衆議院

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第24号 平成29年5月9日(火曜日)

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平成二十九年五月九日(火曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 高木  毅君 理事 長島 忠美君

   理事 大塚 高司君 理事 木原 誠二君

   理事 牧原 秀樹君 理事 井上 貴博君

   理事 泉  健太君 理事 山尾志桜里君

   理事 遠山 清彦君

      大隈 和英君    鬼木  誠君

      古賀  篤君    笹川 博義君

      橋本 英教君    藤丸  敏君

      牧島かれん君    宮内 秀樹君

      渡辺 孝一君    神山 洋介君

      小山 展弘君    田島 一成君

      宮崎 岳志君    本村賢太郎君

      吉田 宣弘君    塩川 鉄也君

      遠藤  敬君

    …………………………………

   議長           大島 理森君

   副議長          川端 達夫君

   事務総長         向大野新治君

   参考人

   (人事官候補者(人事院総裁))          一宮なほみ君

   参考人

   (原子力規制委員会委員長候補者(原子力規制委員会委員))         更田 豊志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  宮崎 岳志君     神山 洋介君

  本村賢太郎君     田島 一成君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 洋介君     宮崎 岳志君

  田島 一成君     本村賢太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官及び原子力規制委員会委員長任命につき同意を求めるの件

 法務委員長鈴木淳司君解任決議案(逢坂誠二君外一名提出)の取扱いに関する件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 まず、人事官及び原子力規制委員会委員長任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る四月十八日の理事会において、萩生田内閣官房副長官から、内閣として、人事官に人事院総裁一宮なほみ君を再任し、原子力規制委員会委員長に原子力規制委員会委員更田豊志君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申し合わせに基づき、人事官の候補者及び原子力規制委員会委員長の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者(人事院総裁)一宮なほみ君、原子力規制委員会委員長候補者(原子力規制委員会委員)更田豊志君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、一宮参考人、更田参考人の順で所信をお述べいただき、その後、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、一宮参考人、お願いいたします。

一宮参考人 一宮なほみでございます。

 本日は、所信を述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 国家公務員制度は、行政運営の基盤となる重要な制度であり、国家公務員法は、国民に対して公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを基本理念としております。

 この基本理念のもとで、全体の奉仕者である国家公務員の人事行政の公正を確保するため、また、労働基本権制約の代償機関としての役割を担うため、中立第三者機関としての人事院が設置されているものと認識しております。

 このように重要な使命を持つ人事院を構成する人事官には、その重い職責に照らして、公正な姿勢と高い倫理観が求められるとともに、公務員制度や職員の人事管理についての高い専門性も求められていると考えます。

 私は、裁判官として司法に携わり、その後、平成二十五年六月に人事官に任命され、平成二十六年四月からは人事院総裁として国家公務員の人事行政に携わり、地域間、世代間の給与配分の見直し等の国家公務員給与における諸課題に対応するための俸給表や諸手当のあり方を含めた給与の総合的見直し、配偶者に係る手当をめぐる状況の変化等を踏まえた配偶者に係る扶養手当の見直し、働き方改革の推進に資するフレックスタイム制の拡充、女性の採用、登用の拡大などの人事行政施策の推進に取り組んでまいりました。

 国家公務員の人事行政については、時代の要請や変化に対応してさまざまな課題があり、国民の公務や公務員に対する目には引き続き厳しいものがございます。このような状況にあって、全ての国家公務員がみずからの役割と使命を深く自覚しつつ、高い専門性を発揮して国民の期待に応えていくことが強く求められています。

 人事院としても、人事行政の専門機関として、長時間労働の是正、仕事と育児や介護との両立支援などの働きやすい勤務環境の整備、多様な有為の人材の確保、人材育成などの課題に取り組み、その責務を適切に果たし、現在の諸課題にも関連して、採用から退職に至るまでの公務員人事管理全般にわたって国家公務員法の趣旨が実現されるよう取り組みを進めてまいりたいと考えます。

 仮に、人事官に再任されました場合には、国民の代表である国会での議論を初め、国民各層や関係各方面の御意見に謙虚に耳を傾けながら、お二人の人事官と協力して、重大な責務を果たすべく、全力で職務に取り組んでまいりたいと存じます。

 以上、簡単ではございますが、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、更田参考人、お願いいたします。

更田参考人 更田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、原子力規制委員会の委員となる前、およそ二十五年間にわたって、事故時の核燃料挙動などを中心に、原子炉の安全研究に携わってまいりました。長年原子力にかかわってきた者の一人として、あのような事故に至ってしまったことに対し、強い衝撃とともに、事故以前に強く声を上げることはできなかったのかという後悔と反省を覚えました。

 その後、原子力規制委員会発足とともに委員に任命され、東京電力福島第一原子力発電所事故のような原子力災害を二度と起こさないとの決心のもとに、新規制基準の策定、原子力発電所の審査などに当たってまいりました。

 田中現委員長は福島県出身ということもあって、福島の県民の方々に寄り添う気持ちを強く持って委員長としての職務に当たっていることを、私もこの四年半余り、近くでずっと感じていました。たとえ委員長がかわっても、原子力規制委員会にとって、福島に対する強い思いを持ち続けることが重要であると考えております。

 福島第一原子力発電所では、困難な廃炉作業が続いています。今後、作業の困難さは一層高まるものと思われます。

 一方で、現場の方々の努力によって、海側遮水壁の完成、海水配管トレンチの処理、汚染水の処理や滞留水の汚染低減などの進展も見られており、プラントのリスクは事故当初に比べると大幅に低減されていると考えています。

 しかしながら、事故の傷跡をさらし、おびただしい数のタンクが並んでいる福島第一原子力発電所には、多くの方々が不安を感じています。原子力規制委員会が、福島第一原子力発電所の現状とリスクとを、可能な限り正確にわかりやすく情報発信する努力を強めていきたいと考えています。

 福島第一原子力発電所に加え、「もんじゅ」、東海再処理工場などの廃止措置についても、原子力規制委員会は、安全で効率的な作業が進むよう、科学的に合理的な規制を進めていく所存です。

 原子力発電所や再処理施設などの新規制基準への適合性審査に当たっては、そのプロセスの透明性を維持しつつ、科学的、技術的知見に基づいた厳正な審査を進めてまいります。また、新規制基準や審査ガイドについても、常に最新の知見に学ぶ姿勢を忘れず、必要かつ適切な改善に努めます。

 IAEAによる規制レビュー、IRRSの指摘に基づき、検査制度の革新、RI規制の強化などを目指した法改正を今国会で御審議いただき、お認めいただきました。新しい検査制度のもとで原子力施設に対する監視を強化、効率化するためには、人材の育成はもちろんのこととして、安全文化の醸成、リスク情報の活用、適度な緊張感を持った事業者とのコミュニケーションを進めることが重要だと考えています。

 原子力規制委員会は、福島第一原子力発電所事故の教訓に基づき、独立した規制機関として設置されました。これまで、高い透明性の確保や国内外で起きた教訓事例、最新知見の規制への反映に努めてきました。福島第一原子力発電所事故の記憶はいまだに鮮明であり、原子力規制委員会の活動が高い注目を集めてきたこともあって、委員長、委員、規制庁職員の使命感、責任感は高いレベルで維持されてきたと思っています。

 しかしながら、人間は忘れやすい存在だということも事実です。原子力規制委員会は、福島第一原子力発電所事故の教訓を個人の記憶のみにとどめず、組織的な記憶にしていく必要があります。安全の追求に終わりはないという初心を忘れず、常にみずからに問いかけ、慢心を戒める姿勢を組織として保つには、強いリーダーシップを持って取り組むべきであると考えております。

 私は、原子力規制委員会の委員長を拝命した場合には、他の委員、規制庁職員と協力し、原子力規制委員会設置法にのっとり、独立性と透明性の確保を基本として、国内外から信頼の得られる原子力の安全規制の実施に最善を尽くしてまいる所存であります。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 更田参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

 理事会の申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席をお願いいたします。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより一宮参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 木原誠二君。

木原(誠)委員 自由民主党の木原誠二です。

 時間が非常に限られておりますので、端的に、私からは二問だけ御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど、一宮参考人の方から、人事官に求められるものとして、高い倫理観、そしてまた専門性というお話がありましたが、私は、もう一点、改革マインドというものが非常に大切だというふうに思いますので、そういう点から二点だけお伺いをしたいと思います。

 まず第一は、公務員組織の活性化ということについてお伺いをしたいと思います。

 私も国家公務員の出身であります。そういう目から見たときに、今の国家公務員組織は、年齢構成のゆがみというか、ピラミッドのゆがみが生じているかなと。退職勧奨も今少しとまっておりますし、あるいは新規採用も抑制してきたということのツケが今若干来ているかなという気がいたしております。

 端的に言うと、四十代、五十代がふえて、二十代、三十代が非常に少ない。そういう中で、私は、これから活力を維持していくためには、やはり若い皆さんにどんどん参加をしていただいて、活躍をしていただく必要があるだろうと思っています。

 そこで、まず一点、最初にお伺いをしたいのは、国の財政も限られている、全体としての公務員もなかなかふやせない中で、私は、まず給与カーブを少しフラット化していく、そうしないと若い世代がなかなか活躍できないと思っております。

 参考人が、御自身の指導力で、五十代後半の皆さんの給与を四%程度カットされて、それを若い世代に回していただいた。これは高く評価をしたい、こう思いますが、まだまだ足りないと私は思っておりますし、公務内での公募を初めとして、より抜てき人事などというものもやっていかないといけないというふうに思いますが、この点について、まず、参考人の御意見をいただきたいと存じます。

一宮参考人 国家公務員の在職状況を見ますと、御指摘のように、年齢別の人員構成に非常に偏りを生じているところでございます。このような構造的な問題につきましては、人事院が国会と内閣に提出いたしました昨年の年次報告書の特別テーマでも取り上げたところでございますが、そこで細かく問題点について検討をしたところでございます。

 まずは、このことによって、御指摘のように、若手、中堅層の昇進ペースが非常におくれているということで、やはり意欲が非常に低下してくるのではないかというおそれ、それとまた、若年層が特別に少ない、とりわけ少ない地方組織におきましては、若手、中堅層の育成とか技術、技能のノウハウの承継、そういったところに非常に支障が生じているという現実がございます。

 先ほど御指摘いただきましたように、給与制度の総合的見直しなどを通じまして給与カーブのフラット化に努めてきて、大体、今、民間の給与カーブと均衡してきたというところではございますけれども、なお一層、やはり能力、実績に応じた処遇、そういったものを考えながら、年功序列によるのではなくて、優秀な者はどんどん抜てきしていく、そういうことが必要であるというふうに考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 二点目でありますが、官民格差の是正について一点お伺いをしたいと思います。

 さまざま取り組んでいただいておることは十分承知をしておりますが、私は、まだまだ足りない、努力が足りないというふうに思っております。

 特に地域手当の件については、例えば九州で、九州財務局というのがあります。ここで採用された国家公務員は、しかしやはり北海道では働かないし、東北では働かないですね。にもかかわらず、各地全部、市町村一つ一つに地域手当がついている。例えば、九州財務局の中で、熊本、大分、鹿児島、この中で異動するだけでも各市町村ごとに地域手当がある。こんな民間企業は私はないというふうに思います。

 ぜひこの地域手当についてしっかりと見直しをしていただきたい、こう思いますが、御所見をいただければと思います。

一宮参考人 おっしゃるとおりの実情ではございますが、民間賃金の低い地域を中心として、公務員給与が高いのではないかという御指摘がしばしばあるところでございますので、これを踏まえまして給与制度の総合的見直しを行いまして、地域間の給与配分の見直しを行ったところでございます。

 先ほども申しましたように、世代間の給与配分も見直すために、若手職員についてはそれほど下げずに、高齢者中心に全体を下げるというようなことをいたしまして、給与カーブのフラット化などもしてまいりました。また、広域異動手当とか単身赴任手当、そういったものについても見直しを行いました。

 諸手当について、昨年も、ちょっと御趣旨と違うかもしれませんけれども、配偶者に係る扶養手当の見直しなども行いまして、諸手当については、社会情勢の変化に応じた見直し等をやってきているところでございます。

 御指摘の地域手当のほかに、まだあと住居手当に関してとか、ほかの諸手当に関しても、各方面からさまざまな御意見や御要望をいただいておりますので、そういうことについては十分承知しております。今後も、そういった御意見や御要望に対して謙虚に耳を傾けながら検討してまいりたいというふうに考えております。

木原(誠)委員 これで質問を終わりにしますが、やはり官民格差の是正というのは、公務員に対する国民の信頼にとって大変重要だというふうに思います。

 十年前に、人事院みずからが、この地域手当については広域化すべきでないかという提言を出されていますから、ぜひ再任の暁には、リーダーシップを発揮していただいて、この点についても御努力をいただければというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、神山洋介君。

神山(洋)委員 民進党の神山洋介でございます。きょうはよろしくお願いを申し上げます。

 時間もありませんので、早速でございますが、人事院の基本的な仕事のうちの、柱のうちの一つとして、人勧制度に基づく勧告をするということがございます。ここでまずお伺いをしたいのは、この人勧制度についての基本的な現状認識についてでありまして、説明はもう不要かと思いますが、労働基本権が制約をされている中での代償措置として人勧制度がある、一方で、これに対してILOからは勧告もあり、いろいろな議論の中には、これは我々もその観点から議論をしてきたところでありますが、労働基本権を少なくとも一部認めることによって新しい形を探るべきではないかという見解もあります。

 この点について、まず、どういう見解をお持ちでしょうか。

一宮参考人 国家公務員に協約締結権を付与すべきではないかという議論があることについては承知しております。

 ただ、公務部門におきましては、労使交渉において、民間と異なって、給与決定に市場の抑制力が働かないということ、また、勤務条件法定主義でございますので、国家公務員の給与は国会のコントロールのもとに置かれているということで、使用者側としての当事者能力に限界があるのではないかという大きな問題点、論点が指摘されているところでございますので、協約締結権についてはまだ、十分な論議を行って国民の理解と御納得を得るに至っていないというふうに考えます。

 ILOから勧告をいただいているということについても承知しておりますけれども、我が国には人事院勧告制度というものがあって、労働基本権の代償機能が果たされているということについて、ILOに対してしっかりと説明して御理解をいただきたいというふうに考えております。

神山(洋)委員 続いて、昨年末から今国会を通じて、一つ天下りの問題が大きな社会問題であり、国会でも議論の対象になっていることは御承知のとおりかと思います。公務員制度改革を通じて、天下り問題への対応というのは、もう長年、ずっと議論がされて、いろいろな対応がとられてきてはまた別の案件が出てきてということが繰り返されて今日に至るわけでございます。その経過は十分御承知かと思います。

 その観点で一つ、まず総括的にお伺いをしたいのが、人事院としても、国家公務員の倫理の保持というのは大きな業務の一つだとされているわけです。その観点から、この天下りの問題に対応してきたことも含めて、また今後、もし再度ということであれば、どういう形で対応されようとしているのか、その基本的な方針も含めて、できるだけ具体的にお伺いができればと思います。

一宮参考人 天下り問題というか、国家公務員の再就職について問題であるのは、官民の癒着につながりかねない公務員のOBの口ききとか予算や権限を背景にした再就職のあっせん等であると考えております。一方、法令に違反することなく再就職をして、公務で培った能力や経験を生かして社会に貢献するということは大変有意義なことであると考えております。

 このたびの文部科学省の事案については、全くあってはならないことだというふうに認識しております。国民からの信頼を回復して確保するためには、人事院としては、採用から退職に至るまで、人事管理全般に対して、しっかりと国家公務員法の趣旨が生かされるように、各府省と連携して取り組んでまいりたいと思います。

 公務員の再就職規制を初めとしまして、各法令を遵守するということは大変重要なことでございますので、国民の全体の奉仕者として、使命感と高い倫理観を持って職務に従事するということは極めて重要なことであると考えております。

 人事院としましては、いろいろな研修を通じまして、また、実際に公務の現場で、職務を行うところを通じまして、OJTを通じまして、高い倫理観を持つということについて指導してきたわけですけれども、これからは一層これについて力を入れていきたいというふうに考えております。

神山(洋)委員 今回問題になったのは、法に違反をしたということもありましたし、さらに言えば、法に違反はしていないけれども潜脱行為であるという形で再就職規制委員会の方から指摘があったということもありました。そもそも、法に違反するのは論外でありますが、法に違反しないということも含めた意味でいえば、やはりこの倫理という部分は大事だと私は思うわけです。

 この天下りの問題は、もちろん、倫理にもとるという観点で、そういうことをした、違法行為をしたということも問題なわけですが、一部根源的に考えていくと、なぜそういうモチベーション、動機が生まれてしまったのかという意味でいえば、国家公務員そのもののキャリアプランであるとか、場合によってはライフステージに至るような大きな観点からの議論というのもこれは大事なんじゃないか、必要なんじゃないかというふうに我々は考えているわけです。

 その観点からも、ぜひこれは、今後、再発防止の観点も含めた検討をしていただきたいと思うわけですが、その点について御認識はいかがでしょうか。

一宮参考人 先ほども申しましたように、人事院としては、採用から退職に至るまで、人事管理全般についてその意識を持ちながらやっていかなくてはならないというふうに考えてございますが、一方、退職後の問題として、公務員に対しての、年金の、済みません、年金が思いつかなくて、年金の支給開始年齢が引き上げになったことに伴って、退職に至っては雇用と年金の接続の問題が一つ大きな問題として起きてくるわけでございます。

 これについては、対策としては、定年の延長というのとそれから再任用の義務化という方法が二つありまして、人事院としては、定年の延長が一番長期的に見て制度的にも明快であるので、これによるべきだということで意見の申し出をしているところではございますけれども、一方、これを実現するためには、処遇制度とか給与制度、根本的なところの総合的な見直しをする必要があるという問題もございますので非常に難しいということもあって、現在のところは再任用の義務化ということで行っているところだと思いますが、人事院としては、定年延長、十年後、二十年後の公務のあり方というのを見据えながらこれについて検討していかなくてはいけないということで、民間企業とか有識者などからヒアリングをいたしまして、これに向けての論点整理をしているところでございます。

神山(洋)委員 圧倒的多数の国家公務員、公務員の方々は国民に称賛されるべき努力をされていると私も思っております。そういった方々がきちんと安心をして仕事をできる環境をつくっていくということは大事なお仕事だというふうにも思いますので、ぜひそういう観点からも、今お話をいただいた幾つかの具体策も含めた研究を人事院としてもお願いをさせていただければと思います。

 以上で終わります。

佐藤委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 早速、一宮候補者にお伺いをしたいと思います。

 まず一点目は、男性の職員、公務員の育児休業取得の問題についてお伺いをしたいと思います。

 女性活躍、これは我が国の重要課題の一つでございますが、女性がさらに活躍していくためには、男性の育児参加、これについても積極的に支援をするような取り組みが重要だと考えております。

 男性の育児休業取得率につきましては、政府全体の目標は平成三十二年までに一三%ということになっておりますが、人事院の調査、私の手元には平成二十七年度の男性の育児休業取得率のデータがありますが、これは九・五%にすぎないということでございます。この男性職員、公務員の育児休業取得や育児参加を支援するために、人事官候補者としてどのような取り組みが必要と考えておられるか、お述べいただきたいと思います。

一宮参考人 男性職員の育児参加につきましては、対象となる職員だけでなく、その上司を含めた周囲の人たちに対する働きかけというのが大事であるということで啓発に努めてまいりました結果、今おっしゃられたような九・五%にまで取得率が上昇してきたわけでございます。まだ少ないという御意見ではございますが、ここまで増加してきたというふうにも言えるところでございますので、この流れを加速させるということが何よりも大事であるというふうに考えております。

 人事院では、本年の一月から、男性の育児休業等の取得に対する不適切な発言について、ハラスメントであるとして禁止する、そういう人事院規則を施行したところでございます。

 今後は、対象となる職員について働きかけるのはもとより、キャリアパスへの不安等を持つ職員も多いので、これについて、上司あるいは人事担当者において、育児休業中とかまた復帰後についていろいろとそういう支援について表明する、全く問題はないのだということをはっきりとして、キャリアパスについてもしっかりと示していく、そういう働きかけが大事であるというふうに考えております。

遠山委員 ありがとうございます。

 育児と並ぶ問題で、次は介護の問題を取り上げたいと思います。

 介護については、育児と異なるのは、いつ介護が必要になるか、そしていつまで介護をしながら仕事を続けなければいけないかということがなかなかわからないという実態がございます。よって、仕事と介護という問題は、育児の問題以上に実態に即した支援制度というものが必要になるわけでございますが、人事院として、仕事と介護の両立を支援していくということについて、今までの取り組みもあるでしょうし、それを踏まえて、今後どのようなお取り組みの方針なのか、お聞かせ願いたいと思います。

一宮参考人 今おっしゃられたように、介護については、育児と異なって、いつ直面することになるのか、また、直面した後いつまで続くのかということが不透明なために、非常に介護休暇がとりにくい状況になっております。ただ、誰でもが直面する可能性のあることでもございますので、誰もが安心して介護休業を取得して働き続けられるように環境整備をするということは極めて重要なことであるというふうに考えております。

 人事院は、昨年の勧告におきまして、本年一月から、介護休暇の分割取得を可能とすることや、それから勤務時間の一部を勤務しないことを可能とする勤務時間制度というものを施行いたしまして、従来よりも非常に柔軟な制度というふうになってはおります。

 また、このような制度が整備されましても、これがあるということが余り知られていないという御指摘もありますので、これを周知するとともに、利用しやすい環境整備も重要でありますので、日ごろから上司が面談等いたしますので、そういう機会を捉えて各職員の事情等について把握しておくということも重要であるというふうに考えております。

遠山委員 ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 私からの最後の質問になりますが、我が国においては、正規労働者、非正規労働者の不合理な待遇の格差、これを解消して、特に非正規労働者の待遇を改善していくということが課題として認識をされておりまして、国会でも多くの議論がされているところでございます。

 政府も、現在、同一労働同一賃金の実現に向けて本格的な検討をしているところでございますが、国においては、常勤職員の定員が抑制される一方で、多くの政府の関係府省におきまして非常勤職員が働いているのが実態でございます。

 国の、公務員の世界でもある非常勤の問題につきまして、どのように今後取り組まれていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

一宮参考人 人事院は、非常勤の給与につきましては、平成二十年の八月に指針を各府省に対して発出しまして、その後もその運用状況について調査をしております。その調査によりますと、おおむねその指針に沿った運用がなされているというふうなことが確認されております。

 また、勤務時間とか休暇等についての処遇の問題に関しましては、業務の必要に応じてその都度、任期だとか勤務時間が定められて任用される非常勤職員の性格を踏まえまして、国家公務員の非常勤の職員についての取り扱いは、民間の同じような有期労働者の処遇に倣って処遇しているというところでございますので、今おっしゃられたように、今、非正規労働者の問題について民間でも非常に話題となっておりますので、そのあたりをしっかりと検証しながら改善していきたいというふうに考えております。

遠山委員 民間を先行させて後からついていくという姿勢ではなくて、ぜひ人事院でも同じ水準で議論していただきたいということを最後に要望申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 一宮参考人にお尋ねいたします。

 最初に、国家公務員給与特例法についてお尋ねをいたします。

 一宮参考人は、二〇一三年六月に人事官に就任をし、二〇一四年四月に人事院総裁に就任をしておられます。二〇一二年度及び一三年度に実施をされた国家公務員給与特例法に基づき、給与減額支給措置が実施されました。その時期に人事官の任についていたわけであります。

 給与特例法は、国家公務員の労働基本権が回復されていない段階で、人勧水準をはるかに超える、平均七・八%もの給与削減という不利益を強要するものでした。これは人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割を否定するものだったのではないのか、この点についての認識をお伺いします。

一宮参考人 人事院勧告は労働基本権制約の代償機能として非常に重要なものでありますので、これについては最大限尊重されるべきであると考えておりますし、政府においても基本的にはそのような姿勢を持っているというふうに理解しております。

 ただいまの二年間の特例、減額特例法につきましては、東日本大震災の復興のために、政府と国会におかれて大所高所の見地から考えられたものであるというふうに理解しております。

塩川委員 次に、一宮参考人が人事院総裁となって初めて行った二〇一四年の人事院勧告、報告における給与制度の総合的見直しについてお尋ねをいたします。

 職務給の原則や地域経済への影響を考慮せず、地域の民間賃金の水準に公務員賃金を合わせて地域間格差を拡大するものであり、また五十歳代後半層の給与を引き下げるものであります。二〇一五年四月から三年間かけて見直しをしてきております。

 この給与制度の総合的見直しは、職務給原則を損ない、勤務地と年齢による賃金格差をつくるものであり、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割に反する措置ではないか。この点についての認識を伺います。

一宮参考人 国家公務員法には確かに職務給の原則を定めておりますけれども、俸給を補完するものとして、各種の手当等についての規定も設けられております。

 そういうところで、給与の総合的見直しを行い、先ほどおっしゃられた地域の格差とか地域間の給与配分、民間賃金の低い地域に合わせた給与の再配分をした、そういうことでございますので、何ら職務給の原則に反するものではないというふうに考えております。

塩川委員 次に、天下りについてお尋ねします。

 今国会では、文科省の天下り問題などが大きな議論となりました。先ほども、あってはならないこととお述べになったところであります。

 一宮参考人は、四年前の所信質疑の際に、「国民の信頼を損なうような天下りの根絶に向けて、厳格に対応することが必要」と述べておられましたが、今の事態をどのように受けとめているか、また、国民の信頼を損なうような天下りの根絶のためにはどのような対処が必要だと考えているのか、この点についてお伺いします。

一宮参考人 今おっしゃられたように、このたびの文科省の天下りの事案については、大変あってはならないことで、遺憾であるというふうに考えております。

 人事院としましては、先ほども申し上げましたように、採用から退職に至るまでの人事管理全般にわたって、国家公務員法の趣旨が生かされるように、各府省と連携しながら対処していくということでございます。

塩川委員 最後に、国家公務員給与の国際比較についてお尋ねをいたします。

 国、自治体の財政支出に占める公務員、公的部門職員の人件費の割合は、OECD諸国の中で日本が最も少ないということはよく知られているところであります。

 人件費は人数掛ける単価です。人数の方について言えば、人口千人当たりの公的部門における職員数は国際的にも極めて少ないものです。

 では、賃金の方はどうか。アメリカやドイツなどとの国家公務員の賃金比較はどうなっているか。上級公務員ではない、いわゆる一般のノンキャリアの公務員の賃金というのは米独に比べても低いと承知をしておりますが、この点についての一宮参考人の認識はいかがでしょうか。

一宮参考人 私は不勉強で、各国との国家公務員の給与の違いについて詳しく存じ上げてはおりませんが、我が国においての国家公務員の給与につきましては、民間準拠ということで民間の企業の給与と均衡するような形で決められております。人事院としましては、綿密な実態調査のもとにおきまして人事院勧告を行っておりますので、これは国家公務員の給与としては適正な扱いであるというふうに考えております。

塩川委員 終わります。

佐藤委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 日本維新の会の遠藤敬でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 我が国の行政運営を円滑に行うためには、公務に優秀な人材を確保することが不可欠であります。しかしながら、国家公務員採用試験については、申込者が減少傾向にあると聞いております。特に、政策の企画立案等を担う職員を採用する総合職の試験について、多様な人材を確保するよう工夫していく必要があると考えております。

 そもそも我が国においては、若年層の人口が減少していく傾向にもあります。また、若者は地元志向が強い、長時間労働も嫌うという意識があるとされております。さらには、国家公務員の仕事が魅力あるものと受けとめられているのかという問題も指摘をされております。

 そうした中で、国に優秀な人材を確保するためにはどのようにすればよいか、お考えをお伺いしたいと思います。

一宮参考人 まず、総合職の受験者の減少の件でございますが、確かに昨年よりは申込者の数は減っておるのですけれども、実際に、ちょうど先日、試験を行ったところ、昨年の受験者よりもことしの受験者の方が人数はふえているということをまずは御報告させていただきます。

 そして、御質問のことですけれども、おっしゃられたとおり、若年人口が減少しておりますし、地元志向、少子化なので、どうしても地元に親が引きとめるということもございます。また、民間も景気が上昇しておりますので、民間と競合するというようなことになっておりまして、優秀な人材を確保するのが大変困難な時代を迎えているのは間違いありません。

 公務に必要とされる優秀な人材を確保するためには、まず、働き方の改革を初めとして公務の勤務環境の整備を行うなどしまして、あわせて、公務の魅力をより向上させて、これを広報活動していくということが非常に重要だというふうに考えております。

 人事院は、学生を対象とした説明会やまた講演会、それとインターンシップなどを含めまして、積極的に人材確保活動を展開しているところでございます。

遠藤(敬)委員 二問目でございますが、我が国の行政の円滑な運営を行うためには、優秀な人材を採用するだけではなく、採用した人材をしっかり育て、国家公務員が高い使命感と誇りを持って働くことができるということが重要であると考えております。

 そのような公務員を育て、公務員のやる気と意欲を高めるにはどうすべきであるとお考えですか。お伺いしたいと思います。

一宮参考人 まずは、国家公務員のやる気、意欲を高めるためには、年功序列ではなく、能力、実績に応じためり張りのある人事を行うことが重要であるというふうに考えております。

 人事院が本年の二月に、本省だけではございますが、職員に対して意識調査というのを行ったところでございます。その結果で、どういうところに生きがい、やりがいを感じているのかということについては、国民全体の奉仕者として公共の利益のために働いている、貢献しているということが実感できること、また、重要な仕事を任されて、これにチャレンジするということを通じて自分が成長できること、そういった結果が出ております。

 ですので、自分の今やっている仕事が全体の中でどのような意味を持つ仕事であるのかというようなことをきちんと理解させた上で仕事を付与して、そして、その結果をきちんと評価して、そういうことによって、それを続けるというOJTを通じてやる気をますます出させるということが重要なのではないかなというふうに考えております。

遠藤(敬)委員 最後の質問でございますが、公務員において高齢層の職員をどのように活用していくのかということも大きな課題になっておりますが、特に、現在定年が原則六十歳である、一方、公的年金の支給開始年齢が六十五歳に引き上げられる中で、雇用と年金の接続をどうしていくのかという問題が大きくあるのではないかと思うんです。

 あわせてお伺いをしておきますが、先般の文科省における重大な再就職規制違反の事案が発生しております。再就職についての透明性をどう高めていけるか、また、国民の理解をどう得られるかという取り組みが必要であることは言うまでもありませんが、今後どのように取り組まれるのか。

 二点含めて御質問させていただきます。

一宮参考人 先ほどもちょっと、年金の言葉が出なくて失礼したんですけれども、おっしゃられるように、年金の支給開始年齢が引き上げられたことによって、退職後、六十歳で定年退職するということになると、その後にどのように雇用の確保をしていくかということは非常に大事な論点になってきていると思います。

 今般の文科省の再就職の違反の事件がこのことと直接関係しているということもないと思いますが、法令に違反することなく再就職をして、その経験と能力を生かして社会貢献するということは大事なことですので、どういう形で透明性の確保をしながら再就職ができるような道を開いていくかということと、それと、先ほども申し上げましたように、定年の延長についてどのように図っていくか。

 やはり十年後、二十年後、先になれば、突然と定年延長というわけにはいきませんので、徐々にこれに向けて改革を進めながらやっていかなくてはならないというように考えておりますが、なかなか難しい問題もございますので、民間の企業等でいろいろと工夫をされている事例等も検討いたしておりますし、また、有識者の方々の御意見なども伺うなどして、これに向けてどのような方策が考えられていくかということについて検討しているところでございます。

遠藤(敬)委員 ありがとうございました。

 終わります。

佐藤委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

 ないようですね。

 それでは、これにて一宮参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 一宮参考人、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより更田参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 牧原秀樹君。

牧原委員 まず、新規制基準の適合性審査について二点お聞きします。

 審査の現場において、規制当局から審査の途中で事業者に対して新たな要求事項が後出しされることが多々あり、事業者は対応するのが大変という声をよくお聞きします。審査の透明性、予見可能性を高めることが大事と考えるが、いかがでしょうか。

 そして二問目は、今のところ、事業者から二十六基の申請を受けておりますけれども、まだ十基しか設置許可が行われておりません。審査に時間がかかり過ぎだという意見もありますけれども、今後どのように改善していくお考えでしょうか。

更田参考人 まず一つ目の御質問にお答えいたします。

 御質問にありました審査の判断に至るプロセスの透明性、さらには審査内容の予見性、これはどちらも大変重要なことだと考えております。

 透明性につきましては、これまでも原子力規制委員会は、審査会合の公開、インターネット中継、速記録の公開等々を進めてまいりまして、透明性の確保には随分努力を払ってまいりましたけれども、今後ともこの努力は継続したいというふうに考えております。

 それから、もう一つの審査内容の予見可能性ですが、これについても、審査ガイド等の充実、それから公開を進めていこうと思います。

 私どもの行っております審査は、科学的、技術的な議論を申請者との間で重ねていくプロセスであります。どうしても、議論の過程で新たな論点が生まれることは避けられない性格だということは御理解をいただきたいと思いますが、いずれにしろ、審査ガイドの充実等々に努めてまいりたいと考えております。

 二つ目の御質問、審査に時間がかかる。確かに時間はかかっております。

 これも一つ目の御質問に対するお答えと重なるところはありますが、やはりまず安全に妥協はできない、したがって、きっちりした議論、判断に至るまでの十分な納得のいく議論を進める必要があると考えております。その上で、申請者の意見も十分に聞きながら議論を交わして重ねていくプロセスですので、どうしても時間がかかるところはございます。

 ただ、原子力発電所等につきましては、かなり審査の経験も重ねてまいりましたので、今後とも効率的な審査に努めてまいりたいと思います。

牧原委員 候補は原子力規制委員会の設立時から委員を務められてきておりますので、今後、これまでの経験を踏まえて、委員長として、規制委員会に関して改善すべきということがもしありましたら、お考えをお聞かせください。

更田参考人 私は、四年半前に規制委員に着任した当初から、検査の改善、革新について口にしてまいりましたけれども、今国会におきまして、検査制度の革新、それから、RI規制とともにですけれども、特に検査制度の改善についてお認めいただいたので、この検査制度を軌道に乗せること、これが最も大きな改善につながると考えております。

 さらに、この検査制度を軌道に乗せるためには、検査を受ける事業者との間のコミュニケーションが大変重要になります。

 これまでも、申請者とのコミュニケーションについては、経営層であるとか原子力部門の責任者との間のコミュニケーションに努めてまいりましたけれども、今後は、透明性を確保した上で、なるべく現場とのコミュニケーションについても改善をしていく必要があるだろうと考えております。

 もう一つは、規制の考え方にかかわる基本文書といいますか、そういった文書で、私たちが安全規制を進める上で何が重要であるか、どういう理念に基づくのかという基本文書の拡充、これは実を言いますと、審査に当たる要員ですとか検査に当たる要員と、そういった文書を作成する要員というのは重なる部分がありますので、なかなか難しいプロセスではありますけれども、業務の優先順位をよく考慮して、こういった基本文書の充実にも努めてまいりたいと思います。

 それから、三つ目になりますけれども、人材育成の仕組み、プロセスについては、さらなる努力が必要だと思っております。

 すぐれて科学的、技術的な技能に基づく規制でございますので、規制庁職員、それから私たち委員も含めてですけれども、学ぶ姿勢と同時に、そのためのシステムの充実に努めてまいりたいと思います。

牧原委員 次に、東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置についてお伺いをします。

 莫大な追加措置が必要となっている状況でございますけれども、これまでごらんになっていて改善すべき点があるか、お聞かせいただきたいとともに、莫大な処理済み汚染水があって、タンクがたくさんあります。規制基準以下であれば海洋放出を行っても問題ないという見解をこれまで規制委員会はとられておりますけれども、このようなやり方は安全というふうに考えていらっしゃるのでしょうか。

更田参考人 福島第一原子力発電所の廃炉措置につきましては、進むにつれて難しい、より難しい段階に入りつつあるとは思っています。しかしながら、例えば、再び地震や津波に襲われたときに非常に甚大な被害を及ぼすような災害に至ってしまうというような危険性は随分と下がったと考えています。

 これまでも、東京電力、幾つかの失敗はありますけれども、一方で、海水配管トレンチからの汚染水の除去等に関しては、率直に言って、いい仕事もしていると思っています。段階的にではありますけれども、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業というのは、徐々に潜在的なリスクを下げるプロセスを進んでいると思っています。

 それから、トリチウムだけが含まれている処理済み水の処理については、告示濃度制限以下での放流によって環境に影響が出るということはないと考えておりまして、このままタンクに貯留し続けることの困難さを考えると、放流は十分安全に考慮して行えるものと考えております。

牧原委員 最後に、原子力ということですけれども、まだまだ技術の進展というものはあり得ると考えますけれども、原子力規制委員長になった場合、今後、技術の進展によってさらに安全性を高めて、一層原子力というものは活用していくべきものかどうか、この点についてのお考えをお聞かせください。

更田参考人 所信の中でも申し上げましたが、継続的な改善というのは決して忘れてはならない姿勢でありまして、新たな科学的な知見ないしは国内外における事象での経験等を踏まえて、基準、それから審査内容、検査での対応、あらゆる面において継続的な改善を進めていくべきであろうと考えております。

牧原委員 終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民進党の田島一成でございます。

 時間が限られておりますが、原子炉の安全研究が御専門の更田参考人に対して質問できることを大変光栄に思っております。

 二〇一二年の規制委員会発足時から、メンバーとして田中委員長の背中をずっと見続けてこられたこと、そして二〇一四年には委員長代理にもついていらっしゃるということで、一定これまでの動きや流れを踏襲していただけるものというような理解、認識を持っておるところでございます。

 ついせんだって、三月にも、私ども、IRRSを受けた形での炉規法改正等々に当たらせていただきました。そう考えれば、新しい流れでの検査体制や研究等々を今後進めていただくわけでありますが、どの点が変わるのだろうか、また、委員長が今回このようにかわられるとなったとき、更田参考人におかれては、背中をごらんになられたというわけではありますけれども、しっかりと田中委員長の足跡を踏襲していただけるという認識を持っていいのかどうか、簡潔にまずお答えいただけますでしょうか。

更田参考人 今回、炉規法改正に当たってお認めいただいた検査制度の改正に当たっては、やはり事業者との間のコミュニケーションの改善、それからスキルの積み重ねによる検査官の能力の充実等々がキーになってまいると思いますけれども、その改正の中で骨子となるのは、事業者責任の明確化、それから、あらかじめ決められた項目をチェックするといったものから、より柔軟な、より重要な点に特化できる検査制度に移行していけるものと考えております。

 それから、田中委員長、ずっとそばで仕事をしてまいりました。確かに私は、田中委員長より十二歳若いですので、どうしても経験に欠ける部分は否めないと思いますけれども、田中委員長は、非常に芯のしっかりした、ぶれない委員長であったと思います。その姿勢から学んで、田中委員長が歩んできた路線を踏襲し、また同時に、改善すべきところは改善してまいりたいと思います。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 今後の原子力規制委員会のあり方について、かつて田中委員長も、推進と規制はもっと明確に分けるべきだというコメントを何度も出していらっしゃいました。そう考えますと、やはり独立性を持った規制委員会が発足していくことを田中委員長も歓迎されていたわけでありますが、残念ながら、今回、新たなメンバーの顔ぶれを見ますと、規制側とそれから推進側の両方に足を突っ込んでいらっしゃる方もいらっしゃるやにお見受けしているところであります。

 そもそも、福島第一原発事故が発生した原因というのは、推進派と規制派のなれ合いを続けてきた結果、必要な規制がなされずに招いた事故ではないかという見方をされる方々もいらっしゃるわけでありますが、このように、両方に所属をしていた経験のある委員がお入りになられる中で、やはり頼りになるのは委員長のリーダーシップではないかというふうに思っております。

 独立性を今後しっかりと担保していくために、委員長として特段のリーダーシップを発揮していくための御所見をぜひお聞かせいただけませんでしょうか。

更田参考人 委員のメンバーは、主に研究者出身であったり、ないしは教職出身の方々で構成されています。

 研究者や教職に当たる者は、これは原子力を研究対象として見ますので、どうしても、規制であるとか推進であるとかというものにとらわれずに、技術そのものに対する関心であるとか科学的興味から業務に当たってきて、必ずしも推進側であるとか規制側であるとかという色分けは当たらない出身者であろうと思っています。

 一旦、規制委員会としての委員としての職務についた場合には、これは安全のみを科学的、技術的根拠に基づいて判断する立場でありますので、推進側の論理であるとか経済性であるとか、そういったものを忘れるというのは、これは我が国だけに限らず規制に当たる者の基本的な姿勢ですので、これについては徹底してまいりたいと思います。

 独立性につきましても、これは、同時に透明性を高めて、そのプロセスや議論の内容を広く聞いていただくことによって、独立性を担保するための大きな助けになるだろうというふうに考えております。

田島(一)委員 最後の質問に入らせていただきます。

 今回、法改正の段階でも議論させていただいたIRRSが指摘する問題点のうち、やはり全ての被規制者との意思疎通不足というものも掲げられておりました。

 先ほど参考人も、現場の皆さんとの対話を重視していきたいということをおっしゃっていただいて、少しほっと胸をなでおろしたわけでありますが、今回、この規制者である委員会というのは、犯罪を取り締まる警察とは異なって、立場をわきまえつつも産業界との関係を醸成し続け、また、現場の皆さんから、さまざまな学びの姿勢をしっかりと持ち続けることが何より大切だと思います。

 安全文化を国民に浸透させ、原子力行政の信頼回復につなげるために、その決意をもう一度改めて聞かせていただき、質問を終わらせていただきたいと思います。

更田参考人 事業者とのコミュニケーションにつきましては、当初、電力経営層との意見交換から始まって、現在では原子力部門の責任者との意見交換、これも透明性を確保しつつ行ってまいりましたけれども、さらに重要なのは、それぞれの施設の現場とのコミュニケーション、これも透明性に関してのプロセスを工夫しながら今後ともさらに進めていきたいと思いますし、また、東京で会っているだけではなかなか進まないところがあって、私は、昨年一年間で七回原子力発電所を訪れることができました。

 仮に委員長になった場合、時間的な制約はいろいろあろうかと思いますが、できるだけ現地に足を運ぶ努力はしたいと思っております。

田島(一)委員 終わります。

佐藤委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。

 更田候補者はもちろん原子力の専門家でございますが、この原子力、一般の方々にはやはりなかなか難しい、非常に科学的、学術的専門性が高い分野であろうと思います。ただ、この原子力を使った最たる技術というものが発電所でございますが、地元の方々が発電所に対してしっかり理解をしておくこと、そのことは、これからのさまざまな原子力の利用という観点からも大切だというふうに思っております。

 ただ、先ほども申し上げましたとおり、非常に難しい内容でございますが、その点を国民とのコミュニケーションにおいてどのように図っていくお考えであろうか、その点についてお聞かせをいただければと思います。

更田参考人 確かに、御質問にありますように、一般の方々にわかりやすくお伝えする努力というのはなかなかに難しいものをはらんでいると思います。

 さらに、私たちも、これまで規制にかかわる考え方について質疑応答形式の資料等をつくりまして公開するなどの努力は続けてまいりましたけれども、今後ともこういった努力を続けていくことも重要だと思っています。

 それから、地元、例えば発電所の近隣にお住まいの方々とのコミュニケーションですけれども、これは、先ほど規制と推進の分離ということがありましたけれども、かつてのように、推進と並んで、地元の同意を得るようなことに手をかすような規制当局になるということは強く戒めなきゃならないと思っています。

 かといって、私たちが行っている規制の内容をきちんと御説明することは重要だと考えておりまして、これまでも、自治体等から御要請をいただいた場合には職員等が説明に行っておりますけれども、今後も、推進に手をかすというのとは別の意味で、技術的な内容をきちんとお伝えするための努力は続けてまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 推進のためのいわゆる規制ではないということ、これはもちろんそうでございますし、私がやはり求めたいのは、地元住民の皆様、また国民の皆様に広く、規制委員会がこう言っている、それは安心だというふうに思っていただけるような、そのことを理解できるような努力というものはぜひお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 今の田中委員長は福島の御出身だということで、先ほど所信にも御紹介いただいたところでございます。今後、福島県民の皆様が安心して故郷に帰還をして通常の生活を営んでいただけるようになるために、原子力規制委員会が果たす役割についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

更田参考人 御質問の内容につきまして、原子力規制委員会ができる大きなことは二つあろうかと思っております。

 一つは、やはり大きな不安の材料となっている福島第一原子力発電所の廃炉プロセスであります。この廃炉が安全かつ効率的に進むように、柔軟で、かつきちんとした規制をこの廃炉プロセスに対して行っていくこと。

 さらに、福島第一原子力発電所が今どういう状態にあって、そして潜在的なリスクはどのような状況にあるのか、これは、もちろん説明責任の一端は東京電力にもありますけれども、私たちも、東京電力とは別の立場から、現在行われている廃炉作業、そして今の福島第一原子力発電所の現状について、できるだけきちんと正確に、かつわかりやすくお伝えする努力をしたいと思っております。

 もう一点は、原子力規制委員会は福島県の周辺のモニタリング活動を行っております。このモニタリングに関する計測値を迅速に正確にお伝えするとともに、人と放射線、生活と放射線との関係に関して、私たちの科学的知識に基づいて、これもできるだけ深い御理解に至っていただけるような努力をしたいと考えております。

吉田(宣)委員 福島の方というのは、やはりなかなか難しい状況にいまだに置かれているという思いに立っていただければと思います。

 最後の質問になります。

 福島の原子力発電所の事故に関して発生をした風評被害、これがなかなか払拭をできない状況であろうかというふうに私は感じております。

 事故に伴う除染の基準値、また、事故で避難した住民が自宅に戻ることができるための放射線量の帰還基準、また、農水産物の放射性物質の基準等々の基準というものがあるわけでございますが、田中委員長は、この農水産物について、基準を国際レベルに持っていくことが大切ですねというふうな趣旨のお話をなさったかと私は承知をしております。

 そこで、原子力規制委員会として、これらの基準について何か積極的に見直しをしていくこと、そういうことがあるのかどうか、お聞かせをいただければと思います。

更田参考人 御質問にありました基準は原子力規制委員会が定めているものではありませんので、かた苦しい言い方をしますと所管外になるんですけれども、ただ、私どもも原災本部のメンバーでありまして、例えば、今御質問の中で特に言及がありました農水産物に対する基準に関して、田中委員長の発言についてですけれども、こういった基準を国際的な水準に照らしたものに改善する努力というのは重要であると私も考えております。

 一方で、こういった基準を国際水準に鑑みたものに変えていくことが生産者の方々にとってよいことかどうかというのは、これは非常に慎重な考慮が必要だと思っています。

 例えば、今の農水産物に対する基準というのは、過度と言ってもいいくらい厳しいものになっていると思っています。しかしながら、これを緩和することが本当に生産者の方にとってもいいことになるかどうかは、結果的にこれは消費市場がどう反応するかということも当然かかわってまいりますので、純粋に技術的、科学的な観点だけに立てば、今の基準は過度に厳し過ぎると思っております。

 ですから、科学者としてどう思うかということになれば、これは速やかに緩和すべきという意見になろうかと思いますけれども、ただ、これは、さまざまな困難にさいなまれてきた福島の生産者の方々のことを思えば、どういう結果をもたらすかということを慎重に考えていく必要があると考えております。

吉田(宣)委員 終わります。

佐藤委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 更田参考人にお尋ねいたします。

 更田参考人、所信でもお述べになりましたように、東電の福島第一原発事故について後悔と反省を覚えたとお話しでございました。

 この東電福島第一原発事故の原因についてどう考えるのか、事業者や規制機関の不作為と考えるのか、想定外の自然災害によるものと考えるのか、あるいはそれ以外の理由によるものなのか、お考えをお聞かせください。

更田参考人 非常に難しいところだと思います。

 事故の発生そのものに関して言うと、これは、当時なかなか予想することができなかった厳しい自然災害が事故の引き金になったと思います。

 しかしながら、事故の進展に当たっては、十分な準備がなされていたとは言えないというところもあって、事故の引き金を引いたのは、先生の御質問のお言葉をおかりするとすれば、想定外の事象によって事故が発生した、しかしながら、事故の対処にかかわる準備に関して言えば不十分なところがあったというふうに考えております。

塩川委員 三月の前橋地裁の判決で、原発事故避難者の損害賠償訴訟がございました。ここにおいては、国と東電は巨大津波の予見は可能だったとして、国については、二〇〇八年三月に東電の自発的な津波対策が難しい状況を認識しており、規制権限に基づき対策をとらせるべきだったのを怠ったと指摘をしているんですが、このような指摘についてはどのようにお考えでしょうか。

更田参考人 個別の係争中の訴訟に関することですので、お答えできることは限られているというふうに考えます。

 当時の判断として、あのような津波が予測可能なものであったかどうかという点について、これは実際問題として非常に難しかったであろうというふうに考えております。

塩川委員 次に、原子力事業者の隠蔽体質の問題について質問をいたします。

 原子力事業者の根深い組織的隠蔽体質は極めて重大だと考えております。東京電力に限ってみても、二〇〇二年の福島第一、第二原発、柏崎刈羽原発での原子炉圧力容器内のシュラウドのひび割れデータ改ざん問題や、二〇〇七年の柏崎刈羽周辺での活断層隠蔽などを繰り返してきました。福島事故の背景には事業者の隠蔽体質があったと言わざるを得ません。

 柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足を三年近く報告していなかったことなど、原発事故後も、隠蔽体質は今も続いています。

 事故、トラブル隠しやデータ捏造などの原子力事業者の隠蔽体質についてどのような認識をお持ちか、また、このような事業者とこの間どう対峙をしてこられたのか、お尋ねします。

更田参考人 隠蔽体質という言葉とは少し異なるかもしれませんけれども、ただ、やはり電気事業者には、みずからの言葉で安全を語らない、みずからの責任において安全のレベルについて発信しようとしない姿勢があるのは事実だと思っています。

 これは、これまでも電力経営層との意見交換等においてもたびたび指摘をしてきたことですけれども、国に認められているとか基準をクリアしているとか、そういった説明に終始する嫌いがあって、みずからの言葉で、みずからの責任で安全のレベルを伝えていくというような体質に欠けている部分があるというのは私自身も認識をしております。

 それから、東京電力に関して言いますと、御指摘の中にはありませんでしたけれども、格納容器の気密性試験におけるデータの捏造に関しては非常に重要な問題であったと思っていますし、当時の規制当局の対処に足らない部分はあったというふうには思っています。

 これをどう改めていくかですけれども、これはやはり、電力と規制当局、それからもちろん国民の方々も含めてですけれども、そういった間でのコミュニケーションの透明性を高めていくこと以外に方策はないだろうというふうに思っております。

塩川委員 原子炉等規制法の質疑の際に、田中規制委員長と私もやりとりしました。その際に、田中規制委員長は、こういう東電の隠蔽体質は根深いと発言をされておられました。その点では同じような認識はお持ちではありませんか。

更田参考人 これも、隠蔽体質そのものかどうかはわかりませんけれども、東京電力と接してきた上で実感しているのは、どうしても拭い去ることのできない、悪い意味でのプライドの高さのようなものは感じています。なかなか同一平面に立って、同じ地に立って対等に議論をするというよりは、どうしても、何といいますか、ふさわしい言葉ではないかもしれませんけれども、上から目線の体質というのは感じています。

 そういったものが、率直に、フラットに実情を伝えていこうという姿勢に欠けるというところが、先生のおっしゃる根深い隠蔽体質といった形に映ることもあろうかと思います。

塩川委員 最後に、新規制基準の中身についてですけれども、新規制基準の策定に当たってきたのが更田氏であります。

 政府は、日本の規制基準は世界最高水準と強調します。しかし、アメリカのNRCは、避難計画を一連の規制の中に取り込んでおります。アメリカNRCの元委員長のグレゴリー・ヤツコ氏は、避難計画が不十分なら、アメリカでは原子力規制委員会が原発停止を指示すると述べております。一方で、日本の規制基準には、避難計画を含む地域防災計画に係る事項が含まれておりません。

 これで、世界最高水準という政府の説明というのは妥当なのか、その点についての認識を伺います。

更田参考人 まず、地域の防災計画に関しては、原子力災害の特殊性に鑑みて、その基本的な考え方となる部分については、原子力規制委員会が災害対策指針を定めて、基本的考え方を示しております。

 また、地域の実情に合った防災計画が地方自治体によってつくられた後は、そのプロセスも含めて、内閣府に置かれた原子力防災の部門がそれを支援し、サポートをしております。さらに、策定された計画に関しては、原子力災害本部において、これは規制委員会もそのメンバーでありますけれども、その災害本部において、防災計画の妥当性について確認をしております。

 いわゆるプラントの規制と防災計画に関するところを一つの組織がやることのメリットとデメリットがそれぞれあろうかと思っています。深層防護の観点に立てば、防災は第五層として大きな役割を担っていますが、これは、独立した層としてそれを考える上では、防災計画をプラントの審査をやるところとは別のところで行うということには一定のメリットがあるというふうに考えております。

塩川委員 終わります。

佐藤委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 最後になりました。早速質問させていただきます。

 これまでの原子力規制委員会の取り組みを通じて、原子力規制委員会は国民から信頼を得られる組織となっていると考えておられるか、また、国民の信頼を得るために原子力規制委員会としてできていると考えること、また、まだまだできていないと考えることを率直にお聞かせいただきたいと思います。

更田参考人 規制当局に対する信頼ですが、これは、福島第一原子力発電所事故において、規制当局に対する信頼は地に落ちたと考えています。それが十分なレベルまで回復できたとは考えておりません。私たちはまだまだ途上にいるのであって、決して十分、十二分と考えられるレベルに達したと思うのではなくて、常に高みを目指して努力を続けたいと思います。

 できたこととできていないことですが、できている、これも完全というわけではなくて、ただし、そこそこできているかなということについて申し上げると、透明性の確保というのは十分な努力を払ってまいりましたし、かなりのレベルでできていると考えております。

 それから、安全上の問題だというのを特定したときに、経済性であるとかないしは事業者の都合を鑑みてためらうというような、そういった姿勢は捨て去ることができたと考えています。声を上げるということに関して規制委員会はちゅうちょしないという姿勢を持つことができていると思っています。

 それから、三つ目は迅速さですけれども、従来の規制のシステムにおいては、安全上の問題で改善すべき点があると特定されていても、その仕組みづくりに一年、二年、三年を費やして、なかなか実行に移されないという側面がありました。安全に関しては、できるところからすぐやるという姿勢はとれていると思っています。

 一方、できていないことですが、できていないことに関しては、まず一つには、これはどうしてもできないわけですけれども、実績であります。まだいまだに動いている発電所であるとか施設というのは限られておりますし、規制当局に対する信頼というのは基本的には実績を通じてのみ得られるものと思っていますので、実績という点では、当然のことながら、まだ足りません。

 それから、先ほども少し申し上げましたが、人材の育成であるとか、それから、規制当局、私たちの規制委員会は、あくまで審査に当たる者、検査に当たる者がみずからの科学的、技術的知見や経験に基づいて規制に当たるわけですけれども、肩書で語るとかそのときのポストで語るというような、どうしても政府組織として避けられないような体質というのは私たちの仕事には似合わないところがあって、やはり、個々人が個々人の名において技術的知識に基づいて発信をしていくというのは、これは委員のレベルだけではなくて、規制庁の隅から隅まで、そういったみずからの知識と理解において名乗って規制を行うという姿勢、これはまだまだこれからだというふうに考えております。

遠藤(敬)委員 ありがとうございます。

 二点目でございますけれども、原子力発電所の立地する地域の防災計画について、事故が起きた際、本当に逃げられるのか、また周辺住民の不安の声が大きいと認識をしております。

 住民の不安の声に応えるためにも、原子力規制委員会の安全審査の中で、各地域の防災計画の妥当性を審査した上で再稼働を認めるようにすべきではないかと考えておりますか、お伺いいたします。

更田参考人 防災上の対策は、極めて地域の細かい状況に左右される部分がありますので、あくまで地域の実情に精通した地方自治体がその計画を立てるのがベストであると考えております。

 ただし、その策定に当たっては、先ほど申し上げたように、内閣府がサポートをしておりますし、規制委員会も必要に応じて適切な助言であるとか支援等を進めております。

 また、常に最悪の条件にだけ備えていればあらゆる事態に適切に対処できるというわけではありませんので、さまざまな条件に照らした、防災計画の策定であるとか、それから、計画だけではなくて、訓練の重要性ということがありますので、よりよい訓練の計画の策定等についても、これは、よりよい訓練の策定には、どうしてもプラントと防災というのは抜き差しならぬ関連がありますので、私たちの科学的、技術的知見を生かして、その訓練計画等々の策定についても貢献をしてまいりたいと考えております。

遠藤(敬)委員 最後の質問でございますが、五人の委員全員が全ての専門分野に明るいわけではない中で、原子力規制委員会の判断が実質的に一人の専門に明るい委員の判断で左右されるといった批判の声があるのも事実です。

 それについて、最後の質問でございますが、この批判に対して、今後どのように改善していこうとお考えか、お伺いしたいと思います。

更田参考人 確かに、審査会合の進行等々におきまして、その分野の専門を背景とする委員が進行を務めてきたのは事実でありますけれども、一方で、規制上の許認可等々の判断に至っては、五人のそれぞれが意見を述べて、それぞれの判断を聞いたもとで原子力規制委員会の判断としておりますので、決して原子力規制委員会の判断が一人の委員の意見に左右されることはありません。

 ただ、そういった疑問、疑念を抱かれることのないようにするためには、一つの方策としては、五人の間での意見を活性化して、委員会での委員間の議論を促進するといったことが今後の改善につながるというふうに考えております。

遠藤(敬)委員 お疲れさまでございました。

 終わります。

佐藤委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 規制基準の一つに、特定重大事故等対処施設を設置する規定がございます。これは、原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムに対して対処する施設を指しますが、設置をしなければ原発の運転の許可は取り消しになります。

 特定重大事故等対処施設の設置期限は、新規制基準施行日の二〇一三年七月八日ではなく、そもそも五年間の猶予期間が設定され、二〇一八年七月七日になっておりました。ところが、原子力規制委員会は、この設置期限をさらに延ばすため、それぞれの発電所の本体施設の工事認可が終わって五年以内と規定を変更しました。

 もともと猶予期間規定があった規制基準を電力会社の不利益とならないように改変したものであり、これは規制機関のあり方として問題があるのではないのか。当時の委員でもあります更田参考人にお尋ねをいたします。

更田参考人 御質問にありましたように、新規制基準策定の時点において、特定重大事故等対処施設に関しては五年間の猶予という規定を設けました。

 しかしながら、これは率直に申し上げて、その後の新規制基準適合性審査に要する時間がはるかに当初の予想を超えた。幾つかの要件はありますけれども、自然条件等々に関する審査を行うことに、はっきり言って、予想をはるかに上回る時間を費やした。

 審査に時間がかかることをもって時間切れになってしまうというのは、これは推進とか規制とかという問題ではなくて、純粋にアンフェアであろう。

 改善のためには、どうしても猶予期間を設けざるを得ません。即時でなければ何事もというのであれば、継続的な改善というのは決して進みませんので、猶予期間というのはどうしても必要です。そして、その猶予期間をより合理的にするためにも、工事計画の認可から五年間というふうに改めた次第でありまして、これは私は改善だと思っております。

佐藤委員長 ほかにございませんか。

 なければ、これにて更田参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 更田参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして人事官の候補者及び原子力規制委員会委員長の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

 午後五時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後三時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時三十分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 まず、決議案の取扱いに関する件についてでありますが、去る二日、民進党・無所属クラブの逢坂誠二君外一名から、法務委員長鈴木淳司君解任決議案が提出されました。

 本決議案は、本日の本会議において議題とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、本決議案の趣旨弁明は、提出者の階猛君が行います。

 討論につきましては、自由民主党・無所属の会の宮崎政久君から反対、民進党・無所属クラブの井出庸生君、日本共産党の藤野保史君から、それぞれ賛成討論の通告があります。

 討論時間は、宮崎政久君、井出庸生君はおのおの十分以内、藤野保史君は七分以内とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次に、本日の議事日程第一ないし第三は、これを延期するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成二十九年五月九日

    午後五時開議

 第一 道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

向大野事務総長 まず最初に、動議により、法務委員長鈴木淳司君解任決議案を上程いたします。民進党の階猛さんが趣旨弁明を行います。次いで三人の方々からそれぞれ討論が行われますが、順序は印刷物のとおりでございます。自民党、公明党及び維新の会が反対でございます。

 決議案の議事が終わりましたところで、動議により、日程を延期して、散会することになります。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 一、決議案の取扱いに関する件

  法務委員長鈴木淳司君解任決議案(逢坂誠二君外一名提出)

   趣旨弁明      階   猛君(民進)

   討論通告

      反 対    宮崎 政久君(自民)

      賛 成    井出 庸生君(民進)

      賛 成    藤野 保史君(共産)

   採決(起立)

    ―――――――――――――

佐藤委員長 それでは、本日の本会議は、午後五時五十分予鈴、午後六時から開会いたします。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、来る十一日木曜日午後一時から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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