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第1号 平成31年2月27日(水曜日)

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本分科会は平成三十一年二月二十二日(金曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      井野 俊郎君    衛藤征士郎君

      村上誠一郎君    山口  壯君

      武内 則男君    渡辺  周君

二月二十六日

 井野俊郎君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成三十一年二月二十七日(水曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 井野 俊郎君

      井林 辰憲君    衛藤征士郎君

      神田 憲次君    小林 鷹之君

      高村 正大君    中曽根康隆君

      三谷 英弘君    務台 俊介君

      村上誠一郎君    山口  壯君

      落合 貴之君    櫻井  周君

      高井 崇志君    武内 則男君

      中谷 一馬君    吉田 統彦君

      渡辺  周君

   兼務 小田原 潔君 兼務 尾辻かな子君

   兼務 近藤 和也君 兼務 関 健一郎君

   兼務 日吉 雄太君 兼務 稲津  久君

   兼務 高木美智代君 兼務 鰐淵 洋子君

   兼務 赤嶺 政賢君 兼務 串田 誠一君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         山下 貴司君

   外務大臣         河野 太郎君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   内閣府大臣政務官     長尾  敬君

   総務大臣政務官      古賀友一郎君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   防衛大臣政務官      鈴木 貴子君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  井上 裕之君

   政府参考人

   (内閣官房皇位継承式典事務局次長兼内閣府皇位継承式典事務局次長)     三上 明輝君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        高田 修三君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    長谷川秀司君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 勝也君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 吉川 浩民君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     秋本 芳徳君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    舘内比佐志君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 桑原  進君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高橋 克彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 齊藤  純君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            鈴木  哲君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   三上 正裕君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 上羅  豪君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   神田 眞人君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    可部 哲生君

   政府参考人

   (国税庁次長)      並木  稔君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 洋司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  晃憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           藤原 朋子君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  神谷  崇君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           島田 勘資君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            星  澄男君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 石川  武君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中村 吉利君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           齋藤 雅一君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     神田 憲次君

  村上誠一郎君     務台 俊介君

  武内 則男君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     小林 鷹之君

  務台 俊介君     高村 正大君

  櫻井  周君     落合 貴之君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     中曽根康隆君

  高村 正大君     三谷 英弘君

  落合 貴之君     中谷 一馬君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     井林 辰憲君

  三谷 英弘君     村上誠一郎君

  中谷 一馬君     道下 大樹君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     衛藤征士郎君

  道下 大樹君     神谷  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  裕君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 昭夫君     吉田 統彦君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田 統彦君     中谷 一馬君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 一馬君     高井 崇志君

同日

 辞任         補欠選任

  高井 崇志君     道下 大樹君

同日

 辞任         補欠選任

  道下 大樹君     武内 則男君

同日

 第一分科員鰐淵洋子君、第二分科員近藤和也君、第四分科員稲津久君、高木美智代君、第五分科員尾辻かな子君、第六分科員赤嶺政賢君、第七分科員小田原潔君、串田誠一君、第八分科員関健一郎君及び日吉雄太君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成三十一年度一般会計予算

 平成三十一年度特別会計予算

 平成三十一年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

井野主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算及び平成三十一年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 平成三十一年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、百一兆四千五百七十億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は六十二兆四千九百五十億円余、その他収入は六兆三千十六億円余、公債金は三十二兆六千六百四億円余となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十五兆四千七百四十四億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十三兆五千八十一億円余、復興事業費等東日本大震災復興特別会計への繰入れは一千八百四十八億円余、予備費は五千億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも百九十兆七千百五十三億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入一千六百四十一億円余、支出八百八十六億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算について、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳しい説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いを申し上げます。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

井野主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生財務大臣から申出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井野主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井野主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田(憲)分科員 おはようございます。自民党の神田憲次でございます。

 本日の分科会、お時間を賜り、大変ありがとうございます。

 そして、本日は、新たに法制化されました民法の配偶者の関係、それからさらに、これまで数度にわたって質問をさせていただいております納税環境の整備、この二点について御質問をさせていただきたいと存じます。

 限られた時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 まず最初に、民法で配偶者居住権が創設されたことに伴い、今般、配偶者居住権の評価方法が定められることになったわけですが、その内容はどういったものでしょうか。また、なぜその評価方法を定める必要があるのでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十年に民法が改正されまして配偶者居住権が創設されたことに伴いまして、今般、その権利の相続税における評価方法を定めることとしたところでございます。

 この権利は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象といたしまして、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利でございます。

 当該権利は、財産的価値は有するものの、その価額は建物自体の価額を下回ることから、配偶者は、当該権利を取得することにより、自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得しやすくなると考えられます。

 その評価方法でございますが、配偶者居住権が設定された建物及びその敷地の相続時における時価と、その建物及び敷地の所有権部分の時価、すなわち配偶者居住権の存続期間終了時の価額、要するに将来価格の割引現在価値との差額、これを配偶者居住権等の価額としているものでございます。

 なお、配偶者居住権は財産的価値を有することから課税対象とすべきと考えておりまして、評価方法について何ら定めがない場合には、個々の納税者によって評価方法、結果が区々になり課税の公平性を確保できないことや、民法上、配偶者居住権は譲渡禁止であり、時価評価がされないことから、相続税法において評価方法を定めることにより、納税者利便の向上と課税の公平の確保に資するものと考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 では、配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地には小規模宅地の適用がありますでしょうか。さらに、この評価について、一定の何らかの配慮といったようなものがありますでしょうか。もしお答えできるならで構いません。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 小規模宅地の特例に関する御質問でございますけれども、土地に関する部分につきましては小規模宅地の特例の対象になります。建物部分についてはございません。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 次に、民法で特別寄与料という考え方が創設されたわけですが、この内容はいかがなものでしょうか。また、なぜ特別寄与料に課税するという形になるのでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御説明いたしました配偶者居住権とともに、この平成三十年の民法改正によりまして特別寄与料が創設をされました。相続人でない親族が被相続人の療養看護等をした場合には金銭の支払いを請求することができる、そういうものでございます。

 特別寄与料には相続税が課されるものと考えておりますが、これは、相続人以外の親族の生前の貢献に関して相続人に対して支払いを求める金銭でございまして、その性質は、慰謝料や損害賠償ではなくて、事実上、相続と密接に関連して定まるものであることから、他の相続財産と同様に、その取得に対して相続税を課税すべきものと考えられるからでございます。

 これに伴いまして、今般、被相続人の親族が取得する特別寄与料については遺贈により取得したものとみなして相続税を課税し、相続人が支払った特別寄与料については相続税の課税価格から減額することとしたところでございます。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 次の質問です。

 そこで、特別寄与者が支払う相続税については二割加算がなされるかどうか。

 特別寄与料というのは、今お話もありましたように、特別寄与者の被相続人に対する生前の労苦に報いるという形の立法趣旨からすると、二割加算が特別寄与者にとっては酷になるのではないかというふうに考えますし、そもそも、相続税法の第十八条、二割加算の立法趣旨がどこにあるのかというふうに考えるからでございます。お答えをお願い申し上げます。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 結論として申し上げますと、これは二割加算になるということでございますけれども、相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人と血縁関係の疎い者である場合、全く血縁関係のない者である場合には、相続税額を二割加算することとしているわけでございます。

 その理由といたしましては、その財産の取得について偶発性が高いということ、それから、被相続人が子を越して孫に直接遺産を相続する、遺贈する場合には相続税の課税を一回免れることになることといった理由が挙げられております。

 これらを踏まえまして、財産を取得した人が被相続人の一親等の血族、代襲相続人になった孫を含みますけれども、一親等の血族及び配偶者以外の人である場合には、相続税額を二割加算することとしているわけでございまして、特別寄与者は相続人ではない親族でございまして、これに該当することとなりますので、扱いとしては二割加算が適用されるというふうに考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 私見なんですが、特別寄与料というこの金銭対価の性格は、棚ぼたで取得したわけではなくて、具体的に、現に死亡前に寄与者が一定の看護なり療養なりに貢献したから支払われるわけでございまして、さらに、この寄与料については租税回避という意図もないわけでありまして、そういった観点から見ますと、二割加算というのは多少酷じゃないのかなというような考えも持ちますので、何らかの配慮をいただければと考えております。

 次の質問に移らせていただきます。

 昨日、これから質問させていただく納税環境の整備の点について、経済財政諮問会議が開催されて、民間議員の方々から、行政が持つデータを民間企業も含めて誰もが利用しやすいよう、国が主導して集約してシステムの整備を進めるべきだと提言があったというふうにけさの朝刊で読みました。

 会議では、その民間議員の方々の中で中西経団連会長が、国や自治体が持つ行政情報については国の財源でデータを集約、共同化して、オープン利用が可能なシステムをつくるべきだと申され、自治体の情報システムのクラウド化についても、複数の自治体が共同で取り組むことにより効率化を進めるようにというお話があったというふうに聞いております。

 そこで、昨今では、経済環境等のICT化という進展が著しいわけで、税務手続について電子化の対応が急務であると考えますのですが、個人所得税にかかわるe―Taxの利用率等の状況はいかがなものでしょうか。

並木政府参考人 お答えいたします。

 国税庁といたしましては、納税者の利便性向上のみならず、税務行政の効率化の観点から、政府全体の電子行政に関する取組方針に沿いまして、国税電子申告・納税システム、いわゆるe―Taxの普及及び定着に積極的に取り組んでいるところでございます。

 こうした状況のもと、個人所得税におけます平成二十九年度のe―Tax利用率は五四・五%の水準となっているところでございます。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 やはり、さらに、この利用率というのは、利便性の向上という点から、もっと急速にその進展があってもいいものだというふうに考えます。やはり、先ほど申しました電子情報の共同利用という観点においても、納税者にとって利用しやすい状況を更に加速させることが必要であると考えていますので、引き続きよろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 今まさに、このe―Taxですが、確定申告期をもう迎えておりますので、これは、納税者の側もこの利便性に気づいていただいて、利用向上を図るということに尽きるのではないかと思っております。

 それでは、次の質問でございます。

 e―Taxの利用時間は、現在どのようになっておりますでしょうか。

並木政府参考人 お答えいたします。

 e―Taxの利用時間、受け付け時間につきましては、平成十六年の導入以後、順次拡大してきているところでございます。

 現在は、確定申告期間中は、土曜日、日曜日、祝日を含む全日において二十四時間対応となっております。確定申告期間以外のいわゆる通常期におきましても、月曜日から金曜日までのいわゆる平日は二十四時間対応しておりまして、毎月最終の土曜日及び翌日の日曜日は午前八時三十分から午前零時まで対応しているという状況でございます。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 ひとえに納税者の利便性向上というためには、行く行くは、これが三百六十五日それから二十四時間の対応、つまり利用が可能になるように、要望をお願い申し上げたいと思います。

 今御答弁がありましたように、現在は毎月最終土曜日とその翌日の日曜日が利用可能となっておるわけですが、当座、その前週の土曜日、日曜日も利用可能となるならば、実務的にかなり利便性が増すと考えられますので、この辺も考慮いただけたらと思っております。よろしくお願いを申し上げます。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のところも含めまして、年末年始も通じまして通年で二十四時間対応をe―Taxにおいて行うかどうかということでございますけれども、現在、まさに先生おっしゃるところも含めて、利用対象としていない期間や時間帯に係る納税者の方、利用者のニーズがどのようになっているかというところ、あるいは、機器メンテナンスの方法ですとか、運用監視などに要する人件費といった経費もかかりますものでございますから、費用対効果という観点からも、そういう点も踏まえまして、利用者の利便性向上策の一つとしての検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 今後、e―Taxが普及されていくにはユーザーフレンドリーなものにしなければいけないというふうに考えておるんですが、現状、国税庁におけるこのe―Tax普及に向けた現在の取組というようなものを教えていただければというふうに思います。

並木政府参考人 お答えいたします。

 ただいま、まさに確定申告期間中でございまして、足元の個人所得税のe―Taxの利用状況を平成三十年四月から本年一月末までの利用件数ということで申し上げますと、約八十八万件となっておりまして、前年同期比で約一〇%の増加ということになっております。

 この増加をもたらした主な要因といたしましては、個人所得税のe―Taxの手続に関しまして、本年一月から使い勝手を改善したというところがございます。

 具体的に申し上げますと、まず、認証方式の簡便化の観点から、e―Taxの開始届出書の提出を不要とするなど、マイナンバーカードを用いたe―Taxの利用が簡便にできる仕組み、それから、ID、パスワードのみで国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーからのe―Taxの利用を可能とする仕組みを導入しております。

 加えまして、スマートフォン所有者の利便性向上を図るという観点から、年末調整済みの給与所得者で、医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除を適用しまして還付申告を行う、そういう方に限ってということでございますけれども、スマートフォン等専用画面というものを提供するとともに、ID、パスワードのみでe―Taxの利用を可能とする仕組みを導入しているところでございます。

 これらの効果によって利用件数が着実に増加してきている状況にあるというふうに考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 現在、これまで質問させていただいた中にもあるんです、申し述べたことなんですが、償却資産税の申告書について、地方自治体の側で電子媒体、電子データの提出を求めておるわけですね。これが業務の効率化に役立つという観点からです。

 しかしながら、自治体側にその電子データが提出されると、地方自治体の側ではまだその電子化が進んでいないがゆえに、結果として、その電子データを紙媒体に戻して、そして、更に手間のかかる、担当課の人がその紙媒体でもって打ち直すというようなことがあるやに聞いております。この質疑に当たっても幾つかの自治体に確認をさせていただいたところ、せっかくの電子データが生かされていない、非効率なことの循環になってしまっておるというような事例もあります。

 しかしながら、この点についてもちょっとずつの進捗は見られておりまして、地方税の納付書については、現在ではパソコンを使ってプリンターで印刷できるような形の納付書がふえております。また、ネットにアップしてある納付書を利用して自分で作成することができる一方、この点は国税が一歩おくれておりまして、複数の納付書しか利用できなかったり、各税務署で配布している納付書しか利用できないような状況にあるわけです。

 そこで、国税でも地方税と同様に、国税の納付書をパソコンで印刷できる措置をとることはできませんでしょうか。

 これについては、書き損じが生じると、もう予備がない、税務署の窓口に赴かないと、なおかつ、対象法人なり対象の個人がどこで、そして納付する所轄税務署がどこで、整理番号が何番でというようなところまできちんとしておかないと、税務署の窓口でも交付していただけないというような不都合が生じます。

 一方で、これを納付する金融機関の窓口に持っていくと、わずかな書き損じでも、例えば、単純な話、3を、実は8だった、上手に丸く8を書き直しても、書き損じだから受け付けてもらえないというようなことで、決算の提出期限間際になって大慌てという事象も多々散見されるわけで、この辺の利便性を早期に図っていただけたらというふうに考えておるんですが、その御対応についてはどうお考えになられますでしょうか。

並木政府参考人 お答えいたします。

 まさに先生御指摘のとおり、地方税の収納事務につきましては、地方公共団体が指定した金融機関が行っておることから、各地方公共団体の判断によりまして、地方税の収納事務を行う金融機関に対しまして、パソコンで作成した納付書でも取り扱わせるようにしている、そういった場合、ケースもあるというふうに伺っております。

 一方で、国税の納付書につきましては、金融機関の窓口納付で使用される場合、国税当局と日本銀行の双方における収納事務、これを効率的に行うというために、日本銀行において機械により納付書の内容を読み取り、データ化しているという現状がございます。

 このため、国税の納付書につきましては、機械による読み取り処理が正確に行われるように、日本銀行が指定する規格に合った色、用紙の厚さ及び紙質のものを使用するということとしているところでございまして、御指摘のようにパソコンにより印刷された納付書を使用することは、現状では困難であるということになっていることを御理解いただきたいと思います。

 他方で、こちらも先生から御指摘があったところでございますけれども、税務署に赴かなくても納付が済む、そういう観点からも、国税庁といたしましては、紙の納付書を必要としない納付手続である電子納税を導入して、その普及拡大に努めるとともに、平成三十一年の一月からは、自宅等のパソコンを用いて、国税庁ホームページのコンビニ納付用QRコード作成画面というところで税目や金額などの情報を入力して作成したQRコードを印刷していただきますと、これらによりまして一部のコンビニエンスストアでの納付が、税額は三十万円を上限としているところはあるのでございますけれども、こういうところを可能としているという対応を進めているところでございます。

 こうした取組を通じまして、今後も引き続き、納税者ニーズを踏まえまして、利便性の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 コンビニ納付という形ができるという点は利便性の一つの向上であろうかと思います。

 しかしながら、コンビニ納付はその一つの手段としていいわけですが、実務的には、やはりそこに上限が設けられている点、それから、日銀との納付の整合性をとらなきゃいけないというお話もありましたので、この点も十分理解するんですが、三十万というと、現状、やはり、毎月提出される、税務署の申告に法人等の黒字率が増加しているというふうに聞きますと、三十万ではなかなかそれが及ばないという点があります。

 ですから、簡易な方法というか、先ほど申し上げたように、納税者にとって利便性の向上をという点を再度お願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、まことにありがとうございました。

井野主査 これにて神田憲次君の質疑は終了いたしました。

 次に、務台俊介君。

務台分科員 おはようございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私が政治家になったんだなという実感を覚えることの一つに、戦没者の魂との接点が飛躍的にふえているということがございます。

 私は、長野県護国神社の例祭に総代会の会長として参列し、戦没者のみたまに手を合わさせていただいておりますが、それに加え、各地の戦没者慰霊祭、神社の霊社みたま祭り、あるいは旧陸軍墓地の慰霊祭といったものにも毎年参加させていただいております。

 これらはいずれも、この地域からお国のために出征し、一命をささげた英霊を慰める儀式であり、遺族会の皆様を中心に催行されております。公的関与が行われない中で、遺族会の皆様の気持ちがこの行事を継続させています。しかし、遺族会が先細る中で、この慰霊の行事が今後どうなっていくのか心配する声が出ております。

 特に、私の地元の旧松本陸軍墓地の慰霊環境は深刻でございます。

 実は、旧陸軍墓地の管理責任が不明確で、現在、松本市では、護国神社が市から委託を受けて管理しておりますが、地元自治体の当事者意識は必ずしも強くなく、八年前に長野県中部地震というものがありましたが、その際に、納骨堂が揺れ、壁に亀裂が入り、骨つぼが散乱したといった事態がございました。当時、地元自治体の反応は悪く、見るに見かねた護国神社の神職がボランティアでこの事態を収束したというのが実態でありました。

 こうした問題は、松本市の旧陸軍墓地だけではなく、全国各地に所在する軍人墓地にも共通するものであり、この課題を今後どうするのか、各地で問題化しております。

 戦後の歴史をひもとくと、旧陸海軍人の戦没者を慰霊する墓地は、さきの大戦後、国が自治体に管理をいわば丸投げしたことが原因で、各地で荒廃が進む事態となっております。

 十年前に参議院の決算委員会で、この管理責任について問われた当時の舛添要一厚生労働大臣は、関係省庁と連携をとりながら、国の責任としてきちんと管理していきたいと答弁しておられました。しかし、その後、事態が改善されたという実感はございません。

 そこで、この問題点に対する当時の厚生労働大臣の答弁がどのように役所でフォローされてきたのか、まず伺いたいと思います。

八神政府参考人 お答え申し上げます。

 旧軍用墓地につきましては、無償貸付けを受けている地方自治体が日常的な維持管理を行っていることから、舛添元大臣の答弁を受けまして、財務省とともに対応を検討し、財務省から貸付先に対して善管注意義務の注意喚起を行ってございます。

 また、旧軍用墓地の管理状況につきまして、昨年、財務省とともに点検作業を行ったところでございます。

 その状況も踏まえて、財務省とともに適切に対応してまいりたいと考えております。

務台分科員 注意喚起をしたということですが、恐らく、その後、去年調べるまで、そのフォローがなかったというふうに私には聞こえております。

 せっかく昨年フォローしたということでございますので、これからはしっかりやっていただきたいと思います。

 明治維新以降、陸海軍人の英霊の遺骨をおさめた軍人墓地は、明治期から戦前までは陸軍省、海軍省が管理しておりましたが、終戦後、両省は解体され、墓地の管理規則もGHQにより廃止されております。その後、国有財産として墓地を移管された当時の大蔵省は、昭和二十一年に、墓地及び公園として利用することを条件に自治体に無償で貸与、譲与しましたが、このことが結果として管理責任を曖昧にしたという指摘がございます。

 財務省として、昭和二十一年の移管時の考え方、これについて御説明いただきたいと思います。

可部政府参考人 お答え申し上げます。

 旧軍用墓地につきましては、ただいま御指摘のございました昭和二十一年の大蔵、内務次官通牒におきまして、旧陸海軍から引き継がれた後の管理方針が規定されております。旧軍用墓地は都道府県又は地元市町村に無償貸与する、また、旧軍用墓地の維持管理は地方の実情に応じ都道府県又は市町村、宗教団体、遺族会等において行うなどの方針が示されているところでございます。

 この方針に基づきまして、現在、旧軍用墓地のうち約半数、四十四カ所は基本的に地方公共団体に無償貸与いたしておりまして、残りの半数、四十二カ所は地方公共団体などに移譲をいたしておるところでございます。

 二十一年の移管時の考え方を調べるため、次官通牒に関する資料を探索をいたしましたけれども、何分、七十年以上前の終戦直後のものでありまして、その発出の背景などが確認できる資料は見つかりませんでした。

 ただ、この通牒には、先ほど申し述べましたように、地方の実情に応じ適切なる処理を実施するよう注意すべき旨の記載もございますことから、旧軍用墓地について、それぞれの墓地の特性や遺族の御意向など地域の実情に応じてきめ細やかな対応を行うには、地元の地方公共団体が管理の担い手としてふさわしいという判断があったのではないかと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、戦没者の御冥福をお祈りし、尊崇の念をあらわすことは重要でございますので、旧軍用墓地については、国、地方公共団体、遺族会などが協力して適切に管理していくことが必要であるものと考えております。

務台分科員 確かに、地方の実情に応じて管理してもらうためには受け手が自治体であるということは一つの考え方だと思いますが、今の憲法の解釈の結果、そこの管理のスタンスが非常に、踏み込むものとなっていなかったり曖昧となっている、そういう側面もあるということを改めて認識していただきたいというふうに思います。

 昭和三十年代に当時の厚生省が行った調査では、全国に陸軍墓地が七十五カ所、海軍墓地が七カ所確認されたとされております。旧松本陸軍墓地もそのうちの一つであります。完全に民間ボランティアによる日常管理に依存したり、中には全く管理も慰霊も行われていないというところもあるとの報告もございます。

 特に深刻なのは、これらの墓所が被災した場合の対応でございます。平成十七年の福岡県西方沖地震で、石碑がずれ、骨つぼが落ちて遺骨が散乱する被害が出た福岡市の陸軍墓地のケースでは、民間の有志で補修費を集めて原状を回復したと報道されております。

 前述の平成二十三年の長野県中部地震の際にも、松本陸軍墓地では、骨つぼが落ちて遺骨が散乱した際には神職のボランティアで対応したわけでございますが、墓所の壁にはいまだに亀裂が入ったまま、手つかずの状態にございます。

 一年ほど前に、私から厚労省、財務省に旧陸軍墓地の管理の現状について調査を依頼しましたが、昭和三十年代の調査も踏まえ、その結果についてどのようなことになったのか、お示しいただきたいと思います。

可部政府参考人 御指摘の調査の結果について御報告申し上げます。

 地方公共団体に無償貸付中の旧軍用墓地の管理につきましては、借り主である地方公共団体が日常的な管理を行い、国が、財産の所有者として、必要に応じて工作物の修繕等を行っております。

 こうした中で、昨年夏の台風によりまして、木が倒れ、あるいは墓石が倒壊するなどの被害が見られた箇所がございましたことから、先ほどもお話ございましたように、厚生労働省と協力して、昨年十月より、改めて旧軍用墓地の状況につきまして、財務局から地方公共団体にヒアリングを行うとともに、現地確認を行うなどの点検作業を行ったところでございます。

 その結果、基本的には草刈りや樹木剪定などの通常の管理は行われていたものの、一部で老朽化し耐震性に劣る納骨堂が見られたこと、また、災害で損傷した慰霊碑が見られたこと、倒壊の危険のある墓石が見られたことなど、修繕を要すると見られる工作物を確認したところでございます。

務台分科員 現状をしっかり把握していただいた、これについては感謝申し上げたいというふうに思います。

 こうした状態を放置しておくということは、国家として恥ずかしいことでございます。戦後七十年以上経過した今日、戦後のあがなうべき負の遺産の一つとして、軍人墓地の維持管理、慰霊は基本的に国の責任で行うということが必要ではないかというふうに思います。

 一方で、日常的な管理を行っている自治体、それも当事者意識を持って対応に向け行動しなければならない、そのように感じます。

 来年度の予算案の中で、この問題に対して政府として一定の方向性が示され、対応がなされていると伺っておりますが、その内容を御説明いただきたいと思います。

可部政府参考人 先ほど申し述べました調査の結果を踏まえまして、このたび、地方公共団体と国の役割分担の明確を図らせていただきました。

 あわせて、計画的に、先ほど申し述べましたような、損傷の見られた工作物の修繕等を行うことといたしたところでございます。このために、来年度予算におきましても、維持管理経費等の拡充を行うこととしているところでございます。

 現在、旧軍用墓地の所在する地方公共団体、先生の御地元の地方公共団体も含めまして、国の対応などについて説明を行わせていただき、個別具体的な対応について相談を始めさせていただいているところでございます。

務台分科員 ぜひ自治体とよく話し合っていただきたいと思います。一方で、自治体の当局者にしてみると、ほとんど意識していない分野の仕事でございますので、この問題の重要性をしっかり説明していただきたい、そのように思います。

 旧軍が設置した墓地以外に、民間団体設置の慰霊碑についても大きな課題がございます。

 全国各地の遺族会が管理している忠魂碑、慰霊碑と呼ばれているものがありますが、遺族会が御承知のとおり弱体化して、慰霊碑が災害などで壊れ、危険な状態になっているものが多々ございます。遺族会が地元の自治体に何とか対応を依頼しても、自治体は、政教分離で我々としてはそういう分野に入り込めないんだということで、門前払いのところがほとんどでございます。悲鳴に似た声が私のところにも寄せられております。

 政府としては、民間団体設置の慰霊碑の管理の現状について調べているのか、特に東日本大震災等の災害での慰霊碑の被災状況、こういったものについて御説明いただきたいと思います。

八神政府参考人 お答え申し上げます。

 民間団体等が建立をいたしました慰霊碑等につきましては、建立者、管理者が維持管理を行うということが基本でございますが、関係者の高齢化等により維持管理が困難なものもあるというふうに承知をしております。

 このため、平成二十六年三月に都道府県に慰霊碑の管理状況の調査を依頼し、二十七年三月にその結果を取りまとめたところでございます。また、昨年、平成三十年十月にも同様に、都道府県に依頼をし、調査をしておるところでございます。

 今後とも、引き続き都道府県の御協力をいただきながら状況把握に努めてまいりたいと考えております。

務台分科員 実態をよく調査していただいて、その上で、現状で大きな問題があるということがわかったら、しっかり対応していただきたいと思います。

 厚労省の補助金の中に、民間団体が建立した慰霊碑について、管理者不明で管理状態のよくないものを自治体が移設、埋設する場合に、その費用を助成する補助金があるというふうに承知しております。平成三十年度は千二百万用意されているというふうに聞いております。この補助金が実際にはどのぐらい使われているのか、まず伺いたいと思います。

 その上で、この補助制度を更に拡充し、慰霊碑の適切な管理を促す制度の充実が必要ではないか、そのように思います。国の命令で戦地に赴き、命を落とした英霊のみたまに国としてどのように向き合うのか、真剣な対応が求められているというふうに思います。自治体が憲法の政教分離規定にある意味で行き過ぎた解釈を行っていることについての政府の考え方を伺うとともに、それを改めていただくために何が必要なのか検討していくべきではないか、そんな思いがございます。

八神政府参考人 お答え申し上げます。

 今、務台先生御指摘の民間団体の設置した慰霊碑につきましての補助金につきましては、平成二十八年度より、さきの大戦の犠牲になられた方々を慰霊をする民間の慰霊碑であって、建立者や管理者が不明で適切な維持管理が行われていないものの移設、埋設といったことを地方公共団体が行う場合に、その費用を補助するという事業として実施をしてございます。

 実績でございます。平成二十八年度、二件、四十九万八千円、二十九年度、一件、二十五万円、平成三十年度が三件、六十三万一千円という状況でございます。

 地方公共団体がより活用しやすい事業となるようにすべく、平成三十一年度からは、新たに、管理者が高齢化をして事実上管理ができないといった場合にも補助対象を拡大する、あるいは補助上限も引き上げるといったことを今検討しておるところでございます。

 管理状況が不良な慰霊碑が放置されているというのは、戦没者の慰霊、近隣住民の方々の安全の観点からも好ましくないというふうに考えてございます。今後とも、本制度の趣旨について自治体によく周知を図り、活用を促してまいりたい、このように考えてございます。

務台分科員 遺族会の方が自治体に言っても、もう門前払い状態でございまして、ましてや、このような補助金が政府にあるということは全く知られておりません。しっかりと周知していただきたい、そのように思います。

 この問題は、全国の神社、地域の精神的支柱ともいうべき施設が被災した場合の対応全体のあり方につながると思います。

 以前、財務当局は、個人が被災した場合には、個人の資産形成に税金を投入することは憲法違反だと言っておりました。現在は、被災者再建支援法に基づき、個人への住宅への財政支援が堂々と行われている。憲法違反と言っていたのが、全然、もうひっくり返ってしまった、そんな状態にあります。

 平素の宗教活動を公的に支援するわけではなく、被災者がたまたま神社等であったというふうに考えれば、神社等が被災した場合についても、税財政上の何らかの支援の工夫、例えば、被災した神社等への指定寄附を一般制度化する、こういうことがあっていいのではないかというふうに思います。個人も支援の対象、農家も対象、商店街も対象にもかかわらず、たまたま被災した人、物が神社や仏閣であった場合に、文化財でない限りはだめだというのはちょっと行き過ぎた憲法解釈ではないかというふうに思います。

 この点については、麻生大臣の御見解をお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 務台先生、これは法人税制というものの原則的な考え方の一番のところになりますので、法人が支払う寄附金ということについては、その法人の事業との関連がいわゆる弱くて、利益処分というような感じの性質を有する部分があると考えられますので、そういった意味では損金算入が制限されている、これはもう一番この種の話では基本なんです。

 その上で、公益法人とか財団法人とか社団法人とか、いわゆる公益の増進に寄与する一定の法人、特定公益増進法人等々、その寄附金につきましての損金算入限度額というのは優遇されております。それは御存じのとおりです。

 更に高い公益性や緊急性が認められる事業に充てられることが確実であるなど、法令上の要件を満たすということがしっかり確認できる寄附金、言われました指定寄附金ですかね、そういったものにつきましては、これは財務大臣の指定によってその全額を損金算入ということが今認められることになっております。

 したがいまして、これまでも、神社等が持っておられる国宝とか重要文化財とか、修復事業とか、東日本大震災や何かがそうだと思いますが、大規模な災害により被災した建物など、こうした要件を満たすのは指定寄附金ということを指定してきているところですけれども、神社仏閣というものを一般的に広く指定して、制限なく法人の損金算入を認めるということになると、これは法人税制上の原則的なところが壊れるということになりますので、そういう意味でのあれは極めて難しいと思っておりますけれども、今言われましたように、この種の話というのは、特定寄附金というようなものにつきましては、お寺、神社等々、そのときの事情によって私どもとしては柔軟に対応できるものだと思っております。

務台分科員 一般的に寄附してそれを指定寄附で認めるということではなくて、災害、被災した段階、予期せぬ状況に陥った場合に限ってやれるということがない。

 実は、私の地元の長野県護国神社が台風で鳥居が倒れたんです。七千万集めなきゃいけないということで企業にも言ったんですが、損金算入にならないので、なかなか厳しいんです。損金算入制度があると寄附できるんですけれども、そういうことがありました。

 一般的な宗教行事の支援ではなくて、被災した場合に限って、それがあったらすごくよかったなというふうに思うので、これからこれは政治の場での議論も必要だと思うんですが、また御相談に乗っていただきたい、このように思います。

 旧軍人墓地に関する財務省の関与のあり方にもかかわる課題でございますが、財務省は、林野庁とともに、我が国最大の地主の一人でございます。その持てるストックをどのように地方創生に生かすか、そういう観点の対応が必要ではないかと常日ごろ考えております。

 どちらかというと、国有財産を保全するんだという意識が財務省には強くて、その財産の存在が、その地域を生かすために、発展に生かすためにどのように活用してもらえるのかという観点がちょっと足りないように私には思えております。

 その意味で、全国に所在する国有財産の現状を調べて、その活用によりどのように地域振興に生かせるかという検討が必要だと考えるが、いかがでしょうか。

可部政府参考人 お答え申し上げます。

 国有財産につきましては、行政目的に応じて各省庁で管理を行っているほか、行政目的のないものにつきましては基本的に財務省において管理処分を行っているところでございます。

 財務省といたしましては、未利用の国有財産の管理処分に当たりまして、国において利用する計画がない場合には、地方公共団体などに取得の要望がないかまず確認をし、地域のニーズを踏まえた処分などを行っているところでございます。

 例えば、最近では介護、保育への対応が政府としても大きな課題となっており、地方公共団体等に国有財産の情報を提供させていただき、優先的に施設が整備されるよう積極的に国有財産の有効活用を進めるなどの取組を行うことにより、地域の振興にも資するように配慮をさせていただいているところでございます。

 国民共有の財産でございます国有財産につきまして、地域や社会のニーズに対応して有効活用を図っていくことは重要と考えており、今後とも、地域や社会のニーズに対応した国有地の有効活用に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

    〔主査退席、山口(壯)主査代理着席〕

務台分科員 これから我が国は、多死時代、たくさんの方が亡くなる時代を迎えます。大量な相続放棄という事態も想定されます。その際に国家としてどのように対応していくのか、備える必要があると思います。地方自治体がその受皿になることも考えられますが、管理コストの負担、あるいは固定資産税が徴収できなくなるということから、これを忌避する傾向が見てとれます。

 私は、この際、所有者不明土地や所有権放棄などにより生ずる土地については、これを積極的に国有地化、公有地化し、その上で、その地域の環境をよりよくするように考えていくべきではないかと考えております。

 例えば、高度成長の過程で、都会も地方も、日本には平地林が非常に少なくなってきております。大量の遊休土地が放出されてくる中で、これを国が積極的に引き受け、自治体と協力し、例えば換地分合を行い、明治神宮の森のような平地林を全国各地に整備していくこと、こういうことを国のビジョンとして打ち出していくということも考えられるのではないかと思います。

 財産管理の立場から、こうした考え方についてのお考えを伺いたいと思います。

    〔山口(壯)主査代理退席、主査着席〕

うえの副大臣 お答えいたします。

 所有者不明土地に関しましては、政府一体となって総合的に対応するため、法務省や国土交通省などの関係省庁を中心として検討が進められているところでございます。

 民法上、相続人不存在や無主の不動産については国庫に帰属することとされております。財務省としては、所有者不明土地に関する政府部内での検討に引き続き積極的に参加をしていきたいと考えています。

務台分科員 おとなしい答弁のように聞きましたが、しっかりやっていただきたいというふうに思います。財務省が国有財産を集めてそれを利用するんだというふうに前向きになると、世の中の動きが変わると思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 ところで、財務省は、財務局、財務事務所等を拠点に、国有財産管理の主体としてばかりではなく、地域金融機関、他省庁の出先機関との連携ネットワークを幅広く有しておられます。こうしたネットワークを活用し、地域経済を元気にし、地方の課題を解決するために何ができるかということをこれまで以上に考えていっていただきたいというふうに思っております。

 財務省では、最近、地域経済エコシステムという、地域経済を元気にする仕組みを起動させるよう努力しているというふうに伺っておりますが、この取組についてのお考えを伺いたいと思います。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省におきましては、これまで、各地域の財務局において、企業や金融機関、地方公共団体等と連携いたしまして、地域経済活性化の取組を進めてきたところでございます。

 具体例を申し上げますと、例えば、若手経営者と異業種の専門家等との交流、マッチングの場の設定、事業承継セミナーや起業家向けのベンチャーイベントの開催といった取組を各地の財務局や財務事務所で進めているところでございます。

 こうした各地域の取組を可視化し、地域を超えた連携を促進すべく、昨年十一月に、地域経済エコシステムの形成に向けたこれまでの取組を取りまとめ、公表したところでございます。さらに、この取組の加速化を図るべく、本年一月、金融庁、経済産業省、経団連と連携いたしまして、全国の企業や金融機関、地方公共団体等が参集する地方創生イベントを開催するなどしております。

 今後とも、関係府省庁と連携しながら、財務省・財務局が一丸となりまして、地域経済の活性化に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

務台分科員 ぜひ財務省の持てる機能をフル活動して地域に出ていっていただきたい、このように思います。

 平成三十一年度の与党税制改正大綱でも指摘されておりますが、近年の経済の電子化に伴い、物理的な拠点なく事業を行う外国企業の事業所得に十分な課税が行えていないという現行の国際課税原則の問題が顕在化しているという指摘が行われております。

 いわゆるGAFAのようなプラットフォーム企業に代表される近年のグローバルなビジネスモデルの構造変化により、多国籍企業の活動実態と各国の税制、国際課税ルールとの間にずれが生じております。このずれに乗じた企業行動に対処するため、国際的な取組が必要だと考えられますが、現在の国際課税の議論の状況について伺わせてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま議員御指摘のとおり、現在の国際課税制度では、外国企業の事業所得に課税するためには、自国内に物理的拠点、いわゆるPEの存在が必要でありまして、物理的拠点なく事業を行っている外国企業の事業所得に課税できるようにするためには、国際課税原則の見直しが必要となります。

 このような経済の電子化に伴う課税上の課題に対しまして、二〇二〇年までにグローバルな長期的解決策を取りまとめるべく、OECDを中心として国際的に議論を進めているところでございます。

 この二月に、OECDから、現在検討中の長期的解決策に係る提案、これをコンサルテーションペーパーとして複数の考え方を示しているところでございまして、経済界等の民間部門からも意見を聴取しているところでございまして、こうした意見も踏まえまして国際的な検討が更に進められていくという状況であると認識をしております。

務台分科員 ぜひ、日本の国益にも資するような観点から検討を我が国としてもやっていただきたいと思います。

 これまでも、OECDにおける国際課税の議論には我が国も積極的にかかわってきたと承知しております。一方で、応益課税原則に基づく法人事業税の分割基準の考え方、あるいは、税を最終消費地に帰属させるための地方消費税の清算基準の考え方等、日本には税源配分に関する知見や議論の蓄積もございます。これらも踏まえて、我が国への適切で公平な税の帰属が果たされるよう主導的立場で当たっていただきたいと思いますが、特に、二〇一九年、我が国はG20の議長国でもあり、この問題についての麻生大臣のリーダーシップを強く期待したいと思います。大臣のお言葉をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 いわゆる大企業というか、多国籍企業によります課税逃れというものが行われておりますのは、最近やっと新聞なんかによく出てくるようになりましたけれども、税源侵食と利益移転、通称BEPSと言われるものですけれども、六年前のG7の財務大臣・中央銀行総裁会議で日本がこれを提案して、これはおかしいじゃないか、一国で対応できるものじゃないんだから各国でやるべしという話を言ったのが六年前。

 いろいろ、反対の国がいっぱいありましたので、特にアメリカ等々、これは対象になる企業が多いということもあるんだと思いますけれども、反対が極めて強かったんだと思いますけれども、おかげさまで、これをスタートさせていただいたのが三年前の十一月です。当時は四十六カ国ぐらいで、日本で第一回をやらせていただいたんですが、現在は百二十六か百二十八カ国ぐらい、これに賛成して入ってきておりますところまでは、やっと来たんだと思っております。

 これは、経済の電子化に伴いまして、課税上の問題ということについて二〇二〇年までにグローバルな長期的解決策が合意できるようにということで、これはOECD等々いろいろやらせていただいているんですけれども、今言われましたように、今年、日本がG20の議長国でもありますので、ことしじゅうに何らかの形でこれを決着する方向まで形として見せたいものだと思って、目下、G20の財務大臣・中央銀行総裁会議を六月に日本で開催いたしますので、それまでに何らかの形を、少なくとも、完璧なものが最初からできるわけはないとは思っていますけれども、そこそこのものができ上がるようなところまでは持っていきたいということで、目下努力をさせていただいている最中であります。

務台分科員 終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて務台俊介君の質疑は終了いたしました。

 次に、関健一郎君。

関(健)分科員 国民民主党の関健一郎です。委員長におかれましては、質問の機会をいただきまして、御礼を申し上げます。

 早速、質問をさせていただきます。

 外国人労働者の確定申告についてお伺いをさせていただきます。

 日本の外国人労働者をめぐる大きな政策転換となる入管法が改正され、来年度から施行されますけれども、今、確定申告のシーズンです。私も地元で確定申告の窓口を視察をさせていただいたんですけれども、私の地元、愛知県豊橋市は、自動車関連工場など、多くの外国人労働者の方が働いていただいています。また、確定申告に訪れている外国人の方も多く見ることができました。

 そこで、副大臣にお伺いをいたします。

 今後、日本の外国人労働者をめぐる大きな政策転換が行われ、今後、外国人労働者の数がふえることが推察されます。また、その中で、確定申告を行う外国人の労働者の方は全国的にふえると推察されているのか、その見通しを伺います。

うえの副大臣 お答えをいたします。

 今般の入管法改正によりまして、本年四月から、特定技能外国人の受入れ制度の運用が開始をされます。

 この特定技能外国人につきましては、法令上、本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて就労することとされているため、一般的には給与所得者となるものと考えています。

 給与所得者の所得税につきましては、基本的には源泉徴収と年末調整によりまして課税が完結をする、そういう仕組みとなっておりますが、納税者自身が確定申告を行うのは、二カ所以上の勤務先から給与を受け取っていたり、あるいは給与が二千万を超えるとき、さらに、医療費控除等の控除等で税金の還付を受けるときなどが挙げられます。

 現在、外国人労働者のうち、どの程度の方が確定申告を行っているか、これは把握できないことから、その増加に応じて申告者がどの程度増加をするかを正確に見込むということは難しいわけでありますけれども、日本人を含む給与所得者全体のうち、一定程度の方が毎年確定申告を行っていらっしゃいますので、そうしたことを踏まえますと、相応にこれは増加をしていくだろうというふうに見込んでおります。

関(健)分科員 ありがとうございます。

 私、豊橋市というところなんですけれども、冒頭申し上げましたが、自動車関連工業であったり農業であったり、多くの方が外国人労働者として豊橋で働いていただいております。

 そうした中で、東海税理士会豊橋支部という人たちが、あるモデルケースとして紹介をさせていただきたいんですが、確定申告の時期、ただでさえ車がずっと並んだり、一般の経営者の方々がずっと並ぶわけです。その中で、豊橋は、主にポルトガル語を話すブラジル人の方とタガログ語を話すフィリピンの方がふえてきているんですけれども、こういう方々がどんどん窓口に来て、ふえてきた。そんな中で、普通の経営されている方も一緒に並ぶものですから、なかなか現場の混乱が増してきた。

 それで、十六年前からなんですけれども、豊橋税理士会の皆様が手弁当で外国人労働者の確定申告のお手伝いを、ちょっと時期をずらして、無料相談をすることにしたんです。ところが、日本人だって、あの確定申告の書類を見るのはややこしいわけです。幾ら日本語をわかってきたといったって、あの書類を読めないわけです。

 そうすると、今度は通訳さんが必要になってくるわけです。この通訳さんを呼ぶにもまたお金がかかってしようがないなということで、今度は国際交流協会というところに税理士の皆さんが頼んで、ポルトガル語とタガログ語をしゃべる人はいませんかということで、じゃ、わかりましたということで、手弁当で、税理士会の皆さんとそして国際交流協会の皆さんがタッグを組んで、確定申告無料相談をやっているわけです。そこを、私、先月、見に行かせていただいたんですけれども、その部屋の雰囲気が異国みたいになっていて、多くの方が確定申告をされているわけです。

 そのときに私が持った問題意識は、一日十人の税理士の方が、そして、それに伴う十人以上の通訳の方が、ボランティアで確定申告の無料相談を行っておられるわけです。これは、今後、全国各地で外国人労働者の皆さんが確定申告をすることが相応にふえることが想定される中、ある程度、国が必要な予算を盛り込んで、その現場の税理士の皆さんの、そして通訳の皆さんの確定申告の相談会を国が支援するというのが必要かなと考えたんですが、大臣の御所感を伺います。

麻生国務大臣 まず、所感ですけれども、外国に住んでいたことがありますからね。そのときに日本人の通訳なんかいませんでしたから。かなり多かったですよ、私、ブラジルに住んでいましたから。そのときに、確定申告に限らず。

 こういった話というのは、先進国の中で日本だけが、かなり異なった、ロマン語でない言葉をしゃべるのは日本人だけで、あとの国はそこそこ、英語だ、フランス語だ、ドイツ語だと、似たような系列の言葉ですけれども、全然違うというのも七カ国の中で一つだけ、先進七カ国では一カ国だけという特殊事情もあるのかもしれませんけれども、こんなに親切にやっている国は、私、イギリス、アメリカ、アフリカに、いろいろ住んでいたことがありますけれども、一カ国もありませんな、そんな国は。言葉がしゃべれなければ、しゃべれるようになってから来いというような話で、全く相手にされないような感じで、冷たくあしらわれていた記憶があるんですけれども、今の話を聞いていて、豊橋に限らず、日本人というのは親切やなと、正直、今の話を聞いて思ったね。俺の正直な所感、実感を言わせてもらえればね。

 今言われましたように、これは、これからふえてくることは確かですよ。間違いなくふえてくるんですが、今、確定申告者というのは二千百万、二千二百万ぐらいおられるんだと思いますけれども、その中で税金の還付等々を受けられる方は約千二、三百万、いらっしゃると思うので、これは何も、言われたように、外国人だけじゃなくて日本人も、還付の話になりますと、結構大きな話になりますので、そういった意味では、これは大変大事なところなんですけれども。

 この申告相談について、税務署員が適当に対応しているといったって、税務署の人が親切なんて話は聞いたことがないからね。イメージとして余り、何となくやばそうな顔をした人が、ここに座っている人たちは例外的にいい人だと思っていてね、なかなか現場は厳しいものですよ。行ったことがありますから、わからぬわけじゃないんです。

 しかし、私どもとしては、今、どんどんふえてくるであろうということから、いわゆる働いておられる外国人の労働者の方々のための英語のパンフレットを、何万部だったか、今随分つくってやらせていただいたり、外国人向けの英語専用のダイヤルを開設するなど、対応を行っているところなんですけれども、昨年末に決定した外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策において、いわゆるガイドブックを多言語で作成するということにさせていただいたり、国税庁においても確定申告の手引の中国版なんていうのを作成することなどとして、一応こっちはいただく方なんだから営業の一端としてやったらどうだという話も、ちょっと営業という言葉が問題なんじゃないかと言われていましたけれども、事実そうじゃないかと。おまえ、売上げがふえると思うんならもっとやったらどうだという話をいろいろさせていただいて、一応、中国語がふえて、まだタガログ語までは行っていませんけれども、中国語版を作成するということにさせていただいて、三十一年度の予算の中にはそういったものを盛り込んではおります。

 おりますけれども、いずれにしても、できる限りのものをやっていかないかぬとは思いますけれども、少なくとも、先生、日本の場合は極端に、豊橋に限らず、関さんのところに限らず、全体的に外国人に親切なんですよ、僕に言わせたら。本当に、ちょっと正直、へえと思いますし、似たような話は、豊橋ほど多くありませんけれども、福岡でも実はいろいろ、あっちこっちでいろいろなものが、組織的ではないけれども、そこそこなものが、やらないかぬのじゃないかという声が上がってきているというのをこの間耳にしていたんですけれども、豊橋は組織的にしておられると聞いたので、へえと思ったのが正直な実感です。

 いずれにしても、これは今後、長期的な問題になっていくだろうと思いますので、少しずつ定着させていかないかぬだろうと思っております。

関(健)分科員 ありがとうございます。

 私も、受けてきた教育としては、相手の郷に入ってはで、向こうへ行って英語がしゃべれないのはおまえが悪いんだろうという教育を受けてきた一方で、これから外国人の皆さんに気持ちよく仕事をしていただいて、気持ちよく税金を払っていただいて、日本に来てよかったねと向こうでまた口コミにしていただいてという意味では、やはり、おもてなしじゃないですけれども、気持ちよく税金を払って、必要以上に払っていたら還付を簡潔にわかりやすくする仕組みというのは、やはり必要なんだと思います。

 ですから、改めて申し上げますけれども、やはり、今、日本は優し過ぎるというのはもう全く同意なんですけれども、これは、税理士さん、通訳さん、今、この豊橋のモデルを聞いて、隣接する自治体も、それ、やったらいいかもねみたいな話になって、市の職員さんが視察に来ておられるわけです。こういうふうになっているのは、もう何度も申し上げますけれども、その国に行ったらその国の言語を話せるのは当たり前だろうという価値観は根底にあります。ただ、来てくれた全ての皆さんがそうもいかないと思いますので、ぜひ、やはり日本ってそういう国だねと思っていただくためにも、必要な予算を、来年度予算、税理士さん、通訳さん、そして会場ですね、そういうことをしっかり設けることによって、この国はそういうことを用意してくれているんだという海外への発信にもなると思うんです。

 余り財務大臣に質問する機会なんかありませんので、改めて質問させていただきますけれども、外国人労働者の確定申告がより円滑に進められるための必要な予算、来年度予算に必要な経費を盛り込んでいただけないでしょうか。御所感を伺います。

麻生国務大臣 予算を今から編成する立場なので、うかつなことは、軽い空約束をできる立場にはありませんけれども、いずれにしても、こういった問題というのは長期的に取り組まないかぬ問題だと思っておりますし、そうですね、中国語、タガログ語、特殊なところで韓国語、その三つぐらいは、英語プラスそういったものは必要かなという感じがしないでもありませんので、これは一冊つくっておきさえすれば、いろいろな意味で、他の税務署にも全部配付できるわけですから、そういった意味では検討する価値があろうかとは思っております。

関(健)分科員 ありがとうございました。

 外国人労働者の方々がふえていって、彼らが気持ちよく働いて、気持ちよく納税をしていただいて、本国へ帰って、あそこの国は働きやすいぞと言っていただく枠組みというのは必要だと思いますので、御検討を引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 刑期を終えた方の更生の道筋について質問をさせていただきます。

 私の地元豊橋では、雇用協力主会という会の皆さんが活動されているんですけれども、刑期を終えたりした、罪を犯して更生を目指す方々が円滑に社会に復帰できるような仕組みを、それもほぼ手弁当ですけれども、やっている皆さんがおられます。

 その方々と話したときの問題意識を紹介させていただきたいんですけれども、ある協力雇用主の方は、地域の顔みたいな人なんですね。商いをずっと何年も何年もやっているので、あの人が言うことなら信頼できるよねという方がたくさんいらっしゃるわけです。そうしたら、こういう方が刑期を終えて、来ました。私、調理に行きたいんです。じゃあ、あの料理屋を教えてやるよ。私、木材加工をやりたいんです。じゃあ、そういう店で働かせてあげるよということを、この雇用主の方はやっておられるわけですね。

 そうした中で、彼が今、不満というかストレスを感じているのが罪状です。何の罪で服役していたかというのが、雇用主の人には教えることができないんですよね。

 また、教えることができない根拠と、教えられないという理解でいいのか、教えてください。

今福政府参考人 刑務所出所者の再犯防止という観点で、就労の確保というのは大変重要でございまして、その際、今御指摘のありました、前歴等を承知の上で雇用してくださる協力雇用主さんの存在というものが大変重要だと考えております。

 協力雇用主さんが雇用してくださる際に、その本人の前科、前歴などの情報を欲しいと求められることがございます。その際ですけれども、そういった情報は雇用後の職場での配慮に大変必要だと思われます。その一方で、特に秘匿すべき個人情報の一つでございますので、本人に無断でこの種の情報を提供するということは、根拠と申されましたので申し上げますと、国家公務員法第百条に定める「秘密を守る義務」に違反するおそれが高いと考えられます。

 そこで、現在、保護観察所におきましては、必要な場合に、あくまで本人の同意を得た上で、これらの情報、すなわち前科、前歴などの情報でございますが、協力雇用主に対して提供をしております。

 なお、平成二十九年に再犯防止推進計画が閣議決定されましたけれども、そこでも、「個人情報等の適切な取扱いに十分配慮しつつ、犯罪をした者等の就労に必要な個人情報を適切に提供していく。」というふうに明示されておりまして、引き続き、協力雇用主さんのお声を拝借しながら、個人情報を適切に提供していきたいと思っております。

関(健)分科員 雇用主の皆さんも保護司の皆さんも、もうよく御存じだと思いますけれども、自治会の役員さんと一緒で、しようがない、俺がやらなきゃ回らないからという責任感のある皆さんで支えられている仕組みなわけです。

 そういう人が、いろいろ仕事を紹介してくださいと言われて、じゃあ、どういう罪を犯したの。窃盗です。窃盗にしちゃあ、ねえと。それで、いざ職場に紹介したら、全然違う罪状だったということがわかった。そうすると、この雇用主さんの顔が潰れちゃうわけですね。やはり麻薬で再犯の歴がある人を例えば調理場にというのは、なかなか、料理をやる方々というのは敬遠しがちなわけです。ところが、窃盗と言われて受け入れたら、そっちだったと。これは全く、雇用主さんの顔が潰れてしまうわけです。

 ですから、いろいろ現場で臨機応変に対応しておられるんだと思いますけれども、そういう責任感と、俺がいないとこの枠組みは回らないからという人たちがいなくなった後、もう全く機能しなくなるおそれが多分にあるわけです。損な役回りですから。

 これはしっかりとお伝えをするということをした方がいいんじゃないでしょうか。伺います。

今福政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、非常に秘匿すべき個人情報であるということは踏まえつつも、しかし、協力雇用主さんの方で実際にまた就労に結びつけていただくに当たっては、その種の情報というのは非常に大切でございます。

 ですので、それに関しては、きちっとそのお声を聞きながら、適切に対処してまいりたいと思っております。

関(健)分科員 繰り返し申し上げますけれども、保護司とか雇用主さんの皆さんというのは、世の中のために僕らがやらなきゃ回らないから、そういう敬意に値するマインドでやっておられる皆さんですから、その人たちが、もうこれ以上顔を潰されたらこういうのをやっていられないよというふうになるようでは、やはり本末転倒ですので。現場の保護司さんとか雇用主さんに、負荷がかかっていますから。そうはいっても、現場を回すためにいろいろな負荷が現場にかかっている状態になっていますから。その一方で、少しずつ更生行政というのがよくなっているという実感もあるようなんです。

 ですから、少しずつでもいいので、保護司さん、雇用主さんに負荷がかからない仕組みを、不断の改善を求めていくことを強くお願いして、次の質問に移らせていただきます。

 次は、また、雇用主さんになるための資格なんですけれども、これも私、実際に三人の人から聞いたんですけれども、雇用主さんになる人ってどういう人か。先ほど申し上げました、僕がやらなきゃ、この世の中の仕組みは回らないからという、ボランティア精神あふれる人と、ちょっと自分も昔やんちゃしていて、いろいろな人に助けてもらったと。いろいろな人に助けてもらって、今一人で仕事ができている。だったら、僕も、自分がそういう人に助けてもらった、同じことをしたい、だから雇用主になります、こういう方は結構おられるんですね。

 そういう方がちょっと言ってきているのは、いろいろ昔もやんちゃしたし、いろいろやると、雇用主になるためにはじかれてしまうことが多々あるんだと。何かそれは反社会的勢力とか、そんなのは絶対だめですよと言ったら、そういうのじゃないと。例えば、会社の規模だとか経営の何とかとかですね。だから、規制が厳し過ぎやしないですかという質問です。お答えください。

今福政府参考人 協力雇用主の登録の要件に関する御質問かと思いますけれども、実は、これまでは全国で統一したものは取扱いがございませんでした。しかし、先ほども申し上げました平成二十九年の再犯防止推進計画、ここで、協力雇用主の要件や登録のあり方を整理することが明記されました。それを受けまして、昨年の八月ですが、現場の実情そして意見を聞きながら、登録の要領を定め、保護観察所に通知をいたしました。

 そこでは、各観察所において、事業主に対しまして、更生保護や協力雇用主の意義、そういったものについて説明をする、そしてまた、先ほど申し上げた個人情報の取扱いをきちんとするということについて説明をして、賛同を得られた場合に登録手続を進めるとしておりまして、事業主さんの御自身の前歴のような情報、それがあること、前歴があることを理由に登録しないという運用は行っておりません。

 しかし、刑務所出所者等の就労先というのは、その改善更生を妨げる職場環境であってはなりません。そこで、暴力団等と関連のある事業主を協力雇用主から排除する必要があると考えておりまして、要件の中で、その協力雇用主として登録を希望する事業主さんにつきましては、事業主さんの同意を得た上で、都道府県警察に暴力団照会を行って、そして当該事業主が暴力団あるいは暴力団員との関連がないことを確認できた場合に協力雇用主として登録をするということとしております。

関(健)分科員 つまり、雇用主になりたいという方は、基本的に、反社会的勢力の人間でない限りなれるということですよね。運用が変わったということを知らない方も多いですね。

 何度も繰り返しになって恐縮ですけれども、この世界で、この仕組みを回してくれている皆さんというのは、ボランティア精神ですから、リスクしかないわけです。でも、こういう人たちのために何とかしなきゃという人たちに負荷がかかるのはやはりおかしいわけです。ましてや、そういうところに、自分も世の中に恩があるからという人たちが入りやすい仕組みにするのは言うまでもないことで、そういうのはありませんよというのもぜひ、どう周知すれば、わからないですけれども、そういうふうになれるよということを、ぜひ周知をしていただければと思うんです。

 現に、僕の周りに三人もいましたから。僕はちゃんと言っておきますのでね。その仕組みのより円滑な活用がされることを強く望んで、次の質問に移らせていただきます。

 最後に、マッチングなんですね。服役をしている皆さんは、再開、更生の、世の中に再スタートするためにいろいろな技術を身につけております。私の家のテレビ台も矯正展で買ったテレビ台なんですけれども、そういう技術、例えば仏壇の細かいあれを彫っておられる方とか、パティシエのような技術を身につけたりとか、いろいろな技術を身につけておられる方がいます。そういうのを見て、この技術を持っている人を雇いたいなと思う方が結構おられるそうなんです。まず、どこに尋ねたらいいかわからない、ハローワークに尋ねる、そのころにはもうその人と出会う方法がよくわからないみたいになっているわけですね。

 つまり、この人材、能力を持った人材が欲しいと思っておられる経営者さんと、こういう、手に職をつけたんだ、技術をつけたんだという方がぱっとマッチングできる仕組みというのが今あるんでしょうか、お尋ねします。

名執政府参考人 矯正施設の在所中から就職を決めて出所後すぐ働き出すということは再犯防止にも重要でありますので、矯正局におきましては、平成二十八年に、企業と受刑者のマッチングを図るために、矯正就労支援情報センター、通称コレワークを東京と大阪の矯正管区に設置いたしました。

 コレワークにおいては、全国の受刑者等の職歴、刑務所で受講した職業訓練種目、資格、帰住予定地などの情報を一括して管理いたしまして、事業主の求人ニーズに適合する者がいる矯正施設の紹介等を行っております。

 事業主の方はハローワークにおいて、その紹介された矯正施設を指定した受刑者等専用求人を登録いただき、その求人に受刑者等からの応募がありましたら矯正施設において採用面接等も実施し、出所後にすぐに採用いただける仕組みとなっております。

 このコレワークは、二十八年十一月に本格稼働を開始いたしましてから、その年に八十四件、二十九年に七百六十五件、三十年に千百二十八件、合計千九百七十七件の企業主からの御相談を受け、平成二十九年は百二十八件、平成三十年は三百十八件、合計四百四十六件が採用内定に結びついておりまして、着実に実績を伸ばしているところでございます。

 また、出所後においては、保護観察所において、矯正施設、ハローワーク、協力雇用主等と連携し、就労支援を行うとともに、民間の事業主の方に就労支援を委託し、そのノウハウを活用する更生保護就労支援事業を実施しておりまして、幅広い業種からの協力雇用主の開拓、また就職が困難な方についてはきめ細やかな寄り添い型の就職活動支援を行うなどして、刑務所出所者の希望と適性に応じた雇用主とのマッチングに取り組んでおります。

関(健)分科員 ありがとうございました。

 私、NHKの記者時代に、再犯に走ってしまう人の思いとか、そういうのを取材したことがあるんですけれども、やはり自分のおとっさん、おっかさんがいるところで再開の道を踏み出すとか、こういうのはやはり再犯の率は下がるんですね、もう御案内のとおりだと思いますけれども。ただ、縁もゆかりもないところにぽこんと出して、とりあえず受け手がないから人材派遣で毎日毎日、こうなるとまた再犯率が上がっていくということがまさに現場で今起こっていることなわけです。

 今のおっしゃっていただいた仕組み、これはもっと細かくした方がいいと思うんです。例えば、今申し上げたように、ふるさとがどこだからお父さんお母さんのもとで再開の道を歩み始めます、私はここで長年働いたからここでもう一歩再開の道を果たしたい、若しくは、本当にゼロから、どこの誰とも会わない、こういう場所でやりたい。その選び手は、出てくる方なんですね。その方それぞれの、ありとあらゆる場所にそういう仕組みがあるべきだと思うんです、限界はありますけれどもね。

 ただ、先ほど言った再犯率の高さというのはやはり課題としなければいけないし、それの低下を目指しているのは言うまでもありませんけれども、先ほど申し上げた、所内で必要な技術を身につけて、例えば木材加工、例えばパティシエ、例えば何とか、こういうのを手にした人間が、その職業について、おいしかったねと言われたり、あなたのつくったテレビ台いいわよ、こういうことを言われると、その人の生きがいにもなるし、再開の何よりの支援にもなるし、再犯率の低下に一番つながるんだと思います。

 ですから、きめの細かい、この地域でこの職業を求めている人がこれだけいます、この地域に出ていきたい人はこれだけいます、これは、アルバイト情報誌とか民間でやっているのと同じように、ぱっと来てぱっと、ああいうのはタイミングも大事ですから、よりきめ細かな仕組みの改善をお願いしますが、御所感をお伺いいたします。

井野主査 法務省名執局長、簡潔に答弁をお願いします。

名執政府参考人 委員御指摘のとおり、受刑者の希望職種また帰住予定地、その後の生活上の希望も踏まえました適切なマッチングができますよう、希望職種等に係る受刑者等のデータベースを更に充実させるなど、コレワークの機能強化に努めてまいりたいと思っております。

関(健)分科員 終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて関健一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、櫻井周君。

櫻井分科員 立憲民主党・無所属フォーラムの櫻井周です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、麻生大臣には初めて質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは早速、三点、本日質問させていただこうと思っております。

 一点目は、消費税対策、ことし十月から始まるということで、それに対するいろいろな対策、消費税増税に伴ういろいろな反動に対する対策をいろいろ講じられているわけでございますが、果たしてこれは費用とか手間の割に本当に効果が上がっているのかどうなのか、こういったことを質問させていただこうと思っております。

 去る二月二十五日月曜日の予算委員会で我が党の枝野代表が質問させていただいた中で、例えば、プレミアムつき商品券等、事務コストが膨大で効率が悪いのではないのか、こういう指摘をさせていただいております。

 そこで、本日は、事務コストとそれから効果、これを対比するような形、全ての事業は費用対効果をしっかり検証した上で実施をされるべきなんですが、このことについて改めて考えていきたいと思います。

 まず、プレミアムつき商品券、この事業費千七百二十三億円に対して、事務コストが四百九十八億円ということで、間接経費の割合が二九%にも上っている、非常に効率が悪いものだと思います。

 そこで、まずお尋ねをいたしますが、この事務コストとして、どのような作業といいますか業務に対してそれぞれ幾ら計上されているのか、教えていただけますでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 今回実施いたしますプレミアムつき商品券で、実際に事業を実施いただく地方自治体において生ずる事務経費について計上させていただいております。

 大きなもの、例えば申し上げますと、自治体、地方公共団体の非常勤職員の方の人件費、これは約二百億円程度でございます。それから、対象者の方の抽出それから御連絡に要する経費、これが約百二十億円程度、そのほか商品券の印刷、換金手数料、広報等々の経費がございます。

櫻井分科員 いろいろな項目について事務コストを計上していただいております。ただ、実際のところは、見えないコストといいますか、計上されていないような、計上しにくいようなコストも実際はかかっております。

 私自身、衆議院議員になる前、地方議員をやっておりました。前回、プレミアムつき商品券をやったときにも、地方議員として、これは本当にいろいろな、無駄な作業といいますか、地域の方々にも負担をかけているな、こういうことを感じたわけでございます。

 例えば、実際、このプレミアムつき商品券、受け入れますよ、やりますよと言ったお店があったとします。このお店は、通常であれば、売上げから仕入れのためのお金、回転資金ですね、調達していくわけですけれども、このプレミアムつき商品券だったら、これは仕入れに充てられないわけです。一々換金をして、それで充てる。一々換金に走るわけにもいかないから、やはりどうしてもその分、回転資金が余分にかかってしまう。これはなかなか見えないコストでありますし、これは当然、今回の予算計上されているもので手当てはされないものだというふうに理解をしております。そうですよね。

 ですから、こうしたところも含めますと、また、自治体の中でも、今おっしゃったように、新たに人を雇いました、それはわかります、わかりやすい経費です。また、専門の部署をつくって、そこで残業がふえました、その分、国に請求します、これもよくわかります。

 しかし、それ以外の、どこまでやっているのか。例えば、そこの担当の部長さん。部長さんは、ほかにも仕事をやっているけれども、これをやることによって追加的な仕事がふえるわけです。そういったところは、じゃ、このプレミアムつき商品券のために一体幾らやっているのかということは、なかなか、ストップウオッチででもはからない限りわからないということですし、それだけを切り出して計上するわけにもいかない。だから結局、国にも請求していないけれども、自治体にとっては事務作業がふえて、業務の負担、いろいろなところで増加をしているんだというふうに思います。

 今度は効果の方なんですが、プレミアムつき商品券事業、平成二十六年の補正予算で実施をしておりますが、この事業効果はどうだったのか。

 これは内閣府が検証しております。検証しておりますけれども、ただ、結局のところ、この検証の中では、アンケート調査では商品券の入手がきっかけとなった商品、サービスの購入ということでアンケートにお答えいただいているわけですが、これですと、なかなか、新規消費の喚起がどれほどあったのかというのはよくわからない。すなわち、需要の先食いがあったのではないのか、横食い、つまり、ほかの物を買おうと思っていたけれども、商品券が対象にならないからやめて、商品券が対象になる商品を買う横食い、こうしたものがいろいろまじっているのではないのかということで、どれほどの効果があったかよくわからないというのが結論だと思います。

 結局、見積もっている事務コストは高い、見えないコストもかかっている、一方で効果はよくわからない。これこそ税金のばらまきとか無駄遣いだというふうに私は考えるんですけれども、もし、ばらまくにしても、もっと効率的なばらまき方があるんじゃないのかというふうにも考えます。これは大臣、どのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは、消費税の二%の増というものに対してのいろいろな考え方なので。費用対効果の話をしておられるんですよね、これ。

 したがいまして、これは、私どもとしては、一番の大きな問題は、消費税というものの使い道として、今回、いわゆる少子高齢化という、日本の国にとりまして中長期的には最大の問題がこれなんですけれども。

 この中長期的な問題に対応するために、少なくとも、高齢者という受け手の側の方がふえてきて稼ぎ手の方が減ってくるという事態に合わせて、日本が昭和三十五、六年につくりましたいわゆる完全な福祉等々の形というのはできるかといえば、あのころは、働いている人、働いている人というのは十六歳から六十四歳まで六人に対して受け手の方は一人、今は二・二ぐらいで一人ということなら、これは極端なことを言えば三倍もらわぬととてもじゃないけれども福祉が賄えないという状態になってきていますので、どうしたかというと、保険じゃなくて、早い話がそこに税金を突っ込んでやっていたというのが今までだったんだと思うんです。

 それを、ちょっとこれはとてもじゃないがもちませんから、それじゃということで、上げていただくという形で、少しずつ少しずつその比率を、税金の比率をこの間半分に減らしていただいたとか、いろいろな形でやらせていただいているということで、いわゆる全世代型の社会保障制度というものを確立するために、私どもとしては、少子化対策とか社会保障対策とか、いろいろな表現があるんだと思いますが、それらの安定財源を確保するためにこれをやるというのが最大の目的であろうと思います。

 私ども、八%の引上げをするに当たって、前回、二十六年だったか、やらせていただいたときには、反動減とか駆け込みとか、えらい騒ぎになって経済全体を押し下げた形になりましたので、それの反省に伴って、これは平準化させないかぬということからいろいろなことをやらせていただいて、ここまで、対応をするに当たって。

 これで腰折れさせたら、もう二回続けてはとてもできませんからということで、断固ここのところは重点的にこれを、あれをということで、ちょっとばらまきじゃないか、やり過ぎじゃないかという御批判が御党に限らずいろいろ聞かされているのは私ども知らないわけではありませんけれども、少なくともそういった対応をやっていかない限りはこれは対応ができないというので、当分の間これをやらせていただく。一年、九カ月とか、プレミアムとかいろいろなものを、期間によって六カ月とか一年三カ月とか、いろいろ長さが違うんですけれども、そういったもので需要変動というものに対応するために、いろいろやらせていただいている。

 これは、費用対効果からはもっとあるんじゃないかという御意見があるんだと思いますけれども、私どもなりに考えさせていただいたというのが今回の案だというふうに御理解いただければと存じます。

櫻井分科員 大きな話からしっかりと御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 そもそも政策論としてどういうやり方がいいのかというのは、三番目の項目のところでまたしっかりお話をさせていただきたいと思います。

 ちょっとこれは細かい話で恐縮、今の御答弁に対して私の質問は非常に細かい話になってしまいますが、続けて、ポイント還元事業の方についてもお尋ねをしたいと思います。

 このポイント付与の事業に関しては千七百八十六億円、これに対して、システムなどの事務費として六百八十三億円ということで、総事業費のこれまた二四%ということで、これも事務コストの比率が高く効率が悪い、このように思われるところでございます。

 しかも、今回の予算審議の中で、どのお店が使えるのか、どのカードだったらポイント還元の対象になるのかよくわからないというようなところもあって、結局のところ、上手に使える人が、カードを上手に使いこなしている人が多額のポイントを獲得できるような仕組みになっていて、多分、この消費税の増税に伴う負担が本当に大きいだろうそうした方々、なかなかクレジットカードとか今余り使われていないような方とその部分が重なるでしょうから、そうするとなかなかこうした意味でも効果が出てこないのではないのか、このようにも心配をするわけです。

 つまり、問題意識として、大臣のおっしゃることはよくわかるんですけれども、しかし、ターゲットとしている人とそれから政策とが必ずしも合っていないんじゃないのか、こういうふうに考えるんですが、これはどうなんでしょうか。こういうやり方で本当に効果があるのかどうか、お答えをお願いいたします。

島田政府参考人 委員御指摘の中で、ポイント還元につきまして、来年度予算で六百八十億を事務費として、諸経費として要求させていただいておるところでございますけれども、この諸経費の中で、特に中小の小売店、こういったところがしっかりとこういった制度に参加をしていただくためにも、各店舗への制度の周知、あるいは勧誘、さらには端末の入れかえといったときのサポート、さらにはポイント還元の開始後のフォローアップ、こういったことを非常に丁寧にやっていきたいというふうに思っているところでございます。

 中小の小売店の皆様方にとりましてはなかなか抵抗感もあるところかもしれないということで、ここは本当にしっかりとやらせていただきたいと思っているところでございまして、そういったもろもろの経費。

 あるいは、利用者の方のわかりにくいというふうな御指摘もございました。このあたりも、実際に利用する店舗にしっかりと、何%の還元ですよといったようなことをちゃんと掲示をしていただく。

 やはり現場で見てわかるというのが一番大事だと思ってございますので、そういった周知、広報といったようなことにもしっかりと取り組ませていただきたいと考えておるところでございます。

櫻井分科員 結局のところ、これはやってみて実際どうなるかというところではございますが、一時的なもので目先を変えたところで、結局消費に対して悪い影響を与えるというようなことになってしまうのではないのか。むしろ、先に対しても安心感を与えるような制度、例えば給付つきの税額控除であるとか、しかも、一旦仕組みをつくっておけばそのままずっと使えていけるようなもの。一時的なものでやるから、その都度事務コストがかかってしまうということでもあろうかと思いますので、これはやり方をもう一回本当は考えた方がいいんじゃないのか。今さらでございますが、そのことをちょっと御意見として申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 次に、ふるさと納税制度についても質問させていただきます。

 これは、もともとの制度は、応援したい自治体を選んで寄附をする、こういうものであったかと思います。しかしながら、昨年二月二十一日の衆議院予算委員会の公聴会でも、一橋大学の佐藤主光教授、御発言されております。ふるさと納税制度について、今の実態はまさに返礼品競争に陥ってしまっている、これはやはり懸念するべきことというふうに述べておられます。

 こうしたことも受けましてでしょうか、平成三十一年度の税制大綱においては、返礼品競争の歯どめをかけるために、過度な返礼品を送付し、制度の趣旨をゆがめているような地方自治体については対象外にする、このような方針も決定されているところでございます。

 ただ、そもそも、応援したい自治体を選んで寄附をするという趣旨からすると、返礼品なんて要らないはずというか、そんなものがあるのがおかしいんだと思うんですね。しかも、現住所とは別の自治体に納税したら返礼品がもらえるというのがそもそも間違っているので、返礼品を一切禁止したらすっきりするというふうにも考えるんですが、いかがお考えでしょうか、大臣。

古賀大臣政務官 お答え申し上げます。

 このふるさと納税でありますけれども、そもそも、ふるさと、あるいはお世話になった地方団体への感謝の気持ちを伝える制度であるとともに、税の使い道を自分の意思で決めることができる、そういった制度でございます。

 この制度から、例えば災害時の被災地支援としての活用、あるいは地域資源を活用することによる地域経済の活性化などなど、よい事例も生まれてきている、このように認識をいたしておりまして、全国のほとんどの地方団体がこの制度を大事に思っていただいているのでないか、こういうふうに認識をいたしております。

 ただ、一方では、返礼品、おっしゃるとおり次第にエスカレートをいたしまして、批判を受けるまでになったというわけでありまして、これを受けて、二度にわたる総務大臣通知により、過度な返礼品を送付する地方団体に対して良識ある対応を要請してきた、こういった経緯がございます。

 そういった状況でございますので、我々としては、今回、一定のルールをきっちり整備をすることによりまして、この制度の健全な発展を進めていきたい、こういうふうに考えているところでございまして、御理解をいただければと思います。

 以上です。

櫻井分科員 例えば、確かに被災地に対する支援とかいうような形でのふるさと納税の使われ方はある。熊本の地震のときには、もう返礼品は要らないからといって寄附をしていただいた、ふるさと納税をしていただいた方も多数いらっしゃるというふうに聞いております。そうなんです、返礼品は要らないんです、その自治体を応援しようと思っているんだったら。そこをまず出発点に、原点に戻って考えるべきではないのかと思います。

 それから、返礼品について、金額を見ますと、これはちょっと前の平成二十七年度の実績でございますが、返礼品の調達に係る費用は六百三十三億円、発送費が四十三億円、合わせると六百七十六億円のお金がかかっている。

 ふるさと納税を選択された方は自己負担二千円あります。利用された方は百三十万人、この年はありました。ですので、百三十万人掛ける二千円で、二十六億円がふるさと納税利用者の負担額でございます。

 そうすると、返礼品の関連の、購入費、送料、合わせて六百七十六億円から二十六億円引きますと六百五十億円、これがお金がかかっているということです。

 本来であれば、この六百五十億円、税収として入ってきているはずなのに、それが使われずに返礼品になって、例えば私の地元の兵庫県であれば神戸ビーフとか、それはおいしいからいいんですけれども、でも、そういうものに、特定の個人、しかもそれなりに税金を払っていて裕福な人がこれを利用して、月に一回神戸ビーフですき焼きするんだとか、そういうことに使われているわけですよ。

 こういう税金の使い方というのは、税金の制度のあり方を根底から崩してしまうようなゆゆしき問題だというふうに私は考えるんですが、麻生大臣、どうですか、税を担当する大臣として。

麻生国務大臣 このふるさと納税のあり方につきましては、そもそもの趣旨というのは、先ほど政府の方で答弁をさせていただいたところ、そのとおりなんで。一部の、これはいつごろからですかね、えらく競争的になって、あおられて、いろいろな話が出てきているのが随分あったんです。

 ふるさと納税というのは、純粋に、寒村から出てきて功成り名を遂げた人が、自分の地元の小さな村が廃村になりそうだとかなんとかいうときに、いろいろな金をというのでやられた。私も知っている方が三人、四人いらっしゃいましたので。

 そのころは返礼品なんかありませんでしたので、そういうものだと思っていたんですけれども、私の場合は地元の福岡に納税していますので、少し意識がその人とは違うんですけれども、まあ、言われたので、いつのころからか。それで、神戸ビーフが出てきたのは、たしか兵庫県じゃなくて別のところから出てきたという記憶があるので、それでちょっとおおっと思ったのが最初にひっかかったときだったんですけれども。

 いずれにしても、もともと、税収云々というものも、もちろん六百何十億の件も確かなんですけれども、それにもまさって、とにかく、この趣旨に沿ったというところなんであって、そこそこの感謝の気持ちを込めて梅干しが届いたと。まあ、そこそこなのでよかったんですが、だんだんだんだんそれが営業みたいな形になってくると、それはちょっと違うんじゃないですかねという点であろうと思いますので。

 今、ルールがそれなりにでき上がるという形で話があっておりましたけれども、きちんとしたもの、そういった本来の趣旨というものに沿ってルールというのはされていかぬと、ちょっと別の意味になってきて、本来の趣旨と離れて、何となく違和感、公平感を欠くという感じになるところが問題だと、私もそう思います。

櫻井分科員 麻生大臣とも問題意識を共有させていただきました。

 多分、役所の方々も、おかしいなと思いながらも、しかし、菅官房長官が総務大臣のときに言い出したから怖くて言えないなというふうに思われているんだと思います。

 これはやはり、菅官房長官に対してちゃんとしっかり物を言える大臣はもう麻生大臣しかいらっしゃらないと思いますので、これはちょっとおかしいんじゃないのと。

 自己負担、ふるさと納税を利用される方は二千円負担するわけですから、返礼品も二千円までだったらいいよ、それを超えたらだめですよというのが本来あるべき筋だと思うんですね。税金をどこで納めようが、納める場所を選択できるようにする、それは構わないと思います。ただ、それはやはりちゃんと公共サービスのために使われるようにしなきゃ、返礼品に多額のお金が使われるというのは制度のあり方として大きく異なっているということを改めて申し上げ、麻生大臣によろしくお願いいたします。

 三点目の質問に移らせていただきます。

 今回の予算審議の中でも、統計の問題が非常に大きく取り上げられました。やはり、あらゆる政策は、きちっと事実に基づいて、そして統計データに基づいて政策はつくられるべきだと考えます。これはもう当たり前のことだと思います。これは別に国の予算等に限らず、民間企業で、麻生大臣も経営をされていた経験がおありかというふうに聞いておりますけれども、民間企業であっても、きちっと売上げその他、いろいろなコストのデータを見ながら経営をしていくということだと思います。

 そういうことも踏まえまして、改めて、国家の経済の基本的なデータでありますGDP成長率の経年変化をちょっとグラフにしてお持ちしました。

 ざっと見ていただいて、民主党政権の間がちょうど真ん中辺にあるわけでございますが、安倍総理は、悪夢の民主党政権というふうにおっしゃいます。私は民主党政権時代に国会議員をやっておりませんので、何も、弁護する立場でも何でもないわけでございますが。ただ、はた目に、一国民であった時代の私から見ても、やはり余りにもひどい言いようだなというふうにも思いましたので、ちょっとグラフを載せさせていただきました。

 資料二が細かい数字の方でございますが、この細かい数字の方を少し丸めて平均をとってみますと、第一次安倍内閣のころに、GDP成長率、実質で〇・五%の成長、その後の福田内閣でマイナス〇・二%、麻生内閣の時代にマイナス一・四%、民主党内閣のときに〇・四%、第二次安倍内閣で、これは民主党政権と平仄を合わせるために、三年間、二〇一五年の第四・四半期までですが、〇・二%の成長率ということで、数字だけを見ると、第一次安倍内閣が、あのときまではよかったけれども、どんどん悪くなっていって、麻生内閣のときに一番悪かった。民主党政権時代に多少盛り返したけれども、その後、第二次安倍内閣でも盛り返せていないというような状況ではないのか。すなわち、アベノミクスは、悪夢の民主党政権以下の成長しかできていないのではないのか。

 民主党政権は悪夢だというふうに安倍総理は言っておられましたが、実は悪夢は麻生内閣のときに既になっていたのではないのか、こういうふうにも数字からは読み取れるわけですが、この十年間のGDPの実質成長率の推移を見て、大臣の御所見をお伺いいたします。

麻生国務大臣 これは、御記憶かと思いますけれども、百年に一度と言われた、いわゆるリーマン・ブラザーズのバンクラプシー、破綻が起きましたものですから、金融危機というのが大きく影響を受けましたので、GDPはもう名目、実質ともにがたんと落ち込むことになった、これは世界じゅう皆同じだとは思いますが。この危機に対応するために、私どもとしては、補正予算を異例の三回、それから通常予算を一回だったかな、やらせていただいて、迅速に危機に対応したんだと思っております。

 民主党政権においてという話ですけれども、大きく落ち込んだGDPの水準ですから、それから上がっていくというのは当然のことで、一番下まで行っていますから。反動とか、また経済対策の効果も、三回の補正予算の効果もありましたでしょうから、そういった意味では、GDPが、二〇〇九年の七―九、二〇一二年の十―十二月までの間、年平均で約一・六%となっているのは私どもも承知しておりますが、ただ、見ていただくとわかるんですが、名目GDPの方は〇・三ぐらいしか伸びていないんだと思いますね。したがって、その差の一・三というものは何がというのは、それは物価が下がったんですよ、だあんと、デフレによって。

 したがって、民主党政権下でデフレというものが物すごく進行した三年半だったことは、もう間違いない事実だと思いますので、デフレ不況というものから抜け出すことができなかったんだと思っております。

 その後の安倍政権において、いわゆるデフレではないという状態をつくり出すことができたということだと思っていますので、そういった意味では、経済の好循環というのが着実に回り始めているという点が一番肝心なところかなと思っております。

櫻井分科員 麻生政権時代のいろいろな御苦労の話をお聞かせいただきました。そうなんです。それぞれの政権、いろいろな苦労の中で政権運営をしているということだと思います。

 確かに、民主党政権時代、文字どおり、世の中は暗くなっていた。原発がとまって、節電ということだったわけですから、地下鉄の構内なんかに行きますと、本当に半分は電灯が消されていたというような状況です。

 しかし、これは別に民主党政権が原発事故を起こしたわけではなく、地震が起きたからですし、それ以前の自民党政権時代に原発をたくさん推進してつくってきたという結果なわけでして、いつの政権も前の政権の尻拭いをして苦労するということだと思いますので、余り前の政権のことを悪夢だと言うのはやめた方がいいんじゃないのかな、それはお互いさまではないのかなというふうにも私は考えるところです。

 次に、資料三の方にもちょっと移らせていただいて、これはGDPの国際比較なんですけれども、これを見ますと、我が国のある種国力といいますか、諸外国に対する我が国の経済の、GDPの占める割合というのが出ているわけなんです。

 小泉政権の終わりのころには一〇%あった我が国の世界におけるGDPのシェアが、これはどんどんどんどん下がっていきまして、麻生政権の終わりのころには八・七%、一回七%ぐらいまで落ち込んだものを、もう一回ちょっと盛り返したわけでございます。民主党政権時代には八%ぐらいを維持していたのが、これは第二次安倍内閣に入りますと六%ということで、落ち込んでいっているということになろうかと思います。

 結局のところ、我が国の国力というのは、これは、ほかの新興国がどんどん大きくなっていっている、成長していっているわけですから、我が国の相対的地位が下がっていくのは仕方がないことですし、新興国が成長して、世界が、経済が発展すること自体はいいことだと思いますが、ただ、アメリカなんかを見ますと、必ずしもそんなに下がっているわけではないのに、日本だけちょっと置いていかれているような感がございます。

 こうしたことを考えても、やはり日本にとって本当に必要な経済政策というのをしっかり打っていかなきゃいけない。

 先ほど、麻生大臣おっしゃいました、少子化、高齢化というのが我が国の非常に大きな課題だと。これは目先の課題でもありますし、中長期的にもずっと続く課題でございます。

 これに対して、我が国の最大の課題、もう一つの課題というのはデフレとおっしゃいましたけれども、デフレのもう一つの原因は、国内消費、個人消費が伸び悩んでいるというところ。この個人消費を伸ばすためにはどうしたらいいのか。やはり、消費性向が高い方々、セグメントに働きかけていく必要がある。

 しかし、安倍政権がこれまでやってきている経済政策は、どちらかというと高所得の方々が得するような政策、先ほど申し上げたふるさと納税もそうです、ポイント還元もそうです、高所得者の方が主に利用しているようなところ。今回目玉にしておられる幼児教育無償化も、目先のことを考えれば高所得者の方が有利になる、こうした制度でございます。

 この金持ち優遇政策ともとられかねないところ、こういうところではなくて、経済格差を是正するような政策に切りかえていくことがデフレ脱却につながっていくのではないかというふうに考えますが、もう時間が押していますので、多分最後の質問になろうかと思います、大臣の御所見をよろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 これは個人消費というものが一番伸びていかぬと、GDPというものから見ますと約六割を占めておりますから、そういった意味では、私どもとしては、この個人消費が伸びていくということが一番肝心。傍ら、私ども、財政再建をやらないかぬという、二つ抱えておるわけです。経済成長と財政再建、二つを追っている形になりますけれども。

 私どもとしては、少なくとも、消費税率引上げという前回のときによってどおんと反動減が起きましたし、そういった意味では大きく経済成長、消費等々にマイナスを与えたということで、私どもは、これをいかに少なくして経済成長を持続させていくかということに立って、我々、これまで取り組んでいるんですけれども。

 今言われましたように、やはり賃上げというのは大きな部分だったんだと思っております。したがって、名目、実質ともに確実に伸びてきて、少なくとも、ベアなんという言葉が、自分でサラリーマンをやっているとき、ベアなんかなかったでしょう、あの時代。ほとんどない時代ですよね、ベア、ベースアップって。あれ、ベアと聞いて、ベアって何ですかと聞いた若い人がいたぐらいで、これは熊じゃなくてベースアップという意味ですよとうちの秘書に説明してやった記憶があるので、ベアという言葉が出てきたということすら、私ども、サラリーマンのときはだあっと伸びている真っ最中ですから、ベアが当たり前という時代だったんですけれども、全然時代が違っていますので。

 そういった意味では、やはり賃上げというのは非常に大きくて、それは可処分所得がふえる、消費につながるということになっていくんだと思いますので、積極的な企業に対していろいろ税制面で援助しますよ、ベースアップやら何やらやっていくところはということで、いろいろなことをやらせていただいて、現実問題として、連合の調査でも毎年、五年間二%ずつアップして、それなりの結果は出してきているんだと思います。

 少なくとも、今後とも、こういったものに関して、企業の業績がいい割には、内部留保がえらいふえている割には、企業における賃上げの額、また設備投資等々の生産性の向上につながるようなものに対する投資が、少なくとも内部留保なんかに比べて少ないんじゃないのということに関しましては、私ども、引き続きこういったことをやっていかないかぬところなので、消費性向をふやすためにも実質の賃上げというのは非常に大きなものだと思って、その方向で動かしていきたいと思っております。

櫻井分科員 麻生大臣、丁寧な御答弁ありがとうございました。

 まさに、実質賃金も非常に重要なポイントだと思います。正確な統計をよろしくお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井野主査 これにて櫻井周君の質疑は終了いたしました。

 次に、落合貴之君。

落合分科員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 久しぶりに麻生大臣に質問をさせていただきます。

 大臣は、もともと企業の経営者でもございます。それから、九〇年代から経済閣僚を務められております。そして、百年に一度と言われたリーマン・ショックのときにも総理大臣をされていた。そして、安倍内閣では主要な閣僚、ずっと経済閣僚を務められているということで、今の現職の国会議員の中で見ても、麻生大臣ほど経済について経験のある方はそうはいらっしゃらないと私は思います。

 したがって、きょうはいろいろなそういった御見地について伺えればと思います。

 まず、財政というのは、やはり健全で持続可能な経済循環、経済成長、これがなければ健全な財政を維持することはできないというふうに私も思います。これについては国民のコンセンサスはとれているものと思います。

 その観点から、今、各部門、経済状況、どうかなと見てみますと、先ほどもおっしゃられていた、GDPの約六割を占める家計部門、強いていろいろ見てみると、家計部門が大丈夫かな、ここはある程度気を使っていかないと、持続可能な、自律的な経済成長が望めないんじゃないかなというふうに私は思っています。

 それで、きょう、資料をつけさせていただきました。

 資料の一枚目は日経新聞でございまして、これは、可処分所得が余り、思った以上には伸びていないという記事でございます。やっと昨年の段階で、二〇一二年の民主党政権末期の水準に実質では可処分所得が追いついたような状況でございます。それまでは下回っておりました。

 それから、資料の三枚目。これは金融資産を保有していない世帯でございますが、上の方が単身世帯で、下の方が二人以上の世帯でございます。二〇一五年にがんと、貯蓄ゼロが九%も例えば単身世帯では上がっているわけでございます。それで、そこから三年間ぐらいは、四〇%台半ばよりか上、後半ぐらい、貯蓄がゼロであるというような回答をしております。

 それから、その次のページはエンゲル係数でございます。これも、改めて見てみるとびっくりしたんですが、二〇一五年にがんと食費の割合が家計の中で上がってしまっているということでございます。

 今申し上げた二つとも、両方とも、二〇一五年に数字が悪くなっているわけですが、これは何で二〇一五年ばかり悪化しているんだろうと思うと、考えられる一つは、二〇一四年に消費税率を上げているというところでございます。消費に対して税をかける。消費税というのは価格に上乗せになるので、実質的には値上げと一緒なので、中間所得層以下の人たちには特に痛手をこうむる問題であるということでございます。

 もう一つ、どういう政策をしたとしても家計に圧力がかかってしまう問題が世界共通で最近起こっていると思います。それが私はグローバル化であるというふうに思っています。

 資料の二枚目なんですが、これは、東京新聞がちょうどいい感じの記事を出していましたので添付させていただきました。

 グローバル化で経済状況のボラティリティーが高くなっているので、それに備えて、内部留保はどこの国の企業もある程度備えなきゃいけない。

 それにプラスして、日本でもそうですが、外国人の持ち株比率がふえてきました。グローバル資本家というのは、配当金をしっかり出せというふうに言ってくるわけです。ですから、財務省も統計をとっていますけれども、配当率、配当金の割合、これはどんどんどんどん年を追って上がってきている。

 そうなると、内部留保をためて、配当金をふやして、コストはそんなに圧縮できないとなると、下がってくるのは労働分配率にどうしてもなってきてしまう。これが、世界的にも、どんな先進国も、中間所得層を破壊して、それで、もっと分配しろですとかグローバル化反対ですとか、そういうような運動が残念ながら起こってしまっている。これは、アベノミクスがどうこうという話ではなくて、世界的な大きな問題であり、どんな政府も対応しなければならない問題であると思います。

 したがって、今、国内の状況も家計を少し逼迫している、プラス、グローバルな状況でも家計を逼迫している、こういう中で更にまた家計に税をかける、消費税を更に上げるというのは、ちょっとタイミングとしてはよくないんじゃないかなと私は思うんですが、財務大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 全体の分析として、これは、落合先生、間違いなくおっしゃるとおりですよ、流れとして。

 これは日本だけの話ではなくて、世界じゅう同じになってきておりまして、今言われたように、企業業績がよくなった割に、もう一回デフレーションにとか、もう一回企業にとっての環境ががたんと、例えば中国の経済がどうとか、米中間の交渉がどうとか、ブレグジットとか、いろいろな不安になる要素がいっぱいありますので企業は構える、これは当然なんだと思うので、そういった意味では、少なくとも内部留保を厚くしておきたいと思っているんだと思います。

 ただ、それにしても、少なくとも過去五、六年を見ますと、内部留保というのは、毎年二十五、六兆、去年は四十五兆ふえて、トータル四百四十兆、四百五十兆ぐらいに膨れ上がっているというのは、国家予算が百兆に対して企業の内部留保が四百五十兆というのはちょっとでか過ぎないですかねと正直思いますよ、私自身としては。

 加えて、それだけふえている割には、企業が設備投資にかけている金は大体、年間、多い年で七、八兆、少ないときで五、六兆。人件費に至っては、この五、六年でいえば、ゼロだったときもありますけれども、伸ばして三兆から五兆、五兆五千億ぐらいのところまで。それに比べて、いわゆる、今言われたように配当はえらいでかいことになってきている等々、これは間違いなく、現実問題としては、そういう経営傾向にあるというのは事実です。

 しかし、こういった点を考えて、私どもは、企業に対して、内部留保に関して、二重課税と言われても内部留保課税を取れとかいろいろ激しい意見があるのは知らないわけではありませんけれども、現実問題として、私どもはこの部分を十分に配慮しながらも、少なくとも、企業が引き続き健全な経営を維持させていくという意味において、私どもとしては、今後、企業が生産性を上げていかれるに当たっての設備投資とかそういったものはきちんとやられないとぐあいが悪い。そのための財政的また税制的な支援をしましょう、企業がまた個人消費が伸びるように賃金を上げていただく、そういったことに対しては援助しましょう等々、いろいろやらせていただいているんですけれども。

 いずれにしても、そういったものを見ましても、企業、今のところ、全体で見ますとGDPは間違いなく伸びてきていますし、五百五十兆近くまで上がってきていますし、そういった意味では、この安倍内閣になって約一割近くGDPが伸びた。伸びないと言われた、あの時代に比べて人口が減って、伸びるわけないじゃないかと言われながら伸びた。そういったような実績を踏まえたりしましたり、また、名目でいきましては間違いなく雇用も何も伸びてきていますから。

 そういったことを考えますと、私ども、もう一個考えないかぬのは、私どもとしては、何といっても、少子高齢化という最大の国家的な、国難とも言えるべき中長期的な最大の問題はこれだと思っていますけれども、それに対応するということを考えておかないと、今のような国民皆保険等々のような政策は、かつての人口比が一対六、一対六というのは勤労者と退職者の比率、一対六の時代と違って、今、一対二・幾つとかいう時代になると、どんと下がってきていますので。

 そういった意味では、これに対応できる体制をということを考えると、やはり直接税、間接税という点から考えても、これはどうしてもやらねばならぬというので、過去二回と違って今回の状況というのは、先行きの懸念を言えば幾らでも出てくるかもしれませんけれども、常識的に言って、今のアメリカの経済というのは決して悪い状況にありませんし、そういった意味では、私どもとしては、タイミングとしてはここかという感じで、ただ、反動減等々を対応していろいろ対応させていただこうと思っているところであります。

落合分科員 少子高齢化で自然と、どんな政策を打たなくても給付が上がっていくということは確かなことでして、これは、今の状況で、誰が財務大臣をやってもかなり厳しい選択を迫られる状況ではあると思います。

 しかし、冒頭申し上げましたように、やはり健全な経済循環、これをまず第一に優先しなければ、例えば九七年、八年の段階でもそうですが、あのとき経済より負担増の方を優先してしまった、それは悪気はなかったわけで、財政再建にしっかり取り組むんだという意気込みでやったわけですが、結果的に税収も下がることになってしまったという失敗を政府はしているわけでございます。やはり、同じような間違いを繰り返してはならないというふうに思いますので、その点から考えると、この今のタイミングで大丈夫なのかなということを今回指摘させていただければと思います。

 それでは、もう少し具体例に入りまして、中小・小規模事業者の税制が今回変わることで、いろいろ私は問題が発生してしまうのではないかというふうに思いますので、その点を取り上げさせていただければと思います。

 まず、少し触れたいのが、今回いろいろな、麻生大臣だけでなく、茂木大臣ですとか総理の答弁を聞いていますと、今までの消費税増税のときとは違う答弁が入っているなということを感じました。

 それは、十月一日に必ずしも値上げを、一斉に十月一日にしなくてもいいんですよという答弁は今まで聞いたことが、私は記憶がなかったもので、あれっと思いまして調べました。ちょっとそれについて触れさせていただければと思うんですが、昨年の十一月にガイドラインが関係省庁連名で、財務省も入っていますが、公取ですとか、あと経産省、中小企業庁ですとか、入っていましたが、消費税率引上げに伴う価格設定についてのガイドラインということで出ました。

 ここで、勉強になりましたが、ヨーロッパでは七〇年代にいろいろ付加価値税が導入されて、ただ、一律に税込み価格が引き上げられたことはヨーロッパではないんですというところからこのガイドラインは始まっています。終わりの方に、そのガイドラインには、今回の引上げにおいて、大企業においても、消費税引上げ後、みずからの経営資源を活用して値引きなど自由に価格設定を行うことは何ら制約はありませんと。それから、その前に、今回、中小・小規模事業者は、消費税引上げ前後に需要に応じて柔軟に価格設定ができる幅が広がるようになりますということが書かれています。

 これまでは、価格転嫁、しっかりしてくださいということを、前回の増税のときも、特に公取ですとかが言ってきたわけでございます。中小企業の経営を圧迫するので、しっかり増税分は価格転嫁してくださいと強調してきた。それでも、今でも価格転嫁していないという指摘がかなり、一カ月に何件も公取も指摘をしているわけでございます。実際に中小企業にアンケートをとってみると、いろいろな団体のアンケートがありますが、小さい企業、特に企業間取引をしている企業などは、価格転嫁、実際にできていない、正直な話という話もかなりアンケートの結果として出ているわけです。

 そういう状況であるにもかかわらず、今回、価格転嫁は、消費税分はしなきゃいけないけれども、もとの原価の部分は自由にやっていいよと。今まで厳しくやれと言っていたのが自由にやっていいよと変えるということは、財務省として、国税庁としては、税はしっかり取りますよということですが、そのコストの部分は大企業も中小企業も競争してくださいというような、これは、反動減を起こさない、そういうマクロの政策的効果はあるんですが、しわ寄せは中小企業に行っちゃうんじゃないでしょうか。

 これは、財務大臣、重要な地位にいるので、ちょっとこれについて感想を伺えればと思います。

麻生国務大臣 今、還元セールといいましたっけね、たしか、経産省が使っていた言葉でしたけれども、ああいったものを許容するということを言っているので、前回のときとは全然そこらのところが、とにかく、価格転嫁ができないできないと言う中小企業に対して、必ずやっていただきますよと言うために前回のような話をさせていただいたんだと思いますけれども、今回そういう表現に変わってきているというのはおっしゃるとおりです。

 事実、私、その値上げのときにイギリスにちょっとしばらく住んでいたことがあったんですが、あれはたしか十月だか九月だかに値上がりしたので、もうさっさと上がるんですよね、決まった途端に、まだ発効もしていないのにどんどんどんどん。あれは内税ですよね。内税だから、どんどんと上げていく。

 日本も、ちょうど今から三十年前に初めて消費税が入った。あのとき、週刊誌というのは、先生、当時、三十年前、百円だったと思うんですね。それがいきなり百三円じゃなくて百五円になったんですよ。私が飛行場の本屋で二円お釣りを出せと言ったら、まあ知っている本屋でしたけれども、麻生さん、そんなけちなことを言っているのは麻生さんだけですよと言われたのを今でも覚えていますけれども、百三円が百五円になったの。だから、三%じゃなくて五%にしたんですよね。しかし、それは何でできたかというと、内税だから。私はそう思います。

 そういった意味で、あのとき、外税、内税というのはもういろいろ騒ぎになって、大論争の結果、結果的に外税という形になったんですけれども、じゃ、ビールはどうかといったら、ビールは外税じゃなくて内税ですから、そういった意味では随分いろいろな、柔軟にやらせていただいたんだと、当時のあれは、見るとそういうことになっているんだと思います。

 今回の場合もそういったようなことで、いわゆる消費者というものに対して、本来消費者に転嫁を、課すという消費税の負担というのを事業者が肩がわりするという点が問題なんだということを言っておられるんだと思いますけれども、これは体力の強い企業の方が肩がわりして安く売りますというようなことが行われるということになりかねないじゃないかという点を御指摘なんだと思いますが、そこの点は私どももそう思って、いわゆるいろいろな形での中小に対する支援金という形で還元、プレミアムとかなんとかいうことをやらせていただいているというように御理解いただいて、私どもとしては、前回厳しくやり過ぎた結果ああいう形になっていったんじゃないかという反省もあって、今回のこれに反動減というものが一番大きいと思っていましたので、そういう緩和をやらせていただいたというように御理解いただければと存じます。

落合分科員 マクロの反動減は恐らく私も緩和されると思います。しかし、厳しくやっていたときも、中小企業の業況はかなり厳しいものに、あの二〇一四年になったわけですから、自由にやってくださいとなった場合は、恐らく中小企業の業況はかなり悪くなると思います。

 全ての中小企業の商売にやはり補助金を上げられるわけではないわけで、しかも、私が思うに、消費に対する税というのは、インフレというか、消費をある程度落ちつかせるという効果もあるわけですから、三十年前はそういう状況でしたけれども、今、デフレではないけれどもデフレ脱却はしていない、値上げがしづらい状況で、自由にやってくださいとよりやってしまうのは、やはり体力がないところはかなり厳しいことになる。これは、しっかりと中小企業の業況を見て、必要があれば補正予算を打つかこのガイドラインを変えるかしなければならない状況だと私は思います。

 また次の問題なんですが、私、個人商店で、なるべく地元で買物をするようにしています。最近、お弁当屋さんでも豆腐屋さんでも言われたんですけれども、容器の仕入れは一〇%、食材の仕入れは八%、我々、売るのは八%なんだよね、これ、仕入れの方が消費税高いじゃんと。今は二%の差だけれども、これからどんどんどんどんいったら、何か払うコストの方が高くなっちゃう気がするんだけれどもというようなことを聞かれました。

 実際には仕入れ税額控除なので、それが大きく損することは、実際に計算してみればないんですけれども、ただ、これは痛税感の逆ですよね。いっぱい払っているような気がする。まあ実際に計算の仕方からすると、そういう状況も起きる可能性もあるとは思うんですが、痛税感の逆のことが個人商店ですとか中小零細では起こる業種があるわけでございます。やはり複数税率にすること自体がこういう問題を起こす。

 今回のような問題は、食料品を扱っている小さいところはかなり痛税感を伴うものだと思います。これについては、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今おっしゃられたように、容器等々必要な経費に関しては一〇%じゃないかというのはおっしゃるとおりなので、私どもとしては、この複数税率、今は八と一〇しかないんですけれども、複数税率というものに、基本的なものに、考えたときに、中小企業者、零細事業者等々において事務負担がふえるというお話なんだというのが一番基本的なところなんだと思います。

 売上げ若しくは仕入れですかね、そういったようなものに関していわゆる税額計算の特例というのを設けさせていただいているのも御存じのとおりなんですが、一旦、一律の、ある程度一定のものを軽減負担させていただいている、税額計算の特例をさせていただいて、軽減税率対象品目の売上額という形にさせていただいているんですけれども、いろいろな形で支援をしていかないかぬところはもう事実、確かだと思いますので、レジの補助金やりますとかいろいろなのをやっているような形で、インボイスに対応するような請求書の作成システムですかね、そういったようなものの機能の改修というもの等々、利用者の軽減に努力しているところなんですけれども。

 いずれにしても、こういったような問題というのは、私どももそれなりに考えたがゆえにいろいろやると、更に複雑なものになっていったという形になっているのかなという感じがしないでもないので、頭がいいやつが考えたらどんどん話が難しくなるから、もう少し簡単にせいといつも言うんですけれども、なかなかそこらのところが、今おっしゃるような指摘を含めて。

 ただ、現実問題として、中小零細企業者の負担増若しくは支出増につながって、結果として利幅が減という形にならないように、きちんとした税率アップ等々のことをやらせていただけるような方向というものを基本に据えてやっているということだと思いますので、いろいろ、ほかにもこういった点がある、どういった点があるというのは、私ども、気がついていない点はいっぱいあろうかと思いますので、私どもとしては十分に参考にさせていただければと思います。

落合分科員 これは、頭がいい財務省の方々が考えたときに、中立であり公正であり簡素な税にしっかり戻すというか、そういう結論づけをさせられるのはやはり大臣の役だと思いますので、これはこのままだと、本当に難しい、商売をやっている人たちが本当にわけがわからない税制にどんどんどんどん年々なっていますので、ぜひそこは大臣のリーダーシップで、簡素に、わかりやすい、公平だと誰もが納得できる税制にしていかなければこの国の税制は成り立たないと思いますので、ぜひお願いします。

 これはやはり、痛税感緩和のために複数税率、やりますといっても、実際にはそんなに低所得者には恩恵がない。にもかかわらず、こういう中小零細の事業者には負担が実際に多くなっているわけです。これはかなり重要な問題だと私は思います。

 それから、先ほどインボイスについての言及がありましたが、これは大臣も先日答弁をされていました。BツーBで仕事をしている非課税業者が百六十万者であるということでございます。私も国税庁に調べてもらいましたら、二十八年度、消費税の課税業者が三百十六万者、非課税業者は四百八十六万者、そのうち、大臣の答弁によると、百六十万者がBツーBなので、課税業者になるか選択をしなければならない。課税業者になったら、消費税ゼロだったのが一〇に一気になるわけです。

 何でわざわざこういうことをやるのかなというふうに調べてみると、これも、複数税率、軽減税率のための穴埋めでインボイスを導入しますというふうに、これは政府じゃなくて与党税制大綱に書いてあるんですよね。

 これも、これは弱者救済のための軽減税率であるはずなのに、その裏づけの穴埋めがインボイスで、小規模事業者に対するある程度圧力になってしまっているということで、これはいろいろなアンケートを調べましたが、今、インボイス制度についてしっかり理解している非課税業者の割合は半分以下であるというアンケートがいっぱい出ています。それなのに、インボイスは経営を圧迫するから廃業を検討しますと答えた人が一割もう既にいます。

 これは、かなり危機的な、経済に大きな混乱をもたらす可能性がある制度を今財務省はやろうとしているわけです。これはいいんですかね、このままで。大臣、いかがですか。大混乱になると私は思いますけれども。

麻生国務大臣 インボイス制度というものは、もともとは、売り手が買い手に対して正確な適用税率、税額を伝える、これが仕組みのもともとの基本ですから、そういったものであって、これは欧州諸国が始めて、いわゆる付加価値税制度の中で幅広く採用されているのはもう御存じのとおりです。

 したがって、今般、複数税率、八%、一〇%というような税が実施されるに当たっては、例えば売り手の方が軽減税率というものを申告して、買い手の方は標準税率で仕入れ税額を控除するといった食い違いというものを防ぐということは大事なことなんだと思います。インボイスによって税額が明確になるということが大事なところで、中小企業者にとりましても価格転嫁がしやすくなる、はっきりしていますから、といった指摘もあるんだと思っております。

 免税事業者への影響ということで、免税事業者が課税転換を迫られて事務負担がふえるのではないか、いきなりゼロが一〇になるではないか等々おっしゃいますけれども、ゼロが一〇になると、その分は乗せられるわけですから。そういった意味で、乗せられるのが、一〇乗せられないで、五しか乗せられない、八しか乗せられなかった、結果としてというお話なのかもしれませんけれども、少なくとも、基本としては、一〇、乗せられた、仕入れ価格が上がれば、その分だけ売上げに一〇乗せられるということだと思っておりますので、免税事業者への影響というのは、これはさまざまだと思ってはおります。

 いずれにしても、政府に対しては、こういう問題が、今おっしゃるように、初めてのことですから、いろいろ時間をかけてやらねばならぬ、私どもはそう思っておりますので、四年間の準備期間というものをまず設けさせていただいて、まず、その間どうなるか。また、そこから更に六年間、トータル十年間になりますけれども、免税事業者からの仕入れについて一定の仕入れ税額控除を認めるということとさせていただいておるという意味であります。

 また、レジ補助金もやらせていただきましたり、いろいろさせていただきますけれども、もう一点は、インボイス制度の導入後においても、引き続き中小零細の事業者のいわゆる簡易課税制度を選択するということもできますので、簡易課税対象者はインボイスの保存をしておく必要がないということになりますので、そういった意味では、事務負担は大きく軽減されるという点もあわせて考えておいていただいて。

 それなりの配慮をさせていただいて、時間をかけて丁寧に努めていきたいと思っております。

落合分科員 今消費税を払っているのが三百万者ちょっとで、百六十万者もが新たにそういう対象になる。企業間取引は小さい企業の方が立場が弱いということが通常ですから、これは大変な大きな変化になると思います。ぜひこれは推移を見守って、適切に対処をとっていただければ、私はこれはもっと延期してもいいとは思うんですが、そこの配慮をいただければと思います。

 続きはどこかでやらせていただきます。

 ありがとうございました。

井野主査 これにて落合貴之君の質疑は終了いたしました。

 次に、中谷一馬君。

中谷(一)分科員 立憲民主党の中谷一馬でございます。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、麻生大臣、そして田中副大臣、雨宮副総裁にお越しをいただいております。貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、私からは、キャッシュレス化の推進についてのお話ということで伺わせていただきたいと思っているんですが、キャッシュレス化を始めとしたフィンテックの推進、これについては、マネーロンダリングの対策、にせ札流通への対策、また徴税効率の向上、社会的コストの削減、データの利活用など、さまざまな面で現金インフラの決済よりもすぐれているとされておりまして、経済成長につながるとの考えが有されておるのが一般的かと思いますが、そうした中で、各国においてのフィンテックの推進が進んでおります。

 そこで、まず確認をさせていただきたいんですが、政府は、キャッシュレス化を始めとしたフィンテックの推進について、進めた方がよいと考えておられるのか、政務三役の大臣か副大臣、政府を代表してお答えをいただきたいと思います。

田中副大臣 今御指摘がありましたフィンテック、キャッシュレス化ということでありますが、これは、利用者の利便性の向上ですとか、また企業の生産性向上等につながるものであります。未来投資戦略二〇一八においても、二〇二七年の六月までにキャッシュレス決済比率を倍増して、そして四割程度とする目標を掲げているところであります。政府全体として取組を今進めているところであります。

 海外においても、かなりこのキャッシュレス決済が進んでいる国もあります。キャッシュレス決済の推進、これは急務の課題である、そのように考えています。

 金融庁としても、キャッシュレス決済の推進に向けてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 キャッシュレス化は進めていかれるという方向性という御答弁をいただきました。

 その前提において、次の問に移らせていただきたいんですが、私からは、中央銀行が発行するデジタル通貨、セントラル・バンク・デジタル・カレンシー、通称CBDCについて伺わせていただきたいと思います。

 自国のデジタル通貨の発行によって、競争力を高めると同時にコストカットや経済成長を目指して、戦略的に取組を進めている国があります。

 例えば、スウェーデンにおいては、デジタル通貨、eクローナの発行を検討しており、スウェーデン中央銀行のスキングスレー副総裁は、五年以内に完全なキャッシュレス社会になるとの見通しを示されました。また、ウルグアイでも、希望者一万人を対象にeペソを発行し、試験的な運用を始めました。その他にも、中国では、中長期的に中央銀行のデジタル通貨を発行する構想を発表されました。

 日本においても、日本銀行でさまざまなレビューがまとめられ、研究をされていると承知をしておりますが、日本銀行におけるデジタル通貨、日本的に言えばe円の発行に関して、政府としてどのように検討していくのか、具体的な方向性について示されておりません。

 済みません、実は大臣に伺いたいなと思っていた問だったんですけれども、大丈夫ですか。済みません。

 中央銀行が発行するデジタル通貨であるセントラル・バンク・デジタル・カレンシーに関して、財務大臣はどのように捉えておられるのか、御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは先生御存じかと思いますが、これはもう、北欧、スウェーデンだったかな、どこかで、スウェーデンなどにおいて中央銀行においていろいろ研究が進められているということは知っていますけれども、通貨のあり方について、これは当該通貨を使用する国民の利便性とか、また、決済が安全にとかいうようなことやら、当該通貨というものを発行することによって、いわゆる金融システムへの影響等々を考えないけません。

 そういった意味では、これはちょっと、新しいものができたからといって、それが簡単にいけるかというと、ちょっとなかなか簡単にはいかないので、研究せにゃいかぬところですけれども、このブロックチェーンという技術というものは検討していかねばならぬと思って、少なくとも、中国がやめ、韓国もやめ、いろいろやめているんですけれども、日本は、いろいろ指摘をされながらも、少しずつ少しずつ今、事を進めておりますので、このブロックチェーンという技術は、将来とも、大きく化ける可能性があるものだと思っているんですけれどもね。

中谷(一)分科員 大臣、ありがとうございます。

 実は、私この前、韓国に行って、彼らも実はブロックチェーンをもっとちゃんと研究しようと、ちょっと流れが変わっていまして、エストニアのカリユライド大統領などをお招きをして、与党の中でそういうカンファレンスを行って、それで、やはりブロックチェーン技術はすごく有用なものだし、それにかかわる暗号資産についてもやはりこれからもうちょっと発展させていった方がいいんじゃないかという、流れが少し変わっているように感じています。

 あと、中国においても、中銀のリテール型の、一般国民に広く使っていただくようなデジタル通貨の発行もやはり中長期的に検討していきたいという、そんな構想が打ち出されていることが日銀のレビューにも書いてありました。

 その中でなんですけれども、もう一問伺わせていただきたいんですが、日本銀行においても仮にデジタル通貨を発行するとすれば、現在の日本銀行券の形を変えたものになる可能性が私は高いと思っているんですね。

 その中で、現行法上の日本銀行券に係る規定、その中に書かれているのが、定款、第十一条、種類、第四十七条、製造及び消却の手続、第四十九条などがあるんですけれども、私見では、日本銀行のデジタル通貨発行のための法改正とかは必ずしも必要というわけでなくて、下位の法令の改正によって発行は可能になるんじゃないかなということを考えております。

 すなわち、経済的な影響を考慮して、金融政策上、発行の判断をすることが可能となると考えることができると思いますが、こうした中央銀行によるデジタル通貨の発行を考える際に、このような法的な整理や制度のあり方についても、やはりちゃんと日本としても研究、検討を進めた方がいいんじゃないかなと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。

麻生国務大臣 これは、その国のいわゆる中央銀行、日本では日本銀行ですけれども、日本銀行発行のデジタル通貨ということなんですけれども、この具体的な設計が決まっていない段階で法律上の取扱いについてお答えする、これはちょっとできないんですけれども。

 いずれにしても、先生御指摘のように、これはいろいろなことが今から起きてくる。これは何となく怪しげなものも、また、不祥事が起きるたびに、ほら見ろという話になりますので、これを真剣にやろうとしている人たちはもうちょっと真面目にこの話を検討してもらわぬと、途中で不心得な人のおかげでこういったものが潰されることになりますので、やっておられる方々にも面と向かって、おたくら、もうちょっと、真面目にやるという顔に見えぬですよと面と向かってその人に言ったことがあるんですけれども、もうちょっとちゃんとした、真面目そうに見える顔の人でも選んだらどうなんて、そこまで、やっている人はいっぱい知っていますので、言ったことがあります、昔ですけれども。

 それ以後、少しその種の騒ぎは減ってきたようには思いますけれども、あの渋谷のようなのが起きたのは、あれに事を、表向きには事が出ましたけれども、それ以後も、いろいろ多額の金がなくなったり出てきたり、いろいろなことはどう考えても怪しげだなという感じになりますので、そういった意味では、今後少し検討させていただく時間が必要かと思っております。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 私も大臣と同様に、民間が取り扱っている例えば暗号資産については同じような感覚を持っているんです。

 せっかく、おととしぐらいまででいえば、暗号資産全体の時価総額が百兆円ぐらいまでばあっと伸びて、ああ、これはもしかしたらすごい市場になるんじゃないかなと。ブロックチェーンの技術自体も、いろいろな国、各国の首脳がビタリックさんとかイーサリアムをつくった人に会ったりとか、何か非常に盛り上がりがあった中で、コインチェックの流出事件が起こったり、テックビューロのああいった事件が起こったりとか、改革をしようとした方々の残念ながら稚拙な経営管理によって、非常にそういった信頼というかイメージを損ねてしまった現実というのはあると思っているんですね。

 なので、大臣若しくは金融庁の皆さんが、やはりそれに対して消費者を守るような規制をしたりとか、マネーロンダリングの対策をするとか、これも当然だと思っているんです。

 その一方で、ただ、イノベーションをやはり伸ばしていかなきゃいけないということを私は思っていまして、インターネットは、情報の流通だったり共有、これにイノベーションを起こして社会を変革させたものだと思うんですね。ブロックチェーン自体は、価値の交換、流通、これに私はイノベーションを起こすものだと思っていて、インターネットの再来ぐらい本当はインパクトがあるんじゃないかなということを潜在的には思っているんです。

 なので、そういった観点で、ブロックチェーンももっともっといい形で育っていってくれたらいいなと思っております。

 それとはまた別の議論で、ちょっと話を戻しますけれども、中央銀行が発行するデジタル通貨、これに関しても、やはり、スウェーデンでは銀行券の使用量がどんどん減ってきているわけですね。我が国でも、先ほど副大臣に御答弁をいただいたとおり、二〇二七年にはもうキャッシュレス比率四〇%にしようとしているわけじゃないですか。それで、イギリスとか韓国も、たった十年でもう三〇%ぐらいどんとふえている現状があるわけです。

 ここ十年で技術というのが私はどう変わっていくかはわからないと思っているので、やはりその時代に対応した研究、検討、こうなったらどうしようかということをやはりしっかり進めていくべきなんじゃないかなと思っているんですが、これについて何か所感があればお答えください。

麻生国務大臣 これはもう、ブロックチェーンの技術の進歩等々、バーチャル通貨というのがクリプトアセットという表現に変わっていったり、世界じゅう名前が変わるほど、仮想通貨が暗号資産に変わっていったり、そういった意味で、世界じゅう、まだ価値観がはっきりしていない、定義もはっきりしていない、なかなか難しい。今から、製粉の状態にあるとか、いろいろな表現があるんだろうけれども、まだ物が出てきていない段階なので、これはちょっと、先生、今の段階で、どうでしょうね、こうなりますとかいうことは申し上げられない、段階にはないんだと思います。

 加えて、私どもとしては、通貨というものが信頼性がないということになったらこれはアウトですから、そういった意味では、ましてや、中央銀行にとってはこれは最も大事な信用でしょうと思いますので、これの利便性等々は間違いなく大きなものでありますが、これは悪用しようと思えば、それこそマネロンやら何でもということになって、もうみんなえらい勢いで、戦々恐々と、安全保障上の人たちが特にこれに差し込んでこられるのはよくわかるところなんですけれども。

 いずれにしても、私どもとしては、これをだめと一方的にただただ決めつけるのではなくて、きちんとした形でやっていこうとしますので、やっていられる関係者の方々も、これを真面目に、単なる金もうけじゃなくて、きちんとこれを育てていこう、これをきちっとという感じの意識をどこかに持っておいてもらわぬと、これはなかなかかみ合わぬという感じがするのが正直な実感です。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 そこに関しては私も同じ見解なんです。一部の人が何かお金もうけをしようとして、それが、稚拙な経営管理のもとで、やはり悪影響を及ぼすようなことというのはよくないと思うんですよね。それはどんな事業においてもそうだと思います。

 ただ、それがやはり誤解された形でブロックチェーンの技術自体が浸透してしまうのはすごく残念だなと思っているので、それについては、やはりイノベーションを育てることに関しても考えていただきたいなと思っているというのが一つです。

 それと切り分けて、中央銀行のデジタル通貨発行の話は、そもそもブロックチェーンを使うかどうかも別の話でありますので、そこに関しては、やはり、ソブリン、日本銀行が発行する通貨ということは、もちろん信用力も上がるものだと思っていますし、それで、結果、コストカットだったりとか、徴税効率の向上だったりとか、いろいろなプラスの側面というのは当然あるものがありますから、スウェーデンでも、多分ことしじゅうにはやるかやらないか結論づけられるんじゃないかなと思うんですけれども、そういったもうケースがあるということですね。

 なので、それをやはり注視をして、しっかり研究をしていただきたいということを大臣には要望させていただいて、続きまして、雨宮副総裁の方にも、ありがとうございます、本日はお忙しいところお越しいただきまして、この件に関して伺わせていただきたいと思っているんです。

 実は、このセントラル・バンク・デジタル・カレンシーに関して雨宮副総裁もさまざまな御発言をされているということを伺っておりますので、そのあたりについて御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、まず、世界的な流れとして、国際通貨基金の、IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事が、キャッシュ需要の減少とデジタル通貨への関心の高まりを踏まえて、国家にはデジタル経済に通貨を供給する役割があるかもしれませんという発言をなされております。

 その一方で、雨宮副総裁は、「マネーの将来」と題された御講演の中で、中央銀行が発行するデジタル通貨に関しての話なんですけれども、銀行券が急速に減少しているスウェーデンなど、デジタル通貨の発行について真剣な検討を行う銀行も見られるという趣旨の発言をしつつも、日本銀行は現在のところ、一般の支払い決済に広く使えるようなデジタル通貨を発行する計画は持っておりませんという見解を示されておりました。

 ただ、副総裁自身も、そのまた講演の中で、技術進歩が極めて急速であり、支払い決済や金融経済を取り巻く環境も急激に変化している中、将来のマネーの姿を確度を持って予見することは容易ではありませんとも述べられており、この部分に関しては私も同様の見解を持っているところであります。

 その中で、飛躍的な技術革新が続く中、韓国やイギリスにおいても十年で三〇%以上キャッシュレス比率を高めており、日本でも二〇二七年までにキャッシュレス比率を四〇%程度まで引き上げるという目標を閣議決定している現状を踏まえれば、スウェーデンのように、中央銀行がデジタル通貨を発行する必要性が生じる可能性もあると思っておりますし、十年後、二十年後を見据えたら、むしろそっちの方が主流になっている可能性すら私はあるんじゃないかなと思っているんです。

 そうした中で、雨宮副総裁に伺いますが、中央銀行が発行するデジタル通貨であるセントラル・バンク・デジタル・カレンシーが今後どのように発展をしていくと考えておられるのか、将来的な展望について副総裁の御見解を教えていただきたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございますけれども、中央銀行がデジタル通貨を発行するということにつきましては、取引の効率化でありますとか安全な支払い手段の提供といったメリットがあると思いますが、一方で、この利用する技術が十分成熟しているのか、安全なのか、あるいは、市中銀行、民間銀行の活動にどういう影響を与えるかといった検討課題も多いわけであります。

 現段階では私どもはこうしたことを検討しているという状況でありますので、現段階では私どもとしてそうしたデジタル通貨を発行する計画は持っておりませんが、一方で、先ほど来御議論ありましたとおり、こうした新しい情報技術が幅広い金融サービスの効率性や利便性の向上に結びついていくということは望ましいことでございますので、今後とも、海外におけるデジタル通貨をめぐる検討の状況なども含めまして、新しい情報技術を活用した決済・金融サービスの動向ですとか、そうした技術の中央銀行業務ですとか通貨への応用ということについても、引き続きしっかり研究してまいりたいというふうに考えております。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 やはり、そういった研究、検討を進めていただくこと、私も非常に重要だと思いますので、副総裁におかれましても将来的な展望も見据えてお願いをできればと思っているんですが、その中で、少し突っ込んだ議論をさせていただきたいんです。

 先ほど少しお答えをいただいたんですが、法定通貨を、デジタル通貨、e円と仮称したときに、段階的に切りかえていくことに関して言えば、硬貨や銀行券の発行に加えて、現金や小切手といった紙ベースの決済手段の利用管理コストの削減につながると同時に、ユーザーの利便性の向上であったり、金融政策の有効性の確保、通貨発行益、シニョレッジの減少防止、脱税やマネーロンダリング対策にもつながっていくんじゃないかなと私自身は考えているんですけれども、セントラル・バンク・デジタル・カレンシーを発行するメリットあるいはデメリットに関して、日銀の副総裁、済みません、先ほども少し触れていただいたんですけれども、詳細、どのように捉えていらっしゃるのかということを教えてください。

雨宮参考人 お答えを申し上げます。

 やはり、デジタル通貨ということの一般に、中央銀行だけではなくて、民間のデジタル通貨についても言えることだと思うんですけれども、取引がより効率化し、全体としての現金の取扱いコストが削減されるというメリットですとか、あるいはより安全な支払い手段が提供できるというようなメリットはあろうかと思います。

 しかし同時に、やはり私どもとしては、通貨制度というのは経済社会の基盤でございますので、そうした仕組みが十分安全で信頼に足るものなのか、同時に、やはり、中央銀行がこうした通貨を発行するという場合には、今、市中銀行、現代の通貨制度は中央銀行の通貨発行と民間金融機関の信用創造といういわば二つの構造からできておりますので、中央銀行がそうした通貨を発行するということが民間の金融機関の活動にどういう影響を与えるかといったことも慎重に検討していく必要があろうかというふうに思われます。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 そのあたりは副総裁のおっしゃっているとおりだと思います。そういったバランスも考慮しながら、では、具体的に一体どういった影響があるのかということを、私はしっかり研究、検討した方がいいと思っているんですね。

 その観点で伺わせていただきますが、シンガポールの金融当局における委託調査では、現金や小切手といった紙ベースの決済手段の利用に伴うコスト、これがGDPの〇・五二%に達するという試算がされています。また、カナダ中央銀行の職員が、セントラル・バンク・デジタル・カレンシーの導入を行った場合に、カナダでは消費が〇・六四%、米国では一・六%それぞれ最大で上昇するという趣旨の論文が発表されておりまして、経済的利益に対する考察がなされております。日本においても、現金決済インフラを維持するコストとしては年間一・六兆円、GDPの約〇・三%程度と試算をされております。

 こうした現状がある中で、雨宮副総裁のお言葉をおかりすれば、マネーは金融、さらには経済社会の根幹でありますから、これらをデジタル通貨などの決済に置きかえることで経済や財政にどのような影響を与えるのか、日本がキャッシュレス社会を推進するのであれば、私は調査研究を行って定量的な試算をすべきじゃないかなと思っているんですが、いかがでしょうか。副総裁の御所見を伺いたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、現金の利用に伴う社会的なコストですとか、あるいは現金をデジタル通貨にかえることに伴うメリットに関する試算というのは、先生御指摘の海外の例ですとか、あるいは国内でもさまざまなシンクタンクが相当研究を進めていることは承知しております。

 ただ、現金というのは社会全体の非常に幅広い主体によって使われておりますので、そうしたコストを非常に正確に把握するということは難しいことも事実でありますので、こうした試算の結果については、ある程度幅を持って見ていくことが必要かと思います。

 私どもとしては、そうした試算、海外あるいは国内、内外の試算の例とか考え方も含めて、引き続き、デジタル通貨をめぐる議論あるいは海外中銀の動向についてはしっかり見てまいりたいというふうに考えておりますし、研究も進めてまいりたいと思っております。

中谷(一)分科員 御答弁いただきました。

 私自身は、ちゃんと試算を行って、エビデンスとなるような資料があった上で、これが有用なのか有用じゃないのかという議論をしていくことというのはやはり重要だと思っているんですね。なので、やはりそういった調査研究を進めていただきたいなということを思っておりますし、それについては御要望をさせていただきたいと思いますので、ぜひ、受けとめをいただけましたら幸いでございます。

 今までの議論を踏まえて、大臣に、もしよければ、聞いていただいて何かコメントをいただけることがあれば、一言頂戴できませんでしょうか。

麻生国務大臣 中谷先生、財務金融委員会等々においては、このデジタル通貨とかクリプトアセットという問題につきましては、結構いろいろ論議がこれまでもされて、いろいろ御意見等々が各党から出されておるのが現状なんです。

 問題は、先ほど申し上げたように、お金の話ですから、これは信用が絶対、安全が絶対ということになりますので、そういった意味では、これを今から、私どもとしては、このブロックチェーンの技術とか可能性というのを、我々は可能性があるなという感じがするものですから、これは、ただただ危ないからやめいといってやめさせちゃう、禁止するというのよりは、丁寧に丁寧に、注意深く育てていく方がいいのではないかというのが私の基本的な考え方なんですけれども、正直言って、これが財務省の総意かといえば、それは全然違いますよ。こんなものはとんでもないという意見も傍らありますから。

 そういった意味では、ぜひ、そういったものを踏まえながら、ぜひ、やっていただいている方々もその自覚を持ってやってもらいたいなというのが正直な実感です。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 ブロックチェーン技術に関しての見解は私も本当に近いところがありますので、それは、事業者に対してはそういった喚起をしっかり行っていかなければならないと思っておりますし、それとは切り分けて、ただ、技術の研究、検討はしっかり進めていかなければならないのかなと思っておりますので、そのあたり、ぜひ、イノベーションにも配慮をした制度設計をお願いできればと思います。

 済みません、ブロックチェーンの話、雨宮副総裁、プロジェクト・ステラについてなんですけれども、もし教えていただけるようであればお願いをしたいんです。

 ブロックチェーン技術について、暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンや分散型台帳技術については、有望な技術ですし、これらの技術をソブリン通貨などの信用に結びつけることで、取引や決済の効率化を実現できる可能性もあるように思いますと副総裁が述べられていらっしゃるんですけれども、これは私も同様の見解でございます。

 現在、多くの中央銀行がこれらの技術に関する調査や実験を行っているかと思いますが、日本銀行においても、欧州中央銀行との間で、分散型台帳技術に関する共同調査、プロジェクト・ステラを進められているかと思います。

 金融市場インフラへの分散型台帳技術、DLTの応用可能性を調査し、技術に関する概念的な整理がなされ、技術的に見ても、さまざまなデザインのもとで、DLT環境下での証券と資金の受渡しが実現できることを明らかにされたと承知しておりますが、その他、現時点における進捗や成果について、何か御紹介をいただけるものがあれば教えてください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今、先生に御指摘いただきましたプロジェクト・ステラでございますけれども、先ほど来御議論されていますとおり、この新しい情報技術の活用を通じて、支払い決済の安全性が確保される中で効率性や利便性が向上していくということは望ましいことでありますし、こうしたもとで、私どもとしても、情報技術を活用した決済イノベーションを推進する方向でさまざまな取組をやっております。

 そのうちの一つが、欧州中央銀行と共同して、中央銀行の中の銀行間決済、いわば決済システムの中の卸売の部分にブロックチェーン技術を利用できないかという検討を欧州中央銀行と共同で進めているわけでございます。これはまだ進めている最中でございますけれども、この間のプロジェクトのいわば中間報告は二回やっておりまして、ある程度、ブロックチェーン技術を使うことによって中央銀行の決済システムをかなり効率的に運営することが可能であるという目算までできております。

 まだこれはプロジェクト途上でございますので、こういう中間報告を踏まえて、引き続き研究を続けていくという段階でございます。

中谷(一)分科員 御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 今、プロジェクト・ステラの話について教えていただいて、ある程度その技術を使って金融政策については活用していけるということを、私自身も報告書を読ませていただいて感じているところなんですが、それを受けて、田中副大臣にお伺いをさせていただきたいんです。

 金融庁設置のフィンテック実証実験ハブの支援を受けて、全国銀行協会においてもブロックチェーン連携プラットフォームの実証事業が進められており、本人確認業務、KYCの高度プラットフォーム構築事業が実証されておりますが、その報告によれば、実証のまとめとして、簡易的な本人確認は十分に適用可能であるということが確認をされておりますが、実用化を目指すためには、利用者の需要性や利便性、法的な論点など、さまざまな課題が存在することも認識したとされております。

 こうしたブロックチェーンの利活用が金融分野においては今後どのように広がっていくと想定をされているのか、政府の御見解を伺いたいと思います。

田中副大臣 ブロックチェーン技術の金融分野におけます活用についてということでありますが、これは暗号資産のみならず、他の金融取引への適用に向けたさまざまな実証実験、これも今実施しているところであります。さまざまな今検討が進められていることは承知しているところであります。

 金融庁においても、このフィンテックを活用したイノベーションに向けたチャレンジを加速する、こういう観点から、フィンテック実証実験ハブ、今委員御指摘があったものを設置しております。三メガバンク等によってこの技術を活用した本人確認の手続の実証実験についても、ここで今支援を行っております。今委員からお話あったように、実証実験においては、現状においては、資金決済ですとかあるいは貿易金融等の分野での活用が広がっていくこと、これが期待されているものであります。

 金融庁といたしましては、やはり、まずは利用者保護、これをしっかりと確保しながら、イノベーションの進展に向けて、ブロックチェーンを含むフィンテックを活用した取組、これを支援していきたいと考えております。

中谷(一)分科員 ありがとうございます。

 前向きに進めていただきたいと思っているんですが、そろそろ時間でございますので、最後に一問、伺わせていただきたいと思います。

 暗号資産に関してなんですけれども、ベラルーシなどにおいては、暗号資産、ICOの発展を目指した法令が採択をされて、二〇二三年まで非課税にされるということが言われております。また、サムスンにおいても、ギャラクシーの最新機種であるS10には、標準搭載でウオレットが搭載をされることとなりました。

 こうした暗号資産に関する世界の動きに関して、政府としてはどのように捉えていらっしゃるのか、副大臣の御所見を最後に伺いたいと思います。

井野主査 田中内閣府副大臣、簡潔に答弁をお願いします。

田中副大臣 暗号資産においては、肯定的な評価をしている、あるいは、一方で否定的な評価をしている国、さまざまあります。

 この政策判断のよしあしについてはコメントは控えたいと思いますが、一般論で言えば、ブロックチェーン技術においては、低コストで金融取引を可能にするブロックチェーン技術と表裏をなすものである、これが暗号資産ということであります。双方が相まって発展する可能性もある、こういう肯定的な意見もあります。

 一方において、価格変動の大きさから見ても、これは長期的に限られた者の間でのみ使用される、犯罪利用ですとか投機のリスクも高い、こういった否定的な意見もある。こういうことは両方、双方あるということであります。

 しかし、今、現時点でのこの有用性というのは低いかもしれませんけれども、これは、インターネットの黎明期と同じように、今後、試行錯誤を経て発展する可能性が十分にあると思っております。

 今後とも、暗号資産の評価はいまだ定まっておりませんけれども、しっかりと、利用者保護とあわせてイノベーションの進展という観点から推進を、支援をしていきたい、そのように考えております。

中谷(一)分科員 時間が参りましたので終了させていただきますが、私も同様の見解でございます。

 聞けなかった質問に対しては、大変失礼いたしました。

 ありがとうございました。

井野主査 これにて中谷一馬君の質疑は終了いたしました。

 次に、日吉雄太君。

日吉分科員 国民民主党・無所属クラブの日吉雄太でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、国の財政の状態、これについてまずお伺いをさせていただきたいと思っております。

 財政危機、こういったことが言われるようになりました。その中で、国の財政について注目が集まるようになってきたところでございます。その中で、現在の財政の状況、概要をまずお伺いさせていただきます。

神田政府参考人 お答え申し上げます。

 財政の現状を一番はかるのにいい指標の一つとして、国の資産・負債差額、こういったもので見るといたしますと、平成二十年度末は、資産六百六十四・八兆円、負債九百八十二・二兆円、資産・負債差額が三百十七・四兆円のマイナスでございました。それが今、足元の平成二十九年度末におきましては、資産が六百七十・五兆円、負債が千二百三十八・九兆円、都合、資産・負債差額五百六十八・四兆円のマイナスでございます。

 したがって、この十年間で、資産は五・八兆円増加し、他方、負債は二百五十六・七兆円増加しておりまして、資産・負債差額は二百五十・九兆円悪化してございます。

日吉分科員 よく国民一人当たりの負債が幾らというようなことが言われておりますが、現在、仮の意味合いかもしれませんが、一人当たりの負債の金額というのは幾らになるんでしょうか。そしてまた、資産は一人当たり幾らになるのでしょうか。

神田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十九年度末で見ますと、資産、負債、差額を総務省が公表している人口推計による平成三十年三月一日の人口で単純に割りますと、資産は約五百三十万円、負債は約九百八十万円でございまして、その差額はマイナス約四百五十万円になります。

日吉分科員 ありがとうございます。

 そういったことで、一人当たりに換算しても、もちろんではございますが、負債の方が超過しているというような状況がございます。

 国の貸借対照表を見ますと債務超過という状況になっておりますが、こういった状況では、当然、企業ではかなり破綻のリスクがあるというような状況だと思いますが、この財政状況につきまして、大臣の受けとめをお尋ねさせていただきます。

麻生国務大臣 詳細につきましては、今、事務方の方から答弁をさせていただいたとおりですけれども、この資産、負債の差額というものの悪化というものは、これは公債残高が増加して、先ほど比べたのは平成二十年でしたか、平成二十年から比べて約二百八十六兆円増加した分が悪化の原因ということだと思っておりますので、当然のこととして、この収支の改善を図って各年度の公債発行額を抑えていくということが不可欠なんだと思っております。

 私どもとしては、この認識のもとで、平成三十一年度の予算の中において税収入が史上最高、六十二兆五千億に行くというように見込んでおりますので、私どもといたしましては、歳出の改革の取組を引き続き計画することということで、私どもといたしましては、二〇一二年の当初予算と比較して、今、新規国債発行額を約十二兆縮減するなど、そういった方向で、新規に、金利がふえてくるのは別に、公認会計士でおわかりだと思います、新規のところにつきましては約十二兆円ぐらいのものを縮減させていただいたということであります。

日吉分科員 債務超過の金額がふえてきている、その原因についてお話しいただいたと思いますけれども。

 このままだと、どんどんふえている状況なんですけれども、なぜこの状況で今、国は特に、普通に財政が動いているんですけれども、国は破綻しないのか、その要因を教えていただけますか。

麻生国務大臣 日本の財政につきましては、これは間違いなく、預金等々が潤沢な国内の家計、一千七百何十兆と言われる家計とか金融資産の存在等を背景にして、極めて低い金利で安定的に、いわゆる国債という政府の借金が、国民の借金というより政府の借金ですから、少なくとも国債というものが国内でほとんど消化されて、海外で買っている方々もこれは円で買っておられますので、そういった意味では極めて幸運な状況が続いているというのが一番大きな背景なんだと思っております。

 また、政府としても、こういった状態を十分に認識して、きちんとそういった方向でやっているんです。財政は再建する方向で動いているということを、きちんと国際社会なり国際金融の場でも発言をしておりますので。

 そういった意味で、私どもとしては、海外からとか、マーケットとかいった、そういった第三者というかオープンな世界で、私どもとしてはきちんとした信用を獲得し続けられているという背景が、金利が低くて今のような状況を続けていられる背景だと思っております。

日吉分科員 日本の国債が満期を迎えても、それが償還され、借りかえることができる、この状況が続いているので破綻をするということはない、こういうふうに理解いたしましたが、今現在破綻のリスクがどの程度あるのか、ないのか、大臣はどのようにお考えされておりますでしょうか。

麻生国務大臣 破綻すると言われると、ちょっと考えないかぬところですけれどもね。

 財政破綻というのは、一般的に、財政状況が著しくばんと悪化して、その運営が極めて困難という話になるので、最近ではギリシャとか、南米なんかだとベネズエラも含めまして、いろいろあるんだと思いますけれども。

 そこに至る要因、破綻に至る要因とかメルクマールとか、いろいろな表現はあるんだと思いますが、具体的なことを申し上げるのは困難ですけれども、少なくとも一つの指標としては、財政の持続可能性への信頼というのが損なわれた場合は間違いなく金利がぼんと上昇しますし、その他、利払い費が一挙に起きることによる、また、国内的にはいきなりぼんとハイパーインフレーションみたいなのが起きるとか、いろいろなことが起きますので、結果として、経済とか財政とか国民生活にやたら大きな影響が出てくるという可能性というのがそういったことなんだと思います。

 そういった事態を招くようなことがないように、財政というのは常にきちんと目配りして、うまくいっているから、じゃあと簡単にはしないで、きちんと借金の額は減らす、きちんとしたものをやっていくという姿勢、政府としての姿勢というのは最も大事なところであると思っております。

日吉分科員 そういうふうに常に目配りをして、借金を減らすことを考えながら対応されているということで、現時点でそういうリスクはそれほど高いわけではないというように認識されていると理解をさせていただきました。

 そういった中で、以前、消費税の増税の際にもこういった財政の危機というのが結構話題になっていたと思うんですけれども、そういった中で、消費税を導入、そして増税をして、その効果というのが財政にどのように影響を与えているのか、これについて教えてください。

麻生国務大臣 今からちょうど三十年前に、平成元年にこの消費税というのは導入されて、竹下内閣で導入しているんですが、あのときは、税体系全体として、税負担の公平性につなげるために、個人所得税というのを軽くして、いわゆる消費を広く薄く負担に求めるということで、資産に対する負担を適正化する税制改革の一環として行ったというのが、平成元年、竹下内閣のときだと思っております。

 また、平成九年に消費税を三%から五%に引き上げさせていただいたときは、これは、活力ある福祉社会の実現を目指す視点に立って、個人所得課税の減税と消費税の充実を柱とする税制改革の一環として行われたのが、これは橋本内閣のときだったと記憶をいたします。

 そして、これらの税制改革は、いずれも財政収支の改善というのを目的としたものではありませんでした、私の記憶ですけれども。少なくとも、少子高齢化というものを背景にして、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定しているという消費税の利点、また、働く世代など特定の年齢層というか世代層に負担が集中するということなく、経済的に中立的です。というような消費税の特徴を踏まえて、税の構造変革、税体系の構造変革を図ってきたものだと思っております。

 その後は、御存じのように、社会保障と税の一体改革のもと、消費税につきましては、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源と位置づけて、平成二十六年、税率を五から八に引き上げ、また、十月に八から一〇に引き上げさせていただくということを考えておりますけれども、この一体改革による消費税の増収分は、社会保障の充実のほかに、基礎年金国庫負担割合をいわゆる二分の一にというような財源の確保とか後の世代への負担のツケ回しを軽くするとかいった、社会保障というものの全体の安定化に充てることとし、財政健全化という観点がこのときから入ってきたというように、私はそう理解をいたしております。

日吉分科員 では、一方で、今進められているアベノミクスのその成果というか、これが財政に与えている影響、好影響、悪影響、こういったところはどのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 今の日吉先生のお話ですけれども、これは経済見通しから入られたと思いますけれども、経済見通しで、平成三十一年度は、消費税率の引上げに伴う対応として講じております、いわゆる臨時特別措置などの政策効果というものもあって、少なくとも雇用とか所得環境の改善が続いて、経済の好循環というものが更に進んでいくであろうということを考えておりまして、内需を中心とした景気の回復というのを見込んでおります。

 今お尋ねの三十一年度の消費税につきましては、このような政府経済見通しというものにおけます雇用・所得環境の変化とかまた改善、これに伴う民間消費というものの増加、また国内需要というものを反映した輸入の増加などなどを考えて、経済指標の伸びを踏まえて税収の増加を見込むということに加えまして、消費税率の引上げによって約一・三兆円を見込んでおりますので、前年度、平成三十年度の補正後で約十七・八兆円ですから、一・六兆増加した十九・四兆円というのを見込んでいるというところでありますので、今言われましたように、この面に関してこういった効果がうまく回ればという、たらればの話かもしれませんけれども、経済見通しの上に立って、そういうものの上に立って考えております。

日吉分科員 予算でも、税収がふえてきている傾向がある、こういった中ではございますが、財政として見たときに、資産・負債差額という意味では、やはり増加している状況でございます。

 そういった中で、アベノミクスによっていい点もありますし、むしろもっと所得税、税収がふえたんじゃないかとか、そういったマイナスの効果もあるのかなという、そういった分析を行うべきではないのかなというふうに考えているところでございます。

 それを踏まえますと、やはり、今のこの財政の状況、どんどん債務超過が続いている傾向にあります。先ほどもその要因というのをお話しいただきましたが、少し見てみますと、補助金や交付金の増加というのが社会保障の増加よりも多くなっているのかなというふうに思います。

 こちらの、「「国の財務書類」のポイント」という、財務省さんでつくられている資料を見ますと、やはり、国の歳出のところで見てみますと、社会保障給付費用、給付金が、十五年度で四十二兆円であったのに対し、二十九年度では四十九兆円ということで、一方で、補助金、交付金は、二十九・三兆円が五十一・五兆円と大きくふえています。

 そういった要因としては、リーマン・ショックを契機とした景気悪化、東日本大震災からの復興等、こういった要因だというふうに言われておりますけれども、そもそも、まだアベノミクスの効果が全国津々浦々まで届いていないといったところがありまして、地方の状況、こういったものを改善することによってやはり税収というのもふえてくるのかなというようなことが考えられますので、そもそものアベノミクスによるやり方自体を、もうちょっとやり直して、検討していただいた方がいいのではないかなというふうなことをお伝えさせていただきます。

 そして、もう一つ、消費税の話を少しさせていただきましたが、消費税、海外に輸出するときに、国内で仕入れにかかる支払った消費税、これが還付されるという話がございますが、これにつきましてアメリカから、リベートではないかというようなお話がかつてありました。

 これについてどのように受けとめられているのか、教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる消費税の輸出免税につきまして、アメリカからそういった批判があるのではないか、指摘があるのではないかということでございます。

 現トランプ政権におきましても、政権ができる前ですけれども、例えば国境税ですとか国境調整措置の導入に関する質問を受けて、トランプ大統領、当時候補ですけれども、問題があるようなことを言っておられたとか、かねてからアメリカはそういった主張があるということは存じ上げております。

 これは、アメリカにはそもそも付加価値税がないために、アメリカ企業が付加価値税のある他国に商品を輸出する場合には輸出還付を受けることができない一方で、他国の企業が米国に商品を輸出する場合には輸出還付を受けることができる、その結果、アメリカ企業は輸出競争力の点で不利になっているといったような指摘があることが背景の一つと考えられるわけでございます。

 しかしながら、この輸出免税につきましては、消費税というものが国内の消費にかかる、そこで転嫁を予定していくという税でございまして、最終的に輸出は国内消費ではありませんので、それまでかかっていた消費税に、かかる税につきまして、輸出の際にまさに控除をされるということで、それが還付になるわけでございます。

 この制度は基本的に、世界的に、ヨーロッパも同様の制度を導入しておりまして、同じような仕組みになっているということでございまして、これ自体は、例えばEUにおきましても、輸出補助金に当たるといったような位置づけにはなっておらないということでございます。

日吉分科員 今御説明いただいた内容だと思うんですけれども、それでも、アメリカとしては不公平だというような、こういった話をされているかと思います。

 そういった中で、日本として、この制度、消費税の今のこの制度を変えるおつもり、こういったものはございますでしょうか。

麻生国務大臣 今の、輸出については削減して出すという今のルールを変えるということ。(日吉分科員「はい」と呼ぶ)

 ありません。

日吉分科員 即答であったのですけれども。

 今まで、アメリカが不公平というふうにおっしゃっているときに、それに対して日本としていろいろ対応を、いろいろな分野でしてきたのかなといったところでありますので、どういった対応をされるのかなということをちょっとお伺いさせていただきたかったところでございます。

 時間が少なくなってまいりましたが、あともう一つ、せっかく麻生大臣いらっしゃいますので、森友の件について少しお伺いをさせていただきます。

 麻生大臣、森友の公文書の改ざんの件で責任をとられたところでございますけれども、何に対して、何が問題だったところに対して御自身の責任をとられたのか、確認をさせてください。

麻生国務大臣 やはり、基本的には、決裁された文書というものを改ざんするというのは、これはふざけた話で、極めてゆゆしい話なんだ、私どもはそう思って、まことに遺憾なことであって、深くおわびを申し上げねばならぬところだと思っております。

 昨年の六月の調査結果を私ども踏まえまして、いわゆる一連の問題行為に関する責任の所在というのをはっきりさせたところでもありますので、その他のことに関しましては、検察当局からも不起訴になっておりますし、また、会計検査院からに関しても該当なしということになっておりますので、要は、基本的なこととしては、私どもとしてはきちんと第三者を入れた上での答えではありますけれども、そもそもなぜこんなことが起きたのか。内部で反対した人もいたのに何でこんなことになったんだというところが私の最もひっかかるところだったものですから、そういったところではきちんとしたことを詰めないといかぬ、また起きる可能性がありますので。

 そういった、とめる人がいてもどんどん進ませちゃうという風土とか土壌とかいうのがあるとなれば、これこそ大問題だと思いますので、私どもとしては、きちんとした対応をするということで、第三者の秋池玲子先生を入れて、今ずっとコンプライアンス等々のあれを続けていただいております。

 いずれにいたしましても、そういったゆゆしき問題が起きたということに関しましては、間違いなく財務省の中で起きているわけですから、近畿財務局で起きたとはいえ、中央の理財局が関与していたということははっきりしておりますので、そういった意味では、その責任をとらせていただいたということであります。

日吉分科員 今、そういったお話を伺いました。

 その中で、そもそもこういったことが起こらないような仕組みをつくっておくことが必要だったかと思うんですけれども、今後、システムで決裁をするというようなことをやられると。そもそもそういったことを事前にやっておかなければいけなかったのではないか。

 不正を防止するための仕組みをつくっておく、それができていなかった、これに対しての責任は、麻生大臣、あったと思われますか。

麻生国務大臣 決裁文書の改ざんという不祥事について、これはなぜそうした不祥事がとめられなかったのかとか、職員の一部にちゅうちょとか抵抗とかいろいろあったというにもかかわらず、なぜかとめられなかったという点について、やはり組織体質的に弱い体質があるのじゃないかとか、構造的な問題があるのかということを、丁寧に時間をかけて私ども調べていかないかぬところだと思って、長いこと続いている話ですから。

 しかし、いずれにしても、私どもとしては、コンプライアンスという、今風の言葉ではコンプライアンスなんでしょうけれども、そういった体制の強化というのをやらないかぬところだというふうに、今までこういったことが起きたことがなかったというような自負のある役所でもありますので、そういったことはないと思っていた役所で起きたというところが一番問題なんだと、私どもはそう思っておりますので、この点は、うぬぼれることなく、きちっと我々としては対応を、今後二度と起こらないようにするような体制、きちんとした制度というものをつくらないかぬという、まあ電子決裁とかいろいろな表現が、技術的な話を含めまして、ありますけれども、まずはその体質、体制というものをきちんとやらねばならぬと思っております。

日吉分科員 今後そういう体制をつくっていくというのは当然だと思うんですけれども、今申し上げたのは、そもそも今回そういう体制ができていなかったということ、その体制をつくる責任が麻生大臣にあったのではないか、そういったところに対しての責任は今回とられたのかどうかということを、ちょっとお伺いしたかったところでございます。

 それと、あと、そういう不正に対しての意識が希薄な、こういった状況であったんじゃないか、そういった風土が、文化があったんじゃないかというようなことも、麻生大臣、会見なんかでおっしゃられていたように記憶しているんですけれども、そういった風土をつくるのが、その風土に影響を与えるのが、やはりトップである大臣がそういった風土をつくっている面があると思うんですね。そういったところへの責任をどのように考えられているのか。二点、教えてください。

麻生国務大臣 今言われましたように、私どもとしては、今言われたような点も十分に踏まえて今後対応していかないかぬのだと思っておりますけれども、防げなかった原因というのに関しましては、これは、私どもとして、近畿財務局でそもそも起きた話で、航空局の話だったんじゃないかとか、何か遠くの話みたいな意識だったんじゃないのかなという感じがしないでもありませんけれども。

 いずれにしても、こういったようなことで、結果として決裁文書の書換えということになっておりますので、そこらのところに至った最終責任は本省にあるということになろうと思いますので、私どもとしては、その点も含めて反省をせねばならぬということを申し上げているということであります。

日吉分科員 ということは、その点も含めて反省しなければならないということですので、不正を防ぐ仕組みをつくる責任は大臣にあって、それについても責任をとったという理解をさせていただきました。

 もう一つ、この森友の公文書改ざん、この目的というのが、これ以上国会を紛糾させないため、資料を出さないようにする、それで、財務省の職員の方々が、皆さん毎日疲弊している、そういった背景があったということなんですけれども、そもそも、この公文書の改ざんをしない方が、することによって疲弊したんじゃないのかなというふうにも思うんですけれども、その点、どのようにお考えになりますか。

麻生国務大臣 私ども、何でこの種の文書を、こんなものをという、あれを見たときにそう思わなかったわけではありません。正直な実感です、私の。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、改ざんすることになった主たる目的というのが、平成二十九年二月以降の国会審議において、森友学園の案件が更に大きく取り上げられて、いろいろな質問が出てくるということを極力少なくするためにということでやったということに言われておるんですが、しかし、文書を改ざんした結果、先生御指摘のように、更にそれを隠蔽するために、つじつま合わせでいろいろやって、精神的にもえらい、労多くして功がないような、何もないような形になったんじゃないのかという御指摘なんだと思いますけれども、全くわからなくはありませんけれども。

 いずれにしても、こういったようなことが、事態が起きたことは事実でありますので、私どもとしては、こういったものが二度と起きないような、いわゆる風土、体制というものをきちんとつくり上げなければならぬと思っております。

日吉分科員 先ほどの質問させていただいた中で、不正に対する、省内の方々に、その意識が希薄だったという話をさせていただきましたけれども、大臣御自身は、この不正に対してどのように考えられ、それについて職員の方々に、どのような指導なりをこれまでされていたんでしょうか。

麻生国務大臣 少なくとも、決裁をした後、国会に提出した文書を、後に、わからぬように書き換えるなんという話はふざけた話なんですから、こういったような話が二度と起きないようにせないかぬということは、最初にこの話が出てきたときに、ほかの話はどうでもいい、ここが一番問題なんだからといって言ったのが最初の訓示だったと思いますけれども、あと二度ほどいろいろな、局長クラスを集める会議やら何やらで発言もさせていただいておりますけれども。

 いずれも、こういったようなことが、何となく、理財局だけの話じゃない、これはほかの局でも起き得る可能性があるんだからという点も踏まえて対応しろという話で、みんなでこれは第三者を入れた形でのいわゆるコンプライアンスというようなものを考えないかぬぞという話をさせていただいたというのが去年だったと思いますので、いろいろな意味で、この問題に関しましては、きちんとした対応というものを今後とも続けていくという土壌というものをつくり上げないかぬと思っております。

日吉分科員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、最後に一言申し上げさせていただきますが、やはり職員の方の不正に対する意識が希薄だったということは、裏を返しますとそのトップの方の意識が希薄だったのではないかというふうにもとられかねないと思います。また、内部統制という、不正を防止する仕組みをつくる責任というのはやはりトップの方にありまして、そういった意味では、大臣が不正を防止する仕組みをしっかりとつくっておかなければならなかったという責任があると思います。

 そういったことを勘案しまして、先ほど、それも含めて、責任をとられましたというふうにおっしゃられておりましたけれども、起こった事案に対しての責任のとり方としてちょっと緩いのではないかなということを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

井野主査 これにて日吉雄太君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

井野主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。河野外務大臣。

河野国務大臣 平成三十一年度外務省所管予算案について概要を説明いたします。

 平成三十一年度一般会計予算案において、外務省は七千三百六億二千百五十七万一千円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、五%の増額となっています。

 このうち外務省所管のODA予算は、四千三百七十六億三千四百九十九万四千円となっています。

 平成三十一年度の予算案の作成に当たっては、次の四本の柱を掲げ、めり張りをつけた上で必要な予算を計上しました。

 第一の柱は、「日本で開催する国際的行事を通じ、日本の存在感・影響力を一層高める」です。来年度はG20大阪サミット、TICAD7、即位の礼といった国際的行事が相次いで行われ、国際社会の注目が日本に集まる一年です。外務省の英知を結集して、議論をリードし、外国賓客の受入れ等に万全を期していきます。

 第二の柱は、「日本の国益と国際社会の平和と繁栄を実現すべく、外交力を強化する」です。日米同盟や共通の価値観を持つ国々との連携を一層強固にしつつ、近隣諸国との協力関係を強化していきます。

 増大かつ多様化する外交課題に対応すべく、外交力を不断に強化していきます。待ったなしの外交課題に機動的に対応するための経費に加え、三つの在外公館等の新設及び外務省定員の百十五名純増に必要な経費を計上しています。

 第三の柱は、「正しい姿を含む政策・取組や日本の多様な魅力を戦略的に発信し、親日派・知日派の育成を図る」です。日本がさまざまな外交政策を推進し、基本的価値に基づく国際秩序を実現していくためにも、日本の政策、取組の戦略的な対外発信を強化していきます。

 第四の柱は、「テロ等の脅威から在外邦人や国内を守る」です。各地でテロ等緊急事態が多発する中、在外邦人の安全対策、情報収集・分析や水際対策の強化等に万全を期していきます。

 以上が、平成三十一年度外務省所管予算案の概要です。

 井野主査を始め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

井野主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま河野外務大臣から申出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井野主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。

小田原分科員 自民党の小田原潔であります。

 予算委員会の第三分科会、質問の機会をいただいて、ありがとうございます。

 私は、ポスターもネクタイもオレンジ色がテーマカラーであります。きょうは大臣も井野主査も同じ色で、一致団結して質問をさせていただきたいと思います。引き続き、我が国の国益を守り、国際社会で応分の敬意を受ける活動をするために予算を有効に活用していただきたいと思います。

 私からは、日韓関係について質問をさせていただきたいと思います。

 と申しますのも、外務大臣政務官を務めさせていただいておりました二〇一六、一七年のころ、いわゆる少女像問題について随分と腐心をいたしました。私自身は、歴史的認識の違いについてコメントするのを極力避けました。

 二〇一七年の一月の三十日に、ウォールストリート・ジャーナルに、私は政務官として寄稿いたしました。それは、二〇一五年の十二月二十八日に、いわゆる慰安婦問題については最終的かつ不可逆的な合意をしたにもかかわらず、投稿の前年、一六年の十二月三十日に、釜山の領事館の前にも少女像が設置されたことに大変落胆をし、無力感とは申しませんけれども、半ばあきれた気持ちになったというのが、今振り返れば言えなかった本音であります。

 投稿の内容は、不可逆的な合意をしたこと、そして、財団に十億円を支出し、我が国はその責務を果たしていること、そして、翌年の十二月三十日に、残念ながら新たな少女像が置かれてしまったこと、それは領事関係に関するウィーン条約からしても問題であること、また、何よりも強調いたしましたのは、当時既に北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返していて、日韓は本来は力を合わせて無謀な挑発を抑止するべき、そういう間柄であるべきだということ、また、国際社会からもそういう役割を期待されているはずなのだということ、いわば、目を覚ましてくれというような内容を寄稿させていただきました。

 しかしながら、その翌年には、今度は、少女像をつくった御夫婦と同じ方、同じ工房なのだと思うんですけれども、今度は徴用工の像というのをおつくりになって、この手の活動というのはエスカレートするばかりであるというふうに思われて仕方がありません。さらには、韓国の最高裁の判決で、我が国の企業が賠償責任を負うという判決が出てしまった。

 少女像や徴用工の像も極めて問題であり、残念でありますが、我が国の法人、個人の生命や資産、安全が脅かされるということを放置するわけにはまいりません。まずは、この徴用工と言われるものの問題についてどのように対処していくべきなのかについてお聞きをしたいと思います。

 今月、二月の八日に、アジア平和貢献センター共催シンポジウムとして、社団法人経済倶楽部が「東アジアにおける「法の支配」の構築に向けて」というシンポジウムを開いています。

 そこで、萬歳寛之早稲田大学教授は、徴用工に関する韓国大法院判決の問題点を、日韓請求権と日韓経済協定だけでなく、日韓国交正常化の一般的な文脈や日本の戦後補償裁判との関係で評価をしています。

 「国際法の観点から見た韓国徴用工問題」と題して、韓国はサンフランシスコ条約に入っていないのに、徴用工判決では、戦争賠償だけではなく、債権債務関係を持ち出した、国交正常化とは、懸案事項を解決した上で将来関係を構築することを意味する、一九六五年の日韓国交正常化の際の懸案事項は経済協力や個人の請求権だった。

 朴正熙大統領が国民の当時の激しい世論を何とか説得をして国交の正常化にこぎつけたその大きな判断材料は、韓国にとっては経済の発展、我が国にとっては個人の請求権、これをそれぞれ折り合いをつけて国交が正常化したというのが現実でありましょう。それが、ちょっと言い方はラフになり過ぎかもしれませんけれども、別の要因でだんだんむしゃくしゃしてきたので、そのたびに我が国に謝れと言い出すようでは、健全な関係は維持できません。私は、どのように、はっきり言えば、今現在の新日鉄住金を差押えから救うべきかということにまずはエネルギーを使わなければいけないと考えております。

 また、皮肉なことに、特にPOSCOは、当初、世銀やアメリカ合衆国からの資金拠出をまだ時期尚早ということで撤回された、それに対して、我が国の国交正常化に伴う資金を注入してでき上がった会社であります。しかも、当時の八幡製鉄、富士製鉄、そして日本鋼管が技術供与をして、世界品質にたえ得る製鉄会社となったという経緯があります。

 二〇〇〇年には新日鉄と戦略的提携の契約を結んでいます。にもかかわらず、当時、新日鉄が、鉄の芸術品と評されるほどの高品質の方向性電磁鋼板、これは電力インフラに不可欠な変圧器の心臓部、鉄心に使うものでありますが、この品質が急に上がってきた。新日鉄のエンジニアからすれば、独自の技術開発でこんな急速に品質が上がるわけないという疑念がありました。

 何と、その後、POSCOの社員が中国に機密情報を漏えいしたというかどで、POSCOがその社員を訴えた。すると、その社員は法廷で、もともとこの技術はPOSCOのものではなくて新日鉄のものだという証言をした。結果的に、請求額が一千百五億四千百二十万円の請求額でありましたが、二〇一五年の九月に三百億円の支払いで和解をした。ただし、技術料を払うこと、そして、どの先に売っていくかということを事前に協議することということで代償を払ったわけであります。

 我々からすると、多少うがったように聞こえるかもしれませんが、今回の徴用工の判決、そして新日鉄住金の資産に手をつけるという、その話合いをしようと言い出すということは、あたかも江戸のかたきを長崎で討つつもりなのかと言わざるを得ません。

 現在、差押えの対象になりそうなものは、新日鉄住金が持っているPOSCOの三・三二%の株式の持分か売上げ債権ではないかと言われているようであります。

 POSCOの持分は、ニューヨーク証券取引所の米国株式信託証書の形、ADRと略しますが、で保管されているので、そう簡単には手がつけられないだろう、アメリカ合衆国で法的な手続をとり、それが許可されなければ手をつけられないだろうと考えられているようですが、現在、この徴用工判決に対抗すると申しますか、があったとしても、我が国の当初の合意に基づき、我が国法人の資産を守るにはどのような対処をされているか、答えられる範囲で結構でありますので、教えてください。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 旧朝鮮半島出身労働者をめぐる問題につきましては、現在に至るまで韓国政府が日韓請求権協定違反の状態を是正する具体的な措置をとらず、加えて、原告側による差押えの動きが進んでいるということは極めて深刻だというふうに思っております。

 我が国としましては、韓国による協定違反の状態を解決すべく、韓国政府に対して協定に基づく協議を引き続き要請しているところでございまして、韓国が当然誠意を持って協議に応じるものと考えております。

 いずれにせよ、今御指摘のとおり、日本企業の正当な経済活動の保護の観点、こういった観点から、引き続き、関係企業と緊密に連絡をとりつつ、日本政府としての一貫した立場に基づき適切に対応してまいりたいと思っております。

小田原分科員 どうか、我々の目から見れば罪のない、現在新日鉄住金で働いている人たち、そしてその財産を、国益をかけて守っていただきたいと思います。

 次に、いろいろなところで議論になっているので、できるだけ手短にいきたいと思うんですが、どうしても、我が国海上自衛隊のP1哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件について触れざるを得ません。

 その後、韓国からいろいろな釈明がありました。テレビでも随分と国民の目にさらされました。一国が潔白を証明するために国際社会で提出する動画になぜ音楽をつけるのか、私にはやや理解ができないところがありますが、事の流れを普通の国民が類推するに、二そうあると言われている大変小さな、漁船のような船を人道的に救助するために、なぜ海上保安庁みたいなボートとか救命ボートではなくて、百三十五メートルもある軍艦が行くのか。そこには、そもそも我が国の排他的経済水域でありますから、当然パトロールが及ぶであろうということは百も承知であったろうに、軍艦が行かなければいけない、それは、どうしてもその状況を守らなければいけない理由があったのではないか。

 また、一応と言うと失礼ですが、我が国と韓国は、日韓基本条約、貿易協定、そして九八年の共同宣言を結んだ間柄であります。そういった国の哨戒機に対してレーダー照射までしなければいけない、そうしてでも追い払わなければいけない理由があったのではないか。

 すなわち、その小さな二そうの船の中には、軽くて、かさばらなくて、しかも値段の高いものが入っていたのか、決定的な人物が中にいたのかと思わざるを得ない、ほとんどの国民はそう思っているのではないかと思います。

 そこで、お伺いします。

 二そうの漁船のようなものと軍艦が入ってきているということは当然わかっていたから哨戒機が行ったと思いますし、ジス・イズ・ジャパニーズ・ネービーと言っているのでその状況は把握していたと思うのですが、我が国の排他的経済水域の中に軍艦が入ってきた理由をどのように認識をしておられたのか、どなたでも結構ですので教えてください。

石川(武)政府参考人 お答え申し上げます。

 その現場にいた北朝鮮の漁船が何をしていたかという御質問でございますけれども、韓国国防部は、韓国艦艇が北朝鮮の遭難漁船に対する人道的な救助作戦を行っていた旨発表していると承知しております。

 その上で、御質問の点につきましては、防衛省として、さまざまな情報をもとに、慎重に分析する必要がございます。その情報の中には、さまざまな手段でとりましたので、この場で明らかにできないものもございますけれども、いずれにしましても、現時点において防衛省として確たることを申し上げることは困難でございます。

小田原分科員 次に、これも恐らく、国会議員であればどなたも地元で言われていることではないかと思いますけれども、韓国は、我々から見ればうそ八百、低空飛行していたとか威嚇的な行為を行ったとかいうようなことを国際社会で発出する。我が国には確固たる証拠がそろっている。それも事実でありましょう。しかし、なぜ、もう少し、韓国が発表したことと全然違う事実を、もっと厳然たる証拠をもって国際社会に示さないのか。

 私たちの目的は、事実を認め、二度とやるなということであって、地元の人たちが、例えば、経済制裁を科せとか、我が国に滞在しているかの国の人たちに何かしろとかいう過激な意見を言う方もいますが、それは我が国の目的ではないでしょう。

 しかしながら、たしか大韓航空機をソ連の飛行機が撃ち落としたとき、当初はソ連はそれを否定して、しらばっくれました。それに対して、自衛隊が傍受した情報を国際社会に公開すると、ソ連はそれを認め、国際社会に赤っ恥をかいたという経緯がありました。

 同じことを韓国に対して、少なくとも我が国の自衛隊員の命が危険にさらされたわけですから、これだけうそ八百を言って、厳然たる事実はこうであるということを、いろいろな画像やデータなども含めて、もっと大々的に公表することはしないのか、教えてください。

齋藤(雅)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘につきましては、韓国国防部が一月二十三日に、海自哨戒機が高度約六十メートルから七十メートルで韓国艦艇に対して低高度近接脅威飛行を行ったと主張をしているという件と承知をしております。

 海自哨戒機でございますけれども、平素の活動におきまして、飛行中の経路あるいは高度などのデータを記録しているところでございます。そして、韓国側が指摘している海自哨戒機につきましては、国際民間航空条約にのっとった我が国航空法に従って飛行しており、脅威を与えるような飛行は行っていないということを確認いたしております。

 そもそも、海自哨戒機が韓国の艦艇に脅威を与える意図も理由もございません。韓国側にはこの見解を受けとめて冷静かつ適切な対応をとっていただきたいと考えており、このことは大臣からも繰り返し申し上げているとおりでございます。

 このように、これまでさまざまな場で必要な反論を行っているものと考えております。

小田原分科員 お立場、よくわかります。わかりますが、この日韓関係のテーマは、共通したテーマ、二つであります。

 一つは、我が国の、礼儀正しく、法の支配を守り、下品なことをしないという崇高な態度が相手には通じていない。その結果、ますます調子に乗ってエスカレートされ、真面目に仕事をしている私たちが弱腰外交じゃないのかというふうにややもすると非難をされる。この歯がゆさをどのように私たちは克服しなければいけないかということであります。

 先ほどのレーダー照射事件を受けて、十月には防衛省による観艦式が行われます。一部報道では、中国は既に招待されているけれども、韓国は招かれないというような報道がなされています。

 観艦式であれば、海上自衛隊はレーダー照射を受けた当事者ですから、ふざけるなという気持ちもわからないでもありませんが、もっと問題なのは、もっと問題と言うとちょっと、事ここに軽重はないのですけれども、韓国の文喜相国会議長の、言及するのも忌まわしい一連の発言、これを受け、また三・一独立運動百周年記念日を迎えます。どういった雰囲気が両国に醸し出されるのか、極めて不透明。

 しかし、ことしは我が国にとっては、御代がわりという大切な年であります。秋には、恐らく即位にまつわる大きな行事が行われ、世界じゅうから要人をお招きし、新しい天皇の即位をお祝いする、そして、海外からもお祝いをしてもらうという機会が必ずあると思います。そこに韓国の要人を呼ぶのか。呼ばないという選択はないと思いますが、仮に、では文喜相国会議長を寄こしますと言われたときに、祝賀ムードはそのまま盛り上がっていくことができるのか。

 宮中行事、いろいろまだ検討中ではないかとは思いますが、観艦式とあわせて、韓国の要人や軍人をこの状況下でも招くのか、教えていただきたいと思います。

三上(明)政府参考人 まず、皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式の部分についてお答え申し上げます。

 本年の十月、御指摘ございましたとおり、御即位に伴う国の儀式等といたしまして、即位礼正殿の儀、それから饗宴の儀、それから内閣総理大臣夫妻主催によります晩さん会、ここに外国の代表をお招きすることとしております。

 具体的な参列者につきましては、今後、総理を委員長とする天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典委員会におきまして、参列者の推薦基準をお決めいただきまして、その上で検討していくこととしております。

 以上です。

小田原分科員 時間も限られておりますので、最後に、河野大臣から、今後の日韓関係の方向性や、どのように取り組む意気込みでいらっしゃるのか。特にお地元では大人気でいらっしゃるとお察しします。しかし、お地元でも、河野大臣に、私が今申し上げたような意見や感情をぶつける方もいらっしゃると思います。そういった方々へどのような御説明や御対応をされているのか、お聞きしたいと思うのです。

 私は、ちょっと引きたいものが二つあります。一つは、平成三十年十一月十一日、日本経済新聞の五面に「風見鶏」というコラムがあります。峯岸さんという編集委員、長くソウル局長をやられたり、きっての韓国通の方だと思います。「韓国は「一国二制度」か」というタイトルで、国交正常化のときに朴正熙大統領は特別談話を出し、きのうの怨敵だとしても、きょうとあしたのために必要であるなら日本とも手を携えるのが国民利益を図る賢明な方法だと呼びかけた。

 七九年に暗殺されるまで軍事政権に抵抗し、デモの計画宣言文を読み上げたのが後の文在寅大統領。卒業後は、代表を務めた弁護士事務所が日本の植民地統治下の元徴用工裁判も手がけた。

 ベテランジャーナリストは、究極の狙いは国内エスタブリッシュメントの刷新と文政権の野心を見る。徴用工の問題や従軍慰安婦の問題は韓国内の権力闘争の断面がある。

 保守から進歩への政権交代のたびに叫ばれる名誉回復。新大統領が誕生すると、そのたびに社会がダイナミックに塗りかえられ、南北関係や外交までがのみ込まれる。

 日韓関係は韓国国内の内政の被害者である。

 例えば、文氏が支えた盧武鉉政権時代には、日本の植民地統治に加担したとする親日派の子孫の財産が没収され、国有化された。

 このように、韓国とはどういう国ですかと言われ、アイデンティティーを聞かれると、それまでほかの国にさんざん侵略されたことはなしにして、日本から独立した国というのがアイデンティティーになっている。

 福沢諭吉翁は、明治三十年十月七日の時事新報に、朝鮮人と約束をしたってどうにもならないと言って、大変嘆いています。

 さればかかる国人に対していかなる約束を結ぶも、背信違約は彼らの持ち前にして毫も意に介することなし。既に従来の国交際上にもしばしば実験したるところなれば、朝鮮人を相手の約束ならば最初より無効のものと覚悟して、事実上にみずから実をおさむるのほかなきのみ。

 百二十二年前、福沢翁が嘆いた現状は、今でも全く同じではないかと思わざるを得ない。

 しかも、きのうの閣議で文在寅大統領自身が、親日の清算と、独立運動に対して正しく礼を尽くすことは、民族の精気を奮い起こし、正しい国へと進む始まりでもあると言っている。この親日を清算というのは、正しく礼を尽くすと並列になっていることから、昔親日を清算したんじゃなくて、これからも親日を清算すると大統領が言っているとしか思えない。

 私たちは、引き続き礼儀正しくすることだけで本当にいいのか。また、これからも、よっぽどの例外的な親日派の大統領があらわれない限りは、本当に我々が想定している同盟関係に似た日韓関係ができなくなるのではと危惧しますが、河野大臣の見解を教えてください。

井野主査 河野外務大臣、簡潔に答弁をお願いします。

河野国務大臣 当面は、日韓両国関係の法的基盤をなしている日韓請求権協定に対する違法状況を是正する、これに全力を挙げていきたいと思います。

小田原分科員 終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて小田原潔君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

井野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小林鷹之君。

小林(鷹)分科員 自由民主党の小林鷹之です。

 河野大臣、山田政務官、きょうはどうぞよろしくお願いいたします。

 河野大臣の国会での外交演説は、大臣の考え方が色濃く反映されておりまして、非常にメッセージ性が強いといつも感じております。ことしもそうでした。ただ、その中で、ことし、一点気になることがあるとすれば、それは、法の支配ですとか国際法の尊重に言及される中で海洋秩序やサイバー外交については触れられていたんですけれども、そもそも国際法そのものがまだ成熟し切れていない宇宙についての言及がなかったことです。

 我が国の宇宙政策に関する方針を定めているのは、宇宙基本計画です。きょうは、その工程表で重要項目とされております宇宙安全保障の強化、宇宙産業のさらなる拡大、そして宇宙空間における国際協力の強化の観点から、宇宙外交や宇宙のルールメーキングのあり方につきまして、大臣の見解を伺ってまいりたいと思います。

 まず、宇宙安全保障の強化の観点から、宇宙状況把握、いわゆるSSAについて質問をさせていただきます。

 SSAにつきましては、二〇一三年に日米SSA協力取決めが締結されて、日本側の要請に基づいて米国政府から日本国政府に対して情報提供を行うこととされました。そして、翌二〇一四年には、SSAに関する日米協力によって、今度は米側の要請に基づいて日本のJAXAが米戦略軍に対して情報提供をすることとされました。これによって、SSAの情報が日米双方向で共有できるようになったということは私は非常に評価をしておりますし、米国との間で、他国に先駆けて、他国と比べても早期にこうしたものが締結されたことはすばらしいことだというふうに思っているんです。

 そこで、まず伺いたいのは、そもそも日米のSSAシステムの違いというものがいかなるものなのか、教えていただきたいと思います。また、双方向で共有する情報の内容というのは機微に触れるものだと思いますので、なかなか具体的にはおっしゃることは難しいかと思うんですけれども、これまでアメリカはSSAの情報共有協定を何カ国と提携し、それらの国々と比べて日本が共有する情報のレベルというものがどの程度のものなのか、可能な範囲でお答えいただければと思います。

石川(武)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、スペースデブリの増加や対衛星兵器の開発の進展などに伴い、宇宙空間の安定的利用のためには宇宙状況監視機能の保有が必要だというのが日米両国間の共通の認識でございます。

 その上で、委員お尋ねの米国のシステムでございますけれども、これは基本的にレーダーや望遠鏡あるいは衛星を使ったものでございますけれども、細部につきましては、米側との関係もございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 他方、防衛省のシステムでございますけれども、これは、我が国の自立的な宇宙状況監視体制を構築すべく、静止軌道を常時継続的に監視可能なレーダーや、あるいは情報の収集、処理、共有等を行う運用システムの整備に取り組んでいるところでございます。

 防衛省のシステムにつきましては、JAXAのシステムに連接するとともに、米軍のシステムとも連接いたします。これによりまして、委員御指摘のとおりでございますけれども、JAXAも含めた我が国のシステムと米軍のシステムとの間で、それぞれが把握している情報を双方向でリアルタイムに共有することが可能となるわけでございます。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 こうした情報共有のレベルがどこまで今後進むかというのは、日本がアメリカにとってどれだけ頼られる存在になれるか、すなわち日本側の能力構築によるところが大きいんだと私は思います。ですから、引き続き御尽力いただければというふうに思います。

 また、今のそのSSAに関する日米協力なんですけれども、これは、アメリカの戦略軍に対して情報提供を行うのはJAXAとされていますが、一方で、アメリカ側から情報提供を受けるのは日本政府となっています。

 アメリカとの関係で、情報提供をする機関と提供を受ける機関とが異なっているのはできる限り避けて、私は一元化すべきだというふうに考えています。

 すなわち、現在は、米軍からの情報は防衛省・自衛隊が受けて、その情報のレベルに合わせて適宜利活用されておりますので、米国に日本から情報提供をする場合も防衛省・自衛隊ができる限り一元的に対応するという方法もあるのではないかと思いますけれども、政府の考え方、また今後の課題について教えていただければと思います。

石川(武)政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年の日米両政府の取決めの中では、確かに、米政府から日本政府に対して情報を提供するということ、それから、二十六年の日米の政府間の対話におきましては、JAXAから米軍に対して情報を提供するということで合意がなされております。

 さらに、その後の日米間の協議を踏まえまして、現在は、防衛省が整備しているシステムにつきまして、防衛省がJAXAからの情報を一元化した上で防衛省が米軍に提供するという意味で、一元化した形で共有することが可能になるということでございます。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 事実上、運用によって一元化に近いことがなされているということですけれども、確かに、米軍との関係で、軍事上の機密の扱いなどもあるというふうに思いますが、可能な限り、そこは、より防衛省・自衛隊が一元的に米側と対応できるような関係というものを引き続き目指していただければというふうに思います。

 続きまして、宇宙システムの抗堪性について伺います。

 今、宇宙システムというふうに一言で申し上げましたけれども、宇宙システムといっても、宇宙空間にある衛星もあれば、衛星の管制を行う地上施設もあり、そしてまた衛星と地上施設の通信リンクもある。そういう意味で、宇宙システムの構成要素というのは多岐にわたるんだと思います。

 その中で、アジア太平洋地域におけるアメリカによる抑止力をしっかりと支えていく宇宙システムの抗堪性を向上させるためにも、今後、日米の衛星機能の連携強化、例えば、GPSが攻撃されたときに日本の準天頂衛星がしっかりとそれをバックアップしていく、そうした連携を我が国としても進めていくというふうに認識していますし、また、これを速やかに、かつ強力にやっていただきたいということを強く期待しています。

 そして、私は、こうした測位衛星だけに限らず、通信衛星なども含めたその他のアメリカの宇宙アセットについても、日本がアメリカの補完的役割、バックアップ機能を持つことで、より双務的な宇宙安全保障における日米関係を構築できるのではないかと考えております。

 この点についての見解と、あわせて、また、日米安保条約が今宇宙空間に適用されるかどうかちょっと不明確ですけれども、宇宙空間における日米同盟を締結していくことの可能性も含めて、大臣の御見解をお聞かせいただければと思います。

河野国務大臣 日米間では、二〇一五年の四月に発表したガイドラインに基づいて、宇宙空間の責任ある平和的かつ安全な利用を確実なものとするため、宇宙に関する連携を日米で維持強化していこうということになっております。

 日米同盟が宇宙に適用されるかということに関して申し上げれば、衛星に対する攻撃を含め、我が国に対する攻撃が、宇宙に対する攻撃が自衛権の行使あるいは日米安保条約第五条の対象となるかどうかということについては、これは個別の状況を慎重に見ながら判断する必要があると思いますので、一概にどうこうと今ここで申し上げるのは非常に困難でございますが、いずれにしろ、宇宙分野を含め、日米間の幅広い協力を推進し、同盟の対処力あるいは抑止力といったものの向上に今後とも努めていきたいというふうに思っております。

山田(賢)大臣政務官 小林委員から御指摘いただいた点について、日米のアセットのバックアップができないかという御指摘でございます。

 先ほど大臣からも御答弁いただきましたが、日米間では、二〇一五年四月に発表した日米防衛協力のための指針に基づき、宇宙空間の責任ある平和的かつ安全な利用を確実なものとするため、宇宙に関する連携を維持強化しております。

 具体的な取組といたしましては、日米両政府は、宇宙の利用に当たって、早期警戒、ISR、測位、宇宙状況監視、通信等の関係する宇宙システムの抗堪性の確保等の分野において協力しております。

 安全保障における宇宙領域の重要性は新しい防衛計画の大綱でも指摘されており、引き続き、宇宙空間の利用のあり方について米国と緊密に連携してまいりたいと考えております。

小林(鷹)分科員 大臣、政務官、どうもありがとうございました。

 現時点ではなかなか、日米安保がどこまで適用されるか、そこは断定的におっしゃるのは難しいと、そこはそうなんだと思います。ただ、だからこそそこをどうしていくのか、これは大きな課題だというふうに思っておりますので、ぜひこれからも検討を進めていただきたいというふうに思います。

 次に、JAXAの権限のあり方について伺わせていただきます。

 二〇一二年の法改正によりまして、JAXAは安全保障を含む政府の宇宙開発利用を支える機関となったことは、私は大きな前進だと捉えております。しかし、アメリカのNASAと比較すると、JAXAにはさらなる権限を私は与えるべきではないかという感覚も持っています。

 かつて、アメリカのアイゼンハワー大統領が、上院の助言や同意まで必要としないレベルの国際約束であれば、NASAがみずから締結をし、それに従って国際協力を進めることができるというふうに大統領みずからが宣言しています。そもそもNASAによる国際協力に関しては、これまで上院の助言や同意を得たものというものはないというふうに聞いておりまして、ISS計画のための政府間協定ですら上院の助言や同意を要しないというふうにされています。

 そういった意味で、適時適切なルールメーキングの観点から、まずは安全保障以外の国際協力分野において類似の権限をJAXAに与えることについてどう考えるか、政府の見解を教えていただければと思います。

長岡政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、日本国の法律上の整理でございますけれども、憲法の七十三条三号におきまして、条約の締結は内閣の事務であると。また、それを受けて、外務省設置法その他の関連法令によって、外務省が国際約束の締結に関する事務を所掌するというふうにされております。

 そうした枠組みのもとにおきまして、外務省としては、これまでも、JAXAが実施する国際協力に関して、法的拘束力のある国際約束の締結が必要な場合には、JAXAそれから関係の省庁と緊密に連携をしながらその締結事務を行っております。

 加えまして、そういった国際約束を締結しない場合であっても、JAXAが必要に応じて、例えば協力覚書、MOCといった法的拘束力のない文書を相手国の関係機関等々と作成することがございますけれども、そういう際にも、外務省や関係省庁は、さまざまな形で助言をしながらJAXAの業務をサポートしているという状況でございます。

 いずれにしましても、外務省としては、引き続き、こうした国際社会における宇宙のルールメーキングについては、JAXA及び関係省庁と積極的に緊密に協力しながら取り進めていきたいというふうに考えております。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 現時点では、法的枠組みもそうだと思いますし、建前としてはやはりそのような答弁なんだと思います。

 ただ、人的資源や予算を含めて、NASAとJAXAを単純に比較することはできないというふうに思いますが、それにしても、宇宙の専門家が集まるJAXAがより主体的にルールメーキングに携われるような体制強化というものは、私は必要だというふうに思っております。

 次に、宇宙産業のさらなる拡大という観点から質問をさせていただきます。

 一九九〇年の日米衛星調達合意によりまして、JAXAが開発を担う衛星は研究開発衛星に限られた、そして、非研究開発衛星、いわゆる商業目的の衛星につきましては、国際競争入札にさらされることによって、結果として、価格競争力のあるアメリカの衛星メーカーがその大半を落札した、そういうふうに私は理解をしております。

 一方で、その後の一九九六年のWTOの政府調達に関する協定、いわゆるGPAでは、その対象にJAXAが入るのかあるいは入らないのか、その点について、日米で若干見解が分かれる状況が続いてきたとも聞いております。

 伺いたいのは、まず、二〇一二年のGPA改定時に日米で協議がされたと聞いておりますけれども、我が国の非研究開発衛星の調達について何が変わったのか。

 また、私は、我が国が行く行く目指すべきところは、産業振興の観点から、JAXAが商用衛星の分野にもみずからもっと乗り出して、国内はもとより、海外に対しても国産の衛星を普及させていくことが大切だと思っているんですが、こうしたことを目指すとしたときに、今の日米衛星調達合意やGPAというものが現行のままでよいと考えるかどうか、政府の見解を教えていただきたいと思います。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 まず、JAXAは、WTOの政府調達協定及び同協定の改正議定書が適用される機関にはなっておりません。

 他方で、我が国の政府調達につきましては、平成二十六年三月一日の関係省庁申合せによりまして、WTO政府調達協定及び同協定の改定議定書等を踏まえて運用方針が定められておりまして、その中で、JAXAも対象となる非研究開発衛星の調達手続が定められております。

 当該手続におきましては、非研究開発衛星を調達するための、公開、透明、無差別、これらを原則とした競争的な手続が定められておりまして、政府といたしましては、引き続き、これらの原則に従って調達を行うことが適切と考えております。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 今の答弁のとおりなんでしょうけれども、各国がしのぎを削る宇宙産業分野におきまして、今、公開、無差別の原則ということをおっしゃっていましたけれども、それはそうなのかもしれませんが、単に、公開、無差別、自由で公平な競争環境をつくればよいというわけではない、私自身はそう感じるんです。

 繰り返しになりますけれども、あくまで、日本の宇宙産業の振興の観点から、こうしたものがどうあるべきなのか、政府としても御検討いただければありがたいというふうに思います。

 また、ちょっと具体的な質問になるんですけれども、JAXAが開発に取り組む衛星が、今の日米合意に規定される研究開発衛星に該当するか否かについてアメリカが疑義を呈した場合、その立証責任は日本にあるとされています。とすると、アメリカが問題を提起すれば、日本の衛星技術をアメリカに開示しなければならないんじゃないでしょうか。いかに同盟国であるとはいえ、産業技術の安全保障の観点から、私は若干問題があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、政府の見解を教えていただければと思います。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 非研究開発衛星の調達手続におきましては、日本側が非研究開発衛星の調達手続には該当しないと区分したものにつきまして、これに対しまして、米国政府等が当該区分に異を唱え、米国政府の要請を受けました場合には、委員御指摘のとおり、今、日米間で協議を行うことになっております。

 この協議において、政府としましては、産業技術の安全保障上、問題が生じないように適切に対処していくこととしております。

小林(鷹)分科員 同盟国との関係もあるので、なかなかあれなのかもしれないですけれども、適切に対応というと、それは適切に対応してもらわなければ困るんですけれども、やはり、幾ら同盟関係にあっても、みずからの安全保障を含めて、日本が持っている虎の子の技術というのは、やはり日本がしっかりと管理しなければいけないと思いますし、そういう意味で、適切に対応はしていただきたいんですけれども、ぜひ、同盟国に流されることのないように、しっかりと適切に対応していただきたいというふうに思います。

 次に、宇宙空間のルールメーキングについて伺わせていただきたいというふうに思います。

 国連宇宙空間平和利用委員会、すごく長い名前がついているんですけれども、いわゆるCOPUOS、このCOPUOSの場はコンセンサス方式ですので、法整備にはかなりの時間を要するものと予想されます。

 そこで、既に合意されているガイドライン、例えば、中でも宇宙物体登録の慣行の強化ですとか軌道上の事象に関する情報共有などについては、この実効性を高めていくために、我が国も、国内の法整備はもちろんのこと、米国を始め我が国と立場を同じくする国々と二国間あるいはマルチの協定の締結などを目指していく必要があると考えますが、この点についての御見解を伺いたい。

 また、あわせて、今、サイバーの領域、サイバー戦におけるタリン・マニュアルというのがありますけれども、こうしたタリン・マニュアルのように、宇宙のルールメーキングについても民間団体が主催する協議の場が非常に重要なんだと私は思います。

 既に、宇宙のルールメーキングという意味では、MILAMOSですとかウメラ、こうした場が設けられてはおりますけれども、例えばMILAMOSの場に参加している慶応大学の青木節子先生、二年ほど前にお話を伺いましたが、もう本当に孤軍奮闘しているというお話を聞いておりまして、そうしたことを伺うと、日本の国益を考えたときに、やはりこうした場に民間の研究者を含めてできる限りの人材を国として送り込んでいくことが私は必要だというふうに強く思っておりますが、この点についてもあわせて大臣の御見解を伺わせていただければと思います。

河野国務大臣 外務省としては、宇宙基本計画に基づいて、宇宙空間における法の支配の実現、強化に向け、国際規範の推進に積極的に関与してまいりたいと思っております。

 今月のCOPUOS科学技術小委員会において、我が国が主導して調整を行い、有志国とともに、既にコンセンサスが得られたガイドラインを実施するよう呼びかける内容のステートメントを行ったところでございます。

 また、委員御指摘のMILAMOSやウーメラ・マニュアルの取組についても政府として重視し、積極的に情報収集を行って、直近のMILAMOS会合にもオブザーバーとして参加したところであります。

 今後とも、関係省庁と連携し、宇宙空間における法の支配の実現、強化に向け、積極的に取り組んでいきたいと思います。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 なかなか宇宙という分野は、まだ非常にふわふわしているというか、ルールメーキングがまだ本当に始まったばかりというところで、なかなかその専門家の方もそんなに多くはいらっしゃらないと思いますけれども、その育成を含めて、ぜひそうした場に積極的に、民間であるか否かを問わず、多くの人材を送り込んでいただきたいというふうに心から期待をしています。

 続きまして、ASEANを含むアジア太平洋諸国との宇宙協力について質問をさせていただきたいと思います。

 既に、隣国の中国は、中国版GPSとも言われている北斗と呼ばれる衛星測位システムを着々と開発しております。また、それを一帯一路の沿線国へと展開しようとしています。私から見れば、この一帯一路、今、北極航路もできますけれども、二次元で捉えていたものが、まさに一帯一路が三次元化していく、そういう思いを持って今、私自身は捉えています。

 そうした各国がこうした宇宙関係でしのぎを削る中で、日本も日本独自の測位サービスの普及というものを、積極的にこれから取り組んでいかれるということを、私自身、強く期待しておりますし、質問レクのときにも非常にこれから頑張ろうとしているというお話があったので、ぜひそこは頑張っていただきたいと思っているんです。

 私は、自由で開かれたインド太平洋を実現していく観点からも、今申し上げた測位サービスにとどまらないで、宇宙安全保障を含めた宇宙システム全般について、我が国がASEANを含むアジア太平洋諸国の宇宙システムの構築に積極的に協力していくべきだと思うんですけれども、大臣の御見解をいただければと思います。

河野国務大臣 宇宙基本計画に基づいて、アジア太平洋地域において積極的に宇宙協力を推進してまいりたいと考えております。

 我が国が主導するアジア太平洋地域宇宙機関フォーラム、APRSAFというものがございますが、これらを通じ、地域の宇宙能力の向上に引き続き貢献をしていきたいと思っております。また、JICAなどを通じ、ASEANを中心に、人材育成、画像提供、衛星関連機材整備などの支援を実施してきているところでございます。

 引き続き、関係省庁としっかりと連携をし、アジア太平洋地域における宇宙システム構築に積極的に貢献をしてまいる所存でございます。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、大臣にはリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、今るる申し上げてきたことを本当に力強く政府として推進していくためには、外務省の宇宙担当部局の体制、これは、伺いましたら、本当に宇宙専任でやられている方は十名もいらっしゃらないというふうに聞きました。ぜひ、人員、予算面での体制強化について河野大臣の引き続きのリーダーシップを発揮していただくことを期待しております。

 最後に、宇宙ビジネス分野の法整備について質問をさせていただきたいと思います。

 今、いろいろな宇宙ベンチャーとか出てきて、イノベーションの話でも宇宙が出てきていますけれども、今後、新たな宇宙ビジネスを日本から生み出していくためには、私はさまざまなやり方があるんだろうと思います。高田局長もよくおっしゃるように、高い技術を持っている日本のベンチャーが実績を積み重ねて、デファクトのスタンダードをつくっていく。そうすれば、日本の発言力も、ルールメーキングに関する発言力も上がってくる。そういう中で、日本が主導してルール形成を進めていくということは、私はすごくしっくりくるんです。

 ただ、それだけでもないのかなというふうに思っておりまして、例えば、資源探査の分野でのルクセンブルク、これ、ルクセンブルクに別にたくさんの人がいるわけでもないし、企業がたくさんあるわけでもないし、特段そこに特有のすぐれた技術があるわけでもない。でも、ルクセンブルクが今やっていることは、アメリカに続いて、資源探査の法整備、国内法をとりあえず整備する。その国家の意思をしっかりと示すことによって、それを感じたいろいろな国のすばらしい企業が、今、ルクセンブルクに支社を置くとか、そういう形で行っています。なので、こういうやり方で企業をどんどん呼び込んでいくやり方というのも、私はありなのかなというふうに思っております。

 そこで、資源探査、輸送あるいはデブリ除去等々さまざまな分野において、日本としてどう勝負していくのか。その戦略というのはしっかり伴っていなければいけないと思いますけれども、その戦略があることを前提として、宇宙ビジネスの振興のための今後の我が国における国内法の整備について、政府の方針、スタンスをお聞かせいただければと思います。

高田政府参考人 御質問ありがとうございます。

 委員御指摘のとおり、宇宙分野などの新領域では、新しく民間ビジネス振興のために制度を整えてやる、それを適切なタイミングで行っていくということで産業振興になっていくという制度整備が有効だということだと認識しています。

 実際、我が国におきましても、二〇一六年に成立した宇宙活動法では、民間事業者のロケットの打ち上げ、人工衛星の輸送に関しての事業環境の予見性が高まり、その後、小型ロケット開発などの分野において宇宙ベンチャーの参入が進んだという実績もございます。

 現在、宇宙資源開発の分野では、委員御指摘のとおり、米国やルクセンブルクなどが、月などにおける宇宙資源開発の活動に関して政府として認可を行うという枠組みを用意することで、関連するベンチャーの支援や国外からの産業誘致を進めている、こういう実態があると認識しています。

 一方、軌道上サービスの事業分野などでは、国際ルールが重要であるものの、なかなかコンセンサスに至ることが難しいのではないかと予想され、こうしたことから、国際的にデファクトスタンダードをつくろうとする民間の動きもある。こういう状況でありまして、内閣府、政府としまして、こうした国内外の情勢を踏まえながら、民間企業の発展していこうという活動が決して阻害されることがないよう、むしろ積極的に産業を振興していくようなタイミングで、国会などで御審議いただくには、立法事実とか、その産業の熟成度も勘案しながら、貴重な国会審議のお時間をいただくことになりますので、そういうのをよく考えながら、適切なタイミングでの法制度を考えていきたい、そのように思います。

小林(鷹)分科員 質疑時間が来ましたので、最後に一言申し上げます。

 ぜひ、今おっしゃったとおり、強力に頑張っていただきたいというふうに思いますし、今、政府の中を見ていると、どちらかというとデブリの除去、これは安保と絡む非常に重要な話ではありますけれども、そこに何となくフォーカスが当たり過ぎているような気がしないでもありません。

 軌道上サービスといえば別にデブリ除去に限るわけではないので、国家戦略として本当に宇宙をどう捉えていくのかというところを幅広い視点を持ってやっていただきたいと思いますし、こうした法整備が未成熟な分野だからこそ、政府も、そして私たち立法府も前向きかつスピーディーにこれは頑張っていかなきゃいけないというふうに思っておりますので、引き続きの河野大臣の強力なリーダーシップを期待して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

井野主査 これにて小林鷹之君の質疑は終了いたしました。

 次に、高村正大君。

高村分科員 自由民主党の高村正大です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 現在の日本と韓国の関係、戦後最悪な状況と言っても過言でないと思います。しかしながら、日本と韓国、お互いに引っ越すことのできない隣国であります。そこで、きょうは、どうすれば韓国との関係をよい方向に持っていけるのか、こういった観点からの質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、韓国はこれまで、日本との間で、しばしばゴールポストを動かしてまいりました。

 一九六五年の日韓基本条約、一九九八年の日韓パートナーシップ宣言など、日韓の間では今までも多くの約束がなされてきました。特に、日韓パートナーシップ宣言の作成に至る過程では、金大中大統領から、一度でいいから文書の形で謝ってほしい、そうすれば韓国政府は二度と過去の問題を取り上げることはしない、二十世紀の問題は二十世紀の間に終わりにしたいとの意向が示され、当時の日本では、特定の国に対して文書の形でのおわびをするという前例がない、また、国内にも多くの反対があった中で、小渕総理と金大統領との政治決断でつくられた宣言であった、このように認識をしております。

 ところが、昨今の韓国側の言動を見てみますと、まさに約束なんか関係ない、ゴールポストを動かすというレベルでなく、都合に合わせてコートチェンジして、ゴールが逆だと主張している、そんなようにも感じる事例が多々あります。

 このような韓国の姿勢は、私には、日本に対してのみ見られるものではないか、このように思っております。また、このように露骨にゴールポストを動かす国は韓国以外には余りないのではないか、このように思いますが、政府はどのように認識をされているか、教えてください。よろしくお願いします。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、旧朝鮮半島出身労働者問題あるいは慰安婦問題を含めまして、日韓両国及び国民の間の財産、請求権に関する問題は日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決済みでございまして、また、慰安婦問題につきましては、二〇一五年の日韓合意によって最終的かつ不可逆的な解決を確認してございます。

 これらはいずれも国と国との約束でございまして、たとえ政権がかわったとしても、責任を持って履行しなければならないことは国際的かつ普遍的な原則と理解しております。

 その上で、委員御指摘の、日本のみに対してではないか、あるいは韓国だけではないかという御指摘、この点、韓国を含めまして、他国の外交姿勢、特徴につきまして、政府としてはなかなか説明するのは困難ということは御理解いただきたいのでございますが、いずれにいたしましても、我が国としましては、さまざまな問題について、一貫した立場に基づき、引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていく考えでございます。

高村分科員 ありがとうございます。

 旧朝鮮半島出身労働者問題について、韓国の大法院は、原告の訴えを認め、被告である日本企業に対して慰謝料を払うように命じました。これは、先ほど言及がありましたけれども、財産及び請求権について完全かつ最終的に解決されたとする日韓請求権協定に明らかに反するものであると考えます。

 旧朝鮮半島出身労働者による日本企業への請求権が認められるんだとしたら、朴槿恵前大統領も、加害者と被害者の立場は千年たっても変わらない、このようにおっしゃっておりました。極論すると、一二〇〇年代、元寇、文永の役等における高麗による対馬あるいは壱岐における虐殺、これについても日本が韓国に賠償請求できる、こういうことになってもおかしくないですよね。

 朝鮮半島との間では、古くは、高句麗、百済、新羅の時代から日本との間では関係がありました。韓国との関係で、いつの時代から現在の日本政府は外交の責任を負うことになっているんでしょうか、政府の見解を教えてください。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、我が国と韓国との間でございますが、一九六五年、日韓請求権協定を含む関係諸条約を締結しまして、国交正常化しました。以来、両国の間では、さまざまな課題に直面しながらも、その時々の情勢や両国の国益を踏まえながら、知恵を絞り、両国関係の安定的管理のために尽力してまいりました。そのような先人たちの努力の上に現在の日韓関係があると認識しております。

 委員御指摘の、先般の一連の韓国大法院判決、国交正常化以来築いてきたそのような関係の法的基盤を根本から覆すものであって、極めて遺憾であり、断じて受け入れられないというのは、まさに委員御指摘のとおりだと思っております。

 なお、委員の方から、元寇あるいは文永の役等に御言及がございました。一般にでございますが、国交正常化以前の両国のさまざまな関係性や現在における外交上の責任につきましては、歴史的経緯や個別具体的な事案に即して検討されるべきものと考えておりまして、一概にお答えすることは困難であるという点は御理解いただければというふうに思います。

高村分科員 ありがとうございます。

 私も、何も一二〇〇年代の賠償をとれるとも思っていないですが、先方の前大統領が、千年たっても変わらない、このような発言をされていたので、ちょっとあえて言及をさせていただきました。

 続きまして、戦後、昭和四十年に日韓漁業協定が締結されるまでに、竹島周辺を含む海域において、日本漁船が韓国側に拿捕された隻数及び死傷者の数を教えてください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十二年から三十九年の間に、韓国側に拿捕された漁船の隻数は三百二十五隻となっております。また、関連する死傷者数は四十四名との記録がございます。

 以上でございます。

高村分科員 大変多くの船が拿捕され、多くの死傷者が出ております。

 四十四名死傷者ということですが、亡くなった方はどれぐらいいるかということを、今、わかれば教えていただけますか。

神谷政府参考人 厳密に死者が何人かというのは、今、手元にございません。死傷者数で四十四名ということしかございません。申しわけございません。

高村分科員 厳密に言えないということで、よくインターネット上とか雑誌なんか、文献なんかによりますと、五名以上が少なくても亡くなっている、このようなことが出ているということは私の口から言及をさせていただきたいと思います。

 それでは、竹島近海における韓国公船による銃撃や拿捕事案に関して、海上保安庁において刑事責任を追及した、このような事例はありますでしょうか。あくまでも、ここは日本の固有の領土、固有の海域であります。お答えをお願いします。

星政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような事案につきまして、海上保安庁が刑事責任を追及するための手続を行った実績はございません。

高村分科員 ありがとうございます。

 日本の固有の領土であって、その近海であっても、韓国の公船がやったことに対して今まで一回も刑事手続をしてこなかった、このようなことであります。

 続きまして、大変有名な事件で、一九七三年に起きた金大中拉致事件では、当時の韓国中央情報部、通称KCIA部長の指示に基づいて、韓国の公権力が日本国内で拉致行為を行いました。韓国による明確な我が国の主権侵害の事件でありましたが、当時の日韓双方の最高首脳が政治判断からの外交決着、これが図られました。

 今まで伺った件でも、日本固有の領土である竹島近海で日本国民が殺されても、国内の刑事手続をとらない。銃撃されても撃ち返さない。日本国内で韓国の公権力による主権侵害があっても、なあなあで済ます。今までの、このような日本が韓国に対して行ってきた対応、筋を通してこなかった、このことで韓国を甘やかし続けた結果、そのツケが今に回ってきて、今、このような、約束を破っても平然でいる、こういうような状況が生まれているのではないかと思います。

 日本政府は、今後、韓国を勘違いさせるようなことを繰り返してはならない、このように思います。そのためにも、日本政府は韓国政府に対して、筋を通して、だめなものはだめだと強い態度で臨むべきだと考えますが、政府の見解をお願いいたします。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほど申し上げましたとおり、日韓は、国交正常化以来、両国関係者、先人たちの努力の上に現在の日韓関係があるというふうに認識しております。

 他方、昨今、旧朝鮮半島出身労働者の問題を始め、これまで日韓両国が築き上げてきた関係の前提すら否定するような動きが韓国側において続いていることは大変残念と思っておりまして、日韓関係、このように現在非常に厳しい状況が続いておりますが、我が国としては、さまざまな問題についての我が国の一貫した立場に基づき、引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていきたいというふうに考えてございます。

高村分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、本当に、だめなものはだめ、きちんとした要求を彼らにしていただきたいと思います。

 それでは、ちょっと次の質問に移りたいと思います。

 昨年末、韓国による日本の哨戒機に対するレーダー照射事案がありました。韓国側の主張は、これまでどのように変遷してきているのか。こうした韓国側の一連の対応について、防衛省の見解を教えてください。

齋藤(雅)政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省が昨年十二月二十一日にレーダー照射事案を公表してから、国内外の報道機関は、韓国軍関係者の話を引用して、韓国駆逐艦が北朝鮮の遭難船舶を捜索するために火器管制レーダーを使用していたとの趣旨の報道を行っているところでございます。

 その後、同月二十四日の韓国国防部定例記者会見で韓国側は、自衛隊機が低空で異例な飛行を行っていたため、火器管制レーダーの光学カメラを作動していたが、電磁波の放射は一切なかったとの見解を明らかにしております。

 また、本年一月四日には、引き続き、火器管制レーダー照射の事実を否定するとともに、自衛隊機が低空脅威飛行を行ったことについて動画を公表するとともに、日本側に謝罪を要求しています。

 本件につきましての防衛省の見解は、これまで累次防衛大臣からも明らかにしているように、一月二十一日に公表いたしました最終見解のとおりでございまして、火器管制レーダーの照射の事実は明らかで、また、自衛隊機は適正に飛行しておりました。韓国側には、この事実を受けとめ、再発防止を徹底していただきたいと考えております。

高村分科員 ありがとうございます。

 韓国側、この件に関しては、最初は、レーダー照射なんかしていない、その後になると、したけれども難破している北朝鮮の船を捜していたんだ、そして、その後また、自分たちはレーダー照射をしないでカメラだけを動かしたんだ、最後には、日本の自衛隊機が威嚇飛行したから。普通、子供でも、こんなころころ変わるわかりやすいうそはつかないと思います。ちょっとこのことだけ一言言及をしておきたいと思います。

 続きまして、韓国の文喜相国会議長が、ブルームバーグとのインタビューの中で、これも本当に口にするのもはばかられるようなあれですが、文喜相議長が言った言葉なので読ませていただきますけれども、天皇陛下が戦犯の息子であり、天皇陛下が元慰安婦に謝罪をすれば慰安婦問題が解決されるとする、甚だ無礼な発言を行いました。我々日本国民としては、決して許すことのできない発言だと思っております。

 その後、国会議長秘書室長名の報道発表の中で、政府間の合意より、心の中から湧き出る素直で真摯な謝罪が重要だという側面を強調する観点から出たもので、新たな条件をつけようとしたものではなかったと述べました。

 しかし、ブルームバーグが文議長の実際の発言を録音した音声を公開すると、またこれも、哨戒機に対するレーダー照射と同じように、開き直ったのか、言い分が変わったのか、みずからの発言について謝ることではないと開き直って、日本側による謝罪と発言の撤回の要求について、盗人たけだけしいとまで、考えられない無礼な発言をしました。

 盗人たけだけしいというのは、こっちが盗人の場合に言う言葉であって、相手側が悪い場合というのはなかなか普通の人は使わないと思うんですね。

 あのレーダー照射事件でもそうであったように、本当に韓国側は、この二つの件だけ見ても、子供の言いわけのようにころころ主張を変えたり、論点をすりかえる、こういうようなことがよく見られます。これは韓国外交の特徴なんでしょうか。それとも、日本がなめられていて、日本に対してはそういうことをやっていい、日本に対してのみ、そのような態度をとっているんでしょうか。政府としてどのように考えているのか、教えてください。

 そして、今後、外務省は韓国に対してどのように対峙をしていくつもりか、このことについても教えてください。よろしくお願いします。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御言及のございました文喜相国会議長の一連の発言、これは甚だしく不適切であり、同議長の発言が報じられて以来、韓国側に対しては、日本側の厳しい考えを累次にわたって伝達してきております。この点、引き続き謝罪と撤回を求めていくという立場には変わりはございません。

 また、委員の方から、韓国側の外交の特徴か、日本に対してだけかという御質問がございました。

 この点につきましては、先ほどとちょっと重なりますが、こういった発言、行動の一つ一つについて、背景、意図するところを政府として説明することはなかなか難しいということはぜひ御理解いただければと思いますが、いずれにせよ、我が国としては、一貫した立場に基づいて、日韓間のさまざまな問題につき、引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていきたいと思っております。

高村分科員 済みません、ちょっとこれは質問通告はしていないんですけれども、先ほどの防衛省の件に関してなんですけれども、最終的な報告をした後、その後というのは一切、韓国側に対して謝罪の要求とか、事実を認めろとか、そういうような交渉はしているんでしょうか、していないのでしょうか。それだけ、わかったら教えていただけますか。

齋藤(雅)政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省が最終見解を出して以降、韓国側は、韓国側の見解を出しますとともに、さらに、低空脅威飛行といった主張をし、また、それを裏づける写真等の公表を行っております。

 これに対しましては、防衛大臣より、明らかに事実に異なるということで、しっかりと防衛省の考え方を対外的にも公表しているということでございます。

高村分科員 済みません、引き続き、日本側から、最終結論を出したけれども、ちゃんと謝れとか認めろということは言い続けているということでよろしいですね。

齋藤(雅)政府参考人 そのように対処しているところでございます。

高村分科員 どうもありがとうございます。済みません、質問通告していない質問で、申しわけございませんでした。

 続きまして、ちょっと観点を変えて伺いたいと思います。

 最近、フランス政府が在イタリア・フランス大使を召還したという報道に接しました。この事実関係、バックグラウンド等について教えてください。

齊藤(純)政府参考人 お答え申し上げます。

 今月二月五日に、ディマイオ・イタリア副首相がフランスを訪問した際、黄色いベスト運動関係者と意見交換を行い、同運動を支持する旨の発言を行ったこと、また、過去数カ月にわたって複数のイタリア政府要人が繰り返しフランスを非難してきたこと等を受け、二月七日、フランス政府は在イタリア・フランス大使を召還したと承知しております。

 なお、その後、二月十二日に至りまして、マクロン・フランス大統領とマッタレッラ・イタリア大統領との間で行われた電話会談において、両国の関係を正常化させるために、両国の間に意見の相違があったとしてもお互いへの敬意を保つことを確認したこと等を踏まえ、二月十五日、在イタリア・フランス大使はローマに帰任したと承知しております。

高村分科員 ありがとうございます。

 普通の国というのは、そうやって、その国にとって許せないようなことがあった場合、外交の一つの手段として大使の召還、こういうことは十分し得るものだと思います。

 そこで、伺います。今、日本と韓国の置かれている状況は、フランス政府が在イタリア・フランス大使を召還したこの状況と比較しても、十分に大使召還に値し得る、このような状況だと私は考えますが、政府の認識を教えてください。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現在のフランス、イタリアの関係と日本、韓国との関係との比較ということは、第三国間の関係にもかかわりますので、ここについては直接コメントすることは差し控えたいと思いますが、委員御質問の、現在の日韓関係において駐韓大使をどうすべきかということにつきましては、日韓関係や北朝鮮問題に関する日韓の間の高いレベルでの意見交換や情報収集のため、引き続き現地で任務に当たらせることが重要というふうに考えておる次第でございます。

高村分科員 ありがとうございます。

 ちょっとこれも質問通告の中にないんですが、日本が過去に、国交のある国から大使を召還した、あるいは帰国中の大使を戻さなかった、こういった事例があるのかどうか、あればどんな場合なのか、こういうことについても教えていただければと思います。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに日韓の関係で、慰安婦像の関連だったと思いますが、現在の長嶺駐韓大使が本国との打合せということで日本に戻ってこられたという事例はあったというふうに承知しております。

高村分科員 済みません、質問通告のない質問で。ありがとうございました。

 旧朝鮮半島出身労働者問題について、大法院判決を受けて日本企業の資産への具体的な差押えなどの動きがあった場合の、政府はどのような対応をとっていくつもりなのか、この件について教えてください。

 そして、日本政府がとり得る対抗手段の具体的な内容についても、もちろん、まだ検討中ですし、相手があることでもあるので答えられないこともたくさんあるんだと思いますが、答えられる範囲で構いませんので、教えてください。お願いします。

河野国務大臣 大法院判決によって日韓請求権協定違反の状態になって、韓国政府が今日までそれを是正する措置をとってこなかったというのは、極めて遺憾に思っております。日本としては、請求権協定に基づいた協議の要請をいたしておりますので、私としては、韓国政府が誠意を持ってこれに応ずるだろうというふうに思っております。

 万が一、日本企業に何らかの不当な不利益が生じるような事態になった場合には、当然、我が国としてそれに対応する措置をとらなければならないということになりますが、どのような措置をとるかということを申し上げると、それに対抗措置をとられてしまうということにもなりかねませんので、実際にそのようなことになるまで、公の場で何をするかというのを議論するのは差し控えさせていただいているところでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います。

高村分科員 河野大臣、ありがとうございました。なかなか大変な一日なので、きょうは大臣の答弁は要らないというふうに申し上げたんですが、答弁に立っていただきまして、本当にありがとうございます。

 ちょっとこの件でもう一つ聞きたいんですが、補足なんですけれども、表には言わないとおっしゃいましたけれども、しっかりとそれも含めて日本政府が検討しているから、訴えられた企業の皆さんは安心して日本政府の対応を待っていてもいいのか。いいという決意をおっしゃっていただければ大変うれしく思います。

河野国務大臣 政府として、これまでも累次、関係する企業に政府の立場を御説明申し上げているところでございますし、政府としては、この請求権協定違反で日本企業が不当な不利益をこうむらないように全力で対応してまいるつもりでございますので、そこは関係する企業と、きちんと情報を提供しながら、この問題に対応してまいりたいと思っております。

高村分科員 大臣、本当にありがとうございました。

 普通の人間同士の、個人の友人関係でも、いつもへらへらして怒らない人間、こういう人間はばかにされるんですよね。日韓が本当の意味で隣国として仲よくしていくためには、今まで日本政府がとってきたような大人の対応というもの、これをこれからも続けるだけではなくて、今は、日本としてもう許される限界点を超えたと思うんですよね。今は本気で怒らなければいけないときだと思います。怒らなければ、逆に彼らが更に日本をばかにして図に乗る、こういうことだと思います。

 私としては、今すぐにでも駐韓日本大使を召還する、そして、日本企業に対する、資産に対する差押え等があった場合にはしっかりと経済制裁を行っていく、韓国に、日本を侮ってはいけない、彼らがそういう認識を持ったときに、初めて本当の意味での友好関係が成立するんだと思います。

 この点に関して、感想なり御意見をいただければと思います。お願いします。

河野国務大臣 日韓両国に、お互いを非難すると喜ぶという勢力がいるのは事実で、そうした勢力に向かって強いことを言うという人もいらっしゃいますが、今、日本と韓国の間は、一千万人を超える人の往来がございます。韓国側の方が、韓国側から日本に来られる人の方が圧倒的に多いわけですが、日本から韓国に行く人の数もかなりの勢いで伸びております。

 こういう中でございますから、お互いの国を訪問し、相手の国のことをよく理解し、相手の国民としっかり、さまざまな形で触れ合っていただくことによって相手の国のことを理解してもらうというのが非常に大事なことなんだろうというふうに思っております。

 ただ、この請求権協定というのはこの日韓の両国関係のいわば法的基盤でありますから、その法的基盤を揺るがすようなことを放置するわけにはいきませんので、日本政府としては、この問題にはしっかりと韓国側が対応してもらうように、ここは断固たる姿勢で臨んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

高村分科員 河野大臣、ありがとうございます。ぜひ、その覚悟でお願いしたいと思います。

 私の選挙区、山口県であります。山口県も非常に韓国の方が多い土地柄であります。JC等で一緒になった私の友人にも韓国の方はたくさんおります。日本と韓国が本当の意味でよい隣人になれること、このことを心から祈念いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 本当にありがとうございました。

井野主査 これにて高村正大君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤和也君。

近藤(和)分科員 石川県能登半島の近藤和也でございます。

 私のこの手の形というのは、能登半島ですね。日本海に突き出た能登半島で、そして越前海岸があって、加賀の国があって、越中があって、越後があるということで、よく国会の場では、質問させていただいているときには、このマークであったり、こういう形で私が質問をさせていただいているということも大臣にはお見知りおきをいただければというふうに思います。

 きょうは本当に大変な一日ということで、先ほどの委員の方も言われました。大臣も気が気ではないと、心はベトナムにあるのかもしれませんけれども、きょうは、私の質疑のときには、この日本海に気持ちを置いて質疑に答えていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 私、ふだん農林水産委員会に所属をしていることが多いです。そこで何度かお話しさせていただいているんですが、ブタイフカアカアという言葉をまず御紹介をさせていただいています。

 大臣、石川県は何度か来ていただいていると思いますが、能登半島はお越しいただいたことはありますか。これは質問ではないですけれども、ぜひとも能登半島、お越しいただければと思います。

 ブタイフカアカアというのは、ブはブリです。ブリ、寒ブリの祭りが冬にあります。そして、タはタラ。タラの起舟祭、日本海側は冬はなかなか漁ができないんですが、二月の十一日から船を出せる、船を起こすということで起舟祭がございます。そのときに、お祝いということでタラ料理を振る舞うということがございます。そして、フ、フグはフグ祭り、こっちはフグですね、能登半島は日本で一番の漁獲高を誇ります。

 そして、ブタイフカ、ブリ、タラ、そして、イ、済みません、イが抜けました。きょうも少しお話しさせていただこうと思いますが、大和堆における北朝鮮違法船籍によるけしからぬ行為がございますけれども、イカす会というのも、イカ祭りというのがあるんですね。大和堆などに出ていくときに、まずは漁師さんたち、一緒に盛り上がっていこうと、イカす会というイカ祭りもございます。

 そして、カアカアのカはカキ祭り。先週も、能登半島でカキ祭り、七尾市の中島というところでありました。穴水というところにもカキ祭りがあります。そして、アはアンコウですね。アンコウ祭りというのも、この能登半島の先端の市でございます。そして、もう一つのカはカニ祭り、これは十二月にかほく市というところと輪島市でございます。そして、最後のアはアワビです。

 もう、すごく大臣もお腹がすいてきたのではないでしょうか。ちなみに日本酒も、杜氏の方がたくさんいらっしゃいますので、この海の幸、ブタイフカアカアと、そして、その他の海の幸もあるんですが、きょうは、私の背中にこのお魚たち、海産物、そして漁村、そして日本海があるという、それを想定して質問をぜひとも私からしたいと思いますし、私の後ろには日本海が控えているんだなということで質疑に臨んでいきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 早速でございますが、昨年の十一月、十二月に、まずは、先ほどから韓国のお話がございますが、韓国籍の船とさまざまなトラブルがありました。十一月十五日の案件、十一月二十日の案件、そして十二月四日の案件について質問をいたします。

 水産庁、海上保安庁さん、それぞれで、まとめてで結構です。この三件、どのような形で受けて、対処して、事後的にどのような動きをしたのかということをお答えください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 最初の一件目、昨年十一月十五日に発生いたしました韓国漁船との衝突事故につきましては、漁船の帰船後、水産庁として日ごろから行っております安全対策を指導する漁業者の育成、確保に対する支援、さらに、関係省庁との連携による船舶同士の位置や針路が確認できる船舶自動識別装置の普及を改めて徹底したところでございます。

 二件目の昨年十一月二十日に発生いたしました韓国海洋警察庁警備艦が日本漁船に接近した事案につきましては、水産庁漁業取締り船と海上保安庁巡視船とが連携いたしまして日本漁船の安全を確保するとともに、水産庁の方から、韓国警備艦による我が国漁船への一連の措置は明らかに日韓漁業協定に違反しており、我が国としては断じて受け入れられない旨の抗議を行ったところでございます。

 さらに、昨年十二月四日に島根県沖で発生いたしました韓国漁船による日本のイカ釣り漁船の漁具破壊事案につきましては、韓国側に対しまして漁船間事故の再発防止を強く申し入れるとともに、両国の漁業者団体による事故処理のための実務者協議を開催し、韓国側への報告及び再発防止を求めたところでございます。

 いずれにいたしましても、水産庁としましては、今後とも、我が国漁船の安全操業の確保のため、海上保安庁や外務省と連携して対応してまいりたいと考えております。

星政府参考人 お答えいたします。

 まず、日本漁船と韓国漁船が衝突した事案について申し上げます。

 昨年十一月十五日午前九時三十五分ごろ、石川県能登半島北西の大和堆周辺海域で日本漁船と韓国漁船が衝突した旨、付近を航行する別の日本漁船から海上保安庁に通報があり、海上保安庁では直ちに巡視船及び航空機を発動し、日本漁船及び韓国漁船の乗組員全員にけが等がないことを確認いたしました。その後、巡視船による伴走警戒を実施し、日本漁船は翌十六日午前、新潟港に入港しております。

 次に、日本漁船が韓国海洋警察庁警備艦から無線交信を受けた事案について申し上げます。

 昨年十一月二十日午後八時三十分ごろ、大和堆周辺の我が国排他的経済水域において、韓国海洋警察庁警備艦から日本漁船に対し、操業をやめて海域を移動してくださいとの無線交信があり、同警備艦が接近してきていることを確認したため、巡視船から韓国警備艦に対し、日本漁船に対する要求は認められない旨申し入れたほか、巡視船が日本漁船と同警備艦との間に位置するなど、適切に対応し、日本漁船を保護しております。

 また、日本漁船が韓国漁船に漁具を切断された事案について申し上げます。

 昨年十二月四日午前二時二十分ごろ、第八管区海上保安本部が、島根県沖の日韓暫定水域において操業中の日本漁船が韓国漁船を呼び出す無線を傍受したことから、同日本漁船に対し、無線などにより状況を確認いたしました。その結果、韓国漁船が日本漁船の船首側を横切った際に同船のパラシュートアンカーのロープを切断したことが判明したことから、引き続き、けが人の有無や船体の状況など、日本漁船の安全確認を行ったところでございます。

 引き続き、海上保安庁におきましては、関係省庁と緊密に連携し、大和堆周辺海域などで操業する日本漁船の安全確保に努めてまいります。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。

 この三件を受けてということですけれども、それぞれについて外務省としての動きをどうされたのかということを、大臣、お願いいたします。

河野国務大臣 先週の土曜日に金沢へ伺わせていただきまして、ノドグロを始め海の幸をふんだんに食べて帰ってきたところでございます。ありがとうございます。

 お尋ねの三件の中で、昨年十一月二十日の韓国の海洋警察庁警備艦による操業停止要求事案、これは明らかに日韓漁業協定に反しているわけでございまして、韓国外交部には外交ルートを通じてその旨抗議をしましたところ、先方から、韓国側警備艦が日本漁船に対し操業停止等を要求したことはまことに遺憾であり、再発防止に努めたいという旨の反応がございました。

 今後このようなことが起きないように、外務省としてもしっかり対応してまいりたいと思っておりますし、そのほかの二件につきましても、先ほど答弁のあったとおり、関係省庁により適切に対応がなされたものと承知をしております。

 外務省としては、今後も、関係省庁と連携しながら、この種の事案に適切に対応していきたいと思います。

近藤(和)分科員 ノドグロを食べていただきまして、ありがとうございます。できれば、金沢よりもっともっと北上していただいて、二時間北上できますので、よろしくお願いいたします。

 さて、実際にはもう笑い事じゃないんですよね。もう相当厳しい状況です。皆さん、命がかかっています。結果として命を失われることはこの三件の事案ではないですけれども、いつ命を落としかねない、きょうでもあしたでも。まあ、今は漁が休みのところが多いですけれども、これは全て日本が権益を主張できる地域、EEZですよね、海域は。なのに、自分たちの命が脅かされているということ。特に、三件目のロープが切られたというのは、ロープがもし切れていなかったら、そして、もし船がそのまま数メーター、間違って衝突していたら、命を落としていた可能性がございます。

 先ほど気になりましたのが、大臣が、二例目ですね、韓国の海洋警察庁警備艦が日本に対して行った警告は間違っている、これに対しては謝罪があったといったことは、これは結果として、そのとおりで、しっかり動いていただいて感謝をいたしますし、向こうの素直な姿勢も見られました。

 けれどもですが、一例目、三例目については、特に三例目ですね、実務者協議ということで、先ほど水産庁さんが言われましたが、具体的に、じゃ、相手の心に響いたのかといったところですね。対処は、日韓民間漁業協議会で申し入れたんですよね。しかも、たまたま翌日だったということなのか、意識してなのかということ、そして、この日韓民間漁業協会がしっかりと韓国政府に対して、こういう危ないことがあった、いかがなものかということが伝わったのかどうかということ、ここはいかがなんでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 日韓民間漁業協議は、十二月十一日に開催されております。三件目のパラシュートアンカーが切断された事件に関しましては、日本側より事例を報告し、さらに、近年パラシュートアンカーの漁具トラブルが頻発していることから、民間取決めを遵守の上、イカ釣り漁船の周辺を航行する際は十分な距離を維持するように求めております。これに対しまして韓国側は、関係する漁業協会に注意喚起を行うと発言しております。

近藤(和)分科員 本当の意味で、相手国に、韓国に伝わっているのかどうかというところは、不安を覚えます。

 今あえて三件申し上げましたが、もっともっと、見えない、危なかった事案も恐らくあったんだろうと思います。相手の確認ができないから言い切れない、恐らく皆様にはもっともっと、相当な数の苦情が行っていると思います。私も、ある船長さんから、今こういう状況だよ、日本海の状況はと、LINEで映像をいただきました。大変だと思います。

 いつ衝突事案があってもおかしくないと思いますが、このことについて、では、ロープが切れました、生命が脅かされかけました、韓国の船、もう相手もわかっていますよね、に対して、何らかの弁済を求めるということはできないんでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 このような民間間の衝突事例に対処するために、日韓民間漁船間事故処理委員会というものがございます。この場で、日本側の船主さんの方から損害を要求するということが提起されましたらば、事故処理委員会が開催されて、協議が開始されるということになります。

近藤(和)分科員 民間の方、この漁師さん方、危ない思いをして、そしてその手続を更に相手に求めるという行為はかわいそうですよ。こういうときのための国なんじゃないでしょうか。

 そして、漁業関係者の方には、公海上のことだからということで、何かあったとしても、相手を処罰するということ、抗議が難しいのではないかといったやりとりがあったということも聞きました。

 大臣、もし公海上で日本の船が、あえて国は言いませんが、どこかの国に衝突をされて日本人に死者が出てしまったという場合は、これは外交上どのような扱いになるんでしょうか。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 なかなか具体的な状況を抜きにお答えするのは難しいところがございますが、一般に、今の三つの事例でもおわかりのとおり、十一月二十日の事案は、先方が違法な公権力の行使をしたということで、国際法上問題ということで、外交ルートで申入れをしました。

 他方で、その他の事案については、それぞれの個別の状況、悪質性ですとかその被害の程度、そういったもの等々を勘案して、例えば死者が出たとかそういう場合については、さらに関係省庁の間で、外交ルートを通じてやるかどうかも含めて、総合的に検討していくことになるというふうに理解しております。

近藤(和)分科員 大臣、これは、死者が出てから動いたら遅いんですよ。死者が出ないように、韓国の政府に対して、今お互いが権益を主張し合っている、そして折り合っているこの暫定水域ですよね、暫定水域における、結果として乱暴になる行為というのはお互い気をつけていきましょうということは、私はこれは韓国政府に伝えるべきだとは思いますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 この日本海の漁業の問題については、日韓外相会談あるいは文在寅大統領に表敬をした際にも話に出ておりますので、これは日韓両国でこの問題は非常に深く認識をし、両国とも対応すべく努力をしているところでございますので、外務省としても、この問題を認識し、しっかりと対応してまいりたいと思います。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。

 いつ言ったんですかとかそういったことはきょうは伺いませんけれども、実際には、韓国と、本当に今、悔しいというか残念な案件が幾つかございます。ただ、それはそれとして、今、現在進行形で、命を脅かされながら、それでもやはり自分の糧、飯の種をとってこなきゃいけませんから、そういう方々がたくさんいらっしゃるということ。そのためにも、必要な交渉というもの、対話というものは必要だということで、ぜひとも、これからも、もっともっと、日本海に思いを寄せて仕事に当たっていただきたいなと思います。

 さて、それでは、次は北朝鮮に移りたいと思います。

 今、日本国として、北朝鮮、問題意識、どこに力点を置いているのか、優先順位、言いにくいかもしれないですけれども、この部分について、大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイル、こうした諸課題を包括的に解決し、国交を正常化しようというのが我が国の基本方針でございます。

近藤(和)分科員 日朝平壌宣言に基づいてということで、外務省のホームページでも、また官邸のホームページでも、拉致、ミサイル、核だということで書かれております。

 ぜひとも、違法操業問題、そしてまた漂着船、これも過去最大です。過去最大だった昨年度のもう倍近く漂着船が来ています。海岸線に住まわれている方、大変です。私も漂着船を見に行きました。平べったい小さな船から十メーターを超える大きい船まで、木くずとしても危ないですし、これに人が乗ってきて、どこに上陸しているかわからない。日本海側は過疎地が非常に多いですから、そういった中で不法入国もどのような形であるかわかりません。ぜひとも、北朝鮮とのこの問題については、日朝平壌宣言以外の部分でも気配りをお願いをしたいと思っています。

 そして、その上でなんですけれども、やはり総理の施政方針や大臣の通常国会冒頭の外交演説、この中でも、韓国の部分が多いか少ないかということはあえて申し上げませんが、北朝鮮に関しての思い、行動という、もちろん、大事なことはたくさんある中で、日本海に対しての意識が私は薄いんじゃないかなと思います。

 日本海という言葉、調べていただければわかりますけれども、入っていません、一言も入っていません。一方で、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉であったり、東シナ海、もちろん大事ではありますけれども、インド太平洋については、言葉とすれば、これは昨年、「法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序は、国際社会の安定と繁栄の礎です。」、全くそのとおりだと思います。「特に、アジア太平洋からインド洋を経て中東、アフリカに至るインド太平洋地域は、世界人口の半数以上を擁する世界の活力の中核です。」、ここまで言われているわけですが、ぜひともこの日本海も活力の中核であるという思いを持って、拉致、核、ミサイル、そしてこの違法操業問題というところは、それぞれの温度差はあるとは思いますが、これは過去のものじゃなくて今、まさしく今、進んでいることでございます。

 この件についての、大臣、御認識はいかがでしょうか。違法操業問題についてです。

河野国務大臣 日本海だけ除いているわけではなくて、瀬戸内海とかオホーツク海というのも入っていないわけで、それは別に、優劣をつけているとか優先順位をつけているというわけではなくて、外交の中で目指しているものを書いた結果がそうなったわけでございます。

 北朝鮮の拉致問題、あるいは核やミサイルというのは、これは今、国際社会を巻き込んで対応している大きな話題であるから、外交演説にも書きましたし、あるいは総理の施政方針演説の中にも書かれたわけでありますが、この日本海の問題というのは、今、日々起きている、もう我々が現実にそこにある問題として対応している問題でございますので、これは優劣とか優先順位とかという問題の前に、これは日々しっかりと、関係省庁連携をして対応しなければいけない、そういう認識で我々はやっておりますので、外交演説に日本海が出てこないからということではなくて、極めて重要な、そして委員おっしゃったように、人命がかかわりかねないという問題だと我々は認識して当たっておりますので、お地元としっかりと連携をしてこの問題には対処してまいりたいと思います。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。

 水産庁、海上保安庁さんも、本当にいろいろな意味で矢面に立たれておられます。感謝されることもあれば、怒られる場面も相当あると思います。もちろん、漁業関係者の方が最もつらいわけでございますけれども、ぜひとも外務省さんにも矢面に立っていただいて、表に出ていただいて、一緒になって頑張ってほしいと思います。よろしくお願いいたします。

 補償問題のことについては、これは難しいということも含めて、ちょっときょうは、済みません、質問を飛ばさせていただきたいと思います。

 それでは、次に参ります。

 北朝鮮に対しての経済制裁、国連の制裁も含めて、現状、この制裁の結果ということも踏まえて、北朝鮮の経済状況はどのように見ていますでしょうか。

河野国務大臣 国連の安保理の決議に基づいて、今、国際社会は極めてしっかりと団結を維持してこれているというふうに認識をしているところでございます。

 WFPと北朝鮮の間で人道支援のやりとりというのが最近ございましたが、相当にこの経済制裁の影響を北朝鮮が受けているという現実があるようでございます。

 ただし、他方、北朝鮮は、石油製品が入手できないために、瀬取りなどといった手法を用いて石油製品を国内に持ってくるということをかなり頻繁に繰り返しております。

 国連の安保理決議の実効性を高めるためには、そうした抜け穴をしっかりと防いでいく、塞いでいくという努力を国際社会としてやってまいりたいと思っておりまして、日本のほかに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、あるいはイギリス、フランスといった国々が、航空機あるいは船舶といったアセットを出して、瀬取り対策を今やっているところでございます。

 更にこの実効性を高めるために、我々としては、中国とも情報の共有をしながら、全ての海域に穴がないように、これからしっかりと対策を打っていきたいというふうに思っております。

近藤(和)分科員 国際社会で団結して、そして抜け穴を少なくしていくというお話を伺いました。

 それでなんですけれども、北朝鮮制裁委員会の専門家パネル、今こちらについては報告書をまとめたという報道が出ておりました。ただ、この報道で見る限り、団結しているように残念ながら見えない。そして、抜け穴というよりも、本当に大きな穴ができてしまっているということ、これは正直、この現状を私は把握をしていただかなくてはいけないのかなと思っています。

 もう時間がありませんので私の方から申し上げますけれども、原油についても、五十万バレルの上限のところを数倍超える量が入っているのではないか、百四十数回の瀬取りが行われたのではないか。外務省さんからいただいた資料では十一回と出ておりましたけれども、全体ではそれだけの数がある。そしてさらには、中国漁船へ漁業権が売却されているということも含めて、私はぜひとも認識として持っていただきたいのは、やはり皮膚感覚。

 漁師さんたちが言われるんです。おととしと比べて去年は、北朝鮮の船が、木造船がほとんどだったのが、大きな鋼船がふえてきた、これは油を食うから、瀬取りをされてしまっているんじゃないか、制裁がきいていないんじゃないかという意見が一つ。

 そして、私がもう一つ心配しているのが、今、漁業権を北朝鮮が中国に売却して、中国の鋼船、中国の船に北朝鮮の旗を掲げて大和堆にやってきているという可能性も指摘されてきているわけです。そして、これがあるから実は立入検査もしにくい。北朝鮮の船に対しては立入検査したことがないということも伺っていますけれども、北朝鮮の船だと思って乗り込んだら中国の船だったといった可能性もあるわけですよね。

 もちろん、これは外交上、大変な問題になるとは思います。思いますけれども、そういう可能性もあるということ、そして、一番困っているのは漁師さんなんだといったことも含めて、本当の、努力をされているのはわかります、経済制裁、一生懸命されているのはわかります。けれども、いろいろな穴がもう起きてきているということもぜひとも認識をしていただいて、この日本海の海、生命と財産を守っていただくように努力をしていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて近藤和也君の質疑は終了いたしました。

 次に、中曽根康隆君。

中曽根分科員 自由民主党の中曽根康隆でございます。

 河野大臣におかれましては、きょうは本当に大変な日にもかかわらず、こういった貴重な質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 大臣は、就任以来、五十八カ国・地域を非常に精力的にハイペースで外遊されていること、私、本当に誇らしく思いますし、さきの外務大臣専用機の話、私、個人的には大賛成だったんですが、今回は残念な結果になりましたけれども、チャーター機の予算として前年度の六倍、四・二億を確保できたというのは大変喜ばしいことであると思いますし、せっかくですので、どんどんチャーター機を使っていただいて、引き続き、日本の顔として外交を積極的に進めていただきたいというふうに思っております。

 それでは早速、質問に入らせていただきます。

 まず、少し大きい話になりますけれども、日本の外交戦略全般についてお伺いをしたいと思います。

 先日、私も参加させていただきましたけれども、天皇陛下の在位三十年記念式典がございまして、その中で、陛下のお言葉でこういった一文がありました。「我が国も、今、グローバル化する世界の中で、更に外に向かって開かれ、その中で叡智を持って自らの立場を確立し、誠意を持って他国との関係を構築していくことが求められているのではないかと思います。」こういったお言葉がありました。

 日本は、戦後、経済重視、軽武装、そして日米安保という、いわゆる吉田ドクトリンを国家戦略として、目覚ましい経済発展を遂げてまいりましたし、アメリカの有名な社会学者でありますエズラ・ボーゲル氏も、その著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の中で、この経済成長を高く評価をしているところではあります。

 ただ、やはり、東西冷戦の構造が終えんして、アメリカの傘の下にいれば安全で、そういった時代も終わり、そして、各国がそれぞれのアイデンティティーをしっかりと自覚し、確立し、この世界の中でどうやって存在感を出していくのか、そういった時代に入ってきておりますし、また、昨今では、アメリカが世界の警察をもうやめると明言をし、そして中国は、覇権争いというか、もう大きく世界の中で台頭してきている。そして、今話題の朝鮮半島も過去にないように混乱している、また、先行きが不透明な状況を迎えております。

 そういった中で、大臣にお伺いしたいと思いますけれども、これからの、今まではよかったですけれども、これからの二十年、三十年先を見据えたこの日本という国の大きな外交戦略、これはいかがお考えか、教えていただきたいと思います。

河野国務大臣 私も、天皇陛下のお言葉を聞いておりまして、陛下がグローバル化とおっしゃったのにちょっとびっくりいたしました。

 戦後の国際秩序を維持してきた共通の価値観を持っている国々というのが、日本を始めアメリカ、ヨーロッパ、あるいはカナダ、オーストラリア、さまざまな国がありますが、この自由とか民主主義とか資本主義、法の支配、基本的人権といった価値観を基礎とした国際秩序が今挑戦を受けていると言ってもいいのではないかと思います。

 資本主義にかわる国家資本主義のようなもの、あるいはさまざまな独裁体制、権威的な政府といったものがだんだんと首をもたげてきているという状況の中で、基本的な価値を共有する国々がいかにこの経済発展をもたらした世界的な国際秩序を維持できるかというのが、大きなテーマにこれからなっていくんだろうと思いますし、委員おっしゃったように、アメリカが一人で警察官をやらないという、これは今に始まったことではなくて、振り返ってみれば相当前からそういう動きがある中で、日本やヨーロッパやその他の同志国は、少しずつ自分たちが背負う負担というものをふやしていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 また、私が外務大臣を拝命して気づきましたのは、だんだんと国際会議の中あるいは国際的な場で日本の主張が通りにくくなっているというのが現実なんだろうというふうに思います。かつてのように、ODA世界一位という状況にはもはやなりませんし、経済的にも中国に抜かれ三番手、そういう状況の中で、これから日本の主張をいかに通していくかというのは、これはやはり真剣に考えていかなければいけないと思いますし、日米同盟を始め、さまざま、この基本的価値観を共有する国々とのネットワークを強め、連携をしていく必要がやはりあるだろうというふうに思っております。

 そういう中で、これはもう外交はオール・ジャパンでやらなければいけない、外務省だけでできる話ではありません。しかし、外務省の中に優秀な人材を集め、裸の外交力を高めていくということも同時に必要でございますし、そういう中で、日本が承認をしている国、国連加盟国、二百弱あるわけで、国連の安保理改革とか、国際司法裁判所の裁判官の選挙とか、さまざまなことを考えれば、やはり、全ての国としっかりつき合っていくということが大事になる。

 そうなると、外務大臣の出張も当然効率的にやらなければいけないわけで、委員がおっしゃった専用機、これは外務大臣専用機というか閣僚専用機も当然考えていかなければいけない。今回、チャーター機の予算もふやしていただきましたが、やはり機内から保秘のかかった電話をしようと思えば、当然に専用機がなければできないわけですから、そういう足腰を含め、さまざま日本外交、転換点にある。

 これから日本の外交力を高めていくために、優先順位をつけて、やらなければいけないことをしっかり一つ一つやってまいりたいというふうに思っております。

中曽根分科員 大臣から、決して今の日本の置かれている状況を楽観視しているのではなくて、危機感を持たれてお仕事をされているということが非常によくわかる御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 やはり、基本的価値を共有する一国として、一員として、その中でもリーダーシップを発揮していけるような、そういった外交を展開していただきたいと思いますし、守るだけではだめで、時には攻めなくてはいけないですし、波に乗るのではなくて、時に波をつくっていかなきゃいけないと思いますので、天皇陛下のお言葉でもありました、日本の立場をしっかりと確立するということに関して、大臣には引き続き御尽力を賜りたいというふうに思います。

 次に、自衛官について、ちょっと防衛省の方に質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げたとおりで、アメリカが世界の警察というものからおりてきている状況の中では、やはり、自分の国は自分で守らなきゃいけないんだという風潮が国民の中にも強くなってきていると考えておりますし、その際に大事になってくるのが、やはり何といっても自衛官の存在であります。

 実は、私、地元のおそば屋さんに先日行ったときに、そこのおかみさんが、中曽根さん、応援しているよ、ただね、憲法改正、特に九条に関してはね、私は変えちゃだめだと思うということをおっしゃっていました。詳しく聞くと、そこのおかみさんは、要は、今、日本って人口が減っているでしょう、若い人も減っていくでしょう、そうすると、自衛官、人が足りなくなるよね、希望する人も減っていったら、これは徴兵制になっちゃうんじゃないの、若い人たちが戦地に送られることになるんじゃないの、だから私は反対なのよということを力強くおっしゃっていました。

 私はすぐに、憲法上も徴兵制ということは日本はあり得ませんということをお答えしましたけれども、ただ、そのおかみさんが言っていることも一理あるなというのがありまして、やはり、どうやってこれからの人手不足の中で自衛官を確保していくのかというのは、これは大きな問題だというふうに思っております。

 私自身、自衛官支援議員連盟の事務局のメンバーとして、処遇に関して、採用に関して、また退官後のキャリアに関して、いろいろと環境整備の面、協議はしておりますけれども、この点、防衛省として、国のかなめとなる自衛官の確保についてどうお考えか、お伝えいただければと思います。

鈴木(貴)大臣政務官 ありがとうございます。

 自衛官の採用対象者人口の減少、また高学歴化、そして労働市場が売り手市場であることなどから、中曽根先生御指摘のように、今、自衛官の採用をめぐる環境というものは厳しさを増していると言っていいかと思います。

 しかしながら、我が国の防衛を担う自衛官を安定的に確保するということは、まさに安全保障上、極めて重要な課題であるとも認識をしているところであります。

 平成二十九年度の現状を申し上げさせていただきますと、応募者数は九万三千百七十四名、最終合格者が二万九千二百十一名、採用者は一万四千九十名を確保させていただきました。

 部隊の中核を担う陸海空曹を目指す、いわゆる一般曹候補生でありますが、計画どおり、約五千名の確保をすることができたところであります。

 他方で、任期制の自衛官、いわゆる自衛官候補生の採用でありますが、約九千四百の計画数に対し、現状は七千五百名にとどまっております。

 そういったことから、自衛官候補生を含め、優秀な隊員の確保は我々としても真っ正面から取り組むべき重要な課題であり、採用年齢の引上げ、そしてまた採用層の拡大、女性自衛官の活躍推進、そして、先ほど中曽根先生からも、日ごろからも御指導いただいておりますが、隊員の処遇改善等の施策を総合的に力強く推進をすることにより、自衛隊のまさに人的基盤というものの強化に努めてまいりたいと思っております。

中曽根分科員 鈴木政務官、ありがとうございました。

 今おっしゃっていただいたような細かいことを一個一個改善することで確保というのはプラスに動くと思いますし、何よりも、それに加えて、やはり、国民の中で、体を張って最前線で命をかけて頑張ってくれている自衛官という皆さんに対する尊敬の念、そういったものの国民意識をしっかり醸成していくということは大前提として大事だと思っておりますので、引き続き御尽力をよろしくお願いいたします。

 続きまして、また大臣にお伺いしたいんですけれども、日韓関係についてですが、本日は、もう日韓関係、さんざん大臣も質問されて、私も質問するのは心苦しく思うんですけれども、やはり今現在、国民の関心が非常に高いところですし、御質問させていただきたいと思います。

 先日、文国会議長が、慰安婦問題に関して、天皇が謝罪すべきという旨の発言をいたしました。これは日本人としては到底受け入れられない、もうあるまじき発言で、大変怒りを覚えたところでありますけれども、そのほかにも、徴用工の賠償の問題であったり、レーダー照射の問題であったり、日韓関係というのが過去にないぐらいやはり冷え込んでいる。お互いがお互いの国を批判する報道を連日やっている。私、これは本当に危惧をしております。

 また、三・一の独立運動に際しても、今度は文大統領の方から親日清算の発言もありまして、やはり当日、各地で反日イベントが起こる可能性も大いにあるという状況であります。

 この日韓関係、なかなか解決の糸口が今見えない状況でありますけれども、今後の日韓関係の大きな方向性、特に切っても切れない隣国でありますので、やはり未来志向をしっかりと追求していかなきゃいけないという中で、どうやってこれから日本としては韓国と前をともに向いて歩いていくのか。

 そしてもう一点、今回のこの日韓関係の極めて深刻な状況というのは、文在寅政権だからなのか、それとも、そうでなくて、大統領がかわったとしても、今後日本は常にこういうことに直面していくことを予想されるのか、そこら辺も踏まえてお答えをいただければと思います。

河野国務大臣 何年か前に「冬のソナタ」という韓国のドラマがありまして、多くの日本の方も冬ソナファンという方がいらっしゃって、日本のSMAPを始めとする文化が、ポップカルチャーが韓国でも幅広く受け入れられて、日韓関係が非常にうまくいくという時期がございました。残念ながら、それは、当時の李明博大統領が竹島に上陸をするという暴挙に出たことによって、それをきっかけに少しおかしくなってしまったというのは非常に残念であります。

 昨年の初めから、私と韓国の康京和外務大臣との間で、新しい日韓関係を未来志向でつくっていこうということで、お互いに有識者会議やタスクフォースを立ち上げて、これから何をやっていったらいいかという議論をかなり積極的に行っておりました。大変有益な提案も多くいただいたところでございます。

 ところが、韓国の大法院で日韓請求権協定を根本から覆すような判決が出されたことによって、今、この日韓両国の関係の法的基盤を揺るがしかねないという事態になっておりまして、これは非常に危惧しているところでございます。韓国政府に対して、この状況を早く是正をしてもらいたいということは再三再四申入れをしておりますし、日韓請求権協定に基づく協議の申入れをいたしました。私としては、韓国側が誠意を持ってこれに応じるというふうに思っております。

 この問題が、やはり両国の法的基盤を損ないかねない非常に大きな問題でございますから、私どもとしては、まずこの問題をしっかりと解決をするというのが大事なことだというふうに思っております。

 他方、先ほども申し上げましたけれども、日韓両国の間の人の交流は合計すると一千万人を超えて、両国とも、前年と比べてその数はふえているわけでございます。お互いに、国民の交流が盛んになり、相手の国のことを実際自分の目で見、体験し、理解をするというのが、この両国の間を、関係をよく保っていくためには一番いいことだと思っておりますので、この流れは非常に重要だというふうに思っているところでございます。

 政府間、いろいろございますけれども、国民の交流をこれからもしっかりと維持していくということをやっていきたいというふうに思っております。

 また、これは政権の問題なのかというお尋ねでございますが、過去を振り返ってみれば、金大中大統領のように、日本の小渕総理と一緒にパートナーシップ宣言を出され、日韓関係を本当に前へ進めていこうという方もいらっしゃったわけでございますので、そこはなかなか一概にどうというのを申し上げるのは非常に困難だと思いますが、いずれにいたしましても、両国の国民の多くがそれぞれの隣国を大切に思い、友好的な感情を持つというのが大事だと思いますので、この両国の国民の交流というのをこれからもしっかりと伸ばしていきたいというふうに思います。

中曽根分科員 ありがとうございます。

 「冬のソナタ」がはやっていたときは、私もヨン様のまねをして髪を伸ばしたりなんかしてみたりしたのを今思い出しましたけれども。

 ソフトパワーというのは非常に大事ですし、民間の交流が盛り上がっているときにこそ、政府間の関係のせいでその民間交流にも亀裂が入るというのは非常にもったいないことだと私は思っておりますので、やはりとにかく前向きに、政府間が率先して、そして、政府間がなかなか話ができない難しい状況のときでも、日韓議連とか日韓協力委員会とか、そういった議会間の交流というものもしっかりと使いながら、何とか両国を前に進めていければなというふうに思っております。

 続いて、関連で徴用工のことをお伺いしますけれども、韓国の原告側が新日鉄住金の韓国内の資産を差し押さえて、そしてこれをいよいよ現金化、キャッシュ化しようという話が出ておりますけれども、万が一これがこうなったら本当に大問題だというふうに思っております。

 大臣今おっしゃったとおりで、一九六五年の日韓請求権協定によって完全に解決しているという立場はもちろん変わりませんけれども、最悪のシナリオ、もしこれがキャッシュ化されたときに、日本としてどういった対応をとるのか、もしそれがありましたら教えていただければと思います。

河野国務大臣 この問題については、先ほど申し上げましたように、請求権協定に基づいて協議の申入れをしておりますので、私としては韓国側が誠意を持ってそれに応ずると思っておりますが、万が一日本企業に不当な不利益が生じるようなことがあれば、日本政府としてしっかりと対応策をとる用意をしているところでございます。

 内容については、これは手のうちを明かすことになりかねませんので、この場で申し上げるのは差し控えたいと思いますが、そこはしっかりと、政府一丸となって準備を進めてまいりたいと思います。

中曽根分科員 手のうちはもちろんあれですけれども、しっかりと対応していただけるということがわかっただけでも心強く思います。

 やはり、日本の大人の対応が通用するのは、相手が大人だからでありまして、時には、しっかりと相手にわからせなきゃいけないというときもあると思います。

 同時に、やはり、これは二国間の問題ではありますけれども、日本の正当性というのをしっかりと世界に訴えて、国際世論を巻き込んで解決していく、そういった方向も同時に推し進めていただきたいというふうに思います。

 続きまして、米朝関係についてお伺いをいたします。

 まさに今夜、本日、あすにかけて、第二回の米朝首脳会談がベトナム・ハノイにおいて行われるわけでありますけれども、最大の焦点は北朝鮮の非核化であります。

 ただ、私、一点、非常に懸念をしているのは、韓国が、南北の経済協力カード、協力するよというカードを出してきて、仲裁役を積極的に買って出ている。

 アメリカのトランプ大統領、選挙を控えている。そして、文在寅大統領、北に歩み寄りたい。北朝鮮の金将軍は、何とか経済を発展させたい。もし、こういった三者の思惑が一致したことによって今回大きな進展を見せたときに、日本というのが、どこか蚊帳の外というか、置き去りにされないかというのが非常に心配であります。

 というのは、非核化はもちろん大事なんですけれども、やはり日本にとっては、北朝鮮においては拉致問題というのが何よりも大事な核としてあるわけでありまして、やはりここをしっかりと、この首脳会談も含めて、拉致問題もしっかりと踏まえてもらって物事が前進しないことには、日本の国益にはならないと思っております。

 そういった意味で、日本として、水面下でも構わないですけれども、しっかりと今回そういったところもグリップできているのかどうか、そこをお聞かせ願いたいと思います。

河野国務大臣 この北朝鮮の問題に関して申し上げれば、日米は一枚岩と思っていただいて結構でございます。つい先日もポンペオ国務長官と電話会談を行いましたし、今、ハノイでは、日米間でさまざまやりとりをしているところでございますが、この核、ミサイルのCVIDなしに経済制裁を解除することはないという日本の立場は全くアメリカと同一でございますし、北朝鮮が言っている開城あるいは金剛山の観光といったことも、これは経済制裁下ではできないということも一致をしております。

 また、アメリカは、トランプ大統領を始め、日本の拉致問題についても非常に重要視してくださっているという状況は、これはもう先般来変わっておりませんので、日米、この米朝のサミットに向けて一枚岩で臨んでいるというふうに考えていただいてよろしいと思います。

中曽根分科員 大臣じきじきに力強いお言葉をいただけたことは、大変うれしく思います。

 拉致被害者家族会の代表である飯塚さんという方が、けさのインタビューでこのように述べております。今回の米朝首脳会談が最後のチャンス、拉致問題について言っておきますよという程度では困るということをおっしゃっております。

 今回が最後のチャンスかどうかはわからないですけれども、ただ、日朝首脳会談の実現も視野に入れて、ぜひともこの拉致問題の前進、政府として御尽力いただけるようにお願いを申し上げる次第でございます。

 続いて、ODAについてお尋ねをいたします。

 日本政府は去年、中国へのODAを今年度限りで打ち切るということを決めました。一九七九年以降、円借款、無償資金協力、技術協力といったODA、約四十年間継続して、トータルで三兆六千五百億円、この巨大な額を中国に支出した結果、中国の近代化を大きく前進させた、支えたというふうに思っております。

 しかし、中国はもう御案内のとおりで、経済大国でありますし、ODAの終了は当たり前のことで、むしろ遅過ぎたんじゃないかという声も聞かれております。

 直近でいうと、二〇一八年度も五千五百三十八億円のODA予算として組まれておりますし、また、日本、全体としてはこの六十五年間で四十六・五兆円という支出をしております。これを外務省は実績というふうに呼んでおりますけれども、国民の間では、それは実績なのかという声がしばしば聞かれます。

 地元において、これはたまに言われるんですけれども、国内がこれだけ財政が逼迫しているのに海外に何千億円も毎年出して大丈夫なのかいということを言われます。これは、私自身はODAというのは極めて大事だし必要なものだと思っておりますけれども、やはり国民の間では何か誤解というものがあるのかなというふうに感じますので、この場をかりて、改めて政府として、国民にわかりやすく、なぜODAが必要なのか、その意義等をお伝えいただければと思います。

河野国務大臣 ODAの額を実績と言うのは、私は正しくないというふうに思っております。ODA、援助をすることによって何を得られたのかというところを国民の皆様にはっきりお示しをする、それが大事なことなんだと思います。

 情けは人のためならずという言葉がありますが、日本がこれまで行ってきたこのODAによって、アジアを始め多くの国が経済発展を、さまざまな段階にはありますけれども、遂げました。今、世界の中で、低所得国と言われている国に住んでいる人口は九%程度まで下がってまいりました。もう圧倒的に世界の大部分は中所得国になっているわけでありまして、そのおかげで、暴力的過激主義に染まる人を減らしている、あるいはテロに走る人たちを減らしている、そういう効果があったんだろうと思いますし、経済が発展することによって、貿易がふえ、日本の経済にも裨益があったということはしっかりと御説明をする必要があると思います。

 また、最近は、豚コレラのようなもの、あるいはエボラを始めとする人間の感染症というものが、国際化あるいは航空機の発達によって、かつてとは比べ物にならない危険性を持っているわけでございますから、そういう意味でも、さまざまな国の開発、発展を支援するというのは大切なことだと思っております。

 そういう中で、これだけの財政難でございますから、かつてのようにODAの金額世界一というわけにはいきません。最盛期と比べて今やODAは半減をいたしましたし、これからの財政を考えれば、これがふえるとは私は思っておりません。そういう中で最も効率的、効果的に海外の支援をするためにはどうしたらいいのかということは、不断に我々考えていかなければいけないんだろうというふうに思っております。

中曽根分科員 大臣おっしゃるとおりで、ODAの、その支出に対するリターンというのは、なかなか数字的にも目に見えないところが多いと思いますので、だからこそ国民にその意義とか必要性をしっかりと伝えて、納得してもらうことが必要だというふうに思っております。

 ちょっと済みません、時間がもう来ていますので、質問を飛ばさせていただいて、最後に一点質問させていただきますけれども、日本の常任理事国入りについてお尋ねをしたいと思います。

 我が国は、二〇二二年に安保理の非常任理事国、これに立候補をしております。国連加盟国でも最多の十一回、今まで非常任理事国を務めておりますけれども、個人的には、やはり日本はもう常任理事国にしっかりと入るべきだという思いであります。やはり、今の世界の中における役割とか、又は分担金、これも八・五六四%といってアメリカ、中国に次いで出している、しかも常任理事国のイギリス、フランス、ロシアよりもはるかに多い額を出している、そういったことを考えても、しっかりと常任理事国に入るべきだと思いますし、昨年末のアメリカにおける対日世論調査でも、七三%の有識者が、日本は常任理事国に入るべきだということを言っております。

 いまだに残る時代おくれの敵国条項とか、又は否決権のあり方、そういったことがこの常任理事国入りを妨げる一因になっている可能性もあるのかと思いますけれども、今後の政府の方針、また大臣のお考えを教えていただければと思います。

河野国務大臣 常任理事国というのは、二十一世紀の現実を反映していない、国連がつくられた数十年前をいまだに引きずっているというふうに思っております。

 我々としては、安保理改革といったときに、恐らく数カ国を除いて反対する人はいないわけでありますが、これを現実に前に進めるためには、文書の形にして交渉を進めるというのが大事だと思っております。

 国連の会期の中でテキストベースの交渉をスタートしたいと思っておりますし、ことしの横浜で開催されるTICADでアフリカが五十四カ国、参加をしてくれますので、このアフリカの勢力というのは国連の中で四分の一を超えるわけでございます。このTICADを、一つ、この安保理改革に向けての発射台にすべく、外交努力を続けていきたいというふうに思っております。

中曽根分科員 ありがとうございます。

 これは憲法改正の議論でも言えることですけれども、日本は敗戦国として戦後スタートしていますので、そういったことがやはり弊害になっているところというのは多いと思います。ただ、戦後七十五年たって、日本の世界に対する貢献度、存在感というのは誰もが認めるところでありますので、やはり、外交を通して、国連においても日本の確固たる地位を築いていただきたいというふうに思います。

 長尾政務官、済みません、せっかく来ていただいたのに、質問ができずに申しわけございません。

 河野大臣には引き続き、その知識、経験、実力、堪能な語学力を使って、日本の顔として世界じゅうを飛び回って、日本の存在感を高めていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

井野主査 これにて中曽根康隆君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津分科員 公明党の稲津久でございます。

 きょうは、河野外務大臣、また外務省の皆様に、通告に従いまして順次質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、きょうは、大きなタイトルでは、北方領土問題、このように書かせていただきましたが、一つは、一九五六年の日ソ共同宣言、このことに関して御質問させていただきますのと、あとは、現在行われている北方四島へのビザなし訪問等について、今後のあり方、あるいは少し新しい視点に立ってこのことを進めていく、そういう趣旨に立って順次質問させていただきたいと思います。

 日ロの平和条約、四島返還、これにつきましては、安倍総理とプーチン大統領との幾度にもわたる会談、それから河野大臣とロシアの外相を始め要人の皆さんとの会談が重ねられて今日まで来られまして、こうしたことによって、この問題を取り巻く環境というのは私は大きく変わってきた、このように認識しております。

 ことしは、プーチン大統領も訪日、このことが取り沙汰されているわけでございまして、両国においては大変重要な年になる。こうした中で、元島民のみならず、北海道のこの北方四島の隣接地域の住民の方々、ひいては国民の皆さんの大変な関心が高まっている、このように思っております。

 戦後七十三年間、両国の間で幾度もの宣言や合意がなされてまいりました。それぞれ大変意味があることであるというふうには思って理解していますけれども、残念ながら、領土返還、平和条約締結にはまだ至っていないわけでございまして、特に、本年一月の二十二日に安倍総理とプーチン大統領による通算二十五回目の日ロ首脳会談が行われまして、平和条約締結問題や北方四島における共同経済活動、そして航空機を使用した墓参の実施等、さらには防衛交流ですとか安全保障分野での協力、議会間交流、人的交流など、大変幅広い分野での二国間協力についても話合いがなされた、このように伺っております。

 私は、この平和条約締結に向けた道筋をいよいよ確かなものにしていかなければならない、特に、北方領土問題の橋渡し役として期待されている北方四島における共同経済活動、それからこれに類するさまざまな事業について、ぜひ相互交流を図っていき、こうしたことを後押ししていくべきだ、このように考えております。

 そこで、まず第一点目に、これは外務大臣に伺いますけれども、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速する意義についてということで伺います。

 既に予算委員会の本委員会の中でもこれは議論があったところですけれども、私はあえてまたきょうここで外務大臣にお伺いしたいと思っていますが、総理の昨年の十一月のシンガポールでの日ロ首脳会談、もう御案内のとおり、一九五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることを、プーチン大統領との間で合意がなされました。

 この一九五六年の日ソ共同宣言の中には、御存じのとおり、歯舞群島及び色丹島を日本に引き渡す、このことが明記をされているということから、二島返還で合意をしようとかあるいはすべきだとか、あるいはまた二島先行返還なのか二島だけなのか、こうしたことが巷間言われまして、論議を呼んでいるのも事実でございます。

 戦後七十三年間の日ロ、日ソ交渉の中で、この一九五六年の共同宣言のみならず、九一年のゴルバチョフ・ソ連大統領との日ソ共同声明、これは、四島の帰属について、日ソ互いの立場を考慮して平和条約締結の全体像を話し合った、このように承知をしております。

 こうしたことを始めとして、九三年の東京宣言あるいは二〇〇一年のイルクーツク声明など、平和条約締結交渉に係る合意の文書、諸合意は幾つかあるわけでございます。これらの多くの宣言等がある中で、なぜ一九五六年の日ソ共同宣言を交渉の基礎としたのか、また、この宣言を基礎に交渉をどのように加速させようとしているのか、このことについて大臣にお伺いします。

河野国務大臣 外務委員会や予算委員会でたびたび御説明をしておりますが、この一九五六年の日ソ共同宣言というのが、両国の立法府が承認をし、両国が批准をした唯一の文書ということでございますので、交渉を加速化するというときに、この文書に立ち返るというのがいわば最も自然なんだろうというふうに思っております。

 その上で、両国の間の領土問題を解決し、平和条約を締結するというのが首脳の合意でございますので、今、先方のラブロフ外務大臣と私と、それぞれ交渉の責任者ということで精力的に交渉を行っているところでございます。

稲津分科員 ありがとうございました。

 一九五六年の国際情勢や日本の国会の中も随分今とは違うと思うんですね。いわゆる、国会の中におきましてはさまざまな政党の再編もあったということ、それから、この時点では沖縄が日本にまだ戻っていなかったということもあり、言うならば、ソ連、そして当時のアメリカ、日本を取り巻く緊張関係というのは今とは全く想像の及ばないようなことであったというふうに思っています。

 ですから、そういう意味で考えると、このときの、当時の総理もそうですし、あるいは関係者の方々も、それはもうこの先が全く見えない中での大変な御苦労をされたと思うんです。私は、そういう意味で、この一九五六年の共同宣言というのは大変、七十三年たった今、まさに光彩を放つ大事な宣言であったということを改めて感じています。

 そのことを一番誰よりも汗を流して真剣勝負で取り組んでおられたのが、御存じのとおり河野一郎先生で、大臣の祖父の方であられますけれども、私、これをいろいろ調べてみました。考えてみたら、約二年間の間、農林水産大臣をなされて、農林水産大臣のお立場であるにもかかわらず、日ソのこのテーマについては、当時のある意味総理以上に大変な考えをお持ちで、あるいは、当時の、まあ外務大臣にとっては失礼ですけれども、さまざまな関係者の中で飛び抜けてやはり大変な御発言、御苦労をなさっている。

 私、二島だ四島だといろいろな議論がありますけれども、この一九五六年の日ソ共同宣言の二日前に、これは十月の十七日のフルシチョフと河野会談です、これを見て大変驚きました。

 御存じの方も大勢いらっしゃると思うんですけれども、改めて御紹介しますけれども、この一九五六年十月十七日の会談で何を河野農水大臣は申されたかというと、この年の五月九日のブルガーニン首相と河野大臣との会談を引き合いに出しました。そのときに、ブルガーニンさんは、私、要するに河野大臣にこのように述べたんですということを当時のフルシチョフに話すわけです。ちょっとその文章、三行ぐらいですから引用させてもらいます。

 ソ連政府は日本に歯舞と色丹を引き渡す。これについては、すでにロンドンでも何度か話された。だが、この領土引き渡しはソ連が領土問題で譲れる最大限のものだ。自分は日本国民が国後および択捉の返還を求めていることを知っているが、これら領土の日本への引き渡しは全く考えられず不可能だ。今問題なのは歯舞と色丹の日本への引き渡しであり、残りのすべては後で解決されよう。双方は見解が一致する問題について合意すべきだ。

こういうことを話されたことをフルシチョフに伝えるわけですね。

 だから、この中では確かに二島と話していますけれども、しかし、それで終わったということは何も言っていないわけですね。それからのことは今後要するに解決されよう、こういう見解、見通しを言っているわけなんです。

 私は、このことを見て調べるにつけ、さっきの話ですけれども、大変な状況の中で、よくぞここまで、こうしたことを実例に挙げながら当時のソ連の首脳に対して切り込んでいく、こうしたことがあって、七十三年たって今まさに光彩を放っている、こう思うんです。

 御意見、何かありましたらお願いしたいと思います。

河野国務大臣 当時、河野一郎がクレムリンから持って帰ってきたペーパーナイフというのが我が家にありまして、よく、私が小さいときに河野一郎は亡くなっておりますから、余り、直接話をしたという記憶はほとんどないんですけれども、この日ソの交渉の話はいろいろな人から話を聞いております。

 ただ、それから七十数年たってまだこんな状況でございますから、きっと河野一郎は今笑っていると思います。祖父が鳩山総理と始めたこの交渉をきちんと両国が受入れ可能なように終わらせるのが我々の仕事だと思いますので、しっかりと対応してまいりたいと思います。

稲津分科員 ありがとうございます。

 大臣の思いも聞かせていただきましたので、ぜひ今後の交渉の中でしっかり全力を尽くしていただきたいということをお願い申し上げたいと思うんですが、もう一つだけ、私の方から紹介をさせていただきたいものがございます。

 これは、今月の二月七日に、国立劇場での、大臣も御出席されました北方領土返還要求大会、ここでの石垣根室市長の発言について紹介を申し上げたいというふうに思います。

 途中のところですけれども、一九五六年十月二十日の新聞がここにあります、日ソ共同宣言の妥結、喜びで昨夜は眠れなかった、きょうの日をどんなに待っていたか、心はもう島に飛んでいる。四十九歳の方の新聞投稿の記事を紹介したわけですね。

 その上で、市長はこういうふうにもおっしゃいました。歯舞村ではちょうちん行列、そして根室町では公会堂に垂れ幕を下げました、六十二年前であります、残念ながら当時の保守合同や東西冷戦の中で悔し涙を流しました。こういう話をされて、そしてこの問題、元島民の方、喜ぶ顔、うれし涙を流している方がいて、その決着に意義があります、残された時間は余りにも少ない、まさに今が正念場であります。こういう市長のこのときでの御発言がありました。

 私は、出席して聞いておりましたけれども、大変深い感銘を覚えて、今こそこの問題について確かな歩みを、大きな前進をしなければいけない、そのことを私の立場でも強く思ったわけでございます。

 先ほどの冒頭の話に戻りますけれども、二島がいいとか四島がいいとか、さまざま言う方はいらっしゃいます。私は、どのようなケースがいいとか悪いというのではなくて、何よりも島が戻ってくること、何よりも島に元島民や御家族が行けること、自由に行けること、そしてその上で領土問題が解決すること、平和条約が締結できること、こうしたことを元島民や関係者の方は強く望んでいる、こうしたことを触れた市長の御発言だったというふうに思いました。

 問題の解決が難しいことは、どなたもそれはもうよく存じていると思います。そのことは七十三年の長い歴史が物語っていることはそこで証明されるんですけれども、しかし、もう一回、繰り返しですけれども、あの七十三年前に、ここまで話を持っていけたことを、今回それを基礎とするというわけですから、七十三年間の間にいろいろな関係者の方々の思いも、ぜひ大臣のお立場でお受けとめいただいて、交渉の大きな道筋、歩みをつけていただきたい、このことを強くお願いさせていただく次第でございます。

 次の質問に移ります。

 次は、ロシア島民への人道支援についてということでございますけれども、四島での共同経済活動という新しい取組も進行しています。まさに総理の言われている新しいアプローチによる成果が現出している。さらに、元島民の皆さんの航空機による墓参も実現している。これは、平均年齢八十歳を超えた元島民の方々の負担を軽減する人道的配慮もあるというふうに承知をしております。

 こうしたことが日ロ関係の信頼を深め、共感を広げていることにつながっていることを認識しておりますが、人道支援といえば、我が国がロシア島民に対する北方四島患者受入れ事業がございます。

 四島からの患者を北海道の医療機関が受け入れ、医療行為を行う。平成十年以降、二十年間で実に二百六十六名のロシア島民が、北海道大学病院や札幌医科大学附属病院を始め根室、中標津の公的医療機関など、道内各地の医療機関で治療を受けている。昨年一年間だけでも五回、十六名を受け入れています。

 全て外務省予算で実施をし、患者受入れで年四千五百万円程度、そのほかに、医師、看護師研修ですとか医療支援促進事業もあります。

 四島では医療機関も専門医も不十分で、この事業は大変に喜ばれている。そして、その際に、移動の交通手段としては、北海道を往復する北方四島交流事業使用船「えとぴりか」でございます。

 自分が色丹島を訪問した平成二十九年八月十八日も、中標津病院で治療を受けたロシア人家族が根室から国後島を同船しました。八月二十日には、色丹島から北海道に帰る帰船に、北海道の医療機関に受診をする人も乗船しました。車椅子を利用した女性の方でしたけれども、このときは、実に十九時間をかけて根室港に着きました。

 色丹島の穴澗湾から根室港であれば四、五時間で移動できるものを、ロシア側の出入域地点は国後島の古釜布しかない。したがって十九時間もかかった。健常者でも大変な移動を、まして治療を受ける患者にとっては大変な負担である。

 このような意味で、色丹島の穴澗に新たな出入域地点を設ける意味があるのではないかということなんです。これは日ロ双方にとっても大変よいことで、ぜひ外務省としてロシア政府に強く働きかけるべきと思いますが、このことについての答弁を求めますとともに、この患者受入れ事業の予算も実績ベースで予算をつくっているということでありまして、この際、受入れ人数の拡大ですとかあるいは予算増も、可能な範囲で結構ですけれども、検討するということをぜひお答えいただきたいと思います。

    〔主査退席、山口(壯)主査代理着席〕

河野国務大臣 北方四島の住民の皆さんに対する医療支援は、人道的な観点から必要な支援を行ってきているということで、住民の皆様からも高い評価をいただいているというふうに理解をしております。

 今御指摘をいただきました追加的な出入域地域の設置についても、患者の受入れ、あるいは日本側の元島民の皆様の墓参、その他を考えると、これはなるべく多くの地点で、なるべく行く道の途中でできるようにしてもらうというのはいいことではないかと思いますので、これは外相会談の中でも、この出入域地点の追加というのは累次申し上げてきているところでございます。

 また、患者受入れの事業につきましては、今年度と比べて来年度は五・三%予算をふやしまして、約四千六百万円を計上しているところでございますので、予算を認めていただければ来年度もこうした必要な医療の提供ということを続けてやってまいりたいというふうに思っているところでございます。

稲津分科員 ありがとうございました。

 ぜひ外相会談の折に、日本でこうした受入れを進めているということを改めて紹介していただきながら、こうした出入域についても検討いただけるようにお話をしていただきたいと思います。

 次に、四島周辺における大規模地震、火山の日ロ共同調査についてということでお伺いしたいと思います。

 これは、四島交流、その中には専門家交流というのもありまして、「えとぴりか」で北方四島に行くときに専門家も実際に乗船して交流をする、地震、火山の専門家の交流、これが進められております。千島海溝沿いの巨大地震の発生率が高いことが近年指摘をされていることもありまして、このことについて大変関係者からの関心も高いというふうに伺っています。

 一九二三年の一月から二〇一九年の一月までの間の約百年間の中で、マグニチュード六・〇以上の地震というのは実にこの四島周辺の中で二百五十二回あった、そういう調査報告があります。今後三十年間の間にマグニチュード八以上の巨大地震の発生確率が七〇%になっているということ、また、北海道東部に巨大な津波をもたらす超巨大地震、これは十七世紀型というふうに言われていますけれども、これも発生から四百年程度経過し、極めて切迫している、そういう可能性が高いと言われています。

 こうしたことを踏まえて、これまでも地震、火山についての日ロにおける北方四島周辺にあっての共同の研究と協力体制ということが実施されていますけれども、今こそこうしたことを強化すべき、そのことをロシア側にも働きかけるべき、このように考えておりますが、見解をお伺いします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇七年二月に、日ロ政府間で、日ロ隣接地域における防災分野に関する協力プログラムというものが署名されております。このプログラムに基づきまして、地震、火山学及び津波研究の専門家が北方四島との間で相互訪問をしてきております。

 二〇一八年末までに延べ百二十四名の専門家が相互に行き来をしておりまして、島への訪問が延べ九十四名、島側からの受入れが約三十名ということになっております。日本人専門家による四島訪問におきましては、現地専門家等と共同で、津波堆積物、火山灰の分布状況、活火山の現状評価に関する視察等を行ってきております。

 地震、火山に関する日ロ共同調査研究を通じた交流の促進につきましては、関係団体から要望をいただいてきておりまして、ただいまの委員の御指摘も踏まえまして、内閣府とも連携の上、ロシア側とも協議して、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

    〔山口(壯)主査代理退席、主査着席〕

稲津分科員 よろしくお願いします。

 それで、今、私、地震のことについて特に強くお話ししたんですけれども、火山についても、これは文科省の地震・防災研究課の方からデータをもらいましたけれども、近年、北方四島で噴火した主な火山、活火山としても、択捉島の択捉焼山というんですか、一九七三年、それから二〇一四年、噴火しています。それから、茂世路岳、一九九九年に噴火。国後島は、爺爺岳、これは有名ですね、一九七三年に噴火が発生しているということで、大変この北方四島の中でも国後島、択捉島というのは火山爆発というのが、噴火というのが非常に多発しているということ。こうしたことも含めて、ぜひこの地震と火山の共同研究を強力に進めていただきたいことをお願い申し上げます。

 次に、自由訪問の参加対象の拡大についてということをお伺いしたいと思いますけれども、自由訪問の参加対象者は、元島民と配偶者、それから子供、このように決められています。子供の配偶者ですとか、孫あるいは孫の配偶者、これはいわゆる同行者の位置づけなんですね。したがって、孫等は同行者であるために、元島民とかあるいはその子が不参加になった場合は参加が不可能という状況です。

 今、この元島民が大変高齢化しているということ、それから自由訪問の参加者が実質この二世の世代に移行していることを考えていったときに、対象者からの大変強い要望もございますことから、この自由訪問の参加対象者を拡大する、そうしたことについてロシア側に協議を進めていただきたいと思いますが、見解を伺います。

宇山政府参考人 お答えを申し上げます。

 政府といたしましては、元島民の方々が御高齢になられていることを考慮いたしまして、現行の枠組みによる訪問手続の改善を図ってきておるところでございます。

 自由訪問は一九九九年に設置された枠組みでございますけれども、その参加者につきましては、二〇〇八年に、日ロ間の調整によりまして、それまでは同行できなかった元島民の子の配偶者、孫、そして孫の配偶者、複数の医師、看護師の同行が可能となりました。

 委員御指摘の、自由訪問の対象者、参加者の拡大につきましては、関係団体からも御要望いただいてきておりまして、元島民の方々が御高齢になられていることを踏まえまして、内閣府や関係団体等とも連携しながら、ロシア側と協議を行うことも含めて、どのような対応が可能か、引き続き検討してまいりたいと考えております。

稲津分科員 ぜひよろしくお願いします。

 最後の質問になりますけれども、最後の質問は、防災ヘリ等による事故対応についてということで、いわゆる北方四島訪問の上陸中に発生した事故等の対応、これを日ロ共同で協力体制を強化していただきたいという趣旨でございます。

 本年度、第二回の自由訪問で、団員の方が亡くなる、そういう事故が発生しました。元島民の高齢化もございまして、今後、やはり訪問中のけがなどは可能性が非常に高くなっているというふうに思います。

 そこで、墓参や共同経済活動実施時期に四島を訪問する邦人の事故への対応、この日ロの協力体制が具体化することが急務であると思っております。防災ヘリあるいはそれ以外の代替搬送手段の確保もそうですけれども、こうしたことを踏まえたロシア側との協議、今後どのように進めていくのか、この点についてお伺いします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、四島交流、北方墓参及び自由訪問、こういった枠組みにおきまして、日本人訪問団員の島での滞在が安全に行われることを重視しております。訪問団員の方々の安全確保のために最大限配慮を行ってきているところでございます。

 その上で、委員御指摘の防災ヘリなどによります事故等への対応につきましては、関係団体からの要望があることを承知しております。きょうの委員の御指摘も踏まえまして、内閣府及び関係団体とも連携いたしまして、北方四島に関する我が国の法的立場を害さない形で、訪問団員の安全を確保していくためにどのような対応が可能か、検討してまいりたいと思います。

稲津分科員 ありがとうございました。

 終わります。

井野主査 これにて稲津久君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、米軍機事故にかかわって、地位協定の問題等で質問をいたします。

 河野大臣は、二月七日の参議院予算委員会で、事故時の規制線内への立入り権の確立について、日本当局がより適切に対応できるように指示をし、日米間で協議をしていることを明らかにいたしました。

 おととし、米軍ヘリが高江の牧草地に墜落したとき、沖縄県と防衛局が規制線の内側に入ることができたのは、事故から六日たった後でした。既に機体は米軍が回収しており、日本側は、事故機を調査することも、機体に触れることさえもできませんでした。日米地位協定のもとで、日本側が米軍の財産を捜査、検証する権限を認められていないからであります。

 大臣、外務省は、米軍機であっても日本側が検証する権利を行使できるように米側と協議している、そういうことですか。

河野国務大臣 米軍の施設・区域外で発生した米軍機事故に関しては、二〇〇五年に日米合同委員会で合意された施設・区域外で発生した米軍機の事故に関するガイドラインに基づき、これまでも内周規制線内において日本側として必要な調査などを行っていると認識をしております。

 この基本原則に基づき、内周規制線内における日本当局による適切な対応がより一層確保されるよう、私から指示をし、現在、事務レベルで米側と協議を行っているところでございます。

赤嶺分科員 二〇〇五年のガイドラインというのは、実際、もう規制線の中では日本の主権が全く認められていないという事態で、非常に首長や当局の皆さんからも不満が高まっています。ですから、施設外で起きた航空機事故などについて、規制線の中で日本の当局が機体を調査し、検査することもできるようにガイドラインを見直す、そういうことですか。

河野国務大臣 先ほど答弁したとおりでございます。

赤嶺分科員 これは改善がされるのかどうか、全く予測がつかない。ガイドラインの原則の範囲内でといった場合には、本当に今、日本がその中で主権が行使できていない。問題は解決しないと思います。主権あっての見直しでなければならないと思います。強く申し上げておきたいと思います。

 具体的な事故について伺いますが、二月六日、米軍普天間基地所属のAH1攻撃ヘリが渡名喜村入砂島に不時着しているのを住民が発見しました。不時着したヘリは、プロペラやローターが取り外され、十一日に別の大型ヘリにつり下げられて、読谷村のトリイ通信施設に運ばれました。

 同型のヘリは、おととし一月にも伊計島の農道に不時着しています。昨年一月には、読谷村の民有地と渡名喜村の村営ヘリポートに相次いで不時着いたしました。

 三年連続で同型ヘリが不時着を繰り返すなど、余りにも異常なことだと思いますが、防衛省にそういう認識はありますか。

原田副大臣 米軍機の飛行に際しましては安全の確保が大前提であり、米軍機による事故等は、地域住民の方々に大きな不安を与えるもので、あってはならないと思います。

 防衛省としては、累次の機会を捉え、米側に対し、航空機の運用に当たっての点検整備の確実な実施、安全管理の徹底等について申し入れておるところでございます。

 いずれにしましても、引き続き、米側に対し、米軍機の飛行に際しては、安全面に最大限配慮するとともに、周辺地域に与える影響を最小限にとどめるよう強く求めてまいります。

赤嶺分科員 今回不時着した機体は、機体番号や所属を記した数字がガムテープで隠された状態で移送されております。地元では、以前に不時着した機体と同じではないか、こういう不安が広がっております。

 なぜ、米軍は機体番号を隠していたんですか。同じ機体だったのではありませんか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、二月六日に沖縄県渡名喜村の出砂島射爆撃場に予防着陸をした米軍AH1Zヘリの機体番号につきまして、米側に確認をしたところ、米側からは、運用にかかわる情報保全の観点から、機体番号等に関することは答えられないという旨の回答があったところでございます。

 いずれにいたしましても、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたとおり、米軍機の飛行に際しましては安全の確保が大前提との認識のもと、引き続き、米側に対し航空機の安全管理に万全を期すよう求めていく考えであり、周辺地域の方々に不安感、不信感を与えることのないよう取り組んでまいりたいと考えております。

赤嶺分科員 いやいや、さっきの副大臣の答弁、今の答弁とも、ガムテープを張りつけていたのとは矛盾すると思いますよ。

 教えてくれないなんて、ちょっとひどいんじゃないですか。米軍が機体番号を隠していたわけですから、これは同じ機体であったことを隠すためであったということではありませんか。

 同じ機体であるかどうか、皆さん、確かめましたか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 重ねての答弁になって恐縮でございますが、防衛省としましては機体番号等について照会を行ったところでございますが、米側からは、運用に係る情報保全の観点から、機体番号等に関しては答えられないという回答があったところでございます。

赤嶺分科員 そういうこともわからないで、航空機の安全な運用を求めているとは到底思えません。同一の機体が不時着を繰り返しているとしたら、それこそ大問題であります。

 大問題だと思いませんか、原田副大臣。

原田副大臣 米軍の方へは申入れをいたしておりまして、今局長の方から答弁をさせていただきましたとおりのことでございまして、防衛省の方にはまだ回答をいただいておらないというのが事実でございます。

赤嶺分科員 いやいや、米軍は教えないと言っているんですよ。教えないことが大問題じゃないかということを私は聞いているわけです。

 おととしや昨年も、米軍は、今回と同様に、飛行中に警告灯がついたため緊急着陸したという説明を繰り返しました。昨年、相次ぐ米軍ヘリの事故を受け、日本政府は、全てのAH1ヘリの整備点検とその間の飛行停止を米軍に求めました。米軍は、ヘリ部隊に対し抜き打ちの安全検査を行ったと回答しました。

 しかし、当時の小野寺防衛大臣は、米側の説明をそのまま受け取るわけにはいきません、こう述べ、AH1ヘリについてアメリカ側が実施した点検整備について、防衛省として、今後速やかに、自衛隊の専門的、技術的な知見を活用して確認、検証を行う予定であります、こう述べておりました。

 ところが、結局、自衛隊は検証を行いませんでした。

 こういうことをやっているから、米軍機の不時着が繰り返されているのではありませんか。

原田副大臣 今御指摘のように、これまでも、米軍機が予防着陸等をした場合はその都度米側から点検整備の結果などの報告を受けているところでありまして、それぞれの事案に即して、防衛省・自衛隊の知見も活用しつつ、米側の判断の妥当性等を確認してきているところです。

 加えて、現在、日米の飛行安全に関する専門家会合を開催し、飛行安全に関する知識経験を有する自衛隊と在日米軍の専門家により、予防・緊急着陸の考え方を含めた、飛行安全をテーマにしたより包括的な議論を実施することで、日米双方の飛行安全の向上に取り組んでおるところでございます。

 いずれにしましても、米軍機の事故等は、周辺地域の方々に大きな不安を与える、あってはならないものであり、防衛省といたしましては、引き続き、米側に対しまして安全管理の徹底等について強く求めてまいります。

赤嶺分科員 小野寺大臣は当初、あれは名護の選挙前でしたからそういうアピールをしたかったんでしょうけれども、事故機の検証と言ったんですよ。

 だけれども、それは果たされず、ついに行われず、今、政府の態度は包括的な専門家会合ということになって、事故を起こした機体に対する検証なんて、本当にもう雲のかなたの方に行っているわけですね。絶対に事故機が検証されないような、そういうところを、日米両政府が。ですから、政府もこの事故の頻発については重大な責任があると思いますよ。

 私は、今回の問題について、通報についてもちょっとかかわって伺います。

 今回の事故について、六日に不時着が確認されてから十一日に運び出されるまで、米軍からは日本政府にも自治体にも通報がありませんでした。

 入砂島の近海というのは、訓練がないときには、シロイカやタイなどの漁も認められている海域であります。渡名喜村長は、本来ならふぐあいがあった時点で知らせるべきだったと指摘しています。

 外務大臣、不時着を繰り返しているヘリが住民の生活圏にまた不時着すれば、住民が不安を感じるのは当然であります。今回の場合も、米軍は、沖縄県や地元自治体に通報するのが当然ではありませんか。

河野国務大臣 外務省としては、米軍機の飛行に際しては安全の確保が大前提との認識のもと、引き続き、米側に対し航空機の安全管理に万全を期すよう求めていく考えであり、周辺地域の方々に不安感、不信感を与えることがないように取り組んでまいります。

赤嶺分科員 不信感、不安感を与えないために、日米間で通報という仕組みがつくられたんですよね。そういう通報の仕組みに沿って、今回の入砂島への不時着も通報すべきだったんじゃないかということを外務大臣に伺っているんです。

河野国務大臣 平成九年の在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続に関する日米合同委員会合意において、通報経路に関するチャートを作成し、その中で、事件、事故が発生した場合、現地の司令官より現地防衛局を通じて関係都道府県及び市町村に直接通報が行われるよう経路の明確化を図っており、これにより、関連の市町村にも事件、事故に関する情報が伝達されると認識をしております。

 いずれにせよ、政府としては、通報を着実に実施するためには、日米合同委員会合意に沿った日米当局間の迅速かつ正確な情報伝達が不可欠であると考えており、引き続き、この点について日米間で取り組んでまいります。

赤嶺分科員 そういうチャートもつくられているとはいっても、それに沿って通報は行われませんでした。

 本当に島の人々は、羽根のないそういう戦闘機、ヘリがずっと島に、演習場にいる、日曜日は、訓練がない日は漁にも行けるんだが、行けるかなという不安が増大しておりました。

 さらに、問題なのは、そのヘリをつり下げて移送したわけですね、もう自力で飛んでいけなくなって。地元自治体に連絡があったのは、移送が完了した後でありました。読谷村では、過去に、米軍の大型ヘリがつり下げ訓練中に車両を海上に落下させる事故が起きています。一歩間違えれば、重大な事故につながりかねません。

 読谷村議会は、米軍による事件、事故などの処理については、地元自治体に早急に連絡することを要求しています。県も、事前の情報提供を求めました。今回、なぜ地元自治体に連絡がなかったんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 出砂島射爆撃場に予防着陸をしたAH1Zヘリは、委員御指摘のとおり、メンテナンスのため、米軍のCH53Eヘリにより読谷村のトリイ通信施設まで輸送され、その後、トリイ通信施設から普天間飛行場に帰島したというように承知をしているところでございます。

 防衛省といたしましては、これらの情報を受けまして、速やかに関係自治体、すなわち沖縄県、渡名喜村、読谷村及び宜野湾市に情報提供を行うとともに、米側に対しましては、地元への影響も考慮をし、今後、万々が一同様の事案が発生した場合には事前に情報の提供を行うよう、申入れを行っているところでございます。

赤嶺分科員 つまり、皆さんがやったのは、事後にその関係自治体に知らせたということであって、今後は、渡名喜村にもそれから読谷村にもこういうケースの場合には事前にちゃんと通報を行うべきだ、そういうことを米側に要求したんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁申し上げましたとおり、万々が一同様の事案が発生した場合には事前に情報の提供を行うよう、米側には申入れを行っているところでございます。

赤嶺分科員 じゃ、これは今回も通報すべき事柄で、事案であったというぐあいに認識していたということですね。

 もう一件あります。今度は、名護市の数久田の米軍流弾事故について質問をいたします。

 昨年六月二十一日、数久田にある農作業用の小屋で、米軍のものと思われる銃弾が発見されました。銃弾によって二枚の窓ガラスが割れていました。

 事故から半年たった十二月、米軍はようやく、銃弾がキャンプ・シュワブ内の実弾射撃演習場、レンジ10から演習中に発射されたものだと認めました。しかし、原因究明もまだ終わっておらず、再発防止策もとられていません。

 ところが、昨年十二月二十一日、米軍は、レンジ10での訓練再開を一方的に通告をしてきました。

 原因究明もなされないまま訓練を再開するなど、外務大臣はこういうことを認めるんでしょうか。

河野国務大臣 米側からは、昨年十二月に、発見された銃弾は、米軍第三海兵機動展開部隊の所属部隊がキャンプ・シュワブ内のレンジ10において実弾射撃を実施した五十口径弾である、原因は、レンジ使用の規則を守らず、不十分な手順で発射されたということ、レンジ10においては、五十口径弾による実弾射撃訓練について、今後同様な事案の発生を防止する措置が施行されるまで実施しないという説明を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないもので、引き続き、米側に対し、安全面に最大限配慮するよう強く求めていく考えでございます。

赤嶺分科員 手順を間違えたという連絡だけで、同様の銃弾は使わないということで、明確な原因究明も再発防止策も日本側に連絡がないまま、報告がないまま、実弾射撃訓練は再開しているわけですね。それを今後は安全にしていくという保証は全くないわけです。

 レンジ10では、これまでも流弾事故が繰り返されてきました。

 米軍は、民家などへの機関銃乱射事故を受け、一九八〇年に安全対策として射角制御装置を設置すると説明しました。しかし、その後も、八七年には銃弾がタクシーを貫通し、二〇〇二年には、パイナップル畑で作業中の男性のすぐ後ろに銃弾が着弾する事故が起きました。そのたびに、日本政府は、射角制御装置を徹底する、安全対策をするんだと説明をしてきました。ところが、また同じ流弾事故が起きたのであります。

 日本政府がこれまで県民に説明してきた安全対策、これで再発を防げなかったわけですが、さらに今回は、そういう再発防止策も何も示されないでその訓練を再開している。これじゃ事故は防げないのではありませんか、外務大臣。

河野国務大臣 米側からは、そのレンジ10については、今般の事案で発見された銃弾による実弾射撃訓練は再発防止措置が施行されるまで実施しないとの説明がなされております。

 いずれにしましても、米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないものであります。引き続き、米側に対し、安全面に最大限配慮するよう強く求めてまいります。

赤嶺分科員 五十口径の弾丸は使わないということであって、実弾射撃訓練はもう再開しているんですよ。

 何か五十口径に問題があったかのような指摘なんですね。ところが、沖縄県や名護市は、二〇〇二年の流弾事故のとき、レンジ10の撤去を求めました。日本政府は、米軍の訓練再開を容認しました。そのもとで流弾事故が繰り返されたんです。私は、あれこれ米側の言い分をそのまま、県民の不安を伝えることなく再開を認めた政府の責任は非常に重大だと思うんですよ。

 キャンプ・シュワブは、周囲に民間集落が近接している欠陥訓練場、こういう認識を持たなければなりません。アメリカの会計検査院も、演習場が狭く実戦的な訓練ができない、こう指摘をしております。

 名護市は、レンジ10の撤去等を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決をいたしました。意見書は、演習が再開をされればまた被弾事故が起こることは火を見るより明らかである、このように強く指摘しています。

 外務大臣、こういう欠陥演習場ですよ。口径五十の弾丸を使わないから安全だという、そんなことに、ああ、安全な演習場になったとだまされる県民じゃないわけですよ、被害を繰り返し受けているわけですから。やはりレンジ10の撤去を米軍に求めるべきではありませんか。

河野国務大臣 米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないものであります。

 他方、米軍が訓練を通じて技能の維持向上を図ることは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠な要素であり、日米安全保障条約の目的達成のために重要であります。

 この事案は、人命にかかわりかねない重大な事案であり、外務省としては、アメリカ側に対して、遺憾の意を表した上で、捜査への協力を申し入れるとともに、原因の究明及び再発防止策の徹底を求めました。その結果、米側からは、このレンジ10について、今般の事案で発見された銃弾による実弾射撃訓練は再発防止措置が施行されるまで実施しないとの説明が行われました。

 米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないものでありますので、引き続き、米側に対し、安全面に最大限配慮するよう強く求めてまいります。

赤嶺分科員 何の答弁にもなっていないですよ。

 だって、いわゆる今度の流弾の弾丸は使わないというだけで、レンジ10は今までと同じように実弾射撃訓練で使い続けるわけですよ。弾丸の種類の問題ではなくて、ここは民間集落に近い、しかもいろいろな流弾事故を繰り返し起こしてきた、そういう欠陥訓練場だというのを、アメリカの会計検査院もそう指摘しているわけですよ。

 放置していたら人命にかかわる事故が必ず起きる、それよりも軍事の訓練が大事ですか。人命よりも軍事が大事ですか。やはりレンジ10の閉鎖を求めるべきではないですか。

河野国務大臣 米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないものでございます。米軍の運用に当たり、安全面に最大限配慮するよう、引き続き強く求めてまいります。

赤嶺分科員 私は、これは日本の外務大臣がやる答弁じゃないですよ。日本の外務大臣であれば、誇りを持って、県民の命を守るために米側に物を言う。物を言う外務大臣である立場を放棄していると思います。

 結局、米軍がヘリ事故を起こしても、流弾事故を起こしても、日米地位協定の前には、訓練をやめさせることも実効性ある調査もできないのが実態であります。

 昨年七月、全国知事会は、日米地位協定の抜本改定を求める提言を出しました。提言は、「国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること」、このように指摘をしております。

 知事会が提言を出して以降、都道府県や市町村で、提言を尊重し、日米地位協定の改定や見直しを求める意見書が相次いで出されています。衆議院の外務委員会に送られたものだけでも五十七件に上ります。地位協定改定は全国的な要求となっています。

 外務大臣、こういう要求を重く受けとめて、地位協定の抜本改定、これに踏み出すべきではないかと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 日米地位協定に関する具体的な問題につきましては、政府として、効果的で最も機敏に対応できる取組を通じ、解決してまいりたいと考えております。

赤嶺分科員 終わりますけれども、外務大臣になる前の河野さんはそういう立場ではなかった、非常に悔しいものを感じているということを申し上げて、質問を終わります。

井野主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田分科員 ありがとうございます。

 法務委員会で尊敬する井野先生から名前を呼んでいただきまして、大変光栄でございます。

 きょうは、ずっとほかの方の質問も聞いてきましたが、日韓関係の質問も多かったと思うんですけれども、その問題の前に、外国との交渉において何らかの問題が起きたときに遺憾の意を、今、先ほども大臣がおっしゃられましたが、遺憾の意をおっしゃられておりました。

 ある意味で、今国民は、何かあったときに遺憾の意を表明したという言葉には多少うんざりしているという部分もあるんじゃないかなと思います。

 私は、日本の領土を守る行動をする議員連盟の一人として、いろいろな、そのときの勉強会に行きました。

 そのとき、竹島に対して上陸をしたりするときに関してどういう行動をとったのかと言うと、遺憾の意を表明してきましたと官僚の方が答えるんですね。そうすると、じゃ、どういう反応があったのかとほかの方が聞くと、いやいや、そっちが悪いんだと言い返してきたと。その言い返してきたときに、じゃ、どうしてきたんですかと。聞いてきたと。何だそれはという話なんですよ。

 遺憾の意を表明するだけで、相手方は、いや、そっちが悪いんだと。それで終わっているというのが現状ではないだろうかという意味では、この遺憾の意というのが果たして、それで国際交渉に関して十分な対応と言えるのかどうかということをもうそろそろ考え直さなければいけない時期なのではないかなというふうに思っています。

 特に、遺憾という言葉は、そんなに日常生活では使わないんじゃないかと思うんです。河野外務大臣は、生活上、これは今遺憾だとか言うことはあるんでしょうか。そういう意味では、この遺憾という言葉自体が、日本人にとってどういう意味なのかというのが非常にわかりづらいというのは正直あると思うんです。

 国語辞書を調べると、残念に思う、期待したことと違ったというような意味で、自分の方が悪いかのような意味合いのことも辞書には書いてあるし、国交的な意味では、相手を非難するとも書いてある。

 だけれども、ネーティブな人、あるいは相手方からしてみたときに、これはやはり日本語で言うのではなくて、何らかの形で、英語で言うのかなと思うんですが、外国に対しては、日本は遺憾ということは、日本語で遺憾というふうに言うんでしょうか、それとも相手の国の言葉に訳して言うんでしょうか。きょうは、遺憾ということの手続を聞くという通告をしているので、わかる内容でお答えをいただきたいと思います。

河野国務大臣 それはケース・バイ・ケースです。

串田分科員 ということは、相手の国の言葉にかえることもあれば、日本語で言う場合もあるということなんだとは思うんですけれども、今言ったような形で、遺憾と言うときには、要するに、こちらの官僚としては、どういうポジションの人がどういうような形で、例えばどういうふうな文書を、手渡して終わるのか、あるいは口頭で手渡しながら何か遺憾の表明をしてくるのか、相手方はそのときにどういうようなことをするのが一般的なのか、言い返してくるのがその場なのか、あるいは後日何らかの反論があるのか、ここら辺も、国民にとってみると本当に不思議でならないんだと思うんです。

 遺憾の意を表明しましたといって、毎回毎回、もうずっと聞き続けているけれども一向に日本の立場というものがあらわれない中で、一方的にやられ続けているというような意識が私はあるんだと思うんですけれども、手順というのは一般的にどういうように行っているんでしょうか。

河野国務大臣 それもケース・バイ・ケースです。

串田分科員 非常にそっけない。国民が大変本当に心配していることであるのにかかわらず、そういうような態度で遺憾を言い続けていたらば、相手の国というのは本当に反省するとか、申しわけないことをしたなというふうに本当に思っているのかどうかというのは、やはり国民としても非常に不安になると思うんです。

 五年間の間に、遺憾ということを、例えば五年じゃなくてもいいですよ、去年の間、日本が他国に対して遺憾と言った回数というのは何回あるんでしょうか。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な、統計として何回というようなことでお答えすることはできないのですけれども、例えば一つの事例として、昨年の三月でございますが、河野大臣の会見記録において、アメリカが一部の国からの鉄鋼及びアルミニウムの輸入品を対象に関税を引き上げる輸入制限措置を決定した場合、その際に、記者会見において大臣から、これに対して、遺憾でございますと、遺憾ですということを表明したという事例はございます。

 それから、平成二十九年でございますけれども、これは日韓外相会談において、前の岸田大臣からでございますが、韓国側が釜山の総領事館の前に慰安婦像を設置したことに対しては、極めて遺憾である、撤去を求めるということを改めて強く申し入れた、そういう事例がございます。

串田分科員 実は、通告段階でも遺憾の回数というのを私は確認させていただいたらば、答えとしては、統計的にとっていないということだったんですね。

 私、すごく不思議なのは、国がですよ、日本という国が、国交上いろいろなことで、日本の約束だとか、あるいは主権だとか、あるいは何らかの権利を侵害されているから遺憾だという表明をしているわけですから、極めてこれは国として重大事項である。少なくとも、そのようなことは、どういうようなときにそれに対して主張したのかというのを列挙されているのも当たり前だと思うし、回数だって、ある程度すぐに計算できるはずなのに、遺憾と言った数が数えられない、計算していません。

 ということは、遺憾を言ったことに対して、それがちゃんと、それに対して、相手方の国がその遺憾に対して十分に対応する、対応していなかったら、また遺憾と言わなきゃだめじゃないですか。一回遺憾と言えばもうそれで終わりなのかということになるわけで、フォローをしていかなければ、遺憾と言った意味がないと思うんですよ。

 そういう意味では、何らかの、計算とかあるいはリストアップとか何もしないで、一応、遺憾と言いました、もうそれで過去のことになってしまうのか、こういうようなところは改めていかなければいけないと思うんですけれども、この点について、もし、大臣から、そういう意味で、別にこのままでいいんだというのであればそれはそれでいいんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

河野国務大臣 特に統計をとる必要性を感じておりません。

串田分科員 そういうお立場であればしようがないと思いますけれども、日本の国民としては、やはり、遺憾なことをされたときには、断固として、国がそれに対して、何らかの是正措置に対して、前向きに何かやっていってくれるんだろうと信用しているんだと思いますよ。でも、今の回答だと、統計をとる必要もない、そして、どういうときに遺憾を言ったのかということも調べられない、数もわからない、こんなことで、何かあったら、とにかく遺憾と言ってきました。まるで遺憾のボタンを押しているだけだというような気が私はしています。

 そういう意味ではちょっと、やはり日本の国民がこんなに一方的にやられているということに対して腹立たしいと思っているわけですから、こういうことをやってきた、それに対してこういう対応をしたから、更にこういうことを言い返しましたというようなことがなければ、本当にやられっ放しになってしまうんじゃないかということを危惧をしています。

 それでは、質問を今度は逆の立場で、我が国が他国から遺憾と言われたことがあるのかどうかをお聞きしたいと思います。ここ数年の間で結構です。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 それについても、外務省として、きちんとした形で統計のようなものというのはございません。

串田分科員 この国は一体どうなっちゃっているんでしょう。ほかの国から遺憾だと言われたときには、それに対して謙虚に耳を傾けて、本当に何かほかの国が遺憾だと言われるようなことをしたのかということをチェックして直すか、あるいは、遺憾だということに対して、全くこちらにとっては思いのよらないことであって、言われることに対しては断固としてこれに対して抗議をするとか、どういうことをするかって、他国から遺憾だと言われることに対して何の感情も示さなかったのであれば、こちら側が他国に対して遺憾と言ったって、相手だってそれは何ら感情を起こさないと思うんですよ。何で、この国が遺憾と言われていることに対して、こういうことで言われたというようなことさえも言えないのかというのは、大変私は不思議なんですけれども。

 一つ、去年アメリカから、ハーグ条約に関して不履行国ということを国務省から主張されていると思うんですけれども、もし、この件に関して見解、その主張自体がおかしいのか、あるいはそれも全くスルーなのか、わかる方がいらっしゃったら、お答えをいただきたいと思います。

河野国務大臣 通告がございませんので、お答えは後刻調べて回答したいと思います。

串田分科員 通告はあるんですよ。ここ数年で遺憾と言われたことがあるのかという質問をしているんですから。去年されているじゃないですか。それを調べないで通告がないというのは、大変それは、回答としては誠実ではなかったと思います。

 ハーグ条約においては、日本は不履行国というような指定をされました。これは非常に重大なことだと思いますし、例えば、今月の二月の七日に国連の子どもの権利委員会から勧告が出されました。この勧告というのは、遺憾というような認識ではないのかもしれませんが、今月のことですよ、今月の七日に勧告が出されたことに対して、外務省としてはどういうような認識があるのか、お答えをいただきたいと思います。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、子どもの権利条約も含めまして、国連のいわゆる人権条約体における個別の国の審査において、その結果、勧告というものが出されますけれども、この勧告には法的な拘束力はございません。

 それについては、日本政府として、その勧告を関係省庁の中で検討して、必要なものがあれば適切に対応します。また、我々として、その実施が難しいものであれば、それは次回の政府報告において、そういう見解も含めて日本政府の立場といったものを明らかにしていく、そういう手順になってございます。

串田分科員 何でそれを聞いたかというと、ここ数年でいろいろな、国連からとかアメリカから、いろいろな意味で日本に対しての主張があるわけです。それに対して、日本も、こういうようなことをしていった、あるいはこれは見解が違うんだというような真摯な態度をとるというようなことがあるならば、この国がほかの国に対してもしっかり、条約違反だ、あるいは請求権協定にしても協定違反だ、こうはっきり強い立場で言えると思うんですよ。ところが、この国自身が、ほかの国から言われたときに、遺憾だと言われた数も数えていません、あるいは、勧告があっても、その勧告に関してはどういうようなことであるのかということも対応を検討していない、そういうような国であれば、ほかの国に対して言うような資格が果たしてあるんだろうか。もうちょっと謙虚に、勧告があったのであれば、それに対して謙虚にこれを受けとめるということは私は必要だと思います。

 特に、今回の勧告というのは、予算委員会でも質問させていただきましたけれども、一九九四年に日本が条約を締結した子どもの権利条約、これに基づいて国連が勧告をしてきたんです。それも、法改正をしなさいという勧告なんですよ。条約に従っていないという意味合いでの勧告なんです。これに対して、予算委員会での外務大臣は、条約に違反していないというような回答でありましたが、これに関してはついこの前回答していただいたばかりですので、見解に変わりはないかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

河野国務大臣 委員の御指摘は全く的外れだと思います。

 この権利条約の関係に関して言えば、予算委員会の答弁のとおりでございます。

串田分科員 もしそうだとするなら、権利条約に違反していないというのであるならば、国連が法律を改正しなさいと言うようなことは内政不干渉の原則に反するから、これは国連に抗議をするべきだと思うんですが、その準備はおありでしょうか。

河野国務大臣 先ほどから申し上げているように、勧告に別に法的な拘束力があるわけではございませんので、政府として対応できるものは対応し、対応できないものについては次回説明をするということでございます。

串田分科員 いろいろな条約の読み方だとか協定の読み方で解釈が違うことはあると思うんです。そのときにどうするかというと、二国間で議論をしても話がつかないときには、国連に、あるいは国際世論に、あるいは国際司法裁判所に訴えをして解決をしていく。今回の徴用工問題もそういったようなことを考えているということでありますが、二国間で話合いがつかないときには、そういう国際世論で、あるいは何らかの形で解決をしていくことを望むということは、二国間ではそれぞれが自分の立場があって解決ができないときには、その上の団体なり国連なり国際司法裁判所に解決を委ねる、その委ねたことに対しては従うというようなことで、そういう日本の立場も主張していこうということだと思うんです。

 ということは、そういうような国連だとかのことに対して、日本も、何とか国際世論から、相手はおかしいことを言っているから、国連から、あるいは国際司法裁判所が正しい判断をしてくださいということを、そういうことを主張するんだと思うんです。そうだとするならば、今回、国連から勧告があったということは、それは素直にこれを改善するという方向性を示さなければ、日本自身がそういうことに対して解決を委ねようとするような資格がないんじゃないかと思うんです。

 国連だとか勧告だとか、法的な拘束力がない、大体何だって国際間に関しては法的拘束力はないですよ。中国だって、裁判で負けても、そのまま領海権については何ら解決を認めませんでした。法的拘束力はないですよ。何だってないんです。何だってないけれども、二国間で争いがあったときには国際司法裁判所や国連に判断を委ねるということにならないと円満な解決ができないということであるなら、国連や国際司法裁判所の判断に関しては我が国も謙虚にそれを受けとめるという姿勢がなければいけないのに、法的拘束力はありませんといってうっちゃっているということは、我が国自身がそういうところに申立てをする資格が私はあるんだろうかというところを疑問に思います。

 次に質問を移りたいと思いますが、遺憾でと言うだけでは解決ができないというようなことがありましたけれども、例えばファーウェイの副会長が中国の交渉によって保釈されたというようなことも報道されました。あるいは、北朝鮮の米国人三名が昨年釈放されたというような話がありました。

 そういうのを聞くと、何で日本の拉致の被害者はまだ帰ってこないのか。私も拉致の特別委員として、とにかく一刻も早く帰してもらいたいという中では、この二つの国というのはかなり強引な手段を使ったのか、使ってでも解決を図ったということは、これはある意味では、その手法というものも分析をして、日本も使えるものは使っていくという必要があるんだと思うんですが、この二つの事例に関しては、外務省としてはどういうような分析をされているんでしょうか。

河野国務大臣 第三国間のやりとりでございますので、コメントすることは差し控えます。

串田分科員 コメントするのを差し控えるのは構わないんですが、検討しているのかどうかということと、それを有効に日本として利用することができるかどうかということの部分を、やはり、政府としては国民に説明する必要があるんじゃないですか。

 同じように北朝鮮に米国人が三名いる中で、日本人だけは帰ってこないのに、米国人だけが帰ってきたのは、実はこういう事情があるから違うんだというような説明をしっかりしないと、アメリカはうまく、ちゃんと交渉しているのに、日本だけは交渉がうまくいかないから帰ってこないんじゃないかと思う人だって、国民の中ではたくさんいると思うんです。

 こういうような疑義というものもやはり解消する必要が私は政府にあると思うんですが、それは、外務大臣としては説明する必要がないという理解でよろしいでしょうか。

河野国務大臣 個別の具体的な分析の内容については、事柄の性質上、お答えを差し控えます。

串田分科員 徴用工問題についてお聞きをしたいと思いますが、これもいろいろな委員が質問をされているところだと思います。

 今回、相手方に対する、誠実なことを信頼するという話がずっと答えとしてありましたけれども、信頼できる根拠というのが、外務大臣としてはどういうものとしてお持ちになっているのかをお聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 徴用工、旧朝鮮半島出身労働者の問題につきましては、今、日韓請求権協定に基づく協議の要請をしているところでございます。私としては、韓国政府が誠意を持ってこれに応じるものと考えております。

串田分科員 本当に誠意を持って対応してくれると思っている、信用できるのであれば、私もこんなに何度も質問しないんですけれども、次から次へと不合理なことを言ってきているように、私は印象としては持っているわけです。そういうように思う国民というのも非常に多いと思うので、誠実な対応をすることを信頼するということはあるんでしょうけれども、外務大臣としては、その信頼に対して期限を区切る、あるいは、いついつまでをめどにして待っているんだというようなことをお考えなのか、あるいは、そういったようなことも含めて、結論をいついつまでに出してほしいというようなことを相手に提示しているのかをお聞きしたいと思うんです。

 なぜかというと、この手続は、民間会社に対しての執行の手続は、どんどんどんどん進んでいるわけです。そうすると、これがどういうふうになっていくかというと、悪化していくばかりですよね。強制執行されたり財産を差し押さえられたりとかということになるわけですから、事態がどんどんどんどん悪化することは、やはり政府としても期限を区切ってこれは主張していく必要があるかと思うんですが、外務大臣としては、その必要は感じておられますでしょうか。

河野国務大臣 日本企業に不当な不利益が生じるようなことがあれば、日本政府として、当然、必要な措置をとるつもりでおります。

 また、タイミングについては、手のうちを明かすことになりますので、お答えを差し控えます。

串田分科員 これの一番最初のスタートというのは、請求権協定に対する解釈の違いもあるんだと思うんです。

 当時、これは一九六五年だと思うんですが、当時の請求権協定に関する合意内容というのは日韓で違いがあるのか、あるいは、そのときには違いはなかったけれども、ここ数年になって違いがあるということを主張し始めたのか、外務省としての認識をお聞きしたいと思います。

石川(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 日本と韓国との間の財産請求権の問題は、一九六五年の日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決済みであるというのが我が国政府の一貫した立場でございます。

 現在及び過去の韓国政府の立場について、我が国として有権的に説明する立場にはございませんが、昨年の一連の大法院判決は、日韓請求権協定に明らかに反するものでございまして、日韓両国間に旧朝鮮半島出身労働者問題をめぐって日韓請求権協定の解釈及び実施に関する紛争が存在することは明らかであるということから、一月九日にこの協定に基づく協議を韓国政府に申し入れたところでございます。

串田分科員 その解釈の違いということは、これは非常に根が深くなるんですね。解釈の違いというのは本当に世の中たくさんあるわけでして、解釈が違った場合には、もうこれは裁判所の裁判官によって、どういう解釈があるのかということを展開していただくしかないと思うんです。

 そういう意味では、解釈の違いというのが出てきたときには、相手方にどんな信頼を持ったとしても、相手もまた、日本が我が国の解釈を理解してくれるに違いないと思っていると考えられるんですね。双方が、解釈が違うというようなことで、いつまでたってもこれはなかなか進まないと思うんですが、解釈の違いに関して、日本として、相手方の解釈が間違っているというようなことを今も順次何らかの形で提案はしているんでしょうか。細かな手のうちを返すという必要はないんですけれども、ただ単に相手方の行動あるいは対応を信頼しているというだけでは、やはり国民としても、政府としての行動として非常に不満足なことをお考えになる人も多いと思うんです。

 こういうような形で、次から次へと相手に対して、この請求権協定の解釈が、あなたの方が間違っているというようなことをしっかりと示すというようなことが行われているのかどうか、外務省にお聞きをしたいと思います。

河野国務大臣 この問題については、韓国政府と協議をしてきているところでございます。

串田分科員 協議はしていると思うんですけれども、今の話を聞いていると、ただ単に遺憾だと言っているわけじゃないし、こちらの国としても、相手方を信頼しているというだけではなくて、外務省としてはできるだけの行動を起こしているんだというふうに今の回答でお聞きをしていいでしょうか。そのことについても回答はできないということになるんでしょうか。よかったらお答えをいただきたいと思います。

河野国務大臣 御指摘のとおりでございます。

串田分科員 最後の方になりましたが、先ほどからずっと、遺憾という言葉だけではいけないんじゃないか、これは、ちまたでも本当に、遺憾だけを言っているだけではだめだという声はすごく強くなっているわけです。

 そういう意味では、今、外務大臣がおっしゃっていたように、なかなか手のうちを見せることができない、そういうもどかしさも私はあるんだと思うんですけれども、そういう意味で、日本の立場というものをもう少し外国に知らしめるというような意味合いで、やっている手段をもう少し国民にわかりやすくやっていくというような、そういう努力だとか、そういったような、抗議の仕方をもう少し検討するというようなことは、外務省としてはお考えにならないんでしょうか。もう遺憾の意を表明しましたというだけでこれからもするのか、あるいは、もう少し抗議の仕方についても工夫をし、システマチックに何かこう、遺憾の行動をとったときにはしっかりと管理をするような部分でフォローアップをしていくとか、そういったようなことの外務省のお考えはあるのかどうか、お聞きしたいと思います。

河野国務大臣 外交について国民の皆様にわかりやすく説明するのは、これは当然のことだと思いますので、外務省としてしっかりと、できる限りのことはやってまいりたいと思います。

串田分科員 当面、今、日韓問題になっていく中で、かなり日本の方が静か過ぎるんじゃないか、だから一方的にやられっ放しなんじゃないかというような気がする国民も多いと思うんです。これは、やはりそういうような態度というのは国民としても感情的に不満でもあるでしょうし、ますます日韓関係が悪くなるんだと思うんです。

 そういう意味では、こういう提案をしたけれども向こうからこういう反論があって、それに対して精査しているけれどもこうだというような意味で、ある程度の交渉経過、これはなかなか手のうちを見せることはできないにしても、今こういうような段階で、こういうようなことが今行われているので、今こういう部分が難しいんだというようなことを、もう少し経過を説明をしていただくということは、私は必要なんじゃないかな。

 遺憾と言いましたというだけで済んでしまっている場合に、本当にそれ以上やっているのかどうか。やっていない場合もあるし、やっている場合もあるだろうし、そこら辺がわからない中で、一方的にいろいろなことをやられてしまっているということに対しての国民の不満というのは非常にあるんだということを、これは外務大臣としても認識をしていただきたいんですが、河野外務大臣、この点に関して、国民のフラストレーションがたまっているということの認識がおありかどうか、最後にお聞きをしたいと思います。

河野国務大臣 一般に、交渉の内容を一方的に外へ言うということは、交渉相手との信頼関係を損なうことにもなりますので、それはできないということは御理解をいただかなければなりません。

 対外的に物を強く言えば解決するなら、こんな楽な外交はないわけでありまして、日韓の中でも、相手を強く非難することだけを喜ぶ勢力というのがいるわけで、その勢力の歓声を目当てに強いことを言うだけではこの問題は解決することができませんので、そうしたことをするつもりはございません。

串田分科員 最後に河野外務大臣の、そういう内輪話というか、難しい部分というのを表明していただきましたので、今後も信頼してお願いをしたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

井野主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。山下法務大臣。

山下国務大臣 平成三十一年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じて、国民の皆様の安全、安心な生活を守るとともに、国民生活を取り巻く状況の変化に応じた新たな政策課題に取り組むため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省の一般会計予算額の総額は八千百九十九億七千九百万円で、所管別に区分いたしますと、法務省所管分は八千百二十九億一千六百万円、国土交通省所管として計上されている法務省関係の国際観光旅客税財源充当事業の予算額は七十億六千三百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計の予算額は、三十一億七千万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、お時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元にお配りしております印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

井野主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま山下法務大臣から申出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井野主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

井野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉田統彦君。

吉田分科員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は、法務大臣、山下大臣に来ていただきまして、実りある議論になればと思います。

 かなり細かく質問通告してあります。ただ、広義の中でいろいろ、きのうレクをさせていただいて、そういった内容も質問させていただきますが、できるだけ簡潔に、そして的確にお答えいただければとお願いを申し上げまして、始めさせていただきます。

 大臣、昨今のソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNS、その他インターネット上の犯罪、特に人権侵害、嫌がらせ、虚偽の記載、そういったことが、やはり、かなり社会問題になってございます。

 まず、昨今のブログ、ツイッター、フェイスブックなどのインターネット上の匿名での投稿に対して、特に今申し上げた人権侵害、嫌がらせ、虚偽の記載に当たる、そういった記載内容に対して、やはり、懲役刑など刑事罰の適用を含めた罰則の強化や、犯罪行為に相当する投稿者の特定など、そういった厳しい対応をしていかなければいけないのかな、そのように考えております。

 実際、我が国はもとより諸外国でも、虚偽の内容をインターネット上にさらされて、風評被害で倒産する中小企業もございます。また、成り済ましの虚偽の不倫告白などで離婚してしまった夫婦なんというのも、アメリカなどで結構いらっしゃる。そのような情報、私のところにございます。私人であっても、大臣や私ども公人であっても、このような事態から当然保護されるべきだ、そのように考えるわけです。

 まずお伺いしたいんですが、匿名性の極めて高いSNS等に対して、投稿や登録に一定の制限を義務づけたり、また、SNS上での匿名登録から本人の特定に至るようにシステム改変をさせること等によって、捜査機関、大臣も所属されていた捜査機関等による捜査の際に、捜査をスムーズに進めて、投稿者を捕捉し、身元を迅速そして容易に特定できるように監視体制を強化すべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 確かに、昨今、SNS等インターネット上において人権侵害等情報が流布されるといった事例、これは法務省としても、人権擁護局を所管していることもございます、取り組んでいるところでございます。

 他方で、今の投稿の匿名性、これにつきましては、表現の自由あるいは通信の秘密、そういったこともかかわるものですから、そういったことについて、特段の法的な制度を設けるといったことは現在考えておらないというところでございます。

吉田分科員 大臣は、逆に、そういうときに取り締まる側にいらっしゃったわけなので、多分、今のお答えも、本来、以前大臣が所属していた組織論としては、そういったところと闘いながらなさっていたことはあると思うので、大臣の本音と、大臣としてのお立場からの発言で乖離が出てくるのはしようがないと思いながら聞いているんですが、大臣、要は、インターネット上の匿名の投稿による犯罪全体への対応をやはり強化してほしい、こういったところが本当に一番大事なところであります。

 今、取締りを今後していくところはやはり表現の自由等に触れるという大臣の答弁がありましたので、なかなかこの先、ちょっと細かいことが聞きづらいんですが、これは大事なことなので聞いていきますが、非常に安易にツイッターなどというのは参画できるわけですよね。若者が特にたくさん参加している。

 その中で、リツイートとかそういう拡散行為、ございますね。拡散行為に対して、その内容がやはり人権侵害、嫌がらせや虚偽の記載などという、そういった記載内容である場合は、投稿者は当然、場合によっては名誉毀損等で訴えられるわけですよね、大臣。そういった投稿者本人は、もちろん、捕捉をされれば、いわゆる名誉毀損等で刑事罰を受けていくわけですが、いわゆる拡散行為、これも、投稿者の内容が虚偽であった場合、その内容を拡散するという行為に対しては、やはり同様に罰則の適用を強化すべきだと考えるんですが、そこについてのお考えを聞きたいんです。

 具体的に言うと、こういった拡散行為も、名誉毀損罪、侮辱罪、そして信用毀損罪に相当すると場合によって考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、お尋ねの犯罪の成否につきましては、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事情であり、一概にはお答えしかねるということでございます。

 ただ、あくまで一般論として申し上げれば、インターネット上の記載、これを投稿する行為に限らず、拡散する行為自体が、例えば名誉毀損罪の構成要件に該当し、違法性、有責性が認められるのであれば、それは犯罪として成立し得る、処罰し得るということでございます。名誉毀損罪に限らず、その他の犯罪の構成要件に該当するのであれば、犯罪として成立し得るというところでございます。

吉田分科員 大臣、構成要件というところに関してなんですけれども、その構成要件に該当するところに関して、例えば、投稿者と拡散者に関して何らかの差異はあるんですか。つまり、内容が一緒だったら同じ構成要件になるかということを確認させてください。

山下国務大臣 これについても、やはり犯罪の成否は具体的な証拠関係に基づいて個別に判断されるべき事柄でありまして、またちょっと技術的、専門的な、適用関係でございますので、必要があれば刑事局長に答えさせます。

小山政府参考人 今お尋ねでございます、拡散行為と当初の投稿者との関係、そこは差異があるとはなかなか言いがたいとは思っております。

 最初の投稿者、それから拡散者、いずれにいたしましても、人の名誉を毀損する内容のインターネット上の記載を拡散する行為、これが、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損したと言え、故意がある場合には名誉毀損罪が成立し得るものと考えております。

吉田分科員 ありがとうございます。よくわかりました。

 では、大臣、そもそも、SNS、インターネットを利用した多岐にわたる犯罪行為がございますね。今、少し、名誉毀損とかそういったことに特化して質問させていただきましたが、例えば前述の人権侵害、誹謗中傷行為。そしてプライバシー権の侵害、個人情報流出、例えば盗撮、肖像権の侵害、学校裏サイト、これはいじめの原因にもなると考えられるんですが。例えば、あと、ワンクリック詐欺、アダルトサイトからの架空請求、オークション詐欺、出会い系サイトのサクラによる詐欺などインターネット詐欺。架空請求メール、未承認広告宣伝メール、個人情報取得目的の詐欺メール、場合によってはウイルスメールなど詐欺メール。あと、リベンジポルノ、SNSストーカー。LINEを使った犯罪、例えば、後でお話ししますが、乗っ取りや成り済まし、あと、LINEいじめ、こういったもの。あと、不正アプリ、スキミングなど、枚挙にいとまはございませんね。もうどんどんふえている。

 こういったところに関して、今言ったように、厳罰化や、ちょっと制度を変えたり仕組みを変えて取締りを強化するなんという考えは、法務大臣、ございませんか。

山下国務大臣 まさに現行の法律で対応可能なものについては、例えば、先ほども指摘がありました名誉毀損罪、あるいは信用毀損罪や業務妨害罪がございます。また、リベンジポルノに関しましては、私自身、議員立法として、防止法、これをやらせていただきました。まさに今、そういった既存の法律において、そういった侵害行為、あるいは犯罪に該当するような行為について対応をしているところでございます。

 そういったものに加えて更に取締り、規制をやるべきかどうかということについては、先ほど申し上げたように、表現の自由、通信の秘密、そういったところの緊張関係もございます。また、そういった人権侵害情報の削除等に関してはプロバイダー責任制限法等もあるところです。これは総務省の所管でございますので、そういったところとの緊張関係という、そういったところも検討しながら慎重に対応していきたいというふうに考えております。

吉田分科員 大臣としては、なかなか、そういうふうにお答えなさるしかないのか。ただ、大臣、もとは正義の味方として、検察官であったわけですから、かつて正義の味方で、今正義の味方でないとは私は思いたくないし、大臣みたいに立派な、資質のある大臣をせっかく法務省は抱えているわけだから、ここはもう一つ、大臣、やはり時代が変わってきていますから、多岐にわたる犯罪行為が出てきているので、それを今のような答弁で、ほかの誰がやっても同じような答弁をするのは、大臣の御答弁が、せっかく、大臣が大臣たるゆえんがないですよ。

 もうちょっと、ここはしっかりやるんだとか、やはりそういったことを、みんな、この世の中の、山下大臣が大臣に就任したことに対して期待している人は思っていますよ、大臣。

 もうちょっと、何とかお答えいただけませんか。これじゃ、ちょっと、みんながっかりしちゃいます。

山下国務大臣 確かに御指摘のとおり、私は昔、検察官をやっておりまして、それを正義の味方と言うかどうかは別にしまして、今、弁護士でございます。ただ、一貫して、立場は変わっても、法の適用、これはやはり人権との緊張関係がございます、そういったさまざまな人権との緊張関係を見ながら必要な対応をとっていくということでございます。

吉田分科員 わかりました。

 ただ、これからまた多岐にわたって犯罪行為はふえますので、準備はされておいた方がいいと思いますよ。やはり厳罰化も含めた、抑止的にする厳罰化。やはり犯罪は犯罪ですから。かなり取締りが緩いなと思うイメージを受けます。

 例えば、もっとこういったところに人を割くだとか、例えば交通取締りも大事でしょうけれども、年末の何かノルマ稼ぎと世の中の人たちに言われちゃうようなそういうことをやるよりも、やはりこういった、本当にこれから時代に即したところに人を。だから、厳罰化をしなくても、取締りを強化するだとか、犯罪を未然に防ぐ工夫をするだとか、そういったことにやはり人を割くのは、今大臣がおっしゃったこと以外のところでもできることだと思うので、ここはぜひしっかりやっていただきたいと思います。それは多分大臣も同じ思いだと思うので、お答えは要らないんですが。

 次に、大臣、現在の刑法だと、名誉毀損罪の法定刑の上限は懲役三年ですよね。昭和四十九年の法制審議会が答申した改正刑法草案では、この法定刑の上限を五年に引き上げることが盛り込まれていたはずなんですが、この名誉毀損罪の法定刑の引上げは、その当時の刑法全面改正が頓挫したことから、実現されなかった。もう大臣、お詳しいと思いますが。このとき、なぜ法定刑を引き上げようとしたのか、その理由は大臣、どうだったでしょうか。

山下国務大臣 ちょっと通告がなかったので、では、その経緯について、また、答えられる範囲で局長に答えさせます。

小山政府参考人 失礼いたしました。ちょっと、申しわけございません。今ちょっと手持ちの資料がございませんので、また後ほど、何か、必要に応じてお答えさせていただきます。

吉田分科員 でも、厳罰化に関して僕は聞いていたから、一応広義で、これは。まあいいです、そういうことなら。大丈夫ですけれども。広義でそういうこともきのう話はしていたので、やはりそこも備えて、だって、そういう話、出るに決まっているじゃないですか、こんな話は。厳罰化と言っているんだから。過去の厳罰化をしようとした事例に関して、それを事務方が御用意ないというのはちょっとどうかと思いますよ、はっきり言って。だって、厳罰化と何回も私、通告で言っているわけだから。

 では、これも同様に答えられませんかね。この改正刑法草案で、侮辱罪も同様に法定刑の引上げが盛り込まれたはずですが、そこに関しても知見はないですか、事務方も。

小山政府参考人 申しわけございません。ちょっと手元に用意がございません。申しわけございませんでした。

吉田分科員 済みません。わかりました。もうちょっと細かく通告してあげればよかったですけれども、ごめんなさい。こういったものの厳罰化ということもテーマに挙げていたので、それくらいは盛り込まれていたかなと思うんですが、わかりました。

 では、そうすると、さっき大臣がお答えいただいたように、こういったものを現時点で、だから、当時の法案の素案もあったし、厳罰化をしようというのは、さっき大臣がおっしゃったように、今現在では、懲役刑を例えば三年からこの前のように五年だとか、引上げをする、そういうお考えはまだ今のところないということでよろしいですかね。

山下国務大臣 厳罰化の具体的な事情について、ちょっと正確な答えについてはまたあれですけれども、恐らく、保護法益である社会的名誉であるとかあるいは名誉感情、これに対する国民の意識の高まりとか、そういったものが背景にあろうというふうに考えております。

 そういったことは現在でもあるところではあるんですけれども、やはり、私どもとしては、今あるその法律、名誉毀損罪あるいは侮辱罪、そういったものを的確に運用していくというところで対応しているというところでございます。

吉田分科員 では、大臣、的確にそれを運用する上の努力はしていただける、そういうことでよろしいですよね。

山下国務大臣 これは個別の犯罪に対する罰則の適用あるいは手続に関することでございますので、そういったことについて、ちょっと若干、お答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、そういった国民の意識の高まりがあるという御指摘は重く受けとめていきたいと考えております。

吉田分科員 ぜひ重く受けとめていただいて。本当にいいときにいい大臣が御着任だと思いますので、ここを本当にしっかり、私も国民の一人として期待していますので、やっていただけたら。

 ちょっと質問を一部細かく通告し過ぎちゃったので、そこに関してのお答えだけに多分ちょっと特化して勉強されたのかなと思うんですが、ほかにも広義で通告させていただいたことを話していきたいと思いますので、大臣、ちょっと、知見がなければ参考人で結構です。

 まず、では、これは大臣に答えていただきたいんですけれども、インターネット上で他人の名前を名乗る行為自体は、現時点で犯罪ではないですよね、それのみでは。刑事責任を追及することはできませんよね。つまり、インターネット上で他人の名前を、例えば、ある人が山下法務大臣の名前をインターネット上で名乗るだけであれば、それは刑事責任を追及することはできませんよね。

 しかし、そもそも、それは、明らかに何か犯罪的な意図があったり、犯罪行為につながっていく可能性が高い行為だと思いますが、SNS等で他人に成り済まして投稿したり、勝手に他者とやりとりをすることは、今後も犯罪とは認定されないんでしょうか、大臣。

山下国務大臣 これにつきましては、そもそも、個別的な事情の中で犯罪として成立し得るかどうかということが前提になってまいります。

 また、犯罪として成立されない場合に、規制がどうかということになりますと、これは、プロバイダー責任制限法あるいは通信の秘密に係る総務省の所管ということになります。

 いずれにせよ、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。

吉田分科員 ただ、これは本当に困った問題に、大臣、なっていますからね。

 例えばツイッターの場合、芸能人とか政治家など知名度の高い人のアカウントというのは、公式マークがついていますよね。成り済ましアカウントが大量にあっても、その公式マークを目印にして本物を見分けることができる。

 ただ、一般人の人の場合、どうでしょう、大臣。例えば、自分の本名を勝手に名乗って写真を使ったアカウントが存在しても、よっぽど親しい人ならそれがにせものだと気づくことはあるかもしれないけれども、ただ、よっぽど親しい人以外は気づかないですよね、基本的に。また、本人がSNSをやっていないにもかかわらず、他者の報告、誰かから、あなた、何かアカウントが存在するよなんということを言われて知った場合というのは、誰でも動揺しますし、何か犯罪や不正に巻き込まれないか心配になりますよね、大臣。

 そうすると、今の大臣の御答弁だと、それを取り締まることはできない、又は法務省としてする意思がない、そういうふうに聞かれかねないと思うんですけれども、どうでしょう。

山下国務大臣 まず、今の御指摘の事例については、やはり、個別具体的な事情によって適用される法律関係がこれは変わってくるんだろうということで、一概にはお答えできないということで、どうか御理解賜りたいというふうに考えております。

小山政府参考人 委員の御指摘、現行の問題は個別の問題でございますので、捜査当局が収集した証拠に基づいて決めていくことでございますが、特別な規定の創設という御指摘もあるのではないかと思います。

 この点につきましては、既存の罰則とは別に、お尋ねのような手段に対する特別の罰則を新たに設ける必要性や理由をどのように考えるかということがまずございます。その上で、この新たな罰則によって処罰すべき行為の外延を明確に定義できなければ、罰則の構成要件としては不十分でございますので、こういう観点も踏まえて慎重に検討することが必要であると考えております。

吉田分科員 なかなか、大臣、答えづらいところで申しわけない。

 ただ、これは実際、本当に社会問題になっていますので、今の御答弁、これは国会の記録に残りますけれども、このままでいい問題じゃないということは、大臣、やはり認識をしていただいて。とにかく、大臣、任期中にやはりこういったことも議論をしっかりしていただいて、あくまで国家国民のためですから、行政が存在するのは。やはり、そこをしっかりやっていかないと、ちょっと今のでは、この日本国の優秀な捜査機関を所轄する法務省としては非常に頼りないなと。私は世界一の法務省だと思っていたんですが、これではちょっと頼りないなということを申し上げざるを得ない。まあ、叱咤も含めてだと思ってください。

 では、こういった成り済ましとは若干異なる視点なんですが、単に名前を名乗るだけではなくて、他人のIDやパスワードを不正に入手してアカウントを乗っ取る行為、これはかなり問題になっていますよね。大臣、LINEの乗っ取りとかあるじゃないですか。これは不正アクセス禁止法に抵触する可能性があると思いますが、まず、そこがいかがかどうか。そしてまた、そういった法律、今申し上げた不正アクセス禁止法以外の部分で、こういった行為に法務省は何かしらの対応をしているのか。

 はっきり申し上げて、LINEの乗っ取りというのはよく聞くんですが、LINEの乗っ取りをしていた人が捕まったという話は一切聞かないんですけれども、大臣、どうでしょう。

山下国務大臣 これも個別具体的な犯罪の成否に係ることでございまして、それがその構成要件に当たり、また違法、有責であれば、それぞれの犯罪が成立するということになるのであろうというふうに考えております。

 そしてまた、法務省は犯罪でなければ何もしないということではなくて、例えばインターネット上の人権侵害情報に対して、そういった重要な人権問題になっているものと認識しておりますので、この人権侵害情報の削除は、プロバイダー責任制限法に定めている免責要件を考慮しつつ行われているところではあるんですが、法務省の人権擁護機関がインターネット上の人権侵害に関する被害申告を受けた場合には、被害者に関して、プロバイダー等への削除依頼等の具体的な方法について助言するなどの援助や、あるいは、御自身で依頼することが困難であるような場合には、法務省の人権擁護機関において速やかに調査を開始して、その結果、不当に権利を侵害する情報の流通であると認められるようなときには当該情報の削除をプロバイダー等に要請するなど、対応に努めているということを御紹介したいと思っております。

吉田分科員 多分、それは私が次に通告しておいたやつのお答えだったんだと思うんですけれども。

 大臣、ただ、LINEの乗っ取りで、何か金品、物を買わせて、金券みたいなものを買わせてそれを回収するという行為が本当に多く起こっているわけじゃないですか。これは個別具体的というよりも、もうそういう犯罪が存在して、これは個別の案件というより、手法もほぼ一緒の手法が全く使われているわけだから、そこに関して、今の大臣の答弁だとちょっとしっくりこないなと思うんですけれども、どうですか。

小山政府参考人 大臣の御答弁と重ねてになってしまいますけれども……(吉田分科員「重ねたところは要らないです、時間がもったいないから」と呼ぶ)ええ。

 いろいろ、個別の犯罪が成立する場合については、もちろん詐欺等も含めまして、適切に対応することが可能ということでございます。

吉田分科員 では、局長、LINEの乗っ取りで逮捕、起訴できた事例はあるんですか。

小山政府参考人 申しわけございません。今、手元に資料がございませんので、申しわけございません。

吉田分科員 このテーマで議論するといって、それぐらいの情報はお持ちにならないと、ちょっと事務方として、大臣も頼りないと思っちゃうんじゃないですか。もうちょっとしっかりお答えいただかないといけないと思いますよ。今こういう犯罪に関して議論しているといったら、それで検挙された例があるかどうかなんというのは、当然、事務方は資料を持ってこの国会審議に臨むべきだと私は思いますよ。

 では、大臣。大臣が知らないのはしようがないんですけれども、これは。もうちょっと行きますけれども、人権侵害に当たる記載内容、さっき大臣がおっしゃっていただいたところなんですけれども、まさにそこの削除、おっしゃってくださったじゃないですか、大臣が。そこはむちゃくちゃ労力と時間がある。それで、さっきおっしゃったように、個人でできない場合はということを答弁いただいたんですが。

 大臣、まず、削除要請がしにくいという声も上がっています。相当な時間が経過してもなかなか削除されない、こういった問題も、もうずっとそれがさらされている。行政からの削除要請に従うかはプロバイダーですよね、決めるの。任意だ。強制力がない。つまり、おっしゃった点はもちろん評価しないわけじゃないです、ちゃんとやってくださっている。ただ、今私が申し上げた三点、本当はもっと言いたいんです、時間の関係で言いませんが、不十分なんですよ、大臣。ここは大臣、どうされるんですか。

山下国務大臣 これは、プロバイダー責任制限法につきましては所管は総務省ということでございます。ですので、その法律の規定の範囲内で法務省としてはできることをやっているという部分でございます。

 このプロバイダー責任制限法を更にどのようにするかにつきましては、やはり総務省の所管でございますので、お答えは差し控えざるを得ないというところでございますが、いずれにせよ、インターネットによる人権侵害情報の流通については、総務省ともしっかり意思疎通しながら、関係機関とも協力しながら対応してまいりたいというふうに考えております。

吉田分科員 ぜひ、ちょっと横串をしっかり刺していただいて、やはり総務省所管という大臣の御答弁はわかるんですけれども、ただ、犯罪が起こったときにそれを捜査、対応するのは法務省ですよね。だから、そういった意味では、法律の、総務省所管はわかるんですが、そこはやはりちょっと横串をしっかり刺していただいて、ちゃんとした連携をとっていただくことを期待します。

 ただ、私人であっても公人であっても、本人が望まない内容をインターネット上にさらすこと自体というのがやはり問題じゃないですかね、大臣。本人が嫌だったらやはり削除させるという考え方が本当は必要。本人がですよ、公人、私人問わず、本人がこんな内容はさらさないでくれと思ったら、やはりそれを削除させるべきじゃないかなと思うんですけれども、その点に関しては、法務省を所管される大臣としてはいかがですか。

山下国務大臣 その点につきましても、プロバイダーを通じて流通するそういった情報について、これが直ちに犯罪あるいは人権侵害情報に当たらないのであれば、そこはプロバイダー責任制限法の世界ということになってくると思います。

 ただ、いずれにせよ、やはりそういった、インターネットを通じた人権侵害がないように、我々は法律の範囲内でしっかりと努めていくというふうに考えております。

吉田分科員 この質問だけで時間が過ぎちゃう。せっかくですから、では、ちょっと別のテーマも。大臣に関係あるところですので。

 大臣御自身は優秀な検察官で、今は弁護士としても御活躍だ。そういった人材が国会に、私も医者ですし、医療関係のことをきょうはちょっと準備して、そこまで行けなくて申しわけないんですけれども、あるんですが、ロースクールのことをちょっと、時間も来ているので。

 大臣、ここはもういろいろな思いがおありでしょうからちょっと議論したいんですが、はっきり言って、この法科大学院制度、いわゆるロースクールと、予備試験を経るパターンがありますよね。今、ロースクール、残念ながら、押しなべて人気は低下傾向ですよね。大臣、それは認めていただけると思います。予備試験を経るパターン、いわゆる旧来の司法試験に近いパターンの方が今人気があって、そして、問題なのが、司法試験の合格者が、予備試験合格者の方が圧倒的に合格率が、大臣、高いですよね、はっきり申し上げて。

 また、そちらを経る人材の方が能力的にまさっているという世評の、法曹の専門家たちの声。声ですよ、これは。声とか意見。まあ、そうじゃないのかもしれない。のある中で、ロースクール、そうなるとやはり、失政じゃないか、議論が必要だということですが、大臣、司法人材の飽和状態も世の中にあるわけで、この質の低下、あと、後述、ちょっと行けないかもしれない、司法修習生の待遇悪化が起こっているわけですが、そういったものにつながったこのロースクールというのは見直しの時期に来ているんじゃないかと思うんです。

 ロースクールにかわる司法人材育成制度を含めた検討が必要だと思うんですが、今後、このロースクールと予備試験を経るパターンの組合せを維持していくのか、それとも、何かしら抜本的な改革を準備されているのか。英明な大臣でいらっしゃるので、この質問には明確に答えていただきたいなと思います。

山下国務大臣 御指摘のとおり、ロースクールに関してはさまざまな御指摘があることを重く受けとめております。

 法務省としては、より多数の有為な人材が法曹を志望することになるように、文部科学省と連携しながら、文部科学省が進める法科大学院改革を前提として、法科大学院在学中受験の実現を含む司法試験制度の見直しについて、これを認める必要性、合理性や、実現する場合の具体的制度のあり方等のさまざまな観点から、今国会における改正法案の提出に向けて、今、文部科学省など関係省庁と協議しながら鋭意必要な検討を進めているというところでございます。

吉田分科員 もう時間が来ていますので、最後、ちょっとまとめて聞いていきますが、大臣、簡潔に聞きますが、今の一年当たりの司法人材の育成数が適正だと思われているのか。多過ぎる、少な過ぎる等、意見があったら教えていただきたい。

 あと、七十一期生から月十三万五千円の一律給付制度が入っていますが、これに関して、この給付制の拡充とかそういったことを考えていらっしゃるのか。ここはぜひ、まずは現行制度の安定的な運用をした後に考えるとか、そういう玉虫色の表現はやめていただいて、しっかり答えていただきたい。

 そして、二〇一一年十一月に司法修習が開始された新第六十五期司法修習生から貸与制が始まっています。既に返済が始まっていますが、この六十五期から七十期の谷間の世代の救済を考えているのか。これを最後に聞かせていただいて、終わりとしたいと思います。

井野主査 山下法務大臣、簡潔に答弁をお願いします。

山下国務大臣 はい。

 まず、規模につきましては、これについてはさまざまな御意見があろうと思いますので、そういった声を、しっかりと耳を傾けてまいりたいというふうに考えております。

 また、いわゆる司法修習生に対する経済的支援、これにつきましては、具体的な支援の中身につきましては、これは最高裁規則で決められているということで、最高裁のお決めになる、だから、その運用の状況をやはり見守りながら検討していかざるを得ないというふうに考えております。

 先生御指摘の谷間の世代につきましては、これは実は、やはり、既に修習を終えている者に対して事後的な措置を講ずることについて国民の理解が得られるのかということであったり、貸与を受けていない者の取扱いをどうするのか、あるいは、貸与金の返済期限の猶予も制度上認められているという救済措置もあるということを考えると、抜本的な救済措置を講ずるということは困難ではないかというふうに考えております。

吉田分科員 ありがとうございました。

井野主査 これにて吉田統彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、尾辻かな子君。

尾辻分科員 立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 きょうは、質問の機会を頂戴しまして、ありがとうございます。それでは、三十分という時間ですので、質問に参りたいと思います。

 きょうは、入管行政のことについてお伺いをしてまいりたいと思います。

 この四月から、入国管理法の改正がありまして、出入国在留管理庁になるということであります。政府は五年で約三十四万人の特定技能の労働者を受け入れる方針であるということですけれども、まず、今現在、しっかりと外国人の方の人権を守る入管行政になっているのかということについて、順次お聞きをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、現在の入管施設における長期収容者の数についてお聞きしたいと思います。

佐々木政府参考人 平成三十年十二月末時点において、全国の地方入国管理官署の収容施設に収容していた被収容者千二百四十六人のうち、退去強制令書に基づく収容期間が六月以上一年未満の外国人は百九十人、一年以上一年半未満の外国人は百七十八人、一年半以上の外国人は三百十三人となっています。

尾辻分科員 千二百四十六人のうち、半年以上収容されている方が半分を超えて、これで計算すると五五%が半年以上の収容になっているということで、これはかなり多いんじゃないかなというふうに思います。

 今数字をいただきましたけれども、今、どれぐらい最長の方がいるのか、一番最長の方から三例ほど挙げていただけますでしょうか。

佐々木政府参考人 申しわけありません。一番長い方の数だけ手元にありまして、最長の方は六年四月となっております。

尾辻分科員 そうですね。私もヒアリングの最初のレクのときに聞いたんですけれども、そこからまた、結構長期間の方がやはりいらっしゃるということで、六年四カ月ずっと長期収容されているというのは、本当にこれは人権問題とならざるを得ない状況だと思います。

 今、この収容というのは収容期限がないんですね。送還の見込みが立たない人や家族が日本にいる人まで、本当に、期限も切らず、最長六年四カ月収容を続けているというのは人道上も非常に問題があると思います。

 私、昨年、仲間と大阪入管に視察に行かせていただきました。現状も見させていただいたんですけれども、その環境というのが、二段ベッドが三つぐらい並んでいる、そういうところに複数人で生活をされている。もちろん、一切外出はできないわけですね。電話では連絡できますけれども、面会も、荷物を全部ロッカーに預けて、携帯電話も預けて、アクリル板越しにしか相手と会えないという非常に制限された状態で、こういう状況で長期間生活をされるというのは、やはりこれはもう耐えがたいストレスになることは間違いないと思うんですね。

 法務省から提供された資料によると、二〇一七年に、こういった形で収容されている方の中で、自傷行為を行った人の数が四十四件あるというふうに聞いております。実際、昨年四月にも、仮放免が認められずに、収容施設の中で三十代のインドの方が自殺されたということもありました。専門家の方々からは、拘禁性のうつ病になっているんじゃないか、こういう方々がふえているんじゃないかという指摘もあります。

 このような現状は非常に問題であると思います。変える必要があると思うんですね。出口のない長期収容が、結局次は、皆さんストレスを抱えておられるわけですから、さまざまな入管の収容施設内でのトラブルの原因、トラブルが今非常に起こっているんですね。

 大阪入管についてのトラブルについてお聞きしたいと思います。

 昨年の五月にこのような記事が報道されました。大阪入国管理局で、一昨年の七月、職員による制圧時に右腕を骨折する大けがをしたということで、収容中のトルコ人男性が、五月二十九日に、国に四百五十万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。男性側は違法な暴行だと訴えているということで、この男性は、二〇一五年一月に来日し、難民認定を申請していた。訴えによると、男性は、一七年七月、男性の部屋に鎮痛剤の服薬状況を確認しに来た職員の態度にいら立ち、読んでいた本を壁に投げつけた、その後、施設内の保護室にそれで連行されて、手錠をされる際に右腕をひねられて骨折したとしているということであります。

 この新聞記事を見てみますと、写真が添付されていまして、八人の方で制圧しているという状況で、これで骨折をされた。これは保護室なんですね。保護室でここまでする必要が本当にあるんだろうかということなんですけれども、この事案についてどのような見解をお持ちでしょうか。

佐々木政府参考人 今委員御紹介いただきましたトルコ人の方の事案ですけれども、平成二十九年七月十二日、大阪入国管理局に収容中の当該トルコ人男性が右の上腕を骨折したものでございます。

 今まさに御紹介をいただきましたように、現在係争中の事案でありますために、詳細についてお答えを差し控えさせていただきますが、この方、当該男性による遵守事項違反行為に対し、合理的に必要な限度で有形力を行使し、制圧したものとの報告を受けております。

尾辻分科員 これは合理的で必要な限度を超えていると思うんですよね。

 私、実は、この収容の中にいらっしゃる方から手紙を頂戴しました。こうして四ページにわたって、今、大阪入管で何があるのかということについて語られているわけです。もちろんこれは収容の方からの受けとめですので、皆さんとちょっと受けとめが違うことももちろんあるかとは思います。

 次は、骨にひびが入った案件が同じ年に起こっているんですね。この手紙によると、二〇一七年の十二月二十日に、四人の被収容者の方が食事の改善を求めて抗議したところ、その中の一人が飛行機運び、飛行機運びとは多分、抱え上げられて運ばれるようなイメージだと思うんですけれども、保護室に連れていかれた、その保護室の中で、チョークスリーパー、後ろから羽交い締めにして首を絞められたということをおっしゃっています。さらに、水をもらおうとインターホンを押したが、一回目はもらえたが、二回目は無視されたため、職員を呼ぼうとドアをたたきながら呼んだら、八人の職員が入ってきて、腕を後ろに回した格好で制圧をされた。結果、左腕の骨にひびが入ったとのことです。

 これは事実でしょうか。

佐々木政府参考人 私ども、報告を受けていることにつきまして御報告をいたします。

 今御紹介のペルー人の事案ですけれども、平成二十九年十二月二十日、大阪入国管理局に収容中のペルー人が、官給食への不満から、大声を出すとともに椅子を持ち上げ、居室の扉をたたき、看守勤務者に飛びかかろうとしたため、看守勤務者が制圧の上、隔離をしました。同人は、隔離後も、居室の扉を蹴る、それから壁に左肩、腕から体当たりをするなどの行為に及びましたことから、再度、看守勤務者が制圧をいたしました。翌二十一日、左上腕部の痛みを訴えたことから、外部病院へ連行の上、受診をさせましたところ、左上腕を骨折していることが判明をしたという事実でございます。

尾辻分科員 私はひびと聞いていた。これも骨折ですか。確認いたします。

佐々木政府参考人 診断は骨折ということです。

尾辻分科員 一年に二回もこうやって骨折をする事案が出てくるというのは、私、これは一体どうなっているんだろうかというふうに思わざるを得ないと思うんです。

 ほかに、例えば大阪入管、またその他の入管施設で、このように入管の警備の方からけがを負わされたとか、そういう事件というのはほかにあるんでしょうか。

佐々木政府参考人 昨年度、今御報告申し上げました二件でございまして、本年度、同種骨折事案はありません。

尾辻分科員 何か、歯が折れた事案があったりとかいうのも聞いているんですね、それはほかのところですけれども。だから、もしかしてもう少し、骨折はないかもしれませんけれども、やはり過剰制圧というのは私はあると思うんですね。

 本当にきちんとその方々を人として扱っておられる、適正な処遇をされているとお考えでしょうか。

佐々木政府参考人 あくまでも身柄を私ども当局として抱えさせていただいているということですので、今委員御指摘の点につきましては、十全の配慮をしている、そして、そのような指導もしているところでございます。

尾辻分科員 私は、これは適切じゃないと思います。特に、力関係で差があるわけですよね。そして、大人数で一人の方を押さえ込んでいるわけですから、このようなけがを負わせるような制圧をしないように、これは私は注意をすべきだと思いますが、いかがですか。

佐々木政府参考人 もちろん、けがをさせようと思って制圧をしているわけではございませんけれども、入国警備官と担当職員の例えば制圧の仕方の訓練、けがをさせないように制圧をするための訓練などにつきましても重ねているところでございます。

尾辻分科員 次に、去年、今度は閉じ込め案件というのが起こりました。二〇一八年の六月十七日から十八日に、これも大阪入管です、一つの部屋、一号室に十七人の人が閉じ込められた。これは新聞にもなっています。

 手紙でいただいたところだと、実は一号室だけではなくて、二号室にも五人、三号室に二人、五号室に一人、多分これは同じブロックだと思うんですけれども、ブロック全部屋で閉じ込められた。さらに、実は、六月十八日の朝というのは大阪北部地震があって、震度四だったんですね。

 このような閉じ込めがあったのか。そして、一号室に限っては、テレビ、エアコン、ポット、全ての電源を切ったというふうにこちらの手紙ではありますけれども、これは事実でしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘の事案でございますけれども、平成三十年の六月、大阪入国管理局の収容場において、一部の被収容者が、開放処遇と申しておりますけれども、それぞれの居室の鍵をあけて自由に行き来できるような時間帯がございます、この開放処遇を終えてみずからの居室に戻る時間になったにもかかわりませず、そのうちの一部の被収容者の居室に閉じこもり、自室への帰室をかたくなに拒否をしたという事案でございます。

 その後も、その被収容者たちは、自室に戻るようにとの職員の説得に応じることなく、居室の窓を毛布やシーツで覆い居室内の様子をうかがえなくしたり、居室の扉を激しくたたいて錠を壊そうとするなど、職員の監視業務を妨害し、保安上支障が生じたものでございます。

 その後に、閉鎖処遇と言っておりますけれども、その鍵をあけないという処遇を一定期間行いましたけれども、入管の施設につきましては、必ず先ほど申しました開放処遇を行うと定めているものではございませんで、施設構造や保安上の支障の有無を踏まえ実施の可否を判断をしておりまして、本件につきましては、一連の状況を踏まえ、同じような事態の発生がないよう、処遇部門の責任者におきましてこの開放処遇を行わないとしたという事案でございます。

尾辻分科員 ちょっと確認ですけれども、一号室以外、二号室、三号室、五号室も閉じ込めたというのは事実だということでよろしいですか。

佐々木政府参考人 先ほど申しましたように、もともとのきっかけといいますか事案の発生は、御本人たちが自室に閉じこもったということが発端でございまして、本来全部自室に戻る、開放処遇の時間が終わりましたら自室に戻るということが遵守事項になっておりますところ、これを、一、二、三、五それぞれ、全部で十九人の方が自室の居室に戻らなかったという事案でございまして、ちょっと今委員御指摘の、みずから立てこもったのか、私たちがその後に同様な事案の発生を防ぐべく閉鎖処遇を行ったということを御指摘になられているのか、ちょっと、二つのことだと思います。

尾辻分科員 ちょっと答えがわかりにくいんですけれども、十七人の方がそこにいて帰らなかったから、そこは閉鎖したということですよね。さらに、関係のないところも一緒に閉鎖されたというふうに手紙ではおっしゃっているんです。これが事実かどうかということなんですね。

 次に進みますけれども、六月の大阪は結構暑いんですよ。そこに、テレビ、エアコン、ポット、電気を全部切った、これも事実でしょうか。

佐々木政府参考人 報告によりますと、電気ポットで沸かした熱湯の投与や電気コンセントを悪用した発火工作などを防止するため、コンセントへの給電を停止する措置をとりましたけれども、居室内の例えば照明の電源を切ったという事実はございません。

 また、居室内には水道が設置をされておりまして、水の供給を停止したという事実もございません。

尾辻分科員 エアコンは切っていたということで、非常に暑い思いを、十七人ですからね、ふだん六人ぐらいしかいない場所に十七人を閉じ込めて、さらに、その閉じ込めている間の日の朝に地震があったのに、そのまま閉じ込めを続けたというのは、これは私、やはり非常に問題があった、人権上問題がある取扱いだと言わざるを得ないと思います。

 さらに、実はこれはその日だけで終わるんじゃないんですよ。その日からずっと行動を制限したというふうにありまして、運動とシャワーと洗濯の時間三十分以外はずっと居室にいるようにした。これが七月三日まで続いて、七月三日にやっと午前中だけ開放があり、そして七月二十五日からやっと通常の開放になった。

 つまり、六月十七日に起こったことを、一カ月以上こういうような形で運用を続けたということ、こちらから報告が来ているんですが、事実でしょうか。

佐々木政府参考人 先ほども御報告を申し上げましたように、同様の事案の発生を防ぐために閉鎖処遇をしたということがございまして、その責任者におきまして、そうした危険性といいますか、安全が確保されないような状態がもう解消されたというまでその閉鎖処遇という措置をとったという事実はございます。

尾辻分科員 これもやり過ぎだと思いますよ。なぜここまでやらなければいけないのか。

 先ほど言ったように、長期収容がふえている、皆さんも出口がない、物すごくストレスがかかっている。その中で、今、これだけのいろいろなことが起こっているんですね。これは、もちろん外国の、来られた方の人権もそうですけれども、職員さんにとっても本当に大変な状況だと思うんですよ。とにかく、皆さん、ストレスをためて大変だ。そういう状況で、起こっていることに対処しなきゃいけない。もうこれは限界が来ていると言わざるを得ないと思うんです。

 私は、これは裁量範囲をやはり逸脱しているというふうに思わざるを得ないと思いますし、実質、データで見てもやはり隔離が倍増しているんですよね。二〇一六年の隔離が百八十五件、二〇一七年になると二百九十五件、これは新聞記事でいくと、二〇一八年六月の半期で百九十九件。つまり、長期収容が続けばトラブルはふえ続けるということではないかと思います。

 さらに、大阪の入管では、実はハンガーストライキが起こりました。なぜハンガーストライキが起こったかというと、十二指腸潰瘍せん孔になった方が二週間入院されて、退院されてきた。油物を控えるようにということで医師から指示があったにもかかわらず、通常食のままであった。それを言ったら、職員さんから我慢してと言われた。何を食べたらいいんだということで、みんなが怒ってハンガーストライキに発展したというふうにここにあるんですが、こういうことがあったのも、これは事実でしょうか。

佐々木政府参考人 今御指摘の被収容者につきましては、御指摘のように、急性十二指腸潰瘍せん孔により外部病院に入院したという経緯がございます。

 退院のときに、その外部病院の栄養士さんから油物は消化に悪いので控えるようにという指示がありましたことから、大阪局では、当該被収容者に対しまして、油物を控えた油制限食というもので対応していたものでございます。その被収容者に支給されました食事について確認をしましたところ、少量のサラダ油を使用して調理したものであって、適切なものであって、その旨、その被収容者にも説明をし、理解を得られていたという報告を受けております。

 この油物を控えるという油制限食でございますけれども、例えばフライ物ですとか、てんぷら物ですか、そういうものを支給しないということでございまして、野菜いためなどをいためるための少量のサラダ油、これを使用して調理した料理を支給したものでございます。

尾辻分科員 その他、例えば、ハラール食の方の食事に豚肉が入っていて、大阪入管では、一年四カ月にわたって、パキスタンの方が入管の食事を食べない、御飯とサラダだけとか、パンしか食べない、こんなことも報告されていますし、食事に髪の毛や虫が入っているとか、食器が汚れている、こういうトラブルもここには書かれています。

 さらに、病気に関しても、標準治療が行われていない、内科の医師に専門外の診療科の診療をされているとか、体調不良に対して適切な検査を怠って、がんにかかっていることが、非常におくれた、こういう事例も挙がっているわけです。

 こういう個別事例、今たくさん挙げましたけれども、大臣、今大阪入管でこのようなことが起こっていることについて、大臣としてどのように受けとめておられ、そしてそれを、ではどう変えていけばいいか、大臣の御認識を伺いたいと思います。

山下国務大臣 まず、大阪入管を始め入管の収容施設、これにつきましては、大前提として、法律上の在留資格を有しないなど、法律上やはり我が国に在留できない、あるいは、一定の罪を犯すなどしたことにより我が国での在留が好ましくないというふうに判断され、退去強制が決定された者、これはやはり送還しなければならないわけでございます。なので、その送還までの間、収容する施設である。

 これは、被収容者が退去強制令書に従い母国に帰るといったことで、母国などに帰る、出国するということで直ちに収容状態が解消されるというところでございます。それを、例えば無限定に身柄拘束を、収容を解いていいかということになると、そもそも、やはり我が国に在留できないというところがございます。

 他方で、そういった収容施設において、るる御指摘がございました。これについては、中には係争案件も含まれておりますので、具体的な御指摘というのは控えさせていただきますが、入管施設におきましては、例えば、ハラールの禁忌がある者に関しましてはそういった配慮もし、あるいは医療状況についても、外部の医療施設あるいは医師等に見せているというふうには報告を受けております。

 ただ、なお、そういった対応につきまして慎重に行うということについては、入管当局においても対応しているものと考えておりますし、私の方もそういうところは見ていきたいというふうに考えております。

尾辻分科員 それで、これから入管、どういうふうにしていくか。今お答えはありましたけれども、やはり、国連の人権に関する各種委員会からは、毎回のように、この長期収容とか無期限収容に対して懸念が示されているわけです。収容期間に上限を設けたり、収容以外の代替措置を検討することが求められているわけで、EUなんかだと、強制送還の決定を受けて収容された方でも、収容期間の上限六カ月ということが定められているわけですね。

 なので、私は、収容期間の上限設定を検討した方がいい、検討しなければいけない状況だと思うんですけれども、それについてはどうでしょう。

佐々木政府参考人 出入国管理及び難民認定法上、退去強制令書が発付された外国人につきましては、速やかに送還しなければならないということが定められております。直ちに送還することができないときは、送還可能なときまで、収容所、収容場などに収容することができることとなっております。

 今の大臣の発言にありましたように、私たちの入管収容施設は、刑事施設と異なりまして、この被収容者が退去強制令書に従い出国することで、すぐさまに収容状態が解かれるという性質の施設でございます。ですので、私どもとしましては、収容している外国人を法令どおり早期に送還することによってまさに収容を解消するということが肝要と考えておりまして、法令上例外的な事案である長期収容、すなわち、速やかに送還をするということが法令上の定めでございますので、その例外的な事案である長期収容に対応するために収容期間に上限を設けるということにつきましては検討をしておりません。

 ただし、その上で、長期にわたって送還できない場合や、収容期間の長短を問わず年齢、健康状態等に鑑みて人道的な配慮を要する場合は、個々のケースに応じ、仮放免許可を弾力的に運用し、一時的な身柄の拘束を解くという措置をとっているところでございます。

尾辻分科員 今、仮放免の話が出ましたので。

 強制退去令書を受けても仮放免という手段があるわけで、この仮放免自身も、非常に移動の制限があるし、仕事もできませんし、健康保険がないということで医療なんかも非常に制限がかかるわけですけれども、これについて、昨年六月の参議院法務委員会で、仮放免のことについてはもろもろの条件を考慮して総合的に判断するというふうな、個別的な事情や出身国政府との交渉状況など、もろもろの条件を考慮すると。このもろもろの条件というのは具体的にはどういうことなんでしょう。

佐々木政府参考人 仮放免の判断をするときに考慮をします要件につきましては、仮放免取扱要領という文書の中に定めてございまして、これについては公表しているものでございます。

 例えば、仮放免請求の理由及びその証拠、被収容者の性格、年齢、資産、素行及び健康状態、被収容者の家族の状況などのほか、個別事案のさまざまな状況を指しておりまして、これらの要素を総合的に考慮して仮放免の許否を判断しているところでございます。

尾辻分科員 この仮放免が最近全然出ないということも、支援団体からはいろいろ指摘をされています。それが長期収容につながっているんだと思うんですが。

 ちょっと文書について確認をしたいんですが、この仮放免についてというのは、平成二十八年九月二十八日の指示という文書で、法務省管警第二百二号ですけれども、ここの二枚目で、送還の見込みが立たない者については、さらなる仮放免の活用を図ると同時にということで、仮放免の活用を図るというふうにここでは書かれています。

 次に、平成三十年二月二十八日、法務省管警第四十三号で出された指示によると、仮放免の運用方針をこれは添付されています。ほとんど真っ黒で見えないんですが、その中に、仮放免を許可することが適当とは認められない者は、送還の見込みが立たない者であっても収容に耐えがたい疾病者でない限り、原則、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努めるということで、この文書では、最初は仮放免の活用を図ると言っていたものが、原則、送還が可能となるまで収容を継続するというふうに、これは方針が変わったということでしょうか、この文書とこの文書。

井野主査 佐々木入国管理局長、答弁は簡潔にお願いします。

佐々木政府参考人 ただいまも申しましたように、この仮放免の判断は、さまざまな要素を考慮をして、総合的に判断をするものでございます。

 例えば、なかなか送還ができないという事案でも、その方を仮放免することが社会にとって何らかの安全上問題があるというような場合には、総合的に判断をして、仮放免をしないということもございますので、いずれも事案に応じてということで、何ら、その二つの文書で方針を変更したということではございません。

尾辻分科員 日本にやはり生活基盤のある方も多いですから、しっかり仮放免にして、これ以上長期収容が続かないように対応いただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて尾辻かな子君の質疑は終了いたしました。

 次に、高井崇志君。

高井分科員 岡山から参りました高井崇志です。

 私、いつも岡山から参りましたと必ず言うんですけれども、きょうは、岡山の隣の選挙区の山下大臣に初めて質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 きょう取り上げますのは、憲法五十三条についてでございます。

 憲法五十三条には、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。」とまずあって、その後段で、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と、はっきり義務だとして書いてあるわけですね。

 ところが、一昨年の六月に、我々、六月二十二日に、四分の一をはるかに超える野党議員がこの召集を要求したわけでありますけれども、安倍政権は一向にこれを開く気配がなく、九十八日間もたって、九月の二十八日に、一昨年の九月二十八日は衆議院の解散の日でございます。いきなり開いたと思ったら即解散で、そこから選挙ですから、また四十日ぐらい開かれないということになったということで、これはやはり、どう見ても憲法違反じゃないかと普通思うわけですが、これに対していろいろ国会でも聞くと、菅官房長官、総理も答えたかな、要は、期間の定めがないので、別にいつ開いてもいいんだというようなことをおっしゃるわけです。

 しかし、これは明らかにおかしいということで、我々、実は、岡山の弁護士の皆さんが、山下大臣も入っておられる岡山弁護士会の有志の皆さんが私の後を押していただいて、ただ、これは、国会議員が原告にならないとなかなか訴訟にならないということで、私は、国会議員が原告になるのは極めて珍しいそうなんですが、勇気を振り絞って、昨年の二月二十六日に、国を相手取って提訴をしたということでございます。

 これに対して、何度かもう裁判をやって、私も、九月十八日に、法廷に初めて立たせていただきました。貴重な経験ではあったんですが、そのときに、その前段で、政府、この場合、政府というのは、これも初めて知ったんですけれども、法務省が答弁というか、いろいろ相手になるということで、その法務省が、これが憲法違反じゃないんだという理由として二つ言ってきているのが、一つは、いわゆる統治行為論です。これは、高度な政治性を有する国家の行為は司法審査の対象にしないんだと。有名なのは、砂川事件とか、あと苫米地事件という、後でまた説明しますけれども、こういう論拠。

 それからもう一つは、法的責任は負わないんだと。これは、政治的責任を負うにとどまって、法的責任を負うものではないため、違法と評価される余地はないと。

 本当にこれは、弁護士仲間でも大変驚くべき二つの理由だということなんですが、ちょっとこのことについて質問したいと思います。なかなか、訴訟中なので答えられませんという答えが予想されるんですが、ぜひ、そうはいっても答えられる部分はあると思いますので、お答えいただきたいと思います。

 まず最初に、通告に従って質問しますが、今の、岡山地裁に法務省から出されている国側の準備書面一というのがありますが、今私が申し上げたようなことが書かれた書面ですが、これは、内閣法制局と調整した上で提出されたものでしょうか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 一般的に申し上げますと、訴訟追行に当たりましては、関係省庁との間で訴訟方針に関する打合せを行うなどの協議をした上で適切に対応しているところでありますけれども、お尋ねのような点につきましては、個別の訴訟における国の訴訟追行体制にかかわるものでありますことから、一般にお答えを差し控えさせていただいているところでございます。

高井分科員 じゃ、もう一問。

 同じく、官邸には、相談なり報告はしていますでしょうか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、お尋ねのような点につきましては、個別の訴訟における国の訴訟追行体制にかかわるものでございます。こういった点につきましては、従前からお答えを差し控えさせていただいているところでございます。

高井分科員 そういう答えが予想されたので、私もあらかじめ弁護士の仲間や有識者とちょっと議論したんですけれども、しかし、どこの省庁と協議しているかということを明かしても、この皆さんの主張の正当性というか、そこが何か揺らぐものでもないし、これは普通答弁できるんじゃないかと、大臣、思うんですけれどもね。ただ、今おっしゃった、前提をつけていただいた、通常のときはいろいろな庁と協議するんだということであれば、これはかなりの確率で関係するところとは相談していると思いますけれども。

 大臣、もうちょっと答えていただけませんか。

山下国務大臣 委員の御質問は、特定の訴訟に関して、その訴訟に関する準備状況等を問うものでございます。こういった事柄につきまして、要するに、一方当事者の内部事情に当たる部分がございます。そうしたことについて、訴訟手続外でお尋ねになるということでございますので、御説明ということは差し控えさせていただきたいと考えます。

高井分科員 これは、今、訴訟手続外でということは、訴訟手続の中で、裁判でやったら答えていただけるんですか。

山下国務大臣 少なくとも、今申し上げるのは、私は今、これは法務大臣としてこの国会の場でお答えをさせていただいております。そうした中でお答えをすることは差し控えさせていただきたいということでございます。

高井分科員 じゃ、これは答えてもらえると思うんですけれども、法務大臣には、これ、出す前に報告はあったんですか。

山下国務大臣 これにつきましても、特定の訴訟に関して、その訴訟に関する準備状況を問うものでございまして、お答えを差し控えさせていただきたいと考えます。

高井分科員 極めて残念ですね。結構、きょうこれをインターネットで岡山のメンバーも楽しみに見ているんですけれども、残念ですが、これ以上言っても、多分繰り返しでしょうから。

 この後はちょっとぜひ、中身に入ってくるので、今と同じような答弁がずっと、今回、通告は全部憲法五十三条関係なので、これが全部今の答弁だったら、今の発言が延々続いて終わりという、何とも非常に不細工な質疑になるので、ぜひ多少は答えていただきたいと思います。

 まず、では、その統治行為論のところで、できるだけ一般的なこととして聞きたいと思います。

 今回、憲法五十三条違反だと我々が主張していることというのは、かつて、統治行為論で代表例というのは苫米地事件というのがありまして、これは一九六〇年六月の最高裁判決なんですが、一九五二年に首相が突然解散をした、そして議員の身分が失われたといって訴訟したという、なかなか大胆なというか、なんですが、これのときはこの統治行為論というので最高裁の判決だったんです。しかし、今回の憲法五十三条というのは、国会の召集を決定するという行為に、これは内閣の裁量ではありませんから、これに高度に政治的と言えるとは、この苫米地事件とは全然違うと思うんですけれども、これは何で高度に政治的だと言えるんでしょうか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたとおりなんですけれども、係争中の訴訟に関することにつきましての詳細につきましては、答弁を控えさせていただいているところでございます。

高井分科員 これはひょっとして、七問通告しているんですけれども、全部同じ答弁ですか。大臣、全部同じ。

山下国務大臣 お答えいたします。

 これにつきましては、特定の係争中の訴訟に関して、しかも、委員御自身が原告であるというふうに先ほどおっしゃいました。委員御自身が原告である特定の訴訟に関しまして、それぞれ主張、立証している、そういった関連する事項についての法的見解について、これは、この場で、この国会において論評を求める、それに対してお答えをするということは差し控えさせていただきたいと考えております。

高井分科員 それであれば、きのう質問通告のときに言っていただきたかったですよね。これは答えられないのがあるんだったら落としますよと言って、何問かは落としたのに、ある程度は答えられるからということで通告もし、また、もし持ち帰って検討して答えられないんだったら教えてくださいよと私は言ったつもりなんですけれども、何の連絡もありませんでしたから、ある程度は答えていただける、多少は答えていただけるんじゃないんですか。ちょっと私も、じゃ、質問の仕方を工夫しますけれども。

 じゃ、例えば、これは答えていただけるんじゃないですかね。もう通告の番号も言いますけれども、五番、統治行為論というところで、これはもう一般的、一般論ですよ、統治行為論というのがあるわけですから、苫米地事件とか砂川判決のような。で、統治行為論だといって、じゃ、司法審査が及ばないということになれば、これはどうやって、法務省もずっと進めてきている、司法改革とかで行政や立法府のチェックをするんだということで進めてきていますけれども、これはどうやってチェックをするというふうに、大臣、どう考えているんですか。

山下国務大臣 これにつきましても、本当に特定の、しかも委員御自身が原告として裁判所で主張、立証をされている案件でございます。そしてまた、法務大臣は国の訴訟代表者ということでございまして、まさに司法の手続の中において主張、立証がなされている部分でございます。そうしたことについて、この場で、要するに、一方当事者同士が訴訟手続外でそういった論評を交わし合うということにつきましては、これは差し控えるべきであろうというふうに考えております。

 苫米地事件に限らず、一般論で申し上げますと、やはり、こういった訴訟において最高裁判例を先例として引用して主張するということは、これは、法律の訴訟手続等、一般論としてあり得るところであろうというふうに考えております。これが、こういった司法全体に対する私どもの立場、例えば司法制度改革ということとは矛盾はしないであろうというふうに考えております。

高井分科員 困りましたね。

 ちょっと、いろいろこちらも申し上げたいことを、じゃ、まず申し上げますけれども、統治行為論ともう一つ、法的責任がないという論拠を法務省は言ってきているんですけれども、これは実は、去年の二月十四日の予算委員会で、我が党の枝野代表が横畠法制局長官に、まさにこの臨時国会の召集というのは法的義務ですかというような、ちょっと問いは忘れたんですけれども、横畠長官は、はっきり法的義務だと答弁しているんですね。

 ところが、今回、法務省は、これは法的責任ではなく政治的責任にとどまるんだと。法的義務と法的責任というのは言葉が違うんですかね。あるいは、閣内でおっしゃっていることが違うんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 まず、繰り返しになりますけれども、係争中の訴訟に関することでございますので、その詳細につきましては答弁を差し控えさせているところでございます。

井野主査 ちょっと局長、法的責任と政治的責任の違いは何かというのが高井さんの質問なんです。その点を、法的責任と政治的責任の違いをちょっと説明してやったらどうですか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の訴訟、個別の話についての詳細はということは先ほど申し上げたとおりですけれども、この主張について、御指摘の裁判、訴訟が、国家賠償法上の国の責任を問うものであるものでありまして、国が法的責任を負うか、それとも政治的責任にとどまるかという観点から、国としての主張を述べたものであるということでございます。

高井分科員 済みません、ちょっとよくわからないですけれども、こればかりやっていると多分これだけで終わりそうなので。といっても、ほかも同じような答弁だと困るんですけれども。

 実は、全てが法的責任は負わないんだ、政治的責任なんだとおっしゃると、例えば憲法には、憲法四十九条で国会議員の歳費のことを定めています。それから、憲法五十一条では免責特権がありますね、院内での発言は問われない。こういった部分も、例えば、国会で何か質問をしたのがけしからぬといって国会議員の歳費をとめる、ゼロにするみたいな閣議決定とか法律とかが出たときに、これは憲法違反だと言っても、これは法的責任はない、政治的責任だけだというふうなことになるんじゃないですか。ほかの、この憲法五十三条以外の規定も全て政治的責任のみだというふうにおっしゃるんですか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 今の御指摘、御質問につきましては、憲法の規定全体のといいますか、そういった一般的な解釈をお尋ねになるというものであろうかと思うんですけれども、全体として、ちょっと法務省の所管で答えられるところかなというのは、ちょっとそうではないと思っております。所管を離れてお答えする立場にはないのではないかというふうに考える次第でございます。

高井分科員 ちょっと私も法律の専門家じゃないので、これは弁護士とかとやっていたらもっといい議論になるんじゃないかと思うんですけれども。

 しかし、憲法五十三条は法務省の所管なんですか。例えば、さっき言った四十九条の歳費とか五十一条の免責特権は別の省で、五十三条だけ法務省だから法務省がやっているんですか。

舘内政府参考人 一般的に、法務省の訟務局が指定代理人をしている事件というのは、どこかに所管行政庁というのがありますので、そういったところが所管する場合は、それをお答えするということになろうかと思います。

高井分科員 もう余り不毛なことはやめて、じゃ、少し別な観点から聞きたいと、一般論で聞きたいと思います。大臣、ぜひお答えください、一般論ですから。

 今回、実は、統治行為論というのは、苫米地事件、一九六〇年以来、出てきていないんですよね。いろいろな学者も、何十年もたって、もう統治行為論というのは、実はドイツなんかでは、昔、ドイツに倣って日本も統治行為論というのを最高裁はやったんですけれども、しかし、ドイツなんかは、これはもうやめている。まさに時代錯誤も甚だしいというようなことも専門家がおっしゃったりしています。

 苫米地事件、砂川事件にかかわった元最高裁判事の入江俊郎さんという方も、書物の中で、この統治行為論というのは取扱い方次第で専制独裁権力の温床になり、官僚的又は政党的独善を招くおそれがある、そういうふうに元最高裁の判事の方までも言っている。

 統治行為論が横行すると、憲法八十一条の違憲審査制というのはもう意味がなくなりますよね。なくなりませんか。何でも統治行為論が広がっていったら、違憲審査制、意味なくなりませんか。

山下国務大臣 まず、委員、先ほど冒頭に今回とおっしゃった。今回というのが、まさに委員が原告をやっておられるこの訴訟に関連することなのであれば、これは、私としては論評することができないというところでございます。

 そして、それを離れて、一般的に統治行為論いかんというふうな憲法解釈上の話ということになりますれば、一般的な憲法解釈の問題というのは、これは法務省の所管の範囲外ということになります。

 いずれにしても、私がお答えをするということについては差し控えさせていただきたいと考えております。

高井分科員 じゃ、これはもう完全に一般論ですけれども、通告はしていませんけれども、憲法裁判所は必要だと思いますか。

山下国務大臣 これにつきましても、憲法に対してどのようなものがあり得るかというふうなことについてのお尋ねだと思いますけれども、これもやはり所管外ということでございます。憲法裁判所というのは、今、現行憲法にないものですから、それに対する論評につきましては、法務大臣として差し控えさせていただきたいと考えます。

高井分科員 いや、まあ、裁判所のあり方ですからね。まさに法務大臣に聞くべき、多分、こういう流れで聞いていなかったら、普通に質問通告して、憲法裁判所の是非みたいなことを聞いたら、現行の法務省の見解が出てくると思いますけれどもね。まあ、わかりました。本当はわかっちゃいけないんだけれども。

 なぜ私が憲法裁判所と言い出したかというと、この違憲審査権、憲法八十一条の違憲審査権、最高裁にあるわけですけれども、これはなかなか機能していないんじゃないかと。こうやって最高裁が統治行為論だと言って逃げていくと、重要な憲法違反の判断が何もされなくなってしまうということを私は大変危惧をしているわけでございます。

 もうこれ以上この話をしても、全て関連するというふうに答えられてしまうので、じゃ、ちょっと全く別の話をしたいと思います。通告していませんけれども、しようがないですよね。答えられる範囲でというか、大きな、全般的なことを、法務大臣としての見解を聞きますので、答えていただけたらと思います。

 実は、憲法五十三条ができたときに、帝国議会で議論されたときに、この憲法五十三条をもし守らない内閣ができたらどうするんだという質問があったんですよ。それに対して当時の金森大臣は、憲法をそもそも、もし守らなかったら、憲法九十九条の憲法擁護義務違反だ、しかし、政治家がそんなことをするはずがない、だから想定できないというふうに答えているんですよね。

 想定できない事態が今、安倍内閣で起こっているんじゃないですか。これは、安倍内閣の一員としていかがですか、大臣。

山下国務大臣 これも、委員が原告である事案についての特定の内閣の対応について、まさに司法手続になっていることに関しまして、しかも、私も法務大臣として一方当事者であるこのことに関して、それぞれの主張についてどのように考えるのかについては、この場ではお答えは差し控えさせていただきたいと考えます。

高井分科員 じゃ、もう本当に話題をかえます。

 きのう、私、総務委員会で安倍総理に質問しました。官僚のそんたくが今ひど過ぎるんじゃないかと。これは、法務省の官僚の皆さんだってそんたくがあるんじゃないかと。私、いろいろな問題、総理が、今回の統計問題だって直接指示したとは思いません。しかし、だけれども、官僚の皆さんが、やはり人事、私は人事にあると思っているんですよ。この人事が、非常に強権的な人事が行われることによって、皆さん萎縮して、そんたくをしてしまうんじゃないかと。

 一方で、維新の足立委員がおもしろいことを言いまして、いや、そんたく、いいじゃないか、何が悪いんだ、官僚なんかみんなそんたくするに決まっている、自分は官僚時代そんたくばかりだった、常に秘書官の顔を見ていたよと。私も官僚時代そうでしたよ。山下大臣だって、やはりそんたくは決して悪いことじゃないと思いますけれども、それを西村官房副長官に一生懸命問うていましたけれども、山下大臣はそんたくはどう思いますか。

山下国務大臣 これもちょっと、お尋ねのそんたくの意味がつまびらかでないというところでございます。

 一般論で申し上げて、行政機関がその行政目的の達成のために、法律で定められた、あるいは政策に沿ってさまざまなことを行うということは、やはり行政機関としてはあるんだろうというふうに考えております。

高井分科員 私は、これもそんたくかなと思ったものを、今回のちょっといろいろ準備しているときに、全然違う話で見つけたんですね。

 最高裁の人事、これは二〇一七年三月の朝日新聞の記事なんですけれども、今までは最高裁の人事というのは、大体出身別に誰を割り当てる、だから、退官したらその裁判所出身の人とか弁護士出身の人とか、そういう方が推薦されてなる。その最高裁の人事担当者に、安倍政権内閣発足後、しばらくしてから、杉田官房副長官のところに、今までは候補者を一人だけ持ってきて、で、内閣がそれを任命していたそうなんですよ、憲法に内閣が任命するとあるからね。ところが、杉田官房副長官は、二枚、二人持ってこいと言い出したということです。

 あるいは、これは弁護士会で問題になったそうなんですけれども、これも弁護士会が推薦するリストという七人のリストをこれまで渡していた、ところが、その七人の中から選ばれなかったと。これに対して当時の中本弁護士会の会長が、長い間の慣例が破られたことはまことに残念だということなんですね。

 こういう、まさに、私は、ほかのいろいろな官庁で、一番は法制局長官の、外務省が来たという、あれは本当にびっくりした人事であります。あそこから端を発して、人事のいろいろな、恣意的な人事になり、そして今のそんたくにつながっていると思いますが、まさか最高裁の人事まで官邸が、まあ確かに内閣が任命となっているんですよ、それはそうなんですよ。だけれども、そこを抑制的にやってきたからこそ、内閣法制局だって中立的な、独立性のある判断をしてこられたし、ましてや裁判所はそうじゃないですか。

 それは、アメリカのように思い切って変えるというならそれでもいいですけれども、日本はそういう仕組みじゃないわけですから、それを一内閣がこんなふうに変えるということは私はあってはならないことだと思いますが、これは所管の裁判所の人事でありますから、大臣、このことについてはどうお考えですか。

山下国務大臣 最高裁判所の判事の任命というのは、憲法七十九条一項にも記載してありますように、これは内閣というところでございます。そして、個別具体的な裁判官の任命につきましては、これはお答えを差し控えさせていただきますが、いずれにせよ、法令に従って適切に任命されておると考えております。

高井分科員 もう質問することがなくなっちゃったんですけれども、じゃ最後に、この流れで聞くと、法務省には今そういう、法務省の人事というのはどうやっているんですか。

山下国務大臣 法務省の人事におきましても、法令に従って適切に、適材適所で考えられているというふうに考えております。

高井分科員 大臣の思いをそんたくする体制にはなっていないですか。

山下国務大臣 これはもう適材適所で、適切に人事が行われているということでございます。

高井分科員 きょう、いろいろ質問したかったんですけれども、全て訴訟中のことだということで答弁をいただけなかった。まあ、ある意味、予想もしていたんですけれども、もうちょっと答弁いただけるかなと期待はしていたんですけれども、ちょっとまた聞き方を工夫して、あるいは裁判でしっかり聞きたいと思いますので、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

井野主査 これにて高井崇志君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 山下大臣には、初めて質問をさせていただきます。朝早くから夜遅くまで、大変にお疲れさまでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、去る二月二十四日開催されました司法書士制度推進議員連盟総会、この際も議論になりましたが、昨年八月一日、法務省に対して、産業競争力強化法に基づいて、経済産業省から、民間事業者による、登記に必要な情報書類を簡単に生成できる事業についての照会がありました。それに対して法務省は、昨年、平成三十年八月二十三日付で回答をされております。その回答につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、経産省が照会を求めた事業といいますのは、民間事業者が新しい事業として、本社移転登記に必要な書類の生成に関して顧客をサポートするサービス開発を検討している。

 まず一点目は、ウエブサイトを通じて、ウエブ上の質問に対し利用者が順次回答をする、よくある形です。その結果により、必要な書類の一覧を表示する。そして最後に、依頼するというボタンをクリックすれば、入力してきた情報をもとに、自動的に本社移転登記の書類として生成をする。二つ目に、その書類を代行印刷し、必要額の収入印紙を同封して利用者に送付する。こういう事業でございます。

 利用者は、それを受け取って、内容を確認し、押印した上で、地元の法務局に提出をします。事業者が徴収するのは印刷と送付に関する手数料、消費税、こういう内容なのですが、これに対して法務省の回答は、今申し上げたこの一、二の事業は、株式会社の本店移転の登記に必要となる登記申請書、印鑑届け書等を利用者が登記所に提出するためだけに作成する場合に限定されており、個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的なアドバイスをするようなものでない限りにおいて、確認の求めのあった法令の条項との関係においては、一及び二の事業は全部実施可能である、このように回答をされています。

 実は、司法書士会連合会としては、この回答は、確認を求める対象となる法令を所管するという立場から、とても認めることはできない、照会者から提示された事実のみを前提として、その時点における見解を示したものとはいえ、認めることはできないとしております。

 その司法書士会連合会の主張としましては、回答において、個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的なアドバイスをするようなものでない限りにおいてとされてはいますけれども、言うまでもなく、登記相談、登記申請書類の起案、作成をすれば直ちに司法書士法違反となるのは当然ではないかと。当該事業は、利用者の判断で回答させるとされているが、申請書の作成に向けた誘導があり、事業者から個別具体的なアドバイスがされている状態と実質的には同様であり、司法書士法違反に当たると考える。本回答の再考を含め、当該事業者の事業活動の監視、また、同業他社に対する調査の徹底並びに非違行為に対する司法書士法違反による告発等を含む厳格な対応を求める。このような主張が司法書士会連合会の主張でございます。私も全くそのとおりだと考えております。

 法務省はどのように対応されるのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、経済産業大臣からの確認の求めに対しまして、法務省の方で平成三十年八月二十三日付で回答したわけでございますが、この回答は、まず一般論として、事業者がウエブ上に本店の移転の登記の申請をするのに必要な一定の入力フォームを用意し、その上で、利用者が自己の判断に基づき、その入力フォームに用意された項目に一定の事項を入力して登記申請書を作成するという作成支援行為や、その際に一般的な法解釈を踏まえたQアンドAを用意すること自体は、司法書士法違反には該当しないとしております。

 他方で、個別具体的な事案に応じて、入力内容についての相談を受け、入力内容を具体的に教示する行為は、司法書士法第三条第一項第五号の事務に該当するおそれがあるとした上で、商業登記の申請書に添付すべき書面は、株式会社の機関設計等に応じて異なるのが一般的であり、個別具体的な事案に応じて必要となる添付書面やその内容について相談を受けることは、司法書士法に違反するおそれがある旨を明らかにしているところでございます。

 その上で、委員御指摘のとおり、結論として、本件の事業は、株式会社の本店移転の登記、つまりそういった特定の登記に必要となる登記申請書、印鑑届け書等を利用者が登記所に提出するためだけに作成する場合に限定されていること、こういったことを前提として確認した上で、さらに、個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的なアドバイスをするようなものでない限りにおいてとの条件を付して、司法書士法との関係で、実施可能であるとしたものでございます。

 法務省といたしましては、このように、今回の回答により、実施が許容される事業の範囲はただいま申し上げました条件を満たす場合に限られるものと回答しているところでございまして、仮に個別の事業者においてこの範囲を超える事業を実施した場合には、司法書士法第三条第一項所定の事務を司法書士でない者が行ったものとして、厳格に対処する必要があるものと認識しております。

 法務省としては、サービス内容や宣伝広告の内容を含めたこのような事業活動の実態を注視し、司法書士法等に抵触することがないかどうかを見きわめた上で、違法な行為を認知した場合には、関係機関及び関係団体と協力しつつ、適切に対処してまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 局長、適切に対処というのは、どういうことになるんでしょうか。

 しかも、先ほどお話あった、こうしたサービス内容、そしてまた宣伝広告内容、こうしたものを実態を把握しながら、抵触するかどうかしっかりと見た上で対処するというお話ですけれども、現実に、この事業者は、申請書の作成というところを、生成と言葉をつくりかえている、しかも、プリントアウトして押印すれば申請書が作成されるというふうにしておりまして、巧妙に司法書士法違反とならないようなやり方をしております。

 また、事業者はホームページ上で何と言っているかというと、グレーゾーン解消制度により、当社のウエブサービスが司法書士法違反でないことが確認されました、こういう見出しで、法務省から、当該事業は司法書士法第三条第二項第二号の司法書士の独占業務に該当せず、司法書士又は司法書士法人でなくても事業を行うことができる旨の回答を受けました、このようにはっきりと書き込んでおります。これははっきりと対処をしていただくべきと考えます。

 また、こうした事業者に対して、法務省の回答にある、確認の求めのあった法令の条項との関係においては、全部実施可能である、こういう法務省の回答の書きぶりというのは、余りに法務省に警戒心がなさ過ぎるのではないかと私は言わざるを得ないと思っております。

 既に、この司法書士会連合会におきましては、各地で、こうした誤解が走る、したがって撤回すべきである、こういう決議が今始まっていると聞いております。

 撤回するとか、さらなる見解をはっきりと出すとか、急いで何らかの対応をしていただきたいと考えております。

 翻って、先ほど来、これは個別のアドバイスには当たらないというお話がありましたけれども、ホームページ上で誘導しながらだんだんその選択肢を狭めていく、こういう行為をどう見ていくかというところにも関すると思うのですが、私は、それはまさにアドバイスに当たるのではないかと思います。個別の、御自分たちの情報を入力していく、それを最後にまとめる形で、これを依頼しますかというボタンをクリックしていく、こういうやり方というのは、まさに司法書士法の違反ではないかと考えます。急ぎ対応をする必要があると思いますけれども、いかがですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員の方からも、いろいろと宣伝のあり方等々についての御指摘がございました。

 先ほど申し上げましたとおり、こういった事業のサービス内容、あるいはその宣伝広告の内容も含めて、そういったような実態をしっかりと注視して、司法書士法等に抵触することがないかどうか見きわめて対応してまいりたいと思っております。

高木(美)分科員 これは八月二十三日に回答が出されています。

 企業というのは、スピードが速いんです。これがずっと広がっていって、しまったと思ったときには、もうこれは世の中の常識になってしまっている。しかも、そこで司法書士法違反の常識が通るということは、私は、これは法務省として何としても避けるべきであると考えております。

 大臣、今のお話を聞かれまして、いかがでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 先ほどのお問合せの件に関しましては、法務省としては、実施が許される事業の範囲というのを限定的に回答しているというふうに考えておりまして、この範囲を超える事業を実施した場合には司法書士法三条一項に違反する、したがって、厳格に対処する必要があるものと認識しておるところでございます。

 したがって、法務省としては、サービス内容や宣伝広告の内容を含めた事業活動の実態、これを今後しっかり注視してまいります。そして、司法書士法等に抵触することがないかどうか見きわめた上で、違法な行為ということで認知した場合には、関係機関や関係団体と協力しつつ、しっかり対処してまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 私は、もう既に誤解といいますか、法務省が意図した回答、そこの条件付のところが全部飛ばされて、実態上できるという結論に宣伝をされているわけです。明らかにそうした宣伝のあり方自体、法務省として対応すべき事柄であると考えております。

 したがいまして、重ねて何らかの見解を示されるとかということが、あくまでもこうしたただし書きというのが重要なのだという、また、どういうことが司法書士法違反に当たるのか、もう少し詳しく法務省としておまとめいただきまして、見解を出される必要があるのではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 この点につきましては、やはり実態、あるいは、そういったところをしっかり見る必要があるんだろうということは考えておりますので、民事局など関係部局にもしっかり検討させて、適切に対応していきたいと考えております。

高木(美)分科員 恐らく、これは炎上してからでは間に合いませんので、しっかりと速やかに調査をするなり、また実態を把握されるなり、速やかな対応を求めたいと思います。恐らく、法務省が考えていらっしゃるスピードと、企業活動のスピードと全く違うと思いますので。

 八月で、半年過ぎていますので。そこで、今、こうしたホームページ上のさまざまなことが起こっている。しかも、今、どうもこのサイトについては、リニューアルしますということになっておりまして、リニューアルして、また新しくホームページで出てきたときには、恐らく大々的に事業を展開していくという、こうした狙いが明らかだと私は思っておりますので、そうした炎上をする前に、火が小さいうちにしっかりと消しとめていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 引き続き聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、外国人人材の活用につきまして、これに関連して、北九州市、そしてまた日本語学校からの要請をいただいております。その要請について伺いたいと思います。

 現在、本邦の大学、専門学校に在籍する留学生につきましては、卒業後に在留資格を留学から特定活動に切りかえて、就職活動を継続できるようになっております。海外で母国の大学、大学院卒の留学生についても、日本に来てくれている留学生についても、日本語学校卒業後に在留資格を切りかえて、就職活動を継続できるように認めてもらいたいというのが、北九州市、日本語学校からの要請でございます。

 私も、日本で就職したい、こういう同じ思いの留学生たちが、入り口によって、日本の大学また専門学校を卒業すれば、そうした特定活動が認められる。恐らく、いろいろな状況があって、最初から日本の大学に行くまでの財政力がない留学生もいらっしゃるかと思います。そして、母国の大学等を卒業して日本に来る。こういう、入り口によって差別をしてしまうというのはおかしいのではないかという疑問を持っております。

 そこで、北九州市は、特区制度を活用して、日本語学校卒業生に対しても、在籍校の推薦状を添えて出入国管理庁に申請をすれば、留学から特定活動に切りかえて、在留期間の延長が可能となるような規制緩和を申請しております。また、同様の申請は、日本語学校からも出ているところでございます。

 現実としても、日本語学校で学んでいる人たちについては、卒業までに企業から就職内定が得られなかった場合、在留資格、留学が失効するわけですから、母国に帰国するか、また更に期間を延ばして、授業料を払って専門学校等に進学をして、在留資格を延長して就職活動を継続している、こういう事例も多く聞いております。中には、多額の借金をしてまで進学を選択している学生もいると聞いております。

 こういうことに対しましてどのような対応をお考えか、伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 ただいま委員御紹介をいただきましたように、現在、在留資格、留学から継続就職活動の特定活動への在留資格変更につきましては、本邦の大学を卒業し、又は専修学校専門課程を卒業の上、専門士の称号を取得し、就労の在留資格への変更申請を行うことができる留学生でありまして、卒業前から引き続き就職活動を行っており、当該教育機関による推薦がある方を対象としています。

 お尋ねの、なぜその取扱いを本邦の大学、専修学校卒業者に限定をしているのかということでございますけれども、技術・人文知識・国際業務の在留資格を始め、留学生の皆さんが在留資格変更許可後に認められる就労資格につきましては、大学を卒業又は専門士の称号を取得しているといった学歴を要件としており、我が国の大学及び専修学校を卒業することによって許可要件を満たすということから、卒業前の在学中には十二分に就職活動ができない場合もあること、それから、大学や専修学校等、卒業した教育機関による推薦を受けておりまして、ある意味、就職活動のための在留継続が適正になされることの保証を得られていると考えていることを踏まえて、こうした取扱いをしているところでございます。

 一方で、御指摘の、海外の大学等を卒業し、日本語教育機関に留学している留学生さんたちにつきましては、既に、就労資格に係る学歴要件、すなわち大学を卒業していることを満たしているために、日本語教育機関の在学中であっても我が国での就職活動及び就職が可能であるほか、そもそも、日本語教育機関というものは、本邦の大学等のように、外国人の学生さんと日本人の学生さんがともに学び、学術の中心として広く知識を授けるという性質の教育機関ではないといった点で違いがございます。

 また、学生さんが在籍する日本語教育機関の中には、適切な運営に疑義のある機関もありまして、こうした教育機関からの、先ほど申しました就職活動に係る推薦を、継続就職活動期間中のいわば保証として大学等と同様に取り扱うことにはちゅうちょを覚えます。

 このことから、日本語教育機関卒業後の継続就職活動のための特定活動への在留資格変更は現在認めていないということでございます。

 そこで、まず私ども、やらなければいけないことは、昨年末に取りまとめられました総合的対応策に盛り込まれた、日本語教育機関の適正化に関する施策を着実に実施をしていこうと思います。その状況も踏まえて、海外の大学等を卒業した留学生に対する継続就職活動を認めるか否かにつきまして検討してまいりたいと考えます。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 まず、日本語学校について質の高い教育をしっかりと確保していく、その担保の上で、その次にしっかりと検討をしていく、こういうことでよろしいでしょうか。

佐々木政府参考人 お話しのとおりです。

高木(美)分科員 ぜひとも速やかな検討をお願いしたいと思います。

 例えば、その国で同じ高校を出て、一人は地元の大学に行く、一人は、日本で仕事をしたいということもあって、日本の大学に進む。ここで、やはり日本の対応がそれぞれ異なっている。同じ高校卒業生にもかかわらず、日本に来てみたら、こっちは就職活動で、もうちょっと特定活動で残れて、自分はもうそれが切れたら帰らざるを得ない、こういうことはやはり国際的に見ても余りいいことではないと思っております。

 ただ、御指摘のとおり、こうした日本語学校の教育の質を確保するということは、逆に、そうした留学生を受け入れる意味でも非常に重要なことだと思います。

 あわせて、もしかしたらその先になるかもしれませんが、ちょっとこの際申し上げておきたいんですが、昨年お取りまとめいただいた総合的対応策、この中で、留学生の就職等の支援ということが大変手厚く書かれております。私もこれはすばらしいことだと思うのですが、やはり、近年、母国の大学、大学院を卒業した学生が、日本語学校に入学して、卒業後すぐの就職を希望するケースも非常に最近ふえている、こういうことも聞いておりますので、その際に、できればこの就職支援の範疇に、日本語学校の教育の質をいち早く確保していただいて、その先に、やはり、母国の大学を卒業した留学生もその範疇にぜひ加えていただいて、就職支援も行える、このようにしていただきたいということをこの際お願いをさせていただきたいと思います。

 大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 先ほど局長から答弁させていただいたとおり、海外の大学、大学院を卒業した者というのは、現在でも、技術・人文知識・国際業務の在留資格の許可要件を満たし得るということでございます。

 そうした方々が日本の日本語学校に来ていただいたときに就職活動というふうなことをやっていただくということは、これは我々としてもサポートをしていきたいと考えておりますし、そういった総合的対応策の中でもそういった形で支援できないか、しっかり検討していきたいと思います。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 そこで、もう一つお伺いしたいんですが、この外国人人材の年金につきまして、これももう既に法務委員会で議論されていることですが、社会保障協定がある国は今二十一カ国、アジアでは中国、韓国、フィリピン。企業、事業所等は、せっかく年金を負担しても結局掛け捨てになってしまうのではないか、こういう懸念が非常に強くあります。新たな外国人人材受入れに当たりまして、この対象となるアジア諸国との交渉を急ぐべきと考えております。

 私も昨年十月まで厚生労働副大臣をさせていただき、各国の保健大臣と何度もバイ会談等を重ねさせていただきました。やはり、介護とか、また年金制度とか、ない国も非常に多くありまして、その国々は、日本から学びたい、社会保障を学びたい、特に日本の少子高齢化に対する対応策、今アジアも急速な勢いで高齢化が進んでおりますので、学びたい、こういう多くのお声をいただいております。

 したがいまして、そういう制度をつくる支援も含めて、これは総合的に進めていただきたいと考えております。

 それでは、このアジア諸国との交渉につきまして、これは外務省にお伺いいたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 我が国に外国人労働者を多く派遣している国との間で社会保障制度への二重加入が生じる場合に、社会保障協定の締結を進め、二重加入の問題等を解消することは、これらの国からの労働者の受入れ環境を整備することに資するというふうに考えております。

 一方で、今委員御指摘ございました社会保障協定を締結するには、基本的に、我が国の社会保障制度と類似した制度を相手国が有して、相手国に住む我が国国民が相手国の制度のもとで十分な保護を受けられることが必要であるというふうに考えております。

 今、幾つかのアジアの国について言及ございましたけれども、アジア諸国に関しましては、やはり、調べてみますと、いろいろな制度がございます。我々も定期的に調査をかけまして、いろいろと考えております。

 我が国といたしましては、引き続き、各国における社会保障制度との類似性、それから我が国にとってのニーズ、こういうものを見きわめながら、社会保障協定の締結、それから社会保障に係る協力体制をどのように構築していくかについて、引き続き検討してまいりたいというふうに考えます。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、大臣にこれはお願いをさせていただきたいと思います。

 医師、歯科医師、また薬剤師もそうですが、保育士、介護福祉士等につきましては、医師法など、それぞれの業の根拠となる法律があります。そこで、禁錮刑以上の刑に処せられた場合、登録を抹消するという規定があります。

 この情報を得るために、実は厚労省も各省も相当苦労しておりまして、新聞記事などをチェックして進めているという現状があります。かといって、確実にこれを実施しなければ、法律上の欠格事由を守ることができない。むしろ法の網の目から漏れてしまい、そうした漏れた人たちが、また更にその業を続けながら犯罪を重ねるということがあってはいけないということを考えております。

 この欠格事由に該当することとなった者の登録の取消しに関する事務の適正化を図る必要があると思います。そのために、情報連携のためのシステム構築を、ぜひとも法務省と、それから各省と、本当に必要な部分だけで構わないと思います、プライベートなところは隠して、必要なデータのところだけ抜き出していただいて、誰がどうなのかというところだけでも構いませんので、そうしたシステム連携をぜひともお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 法務省においては、犯歴、前科前歴の履歴ですね、これが欠格条項とされている資格に対して行政機関から照会がなされた場合には、その必要性や相当性を考慮しつつ、必要な範囲で情報提供に応じておるところでございます。

 他方で、厚生労働省において、事務負担等のいろいろ、さまざまな考慮をされて、欠格事項の有無をより正確かつ簡明に把握することができるシステムを構築できないかというふうな御要望、これについては、お持ちであることは十分承知しておるところでございます。

 ただ、他方、やはり前科前歴情報というのは、その個人にとって、改善更生も含めて、非常にプライバシー上慎重な取扱いが必要であるということを踏まえて対応しなければならないということでございますが、委員の御指摘もございますので、厚生労働省との間で、これまでも適宜意見交換はしてきたのでございますけれども、更に的確に情報交換を、高度なプライバシー情報ということを前提にしながら、できないかということ、しっかりと意見交換させていただきたいというふうに考えておりますし、適切な対応をとっていきたいと考えております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。ぜひ、結果としてそのような形になりますように、また大臣のリーダーシップをお願いしたいと思います。

 もう残り時間がわずかとなりましたが、恐れ入ります、二点だけ、成年後見制度について伺いたいと思います。

 きょう、せっかく最高裁家庭局長もお越しでございます。

 私は、市民後見人の育成、非常に重要と考えております。また、市民後見人をバックアップする成年後見センターもいまだ五百カ所。更に積極的に拡充を推進する必要があると考えます。

 この市民後見人は、強力な地域福祉の支え手でありまして、行政が実施するために、低い所得の人も利用しやすいという特典があります。また、利用者側からは、専門職より身近で話しやすい、こうした声もあります。

 また一方で、家裁がなかなか市民後見人を選ばない、こうした実態があるとも聞いておりまして、もっと市民後見人を選任していただき、活用していただく、そのためには、どのようにすればこれを進めることができるのか、お考えを伺いたいと思います。

手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 成年後見人につきましては、各家庭裁判所におきまして、個別具体的な事案に応じて、被後見人の親族でありますとか、弁護士や司法書士などの専門職のほか、市民後見人、すなわち、社会貢献としてみずから成年後見人となることを希望してくださった一般市民の方など、本人の利益保護のために適切な方が選任をされていると承知しております。

 議員御指摘のとおり、成年後見制度利用促進基本計画におきましても、市民後見人の活用につながるような取組が求められております。今後、成年後見制度の担い手といたしまして、市民後見人の育成が進んでいくものと認識をしておりまして、家庭裁判所としましても、その適切な活用を図る必要があるというふうに考えているところです。

 そのような市民後見人を各家庭裁判所におきまして十分活用していきますためには、各地に設置される中核機関におきまして、市民後見人を支援する体制が整備され、各家庭裁判所に対しまして、それぞれの事案でふさわしい方を候補者として推薦していただくといった連携が必要になってくるというふうに考えております。

 また、市民後見人を育成する地方自治体等から、市民後見人の研修状況ですとか支援体制につきまして家庭裁判所に情報提供していただくなどの連携も大変重要なものというふうに認識しております。

 最高裁判所としましても、各家庭裁判所と地方自治体等の関係団体との連携が円滑に進められるように、必要な支援をしてまいりたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 最後に一言だけ。今ありました中核機関の今後の拡充、また、司法との連携の推進について、厚労省八神さん、お願いいたします。

井野主査 厚生労働省八神審議官、簡潔にお願いします。

八神政府参考人 中核機関でございますが、今お話ございました成年後見制度利用促進基本計画に基づいて市町村の体制整備に取り組んでいくということが重要でございます。

 中核機関と司法との連携ということにつきましては、中核機関が構築をする地域連携ネットワークに、家庭裁判所を始め、弁護士会、司法書士会等の司法関係団体に参加をしていただく、これとともに、中核機関の機能として、家庭裁判所に対して利用者に適した後見人を推薦するなどの機能も期待をされているところでございます。

 今、設置状況について調査をしてございますが、まだまだ、全市町村に設置をされるという状況ではないと認識をしてございますが、私ども厚生労働省では、平成三十一年度の予算案におきましても、中核機関の立ち上げ支援などに三・五億円という予算を計上しており、中核機関の設置を更に促進をしてまいりたい、このように考えてございます。

高木(美)分科員 しっかり後押しさせていただきます。

 ありがとうございました。終わります。

井野主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、鰐淵洋子君。

鰐淵分科員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 早朝より大変にお疲れさまでございます。また、ありがとうございます。

 私の方からは児童虐待につきまして質問させていただきたいと思います。

 千葉県野田市で、小学校四年生の女の子が父親から虐待を受け亡くなったという大変に痛ましい事件がございました。周りの大人たちにSOSを出していたにもかかわらず、なぜ救えなかったのか、悔やまれてなりません。

 このような問題が起こるたびに、私たちは、二度とこういった事件を起こさない、その都度具体的に対策を講じてきたわけでございますが、しかし残念ながら、このような事件は続いております。

 子供たちは未来の宝でもありますし、その子供たちの心身を傷つける虐待、これは、どんな理由があったとしても絶対に許してはならないですし、あってはならないことだと思っております。子供たちの人権が守られ、子供たち一人一人が輝く社会を皆でつくっていく、そういった思いで、そういった決意でしっかりとこの問題に向き合っていきたいと思っております。

 まず初めに、我が国の児童虐待の現状に対する大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 本当に、委員御指摘のとおり、子供たちはこの日本の国の未来そのものでございます。こうした子供たちに対する虐待は決してあってはならないものと認識しております。

 しかしながら、児童相談所における児童虐待の相談対応件数、これが年々増加の一途をたどっており、御指摘のように、お子様が亡くなる痛ましい事件も後を絶たない。これは非常に厳粛に、重大なことと受けとめております。

 これにつきましては、やはり児童虐待を根絶するために、この予防や発見、被害に遭った児童の保護など、これは政府全体として総合的に取り組まなければならないと思っております。

 政府といたしましては、こうした現状を踏まえて、関係閣僚会議において、昨年七月は前任であります上川法務大臣などではございますが、児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策が取りまとめられたところでございますし、今般も、この今般の事件などを受けまして、本年二月八日に、この緊急総合対策のさらなる徹底、強化が確認されたところでございます。

 法務省としても、既にこの緊急総合対策に取り上げられております、人権擁護機関における相談を通じた児童虐待の早期発見、早期対応等について更に力を入れてまいりたいというふうに考えておりますし、また、関係機関ともしっかり連携、情報共有して取り組んでいきたいというふうに考えております。

鰐淵分科員 ありがとうございました。

 今、大臣の方からも具体的に御答弁いただきました。やはり、子供の人権を守るといった上でも法務省の役割は大変に大きくなってくるかと思います。ぜひとも関係省庁と連携をとっていただいて、具体的に根絶をしていく取組を進めてまいりたいと思います。

 その上で、改めて厚労省の方に確認をさせていただきたいと思いますが、児童虐待の現状につきまして、児童虐待の件数の推移、また虐待の内容について御報告をお願いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十九年度の児童相談所における児童虐待相談件数は、過去最多の十三万三千七百七十八件となっておりまして、前年度と比べて一万一千二百三件の増加となっております。

 虐待相談の内容の内訳でございますけれども、最も多いのが心理的虐待でございまして、七万二千百九十七件、全体の五四%でございます。身体的虐待は三万三千二百二十三件、全体の二四・八%、ネグレクトが二万六千八百二十一件で、全体の二〇%、そして性的虐待が千五百三十七件で、全体の一・一%というふうになってございます。

 また、お尋ねのございました児童虐待による死亡事例でございますけれども、厚生労働省の社会保障審議会の下に専門委員会がございますが、この専門委員会で把握をしている数でございますけれども、平成二十八年度の児童虐待による死亡児童数は七十七人、そのうち心中以外の虐待死が四十九人、心中による虐待死が二十八人というふうになってございます。

 現状をお答え申し上げました。以上でございます。

鰐淵分科員 ありがとうございました。

 今、具体的に御報告をいただきました。特に、相談件数というところで、これは虐待又は虐待かもしれないということで表に出ている部分だけですので、潜在的な部分も含めますと大変に増加傾向、また心配なところもあるわけでございます。改めて、いたたまれない思いでいっぱいになるんですけれども、こういった現状を踏まえた上で、しっかりと具体的に対策を講じていきたいと思っております。

 その上で、私たち公明党としましても、特に今回の事案を受けまして、厚労省と文科省、加えまして、そのほか警察等関係省庁が連携協力をいたしまして、一体となって検証することを強く求めてまいりました。そして、二月十五日に、厚生労働副大臣また文部科学副大臣を共同議長としました、児童虐待死の再発を防止する厚生労働省・文部科学省プロジェクトチームが設置をされました。この両省間におきまして問題点を検証、共有しまして、国を挙げて実効性のある再発防止策を検討しなければいけないと思っております。

 私たち公明党としましても、二月十九日に、厚生労働部会、文部科学部会、そして児童虐待防止検討プロジェクトチーム合同によりまして、今回の問題を受けた喫緊の提言を取りまとめまして、政府の方に提出をさせていただいております。

 今国会では児童福祉法等の改正案が提出をされることが予定をされておりますが、具体的には、体罰を禁止することを新たに明示的に規定する必要があると思っております。

 また、衆議院の予算委員会では、我が党の石田政調会長の方から民法八百二十二条の懲戒権についての質問がございまして、その点につきまして、大臣の方からも、この規定のあり方につきましては必要な検討をしてまいりたいというふうに考えております、このような答弁もございました。

 こういった法整備も含めて、法改正も含めて具体的に進めていかなければいけないと思っておりますが、しかし、いずれにしましても、時間のかかることでもございますので、今すぐにできること、こういったことを着実に進めていく必要があると思っております。

 そこで、まずは、しつけに体罰は必要といった誤った認識を社会全体から一掃すること、これが重要であるかと思っております。例えば、具体的には、政府を挙げて広報啓発、周知徹底、こういったことに取り組んでいくことができるのではないかと思っております。

 今回もそうでしたが、実際に虐待事件を起こした人がおっしゃることが、しつけとしてやったという、このように弁明される方もたびたび見られます。

 家庭を含めましてあらゆる場面におきまして子供に対する体罰をなくすということは、虐待を防ぐ観点からも重要であると思っております。体罰は子供の権利を侵害する行為であり、法務省におきましても、しつけに体罰は必要という誤った認識を社会全体から一掃する取組を強力に推進していただきたいと思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 委員御指摘のとおり、しつけの名のもとに、例えば民法上であれば懲戒権に関する民法八百二十二条の規定がこれに当たるのかもしれませんが、これについては、平成二十三年の民法改正の際に、児童虐待を正当化する口実に利用されているという指摘があったことを踏まえて、わざわざ規定を見直して、そういった懲戒権は子の利益のために行使されるべきもので、子の監護及び教育に必要な範囲を超える行為は懲戒権の行使に当たらないことを明文で明確化する改正を行っているということでございます。

 そうしたところから、懲戒権あるいはしつけはあくまで子の利益のために監護、教育に必要な範囲内で行使されるべきものでありますから、例えば、感情に任せて暴力を振るい、子供の身体に傷害を負わせる行為が懲戒権の行使に当たることはないことは明らかであって、こうした虐待に当たるような体罰の繰り返しが、いやしくも、しつけあるいは懲戒権の行使として正当化されるものではないことは当然である。このことは、私も、やはり国会で繰り返し繰り返し言わなければならないんであろうと思っております。

 そうしたことを通じて、口実にするということは当たらないのだということを申し上げていきたいと考えておりますし、また、懲戒権の存在が、体罰を繰り返す親の言いわけ、口実にされているという御指摘、これはもう繰り返しなされているところでございますので、これは真摯に受けとめて、この規定のあり方について、これまで答弁したところでありますが、また繰り返させていただきたいと思いますが、必要な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

鰐淵分科員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 今おっしゃっていただいたように、法改正も含めて検討もしていくわけでございますが、大臣がおっしゃっていただいたように、繰り返しメッセージというか発信をしていくことが重要であると私も思っております。

 そういった意味で、繰り返しになりますが、子供の人権を守るという上では、法務省また大臣のリーダーシップ、大変に大きいものがあると思っておりますので、あらゆる機会におきまして、そういった発信も含めて、ぜひとも引き続き対応をお願いしたいと思っております。

 例えば、厚労省の方では、今申し上げたような意識啓発だったり、周知、広報、こういった取組として、先ほども申し上げたんですが、パンフレットを作成していただいております。子供を健やかに育むため、愛のむちゼロ作戦、こういったパンフレットを作成し、発行していただいております。

 そういった意味で、ほかの省庁でもこういった取組をしていただいているわけでございますが、繰り返しになりますけれども、本当に子供たちを一人の人間として、また家庭、地域、社会において伸び伸びと生活していける、生きていける環境を整備していくという上で、しっかりとまた法務省としても取り組んでいただきたいと思いますし、繰り返しになりますが、やはり、厚労省だったり文科省、こういった関係省庁との連携も大変に重要になってまいります。なかなかこの連携というのが具体的にとることが難しいわけでございますが、閣僚会議等もございますし、いろいろな場面を通じまして、ぜひとも、法務省におきましても大臣のもと取り組んでいただきたいと思っております。

 その上で、具体的に法務省における児童虐待の取組、これまでも取り組んできていただいていると思いますが、改めて、どのように取り組んでいるのか、お伺いをしたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 法務省の人権擁護機関におきましては、大きく分けて三つの虐待に関する施策を実行しております。

 一つ目は、子どもの人権SOSミニレターというものでございます。これは切手を張らずに最寄りの法務局に送付することができる便箋つきの封筒でありまして、便箋を兼ねた封筒でありまして、児童生徒から寄せられたミニレターにつきましては、法務局の職員それから人権擁護委員が、一通一通、返事を書いているものであります。これは全国の小中学校の生徒全員に毎年一回配付しているものでありますが、これをできるだけ常備しようということで、今取り組んでいるところでございます。

 それから二つ目は、子どもの人権一一〇番というものでございまして、これは子供の人権問題に関する専用の無料電話でありまして、全国共通の番号、〇一二〇―〇〇七―一一〇というふうになっております。

 それから三つ目は、SOS―eメールでありまして、これによる相談も受け付け、Eメールによる相談も受け付けているところでございます。

 さらに、人権擁護委員が地域活動を通じている中で、児童虐待等の情報収集にも力を入れているところでありまして、仮にそういう事案を認知した場合には、法務局の方にすぐ連絡をもらい、子供の命の安全ということを最優先に、児童相談所や警察等の関係機関に、連携して適切な措置をとるということにしているところでございます。

 人権擁護機関としては、これらの活動を通じて、しっかりと、SOSを発している子供を見逃すことのないようにやっていきたいと考えております。

鰐淵分科員 ありがとうございました。

 今、具体的に三つ御説明をいただきました。私の勉強不足もあるかと思うんですが、知らないこともございまして、ぜひとも、すばらしい取組をしていただいていると思いますので、こういったことをしているということも含めて、しっかりとまた周知徹底もお願いしたいと思っております。

 例えば、子ども人権一一〇番、これも、無料ではありますけれども電話番号が長いですし、今、一八九がようやく「いちはやく」で認識、それでもまだまだこれからだと思っているんですけれども、ようやく一八九で認識が広がっている中で、こちらの子ども人権一一〇番、〇一二〇―〇〇七―一一〇ということで、子供たちも含めて、まだ覚えられないという方もたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひとも今後の検討といたしまして、わかりやすい、覚えやすい番号にするとか、あと相談時間、受け付け時間が平日の午前八時半から午後五時十五分と伺っております、承知しておりますが、ですので、本当に子供たちを含めて相談しやすい環境を整備する上で、土日だったり夜間の対応、こういったこともできないかとか、そういった環境整備も必要だと思います。

 また、あわせまして、やはり子供たちはLINEをよく使うということで、これも衆議院の予算委員会で伊藤議員の方からも指摘があったと思うんですが、こういった相談につきましては、LINEの活用ということも有効的になってくるかと思います。せっかくそういったすばらしいものをやっているのであれば、よりよく活用していただけるような環境整備というか、それをしっかりとやっていただきたいと思っております。

 もう一つは、やはり子供たちのSOSというところで、今回の事件も、学校のアンケート、そこに記入をしてくれたことがまずきっかけだったと思うんですけれども、子供たちがどうSOSを発信していいかがわからない場合も多いかと思います。

 そういった意味で、今取り組んでいただいているレターの件もそうですし、相談窓口も含めて、具体的に提示しながら、こういうふうにやっていいんだよとか、こういうことでもいいんだよということも提示していただきながら、皆さんに活用していただく環境整備を、ぜひとも法務省の方でも御努力をお願いしたいと思っております。

 これは済みません、通告していないんですけれども、もし何か御答弁いただけるようであれば、よろしいでしょうか。

高嶋政府参考人 委員、御指摘ありがとうございました。

 大臣のリーダーシップのもと、しっかりやっていきたいと思います。

山下国務大臣 本当に、建設的かつ具体的な御提案、ありがとうございました。

 そういったアクセスがより容易になるような方法も含めて、我々、しっかりと検討して対応していきたいと思います。

鰐淵分科員 ありがとうございました。ぜひ積極的に、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、スクールローヤーの活用について質問させていただきたいと思います。

 今回の問題を受けまして、学校の先生から御意見をいただきました。現場の先生方は、児童虐待の対応するための情報をほとんど持っていません、児童相談所のこともよくわかっておりません、法律になりますとお手上げです、自分たちの専門外という認識の方が多いかと思います、虐待やいじめなどの対処を相談できる窓口を教育委員会等に常設してほしい、そこに弁護士などの専門家を配置して、学校に来てもらったり相談に乗ってもらえるとありがたい、こういった現場の声をいただいております。

 今回、教育委員会や学校側の対応に問題があったと一部クローズアップもされておりますが、今御紹介したように、学校現場の実態は、今申し上げたような現状が正直なところであると思います。こういった虐待の問題もそうですし、いじめの問題、こういった問題が起きたときに、実際に威圧感のある保護者だったり理詰めで攻めてくるような保護者がいらっしゃった場合に、それだけで引いてしまいますし、どのように対応したらいいかわからないというのが今の学校現場、先生方の現状であると思っております。

 今、文部科学省におきましては、いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究、これを実施をしていただいておりますけれども、いじめや児童虐待等困難な問題の解決に向けまして、スクールローヤーの活用、配置を強力に推進する必要があると思っております。この点につきまして、文部科学省と法務省の御見解をお伺いしたいと思います。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員お尋ねのスクールローヤーの活用についてでございますが、学校が、虐待やいじめ等の児童生徒を取り巻く問題について弁護士に相談をし、法的なアドバイスを受けることは有効であるというふうに考えております。

 文部科学省では、法律の専門家である弁護士が、その専門的知識経験に基づきまして、学校において法的側面からのいじめ予防教育を行うとともに、教員からの法的相談にも対応する体制の整備に関する先進的な取組を開発をするため、いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究を実施をしているところでございます。

 具体的には、虐待やいじめ等の児童生徒を取り巻く問題への法的助言、また法的側面からのいじめ予防教育、さらにはいじめ問題への法令に基づく対応状況の確認を行いまして、調査研究結果の施策への反映を通じて、いじめの防止や問題の効率的な解決に資することを目指すものでございます。

 虐待事案におけるスクールローヤーの活用が期待されていることに鑑みまして、文部科学省といたしましても、今年度実施をしております調査研究の成果も踏まえつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

小出政府参考人 お答えいたします。

 法曹有資格者がその法的素養を活用して学校現場を含む社会のさまざまな分野で活躍することは、社会の法的需要に十分応えるという意味で重要であると認識しております。

 法務省も、文部科学省とともに、最高裁判所、日本弁護士連合会の参集を得て開催しております法曹養成制度改革連絡協議会におきまして、法曹有資格者の活動領域の拡大を議題として、取組の状況に関する情報共有や今後の取組に向けた意見交換を行っているところでございます。

 いわゆるスクールローヤーを活用し、学校現場における問題について弁護士が法的な観点から関与することは、児童虐待対策の一つとして有益であると同時に、法曹有資格者の活動領域の拡大という観点からも有意義であると考えているところでございます。

 法務省といたしましても、スクールローヤーの活用に関する文部科学省の調査検討を踏まえつつ、日本弁護士連合会の協力も得て、必要な協力を行ってまいりたいと考えております。

鰐淵分科員 ありがとうございました。今、それぞれ御答弁をいただきました。

 このスクールローヤーにつきましては、まだまだ具体的な定義というか、そういった具体的なところがまだ詰められていないところもあるかと思います。そういった中で、例えば大阪だったり江東区だったり、一部地域で推進している地域もありますので、そういったところの現場の状況も踏まえていただいた上で進めていきたいと思います。

 また、これも弁護士の先生だったら誰でもいいというわけではないと思っておりまして、やはり第一に、子供の立場に立って子供のことを思って対応していただける、また学校現場の状況をわかってくださっている先生についていただくというのがやはり一番理想というか、目指すものではないかと思っております。ですので、こういったスクールローヤーの育成もまた重要な今後課題にもなってくるでしょうし、どこにどのように配置するのかということもまた課題になってくると思います。

 いずれにしましても、まだスタートしたばかりというか、これから具体的に進めていかなければいけないと思いますけれども、また文部科学委員会の方を中心に、しっかりと具体的に質問もさせていただいて、進めていきたいと思いますが、いずれにしましても、学校現場の、特に先生方の高いニーズもありますし、ぜひともこれを、法務省の、あと弁護士会の方、そういった方々の協力を得ながらしっかりと具体的に進めていきたいと思いますので、引き続き、大臣も含めて、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 では、少し関連してなんですが、いじめ防止ということで、人権教室に取り組まれているということで、この件について質問させていただきたいと思います。

 学校現場におきまして、人権を守る取組として、人権教室、これが本格的に実施をされるということで承知をしております。小中学校の道徳の授業で、法務省の人権啓発活動、人権教室、これを積極的に活用するということでございます。これは、子供たちがいじめについて考えるいい機会にもなると思いますし、相手を思いやるという、またそのほか、命の大切さ、そういったことを学ぶ上でも、またそれがいじめの防止にもつながっていくと思いますし、大変に期待をしております。

 この人権教室について、具体的にどのように取り組んでいくのか、法務省の方にお伺いをしたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 まず、人権教室の概要でございますが、これは、民間ボランティアであります全国の人権擁護委員が中心となりまして、小中学校を訪ねまして講師等を務め、いじめ等について考える機会をつくる、子供たちが相手に対する思いやりの心や生命のたっとさを学ぶことを目的とした啓発活動であります。

 現在、全国津々浦々の小中学生等を主な対象としまして、学校における道徳等の時間を利用しまして、教材としては、啓発ビデオ、啓発冊子、それから人権擁護委員が手づくりの紙芝居、こういったものを使いまして、こういった多様な教材を活用しまして、子供の年齢に応じてわかりやすく学べる内容をやっております。平成二十九年度は、全国で七十八万人の児童がこの人権教室に参加しております。

 文部科学省と実は連携をとらせていただいておりまして、この人権教室は積極的に活用していただくことが大事かなというふうに考えておりまして、昨年の十二月末に、法務省と文部科学省の連携のもとで、文部科学省の方から各教育委員会宛てに、学校等が道徳の授業の中で積極的にこの人権教室を活用することなどを求める通知文書を発出していただきました。

 法務省からは、これに呼応しまして、その要請があった場合には学校等とさらなる連携強化に取り組むことなどを求める通知文書を発出したところでございます。

 今後も、この人権教室の積極的な実施を始めとする啓発活動を推進し、いじめの防止に努めていきたいと考えております。

鰐淵分科員 ありがとうございました。

 しっかりと、いじめ防止また虐待防止という観点からも、大変に有効的な一つの取組でもあると思っております。学校の現場としましても大変にありがたいことでございますので、ぜひとも引き続き積極的に連携をとっていただいて、有意義な実施ができるように再度要望させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 最後、済みません、がらっと変わりまして、ちょっと外務省の方に質問をさせていただきたいと思います。

 私は、昨年十二月にキューバの方を訪問させていただきました。移住百二十周年記念事業ということでキューバの方を訪問させていただきまして、その中で感じたことを二点ほど質問させていただきたいと思います。

 今回、百二十周年ということもありまして、さまざま記念事業がございました。その中で、日本文化、日本の高校生が向こうに行きまして和太鼓を披露する、また現地のキューバの有名なサックス奏者が演奏する、また最後は一緒になって共演をするという、そういった記念事業がございました。

 それぞれ二国間の交流を深めていく上でも、こういった文化を通じた交流というものは大変に重要になってくるかと思いますし、日本のことを知っていただく上でも、アピールするすばらしい機会にもなるかと思います。

 そういった意味で、今後、こういった日本の文化を海外においてどう発信していくのか、こういった取組も重要になってくるかと思いますので、しっかりと取り組んでいただきたいということ。

 あわせて、スポーツ、ちょうどキューバはスポーツ、野球が大変に有名だと思いますが、東京の高校生の代表がキューバに行って親善試合をしたという、こういった一環の記念事業の中でございました。やはりスポーツの交流も大変に重要になってくるかと思います。

 あわせて、青少年、これからの時代を担っていく青少年、こういった交流事業も重要かと思っておりまして、文化、スポーツ、青少年、こういった交流をどのように進めていくのか、外務省の方にお伺いをしたいと思います。

宮川政府参考人 外務省におきましては、外交政策の重要な柱の一つとして、キューバ始め世界各国の対日理解の促進やそれから親日派の形成を図るために、文化外交、文化、スポーツ、青年交流を推進するように努力を重ねております。

 例えば、毎年、世界各地の在外公館、大使館、総領事館等におきましては、各国で活躍されている日本人の方、団体、それから日本の企業の方などと協力しながら日本文化を紹介する、在外公館文化事業というのを実施しております。

 また、大規模な日本文化紹介の事業として、国際交流基金と一緒になって、例えば、昨年でございますと、フランスでジャポニスム二〇一八という行事を展開したり、ことしは、これからでございますが、アメリカでJapan二〇一九、ASEAN各国で、響き合うアジア、ともに文化をつくっていくという行事を予定しているほか、ロシアでは現在、ロシアにおける日本年というのを実施させていただいております。

 それから、スポーツに関しましては、御指摘のキューバ、野球もございますし、柔道の面などでも交流を深めております。

 こうしたものを含めて、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けまして、百カ国以上、一千万人以上を対象とするスポーツ・フォー・トゥモローという国際貢献策を約束として実施してきておりまして、今、七百万人を超える方に御参加いただいております。

 青少年交流についても、対日理解促進交流プログラム等の事業がございまして、中南米、アジア大洋州、北米、欧州を交流地域といたしました、高校生、大学生、社会人の方を対象に、毎年全部で五千人から六千人ぐらいの招聘と派遣、相互の交流を実施しておりまして、今後とも、文化、スポーツ、青少年交流を積極的に推進し、対日理解の促進に努めてまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

鰐淵分科員 ありがとうございました。

 時間もありませんので、要望だけ、最後、言わせていただきたいと思います。

 日系人の方への支援ということで。今回キューバを訪問させていただいて、唯一日本語が話せる日系人の方、会長お一人で、八十歳を超えていらっしゃいました。現状、やはり三世、四世の方がほとんどということで、これはキューバに限らず各国におきまして、日系人の方、三世、四世、こういった方がふえているんだと思います。

 しかし、自分のルーツは日本であると、しっかりと誇りを持ってそれぞれの国で活躍をされているということで、その方の活躍によって日本とその国との信頼関係、友情が深まっていると改めて実感をいたしました。

 三世、四世の方がふえている、世代が重なれば意識も薄れてくる、そういった課題もございますので、ぜひとも日系人の方々、こういった方への支援、交流が促進、進むような、また、誇りを持ってその国で頑張っていただけるような支援をしっかりとやっていただきたいということで、最後、要望になりますけれども申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

井野主査 これにて鰐淵洋子君の質疑は終了いたしました。

 次に、三谷英弘君。

三谷分科員 自民党の衆議院議員の三谷英弘です。

 きょうは、予算委員会、この分科会の中で三十分、非常に貴重な時間をいただきまして、本当にありがとうございます。

 そして、今大臣が少しお手洗いに行かれていますけれども、本当に遅い時間までお疲れさまでございます。

 委員長もまたお疲れさまでございます。この後まだ分科会ということで。

 きょうは、私の方で時間をいただいているということでございますので、貴重な時間ですので、中身に入らせていただきたいというふうに思います。

 またこの後、大臣が戻られた際にも、ちょっともう一度申し上げたいと思いますけれども、先日の二十五日に行われました予算委員会におきまして、串田委員が共同親権に関する質問をされました。さまざまな実態に基づく質問をされて、総理の答弁、最後にされたわけですけれども、その中で安倍総理がおっしゃったことが、現在の民法では認められていない離婚後の共同親権というものについて、もっともだという気もする、子供はお父さんにもお母さんにも会いたい気持ちだろうと理解できるというふうに語られた上で、民法を所管する法務省で引き続き検討させたいというふうに述べていらっしゃいました。きょうは、そういった総理がおっしゃったことを踏まえまして、いろいろと聞いていきたいなというふうに思っております。

 共同親権、そして一緒に子供を育てていく、そういう意味では共同養育という問題につきましては本当に多くの省庁にまたがる問題でございまして、共同親権というこの制度そのものに限って言えば法務省という形になるんでしょうけれども、ハーグ条約を含む外国との関係ということに鑑みると外務省マターという部分もあります。共同養育、また、その共同養育に関して、虐待ということを考えて、そこに注目すると厚労省、厚生労働省という形になるでしょうし、現在の離婚後の単独親権というもの、どうやってそこを決めていくのかというその実態に即して言えば、実はこれは最高裁判所。そして、離婚の原因でもありますいわゆるDVですとか、そういったところの関係について言うと内閣府あるいは警察庁。本当に多くの省庁にまたがる問題ということであるがゆえに、どこかの委員会で網羅的に聞くというのもなかなか難しいわけでございます。

 その意味で、予算委員会というのは非常にいい場ではあるわけですけれども、きょうは中でも法務省について質問するというような場でございますので、可能な限り他省庁というところも視野に入れるところではございますけれども、基本的には法務省というところに限定して、広範囲の質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 このいわゆる離婚後の共同親権、これはいらっしゃらなかった時分に申し上げたんですけれども、この前の予算委員会での質疑を受けてきょうは行わせていただこうというふうに思っておりまして、総理も、もっともだという気もすると。先ほど申し上げたのをもう一度、強調の意味で申し上げさせていただきますけれども、子供はお父さんにもお母さんにも会いたい気持ちだろうと理解できるというふうに語られた上で、民法を所管する法務省で引き続き検討させたいというふうにおっしゃっていらっしゃった。それを踏まえてきょうは質問させていただくという意味で、広範囲な質問をさせていただくことになるかと思いますので、こんな問題点が実務ではあるんだということをぜひとも、認識というか、少しでも、より理解をしていただく、そんなよすがになればなというふうに思っております。

 それで、最初の質問に移らせていただきますけれども、離婚後の共同親権というものを認めるというときに必ず問題になっているのが、DVとの関係。DVの被害者というものをどういうふうに保護するか、これを考えない限りは、決してこの問題というのは前に進みようがないというふうに思っております。その意味で、DVの被害者、だからもちろん、DVの被害者ニアイコールいわゆる子供との関係でいうと、面前DVということで精神的虐待ということになるので、子供との関係では虐待をするということにもなっているんだろうというふうに思いますけれども、DV被害者がいわゆる加害者から逃げられる仕組みというのをしっかりとつくっていかなければいけないというのは当然であるというふうに考えております。その視点は極めて重要だというふうに思っております。

 ただ、このDVというのは、もちろん物理的に暴力を振るうですとか暴言を吐きつけるみたいなものがこれに含まれるというのは、それはもう明白だと言ってもいいんだろうと思いますけれども、いわゆるモラハラですとかそういったものも含むので、外延といいますか、どこまでがDVなのかということは必ずしも明確ではなく、なので、DVがあったのかなかったのかというのを当事者間で言わせてもしようがない。当事者間での意見というのは、それはもう激しくなることが多いのは当然だろうと思いますので、第三者が間に入る、そういったプロセスというのは極めて重要じゃないかなというふうに思っております。

 そういった夫婦間の行為がDVか否かと判断してもらえる仕組みが必要だということで、本来的には、これは事実認定に関する問題ですので、裁判所というのが介在するのが最もよいのだというふうに思っております。

 その意味で、裁判所が介在する仕組みとして考えられるのが、配偶者暴力防止法の第十条の保護命令というものがあります。この保護命令というのは、「被害者が、配偶者からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては配偶者からの更なる身体に対する暴力により、配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、」、二つ、住んでいる場所とか勤務先等の場所の付近を徘回してはならないですとか、生活の本拠としている住居から退去したり、その住居の付近を徘回するということを禁止するということができるわけでございます。

 一応、これは事実的な関係なので事務方の方からお答えいただきたいと思いますけれども、これは、私が先ほど申し上げたとおり、判断する主体は裁判官であるということ、そして、それについて、不利益処分を受ける側に関しては事後的に争うことができるという、この二点であるということは間違いないでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えをいたします。

 配偶者暴力防止法に基づく保護命令でございますけれども、これにつきましては、判断の主体はもちろん裁判所でございます。原則として、加害者側の反論も聞いた上で、証拠に基づいてDVの有無を判断することとされております。

 これに対しまして、保護命令を受けた者に対しましては、即時抗告ができるということでございます。

三谷分科員 そうなんです。そもそも、その決定を出すに当たっては、告知、聴聞の機会というのもありますし、事後的に即時抗告でも争うことができるということでございますので、しっかりと手続保障というのがあるということでございます。

 ただ、必ずしも全ての事案に関して裁判所を介在させるというのは現実的ではないということでございますので、DV被害者を守っていくという観点ではいろいろな仕組みがあるわけでございますけれども、その中の一つとして、例えばDVの被害者の、訴える方が、子供を連れてどこかに転居した、どこに行ったかわからないというような、いわゆる子供を連れ去るというような、連れて出ていくというような事案において、どこにいるんだろうというふうに思うのは当然のことなんだろうというふうに思います。なので、一般的には住民基本台帳を閲覧するということで現住所を確認するというような手段があるわけでございますけれども、それについて、それを閲覧させないというような仕組みがあります。

 それが何かといいますと、この住民台帳に関してはDV等支援措置というものがあるわけでございまして、このDV等支援措置というものが講じられた場合には、住民票を閲覧したいと言っても閲覧させないということになるわけです。

 このDV等支援措置を実施するに当たって必要なのは、果たして本当に閲覧制限をするだけの必要性があるかという、その必要性の判断です。その必要性を判断するためには、どこからその意見を確認することになっているか。現実、今の運用についてお答えいただきたいと思います。

吉川政府参考人 お答えいたします。

 DV等支援措置を実施するに当たりまして、市町村長は、申出者がDV等支援措置対象者に該当し、かつ加害者が当該申出者の住所を探索する目的で住民票の写しの交付の申出等を行うおそれがあると認められるかどうかについて、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の意見を聴取し、又は、先ほどお話のございました裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めることにより、確認することとなります。

三谷分科員 そうなんです。今お答えいただきました裁判所の保護命令の決定書だけではなくて、警察ですとか配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の相談機関というふうにおっしゃいました。

 これは実は、歴史的に見て変遷があるわけです。もともとは、最初にこのDVを、しっかりと被害者を保護しなければいけないという観点で、平成十六年の五月三十一日に「住民基本台帳事務処理要領の一部改正について」という通知が出まして、その際にどうなったかというと、この必要性というのは、まずは警察の意見を聞き、確認すると。最初にここから聞いてくださいねというふうに出たのが警察です。ただ、警察の意見を聞く以外の適切な方法がある場合には、その方法により確認することとしても差し支えないという、要は、原則警察、例外としてその他のところも認めますよというような形になっておりました。

 しかしながら、その後、平成十八年の九月十五日になりまして、実はこのほかの部分も一緒に上に上がって原則に入って、先ほどおっしゃったところも含まれるようになったわけですけれども、さらに平成二十四年九月二十六日には、この「等」の部分について更にもう少し詳しい通知が出されておりまして、どこが含まれることになったかというと、民間被害者支援団体等、未成年者が入所していた児童福祉施設を運営する社会福祉法人、未成年者の権利擁護の活動を行う法人、未成年者のシェルターを設置運営する法人等からの意見等の聴取、精神科等の医師による診断書等により措置の必要性を確認しても差し支えないということで、最初は警察、それに加えて、さまざまな、先ほどおっしゃったような配偶者暴力相談支援センターとか児童相談所というのが入ったわけですけれども、さらに平成二十四年になって、これはもちろん、目的はDVの被害者を保護するものでありますから、その確認をするというのができる対象というのが広がることは非常にいいことだと思います。

 ただ、私が申し上げたいのは、もちろん、緊急的に被害者はやはり保護しなければいけないわけですから、そういう裁判所の判断を必要とするというのは現実的じゃないとわかります。ただ、裁判所の判断、これは事実認定のプロですよ。事実認定のプロがやっているこの判断に対しても、相手方、加害者とされる側は、告知、聴聞の機会が与えられ、しかも、即時抗告という形で訴えて、この判断を争うことができるわけです。

 では、このDV等支援措置について、どういう形で争うことができるかということなんです。DV等支援措置に基づいて、閲覧の制限、不許可決定が出た場合に、その不利益をこうむる当事者というのが争う手段があるかどうか、お答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、現在、DV等支援措置として、その支援の必要性があると認めた場合には、住民基本台帳法第十二条の三の規定に基づき、加害者からの当該被害者の住民票の写しの交付請求を拒否しているものと承知しております。

 実際に、住民票の写しの交付を拒否する処分がされた場合には、その交付請求をした者は、裁判所に対して処分の取消しの訴えを提起することにより、その適法性を争うことができると考えられます。

三谷分科員 今お答えいただきましたとおり、拒否の決定に対しては取消し訴訟を提起することができる、それはそのとおりなんです。しかしながら、私がここで実は問題だと思っているのは、その中身なんです。

 開示を不許可とする決定をする、どこから何について争えるかといったら、その不許可決定に瑕疵があるかないか。不許可決定に瑕疵があるかどうかというのは、その前に、市町村がDV等支援措置ということを講じていれば、それに基づいて決定をしていれば、違法ではありません。DV等支援措置というのがないのに開示を不許可という決定をしたら、これは違法ですという話になるんですが、この取消し訴訟の中で、そもそも、DV等支援措置というもの自体が、それが適法かどうか、本当にそれが正しい判断かどうかというものを争えるかどうか、お答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、住民基本台帳法の規定では、その申出を相当と認めるときにできるというふうになっておりますので、結局、この取消し訴訟において、その処分の適法性があるかどうかといいますものは、当該申出を相当と認めるとき、この要件に当たるかどうかという、そのレベルで判断されるべきものではないかと思っております。

三谷分科員 そこなんですよ。相当と認めるかどうか、それは裁量の範囲です。私が申し上げたいのは、その判断というものが、どういう事実認定であろうが、その機関が相当だと認めれば相当なんですよ。

 これは、何が私は申し上げたいかといいますと、実は、DV等支援措置というものの有効性そのものを争えれば、これはもちろん、当然ながら、その次の不開示決定というものはないわけでございます。しかしながら、そもそも、極めて広範な、これは行政庁の裁量権の範囲内の話なんです。

 私が申し上げたいのは、裁判所がDVの保護決定をする場合には、その保護の中身について正面から争えるにもかかわらず、裁判所ではない、例えばシェルターですとか、例えば女性を保護する団体の方々がいろいろな話を聞いて、当然、その話を聞いて、これはひどいということで、DVという事実がありましたということを書くわけです。その認定においては、DVをしたとされる側は全く、自分としてはどういうつもりで何をやったかということを説明させてもらえる機会はありません。

 そして、その上で、今おっしゃっていただいたとおり、今回の不開示決定を争えるかどうかというのは、そもそも、DV支援措置というものが講じられたかどうかというものであって、よほどの、全くそういうシェルターなりなんなりのものがないにもかかわらず、いきなりDVの支援の必要性があるというふうに判断をしてしまえば、それはもちろんのこと、それはあり得ないよねということで、今おっしゃったような答弁になるのかもしれない。まあ、なるんだと思います。

 しかしながら、DVだというふうに被害を訴えている側が言ったままのことが書かれて、それに基づいてDV等の支援措置が出され、そしてそれに基づいて不開示決定が出されたら、もう争えないんですよ、不開示決定された側は。私が言いたいのは、そこに果たして本当に手続保障というものがあるんですかと。

 これはもちろん、こういうDVの被害者を保護しなければいけないというのは当然のことなので、一時的に、最初にそういうことがあったらもう不開示決定する、それはいいですよ。不開示決定をするところまではいい。しかしながら、その後で、今回、保護決定の場合も、即時抗告に関しては、即時抗告の間じゅう、決定の効力は失われないというふうになっています。なので、こっちのDV等支援措置に基づく不開示決定に関して、一時的に制限されるのはいいですよ、でも、自分の意見を聴取されることもなく、ずっと今後一生、まあ、その必要性があるというふうに認められる場合においてはですけれども、でも、これだって、この前、裁判がありましたよ、名古屋高裁で。ずっと過去さかのぼって、一度でも暴力を振るっていれば、その後ずっと何年にもわたって暴力なんか一切振るっていなくたって、その必要性があるんだというふうな感じで不開示決定されちゃうわけですよ。

 だからこそ、本当にそこに手続保障というのがあるんですかということを考えていかないと、これは、虚偽DVだ何だというふうにいろいろ言われますよ。私は、虚偽なのかどうかというのは、そこは問題にしない。私が問題にしたいのは、しっかりと当事者間でDVなのかどうかということについて手続保障をしているかどうかなんですよ。それが、今回の事案では余りにもない。この制度上、それは内部決定だから、DV等支援措置というのを講じるというのは内部の決定だから、そこ自体は争えないからこそ、私はこれを問題にしているのであって、この点について、何か手続保障を余りに欠くと思いませんか。お答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 これは支援措置の、あるいは運用の問題にはなるのかもしれませんけれども、支援措置をとるまでの過程におきましても、例えば警察が意見を述べる過程において加害者側の意見を聞くこともあるというふうには承知しております。

三谷分科員 警察の意見を聞くこともある。警察の意見を聞くこともあるけれども、手続保障を欠くと思いませんかという質問に対してはどうですか。

小野瀬政府参考人 支援措置等の手続保障ということでございますので、ちょっと法務省としてはなかなか、これ以上のことを申し上げるのは難しゅうございます。

三谷分科員 なので、法務省の方でぜひひとつ、この手続保障のあれは、不利益処分に対して手続保障をするというのはそもそも大原則ですから、この大原則が今この制度上ないということについてどういうふうに法務省としてお考えなのか、事務の方で構わないので、お答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 やはり、DV等支援措置の中で、この措置の対象となるといいますか、そういった方をどう取り扱うといいますのは、そのDV等支援措置のあり方の問題として検討されるべきものであるかと思いますので、なかなかちょっと法務省としてはこれ以上のことを申し上げるのは難しゅうございます。

三谷分科員 いや、ですから、私が申し上げたいのは、DV等支援措置はいいですよ、それは市町村が決めて保護するものだから。それに対して、人権をつかさどる法務省として、それに余りにも手続保障がないというふうな問題意識は持ちませんかというのが私の質問です。どうですか。

小野瀬政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、実際に住民票の写しの交付を拒否する処分がされますれば、これは処分の取消しの訴えを提起することができるということになります。そのように、適法性を争うという機会はあるというふうに考えております。

三谷分科員 もう全く答弁になっていないので、ちょっとそこはまた改めて伺いたいと思いますけれども、取消し訴訟の中で、そもそもDVがあったかなかったかというのを説明する機会が与えられないんですよ。なぜなら、警察なりDVのシェルターなり、そういったところがこういうことを言われました、以上なんですよ。裁判所は必ず被害者、被害者じゃない、ここで言うと訴える側から話を聞くなんという制度になっていないんですよ。なぜなら、そういうふうなものが記載がありました、こんなにDVです、やられていますというふうに書いてあるもので、DV等の不開示決定ができるんですから、住民票の。だから、私は、余りにも手続保障がないんじゃないかという話をしているんです。

 それで、次に行きます。ちょっと時間が余りにも押してしまったので、次の問題に行かせていただきます。

 今回は、共同親権というものについてちょっと伺いたいというふうに思います。

 そもそもは、子供の連れ去りの問題というものがそもそもの出発点というところであるわけでございますけれども、親権をどういうふうに認めるかということで、継続性の原則というものがあります。

 離婚をしたときに、どっちかにしか親権を認めないわけです。お父さんなのか、お母さんなのか。その判断は、当事者間で話合いがつけばいいですよ。でも、そもそも仲が悪くなって離婚をするわけですから、世界広しといえども、仲がよくて離婚する例なんてほとんどないわけで、ただ、そんな中でも、どっちかしか親権者になれないので、裁判所が判断せざるを得ない場合は出てくるわけです。そのときに、継続性の原則というものがあります。そのときに、継続性の原則があるからこそ、子供を実際育てている状況が欲しいんだということで、子供を連れ去る場合があるわけです。

 一方で、それは往々にして適法だというふうに言われていますし、それだと継続性の原則で子供の親権がとられちゃうからといって、慌てて連れ戻す場合がある。この連れ戻す行為は、実は、未成年者略取誘拐罪として検挙される例が多くあるわけですよ。

 だからこそ、果たしてこの継続性の原則というのが子供の最善の利益に資するのかということについてどう思われるか、お答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 家庭裁判所が親権者あるいは監護者の指定をする場合には、やはりどちらの親を指定するのが子の利益に資するのか、こういう観点から判断がされているものと承知しております。

 やはり具体的には、例えば、その子供が生まれてから主としてどちらの親がそれを監護してきたのかといったようなこと、これもやはり考慮の一つかと思います。

 ただ、それだけではなくて、それぞれの養育能力ですとか子供に対する熱意等々、居住環境、あるいは子の側の事情、そういった諸事情を総合的に考慮して判断されるものと承知しております。

三谷分科員 今おっしゃっていただいたとおり、どちらが今まで監護をしていたかというのは大事な視点ですよ。

 しかしながら、ここで言っているのは、離婚をするというような状態になって初めて別居するわけですよね。当然ながら、ずっと一緒に住んでいて離婚する場合もありますよ。しかしながら、よし、離婚しようと思って連れ去っていく、そこから生じた生活に基づいて判断するというのは適切ですか。

 それまで、イクメンだ何だ、それはお母さんの場合もあるでしょうけれども、お父さんもお母さんも一緒になって一生懸命子供を育てていた場合にでも、どっちかが離婚したいと思って連れ去りました、そこで連れ去った後に離婚調停が始まるわけです。調停前置主義ですから、日本では、必ず調停しなきゃいけない。そのときに、その調停で半年、一年かかりました、その後、裁判になりました、その間の半年、一年、二年の間を継続性の原則の基礎とするのはおかしいと思いませんか。

小野瀬政府参考人 例えば、子供を監護している、そういう現状をつくる、こういうことを理由として子供を連れ去った、こういったような事情ですと、それは、監護の継続という意味で、そういったことが実績という面で重視されるというふうには考えづらいわけでございますし、また、裁判例の中には、子供を連れ去った際の態様が悪質である、こういうことをその親に不利益な事情として考慮したものもあると認識しておりますので、そういったことも含めて、さまざまな事情を考慮して適切に判断されるものと認識しております。

三谷分科員 そういうふうな答弁にならざるを得ないというのは、それはそうなんだと思うんですけれども、そもそもが、一緒に住んでいて一生懸命育てていたという中で、これは単独親権だからこそ問題になるんですよ。

 なぜかというと、継続性の原則に加えて、もう一つ何があるかというと、子供の意思なんですよ。

 子供の意思って、何で問題になるかというと、これは単独親権です。当然、子供を連れ去った側は親権が欲しいんです。そうすると、一緒に生活している間、半年なり一年の間に、お父さんの悪口を吹き込むわけですよ。あなたのお父さんはこんなにひどい人だからね、私はもう一緒に住めないよ、あんたどう思う。三歳、四歳はわかりませんよ、五歳、十歳の子かわからないですけれども。そういう人が、繰り返し繰り返し、お父さんなのかお母さんなのかわからないですけれども、言われていたら、そうだね、そんな人とは一緒にいたくないね、住みたくないねと言わざるを得ないんですよ。これは僕は虐待だと思いますよ。

 だけれども、今、その継続性の原則の次に出てくるのは子供の意思だから、こういう問題で、やむを得ず、じゃ、子供の意見を聞いてみましょうと言って子供の意見を聞いたら、お父さんなんか会いたくない、あるいは、お母さんなんか会いたくないと言って会えなくなっている家庭なんかいっぱいあるわけですよ。何でかというと、最初に連れ去られるからですよ。そこをしっかり問題だと思っていただきたい。

 それは、どっちかが得るんだったら私がとなるけれども、そもそも共同親権だったら、連れ去ろうが連れ去られまいが、じゃ、お互いそれぞれ監護しようよという話になるわけだから、そういう意味では、今の、ある意味、単独親権だからこそ高葛藤を生み出している。うまく話がいかないというような状況になるわけです。

 いろいろな問題もまだまだありますけれども、この単独親権の問題、この前、G20の例でいろいろ聞かれておりますけれども、少なくともG7では日本だけですよ、単独親権の国は。G20に広げるとトルコもあるという話はありますけれども、それ以外の国は基本的に全て、中国ですとか韓国ですとか、そういったアジアの国々全て、ヨーロッパの国もそうです、アメリカもそうです、単独親権というのはないわけです。共同親権なんです。

 これは大臣、共同親権、導入しませんか。

山下国務大臣 我が法制が単独親権、離婚後の単独親権をとっている理由については、これまで予算委員会でも御説明してきたとおり、適時適切なやはり決定が必要だというところでございます。

 ただ、他方で、そういったところに伴う、直接、単独親権から出るのか、あるいはそれに付随すると言われている、例えば面会交流の関係でなるのかということは、やはり慎重に検討しながら考えていきたいというふうに考えております。

三谷分科員 ありがとうございます。ぜひ考えていっていただければというふうに思います。

 本当に、共同親権と共同養育の問題というのは別だというふうにおっしゃるんですけれども、これは先ほど申し上げたように分けられないんです。まず、親権をとるという段階で、一生懸命相手の悪口を言うことが事実的にあるわけです。その結果、じゃ、お父さんならお父さん、お母さんの方ならお母さんに親権になった後に、じゃ、親権が渡されたけれども面会交流しましょうよと言ったって、もうさんざん悪口を吹き込まれている相手に、しかも、親権者でもない相手に……

井野主査 三谷さん、簡潔に。

三谷分科員 何で会いたいと思うんですかというふうな問題も、これは共同親権の問題と共同養育の問題はかぶるので、ぜひとも、そういう問題もあるんだということも含めて、御検討いただければと思います。

 以上です。ありがとうございました。

井野主査 これにて三谷英弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、井林辰憲君。

井林分科員 自由民主党の井林でございます。

 予算委員会第三分科会で質問させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。

 大変、大臣も長くお座りになられてお疲れだと思いますけれども、私が最後のバッターということですので、おつき合いをいただきたいというふうに思います。分科会ということですので、地元というか地域に密着した課題についてお伺いをしたいと思います。

 まず一つが、私の地元にございます富士山静岡空港の入国管理についてでございます。

 この富士山静岡空港でございますが、地方が管理する空港としては外国人入国者数が最も多いという空港でございまして、空港全体で見ても大体全国で八番目ということで、非常に多くの外国人の方が出入りをしていただいている空港でございます。

 この空港の出入国を管理していただいているのが名古屋入国管理局の静岡出張所というものでございますが、まずは、この富士山静岡空港の外国人入国者数の推移と、そして、これを審査していただいているこの出張所の入国審査官の推移をお答えください。

佐々木政府参考人 富士山静岡空港における外国人入国者数は、平成二十六年は七万二千六百八十一人、平成二十七年は十六万九千九百二人、平成二十八年は十万七千八百八十人、平成二十九年は十万八千五百四十二人、平成三十年は速報値でございますが十万八千八百四十人となっています。

 また、同空港を所管いたします名古屋入国管理局静岡出張所の入国審査官数でございますが、平成二十六年度は十七人、平成二十七、二十八、二十九、三十年度、いずれも二十二人となっております。

井林分科員 ありがとうございます。

 事務方の方はちょっと遠慮をして答えていただいたんだと思うんですが、これは二十五年と、そして二十六から二十七年のところで結構立て続けに増員をしていただいておりまして、大変慎重というかスムーズな入国審査をしていただきまして、今、入国審査官二十二名ということで、レクのときに伺いましたら、全国の出張所の中で五番目だ、六十一ある出張所の中で五番目に入国審査官を置いていただいているということで、感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 ただ、昨年十月には、この富士山静岡空港は大変利用が多いものですから、旅客ターミナルの改修と新設が行われまして、これまでに一時間一便だったのがこれからは一時間三便受け入れられることになるということでございまして、そうするとピークが三倍になるということですので、普通に考えれば三倍の人がどうしても必要になるという状況。また、ムスリム対応も、男女それぞれ、二室整備をさせていただきまして、大変、離発着便数が飛躍的に増大するだろうというふうに言われております。

 これから民間委託が、ことし、もう契約されて行われるんですが、外国人の入国者数は十万ということでしたけれども、全体の利用者数が七十万人いらっしゃるんですけれども、これが百三十万人になるという見込みの中で民間企業の方が管理委託を受けていただいているということでございますので、さらなる増員というか、そうしたことをお願いしたいというふうに思っております。

 ですので、今後の富士山静岡空港を所管する静岡出張所の人員の体制についてお伺いをしたいと思います。

佐々木政府参考人 御報告いたします。

 平成三十一年度予算案におきまして、新たな外国人材に係る在留資格審査、受入れ機関の実地調査等の業務に対応するための要員として、入国審査官二人の増員を計上しております。

 今申しましたように在留管理の要員として増員要求をしているものでございますが、もちろん空港の繁忙の状態におきましては応援として駆けつけるものでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 二名、新しく、外国人労働者の法律に関して増員をしていただけるということでございますが、事務方からも今、もちろん入国審査が忙しければそっちもちゃんと手伝いますというふうに言ってくれました。

 おかげで、富士山静岡空港の入国審査の待ち時間の推移が、二十分以内の達成率が九〇%を二年連続、これは統計以来超えているということで、大変ありがたく思っているところでございますけれども、これから飛躍的にふえることも想定されますので、最後に大臣にお願いをしますけれども、更にこれはやはり人員の増加又は弾力的な運用について決意をお聞かせいただければと思います。

山下国務大臣 まず井林委員にお礼申し上げたいのが、先ほど事務方からは二十六年度から申し上げましたけれども、二十五年度は入国審査官数は十三人だったんですね。それが今はもう二十二人になって、来年度予算では二人の増員ということを求めているというところでございます。そして、待ち時間も、二十五年は三十八分であったのが、先ほど御指摘あったように今は平均二十二分と、迅速な入国審査の目安である二十分以内というのが九〇%以上を超えているというのは御指摘のとおりでございまして、これも委員のさまざまな御指摘をいただいたおかげでありますし、今後も真摯に取り組んでまいりたいと思います。

 そして、昨年、訪日外国人旅行者が三千万を突破いたしましたけれども、富士山静岡空港というのは相当なメジャーな入り口の一つというふうになっております。そうしたことから、入管全体では平成三十年度までの過去三年間で七百二十六人の入国審査官の増員措置を図り、適正な配置に努めていたところでございますし、また静岡出張所においても増員を図ってきたところでございますが、富士山静岡空港、今後とも、外国人入国者数、期待できるところでもございますので、推移などをしっかりと踏まえつつ、必要な人的体制の整備を適切に行ってまいりたいと考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 大臣からも、これからもしっかりと見ていくという言葉をいただきましたので、そのようにお願いを申し上げたいというふうに思いますし、やはりこれは一度評判に傷がつくと大変大きな痛手になりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次に、公証人の件についてお伺いをしたいというふうに思います。

 公証人なんですけれども、公証人というのは一体何をやるんだということなんですけれども、日本公証人連合会というところがありまして、そのホームページを見させていただくんですけれども、公証人は、遺言や任意後見契約などの公正証書の作成ですとか、私文書や会社等の定款の認証、確定日付の付与、公証業務を行う公的機関で、公証人は公務員だということでございます。

 これから相続も大変多くなりまして、そうした遺言の作成で、遺言の公正証書を作成する方も増加しているというふうに聞いています。こうした、これからの時代に更に求められてくる公証人、また、その公証人が働く公証人役場でございますが、これについてお伺いをしたいと思います。

 公証人は、公証人法第十条を読ませていただきますと、ちょっと前略させていただきますが、公証人の員数は、これは、済みません、原文は片仮名で書いてあるんですけれども、私、現代語みたいに読むので、ちょっと細かいところが違うのはお許しいただきたいんですけれども、公証人の員数は法務局若しくは地方法務局又はその支局の管轄区域ごとに法務大臣がこれを定むというふうに書いてあります。

 これを受けて、公証人定員規則では全国の定員が定められてございますが、その中で静岡県内の定員も定められていまして、この中では、後で議論しますけれども、藤枝の支局も定員が一というふうに定められていますが、今、現実には公証人が存在していないというのが事実関係でございます。

 まず、先ほどお話しした藤枝の支局、静岡地方法務局の藤枝支局でございますが、これは最近新設をされたものでございますけれども、設置された経緯と、そして、法務局の支局、出張所と、これに対応する公証人役場の対応状況を教えてください。

小野瀬政府参考人 まず、この静岡地方法務局藤枝支局の設置の経緯でございますけれども、まず、平成二十六年十一月二十五日に、静岡地方法務局藤枝出張所、当時出張所でございますが、藤枝出張所に焼津出張所を統合いたしました。さらに、平成二十七年一月十三日に島田出張所を統合したところでございます。そして、この島田出張所を統合した際に、藤枝出張所を支局化いたしまして、藤枝支局を設置したものでございます。

 さらに、静岡におけます法務局の支局、出張所と公証役場との対応状況でございますが、静岡地方法務局管内には、沼津、富士、下田、浜松、掛川、藤枝、袋井の七カ所に支局が設置されておりまして、また、清水、熱海、磐田の三カ所に出張所が設置されております。

 静岡県内におけます公証役場の設置状況でございますが、先ほど述べました七カ所の支局のうち、藤枝を除きます、沼津、富士、下田、浜松、掛川、袋井の六カ所の支局の管轄区域内に公証役場が設置されております。

 また、沼津支局の管轄区域内には二カ所に公証役場が設置されておりまして、そのうちの一カ所につきましては、この沼津の管轄区域内にあります熱海出張所の管轄区域内に設置されている、こういう状況でございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 資料をもらっているんですけれども、これを見ると、法務局の支局で公証人役場が対応していないのが全体の四割ぐらいあるんですよということなんですが、静岡県内で見ると、わざわざ新設された藤枝にだけ今のところ公証人がいないということ。これはいろいろな地理的な条件もあるんでしょうけれども、熱海の出張所にはいらっしゃるということでございまして、これはやはり非常に大きな問題で、ぜひ藤枝の支局に対応する公証人、そして公証人役場の設置をお願いしたいところなんですが、これは公務員なんですけれども、国からお金が払われないんですよね。ですから、ある程度業務がなきゃいけないので、なかなかそういう面でも難しいと思うんです。

 そもそも、公証人役場がここ最近というか、十年、二十年ぐらいでいいんですが、新設されたという実績はあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 それまで法務局あるいは地方法務局の支局の管轄区域内に公証役場がなかった区域に新たに公証役場が設置された直近の事例といたしましては、平成十六年一月一日に大阪法務局北大阪支局の管轄区域内に高槻公証役場が新設された事例が挙げられます。

井林分科員 ありがとうございます。

 実績があるということで、平成十六年、随分前じゃないかと言う人もいますけれども、個人的には最近かなというふうにも思っておりますので、ぜひお願いしたいんです。

 現実を見ると、私どものエリアの人、地元の人に聞くと、静岡の合同役場へ行くと大変混んでいる、四人もいていただけるんですけれども、大変混んでいる、だもので、嫌なので、掛川に皆さん行かれているということでございまして、掛川というと、もともと違う支局の担当のエリアのところまでわざわざ出かけていっているんですよね。いろいろなところに置いていただくのはありがたいことなので、とやかくは言えないんですが、掛川のすぐそこにまた袋井もあるもので、距離的にも、そろそろ私は藤枝に、支局まで、出張所二つ統合してつくった支局ですので、それにふさわしい人員を整えるという意味で、藤枝支局に対する公証人役場を置くべきじゃないかと思っています。

 これは、質問させていただく前に地元の首長さんに、公証人役場をもし置いていただけるときは、さまざまな面で、例えば事務所の提供とか、そういうのも含めて御支援をしていただくつもりはありますかととある首長に聞いたら、ぜひやりたいという答えもいただいておりますので、そうした藤枝支局に対応する公証人役場を置いていただきたいという思いが地元にも大変強くあるということも含めて、大臣、お答えをお願いします。

山下国務大臣 まず、一般論でございますが、これは、法務局又は地方法務局の支局の管轄区域内に公証役場が設置されていない場合において、先ほど委員もおっしゃったように、定員はあるんだけれども置かれていない場所というのは相当数、三割以上ございます。そういった場合において、新たに公証役場を設置するか否かを判断するに当たっては、当該区域におけるその利用の見込み、利用者にとっての利便性、公証業務の効率性の観点等から総合的な考慮を行う必要があると考えております。

 そして、委員の御地元の藤枝支局でございますが、その管轄区域内の人口が約四十六万人と比較的多いということは十分承知しておるところでございます。ただ、平成二十七年に新設された新しい支局でもあるということで、やはり今後そういった推移を見る必要があるんだろうということでございまして、藤枝支局の管轄区域内に公証役場を新設するか否かについて、先ほど言った観点から、状況をしっかり見守りつつ、検討してまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 大臣からもかなり地元のことを細かく御説明いただきましたので、しっかり見ていただけているんだなというふうに思っております。これから公証人の役割というのは非常に重要になってまいりますので、ぜひ設置に向けて前向きな検討をお願いしたいというふうに思います。

 最後になりますが、家庭裁判所についてでございます。

 家庭裁判所は、裁判所法の三十一条の三第一項に規定されています裁判所でございまして、家庭の平和を維持し、少年の健全な育成を図るという理念のもとに、昭和二十四年一月に設けられた裁判所でございまして、戦後に設置をされた裁判所だということでございます。扱う案件としては、夫婦関係、親子関係の紛争などの家事事件の調停、裁判、また非行少年の事件についての審判を行っているということでございまして、家庭内の問題、また非行の問題ということで、非常に重要な裁判所だというふうに思ってございます。

 これも、私の地元にも家庭裁判所を置いていただいているんですが、正式名称が静岡家庭裁判所島田出張所ということでございます。この島田出張所の扱う調停、審判件数のそれぞれの新受件数の推移と、これはレクのときにちょっと私やりとりした未済も入っているんですかね、入っていれば答えてください。落としていたらそれはいいです、済みません。お答えいただければと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 静岡家庭裁判所島田出張所の事件の推移でございますけれども、まず、新受件数の方を申し上げます。平成二十八年は五百五十六件、平成二十九年は五百二十一件、平成三十年は四百六十四件ということでございまして、減少傾向にございます。未済件数でございますが、平成二十八年が二百七十六件、平成二十九年が二百四十二件、平成三十年が百七十七件ということになっております。こちらも減っております。

 他方、家事審判事件につきましては、平成二十八年が三千二百五十二件、平成二十九年が三千三百四十三件、平成三十年は三千五百四十八件、こちらが新受件数でございます。未済件数でございますけれども、平成二十八年が二百五十五件、平成二十九年が百四十二件、平成三十年は百六十五件ということで増減しているというところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 もうちょっと前からデータをもらったんですけれども、減っているところだけうまく切り出したなというふうに思うんですが、大変優秀な事務方だなというふうに思いますが。これは、減っている、ふえているもあるんですけれども、全国的な傾向と一緒なんですよね。だから、この出張所だけ減っているということじゃなくて、全国的に減っている、全国的にふえているということなんですよね。

 この中で、特に平成三十年の調停と審判事件合わせて、四千件を初めて超えたんですよね。四千件を、一年間で、新受件数で。これは非常に大きな数字だと思うし、出来事だと思います。何よりも、これは過去最多でございます。

 ところで、こうした、数が多い多いというふうに申し上げますが、家庭裁判所の出張所というのは全国で七十七あるというふうに、これは去年も質問させてもらっているんですけれども、聞いていますが、この島田の出張所の総数は全国で何番目なのか教えてください。

村田最高裁判所長官代理者 平成三十年に島田出張所に申し立てられました調停事件、審判事件の総数、先ほど申し上げた数字でございますが、これを全国の家庭裁判所出張所の中で見ますと、千葉家裁市川出張所に次ぎまして、二番目に多いということになってございます。

井林分科員 ありがとうございます。全国で二番目に多いということでございます。

 この出張所というのは問題が一つありまして、週五日あいていないんですよね。それぞれ、週二日であったり、三日であったり、四日であったりという、填補回数と呼ぶそうですが、あいている日がそれぞれ異なるということでございまして、市川出張所の場合は、週五日、二人、あいている、全国で一番多いのですね。全国二番目の島田の出張所は、填補回数が週四日ということでございまして、しかも裁判官が一人ということでございまして、大変手薄な状況でございます。

 もちろん、当局の努力で、平成二十七年には填補回数を三回から四回にふやしていただいたということは、これは地元の弁護士の皆様方や民生委員、さまざま家庭の問題に関係する皆様からも大変感謝の言葉が来ておりますが、ただ、市川出張所との関係を見ると、やはりもう少し填補回数をふやしていただきたい。

 そして、これだけあるものですから、家庭裁判所が扱う事案に従事するさまざまな職員というのは、やはり今、いろいろな大変な事件が起きていまして、大変多忙だということも報道でも受けております。そうすると、何曜日はあいていないよとか、何曜日はあいていないからほかの曜日に来てくださいというのは、やはり、その人たちも、いろいろな事案に対処するのは大変なことだし、また、こうした事案に対処する皆さんに聞いたら、家庭裁判所に行く案件ってどれぐらいあるんですかと言ったら、相当なことがない限り行きませんと言うんですよね。

 ということは、やはり、物すごい深刻な事案が持ち込まれるのが家庭裁判所だということでございますので、これだけ取扱いがある出張所でございますので、私は、やはり組織として支部化をしていただくということが一番、最低でも填補回数を週五日にしていただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、支部にすべきであるという御指摘につきまして、支部を含めました裁判所の配置は、裁判所へのアクセス、提供する司法サービスの質等を総合しまして、国民の利便性を確保するという観点から、人口動態、交通事情、そして事件数の動向等を考慮し、また最近ですとIT技術の進展等も考慮に入れながら、総合的な利便性の向上の見地から検討をする必要がある問題だというふうに考えております。

 島田出張所におきまして相応の事件数があるということは、これはもう委員御指摘のとおりであるというふうに思っておりますけれども、その他の観点なども含めてあわせ考えますと、現時点で直ちに新たに支部という形で設置しなければいけない状況にあるというふうには考えておらないところでございます。

 それから、もう一点御指摘いただきました、家庭裁判所出張所への裁判官の填補回数、出張の回数でございます。

 前提として申し上げますと、出張所は裁判官以外の書記官、事務官といった職員ももちろんございますので、出張所自体は毎日あいてはおります。ただ、裁判官が毎日いるかということで申し上げますと、委員御指摘のような回数、出張に行っているという現状にございます。これにつきましても、事件動向に応じて柔軟に見直しを行っております。また、もともと予定している裁判官の出張日以外であっても、緊急を要する事件については次の出張日を待たずして裁判官が臨時に対応するといった体制をとっておりまして、出張所におきましても、地域の住民に適切な司法サービスを提供するように努めているというところでございます。

 島田出張所につきましては、委員の御指摘にございましたとおり、平成二十七年に、当時の事件動向を踏まえまして、週の三日から週の四日ということで出張回数をふやしました。その後を見ますと、審判事件の未済件数というのは平成二十八年をピークにおおむね減少傾向にございますし、平均審理期間を見ましても全国平均と遜色ないというところでございまして、これらの事件動向等によりますと、平成二十七年に出張回数を増加したという効果もございますので、今の時点で事件処理に支障のない体制はとられているのではないかというふうに考えているところではございますけれども、今後とも、島田出張所における事件動向等を注視いたしまして、適正迅速な事件処理に支障を来すというようなことのないように努めてまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 これは、実は去年も全く同じ質問をさせていただいておりまして、なおかつ、去年の七月十一日には、当時上川法務大臣だったんですけれども、地元の首長もこれはやはり大きな問題だと捉えていて、何とかなりませんかというお願いを差し上げて、当時山下政務官もいらっしゃって、いろいろアドバイスもいただいたんですが、これは、三権分立なものですから、立法府がそこまで言うかと。ただ、地域の現状にも耳を傾けてもらいたいということもありますので、このことはやはり私からもお願いをさせていただきたいというふうに思っております。

 なので、大臣のコメントもなかなかもらいづらいというふうに思いますので、アイコンタクトで強く……。何か言ってくれますか。大臣、何かコメントがあればお願いします。

山下国務大臣 この件につきましては、御指摘のとおり、昨年七月、島田市長と井林委員のお越しをいただきまして、その御要望について、充実についてという思いをしっかりと伺ったところではあるんですが、やはり、これは他方で、この家庭裁判所支部の設置や裁判所出張所について、これについては、例えば、地家裁支部の設置は最高裁判所規則である地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則により、また裁判官の填補回数は、同様に最高裁規則である下級裁判所事務処理規則によって、各家裁の裁判官会議によって決定されるということがございます。そうしたことから、なかなか法務省として具体的な御要望についてこうだということは申し上げることはできないということは御理解いただいていると思います。

 ただ、一般論として、司法権を担う裁判所の人的体制が充実し、それにより事件の適正迅速な処理が促進され、これによって国民の司法アクセスが一層向上していくことが重要であるという認識、これは私も持っております。

 そしてまた、恐らく、先ほど答弁もありましたように、最高裁におかれても、そういった思いで動向を注視するというふうにおっしゃっているんだろうというふうに考えておりますので、引き続き見守っていきたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 持ち時間、少し残っていますけれども、未済案件にならないように、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井野主査 これにて井林辰憲君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時五分散会


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