衆議院

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第1号 平成23年2月22日(火曜日)

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平成二十三年二月二十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      石毛 えい子君    磯谷香代子君

      稲見 哲男君    打越あかし君

      生方 幸夫君    小川 淳也君

      小原  舞君    緒方林太郎君

      大西 健介君    勝又恒一郎君

      金森  正君    金子 健一君

      川口  博君    川村秀三郎君

      吉良 州司君    郡  和子君

      佐々木隆博君   斎藤やすのり君

      柴橋 正直君    白石 洋一君

      杉本かずみ君    平  智之君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      玉城デニー君    津村 啓介君

      中根 康浩君    中野渡詔子君

      中林美恵子君    仲野 博子君

      仁木 博文君    花咲 宏基君

      浜本  宏君    福田衣里子君

      本多 平直君    松岡 広隆君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      宮島 大典君    向山 好一君

      村越 祐民君    森本 和義君

      森本 哲生君    森山 浩行君

      矢崎 公二君    山尾志桜里君

      山岡 達丸君    山口  壯君

      山崎  誠君    山田 良司君

      渡部 恒三君    秋葉 賢也君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      菅原 一秀君    長島 忠美君

      野田  毅君    馳   浩君

      宮腰 光寛君    山本 幸三君

      坂口  力君    遠山 清彦君

      笠井  亮君    宮本 岳志君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

      山内 康一君    田中 康夫君

    …………………………………

   公述人

   (早稲田大学法学学術院教授)           犬飼 重仁君

   公述人

   (岡本アソシエイツ代表) 岡本 行夫君

   公述人

   (株式会社野村総合研究所主任エコノミスト)    佐々木雅也君

   公述人

   (上智大学名誉教授)   堀  勝洋君

   公述人

   (日本労働組合総連合会副事務局長)        逢見 直人君

   公述人

   (全国農業協同組合中央会専務理事)        冨士 重夫君

   公述人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           駒村 康平君

   公述人

   (全国労働組合総連合事務局長)          小田川義和君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     松岡 広隆君

  打越あかし君     大西 健介君

  小川 淳也君     勝又恒一郎君

  大串 博志君     森山 浩行君

  川村秀三郎君     川口  博君

  吉良 州司君     花咲 宏基君

  佐々木隆博君     玉城デニー君

  城島 光力君     浜本  宏君

  竹田 光明君     山尾志桜里君

  仲野 博子君     山岡 達丸君

  三谷 光男君     緒方林太郎君

  水野 智彦君     金子 健一君

  村越 祐民君     仁木 博文君

  渡部 恒三君     山田 良司君

  小里 泰弘君     秋葉 賢也君

  馳   浩君     宮腰 光寛君

  遠山 清彦君     坂口  力君

  笠井  亮君     宮本 岳志君

  山内 康一君     柿澤 未途君

  下地 幹郎君     田中 康夫君

同日

 辞任         補欠選任

  緒方林太郎君     山崎  誠君

  大西 健介君     打越あかし君

  勝又恒一郎君     平  智之君

  金子 健一君     水野 智彦君

  川口  博君     杉本かずみ君

  玉城デニー君     斎藤やすのり君

  仁木 博文君     村越 祐民君

  花咲 宏基君     吉良 州司君

  浜本  宏君     中林美恵子君

  松岡 広隆君     玉木 朝子君

  森山 浩行君     福田衣里子君

  山尾志桜里君     竹田 光明君

  山岡 達丸君     仲野 博子君

  山田 良司君     渡部 恒三君

  秋葉 賢也君     長島 忠美君

  宮腰 光寛君     馳   浩君

  坂口  力君     遠山 清彦君

  宮本 岳志君     笠井  亮君

  柿澤 未途君     山内 康一君

  田中 康夫君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤やすのり君    佐々木隆博君

  杉本かずみ君     川村秀三郎君

  平  智之君     白石 洋一君

  玉木 朝子君     稲見 哲男君

  中林美恵子君     森本 和義君

  福田衣里子君     中野渡詔子君

  山崎  誠君     柴橋 正直君

  長島 忠美君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  柴橋 正直君     小原  舞君

  白石 洋一君     森本 哲生君

  中野渡詔子君     磯谷香代子君

  森本 和義君     向山 好一君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     大串 博志君

  小原  舞君     三谷 光男君

  向山 好一君     矢崎 公二君

  森本 哲生君     宮崎 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 岳志君     小川 淳也君

  矢崎 公二君     城島 光力君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず犬飼重仁公述人、次に岡本行夫公述人、次に佐々木雅也公述人、次に堀勝洋公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、犬飼公述人にお願いいたします。

犬飼公述人 早稲田大学法学学術院教授の犬飼と申します。

 貴重な機会をお与えいただきまして、まことに光栄に存じます。

 本日は、平成二十三年度予算案に位置づけられております新成長戦略に関し、金融関係を中心に、経済回復を本格軌道に乗せるための新成長戦略の必要性、我が国が成長戦略としての金融戦略を持つことの重要性という観点も含めて、私なりに少し意見を申し述べさせていただきます。

 私は、民間企業におきまして二十年、東京とロンドンの財務金融部門を経験いたしまして、二〇〇二年からは、内閣府所管の総合研究開発機構の研究員として、我が国金融資本市場を取り巻く諸制度、システムを、そこに参加する市民とユーザーの側に立ち、我が国とアジアの成長に役立つためのものに抜本的に変えていこうということで、早稲田大学との共同の研究プロジェクトを実施しました。その後も、その思いはアジアにまで拡大をし、二〇〇八年に早稲田大学教授に就任してからも、同じテーマで、グローバルCOE研究所長であります上村達男教授のもと、研究活動に従事し、現在に至っております。

 新成長戦略の金融部分には、「ユーロ市場と比肩する市場を我が国に実現する」ということがうたわれておりますけれども、このことこそ、我が国の金融戦略の核心ではないかと考えております。

 私は、民間事業会社の財務部門のロンドンの金融子会社に一九八七年の秋から六年数カ月在籍をいたしまして、ユーロ市場のダイナミズム、便利さ、プロの市場参加者みずからが積極的に市場のイノベーションを生み出していく力、産業や雇用の観点からの英国の金融業の層の厚さ、さらには、英国のみならずベネルクス三国との有機的連携のもとでロンドン中心のユーロ市場が有効に機能しているということを、直接肌で感じたということがございます。

 そして、一九九四年に日本に戻りまして、最初に国内債の発行を担当したのですけれども、ロンドンに行く前と帰ってきてからとを比べても、日本の社債市場は非常に使いにくいままで、全く変化がなかったことに、当時、驚きを禁じ得ませんでした。

 そのとき、強くみずからの心に刻んだのは、日本とアジアの金融市場を、いつの日かユーロ市場並みの自由で使い勝手のよい市場にする必要がある、そして、東京をロンドンに比肩し得るようなアジア域内金融市場の代表にする必要があるということでありました。

 私がそういう思いを抱いて帰国してから既に十七年が経過しましたが、政策立案者の皆様、関係省庁の皆様、そして市場参加者の御尽力によりまして、現在の我が国の金融資本市場インフラについて言えば、恐らく、アジア域内で最も詳細で、かなりの程度高度化され、洗練され、かつ成熟した証券決済システムなどの市場システムインフラと証券関連の規制システムを持っておりまして、安定的に運用している、そういう積極的な評価ができるのではないかと思っております。

 しかし、現在まで、国内債券市場の利用は、国債以外限定的であります。そこには、一見技術的でテクニカルに見える要因がかなりの程度かかわっておりまして、発行体や機関投資家などにとって、個別具体的に見て使いやすい市場インフラが提供されていないという問題がございます。

 また、我が国の雇用の確保の観点からは、進んだシステムインフラの上に、取引コストが合理的で、使い勝手のよい国際的金融市場を整備することで、高度なスキルを持ったサービス産業としての金融を発展させて、すそ野の広い雇用を確保するということがこれからの重要な課題であるというふうに考えております。

 金融市場では、市場は自然に成長することはできません。それを支える関連の制度システムが市場のあり方を規定します。この点は、一般の物やサービスの市場とは大きく異なる点であります。東大の神田秀樹教授の、金融市場は人為的なものであり、規制するのもしないのも当局の判断、すなわち決め事であるとの御指摘は、いつも忘れてはならないと思っております。

 例えば、一九八〇年代のユーロ債市場で発達した、債券を発行しやすくするための仕組みでありますMTN、ミディアムタームノートプログラムが、まだ日本には存在しません、中国においてさえ、既に数年前から存在しておるわけでございますけれども。

 日本の債券市場は、プロ投資家向けの発行が大宗を占めているにもかかわらず、法制度と実務慣行におきまして、個人投資家向けを含みます極めて詳細な開示内容を一律に要求するものとなっておりました。また、海外投資家の日本国内での起債意欲は高いにもかかわらず、日本語開示が障害となって発行額は伸びておりません。

 さらに、海外投資家が日本の公社債に投資する場合、過去、国債と地方債の利子にかかわる源泉税が免除されたのに、社債だけが課税されるという問題がございました。

 こうした状況を踏まえて、早稲田大学では、プロ向け債券市場創設の必要性についての提言を、二〇〇七年以来、たびたび行ってまいりました。

 このような状況を改善すべく、金融庁では、金融・資本市場競争力強化プランの一環といたしまして、二〇〇八年末に、プロ向け市場整備のための新たな開示免除証券市場の枠組みが起案され、法制化をしていただきました。これにより、新たな市場の開設が可能となったわけでございます。また、非居住者の受け取る社債利子の源泉徴収に関しても、二〇〇九年末に、政府により課税をゼロにすることを決定していただきました。

 これらの、政府の二つの政策決定は、我が国の金融資本市場の内と外を隔てていた市場の断絶を埋めるトリガーとなったわけでございます。

 これらのことは、非常にテクニカル、技術的なことに見えるようで、余りメディア等におきましても重要なこととして取り上げられませんでしたが、金融資本市場においては、一見テクニカルに見えることの中に、大変重要な、市場のあり方の根底を覆すような内容がしばしば存在いたします。

 これらの重要な政策決定をリードいただきました皆様方と各省関係者の皆様に、この場をおかりして御礼を申し上げる次第でございます。

 世界的に見て、プロ向け金融資本市場は、もともとグローバルな特質を有するものですが、日本を筆頭に、アジア域内各国の資本市場の多くでは、このような制約条件の多くが存在したために、国をまたぐユーロ市場のような国際債市場とは分断され、国際的なプロ市場のイノベーションが各国の国内市場に持ち込まれにくかったということが言えます。

 ところで、現在、我が国から欧米を経由して、欧米からの投資としてアジアに出ている資金を、直接東京からアジアに流せるようにすることも重要です。それによって、我が国の政治経済的なポジション、これを強化することも可能となります。日本の持つ金融資産は巨大ですが、海外に向かうものはほとんどが欧米経由でございます。

 英国は、自国経済が縮小する中にあって、金融市場を拡大させ、ロンドン経由で資金が世界に流れるようになっていることで、実際の国力以上の影響力を保持してまいりました。英国ほどになるのは遠い将来の話であるにせよ、なるべく東京から直接アジアに資金を流すことができるようになれば、他国から資金を呼び寄せることにもつながるわけであります。

 さて、プロ向けの債券市場について、我が国においては、二〇〇九年年末までに、今申し上げたように、法律と税制という、国内債とユーロ債等の国際債とを概念的に隔てていた二つの制約、これが取り除かれたわけでありますが、これは、我が国が欧州ユーロ市場のようなプロ市場を目指すための最低限の必要条件がまさに今整ったということを意味しております。

 そこで、この二つの制約が取り払われたそのタイミングをとらえまして、大学の主催で、市場実務家、企業の財務担当者、研究者、法律家、そして関係省庁のオブザーバー参加も得まして、二〇一〇年二月から四月まで、アジア・デットリスティング研究会を集中的に開催し、概念的な提言に詳細な新市場の設計図を加え、より具体的な新市場創設提言としての、アジア域内プロ向け国際債市場と、その日本版であります我が国プロ向けの公募債市場創設提言を、昨年四月に公表いたしました。

 このプロ向け債券市場の整備提言のエッセンスは、二〇一〇年六月公表の経済産業省の産業構造ビジョンにも採用いただき、そして、官邸の新成長戦略策定に際して、経済産業省、財務省より、プロ向け債券市場の創設を後押しすることが提案されました。金融庁からも、ユーロ市場に伍していくことを目指すプロ向け社債市場の整備が提案されました。

 これらを受けて、金融戦略を第七の柱とする新成長戦略が、六月十八日、閣議で決定、即公表をいただいたわけでございます。

 この新成長戦略の金融部分には、ユーロ市場と比肩する市場を我が国に実現するためのプロ向けの社債市場の整備、アジア域内の豊富な貯蓄をアジアの成長に向けた投資に活用することがうたわれ、金融自身も成長産業として発展できるように、市場や取引所の整備、金融法制の改革等を進め、ユーザーにとって信頼できる利便性の高い金融産業を構築することで、金融市場と金融産業の国際競争力を高めるとございます。

 実行計画、工程表の金融部分では、プロ向け社債市場の整備は二〇一〇年の早期実施事項として掲げられておりまして、アジア債券市場の構築に関しても、アジア域内の豊富な貯蓄をアジアの成長に向けた投資に活用するため、二〇一〇年にASEANプラス3の債券市場フォーラム、ABMFの設立、二〇二〇年までにアジア債券市場を育成して日系企業等の現地通貨での資金調達を円滑化することなどがうたわれております。

 我が国の新成長戦略の金融部分において、このように我が国が目指すべきビジョンとスケジュールが明確に示されたことは、極めて重要かつ意義深いものがあると考えております。

 これを受けまして、東京証券取引所グループでは、新市場の実現に向けて、二〇一〇年十一月に東京プロボンドマーケットの制度概要を発表、本年四月以降のスタートに向けて準備がなされているところであります。

 この東京プロボンドでは、プロ向け市場制度をフル活用しつつ、ユーロ債市場のような柔軟で機動的な債券の発行を実現し、国内外の発行体と投資家、さらには証券会社などの関係業界の利便性を向上させ、アジアの中核としての我が国の債券市場の発展に資することを目的にしています。

 また、海外のミディアムタームノートプログラムと同様、発行体の基礎的な情報や財務情報、当年の起債予定をプロボンドに登録、ミディアムタームノートプログラムとして上場することによって、その予定額の範囲内で、随時、債券を発行できる便利な仕組みが導入されます。

 海外発行体に対しても、高い利便性が提供されます。海外発行体が日本の国内市場で発行するいわゆるサムライ債発行については日本語開示が必要でしたが、プロボンドでは英語のみで可能になります。日本の会計基準に加え、国際会計基準、米国基準も採用し、円建て以外のさまざまな通貨やイスラム債の形式での発行も可能となります。

 次に、ただいま申し上げた官邸の金融戦略に含まれておりましたABMFの活動についても、一言触れさせていただきます。

 私も、二〇一〇年九月に設立されたABMFのサポートメンバーに加えていただいておりまして、実際、アジア開発銀行、ADBと日本の財務省国際局の御尽力もあり、ASEANプラス3、ASEAN十カ国と日中韓でございますが、これも非常にいい形で動き始めております。

 二〇一〇年九月に、域内の官民、アジア開発銀行、域内各国の当局者及び民間の金融資本市場専門家の協力を得まして、ABMFの第一回の会合が東京で行われました。そこで、取引規制や市場慣行の調和、調整のあり方についての討議を行い、域内共通のプロ向け債券市場の重要性についてビジョンを共有し、目指すべき方向性についてのコンセンサスが図られました。十二月には第二回がマニラで、そして二月、先週には第三回がクアラルンプールで開催されております。

 ASEANプラス3のチームでは、今、域内のクロスボーダー取引の障害となっている各国の規制、市場慣行等に関する情報収集を行っておりますが、二〇一一年一月二十五日の閣議決定の新成長戦略実現二〇一一の中にも、本件にかかわる報告書の作成を盛り込んでいただいております。本年中の完成に向け、私自身も、ABMFのメンバーとともに作業を続けておる次第であります。

 おかげさまで、日本のチームが率先垂範して主体的に日本市場にかかわる情報の取りまとめを行いましたので、これに続き、韓国、中国等からも、非常に質の高い情報の提出が実現しております。

 このように、ABMFでは、二〇一〇年秋以降、各国の官民合同チームが、一つの目的に向かってビジョンを共有し、きずなを強め、主体的に連携をとりつつプロジェクトを進めています。

 日本の事実上のリーダーシップのもと、中国や韓国等も含めて、このような官民一体型の柔軟な国際的連携が実際に機能しているということは大変喜ばしく、そのようなあり方は、今後日本がアジアとともに進むべき一つの重要なモデルを提供しているのではないかとも感じております。

 そして、その大前提として、今回、我が国の新成長戦略の中にプロ向け社債市場の整備とアジア債券市場の構築を盛り込んでいただいたことは、政府によるサポートのあかしとして極めて重要な意味を持っていたと感じておるところであります。

 最後に、域内のプロ向け市場インフラが順調に整備されていったとしても、今後に重要な課題が残されております。

 市場参加者の質の高さ、ルールの公正さ、市場の信頼を担保可能な自己規律の存在、そして市場としての使いやすさといったことが重要であります。域内各国における法規制の存在だけではなく、プロの市場を規律するため、自主ルールと実務慣行の確立が必要になると考えられます。

 ここでも、特に日本が優位性を持っておりますのは、新市場の自主ルール等の制度や慣行の構築に際して、金融商品取引法に先進的な目的規定を持っていることに象徴されるように、プロの市場参加者も市場における公正な価格形成や高質な資本市場の機能確保に対する責務を負っているとの位置づけを、他のアジア域内の諸国や取引所などに先行、率先して示すことができる点にあると思われます。

 その意味におきましても、また我が国成長戦略の基盤としても、金融資本市場法制そして会社法制のさらに一歩先んじた確立が不可欠と存じます。

 したがいまして、今後、日本のかじ取りによって、アジア域内の新市場の市場参加者の自主ルール等、市場制度、市場慣行の策定、確立が期待されていると言ってよいと思います。

 ちなみに、香港やシンガポールでは、厳密な当局による規制が前提でございまして、自主ルールの概念すら存在しておりません。日本のリーダーシップによって、日本とアジア一体の、世界に開かれた信頼される域内金融資本市場新時代が一日も早く到来することを切に願ってやみません。

 最後に、そのような官民連携による努力を通じまして、我が国の企業グループと金融機関こそがアジアの成長とともにあり、日本の企業の発行する証券への投資が成長するアジア投資への最も効率的、効果的かつ安全な方法であるという、新たな国際常識が一日も早く確立されることを望みたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、岡本公述人にお願いいたします。

岡本公述人 岡本行夫と申します。

 このような場で意見を陳述する機会を与えていただき、大変感謝しております。

 二〇〇一年から始まった二十一世紀の最初の十年が昨年終わりました。我々は、今、二〇二〇年まで続く二十一世紀の第二の十年間の劈頭に立っております。

 そこで、私は、まず十年ごとの総括をしてみたいと思います。

 復興の一九五〇年代、高度成長の六〇年代の後、日本は七〇年代も石油危機を乗り越えてたくましく成長いたしました。一九七五年に始まった先進国サミットを初め、国際社会へ本格的に参入したのもその十年間のことでした。

 八〇年代は、今から振り返れば、日本の絶頂期でした。世界最大の金融資産を持つ国として、経済的にはスーパーパワー、安全保障面でも責任を持って世界に貢献していける国とみずからを意識していました。

 ところが、九〇年代に入って、バブルは崩壊し、日本は大きくつまずきました。安全保障面でも、九〇年からの湾岸戦争で、金以外には何の貢献もできない国であったことが露呈されてしまいました。

 そして、二十一世紀に入ってから昨年までの十年間。経済的には、一時期、規制緩和と改革によって勢いを取り戻したものの、格差反対の声に押しつぶされて反転上昇はならず、結局、九〇年代と合わせて失われた二十年となってしまいました。

 さらに深刻なのは、国際社会との関係です。

 日本が昨年まで十年間に対外的に失ったものは、失われた十年間よりさらに大きかったものと思います。今や、日本は、政治、安全保障の面で世界の主要舞台から外れてしまった感すらあります。

 日本の存在感の希薄化は覆いようがありません。私はいろいろな国際会議に出席いたしますが、日本の名前が言及されることがめっきり減りました。アジアといえば、中国、インドそして韓国の発展の話になってしまいます。

 日本のGDPが世界に占める割合は、ピークだった九四年の半分以下になりました。ODAも九〇年代から四割以上減りました。そうした日本に対する世界の関心も、大幅に後退しています。我々は欧米とアジアのかけ橋になるなどとよく言ってきましたが、今や空疎なレトリックでしかありません。

 日本としても、特にここ一、二年、グローバルな関心が薄れたように思います。日本の外交フロンティアは縮小し、隣国との状況対応型の外交のみになっています。例えば、ここ一カ月に中東で起こっている激動に対して、政治は余り関心を払っているようには見えません。最近では反政府運動にイスラム原理主義者たちのかかわりも指摘され、長期的な中東情勢とエネルギー供給の安定性を損なう事態に発展するかもしれない事態であるのにです。

 さらに深刻なことがあります。

 日本の安全保障が、近隣諸国、特に中国との関係で脆弱になりつつあることです。驚異的な軍事膨張を続ける中国が眼前にいるのに、政府は、安全保障の最後のとりでであるアメリカとの関係さえ不安定化させてしまいました。

 予算委員会の場でございますので、本日は、予算に直接絡む防衛費と経済協力費に限って申し上げます。

 最大の問題は、このままいけば、今から十年後に、世界の中での日本の安全はどうなってしまうかということであります。

 成長の勢いは失われましたが、我々日本人は、今極めて居心地のいい社会に住んでいます。

 昨年八月、米国のニューズウィーク誌が、世界で最も心地よい国のランキングを発表いたしました。一位はフィンランドでしたが、人口の大きな国について見れば、日本がアメリカや西欧主要国を抑えて世界第一位とされました。今の日本社会の快適さ、安全さ、清潔さ、便利さ、世界一もむべなるかなと思います。

 しかし、今の日本社会の心地よさは、次世代の子供たちが享受すべき幸福を我々が無責任にも先食いしているからであります。

 既にある高福祉に加えて、さらに防衛予算総額を上回る子ども手当制度をつくるなどの高額支出を伴う施策を新たにとる一方、消費税率は先進国の中でほとんど例を見ない低水準に抑えたまま、所得税の免税点も高いままです。

 言われなくてもわかっているとおっしゃるでしょうが、来年度の税収見通しは四十一兆円です。この税収は、ほぼ全額が、地方交付税十六兆円、国債費二十二兆円で、消える計算になります。つまり、五十四兆円の一般歳出は、基本的にすべて借金で賄わなければならないのです。前代未聞の予算編成であります。

 この財政状況の中で防衛費とODAの拡充を望むことは、ない物ねだりととられるかもしれません。それでもあえて申し上げたいのは、この二つの経費は国家存立のためのコストであり、これ以上の減額は許されないのみならず、できるだけ早い機会に増加させていかなければいけないということです。国内に応援団が少ないこともあって、日本は、この二つの経費が持つ意味を軽視してきました。その結果、国家は危機のふちに近づいているということです。

 我々が次の世代に対して無責任に振る舞ってきたのは、財政面だけではありません。脆弱な国家安全保障を次の世代に残しつつあることも同様に、そして極めて深刻だと信じます。

 まず、防衛関係費について申し上げます。

 日本にとっては、北朝鮮からの脅威はもちろん大問題ですが、北朝鮮は、仮にも日本を攻撃すれば、日米安保体制のもとで米軍から重大な報復を受けることになりますから、日本への軍事攻撃の蓋然性はさほど高くないと思います。日本にとって現実かつ最大の危機は、膨張する中国の軍事力、特に海洋戦略であります。

 中国は、一九九二年の領海法によって、スプラトリー、プラタス、パラセル、マクルスフィールド、中国側は、これをそれぞれ南沙、東沙、西沙、中沙と呼んでおりますが、それに台湾、そして澎湖列島、そして尖閣諸島を中国領土に編入しました。中国は絶対に譲れない国益をみずからの核心的利益と呼んでいますが、この中にさきに挙げた島嶼群がすべて含まれることは、昨年十二月の戴秉国論文などからも明らかであります。

 中国は、九州から沖縄列島を経て台湾、フィリピンを結ぶ、いわゆる第一列島線の内側の海域を着実に支配しつつあります。中国は、この後、第一列島線を越えて、東京、伊豆七島、小笠原、サイパン、グアムを経てパプアニューギニアに至る、いわゆる第二列島線までの海域に進出することを基本戦略としています。そのため、核ミサイル搭載のものも含め、六十隻を超える潜水艦隊を保有し、かつ複数の空母機動部隊を建設しようとしております。

 アメリカ海軍は、横須賀の第七艦隊を含め、二個ないし三個の空母機動部隊が西太平洋、インド洋の広大な海域をパトロールしております。これに対し、中国海軍の場合、複数の空母機動部隊が南シナ海から日本周辺までの狭い海域に展開されることになるでしょう。このまま、あと十年もすれば、強大な中国の海軍力が、太平洋も含めて日本に近接する海域に展開されることになると思います。

 この十年間で、中国の国防予算は実に二六八%増加しました。なのに、主要国の中で、ただひとり日本だけは防衛予算を減らし続けております。苦しい財政事情の中でも予算総額は過去十年間で一一・八%増加しましたが、防衛関係費は三・六%の下落です。今や防衛費の対GDP比率からいえば、日本は世界の百四十位以下という状態なのです。

 特に問題なのは、正面装備を取得する予算額が年々減少し、今や装備の整備維持に必要な経費以下になってしまっていることです。膨張し続ける中国に対しては、何よりも正面装備の充実が必要です。周辺諸国は皆そうしています。人件糧食費が自然に増加してしまうために、本来の意味での日本の防衛力が減退してしまう、そうしたことを防ぐことが国家予算制度であると信じます。今回は間に合いませんが、二十四年度予算において、せめてあと一千億、一千億円の正面装備が増額されれば、防衛力にとってはかなりの改善になると信じます。

 次期防衛大綱は、基盤的防衛力構想から動的防衛力構想に転換いたします。変化する日本の脅威に対応するための策ではありますが、本来は、防衛構想を変えることで対応する前に、防衛費を増額して最低限の防衛体制を確保し、次世代に引き継ぐのが我々の責務のはずであります。

 日本の安全保障の基本は抑止にあります。

 抑止というのは、相手が攻めてくればこれを撃退して、手ひどい損害を相手にも与える実力をふだんから維持することによって相手の侵略意図をくじくということであります。

 私は、十年ほど前に、本院の委員会で参考人として、「抑止とは結局、周辺の諸国が日米安保体制の信頼性ということをどのように見るか、つまり、日本自身以上に周りの国々がこの安保体制をどのように認識するかという問題」であると陳述いたしました。今もそう思っております。

 憲法上、専守防衛の日本は自己完結的な抑止力を有しておらず、米国の攻撃力による相手への報復能力に頼らざるを得ません。つまり、常日ごろから日米同盟の緊密さを相手に見せつけることで初めて抑止の概念が成立するのです。

 例えば、艦載機も含めれば二兆円もする航空母艦、それに随伴艦も含めれば三兆円近い第七艦隊を首都に隣接する横須賀に配置していること、そして、沖縄の第三海兵隊遠征師団も含めた米海軍のプレゼンス全体が、アメリカの日本防衛の強い決意として周辺諸国に伝わっているのです。この意味で、米軍の日本駐留を円滑に確保するための在日米軍関係経費も日本の安全のために必須の経費であります。

 続いて、ODAについて申し上げます。

 ODAは、当初予算ベースで見れば、ピーク時の九七年の一兆一千六百八十七億円から来年度の五千七百二十七億円まで、実に四〇%以上削減されてきました。ODAの縮小により、日本は国際社会で友人を失ってきています。日本の地位低下は、ODA予算が減り続けていることもその一つの原因であります。

 感覚論ではありません。日本が大キャンペーンを張った安保理常任理事国入り、日本の悲願を可能にする国連憲章改正のためには、一定数の共同提案国が必要でした。しかし、日本のために共同提案国として名乗りを上げてくれたのは、アジアではわずかに、アフガニスタン、ブータン、モルディブ、この三カ国だけでした。

 日本は自由と民主主義を信奉する世界第二位の経済大国と決まり文句を言えば、自動的に国際社会で高い地位を与えられる時代は終わりました。グローバリゼーションによる価値の相対化が起こり、中国ですら、大規模に国連PKO活動に協力する中では、言葉でない実質的な貢献が求められています。

 これから、日本は、世界の政治や安全保障の舞台で重要な役割を果たすことができるのか。日本は、世界の安全維持に対して国の規模にふさわしい義務を果たせるのか。残念ながら、展望は明るくありません。リスクをとれない国情、日本人の人命だけは危険にさらさないという超安全主義、大胆な決断を行えない政治システムなどが立ちはだかるからです。

 しかし、日本がみずからは血を流さない国として世界で生きていくにしても、コストはかかるのです。それがODAです。それなのに、経済協力費は十二年続けて減額されています。

 政府原案のODA、五千七百二十七億円は、一般歳出五十四兆八百億円のわずか一%にすぎません。日本の危機的状況に思いをいたせば、一律削減の例外扱いにすることは可能だったはずです。ODAは、つき合いでも、人道、博愛でもありません。日本が世界で生きていくための不可欠のコストであります。

 最後に、一つ申し上げたいことがあります。

 ODAが減額され続ける中で日本の国際貢献の陣頭に立たなければならないのが、JICA関係者、海外青年協力隊員、外務省職員、NGOの人々です。

 私の脳裏を去らない言葉があります。一九九三年四月、当時二十五歳の国連ボランティアであった中田厚仁君がカンボジアでゲリラに殺され、国際平和構築にかかわった日本人として初めての犠牲者となりました。その彼が、前年、カンボジアを訪れた私に、決然とした面持ちで語った言葉です。日本が国としてカンボジア和平に人を出さないから、僕が今ここにこうして来ているんですと。

 日本は、外交官やJICA関係者や中田君のような丸腰の人々に、過重で過酷な献身を求めております。

 例えば、政府は、インド洋で、極めて安上がりの予算ながら、テロリストの交通を遮断するための貢献として各国から評価されていた洋上給油活動を中止しました。武力行使との一体化という、実態とはかけ離れた理由で国際チームから引きはがしました。そして、かわりに五十億ドルという目をむくような巨額の援助をアフガニスタンに供与することにしました。

 テロと闘っている国々の失望と財政上の損得勘定に目をつぶれば、東京ではこれで済むかもしれません。しかし、治安の悪化するアフガニスタンの現場で、この巨額援助を実際に復興支援プロジェクトに仕立てて実施していかなければならない七十名のJICA関係者の負担と危険はどうなるのか。

 ほかの国であれば、身を守る手段と訓練を受けている軍隊が出るところを、日本の場合、自衛隊は法的あるいは組織上の理由で出動できません。その部分が援助関係者や外交官の負荷となっている面があるのです。

 本来、我々はこの人たちに最大の敬意と感謝を払うべきなのに、JICAは事業仕分けの対象とされ、なぜ国家公務員並みの宿舎が必要なのか、ウイークリーマンションでもいいじゃないか、国民が期待するのはJICA全員がエコノミーで旅行することだ、なぜ外交官の八割もの手当が必要なのかなどと仕分け人に居丈高に宣告されて、予算が削減される。その結果、危険な任地に勤務するJICA職員も、疲弊しながらエコノミーで日本と往復することになりました。我々はこれで留飲を下げるのでしょうか。

 途上国に派遣された日本の援助関係者の評判には、他国の追随を許さないほど高いものがあります。仕分けによる無駄遣い探しは当然ですが、援助の本質から離れた議論によってこうした人々の士気を阻喪させるのではなく、彼らを支援してやるべきだと思います。今もなお、世界各地では、一万人のJICA関係者と海外青年協力隊の若者たちが、国の名誉をかけ、献身的に援助活動に携わっております。

 ちょうど時間ですので、終わります。ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、佐々木公述人にお願いいたします。

佐々木公述人 ただいま御指名いただきました野村総合研究所の佐々木でございます。

 本日は、陳述の機会を賜りまして、まことにありがとうございます。

 私、金融市場あるいは実体経済を日々観察しながら、日本や世界のマクロ経済を分析するのをなりわいとしておりますけれども、マーケットの声、マーケットに携わる方々の話を聞く限り、今の日本政治の状況を極めて冷ややかに見ているという声をよく聞きます。

 市場では、昨日の月例経済報告でもございましたけれども、日本経済は緩やかながら回復を続ける、後から述べますけれども、日本国債の消化という点につきましては大きな懸念がないという見方が一般的でございます。

 むしろ、これからの日本経済、目先の大きなリスクの一つは、マーケットの方にお話を伺いますと、特例公債法案の先行きを初め、日本の政治の混乱、混迷にあるというふうにおっしゃっている方が非常に多うございます。政策の中身を正面から議論していただいた上で予算がスムーズに執行されるというのが、私の聞くなりのマーケットの声というふうになります。

 その上で、私なりに今後御議論いただきたいというふうに考えていることをこれからお話をさせていただきます。

 日本経済の大きな課題の一つ、これが財政再建であるということは明らかであります。しかし、この場面で、今この状況で財政再建に向かうべきかどうかという点については、立ちどまって考えてみる必要があると思います。

 財政再建の議論になりますと、財政赤字の大きさあるいは債務残高の大きさといった点に注目が集まります。また、その手法といった点につきましても、歳出の削減あるいは増税等を含めた歳入の拡大といった点が議論されるということになろうかと思います。

 財政の均衡を図る上では、最終的には歳入と歳出のバランスをとらなければいけないという点がありますから、この議論自体は決して間違いだろうとは思っておりません。しかし、政府という経済主体自体、日本経済全体の中では欠かせない、非常に大きな存在であるというふうに思います。

 だとすれば、財政赤字の縮小だけを追い求める余りに、日本経済全体に与える影響を無視して財政の均衡を議論するということは不可能だろうというふうに思っております。この点を、これから、日本経済のお金の流れという点から議論をさせていただきたいというふうに思います。

 お金の流れを見るという点のもう一つ重要な理由というのは、なぜ日本の財政赤字がここまで、九〇年代以降ですけれども、大きくなったのか、また、どのようなタイミング、条件がそろえば財政再建が可能であるのかといった点も含めて観察することができるというふうに考えているからであります。

 マクロ経済学の基本的な考え方の一つに、貯蓄・投資バランスというものがございます。これは、日本も含めまして、一国、国全体、経済全体のお金の流れを見るときに最も基本になる考え方でございまして、そのエッセンスですけれども、その国で集められた貯蓄の総額と、その国で行われた投資の総額、これが常に等しくなるというふうなものでございます。

 現実の経済主体という中には、民間企業や貯蓄をしている家計、このほかに、政府、海外、貿易ですけれども、そういったものが加わってまいりますので、お配りをさせていただきましたレジュメにありますように、貯蓄の総額というのは、民間の投資、財政収支、経常収支を足し合わせたものというふうになります。

 その動きを実際にお示ししたものが、お手元にあります一枚目の下の図表一の形でございます。ここに折れ線グラフが四本ございますけれども、一番上の太い点線が家計、太い実線が企業の動き、細い実線が海外、長い点線の方が政府、これは財政赤字の動きでございますけれども、この四つがございます。この四つを足し合わせれば必ずゼロ、真ん中の線に等しくなるというふうな形になっております。

 その中で、このゼロより上にあるとき、これがお金が余っている、いわゆる貯蓄をしている、海外へ行きますと貿易赤字になるわけですけれども、貯蓄をしている経済主体になり、ゼロより下にあるのが資金不足、借金をして投資を多くしているという主体になります。

 このグラフを見ていただいて、日本が非常に特異、異常であるという部分は、企業の動きでございます。

 通常、企業というのは、利益の拡大を目的としまして、得た利益、あるいは金融機関を介してお金を借り受けて投資に回すというのが普通でございますので、このグラフでいきますと、ゼロの真ん中の線よりも下に太い実線があるというのが通常の形であります。

 しかし、日本経済では、一九九〇年代以降、二度にわたって企業が大きく貯蓄をふやすというふうな、通常とは逆の動きになっていたということであります。

 一度目は、バブルが崩壊した一九九〇年度以降でございます。このときは、バブルが崩壊して、企業が、資金を調達するのではなく、借金の返済に回っていたということが大きな理由でございます。

 二度目は、二〇〇八年九月のリーマン・ショック以降でございまして、ここで急激に経済活動が縮小して、景気の先行き不透明感から、企業が手元資金をふやすというふうな行動に出ました。一般企業の現預金でございますけれども、昨年の九月末時点で二百六兆円でございました。しかし、リーマン・ショック直後の二〇〇八年九月時点では、およそ百八十九兆円でございました。このわずか二年間の間に、企業は十七兆円も貯蓄をふやしている、手元資金をふやしているというふうな計算になります。

 このように、日本の企業というのは、この二十年間、本来想定される企業の行動とは全く逆の形で、投資をふやすのではなく、借金の返済に走ったり手元資金をふやすといった形で、貯蓄をふやすというのが実態でございます。これが、日本経済あるいは今後の日本の財政再建といったものを考える上で大きなポイントになろうかというふうに考えております。

 といいますのも、先ほど貯蓄・投資バランスの話をさせていただきましたけれども、一国の貯蓄と投資、これは必ず等しくなるというふうに申し上げました。通常でありましたら、金融機関を介しまして、家計の貯蓄、これを設備投資などといった形で投資に回すのが企業部門の通常の姿でございますが、実際には、逆に、投資ではなく貯蓄をふやすというふうな形になっております。

 このため、一九九〇年代以降では、日本でお金の流れがきれいに回るようにするためには、輸出をふやすか、あるいは、政府が国債を増発して、マーケットからお金を調達して、支出をふやすというふうな二つ、どちらかしかなかったということであります。

 裏を返しますと、企業が今のように貯蓄を続けているという状況が続いている限りは、政府が国債の発行をふやしても、国債の原資になるお金というのはマーケットにあるということになりますので、国債は非常に低い金利で発行することが可能になりますし、急に財政危機が起きるというふうな状況ではないということになります。

 また、逆に、政府がこのような状況のまま財政再建を急ぐというふうなことになりますと、貯蓄・投資バランスの仕組みに逆らうような形になりますので、国内のお金の流れが滞ってしまう、景気が悪化する一方になりまして、税収が減って、逆に財政赤字をふやすというふうなことにもなりかねません。

 こうして見ますと、今の日本経済では、企業が手元資金をふやし、資金需要がふえない、きょうの日本経済新聞にもございましたけれども、企業が資金需要をふやすという状況でない以上、財政再建を急ぐという状況ではないというふうなことになります。

 一方、財政再建の声が強まった背景には、昨年の春、ギリシャで財政危機が起きたということがございます。それを見まして、日本がギリシャのようにならないためにも財政再建を急ぐべきだという声もございます。

 もちろん、日本がギリシャのように財政危機になるという状況は避けなければなりませんけれども、ここまでお話をさせていただきました貯蓄・投資バランスというものを見て、日本とギリシャの状況を比較しますと、日本とギリシャは、置かれた状況が全く違うということがお示しできるかと思います。

 お配りしましたレジュメの二枚目の下でございますけれども、日本と同じデータをギリシャでやってみるとどうなるのかということをお示ししたグラフでございます。

 先ほど触れましたけれども、日本では、リーマン・ショック以降、企業が急激に貯蓄をふやしているということが財政赤字のふえた原因だったわけですけれども、ギリシャは、もともと、グラフを見ていただいてもおわかりになりますように、一般政府、政府の財政が大きな赤字である、加えて法人部門もお金を借りている、さらに家計もさほど貯蓄をしている状況ではなかったということでございまして、お金の出どころは専ら海外でございました。

 このように、日本と比べますと、政府が国内企業の貯蓄あるいは家計の貯蓄を使って国債を発行している状態というふうになっていますけれども、ギリシャでは、専ら国内のお金、資金を海外に頼っていたという状況でありました。こうした状況の中で、ユーロの危機が叫ばれ、ギリシャの財政状態に懸念が抱かれるようになりますと、投資家は当然ギリシャから資金を引き揚げようとする。これがギリシャの財政危機の原因だったわけでございます。

 そうしますと、両国の財政のあり方という点につきましても、おのずと結論が違ってくるというふうなことになります。ですので、ギリシャの状況を見て、財政赤字の値、日本よりギリシャの方がまだましであるといった議論から日本がすぐに財政再建をすべきだというのは、やや先走っているというふうに思うわけであります。

 特に日本で言えますことは、家計に加えまして企業までもが貯蓄をふやしている、これは極めて特殊な状態であるということでございます。そのために、政府が単純に財政を均衡させようとしてもなかなかうまくいかないということになります。

 むしろ、これから、中長期的に見て財政再建を成功させたいのであれば、単純にまず財政収支を改善させようとするのではなく、企業が今より積極的に投資を行えるように、リスクをとりやすくする環境整備を行うことが極めて重要かと思います。その結果、企業が貯蓄をふやす状況といったものが改善をしていき、国内で投資をふやすというふうなことになっていけば、政府も、景気に悪影響をもたらすことなく財政赤字を縮小させるといったことができるようになるかと思います。

 先ほどの一ページ目のグラフに戻りますけれども、図表一をもう一度ごらんいただければと思います。

 日本企業、この太い実線ですけれども、二〇〇五年から二〇〇七年にかけて、設備投資などをふやしていった結果、ほぼ貯蓄がゼロというふうな状況にまで改善をした時期がございました。しかし、その後リーマン・ショックがありまして、企業が手元資金をふやすというふうなことになったわけでございます。

 この時期に政府の債務残高がどうだったかというのが、レジュメが飛びまして恐縮でございますけれども、三ページ目のグラフにございます日本の長期国債の残高の推移でございます。

 ここにある棒グラフが、日本の国債残高を名目GDP比でお示ししたものでございますが、先ほど、企業が貯蓄をふやすという状況をやめた二〇〇五年から二〇〇七年にかけましては、国債残高はGDP比で見ますと減っている、緩やかながら減っているという状況でございます。

 このように、日本では、民間企業の貯蓄動向、言いかえますと、民間企業の資金需要の動向でございますが、これと政府の財政赤字の動きというのは非常に関連性が高うございまして、民間企業の資金需要の動向、これをうまく刺激してあげるということが必要かと存じます。

 そこで、政府が取り組むべきことということで私の私見を申し上げますと、種々の規制緩和だけではございませんで、企業が積極的に設備投資、研究開発を行えるようにする投資減税が必要かと思います。具体的には、設備投資を加速度で償却する、場合によりましては、オバマ政権が昨年末の景気対策で成立させましたように、一括償却というふうなことを期限つきで認めるといったことが必要かと考えられます。

 今回の予算案では、法人税率を五%引き下げという点を挙げられておりますけれども、これは、今述べましたような企業行動の変化というものを期待して出されたものだというふうに思われます。しかし、法人税を単純に引き下げたとしても、それが企業の貯蓄に回るのか、あるいは設備投資に回るのかといった点ははっきりしません。

 ましてや、今回、法人税を引き下げるために、歳入と歳出のバランスをとるために、研究開発の減税あるいは設備投資に対する優遇を縮小するといった動きがございました。これは、むしろ、企業の積極的な行動、リスクテークといった点から見て、それを抑制させかねないという意味では、逆行しているということさえ考えられます。

 したがいまして、今後、来年度以降の予算編成、あるいは補正予算が万が一必要になった場合には、単純な法人税の減税といったものではなく、設備投資減税といった点で企業の前向きな行動を後押しするといったことが非常に重要になろうかと思っております。

 政府におかれましては、国民に大きな負担、痛みを強いることなく中長期的に財政再建を成功させるためにも、単純な財政均衡を志向するのではなく、今の日本経済の資金の流れに沿った形で、短期的には損はしますけれども、長期的に得をするといった政策を立案し、実行していただくことを希望するものであります。

 その結果、短期的には財政赤字が膨らむことがありましても、民間企業の投資、これを喚起することができましたら、中長期的には、景気後退を招くことなく財政赤字を抑えることができるようになるのではないかというふうに考えております。

 私の方からは以上であります。ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、堀公述人にお願いいたします。

堀公述人 ただいま御紹介いただきました堀でございます。よろしくお願いします。

 年金についてお話をしようと思っているんですが、年金は、社会保険料も含めてですけれども、五十兆円もの費用がかかわっております。それから、平成二十三年度の予算案で、年金制度の検討費というのも含まれております。それから、この予算委員会で年金問題についていろいろ御議論があったということで、私の専門が年金ということもありまして、年金について少し立ち入ったお話をしたいというふうに思います。

 レジュメを用意しておりますので、ごらんをいただきたいと思います。

 年金制度の問題、いろいろあるわけですけれども、二〇〇四年の年金改革で財政問題はほぼ解決したというふうに私はとらえております。ただ、基礎年金の国庫負担割合を二分の一にするための恒久財源というものが確保されていない、これが確保されなければ、二〇〇四年年金改革は完結しないのではないかというふうに思います。

 そのほか、無年金者とかあるいは低年金者といった問題がありますし、それから、一たん国会に法案が提出されましたけれども、被用者年金制度の一元化といった問題も残されているのではないかと思います。

 ただ、きょうは、こういった個別の問題に入るというよりは、年金改革について政府は検討されるようでありますので、年金制度全体について、少し研究してきた立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 レジュメでいいますと、第二の制度体系ということでございます。

 現在は、国民年金それから厚生年金と三つの共済年金というものが分立しております。私は、被用者年金、厚生年金と共済年金の制度統合というものが必要だと思います。これは、既に法案は提出されましたけれども、廃案となっております。

 なぜ必要かということです。

 共済年金と厚生年金の間には幾つかの格差があります。この格差は、官民格差の是正ということで何度か改正がなされてきています。ただ、給付について格差が若干残されておりますし、負担についての格差は残っているということであります。こういった給付と負担の格差を是正するというのが一つの目的です。

 それから二つ目は、年金制度を長期的に安定化するという目的であります。

 賦課方式の年金制度というのは、被保険者に対する年金受給者の割合によって財政が決まってくる。財政単位が小さいと、個別の制度は、かつての国鉄共済、JR共済のように破綻することもあり得るわけですね。年金制度についてはできる限り大きな財政単位にすることが望ましいということです。そういうねらいもあります。

 あと、国民の利便性の向上といったこともあります。

 私は、もう年金受給者でありまして、三つの制度を渡り歩きました。それぞれの制度に請求手続ということをする、住所が変わったら三つそれぞれに手続をする、そういった非常にややこしいことになっております。それから、業務処理も効率化できるのではないか。そういったことから、被用者年金制度を一元化すべきではないか、こう思います。

 民主党が提案されております被用者、サラリーマンと自営業者等の年金制度の統合あるいは一元化ということですが、これは本来望ましいというふうに思います。ただし、実現はかなりそのハードルが高いのではないかというふうに思います。これは技術的な点が絡みます。ただ、技術的な面だといって軽視すると、実行した際、いろいろな問題点が出てきて、やり直しということにもなりかねません。

 どういった点が問題になるかというと、一つは、所得概念が違うわけです。

 現在の厚生年金は、標準報酬という、これは総賃金に対して保険料を課して、それに基づいて年金額を計算しているわけですね。ところが、自営業者の所得をどう把握するか。収入だけで判断するのは、必要経費があってそれはだめだ。そうすると、自営業者については、収入から必要経費を控除する。そうすると、サラリーマンはどうするのか。サラリーマンは、税制では給料、賃金から給与所得控除をしたものが所得になっているんですが、果たしてそういった所得の違いを克服できるのか、そういう問題が一つあります。

 それから二つ目は、これはよく言われているんですが、自営業者等の所得の捕捉の問題です。

 大部分の事業者の方はまじめに申告しておられると思うんですが、そうでない方もかなりおられるというふうに聞いております。年金制度がそういった問題を克服できるならよいわけですけれども、所得を低く申告した人が年金制度で得をする、利益を得るということがないようにする仕組みが果たしてできるのかどうか、そういうことがあります。

 現在、社会保障番号あるいは納税者番号というのが検討されているようでありますが、あるいは消費税にインボイス方式を導入すればその問題は解決するかというと、必ずしもそうではないわけですね。というのは、自営業者の所得というのを大まかに言うと、収入から経費を控除したものが所得になるわけですね。経費はある程度インボイス方式なりで明確になると思いますけれども、売り上げについて果たしてインボイス方式を導入しても把握できるのか、そういった問題があります。

 三点目ですけれども、自営業者に対して厚生年金と同じような保険料率を課すと、これは相当な保険料負担になると思います。

 というのは、サラリーマンの場合には、会社、事業主が半分を負担してくれる。ところが、自営業者は、労働者分、あるいは事業主負担分を含めて二倍の保険料を払う。保険料率は一五%を超えますから、果たして負担の増加に対して自営業者の納得が得られるか、こういった問題があります。これらを詰めていく必要があるのではないかというふうに私は思っております。

 それから、レジュメの第三の保障方式というものです。

 保障方式としては、社会保険方式と社会扶助方式があります。社会扶助方式は税方式と言われておりますけれども、これは混乱を招くというふうに思います。というのは、社会保険方式と社会扶助方式の違いは財源が社会保険料か税金か、そういうふうにとられかねない。しかし、基礎年金は国庫負担率が二分の一もあるんですが、これは社会保険方式なんですね。そうすると、基礎年金というのは税方式なのか社会保険方式なのか。これは、税方式と名づけたために間違っているのではと思います。これは社会扶助方式と言うべきで、欧米諸国でも、ソーシャルインシュアランスとソーシャルアシスタンスというふうに言っております。

 その違い、社会保険方式と社会扶助方式の違いは、保険の技術、これはリスク分散の技術を用いるかどうか、それから、保険料を納めた見返りとして、対価として給付を得られるか、そういった点が違うというふうに私は考えております。

 民主党が提案されている案は、二〇〇四年から若干変わっているようで、どの時点の考えをとるかによって少し違うと思いますけれども、所得比例年金と最低保障年金という組み合わせだと思いますが、所得比例年金は社会保険方式、最低保障年金が、これが社会扶助方式かどうか、あるいは社会保険方式か。

 まず、財源は税金なんですが、考え方が変わった後の民主党案では、所得比例保険料を納めなければ最低保障年金も支給しないというふうに変わった。そうすると、保険料を納めなければ支給しないということですから、これは社会保険方式になる。要するに、社会保険としての給付に所得比例年金と最低保障年金がある、こういうふうにも位置づけることができるのかなというふうに思います。

 私は、保障方式としては社会保険方式が望ましいと思います。というのは、社会保険というのは、保険料を納めて老後に備える、あるいは将来の事故に備える、そういうもので、しかも、保険料を納めた者同士で助け合い、相互扶助を行う。それに対しての社会扶助方式というのは、国家が、六十五歳になったら一方的に給付をする。果たして、こういう自助と相互扶助の仕組みの社会保険と、国家が一方的に給付を行う社会扶助とどちらがいいのか、そういった観点から、私は社会保険方式の方が望ましいというふうに考えております。

 それから、社会保障は戦後ずっと拡大されてきたんですが、それは社会保険を中心にしてきたんですね。社会保険というのは、税とは別に保険料という独自財源があるんですね。この独自財源をもとに戦後の社会保障というのは発展してきた、そういうふうに思っているわけです。介護保険も、あれは税でやっていたら現在ほど伸びていたかどうかは疑わしい。介護保険が伸びたのは、保険方式でやった、そういうことからではないかというふうに考えております。

 次に、第四の財源というところに入ります。

 社会保険方式をとれば、財源の中核は保険料ということですけれども、社会保険に税財源が投入されることは幾らでもあります。

 それからもう一つ、社会保険の保険料というのは、年金に使う、介護に使う、あるいは医療に使うということがあるわけですから、何に使われるかわからない税よりも、引き上げについての国民の同意が得やすい、そういうふうに考えております。

 それから、財源という面でいえば、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるための恒久的な財源が必要だと思います。平成二十三年度予算では臨時的な財源が確保されたようで、これは評価したいと思いますけれども、恒久財源をどうしても確保する、そうしなければ二〇〇四年改革の前提が崩れる、財政が安定しない、そういうことになると思います。

 それから、その財源として何を持ってくるか、あるいは民主党が提案されている最低保障年金の財源をどうするかということですが、私は、消費税を含めて、税制の抜本改革によって確保すべきであるというふうに思っております。消費税を充てる、特に年金目的消費税を充てる、あるいは社会保障目的消費税を創設する、こういった議論がありますけれども、私は、それに対して疑問というか、問題があるというふうに思っております。

 その理由の一つは、社会保障あるいは年金というのはこれからどんどんふえていくわけですが、ふえていくに当たって、消費税を頻繁に上げていくことが本当にできるのかどうかということ。実は、二〇〇四年改革では、厚生年金の保険料、国民年金の保険料は毎年毎年引き上げるように法定化されました。消費税についてそれができるのか。できるとすれば、財源は確保できるということになろうと思います。

 それから、基礎年金の財源あるいは最低保障年金の財源を消費税で賄うといった場合には、厚生年金の事業主の保険料の負担が減る、その分はサラリーマン、被用者が負担増になる、こういうことが社会保障国民会議で試算されております。こういった問題をどう考えるかということ。

 それから、年金目的消費税、社会保障目的消費税というのは、なぜ目的税にするのかという議論が欠けているように思います。それでは財政再建の財源はどうするのか、あるいはほかの財源、防衛費とか教育費とか、そういう財源はどうするのか、果たして社会保障だけに消費税を充てるという政策が本当に望ましいのかどうか、こういう問題もあります。

 それから、どういう制度を組み立てるかによって違いがありますけれども、現在、三六・五%、これを臨時の財源で二分の一にするわけですが、三六・五%から一〇〇%の税財源を確保するといった場合には、消費税率で約五%弱、これを果たして確保できるのか、そういった問題があると思います。

 それから、第五の給付体系のところに入ります。

 配付した三枚目にこういう図があります。この図をごらんいただきたいんですが、一番上の1は基礎年金ですね。現在の基礎年金に所得比例年金を上乗せする。

 それから2は、私は準基礎年金と呼んでいるんですが、所得比例年金が高い方の年金、最低保障年金あるいは準基礎年金をカットする。民主党は、これは全額税財源ということにしております。最近は、最近というのか、新聞等ではこの定額分を上の方に乗っけた案が出ておりますけれども、その違いはどうなのか、私はよくわからない。

 三つ目の3ですけれども、私は、これが本来的な意味での最低保障年金ではないかと思います。これは、実はスウェーデンでとられている型なんですが、仮に最低保障年金の横線のところを七万円とすると、所得比例年金が七万円を下回るといった場合にその分を補てんする、本来的な意味の最低保障年金だと思います。

 民主党がどの案、2の案か3の案か、どちらかよくわからない面がありますけれども、3の案では、最低保障年金を超えるところは所得比例年金だけになって、基礎年金あるいは最低保障年金はない、それは問題であるので、多分、2の定額年金をその上に乗せた案ではないか、こういうふうに思います。

 私は、その財源を社会保険料と税にするかという問題はありますけれども、現在の基礎年金と所得比例年金の形が望ましいというふうに思っています。というのは、基礎年金で基礎的な生活を保障する、それから、二階の所得比例年金、厚生年金等で従前所得、従前の生活をある程度保障する、そういう形が望ましいというふうに思っております。

 2の案は、全額税でやる。これは保険料から税にかえるわけですが、その財源が確保できるか、そういった問題があるのではないかというふうに思います。

中井委員長 少し時間が超過していますので、おまとめをいただけたらと思います。

堀公述人 わかりました。

 第六の給付水準は、マクロ経済スライドが実施されていないので、給付水準を引き下げる措置を講ずべきか。

 それから、第七は、パート労働者等の非正規労働者をどうするか、そういった問題があります。

 その他は、後でお読みいただければと思います。

 少し長くなって申しわけありませんでした。どうもありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

中井委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介と申します。

 本日は、この公聴会という貴重な機会に、また各界各分野の専門家の先生方に直接質問をさせていただく機会をいただきまして、皆様に感謝申し上げます。

 それでは、十五分という短い時間ですので、早速質問に入ります。

 まず、犬飼先生にお伺いさせていただきたいと思いますけれども、その前に、若干私の質問の趣旨を申し上げますと、私は、実は前職日本銀行の職員でありまして、九〇年代から二〇〇〇年代の初頭にかけて、まさに日本の国家戦略として、金融というのは非常に重要な分野ではないか、当時は、日本版金融ビッグバンというものが言われた時期でもありました。

 地球は二十四時間で自転をしているわけですし、また、ビジネスアワーというのは八時間から十時間程度だとすれば、大体三極あれば常にどこかでビジネスアワーの中心が回るのではないか。北米、南米、アメリカでは、ニューヨークがあるわけですし、ヨーロッパでは、ロンドンのシティーであるとかフランクフルトであるとかのマーケットが確立したところがあります。

 では、アジアはどうなんだというときに、東京マーケットが規模としては大きいわけですけれども、使い勝手という面で、香港であったり、上海であったり、シンガポールであったり、いろいろなライバルがいるわけですね。

 そういう意味で、地政学的に三極必要ということは、これからどれだけインターネットが発達しても交通が発達しても変わらない地政学的な条件であるわけですから、このアジアの部分で日本がしっかりと金融インフラを確立するということが、将来の国益にも資するのではないか。

 古い例ではありますけれども、例えばイギリスのシティーというのは、イギリスが十九世紀の経済大国であったときにあれだけの金融インフラを整備したことで、その後、大陸諸国に経済規模では抜かれても、いまだにイギリスというのは金融で大きなビジネスをしているということなのかな、ここから学ぶものは大きいのではないか。特に、中国の台頭著しい昨今、日本はこの一日の長をしっかり生かすべきではないか、そのようにも考えるわけでございます。

 そう考えたときに、今回の新成長戦略には、総合取引所構想であるとか、さまざまな画期的なアイデアが盛り込まれていると私感じておりますが、そうした中で、私自身は、日本版金融ビッグバンというものが、非常に高い志を持っていたにもかかわらず、必ずしも当初の成果を上げ切れなかった。金融経済環境の悪化が最大の要因とは思いますが、その金融ビッグバンの反省と、今回の新成長戦略の一番の違い、今何が日本にとって必要なのか、改めて整理させていただきたいと思います。では、お願いいたします。

犬飼公述人 御質問、大変ありがとうございます。

 今、金融ビッグバンと今回の新成長戦略との対比をというようなお話であったと思うんですけれども、私の認識では、金融ビッグバンは、大変に志はすばらしいものがあったというふうに思っております。そして、実際に取り組まれたことも方向として極めて正しいものであったというふうに思っております。ただ、いろいろな当時の環境がビッグバンの完成を許さなかったということがあるのではないかというふうに思っております。

 それで、大変恐縮なんですけれども、金融というものは、与党、野党のお考えだからどうなんだというようなこととは別の部分で動いているというか、そういうものと非常に一線を画したところで動いている部分が実はあります。

 先ほど、金融は決め事の世界であるということを申し上げましたので、そういう意味では、非常に政策決定の重要性というものは関連するわけでございますけれども、金融の流れというものは、着々と取り組んでいく必要がある分野であろうというふうに思います。そういう意味からしますと、自民党政権時代からここに至るまで、基本的な流れは底流で続いているものと思います。

 例えば、二〇〇七年の安倍政権下のアジア・ゲートウェイ構想の金融で御指摘をいただき、提言をされた内容は、私の理解では、今回の新成長戦略の底流と極めてつながっているというふうに理解をしておるところでございます。そのときそのときに、市場実務家の方々でありますとか各省庁の方々の英知を集めてつくられたものが、綿々と引き継がれて現在のこの新成長戦略の金融部分に至っているもの、そういう理解をさせていただいているところであります。

 それで、今、世界三極のお話がございました。三極についての東京の役割というものは非常に重要でございますけれども、私の認識を若干申し述べさせていただきますと、アジアでは、香港やシンガポールに金融の面で負けるのではないかということがよく言われております。そしてもう一つは、近い将来、中国にアジアの金融拠点がすべて移ってしまうのではないか、そういう懸念がしばしば表明されているかと思いますが、それについての見解を申し述べさせていただきたいと思います。

 私は、何回もそういうアジアの諸国を回っておりまして、実感として理解しているつもりでございますけれども、例えば香港は、もちろん中国の後背地である、あるいは人民元建て取引、今、中国の国内ではできない債券取引等が一部できるようになっている、そういうメリットはございますけれども、基本的には、中国は株の世界でございます。それで、言ってみれば、ニッチの分野を目指して外と外の取引を仲介する、そういうことに専念をしている金融センターであるというふうに思います。

 シンガポールの場合は、香港が株取引を中心とするのに対して、どちらかといえば、デリバティブであり、あるいは為替であり、あるいは投信であり、そういったものに特化して仲介取引を伸ばしていく、そういうことに専心をしているということが言えます。

 したがって、外と外とをつなぐという意味においては、香港もシンガポールもよく似ているわけですけれども、では、日本とどう違うのかというと、先ほどから申し上げておりますように、日本の場合には、巨大な金融資産を抱えているということです。香港もシンガポールもそれを持っておりません。という意味では、日本に大変な優位性が潜在的にあるということであります。

 そういう意味でいうと、やはり中国が問題ではないかというふうに言われるかもしれません。確かにそうです。中国は、大変な外貨準備高を抱えておりますし、また、債券や株式市場の残高は非常に大きくなっております。

 ただ、中国は、アジアの国際的な金融のセンターとなるにはふさわしいとは考えておりません。それは、民主主義の国ではないというような言い方も言われておりますけれども、もう少し専門的に申し上げますと……

中井委員長 少し短目に。

犬飼公述人 はい。

 補完性の原則、これは地方自治の原則とも言われますけれども、それを共有していないということであります。その意味で、中国は、国際的な金融のセンターになる資格が現在のところ存在しておりません、こう私は理解しております。

 ということは、消去法で消していくと、アジアにおいて金融センターたり得る可能性を持っているのは、まず日本である、そして、共同するという意味では韓国も重要でありますけれども、まずは日本ではないか、そういうふうに理解をしております。

 以上です。

    ―――――――――――――

中井委員長 公聴会の最中でありますが、ただいま部屋の後ろに、カナダ日本国会議員連盟共同議長の御一行が傍聴にお越しになっています。御紹介いたします。

 ブライアン・ウィルファート下院議員

 テレンス・ヤング下院議員

であります。

    〔起立、拍手〕

 ようこそいらっしゃいました。ありがとうございます。

    ―――――――――――――

中井委員長 それでは、質疑を続けます。津村君。

津村委員 それでは、質問を続けます。

 犬飼先生、日本の潜在的な力、これからの可能性に改めて注目をしていける、大変勇気づけられる御答弁、ありがとうございます。

 先ほど、党派を超えてというお話もありました。私自身も、たしか九六年だったと思いますけれども、金融ビッグバンを提唱された橋本龍太郎先生、郷土の先輩でもありますけれども、党派は違いますが、大変尊敬をしておりまして、その後の金融ビッグバンが名前倒れになったのではないかということを大変残念に思っておりましたので、今回改めて、周辺環境の変化もあわせて、日本の金融戦略を再定義していただけたのかなと感謝を申し上げたいと思います。

 岡本さんに一つ御質問させてください。

 趣旨としては関連した質問で、金融というものを日本の外交戦略の中にどう位置づけていくかということにかかわることでございます。

 先ほど、防衛費やODA、あるいはJICA、青年海外協力隊の人的貢献、こういったものの意義を改めて御紹介いただきまして、大変よくわかりました。勉強になりました。また、中田厚仁さんの言葉も大変重く受けとめたいというふうに思います。

 そうした中で、私が思い出しましたのは大平総理です。大平総理のころに提唱された総合安全保障という考え方があろうかと思います。多少古い言葉になっているのかもしれませんけれども、日本の強みというものを自覚的に活用していこうという知恵だったと思います。非軍事、あるいは伝統的な狭義の外交のアプローチの枠を少し広げて、日本が今持っているものを有効に活用していこう。

 最近ではソフトパワーという言葉もありますが、これは、日本の独特の歴史を考えたときには、非常に賢い知恵なのかなというふうにも思いますし、今回の新成長戦略におきましても、科学技術であるとかイノベーションあるいは金融も含めて、こういう国際的に、特にアジアの中で日本が今現在ナンバーワンと言える分野をより有効に活用して、国際的な外交、安全保障も含めた環境の中で、少しでも一日の長を生かしていこうという知恵だと思うんですが、こうしたアプローチを先ほどのお話と結びつけて考える場合には、どう理解していけばよろしいですか。

岡本公述人 日本が持っている日本としての資質、それを最大限に活用してソフトパワーとして生きていく、私はそれは基本的に賛成でございます。ただ、それだけでは済まないというのが今の国際社会の現状であります。

 テロの脅威が一層ふえ、そして核拡散の危険性も去らない、世界じゅうが危険と闘っているときに、リスクをとらない国家というものは、一つの面でいいますと、大変金銭的にコストがかかってしまう。

 先ほど、インド洋での給油活動をやめた代償として、結局、日本は五十億ドルを払う羽目になった、もちろん日本の主体的意思でありますけれども。あるいは、湾岸戦争を思い出します。結局、日本は、一隻の政府船舶、一隻の政府航空機も送らずに、その結果、百三十億ドルというとんでもない巨額のお金を、いわばこれは強引に出させられたわけであります。

 翻って、イラク戦争のときには、その趣旨にはいろいろと御意見もあろうと思いますが、日本が自衛隊の人道目的の派遣を決めた。そのために、日本が戦費を負担しろとか財政拠出をしろとか、そういう声は一切なかった。日本は、そういう面で、金を取られずに済んでいるわけでございます。

 結局、湾岸戦争のときがいい教訓になると思いますけれども、人命は地球よりも重しということで、日本はさしたる貢献が、金融面以外では、財政面以外ではできませんでした。

 人命が地球よりも重いということは、当然百三十億ドルよりも重いわけでありますから、その地球よりも重い人命を危険にさらして湾岸に、例えば、百五十人の看護婦、医師団を派遣したフィリピン、そして九十人でしたか、韓国、そういう国が結局評価も高く、そして、日本はその後、大きく国際社会の信頼を失うに至った、そのことを私は思い出すわけでございます。

 ですから、総合的な外交戦略、これは大賛成でございますが、それだけでは、ソフトな貢献だけではやはり今は足りないということを申し上げたかったわけであります。

 ありがとうございました。

津村委員 それでは、時間が迫ってきましたので、短く一つだけ、佐々木さんにちょっと……

中井委員長 本当にもう質問の時間もありませんから、まとめてください。

津村委員 はい、わかりました。

 先ほどのお話、大変勉強になりましたし、企業のアニマルスピリットを設備投資減税等で生かしていこう、大変よくわかりましたけれども、ISバランスを考えると財政再建が困難というのは、私は少し逆なのではないかと思います。

 と申しますのは、財政赤字がまずあって、それを……

中井委員長 津村君、長いから短くして。

津村委員 わかりました。

 日銀の金融緩和があるからこそ成り立っているのではないかなという感想を持ちました。

 貯蓄でおっしゃっていたもののかなりの部分は金融機関の貯蓄であって、一般法人の貯蓄ではないのではないかなというふうに思いました。

 以上です。

中井委員長 次に、田中康夫君。

田中(康)委員 国民新党・新党日本の田中康夫でございます。

 まず、岡本行夫さんにお尋ね申し上げたく思います。

 岡本さんは、昨年末のインタビューで、「普天間基地を辺野古へ移設する案はもはや不可能だと思います。」というふうに週刊ダイヤモンドでお答えになっていらっしゃいます。しかし、残念ながら、その日暮らし内閣は、現在も普天間から辺野古に固執しているわけでございます。

 まず、岡本さんのこの点に関する御見解をお聞かせください。

岡本公述人 昨年十二月にインタビューで申し上げました、今、田中先生が御指摘になった私の見方、それは今も変わっておりません。辺野古に日米合意案に従った形での移設を強行しようとすれば、これは沖縄県内にあって不測の事態を招きかねない。

 私は、この問題については、やはりどこかに、長期的に、たとえ長い期間がかかっても、単に普天間基地だけではありません、沖縄の海兵隊全体をコンパクトな形にして本土に移設する、そういうエレメントが含まれていない解決策というのは成り立たないと思っております。

 しかし、この日米合意案が実際に実現する可能性がますますなくなっている現在、普天間の継続使用ということが結果として起こらざるを得ないわけでありますが、これもいつまで続くのか。これも、本当に薄氷を踏む思いでの時間との闘いであります。

 私は、この点については、政府がもう一度アメリカとも話し合って、基本的に日本のこの問題に対する対応というのを再検討するということが必要だと思っております。

田中(康)委員 政権交代のときには、県外、国外と言ったわけでございます。現実に、グアム、テニアンという場所のハブ・アンド・スポーク化という議論もありますが、岡本さんはこの中で、「米国の言い分どおり合意せずに、「もう辺野古案の実現は不可能だから、ほかの選択肢を一緒に考えてほしい」と言うべきでした。「日米合意の実現に向けて努力を続ける」と米国に言うことは、次の市長選まで三年間、なにも解決しないと言っているのと同じです。」というふうにもおっしゃっていらっしゃいます。

 県外か国外かという点ではさまざまな御見解があろうかと思いますが、先般、前首相の鳩山由紀夫さんは、自分は、まさに県外、国外ということを、辺野古ではないということを実現するべく動く努力をしたけれども、残念ながら、防衛官僚や外務官僚、いわんや、当時のまた現在の防衛大臣、当時の外務大臣、当時の沖縄担当大臣、現在の外務大臣というものは、ありていに言えば、サボタージュをして動いてくれなかったというふうに述べています。

 また、言葉が、方便ということだけがひとり歩きをしておりますが、これは、彼が述べた、そうした中において抑止力という言葉を使った。これに対して、共同通信の記者がそれは方便ですかと述べたのに対して、そこは鳩山さんのじくじたる思いだと思いますが、明確に、いや、方便などという単語のディフィニションではない、抑止力と言わなかったことで、あなたが方便と言うならばそういう言葉もあるかもしれないが、まあ、抑止力だと言ってしまった。そこがリーダーシップの問われるところだと思います。

 こうした、いわゆる担当三官僚や閣僚というものが、少なくとも社長が言っていることを、努力をした上でできない、こうだからできないというならともかく、努力はしていなかった、少なくとも首相はそう見ていた。それに対して、首相のリーダーシップのグリップのぐあいがどうだったかということも、哲学と覚悟が大きく問われるところだと思います。

 岡本さんはこうした問題のエキスパートとして、このような問題に関して、首相でなくとも、岡本さんはさまざまな民主党の閣僚にも友人がおられようと思います、官僚にも友人がおられようと思います。こうした助言ということを求められたことがあるのか。つまり、ここでおっしゃっているようなことですね、辺野古というのは無理だということ、あるいは具体的に岡本さんから助言なりをされたということがあられるのか、この点をお聞かせください。

岡本公述人 私は、助言を求められるままに、そういった私の意見は開陳してまいりました。ただ、正確に言えば、辺野古はもう無理だというよりは、無理になったということであります。この点、やはり前首相にはかなりの責任があると私は思います。

 辺野古案というのは、これは実現可能な案だったわけでございます。十四年という長い歳月はかかりましたけれども、ほとんどこれで合意し、工事が始まる直前まで行っていたところを、一国の最高指導者が県外へということをおっしゃられた。そういたしますと、沖縄の県内にも、基地は嫌だけれども、やはり日本全体のために、抑止力の保持のために県内で受け入れなければいけないという、主として保守系の市町村長さんたちもたくさんいらっしゃったわけです。ところが、国のトップが県外と言えば、中で県内と言うことは県民に対する裏切り行為になりますから、一斉に全員が県外ということになってしまった。

 そういう状況がつくられてしまった後、辺野古への移設というのは無理だということを私が申し上げてきた次第であります。

田中(康)委員 元来は五百メーター四方のヘリパッドというところから始まったものがありますが、きょうはその議論ではなく、では、佐々木雅也さんと堀勝洋さんにそれぞれ簡潔にお答えいただきたいと思うんです。

 先ほど年金のお話等がありました。財政のお話がありました。社会的公正と経済的自由を同時に達成し、混迷する日本にダイナミズムを取り戻す。そして、一億総中流、それは決して平等とか公平ではなく、公正な切磋琢磨の競争と、そしてイールドの高い利益率、利益率は、数字だけでなく、絵そらごとの幸せ度とかいう単語ではなく、得られることが必要だと思いますが、その意味では、やはりフェアでオープンでシンプルな制度であることが大事かと思います。

 先ほど来お聞きしていても、とりわけ年金というものは、役人というのは複雑怪奇にすることが自分の裁量行政やさまざまな行政の肥大化になります。私、ベーシックインカムということを、日本の政党では唯一、新党日本は述べているんですが、これは、例えば一人月額五万円、年間六十万円のベーシックインカムというものは、所得税率を一律三〇%とすれば、日本の雇用者報酬は二百六十兆円ですから、三〇パーとして七十八兆円で、一億二千七百万人に配るベーシックインカムは約七十七兆円で済みますから、十分構想としてはできる。

 というのは、実は、生活保護というものが、皆様御存じのように、三兆円になっておりまして、もう二百万人であります。大阪市は二十人に一人が生活保護。ところが、生活保護の方々というのは、本来は、例えば障害があって同じスタートラインに立てない方への生活保護であったものが、子供一人と夫婦ですと月額二十四万円、二十代から三十代の単身者も月額十四万円で、税金が無税、非課税でありまして、医療費は全額無料であります。

 ですから、私は、このようなシンプルな制度というものを分け隔てなくつくることによって、そして、そこでまだ同じスタートラインに立てない方への構築という形でなければ、今の年金制度というのは、人口が二十年後には千七百万人、労働人口が一千百万人減るわけですから、今行っていることは何か道路の補修工事を行っているような話で、全部下水管から直して集約化する必要があるんじゃないかと思いますが、ちょっとその点に関して、お二方、簡潔にお答えください。

佐々木公述人 お答えいたします。

 今、給付つきの税額控除というふうな形、ベーシックインカムというふうな話をいただいたかと思いますけれども、私個人の考えとしましては賛成であります。

 ただ、現状の税制といったものと最終的な着地点という点にはやはりかなり開きがあろうかと思いますので、納税者番号制度等を含めて、所得をきちっと捕捉できるような形というものが最低限必要だろうと思いますので、その制度整備といった点が必要かと思います。

 あわせて、財政赤字という点で、年金制度あるいは社会福祉といった点が大きな負担になっているわけですけれども、私が冒頭申し上げた点というのは、景気に対する赤字という意味では景気循環的な赤字でありまして、年間一兆円ずつふえていくという社会福祉の赤字という点では制度改革というのは必要ではないかというふうに思っております。

堀公述人 二点、お答えします。

 ベーシックインカムについてですけれども、これはいろいろな形がありまして、議員おっしゃるように、五万円一律に支給するという案もあろうかと思います。

 ただ、財源、額によりますけれども、財源が多くなるという点、それから、所得の高い方、財産のある方にも支給するのはどうかという考え方、それから、基本的には、日本の市民社会では労働することによって得た賃金によって生活する、それを国が一律に支給するというのはどうかという考え方、それから、年金については、モデル年金でいうと二十三万円ですけれども、夫婦二人で例えば十万になるととても足りないとか、そういった問題がある。

 それから、複雑性の御指摘、本当にそうでありまして、これは年金という非常に国民の生活に密着した、それがないと生活に困るという場合には既得権を保障する、そういうことがありまして複雑になったということであります。

田中(康)委員 しかし、日本は歴史上類を見ない超少子超高齢社会を初めて経験するわけですから、私は、やはりミルトン・フリードマンの負の所得税とアントニオ・ネグリが述べているべーシックインカムというのは、ジャズとクラシックが最も両極端に見えながら、実はプリンシプルな部分で通底しているということなのではないかというふうに思っています。それが、結果として、小さな政府、大きな政府ではなく、効率のよい政府体にしていくことかと思います。

 最後に、もう一度、岡本様にお聞きしたいと思います。

 私、岡本さんの基本的なお考えというものには賛同するところが多くあるわけでございますが、岡本さんが、先日、産経新聞でしょうか、日本人が不得手なところは多い、戦略性、概念を構築する能力、発想力、異端に対する包容力、リスクをとるたくましさというものがない、世界一の現場力を競争の最大の武器にするための体制づくりが日本の生きる道だ、おっしゃるとおりだと思うんですね。

 この後に、規制緩和が何より重要で、恐れずにTPPにも参加しようというふうにおっしゃっていらっしゃるわけですが、TPPというものは、先日も申し上げたように、FTAというジョギングにもEPAというハーフマラソンにも本来なかなか参加しなかったサボりん坊が、突如フルマラソンに出ると心臓麻痺を起こすんじゃなかろうかと私は思っております。

 TPPがいい悪いではなく、なぜ日本が韓国等の国に比べてFTA、EPAを結ばないできたのか、それを今からでももっと可及的速やかに行うべきじゃないのか、あるいは、TPPというのは新しい米連邦化ではなかろうかと私は思っていますから、では、他方で、第二の通商国である中国であったり、あるいは韓国であったりEUであったりロシアという中で、私は個人的にはそのように思っております。

 ただ、岡本様はTPPにも参加しようとおっしゃっているので、なぜFTA、EPAではないのかということを最後にお聞かせいただければと思います。

岡本公述人 TPPは今一番のホットな問題として国民の間で議論されておりますので、私は、あの論文の趣旨というのは、日本人のすぐれた現場対応力というものは、どのようなところに置かれても必ずそれを乗り越えることができるんだという意味で、農家の皆さんが今思っている不安感というものも払拭したく、書きました。

 私は、多くの製造業の人たちとお話をしますが、もう日本では製造できないということをよく聞きます。特に韓国との関係で、これはEUとの関係を見ていただければわかりますけれども、EUと韓国との間のFTAが成立した結果、韓国製品は、エレクトロニクス製品については一五%、乗用車については一〇%安く日本の製品よりも入る。日本は、EU市場ではほとんど大打撃を受けるということになっております。

 そして、TPPで、場所の枠組みの設定については田中先生がおっしゃることも私は理解できるところでありますけれども、アジア太平洋地域で日本がEUにおける状況の二の舞にならないように、私はTPPに日本は参加すべきだと思っている次第であります。

田中(康)委員 どうもありがとうございました。

中井委員長 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 自由民主党の秋葉賢也です。

 きょうは、公述人の先生方には早朝から大変示唆に富むお話をいただきまして、まことにありがとうございました。

 御案内のとおり、新年度の予算案、大変残念なことに、二年連続して、税収見込み額を大幅に超える赤字国債に依存せざるを得ない状況になっているわけでございます。私どもが政権を担ってまいりました時代にも、残念ながら赤字国債を発行してまいりましたが、税収の見込み額を超える発行というのはただの一度もございませんでした。そうした限られた財源の中で、選択と集中で、何に予算配分を重点化すべきなのか。とりわけ岡本先生のお話には、大変感銘深く拝聴をいたしておりました。

 本当に、いわゆるばらまき四Kというふうに私ども呼んでおりますけれども、御指摘にございましたとおり、年間の防衛予算に匹敵する子ども手当、あるいは、先般、与党の幹事長から、高速道路の無料化やあるいはまた子ども手当の満額支給を見直したい旨の発言がございましたけれども、やはり効果的な予算配分をしていかなければいけないんだろうというふうに思っております。

 きょう午前中、朝一番のニュースで驚きました。ロシアの外務次官が、モスクワに常駐しているアメリカ大使を呼んで、改めて、北方四島はロシアの領土だという言及があったという報道でございました。尖閣の問題にしても北方領土の問題にしても、ルーツといいますか、もとをただせば、日米の信頼関係というものが政権交代後一気に揺らいでしまった、このことに起因しているのではないかと私は認識いたしております。

 その文脈で、鳩山政権以降の日米の信頼関係がどうしてこれほど揺らいでしまったのか、改めて岡本先生に御認識を伺いたいと存じます。

岡本公述人 普天間の移設問題はもちろん大きな日米間の案件でありまして、日米合意を実施できない状況になっていった日本政府に対するアメリカの不信感はかなり強いものがございました。しかし、それ以上に、アメリカとして一番問題にしておりましたのは、日本が、東アジア共同体、アメリカよさようなら、中国よこんにちはというスタンスを明確にしたということで、周辺のアジア諸国が不安に駆られた。

 日米安保体制というのは、アジア全体にとっての、特にASEAN諸国にとっての公共財であります。アメリカに対して、これらの国々の首脳が、一体日米関係はどうなっているんだ、日本はこれからどうするつもりなんだ、アメリカはそこを説得できないのかというふうな声が相次ぎまして、結局、アメリカとしては、日本がアメリカのアジア政策全体の足を引っ張っていると認識するに至ったわけであります。

 最近、少しアメリカの対日観もよくなってきております。ぜひ、この傾向が続くことを願うばかりであります。

秋葉委員 どうもありがとうございました。

 そうした中で、先ほど田中さんの御質問にもございましたけれども、やはり直接的には普天間でのつまずきというものが大きな事実としてあったわけでございますけれども、私ども、本当に十数年間かけて、いわばガラス細工のように、地元をはいつくばりながら合意を積み上げてきた。それが、鳩山さんの抑止力は方便だったということは本当にあきれるわけでございますけれども、ああした積み上げを一気に否定して、簡単にいくと思っていたその現状認識の甘さと見識のなさに私もあきれるばかりでございます。

 今後の見通しについて、政府は、今でも日米合意を基本としながら、結局は原案どおりで進めるという方針になっているわけでございますが、岡本先生の昨年十二月に出されたコメントを拝見いたしますと、辺野古以外の案もあり得るというような御発言があるわけでございますけれども、今後の見通しについて先生の御見識をお伺いしたいと存じます。

岡本公述人 辺野古以外の案もあり得ると、私は当時は思いました。沖縄県内においてであります。しかし、その後、状況は、先ほど申し上げたような形で、一層県内移設には難しい状況になってまいりました。

 そこで、今、私が考えておりますのは、これはもう与野党協力してやっていただきたいと思うのでございますけれども、沖縄は明らかに過重負担であります。御承知のとおり、日本国土全体の〇・六%の面積しかないところに、基地面積にして七五%の米軍基地が集中している。これは不正義であります。これが緩和される、本土も負担を分かち合うんだという姿勢がどうしても必要でございます。

 ですから、私案でございますけれども、私は、これからの沖縄との話し合いにあっては、二十年かかってもいい、長期かかってもいいから、先ほど申し上げたように、海兵隊をもう少し小さな格好にして本土に持ってくるという閣議決定でもしていただいて、そして八条委員会でも御設置になって、構造的に沖縄の負担を本土側が取り除いていくんだということを示す。

 そうすると、たとえ長期間であっても、沖縄の人たちは、ああ、自分たちの今の忍耐は時限的なものである、やがてこれがなくなるということに思いをいたして、私は、沖縄の人たちももう一度話し合いに応じてくれるものと思います。そのときには、日米合意案そのものは無理かもしれませんけれども、もう少し別の展望も開けるものと思っております。

秋葉委員 アメリカという相手側があっての話でございますから、そうした長期戦略が理解が得られるのかということが大きなポイントになってくるんだろうと思いますが、そうした中、政府は、いわゆるホスト・ネーション・サポートについても、ピーク時の三二%の減額の中で五年間の凍結を決めたわけでございます。これについて、岡本先生の評価を伺っておきたいと存じます。

岡本公述人 私は、これは大変にいいことをしていただいたと思っております。

 先ほどの陳述でも申し上げましたけれども、日本は、GDP対比でいけば、防衛予算は世界の百四十番目から百五十番目の間にございます。そのぐらい、マクロ的に見れば超軽負担で済んでいるわけであります。

 米軍は、日本に、巨額の資金を投じた軍事的な資産、装備、そして人員を配置しております。これによって日本が得ている抑止力というのは、これは何兆円にも匹敵するものでございます。その大きな利益を現在の規模の在日米軍駐留経費で得ているということは、大変に日本にとって得な取引でありますし、しかし一方、これを減額することによって、日本がその本質的な意味をわからずに、ただただまた金を減らしている、これは、私は同盟関係の信義にもとるものと思っております。

秋葉委員 恐らく、今の先生の御発言は、固定を示したことで安心感を与えた意味での評価ということだと思うんですが、金額の上ではピーク時から三二%も減らしてきていて、まさに条約の六条の義務規定がないがしろになるんではないかという懸念も一方であるわけでございますから、しっかりと日米の緊密さ、信頼関係というものを担保していくために、私たちはこれからしっかりこの辺はサポートしていかなければならないというふうに思っております。

 一方で、きょう先生からも、中国の軍事力、この十年間で二六八%ふやしてきたと。確かに、G8の国で、軍事費といいますか、防衛予算を減らしてきた国は我が国唯一でございますけれども、この中国の戦略。

 中国という国は、本当に目標を明確に決めて、その目標を達成するために、長い時間をかけてでも実現するんだという戦略にのっとって行動をしてまいってくる国でございます。

 私も、昨年の八月に北京に参りましたときには、軍関係者とお話をさせていただきました。オフレコの会議といいますか、公開でない会議でございましたけれども、空母を二隻建造中である、必ず持つんだということ、これが中国の夢だとまで言及されているわけでございます。

 そういう中で、中国の脅威という問題について、我が国の南西地方を中心に増強を図るんだということが新たに打ち出されましたけれども、北方もこれは軽減するわけにはまいりませんし、そういった中で、日本政府として、対中国対策というものをどのようにとらえて具体に行動していくべきなのか、岡本先生にお伺いさせていただきたいと存じます。

岡本公述人 時間もございませんでしょうから、一言だけにいたします。

 今、秋葉先生のおっしゃったとおりだと思います。

 私は、立法府の皆様方には、ぜひ、十年後の日本の安全保障環境が、特に中国との関係でどうなっているかということをお考えいただきたいと思います。周辺諸国、韓国、ベトナム、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、皆、その観点から、二〇二〇年以降の南シナ海、太平洋の軍事環境がどうなるかということを考え、心配しているところでございます。

秋葉委員 すなわち、日本も長期的な戦略をしっかりと打ち立てて、粘り強く取り組んでいく以外にないんだということだと思います。

 一方で、ロシアによる北方領土の問題については、メドベージェフさんはもう去年の九月から行くんだということを言っていたわけでございまして、本当にこの問題というのは、ロシア政府といいますか、ロシアという国自体の国力が豊かになってきたということはあろうかと思います。そして同時に、日本の経済支援というものが有効な外交カードとして成立し得なくなってきたという問題点ももちろんあろうかと思います。いろいろな要素が絡んでのことではあるんですけれども、現状、先ほど冒頭申し上げましたロシアの外務次官の発言にもございますように、本当に実効支配を強化してきております。

 そういう中で、我が国の持っているカードというものは、本当に、もう手持ちのカードがないような状況の中で、行き詰まり感がいわば漂っているわけでございますけれども、ロシアとの問題は何も北方領土の問題だけではございませんけれども、岡本先生の論文を拝見いたしますと、四島一括にこだわらずに、特に、エリツィンあるいはその前のゴルバチョフの時代が最大のチャンスだったというような御指摘もあるわけでございますけれども、北方領土問題を念頭に置きながら、これから、ロシアとの外交政策、我が国としてどういったスタンスを優先していかなければならないのか、そして現政府の今の取り組み状況というのをどうごらんになっているのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

岡本公述人 もちろん、北方四島は完全に日本の固有の領土であります。しかしながら、戦争でとられてしまった。日本は戦争で再びそれを取り返すわけにはまいりません。先方の同意が必要であります。

 そういたしますと、四島一括返還というのは、先方にとってみれば、日本からのゼロ回答であります。他方、二島返還というのは、一九五六年の共同宣言から五十五年間かかって一歩も進んでいない。日本は、これは到底のめるところではないと思います。したがいまして、どこかその中間、二島プラスアルファということを私は現実的な考え方として申し上げている次第でございます。

秋葉委員 どうもありがとうございました。

 本当に我が国も、具体的なアクションとして一つ一つ、この北方領土の問題、尖閣の問題にしても、もうお題目ではなくて、実効支配を強めるアクションをしていかなければならないと思っております。

 尖閣については、灯台なんかにしょっちゅうメンテナンスに入ったらいいじゃないか、あるいはまた地籍調査も認めるべきじゃないかというような御指摘がありますので、我々もそうしたことを政府に要望しながら、今後強めていきたいというふうに思っております。

 きょうは、先生方、本当に貴重な御提言をいただきまして、佐々木先生にもちょっと伺いたいこともございましたけれども、時間となりましたので、以上で私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 大変御示唆に富むお話をいただきまして、まことにきょうはありがとうございました。

中井委員長 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 公明党の坂口でございます。

 きょうは、公述人の先生方には、大変お忙しい中御出席を賜りまして、貴重な御意見をお伺いさせていただくことができまして、ありがとうございました。

 それぞれすばらしい御意見をお伺いしたものですから、各公述人全員からちょっとお聞きをしたいというふうには思っているんですが、十五分という限られた時間なものですから、なかなかそうもいかない場合もあるかもしれません。そのときにはお許しをいただきたいと思います。

 堀先生から年金のお話をしていただきましたので、まずは堀先生にお聞きをしたいというふうに思っております。

 堀先生が御指摘をいただきましたお話、総論におきまして先生の御指摘どおりというふうに私は思っておりまして、心から御賛同申し上げたいというふうに思います。

 ただ、それでは年金に何ら問題がないかといえば、やはり問題もございます。

 一つは、国民年金だけの皆さん方というのは、非常に額も少ないものですから、大変御苦労をされております。昔は、自営業の皆さん方が中心でありましたために、自営業や農林漁業というのは定年制もありませんし、お体が元気な間はそれでも生活ができたわけでございますから、一つの行き方としてそういう年金制度ができたというふうに思っておりますが、しかし、最近はそうもまいりませんで、いわゆる非正規労働等の皆さん方がふえてまいりましたり、あるいはパートの皆さん方がふえたりということになってまいりまして、必ずしも自営業でない皆さん方で、しかも、国民年金に入らざるを得ないという方がふえてきていることだけは間違いのない事実でございます。

 そこで、国民年金をこれからどうしていくかということが問題になるわけでございますが、この国民年金に対するお考えをひとつお聞かせいただきたい。

 もう一つ、あわせて二つ目としてお伺いをさせていただきたいというふうに思いますのは、国民年金の保険料が払える人と払わない人、払わない人といいますと、払えるけれども払わない人、あるいは本当に払えない人、こうあるわけでありますが、そうした意味で、ひとつ、保険料を段階的にしていく、保険料を所得に応じて払うという行き方はどうかという提案をされる方もありますが、それに対する御意見をお聞きしたい、こういうふうに思います。

堀公述人 国民年金の問題ですけれども、これは長年いろいろな問題が指摘されておりました。定額保険料というのもその一つの問題であります。

 現在は、全額納付、全額免除、四分の一免除、それから半額免除、四分の三免除とあります。ある程度段階的になってきておりまして、負担能力に応ずるようになっている。これをさらに細かい段階にするという方法もありますし、あるいは、完全に所得比例というわけじゃないんですが、所得に応じて段階をふやすという案はあると思います。

 それから、国民年金にパート労働者等が入っている、そういった問題については、これは労働者である以上、厚生年金に加入する、厚生年金の適用を拡大する、そういった方向で二階部分の年金を支給する、そういったことが考えられます。それから、定額保険料ですから、自営業者等でも所得の高い方がおられます。これにつきましては、国民年金基金とか個人型の確定拠出年金、そういった形で対応するということになります。

 ただ、基本的には、国民年金の加入者に対する基礎年金は、これはサラリーマンの方から財政援助があるという形になっておりまして、基礎年金については、財政は余り問題がなくなってきたという理解をしております。ただ、サラリーマン、パート労働者等が厚生年金を抜ければ、その後の国民年金の形というのが非常に小さくなる、そういった場合にどうするかということをさらに考える必要があると思う。ただ、これについての私の考えは、もう少し検討させていただきたいと思います。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 ぜひ御検討いただきまして、また御指導いただければ大変幸いでございます。

 次に、岡本先生にお伺いをさせていただきたいというふうに思いますが、中国との問題でございます。

 けさはパンダが二頭やってまいりまして、比較的明るいニュースかなというふうに思ったわけでございますが、中国との間は、そうした喜びもありますけれども、なかなか難しいというのは、先生の御指摘のとおりだというふうに思います。お隣の大国でありますし、信頼関係をつくり上げていかなければならない、これはもう間違いのない事実だというふうに思います。

 しかし、軍事力がだんだんと大きくなっていく、海軍力が大きくなっていく、恐怖を心の中に持ちながら信頼関係を築いていくというのは、なかなかこれは難しい話でございます。信頼関係を築くという以上は、心の中の恐怖も本当はなくしていかなきゃいけないと思うわけです。

 先ほど先生のお話をじっとお伺いをしていて、そこは、相手の軍事力に対して、こちらもある程度の対抗でき得る防衛力を持って初めて信頼関係ができるということを御指摘になっているのかなというふうに思ったわけですが、あるいは私の考え方の違いがあるかもわかりません。もう少し教えていただくことができればと思います。

岡本公述人 私が申し上げたことは、坂口先生の御解釈のとおりであります。

 中国との信頼関係が必要なことは、これは言をまちません。しかし同時に、我々は言葉だけでは信頼関係は打ち立てられない。戦略的互恵関係という言葉を多用いたしますけれども、ではその実態は何なのか。

 中国は、日本の安保理常任理事国入りに強烈に反対して、アジア各国に、そのような地位を与えることに反対するキャンペーンを繰り広げました。沖ノ鳥島は、日本の主張に真っ向からチャレンジしておりまして、あれは単なる岩にすぎないと言っております。東シナ海の共同開発も、ガス油田についてでありますけれども、進んでおりません。沖縄列島を越えて中国の大艦隊が太平洋側に出てきていることも御承知と思います。戦略的互恵関係が、遺棄化学兵器の日本による処理、あるいは中国の環境汚染に対する日本の支援という中国側の利益に資するだけの形でのものであるならば、私は、これは信頼関係の構築からはほど遠いものと思っております。

 中国の最近の軍事戦略の拡張、これは非常に長期かつ戦略的に考え出された彼らの行動であります。それを子細に分析いたしますと、中国が第一列島線を越えて日本のどん前の太平洋にまで進出し、そして、そこで海洋権益を確保していくんだ、中国はいろいろなところでもうこれを発表し始めているわけであります。これに対して、善意だけでは日本はみずからの安全は確保できない。やはりアメリカとの協力による防衛体制の強化ということしか、これを抑止力として後ろに持つことがどうしても必須だと私は考えております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 では、もう一問、佐々木先生にちょっとお聞きをしたいというふうに思います。

 確かに、日本の企業が貯蓄に回してなかなか設備投資に回さないというお話がございまして、御指摘のとおりだろうというふうに思うんですが、大きい企業といいますか、大企業の方は渡り鳥みたいなものでありまして、一番都合のいいところへ飛んでいくという状況になってまいりました。そして、そこへ行って設備投資をする、こういう状況になっておって、日本の国内で設備投資をしてくれないということではないかというふうに思います。

 そこで、アメリカのリトルトン市なんかもやっておりますけれども、地域に根差した中小企業で、しかも新しいものを目指す、新しい技術開発をする、新しいサービスを始める、そうしたところに重点的に国の方も援助をするといったようなことで、中小企業は数は多いですから、その中の特にそうしたところを選択して、日本の国内においてそれらの力をつけていくということになればかなり大きな力になってくる、国の力になってくるのではないかというふうに実は私も思っているわけでございますが、他の国のそうした先進例もございますし、リトルトン市なんかの例もございますし、雇用もふやした、税収もふやしたというような例もございますので、そうした点につきまして、ひとつ先生のお考えをお聞きしたいと思います。

佐々木公述人 お答えいたします。

 新しい技術開発という点で、大きな制度として、設備投資に対する減税であったり研究開発に対する減税といったものというのが、まず一つ必要であろうというふうに思っております。

 ただ、もう一点、新しい技術開発を目ききするというふうなことになろうかと思うんですけれども、今そのノウハウが日本の金融機関にどこまであるのかという点、あるいは地方自治体も含めてそういったノウハウがどこまであるのか、あるいは、ベンチャーキャピタルというのがなかなか日本で育たないというふうなこともありますけれども、いずれにしろ、新しい技術開発、あるいは非常に中長期的に長い目で見て役に立つという技術になろうかと思いますので、その点の目ききというものをどういうふうにやっていくのかということが大切だろうと思います。

 金融機関だけでなく、あるいはほかの業種、いろいろな人たちが、雇用の中で、流動化する中でいろいろな立場から見られるようにするということが必要かと思いますので、その点は、雇用の面、あるいはさまざまな制度面を含めて、新しい制度をつくっていくというふうなことが税制に限らず大切になってこようかと思います。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

中井委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 本日は、貴重な御意見、まことにありがとうございます。

 まず、岡本行夫公述人にお伺いいたします。

 先ほども少し議論になりました、鳩山前首相が沖縄タイムスのインタビューに対して、在沖海兵隊の抑止力について、辺野古に戻らざるを得ない中で理屈づけしなければならず、考えあぐねて抑止力という言葉を使った、方便と言われれば方便だった、こう述べたことがこの間話題になってまいりました。その理由として、海兵隊に抑止力があるわけではない、四軍がそろって抑止力を持つ、そういう広い意味では使えるなと思ったとも語ったと言われております。

 二〇一〇年五月五日の琉球新報によれば、「「県外」断念の理由に鳩山首相は、「海兵隊の抑止力」の必要性を何度も強調した。鳩山首相の口から「抑止力」の言葉が出始めたのは、自公政権下で辺野古移設案決着に奔走した元外交官の岡本行夫氏との接触があって以降だった。」こう報じられております。

 まず、岡本公述人にお伺いしますけれども、抑止力という言葉を使うように進言した事実はございますか。

岡本公述人 求めに応じて鳩山総理のところへ行ったのは事実でございます。そのときに、抑止力という概念について私は説明をいたし、御理解を得るように努めました。

 以上でございます。

宮本委員 そういうお立場で、鳩山前首相の最近語られた中身、いろいろ、先ほど本意じゃなかったというようなこともありましたけれども、少なくとも方便というふうにおっしゃったわけですけれども、これについてはどのようにお考えですか。

岡本公述人 鳩山前総理のインタビューの記録を読みましたが、方便という言葉が若干ひとり歩きをしているような感じもございます。

 鳩山前総理がおっしゃりたかったのは、今まさにおっしゃられたように、四軍がそろって初めて抑止力というものを構成するというところではなかったかと推察いたします。その意味においては、私は鳩山前総理が間違っているとは思いません。ですから、方便という言葉に余り大きな意味を置いて本件を議論するべきではないと私は思っております。

宮本委員 先ほども岡本公述人がお話しになったように、私たちも、沖縄県内、辺野古への移設というものは事実上不可能だというふうに考えます。同時に、これは県内の別の場所でも、国内の別の場所でもだめであって、改めて、普天間基地は無条件撤去ということをしっかりと米側とも話し合うべきだというふうに思っているんですね。

 それで、先ほど、北方領土、千島の問題についても議論がありました。尖閣諸島の問題についても議論に上りました。

 先ほど、日米関係の揺らぎが原因だという話も出ましたけれども、私たちはそうではないと思います。なぜならば、その前、自民党政権下でも、おっしゃったとおり一歩も進まなかった、ずっとこの問題は未解決できたわけですから、そういう意味では、一貫して、この問題の解決という点では、私たちは日本の政府のとってきたやり方というものに問題があると。

 日本共産党は、尖閣諸島の問題でいえば、歴史的な事実や国際法に立った、正面からの領有の正当性の主張をやってこなかった外交努力の弱さにあったと思いますし、同時に、千島問題でいえば、領土不拡大の原則に反して、踏み破って、スターリンが北海道の一部も含めて不当に領有をした。改めて、北海道の一部である歯舞、色丹はもちろんですけれども、サンフランシスコ条約二条(c)項の見直しも含めて、千島全島の返還を求めるという立場で、一からきちっとした国際法と道理に立った交渉をやるべきであると繰り返し申し上げてまいりました。

 こういう点で、これまでの日本政府の外交的な姿勢について、岡本公述人はどのようにお考えか、お聞かせください。

岡本公述人 私は、宮本先生がおっしゃった普天間の無条件撤去、それは、一つの条件が満たされれば不可能ではないと存じます。それは、日本自身が、自前で、自己完結的に国を防衛できる体制を持つということであります。

 恐らく、今の四兆七千億の防衛費は、国際水準並みにGDPの二%、二・五%へ持っていくということになれば、残り七兆、八兆という防衛費を積めば、私は普天間基地がなくても日本はやっていけると思いますが、それができないのであれば、日本は米軍の抑止力に頼らざるを得ない。ですから、無条件撤去というお言葉には、私は反対であります。

 領土問題の方につきましては、日本は、三つの領土紛争を隣接するすべての国・地域、つまりロシア、韓国、北朝鮮、中国、そして台湾と抱えているという世界で唯一の国であります。これだけ安全保障環境が脆弱なところに日本はございます。

 私は、その中で、北方領土については、いろいろな経緯もございましたし、島が四つあるということで、単純に交渉のバリエーションも考えられますし、もう少し進んでくればよかったと思っております。

 しかし、先ほど秋葉先生もおっしゃっていたように、ロシアは、みずからの力が弱いときには日本に対話をしてき、自分たちが強くなった場合には日本との門戸を閉ざすということをやってきております。今は、残念ながらといいますか、ロシアの国力が、プーチン首相、メドベージェフ大統領のもとで非常に強くなったという認識でございますから、日本から交渉を持ちかけてもなかなか、実際問題としては彼らは乗ってこないのではないか。

 ただ、日本は、ロシアとの信頼関係あるいは領土以外の関係を深めて、彼らがこれ以上の実効支配を今の段階で固めないように、これは強く訴えかけていくべきだと思います。

宮本委員 御意見は承りました。

 次に、佐々木公述人にお伺いしたいと思います。

 佐々木さんの「金融経済コラム」というものを見せていただきましたら、大変興味ある内容がございました。「なかなか回復しない日本の内需」という文章で、一九九二年以降一貫して、貯蓄残高が減った世帯の方が、貯蓄残高がふえた世帯の数を上回っていることがわかる。そもそも、ライフサイクル仮説に基づいて考えれば、人は本来、老後を見越して、働いている時期に貯蓄を行っているはずだ。ところが、アンケート調査の結果が示しているのは、ライフサイクル仮説でいえば貯蓄しているはずの世帯で、雇用、所得環境の悪化と相まって、なかなか貯蓄ができていないという今の日本の家計の実態だと。

 きょうお示しいただいたグラフを見ても、九〇年代からずっと下がってきて、少し上がった局面はありましたが、リーマン・ショック以降また下がっているわけですね。この原因ですけれども、先生はどのようにお考えになっておられますか。

佐々木公述人 基本的には、九〇年代以降、失業率がかなり上昇していったという点がありますので、主に雇用環境というのが一つであります。もう一点は、それにあわせまして、所得が伸びないというふうになっていったということであります。

 ただ、その一方で、労働分配率、そのお示しいただいたコラムの中では触れていませんけれども、九〇年代にかけては労働分配率がむしろ上がっていく状況にあったはずでございますので、そこの部分を企業が何とか見ながら推移していったということだろうと思っております。

宮本委員 私たちは、この間、この原因というのは、やはり給与所得の激減ということがあると思うんですよね。

 それで、民間賃金は、ピーク時の一九九七年から、年収で平均六十一万円、総額では三十一兆円減った。そして、年収二百万円以下の働く貧困層と言われる方々が一千百万人に達しております。雇用も過去最悪の状態を示しています。一方で、大企業の内部留保、これはもう二百四十四兆円まで膨れ上がりまして、現預金など手元資金だけでも六十四兆円という空前の金余りという状況。これは先ほど先生がおっしゃったとおりですね。この異常な構造が内需を冷え込ませて、経済の健全な発展を妨げていると思うんですね。

 ところが、来年度予算案では、一兆五千億円もの法人税減税を行い、証券優遇税制も二年間延長しようとしております。こういう大企業に対するばらまきをやめて、雇用の確保や賃上げを通じて内需の振興を図ってこそ、内需主導型の本当の経済の発展があるというふうに私どもは考えますけれども、佐々木公述人のお考えをお聞かせください。

佐々木公述人 企業の内部留保というふうな話がございましたけれども、先ほど私が冒頭で申し上げましたように、企業がリスクテークをなかなかできないという環境が、むしろ内部留保を最終的にふやす結果になったということがあると思います。

 日本経済を活性化させる上で、特に民間の企業部門を活性化させて、その結果、雇用をふやしていく、所得も伸びていくというふうな形が正常な経済の形であろうと思いますし、それを促していくということが一番大切ではないかというふうに思っております。

宮本委員 それでは、堀公述人にお伺いしたいと思います。

 社会保障、特に年金についての詳しいお話をお伺いしました。

 昨年三月十五日の週刊社会保障というものの中に、「税財源の確保とともに給付の効率化・重点化を」という先生のインタビュー記事が載っておりまして、読ませていただきました。その中で、財源確保が困難な状況のもとでは、子ども手当のようなばらまきをしている余裕は全くないはずですと述べておられました。

 私どもも、今、保育所に入れないお子さんがたくさんおられて、非常にそれが深刻になっている。まず保育所の増設こそ待ったなしであるし、子供の医療費の無料化とか、高過ぎる教育費への支援とか、総合的な対策を打つ必要があるというふうに思っております。

 同時に、財源の問題では、手当を出すかわりに税の控除を削って庶民から取るというやり方もだめだし、ましてや、子ども手当の財源に消費税の増税というのはもってのほかだというふうに考えるわけでありますけれども、民主党の、今政府が進めている子ども手当についての堀公述人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

堀公述人 そのインタビューは、たしか、一昨年民主党が政権をとった、総選挙で勝ったときのものだと思います。

 私は、財政再建というものを優先してやるべきだというふうに考えております。財政再建のための消費税の引き上げとか、そういった税制の抜本改正が必要だ。

 子ども手当につきましては、財源確保の見通しのないまま制度化するというのは、私はおかしいと思っています。

 それから、もう一つは、子ども手当の性格が、子を育てる家庭の経済的支援にあるということなら、高所得者層はそういう経済的支援は必要がないということであれば、これは所得制限をするべきだというふうに考えております。

宮本委員 本日はありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

中井委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日の四人の公述人の皆様のお話、大変参考になり、勉強もさせていただきました。順次お伺いいたします。

 まず、犬飼公述人にお願い申し上げます。

 きょうのお話の中で、現政権の新成長戦略の中での金融政策ということを大変評価されてのお話でありました。と同時に、前政権の時代も、アジアにおける金融というのは、日本にとって大変重要なものである、持続するテーマであるという御指摘もございました。

 思えば、宮沢大蔵大臣の時代にアジアの金融危機がございまして、当時の総理も、何とかアジアの金融市場を、それこそ欧米を介さないで自分たちの本当の発展のために潤滑油効果を出したいと願われたテーマだと思います。その意味で、御指摘は私は大変参考になりました。

 今、金融と申しますと、アメリカのサブプライムローン問題もそうですが、いろいろなリスクがそこに発生する。G20でも、食料などの高騰は、余ったお金がそこに入り込んでいるのではないかという指摘もあったと思います。

 アジアの金融ということをこれから前向きに考える場合に、リスク要因というか、逆にどういうことにきちんと対応しておくことが重要なのか。先ほどの御指摘だと、中国の政治経済体制の問題を一つ言われておりましたけれども、中国は、ここにおいて非常に大きなシェアを持っております。あと、日本の貯蓄の部分がこれから活用されるであろうという御指摘でもあったと思いますが、本当にアジアの足腰を強くしていくためには、一方のリスクも見ながら進めることが肝要と思いますが、その点については何を注意しておけばよいでしょうか。

犬飼公述人 大変に重要な御質問を大変ありがとうございます。

 アジアにおける金融の面におけるリスク要因というお話であるわけですけれども、一九九七年のアジア金融危機、このときに起こったこと、その経験を踏まえて、アジアの各国というのは、為替変動に対する、あるいは金利変動に対するリスク、これの対処方法をかなり厳密に打ち立てております。そのおかげといいますか、それによって、このたびのリーマン・ショック以降の世界金融危機において、アジア諸国が比較的落ちついていられるということが言えるというふうに私は理解しております。

 そういう意味では、アジアの中の金融の状態は世界の中でかなりいい。金融がいいという意味は、金融のリスク管理能力がアジア全体にかなりふえてきているというふうに私は理解をいたしております。

 例えば、九七年の金融危機のときに起こった問題が、実は、めぐりめぐってといいましょうか、ヨーロッパのEUの諸国の中で、アイルランドであるとか、ギリシャであるとか、東欧の諸国であるとか、ユーロという通貨を採用している国々で、同じロジックで同じリスクが起こっています。それによって、EUの諸国が大変に困った状態になっている。そういうことから考えますと、九七年のアジア通貨危機の経験は、代償も大きかったんですけれども、大変に貴重であったというふうに思っております。

 もう一つは、グリーディー資本主義とか、アメリカ、イギリスのアングロサクソン型の金融というものと比べますと、アジアの金融は全く別物である。別物という言い方は変かもしれませんけれども、お金をもうけるための金融というものは、全世界に広がっているようで、アジアでは必ずしもそうではないというふうに私は考えております。

 日本もそうですけれども、お金もうけのためではなくて、足るを知るということが前提になった上で、それぞれ金融機能を強化していこうということをアジアの官民が一斉に感じて動き出しているということは、非常にすばらしい動きではないかというふうに私は思っております。

 もちろん、アジアにおいてはいろいろなリスクはあるんですけれども、それを乗り越えるだけのアジアの潜在の成長性、その潜在的な成長性がここ近年では現実化しておるわけですけれども、世界的な金融リスクを乗り越えるだけのものがアジアにだんだん備わっているというふうに思います。

 問題は、欧米の観念からいうと、例えば格付問題にしても、今、例えばマレーシアであるとかインドネシアが随分よくなっているということがあるんですが、その割に、欧米からの評価がそれほど高くないというような問題もまたこれあります。

 したがいまして、日本を含めて、アジア諸国がみずからのよくなっている部分をこれからどんどん前向きに情報を発信していくということが重要ではないかと思います。

 以上です。

阿部委員 私は、民主党が政権交代当初掲げられた東アジア共同体という考え方も、そうした金融に裏打ちされて、特にこれからのアジアの発展を取り込んでいくためには大変重要な考え方であったと思っております。

 この点は私の見解として申し添えて、次に岡本公述人にお伺いをいたします。

 岡本公述人が、ちょうど鳩山総理に呼ばれて、官邸でいろいろ抑止力についてのお話をされているころ、私は社民党の政策審議会長として、一たんは年末に普天間にという結論づけがされそうになったところを、もう一度考え直してみようということで、国民新党の皆さん、民主党の皆さん、政府とあわせて、社民党案を出すという役割を担っておりました。私は、そのとき、いみじくも、きょう岡本さんがおっしゃったことと内容的には大変近いことを提案させていただいたのです。

 実は、一九七二年に沖縄返還が行われて以降も、沖縄の基地負担というのは軽減されるどころか、それまで山梨とか岐阜にいた海兵隊が逆に沖縄に置かれるということになって、結果的に見れば、基地負担が本土よりも増強されてまいりました。

 これは、学べば学ぶほど、もう耐えられないというそのお声も当然と思いましたので、もしも本当に日本に海兵隊も含めた抑止力が必要であるならば、本土も含めてもう一度考え直すべきだと私は思いました。もちろん、社民党としてはグアム移転ということを第一に掲げましたが、それの時間段取りと、その間にも、もしも必要性があるならば、全国民の論議の中で沖縄の負担を分け合うのも私は政治の姿だと思いました。

 きょう、岡本さんは、八条委員会でも設けて、国会の中で、沖縄に対しての本土側、沖縄ももちろん政治の一環ですが、長年の本土の持ってきた構造的問題をきちんと解決する姿勢を示すべきだとおっしゃいました。本当に私はそのとおりだと思います。先般、ジョセフ・ナイがインタビューに答えて、何も沖縄じゃなくたっていいんだよというふうに、本当に平易な言葉で言っていたのも私は印象に残ります。

 この点も含めて、もう一度、今この問題は非常に膠着しております。少なくとも、何を政治の誠意として示すべきか。そしてもう一点、グアム移転もさまざまな環境問題を抱えておりますから、これは日本とアジアの諸国との連携ということで、もっと本当に真剣に考え、負担の軽減等も含めて考え、やがては私はグアムに行ってほしいと思っておりますが、この点についてのお考えもお願いいたします。

岡本公述人 もし阿部先生がおっしゃっていることが次のような意味であれば、私も賛成でございます。すなわち、何年かかっても、たとえ二十年かかっても、沖縄の海兵隊を可能な形にして本土に移設するための道筋をつけるということであります。

 しかし、往々にして、本土移設というときには、普天間の基地だけを沖縄にいる海兵隊から切り離して、これを本土へ持ってくる。社民党さんも、普天間の飛行場だけを硫黄島に移設しろというような御主張をおっしゃいました。私は、これにはくみしません。

 ただ、阿部先生が今おっしゃられるような、長期的な海兵隊全体としての取り扱いということであれば、私は、これは国家として本当に真剣に取り組むべき課題だと思っております。

 その際に、アメリカとの信頼関係を崩してはならない。したがって、日本が何のためにそれをするか、そして、あくまでもアメリカが今持っております能力というものを減じない形での移転ということが私は必要になると思います。

 グアム移転の議論などがよくなされます。私は、これを主張する方々が基本的に間違っていると思いますのは、我々は米軍を沖縄にいさせてやっているんだという、この発想なんでございますね。

 沖縄におります米海兵隊、米軍は、総体として、先ほど来議論してきておりますように、日本のための抑止力であります。むしろ、アメリカは、いてやっているという意識でございましょう。出ていけと言えば、彼らは案外あっさりと出ていってしまう。そのときに、私は、国家の安全に大きな危険を持ち込むことになると思いますので、グアム移転、海兵隊を今の時点で国外に移設させるということには反対であります。

阿部委員 アメリカ国内でも、海兵隊の役割やそこへの予算づけについては、本当に速いスピードでいろいろな変化がございますから、お互いが意思疎通をよくしながら、しかし、私はやはり縮小の方向でやれると思いますし、ただ、信頼は損ねてはいけない。

 それから、沖縄の皆さんにとりましては、これは返還直後も、抑止力とは何かという論議があったときに、沖縄そのものを守るものではないというふうにまとめられた外務省の文書などもあって、であれば沖縄は何に耐えているのかということがずっと疑問であったと思います。ここは、私は本当に重要な政治家としてのテーマと思います。

 なお、先ほど、私が、年末に普天間に決まりかけたと申しましたが、これは辺野古の誤りでございました。申しわけございません。

 もう一問お願いいたします。佐々木公述人にお願いいたします。

 私は、きょうお示しいただいたデータ、大変に興味深く拝見をいたしました。普通、企業行動からいえば、内部留保を持たないで次の資金に回していくという方が企業の普通の行動であると思いますが、それがこうした形で内部に貯蓄されている現状の中で、このときすぐに財政再建ということを言えば、それはできないだろうという御指摘も、本当にそうだと思います。

 私がもう一点伺いたいのは、では、金融緩和等々でこの国に回る資金をもっともっと多くすることは、果たしてこの段階でどうであろうかということをお願いいたします。

佐々木公述人 金融政策について御質問いただきましたけれども、既にもう短期金利がゼロという状態が十数年続いていますし、長期金利も一%半ばという段階で、基本的に、金融政策を通じて民間の資金需要が喚起されるという状況ではないというふうに思っております。

 金融政策の議論につきましては、インフレターゲットや量的緩和がきくのではないかというふうなことも言われております。先ほど申し上げた民間の資金需要、銀行を介した金融取引というのは間接金融ですけれども、直接金融を介して、金融市場を通じてきくのではないかという意見もありますが、最終的に株価あるいは為替レートが円安あるいは株高の方向に行ったとしても、実体経済がそれに伴った形で利益を上げるというふうになっていなければ、金融緩和をやめた時点で株価が暴落してしまうというリスクが出てきてしまいますので、今は、金融政策を主導して景気回復を図るというよりも、むしろ財政政策を使って実体経済をよくしていくという方が先決ではないかというふうに思っております。

阿部委員 御意見を参考にして、これからの審議に役立てます。ありがとうございました。

中井委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 四人の公述人の皆さん、本当に貴重な御意見またお話をありがとうございました。

 岡本公述人にお伺いをいたしたいと思います。

 先日、私自身が予算委員会の外交、安保に関する集中審議で、先ほどおっしゃられた中国の海洋進出の問題について取り上げさせていただいたばかりであります。第一列島線の内部の島嶼をみずからの島だというふうに位置づけて、なおかつ、その海域を基本的に中国の内海化しようとしている。また、第二列島線の内部にも進出をすべく、さまざまな軍備を増強している。今や、第一列島線と第二列島線の間の海域で仮に有事が起きた場合、日米安保条約に基づいてアメリカの艦船が日本を防衛に入ってくる、こういうことを寄せつけないように、例えば対艦弾道ミサイル、射程千五百キロのものが間もなく完成をする、あるいは配備をされる、こんなことも言われているわけであります。

 そうした中国のいわゆる接近拒否、また領域拒否、A2ADというんでしょうか、アンチアクセス・エリア・ディナイアル、この戦略に対して、日本が防衛大綱でどのように対応していくのか、ここが今本当に問われている議論の本質なんだろうと思いますが、そのことについて、先日、北澤防衛大臣にお尋ねをさせていただいたところ、こういう形で中国の意図をこの場で語るのは、中国の意図もはっきりしないし、また、中国と日本の軍拡競争を招いて、かえってアジアの状況を不安定化させるんじゃないか、こういうふうな御答弁を北澤防衛大臣からいただきました。

 この認識で果たしていいのかと私は思っておりますが、岡本公述人のこの点についての御見解をお伺いしたいと思います。

岡本公述人 私は、いたずらに中国への恐怖感をあおり立てるつもりはございません。ですから、事実関係の指摘だけにとどめます。

 中国は、御指摘の第二列島線までの進出について明確な戦略を持っていると思います。既に二〇〇七年、胡錦濤主席は次のような指示を出しております。中国の近海総合作戦能力を向上させると同時に、徐々に遠海防衛型に転換し、遠海機動作戦能力を向上させ、国家の領海と海洋権益を守り、日々発展する海洋産業、海上運輸及びエネルギー資源の戦略ルートの安全を保護する。

 昨年末の中国は、全人代におきまして、第十二次でございましたか、五カ年計画において、海洋進出の理由を海洋権益の確保というふうにはっきり位置づけております。

 したがいまして、中国が実際に太平洋に出てくる、そのために核ミサイル搭載艦を含めた六十隻以上の潜水艦隊を持っている、そして、航空母艦を複数隻建造しているようである、このような事実関係から、私は、日本としての対処能力というものを組み立てていくべきだと思います。

柿澤委員 私は、日本の防衛に関する、安全保障に関する議論の基本的な問題は、日本にとって何が脅威であるかということについて、国民の間、私たちの間にきちっとした認識の共有がない、こういうことなのではないかと思っております。

 そういうことが共有されていないからこそ、例えば、アメリカは今、QDRの中で、基本的に沖縄とグアムを一つの核として太平洋あるいは日本海の海域を防衛していく、こういうことを考え、また、中国のA2AD、接近拒否戦略に対しては統合エアシーバトル構想を作戦構想として示してこれに対抗する、こういう考え方を示しているわけですけれども、一方の日本は、沖縄の米軍基地をめぐって、人によっては、沖縄からアメリカのプレゼンスをなくしてしまうのがいいことだ、こういう議論になってしまう。

 こういう点で、まさに日本にとって今この地域の中で何が脅威となっているのかということに対する認識が共有をされていない、この国会の場においても十分な議論がそうしたことについて行われていないということが私は基本的な問題点だと思いますけれども、この件について、岡本公述人のお考えを改めてお伺いしたいと思います。

岡本公述人 今の柿澤先生の御意見には全面的に賛成でございます。

 日本は、所要防衛力整備構想を持っておりましたときには、日本の周りの脅威分析から日本の防衛体制を考えるという、この考えをとっておりました。

 しかし、基盤的防衛力整備構想になってから、日本の周辺の脅威に対する視点というのは落ちていったような気がいたします。日本として平時持つべき防衛装備はこれこれであるということがいわば外の脅威の増減とは無関係に語られ、それに基づいて防衛力がGDPとの対比でつくられてきたということだと思います。

 今度の動的防衛力構想というのはその点を正すものだと私は思いますので、歓迎しております。

 私は尖閣をめぐる漁船の衝突事件を思い出すのでありますけれども、あのときにアメリカが、尖閣は日米安保条約の対象内であるということを言った。それまで声高に日本に謝罪しろ、補償しろと言っていた中国は、それ以来何も言わなくなったわけであります。

 中国にとっては、日本の軍事力は怖くはございませんでしょう。しかし、彼らにとって一番困るのは、アメリカとの関係の悪化でございます。したがいまして、周辺の脅威分析とともに、日本がそれに対応していくためには、日米関係が基軸にあるということは、私は不変であると思います。

柿澤委員 防衛大綱の動的防衛力構想のお話が出ました。

 現政権の皆さんからすれば、まさにそこのシフトチェンジをこの防衛大綱で行ったんだ、こういうことになるんだと思いますけれども、一方で、この防衛大綱は先々に多くの宿題を残した宿題大綱だ、こういうふうにも言われているわけです。また、もう一方、いいことは書いてあるけれども、全く予算が足りない、お経としてはいいけれども、お布施が足りないので霊験があらたかでない、こういうことを言っておられる防衛政策の専門家もいらっしゃいます。

 こういうことについて、本当に実質的にこの構想が機能するためには、例えば、有事の際に米軍との連携をどうしていくのか、また、兵器の共同開発についてどのようにコミットしていくのか、集団的自衛権の問題やあるいは武器輸出三原則の問題、新しい時代の安全保障と防衛力のあり方に関する懇談会でまさに正面から議論をされ、こうした一定の方向性が出ているテーマについて、本来であれば、しっかりとこれから取り組む姿勢をここにおいて示しておく必要があったというふうに私は個人的には思っております。

 そして、政権の内部にも、それについてかねてから積極的な発言をしている方が外務大臣をやられていたり、そういう意味では、体制の面でもそれを進める条件がある意味では整っていたのではないかと思いますが、最終局面で、予算及び予算関連法を通すための議論もあって、例えば社民党さんとの対話の中でこうしたことを引っ込めざるを得なくなったというふうにも言われている。

 私は、このことが、将来的に日本の安全保障政策あるいは体制に重大なリスクをもたらすことになりかねないのではないかという懸念を持っておりますが、例えば、集団的自衛権の問題、武器輸出三原則の問題あるいは日本版NSCの問題、こうした問題について岡本公述人のお考えをお伺いしたいと思います。

岡本公述人 まことにおっしゃるとおりだと存じます。

 幾つか個別的なことを簡単に申し上げます。

 集団自衛権については、私は、憲法改正まで踏み込んでいく必要はないと思っております。安倍内閣のときに防衛懇談会で議論をしておりましたあの四類型さえ日本がクリアできるようになれば、私はもうこれでかなりの期間やっていけると思います。

 武器輸出三原則は、私は、民主党政権がここから退行する、退くのであれば、大変残念なことだと思います。

 一例を挙げれば、F35の共同開発、トルコですらと言っては悪いですが、武器技術についてみんなから情報供与を受けられるのに、日本は武器輸出三原則があるからできないというのは、やはり不正常な状況だと思います。こうしたことが正されることを願っております。

柿澤委員 普天間基地の移設の問題について、一点だけ岡本公述人にお伺いをいたしたいと思います。

 先日の予算委員会の外交、安保の集中審議で、方便発言についていろいろ議論がされていたんですが、その一方で、ことしの前半に行われるはずの日米2プラス2、そして日米首脳会談までの安保の共同声明の中でこの普天間の移設について合意、決着をさせる、こういうことについて、時期を切って考えているわけではないということを菅総理は繰り返しお話しされました。

 アメリカの側からも、別にそれが期限ではないよというようなシグナルは確かに出ているわけでありますけれども、しかし、この段階で、日米同盟の重要性を一方で語りながら、この普天間基地の時期、工法等に関する問題についてすぐ決める必要はないんだ、こういうことを日本の政府の側から発信していくのが果たして正しいことだったのかどうなのかというふうにも思っております。

 そういう意味で、これは、この問題について本当に決着をさせるというこの政権の意思、決意、覚悟そのものを疑わせる面があると思いますけれども、お考えをお伺いしたいと思います。

岡本公述人 時期に特段の期限を設けないというのは、確かに、これまでアメリカに言ってきたことに比べれば、ポジションの変更でございます。その理由は十分に説明する必要があると思います。

 他方、アメリカの中でも、本件については、今までのようなとげとげしい雰囲気は若干なくなってきていることも事実でございます。

 アメリカとは、本当に今、胸襟を開いて、何ができるのかということを議論できる素地が整いつつあると思います。日本もアメリカも安全保障については目指すところは同じでございますから、本来は同じ方向の意見が出るはずであります。

 もともと、普天間の移設というのは、軍事オペレーション上の要請ではなくて、あくまでも、住民の受けている騒音と事故の危険性をいかに除去するかということから出発したものであります。ですから、沖縄の大反対の中で移設計画を強行するというのは本末転倒だと思います。沖縄の住民感情を十分に踏まえて、そして今、アメリカともう一度基本的なところから議論し直してもいいのではないか、私は個人的にはそう思っております。

柿澤委員 佐々木公述人に最後にお伺いをいたします。

 このいただいたペーパーで、最後に、減価償却の加速度償却や一括償却など、企業の前向きな投資を直接刺激する仕組みを導入し、政府が企業のリスクテークを支えていく方が最終的には財政再建や国際競争力の確保に資すると考えると。まさに、私たちも同じ考え方に立っております。去年の九月、オバマ大統領はまさにこの投資減税を二千億ドル規模で打ち出されたわけです。

 去年の補正予算の議論の中で、みんなの党は、税務上の償却期限を自由に設定できる、自由償却つき投資減税三・六兆円分、こういうものを提案させていただきましたが、残念ながら、賛同を得られず、否決をされてしまいました。

 しかし、この考え方こそが、まさに民間の投資を誘発して、そして経済を成長軌道に乗せるかぎを握っている、こういうふうに思いますが、お考えをお聞きして、終わりとさせていただきたいと思います。

中井委員長 佐々木君、時間が来ていますので、簡略にお願いします。

佐々木公述人 設備投資減税については、さまざまな制度的な細かい部分というのは議論があろうかと思いますけれども、最終的に企業の投資をふやしていくということが、中長期的に日本経済にとって一番大切だろうと思いますので、さまざまな観点から引き続き御議論いただければというふうに思います。

中井委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 平成二十三年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず逢見直人公述人、次に冨士重夫公述人、次に駒村康平公述人、次に小田川義和公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、逢見公述人にお願いいたします。

    〔委員長退席、武正委員長代理着席〕

逢見公述人 連合で副事務局長を務めております逢見です。きょうはよろしくお願いいたします。

 連合は、働く者の立場から、我が国の経済社会の状況を克服し、希望と安心の社会づくりに取り組んでおります。具体的には、デフレ脱却・消費回復に資する経済対策と雇用の創出・人材育成、そしてワークルールの確立によるディーセントワークの実現、社会的セーフティーネットの強化を三本の柱として、さまざまな政策課題に取り組んでおります。

 本日は、こうした考え方や問題認識を示し、予算委員会における審議においてぜひとも反映していただくようにお願いをいたします。

 お手元に資料もございますので、逐次それも参照しながら意見を申し上げたいと思います。

 連合は、これまで、目指すべき社会のあり方として掲げてきた、労働を中心とした福祉型社会というのを約一年かけて再定義、深化させて、働くことを軸とする安心社会というのをビジョンとして掲げました。

 二〇〇八年のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況は、それまでの新自由主義的な政策などによってもたらされた格差あるいは貧困、社会の不条理といった問題に対する反省を世界と日本に促し、根本から問い直しを求めてきたのではないかと思います。

 労働の尊厳、労働の価値を軽視してきたこれまでの経済政策や社会政策を転換させるべく、時代の潮流は明らかに変わってきていると思います。ILOが提起するディーセントワーク、日本語では働きがいのある人間らしい仕事というふうに訳しておりますが、こうしたディーセントワークはこのような背景を踏まえた世界へのメッセージでもあると考えております。

 こうした世界的な潮流変化の中で、パラダイムの転換が始まっております。すべての働く者、そして働くことを願う者の利益を結びつけ、新しい社会を切り開いていくことが求められております。このような問題意識から、働くことを軸とする安心社会、すなわち、働くことを通じて支え合う希望と安心の社会を築くために全力を挙げることといたしました。

 働くことを軸とする安心社会は、働くことに最も重要な価値を置き、だれもが公正な労働条件のもと多様な働き方を通じて社会に参加でき、社会的、経済的に自立することを軸として、それを相互に支え合い、自己実現に挑戦できるセーフティーネットが組み込まれている、活力あふれる参加型の社会であります。だれもがいつでも働く機会、参加の場を得ることができるという安心が、人々の希望につながる社会のかなめとなります。

 お手元の資料に図表一というのがございますが、ここには五つの安心の橋というのがかけられております。

 すべての人々に、人間的で誇りの持てる働く機会が保障されなければなりません。しかしながら、安定した職が得られないでいる若者、育児や介護のために就労をあきらめざるを得ない労働者、障害のある人々など、困難を抱えている人々が多数存在いたします。こうした困難を取り除き、働くことを人々に結びつける安心の橋がかけられなければなりません。それは、意思があれば自由に行き来ができる橋であります。

 橋の1というのが左側にありますが、これは教育と雇用を結ぶ橋であります。

 学業を終えて社会に出る前に、働くこととつながっている社会であります。学卒未就職といった事態は避けねばなりません。また、教育の場でしっかりとした職業観をはぐくむことも重要であります。

 橋の2は、家族と働くことをつなぐかけ橋であります。

 その一つとして、出産から子育てに至る一連の課題が挙げられます。

 我が国が人口減少社会に転じており、合計特殊出生率が回復傾向にあるとはいうものの、人口の減少傾向には歯どめがかかっておりません。子育て費用、教育費の負担、貧困層の増大、不安定雇用の増大による将来不安などにより養育費用が確保できないことなど、少子化の原因は多岐にわたっており、まさに切れ目のない安心を実現するための総合的な対策が必要であります。

 また、人々を雇用に結びつけると同時に、その雇用が人間的で誇りの持てるもの、すなわちディーセントワークの実現が求められます。それが橋の真ん中にある3であります。

 我が国でこれを実現するためには、仕事の価値に見合った所得、職場コミュニティーとそれを支えるワークルールの確立、ワーク・ライフ・バランスの実現が不可欠であります。

 働くことを軸に支え合う安心社会とワーク・ライフ・バランスを追求するということは、矛盾するものではありません。ワーク・ライフ・バランスこそが、雇用の質を高め、より多くの人の就労を可能にするものであります。労働力の質の向上が労働生産性を向上させ、従業員のより豊かな暮らしにつながるとともに、やりがい、働きがいのある職場をつくり、それが企業価値の向上にもつながっていきます。

 職業訓練などの積極的労働市場政策を充実させ、生涯教育を拡大し、ワーク・ライフ・バランスを定着させるならば、質の高い労働力による成長戦略が可能になります。

 国際的にも質の高い労働力によって培ってきた我が国のすぐれた技術力、開発力を維持強化しつつ、それをベースに、成長が期待できる産業分野に積極的に進出し、雇用機会をつくり出していく必要があります。例えば、環境関連の分野、再生可能エネルギーの分野、住宅、施設のエネルギー効率改善など、新しい分野で雇用機会をつくり出していくことが可能であります。

 また、これまで地域経済を支えてきた建設業や、農林水産業といった第一次産業にも新しい可能性が芽生えております。環境保全や安全を高める分野の公共事業には強いニーズが生まれております。農林水産業などの第一次産業については、商工との連携による第六次産業化や国産材の活用などで雇用を拡大し、地域を活性化させることが可能であります。

 働くことを軸とする安心社会は、だれもが自己実現に挑戦できるセーフティーネットが整備され、生涯を通した切れ目のない安心を提供する社会であります。橋の4のところには、失業から就労へのトランポリン型の社会のイメージが描かれております。

 今国会は、デフレ脱却、雇用対策に資する予算措置、あるいは平成二十三年度税制改正、求職者支援法案、雇用保険法改正案、そして労働者派遣法改正案など、国民生活、日本経済にとって極めて重要な法案が審議されることになっております。その中から、特に重要と考える課題について、連合の考え方や問題認識を述べたいと思います。

 まず第一は、新成長戦略の着実な推進であります。

 デフレを脱却し、日本経済を持続的、安定的な成長軌道に乗せるためには、まずは、昨年六月に取りまとめられた新成長戦略を着実に推進し、雇用の創出、維持を図る必要があります。

 雇用情勢は依然として厳しい状況が続いております。特に、ことし三月の新卒者の内定率が五七・六%と過去最低水準になっているなど、若者、新卒者の雇用状況は深刻であります。

 政府は、昨年九月に三段構えの経済政策を掲げ、予備費の活用、二〇一〇年度補正予算として新卒者、若年者雇用対策を打ち出しております。また、昨年十二月には、私ども連合の参加した雇用戦略対話において雇用戦略・基本方針二〇一一がまとめられ、その中で、雇用をつなぐ、つくる、守るという三本柱による政策がまとめられました。平成二十三年度予算案では、特別枠を活用して、若年者雇用対策となるキャリア制度の構築などが示されております。

 また、新成長戦略に関して、昨年末に国内投資促進プログラムが取りまとめられております。国内投資促進が雇用を創出し、さらなる成長につながっていくという好循環が求められます。そのためにも、官民それぞれが課題を克服し、行動目標の実現に向けて取り組んでいくことが重要であり、私ども労働界も協力をしていきたいと思っております。

 経済対策で示された若年者、新卒者の雇用対策の効果を高め、改善を図る上でも、また新成長戦略を早期に実現するためにも、平成二十三年度予算の早期成立をお願いしたいと思います。また、予算と一体となる予算関連法案についても、できるだけ早期の成立をお願いしたいと思っております。

 次に、社会保障制度と税の一体改革について、所見を申し述べたいと思います。

 言うまでもなく、日本は、世界でも類を見ない超高齢化の進行、労働市場の規制緩和と非正規労働者の増大、貧困と格差の拡大など、国民の生活をめぐる状況は大きく変化しております。

 図表二に示してございますように、生活保護世帯は、二〇一〇年十一月時点で百四十万世帯を超え、増加の一途をたどっており、十年前と比べて約一・八倍となっております。

 日本の相対的貧困率は一四・九%であり、OECDの二〇〇〇年代半ばのデータではOECD平均を上回っており、子供の貧困などが深刻化しております。これは図表三に示されたとおりでございます。

 しかし、こうした社会経済の変化に社会保障制度を初めとしたセーフティーネットが十分機能しておらず、人々に将来の不安を抱かせております。

 現在、連合は、新しい社会保障ビジョンとそれを支える税制改革の大綱の策定に取り組んでおります。その中で、幾つかの点を述べさせていただきたいと思います。

 まず、必要なことは、全世代型の社会保障体系を確立するということであります。

 従来、社会保障機能の多くを家庭や企業が担っていたために、日本の社会保障体系は高齢期にシフトしたものとなっておりました。今後は、生産年齢人口の減少によって、社会保障の支え手の減少も危惧されております。

 社会保障を支え、社会経済を活性化させるためにも、子供や若者など次世代の育成を積極的に進め、社会の持続可能性を重視する必要があります。人生前半期、子供や若者の育成支援、現役世代への就労支援を重視した全世代型の社会保障体系に改革をすべきであります。

 イメージとしては図表四のようなものでありまして、従来、高齢期に偏重してきた社会保障政策の体系、そして若年期に手薄であったものを全世代型に移すべきだということであります。

 そのためにも、雇用保険と生活保護の間を埋め、労働市場への復帰を図る第二のセーフティーネットである求職者支援制度の確立は不可欠であり、求職者支援法の早期成立をお願いしたいと思います。

 三層構造による社会的セーフティーネットの構想は、図表五に示されている部分でございます。

 また、子供、子育てを社会全体で支える仕組みの構築、すべての子供の子育ての権利が保障され、子供の貧困が解消される社会、安心して妊娠、出産、子育てができるような切れ目のない子育て支援サービスの整備も重要であります。

 連合は、子供、子育てにかかわるすべての政策と財源を子ども・子育て基金といったものに統合し、総合的かつ体系的な支援策を構築すべきと考えております。

 次に、税の再分配機能の強化と財源調達能力の回復についてでございます。

 社会保障の財源構成は社会保険と税を基本とし、社会保障と税の一体改革を通じて、国民合意のもとに安定財源を確保する必要があります。

 この二十年間、所得税のフラット化や資産課税の軽減等によって税の再分配機能が弱っております。一方、給付面では、社会保障費の伸びの抑制が継続されてきたことによって、社会保障と税全体を通じた再分配機能が弱まった、このことへの対応が必要と考えております。

 図表六の一と図表六の二に、それぞれの再分配効果の国際比較が載っております。

 こうした現状を打破するためにも、公平、連帯、納得の理念に基づいた税制改正を行うべきであります。具体的には、納得を高めるための納税者の立場に立ったわかりやすい税制、公平を高めるための税と社会保障を通じた所得再分配機能の強化、連帯を強め、少子高齢化を支える税制、地方分権とバランスのとれた地方税財源の改革、経済と環境を両立するための税制、グローバル化への対応、経済成長と持続可能な財政基盤の確立といった視点での改革が必要であります。

 また、社会保障の財源は、税だけではなく、社会連帯を基礎に重層的に組み立てられているわけでありますが、特に社会保障については、労使や利用者などのステークホルダーが参画する社会保障基金の設置など、社会保障全体の総合的なガバナンス機能の確立が必要と考えております。

 それから、社会保障・税の共通番号について、一言申し上げたいと思います。

 一月に、社会保障・税にかかわる番号制度についての政府の基本方針が取りまとめられました。この共通番号制度は、連合も以前から導入を求めてきたことであり、その実現に向けて一歩前進したことは高く評価しております。

 今後は、国民各層の納得と理解を得ながら、法整備や運営体制の検討、整備を図っていくこととなりますが、できるだけ早期導入に向けた丁寧かつ慎重な議論、情報発信をお願いしたいと思います。

 また、地球温暖化問題についても、一言申し上げたいと思います。

 働くことを軸とする安心社会の構築には、グローバル化の負の側面を克服し、持続可能な社会の構築に向けて、我が国が国際的にも役割と責任を果たすことが求められます。その中で、地球温暖化対策は大変重要な課題の一つであります。

 昨年十二月に開催されたCOP16で、カンクン合意が採択されました。日本政府は、京都議定書の枠組み単純延長の回避に向けて、すべての主要排出国が対象となるコペンハーゲン合意をベースにして、公平で実効ある枠組みの構築を目指すとした方針を堅持して、最後まで粘り強く交渉を行いました。その結果については、我々も高く評価しております。

 ことしの十二月にはCOP17が開かれるわけですが、それに向けてさらに厳しい国際交渉が続くことが予想されますが、これまでの方針を堅持し、公平で実効性のある新たな国際的な枠組みを構築すべきであります。また、カンクン合意の実現に日本も積極的に貢献するとともに、地球全体での排出量削減に向け、新興国に対する技術や資金援助など、新たな提案を行っていくことも必要であります。

 国内的には、エネルギー基本計画で、二〇三〇年に一九九〇年比でエネルギー関連のCO2を三〇%もしくはそれ以上削減する見通しを示しております。これを実現するため、新成長戦略において、グリーンイノベーションによる環境・エネルギー大国戦略というのを政府は掲げ、環境関連の新規市場、新規雇用、温室効果ガス削減量の目標を打ち出しております。

 環境と経済の両立、そして雇用の拡大を図るとともに、世界全体の温室効果ガス排出量の削減に貢献していくためにも、グリーンイノベーションの推進をお願いしたいと思っております。このことが雇用の改善、地域の活性化につながり、ひいてはデフレ脱却に資するものと考えております。

 主要三施策を含む地球温暖化対策について、温暖化対策のための税については平成二十三年十月から導入する、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度については今国会で法案を提出する、国内排出量取引制度については海外の動向やその成果などを検証し、慎重な検討を行うこととされております。これらの結論は、この一年の知見の積み重ねの結果と理解しております。

 今国会で継続審議となっております地球温暖化対策基本法案は、今後の対策を進めていく上での我が国の基本戦略と位置づけられるものであります。主要三施策など個々の施策について、与野党協議のもとで、国民の負担や産業、雇用の競争力への影響などについて政府の方針を踏まえつつ、必要な修正を含め成立させるようにお願いしたいと思います。

 最後に、ディーセントワークの実現に向けた公契約基本法などについて、一言触れたいと思います。

 昨年十二月、川崎市議会は、公共事業などに従事する労働者の適正な労働条件を契約事項に入れる公契約条項を盛り込みました。二〇〇九年には野田市が条例を制定し、これがやがて全国に広まるということが期待されております。

 公契約で働く人たちのディーセントワークを通じた経済成長と雇用創出を実現するためにも、公契約基本法などの国内法の整備を図っていく必要があると思います。

 経済雇用情勢はまだまだ予断を許さない状況にあります。生活の安定と不安解消を求める国民の期待に十分こたえるためにも、政府また国会は、建設的な政策論争と国民の負託と信頼にこたえる運営をお願いしたいと思っております。

 以上で私の発言を終わります。(拍手)

武正委員長代理 ありがとうございました。

 次に、冨士公述人にお願いいたします。

冨士公述人 JA全中の専務の冨士と申します。

 本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私からは、JAグループの立場に立ちまして、農業政策に関する意見を述べさせていただきたいと存じます。

 最初に、TPP交渉の問題について意見を述べさせていただきたいと思います。それは、このTPPの問題が現在の農政上の重要な課題となっておりますし、我が国農業の根幹に関する極めて大きな問題であるからであります。

 私は、我が国がこのTPP交渉に参画することには絶対反対であります。

 現在、世界的に食料価格が再び高騰し、二〇〇八年を上回る水準になっております。大変大きな問題となっております。また、地球全体で見れば人口の増加が毎年八千万人ずつ増大するということなど、食料輸入国であります我が国としては、国内の農業の発展や食料自給率五〇%を目標とする食料・農業・農村基本計画をまさに昨年の三月に閣議決定したわけであります。この我が国の国家戦略としての基本計画とこのTPPとは、決して両立するものではないというふうに思います。

 三点ほど、その理由、意見を述べさせていただきたいと思います。

 一つは、貿易交渉というのは、日本と相手国である双方が利益を享受するというのが原則の協定であります。

 貿易協定、経済連携協定で、日本側だけが利益の享受をすることはあり得ません。日本が鉱工業製品でプラスになるのであれば、アメリカ、オーストラリアは、食料、農産物輸出でプラスにならなければお互いに協定は成り立ちません。

 日本が今以上に自給率を減少させないで輸入を増大させないとするならば、アメリカ、オーストラリアの利益にはなりません。

 双方の国がウイン・ウインの関係になるのであるならば、日本の農産物生産が今より減少し、アメリカ、オーストラリアの農産物が今以上に輸入されることは当然であって、このことから、TPPは、自給率向上を目指す食料・農業・農村基本計画と両立するということは到底考えられません。

 二点目は、関税撤廃とは、関税をゼロにするだけの問題ではないということであります。

 我が国の農産物の平均関税率は既に一二%程度にすぎませんけれども、全体のタリフラインの数の一割程度を重要品目として高い関税により守っております。

 米や脱粉、バターなどの乳製品、それから砂糖、小麦などの品目は、関税水準はもちろんでありますが、国家貿易という外国産を供給管理できる仕組みによって国内農産物の供給が担保されております。

 加工原材料農産物であります小麦、脱粉、バター等の乳製品、砂糖、これらはケーキや菓子などの原材料で、ほとんど品質格差がなく、関税措置が撤廃されれば、アメリカ、オーストラリア産と同じ価格水準に下落するだけではなくて、国家貿易がなくなれば、その利便性やロットの観点から、外国産に簡単に置きかわったり製品輸入に置きかわったりして、国内生産はもちろん、乳業メーカーや製粉メーカー、砂糖メーカーなどの関連企業も壊滅いたします。

 特に、小麦の国貿がなくなることは問題であると思っております。

 主食用の米の需要量が少子高齢化によりまして今後も減少していく中で、小麦粉代替として米粉などの新規用途による需要確保で、水田農業を最大限活用して自給率向上を図る絵姿を基本計画で描いているわけですが、外国産小麦の供給管理する措置がなくなれば、基本計画はまさに実現できない、絵にかいたもちになるわけであります。したがいまして、TPPと基本計画は全く両立できないというふうに考えております。

 三点目は、TPPによる影響は、もっと広範で大きなものになるという危惧でございます。

 農林水産省の試算では、農業生産額の減少は四兆五千億円、多面的機能の喪失は三兆七千億円、自給率は四〇%から一三%へ低下すると試算しております。

 日本の固有種でありますアカトンボというのがありますが、これは、農業が、水田が失われれば失われる、そういった生物多様性への影響、それから、沖縄や北海道など国境線上にある農業がなくなることによります国防上のリスクの増大、それから、一億二千万人の人口を持ちます我が国日本が、九〇%近くの食料を海外から調達することによる世界の食料価格や世界の食料需給に与える影響、こういったことなど、農業関連の影響は、農水省試算よりももっともっと広範で大きなものになるのではないかと考えております。

 TPP九カ国と日本を入れたGDP総額の占める割合は、日本とアメリカ、二国間で九〇%以上を占めるものになります。そのアメリカから日本に輸入されている貿易総額の七五%までが、既に無税となっている品目であります。

 したがって、アメリカにとっては、関税撤廃のほかに、金融、保険、医療、電気通信、弁護士や医師などの専門労働の開放、政府調達など、我が国の形にかかわります重要かつ広範な分野に関心があるのは明らかであり、TPP交渉でも、そうした二十四の交渉分野が交渉対象となっているわけであります。

 アメリカの自動車関税の二・五%を撤廃するなどの産業分野における日本の利益は、円高などの為替変動がある中で本当に利益となるのか。国内農産物と関連産業、それから環境などの多面的機能を失うということだけではなくて、地域経済や地域社会、国民生活に関する重要な仕組みや基準が一変しかねないこのTPP交渉は、我が国の国民生活全体から見ても大きな損失をもたらすものになると考えられ、改めてTPP交渉には反対であります。少なくとも、もっともっと情報を提供し、広範な国民的な議論をすべきであり、拙速な判断をすべきではないというふうに思います。

    〔武正委員長代理退席、委員長着席〕

 次に、農業予算について意見を述べさせていただきたいと存じます。

 農業予算総額は、年々減少する中で、二兆円をわずかに上回る水準まで低下しております。戸別所得補償等の予算を確保することを最優先するため、農業の体質強化やコスト削減につながる生産、流通関係の施設整備、それから公共事業、土地改良のメンテナンスなど、予算が十分確保できなくなっている部分があります。食料・農業・農村基本計画の早期実現に向けて、万全な予算を確保することが必要であるというふうに思います。

 また、今や、鳥インフルエンザそして口蹄疫など、家畜伝染病の発生が広範な被害、損失を与える事態となっております。畜産、酪農基盤を守るためにも、機動的な対応で早期に終結をさせるためにも、基金とか積立金といったような柔軟な対応ができる予算をあらかじめ確保しておく必要があるのではないかというふうに考えます。

 次に、戸別所得補償制度について意見を述べさせていただきたいと思います。

 二十二年度から導入されました米の戸別所得補償モデル事業におけます十アール当たり一万五千円の仕組みは、我々JAグループとしても、これまで主張してまいりました米の需給調整参加者へのメリット対策、二つ目にはコスト割れを防ぐ最低コスト保証、三つ目としては水田の多面的機能の発揮に関する観点といった要素を反映した内容となっているもので、評価をしております。

 また、二十三年度予算から、麦、大豆、てん菜、バレイショ等の畑作物の戸別所得補償におきましては、従来に比べて、生産数量に応じた数量支払いとすることになりまして、これも、我々が求めてきました生産者の努力がより反映できる仕組みとなるよう、生産性向上や品質向上を図る上でも評価できる仕組みになったというふうに考えております。

    〔委員長退席、武正委員長代理着席〕

 一方で、今の戸別所得補償制度には四つの課題があると認識しております。

 一つが、変動交付金についてであります。

 変動交付金は、全国一律の基準価格で下落分を補てんするものであります。米価は全体需給によって形成されるわけでありますが、地域、銘柄ごとに米のそれぞれの価格水準、下落変動幅も異なるのが実態であります。したがって、地域ごとにセーフティーネットを設定する仕組みや、担い手への経営所得安定対策に資するような仕組みに見直すことを検討することが必要であるというふうに考えております。

 二点目は、米の需給調整が必要という点でございます。

 米の計画生産、需給調整をする場合に、入り口の生産量はこれまでの需要予測に基づきまして設定し、取り組むわけでありますが、作柄変動によります豊作、見通しを下回る需要実績ということも当然あるわけであります。

 米は、一年一作で長期保存ができる、そして主食で価格弾性値が低く、少しでも足りないと価格が上がり、少しでも過剰になれば価格が大きく下落するという特性を持っております。所得補償があるから価格が下がってもよいという対応ではなくて、適切かつ機動的な需給対応を措置すれば生産者の経営安定にも財政負担の軽減にもなるわけで、こうした仕組みはどうしても必要ではないかというふうに考えております。

 三つ目は、地域裁量が最大限発揮できる仕組みが必要という点であります。

 米の転作作物であります麦とか大豆など、これらの作物については、地域の現場で、賃貸借や作業受託など、担い手による営農が大きなウエートを占めております。しかるに、水田利活性自給率向上交付金では、全国統一一律単価という仕組みになっております。麦や大豆の収量や収益率は地域によって大きく異なる実態にあります。地域の主体性を発揮できるよう、産地資金の充実や仕組みの柔軟な対応など、地域の裁量により調整できる仕組みが必要であるというふうに考えております。

 最後、四点目でありますが、担い手への農地の利用集積強化の仕組みが必要であるという点であります。

 今回の予算で、規模拡大加算十アール当たり二万円が措置されましたことは評価できるというふうに思います。ただ、農地の出し手、それを受ける受け手である担い手、これをつなぐ調整機関、それを円滑に行うような支援システムの充実強化が必要であります。

 現在の農地利用集積円滑化団体は農地法改正によりスタートした仕組みでありますけれども、これをもっと的確に加速するためにも、優先的に農地の利用調整を仲介する公的権限を強化するとともに、地域の農地の需給状況に応じて、出し手と受け手と双方に支援、助成ができる仕組みに見直す必要があるというふうに考えます。

 以上をもちまして、私の農業政策に関する意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

武正委員長代理 ありがとうございました。

 次に、駒村公述人にお願いいたします。

駒村公述人 慶應義塾大の駒村でございます。

 本日、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私の意見を、二十分いただきまして、申し上げたいと存じます。

 多少資料を用意させていただきましたので、お手元の方に配られているかと存じます。横の大きい字で書かれているものが、申し上げますきょうの本体資料であります。

 そのほか、ここ一年ぐらいで書きました私の論文を三点ほど配付させていただいているかと存じます。論文そのものについては細かく触れませんけれども、舌足らず、説明不足のところがあるかと存じますので、それはどういう趣旨なのかというのは論文の方を見ていただければと思います。

 パワーポイントの資料の方は、右下に数字が打ってございますので、この数字に従って御説明をしていきたいと思います。

 一ページ目は表紙でございますので、二ページ目から入りたいと存じます。

 私は社会保障を専門にしております。そういう点で、社会保障に重点を置いたお話をさせていただきたい、予算の中でももともとボリュームが多いのが社会保障関連の費用でございますので、そこに中心を置かせていただきたいと存じます。

 私の現在の社会保障あるいは社会経済に対する見方という点でございますけれども、グローバル経済の進展や人口構成の大きな変化の中、どういうことかといいますと、グローバル経済のところは、御案内のとおりでございます。資本、物、人の急速な国際移動が起きているということでございますけれども、人口構成の方は、人口減少、そして超高齢、そして、世帯構成も、単身世帯がこれから急増していくという意味で、世帯の質も大きく変わっていくということが起きていると思います。

 こういう大きな社会変化の中で、従来、日本経済社会を構成していた企業の統治システムや、雇用システム、社会保障・税システム、教育システムは、例えば日本型雇用というような形を中心に機能していたわけですけれども、ここ二十年で、雇用あるいは企業のガバナンスのシステムが変わることによって大きく変化をして、不安定な構造になり始めているということだったと思います。

 この点については、参考論文の一の方で少し詳しく書かせていただいておりますので、説明は省略させていただきたいと思います。

 次の三ページ目は、この四者の関係を概念的に、相互補完的になっていたんだ、社会保障の議論、雇用の議論、こういったものは、ほかの社会のシステムから独立して成立しているわけでもなく、独立して議論できるわけでもない、すべてを見ながら、整合性のある新しい社会経済のシステムを今考えていかなければならない、こういうふうに考えております。

    〔武正委員長代理退席、委員長着席〕

 そういった中で、次、四ページ目の方に入らせていただきたいと思いますけれども、日本経済社会が直面している問題、これは三つにまとめさせていただいております。

 少子高齢化への不安。これはまさに、人間でいうと、老化が始まっている、老化への不安ということかもしれません。それから二番目は、旧来型の成長志向のあった社会モデルが崩壊しつつある、そして長引くデフレ社会。これは、なかなか従来の生活を変えることができない、生活習慣病のような状況になってきているのではないか。それから、国民全体が将来展望がなかなか見れない、自信や希望を失っている、精神的にやや気落ちしている、うつということでもないかもしれませんけれども、気落ちをしているということで、三つの病気を抱えているということだと思います。

 こういった中、国民が、一部かもしれませんけれども、浮き足立ってきているのではないか、既得権や既存のシステムにしがみつくということになっているのではないかと思います。

 新しい安定した社会経済システムを考えていかなければならない。これはまさに、参考論文一の方でも、その具体的な姿は提案をさせていただいているところでございます。

 あるいは、経済成長、経済政策においても、現役世代は名目の手取り所得が毎年少しでもふえていくという社会をつくっていかないと、前年よりもことし、手取りが減っている、名目額も減っているということになれば、自信も失ってくるのではないか、こういうふうに思うわけです。

 では、次の五ページの方で、具体的に社会保障政策についてのコメントを申し上げていきたい、こういうふうに思います。

 社会保障政策全般については、現在議論されている子ども・子育て支援新システムと言われているもの、これはまさに、幼保一体、育児休業の充実、それから子供向けの所得保障政策といったものを包括的に整備していく、今までのような、ばらばらであり、部分的でありという政策ではなく、包括的に整備をしていくという政策について、あるいは、仕事を失って雇用保険が切れてしまった方、あるいはもともと雇用保険に入っていなかったような方に対して現金の所得保障つきの訓練を行っていくという政策、あるいは、年金改革としては、一元化された所得比例、所得に連動した保険料と給付を行う、そして一方では、税を財源にした最低所得保障年金というのを組み合わせるというのが正しい方向を向いた政策ではないか、こういうふうに思っております。

 しかしながら、参考論文の二の方で、これは去年の一月に書かせていただいたものでございますけれども、やはり財政制約というものもありますし、やるべき優先順位、既存給付の見直し、税制上の優遇も含めての見直しといったものを連動して行っていくべきではないかと思います。現実に合わせて政策を見直していくということが大事でございますので、参考論文の二の方でも、靴を買いに行った人の逸話を紹介しておりますけれども、足に合わせて靴は買わなければいけないと思いますので、そういう見直しは必要ではないかとは思っております。

 あるいは、国民に、この社会保障政策を行うためには、どのような、どの程度の安定財源が必要になってくるのかという数字、目安、あるいはこの政策が果たしてどういう社会を想定しているかということを明示して、新しい社会経済の中で新しい社会保障政策がどういう役割を果たしていくのかということも明示して、国民を安心して暮らせるようにリードしていく必要があるのではないかと思います。

 六ページ目の方に入りたいと存じます。

 六ページ目の資料は、今のお話のうち、教育及び雇用、そして所得保障、社会保障システムの関係を抽出して書いたものでございまして、真ん中に雇用システムがありまして、左から、職業と教育の連携、そして上に、家族と暮らしの親和性、そして、いざというときの所得保障、そして緩やかに退職していくという絵をかいております。

 これは、先ほど逢見氏が御紹介した五つの橋とほぼ同じイメージでございますので、そこを具体的に入れ込んだということでございます。

 こういう新しい社会保障システムを提案していくに当たっては、当然、国民側にもその費用というものはお見せしていかなければいけない。

 これが七ページ目でございまして、社会保障・税一体改革というのは、当然これから必要になってくるだろうと思います。

 現状の社会保障制度の財政的安定性の確保、これがまず近々に必要だということだと思います。膨大な財政赤字を出しっ放しであれば、財政の持続可能性は失われていくわけですから、世界で最も高い高齢化率に見合った社会保障給付とその財源を確保するということは、当然大事なことであろうと思います。

 さらに、私が今申し上げた、新しい包括的な人々のグローバル経済、高齢化社会の中で、安心して国民が暮らしていけるような新しい社会経済を支えるための社会保障システムというものも構築していく、このためにも財政の安定性は必要だと思います。

 これからの社会保障制度の仕様書、どういうものを想定されているのか、そして、それに必要な費用、見積書、そしてそれを国民に負担していただく請求書というものを具体的に組んでいく必要がある。それから、当然、その基盤として、社会保障・税にかかわる番号制度、効率的な社会保障給付と公平な費用負担のためには、どうしてもこういうツールが必要だろうと思います。さらに、すべての国民が今よりも得をする、すべての人にとって得ですよという政策はあり得ないと存じます。

 そういう意味では、この議論は連続的な安定した政治的な状況のもとで行ってもらいたいわけですけれども、なかなかそういう状況がないということであれば、社会保障諮問会議、これは、私は社会保障有識者検討会、内閣府で去年末に置かれたもののメンバーとして参画をしておりましたが、与野党の議員から構成されて、常設で法に基づく会議、仮に途中で政権交代があっても継続的に協議できるような体制といったものをきちんと用意する。かつて社会保障制度審議会というものがあったわけでありますので、わざわざそれを前政権の中で廃止しているわけですから、本当は廃止すべきではなかった、それを復活してもらいたい、こういうふうに思っております。

 社会保障をめぐっては、なかなか国民の中で理解が進まない部分もあるかと思います。スウェーデンではどういう改革の進め方をしたか、これは年金を例に後ほど御紹介をしたいと思います。

 では、年金に関するお話を紹介していきたいと思います。

 八ページ目でございますけれども、これは、年金制度改革を行うに当たって、議論のスタートの時点として、今の年金制度の何が問題なのかというのをまず共有しなければいけない、問題設定やその原因が間違っていれば、当然、その治療方法も違ってくるというわけですので。

 年金というのは、かなり技術的なものと現行制度にかかわる部分がございますので、その二つのことを考えていくと、高齢化社会が進んでも制度の持続性を維持する、経済的にも財政的にも維持するということ。それから、社会の状況の変化に対応できるのか、働き方の変化や暮らし方の変化にきちんと年金制度が対応できているのか。そして、給付の見直しも不可欠になってくるかとは思います、費用負担も必要になってくるかと思いますけれども、最低保障すべき給付水準というのもあるのだろうと思います。この三つをいかに達成するかというのが大事かと思います。

 この三つは、年金が世界でどう改革されてきたのかというILOの経緯分析においても、世銀においても、OECDにおいても類似の報告書が出ておりますけれども、おおむね九〇年代から二〇〇〇年代に行われた諸外国の年金改革はこの三つを政策目標にしていたと思いますし、日本の年金制度も、まさにこの三つを改善していかなければいけないだろうと思います。

 次の九ページでございますけれども、九〇年代から二〇〇〇年代にかけて行われた各国の年金改革においてどういったことが重要視されたのかを、世界銀行が各国の専門家に調べた回答結果でございますけれども、長期高齢化が進む中でも財政の安定性が確保できること、そして、低所得者の生活が改善すること、多くの労働者がカバーされることといったことが重要なテーマになっているわけです。

 日本における年金の空洞化の問題、社会保険の空洞化の問題は、まさに非正規労働者が国民年金に入っていったということに対応できずに放置していた、その結果空洞化が進んでいるわけでございますので、この三つの優先順位は、まさに日本でも同じ問題を視野に入れて解決をしていかなければいけないと思います。

 では、十ページの方で、この年金改革について、エッセンスを申し上げますと、まず、病状の診断から始まるべきだと思います。いきなり案をぶつけ合うというよりは、まず病状はどうなのか、ぜひ与野党の代表の方に、日本の年金制度の病状はどういう点にあるのかという病気の診断を共有していただいて、その後、治療方針を決めていただきたいと思っております。

 スウェーデンの年金改革について、論文三の方で紹介させていただきました。スウェーデンでは、大きな年金改革をやる際に、まず与野党できちんと病状を、何が問題なのかを共有しましょうというところから始まっていったわけでございます。

 これは資料三の論文の方で少し詳しく書いております。

 さて、二番目としまして、現行制度の補修では恐らく不十分になってくるだろうと思います。特に、低所得者向けの年金を上乗せするような補修工事だけではどうしても不十分だと思います。

 その理由としては、二〇〇四年の年金改革のマクロ経済スライド、これによって年金の財政は実はかなりコントロールされて、国民が思っているほど、高齢化が進むから財政が破綻するというほどのものではない。GDP比で年金の給付水準は、おおむね、二〇六〇年という高齢化のピークごろでは一一%ぐらいにコントロールされている、現在の九%から一一%ぐらいまででコントロールされるということでございますけれども、副作用も大きくありまして、基礎年金がその引きかえに三割程度カットされるということでございますので、単身高齢者がふえる社会においては、高齢期の所得保障をどういうふうに組み直すのかというのが重要になってくるだろうと思います。

 有権者も高齢化が進んでいく中で、大きな改革の抵抗も強まっていくということで、それほど時間はないかと思っております。

 さて、最後に、私の研究者としての具体的な提案をさせていただきたいと思います。

 現実的な志向性のある年金改革を行っていただきたい。やみくもな増改築をやって非常に複雑なしにせ旅館みたいな形にされてしまえば、何が何やらわからなくなってしまうということになってしまいますので、志向性のある、つまり、やみくもな増改築ではなく、ある方向に向かった改築であるというのが大事かと思います。

 一つ目に対しては、働き方に対して中立で影響を与えない一元化された年金制度を二段階で目指す、つまり大型リフォームを行う。一段階目としては、正社員と公務員と非正規社員を含んだ新型の厚生年金、これで国民の九割までは一元化が達成になる。二段階目としては、所得把握がなかなか困難な自営業者をどう考えていくのかというので、ここでは番号と歳入庁というものも必要になってくるだろうと思います。

 さらに、二番目に連動して、基礎年金のあり方を考えて、高齢者向けの所得保障政策の確立ということと、基礎年金の税方式化というよりは、基礎年金を税を財源にした最低保障年金の方に、つまり低所得者の方に重点を置く。基礎年金は、税財源の確保された最低保障年金という形で、低所得者の方に重点を置くというような形。

 そして最後に、高齢化のコストを広く薄く吸収するために、給付の見直しと支給開始年齢の見直しも行いつつ、若年者には、年金の給付が低くなってくることを補てんするために、その給付抑制分を私的年金への税制上の優遇などによって補完できるようにしていくというような形で完成形を目指せばいいのではないか、こういうふうに思っております。

 詳細、論文の中で書かせていただいておりますけれども、時間も来ましたので、これで終わりにさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、小田川公述人にお願いいたします。

小田川公述人 全国労働組合総連合、全労連の小田川と申します。

 こういう場で発言の機会をいただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。

 私は、労働者の立場で、雇用関係を中心に意見を申し上げたいと思います。お手元に配付をいただきましたメモに沿って発言をさせていただきます。

 まず最初に、全体的な感想的な意見になりますけれども、先日発表されました昨年十月から十二月期のGDP速報でも、内需の改善が依然として進んでいない、回復をしていないということが明らかになっていることにも示されますように、この改善が今最も求められている。その意味では、需給サイド、とりわけ民間消費の中心にあります勤労者の需要喚起が必要だと思います。その点で、予算の編成でも、雇用あるいは需要の創出への直接的な財政支援を私どもとしては期待したいと思います。

 しかし、政府の予算案を拝見いたしますと、強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的実現に主眼を置かれる新成長戦略が編成の主眼となっておりまして、例えば、法人税減税、証券優遇税制延長など、供給サイド重視の内容が目立つように思います。その点で、期待に逆行、反していると考えております。また、需要や雇用の安定拡大策は、私どもとしては極めて不十分だと受けとめております。

 そのことを申し上げるために、以下三点の意見を述べたいと思います。

 一つは、労働者の現状についてです。

 六点ほど出させていただいているかと思いますが、一つは、この十年以上にわたりまして労働者の賃金が低下し続けているということであります。

 お手元の図表にも示させていただいておりますように、一九九七年をピークに、この間、年収で平均六十一万円、労働者全体では総額三十一兆円も減少しておりますが、こういう賃金低下の国は先進国では日本だけでありまして、OECDの資料から、できる限りの国を手元に示させていただきました。

 また、同時期に、失業者は二百二十六万人から三百二十三万人へと約百万人増加をしております。

 賃金が減って、かつ雇用も減少している、これがこの十数年ではないかと思います。とりわけ青年層での失業状況は深刻になってきている、私どもとしてはそのように考えております。

 二つ目に、雇用の内容、質が悪化をしているということだと思います。

 非正規労働者が増加をし続けている、これは皆さん御承知のところかと思いますが、直近の二〇一〇年二月の数字でも、千六百九十万人、三三・六%が非正規労働者となっておりまして、とりわけ十五歳から二十四歳層、青年層に男女とも顕著にこの非正規の増加があらわれていると見ています。

 三つ目に、ワーキングプアの増加とその影響の広がりという問題だと思います。

 幾つかあると思いますが、ここでは三点ほど申し上げたいと思います。

 一つは、賃金格差が改善をしない、その状態が放置をされ続けているという問題です。

 男性正規社員一〇〇に対しまして、女性非正規労働者の賃金水準は三七の指数になっておりまして、四割以下の状況であります。この状態が放置をされたまま非正規労働者が増加をし続けている、このことが労働者全体の賃金低下の一因と私どもは受けとめております。

 二つ目に、このこともありまして、所得格差を示すジニ係数が一九九〇年代後半から拡大の傾向にあります。

 世帯主収入だけに限って見ましても、とりわけ、三十歳代から四十歳代の子育て世代で格差の拡大が顕著になっております。また、格差の拡大は結果として労働者全体としての貧困化を進めてきておりまして、二〇〇七年時点での日本の相対的貧困率は一五・七%、先進国の中でも相当程度高い状況にありますし、十七歳以下の子供の貧困は、貧困ライン以下が一四・二%と、次の世代を担う子供の貧困が深刻化をしている状況が示されていると思います。

 三つ目に、ワーキングプア増加の影響ともかかわりますけれども、社会保障への影響が顕著になっていると思います。

 国民年金の第一号保険者に占めます被用者割合は、二〇〇二年の三一・六%から二〇〇八年には三九・四%、四割弱に上昇してきておりますが、同じ時期に、一号期間の滞納者は三百二十七万人から四百三十三万人へと、百六万人増加をしてきております。一号期間の滞納者の六四・二%は、その理由を保険料の高さが原因とアンケートで回答しておりますが、低賃金労働者の増加が社会保険料の滞納率を高めているということではないか、このように思います。

 その点でいえば、非正規労働者増による低賃金労働者の増加というのは、年金、社会保障制度の持続性にも影響し始めている、このように考えているところであります。

 四つ目に、労働者家計の状態が極めて悪化をしているということであります。

 勤労家計、標準世帯の収入と支出の変化につきまして、家計調査をもとに、一九九四年と二〇〇九年を比較したものを、その一部でありますけれども、図表としてお示しをさせていただきました。

 労働者の家計状況をこれから見ますと、世帯主収入の減少を衣食住関連の支出抑制で補う、しかし、それでも補い切れずに貯蓄取り崩しをふやさざるを得なくなっている、こういう状況だと思います。支出では、半固定的な項目であります水道光熱や保険医療、必需品となってきております携帯を初めとする交通通信費の支出がふえております。これらの結果、この十五年間で、可処分所得は一一%、一割以上減少しておりまして、内需後退の一因が労働者家計の状態悪化にあることはこのことからも推測されるところだと思います。

 状態悪化の二つ目は、年収二百万円以下の低賃金労働者が増加をし続けているという問題であります。

 一年間働き続けて得た年収が二百万円以下という労働者は四人に一人に上っておりまして、この二百万円以下という数字を、例えば、厚生労働省のナショナルミニマム研究会中間報告にあります最低生計費作業チームの報告に示されています数字、若年単身者の最低生計費を月額十六万七千二百二十四円プラス税、社会保険料と試算をしているものから比較いたしますと、これを年収ベースにいたしますと二百万円強プラス税、社会保険料の負担ということになりまして、二百万円以下の低賃金労働者は政府の研究会で示された最低生計費のラインを下回っているということになるのではないかと思います。

 そのこともありまして、十五歳から三十四歳の青年で、自立して生活できる、このように回答している労働者は、正規労働者でも五一・六%、非正規労働者では三〇・三%にしかすぎません。正規労働者で半分、非正規労働者では三分の二が自立できないと答えている状況であります。

 五つ目に、失業の長期化という問題であります。

 直近の資料で見ましても、失業期間一年以上が百二十二万人、前年と二〇一〇年十月から十二月期を比較いたしまして二十三万人増加をしております。

 二〇〇九年にILOが明らかにしました調査報告でも、失業手当を受給できない失業者割合は、日本は七七%と極めて高い状況になっておりますが、昨年、雇用保険法が改正をされ、適用対象が改正をされておりますけれども、その効果は二百五十五万人の被用者に限定されると試算をされておりまして、この七七%の失業者に手当が給付をされないという状況が完全に解消されているというふうには推測できないと考えております。

 六つ目に、減少しない長時間過密労働という問題があります。

 正規労働者では、週労働時間六十時間を超える労働者が経済危機後の二〇〇九年でも四百九十六万人存在をしております。毎月勤労統計調査でも、この間、一九九七年から二〇〇八年にかけて、その長時間労働ぶりは変わっておりません。労働問題総合研究所が、労働力調査と毎月勤労統計調査の差からサービス残業を試算し、それの正規労働者一人当たりの時間を算出しておりますが、百二十六時間とおおむね試算をしております。仮にこの百二十六時間の不払い残業を是正する、それだけでも二百二万人の雇用を創出することができる、このような試算ができるかと承知をします。

 大きな二つ目といたしまして、今まで申し上げたような状況から踏まえた私どもの予算案に対する意見を申し上げたいと思います。

 厚生労働省予算に盛り込まれております求職者支援制度の創設、あるいは雇用保険の機能強化などなどの雇用対策事業につきましては、その規模の不十分さや制度内容に意見を異にするところがありますけれども、政策方向としては賛成をしたいと思います。

 また、雇用促進税制についても、その効果に期待をしたいと思います。

 二つ目に、子ども手当につきましては、私どもとしては、先ほど申し上げました子供の貧困化の問題ともかかわって、政策方向としては評価をしているところであります。しかし、現状は、待機児童問題など極めて深刻な問題が多く報告をされてきている、こういう状況でありますので、保育所建設など総合的な施策とする検討が必要ではないかと思っております。

 三つ目に、冒頭でも申し上げましたが、法人税減税、証券優遇税制の二年間延長、こういったものは、既に多額の内部留保を蓄積し、手元資金を豊富に持っている大企業にその減税の効果がとどまってしまう、雇用拡大等が期待できない、このように考えております。

 また、税収を上回る国債発行が予定されている状況のもとで、大規模な法人税減税には反対をしたいと思います。

 四つ目に、元気な日本復活特別枠に盛り込まれておりますいわゆる思いやり予算、これについても反対をさせていただきたいと思います。防衛費の固定化、これが国民生活関連の予算を圧迫している、この側面はあると私どもは見ております。

 地元沖縄県民の反対が強い名護市辺野古沖での新基地建設の撤回などを強く要望させていただきたいと思います。

 また、三つ目に、先ほど申し上げました労働者の雇用、生活の状況を踏まえた私どもとしての予算への要望を申し上げたいと思いますが、大きく分けて、これも五つございます。

 一つは、雇用の安定のために予算と制度の整備をということであります。

 一つ目は、非正規労働者をできるだけ減らしていく、その施策の実施として、労働者派遣法の抜本改正、有期雇用の規制など、早期の実施を求めたいと思います。

 また、日本航空に見られますような違法、不当な解雇の規制強化、こういったことも必要だと思いますし、とりわけ労働者派遣法、有期雇用の規制強化などとかかわって、中小零細企業への対策が必要かと考えております。

 二つ目に、求職者支援制度などに加えまして、国などでの雇用拡大の施策、就職困難地域での公的就労事業の実施、あるいは国、地方自治体に働く非正規労働者の正規化促進、こういった施策についてお願いをしたいと思います。

 私どもが昨年十月に実施をいたしました失業者アンケートでは、再就職先の確保、これが六二%と最も高くなっております。失業者は今仕事を求めている、こういう状況だと思います。

 三つ目に、失業時の生活保障制度のさらなる整備拡充が必要だと思います。

 雇用保険制度の改善と同時に、失業給付に該当しない場合の生活保護に加えた失業扶助制度の検討が必要ではないか、新設が必要ではないかと考えております。

 二つ目に、良質な雇用の実現とかかわりまして、最低賃金時給千円への引き上げを強く主張したいと思います。

 下の表にもありますように、最低賃金の水準は、その国の中でどの程度の位置にあるのか、このことでもはかるべきだと考えておりますが、それからいたしますと、日本の最低賃金は先進国でも相当低くなっております。そのことを踏まえた上で、政府主導での時給千円の実現を強くお願いしたいと思います。

 そのためには、中小企業を対象とする支援策の抜本的拡充などなど幾つかの対策が必要だと考えますし、公契約法の制定も必要だと考えております。

 良質な雇用の実現とかかわりまして、不払い残業、所定外労働時間規制による雇用の拡大という問題についてぜひ御議論をお願いしたいと思います。

 私どもは、労働時間短縮を雇用政策に位置づけることが今必要ではないか、その前提に立って、中小企業支援策などの強化や労働基準監督官の増員といったような施策が必要ではないかと考えております。

 三つ目に、昨年の年末からことしの正月にかけましてもワンストップの会などが取り組みましたように、引き続き、貧困、また住まいを失った生活困窮者の存在は深刻な問題だと思います。

 すべての働く者への衣食住の確保として、一時的収容施設の確保、あるいは、先ほども御紹介いたしましたが、社会保障の状況なども踏まえた年金、医療などの本人負担の軽減などについて検討がされるべきと考えております。

 四つ目に、税と社会保障の一体改革とされておりますこの方向につきましては、逆進性の強い消費税率の引き上げに直結するものとして反対をさせていただきたいと思います。

 五つ目に、農業と関連産業に多大な影響を与えると同時に、雇用のさらなる悪化、農林水産省の試算では三百四十万人の雇用機会への影響と試算をされておりますが、TPP参加には反対の意見を表明させていただいて、私の発言といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

中井委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井美穂君。

高井(美)委員 民主党の高井美穂と申します。

 本日は、大変御多忙の中、さまざまな観点から多岐にわたる貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 今、政府として可能な限り知恵を絞って二〇一一年度予算案を出されているわけでございますけれども、きのうまでの連日の審議で約七十時間に近くなってまいりました。私自身も、国民の皆様の負託にどれほどこたえられているのか、逡巡しながら当委員会に日々臨んでいるわけでありますが、政府に対しても、できるだけ謙虚に柔軟に、当委員会の議論を踏まえた上で、予算案と関連法案をできるだけ早く成立させるべく、重ねての努力を願いたいと思っていますし、私たちも努力をしてまいりたいと思っております。

 そこで、本日、それぞれがおっしゃった理念、考え、大変難しい面、それから正しい方向に向かっている面、いろいろな思いもあろうかと思いますけれども、まず、逢見公述人、冨士公述人、小田川公述人にそれぞれお尋ねをしたいと思っています。

 まず、逢見公述人がおっしゃった、働くことを軸とする安心社会をつくるという理念は、我が党、まさに民主党政権が目指してきたものでもありますし、共感をするものであります。

 この予算案の中で、いろいろ評価できる部分、新成長戦略、雇用対策、また求職者支援なども深くおっしゃっていただきましたが、よりここは高く評価できる、逆に、この予算審議、また公述人の皆さんの意見、さまざまな観点を踏まえた上で、与野党で議論を重ねて修正や再考がもし可能と思われる部分があれば教えていただきたいと思います。

逢見公述人 お答えいたします。

 この二〇一一年度予算案の中で最も評価できる部分はどこかということでございますが、成長と雇用を最大のテーマと位置づけて、元気な日本復活特別枠を活用して、府省庁の枠組みを超えて新成長戦略の着実な推進に資する諸施策を打ち出したということは、積極的に評価したいと思っております。

 また、特に、新成長戦略の着実な推進と雇用対策というものは、私ども連合が強く求めてきたものであり、国内投資促進プログラムにのっとった雇用創出や産業、企業の活性化に官民が連携しつつ取り組んでいくということが重要だと思います。また、将来的に国のひもつき補助金を廃止して、地方の自主裁量の拡大を目指すものとして地域自主戦略交付金といったものが創出されたこと、このことは地方分権の推進や地域活性化にも資するものと考えて、これも評価しております。

 雇用対策については、特別枠を活用して、若年者雇用対策となるキャリア制度の構築や最低賃金引き上げに向けた中小企業への奨励金が盛り込まれたということも評価できると思っております。

 また、与野党で議論を重ねて修正すべき点があったらということでございますが、求職者支援制度につきましては、労働政策審議会の雇用保険部会でもかなりいろいろな議論がございました。この財源が、本来はすべて公費負担とすべきところを、雇用保険制度の附帯事業と位置づけて労使の負担とされたことに加えまして、雇用保険の失業給付に対する国庫負担の本則復帰が本年度の予算案に盛り込まれなかったということなどがございます。

 雇用のセーフティーネット、私どもが主張している第二のセーフティーネットをどのような形にして、その中で公費というものがどの程度の位置づけになるのかという点については、引き続き議論をする必要があるのではないかと思っております。

高井(美)委員 ありがとうございました。

 では、冨士公述人、いかがでしょうか。

冨士公述人 農業予算の中で評価できる部分ということでございますけれども、一つは、米の所得補償のモデル事業を二十三年度からは本格的実施という形で、ほぼ二十二年と同じ仕組みで予算を組んでおりますけれども、十アール当たり一万五千円の部分につきましては、米の計画生産に参加する生産者のメリットという側面、それから農業の多面的機能を発揮するということに着目している位置づけ、そして米の生産コストがコスト割れを起こしている実態の中での最低所得保障という位置づけ、そういった意味合いをこの仕組みの中に反映していくという観点から、大いに評価できるというふうに思っております。

 それからもう一つは、二十三年度から実施されます畑作の戸別所得補償政策であります。これも、従来は面積支払いと数量支払いがありましたが、今回は数量支払いと面積支払いとの併用のような形でありますが、数量支払いに対するウエートを基本に置いております。

 そういう中でも、従来は過去の作付面積に着目しておりましたけれども、今回の畑作の所得補償では、当年産の作付面積に着目するという点、それから、先ほど言った数量支払いに基づいて基本的には支払うという観点の仕組みになりました。このことについては、畑作の生産現場からは、生産性向上、そして品質向上という農家の努力が報われる仕組みになったというふうな評価があり、我々としても評価をしております。

 それから、予算の修正といいますか、そういう点については、大変難しい問題で、全体の予算の枠組みとか全体の関連との関係でよくわかりませんけれども、今、生産現場では、生産流通施設整備に関する予算が不足している、それから活用がなかなか難しいという声を現場から聞いております。

 二十三年度予算では、今まで措置しておりました強い農業づくり交付金が大幅に減額されて、新たに米、麦等の戦略作物の生産流通施設整備に関する予算ということで、生産流通整備の予算が衣がえになったわけでありますが、現場からは、そういう戦略作物、米とか麦というものに限定された生産流通施設であったり、野菜とか果樹なんかは補助率が低いといった指摘があります。

 そういった点については、今後の農業の体質強化という点では与野党一致できる部分であると思いますので、協議の上、一致点を見出せる予算項目ではないかというふうに認識しております。

小田川公述人 お答えいたします。

 評価点につきましては、最初の意見陳述で申し上げましたけれども、求職者支援制度の創設、雇用保険の機能強化、最低賃金の引き上げに向けた中小企業の支援策、あるいは新卒、既卒者の就職支援、こういった雇用事業については私どもとしても評価をさせていただいていますが、同時に、その内容と規模において不十分さを持っていると思います。

 例えば、最低賃金の中小企業対策支援費は五十五億円だと承知をいたしますけれども、これで私どもが求めています最賃時給千円という方向に向くのかといえば、やや時間のかかる話ではないかというふうに承知をするところであります。

 その点で、雇用の量の安定が経済成長以前に今この国では必要ではないかという立場での御議論をぜひお願いしたいと思いますし、その立場での予算の見直しについて御検討いただければ幸いであります。

 なお、冒頭のところで反対の意見表明をしたところにつきましては、修正の意見を申し上げておきたいと思います。

高井(美)委員 ありがとうございます。

 残りの時間で駒村先生に少しお伺いしたいと思うんですけれども、もちろん、評価点、修正なり、おっしゃりたいことがあれば付加していただいて結構でございます。

 先生から御提示のあった、これまでの日本型社会保障システムが成り立たなくなったという認識で社会保障を再構築しよう。これは私たち自身が思ってまいりましたことで、それで、総理自身がまさに三顧の礼で担当大臣を迎え入れて、検討会議を開いているということであります。民主党として、年金制度改革のある種大まかな方向性は提示して、与野党協議を今呼びかけているところでございますけれども、野党の側からは、もう少し具体的な案がなければ協議がスタートできないというお話もございます。

 先生はお詳しいのでぜひお聞きしたいんですが、もう少し問題点共有というところから始めるべきというお話もございましたが、年金協議の中で、スウェーデンがどのあたりのラインからスタートをしたのか、具体案をそれぞれ各党がある程度のところまで持ち寄って協議をするべきなのか、それとも、まずは更地から、共有認識からスタートするべきなのか、教えてください。

駒村公述人 ありがとうございます。

 年金については、ことしは基礎年金二分の一国庫負担分の確保が大変難航して、特会から使われているというふうにお聞きしております。

 年金は、一つは、財政的な持続可能性が大事でございます。もう一つは、高齢化社会でどう対応するかというのが長期的な課題になっております。

 高齢化社会の中で年金をどう維持するかというのは世界共通の問題でございまして、御指摘がありましたように、スウェーデンについては、これはスウェーデンの年金のレポートや論文から見たものでございますけれども、資料にございましたように、従来、スウェーデンの方式は、改革が始まる前については非常に財政的に負荷がかかる、それから低所得者に不利であるという課題があったわけですね。

 与野党のワーキングチームは、何が現行制度の問題なんだというふうに問題点をまず共有する、そこは確かに問題ですねと。そこを共有した上で、では、それを解消するためにはどういう選択肢があるんでしょうかということを、これはかなり年金に精通した議員の皆さんが少ないメンバーでかなり突っ込んだ議論を進めていった、こういうふうに聞いております。その中では、当然、政党によっては考え方に差がある案が出てきたというプロセスもあったようですけれども、実現可能性、それから、年金というのは現在と過去と未来がつながっていなければいけませんので、選択可能性ということから考えますと、おのずと限定されてくる。

 そういう意味では、一つは、年金というのは長期のもの。現在生きていない、これから生まれてくる子供たち、将来世代もかかわってくるわけですから、短期でころころ変わってはいけないという点がございます。そういう長期的な視点がまず一つ。そして、論理的に検討して実現可能性まで詰めていくと、実はゼロと一ほど差があるわけではなくて、きちんとそういう問題意識を共有する場で議論していけば恐らく〇・四と〇・六ぐらいの差しか多分なくて、そこで調整を始めていければよりよいかと思います。

 ゼロと一のような、お互いのメンツにこだわった議論をしてしまえば話が先に進まないということになると思いますので、まずは日本の制度の何が問題なのか、病気は一体どこにあって、どういう理由が病気の原因なのかということを共有したところから議論を始める方が、解決に行き着くのではないかと思います。

 以上でございます。

高井(美)委員 ありがとうございました。

中井委員長 次に、田中康夫君。

田中(康)委員 国民新党・新党日本の田中康夫です。

 まず最初に、連合の逢見直人さんにお伺いしたいと思います。

 先ほど、ディーセントワークあるいはワーク・ライフ・バランスということをおっしゃいました。また、貧困率ということをおっしゃいました。

 しかし、多くの国民は、それはほかの中近東やあるいはアメリカのような貧富の差ではないかもしれませんが、逆に貧困率ならぬ富裕率というのも生まれてきているのではないか。

 そして、これは先ほど駒村康平さんの資料の中で、民間正社員、公務員、非正社員という三つの区分がされておりました。連合は公務員の方々が多く所属されております。口さがない向きは、国家公務員に厳しく地方公務員に優しい民主党と連合などと言う方々もおられますが、この組織化率というものが他の労働組合を含めても一三%であります。政権末期の支持率のようなぐあいなわけですね。働く方はすべての方であります。あるいは、これから生まれてくる方も働く方です。組織化率が現在一三%である、こういう現状をどのようにお考えなのか。

 また、ディーセントワークというものはILOが言っておりますが、改めて逢見さんはディーセントワークというのを日本語に少しかみ砕いて言ったならばどういうものなのか、お話しください。

逢見公述人 まず、貧困については、絶対的貧困と相対的貧困という二つの区分がございます。

 絶対的貧困というのは、一日当たり一・二五ドル以下で生活を余儀なくされている人々でありまして、これは地球全体を見ますと、アフリカ、アジア、中南米等にたくさんございます。

 こうした絶対的貧困とは別に、相対的貧困という問題がありまして、我が国では、さすがに絶対的貧困のもとで生活せざるを得ないという状況ではないと思いますが、しかし、相対的貧困については、OECDの統計、また厚生労働省が示した二〇〇七年でも一五・七%ということで、これは先進国の中で高い数字でございます。

 日本で、相対的貧困の比率が高まっている、さらにその中で子供の貧困という問題が起こってきて、これがその世代に引き継がれるということは大変大きな問題であるというふうに思っておりまして、こうしたものを所得再分配効果などによって是正していく必要があるのではないかと思っております。

 組織化率について御質問がございました。

 我が国の組織化率は一三ではなくて一八・七だったと思いますが、組織化の比率が下がってきて、ここのところ歯どめがかかったというところだと思います。これは、特に非正規労働者が増加してきたこと、また産業構造が大きく変わって第二次産業から第三次産業、サービス業等へ雇用がシフトしてきたということで、こうした分野における労働組合の組織のネットワークというか、網がまだかかっていなかったということで、我々も、ここはいろいろ課題を認識して、今組織率の向上に取り組んでおります。

 連合は公務員の組織じゃないかという御指摘がございましたけれども、比率からいうと、圧倒的に多いのが民間でございます。もちろん、公務員も組織しておりますけれども、民間で働いている人たちがたくさんいますし、それから、大企業のみならず、中小企業で働いている人たちもいます。

 また、連合は、すべての働く人たちのことを考えておりますので、労働組合に入っていない人についても、あるいは最低賃金、ワーキングプアと言われている人たちのことについても、我々は、同じ働く仲間ということで、そういう人たちの問題についても懸命に取り組んでおります。

 ディーセントワークにつきましては、それぞれの国によって状況が違います。それぞれの国の成長段階、国民所得の状況が違いますが、日本においても、やはりディーセントワークを求めていかなければいけない課題がある。

 特に、日本では、正規と非正規の間の働く人たちの格差があること、それからM字型カーブと言われているように女性の就業率が途中で落ち込んでいること、それから長時間労働、こうした問題があること、特にストレスなど、そうした状況も深刻な問題にあることなど、こうした点についてディーセントワークという視点から改善していかなければいけないと思っております。

田中(康)委員 ディーセントワークというのは、まさに慎み深い誇りを持ったということなのではないかと私は思うんですね。よい意味での自暴自棄な諦観でもなく、あるいは夜郎自大な矜持でもない、それがディーセントワークなのではないかと。

 私は、協同労働の協同法制化ということを知事時代から取り組んできております。今、一八・七%の組織化率、そういうことになりますと、まさに直近の内閣支持率ということになってしまうわけですから、これは、国民からは、マスメディアの方々は、記者クラブの方は支持されていないと言われているわけで、まさに組織化率というものが貧困率ならぬ富裕率になっている。

 地域に行きますと、私は別に公務員いじめをしようと言っているのではなくて、皆様はすべての労働者のためにとおっしゃった。しかし、八〇%の、労働組合にも入れない方々のために尽くしてこそ、ディーセントワークであります。

 そういたしますと、先ほどステークホルダーとおっしゃいました。ステークホルダーは非組合員も含むということでよろしゅうございますよね。そうすると、非組合員との格差を解消するために、現在デフレの状況で賃金が低い、もちろん経済成長をさせるんだということを与野党問わず言っております。でも、それまでの間、ノーブレスオブリージュという精神で、もちろん議員もそうであります、国会議員のみならず地方議員も首長もそうでありますが、やはりその点に関して、労働組合の方々というものはまずは身を切るということを示さねば支持率向上にはならないのではないかと、私は知事時代の多くの組合の方との何十時間もの交渉を経て感じるところでございます。

 ですから、日本経団連の米倉弘昌さんは給料泥棒と議員のことを言っておりますが、逆に言うと、同じことを心ある住民のために働いている方々が言われないように、ぜひこれは皆様がリーダーシップを振るわれるべきだと思います。

 もう一点、お聞きをいたします。

 経団連同様、連合は、TPPは大変にすばらしいので推進しようというふうにおっしゃっているわけですが、このTPPの推進によって、皆様がおっしゃるディーセントワークであったり、ワーク・ライフ・バランス、あるいはステークホルダーらがみんな拍手喝采を、あるいは勇気や希望を持てるような、ない物ねだりではない社会が実現できるというふうに連合はお考えになっているということでよろしゅうございますね。

逢見公述人 TPPについての御質問でございますが、我々、基本的にはこのTPP交渉に日本政府も加わるべきであると思っておりますが、それは、手放しでということではなくて、しっかり日本の国益を考えた上での参加ということでございます。

 TPP交渉ということの前に、日本の国際競争力が弱っている、あるいは企業の活動が萎縮しているということが雇用機会の減少になっているのではないかということを我々は非常に危惧しておりまして、この十年間で三百万人の雇用が失われている。それから、全国で二十二万カ所の事業所が減少している。特にそのことによって地域経済の衰退ということが起こっているのではないか。それから、中小企業への影響も懸念される。

 一方、アジアは今、成長を目覚ましく遂げている国がたくさんありまして、こうした成長を日本に取り込んでいくということが必要なのではないか。そういう意味で、このTPPというのは、今後、アジア太平洋地域における貿易の基本的な、ベーシックなルールになり得るというふうに思っております。

 そういう意味で、我々は、国益を考えた上でしっかり討議段階からTPP交渉に参加して、日本の主張をきちんとやるべきだ、そのことによって、アジア太平洋地域における成長力を日本に取り込んでいくとともに、雇用の機会も日本でつくっていく、そういう必要があるというふうに思っております。

田中(康)委員 この点に関して、国民新党・新党日本は、TPPという前に、FTA、EPAであるべきである。でなければ、中国も韓国も、環太平洋ではないEUも、あるいはロシアも部分的に接していますが、入らないわけでございますから、これらの国を敵に回す。しかし、アメリカにとっての覇権主義の、米連邦の中に入ってしまうと思っています。連合がそういう形でお進みになるということを、私どもは、お邪魔虫のような連立与党の一角でございますが、大変危惧しております。恐らく、これは自由民主党や公明党の方も同様ではなかろうかと思います。

 同様に、連合の方は、消費税の税率アップということを認めていらっしゃる。ですから、TPPも消費税も、菅直人さんとまさに一蓮託生で進まれるということでよろしゅうございますね。

 再度、確認のために、国民の前で端的に、イエス、ノーでお答えくださいませ。

逢見公述人 社会保障と税の一体改革についての意見については冒頭申しましたけれども、この社会保障改革というのは待ったなし、先送りできない課題だと思っております。

 さまざまな社会保障についてのひずみが問題となっている中で、これを改善する、機能強化していくとともに、それを支える税というのは必要なものだろうと思います。

 これは、決して消費税に偏重するということではなくて、資産、所得、消費にバランスのとれた税でいくべきだと思いますが、とりわけ消費税については、社会保障の安定財源ということで、社会保障のために専ら充当すべき税というふうに考えて、必要な引き上げということも我々としては考えていかなきゃいけないと思っております。

田中(康)委員 私どもは、増税で景気浮揚した国家は古今東西存在しないという点に立っておりますが、連合の方は、増税という視点に立たれる。そして、FTA、EPAをきめ細かくというよりも、TPPということをまずはプライオリティーとして考えるということが確認できたかと思います。

 最後に、駒村康平さんにお聞きしたいと思います。

 駒村さんは、非正規労働者のカップルでも家族を持てるような所得保障制度を確立すべきとおっしゃっております。大事な点であろうと思います。ただ、私どもは、ベーシックインカムのようなものこそ導入すべきだと思っております。

 現行年金制度の廃止と新年金制度の導入という完全建てかえ方式か、現行年金制度の問題点の解決を行う連続大型リフォーム方式かということを駒村さんはおっしゃっていて、後者の連続大型リフォーム方式とおっしゃっていますが、私どもは、その連続が、百年安心年金が数年でまた制度改変をするという二の舞になりはしまいか、朝令暮改ではないかと。

 なぜならば、人口構造というものが世界に類を見ない形になっていくわけでございますから。それでも年金というものにある意味では拘泥されるのか。納付率の低迷というものは、現在の年金の制度というものが部分修正をしても、国民から信頼の関係にないということを示しているのではないかと思っています。

 こうした点で、ベーシックインカムというものを我々は述べておりますが、先生は、今のような所得保障制度を確立すべきということは、具体的にどういうことをおっしゃっているのか。この点に関して、またベーシックインカムに関してどのようなお考えがあられるか、おっしゃってください。

駒村公述人 ありがとうございます。

 日本型の雇用、つまり年功給与というものが部分的、特定の人しか対象ではなくなってきている中で、非正規の方に、しかるべき賃金とともにきちんとした家計を営めるような所得保障をすべきであるという点で、社会手当というものを提案しております。

 これは、見方によっては部分的なベーシックインカムというふうに言う方も中にはいらっしゃいます。ただ、私は、働ける人にもかかわらず全員に定額の給付を上げなさいという考え方には反対でございまして、それは一歩間違えると、それと引きかえに、あらゆる給付は必要ないし、あらゆる雇用規制も必要ないという右派的なベーシックインカムの発想につながるという見方もありますし、現在ある、給付と負担の記録において対応している年金を一気に切りかえることは難しいと思っております。

 百年安心、そして年金制度についてでございます。

 簡単に申し上げたいと思いますけれども、納付率の低迷というのは九〇年代半ばから起きていることでございまして、この主力というか、主な原因はまさに非正規労働者であるということで、現象面としては非正規労働者が未納につながっている。もちろん、国民の中で、年金制度に対するあきらめというか、失望というのが背景にあるのは認めますけれども、直接的な引き金は非正規。

 非正規をちゃんと適用できる、これは、世界のほかの国でも非正規の年金の未納というのは起きていますけれども、きちんと非正規の方を正規と同じ扱いをするということで対応していますので、同じことをやれば、全く新しい年金をつくるほどの大工事をしなくてもいいだろうと思っております。

 以上でございます。

田中(康)委員 働けるのに働かない生活保護という問題がゆゆしき問題になっておりますので、私どもは、抜本的に社会保障の制度を変更せねばと考えております。

 どうもありがとうございました。

中井委員長 次に、宮腰光寛君。

宮腰委員 自由民主党の宮腰でございます。

 公述人の皆様方には、本当に御苦労さまでございます。

 きょうは、冨士公述人に御質問をいたします。

 政府がTPPについて、貿易自由化と食料自給率の向上、さらには農業、農村の振興と両立を目指す、こう言っておいでになりますが、冨士公述人は、先ほど不可能だとおっしゃいました。私も全く同感であります。

 具体的なお話に入りたいと思いますけれども、ことし、米がざっと二千円下がりました。そのことで内外価格差が縮小をして、例えばミニマムアクセス米、特に主食用米のSBSの取引が低調である。これは、内外価格差が縮小して日本の米にも競争力が出てきたから、こういうことをおっしゃる方々がおいでになりますけれども、私は、具体的には、米のトレーサビリティー法が昨年の十月一日から施行されて、帳簿でトレーサーを義務づける、あるいはことしの七月一日からは原産国表示を消費者に対して表示することを義務づける、これが始まるということで、SBS米、特にお弁当や社員食堂で使われているわけでありますけれども、そこでも原産国表示をしなくちゃいかぬということになって、国産米が買われているのではないかというふうに見ております。

 内外価格差が縮小し、加えて、ジャポニカ米、短粒種、これは世界的に見て生産量が多くないから、米を自由化しても国内の米生産に大きな影響はないというふうな見方がありますけれども、これについてはどう見ておいでになりますか。

冨士公述人 宮腰先生おっしゃいます、今年度のSBSの輸入米の取引が低調である、五千トンぐらいだというその低調の理由が、先生おっしゃるとおり、米のトレーサビリティー制度の導入によって本年七月から輸入米に原産国の表示をすることが義務づけられたということが、実需者が外国産米の使用を敬遠する動きにつながっているということが大きいというふうに私どもも認識しております。

 先生お尋ねの内外価格差が縮小している点についてでありますが、これは、SBSの仕組みを中国が利用して高い米を輸出しているわけですが、通常、中国国内で市場流通している米はキログラム当たり四十円から五十円、それに比べますと、SBSはキログラム当たり百五十円、百六十円ということでありますので、こういう中国の実際の現場の流通実態からすると、内外価格差が縮小しているとは言いがたいというふうには思います。

 生産者米価の二〇〇八年レベルの比較でも、アメリカ、オーストラリアの玄米ベースでキログラム当たり四十四円から四十八円、中国産米がキログラム当たり三十五円、日本産がキログラム当たり百九十二円。四、五倍の内外価格差があるという状況であります。

 そういう中で、ジャポニカ種が、一部の地域ということでありますけれども、日本の米の関税が撤廃されるというようなことになれば、中国、アメリカ、そういった国々は、日本の需要に合わせて、ジャポニカ種を安く大量に生産するということは極めて容易であるというふうに見ております。

宮腰委員 我々、衆議院の農林水産委員会で、昨年の八月にベトナムに行ってまいりました。米の生産量は年間三千五百万トンから三千八百万トン、輸出量は一千五百万トン、メコンデルタの二期作、三期作地帯を見てまいりました。

 ジャポニカ米をつくれば、長粒種よりも三割減収になる、収量は落ちる、しかし能力は極めて高い。生産者段階での価格は、キロ当たり二十五円から三十円。これをジャポニカ米にすると、大体四十円になる。それを精米工場から出荷してくれば、恐らく相当の安い価格で幾らでも入ってくる。米は、そもそも、種もみ一粒が収穫時には百六十粒から百七十粒になる大変ありがたい作物ですけれども、その分だけ幾らでも拡大ができるということなんだと思います。

 そこで、先ほど公述人の公述の中に、農業予算のことについていろいろありました。規模拡大、これについては今回百億ついています。しかし、八月の概算要求段階ではこんなものはついていませんでした。そもそも、戸別所得補償制度の中に規模拡大十アール一万五千円という支援単価で規模拡大がインプットされているので、規模拡大加算は必要ないという説明でありました。政務三役もそういう説明をしておいでになりました。

 今回、この規模拡大加算百億円と、それから集落営農の法人化に一件当たり四十万円支援する。これが概算要求になくて、年末の予算編成のときに突発的に出てまいりました。なぜか。TPP対応ですよ。

 同時に、戸別所得補償の裏づけとなる戸別所得補償法案は今国会に提出をしないと決めました。このことについて、冨士公述人はどう見ておいでになりますか。

冨士公述人 先生おっしゃるとおり、自民党のときにおきます経営所得安定対策は、法律に基づいて措置をされております。そういう意味で、民主党政権になって戸別所得補償政策を実施するということであれば、同様に、単年度予算での担保ではなく、中長期的に安定する法制度の措置に基づいて所得補償の制度を措置するという意味で、法案がぜひとも必要だというふうに思います。

 それから、米の計画生産におけます取り組みも、従来の仕組みから米の戸別所得補償を担保する生産調整の位置づけというふうになりましたので、米の需給調整を推進するという観点からも食糧法の改正が必要になるというふうに認識しております。

 そういう意味でも、戸別所得補償制度関連法案の、食糧法を含めて法制度の改正をきちっとやっていただくということが、現場の農家の安心とか、これからの将来展望につながるというふうに思いますけれども、私はそういう認識でおります。

 以上でございます。

宮腰委員 今回の予算で、備蓄米のルールというのが初めて決定をされました。棚上げ備蓄百万トンプラスMA米。しかし、昨年の参議院選挙それから一昨年の衆議院選挙で、MA米を含む三百万トンの棚上げ備蓄と約束をしておいでになりました。今回仕組みがきちっと決まって、百万トンプラスMA米七十七万トン。

 これは公約違反ですよ。公約違反の予算をお組みになっていると私は思っておりますが、この棚上げ備蓄三百万トンということについて、冨士公述人はどうお考えになっておいでになりますか。

冨士公述人 備蓄数量についてはいろいろ議論があるところでありますが、これまでは回転備蓄という形で、一年、古米以上になったものを、需給状況を踏まえまして主食に放出していくという仕組みの中で、百万トン程度という備蓄水準量でありましたけれども、これからは、不測の事態に備えて棚上げ備蓄をしておくという形で、不測の事態がない限りは主食用には放出しないということでありますので、百万トンという水準が、今回の政府の年末の予算案の中では考え方が盛り込まれておりますが、それでいいのかどうかというところは疑問があると思います。

 今の需要量においても、米の一カ月間の消費量は六十万トンから七十万トンでございます。百万トンというのは一・五カ月分に満たない水準になります。そういう意味で、国民、消費者の安全保障という観点から備蓄数量を考えるということになれば、三百万トンがいいかとかということはありますが、百万トン以上必要だろうというふうには思っております。

宮腰委員 私は、約束した分、できないということであれば、岡田幹事長がいみじくもおっしゃっておいでになるように、四年かけてもできないものはできないんだというふうなことであれば、できない理由を国民にお示しして素直に謝るというのが大事なんだというふうに思っておるんです。

 そして、昨年九月の民主党代表選挙で、戸別所得補償制度があるから貿易自由化をしても大丈夫だという発言が両陣営からあったと思います。代表選挙が終わってから、十月一日、突然にTPPへの参加検討という話が飛び出したわけであります。

 そもそも、この戸別所得補償制度というのは、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときに、EUがずっと続けてきた国内農家保護のための輸出補助金が否定されて、アメリカから強く要求をされて、やめろということになって、そのかわりの措置の一部として、直接支払い、不足払いという仕組みができたわけでありまして、それをそのまま引き写してきた政策でありますので、諸外国から見れば、だれが見ても、戸別所得補償制度というのは貿易自由化の準備行為だと映るわけですよ。

 つまりは、私は、この戸別所得補償制度そのものがTPPへの引き金を引いた、みずから引き金を引いたというふうに見ているんですけれども、冨士公述人はどう考えておいでになりますか。

冨士公述人 EUの直接支払い制度は、宮腰先生おっしゃいますように、WTO交渉における自由化の代償措置ということで導入されたというふうに私も認識しております。

 現行の戸別所得補償制度の目的といいますか、この趣旨は、食料自給率の向上を図り、農業の多面的機能を維持していくためにも、現在、販売代金では生産コストを賄えない重要品目、今は米そして畑作物でありますが、そういったものの所得補償を行うものであるというふうに理解しておりますし、そういう趣旨であろうというふうに理解をしております。

 もし先生おっしゃるようなことで、自由化の前提で戸別所得補償ということであれば、とんでもない約束違反であるというふうに思いますし、もし自由化の代償として戸別所得補償措置が措置されたとしましても、幾ら価格が下がってその分所得補償したとしましても、我が国の重要品目であります小麦、米、砂糖、脱粉、バター等の乳製品、そういったものは、関税率の水準だけではなくて、国家貿易による供給管理、外国産を供給管理する仕組みを持っているわけで、そのことによって国内産が担保されているというふうに理解しておりますので、幾ら所得補償があっても、国内生産は壊滅的な打撃を受けるというふうに理解しております。

宮腰委員 終わります。ありがとうございました。

中井委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 きょうは、四名の公述人の皆さん、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 私、まず最初に、連合の逢見副事務局長にお伺いをしたいと思います。

 お配りになられた資料の図表の四のところに、表のタイトルは「「全世代型支援」への社会保障制度の転換」ということになっておりますが、非常にわかりやすい、人の人生の一生の中でどういう支援の必要性があるかということを図解されているわけでございますが、この中で、これは若年期の公的支援のことをおっしゃっているんだと思いますが、手薄であると。他方で、右側の、高齢期については偏重という言葉で表現をされております。

 私は以前、参議院議員をやっておりまして、参議院の委員会で、政府の社会保障給付全体の中に占める幼少期あるいは若年期に対する支援の割合が、欧米と比しますと日本は大変低い、一〇%に到底及んでいない、大体、欧米あるいは北欧諸国は一〇%を超える割合の社会保障給付を若年者に充てているわけでございますが、日本は高齢者の方に手厚いということを私自身が指摘させていただきました。

 そういう意味では、私、知っているお話ではあったんですが、改めて、では、若年期が手薄であるというところをどうするか。当然、予算委員会で、子ども手当、つまり現金給付の分を手厚くするという施策が政権交代以後とられたわけでございますが、私ども公明党は、やはり現物給付の方をもっと手厚くすべきであると。

 特に、具体的に我が党のマニフェストに書かせていただいた政策、そして自民党さんとも協議をして、合意をして共通マニフェストに載せさせていただいた政策は、三歳から五歳の子供さんの保育園料あるいは幼稚園代を国が肩がわりする、一言で言えば、幼児教育の無償化ということをやるべきではないかと。

 これは、ゼロ歳児から十八歳までの子供を考えたときに、小学校、中学校は当然無償でございますし、民主党政権になりまして、高校も無償化された。そうすると、唯一、実態上有償なのが、三歳から五歳の保育園、幼稚園に通っている時期に世帯にかかる負担が大きいということでございまして、ここを思い切って無償化するという政策が必要なんじゃないかと。

 私、実は三年前に、当時与党でございましたので、文部科学省の方からいろいろデータをいただいて、私なりに試算をいたしました。全国の三歳から五歳の方々の教育費を無償化した場合、国費大体八千三百億円程度でできる、当時は、私自身の計算ではそうはじき出したわけでございます。現金給付に乗せた分を抑制する、あるいは削れば、一兆円以下でございますので、これぐらいの財源は確保できるのではないかというふうに思っておりますが、逢見公述人の幼児教育の無償化という政策についての御意見を伺いたいと思います。

逢見公述人 御質問ありがとうございます。

 図表四について十分な説明をする時間がございませんでしたけれども、これは、ある人の一生を見ているわけではなくて、今七十歳の人が、幼少時、これだけのサービスを受けられたかというと決してそうではないので、現時点でそれぞれの年齢層について見るとこういうサービスが受けられるということになっているんですが、特に若年期、幼少時については、国際的に見ると、先生御指摘のとおり、日本は、対GDP比の中で社会保障予算の中の子供、子育て部分にいっている比率というのは極めて低い。これを伸ばしていかなきゃいけない。そういう意味では、子ども手当もその手法の一つであるということは我々も理解しておりますが、やはり現物給付と現金給付とのバランスをとってやっていく必要があるんだろうというふうに思っております。

 保育については、まだ待機児童があって、保育施設が十分ではないというところもあります。それから、今御指摘のように、保育所に通わせたとしても、その親の負担が非常に高いということで、そうした幼少期における家庭の負担を減少していくという必要があるんだろうと思います。

 そういう意味で、我々は、子供、子育てについての基金というのをつくって、この基金というのはただ単なるファンドという意味ではなくて、今、縦割りの中で各省別にいろいろな予算項目が立てられているわけですが、それが必ずしも利用者の視点に立っているわけではないので、サービスが途中で切れてしまうという部分もありますし、それから、それぞれの財源が、もとある財源の制約によって必ずしも全体としてバランスのとれたサービスになっていないというものがありますから、これを一つの財布にすると同時に、ステークホルダーがそこに参画して、利用者の視点から切れ目のないサービスを提供していく。そういう中で、幼児期におけるサービスの無償化ということも十分検討に値し得るというふうに思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 続きまして、駒村公述人、大変興味深い年金改革についてのお話だったと思います。

 私も、それから私の所属する公明党も、年金改革の必要性を近年強く訴えてまいりましたし、また、与野党の協議の場が必要であるということもずっと主張させていただいております。

 そういう中で、先生が提案されていた、法律をちゃんとつくって、その法に基づいて、常設の社会保障諮問会議、これは名前は仮称でしょうけれども、そういったものを設けて、いわゆるその時々の政局とか、あるいは政党間の政争の具にならないように年金改革の合意を得ていくべきだという考え方については、私個人としては大変賛成をしておりまして、ぜひそういうことも必要じゃないかなと思っております。

 ただ、この先ちょっと御質問になりますが、先生がおっしゃっている年金改革、やや具体的にお話をされておりましたけれども、まず、一元化ということにつきましては、この予算委員会でもさまざま議論されてきたわけでございますが、恐らく一致しているのは、サラリーマンの方が入っている厚生年金と公務員や学校の教員の方が入っている共済年金、被用者年金を一元化するということについては、これはもう党派超えてやりましょうというのが、個別の技術的な方法については当然まだ合意はないですけれども、方向性としてそこは余り問題ないと思うんですね。

 ところが、自営業者等の現在国民年金に加入している方々を、一元化された、特に単純所得比例が大きな要素を占める新しい制度に入れることについては、相当難しい議論をしなければいけないわけですね。

 一つは、御承知のとおり、保険料方式を維持した場合、雇用主負担の部分を自営業者は自営業者自身が負担しなければいけませんから、理論的には、サラリーマンや公務員の方の倍の保険料を毎月、場合によっては四十年間払って、もらう年金額はサラリーマンの方と一緒、著しく不公平な制度設計になってしまう可能性がある。これが一点目です。

 それからもう一つ、これはなかなか予算委員会でも出てきていないんですけれども、自営業者の方々は、被用者の方々と違いまして、毎年の年収の異動が激しいわけですね。例えば、お花屋さんなんかは、去年はお花がたくさん売れて、税務署に確定申告を出した年収が一千万円いきましたと。ところが、それを所得比例で、保険料率が仮に一五%とした場合、一千万円の確定した年収が前年度にあったら、翌年の年金の保険料は百五十万円です。しかも、折半する相手がいませんので、十二カ月で割りますと、一カ月当たり、年金の保険料だけで十万円以上払わなきゃいけない、こういうことになりますね。

 ところが、自営業者というのは毎年年収の変動が激しいですから、去年一千万円確定申告した人が、ことしは三百万ということがあり得るわけです。三百万しかことし年収がないのに、その半分に至る百五十万円を年金だけで取られるという事態が理論上起こり得るんですね。

 では、こういうことが起こらないようにする制度設計はどうするのか。

 私は、今まで、ある程度の専門家の皆さんの御意見を聞きましたけれども、妙案を見たことが実はないんです。もし先生がお持ちであれば。一元化で、多分、最大の障害の一つがこういう論点だと思うんですね。ですから、こういうことも含めて、本当に一元化というのは自営業者も含めてできるんだろうかということについて、ちょっとお話をしていただければと思います。

駒村公述人 ありがとうございます。

 私の一元化論というのは二段階になっておりまして、第一段階は、先ほど被用者とございましたけれども、今の年金制度の一つの大きな欠点というのは、非正規が国民年金に入っている、国民年金に入っている人の七割までが非正規か無業の方になってしまっているという点に着目して、この部分がいわゆる年金の未納者の中核になってしまっている。自営業者の人は割ときちんと払っていただいているという認識でございます。

 そういう意味では、被用者年金プラス非正規労働者も組み込んだ一元化をまず第一段階としてやる。つまり、雇われている人は、働き方にかかわらず全員、拡大された厚生年金、共済年金も吸収したものにまず入っていただく。二段階目が、自営業者も含めての議論になってきている。ここが一番難しい御指摘のところでございます。

 一元化されているかどうか、各国の年金制度はいろいろございますので、一概に言えませんけれども、まず、自営業者に年金制度を適用している国のほとんどは、収入に比例した年金制度になっているということでございます。つまり、自営業者の方も、サラリーマンと同じように、事業所得から経費を抜いたところの収入で保険料を払っていただいているというのが、ほかの国のほとんどの例でございます。

 そこでは、御指摘のように、自営業者は労働者であり経営者でございますので、まさに、サラリーマンのように半分企業が負担している、まあ、この半分企業が負担しているのも、経済学的には、本当に半分企業が負担しているかどうかというのは、実は保険料の価格の転嫁と帰着の問題という議論がありまして、表面的には半分企業が負担しているというものの、実質的には賃金で調整している、あるいは雇用で調整しているという見方、実はこれは学説的、実証分析はむしろこっちの方が多数です。したがって、サラリーマンも間接的にはちゃんと倍負担しているんだという見方の方が、実は学界の中ではメジャーでございます。

 そうはいうものの、確かに、今まで半分だったものというか、一律負担だったものが一気に二倍という点をどう考えていくのか。これは、一つは産業政策ですね。自営業者を今後どういうふうに考えていくのかというのが一つ。この政策上の留意点を入れて、何らかの保険料補助を入れていくのがどうか。あるいは、自営業者はこれまでどおり別制度に置いて、そこには別途の所得保障制度を行っていくと考えるのか。ただ、適用拡大をすれば、年金の加入者の九割までは適用できてしまいますので、残り一割の方の問題だろうと思います。

 その上で、確かに御指摘のように難しいのは、大きい変動がある、所得の変動が大きいんだと。これはサラリーマンとは全く違う仕組みでございますので、これをならすような何か、何年かの所得を見て保険料を決めるような形、特殊な方法をとらないと払えなくなってしまうというのは確かに御指摘のとおりで、この自営業者のところは、二段階目としては最低所得保障とのセットで非常に難しい工夫をいろいろしなければいけない。税・社会保障番号をこういうところで使うのがどうかと思います。

 ありがとうございます。

遠山委員 もう時間がありませんが、大変興味深い論点を教えていただいたと思っております。特に、前段の方で、サラリーマンの皆様が半分しか保険料を払っていないというのは、賃金調整を事前にされているから、実は自営業者と同じで十割負担をしているという学説が学界では主流であるというのは、私、初めて伺いました。

 でも、そうなりますと、一元化の議論の中では、サラリーマンの方々の年金保険料の負担も、自営業者の方々と不公平感がないように最初から十割にしてしまって、企業側にその分の賃金調整をやめてもらう、そういうことも一つ考えられるわけです。

 いずれにしても、後段で先生もお認めになったように、自営業者の年収変動が激しい中でどうやってそれを公平に保つかというのは非常に難しい問題だと思いますから、今後、また先生の御意見も参考に議論していきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

中井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、逢見公述人、冨士公述人、そして駒村公述人、小田川公述人、お忙しいところ貴重な御意見をありがとうございました。

 まず、小田川公述人に伺いたいんですけれども、先ほど労働者の現状について、十年以上のスパンということでの詳しいお話がありました。

 そこで、伺いたいんですけれども、二〇〇九年に政権交代があったということで一年半たちますけれども、それから一年半たってみて、そうした現状というのは、よくなってきたな、あるいは余り変わらないな、それとも悪くなってきたかな、どんなふうに感じていらっしゃるか。

 そして、その中で、例えば非正規労働者に対する理不尽な解雇とか雇いどめという問題も、この間、問題になってきましたけれども、私も鳩山前総理にこの問題をただして、財界にも乗り込んで強力に指導するようにというふうにただしましたら、やりますと。そのうちに退陣されたわけですけれども、例えばこの問題、その後、菅政権、菅内閣の対応についてはどんなふうに見ていらっしゃるか。

 この二点をまず伺いたいと思います。

小田川公述人 お答えします。

 昨日ですか、発表されております労働力調査、二〇一〇年のものですけれども、非正規労働者が、前年から三十四万人、一ポイント増加をしているという結果になっております。一方で、正規雇用は二十五万人減少している。この傾向は、先ほどお示しをしたこの十数年間のトレンドと変わっておりません。非正規労働者のうち、派遣労働者は減っておりますけれども、その分、有期雇用労働者が増加をしています。結局、非正規労働者を生産の調整弁にするという企業の行動原理は変わっていないのではないか、また、それを抑制する施策が二〇一〇年の間でも十分機能していないのではないかと考えています。

 私が考えますに、その最大の象徴は、製造業や登録派遣禁止について多くの抜け穴がある法案ではありますけれども、この労働者派遣法の改正法案がさきの秋の臨時国会でも審議をされなかったということに端的に象徴されているのではないかというふうに考えております。

笠井委員 もう一問伺いたいんですが、今、お話の最後の部分にありましたが、労働者の現状というのを改善していく上では、雇用の安定と最低賃金の引き上げ、そういう問題が本当に不可欠だというふうに私も思うんです。

 その中でも、今ございましたが、労働者派遣法の抜本改正ということが不可欠だと思うんですけれども、この問題をめぐっては、財界の側から、非正規労働を規制すればかえって失業者がふえちゃう、あるいは労働者の中には非正規で働きたいという人もいるという主張があって、その辺があると思うんですけれども、そうした意見については小田川公述人はどういうふうにお考えでしょうか。

小田川公述人 幾つかの調査がありますので、意見の違うところがあるかと存じますけれども、確認をしなければならないことは、派遣労働を初めとする非正規労働につくことを多くの労働者は望んでいないという調査結果の方が多いということだと思います。

 また、非正規労働は、生活が安定をしない、必要な仕事のスキルが確保できない、仮に確保したとしてもそれが正当に評価をされない、こういう問題が多く指摘をされておりますし、長期間不安定な雇用が繰り返されるということから抜け出しづらいという問題だと思います。

 その点でいえば、企業サイドのコストの要請はあるとしても、今申し上げたような点は、労働者の働く権利あるいは人格という問題とかかわっている問題でありまして、単純に、非正規を規制すれば失業者がふえてしまうという論議で議論すべきではないというふうに私どもは考えています。

 先ほども、サービス残業の是正だけでも二百二万人の雇用という御紹介をいたしましたけれども、それ以外にも、年休を完全消化するという当たり前のルールで、実質だけでも百四十四万人の雇用創出効果があるという試算すらあるわけでありまして、そういった意味での真のワークシェアリングの論議とあわせて、失業をふやさずに、かつ非正規労働を減らしていくという論議は可能ではないかと考えております。

笠井委員 冨士公述人に伺いたいと思います。

 先ほどのお話の中で、日本のTPP参加というのは自給率向上を掲げた基本計画とも両立しないという明確な反対の御意見があって、私もそのとおりだと思います。

 そこで、お話の中で、農水省の試算とかというのもあるけれども、それと比べても、より広範な、甚大な影響がこのTPP参加についてはあるんだというお話があったんですが、特に地域経済ということに視点を当てると、具体的にはどういう影響と問題が起こってくると見ていらっしゃるか伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

冨士公述人 お答えします。

 先生おっしゃいますように、地域経済の実態というのは、農業を中核にして、運送業でありますとか製造業でありますとか、多くの人々の仕事が関連して成り立っております。そういう意味で、TPPによって農業が壊滅的な大きな打撃、影響を受けるということになれば、地域経済社会全体に大変大きな影響を与えるというふうに思います。

 例えば、これは北海道の試算ですけれども、北海道の道庁の影響額試算は二兆一千五百億円ぐらいということなんですが、農業生産額そのものの損失額という影響は五千五百億円程度なんですね。一方、メーカーとかそういった関連産業の影響額は五千二百億円。運輸とか建設、商業全般のいわゆる地域経済全体への影響は九千八百五十億円と、最も大きいわけですね。農業の産出額そのものの損失額五千億の三倍近い金額の、関連産業や地域経済全体に対する影響を与えるというふうに試算しております。十七万三千人の職が失われる。

 特に、北海道でありますとか南九州でありますとか、生鮮産品で直接売れる農産物でない、調製だとか加工を経て食料供給していく、こういう産業はいろいろな産業が関連しておりますので、そういう作物ほど地域経済に対する大きな影響が出るというふうに思います。

笠井委員 関連して、小田川公述人に伺いたいんですが、先ほど冨士公述人からもあったんですけれども、このTPPというのは、農業だけじゃなくて、サービス貿易という点では、人、物、金ということで、とにかく日本の経済と国民に対して与える影響が大きいということで深刻だというお話があったんですが、私は、ましてデフレのときに、このTPP参加は一層の安売り競争を招いてきて、そしてさらなる賃下げということになっていく悪循環になるんじゃないかと思うんですけれども、日本の労働者にとってのTPP参加の意味というか、雇用や賃金などに対する影響については、小田川公述人はどのようにお考えでしょうか。

小田川公述人 お答えします。

 私どもは、TPPあるいはFTA、EPAへの参加による労働者への影響は三つぐらいあるんじゃないかと考えております。

 一つは、今も先生おっしゃいました、海外からの安価な労働力の流入による賃金、労働条件の切り下げ競争の強化、とりわけ現時点で考えられますのは、東南アジアとのEPAなどで焦点となっております看護師、介護福祉士の日本での受け入れに伴う問題だと思います。

 現状でも低賃金、劣悪な状況の職種でありますので、さらなる悪化と同時に、言語の壁による医療、介護の質という問題にも影響するんじゃないかというのが一つ目です。

 二つ目の労働者への影響は、企業の海外移転、メーカーの海外移転などによる中小零細企業の倒産、廃業という、今日でも起きているような問題だと思います。先行していますアメリカや、アメリカとメキシコなどとのNAFTAの報告を見ましても、企業総体を見ますと、国境を越えて雇用は維持をされている、しかし、アメリカの国内の雇用は生産分野等を中心に減少したという報告が出されているように思います。

 三つ目は、農林水産関係の問題でありまして、農林水産省の試算にもありますように、農業とその関連産業での雇用への影響、これは三百四十万人と試算されている問題だと思います。

 いずれにいたしましても、労働者全体の働き方、雇用、賃金、産業のあり方に非常に大きな影響があると理解をしておりまして、その影響の程度と対応をどうするのかということがきちんと議論されない限り、極めて危険な問題を含んでいるというふうに私どもとしては考えております。

 以上です。

笠井委員 逢見公述人に伺いたいと思います。

 法人税率の引き下げと雇用、国内投資との関係なんですけれども、連合は、法人税率を五%引き下げた場合に、産業界、企業がそこで生み出されたお金を雇用創出につながる国内投資に回すコミットメントを示すようにということで求めてこられたと思います。

 ところが、この問題をめぐっては、御案内のように、日本経団連の米倉会長が昨年の十二月十三日に、法人税減税と引きかえに経済界が雇用、国内投資の拡大を約束するべきだという意見に対して、資本主義的でない考え方を導入されては困るという形で一蹴されたということでありますけれども、そのもとで法人税減税をしても、国内投資それから雇用創出が進むというふうにお考えか、この問題についてはどのように対応されていくおつもりかということについて伺えればと思います。

逢見公述人 法人税引き下げについて、私ども連合は、菅総理が成長戦略の一環として法人税減税について検討するということを指示された、その中で、我々としてもこの法人税減税をどのように考えるべきかということをかなり真剣に考えたわけです。

 確かに、実効税率を国際比較すると、日本はアメリカと並んで先進国の中で極めて高い。そのことが日本の競争力の低下につながっている、あるいは、国内で立地する、創業することについて制約になっているという経済界の主張も理解できないわけではない。ただ、法人税減税が企業の内部留保に使われてしまっては意味がないのであって、それを国内投資にきちんと使うというコミットメントを出してほしいということと、それから、日本の課税ベースは狭いので、課税ベースの見直しが前提であるということを申し上げました。

 その経済界のコミットメントについては、新成長戦略実現会議のもとに置かれた国内投資促進円卓会議というのがございまして、私もその一員で参加いたしました。

 その中で、国内投資プログラムをつくるに当たって、日本経団連あるいはそこに参加する各産業界が、どれだけ国内投資に回すかということの試算なり発言をいたしまして、日本経団連は、五年後に八十四兆、それから十年後に百四兆の民間設備投資を行うと。現在、二〇〇九年度は六十三兆円ですから、十年後に百四兆というのは極めて大きな投資額であると思います。

 では、これを本当にやってくれるのかどうかということについて、国内投資円卓会議の場で、法人税減税をしても企業の内部留保に回るだけでは投資や雇用に結びつかないという指摘もあるが、これは大変な誤解であり、経済界として、減税分は国内における投資拡大、雇用創出につなげていくという決意表明がありまして、このことは国内投資促進プログラムの中に明記されております。

 そういった意味で、我々は、約束というものではないにしても、かなり前向きのコミットメントがあったというふうに思っておりまして、これから、実際の企業行動の中で進めていくことを検証していきたいというふうに思っております。

笠井委員 米倉会長の発言が非常に衝撃的だったわけですので、そういう点ではなかなかこれは大変なんだろうなというふうに私は思っております。

 最後に、駒村公述人に一言で伺いたいんです。

 貧困と格差の問題なんですけれども、生活保護を受給している世帯数が昨年十一月で百四十二万世帯、受給者で百九十七万人となって、歯どめがかからないということであります。年収二百万円以下の働く貧困層が一千百万人に達するという深刻な事態がある一方で、今お話がありましたけれども、大企業の内部留保は二百四十四兆円にまで膨らんで、とにかく大企業は金余り状況にある。こうしたことの中で、貧困と格差というのは何によってもたらされたというふうに公述人は分析をされているでしょうか。

駒村公述人 お答えします。

 二〇〇〇年前後からのいわゆる格差の拡大、ジニ係数の上昇あるいは貧困率の上昇、これは大きく二つの要因がありまして、一つは人口構成ですね。確かに高齢者なり小さい世帯がふえていますので、そこにおいての要因と、もう一つは、やはり雇用規制の見直し、非正規労働者の増加、こういった政策的要因があったんだろう。つまり、この二つの要因が格差や貧困の増加要因である。

 私も研究をしておりますけれども、明らかに、世帯主の年齢別に並べてみても、生活保護程度の収入を基準にした場合でも、すべての世帯で貧困率が上昇傾向にあるというのは、年齢構成、人口構成の影響だけではなく、雇用システムの変化にあるのではないかと思っております。

笠井委員 ありがとうございました。終わります。

中井委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、四人の公述人の皆さんの貴重な御意見、ありがとうございます。順次御質問をいたします。

 まず、逢見公述人にお願いいたします。

 たしか去年も公述人としてお越しいただきまして、ことしは、働くことを軸とする安心社会で、去年のお話のときには労働という言葉を使われておりましたけれども、よりやわらかに、わかりやすく、働くことを軸とするというのは大変に受けとめやすい言葉であると思うんですね。

 さはさりながら、私はこの間の連合の皆さんの発表するものを見ていてもう一つ懸念の点がございまして、働くことに最も重要な価値を置き、だれもが公正な労働条件のもと多様な働き方を通じて社会に参加でき、社会的、経済的に自立することを軸とすると。これだけさらさらっと読めば当然なのですけれども、果たして、働くということは経済的、社会的自立ということと本当にぴったり一緒なのか。

 世で言うシャドーワークですね、介護とか育児とか、家庭の中でも、外に向いて働いていなくてもしっかり働いている現状があります。これについて、今まではワーク・ライフ・バランスという言い方で言ってきたのですけれども、働くことと家庭生活のバランスですが、今現在の日本において一番問題になっているのは、御高齢期の方々を介護として支える部分が、自分が暮らすということ以上に物すごく大きなウエートを占めたり、あるいは、少子化に典型的ですが、子供を持つということが大変に負担感をもたらしていて一歩踏み出せない状況、こういう状況を見たときに、もし来年また公述人としていらしたら、ワーク・ライフ・ケア、いわゆるケアという新たな分野に光を当てた全体の働くイメージを、働くというか、生きて暮らすイメージをもう少し出していただきたいと私は思うんですね。

 なぜこんなことを言うかというと、例えば、民主党の皆さんが、子ども手当の財源に、ことしはなさらなかったけれども、配偶者の扶養控除を外されようとマニフェストではしておられましたけれども、私は小児科医で、家庭がどう子供たちを守っているかということを考えたとき、必ずしも外の労働でなくて、本当に重要なものがいっぱいあると思うんです。その価値、家族の価値、家庭の価値をもう一度取り戻さないと、同じ同居でも、白骨化した御老人がいるとか、子供の世話が大変で、結局は貧困の中で虐待しちゃうとか、尋常ならざる世界が広がっていると思います。

 さて、連合の皆さんの御認識はいかがでしょう。

逢見公述人 御指摘ありがとうございます。

 働くことを軸とする安心社会というのは、我々、約一年かけて、ですから、去年この公聴会に出席したころにはまだこの概念は固まっていなかったわけですけれども、その後の議論の中で、目指すべき社会のあり方を一つのフレーズとしてまとめたものであります。

 この働くの中には無償労働というものも含まれております。もちろん、雇用された有償の賃金というのは非常に重要なんですが、しかし、私たちは、無償労働についての意義というのは、先生御指摘のとおり、家庭にとっても地域にとっても非常に重要なものであるというふうに理解しておりまして、このことを決して軽視するというものではありません。

 ケアということについては、私たちは、地域社会における見守り、子供を見守る、お年寄りを見守る、障害のある方を見守るというのは非常に大事なことであって、こうした全体の見守りを社会保障の中の重要な位置づけとして入れていくべきだと。特に、ケアという部分については、地域介護支援センターというのがありますが、この機能をより強化して、その範囲も広げていくべきだろうというふうに思っております。

 そうしたことと、それから介護の担い手ということが非常に重要であります。今、介護労働のニーズはあるんですけれども、残念ながら、新たにその世界に入ろうとする人が少ない、せっかく入っても短期でやめてしまうということがありまして、こうした介護を初めとするケアという労働についての専門職としての価値をもっと国民の間に共有するものにして、非常に大事な仕事で、専門性のある仕事であるということを理解していただく必要があると思っております。

阿部委員 私は、介護保険ができ、そして今回、子ども手当ができてもなお、それ以上のもっと大きな価値が家庭や家族というところでしっかり担保されないと、本当に人間が孤独でばらばらで、結局弱い者が消えていくということになると思いますので、ぜひ、連合の皆さんに、そうしたことにも目配りをいただきたいと思います。

 引き続いて、きょう、冨士公述人にお伺いしたいのですが、実は、皆さんがおつくりになった「TPP交渉への参加に反対し日本の食を守る緊急全国集会情勢報告」というのを読んでおりまして、非常にいい表現がございました。ちょっと読ませていただきます。

  国を開くとか開かないとか、鎖国とかいった言い方は、国民・消費者を誤った情報でTPP参加に誘導するものです。

  そもそも関税を設定することは「悪」で、関税をゼロにすることが「良いこと」のように言いますが、それは誤りです。

  世界の国々は大きな国もあれば小さな国もあり、北に位置したり南に位置したり、平地だったり山国だったりするわけで、その変えることが不可能な各国の国土条件などを平等にするため、同じ土俵にして公平なものにするために、関税の設定が認められています。

 これは当たり前過ぎるほど当たり前なんですけれども、どうも、年明けてからの菅総理は開国という言葉がお好きで、メディアもみんな開国、開国と言って、これは一体何なんだと。私は、本当に国民を誤った方向に導き、結果的には食料自給もままならないということになって、国を滅ぼす大きなもとになるというくらいに思っている者の一人です。

 一方で、EPA、FTAあるいはWTOのような世界のルールというのはそれなりに歴史があり、特にWTOなどは、第二次大戦前はブロック経済になって、それがお互いの利害のぶつかり合いで戦争にまでなっていくという中で、そうではなくて、本当に世界のルールを築こうということでやってきたわけで、そしてまた、ここにも文章がありますが、「WTOドーハ・ラウンドで、各国の多様な農業の共存を基本にし、」というすごくいい表現。それで、日本も十年にわたり粘り強く交渉してきたわけで、今TPPに入るとこれを壊しちゃうということ、そのことが、スイスやノルウェーや、ともに闘ってきたフランス、イタリアなどヨーロッパ諸国に対しても大きな弊害になるということが書いてありました。

 もう少し詳しくお願いします。

    〔委員長退席、泉委員長代理着席〕

冨士公述人 ありがとうございます。

 WTOとの関係でありますけれども、日本は、日本の貿易政策の基本をWTOに置いてきたというふうに思っております。それは先生おっしゃるように世界共通のルールでありますし、関税の単なる率だけではなくて、輸出補助金でありますとか国内の補助金でありますとか、そういう貿易を歪曲しているものすべてを土俵に上げて、公平公正な観点から議論をしているという意味で、WTOを貿易政策の基本に置いてきたわけであります。

 それで、補完するものとしてFTA、EPAを持ってきたという関係にあるというふうに理解しておりますけれども、今回のTPPは、こうしたこれまでWTOを基本に据えて我が国が経済外交を展開してきた主張や考え方と根底から違うもの、覆すものというふうに思っております。

 我が国は、WTOの中でも認められた非貿易的関心事項、これに基づいて、多面的機能と言われていますけれども、各国の農業の多様な共存ということを共通項として主張してきたわけです。その一環として、上限関税の設定には反対するとか、重要品目の数の十分な確保でありますとか、各国の多様な農業が共存できる、そういう枠組みとして、WTOでのさまざまな交渉をしてきたわけです。そういうことに対して、特にEU諸国などのいわゆる新大陸ではない国々は、自給を基本にした農業でありますので、非常に日本に対して理解があります。そういう意味で共闘を組んできましたし、スイス、ノルウェーとは、食料輸入国として、まさにG10のグループを形成してきたわけです。

 そういうことからすると、今度のTPP交渉で日本が交渉に参加するということになれば、まさに関税撤廃を世界に対して宣言するようなものでありまして、そういう意味で、これまで日本がWTOを基本に通してきた主張と、今TPPに臨もうとしている主張、そこに物すごく違和感があるというのが実態ではないかと思います。WTOとの整合性も十分図れないのではないかというふうに認識しております。

阿部委員 各国にとっての食料主権は命を守る根本ですから、私も、今の公述人の御答弁のような方向で日本は進むべきと考えています。

 次に、駒村公述人にお願いいたします。

 いつも年金問題を初めいろいろな御助言をありがとうございます。

 きょうは、できれば二点、足早にお伺いいたしたいと思いますが、一点は、年金問題全体として見た場合に、生活保護との整合性というか、はっきり言うと、保険料を全然納めていなくても、生活保護の方が給付が多いじゃないかとよく言われるところのものです。この問題について今何をなすべきかということと、もう一つは、ことしも就職内定率が非常に悪く、これは連合の言葉をかりれば、教育から働くことにかける橋の問題だというふうになって、駒村公述人は「世界」にも書いておられますが、この二点、忙しくて済みません、お願いします。

駒村公述人 年金の方でございますけれども、今、生活保護受給者は大変ふえていて、その半分近くが高齢者という状態であります。高齢者が生活保護を受ける割合というのは、かつては高かったんですけれども、だんだん落ちてきてはいたんですけれども、九〇年代の半ばから反転上昇をしてきて、これからは、高齢化が進めば不安定な年金の方と高齢者の数がふえますので、生活保護にどんどん入っていくということはあるかと思います。

 一方、先ほど申し上げましたように、基礎年金がかなり下がっていきますので、こういった中で、生活保護と基礎年金の関係はやはり高齢期の所得保障政策として一体として見ていかなければいけない、ばらばらに議論をしてはいけない、こういうふうに考えております。

 内定の問題でありますけれども、まさにかけ橋が壊れておるところが問題でございまして、そこについては、教育システムとの連携した見直しと、所得保障政策、求職者支援制度のような、生活保護と雇用保険の間のような、スプリングボードを持ったような仕組みを別途考えなきゃいけない。

 ただ、これは、労働市場をどう整備するかということと、非正規やキャリアラダーのある労働市場をどう整備するかということと、同時にそれも準備しなければ効果がないと思います。

 以上です。

阿部委員 急がせて済みません。

 小田川公述人には伺えなくて申しわけありません。

 ありがとうございました。

泉委員長代理 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 きょうは、公述人の四名の皆様方、大変貴重な御意見をありがとうございます。また、逢見公述人と駒村公述人のお二人におかれましては、去年と同様に引き続きということで、大変ありがとうございます。

 最初に、私はみんなの党に属しておるんですが、ふだん余り労働組合の方とおつき合いがないもので、この機会にぜひ労働問題について質問をさせていただきたいと思います。

 官製ワーキングプアの問題、先ほど、川崎市の公契約のお話もちょっと出たかと思うんですけれども、今、自治体なんかに行くと、本当に、図書館の司書の方とか、消費者窓口の相談の受付の人とか、そういう非常に専門的で高度な仕事をやっている非正規の職員の方というのは大変多いというふうに感じます。

 こういう問題の解決策ということでいうと、一番いいのは正規の社員にしてしまうということですけれども、今の財政的な状況を考えると、実際問題なかなか難しい。そういう状況のもとでは、この官製ワーキングプアの問題をどういうふうに解決していったらよろしいのか、逢見公述人と小田川公述人のお二人にお尋ねしたいと思います。

逢見公述人 御指摘の官製ワーキングプアの問題でございますが、冒頭の公述の中で、公契約基本法の必要性について発言させていただきました。地方自治体レベルでは、川崎市、その前には野田市、今、ほかの都市でもこうした公契約条例の制定の動きが出てきておりますが、これは非常に歓迎すべきことだと思っております。

 現在の公契約あるいは公共サービス契約というのは、今、相当程度民間等への委託契約が進みつつある。それが一般競争入札によっているということがあって、そうすると、価格だけがその条件になってしまう。価格が安ければそこに落ちてしまう。果たして、そこで適正な人件費というのが計上されているのかどうかというのがありますし、中には、社会保険料が未納だったりというところがあるというケースも聞いております。こうしたところに落札してしまうことによって、非常に劣悪な労働条件のところが公共サービスを担うというのは、本来、あるべき姿ではない。

 そういう意味で、一般競争入札だけではなくて、そこにサービスの質ということと、それから総合評価方式を入れることによって、例えば社会保険料をきちんと納めているとか、あるいは過去に労働法制についての違反がなかったとか、そういうことも条件にして総合評価で決めるべきだ、そういう部分の基本的な公契約のルールを公契約基本法という形で制定すべきだというふうに私どもは考えておりまして、ぜひ、これからこの国会においてもこうした議論を深めていただきたいと思っております。

    〔泉委員長代理退席、委員長着席〕

小田川公述人 お答えします。

 二つの問題が官製ワーキングプアにはあると考えておりまして、一つは、今もおっしゃいました、アウトソーシングあるいは民間委託という問題の中で発生をしている事象だと思います。

 安ければいいということが、結果として人件費を下げていて、その結果として公務周辺のワーキングプアをふやしているということだと思いますので、その点で申し上げれば、公契約の意義があり、かつ、入札制度の問題でも、例えば適正な人件費が確保されているかというような点を入札の際の点検項目にするような、いわゆる新宿方式と言われるようなものもありますけれども、そういう仕組みが必要と思います。

 二つ目には、直接雇用の非常勤の労働者の問題がございまして、これは民間と同様、有期雇用一般の問題だと思います。何年勤めていても賃金が上がらないという問題を抱えていますので、有期雇用規制、民間と公務とあわせた論議が必要ではないかと考えております。

山内委員 小田川公述人、今の最後の部分をもうちょっと詳しく説明していただきたいんですが、民間とあわせて、直接雇用の問題をどういうふうに解決していけばいいのか。

小田川公述人 有期雇用の規制は、二つの方法が考えられると私どもは思っています。

 一つは、入り口の規制です。公務でも、臨時、一時的な業務以外については非常勤にしてはならないということになっているはずなんですけれども、これが、現実のところでいえば、十年、二十年、非正規労働のまま働くことを、いわゆる恒常的な業務についても非常勤の職員として採用しているという現実、これをどう規制するかという問題が一つ。

 二つ目に、一定期間以上の有期雇用を認めない、仮に臨時、一時的なものであったとしても一定期間以上は認めないという、二つの方法で規制されるべき課題であって、これは公務も民間も同様ではないかと考えております。

山内委員 ありがとうございました。

 それともう一つ、同一労働同一賃金という考え方というか、原則というのがあるかと思うんですけれども、それについて逢見公述人と小田川公述人にお尋ねします。

 この同一労働同一賃金、原則として、一般論としてで結構でございますが、望ましいとお考えなのか、それともそうではないとお考えなのか、あるいは、仮に望ましいとすると、どうやって実現していけばいいのか、御意見をお聞かせください。

逢見公述人 同一労働同一賃金、同一価値労働同一賃金と言うべきだと思いますが、これは、私ども、ILO条約にもある、普遍的な市民法原理であるというふうに考えております。したがって、これは普遍的な原理として我々も受け入れていかなきゃいけない。

 ただ、我が国の場合は、職務をベースにして賃金を決めていくという形だけではなくて、賃金の決め方というのは多様でありまして、必ずしも職務がベースになっているわけではない。そういう意味では職務を物差しではかるということができにくいところがありまして、それを均等待遇、均衡処遇という形でバランスをとっていくという考え方をとってきております。

 私ども、それは、同一価値労働同一賃金という原則を受け入れつつ、こうした均等待遇、均衡処遇という形で、働き方が同じであれば賃金は同じであると。しかし、働き方だけではなくて、仕事の内容だけではなくて、教育訓練、福利厚生、それから責任の度合いとか、そうした職務だけではない部分についてより明確な基準をつくって、賃金に差があるとすれば、どういう合理的理由で差があるのかということをきちんと示すということが均等待遇、均衡処遇に持っていくベースになるというふうに思っておりまして、こういう形で働き方のルールということが設定されていくべきだと思っております。

小田川公述人 お答えします。

 基本の考え方、同一価値労働同一賃金であるべきだということも含めて同じ考え方に立っておりますが、日本的な要素というものが加味された議論が必要だということは、率直に私どもとしても考えています。

 現状で申し上げれば、大部屋型で一人ずつの職務がなかなか特定しづらいという日本の雇用慣行の現状があり、あるいは人事管理の現状がありますので、そのことを前提にして考えますと、派遣法やパート法など幾つかの労働関係の法律がありますが、そこの中に均等待遇の原則を宣言し、合理的理由のない差別取り扱いを禁止するような規定を設けて規制を行うと同時に、それを手がかりに、各交渉単位や各企業単位で、現実的な均等待遇のあり方、賃金の同一化を図っていくという手順を踏むことになるのではないかと考えています。

山内委員 残り時間がわずかになってまいりましたが、昨年と引き続き二年連続で出ていただいた逢見公述人と駒村公述人のお二人にお聞きしたいと思います。

 一年たちました。一年前と比べて、この民主党政権になってからの一年間で、どういったところがよくなって、どういったところがよくなっていないか、あるいは改善が必要か、プラスとマイナス、どちらも簡単にお述べいただければと思います。

逢見公述人 昨年の予算編成というのは、二〇〇九年の九月に当時の鳩山内閣が立ち上がって、その中で、補正予算それから本予算という連続した形で、かなり限られた時間の中で予算をつくらねばならなかったということもあって、かなり時間的制約の中でつくられた予算だったと思います。また、税収が予想以上に落ち込んで、三十七兆という形の税収の中で予算を組まざるを得なかった。

 ことしは、そういう意味では、政権が交代して初めてゼロからの予算だということもありますし、昨年度よりは税収も少し好転している。そうはいっても四十兆ぐらいですから、大変財政制約のある中でつくられた苦労された予算だというふうに思います。

 ただ、その中で、我々と問題意識を共有している、特に雇用の問題であるとか子育ての問題であるとか、そういう点について、めり張りのついた予算があったのではないか。

 それから、税制についても、所得再分配機能を強化するという思想があらわれておりますし、その前提として、納税者の権利憲章あるいは共通番号という、これまで課題として挙げられたけれどもなかなか実現できなかったことに踏み込まれているという点について評価しております。

駒村公述人 なかなか一言というのは難しいわけでございますけれども、いい方と言うべきでしょうか、政策の現実的な部分、姿勢が高まってきたというところがいいところだと思いますけれども、もう一方、悪い点というか、努力をしていただきたい点は、新しい政策をやるときには、費用もかかりますし、すべての方が得するわけではないということは明確にしていただいて、八方美人ではなくやっていただきたいと思います。

 とがった部分まで全く忘れていただいては困ると思いますので、とがったいい部分はちゃんと残しながら、現実的な調整ということで、ちょっと矛盾するかもしれませんけれども、お願いしたいと思います。

 以上です。

山内委員 時間の関係で、最後の質問を冨士公述人にお願いしたいと思うんですが、民主党政権の農政の中で一番問題だと思う点、一点だけお答えください。

冨士公述人 最初にも申し上げましたが、TPP交渉、これから参加判断ということでありますけれども、そういう発想に立って、これまでのWTO交渉との関係とかそういうことを含めて、何も整理しない、具体的に情報を提示しないという中でTPP交渉に前のめりに進んでいくという点が一番懸念する点だというふうに思います。

山内委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 公聴会は、これにて散会いたします。

    午後三時五十二分散会


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