与法により、きめ細やかなサシ、すなわち脂肪交雑が入った牛肉を仕上げる技術であり、これも今御発言がございましたように、長年にわたって生産者が研さんし、育んできた貴重な一連の技術の体系でございます。

 このように、和牛という我が国にとっては重要な遺伝資源を利用して世界最高峰の和牛肉等を生み出す独特の繁殖、肥育の技術は、生産者にとって重要なノウハウであり、これが開発途上国に持ち出されることを危惧する声が肉用牛業界内になお存在しているのも事実でございます。したがって、先ほど答弁しましたように、いろいろ話合いが行われているところでございます。

 それで、一部だけという御意見もありましたけれども、一部だけだったら、一部だけからやはり技術が流れるということは変わらないわけでございますので、こうした外国人技能実習制度の活用ないしは改革につきましては、やはり肉用牛業界全体の合意形成が必要であると考えているところでございます。

石川(香)委員 今、お話にもありましたけれども、ただ、現実には、肉牛農家をやっていて酪農も同時にやっているというところは、それぞれの作業の線引きが非常に曖昧になっておりまして、合法的に、肉牛の部門でも外国人技能実習生を採用しているというところがあるというのはいろいろなところで聞いております。

 そういう現実がある以上、和牛の技術が流出されるということを懸念されているということに関しては、既にこういう形で外国人技能実習生が入っているという認識だと思います。

 そういったことは、国も合法的に認めているということにならないでしょうか。こういう事実がありますけれども、お答えをお願いしたいと思います。

枝元政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘ございましたとおり、酪農については二号移行対象職種となってございますので、酪農に関する技能実習につきましては、三年間の期間で、技能実習計画に基づいて作業が行われているという状況でございます。

 この酪農の技能実習の中で、関連作業といたしまして、実習時間全体の二分の一以下の範囲で、酪農の必須作業に関連する個体の観察ですとか飼養管理などの肉用牛生産作業、酪農でも肉用牛を産むということもやってございますので、そういうのも認められているところではございます。

 しかしながら、この場合、肉用牛生産に関連する作業に従事する時間ですとかその作業内容が、先ほど申し上げたとおり酪農の作業に関連するということに限られてございますので、我が国の肉用牛生産に係ります高度な繁殖、肥育に関する技術の核となるノウハウを含めまして体系的に習得することは困難ではないかというふうに考えてございます。

石川(香)委員 これは日本国内だけの話ではなくて、海外に向けても大切なアピールになるのではないかという思いもありますので、そのあたりについてお伺いしたいんです。

 外国人技能実習生を一つのきっかけにしまして、日本の肉牛を海外に広めて、日本の肉牛の消費を拡大することができるのではないかという考えがあります。本場である日本で生産された肉牛の需要が高まるというのは、非常に日本にとってもプラスだと思います。

 あくまで外国人技能実習生という制度が一つのきっかけになり得るのではないかということについて、御見解をお伺いしたいと思います。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 牛肉の輸出拡大に向けて、日本産和牛の品質面での魅力や特性を海外の消費者に知っていただくことは極めて重要なことであり、政府としても全力を挙げて今そういう取組をしているところでございます。

 その中で、技能実習生が帰国してから、日本国内で味わった和牛の価値をその国の同朋に知らせていただく、もちろんそういう効果はあるとは思います。

 ただ、そういうこともありますが、先ほど言ったとおり、まだ技術の流出については懸念の声もあるので、そういうことも、今の御指摘はプラス面として考えながら、全体として業界内の合意形成ができるかどうか、努力してまいりたいと思います。

石川(香)委員 技術の流出という懸念と、それから業界の足並みというポイントは非常によくわかりますが、ただ、やはり繁殖、肥育でも技術も違いますし地域の考え方も違うという中で、まずそれを統一させるというのがそもそも難しいことなのではないか、別物として考えなくてはいけないのではないかと思います。

 業界の足並みということだけを重視し過ぎて、まとめて答えを出すということが非常に難しいということでありますので、肉牛に関して、全体的に外国人実習制度を一年のみにするのではなくて、肉牛農家も、やはり酪農と養鶏、養豚と一緒に、同じように二年目以降も認めるということにして、この制度を利用したくなければ利用しなければいいという考えもありますけれども、そのあたりについて、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 肉用牛の農家が人手不足で大変だというのはよく承知をしているわけであります。

 一方で、繰り返しになりますけれども、肉用牛の生産の技術というのは、繁殖に関しては、多様な血統を組み合わせて最良の遺伝的資源を持つ子牛を生み出すという技術を長年かけて磨き上げてきたり、あるいは肥育に関しては、この繁殖技術により生み出された子牛の遺伝的資源を最大限発揮して、独特の飼料設計やあるいは与える方法によって、きめ細かなサシをどの程度入れるかとか、そういう技術をやはり長年にわたって育んできたということがありますので、それが海外へ流出してしまうのは何としてものみ込めないというのもわかるんですよね。

 ですから、そういう貴重な技術体系を、私どもが、皆さんが反対する中で、いや、いいんだ、不足しているんだからといって強行することは私はできないと思っておりまして、したがって、まずは業界団体、業界の中でしっかり合意形成を図っていただきたいというのが今の農林水産省の立場でございます。

石川(香)委員 繰り返しになるかもしれませんが、違う業種についてもちょっと目を落としていただきたいと思いますが、漁業関係の養殖業というところを見ていただきますと、ホタテガイやマガキ養殖作業というのは認められています。ただ、同じ養殖でもウナギは認められていません。となると、肉牛もF1だけ認めるとか、試験的に認めるだとか、そういう手段もあり得るのではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

礒崎副大臣 お答え申し上げます。

 F1というのは、和牛と乳用牛のかけ合わせのことでございますが、これについても、繁殖に関しては、効率的な増体やサシ、脂肪交雑が入るような子牛を生産する精液の選択に関する技術がございます。また、肥育に関しては、子牛の遺伝的資源を最大限に発揮し、独特の飼料設計と給与方法により、きめ細かなサシ、脂肪交雑が入った牛肉を仕上げる技術でございまして、これも同様に生産者が長年にわたって研さんしてつくってきた技術の体系でございます。

 これも、私の方も繰り返しになりますが、先ほど言いましたように、業界内部で何度も会議をやっておる、結論は出ていないわけでありますが、その中で合意を求めるような努力は今続けられておるところでございますので、なかなか今ここでどうだとは申し上げられませんけれども、そういう合意形成の努力には我々としても後押ししていきたいと思っておりますが、なかなかちょっとF1だけというのも難しいかと思っております。

石川(香)委員 それでは、新しくできた外国人技能実習機構ということについてもお伺いをさせていただきたいと思います。ちょっと順番を変えましたけれども。

 技能実習制度を運営していく中で新しく設立されたのが、この外国人技能実習機構ということであります。

 昨年の一月に設立をされたということでありますが、まだ設立間もないので、地元でも認識度が少し低いのかなという印象を持ちましたけれども、外国人技能実習制度を円滑に施行していく上で、人員ですとか体制というのは十分なのかどうかということについてお伺いしたいと思います。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 外国人技能実習機構におきましては、技能実習計画の認定あるいは実習実施者、監理団体に対する実地検査などの業務を行っておりまして、こういった業務に当たるため、現在、本部に九十二名、また全国十三カ所の地方事務所に二百五十四名、合計しまして三百四十六名の人員体制を措置しております。

 このように、当面必要な体制は整備されているものと考えておりますが、今後とも、厚生労働省といたしましては、外国人技能実習機構が業務を円滑に遂行できるように、その進捗状況をしっかりと注視して、対応に万全を期するよう努めてまいる所存でございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 やはりこれからも外国人技能実習生というのがどんどんふえていく中で、この機構の負担もふえていくと思いますので、ぜひ円滑に、体制にしていくようにしていただきたいと思っております。

 きょうは、本当に、この外国人技能実習制度について肉牛農家の強い要望があるという思いを、皆さんの思いを背負って質問を何度もさせていただきましたけれども、受入先である農家自身も、やはり外国人の方を入れると非常に成長ができるとお話をされておりました。刺激にもなるし、若手にも非常にいい影響があると。

 きょうは、常に、業界団体の意見が足並みをそろえないとということでありましたけれども、それは当然、現状として、今の農家の方々も理解をしているところだと思います。

 ただ、繁殖、肥育、それぞれの地域ごとでの考え方があるという中で、やはりそれを一致させろというのも非常に難しいということもあわせて申し上げたいと思いますし、業界の足並みだけではなくて、農林水産省も、日本の和牛、大切な和牛でありますので、そういったところで、業界の取りまとめも含めて、ぜひ肉牛農家に対しても外国人技能実習生を導入することができるように、私も強く要望したいと思いますし、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。

 では、続いての質問に移りたいと思います。次は、液体ミルクについてであります。

 現在、日本で販売されております赤ちゃんが飲むミルク、粉又は粉を固形にしたもののみでありますけれども、今、液体ミルクの規格基準が検討中であります。この規格基準が決まれば商品開発に向けて進み出すということで、私も非常に期待をしている一人であります。

 液体ミルクは、すぐに飲ませることができるということと、それから常温で保存ができるということで、二〇一六年の熊本地震のときにフィンランドからの支援物資で非常に喜ばれたということで、液体ミルクをぜひ日本にという機運が高まったということでありました。

 液体ミルクは、海外では既に流通されております。現在も、乳飲料として分類されれば日本でも輸入販売ができるということでありました。

 この基準の作成のために、今、日本乳業協会が厚生労働省に提出したデータによりますと、容器は缶やレトルトパック、紙パックを想定しているということです。この賞味期限なんですけれども、缶とレトルトパックは九カ月から一年、紙パックは半年としているということです。

 これは、災害時だけではなくて、日常的にも液体ミルクというのは非常にさまざまなメリットがあると思います。まずは、やはり家族みんなが育児に参加できるということで、非常にミルクをつくるという手間が省けるという点であります。私も、液体ミルクがもしあれば、夫ももうちょっと手伝ってくれたかなと思うところなんですけれども、これはやはり皆さんが期待されていることではないかな、私だけではないかなと思っています。

 ただ、いろいろ課題もありまして、価格であります。今、ミルクを二百ミリリットルつくる場合、日本の粉ミルクの場合は七十円から八十円という価格でありますが、海外製の液体ミルクになりますと百五十円から三百円程度になってしまうということで、非常に割高であるということが課題であります。そして、もう一つは、液体ミルクだと量がかさばりますので、備蓄したところで非常に場所をとってしまうということもあります。

 とはいえ、私は、液体ミルクはぜひ解禁するべきじゃないかなと思っているんですけれども、ただ、また難しい問題として、子供が減っていく中でやはりなかなか採算が合わないというところもありまして、国内の乳業メーカーは余り乗り気ではないというようなお話も少し聞きました。

 この液体ミルクについて、課題も含めて、現状をどう分析されているのか、お答えいただけますでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、液体ミルクですけれども、今御指摘ございましたとおり、育児の負担軽減につながるという観点から、粉ミルクにかわり得る新たな選択肢でございます。働く女性にとっての利便性の向上ですとか、男性の育児への参加の推進、また災害時での使用とかそのための備蓄など、さまざまメリットがあるというふうに考えているところでございます。

 そういう中で、今、乳児用として販売するために必要となる新たな規格基準の設定に向けまして、厚生労働省が必要な手続を進めている段階でございまして、それに沿う形で、現在、主要な乳業メーカーにおいて、安全で衛生的な液体ミルクの消費者への提供に向けまして、製造、販売の検討を行っている段階、状況でございます。

 その際、乳業メーカーから課題として聞いてございますのは、一つは、製品の長期保存を想定いたしました微生物汚染防止に必要となる適切な容器の形状、材質等の選択、乳児用の食品としての高いレベルでの安全、安心の確保、品質面で避けることが難しい色調ですとか沈殿、成分含量や風味の変化への対応、あと、御指摘ございましたとおり、粉ミルクと比較して割高となること、こういうことが挙げられてございます。

 これらの課題をどう解決するかも含めまして、今、乳業メーカーの方でさまざま検討しているところでございまして、農林省としても、引き続き、関係省庁また業界とも連携いたしまして、液体ミルクの普及に係る取組を後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 いろいろな課題があるということでありましたけれども、やはり国内産の生乳を使って安全な液体ミルクの実現というのが見えてくれば、生乳の用途の選択肢としても一つふえるのではないかと思います。そのことについて、農林水産省としての御見解をお伺いしたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、もし液体ミルクが製造、発売されることとなりました場合には、これは我が国にとっては新しい取組でございますので、御指摘のとおり、国産生乳の用途の選択肢もふえるものというふうに期待しているところでございます。

石川(香)委員 現在の日本メーカーの粉ミルクに使われている原乳量は、ほとんどが外国産であるということでありました。ただ、やはり求めるのは安心、安全な液体ミルク、これをできることができれば、本当に多くの母親のみならず皆さんから喜ばれることだと思います。国産についてはいろいろな問題もありますし、商品化に関しては規格基準を検討中という段階でありますので、これからもぜひいい方向に向かっていくように私も期待をしているところであります。

 それでは、時間が迫ってまいりましたので、最後にお伺いしたいと思います。鳥獣被害についてお伺いいたします。

 今、鳥獣被害が非常にふえているということでありまして、平成二十九年七月の資料によりますと、二百億円前後の被害があるという中で、最近、ハンターの数が非常にふえているといううれしいニュースもありました。

 ハンターの中でも、若手の二十代、三十代の方、特に女性の割合が、二〇〇六年から二〇一五年の間、ここ十年間で四倍になったということがあります。狩りガールと言われるそうでありますけれども、若い方、それから女性がふえているハンターに関して、要因などをどう分析されているでしょうか。

伊東委員長 米谷大臣官房政策立案総括審議官、時間が来ておりますので、簡潔な答弁をお願いします。

米谷政府参考人 はい、わかりました。

 狩猟を行うためには狩猟免許を取得する必要がありますが、全国の女性の狩猟免許所持者数は、平成十八年度が千二百三十八人、それが平成二十七年度に四千百八十一人と、三・四倍となっております。

 環境省では、ふえ過ぎた鳥獣の管理を行う必要がある一方で、鳥獣の担い手が減少、高齢化しているため、鳥獣免許取得者をふやすことも目的として、平成二十四年度より全国で狩猟の魅力まるわかりフォーラムというのを開催しています。このフォーラムでは、女性のハンターの方に積極的に狩猟の魅力のPRをいただいたり、ジビエの料理を試食していただいたりということをしております。

 この結果、このフォーラムの参加者のうち約二割が女性という状況になっており、参加後のアンケート結果、これは女性に限ったものではありませんが、約七割の方が、狩猟のイメージがこれでよくなった、あるいは狩猟の免許を取得したいと答えていただいております。

 こうした取組も女性のハンターが増加した一助になっているものと考えております。

伊東委員長 石川君、時間が来ておりますので。

石川(香)委員 はい。

 十勝の豊頃町にあるエレゾ社というところでは、ハンターを社員としても雇用した日本で最初の会社であるということでありました。

 鳥獣被害のことも含めて、これからもいろいろ議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、神谷裕君。

神谷(裕)委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日も、委員会で質疑に立たせていただくことになりました。本当に皆様に感謝と御礼を申し上げたいと思います。

 それでは、質問させていただきたいんですけれども、冒頭、石川議員が触れました首相案件文書について、私からも若干聞かせていただけたらなというふうに思います。

 先ほど大臣から、九日からの丁寧な御説明を頂戴したところでございます。課長補佐の方一名がこの紙を保有していたというようなお話でございました。また、この一名の方については、前任の方から受け取ったということでございますので、恐らく申し送りか何かだろう、引継ぎか何かだろうというようなことで多分お持ちになっただけだったんだろうということは想像にかたくないんですけれども、では、もともと保有をされていた前任者の方、この方はどういうふうな形で持っておられたのかなということは非常に気になるところでございまして、この方についてもヒアリングをなさったんですよね。

 とするならば、この前任の方、もともと受け取った方、この方が受け取った状況であるとか、そういった背景について御説明いただけたらと思います。

齋藤国務大臣 当然のことながら、保有していた職員の前任の方にもヒアリングをしております。

 この前任者は、ヒアリングに、この文書を見た記憶はなく、後任に渡した記憶もないが、後任者が文書を保有しているなら、異動の際に渡した資料の中に含まれていたかもしれないというのがその方のヒアリング結果でございました。

神谷(裕)委員 ヒアリングをしていただいたようでございますけれども、何とも歯切れの悪い感じがどうしてもいたします。

 首相案件文書、我々はそういうふうに呼んでいるわけでございますけれども、首相案件であるというようなことになりますと、当然重いと私は思います。少なくとも農林水産大臣がかかわっているというだけでも非常に重いなと思いますし、まして首相がかかわっておられるということになるとやはり非常に重いと、普通考えたら思うわけでございます。

 それが、記憶にないというか、覚えていらっしゃらない。それは百歩譲って事実かもしれませんけれども、やはり入手経緯であるとか、あるいは、文書という形で残っているのであれば、ファクスなのかメールなのか、あるいはほかの方法によるものなのか。入手をされたということは事実としてあるわけでございますから、それについては何か確認をヒアリング以外にはなさっているんでしょうか。

齋藤国務大臣 もともと、この問題に関する行政文書の方は、累次の公開要求に従いまして出しているわけでありますので、今回はヒアリングをしたということであります。

神谷(裕)委員 どうしても歯切れが悪いんですね。発見されて速やかに公表をしていただいたという農林水産省でございますから、他の省庁に比べて、私は、格段に信用というものは高いんだろうと本当に思っているところでございますけれども、ただ一方で、どうしてもやはり歯切れの悪い部分がある、不透明な部分がある、ここは事実だと思うんです。

 ヒアリングだけで、これで解決なのかというと、どういう形で入手されたのか、あるいはその文書が本当に省内で回覧をされなかったのか、供覧に処されなかったのか、そういったところはどうしても気になるんです。こういったところの確認を今後していただけるようなことはあるのでございましょうか。

礒崎副大臣 今大臣が言いましたように、既に、当時から現在まで、担当部局における局長級から担当レベルまで、全員について我々はヒアリングを行っておるわけでございます。

 その中で、その文書について記憶があると言っているのは、今所持していた一人の職員のみであって、ほかの職員は、きちんとしたヒアリングまで行いました、行いましたけれども、その文書の存在そのものについて記憶がない、見た記憶がないと言っておるわけでございますので、調査は尽くされたものと考えているところでございます。

神谷(裕)委員 副大臣おっしゃっていただいたとおり、三十六人の方ですか、ヒアリングをされておると思います。

 ヒアリングの結果、まだわかりにくいところがあるんだなということでございまして、ここについて、やはり農水省としても積極的にぜひ御調査をいただくようなことはできないかというお願いでございますけれども、いかがでございましょうか。

礒崎副大臣 省内につきましては、今言ったように、いいかげんな調査をしたわけではございません。一人一人呼び出して、場合によっては何度か同じような質問もいたして、本当に何も記憶はないのか、見たことは本当にないのかとかなり徹底的に聞いたわけでございまして、しかも、それはさきおととしの話ですよね。それでもう記憶がないと言っておるわけでありますから、ちょっとそれ以上、大変申しわけないのでありますが、農水省としては、今は他部局におる担当が文書を所持していたという事実以上のものはもう出てこないということで、省内的には、これで調査はもう難しいと考えておるところでございます。

神谷(裕)委員 この文書が実際に農水省で何かあったというようなことではないと私は信じておりますし、すぐに開示をしていただいたということでございますし、先ほど副大臣、大臣からも詳細な経過については御説明をいただいております。

 そういった意味では非常に信頼に足るものだろうということは重々理解をした上で、あえて、どうしてもやはりまだわからない部分があるんだというところは先ほど申し上げたとおりでございまして、ヒアリング、記憶によるところでございますから、当然曖昧な部分があると思います。ただ、現実に目の前に文書があるわけですから、どういう形なのか、入手をされたということは間違いない事実でございますから、ここについて、もちろん記憶によるところが一番解明には早いのかもしれませんけれども、できることであれば、どういう経緯で入手をしたのかということについて、あるいはその後のことについてもお調べをいただきたいなというのが率直なところでございます。

 ちょっと時間もないので、質問に早速入らせていただきたいと思います。

 昨日、衆議院の本会議でも、TPPについての議論、CPTPPについての議論がスタートしたところでございます。

 農林水産分野の合意内容については、TPP12の協定と基本的に同じであるというふうに御説明をいただいているところでございますけれども、これは恐らく間違いないんだろうなと思います。

 だとするならば、脱脂粉乳であるとかバターであるとか、幾つかの品目について創設したいわゆるTPP枠、これについて非常に気になるところでございますけれども、これがなぜそのまま維持をされたのか。まずはこれについて伺いたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の乳製品などTPP締約国全体を対象とした関税割当て、いわゆるTPPワイド枠というものでございますが、これにつきまして、その後の状況の変化によって、結果として現在の関税割当て枠を超えるような輸入枠となってしまうといったことを懸念する御意見を頂戴したこともございまして、我が国のそうした懸念を、TPP11の交渉当初から各国に伝えてきたところでございます。

 その上で、同じような制度を持っている国もほかにもあるわけでございますし、また、アメリカが仮にTPPへ復帰しないことが確実になった場合には、ほかにもいろいろと調整が必要になるかもしれない、こういう考え方は各国で共有されてきたところでございます。

 一方、十一カ国としては、昨日本会議でも茂木大臣から答弁したとおりでございまして、アメリカのTPP復帰を促す、こういう立場でございます。そういうことを踏まえますと、TPP11においては、アメリカが現時点でいないことを踏まえた協定の修正等は行わず、ごく一部のルールのみを凍結するということで合意したものでございます。

 その際、我が国の主張に沿った形で、新協定に第六条を設けまして、米国を含めたTPPが発効する見込みがなくなった場合等には、締約国の要請に基づき協定の見直しを行うと規定したところでございまして、これにより、発効後、必要な場合にはTPPワイドの枠数量等の見直しを行うことを我が国として各国に明確に説明をして、理解を得ているところでございます。

神谷(裕)委員 やはりこのCPTPP、TPP12同様に、農業者の方にとっては非常にいわば脅威であると思います。

 特に、アメリカがいる、いないということについては我々も関心も高いんですけれども、実際にアメリカが今回CPTPPに関しては入らないわけでございますから、そういった中にあって、あえてアメリカに戻っていただきたいという気持ちがあるということは十分聞いておりますけれども、では、なぜこの農業の、皆さん方は不安に思っていながら、しかもアメリカが外れながら、こういったものが維持をされていくのか、非常にまだ疑問なんだと私は思いますし、アメリカが来ないんだったらやはりここは外すべきなんだというのが、農業者の皆さん、あるいは、懸念を持っている、ここにも何人もおられると思いますけれども、その方々の真意ではないかな、こう思うわけでございます。

 改めて伺いますけれども、アメリカのない、アメリカが入らないこの協定において、なぜ維持をされるのか、もう一回、澁谷さん、お願いします。

澁谷政府参考人 先ほど申し上げたとおり、十一カ国としては、アメリカのTPP復帰を促すという立場でございます。仮に、アメリカがいないことに伴う修正を行った上でアメリカが復帰した場合には、アメリカの部分をどうするかという交渉を行う必要が生じてくるわけでございます。

 そうしたことを踏まえまして、我が国と同様の制度を持つ国、例えばカナダも、乳製品について、実際の今の輸入量の大半がアメリカからだという品目についても、我が国と同じTPPワイドという枠を設定しているわけでございますが、こうした国も含めて、現時点では修正を行わず、発効後必要と判断される時点で見直しを行うことが望ましいというのが十一カ国の判断ということでございます。

神谷(裕)委員 発効後見直すということになるわけでございますか、今の御説明ですと。

 では、農業分野についてのTPP枠についても、これは発効後見直す可能性がある、特に問題がありそうだということでこれを見直すんだというようなことが現にあるのか、その可能性について教えていただけますか。

澁谷政府参考人 新協定第六条に規定されているとおり、アメリカを含めたTPPが発効する見込みがなくなった場合等には必要な見直しを行うということでございます。

神谷(裕)委員 アメリカが入らないことが確実になったというところで見直す。

 実際には、でも、もう協議はされているわけですよね、CPTPPという枠組みは合意をされているわけですよね。

 ですので、合意をされている、確かにこの後見直しの条項もあります、ただ、発効後に見直すんだと言われても、もう既にこの枠組みはできているわけでございますから、次の見直しのタイミングまではこのまま進むということなんでしょうか。

澁谷政府参考人 TPP11協定は、もともとアメリカが入っていたTPPを十一カ国で発効させよう、そういう法的枠組みでございます。

 アメリカがいずれ復帰してくる、現時点でトランプ大統領は必ずしも復帰について前向きでないにしても、復帰を期待しているということは十一カ国の総意であることは間違いないわけでございます。

 もともと11が、もともと12という協定がある中で、別協定という形でTPPを発効させよう、その中でアメリカの復帰も促していこう、こういう、確かにこれまで余り例のないようなシチュエーションであるわけですけれども、そうした中で、それぞれ、アメリカが戻ってこないことが確実になった場合にはこういう見直しをしたいということを、我が国も含めて、他の国も含めて、いろいろ問題意識を出し合った上で、現在の内容で合意をしたということでございます。

 当面、TPP11については、三月八日に署名した内容で、我が国を含めて、発効させるということで国内手続を進めている、そういうことでございます。

神谷(裕)委員 このTPP枠もそうなんですけれども、同様に、牛肉等のセーフガードが、アメリカが外れたにもかかわらず同様の設定となっております。TPP11参加国の輸入量に対しては多過ぎる発動基準数量であるために、発動しにくくなっていると指摘をされているところでございます。

 なぜCPTPPでは農林水産分野の水準をそのまま容認したのか、伺いたいと思います。

 また、あわせて、特にセーフガードについては、なぜ維持したのか、そもそも交渉を行ったのかどうか、この辺について教えていただけたらと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、牛肉などの、TPPワイドでセーフガードの発動基準数量が定められている場合につきましても、先ほど来お答え申し上げておりますTPPワイドの関税割当てといった場合と全く同様の懸念を我が国として持っているということは、当初から各国に説明をしたところでございます。

 それも含めて協定第六条の見直しの対象とすることについて、各国の理解を得ているところでございます。

神谷(裕)委員 各国に我が国のこの懸念は伝わっているという理解でよろしいんですか。

澁谷政府参考人 セーフガードの発動基準数量それからTPPワイドで設定した関税割当て枠数量等について第六条の見直しの対象にする、数量そのものを見直しの対象とするということは明確に各国に伝え、茂木大臣が昨年十一月のベトナムでの閣僚全体会合の場で明確にそれを各国に対して伝えて、各国からそこは理解を得ているということでございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 懸念を伝える、あるいは各国に対して我が国の意思を伝える、これは本当に大事なことなんですけれども、現状でいいますと、セーフガード、そのまま、非常に大きな数量が認められているというままスタートをすることになるかもしれません。

 こういうことは、農業者の方々、先ほど石川さんも酪農であるとか肥育であるとか牛肉に関してさまざまなことをお伺いさせていただきました、やはり非常に不安だと思いますし、ここは一番影響が出るんじゃないかという部分の一つだと思います。

 そういう意味においても、やはりしっかり交渉していただく、そしてまた、この後、再交渉を実際にやるのかどうか、そこについてもう一回伺ってもよろしいでしょうか。

澁谷政府参考人 新協定第六条の規定に基づきまして、必要な場合には見直しを行うということでございます。

神谷(裕)委員 ぜひしっかりと交渉をしていただきたいと思いますし、ここは農林水産委員会の場でございますから、農林水産関係者の皆さんの思いを代弁する場でございます。

 そういった意味において、やはり一番懸念を持ち、あるいは自分の生活、自分のやっているなりわいは大丈夫かというふうに思っているのは、間違いなく農林水産の皆さんでございます。そういった皆様方の思いを考えたときに、少なくとも交渉を、意は伝えた、あるいは再交渉していただけると確認はとっているんだというようなことでございますけれども、実際にはスタートの段階でひょっとすると大量の牛肉が来るかもしれないなというふうにどうしても思えてしまう。一年二年先なのか、あるいはその先なのか、自分たちの経営も近いところを見通せない中で、何年先になるかわからないけれども、変わるかもしれないから待っていてくれとはなかなか私は言えないと思います。

 そういった意味においては、もちろん農水省の方でも万全の対策をやっていただかなければいけない、そのことも改めて申し上げさせていただきたいと思いますし、大臣、大きくうなずいていただいておりますので、しっかりとやっていただけるということを信じて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 昨年十二月に、CPTPPについて政府が農林水産分野も含めた影響試算ということをやっていただいております。CPTPPでは九百億から千五百億の生産額減少が見込まれるとされておりますけれども、この影響試算は総合的なTPP等関連政策大綱に基づく政策対応を考慮して算出しているというふうに御説明をいただいております。

 ただ、この方法では実態の影響が見えにくくなっているんじゃないかな、このように思うわけでございまして、本当にこの方法による影響試算で問題なかったのか、このことを伺わせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

野中大臣政務官 農水省としましては、影響試算というのは現実的に起こり得る影響を計算するものであるというふうに考えております。

 ですので、協定発効による影響ではなくて、協定発効による影響の後、国内対策による影響、これを加味した結果が現実的に起こり得る影響だというふうに考えておりまして、TPP11の影響試算、これもTPP12のときと同様、まず、関税撤廃の例外やセーフガード等の国境措置をしっかりと確保した、このことを明らかにし、品目ごとの定性分析を行って、そしてその上で国内対策も含めた試算を行ったところでございます。

神谷(裕)委員 野中政務官、ありがとうございます。

 ただ、やはり農業者の皆さん方はどう考えるかというと、実際に今御試算をいただいている九百億から千五百億……

伊藤(信)委員長代理 撮影はしないでください。

神谷(裕)委員 続けさせていただきます。

 野中さん、今試算をいただいているのは九百億から千五百億ぐらいの影響試算だということでございましたよね。だとするならば、率直に言います、農業者の思い、こんなに少なくないだろうということだと思います。

 本来のあり方であれば、TPP妥結しました、だとすれば、影響はこれくらいですね、次に、万全の対策を講じました、その結果、影響はこうなります、その道筋が欲しいんです。最初に全てパッケージにして、こうなりました、正直言うと、これはわかりにくいです。

 どうですか、こういった対策を抜いた上で、しっかりと影響試算を示していただく、そういうことは可能でしょうか。

野中大臣政務官 私も、平成二十五年が非常に記憶にあるんですが、まず交渉に臨む前に、全て譲った中での試算ということで約三兆円ということで数字が走り出した記憶があります。私も地元で農家の方が多くいらっしゃいますが、その数値がひとり歩きすると非常に心配をされたということが私は記憶にございます。

 やはり現実的に起こり得る影響というのは、その数値の後にちゃんとした対策を練った後、その数値の方が農家の方にとっても安心感を得られるんじゃないかという現実的な数値として、私どもは、影響試算はそのように計算をさせていただいております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

神谷(裕)委員 その平成二十五年の試算、確かに、三兆円という大きなものでございまして、ひとり歩きをしたんじゃないかというようなこともございました。このTPP、国論を二分する大きなものでございました。そういった中で、いわば現実をしっかりとお示しする、これは、特に国論を二分するものにあっては必要なことだと私は思います。

 もちろん、それについて丁寧な説明が必要であるということは間違いないことでございまして、だとしますと、次の質問なんですけれども、対策を仮に加味するとしても、対策による効果、あるいは、そういったものが実際に生産コストの低減や品質向上等の効果があるんだ、だから影響が減るんだというような議論があるとするならば、この根拠というか道理というか、これについてやはりきちんと説明をしなきゃいけないと思うんです。

 先ほど申し上げたように、影響がある、そしてそれに対して政策があって減るんだというようなことでございますれば、なぜこの政策がきいて、影響がこれくらい減るんだというようなところをしっかりとやはり説明をしていただく必要があると思うんです。これについて伺えたらと思います。

野中大臣政務官 お答えいたします。

 まず、TPPについて、農林水産分野において、特に重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保する、また、関税割当てやセーフガード等の措置を獲得したところであります。

 そしてまた、それでもやはり不安な農林漁業者の方々に、安心して取り組める、これが国内対策でございますが、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて対策を講じていくこととしております。

 その中で、例えばでございますが、米については、オーストラリア向けの新たな関税割当て枠で入ってくる米については、輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れる、このことによって、国産の主食米の需給及び価格に与える影響を遮断いたしました。牛肉、豚肉等についても、生産コスト削減のために、省力化機械の導入、規模拡大のための畜舎整備など、また、体質強化対策、牛・豚マルキンの補填率を八割から九割に上げるなどの経営安定対策の充実を行ったところでございます。

 そのような個別品目ごとの対策効果を踏まえ、先ほどの試算を計算したところ、九百億から千五百億の減少が見込まれるということになります。

神谷(裕)委員 今、野中政務官言われるように、例えば米について、オーストラリアの分は備蓄米に回しますよ、こういうことで需給関係は大丈夫ですよという説明は、一見わかりやすいんです。ただ、今、備蓄米の状況はどうなっているか、また一つこれも問題としてあると思います。

 あるいは、マルキンの話なんかもされるわけですけれども、実際、関税が削減された後、目に見える形で、要は、幾ら下がるよというのは見えるんですね。ただ、逆に、政策効果としてどれくらい上がるよというのはなかなか言いにくいな、見えにくいな。例えば、百円関税で下がります、ただ、この政策で百円相当分所得を確保することができるんですというような因果関係の説明というのはなかなか難しいんじゃないかなと正直思います。

 そこが明確でないから、恐らく農業者の皆さん方は御不満に思うでしょうし、例えば、私の価格が百円落ちちゃうけれども、その百円に相当する部分、政策でカバーできるのかなということを思うんだと思います。こういったところにやはり丁寧に、かつ、その政策でどれくらいきくのかというのは、正直見えない部分も多々あると思うんですね。

 この辺についてぜひ御配慮いただいた上で、だからこそ、最初に申し上げましたような、しっかりとした最初の影響試算、そして対策の結果これだけリカバリーするんだというものが要るんじゃないかなと思うんですけれども、再度、いかがでしょうか。

野中大臣政務官 お答えいたします。

 TPP協定の大筋合意によって、我が国の農林水産業は新たな国際環境に入ったということで、二十七年度以降、毎年補正予算を活用しまして、体質強化策を講じてきております。例えばですが、産地パワーアップ事業とか畜産クラスター事業、そしてまた我が国の農林水産物の輸出拡大対策等も予算として、政策として講じてきたところであります。

 一例でありますが、搾乳ロボットの導入とか、こうすることにおきまして、一日当たり七・六%の増加、搾乳量ですね、得られたという効果もありまして、引き続き取り組んでまいりたいと存じます。

神谷(裕)委員 大分時間を使ってしまいまして申しわけありません。

 それで、委員長、やはりこの農林水産委員会が一番TPPに関して、特に農業という分野が影響を受けるんじゃないかというようなこともあると思います。できますれば、今回の条約も含めてでございますけれども、連合審査みたいなことをやっていただけるように、御要望させていただきたいと思います。

伊東委員長 これは、他委員会との関係もありますので、理事会において検討させていただきます。

神谷(裕)委員 よろしくお取り計らいの方をお願いしたいと思います。

 ちょっと時間が来てしまったので、次の主要種子法の廃止に関連しての質問にかえさせていただきます。

 主要種子法が廃止された結果、幾つかの道県では、主要種子法の精神を受け継いだ条例を準備していると伺っております。こういった道県の動きについてどうお考えなのか、あるいは、各都道府県の予算措置の状況について伺えたらと思います。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 主要農作物種子法によりまして、種子供給業務につきまして全ての都道府県に一律に義務づけを行ってきたわけでございますが、当該業務につきましてはこれまでも自治事務という取扱いでございまして、各都道府県におかれて条例等を定めることにより、独自のルールを設ける都道府県は今までもあったわけでございます。

 種子法廃止後におきましても、このような都道府県が行う種子業務が自治事務であるという位置づけは変わりませんので、種子法の廃止後におきましても、条例等の独自のルールを定めることにつきましては、それぞれの都道府県の自主的な御判断だというふうに判断しているところでございます。

神谷(裕)委員 もちろん自治事務でございます。

 ただ、この廃止を受けて、新たに条例に取り組んでいる道県があるというようなことでございますれば、本来であれば、各都道府県で個別に条例つくりなさいというよりは、むしろ主要種子法をそのまま復活させた方がよろしいのじゃないかなというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。

齋藤国務大臣 もうこの話も累次お話し申し上げていますけれども、種子法の廃止は、当時の米の供給不足の解消や食生活の変化に伴う消費者ニーズの変化等を踏まえて、法律による都道府県に対する一律の義務づけという枠組みはもう必要なくなっているだろうということで、むしろ、官の力に加え、民の力を生かした種子の供給体制を構築して多様化するニーズに応えていった方がいいだろうという趣旨で、種子法は廃止をさせていただいたわけであります。

 この結果として、地域ごとの米の位置づけの違い等は当然ありますので、そういったものも踏まえて、条例の要否も含めて都道府県で判断をして、必要な措置を自治事務として行っているという現状が今生まれてきておりますので、それは法律廃止の趣旨に沿っているのではないかとむしろ考えております。

神谷(裕)委員 時間が参りましたので本日はこの程度にさせていただきたいと思いますけれども、種子の問題もそうです、あるいはTPPの問題もそうです、まだまだ聞きたいこと、あるいは疑問に思うこと多々ございます。これからも議論をさせていただきたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございました。

伊東委員長 次に、関健一郎君。

関(健)委員 希望の党、関健一郎でございます。

 質問の機会をいただきまして、御礼を申し上げます。

 神谷委員に続き、種子法に関して質問をさせていただきます。

 改めて、その種子法廃止の目的を教えてください。

柄澤政府参考人 主要農作物種子法の廃止の考え方について改めてお尋ねがございましたので、申し上げたいと存じます。

 この種子法につきましては、昭和二十七年、戦後の食料増産という国家的要請を背景に制定されたものでございます。しかし、それ以降、米の供給不足が解消するですとか、食生活の変化によりまして米の需要量が減少するという状況の変化が起きた後におきましても、今日、先般廃止されるに至るまで、全ての都道府県に一律に種子供給業務が義務づけられてきたところでございます。

 このような枠組みのもとで、各都道府県がいわばフルセットの形で種子供給業務を行ってきたわけでございますが、その結果、例えば、いわゆるブランド米の種子については多くの都道府県がそれぞれ供給を行うという一方で、今、我が国全体として課題となっております、例えば外食、中食需要に適した低コストで生産可能な多収品種等の種子の供給について見ますと、こういったものに取り組む都道府県がほとんどないというようなことでございますので、むしろ、多様な需要に応じた種子の供給に問題が生じてきたというふうに認識しているところでございます。

 このために、種子法に基づく全ての都道府県に対する一律の義務づけを廃止すると同時に、農業競争力強化支援法を制定することによりまして、民間事業者も含めた国の総力を挙げて需要に応じた種子の供給が行われる環境を整備するという考え方で行ったところでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 現状の認識は共有ができるんだと思います。まさに需要が減退して、日本人の食生活が変わって、フルセットで都道府県が一律にやることはどうなのかという問題意識なんだと思います。そして、都道府県の品種が大宗を占める中、民間の活力が入ってきていないんじゃないか、こういう問題意識なんだと思います。おっしゃられたように、ブランド米とか、外食、中食に対してのニーズに応えていないんじゃないか、その問題意識も現状の認識としては共有できるものであります。

 質問は、民間企業の促進、これが廃止の趣旨なんだと思いますが、現時点で、例えばお米、麦、大豆ですけれども、民間企業への開発支援、これはどういうことをやっておられますか。教えてください。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 種子、種苗の開発に当たりましては、官民の総力を挙げた体制を構築いたしまして、我が国農業の競争力強化を図って、農業を成長産業にすることが重要と考えておるところでございます。

 そこで、民間企業の育種に対する支援でございますけれども、現在、農研機構におきまして、ジーンバンク事業を通じまして国内外から収集、保存してございます、さまざまな特性を有する遺伝資源を民間企業等のリクエストに応じまして育種素材として提供するとともに、各種の研究開発プロジェクトにおいて、研究開発費に対する支援を行っているところでございます。

 近年における具体的な事例といたしましては、例えば、民間企業が参画して行っております業務用向けの超多収米、あるいはビール用大麦、牧草等の品種開発の支援を行っているところでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 まさに、今おっしゃっていただいた支援、引き続き加速をさせていただきたいんですけれども、ある具体例を紹介させていただきます。農林水産省が取りまとめていただきました市町村別農業産出額全国九位の豊橋市の具体例です。

 女神のほほえみというお米が販売されているんです。六年前、豊橋市の生産者の方が夏前に自分の圃場を見渡していたら、銀の稲が六本生えていた。この銀の稲は何なんだ、これはきっと新しい品種に違いないと気づいた、河合さんという方なんですけれども、この方は、そのもみをとって育成をしてということをやったら、何と、収穫のときには黄金色になる品種だったそうです。お盆前には銀色になって、収穫のときには金色になる。これは見た目が物すごくきれいで、新しい品種に違いないと。そこから販売まで三年かかりました。今では、その六本だった女神のほほえみは、二十九年産はほぼ完売で、二百トン生産しておられるそうです。

 粒が大きくて食感がよい、冷めてからもおいしい、だから、おにぎりとかお弁当でも使いやすいんですよ、こういうのがアピールポイントになっておりまして、これはまさに、先ほどおっしゃっておられた民間の活力の促進の典型的な具体例だと思います。

 この方々は、国からの支援は一円もいただいておりません。ただ、いろんな援護射撃で農水省の支援をいただいていたそうなんです。

 具体的に申し上げますと、まず、自分たちで、おっ、これは見たことないなというのを商品化するためには、二つの登録をしなければいけない。一つが商標の登録、そしてもう一つが品種の登録です。これは通常、物すごい時間がかかるそうなんですが、農水省の人たちが、急がなきゃいかぬということで、三年ぐらいでやってくれたそうです。必要な手続としては、種の提出を受けた後、DNA鑑定をして、どういう品種になるのかということを調べなきゃいけないから、何年かかかってしまうわけです。

 ここから申し上げたいのは、農水省がやらなければいけないことというのは、まさに、こういう意識高き生産者の人たちがより早く特許をとれるとか、そういう品種の開発に向けた後押しをいかに迅速に正確にできるか、かゆいところに手が届くサービスができるかというところに尽きると思うんです。

 どういうことをやってほしかったですかと聞いたんです。そうしたら、商標登録と品種登録、これにやはり膨大な手続とお金がかかるんだというのが悩みでした。そして、これは、先ほど言及された外食、中食のお米なんかもそうなんですけれども、かなり生産についての、生産者の皆さんに細かい技術指導というか、そういうのをしなきゃいけないという課題があるわけです。

 つまり、民間企業促進のためには、民間の活力を活用するためには、先ほどおっしゃっていただいた支援策も必要なんですけれども、まさに商標登録、品種登録、そして生産者への、こうやってつくるんですよ、そういうところの周知、ここにお金と時間がかかるんだ、こういう支援をやってほしいということをおっしゃっていました。

 そこで、大臣に質問です。

 これは、先ほども神谷委員の質問に対してお答えいただきましたけれども、まさに基本的な認識、現状分析は共有できていると思いますが、その廃止の是非について意見が違うんだと思います。

 ですからこそ建設的に質問をさせていただきたいんですけれども、種子法を廃止することによって、やはり作用、副作用があると思います。私たちは、その副作用に関して深刻な懸念を持っているわけです。そして、その懸念、種子の価格が上がっちゃうんじゃないか、種の種類が減っちゃうんじゃないか、寡占のリスクにさらされちゃうんじゃないか、もぐもぐタイムのイチゴであったように、今までの日本人の米の集積が外に漏れちゃうんじゃないか、こういう副作用がある、その懸念は拭い切れないと思います。

 であれば、この法律を残したまま、民間の人たちのかゆいところに手が届く、活力を上げさせるような支援を新たに足せばいいだけの話だったんじゃないか。つまり、廃止せずに、生産者への支援を追加するということでよかったのではないかということを大臣にお尋ねします。

齋藤国務大臣 今、関委員がお話しになった河合さんの、新しくいろいろ種子を開発して所得を向上させようということを農林水産省として大いに応援をしていきたいと思っているわけでありますが、そういうものが、ちゃんと都道府県の奨励品種にしていただくということはもっと重要なことであるわけであります。

 それで、今、関委員の議論を伺っていて、民間の取組をもっと応援する、多様なニーズに応えるためにはそういうことが必要だという認識は多分共有できていると思うんです。だから種子法があった方がいいという結論には私はならないと論理的に思っています。

 ですから、むしろ、奨励品種に自分が開発したものが偏りがち、なぜなら、奨励品種にするかどうかの試験をするのは都道府県自体なわけですから、自分たちが開発したというものを都道府県自身が試験をするとか、そういうのは国が決めているわけでありますから、そういう国で決めることをやめていけば民間がより活躍できる環境整備の一助になるのではないかということが我々が考えていることだということでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 やはり、大臣がおっしゃることもよく理解するんですけれども……(発言する者あり)済みません。

 私としては、私としてはというか、やはり作用、反作用があって、もちろん作用の部分はおっしゃるとおりなんだと思います。ただ、やはり、国の根幹でもある米、麦、大豆というものが寡占のリスクにさらされる、また値上がりのリスクにさらされる、そして文化の根幹でもある多様性が減退してしまうのではないか、こういうリスクにさらされること自体に強い危機感を感じます。

 野党の皆さんと主要農作物種子法復活法案をしっかりと提出をさせていただいて、その中では、稲、麦、大豆を対象に、都道府県の機能はもとに戻して、あとは、農業競争力強化支援法の、民間企業への知見の提供というのは、これは情報、技能の流出、海外への流出のリスクもありますから、それを削除するということ。あとは、先ほど私が紹介させていただいた女神のほほえみ、これは豊橋一号という品種でございますけれども、そういう意識高き生産者の皆さんが、いや、これは面倒くさいんだよな、あれは金がかかるんだよなということを思われないような支援の仕組みをしっかりと盛り込んだ種子法の復活法案というのを提出させていただきますので、引き続き御審議をお願いいたします。

 また、種子法とは別個にしてでも、大臣も今言及いただきましたけれども、そういう生産者の方がまさにかゆいところに手が届くサービスというのを農水省の方々に引き続き追求していただきたいとお願いを申し上げまして、種子法に関しての質問は終わらせていただきます。

 続きまして、ちょっと順番を変えさせていただきますけれども、森林・林業に関してお伺いをさせていただきます。

 私、NHK記者時代に農林水産省を担当させていただきまして、林業、ちょっと詳しく取材をさせていただいて、特別な思い入れを持って質問をさせていただきます。そのときにちょっと出始めだったCLTに関してお尋ねをさせていただきます。

 現在、建築基準法の一部を改正する法律案が国会に提出をされていると思いますが、この法案における木造建築物に関する改正内容について説明をお願いいたします。

眞鍋政府参考人 建築基準法の一部を改正する法律案についてのお尋ねにお答えいたします。

 我が国におきましては、木材が内外装材や建物の躯体などに活用されている木造建築に親しみを感じる国民の皆さんが多いことから、木材を目に見える形で活用した建築に対する根強いニーズがあるものというふうに認識しております。

 これまでにも、農林水産省、林野庁始め関係省庁との連携を図りながら、建築基準法の改正など建築規制の合理化に取り組んできておりますが、今国会でまさに今御審議いただいております建築基準法の一部を改正する法律案におきましては、主として防火関係の規制の合理化を図ることとしております。

 具体的に申し上げますと、高さが十三メートルを超える中層建築物の柱やはりなどについて、木材がそのまま見える、いわゆるあらわしで使いやすくなる。防火地域、準防火地域の建築物の内部の柱やはりなどについても、木材をあらわしで使いやすくなる。さらに、防火地域、準防火地域の建築物に附属する二メートルを超える門や塀についても木材でつくりやすくなる。こういった効果を見込んだ合理化を内容とするものでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたとおり、根強いニーズがあると思います。

 私も夢がありまして、いつか地元の木材だけを使った木造建築の家に住んで、真ん中には暖炉があって、そういう家に住むことができたらなと思っています。(発言する者あり)ありがとうございます。

 そんな中で質問なんですけれども、その夢を、私、建築士の方に言ったら、関さん、それは無理だと言われたんです。暖炉の周りは木はだめなんですね。キッチンの周りに木が見えているとだめなんですね。これは、いつの、何十年前の基準かわかりませんけれども、今おっしゃられた根強いニーズがあるにもかかわらず、そういう理由で木造建築を断念せざるを得ない、こういうことは結構あるわけです。

 そこで、質問をさせていただきますけれども、この改正により、耐火構造とすべき木造建築物の対象が見直されれば、どの程度木材の利用が促進されると見込んでいるのか、お答えください。

沖政府参考人 お答えいたします。

 今回の建築基準法の一部を改正する法律案においては、木造建築の推進を図るため、木造建築物等に係る制限の合理化として、中層木造共同住宅など木造建築物の整備を推進するとともに、防火改修、建てかえ等が促進されるものと承知してございます。

 この改正による木材の利用がどの程度かにつきましては、実際の木材の利用量が、住宅やオフィスを建築します施主の意向とか、それから社会情勢等に左右されますことから、定量的にお示しをすることは難しいところでございますけれども、木材の利用が促進される機会になっていくのではないかと期待をしているところでございます。

 林野庁といたしましては、この法改正を受けまして、中層建築物等におけます木材利用が一層促進されますよう、CLTなどの新たな製品、技術の開発、普及、中層木造建築物等に携わる設計者それから施工者等の技術者の育成等に国土交通省等の関係省庁と連携して取り組んでまいることとしてございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 きのう、国交省の方からこれに関してレクチャーをしてもらっていたときに暖炉の話をしたら、かつては、暖炉がある部屋は全部木材はだめだったらしいんです。ところが、耐火性の向上によって、暖炉の周辺だけ木にしなければよくなったんですよね。というように、耐火性、性能に合わせて不断の改正をしていくということはまさに大事なポイントだと思います。

 そこで、改めてお尋ねしますけれども、CLTの耐震性、どのぐらい強いか、あとは耐火性、従前と比べてどの程度改善されてきているのか、説明をお願いします。

沖政府参考人 お答えいたします。

 CLTについてのお尋ねでございます。

 CLTにつきましては、平成二十七年度以前は、建築の耐震性に関する強度性能や耐火性能など、建築部材としての性能について実験データが整備されておりませんでした。こうしたことから、その利用の範囲が極めて限定的なものになってございました。

 このため、林野庁といたしましては、CLTの曲げ強度等のデータの収集を行い、材料として用いる樹種や積層のパターンをふやすことを可能としたほか、金物やボルトを用いて強度の高いCLTの接合方法を開発し、さらに、床材としてCLTを用いた場合に二時間耐火性能を持たせる方法を開発するなどの取組を支援してきたところでございます。

 こうした取組によりまして、平成二十八年三月には、CLTの建築部材としての強度や耐火性能に関するデータが一定程度まで収集されまして、CLTを用いた建築物の一般的な設計方法に関する国土交通省の告示が公布、施行されたところでございます。

 このような背景によりまして、中高層建築物や防火地域内の建築物にもCLTの利用が可能となりまして、平成二十八年度末までに九十五件のCLTを使用した建物がつくられ、CLTを床に使用しました五階建てのビルも建てられているところでございます。

 今後とも、更に技術開発等を推進して、CLTの一層の利用が進むよう取り組んでまいります。

関(健)委員 ありがとうございます。

 CLTの耐震性、耐火性、更に改善されていけば、これは中高層建築物にも利用できるようになるんじゃないか。まさに、先ほど冒頭答弁をいただきましたけれども、根強いニーズがあるわけです。木の魅力というのは、日本人、日本人に限らず、みんな、おしゃれだ、クールだと感じるようになっているわけです。

 ですから、中高層建築物にも利用できるようになるんじゃないか、そして、建築基準法のさらなる改正が必要となるのではないかということなんですけれども、答弁をお願いします。

眞鍋政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねのありましたCLTでございますが、御指摘のように、中高層建築物などにも利用可能な新たな木質部材だと認識してございます。

 国土交通省におきましては、これまでにも、農林水産省、林野庁との連携協力のもと、CLTを利用した建築物を建てやすくするような建築基準の整備を順次進めてきております。

 まず、構造関係の規制については、平成二十八年に、CLT工法について一般的な構造設計方法を定めて、個別の大臣認定を一件ずつ受けなくても建築確認の手続で建築できるようにしたほか、ことし三月には、床や屋根に用いるCLTについて、五層の厚いものに加えて三層の薄いものも使用できるように告示を改正いたしました。またさらに、ツーバイフォー工法の建築物の床や屋根にもCLTを使用できるように、これも告示改正をしてございます。

 また、防火関係の規制を見てみますと、現行の制度におきましても、耐火構造とする必要がある場合には、CLTを石こうボードで被覆いたしまして耐火性能を確保すれば使用できますし、平成二十八年からは、低層建築物であれば、構造部材であるCLTをそのまま見せる形、つまり、あらわしで使用できるようにいたしております。

 このように、一定の範囲内で、現行制度において中高層建築物に使用することも可能でございますが、さらに、御指摘のありました建築基準法の改正案において、高さ十三メートルを超える、あるいは四階建て以上の建物についても、CLTをあらわしで利用することを可能とすることにしております。

 このように、建築規制の合理化については不断に取り組んでまいっておりまして、今後とも検討を進めてまいります。

関(健)委員 ありがとうございます。

 現場の企業の方とかに話を聞くと、技術が伸びて、ここまで強度が上がっているのに使わせてくれないんだとか、ここまで燃えないつくりにしているのに許可がおりないんだ、こういうことはやはりあってはならないと思うんです。今おっしゃられたように、技術の革新に伴った、不断で迅速な改正というか、民間のスピードについていって、彼らのまさに活力を阻害しないような、仕組みの不断の見直しを強くお願い申し上げます。

 最後に、大臣にお尋ねします。

 まさに、きのうもそうでしたけれども、林業の成長産業としての位置づけという活性化、これは大いに議論されていますけれども、この出口、どこでどれぐらい使ってもらえるか。まさに、使いやすい出口戦略がしっかりしていなければ、これはどんなに川上を整えても川下で詰まっちゃうわけですね。農林水産業の最高責任者として、改めて、その出口の拡大、販路の拡大について御所見を伺います。

齋藤国務大臣 林業の成長産業化を進めていくためには、当然のことながら、木材の需要の拡大ということを同時に進めていかなくちゃいけないわけであります。

 今、委員は出口という話をされました。そういう意味では、建築部材として木材が使われやすくするための環境づくりというのは大事なポイントだと思っておりますので、国土交通省等とも連携して、制度の見直しや施策の充実というものをこれまでも図ってきているところであります。

 先ほど来、国土交通省の方からも御答弁させていただいておりますので、例えばCLTの建築基準がどう変わってきただとか、もう繰り返しませんけれども、今委員おっしゃったように、また新しいものも出てきますので、それにおくれない対応で需要の拡大を図っていくということが大事だと思っています。

 特に、私が個人的にいいなと思っているのは、木材がそのまま見えるあらわしですね。このあらわしがいろいろな建築物に使われて、癒やしの一つの発露となっていくというのは、私はすばらしいなと思っておりますので、できれば中層ですとか非住宅の分野でもこういうものが広がっていけばいいなというふうに考えています。

 いずれにいたしましても、国土交通省等関係省庁ございますので、関係省庁等とも連携をして、建築物等における木材の利用の一層の推進というのは林業の成長産業化の肝の一つだと思っていますので、全力で取り組んでまいりたいと思います。

関(健)委員 ありがとうございます。

 林業の活性化に向けて、出口戦略というのはまさに肝の部分だとおっしゃっていただきましたので、引き続き拡大に向けた取組をお願いいたします。

 時間が少なくなってしまいました。

 今回の女神のほほえみを調査させていただいたときに、いろいろ、いろんな方の、生産者の方のお話を聞きました。

 その中で、ある生産者の会でお話をさせていただいたときに、農水省とか大臣というのは、どうせ現場なんか知らないで、机の上しか見ていないんでしょうということを言う方がいました。私は反論する立場ではないんですけれども、そんなことはないです、農水大臣だって、農林水産省の全ての役人の皆さんも、現場感がないということを言われないように必死で現場に足を運んでいるんです、そういう人たちを見てから言ってくださいと言っておきました。

 既に、私はまだ衆議院議員になって半年しかたっていませんけれども、農水省の皆さんが現場を訪れて、まさに土を踏んで、靴を汚して、現場を視察している方々をたくさん見ていますし、大いに敬意を表したいと思いますけれども、農林水産省というところほど現場感がなくなってはいけない役所はないと思います。

 ですから、きょうの質問でもさせていただきましたけれども、民間の成長を阻害しない、技術革新が進んだら、すぐそれに対応できる仕組みを改正する。そして、いいお米をつくる、意識高き人がいたら、その人の時間とお金を邪魔しないように、何とかしてそういう人たちの、意識高き人の背中を後押しする。こういうことを常に悩み続けて、生産者の皆さんのニーズに合う役所として機能しなければいけないんだと思います。

 ちょっと抽象的な質問ですけれども、大臣、改めて、最後に伺いますけれども、農水省は現場感があるということを常に意識し続けなければいけないとお考えでしょうか。また、改めて役所の皆さんにそういうことをぜひ言っていただきたい。お願いいたします。

齋藤国務大臣 御指摘のとおりだと思います。私も地元では、都市近郊農業ですけれども、相当一生懸命農業をやっている方、たくさんおりますので、最近余り帰れなくなりましたけれども、帰ると田植をしたこともございますし、そういう現場の皆さんの声、実情、ここに政策の答えがあるんだろうと私は思っております。

 と同時に、今、こういう季節、農業をめぐる環境が大きく変化をする中で、現場を見るのと同時に、広い視野を持って考えていくということも同時に必要だなというふうに思っていまして、私はこの点については常々職員に申し上げているところでございます。

関(健)委員 通告のない質問にお答えいただき、ありがとうございました。

 質問を終わります。ありがとうございました。

伊東委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 希望の党の大串でございます。

 今、関さんが質問された、農林水産省というのは、どんな役所もそうですけれども、現場の声に基づいておかなければならない。特に農水省は、土の香りのする政策をしっかり実行していけるように、あるいは潮の香りのする政策を実行していけるように、あるいは緑の背景が見える政策を実行していけるように、現場目線でなきゃいけないと私は思うんですね。そういう意味からして、関さんが言ったことは私は非常に大切だと思うんですが、では、今の農水省の体制がそうなっているかというと、私は非常に心配なんです。

 きょうは野上副長官に来ていただきました。政府全体の公務員の定数管理、これも重要です。官の肥大化みたいになってはいけない、それはよくわかります。しかし、必要な行政はやっていかなければならない。これは重要なことです。

 資料をお配りさせていただきましたけれども、一枚目を見ていただきますと、二つ表があるうちの下の方を見てください。「年度末定員の推移」というのがあります。二十六年度から三十年度まで書いていますね。農林水産省の定員がずっと書かれていますけれども、一番右のところの推移を見ていただきますと、突出して農林水産省の定員の削減、多いんですね、千三百六十六人。ほかの役所と比べてみてください。

 ぜひ委員の皆さんも銘記いただきたいと思いますけれども、こんなに農水省だけが突出して定員は削減されているんです。定員の合理化に関しては政府もいろいろ議論した上でやっているので、私は、土の香りを忘れない安倍政権だと期待したいと思っていますので、ちょっとこれはいかがなものかなと思うんです。

 これからも定員合理化の議論はあるんでしょうが、野上副長官、お忙しい中来ていただきましたが、これはちょっと、農水省だけ定員合理化、過度なのではないでしょうか。それがゆえに政策実行が現場目線にならないおそれをはらまないでしょうか。いかがでしょうか。

野上内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 国の定員管理に当たりましては、現下の厳しい財政状況を鑑みまして、不断の業務の見直しを進める一方で、必要なところには適切に定員を配置し、政府の重要課題に機動的かつ柔軟に対処できる体制の構築を図っているところであります。

 計画的な定員合理化を行うに当たりましては、全ての府省に対して一定の合理化を求める中で、各府省の行政需要の動向を反映しております。近年の部局ごとの定員増減の状況等も加味をして、府省ごとの合理化目標を決定しているところでありますが、委員御指摘のとおり、農水省に重い負担をお願いしているということは事実であります。

 他方、平成三十年度の定員査定につきましては、農林水産行政を取り巻く環境の変化を踏まえまして、動植物検疫、あるいは農泊、ジビエ利用、漁業取締り等の重要課題への対応に重点的に定員措置を行っているところであります。

 引き続き、厳しい財政事情に鑑みまして、既存体制の見直しをお願いしつつ、今委員の御指摘も踏まえながら、現場の実情を始め政策課題を丁寧に伺いながら定員査定に臨むことが必要だと考えております。

大串(博)委員 一般論として答弁はわかります。

 今、副長官の方から、農水省に重い負担がかかっているということは事実だ、認識しているというふうに言っていただいたのは、認識をそう持っていただくのはいいと思います。その上で、ぜひ、本当に現場目線の農政ができる、農林漁政ができる形になっているのかというところは、政府全体としてもこれから考え続けていただきたいと思うんですね。

 加えて、では農水省自体、これだけ、見てください、農水省、大きな役所の中で、決して定員がひどく多い役所ではないんですね、二万二千人。でも、そこの中で、この五年間で千三百六十六人も削られている。こういう状況に突出してある中で、皆さん、これを頭に置いていただきながら次の資料を見ていただきます。

 農林水産省の定員がどうなってきているかといいますと、この次の資料なんですけれども、農林水産省全体では、さっき言ったようにかなり減っていますね。どういう分布になっているかというと、本省の方は、四千八百二十九から五千九十六、ふえていますね、千人強。施設等機関、これは、先ほど野上副長官も言われましたけれども、今、検疫、動物検疫等々、水際対策も含めて非常に重要な社会課題がございます。ここの体制も強化してもらっている。これはいいことだと思うんです。これは前に我が党の岸本議員がこの委員会でも取り上げました。

 最後を見ていただくと、地方支分部局なんですね、地方農政局。北海道の農政局や、あるいは皆さんのところにも地方農政局があると思います。これはセンターという形で改組されつつありますけれども、ここを見ていただくと、一万五千八百八十九から一万四千百五十二人と、約千七百人ほど急減しているんですね。

 先ほど関さんから話のありました、地方を歩くと、農政、机上の空論になってはいないかという声をよく皆さんは聞かれないですか。農水省の机上の空論のような農政は困るという声を農業者の皆さんから聞かれないでしょうか。その観点からいうと、地方支局の皆さん、地方を歩いていただいて、本当に今、農政の実態がどうなのかということをよく見聞きしていただいた上で本省にいろいろな情報を上げていただくということをやっていただかなきゃならない。それが本当に地に足のついた農政になるんだと思いますけれども、地方支分部局がこれだけ削られているということなんですね。

 私、これは非常に気になるところでありまして、大臣にここはお尋ねしたいと思いますが、全体、農水省は非常に抑えられている、これは非常に厳しい。だから、大臣として、まず定員の確保に全力で努めるということはぜひお約束いただきたいと思います。全体像が一つ。

 そのもう一つに、農水省の中の割り振りとして、地方の定員合理化に、重い負担がここにかかっている。これが本当に、机上の空論にならない農政に、なってしまうんじゃないかというおそれを惹起する。これを今後見直していってほしいなというふうに思うんですね。

 この二点に関して、私は、大臣としてしっかり決意を述べていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 まず、御指摘の第一点であります。農林水産省ばかりに深掘りを求めていることは問題ではないかという御質問がありました。問題なんですと申し上げるわけにはいかないんですけれども、応援をしていただいているというふうに聞かせていただきました。

 現行の国家公務員の定員合理化計画の策定後にも、御案内のように、平成二十七年の農林水産省設置法の改正時の附帯決議におきましても、農林水産省及び地方農政局等において必要な定員を確保することとされております。

 農林水産省においても、これまで、農林水産業の競争力強化等さまざまな課題の解決を図る観点から、地方農政局等の地方支分部局も含めて必要な定員を確保してきたところでありますけれども、今後とも、業務に支障が出るということはあってはならないと思っていますので、この人員の確保、定員の確保については私も努力をしていきたいと思っております。

 また、地方に関しても、この定員合理化の配分を行うに当たりましては、業務の状況を考慮しまして、めり張りをつけて行うなど、業務に支障が生じないよう対応してきているところであります。

 少し例を申し上げますと、本省におきましても、農林水産業の競争力強化のための定員ということで、輸出促進ですとか、AIとかICT等を活用したスマート農業の推進のところですとか、あるいは、地方では農泊の普及、推進ですとかジビエ利活用ですとか、そういうところには要員をしっかりふやすという努力もしてきているところであります。

 今後とも、業務の実施や合理化の状況等を踏まえて対応してまいりますが、やはり、現場とともにある農林水産省というところが崩れては、これは一大事でありますので、そういうことがないように目配りをしていきたいと考えております。

大串(博)委員 今、大臣も言及していただきましたけれども、さきに農林水産省設置法の一部を改正したときに、附帯決議もしっかり、院としてもつけてきているんですね。「地方農政局等において必要な定員を確保し、中長期的視点に立った採用、研修を通じて人材育成を行い、現場と農政を結ぶバランスの良い人員配置を行う」というようなことを言ってきているんです。

 というのは、今、地方において、退職される方々がある意味多いんですね。皆さん御想像つかれると思いますけれども、ごそっと抜けられるわけですよ。一方で、新規採用というのは、これは答弁は求めませんけれども、地方支分部局においての新規採用というのはないんですね、今。ほぼない。となると、もう減っていく一方なんです、地方は。そういう現状があるから、この附帯決議でも、地方で目くばせできるようにということを、あえて院として言わせていただきました。

 特に統計ですね。農業統計、農林統計、農林漁業統計、もう非常に重要だと私は思っているんです。これがあって初めて、地に足のついた農政を私たちも政府も議論できると思うんですけれども、統計調査なんかは本当に専門性もあります。ぽっと来ていただいて誰かにお願いすればできるというものでもない。経営診断や、あるいは農業の本質的なところを見てもらいながら統計をとってもらわなきゃならないので、この育成というのはなかなか大変で、単に外部化すればいいというものじゃないと思うんですね。

 こういったものも含めて、やはり今の段階においては、大臣には、相当気合いを入れて定員の確保やあるいは省内での人員配置を考えていただかなければならないなというふうに思いますけれども、最後に一つだけちょっとお尋ねさせていただきたい。

 さっき申し上げた、特に地方は、ごそっとこれから大量に高齢の方がやめられるわけですね。それで、新規採用が今ない。こういう中で、地方支分部局の業務が滞らないようにしていかなきゃならない。

 一つ考えるとすると、今、退職された方々の任用をもう一回お願いして、つないでもらうということをお願いするんですけれども、やはりパートタイムだと、なかなかその方々もしっかりした業務にならない。やはり、そういう退職した方々にもう一回お願いするときにも、できるだけフルタイムで、きちっとした形で業務に邁進してもらえるようにするというのが一つの解決策だと思うんです。

 地方支分部局の皆様がこれから退職される、しかし新規採用はない、要するに減っちゃう、それで足腰が弱る。そういうふうにならないように、退職者の皆さんにフルタイムで働いてもらうというようなことも含めた、やはり私は手当てが必要じゃないかと思うんですけれども、大臣の御所見をいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 今御指摘いただきましたけれども、農林水産省におきましては、高齢職員の割合が極めて高いということでありまして、今後、多くの退職者が見込まれるところであります。

 私どもも、全体として新規採用数をふやしているのでありますけれども、あわせて、定員の状況に応じたフルタイム再任用の活用も図ってまいりたいと考えています。少しずつ数字はふえてきておりまして、二十八年度はフルタイム再任用五十名だったんですけれども、三十一年度の予定では八十名ぐらいになるということであります。

 地方農政局及び北海道農政事務所の県域拠点等においては、フルタイムではなくて短時間再任用での配置ということになっているわけでありますが、今後とも、また退職者はふえ続けますので、職員の希望ですとか業務経験等も踏まえて適切に対応していきたいと考えております。

大串(博)委員 ぜひここはよろしくお願い申し上げたいと思いますので、地方の声をしっかり聞き取れる農林漁政であってほしいという思いからの質問でございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 野上副長官にもぜひよろしくお願いして、どうぞ、御退席いただいて結構です。

 次に、これも同じような流れの話なんですけれども、独立行政法人、農水省で抱えていらっしゃいます。この施設、私、結構あちこち視察に行くことがあるんですけれども、かなり老朽化している。本当に、業務に差し支えないかと思うところもあるんですね。

 数字をちょっと見させていただきました。独立行政法人、幾つかありますけれども、合算した施設整備費の推移を見てみると、やはりあっと驚くような数字だったんですね。十年前と比べると激減しているんです。十年前は、農水省所管の独法の施設整備費は約四十九億、五十億ぐらいありましたね。それが今、この段階においては、三十年度においては十五億ぐらいに、三分の一ぐらいになっているんですね。相当な施設が老朽化してきているのも、私も見ています。

 これは本当に、業務を適切に執行するという意味においてはかなり苦しい状況になってきているかなと思うものですから、この予算獲得、あるいは施設整備に対する力を込めるという点に関しても、大臣にぜひ決意をいただきたいなというふうに思います。

齋藤国務大臣 御指摘のように、独立行政法人の施設整備費補助金というものは、厳しい財政状況の中で、各法人における施設整備の緊急性等を十分に踏まえて、私どもも、優先度の高いものから必要な予算を措置し、計画的な施設の更新等を進めているところであります。

 例えばですけれども、平成二十四年度補正予算では、電源喪失時にも対応し得る遺伝資源関連施設、要するにジーンバンクですが、これを設置して九百平米ぐらいの施設をつくるとか、あるいは、二十九年度からの国庫債務負担行為によりまして、複数年にわたる大規模な施設改修を、これはいずれも農研機構ですけれども、において新しい対応をするということも行っているわけでありますが、いずれにしても、厳しい予算の中で優先度の高いものからきちんと整備を進めていくということでありますが、独立行政法人が十分なパフォーマンスを発揮できるということが大事でありますので、その発揮に支障が出ることのないように、きちんと対応してまいりたいと考えております。

大串(博)委員 ぜひよろしく、施設も見ていただいていると思いますけれども、相当な老朽化ですので、見ていただけたらな、そしてその上で取り組んでいただけたらなと思います。

 そして、もう一つ論点を指摘させていただくと、私が非常に今心配しているのが漁業調整事務所なんですね。御案内のように、外国漁船の違法操業、これは各地で時折見られます。これに対してかなり頻繁に漁業調整事務所が出ていって、違法操業がないかというのを取り締まっていく。これは本部をつくって今やっているんですけれども、この体制が非常に今、実態に追いついていないという現実があると思うんですね。

 船等の装備も古い。違法操業しているわけですから、向こうがどういうふうな荒々しい対応に出てくるかわからないにもかかわらず、調整事務所の人が出ていくのは一人で行かれている。複数じゃないんですよ、一人で行かれている。一体、何かあったときにどうするんだろうという心配すらあるんですね。

 この複数対応体制も全くまだできていないということからすると、ここは非常に、今の日本の水際を守るという観点からして、漁業調整事務所の整備や施設あるいは人員も含めた体制の整備、これはもう極めて急務になってきていると思うんです。これに関しても、大臣も非常に問題意識を持っていただいていると思いますけれども、ぜひ、しっかりと対応していくという決意を聞かせていただきたいと思います。

齋藤国務大臣 漁業調整事務所は、漁業秩序の維持と円滑な操業を確保するために、我が国排他的経済水域等において外国漁船及び我が国漁船の指導、取締りを行うとともに、複数県にまたがる漁業紛争の調整、大臣許可漁業の許可等の業務を行っておりまして、御指摘のように、広範な業務を担っていただいているわけであります。

 特に、御指摘の漁業取締りにつきましては、漁業調整事務所に漁業取締り船を配置いたしまして、海上保安庁や都道府県等と連携して、悪質化してきている外国漁船に対する取締り、沿岸域での密漁取締り等を実施しているところでございます。

 我が国には、世界有数の広大な漁場が存在します。その豊かな資源を管理しつつ、水産業の成長産業化を進めるためには、この漁業調整事務所の機能を十分に活用して、漁業秩序の維持、水産資源の維持、回復等を進めることが極めて重要だというふうに考えておりまして、そのために必要な人員や予算の確保、取締り船の建造等に力を入れていきたいと考えております。

 平成三十年度におきましては漁業監督指導官を五名増員いたしましたし、平成二十九年度補正及び平成三十年度予算におきましても、大型かつ最新鋭の漁業取締り船一隻の代船建造及び新たに漁業取締り船を一隻建造するということとさせていただいたところでありまして、引き続き努力を継続していきたいと考えております。

大串(博)委員 ぜひ、これも本当に喫緊の課題になっておりますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、ちょっと質問の順番を変えまして、大臣、済みませんけれども、中山間直接支払いのことに関して、資料もつけておりますので、先に質問させていただきますと、先ほどの、地域の声の聞こえる農政じゃないですけれども、皆さん、どうでしょうか、中山間直接支払い、地元を歩かれると、これはもう少し支払いが早くならないかなという声は聞かれないでしょうか。二月にもらったって年度内執行なんてできやしねえよという声を聞かれる方が多いんじゃないかと思うんですね。

 資料三番目を見ていただきますと、過去三年分の執行の月ごとの配分額を見ていただきます。例えば、ひどいのは、二十七年なんか、九月、十月はまだ九%、一六%ぐらいしか執行されていないんですよ。一月になってやっと六四%です。例えば二十八年度なんかも、一月でやっと七三%です。極めて後ろ倒しして執行されているんですね。中山間直接支払いというのは、基本的に各地区が仕組みをつくって毎年毎年やっているようなものなんですよ。それが何でこんなにおくれるのかと、私は非常に不思議でたまらないんですね。

 ちょっと参考までに次の資料を見ていただきますと、これは多面的機能支払い、農地・水・環境ですよ。私の地区も先週、農地・水・環境の溝掃除がありましたけれども、これを見ていただくと、比較的執行が早いんです。七月に六一%、八月に七六・五、こうなっているんですね。

 同じように集落が管理しながらやっているにもかかわらず、なぜ中山間直接支払いでこんなに遅いのか、私は何かやり方に問題があるんじゃないかと思うんですよ。

 恐らく、市町村、県から上げてきてもらえれば執行できるんです、交付できるんですというお答えかもしれないけれども、似たような仕組みで、似たようなというか同じような仕組みを使っているのでこれだけ違いがあるということは、農水省も、何がしかの取組を私は変えなきゃいかぬと思うんですね。県や市町村に早く出せ早く出せと言うだけじゃなくて、何がしかの取組を私はしなきゃいけないんじゃないかと思うんですよ。

 例えば、そのときには、仮に二月にたくさんの交付があったのであれば、年度内執行をちょっと緩めて、繰越しもより容易にできるようにしていくとか、あるいは、都道府県や市町村との周知徹底、勉強会あるいは研修会の場をより前倒ししてやることによって、早く執行の要請を出してもらうようにするとか、そういった何がしかのことをしなきゃいかぬと思うんですよ。

 これに関して、きょうは政府参考人に来てもらっていますけれども、時間がないので、大臣にちゃんとレクしてもらっていると思いますから、大臣から、これらに関してどうしていくのかというのをお聞かせいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 せっかくの予算ですので、お使いいただく方に喜んでもらいたいと思っております。

 中山間地域等直接支払交付金は、農業の生産条件が不利な地域における農業生産活動を継続するために国及び地方自治体による支援を行う制度として、平成十二年度から実施をいたしておりまして、平成二十七年度からは第四期対策がスタートをした。

 本交付金の集落協定への交付におきましては、国は、予算の交付決定後、都道府県から概算払い請求があれば、おおむね十日間程度で速やかに交付を行っているというところでありますが、都道府県からの請求が年度後半に多いのは事実である。

 それで済ませちゃだめよというのが質問の趣旨だと思うんですが、その要因といたしましては、一つは、本事業の適正な執行を行う観点から、毎年度、市町村が九月三十日までに集落協定の実施状況の確認を行うということになっておりまして、市町村によりましては、この確認を実施した後、集落協定から概算払い請求を行っている事例が見られるわけですけれども、この確認は交付の前提にはなっておりませんので、もしかしたら誤解があるかもしれないなと思います。

 それからもう一つは、幾つかの都道府県におきましては、市町村からの概算払い請求が全部まとまってから国へ概算払い請求を行うという事例が見られているということ、それから、年度前半の活動には前年度からの繰越金を活用することができるので、集落協定から市町村への概算払い請求が遅くなるような事例も見られる、そういうことが考えられるわけであります。

 他方、本交付金の適切な執行を図る観点から、実は、平成二十六年度に、課長通知によりまして、都道府県及び市町村に対し、交付金の交付は実施状況の確認後であることを要件としていないですよという通知をさせていただいてあります。この通知後は交付実績も早まりつつはあるんですけれども、更に早期執行が可能になるように、都道府県、市町村への周知を徹底していきたいと思います。

 また、繰越しの御指摘もありました。

 この中山間地域等直接支払交付金におきましては、その使途を明確にしていただければ繰越しを柔軟に認めるということにしておりまして、現に、平成二十八年度は、全協定の約二割で繰越しが行われているという実情にあります。

 その使途といたしましては、年度当初の用排水路管理経費及び農道、農用地等の維持管理経費、あるいは融雪災害復旧経費など、こういう使途を明確にしていただければ繰越しが柔軟に認められるということであります。

 なお、集落協定によっては繰越しの事務手続への理解が十分でないものも正直想定されますものですから、繰越しの活用についても、市町村を通じ集落に周知するとともに、引き続き、現場の声も踏まえながら、より取り組みやすい制度となるように努めてまいりたいと思います。

大串(博)委員 集落協定のこと、私もなるほどと思いましたけれども、集落協定というのは本当に毎年やっているので、確認に時間を要するというのはちょっと考えづらいですね。だから、ぜひその辺も工夫していただいて、できるだけきちんと執行して、みんなが使っていただけるように、さらなる工夫をお願いしたいというふうに思います。

 これも、地域の声に根づく農水省をやるためには、ぜひ、繰り返しになりますけれども、定員の管理もひとつよろしくお願いします。

 あともう一つ、クロマグロの漁獲量制限に関して。マグロですね。

 これは、自主的な取組の中で、小型魚の漁獲枠を四千七トンということで、管理機関において制限するということになっています。これは、小型魚を育てて大型魚になってから、資源を育ててからとるという考え方はわかるんです。管理しながらの漁業にしていかなきゃならないというのは非常によくわかる。

 ただ一方で、やはり、漁家の方々にしてみたら、マグロが入ってくるんだよな、ほっといても入ってくるんだよなというところもあるんですよ。何でとっちゃいかぬのかという思いを持たれている。枠が半減していますから、やはり操業的には非常に寂しい操業で、所得的にも厳しくなる、こういう状況があるんですね。

 だから、こういう資源管理型の漁業、それは当然だと思う。ただ、私が思うのは、漁家の方々に、これは何のためにやっているんですよ、いつまでにこうしていただければこうなるので、見込みが持てるんですよ、その間の所得等々の支援はこうやるんですよと。この全体像がわからないから、漁家の皆さん、何でとっちゃいけねえんだというだけで終わっちゃっているんだと思うんですよね。かつ、生活の計画もなかなか立てにくいということだと思うんです。

 これは私、大臣、ぜひもっと漁家の皆さんに、こういうことで今これは半減措置をとっていて、何年後ぐらいにはこれが、ある意味違ったステージになっていくので、とれるようになっていきますよということをよりきちっと周知してもらった上で、支援策もその間とっていきますというのをきちんと言っていただく必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

齋藤国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。

 太平洋クロマグロの資源量は、過去最低水準付近にあったことを踏まえまして、平成二十七年以来ですが、WCPFC、中西部太平洋まぐろ類委員会におきまして合意がなされて、国際的な数量管理が今行われているということであります。

 その結果、最近の我が国沿岸へのクロマグロの来遊状況を見ても、徐々に資源回復の兆しが見えつつある、私たちもそう判断をしているところでありますので、これをしっかり継続したいなと。

 こうした状況も踏まえて、昨年十二月のWCPFCの年次会合におきましては、クロマグロの資源量が増加をして管理目標の達成確率が一定以上と認められる場合には漁獲枠の増加の検討が可能となる、ふやすことができるという道がようやく開かれてきたということでありますので、私どもとしては、しっかり管理をして、この枠の増枠につなげていきたいというのが私どもの考えであります。

 今御指摘のように、このような増枠を達成するためには、漁業者の皆さんの理解と協力というものが不可欠でありますので、この国際合意に基づく管理措置を遵守して、みんなが協力し合いながら本格的な資源回復に結びつけていこうということを繰り返し御説明を続けていきたいというふうに考えております。

大串(博)委員 ぜひ、漁家の方々に見通しをしっかり持っていただけるように、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に一問だけ、TPPに関して。

 総理がアメリカに行かれて、首脳会談があります。一つだけ大臣に、非常に重要な論点なのでお答えいただきたい。

 先般来、アメリカが自由貿易交渉に帰ってきたとしても一方的な譲歩をすることがないという一言の説明でございます。それはわかります。

 この一方的に譲歩することはないというのは、農水大臣の決意として、例えば、農業分野以外で何がしかの譲歩が得られれば農業の面では譲ってあげることがあり得るということであってほしくないなと思うんです。あってほしくないなと思うんです。ましていわんや、TPPの現行のラインを更に譲るようなことなんて絶対あってほしくないと思うんですね。

 この点において、一方的に譲歩することはないというふうにおっしゃった。それは、他の分野でアメリカの譲歩があれば農業面で譲っていいなんということでは絶対なくて、ましていわんや、TPPのラインは絶対に譲りませんというふうに大臣には断言していただきたいんです、心配だから。

 何でこんなに心配になるかなというと、トランプさんがTPPに復帰することを検討せよと言った後、総理の動静をずっと調べたんですけれども、総理の動静を見ていて、齋藤農水大臣、総理に会われていませんよね。総理と直接、農水としてはこうですから、こういうことを言われていない。ちょっと心配なんですね。

 ぜひ、今申し上げましたように、一方的に譲歩しないというのは、他分野での譲歩がアメリカからあったら農水分野で譲歩するなんということはない、TPPのラインは一歩も譲らないとこの場で断言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 私自身の思いはいろいろありまして、これまでも、TPP、日・EU、それからオーストラリアも、私が農林部会あるいは副大臣のときに関与してきまして、私自身は、農業の維持発展というものを旨としてこれまでも取り組んでまいりました。

 これからアメリカと、今、総理がやっていると思います。その事前の総理の動向をチェックされたかもしれませんが、確かに私は、直接は申し上げておりませんが、大変強い私の意見は十分に伝わっていると思います。ただ、その意見がどういうものかについては、ちょっと差し控えたいと思います。

大串(博)委員 終わりますけれども、差し控えたいというのは寂しい答弁だったなと、私は、極めて思います。

 いずれにしても、先ほどの農水の定員も含めて、一度、大臣、私たちで要請行動に行かせていただきたいと思いますので、しっかりとした農業政策の実施体制となるように要請活動もさせていただきますので、そのとき、またよろしくお願いします。

 終わります。

伊東委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。金子恵美君。

金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 昨日、森林経営管理法案をこの委員会で可決いたしましたが、十四項目もの附帯決議が付されました。それだけ課題が多いというようなことだというふうにも理解しております。

 昨日も申し上げましたが、一つ一つの課題をしっかりと解決していく、この国の森林、山、国土の七割を占めているということで、森林を整備すること、山を守るということはこの国を守っていくということに直接つながっていくのだというふうに思っていますので、ぜひ、そのことも踏まえまして、この委員会一つになって前進していかなくてはいけないと私は思っているところでもあります。

 そこで、引き続き、森林・林業に関しての質問をさせていただきたいと思うんですが、林業の成長産業化というのを本当に実現させるためには、やはり人を育てていかなくてはいけないということであります。

 地域の森林資源を活用した林業、木材産業による事業と雇用の創出、就業機会の増大、若者定住に向けた条件整備を推進すること、これが必要だというふうに思っているんですが、どうしても、林業労働者の現状というのを見てみますと、今、五万人を割るような状況にあるということでありまして、国として、これ以上林業にかかわる労働者の方々を減少させるということを食いとめなければいけない、本気でしっかりとした対応をしなくてはいけないという時期に来ているというふうに思いますが、そのための措置、どのような取組をされているのか、お伺いしたいと思います。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 林業の成長産業化を実現するためには、林業の現場の担い手を確保、育成していくことが最も重要な課題であると認識いたしております。

 そのため、農林水産省では、林業に就業するための基礎知識等を林業大学校で学ぶための経費を就業準備給付金として支給するほか、緑の雇用事業により、安全かつ効率的な森林施業に必要な知識、技術を実地で習得するために事業体等が行う研修への支援を行っているところでございます。

 こうした取組の結果、林業への新規就業者は、平成十四年の緑の雇用事業開始前は年間二千人強であったものが、最近では年間三千人強で推移しており、林業従事者に占める三十五歳未満の若者の割合は、同事業開始前の一割程度から増加し、近年は二割程度を維持しているところでございます。

 今後とも、こうした施策を通じ、林業従事者の確保、育成に向けて努力してまいりたいと思います。

金子(恵)委員 今おっしゃっていただきましたように、改善はされている、努力をしてきたということでありますけれども、それでも毎年三千人程度で推移している、二千人から三千人にふえてはいるけれども、それでもその程度の推移なんだと思います。

 何が原因かというと、やはり不安定な雇用実態と、労働災害など多く発生する、そういう課題というのもあるというふうに思います。当然のことながら、雇用の安定化、また、労働条件をしっかりと改善していく、そして、安全な労働環境の確保等をしっかりと進めていかなくてはいけないと思います。

 今、副大臣からは、研修等も含めて、しっかりと学んでいく場というのをつくり上げていくというお話もありましたけれども、それだけで足りているのかという議論をしっかりとしなくてはいけないというふうに思っています。

 緑の雇用、これも定着率は三年で出しますので、数字的にいうと、例えば二十七年度は七六・九%、二十八年度は八〇・二%、そして二十九年度が七五・七%、七〇%から八〇%ということで、定着率の評価というのはいろいろあるとは思うんですが、一定の成果を上げているというふうにおっしゃる方もいます。しかし、繰り返し申し上げると、三年後の定着率の数字を出しただけで、これでいいのかというのもあると思います。

 ですので、就労をされた方々に対してのフォローアップをどのようにされているのか、ここはとても重要な部分だというふうに思うんですけれども、いかがですか。

礒崎副大臣 ちょっと今手元にデータがございませんけれども、三年だけで十分かという御意見はよくわかりますので、今後フォローアップの点についてもよく検討してまいりたいと思います。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 しっかりとフォローアップをしていく、そのことは、つまりは、やはり労働の実態をしっかりと把握していくということ、不安定な雇用を安定的なものにしていくということ、そしてまた、他産業と比較して低い賃金であるような、例えば月給制が二割に満たないというような状況であるとか、そういうことを改善していくことだと思います。

 そしてまた、労働災害の発生率、これも全産業平均の十二倍となっているということでありますから、こういう課題を一つ一つ解決していくということで、ぜひ注視していっていただきたいというふうに思います。

 改善策については、ともにしっかりと考えていきたいというふうにも思いますし、よろしくお願いいたします。

 そこで、林業に従事する人材育成、今いろいろとおっしゃっていただいたんですけれども、やはり一つは、経験と能力が適切に評価される労務単価の設定等、これも重要な部分でありまして、特に国が発注する事業については、それをしっかり進めなくてはいけないとも思っています。

 処遇改善と一体的な施策を講じる、このことによって林業労働者を確保していくべきだというふうに思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 今、金子委員が課題を一つ一つ解決していくとおっしゃったのは、まさに私もそのとおりだと思っています。

 今、林業労働者においては、日給制が約七割を占めて、全産業と比べて所得も低くて、労働災害の発生率も他産業と比べ高いなどの厳しい労働条件にありまして、労働環境の改善が重要であると認識しています。

 私自身も何回か現場視察に参りましたけれども、本当に危険と隣り合わせの林業労働の現場を目の当たりにしまして、安全確保の重要性を改めて認識したところでありますし、実は私の知人というか支援者も木を切っている最中に倒木によって亡くなったということもありまして、そういう意味では、厳しい作業環境というのは十分認識しているところでありますので、そういうものをトータルで改善していくことが必要なんだろうと思います。

 今、緑の雇用のお話がありましたけれども、これによって人材の確保、育成を図るということだけではなくて、労働条件の改善ということも大事なので、社会保険料等の事業主負担分への支援というものを今実施させていただいておりますし、それから、安全確保に向けては、林業の現場への巡回指導を充実させていくということが大事かなと思っております。

 いずれにしても、繰り返しになりますが、一つ一つ課題を前進させていくことが大事かなというふうに思っております。

金子(恵)委員 山で働いていいんだ、安全、安心なんだ、ここはすごく重要な部分だと思いますし、そして、そのような形で、山で働くことに関心を持っていただく。そしてまた一方で、その関心を持っていらっしゃる方々の受皿、事業体をしっかりと育てるということも重要なのだというふうに思います。

 そこで、国の事業を中心とする一般競争入札は、安定的な経営に支障を生じさせ、事業体の減少や労働者の処遇改善の支障の一因となっているのではないか、そういう指摘があるということもちょっと申し述べさせていただきたいと思うんですけれども、つまりは、国が発注する事業についてのあり方を問われるものだというふうに思っているんです。

 どういう意味かといいますと、入札に参加できない地元の事業者の方々が多い中で、地域外あるいは県外から参加をし落札をする、そこで受注する。しかし、地域の方々とよりコミュニケーションをとっているわけでもなく、一方で、例えば足りない人材の部分を外国人労働者で補っていったり、それを低賃金で雇っている状況があったり、そういうことが見られるという御指摘もあるようです。

 こういうことがずっと続いているのであれば、当然のことながら、林業労働者の方々の処遇の改善という点について言えば、逆行していることになっていくわけですので、こういうこともしっかりと改善するということをやっていかなくてはいけないと思います。

 つまりは、国でできることを一つ一つもしやっていくのであれば、国有林野事業にかかわる事業については、しっかりと地元の方々が仕事をすることができる、そういう体制づくりというのは私は重要だと思うんです。その上で、地域の方々がしっかり山で働く、森林整備をしていく、そういうことにつながっていく、そして山村振興につながっていくんだと思いますが、御所見があればお伺いしたいと思います。

野中大臣政務官 お答えいたします。

 国の発注ということでありまして、これは公共事業全般においても、やはり安かろうよかろうというよりは、いかに質の確保をしていくか、そしてまた、地域で頑張っていらっしゃる企業を育てていくかということは非常に大切な御指摘だというふうに思っております。

 低入札の関係で申し上げますと、予定価格よりも極端に低い価格で落札する場合にあっては、予定価格一千万円以上で落札率は六〇%を下回るものについては、低入札価格調査を実施して、本当にこれでできるのかと確認した上で発注をしております。

 また、事業発注に当たり、価格と価格以外の技術力等の項目を総合的に評価し落札者を決定する必要がある場合には、総合評価落札方式を採用しております。この評価項目の中には防災活動等における地域への貢献に関する項目が含まれておりまして、地域の事業体の育成の観点からも、地域に根差した活動がプラスポイントになるということで、効果のあるものというふうに考えております。

 今後とも、総合評価落札方式と低入札価格調査制度、この適切な運用を通じて、地域の企業も育てていく、そのような環境づくりに努めてまいりたいと存じます。

金子(恵)委員 今おっしゃっていただきました総合評価落札方式や低入札価格調査など、こういうものを行われているんですけれども、それでも、地元雇用といった地域貢献等が評価されにくいということであったり、やはり価格競争の激化によって、地域の森林を守ってきた事業体が大変経営を危うくしているというようなことでありますので、ぜひ、しっかりと山を守っていく人たちあるいは事業体を育てるという御検討をいただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 次に、森林認証制度についてお伺いさせていただきたいんです。

 一月に、東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の軒、ひさしに四十七都道府県の木材を使用するということが発表されました。また、震災復興を祈念し、東日本大震災、熊本地震の被災県の木材をエントランスゲートの軒に使用するということであります。

 新国立競技場は、国産木材の利用による世界に誇れるスタジアムというのがコンセプトになっているということで、四十七都道府県の行政、森林組合の協力によって、森林認証材の杉を使用するということであります。

 この森林認証制度について、私が御説明を申し上げることではないというふうに思っておりますけれども、一つ、違法伐採が問題になっている中で、合法性を証明するものでもあるということは申し添えたいと思っております。

 林野庁では、森林認証取得ガイド、これは、木材産業者向けと森林所有者向けというのを私は見つけました。また、森林認証材普及促進ガイドを制作しているようであります。森林認証そして認証材の普及促進、改めてどのように取り組んでいるのか、お伺いしたいと思います。さらに、今後この認証材の利用拡大をどのように進めていかれるのか、お伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 森林認証制度は、第三者機関が、森林経営の持続性ですとか環境保全への配慮等に関する一定の基準に基づいて、まず森林を認証する、それと同時に、認証された森林から産出される木材及び木材製品を分別して、認証材として表示管理するという仕組みでありまして、持続的な森林経営を進めていく上で有効な制度だと考えています。

 代表的なものとしては、FSCですとかPEFCですとかSGECといったものがありますが、平成二十八年十二月現在、国内の認証森林の面積は約百九十五万ヘクタールになっています。

 欧米諸国を中心に、今御指摘がありましたけれども、木材取引においては、合法性や持続可能性の担保が求められることが一般的となりつつありますし、また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会等が公表した木材の調達基準等では、認証材であれば調達可能という方針も示されているわけであります。

 農林水産省としては、平成二十七年度から、関係者による認証取得に向けた合意形成等への支援を行ってきたところでありますし、また、平成三十年度からは、森林認証の普及に向けて消費者、需要者の理解、認知度の向上が課題であるとの認識のもと、消費者や需要者向けイベント開催等への支援に取り組むこととしているところであります。要するに、マークがついているものが何なのかというのがわからなければ、消費者の人もその木材を使わないということですので、大事なことだと思っています。

 今後とも、国内の森林認証の普及や認証材の供給体制の構築に向けた取組を鋭意進めてまいりたいと考えています。

金子(恵)委員 先ほど来申し上げていますけれども、やはり国を守る、国土を守るということは森林を守っていくということ、そういう意味を、しっかりと国民の皆さんも共通認識を持っていただけるような取組もしていかなくてはいけないということだと思います。

 そういった点で、今、森林認証制度についても、やはり消費者側の皆様にも御理解をいただくというようなことをおっしゃっていただいたんだというふうに思いますので、それをまずしっかり進めていくということだと思っています。何とか林業に携わる人たちが元気になるような、そういう方策を考えていきたいというふうに思っておりますので、ぜひ農水省としてもよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、果樹農業についても質問させていただきますので、次に移らせていただきたいと思います。

 これも同じように大変厳しい状況にあるということですが、我が国の果樹農業は、高齢化の進展や担い手の減少、そして農地荒廃の加速化等によって生産基盤が脆弱化しています。園地の集積や労働生産性の向上など、果実の供給力の維持強化が大きな課題というふうになっているわけなんですが、ただ単に大きくすればいいということではなくて、一つ一つ、やはり地域の特性というものを持っている果樹農家をいかに支えていくかということが私は重要な観点だというふうに思っています。

 しかし、一方で、数字を見ていくと、例えば果実の需給構造を見ると、国内需要のうち六割、そして果実加工品だけを見ると九割を輸入に依存しているということで、こういう数字を見ただけでも、これからの果樹農業をいかに前進させていくかというのは、本当にしっかりとした取組をしていかなくてはいけない時期に来ているんだというふうに思います。

 そこで、果樹農家を支えるための取組についてお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 果樹農業につきましては、植付けから収穫まで時間がかかることですとか、労働集約的であり作業時間が長いといった特性のある農業であることを踏まえまして、国内外の消費者ニーズに対応した高品質果実の安定生産と、規模拡大や省力化による労働生産性の向上等を一体的に推進していくことが重要であると考えています。

 このため、果樹農業好循環形成総合対策事業というのがありますが、そこでは、果樹農家が行う優良品種、品目への改植や、これに伴う未収益期間への支援を行うとともに、農地中間管理機構が行う園地整備等の取組を支援しているところであります。

 加えて、平成三十年度予算におきましては、労働生産性の方を飛躍的に向上させるために、地域の担い手が行うICT等を活用した生産技術の実証の支援、あるいは、急傾斜地から条件のよい平地等に園地を移して集積し、改植を行う場合に改植単価を加算するなど、三十年度からも支援を実は強化しているところであります。

 また、私は日本のすぐれた果樹は輸出品目としても期待できると思っておりまして、輸出促進対策として、まずは、輸出先の残留農薬基準の問題がありますので、その設定に必要なデータ収集など産地が行う取組を支援しているところであります。

 これら支援によりまして、我が国の果樹農業をしっかりと支えてまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 今、輸出のこともおっしゃっていただいたんですが、それに関連づけて申し上げますと、やはり相手国・地域に存在しない病原菌や害虫が作物に付着していないということがもちろん必須なわけですけれども、当然のことながら、果樹農家を守るという意味で、病害虫から果樹を守る、そういう対策というのをしっかりと、徹底してやっていかなくてはいけないというふうにも思っています。

 防除対策を徹底するためにどのような具体的な策を講じているのかお伺いしたいと思うんですが、例えば、四月の十六日には桃せん孔細菌病の注意報が和歌山県に出されたということであったり、十一日には北海道でリンゴの黒星病の注意報が出されたということで、その年で、いろいろな気候によって病気の発生状況等は違ってくるわけなんですけれども、それでもどうしてもゼロにはならないわけで、そのために、病気等が、細菌等が蔓延しないようにしっかりと防止をしていくということが重要なわけなんですが、どのような対策を講じていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

礒崎副大臣 果樹を始めとする農産物の病害虫対策につきましては、基本は、生産者みずからが薬剤散布などによる防除の徹底を図ることが必要であると考えております。

 この防除が的確に行われるようにするため、農林水産省では、発生予察事業を通じて、都道府県と協力して、今お話もありましたけれども、病害虫の発生動向を調査し、生産者等に提供しているところでございます。

 また、今お話のありました福島県の事例では、平成二十六年に、葉や果実に穴をあけ、樹勢低下や果実の商品価値を低下させる桃せん孔細菌病が広範囲に広がったところでございます。

 その際には、この病気は雨や風によって感染拡大することから、防風ネットの設置、感染した枝の除去、農薬の散布等の対策が実施されておりまして、農林水産省としても、防除方法の検討に当たって技術的な指導を行うなど、必要な協力を行ってきたところでございます。

 その後、福島県では、こうした対策の効果もあり、本病の顕著な発生は認められておりませんが、農林水産省といたしましても、今後も農業生産に大きな影響を与える病害虫の発生抑制や蔓延防止に全力を尽くしてまいりたいと思います。

金子(恵)委員 今、平成二十六年の段階の福島の状況等もお話をいただきまして、その折に農水省から随分御支援をいただきまして、調査研究をしっかりとやっていただき、原因究明と言ったらいいんでしょうか、それをしていただいたということです。やはりそこから得た教訓というものをしっかりと全国各地の桃生産者の皆さんにも伝えていくということだというふうにも思っています。

 ことしの七月には桃サミットが福島市内で行われることになっていますので、今させていただきましたやりとりの件についても、やはり情報共有をできる、そういう場になっていくのではないかというふうに思っているところであります。

 時間が参りましたので、今の件についてコメントだけいただいて、桃サミット、頑張りますが、いかがでしょうか、大臣。

齋藤国務大臣 福島県の桃の振興につながるように、この機会も生かしていきたいと思っております。

金子(恵)委員 終わります。ありがとうございます。

伊東委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 きのうに続き、愛媛県が作成した文書についてお伺いします。

 加計学園の獣医学部の創設というのは、国家戦略特区、この制度を使って実現したものであります。この間の経緯を見てみますと、やはりターニングポイントとなったのは三年前、二〇一五年の四月の二日、官邸での面談であったというふうに思うわけであります。したがって、農林水産省等に提出された愛媛県側からの四月三日付の文書というのは、加計学園の疑惑解明を進める上でも、大変重要な文書となっているということであります。

 ところが、農水省は余りこの文書を重要視されていない、重要な受けとめをされていないと私は思うわけであります。

 この四月の二日、四月の三日、前後して、国家戦略特区のワーキンググループのヒアリングが頻繁に行われています。

 そこで、お伺いします。

 四月二日の官邸面談の以前に開かれた獣医師系のワーキンググループで、農林水産省が出席した会議は何回、いつ行われたのか。あわせて、この会議の議題、議事は何となっているか、どの部署のどの役職の方が出席されたのか。御答弁ください。

池田政府参考人 お答えいたします。

 獣医師養成系大学、学部の新設に係る国家戦略特区ワーキンググループには、平成二十六年八月五日から平成二十七年四月二日までの間に四回出席してございます。

 一回目が二十六年八月五日、二回目が二十六年八月の十九日、三回目が二十七年の一月の九日、四回目が二十七年の二月の三日でございます。

 それぞれ、ヒアリングの事項といたしましては、獣医師養成系大学、学部の新設、あるいは獣医師養成系大学、学部の新設の解禁、こういったヒアリング事項で参加をしているところでございます。

 参加をいたしましたのは、獣医師法を担当する課の課長あるいは課長補佐でございます。

田村(貴)委員 それで、獣医学部の創設の是非をめぐる議論が行われているわけですよ。獣医師数については、全国的に、基本的に満たされている、農水省の方はそういう考え方を何回も半年にわたって説明されてきたわけですよね。それは、畜水産安全課の課長と課長補佐が出て、ワーキンググループのヒアリングで行ってきたわけなんです。

 その職業柄、今治市が、その何年も前にさかのぼって、ずっと構造改革特区に獣医学部を設置したいと提案してきたことも当然知っているわけなんですよね。この当然知っている課長や課長補佐が、この二カ月後の四月の二日に愛媛県側から来た文書を課長補佐が受け取った。これは首相案件とも書いてあるわけです。だから、課にとっても、これは局にとっても省にとっても重大事案ではなかったのか、なぜそういうふうに受けとめないのかなと私は思うわけなんです。

 愛媛文書を受け取ったのは畜水産安全課の課長補佐ですよね。その二カ月前までにワーキンググループで説明していたんですよね。こういう愛媛県側からの文書が来た、私たちの立場と違う方向で今から進むんじゃないかということで、重大事案としてなぜ捉えなかったのか、私は非常に不思議でならないわけなんです。

 大臣、そう思われませんか。

齋藤国務大臣 私どもが行ったヒアリング調査の結果につきましては、従来からお話をしているとおりであります。

 それで、それを不思議に当時の人は思ったか思わなかったかという質問であります。私も、霞が関で二十三年働き、その中で県にも二年弱おられたので、いろいろな推測はできますよ。推測はできますが、その推測を、何通りか推測できますけれども、それをここでお話しするのは適当ではないと思いますので、私どもが調査で判明した事実をもってお答えとさせていただきたいと思います。

田村(貴)委員 私は、これは重大案件だというふうに恐らく農水省は認識したはずだと思います。それは、課じゃなくて、局も省も情報は共有する、そして文書としては共有保管したというふうに見るのが自然であります。そして、東京新聞が報道したように、次の日に、どういったことになっていたのかと農水省の方から説明を求めたというふうに考えるのがやはり自然ではないかなと思うわけであります。

 再調査が必要だというふうに思います。愛媛県の文書の件、それから、それに付随する文書はなかったのか、報告を受けた人はほかにはいなかったのか、愛媛県側から農水省に対してどういう報告、伺いがなされたのか、こうしたことをちゃんと説明していただかないと、農林水産省は独自の疑念がここでまた生じるということになります。再調査を含めて徹底した情報開示をしていただきたいと思います。答弁は変わらないと思いますから、これは強く要望させていただきたいと思います。

 次に、盗伐問題について伺います。

 資料をお配りしています。もう本当にひどいことになっています、宮崎県で。きょうはこのことについてお話をしたいと思います。

 私は、昨年十二月十二日の委員会で、宮崎県の盗伐の問題を質問しました。対策と調査を求めましたけれども、齋藤大臣は二月六日の記者会見で、無断伐採にかかわる盗伐の調査を指示されました。

 今回、調査結果がまとまっておられたと聞いたので、きょうお配りしています。説明をしていただけますか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 宮崎県における盗伐事案を踏まえまして、林野庁では、本年一月に、全都道府県に対しまして無断伐採の全国的な調査を実施したところでございます。

 この結果、無断伐採に関する情報や相談が市町村や都道府県に寄せられた件数は、平成二十九年四月から平成三十年一月までの間でございますけれども、六十二件ございました。また、このうち、無断伐採が故意に行われた疑いがあるものにつきましては十一件あると確認されたところでございます。

田村(貴)委員 この調査はどうやって集計されましたか。都道府県への聞き取り調査でしょうか、現地などへの調査に行かれたんでしょうか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 これにつきましては、我々から現地へ赴いたのではなくて、聞き取りでございます。県を通じて聞き取ったものでございます。

田村(貴)委員 それでも、全国の都道府県に照会をかけて、そしてこの数字が集まったというのは、一歩前進ではないかなというふうに思います。

 ただ、長官、ここに集計されている数字、桁違いの被害が宮崎県だけでも起きているということです。しかも、この数字、昨年度だけなんですね。もうちょっとさかのぼって調査もする必要があります。

 被害者の家族が、宮崎の盗伐被害に遭った方が集まって、会も今回結成されて、今、その会員さんは四十二家族に上ったというふうにも伺いました。

 宮崎県が、素材生産組合などの団体に対する無断伐採に関する相談件数が六十六件というふうに発表したんですけれども、被害者の会の家族にこれらの相談をされたというようなものはないわけなんです。ということは、公式な発表の中に被害者の会の被害が入っていない。その総数は百件を超えるのではないかなというふうに見ております。

 資料の1、一番表にあるんですけれども、こんなひどい無断伐採をされてしまいました。後から草が生えているわけですよね。

 このように、無断伐採というのは、伐採届に虚偽の報告をする。この方は、亡くなったお父さんの名前が勝手に書かれて、勝手に署名をされて、事に及んだということです。また、ほかの手口では、適法な伐採届を出しておきながら、後は誤伐、間違ったということで、広大な範囲を切り取っていく。こうしたやり方、手口が横行しているわけであります。

 私、先般、ある森林組合に行ったら、森林のプロというのは、一つの筋でも、一本の木でも、間違ったらそれは恥ずかしいことなんだと。今は、伐採するにもGPSを使いますので、こうした誤伐などはなかなか起こらないというふうに見るわけであります。大胆不敵にも、こうした盗伐がたくさん行われているわけであります。

 写真の2をごらんいただきたいと思います。

 ここは、日南市の飫肥杉の人工林であります。長年、所有者が大事に世話をされてきたんですけれども、谷筋に沿って何千本も切られているわけであります。切られた後に、大きな岩や土砂、捨てられた枝などが散乱している、滑り落ちて堆積している。ダムをつくっている形になります。ここに大雨が降ればどんなことになるのか。

 下にグーグルの航空写真を添付しているんですけれども、これを見てみますと、この右上の方の、はげ山と化したところから、もし濁流が、鉄砲水が下に落ちていたら、ここには福祉施設もあれば学校もある、これは大変なことになってしまうわけです。

 多くの被害者の方は泣き寝入りをするだけだということであります。この調査はもうちょっと精密に、そして正確に拡充していかなければならないと思うわけであります。

 こうした被害に遭っている方々は、市の窓口に行っても何のアクションもなかった、それから、県は把握しているんだけれども、一年以上放置されている。そして、多くの家族の方が言われるんですけれども、警察に被害届を持っていっても被害届を受理してもらえない。

 私、ここに四十二家族の被害の一覧をいただきましたので、ずっと見てみますと、宮崎県内全ての地域に盗伐が行われて、その数九千百八十三本。被害に遭った木が九千百八十三本、約一万本ですよね。そして、ほとんどが被害届不受理になっています。

 不受理の仕組みはこうなんですよ。無断伐採しているところに立ち会うわけです。保有者がいて、無断伐採しているところで、何切っているんだということで警察に電話します。そうしたら、すぐに警官が来ます。そうしたら、警官は、民事不介入ということで、当事者間で解決してくださいとなるわけですね。そうすると、なけなしのお金を渡す人もおれば、あるいは、植林をします、原状復帰しますと口約束をして、そして、もう後は知らぬ存ぜぬで今に至るというようなケースなんです。すごく多くの方が泣き寝入りしているわけなんですよね。

 これは、私、行政の怠慢もあると思うんですよ。政府はしっかりと監督の目をはせていただきたいと思うんですけれども、こういう被害に遭った方は一体どうすればいいんでしょうか。林野庁、お答えいただけますか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 まずは、宮崎県の盗伐、無断伐採等の事案が発生しておりますことにつきましては大変遺憾であると思っております。

 このような状況を踏まえまして、宮崎県でございますけれども、県、市町村、森林組合や関係団体と県警本部が協定を締結いたしまして、誤伐、盗伐対策に連携して取り組むという体制をまずつくりました。

 また、それとともに、県内の市町村に対しまして、伐採届、木を切るときは伐採届を出すんですけれども、伐採届を届出する際に森林所有者であることの確認を徹底していただくなどの再発防止の取組をまずは進めるということをしてございます。

 そうした効果もあって、昨今、発生件数自体は減少の傾向にあると県からお聞きをしてございます。

 また、委員御指摘ございました、この検挙された人でございますけれども、これは、三月二十日には、森林法違反、これは森林窃盗、及び有印私文書偽造という形で罪に問われて、有罪判決があったと承知してございます。

 農林水産省といたしましては、今回の調査結果を森林・林業関係者等に周知いたしますとともに、このような問題を注視して、注意深く、注意を喚起するということをまず行っておりますし、また、宮崎県などの盗伐、無断伐採などに関する取組事例を、他県等にこういうふうにやっていますよという紹介をいたしております。このほか、伐採届出制度の適切な運用を徹底するように市町村等に依頼をしてございます。

 こうした対策を、警察等の関係機関とも連携して進めていくこととしております。

田村(貴)委員 長官、二つ、ちょっと事実誤認があります。

 一つは、県がどう言ったかわからないけれども、盗伐が減る傾向にある。これは、しっかり調べないとわかりませんよ、毎日起こっているわけですから。

 もう一つは、違法な伐採をした方が検挙された。これはブローカーなんですけれども、そこでとどまっているわけなんです。ほかにも盗伐の事実を認めた業者はいっぱいいるわけですよ。それは森林保有者が確認しているわけです。で、なけなしの金を持ってきた業者がいっぱいいるわけですから、切った人はわかっているわけなんですね。そこをやはり検挙しないといけないんですよ、この事案は。盗伐は犯罪なんですから。そうですよね。

 だから、厳正なる対処と対策と、それから調査をしなければいけないと思います。今の対応については私は否定するものではありませんけれども、もっと踏み込んでいくところがあるんじゃないかと思います。

 そこで、大臣、今ずっと私、現場、この写真も取り寄せて、きょうは委員の皆さんにも見ていただきました。そして、被害者の会の方もきょうは傍聴に来ておられます。

 この事態は、もう猶予は許されない状況であります。きのうまで森林の論議をしておって、そして山の保有者の大事な資産を守っていこうという議論をしている中で、こんなモラルハザードが毎日のように起こっている。報道によったら、全国で行われている。ただ取りですよ、木の。それを利益にするのは許されない話であります。

 大臣にお伺いしたいのは、大臣が二月六日の会見で、再発防止の取組を進めたいとおっしゃいました。私はそのお言葉に期待しています。だけれども、再発が毎日進んでいるならば、やはり手だてを打たなければいけません。

 緊急の手だてを打っていただくこと、そして、今まさに、林野庁、国が宮崎の盗伐の現場、全国の盗伐の現場に入って自治体を指導してもらわなければいけない、捜査機関も指導してもらわなければいけない、そういう状況にあると私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 まず、宮崎県始め全国的に無断伐採事案の発生が認められたことについては、まことに遺憾だと思っております。

 そして、今写真も見せていただいてお話を伺って、私、改めて深刻な事態だなというふうに実感をいたしました。

 特に、委員が御紹介された、現場で警察を呼んでも民事不介入だということで手を打ってくれないとか、被害届が受理をされないとか、そういう問題、これは、やはり警察当局の力というものも非常に大きいのではないかと思っております。

 私自身、ちょっとその点を、どうなっているのか確認をさせていただいて、何が前進できるか、ちょっと考えてみたいと思っております。

田村(貴)委員 踏み込んだ大臣の答弁もいただきました。

 対策に期待をするものでありますけれども、せんだって、毎日新聞、二月二日付の報道の中で、宮崎市が新たに四件告発したということであります。

 ブローカーにおける盗伐が中心なんですけれども、ブローカーが提出した書類が約百枚ほどある。こうしたところで、まだまだ解明を進めていかなければならないというふうに思うわけであります。

 森林資源というのは、本当に大事なものであります。参考人の御意見も聞いて、三回この委員会で森林の経営のあり方、管理のあり方を論議してまいりました。委託を受けた業者が相当な経営努力をして、森林所有者に利益を還元することも想定されると、きのうですよ、私の質問に対して長官はお答えになりましたよね。森林所有者に利益を還元することが、法改正によって想定されると。

 しかし、現実はこんなモラルハザードが起きているわけなんです。盗伐対策、今すぐ手を打っていただきたい。

 そして、大臣、お忙しいかもわかりませんけれども、やはり政府三役を含めて現地に飛んでいただきたい。林野庁、事務方はもうすぐに現地に行っていただいて、自治体から生の声を確認していただきたい。

 どうも私は行政絡みで黙認されているんじゃないかなという疑念を持っていますので、この疑念に応えていただく行動をとっていただくことをお願いして、きょうは終わります。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、森夏枝君。

森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。

 本日も、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質疑に入らせていただきます。

 本日は、まず、遺伝子組み換え大豆について伺います。

 今日、スーパーに並ぶ大量の食品には、食品表示がされております。中でも私たちの生活に欠かすことのできない豆腐や納豆の食品表示を見てみますと、原材料大豆、括弧、遺伝子組み換えでないと記載のあるものばかりです。

 我が国では、一九九六年に遺伝子組み換え作物を商品として認可をして、二十二年がたちました。二〇〇二年の遺伝子組み換えでない食品を選びたいという消費者運動から、十六年が経過をいたしました。

 先日、知人に、豆腐や納豆の遺伝子組み換えでないという表示に対する意見を求めましたところ、よくわからないから怖い、本当に食べていいものなのかわからないといった不安の声がありました。この声こそが一般の消費者の声だと思います。

 遺伝子組み換えでないという表示が始まって以来、消費者からどのような意見が寄せられ、どう回答したのか、消費者庁からお聞きしたいと思います。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁では、食品表示制度全般に関しまして、平成二十八年度から毎年消費者意向調査を実施しておりまして、平成二十八年度は、特に遺伝子組み換え表示制度について多数の質問項目を設定して、消費者の意向を調査したところでございます。

 この調査の結果によりますと、御指摘の遺伝子組み換えでないという表示の認知度は約六割、そして、実際に見たことがある方の割合は七割でございました。

 それから、遺伝子組み換え食品は安全性が確認されたものだけ流通しておりますけれども、遺伝子組み換え食品に不安があると答えた方の割合は四割、そして、不安がある又は不安はないと答えた方のうち、遺伝子組み換え食品を避けている又はできるだけ避けていると回答した方の割合は八割以上との結果となっております。

 消費者庁では、この調査だけではなく、消費者団体等との意見交換も実施しておりまして、現行の遺伝子組み換え表示制度に関して、よりわかりやすく正しい情報を提供する表示制度にしてほしいという要望を受けているところでございます。

 特に、遺伝子組み換えでないという表示につきましては、遺伝子組み換え農産物が最大五%混入している可能性があるにもかかわらず遺伝子組み換えでないと表示することは、消費者の誤認を招く可能性があるなどの御意見をいただいておりますので、昨年以来、表示制度のあり方について御議論いただくための検討会を開催したところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 遺伝子組み換えでないとわざわざ記載するということは、遺伝子組み換え作物は安全でないと言っているようにもとられます。これがかえって国民を不安にしているのだと思います。

 私自身も、遺伝子組み換え作物の安全性についてわからない部分が多いですので、質疑をさせていただいております。

 食品表示の制度の中で、以前から気になっていたことがございます。

 先ほども御説明ありましたけれども、意図しない混入であれば、五%までであれば遺伝子組み換えの原材料が混入していても遺伝子組み換えでないと表記できる点です。

 大豆は九三%を輸入に頼っており、そのうち七割がアメリカからの輸入であると聞いております。そのアメリカでは、九割以上の大豆が遺伝子組み換えだという話も聞きました。

 また、大豆農家が遺伝子組み換えでない大豆をつくっているつもりでも、隣の農地から花粉が飛んできて遺伝子組み換え作物になってしまうとの話も聞いたことがございます。

 アメリカ、ブラジル、カナダ、中国から確実に遺伝子組み換え大豆が日本に入ってきています。

 大豆は、豆腐、納豆だけでなく、油揚げ、おから、豆乳、きな粉、みそ、しょうゆなど、さまざまなものに使われております。遺伝子組み換えでないという表示は本当に正しいのでしょうか。遺伝子組み換えの混入率を数値であらわすなど、もっとわかりやすい表示が求められているのではないかと思います。

 現在の表示方法では、やむなく混入してしまうなど、ある意味日本人らしい表示を認めてきておりますが、製造業者の方から、遺伝子組み換えでないと表示しておけばよいという声さえ聞いたことがございます。いま一度立ちどまって、遺伝子組み換えの表示方法の検証も含め、変更する時期が来ているのではないでしょうか。

 これらの表示方法について、見直しが一部検討されていると先ほども御説明ありましたけれども、今後、こうした消費者の声をどう政策に反映し、消費者の不安を払拭し、消費者の安全確保をしていくのか、また消費者としての選択肢を提供していくのか。今後の取組について、消費者庁に伺います。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、消費者庁において、遺伝子組み換え表示制度のあり方について御議論いただくための検討会を開催いたしましたが、これは、昨年四月から本年三月までの十回にわたって開催いたしまして、委員の皆様にはそれぞれのお立場から御議論いただき、報告書を三月に公表されたところでございます。

 報告書には、消費者の誤認防止や消費者の選択幅の拡大等の観点から、これまでどおり遺伝子組み換え農産物の混入を五%以下に抑えているものについては適切に分別生産流通管理を行っている旨を任意表示することができるとした上で、御指摘の遺伝子組み換えでないという表示は不検出である場合に限ることが適当であることなどが盛り込まれております。

 消費者庁としましては、今後、この報告書の内容を踏まえ、消費者に正しい情報が提供されるような表示制度を検討してまいりたいと考えているところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございました。

 消費者の不安の声を払拭するためにも、また消費者の安全確保のためにも、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 これで消費者庁への質問は終わりましたので、橋本審議官、御退室いただいて結構でございます。ありがとうございます。

 続きまして、現在、国内では、遺伝子組み換え作物の商用栽培は禁止されていると伺っておりますけれども、農業就業者の減少や企業農業の拡大化の流れから推測いたしましても、やがてなし崩しに国内でも生産承認の方向に進んでいくのではないかと心配するところでございます。

 また、一方で、多くの遺伝子組み換え大豆を輸入している事実がありますので、遺伝子組み換え大豆が安全なのであれば、安全であることを国民に知らせるべきですし、先ほども申しましたが、遺伝子組み換えでないという表示が、遺伝子組み換えは危険であり、また遺伝子組み換えでないとの記載のないものは安全でないという印象を持たれてしまいます。

 遺伝子組み換え作物の商用栽培の現状と、今後の対策などをお尋ねいたします。

池田政府参考人 お答えいたします。

 遺伝子組み換え農産物の輸入、流通、栽培などに当たりましては、食品としての安全性は食品衛生法、飼料としての安全性は飼料安全法、そして野生動植物への影響はカルタヘナ法に基づきまして科学的な評価を行い、問題がないもののみを承認してございます。

 このような手続を経た結果として、国内で栽培を行うことができるものは、現在八作物百三十三品種ございます。

 このうち、現在、実際に栽培をされているものは青いバラ一品種のみでございまして、食品や飼料として使用することを目的として遺伝子組み換え農作物が国内で栽培されているという実態はございません。

 農林水産省といたしましては、今後とも、栽培などの申請があった場合には、冒頭申しましたような科学的な評価に基づきまして、関係省庁とも連携をして適切に対応してまいりたいと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 次に、遺伝子組み換え作物の実験の状況について伺います。

 既に、国内でも遺伝子組み換え作物の実験は進み、さまざまな企業が取り組んでいると聞いております。大豆だけでなく、トウモロコシ、ジャガイモなど、実験が行われていると思います。

 遺伝子組み換え作物は、枯れ葉剤に負けない品種をつくり出していますので、遺伝子組み換え作物の栽培実験には大量の枯れ葉剤が使われます。私は、その枯れ葉剤が地下水へ流れることを心配しております。

 地下水は大事な資源であり、一度汚染されてしまうと取り返しのつかない事態が想像されます。地下水を生活用水として使う私たちに、そして農業にも悪影響を及ぼすとの話も聞きました。

 農林水産省から、国内で行われている枯れ葉剤を使用した遺伝子組み換え作物の実験の状況などを教えていただければと思います。

池田政府参考人 お答えいたします。

 今お話しいただいたことについて、私どもとして、通告をいただいたという認識がございませんので適切なお答えをすることができませんが、我が国で農薬等を使う場合には、先ほども申しましたように、環境の影響を評価いたしまして、その上で、環境に影響がないということをしっかりと確認した上で流通をするという仕組みになっているということでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。通告はしていたと思うんですけれども。

 時間がありませんので、次の質問に移らせていただきます。

 次に、鳥獣被害のジビエとしての利活用に向けた農林水産省としての取組について伺います。

 最近、ジビエの取組が全国各地で行われているとお聞きしております。

 京都では、年々着実に駆除の頭数がふえており、平成十二年からですと四倍となっており、一昨年では二万二千八百四十七頭が駆除されております。

 人間の側からすると、畑を荒らされ、迷惑な存在ですが、動物は生きるために食べ物を探しに人里にやってきているわけですので、駆除して埋蔵処分というのはかわいそうな気がします。人間の都合で動物の命を奪っているわけですので、ぜひ、駆除したジビエの利活用をしていただきたいと思います。

 ジビエの利活用に対する農林水産省の取組について教えてください。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 鳥獣被害及びジビエの活用についての御質問を頂戴いたしました。

 まず、先生からお話ございましたように、野生鳥獣による農作物被害、全国ベースでいいますと、平成十一年の調査開始以来、昨年は最低水準という状況で、だんだん減ってはきておるわけでございます、百七十二億円という状況でございます。

 近畿につきましても、お話ございましたように捕獲を進めておりまして、二十二年度以降毎年減少している状況でございまして、平成二十八年度十六億円ということになっておるところでございます。

 一方で、先生お話ございましたが、捕獲されました鳥獣につきましては、しっかりとこれを利活用していくということが大事だと私ども認識しておりまして、その一環といたしまして、これをジビエとして活用していくというようなことを積極的に進めておるところでございます。

 三十年度予算におきまして、このジビエの利活用を総合的にやっていくという観点から、全国の優良事例になっていただくべく、全国で十七地区のモデル地区を選定いたしまして、このモデル地区におきまして、川上の捕獲から、処理加工、それから川下の需要までしっかりつながったモデル地区を選定いたしまして、ここに支援を集中していくというような取組をしっかり進めさせていただこうと思っておるところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 平成二十五年十二月から鳥獣捕獲強化対策が行われ、四百十二万頭の鹿、イノシシを、十年後には半分の二百五万頭に減らすという目標も掲げられていると思います。

 手間と時間をかけて育てた作物を一瞬のうちに食い荒らされ、農業従事者はいろいろな対策をとっておられると思いますが、イタチごっこのような状態かと思います。

 最近では、イノシシや猿などが民家や子供たちの通う学校へ侵入するといったニュースも多くなりました。深刻な有害鳥獣被害というのは、作物だけでなく、農家の方々の意欲さえも奪っていくと感じております。私の知人に、突然イノシシが出てきてけがをされた方などもいらっしゃいます。野生動物による農作物の被害も年々増加しているとお聞きをしております。

 先ほど、ジビエ利用体制の整備モデル地区のお話もありました。私の地元の京都もモデル地区として選定をされましたので、私も、このジビエ対策についてはしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 私も、猟師の方から鹿やイノシシのお肉をいただいたことがございますし、実は本日も、地元の方から、有害鳥獣として駆除をされた鹿肉をおいしく食べるための健康ジビエ料理教室にも誘われておりました。本日の十一時から十四時の料理教室ということで、参加はかなわなかったのですが、ジビエの利活用の促進のお取組の一つとして、今後、私も、日程が合う日がありましたら参加させていただこうと思っております。

 猟師の方からお話をお聞きしましても、やはり後継者不足のお話が出てまいります。また、猟師の数も減少傾向の中、ジビエの利活用をするためには更に人手が必要です。農林水産省としても、サポートをお願いしたいところでございます。

 地元の方とジビエの利用についてお話をさせていただいたときに、ジビエカー、移動式解体処理車についてのお話をお聞きしました。ジビエカーは、捕獲現場付近まで駆けつけ、直ちに処理を行うことができるので、肉の劣化を抑えることができ、また、近隣に処理施設がなく廃棄されていた鹿、イノシシの利活用の向上が期待できるとのことです。

 ジビエカーの導入の現状について教えてください。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 ジビエカーでございますけれども、今先生からお話ございましたように、遠方から処理加工施設に搬入するまでの間に、車内で解体ですとか内臓の摘出、皮剥ぎ、剥皮まで行うことによりまして、肉質の劣化が防げるということで、安全な食肉の提供に資するということで大変有効だと認識をしておるところでございます。

 これまでジビエカーを導入されたところということでは、平成二十九年度に、私どもの総合対策交付金を活用していただきまして、高知県檮原町が全国で初めて導入をしていただいたところでございます。

 先ほど御紹介をいたしました全国十七地区のモデル地区におかれましても、ジビエカーを導入されようという動きもございまして、今、計画ベースですけれども、今年度で三地区で導入が予定をされておるところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 ジビエカーが高価であることは私も理解をしておりますけれども、今後も、ジビエカーのさらなる導入の検討を進めていっていただきたいと思います。

 最後に、齋藤大臣が三月十日の会見で、有害鳥獣は有効に活用すればプラスの存在になるという意識が伝わるようジビエ利用を推進していくとお話しされたとお聞きしておりますが、なかなかビジネスにつなげるまでには、まだまだサイクルが整っていないように感じております。野生動物ですし、まだまだジビエという言葉もこれから浸透させていく段階かと思います。

 そこで、大臣に、ジビエの利活用の拡大に向けた御決意と、取組についての思いをお聞きできればと思います。

齋藤国務大臣 有害鳥獣の捕獲頭数が増加をして、そのほとんどが埋設や焼却により処理されている中で、ジビエ利用を推進し、農村地域の所得につなげていくことができないか、そうすれば地域の活性化が実現するのではないか、そういう観点からも、ジビエ利用は重要であるというふうに認識をしています。

 農林水産省では、安全で良質なジビエの利用拡大を図り、ジビエ利用量を三十一年度に倍増させるという政府の目標の達成に向けまして、ジビエ利用モデル地区、先ほどありましたけれども、を始め、地域関係者が一体となったジビエ利用拡大に向けた取組を鳥獣被害防止総合対策交付金により支援するとともに、衛生管理、流通のための規格、表示等についての認証の仕組みの構築、これらの施策を進めているところであります。

 今後とも、農林水産省として、有害鳥獣を利用して農村地域の所得にプラスしていく、そういうマイナスをプラスに変えるという方向での取組を、関係省庁とも緊密に連携しながらしっかりと推進してまいりたいと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございました。

 私は、以前の質疑の中で、子供食堂についての質疑をさせていただきました。食品ロスの観点からも、規格外野菜の提供ができないかと提案をさせていただきましたけれども、ジビエの提供も検討していただければと思います。

 子供たちに、動物の命をいただいて自分たちが生きていること、動物の命を無駄にしないという教育もお願いしたいと思います。

 時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊東委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣齋藤健君。

    ―――――――――――――

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

齋藤国務大臣 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 農林漁業団体職員共済組合制度は平成十四年に厚生年金保険制度と統合され、現在では、統合前の旧農林共済組合員期間に係る職域年金相当部分を、統合後もなお経過的に存続する農林共済組合が特例年金として支給しております。

 しかしながら、平成二十二年度から、特例年金にかえて一時金を選択できる仕組みを導入したことにより、年金受給者が大幅に減少するとともに、一人当たりの支給額の少額化が進んでおり、農林漁業団体と年金受給者団体の双方から一時金支給の義務化による特例年金給付の早期完了の要望が出されているところであります。

 こうした状況を踏まえ、特例年金の給付事務の合理化を図るため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 存続組合は、旧農林共済組合員期間を有する者に対し、特例年金給付にかえて、将来分の特例年金の現価に相当する額の特例一時金を支給することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

伊東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時九分散会


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