衆議院

メインへスキップ



第3号 平成30年3月30日(金曜日)

会議録本文へ
平成三十年三月三十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 安藤  裕君 理事 神山 佐市君

   理事 亀岡 偉民君 理事 工藤 彰三君

   理事 鈴木 淳司君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 浮島 智子君

      井野 俊郎君    池田 佳隆君

      石川 昭政君    上杉謙太郎君

      尾身 朝子君    大見  正君

      加藤 鮎子君    木村 次郎君

      木村 哲也君    小林 茂樹君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      田野瀬太道君    高木  啓君

      根本 幸典君    馳   浩君

      百武 公親君    古川  康君

      古田 圭一君    松本 剛明君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      櫻井  周君    日吉 雄太君

      山本和嘉子君    源馬謙太郎君

      長島 昭久君    西岡 秀子君

      中野 洋昌君    鰐淵 洋子君

      平野 博文君    畑野 君枝君

      串田 誠一君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       林  芳正君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        木原  稔君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   文部科学大臣政務官    宮川 典子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  多田健一郎君

   政府参考人

   (内閣府公益認定等委員会事務局長)        相馬 清貴君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   市川 健太君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 藤原  誠君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         中川 健朗君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          高橋 道和君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    今里  讓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉永 和生君

   文部科学委員会専門員   鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  小林 茂樹君     井野 俊郎君

  田野瀬太道君     古川  康君

  高木  啓君     木村 次郎君

  船田  元君     百武 公親君

  宮路 拓馬君     加藤 鮎子君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     小林 茂樹君

  加藤 鮎子君     宮路 拓馬君

  木村 次郎君     高木  啓君

  百武 公親君     船田  元君

  古川  康君     木村 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 哲也君     田野瀬太道君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官多田健一郎君、内閣府公益認定等委員会事務局長相馬清貴君、財務省理財局次長市川健太君、文部科学省大臣官房長藤原誠君、大臣官房総括審議官中川健朗君、生涯学習政策局長常盤豊君、初等中等教育局長高橋道和君、高等教育局長義本博司君、高等教育局私学部長村田善則君、スポーツ庁次長今里讓君及び厚生労働省大臣官房審議官吉永和生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。日吉雄太君。

日吉委員 おはようございます。立憲民主党・市民クラブの日吉雄太でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日の委員会は、先日の大臣所信を受けての基本施策に係る質疑でございます。

 今、国民の皆様の関心事の一つに、森友学園における財務省の決裁書類が書き換えられた改ざん問題、これにつきまして非常に関心が集まっております。今月の二十七日には、財務省の前理財局長であります佐川氏が証人喚問を衆参で行われました。しかし、刑事訴追のおそれがあるということから、たびたび証言を拒否され、真相究明には至らず、疑惑はますます深まっている、真相が解明できない、このような状況でございます。

 そこで、林大臣にお聞きいたします。

 行政府が虚偽の資料を国会に提出し、虚偽の資料をもとに約一年にわたって国会の議論が行われ続けたこの現状につきまして、今回の財務省決裁文書改ざん問題、この公文書の改ざんという行為を文部科学行政の長としてどのようにお考えになりますか。

林国務大臣 御指摘の財務省における決裁文書の書換えにつきましては、三月二十三日の閣僚懇談会におきまして、総理より、このたびの決裁文書の書換えにより行政全体の信頼が損なわれ、痛恨のきわみであり、閣僚が先頭に立って信頼回復に全力で取り組もうとの御発言がありました。政府の一員として、私としても思いを同じくするところであります。

 公文書管理法の目的にもありますように、公文書が国民が共有する知的資源であるとともに、公文書を扱う者の立場は極めて重いということを改めて一人一人の職員が肝に銘じる必要があると思います。

 文部科学省においては、総理発言にございましたように、今後、公文書管理に関する新ガイドラインを踏まえ来年度から施行する改正文部科学省行政文書管理規則を省内へ周知徹底し、確実に運用することや、更新等の履歴が厳格に管理できる電子決裁システムへの移行を加速することなど、適切な文書管理にしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

日吉委員 少し質問の仕方を変えさせていただきますが、文部科学省は、この組織におきまして、林大臣の知らないところでこういった公文書を改ざんするような組織か否か、これについて、文部科学省という組織についての評価を、大臣のお考えをちょっとお伺いしたいと思います。

林国務大臣 文科省において決裁文書の書換えに係る事例というのは承知をしておらないところでございます。行政文書の重要性に鑑み、決裁文書の書換えといった行為はあってはならないというふうに考えております。

日吉委員 今回の森友問題では、この公文書改ざん問題では、大臣の知らないところで公文書の書換えが行われている、こういった内容で話が進んでおりますが、今、林大臣がおっしゃられましたように、文部科学省で林大臣が知らないところでこういった改ざんが行われることはない、こういうような理解をしたんですけれども、この大きな改ざん、一年にわたってわからなかった、こういったことはやはり組織の個々人でできることではなくて、やはり組織のトップ、こういった人がかかわらないと実際にこのような不正はできないのではないか、このように考えるところでございます。

 重ねてお伺いしますが、仮に同様の問題が文部科学省で起こった場合に、今回の財務省のように、財務省が財務省のことを調べる、こういったことに私は違和感を覚えるんですが、例えば第三者機関といったものをつくって調査を行う、こういったことが考えられますが、林大臣のお考えをお聞かせください。

林国務大臣 財務省でどういう調査をやるのかというのは財務省でお考えになるということだと思いますので、私から答弁することは控えたいと思いますが、その時々、そのケース、ケースに応じてどういうふうに調査をするのかというのは考えていかなければならない問題であろうというふうに思っております。

 大事なことは、先ほど委員の御質問にもありましたように、これは大変、公文書というのは大事なものであるということでございますから、そのことを踏まえて対応するということが大事なことであるというふうに考えております。

日吉委員 今大臣からお話がございましたように、公文書、これは非常に大事なものでございます。改ざんが行われるようなことがないように、しっかりとこの仕組みを、チェックしていただく仕組みを再チェックして構築していただく、こういったことが大事かと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、前川文部科学省前事務次官の名古屋の公立中学校における講演におきまして、名古屋市の教育委員会に対して、講演の内容について余りにも悪意に満ちた不適切な調査が行われたことが判明いたしました。これについて大臣にお伺いをさせていただきます。

 大臣は、先日の委員会で、大臣発言ということで、前川氏が違法行為により停職相当とされた者であり、このようなお話がございましたけれども、まずお尋ねいたします。

 この違法行為、国家公務員法違反を指してのことだと思いますが、こういった国家公務員法違反による停職処分、こういった事実は、公立中学校における外部講師の欠格事由、こういったものに該当いたしますでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 公立中学校における外部講師の欠格事由というようなものはございませんけれども、今回の事案は、中学校の授業において講演を行った前川氏が、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけではなく、本人自身の違法行為により停職相当とされた方であり、このような事例について、こうした背景も踏まえ、授業の狙いや内容、前次官を招いた理由や経緯など、今回の件が適切な教育的配慮のもとで行われたものであったかどうかについて確認する必要があると考えて調査を行ったものでございます。

日吉委員 欠格事由には該当しないということでよろしいですね。

高橋政府参考人 公立中学校の外部講師について欠格事由というようなものがないということは、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。

日吉委員 それでは、今回の調査を行うに当たっての経緯について少しお伺いいたします。

 配付資料ということで、新聞の記事を今回御用意させていただきました。こちらの記事をごらんいただきたいんですけれども、この最後のところで、「官邸の関与があったと主張してきた加計学園問題には触れなかったが、「今の肩書は」と聞かれると、「国会参考人です」と冗談を言う場面もあった。」このように記事に記載されております。

 この調査のきっかけの本当の理由というのは、前川氏が加計問題について官邸の関与があったと主張していたからではないでしょうか。この記事を見ますと、国家公務員法違反も、停職相当といった記載もございません。電話による問合せ、たび重なるメールでの調査、これは異常だと思われます。一体何を目的にして調査を行ったのか、もう一度明確に御答弁をお願いいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもちょっと申し上げましたが、今般の事案は、中学校の授業において講演を行った前川氏が、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけではなく、本人自身の違法行為により停職相当とされた方で、なおかつ、教育行政の事務方の最高責任者も務めていた方でもございました。こういった事例でございましたので、こうした背景も踏まえて、この授業の狙いや内容、前次官を招いた理由や経緯など、今回の件が適切な教育的配慮のもとで行われたものであったかどうかについて確認する必要があったと考えて問合せを行ったものでございます。

日吉委員 地方教育行政の組織及び運営に関する法律がございます。こちらは配付資料がございますが、これを見ていただきたいんですけれども、四十八条一項では、「文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し、」少し飛ばしますけれども、「都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる。」となっており、五十三条一項において、文部科学大臣は、四十八条一項の規定による権限を行うため必要があるときは、地方公共団体の長又は教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について、必要な調査を行うことができるとなっております。

 必要があるとき、必要な調査をするわけですが、この必要性を判断し、決裁する部署、これは調査内容によって変わるものなのでしょうか。

 本件につきましては、三月二十三日の林大臣の記者会見におきまして、文書決裁規則に基づいて初等中等教育局の判断で今回の調査を行った旨のお話をされております。例えば教育課程課の判断でこの調査をすることができないのか、今回のように一律初等中等教育局の判断となるのか、そうではなく、場合によっては文部科学大臣の判断が必要になるのか。文書決裁規則ではどのように規定されているのか、教えてください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、文部科学省組織令第五条第六号及び第二十五号等に基づきまして、初等中等教育局は、初等中等教育の振興に関する企画及び立案並びに援助及び助言に関すること及び初等中等教育に係る専門的、技術的な指導及び助言を行うこと等をつかさどることとされております。

 今回の調査は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十八条に「教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる。」とされていることを踏まえ、指導、助言、援助を行う必要があるかどうかを判断するため、同法第五十三条に基づいて授業の内容等についての事実確認を行ったものであり、このような事務は、先ほど申し上げました組織令の規定に基づきまして、初等中等教育局に分掌されているものであると考えております。

日吉委員 今のお話ですと、そうしますと、初等中等教育局が常にこういった調査に当たって、決裁をしますというか許可を出す、このように理解いたしましたが、こういった初等中等教育局の判断で調査を行ったにもかかわらず、事後的に大臣に報告をされております。三月十二日に報告があったとおっしゃられておりますが、この報告というのは、実際、必要があったのでしょうか。もし必要があるのであれば、事前に大臣の許可を得ておくべきであり、実質的に調査を行う上での手続上の問題があった、こういったことにはならないでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの地教行法第五十三条、法律上はこの調査については文部科学大臣が行うこととされているところですが、先ほど申し上げたような文部科学省組織令の規定に基づきまして、初等中等教育の振興に関する企画及び立案並びに援助及び助言等に関する事務は初等中等教育局が担当しておりますので、今回の調査は初等中等教育局の判断で行うことが可能であったものと認識をしております。

 ただ、それにつきまして、事後的に大臣に報告をしたということでございます。大臣に報告をしたときに、今回のこの調査についてはやや誤解を招きかねない面もあって、表現ぶり等には留意が必要であったということと、それから、こういった内容については事前に政務三役に報告、連絡、相談があってもよかったのではないか、そういった注意は受けたところでございます。

日吉委員 もう一度お尋ねいたしますけれども、なぜ事後に報告をされたのでしょうか。

高橋政府参考人 まず最初に、名古屋市教育委員会に電話での問合せやメールでの問合せにつきましては、これは事実確認を行うものでございましたので、先ほど申し上げました組織令の分掌に従って、初中局の判断で行うことが可能と判断したものでございます。そして、その内容について事後的に大臣始め政務三役に報告した、こういうことでございます。

日吉委員 事後的に報告したのは理解できたんですけれども、なぜ事後的に報告したのか、その理由がちょっと明確にわからなかったところでございます。

 次に行かせていただきます。

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律では、必要な指導、助言又は援助を行うために、必要があるときに調査を行うことができるとなっています。

 今回の講演につきましては、指導、助言又は援助を行う必要性が高いと判断したからこそ調査を行ったわけですが、先日の大臣発言によりますと、適切な教育的配慮を欠いている可能性があるため、指導の必要性が高いと判断され、調査を行った、このように私は理解いたしました。

 では、一体、具体的にどのような教育的配慮が欠けている可能性があり、どのような指導等を行う可能性があるから、このような調査を行ったのでしょうか。ただ漫然と、もしかしたら教育的配慮が欠けているかもしれない、とりあえず事実確認だけをしておこう、こういったスタンスでは、このような詳細な調査が行われるものではないと考えますが、御答弁をお願いいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今回の事案につきましては、前川氏が、直近まで、文部科学行政の事務方の最高責任者として、その発言が教育行政に関して正当な根拠なく受けとめられる特別な立場にあったことから、影響力が極めて大きく、仮にその発言内容が学習指導要領等と整合しない場合であっても、法令や学習指導要領の正しい解釈として受けとめられる可能性が高いこと。また、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけでなく、本人自身の違法行為をもって停職相当となった者であることから、特に心身の発達が途上状態にあり、必ずしも公正な判断を行う能力が十分に備わっていない中学生に対して授業を行うことについて適切な教育的配慮が求められること。さらに、本人の違法行為をもって停職相当となったことなど、各種報道により社会的に注目を集めている人物でもあり、一部にはこれを不適当と捉える向きもあると考えられることから、保護者の当該学校に対する信用に与える影響について十分な考慮が行われる必要があること。こういったことを考慮して、指導、助言、援助を行う必要があるかを判断するため、同法五十三条に基づき、授業の内容等についての事実確認を行ったものでございます。

日吉委員 その一方で、今回の調査の内容には、このメールに添付された調査項目を見ますと、交通費や謝金の支出があったのかどうかなど、教育的配慮とはかけ離れた質問も含まれています。また、肩書はと尋ねたのは、どのタイミングであったのか御教示ください、冒頭の校長による紹介の際か、司会による質疑応答の際かといった、明らかに受け取る側にとっては大きなお世話と言わざるを得ないような質問も含まれております。

 三月二十八日の大臣発言の際に、林大臣は、「今回の書面についてはやや誤解を招きかねない面もあったと考えられる」や、「事実確認を行う際には表現ぶり等について十分に留意する必要がある」とおっしゃっておりましたが、これは、やや誤解どころか、教育基本法第十六条にある不当な支配と認識されかねない内容であり、また、表現ぶりの問題ではなく、明らかに必要外の過剰な調査であったと言わざるを得ない、このように考えます。この大臣発言の訂正をお考えにはなりませんでしょうか。

林国務大臣 この間、大臣発言というか御説明をいたしたところでございまして、この件が会見等、また国会等でいろいろお問合せがあってからずっとそういう言い方をしてきておりますので、そういう認識で今もおります。

日吉委員 文部科学省に限らず、役所からの調査、こういったものは受ける側にとっては大変大きなプレッシャーになります。調査が不要であるにもかかわらず調査対象とする一方で、調査が必要にもかかわらず逆に調査対象としない、こういった調査先を恣意的に決定するようなことがあってはなりません。今回の事案は、やや誤解では済まされない、文部科学省の行き過ぎた対応である、このように考えます。今後の全国の学校現場において非常に大きな影響を及ぼすほどの重要な事態でございます。

 もう一度お伺いいたします。やや誤解、この言葉を撤回してもらえませんでしょうか。

林国務大臣 この今回の調査でございますが、先ほど来局長から答弁をしておりますように、法令に基づき行った調査でございます。調査における質問事項、質問内容については、あくまでも事実関係について内容を確認したものでございまして、教育現場に不当に介入するものではない、こういうふうに考えておりますけれども、書面全般の表現ぶりとしてもう少し留意する必要があったことから、やや誤解を招きかねない面もあった、こういうふうに申し上げたところでございます。

日吉委員 大変残念な御答弁でございました。決してやや誤解ではなく、極めて大きなプレッシャー、行き過ぎた調査だ、このように考えます。音声データまで提出を求めたり、こういった過度の調査における実態は、文部科学省の姿勢を問われる重大問題であり、国民の皆様は非常に注目をしているところでございます。

 今、文部科学省に関するいろいろな問題がございます。この今回の前川前事務次官の講演に対する調査始め、安倍首相の友人が理事長を務める学校法人加計学園において獣医学部の新設認可、これについての不透明な状況、そして、スーパーコンピューターの開発会社に対して文部科学省が所管する科学技術振興機構からの六十億円余りの融資、この手続、こういったものの不透明さ、こういったさまざまな問題が今、文部科学省を取り巻いております。

 こういった中におきまして、安倍内閣に対する不信感、こういったものが国民の中に渦巻いていると思いますが、安倍内閣の一員としまして、内閣支持率の低下について林大臣はどのようにお考えになっているか、お話をお聞かせください。

林国務大臣 内閣支持率の低下に関しまして、今お話のあったいろいろな事案、どういう影響がそれぞれあるかということは一概に申し上げることはできないとは思いますけれども、現政権に対して国民の皆様から厳しい目が向けられている結果である、こういうふうに認識をしております。

 文科省としては、これまでの組織的な再就職等規制違反や国家戦略特区における獣医学部新設に係る一連の対応等を通じて低下をいたしました文部科学行政への国民の信頼に関しまして、人づくりを始めとした諸課題の解決に向けて一つ一つ着実に取り組み、成果を上げることを通じて、その信頼回復に努めてまいりたいと考えております。

日吉委員 もう一度大臣にお伺いしたいのですが、今回の前川前事務次官の講演につきまして、実際、この話、いつの時点でお知りになって、そのときに率直にどういう感想を持たれたのか、お伺いできますでしょうか。

林国務大臣 三月の、先ほど局長から説明があったように、事後的に報告があったところでございますので、その時点で、先ほど来申し上げておるような、表現ぶり等についてやや誤解を招きかねないところがあったのではないか、そういうことがないようにという注意をいたしました。

 それからもう一つは、与党の先生方からのいろいろなコメントといいますか、こういうこともあったということもありますので、先ほど来局長が答弁しておりますように、法令上、規則上、これは局でやるということには、先ほど委員とのやりとりで確認していただいたとおりでございますけれども、ホウレンソウ、別に法令にそう書いてあるからしてはいけないということはないわけでございますので、報告、連絡、相談という意味で事前のそういうものがあってもよかったのではないか、この二点について注意をしたところでございます。

日吉委員 そもそものところに少し戻らせていただきたいと思うんですけれども、今回のこの調査の経緯、新聞報道があったというところからスタートしておりますけれども、その報道、この情報というのは、赤池議員、池田議員がこういったことを文部科学省の方に問合せをした、こういった経緯がございます。実際に、こういった議員が行政に深く介入する、こういった重大な問題、これがこの前川氏の講演における本質的な問題だと考えております。

 この問題、本当に重要な問題と思います。やや誤解、こういったことではなく、不当な支配、こういったものに該当するのではないか、このような重大な問題と考えます。そのため、この両議員を参考人として迎えて、徹底的に内容を究明していきたいと思いますが、これについてお願いを申し上げたいと思います。

冨岡委員長 理事会にて検討させていただきます。

日吉委員 もう一度林大臣にお伺いしたいと思います。

 この問題、本当に、やや誤解を生じるような、この程度の話なのか。大臣がそういった認識でありますと、やはり文部科学行政に対する国民の不信というのは更に深まると思います。

 もう一度お伺いしたいと思います。やや誤解、この表現を訂正していただくおつもりはないか、お願いをいたします。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、この調査自体は法令にのっとって行われたものということでございますが、やはり表現ぶり等についてはやや誤解を招きかねない部分があったという注意をしたところでございますので、そういう認識を今でも持っております。

日吉委員 非常に残念な御答弁なんですけれども、本当に林大臣、これ、やや誤解のレベルだと思われますか。

 確認したこの質問票なんですけれども、事細かに、一つ一つの質問について、具体的に詳細にお答えください、御教示ください、このように記載がされております。文面は丁寧なんですけれども、それの受ける受け手の感想といいますか思いというのは非常に大きなプレッシャーを感じます。本当に悪意に満ちているかのような、こういう文言であります。これ、本当に誤解とか書きぶりの問題なのでしょうか。大臣、改めてお願いをいたします。

林国務大臣 処分を受けた方であるという部分につきまして、本人の違法行為に基づいて処分を受けているということは、文科省としての処分でございます。

 一方で、バー等に行かれていた云々の部分につきましては、報道によるもの、こういうことでございますので、そういう報道によるものについての部分について、やはり誤解を招きかねない部分があったのではないかというふうに思っておりまして、全体の中でそういう部分があるということでございますので、事実確認をした部分が大宗であった、こういうふうには思っておりますけれども、全体的にやはりやや誤解を招きかねない部分があったという注意をしたところでございます。

日吉委員 停職相当とか報道、こういった誤解ではなくて文章自体の、これについて本当に誤解の程度、やや誤解で済むのか、こういった問題ではなく、明らかに行き過ぎた調査、教育への不当な介入、こういったことが本質的に問題になっていると思っております。

 先ほどお願いいたしましたが、今後もまたこの問題、追及してまいりたいと思います。

 時間が参りましたので、私の質問は終わりとさせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 おはようございます。立憲民主党・市民クラブの山本和嘉子でございます。

 早速、質問に入らせていただきます。

 卒業シーズンが終わりまして、いよいよ来月から新年度が始まります。新入生、新社会人は、これからの新しい人生、期待を胸にされているかと思います。特に、受験勉強を終えた高校生の方々は、これから始まる大学生活、勉学だけでなくて、さまざまな活動、将来つきたい職業はと、もう希望でいっぱいの毎日なのかなと思っております。

 そんな中ではありますけれども、去年、ことしに入りまして、大学の入試問題の出題ミスが数多く見受けられます。

 お手元に資料を配付させていただいておりますけれども、ミスの件数を調べさせていただきました結果、二〇一七年、昨年は三十一件、ことしは三十五件、もう既に三十五件もの数が上がっているということでございます。

 主なもので申しますと、昨年二月の大阪大学の入試問題、たくさん報道されておりましたけれども、ことしの一月になって、一年たって発覚したということでございます。三十名もの学生が追加合格となりまして、物理の問題でしたけれども、正解が複数あったということで、外部からの指摘で発覚したとのことでした。そのほか、設問の条件が不十分で解答できないという理由、問題文の不正確、漢字の記載ミス、正解がない問題などなど、ほぼ全員正解で処理をされているということでございます。

 全員正解となりますと、必死に受験勉強してきた受験生にとりまして、入学試験問題を一生懸命解いた努力が無駄になってしまうのではないかなと思います。

 林大臣は、一月二十九日の衆議院の予算委員会の御答弁で、文科省のホームページに大学を対象とした出題ミス相談窓口を掲載したとおっしゃっておられました。また、二月一日付で、防止と早期発見のコメントというのも出されています。相談窓口を開設された後、大学からの御相談等はあったかどうか、あった場合、どんな内容だったかもお教えいただければと思います。よろしくお願いします。

林国務大臣 文部科学省におきましては、大阪大学や京都大学における入試ミスを重く受けとめまして、国公私立の全ての大学に対して、改めて、ミスの防止及び外部から指摘のあった場合を含めた早期発見及び適切な対応を促す通知を発出をするとともに、現在実施中であります今年度の入学者選抜において入試ミスが起こらないよう全力を尽くしていただきたい、今触れていただきましたが、そういうコメントも公表いたしたところでございます。

 入試問題のミスへの早期発見を促進する観点から、ことしの二月一日より入試ミスに係る専用の窓口を設けたところ、これまでに四十件程度の御指摘が寄せられておりまして、各大学に対して対応を促しているところでございます。

 文科省としても、今後、大学関係者の御意見も伺いながら、入試ミスの防止や解答の開示のあり方に係る新たなルールをつくりまして、入試ミスの防止や早期発見、適切な対応に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 相談窓口を設けられたということでありますと、今後も文部科学省として一応チェック、監督などをする必要があると思います。今後もよろしくお願いしたいところなんですけれども、特に大阪大学の方では、追加合格者三十名のうち、ことしの春から十八名の学生が転入を希望されているとお聞きをしております。受験を終えて、一生懸命勉強してきた学生が、大学の入試問題自体に間違いがあったにもかかわらず不合格であった、そして一年後に合格ですというのは、ちょっとどうなのかなというのはあったんですが、これは、ミスがあってからの大学の対応にも問題があったのかなとは思っております。

 今大臣もおっしゃいましたけれども、ミス防止のためのルールづくりを進めるということでございますけれども、大学ごとの解決の努力が重々必要であるということはわかっておりますが、今後、入試のための問題づくりをする教員の人材育成など、改善を進めることが大切なのかなとは思っております。

 文部省として、そういう人材育成などの観点からも、どういった御所見をお持ちか、ちょっとお聞かせいただければと思います。

義本政府参考人 お答えいたします。

 入試につきましては、基本的には大学において出題をし、中から作問する委員を定めてつくっておられるということでありますけれども、今回、大阪大学の件においても、その作問の先生方だけで対応したということで、全体としてのチェックができなかったということがございますので、大阪大学においては、例えばそれを全学的にサポートするための体制をつくったりとか、あるいは、サポートするためのアドバイザーなどを委嘱する形によって対応していこうということでございます。

 また、先生御指摘のとおり、作問については、いろいろな蓄積ですとかノウハウとか知見がございますので、それをしっかり共有いただくような対応ということについて学内でも議論されているところでございます。

 文科省としましては、各大学の関係者が集まるいろいろな協議の場がございますし、また、入試センターも入りまして、その中でのいろいろな情報の共有ですとか、あるいはそれを大学に周知するということを通じまして、人材育成についても意を用いてまいりたいと考えているところでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。ぜひそういったフォローアップなどを進めていただければと思います。ありがとうございます。

 受験生が、この大学に行きたいけれども入試問題に信頼が持てないとか、そういうことはやはりあってはならないことだと思いますし、一旦不合格だったけれども、いや、違って、また合格でしたという、ちょっとそういうことに翻弄されるようなことがないようにお願いしたいところでございます。

 引き続きまして、教員の働き方改革についても質問させていただきたいと思います。

 安倍内閣は、今国会は働き方国会ということで、裁量労働制のデータの問題など、さまざまな懸案がございましたけれども、法案審議がこれからも進められようとしております。

 働き方改革法案の高度プロフェッショナル制度の導入が議論になっております。今の日本の労働環境におけるこの高度プロフェッショナル制度では、労働時間の規制が緩和されて、かえって長時間労働に陥るのではと言われております。高度プロフェッショナル制度では、一定の年収以上という条件で、残業代が支払われることはありませんし、そもそも法定労働時間の設定というものがございません。成果を出せば、時間内におうちに帰れるということは、建前上はそういうふうに言われておりますけれども、いろんな業務が、膨大な業務があるということは明らかなことですので、結局は、長時間労働を招いてしまって、過労死、過労自死などを招いてしまっている、そういう御遺族の方とかの声もたくさんお聞きはしております。

 そこで、学校教員の労働実態を見ますと、給特法のもとにおいて、まさに高度プロフェッショナル制度を先取りしたような状況になっているのではないかなと思っております。例えば、もう皆さん御存じだと思いますが、給特法では、四%の調整額を支払うということで、残業代はゼロとなっておりますが、教員という仕事の性質上、自分の裁量で業務のやり方とか時間配分をある程度決められますが、最近では、もう部活動指導、生活指導や授業準備など、多くの業務を時間外に行わざるを得ないという状況でございまして、長時間労働から抜け出せないのが実態だと思います。

 労働基準法に定められている法定労働時間が実質的に勘案されないのが教員の実態であるのかなと思っておりますが、問題のある働き方の代表でもあります高度プロフェッショナル制度や裁量労働制というものが、ある意味、そういう制度の先駆け的であるのが給特法なのかなと思いますが、そのあたり、御所見いかがでいらっしゃいますでしょうか。

林国務大臣 給特法の規定によりまして、今先生からお話がありましたように、教師には時間外勤務手当を支給しないかわりに教職調整額を支給するというふうにされておりますが、教師を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、いわゆる超勤四項目に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られておるわけでございます。また、時間外勤務を命じる場合であっても、健康及び福祉を害さないよう考慮しなければならないということも示されておるところでございますので、超勤四項目に該当しない業務については、時間外勤務を命ずることはできないということになっておるわけですが、正規の勤務時間を超えて、自主的、自発的な判断によって勤務を行っている場合があるというふうに承知をしておりまして、昨年四月に公表させていただきましたけれども、この教員勤務実態調査の速報値では、教師の長時間勤務の実態が明らかになっているところでございます。

 教師の働き方改革というのは大変大事な課題でございますので、引き続き、教師の業務の適正化を行っていくとともに、給特法のあり方も含めて、教職員の勤務時間等に関する制度のあり方について、現在、中央教育審議会で御審議をいただいているところでございますので、その議論を踏まえつつ、慎重に検討してまいりたいと思っております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 給特法のあり方を検討されるということでございますけれども、教職調整額における給料月額の四%というのは、一九六六年に文部省が実施した調査に基づいてのものでございます。一週間の時間外労働時間が一時間四十八分であった時代の値からの算出であるというふうにもお聞きをしておりますが、現在では小学校で一週間の時間外勤務は十八時間四十分、中学校では二十四時間三十三分というのが時間外労働時間の実態であることから、もはや、もうその四%という教職調整額というのは現在の時間外労働との隔たりがあるということでございます。

 対価としては不十分であると思うのですが、見直しを検討されているとのことですが、その見直しの方向性といいますか、ちょっと具体的に教えていただければと思います。その見直しの時期でありますとか、もう給特法をなくそうという議論までもしお考えなのであれば、ちょっとそのあたりも具体的に教えていただければと思います。よろしくお願いします。

高橋政府参考人 先ほど大臣から答弁申し上げましたように、現在、中教審で御議論いただいております。

 昨年十二月に取りまとめました中教審の中間まとめにおきましては、「給特法の在り方も含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方については、引き続き議論を進めていく必要がある。」とされております。

 現在、まだ審議中でございますので、具体的な見直しの方向性や検討スケジュールというのはまだ明らかなものにはなっておりませんが、これまでの議論を踏まえつつ慎重に検討してまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 具体的に進めていただけるように、今後も継続的にお願いしたいところでございます。

 引き続きまして、本年二月九日に文部科学省事務次官より、「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について」というちょっと長いタイトルの通知が出されております。

 内容は、「教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性を高め、児童生徒に対して効果的な教育活動を行うことができるよう、」というふうにあります。方向性や内容は、教員の働き方改革に対しまして取組を徹底するものでございます。より具体的な内容だと言えます。

 そこで、お伺いいたしますけれども、こういう通知に関しまして、各都道府県の教育委員会で、こういう徹底をされたことに対する取組状況を、もしわかっておられるようであれば教えていただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 学校における働き方改革については、文科省において、昨年十二月に緊急対策を取りまとめ、学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底とあわせて、先ほど御指摘いただきましたように、本年二月九日に各教育委員会へ通知を発出いたしました。この通知では、教育委員会において、学校や教師の業務の役割分担を着実に実行するため、学校や地域の実情に応じて、順次適切に必要な取組を進めるよう促しているところでございます。

 文科省といたしましては、各教育委員会における学校の業務改善のための取組状況について定期的にフォローアップをすることといたしております。今般の通知を踏まえた取組について進捗状況を把握し、業務改善の優良事例を収集、周知するなど、必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 例えば、京都府の教育委員会では、教職員の働き方改革実行計画を三月六日に策定して取り組んでおられます。中身としては、具体的な方針を数字化して目標を定めたものでありまして、例えば、府立学校にあっては、さらなる業務改善を実施し、三年間で教員の時間外勤務を二〇%縮減するという内容になっていたりとか、具体的に結構、この項目はいついつ幾日までにどれぐらいやるか、進捗状況を全てチェックできるような内容になっているんですけれども、各都道府県教育委員会でこういった取組がきちんと行われているかどうか、また取組の進捗状況などのチェック体制は、教育委員会のそれぞれに自己完結させるというかお任せをされるのか、それとも本省のチェックをきっちりしていかれるのか、そのあたりもちょっと教えていただければと思いますが。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今御紹介いただきました京都府教育委員会の例にもありますように、昨年末の緊急対策あるいはその前からの中教審の審議なども踏まえて、既に各教育委員会等においてもさまざまな動きが出てきております。

 一義的には、これはまずは教育委員会の責任でしっかりとやっていただくことでございますけれども、私どもといたしましても、業務改善の各教育委員会の取組状況については定期的にフォローアップをする、そして、優良事例などはこちらとしても収集して、そういったものを各都道府県にまた示していく、そういったような形で文科省としても各都道府県の取組が促進されるようにしっかりと支援をしていきたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 御支援いただけるということでございます。本省によって御支援、チェック、フォローアップをしていただけるということであれば、より一層全国的に改革が進んで、見直し状況の共有化が図れるのではないかなと思いますので、どうか引き続きお願いしたいところでございます。

 引き続きまして、教員の、ちょっと最近よく言われています過度なストレスについて御質問を進めさせていただきたいと思います。

 昨年三月に、福井県池田町の中学校で二年生の男子生徒がみずから命を絶つという事件がありまして、この件に関しまして、御冥福をお祈りしたいところでございますが、この事件は、担任と副担任の行き過ぎた生徒に対する叱責が生徒を追い詰めて死に追いやったという痛ましい事件でございました。亡くなった生徒は、宿題提出のおくれなどを理由に、担任や副担任から繰り返し叱責を受けていたということでございます。それを苦に自死に至ったようでございます。

 福井県といえば、学力日本一と言われておりまして、文部科学省による全国学力・学習状況調査、いわゆる学力テストでも好成績をおさめている県でございます。教員に対しまして日本一の維持がひそかなプレッシャーにもなっている、このことが教員にストレスを与えていたということも言われております。ちょっと極端に言いますと、生徒を叱ることで多忙のストレスを発散していたのではないかということも言われております。

 昨年十二月、福井県議会で、教育行政の根本的見直しを求める意見書というものが取りまとめられまして、意見書の趣旨説明で、尋常でない学校現場の多忙化の実態であり、教員のストレスが限界に達し、結局はそのしわ寄せが子供に行く、最長月二百時間にも及ぶ超過勤務、過度なストレスによって、厳しい生徒指導の末、生徒を死に追いやったのではないかという大変厳しい見解を述べておられます。

 この件につきましては、昨年十月、既に文部科学省からも再発防止に向けた取組を求めるという通知が出されておりますけれども、生徒指導上の留意だけでなくて、教員のストレスの問題が生徒に大きな影響を及ぼし得る事例であるのではないかなと思っております。

 この件に関しまして、林大臣の御見解、いかがでいらっしゃいますでしょうか。

林国務大臣 福井県の池田中学校の中学生の自死事案については、町の方で第三者調査委員会が調査をされまして、そしてここが取りまとめた報告書においては、教員のストレスについての直接の指摘というのはないわけでございますが、一方で、教員は報告や課題、部活動で多忙で余裕がないこと、小規模校における教員負担の問題があること、こういうところが指摘をされておりまして、教員の負担をできるだけ軽減するようにこの報告書でも求めているところでございます。

 学校教育というのは、教職員と児童生徒の人格的な触れ合いを通じて行われているものでございますので、やはり、教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるようにするためにも教員のメンタルヘルス対策というのが重要だと考えておりまして、我々としても必要な取組を推進してまいりたいと思っております。

山本(和)委員 今大臣がおっしゃいました人格的触れ合いということは、本当に最も重要なことであると思います。

 おっしゃいましたメンタルケアに関してなんですけれども、教員のメンタルヘルスにつきまして、平成二十五年度に最終まとめというものが発表されております。

 最終まとめの中で教育職員の精神疾患ということがありまして、その原因としては、今もおっしゃいました過度なストレスが大きな原因だと言われております。

 最終まとめの中でさまざまな対策が盛り込まれておりますが、例えば校長先生のリーダーシップであったり相談体制の整備や充実等々挙げられておりますが、精神疾患によって学校を休職する教員が約五千人今おられるということがわかりました。お手元に資料を配付しておりますけれども、教職員の精神的病気休職者の推移は、平成二十八年までで、若干減少傾向ではありますけれども、退職者もいることも考えたらほぼ横ばいで、変わらない数字で推移をしている。精神疾患によって五千人前後も休職者がいること自体がちょっと問題なのではないかなと思ってしまいます。

 教育のメンタルケアを推し進める何か取組などいかがなものかなと思いますが、どうでしょう。

林国務大臣 今委員からお示しいただきましたように、教育職員の精神疾患による病気休職者数は年間五千人前後で、少しずつ今減っているということではございますけれども、やはり、五千人という水準があるということでございますので、メンタルヘルス対策は喫緊の課題であるというふうに考えております。

 このため、文部科学省として、これまで、まず、教員本人のセルフケアの促進、それから管理職によるケアなど予防的取組を推進すること、それから、ストレスチェック等の取組を推進すること、試し出勤などの復職支援の推進等々について一層積極的に取り組むように各教育委員会等に対して通知をしておりますほか、都道府県教育委員会等の担当職員を集めた研修会においてもメンタルヘルス対策の重要性を周知をしておるところでございます。

 こうした取組に加えまして、教員のメンタルヘルス不調の要因の一つとしてやはり勤務が長時間に及んでいる状況もあると考えられることから、そういう意味でも、このメンタルヘルス対策の観点からも学校における働き方改革の取組を進めてまいらなければならないと思っております。

山本(和)委員 大臣、ありがとうございました。

 具体的にいろいろと、セルフケア、予防への取組など、研修会の開催等々いろいろとお考えいただいているということで、ありがたいことだとは思いますが、やはり、この五千人の休職者を減らすことで、学校現場に復帰していただいて、人員不足を解消していくことにつながってほしいなというふうには思います。

 教員の働き方改革は授業の質にも直結する問題でございますので、よりよい教育環境によって学力向上につながって、今の福井の事件など、最悪の事態を防ぐことができるのかなというふうにも思っております。

 働き方改革の本来の目的というのは、教員お一人お一人が、人生を充実させて、趣味や自己研さんの時間を持って人間性を広げていくことで、それが豊かな教育につながっていくことなのかなというふうにも思っております。どうか引き続きお願いしたいところでございます。

 ちょっと時間がなくなってまいりました。もう一問だけちょっとお聞きしたい分がありますので、済みません。

 新学習指導要領に向けての働き方改革のための環境整備についてなんですけれども、英語の専科教員の充実という項目があります。これは、来年度から小学生に英語の授業が追加されるものですが、今年度は年間千人というふうになっております。

 小学校の数は全国でおよそ二万校ございまして、英語学習の対象となる三年生から六年生の学級数はおよそ十六万学級と言われております。文科省が目標とする四千人の英語専科教員が実現したとしても、配置は五校に一人の割合でしかありません。三十二年度、各学級で週一こま、年間三十五こまの英語授業を行うには大変なことなのではないかなと思います。

 そうすると、結局、相当数のこま数について担任の先生方が、既存の先生が対応しないといけないのかなと思いますが、そうなるとまた負担がふえるおそれがあると思いますが、このことについての御見解はいかがでいらっしゃいますでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十二年度から全面実施される新学習指導要領において、外国語教育の充実に伴い、小学校三年生から六年生において標準授業時数が年間三十五こま増加することとなっております。

 一方、現在の小学校教師の勤務実態を踏まえると、今回の授業時数の増が教師の勤務時間の増につながらないよう、指導体制の効果的な強化が必要であります。

 具体的には、今後の少子化による学級数の減少や、各学校における働き方改革を考慮した適切な授業時数の設定等を踏まえると、平成三十二年度までの三年間で四千人の専科教員の配置が必要と見込んでおります。

 平成三十年度予算におきましては、移行期間中であること等を勘案し、その四分の一に当たる千人の改善を計上したとおりであり、小学校学習指導要領の全面実施に向けて、引き続き必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 英語教育の推進ということは、グローバル化という観点からも必須の取組だと考えております。

 よりよい、きめ細かな指導が行き届くためにも、やはり正規の先生を確保することも優先する課題だと思います。英語教育だけでなく、学習指導要領に沿った教育の質を確保しながら、働き方改革を進めていっていただきたいと思いますし、三十年度予算にあります教員の増員にとどまることなく、引き続き教員増についても御検討いただければと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・市民クラブの櫻井周です。

 本日は、この質問におきまして黒板の使用を許可いただきまして、まことにありがとうございます。この黒板は後ほど使わせていただくといたしまして、早速最初の質問に入らせていただきます。

 まず一点目は、幼児教育の無償化についてお尋ねをいたします。

 この質問は、前回、十二月一日の委員会質疑でも取り上げさせていただきましたが、議論がかみ合わないところがございましたので、再度質問をさせていただくところです。

 一昨日の委員会におきまして、林大臣は、幼児教育無償化の意義を問われ、これに対しこのような答弁をされました。「幼児教育は、生涯にわたる人格の形成の基礎や、その後の義務教育、この基礎を培うものでございまして、全ての子供に質の高い幼児教育の機会を保障するということは大変重要なことである」、このような答弁をされています。

 そこで、大臣にお尋ねをいたします。

 全ての子供にと答弁されておりますので、これは幼稚園の入園希望者は全員入園できるようにする、こういう理解でよろしいでしょうか。

林国務大臣 希望する全ての子供に質の高い幼児教育を受ける機会を保障するということは、大変重要だと思っております。

櫻井委員 ありがとうございます。

 私も全ての子供たちに質の高い幼児教育を提供するべきだというふうに考えておりますので、大変心強く思っております。

 ただ、現状を見ますと、地域にもよりますけれども、いわゆる四歳、五歳の二年保育の幼稚園がまだあります。そうしますと、そういった地域におきましては、三年保育、三歳児から入れる幼稚園というところの定員に限りがございますので、三歳児については抽せんというふうになっている。幼稚園に入園したいが入園できない、そうした児童が現在もいるところでございます。

 具体的に申し上げますと、幼稚園、認定こども園、保育所の在籍率のこの合計、三歳児では八八%、四歳児で九七%というふうになっていることから、大体九%程度の児童が二年保育ということになっている可能性がございます。

 国が、幼児教育は重要だ、三年間は無償にするという政策を示すのであれば、多くの御家庭で、二年保育ではなく、やはり三年保育に行きたいなというふうに希望されるのではなかろうかというふうに考えるところです。

 こういうことを考えますと、じゃ、どうやって三年保育をみんな受けられるようにするか、これが重要になってくるわけですが、保育所や小学校、中学校の場合には、市町村の中で完結する話でございます。市域を越えて、越境して通学、通園するということは余りないわけですけれども、ところが、幼稚園の場合、特に私立幼稚園は通園バスがあちこち走り回っております。市の境を越えて通園するということが少なくございません。

 希望する全ての子供が入園できるだけの定員をどうやって確保するのかということが重要なんですが、この点、大臣、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 幼稚園の修業年限についての法令上の規定というのはないわけでございますが、三年保育については、現在、私立幼稚園ではほぼ全ての園で実施をされているというふうに承知をしております。また、全国の国公立の幼稚園、こども園の園長会というのがあるんですが、そこの調査によりますと、公立幼稚園においては三年保育を五四%が実施をしておるということで、十年で一六ポイントほど増加をしてきておるところでございます。

 文科省においては、公立及び私立幼稚園等の施設整備補助、それから教員の人材確保を支援する取組を進めておるところでございますので、新しい経済政策パッケージというのをつくって、幼児教育の無償化をする、こういうことになってまいりましたので、それに合わせてこうした取組をしっかりと進めていきたいと思っております。

櫻井委員 一方で、私立幼稚園では三年保育が実現しているけれども、公立幼稚園では二年保育のところが半数弱残っているという御答弁でございました。

 この裏の原因として一つ考えられるのが、公立も三年保育をされると私立幼稚園の方の経営が圧迫されるから、なるべく公立では二年にしておいてほしい、そのような裏のような動きもないわけではないというふうに思っております。公立も三年を全部やるということに対して、地域の中では反対する声も、これは私立幼稚園の経営のことを考えて反対する声もないわけではないところなんですね。

 そうした中で、どうやって三年保育を実現していくのか。つまり、定員が大幅にふえ過ぎても、定員の方が多過ぎる、幼稚園が余ってしまうということになっても、それはそれで地域の教育の質の低下を招く、過当競争から質の低下を招く可能性があるわけでございまして、多過ぎず少な過ぎずというところで、ちょうどぴったりのところを目指さなきゃいけないというところが難しいところだと思うんです。

 この定員の管理をどのようにしていくのか、しかも市域を越えて移動するという場合がある中でどうやって管理をしていくのか、この点について大臣のお考えをお聞かせください。

林国務大臣 子ども・子育て支援新制度におきましては、家庭や地域におけるさまざまなニーズや実情を踏まえ、必要量を見込んだ上で、幼児教育、保育の提供体制を確保していくというふうにされております。

 事実上、今委員がおっしゃったように、この地区の人はこの幼稚園へ行けというふうに公立の小学校みたいに決まっていれば、その需要等の見通し、必要量の見通しというのが非常にシンプルなんでしょうけれども、しかし、そこは、住んでいらっしゃる方々、それからその世帯世帯にどういうお子さんがいらっしゃるかということもある程度把握はできるわけでございますので、地域地域におかれてしっかりとその必要量を先ほど申し上げましたように見込んで、今委員がおっしゃったように、つくり過ぎて余っちゃうということになれば、例えば、先ほど申し上げましたように、いろいろな公費も入っているわけでございますので、入っている部分があるわけでございますので、そこはしっかりと、地域地域で、提供体制を確保する上で留意をしながらやっていただきたいと思っておるところでございます。

櫻井委員 そこで、定員の管理をどこでするのかというところです。文部科学省で全国全ての幼稚園を管理するのは到底無理でございます。これは、やはり基礎自治体で一義的には管理をしていくことになる、多過ぎず少な過ぎずということになろうかと思います。

 一方で、先ほど来申し上げているように市域を越えての移動もあるという中で、それでも、これは基礎自治体、市町村で一義的には定員の見込みをしっかりと管理をしていくというような理解でよろしいんでしょうか。どこがその管理の責任者になるのか、そこを教えていただけますでしょうか。

林国務大臣 先生おっしゃるように、一義的には市町村ということになるわけでございますが、一方で、子ども・子育て支援法の中には都道府県についての記述がございまして、「都道府県は、市町村が行う子ども・子育て支援給付及び地域子ども・子育て支援事業が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言及び適切な援助を行うとともに、子ども・子育て支援のうち、特に専門性の高い施策及び各市町村の区域を超えた広域的な対応が必要な施策を講じなければならない。」こういうふうになっておりますので、そういうことの中で、市町村が一義的に行うわけですが、必要な場合には、ここに書かれているように、都道府県の役割もあるというふうに承知をしております。

櫻井委員 これは今すぐお答えというのは難しいかもしれませんが、結局、都道府県の役割もある、市町村の役割もあるというふうになると、どちらが最終責任を負うのかというところが曖昧になってくるわけです。まず、どっちが一義的な主たる責任を持つのかというところをしっかりと決めていただきたいと思うんですけれども、そういったことも含めて、大臣、今後どのようなスケジュールで決めていくか、教えていただけますでしょうか。

林国務大臣 済みません、先ほど申し上げたつもりでしたが、子ども・子育て支援新制度においては、市町村が、幼児教育、保育の利用状況や利用に関する保護者の意向等を把握して、必要となる教育、保育の必要量の見込みと、実施しようとする教育、保育の提供体制の確保について計画を定める、こういうふうになっております。

櫻井委員 わかりました。幼児教育の充実を図っていきたいという大臣の思い、私も同じでございますので、ぜひ、全ての子供たちによりよい幼児教育を提供できるように、ともに頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、黒板を使いまして質問させていただきます。学校教育における色弱の児童生徒に対する配慮について質問させていただきます。

 色弱の頻度は、およそ男子で五%、女子で〇・二%というふうに言われております。色覚異常に対しては、配慮が十分でない場合や誤った理解などが多少見受けられているところでございます。

 そこで、兵庫県の伊丹市議会の山薗有理議員と千葉県松戸市の関根ジロー議員を中心といたしました超党派の地方議員と、それからNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構などが協力して、色弱に関する問題、具体的には、消防士の採用の問題や色覚チョークの問題などに取り組んでいるところです。

 この色覚チョークというのは、このような、従来のチョークはこちらでございますが、色覚チョークは色弱にも配慮したチョークになっております。色弱でも見分けやすいような、ちょっと蛍光の入った色になっております。明る目の配色になっております。この色覚チョークというものは、色弱でない児童生徒にも見やすい色になっているということで、これは大変有意義だと思っております。

 お値段の方なんですが、気になるコストの方ですが、工場出荷段階では同じ値段で出している。ただ、流通段階で、色覚チョークの方が流通量が少ないものですから、多少上乗せがあるというふうには聞いておりますけれども、コストはほぼ同じ。流通量がふえていけば、多分値段も同じになっていくのではないかというふうに思うんです。ということであれば、見やすい色覚チョークをどんどん導入していったらいいんじゃないのかなというのが私の率直な意見でございます。

 色覚チョークの導入状況は、地元の兵庫県で調べましたところ、約一割程度でございます。色覚チョークを導入した学校においては、大変見やすくなったということで好評でございます。

 ただ、一割程度にとどまっている、導入が進まない理由としまして、一つには、色覚に関する指導の資料というのがありまして、そこでは、色覚に関する指導の資料では、白と黄色のチョークを主体的に使います、このように書かれている。さらに、その下に「黒板上に赤、緑、青、茶色などの暗い色のチョークを使用すると、見えにくいため、避けるようにします。」というふうに書いてあります。学校現場では、白と黄色しか使えないんだったら色覚チョークを使う必要性は余りないんじゃないか、こんなふうにもなってなかなか普及が進まないというところもあろうかと思います。

 そこで、例えば、ただし書きで、色覚に配慮したチョークについてはこの限りではないといったような注釈をつけると導入も進んでいくのではないかと考えるんですが、この点、大臣、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 御指摘の色覚に関する指導の資料は、教職員が色覚異常について正しく理解し、学習、進路のそれぞれにおいて適切な指導を行う必要があると考えて、学校での指導のあり方を示す教職員向けの資料として、文科省が平成十四年に作成をしたものでございます。

 同資料における「白と黄のチョークを主体に使います。」という記載は、白と黄のチョーク以外のチョークの使用自体を否定するというものではなくて、黒板の文字等が児童生徒にとって識別しやすいものとなる配色や工夫の具体例を示したものである、こういうふうに考えております。

櫻井委員 大臣がおっしゃられたことについては、実はもう既に質問主意書で質問させていただいて、その御答弁の中においては、色覚チョークを排除するものではないということははっきり述べていただいております。

 ただ、文字にされてこうした資料の中で白と黄色のチョークを主体的に使いますというふうに書かれると、やはり学校現場としては、それ以外の色は使いづらいなというふうになってしまう。ほかの色を使うと、それこそ文部科学省から指導が入るのではないか、そんなふうに恐れてしまうのかもしれません。

 ですので、多少追加的な情報を添加していただくといいのではないかなというふうに思うので、ぜひ今後改定する際には御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 恐らくは、先ほど示していただいたような新しいチョーク、そういうものがまだ一般的になっていないときの資料ということだったと思いますが、先ほど、そういう一例を示して、ほかはだめだという意味ではないとここで申し上げておりますので、現時点でこの資料を見直す必要がないということはこの間答弁書でお伝えしたところでございますが、今後、そういうものが、これ以外にもいろんなやり方が出てくる等々、状況の変化に応じて、将来において、この資料の改定時等々において、またそのときにしっかりと考えていかなければならない課題だと思っております。

櫻井委員 ありがとうございます。ぜひ次回の改定の際には御検討いただきたいと思います。

 また、導入が進んでいないもう一つの理由として、色覚チョークというものを知らないという学校現場の方も結構いた。兵庫県内でアンケート調査をこの地方議員、超党派のグループがしたわけですけれども、その際に、色覚チョークというのがあるんだとこのアンケート調査で知った、ぜひ試してみたいということで導入したというような事例もございます。

 また、学校現場では、チョークに限らず、さまざまな形で色が使われております。もちろん教科書もそうですし、電子黒板、それからホワイトボード、それ以外の掲示物、いろいろなものがございます。こうしたところにおいても、色弱に対する配慮というのは必要になってこようかと思います。

 こうしたことを含めまして、学校現場、教員の方々へ、色弱への配慮の仕方について、やはり理解を更に深めていただく必要があろうかと思いますが、こうした研修等が必要だと私は思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 このカラーユニバーサルデザインという概念でございますが、人の色覚の多様性に配慮して、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品等を提供する、こういう考え方であると思っておりまして、学校においても児童生徒の色覚の多様性に配慮するということは重要であると考えております。

 学校においてどういうチョーク、電子黒板、教科書等を使用するかは、文字等の識別のしやすさ等の観点にも配慮しながら、先ほど申し上げたことでございますが、各学校、教育委員会において適切に判断していただければというふうに思っておるところでございます。

櫻井委員 もう一歩進めて、こうした知らなかったというような事例も我々の調査の中で明らかになっていますので、ぜひとも研修、啓発活動も進めていただきたいなというふうに改めて要望させていただきます。

 次に、三点目の質問に移らせていただきます。

 瑞穂の国記念小学院、いわゆる森友学園ですけれども、設置認可申請に係る経緯について質問をさせていただきます。

 この森友学園に関しましては、財務省におきまして決裁文書の改ざん問題ということがありました。昨年の通常国会ではないというふうに言われていた情報等が多数見つかるというようなことになってきております。

 そこで、お尋ねをいたします。きょうは理財局からも来ていただいているので、質問させていただきます。

 近畿財務局が作成した大阪府庁と近畿財務局の面談に関する情報、これは残っていないんでしょうか。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 本件森友学園につきましては、先般、私ども理財局におきまして、同学園に対する国有地売却等に関する複数の決裁文書を、決裁後に書き換えていたことが明らかとなりました。これはあってはならないことであり、当委員会を始め、大切な国会での御審議にも多大な御迷惑をおかけいたしましたこと、まずもって深くおわび申し上げます。

 その上で、お尋ねの点でございますが、委員お尋ねの大阪府教育庁と近畿財務局の間での打合せにつきまして、これは、今回発見いたしました書換え前の書類の中に、二十五年の九月から二十六年の二月にかけて三回ほどのコンタクトがあったということが記載されておりまして、その中で、その照会の要点などが記載されております。

 しかしながら、その詳細に関しますメモや報告書につきましては、仮に作成されていたとしても、行政文書管理規則上、文書の保存期間が一年未満となっていることから、これまでの国会審議におきましては記録等は残っていない旨お答え申し上げておりましたし、また、現時点においてもそのような文書は確認できておりません。

 しかしながら、今般の書換えの問題を受けて、財務省の文書管理について疑念を抱かれる状況にありますことは十分に認識しております。

 現在、決裁文書の書換えについて、経緯や目的等についての調査を行っているほか、進行中の捜査にも全面的に協力しているところでございまして、まずは、この決裁文書の書換えの問題に対して全力で取り組ませていただきたいのですが、この書換えに関する一連の対応が一段落ついたところで、御指摘の点につきましても速やかに確認を行ってまいりたいと存じております。

櫻井委員 先ほど申し上げた大阪府教育庁と近畿財務局の打合せというか面談でございますが、大阪府教育庁の側で記録をつくっていたり、ないしは担当職員の記憶等をたどって発表されているところでは、近畿財務局は大阪府教育庁を訪問してきて、いろいろな議論の中で、審議会の結論を出す時期など、ある程度事務局でコントロールすることはできるのではないかというような趣旨の発言をしたというふうに、これは大阪府教育庁側の言い分でございますが、こうしたことも見つかっております。ただ、これは大阪府教育庁の言い分であって、近畿財務局は、もしかしたら別な言い分といいますか捉え方、ないしは、そんなつもりで言ったわけではない。いろいろな見方があろうかと思います。

 こうしたことが起きないようにするためにも、普通、役所のみならず、民間企業でもどこでも、あらゆる組織というものは、情報を共有しておく、また、記憶にでなく記録にしっかりととどめて後々問題が起きないようにしていくためにも、こうした面談記録のようなものはつくっていくはずでございます。当然、財務省においても、面談記録をきちっとふだん日常の業務の中でつくっているんですよね。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論といたしまして、重要な面談があれば面談記録は作成するということが一般の行政の振る舞いであると承知しておりますが、一方で、こういう記録というものは、一つの行政行為を完結させていく中で、決裁文書の中にその要点を取り込んで収れんしていくということもまた一般的でございまして、そのようにポイントを別のより上位の文書に書き換えた場合には、そうした文書の保存をもうやめてしまうということも生ずるところでございます。

 なお、先ほど御指摘の、大阪府側でこういうふうに言われたという認識の点でございますが、先ほど紹介いたしました今回発見されました書換え前の文書の中には、当方、近畿財務局の方から大阪府に対してそのような発言をしたという記録はこの中には入っていないところでございます。

櫻井委員 いずれにしましても、こうした経緯は、両方の言い分があって初めて真実というのが明らかになっていくわけでございますので、しっかりと記録を残していただきたいと思いますし、また、記録は残っているはずだと思います。また、この森友学園の問題については、分割払いであったので、決して、支払いが完了していない限り、事案が終了したと言えないわけですから、それは本来は残しておくべきものだったというふうに認識しております。そうしたことも含めて、文書管理のあり方をしっかりと見直していただきたいと思います。

 その上で、今度、文部科学省の方にお尋ねをいたします。

 先ほど申し上げたとおり、近畿財務局は大阪府庁に対して、審議会の結論を出す時期など、ある程度事務局でコントロールすることはできるのではないかといった趣旨の発言もあり、また、前の大阪府知事の橋下徹氏は、昨年三月十三日のテレビ朝日の番組で、大阪府の言い分は、国から相当圧力を受けた、近畿財務局の方から、これはもう何とか条件付でもいいから認可を出してくれ、出してくれ、こうした発言をされています。

 森友学園のこの認可申請に関して、国の行政機関からの圧力で地方自治体の教育行政がゆがめられている、そうした可能性があり得るわけでございますが、文部科学省としてはどのように調査されたんでしょうか。

林国務大臣 森友学園の小学校設置につきましては、大阪府の私立学校審議会において条件付で認可適当との答申がなされたものの、申請が取り下げられまして、最終的には認可されませんでした。

 いずれにしても、私立学校の設置認可に係る審査でございますが、学校教育法の第四条第一項第三号に基づきまして、認可権を持つ大阪府において、関係法令及び府の審査基準に基づいて、その判断において行われたものと承知をしております。

 森友学園の小学校の設置認可申請に係る大阪府私立学校審議会における審査及びその経緯等については、同審議会及び大阪府において検証を行って、森友学園から提出された申請書等に事実と異なる記載が見受けられたこと等を踏まえて、虚偽申請に対する対応の強化等、審査方法の厳格化を図るなど、再発防止に向けた取組を進めている、こういうふうに聞いておるところでございます。

 我々としても、各都道府県の審査状況や審査における工夫については情報収集を行い、その結果を都道府県の私立学校主管部課を集めた会議において周知をするなど、各都道府県がより適切な形で審査を行うために必要な情報の提供等を行っているところでございます。

櫻井委員 森友学園の問題については、昨年の通常国会でもさんざん議論されてきたところでございます。まだ最後の結論が出る前の段階で、国会においてもさまざま指摘があったところです。

 森友学園の既に経営している幼稚園、塚本幼稚園においては、さまざまな問題があると保護者の方から、いわゆる問合せというか内部告発といいますか、そういったお声があって、それに対して大阪府教育庁が十分に取り合ってくれないということから、議員の方にもいろいろ声が上がっていた。

 そうしたことについて国会でも取り上げられたんですが、国会では、基本的には、大阪府、先ほど大臣がおっしゃったように、幼稚園のことについては地方自治体でということで、文部科学省は余り積極的に動いたというわけではない。まあ、一回ぐらい問い合わせたというようなことでございました。

 そうしますと、先ほど日吉議員がいろいろずっと追及いたしましたけれども、前川さんの件については、新聞記事にちょろっと、しかも、そこの中で特に違法性があるようなことは書いてないにもかかわらず、さんざん詳細な調査をやっている。メールで二回も、しかも、一回目は十五項目にわたる調査をしている。二回目もやっている。その前に電話でも問合せをしている。これだけ詳細にやっている。一方で、森友学園の問題については、非常に抑制的といいますか、これは地方自治の問題だからといってほとんど調査をしないというようなことが行われていた。

 このバランスの悪さこそ、ある種、行政がゆがめられているのではないのか。政権に近かったりするところについては手心が加えられ、また、政権にとって都合の悪いところはふたをしてしまう。一方で、政権にとって目ざわりな人については徹底的に追及する。そうしたことが行われているのではないかというふうに考えるんですが、今後、こうした、行政がゆがめられたと国民の皆さんに疑念を持たれないようにしていくためには、大臣としてはどういうふうにお考えですか。

林国務大臣 それぞれの案件につきまして、名古屋の方は先ほど来局長から答弁をしたとおりでございますし、森友については今私が答弁したとおりでございますので、それぞれのお問合せのあった件、国会等で御質問があった件については、それぞれしっかりとお答えをしていくということが、やはり今おっしゃったような指摘を招かないようにすることであろうというふうに思っております。

櫻井委員 時間になりましたのでこれで最後の質問にいたしますが、まさに誤解を招かないようにするためには、どういった基準で調査をするのかどうか、それを、これだけ問題になっているわけですから、きちっとやってもらう。

 前川さんについて、もう一回公立学校で講演したら、またあれだけ質問事項がどかっと来るのか、こういうことになると、やはり自己抑制みたいなことが起きてしまうわけです。そうやって学校現場がゆがめられないようにするために、ぜひ大臣、こうした基準をしっかりつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、それぞれの件につきまして、どういう理由でということをるる初中局長からも説明してきたところでございますので、今後のことについて、ケース・バイ・ケースで、一概にお答えするということはなかなか難しいことであろう、こういうふうに思いますけれども、それぞれの法律に基づいて、法律の条文のどこにどういうことがあって、それに基づいてどういうことをするのかということはしっかりと説明していく、これが大事なことだと思っております。

櫻井委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、城井崇君。

城井委員 希望の党の城井崇でございます。

 文部科学委員会での質問は八年ぶりになります。大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、名古屋市立中学校での総合の授業での教育現場への不当介入の問題について、やはり質問せねばなりません。幾つか申し上げたいというふうに思います。

 今回の問題は、まず、教育基本法によりますと、本来、教育は不当な支配に服することなく行うべきだというふうにされております。教育現場の内容については、まず教育委員会が当たるべきだということであります。

 これまでにも、予算委員会を始めとした国会審議や、四回にわたる野党六党での合同ヒアリングなども行ってまいりましたが、こうした中で明らかになりましたのは、そもそも名古屋市教育委員会は講師の前川氏について事前に了解をしていたということ、それなのに、行われた調査の質問の量や内容、録音記録の提出要求などから見て、事実上、校長を問い詰めたと言ってよい状況だったというふうに受けとめています。

 回答後には追加の報告も求められました。学校の判断に問題があったと言わんばかりでございました。結果としては問題なかった、問題が見つからなかったというのが文部科学省からの答えでありました。

 ねちっこくていんぎん無礼な文体で、個別の学校の授業内容や講師の言動、動員の数まで数度にわたってチェックをするのは、さすがに文部科学省による学校現場への検閲ではないか、行き過ぎではないかというふうに言わざるを得ないというふうに思っています。

 今回の文部科学省の対応は、大変残念ですが、学校現場への不当な介入というふうに言わざるを得ません。

 しかも、この調査が、我々からのヒアリングが進むにつれて、自民党議員による調査内容への添削という政治圧力も残念ながら確認をされたところであります。事実経過や政治家のかかわり、学校現場への今後の対応、そして前川氏を含めた外部講師選定への今後の対応など、明らかにしていかなければなりません。

 そこで、一点、大臣にお伺いをいたします。

 お手元の、委員の皆様にもお配りしておりますが、資料の二枚目をごらんいただければというふうに思います。

 お伺いしたいのは、情報照会をしたとされる政治家の影響についてであります。

 これまでにも、自民党の赤池議員やあるいは池田佳隆議員の情報照会があったということは、文部科学省からも報告があったところであります。この具体的な部分でございますけれども、三月の一日の夕方にメールなどのやりとりが行われたということが明らかになっております。このやりとりで調査内容の変更が行われました。

 この資料二枚目のメールは、文部科学省から夕方に二度メールが送られておりますけれども、その二枚目であります。

 一通目は、三月一日の木曜日、十七時四分のタイムスタンプ、そして、二通目が十七時四十四分のタイムスタンプということであります。約四十分の間で、二通、文部科学省から送られているという状況であります。

 この二〇一八年三月一日十七時四十四分の文部科学省初等中等教育局教育課程課課長補佐から池田佳隆議員に宛てた公用電子メールで、このように記述があります。「池田先生から頂戴しました三カ所の修正を加えた質問状を再送させて頂きます。 こちらをもって先に進めさせて頂きたく存じます。」とあります。

 「池田先生から頂戴しました三カ所の修正を加えた」という調査の質問修正は、調査そのものの内容に影響する行為であります。なぜ、大臣を含めて文部科学省の皆さんは、調査に関する文部科学省の判断に影響はない、政治家の情報照会は影響はないというふうにうそをおっしゃったんでしょうか。この「池田先生から頂戴しました三カ所の修正を加えた」という文言は、まさに調査そのものへ影響するものだというふうに考えますけれども、大臣、御見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 今示していただきましたメールは既に公開をさせていただいたものでございますが、「先ほどは池田先生に表記の質問状案をご覧頂きまして誠にありがとうございました。池田先生から頂戴しました三カ所の修正を加えた質問状を再送させて頂きます。 こちらをもって先に進めさせて頂きたく存じます。」と書かれております。

 ここでは池田議員から「頂戴しました三カ所の修正」と表現しておりますが、このうち「三カ所」という部分については職員の認識の誤りでありまして、あくまで事実関係としては二カ所コメントをいただいたということでございます。

 また、この表現でございますが、これは国会議員に対する儀礼的な表現で使ったということでございまして、最終的な文案についてはあくまでも初中局の判断で行ったというふうに聞いております。

城井委員 文部科学省から提供いただいた公用電子メールの文言であります。儀礼的ということで逃れられる内容ではないというふうに思います。書いてある部分が重要だと思います。

 「池田先生から頂戴しました三カ所の修正を加えた」というふうになっております。課長補佐がみずから書き起こしたメールでございます。この点を踏まえて、大臣、もう一度御答弁をお願いいたします。

林国務大臣 箇所数については先ほど申し上げたとおりでございますが、池田議員から頂戴いたしました云々という表現につきましては、教育課程課の職員が、国会議員の先生でございますので、儀礼的にこのような表現を用いたものであるというふうに考えております。

城井委員 大臣、明確に、「修正を加えた」というところで、影響があっているということをメールが物語っているわけです。その部分を逃れて、今回の事実経過と事の真相に目をきちんと向けているかと言われれば、そこは向けることができていないということを、ぜひ大臣、御自覚をいただきたいというふうに思います。

 この政治家のかかわりを含めて、事実経過なども含めて、相当に確認をせねばならぬところがある。ここまでにも、他党の議員も含めてでありますけれども、後ほど我が党議員を含めて質問があると思いますけれども、こうした確認をせねばいけない部分がたくさんあるわけでありますが、その一方で、新年度に向けて、今、各学校現場でも授業の準備が進んでおります。学校現場が今回の一件で萎縮するようなことは絶対にあってはならぬというふうに思うわけであります。

 その点を踏まえて、二点、大臣に確認をしたいというふうに思います。

 一つは、今後の学校現場に対する文部科学省の基本姿勢についてであります。

 今回のような行き過ぎた調査、不当介入ということがあってはならぬということ、本来の法律の運用に戻していただきたいという趣旨で、以下の確認をいたしたいというふうに思います。

 公立学校に関する事務は基本的には自治事務であり、各教育委員会の権限と責任において適切に処理されるものである。このため、これらの事務に当たっては、教育委員会はもとより、教育委員を任命した地方公共団体の長やこれに同意した地方議会がまず主体的に適切に判断すべき。その上で、必要があれば文部科学省も確認対応すべき。こうした認識に立つべきだというふうに思いますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 「教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」とされておりまして、地方の自主性と現場の創意工夫を前提としつつ、適切な役割分担が重要であると考えております。

 この点、公立学校に関する事務は基本的には自治事務であり、教育に関する実務の管理及び執行については、本来、学校の設置者である教育委員会若しくは学校の権限と責任において適切に行われるべきものであると考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 公立学校に関する事務は基本的には自治事務ということで確認をさせていただきました。ありがとうございます。

 もう一点、確認をさせてください。外部講師の今後の選任についてであります。

 今後、前川氏を含めて外部講師の選任に当たっては、授業の狙いや内容、講師を招く理由や経歴などについて、学校や教育委員会において十分に検討され適切な配慮が行われており、そして文部科学省も確認をできる場合には、今回のような行き過ぎた調査や文書による問合せは不要だ、こうした認識でよろしいでしょうか。

林国務大臣 その方向で対応してまいりたいと考えております。

城井委員 ありがとうございます。二点、確認させていただきました。

 今後も、事実経過や政治家のかかわりなど、確認すべき点が大変多くございます。大臣所信の質疑で十分な審議を行っていくというのは難しいというふうに考えておりますので、ぜひ委員長、集中審議の実施を改めてお願いしたいというふうに思います。

冨岡委員長 理事会で検討させていただきます。

城井委員 続いて、大臣所信に対する質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、奨学金についてお伺いをというふうに思っておりましたけれども、貸与型の奨学金についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 貸与型の奨学金については、これまでも与野党が協力しながら、そして政府の努力もあり、改善が進んでいます。必要な学生が皆利用できる形にたどり着いてきたということは大変評価をしたいというふうに思っています。

 しかし、心配はまだあります。何か。それは、返済中の奨学生が滞納している、しかも、その滞納が続いたことで、奨学金破産、奨学金自殺という痛ましい状況が生まれていることであります。けさの朝日新聞でも、朝日新聞の記事に対する反響ということで記事が載っておりましたけれども、この五年間で延べ一万五千人の奨学生が破産という憂き目に遭っている、こういう状況であります。

 昨年春からの新規の奨学生には、所得連動型返済が適用されました。これは極めて前向きな取組だと思います。それ以前に借りた奨学生や返済中の元奨学生は、従来のルールのままであります。今は、二十代前半の約半数がパートやアルバイト、臨時社員、派遣社員という形で働いており、収入が限られております。借りたものを返すのが世の中のルールであることは十二分に承知をしておりますが、そうした若い世代の物理的な状況を見て、工夫ができないものかというふうに思うわけであります。

 大臣、この日本社会をこれから支える若い世代、特に返済中の奨学生こそ所得連動型返済の制度を適用すべきだというふうに考えるわけでありますが、ぜひ国として、この制度導入を検討いただけないでしょうか。

林国務大臣 今先生からお話がありましたように、さまざまな事情で、卒業後、厳しい経済状況に置かれ、奨学金の返還が困難な方に対しては、きめ細やかな対応が必要だというふうに考えております。

 既に奨学金の返還を開始している方に対する負担軽減策としては、所得連動返還型制度創設時の有識者会議での議論も踏まえて、減額返還制度の拡充により対応を図るということといたしております。

 具体的に申し上げますと、今年度から、従来の二分の一の減額に加えまして、新たに三分の一に減額することを可能とする減額幅の拡充を行うとともに、適用期間を十年から十五年間に延長いたしまして、制度の充実を図ったところでございます。

 また、本人の収入が一定以下の場合に、申請により返還を猶予する制度、これも実施をしておりまして、文科省としては、こういった制度を着実に実施をしていくことによりまして、既卒者も含めた奨学金の返還負担の軽減に努めていきたいと考えております。

城井委員 これまでの文部科学省における御努力は、必要な部分に少しでも届けたいということで頑張っていただいていることは評価をいたしたいと思いますけれども、これまでの仕組みのもとで、この五年間の奨学金による破産が延べ一万五千人という状況でございますので、もう一歩踏み込んでいただきたい。

 特に、マイナンバーも導入をされました。所得把握についても前進をしているというふうに思います。そうした仕組みの活用も含めて、返済中の奨学生にこそ所得連動型返済の導入をぜひお願いしたいと思いますので、御検討をお願いしたいというふうに思います。

 続いて、大学における研究費の確保についてお伺いいたしたいと思います。

 配付資料の一枚目をごらんいただきたいと思います。

 研究現場とインターネットというのは相性がよいようでございまして、インターネット上でも研究費をめぐる議論は活発に交わされております。この図は、元大学職員の方がその議論をまとめていただいたものでございます。関心は、研究費の総額はふえているのに、なぜ現場で不足しているのかということであります。

 この図によりますと、左側が本来国として目指している形。つまり、運営費交付金や私学助成金などで事務・生活費を賄い、そして常備している実験機材などのお金に充てる。そして、競争的資金などを含めて、ここでは「なんか凄いことに必要なお金」というざっくりした言い方で書いておりますけれども、iPS細胞やAIやイノベーションといった最先端の部分にこうしたものが充てられていくだろう。こうした想定であるわけでありますが、実際に研究現場に目を向けますとということで意見が交わされましたのは、「なんか凄いことに必要なお金」のところは余っている、しかし、足りていないところに転用することはできないという状況。しかし、ふだん必要な事務・生活費や常備する実験機材等のお金の部分が不足している。大学関係者は、ここの不足分を補ってほしいということを言っている。なので、政府や財務省の認識、文部科学省の認識と、大学関係者が実際置かれている状況というのが離れている状況があるというのがこの図の核心であります。

 せんだって自民党の安藤委員さんからの質問でも総括的に触れられましたけれども、実際に統計に当たりますと、この内部資金と外部資金を合わせた大学研究者一人当たりの研究費が二十年余り横ばいで来ています。その中で、基盤的経費と公募型資金のバランスが公募型資金に傾斜することなどによりまして、基盤的資金を原資とした一人当たりの公費が減少しています。

 このため、多くの研究者は、外部資金とあわせて獲得して研究活動を実施しています。外部資金は一部の大学や研究者に集中する傾向がありますので、研究費の過度の集中が生じて、研究者によっては研究の継続に支障が生じているとの声があります。職員の雇いどめだとして争いになるような大学も出てきております。

 研究基盤をしっかりとした体制にするために、基盤的経費を原資とした一人当たりの公費を増加する政策が必要だというふうに考えますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 このツイッターの資料、「なんか凄いこと」ということですが、これも大事なことであるとは思いますが、一方で、今委員からお話のあったように、基盤的経費が重要であることは我々もしっかりと認識をしておるところでございます。

 まず、国立大学法人の運営費交付金等でございますが、法人化ができた平成十六年度と平成二十七年度の予算額を比較しますと千四百七十億円減少ということでございますが、平成二十八年度で、前年度同額、一兆九百四十五億円、平成二十九年度予算では、わずかということかもしれませんが、法人化以降初となる増で一兆九百七十一億円を確保して、平成三十年度もその同額を確保しているところでございます。

 そういった状況でございますが、一方、私立大学等経常費補助金については減少ないし横ばいですが、平成三十年度では対前年度二億円増の三千百五十四億円ということでございますので、文科省が実施した個人研究費等の実態に関するアンケートでも、国立大学教員についても、年間の個人研究費が五十万円未満の者が六割という結果も出るということで、国立大学の教育研究基盤の強化は大変大きな課題だと思っております。

 今後とも、各大学が継続的、安定的に教育研究活動を実施できるよう、運営費交付金等の基盤的経費の確保に努めてまいりたいと思っております。

城井委員 ありがとうございます。

 最先端の研究もやるべきというのは言うまでもない部分でございます。ただ、競争的資金の方に目を向けましても厳しい状況があると思っておりまして、特に採択率の低さが課題だというふうに考えています。

 競争的資金の五割以上を占めているいわゆる科研費では、新規採択率がこの六年間でどのような状況になっているかというところに、ぜひ大臣、目を向けていただきたいというように思います。平成二十九年度で二五%と、平成二十四年以降、六年連続で減少しております。

 採択率の引上げが若手研究者の研究費確保につながります。先ほどの五十万円以下という、ここで踏ん張らなきゃいけない若手の研究者の支えにもなると思います。

 大臣、この採択率の引上げをぜひ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 おっしゃられましたように、平成二十四年度から平成二十九年度までの直近六年間の科研費の助成事業の新規採択率は、平成二十四年度の二八・三%から、二十九年度には二五・〇%と、三・三ポイント六年間で減少しております。特に、平成二十九年度なんですが、前年度と比較して、新規採択率が一・四ポイント減少しております。

 この背景として、平成二十九年度から、論文等の実績よりもアイデアの斬新性等を重視する研究種目として、新たに創設をいたしました挑戦的研究というのがございますが、ここにおいてその趣旨に沿った研究課題を厳選したため、新規採択率としては一〇%になっておるということで、これが全体の採択率低下の要因の一つとなっておるところでございます。

 この挑戦的研究、それから、その前身は挑戦的萌芽研究という名前でございましたが、これを除きますと、全体としての新規採択率は、直近六年を通じて大体二七%から二八%ということを維持しておるわけでございますが、今後とも、さらなる学術研究の振興に向けて、科研費の充実と質の向上ということをしっかり図っていきたいと思っております。

城井委員 今大臣からもございました挑戦的なということになった場合に、どうしても最新鋭、最先端の研究の名前がつかないと研究費を得ることができないというふうなところに現場の研究者が追い立てられているという実情がございます。そこがあるからこそ、きょう私が、基礎的な研究の部分や学校でのふだんの研究の準備の部分について目を向けなきゃいけませんよということをあえて申し上げている次第でございます。

 今申しました基礎研究や日ごろの学校運営にかかわる部分、特に、現場で不足している事務・生活費でありますとか常備する実験機材等の費用についての手当て、ぜひここはお考えいただきたいと思いますけれども、大臣、改めて御見解をお願いしたいと思います。

林国務大臣 ノーベル賞を受賞されました大隅先生や梶田先生のような方からも、やはり基礎研究の充実が大事であるということを御発信なさっておられますし、私も直接お話をお伺いする機会がございましたので、先ほど申し上げたように、基盤的経費の確保というのはしっかりとやってまいりたいと思っております。

城井委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、高大接続改革、特に大学入試の共通テストについてお伺いいたしたいと思います。

 せんだって試行試験もございまして、準備が進んでいるというふうに認識をいたしておりますが、この中で、心配、懸念の声がある点が幾つかございますが、そのうちの一つが、いわゆる英語の民間試験の導入についてであります。

 この部分について、心配、懸念、どんなことがあるかということで申し上げますと、一つには、民間の資格検定試験とマーク式の共通テストが平成三十五年までは併存するという状況になります。受験生は双方の準備が必要になるということで、学習上の負担が大きくなるおそれがあります。

 更に申しますと、今回の民間試験の出題を見ますと、高校の学習指導要領の範囲の外の部分がある。高校での学びをはかる目的、用途であるにもかかわらず、学習指導要領の範囲外からも出題される英語の民間試験をそのまま利用するのは、これまでの大学入試の共通テストで言われてまいりました本来の目的とは離れるというふうに考えます。

 更に申しますと、費用負担の問題も生じてまいります。この英語の民間試験の受検料の負担が新たに加わってまいりますし、また、受検料のみならず、事前の学習の段階から受験生の経済的負担が増大することにもなります。家庭の経済格差により、事前学習の機会にも大きな格差が生ずるおそれがあります。

 また、受験生の家庭の経済状況や、自宅と英語の民間試験の会場との距離などによって、受検機会に格差が生ずるおそれもあります。

 こうした英語の民間試験を導入するのであれば、今申した経済的負担や機会の不公平を正すことはもとより、少なくとも高校の学習指導要領の範囲の中での取組になるべきだというふうに考えますけれども、こうした英語の民間試験について御指摘のある、私からも指摘をさせていただいた問題点について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 高等学校の学習指導要領は、高等学校において学習する教科等の目標や最低限教えるべき内容を定めている大綱的基準でございまして、実際にも、各学校の教育課程の目標に応じて、より高度な内容を学習することが多く行われているところでございます。

 こうした中で、高等学校卒業時点での生徒の英語能力もさまざまでございまして、高い英語能力を習得した生徒を評価する仕組みを用意しておくことも必要だと考えております。

 今回、大学入試センターが成績を提供する対象として確認をした資格・検定試験は、それぞれの試験内容について、英語教育等の専門家等が学習指導要領との整合性を確認をしたものでございまして、そういった意味で、大学入学者選抜に用いることに問題はないというふうに考えております。

 それから、御負担のお話もいただいたところでございますが、英語の四技能評価の重要性に鑑みまして、文科省としては、資格・検定試験の入学者選抜における活用を働きかけておりますが、最終的には、アドミッションポリシーに応じて各大学において判断をされるということになります。

 活用に当たっては、受検者の実施場所や検定料の負担に配慮するために、受検時期、回数を高校三年の四月から十二月までの事前に登録された二回に限るということにしております。

 また、今お話のありました低所得世帯の受験生の検定料でございますが、これについても各試験団体において配慮することを検討すると聞いておりまして、文科省としても、四月以降、全国の高校に対して実施する予定の受検ニーズの調査等を踏まえて、実施会場の追加や検定料値下げ等の配慮を求めていきたいというふうに考えております。

 さらに、大学入試全体の受験料負担の軽減としては、その具体的な内容は調整中でございますが、昨年十二月に策定された新しい経済政策パッケージにおいて、低所得者層に対する給付型奨学金の中で、大学等の受験料が措置をされることになっておりますので、文科省としては、経済的に困難な受験生の支援を始め、受験生の負担軽減に努めてまいりたいと思っております。

城井委員 今ほど御答弁いただきましたけれども、一つ一つの御努力をぜひお願いしたいというふうに思いますのと、民間試験が複数にわたりました。内容も異なる、レベルも異なるものでございます。単純に比較することも難しいという指摘も既に出ておりますし、東京大学は不採用の方針ということも聞こえてまいりました。そうした部分も含めて、今の想定のままで前に進むのには少し無理がある部分があるというふうに考えますので、ぜひ御検討をお願いしたいというふうに思います。

 さて、最後に、教育機会確保法にまつわる課題についてお伺いいたしたいというふうに思います。

 この法律の中でキーワードになる言葉があります。それは、児童生徒についてでありますが、休養の必要性に鑑みという一言であります。学校に通うことができない子供たちに対して休養の必要性というものを位置づけていこう、考えていこうということでございました。

 ただ、その折に、休む必要がある子供たちもある、でも、休むことによってリスクを抱える子供たちもいるということに目を向けねばならぬというふうに思っております。

 具体的に申し上げますと、休んでいるからということで、学校の教員などからのいわゆるアウトリーチ、家庭訪問の数が減ってしまうという懸念があります。学校の先生方からも、子供たちに、休んでもいいという法律ができたというふうなことで説明しているという誤解もあるというふうに現場から聞きました。これはまずいというふうに思っています。

 どうまずいかというのを具体的に申し上げますと、会わないとわからない問題、例えば発達障害というものがあります。発達障害を抱えた児童生徒に向き合ったときに、もしそれが、休むということを理由にして、その子たちに、外部からの教員やあるいは専門的知識のある方がもし当たることができないで放置をされて、最初に、小さなころに、発達障害ですねといって診断があった。そこから改善していく手だてはたくさんあるのに、そこにさわらずに長期間たってしまうということが起こり得てしまう。そもそも、この発達障害というラベリングが全国に広まってひとり歩きしてしまっている状況もあります。そうした、かかわることによって改善していけるはずの子供たちが、この休む必要性という言葉でもって違う形で隔離されてしまうということを非常に心配をいたしております。

 また、虐待ということについてもそうでありますが、会わないと、その子供が虐待されているかどうかわからない、こういう部分があります。

 この発達障害や虐待の可能性というものから遠ざけてしまうような運用にならないように、ぜひ大臣、この法律運用をきちんと見ていただきたいと思いますけれども、この点について大臣の御所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

林国務大臣 不登校の要因、背景は、家庭や学校にかかわるものも含めて多様、複雑であることから、不登校児童生徒に対する効果的な支援を行うためには、なぜ不登校になったのか、そしてなぜ続いているのか、それから、当該児童生徒が学校以外の場に行っておられる学習活動状況がもしあれば、こういうことをやはり継続的に把握をすることが必要であるということだと考えております。

 個人のプライバシーの保護に配慮するということはもちろんでございますが、不登校児童生徒や保護者の意思を尊重しつつ、やはり家庭への訪問による把握を含めた学校や教育委員会による状況把握を行うことは重要であるということでございまして、個々の不登校児童生徒の状況に応じて効果的に支援がなされるように、機会を捉えて各教育委員会等を指導してまいりたいと思っております。

城井委員 終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 希望の党の長島昭久です。

 きょうは、実は、高等教育の将来像について大臣と建設的な議論をさせていただきたいと思ってやってきたんですが、先ほど来の大臣の御答弁を伺っていて釈然としないことがありますので、あえて、前川前次官にまつわる問題について、冒頭にお伺いをしたいというふうに思います。

 私は、本当に林大臣、尊敬申し上げておりまして、これまでも超党派の議連や勉強会で御一緒させていただいて、その見識、あるいは政治家としての器、まことに大した人物だと、お世辞じゃなくて本当にそう思っておりました。ただ、今回のこの問題に対する大臣の姿勢、これは本当に私は残念に感じているんです。

 先ほど、日吉議員の、何度も何度も、やや誤解を招いたという、そのやや、何か物事を過小評価されるようなそういうおっしゃり方、大臣発言をされて、大臣発言という文書も残してしまいましたから、それを修正するのはなかなか大変なことだということは私も理解いたしますけれども。

 まず冒頭、大臣の認識についてお伺いをしたいんですけれども、先ほど城井議員の質問にもお答えになっておられましたので、もう一度だけ確認させていただきたいんですが、公立学校に対する文部科学大臣あるいは文部科学省の基本的なかかわり方、この点についての大臣の基本的な御認識をまず問いたいと思います。

林国務大臣 教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力のもとで公正かつ適正に行われなければならない、こういうふうにされておりまして、地方の自主性と現場の創意工夫を前提としつつ、適切な役割分担が重要であると考えております。

 この点、公立学校に関する事務は、基本的には自治事務でございまして、教育に関する実務の管理及び執行については、本来、学校の設置者である教育委員会もしくは学校の権限と責任において適切に行われるべきものであると考えております。

長島委員 つまり、まず現場の判断を尊重するということが基本中の基本だというふうに今御答弁されたというふうに認識します。

 これは、元文部官僚の寺脇さんもコメントを出していますね。教育の内容は市町村教委の責任に委ねてきたことで、役人なら誰でもわかっていると。局長、そういうことですよね。

 それから、尾木ママ、尾木さんは、どんな授業をするかのカリキュラム編成権は学校にあると。これをしっかり教育委員会がまさに監督をしていくというのが日本の文部行政、教育行政の仕組みになっている。

 きょうは歴代の文部科学大臣三名、与野党おられますけれども、これまでずっと積み上げてきた国と地方との教育をめぐる役割分担、あるいは連携、あるいは教育の現場を尊重する、もっと言えば、教育の独立をきちっと尊重していく、そういう姿勢は、脈々と党派を超えて、文科省の大臣を中心に引き継がれてきたと私は認識をしておりますが、林大臣になってから、もう少し教育の現場に対して踏み込んで指導や助言を行おうじゃないか、そういう姿勢の転換があったんでしょうか。

林国務大臣 尊敬する文部科学大臣経験者の皆様が多数いらっしゃるところでございます。先ほど申し上げたとおりの基本的な考え方を申し上げたとおりでございまして、先輩方と何ら変わることはないというふうに考えております。

長島委員 そこで伺いたいんですけれども、大臣は、この大臣発言の中にも、それから累次にわたる会見の中でも、個別の授業内容について国が調査を行うことは可能である、こう結論づけて、今回の調査については違法性はないんだということで、地教行法の四十八条と五十三条を引用されています。四十八条と五十三条は引用されているんですが、もう一つの、極めて重大だと私は思うんですが、教育基本法についての言及はないんですね、大臣。

 私は、この教育基本法の、不当な支配に属することのない教育のあり方というのがまず基本にあって、そして地教行法があるんだろうという認識なんですが、大臣、いかがですか。

林国務大臣 委員がおっしゃったように、基本法があって、そのもとにいろんな法令があるということは、先生がおっしゃるとおりだというふうに思います。

長島委員 だとすれば、今回のような、教育現場、カリキュラム、授業のありよう、こういったものに文部科学省が手を出す、介入と言ってもいいかもしれません、これはもう慎重の上にも慎重であらねばならないと思うんですが、大臣、いかがですか。

林国務大臣 教育基本法のもとにある、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づいて行ったということは、累々私や担当の局長から答弁したとおりでございます。

 これも私も重ねて申し上げることになりますが、このような事実関係の確認を行うに当たっては、教育現場において誤解が生じないように十分留意すべきであることは当然であり、そのような観点から、今回の書面についてはやや誤解を招きかねない面もあったと考えられるため、今回、確認を行った初等中等教育局に対しては、このような事実確認を行う際には、表現ぶり等について十分留意する必要がある、その旨を伝えたところでございます。

長島委員 まだ、ややがついているので、そこは気に入らないんですけれども。

 その上で伺いたいんですが、大臣は、三月十六日の会見で、このような事例は過去にもあった、こういうふうに述べているんですね。例えば、名古屋市の教育委員会の藤井指導室長は、授業内容にまで踏み込んでの質問はこれまで余り経験したことがないと。あるいは、教育専門家に私、お尋ねをいたしましたところ、これまでそういう話は寡聞にして知らない、こういう返事が返ってきたんです。

 大臣、具体的にこれまでどんな事例がこういう教育の内容についての調査であったか、少し御披露いただけますか。

林国務大臣 保護者や学校関係者からの問合せ若しくは報道等を契機といたしまして、例えば、学校の教育活動が法令に違反している、学習指導要領に違反するような教育内容となっている、特定の児童生徒に不当に不利益が及ぶような扱いがあるなどの可能性があると認められる場合に、文部科学省から教育委員会に対し個別の学校の教育活動について問合せをすることは一般的にある、こういうふうに会見で申し上げたところでございます。

 具体的な例ということでございましたので、例えば、高校の数学の学習評価が不適切に行われているとの匿名の保護者の方からの情報提供を受けて、これまでの経緯や今後の対応等について確認をした事例でございますとか、高校の特別活動の授業で使用した教材の内容に偏りがあるという旨の報道機関からの情報提供を受けて、教材の内容等について確認をした事例、中学校の理科の実験中に複数の生徒が体調不良を訴えて病院に搬送された旨の報道を受けて、授業の内容や生徒の状況、学校の対応等について確認をした事例、こういう事例があるというふうに承知をしております。

長島委員 今大臣がるる説明されたように、文部科学省が調査をするという事例は極めて異例なんですよ。これも教育関係者がよく述べておられますけれども、一般的に言えば、学校の教育活動が法令に違反している場合、あるいは指導要領から逸脱している場合、あるいは今大臣がおっしゃった、いじめなどで特定の児童生徒に不当に不利益が及ぶような懸念がある場合、緊急の場合に限ってこれまでやってきた。

 ここは高橋局長に伺いたいんですけれども、今回、そういう事例に当たるという判断を原課はされたんでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の事案は、中学校の授業において講演を行った前事務次官の前川氏が、直近まで文科行政事務方の最高責任者として、その発言が教育行政に関して正当な根拠があると受けとめられる特別な立場にあったことから、影響力が極めて大きく、仮にその発言内容が学習指導要領等と整合しない場合であっても、法令や学習指導要領の正しい解釈として受けとめられる可能性が高いこと、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけでなく本人自身の違法行為をもって停職相当となった者であることから、特に心身の発達が途上段階にあり、必ずしも公正な判断を行う能力が十分に備わっていない中学生に対して授業を行うことについて適切な教育的配慮が求められること、本人の違法行為をもって停職となったことなど、各種報道により社会的に注目を集めている人物であり、一部にはこれを不適切と捉える動きもあると考えられることから、保護者の当該学校に対する信用に与える影響について十分な考慮が行われる必要があること等を考慮して、指導、助言、援助を行う必要があるかを判断するために、地教行法五十三条に基づき、授業の内容についての事実確認を行ったものでございます。

長島委員 そういうことの懸念があるので、それを判断するための予備的な調査という認識ですか。もう一回お願いします。

高橋政府参考人 先ほど申し上げましたようなことを考慮して、指導、助言、援助を行う必要があるかを判断するために、地教行法五十三条に基づき、授業の内容等についての確認を行ったものでございます。

長島委員 今、高橋局長がるる説明をされましたけれども、恐らくこの部屋の中で十分納得をされている方は少ないんだろうと思いますよ。

 例えば、今回私は本当に異常だなとつくづく思っていて、いろいろな方の見解をなるべくバランスよく集めてみたんです。馳浩元文科大臣のブログ、御本人いらっしゃいます、私は匿名でいこうかと思ったら、本人、名前を出してもいいよということだったので、三月十六日、問題が出た後、直後、物すごく反応が早かったですね。

 いじめとか違法事案などを除き、国が現場の公教育の内容に直接介入、調査することはあってはならないことだ。翌日、公教育現場の授業内容に事細かく文科省が介入することは言語道断である。教育現場の自主自立を守ることは当然。不当な支配に服することのないようになんてことは文科行政のイロハのイ。前川さんについては天下り関与行為で停職扱いになり、不名誉な辞職をしたことは事実だが、だからといって公教育の現場で講師をしてはならないわけではない。

 林大臣、私は率直に言って、この馳元大臣の見解の方が腹にすとんと落ちるんですが、いかがでしょう。

林国務大臣 尊敬する馳元大臣のコメントですからしっかりと頭に入れたい、こういうふうに思っておりますが、私どもの見解は先ほど述べたとおりでございます。

長島委員 林さんらしくない。林さんらしくないですよ。

 大臣、やり方に誤解を招くところがあった、こういう認識をされているでしょう。大臣でもいいですよ。局長でもいいですよ。例えば名古屋市の教育委員会に対して、あるいはその中学校の校長に対して、少しやり過ぎてしまったなということでおわびしましたか。もししていなかったら、今ここで、大臣、おわびのコメントを出してください。

高橋政府参考人 私どもといたしましては、法令に基づいて教育委員会に対して必要な調査を行ったところでございますけれども、しかし、この内容を大臣に報告したところ、その表現ぶり等について留意すべきであった、やや誤解を招く面があったということで、そこは注意をいただきましたので、その注意については真摯に受けとめて、今後は教育現場に対してより丁寧な対応に努めたいと考えております。

長島委員 注意、今後していくのはいいですよ。名古屋市に対して、あるいは名古屋市の教育委員会に対して、悪かったな、今後気をつけるから、こういうことが変な先例にならないように伸び伸びとやってくれ、こういうようなコメントは出していないんですか。全くほっかぶりですか。

高橋政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございます。

 今回は私どもとしては法令に基づいた調査と考えておりますので、教育委員会等に対して謝罪が必要とは考えておりませんが、今後、今回のことを踏まえて、教育現場に対してより一層丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております。

長島委員 これをごらんになっている方が最終的には判断されることだと思いますが、大臣、一緒に論語を学んだことがありましたよね。過ちて改むるにはばかることなかれ。過ちて改めざる、これ過ちなり。

 大臣、やはりちょっとやり過ぎたという意識はないんですか。先ほど、私、前の大臣の発言まで引用して、大臣には非常に聞きづらいことだったかもしれないけれども、反省を促したんですよ。過ちが仮にあったとしたら、ややとか何かそういう修飾語はいいですよ。やはり少しやり過ぎたな、名古屋市の教育委員会や学校現場の方々に萎縮効果を及ぼしてしまったな、法令に適合しているかしていないかじゃなくて、このこと全体を見て、今後、そういうことで萎縮することのないように、やはりここはきちっとけじめをつけるべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。もう局長は言わないみたいだから、大臣、お願いします。

林国務大臣 論語を一緒に学んだということでございました。仁、義というのも学んだところだ、こういうふうに今思い出しておりましたが。

 やはり、しっかりと、行政を行うに当たっては、先ほど初中局長が申し上げたように、誤解を招かないようにするということはもちろんである、こういうふうに思っておるところでございまして、今回、そういった意味で質問状の表現ぶり等について注意をしたところでございますので、そのことは当然、名古屋市教育委員会には、これだけ国会で取り上げていただいておりますので、伝わっているとは思いますが、改めて、注意があったということを事務方からしっかりと伝えさせたいというふうに思います。

長島委員 ありがとうございます。

 これは、もう一つのポイントはガバナンスなんですよ。林大臣のもとでの文部科学省のガバナンス。

 私は、事後報告だったということもびっくりしましたけれども、しかも、これは三週間後だったんですよね。もう報道で騒がれて、政治家の介入があったかないかといろいろあって、もうたまらなくなって、恐らく大臣室に駆け込んだんだと思いますよ。まず政務官、その後副大臣、政務三役。私は、こういう異例な判断が、原課の担当者だけで、日常茶飯事で、日常的にやられることだとしたら、その方が実は怖いですよ。

 池田議員は、教育行政にも精通していて、現場にも関心があって、情熱を持って、いや、これはおかしいなと思って文科省に問い合わせたんだろうと思いますよ、動機は。ちょっとしつこかったと思いますけれども。それを受けて、私も政務三役をやったことがありますから、党の同僚から無理難題が来るんですよ。そうしたら、盾になるのは政務三役なんですよ。まあ、あなた、気持ちはわかるけどと。

 だから、大臣の、この事柄のシークエンスの説明がありますね。最初に池田議員から当該の記事の提供を受けて、電話で確認しているんですよね、名古屋市の教育委員会に。それで、関係資料の提供を受けましたと。それで、その後、池田議員に説明しているんですよ。この最初のパラグラフで物事が終わっていれば、こんなに大ごとになっていないと思うんですよ。よくある話ですよ、多分。

 ここは、局長、何かいろいろ言ってこられたら政務三役に駆け込むんですよ。もう勘弁してほしいと。もう連日メールと電話でやいやい言われているけれども、この問題は慎重の上にも慎重を期して省としては対応しなければならないと思うんだから、いや、そう思っていなかったらもっと大問題ですけれども、これぐらい重大な問題だから、何とか大臣、おさめてくださいよ。あるいは副大臣、政務官、宮川政務官、立派な政務官がおられるんだから、盾になってくれますよ。何でそういうことを考えなかったんですか。

高橋政府参考人 私どもといたしましては、まず内容の事実確認ということでございましたので、そこは初中局の判断として、内容を確認した上で、その確認した内容について政務三役に報告をしたというのが経緯でございます。

 ただ、政務三役に報告した際には、こういった内容については、もっと事前に報告、連絡、相談があってよかったのではないかというようなことを言われましたので、そういった注意を受けましたので、そのことは今肝に銘じているところでございます。

長島委員 この新聞記事ですけれども、ある文部省の幹部はこう言っているんですよ。「前川氏に対する価値判断が入っており、現場を萎縮させかねない。百のことを言われ、五十をやるのも役人の知恵だ。現場を守ることも必要なのに、そのバランスを欠いていたと思う」。どうですか、局長。

高橋政府参考人 そういった報道があることについては受けとめていきたいと思います。

長島委員 いや、林大臣には、もう本当にガバナンスを回復していただきたいと思います。

 片山さんがこういうことを言っていますよ。片山善博さん、元総務大臣。国会議員が官僚に理不尽な要求をすることは、よくあることだ。だが、今回は拒否できなければ、文科相に相談すべき内容だった。私がさっき申し上げたとおり。授業について市教委に問い合わせることは文科相の見識が問われる行為だ。結果責任も生じる。議員からの要求を受け、官僚がそのまま調査した文科省は組織のガバナンスを著しく欠いているのではないか。

 私も全く同感なんです。大臣、いかがですか。

林国務大臣 先ほどのどなたかの御質問で文書決裁規則等については申し上げたとおりでございまして、法令、規則等の中では、局内で判断ができることということではあることはもちろんでありますけれども、しかし、与党の先生方、これは与党にとどまらず野党の先生方もそうでありましょうけれども、そういう案件でもあったということもありますので、私の方からは、政務三役に報告、連絡、相談をするということもあってもよかったのではないか、今後もそういう判断をしっかりするようにという注意をしたところでございます。

長島委員 もう時間がないので、大臣、この問題の最後の質問にしたいと思うんですが、ガバナンスをぜひ回復していただきたいと思います。

 これは仮の質問ですが、仮に大臣が事務方の担当者だったら、最初に議員からのこういう話を受けたら、どうされていましたか。大臣も同じような行動をされたでしょうか。

林国務大臣 仮定の問題でなかなか難しいわけでございますが、最初の報告でどの程度の報告があったかということにもよるものであろうかというふうに思いますが、全般的に、長島委員がおっしゃっていたように、こういうことは、どれぐらいたくさんあるかは別にして、与党の議員、野党の議員からいろいろな御指導をいただくことはあるわけでございますので、そういうことについては、盾になるほど私、丈夫ではないかもしれませんが、しっかりと相談にあずかって、いろいろなことができたのではないか、そういう思いもあったので、そういう注意をいたしたところでございます。

長島委員 まだ、この問題、いろいろ論点はあるようですから、先ほど城井委員からも御要望申し上げましたけれども、この問題でもう少し突っ込んで議論をする機会を設けていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

冨岡委員長 はい。先ほど申しましたように、理事会で検討させていただきます。

長島委員 これで終わりにしますけれども、大臣、この問題は、法令に基づいて行われているから問題がないんだというようなニュアンスのおっしゃり方はもう金輪際しないでいただきたい。これだけやはり現場も含めて大きなインパクト、マイナスのインパクトを及ぼしているということをぜひ御認識いただいて、最後まで、やや誤解を招くという、ややを取っていただけませんでしたけれども、こういう本当に、恐らく局長だって現場を畏怖するつもりは全くなかったと思いますし、池田さんだってそういうつもりで最初に問題を持ち込んだわけではないと思いますから、ゆめゆめ、文部科学省が教育の現場、カリキュラムの内容、授業の内容、こういったものに過剰に介入をしないように気をつけて、今後とも精励していただきたい、このことをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 希望の党の源馬謙太郎でございます。

 きょうは、日本語の指導が必要な児童と生徒に対する支援に関する質疑をさせていただきたいと思います。

 昨今、外国人労働者の確保、あるいは、あえて申し上げますが、移民という政策的な議論が幅広く行われる、こういう状況にあると思います。こうした中で、外国人の児童生徒への教育というのも喫緊の課題であるというふうに考えています。

 今、公立学校における日本語の指導が必要な児童生徒数というのは年々増加をしておりまして、平成二十八年には四万四千人弱に上っております。家族と一緒に来日した子供であったりとか、日本で生まれて、外国出身の親が日本語を教えることができないという家庭の子供たちが多いというふうに認識をしています。

 以前は、外国人の労働者というのは一人で出稼ぎに来て、そして、ある程度稼いだら帰るというのが一般的な出稼ぎのスタイルでしたけれども、最近では家族も連れてくるというケースが非常にふえています。

 平成十八年から二十八年まで、この十年間で比較してみますと、日本語の指導が必要な日本国籍を持った児童生徒が二・五倍増加をしていて、日本語指導が必要な外国人の児童生徒は約一・五倍増加をしています。日本語が理解できないために、学習につまずいたり不登校になったりする生徒がふえている。さらには、これが更に歯どめがかからなくなると非行や犯罪に走る、そういう児童生徒もいるというふうに聞いています。このような児童生徒を生み出さないためにも、やはりきめ細やかな支援を行うことが大事であるというふうに私は考えております。

 そこで、まず大臣に、日本語指導が必要な外国人児童生徒を取り巻く現在の課題ですとか、それに対する今後の方向性、こういったものをお伺いしたいと思います。

林国務大臣 公立小中学校等における日本語指導が必要な児童生徒数は、この十年間で一・七倍に増加をしております。また、日本語指導が必要な児童生徒の在籍する地域の分布につきましては、都道府県別の在籍者数の上位六都府県の在籍者合計が全体の六割を占めておりまして、特定の地域への集住化の傾向が見られる。

 一方で、在籍者が一人から四人の学校数が在籍学校の七六%を超えている状況でございまして、これらの児童生徒が全国に散在化する状況が一層顕著になっている、こういうことでございます。

 さらに、児童生徒が使用する言語も多様化する傾向が見られておるところでございます。

 こうした状況も踏まえて、これらの児童生徒へきめ細かく指導、支援できる体制の整備充実や、これらの児童生徒の教育に携わる教師、支援員等の資質、能力の向上など、こういったことが重要な課題である、こういうふうに認識をしております。

源馬委員 ありがとうございます。

 この外国人の児童生徒に対する支援というのは、私は外国人に対する支援というふうには実は余り捉えていなくて、日本の国民の税金で支援をするわけですから、もちろん日本の子供たちへの教育というのが最重点、最重要であるというふうには思うんですけれども、実は、この外国人児童生徒への支援というのは、学校の教育現場の先生たちの負担を減らしたりとか、一緒にいる日本人の子供たちの教育を妨げないようにするためにも非常に重要な支援である、重要な課題であるというふうに捉えております。

 先ほど大臣もいろいろ数字を教えていただきましたけれども、例えば、私の地元の静岡県でも、現在、三千人以上の日本語指導が必要な生徒がおりまして、これは、愛知、神奈川、東京、大阪に次いで五番目の大きな人数になっております。

 私の選挙区がある浜松市も、製造業が盛んということもありますけれども、千五百人以上の児童生徒がいまだに日本語の指導を必要としている。さらに、いろいろ浜松市から聞いてみると、今大臣がおっしゃっていただいたように言語もさまざまでありまして、ブラジル語であったりとかポルトガル語、タガログ語、ベトナム語、スペイン語、インドネシア語、英語、中国語と、さまざまな言語でのサポートが必要な生徒がまだまだたくさんいるという状況であると思います。一時はリーマン・ショックが起こった後に少し減少したんですけれども、またこの三年間で伸びておりまして、本当に地元の話で恐縮ですが、浜松のこの人数というのは、実は全児童生徒のうちの二%から二・五%ぐらいの数の日本語指導が必要な外国人生徒がいるという状況でございます。

 ここに大きなサポートをしていかないと、先生方もどんどん疲弊をしていきますし、そうした外国人の生徒への指導で、本来するべき日本人の子供たちに対する教育というのがおろそかになっては、これは本末転倒なわけでございます。

 そうした意味で、やはりここはしっかり予算措置もとっていただきたいというふうに思っているんですが、実は、この外国人児童生徒に対する支援の額というのは、平成二十九年度に比べても減額をされています。

 この平成三十年度の予算の主要事項というのを拝見しても、例えば、帰国・外国人児童生徒教育の推進支援事業というのがありまして、これがまさに当たるわけですが、二億二千九百万円。昨年度は二億六千万円の予算がついておりましたが、減額されている。

 一方で、同じ事項の、これでいうところの初等中等教育段階におけるグローバルな視点に立って活躍する人材の育成という大きな項目の中に、減額されているのはこの外国人児童生徒への教育の推進事業なんですが、そのすぐ後に、高校生の国際交流の促進という項目もあります。私は、もちろんこうした支援事業をしていくというのは大事なことだと思いますが、これが昨年度の一億五千万から三億四千万に倍増されている。一方で、先ほど大臣からもお話がありました、数がふえて困っているという外国人児童生徒に対する教育支援の額が減額をされている。

 ここは、もちろんその額を単純に比較することはできませんが、もう少しやはり予算措置もしていただいて、これこそ増額が必要ではないかと思うんですが、所感をお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年度から、日本語指導が必要な児童生徒の在籍する学校への日本語指導員及び母語支援員の派遣などの地方自治体が行う取組を支援する補助事業を実施しております。予算は、今委員御指摘がございましたように、少し減っておりますが、その中でも、来年度予算においては、これまでの取組に加えて、新たに、就学前の幼児への支援や、多言語翻訳アプリなどICTを活用した取組などのメニューを追加したところでございます。

 文部科学省としては、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

源馬委員 各自治体では、先ほど大臣もおっしゃったとおり、外国人児童生徒が多いところと、もちろん少ないところがありますが、私の地元の浜松のように多いところでは、いろいろと工夫をして、しかも、それぞれの言語、それぞれのナショナリティーを持った子供たちのニーズに合わせた支援をしなきゃいけないという、先生方は大変真面目ですから、そういったことで苦労をしております。

 例えば、外国人児童生徒の就学のサポーターの派遣をしたり、指導補助者、こういったものを配置をしたりしております。状況もそれぞれ違って国籍もそれぞれなので、これは余計に難しい支援になるというふうに思うんですね。一人一人に合わせることというのはもちろんできませんが、全員を十把一からげにするということもできないというような難しさがあると思います。

 そこで、さっきの御答弁の中にありました、多言語翻訳システム等ICTを活用した支援、これが新たな新規事業として盛り込まれたというふうに伺いましたけれども、この中身をもう少し詳しく教えていただきたいというふうに思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十年度予算から新たにメニューに組み込まれました多言語翻訳システム等ICTを活用した事業でございますが、このシステムは、具体的には、教育委員会の窓口において、新たに渡日した保護者が就学相談に来た際に、外国語によりさまざまな学校事情を説明しながら就学ガイダンスを行うこと、児童生徒への初期日本語指導の場面において、児童生徒がわからない日本語を調べたり学んだ日本語を確認したりすることにより学習に役立てること、教師が保護者と懇談を行う際、外国語によりきめ細かなコミュニケーションを図ること、こういった取組に資することと考えております。

源馬委員 今おっしゃったように、まさに、例えば、小学生で入学してくる子供たちは、たとえ幾ら日本語がわかったとしても、学校に入っていくとどんな段取りがある、そういったことは全くわからないと思うので、保護者の方に説明するというのも必要だと思います。それは、やはり言語が壁になると思いますので、こうしたICTを活用した取組というのは非常に私は評価をしたいというふうに思いますが、ことしその申請があったのが、我が浜松市と横浜市だけというふうに伺っています。

 こうした取組をもっと全国に広げていって、例えば、愛知県だったりとか東京都も同じ問題で非常に苦しんでいるわけですから、大阪もそうですね。もう少し、こういったICTを活用した、しかも、アプリがあると聞きました。こういったことを使っていけば先生方や学校現場のスタッフの皆さんの負担が減るんだということを文科省としてもどんどんアピールをしていって、ぜひ活用してもらう、そういったふうにしていただきたいと思うんですが、そのあたりの御見解を伺いたいと思います。

高橋政府参考人 御答弁申し上げます。

 ただいま委員から御指摘いただきましたように、平成三十年度、例えば浜松市では、多言語翻訳アプリを搭載したタブレットを十台準備して、教育委員会や学校の窓口に配置し、そして、渡日した保護者が就学相談に来た際に、ポルトガル語、中国語、ベトナム語等の外国語によりさまざまな学校事情を説明しながら就学ガイダンスを行う予定であると承知しております。

 このタブレットでは、音声のみならず、文字でのやりとりも確認できますので、より正確な情報伝達が期待されておりますし、また、学級担任や支援員の方が児童生徒の家庭訪問の際に持参することによって、校外においても家庭においてもきめ細かな支援が可能となる、そういった効果が期待されると伺っておりますので、文科省といたしましては、こういった浜松市などの取組の成果と課題をしっかりと把握してモデル化を図り、全国各地域への普及を図ってまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 必要としている地域へのPRですとか、さらなる普及をぜひお願いしたいというふうに思います。浜松市もこのモデルとなれるように、しっかり活用していく姿を、私もしっかり現場を見ていきたいなというふうに思います。

 続いてなんですが、先ほど大臣から御答弁がありました中で、集住と散在というキーワードがありました。まさにこれがこの問題を難しくしているところだなというふうに思います。

 浜松は多いと言いましたが、多い浜松の中でも、一つの学校にたくさん外国人児童生徒がいるところと、同じ浜松でも数人しかいないというところ、同じ基礎自治体の中でも集住と散在が実は存在をしています。

 例えば、浜松の例でいいますと、三十人以上の外国人児童生徒が在籍をしている学校というのは十校ありまして、百十八校のうち十校。そのほか、一人から九人の少人数の外国人児童生徒が存在している学校、これがほとんどでありまして、こうしたところに問題の難しさがあるというふうに思います。

 たくさん外国人児童生徒がいて、三十人いるところを例えば三人で見れるとしても、一人いたら、やはりこれはゼロというわけにはいきませんので、本当に、ここら辺の支援できる体制というのがすごく難しいところだなというふうに思います。

 こうした状況において、二つの大切な課題があると私は認識をしております。

 まず一つは、これは最も望ましい姿だと思うんですが、言葉もわかって教員免許を持っているという人材を確保すること。例えば、市立小中学校に編入する児童生徒に対して、学校生活で日常に使うサバイバル日本語というものを習得をしながら学校に適応できるように指導するという、バイリンガル支援者による初期適応指導というのを実践していますが、これがまず一つ望ましい姿ですね。教職員免許を持ちながら、多言語も話せる。二つ目は、外国人児童生徒をどのように指導していいかわからない、外国語を流暢にしゃべらない先生方へのサポート。この二つの大きな課題があると思います。

 まず一つ目について伺いたいと思いますが、バイリンガルであり、かつ教職員免許を持っている。これは、浜松の教育委員会に伺いましたけれども、この人材の確保が本当に難しいんだ。本当にこの人材が欲しいんだけれども、なかなかいない。たとえ予算があったとしても、そういう優秀な人材は民間会社にどんどんとられてしまうし、確保が難しいというふうに聞いています。

 ここら辺の難しさを解決する方法は何かないか、お伺いをしたいと思います。

高橋政府参考人 委員御指摘いただきましたように、日本語の指導が必要な児童生徒の教育に携わる教師がポルトガル語や中国語などさまざまな言葉のバイリンガルである、これが非常に望ましいことですが、一方で、こういった人材を確保することは容易ではないと考えております。

 このため、文部科学省におきましては、日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校への、バイリンガルである、教員免許はありませんが、日本語指導員や母語支援員の派遣などを支援する補助事業を実施しております。また、先ほど申し上げました多言語翻訳アプリ等ICTを活用した取組に対して、今後重点的に補助をすることとしております。

 さらに、日本語指導員や母語支援員の質の向上に資するよう、学校における教科学習や生活指導上の基礎的な知識などを習得できる研修などのモデル化を図る事業を実施し、こういったことによって取組を進めてまいりたいと考えております。

源馬委員 それでは、二つ目の課題の方を伺いたいと思います。

 外国人児童生徒の教育を担う学校の先生、教員の養成や研修のモデルプログラム開発事業というのをスタートしているというふうに思いますが、日本語指導を担当する教員の専門性を向上させるものであるという説明を事前にレクで受けました。これについての中身をもう少し詳しく教えていただきたいと思います。

高橋政府参考人 外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラムは、学校において日本語指導等を担当する教師、支援員の専門性の向上のため、大学、教育委員会、学校等における研修等に資する体系的なモデルプログラムを開発、普及を行う事業であり、公益社団法人日本語教育学会に委託して実施をしております。

 この事業は平成二十九年度から三十一年度の三カ年にかけて行うことを予定しており、平成二十九年度においては、研修等の実態調査や、教師、支援員等に求められる資質、能力の検討を行い、モデルプログラム試案を作成したところであり、平成三十年度においては、モデルプログラムの試行や分析、評価を行うとともに、具体の研修事例の収集をあわせて行うこととしております。

源馬委員 御答弁ありがとうございます。

 これは恐らく皆さん共通の認識だと思うんですけれども、やはりマンパワーがどうしても必要だというふうに思います。これは学校現場の先生のお話を聞いても、学校でただ教えるだけではなくて、例えば、外国人児童生徒に給食の食べ方まで教えなきゃいけない。上履きをどこで脱いでどこで履くか、履き方まで教えなきゃいけない。非常にこれは困難であるというふうに聞いております。

 また、保護者も、始業式ですとか終業式というものの意味も理解できずに、一々学校の先生が保護者に電話をして、実はきょうは始業式で生徒は来なきゃいけないんですよ、こういったことも伝えるという、無駄と言ってはあれですが、本来業務以外の業務に非常に時間をとられるということです。

 私は、前回の質問のときにも取り上げさせていただきましたが、欧米の学校では教員以外のスタッフが充実をしていて、日本と比べればすごい数のスタッフがいて、こうした授業以外のことはそのスタッフに任せられるということが充実しているから、欧米ではスムーズに指導がいっているんだというふうに思います。最近見る数字で、教員一人当たりの児童生徒数というのは、欧米と比べて日本と遜色ないじゃないかというような議論もたまに散見しますけれども、それは教員以外のスタッフがいるから向こうはできている、やはりこういう認識に立たないといけないというふうに思います。

 そこで、教員の人数をふやすというのはなかなか難しい、こういった現状の中で、教員以外のスタッフをふやす、これをぜひ今後も更に推進させていただきたいと思いますが、この点について、大臣の御所見と今後の意気込みをぜひお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、日本語指導が必要な児童生徒数というのは増加をしておりますので、日本語能力に応じた特別の指導を行うための教員を安定的に確保することは必要である、こういうふうに思っております。

 また、今委員から御指摘のあったように、欧米に比べますと、よく我々は教職員といいますが、教員と職員のバランスというのが欧州に比べると非常に低いというのが日本の特徴であるということで、そのこと自体は、教員の働き方改革の中で、実際に先生がやるべきこと、やった方が望ましいこと、そうでないことと分けてやっていこう、こういうことにしているわけでございます。

 日本語指導が必要な方に対する特別な指導のために必要な教員、これは、平成二十九年の三月の義務標準法の改正によりまして、三十八年までの十年間で対象児童生徒十八人につき教員一名の定数を措置する、こういうふうにしております。

 また、平成三十年度においては、引き続き、公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業において、日本語指導員及び母語支援員の派遣などの地方自治体が行う取組を支援していくとともに、日本語指導が必要な児童生徒等に対する先進地域での実践事例を集約そして普及するポータルサイトを抜本的に強化する。平成二十三年に作成しておりますが、自治体、学校向けの外国人児童生徒の受入れの手引について、最新の情報を踏まえて改定をするということをしておるところでございます。

 こういった施策を総合的に推進することによって、教員の負担軽減を図るとともに、日本語指導が必要な外国人児童生徒や親御さんも含めて、しっかり対応していきたいと思っております。

源馬委員 ありがとうございます。

 大臣の思いを聞かせていただきまして、ぜひこれは進めていただきたい。これはあくまでも、外国人のためではなくて、日本の先生のためだったりとか教育現場のため、あるいは一緒に学ぶ日本の子供たちのためにもなりますので、ぜひお願いをしたいなというふうに思います。

 外国人児童生徒の問題についてはまた引き続き取り上げさせていただきたいと思いますが、最後に少しだけ、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。

 今大臣の御答弁の中に出てきましたポータルサイトは、事前のヒアリングで伺いましたところ、何かそのサイトの中でリンクがもう既に切れちゃっていたりとか、今なかなか使用にたえない状況というお話も伺いました。しっかりこれはリニューアルして、学校の先生や関係者が使えるようなものにぜひ見直していただきたいと思う、それが一点。

 あと、外国人の中で、帰国や入国を繰り返したりとか、外国人学校と公立小学校間の移動を繰り返さざるを得なくて、母国語も日本語も十分に身についていないという、いわゆるダブルリミテッドと言われている子供たちもいるというふうに聞いていますので、この対策もぜひしていただきたいということを要望させていただきたいというふうに思います。

 続きまして、今度は高校生の修学支援について伺いたいと思います。

 平成二十六年の四月から公立高等学校に導入されました高等学校就学支援金制度において、授業料が履修単位により決定される高校、つまり定時制や通信制の高校に対する就学支援金は、年間で三十単位、四年間で七十四単位という卒業に最低限の単位の部分が支援をされる、その単位数に応じて支援をされるということが決まっているというふうに思います。

 これは一見理屈が通っているように思うんですが、こうした、所得の上においても、また、定時制に通う、あるいは通信制に通う層の子供たちというのは、これは一般的に言って、例えば私立学校の有名校に通う子供たちに比べて学ぶ意欲というのは平均的に低いんではないかなというふうに推測をされるわけです。

 しかし、静岡県の例でいいますと、定時制や通信制に通っている子供たちの平均の取得単位数というのはちょうど九十単位なんですね。最低が七十四でも九十単位履修している。やはり、これは学ぶ意欲があるんじゃないかなというふうに思うわけです。

 しかし、上限が七十四単位になっていると、経済的に厳しいと、本当は学びたいけれども七十四にしておこう、ぎりぎりにしておこう、こういった例もありまして、静岡県も実はこの単位数の見直しをしてくれと要求しているわけですが、このことについてぜひ御見解を伺いたいというふうに思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 高等学校は学年制と単位制の併用が基本であり、高等学校等就学支援金においても、例えば公立高校の全日制であれば、年収約九百十万円未満の世帯の生徒に対して、学年ごとに十一万八千八百円、三年間で三十五万六千四百円を支給しております。

 他方、学年制をとらない単位制の高等学校も制度上認められており、履修した単位数に応じて授業料を支払うこととなっている単位制高校も見受けられます。この場合は、三年間の先ほどの三十五万六千四百円を、学教法施行規則の卒業に必要な七十四単位で除した、一単位当たり四千八百十二円の就学支援金を履修に応じて支払う、こういった仕組みになっております。

 こういった公立高校の全日制の例であれ、学年制であっても定時制であっても、在学中の支給額の上限は同じになっているというのが現在の仕組みでありまして、均衡を保つ観点から、これを変更することは困難ではないかと考えております。

 ただし、文科省といたしましては、七十四単位を超える履修単位について、授業料を生徒から徴収せず、生徒負担が生じないような配慮を都道府県にこれまで求めてきたところでありまして、こういった配慮は今後も要請してまいりたいと考えております。

源馬委員 ぜひ、特に定時制や通信制に通う、一般的に学ぶ意欲がそのまま放っておくと低いんじゃないかと思われる、そういう生徒たちには、高校の単位を与えるということではなくて、学ぶ意欲をどんどん上げてもらうことができるように配慮をお願いしたいというふうに思います。

 最後に、またこの就学支援についてなんですが、これまで、平成十七年度から、日本学生支援機構が奨学金事業について都道府県に移管をされたというふうに聞いています。これも、各都道府県でいろいろ困っているところがあります。所得が低い世帯において、例えば、身内や知人に頼ることがなかなか難しい、そういう人もいない、連帯保証人を立てることができずに奨学金の申請を諦めてしまうという生徒もいるというふうに聞いています。

 日本学生支援機構が取り組んでいるいわゆる大学生に対する奨学金では、機関保証制度、保証人を立てられない人に対する機関保証制度というのがありまして、実は四六%の人がこの機関保証制度を利用しているとレクのときに伺いました。

 一方で、都道府県ではこの機関保証制度を利用できないわけですね。各都道府県がいろいろ、国の、日本学生支援機構の機関保証制度を使いたいと言っても、それがなかなか認められなかったり、それぞれの都道府県で同じような仕組みをつくるというのがなかなか難しかったりするという現状がありますが、都道府県の所管だから国は知らないということではなくて、もともとは国でやっていたということもありますから、子供の教育をつかさどる文科省として、この機関保証制度の実現のこれからの見通しというか、何か知恵を絞れないか、ちょっと所感を最後にお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 高校生に対する奨学金事業は、平成十七年度以降、順次、日本学生支援機構から都道府県に移管され、現在は都道府県の単独事業として、都道府県の判断と責任により実施をされているところでございます。そして、今委員から御指摘いただきましたように、都道府県段階で機関保証制度を導入している県はないと承知しております。

 具体的な事業の詳細は都道府県によってさまざまですが、例えば、連帯保証人の扱いとして、ある県では、保護者と原則四親等以内の親族、この二名を求めるものの、これらの者がいない場合には特例を認めているといった県もございます。中には、連帯保証人を求めないといった扱いをしている県もあるようでございます。

 冒頭申し上げましたように、基本的には各都道府県の判断と責任により行われる事業でございますが、文科省としては、このような連帯保証人の取扱いなどについての情報を収集、提供、そして共有しながら、各都道府県において奨学金事業の改善が図れるような、そういった支援はしてまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございました。終わります。

冨岡委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。平野博文君。

平野委員 民進党、無所属の会の平野博文です。

 きょうはもう朝からずっとですから、また長い本会議でしたから、随分疲れておると思いますので、エッジのきいた質問になるかどうかわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。

 午前中からいろいろ同僚議員また質問者から出ましたが、やはりこの前川氏に対する公開授業への問合せ問題というのは避けて通れませんし、これはやはり大変大事な問題だと思っています。

 そういう視点で、それを中心にやりたいわけですが、一つ、きょうは財務副大臣もお越しいただいていますので、最初に、わざわざ来ていただきましたので、その点について少し簡単に質問をしたいと思っています。

 ちょうど一年前に、文科省は、天下り問題を含めて大きな課題が発覚をしたわけです。そのときの調査の過程で、再就職監視委員会に対する隠蔽や公文書の捏造ということが判明した事案がございました。

 省を挙げて事実を解明する、再発防止に追われたわけですが、その当時、やはり文科省としては、これは大変なことになった、こういうことで、私は大臣のもとに、官房長をトップとした、弁護士等々外部の有識者を入れて調査班を設置をした、こういうふうに記憶をいたしておりまして、全職員の調査、退職者まで含めて事態の究明をしてきたと私は認識をいたしております。

 文科大臣に伺いたいわけですが、その当時の調査体制というのは、この問題への国民の関心が非常に高い、文科省としての組織に向けられた厳しい目を念頭に置かれたものと理解をいたしておりますが、この観点から調査体制をつくったかどうか、イエスかノーかでいいですから、お答えをいただきたいと思います。

林国務大臣 昨年一月の再就職等監視委員会の調査報告書においても再就職等規制違反行為の隠蔽について指摘をされましたが、やはりこうした行為は極めて悪質であって、決して許されないものであり、処分をした、こういうことでございまして、当然それは我々自身もそういうふうに思っていたということでございますが、それに対する国民の皆様の目を、非常に厳しいものがあったというふうに私も、そのときはここにおりませんでしたけれども、そういうふうに認識をしております。

平野委員 一方、今般の森友文書の改ざん問題、これについて、財務省、きょうは副大臣お越しで、来ていただいておりますけれども、外部の第三者を入れずに、庁内のみで調査を行っている、こういうことであります。官房長が責任者ということになっているようですが、どのような体制で調査をしている、このこともオープンにしていないし、職員への聞き取り内容、調査の範囲などによって、どのように行っているかという中間報告もしない。

 昨年の文科省の天下りの調査のやり方に照らして、財務省のこのような内部での調査、このことについて、私、文科大臣、立場は違いますが、文科省は外部の有識者を入れて、外部からの人の目をそこに入れて職員調査をした、財務省は官房長以下庁内の人間だけで、それも誰がどうやっているかということも明らかにしない、こういう調査で解明をしようとしていますが、同じ政権内の閣僚として、財務省のやり方については、文科大臣、どう思われますかね。

林国務大臣 先ほど委員からお話がありましたように、再就職等問題調査班というのを設置しまして、外部有識者である特別班員や調査班員として弁護士の方々にも参画をいただいてやったということでございまして、やはり我々としては、先ほど委員からもお話があったように、このこと自体あってはならないことであると同時に、やはり文科行政に対する信頼というものを回復するために徹底的にやる必要がある、そういう認識だった、こういうふうに思っております。

 財務省でどういう調査が行われるべきかについては、なかなかお答えしにくいところでありますが、後で副大臣からもるる答弁があるんだろう、こういうふうに思いますけれども、既に司直の手に入っているということは考えながら体制を考えていかなければいけないのかなというふうに側から眺めているということでございます。

平野委員 いやいや、私はやはり、文科省の問題も問題でありましたけれども、今回起こっている、財務省の起こした公文書の改ざんという、ある意味、文科省より、国民の目線から見たら、より厳しい目線が逆にあるんですよ。そういう事案についてでも相変わらず庁内で処理する、庁内で見る、こういうことであります。特に、作成済みの公文書の改ざん、こういうことでありまして、社会的にも非常に大きな、国民に対しての信頼を失った事案については、私は、過去ないぐらい大きな不信感を招いているというふうに実は思っております。

 したがって、私、なぜ林大臣に聞いたかというと、これはやはり同じ政権の大臣という立場で見たら、そんなことでいいのかと言うぐらいやはり強く主導する、閣議了解じゃありませんが、閣議の後の懇談会でも、それじゃだめだよと言うぐらい、やはり林大臣、言わなきゃいかぬと思いますよ、それだけ国民にさらされておる問題点というのは大きいと思いますから。

 そういう意味で、きょう、副大臣、来られております。文科省のケースと比べて、第三者も入れない、恐らく理財局や近畿財務局の職員以外の全職員調査も行わない、調査手法、過程も公表しない、こういう調査手法に対しては、私は、異常ではないか、明らかにバランスを崩していないか、こういうふうに思いますが、副大臣、答えにくいかもわかりませんが、見解をお述べいただけたらと思っております。

木原副大臣 まず、財務省内で発生いたしました決裁を得た行政文書について書換えを行うというような事案につきましては、これは極めてゆゆしき事態でございまして、政務三役である副大臣として、私としても、深くこれはおわびを申し上げなければいけない、そのように考えております。

 今委員御指摘の第三者による調査ということでございますけれども、多少意味合いが異なるかもしれませんが、現在、今、林大臣もおっしゃっていただいたように、捜査当局の捜査を受けているというところでありまして、今後とも進行中の捜査に全面的に協力をしてまいるということを今申し上げるしかございません。調査の客観性というものを担保すべきでもありまして、また、並行して財務省としても、できる限り速やかに説明責任を果たすべく、それとはまた個別の調査を進めていくということもさせていただいておりますので、また報告についてもできるだけ速やかに行っていきたい、そのように考えております。

平野委員 いや、今司直の手にある、こういうことですから、だからといって、この調査をオープンにしない、また内部でやっている、これはちょっと違う。司直というのはあくまでも刑事捜査という考え方であって、刑事処分するためにどういう捜査をしているか、こういう視点であります。何かそこがごちゃごちゃにされているような気がしてなりません。

 あくまでも、検察が云々というのは、刑事処分に該当するかどうかというこの捜査をしているのであって、我々が求めているのは、究極的には国民に対する説明責任をどう果たしているか、このことを我々国会が言っているわけで、我々は検察ではありません。国民がやはり知ろうとしていることに対して客観的に調査をする必要があるんじゃないですか。司直を常に隠れみのにする、そこの違いが私は明らかにあると思うんです。

 刑事処分するかどうかの捜査をしているんですよ。我々は違うんです。国民が疑問を持っている、不信を持っている、そのことに対して、改ざんをしたこの事実に対して、なぜしたのか、このことをしっかりと説明をする、これが我々立法府に与えられた、また我々が国民の代表として国会に来ている責務なんだ、こういうふうに思われますので、やはり国民に対する説明責任はしっかり財務省としてはしてもらいたい。御答弁ありますか、この点だけ指摘にしておきましょうか。御答弁されますか。指摘だけしておきます。

 副大臣、ありがとうございました。副大臣、結構ですよ。済みません、わざわざ来ていただきまして。

 さて、本題の前川さんの公開授業への問合せについて御質問をしたいと思います。

 事案の整理として、私、この間含めて、参議院あるいは衆議院でも、きょうも議論がございました、ダブってもいけませんから少し整理をしておきたいと思いますが、今回の名古屋の教育委員会に対しての質問状が違法なものかについての案件は、文科大臣の見解については、本件は地教行法に基づいての法令調査である、教育現場への不当な介入ではないという見解でありますが、それはそれでよろしいでしょうか。イエス、ノーで結構です。

林国務大臣 地教行法の四十八条また五十三条でやっておるという説明をるる今までもしてきております。

平野委員 次に、このような調査を行った理由について、文科省の見解でありますが、要約すれば、前次官としての影響力があり、教育内容についての個人的見解が正しい解釈と受け取られるおそれがある。違法行為で停職となった者であり、中学生への授業には教育的配慮が必要なんだ。一部に不適切とも考える方もおられるので、学校への信頼確保に配慮が必要。こういう三点のことを含めての理解、この点でよろしいか。イエスかノーかで結構でございますが、お答えいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで国会の場においては、以上の三点を理由として答弁をさせていただいております。

平野委員 このことで大臣の見解は、適法だと思うけれども誤解を招きかねない、こういう表現の配慮が必要だったということであります。あらかじめ政務三役に相談すべきであった、こういうことで御答弁をされているように私は思っております。

 なお、法令調査で行ったと言っておられるわけですが、法令調査が五十三条に規定があり合法であるということと、法令調査として行われた今回の事案が合法、適切であるというのは全く別の問題だと私は思うんですが、こういう視点に立って質問いたします。

 今までの答弁云々を聞いておりますと、そこが割合ごちゃごちゃになって答弁されている、こういうふうに思うので、法令調査でやっておりますということでありますが、合法、適切であったかどうかというのはまた別の問題なんだ、こういう視点も私はしておかなければいけないと思いますし、また、そのことを切り離して答弁をしてもらいたい、こういうふうに思っております。

 本件は、適法な法令調査の皮をかぶっておっても、私には、教育委への質問内容、質問の行為の内容、様態は、やはり明らかに圧力、前川氏への攻撃を意図しているように思えてなりません。

 大臣的に言えば、誤解を受けかねないという言葉でそこを言っておられるのかもしれませんが、法令調査であることを前提にしても、微に入り細に入り個人の資質をあげつらうという本件の質問状は、教育への不当な介入と疑われても私は当然である、こういうふうに思うんです。

 なぜ不当な介入でないのか、明確な見解をいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員から御指摘いただきました三つの理由によりまして、これらを考慮した上で指導、助言、援助を行う必要があるかを判断するために、今回は、法律の規定に基づき、授業の内容等についての事実確認を行ったものでございまして、先ほど申し上げた三つの理由というのは、私どもとしては、それはいずれも調査をするに足る理由と考えておりましたので、そういう意味で、法に基づいて適切に行われたと答弁をしていたわけでございます。

 ただ、このような事実関係の確認を行うに当たっては、教育現場において誤解が生じないように十分留意すべきことは当然でありまして、そのような観点から、今回、表現ぶり等について十分留意すべきであったという注意を大臣から私どもいただきましたので、それについては真摯に受けとめて、今回の事案を踏まえ、今後、教育現場に対してはより一層丁寧な対応に努めてまいる所存でございます。

平野委員 いや、もう高橋局長がそういうことを言わざるを得ないところに追い込まれているんだろうなと私は思いますよ。

 この質問状、メールで送られてやりとりしているじゃないですか。これは行政文書じゃないですよ、こんな文書を見たら。こんなもの、文科省、職員が今までこんな文書で公開質問状なんて書きましたでしょうか。

 高橋さん、ほんまにこれは文科省の文書ですか、質問状。どうですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 この十五項目の質問文書でございますが、担当課において作成し、それを課長と私がチェックして、最終的に私が決定を判断してございますので、文科省の文書ということでございます。

平野委員 文科省の文書にしては、ひどい文書だと思いますよ。そういう文科省の文書なんでしょう。だとしましょう。

 そうすると、この文書を作成して調査をするということについては、決裁手続がこれは要りますわな、普通。省議か何かにかけるんでしょうか、大臣まで上げるかどうかは別にして。省議をかけて、本来、決裁をとって、これは、法令に照らして調査をするということは、決裁を普通はとりますよね。この決裁書はあるんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事案につきましては、担当課から上がってきた文書を私の方で最終的には確認をして決定をいたしました。この確認については、いわゆる起案文書を回した文書での決裁という形はとっておりませんが、担当課との相談の中で決定したということでございます。

 なお、一般論として、文部科学省が必要に応じて地教行法に基づいて教育委員会に対して問合せや事実関係の確認を行うことは日常ございますが、その問合せや事実確認を文書決裁という形で行うか、あるいはこういった口頭の了解のような形で行うかについては、当該事案の内容などを踏まえつつ個別に判断するというのが通例でございます。

平野委員 そこがちょっとおかしいんだよね。

 地教行法五十三条に基づく大臣の権限というのは、行政決裁規則によって初等中等局長高橋さんに委任されておるのかもしれません。局長ないし原課はこの権限行使として調査たる問合せを行う、こういう説明ですよね、普通は、理屈は。

 大臣の権限を担当課に行使するに当たり、事実として、局長のみの確認で、行政の機関決定として決裁手続をとらない、行政文書も残さない、こういうことがあるんですか。

高橋政府参考人 先ほど、ちょっと私、少し説明が不足したかもしれませんが、まず、経緯につきましては、教育課程課の課長補佐が作成し、その文書について担当課長がチェックし、それを更に私がチェック、確認をしたということで、一応、担当課長と私で確認をしております。ただし、局議のような形で合議の会議などを開いたものではございません。

 それから、具体的な決裁の形につきましては、当該事案の内容などを踏まえつつ個別に判断するものと考えております。

平野委員 文書決裁の規則の読み方、午前中にも御議論があったと思いますが、定め方、これについては、文部科学省の行政文書管理規則第十条に何と書いてあるか、局長、読んでみてください。

高橋政府参考人 第十条、文書主義の原則でございます。「職員は、文書管理者の指示に従い、法第四条の規定に基づき、法第一条の目的の達成に資するため、文部科学省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに文部科学省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。」このような規定でございます。

平野委員 この文書がないということは、文科省自身は、これは軽微な案件だ、こういうふうに認識しているんでしょうか。私は、これはあっちゃならぬことだと思っていますよ。

 特に、文科省内部の連絡とか最初の電話の問合せとか、そのレベルだったらいいんですが、二回もこれは回答を求めているんですよ。そこまで求めなきゃならない行政文書、法令調査に基づいてやるんですよ。にもかかわらず、決裁をとってやらない。この認識はどうなんでしょうか、大臣。

林国務大臣 先ほど局長が答弁いたしましたように、まず設置法というのがございまして、所管というのが定められておって、また、今委員からお話がありましたように、文書決裁規則というものがございますので、そういうルールに従ってやるということで、今回、今説明があったように、局内でやるということでございまして、その局内において、決裁文書という形をとるかどうかについてはケース・バイ・ケースだという説明でございました。

 私は、最初に報告を受けたときに、それは法令としてそうなんだけれども、与党の先生からもいろいろなお問合せ等々があったということであるから、法令で決められているのとは別に、だから法令上違反しているという意味ではないですけれども、やはりホウレンソウ、報告、連絡、相談ということはあってしかるべきではなかったかという注意をしたところでございます。

平野委員 きょうは法制局、来ていますかね。来ていませんか。法制局、来ていない。

冨岡委員長 法制局は呼んでいません。

平野委員 呼んでいない。ごめんなさい。

 法令に基づく大臣の権限の行使に当たっては、機関として何らかの決裁をせず、決裁文書も残さないという事務処理は、本当に、法制局でどうなのかということを問おうと思ったんですが、ちょっと来られていないので、私、ちょっと確認できないのでごめんなさいですが、しかし、実際問題として、軽微な案件がやはり日常業務処理にはあるという、これは私はあると思うんです。事実行為としての問合せは私はあってしかるべきだと思うし、これは当然だと思うんですが、資料の提供をお願いする、こういうのは当然あっていいんですよ、ただ、あくまでも事実行為なんですよ。法的には、大臣の権限の調査と位置づけないということでお願いをし、報告をもらうんですよ。

 今回は違うでしょう。法律にのっとって調査をしたんでしょう。そうじゃないんだったら言いませんよ。法令にのっとって、五十三条にのっとってやったと言うから、私、あえて質問しているんですよ。そうじゃない、通常の問合せなんだということだったらいいんですが、ずっと答弁されているように、法令調査だと言うから、きちっと残しなさいよ、こういうことなんですよ。

 それはケース・バイ・ケースで、残すか残さないかは原局の判断だ、こういうふうに解釈しておられるのか、確認したいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、まず最初に電話で問合せをしております。そして、資料をいただいて、その資料に関して今度はメールでの問合せをしておるわけですが、最初の電話の問合せも、メールの問合せも、いずれも、根拠につきましては地教行法五十三条に基づく調査、そのような位置づけになっておりまして、電話の場合もメールの場合も、基本的には事実確認を行うものという認識でございましたので、特段、局議を開くとか文書による決裁を残していない、通常の、担当課から局長に相談があって、そこで局長が判断した、そういうような手続にのっとったものでございます。

平野委員 いや、要は、いずれにしても、国会で問題になったから、法令調査という後づけをしているんですよ、これ。それで逃げているんですよ。

 ここのところはやはり、マージャンは完全先づけじゃないといかぬですよ。後づけなんというのは何でもありになるんです。まあ、マージャンと言ったら語弊がありますな。

 そういうことなんです。後で幾らでも理由をつけられる。これをやるといかぬものですから、きちっとしたルールにのっとって、その足跡をやはり決裁として残していくんですよ。これが正しいやり方なんです。それが、安倍政権にとったら、あちこちでいろいろなものが出てきたんですよ。

 したがって、私がなぜこういうことを言うかというと、法令調査でやる、これは大事なことだと思うし、大臣の権限を原局がそれにかわってやるんですからいいんですが、ただ、やるについては、局長が勝手にやれるわけでもないんですよ。担当課長が勝手にやれるわけでないんですよ。きちっとした決裁手続をとってやる。こういうことが、とったというんだったらそれでいいですけれども、とった割には中身のひどい質問だと私は思いますよ。

 なぜ、前川さんが出会い系バーへ行ったとか云々という、こんなことまで聞かなきゃならないんですか。一旦そういう前科があったら、未来永劫、その人はそういうところに立ったらいかぬのですか。

 決して私は前川さんを擁護しているわけでないんです。私は前川さんの性格を知っていますよ、私が大臣のときの官房長ですから。気骨のある男ですよ。だめなものはだめ、曲げない、政治の圧力に屈しない、それが公僕としての仕事なんだ、官僚としての国民に対する責務なんだ、そういう気骨のある男ですよ、あの男は。

 それを、そういう事案のあった人をなぜ授業に呼ぶんだ、こういう質問をするというのは明らかに介入ではありませんか。呼ぶ呼ばないは、現場の、これも法律で定められていますよ、学校長の責務においてやるんですよ。それを、なぜ呼んだんだ、どういうことだと。これは明らかに私は、大臣、介入だと思いますが、その辺は介入ではありませんか。

林国務大臣 私は平野先生と違いまして、着任したときに既に御退官というか、されておられましたので、今、前川氏についてはそういうつき合いはなかったわけですので、なかなかそういう判断ができにくいわけでございますが、今回の事案については、法令に基づいてやってきたことであるということを累々申し上げてきたところでございます。

冨岡委員長 平野委員に申し上げます。

 時間が来ておりますので。

平野委員 はい。もう一言、二言で終わります。

 官房長、初中局長、文科省の職員に私は伝えたい。今回の事実がどこにあるか、私にはまだわからぬけれども、文科省の職員は、みずからの職務に照らして、常に正しいと信ずる仕事をしてもらいたい。国会の質問や資料要求で忙しい、これは当然申しわけないと思うけれども、だからといって、常に恥じない仕事をしてほしい。圧力に屈しないで、本来の本分をやはりやってもらう文科省の職員、幹部であってもらいたい。このことだけを強く求めて、私の質問を終わりたいと思います。

 終わります。

冨岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 三月二十八日の当委員会の冒頭、林芳正文部科学大臣から、名古屋市立中学校の総合的な学習の時間の授業で行われた講演の内容に対し、文部科学省が調査を行った件に関する発言がありました。

 文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市立中学校の授業で講師を務めた経緯の報告と録音データの提供を文科省が名古屋市教育委員会に求めたという問題で、三月十六日、市教委は記者会見を行い、文科省のメールは前川氏に講師を頼んだ理由を繰り返し聞くもので、講師に適格ではないと文科省が考えていると受け取れる文面だったと述べています。

 三月十六日、院内で野党合同ヒアリングが行われた際、外部からの問合せについて、政治家からかどうかの私たちの質問に文科省は答えませんでしたが、前回の委員会でも林大臣から、赤池誠章参議院議員、池田佳隆衆議院議員からであったと発言があったとおりです。

 教育現場の教職員からも、授業の内容など教育課程の編成権は各学校にあり、本来、文科省は不当な介入から学校を守るべき立場です、その文科省が各学校の授業に介入し、圧力をかけるなど、憲法と教育基本法が禁じている国家権力による教育内容への不当な支配そのものであり、許されないなど、非難の声が次々と私のところにも寄せられております。これは行政による教育への不当な介入というゆゆしき問題です。

 そこで、最初に、私は、そもそも憲法と教育基本法に照らして教育行政はどうあるべきなのかについてただしたいと思います。

 林大臣は、三月二十三日の参議院文教科学委員会の委嘱審査で、不当な支配について、「法律の趣旨にのっとり、その定めるところにより適正に行われる教育行政機関等の行為は不当な支配とはならない」と逐条解説の該当部分を引用され、「地教行法に基づいて今回行った調査は教育基本法に規定する不当な支配に当たるものではない」と述べられました。

 そこで伺いますが、林大臣は、法律に基づく教育行政機関の行為は全て無条件で不当な支配には当たらないとお考えになっていらっしゃるんですか。

林国務大臣 教育基本法第十六条第一項に規定する不当な支配とは、国民全体の意思を代表するものとは言えない一部の社会的勢力、政党、官僚、財界、組合等が党派的な力として教育に不当に介入してくることをいうわけでございます。

 このため、論理的には、教育行政機関が行う行政でも不当な支配に当たる場合があり得るわけでございますが、法律の趣旨にのっとり、その定めるところにより適正に行われる教育行政機関の行為は、不当な支配に当たることはないというふうに考えておるところでございます。

畑野委員 そこで、もう少し深く考えていきたいんですが、国家権力と教育との関係について、憲法や教育基本法の重要な解釈を示した判決に、一九七六年の旭川学力テスト事件最高裁判決があります。

 大臣に御紹介いただいたものと同じ本だと思うんですが、元文部科学審議官田中壮一郎氏監修の「逐条解説 改正教育基本法」の百八十八ページにある旭川学力テスト事件最高裁判決の抜粋部分、その後半、どのように書かれているか、御紹介いただけますか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の箇所について読み上げさせていただきたいと思います。

 思うに、憲法に適合する有効な他の法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為がここにいう不当な支配となり得ないことは明らかであるが、上に述べたように、他の教育関係法律は教基法の規定及び同法の趣旨、目的に反しないように解釈されなければならないのであるから、教育行政機関がこれらの法律を運用する場合においても、当該法律規定が特定的に命じていることを執行する場合を除き、教基法十条一項に言う不当な支配とならないように配慮しなければならない拘束を受けているものと解されるのであり、その意味において、教基法十条一項は、いわゆる法令に基づく教育行政機関の行為にも適用があるものと言わなければならないと記載されております。

畑野委員 御紹介いただきましたのは、私のきょうの資料にも載せさせていただいております。

 そこで、文部科学省もこの判決文の立場だと思いますけれども、林大臣、確認をさせてください。

林国務大臣 御指摘の最高裁判決は、旧教育基本法の第十条一項について、教育行政機関が法律を運用する場合においても不当な支配とならないように配慮しなければならないとし、そのような意味で、法令に基づく教育行政機関の行為にも適用がある、こういうふうに述べているものでございます。

 論理的には、教育行政機関が行う行政でも不当な支配に当たる場合があり得るものと考えられますが、法律の趣旨にのっとり、その定めるところにより適正に行われる教育行政機関等の行為は不当な支配とはならない、これは先ほど答弁したとおりでございます。

畑野委員 林大臣も前半のところでおっしゃったとおりです。判決は、不当な支配の主体は問うところではないと言っております。つまり、国も主体になり得ると述べている。

 判決は、教育行政機関が法律の命じるところをそのまま執行する場合は不当な支配にはならないが、例えば何人と決めたら何人ということだけれども、それ以外の、例えば、法律に調査できるとあるのを受けて、国が全国学力調査を行うといった法律を運用して行う行政行為は不当な支配になり得るのだから、そうならないように注意しなければならないということを言っているわけです。大臣が、法の趣旨を踏まえて行う行政の行為は不当な支配にならないと、法の趣旨を踏まえてと限定をつけられるのもそのためだろうというふうに思うんです。

 要するに、行政は、幾ら法律に基づいた行政行為でも、教育への不当な支配とならないことが要請されている。逆に言えば、不当な支配となる行為は、どんな法律に基づく形式をとってもだめなんですということなんですね。

 そこで、文科省に伺いますが、「教育は、不当な支配に服することなく、」というのは、旧教育基本法第十条第一項にあって、現行の十六条にも引き継がれているわけですが、この規定はどのような歴史的な教訓から導き出されたのでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 旧教育基本法制定時におきまして、この年は帝国議会でございますので、帝国議会における政府答弁によりますと、「不当な支配に服することなく、」という文言については、従来、超国家主義的あるいは軍国主義的なものによって教育が動かされるということがあったことから特に規定されたものであるという旨の説明がなされております。

畑野委員 そういうことです。こういう歴史の教訓に基づく原則なのだから、真剣に守る努力が求められています。

 さて、今回、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、地教行法第五十三条に基づいて行われた調査が問題となっています。

 林大臣は、三月十六日の記者会見で、例えば、学校の教育活動が法令に反している、学習指導要領に違反するような教育内容となっている、特定の児童生徒に不当に不利益が及ぶような扱いがあるという可能性が認められる場合に、個別の学校の活動について文科省が問合せをすることは一般的にあると述べられております。

 この規定に基づく過去の事例はどのようなものがありますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 保護者や学校関係者からの問合せや報道等を契機として、文部科学省から教育委員会に対し個別の学校の教育活動について問合せをすることは、一般的にはあることでございます。

 具体的な事例を幾つか申し上げますと、例えば、高校の数学の学習評価が不適切に行われているとの匿名の保護者の方からの情報提供を受け、これまでの経緯や今後の対応等について確認をした事例、また、高校の特別活動の授業で使用した教材の内容に偏りがある旨の報道機関からの情報提供を受け、教材の内容等について確認した事例、さらに、中学校の理科の実験中に複数の生徒が体調不良を訴えて病院に搬送された旨の報道を受け、授業の内容や生徒の状況、学校の対応等について確認した事例、こういったものがございます。

畑野委員 野党合同ヒアリングでいただいた資料を、きょう二枚目につけさせていただいております。そのことを御紹介いただいたと思います。これ以外に、局長、あるんでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 こういったような問合せをすることは一般的にはございますので、これ以外にもあると思いますが、現時点で私の方が把握しているのは今の三つでございます。

畑野委員 法の五十三条に基づくということで、今わかっているのはこの三つだけということでよろしいですか、現時点で。

高橋政府参考人 現時点で確実に確認がとれているのはこの三つでございます。

畑野委員 資料も見ていただければいいんですけれども、五十三条に基づいてのものは三つしかない。

 文科省から提供された資料を見ますと、いずれも、情報提供がなされた段階で、法令違反や児童生徒に対する不当な不利益が認められる、あるいはその蓋然性が高い場合なんですね。今回のケースについて、法令違反や児童生徒に対する不当な不利益といった事実、蓋然性はどこにあったんですか。

高橋政府参考人 この授業を行った前次官は、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけでなく、本人自身の違法行為により停職相当とされた方であり、また、前文部事務次官という文部科学行政の事務方の最高責任者としての地位にあった者でございます。このような背景を踏まえまして、授業の狙いや内容、前次官を招いた理由や経緯など、今回の件が適切な教育的配慮のもとで行われたものであったかどうか懸念されたため、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十八条に基づく指導、助言、援助を行うかどうかを判断するために、同法五十三条に基づいて調査を行ったものでございます。

畑野委員 いろいろなところで答弁されていますし、大臣も先ほど同僚の委員に御答弁されておりますけれども、結局、文科省の事務方のトップが話す内容というのは、仮に学習指導要領に反した内容でも正しいと受けとめられる可能性があると。仮にの話で、なおかつ、可能性。こんな理由で教育内容に国が介入できるとすれば、客観的な事実などなくても、主観的、恣意的な判断で好き勝手に授業内容に介入できるようになってしまうということじゃありませんか。教育基本法に基づいて行われるべきだと、地教行法五十三条の調査の過去の事例と比べても極めて今回異常だと言わなくてはなりません。

 先ほど、政府は最高裁判決と同じ立場だということを確認いたしました。不当な支配にならないよう配慮する拘束を受けているんじゃありませんか。大臣、どうですか。

林国務大臣 先ほど、判決にそういう旨の記載があることを御紹介をいただいたところでございまして、拘束という言葉は先ほど私は法律の解釈としては使いませんでしたけれども、教育基本法というものがあって、その下にそれぞれの法律があるという意味で、趣旨はそういうことではないかというふうに思っております。

畑野委員 憲法と教育基本法に基づくならば、教育内容に対する国の介入は極めて抑制的でなければなりません。

 今回の調査については、先ほども同僚委員からいろいろ紹介がありましたが、いろいろな立場の方が批判的な意見を述べられております。

 日本教育学会会長の広田照幸氏は、余りにもやり過ぎだと思う、個別に学校に問い合わせるには、法令違反が認められたり、いじめなど子供の教育に悪影響を及ぼすケースだったりする場合で、今回のケースは全く該当しないとおっしゃっておられます。

 馳浩元文部科学大臣も、私も許可を得させていただきましたが、ブログで、執拗であり、圧力、介入そのもの、公教育現場の授業内容に事細かく文科省が介入することは言語道断、民間人である前川さんに過剰反応することは文科省にとってマイナスにしかならないと述べられております。

 自民党の石破茂元幹事長も、あんな講演をやるのはいかぬじゃないかといって、文科省が一体どんなことだと。それはおかしくないですか、そんなことをやり始めたら言論の自由はなくなってしまうと述べておられます。

 今回の発端をつくった赤池議員も、その関与は重大で、その責任を免れないのは言うまでもないんですが、御本人のブログで、文科省が名古屋市教委へ出した詳細な質問書という手法に対しては、誤解を大きく招くもので、やり過ぎだと指摘したと述べられておられます。

 さらに、尾木直樹氏は、赤池議員は自民党の文部科学部会長、池田議員は部会長代理であると指摘した上で、自分が意図せずとも受けた相手が圧力を感じる、これ、パワハラの基本構造とぴったり重なる。林文科相も必要に応じて教委に問合せや事実確認をするのは通常のこととおっしゃるけれども、しかるべき肩書や権威を持ったら、みずからの言動が圧力になる可能性を自覚し、自重すべきと言って、教育基本法の「不当な支配に服することなく、」に抵触しているというふうに指摘をしておられます。

 前川氏は、退職後、各地で講演をされておりまして、私も一昨日、川崎で行われた講演会に参加をしてまいりました。憲法と教育基本法に関する大変すばらしいお話でした。

 前川氏は、昨年来、これまで多くの講演を行っていて、その場その場に応じた適切なお話をされています。私もマスコミ報道を見ました。その実績の中に、法令違反あるいは生徒の不当な不利益となる強い疑いが生じるような事実は何かあるのか、あるのなら具体的に挙げていただきたいと思います。

高橋政府参考人 前川前次官がいろいろなところで講演をしていることは報道等で承知しておりますが、今回は、公立の学校で行ったというのは初めてでございますので、それについては承知をいたしておりません。

畑野委員 それで何か不適切な問題があったという結果ですか。なかったわけでしょう。

高橋政府参考人 学校以外の場での講演については、私から何かコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

畑野委員 そらさないでいただきたいんですけれども、そういうことがあって、そして、今回の授業でそういうことを含めてあったんですか。確認です。なかったとおっしゃっているんだから。確認です。

高橋政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、一般の講演会や、あるいは最近出版された著書の中でいろいろな発言、意見をおっしゃっておられることは承知しておりますが、今回は、あくまで学校で行われた発言ということが、授業ということが私どもとしては調査の対象でございましたので、それについてはコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

畑野委員 答えられないということは、ないということですよ。本当にひどい調査だったとみずから認めたものじゃありませんか。名古屋市教育委員会の方は、個別の指導内容について文科省からの問合せは異例だった、記者会見でこうおっしゃっています。

 調査の結果は、地教行法四十八条の助言でした。その唯一の内容は、前川氏本人の違法行為によって停職相当とされた事実を知らなかったからということのみです。大臣も初中局長も、みずから違法行為を行ったと鬼の首をとったように強調されますが、しかし、文科省が三月一日に名古屋市教育委員会に初めに送ったメールですね、皆さん持っていますが、前川氏が自身の違法行為によって停職相当とされた事実を知っていたかという質問項目はないんです、文言もないんです。二度の追加メールにつけ加えられているんですね。五十三条の調査を正当化する理由を無理やり、先ほどあったように後づけでつくる、こういうことしか考えられません。こんないいかげんな調査の結果があの助言です。全く何の意味もない。教育現場がこんなものに縛られるなど、たまったものではありません。

 伺いますが、この四十八条に基づく指導、助言、援助の法的拘束力はどうなっていますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 地教行法四十八条に基づく指導、助言及び援助は、いずれも非権力的な関与であり、法的拘束力を持たないものとされております。

 指導、助言に従うか否かは相手方の主体的な判断に委ねられております。

畑野委員 お認めになったように、法的拘束力はないということです。

 文化的な作用であるべき教育への指導、助言は法的拘束力はありません。それは、内容の卓越したすばらしさで教育者を感服させるものでなければならないからです。しかし、その内容が今回のようなものならば、文科省の言うことなど聞かなくても構わないということになるわけです。実際、名古屋市教育委員会は、三月十六日の記者会見で、我々は多様な観点を大切にしており、人選が間違っていたとは考えていないと述べておられます。当然のことです。

 私、この問題で最後に申し上げたいのは、今回の調査に当たっては、政治家の関与、文科省のメール検討のプロセス、政務三役への報告内容など、記録が残されておりません。口頭だという報告なんです。事の発端となった赤池議員から官房長へ送られたメールも残っておりません。文科省からは、消してしまったという報告です。特定の授業への調査など、よほどのことがなければやるべきではない業務について、政治家と接触があった場合、その記録をきちんと残すべきです。

 国が地方教育行政に関与する場合、そのやりとりを記録に残し、それが不当な支配に当たるのかどうかを客観的に検証できる仕組みをつくるべきだと思いますが、林大臣、いかがですか。

林国務大臣 今回残っておりましたメール等は、皆様のヒアリング等々にも全て提出をさせていただいておるところでございますが、私、表現ぶりということと、それから、政務三役に報告、連絡、相談すること、二つほど初等中等教育局には注意したところでございますが、こうした今回の事案の経緯を踏まえて、省内の報告、連絡、相談をより密なものとするとともに、教育現場等に対してより一層丁寧な対応を行うように努めてまいりたいと思っております。

畑野委員 憲法と教育基本法に基づいて、教育現場に不当な支配を持ち込むことがないように、二度と繰り返さないように重ねて申し上げたいと思います。

 委員長、この問題で集中審議という議員からの要望があります。私もそうだと思います。これは本当に教訓にしなくてはならないということで、求めたいと思います。

冨岡委員長 理事会に諮りたいと思います。

畑野委員 最後に一言、どうしても質問しなくてはならないことがあるんです。

 あすで三月が終わってしまいます。今、全国の大学で、無期転換を希望しながら雇いどめの不安を抱えるたくさんの非常勤講師、職員の皆さんがいらっしゃいます。文科省は、この間、国立大学法人や大学共同利用機関法人における無期転換への対応状況の調査や、適切な対応を求める通知を出してまいりました。

 こうした実態把握とともに、現場の労働者の闘いが広がり、東京大学や理化学研究所、海洋研究開発機構等で雇いどめ撤回がかち取られています。しかし、東北大学のように、雇いどめを強行しようとしている大学も残されています。このままでは、多くの非常勤教職員が雇いどめされる。国立大学などの無期転換逃れに、文部科学省としてどう対応されるのでしょうか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学法人においては、各法人の自主性、自律性のもとに業務運営が行われることが基本であり、それぞれの職員の雇用形態は、労働関係法令に基づき、各法人が適切に定めるべきものであると考えております。

 文部科学省としても、今お話ございましたように、これまで、無期転換ルールにつきまして、事務連絡や国立大学の学長等を集めた会議等を通じて情報提供や説明を行うなど、改正労働契約法の趣旨を踏まえ、各法人が適切に対応いただくようお願いしてきております。

 今後とも、各国立大学法人におきまして、労働関係法令に基づき適切な対応がなされますよう、引き続き、厚生労働省等と連携しながら、情報提供や制度の説明等を行ってまいりたいと考えております。

畑野委員 しっかりやっていただきたいと思います。もう日がありません。

 あわせて、私立大学の実態把握や対応はどうなっていますか。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 私立大学の雇用のあり方につきましては、労働関係法令に従って、設置主体である各学校法人がその経営方針等に基づき適切に対応すべきものと承知しており、学校法人の自主性、自律性のもとで、厚生労働省の労働基準監督署の監督等を受ける立場であるということから、文部科学省としては、個別の学校法人の労務管理の状況等を把握することは現在行っておりません。

 一方で、私立大学が労働関係法令に従った雇用形態をとることは大切でございまして、文部科学省といたしましては、これまでも、いわゆる無期転換ルールにつきまして、私立大学の担当者を集めた会議等を通じて、厚生労働省と連携して情報提供や説明を行うなど、改正労働契約法の趣旨を踏まえ、各学校法人が適切に対応するよう促しているところでございます。

畑野委員 教育基本法や学校教育法に基づいて、私立大学も公の性質を有する公教育機関なんですね。ですから、実態を厚労省とも協力しながらよくつかんで、ただ垂れ流して伝えるというんじゃなくて、実際にそれが進むようにしていただきたいと思うんです。

 北海道の北星学園大学では、臨時職員の雇いどめは撤回されましたが、給与が月額支給される特任職員は、五年上限に雇用内規が一方的に変更されて、年度末で雇いどめされる。都内のある私大では、これまで更新上限がなく、三十年以上にわたって一年更新を繰り返してきた非常勤講師に対して、一方的に労働契約を変更して、今年度末までに雇いどめをする。

 そして、昨年十二月に質問しましたが、日本大学。新設された学部で、完成年度途中の非常勤英語講師に対する一方的な雇いどめの問題。雇いどめする非常勤講師の持ちこま分を、専任教員の持ちこま数をふやすことで対応すると言っているんですけれども、それじゃ足りなくて、ほかの学部の専任教員にも、一年でいいからと言ってお願いをしている。そして、英語の授業を、学部レベルの英語教授法の資格を持った者は全くいないという民間の外国語学校に委託する計画が出されてきている。

 能力も経験もあり、研究活動を支える非常勤講師を雇いどめすることで、学生の教育環境が悪くなるのは目に見えています。文部科学省が知らぬ存ぜぬでは済まされない。教員の、そして学生たちの教育の質にもかかわる問題だということ、このことをしっかりとやっていただきたいと重ねて申し上げて、私の質問を終わります。

冨岡委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、両大臣の所信に沿って御質問をさせていただきたいと思いますが、まず、鈴木大臣、最近、オリンピックの話題がニュースに全然出てこなくなってしまいまして、かつては新国立競技場が総工費が高いとか、あるいはシンボルマークの盗用だとか、あとは、ボート会場というようなことを地方に移転するかとか、そんなのが毎日のように報道されていた時期もあるんですが、最近余りオリンピックのニュースが出てこないので、国民としては、オリンピックの準備が順調に進んでいるのか、それとも非常に今大きな問題に実は差しかかっているのか、そこら辺もちょっとわからないと思うんですけれども、今の大臣の心境というか、どういうような状況であるのか、御説明をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 いろいろなやるべきことがございますけれども、例えば、新しい国立競技場の建設、これにつきまして、けさも閣議の前に関係閣僚会議を開きました。実際に新しい国立競技場をつくる関係のところから説明を受けましたけれども、順調に進んでいるということであります。私も、先般、新国立競技場を視察いたしましたけれども、順調に進捗しているということです。

 それから、IOCが調整委員会ということで、しばしば東京に参りまして、調整委員会の委員が準備状況全般にわたってチェックをいたしますが、そこにおきましても、準備状況は順調に進んでいるというIOCの評価もいただいているところであります。

串田委員 平昌オリンピックも終わりまして、大臣も非常に興味深く見ていたと思うんですが、その後、日本の選手が戻られまして、いろいろな状況などを聴取されているというような話もニュースで聞いておりますけれども、そういう平昌オリンピックを通じて今度の二〇二〇年東京オリンピックで何か参考になったようなことがあれば御披露いただきたいと思います。

鈴木国務大臣 私、平昌のオリンピックそれからパラリンピック両方に、国会のお許しをいただきまして、行ってきたところでございます。

 大会の視察を踏まえまして、東京大会のことを考えますと、まず平昌はとても寒い、マイナス二十度と言われるぐらいの寒い状況でありましたが、東京はまさにその真逆でありまして、真夏に開催されるということで、こうした気候、暑さ対策がとても重要だということを認識したところであります。

 それから、パラリンピックのことにつきましても、障害者の方の移動のしやすさに配慮がなされておりまして、車椅子トイレ等のわかりやすい誘導サイン、障害のある方専用の入場口、退場口の設置等、対策に工夫が見られまして、こういう点も大いに参考になると思って、帰ってまいりました。

串田委員 所信の中で、今回の東京大会の重要な柱の一つは、復興オリンピック・パラリンピックという、復興という言葉が使われているんですけれども、その中で大臣がお話をされているのは、被災地の食材等の供給だとか、あるいは被災地での聖火リレー、試合開催などというのも述べられているわけでございますけれども、一方で、元気づけるのにどうしたらいいかというときに、ここ数日前にオリンピックのボランティアの募集を始めたということではございましたが、私は、被災地の方をボランティアとして、枠として何人か用意をしていただけたらどうだろうか。

 これは、林大臣の所信にもありましたけれども、第二期スポーツ基本計画の中で、する、見る、支える機会を確保しという中で、どうしても、何か被災地の方に対しては、こちらで被災地のものを何か買うとか、あるいはそこに行って聖火リレーをやるとか、そういうようにして、こちら側が提供するというようなことが復興というようなイメージであるんですけれども、むしろ、非常に今ボランティアというのは大変人気のあるところで、募集もたくさん多いというような話も聞きましたけれども、東京オリンピックを被災地の方が今度は支えるというようなことが私はあってもいいんじゃないかなと思うんですが、そんな考えはしていただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 二〇二〇年東京大会は、招致のときから復興オリンピック・パラリンピックと言われてまいりました。

 しかし、実際、東京大会の招致が決まったときに、被災地では、何かこれで国民の関心が被災地から東京の方に移ってしまうのではないか、風化してしまうのではないか、あるいは、これからいよいよ建物等を建てようと思っていたんだけれども、人手不足、また資材の高騰等、東京大会がむしろ復興の足を引っ張るのではないか、そういう声があったのも事実でございます。

 したがいまして、この復興オリンピックということを、単にタイトルだけではなしに、中身の伴ったものにしなければいけない。それには、先生の御指摘にもつながるわけでありますけれども、被災地の方にとっても、東京オリンピック・パラリンピックというのはよそごとのものではない、自分も何らかの形でかかわりを持っているんだ、参加をしているんだ、そういう意識を被災地の方に持っていただかなければ、復興オリンピック・パラリンピックにならないと思います。

 そういう意味で、復興「ありがとう」ホストタウンというものも新設をいたしましたし、被災地の食材あるいは木材、そういうものも積極的に活用しようとしております。

 そして、参加するということの一番の大きなものは、やはりボランティアというものも一つの形であると思います。そういう先生の御指摘も踏まえて、聖火リレーも被災地には日数も配慮するということになっておりますので、さまざまなことを通じて、被災地の方も、東京大会は何か離れた東京での出来事じゃない、自分も何らかの形でかかわりを持っている、参加をしている、そういう思いを持っていただけるように、ボランティアのことも含めて、いろいろと検討をしてまいりたいと思っております。

串田委員 ぜひ、ボランティアの枠を被災地の方にも設けていただけるよう、ちょっと検討していただければと思います。

 今、被災地の木材の話が出ましたが、東京オリンピックの木材利用というのは、新国立競技場だけじゃなくて、いろんなところにも使われるというような話がありました。いろいろ競技をするというだけじゃなくて、日本のよさというものが競技場に利用されているということのアピールというのも政府としてはもうちょっとしていっても興味が湧くんじゃないかと思うんですが、木材利用に関してどんなようなことが東京オリンピックで行われるのか、説明をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 平成二十七年の十一月にオリパラ基本方針というものが閣議決定をされました。その中において、木材等を活用した日本らしい建築など、日本文化の魅力を世界に発信するとともに、地方創生、地域活性化につなげることということを掲げております。

 これを踏まえまして、政府におきましては、ちょっと長いネーミングなんですけれども、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における木材利用等に関するワーキングチームというものを開催いたしまして、東京都や組織委員会などと連携をして、大会関連施設における木材利用の推進を図っているところであります。

 実際の利用状況でありますけれども、例えば新国立競技場におきましては約二千立米の木材を利用する予定です。これは、平成二十八年度に国が整備した公共建築物における木材利用量、三千六百八十九立米の半分以上の量となります。また、新しい国立競技場では、三層にわたって軒ひさしをつくるわけでありますけれども、その軒ひさしには四十七都道府県から調達した木材を使用するとともに、エントランスゲートの軒ひさしには被災県の木材を使用するなど、木のぬくもりが感じられるスタジアムを今進めているところでございます。

 また、組織委員会が選手村にビレッジプラザというものをつくります。これは、参加をしてくださる県あるいは市町村から木材を提供していただいて、仮設のものとしてつくります。木材建築でありますから、リサイクルがきくわけでありまして、大会が終了したらそれをまたほごして、ちゃんと二〇二〇年に使ったという印をつけまして、拠出していただいた県や市町村にお戻しをする。それを戻してもらった県や市町村は、その木材を利用して地元で何らかの記念になるような建物に使ってもらう、こういうような取組もしているところでありまして、木材の利用ということは十分配慮しながら進めていきたいと思っております。

串田委員 新国立競技場の、あのスカートみたいな、ぺらぺらとなっているあれを軒びさしと言うのは、漢字を見たときに読めなくて私もちょっと調べたんですが、それが何と四十七都道府県の木材を利用しているというのは余り国民の方も知らないんじゃないかと思うんですが、木材を利用することによる長所と短所、そんなものが、もし何か技術的な部分で御説明いただければと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 木材を使用することのプラス面ということでいえば、先ほども申し上げましたけれども、日本は歴史的に木造建築の文化でありまして、ヨーロッパのような石造建築のものではございません。でありますから、木材の利用というのは日本の文化、建築文化でありまして、その魅力を世界に発信をすることができると思っておりますし、森林が多い森林国でもあるわけでありますので、地方創生、地方活性化にもつながるものと思っております。

 それから、マイナス面ということでいえば、やはり、木材は一般的には火に弱いという側面や、コストがかかり増しになるという点が指摘をよくされます。しかし、これまでも、耐火部材の技術開発そしてコスト削減のための製材流通の効率化等に取り組むことによって、こうしたマイナス面もカバーがされている、このように認識をしております。

串田委員 木材を利用するというのは東京オリンピックの日本における一つの売りかなと思っておりますので、ぜひうまく活用していただければと思います。

 もう一つ、大臣が心のバリアフリーというのをおっしゃられているわけなんですが、日本人はほかの国の方と比べても心のバリアフリーというのは非常に苦手なのかなと思っておりまして、アンケート調査によりましても、若い人は何か対応するというのが非常に苦手なような結果が出ているんですけれども、学校教育においてこの心のバリアフリーに対してどのようなことを考えて今進められているのか、教えていただければと思いますが。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 学校教育を通して子供たちが心のバリアフリーについて学び、多様性を受け入れ、互いに協働する力を身につけることは極めて重要であります。

 このため、障害者への理解を深める教育については、児童生徒の発達の段階に応じて指導することとしており、小学校で平成三十二年度、中学校で三十三年度から全面実施される次期学習指導要領においても、障害のある児童生徒との交流及び共同学習の機会を設けることを規定し、指導の充実を図ることとしております。

 また、小学校で平成三十年度、中学校で三十一年度から始まる特別の教科道徳においては、相互理解、寛容、公正、公平、社会正義など内容の充実を図り、誰に対しても差別することや偏見を持つことなく、公正公平な態度で接することなどについて指導の充実を図ってまいります。

 さらに、学校における交流及び共同学習がより活性化されるよう、心のバリアフリー学習推進会議において、本年二月、その推進方策についての提言を取りまとめたところであり、都道府県教育委員会等に対して、本提言の趣旨を踏まえた積極的な取組を促す通知を発出したところでございます。

 今後、文部科学省においても、交流及び共同学習を通じた障害者理解を推進するモデル事業の成果を全国に普及するなど、さらなる充実を図ってまいります。

串田委員 バリアフリーというもののハードの部分だけではなくて、ソフトの部分というものも大いに進めていただきたいと思うんですが、林大臣の所信の中で、「部活動指導員等の専門スタッフや外部人材の配置拡充などを一体的に推進します。」というところがありました。

 昨年であったと思うんですけれども、日本の一流陸上選手、世界陸上で六位になった女子選手でしたが、ちょっとつまらない窃盗事件で話題になってしまったということがありました。朝のワイドショーにおきましても、彼女がもしオリンピックに出ていたらこういう人生ではなかったのにねというようなコメントを述べられているような司会者もいらっしゃったわけでございますが、このような、大変一流の選手が引退後どういうふうに進めたらいいのかというのは、為末大元選手の本にも書かれていたんですけれども、マネジメントというのが非常に不足しているそうなんですね。

 一方、このように、部活動指導員のスタッフというのは、実は、一流選手が引退したときに学校でそういうような形の指導をしてもらうということは非常に理にかなっているし、これを教員にやってもらうということになると、また働き方改革とかいろいろな長時間労働というような問題も出てくるわけですから、そういう意味では、専門の一流の選手が、引退後、学校で部活動指導スタッフとしてやっていけばいいんじゃないかなと思うんですけれども、ここの政府の取組というのがちょっと足りないんじゃないかと思うんですが、今はどんな状況でございましょうか。

今里政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、元アスリートを例えば部活動の指導員などに充てるということでございますけれども、元アスリートの高い技能が未来のアスリートへ伝承される、こういうことは、競技力の向上あるいはアスリートのセカンドキャリアの観点からも有意義であるというふうに考えるところでございます。

 一例といたしまして、北海道の紋別市では、日本ハムファイターズで活躍した選手が紋別市の職員として採用されまして、高校の野球部や地域のスポーツ教室における実技指導、こういった業務を行っていると伺っているところでございます。

 一方で、アスリートのマネジメント能力といいますか、再就職のところの人間力の話でございますけれども、アスリートの育成に当たりましては、アスリートが現役時代から人間力を高めていく、こういったことが、競技力の向上だけではなくて、アスリートの引退後のキャリア支援、これについても非常に重要だと考えているところでございます。

 このために、文部科学省では、選手としてのキャリアと引退後を含む人生設計の全体を考える、いわゆるデュアルキャリアという考え方のもと、アスリートの支援に関する取組を実施しているところでございます。

 具体的には、アスリートとして、人としての自己実現を果たすための価値観、習慣と能力を身につけるためのデュアルキャリア教育プログラムの開発、実施、JOCのエリートアカデミー生に対する学習支援や進路相談、心のケアの実施などに取り組んでいるところでございます。

 特に、トップアスリートは全国のファンや子供たちの目標や憧れの存在でございますので、引退後もその能力を十分生かせるよう、今先生御指摘がございました部活動指導員も含めて、競技力向上だけでなく、幅広い資質を育成するための取組を関係団体と連携してしっかりと推進してまいりたいと考えます。

 以上でございます。

串田委員 いわばアスリートバンクという、ある程度のレベルの選手は、そこに登録をするといろいろな地方の地方自治体から、学校とかそんなところからの招聘というものを受ける、そういう何か受皿みたいなのを、アスリートバンクみたいなものをつくっていただければいいのかなと思うんです。

 今は、引退後の選手は、それこそ単独で全く自分が経験していない社会に放り出されてしまうというような部分がどうもあるようなので、そこら辺の部分を検討していただければと思います。

 次に、これは鈴木大臣の所信の中で、アスリート、観客が過ごしやすい環境を整備することは極めて重要であるというようなお話もありましたけれども、一方で、最近ちょっと話題になりましたが、女子レスリングの告発文の話、あるいは貴乃花の告発文の話というのもありまして、これが内閣府に告発文が出されるというようなことであるんです。

 ちょっと残念だと思ったのは、女子レスリングの中で、伊調馨選手というのは四つも金メダルを連続してとられ、そして国民栄誉賞をとられたというような報道であるんですが、しかし、片や栄和人監督も、これは吉田沙保里選手、伊調姉妹、あるいは土性さんですか、いろいろな選手を輩出をしてきた。そういう意味では日本における大変な功労者なわけだと思うんです。

 シンクロナイズドスイミングで井村コーチというのが大変有名でありまして、日本で指導していたのが、中国に行ったら中国が非常に強くなって、また日本に戻ってきたというようなこともあるわけでございますから、成果を上げた選手というものももちろん尊敬に値するわけですけれども、栄監督自体も、これはもう大変な尊敬を実はしなければいけない方だと思うんです。

 そういう中で、告発文ということから、何かこういういろいろな、非常にそういう意味ではどちらの選手にも気の毒だし、また、それを聞く国民にとってもすごく残念なニュースだったような気がするんですけれども。

 内閣府というのは、この告発文を受けるというシステムが既にでき上がっていて、受けると何かこういう手順が行われるというような、そんな状況が実際存在するものなんでしょうか。

相馬政府参考人 お答え申し上げます。

 公益認定等委員会におきましては、法人の運営のあり方等につきまして、さまざまな形で情報の提供を受けることはございます。

 このような場合、公益認定等委員会において、公益法人のガバナンスを確保するという観点から、必要に応じて事実関係の確認や対応が行われるものでございます。

串田委員 一応そういう手続があるというお話だったんですが、一方で、相撲の場合には、貴乃花親方というのはかなり当事者だと思うんですけれども、女子レスリングの場合には、当事者である伊調馨選手が、この告発文については自分は関与していないというような話もちょっと漏れ聞いているわけでございます。

 当事者が関与していない告発文がひとり歩きして監督をマスコミがたたくというような図式というのは、これはちょっと、一つは問題なんじゃないかなというようなこともございますので、そこら辺の部分のしっかりしたルールづくりというようなものをしないと、ちょっとそういう、二人の大変偉大な、片や選手であり、片や監督が、必要以上に何かマスコミによって評価され、そして国民にもいろいろな、一方的な印象を与えてしまうというのは、これはやはり避けなければいけないのかなと思いますので、そこのところの部分ももう少し政府が、環境をというようなことであるならば、そういうような部分ももう少し積極的に介入していけば、このようなひとり歩きというのはもう少し前でとめられたんじゃないかなと思いますので、今後のこともありますから検討をしていただきたいと思います。

 次に、オリパラ、鈴木大臣の所信の中で、「ドーピングのない」ということがありました。ドーピング問題というのはいろいろな薬物の利用によってあるわけですから、その薬物に関してはイタチごっこというような部分もあるんだと思います。

 ただ一方で、ことしの冒頭でしたけれども、カヌーの事件でライバル選手が薬物を混入したというような、非常にそういう意味で、昔から問題視されていたことではあるんですけれども、それが顕在化してしまったというとても残念なことだと思うんです。

 これが、二〇二〇年、我が国が主催するそれこそ世紀のイベントの中で、何らかのメダルをとった後に翌日の朝刊で陽性反応なんということがあると非常に残念なことだと思うんですが、このイタチごっこ以外の部分で、何かライバルが混入するというようなことを避けるとかというようなことを、東京オリンピックに関してはこういうような厳格なシステムを考えていますというようなことがあるのかどうか、その点はいかがでしょうか。

林国務大臣 二〇二〇年の東京大会の開催国として、日本人選手からドーピング防止規則違反者を出さないということは大変重要なことだというふうに認識をしております。

 我が国におけるドーピングの防止規則違反の確定率というのは国際的に見ますと大変低い状況にあるわけでございますが、一方で、委員が今お話しなさっていただいたように、第三者によるドーピング禁止物質の混入が原因となった違反など、これまで十分に想定していなかったような事案が生じておるということでございますので、こういったことに対する危機感を持って対応する必要があると認識をしております。

 文科省としては、日本アンチ・ドーピング機構や競技団体と連携をいたしまして、アスリートや指導者等に対する教育、研修を実施してきたところでございますが、今後、こうした事案を踏まえて教材や研修の内容を見直すなど、ドーピング防止教育の充実を図ることとしておるところでございます。

 引き続き、関係団体と連携してドーピング防止活動を強化し、二〇二〇年東京大会の成功に向けて、ドーピングのない、クリーンでフェアなスポーツの実現に努めてまいりたいと思っております。

串田委員 一つのこれは提案といいますか、これは無理かどうかわかりませんけれども、オリンピックのかなり近い数カ月の間は自分が食べる食べ物は少しずつ何かうまい形でサンプルがとれるような、ごそっととるのは大変かもしれませんけれども、リトマス試験紙みたいに、ちょっとさわればすぐそれが材料としてサンプルとして保存できるというようなことで、これは故意ではないということは非常に重要なことだと思うんですね。他人の提供された食べ物が、実はそこの中に陽性反応の薬物が入っていたということであれば、これはドーピング問題に関してもかなり違ってくるんじゃないかと思うので、東京オリンピックに関してだけは、何かそういう、非常に、今までなかったような、ちょっとやり過ぎかなと思うようなこともドーピング検査としてはちょっと取り入れていただくということも検討していただければいいかなと思っております。

 最後に、受動喫煙についてお話をしたいと思うんですが、受動喫煙というのは、健康の問題から非常に日ごろから取り上げられているんですけれども、事オリンピックとの関係では非常に強い関連性がある。IOCとWHOの二〇一〇年の合意の中では、たばこのないオリンピックということを共同で推進することについて合意したというのがあるわけでございます。

 そういう意味では、普通の健康状況ではなくてオリンピックであるということから、ひとつこれは受動喫煙に関しては大きく一歩踏み出さなければいけないのではないかな。オリンピックに対して開催国として手を挙げるということは、アスリートを受け入れる箱をつくって競技を見るというだけではなくて、やはり開催国として手を挙げる以上は、自国が健康志向の国であるということを他の国に対しても先制して表明をするという覚悟でもって私は手を挙げたんじゃないかなと思っているわけでございます。

 その点からちょっとほかの大会を調べてみると、二〇〇八年からずっとあるわけですが、中国から始まりまして、カナダ、イギリス、ロシア、ブラジル、韓国、そして日本、この中で、受動喫煙に関しては日本が非常に、一番おくれているという状況なんですね。

 池上彰さんが司会をやっている番組の中でも、この日本のオリンピックの受動喫煙は大変おくれているということで、残念なのは、その理由も池上彰さんが、このおくれている理由というのは日本の国会議員の喫煙率が高いからだと言われている。これが事実かどうかはちょっとわかりませんけれども、それを放送でされているということは、私たちはこれはやはりちょっと考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 特に文科の皆さん、委員の方々は、学校教育の中で、喫煙というのは健康被害によくないんだということを授業に取り入れているということをやっている委員会であるということを考えるならば、やはりこれは、オリンピックを一つの契機として、受動喫煙に関しては断固とした態度を表明する。これは党派を超えてやらないと、党拘束ですと、うちの党もやはり喫煙者もいるわけでございますので、なかなか難しいところはあるんですけれども、議員個々の中で、議員立法なりで受動喫煙というものをしっかりと進めていくということを文科の委員の中でも進めていただきたいと思うんですけれども、受動喫煙を、オリパラ、鈴木大臣が所信表明されたということは何か特別な思いがあるのかと思うので、最後にそれを述べていただければと思います。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおりに、WHOとIOCとの間でたばこのないオリンピックの合意というものがなされておりまして、二〇二〇年大会もたばこのないオリンピック、パラリンピックにしなければならないと思っております。

 今般、健康増進法の改正の案が閣議決定されたところでございまして、これは、これまで努力義務による自主的な対応に頼っていたものから、法律上新たに設ける義務のもとで段階的、着実に前に進めるものだと考えているところでございます。

 しかし、法律ができればそれで終わりということではもちろんないわけでありまして、聞くところによれば、開催都市であります東京都も条例を検討されるというお話も仄聞をしておりまして、そうすればこの法律の上に乗っかってくるのかどうか、それも見きわめなければならないと思っております。

 また、路上の、屋外の喫煙につきましては、東京二十三区のうち二十二区において何らかの規制がある。これはむしろ外国には余りない規制だと思います。そういうものも外国人の方々に知っていただかなければならないと思います、知らないでたばこを吸っちゃうということもあると思いますので。そういうこともよくやっていかなければいけないと思っております。

 そして、先生の御指摘のとおり、過去大会がどうであったかということも踏まえて、東京都それから組織委員会と連携をしながら、たばこのないオリンピック、パラリンピックの理念を具現化するために、引き続き努力をさせていただきたいと思っています。

串田委員 思いのほか大臣の答弁を何回も聞かせていただきまして、感謝いたします。

 どうもありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 大臣所信に対する質疑ということで、たくさん聞きたいことがございます。ただ、もう既に多くの委員からも指摘あるいは質問がされておりますが、やはり名古屋の事例については、幾つかどうしても確認をさせていただかなければいけない問題があります。

 通告では大体二十問ぐらい質問を投げておりまして、恐らくいろいろ重なるだろうということもあって、投げております。実際に重なった問題もありますし、重なっていない問題もあります。また、私が聞き漏らした質問もあると思いますので、全てはきょうは聞かずに、その中から幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣が十六日の会見で、現時点では明確に何らかの法令に違反するという事実は確認できていない、そう発言をされております。そもそも今回の事案は、どのような法令のどの条文、あるいは学習指導要領のどの部分に違反している可能性があったと考えて行われたものなんでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の事案は、中学校の授業において講演を行った前次官の前川氏が、直近まで文部科学行政の事務方の最高責任者として、その発言が教育行政に関して正当な根拠があると受けとめられる特別な立場にあったことから、影響力が極めて大きいこと、いわゆる天下り問題等にかかわって、単に監督責任だけでなく、本人自身の違法行為をもって停職相当になった者であることから、特に心身の発達が途上段階にあり、必ずしも公正な判断を行う能力が十分に備わっていない中学生に対して授業を行うことについて適切な教育的配慮が求められること、本人の違法行為をもって停職相当となったことなど、各種報道により社会的に注目を集めている人物であり、一部にはこれを不適切と捉える向きもあると考えられることから、保護者の当該学校に対する信用に与える影響について十分な考慮が行われる必要があること等を考慮して、指導、助言、援助を行う必要があるかを判断するため、同法第五十三条に基づき、授業の内容等についての事実確認を行ったものでございます。

吉川(元)委員 私が聞いたことに答えてください。

 どの法令やどの条文、あるいは学習指導要領のどこの部分に違反する可能性あるいは蓋然性があるというふうに考えてこの質問をしたのか。社会的に影響がある人が講演に立ったからとか、文科省にとって都合の悪いことを言われたら困るからとか、そんなことはどっちでもいいんですよ。いわゆる条文のどこに違反する可能性が、実際に大臣が、明確に何らかの法令に違反するという事実は確認できていないというふうに答弁しているということは、その前として、法令に違反する可能性があったと認識していたということでしょう。

高橋政府参考人 この調査は、あくまでも指導、助言、援助を行う必要があるかを判断するための事実確認であり、必ずしも学習指導要領等の具体的な条文等を個別に特定した上で調査を行ったものではありませんが、例えば、学習指導要領の総則では、各学校においては、生徒の心身の発達の段階や特性等を十分考慮して、適切な教育課程を編成するものとしており、こうした観点から、今回の授業について、適切な教育的配慮が行われていたのか等について確認する必要があると判断したものでございます。

吉川(元)委員 今の事例を取り出したら、今の局長のお話だと、どんな授業でも全て該当しますよ、それだったら。

 ちょっと時間がないので、次に行かせていただきます。

 今、五十三条による調査ということは言われました。一つ確認なんですが、問合せと言ってみたり、確認と言ってみたり、調査と言ってみたり、法文上は、五十三条というのは調査と書かれているんです。これは調査ということでよろしいんですね。

高橋政府参考人 地教行法上は調査でございます。

吉川(元)委員 そうすると、しばしば行われている問合せ、こういう問合せはしばしばあるんですよというふうに、大臣も、あるいは局長も、文科省は言われていますが、そのしばしばあるんですよという問合せというのは、これは、今回と同じく五十三条に基づいた調査のことを指しているんですか。それとも、それ以外の調査も、調査というか、いわゆる普通の問合せも含まれているんですか。

高橋政府参考人 先ほど御答弁申し上げた三事例も含めて、日常的な問合せなどについては、これは一応、地教行法では五十三条に該当する調査と考えております。

吉川(元)委員 そうすると、先ほど畑野委員からも質問がありました、具体的な事例を出してくださいと言ったら、今確認できているのは三事例だけですと。さっきの話と全然矛盾しませんか。日常的に行う問合せも全部五十三条なんだと言ったら、日常的に、きょうだってやっているでしょう、何らかの問合せは。それも五十三条に基づいてやっているということですね。

高橋政府参考人 済みません、ちょっと今手元に細かな条文はないんですけれども、基本的に、国と地方の関係においては関与法定主義ということになっておりまして、国からの問合せは全て法律に基づくということになっておりますので、文科省からの問合せ、事実確認等、これは全て、基本的には地教行法の五十三条の調査に該当すると理解しております。

吉川(元)委員 だとすれば、先ほどの答弁、今確認できているのは三つだけですと。これは、六野党の合同ヒアリングでかなり前の段階で、幾つありましたかと。もうそれから恐らく二週間ぐらいたっていると思いますよ。いまだに三つしか確認できていないというのはおかしくないですか。

 関連して、もう一つ伺います。

 私は、当委員会以外にも、総務委員会にも所属をしております。総務省もしばしば地方自治体に対して技術的指導、技術的助言という形の文書を発出いたします。その場合に必ず、この文書は地方自治法第何条に基づく技術的助言ですという一文が入ります。今回明らかになった名古屋市教委への問合せのメール、メールの本体といいますか、こんにちはのメールの本体と、それからそれに添付された質問、どこにも五十三条に基づく調査ですとは書かれておりません。これは、相手方には五十三条に基づく調査だという認識は伝わっているんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 名古屋市教育委員会がそのような受けとめをしていたかどうかは、私どもとしては承知をしておりません。

吉川(元)委員 非常に驚きました。

 普通、法律に基づくさまざまな調査やあるいは助言、その場合には、その根拠となる法律を普通は示さなければいけない。普通は示すはずです。それをやっていないというのは、私は非常に驚きますし、聞かれた方は、では、名古屋市の方から見ると、これは単なる普通の問合せなのか、それとも、五十三条、いわゆる法令に基づく問合せなのか、わからない状態に今でもあるということなんですね。

高橋政府参考人 二度のメールのやりとり等において、こちらからはそのようなことを明確にはお伝えしていない状況でございます。

吉川(元)委員 私、非常にこれは問題だと思います。ちょっとこれも時間がないので、また別の機会にやらせていただきます。

 それで、もう一点だけ確認させてください。

 大臣が十六日の同じ会見で、先ほど午前中も他の委員から質問があったりしまして、やや誤解を招きかねないと。ややを取るか取らないかで少し議論が行われましたが、ややであろうが何であろうが誤解を招きかねない、あるいは表現ぶり等で十分留意する必要があるというようなことをおっしゃられております。

 大臣、端的に伺いますが、この誤解というのは、どういう意味で誤解をされるのではないかというふうに、やや誤解を招きかねない、どんな誤解だというふうに考えておられますか。

林国務大臣 同じ会見で申し上げていたかどうか、ちょっと記憶が定かではございませんが、表現ぶり等で相手が圧力と受けとめかねない、そういう誤解があってはならないということで、そういう趣旨で申し上げたというふうに思っております。

吉川(元)委員 それと、あと一点だけ、これもちょっと通告はしていないんですが、確認させてください。

 先ほど畑野委員の方から、教育基本法旧十条、現行では十六条です、について質問がありました。「教育は、不当な支配に服することなく、」これがやはり基本にあるんだという答弁でございました。

 実は、第一次安倍政権のもとで教育基本法は改正されております。この旧十条は現在十六条となっており、その中に新たな文言がつけ加えられております。「教育は、不当な支配に服することなく、」この後、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、」というふうに、こういう文言が入っております。

 まさかとは思うので、そんなことはないと思いますから、確認のために質問させていただきますが、一応、文科省の立場は、今回の事案については不当な介入ではないということで、おかしくないんだ、問題ないんだとおっしゃられておりますが、仮に不当な介入であったとすれば、後段の、この法律及び他の法律の定めるところにより行われていたとしても、これは許されないことだということでよろしいんですね。

高橋政府参考人 先ほどの畑野委員の議論の中でも、論理的には、教育行政機関が行う行政でも不当な支配に当たる場合があり得るというようなことは答弁申し上げたかと思います。

 ただ、法律の趣旨にのっとり、その定めるところにより適正に行われる教育行政機関の行為は、不当な支配に当たることはないと考えるところでもございます。

吉川(元)委員 例えば、今回の五十三条に基づく調査そのものが、その内容が、形式じゃないですよ、外形上の話じゃなくて、内容上、不当な介入に当たる。今回の事案は、文科省はそうではないとおっしゃる。だから、それはそれで結構です。仮にそれが不当な介入に当たる、だけれども、改正教育基本法上は法律にのっとりと書いてあるから教育基本法上は問題ないんだという立場には立たないということでよろしいですね。

高橋政府参考人 これまでの答弁の繰り返しになりますが、論理的には、教育行政機関が行う行政でも不当な支配に当たる場合はあり得るということを答弁させていただいております。

吉川(元)委員 わかりました。

 実は、ほかにもまだいっぱい聞きたいことがございます。きょうは丹羽副大臣、それから宮川政務官にも来ていただいていて、この問題についても少しお聞きしたかったんですけれども、ちょっと時間もありません。

 ぜひ、委員長、この問題については当委員会で集中審議を行っていただきたいというふうに思いますので、ぜひ御検討をいただければと思います。

冨岡委員長 理事会にて検討いたします。

吉川(元)委員 それでは、次に、平成三十年度、二〇一八年度の文部科学関係予算について何点か尋ねたいと思います。

 今回の文部科学関係予算、全体で見ますとマイナス四億円ということで、今年度とほぼ同額が確保されております。ただ、内訳を見ますと、スポーツとか文化芸術等々については、あるいは科学技術関係はプラスになっているんですが、肝心の文教関係予算、ここだけが今年度比マイナス二十三億円。実に三千八百億円以上、概算要求と比べても少ない状況であります。

 高等教育の無償化、あるいは奨学金制度、さらには教員の長時間労働の是正、また、後ほど触れますけれども、新学習指導要領により授業時間がふえる中で、これに対応して文教関係予算はふえるものと私自身は考えておりましたが、これはなぜマイナスになっているんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成三十年度の文教関係予算につきましては、対前年度二十三億円の減になっておりますが、これは、例えば義務教育費国庫負担金の自然減などで百九十億円減っております。それから、子ども・子育て支援新制度への移行分、これで四十二億円が減っています。

 こういったことを勘案すれば、実質的には、対前年度から比較して増額の予算になっているというふうに考えております。

吉川(元)委員 少子化だとか、これはもう何年にもわたって文科省とは議論している話ですけれども、ちょっと大臣にお聞きしたいんですが、平成三十年度文部科学関係予算のポイントの中の更に文教関係予算のポイントで、新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築、こういう記述があります。

 概算で、プラスの三千三百億円の要求をしております。で、実際にはマイナスだった。果たしてこれで、新学習指導要領の円滑な実施、あるいは学校における働き方改革に資する予算というふうに大臣自身はお考えなんでしょうか。

林国務大臣 新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のためには、学校の指導、事務体制の効果的な強化等を図るとともに、学校や教師の業務の役割分担や適正化による業務負担の軽減が必要となります。

 このため、平成三十年度予算において、小学校の英語教育の早期化、教科化に伴う専科教員に対する加配など、千五百九十五人の定数改善によりまして指導体制の効果的な充実を図るとともに、教師の業務負担の軽減ということで、働き方改革ということでございますが、スクールサポートスタッフの配置として新たに十二億円、三千人相当でございます、それから、中学校における部活動指導員の配置として新たに五億円、四千五百人分、地域と学校の連携、協働を通じた登下校等の見守りの活動の充実として一・一億円等を盛り込んでおります。

 文部科学省としては、こうした環境整備等を通じて、新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革にしっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。

吉川(元)委員 私が聞きたいのは、概算要求というのは、では一体何なんですか。これは以前にも、当時は初中局長は小松さんだったと思いますが、議論させていただきました。

 もちろん、自然減が予想以上に進んだということは、それは当然、概算段階と予算を策定する段階での差は多少は出てくるでしょう。だけれども、概算というのは、あくまで科学的な根拠に基づいて、それこそ数字をしっかりと積み上げながら、今の教員の働き方を改善していく、あるいは新しい学習指導要領に適応させていく、多忙化を解消していく、そのために必要だからということで概算として出されているんじゃないんですか。

 先ほど、千五百人余りの定数改善というふうに言われました。もともとの概算では、何人の定数改善を予定されていましたか。

高橋政府参考人 大変失礼いたしました。

 一例を申し上げますと、例えば、今回は、小学校英語について加配教員というものを要求しております。それで申し上げますと、例えば、六千六百人を三年間でということで、二千二百人という要求をいたしまして、それに対して、今回、査定としては千人というのが政府予算に盛り込まれたところでございます。

吉川(元)委員 全体で、来年度予算の概算段階では三千二百人。それが、結果的には千六百人弱、半分にしかなっていない。

 例えば、今の英語に関しては、もともと二千二百人だったのが、英語専科は千人です。これは五〇%を切っています。それから、中学校における生徒指導体制の強化に必要な教員の充実、もともとこれは五百人要求していましたよね。実際は五十人です。

 株式の相場の格言で、半値、八掛け、二割引き、そういう格言があるというふうに聞いたことがありますが、文科省の概算と結果的に出てくる予算はいつもこうじゃないですか。半値、八掛け、二割引きだったらまだましだ。項目ごと落ちているというものもある。だとするならば、概算の根拠というのは一体何なんですか。どんなことがあってもこの概算は必要だから要求をするわけでしょう。

 恐らく、この委員会の様子を財務省は見ていますよ。財務省が見て、そして文科省がつくる概算というのはいいかげんなものなんだと思われたら、幾ら積んだって、それこそ半値、八掛け、二割引きですよ。あるいはゼロです。

 この点についてどういうふうに考えておられるのか。これはもう数年前からこの指摘をさせていただいておりますけれども、石にしがみついてでもとってこなきゃいけないんじゃないんですか。あるいは、とれなかったなら、とれなかった、ですから、教員の皆さん、申しわけない、働き方改革というふうに言ってきたけれども、来年度については言っているとおりこれは実現できない。だから、引き続き次々年度以降の予算をとりに行く。そういう決意がない限り、結果が出てきたら、先ほど後づけとか完全先づけじゃなきゃいけないというふうに言っていましたけれども、結果が出てきて、概算で求めたものよりもはるかに少ないものしか出なかったとしても、いや、これでいいんですと。この態度を続けていく限り、いつまでたっても定数改善は進まないと思いますが、いかがですか。

高橋政府参考人 概算要求は、概算要求の時点において、文部科学省として望ましいと思うような内容を要求いたします。その後、政府部内で、財政当局とも折衝、調整も行われるわけでございます。

 特に、今回の定数改善の中心になりました小学校英語でいいますと、例えば、当初は、六千六百人程度を三年間ということで、二千二百人要求しておりました。この六千六百人につきましては、その査定の過程におきましては、今後見込まれる学級数の減でありますとか、あるいは、大幅に授業時数を上回って授業計画を立てている小学校について一定指導計画を見直す、そういった合理的な見直しも行った上で、今後四千人が必要であるということを私どもとしても主張して、それを、移行期間中ということもありますので、当面、来年度はその四分の一に当たる千人というような形で、あくまでも、今後の小学校の英語の授業時数増に対応するという、その基本的なところは守り抜いてそういった査定案をいただいたと考えております。

吉川(元)委員 守られていないんですよね。当初六千人と言ったのは、それなりに根拠があった数字だと思います。

 今、小学校の三年生、四年生、五年生、六年生、それが三十五こまプラスをして今よりも授業をする。そのための英語専科、必要なこま数というのは、おおよそ十四万こま必要になります。これを四千人で割ったとすると、週三十六こまやらなきゃいけないんですよ。

 そうしないかわりに、では、今いる教員で負担をしてもらう。ただでさえ大変な教員が更に大変になっていく。四千人じゃ足らないから六千というふうに、私は六千でも足らないと思いますけれども、だから、最初の当初は六千と言っていたんでしょう。それがいつの間にか四千になって、そうしたら来年になったら三千人になりますよ、これだったら。

 関連して、英語教員に関して、もう余り時間がないので伺います。

 今回、三年で先ほど局長からお話ありました四千人採用する予定ということです。その中で、四類型ある。一つは、中学校、高等学校の英語免許を持った方。で、残りの三つが問題です。一つは、二年以上のALT経験者。それから二つ目が、CEFRと言われる英語力、検定か何かだと思いますけれども、B2相当以上の英語力を持った人。それから、更に驚いたのは、二年以上の海外留学、例えば海外青年協力隊、あるいは勤務経験のある者、この人たちが対象になって特別免許状を授与させる、そういうふうに聞いております。

 文科省として、四千人のうちどのぐらいの方が、いわゆる残りあと三つですね、中高の英語の免許を持っている方はいいですから、残りの三つでどのぐらいに人数がなるというふうに考えていらっしゃいますか。

高橋政府参考人 平成三十年度の加配を予定しております専科教員千人につきまして、先ほど委員から四つの類型を示していただきました。

 このうち、どの要件を満たす者を何人配置するかは現時点では把握しておりませんが、各都道府県・指定都市教育委員会からは、中学校や高等学校の英語免許状を有する者の活用が多くなるのではないか、そういったことは伺っております。

吉川(元)委員 では、逆に伺いますが、なぜ四類型にしたんですか。中学校、高等学校の英語の免許を持っておられる方ということだけにすればよかったんじゃないんですか。

高橋政府参考人 教員の採用については、各都道府県それぞれ、さまざまな事情がありますので、こういった形で今回は対応いたしております。

 なお、免許状を持っていない方につきましても、特別免許状を所有していただくことになっております。

 この特別免許状制度は、特定分野について高度の専門性を有し、教師としての熱意を有する社会人等を教員として登用し、学校教育の充実に資することを目的として制度化されたものでございます。

 その授与に当たっては、任用しようとする教育委員会や学校法人の推薦に基づき、免許授与権者である都道府県教育委員会が行う教育職員検定において、担当する教科に関する専門的な知識経験、技能、社会的信望と教員の職務を行うのに必要な熱意と識見を有しているかを確認した上で、あらかじめ大学の学長や学校の校長等の有識者の意見を聞いた上で、合格者に対して授与することとされておりますので、このような適切な手続を経て、専門性や資質の確認された特別免許状所持者が学校教育の充実につながるということを期待して、このような形にしたものでございます。

吉川(元)委員 見ておりますと、私、感じるのは、四千人、まあ当初は六千人でしたけれども、確保できないんじゃないか、だから、あえて残りの三類型をつけ加えて、その上で何とか加配で人数を確保したい、そういう意向があったのではないかというふうに思います。

 ALTの方は、もちろん母国語が英語の可能性が非常に高いですから、英語はしゃべれるだろうと思います。CEFR、B2以上というのがどういうレベルなのか私はよくわかりませんが、二年以上の海外留学、英語を使って仕事をしたり、あるいは学問した人、その人が、では小学校の三年生、四年生、あるいは五年生、六年生で英語を教えられるんですか。英語をしゃべることができることと英語を教えることは全く別の話です。

 我々は、今、日本語をしゃべっています。日本語をしゃべっていますから、じゃ、小学校一、二年生の国語の先生になれますか。恐らく無理だと思います。

 例えば、これも卑近な例ですけれども、恐らく国語の先生はわかると思います。この中に、象は鼻が長い、この「は」と「が」は何が違うのか、説明できる方がどれだけいらっしゃるか。そういう意味でいえば、非常に難しいんです、言葉というのは。

 象は鼻が長いなんというのはそんな難しい構文じゃない。これは日本語の話ですからね。だけれども、この「は」と「が」の違いというのは専門家の間でもずっと論争が続いてきた話です。恐らく英語も、語学である以上、初歩的な英語であったとしても、そうした教科としての特殊性があると思います。

 宮川政務官にぜひお話を伺いたいと思ったんですけれども、政務官は、高校で英語の授業をずっとやられてこられた、そういう経験のもとに国会に来られたというふうにも聞いております。恐らく、恐らくといいますか、当然、免許を持っておられる。

 大学の免許というのは、取るためには、教科に関する科目でありますとか教職に関する科目、教職に関する科目の中には、児童の心理の発達及び学習の過程だとか、あるいは指導法だとか、そういう意味でいうと、教育者として必要な教職課程を経てようやく免許を取るわけです。

 ところが、今回の残りの三類型というのは、こういうものを全部すっ飛ばしてしまう。果たしてこれで、私は小学校の英語教育というのは非常に否定的な立場です。過去にも平泉・渡部論争というのがかなり昔ありましたけれども、小学校から英語をやるよりも、まず母国語をしっかりと身につけることの方が先だろうというふうに私は思いますが、ただ、英語教諭としての立場として、果たしてこれでまともな英語の指導が小学校の三年生から六年生の間にできるというふうにお感じになられますでしょうか。実際に免許を持っておられる立場からして、いかがですか。

宮川大臣政務官 今、吉川委員がお話しになられたことは大変重要な観点だと思っております。

 私は、もともと中学校と高校の英語の教師でございましたけれども、教師時代は、第一の責任は教育者である私にあるということを常に思いながら教育活動をしておりました。それは、つまり、大学でしっかり教職課程を学んだ、普通免許を持っている私に責任があるということで教育活動をしていたというふうに記憶をしております。

 第一義的には、やはり普通免許状を持っていて、そしてそういう教師がしっかり教育活動の根幹をなさなければいけないということは、教師時代から感じていたところであります。

 しかし、私が教職にいたのはもう十年も前のことでありまして、そのときから、教育現場を見ますと、相当大きな状況の変化というのがあったかというふうに思います。そう考えますと、やはり一方では、多様化する教育環境や状況、カリキュラムの変更だとか教育の課題に関して、多様な人材を活用するということは大変重要だというふうに思っております。それも事実だと思います。

 問題は、普通免許状を持っている人も教職課程の中でしっかりと養成、研修を続けていくこと、そして、特別免許状を付与された皆さんも各勤務校で必要な研修や支援を受けることが大変重要だというふうに思っております。多様な能力を使って現場に対応していけるような体制、環境整備が必要だというふうに考えております。

吉川(元)委員 時間が来ましたので終わりますが、今、世界的に、学校の教師の養成課程というのは高度化しています。

 日本は、大卒、四年卒で免許が取れる。だけれども、多くの国では、更にもう二年、院も含めて六年間の、それだけ教育が複雑化している、それに対応する教師の能力が求められている。そういう意味でいいますと、四年ではまだ足らないという中で、全くそうした課程を経ていない方が教育現場に入っていって、果たして本当の意味での教育ができるのか。

 それから、最後に一言だけ皮肉を言わせていただきますが、多様な教育が必要だ、だとするならば、なぜ前川さんの問題についてここまで固執をするのか。まさに、多様な教育を行う現場に文科省が介入をしている、そのことだけ指摘をさせていただいて、私の質問を終わります。

冨岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.