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第1号 平成29年2月22日(水曜日)

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本分科会は平成二十九年二月二十日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十一日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      衛藤征士郎君    黄川田仁志君

      葉梨 康弘君    保岡 興治君

      今井 雅人君    前原 誠司君

      國重  徹君

二月二十一日

 葉梨康弘君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十九年二月二十二日(水曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 葉梨 康弘君

      衛藤征士郎君    神田 憲次君

      黄川田仁志君    田所 嘉徳君

      藤丸  敏君    村井 英樹君

      保岡 興治君    山田 賢司君

      今井 雅人君    枝野 幸男君

      逢坂 誠二君    前原 誠司君

      濱村  進君

   兼務 赤枝 恒雄君 兼務 門  博文君

   兼務 稲津  久君 兼務 佐藤 英道君

   兼務 赤嶺 政賢君 兼務 畠山 和也君

   兼務 小沢 鋭仁君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   外務副大臣        薗浦健太郎君

   財務副大臣        大塚  拓君

   財務副大臣        木原  稔君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   防衛大臣政務官      宮澤 博行君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           山本 茂樹君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         中村  格君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    畝本 直美君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩本  修君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 森 美樹夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 四方 敬之君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    能化 正樹君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 井上 裕之君

   政府参考人

   (国税庁次長)      飯塚  厚君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           谷内  繁君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           諏訪園健司君

   政府参考人

   (水産庁増殖推進部長)  保科 正樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           赤石 浩一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高科  淳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官) 小澤 典明君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     瓦林 康人君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     神田 憲次君

  保岡 興治君     村井 英樹君

  前原 誠司君     高井 崇志君

  國重  徹君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     田所 嘉徳君

  村井 英樹君     山田 賢司君

  高井 崇志君     逢坂 誠二君

  濱村  進君     國重  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  田所 嘉徳君     衛藤征士郎君

  山田 賢司君     藤丸  敏君

  逢坂 誠二君     枝野 幸男君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     尾身 朝子君

  枝野 幸男君     前原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     保岡 興治君

同日

 第二分科員赤嶺政賢君、第四分科員小沢鋭仁君、第五分科員赤枝恒雄君、第六分科員畠山和也君、第七分科員稲津久君、佐藤英道君及び第八分科員門博文君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十九年度一般会計予算

 平成二十九年度特別会計予算

 平成二十九年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

葉梨主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私、理事の葉梨が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 平成二十九年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、九十七兆四千五百四十七億円余となっております。

 その内訳について申し上げます。租税及び印紙収入は五十七兆七千百二十億円、その他収入は五兆三千七百二十九億円余、公債金は三十四兆三千六百九十八億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十五兆七千三百四億円余となっております。

 このうち主な事項につきまして申し上げますと、国債費は二十三兆五千二百八十四億円余、復興事業費等東日本大震災復興特別会計へ繰り入れは五千七百十兆円、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも百九十六兆六千四百十五億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただければと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入一千六百九億円余、支出九百五十二億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 復興特別会計への収入は五千七百十兆円と申し上げましたが、これは億円の間違いでありました。失礼しました。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付いたしております印刷物をもちまして詳しい説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださいますようよろしくお願い申し上げます。

 以上であります。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

葉梨主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村井英樹君。

村井分科員 自民党の村井英樹です。

 本日は、予算委員会分科会で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、麻生大臣初め財務省の皆さんも、朝早くからお疲れさまでございます。

 さて、きょうは、税と社会保障の制度を俯瞰して、ひずみとでも言ったらいいんでしょうか、幾つか、解決すべきではないかという課題について指摘をさせていただいて、財務省の皆さんから見解を伺うとともに、今後の社会保障制度改革の方向性を共有させていただければと考えております。

 現在進められております社会保障・税一体改革については、私も役所にいたときに少し携わらせていただきましたけれども、もともとは福田政権時の社会保障国民会議等の議論を踏まえて、麻生政権での改正所得税法の附則百四条という形で結実したものを、政権交代後でありましたけれども、三党合意が行われ、その三党合意に基づいて、今、税・社会保障一体改革が進められているわけであります。

 ただ、この税と社会保障の一体改革、消費税がまだ八%であるということからも明らかなとおり、未完の状態にあるわけでありまして、私が何を申し上げたいかと申し上げますと、現在進められている社会保障・税の一体改革、これはもちろん完遂を目指すべきものだと思いますけれども、その一方で、今の枠組みが議論をされ始めた二〇〇〇年代一桁台、そこからもう約十年が経過をしておりまして、当時は想定をしていなかったような社会保障、税制度のひずみ、当時は想定をされていなかった、また、余り問題視をされていなかったようなものがあらわれ始めているのではないかというところでございます。

 きょうは、そうした課題を四点ほど指摘させていただきたいと思います。

 今、お手元にさまざまな資料をまとめたものをお配りしておりますけれども、一点目として資料一から順々にお話をさせていただければと思っております。

 資料一、これは、政府税調の資料がもとになっておりますので、皆さんおなじみのものかもしれませんけれども、若年世帯、壮年世帯、また高齢者世帯についての収入分布を九四年時点と二〇一四年時点で比較をしたものであります。

 若年世帯の収入が、一番左側ですけれども、下方にシフトをしているというのがもう明らかに見てとれるわけであります。また、余り目立ちませんけれども、真ん中の壮年世帯についても、年収八百万のボリュームゾーン、八百万より下の層がふえて、八百万よりも上の層が減っている。また、一番右側の高齢者世帯についても、高収入の層が減っていることが見てとれるかなと思います。

 さらに、ちょっと一歩引いてみると、高齢化の影響で、高収入の割合が高い、この真ん中の壮年世帯は減っていて、一番右側の、四百万のところにメディアンがある高齢者世帯がふえているわけでありまして、そういう意味で、全体として見ても、やはり収入水準が下方にシフトをしているということだろうと思います。

 こうした状況を踏まえていただきながら、資料二をごらんいただければと思います。これも政府税調の資料なんですけれども、所得税と保険料の負担割合を収入水準ごとに示したものを昭和六十二年度から平成二十七年度まで比較したものであります。

 まず、この左側をごらんいただきたいんですけれども、こちらは、所得課税、税の方の負担のみを取り出したものでありますけれども、昭和六十二年度時点の赤い点々線が、この下の黄色い点々になって、青になって、平成二十七年度の黒い線になっておるわけであります。この間、直間比率の是正といったようなかけ声もあって、基本的に所得税率はフラット化をしてきております。

 その一方、右側を見ていただきたいんですけれども、これは、この左側の所得課税負担にプラスをして社会保険料負担を乗せたものとなっております。若干複雑に、ぐちゃっとなっているんですけれども、これもポイントは赤から黒に移動しているということなんですけれども、昭和六十二年度の赤の点々線が、現状、黒の線に移動をしているということであります。見ていただくとわかるとおりで、所得の高い層では負担が下がっていて、所得の低い層では負担が上がっているということであります。

 これは、先ほど申し上げたとおりで、所得税がフラット化をしている一方で、社会保険料は知らない間にじわじわ上がってきておりまして、右下にも書いておりますけれども、社会保険料率が昭和六十一年には八・九五%であったものが、平成二十六年には一四・九二%まで上昇している。さらには、社会保険料率は、御案内のとおり、基本的には所得水準にかかわらず負担が比例的にかかってきますので、税と保険料の合算の負担率で見ると逆進性が高まる形となってくるわけであります。

 ここまでおつき合いをいただいた上で質問をさせていただきたいと思いますが、まとめると、この二十年間で我が国の収入水準は下方にシフトをしております。特に若年の部分、これは非正規雇用の話とかいろいろな原因があると思いますけれども、大きく下方シフトしております。その一方で、税、保険料負担の逆進性は高まっているという状況があるわけですけれども、こうした点について、財務省としてどのように考えていらっしゃるのか、見解を伺いたいと存じます。

木原副大臣 村井委員から、税と保険料負担の逆進性という問題意識がある、そういう御質問でございますが、確かに重要な視点だというふうに考えておりまして、私どもとしましても、そういった逆進性を排除するように是正する方向で常に配慮を行っているところであります。その結果として、今の日本の税と社会保障制度全体としては、逆進的とまでは言えないというふうに考えているところです。

 まず、我が国の基礎年金、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険については、社会保険制度の費用の半額は税金、公費で賄われており、これらに加入することで、所得がなく、あるいは所得が低く、税金を負担していない、あるいは少額の負担にとどまる、そういう場合でも各種の給付を受けることができるようになっているところです。

 さらに、所得税について言えば、昭和六十年代以降、税率構造について大幅な累進緩和が行われた時期がありました。再分配機能が低下した中で、近年ですが、最高税率を引き上げました、御承知のとおり四〇%から四五%に。そういった対応を行っているところです。

 そして、消費税についても、いわゆる逆進性を有している面があることは、これは否定しませんけれども、税率引き上げの増収分は、社会保障の充実、またその安定化というものに充てられて、国民健康保険料の軽減等の低所得者対策というものを行っているほか、軽減税率制度によって逆進性を緩和することができると考えております。

 政府といたしましては、今回の平成二十九年度予算において、保育士、介護人材等の処遇改善や、また教育負担の軽減等、若者への投資を拡大するとともに、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革の中で、同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋めることで若者が将来に明るい希望を持てるようにしたい、そのように考えております。

村井分科員 ありがとうございました。政府としてさまざまな取り組みをしていただいているという御紹介をいただきました。

 副大臣の御答弁の中でも、現状、逆進的とまでは言えないというお話がありました。確かに、累進性は保たれているので、そういうことなんだろうと思いますけれども、その一方で、逆進性が高まってはいるというこの変化については、ぜひまた財務省さんの方でも検討していただければとも思っております。

 ここまで、税と保険料の負担に着目をして、逆進性の話等を指摘させていただきましたけれども、ここから、給付の方も含めて、今、国の再分配の機能がどのような形になっているのか見ていきたいと思っております。

 資料三をごらんいただきたいと思います。この図は、厚労省の所得再分配調査をベースにして、所得水準ごとに負担と受益、受益についてはサービス給付、医療とか介護も含めておりますけれども、これらがどうなっているのかを整理したものであります。

 見ていただくとわかるとおりで、上が収入、所得が低くて、下に行くにつれて高所得になっているんですけれども、収入が高い方の方が負担が大きくて、収入が低い方の方に給付が多い形となっているので、全体として見ると、しっかり再分配機能が発揮されているというふうに見えるわけであります。

 ただ、これを今度は年齢別にしてみるとどうなるのかというのが、次の資料四でございます。この資料四をごらんいただきますと、実は、高齢者ほど負担が少なくて受益が大きい、若者、若年層は受益が少ないということが見てとれます。これは、我が国の社会保障において年金が主な再分配のツールであるということだとか、医療、介護みたいなサービス給付も基本的には高齢の方が多く受けるということからこういうような形になっているわけであります。

 この状況そのものを取り上げて、いいとか悪いとか、そういうことはなかなか言えないんだろうと思いますし、また、壮年、若年世代がばりばり仕事をして収入もある、これからどんどん上がっていくという形で、高齢世代は収入が少ないかわいそうな人たちというようなイメージがはまる時代背景であればこういうことでいいんだろうと思いますけれども、果たして今そういう状況なのかということなんですよね。

 こういうことを踏まえながら、資料五を見ていただければと思うんです。実はこれは前政権時代に割と出てきた資料なんですけれども、では、その再分配機能を働いている人に限定して見るとどうなのか、何が起きているのかということなんです。

 OECD諸国と比較をして、再分配前と後で貧困削減率がどうなっているのかということでありまして、ほかの諸外国は貧困削減率がかなり高い水準にあって、当たり前ですけれども、再分配が行われる前と後で、格差という言葉で言っていいんでしょうか、格差がより小さくなっているという形になっているわけでありますけれども、我が国を見ると、驚くべきことに、赤い方、一人が就業というのでもかなり小さいんですけれども、成人全員が就業というこの青の方を見ると、何と、再分配前と後で、これは相対的貧困率で見ているんですけれども、相対的貧困率が上がっているという結果が出ております。これは東大の大沢先生の研究なのでありますけれども、こういうように諸外国と比較をすると、働いている部分に限定して見ると、実は再分配が機能しているどころかマイナスになっているような指摘もなされているわけであります。

 こういうような状況についてどう考えるのか。もう一回整理をしますと、全体として見ると再分配機能がきいているように見えるけれども、実はそれは世代間の支え合いというところに重きが置かれていて、実は、働いている世代に限定をして見ると、再分配が機能していないんじゃないかというような指摘もあるかと思いますけれども、その点について財務省さんの御見解を伺いたいと思います。

木原副大臣 所得再分配についての御指摘でございましたが、格差の固定化を防止するという観点から、これは重要だというふうに考えております。

 再分配といいますと、その規模ではなくて、再分配の結果、どうなっているか、格差の状況というものをよく見る必要があるな、そのように考えているところです。この点で申し上げますと、現役世帯の所得再分配の状況について、OECDの統計によれば、日本の社会保障と税による再分配後のジニ係数ですけれども、ここに着目すれば、OECD平均と同水準にあるものと承知しているところです。

 他方で、平成二十七年に取りまとめられた政府税制調査会の論点整理において、若い世代や子育て世帯に光を当てていくことが重要との観点から、所得再分配機能の重要性が高まっていることが指摘されているように、また、委員が先ほど御指摘されたように、再分配機能の確保が重要というのはそのとおりだというふうに考えております。

 こうした中で、再分配機能の確保のために、これまでに、所得税及び相続税の最高税率について平成二十七年からの引き上げ、先ほど申し上げました所得税四〇%から四五%、相続税は五〇から五五%にということ、そして金融所得課税については平成二十六年からの見直し、これは一〇%から二〇%というところでございます。また、児童扶養手当の機能の拡充等の一人親家庭への支援や子ども・子育て支援の強化などを、これまで随時行ってきたところであります。

 まずは、こうした措置の影響を、社会全体にどう波及していくか、その影響を見きわめる必要があると考えておりまして、税、社会保障制度については、所得再分配機能のあり方を含めて、引き続き丁寧に検証しながら検討してまいりたいと思っております。

村井分科員 木原副大臣、ありがとうございます。副大臣から、ジニ係数ベースで見るとOECD諸国と比べても遜色ないといったようなお話がありました。

 おっしゃるとおり、貧困の話とか格差の話とかというのは、見方ですよね。統計のとり方によってもかなりいろいろな見方ができるのはおっしゃるとおりでありまして、ぜひさまざまな視点からまた検討を行っていただきたいと思います。

 ただ、その一方で、一ページめくっていただいて、資料六ですけれども、これはよく一橋の小塩先生なんかが使っていらっしゃいますけれども、半分直観的に言うと、やはり本来は、若者、高齢者で、それぞれ、貧困でない方が貧困な方を支える、困っていない方が困っている方を支えるのがある意味、社会保障のあるべき姿なんですけれども、実は、世代を超えている、ここの支え合いのところが強過ぎる、若者で困っていない人も困っている人も、高齢者の困っていない人も困っている人をも支えるという形になっているんじゃないかというような問題意識を指摘させていただきたいと思います。

 その上で、大分時間が来てしまいましたので、ちょっとペースアップをしていきたいと思いますが、一ページおめくりをいただきまして、資料七をごらんいただければと思います。

 いきなり表題に「低所得者と「中間低位層」の間に可処分所得の逆転が生じている?」というよくわからない表題がついていますけれども、この中間低位層、これは私が名づけたんですけれども、低所得の上の方ですね。いわゆる、いろいろな支援策が当たっているこの低所得の方よりは所得が高いんだけれども、その中で所得が低い層の方々。

 例えばで言うと、ここの右側のラインで出ていますけれども、今非正規で働いている方の平均年収というのは約百七十万円なんですね。この百七十万円ぐらいの皆さん方と、この左側に出ているような住民税の非課税だとか所得税の課税最低限の下の層で、実は、いろいろな給付だとか税負担の優遇施策を積み合わせていくと、可処分所得の逆転とまで言えるかどうかわからないけれども、かなり、ある意味での不公平が生じているんじゃないかという指摘であります。

 見ていただくとわかるとおりで、百十五万以下で住民税非課税、これは所得割の方ですね、均等割も百万以下で非課税。所得税の課税最低限は百二十万。さらには、国保の保険料の軽減だとか年金の保険料の減免も、この下に書いたような形できいてきますし、一ページめくっていただいて、資料八で、例えば住民税非課税を対象としている制度というのは物すごくあるんですよね。

 例えば、高額療養費も上限額を低く設定していたりとか、高額介護サービス費もそうですし、介護保険の保険料の低所得者軽減、保育料の軽減、就園奨励費も住民税非課税はかなり手厚く出ているだとか、また簡素な給付措置についてもしっかりと出ていたといったようなことがあります。

 これは代表的なものでありますけれども、実は、我が国の低所得者対策と呼ばれるものは結構あるんです。いろいろな優遇施策はあるんですけれども、そのちょっと上のところ、まさに今、層としてふえ始めているこの百七十万円ぐらいの中間低位層、一生懸命非正規で頑張っているんだけれどもという層が、実はここからこぼれ落ちてしまっているんじゃないかというような指摘が考えられると思いますけれども、その点について財務省の見解を伺いたいと思います。

木原副大臣 中間低位層という言葉、大変興味深い区分だというふうに思います。

 年収百七十万円程度の非正規労働者と一口に言っても、就業の目的であったり、扶養者がいるかどうかとか、そういうものに応じて、置かれている環境はさまざまであり、また必要な支援や内容、程度もそれぞれ異なるというふうに考えておりますが、その上で、低所得者向けの施策としては、税や社会保障料の軽減措置といった優遇措置だけでなくて、例えば、キャリアアップをさらに目指す方を念頭に置いた非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金の拡充であるとか、また、子育て中の方を念頭に置いた保育の受け皿整備を初めとする子育て支援の拡充、そういった、低所得者が置かれている環境に応じた政策支援もあるわけであります。

 我々財政当局といたしましては、国民一人一人の実情にきめ細かな配慮を行いつつ、実効性のある支援策が講じられることが重要だと考えておりまして、今後とも厚労省など関係省庁とよく相談しながら取り組んでまいりたいと思っております。

村井分科員 ありがとうございます。

 もう一問、最賃と生活保護世帯で実は可処分所得が逆転しているんじゃないかというような指摘もさせていただきたかったんですけれども、時間が来ておりますので省略をしたいと思います。

 最後に申し上げたいことは、冒頭にも申し上げましたけれども、今回の、今進行している社会保障・税の一体改革の議論がスタートして十年、三党合意から五年という時間が経過をしております。この間、高齢化だとかグローバル化、IoT化という変化が加速度的に起きていて、我が国の経済社会構造も変化が起き始めているし、この変化はさらに大きなものになってくる。例えば、アメリカの大統領選なんかでも、ミドルクラスの没落といったようなことが一つのテーマとなってきました。我が国においても、そうした問題はさらに深刻化をしていくおそれがあると思います。

 こうした変化をしっかり見据えながら、財政的な持続可能性はもちろん大切でありますけれども、財政論のみならず、大きな視野から新しい時代の社会保障、税制度についての検討を進めていただきたいと思います。

 特に、制度横断的にということですよね。先ほども見ていただいたとおりでありますけれども、主税局は税のことだけ、主計局は予算のことだけ、厚労省は社会保障、保険の世界だけということでいくと、やはり全体として見たときにどこかにひずみだとか不公平というものが生じてきてしまうものでありますので、ぜひ財務省の皆さん方にはリーダーシップをとっていただいて、そういったような大きな改革の検討を今こそ再スタートしていただきたいということを申し上げたいと思いますが、最後に麻生副総理・財務大臣の御感想を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 いい資料ですよ、これは。どれくらい手間と暇と金をかけたんだか知らないけれども、よくできています。大したもの。役所をやめてよかったのか、やめてよくなかったのか知らぬけれども。

 社会保障制度や税制の話に当たっては、逆進性とか再分配機能という話というのは大変大事なことなので、これは考慮をしておかないかぬ大事なことなんだ、私どもはそう認識をして、今回もいろいろ相続税やら何やら大分さわったところではあるんです。

 いずれにしても、社会保障というものを我々としては持続可能なものにしていかないかぬ、次の世代に残すようにしていかないかぬということで、社会保障・税の一体改革とか改革工程表でしたか、ああいったようなものに沿って社会保障制度の改革を進めていくということで、いわゆる負担と給付の話を、そこそこ持っている人はちょっと控えてもらおうというような話で今いろいろさせていただいているところなんです。

 いずれもそういったのを今スタートさせておりますので、御指摘のような点というものも大いに踏まえつつ、今、大きなものを十分に頭に入れながら、こうした改革を着実に進めていくというところからスタートさせていただかないかぬところで、まずはちょっと二〇二〇年までそれでやらせていただいて、その後というところが、今、村井先生の言っておられるところに行くべきところかなという感じはしました。

 ありがとうございました。

村井分科員 ありがとうございました。終わります。

葉梨主査 これにて村井英樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、神田憲次君。

神田分科員 おはようございます。自由民主党の神田憲次でございます。

 本日は、質疑の時間をいただき、まことにありがとうございます。

 本日、麻生財務大臣のお顔もお見えになりますけれども、早朝からお疲れさまでございます。財務金融委員会、九時からということでございまして、本日の委員会、七時間全て野党からの質疑ですので、大臣には御退席をいただければ、そして英気を養っていただければと存じます。ありがとうございます。

 では、続けます。

 先ほど、同期の村井先生の方から、マクロの視点からの質疑をいただいたところでございます。私は税務行政についての質疑を用意いたしてまいりましたので、少々細かいことをお伺いするかもしれませんが、どうかお許しいただきたいと存じます。

 本日はまた、大塚副大臣にお見えいただいております。主税局からは井上審議官、そして国税庁からは飯塚次長に来ていただきまして、御多用の中、質疑に応じていただきまして、重ねて感謝申し上げます。

 先ほども述べましたように、私、税理士出身でございますので、やはり、よりよき税制の構築というのが国政に参画した私の思いの一丁目一番地であるということは自負しておるところでございます。

 一般に、税制には三つの機能があると言われております。それぞれ、財源の調達、所得再配分、それから経済、景気対策でございます。この三つは、現在の日本の社会経済が抱える問題そのものでございますし、また、安倍政権が挑む課題そのものでもあります。その意味からも、税制改正は、我が国の、日本の未来を考えますときに、本当にこれが根幹であると考えている次第でございます。

 しかし、一般的に税制というのは、納税、税法、それから税務、ほとんどいいイメージで捉えられることはありませんし、税は、どちらかというと、その表現にもありますように、取られるという認識のものでありまして、とかく不公平であるとか、あるいは何に使われているのかわからないとか、そういったイメージで見られるものではないでしょうか。

 もちろん、国政を担う者としては国会議員も大いに反省しなくてはなりませんが、本来の税制の成り立ちというのはもっと国民的サイドから自発的なものであったように思われるわけです。

 歴史をひもとけば、近代の市民革命の理論的支柱でありましたトーマス・ホッブスは、租税とは、国家が私たち市民に提供する生命と財産の保護、この二つの便益への対価であると語っておりまして、近代以降の国家では、自主的納税倫理とも言うべきものに基づいて、国民が国家に対して、信任を持って、正当な対価として納めるべきものだと考えられてまいりました。

 ですから、我が日本の納税者の皆々様には、その納税については気持ちよく納税をしてもらわなければなりませんし、そのための努力を、私たち国政の議員も、それから税務当局も、惜しんではならないと思うわけでございます。

 当局の方もさまざまな努力をしてこられたと思いますけれども、近年は特に行政の電子化、すなわち電子申告の普及促進に力を入れられております。

 我が国では、国税はe―Tax、地方税はeLTAXと、それぞれ主管庁である国税庁と総務省がシステムの構築をしてこられました。当初はなかなか普及しないなどの意見がございましたし、実際に税の申告の実務を行っておりますと、今まさに行われている確定申告でも、ことしからはマイナンバーの登録が始まっておりますし、着実に一歩一歩、その定着が図られているように感じておるところでございます。

 そのような中で、ことしの一月三十一日に、地方税の電子納税システムであるeLTAXへのアクセスが集中しまして、システムがダウンするという事件が起こりました。

 一月三十一日は、地方税ですと、まず十一月期の決算法人の確定申告と五月期決算法人の中間申告、それから給与支払い報告書の提出、償却資産税の提出等々、四つの締め切りが重なっておりまして、サーバーに負荷がかかったことがシステムダウンの原因であったと。これは総務省の方からも既に報告を受けておるところでございますが、結果的に二週間程度の幅を持って未達のデータも受理することとなりましたが、やはりまことに、この電子申告の怖さというものを感じたところでございます。

 そこで、国税庁にお伺いしますが、確定申告の締め切りももう間近となっておりますし、ふるさと納税の広がり等もございます。そこで、ことしの確定申告も一定数はふえるのでないかということは予想されますし、それから、提出附属書類の作成もふえていく時期でございますので、eLTAXのようなことが起きないように、サーバーの負荷テストなど、システムの準備は大丈夫でしょうか。

 また、eLTAXのシステムダウンの際には救済措置がとられたわけですが、各自治体で告知の時期や方法がばらばらで、納税サイドでは大分混乱をいたしたわけですし、国税は一つしかございませんから、ばらばらということはないわけでしょうが、万が一の場合、速やかに対応するための想定やマニュアルの準備はできておりますでしょうか。

飯塚政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、地方税の電子申告システムでございますeLTAXにおきまして、ことし一月に、あらかじめシステムに設定された上限値を超えたアクセスが集中し、システムにつながりにくい事象が発生したということを承知しております。

 お尋ねは、国税の電子申告システムでございますe―Taxについてでございますけれども、e―Taxにおきましても同様のトラブルが発生した場合には納税者や税務行政に多大な影響を与えるということになりますことから、前年度のピーク日の受け付け件数の実績を踏まえた負荷テストを実施するとともに、日々のアクセス状況を常時監視するなどの事前対策を講じているところでございます。

 また、万が一システムに同様のトラブルが発生した場合には、システムの設定情報の点検等を行うことにより早期の原因究明と復旧を図ることを想定しております。

 いずれにいたしましても、国税庁といたしましては、e―Taxシステムの安定稼働が引き続き図られますよう努力してまいりたいと考えております。

神田分科員 御答弁ありがとうございました。

 国税庁内部の技術的な問題ですので、余り深掘りをいたしますとセキュリティー上の問題も生じる可能性があると思いますので、そこは深掘りはいたしませんが、今御答弁ありましたように、備えられておると伺い、ひとまず胸をなでおろすというような思いでございます。

 全国の税理士や会計士がこの期日に向けて帳票のデータを送信し続けるわけですから、おくれること、すなわちそれは納税者に迷惑をかけるということにもなりますし、それから、適正なる申告納税制度の確立という観点からも、そういう事態が起きないように、皆様にも御尽力いただければと存じます。

 次の質問に移らせていただきます。

 まさに今、財務金融委員会では二十九年度の税制改正に伴う所得税法改正案が審議されておるわけですが、税制を変革するということで国家財政がよみがえる、あるいは経済活力が創出されるという例を、特に高齢化という問題を抱える先進国で見ることができると思います。

 具体的には、ドイツのメルケル政権において行われた税制改正のパッケージ、消費税、所得税をふやして、法人税と社会保険料負担を軽減する、キャピタルゲイン課税を簡素化する等、包括的な税制改正パッケージですが、実施の結果、EU圏内でも圧倒的に強い経済と財政健全化を誇るに至ったわけです。

 また、英国やオランダでは、社会保障と税の一体改革を行った結果、所得再配分効果が発揮されたと聞いております。

 具体的には、英国では、勤労税額控除、児童税額控除の導入など税制改正によって社会保障費の肥大化に歯どめがかかって、オランダでは、勤労税額控除によってワーキングシェアの導入、それから税額控除方式の採用によって所得再配分率の劇的な上昇が見られたと伺っております。

 我が国でも、二〇一一年以降、社会保障と税の一体改革ということが進められてまいりましたけれども、その中でも重要な柱であった所得税改革につきましては、昨年末の政府・与党の税制改正論議で、二十三年ぶりに検討が行われております。

 所得税改革の背景には、請負型事業主の増加など雇用の多様性が生まれる一方で、就業調整の原因と長く指摘を受けてまいりました配偶者控除の見直しの必要性が高まったことなどが考えられるわけですが、所得税改革は、先ほど申しました税の三つの機能に資する税制改革だと思っております。

 個人的には、一般的に言われる百三万の壁というのは、配偶者特別控除が導入されている以上、私は、幻想の壁でしかない、むしろ、その壁はないと思っていますし、本当の壁というのは違うところにあるのではないかと考えております。この点については後ほど質問をしたいと思いますが。

 与党税制改正大綱の中でも、配偶者控除それから配偶者特別控除の見直しが個人の所得課税改革の第一弾である、そして今後も改革を継続していく。それから、さらに税制、社会保障、労働政策等の面でも総合的な取り組みを進める必要があるんですが、個人所得課税においては、所得再配分機能の回復を図ることが重要であって、各種控除等の総合的な見直しを丁寧にしていくとあります。

 我が自民党の宮沢洋一税調会長が執筆されました税務の専門誌の記事を拝読してまいりましたら、所得税改革議論については、平成二十九年度が改正一年目というふうに示されておりました。

 そこで、税務当局に、お考えの今後のスケジュール感、さらに抜本改革の内容、そして、可能であれば、その改革を終えた後の姿、御教示をいただけませんでしょうか。

大塚副大臣 今般の税制改正、昨年、与党でずっと議論しております際、当初、夫婦控除の話、政務官のころからずっと議論があることだと思います。夫婦控除というようなこともあったわけですけれども、結局、最終的な形としては、配偶者控除の基準額の見直しという形になっているところであるわけでございますけれども、就業調整をめぐるいろいろな課題に対応する、こういう観点で、そういう議論がなされたところであるわけでございます。

 百三万円の壁というのは実際にはないという御指摘もありましたけれども、私どももそう思っております。ただ、百三万円というのは一つの基準になってしまっている、民間、後ほど御質問があるということですけれども、そういう側面もあるというふうにも思いまして、この百三万円の壁というのはもう明確にないという状況をつくったわけでございますけれども、その上で、今後、数年かけて個人所得課税改革に取り組んでいくということとしているわけでございます。

 具体的には、二十九年度の与党税制改正大綱において、所得再分配機能の回復の観点から、基礎控除など人的控除等における控除方式の見直し、多様な働き方を踏まえた所得の種類に応じた控除と人的控除のあり方の見直し、老後の生活に備えるための自助努力を支援するための私的年金、金融所得等にかかわる税制の見直しなどの改革の方向性が示されているわけでございます。

 最終的な見直しが全部終わった後の姿ということでございますが、これはもうまさにこれから何年かかけて、与党税調とも、いろいろ御指導もいただきながら、財政当局、税務当局としても検討していかなければならないわけでございまして、負担構造のあるべき姿ということを検討していくわけですけれども、まさに家族とか社会のあり方そのものにかかわることでございますので、さまざまな、所得再分配機能でありますとか就業調整、今回の見直しでどの程度改善されるかといったことも踏まえながら検討していくものというふうに考えております。

神田分科員 ありがとうございます。

 昨年の改正で、配偶者控除の線引きというものを百五十万というところに設定された結果、今また話題として上るのが、百五十万の壁ができるという方もおられるようでございます。

 そういう意見もある中、本当にこの壁という表現が正しいのか否か、用語の適切な運用というのもあるわけですが、壁というのは、もしその金額の上限が壁ということで言われるようなものであったとしたら、本来の壁というのは百五十万にあるのではなくて、本当の壁というのは、民間の会社におけるいわゆる手当の問題だと私は思っております。

 基準として、どうしても旧来の百三万というのを考え方の基準に置かれている法人ないしはパートの皆さんが多いということなので、いまだに百三万の壁があるかに見える、そんなものが具体的事象として見受けられるのではないでしょうか。

 そこで、引き続いてお伺いしたいのですが、今回の配偶者控除の改定それから所得税改革を通じて、民間企業による配偶者手当の壁の解消、これには対応をしておられますでしょうか。見解をお聞かせ願えればと存じます。

大塚副大臣 まさに御指摘のとおりというふうに思っておりまして、私ども、百三万円という基準自体が、今までの控除の水準自体が壁になっていたというよりも、それをもとに、民間企業の皆様などが社内のさまざまな制度をつくるときの基準にしてきたというところの効果が非常に大きいと思っているわけでございます。

 そうした意味で、就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築というのは税制だけで達成できないとも思っているわけでございまして、そうしたさまざまな、社会保障制度などもございますけれども、さまざまなものを一つ一つ丁寧に解きほぐしていくことが重要だと考えております。

 具体的に、民間企業の配偶者手当につきましては、一月二十五日、経済財政諮問会議におきまして、総理と私どもの麻生大臣から、経済界に対してお願いをさせていただいたところでございまして、それに対して、経団連の榊原会長からも、今回の税制改正を好機として、見直しに向けた検討を早期に広げていきたいという旨の御発言をいただいたところでございます。

 このように、官民合わせたというか、このような就業調整の社会的な構造の改革ということがまさに動き始めたわけでございますので、今後も、民間の動向もいろいろ注視をしながら、必要なところはお願いをさせていただきながら取り組んでいきたいというふうに考えております。

神田分科員 ありがとうございます。

 ちょうど昨日の日経新聞の報道であったかと思いますが、大手食品会社の味の素ホールディングスでしたが、手当の全面見直しを行うということが大きく取り上げられておりました。

 専業主婦の方を前提としてつくられた配偶者手当、これは、働き方の多様化とともに、その手当が現実の社会情勢に合わなくなってきたと判断することが適当なのではないかと思いますし、また、そういった意味の企業側の諸手当、例えば、工場の夜間勤務手当とか本当にさまざま、呼び出し手当とか、それから営業担当者向けには早朝手当とか被服手当とか、さらには四季のある国日本では寒冷地手当なんというのも見受けられるわけで、そういったものを見直した上で、子育てや介護支援の新しい手当の創設と基本給の一万円アップを決定したんだというふうに報じられております。

 基本給が上がることですから、会社にとっては固定費負担増となりますが、さまざまな働き方の選択ということになりますし、障壁としての手当から、やはりインセンティブとしての手当、さらには働く人を支える手当という意味で、この味の素ホールディングスさんの改革というのは画期的ではなかったのかというふうに感じております。

 これは、経営資源である体力があるから、大きな会社だからできるというのではなくて、今後は、中小企業も含めてさまざまな選択肢をとることができるように、これからの所得税改革の中で行っていただきたいというふうに考えておるわけでございます。

 次の質問に参ります。

 税目がちょっと変わるんですが、次に消費税でございます。

 消費税の軽減税率導入に伴って、インボイスが導入される。これは、平成二十九年四月に予定されておりました消費税率の引き上げと軽減税率の導入が三十カ月余り延長されて、三十一年十月からとなりました。時間的にはまだ一定の時間があるわけですが、軽減税率の実際の導入というのは、やはり消費税施行後初めての制度でございますし、民間企業が行わなくてはいけない設備投資等の準備期間を考えますと、一年半程度は必要でないかと考えております。

 逆算いたしますと、平成三十年の四月には、当局から法令それから通達、さらには事業者に対するQアンドA等々、ある程度骨格が固まっていなくてはならないと思うわけであります。そうなりますと、ことしの末に行われる与党の税制改正議論の中での話を始めなければ間に合わないと考えております。

 現行制度のたてつけですと、平成三十五年十月にはインボイス制度の導入も始まりますので、民間企業にとっては再度の設備投資を行わなくてはならなくなるわけで、大手だったらまた二度の対応ということも可能なのかもしれませんが、いずれにしても、経費という部分での増大ということ、設備投資が二度も行われるということはできたら避けたいわけで、一度で終わらせたいという思いが経営する側の考え方だと思いますし、そういう思いもやはり理解できるわけです。

 そういたしますと、インボイス制度の骨格、法令や通達、QアンドA等が、こちらも早期に検討される必要があるのではないか。

 そこで、主税局にお伺いしたいのですが、インボイス制度の検討についてはどのような段階に至っておりますでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のインボイス制度でございますけれども、消費税率一〇%の引き上げ、軽減税率の実施が平成三十一年十月になりましたので、御指摘のとおり、その四年後ということで、平成三十五年十月からインボイス制度の導入ということになっております。

 その具体的な制度設計でございますけれども、法律部分は既に公布されておりますし、政省令事項につきましても、二十八年度の税制改正の大綱において、可能な限り、相当程度明確にさせていただいております。

 その上で、現在、具体的な政省令事項、具体的には適格請求書の交付義務を免除する取引の詳細でありますとか、事業者の登録制度の詳細等について鋭意検討を進めております。適格請求書等保存方式は、幅広い事業者の方の実務に影響を与えますので、よくお話を聞いて丁寧に検討する必要があると考えております。

 同時に、今先生がおっしゃいましたように、平成三十一年十月に軽減税率制度のシステム対応等をするわけでございますので、その際に、その後のインボイス制度への対応も済ませたい、要するに二重投資は防ぎたいという御意見もあるということは承知しております。それはごもっともな御指摘だとも思います。

 我々も、そうした御意見も踏まえながら、また引き続き、丁寧に関係の方のお話も聞いて、余り遅過ぎないようなタイミングできちんと政省令を公布できるように、しっかり作業に取り組んでいきたいと思っております。

神田分科員 今、井上審議官にお答えいただきましたように、ぜひ事業者、納税者のことを考えて、先手先手で御検討いただいて、納税者の利便性に配慮した形の税制改正を進めていただきますよう、改めてお願い申し上げるところでございます。

 それで、消費税を減免されている事業者、免税業者というふうに私たちは呼ぶわけですが、審議官も言われました、このインボイスの手続が大変煩雑であると言われております。

 ここで一番、先ほど適格請求書という話も出たんですが、事務手続という部分で制度導入のコストに耐え切れない、それから、さらには取引から排除されてしまうのではないかという心配等も小規模事業者から聞いておるわけでございます。

 こうした免税事業者への配慮はどのようになっておるのか、御答弁いただけますでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 先生のおっしゃったような免税事業者の取引の排除、それから導入コストの問題、御懸念があることは承知しております。

 しかしながら、例えば、納入先の事業者の方が簡易課税を適用している場合でございますと、仕入れ税額を積み上げて計算する必要がありませんので、適格請求書の保存も要しないということから、免税事業者の方が取引から排除されることはないということだと思います。

 それから一方で、事業コスト、事務コストでございますけれども、免税事業者の方が課税事業者に転換する場合には、今度は逆に、簡易課税の利用によって事務負担の軽減ということも可能だとは思っております。

 まずは、こうした事情をよく御理解いただくということで、インボイス方式を含む諸制度について、しっかり周知徹底を図りたいと思っております。

 その上ででございますけれども、免税事業者の方が課税事業者への転換の要否を見きわめながらしっかりと準備できるように、適格請求書等保存方式の導入、平成三十五年十月にまずは、繰り返しになりますけれども、四年間の準備期間を設けるとともに、その導入から六年間、仕入れ税額控除、免税事業者からの仕入れについて一定の控除を認めるということにさせていただいております。

 こうしたことをあわせ行いながら、円滑な導入に向けて万全の対応を行ってまいりたいと考えております。

神田分科員 ありがとうございます。

 やはり地域を支えるのはこういった中小の事業者、本当に、くくりとしては中小事業者と呼ぶわけですけれども、実際は零細で、お父ちゃん、お母ちゃんの会社というのが本当に多いわけですから、こういうところにぜひ配慮をお願いしたいと思います。

 時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきますが、御多用の中、皆様に御答弁いただき、大変ありがとうございました。

葉梨主査 これにて神田憲次君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。岸田外務大臣。

岸田国務大臣 平成二十九年度外務省所管予算案について概要を説明いたします。

 平成二十九年度一般会計予算案において、外務省は六千九百二十六億千七百五十万五千円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、約三%の減額となっております。

 このうち外務省所管のODA予算は、四千三百四十三億二千九百一万九千円となっており、七年連続の増額となっております。

 平成二十九年度予算案の作成に当たっては、国際協調主義に基づく積極的平和主義を具体的に実践する外交を引き続き展開していくとの考えのもと、国際的な取り組みや議論を主導するべく、一層積極的な外交を展開するため、以下申し上げる四本の柱を掲げ、めり張りをつけた上で必要な予算を計上いたしました。

 第一の柱は、テロその他の脅威から在外邦人や国内を守る安全対策です。ダッカ襲撃テロ事件等を踏まえ、在外邦人の安全対策強化や水際対策強化のための施策を強力に推進していきます。

 第二の柱は、不透明性を増す国際情勢への対応です。平和構築・平和維持、人間の安全保障の推進、保健、女性分野、気候変動・地球環境問題、軍縮・不拡散といったグローバルな課題に積極的に取り組みます。

 第三の柱は、地方を含む日本経済を後押しするための外交努力です。日本企業の海外展開支援や、地方を含む日本の魅力、強みの売り込みを強化し、日本に有利な国際経済環境づくりを進めることにより、名目GDP六百兆円の達成に寄与します。

 第四の柱は、戦略的対外発信です。引き続き、日本の正しい姿の発信、日本の多様な魅力のさらなる発信、親日派、知日派の育成を強化し、国際社会における我が国の影響力を高めてまいります。

 また、これらの諸課題を実現するために、主要国並みを目指した外交実施体制の強化と、国益に資するODAのさらなる拡充に取り組みます。外交実施体制については、主要国並みの体制の実現を目指し、在外公館三公館の新設と定員八十三名の純増を含めた必要経費を計上しております。

 ODAについては、開発協力大綱のもとで、国益に資する開発協力を一層戦略的に実施していきます。

 以上が、平成二十九年度外務省所管予算案の概要でございます。

 葉梨主査を初め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付しております印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

葉梨主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま岸田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤英道君。

佐藤(英)分科員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 きょうは、日ロ共同経済活動並びに我が国の外交方針についてお伺いをさせていただきます。

 通告とは逆になりますけれども、初めに、我が国の外交方針についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 二〇一二年の自公政権の復活から、はや四年が過ぎました。この間、安倍総理のリーダーシップのもと、また岸田外務大臣の精力的な活動のもと、経済成長とともに外交における進展も数多く見られるところでございます。

 特に、過日行われました日米首脳会談の評価、世論は七割弱が支持を表明したところでありますけれども、何よりも、米国という同盟国、重要なパートナーである国の大統領と円滑なコミュニケーションがとれる環境が確認できた点は大いに評価されるものと思います。

 しかし、一方で、北朝鮮の問題もあります。中国や韓国など、隣国との関係性も楽観するのは難しい。我が国の外交は厳しい局面が続くと思われます。

 アメリカン・ファースト、英国のEU離脱など、自国第一主義が堂々と主張されるのも現在の風潮でしょうか。しかし、核やミサイル、テロ、持続可能な開発、気候変動など、世界と日本を取り巻く国際環境は、決して一国平和主義や自国第一主義で乗り切れるほど単純なものではないと考えます。自国第一を国益と言いかえるならば、我が国にとっても国益は重要であります。

 しかし、同時に、国際協調や世界各国との融和という側面が極めて重要であることは言うまでもありません。極端な国益の主張は、分断にもつながります。我が国は、国益を主張するとともに、世界が相互に繁栄を享受する方向性を模索する道も主張し続けていくべきであります。

 我が国の外交の大きな方針が安定的な平和主義、国際協調主義にあることを再度確認する意味からも、こうした視点での取り組みについて、岸田外務大臣の今後への決意をお伺いさせていただきたいと思います。

    〔主査退席、黄川田(仁)主査代理着席〕

岸田国務大臣 まず、委員の方から厳しい安全保障環境についての御指摘がありました。

 今、どの国であっても、たとえ米国であっても、一国のみでみずからの国を守ることができない、これが国際的な安全保障環境における常識になりつつあります。

 我が国自身、我が国そして我が国周辺の安全保障環境をしっかりと安定させていかなければならないと思いますが、あわせて、国際社会全体の平和と安定、これも考えていかなければ我が国の国民の命や暮らしは守っていけない、こういった基本的な考え方が大事であると思います。国際協調主義に基づく積極的平和主義の取り組み、これは国際社会からも評価されていると思っています。

 そして、保護主義や内向きの傾向が強まっているということ、これは御指摘のとおりだと思います。こういった中であるからこそ、日本は引き続き、国際社会における安定勢力としてしっかり議論をリードしていかなければならない、このように思っています。

 国益、もちろん大事だという御指摘がありました。国益をしっかり守ること、これはもちろん私も大事だと思いますが、あわせて、防災ですとか環境ですとか、こうしたグローバルな課題に汗をかいてこそ、日本の存在感や発言力も確保できる。この両方が大事だということも強く感じるところであります。

 また、日米関係についても御指摘がありました。日本の外交の基軸として、日米同盟、しっかり深化、強化していかなければならないということで、先日も米国の新任のティラーソン国務長官と会談をさせていただきましたが、日米同盟の重要性、そして厳しい安全保障環境に対する認識の共有、こういったことをしっかり確認した次第であります。

 引き続き、今申し上げました方針で外交において努力をしていきたいと考えます。

佐藤(英)分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、日ロ共同経済活動について随時お伺いしてまいりたいと思います。

 昨年末の日ロ首脳会談では、平和条約締結への第一歩とも言える共同経済活動の交渉開始が決まるなど、大きな成果を上げられたと思います。二月七日には日本側の関係省庁協議会が設置され、いよいよ来月からは公式協議が始まります。

 ぜひとも迅速な進展を望みたいと考えておりますけれども、来月の公式協議開始、さらには四月とも言われる総理大臣の訪ロに向けて、現在の検討状況、また大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 現在の検討状況、そして決意について御質問いただきましたが、昨年十二月の日ロ首脳会談の成果の一つであります北方四島における特別な制度のもとでの共同経済活動、これは、戦後七十年以上たって初めて北方四島において日本人とロシア人がともに経済活動を行うということを目指すものであり、平和条約締結交渉において大きなプラスになるものであると考えています。

 ぜひ、お互いの法的立場を損なわないということを前提にしながら、新しい仕組みにしっかりと取り組んでいかなければならない、このように思っています。

 この点については、十七日に行われましたボンにおける日ロ外相会合においても一致をしたところであり、三月十八日には次官級の公式協議も行うことを確認しております。そして、国内においては、共同経済活動関連協議会ということで、関係省庁による協議をスタートさせています。

 ぜひ、こうした取り組みを通じて、この共同経済活動を初めとする日ロ首脳会談での成果、これを具体的に前進させていきたいと私も強く思っておるところでございます。

佐藤(英)分科員 私は、元島民の方が多く住まれている北海道に住んでおりますので、ぜひ、今後の交渉の行方を大いに期待しておるところでございます。

 今月七日、関係省庁協議会の初会合が開かれましたが、席上、外務大臣御自身も、スピード感を持って具体的な成果を出していく、できることから成功例を重ねると述べられました。私は、できることからという考えに大いに賛同いたします。

 このお言葉の背景には、まずは海域での活動が比較的条件整備しやすいのではないかという感も抱いたところであります。共同声明の中でも、漁業や海面養殖、環境といった分野の具体的な明示もございました。

 そこで、私は、以前にも国会で取り上げさせていただいたのでございますけれども、現在の知床の世界遺産を北方四島、さらには得撫島にまで拡張し、世界にもまれな生態系を持つこの地域の共同研究や保護活動事業を大胆に見直し、日ロ平和公園構想とも呼ぶべきこの構想の実現について大いに期待をしているところでございます。

 世界遺産条約は、紛争当事国の権利に影響をもたらさないとしております。主権を害するおそれもないと思いますけれども、いかがでしょうか。

 海域を中心に、できることから段階的にどんどん進めていくという点、そして世界自然遺産、日ロ平和公園構想についての御見解をお伺いしたいと思います。

相木政府参考人 お答えを申し上げます。

 北方四島における共同経済活動につきましては、二月七日に開催をされました共同経済活動関連協議会の中で岸田大臣から申し上げたとおり、漁業、海面養殖、観光、医療、環境その他の分野での共同経済活動につきまして、日本とロシアの双方に経済的に意義あるプロジェクトを早急に検討するべく、スピード感を持って具体的成果を出していくこと、四島に関する日本の法的立場を害することなく、できることから成功例を積み重ねていくことが重要であると考えている次第でございます。

 現時点で、御指摘の点を含めまして、具体的なアイデアの一つ一つについてその是非を述べることはまだ時期尚早であろうかというふうに思いますけれども、漁業分野につきましては、御指摘のとおり、四島周辺水域において日本の漁業者が安定的に操業できるよう、日ロ二国間の協定のもとで長年にわたる協力の積み重ねがございます。

 また、世界遺産、自然保護といった点についても御指摘がございましたが、環境分野につきましては、政府といたしましても、北方四島に存在する豊かな自然環境の保全の重要性は認識をしておるところでございます。このような観点から、四島交流の枠組みを使った専門家交流を含めまして、この地域での生態系保全協力を実施してきているところでございます。

 こうした協力の経験も踏まえまして、北方四島に関する我が国の立場を損なわない新しい仕組みとしてどのようなことが可能か、しっかりと検討し、交渉を進めていきたいと考えている次第でございます。

佐藤(英)分科員 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 私は、今の自然のお話もさせていただきましたけれども、こうした共通の自然環境のもとで育まれた人類の歴史や文化もあろうかなと考えているところであります。

 例えば、北海道にございます、北海道東部の窪みで残る大規模竪穴住居群と呼称されるオホーツクからアイヌ文化を中心とした文化遺産と、北方四島に存在する遺跡群を含めて、複合遺産にしてはどうかという構想もございます。

 日本とロシアが共同でユネスコ世界複合遺産の登録を進め、人事交流や観光振興などの共同作業を推進することによって、日ロ両国における信頼感を醸成し、土台の安定した日ロ関係を構築することも極めて私は重要と考えておりますので、ぜひ今後の検討課題に入れていただきますよう、お願いをしたいと思います。

 引き続き、共同経済活動にかかわる隣接地域振興の観点でお伺いをしてまいりたいと思います。

 北方領土の隣接地域は、かつて水産業で大いに振興していたところでございます。今後、共同経済活動が進めば、その先に再び制約のない操業が可能となるのではとの期待も非常に高いのも事実であります。

 また、観光の面におきましては、例えば知床を訪問した観光客を地元のクルーズ船で四島の観光に送り出すということができれば、確実に隣接地域の振興にもつながるのではないかと思います。他の地域から、自分の地域の港から観光客が四島の観光に行けるようにしたいという考えも示されるかもしれませんけれども、まずは四島と一体的に隣接地域の振興が図れることが重要と考えます。

 共同経済活動が進んで四島が発展していく中で、島から強制移住させられ、長年苦労を耐え忍んでこられた隣接地域の方々が置き去りになるようなことは絶対に避けなければならないと思います。

 共同経済活動が具体的に進捗する中で、同時に隣接地域の振興をいかに図っていくかという観点の重要性について、御見解を伺いたいと思います。

    〔黄川田(仁)主査代理退席、主査着席〕

相木政府参考人 お答え申し上げます。

 北方四島における共同経済活動につきましては、北海道、特に北方領土隣接地域におきましてもさまざまなアイデアが検討されていると承知をしております。

 今後、共同経済活動に関する検討やロシアとの協議を行うに当たりましては、そうした地元のニーズ、あるいは元島民の方々の御意見、北方領土の地理的環境などを踏まえまして、四島に対する我が国の法的立場を害さないことを大前提といたしまして、具体的なプロジェクトを発掘していくことが重要であるというふうに考えております。

 北方領土隣接地域の振興という観点につきましても、このような観点からも関係省庁とよく連携をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

佐藤(英)分科員 昨年末、日ロ首脳会談に、元島民の方々を初め、平和条約締結、北方領土返還への期待はかつてないほど膨らんだ。結果として、両国の協力関係において、官民合わせて八十件以上の成果文書が交わされるなど大きな進展が見られ、国民の七割が支持するものとなりました。

 この首脳会談の成果の中で私が特に評価したいのは、一つは何といっても共同経済活動、それと並んでもう一つは元島民の墓参事業であります。参加者が高齢であることを考慮した改善の必要性で合意できた点を特に評価したいと思います。

 この墓参事業の改善について、現在は全参加者が国後に立ち寄って行っている一時的通過点の追加設置、手続のさらなる簡素化についても改善が見込まれますけれども、現在の検討状況もお伺いさせていただきたいと思います。

 あわせて、高齢化が進む中で船による渡航が極めて厳しい現状となっていることを踏まえまして、航空機による墓参事業の早期実現、さらには、その際の費用支弁をこれまでどおり無料としていただくよう、強く要望をさせていただきたいと思います。

 御見解を伺います。

相木政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月の日ロ首脳会談におきましては、北方四島の元島民の方々が御高齢となられていることを考慮いたしまして、現行の枠組みによる訪問手続を改善することで一致をしたところでございます。

 これを踏まえまして、四島訪問におきます元島民の方々の負担軽減につながるような手続の改善を不断に目指していく考えでございます。その実現に向けて、先般のボンにおきます日ロ外相会談においても議論がなされたところでございます。

 具体的には、四島を訪問する際に出入域を行う地点を訪問先の島に応じて複数設けることによりまして移動に伴う負担を軽減することでございますとか、手続のさらなる簡素化を含めまして、あり得べき案を迅速に検討してまいるところでございます。

 墓参を含めまして元島民の方々による四島への訪問の具体的な時期や態様につきましては、ロシア側と調整を要するものでございまして、現時点では決まっておりませんけれども、航空機の利用につきましても元島民の方々の要望に含まれていることを承知してございます。それを踏まえまして、あり得べき案を迅速に検討してまいりたいというふうに思いますし、元島民の方々の負担の軽減につながるような改善を不断に目指してまいりたいというふうに考えております。

佐藤(英)分科員 千島歯舞諸島居住者連盟の方々とも懇談する機会がよくございます。本当に、この墓参事業、そしてまた、さまざまな手続の簡略化というのはやはり喫緊の課題であると思います。私の方からも切にお願いをさせていただきたいと存じます。

 次に、北海道から四島への物資の輸送環境の整備についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 北海道は、質量ともに農業王国と呼ぶにふさわしい地域であります。ロシアに対しては農業技術の支援も行っております。自給率は二〇〇%を超え、日本全国の食を支えているところでもございます。ジャガイモやトウモロコシだけではなく、最近は米や麦においても国内をリードする強さを獲得もしているところでございます。

 一方で、四島に現在暮らす一万七千人のロシア人の方々の生活物資などは、その大半がサハリンから輸送されているというふうに伺っているところでございます。

 サハリンから最も近い択捉島までは直線で七百二十キロ。一方、根室から択捉の最も遠い反対側ですら三百五十キロ。歯舞群島に至ってはわずか二十キロほどでございます。わざわざ遠いサハリンから運ぶよりも、北海道の安価で良質な農作物を初めとした物資が円滑に輸送できるような環境整備も必要と考えますが、御見解を伺いたいと思います。

相木政府参考人 お答えを申し上げます。

 現時点では、御指摘の点を含めまして、具体的なアイデアの一つ一つについてその是非を述べることについてはいまだ時期尚早であるというふうに思いますけれども、いずれにせよ、具体的なプロジェクトの検討に当たりましては、委員の地元であります北海道、また北方領土隣接地域のニーズ、元島民の方々の御意見などをしっかりと踏まえて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

 いずれにせよ、我が国の法的立場を害さないような形で何ができるか、よく考えてまいりたいというふうに思っております。

佐藤(英)分科員 ぜひ最後に、日ロ平和条約の早期締結について、岸田大臣に御所見を伺いたいと思います。

 本当に、きょうの質疑を通しまして、全ての課題の整理には多大な時間を要するのではないかと言われたりもするのでありますけれども、やはり、そうした中で、領土問題の解決に向けて一歩でも進展しているということを見せるということも私は極めて重要ではないかなと思います。

 全ての条件がそろわなくても、比較的条件が整備しやすいと思われる海域での共同活動から先行して進めていくという段階論も必要であると考えます。

 また、共同経済活動につきましても、日本とロシア、両国にとってウイン・ウインの関係になるということも重要であると考えます。こうした共同経済活動を進めるに当たっても、隣接地域の振興もぜひあわせて御検討していただければと思います。

 ちょっと通告はしておりませんけれども、本当に、岸田外務大臣のこの日ロ平和条約にかける思い、並々ならぬ思いを私も感じます。ぜひ最後に、思いを、御決意を語っていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。

岸田国務大臣 日ロ間における平和条約締結交渉、これは日本の戦後外交における最大の課題の一つであると認識をしています。

 戦後七十一年たってもなおかつ隣国同士平和条約を結んでいないという、この異常な状況について何とか打開しなければならない、これは両国の首脳間で一致をしておるところです。そうしたことで取り組みを進め、昨年五月、両国首脳で新しいアプローチというものを確認し、協議を進めてきました。

 そして、昨年十二月のプーチン大統領訪日における首脳会談において、先ほど来議論の中に出ておりますような四島における共同経済活動を初めとするさまざまな内容において一致をし、両国首脳の真摯な決意を確認したところであります。ぜひその決意をしっかりフォローアップしていかなければならないと強く感じております。

 先日二月十七日、ドイツのボンにおきまして、ラブロフ外相と日ロ外相会談を行いました。ぜひこの両国首脳間の真摯な決意をしっかりフォローアップするために外相間でもしっかり連携をしていかなければならない、こういったことを確認したわけですが、続きまして、三月十八日には両国の次官級の協議が予定されています。また、総理自身も、ことし早い時期にこのフォローをしたいということを意向として示しておられるわけであります。

 ぜひ、さまざまなレベルを通じて、戦後日本の外交における最大の課題の一つである平和条約交渉、北方四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結する、この基本方針のもとに、しっかりと前進をさせていきたいと強く思っております。

 そして、こうした取り組みを進めるためにも、外交を進めるためにも、多くの国民の皆さんにこうした取り組みに対する理解をいただき、後押しをしていただく、こういったことも大事なのではないかと思います。ぜひ、こうした課題への取り組みの意味、そして政府の姿勢について国民の皆さんにも丁寧に説明をしていただきながら、国民の皆さんに御理解をいただき、後押しをしていただける、こういった外交の進め方を続けていきたいと考えております。

佐藤(英)分科員 並々ならぬ御決意を伺いました。

 岸田大臣の大いなるリーダーシップを御期待申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて佐藤英道君の質疑は終了いたしました。

 次に、畠山和也君。

畠山分科員 日本共産党の畠山和也です。よろしくお願いいたします。

 私からもきょうは日ロの領土問題について中心に質問したいと思っておりますが、初めに、EUとのEPA交渉の現状について確認させてください。

 日本農業新聞ですが、二月十九日付では、「日欧EPA膠着」と見出しが打たれて、次のように書いてあります。「日本とEUは一月に首席交渉官会合を開いたが、双方の主張の開きが大きい自動車、農業分野双方で目立った進展はなかった。」と報じられています。EUからはチーズなどの乳製品、また豚肉、木材、ワインなどでTPP以上の市場開放を要求されているとも報じられています。これはもうもちろん多くの農家から心配の声が聞かれるのも当然だと思います。

 そこで、岸田大臣に、まず、EUとのEPA交渉の現状について、どうなっているか伺います。

岸田国務大臣 日本とEUとの間のEPA交渉ですが、できる限り早期に大枠合意を目指す、この方針のもとに、引き続き議論、協議を続けております。

 先日、二月十七日ですが、EUの経済貿易担当のマルムストローム委員ともワーキングランチを開催し、意見交換をさせていただきました。国際社会において保護主義の台頭、内向きな傾向が強まっているときだからこそ、この日・EU・EPAについて、しっかりと早期の大枠合意に向けて努力を続けていくことが大事であるということを確認した次第であります。

 委員御指摘のように、日本とEUの間においては、それぞれセンシティビティーもありますし、それぞれの国内事情等もあるわけでありますが、しかし、引き続き協議を強い意思を持って行っていく、モメンタムをしっかり維持していかなければいけない、こういったことについては確認をさせていただきました。

 そういうことですので、引き続き、日・EU・EPA、日本とEUの間における最大の、最重要の課題であるという認識のもとに協議を進めていきたいと考えております。

畠山分科員 意義や重要性については、いつも農水委員会の方でもあるたびに、関係するところから出されるんですが、やはり中身について、関係する業界、農家などは心配をされているわけです。

 TPP交渉の際には秘密保持義務がかかっていたというふうに答弁などはされていました。結果が出てくるまで中身がわからずに、その後の審議でも、交渉過程はつまびらかにできないというような答弁が昨年の特別委員会でもされていて、これでは国会で検証もできないではないかということは野党の側から繰り返し指摘もありました。

 それで、今回のEUとのEPA交渉においても同じことがあるのかという点でも非常に懸念の声があります。

 確認ですが、今回のEUとの交渉において、TPPのような秘密保持の取り決めがあるのかないのか、まず、事実の点として確認したいと思います。

岸田国務大臣 事実関係だけ端的にお答えするならば、日・EU・EPAにおいては、TPP交渉のときのように秘密保持について特別の約束というものを交わしたということはございません。通常のこうした条約交渉における基本的な考え方に基づいて秘密保持についても取り扱っていかなければならない、このように思っております。

畠山分科員 外交に一定の秘密が必要だということでありますが、これまで日本はマレーシアとかフィリピンとか多くの国とEPA、FTAなどを結んできました。とりわけ、経済規模や国内への影響という点では日豪のEPAが非常に大きなものだったと思うんですが、当時の議論を振り返りますと、農林水産委員会などでも決議が上げられて、農産物を中心としたセンシティブな品目にかかわっては一定でも質問には答えようという形で、農業者を含めた方々への、懸念を払拭する態度の御答弁などもあったように思います。

 それで、今なんですけれども、もちろんEUとのEPAにおいてはさらなる影響の大きさということが心配されているわけでありまして、こういう点で、秘密という形でTPPから引き継がれるようなイメージをやはり多くの方々は受けております。

 それじゃ、何がこれまでと、今までと違うのか。これまでも一定、センシティブな問題でもお答えいただくというような態度があったかに思いますが、どこまで秘密にしているのか、違いがあるのかないのか、改めてその点についての岸田大臣の答弁を求めます。

岸田国務大臣 条約交渉においては、一般的な態度としまして、条約交渉の結果については、もちろん、当然のことながら国民の皆さんに明らかにし、しっかり説明をしていかなければなりません。しかし、条約交渉の経過については、しっかりとした慎重な取り扱いをしていかなければならない、これが基本的な考え方です。

 交渉の経過につきましては、まず相手方との信頼関係があるわけですが、加えて、こうした条約交渉の経過を明らかにするということになりますと、経済連携交渉を初めとする同様の交渉を他の国と行う際に、日本の最大の関心事は何なのかとか、日本の手のうちを明らかにすることにつながってしまいますので、一つ一つの条約交渉の経過を明らかにするということは国益にもかかわることであります。そして、これは日本のみならず相手方にとっても同じ立場ですので、お互い国益がかかっていますので、信頼関係のもとに、交渉経過については明らかにすることは慎重でなければならない、これが基本的な態度であります。

 ですから、今回の日・EU・EPAにおいても、今申し上げました相手との信頼関係そして国益との関係において、交渉経過については、明らかにすることはできるだけ慎重でなければならないということは御理解いただきたいと思います。

 ただ、一方で、日・EU・EPAについては多くの国民の皆さんから大きな関心を持って見られている、これは事実でありますので、今申し上げました条件の中にあっても、最大限説明努力は政府として行っていかなければならない、このことは政府としてもしっかり考えておかなければならないとは思っています。

畠山分科員 お聞きしたいことは、なぜこのようにEUとの交渉で今回まだ不安が広がっているかというと、日本政府の側の基本姿勢にあるのでないかと私は思っているんです。

 というのは、安倍首相みずからが、今後の通商政策においてはTPPをスタンダードにするということを述べられてきたことが根本にあるのではないかと思っています。御存じのように、もちろんTPPというのは原則は関税撤廃でありますし、非関税障壁においても、さまざまな、食の安全、保険などについての懸念を委員会などで私も指摘をしてきました。ISDSのように一国の主権が脅かされるかもしれない中身についてはEUからも、強い反発が市民からもあると報じられてもいます。だから不安の声が今回においてはさらに強まっているんだと私は思うんですね。

 そこで、EUとの関係で最後に確認したいのは、先ほど、総理が述べたようにTPPが今後の通商政策のスタンダードだと言っていたことは、今回の交渉においてもそれが同じ基本姿勢として進められているのかどうか、最後に確認したいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の総理答弁のように、TPPにおいて得られた成果というのは今後の我が国の経済連携交渉の一つのモデルになると思っていますし、また、二十一世紀型の経済連携のスタンダードになる、こうした認識は持っております。

 ただ、経済連携交渉は、それぞれ相手によってセンシティビティーは異なります、それから関心分野も異なります。ですので、単純にこれを比較するということはなかなか難しいのではないかと思います。それぞれの条約交渉において、我が国の国益を最大限考えた上で全力で交渉に臨んでいく、こうしたことなのではないかと思います。

 日・EU・EPAにおいても、同様に、我が国の国益を最大のものにするようしっかりと努力をしていきたいと考えます。

畠山分科員 これは主張の範囲ですが、TPPのような経済主権や食料主権を脅かすような協定には賛同することはできません。何より、今、国民や、国会においてもさらなる説明を強く求めておきたいというふうに思います。

 日ロの交渉の話に進みます。

 G20のボン外相会合の場で、十七日、岸田大臣とロシアのラブロフ外相との会談が行われました。昨年の日ロ首脳会談を受けた後の外相会談ですので、当然注目すべき会談だと思っていました。

 それで、まずこれも事実としての確認ですが、その外相会合の場で、平和条約、領土問題でどのような話をラブロフ外相としたのかしなかったのか確認したいと思いますが、同時に、それにあわせて、とりわけクリミア問題で経済制裁中である中で、その点も含めてかかわった話し合いはどうだったのか、基本姿勢はどのようにして臨んだのかについて、まず伺います。

岸田国務大臣 先日、G20の外相会談の際に行われた日ロ外相会合ですが、昨年十二月の日ロ首脳会談において平和条約問題を解決するという両国首脳の真摯な決意が表明されたのを受けて、外相間でも緊密に話し合って、四島における共同経済活動と、また旧島民の皆さんの四島への往来、こうした協議についてしっかり進展を図っていく、こういったことで一致をいたしました。その上で、十八日にこの問題について次官級の協議を行う、これを両国で確認したということであります。

 そして、一方で、ウクライナ問題に関する制裁、そして我が国の立場についてですが、力による一方的な現状変更の試み、これは認められない、この方針、態度は全く変わっておりません。この方針に基づいてロシアともこの議論を行っているところでありますし、この問題につきましては引き続きG7の連帯をしっかり重視しながら対応を考えていきたい、このように考えております。

畠山分科員 共同経済活動はこの後話を進めたいと思いますが、やはりちょっと基本のことについて、二月三日の予算委員会でも私は総理に対して質問をしましたので、改めてこの場でも一言確認しておきたいと思うんです。

 結局、今回、首脳会談においてのプレス向け声明で、領土のことについては共同経済活動の文脈では出ているけれども、実際の返還に向けた記述がないのではないかということで、非常に落胆の声が上がりました。棚上げなのかという根強い声があります。

 このとき、二月三日ですが、予算委員会で、私がヤルタ協定という戦後処理の不公正を正す交渉姿勢で臨むべきだと主張したのに対し、岸田大臣も総理もですが、ヤルタ協定は当時の連合国の首脳で戦後処理方針を述べたにすぎない、当事国でない日本がヤルタ協定の内容と領土不拡大原則の関係を説明する立場にないとの答弁をされました。だから交渉では領土問題を正面から取り上げなかったのか、そういうふうに吐露したんじゃないかということを私は改めて受けとめたいと思うんです。

 長い交渉の歴史を肌で感じている元島民や根室の皆さんからすれば、今回の結果に落胆の声が上がるのも当然だと私は思いました。

 そこで、いろいろとレクチャーなども、外務省を含めて聞くんですが、改めて判然としないなと思うのが、総理の言う新しいアプローチというのが何なのか。これは地元の皆さんもよくわからないと言うんですよ。結局、領土との関係はどうなるのか、経済活動一辺倒にならないか、不安の声がたくさんあります。領土交渉の棚上げではないと言うのであるならば、改めて、どうやってその新しいアプローチが領土返還につながるものなのか、しっかりと御説明をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 北方領土問題そして平和条約締結交渉につきましては、戦後七十年以上にわたって両国で激しい議論を続けてきました。

 私も、二〇一三年の四月に初めて、ロシアのラブロフ外相と、ロンドンにおきまして日ロ外相会談に臨みました。昼食を挟んで、長時間にわたって北方領土問題そして平和条約問題について議論を行いましたが、実際、内容は、歴史的な解釈あるいは両国のこの問題における法的な立場、これについて延々と議論をするということでありました。

 その後、ウクライナ問題もありまして、この議論が一時期途絶えたわけでありますが、一昨年の九月に、また引き続きこの議論を始めようということを確認し、そして昨年の四月の段階で、我々、ラブロフ外相と私もそうですし、多くの先輩たちが戦後ずっとこの議論を続けてきましたが、歴史的な解釈あるいは法的な立場について議論を続けるということになりますと、私が日本の法的な立場や歴史的な解釈を幾ら説得してもラブロフ外相もわかりましたということにはなかなかならないでしょう、私自身も幾らあなたからこれを説得されても日本の立場は絶対譲ることはできません、これは当然のことですということを申し上げ、確かに両国の間には法的な立場の違い、歴史的な解釈の違いは存在するけれども、未来に向けて両国が受け入れられる、こうしたものを考えることはできないだろうか、こういったことを、去年の四月、日ロ外相間で話をしたわけであります。

 新しいアプローチということについては、具体的なことはまだ交渉の最中ですので申し上げることは今控えなければならないと思いますが、新しいアプローチは、その四月の外相会議の後、五月に両国の首脳間で確認したものであります。基本的には今申し上げましたような考え方に基づいて新しいアプローチというものを両国首脳間で確認したものであると考えております。

畠山分科員 予算委員会の際に、私が総理にぜひ根室へお越しくださいという要請をしたのは、やはりそういう中身を市民の皆さん、元島民の方々がきちんと聞きたいという思いを強く持たれているからです。

 原則については改めて今繰り返すことはしませんけれども、先日ですか、三つの無人島にロシア側が旧ソ連軍幹部などの名前をつけるということの発表もありまして、日本としては遺憾を表明したとも報じられています。こういうたびに改めて日本政府としては原則的で強い姿勢を示す必要はあるかと思いますが、根本的には戦後処理の不公正を正す外交姿勢の確立を改めて述べておきたいと思います。

 それで、共同経済活動について、後半、伺いたいと思います。

 七日、共同経済活動関連協議会が開催されました。岸田大臣を座長に、世耕担当大臣、野上内閣官房副長官らが出席して設置されたとのことです。

 この協議会の目的と意義について簡潔に、まずお示しください。

岸田国務大臣 二月七日に開催しました共同経済活動関連協議会ですが、これは、昨年十二月の日ロ首脳会談の結果を踏まえ、北方四島における共同活動を具体化していくために考え得るプロジェクトについて、外務大臣を座長として関係省庁と調整していく、このために設置されたものであります。

畠山分科員 共同経済活動で思い起こされるのが一九九八年のモスクワ宣言の後の取り組みであります。このときも、二〇〇〇年までに平和条約を締結することを目指して、国境画定に関する委員会と共同経済活動に関する委員会の設置が指示をされて、具体的な作業や議論が行われましたが、実を結びませんでした。

 現状においては、当時よりもさらに、先ほどからあるように、ロシア側の領土問題についてのかたい態度表明などもされてきて、なかなか主権の問題では今後の協議が難航することは予想されます。

 どのような態度で基本姿勢として臨まれるか、お答えください。

岸田国務大臣 こうした共同経済活動につきましては、委員御指摘のように、過去においてもさまざまな議論が行われてきました。その際に、やはりネックになりましたのは、それぞれの法的な立場を害するということになってしまっては基本的な立場自身が揺らいでしまいますので、これが一つのネックになってきたというふうに感じております。

 その部分にしっかり着目をした上で、今回、知恵を出そうではないかということで、両国首脳間で合意に至ったわけであります。国際約束など、さまざまな知恵を出すことによって、お互いの法的立場を害することなく共同経済活動を行うことを目指そうということになったわけであります。

 そのことによって初めて日本人とロシア人が北方四島において経済活動を行うことができるようになる、そのことによって両国の間の信頼関係が生まれてくる、あるいは、北方四島で暮らしておられるロシアの方々にとって日本に対する理解が進むなど、北方四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結するという我が国の方針にも大きなプラスになる、このように考えている次第であります。

畠山分科員 なかなか、歴史的にも議論などが進んできた中身ですから、言うはやすく行うはかたしの課題であろうというふうに私はもちろん思っております。

 そこで、現実的に、今根室市などを含めた現状を紹介しながら、一方で、目の前に迫っている、元島民の生活であったり根室市の経済をどうするかということが非常に深刻であることを最後に訴えたいと思うんです。

 島が返ってこないことで直接的な打撃を受けてきたのが水産業でありました。関連する製造業や流通業に打撃があって、とりわけ昨年はサケ・マスの流し網漁が禁止されたことによって、試験操業しましたが、たった四千四百二十キログラムでした。サケ・マスのみならず、二〇一六年の根室市の漁獲量は約六万七千トンで、前年比約八千トン減少、金額でも約二百二十四億円で、前年比三十一億円減少です。漁獲量の水準は、実は、一九五五年、昭和三十年以来の六十一年ぶりの低水準となって、そのために、魚が来なければ仕事にならない製造業、流通業にとっては、倒産や廃業を余儀なくされるおそれが出ています。

 ですから、こういう当面の対策と中長期の対策などと分けて考える必要もあります。

 水産庁に確認します。まず、当面の対策について端的に述べてください。

保科政府参考人 サケ・マスの流し網漁の禁止に伴う道東地域を中心とした関連産業への影響を最小限に抑えるために、平成二十八年度の補正予算におきまして緊急対策を講じたところでございまして、現地において十分活用をいただいていると考えております。来年度以降にも、必要に応じて既存の水産予算を活用して支援に努めることにしております。

 特に関係の漁業者からの要請の強い、ロシアの二百海里水域において禁止された流し網漁法にかわる新たな漁法の可能性の検討、それから、ロシア二百海里水域での五月から七月のサケ・マスの流し網の操業から、公海あるいは日本の二百海里水域でのサンマ、サバ、イワシ等の操業への転換の支援、これらにつきましては、これまでの実施状況を踏まえまして、必要な額を平成二十九年度の予算にも計上しているところでございます。

畠山分科員 当面は予算措置も含めてしっかりやるべきであることを改めて要望しておきたいと思います。

 共同経済活動においては、漁業において、安全操業などについて先例的にやってきた経験があるということを地元でもおっしゃっておられました。先に進めようとするとこういう経験があるのではないかという現場の知恵です。

 そこで、これも水産庁に確認しますが、例えば第一歩として共同資源調査などができないか、そういう点の可能性や課題はどのように考えていますか。

保科政府参考人 まず、先ほどのお答えの中で、補正予算の措置について、平成二十八年度と申し上げましたけれども、平成二十七年度の間違いです。訂正させていただきます。

 次に、水産資源調査でございますけれども、水産庁では、北太平洋に広く生息するサンマ等の資源評価を実施してきておりまして、来年度は、我が国同様サンマ等の資源の沿岸漁業国であるロシアと共同で、公海でですけれども、資源調査を実施することにしております。両国の研究者の知見を活用しまして、サンマ等の資源評価の精度向上を図ってまいりたいと考えております。

 このような共同調査をさらに拡大していくということですけれども、そのような場合には、これまでの調査の結果ですとか、あるいは今後の調査の必要性を踏まえて、ロシア側と協議しつつ検討していく必要があると考えております。

 なお、北方四島における共同調査、共同経済活動については、我が国の法的立場を害さないことが前提であると承知しておりまして、こうした立場を確保しながら検討していく必要があると考えております。

畠山分科員 こういう地域経済や水産業の状態が今何を招いているかといいますと、地域経済が回らないものですから、地元企業も雇用がぎりぎりなんですね。ですから、昔のように返還運動を企業も後押しして東京の集会なんかに送り出すということができなくなってきているんだそうですよ。したがって、そもそも若い人の雇用が減ってきているわけですから運動の後継者も減っていくということを聞きまして、本当に深刻だなと改めて思いました。

 そこで、最後に問いたいのが北方基金の問題です。

 隣接地域の振興事業や啓発事業などを行ってきましたが、利率の低下で運用益が大きく減ってきています。運用益の最高時がいつで何億円、そして直近がどうなっているかの事実だけ、内閣府の方に確認します。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 運用益の最高額は、平成三年度における五億九千百万円であります。

 平成二十八年度の見込み額は一億五千五百万円となっております。

畠山分科員 実に四分の一まで減ってしまっているわけです。これを、隣接地域の一市四町で一億五千万円を分けてもどれだけの振興策ができるかということになります。具体的に先ほどのような全国キャラバンを展開するにしても、十分な日当も出ない、手弁当状態だというふうに聞きました。

 そこで、最後に岸田大臣に伺います。

 北特法においても、主務大臣として外務大臣の名前が挙げられております。総理や国交大臣もおりますが、財政問題については、新たな枠組みも視野に入れた安定的な財源対策が必要だと思いますが、最後に答弁を求めます。

葉梨主査 岸田外務大臣。

 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

岸田国務大臣 先ほど来議論に出ておりますように、国内においては共同経済活動関連協議会を立ち上げました。そして、三月十八日には日ロ間で次官級協議も行われます。

 こうした議論が続いております中ですので、今の段階で具体的なプロジェクト、ましてや財源について何か申し上げるのはまだ時期尚早だとは思いますが、ただ、委員の御指摘を聞いておりまして、やはり、地元のニーズ、さらには北方領土の地理的な環境、こういったものをしっかり念頭に置きながら、具体的なプロジェクト、さらには財源等についても考えていかなければならないな、このようには感じました。

 ぜひ、そういったことも念頭に引き続き議論を続けていきたい、このように考えます。

畠山分科員 墓参などの拡充の強い要望もあることを最後に添えまして、私の質問を終わります。

葉梨主査 これにて畠山和也君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田賢司君。

山田(賢)分科員 おはようございます。

 私は、自由民主党の山田賢司でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 さて、安倍政権は、政権奪還時におきまして、日本を取り戻すというスローガンのもと、さまざまな政策、経済を取り戻す、外交を取り戻す、教育を取り戻す、その中の外交につきましては、このもとで外交力が大変強化されて、成果が上がってきているというふうに実感しております。

 そんな中でも、いいことというのは言うのは簡単なんですけれども、中でもまだ取り戻せていないもの、これについてきょうは御質問させていただきたいと思っております。

 言うまでもなく、まず拉致被害者が取り戻せていない、そして北方領土、そして竹島が取り戻せていない。これをどうやって取り戻していくのかという観点から外務大臣に御質問したいと思っております。

 折しも、本日二月二十二日は竹島の日でございます。島根県において本日も式典が開催されておるところでございます。私も実は、当選以来、毎年出席をさせていただいておるんですが、式典で頑張りましょうと言うのも一つのPRなんですけれども、それよりも、国会でこの問題を取り上げて対策を考えていく、これが竹島奪還につながるのではないかと思い、質問に立たせていただいております。

 そこで、まず外務大臣にお尋ねしますが、本日、島根県が主催となりまして、竹島の日の式典を開催されている方々に対して、一言メッセージをお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、竹島につきましては、歴史的事実に照らしましても、また国際法上も、明らかに日本の固有の領土であり、韓国による竹島の占拠は国際法上何ら根拠がないままに行われている不法占拠であると考えます。我が国は、この問題に関し、国際法にのっとって冷静かつ平和的に紛争を解決する強い決意を持っております。

 竹島問題、これは一朝一夕に解決する問題ではありませんが、先般のG20の外相会談の際に行いました日韓外相会談においても、私から、この竹島問題、提起をさせていただきました。韓国側に対して、受け入れられないものについては受け入れられないとしっかり伝え、大局的観点に立って、冷静に粘り強く対応していきたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 日韓外相会談の場でもこの問題を強く申し入れていただきましたことは感謝申し上げます。さはさりながら、それですぐに、確かに一朝一夕に返ってくる問題ではない、粘り強くやっていかないといけないと思うんです。

 これは外務省の事務方にお尋ねしたいんですが、竹島を実際に取り戻すための政府の取り組み、具体的にどんなことをやっているのか、それが有効なのかも含めてお尋ねをしたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、竹島問題の平和的手段による解決を図るため、一九五四年、一九六二年及び二〇一二年に、韓国政府に対し、竹島問題を国際司法裁判所に合意付託することなどを提案してきております。これまで韓国政府は我が国の提案に応じてきていませんが、竹島問題を冷静、公正かつ平和的に解決するために、これらの提案に応じることを引き続き強く求めていきたいと考えております。

 また、我が国の領土を取り巻く情勢につきまして、国民世論を啓発し、国際社会の正しい理解を得るべく、国内外の広報を強化しております。例えば、世界各国にあります日本大使館による対外発信に加え、有識者や報道関係者の招聘及び派遣、竹島に関する動画やパンフレット等の作成並びに竹島問題を啓発するスマートフォンアプリの作成、配布といった取り組みを行っております。

 竹島問題は一朝一夕に解決する問題ではございませんが、大局的観点に立って、冷静に粘り強く対応していきたいと考えております。

 以上でございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 実は、この問題は毎年取り上げさせていただいているんですが、もう本当におっしゃるとおり一朝一夕には解決しないから、もどかしい思いはあるんですけれども、先ほど冒頭におっしゃられた国際司法裁判所への提訴、これも、合意付託はできないんですが、相手方の韓国が合意してこないから付託できないんですけれども、昨年も申し上げましたけれども、単独提訴もどこかの段階で御判断をいただいて、司法的解決を図っていくよう取り組んでいただきたいと思っております。

 そして、この竹島の日の式典に関しましては、毎年これまた同じように抗議活動をしに来る人物、韓国の方から来る方々がいらっしゃる。これは何で入国させているんだということですね。韓国とのビザなし交流みたいな、ビザ免除みたいなことをしているから抑えることができないんじゃないか。平和的に、友好的に観光で来られる、これはもうどんどん来ていただいたらいいんですけれども、明らかに同じ人物が日本の領土主権を脅かす主張をしにやってくるということがわかっているのに、なぜこれを入国阻止することができないのか、法務省、お尋ねしたいと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事案の対応ぶりにつきましてお答えを申し上げることは差し控えさせていただきますが、一般論といたしまして、我が国に上陸しようとする外国人から申請があったときは、入管法に定める上陸のための条件に適合しているかどうかを審査することとしておりまして、こうした審査の結果として当該外国人がこの条件に適合している場合には上陸を許可することになります。

 他方、例えば我が国で違法行為を行おうとしていることが明らかな場合や、過去において日本国内、本国などのいかんを問わず罪を犯して一定の刑罰に処せられたことがある者、我が国政府を暴力で破壊したり公共の施設を不法に破壊することなどを企てる者など、入管法上の上陸拒否事由に該当すると認められる場合には上陸を拒否することになります。

 そこで、これも一般論でございますけれども、日本に上陸して明らかに違法活動を行うという場合は上陸拒否が可能でございますが、外国人があくまで合法的に自己の思想信条を表明するということは、入管法上の上陸拒否事由には該当しないと考えているところでございます。

 法務省といたしましては、治安や国民生活に与える影響を念頭に置きつつ、関係法令に定められた手続にのっとり、また関係省庁とも連携協力をしながら、引き続き適正な審査に努めてまいります。

山田(賢)分科員 おっしゃるとおり、この場でなかなか、個別のケースで、これはだめです、いいよというのは言いにくいとは思うんですけれども、我々から見て、もっと言うと一般国民から見て、これはどう考えてもおかしいだろうというような事案も発生しておりますので、厳格に適用していただいて。友好的に来られるのはどんどん来ていただいたらいいんですけれども、明らかに抗議活動に来るとわかっているものですから、これは何らかの法的、どこの法律にひっかけられるかも含めて、これはやはり厳格に適用していただきたいと思います。

 そこで、ちょっと疑問に感じるのは、メディアなんかで取り上げられる、反日的な活動をされる韓国の方々、これは一部の方が反日的なのがメディアで大きく取り上げられているだけなのか、あるいは全国的に幅広く反日感情が高いのか。この辺について、外務省、わかる範囲で教えていただければと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国で反日活動をしている一部の人たちという御質問がございましたけれども、日本と韓国の間には国民感情や歴史認識の問題を初めとしまして難しい問題もあり、こうした問題が両国の国民世論に影響を与えている面もあると考えております。

 お尋ねの点につきまして一概にお答えすることは困難ではありますけれども、例えば平成二十八年に行われた世論調査によりますと、六一%の韓国人が日本に対する印象をよくないと感じていると回答したと承知しております。そういう状況でありますからこそ、日韓のさまざまなレベルで率直かつ冷静に話し合う必要があると考えております。

 我が国としましては、引き続き、戦略的利益を共有する最も重要な隣国である韓国との間で、大局的な観点から、未来志向で新しい時代の協力関係を深化させるべく、粘り強く努力してまいりたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 私も、何度も繰り返しますが、友好的な韓国の方々とは本当に友好関係を築けばいいと思っているんです。

 ただ、やはりベースにあるのは、日本の固有の領土である竹島を武力で奪って返していない、そして、最近でいうと、仏像を盗んでいって、盗んだ人は個人の犯罪者であればいいんですけれども、それを裁判所までが返さなくていいとかいう判決を出したり、それをまた国民が支持するという、何か、そういう反日感情を持っていらっしゃる、最初からそういうふうな思いを持っていて、今お答えになられたように六一%が日本によくない印象を持っておられる。よくない印象を持っているのであれば余計に、来ていただいて、日本を知ってもらって友好的になる、これも大事なことなんですけれども。

 韓国に対して今ビザを免除している、これはちょっと見直すべきではないかと考えておりまして、一律にビザ免除というふうにするのではなくて、問題を起こさないとわかっているような方については、普通の方については簡易な方法で入っていただいたらいいんですが、明らかに反日活動を行った実績がある、こういった人物については個別に審査できるようにするべきではないかと思いますが、外務省、ちょっと見解をお聞かせください。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 ビザ免除に当たりましては、二国間の関係強化、観光を含む人的交流促進といった観点に加えまして、治安に与える影響などを総合的に勘案して判断しております。

 日本と韓国におきましては、今ございましたとおり、ビザを相互に免除しておりまして、これは両国間の人的交流の拡大に寄与していると認識しております。

 反日感情との関連で申し上げれば、我が国は言論の自由を尊重する民主主義かつ法治国家であり、特定の言論活動を行っている者がいることをもって直ちに当該国に対するビザ免除措置を見直すことは適切ではないと考えております。

 個別の審査ということに関しましては、これは例えば、一年以上の懲役もしくは禁錮またはこれに相当する刑に処せられた者や、薬物関連法令に違反して刑に処せられたことのある者など、入管法第五条に定める事由に該当する者につきましては、個別に入国についての審査は行っておる、こういうことでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 では、次の議題に移らせていただきます。

 拉致問題、これも毎年毎年、家族の方々、ことしこそは、ことしこそはと言いながら取り返せないでいる。私も、政治に携わる者として大変申しわけない思いでいっぱいでございます。

 そして、これも、早く返せということで、言ったからといって返す相手ではないというのは御承知のとおり。だからどうするんだというと、国際社会での圧力、こういったものも大事だというんですが、再三にわたる国連制裁決議、これはミサイルも含めてですけれども、制裁決議をやっても、だからといって、相手がそれで、もう許してくれと折れてくるわけではない。

 これは実は、制裁というふうに、強い制裁を科しているというふうな発表をして、文書上そうなっているけれども、実態はどうなのかというと全然制裁になっていないのではないかと感じております。

 北朝鮮自身がこの国連制裁決議に従っていないだけではなく、北朝鮮に対して制裁を科す側、例えば中国なんかですと、石炭、こういったものは輸入しないというふうに言っているのに、規定された量の三倍以上の大量の石炭を輸入したりということが行われている。また、武器の輸入をしている国もあります。

 国際社会が、制裁を科さないといけない側がこの制裁を守っていない。こういった、国連決議に従わない場合にペナルティーを科すことはできないのか、外務省にお尋ねしたいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十一月に採択された安保理決議第二三二一号を初めとする累次の安保理決議の履行につきましては、安保理の下部機関である北朝鮮制裁委員会が、各国が措置を実施するためにとった行動及び制裁違反に関する情報の収集、検討等を行い、同委員会の専門家パネルが決議の履行を改善するための勧告等を行うこととなっております。

 安保理決議による制裁措置を遵守しない国に対して罰則規定があるわけではございませんが、我が国としては、北朝鮮制裁委員会の作業に積極的に関与していくとともに、関係国により決議が全面的かつ厳格に履行されるよう、一層働きかけていくこととしております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 そうなんです。安保理でどれだけ強い決議を出していても、守らなくても何のペナルティーもない。

 そして、許せないのは、中国というのは安全保障理事会の常任理事国だ。常任理事国も入って決議している安保理決議を守っていないのが中国。この中国に対して、安保理決議を守らせるためにどのような取り組みを行うのか、外務省のお考えをお聞かせください。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 安保理決議の実効性を確保する上で、安保理常任理事国かつ六者会合議長国であります、また北朝鮮との貿易額の約九割を占める中国の役割は極めて重要であると考えております。

 二月十七日にドイツ・ボンにて行われました日中外相会談においては、岸田大臣から王毅中国外交部長に対し、中国の、責任ある常任理事国としての建設的な対応を求めるとともに、安保理決議の遵守の重要性について一致をし、引き続き連携していくことを確認いたしました。その後、二月十八日、中国は、同決議の履行のため、二〇一七年末までの間、北朝鮮産石炭の輸入を暫定的に停止する旨発表したと承知しております。

 政府としましては、引き続き、中国による安保理決議の履行状況を注視するとともに、米国を初めとする関係国や国連と緊密に連携しつつ、安保理決議が厳格かつ全面的に履行されるよう、中国に働きかけてまいりたいと考えております。

 また、各国による安保理決議の履行状況につきましては、各国からの通知や各国が講じた措置等を踏まえまして、北朝鮮制裁委員会や専門家パネルが精査することになります。我が国としましては、こうした作業に積極的に関与し、各国の履行状況を注視してまいりたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 国際社会の平和と安全を守るためには、大国は率先してルールを守っていかないといけない、法の支配というのを守っていかないといけない。その安全保障理事会の常任理事国がルールも守れないんだったら、常任理事国をやめろというぐらいの気持ちで交渉に当たっていただきたいと思います。

 では、翻って、日本はこの国連安保理決議を守っているのか。守っているのかという言い方をすると、違反しているのを証明しない限り言えないんでしょうけれども、どうも日本も緩いのではないかと思うところが多々あります。

 例えば、安保理決議二三二一号では第十八項で、「全ての加盟国が、その領域内において北朝鮮が所有し又は賃貸している不動産について、外交又は領事活動以外のいかなる目的での使用も禁止すること」を決定しております。しかし、日本国内では、北朝鮮の出先機関である朝鮮総連が公然と活動を行っておりますが、同決議を厳格に遵守するのであれば、朝鮮総連が不動産を賃貸することを禁止すべきではないかと考えますが、外務省、お考えをお聞かせください。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 朝鮮総連が使用している不動産につきまして、網羅的にお答えすることは困難でございますが、少なくとも現時点で北朝鮮が所有しまたは賃貸しているものがあるとは承知はしておりません。

 したがいまして、御指摘の安保理決議第二三二一号主文十八との関係で直ちに問題になるケースは承知しておりません。

山田(賢)分科員 もちろん、直ちに問題があるんだったら、それを放置したらえらいことなんですけれどもね。

 これをどう解釈するか、決議に違反しているか違反していないか。中立の立場で言うと、それは違反していないのかもしれません。しかし、こういう趣旨を踏まえると、北朝鮮の、まあ、朝鮮総連というのは、日本政府としてはあれは大使館や領事館の類いではないと言っていますけれども、彼らは大使館や領事館みたいなものだと主張しているわけですね。だとすると、大使館や領事館だと自分たちが主張しているその施設において、さまざまな、領事活動、外交活動以外のことを行っているのであれば、決議違反だということをもって、これを賃貸させないように圧力をかけることは可能ではないか、このように考えております。これはもうお答えは結構でございます。

 続きまして、同じく安保理決議の二二七〇号では、第十七項にて、北朝鮮の「核活動及び核兵器運搬システムの開発に寄与し得る分野の、自国の領域内における若しくは自国民による北朝鮮国民に対する専門教育又は訓練を防止すること」というふうに定めております。そして、同じく安保理決議二三二一号第十項では、その教育、訓練というものには、「材料科学、化学工学、機械工学、電気工学及び産業工学が含まれるが、これらに限定されない」ということが明記されております。

 にもかかわらず、日本国内にある朝鮮大学校では、理学科で量子力学や相対性理論を基本とする物理学研究、あるいは、電子工学科でコンピューター、情報工学の研究が公然と行われております。同大学の卒業生あるいは教授というのは、朝鮮総連傘下の科学技術協会、通称科協に所属する者もおり、また、同大学は、昨年の創立六十周年記念行事において、金正恩総書記に向けて、日米を壊滅できる力を整えると表明したと聞いております。

 国連安保理決議の要請を踏まえると、こういった朝鮮大学校の活動を防止する必要があるのではないでしょうか。外務省、見解をお聞かせください。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、我が国は、独自の対北朝鮮措置といたしまして、北朝鮮籍の者の我が国への入国を原則として禁止しております。また、在日外国人の核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先とした再入国も禁止しております。さらに、安保理決議二二七〇号及び二三二一号を踏まえまして、北朝鮮の拡散上機微な核活動及び核兵器運搬システムの開発に資する分野の専門教育、訓練が、我が国において、または我が国国民によって北朝鮮籍の者に対して行われることがないよう、関係当局から、我が国国内の大学や研究機関に対し、安保理決議がかかる教育、訓練を禁止している旨を周知しております。

 このような中、政府としましては、現時点において、朝鮮大学校の活動が安保理決議二二七〇号及び二三二一号との関係で直ちに問題になるとは考えてはおりません。

 いずれにしましても、政府としましては、朝鮮大学校を含む朝鮮学校は、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総連がその教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものであると認識しておりまして、引き続き関係省庁間で連携しつつ、委員御指摘の問題意識を重く受けとめ、重大な関心を持って情報収集等を行ってまいりたいと考えます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。そうしていただかないと困るんですけれども。

 これはちょっと通告をしていなかったんですが、だからお答えは結構なんですが、今月の新潮45という雑誌の中に、京大の准教授、原子炉実験所准教授は拉致実行犯の娘と結婚していたという記事で、週刊誌レベルですから、これをもって裏づけをとってどうこうということじゃないんですけれども、この中では、つくばの高エネルギー加速器研究機構に在籍した者も北朝鮮籍の者が含まれているということなんですね。

 学問の自由ですから勉強するのも自由なんですけれども、そこに矛盾があって、入学の段階で、例えば、あなたは何々籍、国籍によって入学しちゃいけませんということはできない。入学した後というのは、学問の自由があるから、研究、何を勉強しようとこれもまた自由だ。そして、では、核開発にかかわるような重大な研究、こういったものをやった人が出国するときに、北朝鮮に向けて出国するときに、あなたは核開発の研究に携わったから北朝鮮に戻っちゃだめですよということは言えないわけですね。憲法上、やはり出国の自由というのが外国人にも認められている。ということは、日本の国のお金で、日本の国立大学で研究した人、それが日本を攻撃するための研究をして北朝鮮に帰っていくということに何か矛盾を感じるんですね。

 物理学会の方々というのは、防衛産業、防衛技術に関する研究はやらないということを宣言されているというふうに聞いておりますけれども、日本を守るための防衛技術の研究はけしからぬけれども、日本を攻撃するための技術研究をやった人を北朝鮮に帰らせる、これについては何の歯どめもない。これに対して強く矛盾を感じますので、先ほどお答えになられたとおり、厳格な運用をできるように指導していっていただければと思っております。もちろん、政府が大学、研究機関なんかに指導というと、これもまたえらいことになりますから、学問の自由、研究の自由がありますけれども、趣旨をよく周知していただければと思います。

 続きまして、外務大臣にお尋ねをいたします。

 国連人権理事会の勧告にもあるんですけれども、日本人の拉致を初め、深刻な人権侵害を続ける金正恩を国際刑事裁判所、ICCに訴追すべきと考えておりますが、安保理の決議が必要だと承知しております。我が国は、国連安保理の理事国として、非常任理事国として、安保理の決議がなされるよう強く働きかけていただきたいと思いますが、大臣の御所見をお聞かせください。

岸田国務大臣 国際刑事裁判所ローマ規程のもとでは、締約国でない北朝鮮の事態を国連憲章第七章の規定に基づいて行動する安保理がICCに付託する場合、ICCは管轄権を行使することができる、このように規定されています。

 昨年、我が国とEUが国連総会に共同提出し採択された北朝鮮人権状況決議というものがありますが、この決議は、北朝鮮の事態のICCへの付託の検討等を通じて安保理が適切な行動をとること、これを促しているものであります。

 安保理によるICC付託、これは、九理事国の賛成あるいは常任理事国の拒否権の発動がない、こうしたことが必要となってきます。容易ではありませんが、北朝鮮人権状況決議の共同提出国であり、現在安保理理事国でもある我が国としては、関係国とも緊密に連携しながら今後の対応を検討していきたいと考えています。

 いずれにしましても、北朝鮮との間においては、拉致問題、これは最重要課題です。それ以外に、核問題あるいは弾道ミサイル問題、こうしたさまざまな課題が存在します。その諸懸案を包括的に解決するために何が最も効果的なのか、こういった観点から、御指摘の点も含めて、全体の取り組みをしっかり考えていかなければならないと思います。ぜひ、諸懸案を包括的に解決する、こうした我が国の基本的な立場をしっかり守りながら、御指摘の点についても臨んでいきたい、このように考えます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 私も、刑事裁判所への訴追ありきではなく、大臣がおっしゃるとおり、最も有効な方法ということで考えていただければと思いますが、どうしても今までの制裁決議、経済制裁とかではきかないものですから、かといって軍事的な制裁を加えるわけにもいかないので、こういった司法的な解決も一つの手段ではないかと思っておりますので、ぜひ、最も効果的な方法を御検討いただいて取り組んでいただければと思います。

 続きまして、高度外国人材についてお聞きをしたいと思います。

 私は、安倍政権の政策は全力で応援するつもりなんですが、何でもかんでもいいというわけではなくて、中には、ちょっとこれはおかしくないかというものがありまして、その一つがこの高度外国人材で、日本再興戦略の中でも世界最速のグリーンカードみたいなことがうたわれて、高度な人材については永住権を一年で取得させるというようなことが検討されているやに聞いております。

 高度外国人材、一定ポイント、八十ポイントですか、これに達したら一年で永住許可を与えることを法務省が考えておられると聞きます。これも法務省のポイント計算でいくと、博士号で三十ポイント、年収一千万だったら四十ポイント、年齢が三十四歳以下だと十ポイント、これで八十ポイントになってしまう。

 これが本当に高度な外国人材かという気はするんですけれども、この人が百歩譲って高度外国人材だったとして、その人が永住許可を得た後、失業して無収入になっても、犯罪を犯したりとか特段の事由がない限りは永住許可は取り消されないと理解してよろしいでしょうか、法務省。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 永住許可申請時に虚偽の申告を行った場合には在留資格の取り消しの対象になりますほか、今御指摘の一定の刑罰法令に違反したような場合には退去強制の対象にもなります。

 しかしながら、永住許可取得後、今御指摘の失業して無収入になったといたしましても、そのことのみをもって永住許可が取り消されることはありません。

 したがいまして、永住許可の審査が極めて重要となりますので、永住許可に当たりましては、学歴、職歴、年収等、八十点以上が必要ということであれば、この点について厳格に審査を行い、独立生計を営むに足る資産、技能を有することを確認してまいりたいと考えておるところです。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 だんだん時間がなくなってまいりましたので、ちょっと端的にお聞きしたいんですけれども、今おっしゃったように、犯罪とかがない限り、永住許可は取り消されない。

 高度外国人材として入ってきて、高収入だよといって永住許可を与えているのに無収入になってしまったとき、生活保護の対象になるんでしょうか。

佐々木政府参考人 生活保護制度につきましては当局の所管ではございませんが、実際に、永住者として在留する方が生活保護を受給しているケースがあるということは承知をしてございます。

 もとより、この高度外国人材の方が御指摘のような事態に至る可能性は、先ほど申しましたような厳格な審査も行いますので、可能性としては低いということを考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 御本人は多分そうだと思うんですが、この永住許可は、法務省さんにお聞きしたら、本人が来るときは御家族、配偶者も子供も永住許可が得られる。そうすると、本人が亡くなってしまった、残された配偶者、子供、そして、そのお子さんが今度結婚した、子供にも基本的には永住許可、永住権が与えられると聞いております。そうなったときに、収入の糧が、高度外国人材として来られた方というのは、それは失業する可能性は低いかもしれないけれども、その配偶者、子供、代々、ずっと孫子の代まで高収入、高度人材である保証というものはないのではないかと思っております。

 そこで、もう最後になりますので、井野政務官にお尋ねしたいんですが、こういった高度外国人材という理由で、一年という短期間に永住許可を認めるというのは問題が多いと承知しております。海外から人材を集めるのに永住許可でもって集めてくるのではなくて、実際、外国人の方々も、永住許可を一年で欲しいと言っている人はいなくて、在留期間を通算してくれとか、手続を簡素化してくれとか、そういった要望はあるとは思うんですね。だけれども、一年にしてくれという要望はほとんどないと聞いております。

 こういった、安易に永住権を安売りして人材を集めるような政策は見直していただきたいと思いますが、御所見をお願いいたします。

葉梨主査 井野政務官、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

井野大臣政務官 はい。

 山田先生の御指摘、多々いただいておりますけれども、まだこの制度については検討中でございますし、また、先ほど先生の御指摘がありました日本再興戦略二〇一六を受けての今回の制度検討、制度設計について行っているものでございますので、さまざまな御懸念をいただいて、また、パブリックコメントもしておりますので、そういった御指摘をいただきながら、よりよいものをつくっていきたいと思っておりますので、御理解のほどよろしくお願いします。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わらせていただきます。

葉梨主査 これにて山田賢司君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津分科員 公明党の稲津久でございます。

 きょうは、日ロ関係についてということで数点お伺いさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず第一点目ですけれども、これは、さきの日ロ首脳会談におけるプレス向け声明の意味するところということでお伺いしておきたいと思うんですけれども、その前にもう一回、これまでの日ロの、いわゆる首脳会談も含めて、進んできたことをもう一度確認していく必要がありますので、私の方から、これはもう十分、既に御存じのとおりですけれども、少しお話しさせていただきたいと思います。

 まず、昨年ですけれども、五月のソチ、九月のウラジオストク、そして十一月のリマの首脳会談に続きまして、十二月のロシア・プーチン大統領の来日、そして山口県の長門会談、東京会談ということで、日ロの首脳会談が行われた。多くの国民、そしてとりわけ北方領土の元島民や御家族の方々の関心は非常に高かったと思います。

 会談の結果、両首脳は、平和条約問題を解決するという、みずからの真摯な決意を表明されるとともに、北方四島の未来像を描いて、その中から解決策を探し出す、いわゆる未来志向の発想の新しいアプローチに基づいて、平和条約締結交渉の枠の中で今後協議をしていく。その第一歩として、北方四島において、両国がお互いの立場を害することなく、共同経済活動を特別な制度のもとで行うべく、協議を開始することとなりました。

 それから、元島民の北方四島への墓参、また自由訪問に向けた協議、これも開始するということで合意がされました。

 このほかに、ソチにおいて安倍総理から提案がなされた対ロ八項目の経済協力プラン、このことに関連して、日本の政府、当局それから企業間においても、この合意文書に署名がなされた。これが一連の経過だと思っています。

 そして、この十二月の日ロの首脳会談を受けて、ことしの一月に、世耕ロシア経済分野協力担当大臣がロシアを訪問されて、シュワロフ第一副首相と会談をして、八項目の経済協力プランの具体化に向けての協議が開始をされた。

 さらに、二月十七日、G20外相会合に際して、ドイツのボンにおいて岸田外務大臣とラブロフ・ロシア外務大臣との日ロ外相会談が行われて、そして、北方四島における共同経済活動と元島民の四島への往来についての協議の進展、これを図っていくということで合意がなされました。

 来月の十八日には共同経済活動等に関する公式協議を行うことですとか、この月の二十日には、二〇一三年以来中断されていた日ロの2プラス2を開催すること、それから、三十日には日ロ戦略対話を行うということでも一致した、このように聞いております。

 国内では、二月七日に、北方四島における経済共同活動の議論に向けた具体的な案件の形成を促進するために、岸田外務大臣を座長とする共同経済活動関連協議会が設置をされまして、その第一回目の会合が開催されたというふうに承知をしております。

 一部報道によりますと、安倍総理は四月にもロシアを訪れて、プーチン大統領との首脳会談をまたさらに開催する見通しではないか、こんなことも報道されております。

 なぜこういうことをもう一回確認してお話をさせていただきましたかということをこれから述べたいと思うんですけれども、昨年の十二月、いわゆる安倍総理とプーチン大統領の会談の成果ということがいろいろ言われております。

 その中で、領土問題についての具体的な表明がなかったということを指して、そしてこの会談というのは成功ではなかった、そういう批判の声もありますが、今私が申し上げたように、ここに至るまで、そしてその後の取り組みについても進展をしているということ、何よりも、北方領土における共同経済活動ということ、それから元島民の方々の墓参、自由訪問が拡充するということが合意を得たということ、これは、これまでにない全く新しい展開で、こうしたことを踏まえていくと、私は、この安倍・プーチン会談というのは大きな成果があったというふうに評価していいと思うんです。

 そして同時に、繰り返しになりますけれども、本年に入ってからのさまざまな動き、特に岸田外務大臣が取り組んでいらっしゃることについても、これはまさにこの十二月のところを起点にした、新しいそういう流れに入っていった、このように思っておりまして、改めて評価をさせていただきたいなというふうに思っています。

 ただ、そこで一点だけ、これは外務大臣に確認をさせていただきたいんですけれども、私は、昨年十二月十二日の沖縄北方特別委員会で、岸田外務大臣に対しまして、この日ロ首脳会談では、対ロ経済協力プランですとか北方四島での共同経済活動、それから領土問題を、うまくと言ったら表現は悪いんですけれども、バランスをとることが重要だということを申し上げさせていただいて、その上で、あのウラジオストクの会談の後に、総理が、道筋が見えてきた、こうおっしゃって、新たなアプローチに基づく交渉を進めていくんだと。こういう道筋を明確にするためには、できれば共同声明を発出していただきたい、このように大臣にお話を申し上げたことを覚えておりまして、ただ、結果はプレス向け声明、こういうふうになりました。

 なぜ共同声明とならなかったのか。なぜプレス向け声明となったのか。一部には残念だという声もありますが、私は、改めてここのところを一度整理させていただきたい、こう思っておりまして、ぜひ大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、安倍総理とプーチン大統領の間においては、二〇一三年四月の共同声明において、これまで採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて交渉を進める、このことをまず確認しています。こうした諸文書や諸合意の中で四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すること、このことをまず確認しています。

 これがまず大前提としてあり、その上で今回の、今回のというか昨年十二月の首脳会談に至ったわけであります。

 そして、この会談においてプレス向け声明を発出して、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を書き込み、また、プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結である、これを明確に述べたわけであります。

 そして御質問の、なぜプレス向け声明になったかということでありますが、このプレス声明、これは、四島の書きぶりなど用語について日ロ間で一致していない部分がありましたので、共同声明という形をとらなかったということであります。

 ただ、これは内容面におきましては、日ロ間で調整した結果、一致しているものであり、この点は、この文書が共同声明であったか否かによって重要性が変わるものではない、これはしっかり強調しておきたいと思います。

稲津分科員 ありがとうございました。

 プレス向け声明であっても、あるいは共同声明であっても、この二枚の声明ですけれども、中身は変わるものではないという御趣旨の御答弁をいただきましたので、そこはそこで、私も理解をさせていただきたいと思います。

 ただ、今後、ぜひまたさまざまな会談等、また、さらに詰めた重要な会談もあるかもしれませんね、期待をしたいと思っていますけれども。そういう折に、いわゆる共同声明というステップをぜひ踏んでいただきたいということは申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。

 続いて、今のこの安倍・プーチン会談の中で約束されたことの一つの、墓参、自由訪問の拡充についてということで、お伺いしたいと思います。

 日ロの両首脳は、昨年の十二月の会談で、北方墓参について、日本人参加者が高齢であることを考慮した改善を必要としているとの認識で一致しました。入域出域手続を国後島の古釜布の一カ所からふやすことや手続の簡素化など、あり得べき案を迅速に検討するということで合意したというふうに私は思っております。

 今月十七日のG20、ボンでの外相会合の際の日ロ外相会談では、平和条約の締結について、それから安全保障分野での対話、そして北朝鮮の三テーマについて意見を交わされまして、特に平和条約締結については、その中で、元島民の四島への往来についての協議の進展を図っていくということで一致した、このようにお聞きをしております。

 そこで、実は、元島民の方々、御家族また関係者の方々から私のところにも多く寄せられている、墓参事業、自由訪問事業について具体的な要請が来ておりますので、きょうはそのことを少し個別に伺いたいというふうに思っているところでございます。

 まず一つ目については、自由訪問者の対象拡大ということなんですけれども、これは今でも、元島民との同行であれば、例えば子の配偶者、孫、孫の配偶者、これらに関連して同行することは可能であるとなっていますが、ただ、やはり先祖の故郷に足を踏む、そういう思いから立って考えると、ぜひここのところの対象拡大を図っていただきたいということ。

 それから、今回、いわゆる船での出入域ではなくて、元島民の平均年齢を考えると、ぜひ飛行機の利用ということもありました。

 それから、先ほど触れさせていただいた、現在、この北方領土については出入域の箇所が国後島の古釜布一カ所となっておりますので、これをぜひふやしていただきたい、こういう要請があります。

 このことについて御見解をいただきたい。現時点の見解で結構でございます。お願いします。

相木政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、自由訪問の枠組みの対象者の件でございますけれども、自由訪問の枠組みのもとで北方領土訪問可能な対象者といたしまして、元島民並びにその配偶者及び子に限られているというのは委員御指摘のとおりでございます。

 一方で、これも委員御指摘のとおり、二〇〇八年四月の日ロ外相会談の結果といたしまして、自由訪問に同行するということで、元島民の子の配偶者、孫及び孫の配偶者も同行することが可能となっているというようなことで、これまでも改善の努力は重ねてきたところでございます。

 こういった点はございますが、先般の日ロ首脳会談の結果、発出をされましたプレス向け声明におきまして、北方四島の元島民の方々が御高齢になられているということを踏まえて、改善をしていくということが必要であるということが示されているところでございます。

 このことを踏まえまして、元島民の方々の要望も考慮しつつ、今後とも改善に努めていく考えでございます。

 次に、航空機の利用の件でございますけれども、これも昨年の十二月の首脳会談で、現行の枠組みによる訪問手続を改善することで一致したということを踏まえまして、四島訪問における元島民の方々の負担軽減につながるような手続の改善を不断に目指していく考えでございます。

 この中で、先般のボンにおける日ロ外相会談におきましても、岸田大臣とラブロフ外相との間で航空機活用の点についても議論をされたところでございます。

 北方四島への訪問の具体的な時期や対応はロシア側との調整を要するものでございまして、現時点では決まっておりませんけれども、引き続き、元島民の方々の御要望も考慮しつつ、今後とも改善に努めていく考えでございます。

 次に、入域ポイントの点でございますけれども、昨年の十二月の日ロ首脳会談の際のプレス向け声明におきまして、四島を訪問する際に出入域手続を行う地点を追加的に設置することについては、迅速に検討することが明記をされているところでございます。

 御指摘のとおり、現在、国後島古釜布のみにて行われております出入域手続のための地点については、訪問先の島に応じまして、その島に近い場所にも地点を設けて移動時間を短縮することで、元島民の方々の移動に伴う負担を軽減したいというふうに考えているところでございます。

 政府としては、できるだけ早期にこれが実現するよう、ロシア側との間で調整を進めてまいりたいと考えております。

稲津分科員 一点だけ改めて要請をさせていただきますけれども、その出入域手続の箇所についてですが、これは九年ほど前までは、歯舞、色丹、向こうの方の水晶島沖、それから色丹島の穴澗湾ですか、そこでもできていて、三カ所であったというふうに承知をしておりまして、まずはそこからの着手でも結構ですから、具体的に進めていただきたいということをお願いさせていただきます。

 次は、今度は船のことなんですけれども、「えとぴりか」二号、私も一昨年利用させていただいて国後島に行きましたけれども、非常にすばらしい船でして、安定していて清潔ですばらしいんですけれども、ただ、古釜布のところでは、はしけを利用して乗りかえるんですね。結構やはり、私のような年齢の者でも少し危険を感じるんですけれども、恐らくさらに高齢の方はなかなか大変だと思っております。

 そこで、例えば、これは今でも検討してやっていると思うんですけれども、砂浜に上陸する、その際の上陸ポイントをどうしていくのかという考え方、それから、これに関連して、必要な機器とか設備についてもぜひこの機会に整備することも検討してはどうか、このように思っておりますが、大事な点でございますので、ぜひこの点についての見解を伺いたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 四島交流で現在使用しております「えとぴりか」あるいは「えとぴりか」の二号でございますけれども、設計の当初から元島民の方の意見も聞き、船舶工学の関係の専門家の意見も踏まえて、それなりの対応をしているつもりではございますけれども、御指摘のように、元島民の皆さん、高齢化されていますので、今も訪問団の安全対策は細心の注意を払っているところではございますが、今後も細心の注意を図り対応いたしますし、御指摘のような必要な機材の整備につきましても、必要に応じて検討はしてまいりたいと思います。

稲津分科員 それで、もう一点、これに関連してお伺いしておきますけれども、墓地や元居住地などの自由な行動の許可についてということで伺っておきたいと思います。

 現在は、訪問団をつくって、そして元島民、その子、あるいは学生等が中心ですけれども、訪問団を結成して、そして北方領土に行く、こういう仕組みになっているんですね。

 ただ、元島民の思いというのは、やはり四島の自由往来。もともと自分たちが住んでいた土地、紛れもない日本の国、我が国固有の領土、そこに行くときに、ある意味もっと自由に、例えば、住みなれていた家、その跡、お墓、先祖のお墓に行きたい、こういう思いは非常に強いわけです。

 ですから、そちらの方の立場になって考えたときに、今回の墓参等の拡充を踏まえたならば、ぜひ、家族単位、あるいは集落、もとの集落等のグループ単位等で行かせていただけないだろうかという声も非常に強いものがございます。

 もちろん、立入禁止区域と向こうで指定しているところもありますし、そういうことを考えていきますと、制限の緩和とかアクセスの確保、こういったことも非常に大事な問題ですので、これらのことにどのように対応されるお考えか、この点についてお伺いしておきたいと思います。

相木政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の十二月の日ロ首脳会談におきまして、北方四島の元島民の方々が御高齢になられていることを考慮しまして、人道的な観点から、現行の枠組みによる訪問手続を改善することで一致をしております。先般の日ロ外相会談におきましても、岸田大臣とラブロフ外相との間でも議論がなされたところでございます。

 また、首脳会談の後の日ロ共同記者会見におきまして、プーチン大統領は、元島民の墓参に関しまして、これまで閉じられていた地域にでさえ最大限自由なアクセスを保証することで合意した旨を述べておるところでございます。

 これらの点も踏まえまして、政府として、元島民の方々の御希望に沿うよう、改善を不断に目指していきたいというふうに考えております。

稲津分科員 ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 私が今、主に三つの点についてお聞きさせていただきましたけれども、これは全て、元島民、御家族そして関係者の方々の思いでございますので、しっかり御検討いただきたいと思います。

 特に、最後に申し上げておきますけれども、北方四島の墓参の拡充についてなんです。

 これは、私も国後島で墓参をさせていただきましたけれども、元島民の方も大変な思いの中で先祖への報告をされておられました。

 例えば、この北方墓参については、やはり、かなり制限をかけてきているという向こう側の傾向がある。例えば、最も多い約六百人が眠っている国後島の泊の墓参は二〇〇六年が最後で、日本側は昨年もこれは要請したんですけれども、ロシアから拒否されました。それから、過去には、国境警備隊の基地がある国後島の瀬石への墓参についても拒否された例もあります。

 なぜそういうことを言っているかというと、これまでそういう経緯がずっとある中で、行けたものが行けなくなってしまったりとか、繰り返しですけれども、自分たちの町であり自分たちの土地であった、自分たちの先祖が眠る墓、なぜそこに行けないのかというせつない思い、そして今回のこの日ロの首脳会談での新たな展開ですから、ぜひ政府一丸となってこのことについて取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 次は、北朝鮮のミサイル問題についてということで、具体的には、制裁の履行状況を互いに日ロで確認する場に今後もしていったらどうかというお話でございます。

 これは、G20、ボンでの外相会合の際の日ロ外相会議で、北朝鮮によるミサイル発射による挑発行動の自制や安保理決議等の遵守を強く求めていくことで一致をされて、国連の場を含めて緊密に連携していくことを確認されているというふうに承知をしております。

 このことに関連して申し上げれば、ミサイル発射に対する経済制裁の実効性の確保に向けて、鍵を握る国々が国連安保理決議に基づく制裁を着実に履行していくということが大事だと思っております、これは当たり前のことですけれども。

 中国は北朝鮮から石炭輸入を停止した、まあ、ちょっとトン数が多かったという話もあって、批判もありますが、いずれにしても、そういうことがあったことを承知しておりますが、ロシアにおいても我が国と同様に安保理決議を一致して進めることを望むべきで、三月二十日には日ロの外務・防衛担当閣僚会議、2プラス2を東京で開催というふうに伺っておりますが、ぜひともこれらの機会に制裁の履行を確実なものにすべく臨んでいただきたい、こう思っております。

 このことについて、岸田外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、北朝鮮の挑発行動に対して、国連安保理において強い内容の決議を採択する、強い意思を示す、これは大変重要なことでありますが、その決議を実際に履行する、このことが大変重要であると認識をします。

 国連安保理においては、安保理の下に北朝鮮制裁委員会という組織があり、さらには専門家パネルが置かれて、履行状況をしっかり確認し、関係国に履行を促していく、こういった仕組みがあるわけですが、加えて、我が国としましても、先般、G20の外相会談の際に行われました日中外相会談あるいは日ロ外相会談、こういった会談の場を利用しましても、中国、ロシア、こうした国々に、国連の安保理常任理事国として、責任のある常任理事国として建設的な態度を求める、こうした働きかけを行ってきたわけです。

 ぜひ、御指摘の三月二十日に予定されております日ロ2プラス2においても、北朝鮮を含む地域情勢に対して、しっかりと共通認識を持てるよう確認をし、議論をしていきたいというふうに思っておりますが、今後とも、さまざまな機会を捉えて、ロシアを初めとする関係国に、国連安保理決議の履行に向けてしっかりと努力をしていくよう働きかけを続けていきたいと考えます。

稲津分科員 大臣から非常に大事な御答弁をいただきまして、ぜひ、常任理事国に対する日本の働きかけ、それから、それぞれ全部隣国でございますので、そういう意味では非常に大事な日本の役割はあると思っていますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 最後の質問に移ります。

 最後は、いわゆる八項目の協力プランにおけるエネルギーについてということで伺っておきたいと思います。

 これは繰り返しですけれども、昨年十二月の会談で日ロ両首脳は、八項目の経済プランの具体化の進展を確認して、特に安倍総理から、医療、都市つくり、エネルギー、そして生産管理研修、温室野菜栽培、農産物の乾燥保存技術の協力などが示されまして、このときはエネルギーは、原発の廃炉とか風力発電の導入促進協力ということがうたわれました。

 また、今後さらにこれを具体的にということを考えていくと、むしろソチの八項目の協力プランのところが非常に大事で、そこで伺うんですけれども、この八項目の協力の、石油、ガス等のエネルギー開発協力、生産性の拡充は非常に大事で、どのように進展をさせていくのか、もちろんこれからのことですけれども、ここはやはり注目すべきところだと思っています。

 なぜそういうことを言っているかというと、我が国にとっても大事なことですけれども、ロシア側が最も関心の高い分野の一つであろうというふうに思っております。具体的な取り組みがあるのかどうか。

 日米関係においては今後、麻生財務大臣とペンス副大統領間で経済対話を発足することが予定されたということで、マクロ経済とかエネルギーとか貿易そして投資のルールつくり、こういった分野での進展が期待される、日米の中で。

 もちろん、日ロについては、この八項目のプランをどういうふうに進めていくのか。特に、やはりエネルギー資源の乏しい日本の国ですから、そうした点も踏まえて、日ロのエネルギーの開発協力についてお伺いしておきたいと思います。

小澤政府参考人 お答えいたします。

 八項目の協力プランの実現に当たりましては、ロシアが抱える問題意識、あるいは日本企業の関心分野などを踏まえて、両国がウイン・ウインの関係になる形で、現在進めているところでございます。

 特にエネルギー分野につきましては、世耕大臣とノバク・エネルギー大臣が議長となる日露エネルギー・イニシアティブ協議会、これを立ち上げまして、そのもとに、先生御指摘の石油、天然ガスなどの炭化水素の分野、それから省エネ・再エネ、原子力の三分野について、ワーキンググループを設置してございます。

 これらのワーキンググループにおきまして、石油、天然ガスの上流の共同開発、あるいは風力発電の導入促進、福島第一原発の廃炉協力等に関する議論を行ってございます。

 昨年十二月にプーチン大統領が訪日した際には、エネルギー分野では二十三の協力プロジェクトについて合意をいたしました。特に、石油、天然ガス等につきましては十四件の合意をしております。それらの早期の具体化を目指しまして、三月末を目途に今後の作業計画を取りまとめるべく、作業を進めているところでございます。

 今後とも、エネルギー協力を着実に前進させるべく努めてまいりたいというふうに考えております。

稲津分科員 終わります。

葉梨主査 これにて稲津久君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤丸敏君。

藤丸分科員 きょうは、世界人権宣言についてお話をさせていただきたいと思います。

 そして、財金もやっておりますので、できるだけ短くさせていただきたいと思います。

 その前に、自由と平等。フリー、勝手ながら、フリー。フリーダム、束縛からの自由ですね。リバティーは、フランスが語源ですから、そっちからきている。イクオリティー、平等と、イクイティー、フェアとかいう言葉があります。つまり、人権についてお話をさせていただきます。

 余談でございますが、私が学生のときにいろいろ学んだ、哲学というか、それを勉強しておりましたので、幾ばくか。そこで、少し青臭い話をさせていただきますが、自由というと、イギリスでJ・S・ミルというのがおりまして、これは一八〇六年。一八五九年に「自由論」というのを発表しております、J・S・ミルは。

 これは、西洋のその時代はアンシャンレジームの時代でありますから、アンシャンレジームからの自由というのが書かれておりまして、国家権力からの諸個人の自由が述べられております。そして、この権利が、自由が制限されるというのは他人に実害を与える場合に限定されるという、今の憲法の中に入っている、世界憲法の中に入っている基本的な考えがここに述べられておりまして、この先に、J・S・ミルは、文明が発展するためには、そういう個人の個性とか多様性とか天才性とかというのが保障されなければならないという話がこの「自由論」に述べられているところでございます。

 また、その同時代、ちょっと後なんですが、イエーリングというドイツの学者がおりまして、このイエーリングというのは「権利のための闘争」という本を書いております。これは一八七二年でありますが、ちょっと難しくて、権利の生涯とはと。ちょっと意味がよくわからないんですけれども、権利の生涯とは闘争なのだと言っておりまして、民族の、もしくは国家権力の、階級の、そして個人の闘争である。そして、権利は、単なる思想ではなく、生き生きとした力なのである。片手に権利をはかるためのはかりを持つ正義の女神、これはユースティティアという有名な女神なんですが、もう一方の手で権利を貫くための剣を握っているということを言われているんですけれども、なかなかこのイエーリングの主張はいまだに理解できない、時折読み返しているんですが。人のいいおじさんなんですけれども、イエーリングという人は。

 もうちょっと余談を続けさせていただきます。

 それから、平等という概念なんですけれども、この平等という概念は、古代ギリシャのソクラテス、プラトン、アリストテレスまで大体さかのぼりまして、アリストテレスのいろいろな議論がありますが、紀元前三五〇年ぐらいなんですが、アリストテレスの正義の中には、平均的平等というのと配分的平等というのが挙げられる。まあ、調整的平等というのもあるんですが。

 平均的平等、配分的平等。平均的平等というのは、大体同じという意味であります。配分的平等というのは、何かを基準にして配る、配分して平等を担保するという考え方でありますので、わかりやすい。このときから大体そういう考えを世間に述べている、アリストテレスですね。この場合、正義という言葉と平等という言葉が大体同等に使われている時代であります。

 それから、ルソーという、私、教育学部なので、ルソーの「エミール」を読まされたのが本当は始まりなんですけれども、「エミール」、教育論なんですが、この人は家庭教師とかいろいろ書かれていて、教育学部では教科書なんです、「エミール」というのは。しかし、途中まで読んでいって、この人の生きざまは、自分の子供が十何人いるんですけれども施設に預けているので、こんな人の本が読めるかと思って本自体を捨ててしまったんですけれども。

 しかし、この人のもう一つの論文で「人間不平等起源論」というのがあるんですよ。これは賞をとっているんですが、「人間不平等起源論」、不平等は一体どこから起こったんだという話であります。簡単にまとめて言うと、土地の所有が認められるようになって、富む者と富まない者が出てきた、ここに不平等の起源があるという、この人の主張ですから、傾聴に値することだと思っております。

 そして、当然、自然状態では、ここに不平等とか起こり得るはずはないわけですから、理性を人間が持って社会ができる、ここに不平等の階層ができる。社会ができると不平等が起こると言っているんですね。まして、法律や所有権ができると不平等は発展すると言っておりまして、はたまた次に、為政者の職業が確立すると不平等は固定化するというところまで言っているところでございます。

 そろそろ本題に入っていきますが、人権は、世界的に大ざっぱに言えば、アンシャンレジームのフランス革命から始まって、アメリカ独立宣言、このあたりで世界人権が確立するということになると思います。しかしながら、第二次世界大戦、その前の第一次が終わったときにナチス・ドイツのことがありましたので、この反省の上に立って国際連合が世界人権宣言をしたという流れでございます。

 日本はというと、大宝律令から律令国家になっておりますので、為政者というか、人道とか、民を大事にするという、諸国を治める、江戸時代は大名ですけれども、天皇制ですから、そういう文化がありましたのでちょっとは違うとは思いますけれども、そういう時代であります。

 そこで、やっと質問に入らせていただきます。世界人権宣言、それから国際人権規約、個人通報制度について聞きますが、まずは、世界人権宣言とは、どういう経過で、どういう内容なのかということをお聞きしたいと思います。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 世界人権宣言は、一九四六年二月に開催された第一回の国連経済社会理事会がその決議によって人権委員会を設立し、これに付託した国際権利章典作成の作業に端を発するものでございます。

 この作業は、一九四七年十二月に開催をされた第二回人権委員会の決定によって三つに分けられておりまして、まず人権に関する宣言、人権に関する国際条約及び、三番目に実施措置に分かれております。その後、一番最初の人権に関する宣言が世界人権宣言として、一九四八年十二月に第三回国連総会において採択されたものでございます。

 内容でございますが、世界人権宣言は、その前文に述べられておりますとおり、全ての人民と全ての国が達成すべき共通の基準を宣言したものであり、法的拘束力を有するものではございませんが、人権の歴史において重要な地位を占めております。具体的には、例えば、全ての人間の自由と平等、刑事手続上の権利、表現の自由、社会保障を受ける権利等を宣言しております。

藤丸分科員 そういう流れで人権宣言がされております。法的拘束力はないということでございますけれども、その直後に国際人権規約というのができてきておりますが、これも経過と内容をお願いいたします。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 一九四六年に経済社会理事会が設立した人権委員会が、同委員会の作成する国際権利章典を、先ほど申し上げました三つの部分、人権宣言、人権に関する国際条約及びその実施措置から構成をすることとなりましたけれども、この人権宣言の起草作業を行った後、同委員会が、第五回会期、一九四九年から国際人権規約の起草に当たりました。

 第十回の会期、一九五四年におきまして、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約案、いわゆるA規約でございます、並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約案、いわゆるB規約案でございますが、この二つを採択いたしました。

 人権委員会で採択をされましたこれらの国際人権規約案は、その後、国連における審議を経て、一九六六年十二月に第二十一回総会において採択されております。

 その内容でございますが、国際人権規約は、それぞれ独立した国際約束である、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、A規約、及びA規約の選択議定書と、市民的及び政治的権利に関する国際規約、B規約、及びB規約の選択議定書から成っております。

 A規約は、人権の保障を名実ともに充実したものとするために、国家が個人に対して積極的に与えるべき保護という意味で、いわゆる社会権を主として規定しております。B規約は、公権力の行使からの個人の保護という意味で、いわゆる自由権を主として規定したものとなっております。

藤丸分科員 世界人権宣言、第二次世界大戦後、国連がこれまでの反省をして世界人権宣言をした。これは宣言ですから、それを具体的に、人権委員会が国際人権規約をつくったということであります。

 そして、それを担保するために個人通報制度という制度が、今お話を聞いたように一応できてはいるんですが、それでは、個人通報制度の日本の状況を教えてください。

飯島政府参考人 個人通報制度の日本における状況でございますけれども、個人通報制度の趣旨は条約の実施の効果的な担保を図るものでありますところ、我が国としましては、効果的な担保に向けて、まず、A規約及びB規約を初めとする人権条約に定められた政府報告を提出し、審査を受け、フォローアップに努めてきているところでございます。

 個人通報制度の受け入れは、実効担保の観点から注目すべき制度と認識しており、政府としてはこれまで十九回にわたり個人通報制度関係省庁研究会を開催してきたところであり、各方面から寄せられる意見も踏まえて、政府として真剣に検討を進めているところでございます。

藤丸分科員 この必要性まで言えますか。必要性はどういうふうに考えられるのかということでお願いします。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨からは注目すべき制度であるというふうに認識をしております。

 他方、この委員会から、国内の確定判決とは異なる内容の見解、あるいは通報者に対する損害賠償や補償を要請する見解、あるいは法改正を求める見解等が出された場合に、我が国の司法制度や立法制度との関係でどのように対応するか、他国に関する通報事例等も踏まえつつ検討を進める必要があると認識しております。

 政府としましては、各方面から寄せられる意見も踏まえつつ、真剣に検討を進めてまいりたいと考えております。

藤丸分科員 人権は、やはり常日ごろ注意をして、気を配っておかなければなりません。

 この必要性というのは、例えば、自分でちょっと思ってみたんですが、民法九百条の相続において、嫡出子か非嫡出子かというところで、民法は九百条で非嫡出子は二分の一にしておりました。これは合憲になっておりましたが、違憲判決が出て、平成二十五年にこの九百条は前の部分が削除されて改正されて、嫡出子、非嫡出子は平等になったんですけれども、もしこれがまだそういう違憲判決が出る前の段階であれば、その前までは合憲というふうに出ていただろうと思うんです。

 ということは、もし個人通報制度が日本にあったならば、つまり、日本の国内で手だてを全部尽くさないといけないので、最高裁判決かもしくは高裁で確定判決を受けるかというふうなものがないと、国内で手だてを尽くした上で、手だてがもうないというときに通報制度というふうになっておりますので、私は、今はもう解決はされましたけれども、その前で通報制度があれば、この嫡出子、非嫡出子の話は通報制度に乗っていたのではないかというふうに推察をしているところであります。これは自分で考えたので、まだ余りほかに当たっていないから、多分そうであろうと思っているところでございます。

 しかしながら、では、ほかにあるかというと、きのう知り合いの弁護士に夜中に聞いてみたんですが、婚姻年齢が民法では十八歳と十六歳になっていますから、これは余り文句は来ないとは思いますけれども、文化の違いということはあるかもしれませんが、これも問題に、それに合理的な理由があるのか。再婚待機の問題は、今、民法にそれぞれ載っていたような気がいたしますが。

 それ以外に、こういう通報制度があれば、まあ、そう簡単にはならないですね、最高裁が蹴らないといけませんから。この表をもらっているんですが、日本は余りないので、全部とは言いませんが、人権先進国としてこの制度がある必要があると思いますので、この個人通報制度を人権先進国として進めるためには、どういうふうにして進めれば進むのかを教えてもらえればと思います。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 我が国が締結しております人権諸条約のうち、B規約、女子差別撤廃条約、児童の権利条約、障害者権利条約及びA規約につきましては、選択議定書において個人通報制度を規定しており、個人通報制度を導入するには、この選択議定書の締結手続が求められております。

 また、別の条約として、人種差別撤廃条約第十四条、拷問等禁止条約第二十二条、強制失踪条約第三十一条のように、条約中の選択条項として規定されているものにつきましては、同条約、これらの条約の本文にある規定の受諾宣言を行うことが求められております。

 いずれの手続につきましても、具体的にどういった国内手続を経る必要があるかにつきまして、本制度の導入に際して国内法の改正の必要性等を整理して判断する必要があると考えておりまして、現時点でその手続について確たることを申し上げられる状況にはないことについて、御理解を賜ればと思います。

藤丸分科員 多分、閣議決定だけでいけるとか、もしくは条約を新たに批准しなきゃならないとか、いっぱい条約はありますから、条約によっていろいろ違うんだろうと思います。

 いずれにしても、やはり人権は大事なことでありますので気を配っておかなければならないと思いますし、日本は人権先進国であらねばならないであろうと思っております。

 最後に、大臣、一言何か、感想で構いませんので、お願いいたします。

岸田国務大臣 委員の方から、人権について、あるいは個人通報制度について、さまざまな御意見の開陳がありました。改めて人権について考えさせていただく機会になったと思っておりますが、その中で、個人通報制度について幾つか御質問がありました。

 条約実施の効果的な担保を図る、こういった趣旨から、個人通報制度、これは注目すべき制度であるというふうに私も認識をしております。

 ただ、我が国の導入に向けては、我が国の司法制度や立法制度との関連の問題、あるいは実施体制の検討の課題が残っているということについて答弁があったわけであります。

 条約に基づいて設けられた委員会が国内判決と異なる見解を示した場合にどう対応するかとか、あるいは、司法手続が行われている最中に見解が示された場合などにどのように対応するかなど、政府としましても、これまで十九回にわたって研究会を行って議論してきたということを答弁させていただいた次第であります。

 ぜひ政府としましても、引き続き真剣にこの課題について検討を進めていきたいとは考えております。またぜひ、こうした取り組みにつきましてもさまざまな御意見を各方面から賜りたいと考えます。

藤丸分科員 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて藤丸敏君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、初めに東村高江のオスプレイ着陸帯の問題について質問をいたします。

 政府は、昨年十二月二十二日、菅官房長官やアメリカのケネディ大使が参加して、北部訓練場の一部返還を祝う返還式典を開催いたしました。政府は、沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後最大の返還だと強調しております。

 ところが、地元紙の報道によると、H地区とN1地区、そこの完成した着陸帯で、盛り土したのり面から水がしみ出して変形している場所が確認され、補修工事を行っていたことが報じられています。土木に詳しい人の話によると、土が十分に締め固められていないためで、業者が土を固める転圧の工程を怠ったのではないかと指摘をしております。

 防衛省、事実関係を説明していただけますか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年末に完成した北部訓練場のヘリパッドにおいて、一月に、御指摘のとおりでありますが、N1地区においてのり面の一部から水がしみ出していること、そして、H地区においてはのり面の表面の張り芝の一部がずり落ちていることがそれぞれ確認されました。

 現在、これに関する補修を実施しておるところでございます。二月中に完成を予定しておるところでございます。

赤嶺分科員 雨の影響だったと言われておりますが、そうですか。

深山政府参考人 沖縄防衛局において原因を調査いたしましたところ、N1地区については、のり面に芝を張る作業を完了する前に雨水が内部にしみ込んで脆弱となって、その後、雨水が入ってきたということが原因と考えられるということでございまして、現在、のり面の一部を補修するとともに、水抜きのパイプの設置等によって排水を行い、こうしたことが再発しないような対策を講じております。

 また、H地区については、雨の影響で表土がずり落ちてしまったというものだと考えております。

赤嶺分科員 私、土木に詳しいものでは全くないんですが、ただ、完成した着陸帯が雨が降っただけで補修が必要になるような工事をやっていたのかと、素人でも疑問に思います。

 転圧の工程を怠った事実があるのかどうか、その点はどうですか。

深山政府参考人 現在、転圧も含めまして、特に工程を、何かを行わなかったためにこうしたことが出たとは我々認識しておりません。

 ただ、結果としてこのようなふぐあいが生じたということは大変遺憾であるというふうに思っております。

 現在、補修に当たっているところでございます。

赤嶺分科員 きちんと、どんな作業の結果という認識は全くされていないようです。

 結局、返還式典に間に合わせるための突貫工事が原因だった、みんな、そのように見ております。そうであれば、極めて重大な工事のやり方だったと言わなければなりません。

 報道によりますと、関連工事そのものも終わっておらず、歩行訓練ルートやG地区、H地区への進入路の工事が続いていることが報じられています。七月から八月ごろまでかかる見込みと伝えられております。

 防衛省に伺いますが、どこの工事が残っていて、いつまでかかる見通しですか。

深山政府参考人 北部訓練場につきましては、ヘリパッドを既存の訓練場内に移設することによりまして、その過半、約四千ヘクタールの土地の返還をするということで日米で合意いたしまして、昨年七月の工事再開以降着実に進めてまいりました。その結果として十二月に返還を実現いたしました。

 その上で、この返還に当たりまして、進入路等についても、米軍の当面の運用に必要な整備は先般行ったわけでございますけれども、一方で、継続的な運用を可能とするための補強工事は引き続き行うこととしておりまして、具体的には排水路の整備、ガードレールの設置等を現在実施しております。

 この補強工事については本年夏ごろの完了を目指しておりまして、防衛省としては、環境の保全及び施工の安全に最大限配慮しつつ、この工事を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

赤嶺分科員 七月から八月ぐらいまでかかると。過半の返還をする条件の着陸帯、完成したといいながら、こういう状態なんですね。

 歩行訓練ルートは二月じゅうにも完成する見通しと報じられておりますが、歩行訓練ルートも含めて夏ごろまでかかる、そういうことですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 最終的には、歩行訓練ルートの一部を含めまして夏ごろまでの完了というのを目指しております。

赤嶺分科員 実際には完成していなかったのに返還式典をやったのかという、過半の返還をアピールするための、そういう工事のやり方だったのかという印象を免れません。

 防衛省は、これまで、絶滅危惧種ノグチゲラの営巣期である三月から六月は重機を使用した工事は行わないと説明をしてきました。その方針は今後も変わらないと理解していいですね。

深山政府参考人 御指摘のとおり、北部訓練場については、今現在、継続した運用を可能とする補強工事を行っているところでありますけれども、私どもで自主的に実施した環境影響評価によりまして、建設機械の騒音による影響を回避するため、ノグチゲラ等の多くの貴重な鳥類の営巣期間である三月から六月ごろについては建設機械による土工事は実施しないということといたしております。

 いずれにしても、防衛省としては、環境の保全及び施工の安全に最大限配慮する工事を進めております。この三月から六月ごろまで土工事を実施しないという方針は変えておりません。

赤嶺分科員 土工事というのをもうちょっと詳しく説明していただけますか。

深山政府参考人 土工事と申しますのは、建設機材を用いましたいわば土木工事という認識でおります。

赤嶺分科員 それはトラックも含まれますね。

深山政府参考人 トラックの使用も含まれます。

赤嶺分科員 政府は、本土復帰後最大の返還だ、このように強調していますが、問題は、高江上空での米軍機による飛行訓練が激しさを増していることです。

 防衛省には、米軍機の飛行に関して住民からの苦情や自治体からの情報が寄せられていると思います。昨年の返還以降の高江での米軍機による飛行や騒音の発生状況について、どのように認識しておられますか。

深山政府参考人 昨年の十二月の返還式においても、稲田大臣から、防衛省としては、引き続き米側と協力して、集落上空の飛行を避けるなどの地元の皆様の生活環境への配慮が十分得られるよう取り組んでいくとお話をさせていただいたところでございます。

 防衛省としては、米軍機の飛行の状況の全てを承知しているわけではありませんが、例えば、先月一月の二十四日夜、東村高江区集落周辺における米軍機の飛行があったという訴えを受けておりまして、これにつきましては、米軍に対し、住民の皆様への影響を最小限にとどめることなどを申し入れいたしまして、関係自治体の皆様に対しても、この米軍への申し入れ状況を御説明しているというようなことは行っておるところでございます。

赤嶺分科員 住宅地上空を飛ぶことを避けるために対策をとってきたと思いますが、どんな対策ですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅地上空の飛行を避けるために私どもが行ってまいりました対策といたしましては、例えば、住宅地や学校上空に航空標識灯、これを、東村で申しますと三カ所設置をいたしました。こうしたことをいたしまして、そこに学校あるいは住宅があるということを示して、その上空の飛行を回避することが可能になるような手だてを講じているところでございます。

赤嶺分科員 私、この週末に高江に行ってまいりました。区長さんや住民の声を聞いてきました。

 航空標識灯というお話をしますと、地元の皆さんは、飛行回避灯、このように説明を受けてそう呼んでいると言いましたが、全く効果はないと口々に言われていました。それどころか、明かりを目指して飛んでいるのではないか、こういう声まで出ていました。最初は高江の集落の離れたところを旋回しているけれども、だんだんその航空標識灯の明かりを目標にしているのではないかと思われるような集落上空の飛行になって、近づいてきている。

 防衛省は、その航空標識灯について、集落上空の飛行は回避されているのか、飛行の実態、把握しておりますか。

深山政府参考人 一々の飛行のコースについて全てをつまびらかにしているわけではございませんけれども、先ほど申しましたように、地元から騒音等についてお話があった場合には、我々は米軍に申し入れる等のことをしております。

 また、今、航空標識灯が役に立っていないのではないかという御指摘があったところでございますけれども、これは当然米側にも累次、繰り返しにわたって、航空標識灯が設置してあり、そこを回避して訓練等を行うべき旨を申し入れているところでございます。

 航空機の運用が地元の皆様の生活に与える影響が最小限となるように配慮することをこれまでも申し入れておりますが、今後とも引き続きこのような努力は重ねてまいりたいと思っております。

赤嶺分科員 資料が配付されていると思いますが、N4地区の着陸帯から約四百メートルのところに住んでおられる住民の方、安次嶺雪音さんという主婦の方ですが、これは自宅で撮影したものです。自宅の真上をオスプレイが飛んでいます。午前中は外に出かけていて、家に帰るとオスプレイ二機が何度も何度も旋回飛行をしていたそうです。

 この方は、たまりかねて、米軍機が飛ぶたびに東村に抗議のメールを送っているそうです。私もそのメールを見せていただきました。幾つか御紹介をさせていただきます。

 一月二十七日、きょうも今もオスプレイが何度も真上を飛んでいます、すぐに対応をお願いします。

 一月三十日、おはようございます、今もオスプレイが我が家の上空を飛び始めました、対応よろしくお願いします。

 一月三十一日、きょうも先ほどからヘリが上空を飛んでいます、対応をお願いします。

 二月一日、きょうも今オスプレイが飛んでいます、対応お願いします。

 二月二日、ここのところ、ほぼ毎日のようにヘリやオスプレイが飛んでいます、きょうは二機がぐるぐるぐるぐる飛び回っています、毎回対応をお願いしますと訴えていますが、対応はしていただけていますか、六カ所のヘリパッドが全て使われ始めたらと考えただけでも恐ろしいです。

 二月八日、二十時二十四分ですが、オスプレイが飛び始めました。

 二月九日、十九時二十分から、また上空をヘリが飛び始めました、多分オスプレイだと思いますが、暗いので確認できません、窓ガラスが揺れるほどです、対応をお願いします。

 二月十五日、今二十一時二十二分ですが、まだ飛んでいます、毎日ですよ、余りにもひど過ぎます、強く抗議してください、この状況は異常です、私たち家族はどうしたらいいんですか。

 これは、高江集落、着陸帯の四百メートルのところに住まいを持っておられる安次嶺雪音さんという方が、オスプレイを確認して、東村にメールで要請をし、抗議をし、いつまでたってもとまらない、どうしたらいいかと。絶望のふちに立たされております。

 外務大臣に伺いますが、政府は、沖縄にオスプレイを配備するときに、住宅地上空の飛行は避ける、このように約束をいたしました。このメールの内容を聞いて、大臣はどう思われますか。

岸田国務大臣 まず、昨年十二月の二十二日に、北部訓練場の過半、約四千ヘクタールの返還が実現したわけですが、ヘリパッドの移設により影響を受ける国頭村あるいは東村の皆様への配慮が大切であるということ、これは強く認識をしております。

 そして、米軍による飛行訓練等は日米安全保障条約の目的を達成するために重要ではありますが、ただし、米軍は全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全等に妥当な配慮を払って活動すべき、これは当然のことであると思います。

 そして、オスプレイにつきましては、平成二十四年の日米合同委員会合意において、「MV―22を飛行運用する際の進入及び出発経路は、できる限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定される。」、このようにされています。この合意等との関連において、我が国としまして、米側と議論をし、そして必要な申し入れを政府として行ってきているところであります。

 引き続きまして、こうした認識に基づいて米側への働きかけは続けていきたい、このように考えます。

赤嶺分科員 その合意が生きたものになっていない。日米間で合意したにもかかわらず、実際にオスプレイの離着陸で毎晩のように苦しめられている、そういう被害者が出ているわけですね。そういう被害者が出ている段階で、いや、合意をしている、安全に配慮している、公共の安全に配慮している、申し入れていると。これは申し入れているはずですよ。そうでしょう、防衛省も。

 高江のこの問題について、あなた方のところにもメールは行っているはずですよ。違いますか、メール、行っていませんか。

深山政府参考人 私どものところにも、例えば東村の問題については東村からこういうことがあったというお申し出はいただいております。

 先生が今読み上げられましたメールの内容についても、例えば、二月七日のメールの内容とほぼ同等のこと、あとは二月二日にも、今読み上げられた内容とほぼ同じことにつきましては、私ども、メールを直接いただいているかどうかはちょっと確認をいたしますけれども、この内容につきましては、東村役場を経由いたしまして沖縄防衛局も受け取っておるところでございます。

 また、先生がおっしゃいましたように、我々も、この騒音問題につきましては十二月から一月にわたりまして累次申し入れを行っているところでございます。

赤嶺分科員 申し入れを行っても結果が出ないんですよ。異口同音に、アメリカは守らないと言うんですよ、日本政府は守らせ切れないと言うんですよ。そんなことになったら、日米合同委員会合意の中身は全くないということになるんじゃありませんか。日本の外交というのはこういうものなのかという疑念を感じざるを得ません。

 もう一度、岸田外務大臣の考えを述べていただきたいと思います。

岸田国務大臣 平成二十四年の日米合同委員会の合意は、先ほど申し上げさせていただきましたように、「できる限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定される。」、このようにされているところであります。この内容等も念頭に議論を行っているところであり、米側にも申し入れを行っています。

 米側が公共の安全あるいは住民の皆さんの平穏な生活のために妥当な考慮を払う、これは当然のことであると思います。引き続き申し入れを行っていきたいと考えます。

赤嶺分科員 できる限り努力すると言ってみても、米側から見れば、できる限りの範囲であって、自分たちも努力した結果がそれだと言わんばかりの態度であります。

 外務大臣、過半の返還の条件としてオスプレイの着陸帯をつくって米側に提供する。米側は、過半の返還地のオスプレイの着陸帯あるいはヘリの着陸帯は使用不可能だと言っていたんですよ。使っていない地域を返したら、日本政府が新しい着陸帯を六カ所つくってくれて、自分たちの作戦能力も向上する。

 いわば、県民の負担の軽減ではなくて、たくさんの土地が返還されてくる問題ではなくて、使えなくなった土地でも、移設するときは無理な条件をつけて、住民に本当に絶望の、この方、今絶望のふちに立たされていますよ。私は、そこのところを、あの北部訓練場問題、高江の問題というのは何だったか、決して負担の軽減ということを口にしてほしくはないということを強く思っております。

 住宅の上空を飛行するだけではないんですね。宜野座村の城原区に泉さんという方が住んでおられます。この方は、自宅から三百八十メートルの場所にファルコンという米軍の着陸帯があり、屋根をかすめるようにしてオスプレイが低空で飛行訓練を繰り返すところです。先ほどの高江の安次嶺さんのところは着陸帯から四百メートル、城原の泉さんのうちは三百八十メートル。

 ここで何が起きているか。ここでも、泉さんのうちも、予算委員会でも取り上げたことがありますが、きょう取り上げたいのは、十二月の上旬、三日連続でオスプレイがトンブロックをつり下げて飛行訓練を行いました。泉さんの御自宅の上空付近を何度も旋回飛行をしておりました。施設・区域の外であります。沖縄防衛局の職員もその場におりました。自分の目の前でつり下げ訓練が繰り返されている光景を見て、何度も泉さんにその場で頭を下げていたそうです。

 ところが、政府は、施設・区域の外部を飛行したか否かについては確認できないとその後説明し始めたんですね。

 防衛省に伺います。

 防衛局の職員の目の前で、施設・区域の外でつり下げ訓練が行われていたにもかかわらず、なぜ確認できないんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、昨年の十二月六日から八日の間、キャンプ・ハンセン付近の住宅地の近傍において米軍オスプレイがつり下げ飛行を実施したということは、そのとおりの事実を我々も把握いたしております。

 一方、それが施設の区域内、区域外であったかということにつきましては、実際その場に当局の職員がいましたが、正確には判定できませんでしたので、我々、施設の区域内であったか区域外であったかについては確認ができなかったとその後お答えをしているところでございます。

 その一方で、米軍に対しては、いずれにしましても、住民の皆様への影響を最小限にとどめるべきであることなどを六日、七日、八日にわたって申し入れを実施したところでございます。

赤嶺分科員 トンブロックをつり下げて区域外を、つり下げ訓練がどんなに危険なものであるか、そういうのを防衛局の職員も一緒に見て、その場では頭を下げたわけですよ、申しわけないと。防衛局長は、異例なことですが、その報告を受けて、宜野座村長に謝罪に行ったわけですよ。宜野座村長に行くところまでは区域外だという認識を持っていたんですよ、持っていたんですよ。

 それが、米軍の司令官に会ったら、米軍の司令官が、いや、あれは施設の中だったか外だったかよくわからぬねということを米軍が言い出したら、途端に防衛局も態度を変えて、よくわかりませんと。そんな県民の安全にかかわるようなことが、米軍の司令官の一つで、目撃者が防衛局の中にもいながら、事実をゆがめた態度をとり続ける、こういうのは本当に許せないと思うんです。

 外務大臣、そこで伺いますが、米軍の運用の問題に手をつけないで、幾ら住民生活への配慮と言っても事態は何も変わりません。

 泉さんは、泉さんの自宅にも航空標識灯がついているんですよ、航空標識灯を目がけて飛んでくると言うんですよ。航空標識灯を撤去せよと言っているんですよ。どうも標識灯がついてから頻繁に来るようになっていると。私は、いやいや、総理も、避けて飛ぶと言っていましたよと。そんなことじゃないということを言っているんです。

 そもそも、外務大臣、住宅から数百メートルの場所に着陸帯が存在すること自体がおかしいのではありませんか。集落に近い着陸帯を撤去しない限り、住民の安全を守ることはできないのではありませんか。いかがですか。

岸田国務大臣 先ほども少し申し上げさせていただきましたが、米軍の航空機の運用に当たっては、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきであるということ、これは言うまでもないことであります。住民の皆様への影響をできる限り小さくする必要があると強く認識をしております。

 そして、御指摘の、宜野座村城原区の住宅地周辺における米軍オスプレイのつり下げ飛行については、外務省としましても、米軍に対して申し入れを行っているところです。昨年十二月九日、川田沖縄担当大使からニコルソン在日米軍沖縄地域調整官に申し入れを行ったところであります。

 いずれにしましても、住民の皆様の生活の安心、安全、これは最大限配慮されるべき大変重要な課題であると認識をいたします。

 さまざまな現実を前にしながらも、ぜひ政府としましても、最大限こうした住民の皆様方の声に応えるべく、米側への働きかけなど努力を続けていきたい、このように考えます。

赤嶺分科員 時間がなくなりましたけれども、やはりその場しのぎの対応を続けていても事態は何も変わらないと思うんですよ。

 復帰前の一九六五年、当時十歳だった棚原隆子ちゃんが自宅近くで、米軍機から投下されたトレーラーの下敷きになって死亡いたしました。こういう痛ましい事故を二度と繰り返してはならないと思うんです。

 集落に近い着陸帯、城原区も、それから高江でも直ちに撤去することを強く求め、質問を終わります。

葉梨主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

葉梨主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小沢鋭仁君。

小沢(鋭)分科員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 きょうは分科会でございますので、ある意味では個別具体的な話としてラオスの話をさせていただきたいと思っているんですが、そうはいっても、その前に若干、大所高所のODAの話から入らせていただきたいと思います。

 そしてまた、その前にちょっと変わった質問をさせていただくんですが、この前、安倍総理がトランプ大統領と会談をして、その後ゴルフを一緒にされた、こういう話があって、トランプ大統領の言葉が報道で伝わってきて、食事をするよりゴルフをやった方がずっと親しくなれるんだ、こういうような話も伝わってきているんですけれども、そういう意味では、ある意味ではゴルフ外交、こういうような言葉も新聞に載っておりました。

 私は、決してこれを批判する立場からではなくて、外交関係で、各国の大使館、領事館、公館が、そういった各国の政治家、経済界の皆さんたちとゴルフをするという機会は多いんだろうと思うんですね。それもまた、実際、私も日本で、我が国で、どこの国とは申し上げませんけれども、大使とゴルフをしたこともありますし、そういった意味ではゴルフというのは大変有効な、そういうコミュニケーションのツールだとも思うんですが、まず大臣、御所見をお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、外交の世界、諸外国の動向などを見ましても、ゴルフというのは外交を行う上において大変重要な、そして有効なツールの一つとして扱われていると認識をしております。

小沢(鋭)分科員 私はたまたまゴルフ議員連盟というのの幹事長をやらせていただいていまして、衛藤先生が会長をずっとお務めになっていて、今も横に来て、ねじを巻かれたんですけれども。

 それで問題は、大臣、これはゴルフ議連でずっと提言、要請をしておるんですが、公務員倫理規程というのがあって、そこには、利害関係者とゴルフをしてはいけないという規定があるんですね。ですから、大使たちもなかなかやりづらい、こういう話があるやに聞いているんです。やるにしても、いわゆる普通の昼食会、夕食会というのは公費で出るんでしょうけれども、そういう話があると自腹でやらざるを得ないというような話、これは、これもどこの国とは言いませんが、我が国の大使ですけれども、そんな話を聞かせていただいています。

 ですから、今、そういう話を大臣が御存じかどうか、あるいはまた、我々の最大のポイントは、オリンピック競技になっているスポーツを利害関係者とやってはいけないという、時代錯誤のこんな規定があっていいんだろうか、こういうふうに思っておりまして、大臣の御所見を聞かせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘のように、国家公務員倫理法そして倫理規程によって、国家公務員は利害関係者とゴルフをやることは禁じられているということ、これは承知をしております。

 ただ、その利害関係者の中には外国政府関係者は入らないというのがこの法律の読み方であるということも承知をしております。だからこそ、外交においてゴルフというものは有効なツールとして活用されているんだと思います。

 ただ、法律はそういうことではありますが、やはり国民から見て不信とか疑惑を招いてはならないわけでありますので、法律はしっかり守った上で、法律の範囲内で適切にゴルフを活用していく、これがあるべき姿なのではないかと考えます。

小沢(鋭)分科員 今、初めて、外国政府の方々は含まれない、こういう話を聞かせていただきました。政治家はどうなんでしょう。

 それと、ぜひ、これを機会に、大臣にも、外交関係でもそういったことがあるんだということで、倫理規程からの削除に御協力をいただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 国家公務員倫理法そして倫理規程におけるゴルフと外国政府関係者の関係については、先ほど申し上げたとおりだと理解しております。

 ぜひ、ゴルフというものが国際社会でどのように取り扱われているか、評価されているか、こういったこともしっかりと念頭に、これを前向きに活用することは大いに考えるべきではないかと思います。

 ただ、国家公務員倫理法、倫理規程そのものをどうするかということについては、外交の立場だけではなくして、もう少し幅広く議論しなければなりませんので、これは政府全体として議論すべきことであると思います。外交における取り扱い、外交との関係も念頭に、これは政府全体として議論をすればよいのではないかと私の立場からは考えます。

小沢(鋭)分科員 今、後ろを見ましたら、保岡先生もいらっしゃって、保岡先生もゴルフ議連の大幹部でいらっしゃいます。

 いずれにしても、今大臣からは政府の中でと、こういうお話がありました。ぜひ政府の中で議論を進めていただきたい、こういうふうに思います。二〇二〇年の東京オリパラまでにはぜひそういったことがないようにしたい、こういうふうに思っておりますので、御協力をぜひお願いしたい、こういうふうに思います。

 それでは、本題の方に移らせていただきます。

 ODA並びに円借款、民間の経済協力も含めて、こういう話になるんですが、安倍総理になってから、安倍総理は、今私の手元にある数字で、延べ百十カ国ですか、外遊をされた、こういう話があって、大変外交で頑張っていられる、こういうことでございます。

 日本維新の会は、総理だけではなくて、外務大臣を含めて、そういう外交関係で外に出るのは大いに結構だということを発足の当初から言っておりまして、そういったときに国会審議は副大臣とかそういった方々で回していけばいいんだ、こういうことを一貫して言っておりますので、このことは大いにサポートをさせていただきたいと思います。

 きょうは予算委員会ですから数字の話を聞かせていただきたいんですが、行きますと、一言で言うと、あっちに経済協力をする、こっちに経済協力をする、こういう話がいっぱい出てくるんですね。ですから、安倍総理になって、外交関係で頑張るのはいいけれども、お金をやたらとばらまく、こういう話が、国民は心配をしている向きもあるんですが、実際問題、数字の上でどんななんでしょうか。

 細かい数字はいいですから、ざっくり言って、安倍総理になって、過去と比べて大幅にふえたのか減ったのか。ODAだけでなくて、特に円借款が去年なんかすごくふえていますね。ですから、そういった、ざっとの数字で結構ですから、傾向をお聞かせください。

森(美)政府参考人 お答えいたします。

 現在御審議いただいている平成二十九年度予算案、ここにおけます一般会計ODA予算が、政府全体で五千五百二十七億円、お願いしております。二年連続で増額計上していることになりますが、これは、ピーク時の、平成九年度の約一兆一千六百八十七億円に比べると半減しておりますのが現状でございます。

 この中で、政府全体のODA予算の大宗を占める外務省ODA予算というのが四千三百四十三億円を計上しておりまして、これは七年連続の増額となります。

 次に、前年度の補正予算も含めた外務省のODA予算、この計上額は、第二次安倍政権発足後の五年間、これが平成二十五年度から平成二十九年度になりますが、この平均で約五千七百七十億円でございまして、この額は、ほぼ同規模で推移しております。

 直近、平成二十九年度当初予算及び平成二十八年度補正予算を合わせた金額におきましても、同じく、約同額の五千七百八十三億円となっております。

小沢(鋭)分科員 余りふえていない、こういうことですね。

 ODAは、本当に、ピーク時から半減みたいな大変厳しい状況だというのは、私も実は承知をしているところであります。

 ただ、今申し上げたんですが、有償資金協力が平成二十七年度は前年比で一二二・六%増、こういう話になっていますよね。ですから、ODAは厳しいけれども有償資金の方でかなりやっている、こういうことはないんでしょうか。

森(美)政府参考人 円借款の計上額というのは、その年にどれぐらいプロジェクトを積み上げることができるかによって年々推移しております。

 ただ、円借款をカウントするときに御注意いただきたいのは、円借款は、必ずしも外務省のODA予算だけを原資にしておるわけではございませんで、過去の有償資金協力の回収金から得られた自己資金ですとか、それから財政投融資特別会計からの借り入れも主な財源としておりますもので、これらのバランスの上から、額がおのずから決まってくるということになります。

小沢(鋭)分科員 大臣におかれては、ぜひ国民の皆さんたちに対して、地元なんかに帰ると、国の借金が大変で、社会保障の費用も大変で、我々の生活も苦しいのに、海外にどんどんどんどんそうやってお金をばらまいていいのか、こういうような、かなり素朴な意見もあるんですね。そういった国民に対して、本当に日本にとって有効なんだということを言っていかなければいけないわけですが、大臣としてのその辺のお考えをお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国のODAというのは、開発途上国から、質の高いインフラ整備等の観点からも高く評価されているというふうに思いますし、それから、相手国との関係を強化する、あるいは我が国が国際社会において主導的な役割を果たす、こういった意味で、重要な外交手段の一つでもあると認識をしております。そして、こうした国際社会に協力することは、ひいては我が国の国益にも裨益するものであるという考え方も大事だというふうに思います。

 そして、国連においては、先進国に対して国民総所得の〇・七%のODA支出を求めること、これを決定しているわけですが、我が国の支出は国民総所得の〇・二一%にとどまっているということであり、国際的な目標にはまだはるかに届かない、こういった現状にもあるわけです。

 我が国としましては、厳しい財政状況も勘案しながら、経済支援協力というもの、国の予算だけではなくて民間も活用するとか、あるいは、先ほど議論になりました円借款、これは必ず返ってくるお金でもあります。こうしたさまざまな制度を組み合わせて、工夫しながら、最大限の効果を上げていく、こういった努力も必要だと思います。

 ぜひ国民の皆様方に御理解をいただくために、今言ったさまざまなODAの観点をしっかり説明して、まず、ODAがいかに有効なものであるか、そして、日本はもっと頑張らなきゃいけないという、この国際的な現状をしっかり説明する、さらには、政府として効果的なODAの活用に努力しているんだということ、こういったことを丁寧に説明することによって国民の理解を得ていくこと、これが重要ではないか、このように思います。

小沢(鋭)分科員 岸田大臣らしい、大変生真面目な御答弁をいただいたというふうに思います。

 まさにそのとおりだと思うんですが、私なんかは、ある意味でいうと、このくらいお金を使うと、逆に日本のいわゆる国際収支でこのくらい戻ってきて、ある意味では、それのシーズマネーみたいなものですよみたいなことを言うと、意外と国民の皆さんは、ああ、そういうものだよねと言って、後でもうかるんだったらいいよねみたいな話もあったりするんですが、それは、ある意味ではレトリックとしてはちょっと、自分としてもそこまで言っていいかなと思いながら言っているような話があります。

 それから、今の話に関係するんですけれども、新聞報道を見ていましたら、首相、フィリピンに一兆円規模支援という新聞が一月十三日にありました。ドゥテルテ氏に表明と。

 まあ、ドゥテルテ氏に対する評価は、トランプさんに対する評価と同様で、いろいろな評価があり得るわけですが、ドゥテルテ氏に一兆円もどうしてというような感じの記事だったわけですけれども、これの内訳、意味はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、どうしてフィリピンにそれだけ支援をするのかということですが、基本的にフィリピンという国、ASEANの中にあっても、自由や民主主義や法の支配、人権、こういった基本的な価値を共有する重要なパートナーであると認識をしています。

 フィリピンにとっても日本は最大の貿易パートナーであり、両国間の関係は大変重要であると認識をしているわけですが、それに対して一兆円支援をするということについて御指摘がありました。

 内訳ということですが、まず、一兆円全部、政府のお金を出すというのではなくして、これは民間も合わせたお金であります。それから、五年間で一兆円ということであります。だから、官民合わせて五年間の積み上げで一兆円という支援を表明したというのが、この内訳、実際のところであります。

小沢(鋭)分科員 確かに、過去五年間の実績を見ると八千五百七十四億円ですから、そういう意味でいうと、一兆円というこの報道の見出しには驚くんですけれども、そういった過去との比較を見ても、そんな大した額ではないのかもしれません。

 そして、ある意味では、今大臣もおっしゃられた、外交的な、地理的、地政学的というんでしょうか、そういったポイントもあるように思うんですが、そこはいかがですか。

岸田国務大臣 フィリピンとの関係、先ほど経済の話はさせていただきましたが、地域の安全保障ということを考えましても、日本とアメリカは同盟国ですが、フィリピンと米国も同盟国ということであります。

 こうしたフィリピンの安全保障における存在感、重要性、こういったことも考え合わせますときに、日本とフィリピンの関係を安定させていく、このことは大変重要な取り組みではないか、このように考えます。

小沢(鋭)分科員 次に、実施機関といいますか、実際に現場で経済支援をしている組織として、JICAとジェトロがあります。それぞれの組織の規模、それから予算等を教えてください。

森(美)政府参考人 お答えいたします。

 まず、外務省が所管しておりますJICAの方でございますが、JICAの職員数は、平成二十九年二月現在で、国内千四百四十三名、海外四百三十九名、合計千八百八十二名となります。それから、予算は、一般勘定予算として、JICA運営費交付金というのを、二十八年度当初予算では千四百九十億円、それから二十九年度当初予算では千五百三億円をそれぞれ外務省から計上しております。

 JICAの役割といたしましては、御案内のとおり、日本のODAの実施機関として、技術協力、有償資金協力、無償資金協力を中心とした援助手法、これを組み合わせまして、開発途上国が抱える課題解決を総合的に支援しておるところでございます。

赤石政府参考人 続きまして、経済産業省の所管しておりますジェトロについてお答えいたします。

 ジェトロの常勤職員数は、やはり二十九年二月現在で、国内千二十八名、海外七百四十名の合計千七百六十八名となっております。予算は、運営費交付金を、二十八年度当初予算で二百三十八・六億円、二十九年度の当初予算案で二百三十九・二億円、それぞれ計上しております。

 東南アジアを含む各地域への海外展開を行う日本企業を対象とした支援につきましては、最初に、現地制度情報の提供であるとか、実務上の課題の相談対応であるとか、それから次に、ビジネスをさらに広げるための海外展示会、日本国にバイヤーを招聘する商談機会の提供であるとか、それから、海外現地ニーズ把握を目的とした海外の現地調査への支援など、こういったものを段階に応じて行っているところでございます。

小沢(鋭)分科員 このそれぞれの機関の役割、仕事の内容を、ぜひまた外務委員会、経産委員会等々で聞かせていただきたいと思います、時間がないので先に進みますが。

 ただ、さっきも申し上げたJICAの方は、円借款の方の話になると、ある意味でいうと銀行みたいな仕事を担っているわけですね。私がかつて東京銀行にいたものですから、そういったことでいうと相当の額が、先ほどの予算は千五百億くらいですけれども、円借款、特別会計を含めると相当の額を担っている、こういうふうに承知をしておりまして、ぜひそれが効率よく回るという話に頑張っていただきたいな、こういうふうに思います。またいずれ議論させていただきます。

 ラオスに入ります。

 ラオスですけれども、先ほども、もう大臣とちょっと雑談ふうに話をしましたが、インドシナのラストランナー、こう言われていて、国民の皆さんに言っても、なかなか、ラオスの場所がどこにあるのかというのも意外と知らない。ラオスに行くと言ったら、ああ、北海道に行くのね、こう言われて、それは羅臼だ、こういう話も出るくらいということなんです。

 要は、きょうは二つ申し上げたいんですが、一つは、ラオスが最近、インドシナのまさに電力供給国として大変注目をされている、こういう話が一つあります。

 国境を越えた電力供給というのは、インドシナ半島ではよくありまして、日本もそれをやれと私はずっと言い続けているんですが、経産省はなかなかうんと言わないんですけれども、いずれにしても、電力供給国としての位置づけが一つあります。

 それから、もう一つは、物流の拠点としての役割があります。

 国民性は大変親日的で、穏やかな国民性なので、そういった意味では、日本の企業ももっと出た方がいいんじゃないか、こうも思うんですけれども、先ほど申し上げたように、とにかく認知度が極めて低い。私は、大変重要な国だ、こう思っておるんですけれども、経済協力も東南アジア全体の二%くらいなんですね、これは平成二十七年の二国間のODA供与の実績ですけれども。

 大臣にとって、このラオス、どんなふうにごらんになっているでしょうか。昨年、ASEANの首脳会議で行かれたと思いますが。

岸田国務大臣 ラオスという国ですが、まず位置として、これはインドシナ半島の中心に位置しています。ですから、ラオスの発展というのは地域の平和や安定に大きく影響するものであると思いますし、あわせて、今、電力とか物流のお話がありましたが、この地域の連結性を強化するという意味で、ラオスという国は鍵になる国ではないか、このように考えます。

 そういった観点から、我が国は、額は多くはないかもしれませんが、ラオスの重要性に着目して、ラオスにとっては、我が国はトップドナーとして位置づけられていると認識をしております。

 そして、去年、ラオスはASEANの議長国でありましたので、私も二度、ラオスを訪問させていただきました。サルムサイ外務大臣との外相会談など、ラオスの要人とさまざまな意見交換を行ってきたわけでありますが、そういった要人往来等を通じましても関係の安定化に努めてきた、こういった国であります。

 ぜひ、ラオスの戦略的パートナーとして、政治、経済のみならず、文化などさまざまな分野を通じて関係を安定化させていきたいと考えます。

小沢(鋭)分科員 ぜひ、今の大臣のような御認識であれば、さらにいろいろなやはり取り組みをしていただきたいと申し上げたいと思います。

 その中でも特に、今お話ありましたが、ODAはトップドナーなんです。でも、民間の金が全然入っていないんです。民間の貸し金だと、多分六番目くらいだったと思います、これははっきりした数字じゃありませんが。

 そういう中で、さっき申し上げた電力供給国としての位置づけがあって、日本ももちろん支援はしているんですけれども、これは私、環境も専門にやっている人間からしたら、まさに二国間のクレジットなんかの話も十分あり得る話でありまして、そういった意味では、もっとそういった電力、これは水力が今まではメーンですけれども、太陽光もあれば地熱もあるんです。温泉が最近あちこちで出ていまして、地熱も十分やれる、こういう話なんですが、そういったところはいかがでしょうか。

四方政府参考人 ラオスは、メコン川流域に位置しまして、豊かな水資源を有していることから、ASEANやメコン地域の電力供給源としての役割が大いに期待されております。さらに、近年は、ラオス自身の発展に伴う国内電力需要の伸びも大きい状況にございます。

 このため、ラオスにおける電力整備は、メコンを初めとするASEAN地域全体の経済発展を支えるという観点に加えまして、ラオス国内の経済社会開発の実現を通じた、ASEANやメコン地域、域内の格差是正という観点からも重要であると考えております。

 委員御指摘のラオスの電力分野につきましては、我が国民間企業が進出をしておりますとともに、ODAを通しても、電源や送電網といったインフラ整備やソフト面での支援を行っております。

 委員御指摘の太陽光発電につきましても、二〇一〇年に、太陽光を活用したクリーンエネルギー導入事業で、ビエンチャン国際空港に太陽光パネルを設置する等、既に協力を実施してきておるところでございます。

 我が国としましては、引き続き、ラオスの電力分野を官民一体となって支援を強化してまいりたいと考えております。

小沢(鋭)分科員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 まさにラオスの産業革命、こうも言われていて、つい先般は、マレーシアに百メガワットの電力供給、輸出を決めたという発表がなされておりまして、タイにマレーシアにシンガポールに、こういう形で電力供給をしておりますので、日本の、これは民間でも十分いけると思いますので、ぜひバックアップをしていただきたいと思います。

 それからあと、物流の点で、道路であります。

 まさに先ほど大臣からもあったように、中心にありますから、ビエンチャン―ハノイ産業道路計画というのが今あるやに聞いておりまして、それがつながると、バンコクともつながるんですね。ここに対する支援はどのようになっていますでしょうか。ぜひ進めていただきたいと思いますが。

葉梨主査 森大臣官房審議官、簡潔にお願いします。

森(美)政府参考人 委員御指摘のとおり、ラオスは、ASEAN唯一の内陸国でございますので、物流の拠点として、今後とも大きな役割を果たしていくことが期待されております。

 我が国は、これまで東西経済回廊というのを初めといたしますインフラ整備、制度改善などの連結性を強化する支援を行ってきておりますし、特に、昨年九月に発表した日・ラオス開発協力共同計画におきましては、ラオスの周辺国との連結性強化というのを協力の三本柱の一つとして掲げております。

 具体的な物流支援に関しましては、御指摘を頂戴いたしましたルートも含めまして、関係国と今後とも緊密に協議いたしまして、ラオスと周辺国の連結性をいかに強化するかといった方向で、引き続き貢献してまいる所存でございます。

小沢(鋭)分科員 時間ですから終わりますが、ぜひラオス、よろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて小沢鋭仁君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。金田法務大臣。

金田国務大臣 平成二十九年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じまして、国民の皆様の安全、安心な生活を守りますとともに、国民生活を取り巻く状況の変化に応じた新たな政策課題に取り組むため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は、七千五百三億八千八百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されております法務省関係の東日本大震災復興特別会計予算額は、十四億五千百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願いを申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付をしてあります印刷物を会議録に掲載されますようお願いを申し上げます。

 以上であります。

葉梨主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま金田法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田所嘉徳君。

田所分科員 田所嘉徳でございます。

 葉梨主査、そして金田大臣、盛山副大臣、さらに井野法務大臣政務官には、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 まず、テロ等準備罪につきまして、たびたび予算委員会等でも取り上げられておりまして、今国会の重要法案として注目をされているわけでございます。

 まさにこの法案は、刑罰を科する、そういう重いものでありますので、確定的な解釈などは、条文に基づいてしっかりと審議をしていかなければならないわけでありますけれども、金田大臣におかれては、できるだけ現時点においても丁寧な答弁に努めておられまして、まことに御苦労さまなことだというふうに思っているわけでございます。

 テロ等準備罪を定めるということは、国際的なテロ等の脅威が高まっている中で、捜査協力、あるいは情報の共有、そういったことをもって、しっかりと国際的な犯罪を未然に防ぐため、非常に重要な意義があるというふうに思っております。

 しかしながら、この前段となるような法案がたびたび廃案になっている、三度も廃案になっているということを考えれば、やはり、犯罪とは関係のない一般の人々が処罰の対象になるのではないか、そういう不安がなかなか払拭できなかったんだろうというふうに思っております。どうかしっかりとその点を明らかにして、この条約が締結できるように努力をしていただきたいというふうに思っております。

 現在、法務省において、この法案の策定につきまして、全力で力を尽くしているところだと思います。私は、完成されたそういう法案に基づいて精緻な議論をするべきだというふうに思っておりますので、その内容についてきょうは質問はいたしません。

 しかしながら、一点だけ、今国会でも繰り返し問われておりまして、条約担保のための法案の立法事実とは何かという基本的な問題についてだけ、確認をさせていただきたいと思います。

 今回の法案の立法事実は、国際組織犯罪防止条約を締結するための必要性という点にあるというふうに理解をしております。一般論として、条約を締結するための必要性についても、立法の必要性を裏づける一般的事実、つまり、立法事実と言えるのだと考えますけれども、立法事実とはどのようなものかも含めて、内閣法制局長官にここで示していただきたいというふうに思います。

横畠政府特別補佐人 一般論として申し上げますと、立法事実とは、法律の必要性を根拠づける社会的、経済的な一般的事実のことでございます。

 憲法第九十八条第二項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定しており、我が国が締結する条約が定める義務を実施するために法整備の必要があること、すなわち、条約の国内担保法の整備の必要があるということは、立法事実となり得る事実であると考えられます。

 なお、一般に、ある条約の締結が必要であるという理由と、その条約を締結するための国内法の整備が必要であるという理由は、別物ではなく、重なり合っているものと理解しております。御指摘の検討中の案件について申し上げれば、テロ等の組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪に国際的な協力のもとで適切に対処する必要があるということが、まさに共通の必要性であると理解しております。

田所分科員 よく説明をいただきまして、ありがとうございました。

 このTOC条約は、既に世界で百八十七カ国が締結をしております。我が国を初め、締結していないのは、イランとかソマリア、南スーダンなど十一カ国のみということであって、私は、世界はかなりこれは必要と認めている、そういうものだというふうに考えております。

 そういう中にあって、我が国は一番そういうことに対する厳しい国であるということで、ある面、それは肯定もして、法の支配として徹底されているという面もあるんだろうと思いますけれども、しかし一方で、必要な法律が制定できないということは、この条約の、世界が国際的なテロの防止をするという観点からつくったものについて、やはり我が国においてほころびを生じさせてしまう、そういう問題がある。ですから、私は、日本国民のためだけでもなく、世界の安全のためにも、やはりしっかりと歩調を合わせるべく、この成立を期して頑張ってもらいたいというふうに思っているわけでございます。

 きょうの質問は、ただいまのテロ等準備罪も世界との関係でありますけれども、日本と世界をつなぐ法務行政という観点から質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 私も、あの赤れんが庁舎で仕事をさせていただきました。あそこに行くときに私が考えることは、非常に我が国が大きく発展した歴史というものを感じるわけでございます。

 今から百二十年前に、エンデとベックマンという、私は一級建築士であります、建築家が教えて、あの庁舎を建てたわけでございまして、その二十年後に辰野金吾が同じネオバロック様式で東京駅をつくったわけでありますが、そのように技術が移転してきた。さらに、法制度の中でも、これはしっかりと海外に学んで、今や世界に教えるようになった。私は、隔世の感があるというふうに思っているわけであります。

 今の不安定な世界の情勢を見ると、まだまだ法の支配というものとはおよそ縁遠い国家がたくさんあります。それらの中で、我が国が、これまでの経験を通じてしっかりと世界に貢献をしていくということは大変意義のあることだろうというふうに思っております。

 我が国は、初代司法卿である江藤新平が、精力的に法制度の構築に力を入れてまいりました。外国の進んだそれらを取り入れて、近代国家への道を歩んできたということでございます。その経験を生かして、法制度整備支援事業というものをしっかりと推進していくことが、我が国にとって、世界にとって、大変有用なことだろうというふうに私は考えております。それが、我が国のプレゼンスを確かなものにして、そして我が国の特性を生かした平和的な世界戦略であるというふうに考えております。

 そこで、法務省がこの法制度整備支援事業を行うに当たり、対象国との関係でどのようなことに留意をしているのか、その基本的なコンセプトと、この事業を行っていることの成果についてどのように捉えているのか、井野法務大臣政務官にお伺いをいたします。

井野大臣政務官 お答え申し上げます。

 我が国の法制度整備支援の重要な柱が二つございまして、一つが、相手国の自主性、主体性の尊重にあるというふうに考えております。すなわち、法制度自身は、やはりその国の歴史、文化、社会、そういったものに適合しなければならない。一方的に押しつけるものではなくて、そういう相手国の主体性、自主性を尊重した支援を行う必要がある、これが重要だと考えております。

 そしてもう一つが、単純に法律をつくるだけではなくて、法の執行、運用です。そういった制度整備や人材育成を含めた包括的な支援を行うこと、こういうことが大変重要な、我が国の司法制度支援の二つのポイントになっているというふうに考えております。

 このような支援は各国からも高く評価をされておりまして、継続的に支援要請を受けるとともに、相手国との信頼関係を強めることにも貢献しているものと考えております。

 具体的には、例えばベトナムにおいては、平成六年に支援を始めて以来、民法改正、民事訴訟法等の法律の制定であったり、二十年にわたる支援により、強い信頼関係を構築しているところでございます。

 今後も、こうした相手国のニーズに沿った形で司法支援制度を進めてまいりたいというふうに考えております。

田所分科員 わかりました。短絡的な利益を目的とするものではなくて、しっかりと相手国の事情を理解した上での支援ということは大変重要であると思いますし、日本的な支援のあり方というものをぜひ貫いてもらいたいというふうに思っております。

 しかしながら、一言言っておきたいのでありますが、この目的の中に、日本企業の海外展開に有効な投資環境の整備ということがうたわれております。私は、これは言わずもがなのことで、こういうことを余り前面に出さなくてもいいのではないかなというふうなことを思うわけであります。直接的な見返りというよりも、それが結局は大きく、高次元の成熟した世界をつくっていく、情けは人のためならずというような思いで、純粋に支援をしていただきたいなというふうに思っているわけでございます。

 そして、さらに、この法制度整備支援事業とともに、さらなる国際貢献として私が感じておりますのは、これまでさまざまな、我が国がリードをして、国際機関を用いた中、あるいはいろいろなコングレス等を含めての予定があるようでございますけれども、それについてお聞きをしていきたいというふうに思っております。

 法の支配ということは非常に重要でありまして、各国のいろいろな事件とか紛争とかを見ておりますと、本当に、そういう点で未熟な国がまだまだ多い。我が国は、その手本として、しっかりとそのよさを世界に出していくべきだろうというふうに思っております。

 そういう中で、法務省が世界と日本をつなぐために、やはりUNAFEI、アジ研などとも言いますけれども、通じた国際研修、さらには、刑事司法分野における世界会議の開催というようなことも射程にあるようでありますけれども、こういった点からの国際貢献についてどう考えておられるのか、井野法務大臣政務官にお伺いをいたします。

井野大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 田所先生は、法務大臣政務官として仕事をされてこられただけあって、本当に、大変知識を広くお持ちになっているかと思いますけれども、法務省としては、国連と共同して、国連アジア極東犯罪防止研究所、先ほど先生がおっしゃられた、通称UNAFEIを運営しております。

 このUNAFEIは、世界各国の刑事司法実務家を対象に、犯罪の防止、犯罪者処遇に関する研修、セミナーを実施しておりまして、各国の刑事司法制度の発展と相互協力の強化に努め、法の支配の促進に貢献しているものと考えております。

 また、二〇二〇年、オリンピックの年には、我が国において、国連が主催する犯罪防止刑事司法会議、先ほど田所先生がおっしゃったとおりのコングレスが開催される予定でございます。同会議は、犯罪防止、刑事司法分野における国連最大の国際会議でございまして、前回のコングレスでは、百四十九カ国、四千人が参加したというふうに聞き及んでおります。

 ホスト国として、この機会に、我が国における法の支配、そして、世界の方々にもこういった観点で日本国の司法制度、そして貢献等も理解していただきたいというふうに考えております。

田所分科員 UNAFEIにおいては、警察関係あるいは検察、さらには裁判官、矯正、保護観察官、そういった人たちが、百三十七カ国から五千人以上参加をして、非常に有意義な研修等を進められてきた。そういう中で、法務大臣が生まれ、あるいは最高裁の長官、そして検事総長、保護局長、そういったものが誕生しているということも聞いております。

 これは、まさにすばらしいネットワークができていることでありまして、日本のファンもふえて、日本の力というものになるんだろうと思いますので、そういったしっかりとした日本の役割、あるいはその優位性というものを世界の中で出していく事業というものを進めてもらいたいというふうに思っております。

 次に、外国人労働者についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 東京オリンピックが開催をされました、あの当時、大きく我が国は成長したわけでございます。この二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックが開催をされるわけでありまして、そういう中にあって、夢をもう一度、しっかりとまた成長する時代をそこで迎えたいなという思いがするわけであります。

 しかしながら、大きくその条件が違っております。当時は多分、人口は九千万人台だったかなと思いますし、高齢化率は多分数%、年少人口割合は三十数%だったと思うんです。それが、まさに若々しい我が国が、人口の増加とともに経済も拡大し発展してきた、そういう時代であります。

 しかしながら、今度のオリンピックに向かうその道のりは、もうどんどん高齢化率が上がって人口も減少する、全く逆の現象でありまして、社会を支える生産年齢人口というものも大変少なくなっていく。そういう中で、どうこれから労働力を確保するか、大変難しい問題がございます。

 そういう中にあって、新聞でも、外国人労働者が百万人なんということが最近出ておりましたけれども、やはりそこに大きな、目が行くんだろうというふうに私は思っております。将来は、AIとかロボットの活用で、四九%以上なくなっていくというような、そういう報道もありますが、それまでどうつなぐかということであれば、外国人労働者ということも、これはいろいろと考えていかなければならないわけでございます。

 そういう中にあって、私は、拡大の動きは着実に進んでいる。それはEPAあるいはオリパラ対応の建設労働者、これは実績は余り上がっていないようですが、道を開いたわけであります。あるいは、改正入管法において、介護福祉士、こういう専門職としての仕事ができるようにする。さらには、最近では、特区における農業分野での労働者を入れてほしいというようなことで動きがあるようであります。

 そういう中にあって、やはり法務省では、移民政策はとりませんよということをまず接頭語のように言うわけでありますけれども、私は、移民政策と、国際貢献あるいは語学学校や大学に来ている人たちのアルバイト、そういった人たちが付随する労働のような形をとっていくその間、これを架橋する考え方というものもやはり若干必要なのではないかなというふうに思っております。

 会館から向こう側におりて赤坂に行きますと、コンビニエンスストアに行っても、ファミレスに行っても、居酒屋でも、みんな外人ばかりたくさん働いておりまして、そういった状況の中でどんな方向に考えていくのかということは大変重要だろうと思っております。

 もちろん、海外において、今日、アメリカとかヨーロッパでも大変、移民の問題はいろいろな問題を生じておりますので、そんなに極端ではなくても、やはり現実というものも捉えて考えていく、そういう問題であるというふうに考えております。

 そこで、今後の外国人労働者の受け入れにつきまして、法務当局において、どのように捉えて、どのように対応しようとしているのか、法務省の入国管理局長にお伺いをいたします。

和田政府参考人 お答えいたします。

 外国人労働者の受け入れにつきましては、専門的、技術的分野の外国人は、我が国の経済社会の活性化に資するとの観点から、積極的に受け入れることが重要であるというふうに考えております。

 他方、専門的、技術的分野とは評価されない分野の外国人の受け入れにつきましては、ニーズの把握ですとか、受け入れが与える経済的効果の検証のほか、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会コスト、治安などの幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ、政府全体で検討していく必要があると考えております。

 今後の外国人材の受け入れのあり方につきましては、日本再興戦略二〇一六において、真に必要な分野に着目しつつ、総合的かつ具体的な検討を政府横断的に進めていくこととされております。

 法務省といたしましても、出入国管理を所管する立場から、この検討に積極的に参加してまいりたいと考えております。

田所分科員 移民政策はとらない、それはいいだろうと思っております。しかし、合理的な、現実的な、我が国に弊害が生じない程度において何らかの方法があるのか、いろいろと考えていただきたいなというふうに思っているわけでございます。

 続いて、技能実習制度につきましてお伺いをしたいと思います。

 技能実習生は二十万人以上いるということであります。そういう中にあって、さまざまな問題も生じてきました。これを何とか解消して、しっかりとした制度とすべく、適正化法ができたわけでございます。

 私は、非常にこれはよくできた法律だ、本当によく考えてくれたと。これは、しっかりと送り出し国との協議等をする、そこから始まって、また、外国人技能実習機構をつくって、しっかりと監理団体や実習実施者を管理していく。さらには、本人がいろいろな苦情を申し立てたり、あるいは職業も若干実情に合わせて変えられるとか、柔軟に、これまでの問題に対応した、そういう対策がとられた、大変すばらしい考え方に基づいているというふうに私は思っております。

 ですから、私は、これを運用するに当たって、やはり、その趣旨を潜脱して、しっかりとしたこの制度の進め方ができないようなことでは困るというふうに思っておりますので、現在、これが制定されまして、数々の適正化を盛り込んでおりますので、技能実習制度の運用開始に向けて、これはさまざまな準備がされているんだろうと思います。外国との交渉や、あるいは実施計画をどう判断していくとか、いろいろな細則にわたって皆さん方が準備をしておられるんだと思いますけれども、そういう中にあって、どのようにそれを進めて、安心した制度として、まさに法の支配の行き届いたような形が体現できるようなものとして行われるのか、法務省入国管理局長にその点をお伺いしたいというふうに思います。

和田政府参考人 昨年十一月二十八日に公布されました技能実習法の適正化に向けました現在の作業状況について御報告申し上げます。

 まず、法務省と厚生労働省が共同で政省令の案を作成して、昨年の十二月十六日から本年の一月十四日までにかけて、いわゆるパブリックコメント、意見公募手続を行いました。現在、政省令等の早期の公布に向けまして、最終の調整作業を行っているところでございます。

 また、外国人技能実習機構の設立状況についてでございますが、この機構につきましては、本年一月二十五日に設立登記がなされまして、三月には本部事務所を正式に立ち上げ、業務を開始することができるよう準備を進めているところでございます。

 さらに、新制度では、不適切な送り出し機関を排除するため、各送り出し国との間で取り決めを作成し、送り出し国政府において適正な送り出し機関を認定してもらい、それ以外の送り出し機関が送り出す技能実習生は受け入れない仕組みとすることを予定しておりますが、これにつきましても、現在、各送り出し国政府当局との交渉を開始するため、各送り出し国との間で二国間取り決めを作成するに当たっての情報共有を図るなどの準備を進めているところでございます。

 いずれにいたしましても、法務省といたしましては、厚生労働省と協力しながら、制度の適正化のため、新制度の円滑な実施に向けて所要の準備を進めてまいりたいと考えております。

田所分科員 先ほど、著しい人口減少の問題を述べさせていただきました。そういう中にあって、合計特殊出生率を一・八にして、二〇六〇年に一億人をキープしようというような方針も出されているわけでありますけれども、そういう中にあって、私は、定住人口はなかなか望めない、人口増は望めない中にあって、交流人口の増加というものが活力をつくるために大変重要だろうというふうに思っております。

 そういう中で、二〇二〇年に四千万人の外国人の観光客が来るようにしよう、二〇三〇年には六千万人にしようというようなことが打ち出されております。これは明日の日本を支えるビジョン構想会議において出されているものですから、私はそんなに簡単には見るべきではないと思います。

 しかしながら、この目標というのは、普通のものは数%上げることでも大変なわけであります。そういう中にあって、一〇〇%も上げるということでありますから、もう本当に急激な変化になってくるわけでありますけれども、それに対応するような計画的な準備というものを私は怠ってはならないというふうに思っているわけであります。

 政府一丸となって訪日外国人等の旅行者の増加を目指す中にあって、最初のおもてなしを担う法務省において、円滑な入国審査と、先ほど来テロ等準備罪もありましたが、厳格な水際対策の徹底の両立ということのために、私は、法務省は大変大きな役割を果たさなければならないというふうに思っております。これらにどのように取り組んでいこうとしているのか、その点をお伺いしたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、円滑な入国審査とテロの未然防止等の水際対策の実施は極めて重要な課題であるというふうに考えております。

 入国管理局といたしましては、円滑な入国審査と厳格な入国管理を高度な次元で両立させる必要があるというふうに認識しているところでございます。そのための必要な人的体制の充実あるいは物的設備の強化等に計画的に取り組んでいるところでございますが、若干具体例を挙げさせていただきます。

 まず、円滑な入国審査のための取り組みといたしまして、昨年十月から、上陸審査待ち時間を活用して、個人識別情報、指紋と顔写真でございますが、これを事前に取得するための機器、いわゆるバイオカートを関西空港、高松空港及び那覇空港に導入いたしております。同機器の導入によりまして、乗客一人当たりの審査時間が三割から四割程度短縮されたというふうに聞いております。

 現在、本年四月以降速やかに成田空港を初めとする十二空港にバイオカートを導入するための準備を進めております。

 また、昨年十一月から、出入国管理上のリスクが低く、頻繁に日本に入国する外国人ビジネスマンなどを、信頼できる渡航者、我々はトラステッドトラベラーと呼んでおりますが、この方々に自動ゲートを利用していただくということになっております。今後、ビジネス客のみならず、外国人観光客等の自動化ゲート利用実現のため、実施状況を検証した上で、平成三十二年までに対象者の拡大の実現を目指しております。

 また、厳格な入国管理の方ですが、平成十九年から顔写真や指紋の個人識別情報を活用した入国審査を行っております。平成二十七年一月からは、航空会社に対しまして、乗客予約記録、PNRの報告を求めまして、出入国管理インテリジェンス・センターにおきましてその情報を分析することにより、不審者を発見する手法の活用を行っております。

 今後の取り組みでございますが、今後、入国審査体制の強化でありますとか、ただいま申し上げた諸施策の運用に加えまして、日本人出国、帰国の手続を円滑化させるため、顔認証による自動化ゲートを導入するための準備を進めておりまして、平成三十年度までに主要空港に配備することを予定しております。顔認証技術を導入することによりまして、事前の利用希望者登録手続が不要となり、自動化ゲートの利用者を飛躍的に増大させることができるものと期待しております。

 また、外国人の出国確認手続の自動化を進めることについても、現在検討中でございます。

 これらの取り組みを進めることで、入国審査の円滑化と入国管理の厳格化を高度な次元で両立させるよう努めてまいりたいと思っております。

田所分科員 入国管理につきましては、適正なしっかりとした運用の期待から、予算も人員も大分充実して手当てをされているようでございます。私は、こういった期待の中で、しかし、一たびテロ等が起きれば、これは国家の信頼にもつながることでありますので、しっかりとやってもらいたいというふうに思っています。

 最後、一言だけ申し上げまして、結びます。

 これまで急激にインバウンドが伸びてきたわけでありますけれども、今まで余りにも順調でしたから、ただ待っているだけではだめなわけでありまして、やはりビザ緩和でありますとか、入管の政策、さらには近隣の国の経済状況、円安、こういったものがやはりリードしてきた面もあるというふうに思うんです。

 そういう中にあって、これから、これをさらに後押しするような、そういう目標達成の政策を積極的に進めて、我が国の最も大きな成長分野であるという意識のもとに頑張ってもらいたい。

 国土交通省もおいでいただきましたが、きょうは聞くこともできませんでしたけれども、そういうことをあわせて皆さんに期待を申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて田所嘉徳君の質疑は終了いたしました。

 次に、門博文君。

門分科員 自由民主党の門博文でございます。

 きょうは、質問の時間を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 お手元に資料をお配りいただいております。

 まず、一枚目のペーパーなんですけれども、きょう最初に、去年議員立法で提出させていただいて成立を見ました部落差別解消推進法について、少し御質問させていただきたいと思います。

 この一枚目のペーパーは、私の地元の和歌山県の県民紙というか、県の広報紙の最新版の一ページを抜粋してまいりました。和歌山県民の全戸に配付される機関紙というか広報紙ですけれども、そこにそのような形で、部落差別解消推進法の成立を受けて、県の取り組み、意気込み等について触れていただいております。

 今回のこの法律は、国そしてまた地方公共団体のそれぞれの責務についても触れさせていただいておりますので、ここで、成立してしばらくの時間がたちましたので、この間、国ないしは国から働きかけた上で地方公共団体にどのようなお取り組みがあったか、お聞かせをいただきたいと思います。

萩本政府参考人 今委員から御紹介のありました部落差別の解消の推進に関する法律、この法律の成立、施行を受けまして、まず、法務省としましては、法務局、地方法務局に対しまして、法の趣旨を踏まえた適切な対応を指示するとともに、法律の施行を周知するため、各法務局に広報用のチラシを備え置きするなどいたしました。

 また、地方公共団体に対しまして、全国の法務局、地方法務局を通じて、法律が施行された旨の周知を行うとともに、国と地方公共団体との連携をより一層深めるための協力を依頼したところでございます。

 必ずしも網羅的に把握しているものではありませんが、この部落差別解消推進法の施行につきましては、今委員から御紹介のありました和歌山のほかにも、既に周知を行っている地方公共団体が複数あると承知をしております。

 政府におきましても、人権教育、啓発に関する中央省庁の密接な連携協力を図るため、人権教育・啓発中央省庁連絡協議会というものを設置しておりますが、その幹事会を今月中にも開催することを予定しております。この会議の場で、同和問題に関する関係省庁の取り組みにつきまして情報交換を行った上で、法の趣旨を踏まえた連携強化の必要性、職員に対する研修の充実強化の必要性などにつきまして、しっかり確認したいと考えております。

 法務省の人権擁護機関としましては、これまでも、同和問題を人権啓発の強調事項に掲げ、各種啓発活動を実施するとともに、人権相談及び人権侵犯事件の調査処理を通じて、その被害の救済及び予防を図ってきたところでございますが、引き続き、この法律の趣旨を十分に踏まえまして、関係省庁や地方公共団体とも連携しながら、同和問題に関する差別や偏見の解消に向けてしっかり取り組みを進めてまいりたいと考えております。

門分科員 ありがとうございました。

 これからも引き続きお取り組みをいただきたいと思いますし、法律をつくっていくプロセスのときにもお話もしたことがあったんですけれども、部落差別という言葉が法律用語になかったのが、今回この法律ができ上がることによって新しくそういうことができました。おかげをもって、こういう印刷物でも何のためらいもなく部落差別という言葉が出るようになったわけなので、これはできるだけ多くの地方自治体のこういう同じような広報紙にも載せていただけるように働きかけもしていただきたいと思います。

 そしてまた、国におかれては、特に今回の立法の原点になりましたけれども、インターネット上の部落差別問題の指摘というのがありましたけれども、この実態も早晩またお調べをいただきたいというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 きょうは、保護司制度のことと再犯防止について御質問をさせていただきたいと思っております。

 先日、私、地元の和歌山市で、地元にあります更生保護サポートセンターにお訪ねをする機会がありました。そちらの方に伺いまして、その訪問を兼ねて、地元の保護司さん、それから協力雇用主、そして保護観察所の職員の皆さん方と意見交換をさせていただきました。その点で、保護司制度について、きょうは改めてお話を聞かせていただきたいんです。

 まず、根本的な問題で、大変初歩的なことで失礼なんですけれども、保護司制度について、その概要とか現状を法務省の方から御説明いただけますでしょうか。

畝本政府参考人 保護司とは、法務大臣から委嘱される非常勤の国家公務員でありまして、それぞれの地域におきまして、犯罪や非行をした人の指導、支援や犯罪予防活動に取り組んでいただいているボランティアの方々であります。

 保護司法におきましては、保護司には給与は支給されず、職務を行うために要する費用の全部または一部を実費弁償金として支給するということになっております。

 現在、保護司は全国で約四万八千人おられ、その人員数は、平成二十八年に七年ぶりに増加に転じましたものの、本年は再び減少しております。また、保護司の平均年齢は六十五歳であり、一貫して高齢化が進んでおりまして、保護司を安定的に確保していくことが更生保護にとっての最重要課題となっております。

門分科員 ありがとうございました。

 今、答弁の方にもありましたけれども、なかなか人数を確保するのに苦労されていて、ちょっと増加したけれどもまた減少したという直近の様子もお話をいただきました。

 お手元にもう一枚資料をお配りさせていただきました。

 これはお正月明けの毎日新聞の紙面ですけれども、ここにもタイトルに大きく書かれていますけれども、「保護司十年で半減へ」というなかなかセンセーショナルなタイトルをつけていただいていまして、私も正月明けにこの新聞を見て、これが目にとまったんです。

 ここにも指摘されていますけれども、人材難というんですか、今御指摘あったように、人材不足、人員不足ということを法務省の方もお気づきだと思うんですけれども、その点、もう一歩踏み込んで、現在法務省が理解をされている保護司制度の課題について、何点か御示唆いただけたらと思います。

畝本政府参考人 ただいまお話ししましたように、保護司の安定的確保というのは最重要課題でございます。法務省では、安定的確保のためにいろいろな保護司の支援策に取り組んでいるところでございます。

 とりわけ、委員も御視察いただいたという更生保護サポートセンターの充実強化に取り組んでいるところでございます。これは、保護司活動に対する負担感あるいは不安感を軽減するという観点から、保護司会が更生保護活動の推進をするための拠点となるものでございまして、これまで全国で四百五十九カ所センターが設置されております。また、平成二十九年度の予算案では、新たに四十二カ所を新設するための経費が計上されているところでございます。

 また、平成二十八年度からは、地域の方々に保護司活動を体験していただく保護司活動インターンシップというものを実施しております。これは、保護司の活動に対する理解を深めてもらうための施策でございます。

 保護司は再犯防止について非常に重要な役割を果たしておられますので、保護司の確保が困難化している現状におきまして、その要因などもよく見きわめながら、今後とも効果的な方策を検討して実施するように努めていきたいと考えております。

門分科員 ありがとうございます。

 私の周りにも保護司をされている方は何名かいらっしゃるんですけれども、唯一僕よりも若い人が一人だけおります。お恥ずかしい話、私も自分が政治の世界に入るまでは、保護司というお役割というのがあるのはよくわかっていたんですけれども、ではその先何をやっている人なのかということは、申しわけないんですけれども、残念ながらよく理解をしておりませんでした。

 そういう意味では、なり手が少ないというところで、何か、保護司というのになってくださいとかなろうとかとする以前に、何だかよくわかっていない人たちが意外に多いんじゃないかなというふうに思いますし、また、もうちょっと踏み込んだら、ああ、そういうふうに世の中の役に立てるんだったらなってみようかなと思うんだけれども、そのことさえわかっていない人たちもたくさんいらっしゃるように思うんですね。

 そこでお伺いしたいんですけれども、こういう保護司制度とか保護司そのものについて、啓蒙活動とかPR活動とか、そしてまた、今私が冒頭申し上げましたように、果たして世の中に保護司とはどれぐらい認知度があるのかというようなことを、お調べされたり今まで実施されたことがありましたら教えていただきたいんですけれども、よろしくお願いいたします。

畝本政府参考人 委員御指摘のとおり、そもそも保護司がどんな活動をしているのかということを広く知っていただくということは極めて重要でございます。

 法務省では、保護司活動を初めとした更生保護に対する国民の皆様の理解、協力を求めるために、社会を明るくする運動というものを推進しております。

 これは、平成二十七年からは、安倍内閣総理大臣からも国民の皆様へこの運動への理解と協力を求めるメッセージをいただくなどして、推進体制を強化しているところでございます。

 昨年は、この運動の中で、保護司の役割をわかりやすくまとめた広報用の動画を作成して、全国で地域住民向けの上映会などを実施するなどしたところであります。また、保護司みずからが出演して保護司活動や保護司の役割などを紹介するシンポジウム、こういったものを各地で開催するなどして、保護司活動の社会的意義について広く国民に知っていただくための取り組みを進めているところであります。

 あと、認知度に関するアンケートについてでございますけれども、平成二十六年十一月に内閣府による更生保護に関する世論調査の一環として行われたものがございます。これは、保護司という言葉の意味を知っているかどうかという問いに対しまして、知っていると答えた者の割合は五七・五%でございました。ただ、年代別に見ますと、二十代では知っていると答えた者が二一・五%、三十代では三五・一%となっておりまして、若い世代の認知度が低いということがわかります。

 このような状況ですので、あらゆる機会を捉えまして、保護司の活動について、より多くの国民に、とりわけ若い世代の人々に知っていただけるように努めてまいりたいと考えております。

門分科員 ありがとうございました。

 確かに、何か目立つようなお仕事をしていただいているのでなくて、どちらかというと地味なところで、また、ある程度秘匿された部分の中で業務というかそういう対応をしていただいているので、そういうことが露出しにくいというのもよくわかります。

 茶化すわけではないんですけれども、何か本当に、テレビ番組のシリーズ物で保護司何とかというような番組でもやっていただけて、ゴールデンタイムに流れれば随分違うのかなというふうに思ったりもするんです。また、そんなことは何か提案もできませんけれども、ちょっとひとり言として申し述べさせていただけたらと思います。

 そして、今、新聞の記事の方にちょっと目を戻していただきたいんですけれども、ここに幾つかの御関係の方々のコメントがありまして、一つは、保護司は全体的に不足しているんだけれども、その中でも特に都市部での人材、人員の不足ということが顕著ではないかなというような御指摘がありました。

 確かに、私の地元の和歌山は、そんなに都会ではないですけれども、和歌山の中にも割と人口密集している部分とそうでない部分があって、やはり人口密集しているところのエリアで保護司をされている方々は受け持つ人数が結構多かったり、また逆に、そんなに人口が多くないところで保護司をされている方々は、この間もありましたけれども、保護司になってもう二十年か三十年ほどあるんだけれども、一度も対応したことがないという方々もいらっしゃいました。

 そういう意味では、全体の定員をどうするかという問題じゃなくて、今ある定員の中でも、密度の高いところに加重的に定員を持っていってそこの負担を減らしていくとか、そういうふうなことをしたらどうかというのをこの記事の中から読み取ったんです。

 そしてまた、もう一つは、やはりなり手が少ないということの中で、これからはやはり、今まではもちろん報酬のない、無償のボランティアとしてやっていただいていたんですけれども、例えば、一つの切り口として、少なくとも少しばかりの対価を設定してやった方が、この間もお話を聞いたら、今なっていらっしゃる人たちはそういうことを求めていらっしゃいませんという声がありましたけれども、これからなってもらわないかぬ人たちを探していかないかぬわけなんで、そういう制度のいろいろな変更を考えてはどうかというふうに私は思うんです。そのあたり、法務省からの御見解をお聞かせいただきたいと思います。

畝本政府参考人 まず最初の、地区ごとの定数の見直しの点についてでございます。

 保護司の皆さんは地区ごとに分かれて活動しておりますけれども、この地区ごとの定数については、それぞれの地区における保護観察事件の件数であるとか、地域の事情を勘案して定めているところであります。

 地区によっては、事件数が大幅に増加したりしまして、保護司の定数が不足するといった状況が生じることも考えられます。この保護司の定数を変更する必要が生じた、そういう場合には、法務大臣の権限の委任を受けた地方更生保護委員会が、変更の要否を決定するほか、社会状況の変化に対応するために定期的に保護区ごとの定数の配分の見直しなどの運用を行っております。

 今後とも、地区の状況などに留意しながら、保護司会の意見にも配意しつつ、柔軟な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

 二つ目の報酬制の問題でありますけれども、保護司の皆さんは、基本的には、社会に恩返ししたいというそのような気持ちから、社会奉仕の精神を持って無報酬で対象者の処遇に当たっていただいているところでありまして、現時点では、報酬制を求める意見というのはさほど多くはないというふうに認識しております。

 ただ、新たな保護司を確保して、今の保護司の皆様の負担を軽減して、やりがいを持って続けていただけるよう、今後とも、いろいろな意見、保護司の皆様の意見にも耳を傾けながら検討してまいりたい。とりわけ、現在は実費弁償金というものが支払われておりますけれども、その弁償金の充実も含めた保護司活動の基盤の整備に努めていきたいと考えております。

門分科員 本当にこの新聞のタイトルどおり、保護司十年で半減という、これはここの新聞社がしんしゃくして書いたタイトルだと思いますけれども、遠からずこういうことだって予測されているわけだと思いますので、ぜひとも、十年後に、やはり十年前に言っていたとおりになってしまったなというようなことにならないように、いろいろなところで創意工夫をしていただいて、柔軟にこの保護司制度の維持、継続に向けてお取り組みをいただきたいと思います。

 ちょっと時間があれですので、この保護司の関係の質問はあと二問あったんですけれども、ちょっと一方的にお話をさせていただくにとどめさせていただきたいと思うんです。

 あと、サポートセンターも充実させるということで今お話がありました。

 私たちの地元の和歌山市にはそういうことでサポートセンターがあったわけで、そこにお伺いをしました。これも和歌山市の外郭の団体の建物の一角に入居されておりまして、これは再犯防止推進の法律の中にも書かれていますけれども、国と地方公共団体がこれから再犯防止についてもより密接に協力をするということであれば、こういうサポートセンターをつくるということは、もう今もお取り組みだと思いますけれども、やはり地元の県とか地元の市町村に働きかけて、できれば県や市のどこかの物件の中に必ず設置をしていくというようなことの一つのルールみたいなものをつくったらどうかというふうに思います。

 御承知のように、法務省の法務行政と地方の県や市の組織というのは、必ずしも一気通貫していないジャンルがたくさんあると思いますので、そういうあたりは、地元の知事さんであったり市長、町長さんに対して、我々も含めて直接働きかけてそういう制度づくりをしていったらどうかというふうに思いますので、また今後御指導いただけたらなと思います。

 次の再犯防止について、こちらも、この間の訪問に基づいて、少し聞きましたことについてお話をさせていただきたいと思います。

 この間は、そのサポートセンターでの意見交換は、協力雇用主や保護司会の役員の皆さんがいらっしゃった中で、いろいろな意見交換がありました。

 その中で、協力雇用主のある会社の社長さんが、今、チャンスやとおっしゃったんですね。ぴんとこなくて、アベノミクスは地方に届いていないと思っていた部分もあったんですけれども、その社長さんは、いや、おかげさんで、門さん、今、和歌山は非常に人材難なんや、就職してもらう人を探すのに大変苦労している、こういう売り手市場みたいなときこそ、再犯防止に向けた出所者の方々の就労支援に対してやはりギアを入れていかないかぬというようなお話がありました。

 その中で、ちょっと突いたり引いたりになるんですけれども、ただし、老人と薬物犯罪者、これはなかなか雇われへんのやという話もありまして、それで、とりあえず、まず、一般的に自立可能な出所者の方々を対象にちょっと御質問をさせていただきたいんです。

 これもよくいろいろな意見があるんですけれども、就労支援して、会社へ就職しました。でも、自分の出身地かもともとの居住地に就職するのと、全然違う、地理も縁もゆかりもないところで就職するのとで、さまざまなケースがあると思うんですけれども、今回訪れたところで御指摘があったのは、やはり和歌山で就職させるのは、和歌山出身の人を和歌山に連れてきた方がいい、それの方が、いろいろな準備をするのにゼロからスタートすることがなくて、いろいろ、ある程度のインフラが整ったところへ来られるんだというようなことがありました。

 この点で、これが正解ということはないと思うんですけれども、法務省として、出身地、以前の居住地に就労支援で再就職の先を見つけるのがいいのか、いや、それはまたいろいろ問題があって、やはり違うところでやった方がいいのかということに対して、何か御見解がありましたら教えていただきたいんです。

畝本政府参考人 こういった出所者の方々がどこで働くのがいいのかということにつきましては、まず、家族の支援が得られるのか、あるいは、地元に帰って更生を妨げるような交友関係はないのかなど、そういった生活環境や、対象者が起こした事件がその地域でどれだけ知られているのかなどによりまして、就労にふさわしい場所が出身地なのか、居住地なのか、あるいはそれ以外の場所なのか、個々の事案ごとに異なるというふうに考えております。

 就労支援におきましては、就労する場所のみならず、本人が希望する職種あるいは適性を踏まえた就労先とのマッチングなど、いろいろな点を考慮する必要がありまして、今後ともきめ細やかな対応に努めてまいりたいと考えております。

門分科員 ありがとうございました。

 それは本当にケース・バイ・ケースだと思いますけれども、逆に、どちらでも検討できるようなふうにしていただいて、いや、やはり出身地と違う方がいいというようなことでなくて、今お答えにありましたように、最適なマッチングを絶えず考えていただきたいなというふうに思います。

 それで、あと、一問ちょっと飛ばさせていただいて、さっき保護司制度のところで、国と地方公共団体の連携ということを最後お伝えさせていただいたんですけれども、その点について、これも国から積極的にお願いをしたらどうかと思うんです。

 我々の意見交換のときにもあったんですけれども、出所してきた人を民間に雇え雇えと言ってくるけれども、肝心の役所は雇っているのかという話になって、雇っていませんと。そんなの矛盾していないかということで、正採用というのはなかなか難しいのかもわかりませんけれども、臨時職員として、例えば地方公共団体のどこかの部門に定員を設けてでも採用していただくような仕組みをつくれば、そのときにもお話がありました、例えば、和歌山市で、出所してこられた方々が働きましたと。その人たちは、半年の期限で働いた後、市役所でも働いていたんやから、うちでも雇えるなというような、そういうプライオリティーみたいなものをつけられるようなこともあるかというふうなことがあったんですね。

 この点、強制力を発揮するということはなかなか今の段階では難しいんだと思いますけれども、でも、まず隗より始めよという意味からいうと、行政での臨時職員の採用について、何か今お取り組みいただいていたり、これから取り組もうとしているようなことがあれば教えていただけますか。

畝本政府参考人 刑務所出所者等の仕事を確保する上で、とりわけ地方公共団体の取り組みは重要な意義を持つものだというふうに考えております。

 平成二十八年九月現在の地方公共団体における取り組みにつきましては、保護観察対象者等を非常勤職員として雇用する取り組みを始めている団体は四十六団体、入札参加資格審査における優遇措置を導入している団体は八十一団体、総合評価落札方式における優遇措置を導入している団体は四十四団体となっておりまして、こういった刑務所出所者等の就労に協力いただいている地方公共団体の数は年々増加している現状にはありますが、より多くの地方公共団体の協力が必要であるというふうに考えております。

 また、国におきましても、これまで、延べですが三十一名を非常勤職員として雇用しております。

 こういった仕事の確保は再犯防止のためにとりわけ重要でございますので、引き続き、地方公共団体も含め、こういった者たちの雇用に努めていきたいというふうに考えております。

門分科員 ありがとうございました。

 今御報告いただいた地方公共団体の実績の数がふえていくことを祈るばかりでなくて、我々も協力させていただけることがあれば協力をしていきたいと思います。

 もう時間がなくなってまいりましたので、ほぼ最後の質問になるかと思いますけれども、老人の方の質問はちょっと省かせていただくんですけれども、老人の方は出所してもなかなか仕事につくというのは難しいので、また、我々、地元は和歌山刑務所というのも抱えていますけれども、そこでもお話を聞きましたら、結局、出ても、すぐまた窃盗か何かを起こして戻ってくる。それは、働くところも住むところもなければ、年寄りというか高齢の方々はそういうことにならざるを得ない部分もあると思うんですね。

 それは、制度として社会保障と直結した形で、出所したら就労支援というメニューじゃなくて、社会保障に直結するような何か仕組みが考えられないかなと思いましたので、最後に御提案をさせていただきます。

 そして、最後の質問ですけれども、薬物犯罪者はやはり雇われへんという意見があったのは、やはり再犯率が高いということに対して、雇用主の人たちが結構リスクを経験則からも感じていらっしゃるようでした。だから、これは本当に根本的に、再犯防止ということじゃなくて、やはり犯罪そのものを撲滅してもらわないかんのやというような保護司さんからのお話がありました。

 最後に、お越しいただいているので、厚労省と警察庁からこの点について端的にお話を賜ります。

森(和)政府参考人 お答えいたします。

 薬物の乱用は、本人の体や心の健康をむしばむだけではなく、薬物を手に入れるための犯罪の誘発や家庭崩壊など、身近な人や社会に与える影響も極めて大きゅうございます。

 厚生労働省といたしましては、警察等の関係機関との連携をさせていただきながら、麻薬取締官による違法薬物の徹底的な取り締まり、違法薬物に手を出させないための啓発活動などの薬物乱用防止対策の強化、国際的な連携協力など総合的な対策を推進しておりまして、引き続きまして違法薬物の根絶に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 薬物事犯の検挙人員につきましては引き続き高い水準ということでございますけれども、とりわけ覚醒剤の事犯につきましては、検挙人員が年間一万人を超えております。再犯者の占める割合も六割を超え、また密輸入押収量も高水準にあるなど、非常に厳しい状況にあると認識をいたしております。

 警察といたしましては、引き続き、外国取り締まり当局また国内の関係省庁とも連携をいたしながら、密輸、密売組織の壊滅に向けた取り締まりと水際対策を強力に推進するほか、末端乱用者の取り締まり、乱用防止に向けた広報啓発活動を鋭意進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

門分科員 ありがとうございました。

 本当に、再犯防止を考える前に、そもそも、犯罪が起こらない、犯罪者が生まれなかったらこの再犯というところまで来ない案件でもあると思いますので、今も鋭意お取り組みいただいているとは思いますけれども、さらに、まさに水際作戦というか、薬物犯罪に手を染めないように、両省庁が連携をして取り組んでいただきたいと思います。

 時間になりましたので、これで終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

葉梨主査 これにて門博文君の質疑は終了いたしました。

 次に、濱村進君。

濱村分科員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、技能実習制度について質問をさせていただきたいと思っております。

 昨年の十一月二十八日に公布されました外国人技能実習制度の法律は改正されたわけでございますけれども、これを、恐らく公布の日から九カ月を想定して、大体七月ぐらいでしょうか、政省令の改正についてもパブコメを行ったということで、これは一月十四までやったわけでございます。

 その中にはさまざまな意見があったかというふうに思うわけでございますけれども、例えば職種の作業欄の削除とか、非常に細かいものまでパブコメとして寄せられているというふうに思っているわけでございますが、私は、この制度の目的をしっかりと堅持して、その上で適切な運用がなされ、もっともっと改善されて、さらに言えば、この制度が積極的に活用されるということを希望しているものでございます。

 その上で、非常にテクニカルな細かいことも聞いてまいりたいというふうに思うわけでございますが、技能実習生は別として、そもそも日本で働かれる外国人の方というのは、その外国人の方の御家族については家族滞在という名目でビザが発給されるわけでございます。一方で、技能実習生の家族については、これはビザが発給されるというわけにはなっておりません。この両者に違いがありますねということでございますが、その違いの背景について確認をしたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、技能実習生の家族につきましては、家族滞在の在留資格での入国、在留を認めておりません。

 その理由でございますが、まず一つは、技能実習生は技能等の修得を行う立場でございまして、専門的、技術的分野の外国人とは違い、その賃金は必ずしも高くないことから、日本で家族と生活するために十分な収入を得ることが見込まれないというようなことですとか、技能実習制度は、現行制度では三年、新制度では五年という間で帰国することを前提とする制度でございまして、家族の帯同を認める必要性が他の在留資格と比べ必ずしも高くないこと、こういったようなことが挙げられると考えられております。

濱村分科員 今、なかなかそれに見合う収入が得られないというようなお話がありました。さらに言えば、これは、まだ学んでいる側の方々ですということでございます。

 ただ、技能実習制度の中で、今現場で求められている人材としては中間的な管理を行うような方というのも人材として育成していきたいというような要望もございますので、それについては細やかに、対応を柔軟にやっていっていただきたいというふうに思うわけでございますが。

 おっしゃるとおりで、技能を持ったような方で十分な収入を得られる、そういう方とはまた別であろうということでございますので、そもそも家族滞在という形でのビザの発給は行われませんよ、これはもう至極真っ当だというふうに思うわけでございます。制度によってこういう考え方はしっかりそれぞれ適用させていっているわけでございます。

 次に、ちょっと厚労省にお伺いいたしますけれども、外国人技能実習制度であったとしても、健康保険の適用があった場合に、出産育児一時金が支給されるのかどうか、支給される場合はどういった申請書類が必要だったりするのか、お答えをいただければと思います。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 まず、出産育児一時金が支給されるのかどうかという質問でございますけれども、健康保険法では、被扶養者は、主としてその被保険者により生計を維持する配偶者や子供などが対象とされておりまして、国籍や居住地は要件とはされておりません。このため、被扶養者である、外国人技能実習生の配偶者が母国で出産した場合にも、保険者から家族出産育児一時金が支給されることになります。

 また、どのような申請書類が必要かという質問でございますけれども、これにつきましては、支給申請書とともに、医師等または公的機関による出産の事実を証明する書類が必要となります。なお、その際、当該書類が外国語で記載されている場合には翻訳文の添付を義務としていること、さらに、保険者がさらに書類が必要であると判断した場合には、被保険者や事業主に必要な文書を提出させることができることになっております。

濱村分科員 一次的には保険者の方々がどのように判断するかということに委ねられると。その場合においては出産育児一時金についても支給される。

 当然、これは健保に入っていないと、要は受け入れされた企業によって健保に所属できるという環境がない限りは無理なわけでございまして、これは国保に所属するというわけにはなかなかいかないという話なんだろうというふうに思います。大前提としてその区別があった上で適用がなされるものというふうに認識するわけでございます。

 一方で、今、支給申請書を出していただくことになるということでございました。外国語であれば翻訳文を添付していただく。保険者によって必要と認められるものがほかにあるのであればそれも出していただきますよということでございました。

 医師による診断書というものについての判断、これが、仮に、仮のことなのでお答えは求めませんけれども、制度として、申請すれば出産育児一時金をいただけるものなんだということで、現地、本国の配偶者が出産をしたということで医師に診断書を書かせて、その書かせたものをそのまま出産育児一時金の添付書類として申請したということになった場合に、これはなかなか、適切に、診断書が偽造したものであるとかを見抜くことは難しいと私は思います。

 そういう意味では、チェックするのが非常に難しいなとは思うわけでございますけれども、こういうことは可能性としては起こり得るということでございます。可能性としては起こり得るということではございますが、そういうことのないようにしっかりと教育をしていくことも一方で、監理団体の方とかあるいは受け入れ企業においてもそういうことをしていくことが非常に重要なのであろうというふうに思います。こういうことは起きていないんだよ、あるいは起きないように努力しているんだよということをしっかりと周知していくこともまた必要なのであろうというふうに思うわけでございます。

 続いて、在留期間についてお伺いをしたいと思いますが、基本的には、実習生の在留期間は三年でございます。一方で、実習自体は二年十カ月とか十一カ月で終わってしまうということが大体常です。そうなりますと、一カ月、二カ月、まだ在留期間が残っていますという状況にありながら本国に戻ってしまえる、要は、実習が終わったから本国に戻りますと。本国に一回戻って、さらにもう一回日本に入国することは可能になるというふうに思うわけでございますが、まず、これは可能であるかどうか、確認をしたいと思います。

和田政府参考人 御指摘のとおり、可能でございます。

濱村分科員 実は、可能であるがゆえに、これも可能性の話としてあり得るのが、再入国して、その再入国した後に失踪して不法滞在をするというようなケースがあるという指摘があるんですね。

 実際に実態としてあるかどうか、これについて法務省が確認されておられるかどうか、確認をしたいと思います。

和田政府参考人 そのように、再入国許可制度を悪用している者があるというようなことは承知しております。

濱村分科員 そういう意味においては、可能性としてはあるんだけれども、実態としてはまだ法務省としては確認はできていない、これからもそういうことのないようにしっかりとやっていかなければいけないということであろうかと思いますが、さらに申し上げるならば、これも、どこかでぎりぎり防ぐことはできないかなということも検討していかなければいけないのかもしれないなと思っておるんです。

 どういうことかというと、入管においてチェックするときに、ビザは、技能実習生かどうかということがわかるわけでございます。技能実習生なのであれば、入管で、再入国のとき、そのタイミングで、あなたの技能実習としての期間はもう終わっているんですかどうですかということを確認することによって、その方についてちゃんと、一カ月、二カ月、何の目的で再入国されるんですかということになるわけでございますが、そういう形で技能実習が満了しているのかどうかを確認することによる水際対策というようなことも考えられ得るんじゃないかと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。

和田政府参考人 まず、先ほどの再入国の観点でございますけれども、当方では、在留期間が余り残っていない技能実習生が再入国許可によって出国しようとする際には、入国審査官におきまして、状況に応じて、その必要性を確認いたしまして、不正な再入国が生じないように努めているところでございますが、先ほど来、先生の御指摘もございますので、引き続きこの点については適切に対応してまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 また、再入国許可制度を悪用する技能実習生につきましては、入国のときというのはなかなか難しい点がございますけれども、昨年の入管法により新設されました在留資格の取り消し事由を活用いたしまして在留資格の取り消しを行うとともに、不法就労を雇用する事業者やあっせんするブローカー等についても、関係機関との連携を強化して厳正に対処していく、こういうような取り組みが重要であるというふうに認識しているところでございます。

 いずれにいたしましても、入国管理局といたしましては、今後とも、さまざまな施策を用いまして御指摘の問題の解消に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

濱村分科員 改正入管法とかでも、なりわいとして入国を取り次ぐような方についても、ブローカー的にやるような方というのはしっかりと牽制していくということになっているわけでございますが、水際対策としても審査官において非常に努力されているということで、よく理解をいたしました。

 実は、この技能実習制度については、あるのかないのかわからないような、法の可能性において議論がどうしても膨らみがちであるというふうに思うわけです。一方で、存在を確認できたならば、それは不法滞在として取り締まらなければいけないわけでございますが、不法滞在なのかどうかというのもよく確認しないままにそういうことが起き得ているというような話が流布されているという状況もございます。しっかりと、そういうことは起きていませんよということを確認しながら、この技能実習制度、効果があるところは効果があるわけでございますので、大きな期待を持っているわけでございます。

 ここで大臣にお伺いをしたいわけでございますが、この不法滞在があるやないやでいうと、私は、一部そういう事案があったということも実際確認もされておられるわけでございますので、先ほど申し上げたルートでということは申し上げませんが、そうではないと思いますが、あるいは出産育児一時金などの制度についても悪用が起きているわけではないんだろうというふうには思うわけでございますが、こうしたことが起こると信頼を損なうことにつながるわけでございます。

 この制度をよりよくして、さらに実のあるものとしていくためにも、ぜひともさらに改善をお願いしたいというふうに思うわけでございますが、大臣の御決意をお伺いできればと思います。

金田国務大臣 ただいま濱村委員から御質問がございました。

 先般、適正な技能実習の実施のための技能実習法が公布をされたところであります。十一月二十八日だったと思います。

 この法律に基づきまして、主務大臣といたしまして監理団体の許可を厳格に行っていきますとともに、外国人技能実習機構におきましても、技能実習計画の認定あるいは実習実施者等に対する実地検査等の管理監督業務を的確に行っていくということとあわせまして、技能実習生からの相談、申告への対応や援助等の技能実習生保護業務をきめ細かく行っていくことにしているところであります。また、政府間取り決めによりまして、送り出し国や送り出し機関によります技能実習生に対します制度趣旨の周知徹底を求めることにいたしております。

 こうしたことを通じまして、技能実習生の失踪あるいは不法残留といったものを防止し、制度の一層の適正化に努めてまいりたいものと考えております。

濱村分科員 おっしゃるとおり、大事なことは、監理団体が優良な監理団体として育成されていくということ、そしてまた、実際に入ってきた技能実習生が当初の目的を達成できるように、必要な技能をしっかりと身につけて帰国されることであろうか、こういうふうに思うわけでございますが、残念ながらそうではない事案もあるがために改正をした。それを受けるためには、相談体制を整えるであるとか、あるいは保護業務を行うというようなことがあるわけでございますが、しっかりとこうした取り組みをやっていくということであろうかと思います。

 さらには、政府間連携というお話もございました。送り出し国において、あるいは送り出し国の送り出し機関において、技能実習制度というのはどういうものかということをしっかりと徹底していくことが非常に大事であろうということでございましたので、私も、それについてしっかりと、お役に立てる限りやってまいりたいというふうに思うわけでございます。

 今の送り出し国との関係という部分に少し関連する話をこの後させていただきたいと思うわけでございますが、それは何かといいますと、技能実習生の方の年金の話なんです。年金についても、実は、技能実習生というのは年金はどう扱われるんだろうかというふうに思っておったんです。

 それをちょっと確認したところ、もともと普通に外国人の方で企業で働いておられるような方については、社会保障協定をその国と結んでいるかどうか、それがまず結ばれているかどうかによって企業の年金として取り扱われるということになろうかというふうに思うわけでございます。

 一方で、技能実習生はどうなるんだということになりますと、これは私の理解がまだ浅いので、ちょっと確認をさせていただきたいと思うわけですが、送り出し機関、これは送り出し機関なので企業でもありません。一方で、受け入れするのも監理団体ということでございますので、なかなかそこにおいての社会保障協定というのは成立しにくいということもあるのかなというふうに思ったりはするわけでございます。技能実習生がそもそもそういった社会保障協定が適用されないというふうに認識しているわけでございますが、これは事実確認として、どういう理由でそうなっているのか、ちょっと確認だけさせていただければと思います。

諏訪園政府参考人 お答えいたします。

 今先生から御指摘がありましたように、お尋ねの社会保障協定の効果の一つといたしまして、一方の締約国から他方の締約国に派遣されて就労される方につきまして、原則としては就労地、派遣先の国の制度への加入が義務づけられております中で、派遣期間が短い、通常五年以内といった一定要件を満たします場合に、派遣元国の制度のみに加入しておけばよいという扱いが認められるようになるという効果が挙げられます。

 先生御指摘のように、こうした扱いが社会保障協定によって認められるケースは、通常では、派遣元の国の企業と派遣先国の企業との間で社員を派遣するような場合に限られているところでございます。

 一方で、技能実習制度によりまして相手国から派遣されている方は、企業間の派遣ではなくて、技能実習生の送り出しを行う相手国の団体の募集に対して個人の資格で応募された方が日本に派遣されてくる、そうしたケースが大半であるとお聞きしております。

 したがいまして、結論といたしましては、我が国が社会保障協定を締結した国から派遣されている方がおられる場合におきましても、技能実習生について年金制度の加入義務が免除されているケースはほとんどないのではないかな、このように考えておるところでございます。

濱村分科員 ありがとうございました。よくわかりました。

 送り出し国の方でもともと企業に属していて、その企業に属している中で、企業に属しながら技能実習制度を活用するといった場合には社会保障協定が適用となる可能性もあり得るということでありますが、一般的にはそういうことは少ない、技能実習制度を活用する方々はほとんど個人でやっておられるということが実態であろうかと思いますので、そういう意味においても適用はなされないということはよく理解したものでございます。

 そうであるならば、さらに確認をさせていただきたいことが脱退一時金についてでございます。この脱退一時金の手続につきまして確認をしたいと思います。

諏訪園政府参考人 先ほど申しましたとおり、我が国の年金制度は国籍にかかわらずひとしく適用されておりますので、技能実習生を含む滞在期間の短い外国人の方々にも加入を義務づけました上で、被保険者として、滞在中に障害を負った場合あるいは死亡された場合には障害給付や遺族給付が行われることとなっております。

 御質問いただきました脱退一時金につきましては、日本に滞在中にそうした障害給付とかあるいは遺族給付、こういったものを受けられなかった外国人の方が、六カ月以上の被保険者期間を有していることや日本国内に住所を有さなくなったことなどの要件を満たしました場合に請求することが可能となっている、こういう手続でございます。

濱村分科員 今の給付についても、障害であったりそういうことが起きたならば給付がなされるということでございます。そういう形であれば、あればということでございますので、非常に難しいところではあるわけでございますが、これは実は、私が監理団体の方から聞いている限りにおいては、非常に事務手続が煩雑であるというようなお話も聞いているわけでございます。この事務手続が煩雑であるとおっしゃっている方の詳細の理由については私もそこまで詳しく聞いておるわけではございませんが、これは改善の余地がないのかどうか、この点についても確認をしたいと思います。

諏訪園政府参考人 脱退一時金の手続、もう少し補足して申し上げますと、日本国内に住所を有しなくなったときに請求できることとされておりますことから、それを確認するために、支給申請に当たりまして、最終出国日のわかるパスポートのページの写しの提出などを求めているところでございます。

 御指摘の趣旨は、そうした脱退一時金の申請手続が技能実習生の方にとって御負担になっているということであると理解しております。手続面での負担軽減というものを進めることが重要と私どもは考えておりまして、今後、制度の枠内でどのような対応が可能か検討させていただきたいというふうに考えております。

濱村分科員 今後改善をしていくということであろうかと思いますので、しっかりと適切に進めていただければというふうに思うわけでございます。

 こうした、今私が申し上げたような脱退一時金の手続も含めてさまざまな手続については今回見直されるというふうに考えているわけでございますが、これ以上質問をするということはございませんので、聞いていただければというふうに思うわけでございます。

 こうした具体的なところをしっかりと聞くということは非常に重要であろうかと思っております。また、我々も、地元で、監理団体をやっておられるような方、あるいは、私も技能実習生と触れ合って日本語で会話をしたりしたことがあるんです。その方はベトナムから来た方でございました。金属加工の企業とかにその後行かれたというような話もあり、金属加工の企業にも実際行って、そこで働いておられる方、そして経営者の方々がどのように評価されておられるのか、こういうことについても聞いてまいりました。非常によい環境で働けていると技能実習生の方はおっしゃっておられるということもありましたし、そしてまた経営者の方々も、非常に真面目に頑張ってくれる、三年と言わずにもっともっと長い間働いてほしいというような声もよく聞いているわけでございます。

 優良な監理団体については三年という期間を延長できるという規定も今回設けられているわけでございますけれども、こうした取り組みをしながら、適切に、日本で働けるといいますか、日本で技能実習ができる、そういう環境を構築していくことが非常に重要であるというふうに思うわけでございます。そういう意味におきましては、まだまだ改善できるところはあるのであろうというふうに思いますし、また、この制度を適用できる場面というところが非常に限られているというところもあります。

 先ほども少し、冒頭に申し上げたんですけれども、実は、技能実習生のパブコメの中でも言われているわけですが、中間管理の方をもうちょっと技能実習生として育成したい、これは送り出し国の方からも要請があるでしょうと。あるいは、もっと言いますと、多能工、いろいろな職種を一人でこなせますよというような方も育てたいですと。これは、一方でいうと、日本の建設業の中とかでも多能工というようなことは言われ始めているわけでございまして、とびもできれば何もできるとか、いろいろな職種ができますよという方を育成していくというような流れができつつあるわけでございます。この技能実習制度においても、ぜひそういうことを、適用をお願いしたいというふうに思うわけでございます。

 時間について少しまだ余裕があるようにも思いますが、次の方に譲りたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

葉梨主査 これにて濱村進君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂分科員 民進党の逢坂誠二でございます。

 まず冒頭に、金田大臣、おわび申し上げます。

 先日の予算委員会では、御準備いただきましたけれども、最後に時間が足りなくなって大臣に質問できなくなって、大変申しわけございませんでした。これからまたしっかりやらせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 そこで、まず冒頭に外務省にお伺いをしたいんですが、お手元に資料を配らせていただきました。

 お手元に配った資料は、十二月にNHKで放送された、スクープドキュメント北方領土という番組の一シーン、これをテレビからカメラで写したものであります。そして、この映像が流れるときに、こんなナレーションが流れました。これは政府幹部の打ち合わせを撮影した映像です、外交機密が含まれるため音声は使用できませんというふうにされた映像であります。

 私、このテレビを見たとき、相当違和感を覚えました。外交機密が含まれるという映像を誰が撮ったんだろうかなと。マスコミが撮ったのかな、政府が撮ったのかな、あるいは全く違う人が撮ったのかなと。誰が撮るにしても、問題は何かいろいろあるなということを感じた次第でありますけれども。

 まず、外務省、きょうは薗浦副大臣、お越しをいただきまして、ありがとうございます。

 この映像を撮られたということは、ここにいる会議の場の方は認識されていたんでしょうか。

薗浦副大臣 この映像を撮った過程等々も含めまして、このお尋ねにお答えするということは、報道機関である日本放送協会、NHKの取材の過程また経緯について、この場でつまびらかにしなければならないということでございますので、政府としてのコメントは控えさせていただきたいと存じます。

逢坂分科員 私は報道の内容を問うているわけではありません。会議そのもの、この打ち合わせそのものの映像を撮られていたことを認識しているかと聞いているのみであります。放送の中身を問うているわけでも、あるいは報道機関の取材姿勢を問うているわけでもありません。

 そして、この問題は、政府にいろいろ聞いてみましたら、外務省が所管なので外務省に聞いてくれというので、本当は外務省に聞くのが適切なのかどうか、私はわからないんですけれども、そういう御指示でありますので、そういう仕事の区分けをしたようでありますので、副大臣の方にお伺いをしているわけであります。

 撮られていたか撮られていないか答えられないという、私は報道の内容を聞いているわけではありませんので、いかがですか。

薗浦副大臣 このときの状況につきましては、我々も、ここに写っております秋葉外務審議官から話は伺っております。伺っておりますけれども、繰り返しで恐縮でございますけれども、その過程等々についてお答えをするということは、この場では控えさせていただきたいと思います。

逢坂分科員 報道の内容を問うているのではないということは理解いただけますか。

薗浦副大臣 そのように質問の意図は理解をしております。

逢坂分科員 では、きょうはこれ以上はもうやめますけれども、これは私、続けてやらせていただきますが、報道の内容を問うているのでもないにもかかわらず答えられない理由を、後で明確にしておいてください。どこかの機会で、また質問したいと思いますので。

 なぜ私はこの質問をするか。仮にこれをマスコミの人が撮ったということであるならば、外交機密が含まれるかもしれない場面を特定のマスコミに公開をしたということは、それはそれで問題があるだろう。政府が撮影をして特定のマスコミに渡したのであっても、それはそれで問題があるだろう。それから、政府が知らないうちに全くの第三者がもし隠し撮りをしていたというのであれば、それはそれでまた問題があるだろうということでありますので、どのケースをとってみても私は課題があると思うんです。だから、しつこく聞くんです。

 このことはぜひ御理解をいただいた上で、私は報道の内容を問うているわけではないということを含めて、なぜ答えないのか、それは明確にしていただきたいと思います。

 それでは副大臣、大変申しわけございません、あと、そういえばTOC条約のことがありましたので、そのまま引き続きお願いします。

 さて、そこで、金田大臣にお伺いをします。

 大分時間がたってきて、随分昔のことのように思われるのでありますけれども、法務省の方で、今回の共謀罪が必要だとされる一つの例示として、三つの案件を出されました。

 一つは、テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに衝突させるテロを計画した上、例えば搭乗の航空機の搭乗券を予約した場合、これは現行法では事前に取り締まることはできないんだということをおっしゃったわけであります。

 それからもう一つ、テロ組織が殺傷能力の高い化学薬品を製造し、これを用いて同時多発的に一般の市民の大量殺人を行うことを計画した上、例えば殺傷能力の高い化学薬品の原料を入手した場合、これも現行法では事前に取り締まることはできないんだという事例を、法務省の方から提示をいただいたわけであります。

 これについて、私が質問主意書で、これは殺人予備罪の適用にはならないのか、あるいは、テロの方は殺人予備罪もしくは強取、ハイジャック予備罪ですね、これの適用にならないのかという質問主意書を出させていただきました。そうしたところ、昭和四十二年の東京高裁の判決、それを紹介の上で、こんな答弁をいただいたわけであります。

 「予備罪については、実務上、「実行行為着手前の行為が予備罪として処罰されるためには、」途中省略いたしますけれども、「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する」」と。「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する」といった解釈が示されており、このような解釈を踏まえて個別の事案ごとに判断されるものと考えている。」こういう答弁をいただいたわけであります。

 ここのところまでは、大臣、よろしいでしょうか。

金田国務大臣 逢坂委員の御指摘をいただいているただいまの点は、それで結構です。

逢坂分科員 私、この答弁を読んで、ああ、なるほどなというふうに思ったわけですが、これは、政府が示したいわゆるテロ事案と薬物事案が、現行法で一〇〇%罰することはできないとは言っていないということに私は理解するんですよね。

 要するに、このような解釈を踏まえて個別の事案ごとに判断されるものと考えるということでありますから、殺人予備罪や強取予備罪が適用される余地を否定したものではないというふうに私は理解するんですが、大臣、この理解でよろしいでしょうか。

金田国務大臣 お尋ねのハイジャックテロ事案は、現行法のもとで十分な対処が困難な場合があることを御理解いただくために例示をしたものでありまして、そのような場合があることが、法整備の必要性を裏づける一般的事実、立法事実の一つとなり得るんだ、このように考えてお示しをした事案だと考えております。

逢坂分科員 今の答弁の中で、十分な対処ができない場合があり得る、そういうことの立法事実の一つとして出したということでありますけれども、場合によってはそれでは十分な対処ができるというケースもあり得るというふうに聞こえるわけですが、それでよろしいでしょうか。

金田国務大臣 あくまで事例ごとの判断でございますので、個別具体的な事実関係のもとで予備罪が成立する可能性を全く否定するものではありません。

 が、このような裁判例、昭和四十二年の裁判例をお出しでございますが、考え方に従いますと、テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画した上で、計画に基づいて、そのうちの一人が搭乗予定の航空機の航空券を予約または購入したのみで、その他の犯行の実現に向けた行為が行われていない場合には、予備罪は成立しない事案が多いと考えている次第であります。

逢坂分科員 予備罪が成立しない事案が多い。ということは、予備罪が成立する事案もあるということでよろしいですね。

金田国務大臣 あくまで事例ごとの判断でありますので、個別具体的な事実関係のもとで予備罪が成立をする可能性を全く否定するものではありません。

逢坂分科員 そうですね。予備罪を全く否定するものではないということ、だから、政府が示した二つの事例、これは、予備罪が成立する可能性は全く否定されていない。すなわち、裏返して言うならば、予備罪が成立する可能性も個別事案に応じてはあり得るという答弁をいただいたんだと私は理解をいたしました。

 そこでなんですが、新しい共謀罪をつくったときに、東京高裁の判決、予備罪が成立するための一つの要件として、「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する」、これは何か変わるんでしょうか。

金田国務大臣 変わらないと考えております。

逢坂分科員 変わらないのであれば、なぜ新たな準備行為といったものを付加するということになるのかですね。

 今度、新しい共謀罪には、合意だけではなくて、新たな準備行為というものを設けるわけですよね。ここが変わるのであれば、それは何らか必要になるということも場合によってはわからなくもないのでありますけれども、多分、これはやはり変えようがないんですよ。

 客観的に相当の危険性が認められる程度の準備、これが要件としてあるから、国民も、場合によっては安心できるというか、そんなに客観的に相当の危険性が認められないのに予備罪を適用されちゃかなわぬということなわけですね。だから、ここは変わらない。新しい共謀罪をつくっても、ここは変わらない。

 だったら、新しい共謀罪に準備の要件を付すということ、これはどういう意味があるのか、私には必ずしも理解できないんですよね。要するに、既存の法律の中でやれるんじゃないですかということなんですよ。

葉梨主査 逢坂委員。

 今の金田大臣の答弁は、予備罪の構成要件を満たすのに関して、この判例の文言は変わらないと言われたわけですよね。今回の準備行為について答えられたわけですか。

 もう一度、金田大臣から答弁させます。

金田国務大臣 予備罪についてお話をしたつもりです。

逢坂分科員 予備罪について話をした。

 それでは、今度の、新たにつくるであろう政府の言うところのテロ等準備罪は、この判決が示している解釈、「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する」という解釈は、今度の新しい共謀罪では、この解釈は適用にならないということなわけですか。

金田国務大臣 予備行為と実行準備行為とは別物である、このように考えております。

逢坂分科員 予備行為と実行準備行為は別のものであると。

 もう少し具体的に説明いただけますか。

金田国務大臣 予備罪や準備罪というのは、予備や準備という行為が行われたときに処罰をするものであります。

 そして他方、テロ等準備罪というのは、重大な犯罪の合意に加えて、実行準備行為が行われたときに初めて処罰できるものとすることを、現在、成案を得るべく検討中でございます。

 つまり、合意という行為だけで処罰されるものでも、実行準備行為だけで処罰されるものでもなく、予備、準備とは異なるものとして、実行準備行為を現在検討中であります。

逢坂分科員 きょうは分科会で、余りこのことをぎりぎりやるつもりはないんですけれども、やはり曖昧な感じが私はするんですよ。

 それで、なぜ今回のこの新しい共謀罪が必要なのかなというのは、やはりわからない。一般論としては、テロに備えるとかいろいろ言うことは、それは理解ができる、理解というか、そういう風潮というのはあることは何となくはわかりますけれども、でも、法律的に本当にこれが必要なのかというところは、やはり私には理解できない感じがします。

 そこで、薗浦副大臣がいらっしゃいますので、早目に聞いておきます。

 今回、平成十七年だったと理解をしておりますけれども、TOC条約を批准するためには、国内法に規定する重大犯罪の全て、これを共謀罪の対象にしなければいけないという政府の答弁が公式にあったかと思います。幾つかの場面でもしゃべっておりますし、質問主意書でもあったかというふうに理解をしておりますが、その考えは今も変わっていないんでしょうか。その答弁は変わっていないんでしょうか。

薗浦副大臣 先生御指摘の条約等々について、今先生が御指摘をいただいた答弁また答弁書があるのは承知をしております。

 一方で、今、法案との関係で申し上げますと、今までのさまざまな法案審議とかいろいろなものを踏まえた上で、このあり方を今慎重に検討しているところでございますので、改めてこの法案が成案を得た段階で、条約との整合性についてもきちんと答弁をさせていただきたいというのが私どもの今の立場でございます。

逢坂分科員 わかりました。

 現時点では以前の答弁は変えてはいないけれども、もし仮に何らかの形でそれと変わるような法案が出た場合は、その時点できちんと整合性がとれる。とれなければ、それは法案として成り立たないわけでありますので、そのときに説明させていただくというような理解でよろしいでしょうか。

薗浦副大臣 いずれにしましても、今、法案と条約との関係について、法案について成案を得つつあるところでございますので、その際にしっかりとした説明を政府としてさせていただきたいと考えております。

逢坂分科員 その説明のときに、私は、対象法律を減らしたからいいとか悪いとかという議論は、余り理解ができないところがあるんですよね。それから、現行法体系の中でも、共謀あるいは予備、準備、こういった罪は規定されているわけなので、現行法で足らなくて、なぜ、例えば六百七十六で、今の外務省の考えでいけばそれがマストである、それが必須である、でも、それは場合によっては変わるかもしれないと。

 それでは、変える基準とか変わる基準、全部フルセットだというなら、まだそれは理解できるところはある、それが賛成か反対かは別にして。でも、それを減らすんだということになれば、減らす理由、意味。そして、現行にも既に、現行法の中でも幾つかの共謀罪や予備罪、準備罪、こういうものが含まれている。それでなぜ対応できなくて、減らせばなぜいいのか。

 ここのところは相当丁寧にやらないと、過去の議論と整合性がとれなくなってしまうという気もいたしますので、ぜひ、しっかり御検討いただくというよりも、余りいい答えが出ないままこの国会が終わればいいなと私は思っているんですけれども、その辺は何とも言えないでしょうから、そこの点、問題意識としてお話ししておきたいと思います。

 では、薗浦副大臣、もうよろしいです。済みません、ありがとうございました。お手間をとらせました。

 それでは、金田大臣にまたお伺いをします。

 今度政府が検討している共謀罪とこれまでの共謀罪との違い、これについて、二点大きくあったというふうに私は理解をしているんですけれども、一つは準備行為が付加される。先ほども説明いただきました、準備行為が付加される。それから一般の人が対象にならないということだったと思うんですが、この理解でよろしいでしょうか。

金田国務大臣 基本的な考え方にかかわる部分でございます。

 かつての議論された共謀罪と現在私どもが申し上げておりますテロ等準備罪、この違いは、どこが異なるかという点でございますが、私どもが考えておりますのは、過去の共謀罪に対して示されました不安や懸念を払拭するために、一般の方々が処罰される余地がないことを法律の文言上も明確なものにするという観点から、かつてはその主体が団体とのみ規定されていた、この点について、私ども現在検討しております法案におきましては、組織的犯罪集団について明文で定義をして、主体をこれに限定していく。

 それに加えまして、また、重大な犯罪の合意のみで、あるいは共謀のみで処罰するのではなくて、これに加えて、合意の内容を推進するための実行準備行為があって初めて処罰の対象とするということについて検討をしているというのが私どもの思いでありますし、ただいまの説明のできる状況であります。

 そして、テロ等準備罪につきましては、適用対象を一層明確かつ限定的なものとすることがこれによってできるということを私どもは考えておりまして、かつての共謀罪とは違ってくるということであります。

逢坂分科員 一般の方々が処罰されるという不安を取り除くためにということをおっしゃられましたけれども、一般の方々というのはどういう方々なんでしょうか。

葉梨主査 金田法務大臣、自分の言葉でどうぞお答えください。

金田国務大臣 組織的犯罪集団とかかわりのない方々であります。

逢坂分科員 当たり前のことですよね。

 今度の共謀罪は組織的犯罪を防止しようということでやっているわけですから、組織的犯罪を犯そうとする者が処罰の対象になる、これは当たり前のことなんですよね。そして、それ以外の人はこの処罰の対象にならない、これは当たり前のことを言っているだけなんですよ。それ以外の方々を一般の人々と言うのであれば、組織的犯罪を犯そうとしない人が処罰の対象になってはいけないわけでありますから、これは当然のことを言っているにすぎないんですよ。

 前も私、お話ししましたけれども、殺人罪を誰に適用するか。殺人を犯した者、殺人を犯そうとして行為をした者。それ以外の人は殺人罪の対象になるか。ならないんですよ。ですよね。

 大臣、ここ、私の考えは間違っているでしょうか。

金田国務大臣 以前、逢坂委員からは、たしかこの点を例に引かれて、トートロジー的な状況になっているのではないかという御質問があったように記憶しております。

 私は、要するに、テロ等準備罪を適用するには、主体が組織的犯罪集団であること、すなわち、結合の目的が犯罪を実行する団体であると認定される必要があると。単に団体の中で一定の犯罪を犯す合意があることが認定されるだけでは足りないわけでありまして、そのように考えているわけです。

 したがって、組織的犯罪集団の要件というのは、合意や実行準備行為とは別の、独立をして意味のあるものであって、私は、御指摘のようなトートロジーとは考えていないのであります。要件としてしっかりと、組織的犯罪集団の要件、そして合意の要件、実行準備行為の要件というものをしっかりと定めていくという考え方を持っているものであります。

逢坂分科員 きょうはもう時間がないので、余りこれ以上深入りできませんけれども、先般、二月十六日に法務省が発表したあのペーパー、「もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得ることとするのが適当である」、こういうペーパーを出されたわけでありますけれども、これを見たときにも私は同じことを考えたんですね。

 同じことを考えたというのは、すなわち、これを見て、一変するというのはどういうことなのかなとか、認められるというのは誰が認定するのかなとか、あるいは、何らかの変化を認めるためには、変化の前と後がなければ、変化をしたというふうには、これはわからないわけでありますね、だから、そういうときに、例えば捜査というのはどこから捜査の範囲になるのかなとか、あるいは、捜査の端緒。

 これは多分、葉梨委員長はプロですから、その辺は葉梨委員長なりのお考えはあるんでしょうけれども、私は必ずしもこの点プロではありませんので。でも、その辺が非常にやはりグレーだなという気がするんですよ。葉梨委員長は首を振って答弁をしておりますけれども。いやいや、まあ委員長は余り、委員長にいろいろやられると私もやりづらいんですよ。予算委員会でも何か、委員長が金田大臣のところへ行っていろいろ御説明をなさっているようですので。まあ、それはちょっと脇に置くとして。

 どうもこの辺がよくわからないんですね。ここをまず大臣、一つ、これは、認められるというのは誰が認めるんですか。今の、正当な活動を行っていた団体が犯罪を実行することにある団体に一変するというのを認めるのは、誰が認めるんですか。

金田国務大臣 一変というのは、もともと正当な活動を行っていた団体がその性格を全く変えて、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に変化したと認められることをいうものとして、一変という用語を用いております。

 そして、誰が認めるのかということでございますが、最終的には裁判所である、このように考えております。

逢坂分科員 裁判所が認めるというのは、それは確かにそうなんだと思いますけれども、捜査の対象にするとかというときに、それじゃ、裁判所が最後は決めるのは、それはそうだと思いますけれども、捜査の対象にするかしないかというのは誰が決めるんですか。

金田国務大臣 その間の件についてお尋ねでございますが、捜査機関であろうと思います。

逢坂分科員 それでは、捜査機関が、一変したと認める前に、いわゆる正当な活動をしている団体について何らかの情報収集なり、いわゆる、平たい言葉で言うならば、当たりをつけるなんということはあり得るんですか。

金田国務大臣 ただいまの御指摘に対しましては、捜査は犯罪の嫌疑があって行うものである、これは御承知のとおりでありますが、組織的犯罪集団によるテロ等準備罪の犯罪行為が行われた嫌疑がないにもかかわらず、テロ等準備罪に関する捜査が行われることはない。

 したがいまして、一変したか否かを判断するために、テロ等準備罪の犯罪行為が行われた嫌疑がない段階から、正当な活動を行っている団体を対象にテロ等準備罪に関する捜査が行われるということはあり得ない、このように申し上げます。

 そして、組織的犯罪集団に当たるかどうかは、具体的な事案の嫌疑が生じた時点で、その団体の結合の目的が犯罪を実行することにあるか否かによって判断されるのでありまして、一変する過程を継続的に捜査することによって認定するものではない、このように考えております。

逢坂分科員 時間が来ましたので、これでやめますけれども、そのあたり、すごく私は大事だと思うんですよ。いわゆる大臣の言葉で言う一般の方々が該当するかしないかというところは、今のところをもう少しクリアに議論をしないと、私はまずいような気がしております。

 これからもまたよろしくお願いします。ありがとうございます。

葉梨主査 これにて逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤枝恒雄君。

赤枝分科員 自由民主党、衆議院議員の赤枝恒雄でございます。

 この発言の機会を与えていただきました関係者の皆様に、心からお礼を申し上げたいと思います。

 実は、きょう私のお聞きしたいのは、刑法の百七十六条と百七十七条に出てきます、性の同意年齢というのは聞きなれたことがないんだと思うんですけれども、つまり、性行為のリスクを十分理解した上で性行為を私はするんだという権利、これが十三歳で日本では芽生える。

 十三歳になると性の同意年齢が芽生えるということですから、実際、十三歳までの小学校のときに性のことが全てわかっていて、それで十四歳になったらもうしてもいいよということになるわけですけれども、これが、世界の常識からしたら、世界八十九カ国では、性の同意年齢は十六歳なんです。三歳も違うんですね。これは世界の常識で、八十九カ国がみんな十六歳になっているのに、日本だけ明治の時代に決まったものがそのまま残っていて、十三歳になっている。

 これが物すごく大きな問題であるわけですけれども、これについて、私はずっと、町の産婦人科医として三十九年間、六本木でやってきて、お産ももうなくなった十何年前からは、子供相談室というのをハンバーガー屋さんで、夜、診察の後にやって、それでいろいろな話し合いを続けてきて、実は、このハンバーガーショップで、ここに来る子供たちの十人ぐらいにお話をしたって、これはちょっとやはり時間が無駄だなと。これはぜひラジオでやろうということで、文化放送で金曜日の夜中二時からラジオ番組を始めたわけですね。

 金曜日の夜中二時というのは、母親、父親は寝ている時間で、非常にラジオを聞きやすい。次の日は休みだということで、普通、ラジオ番組は六カ月で終了なんですが、私の夜の性教育番組、これは「ガールズガード女の子の保健室」というんですけれども、何と十年間続いたんです。十年間このラジオは続いたんです、人気で。

 そこで、このラジオ番組がすごいと僕は、自画自賛ですけれども、始まった次の年から、その前は十代の中絶が三万九千六百七十八人あったものが、そのラジオ番組が始まった翌年、次の年からはどんどん減り続けて、現在は二万六百五十九人。十代の中絶が半分以下になっている。こういうのはこのラジオ番組のせいかどうかわからないですけれども、僕は効果があったのかなというふうに思っているわけです。

 ここに至るまでの街角で私が聞いた話は本当に怖い話ばかりで、そんなのうそだろう、それは東京だけの話だろうと言われることがあるんですけれども、実は東京は、中絶も少なくて、性感染症も少なくて、そういう意味の性の被害者が非常に少ないエリアなんです。東京だから多いんだろうと言われる。違う、東京は少ないんですよ、全国的に言うと。

 では、何で東京は少ないんですか。それは、健全な遊び場が東京は多いんですね。健全な、ディズニーランドもある、シーもある、それから後楽園もある。いろいろなところがあって、健全に子供たちが遊べる遊び場があるというところで、健全に遊んで、バイバイというのができるところではあるわけですね。東京の方が少ない、そういう意味では。それが現実なんです。

 その中でも、私は、街角に出ていろいろなお話をする中でこれは怖いと思ったのは、今、ナンパというのは御存じかどうか、トライをする、デートの約束をするような、ナンパというのがあるんですけれども、これは昔、男性が女性に声をかけていましたよね。今、逆ナンといって、逆ナンパ、女性がイケメンを見つけたら追いかけていってアドレスを交換しようと言うのが逆ナンというものですよ。これは、本当に今の女性はそういう性行動が非常に強くなってきて、現実に、もう高校生のレベルでは、女子高校生の方が性の体験は男性を上回っているというのが現実ですね。これは皆さんよく御存じのとおりです。

 そんな中で、多分、こういう今の状態だと、子供たちの性感染症はひどいことになっているんじゃないかと思って、六本木の産婦人科、港区の産婦人科ですけれども、女医さんも含めて九人に協力してもらって、水曜日と木曜日の夜、徘回している子供たち、平均十八・何歳ですけれども、その人たちに無料券を、性感染症の無料券、これはどこへ行ってもいいよ、いつ行ってもいいんだよ、無料だよというので、エイズ、梅毒、淋病、クラミジアとか、無料でやったんです。無料で調べて、受けてくれた人が二百五十人ぐらいいました。受けてくれた。

 その中の何と八九・六%が何かしらの性病を持っているという、私はそれでショックを受けたんです。これはいかぬ、ここまでひどいことになっているのなら、これはちょっとやはり対策を立てないかぬなと思って、私は、ガールズガード運動、女の子を守ろうという運動をそこから始めたんですね。これは一九九九年の四月一日、そこから始めたんです。

 これが、いろいろな本も発行しましたし、ラジオ番組もやりました。いろいろなことを、いろいろなところに行って講演もしました。そういうことをずっとやってきた中でやはり感じたことは、子供たちが、家庭の中が問題なんですけれども、義務教育を全うしていない。

 うちに来る中学生で、制服のまま来て、それで性病検査に来る、保険はもちろんないわけで。君ね、性病検査といったって、性病検査はお金がかかるよ、三万ぐらいかかるよ。お金はありますということですよ。お金はあります。

 その子は、お母さんが英語の先生で、自分は起きないので、お母さんは仕方なく学校へ行っちゃった後に、制服を着て渋谷に行って援交、援助交際というのをやっているわけです。

 この援助交際というのも、だんだん下の方の、情報が伝わって、小学校まで援助交際というのは実際あるわけで、小学生で淋病になって来る子というのも結構いるわけなんです。小学生が性病というのは、こんなのはないと思うでしょうけれども、現実に私のところのカルテを見ていればあるわけで、こういうのを大人が知らない。

 しかし、これは子供たちの責任ではないので、やはり大人の我々の責任であるというところを自覚しなきゃいけない問題なんです。

 そういうふうに、今、子供たちの性が低年齢化してきた。これについて、現実は本当にすごいことになっていて、学校の中では、援助交際なんていう、大人が子供をある程度お金を出してということが、中学生同士、高校生同士で援交ごっこというのをやっているわけです、三千円とかですね。中学校は千円ぐらい出して、援交ごっこというのをやっている。

 社会の中のいろいろなメディアも悪いんですけれども、「十四才の母」なんていう大ヒットしたテレビ番組があったんですね。「十四才の母」、これはよくできていました、ストーリーが。塾に行って、塾に行っているということで、ちょっと遊んでいて、女の子とたまたま川に入っちゃって、ぬれたから乾かそうと思って小屋に入ったら、そういう関係になっちゃったということ。僕たちこれでいいの、いいのと言いながらしちゃっているんですけれども。

 それから「コドモのコドモ」という、これは小学生同士が、くっつけっこというのがはやった時期があるんですよ。くっつけっこをやったときに、やはりできちゃった。

 今言ったとおり、日本では合法ですよ、十四歳のセックスは。ところが、外国、八十九カ国は、十四歳の性行為はレイプ事件ですよ。ましてや小学生は。しかし、日本ではそれは認められていて、こういうメディアの番組の悪いのは、そういう、子供たちが性行為をして、結末はみんなハッピーエンドです。最初は親は反対していた、ずっと。おろしなさい。病院まで行った。だけれども、子供は逃げて帰ってきて、嫌だ、産みたい。親も反対していたけれども、産んだ。その後は、おじいちゃんもおばあちゃんも子供を愛してくれて、ハッピーエンド。

 僕は、こういう余り好ましくない行為自体がハッピーエンドで終わっているというのは、子供たちに対する影響も余りよくない。影響がよくないというか、子供を大切にという意味ではいいのかもわかりませんが、しかし、準備も何もない出産というのは、後ほど必ず子供の貧困とか虐待につながることであって、準備をしてから出産というのでなければ、これはやはりまずいというふうに私は思っているわけなんです。

 それで、肝心の、日本はどうして性の同意年齢が十三歳に置いておかれたんだろうという、ちょっとストーリーをお話しします。

 これは、かつて検討された時期があったんですね。検討された時期が、昭和四十七年三月の法制審議会刑事法特別部会で検討されて、この十三歳を、改正刑法草案というところで、十四歳にしたらどうだという、この検討がなされたわけです。

 しかも、今回、お国の例の審議会、審議会というか検討会、性犯罪の罰則に関する検討会、これは取りまとめが二十七年の八月に出ているんです。取りまとめに確かにそういう両論併記はされているけれども、結果はどうなったのかというと、これは何の法律にも反映されなかった。つまり、ほっとかれているわけです。

 だから、ここのところ、やはり、私が指摘したところは、昭和四十七年にもちょっと指摘されているんですね。この審議会でも、十三歳のままではまずいという意見がかなり出てきている。それなのに皆さんは、誰が担当かわからないですけれども、行政の方も、これをほっておいたとは言いませんが、今後、どういうふうにこれを持っていく予定なのか、その辺の今後の取り扱い、ただ審議しただけなのか、どこかに何かもう一回特別部会をつくって審議をしてくれるのか、その辺のお考えをちょっとお聞かせください。

林政府参考人 刑法の強姦罪につきまして、暴行または脅迫を用いることが構成要件とされていない年齢、今、性交同意年齢とかそのようなことで言われますけれども、この年齢の引き上げにつきまして、これまでの議論の経過及び今後の予定について申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昭和四十七年当時は、刑法を全面改正するという観点でこの部分が議論されたわけでございますが、近年に至りましては、法務省におきましても性犯罪の罰則に関する検討会というものがございました。それに引き続いて法制審議会の審議というのがあるわけでございますが、この性犯罪の罰則に関する検討会でも、やはりこの年齢の問題は議論をされたわけでございます。

 この点について、その検討会では、十三歳以上であっても中学生等は保護が必要であるという理由から、この年齢を引き上げるべきであるという意見があった一方で、これに対しまして、引き上げに係る年齢の被害者について、本当に一律に性交についての同意能力がないと言えるのかどうか、あるいはないと擬制できるのかどうか疑問である、こういった意見、あるいは、仮に十五歳未満や十六歳未満に年齢を引き上げるとすれば、児童の性的な保護、安全というものを刑法の性犯罪の保護法益に導入することになるなどとして、これに対しての慎重な意見というものがありまして、いずれかの意見が大勢を占めるには至らなかったわけでございます。

 その結果、法務省におきましては、その検討会を踏まえた上で、法制審議会に性犯罪に対処するための刑法一部改正についての諮問を行って答申を得ているわけでございますけれども、その中では、事前に行われました性犯罪の罰則に関する検討会で年齢の引き上げをすべきという意見が多数を占めることはなかったことから、法制審議会への諮問においてはこの点については諮問に至らず、法制審議会においては主な議論の対象とならなかったものでございます。

 法務省といたしましては、今般、刑法の一部を改正する法律案ということで、性犯罪の罰則の見直しについての法案を国会に提出すべく準備中でございますが、御指摘の年齢の引き上げの問題、これについては、現在この法改正の中には含めておりませんし、現時点で、今後これを法改正に向けて議論するという予定は持っておりません。

赤枝分科員 まことに残念なというか、意識が欠けている。これでお父さんをやっていられるのか、お子さんは女の子はいないのかというのを聞きたくなるぐらいの話で、実は、この三歳、三年上げるということの意味、大変なものがあるんです。十三歳で性の知識ができていなきゃいけないんですよ、法律上。十三歳でできていますか、皆さん、考えたって。十三歳で性の知識なんかついていないですよ。法律は書いてある。でも、それじゃいけない。

 もう少したって、三年ぐらいたって、性の知識を身につけさせて、それから性行為に、結婚とかにいこうということで、諸外国はみんな十六歳になっているんですよ。十六歳の意味というのはすごく大きいんですよ、この三年間おくらせる意味は。何の性教育もできていないのに、そのまましてもいいんですか。性のリスクというのはあるでしょう。子宮外妊娠があったり、それから性感染症もある、不妊症になる、そんなこともあるじゃないですか。

 そんな知識を身につけさせないままで、十三歳でやってもいいですよなんていうのは、無責任過ぎますよ。ここは絶対に変えてもらいたい。どうですか、もう一回お答えをお願いします。

林政府参考人 委員御指摘の年齢の問題を刑法の問題として位置づけますと、やはり、刑法の現在の強姦罪等の保護法益というのは、人の性的自由また性的自己決定権と考えております。そうしますと、性の低年齢化が進行している現状に鑑みますと、性交等をすることのみによって強姦罪等が成立するものとされる被害者の年齢を引き上げるということにつきましては、むしろ、若年者の性的自由に対する過度の制約となり得る側面というものがあるということ。

 また、我が国では、性的自由でありますとか性的自己決定権を保護する観点からは、必ずしも刑罰によって規制する必要がない性的行為でありましても、他方で、児童福祉の観点から、刑法とは別に、児童福祉法等によりまして、十八歳未満の者に対する性的な行為について、十八歳未満の者の同意があったとしても処罰する規定が置かれております。

 このような我が国の法体系全体を見ますると、十八歳未満の者についても刑法以外のところでの保護が図られているとも言えるわけでございまして、こういった状況を考えますと、この点について、この問題を刑法の改正という形で行うことについての必要性は感じていないところでございます。

赤枝分科員 これは、もう一回よく考えてほしいんです。

 例えば、児童福祉法違反とかで刑がありますよと言われても、我々がやはり怖いのは、一般の我々パンピーにとってみたら、刑法なんですよ、刑法。刑法で入っている、刑法で百七十七条には書いてあるよと言うと、僕たち、何でこんなことを言っているかというと、今、女の子を守るために言っているんですよ、守るために。

 女の子は、やはりイケメンの子に対して、嫌われたくないから、やらせてくれよと言ったら仕方ないと、断りができない。これは現実ですよ、本当に。だから、女の子が断りやすいように、これはだめだよ、私まだ十四歳だからできないんです、法律に書いてあるじゃない、刑法の百七十七条に書いてあるじゃないと言えるものが、女の子を守るんですよ、守ってくれるんですよ。

 そういうものがないから、法律上は十三歳からしてもいいよということになっていれば、断れない。だから、僕は、断れる理由のために、女の子を守るために、ぜひ、十六歳以下はしちゃいけないんだという法律に変えてもらわなきゃいけない。

 現実に今、低年齢化して、十代の中絶、これは十二歳でもありますよ、報告が。これは去年の東京産婦人科医会のあれですけれども、十三歳でも五人も、十四歳でも十人、十五歳の中絶も七十五人、十六歳が百六十八人、十七歳が二百八十九人、十八歳でも四百七十七、十九歳は八百八十四というふうに、十代の中絶はいっぱいあるんですよ。

 それから、今、子供たちが遊びに行こうといって、最後に、ディズニーランドも最後までいて、遅くなって女の子が帰ろうと思うと、ちょっと待てよ、やらせてくれよという話になって、つまり、レイプという問題になるんです。

 これは朝日新聞にも出ています。朝日新聞に、今の女子高生の二十人に一人がレイプされていると書いてある。どうですか、二十人に一人がレイプされている。その相手は、加害者のトップは恋人です。恋人、つまり、おつき合いしている人ですよ。男が悪い、もちろん。男にそういう知識がないから。受ける女の子も、法律でだめだよと言えるものがあれば断れるんだけれども、そういうものはない。結局、こういういろいろな事件になっていく。でも、二十人に一人はレイプされているといって新聞に書かれて、誰も驚かないというこの現実も、私は困ったものだと思うんですが。

 とりあえず、本当に、この議論は皆さんで共有して高めていって、今の小中高生の健全な性の育成につなげていきたいというふうに思っています。

 もう一つ、レイプの罪が強盗よりも軽いというのが今度訂正されるんですか、改正される。それはよかったです。

 ところが、レイプをしてその後強盗する場合と、強盗してついでに女性がいてレイプした場合と、罪の重さが違うんですね。これはどんな意味があるんですか。これをちょっと教えてもらえますか。

林政府参考人 今委員御指摘の中で、まず、強姦罪の法定刑が強盗罪の法定刑よりも軽いという御指摘、これにつきましては、今回、法制審議会等の議論も踏まえまして、現在、改正の法律案を提出することを準備中でございますが、その中で、強姦罪の法定刑の下限を五年以上という形にしまして、強盗罪と並ぶという形に改正をする予定でございます。

 その上で、もう一つの点は、強盗強姦罪の成立の要件といたしまして、現在、強盗の犯人が強姦をした場合、それから、逆に、強姦の方が先で、強姦が行われた後にその同じ機会に強盗が行われる、こういった場合とで処断刑が異なるというところの不合理さというものが指摘されているところでございますので、その点につきましても、今回の法改正の中で、全く強盗と強姦の先後関係を問わず同一の処断刑で処断されるように法改正をする予定でございます。

赤枝分科員 それから、強姦の刑罰が軽過ぎると絶対に私は思うんです。

 というのは、具体的なあれは出せないんですけれども、ある女性が上司に連れられて、うちに震えながら来たのは、彼女がつき合っていた元彼に呼び出されて、自分のいる駅の近くで待ち合わせをして、車に乗れよと車に乗せられて、元彼の車に乗ったら、ほかに二人の男性がいました。結局三人がいたわけですね。それで、乗せられて彼の家に連れていかれて、そこですっぽんぽんにされて、元彼の友達を二人連れてきて、その二人にレイプされたんです、見ている前で。

 それがとにかく怖くて、その後の病気のチェックにも来たんですが、麻布警察に行こうよ、そんなの訴えろよ、場所もわかっているんだからと。でも、彼女がどうしても警察に行けなかった理由は、その男に、おまえ、警察なんか行ったら、レイプなんかはすぐ出てこられるんだよ、俺なんか初犯だからすぐ出てこられる、出てきたら、おまえとかおまえの家族をぶっ殺してやるよ、それをささやかれたから、もう怖くて警察に行けなくなっちゃった。それぐらい、レイプの罰則が、一般の人にとってみたら、すぐ出てこられるよと思っているところが困ったものなんですね。

 レイプは、どうしてもやはり刑は十年以上は、二十年以上ぐらいの刑にしてもらって、絶対だめな行為だというふうにしてもらわないと、三年とか五年じゃまずいんじゃないんですか。そのところはぜひお願いをしたい。

 それから、実際の例として、レイプされた患者さんたちが困っているのは、語学を勉強したいといってネットで出したら、じゃ教えてあげるよと男が来て、待ち合わせをして、うちに資料があるからちょっとうちに行こうよと、おうちの中に入った途端にレイプされちゃった。これは警察に行ったんですよ、彼女は。行ったけれども、警察では、それは家の中に入ったから、レイプといってもできないよと。えっというわけですよ。

 僕なんか、そんなことはあるでしょうと。だから、ホテルの中に入ったらもう全部だめとか、建物に入ったらだめ。その子も、資料があるからといってだまされて行ったらレイプ。家の中に入ったらレイプにならないというこの判断は、ぜひやめてもらいたい。こんなことはよくあるんですから、ぜひそこをお考えいただいて、少しうなずいていただきたいんですけれども、いかがですか。

 家の中に入ったらもうレイプじゃないという考え方、これはまずいですよね。そうじゃない場合はあるでしょう。でも、警察に行ったら必ず、それはだめだめと言われちゃうんです。この現実をちょっと考えていただいて、レイプをもっと、子供たちを守る意味で、刑罰も重くするし、それから、さっきの法律の整備もしていただきたいと思いまして、きょうの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて赤枝恒雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、枝野幸男君。

枝野分科員 民進党の枝野です。

 我々がいわゆる共謀罪法案と呼んでいる法案について、私も過去にこの法案が審議されたときの審議にも立っておりますが、きょうは、基本的なところ、細かいところは仲間がこれまで予算委員会で聞いてくれていますので、改めて、基本的なところを確認したいと思っています。

 先ほど逢坂さんも若干関係するところに触れていましたが、今回国会に政府が提出を予定している、テロ等準備罪を新設する法案がもし成立をしたら、国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約の批准が可能になるんですか、それともそうではないんですか。

金田国務大臣 可能になる、このように考えております。

枝野分科員 ということは、これは、きょうは法務の分科会ですのでこれ以上詰めませんが、これまで法務省か外務省はずっとうそをついてきたということが今明確に答弁されたということであります。これ以上絞り込みはできない、絞り込みをしたら批准ができなくなるというのは国会にも議事録が全部残っている話です。ということは、今までうそをついてきた。

 誰がうそをついてきたか、しっかりと、法務大臣、調べてください。

金田国務大臣 枝野委員から御指摘がございました。かつての共謀罪、これがTOC条約の担保法として過剰あるいは過大なものであって、今回がTOC条約の担保法として適切、こういう考え方なのかという御指摘であろうか、このように考えて、今ここに、お答えをさせていただこうと思って立っております。

 かつての共謀罪も、条約の趣旨に沿うものとして立案されたものでありまして、過剰あるいは過大なものではない、このように考えております。これは外務省の方から答弁した方がよろしいのかもしれませんが、TOC条約が許容するオプションを活用するかどうかという問題であろうかと考えております。

枝野分科員 後で議事録を全部精査して、よく見てください。法務省自身が、これ以上絞り込みはできませんという趣旨の答弁を何度も繰り返していますから。葉梨さんもよく覚えていらっしゃると思います。間違いなく、そのとき、うそをついていたということになります。条約自体がその後変わっていませんから。

 これは、誰が当時うそをついたのか、当時の法務大臣なのか外務大臣なのか、それとも事務方なのか、主犯は外務省なのか法務省なのか、このことを明らかにしないとこれは審議を進められませんから。また今度もうそをついているかもしれない。疑わざるを得ません。あのとき、誰がどういう経緯でどううそをついて国会に説明したのか、そのことをはっきりさせないとこの審議は進まないということをまず申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、そもそも、今回、皆さんは準備罪と呼んでいる、我々は共謀罪と呼んでいる、この法律の制定についていろいろ疑義が上がっているのは、実行の着手に至らない段階で、本犯の、本来の主たる犯罪の実行の着手に至らない段階で処罰がなされる。ここの部分が実は刑法の例外です。既遂になったときに犯罪が成立する、あるいは、未遂罪が設置されている場合であっても、実行の着手がなされて処罰の対象になる、ごく例外的に予備や謀議の段階で処罰が規定されているものがありますが、非常に例外、限定されています。これを非常に広く広げるということで、今回問題になっています。

 それでは、なぜ、従来の刑法では、実行の着手に至らない、予備や謀議の段階では原則として犯罪にならないとされてきたのか、その理由を教えてください。

金田国務大臣 ただいまの御質問につきまして、刑法上、多くの罪につきましては、例えば未遂罪が設けられておったりして、法益に対する侵害の危険性が現実化した段階で処罰の対象とするのが適当である、このように考えられたということにより未遂罪が多くの罪について設けられている。

 これに対して、一般的には、予備の段階あるいは陰謀の段階では結果発生の危険性が相対的に低いために、特に重大な犯罪についてのみ予備罪や陰謀罪が設けられているものと考えております。

枝野分科員 それも理由の一つでありますが、それだけですか。

金田国務大臣 この点については、私は、そのように考えておる次第であります。

枝野分科員 そうですか。

 それでは、違う角度から聞きましょう。

 憲法三十八条三項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と規定してあります。ほぼ同趣旨の規定が刑事訴訟法にもあります。この趣旨はどこにありますか。

金田国務大臣 憲法第三十八条第三項は、いわゆる自白の補強法則を定めるものと承知をいたしております。

 その趣旨は、自白を唯一の証拠として有罪の認定をすることを認めますと、虚偽の告白による誤判のおそれがある、そしてまた、自白を偏重する余り人権を侵害するおそれがあるということから、自白が唯一の証拠である場合には有罪とされずに、有罪とするためには自白以外の補強証拠を必要とするというものである、このように考えております。

枝野分科員 そうなんですよね。被疑者、被告人が、私がやりましたと幾ら言っても、それだけでは本当かどうかわからない。だから自白だけでは有罪にしてはならない。

 では、皆さんの準備されている、皆さんの言う準備罪、いわゆる共謀罪において、複数の者がお互いに共謀関係にありましたという自白があります、他に証拠がない、この場合、有罪にできますか。

金田国務大臣 共犯者の自白ということになろうかと思います。

 あくまで一般論として申し上げますと、判例によって、共犯者の自白は、本人との関係におきましては、被害者や目撃者の供述と同様に自白を補強する証拠となり得るものと解されていると承知をいたしております。

枝野分科員 そうですね。共犯者の自白は、少なくとも憲法三十八条三項との関係では、他の証拠になるんですよね。したがって、共犯関係にある者の自白だけで、他に物証が一切ない場合でも、共謀共同正犯、犯罪が成立をする、そのケースはあり得るわけですよ。

 これを謀議だけで適用していいと思いますか。共謀共同正犯の場合は、誰かの何らかの実行行為があります。したがって、他に物証がない、他に証拠がないという場合であっても、犯罪が行われたという事実は存在します、共謀共同正犯の場合、従来の既遂罪の場合はですね。だけれども、これは、実行の着手がなされていない、つまり犯罪が実際に行われたのか行われていないのか、まあ行われていないわけですね、本犯は。そのときに、一個一個は信用性がない、共犯者相互の自白だけで有罪にしていいんですか。

金田国務大臣 共犯者の自白で補強される自白を有罪認定の証拠として用いることは可能であるわけですけれども、合意に加えて、我々は、実行準備行為がなければ有罪とされないものとして現在検討をしておるわけであります。

枝野分科員 そこでそういうお答えをされるなら、先ほど、なぜ原則として実行の着手がなければ処罰の対象になっていないのか、そのもう一つの理由はおわかりになりませんか。

金田国務大臣 さきの問いにお答えしたとおりであります。

枝野分科員 いいですか。今大臣は、共犯関係にある者同士の自白、一人一人の自白だけでは自分のことは有罪にできないわけで、信用性がないわけですよね。その自白しかない状況で全員を有罪にしてしまうというのはやはりまずいから、準備行為を必要とするようにしましたとお答えになったんです。

 つまり、準備行為のような具体的な行動がないのにもかかわらず処罰をしようとすると、結局、自白などに頼らざるを得なくなって、その自白は本来は信用性の乏しいものであるから冤罪を生む可能性がある、だから、実行の着手など具体的な、自白以外、本人の証言、発言以外の何らかの証拠が残るような形になって初めて処罰可能になるんだ、だから原則として実行の着手までは処罰できないんだ、これが未遂、実行の着手までは原則処罰対象にならないということのもう一つの理由じゃないですか。

 後ろの方、ゆっくり考えて教えてあげていいですよ。

金田国務大臣 テロ等の準備罪の捜査、公判活動につきましても、他の犯罪と同様に刑事訴訟法に基づいて適正に行われると考えています。したがいまして、共犯者の自白については一般に巻き込みの危険があると指摘されていることを踏まえまして、客観的な裏づけ証拠の収集に努めるとともに、その信用性については慎重に判断されるものと考えておる次第であります。

枝野分科員 いいですか。

 私も、本当にテロにつながる具体的な危険がある、それをできるだけ早い段階で捜査して取り締まってテロを予防する、そのことはぜひやるべきだ、最大限やるべきだと思っています。

 ただ、やはり、そのために冤罪を生んではいけない。冤罪を生まないためには、しっかりと基本原則のところから考えて、何をしなければならないのか。

 絞り込みはされるようですから、その絞り込み自体が、過去の発言はうそであるということ、これは後で詰めるにしても、絞り込みは結構だけれども、どう絞り込むかが問われるわけですよ。絞り込みしたけれども、何となく形だけでは意味がないわけです。

 そこで大事なことは、今申し上げた、原則として刑法は実行の着手がなければ処罰しない、本人の自白だけでは処罰しない。それは、やはり基本的には、本人が何を言ったってそれは信用できない、それだけで処罰すると冤罪の可能性があるから。だから、具体的な行動があって、その具体的な行動と自白とあわせてみると、これは間違いないですね、そこまで担保しないと危ないよね。だから実行の着手が要るんですよ。内心で幾ら考えていて、本人が自白しても、どんなに凶悪なことを考えていたとしても、それだけで処罰できないのは、本当に本気でやろうとしたのかどうかわからない、本当に考えていたかどうか誰もわからない。だから、具体的な、物理的に何らかの表に出る実行の着手が原則とされるんですよ。

 御理解いただけますか、そこまでの考え方は。大丈夫です、ここの部分で揚げ足はとりませんから。

葉梨主査 枝野委員、実行の着手と準備行為と……(枝野分科員「その後、これから詰めますよ。原則として」と呼ぶ)そこはちょっと別のものだという答弁のように思うんですが。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 枝野委員の御指摘は、自分としては理解しているつもりであります。

枝野分科員 とはいいながらも、凶悪なテロにつながるようなものについては、今までのルールでは実行の着手を必要としていたけれども、もうちょっと広げたい。気持ちはわかります、気持ちはわかります、気持ちはわかるので。

 だから準備行為を要件とすることにした、これはいいんですね。全ての、今回、テロ等準備罪とそちらが称している新たにつくられる類型には、全て構成要件として準備行為が必要、これでいいんですね。

金田国務大臣 実行準備行為が必要であるということにつきましては、構成要件であるかどうかはともかくといたしまして、要件である、このように考えております。

枝野分科員 なるほどね。構成要件にするのかそうではないのか、これから詰めるわけですか。

 では、違う方向からいきましょう。

 よくわからないのは、この準備行為が必要、その準備行為と、現行法でも殺人などについては予備罪があるわけですね、殺人罪などの予備行為と、皆さんが想定している準備行為は同じものなんですか、違うものなんですか。

金田国務大臣 ただいまお尋ねの予備罪あるいは準備罪の予備行為、準備行為、それから実行準備行為の準備行為、同じものか違うものかという質問である、このように思っております。

 予備罪や準備罪というのは、予備や準備という行為が行われたときに処罰するものであろう。

 他方、テロ等準備罪というのは、重大な犯罪の合意に加えて実行準備行為が行われましたときに初めて処罰できるものとすることを検討中でございます。この点、こうした実行準備行為は、現行の予備行為や準備行為の以前の行為である場合があり得るものとして検討を行っているところであります。

枝野分科員 従来の殺人予備罪などの予備行為も、殺人の実行の着手には至っていない、でも間違いなく殺人のための準備として何かの行動をとった、その段階を捉えて処罰しているんですよ。実行の着手には至っていない、でも犯罪に向けた行為であるということが明らかであるものは予備なんですよ。

 それに至らない準備というのは何ですか。一例でいいから具体的なものを挙げてほしいんですよ。

金田国務大臣 例えば、例で挙げるといたしますと、犯行現場の下見といったようなものがあろうかと思います。

枝野分科員 これは通告していないから大臣は答えられないかもしれませんが、後ろは教えられるでしょうから。

 殺人予備の場合も、下見、明らかに下見の目的で行っていたら、それは予備が成立しませんか。しないの。

金田国務大臣 その場合には、下見に行っていて、凶器を持っていたかどうかとかそういった要素も出てくるのではないか、このように思います。

枝野分科員 凶器を持たずに下見に行って、現場の状況はこうだから、だからこういうふうに殺してやろうといって、一度家に戻って、そのときは予備罪は成立しませんか。

金田国務大臣 予備罪が成立するかどうかにつきましては事案にもよるのではないかなというふうに思っておりまして、予備罪が成立しない場合もあるものと考えております。

枝野分科員 そうなんですよね。

 なぜかというと、その下見行為は、刃物とかを持っていなければ、下見の目的であるのか、それとも別の目的であるのかは、内心でしかわからないんですよ、本人の主観でしか。客観証拠はないんですよ。わかりますか。刃物を持って、さあ殺しに行こうといって待ち伏せしているんだったら、これはわかりますよ。だけれども、刃物も持たずに、ここにどうせあした来るんだ、あした来るんだからきょう見に行っておこうと、犯行のために、殺人のために下見に行ったのか、それともたまたまどこかに移動する途中でそこを通ったのかは、本人の内心以外、誰もわからないんですよ。

 だから、それがまさに下見の目的であるかどうかという他の客観証拠がなければ、確かに予備罪が成立しないケースはあり得るんですよ。

 でも、同じ問題は準備行為にも起きますよね。

金田国務大臣 準備行為におきましても、準備罪のただいま挙げられたような例と同じようなケースがあり得るものと思います。

枝野分科員 だから予備で十分なんですよ、新しい概念をつくる必要はないんですよ。違いますか。

 見回りだって下見だって、ああ、これが犯罪行為に向けた行為であるという客観的な材料があれば、今、予備罪になるんですよ。皆さんの言う準備罪だって、その準備行為が犯罪行為に向かっているという客観証拠があれば予備罪でできるんですよ。それを広げる必要はどこかにあるんですか。

金田国務大臣 枝野委員の御指摘に対しましては、客観的に相当の危険性が必要とされると、予備罪が設けられている罪につきましての裁判例もございますが、未然防止という観点からは十分と言えないという、テロ組織によるテロ行為は一たび実行されると取り返しがつかない結果が生じるので計画発覚後はできるだけ早く検挙すべきではありますが、現行の予備罪だけでは不十分のケースがあるということでございます。

枝野分科員 そういう答弁をされると、今度は犯罪対象をどうするのという話なんですよ。

 確かに、いわゆるテロ行為、不特定多数を殺害するような行為、それは取り返しがつかないから、だからちょっと前広に、冤罪を起こしちゃいけない、そこは注意をしながらだけれども、前広に取り締まらなきゃならない、それは私は賛成ですよ。

 だけれども、今度の犯罪対象は、テロ組織の資金源獲得みたいな間接的な、つまり準備罪に当たるような準備行為をしたとしても、それが既遂になったとしても、不特定多数の命に直接影響するものではない、テロ行為からすればまさに予備ですらない準備行為だ。そういうものまで処罰対象になるんでしょう、絞り込むとは言いながらも。経済犯罪とかも入るでしょう。

金田国務大臣 現在、対象犯罪につきましては検討中でございますので、成案ができた段階で御説明できると思います。

枝野分科員 いろいろ新聞に報道されていますけれども、新聞が最近必ずしも正しくないというのは僕らもよく知っていますので。

 だとすれば、今の発想、必ず真剣に考えてください。

 共謀した犯罪行為が直接的に不特定多数の命にかかわるようなことについては少し前広に、具体的な危険というところの段階まで行く前から取り締まらなきゃいけないよねというのは理解します。なぜなら、今でも殺人予備罪があるんだから。殺人については、他の犯罪類型にはない予備の段階で処罰できるというのを置いているのは、やはり人の命は取り返しがつかないからですよ。ましてや、不特定多数、大量に人の命が奪われる、そういう犯罪について早い段階で取り締まるということならば、もちろんそれだけじゃだめですよ、絞り込むだけじゃない、ほかのところの要件はありますが、まだわかりますよ。

 だけれども、法定刑何年以上みたいな話で、経済犯罪だろうが何だろうが、そのこと自体が直接人の生命にかかわるものではないものまで含めるとしたら理屈に合わないですよ。違いますか。

金田国務大臣 前も申し上げましたが、刑法上、特に重大な犯罪については予備罪や陰謀罪といったものが設けられているわけであります。そのため、我々がテロ等準備罪におきまして、一定の重大な犯罪についての合意を処罰対象として考えていくという考え方は、その刑法の考え方と矛盾するものでもない、このように考えているわけであります。

 TOC条約の国内担保法案につきましては、テロ等準備罪における対象犯罪のあり方を含めまして検討中であるために、お答えできる段階にはないわけであります。お尋ねの点も含めまして、法案の具体的内容については、成案を得た後で御説明を申し上げたい、このように考えております。

枝野分科員 いわゆるテロが、組織的なテロ集団によって大量殺人、不特定多数に対する大量殺人行為、これは大変甚大な被害、まさに取り返しがつかない、生命という法益が侵害され、取り返しがつかない。わかりますよ。

 でも、例えば経済犯罪、経済犯であれば、テロ集団とかじゃなくて、民間の、例えば一部上場企業が大量の詐欺をやって何万人という人が何百万円という損害をするのと、テロ集団が何か行ったことで生じる経済的な損失とは、実は、テロ集団でも何でもない一部上場企業がやる詐欺行為の方が大きかったりするわけですよ、法益侵害の大きさ、罪の大きさという意味からは。だから法定刑だけではやはり線引きはできないんですよ。

 人の命、国民の生命にかかわるようなところについて絞り込むというのは、私は、党の公式見解とずれるのかずれないのかわからないけれども、わからないではない。だけれども、そこのところは、やはり広げ過ぎないで、本当のテロに備えるというところにまず絞り込むべきじゃないのか。

 その上で、残り五分を切ってしまったので、もう一つやはり怖いのは、どうやって立証するんですかという話なんですよ。

 内心なんですよ。先ほど刑事訴訟法、憲法の話をしましたけれども、内心以外であるとすれば、共犯者が自白をする、あとは盗聴する。すぐれたという言葉はこういう場合はおかしいんですけれども、つまり、大きな被害を与えるようなテロを起こすような集団ほど犯罪にたけていて、物証を残さないなんてうまくやりますよね、普通は。したがって、そこでは当事者の自白、当事者とされる人たちの自白、あるいは盗聴、これしか証拠は出てこないんじゃないですか。それ以外に証拠のとりようはあるんですか、共謀段階で。

金田国務大臣 捜査のあり方についてということになろうかと思います。個別具体的な事案に応じてさまざまである、このように考えておりまして、一概にはお答えしかねると思うんですが、テロ等準備罪の捜査についても、現在行われております他の犯罪の場合と同様の方法で、刑事訴訟法の規定に従って必要かつ適正な捜査を行っていくことになろうかと思います。

 そして、捜査への着手についても、具体的な捜査の、端緒の把握方法につきましてなんですが、これも事案によってさまざまであって一概には申し上げられないんですけれども、例えば合意についての供述、あるいは犯行手順が記載されたメモのような証拠の発見といったものが考えられるのではないか、このように考える次第であります。

枝野分科員 基本的には、メモみたいなものは、それ限りでは供述調書に準じますよね、特に共謀関係では。共謀関係にある誰か一人が勝手に書いたメモは、他の人間にとっては物証にはならない。ですよね、勝手に書けるわけですから。

 従来の刑事訴訟法の判例に基づけば、共犯者の自白だけで有罪にできるんですよ。共犯者の自白だけで有罪にできるということは、つまり、何人かが共謀してあいつを罪に陥れようということで、全然関係ない人間を、あいつも共犯だ、一緒に共謀したと巻き込んで、共謀罪の処罰の対象に巻き込むことが可能な仕組みがつくられてしまったら困ると言っているんですよ。

 だから、実は皆さんが示唆してくれているんだけれども、構成要件ではないかもしれない、準備行為は。

 というのは、多分、刑事手続の方に事実上重なるような部分のところまで考えているんだったら、刑事訴訟法の特例をつくるとか、そこまで考える必要があるんじゃないですか。ある部分についてはどうしても必要だ、謀議の段階でと。供述や、あるいは誰か特定の人が書いたメモだけで、それぞれのそこの共謀の構成員が本当に共謀に加わっていて犯罪を犯そうとしていたということについての、一人一人の被告人ごとに何らかの物証がなければ処罰できないとかということをしておかないと。

 亡くなられた先輩ですけれども、昔その席に座っておられた方で、アルカイダは友達だ、友達だと御冗談を言われた方がいらっしゃいますよ。それをあっちからやられたらどうするんですか。あっちから、金田さんというのは実はISの仲間でねというようなことを当事者がみんな供述しましたと。それだけでも処罰の対象になり得る法律はやはり危ないんじゃないですか。

 だから、何らかの実行行為、実行行為までいかないまでも、せめて今の、従来の予備罪に該当するような行為、ついでにというか、さらに大事なことは、そういった形で陥れ、共犯関係に勝手に巻き込む、そういったことがなされない、そういう担保が必要なんじゃないかということを申し上げて、いずれ国会に、恐らくここまで拳を振り上げたら出てくるんでしょうから、いつになるかわかりませんが、そこで丁寧に議論させていただきたいと思います。

 できれば、きょう申し上げたようなことを参考にしていただいて、最初から賛成できるような法案を出していただきたいと申し上げておきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて枝野幸男君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十三日木曜日午前九時より開会し、法務省及び財務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会


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