衆議院

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第7号 平成30年5月11日(金曜日)

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平成三十年五月十一日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 金子万寿夫君 理事 北川 知克君

   理事 関  芳弘君 理事 高橋ひなこ君

   理事 武村 展英君 理事 生方 幸夫君

   理事 西岡 秀子君 理事 江田 康幸君

      井上 貴博君    河井 克行君

      木村 弥生君    笹川 博義君

      武部  新君    中村 裕之君

      百武 公親君    福山  守君

      古田 圭一君    細田 健一君

      三浦  靖君    務台 俊介君

      近藤 昭一君    福田 昭夫君

      堀越 啓仁君    横光 克彦君

      下条 みつ君    鰐淵 洋子君

      田村 貴昭君    玉城デニー君

      細野 豪志君

    …………………………………

   環境大臣         中川 雅治君

   環境副大臣      とかしきなおみ君

   環境大臣政務官      笹川 博義君

   環境大臣政務官      武部  新君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  森下  哲君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策統括官)           中井徳太郎君

   環境委員会専門員     関  武志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  柿沢 未途君     今井 雅人君

同月八日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     西岡 秀子君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  福田 昭夫君     山崎  誠君

同日

 理事柿沢未途君同月七日委員辞任につき、その補欠として西岡秀子君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 気候変動適応法案(内閣提出第二七号)


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     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に西岡秀子さんを指名いたします。

     ――――◇―――――

松島委員長 内閣提出、気候変動適応法案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十五日火曜日午前十時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として環境省地球環境局長森下哲さん、環境省総合環境政策統括官中井徳太郎さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。百武公親さん。

百武委員 おはようございます。自由民主党の百武公親でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 それでは、気候変動適応法案について御質問をさせていただきます。

 近年、我が国を含む世界じゅうで、気候変動によるものと考えられるさまざまな影響が起きています。例えば、二〇〇五年に発生した米国のハリケーン・カトリーナによる被害では、死者・行方不明者二千五百人以上、被害総額一千億ドルを超える米国史上最大の気象災害となりました。また、二〇一一年のタイの洪水では、日系企業が多くを占める七大工業団地が浸水し、八百名以上の死者と四百億ドル以上の経済被害が発生するなど、世界経済に大きな影響を及ぼしました。

 一方、我が国では、私の出身地である埼玉県について触れさせていただきますが、夏の異常高温による、埼玉県の代表的水稲品種である彩のかがやきを始めとした農産物への著しい被害の発生や、時間雨量五十ミリメートルを超えるような集中豪雨の増加、また、多数の県民が熱中症で搬送されるなど、温暖化の影響と考えられる現象が既にあらわれています。

 我が国を含む世界じゅうで顕在化する気候変動の影響について、IPCC第五次評価報告書では、国際的に合意された、産業革命以前と比べ世界の平均気温上昇を二度以内にとどめるとのパリ協定の目標を達成したとしても、気候の変化、海洋の酸性化などの影響が生ずるおそれがあると指摘をしています。

 このような背景のもと、我が党では、昨年六月に、適応策の充実強化を図るための法制度の必要性を内容とする「気候変動の影響への適応策の充実・強化に向けた提言」を発表させていただきました。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの濃度を下げる緩和策とともに、気候変動の影響に適切に対応する適応策に積極的に取り組むことが必要であり、気候変動適応法案の成立は必要不可欠であるとまず述べさせていただきます。

 それでは、まず最初に、中川環境大臣に、本法案に込めた意気込みをお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

中川国務大臣 気候変動の影響は、さまざまな分野におきまして全国各地であらわれております。今後更に深刻化するおそれがあるわけでございます。こうした気候変動の影響に対処し、国民の生命財産を将来にわたって守るためには、関係省庁等と連携しつつ、適応策の一層の充実強化に取り組むことが重要でございます。

 こうした認識のもとで、本法案により、国、地方公共団体、事業者、国民の役割を明確化し、新しい法定の気候変動適応計画のもとで、関係者が一丸となって適応策を強力に推進したいと考えております。

 また、国立環境研究所を中核とした情報基盤の整備を図り、精度の高い気候変動影響の予測情報に基づく適応策を展開してまいります。さらに、広域協議会による国と地方公共団体の連携の促進等を通じて、地域レベルでの適応策についても強化してまいります。

 本法案のもと、国を挙げて適応策の充実強化を進めてまいる決意でございます。

百武委員 大臣、ありがとうございました。

 それでは次に、本法案についての具体的な質問をさせていただきます。

 まず、地域気候変動適応計画の策定を努力義務とした理由です。

 埼玉県は、地球温暖化対策に積極的に取り組んでおり、政府が適応計画を閣議決定した平成二十七年の六年前である平成二十一年に、既に県の地球温暖化対策実行計画に適応政策を盛り込んでおります。

 地球温暖化の影響は、一部の地域のみならず、日本全国に及んでいます。例えば、水稲では、気温の上昇による白未熟粒の発生や一等米の比率の低下などの影響が全国で確認をされております。

 これらのことから、国が定めた方針のもとで地方公共団体が策定した計画に基づき、気候変動の影響に対応していかなければならないと考えますが、この計画策定が努力義務に至った考え方について、政府の見解をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

笹川大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 地方公共団体がこの計画を策定するに当たっては、地域レベルの気候変動影響の科学的知見の充実、そしてまた、今委員が御指摘をいただきましたけれども、埼玉県の積極的な取組も含めての適応策の優良事例、これについて共有をするということも大事な観点でありますので、こうした取組は、現在、環境省そして農林水産省、国土交通省とも連携をしつつ実施しております地域適応コンソーシアム事業等によって支援をしているところでもございます。

 こうした中、現在、地方公共団体においては、既存計画に適応策の重要性を記載するなど自主的な計画策定が進んでいるところもありますが、一方で、具体的な適応策の検討についてはまだまだこれからという段階の自治体もございますので、計画策定を一律に義務づけるのではなく、現時点では努力義務とさせていただいたところでございます。

 環境省としては、今後、本法案のもと、国立環境研究所による技術的なサポート、それからまた、広域協議会を通じた地域の関係者の取組共有を推進してまいりたいというふうに思っております。

 また、特に、環境省としては、それぞれの地域に積極的に足を運びながら、本法案に関する説明会を開催して、そしてまた地方公共団体の計画策定を促し、同時にまた支援をしてまいりたいという思いでございます。

百武委員 ありがとうございました。

 次に、地方公共団体が得た気候変動の影響予測及びモニタリング情報の活用方策についてです。

 埼玉県では、ストップ温暖化・埼玉ナビゲーション二〇五〇を踏まえ、県内への気候変動影響評価や既存の施策等の点検など、今後の取組の方向性を整理した報告書である「地球温暖化への適応に向けて」を平成二十八年三月に取りまとめています。同報告書では、今後、埼玉県の各部局において分野別の適応策の取組を推進していくために、将来の気候変動の影響予測やモニタリング結果の情報提供を行い、各部局の適応策の取組を支援していくこととしています。

 このような各地方公共団体で行われているモニタリングで得られた気候変動影響の情報は、気候変動の影響が似ている他の地域の気候変動の影響を評価する上でも重要なデータとなると考えます。

 そこで、各地方公共団体で得られた情報が本法案のスキームでどのように活用されていくのか、政府に伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動影響に関するモニタリングあるいは調査研究でございますけれども、国の研究機関のみならず、地方公共団体の研究機関やあるいは地域の大学などにおいて実施されておりまして、それらの科学的知見を集約、活用することは、地域における気候変動への適応を推進していく上で非常に重要であるというふうに考えております。

 先ほど御紹介のありました埼玉県のお取組でございますけれども、非常に先進的なお取組として我々も注目させていただいておりますし、日ごろから連携もさせていただいております。特に、モニタリングをしっかり実行して、さらには気候変動の影響評価というところまで踏み込んで実施をされているという例は、非常に我が国の自治体の中でも先進的な事例だというふうな認識でおります。そういったところとしっかり連携していくことが非常に重要であると思っております。

 こうした考えのもと、この法案におきましては、地方公共団体の地域気候変動適応センターと国立環境研究所とが気候変動影響に関する情報を共有いたしまして、連携をしながら地方公共団体の適応策を支えていく仕組みを規定しているというところでございます。

 この規定に基づきまして、地域の研究機関が有するモニタリングデータ等を、国立環境研究所が中核となる適応の情報基盤に集約をいたしまして、それを分析をした上で地方公共団体にもフィードバックをさせていただいて、広く発信していきたいというふうに考えております。

 このような仕組みの構築を通じまして、モニタリングデータ等を活用いたしまして、各地域における適応策を、きめ細かなデータに裏づけられた実効性の高いものにしていきたいというふうに考えておるところでございます。

百武委員 ありがとうございました。

 次に、本法案の気候変動適応計画と、現行の政府の適応計画との関係性についてです。

 本法案では、政府は、気候変動適応に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、気候変動計画を定めなければならないこととされています。

 適応にかかわる計画については、既に平成二十七年十一月に政府の適応計画が策定をされておりますが、本法案に基づき策定されることとなる気候変動適応計画は、現行の政府適応計画とは具体的に何が変わるのか伺います。また、埼玉県を始めとして、既に適応にかかわる計画を策定し、先進的な取組を進めている自治体の適応計画の取扱いについても政府に伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 百武委員のおっしゃるとおり、平成二十七年の閣議決定では、現行の適応計画、これは法的には根拠がないものであるということで、主として関係省庁の取組をまとめた計画となっておりました。

 しかし、新たに策定する適応計画におきましては、現行の計画の内容を大幅に見直す内容となっております。

 具体的にどこを見直したと申しますと、三点ございまして、まず一つ目が、関係省庁の取組について充実強化を図るということ、そして二つ目が、国立環境研究所を中核とした情報基盤の整備を整えていくこと、そして三つ目は、地方公共団体、事業者、国民等の幅広い主体の連携協力による取組を幅広く取り込むこと、この三点を組み合わせまして、適応策を強力に展開していくことが可能となっているところが特徴でございます。

 また、お尋ねのありました地方公共団体の取扱いにつきまして、本法案に基づきまして適応計画を策定することが求められることとなりますが、既に適応に関する、例えば埼玉のように、計画を既に策定している地方公共団体の計画につきましては、本法案に基づく計画として取り扱うものとなっております。

 環境省といたしましては、既に計画を策定済みの地方公共団体につきましても、計画策定マニュアルの作成や提供、さらに、国立環境研究所の技術的サポートの充実等を通じまして、計画のより一層の充実強化を後押ししていきたい、このように考えております。

百武委員 ありがとうございました。

 次に、気候変動適応情報プラットフォームのポータルサイトの充実化等についてです。

 政府の適応計画の基本戦略の一つとして掲げられている、気候リスク情報等の共有と提供を通じた理解と協力の促進に基づき、地方公共団体、事業者そして国民が適応策を検討するための行動を支援する情報基盤として、平成二十八年八月に、ポータルサイト、気候変動適応情報プラットフォームが構築をされております。

 このプラットフォームは、気候変動の影響への適応に関する情報を一元的に発信するためのポータルサイトであり、必要な科学的知見や関連情報が提供をされており、国立環境研究所が科学的な知見をもとに同プラットフォームを運営していると承知をいたしております。そして、本法案により、ステークホルダーに情報を提供するという国立環境研究所のこれまでの取組が法定化され、法律上の根拠に基づいて行うことが可能となり、今後の適応策を進めていく上で重要なファクターになると思います。

 私もこのサイトを拝見いたしましたが、各県の米の収量の将来予測や熱中症搬送者数の将来予測など、最新の科学的知見に基づいた情報が提供をされており、これらの情報をうまく活用することで、地方公共団体が適応策を検討するための行動支援に役立つものと思っております。しかしながら、事業者の適応ビジネスの取組事例については紹介されている事例が限定をされており、適応ビジネスの展開に対する機運はまだ十分には高まっていない感じがいたしました。

 そこで、気候変動適応情報プラットフォームの今後のさらなる充実化に向けた取組について政府に伺います。

 また、二〇一六年に開催されたCOP22において、当時の山本環境大臣は、途上国による適応策の実施をサポートするために、二〇二〇年をめどに、気候変動情報プラットフォームを発展させ、アジア太平洋地域に拡大したアジア太平洋適応情報プラットフォームを構築することを発表いたしましたが、その構築状況についてもあわせてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省は、平成二十八年から、関係省庁と連携をいたしまして、適応の情報基盤であります気候変動適応情報プラットフォームを構築いたしまして、地域ごとの気候変動影響の将来予測ですとか、あるいは適応策の優良事例など、さまざまな情報を発信してきてございます。

 御紹介もいただきましたけれども、例えば、都道府県別にクリックする場所がウエブサイト上にございまして、そこをクリックすると、例えばお米の収量あるいは果樹の収量、それが中長期的にどうなっていくのか、そういった情報も得ることができますし、さらには、ではどういった取組をしていけばいいのかということも共有ができるような、そういうプラットフォームが既に構築をされておりまして、それを充実強化させていきたいというふうに思っております。

 この法案におきましては、適応の情報基盤の中核となります国立環境研究所が、国や地域の研究機関等との連携していく規定というものを盛り込んでございます。今後は、この規定に基づきまして、さまざまな研究機関が有する気候変動の影響や適応策に関する情報をこのプラットフォームのポータルサイトに集約をして発信してまいりたいというふうに考えております。

 それから、御指摘のございました、事業者の、特に適応ビジネスに関する情報でございますけれども、これについても、更に今後情報を集積していきたいというふうに考えております。

 国内の事業者の方々も、例えば保険業あるいはIT関係の方々、さまざまな方々が、クライメート・リスク・インフォメーション、これを使ったビジネスの展開というのを国内そして海外に広げていくということを考えてございます。今、こういった方々と一緒に、シンポジウムを開催させていただく、あるいは勉強会を開催させていただくというようなことを進めてございます。そういったところの活動を通じまして得られた知見というものを、この中に充実、蓄積をしていきたいというふうに考えております。

 それから、後段で御指摘のありましたアジア太平洋適応情報プラットフォームでございます。これは、国際的な適応の情報基盤といたしまして、開発途上国が科学的知見に基づきまして適応策を立案、実施できるよう、二〇二〇年までに構築をすべく、各国との調整を進めているというところでございます。

 これは、COP22で当時の山本大臣が、国際的にもこのプラットフォームというのを立ち上げますということを宣言されてございます。そして、昨年のCOP23、中川大臣が御出席をされました気候変動枠組み条約締約国会議、COP23では、サイドイベントを開催いたしておりまして、このプラットフォームの暫定版の紹介をさせていただいたということでございますけれども、開発途上国からは強い期待を寄せていただきました。

 既に、実は、インドネシアやフィリピンというところから日本に対して、ぜひ技術的な支援をしてくれないかという問合せが来て、私どもも対応を開始しているというところでございます。

 インドネシアにつきましては、非常にお米のお好きなお国柄でございますけれども、お米の収量が中長期的にどうなっていくのか非常に心配だということで、国立環境研究所に将来予測をしてほしいという御依頼が来ております。これには既に対応を開始させていただいております。

 それから、フィリピンからは、洪水予測をやってくれないか、そういう御依頼が来ております。フィリピンのある地域の三次元の情報と、それから今後の気候変動の影響というものを掛け合わせまして、その地域のどこに脆弱なエリアがあるのかということを判断したいんだということで、こういった防災の面からもアプローチが来ておりまして、これについても対応を開始しているというところでございます。

 こういった途上国の大きな期待にも応えられるように、しっかりと取組を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

百武委員 ありがとうございました。

 次に、地域適応コンソーシアムの取組状況についてです。

 政府の適応計画の基本戦略の一つとして掲げられている、地域での適応の推進に基づき、環境省では、国土交通省及び農林水産省と連携して、平成二十九年度より三カ年の計画で、全国事業と六つの地域における地域事業で構成する地域適応コンソーシアム事業を開始しております。

 この事業は、地域の関係者との連携体制を構築し、各地域のニーズに沿った気候変動に関する情報の収集、整理を行い、また、気候変動による影響調査を実施することにより、具体的な適応策の検討が進められていると承知をいたしております。

 そして、本法案により、地域適応コンソーシアム事業の六つの地域の地域協議会を念頭に置いた気候変動適応広域協議会を組織することができる規定を設けることで、広域的な連携による気候変動適応の推進が図られることとなります。

 気候変動の影響への適応は、地域の生活基盤を守ることや地域振興にもつながることから、気候変動適応広域協議会を通して、長年にわたっての地域での生活や社会貢献活動を通じて得られた身近な自然環境の状況等に関する情報を広く共有していくことは、大変有益であると考えております。

 そこで、現在三カ年計画で取り組んでいる六つの地域協議会の主な気候変動影響に関する調査の内容と、その進捗状況についてお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

森下政府参考人 地域適応コンソーシアム事業の取組についての御質問でございます。

 御指摘のこの事業におきましては、都道府県等の地域のニーズを踏まえながら、農林水産省さん、国交省さんと連携をいたしまして、農業、水産業、自然災害、水環境、生態系、健康等、さまざまな分野を対象といたしまして、将来の気候変動影響に関する全三十五項目の調査を実施しているところでございます。

 例えば、関東地域におきましては、都道府県等の研究機関と連携をいたしまして、夏季の高温あるいは少雨によるお茶の栽培への影響調査ですとか、降水量の増加等を考慮した都市圏の内水氾濫リスク評価等を実施してございます。

 それから、御指摘のございましたように、集中豪雨といったようなことも、自治体の方から、これは大きな課題だということで御提案をいただいておりまして、例えば、先ほどの内水氾濫リスクの評価ということで実施をさせていただいているということでございます。

 また、熱中症関係につきましても、気候変動によるその影響という、熱中症リスクの評価手法の整理、構築ということで、これも関東地方の一つの課題として現在取組をさせていただいているということでございます。

 ちなみに、この課題は、自治体の方から御提案をいただきまして、その地域地域に応じたニーズに応じまして、それに対する対応策というのを検討していくという形で進めさせていただいているということでございます。

 昨年度は、主に気候変動影響の将来予測に必要なデータの収集等を行ってまいりました。今後は、この法案のもと、広域協議会を通じまして、関係府省庁や関係研究機関との連携協力体制の強化を図りながら、シミュレーションモデルを活用した将来予測計算や、その結果を踏まえた適応策の検討を行ってまいりたいというふうに考えてございます。

百武委員 ありがとうございました。

 まだ時間がございますので、もう一問、最後に、最近の研究に関し質問をさせていただきます。

 昨年の十月に、国立環境研究所を始めとしたグループは、産業管理外来種に指定されているモウソウチクとマダケの生育に適した環境が、東日本で温暖化の進行とともに拡大することを予測モデルによって明らかにしたと発表をいたしました。発表では、気候変動そして温暖化を抑制する緩和策と同時に、外来種予防三原則に基づいた生態系管理などの適応策を進めることも重要であると指摘をしています。この研究は、竹林の分布を広域の現地調査に基づいて予測するとともに、気候変動の影響を推定した日本で初めての報告とのことで、このような最新の科学的知見も踏まえ、気候変動の影響を評価していかなければなりません。

 そこで、このモウソウチクとマダケについての現時点における国の気候変動影響評価と、その適応策の対応状況を簡潔にお教えいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

森下政府参考人 モウソウチクとマダケなどの放棄竹林は、現在西日本で問題となってございますけれども、昨年十月に国立環境研究所等が公表しました研究成果では、気候変動によりまして東日本や北日本においても分布地域が拡大し、地域の生態系や里山の管理に悪影響を及ぼす影響があるという指摘がなされてございます。

 環境省は、ことしの二月に、関係省庁とともに、我が国の気候変動及びその影響に関する最新の科学的知見を、報告書、気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート二〇一八という名称でございますが、取りまとめてございます。その中にも、先ほど御紹介にもありましたが、この竹に関する研究成果が盛り込まれたところでございます。

 環境省といたしましては、これまで、地方公共団体等が生物多様性の保全のために行う竹林対策の支援を行ってまいりましたが、今後は、これらの新しい科学的知見を踏まえつつ、この法案に基づき気候変動適応計画を策定する中で、生態系分野における適応策についても取り組んで、検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

百武委員 ありがとうございました。

 もうそろそろ時間でございますので、以上、本日は気候変動適応法案の基本的な部分について私なりに質問をさせていただきましたが、中川環境大臣を始め、とかしき副大臣そして笹川政務官など環境省の皆様の答弁を改めて拝聴させていただいた結果、冒頭で述べさせていただきましたとおり、地球環境を将来にわたって守っていくためには本法案の成立が絶対必要不可欠であるということを再認識させていただきました。

 今後とも、環境省を中心として、各関係省庁や各地方自治体等との連携を図りながら、これらの適応策に積極的に取り組んでいっていただきたい旨を強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、堀越啓仁さん。

堀越委員 立憲民主党・市民クラブの堀越啓仁でございます。

 先月の十日に初めて本会議場で登壇させていただきまして、中川環境大臣に気候変動適応法案について質問させていただきまして、まことにありがとうございました。

 本日は、その件について更に深掘りをさせていただくとともに、質問事項にかかわることを、再確認も含め、更に質問させていただければというふうに思っております。

 それから、本会議場の登壇のときに、自然系国会議員を目指しますということを言わせていただきました。このことについて、与野党を超えてさまざまな先生から、いや、自然系国会議員、いいんじゃないかということで声をかけていただきまして、ありがたいなと思っておりますけれども、私は、冗談ではなく本当に自然系国会議員をまず目指していきたいというところでありますし、あとは、やはり自然環境の問題に関しては、これは日本国内だけではなく世界規模で取り組んでいかなければいけない大問題であると思います。ですので、そういった意味で、本当に自然環境に全力で向き合っていくんだという議員の皆様がふえていくといいなという希望も含めて、自然系国会議員というふうにこれからも名乗らせていただきたいと思っております。

 まず、委員の皆様にとりましても、御地元へ戻られましたらば、自然系国会議員でございますということを言っていただけるとありがたいなと思っております。とりわけ、同じ群馬県であります笹川政務官、ぜひ、群馬県で自然系国会議員をふやしていくために、お願い申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 私の地元であります群馬県も、本当に、館林、前橋等々で、日々、夏になりますと気温がどんどん上昇しているという状況であります。地球温暖化等の影響により平均気温は長期的に上昇しているという状況がもう可視化できているという状況だと思います。今後も更にこれらが上昇することが予想されますし、また、近年では、地球温暖化の影響と見られる短時間の豪雨の発生回数も非常にふえております。こうした環境の変化による水害や土砂災害等の発生リスクは年々増加しているわけでございまして、県内でも大規模な土砂災害の発生が懸念をされております。

 先日、環境省の方からレクを受けさせていただいたんですが、デング熱を媒介するヒトスジシマカの生息域は、もともと戦前は群馬県が北限だったところ、今は青森県まで、かなり上に上がってきているという状況であります。改めて気候変動対策は待ったなしの状況でありまして、緩和と気候変動の影響への適応が喫緊の課題である、再確認しているところであります。

 そういった意味で、この気候変動適応法、先ほど百武議員の方からもお話ありました、私も非常に重要な法案だと思っています。

 そういった意味で、この気候変動対策は、最大限の緩和策の実施、これがやはり大前提であるという私の考え方は既に本会議の方でも述べさせていただいたとおりでございます。

 適応策は気候変動の影響に対応して実施されるものですが、温室効果ガスの削減を最大限行うことにより、その影響を極力抑えることが期待できるわけであります。つまり、緩和策を強化することは、気候変動の影響と被害を未然に回避する最大の適応策であると言えると考えております。

 この点について、再度ではありますが、大臣の御所見をお伺いするとともに、こうした考えを踏まえ、気候変動対策は緩和策の最大限の実施が大前提であるということを本法案に私は明記する必要があると考えておりますが、その点について伺いたいと思います。

中川国務大臣 気候変動の脅威に対応するためには、御指摘のとおり、緩和策と適応策の二つを車の両輪として進める必要がございます。

 世界各国が合意したパリ協定や、気候変動の科学に関する国際的な組織であるIPCCも、緩和策と適応策の両方を推進することの重要性を強調しております。

 緩和策の重要性につきましては、既に地球温暖化対策推進法に明記しておりまして、同法第一条においては、「地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題」とされております。

 本法案のもとで適応策を充実強化させるとともに、地球温暖化対策推進法のもとで緩和策に全力で取り組んでまいります。

 地球温暖化対策推進法と今回御審議いただく本法案の二つを礎に、緩和策と適応策をしっかりと推進してまいります。

堀越委員 ありがとうございます。

 まさしく何度か質問させていただいておりまして、中川環境大臣の方から心強い答弁をいただいているわけでございますけれども、やはり、私はこれは、車の両輪とおっしゃっておりました、そのとおりだと思っておりますし、やはり緩和策というのを講じることが大前提であるという認識は常に持ちつつ、適応策についても今後も注視をしていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 それから、次に移りますけれども、次に、パリ協定に関する削減目標の件についてです。

 パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前より二度以下に抑えることを目標とし、さらには一・五度以下に抑えることを努力目標としております。この目標の達成のためには、世界第五位の温室効果ガス排出国である日本の、二〇三〇年度に二〇一三年度比で二六%削減するという目標では、責任と能力を踏まえた十分な貢献はできないというふうに考えております。

 極めて不十分な目標であるということについては本会議で指摘をさせていただきましたが、これと同様に、経済協力開発機構、OECDが、このままではパリ協定の目標達成は困難であり、日本の削減目標について、各国が示している数値を念頭に、不十分だとした上で、削減の野心を高めるべきだと報告書をまとめております。

 このOECDの報告書が、先月の十三日、グリア事務総長から中川環境大臣に手渡されたものと承知しておりますが、この提言について、大臣、どのように受けとめておられますのか、まずお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 OECDの対日政策提言書、受け取ったわけでございますが、拝読いたしまして、まず、御指摘のように、二〇三〇年度二六%削減目標について、その達成に向けた取組を加速化させる必要があることや、現行の削減目標を超えて野心の向上に努めていくべきだ、こういったことが書かれております。また、二〇五〇年八〇%削減目標に向けた戦略を確立すること、革新的な低炭素技術に関する研究開発を促進、普及させること、それから、グリーンファイナンス・投資の活動の奨励、こういった点につきまして御提言をいただきました。

 いずれも重要な御指摘であると考えておりまして、今後、気候変動対策を進めていくに当たって大いに参考にさせていただきたいと考えております。

堀越委員 ありがとうございます。

 これとあわせて、この提言を受けて、国際社会に対して十分に貢献していくためにも、緩和策は最大の適応策であるという観点からも、やはり日本の削減目標を引き上げる必要があると考えますが、その点について改めてお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 パリ協定は、二度目標の達成のため、今世紀後半に温室効果ガスの実質排出ゼロを目指して各国の取組を前進させていく歴史的な枠組みでございまして、この趣旨を十分に考慮し、全ての国が脱炭素化に向けて取り組んでいくべきと考えております。

 我が国におきましては、平成二十八年五月に閣議決定いたしました地球温暖化対策計画に基づく取組を着実に実施し、まずは二〇三〇年度二六%削減目標を達成するということが重要でございます。

 また、この計画では、対策、施策の進捗状況を毎年厳格に点検するとともに、少なくとも三年ごとに目標及び施策について検討を行い、必要に応じて計画を見直すこととしております。

 パリ協定の目指す脱炭素社会の実現に向け、温室効果ガスの国内での大幅な排出削減を目指すとともに、世界全体の排出削減に最大限貢献してまいりたいと考えております。

堀越委員 ありがとうございます。

 これは、本当に世界レベルで削減目標を掲げているところであって、その影響がやはり、先ほど御答弁の中にありましたけれども、アジア諸国から、いわゆる米がどれぐらいとれるのか、あるいは水害の被害がどれぐらいになるのか調査をしてくれ、この調査の依頼があることに関しては、高い技術力を持った日本にこそ委ねられているというところに関しては非常にすばらしいことだなと思いますけれども、やはり、我々が日々享受している豊かさというものが、そういう、アジアの、本来CO2を、温室効果ガスを排出していない国々に押しつけるというようなことがあってはならないという観点からも、やはり先進国として野心的な目標を更に掲げていかなければいけないのではないかなというふうに述べさせていただきたいと思います。

 COP23でも、環境NGOの方から化石賞というものを受賞してしまいましたので、この汚名を返上するためにも、更に野心的に削減目標を掲げていく必要があるというふうに考えております。

 また、代表質問で、適応策の名のもとに無駄な公共事業が行われてはいけないということを指摘させていただきました。これに対して、中川環境大臣の方から、本法案では、科学的な情報基盤を構築し、将来の気候変動影響に関する精度の高い情報を提供していくこととしており、適応策の観点から、効果的かつ効率的な事業の推進を図っていくこと、また、本法案では、気候変動適応計画に基づく施策の進展の状況を的確に把握し、評価する手法の開発に努める旨規定するとともに、気候変動適応計画を必要に応じて見直していくこと、そして、これらの仕組みにより、適応策を具体的に実施するそれぞれの府省庁において、必要性や緊急性を踏まえ、適応策の効果的かつ効率的な実施が図られるものと考えておりますというふうに御答弁いただきました。

 つまり、気候変動適応計画の見直し等の仕組みによって、各府省庁が適応策の効率的な実施を図っていくことを期待されていると理解をさせていただきましたが、かつての公共事業の巨額な伸び、それからゼネコン汚職や談合事件などの摘発を契機として、公共事業のあり方に対し批判が今広がっているというふうに思います。本当に適応に係る事業なのか、あるいは、これが本当に環境の負荷の少ない事業なのか。もともと環境保全も含めてこういった取組をしていかなければいけない部分ではありますが、それと真逆の方向に進んでいってしまってはいけないというところも懸念されます。

 さらに、もっと費用の少ない事業に代替できるのではないかなどの視点から、第三者、つまり市民がこれを評価する仕組みを設ける必要があるというふうに考えますが、再度、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のとおり、適応策に便乗してといいますか、名をかりて無駄な事業が行われるということを防止していくということは、これは重要な課題でございます。

 現実に、予算の無駄遣いを防止するための仕組みといたしましては、各種の政策評価や、会計検査院や国会の決算委員会等でのいろいろな御指摘、こういったものを踏まえて次の年度の予算編成の作業に生かしていく、こういう仕組みがあるわけでございますが、とりわけ、この適応策につきましては、科学的な情報基盤を構築し、将来の気候変動影響に関する精度の高い情報を提供していくことにいたしておりまして、国立環境研究所が、国や地方公共団体、事業者等が気候変動影響の情報に基づき効果的に適応策を実施できるよう、科学的な情報の収集、分析、提供等を行ってまいります。

 こういった情報等を的確に使っていただいて、効果的、効率的な事業の推進をそれぞれの省庁や地方公共団体を含めてしていただきたい、こういうふうに思いますし、環境省としてもそのような見地に立って対応してまいりたいと思っております。

 また、気候変動適応計画に基づく施策の進展の状況を的確に把握し、評価する手法の開発に努めるということが本法案でも規定されておりまして、気候変動適応計画を必要に応じて見直す、こういうことにいたしております。

 こうしたいろいろな仕組みを通じて、必要のない事業による予算の無駄遣いを防止していくという、そういった仕組みになるように努めてまいりたいと考えております。

堀越委員 ありがとうございます。

 私は、この気候変動適応法に大変期待をしているのは、いろいろな効果はあると思うんです、農作物のとれるところが変わってくる中で、この地域ではどんな農作物がとれるのかということを地域の皆さんと一緒に検討していくということは必要だと思いますし、あとは、やはり災害ですね、災害の防止。中山間地域、今林業をされておられる方々がどんどん減っている中で、やはり、間伐が行われないことによって根が深く張らない。根が深く張らないから、大規模な集中の豪雨があったときに土砂災害に発展してしまう、こういう連鎖というものがあります。

 一つそこから更に深掘りをすると、やはり川の機能をもう一度戻さなければ、砂浜がどんどんどんどん減退している。砂浜が減退することによって、水面が上昇してきたときの大きな経済損失というものも大きく発展してくるというところからすれば、砂防ダム、非常に多くなっておりますけれども、この砂防ダムに、スリット化といって、スリット、切れ目を入れるんですね、そうすることによって、川の機能を戻しつつ、更に土砂も請け負うことができるというようなものがあります。

 例えば、災害対策に、土砂災害を防ぐんだということでコンクリートにまた覆われるようなのは、根本的な解決にはやはりならないというような見方もできると思いますので、そういった観点からも、適切にこの適応策に対して公共事業が行われるということが本当に必要なことだというふうに思っておりますので、ぜひ今後ともチェックを厳しくしていただければというふうに思います。

 それから、第三者機関というお話をさせていただきましたけれども、やはり我々、環境省の官僚の皆さんや議員の皆さんからいろいろな御教授をいただいて、日々勉強させていただいているわけでございますけれども、第三者機関というか市民団体は、割と新しいものに非常に特化している、知識として持っている部分があると思います。

 例えば、これから議員立法の方で検討されていると思いますが、海洋ごみの問題に関しても、マイクロプラスチックの問題等々に関しては、いち早く、ずっと前から市民の団体の方々が声を上げておられた。そういった意味からも、市民の団体の皆さんと一緒に連携をしていくということが非常に重要なのではないかなということを一言申し上げさせていただきたいと思います。

 次に、これも本会議場でお尋ねしましたけれども、企業の気候リスク情報の収集や情報提供等についてお伺いをさせていただきました。これに対して中川大臣の方から、本法案において、国、地方公共団体、事業者等が科学的知見に基づき適応策を実施できるよう、国立環境研究所が関係研究機関と連携しつつ、気候変動影響に関する情報の収集、分析、提供等の業務を行うことを明記していること、また、事業者は事業活動の内容に即した適応策に努めるとともに、国及び地方公共団体の施策に協力するよう求める旨規定しており、これらの規定に基づき、企業の協力を得ながら、気候変動によるリスク情報の収集に努めるとともに、企業への情報の提供等を行っていくこと、さらに、こうした取組を通じて、国立環境研究所を中核とする情報の収集、分析、提供体制の充実強化を図り、政府一体となって適応策を推進していく旨の答弁をされました。

 確かに、本法案において、気候変動によるリスクに関し、企業や自治体に対するさまざまな規定があることは承知をしておりますが、企業の把握したみずからの事業の気候変動リスクに関するデータは、企業自体のものとするだけではなく、やはり企業が、関係する地域や関連する業種等の適応についても共有することが求められるというふうに思います。

 つまり、多くのデータを収集することは適切な影響評価にもつながると考えますが、情報提供について、企業の協力を求めるという段階から一歩私は踏み込んでいいんじゃないか、義務として情報の提供をしていただくことによって確実に情報を収集していくことがやはり必要なのではないかというふうに考えます。

 そこで、改めて大臣に伺いたいと思います。

 気候変動によるリスクに関して集められた貴重なデータを適切に活用していくために、影響が大きいと考えられる業種の事業所や自治体が把握した気候変動に係るリスク情報については、その提供を義務化するなど、措置を講ずる必要があると考えておりますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 御指摘のように、企業が収集した情報を提供していただくということは大変重要なことでございますが、一方で、企業にとっては、その情報がそれぞれの企業の経営に係る、その企業にとって公開を、提供するとまずい、そういった情報もあろうかと思います。そこのところを努力義務としてお願いをする、極力提供していただくという形で対応するということは重要なことだと思いますけれども、義務ということにするということは、それぞれの企業の事情がございますので、現在のところ、まだそこまで対応できないのではないかというふうに考えております。

堀越委員 それとあわせて、続けてもう一点。

 また、気候変動の影響についての知見がいまだ不十分な分野については、調査研究を推進させる、より充実した気候変動の影響評価を行っていくことが必要と考えます。

 これは国が積極的に進めていくことが求められることから、科学的知見に基づき気候変動適応を推進するため、気候変動及び多様な分野における影響の情報収集の推進を本法案において位置づけるべきだと考えておりますが、政府の見解を求めたいと思います。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 お話のございましたように、気候変動、これは、農業、自然災害、生物多様性など、さまざまな分野に影響を及ぼします。これらの影響に対処していくには、我が国の研究機関が連携協力をいたしまして、気象、農業、防災など、さまざまな分野の科学的知見を集約する必要があるというふうに考えてございます。

 このため、本法案におきまして、国立環境研究所が、農林水産省、国土交通省を始めとする関係省庁所管の研究機関と連携をしながら、気候変動影響に関する情報の収集、分析等を行うよう規定をしているというところでございます。

 こうした規定のもとで、現時点で知見の蓄積が不十分な分野も含めまして、多様な分野における気候変動影響の情報を収集いたしまして、より充実した気候変動影響評価を実施してまいりたいというふうに考えてございます。

堀越委員 ありがとうございます。

 先ほど中川環境大臣の方からも御答弁いただいたように、企業は、やはりその企業努力によって温室効果ガスの削減をしていく、あるいは適応策を講じていく。そこで外に出せない情報等々もいろいろあるとは思います。

 そういった点からも、私は、問題の根幹がどういったところにあるのかなということをちょっと考えますと、やはり、気候変動が、気候変動そのものによって多くの経済損失を招いてしまうんだという概念がまだまだ企業には浸透し切れていないのかなという印象、特に、とりわけ日本の企業においてはあるのではないかなというふうに思っております。

 そういった意味では、海外に目を向けますと、イギリスの財務省が実施した、気候変動問題の経済的側面に関するレビューというのがあります。これは、ブレア首相並びにゴードン・ブラウン財相が昨年の七月に委託してつくられたものなんですけれども、この責任者となっているのが、元世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターンという方が責任者になられているんですね。

 これはスターン・レビューというふうに言われているんですが、六百ページに及ぶ非常に大きいレポートになるんですけれども、要点だけ述べさせていただきますと、今、行動を起こす、いわゆる適応に対して行動を起こせば、気候変動の最悪の影響は避けることができる。経済モデルを用いた分析によれば、行動しなかった場合、毎年GDPの少なくとも五%、最悪の場合二〇%に相当する被害を受ける。対策コストはGDP一%程度しかかからない。つまり、これは、やらないよりはやった方がいい、確実にいいということであります。これはもう企業全体で、こういった経済損失を防ぐためにも取り組んでいく必要があるというふうに考えます。

 また、これは名城大学の教授の皆さんが研究されたデータなんですけれども、伊勢湾地域を分析の対象として、水位が、例えば海面の上昇が一メーター起こった場合にどれぐらいの経済損失になるのかということを試算したデータがあります。端的に言いますと、海面上昇が一メートル上がることによって、直接被害は二十兆円。非常に、これは伊勢湾だけでこの状況ですから、東京でこういったことが起これば、もう当然ですけれども、より多くの被害が及ぶのではないかというところであります。

 多くの経済損失がこういったところからも読み取れるわけでありますし、では、逆に、いいことはないのかと。適応策を講じて、予算をそこに入れることによっていいことはないのかということを研究した結果というのがありまして、これは、専門誌、ランセット・プラネタリー・ヘルスという、電子版なんですが、これも端的に結果だけ申し上げますと、温室効果ガス抑制の経済効果は、そこに対策をしてお金を投じることによって病気などが減ることによって十分黒字になるんだ、そういう結果が出ております。コストはかかるけれども、いいことがあるので、それによって相殺されますよというデータです。

 つまり、これだけのことを世界では取組として研究としてもなされておりますし、大きな経済損失を防ぐためにも、日本の企業に向けても大きく発信をしていっていただきたいなということを述べさせていただきたいと思います。

 時間も残り少なくなってきましたので、次に参りたいと思います。

 続いて、情報の重要性に関連してなんですけれども、適応策の推進に当たり必要とされる情報の収集、分析、提供体制の中核的存在となる国立環境研究所について伺いたいと思います。

 本法案では、国立環境研究所による気候変動適応の推進に関する業務として、都道府県又は市町村に対する地域気候変動適応計画の策定又は推進に係る技術的助言や、地域気候変動適応センターに対する技術的助言等が盛り込まれています。

 現在、国立環境研究所は、現行の適応計画において基本戦略の一つとして挙げられている、気候リスク情報等の共有と提供を通じた理解と協力の推進に基づいた中核的取組として、科学的な知見をもとに気候変動適応情報プラットフォームを運営しておりますが、国立環境研究所による研究の一環とした取組であったものが、本法案により、行政事務として、法律上の根拠に基づいて行われることとなります。

 そこで、まず、国立環境研究所が現行の適応計画に基づいて行っている業務と、本法案において行うこととされている業務の違いについて、重複ですが、お伺いをしたいと思います。

 また、適応に関する国立環境研究所の事務を本法案に位置づけることにより期待される効果についても政府に確認したいと思います。

中井政府参考人 お答え申し上げます。

 国立環境研究所は、これまで適応に関しまして、気候変動による影響予測手法の開発等を行ってきてございます。加えまして、適応の情報基盤として、平成二十八年から、環境省が関係省庁と連携して運用いたします気候変動適応情報プラットフォームの事務局を務めてございます。

 このプラットフォームでは、これまで、科学的知見や気候変動影響予測情報を提供することによりまして、地方公共団体の気候変動影響評価や適応計画の策定の支援等を行ってまいりました。

 今後は、これらの取組に加えまして、気候変動影響予測の高解像度化など、さらなる科学的知見の集積を進めてまいります。また、これまでの経験に基づきまして、地方公共団体また地域気候変動適応センターに対します高精度な予測情報の提供などの技術的支援を行ってまいります。さらに、国立環境研究所が中核となりまして、国や地方の研究機関との連携協力体制の構築を図ってまいります。

 このように、法制化により加わる業務を通じまして地方公共団体等の取組をより後押しするということで、実効性の高い適応策が推進されるように取り組んでまいります。

堀越委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がないので、次に進みたいと思います。

 次に、気候変動影響のあらわれ方は、先ほどからお話しさせていただいています豪雨や台風の巨大化、強大化、土砂災害の発生確率の増加や大規模等の災害外力が強くなっているだけではなく、影響を受ける側の状況、つまり人口減少や高齢化、過疎化や都市化、産業構造の変化によって大きく異なってくると考えられます。

 こうした社会経済が持つ気候変動の影響に対する脆弱性や暴露を評価するための評価や手法の開発、地域ごとの脆弱性や暴露の評価に関する調査研究を進めていく必要があります。

 本法案においては、国立環境研究所は、気候変動適応の推進に関する業務を行っていくに当たって、国民一人一人が日常生活に得る気候変動影響に関する情報の有用性に留意することとされております。この点は非常に重要ですけれども、それだけではなく、気候変動適応の推進は地域の実情に応じて行っていくことが必要であることから、地域の実情に応じた気候変動適応の推進の重要性についても国立環境研究所は留意しておく必要があると考えますが、この点について、この点を本法案に規定しておくべきではないかなというふうに考えておりますが、政府の見解を伺いたいと思います。

笹川大臣政務官 委員の御指摘のとおり、地域のそれぞれの事情というのはさまざまだというふうに思っております。特に、委員のお住まいの伊勢崎地区も、私の住んでいる、選挙区であります太田、館林も、大変、夏の時期になりますと、三十七度、八度ということで、高温を争っている地域でありますので、非常に深刻度は違うというふうに思っております。

 その中にあって、先ほど百武議員の質問の中にありましたけれども、やはり埼玉県、これも先進的に取り組んでいるという形の中で、それぞれの地域の取り組み方にも濃淡があるわけでありますので、その中で、地域の実情に応じた気候変動の適応の推進というのは本当に重要でありますので、そのことについて、本法案につきましては、それぞれの推進の具体的な仕組みについても盛り込んでおります。

 特に、市町村の役割というものは、市民一人一人に寄り添う形で、一番近い、寄り添っているわけであります。そしてまた、地域を束ねていく中での都道府県の役割もこれは大きいということであります。

 そして、その中の情報というものの共有の中で、この国立環境研究所の役割というものも大変大きなものがあるわけでありますので、そういう意味では、気候変動影響に関する情報の提供等を通じて地方公共団体に対する技術的サポートを行う、この旨を規定しており、これらの規定のもとで、地域の実情に応じた適応策を推進していく上での国立環境研究所の役割というものがあるというふうに思っておりますので、御理解いただけると思います。

堀越委員 ありがとうございます。

 本当に、先ほども触れさせていただきましたけれども、中山間地域においては、土砂災害、大規模なものが起こってしまうリスクが当然高くなるわけですけれども、しかし、その災害に対する対応というのはやはりおくれてしまうということもありますので、地域の実情を踏まえた上で、ぜひ適応策も推進していただけるとありがたいと思います。

 それから、最後の質問になってしまうと思うんですが、本法案では国立環境研究所が情報基盤の中核をなすこととされておりますが、それに関連して、私は非常にすばらしいと思っているんですけれども、温室効果ガス観測技術衛星の「いぶき」、こちらにきょう持参させていただきました。こちらの、これは何分の一ですか、百八十分の一スケールという「いぶき」二号の模型をちょっときょう持参させていただきましたけれども、この「いぶき」についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 緩和策や適応策を適切に講じていくためには科学的な知見が基盤となりますが、この科学的知見の集積に重要な役割を果たしているものの一つが、こちらにあります模型の、JAXAとともに共同開発した「いぶき」であるというふうに思います。これは世界初の温室効果ガス観測専用の衛星ということで、平成二十一年一月に打ち上げられた後、現在も観測を続けております。聞くところによると、片翼がもう太陽光パネルが損失しているということなんですが、片翼だけで今は観測を続けているということでございます。

 まず、これまで行ってきた「いぶき」の観測の成果、そして、観測データは、各国の政府機関や科学者のみならず、登録することで誰でも利用することが可能とのことですが、具体的な活用事例、世界各国の評価や反響について政府に伺いたいと思います。お願いします。

とかしき副大臣 堀越委員にお褒めいただきまして、本当にありがとうございます。

 その「いぶき」の件なんですが、世界初の温室効果ガス測定専用の衛星でありまして、平成二十一年の一月打ち上げからもう既に九年が経過しております。

 温室効果ガスの地上での測定地点、これは世界で約二百六十カ所ありますけれども、「いぶき」は通年で約一万三千カ所の測定を可能としております。ですから、地球全体の温室効果ガスの全体像が見えるというのが特徴であります。

 私も、海外に行くたびに必ず日本の技術をアピールするためのファイルを持っていくんですが、そのときに「いぶき」の話をしますと、非常に皆さん興味を示してくださいます。特に各国の首脳が評価してくださいますのは、要するに、専門家だけではなくて、一般の人たちでも、面で表現ができる、色分けをしてくれると非常に、世界の中でCO2がどうやってふえているのか、どの地域でふえているのかということが一目瞭然でわかるということで、大変評価をされているところであります。

 「いぶき」はこれまで多くの成果を上げておりましたけれども、平成二十七年の十二月には、地球全体の二酸化炭素の月別平均濃度、これが初めて四〇〇ppmを超えたことを明らかにした、これもまさに「いぶき」の成果でございます。

 「いぶき」の観測データ、これは全世界に無償で提供させていただいておりまして、世界じゅうの研究者に利用されているところでございます。また、「いぶき」の打ち上げ後も、各国の宇宙機関により同じような観測衛星の打ち上げが続いておりますけれども、利用者からは、各国の衛星の観測データと比較して「いぶき」は非常に高性能であると評価をされております。

 ということで、実は「いぶき」の設計寿命は五年ということで、もう九年使っておりますのでかなり厳しくなってきておりまして、現在、文科省と環境省が共同で、後続機「いぶき」2の開発を進めているところであります。

 ということで、今後も、パリ協定に基づきまして世界各国が温暖化対策にどういうふうに貢献しているのか、これをしっかりと測定できる物差しとして「いぶき」を活用していきたい、このように考えております。

堀越委員 ありがとうございます。

 本当に高い技術力を持った日本だからこそ、これは世界に貢献できるすばらしい取組だというふうに思っております。

 私、自然は好きなんですけれども、それと同じに宇宙も大好きでして、役人の方に来ていただいて「いぶき」のレクを受けたときに、私、宇宙を担当しておりますということで名刺をいただいたことがあって、宇宙担当というのが環境省にもいるのかというのが本当にすごいなと思いましたけれども、この「いぶき」は……(発言する者あり)言い過ぎですかね。

 この「いぶき」は、一号機は、先ほど御答弁いただいたように、温室効果ガスを測定するためだけに打ち上げられている。これは非常にすごいことでありますし、「いぶき」二号の特徴が非常にまたすぐれておりまして、「いぶき」一号は雲があると観測できないんですね、しかし、「いぶき」二号に関しては、雲があっても、雲がないところに観測スポットをスライドさせて観測をする。つまり、切れ目のない温室効果ガスがどれぐらいあるのかという測定ができるという意味では、本当にすばらしいものだと思います。

 これからも、これはなかなか国民の皆さんに知られていないというところがありますので、委員の皆さんも、「いぶき」二号、ぜひ国民の皆さんに周知をしていただければありがたいなというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 私の質問を以上で終わります。ありがとうございました。

松島委員長 次に、下条みつさん。

下条委員 国民民主党の下条みつでございます。

 きょうは適応法案について御質問させていただきたいというふうに思います。

 先般来、本会議場でも委員会でもいろいろ御質問させていただいて、私も大臣と同じように、私はどっちかというと財務金融が専門でございまして、やればやるほど本当に環境問題というのは奥が深くて、その上、全く大きな財政に影響する、また、国際関係も含めて非常に影響が大きいということが知れば知るほど出てくるなという感じがいたしております。そんな中できょうの法案の御質問をさせていただければというふうに思っております。

 まず、法案の想定しているというのは、気候変動の予測、それに対する対策、それを都道府県や市町村に落としていく、計画を作成していく、これが原点になっているというふうに思います。そんな中で、見込みというのは最も僕は重要だと思っているんですけれども、地方自治体に適時適切な情報提供を行っていくことが、最終的にはそれをもとに地方自治体が前に進む、また見込みをやっていくということでございます。

 まず最初に御質問したいのは、気候変動の予測がどのように現状行われていて、またどのような頻度で予測が更新されているのか、これをまずお聞きしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、関(芳)委員長代理着席〕

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動の予測についての御質問でございます。

 将来の気候変動の予測を行うために、世界じゅうでさまざまな研究機関が将来の気温やあるいは降水量の変化をシミュレーションするための気候モデルというものを開発してございます。

 気候変動の予測におきましては、将来の温室効果ガス排出量等をこの気候モデルにインプットいたしまして、二〇五〇年あるいは二一〇〇年などの将来の気候を予測しているということでございます。

 我が国でございますけれども、気象研究所、あるいは、東京大学、海洋研究開発機構、国立環境研究所が共同で開発をいたしました気候モデルを主として活用しておりまして、気候変動の予測を行っているというところでございます。

 その更新でございますけれども、おおむね五から七年ごとに気候変動の科学的評価を行っているIPCCの評価報告書のサイクルも見据えつつ、多くの研究機関は、気候モデルを改良し、新たに予測結果を公表しているという状況でございます。

下条委員 ありがとうございます。

 地球全体は当然温暖化にどんどん進んでいる中で、その予測というのは非常に壁が大きいなという感じが僕はしています。

 それで、今おっしゃった中で、もうちょっと細かく言うと、技術が進歩したり、てっぺんからとか、上からいろいろやっていますけれども、気象庁の高解像度降水ナウキャストというのは二百五十メーターの範囲で降水量の解析を行っている。もともと、例のアメダス、雨ですね、アメダスは二十キロごと、十七から二十キロごとに設置されて、各都道府県単位での気象現象の観測が行われている。

 気候変動の予測モデルにおいては、どの程度の範囲内での予測を前提にしているか、これをまずお聞きしたいというふうに思います。

森下政府参考人 予測モデルの御質問でございます。

 まず、世界各国の多くの研究機関では、地球全体を対象とする気候モデル、これを使用しまして、大気や海洋の変動をシミュレーションすることで、気候変動の将来予測を実施しております。

 地球全体を対象とする気候モデルでございますけれども、地球全体を二十から百キロメーター四方のメッシュに区切りまして、それぞれの地点の気温あるいは気圧、降水量等の予測データを算出しているということでございます。

 また、国レベル、地域レベルで気候変動の予測を行うために、一部の研究機関は、国あるいは地域単位に限定した区域を対象に詳細な予測を行っているというところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 先日の参考人質疑で三村信男茨城大学長さんもおっしゃっていたのをちょっと引用すると、まさに今おっしゃっていた点ですけれども、全地球的気候モデルから、スーパーコンピューターを使ったモデルで地球全体を予測していく、その分解、今おっしゃった百キロから二十キロ以内にまた切っていく。ただ、相当細かく切らなきゃいかぬなと思いながら、その範囲になっている。それを今度はダウンスケーリングしていっていくということですよね。これらの技術は非常に、さっき言ったように、高度なものを僕は日本は持っていると思うんですが、地域ごとの影響を予測して計画立案するまでに細かく至っているのかなというときに、ちょっとクエスチョンが幾つかあるなと。

 簡単に言えば、現状は二十キロという場合、百キロから二十キロというので、例えば二十キロ、最小限の二十キロに絞った場合は、面積にすれば四百キロ平米ですよね。

 これは大臣、四百キロ平米というと相当でかいんですよ。私は、なぜ日本というのは、環境をもっとやっていかなきゃいけないのか、後で言おうとは思っていますけれども、この国というのは山あり谷あり川あり海ありで、全部、もう商品がオールそろっているんですね、気候に対する影響。そのときに、私は、この四百平米というのは、ちょっとでかすぎるんじゃないのと。というのは、日本は特に、さっき言ったように、山があって、その隣がすぐ平地になっていて、その先が海になっているとかという、そうなると、もうちょっと細かく切っていくようにするには何か必要じゃないかと僕は思っています。

 そのときに、例えば、せいぜい半分の十キロ四方、四分の一の五キロ四方に切ったとしても、かなり予測が、非常に精度は上がってくるんだろうけれども、そのときの細分化や精密化を実施していくときに、何が一体、ある意味で課題、壁になっているのか、これがポイントだと僕は思うんですが、いかがでございますか。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、地球全体を対象とする気候モデル、これは二十から百キロメーター四方を単位としてというふうに申し上げました。これは、御指摘のとおり、これだと、局地的な高温ですとか降雨、こういったスケールが小さい現象を再現することは困難でございます。

 そこで、国立環境研究所を始めまして、さまざまな研究機関は、これはお話もございましたが、ダウンスケーリングというテクニカルな手法を活用しまして、二十キロ四方の予測結果を使って、五キロメーターあるいは一キロメーター四方のメッシュに区切りまして、これを、きめ細かい気候変動の予測を行っているということをやってございます。

 一方で、気候変動の予測の細分化、細密化、ダウンスケーリングというのは、非常にテクニカル、知見を要する手法でございます。また、分解能を上げるために、コンピューターの性能、あるいは既存のデータの適切な活用ということがございまして、高度な専門知識を必要とするということでありますし、予測結果の誤差が大きくなってしまうというような欠点も一部あるということもございます。こういった点につきましては、調査研究等を通して、その改善を図っていくということが非常に重要であるというふうに思ってございます。

    〔関(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

下条委員 ありがとうございます。

 誰もが同じことを考えているんです。簡単に言えば、一つのデータがあって、そのデータをもとに、それをおろしていくときに、コンピューターで解析する科学者が出てくる、僕はそう思っています。

 そこで、私は、もうちょっと、もとの分母の話をすると、もとの分母の話というのは、ある意味で、要するに世界じゅうのデータですよね。てっぺんから、さっきの、あの先生がおっしゃった、上から観測するというのも更に必要ですけれども、一番は、やはり精度を上げていくには、全世界的にどういうデータをとれているか。このもとになるのは、例えば、気温であったり降水量であったり積雪であったり、僕が一番気にしているのは気圧ですよ、そして、それに伴って、海流だ、さっき言った海水の水位、海温、いろいろなものがまじってきて、それが地球が回転しているうちに日本にかぶってくる、こういうことですよね。

 私は、このもとになる分母をきちっとしなきゃいかぬと思っているんです。というのは、どんなに日本の上の、青森だとか山口だとか長野県に物を置いて、そこの水がほうだはあだとか、それは必要だ。だけれども、それがあったとしても、違う水位、若しくは違う気圧によって、すぐ違う天気になってしまう可能性が非常にあるわけです。

 この分母の部分を非常に重要にしなくちゃいけないなというのが私の申し上げたいことであって、その中で、今、WMO、世界気象機関というのは、大臣御存じだと思います、国連の関係ですから御存じだと思いますけれども、金融局にいらっしゃったので。そういう国際機関のデータをもとに、それをダウンスケーリングしていくんですね。

 ところが、このWMOの部分で賄い切れないところがたくさんあるんですよ、大臣。例えば、アフリカであったりとか、南極、北極、そして発展途上国であったりとか、こういう部分のデータがないがゆえに、結局、東アジアというのは、豊かな国もあればそうじゃない国もある、その部分の気圧や海流、若しくは風、雲がやはり日本に即影響してくるんです。ですから、そういう部分との連携が非常に重要だし、そういう部分に対する支援も必要になっていくんじゃないか。それが、もとになる、ダウンスケーリング何だかんだ言っていく中のもとのデータの、分母の部分だと思うんですね。

 そこで、国際機関との連携というのは僕は非常に重要で、要は、もう日本だけで済まされないよと。さっき言いましたように、海あり山あり川あり雪あり、夏場の、砂漠もあっちにありますし、そういう中で非常に日本に影響してきます。

 大臣として、国際機関との連携が、これから、これは実を言うと、さっきの話じゃないけれども、文科省も関係してくるし、国交省も関係してくるし、気象庁も関係してくるし、環境省ももちろん当然、きょうこの委員会であるので関係してくる。それが一番重要な部分の一つ。要するに分母です。どれだけ精度が高いものを各国から仕入れてきて、それをこの日本国のために使って、若しくは、それを近隣の諸国にも分けてあげるということですが、その辺の御認識とこれからの方向感をちょっとお聞きしたいというふうに思います。

中川国務大臣 御指摘のとおり、全球レベルでの気候モデルの精度を上げるためには、データの空白地域での衛星等を活用した観測や国際機関等との連携が重要でございます。

 こうした観点から、環境省では、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」によりまして、地球各地で年間約一万三千点の温室効果ガス濃度を観測しております。今年度に打ち上げを予定しております後継機「いぶき」二号では、更に観測地点数を増加させ、精度を向上させる予定でございます。

 また、国立環境研究所と諸外国の機関との協力に関する協定というのがございまして、そういった協定を活用して、温室効果ガス濃度の観測データを相互に共有しております。これからもこうした相互の共有というものを推進してまいりたいと考えております。

 こうした取組により、我が国として、全球レベルでの気候モデルの精度向上に貢献してまいりたいと考えております。

下条委員 「いぶき」はさっき副大臣がおっしゃっていて、私に言わせると、てっぺんからとるものです。私が言いたいのは、てっぺんも必要ですけれども、大臣、地面ですよ。地質の問題もあり、雨の量の問題もあり、それから気圧ですね。

 ちょっとこれは質問通告していませんが、気圧は「いぶき」はどの程度まで調べられるんですか。

森下政府参考人 気圧は「いぶき」の対象項目では今、ございません。

 それから、気候ということに関しましては、気象庁がWMOと一緒に連携をしながら、さまざまな国際的な情報収集をして、それを共有するという取組を展開しているということでございます。

下条委員 大臣、気圧が、私は好きじゃないんですけれども、どうでもいいんですけれども、一番影響してくるんですよ。気圧が全ての空気の流れ、海流、海温、そしてまた温暖化の方向感を決めちゃうんです。ですから、今言ったように、「いぶき」で見ますよという話の中では、世界各国の気圧変動に伴う雲の流れ、空気の流れ等々にはちょっと適用できないんです。そういうふうにおっしゃっていただいた。

 気象庁がほんだらはんだと言いますけれども、僕が言いたいのは、てっぺんから見るものも必要ですけれども、やはり地面の部分で、湿度とか海温とか、それからさっき言いました気圧の部分、そして雨量、積雪量、そういうところをきちっと調べることに対して国際連携を更にしていくべきじゃないかなという御要請なんですが、その辺はいかがでございますか。

中川国務大臣 現在でも環境省といろいろな形で協定が結ばれておりますし、国立環境研究所は、例えばウーロンゴン大学とかフィンランドの環境研究所などとも連携を結んでおります。JAXAもいろいろな形でまたいろいろな機関と連携をしております。

 環境省自身も、IPCCともいろいろな形で情報をいただいておりまして、そういったさまざまな関係省庁、機関と連携をしながら、今先生御指摘のいろいろな情報をこれからも収集して、適切に気候モデルの精度向上に対応していきたいというふうに考えております。

下条委員 現状では、大臣、精いっぱいのお答え、ありがとうございます。

 僕に言わせてもらうと、やはり、国連にあれだけお金を出しているわけですね、大臣も一番かかわっていた部署にいらっしゃいましたから。ですから、やはり国連の機関のWMOを含めた部分、そして、我々がいろんな意味で、今僕が一番政治で必要なのは、物に見える部分は必要です、これは対症療法としてですね。ただ、根治療法というか、長い時間かかってがん細胞ができてくるかもしれない、それが非常に大きな、さっき他の委員がおっしゃったように、水位だけで二十兆のマイナスになるぐらい、非常に長く見たときに影響してくるのが、この政治の、また特にこの法案、若しくは環境省様の責任だと僕は思っていますので、これ以上細かくこの部分については詰めるつもりはないですけれども、ともかく連携していただくということが必要。

 そして、データの精度を上げるということは、結局日本国の国益になり、それが近隣の方に広がっていくので、先ほどの協定もありますけれども、後でそのことについて別件でちょっとお話ししますけれども、その辺を少し詰めていただければなという御要請をしておきたいというふうに思います。

 次に、自然の災害とか農業、生態系への影響とか、気候変動の予測の精度を上げることは、さっき言った分母の部分もそうなんですけれども、必要になってくる。これをまた影響についてわかりやすく整理して適応策に生かしていくということが必要になってきますね。それは、私もあれを見ましたけれども、幾つかに分かれてコンピューターにぶっ込んでいく、それで出してくるというあれはありますけれども、この辺、今後精度を上げていくということについてどういうふうに今御対応しているか、お答えいただきたいというふうに思います。

森下政府参考人 影響予測の精度の向上でございますけれども、御指摘のありましたように、気候変動は、農業、自然災害、生物多様性など、さまざまな分野に影響を及ぼします。これらの影響に対処していくには、環境分野だけではなく、気象、農業、防災など、さまざまな分野の科学的知見を集約する必要がありまして、その予測に当たりましては、関係機関と連携をし、あらゆる分野の影響予測を可能な限り統一的な条件のもとで実施をしていくということが大変重要だと考えております。

 この法案におきましては、国が気候変動及び多様な分野における気候変動影響の調査研究や、適応に関する技術開発を推進するよう努める旨の規定を盛り込むと同時に、国立環境研究所と各省庁の研究機関及び地方の研究機関が、気候変動影響に関する情報を共有しまして、連携をしていく旨の規定も盛り込んでおるというところでございます。

 国立環境研究所を中核とした国や地方の研究機関との連携協力体制を構築しまして、気候変動と多様な分野の統合的な調査研究を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

下条委員 技術は持っているし、慎重に進めてきて今度の法案ができたことについて非常に敬意を表したいというふうに思いますし、私もこれはすばらしい法案だと思っていますよ。ですから、更にそれを進めていく、さっき言った分母の話もそうですけれども。

 そこで、情報プラットフォームというのを確認したら、大臣はおやりになったとは思うんですけれども、データセットが二種類あって、気候モデルが四種類あって、排出シナリオが三種類とかいって、それをクリックしてとんたかとんたか入れていくんですね。三十年後とか八十年後の予測モデルを確認しなきゃいけないということなんです。

 私は地方の人間ですので、地方の自治体には、簡単に言えば、財政面でもそれから専門家の部分についてもほとんどいらっしゃらないというふうに思っています。そういう意味で、これだけインプットするに当たって非常に手間がかかる、また、どれをどういうふうにしていくかというのは、非常にこれから、インプット一つ違いで違った方向に行っちゃいます。ですから、この辺を、さっきから出ている環境研究所とか、それから環境省において、地方自治体におろしていく上でサポートが僕は必要じゃないかななんて思っています。

 というのは、やはり、地方は今、財政、これだけ少子化で税金を落とす人がいない。国から交付金等は入るけれども、実際に、まさに目の前の、例えば災害、それも重要、骨折したと同じですからね。ただ、長い目で見たときに、それはさっき言った農業の問題もあるし、それから水害の問題も出てくるし、健康被害にもそれは物すごく大きな影響がある。それのもとになる部分のサポートをどうしていくかということを御質問させていただきたいというふうに思います。

森下政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問にありました、さまざまな例えばシナリオですとかモデルというものは、この気候変動適応情報プラットフォームに構築をしているものでございます。御紹介していただきまして、本当にありがとうございます。これは、平成二十八年から、適応の情報基盤として整備をしてきておりまして、情報をそこから発信をしているというものでございます。

 気候変動の将来予測の結果は、将来の温室効果ガスの排出量の見通しの違い、シナリオの違いや、気候予測モデルの特徴によってまた異なってくるということでございますので、通常、幅を持って示されるということになります。

 このため、気候変動適応情報プラットフォームでは、複数の温室効果ガスの排出シナリオや気候モデルを選択しまして、将来の予測情報を地図で示すことができるようにしているということでございます。

 御指摘にございましたように、サポートが必要だと考えております。この法案では、適応の情報基盤の中核を担います国立環境研究所が、将来の気候変動影響に関する情報の提供等を通じまして地方公共団体の技術的サポートを行うということを位置づけてございます。また、環境省におきましても、マニュアルの策定等を通じまして地方公共団体の適応計画の策定を支援してまいりたいというふうに考えております。

 その際、将来の気候変動影響に関する情報が持つ意味についても、丁寧に説明をしていく必要があるというふうに考えてございます。

下条委員 局長、ありがとうございます。

 地方公共団体へのサポートということでありますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 そこで、私の地元、長野県というのは、細かく言うと十九市二十三町三十五村、七十七市町村があります。そこで、適応計画作成に当たって、長野県とか環境保全研究所とか、それから信州大学とか、こういうことはセットでやっていますけれども、県の方はともかくとしまして、環境保全研究所、信州大学というのは、研究活動を中心にしている機関であって、簡単に言えば行政事務を行う機関ではないわけですよね。行政事務を行う機関ではないけれども研究している。簡単に言えば、非常に負担になっているということだと思います、例えばの話。今、局長がおっしゃったのは、地方公共機関についてはサポートをすると、大臣。

 やはり、私は、そこの地区によって、それは大学があったり、いろいろな専門のがあったり、保全何とか環境とかいろいろあるとは思うんですけれども、やはり、一般の大学、研究している研究機関に対しても、公共団体ではないにしてもサポートをしていって、それが結果的には大学生を地域に残すことにもなりますし、それがまたその地域での経済発展にもつながってくると思うんですが、やはり、行政だけやればいいということでは僕はないと思うんですね、私大ももちろんありますし。

 ですから、そういうことに対するサポートはこれから更に必要になってくるんじゃないかと思うんですが、大臣の所感をちょっとお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のとおり、地域の気候変動適応計画を策定するためには、地域の気候変動に関する科学的な知見の充実が重要でございます。

 この法案では、一つは地域気候変動適応センターという仕組みを考えておりますし、もう一つは広域協議会という規定を設けております。

 まず、この法案では、地方公共団体は、気候変動影響に関する情報の収集、分析、提供等を行う拠点として、地域気候変動適応センターを確保するよう努めること、そして、国立環境研究所が同センターの技術的支援を行うことを規定しております。

 国の出先機関、それから地方公共団体、地域気候変動適応センター等の地域の関係者が連携をして適応策を推進するため、本法案では広域協議会に関する規定を設けております。

 いずれにしても、こういった枠組みのもとで、国立環境研究所による気候変動に関する技術的な情報の提供や、広域協議会のもとでの関係者連携による気候変動影響に関する調査の充実等によりまして、地方公共団体等の取組をサポートしてまいりたいと考えております。

下条委員 大臣、ありがとうございます。

 適応センター、ぜひ進めていただき、当然ですけれども、先ほど申し上げましたけれども、気象庁とか文科省にも影響してきますので、ぜひ内閣の中を含めて国家的なプロジェクトとして進めていただいて、それによって地域にその認識が高まって、それでまた大臣含めた環境省様のリーダーシップによって未然に防いでいく、情報をキャッチするということが必要ではないかなというふうに思いますので、ぜひ連携をとっていただいて進めていただければというふうに思います。

 次に、私も民間にずっといたので、どっちかというと、ばっと法案を投げた後の問題は、実を言うとそのフォローアップなんですね。税金を使ってやっていく仕事でございますし、やはりフォローアップというのは一番必要じゃないかというふうに思います。

 ちょっと他議員と重なることはあるかもしれませんけれども、計画の検証とかフォローアップというのは一体どんな感じになっているのかなという感じがしています。

 というのは、一定の地区であれば、余り環境についての変更がない地域もありますし、海沿いはもうともかくすごいですよね。それから、積雪が多いところ、雨量が多いところ、台風が多い南のところとか、それはフォローアップというのは当然、計画に対して指導していかなきゃいけないし、同時に、情報をもっと頻繁に、さっき言った、ダウンスケーリングは北海道から沖縄まで全部同じではないわけですから、そういうフォローアップの部分と検証を一体どういうふうに今計画なさって、これはこれからの法案なので、それをまたどういうふうに落としていくかを具体的にちょっと、今の手元の資料で結構でございますので、お聞きしたいというふうに思います。

森下政府参考人 取組のフォローアップについての御質問でございます。

 この法案の中では、最新の科学的知見を踏まえまして、おおむね五年ごとに気候変動影響の評価を行い、その結果を踏まえて気候変動適応計画を改善していく仕組みを規定してございます。

 これに加えまして、気候変動適応計画に基づく施策の実施状況につきましては、関係省庁と連携をしつつ、定期的にフォローアップを行っていくこととしております。その結果も踏まえながら、気候変動適応計画を見直してまいりたいというふうに考えてございます。

 また、自治体の皆様方、あるいはさまざまな大学あるいは関係の機関の皆様方とは、現在、地域コンソーシアム事業というものに御参画をいただきまして、これは国交省さん、農水省さんと一緒に展開をしている事業でございますけれども、情報の共有と、それから更新、そして横展開というようなことも含めて、常に情報が更新をされるような、そういった仕組みも現場で構築をしているということでございます。

 常に状況の変化に柔軟に対応していけるように取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

下条委員 局長、ありがとうございます。

 ぜひ大臣、リーダーシップをとっていただいて、私が言いましたように、地区によって随分違うんですよ。

 だから、今、おおむね五年という言い方は非常に、五年後、局長、同じ部署にいないと思いますけれども、我々もそうかもしれませんし、ですから、地区によって、やはりここは重点にしろという地区とか、それをやはり指示していただく必要が、僕は、内閣の皆さんに必要があるんじゃないかというふうに思います。

 ですから、特に今まで、この五年間、過去を見たときに、非常に環境の変化が大きく、また災害が多い、積雪を含めて、東京なんかも雪が降ったりして、どこも全部なっているとは思いますけれども、その強弱をつけなければ、予算というのは湯水のようにない。ですから、そこはリーダーシップをとっていただいて、ここの部分は特に重点的にやれや、この間、委員会で出ただろうということをぜひ大臣、お約束していただけませんか。

中川国務大臣 御指摘のとおり、地域によって、また自治体によって、先進的な取組を進めているところと、まだ十分にそういったレベルに達していないところとございますし、また科学的な知見についても不十分なところもございます。

 しかし一方で、適応計画の重要性の非常に高い地域がございまして、やはり重点的にそういった地域に対して支援をしていく、効率よくいろいろな形の支援を配分していくことが重要だと考えておりまして、そのような方向で進めてまいりたいと思っております。

下条委員 大臣、ありがとうございます。

 百という予算の枠があったら、全部それを均等ではなくて、やはり、被害が多かったり、偏向がきわまる水域、太平洋にしても日本海にしても、北にしても南にしても、そういう地域にやはり重点的に絞っていただくリーダーシップをお約束していただきまして、私もこれは賛成の法案なので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 時間があと、まだちょっと残っておりますが、そこで、そもそも論にちょっと入りたいというふうに思っています。

 私も、この環境の部分というのは本当に、目に見えなくて、目に見えたころはもう遅い。大水害がある、大災害がある、崖崩れがある、そして、海流が変わってお魚ちゃんととれない、また違うところの魚が来たり、本当に、気づいたときには物すごく大きな病魔になっているというのがこの災害若しくは環境の根にある部分だというふうに思っています。

 それだけに、データの確実性をさっきからお話しさせていただいて、上げていくにはその分母をまずきちっとしろというところですけれども、それ以外に、ダウンスケーリングを含めた、そして、今ある範囲内の中での重点地区を置いていっていただくというお話をいただきましたけれども、一方で、地方で対策をそれぞれやっていく中で、これだけ、言いにくいですよ、これは、言いにくいんだけれども、確実なデータってないじゃないですか。ある意味で、悪く言うと、不確実なデータの中でこれだけ進めていくというのは、これは、例えば、私が地元に帰ったときに、今度こういうのを環境省がやったけれどもといって、みんなぴんとこないと思うんですよね。

 そこで、では、この行政レベルのコスト、一体こんなのに使ってどうだというときに、これは大臣がリーダーシップをとってこの法案をやっている以上、例えば、大臣は東京ですからあれですけれども、それ以外の方は地方が多いわけですよ。そのときに、大臣としてこれをとるに当たって、行政レベルのコストを例えば御説明するに当たって、どういう方向感でおっしゃっていただけるかなというふうに思っています。それを私、持ち帰って、今晩はまた地元におりますので、それをお話ししたいと思いますが、いかがでございますか。行政コストについてです。

中川国務大臣 環境問題はかなりそういった面を持っていると思います。過去に大きな問題になりました公害問題につきましても、まだ不確実なうちに、これはまだ不確実性が高いということで、対策を先送りすることによってその後の被害が拡大をして、そのときに対策をとる、あるいは補償をしていくということになりますと、大変大きなコストがかかりますし、人命にも大きく影響をする。こういった経験を環境省は、あるいは日本の国民が経験をしていることだと思います。

 この気候変動の問題もそういった面が非常に大きくて、いろいろなデータ、科学的な知見といいましても、一定の不確実性が伴うことは事実だと思いますが、この不確実性を理由として対策を先延ばしするということは適当ではないというふうに考えております。

 一方で、こういった、十分にきちっとしたデータがなくて、不確実性が伴うデータ、知見によって適応策をとっていくということについては、そのコストを負担していただくのは究極的にはもちろん国民の皆様でございますので、国民の皆様にそういうことを十分に御理解をいただくことが重要であるというように考えております。

 この法案におきましては、国が適応の重要性に関する国民の関心と理解を深めるための措置を講ずる旨の規定を盛り込んでおりまして、もちろん、そういった対策にはコストがかかり、最終的には国民の御負担になることでございますけれども、今ここで対策をとっておくということが重要だ、これは緩和策についても適応策についても言えることでございまして、そういったことをしっかりと普及啓発をしながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。

下条委員 大臣、ありがとうございます。

 その辺の部分というのは、例えば、橋が壊れたとか、信号をつけろとか、とまれの表示器をつけろと同じだと僕は思っています。ただ、国民の皆さんの理解というのはやはり必要だと僕は思うんですね。知らないうちにやっちゃえじゃなくて。

 ですから、今おっしゃったように、プロパガンダの部分も随分必要になってくるんじゃないですか、宣伝部分ですね。ですから、リーダーシップをとっていただいて、何度も言いますけれども、文科省もそうですし、国土交通省も気象庁もそうですけれども、環境省は特にやはり中心になっていただいて、これは歴史に残る、史上に残るぐらい重要な話だと僕は思っていますので、ぜひリーダーシップをとっていただいて、その部分を広げていって、そのために税金を使っているんだぞということを明確に、各市町村からそれぞれの市町村民の方におりていくように、指示、指導していただければというふうに思っております。

 そこで、私は、先ほどおっしゃっていただいたデータの部分もあるんですけれども、例えば、海外でいくと、気候変動法というのは英国では二〇〇八年にできていて、フランスではグルネル法というのが二〇〇九年で、ことし、我々はこういうふうに、行政の方の御努力があって、また、いろいろなものを仕入れて、これで適応法案ができるわけなんですけれども。韓国では低炭素・グリーン成長基本法が今から八年前にできているとか。

 そんな中で、私は、国際機関との人的交流というのが非常に重要だと思っているんですね。友達であるかによって、更に知識やそれからレッスンを受けられたり、そしてまた新しい情報が入ってくるということもありますし、イギリスとかドイツを含めて、どんどん進んでいるところがこの件に関しては僕はあると思うんです、法案ではですよ。技術的なのは、さっきの「いぶき」を含めて、日本は非常に持っているんですよ。

 だから、ちょっと残念だなと思いながら、進んでいる部分の国々との交流をもってして、そこからとれるものはとるし、それをまた近場の発展途上国に分けていってあげる、これがやはり政治の一番重要な部分じゃないかというふうに思うんです。

 そして、人事交流というのは、私は、非常に重要で、この日本は、昔は、こんな飛行機がぽんぽん飛んでいったりロケットがなかった時代には余りなかったので、非常にDNA的には、出るくいは打たれるとかそういうのが多くて、交流というのはそもそも、最近非常にみんな主張できるようになってきたのは、若い人を中心に、やはり交流があるからだと思います。

 そういう意味では、ここの部分の交流というのは、僕は非常にコストがセービングできた上で重要だと思うんですが、例えば、WMOにしろ、フランス、イギリスにしろ、これをもっともっと深めていって、向こうから技術者を呼ぶ、こっちからも行くというのを考えてはどうかなと思っていますが、大臣の所見はいかがでございますか。

中川国務大臣 環境省も、職員をいろいろな国際機関や諸外国の日本大使館に、人事交流という形で出向させております。また、国立環境研究所も、先ほど申し上げましたが、いろいろな外国の国際機関と連携をし、協定を結んで、研究者同士の交流というものもかなり活発に行われているところでございます。

 ただ、気候変動という問題に特化して、あるいは、それの、今問題になっております科学的なデータをどう集積していくか、そういった点についての交流ということについては十分ではないという御指摘もございます。

 人事交流、人材をどういうふうに確保していくのか。予算面の問題もございますし、これからは、やはりそういった諸外国の研究者や専門家との交流、いろいろな方から情報を得て、そして国内にそれを蓄積していく、それをまた全世界にお返しをしていく、そういった取組が必要だというふうに考えておりまして、御指摘の点を踏まえて対応を進めていきたいと思っております。

下条委員 大臣は正直ですね。普通は、交流するだけでというので終わっちゃうんですけれども、特化しては少ないとおっしゃっていただいて、私は、今までの質疑を含めて、大臣の言っていることは信じておりますので、ファンの一人でございますので、ぜひ進めていただきたい。要するに、交流の人数という問題を僕は言おうかなと思ったんですが、そうじゃない。特化している人は少ないとおっしゃって、それで終わっちゃったんです、僕の質問は。

 だから、それだけに、やはり、それが実を言うと分母に近づくんですよ、さっき言ったデータの。遠いところから、またそれは、例えばフランスにしろ、ドイツにしろ、イギリスにしろ、そこが支援しているところからのデータをとれるんです、日本が。だから、交流というのは、非常にこの特化した部分は僕は重要な部分だなと思ったところで、特化しては少ないとおっしゃっていただいたので、僕はそれ以上申し上げませんので、ぜひ、特化した人の交流を含めて、ついでにという言い方はあれですけれども、この日本国のためにデータをとってきていただくような交流を進めていただければというふうにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 だんだん時間がなくなってまいりました。

 それでは、今は海外との交流部門の話なんですが、実を言うと、私も短時間の間にある程度ちょっと調べたら、気象学を専門に研究する研究者というのは非常に少ない。気象庁関係ですね。と同時に、気候変動の専門家というのは絶対的に数少ないんですよ。

 つまり、私が言いたいのは、気候のデータをプロジェクトにしている人たちは、実を言うと専門家ではないんです。科学者ではない。工学者なんですよ。つまり、データの集積によって、それをグラフに移して落としていく人が、実を言うと、これは予想専門家になっちゃっているんですね。ところが、気候の専門家というのは非常に足らなくて、私も、実を言うと、レクをいろいろ御省から受けていて、本当にみんな頑張っていて、飯も食わずに、大臣を支えようと思って頑張っています。私は敬意を表したいというふうに思います。

 要は、地方大学とか都道府県でも、計画サポートをするに当たって、やはり気候の専門家が必要だと僕は思っているんですよ。つまり、取りまとめてそれを科学的にぶち込むコンピューターの方じゃないんです。

 気候の専門家の育成について、最後にちょっと大臣の見解をお聞きしたいと思うんです。これは、実を言うと、プロジェクトでは、ここに紙があるんですけれども、気象庁や文科省といろいろあるんです。

松島委員長 質疑時間が終了しましたから、簡潔に。

下条委員 はい。ちょっと、一番いいところだったんですけれどもね。済みません。

 では、最後に大臣に、この部分の育成が一番国内では重要なんです。それが、省庁の中で支える方が今、五人だか十人だか知りませんが、たくさんいらっしゃらない中で汗をかいていて、非常に重要なポイントなんですが、最後に大臣の御見解をお聞きしたいというふうに思います。

松島委員長 大臣、簡潔に。

中川国務大臣 やはり、気候変動に関する専門家の人材育成ということになりますと、国立環境研究所が中心になって、国や地方のさまざまな研究機関や大学と連携をしながら、情報の収集、分析、提供等を行う、そういう活動の中で、いろいろな機関と共同研究を推進して、専門家の人材育成に貢献できるものと考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 時間が来ました。

 それが結果として、さっき言った交流と地方のサポートにもつながりますので、ぜひリーダーシップをとっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

松島委員長 次に、江田康幸さん。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、引き続き、気候変動適応法案について、私の方からも質問をさせていただきます。

 気候変動については、これまでもございましたけれども、やはり、国民の生活、社会、経済、自然環境に大きな影響を及ぼす重要な問題でございますが、地球温暖化の進行によって日本の平均気温は上昇し続けている。熱中症の増加や、米また果物の品質悪化や、そしてサンゴ礁の劣化など、さまざまな影響があらわれているところだと思います。

 また、気象庁のデータからは、豪雨の回数が年々ふえている。昨年夏には九州北部豪雨災害がございました。私の地元でございますけれども、一時間に百ミリ、十二時間に九百ミリを超える猛烈な雨が観測されたわけでございます。

 このように、地球温暖化が進行することによって、各地で災害が激甚化していくということが強く懸念されているところでございますが、このため、我が国においては、この気候変動の影響を回避、軽減する適応策の強化は待ったなしというところと思っております。

 そこで質問に入らせていただきます。

 まずは、最初に中川大臣に御質問をさせていただきますが、昨年七月、我が党は、気候変動の影響に対する適応の取組を強化するための法整備を検討するように環境大臣に強く要請をしたところでございます。その要請に応えていただいて、今般、政府がこの気候変動適応法案を国会に提出されたことを高く評価いたします。

 まずは、この法案の意義と、これにより適応策をどう強化していくのか、環境大臣の見解を伺います。

中川国務大臣 気候変動対策のうち、温室効果ガスの排出削減対策につきましては、地球温暖化対策推進法に基づき取り組んでおりますが、適応策につきましては、これまで法的な位置づけがございませんでした。

 こうした中で、本法案により我が国における適応策を法的に明確に位置づけることによって、国のみならず、地方公共団体、事業者、国民と連携協力して適応策を強力に推進することが可能となります。

 また、本法案により、国立環境研究所を中核とした情報基盤を整備することによって、精度の高い気候変動影響の予測情報に基づく実効性の高い適応策を展開することが可能となります。

 このように、関係者が一丸となって実効性の高い適応策を推進する仕組みを構築することが今回の法制化の意義であり、本法案のもとで適応策の充実強化を図ってまいりたいと考えております。

江田(康)委員 大臣、ありがとうございました。

 それでは、気候変動適応計画についても質問をさせていただきます。

 この法案では、政府が策定する気候変動適応計画が我が国の適応策のグランドデザインを描く重要な位置づけを持っているわけでございます。

 政府は、この法案が提出される二年以上前に、気候変動の影響への適応計画、これを閣議決定してまいりました。法律に基づく計画ではありませんでしたけれども、この計画によって、政府による適応策が一定程度進展してきたものと理解をしております。

 今後、政府においては、この法案に基づいて策定する気候変動適応計画によって、更に適応策を強力に推進していくものと期待しておりますが、この法案に基づく気候変動適応計画の内容については、平成二十七年に閣議決定した計画と比べてどう変わるのか、また、これにより実効性がどう高まるのか、これを明確に示していただきたいと思います。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 平成二十七年に閣議決定いたしました現行の適応計画、これは法的な根拠に基づくものではございませんで、主として関係省庁の取組をまとめた計画となっておりました。今回は、新たに策定する適応計画におきましては、現行の計画の内容を大幅に見直していくということとしております。

 新たに策定する適応計画は、本法案に基づきまして、政府の取組に加えまして、今回は、地方公共団体、そして事業者、国民等の幅広い主体の連携と協力による取組を盛り込ませていただいております。

 また、各省庁との連携体制の構築、精度の高い気候変動の予測情報を提供する、国立環境研究所を中核とした情報基盤の整備、あと、広域協議会を通じた国と地方公共団体の連携による取組など、現行の適応計画にはない関係者の連携による具体的な取組、これを積極的に推進しようということで記載をさせていただいております。

 このように、現行の適応計画を大幅に見直しまして、国、地方公共団体、事業者、国民、全ての主体が一丸となって我が事のようにそれぞれが適応策を展開していただきたい、その実効性を高めていきたいというふうに考えております。

江田(康)委員 関係省庁の連携強化についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 政府全体で適応策を推進するに当たって、今おっしゃいましたように、関係省庁はかなりあるわけでございますけれども、その中で、環境の保全に責任を持つ環境省が極めて大きい役割を持つのは当然でございまして、大変に大きく期待をしております。しかし、一方では、この適応策は、防災、農林水産業の振興や感染症予防対策などなど、国交省、農水省、そして厚生労働省などの関係省庁が所管する多くの行政分野がかかわっているわけであります。

 そこで、この法案において、関係省庁との連携を強力に推進するということになっているかと思いますけれども、どのように強化することとしているのか、見解を改めて伺います。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 委員おっしゃいますように、気候変動の影響は多岐にわたっておりまして、自然災害や農業や生物多様性など、本当に大きな、さまざまな分野に及ぶものでございます。適応策を推進するに当たっては、各省庁との連携が不可欠であります。

 このため、本法案に基づきまして、例えば、適応計画の案の策定に当たりましては関係省庁との連携を協議すること、あと、広域協議会の構成員として国の出先機関同士で地域の実情に応じた協力を進めるなど、幅広い関係者の連携協力を推進するための規定を随所に盛り込んでおります。要するに、連携をなるべく強めていこうということであります。

 また、本法案は、適応の情報基盤の中核となる国立環境研究所が、国や地方の研究機関と連携していく旨の規定を盛り込んでおります。

 こういった規定をてこに、国と地方レベルで関係機能の連携強化、これを深めていく、未知への挑戦にもなるわけでありますので、しっかりと連携を強めていって力を出していこう、こういうふうに考えております。

江田(康)委員 とかしき副大臣、ありがとうございました。

 関係省庁の連携強化はこの法案のキーポイントとなるところだと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、気候変動影響評価の内容、早期実施について伺います。

 簡潔にお答えしていただきたいんですが、科学的知見に基づいて適応策を実施していくには、現在並びに将来の気候変動影響について科学的に評価を行っていくことが求められているわけであります。先ほどからの議論もそうでございますけれども、この法案では、環境大臣がおおむね五年ごとに気候変動影響評価を行って、その結果を踏まえて気候変動適応計画を実施していくことになっているかと思います。

 そこで、この法案に基づく気候変動影響評価をいつまでに行っていくことと想定をしておられるのか、またその内容はどのようなものなのか、局長にお伺いをしたいと思います。

森下政府参考人 気候変動評価でございますけれども、これにつきましては、膨大な科学文献やあるいは調査研究の成果物を幅広く収集をしていく必要がありますので、一定の期間を要しますけれども、今後速やかに中央環境審議会に諮問をいたしまして、審議を重ねた上で、平成三十二年を目途に評価結果を取りまとめたいというふうに考えてございます。

 評価の具体的な進め方につきましては、今後、中央環境審議会の意見を聞いて定めていくということになりますけれども、平成二十七年に評価を行った際には、農業、自然災害、生態系等の分野別に、重大性、緊急性、確信度という観点から現在及び将来の気候変動影響の評価を行っております。

 そういった評価の進め方も参考にしつつ、新たな科学的知見も踏まえて、気候変動評価を的確に行ってまいりたいと考えております。

江田(康)委員 わかりました。

 平成三十二年をめどに、気候変動影響評価の報告書を作成していかれるということでございますので、最初の計画は今までの科学的知見をもとにやられると思うんですけれども、気候変動影響評価というのは大変科学的であり、重要でありますので、これに基づいた正確な最新の情報に切りかえていっていただきたい、そのように思います。

 次に、適応の情報基盤について質問をさせていただきます。

 国立環境研究所とほかの研究機関の連携強化についてなんですが、国、地方公共団体、事業者が適応策を進めていくには、気候変動によって、いつから、どこで、どのような影響が出てくるのか、科学的な情報が欠かせないわけであります。このため、科学的な情報基盤の中核となる国環研、国立環境研究所の役割は今後ますます大きくなっていくものと思います。

 そのためには、国立環境研究所としての体制の強化を図ることはもちろんでありますが、関係する独立行政法人や、地域の大学、研究所との連携の推進が不可欠と考えます。そこで、国立環境研究所は、国や地方の関係研究機関とどのように連携を強化していくのか、適応の情報基盤を充実させていくのか、見解を伺います。

森下政府参考人 御指摘のように、科学的知見は非常に重要でございます。そして、気候変動につきましては、特に、農業、自然災害、生物多様性など、さまざまな分野にまたがってくるということでございますので、さまざまな関係する研究機関との連携協力ということが非常に重要になってくるというふうに考えております。

 このため、この法案におきましては、適応の情報基盤の中核となる国立環境研究所が、国土交通省、農林水産省を始めとする関係省庁所管の研究機関との連携に努める旨の規定を盛り込んでございます。

 また、地方の研究機関と国立環境研究所とが気候変動影響に関する情報を共有しまして、連携していく旨の規定も盛り込んでございます。

 これらの規定のもとで、国立環境研究所が中核となり、国と地方の研究機関との連携協力体制の構築を図っていくということで、適応の情報基盤を充実させてまいりたいというふうに考えてございます。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 それでは、今度は、地域における適応の推進について質問をさせていただきます。主には、その地域の適応で頑張っていただいている笹川政務官にお話を伺っていきたいと思います。

 まず、日本列島は北から南へと長いわけでありまして、気候は各地で大きく異なる。都市の構造、主力とする産業もさまざまでありまして、どのような気候変動影響に優先的に対応すべきかも地域によって異なるわけであります。このため、地域の状況に応じて適応策を推進していくには、地方公共団体が重要な役割を担っておりまして、地域気候変動適応計画の策定が重要と理解しております。

 そこで、適応策を実施していく上では、防災や、農林水産業の振興に関する施策との連携が不可欠であることを考えると、基礎自治体である市町村の役割も欠かせません。一方で、市町村は、さまざまなニーズに対応することが求められておりますから、マンパワーは限られている。そういうことであると、適応策の重要性は理解しながらも、専門的な見地を持って適応策を実施していくことは難しいと考えています。やはり、高い行政能力を持つ都道府県が、地域気候変動適応計画の策定も含めて、区域内の市町村をきめ細かくサポートしていくことが重要になってくるのではないかと考えます。

 そこで、地域での適応の推進に当たって、地域気候変動適応計画の内容はどのようなものを想定されているのか、また、都道府県にどんな役割を期待しているのか、見解をお伺いします。

笹川大臣政務官 委員御指摘のとおりでありまして、市町村もさまざまな、規模の大小もありますし、同時にまた、行政能力、そして今御指摘のとおり、マンパワーもさまざまでございます。

 その中にあって、今回、地域気候変動適応計画策定に努めていただくということでありますので、それぞれどういう形でお手伝いができるのか、そしてまた、今御指摘のとおり、都道府県、この行政能力を生かした形の中で、市町村、これをサポートしていただける、していただきたい、この役割というのは大変大きなものがあろうかというふうに思っております。

 この計画においては、それぞれの分野、特に、農業ももちろんでありますし、そしてまた地域の社会資本の整備ももちろんでありますし、そういう意味においての、それぞれ地域の実情に応じた形の中の具体的な適応策を記載していきたい、してもらいたいという想定であります。

 もう一度申し上げますが、その中におけるマンパワー、行政規模の大小を含めた中で、やはり都道府県、この役割が大きいものがありますので、地域におけるこの適応策を牽引していただく。それからまた、知見の整理や、そして共通する適応策の実施等により、市町村の計画策定にも、また実施についてもぜひサポートしていただきたい。もちろん環境省としても、都道府県とともに市町村をサポートしていきたいということでございます。

江田(康)委員 今も言及されましたけれども、その地方自治体への支援について改めて言及したいわけです。

 先ほどもございましたけれども、都道府県の適応策の取組はまだ始まったばかりだと思うんですね。既に四十一の都道府県では適応策が行政計画に位置づけられているとしても、その多くは、具体的な取組、政策が書かれているわけではなくて、適応策の重要性を記載しているにとどまっているものとなっていると思われます。

 加えて、市町村の取組はというと、スタートすらしていないところもあるのではないかということでありまして、現時点においては、国による適切な支援がなくては、地方公共団体が地域計画を策定して、そして実効性のある適応策を進めていくことは極めて困難な状況にあると私は考えますが、そのような中で、この法案では国の援助の規定が設けられたわけでありますから、国として、地方公共団体による適応策を推進するために必要な援助を行うとされているわけであります。

 そこで、この地方公共団体の適応策を推進していくためにどのような支援を具体的に行っていこうとしているのか、その見解をお伺いします。

笹川大臣政務官 まさに委員御指摘のとおり、それぞれの市町村の取組については、先ほど来、先進的な取組の優良事例もございましたが、濃淡があることは事実であります。

 また、環境省はこれまで、農水省、国交省とともに連携をしながら、地域における気候変動影響の将来予測に関する調査や科学的知見に基づく適応策の検討を進めるなど、地方公共団体の取組も支援をしてまいりましたが、本法案につきましては、引き続きこの支援を行っていくとともに、計画策定マニュアルの作成、提供、本法案の規定に基づく国立環境研究所等による技術的なサポート、さらには、設立した広域協議会を通じた地域の関係者の取組共有を推進してまいりたいと思っております。

 特にまた、環境省としては、積極的にそれぞれの地域、市町村に足を運びまして、本法案の趣旨等を説明会を開催することによって御理解をいただいて、また御理解を深めていく、そのことをしっかりと努めてまいりたいと思っておりますし、地方公共団体の地域の実情に応じた適応策が推進できるように、計画の策定の段階からしっかりと支援をしてまいりたいというふうに思っております。

江田(康)委員 どうぞよろしくお願いをいたします。

 今ありましたように、このサポートの一つとして広域協議会というのがあるわけでありますけれども、その役割、活動内容についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 地域において適応策を進めていく上では、やはりこの広域協議会が重要な役割を持っております。私の地元の九州地域では、ほかの地域に先駆けまして、全県、政令市、地方農政局や整備局など国の出先機関や専門家が参加する協議会が設置され、行政機関同士の情報共有や連携の促進がなされてまいりました。

 その結果として、九州地域においては適応策に対する理解が非常に深まっております。例えば、米の品種改良も相当早い時期からこれはやってきておるわけでありますし、また、マンゴーとかアボカドの栽培のように、新しい気候に対応した農業の振興などの取組が既に始められております。

 この法案における広域協議会の規定というのは、九州地域での先進的な取組が一つのモデルになったものと理解しておりまして、ほかの地域においても、九州地域と同様に、地域の関係者連携による取組を強化していくことが重要と考えます。

 そこで、地域において適応策を推進していくために、広域協議会にどのような役割を期待しているのか、また、今後どのような活動を行っていく予定なのか、その見解もお伺いします。

笹川大臣政務官 委員の御指摘も、本当に、まさにもっともだなと。私のところも、今まさにお話、堀越委員の質問のときもお答えをさせていただきましたが、利根川を挟んで隣の埼玉・熊谷なんかともまさに同じ状況でありますので、そういう意味では、本当に、広域の取組の重要性というのは私も認識をいたしているところであります。

 その観点からも、九州・沖縄地域での取組につきまして、今委員からも御指摘ございました、本当にすばらしい取組だというふうに思っておりまして、九州・沖縄地域の先進的な事例がまさにモデルということとして、国の地方出先機関や地方公共団体等の関係者から構成される地域協議会をまさに全国六つのブロックに設置をして、それぞれの優良な事例の共有や地域における気候変動影響の将来予測に関する調査等を実施していきたい、また、してきたところでもあります。

 本法案におきましては、地域における関係者の連携というのは更に強化をしていかなければなりませんので、広域協議会に関する規定をそこで盛り込んだというところであります。地域レベルの連携協力を推進するための場として、この広域協議会の役割は本当に大きなものがあるというふうに思っておりますし、また、その役割が大きく期待をされているというふうに思っております。

 今後は、既に設置されている全国六つのブロックの地域協議会を土台として、本法案に基づく広域協議会に発展をさせて、地方環境事務所が旗振り役となって、地域の幅広い関係者の連携協力のもと、将来予測に関する調査や情報の共有、優良事例に関する意見交換を行いながら、地域レベルでの適応策の充実強化を支援してまいりたいというふうに思っております。

江田(康)委員 ぜひとも、地域レベルの支援策を強化していくためにも、広域協議会をしっかりとしたものに進めていただきたいと思います。

 それでは、大臣にお伺いをさせていただきたいと思うんですが、国際協力の強化についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 我が国においても気候変動の影響は顕在化してきたわけでありますが、気候変動に対して脆弱な途上国においては、以前から気候変動の脅威にさらされ続けてきたわけであります。毎年のように発生する大規模な台風やハリケーンというのは、途上国において、多数の死者や負傷者をもたらしている。また、海面上昇は、ツバルやモルディブなどの太平洋の島嶼国において、居住地の喪失といった深刻な問題を引き起こしているわけでございます。

 このように、途上国は、気候変動への適応に対して強いニーズを持っている。この法案に基づく我が国の取組や経験に加えて、我が国が有する気候変動の将来予測に関する科学的な知見、そして、気象情報を活用した営農支援技術、早期警戒システムや防災インフラ技術などは、途上国の適応策を推進していくために有効に活用できるものと考えます。

 そこで、我が国のノウハウや技術を活用して国際協力を推進することで途上国の適応策の強化に貢献していくべきと強く考えますが、大臣の見解をお伺いします。

中川国務大臣 ただいま先生から御指摘いただきましたように、開発途上国は、気候変動に特に脆弱であり、我が国が有する科学的知見や技術を生かして、開発途上国の適応能力の向上のために国際協力を進めていくことが重要であると認識いたしております。

 このため、環境省においては、インドネシア、フィリピン、島嶼国などで、各国のニーズに応じて、気候変動影響の将来予測や適応計画の策定の支援を行ってまいりました。

 今後は、開発途上国が科学的知見に基づき適応策を立案、実施できるよう、アジア太平洋地域の適応に関する情報を一元的に提供するアジア太平洋気候変動適応プラットフォームを二〇二〇年までに構築するなど、引き続き適応策に関する国際協力を積極的に推進してまいります。

江田(康)委員 ぜひとも、このアジア太平洋地域の気候変動適応情報プラットフォーム、AP―PLATですか、これを強力に日本が進めていただいて、貢献していただくことを切に願います。

 最後になりますが、中川大臣にもう一つ、緩和策の強化についても最後に決意をお伺いしたいと思います。

 これまでの質疑を通しまして、今回の適応策の法制化というのは、我が国として気候変動対策を強化していく上で、極めて重要な意義があるということが確認できました。早期成立を図っていきたいと思います。今後、この法案に基づく取組を関係者一体となって着実に進めていただきたい。また、実効性の高い適応策を全国各地で展開していただくことを期待しております。

 その一方でなんですが、人類の存亡を脅かす気候変動に対処するためには、適応策では限界があるわけであります。気温が三度も四度も上がる世界には我々人類は適応することはできない。パリ協定のもとで国際社会が協力して、協調して、温室効果ガスの排出削減対策や緩和策に全力で取り組み、二度C目標を達成することができなければ、これまで経験したことのないような豪雨、熱波又は海面上昇に世界は見舞われることになるでしょう。

 脱炭素社会に向けて世界全体を牽引していくべき我が国としましては、適応策と緩和策はまさに車の両輪として推進していかなければならないと思います。

 本法に基づいて適応策を着実に推進するとともに、地球温暖化の進行を食いとめるために、徹底した温室効果ガスの削減、すなわち二〇三〇年二六%、また、二〇五〇年八〇%削減、その次の低炭素社会の実現を目指して、徹底した省エネ、再エネの最大限の導入等に国を挙げて取り組むべきと考えますが、環境大臣の決意をお伺いします。

中川国務大臣 御指摘のとおり、気候変動の脅威に対応するには、車の両輪として、適応策と緩和策の両方を推進することが必要不可欠でございます。

 このため、本法案に基づき適応策の充実強化を図るだけでなく、地球温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガスの排出削減対策についても全力で取り組んでまいります。

 具体的には、二〇三〇年度二六%削減の達成に向けて、地球温暖化対策推進法に基づき、徹底した省エネルギーや再生可能エネルギーの最大限の導入等の対策を政府一丸となってしっかりと進めてまいります。さらに、二〇五〇年八〇%削減、そして、その先の世界全体での脱炭素社会の構築に向けて、長期戦略の策定に取り組んでまいります。

江田(康)委員 ちょうど時間になりました。

 大臣から今強い決意を伺ったところで終わらせていただきますが、適応法案の早期成立を期待して、これで質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松島委員長 次回は、来る十五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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