衆議院

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第8号 平成28年10月27日(木曜日)

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平成二十八年十月二十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 うえの賢一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 菅原 一秀君 理事 西村 康稔君

   理事 森山  裕君 理事 今井 雅人君

   理事 篠原  孝君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      池田 道孝君    大西 宏幸君

      鬼木  誠君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    黄川田仁志君

      北村 誠吾君    坂本 哲志君

      武部  新君    武村 展英君

      津島  淳君    寺田  稔君

      冨岡  勉君    中川 郁子君

      中村 裕之君    長尾  敬君

      ふくだ峰之君    福田 達夫君

      福山  守君    古川  康君

      前川  恵君    宮川 典子君

      山本ともひろ君    渡辺 孝一君

      緒方林太郎君    岸本 周平君

      近藤 洋介君    佐々木隆博君

      玉木雄一郎君    福島 伸享君

      升田世喜男君    宮崎 岳志君

      村岡 敏英君    伊佐 進一君

      稲津  久君    岡本 三成君

      中川 康洋君    濱村  進君

      笠井  亮君    斉藤 和子君

      畠山 和也君    小沢 鋭仁君

      椎木  保君    松浪 健太君

      丸山 穂高君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国務大臣         松本  純君

   国務大臣         石原 伸晃君

   国土交通副大臣      田中 良生君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   外務大臣政務官      滝沢  求君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本佐和子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口 英彰君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       西郷 正道君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 舘  逸志君

   参考人

   (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)     鈴木 宣弘君

   参考人

   (横浜国立大学名誉教授)

   (大妻女子大学名誉教授) 田代 洋一君

   参考人

   (NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表)  内田 聖子君

   参考人

   (明治大学法学部兼任講師)

   (NPO法人日本消費者連盟元共同代表)      山浦 康明君

   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  笠井  亮君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  田村 貴昭君     笠井  亮君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     冨岡  勉君

  福田 達夫君     津島  淳君

  福山  守君     長尾  敬君

  近藤 洋介君     緒方林太郎君

  稲津  久君     濱村  進君

  笠井  亮君     斉藤 和子君

  小沢 鋭仁君     丸山 穂高君

  松浪 健太君     椎木  保君

同日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     福田 達夫君

  冨岡  勉君     鬼木  誠君

  長尾  敬君     福山  守君

  緒方林太郎君     宮崎 岳志君

  濱村  進君     伊佐 進一君

  斉藤 和子君     笠井  亮君

  椎木  保君     松浪 健太君

  丸山 穂高君     小沢 鋭仁君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     坂本 哲志君

  宮崎 岳志君     近藤 洋介君

  伊佐 進一君     稲津  久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会条約第八号)

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第四七号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 両案件審査のため、本日、参考人として、東京大学大学院農学生命科学研究科教授鈴木宣弘君、横浜国立大学名誉教授・大妻女子大学名誉教授田代洋一君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、農業につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 皆さん、おはようございます。鈴木でございます。よろしくお願い申し上げます。

 配付資料も配付いただいておりますので、それも参照しながらお話をさせていただきます。「TPPに係る懸念事項の再検証」というタイトルの配付資料でございます。

 まず、国民の格差是正、自由貿易見直しの声が巨大なうねりとなって、大統領候補も全てTPP反対という形になっておるアメリカのみならず、参加国は一国としてTPP関連法案をいまだ可決しておりません。国民のさまざまな懸念が噴出し、それを受けとめて政治、行政も慎重な対応をしているからでございます。

 我が国でも、これから示すように、多くの懸念事項が、国会決議との整合性も含め、納得のいく説明が得られているのかどうかが厳しく問われている状況であるというふうに思います。

 まず、基本的な論点として一つ申し上げたいのは、TPPで雇用がふえ賃金が上がるという議論ですが、これは冷静に考えれば、ベトナムの方の賃金は我々の二十分の一から三十分の一でございますから、投資が自由化されて人の移動が自由になれば、日本人やアメリカ人の高い賃金の方をいかに首を切るか、あるいは、それが嫌ならば短期雇用で雑巾のように使うぞという議論になりかねないというのが現実でございまして、まさにアメリカがこのことで大変な大きな反対のうねりが出ているわけでございます。このことについて、なぜもう少し日本の中できちんと議論が行われないのか。

 ただ、日本の内閣府のモデルなどでは、農家の方が失業しても、瞬時に例えば自動車産業の技術者になれる、こういうモデルで計算しておるので、失業というものがそもそも存在しない、完全雇用を前提にしたモデルだということ、まずここが机上の空論になっているということももう一度問われなければいけない。

 それからもう一点、重要な論点として、ISDSがございます。

 人の命や環境よりも企業の利益の方が優先されてはいけない、そういうふうな訴訟は防止しなければいけないという議論が日本でもありました。

 端的に言えば、御案内のとおり、例えばアメリカの企業が水銀を垂れ流すような設備で日本で操業しようとしたら、当然日本は規制をします。ところが、それに対して、アメリカの企業は、それによって生じるアメリカの企業の損害を賠償しろと国際法廷に訴えて、損害賠償させられ、そのルールも取り壊されてしまう。こういうことが、起こるはずがないようなことが起こるのがISDSだ。だから、国会決議でも、濫訴防止策がとられていないような、国の主権を損なうようなISDSには反対すると決議しているわけです。

 濫訴が防止できたというふうに政府は説明しておりますが、問題のTPP協定九・十六条は濫訴防止にはなっていないというのが、世界、日本も含めての法律家の解釈です。この点について、きちんとした説明があるでしょうか。

 こういうことをそのままにしておりますと、韓米FTAで起きたように、遺伝子組み換え食品を使わないとしたソウル市の学校給食条例が不当なアメリカ差別に当たるとして、損害賠償で提訴するとおどされて、韓国政府は、アメリカに損害賠償させられ、訴訟費用も払うぐらいなら、先にやめた方がいいという判断をせざるを得なくなった。こういうことが日本でも懸念されるということについて、きちんと検証されているでしょうか。

 そのアメリカでも、全米の法学者、環境保護団体などが、ISDSは国家主権の侵害だと。それから、ヨーロッパ、フランス、ドイツ全土でも、ISDSに対する猛烈な拒否運動が起こっている。これが世界の現実で、日本もオーストラリアとの自由貿易協定ではISDSを入れていないんですよ。

 だから、日本政府の解釈には無理があると言わざるを得ず、国会決議違反という疑いは拭い得ない。

 それから、農業に関する問題で、食の安全基準は何ら影響を受けないというふうに政府は説明しておりますが、これは全くの間違いです。

 アメリカは、二〇一一年の十二月のアメリカ議会での公聴会で、当時のマランティス次席通商代表が、TPPでは、日本のような国が科学的根拠に基づかずに国際基準以上の規制措置をとっているのを国際基準に合わさせるのがTPPだとはっきり言ってきたわけです。条文にはそのとおり書いてある。それは、TPP協定七・九条の二項です。これを見れば、そのようにして科学的根拠が示されない限りは、それを緩めさせるということがどんどん起こるということです。

 しかも、実際に既に日本はもう緩めているわけですよね。BSEですよ。

 BSEは、TPPに日本が入れてもらいたいならば、前もって入場料として緩めろと言われて、二十カ月齢を三十カ月齢まで緩めました。そしてさらに、今起こっていることは、アメリカは一応BSEの清浄国ということになっているものですから、アメリカから、科学的根拠が示せないならば月齢制限を撤廃しろと言われているわけですよ。それに対して、既に日本は前もって、もういつでも撤廃できるように、食品安全委員会は準備を終えているわけですよ。

 だから、このことを考えれば、食品の安全基準が影響を受けないということはもう既に満たされていない。国民に対する説明と全く矛盾しておるわけです。

 それは、防カビ剤の問題もそうです。

 防カビ剤、これはポストハーベストの農薬ですね。収穫後に農薬をかけることは日本では禁止。しかし、アメリカからカビが生えないように運んでくるには農薬をかけなきゃいけない。そこで、無理やりこの防カビ剤を食品添加物と二重の分類をして、わざわざ認めてあげた。それに対してアメリカは、食品添加物に分類されるとパッケージに表示をしなきゃいけない、これが不当なアメリカ差別であるから、これを改善しろと言い始めた。

 これは二国間の並行協議でもう既に改善を認めた。日本政府は、その時点、三年前ですか、一切そんなことはやっていないと主張しましたが、今回TPPが成立して、その附属文書を見てみると、そこに、その時点で日本がアメリカの要求に応えて改善を認めたというふうにちゃんと書いてあるわけですよ。

 こういうふうに、TPPに関する日米の二国間の協議というのは三段階ありまして、まず事前の、国民には単なる情報交換だというふうにごまかされましたけれども、この時点で入場料をたくさん払った。

 それから、TPPの十二カ国間の交渉が始まった中で、日本だけ積み残し分を別途並行協議という場でやらせる。そこで決まったのが先ほどの防カビ剤ですよ。

 それから、TPPが決まったこれからは、アメリカがTPPを批准するために、各国の制度がきちんとそれに適合しているかを審査して、合わせさせるということがもう始まっているわけですね。その中で、既に輸入牛肉の月齢制限は撤廃するということを日本は完全に準備しているということですよ。

 だから、食品の安全基準が影響を受けないということは全く説明になっていないということになります。

 それから、国民に十分に説明したというふうに政府は言っておりますが、これも国会決議でもそういうことがきちんとうたわれているわけですけれども、三ページの十行目ぐらいのところを見ていただきますと、私も全国を回りました。全国キャラバンで説明に行かれたと言いますけれども、ほとんどまともな説明ではなくて、まともに回答もしてもらっていない、これが全国の声です。

 それから、都道府県知事、四十七知事に対するアンケート調査では、どちらとも言えないという答えが多いんですけれども、確かなことは、TPPに関する政府の説明は十分と答えた知事はゼロ、国会決議が守られたもゼロ、試算が現実的もゼロ、こういう数字があるということですね。これは重く受けとめざるを得ないということです。

 それから、TPPの経済効果は非常に大きくて農家への影響はないんだというのが今回の試算でございます。この件は、国会決議の一番目、農産物についての聖域を守るという議論とも絡んで、非常に大きな問題です。

 そもそも、政府の全体の試算も、二〇一三年には、GDPは三・二兆やっとこさっとこふえると言っていたわけですよ。これも水増しだったんですけれども、今回は、それより減るはずのものが、何と十四兆ですよ。四倍以上に膨れ上がる。そんなことはあり得ないわけですね。

 その三・二兆についても、これはドーピングですよ。何が行われたかというと、生産性向上効果というものです。要するに、TPPで製品価格が十円下がれば、みんなも頑張るからコストも十円下がると置けば、マイナスは出てこないわけですよ。そこでやっとこさっとこ三・二兆と言っていたのが、何で四倍になるんですか。今度は、価格が十円下がれば、何と、みんなもっともっともっと頑張ってコストは五十円下がるとか勝手に置いて、十四兆になるように数字を合わせればいいわけですよ。こういう分野を専門にしている私が言うんだから間違いないですけれども、まあ、要するにその程度のものだということですね。

 それから、農業についても大変でした。私は所管官庁にも同情したい。何とか政府の中で食料、農業を守るということで抵抗すると言って、最初は被害四兆円と言った。それが、外務省さん、経産省さんから、そんなに多くないだろうと言われて、三兆まで減らした。だけれども、三兆だった。それが今度は一千三百とか二千百億って、二十分の一以下ですよ。これは、所管官庁の中でも大変もめましたよ、こんな恥ずかしい数字を出すのかと。だけれども、やはり幹部は骨抜きにされてしまった。

 今の政権は、反対する声を押し潰していく巧妙な策略が大変上手でございます。人事権を握られたということは大きい。今回の一連の人事も、刃向かう者は全て飛ばすですよ。これによって全て、正論を言う人を押さえつけていく、これによって所管官庁は物が言えなくなってしまったわけですよ。こんなことが続けば、食料も農業も農業関連組織も、所管官庁自体も、これはもう全部葬式を上げるのかという話になるわけですよ。こういうことを続けることが許されるのかどうか。

 そして、具体的に言いますと、まず、農水省の影響試算については、本来ならば、影響がこれだけあるから対策はこれだけやらなきゃいけないという議論をしなければいけないのに、それを逆にして、対策を出したから影響ない、要するに、影響がないように対策するから影響はないと言っているだけなんですよね。

 例えば、わかりやすいのは、酪農について、政府も、加工原料乳は、バター、脱粉向けの牛乳価格はキロ七円下がるというふうに出しているわけですよ。ところが、七円下がったら酪農家は潰れますよ。なのに、酪農家の所得も生産量も変わらないと言うんですよ。そんなことあり得ますか。いや、生クリームに補給金をつけるから大丈夫だと言う。生クリームに補給金をつけただけで七円補填されますか。いやいや、そんなことはない、畜産クラスター事業を頑張れば七円コストが下がるんだと。どこにそんな保証があるのか、ちゃんと根拠を示してくれということですよ。そういうことが山のようにあって、全く説明になっていない。

 それに加えて出てきたのが、SBS米の偽装でございます。これによって完全に、国内価格と輸入米の価格は同じであるから影響はないと言っていた前提が崩れたわけですから、影響試算は残念ながらやり直さざるを得ないというのが、ここで出てくる話だと。

 それから、我々の試算では、もし本当にきちんと合理的な方法で計算して、その損害を差額補填で相殺するとすれば、毎年八千億円の予算が必要だと出てきます。十年で八兆円ですよ。

 今考えているつけ焼き刃の予算は、大半がそもそもこれまでの政策の焼き直しですし、とても、本当に現場がこれから受けるであろう被害をきちんと相殺できるものではない。これで十分だと言っていたら、本当に現場は、どんどんTPPの影響が出てきたらゆでガエルになっちゃいますよ。それで本当に大丈夫なのか。

 日本政府は、収入保険があるから大丈夫だと。収入保険はセーフティーネットではありません。これは、五年間の米価が平均で六十キロ五千円になったら、五千円との差額は補填するから大丈夫だと言っているだけなんですよ。こんなものでつくれる人がおりますか。

 アメリカの政策をまねした、これもうそですよ。アメリカは、一俵四千円で売っても、一俵一万二千円との差額は、九割は全部払うというぐらいの政策をやっていて、つけ足して収入保険があるだけなんですよね。そのつけ足しの部分だけを持ってきて、これでいいんだと言えば、これは完全なミスリーディングになります。

 そういうことも含めて、今の議論されている政策も、全くTPP対策としては不十分である。

 そして、既に現場の農業は苦しいんですよ。この状態で、TPPも何も影響がないといってセーフティーネットも外して、大丈夫だと言っていたら、本当につくれる農家の方はいなくなりますよ。家族経営は全滅状態ですよ。それでもいいんだと言うんですよ。

 政府の諮問会議に属しているような流通企業の大手の方々が農業をやりたいと言っているから、条件のいいところだけそういう人たちがやって、そこで利益が上がれば所得倍増だというわけですよ。では、残り九九%の地域はどうするんですか。そんなところには人が住むな、伝統も文化もコミュニティーも、そんなものは非効率だから要らない、極端に言えば、こういう議論になってきているわけですよ。

 これで国民の食料を守ることができますか。武器である食料の安全保障を追求していながら、食料自給をないがしろにする議論は、全く国家安全保障の本質を理解していない議論だというふうに言わざるを得ません。

 欧米は、きちんと農産物の価値を、多様な機能を評価して、国民がどうやって負担していくかというシステムをつくり上げています。アメリカは、さっき言ったとおり、生産者に必要な最低限の水準との差額は補填するという仕組みをつくっているわけですよ。そうやって、国民の大事な食料を、自分たちの命を守る食料をみんなで守る、これが食料を守るということなわけですよ。

 そういう議論がきちっと日本で行われていますか。そのことを考えても、TPPの国内対策の議論も全く不十分だということで、以上のように考えれば、国会決議との整合性も含めて、まだまだ議論すべき点が山のように残っている。こういう状況で拙速に採決をするということがもしあれば、誰のために政治、行政をやっているのか、日本の民主主義が問われる、日本の歴史上大きな禍根を残すと言わざるを得ないというのが私の意見でございます。

 以上でございます。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、田代参考人にお願いいたします。

田代参考人 田代でございます。

 このような発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 私のお話し申し上げたいことは大体このレジュメに書いてございますので、大体これを読み上げる形でお話をさせていただきたいと思います。大体五点にわたっております。

 第一点目に、やはり日本は、通商戦略の原点に立ち戻って、あるいは今お話のありました国会決議に立ち戻って、あるいは国際標準との関係でもって、やはりこのTPPを再検討すべきだということが一点目の主張でございます。

 1でございますけれども、今、世界では、反グローバリズム、この嵐が吹き荒れております。そういう中で、日本はいち早く、二〇〇〇年のWTO交渉日本提案、この二〇〇〇年の提案で、行き過ぎた貿易至上主義へのアンチテーゼとして、多様な農業の共存、そういう通商戦略を打ち出しました。まさに行き過ぎた貿易至上主義というのが今のTPPではないでしょうか。TPP協定は、この日本の二十一世紀の通商戦略、特に、やはり農業交渉戦略の原点に反しているということでございます。

 二点目に、今御指摘がありましたように、二〇一三年四月に衆参両院でもって、農産物重要五品目について、「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」ということを決議しておりますけれども、御案内のように、五品目で三割になる関税の撤廃がなされている。こういう点からも、やはり国会決議に違反しているのではないか。

 三点目でございます。

 アメリカのTPAに基づく、ITC、国際貿易委員会がアメリカの議会に五月十八日に出した報告書、これで、TPPによるアメリカのGDPの引き上げ効果は〇・一五%しかない、こういうことでございます。そして、製造業に至ってはマイナスである。

 ところが、アメリカにとって農業だけはプラスでありまして、しかも、その輸出増の最大の輸出先が日本になっていて、四千億円を超える。大体、輸出増の三二%は日本が引き受けてくれる。こういう形で、日本の行った影響分析とは非常に大きく異なるということであります。

 今御指摘がありましたように、日本の影響分析は、まず国内対策ありきということで計算しているわけでございますけれども、やはり、科学的なこういう試算に当たっては、他の条件を等しくしてTPPのみの影響効果をまず分析する。それを踏まえた国内対策でないとすると、やはり国民の血税を使った国内対策そのものが根拠を失うというふうに考えております。

 四点目でございますけれども、グローバル化時代の農業所得の確保、これは直接所得補償でやるということが、EUを初めとする先進国農政の標準であります。ところが、日本はそうではなくて、農業所得の増大を農家に、農協に迫ってくる。

 そういう中で、直接所得補償といいますと、畦畔管理を支援するような日本型直接支払いと青色申告の対象者だけに行うような収入保険、こういう検討だけでもって、やはり本格的な直接所得補償を導入するという、もしもTPPでも言えるならば、それにかわるものとして、やはりこの直接所得補償、直接所得支払いを標準として取り入れるべきだと思いますけれども、それがなされていないということでございます。

 二点目に、私は、将来にわたる農業問題で最大の問題は、やはり、農産品が七年後に再協議を日本だけが義務づけられたという点でございます。

 1でございますけれども、附属書の二―Dでもって、日本国の関税率表の中で、日本はオーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカの求めに応じて、原産品の約束、関税、関税割り当て、セーフガード、これについて、発効七年経過後に再協議するということになっています。何で日本だけが、こういう屈辱的というか、こういう約束をさせられたのか、この交渉過程をぜひ知りたいところでございます。

 これについては、2でございますけれども、実は、こちらの衆議院ではなくて参議院でございますけれども、二〇一三年の二月の十九日、林元農水大臣、この方が、二〇一一年当時に、九〇から九五%の関税を即時撤廃する、残るものも七年以内に段階的に撤廃する、これが多くの国々の合意であるということを確認していらっしゃいます。

 まさにこの九五%という数字が、日本の関税率撤廃の数字に用いられております。それから、七年後協議ということは、七年以内に段階的に関税撤廃というこの言葉が生きているわけであります。

 そういうふうに考えますと、この七年後協議、日本だけが七年後協議を義務づけられたということは、今回は少し勘弁してやるけれども七年後には絶対に許さないぞというTPPの輪郭をつくったP9の国々のかたい決意である。それを日本がはねのけるだけの力があるのかということを私は非常に心配しております。

 三点目に、食料と国民生活の安全性が脅かされるということで、これはもう既に議論されておりますし、これからもまた議論されることであると思いますけれども、私、最大の問題の一つは、現在のSPSだとかTBTでは大丈夫だということを言われているわけですけれども、問題は、多くの事項が、ほとんどの事項が、食の安全性、食品表示等々について、全てこれが小委員会、作業部会に委ねられているということでもって、一体そこで何がこれから要求されるのか。

 これも、今回は許してあげるけれども、後で小委員会でがっちりとっていくよ、こういう話だと思うんですね。

 そこで私は思い出すんですが、原発事故のときに、現時点では大丈夫というような言い方がされたんですけれども、まさにこの食の安全性についても、現時点では大丈夫かもわからないけれども、これが先送りされているということを考えてみますと、安全だ安全だと言いながら、それは空約束でもって、実は行き先のわからないバスに乗せられてしまうということがあるのではないかと思っています。

 2でございますけれども、医薬品についても、やはり特許の期間が延長されるというような規定が入っている。これはやはり国民の新薬利用を制限することになってくるんじゃないかと思っております。

 四番目には、ISDSの危険性でございます。

 一応、健康、安全、環境等に対する公共政策はISDSの対象にしないということになっておりますけれども、実は附属書の方でもって、それはまれな場合には、だけれども対象とするよということになっております。このまれな場合ということを使って、結局は、国民の健康、安全、環境に関する規定もやはりISDSの対象とさせられる、こういう可能性が非常に強い。

 そもそも、海外に司法権を委ねるISDSは、やはり司法権が最高裁を初めとする裁判所に属するという憲法七十六条の規定に反しております。学説では、条約と憲法はどっちが優先するかということになってくると、やはり憲法が優先するということになっておりますので、ISDSを入れることについては、憲法との関係を重々考える必要があるだろうということでございます。

 2でございますけれども、ISDSと農業の関係でございます。

 農業との関係で、今、農協改革でもって、全農が株式会社化できるということになっております。それから、農林中金や全共連も株式会社を検討するということになっております。

 その場合に、農協出資の株式会社という、農協出資だけの株式会社であれば外部に支配されることはないというふうになっておりますけれども、問題は、農協だけが出資できる株式会社、これを考えてみると、何で農協以外のほかの資本、あるいは特に外資が日本の農協に、日本の全農なり中金なり全共連に出資できないのかという形でもって、これはもうISDSに訴えられることは必定であります。そのことは、在日商工会議所が長年にわたってこの信用共済事業についてイコールフッティングを要求してきていることに照らしても成り立つだろう。

 そうなってくると、結論的には、日本の農家、農協が築いてきた百兆円を超える金融資産が海外に流れてしまう、こういう可能性もあるのではないか。

 三番目でございますけれども、林業について、現在、林産物の自給率が少し高まっておりますけれども、自治体による地域材の優先的な利用、あるいは自治体の公共建築物の国産材利用、こういうものが、やはり、何で国産材に限るのか、地域材に限るのか、こういうことがISDSに訴えられると、これもひとたまりもない。既にこの点について、木材ポイント制度でもって、日本は譲歩を迫られているわけでございます。

 最後に、五番目でございます。

 私自身はTPPに反対でありますけれども、少なくとも、TPPの国会承認を急ぐべきではないというふうに考えております。

 1でございますけれども、TPPに反対するアメリカの大統領候補の本音は、別にTPPに反対ではなくて、再交渉してもっと奪え、もっと多く獲得しろということにあると思います。首相は、我が国のTPP承認がアメリカを初めとする国々の早期発効に弾みを与えるというふうにおっしゃっておりますけれども、アメリカの内政は、御承知のように、そんな状況では全くない。

 そのときに、日本がアベノミクスの柱にTPPを据えて、何としても、アメリカに先んじても、ともかくTPPを発効させたい、そうやって焦れば焦るほど、その足元をアメリカに見られて、もしもアメリカの再交渉に応じなければTPPそのものを批准しないぞ、こういうブラフをかけられてきたら、果たして政権はもつのだろうかという懸念がございます。

 国会承認をした後で再交渉に応じて、しかもそこで妥協するということになってきたら、これはもう国会の承認したことが否定されてしまうわけですから、もはや日本は主権国家としての存在価値を失っていく、こういうふうに思っております。

 結論としまして、TPPの早期国会承認、これはやはりアメリカの批准の促進にも役に立たない、再交渉の阻止にもつながらない。結論的には、百害あって一利ないということでございます。TPPの国会承認を焦ることなく、時間をかけて問題点の解明に意を尽くして、アメリカ等の出方を見て最終的な判断をするのがやはり国益を守る国会の賢明な態度ではないかというふうに私は考えております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。升田世喜男君。

升田委員 冒頭、三笠宮様が薨去なされました。心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 改めて、おはようございます。

 鈴木氏、田代氏、御両者の参考人には、大変お忙しい中御出席をいただきまして、また、大変貴重な御意見を拝聴させていただきました。感謝申し上げたいと思います。

 わずかな、決められた限りのある時間でありますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 昨年の十月にTPP大筋合意がなされまして、きょうを迎えているわけでありまして、私は青森でありますが、周りの農家は会うたびごとに不安を口にしております。そういう不安の中で今、農家は日々暮らしをしているんだろうなと思います。

 さて、そういう中で、さらにまた農家を不安、さらには今度は不満を持たせることが生じました。それは、SBS米のことでございます。米の価格偽装、販売問題であります。

 鈴木氏に私はお伺いをしたいのでありますけれども、このTPP特別委員会の中で、政府あるいは農水省、特にまた山本農水大臣は、SBS米の取引において国内の米の販売価格に影響は全くない、こういうことの答弁の一辺倒なんですね。この答弁に対して、鈴木氏は専門家でもありますから、どんな見解をお持ちかどうか、お伺いをさせていただきたいと思います。

鈴木参考人 SBS米の偽装問題につきましては、まず、このように国が差額を徴収する、差益、レントを徴収する仕組みにおいては、必ずその差額部分を分け合うという行動が起きます。それは国と業者間でもありますし、業者同士でもあり得るということで、こういうふうな不正といいますか、これはつきものであるということになると思います。

 そこで徴収した差益部分、それを安値販売に向かわせるということもこれは常識的に当然のことでありまして、そのことについてこれまで政府も認識していたにもかかわらず、そのことを伏せて、国産米と輸入米の価格が同じであるから在庫に回せば影響はないという根拠にしていた。この根拠がそもそも完全に崩れていたということだと思います。

 その点についてきちんと調査をするということで、農水省が調査をされました。農水省もいろいろ板挟みで大変だとは思いますけれども、この調査結果というのがちょっと驚きでございます。安値販売が行われたかどうかについてはきちんと聞かずに曖昧にしたまま、結局、仮に安値で販売が行われたとしても影響はないんだという理屈にすりかえているわけですね。

 まず、輸入米と国産米が同じであるから影響はないと言っていた、つまり輸入米が安ければ影響があると言っていたわけですから、そのことについて、ではどう説明するんですか。完全にもう矛盾しているわけですよね。

 この調査そのものを見ていただいたらわかりますように、これが卒業論文で出されてきたら、残念ながら、優、良、可の不可をつけざるを得ない。卒業できません。という意味で、これは普通でしたら、もう一年かけて卒業できるようにやり直していただくということに大学の場合はなろうかと思います。

升田委員 今のお話を聞きますと、農水省の調査は専門家から見たらもう調査に値しない、こんなことを言われたんだなと思います。

 鈴木氏が、SBS米の実態に照らし合わせてその影響額は三千四百億円にも上る、新聞等でこう御指摘をされておるんですが、このことに対してもうちょっと詳しく御説明いただけないでしょうか。

鈴木参考人 この三千四百億円という計算は、SBSの輸入米が最大キロ六十円安く売られる可能性がある、キロ六十円というのは約三割弱です。そういう数字をもとにしますと、輸入米の一%の下落が〇・五%の国産業務用米の下落につながるという統計的な解析結果があります。それから、業務用米の一%の下落も約〇・五%の家庭用米の下落につながる、業務用米と家庭用米の比率は大体一対二、米価の一%の下落は米生産の約一%の減少につながる、このような統計的に解析した数字をもとにして計算しますと、生産額は、一九%、三千四百億円減少する可能性があるという試算が一応成り立つということでございます。

升田委員 鈴木氏の計算でいきますと、三千四百億、こうなります。政府・与党がいわゆる国内対策を行った場合、一千三百億から二千百億と三兆円から急に下がったわけでありますけれども、この三千四百億というのはそこに照らし合わせると倍ぐらいになりますから、極めて膨大な影響があるわけでありますよね。

 としますと、TPPそのものの影響額の試算に対して、もうこれは根底から崩れるんじゃないかと私は思うんですが、鈴木氏の見解を求めたいと思います。

鈴木参考人 先生のおっしゃるとおりでございます。一千三百億から二千百億と言っていた額が、この三千四百億だけでそれを超えてしまうわけですから、全く話が違ってくるということになります。

 そして、私が先ほど申し上げた、私が以前に計算していた現状の被害額に基づいて、それを相殺するには年間八千億の予算がかかると申し上げましたが、それに比べてさらに二千億の予算をふやさなきゃいけないということですので、TPPの影響を相殺するには毎年一兆円の差額補填予算が必要になるという計算が、現状では大体目安として出てまいります。

 そうなれば、これは今の対策で対応できるレベルをはるかに超えていると言わざるを得ない。ですので、そうでないと言うならば、きちんとそれに対する政府側の試算を出して、それによって議論すべきじゃないでしょうか。そういうふうに思います。

升田委員 ただいまのお話を聞くと、毎年一兆円の補填が必要だと。これが事実とすれば、農家はますます不安になっていくわけでありますね。

 こういうさなかにおいて、政府・与党は、もう強行採決でやっちゃうんだ、こういう御意見が大変出ております。これは大変不謹慎だと思います。その中でも、この農水行政の最高責任者である山本農水大臣が、国会内ではありませんけれども、政治的な場面において強行採決に関連した言及をされたことは、私は、農家の方々の思いを鑑みれば、断じてあってはならない、こう思っておりまして、ただいまのお話のやりとりの中でも、やはりこの審議というのは時間をかけて慎重に、丁寧にやるべきだなと今改めて思った次第であります。

 続きまして、きのう宮崎の方にお邪魔させていただきまして、地方公聴会に私も参加させていただきました。そのときに、御出席をされた藤原氏ですか、輸出補助金のことに触れておりまして、しかし、その輸出補助金というのはかつてあったのであって、今はそれはないんだというような、そういう意見もあって、私も鈴木氏の本は何冊か読ませていただいて、鈴木参考人はその著書の中では明確に輸出補助金の存在を認めておりまして、今現在、きのうの地方公聴会を聞いて、あるないということでちょっと見解が分かれておりますので、鈴木氏から、アメリカには輸出補助金的なものがあるのか、あるいは、そのことを目的とする仕組み等が存在するのかどうか、専門家から見てこれはいかがでしょうか。

鈴木参考人 WTO上、輸出補助金、明確な輸出補助金は廃止されるということになったのは事実でございます。

 ただ、アメリカには実質的な輸出補助金がたくさんありまして、その最たるものが、先ほども言いました、一俵六十キロ四千円でお米を売っても、生産者にとって最低限必要な、例えば一万二千円との差額の九割は全額政府が補填するという不足払いがございます。この不足払いというのは輸出補助金ではないとアメリカは主張して、ずっと続けているわけですよね。

 なぜかというと、これは国内向けも輸出向けも一緒に払うから、輸出を特定した支払いではないから、輸出向けの部分は輸出補助金なのに、それも含めて輸出補助金ではないと言い張っているわけですね。そういう形で、実質的に補助金の仕組みは維持されている。

 ただ、これは、一万二千円と四千円との差額を補填すると言いましたが、仮に国際価格が一万四千円になっていれば、この差額は発生しないということでございます。最近は、国際価格が高かったので、実質的に補助金が支払われることがない年が出てきているというのが現実です。

 ただ、重要なことは、いざというときには必ず生産コストに見合う水準との差額は補填するから安心してつくってくれという仕組みが準備されている、このことが大変重要なポイントであろうというふうに思います。

升田委員 最近、地元を回って妙なことに気づきまして、それは、農業をされていない方が農家に対して、あなたたちは相当保護されて、いわゆる過保護である、税金をたんまり使っている、我々はそんな恩恵がない、もうちょっとしっかりしなさい、改革やTPPにうろたえるな、こういう声が、農家以外からそういう指摘があるんですね。

 私も国会議員をさせていただいて、いささかこの分野を勉強させていただきますと、ヨーロッパなんかはかなりな所得補償的な保護政策があるのがわかりまして、そしてまた、ただいま鈴木氏も述べた、輸出補助金というものはないにしても、いざとなったらその目的のための仕組みはまだ存在している。こうなりますと、私は、決して思うほど日本の農業は過保護ではないのではないかな、こんなふうに思うんですね。

 世論の、農業は過保護過ぎるというこの声に対して、鈴木氏の見解をお知らせいただければと思います。

鈴木参考人 この点につきましては、具体的な資料がきょうの私の配付資料の十一ページにございますので、これで少し確認させていただきたいと思います。

 まず、表の二と書いてあるところでございますが、日本の販売農家の農業所得に占める補助金の割合は、二〇〇六年段階で一五・六%、非常に少なかった。確かに最近は、米価の下落等で所得が減ってきているものですから、三八%ぐらいまで増加しております。

 しかしながら、表の一で見ていただきますと、アメリカがやはり三五%程度と日本と同程度ですが、ヨーロッパ各国、スイスはほぼ一〇〇%、フランス、ドイツ、イギリスも九割前後の所得が補助金で賄われている。こんなのが産業かと言われるかもしれませんが、命を守り、環境を守り、国土、国境を守っている産業を国民が支えるのは、欧米では当たり前なんですよね。むしろ、それが当たり前でないのが日本だと考えた方がいい。

 表の三のフランスを見ていただくと、品目別にありますが、ここでは、日本ではほとんど所得に補助金が出ていないと思われるような野菜とか果物でも、三割、五割もの所得に対する補助金率となっております。これが世界の実態だということ。

 そして、アメリカは、ヨーロッパに比べれば補助金の割合は少ないようにも見えますけれども、表の四、主要国の農業生産額と予算額の割合、アメリカの場合は、農業生産額に対する農業予算の割合が七五%に達しております。これも、ほかの国と比べて日本が一番低いわけです。

 こういうことを考えますと、日本の農業が過保護であるという議論は、世界的に、相対的に見れば全く間違っている。このような前提をもとにして、農業が過保護であるからこれを競争にさらせば輸出産業になって強くなるんだという議論をしてしまえば、最後のとりでまで失って、本当に潰れてしまいますよということになるんじゃないか。

 こういうふうな、世論がこういうことについて全く逆の方向に誘導されているということが大変な問題だと思います。

升田委員 ただいまのは大変貴重な見解ではなかろうかなと私は思うんです。自分の中でも、この数字が信じられないぐらい、やはり食というのは国が責任を持って守っていくんだなと。あの競争一辺倒のアメリカでさえも七五パーの補填があるということでございました。

 これに対して、田代氏にも、同じことで御見解をお知らせいただければと思います。

田代参考人 余り発言の機会がございませんので一言申し上げたいんですけれども、何で地方の公聴会を、今御指摘の米の問題でこれだけ苦しんでいる東北で開かないで北海道と九州だけでやるのか、そのことに対して、私としては非常に不満がございます。それが一点。

 今まさにおっしゃるように、何で日本の農業は過保護かというと、やはりTPPの試算を、国内対策をまずやったからTPPの影響は少ないんだ、こういう形でやれば、国民は、TPPの国内対策を農業だけが受けている、やはり過保護だ、こういう発想になってくると思うんですね。やはり、まず国内対策は抜きにして、TPPの純粋な影響がどれくらいあるのか、それが何兆円に達するのか、そのことを明らかにして、その上で、では、やはり国内対策が必要だ、こういう論理に持ってくれば国民も納得してくれるんじゃないかと思っております。

 以上です。

升田委員 私、農業というのは、特に米農家、米というのは日本の文化そのものだと思います。

 先般、神社の例大祭に参加させていただいたときに、宮司さんがおはらいするときにも米を使うわけですよね、お清めするときはお酒で、その原本も米なんですね。ですから、米を守るというのは日本の文化を守るということで、ただ単に競争競争で輸出をすればいいという論調が、特に安倍総理が声を大にしてそういうことを述べているわけでありまして、私は、そういうときであっても、もう一回足元ということで、内需の拡大こそ今行って、そして家族農家も守る視点も持つべきだ。

 日本は本来、小さなことに丁寧に向き合って、その上で、大きな安心と大きなきずなで安定、発展してきた。これこそ文化だと思うんですね。輸出に特化せず内需に目を向けるべきだ、この点につきまして、鈴木氏の見解をお伺いしたいと思います。

鈴木参考人 先生御指摘のとおりだと思います。

 実は、日本は、製造業も含めて輸出国だと言いますけれども、GDPに占める輸出の依存度は一四%しかございません。内需国なんですよね。

 ですから、特に食料につきましては、農業につきましては、これは国民の命を守るかなめの産業として、まず内需をしっかり満たして、国民に安全、安心な食料を提供し、地域のコミュニティーを守っていく、このことが一番重要な役割だ、先生のおっしゃるとおりだというふうに理解しております。

升田委員 もう時間が来てしまいまして、田代氏には余り質問できずに申しわけないなと思っています。

 きょうは、私、改めて、このやりとりをさせていただいて、やはり慎重審議が大事だな、このように思います。強行採決などということは、農家に不安あるいは不満、これをさらに倍増させて、日本の民主主義を根底から崩していく可能性が大でありますので、丁寧な審議を求めて、私、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。

 鈴木先生、田代先生、本日は本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今、TPPの審議の中でも、農業は、攻めの農業、強い農業などなど、TPPを利用して輸出で攻めるんだということがよく言われています。それに対して、鈴木参考人、田代参考人、それぞれに御見解をいただければと思います。

鈴木参考人 輸出の問題につきましては、先ほどの内需の問題とも絡みますけれども、政府は盛んに、人口も減少する中で、これからは輸出で経営を成り立たせていくことが重要であるということを発信されまして、特に輸出で成功している農家の方がよくテレビ等でも出てきておられます。

 輸出を振興する、これについて努力をすることはもちろん大変重要なことだと思いますが、その輸出で成功しているという農家の方の経営を見てみても、輸出による所得というのはわずか数%です。輸出で成り立っている経営というのは、日本に農業経営で存在しません。

 このことをよく考えないと、これからは輸出で全てバラ色なんだということを喧伝するというのは、これは非常に幻想で危険なことであるというふうに私は思っております。

 輸出が伸びる前にTPPで安いものが入ってきて、それで経営が苦しくなったら、とても経営は成り立たない、こちらのことをまずきちんと議論すべきである、そういうふうに私は考えております。

田代参考人 輸出でございますけれども、現状でもう御案内かと思いますけれども、日本の輸出のうち、実際にTPP諸国に出ているものは二十数%、二〇%程度でもって、はっきり言って、輸出することは、輸出自体について頑張ることは大切なことかと思いますけれども、余りTPPとは関係がないんじゃないかということでございます。

 それから、加工品が輸出の大体五割を占めているということもございます。しかも、その加工品の原料の三割が輸入されているというんですから、やはり農産物の輸出についても加工貿易だな、こういうことであります。

 しかし、最大の問題は、自給率三九%の日本が輸出で農業を伸ばすんだと言っても、これはもう世界のお笑い物だというふうに考えざるを得ないと思うんですね。

 先ほども御質問がありましたけれども、内需の拡大が必要だと言っていますけれども、今の消費を見てみますと、実は、若い人ほど、若いお宅ほど食べていないんですよ。それから、若いお宅ほど安いものを食べているんですよ。きょうお集まりの議員の先生方は、和牛牛肉のキロ千五百円ぐらいのは食べるかもわからないけれども、若い人たちはそんなにお金がなくて、キロ三百九十五円ぐらいのものを食べている。

 こういうことを考えると、やはり若い人の内需から高めていって、輸出も大切だけれども、国内消費は、まだ三九%ですから、まだまだ伸ばす可能性はあるというふうに考えております。

斉藤(和)委員 田代先生の方から牛肉の話がありましたけれども、やはり牛肉・オレンジの自由化によって、牛肉は国産のものは高くて手が出せないと。こうした状況の中で、TPPによって豚肉なども関税がかなり下げられる、安くなる、もうなくなる、そういった状況の中で、豚肉も国内産は食べられなくなるのではないか、そういう懸念があるわけですけれども、どのようにお感じでしょうか、田代先生。

田代参考人 国産の豚肉が食べられなくなるかどうかということについては、むしろ鈴木先生の方がお詳しいと思いますけれども、ただ、問題は、牛肉はともかく、豚肉については、はっきり言って、味の面でもって一般の我々消費者が国内産、外国産の区別をなかなかつけることができない、こういう難点がございます。そういう点では、こうやって関税が引き下げられていくということになってくると、輸入の構造が変わってきて、大量に豚肉が入ってくるということがあるなという感じがいたします。

 この間、テレビでどこか大阪のレストランの方を見ていたら、ランチには輸入豚を使う、ディナーには国産を使う、こういう使い分けがどんどん進んでくるということでありますから、当然、やはり大きな影響を受けるというふうに考えております。

斉藤(和)委員 鈴木先生の方がというお話だったので、それに触れていただきながら、配付資料の九ページに、農業政策は安全保障政策というお話があります。先ほど、食料自給率三九%もありましたけれども、食料、農業の問題と食料安全保障の問題との絡みで、先生の御見解、そして田代先生にもお話をいただければと思っています。

鈴木参考人 まず、豚肉の件に関しましては、政府は、豚肉については、いわゆる差額関税制度を守ったので基本的にはほとんど影響がないと言っております。これは間違いでございます。

 差額関税制度によって、今は、安い豚肉と高い豚肉をまぜて五百円幾らにして、関税が二十二・五円という一番低くなるようにして輸入をしている。それで、今度、一律五十円の関税になる部分が多くても、関税五十円よりも二十二・五円の方が低いから、今の、コンビネーションというまぜて輸入する仕組みをやめないんだというふうに説明している。これは完全な形式論です。たくさんの輸入業者さんは、五十円でいいならば安い部位を大量に輸入しますよと言っておるわけですよ。だから、それだけの影響がある。しかも、アメリカで一番TPPで喜んでいるのは豚肉業界なわけですよね。ということは、大変なことだということがわかるわけですよね。

 そういう意味で、既に、牛肉もそうです、豚肉もそうです、自給率は五割を切っているわけですよ。それが、牛丼、豚丼が安くなるからということでどんどん国民がそちらの方に走っていったら、自給率は本当に一割とかに近づくかもしれません。

 そのときに大変なのは、食品の安全の問題でも出てきますように、成長ホルモン、ラクトパミン等のたくさんのリスクが満載の輸入牛肉、豚肉を食べて、発がん性があり、がんがふえてきた、大変だ、国産の安全、安心なものを食べたいと思ったときにはもうつくってくれる人がいない、このときになって気づいても遅いんだ。食に安さだけを追求することは命を削ることなんだということに今気づいて、きちんと対策をしなければ、食料の安全保障は守れない。

 食料の安全保障は、まず量を確保することが大前提であって、量がきちんと安定的に確保できなければ、安全なもの、質の安全保障も守れない。つまり、安全なものを選ぼうと思ってももう選べなくなるわけですから、そういう意味で、国民を守る食料というのは、質、量の面できちんと安定的に確保されなければいけない。

 もう一つは、いざというときに食べる食料がなくなるということは日本ではないんじゃないかなんということを言う議論は、私は間違っていると。

 アメリカなんかは、食料は武器であると言って政策をやってきた。

 あのブッシュ大統領も、戦争を続けて困ったものだったけれども、食料はナショナルセキュリティーだ、皆さんのおかげでそれが常に保たれているアメリカは何とありがたいことかと農家の皆さんにお礼を言って、それに引きかえ、どこの国のことかわかると思うけれども、食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ、そんなふうにしたのも我々だけれどもな、もっともっと徹底しようと言っているわけですから、そのことを私たちは深刻に受けとめなきゃいけない、そういうふうに思います。

田代参考人 私個人的には余り食料安全保障という言葉は使いたくない立場でありまして、歴史的に見ると、やはり、食料安全保障は軍事的な安全保障と一緒に出てきた言葉でありますので、ちょっと危ないなというふうに思っております。

 ただ、今御指摘がありましたように、国民の安全を確保するという上で、やはり食料の一定の自給率は必要であるということは明確な話だと思います。

 ちょっときょう議論になっていないんですけれども、御承知のように、TPPは生きた協定、リビングアグリーメントということになっているんですね。これからどんどん拡大していく。それは、もう既に韓国が入りたいというようなことを言っていますし、行く行くは中国まで入ってくる。そうなってくると、今の三九%の食料自給率も、これはやはり、近隣のタイを初めとする農業国が入ってくれば、もっともっとこの自給率はおっこっていくことがもう目に見えている。

 そういう長い目でもってTPPの影響を見ないと、やはり国民の安全という点でも将来を見失うことになるんじゃないか、こういうふうに考えております。

斉藤(和)委員 国内を見失うのではないかというお話がありました。

 先ほど田代参考人の方から、先進国の農政の標準から日本は外れているというお話がありました。その辺をもう少し詳しくお話しいただけないでしょうか。

田代参考人 ちょっと言葉足らずなところがありますけれども、ヨーロッパを初めとして、自由化というか国際価格並みに域内価格を引き下げていく、そのかわりに、その所得の減った分は直接所得支払い、ダイレクト・インカム・ペイメンツで賄っていくというのが国際標準になっている。それが、先ほど鈴木先生がデータでお示しになった、ほぼ農家の所得の一〇〇%が財政によって負担されている、こういうことだと思うんですね。それは、まさにやはり、国際化し自由化したから、その代償としてやるということだと思うんですね。

 日本は、今のところそこまではまだTPPの前であればいっていないということになってくるわけですから、そこはやはりヨーロッパと違うと思うんですけれども、ただ、もしも本当にTPPをやるならば、関税撤廃を長期的に考えているわけですから、本格的な直接支払い政策、ヨーロッパ型のものに転換しなければ、これはやはり農家は所得を確保できなくなってくる、そういう意味でございます。

 今、TPPを抜きにして直接所得補償が全てだということを申し上げているんじゃなくて、TPPでもって完全自由化に追い込まれてくるならば、それはやはりそういう政策をとる以外に道はないということを申し上げた次第です。

斉藤(和)委員 直接的にやはり農業を支えていくということがなければ、本当に食料自給率三九%を維持するということはあり得ないし、TPPによってさらに日本の農業が壊滅的状態になるということは、先ほど来先生方からあったと思います。

 その中で、よくTPPと韓米FTAは似ているというお話があります。先ほど鈴木先生も少しお触れになりましたけれども、この韓米FTAによって、韓国の農業の中での変化、また韓国国内での起こっている変化など御紹介いただければと思います。これは田代参考人にもお願いいたします。

鈴木参考人 韓米FTAは、TPPと似たような内容を持っているということもあって、大変日本でも議論になりました。

 私も、韓米FTAが発効する前にも韓国に伺って、農業への影響を調べました。そのときに一番問題になっていたのは牛肉でした。牛肉の十四年間での関税撤廃が韓国の畜産を潰すのではないかということで、韓国には和牛と対応するような韓牛というブランドがあるが、これはそれほどのブランド力がないので大変なことになるというのが専門家の見方でした。

 そして、ふたをあけて韓米FTAが発効して直後、もう一年目に、アメリカからの輸入が五割ふえて、そして、韓国の子牛価格は二五%も下がるという大変な事態になりました。十四年後に関税撤廃で徐々に下げていくはずなのに、もう一年目からこういうことになったということで、韓国は大変な混乱に陥った。

 これが、我々が参照しなければいけない大きな一つの事例ではないかというふうに思います。

田代参考人 具体的な品目について、今、鈴木先生の方からお話がありましたけれども、私は、むしろ外枠で考えたいと思うんです。

 まず第一点目として、米韓FTAの結果として、韓国が予想していた以外の作目にやはりいろいろな影響があらわれてくるというか、こういうことがあると思うんですね。このTPPをめぐっても、やはり、米が危ないということになってくると、今現地では産地を挙げて園芸作にシフトしようということでありますが、そうやってみんなが園芸作にシフトすれば、今度は園芸の方が玉突きでもってやられちゃうというか、こういう思わざる問題が出てくるということが一点。

 それから二点目に、先ほどちょっと農協の問題について触れましたけれども、この米韓FTAのもとでもって農協の信用、共済事業が分離される、会社化されるという、作目だけではなくて、そういう大きなところもやはり見ていかなきゃならないんじゃないか。

 それからまた、ISDSで、御承知のように、ソウル市の、有機農産物を使った、こういうものが、みずからやはりちょっと撤退せざるを得ない、こういう影響もあらわれてくる。

 ただ、私は、今回最大に韓国から学ばなきゃならないことは、再協議を求められたという、しかも再協議に応じたという、こういう前例があるよということをやはり重要なこととして学んでおくべきだというふうに考えております。

斉藤(和)委員 本当に、韓国でもさまざまな影響が予想をしなかったところにも出ているというお話がありました。

 鈴木参考人の方から先ほどあった、遺伝子組み換え食品の問題や、学校給食に地元のものが使えなくなるというお話、また、田代参考人からもありました、地元のところでとれた木を使って公共工事をやるということさえもかなわなくなるような事態になりかねない。そして、TPPは安全だと言いながらも、行き先不明のバスに乗らされるというのは非常にわかりやすいと思いました。

 改めて、今の日本農業の現状から見た場合、TPPはどのような影響になるのか、そして、本来、今やるべき日本農政への対策というのは何が一番必要だとお感じになっていらっしゃるでしょうか。両参考人からお願いいたします。

鈴木参考人 まず、日本の農業は、既に今でも非常に苦しくなっているということですね。お米の生産量は今八百四十万トンありますが、これが十五年後には、我々の試算では六百七十万トンにまで減る可能性がある。地域がもたなくなります。TPPを入れなくてもです。

 しかしながら、消費は、米は六百万トンになる可能性がある。六百七十万トンまで生産が減っても、まだ七十万トン余る。だから餌米をつくって畜産にと言いますけれども、畜産の方は、非常に巨大な経営は出てきていますが、中堅規模も含めてどんどんやめております。生産量は減る可能性が高い。何と十五年後には、計算の仕方によりますが、五割も六割も生産が減る可能性がある。だったら、餌米をつくっても誰が食べるのか。

 今の施策体系でも地域が回っていかない、そういう状況になっているのに、さらにTPPについては基本的に影響がないと言っているわけですよ。影響がないから何もしなくてもいいと言っているわけですから、これはほとんどの家族経営が潰れてもいいと言っているのに等しいと考えざるを得ない。そうなれば、地域の伝統も文化もコミュニティーもなくなる。

 しかしながら、そこに巨大企業の一部が、諮問会議に入っているようなメンバーの方が農業をやれば、それでその方がもうかればいいんだと言っていたら、これは日本国民を支えることはできません、地域も支えることはできません。

 しかも、兵庫県の養父市も、言いましたけれども、特区で起こっていることは、企業が農地を買えるようになった。その企業はどこですか、そして、そこの社外取締役は誰と誰ですか。ほとんどこれは利益相反ですよ。自分たちの利益を、私益を追求するために政府の会議を利用して、そういう人たちが自由に日本の方向性を決めて、今だけ、金だけ、自分だけで、国民を苦しめ、地域を苦しめ、TPPをやり、国内の規制改革をやっていって、誰もとめられない。

 この現状を今とめなければ日本の将来は危うい、そういうふうに思います。

田代参考人 既にTPPの影響はもうあらわれております。二〇一五年の農林業センサスでも、かつてなく離農がふえている、それから基幹的農業従事者が減っている。こういう事態からすると、もう既に影響はあらわれているというふうに私は見ております。これはやはり、高齢に達した方、頑張っていらっしゃった方が、TPPで将来が危ないなと思ったらこの際離農ということだと思うんですね。

 それから二点目に、後継者として新規就農にやはり頼らざるを得ないところがあるんですが、新規就農者が十年、十五年後の自分の将来を農業に託せるか、こういう懸念が非常にふえてくるということが二点目の影響です。

 三点目で、これはある酪農県の一番トップの酪農家に伺ったんですけれども、今はこのTPPを控えて、投資をするかどうか。子供の代までは借金が残っても仕方ない、だけれども、孫の代までは借金を残したくないということで、もうこの際投資を諦めるというか、こういう形でもあらわれております。

 離農がどんどん続いていけば、今の御指摘のように、では企業的農業に切りかえればいいじゃないか、こういう話になってくるかと思うんですけれども、企業的農業だけになってくれば、やはり、日本の環境をどう守るのか、地域社会、過疎化する農村社会をどう守るか、そういう問題まで波及してくるんじゃないかと思っております。

斉藤(和)委員 本当に、先生方、ありがとうございました。TPPは、農業だけではなくて、地域経済、あらゆる問題に波及する。こういうものを徹底的にやはり審議すること、強行採決は絶対に許されないし、そもそもTPPからは撤退すべきだと私も改めて感じました。そのことを最後に述べて、質問を終わらせていただきます。

 本日は、本当にありがとうございました。

塩谷委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 両案件審査のため、本日、参考人として、NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表内田聖子君、明治大学法学部兼任講師・NPO法人日本消費者連盟元共同代表山浦康明君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、食の安全等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず内田参考人にお願いいたします。

内田参考人 御紹介いただきました、NPO法人アジア太平洋資料センター、私どもは小さな市民団体です。しかし、国際NGOとして、私自身、六年以上TPPの問題に、他国の市民団体や労働組合、環境運動、それから医療者の団体、たくさんの人たちとTPP交渉をウオッチして、その問題点を国内外で発信をしてきました。

 今、TPPの参加国の市民社会は、本当にこの協定の中身に対して強い懸念を持っております。それがとりわけ強いのがアメリカだというふうに言えようと思います。御存じのとおり、もはや大統領候補二人をしてTPPには反対すると言わなければ通らないというところにまで進めてきたのは、やはりとりわけアメリカの場合、労働運動、一人一人の労働者たち、それから、環境問題、消費者団体等々の人たちの努力があるわけです。

 私はその一員として、特に二〇一三年三月から、日本が交渉に参加する前からになりますが、交渉会合の現場に何度も足を運びまして、秘密交渉でしたので大変情報がない中で、他国の団体と協力をしてきて、中身も分析したという点で今回お招きをいただいたと思っておりますので、経験の中から幾つか御指摘さしあげたいと思っています。

 資料をお配りしております。時間が限られておりますので、ポイントだけ絞って言います。

 きょうは、主に食の安心、安全というテーマですが、その前提となるTPP協定全体に関する大きな懸念点を幾つか述べさせていただきたいと思います。

 まず、このTPPというのは、やはりかつてない特異な性質、性格を持っていると思います。その一つが、最大の一つが、極度な秘密主義だと思っています。これまで日本がさまざまな貿易協定、通商交渉をやってきたわけですが、それらと比較してもここまでの秘密であった交渉はないということです。これは、我々国民、市民社会にとっては大変大きな問題だと思っています。

 具体的に言えば、日本が二〇一三年七月に交渉に参加しましたが、その際に、他国と保秘契約という契約書、これを交わさなければ入れないので、当時、鶴岡首席交渉官がサインをした。私もその交渉会合の現場に市民としておりましたけれども。

 問題は、この保秘契約書という中身も秘密なんですね。ですから、皆さん、国会議員の方々も、一体その秘密の定義が何であるのか、その規定を破ったらどういう罰則なりあるのかということがわからないまま国会の審議がどんどん進んでいる。これは私たち国民からすれば大変に怖いことです。

 ですから、後ろにも書きましたが、まずこの保秘契約書の中身を明らかにするということが議論の大前提であろうかと思います。

 それから、その下に二つほど書きましたが、交渉官の方々も大変厳しい守秘義務ということを課せられておりまして、このことは、当時のTPP担当相でありました甘利明氏も、ほかの交渉ではあり得ないほど厳しいんだということをおっしゃっておりますし、国会の中でも、先ほどの保秘契約にサインをするような協定はあったのかという御質問を紙智子議員がされた際に、外務省の齋木尚子経済局長が、TPP以外に例はないとはっきりと御答弁されています。

 つまり、今国会でも、外交上の問題、秘密ということでお答えできませんという発言を多々私どもも聞いておりますが、その際は、外交上の秘密という内容や定義、これは普遍的なものではないということです。

 そして、なぜTPPがここまでの秘密なのか、ほかの協定と比べてどうしてTPPがこんなに秘密なのかという理由について、私たちは説明を全く聞いたことがありません。ですから、このあたりは説明をしていただかなければやはり納得ができない。かつては知り得たレベルの情報が、今回、TPPでは何もわからないという状態です。

 私も交渉会合に行って、農業団体の方、畜産の方、たくさんお会いしますけれども、皆さん言っておられるのは、WTOの交渉の際には、現地に来て、政府やいろいろな各国の人と話せば、ある程度中身はわかった。交渉のテキストもわかった。しかし、今回、TPPでは本当に教えてくれないんですね、どうしてなんでしょうと皆さんお困りでした。

 ですので、この保秘契約書を開示していただいた上で、そして可能な限りの開示説明ということが大前提になるんだろうと思っております。

 次に、ここが一番大きな、きょうお伝えしたいポイントの一つなんですが、TPP協定文というのは、今審議されている内容というのは、資料でおつけしましたが、この細かい表ですね。

 このたび、私は改めてページ数を数えてみました。そして、日本政府がそのうちどれだけの分を訳しているのかということも数えてみました。そうすると、細かい表なんですけれども、三ページ目、トータルで八千三百二十ページありました。膨大です。そして、そのうち何ページ分を政府が訳されているのかというと、隣の数字、二千三百二十八ページ、これは三分の一弱というか四分の一強というか、大変にボリュームとしては訳していない分が多うございます。ここも議論のポイントだと思います。

 各国の関税譲許表は膨大です。これは訳す必要がなしというふうに理解して訳していないのだというふうに私ども解釈していますが、ただ、それで本当にいいんだろうかという疑問も一方であります。

 ともあれ、このような膨大な協定文を今皆さんは御審議されているわけですけれども、ただ、TPPの協定文、条文の解釈を、この間、私どもも数カ月かけてやってきましたが、結論から言えば、TPPの中身というのは、今後、常にどんどん変わっていくということなんです。このことが余りにもこの国会審議の中で前提となっていないような気がしております。

 具体的に書きましたけれども、協定文における再協議や見直しの規定というのが、既に協定文の中に何カ所も条文として書かれています。

 例えばですけれども、冒頭のTPP委員会を設置というところでは、発効から三年以内に協定の改正または修正の提案を検討する。これはTPP協定全体です。個別分野ではありません。発効して三年以内に見直しがなされるという可能性がはっきりと規定されている。それからあとは関税撤廃の時期の繰り上げですとか、よく問題になります七年後の農産物の再協議、あるいは国有企業や政府調達分野に関しては、具体的に三年や五年という年数を書いて、再交渉していくんだと、もうあらかじめ書かれているんですね。

 ですから、今、国会の中でも、アメリカから再交渉を要求されたらどうするんだという議論をされていますが、その問題はもちろん重要ですが、それがなかったとしても、TPPというのは発効した後にも交渉が行われる、そして中身は変わっていくということです。

 ですから、このことを踏まえて議論をしなければ、今出されている協定文の中身、水準で大丈夫だ、もう変わらないということを主張されても、協定文にも規定されている中身を見れば、変わり得るということが明確に規定されていますから。

 疑問としては、その都度、批准をし直すのだろうかということがあります。これは法的にどうなんだろうかということがありますし、もしそうやって変わっていくのであれば、今国会で、時間が非常に限られて、拙速に議論していますが、その中身というのが変わってしまえば、今私たちは何について、何に確証を持って議論をしているのか、それを聞いているのかという根本的な疑問が生じます。

 そしてもう一つは、日米並行協議の問題。これは国会でも野党の議員の方が追及されていましたけれども、たとえTPPが頓挫しても、ここはどうなるのかというのを私たちも非常に懸念をしていました。

 日本政府のこれまでの見解は、日米並行協議は、万々が一TPPが発効できなければ、これは無効になるという御説明を私たちも聞いてまいりましたし、野党の皆さんもそう聞いてきたと思います。あるいは、日米のFTAというのは結ばない、結ぶつもりはないということを政府の見解として伺ったことがあります。

 そうすると、日米並行協議というのは、TPPが発効する前までにさまざまな手続を完了していくという話になっているので、仮に発効しなかった場合、これは全部、原状復帰というか、日米並行協議がなかった状態まで本当に戻せるのだろうか。戻すという話を今政府はされているわけですけれども、そういうことも論点の一つかと思います。

 それから、ちょっと急ぎますけれども、アメリカには承認手続というものがアメリカ独自の制度としてあります。

 これはそこにも書きましたけれども、条約の批准から発効するまでの長い長いアメリカのプロセスの中で、相手国の国内法をチェックしまして、当該する協定内容の水準に達しないものについては口を出して、国内法を変えてほしいということを要請したり、場合によっては、アメリカの交渉担当官が相手国に出かけていって、そこの国内法の改正を協力してやっていくということを既にやっております。

 主には、九〇年代後半から二〇〇〇年代、中南米諸国、グアテマラとかコスタリカというような国々とのFTAの中で、かなりの分野でこれをやっております。その中に、食の安心、安全というのも入っておりますし、さまざまな国内の規制緩和という方向で国内法を改正させています。

 ですから、これはいわゆる今言っている再交渉とは全く別の話として、今後、日本にもそのような要求というのが十分来るであろうということを私たちは分析しておりますし、そのことが非常に大きな懸念材料として挙げられます。

 では、次の(二)というところですけれども、私は、交渉のプロセスに参加する上で、その中で大変たくさんのグローバル企業がTPP交渉に関与してきたという実態を見てまいりました。きょうは食の安心、安全が大きなテーマですので、そこをトピックとして挙げたいと思います。

 皆さんに資料でつけましたのが、どなたでも御存じのモンサント、これは、巨大な食糧メジャーであり、農薬そして遺伝子組み換えの巨大な、世界最大のメーカーです。最近、バイエルという会社に合併という話もありましたが、いずれにしても巨大な企業です。

 こうしたモンサントのようなバイテク企業がもうかなり早い段階からアメリカ政府に対して、TPPでこういうことを実現してほしいという要求をやってきました。

 その一例として、きょう原文をつけさせていただきましたけれども、原文で恐縮なんですけれども、これは、二〇〇九年三月に、バイオというロビー団体がアメリカ政府に対して出したTPPへの要請書です。

 ポイントをかいつまんで言いますと、下の項目のようなことが書いてあります。大変率直でわかりやすい内容だと思います。TPP協定の中もこのぐらい率直にグローバル企業の要求を書いてもらえば、批准の審議も楽だと思いますけれども。

 具体的には、遺伝子組み換え作物を規制しないこと、それから、表示義務も課さないこと、それから、規制も各国がばらばらでやらなくて統一的にやりなさい、そして、ある国が遺伝子組み換えをもう輸入しないという場合にはアメリカ政府にお伺いを立ててほしいと。ちょっと普通では単純に理解しがたいような要求が次々と挙げられていて、交渉の過程を見る限り、こうした企業の意向というのをやはりアメリカ政府はしょって交渉に参加をしてきているということは確証を持って申し上げられると思います。

 ですから、こういう現実がある以上、この後、山浦先生からTPPでの細かい懸念というのは語られますけれども、そして、TPPの中身が変わるんだ、今後もどんどん企業の発言力が強まって変わっていく、そのことをあわせて考えた際に、とても私たちはこのTPPで食の安心、安全が守られるということを信じられないという思いが率直にいたします。

 そして、もうやめますけれども、最後の(四)というところです。ISDの問題は、先ほど鈴木先生たちも触れられましたので、触れません。

 今、国際社会の議論というのは、行き過ぎた企業や投資家の自由なビジネスの横行、これは租税回避という現象としてもあらわれていますし、ISDで多額の賠償金を得るということも一つですが、これに対して、いかに環境や人権、食の安心、安全というようなところの原理原則を貿易や投資の中に埋め込んでいくかという議論をやっています。アメリカでもEUでもそうした議論をやっています。

 ですから、今、いわゆるメガFTAと言われるアメリカとEUのTTIP、それから、EUとカナダの連携協定等々が立ち行かなくなってきているというのは、皆がこの三十年間の歩みを一旦立ちどまって反省をして、新しいルールをつくろうということなんですね。

 具体的には、そこにたくさん挙げましたが、国連の報告書ですとか人権委員会の指摘、それからUNCTADなども、やはり環境やそれから遺伝子組み換えの問題等々、いかに上手に規制をして適切な貿易・投資のルールをつくるかという議論をしています。

 ですから、そういう中にあって、日本はなかなかここの議論が弱いと思いますし、パリ条約の批准がTPPより後回しにされているという現状こそ、やはり国益を損なうもの以外の何物でもないというふうに私自身は思っております。

 ですから、拙速な審議は一旦ストップをしていただいて、何が本当の日本の国益であり国民益であるかということを、多角的な検証をぜひしていただきたいと思っております。

 済みません、長くなりまして。

 以上、終わります。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、山浦参考人にお願いいたします。

山浦参考人 ただいま御紹介いただきました山浦康明と申します。

 今、明治大学の法学部の講師をしておりますけれども、長年、日本消費者連盟という消費者団体の役員をしておりまして、消費者問題に長らくかかわっております。その中でも、TPPといった貿易の問題、そして食の安全の確保、こういった問題につきましていろいろと活動をしてまいりました。

 消費者庁、消費者委員会が二〇〇九年にできましたけれども、そのときにも、消費者委員会の食品表示部会の委員も二期ほど務めさせていただきまして、食品表示のあり方につきましていろいろと提言をさせていただきました。

 きょう私がお話しする内容は、資料として皆様方にお配りしております。レジュメが、三枚紙が一つ。そして、内田さんなどのグループと一緒につくりました、TPPの原文を読んで内容を分析しようということで、その分析チームの報告書、第六版まで出ておりますけれども、そちらの食の安全についての私が書いたもの。そして、一般向けにこういった「TPP 24のギモン」という冊子をつくりまして、好評で、今、皆様方お読みになられているわけですけれども、こちらの食の安全に関する部分を印刷していただきました。それに基づきましてきょうはお話をさせていただきたいと思います。

 本日、私が意見陳述をするに当たって気になったことは、去る十月二十五日、与党の推薦による参考人質疑が行われまして、その中で、奈良県立医科大学の今村知明教授の発言がありました。

 この内容を見ますと、政府もQアンドAをつくっておりまして、TPPに参加したからといって日本の安全基準とか表示のルールというものは変える必要はないんだというふうに言っておりますけれども、その内容をそのまま今村先生はお話しになっておりまして、例えば、WTO上のSPS協定を守っていれば各国の基準の差は認めている、日本の食品安全基準はSPS協定を守っているんだから心配ない、こういった発言。あるいは遺伝子組み換え食品の表示、これにつきましては、わかりやすくすべきだけれども、最終的に検出できない場合もあるから、余り無理な義務表示はだめだ、こんなようなお話をされていたと思うんです。

 これにつきまして、私はきょう、具体的な遺伝子組み換え、そしてBSE、そして食品添加物につきまして、TPPではどうなってしまうのかということをお話しさせていただきたいと思います。

 まず、私のレジュメの括弧一番、「遺伝子組み換え食品・作物」のところですけれども、皆様方御存じのように、日本の安全性評価は私は不十分ではないかと思っているんですね。輸入が許可されているものは、トウモロコシ、大豆、菜種、綿実、ジャガイモ、パパイヤ、てん菜、アルファルファですけれども、実際に消費者が口にする可能性が高いものはトウモロコシとか大豆とか菜種、綿実の油ですね、こういったものが出回っているわけですけれども、この安全性について、TPPに参加すると非常に安全性の評価が後退してしまうんじゃないか、こういう危機を持っております。

 したがいまして、安全性を評価する対象が、今後、遺伝子組み換えのシャケとか小麦、あるいはお米なども今開発されているわけですけれども、こういったものがもしかすると日本で承認されてしまうんじゃないか、こういうおそれがこの遺伝子組み換えをめぐる安全性評価の考え方にあらわれてくるんじゃないかというふうに思います。

 そして、この遺伝子組み換え技術だけではなくて、今は遺伝子組み換え技術を使った微生物、そして添加物、それからゲノム編集などと言われる新たな遺伝子操作が非常に脚光を浴びておりまして、遺伝子組み換えだけではなくて、遺伝子操作の技術を我々がどう考えるかということについて懸念があるわけです。

 そして、日本の遺伝子組み換えの表示、これについては今後変えることはないというふうに政府はよく説明をしますけれども、皆様方御存じのように、これを義務表示にしているのは遺伝子組み換えが使われているということで遺伝子組み換え表示、そして、不分別というものがあります。つまり、本当は遺伝子組み換えを使っているんだけれども、流通の過程で、製造の過程でわからなくなってしまったという場合には書かなくてもいい、不分別と表示すればいいということで、実際には遺伝子組み換えの原料を使った食品が大量に出回っておりまして、日本は世界で一番遺伝子組み換え食品を食べている国民である。いわば世界のモルモットなんですね。

 こういう実情があるわけですけれども、消費者は厳しい遺伝子組み換えの表示を求めております。しかし、これができなくなるんじゃないかということがTPPの論理から出てくるということをお話ししたいと思います。

 また、第二章には遺伝子組み換えの問題を、市場アクセスの章なんですけれども、突然、遺伝子組み換え対策、そういった条文が盛り込まれておりまして、微量混入の問題ですけれども、このときには、違法なものが入ってきた場合には、日本は輸出国に対して送り返すことが権利として当然できるわけです。また、そうしてきました。しかし、この条文によると、まずは話し合いをしようよ、協議をしようよ、そういうことになっていますね。ですから、すぐに突き返すではなくて、輸出国と日本がそこで協議をして何らかの対策を検討する、そういうふうなやり方が導入されています。

 これは、先ほど内田さんもおっしゃったように、多分、モンサント社を初めとする遺伝子組み換え企業がこういうルールを新たに盛り込みたいというロビーイングをした結果、こういった食の安全と一見関係ないようなところに入ってしまったという問題だと思います。

 そのほか、例えば、アメリカがこれを合法化したいというふうなことを考えた場合には、日本政府に対して早く合法化してくれという要請をすることができる、こういうふうな文言もあるわけですね。

 ですから、私たちは、遺伝子組み換えのコーン、大豆油、マーガリン、マヨネーズ、こういったものを食べておりますし、また高度に加工された甘味料、しょうゆなども日々食べているわけですけれども、こういったことが今後非常に懸念されるということです。

 その背景には、TPPの安全性評価というのはリスク分析を前提としておりまして、狭い科学主義を重視しております。WTOにもSPS協定が当然あるわけでして、この書きぶりとTPP協定の書きぶりを比べますと、リスク分析万能論を前面に出しているという違いがあるんですね。

 科学主義といいまして、黒か、白か、グレーか、そういういろいろな問題があると思います。遺伝子組み換え食品をめぐっても慎重な市民派の科学者は、動物実験を含めて、こんなに危険がある、あるいはアメリカのいろいろなアレルギーを初めとする疾患がふえたのは遺伝子組み換えが原因ではないか、こういったことを実証しているわけですけれども、世界には遺伝子組み換えを推進したい科学者がたくさんおりますので、そういった人たちの論文などもあります。したがいまして、まだ科学的に結論が出されていない領域だというふうに言えます。

 そうした場合に、規制をしたい国は、はっきり黒だというふうに証明しないと規制できない、こういう論理がこのTPPのSPSの章にちりばめられております。

 具体的には、第七章でも、SPS委員会というものをつくりまして、その中でリスク分析に基づく評価をするわけですね。ですから、そこで厳しい規制というものが押しやられてしまうという可能性がありますし、また、国内で安全性評価をする際にも、そういった論理がまかり通るということになります。

 それから、表示の問題には、TPPの第八章がかかわるんですけれども、これは、TBTの、貿易の技術的障壁に関する協定、WTOにもありますけれども、これが第八章に反映されておりますが、WTOのTBT協定に比べて、TPPは、やはりステークホルダーと称する産業界の意見が非常に反映されやすいという内容になっていると思います。

 そこで、例えば、日本の審議会でそういった表示を考えるというときに、グローバル企業の代理人と称する人々が、そこでいろいろな発言ができる、消費者の厳しい要求を阻止するというふうな場面が非常に今後懸念されます。

 それから、今はそういった懸念があるというふうに申しましたけれども、実は日本の食品安全委員会、この内閣府の科学的な評価をするという機関が、残念ながら、遺伝子組み換えを推進する立場に今変わったんじゃないかというふうに私は感じています。

 具体的には、例えばことしの三月に食品安全委員会主催のシンポジウムがありましたけれども、そこで、バイオテクノロジーの部会の委員の方が、世界の企業を救うためには遺伝子組み換えは非常に有効であるといった、そんな発言もされておりますし、実際、安全性評価は、どんどんと遺伝子組み換え容認、あるいは先ほど申しました遺伝子組み換え微生物、添加物、こういったものを認めていく、そういう方向がありますので、TPPがこれから発効しますと、まさにそういった流れを加速していくんではないかというふうに思います。

 次に、BSEの問題について触れたいと思います。

 これは、皆さん御存じのように、全頭検査を、この九月に、もう廃止するというふうに政府は方針を決定しました。実は、これは去年から、あるいはその前から、アメリカのUSTRが日本に対して月齢の規制をするなという要求を毎年言ってきたものでして、これを去年十二月の段階で日本の厚労省が食品安全委員会に諮問しまして、そして夏に、これは四十八カ月齢以上の検査をしていましたけれども、それも要らないということで、健康牛についても要らない、そういう答申を出し、そして政府としても、来年からでしょうか、廃止する、そういう方針になりました。

 そのほか、アメリカ側の要求が二国間の協議の中でいろいろと出されておりまして、ゼラチンとかコラーゲン、骨の成分などから抽出されるそういったものですけれども、これは異常プリオンが非常にたまりやすい場所に関係していますので、私は食べるべきではないと思いますが、これもアメリカの要求をのむ形でもって日本が譲歩していくということになっていったわけです。これにつきましても、きょうは時間が余りありませんので細かい説明はいたしませんけれども、食品安全委員会の安全性評価の仕方が非常に不十分ではないかというふうに思っております。

 それから、最近国会で先生方も議論されていた、牛のホルモン剤の使用の問題ですね。これにつきましても私ども非常に懸念をしておりまして、残留基準値の後退が今後予想されるので、日本国内ではこの使用は禁止されているわけですけれども、輸入されたものについての安全基準が損なわれるとどんどんとまた入ってきてしまうということがTPPに絡んで出てくるというふうに思います。

 それから、食品添加物について少し述べたいと思います。

 食品添加物、二ページ目のところですけれども、これはなかなかわかりにくい制度になっておりまして、そこにちょっと触れておりますが、天然香料六百十二、一般飲食物添加物、イカ墨などですね、これが百四、それから指定添加物、厚労省が指定するのが四百四十九、夏の段階でこういう数字、それから既存添加物、長年の食経験があって政府としても認めてきたものが三百六十五ありますけれども、この指定添加物について、規格基準を厚労省が定めているんですけれども、この基準が今後緩められるという可能性がTPPに関して出てくるというふうに思います。

 既に、アメリカから、日本が早く食品添加物をもっと承認してくれという要求が出され、それに応える形でもって、今非常に多くの食品添加物を承認しておりますけれども、具体的に、例えば四品目がまだだったから早く承認してくれというふうにアメリカから言われまして、固結防止剤のアルミノ珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、着色剤のカルミン、膨張剤の酸性燐酸アルミニウム、こういったものが承認されましたけれども、このアルミニウムが、ヨーロッパではアルツハイマーの一つの原因ではないかということで規制をしておりますが、こういったものも、食品安全委員会は、アメリカから言われたんでしょうか、認めてしまったということがあると思います。

 それから、TPPの八章のTBTのところには、附属書がわざわざつくられておりまして、食品添加物については、これは企業秘密だから消費者が求めても公表しなくてもいい、こういう文言があるんですね。なかなか政府はそういった説明をしませんけれども、消費者の知る権利を阻害するという条項まであるわけです。

 こういうふうに、今三つの例を申し上げましたけれども、国会でこういった安全性の問題あるいは国民の選択権の問題、こういうことにつきまして、詳しい、しっかりとした審議をしないまま、この十月にも、もし強行採決をしてしまうようであれば、全くこれは審議が不十分であるというふうに我々は考えております。

 やはり理想は、こんなに二十一もの分野があるわけですから、それぞれ分科会をつくって、専門の委員の先生方がしっかり審議をしていただいて、この章はどうか、この章はどうかということをしっかり議論した上で、批准するかどうかということを決めるべきだと思います。

 それから、アメリカを初めとして、日本以外の国は批准の方向にはないわけですけれども、そういった現実も直視すべきでありまして、拙速にTPPの承認案を採決すべきではないというふうに思います。

 それから、最後に一点、私は法学部なんですけれども、少し懸念している事項がありまして、衆議院の優越の論理ですね。予算案と同時に、条約については衆議院の優越が認められておりますけれども、これほど国民生活に非常に大きな影響を及ぼすものを、衆議院が可決されたからといって、参議院のそういった審議を無視していいのか、こういうふうに感じております。

 ぜひ、実際に強行採決というふうなことをしないと同時に、参議院でのしっかりとした議論をしていただいて、国民が納得いく形でもって、このTPPの承認案、そして、関連法案、これも重要ですから、これにつきまして、ぜひ、しっかりと議論をしていただいた上で国としての方針を定めていただきたい、そういう意見を申し述べて、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。

篠原(孝)委員 篠原でございます。

 きょうは、どうもお忙しいところをおいでいただきまして、ありがとうございます。

 非常に違う観点から大事なことをお二人から指摘していただいたんじゃないかと思います。

 限られた時間ですので、質問をすぐさせていただきたいと思います。いつもは私は自分のことをいっぱいしゃべるんですけれども、きょうは抑えます。

 さっき内田参考人が、労働者、環境団体、消費者といろいろな声がアメリカを突き動かして、二人の大統領候補とも反対に至らしめたと。労働者はよくわかるわけです。賃金は上がらない、職はふえないというものなんですが、消費者の声というのがちょっと、少なくとも私が見る貿易関係の英文の業界紙とか、それから一般的な新聞では余り見えてこないんですけれども、内田さんは、そういう動きはどのように把握されておられますでしょうか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

内田参考人 具体的には、アメリカの消費者も、実は、食の安心、安全ということについては懸念をしている人は多くいます。多くの方が知っている団体ですが、パブリックシチズンという一九七〇年代からある巨大な消費者団体ですが、こちらが警告している中身ですと、TPPによって、アメリカにも、例えば、ベトナムやマレーシアなどから、アメリカの食の安心、安全の水準以下の魚介類ですとかそういったものがますます入ってきやすくなる、そのことへの懸念ですね、一点は。

 それからもう一つ、今、アメリカの中でも遺伝子組み換えや添加物に対する非常に強い心配というのが、特にアメリカのお母さんたち、母親たちの運動が大変盛り上がっていて、そのことで、つい先日、アメリカの中でも初めて表示義務制度が、これは不十分だとも言われておりますが、バーモント州でしたか、つくられたというところにもなっているわけです。

 ですから、グローバル企業もアメリカにあるのですが、一方、消費者というのは世界じゅうにいるわけで、その中にはアメリカの消費者もいるので、こうしたところは、アメリカの遺伝子組み換えのグローバル企業が今以上に力を持つということは自分たちにも危険だし、ほかの国の人々にとっても危険だという観点から強く反対をしていると思います。

篠原(孝)委員 日本の消費者あるいは日本国政府にも言えることなんですが、具体的な問題、例えば山浦参考人が触れられましたBSEとか、かつてありましたポストハーベスト農薬、OPPだとか、具体的なものがあると、わあっとなっていろいろするんですけれども、こういう抽象的な文書で協定とかいうのになると、よくわからないので、ふわっとした感じになってしまう。

 これは、私は、政府の責任で、この前の質問のときにTPP担当大臣に、きちんと説明したりするような冊子をつくったりしたんですかと。山浦さんが今持っておられますけれども、皆さんが冊子をつくって解説している。当然、皆さんは、危険だからここがおかしいと。だから、政府が安全だと言うんだったら、そっちでそういうのをつくったりすればいいんですけれども、全然つくっていないんですよね。

 きのう、私は宮崎の地方公聴会にお邪魔したんですが、農業者はみんなある程度わかって、農林水産省も何とか、余りきちんとは説明していないにしても、形だけは説明に行っているわけですね。

 ところが、蒲生芳子さんというNPOの活動をされている方、日本人の体は米と豆でできているんだというのでやっておられる方なんですけれども、この方が言っておられたんです。二十一人の商店街の人たち、御本人がそば屋さんも経営しているので、二十一人のうち五人、TPPという言葉を知っていた、内容までちょこっと知っている人はたった一人だったと。

 これは残念ながら日本の消費者にも今当てはまる。具体的な問題、それはマスコミの問題もあるんだろうと思います。こんなことを言ってはなんなんですが、もう最初から日本の五大紙はTPP推進と言っていますから、今、内容がこうやって、条文が明らかになったのに、まあ無理だと思うんですけれども、きちんと書いて解説というのは、余り説明していないんですね。

 そういった中で、NPO活動として日本の消費者にどのように広げる努力をされているのか、そして、それはどうやったらわかっていただけるかというのを、そこのところをちょっとお伺いしたいと思います。

内田参考人 私たちも努力をしていますが、まだまだ足りないと思っております。

 一つは、よく世論調査で、TPPについて知っていますかとか、反対ですか、賛成ですかと聞くと、これは多くの方がわからないと。この数がどんどん実はふえておりますよね。先日のNHKの直近の調査でも、賛成が一九%、反対が一七%、わからないが五二%ということで……(篠原(孝)委員「質問でやりました」と呼ぶ)はい、篠原先生もされていましたが、どんどん多くなっている。つまり、わからない人が多いんですね。

 ところが、では、あなたは国内の自給率、食料自給率が上がった方がいいですか、下がった方がいいですかと聞くと、これはもう八割九割の方が上がった方がいいと。なぜならば、やはり安心、安全なものを食べたいから、こういうふうに答えるんですね。

 ですから、問題は、本当に、抽象的なものではなく具体的なもの、できれば品目一つ一つとか、そういうものにクローズアップして聞く、そして伝えるということが重要かと思います。

 もう一つは、やはり今、食べ物への不安というのは非常に広がっていると思います。国内でも食品偽装の問題も含めてありますし、これからどんどん外国のものが入ってくるという中で、とりわけ親たち、お母さん、お父さん、それから学校給食の関係者の方々、つまり子供の未来というのは本当に食がしっかりしていないとできないということだと思いますので、そういう発信の仕方を私たちも心がけております。

篠原(孝)委員 それから、きょうの資料の中にはありませんでしたけれども、内田さんが前、お書きになったり対談されている中に、日本の消費者のバイイングパワーを活用していくべきである、これはもう非常に大事なことだと思うんです。日本は大お客様ですから、我々がこれはだめだ、あれがだめだと言ったら、それに合わせて直してくれるのが普通なんです。お客様の要望に応える、日本の企業はそうしてきたはずなんです。ところが、アメリカとかそういうところは尊大な国でして、自分の基準に合わせろなんですね。

 そういう点では、武部勤さんですけれども、息子さんおられますか、今、おられますね、私は感心したんです。武部ルールがつくられつつあったんです、BSEのときに。武部大臣ですよ。BSE、何だかよくわからなかったんです。ですけれども、学者の先生はそんなにやらなくたっていいと言ったんですけれども、全頭検査を断行したんですね。その結果どうなったかというと、山浦さんのところにありましたけれども、全部こんなに調べたところはないんですね、世界じゅうで。だから、データがそろってきて、二十カ月齢以下だったら全くBSEは発生していない、二十から三十のところはちょこちょこある、三十以上は非常に危険だというのが出てきたんですね。

 そのとき私はアメリカに行ったんですよ。行ったというか行かされたんです。そうしたら、アメリカの消費者から、何しろアメリカの消費者は鈍感で、こういうのを、新型クロイツフェルト・ヤコブ病になる確率は何千万分の一だ、それだと、あっけらかんのかんで、もういいやと。ところが、日本や韓国の消費者は違って、非常に神経質になる、日本はそういう国なんだから、頼むから、日本がきちんとしたルールでいってくれていたら鈍いアメリカ政府もそれに従わざるを得なくなるから、きちっと守ってほしいと。へえ、そういうことがあるのかと。

 僕が帰ってきて、武部ルールで、今の十年後、武部さんは、世界の消費者というか安全を考える人たちから称賛されるかもしれませんよと言っていたら、全然だめで、せっかく武部さんがつくられて、全部やって調べてみるんだ、そして二十カ月以下、だめだ、日本はこれ以上のは全部検査してと言っていたのが、なし崩し的に逆になっちゃっているんですね。これはよくないことだなと思っているんですが。

 世界のNPO、NGOと接せられていると思います。この人たちが、日本の消費者、日本のこういった活動に対してどのように評価しているかというと、例えば和牛、きのう実は、江藤委員の地元に行って、少々高い肉、少々じゃない、結構高いんですが、久方ぶりにいただいてきたんですが、ミラノ食の博覧会でも、大好評だ、うまいからと皆さん言っていますけれども、実は違うんですね。外国の人たちというのは、日本の和牛を食べるときに、成長ホルモンもない、一番そういうところが厳しい国の牛肉だからといって、アメリカの研究者は日本の牛肉を食べるけれどもアメリカの牛肉は食べないんですね。ということなんです。

 日本の消費者運動に対する世界のNPOの期待というのはどのように感じておられますでしょうか。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

内田参考人 世界といっても広いので全てはお答えできませんが、やはり、日本の安全基準というのは、消費者運動の成果もあって、強い、すばらしいという評価はあると思います。

 ところが、今、アメリカの団体の方と話していると、そういう日本の基準というのがやはりどんどん後退してきているのではないかという懸念を、しっかり見ている方はやはり指摘しています。

 例えば、先ほど山浦さんも御指摘された、遺伝子組み換えの承認件数ですね。これは日本は非常にふえてきておりますし、最近のメーカーの動きなどを見ていると、例えば、発泡酒の原材料の液糖というものを、これはコーンスターチをつくる、つまりトウモロコシ由来なんですが、昨年あたりから、日本の大手メーカー四社ですが、いずれも遺伝子組み換えトウモロコシに切りかえているんですね。これはあるNGOの調査でもわかって、会社から回答も来ています。

 つまり、そのように、日本はどんどん今以上に消費をしていく傾向が見られる、そして、作物の承認も、今も多いし、これからもなされていくということ、それから、先ほど言った、成長ホルモンの国内での禁止と輸入の場合はオーケーという二重基準等々、見ている方は、非常にこれから日本が心配であると。ある遺伝子組み換え反対のアメリカの活動家の方は、世界はもう遺伝子組み換えはやはりいろいろな意味で問題があるので買わなくなってきている、つくらなくなってきている、しかし、日本は今言ったようにつくるし買うという傾向になっているので、これでは日本が遺伝子組み換えのごみ捨て場のような状態になるのではないかという強い懸念を表明していました。

篠原(孝)委員 山浦参考人にお聞きしたいと思います。

 山浦参考人が書かれたのを見ると、私も同じ認識なんですけれども、ぎょっとするわけですね。

 どういうことかというと、そんなに影響を受けないんだ、受けないんだと。今をダイレクトに変えろとは言っていないんですね。しかし、透明性を確保しろと。

 そもそもTPPは、貿易と投資の自由化と、もうそっちの方ばかり向いているわけですね。これから何かやるときは、おっしゃったように、科学的に証明しなかったら予防的にストップすることができない。黒、完璧に黒とやらなくちゃいけないというところなんですね。

 それから、情報交換しろと。情報交換というのは、各国情報交換して、結局、モンサントという名前が出てきましたけれども、モンサントの人がぎゃあぎゃあ言って、そのとおりに変えさせられる。悲惨な目に遭っていく。

 TPPで、我々が政策を決める、その権限を、TPPの委員会、そしてバイオテクノロジーのわざわざ作業部会までつくってくださいと書いてあるんですね。内田さんのところの資料にありましたけれども。

 これをずっと追ってこられて、例えば、WTOの中にSPS、TBT、ありますよね。それと比べて、それとほとんど条文は同じだと言われているんですが、僕は、英文でもって、原文ではチェックしていませんけれども、分析チームでやられたと思いますけれども、WTOよりも相当、安全を重視する人たちの立場からするとおかしくなっているところがあるんじゃないか、緩くしろというような条文が。

 今緩くしろとは言っていませんけれども、情報交換とか委員会に決めさせろとか協議しろとかと言ってきているんですが、どういうところが一番問題になってくると思われますでしょうか。

 我々は阻止したいと思っていますけれども、仮にTPPがこれで承認されたら、多分、僕は、ここのところはがたがたになっていっちゃうんじゃないかと心配しているんですけれども、この点、いかがでしょうか。

山浦参考人 御質問ありがとうございます。

 いろいろなところに問題のキーワードがちりばめられておりまして、ここに英文の原文がございますけれども、今おっしゃった透明性、トランスペアレンシーという言葉がたくさん使われておりまして、情報交換、情報公開をしてみんなで中身を知ろう、そういう一般的な意味が普通ですけれども、TPPのトランスペアレンシー、透明性の確保は、企業の人がいろいろな情報を知って、そしていろいろと政策提案もできる、そういう透明性なんですよ。

 消費者ももちろんそのステークホルダーの中には入っておりますけれども、実際のこれまでのさまざまな審議会、そういったものを考えておりますと、どうしても消費者の意見は端に追いやられてしまうという傾向が日本ではありますけれども、そういったことは今後さらに大きくなっていくんじゃないか。それを制度的にも保障している、そういう構図になっていると思います。

 WTOのSPSというものももちろんあるわけですけれども、それに比べますと、予防原則の考え方というものが完全に排除されているのがTPPだと思うんですね。ですから、心配だという声を各国が考えて慎重な政策を進めるということが認められなくなるということ。

 具体的には、SPS委員会というものをつくって、そこで、このトランスペアレンシーをもとに、まず事業者の声を反映したような各国の代表が審議をする、そして、そこで決まったことを各国で認めていいかどうかという審議をするわけですけれども、そこにもやはりステークホルダーが関与できる、そういう構図ですから、これはかなりWTOのSPSとは違うというふうに思います。

 そして、先ほども私も説明しましたように、八章のTBTの点につきましても、WTOのTBTは、かなり情報交換的なことをやりましょう、そういう簡単な規定があるんですけれども、TPPの第八章のTBTは、事細かにその事業者の関与のルールというものが中に入っておりまして、これはやはり違うなというふうに私は感じておりますので、こういう点をぜひ皆さん方に知っていただきたいなというふうに感じております。

篠原(孝)委員 今、持ってきているんですね。附属書八―Fで、あらかじめ包装された食品及び食品添加物の専有されている製法等のところにも、常に企業が、企業がと。情報開示というのを。私は、ここの、この関係が一番問題じゃないかと思っているんです。

 それで、初めて聞いたんですが、日本はかつて、何でもつくってつくって、売って売って売りまくって、四大公害病というのができてしまって、東京の空気も汚れて、花粉症だ何だかんだとなってきた。だから、こういったことから立ち直れるかどうかというのは、炭坑の中に警告を発してくれるカナリアを飼っておいて、これが生きているかどうかで変なガスが発生するかどうかをチェックするんです。カナリア列島と呼ばれておりましたけれども、モルモット列島と呼ばれているのを初めて聞きました。

 そう言われてみればそうだなと思います。自給率が三九%で、世界じゅうから食料を輸入している。そして、一生懸命国内は厳しくしたりしようとしているんですけれども、外国の圧力でもってぱっぱぱっぱオープンにしちゃっている。これに拍車をかけると。

 それで、私が心配なのは、これはその人の価値観によるんですけれども、私、外の化学合成物質ならまだ何とか除去して、これはわからないんですけれどもね。ところが、我々の体の中に入り込んで変なふうになってしまったものをどうやって除去するか、一部になってしまったもの。ウエークアップ・アンティル・イット・イズ・ツー・レート、気がついたときには遅いんだ、だから予防原則できちんとしていかなくちゃいけない。

 そういう点では、私は、遺伝子組み換えについては、ああ、心配なかったなと言われるまでは厳しく厳しくしていくべきだと思いますが、この点についてずっと追いかけてこられました山浦参考人は、日本で今どういうふうにしたら一番、この点、うまくいくと思われるでしょうか。

山浦参考人 遺伝子組み換えにつきましては、まず、日本の表示制度が十分ではないので、消費者が知らないうちに食べてしまっている、この現状を変えなければいけないというふうに思います。もちろん、気にしないから食べたいという人もいるかもしれませんけれども、知らないうちにどんどん食べているというのが現状ですから、まずは義務表示のやり方を変える。特に、不分別という、こういった事業者に有利な、そういう曖昧な表示の仕方というものをやめさせる。

 これは、実はヨーロッパでは可能なんですよ。検出できないから、あるいは混入がわからないからというふうな、そういう論理がまかり通っておりますけれども、トレーサビリティーをきかせれば、これはどういう原料を使った製品かということが、事業者は知っているわけですね。それから、もちろん、防疫上、いろいろな通関手続の際に、どういう物質をどれくらい入れるかということは書かれているわけですから、担当者は知っているんですよね。

 ですから、不分別でわからないというようなそんな言い方は許さないという、その表示制度をまずきちんと変えさせて、そして消費者が選択できるということが今後可能となれば、食べたくない人というものは、やはりもっと安全な国産の有機農産物に基づく食品を食べる、そういう流れになって、日本の食料自給率も高まるというふうに思っております。

 そのほか、いろいろ遺伝子組み換えのお話でしたけれども、添加物の問題も私は非常に重要だと思っておりまして、消費者庁がいろいろと表示の問題につきまして検討しておりますけれども、非常に添加物の実態を知らないまま議論が進んでいるんじゃないか。

 例えば、一つ例を挙げますと、グリシンという保存料と称される化学物質がありまして、これが使われているんですけれども、実態は、例えばおにぎりのお塩を使ったそういう製造方法をたくさんしているわけですけれども、塩辛い感覚を麻痺させる、そういう機能があるので、事業者にとっては、このグリシンを使えば、保存料として機能すると同時に、消費者をだまして、保存のきく辛いおにぎりをどんどん食べさせることができる、こういう機能が実はあるんですよ。それは全然知られていないですよね。

 こういうふうにして、コンビニのおにぎりをみんなおいしそうに食べる、そういう現実ができてしまった。これは、食品添加物の内容を知らされないまま我々は食べてしまっている、そういう一つの例だと思います。

 このように、やはり知る権利をしっかり確保して、消費者が選択できる社会をつくっていくということが望ましいというふうに思います。

篠原(孝)委員 どうもありがとうございました。

塩谷委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。引き続きよろしくお願いいたします。

 本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 先ほど内田参考人の方から、遺伝子組み換えでTPP協定の交渉の中で、大企業だとか投資家のロビー活動がかなり行われていたというお話がありました。この遺伝子組み換えも含めてさらにさまざまな動きがあったと思うんですが、その辺の動きを御紹介していただけないでしょうか。

内田参考人 ありがとうございます。

 ほかの分野も含めてということですね。大体、交渉会合というのは三、四百人の企業や投資家、ロビイストの方が毎回来ておりますし、こういう方というのは日常的にも、当然、自国内で自国の政府に対して、TPPの推進、かつ、これは自分たちの利益になるような内容を獲得するということも同時に求めてきているわけですね。

 ですから、産業のセクターとしては本当にたくさんあります。例えばコンテンツ産業、これはアメリカでも巨大な産業ですし、製薬会社、それから金融や証券というのもありますし、通信、貨物というのもありますし、石油会社とか、それからもちろん自動車産業とか、ありとあらゆる産業が、しかもそれは一番トップの大企業の一部ですけれども、TPPに対して利益を期待してやっている。

 こうした企業は、実は、私がさっき申し上げた、まだまだTPPの内容が変わっていく可能性ということにも関連するんですが、昨年の大筋合意の後も、今のこの水準のTPPでは全く満足はできないということで、この一年間、さらに激しくロビー活動をやっているような業界もあります。

 例えば製薬企業というのがその筆頭です。新薬のバイオ医薬品の臨床データを企業が独占できる期間というのが一番最後のもめた論点だったんですが、これが、アメリカが当初主張していた十二年というのが、譲歩するような形で最終的には八年プラスアルファというか、ちょっと玉虫色なんですけれども、そういうふうに決まりました。

 これに対して、製薬会社は全く納得をしていません。ですから、再交渉しろとか、再交渉にならなくても、先ほど私がいろいろな手があると言いましたが、そういう中で、何とかやりなさいということで強烈な圧力をかけ続けています。

 ですから、このような圧力に、いずれ大統領選が終わった後も新大統領というのはやはり対応せざるを得ない。つまり、それが再交渉というものとして私たちの、日本の目の前にも提案されるという危険性は十分にあるということです。

斉藤(和)委員 大筋合意後も各産業界のトップと言われる方々がロビー活動を進めている、そして再交渉を求めるような動きもあるというようなことをお聞きしますと、本当に、先ほどもありましたが、安全だと言いながら行き先のわからないバスに乗せられる、まさにこのTPPは誰のためにあるのかという疑問を持つわけですけれども、内田参考人、山浦参考人、それぞれどのように感じていらっしゃるでしょうか。

内田参考人 端的に言えば、繰り返しもう指摘されておりますが、やはり一部の大企業や投資家の人たちによってつくられ、そして運営されていく一つのシステムなんだと思います。

 日本にも来日したノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏は、TPPは、特定の集団、つまり投資家やグローバル企業によって管理をされている大変悪い協定である、九九%の人を不幸にしてしまうというような発言もされていますが、それが非常に端的にあらわしているのではないかと思います。

山浦参考人 誰のためにという御質問でしたけれども、やはり、成長が非常にいいことだというふうに捉えている人たちにとって非常に都合のいい論理ではないかというふうに思います。

 具体的には、貿易を拡大することによって企業が利益を得ることができる、こういうふうな論理を支えるための貿易ルールづくりというものであって、各国の産業のあり方とかあるいは地域のあり方、こういったものを無視する形でもって、経済的な利益の拡大ということをよしとしている人々にとって非常に都合のいい、そういうルールではないかと思うんですね。

 ですから、私たちは、TPPの問題点はいろいろありますけれども、それを、実際の足元から、私たちの暮らしをどういうふうにつくっていったらいいかということを考える論理を対抗的に打ち出していって、地域社会を守るとか、あるいは日本の地域の農業を守るとか、中小企業のあり方をもっとしっかり見直すとか、そういうふうな考え方を対置していく、そういう運動が大切だなというふうにかねがね思っております。

斉藤(和)委員 九九%対一%というお話もありますし、貿易の拡大によってさらに利潤を得ようとする動きがあると。

 この貿易の拡大にかかわって、四十八時間通関制というのが協定の中に書き込まれてあります。このもとで、四十八時間で通関させる、移動させるということになると、検疫体制など食の安全をめぐる問題にも、今でさえまともに検査がほとんどされていないという実態の中で、どういう懸念がされるのかというのを非常に不安に思うわけです。

 山浦先生にぜひ、どういう御見解かお聞かせいただければと思います。

山浦参考人 ありがとうございます。

 こちらのカラー版の、私どもがつくったQアンドAの二十五ページというところに、今おっしゃった四十八時間ルールの話が載っております。

 これは、第五章に税関当局及び貿易円滑化という章がありまして、その中に輸入手続の迅速化という項目があって、原則四十八時間で必ず入れなければいけない、英文、原文ではシャルという助動詞も使われておりまして、非常に強い言い方で、もっと早く入れなさいと。例えば、日本は九十二時間ぐらい平均的にかかっているんですけれども、これを二日余りで入れなければいけない、そういう文言が書かれております。

 日本政府とこの点でいろいろ話し合いをする機会があったんですけれども、例外が認められているから大丈夫ですよ、そういうふうな楽観的なお話でした。今でも九十二時間ぐらいはかかっているのに、それを四十八時間にするという圧力がかかってくるわけですから、現場の検疫官の方々は過労死するんじゃないか、そんな感じもするほどでして、今、抜き取り検査にすぎませんけれども、これの効率が悪くなって、正確にしっかり検疫できないという状況がこれから出てくるんじゃないか。

 人員を確保しようというふうな動きもありますけれども、本当にわずかな増員しか今できていませんよね。そして、過去に、議員の先生方も調べられたように、実際に違法なものが日本に入ってきたときに、チェックをしたんだけれども実はもう食べてしまっていた、こういうふうな話がありますよね。

 ですから、昔はちゃんととめていたんですけれども、今は国内流通オーケーというルールになっていますから、例えば、そういうものを改めるとか、そして検疫官の数をふやすとか、検疫のシステムというものをもっとしっかりとしたものにするとか、そういうことが必要なのに、四十八時間でしろ、そういう話ですから、ますますこれは日本の食の安全が脅かされるということになると思います。

斉藤(和)委員 検疫の面からでも非常に懸念があるというお話です。

 そもそも何をもって安全とするのかという話で、先ほど山浦先生が、SPS委員会が設けられて、科学的根拠を示さなければ、それを安全かどうか判断することさえ許されないというような趣旨の御発言がありました。この辺が、やはり遺伝子組み換えのような、先ほどもありましたけれども、グレーと言われているものさえ、自分たちの国の決まりとして主張することさえできなくなる懸念があると思うんですけれども、その辺、もう少しお話ししていただけないでしょうか。

山浦参考人 この辺がやはり一般の人になかなかわかりにくい論理でして、リスク分析論が非常にこの世界ではもてはやされています。

 具体的には、人々の死亡率と食の安全対策というものを結びつけている論理なんですよ。つまり、死者が何%出るかということを考えたときに、貿易優先の論理、貿易によって利益を上げる論理と、その死亡率が高いか低いかというのを比較考量しまして、いろいろ問題があるかもしれないけれども、利益が拡大して国が豊かになるんだから貿易優先にした方がいいんじゃないかというのが前面に出てくるという話なんですよ。

 これは保険業界とかいろいろな業界が考えているリスク論というものですけれども、普通のものだったら当事者は同一の主体ですからいいんですけれども、つくっているメーカー、そして扱っている事業者に比べて、実際食べるのは消費者ですから、リスクは全部消費者がかぶるわけですよね。ですから、多少のことだったら、死亡率そんなに高くないし、交通事故に比べれば非常に低いんだから大丈夫じゃないかという論理が上から押しつけられてしまって、慎重にそれを規制しようということがおろそかになる、こういう論理がリスク分析論です。

 これが、WTOのSPS協定にもありましたけれども、さらにTPPのSPS、第七章にはもっと明確に、強力に出てきている、そういうことがやはり一番問題かなというふうに思います。

斉藤(和)委員 そういう点で、消費者がやはりきちんと、それが自分の判断として大丈夫かどうかというのを最低限選べる権利、知る権利というところでいうと、表示が非常に大事だと私は思っているんです。

 その点で、内田参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど、アメリカの中で遺伝子組み換えの食品表示をめぐってさまざまな動きがあった、そして、お母さん方も立ち上がっている、非常に盛り上がっているんだというお話があったんですが、その辺で、具体的にどんな運動が起こっているのかという、その辺の様子を教えていただければと思います。

内田参考人 アメリカで遺伝子組み換え作物が生産され始めたのが、大体二十年前、九六年。ですから、この二十年間、さっきモルモット列島というのがありましたが、そこの期間はまだまだ続いているわけですが、この二十年の間に、アメリカの中では一切その表示義務はありませんでした。ですから、流通しているほとんどのものが、普通に買えば、遺伝子組み換え作物、遺伝子組み換え商品であったわけですね。

 二十年のスパンで今さまざまな臨床の結果が出ていまして、例えば、慢性的な成人病であるとか、いろいろな疾患がやはりふえている。そして、子供たちのアレルギーとか、それから、腸壁ですね、腸の機能がおかしくなるというようなことが現象としてあって、それと遺伝子組み換えの直接的な因果関係は、先ほどからあるように、まだ研究の途上です。

 ただ、やはり食べ物がおかしいということをアメリカの市民は非常に今気づき始めていて、そうした中で、知る権利として表示義務を求めていたり、逆に、表示義務制度がなかなか州の中で可決できない、潰されちゃうということもありますので、逆にオーガニックの食べ物の種類をふやそうということで企業に働きかけたりしています。

 先ほど、市場で変える、消費者の力で変えると言ったのがまさにそうなんですが、ティッピングポイントといって、ある地点で市場の動向が変われば全体が変わっていくというポイントがあって、遺伝子組み換えやオーガニックの場合、それが五%ぐらいと言われているんですね。つまり、全体の五%の消費者行動が今までのものからオーガニックの方に切りかえる、そういうふうになれば市場全体に影響を与えていく。

 そういう具体的な目標を立てながらやっていって、ですから、今アメリカのオーガニック市場というのは、非常に品目や流通量もふえています。ラベルをとって、それを親たちが買っているということがはっきりと見てとれます。

斉藤(和)委員 表示の問題で、非常にアメリカで活発に、やはり自分たちの子供だとか自分が食べるものがどうなのかというところで運動が起こっているというお話がありました。

 やはり、選ぶ権利というところで、表示という動きがアメリカでも起こっているわけです。この表示をめぐっては、ISDSなど、貿易の障壁になるのではないかという懸念などもありますが、ISDSとの絡みで、食にかかわらずですが、さまざまな紛争が既に起こっているんですけれども、その中で、どんな影響が今後日本に及んでくるというふうに考えられるかという御懸念を、それぞれ山浦参考人、内田参考人から最後お聞きしたいというふうに思います。よろしくお願いします。

山浦参考人 ありがとうございます。

 私の方の資料の、先ほどのカラー版の二十一ページのところに、国産表示についての山田正彦元農水大臣の執筆した部分がありますけれども、実際に、WTOのもとでこういった紛争が起きておりまして、国産表示で優遇するのはだめ、そういう話になってしまったわけですよね。TPPはこのWTO以上に貿易優先ですから、こういった論理に今後も日本も影響を受けかねないというふうに感じております。

 ISDについては、さまざまな分野でそれぞれ影響を及ぼすんじゃないかというふうに思いますけれども、食の問題は、政府の説明によると、ISDの問題にはなじまないというふうなQアンドAあるいは担当者の説明があるんですけれども、私はそうは思わないんですね。

 やはり、外国企業が投資をしてさまざまな製品をつくるというときに、これが相手の国の規制によって販売できないということになると、回り回って投資したものが回収できないという話になりますので、何らかの形でもってこれが及んでくるだろうというふうに思います。

 直接ISDにかけるという形にはならないかもしれませんが、まずは、例えば食の安全基準あるいは表示をめぐる紛争をTPPの紛争解決機能の中で解決するという場面があります。そして、それをもとにして、今度は外国企業が具体的に相手政府を訴える、そういう段取りもその後考えられますので、政府が紛争になじまないというふうな説明をしますけれども、これはおかしいと思っております。

 細かい話ですけれども、SPSの関係について、条文に、特に「注」で、これは紛争解決の対象にはしないんだという文言があるから大丈夫だと言っているんですけれども、よく読むと、これはもうSPS委員会で決まったことなんだから、輸入国がもう一回蒸し返してこれを紛争の対象にしてはいけないということなんですよ、私の解釈では。

 ですから、実は紛争の対象にはなるわけでして、これを政府の担当者の人も最終的に認めましたから、まずはそういった問題が紛争の対象になるし、そして、投資した企業が、利益が上げられないということになれば、やはり外国の、相手の国の規制方法を問題にして国を訴える、そういう場面もこれから大いにあり得るというふうに考えております。

内田参考人 ISDについては、もともと、訴えられる国の政府というのは主に途上国だったわけですね。政情も不安定で、突如クーデターが起こって、企業の土地などが接収されていく、そういうことが最初イメージされていて使われていましたが、八〇年代以降は先進国政府も次々と訴えられるようになります。

 資料でもつけましたが、カナダ政府は、NAFTAという条約の後ですけれども、今まで二十六件訴訟を起こされている。そのうち二十五件がアメリカの投資家や企業である。これはやはりちょっと恐るべき実態だと思います。カナダはもちろん先進国です。民主的な制度がありという中ですね。

 そして、もちろん、アメリカ政府ですらと言うとおかしいんですが、も訴えられているわけです。今までに十六件訴訟を起こされている。しかし、一件も負けてはいません。逆に、他国政府を訴えたアメリカ企業というのが断トツでして、これは百四十五件。

 本当にケースの中身はさまざまです。我々はやはり、こうした各ケースの事例にもう少ししっかり耳を傾けて、これは日本の未来に重ね合わせてみるべきだと思っています。

 例えばですが、石油会社が開発をして、その開発を環境の影響という点でアメリカ政府がこの間撤回をしたんですね、天然ガスパイプラインの。ところが、それに対して開発企業がアメリカ政府を訴えるというケースもあります。

 カナダでは、医薬品の認可をめぐって、国がそれを取り消すというか許さなかったということで医薬品メーカーが政府を訴える。

 それから、水道の民営化の問題ですね。これは日本でもどんどん今後起こってくるんじゃないかと思いますが、そこに外資系企業が参入していた場合、契約を更新しなかった、これはアルゼンチンのケースですが、結果的に水道企業から賠償金を訴えられる。

 あるいは、驚くべきなんですが、エジプトなどの国では、最低賃金を引き上げた、それによって、投資、そこで事業をしている外資系企業から、最低賃金を上げたということで訴えられたわけです、政府が。

 というように、累計六百数十件の今までのケースには、やはり驚くような、こんなことでも国が訴えられるのかというケースがたくさんあります。

 ですから、これは日本の危機のイメージと近いものもあるように思いますので、ぜひこれは十分に皆さんにも御審議いただきたいと思っております。

斉藤(和)委員 済みません、時間ですので。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 参考人各位は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 この際、両案件審査のため、昨二十六日、第一班北海道、第二班宮崎県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班菅原一秀君。

菅原委員 北海道に派遣された第一班の委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、塩谷立委員長を団長として、理事うえの賢一郎君、今井雅人君、委員勝沼栄明君、武部新君、中川郁子君、佐々木隆博君、稲津久君、畠山和也君、小沢鋭仁君、そして私、菅原一秀の十一名であります。

 会議は、昨二十六日、札幌市内の京王プラザホテル札幌において開催し、まず、塩谷団長から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、株式会社東和電機製作所専務取締役浜出滋人君、北海道農業ジャーナリストの会幹事・酪農学園大学名誉教授中原准一君、北海道漁業協同組合連合会代表理事専務崎出弘和君、北海道農民連盟書記長山居忠彰君の四名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 まず、浜出君からは、TPP協定の発効及びその参加国増加による輸出拡大への期待と中小企業による国際的な知的財産戦略に対する支援の必要性などの意見が、

 次に、中原君からは、TPP協定は北海道経済の死活的利益にかかわっていることから、その利害得失を明らかにする慎重な審議を行う必要性などの意見が、

 次に、崎出君からは、水産物の輸出拡大のため、関連手続を簡素化、迅速化させる必要性などの意見が、

 最後に、山居君からは、食料生産や地域の担い手である家族農業者を守るため、TPP協定が衆参両院の農林水産委員会の決議に反していないかどうかを確認する必要

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述者に対し、TPP協定を利用して、海外進出や輸出の拡大を行う上で課題となることが予測をされる事項、重要五品目を含め、政府の関税交渉の結果に対する評価、人口減少による国内市場の縮小が見込まれる中、TPPを契機として輸出を促進することに対する見解、ウルグアイ・ラウンド以降、今般のTPP国内対策に至る一連の政府の農業政策に対する評価、米の内外価格差がほぼ解消されたとの認識のもと、減反政策を廃止し、日本の米づくりを最大の輸出産業にしようとする考え方に対する所見などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきまして、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表し、御報告申し上げます。

 以上でございます。

塩谷委員長 次に、第二班森山裕君。

森山委員 宮崎県に派遣をされた第二班の委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、森山裕と、理事江藤拓君、西村康稔君、篠原孝君、上田勇君、委員加藤寛治君、北村誠吾君、古川康君、升田世喜男君、田村貴昭君、松浪健太君の十一名であります。

 会議は、昨二十六日、高千穂町内のゆめゆめプラザ・TACにおいて開催をし、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、宮崎県知事河野俊嗣君、NPO法人手仕事舎そうあい代表理事・もちなが邸蒲生芳子君、農業(和牛繁殖業)興梠哲法君、元宮崎大学学長・宮崎大学名誉教授藤原宏志君の四名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 まず、河野君からは、TPP協定によるプラスの影響を最大限にし、マイナスの影響を最小限にするために万全の施策を講ずる必要性などの意見が、

 次に、蒲生君からは、TPP協定による食への影響についての国民の理解が不十分な状況下で国会審議が進んでいることへの懸念などの意見が、

 次に、興梠君からは、中山間地の農業、農村を守るために、国、県及びJAが協力して担い手確保、後継者育成のための施策を講ずる必要性などの意見が、

 最後に、藤原君からは、水田稲作文化を育んできた農村に対するTPP協定の影響

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述者に対し、ブランド化や規模拡大による農産品の輸出促進についての見解、TPP協定についての若い農業後継者の意識、中小零細企業に対する輸出支援のあり方、宮崎県の畜産業に対するTPP協定の影響、遺伝子組み換え大豆が大量に輸入されているにもかかわらず、遺伝子組み換え表示のある食品が見当たらない食品表示制度の実態に対する見解などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

塩谷委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、公正取引委員会事務総局審査局長山本佐和子君、法務省民事局長小川秀樹君、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長北島智子君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、農林水産省大臣官房総括審議官山口英彰君、農林水産省大臣官房総括審議官水田正和君、農林水産省大臣官房技術総括審議官西郷正道君、農林水産省消費・安全局長今城健晴君、農林水産省生産局長枝元真徹君、農林水産省経営局長大澤誠君、農林水産省政策統括官柄澤彰君、国土交通省政策統括官舘逸志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮川典子君。

宮川委員 自由民主党・無所属の会の宮川典子でございます。

 冒頭ではございますが、本日、三笠宮崇仁親王殿下が、午前八時三十四分、聖路加国際病院にて薨去されました。謹んで哀悼の意を表したいと思います。

 生前は、古代歴史研究の分野で大変な御功績を残され、また、お一人として、御家族の皆様を大変大切にされたと伺っております。温かく国民を包み込むようなまなざしというのが大変印象的だったというふうに思っております。謹んでお悔やみ申し上げます。

 また、本日は、質問の機会をいただいて、まことにありがとうございます。

 TPPに関しましては、いろいろな、さまざまな不安を持っている方がたくさんいらっしゃるということは、もう私たち、むしろ代議士として外へ出ている人間としては皆さん感ずるところだというふうに思います。しかし、その中でも特に私が感じているのは、食品の安全、食の安全に関しての不安を抱いている方がかなり多くいらっしゃるなという実感がございます。

 それで、実は私は、TPPのこの協議が始まりましてから、地元の山梨で、山梨の食品安全を考える会というTPPの勉強会をずっとこれまで開いてまいりました。やはりそこで感じますのは、TPPというのはもう膨大な外交交渉の中でさまざまなルールが決まってまいりますので、そのことをわかりやすく丁寧に皆様にお伝えしていくということが何よりも重要だというふうに思っております。

 また、ここに至るまでに、食の安全、食品安全に関して、さまざま議論が与野党からありました。その中で、やはりよくわからなくて不安なんだという有権者の声も、地元に帰ると聞いてくるところであります。

 ですので、本日は、そこを少しでもつまびらかに、わかりやすく国民の皆様にお伝えできればというふうに思っております。

 まず第一問目ですが、TPPにおける食品安全のルールの運用について伺いたいと思います。

 TPP協定というのは、加盟国全部で何か大きなルールを決めなければいけないんじゃないか、そうすると、今まで日本が守ってきた食の安全というのが脅かされるかもしれない、そして、我々が今まで使ったことがない、対峙したことがないような農薬や薬剤で健康が害されるかもしれない、そういう不安を持っていらっしゃる方がいます。

 ですので、このTPPにおいて食品安全のルールというのはどのように運用されていくのか、ぜひ、まず最初に、そもそも論として伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 質問にお答えをする前に、冒頭、まず、三笠宮崇仁親王殿下の御訃報に接し、悲しみの念にたえません。

 殿下には、昭和時代からの長きにわたり、昭和天皇及び今上陛下を助けられ、国の平和と国民の福祉のために貢献してこられました。殊に、国際親善やスポーツ、医療、福祉等幅広い分野にわたり、皇族として、重要な役割を果たされ、さまざまな行事に御臨席の際には、関係者を励まされるなど、国民と親しく接せられました。

 昨年には百寿をお迎えになり、国民は殿下の一層の御長寿を願っておりましたところ、思いもむなしく薨去されましたことは、まことに哀惜にたえません。

 皇室を初め、御近親の方々の深いお悲しみを拝察申し上げ、ここに、国民とともに、謹んで心から哀悼の意を表します。

 それでは、質問に答えさせていただきます。

 消費者の健康を守るため、国産品であれ輸入品であれ、安全性が確保されたものでなければ流通は許されません。これは食品行政上の大原則でありまして、この原則は堅持をしていきます。国民の安全そして健康が第一である、この原則は全く変わらないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 TPP協定には、我が国の食品の安全を脅かすようなルールは一切ありません。

 TPP協定の衛生植物検疫措置、SPS章は、WTOのSPS協定と同様、各国に科学的根拠に基づく適切な措置を認めるものであります。我が国の食品安全に関する制度に何ら変更を及ぼすものではありません。我が国が必要と考える食品安全に関する制度の変更に新たな制約を加えるものでもない。

 TPP協定の貿易の技術的障害、TBT章は、WTOのTBT協定と同様、表示ルールなどを定める際の手続や透明性の確保等について定めるものであります。我が国の食品表示制度に何ら変更を及ぼすものではありません。我が国が必要と考える食品表示制度の変更に新たな制約を加えるものでもありません。

 今後とも、食品を妥当な価格で安全に手に入れたいとの国民のニーズに応えつつ、食品輸入の安全確保に万全を尽くしてまいります。

 繰り返しになりますが、国民の健康と安全をしっかりと守っていく、この基本的な考え方は一切変わらない、その中でのルールについても今申し上げたとおりでございます。

宮川委員 そこが一番大切なところだと思います。国内のルールでしっかり運用されていき、その国内のルールは国民の健康と安全を守るものである、この基本をしっかり国民の皆様に理解していただく、頭にとどめおいていただくということが何よりも重要だというふうに私は思っております。

 ですので、まずは私たちが、国の中で国内ルールをしっかりつくっていくこと、安全基準をつくっていくことが何よりも重要だということでありますが、先日来の質疑の中で、酢酸メレンゲステロールという肥育ホルモンについての質問がありました。

 ちょっとこれについてはただしておきたいところがあるんですが、この酢酸メレンゲステロール、国内基準が国際基準よりも緩やかであるという指摘がありましたけれども、これはなぜなのか、理由を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 我が国の酢酸メレンゲステロールの残留基準値は、食の安全に関する国際基準、コーデックス基準でありますが、これが制定される三年前の平成十八年に日本でポジティブリスト制度を導入した際に、海外で科学的根拠に基づき定められておりました当時の残留基準を参照いたしまして暫定的に設定をいたしました。

 その後、三年後にこのコーデックス基準というものが設定をされて、我が国の現行の基準とは異なるものとなったのは今御指摘のとおりでございまして、これは、酢酸メレンゲステロールの動物用医薬品としての米国などでの使用基準に従って適正に使用した場合における、牛肉などに残留する濃度の実績値などをもとに設定をされたものだというふうに理解しております。

 酢酸メレンゲステロールに関しましては、平成十八年の暫定基準設定以降、検疫所で行っている輸入食品のモニタリング検査というのをやっていますが、ここにおいて検出された事例はございません。そして、食中毒事例も報告されていません。

 また、健康に悪影響がないとされる一日当たりの摂取許容量、これは国際的なリスク評価機関でございますFAOとWHOが合同で定めている基準があるわけでありますが、仮に、我が国の今の暫定残留基準値まで酢酸メレンゲステロールが残留している食品を人が一生涯にわたって毎日平均量を摂取し続けたとしても、この摂取量は、国際的に定められた、今のFAOとWHOが定めている許容量、この中で、最大でも六割弱にまでしかいかないということで、人の健康に悪影響を与えることはないというふうに考えております。

 厚生労働省としては、現在、暫定的に設定した我が国の基準でありますから、これをコーデックス基準に合わせる方向で既に検討をしておりまして、このため、食品安全委員会に対して、最新の知見に基づく科学的なリスク評価を依頼いたしまして、この評価が終了次第、速やかに残留基準を見直すという方針にしているところでございます。

宮川委員 大臣の答弁に出てきましたコーデックス基準というのが、一体どんな基準なのかよくわかりません。ですので、ぜひちょっとここで詳しく説明をしていただきたいんですが、コーデックス基準について説明をお願いいたします。

北島政府参考人 お答えいたします。

 コーデックス基準とは、消費者の健康の保護と食品の公正な貿易の確保を目的として、WHO及びFAOにより共同設置された政府間組織であるコーデックス委員会が策定する国際的な食品の基準であります。

宮川委員 今、コーデックス基準についてわかりやすく御説明をいただきまして、さっき大臣からも、これは食品安全委員会に今またさらに新たな知見において調査を出しているところだということがありましたけれども、食品安全委員会においてこの調査の結果が出るのはいつごろになりますでしょうか。

松本国務大臣 食品安全委員会におきましては、厚生労働省から評価依頼を受け、専門調査会が最新の知見に基づき科学的なリスク評価を行っており、年内を目途に審議結果を取りまとめる予定でございます。なお、酢酸メレンゲステロールの審議は公開で行っており、また、議事録もホームページで公表しております。

 食品安全委員会におきましては、引き続き、透明性の確保を図りながら、科学的な調査審議を進めてまいりたいと存じます。

宮川委員 年内に健康影響調査の評価が出るということでありますけれども、その後に問題なのは、その健康影響評価が出た後で、新しい知見に基づいてしっかりと安全性が担保された、さらに安全性が担保された食品が一体いつごろ私たちの手元に届くのか、これについては、めどがありましたら教えてください。

塩崎国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、食品安全委員会から科学的なリスクの評価が出た場合、直ちに、私どもとしては、我が国の基準をコーデックス基準に合わせる方向で見直しに入りたいと思っております。

 基準の見直しに当たりましては、薬事・食品衛生審議会というのにかけ、専門家による審議、パブリックコメント、そしてWTOの通報などの手続をとる必要がございまして、こうしたプロセスに丁寧に対応していく必要はありますが、できるだけ早く対応することによって、手続全体を通して、私どもとしては、食品安全委員会のリスク評価終了後、半年以内をめどに残留基準等の見直しを行いたいというふうに考えております。

 また、残留基準の設定に当たりましては、従来から、審議会における審議は当然公開、さらに今、議事録や資料も会議後速やかにホームページで公表ということにして、今回の見直しについても、透明性をしっかり確保して、皆様方にごらんをいただいた上で、食の安全をさらに深めてまいりたいというふうに思います。

宮川委員 審議会などをまた経た上で、できるだけ早く速やかに、半年以内ぐらいをめどにということでありますので、健康影響調査をして評価をした後、さらに審議会にかけて、そして丁寧に議論をしていくということでありますので、これが本当に食の安全を保つには、こういう丁寧な経過、過程というのが大変必要だというふうに思っております。そのくらいの時間のめどで私たちのところに新しく評価されたものが出てくるということですので、私としては、非常に時間が早いなと。でも、その間が非常に丁寧であるということも今の回答でよくわかりました。

 そして、今、酢酸メレンゲステロールについてお話をしましたけれども、その他肥育ホルモンが使われているというのも事実としてあります。これには、私は、安全性を担保するため、そして消費者のためには、表示をしていくということも考えなければいけないんだというふうに思います。

 消費者の知らないうちに、肥育ホルモンが使われているものを、残留基準を超えたものを食べているということはないんでしょうか。それについてお答えをいただきたいと思います。

松本国務大臣 肥育ホルモン剤等の動物用医薬品を使用して生産された畜産物については、国産品であれ輸入品であれ、消費者の健康を守るため、安全性が確保されたものでなければ流通は許されません。これは食品行政上の大原則であります。

 そもそも、ホルモンは、健康な人や家畜の体内に一定量存在しており、国際的な評価機関において、微量の残留があっても当該食品は安全であると評価されています。

 厚労省の薬事・食品衛生審議会は、国際的に認められているものと同様の考え方に基づいて、人が一生涯にわたって毎日摂取したとしても健康への悪影響がないと評価されている量、一日摂取許容量を参考に、科学的根拠に基づいて厳正に評価した上で、肥育ホルモン等の残留基準を設定しております。

 肥育ホルモンの使用は、国内で全面禁止されているわけではありません。過去には二品目が承認されていたことがありますが、国内のニーズに合わなかったため、事業者が自主的に承認を返上しました。その後、事業者からの承認申請が行われていないため、現在、承認されているものはございません。肥育ホルモンを使用した輸入牛肉については、残留基準を満たすもののみ、輸入、販売を認めております。

 このように、国内で流通している牛肉の安全性は、国産品、輸入品の双方について確保されています。

 一方、肥育ホルモン等の使用に表示義務を課するに当たっては、食品表示基準違反は罰則の対象となることから、使用したことを科学的に検証できることが前提になると考えています。

 肥育ホルモン等は、投与の後十分な時間が経過すれば、排せつされ、検出できなくなります。仮に肥育ホルモン不使用との表示が虚偽であっても、これを検証できないことから、義務表示の対象としてはおりません。

 なお、肥育ホルモン等を使用した輸入牛肉を食べたくない、表示で区別したいというニーズについては、例えば、米国、オーストラリア等、オーガニック規格は、家畜の成長を人為的に促進させる肥育ホルモンやラクトパミンの使用を認めておらず、輸入オーガニックビーフを選ぶことで、肥育ホルモン等を使用したものを避けることができると考えられています。

 これらの表示が虚偽であれば、景品表示法、不正競争防止法等による取り締まりの対象となり得ます。現在は、オーガニックビーフの輸入はまだ限られておりますが、表示を求める消費者ニーズが高まれば、今後、そのような選択肢が増加することも考えられます。

 消費者の不安を払拭し、安心を確保していくためには、我が国においてどのようにして輸入牛肉の安全性が確保されているか、動物用医薬品の残留基準や輸入牛肉の検査体制がどのような考え方で定められ、実施されているかなどについて、丁寧に説明していかなければなりません。関係省庁が連携し、消費者の具体的な懸念に応じてわかりやすく情報を発信するよう、不断の努力を重ねてまいります。

宮川委員 丁寧に説明をしていただきました。(発言する者あり)いや、とても重要です。これはとても重要なことです。

 そして、消費者に対して選択肢がふえる可能性もあるということ、これも私たちにとっては大変重要なことでありますし、また、我が国内において肥育ホルモンがどのような経過をたどってきたのか、その事実に関しても今大臣からお話をいただきましたので、大変重要な説明をいただいたと私は思っております。

 あともう一つ大臣にお答えいただきたいんですが、遺伝子組み換えの大豆については、知らないうちに摂取してしまっているということはないでしょうか。

松本国務大臣 遺伝子組み換え農作物は、食品安全委員会が行う厳正な科学的評価により安全性に問題がないとされたもののみ、食品衛生法に基づき食品としての流通が認められております。これによりまして、国内で流通する遺伝子組み換え大豆及びこれを用いて製造された油脂、しょうゆ等の大豆加工品の安全性は確保されております。

 議員が御懸念を感じている、遺伝子組み換え大豆について知らないうちに食べているのではないかという点を表示の観点からお答えすると、遺伝子組み換え表示の義務表示の対象となる加工食品については、当該食品が遺伝子組み換え農作物を含むかどうか、科学的に検証できることが前提となると考えています。

 大豆加工食品のうち、食用油やしょうゆ等については、組み換えられたDNAやそれによって生じたたんぱく質が加工工程において除去、分解され、最終製品において検出できないということから、表示義務の対象としておりません。

 遺伝子組み換え食品の表示のあり方については、本年四月以降、現在は義務表示の対象ではない品目について、最新の分析技術を用いて組み換えられたDNA等が検出できるか検証する、表示対象品目の検討に係る調査、二つ目は、米国及びカナダにおける遺伝子組み換え農作物の流通状況の調査、三つ目に、消費者意向調査など、制度の見直しに向けて必要な調査を順次実施しているところでございます。

 これらの調査は全て本年度末までに終了する予定としており、調査終了後、速やかに有識者等を構成員とする検討の場を設けることを考えております。

宮川委員 今年度一年間をかけて調査をされるということですので、年度末にこの調査の結果が出ましたときには、消費者の皆さんに早く情報が届くようにぜひしていただきたいと改めてお願いを申し上げておきたいと思っております。

 私が今まで伺ってきたのは、食品が私たちの人体に入るに当たっては今どういう基準なのかということを申し上げました。ただ、例えば肥育ホルモンであるとか、さまざまな動物用医薬品等というのは直接牛や豚に投与されているわけでありますけれども、そのときの、食品の生産過程で使われるそういう動物用医薬品等に関しては、どのような調査、また研究、分析が行われているのか、ぜひ伺いたいと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 動物用医薬品一般でございますけれども、これは承認に当たりまして製造業者から申請をいただきます。その申請に応じまして、まず、動物への安全性や有効性につきまして、薬事・食品衛生審議会、ここに動物用医薬品等部会というのがございまして、そこの意見聴取をしております。

 また、並行して食品の安全性という観点も進めておりまして、同時に、農林水産省から食品安全委員会に対して、当該使用された畜産物による人の健康への影響について評価を依頼する。

 さらに、同時に、厚生労働省に対しまして、当該動物用医薬品が残留により人の健康に影響を及ぼすものであるかどうか、これについても専門家の方々から意見を聴取いたしまして、その上で、同時に、農林水産省といたしまして、承認の可否あるいは添加物については指定の可否、これを判断するということとしております。

宮川委員 人体に入るところでもしっかりスクリーニングをして、そして、動物に直接投与するときにも厳しくスクリーニングをしているということですから、その過程を経て出てきている食品の安全というのは担保されていると考えてよろしいというふうに思います。(発言する者あり)もちろんです。日本でです。国内ルールが一番重要なわけでありますので、そこが一番重要です。

 しかし、今聞いていて私が一個思いますのは、消費者にとってやはり情報というのが重要です。今、食品安全委員会もホームページで出している、厚生労働省もホームページで出している、たしか農林水産省もホームページで情報開示をしている。しかし、消費者の皆さんが一々それぞれの省庁のホームページを全部見るかといったら、私はそうではないというふうに思います。

 ですので、食の安全に関しては、ぜひ、総理、ここは情報の一元化ですとか、消費者の皆さんにわかりやすいような施策、そして、多省庁にわたっているさまざまな役割をどこかでグリップするような、新たな体制づくりがTPPを行うに当たっては必要だと思いますが、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 大変重要な点を質問していただいたと思います。

 消費者の皆さんは、果たしてどこが中心になって政策調整をやっているのか、どこが中心になって責任を持って司令塔機能を果たし、消費者の安全、健康を守っているのか、そこがやはり一番重要な点なんだろう、こう思います。

 政府としては、消費者行政の司令塔である消費者庁が中心となって、厚生労働省を初め関係府省庁が連携をしながら食品の安全に万全を期しています。具体的には、消費者庁において食品の安全に関する関係府省庁の総合調整を行っていきます。ここで見れば、松本大臣が、塩崎厚生労働大臣とかあるいは山本農林水産大臣等との調整をしっかりと行い、責任を持って司令塔としての役割を果たしていく、責任を持ってやっていくということになるわけであります。

 そして、今、宮川委員が指摘をされた消費者の皆さんとのリスクコミュニケーションが大切であります。いろいろな不安があるんだろうと思います。ですから、いろいろと問い合わせをする。そういう問い合わせにちゃんと答えていく必要があります。それを消費者庁が、関係府省庁が連携して行うリスクコミュニケーションの企画及び実施の調整等を行っています。こうした消費者庁の総合調整のもとで、食品に残留する農薬などの安全基準の設定等を担う厚生労働省を初めとした関係府省が相互に連携しながらしっかりと取り組んでいます。

 食の安全に関する情報の発信については、食品安全上のリスクに関する正確な情報が消費者にわかりやすく伝わるように、この正確な情報をお伝えすることが最も大切なんだろうと思います。まず消費者に懸念を述べていただき、それに応じて専門家やそして行政担当者が懸念の解消に役立つ具体的な説明を行うという形での意見交換等を実施しています。

 今後とも、消費者庁が、関係府省の協力を得ながら、食の安全に関する情報をわかりやすく整理していくことが大切であって、専門用語を羅列するのではなくて、消費者の皆さんにわかりやすい説明をしっかりとしていくということだろうと思います。ウエブサイト等を通じて広く広報するなど、国民にとってよりわかりやすい情報発信に努めていく考えであります。

 消費者庁の総合調整のもと、関係府省庁が連携をして国民の食の安全に万全を期してまいります。

宮川委員 ありがとうございます。

 私が最も言いたかったことを総理がおっしゃってくださいました。

 わかりやすく、専門用語を羅列するのではなくて、一般の国民の皆様が、この議論を聞かずとも、それをしっかり見たら、当たり前のことが当たり前のようにわかる、そういう説明ができるような司令塔機能の強化をするということ、情報発信をするということが、このTPPに対して信頼を高める最も重要な方策だというふうに私は思っております。これを私が地元でやっている勉強会でも何度も皆さんが口にされていたことであります。

 本来でしたら、あと三分ぐらい時間がありましたら、攻めの農業について御質問したかったところなんですが、特に、私の地元の山梨県の果樹について聞きたかったんですけれども、きょうは、食の安全に関して今明快な御答弁をいただきましたので、ぜひ国民の皆様には安心をしていただいて、そして、これから我々国会議員は何をするべきかといったら、不安をあおる質疑ではなくて、不安を払拭する質疑をしっかり与野党ともにやってまいりたいと思います。

 そのことをお伝えして、私の質疑を終わります。

塩谷委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、本日、三笠宮崇仁親王殿下におかれましては薨去されました。公明党を代表いたしまして、謹んで哀悼の意を表しますとともに、衷心より御冥福をお祈りいたします。

 総理、まず初めに、一番大切なことを確認させていただきたいと思います。

 このTPPというのは、日本全体で見たときにプラスなのかマイナスなのか。国民お一人お一人、そして全国民と考えたときにプラスなのかマイナスなのかということをまず確認させていただきたいんですね。

 こちらの資料一をごらんください。

 これは、国連の銀行部門である世界銀行が試算をいたしました、TPPが発効された場合にどの国がどの程度恩恵を受けるかということを一覧にしたものであります。

 これをごらんになっていただければわかるように、圧倒的に恩恵を受けるのは我が日本でありまして、その額は十三・一兆円。これは、国民一人頭に直しますと、一人約十万円強の恩恵であります。いろいろな出入りはあります、恩恵を受ける方、受けない方あると思いますが、平均をすると大変な恩恵なんですね。これは、第二番目に恩恵を受けるアメリカの約二倍、三番目に恩恵を受けるマレーシアの約四倍分の恩恵が我が国にあるわけですから、どう考えても、総合的にはTPPは大チャンスであるというふうに私は判断をしております。

 ただ、一方で、これまでの議論を聞いていましても、何か、議論が業界のことに集中していることに関して、私は、大切なところですけれども、全体としてどうかということをやはり初めは確認したいんです。

 自動車産業、自動車部品、輸出が物すごく伸びそうだ、大切かもしれませんけれども、別に、多くの国民が自動車産業で働いているわけではありません。農家の方、確かに御苦労される可能性が高いと思いますけれども、農家の方にはしっかりとした手当てをしながらも、ただ、農家にも輸出産業にも関係のない一般国民の方全員に対して、どういう恩恵、またはメリット・デメリットがあるかということが大事なんだと思うんですね。

 実は、一つだけ、全ての国民の方に関してこのTPPと接点があることがあります。それは何かというと、消費者としてお買い物をするとき。これは、どんなお仕事をされる方でも、仕事をしていない方でも、お買い物をされるときは消費者です。この方々にはTPPの恩恵がすべからく行きます。

 例えば、私も、あるときは、和牛、国産、いい肉を食べたいと思うときもありますし、あるときは、海外から輸入されたものをおなかいっぱい食べたいというときもあります。今回のTPPで、関税がある程度削減をされたり、完全に削減されるようなことになれば、消費者の方の選択肢が増すわけですね。この選択肢が増すということ自体がもう大変大きな価値だというふうに考えています。

 そう考えますと、全体として日本を考えたとき、また国民お一人お一人の目線で、どういうお仕事についている方でも、このTPPとの接点を考えたときに、TPPは日本にとって大変大きなチャンスであるというふうに考えておりますけれども、総理の御答弁をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 これはもうまさに岡本委員が言われるとおりでありまして、TPPの効果、我々がどういう利益を享受するかということを考えるに際して、日本全体を俯瞰して見ていく必要と同時に、現在から未来に向けて見ていく必要があるんだろうと思います。

 確かに、今、岡本委員が御指摘になったように、我が国が新たにTPPによって成長軌道に乗っていくことによって、実質GDPは二・六%、約十四兆円の拡大が見込まれているわけでありまして、また、TPP協定は、まさに消費者という立場に立てば、全ての消費者にとって、さまざまな商品を、今まで関税がぐっとかかっていたものに対しましては関税はなくなりますから、安く、そしてさまざまなものが手に入るようになるわけでありまして、大変選択肢もふえていくわけであります。まさに消費生活をより豊かにしていくことは間違いない、このように思います。

 我が国の経済効果分析においても、関税や非関税障壁が撤廃されることによって、小売価格が低下し家計の負担が減少することなど、消費者にメリットがもたらされることを明らかにしているところであります。ことし一月の世界銀行試算においても、TPPにより我が国GDPが二・七%拡大すると分析をしておりまして、我が国の経済効果分析結果と近い数字になっています。

 なお、世界銀行試算は、TPP参加十二カ国中、GDPの増加額が最も多いと期待されるのは日本であるわけでありまして、しっかりとこのチャンスを生かしていく。

 日本は残念ながら、しばらく人口は減少していくわけでありまして、それはまさに消費者が減少していくという中において我々がGDPを伸ばしていくためには、成長していくこのアジア太平洋地域の新たな大きな経済圏の中で自由に活動していくしか道がないんだろう、このように思っております。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 その上で、将来から振り返ったときに、実は、農業に従事していらっしゃる方々からも、あのTPPが起点となって攻めの農業に転換できて、より豊かな農業になったというふうに言っていただけるような政策が私は重要なんだと思うんです。

 よく攻めの農業というお話をいたしますと、いやいや、守らなければいけないという話があります。両方とも大切です。ただ、私はあえて、本当に今まで農家の方が期待するような形で農家を守れてきたのかどうかということを一度検証してみたいんですね。

 資料二をごらんください。

 ガット・ウルグアイ・ラウンドが一九九四年に終了して、本格的に農産物の輸出入が解禁をされた後、日本政府はこの二十二年の間、毎年平均二・六兆円、合計で五十七兆円もの金額を農業の政策に充ててまいりました。

 その結果、その時々は全力で支援に行ったんですけれども、振り返ってみるとどういうことが起きているかというと、この二十二年の間、農業産出額、これは売り上げですね、農家の全体の売り上げは十一・三兆円から八・四兆円に二六%ダウンです。売り上げダウン。農業に従事をされている方の所得、全体で五・一兆円から二・八兆円にダウン。約半分です。当然、働いていらっしゃる方々も、慈善事業をやっているわけではありませんので、もうからない業界には入りませんから、二百六十三万人が百七十五万人、三三%のダウン。耕地面積も減っていますし、上がったのはたった一つ、農家の方の中の六十五歳以上の割合。二十二年前は三人に一人だったんですが、今は三人に二人が高齢化の形です。

 要は、そのときそのときは全力で支援してきました。ただ、振り返ってみると、守るというその形がこういう結果につながっているんですね。今後は、いかにして、もうかるから農業を始めたんだという若者の方をふやしていくかという政策に転換する必要があります。

 そこで、ぜひ総理にお伺いをしたいんですけれども、今回のTPPを契機といたしまして、農業の分野における政府の目標は海外輸出額一兆円です。私はすごく違和感があるんですね。輸出額というのは売り上げですから、売り上げが大きくても利益が少なければ給料は上がりません。少なくとも利益にしてほしかったんですけれども、百歩譲って輸出額がわかりやすいとして、一般の農家の方は、輸出額が一兆円になったからといって、自分の所得がふえなければ何の値打ちもないんですね。

 ですから、政府の大きな目標を転換してミクロな目線に、しっかりと現場目線で、これから総理やそして各大臣のいろいろなお話の中で、政府の目標は農家の方の所得を向上させることです、それが目的でTPPの攻めの農業をやっていますというふうに、大きなメッセージを発していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私が初当選をしたのは平成五年の総選挙でありましたが、そのときに、私の地元は農村地帯でありますから、多くの農家の方々が私の手を握って、晋三さん、農業を守ってくれよ、こう言われました。彼らの手はみんなごつごつしているんですが、そのごつごつした手で地域を守り、伝統や文化を守ってきたのは事実なんだろうと思います。

 ですから、私も、とにかく守らなきゃいけないと思ってずっと一生懸命やってきましたが、結果は今示していただいたとおりであります。今までの農政を続けていたのでは農業には未来がないのは事実であります。ここで我々は思い切った転換をしなければならない、そう考えたところであります。

 そこで今、岡本三成委員から大変いい御指摘があったと思います。一兆円という輸出額、これは額じゃないか、それで果たして農家は豊かになるのか、そこがまさにポイントなんですね。

 今でも、例えば、大体農家はみんな真面目ですから、いいものをつくって、おいしいものをつくりますから、結果として、消費者の手に渡るときには結構高いものなんです。高く行っているんですが、特に東京の一番敷居の高いお店で売っていると結構いい値段で売れるんですが、ところが、その値段と、実質農家がそこに納入している値段、これは大きな差があるんです。

 ここがしっかりと、いいものを売って、高く売れているのに、売り上げは高いけれども、農家の手取りをどうやれば高くするかということ、このミクロのところにしっかりと入っていかなければ、それは農業、農家を豊かにしていくことにはつながらない、まさに御指摘のとおりであろう。これは輸出のみではなくて、国内においてもそうなんだろうと思うわけであります。

 そこで、新たな需要の取り込みや生産性の向上、そして高付加価値化など、一つ一つの課題に正面から向き合い、これを克服するための政策を積極的に講じてきたところであります。

 具体的には、アジアを中心に拡大し続ける世界の食市場の需要を積極的に取り込むための輸出拡大、担い手への積極集積によりコスト削減を実現する農地集積バンクの創設、また六次産業化の推進による付加価値の向上など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。

 こういう動きが進んでいく中において、例えば、私の地元でアスパラをつくっている農家なんですが、アスパラをただつくるだけではなくて、どの時期に出荷すればどこで高く売れるかということに初めて取り組んだ結果、これは手取りがふえています。そして、普通のグリーンアスパラだけではなくてホワイトアスパラにも挑戦して、これを付加価値化することによって、これも農家の手取りにプラスになっています。こうした動きはこの三年、四年で始まったことであります。

 そして、我々は、さらに現在、総合的なTPP関連政策大綱に基づき、攻めの農業への転換に必要な体質強化策を講じているところでありますが、農家の所得をふやす観点から、生産資材及び農産物の流通、加工構造の改革の具体策等について、年内を目途に改革プログラムを取りまとめることとしております。

 引き続き、政府全体でこうした改革を進め、農家の所得向上を実現していきたい、このように思っております。

岡本(三)委員 関連いたしまして、山本農水大臣にお伺いをしたいんですが、やはり生産性を上げて農家の方の所得を上げるキーポイントというのは、どうやって人材育成をするかということなんだと思うんです。

 例えば海外の農産物の輸出、世界の第二位は小さな国オランダです。オランダのポイントは、国が大学をつくって、その農業大学で、最先端の技術のみならず、農業経営を教えるんですね。どうやって高く売って、どうやって収益を上げるか。

 このように、どういうふうに日本の中で人材育成をするかという施策についてお伺いしたいと思います。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のように、オランダは、EU加盟のときに、温暖なスペイン、ポルトガルの農業に劣後する、負けてしまうのではないかと、恐怖感で反対の議論が多かったわけであります。

 そこで、ワーゲニンゲン大学を中心にしまして英知を結集して、農業者、実務に携わる担い手を多くそこで勉強、研修をいたしまして、それで野菜に特化して、EUをマーケットとしてトマトを中心に輸出をしております。その輸出は九兆円に達しているわけでございまして、日本の農業総生産高よりも多いわけでございます。

 そのような新しい試みを我が国もやっていきたいというように思っております。

 特に、マーケティングを含む経営ノウハウや、最新のIT技術などイノベーションの成果を取り込めるような人材育成が極めて重要でございます。

 既に就農している農業者が営農しながら体系的に経営を学ぶ場として、農業経営塾の各地への展開を進めることとしておりますし、二十八年度補正予算により、その開講準備を支援しておるところでございます。

 ICT等を活用して生産現場のイノベーションを促進していくため、人工知能等を活用した熟練農業者のノウハウの見える化や、現場での導入が円滑に進むよう、明確な開発目標のもと、農業者の参画を得て技術開発に取り組むこととしております。

 以上のようなことを通じまして、農業者の所得向上に邁進していきたいというように思っております。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 続きまして、世耕経産大臣にお伺いをしたいと思います。

 私は、今回のTPPで一番恩恵を受けるチャンスがあるのは、大企業ではなくて中堅企業ではないかなと思っているんですね。

 なぜならば、大企業には、例えば海外輸出の専門の部隊があったり、そのマーケティングの部隊があったりしますが、中小企業や零細企業の方は必ずしもそういう人材の余裕がありません。ただ、つくっていらっしゃる商品、これは製造業に限らず、農業であってもサービス業であっても、そのつくっていらっしゃるものは世界標準以上のものを持っていらっしゃるような中小零細企業がたくさんあります。ですから、ここをどういうふうに支援していくかというのが大切なポイントなんだと思うんですね。

 資料三をごらんいただきたいんです。

 これは、今回のTPPに関連をして、経産省を中心として政府がどういう支援をしていくかという体制なんですが、新輸出大国コンソーシアムという、ジェトロを中心として、そこにいろいろな業界の専門家の方、または輸出の専門家の方、こういう方を一つにして、例えば、ここに連絡をしてくだされば、その方がどういう業界に属していようと、どのようなサイズのお会社であろうと、二人三脚でパートナーのように支援してくださるというような仕組みにはなっています。

 ただ、ポイントは、これがちゃんと機能するかどうかなんだと思うんです。

 ですから、この新しいコンソーシアムを本当に相談をしてくださる企業の一部門のように使っていただく、そのためにすごく大切なお願いをしたいことがあるんです。

 これはホットラインがもうつくられています。フリーダイヤルですからぜひどんどんお電話いただきたいんですけれども、加えて、近くのジェトロに御訪問いただければ相談になっていただけるんですが、専門家の人は往々にして、知識が豊富ですから上から目線なんですね。そこに御相談に行かれる方は、今まで海外のことを余り真剣に御検討されていなかった方が多いので、緊張して行かれます。

 ですから、しっかりと職員の方に、自分の家族と一緒に働くかのような気持ちで、その相談者の部下になったような気持ちで、全力で二人三脚で支援をしていくというような御指導をして、必ずや中小企業、零細企業のパートナーとなり得るということを宣言していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 今回のTPP、やはり中堅・中小企業には大きなメリットがあると思っています。特に、中小企業、中堅企業はなかなか国別の対応なんというのは難しいんですが、ルールがある程度統一化された。あるいは、中小企業でも二割がやはり模倣品で苦しんでいるんですね。こういう模倣品対策も盛り込まれた。あるいは、通関手続というのも、なかなかこれも小さな企業にとっては難しいことになるわけですけれども、これは、普通であれば四十八時間以内の通関というのも決められたわけでありまして、中小企業にとってやはりいろいろなメリットをもたらすと思います。

 ただ、委員御指摘のように、中小企業、いきなり海外へといっても、どうしようかな、どうしたらいいのかな、全くわからないということで、それに応えるために新輸出大国コンソーシアムを設立いたしました。

 海外ビジネスに精通した専門家が、例えば海外での事業計画の策定ですとか、あるいは現地での商談とか、あるいは店舗の開設の支援とか、そういったことをしっかりと行う体制を組んでおりまして、現時点で千九百二十五社に御参加をいただいています。しかも、その内訳を見ますと、農業関係が二百九十八社、あるいはサービス関係が四百六社ということで、必ずしも製造業だけではなくて、いろいろな分野の方々が関心を持ってくれているということであります。

 ただ、千九百二十五という数字は、中小企業全体の数から見たらまだ少ないですから、もっといろいろな方々に相談に使っていただけるようにこれからも頑張っていきたいと思いますし、今おっしゃったように、特に三百九名の専門家、これから四百名、できれば六百名ぐらいにふやしたいと思っていますが、絶対に上から目線ではなく、私のように低姿勢で常に対応するように、しっかりと指示をしてまいりたいと思います。

岡本(三)委員 このTPPもアベノミクスも、全ての目的は働く方の所得を上げることです。ですから、このTPPを通して希望の風を日本全国に吹き渡らせて、働く方の所得が向上するように全力で政府に取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 以上です。

塩谷委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 民進党の今井雅人でございます。

 民進党最初のバッターでございますので、私の方からも、三笠宮崇仁親王殿下の御訃報に接し、民進党を代表して、謹んで心から哀悼の意を表しますとともに、心より御冥福をお祈りいたしたいと思います。

 さて、総理、きのう地方公聴会がありまして、私、北海道に行ってまいりました。そこでいろいろな意見が出ましたけれども、一番多かったのは、やはりまだ中身がよくわからないという声が非常に多かったわけです。

 特に、もちろん野党の陳述者の人たちはそういう意見が多いんですが、与党の御推薦された陳述者の方も、基本的にはTPPによって輸出が伸びるような気がするけれども、ちょっと中身がよくわからないと。勉強会をいろいろやっているんだけれども、勉強会をやっている人も、どうやったら輸出が伸びるのか、TPPでどう伸びるのかということは全くわからないという声が多いんですということをおっしゃっておられました。ですから、やはり国民にはまだまだこれが浸透していないということだと思います。

 そして、きょう午前中の参考人質疑でも、きのうは北海道と宮崎でやりましたけれども、ぜひ米どころの東北でもやってほしいという声も強くありました。

 ですから、まだまだ国民にはこのTPPは浸透していませんので、ぜひ、これから地方公聴会も何度も開いていただいて、国民が理解するまでやっていただきたいと思います。

 そういう思いの中で、この委員会はいろいろなことが起きるわけでありまして、私、十七日に質疑に立たせていただきましたけれども、そのときに、与党のもとの理事から強行採決という発言が出て、それでおやめになった、これは本当に問題ですという話をさせていただきました。政府の方からも遺憾のような発言があったと思いますが、何とその翌日、今度は政府の方から強行採決に関しての発言が出るという驚くべき事態が起きてしまいまして、それ以降、この委員会はまた順調に回らなくなってきてしまっております。私も本当に残念です。

 そこで、まずお伺いしたいんですが、この発言をされた山本大臣、御自分の口から、どういう発言をされたか、まずそれについて御説明いただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 十月十八日の私の発言で、誤解を生じ、皆様に御迷惑をおかけいたしました。十九日水曜日のTPP特別委員会の場で、この発言を撤回させていただきまして、かつ、おわびを申し上げたところでございます。

 この発言の趣旨は、TPP特別委員会の審議で強行採決をするのかという質問があったことでございましたが、それにつきましては、国会のことは国会がお決めになるという趣旨で申し上げたものでございます。

 TPP特委や農水委員会での今後の国会審議において、緊張感を持って丁寧に御説明に努めてまいりたいと存じております。

今井委員 いや、私が今申し上げたのは、どういう発言をされたか。発言の内容をお答えください。

山本(有)国務大臣 これはNHKニュースのウエブに捉えていただいております私の発言でございます。これを御紹介させていただきます。

 私は内心思っております。強行採決するかどうかは、この佐藤勉さんが決めるのであろう。ですから、私ははせ参じたわけでございます。

 以上でございます。

今井委員 ちょっとあきれて物が言えないような発言なんですけれども。

 実は、十七日の日に私が質疑の中で安倍総理に御見解をお伺いしたところ、こうお答えになられました。今まで結党以来、自民党は強行採決をしようと考えたことはないと。考えたことすらないというふうにおっしゃっておられますけれども、考えていらっしゃるじゃないですか。強行採決をするかどうかを考えるということは、考えているということでしょう。やったことがないと言うならまだしも、考えたことすらないとおっしゃっているんですけれども、これは間違いですよね。訂正してください。

安倍内閣総理大臣 この場において、自民党は結党以来、強行採決をしようと考えたことはない。それは、今日に至るまで、この瞬間まで、全く変わりはないわけでございます。

今井委員 では、この山本大臣の発言に対してどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 強行採決しようということを山本大臣が考えているとは全く思えないわけでございます。

 ただ、誤解を呼ぶ発言をしたことについて、既に山本大臣が陳謝をし、また、私どもの方から注意しているところでございます。撤回し、陳謝をしている。撤回をしているわけでございまして、私どもの方からも注意をしているところでございます。

今井委員 山本大臣が強行採決をするということを言っているわけじゃないんです。今もおっしゃったじゃないですか、国会が決めることだと。

 つまり、与党自民党が、強行採決するかどうかを自民党の佐藤さんが決めるんだというふうにおっしゃっているわけです。山本大臣も自民党の方ですよね。ということは、強行採決するかどうかということを与党が考えているということじゃないんですか。総理、違うんですか。

安倍内閣総理大臣 それは全く違いますね。全くそれは違います。

 繰り返しになりますが、今まで我が党は、自由民主党は結党以来、強行採決をしようと考えたことはないわけでございます。

 山本大臣は、そもそも強行採決という定義をどう考えるかということもありますが、それは横に置いておいたとしても、それが例えば、いわば円満な雰囲気の中で採決されないということを指すとすれば、今、委員の頭の中にそういうものがあるとすれば、それにつきましても当然そんなことは我々は今まで考えていないわけでございまして、我々としては、できる限り議論を熟す、議論を行っていきたい。

 政府の立場としては、いつ採決するかということを考える立場にないわけでありまして、委員会にお願いをしているわけでございますが、同時に、党としてもそういう立場に立って、いわばしっかりと議論をしていく。そして、議論が熟せば採決をしていくというのが基本的な民主主義のルールだろう。

 この中で、まさに山本大臣が申し上げましたことは、まさに議会の運営ということにおいては、これは、私に質問しているようだけれども、総理大臣が決めることではなくて、議会の運営は議運の委員長が議会全体としては決めていくことだ、こういうことを指摘された、こういうことでございます。

今井委員 であれば、閣法の審議をお願いする大臣がこういう強行採決についての発言をされるのは、それは不適切じゃないんですか。この発言は不適切ということでよろしいですね。総理大臣、これは不適切な発言ということでよろしいんですよね。

安倍内閣総理大臣 これは、山本農林水産大臣の発言については、十月十九日の朝、官房長官から山本大臣に対し、誤解を生じさせるような発言はしないよう厳重に注意するとともに、山本大臣も、同日の本委員会、この場所でこの発言を撤回し、おわびをしたところであります。

今井委員 同じ十七日の日の質疑の中で、総理はこういうことをおっしゃっているんです。理事のやめられたことに関して、自民党は強行採決をしようと考えたことはない、この考え方と相入れない発言をした、だからこそ国対委員長から注意がなされ、本人は辞職をしましたと言っています。同じですね、起きていることは同じです。

 ですから、この理屈に従えば、任命者である総理大臣が大臣を注意して、大臣が自分で責任をおとりになられる、そういうことじゃないんですか、違いますか。この発言と整合性はどうとれるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まさに私がそのとき申し上げた対象の人物はこの委員会の理事でありまして、委員会の理事として円満な運営を心がけなければならない立場であったということであります。

 他方、山本大臣は、そもそもこの委員会の運営に、運営は委員会が行うものでありまして、この運営を決めた中においてそれに従う立場でございます。しかし、他方、誤解を与えたことは事実でありますから、そこは官房長官から注意をし、本人もおわびをし、撤回をしたところでございます。(発言する者あり)

塩谷委員長 御静粛に願います。

今井委員 いやいや、撤回をされるということは、不適切な発言をされたということでしょう。前の理事も不適切だったということで撤回をされたわけですよ。それは同じじゃないですか。(発言する者あり)強行質問なんかしていませんよ。

 ですから、どこが一体違うんですかということです。やはりこれは、これから中身をやるに当たって、答弁をされる方の資質とか信頼性というような問題があるので私はお伺いしているんです。しかも、この発言に関して質問したのは、私はきょうが初めてですから。何度もやっているわけじゃありません。ですから、もう一度お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私も不適切な発言だと思います。ですから、本人がおわびをし、撤回をしたわけであります。

 そして、他方、当該理事、元理事につきましては、理事としての発言は不適切であると同時に、これは御本人の判断でありますが、御本人はいわば、理事としてこの委員会を運営することはもう困難であろう、そう考え、みずから辞任をされたんだろうということでございます。

 他方、山本大臣は、確かに不適切な発言であり、本人も誤解を招いたとおわびをし、撤回をしたところであります。と同時に、山本大臣の責任は、TPPについてしっかりと、正しく、わかりやすく答弁をしていく、国民の皆様に御理解をいただくために全力を尽くしていく、そして農家の皆さんの不安を払拭し、強い農業をつくっていくことによって、もって国民の負託に応えていく、これが山本大臣の決意なんだろう、このように思いますし、私もそのように考えたところでございます。

今井委員 政治家の出処進退は御自分で決められるということですから、では農水大臣、いかがですか、御自分で責任は感じていらっしゃらないですか。

山本(有)国務大臣 発言につきましては、撤回をし、かつまた、皆さんにおわびを申し上げているところでございます。

 また、TPP特別委員会や農水委員会で、TPPに関する審議、これに緊張感を持って丁寧に説明をさせていただき、この審議の内容を深めてまいりたいというように思っております。

今井委員 この問題はこれでやめますが、しかし、私はやはり大臣の言葉というのは重いと思いますよ。非常に重いと思いますから、撤回をして済むという問題ではないと思いますので、そこは御自分でもう一度よく考えていただきたいと思います。

 そして、また一つ、どうしてもお聞きしなきゃいけないことが出てきたんですが、もともとこのTPPにはいろいろな分野があるんですけれども、その分野の中には労働というのがあります、労働分野。ここでは、合意内容というのはいろいろあるんですが、一つは、労働者の基本的権利及び労働条件を規律する法律等を自国で採用、維持する、こういうことをちゃんと規定するというような内容になっています。

 日本の場合は、日本の政府の見解は、日本は法律がきちっと整っているということで、特別な対応はないという立場だそうですが、せっかく法律があったとしても、これをきっちり守っていなければ何にもなりません。

 ですから、そういう観点から、最近週刊誌で報道され、そして、それに対して二十五日の会見でも御本人も説明されておられますから、この場でもう一度お伺いをしたいというふうに思います。

 事実関係をまずちょっと確認してまいりたいと思うんですけれども、元秘書と言われる方の証言で、労働契約書を締結してほしいということを山本大臣本人にお願いしたけれども、そんなものはつくる必要はないというふうに拒否をされましたというような記述がありました。これに関して、これが正しいのか間違っているのか、お答えいただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 これは、当該週刊誌に十月十八日付で御回答を申し上げました。

 事務所で確認したところ、現時点において以下の事実関係であることが判明しました。

 最近退職した秘書から、雇用契約書を作成してほしい旨の申し出が、同秘書の採用をあっせんした現在は退職している秘書から経由して、山本事務所にありました。これを受けて、私が作成を政策秘書を通じて指示したところ、政策秘書が地元事務所の担当秘書と協議をしたが、作成が延び延びになってしまったということでございました。

 御質問によれば、山本が作成を拒否したとのことでございますが、私は、この新規採用秘書の給与について、県庁職員の同年齢の者と同程度の給与を支給することを事務所に指示し、そのとおり実際給与が支払われており、そのような指示をしている私が雇用契約書の作成を拒否することはあり得ません。

 このような事情に照らしましても、同氏からどのような証言を得られたのかは存じ上げませんが、独立した客観的な裏づけに基づいて事実を記載していただきたいと、十月十八日、文書で申し上げたところでございます。

今井委員 では、事実関係だけ確認しますけれども、この方が話をされていることは、これは間違い、先方が間違ったことを言っているという認識でよろしいですか。

山本(有)国務大臣 私は、あくまで、この方の雇用契約書を作成し、早急に事務所の所内手続、勤務体制、これを完璧にするように指示をいたしております。

今井委員 ちょっとよくわからなかったんですけれども、私の質問は、その方の言っていることは間違っていますよねということです。そのとおりですか。イエスかノーで結構です。

山本(有)国務大臣 私が書面の作成を拒否したことはありません。

今井委員 わかりました。

 では、ちょっときょうは厚生労働省さんに来ていただいているので、事実関係だけにしたいと思いますけれども、労基法の十五条のところに「労働条件の明示」というところがございます。そこで、詳しいことについては「厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」とありますけれども、この「定める方法」とはどういう方法ですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法の施行規則におきましては、労働契約の締結に際し、賃金や労働時間等に関する事項を労働者に書面によって明示しなければならないことと定められているところでございます。

今井委員 ということは、もう一回お伺いしますけれども、書面を交わしていないということはこの労働基準法に要するに違反している、こういう理解でよろしいですか。

山越政府参考人 個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、労働者に書面によって明示されていないことは労働基準法に違反することになるのではないかというふうに考えております。

今井委員 大臣にお伺いしたいと思いますけれども、現在は労働契約書は全てもう整備されているということでよろしいですか。

山本(有)国務大臣 全ての職員、秘書に確認をし、全て契約書が交わされている、書面で交付されているということを確認いたしました。

今井委員 もう一点だけ。

 先日の二十五日の閣議の会見をお伺いしておりましたら、今チェックしたところ、一番長い方で二年九カ月、契約書がおくれている方がいらっしゃって、そのほかにも何人かおられたというふうに発言しておられますけれども、それは事実ですか。

山本(有)国務大臣 記者会見で申し上げました、まず、記事にある二名につきましては、一人は三カ月、もう一人は一年、労働条件の書面による明示がおくれておりました。

 そこで、遺漏がありましたので、今後、秘書の待遇等につきましては、労働基準監督署などに相談をさせていただいて、これをきちっと注意していくような体制をつくらせていただきました。

今井委員 済みません、私が確認しているのは、労働契約書を作成しないで勤務をしていた時期がどれぐらいあるんでしょうかということをお伺いしているんです。

山本(有)国務大臣 この記事にある二名以外に、現在勤務している、私のスタッフとして働いている者のうち、一人は一年、もう一人は二年九カ月、労働条件の書面による明示がおくれていましたことから、改めて労働契約書を交付したところでございます。

今井委員 二年九カ月の期間があるということでございましたので、その期間の間は法令違反の状態であったということでよろしいですね。

山本(有)国務大臣 いわば行政手続法の違反であるという認識でございます。

今井委員 もう一度言いますが、要するに法律に違反しているかどうかということです。

山本(有)国務大臣 一般的な行政法の範囲の中で懈怠していたという認識でございます。

今井委員 総理大臣、最後にちょっと御見解をお伺いしたいと思いますけれども、これからTPPをやるときに、労働者の環境というのも向上していこうというのがこのTPPの一つの目的だと思いますから、そういうところで、どういう理由かはともかく、法令違反状態にあったという方がおられるということは、私は大変問題だと思いますし、早急にやはり政府内でもそういう状態がほかにないかお調べになられるべきだと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 国民の負託を受けている私たち国会議員は、その責任を自覚して、みずからの政治活動について国民に不信を持たれないよう常に襟を正して対応していかなければいけない、こう考えております。

 自民党としては、社労士を入れてしっかりとした対応をとるようにということに既になっているわけでございまして、さらに徹底していくということになるわけでありますが、大臣においてはまさに法令遵守は当然のことであろう、このように思っているところでございまして、今後、労働基準監督局にも相談の上、山本大臣につきましてはきちんと対処することとしているものと承知をしておりまして、今後とも本件について説明責任を果たしていかれるものと承知をしております。

今井委員 一点だけ確認したいんですけれども、自民党の方でも社労士さんと相談しているということは、今回のこの報道を受けて、新たにもう一度、そういうことを徹底するということをされたということですか。

安倍内閣総理大臣 既にそれを行っているということでございます。

今井委員 いやいや、それを既に行っていたのに農水大臣のところは漏れていたということですか。自民党のところで既にやっておられるのでしたら、そういう漏れはないはずじゃないですか。ちょっと今おかしいと思いますけれども。

山本(有)国務大臣 私は、念のために、そうしたことのないように指示をしておりました。しかし、職員に徹底することができませんでして、遅滞を生み、また、二年以上そうした懈怠の期間があったということは申しわけなく思っております。

今井委員 大臣だけじゃなくて、私たち立法府の人間も、やはり法令をしっかり守っていかなきゃということで身を引き締めていかないといけないと思いますから、やはりこれは、事務所の人が忘れていたと言ったとしても、監督責任はあるわけですから、そのことを重く受けとめていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 次に、後で私の同僚、福島さんが詳しくやられると思いますけれども、私の方でまず最初に頭出しをさせていただきたいと思うのは、SBS米の価格の偽装疑惑の件です。

 十七日の日も私ここで議論させていただきましたけれども、政府から出ている報告書が本当に信憑性が高いんでしょうかということを何度もお話をさせていただきました。結論は、それは問題はないということをずっとおっしゃっておられて、さらに、調整金を使って価格を安くしたところはなかったというふうにおっしゃっておられますけれども、十月二十四日の日本農業新聞では、十一の商社がヒアリングに、調整金を使って安く、二割ぐらい安くしているところもあったというふうに証言をしておられます。そして、きょう、十月二十七日の毎日新聞の方でも、今度は卸業者の十社の方から、調整金で価格を下げて市場に出ていたということを証言されている方がいらっしゃるわけですね。

 ヒアリングしているところは同じはずなんです。同じところでヒアリングをしているのに、農水省さんではそういう件が一件もなく、一社だけならともかく、日本農業新聞と毎日新聞、それぞれ別々に調査を行ったのにもかかわらず、両方とも、十社、十一社、いや、そんなことはない、ちゃんと調整金を含めて安く売っているんだという方があらわれているということは、これはどういうことなんでしょうか。

山本(有)国務大臣 日本農業新聞あるいは毎日新聞、こうした会社で調査をされているということに対して、農林水産省は全く関与をしておりません。したがって、その内容に対してコメントをする立場にはございません。

 その上で申し上げれば、調査結果にありますとおり、SBS米の販売価格を決定する際の主な考慮事項として、国産米価格の水準と回答した者が四十二者中三十一者でございました。国産米の価格水準いかんにかかわらず、SBS米を調整金分だけ安く販売していると回答した者は皆無でございました。

 米の価格は基本的に品質、需給で決まるものであり、国産米価格の下落局面などに、政府売り渡し価格を下回る価格での販売が発生することは十分あり得ることでございます。これは、卸業者が状況によっては国産米を仕入れ価格を下回る価格で販売していることがあるのと何ら変わりはないところでございます。

今井委員 きのう、北海道の地方公聴会で陳述者の方が、このSBS米の件は本当にどうなっているのかさっぱりわからない、この解明がしっかりなされなかったら、とてもTPPなんかやってもらっては困ると強くおっしゃっておられましたので、ここは本当に私ははっきりさせなきゃいけないと思うんですよ。

 大臣、他人が調べたことなどあずかり知らぬなんて、そんな悠長なことを言っていちゃいけないんです。だって、今、農水省さんの調査した報告書の信憑性が問われているわけですよ。そうでしょう。だって、同じ方に農水省が聞いたらゼロ回答だった、しかし、ほかの方が、別々の二人の方が聞いたら、十人も十一人もいたと言っているわけですよ。どっちが正しいのか。農水省さんは、自分たちの報告書が正しいんだということをやはり立証しないといけないと思いますよ。

 では、まずお伺いしますが、この二社に対して何かアクションされましたか。

山本(有)国務大臣 この二社が御自身の判断で調査をされることに対しては、我々は、それはそれで、何ら関与をするものではありません。

 そして、もし、米の価格に、低値誘導の要因が調整金等であるとするならば、私どもが考えております品質と需給の関係、この関係のみで価格が決まることに対する反証になるわけでございます。

 したがいまして、その反証としての、米の価格を決定した日にち、そして銘柄、あるいは品種、あるいは産地等々について、具体的に比較をしなければ判明できないし、また比較もすることができません。

 その意味において、この報道ぶりにつきましては、私ども関与をするものではありません。

今井委員 きょう、テレビをごらんになっている方、今の答弁でわかりましたかね、言っていることが。全く答えていないと思いますよ。

 大臣、私が申し上げたいことは、農水省の調査では、調整金を価格を下げるのに使ったところは皆無だったとおっしゃっているわけです。しかし、そういうことをしていたというところが十社、十一社あった。この違いですよ、この違い。同じ方が答えておられるわけですよね。同じところに調査をかけているわけですね。これが違うのを放置するんですか。

山本(有)国務大臣 その十何社という方が、私ども農林省が調査した相手方、回答を得た相手方と同じかどうかの判断もできません。そして、その品種あるいは産地等についても可能な限り私どもで調査したわけでございますが、しかし、その調査、マスコミによる調査につきましては、私ども知る由もありません。

 したがいまして、これを比べろ、あるいは真否について判断しろと言われましても、私どもは、この千七百を超える全てのSBS米の契約の調査を、落札した方を中心に、全省挙げてこれを調査したわけでございます。しかも、非公表を原則に調査をしておりまして、正確性におきましては私どもの調査が正確であるとあくまで考えるところでございます。

今井委員 いやいや、ちょっと今のは、大臣、これは答弁を変えられた方がいいと思いますけれども。この三者貿易にかかわる人を全者調べられたわけでしょう。それでなぜ二社がやっているところの対象先と同じかどうかわからないと言えるんですか。同じじゃないですか。少なくとも、農水省さんが質問した先の中に含まれていますよ、それは。普通の人が考えたらすぐわかるじゃないですか。それが重なっているかどうかわからないなんて、それは答弁が間違っていますよ。

山本(有)国務大臣 各個別の買い受け業者の方、その方が代表者である場合、また職員の方である場合、さまざまでございます。その方と同一人物であるということを、私ども、これを認識することができておりません。

 また、マスコミの調査でございまして、公表することを前提にお話しになった調査でございます。私どもは、公表、公開することを前提とせず、そして非開示を条件に物を言っていただいたということでございますので、私どもの調査の方が私ども客観性があるだろうというように思っております。

今井委員 とてもおかしなことをおっしゃいましたね。調整金をそういう価格のところに、価格を下げるために使ったということは、なかなか言いづらいことですよ、本来は。公表するという前提の方が余計言いづらいじゃないですか。公表しないと言っている方がより答えやすいじゃないですか。それはそうでしょう。だから、公表されるんだったら、ううん、ちょっとやはり本当のことを言うのはやめておこうかなという方、当然出られると思いますよ。

 ですから、今、公表する前提じゃないから私たちは聞き取れなかったって、それはおかしいじゃないですか。今のはちょっと、大臣、おかしいですよ。

山本(有)国務大臣 私ども、強制力を使う調査ではなく、あくまでSBS米の契約当事者としての国と買い受け業者あるいは輸入業者との調査でございます。

 そこにおきましては、信頼関係、永続的な信頼関係のもとにこれは調査をいただいた、そして報告をいただいたということでございまして、そこには私ども客観性がより明確にあるものというように考えるところでございます。

今井委員 しっかり答えていただけないので、私たちは余計、ますますこの調査報告書の信憑性というのを疑わざるを得ません。

 ですから、何度にもわたり我々は申し上げて、要求しているのは、まず、調査したときの質問票を出してください、それから、そのときの聞き取ったメモを出していただきたい、そして、その後集計をされたというふうに農水省さんが答えておられますから、その集計したものを見せてくださいと。それを見ないと、今はもう特にそうなんです、これだけ新聞社二社が別のことを言っているわけですから、農水省さんが聞き取りして本当のことを報告書に上げているかどうかすら疑わしいわけですよ。

 であれば、この報告書の信憑性を確認するために、この間、質問票についてはないとおっしゃいましたから、それも驚くべきことなんですけれども、メモです、メモ、農水省さんが聞き取ったメモ、それで、集計をした集計表、大臣、この二つをぜひ出してください。

山本(有)国務大臣 事業者ヒアリングの際に職員が作成いたしました備忘用のメモの提出の御要求でございますが、これは行政情報公開法の取り扱いに即して対応する必要がございます。

 今回の個別のヒアリングメモの取り扱いにつきましては、同法に基づく公開の対象でございます行政文書、すなわち、行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているものかどうかに照らして判断する必要がございます。

 当該メモは、個人として利用している段階にとどまっておりまして、農林水産省の職員が組織的に用いるものとして、農林水産省が保有しているものではありません。行政文書には該当していないと判断しております。(発言する者あり)

塩谷委員長 不規則発言は慎んでください。

山本(有)国務大臣 いずれにいたしましても、実際に情報公開請求があった場合、農林水産省において行政情報公開法の基準に照らして判断させていただきます。(発言する者あり)

塩谷委員長 今の件について、理事会で検討したいと思います。

今井委員 今、大臣は、聞き取ったメモは出せないとおっしゃいました。それは個人的に聞き取ったものであるから出せない、行政文書じゃないとおっしゃっていましたけれども、実は、十月七日に行いました、十一時からやったんですけれども、SBS米の我々の追及チーム、農水省さんに来ていただいたんですけれども、そのとき、貿易業務課長はこうおっしゃいました。聞き取った個人のメモというその詳細は、個別のものはありません。ないと言ったんです、最初。

 大臣は、質問票のああいうペーパー、それすら出すのをちゅうちょしたとこの間おっしゃっていました。私は、大変問題発言だと思ったんですね。そういう質問票すら出したくないというその姿勢自体が問題だと思いますけれども、この方、今大臣があるとお認めになったメモが、我々のヒアリングのときに、ないとおっしゃったんですよ。ないとおっしゃったんです。ちゃんとこれは記録に残っていますから。

 これはあれですか、大臣が指示して、ないと言えと御指示されたんですか。

山本(有)国務大臣 これは、提出すべきメモがありません、そういう意味でございまして、あくまでメモというものがそれぞれ、調査したそれぞれの方々が再三にわたって面談、電話で相手方とやりとりをしておるわけでございますので、その方々固有の備忘録としてあることは当該職員も知っているというように思います。

 私が申し上げたとおり、メモは、行政文書ではない以上これは提出できないし、そのことにおいて提出すべきはずのメモを期待されるでしょうけれども、そのメモはありません、こういう理解であります。

今井委員 とても苦しい答弁なんですけれども、時系列を申し上げますと、最初はメモはないと言っていたんです。それが、途中から何度か説明が変わってきて、メモはあると言い出しました。それを出せということになったら、与党の方から、これは情報公開法上の行政文書じゃないという整理をしていますという話をされたんです。

 ですから、このメモがないと言った時点では、行政文書として出せないメモであるなんというそんな考えで答えているわけないんですよ。その後でメモが存在していると言ったから、それが行政文書に当たるかどうかという検討をされているんです。これが時系列です。

 ですから、この時点では、この方はうそをついていらっしゃる。うそをついていらっしゃるんですよ。これはやはり大臣の部下じゃないですか。大臣がこれを指示されたのか、僕は伺っているんです。

山本(有)国務大臣 繰り返しになりますが、行政文書としては存在していないという趣旨の回答を職員がしたというように考えております。

今井委員 ちょっと何か、まあそういう答えしかできないんでしょうけれども。(発言する者あり)いや、そんなことないですよ。このとき、メモそのもの、個人のメモはないと言ったんですから。行政文書として出せないメモなんてどこにも言っていませんよ。どこにも言っていません。ですから、出したくないということなんですよ。

 大臣、これだけもう調査報告書の信憑性が問われているんですから、行政文書として整理していないから出せないんじゃなくて、この問題をちゃんと究明するために、みずから積極的に出すべきですよ。行政文書じゃなかったら出せないということはないわけです。別に、出したっていいじゃないですか。出す義務は必ずしもないにしたって、出せますよ。

 ですから、もうこれははっきりさせましょうよ、何が正しいのか。そうしないと我々は前へ進めませんから。このSBS米の取引について本当は何が起きているのか、それが知りたいんです。だから、その調査のものも全て出してください。新聞社が言っているのが正しいのか、農水省さんが言っているのが正しいのか、そこで決着つけましょうよ。ぜひ出してください。

山本(有)国務大臣 再三にわたり申し上げておりますとおり、調査の相手方はSBS米入札契約の一方当事者でございます。その完了した契約につきまして、非公表を前提に調査をいたしました。その非公表を前提にしたメモを開示するということは、今後の契約あるいは今後の農水省がする調査について御協力がいただけないということにもなりかねません。

 その意味で、農水省の信用というものを維持するためにも、このメモの開示というのは難しい問題であるというようにお考えいただきたいと思います。

今井委員 持ち時間が来ましたからやめますけれども、そんな壊れたレコードのような答弁を繰り返していても、国民の理解は得られない、広がらないということを申し上げて、そして、大臣、やはり姿勢を変えて、いろいろなものを開示して、そこで一つずつ明らかにしていく、そのことをぜひやっていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享でございます。

 まず冒頭、本日、三笠宮崇仁親王殿下が薨去されました。謹んで哀悼の誠をささげさせていただき、質問に入らせていただきたいと思います。

 さて、SBSの問題を私もやらせていただきますけれども、この問題をずっと国会で取り上げてまいりまして、地元に帰ると本当にみんな怒っています。何に怒っているかといえば、まことに恐縮ですけれども、今までのような大臣の答弁そのものなんですよ。

 大臣、この問題を軽く見られていませんか。何とか言い逃れをすれば、まあ国民は納得すると。そもそも、この調査を始めた目的は、国民に不安があるとすれば、その不安を払拭するためだと大臣は何度もおっしゃってきました。私は、その理由もおかしいと思いますよ。

 しかし、この間の国会の答弁やあるいはさまざまなメディアの報道等を通じて、国民の不安とか不満とかというのは、私はむしろ高まっていると思っています。

 午前の参考人質疑におきましても、鈴木先生、私のゼミの先輩でありますけれども、この農水省の調査は、卒業論文でいったら、優、良、可、不可の不可だ、やり直さなければ卒業できないと言っていました。卒業というのは、まさにTPP協定の採決だと思います。つまり、これをやり直さなければ採決なんてできませんよ。

 なぜか。先生もおっしゃっていたように、今農水省は、TPPで農産物の影響は、一千三百億円から二千百億円のマイナスだと言っています。しかし、仮に、調整金があって実際の輸入米の値段が政府が公表している公定の輸入米の価格よりも二割、三割安いとしたら、三千四百億円、米だけでマイナスになると言っているんですよ。千三百億円の被害と言っていたのが、その三倍近くの被害を一つの品目だけで及ぼす。それだけ大きな影響があるものだからこそ、多くの国民が注目をし、問題にしているんですよ。

 そして、農水省は、生産量を落とさない、TPPになっても、農産物の生産量は減らないんだと言っていますけれども、それは対策を打つからだと。必要な対策を打てば生産量は減らさなくて済むと言うけれども、では、その米の生産量、今の生産量を維持するために幾らの予算が必要だといえば、一兆円ですよ。つまり、TPPの審議の大前提を崩すことになる可能性がある問題だからこそ、このSBS米、輸入したお米の値段が一体幾らなのかというその調査が大事になってくるんですよ。その認識を持ってぜひ御答弁をいただきたいと思います。

 農水省の調査ではこう書いてあります。調査の結果、民間事業者間の金銭のやりとり、つまり調整金はある程度あったものの、それによってSBS米の国内市場における価格水準が国産米の需給及び価格に影響を与えることを示す事実は確認できなかった。

 しかし、これまでのやりとりでも明らかなように、問題は、この問題の本質は、今まで農水省が公表していた輸入したお米の値段というのは、国産の業務用米の価格と同じだと言ってきた。しかし、この調整金なる、そうしたやりとりがあれば、実際に出回っている輸入米の価格はもっと安いんじゃないかということがこの問題の根幹であります。

 しかしながら、農林水産省は、二例しか、実際に幾らで輸入したお米が出回っていたのかということの調査結果を得られなかったと言っているんですよ。

 ところが、どうでしょう。日本農業新聞。「商社「安いから」 相場は国産の二割安」、まさに、言われている調整金の額を引くと二割安ぐらいになるんですよ。二割安で出回っている。「国の見解と食い違い」。回答を得た全社が、輸入米を扱う理由に、国産米より安いからだと挙げている。取引する米の相場は、国産品より二割安いというのが最も多かった。まるっきり、百八十度違う見解を出しています。国の見解と食い違うという見出しがあります。

 次の毎日新聞。けさの毎日新聞でも同様なのが出ました。先ほどは輸入業者に問い合わせたものです。毎日新聞は、今度、卸売業者に問い合わせた。国内で輸入米を販売した卸売業者十社が、商社から受け取った調整金の使途について、輸入米の値引きに使ったと毎日新聞社の取材に答えた。十社ですよ。これも、「農水省に反論」。

 大臣、なぜこんな記事が出ると思いますか。どう思いますか。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

山本(有)国務大臣 まず、日本農業新聞社の調査は農林省の関与するところではありませんが、私どもの調査によりましては、金銭の授受があったと回答した者もいるということは明らかになりました。そこで、その授受をした場合の背景や目的、これについて尋ねることができました。その意味におきましては、いわゆる国内価格を下げるためにこの調整金を支払ったという事実のある者はいませんでした。

 というようなことでございますので、報道による、毎日新聞あるいは日農新聞によるこうしたことに関しまして、私どもと、どういう調査方法をとってどなたに聞いたかわからない以上は、これは正確に比較することはできません。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

福島委員 記事の中には、よっぽど農林水産省よりも誰に対してどういう調査をしたと書いていますよ。農水省がヒアリングをした全社に調査を行って、回答を行ったのが何社かで、例えばきょうのこの日本農業新聞の記事でありますけれども、A社、B社、C社、D社、E社、F社、G社、H社、I社、J社、K社とそれぞれ全部回答を事細かに出していますよ。

 誰に対して調査をやったかわからないと言うけれども、農林水産省の調査よりもよっぽどちゃんと回答を公表しているじゃないですか。

 しかも、秘密にするとかなんとかと言わないでも皆さんここで回答してくれているというのは、先ほどの毎日新聞の記事にもあったとおり、農水省からのヒアリングに応じた業者の皆さん方が答えたのと違う答えを皆さん方がやっているからなんです。それは、私のところにも声が来ているんです。

 大臣、肝心かなめの輸入米が、政府が公表している値段と違う形で、一体実際に幾らで公表されているかというのは、何者に対して調べたんですか。

山本(有)国務大臣 過去五年間におけるSBS米入札が落札され、成約されました者、千七百件以上につきまして、それを調査させていただきました。輸入業者、また買い受け業者、それぞれにお聞きをさせていただいたということでございます。

福島委員 全部に値段を聞いたんですね。どうぞ。

山本(有)国務大臣 公表しないことを前提に値段を聞き、そして開示をしていただいたところもありますが、値段を聞き、それで報告をいただけなかったところもあると聞いております。

福島委員 何者から値段を聞くことができたんですか。もう一度お答えください。

山本(有)国務大臣 ヒアリングの対象者は、平成二十三年から二十七年の落札業者で、買い受け業者百十三者、輸入業者二十六者でございます。

福島委員 そのうちの何者が価格について答えてくれたんでしょうか。

山本(有)国務大臣 これについて、私どもの質問項目は、調整金の有無についての……(福島委員「違う、違う、価格についてです。何で質問をすりかえるんですか」と呼ぶ)ちょっと待ってください。金銭のやりとりの有無を聞きまして、それがあったかなかったかの回答を得ています。

 そして、買い受け業者が受け取った金銭の活用方法を聞いております。そして、金銭のやりとりが生じた主な背景、目的を聞いております。そして、最後に販売価格の決定の際の主な考慮事項を聞いておりまして、何円というものを中心にこの調査が行われたわけではありません。

塩谷委員長 数字は出ますか、事実関係、役所の方。今の話、今の質問に対して。

柄澤政府参考人 委員長の御指名ですので、お答えいたします。

 今般の調査におきまして、買い受け業者の中で、金銭のやりとりが過去または現在あると回答した買い受け業者は四十二者ございました。この四十二者に対しまして、受け取った金銭の活用方法を質問するのにあわせて販売価格についても質問しましたところ、販売価格について何らかの回答が得られた業者もあったものの、まさに個別企業の商取引に関することであることから、抽象的なものであり、詳細かつ具体的な公表を前提とした回答が得られなかったところでございます。

福島委員 要するに、農林水産省の調査では、輸入米が実際に幾らで出回っているということを調査しなかったということでよろしいですね、大臣。

山本(有)国務大臣 調査をしなかったという表現は当たらないと思います。調査はして、調整金が国内米価格に影響するかどうかを中心に調査をさせていただいた、こういうことでございます。

福島委員 申しわけない、これで何度もやりとりするのは不毛なので、私は端的に聞いているんですよ。

 卸売事業者が実需者に向けて幾らで渡したかというのを何件調べたんですか。何件、数字で答えてください。数字で端的にお答えください。

山本(有)国務大臣 四十二者に対して、受け取った金銭の活用方法を質問するのにあわせて販売価格についても質問したところ、販売価格について何らかの回答が得られた業者もあったけれども、まさに個別企業の商取引でございます。したがいまして、これは回答を申し上げるわけにはいきません。

 そこで、米穀業界の取扱量上位五者、この上位五者に限ってSBS米の取扱実績がある四者を対象にしまして、公表することを前提としてより詳しい聞き取り調査を実施したところ、販売価格まで聞き取ることができましたのが二者であったと報告書に書いてあるわけでございます。

福島委員 いや違う、今のはうそをついていまして、うそというかごまかしていまして、なぜ上位五位に縛るんですか。上位五位じゃないところにも答えたところがあるんですか、ないんですか、どちらですか。

山本(有)国務大臣 卸からさらにその先は極めて不特定多数でございまして、業界としまして代表的な米業界の上位五者に絞って、かつ公表を前提としてお聞きをしたわけでございまして、これは、卸からさらに第三者に、不特定多数、コンビニであるとかお弁当屋さんであるとか、そのほか多種多様な業界に販売されておりますので、これを悉皆調査していくことはできませんので、業界上位五者、これに限って調査をいたしました。(発言する者あり)

塩谷委員長 説明を聞いてください。今、二者とかと言ったのはその答えですか。

福島委員 いや、二者なんて聞いていないですよ。それは上位五者のうちの二者と言っているだけで、その前の大臣の答弁では数者あったと言っているんだから、それは何者だと聞いているんですよ。数で答えてくださいよ。

 いやいや、政府参考人は呼んでいませんよ。

 では、端的に数字で答えてください。

柄澤政府参考人 改めて申し上げます。

 金銭のやりとりが過去または現在あると回答した全ての買い受け業者四十二者に対しまして、受け取った金銭の活用方法を質問するのにあわせて、販売価格についても質問したわけでございます。

 ところが、この方々からの回答につきましては、まさに個別企業の商取引に関することでありまして、抽象的で、詳細かつ具体的な公表を前提とした回答が得られなかったということでございます。

福島委員 何者かというのは、個別企業のものにかかわる問題なんですか。どの会社という社名なんて求めていないですよ。

 皆さん、本当にずっとこうなんですよ。何者が回答したかすら答えられない。余りにもひどくないですか。余りにもひどいですよ。何者なんですか。答えてください。

山本(有)国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、ヒアリング対象の範囲というのは、買い受け業者百十三、輸入業者が二十六、それで四十二者に販売価格決定の際の考慮事項について質問させていただいたわけでございますが、このとおり、この調査と申しますのは、これは非公表を前提にしているわけでございますし、言うように数が限られておるわけでございますから、何者かと申し上げることは、それは推測やら臆測を生むわけでございます。

 このSBS米の入札は、永続的に、百六十カ国以上のWTOの考え方の中でとっている制度でございまして、これは我々が持続させていただかなきゃなりません。その意味において、持続するためには信頼が必要でございます。信頼を失うような調査やあるいは公表は、これはできないことを御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

塩谷委員長 この件については、理事会でしっかり……(発言する者あり)今それは農林水産省の見解が出ましたので、それをちゃんと理事会で協議します。出せないという見解を出しましたので、それに対して理事会で協議します。(発言する者あり)それでも、今出せないという大臣の判断ですから、それについて理事会で協議します。

柄澤政府参考人 改めて申し上げますが、四十二者につきまして、先ほど申し上げたとおり、お聞きしたわけでございますが、そのうち全ての回答が抽象的で、詳細かつ具体的なものでなかったわけでございます。

 そこで、さっき大臣が申し上げましたように、トップの卸売業者五者のうち、SBSの取扱実績がある四者を対象に、改めて、公表を前提として具体的な数字を教えてくださいというふうにお聞きしたわけでございます。その結果、販売価格まで具体的にお聞きできたのが二者でございましたので、その事例を調査報告に記載したところでございます。

福島委員 なぜこのことを聞いたかというと、抽象的とかなんとか言っているけれども、聞いていないんじゃないですか。

 毎日新聞のきょうの記事。同省は任意の調査の限界としている、今までさんざん大臣は任意の調査の限界としているが、関西地方の卸売業者は、隠す必要はないので本当の安い値段を答えるつもりでいたのに全く聞いてこなかったと証言したと。

 うそじゃないですか。聞いていないんじゃないですか。聞いているんですか、聞いていないんですか、どうですか。さっきの五者以外については聞いているんですか。

柄澤政府参考人 記事でおっしゃっている業者がどういうことをおっしゃっているのかは私どもは関知いたしておりませんが、私どもとしては、先ほど申しましたように、四十二者にお聞きしたところ、具体的公表を前提とした回答は得られなかったという事実でございます。

福島委員 聞いたんですか、聞いていないんですか。聞かれなかったと言う人がいるんですけれども、本当に全部の者に明確に聞いたんですか、聞いていないんですか、どちらでしょうか。

柄澤政府参考人 受け取った金銭の活用方法という項目で御質問するのにあわせまして、販売価格についてもお聞きしたわけでございますが、販売価格について何らかの回答をおっしゃったところもありましたが、具体的な、公表を前提とした回答はなかったということでございます。

福島委員 実はそうじゃないんですよ。だからこういう記事が出ているんです。

 出元がわからない資料は委員会に提出しちゃいけないというので、プライバシーのために、まさにこれはどこが提供したか言わないでくれといってもらっている資料ですけれども、ちゃんと彼は農水省に答えているんですよ。

 平成二十五年度のSBS入札分で、政府が発表している輸入の価格は二百円なんです。でも、実際は、この業者は三十九円の調整金を輸入業者からもらって、この卸売業者は百六十一円で実際仕入れているんです。そして、神奈川県の食堂ではこれを百九十七円で卸した。和食レストランでは二百円で卸した。韓国料理店では百五十四円で卸した。京都の洋食屋さんでは百七十五円で卸している。

 このときの業務用価格は政府は二百六十円から二百五十八円となっていまして、それを、実際にこの業者は二百円とか百八十七円とか百五十四円で渡したと農水省に答えているにもかかわらず、二者しかないと言うから、おかしいですねと。そういうことから始まって、日本農業新聞や、きょうの毎日新聞の記事になっているんですよ。余りにもおかしくないですか。

 総理、本当に内閣としての信頼を失いますよ。政府の調査が出た後にそれを否定するような報道があちこちで相次ぎ、しかも、それは調査を受けた側からの、取材にむしろ積極的に応じて出ているんですよ。

 こんな調査を出しておいて、TPPの審議をしろという方がおかしいんですよ。これは調査を農林水産大臣にやり直させる気はありませんか。

安倍内閣総理大臣 日本農業新聞社による調査については、これはその内容についてコメントする立場にはないわけであります。それはもう大臣から既に答弁させていただいているとおりでございます。これは政府が調査をしているわけではございませんから、当然コメントする立場にはない、こういうことでございます。

 そして、十月七日に公表された調査結果では、事業者ヒアリングの結果、SBS米の買い受け業者は、輸入業者から金銭を受け取った場合においても、国産米の価格水準を見据えながらSBS米の販売を行っている実態が確認できたわけでございまして、これが確認できたところが非常にポイントであろう、こう思うわけであります。

 また、関連データの分析では、SBS入札の時期の前後において、国産米の価格はほとんど変動していないことが確認されたわけであります。つまり、このSBSによって効果を与えているのであれば、入札後、価格が変動するわけでありますが、この価格の変動がなかったわけであります。ここが、今私が申し上げている点が重要な点でございます。

 このように、今回の調査では、廃業者や連絡がつかない者を除く全ての事業者からヒアリングを行うとともに、過去のSBS米の取引実績といった客観的なデータをもとに分析を行ったところでありまして、したがって、調査をやり直す必要がないということであります。

 現在、今行っていることは、御承知のように、WTOの中で行っていることでありまして、まさにこれから審議をしなければいけないTPPについては、輸入するものについて、七万八千トンについては、それと同量のものをしっかりとこれは買い上げるわけで、断絶をするわけでありますから、価格や需給には影響を与えないものと考えているところでございます。

福島委員 総理、農業経済学者から不可だと判定された論文をもとに答弁をしないでほしいと思います。

 実際の輸入米の価格が幾らで流通しているかわからない段階で、国産米の価格に変動を与えたか与えていないか、何でわかるんですか。調べていないと言っているじゃないですか。五者のうちの二者からしかわかっていなくて、実際に幾らで輸入米の流通がされているのかがわからなくて、何で国産米の変動、影響がなかったと言えるんですか。ちょっと真面目に考えればわかるけれども、役所から答弁を渡されたから読むというのは、私は、おやめになった方がいい。

 国民の皆さんはもうわかっているんですよ、この問題の本質というのは。実際は安い米で出回っているんでしょうと。(パネルを示す)店頭でこういうのがあるわけですよ。先ほどの例だと、こうやって店頭で出回っているんですよ。「最安値コシヒカリに挑戦中! 二十五年産豪州コシヒカリ 十キログラム千九百八十円」。ほかだったら、これは三千円ぐらいしますよ。三千数百円するのが、千九百八十円で安く実際に売られているんですよ。

 直観として、外国の輸入米が国産米と同じ値段なんというのは到底信じられないんですよ。そんな答弁をしているからこそ、ますます国民の皆様方はTPPに関して不安に思うんですよ。

 もう一度確認しますけれども、大臣は何度も何度も、いっぱい実需者はいるから調査し切れないと言います。本当に輸入米の価格は調査しようがないんですか。どうですか。もう一度、大臣、お答えください。

山本(有)国務大臣 写真にあります二十五年産コシヒカリの値段は京都で撮影されたものと存じておりますが、この二十五年産といいますときには、二十四年産米が非常に高くて、だんだん下落局面にあっている時期でございます。したがいまして、安値である場合がしばしばあって、そこで、国内産の価格も安値販売している場面でございます。

 その意味におきましては、この一例で直ちに調整金がこの価格に影響しているということを立証することはできません。(発言する者あり)

塩谷委員長 福島伸享君、質問をもう一度してください。

福島委員 そんなこと聞いておりません。農水省から紙を渡されたから、その紙を一生懸命読むのはやめてくださいよ。

 私がお聞きしているのは、皆さん方が何回も何回も、農林水産大臣の答弁は、実際に輸入米が幾らで出回っているということは、いっぱい業者もいるから調査もできないということをおっしゃるわけですよ。食糧法の違法な事案ではない、この調査は任意の調査だからできないとか、我々行政の把握する外にあるんだということをおっしゃいますけれども、本当にできないんですねということのイエスかノーかをお聞きしているんです。どちらですか。

山本(有)国務大臣 このSBS入札の三者契約の中で成約を得た既存の業者さんは、今後もSBS入札に参加をいただいて、国家貿易を維持しなきゃなりません。その意味におきまして、この調査を公表したり、相手方の不快を得るような調査は、我々にとりましては避けていかなければならないというルールがあるだろうというように思っております。

 したがいまして、ルール違反の調査はできません。

福島委員 今、ルール違反の調査をしないという確認をしました。

 今、小泉進次郎さんを筆頭に、さまざまな農政改革なるものをやっている中で、例えば農林水産省は、農薬の価格、最大千三百六十八円、平均千二百五十九円、最小千五十九円とか、これは全然SBSとか国家貿易ではない、政府の絡まない民民のものについて調査をして価格を出しているんですよ。

 国会での質問には答えられないけれども、小泉進次郎さんが言えば答えられる、そういうことですか、大臣。

山本(有)国務大臣 農業資材の流通改革を進めるに当たりまして、日韓の肥料等の価格調査を行っております。これは、市場価格の調査でございまして、SBS米でいえば、小売価格に相当するものであって、店頭チラシ等で比較的容易に確認できるものでございます。

 これに対し、SBS米の卸業者から小売業者、実需者への販売価格は、相対での取引価格でありまして、当事者から聞き取るのでなければ、正確に把握することは困難でございます。

 輸入米に関する調査結果につきましても、小売価格につきましては、店頭やインターネットを確認し、その価格を掲載しておるところでございまして、その意味におきましては、小泉さんの調査とこのSBS米の三者契約の中の相手方に対する調査とは、種類が違うものでございます。

福島委員 全く理解できませんね。これは、テレビを見ている人が何をだめだと言っているのかわからないと思いますよ、不適切な調査はできないとかって。

 この農薬とか資材の話だって、相対の価格を調べているんですよ、店頭だけじゃなくて。だから、最大とか、平均とか、最小とか、あるいはさまざまな条件をつけて、サービスとかをつけてやる契約も含めた価格を調べているんです。まさに、相対とかで、店頭価格でわからないからこそ、見える化しようと進次郎さんは頑張っているじゃないですか。

 先日、十月六日の未来投資会議とか規制改革推進会議の農業ワーキング・グループの提言として、「生産資材は、農業の競争力を左右する重要な要素であり、国は、国内外の生産資材の生産・流通・価格等の状況を定期的に把握し、公表するものとする。」

 流通段階の価格なんか把握できないんでしょう。今の答弁で言ったらできないですね。当然、この未来投資会議や規制改革推進会議の提言については、できないとおっしゃいますね、農水省さん。

山本(有)国務大臣 まず、自民党の骨太PTの価格調査でございますが、これは、肥料、農薬などの生産資材について、ことし四月中旬に、農協系統、商系の販売業者、ホームセンター等に任意での協力をお願いして、資材店が農業者向けに配付している予約注文書の掲載価格等の調査を実施したところでございます。

 また、これに反しまして、SBS米の小売価格でございますが、これは、小売店の店頭で販売されていることは極めて少ないわけでございますけれども、店頭価格につきましても把握できる限り調べておりまして、それを公表し、また、インターネット販売での価格についてもこれを掲載した十月七日の調査報告書でございました。

福島委員 聞いていないです、それは。質問にちゃんと答えてください。もう二回目ですよ。

塩谷委員長 できる、できないの理由も含めて説明していますから、それを聞いてください。質問してください。

福島委員 委員長、ちゃんと仕切ってください。

 もう何度も同じことを山本大臣は繰り返しています。質問を私は極めてクリアに、何件かとか、あるいはイエスかノーで答える質問しかしていないんですよ。何でそのことに答えられないんですか。

 規制改革会議農業ワーキング・グループや未来投資会議で指摘されているような、「国は、国内外の生産資材の生産・流通・価格等の状況を定期的に把握し、公表する」ことは、今までの大臣の答弁によれば、できないということでよろしいですね。

塩谷委員長 山本農林水産大臣、簡潔にお願いします。

山本(有)国務大臣 SBS契約を締結した者に対しては、私は、委員が御指摘のような調査は、これ以上の調査についてはする必要がないというように思っております。

柄澤政府参考人 SBSにつきまして、小売段階での価格は、例外的なケースでございますが、調べまして、調査結果に掲載したところでございます。(発言する者あり)

塩谷委員長 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 スタートしてください。

山本(有)国務大臣 生産資材の調査につきましても、任意の調査で、相手方の了解が得られた範囲で、これは調査は可能という認識でございます。

福島委員 それでは、SBSもできますね。

山本(有)国務大臣 今回、十月七日に調査結果を発表したとおり、これは任意の調査で得られた結果を発表させていただきました。

福島委員 資材と米というのは違うんですよ。米は食糧法というのがあって、御存じですね、大臣。食糧法の五十条というのがあります。御存じですか。

柄澤政府参考人 今御指摘ございましたのは、恐らく食糧法五十二条のことだと思いますが、五十二条におきまして、農林水産大臣が法の施行に必要な限度において報告徴収することができるというふうになっております。

福島委員 五十二条ではありません。五十条と言っているんです。「政府は、主要食糧の適正かつ円滑な流通の確保に資するため、次条の調査の結果その他主要食糧の需給及び価格に関し必要な情報の提供に努めなければならない。」米は重要なものだから、需給及び価格に関し情報提供に努めなければならない。

 そして、五十一条というのがあって、「主要食糧の需給及び価格の安定を図るため、農林水産省令で定めるところにより、主要食糧の生産、流通及び消費の状況に関する調査を行うことができる。」として、毎月、相対取引価格というのを公表しているんですよ。出荷業者と卸売業者との間で数量、価格が決定された主食用の相対取引価格というのを公表しているんですよ。

 この内訳でSBSのだけやればいいだけであって、何でこれができないんですか。ほかの米でできて、なぜできないんですか。大臣、お答えください。大臣、なぜできないんですか、お答えください。

柄澤政府参考人 事実関係ですので、御説明申し上げます。

 今委員御指摘のお話は、国産米につきまして、私どもが確かに毎月調査、公表しております相対取引価格につきましては、これはあくまでも出荷業者と卸売業者との間の価格でございます。これはなぜかと申しますと、出荷業者につきましても卸売業者につきましても、私どもの届け出の業種でございます。国内産もそういうふうになっているということです。

 したがいまして、国内産につきましても、卸売業者から先のエンドユーザー、すなわち、小売業者に加えまして、コンビニ、お弁当、レストラン、お煎餅の加工業者等々多岐にわたっているところに対する取引価格は、国内産米につきましても、調査、公表の対象になっていないというところでございます。

福島委員 そんなこと聞いていないですよ。法律の五十条、五十一条に基づいてできるんです、同じことを。やるかやらないかであって、やれないという法的根拠は何もありません。むしろ、法的根拠はあるんですよ。あるのにやっていないというのが今回の調査なんですよ。

 そもそも、今回の調査は、調査票すら出さないんですよ。どういう調査をやったかというのは、農水省の中でチームを組んでこの調査をしているはずですよ。そのときに、私も役人だったからわかりますけれども、一人一人に口頭で言ったら、ばらばらになるに決まっているじゃないですか。どういう調査をしましょうという調査の仕様書があるはずです。これを公表していただけませんでしょうか、大臣。

山本(有)国務大臣 これにつきましては、既に十月七日の調査結果で公表しているとおり、調査の内容につきまして、方法につきまして、これは丁寧に開示しているという認識でおります。

福島委員 役所の内部で職員に対して、こういうことを聞きましょう、こういう調査を行いましょうと指示をした文書を公表してください。どうですか。(発言する者あり)いや、理事会のあれは文書じゃありません。

山本(有)国務大臣 これは、調整金に係る授受の有無を中心にまず調査をいたしました。したがいまして、この千七百を超えるそれぞれの入札契約の相手方について調査をしたわけでございまして、その意味におきましては、調査は対象も調整金を中心にしているわけでございます。

 そして、買い受け業者、輸入業者の金銭のやりとりの有無をまず聞いた後、それぞれの項目についてまた調査を続けてやっていったわけでございまして、これは、一刀両断にアンケートのような形ではできませんでした。

 それは、やはり契約の相手方であるということと、それから、任意にお調べさせていただく以上の権限がないというようなことからでございまして、したがいまして、委員おっしゃるように、項目票で機械的に調査ができるものではないという複雑な事情をお酌み取りいただきたいというように思います。

福島委員 今大臣がおっしゃったようなことをちゃんと指示したものがあるんですよ。調査票を求めていません。こういう調査をしましょう、こういう項目を聞きましょう。理事会に確かに出てきていますよ。これはそのものではありません。行政の中で、上司から部下に対して、こういう調査をしましょうとやった仕様書があるんですよ。ないわけがない。それを公表してください。どうですか。

 端的に答えてください。委員長、注意してください。まともにこちらの質問に対して大臣は答えないんですよ。行政の内部で職員に対して、こういう調査をしましょうと指示した仕様書を公表してください。

柄澤政府参考人 今回のヒアリングにつきましては、非常に単純な少数の項目につきまして、民間の取引実態の詳細がわからない中で、その回答を踏まえながら、角度を変えながら質問の仕方をそれぞれが工夫して進めております。

 したがいまして、統一的な質問票や仕様書はございません。

福島委員 悪質だと思いますよ。大臣も答弁したのと同じことを事務方が来てまた時間を稼ぐ、それはあり得ません。

 農林水産省行政文書管理規則というのがあります。そこは、職員は、農林水産省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに農林水産省の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ、または検証することができるよう文書を作成しなければならないとなっているんですよ。

 ここにいっぱい役所で働いている人がいますけれども、文書でお願いしない仕事は仕事になりません、役所は。あるんですよ。何でないんですか。なくて調査なんてできるわけないじゃないですか。多くの職員が調査をするときに、統一して調査を行わなきゃならないんだから、こういう調査を行いましょうという文書はあるんです。ないんだったら、調査をやっていないと一緒ですよ。単に職員が勝手に電話をかけて聞いているだけだったんですか。それでこんな偉そうな結果を報告しているわけですか。そうではないです。

 もしつくっていないんだとすれば、農林水産省の行政文書管理規則違反ですよ。どうですか、大臣。

山本(有)国務大臣 恐縮でありますけれども、調査項目は、金銭のやりとりがあったかどうか等の五項目でございます。

 また、公文書管理法四条、この点についての御質問でございますが、法令の制定、改廃や、閣議、あるいは複数の行政機関による申し合わせ等、個人等の権利義務の得喪あるいは職員の人事その他の事項について文書を作成しなければならないと定められております。

 また、農林水産省の行政文書管理規則九条は、この規定を踏まえた形で文書作成義務を定めております。

 それでは、この指示書だとかいうものはあるのか、あるいは個人のメモはあるのかという問いでございますけれども、今回、職員がヒアリングにおいて書き取ったメモ以外にはございません。その意味において、このメモが、文書作成が求められている法令の制定や改廃等の文書には該当しておりません。

 したがいまして、公文書管理法第五条に基づきまして行政文書としての管理が求められている文書は、行政機関の職員が組織的に用いるものとして行政機関が保有しているものでございまして、行政情報公開法と定義が同じでございます。

 したがいまして、ヒアリングにおいて書き取ったメモについては個人として利用している段階にとどまる話でございますので、行政文書にはこれは該当しておりませんので、これは公表は避けていかなければならない文書だというように思っております。

福島委員 めちゃくちゃな答弁だと思います。だって、メモの話なんてまだ聞いていないじゃないですか。さっきから私はイエス、ノーで答えられる質問しかしていないのに、そうじゃない答弁をして時間を稼ぐのは極めて悪質だと思います。

 調査報告書だと、例えば、プールした上で他の米も含めてさまざまな経費に活用、二十一件とか、取りまとめを行っているんですよ。それは、個別の何人かの職員で行った調査をまとめて集計しているから二十一とあるわけでしょう。そのまとめるためにどういうふうなことを聞きましたと書いたものがなければ、二十一件と集計できないじゃないですか。どうやって集計しているんですか、これ。どうやって集計したんですか。それぞれ、どこどこの会社に電話してこういうふうな言葉をいただいたということをもとに、それを集めて足して二十一件としているんじゃないですか。どうですか。

柄澤政府参考人 ヒアリングをした職員の情報をもとに全体を整理して、調査報告としてまとめたところでございます。

福島委員 それは紙があるでしょう。二十一件もなんだから、紙でやりとりをしないと二十一件と数えられませんよね。紙はありますよね。どうぞ。

柄澤政府参考人 あくまでも職員のメモにつきまして、先ほど大臣が法文上の根拠を申し上げましたとおり、行政文書ということではございませんので、公表はできないということでございます。

福島委員 行政文書じゃないわけないじゃないですか。

 行政文書の定義は、行政機関の職員が職務上作成ですよ。遊びでつくったわけじゃないでしょう、業務としてやったわけでしょう。だから、行政職員が職務上作成しているんです。

 そして、行政機関の職員が組織的に用いるもの。これはその人が誰かに報告して取りまとめられているんだから、まさに組織的に用いているじゃないですか。

 行政機関が保有しているもの。多分それはその人の机の中か、パソコンの中に入っている。それは行政機関が保有しているんですよ。行政文書そのものなんですよ。

 本当はこんな調査の手続だけの話をしたくありません。もっとちゃんとした、中身のある話をしたいです。でも、この議論を通じて明らかになったのは、余りにもずさんな調査で、一定の結論を導くためにうそをついているとしか思えないんですよ。

 だから、いろいろな新聞の中に、農水省の調査を受けた人が、私が受けたヒアリングの調査の結果と全然違う結果を農林水産省は出しているじゃないか、リークがあってこの記事になっているんじゃないですか。

 そして、それは軽微な話じゃないですよ。先ほど申し上げましたように、もし二割、三割、輸入米が安かったとしたら、米の生産額が三千億円減って、そして対策費として一兆円以上必要な、何か後ろから秘書官がやじるんですよ。前代未聞ですよ。秘書官がやじるのはやめてくださいよ。

 極めて大きな問題なんですよ。これが出ないと、TPPの審議の根幹にかかわることです。調査をやり直してください。

 そして、山本大臣、こうしたことを議論したくないから、強行採決をしたい気持ちになっちゃって、つい佐藤議運委員長のときにああいう発言をしちゃったんじゃないですか。

 私は、本当におやめになったらいいと思いますよ。福井照さんも土佐人。山本大臣も土佐人。坂本竜馬を尊敬する大臣が、本当に政治家として思うんだったら、そんなくだらない農水省の答弁を読み上げさせられるような役割をするんじゃなくて、もう一度しっかり、大臣を辞任してやり直されればいいと思いますよ。そして、堂々と、正しい調査結果のもと、TPPの議論をやろうじゃありませんか。

 福井さんはおやめになった。同じことをされているわけですから、山本大臣、ぜひ御自分の政治家の身の処し方をお考えになりますことを訴えまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 民進党、秋田県出身の村岡敏英でございます。

 初めに、三笠宮殿下薨去ということで、哀悼の誠をささげたい、このように思っております。

 我が秋田県にも四回来ていただき、秋田県で今名物になっている切りたんぽの原点であるだまこ、これは三笠宮殿下が食べられて、おいしいということで、伝統的なものとして今名物になっておりますので、本当に秋田県民としても残念だ、こう思っております。

 さて、SBS米、同僚議員もお聞きしておりました。私も、地元に帰り、農業者の方々から、本当に不安の声、そして、これが価格の影響があるというならば、怒りの声も聞いております。

 その中で、前に総理は見たことがありますけれども、山本農林大臣は多分見たことがないと思いますので、パネル一を出してください。

 これは、昭和二十一年、戦後すぐのとき、食料不足、上野駅では毎日二人から三人が餓死者、そしてさらには、大阪では一カ月に六十人も栄養失調で亡くなるという、こういう時代。戦前のころには、秋田を初め、米をつくる稲作農家の方々は、小屋や倉庫まで捜されて米を供出しました。そしてその後、この食料不足の中、増産してくれということの中で、本当に米づくりに、一生懸命開拓して食料の確保のために努力をしてまいりました。

 しかしながら、今の現実は、世界に向かっていかなければいけないのは、もちろんわかっています。しかしながら、急に行くことはできない。その中で、国家貿易という中で、MA米が七十七万トンに今現在なっている。その十万トンのSBS米が価格の操作をされていたとすれば、それは怒ります。

 その中で、先ほど質問した委員の中で、日本の農業の二十二年間の推移ということで、一九九四年、農業総産出額は十一・三兆円ということを言われ、そして今八・四兆円。これまでの農業ではだめだということを総理も言われました。

 しかし、この一九九四年というのは、実はその次の年からMA米が入ってきた年なんです。最初は少なかったです。そして、さらにはWTOで六兆円かけたときなんです。

 考えてみると、日本で米をつくって、これが需要よりも非常にふえてくれば生産調整がある。そう考えると、米が外国から入ってくるというだけで、これは価格の下げにつながるんです。景気と一緒なんです。商売の中で、農産物を含めても、海外から物が入ってくるというのは価格を下げていく方向に行くんです。その上、価格に対してこの調整金というのがあるとすれば、これはもっと下がっていく。大変な影響を与えるということの中でこの調査が行われたかどうかが非常に疑問です。

 特に、大臣も答えておりますけれども、強制力もない、そして任意だ、非公表だ、こういう中で実際に調査をやった場合、本当のものが出るとは思えません。そして、結論を見ると、価格に影響がなかった。これは飛躍し過ぎじゃないですか。

 そんな調査が、もう強制性がない、非公表だ、そして任意だ、こういう調査をやって、結論が、何で結局価格に影響がないと言えるのか。これは農家の方々は誰も信用しません。

 このことに関してどう思いますか。

山本(有)国務大臣 まず、SBS米の量が限られているということが一つでございます。八百万トンに対して十万トン。そして、十万トンが上限ですので、十万トン全部が入ってくるわけではない。そして、その量につきまして、主食用米の市場から、また国が備蓄米として買い上げている。

 そうすると、品質と需給のバランスで価格が決定するというように方程式を置くと、需給につきましては供給を裁断するわけでございまして、その意味におきましては価格に影響がない。マクロ的にそう解釈しておるわけでございまして、決して適当にしているわけではありませんし、また、精緻な分析のもとに、このSBS米の入札があった前後でその加重平均をとり、前後の価格についての推移も公表しつつ、それで我々は判断しているわけでございまして、SBS米が国内産価格に影響があるということに対しては、調査の結果も踏まえて、業者のヒアリングについての報告も踏まえて、この結論が得られたというように考えております。

村岡委員 需給のバランスとそして品質、これだけで値段が決まっているという結論をつけているからそのような状況の調査しかできないわけです。

 もちろん、私が、通常国会の中で森山大臣に聞きました。品質が同じでは、国産米を選んで、これは安い方を選びます、価格が同じだから大丈夫ですと。しかし、実態は、先ほど個別にスーパーで売られている値段のものは同僚議員が言いましたけれども、ほとんどがブレンド米なんです。ブレンド米ということは、国産米の中にまぜますから、その中で、例えば味がよくなったりしていいんですよ、それはそれで。しかしながら、全部国産米に影響を与えているわけですよ。

 十万トン仮に売れたとすれば、そこでほとんどがブレンド米だとすれば、この前も質問しましたが、五〇%も入れるわけじゃないんです、一〇%程度なんですよ、大体。そうなると、必ず多くの米に影響があるんです。そして、業務用米は二百五十万程度なんです。そうすると、仮に二〇%入れたって、百万トン近くは影響があるんですよ。その上、調整金があれば、これは価格が下がっているなと疑いを持って調べるのが普通の調査です。その調査をしていない。

 その中で、それはもう調査したからと答えますから、調査したことに対して聞きます。この調整金はいつから始まったんですか。その調査はしていますよね。調整金はいつから始まったんですか。

山本(有)国務大臣 十月七日の調査結果でお答え申し上げますと、各業者には、過去やっている、あるいは、過去はやっていたというだけで、時期について、明示的に何年何月という報告を聴取はいたしておりません。これにつきまして、金銭の授受があったという点について重きをなして、その意味での過去という報告のままに調査報告書を作成しております。

村岡委員 いつから始まったかも聞いていないということは、これだけで一つ調査不足ですよ。一九九五年からSBSが入ってきて、その経緯をずっと調べながら価格の経緯を調べなきゃいけないんです。いつから始まったか最初から聞く気がない、こう思わざるを得ないんですよ。

 そして、SBSの調整金があったと答えた業者、この業者は非常に少ないです。この業者の人たちは、SBS米のどのぐらいのシェアがあったかは調べましたよね。千七百幾つの取引を調べたんですから、どのぐらいのシェアがありましたか。

山本(有)国務大臣 全てのSBS契約で調整金があるわけではありません。

 これまでにないと答えられたのが百十三者のうち六十一者、過去あったが現在はないと答えたのが三十一者、現在もあるというのが十一者、無回答も十者でございまして、これを集計することはできませんでした。

村岡委員 違う、違う、答えが違う。シェアですから。千七百のうちの契約がどのぐらい、その答えた中のシェアですから。

山本(有)国務大臣 調整金があった場合に、調整金の授受をした業者が扱い、取引したその量については格別の調整金との連動あるいは関連が明確ではありませんので、この量についての集計はしておりません。

村岡委員 それはおかしいですよ。千七百件調べて、調整金があったと言った業者がどのぐらいのシェアでこの調整金をやっていたか調べなかったら問題じゃないですか。

 それは、何で調べないんですか、連動できるじゃないですか、すぐその契約を見れば。

山本(有)国務大臣 これは、あくまで調整金が値下げに使われる原資になったのではないかという疑いのもとに調査を起こした調査結果でございます。

 したがいまして、この調査結果を求めるに当たって、契約当事者たる業者が調整金の授受を行ったと言っても、その調整金との関係が明らかでない以上、量についての集計をしているわけではありません。

村岡委員 それは、調査の意味がないです。

 それで、パネルの三を見てください。

 通常のSBSですと、輸入業者と有資格卸業者と国との三者契約で実質的な直接取引をいたします。そのときにも調整金が発生したことも、ないときもあると思います。

 下の、名義貸しが行われた場合というのを調べているはずです。その中で考えると、輸入業者と有資格業者がこの中で三者契約で、千七百件のうちにこの契約書があります。しかしながら、実質的には無資格卸業者にこの米が行って、ここに調整金が行った場合には全くわからないのが実態ですよね。大臣、どうぞ。

山本(有)国務大臣 あくまで、SBS売買につきましては、資格制限を設けております。無資格者についての契約はしておりません。したがいまして、有資格者との売買契約でもって、ここで入札契約が終了しておりまして、そこから先に多様な第三者に売り渡されるわけでございますので、この間につきましての調査は、これは事実上不可能でございます。

村岡委員 不可能というよりも、名義貸しというのは実態はあったという調査は、これは調べていますでしょうか。

山本(有)国務大臣 あくまで有資格者を対象に調査をし、これは契約上、信義誠実の原則の中からお聞きしているわけでございまして、無資格者について調査をしているということは、これはありません。

 したがって、SBSの契約者、そして実際に売り渡した者についてだけ、これは買い受け業者についてだけ、そして輸入業者についてだけ調査を行っているわけでございまして、無資格者についての調査はしておりません。

村岡委員 無資格者に調査したかどうかを聞いているわけじゃないんです。名義貸しという実態があったかどうかというのを、大臣、それは知らない、調査していないということでいいんですか。

山本(有)国務大臣 名義貸しなるものがあるとの話は、存在は、有資格者を限定する以上、それは当然あり得る話であろうというようには思います。

村岡委員 これはあり得る話ということの前提に立ってですけれども、そうなると、この有資格卸業者に調査をしますね。調整金のことを知らない、調整金を受け取ったことはない、当然です、名義貸しですから。だから、非常にこれは低いんです、調整金があったかどうかというのがわからないのは。

 実態は、この名義貸しが相当行われていて、普通の有資格者に調べて、千七百件を調べると、ほとんどこの調整金がなかったという場合が多いんです。だからこそ先ほどのシェアを聞いたんです。

 どのぐらいの者がこのことをやって、そして、そのシェアが非常に大きいとすれば、ごく少数の業者の中で、一九九五年当時からこういう調整金をして、安くなければ売れない、こういうことをやっていたんじゃないか。こういうことを調査しなきゃいけない。

 名義貸しがあったかもしれないということなのに、何でそれを調べていないのか、それをお答えください。

山本(有)国務大臣 資格要件を厳格にすればするほど、また、SBS米、外米を望む実需者がいるような場面も、それは想像ができるわけであります。

 しかしながら、あくまでSBS米の入札制度というのは、有資格者のみに与えられた買い受けの資格でございます。そこから先にどなたに売られるかにつきましての話は、我々、国家貿易を維持する者にとりましては、これは自由な販売であるわけでございまして、これを民民の契約として、介入すべき立場にはありません。

村岡委員 大臣、有資格者はもちろん国が指定したわけですから、そこがしっかりしているかどうか調べるのはもちろんです。しかし、業界で名義貸しがほとんどだというようなことが仮にあるとすれば、これは調べても何の意味もありません。そして、これは、もちろん農林省ほど我々は調査力がないですから調べられないですけれども、この名義貸しした有資格者は、普通に手数料の値段も決まっている、こういうふうなことが伝えられています。

 そういうことを全部調べないと、これは国家貿易で、SBS、しっかりとここは押さえておくということの中で農家の方々に安心を与えているわけです。

 そして、総理がよく言われる、新しいTPPでSBSで七万八千トン入ってくる、このことは備蓄でしっかりこれを守ると言っていますけれども、もともとのMA米でSBSでこのような取引が横行していたとすれば、当然、同じ業者の有資格者が名義貸しを使ってやるんです。それは当然です。

 そして、三者契約の中で調整金を廃止しても、何の意味もありません、名義貸ししていれば。これは商行為だからいいということであれば、何のための禁止行為なのか全くわかりません。

 大臣、これでいいんですか。実際にこれは価格を下げていますよ。

山本(有)国務大臣 まず、御指摘のように、SBS米の契約は三者当事者でございます。そして、買い受け人なる者は有資格者でございます。この要件は厳格に定められておりまして、その意味において、誰でも入れるというような資格ではありません。

 したがいまして、これにおけます我々の認識といたしましては、さらにこの者から買い受けた者が無資格者であろうとも、この有資格者が利益を得てさらに転売をするというように考えると、この無資格業者が牛丼屋さんであったりコンビニであったり弁当屋さんであったりすることと何ら変わりはない存在でありますので、この輸入業者が直接ここに調整金を支払う云々については民民の考え方の中でやられる話であって、マークアップ価格についての関心が国家貿易の一番の関心でありますから、ここにつきましては、第三者に不特定多数いらっしゃる人の一人と考えるのが当然のことだろうというように思っております。

村岡委員 大臣、それは違うんじゃないですか。SBSの中で、大臣が、森山大臣も答えていますが、隣におられますけれども、値段は同じです、それで価格には影響を与えていませんと答えたんです、大臣当時。しかし、今の大臣の言葉ですと、これは牛丼屋さんや弁当屋さんと同じではないんです。完全な同じ卸売業者なんです。それで、この有資格卸業者に、例えば仮に一円の手数料を払って、全く調整金はここには行きません。そして無資格業者にそのまま行っちゃうんです。そうすると、そこに調整金が払われる。そうなれば、その後の本当の実需者、牛丼屋さんや弁当屋さんに安い米が流れるんですよ。

 それが全く問題ない、こう言うわけですか。それでは、今まで政府で答弁してきた、国家貿易で隔離するというのは、何の隔離もない、こういうことになりますよ。

山本(有)国務大臣 SBS米、国家貿易の主眼になる価格設定は、あくまでマークアップの大きいかそうでないかの順になるわけでございます。その意味におきましては、利益を国家が最大化することによって買い受け業者が決まるというシステムになっております。

 その意味において、さらにその買い受け業者から転売される者につきまして、これは私どもは、何らお弁当屋さんやコンビニエンスストアの皆さんと変わらず商取引を行っているというように思っております。

村岡委員 大臣、その答弁は、農家の方々にこれまで政府で説明してきたのと全く違いますよ。

 お弁当屋さんや牛丼屋さんのことと同じじゃないですよ。完全に国産米の価格下げになっていくんです。その調整金が入った上に、ブレンド米ですよ。国産米とまじっているんですよ。その中でいって、それはもう弁当屋さん、牛丼屋さんのもので、そこまで調べることはできないと。しかしながら、これを調べなかったら何の調査ですか。何のためにやっているんですか。価格が下がっているか下がっていないか、弁当屋さんを全部調べてくれとか、そう言っているわけじゃないですよ。こういう無資格業者が名義貸しで有資格業者に借りるという実態があることをしっかり調べなきゃいけないじゃないですか。

山本(有)国務大臣 そこで、我々としましては、十月七日の調査結果の中にお示しをしましたように、個々のSBS米契約に関連して、買い受け業者から直接または間接に現品を販売され、譲渡され、または引き渡しを受ける者を含んで、これにもし調整金のやりとりがあった場合には資格を取り消すということにしておりまして、この運用改善によりまして、この者が、かかるSBS米売買についての脱法行為なるものを抑制できるものなりというように考えるところでございます。

村岡委員 それは、問題なければ禁止する必要はないですよ、値段にも影響ないし。それはおかしいんじゃないですか。何でそれは禁止するんですか。不信を招くということは、何の不信ですか。価格が下がる不信じゃないですか。それ以外の不信はない。商行為でまともならば、不信も何もないわけです。

 それはやはり、国家貿易で隔離すると言った以上、そこの部分では、いろいろな商行為があっても、これは国家貿易なんだから、名義貸しであったり、そして実際の価格であったり、そういうことを調べて、それをやめるという方向の中で調査をする、それが普通じゃないですか。何でそれを隠すんですか。別に大臣が知っていたわけじゃないでしょう、調整金。

山本(有)国務大臣 実質的に、調整金あるいは個々の契約についての金銭のやりとりの禁止条項を契約書に書くわけでございますが、その契約書にサインした後に、この種の有資格者が無資格者の利益のために行うことについて報告等をいたします。そして、有資格者が正常なSBS取引をするように改善を図ったわけでございます。

 この調整金につきましては、大々的な報道から、お米の生産農家に不安を与えるというように判断いたしましたので、不安のないように万全を期するという意味でこの契約の運用を改善したところでございます。

村岡委員 これは、万全は全く、それはそのまま抜け落ちていますよ。

 そして、もとに戻ると、この調査表の中に重大なことを書いているんですけれども、農林水産省担当者は、福井精米と兼松とのSBS契約の履行業務の担当として、当該メール内容のうち、福井精米が兼松に対して、米の品質保証に係る債務不履行に基づく損害賠償を求め、民事訴訟を提起する意向を持っていることを課内で共有。

 メールは課長だけなんですよ。ところが、裁判内容に、価格が安くなっているのが全部ついているんですよ、課内で共有しているんですよ。大分前からわかっているんですよ、農林省自体。大臣はわかっていないと思います。政治家はわかっていないと思う。

 裁判内容を課内で共有していたら、その当時から共有していたら、メールは見ていないということで断言していますから、それはそれでいいです。裁判書類を見れば、価格表が全部ついているんです、調整金のことも。それは課内で共有していたんですよね。

山本(有)国務大臣 平成二十六年十月時点では、メールを受け取っていた担当者が、個別具体の訴訟に関連して、業者間の金銭のやりとりの存在を知っていたことは事実でございます。

 担当者は、訴訟について課内で共有したものの、業者間の金銭のやりとりの存在につきましては、SBS契約の履行というみずからの担当業務以外の事項でございましたので、民民間の争いの一方の当事者がその立場を示したとの理解のもとで、上司への報告はしておりませんでした。

 したがって、二年前に農林水産省の職員が業者間の金銭のやりとりの存在を知ったものの、個別具体の訴訟に関連した状況の中での話でございまして、当時の農林水産省が組織として意味ある形で知ったものではありません。

 そして、現在もこの訴訟は係属中でありまして、一方当事者からの情報を、中立的立場である行政の農林水産省が、これは何らか行為を始めるというようなものではないというように理解しておりまして、あくまで抑制的に扱うべき情報だというように思っております。

村岡委員 裁判書類を見て、全てついているのに、それも共有していない。調査も何のためにやったかわからない。念のために万全を期す。しかし、この調整金に関して、本当に重大だと思っているのか。

 このSBS、MA米は全体ですよ。それから、次にTPPでもし締結されれば七万八千トン、これは全て響いていくわけです。これは、十万トン、七万八千トン、また、六万トンは中粒種で加工用米といっても、米は需要が八万トンずつ毎年下がっていくときに、その中で大きく影響してくるんですよ。ここでしっかりとストップしなければだめなときに、その調査のままやったら、将来に禍根を残しますよ。そして、今まで農家に説明してきたいろいろな、キャラバンとかやってきたのも、全くこれはやり直しですよ、こういう状況だと。そのぐらい大切なことだという認識がないのが信じられないんですよ。

 そして、私が前にも質問しましたけれども、ほかの委員も言っていますけれども、牛肉だって、セーフガードだってそうですよ。セーフガードだって、もうどんどんどんどんセーフガードが伸びていけば、百万トンしか需要がないときに、今でさえ六十万トン外国産があるのに、九十万トンまでいったら、日本は十万トンなんですよ。それは、輸出すればいいと多分言う人がいる。しかしながら、輸出はそう簡単には伸びないですよ。

 そのことも含めて、米というのが農業の中の一番の基本なんです。この基本の米を入れざるを得なかった日本の状況の中、これはいたし方ないということで、農家の人も耐えていますよ、これは国益にとって、自由貿易のために。しかし、国が今まで言ってきたSBS米が違うとすれば、これをしっかり調べるのが当然じゃないですか。

 総理、聞いていて、やはりもう一度調べ直した方がいいんじゃないですか。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 先ほど来答弁をさせていただいているわけでございますが、今回のいわば調査については、マークアップをし、そして、そのマークアップを取ることによって国産米に影響を与えないようにしたわけでございます。しかし、そのマークアップしたものが調整金として卸業者に行っていた。では、これがその後、そのお米自体を値下げしてその次に行っていたんではないか、そういう指摘がある中において調査をしたわけであります。この調査はそこに視点が置かれていたわけでございます。

 同時に、これは、いわば趣旨とは違うわけでありますが、違法行為ではない中において、農水省の調査にも限界があったのは事実であります。その中において公表しないということを、任意で行う中での調査であったわけであります。それは既に答弁をさせていただいたとおりでございますが、その結果については、既に大臣からも答弁をさせていただいた、また、私も先ほど答弁をいたしましたが、入札の前後の時期を見てみても、国産米に対して影響が与えられていない。

 いわば、入札をした結果、国産米が下がったということであれば、それは影響を与えたということになるわけでありますが、そういう事態にはなっていないということから、農水省が結論を導き出したということではないかと思います。

村岡委員 総理は報告だけですからそれを信じるということになるんでしょうけれども、大臣、それは違うでしょう。公表するのと、新聞社が調べたのは全くコメントする必要はない、そして自分たちのものが正しいんだ。

 普通、いろいろな事件が起きたり何かしたら、省庁が新聞で書かれていたことを、先ほど万全を期したと言いましたけれども、あの農業新聞を見たら、農家の人たちがみんな不安になっていますよ。不安になっているのに、あれは全然コメントする立場にないし、そんなことはあり得ないんだ、価格には影響なかったんだと。これが、政府が責任ある立場と言えますか。

 普通は、何かの問題があって法律ができるときも、それが報道であったり、それから地域の問題であったり、いろいろなものを調べるのが普通じゃないですか。それを調べていないんですよ。報道があったらこれは何かあったんじゃないかともう一度調べ直す、この姿勢が大事なんじゃないですか。どう思いますか。

山本(有)国務大臣 当該専門性のある社、報道機関が、もし私どもの調査にさらに正確性を加えるために、何らか御相談をいただいて御一緒にさせていただければ、私どもは正確性を期すことができたかもしれません。

 しかし、あくまで突然に、しかも何の連絡もなしに公表され、しかも調査のやり方や相手方の社についての情報もわからぬままにこれを公表されるならば、私どもはこれはコメントする立場にはないわけでありまして、あくまでそうした報道があったという事実を知るのみになります。

 したがいまして、この調査をさらに深めるためにもし御協力いただけるならば、大変ありがたいというように思います。(発言する者あり)

西村(康)委員長代理 御静粛に。

村岡委員 政府の調査が足りないと思っているから新聞社は調べたんですよ。何で新聞社が、政府の調査と一緒になって調べましょうと言ったら、また同じ結論じゃないですか。それは、しっかり調べていない調査がおかしいと、特に日本農業新聞は、農家の方々が買っている人が多い、農家の不安を考えて、ちゃんと調べたんですよ、取材したんですよ。それがあって、もし違うと思うなら、もう一度それはやるべきですよ。不安を持っているんですよ。このままでは信頼を置けないままになりますよ。

 誰が一緒にやりましょうなんて、今からならいいですよ、今からなら一緒にやりましょうと言ってみてください。それは、その前の段階は農林省の調査が余りにも不誠実だということの中で、それで農業新聞がしっかり調べたんです。それはおかしいと思いませんか。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

山本(有)国務大臣 農林省の調査は、過去五年にわたる行政文書保存義務のある限りのわかる相手方に対して、輸入業者、買い受け業者、これに契約をした過去の事実に基づいて、信頼のあるお互いで、これを公表を前提とせず調査したわけでございます。

 この当該報道機関がどのようなやり方でどう調査をしたのか。公表を前提として調査したならば、信憑性は私は農林省の方にあるのではないかというように主観的には思っております。そんな意味で、私どもがコメントする立場にはございません。

村岡委員 幾ら求めても、コメントする立場にないと言い張るだけという感じなんです。

 やはり、これは信頼を受けていないということは、農家の方々の現場を回ってみてください。やじを言っている人が農家の現場に行って、これは信じていますかと聞いてみてください。そんなことはないですよ。それだけは言っておきます。

 次に移ります。

 総理が、新しい挑戦をしていく、私も、それは農業が輸出産業として、いろいろなものが進んでいくのはいいと思っています。そして、守るだけではだめだと言っていますけれども、日本の農業予算という中で各国を調べてみて、午前中に参考人もありましたけれども、これはスイス、フランス、ドイツ、英国だと、所得の中で九〇%、六九%、九四%、一〇四%と、やはり国にとって食料自給率も食料の安心、安全も大切だということの中で、相当な予算をかけています。日本は三九・一%。

 その中でいくと、まだまだ輸出産業だけでやれない部分があります。そこのことに対して、全てが何か輸出産業にいるように総理がおっしゃるものですから、みんな不安になっているんです。全部が行くことは簡単にはできません。他国の農業も全部潰してしまいます。

 そういう中でいくと、少しずつ行かなきゃいけない段階のときに、とにかく輸出だというイメージがついています。そのことに対して総理はどう答えますか。

安倍内閣総理大臣 農産物の輸出については、これはまさに、私が申し上げておりますのは、いわば農業を強化していく中における方途の一つとして、今まで力を入れていなかった輸出を強化していこうということであって、農業全体を全部輸出にするということではこれは全くないわけでございます。

 そもそも、国内の需要に対する対応が主になるのは当然のことであろう、それに加えて、今まで、いわば日本の農産品というのは競争力が弱いのではないかというある種の思い込みもあったのは事実なんだろうと。それは、そうではなくて、日本の農産物というのは、まさに農家が精魂込めてつくったものであり、安心できる、そして品質の高いものでありますから、これをかけた手間暇に相当する価格でしっかりと輸出をしていく。これを国が支援しながら、かつ農家にもしっかりとした手取りがあるような、そういう農業にしていきたい、こう思っているわけでございます。

 当然、この多面的機能については私も十分に評価をしているわけでありまして、多面的な機能を有する農業を守っていく。であるからこそ、これはまさに、農は国の基なんだろう、こう考えているところでございます。

村岡委員 総理、実は自動車産業や何かとだんだん同じようになってくると思うんですが、果樹でも野菜でも、外国の安い土地でつくった方がいいという部分ももう商社が研究しているんです。米はある程度の制限がついていますが、カリフォルニアでは、残念ながら、我が秋田県のあきたこまちもコシヒカリも全部、肥料とかそういうのを日本人が来てやれば変わるように、むしろ、日本食のブームはあるんですけれども、関税が下がったり、また量がふえてくるとなると、国際的な流通の中では日本の技術は、向こうに行ってつくった方がいいということになる。

 ですから、輸出というのはなかなか簡単に伸びないということ、そこには相当な対策が必要だということは申し述べておきます。

 そして、石原大臣、済みません。呼んでいてまだ質問をしていなかったんですが、最後に質問します。

 きょうの午前中もありました再協議の場面です。三年後に一つがあります。そして、七年後、これはこの前、石原大臣は、五カ国とバイでやるから大丈夫だと。

 しかし、もしこれが、全く断るから大丈夫だと言うなら、何でこの契約を結んだんですか。それは、やはりその可能性を相手が求めているということじゃないですか。

石原国務大臣 村岡委員にお答えいたします。

 この間、議論の途中で終わってしまった話ですけれども、WTOの交渉の中にも再協議というものがございます。それは当然、委員の念頭にあるようなことを各国が望むからこそこういうものが入ってくるんだということは私も同意をいたします。

 しかしながら、このバイの会議というものは相互主義でございます。どちらかがその再協議によってどちらかの利益を損なうようなことは、何か相対のものがあれば別ですけれども、そういうものがない、その品目について何を協議するというのが再協議でございますので、国益を損なうということについては我が国はノーということを言いますので、そのことが、相手側のごり押しによって関税率を下げるとか、あるいは、関税率の来る期限をもっと前倒ししろとかいうような御懸念は発生しないんじゃないかというのがこれまでの私の見解でございます。

 前回は、でもそれは甘いんじゃないかというところでたしか議論が終わっていたと認識をしているところでございます。

村岡委員 時間が参りましたので終わりますけれども、やはり、この調査に関してはやり直しを求めますし、TPPは中身の問題で、それぞれが、セーフガードも本当にしっかりしているのか、そういうことを検証しないと、これは総理が、日本が早目に可決して、そしてアメリカに推し進めると言いますけれども、きょう、委員の中で出ました。日本だけが非常にいいとなれば、かえって、進めるんじゃなくて、アメリカは、だからこそ再交渉しようということになるんじゃないですか。日本が一番利益が上がるとしてこの資料がアメリカに行ったら、アメリカ大統領、新しくなった人は当然、これは交渉し直すよ、日本だけのひとり勝ちじゃないか、こう言うんじゃないかということで、今急ぐ必要はないということを言って、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 山本農林水産大臣の去る十月十八日の発言は、事実上強行採決をけしかけた、絶対に許しがたいものであります。謝罪とか、あるいは撤回で済む問題ではない。安倍総理の任命責任は重大であります。

 ともかく議案を通せばいいと言わんばかりの国会軽視、政府・与党の政権運営に対する傲慢な姿勢が厳しい批判を浴びております。本委員会での審議は緒についたばかりであり、徹底審議こそ必要であります。

 そこで、具体的に質問いたします。

 TPPは、日本がアメリカなど十一カ国との間で関税を原則的に撤廃し、サービスや投資も自由化を約束、農業や中小企業だけでなく、医療や保険、雇用や食の安全などに大きな影響を及ぼす、国のあり方を変えていくような協定であります。日本の医療をめぐっても、政府が批准しようとしているTPPがどんな役割を持つのか、極めて重大な問題であります。

 ここに、TPP協定で日米が交わした文書があります。書簡があります。医薬品及び医療機器に関する透明性及び手続の公正な実施についての附属書の適用に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡というものであります。

 日米両国はこの中で、関連する将来の保健医療制度を含むそういう事項について協議する用意があることを確認するというふうにしております。この将来の保健医療制度について協議する用意があるというのはどういうことでしょうか。

塩崎国務大臣 今、笠井委員からお話がございましたのは、交換文書についての御指摘かと思います。

 御指摘のとおり、医薬品等に関する附属書の適用についての米国との間の交換文書は、これはまず、法的拘束力を持たない文書であるということであります。いわゆるサイドレターでございます。

 交換文書におきましては、日米は附属書に関するあらゆる事項について協議をする用意がある旨を確認しているわけでありますが、この規定によって米国政府の意見を受け入れるということを約束するようなものではないということでございます。

 したがって、交換文書を根拠に、アメリカの要求を受け入れざるを得なくなったり、薬価の高騰が生じるといったような御懸念は当たらないというふうに考えております。

 今後とも、日本が誇る国民皆保険制度はしっかり堅持をして、安全で安心な医療が損なわれることのないように取り組んでまいらなければならないというふうに考えております。

笠井委員 私は懸念について述べたわけじゃないんですが、懸念は当たらないというのは、何か先回りして話をされたかもしれません。私は、将来の保健医療制度について協議する用意がある、これはどういうことかということを聞いたんですが、それについてはお答えがないということであります。

 安倍総理は、国民皆保険制度は守られるというふうにかねがね言ってこられましたけれども、将来の保健医療制度の改変についても協議する用意があると、今回の書簡は日米両政府間で約束したということではないんですか、総理。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 日米間のサイドレターについての御下問だと思いますが、御指摘の交換公文では、医薬品等に関する附属書に関するあらゆる事項について協議する用意がある旨を確認しています。しかし、これは米国政府の意向を受け入れることを約束するものではございません。

笠井委員 そんな答弁したら、アメリカ側から違うと言われますよ。

 この書簡を見ますと、まず米国側書簡というのがありまして、その中では、日本国は、要するに、国民皆保険制度を維持する必要性を強調する一方、一方ということで、その先に、日米両政府が、国の保健医療制度の実施における透明性及び手続の公正な実施の重要性も認めると。皆保険制度を維持する一方で、それとは違う方向で、透明性とそれから公正な実施、そういう方向についても重要性を認めるということで日米両政府が確認したということで、そしてその中で、今言った将来の保健医療制度についても協議する用意があると確認しているわけです。

 そして、米側書簡のところには、「本代表は、閣下が、貴国政府がこの了解を共有することを確認されれば幸いであります。」というふうに書いて、フロマン代表の名前があり、そして、当時日本の甘利前大臣はもうやめていらっしゃいましたから、高鳥副大臣宛てになっている状況です。

 そして、この米国側書簡を受けて日本側の書簡はどうなっているか。この書簡の受領を確認する光栄を有します、こういうふうにへりくだって言われながら、「本官は、更に、日本国政府がこの了解を共有していることを確認する光栄を有します。」ということで、高鳥副大臣が、フロマン閣下ということでこれが出されているわけであります。

 まさにこれが、わざわざ、当時、これはことし二月四日ですから、TPPが署名された当日に交わされたという文書であります。まさに、米側の書簡にあるような要望を受けて、そして確認し合ったことは明らかだと思います。

 事は、保険証一枚で医療が受けられる国民皆保険制度、この根本にかかわる重大問題であります。こういう重大な書簡がTPP署名の日にまさに日米間で取り交わされているということであります。まさに、この文書に対して、あるいは日米の確認事項に対する認識が甘いと言わざるを得ないと思います。

 塩崎大臣にさらに伺いますが、ここに日米両国政府による日米間の規制改革及び競争政策イニシアティブに関する日米両首脳への第八回報告書、二〇〇九年七月六日というのがあります。つまりこれは、日米両国政府が二国間フォーラムを開いたときに両国首脳に対して報告書を出したというものであります。

 この中で、十三ページ、医療制度改革への意見ということで、「厚生労働省及び中央社会保険医療協議会(中医協)等の審議会が日本の医療制度改革を検討し実施する際には、米国業界を含む業界は、厚生労働省に対して意見を表明することができ、厚生労働省はその意見を考慮するものとする。」と。意見を述べられて、それを考慮するものとするということで、そういう意見について日米間の政府で一致して首脳に対して報告書を出している。

 こう書かれていることは間違いありませんね。書かれているかどうか、確認をお願いします。

塩崎国務大臣 結論的には、確かに、厚生労働省に対して意見を表明することができ、厚生労働省はその意見を考慮するものということが書き記されていることは事実でありますけれども、これは、先ほどの、総理から御答弁申し上げているとおりの、外交の常識としても、米国の意見を受け入れることを約束するような表現ではないということであります。

 先ほどであれば、TPPの附属書、それに伴う交換文書の中で言っているのは、言ってみれば、手続の再確認をしているということであって、相手の言うとおりになるということを言っているわけでは全くないということであります。

笠井委員 既に米国側から、保健医療制度そのものについてを含めて協議する用意がある、こういうことであるなと言われて、ありますという確認をし、そして厚生労働省も、米国の業界などから言われたときには、意見を言うことができて、それを考慮するとまでちゃんと能動的に言っているわけですから、総理、既に二〇〇九年の段階では、米国の医療業界が意見を表明すれば厚生労働省が考慮するものとするという約束ができ上がっていた。米国は、自国の医療業界の対日要求をのませる仕組みを着々と整えてきた、これは明らかじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、これらは、表現はいずれも手続を確認している文言でありまして、例えば、中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協ですね、ここで内外の製薬業界の意見を聴取しながら薬価制度の改革の議論を進めてきた、これは事実であります。

 しかし、例えば報告書で、薬価の市場拡大再算定、これがありますけれども、最近オプジーボの問題でいろいろ議論になっていますけれども、米国政府が廃止または拡大の回避を要請しているということを留意しますが、米国業界と引き続き議論をする旨が定められているわけであって、平成二十八年度の診療報酬改定では、むしろ、市場拡大再算定に加えて、市場拡大再算定の特例というのを設けているということで、さらに上乗せ規制をしているようなものでございます。

 このように、御指摘の報告書によって、米国の要求を受け入れざるを得なくなったり、あるいは薬価の高騰が生じるといったような事態には全くなっておらないわけであって、御懸念の趣旨は当たっていないというふうに思っております。

 大事なことは、今後とも、我が国の医療制度改革について、他国との対話は、当然議論はするわけでありますから、そしてまた、手続をきちっと踏んでいくということは、当然お互いに確認をし合わなければいけないことですけれども、中身をどうするかということは、それは国家主権として主体的に判断をして取り組んでいくというのが大原則であります。

笠井委員 日米間の対話というのは、この間も、協調対話を含めてやってきたんですよ。アメリカ側の要求があるということについてもいろいろな場で議論されて、そして、それについては企業の側の要求があるということも、政府を通じて来たりしていた。

 しかし、今度TPPができた時点で、署名した日にわざわざ、国民皆保険制度の根幹にかかわる問題を含めて日米間で協議する用意があるということを、ありますねとアメリカから言われて、ありますよというふうにしたんですよ。

 そういうことというのは、まさに画期をなす重大なことになるわけじゃないですか。今までとは違うんですよ、それは。だから、受け入れるわけじゃないんです、今までと同じですというのは違うんですよ。TPPができた途端にそういうことをやっているんですよ。

 書簡の言う、関連する将来の保健医療制度を含むというのは、国民皆保険制度における薬価の問題、医療機器、ジェネリック、診療報酬、保険がきかない自由診療部分の拡大など、日本の医療制度のあらゆる事項について、米国製薬大企業と政府から内政干渉を丸ごと受けかねない、そういう規定になります。これを取っかかりにして向こうはやってくる。日本は協議する用意があると言ったんでしょうと、そういう形で具体的にぶつけてくるわけで、そういう問題だと思います。

 既に、米国の研究製薬工業協会、ここは、TPPに向けて、これまで取り上げてきた事項、薬価規制改革等は引き続き協議されるべきということで要求してきております。米国医療業界が日本市場をターゲットにしてきたし、していることは明らかだと思います。

 こうやって、国民皆保険制度が内側から壊されて、そして空洞化する危険がある。だから、関係者や国民の皆さんから深刻な懸念の声が多く上がっていて、請願や署名、要請もたくさん来ているわけであります。

 委員長、この問題での参考人質疑の実施を提案したいと思います。大事な問題です。理事会で検討をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩谷委員長 その件については、理事会で検討いたしたいと思います。

笠井委員 次に、TPPの核心の一つ、投資家対国家紛争解決、ISDS条項について伺います。

 このISDSというのは、なかなか聞きなれない言葉だったかもしれませんが、随分最近は言われるようになりました。投資先の国の、相手国の政府や自治体の政策が協定に違反をして損害をこうむるというふうに多国籍企業が判断した場合に、投資家が判断した場合に、国際的な仲裁機関に訴えることができる仕組みであります。

 まず、外務省に伺います。

 これまでに、さまざまな経済連携協定や投資協定などがありましたが、この仕組みを使って国際的な仲裁裁判になったのは、累計で何件になるでしょうか。

滝沢大臣政務官 お答えいたします。

 UNCTADの統計によりますと、本年一月一日時点で公表されている投資関連協定に基づく国際仲裁の累計件数は、六百九十六件でございます。

笠井委員 累計で世界で六百九十六件もあるということであります。

 これまでさまざまな事例があると思うんですが、どういう紛争になっているか、具体的に幾つか聞きたいと思います。

 例えば、ドイツ政府は、東京電力福島第一原発事故の後、原発ゼロの政策に転換をいたしました。これを、スウェーデンの大手電力会社が、原発閉鎖に追い込まれて多大な損害をこうむったとして、ドイツ政府を訴えました。外務省、そういうケースがありましたね。具体的にどういうことでしたでしょうか。

滝沢大臣政務官 御指摘の事例につきましては、我が国が当事国ではない事例であり、政府としてその経緯と現状について正式にコメントする立場にはないということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、先ほどお話がございました、スウェーデンのエネルギー関連会社ヴァッテンフォールがドイツ政府を訴えた事例については、同社が、エネルギー憲章条約に基づき、ドイツ政府を相手に二〇一二年に仲裁に付託したものであると承知しております。

 UNCTADによれば、ドイツの原子力発電所に関する政策の変更をめぐる紛争であるとされております。

 本事案は、現在係争中であると承知しているところでございます。

笠井委員 もう一つ事例を伺いたいと思いますが、エジプト政府が最低賃金を引き上げたとして、フランスの水道会社ヴェオリアがこの仕組みを利用して訴訟を起こしたと思います。この事例についてはどうなっているでしょうか、外務省。

滝沢大臣政務官 御指摘の事例につきましても、我が国が当事国ではない事例でございます。政府としてその経緯と現状について正式にコメントする立場にはないということを重ねて申し上げておきます。

 その上で、お尋ねの事例についてお答えを申し上げます。

 フランスの環境事業関連会社ヴェオリアがエジプト政府を訴えた事例につきましては、同社が、フランス・エジプト投資協定に基づき、エジプト政府を相手に二〇一二年に仲裁に付したものであると承知しております。

 UNCTADによれば、エジプト地方政府がインフレと労働法制の改正を理由とした契約の変更を拒否したことをめぐる紛争であるとされております。

 本事案は、現在係争中であると承知しております。

笠井委員 それ以外にもたくさんの事例があるわけですが、例えば一つ挙げれば、メキシコでの廃棄物処理場の建設をめぐって米国企業がメキシコ政府を提訴した事例では、地元自治体の建設不許可が違反に問われて、千六百六十九万ドルの賠償が命じられております。

 総理、ISDS条項によって、外国の多国籍企業などが相手国の政策によって被害をこうむったと訴えた、こういう事例があることを御存じだったでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 そういう事例があることは承知しております。

笠井委員 外務省に伺いますが、ISDS条項は、米国がカナダ、メキシコとの間で締結をしております北米自由貿易協定、NAFTAにも盛り込まれております。この三カ国、米国、カナダ、メキシコ合計で、企業側が相手国を提訴したのは何件で、そのうち米国企業が起こした訴えというのは何件ありますでしょうか。全体の何%になりますか。

滝沢大臣政務官 お答え申し上げます。

 NAFTA加盟国、アメリカ、カナダ、メキシコの政府ホームページで公表されている本年十月時点での情報によりますと、NAFTAのISDS仲裁手続に基づき投資家が提訴した件数は、全体で六十九件でございます。そのうち、米国投資家が提訴した件数は五十件、七二%でございます。また、米国政府が提訴された件数は十七件、そのうち、企業が勝訴した……(笠井委員「そちらはまだ、次」と呼ぶ)いいですか。失礼しました。では、七二%でございます。件数が五十件でございます。

笠井委員 圧倒的に米国企業がこの条項を使っているということであります。

 それでは、続けて、後半のところになりますが、米国政府が訴えられた場合はどうか。

 これまで米国政府がカナダやメキシコの企業に提訴されたのは十七件あると思うんですけれども、そのうち、企業側、投資家側が勝ったのは何件でしょうか。

滝沢大臣政務官 そのうち、企業が勝訴した例はございません。

笠井委員 企業側が勝ったのは一件もない、ゼロ件ということであります。つまり、米国政府は外国企業に訴えられても負けたことがない、少なくともNAFTAの場合はそうだということだと思います。

 総理に伺いますが、アメリカは、USTR、通商代表部が外国貿易障壁報告書というのを毎年出しております。これはTPP交渉を担った機関でありますけれども、このUSTRは、日米の貿易の懸案について、これは二〇一六年版ですが、農業分野以外にもたくさんの項目を挙げておりまして、例えば、サービス障壁の問題では日本郵政、保険、さらには知的財産保護の問題、それから東京オリンピックを初めとした建設事業に関連する問題、それから自動車の問題など、たくさんの項目を挙げて対日要求を出してきております。

 それらの分野について、農業分野以外にも、米国の多国籍企業が、この場合は米国の要求ですので、米国の多国籍企業が参入しやすいように要求してきたということでありますけれども、これらを実現するために、TPPが発効した後はこのISDSの条項を使って訴えてくることはないというふうに断言できるでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日米の間でTPP署名とあわせて交換しましたサイドレター、これにつきましては、内容を御確認いただければと思いますが、全て、我が国としましては、既に実施をしていること、実施することを決定していること等の内容であります。よって、新たな何か義務を生ずるというものではないと思いますし、そもそも、サイドレター自体、法的な拘束力がないものであると認識をしております。

 そして、その上で、TPPが発効したならば、さまざまな提訴を受けるのではないか、可能性はないのか、こういった御指摘がありました。

 TPPにおいては、投資家がISDS手続を利用して提訴することが可能であるのは、投資章に規定されています内国民待遇、最恵国待遇等の義務に違反する措置を国が講じた結果、投資家が損害をこうむった場合であります。

 そして、TPP協定の投資章のISDS手続は、整理して言いますと、三つの要件、すなわち、公共福祉に係る正当な目的のため、二つ目として、必要かつ合理的な規制措置、そして三つ目として、差別的でない態様、こうした要件を満たす措置を講ずること、これを妨げてはおりません。これは投資章の複数の規定において確認をされています。

 こうした基準を念頭に、我が国は、署名するまでの間に、我が国の措置がこういった規定に反するものがないかどうか、これは入念に確認をいたしました。そして、問題がある場合には必要な例外措置を置く、こういった措置も行いました。こういったことで国内法との整合性、これをしっかり図ってまいりました。

 こうした取り組みを行っておりますので、我が国がISDS手続において提訴をされる、こういったことについては考えていないというのが我が国の考え方であります。

笠井委員 書簡の話にまた戻って答弁されたので、それはさっきちゃんと言ってもらわないと議論がかみ合わないんですよ。

 今の問題について言いますと、結局のところ、お答えになっていないんですね、私のことについて。提訴されることは考えていないと言うわけですけれども、提訴されることはないと断言できるのかと聞いたんですね。国内法との関係では、訴えられないようにするために国内法で制度を変えるとか、あるいは既にそうなっているということであります。訴えられることを口実にして政府が国民の命や健康を守ることに取り組まなくなるという萎縮効果が出てくると、大問題だと思うんですね。

 要するに、私が質問したのは、先ほど具体的に、ISDがこうやってある、そういう協定があるもとで、発効した場合に、アメリカはこれまでも対日要求をUSTRを通じて言ってきた。もちろんいろいろなツールはありますよ。今度だって、直接、企業の代表が言えるような場面が出てくる。だけれども、少なくともアメリカのUSTRが、農業分野以外について言っても、たくさんの、日本郵政や保険や知的財産の保護の問題や東京オリンピックの建設事業や自動車など、さまざまな問題を列挙して米国企業が入れるようにということで言ってきた。

 今度は、それに対していろいろな規制があったりできないという話になったら、ISDSという条項を使って米国の多国籍企業の側が直接的に日本政府を訴えて、そして提訴するということは絶対ないと言えるかと聞いたんです。考えていないという主観の問題じゃないんです。

岸田国務大臣 先ほど、NAFTAにおいて米国企業が有利な状況に置かれているのではないか、こういった御指摘がありました。

 そもそも、ISDS手続において、仲裁廷を構成する三名の仲裁人、これは、紛争当事者が一人ずつ任命し、そして、仲裁廷の長となります第三の仲裁人、これは原則として紛争当事者の合意で任命される、こうした公平性、中立性を確保する、こういった仕組みになっています。(笠井委員「それは訴えられた後の話でしょう。訴えられることはないかと聞いているんです」と呼ぶ)

 いや、それで、先ほどNAFTAにおける米国の有利性について御指摘がありましたので、それについてまずちょっとお答えしておりますのは、こうした基本的な中立性に加えて、NAFTAとTPPを比較した場合に、これは裁定のみならず、全ての事案の審理、判断内容を原則として公開する、これを義務づけている、TPP協定はそういった内容になっています。

 より公平性、中立性をしっかり確保する形になっている。そういったことから、特定の国が有利な状況に置かれる、そういったものではないということをまず御説明した上で、そして、その上で、提訴される可能性がないのか。

 まず、署名に至るまでの我が国の取り組みを行いました。そして、TPPにおいては、それに加えて、提訴に至るまでのハードルを上げるさまざまな仕組みも加えられています。濫訴の抑制につながる規定、あるいは、環境や健康等の正当な目的のために措置をとること、こうしたことが妨げられないことを確認する規定、こういったものが充実しています。

 こうしたしっかりした規定があり、なおかつ、署名に至るまで、我が国は、丁寧に我が国の国内措置を確認した上で、TPPの内容と我が国の国内法を初め国内での状況、この間にそごが生じていない、そしてしっかりとした整合性を保っている、これを確認しておりますので、提訴されることはないと考えています。

笠井委員 ISDSの仕組みを幾らしゃべって、説明されて、その関係でこうなっているからという話じゃないんですよ。この仕組みを使ってやることは絶対ないかと言うと、それについてはちゃんと説得力のある説明はない。

 しかも、外務省はことし四月一日に、経済局の国際貿易課のもとに国際経済紛争処理室を設置しましたよね。これは予算もつけて、政府の文書に書いてあります、TPP協定の早期発効につなげるための措置と。経費ということも立ててやっている。対策をとっているじゃないですか。実際にそういうことがあるから対策しているんでしょう。そういうことだと思います。多国籍企業の利益のために国民の暮らしや権利を犠牲にするISDS条項で経済主権を売り渡してはならないと思います。

 TPPの日本語の正文もなく、翻訳は間違えて、資料は黒塗り。交渉担当者の甘利前大臣も出てこずに、いまだ内容は解明されていない。二十一分野関連十一法案ごとの徹底審議が必要で、国民の七割が慎重審議を求めております。強行など断じて許されない、このことを強く求めて、質問を終わります。

塩谷委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 何よりも初めに、昭和天皇の弟宮であらせられる三笠宮崇仁親王殿下、薨去あそばされました。その報に接し、ただただ国民の一人として痛切の念にたえません。謹んでお悔やみ申し上げますとともに、おかくれになられた親王殿下のみたまが安らかならんことを心よりお祈り申し上げます。

 さて、改めまして、関西国際空港がございます大阪の南部、泉州選出の丸山穂高でございます。

 日本維新の会を代表しまして、私からもTPPに関連した質疑をさせていただきます。

 先週、民進党さん、共産党さんがボイコットされていたちょうどその日、私、質疑に立たせていただきまして、このTPPの特別委員会で、著作権法の改正による二次創作物の非親告罪化の、非常にテクニカルな部分も含めまして大事でございますが、細かい論点を議論させていただきました。

 本日は食の安全ということでございますので、私からは、まず、いわゆる食料自給率の点についてお伺いしていきたいと思います。

 この食料自給率、非常に重要な問題だと考えております。フリップをお願いいたします。

 現行、政府が公表しているのが、この食料自給率の指標でございます。この端にあるのが最新の二十七年の自給率のデータでございまして、生産額では六六%、カロリーベースでは自給率三九%ということで、それを受けて、例えば、この夏に最新のデータが公表されましたけれども、そのときも、国民の皆さん、多くの方のお声で、これはまずいぞ、万一のためにはこの三九%じゃ足らないじゃないか、何とかこの自給率を上げていかなきゃいけない、そういった御意見が多数出ておりましたけれども、政府は目標設定を実は大分前に開始しているんですよ。

 これは法に基づくものなんですけれども、平成十二年以降五年ごとに、もう過去四回も、この自給率を何とか上げたいと政府はおっしゃっておりまして、それに対して目標設定をして、四五%に上げようというのが大体の目標設定。なぜか民主党さんの政権のときは五〇%という高目の設定をされているので、これはどういうことかというのもありますけれども。しかし、大体は四五%の目標に設定しているんですが、大臣、これは一度も目標を達成できていないんです。

 普通、民間企業で考えてもそうだと思うんですけれども、十五年間も、目標達成を目指してやりますと言っておきながら、目標が達成できていないというのは非常におかしな事態だと思いますし、責任者は責任問題になるような事態だと思うんですけれども、その点についてどういうふうにお考えになっているのか、なぜ達成できないのかをお聞きしたいんですが、残念ながら時間が少ないので、重ねて大臣にお伺いしたいことがあるので、重ねてお伺いしたいと思います。

 実は私、これは自給率を上げるべきだといってお出ししたんじゃないんです。

 というのは、そもそもこの計算はおかしいんです。今委員の先生からも御指摘ありましたけれども、何がおかしいかといいますと、例えば先ほどの食料自給率、カロリーベース三九%というのはどうやって計算した数字かといいますと、このオレンジに囲まれたところ、いわゆる輸入品も含めた国内の消費量を分母にして、分子を国内生産量、国内で生産された量という形で百分率にしたものがこの割合です。

 実は、これで出した数字というのは非常に問題が出てきます。

 というのは、からくりがありまして、例えば、ここにも書かせていただいていますけれども、この分母の方、輸入品も含めた消費量というところに関しては、実は、廃棄物、捨てられたもの、コンビニとかまた御家庭でも、多くの食品の廃棄物が入っていると思います。要は、実際に国民の皆さんがこれだけなかったら飢えるんじゃないかという量ではなくて、余分に、日本全体で年間二千万トンもの廃棄物があると言われているんですが、いわゆる供給量の二五%に相当する量が廃棄されているわけですよ、これも含まれている分で計算している。

 しかも、上の分子の方は、国内で生産したものというと、大体、国民の皆さんは、スーパーへ行っていただいて国産と書かれている例えば牛肉みたいなものを想像されると思うんですけれども、実はそれも違って、例えば、スーパーで国内産と表示されている牛肉は大体四三%ぐらい今あるということなんですけれども、このカロリーベースの計算で見ると、自給率では、実は、海外から輸入してきた餌で飼育した牛、鶏、そういったものは国内の生産に含まれないんです。

 通常考えたら、例えばシーレーンが封鎖されて、安全保障上、食料の問題が起きたら、例えば鶏を飼っていて海外の飼料で育てていても、恐らく、そのときは国内の草とかに切りかえて飼育することになっていくと思います。なおかつ、そういう状況では、食料品の廃棄というものは起きにくい状況だと思うんですけれども、そういったものも踏まえた上での数字を出されている。

 一番わかりやすいのは、例えば隣国の北朝鮮です。北朝鮮は、経済制裁を受けていますので、その中で、中国からの輸入もあるということですけれども、ほとんどを国内で生産している。そうしたときに、輸入品も含めた消費量は国内生産量とほぼ同値になりますから、北朝鮮のような国は一〇〇%に近い数字になってしまう。しかし、現実は、国民の皆さん御存じのように、餓死をされる人がいるような状況。

 そして、この目標、法律に「向上を図ること」と書かれてしまっているんです。実は、これは、最初政府が出したものには向上に努めると書かれていなくて、衆議院の修正で入った文言なんです。だから、官僚の方は、役所の方は、この法律をいじることが非常にできにくい、衆議院で改正したものだからできなくて、それがゆえに、毎年、正直、私から申し上げたら意味がないような、国民の皆さんの危機感をあおるだけのような、実態に即していないこのカロリーベースの自給率が前に前に行っちゃって、国民の皆さんの不安をあおっていると思うんです。

 実際、大臣、これをどう思われて、そして、法改正も含めて、やはり今こそ変えなきゃいけないと思うんですけれども、どのようにお考えになられますでしょうか。

山本(有)国務大臣 まず、食料自給率の目標を達成できていないということでございますが、大変残念というように思っております。

 この自給率は、食料の国内需要を国内生産でどの程度賄えているかという比率でございます。食料・農業・農村基本法に基づきまして、平成十二年に、食料・農業・農村基本計画におきまして目標が定められております。

 これは、目標が達成できていないのは、長年にわたり、米の消費減に伴い国内生産が減少してきた一方で、少子高齢化の進展により食料需給も漸減してきた等が主たる要因でございます。

 国といたしましては、食料自給率目標の達成に向けまして、平成三十七年四五%、これに向けまして、国内外での国産農産物の消費拡大、食育の推進、飼料用米の推進や、消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大、優良農地の確保や担い手の育成の推進、こういった施策を総合的、計画的に講じていかなければならないと考えております。

 また、次に、御指摘のこの計算のやり方でございますけれども、国内消費のうち、どの程度が国内生産で賄われているかを示す指標と自給率を考えておりまして、その比率をより丁寧に算出するために、国内で生産された畜産物のうち輸入飼料による分は海外に依存しているものとみなして、国内生産から控除して計算しております。

 また、食料自給率は、分母と分子に食べ残しや廃棄部分を含めた供給ベースでの計算を行っているものでございますが、これは国際連合食糧農業機関、FAOが示す計算方法に準拠したものでございます。

 他方、食料自給率につきましては、花卉などの非食用作物が栽培されている農地が有する食料の潜在生産能力が反映されないなど、我が国農林水産業が有する食料の潜在生産能力を示す指標としては一定の限界があるものでございます。このため、昨年三月閣議決定いたしました基本計画で、我が国の食料の潜在生産能力を評価した食料自給力指標を新たにお示しさせていただいたところでございます。

 委員の御指摘のように、この食料自給率について、幾つかの課題や正確性においてさらに検討を加える必要がある点があることは事実でございます。

丸山委員 今大臣からも、改善を加える必要がある、検討を加える必要があるということは事実だというお答えがありましたので、これはしっかり検討して、変えていただきたいんですよ。

 国民の皆さんの御不満、御不安というのはすごく高くて、八三%の方が食料の供給に不安があるとお答えになっていて、その理由のほとんどが、万が一、異常気象や災害などで国内外における不作が起こったらどうなるんだとか、シーレーン、食料や石油などの生産資材の輸入が大きく減ったら、とまったらどうなるんだというところにやはり重きを置かれているわけですね。

 そういった意味で、実は北朝鮮ですら一〇〇%になってしまうような、余り安全保障上意味のない数字よりは、今大臣がおっしゃった部分、一つは、私は余り国産ばかり高めてもだめだと思っていまして、例えば、国内で飢饉が起きたり、天候の不順みたいなことが起きる、日本周辺で起きることも十分あり得ます。その場合に、国内だけに今のように頼っていれば、逆に輸入が急にはできないですから、そういった意味で問題が生じる。

 一方で、日本はほかの国に比べてもすごく食文化が多様で、世界じゅうの食事を食べられるような、指折りの、すごく誇るべき食文化だと思います。そういった意味でも、やはり輸入品をバランスよくやっていく、輸入先を多角化して、国内外の天候や国際情勢におけるリスクはきちんと分散する必要がある。これは実は基本計画にも書かれている。

 だからこそ、変な国内生産の目標というよりは、むしろ、今国民の皆さんの八三%の方が御不安に思っているような、万が一のための備蓄はどうなっているんですか、シーレーンがとまったら我々は飢饉にならない、飢餓にならないのかどうか。そして、短期的だけじゃなくて、国内生産の水準、その後、ある程度それが解消するまできちんと生産ができるのだろうか、中長期的なそういった万が一の部分の自給力というものをしっかりやってくれというのが国民の皆さんの声だと思います。

 ようやく、今大臣がおっしゃったように、今回、去年出た基本計画でこの点は少し触れられ始めました。私は、これは率直に評価したいし、今までのは問題だったと思いますし、大臣もこれは問題もあると言って、検討されるとお答えになっています。

 そういった意味で、では、今備蓄は大丈夫なのかというと、米を二年分備蓄をきちんとしているとか、実はやられているんですね。でも、国民の皆さんに広報が不十分なんですよ。だから八三%の方が不安だと思っていらっしゃる。

 同時に、最初の短期的な備蓄は大丈夫だという形なんですけれども、一方で、中長期的に、ある程度、一年、二年という形で万が一国内だけでやらなきゃいけないときの推測をされているんです。

 このデータ、棒線グラフのデータの方なんですが、実は、四段階に分かれていまして、一番下のものが、今ある畑、田んぼを全部芋にかえた場合、カロリーが高いので、カロリーが高い食品にかえた場合、ぎりぎりこのラインを超えて、ちょうど国民の皆さんが飢えないライン、皆さんの一日に必要なカロリーのラインを超えている。でも、一方で、栄養バランスを考えた場合、一番上の棒線グラフですけれども、足らないんですね。そう農水省は今回試算しているんですよ。

 だからこそ、私は、北朝鮮が一〇〇%になるような目標じゃなくて、栄養バランスを考えた上で、万々が一、なかなか考えづらいですが、しかし、万々が一とまった場合、この埋めていくのをどうするのかというと、実は、目標自体を変えていく必要性というのが非常に今回重要になってくるんじゃないかな。それこそが実際国会で議論すべき点だというふうに考えるんですけれども、農水大臣、この点、どういうふうに考えられ、広報をしっかりやっていかれるのかどうか。

 そして、この目標値、こっちにしましょうよ。大臣の政治的なリーダーシップが非常に問われていると思いますけれども、いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 御指摘のように、広報、あるいは不安の解消のための実際の措置等、これは努力していかなきゃなりません。その意味において、なお御指摘のとおり、自給力における認識も国民の間で共有していきたいというように思っております。

 さらに、委員御指摘のように、自然災害が多発する今日でございます。特に、個人の備蓄あるいは社会の備蓄、市町村の備蓄あるいは県当局の備蓄等々、これが自然災害における不安につながらないようにしっかりやっていく必要がありますので、これも検討対象とさせていただきたいと思っております。

丸山委員 農水大臣から前向きな御答弁があって、非常に大事だと思います。ありがとうございます。

 総理、この議論を聞いていただいて、どのようにお考えになりますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま農水大臣から答弁をさせていただいたとおりでございますが、食料自給率については、食料の国内需要を国内生産でどの程度賄えるかを示す指標でありますが、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有している中で、食料の安定供給を図るためには、食料自給率目標を掲げて、平時から国内農業生産の増大を図ることが重要であると認識をしておりますが、一方、昨年三月に閣議決定をいたしました食料・農業・農村基本計画においては、不測の事態が発生した場合の食料の潜在生産能力を示す観点から、食料自給率目標に加えて、食料自給力指標を新たに示したところであります。

 また、先ほど御質問を伺っていて、もっともだなというようにも感じていたところでございますが、食料自給力指標は、農地等を最大限活用することを前提に一定の仮定を置いて試算したものでありまして、政策目標とすることにはなじまないと言われておりますが、不測時の食料安全保障に関する国民的議論を深める上で重要な意義を持つ、このように思います。

 このため、政府としては、食料自給率と食料自給力の向上をともに図り、国民に対する食料の安定供給を確保していく考えでありますが、いずれにいたしましても、不断の検討、見直しは必要であろう、こう思っております。

丸山委員 総理から、大臣からも、これは見直し、検討が必要だというお言葉をいただきましたので、必要があれば政策を転換していく必要があると思います。率直に、おかしな指標であれば本当に必要な指標に変えていくことで、国民の皆さんの安全、安心をつくっていただきたいというふうに考えています。

 最後に、時間がなくなってきましたので、土地のフリップだけ。

 以前、安全保障上重要な土地の取引の規制の話をさせていただいて、これも総理から前向きな検討のお話がありましたけれども、農業にもすごく土地というのは関係していまして、水産物を除けば、ほとんどは土地がなければ食料を生み出せないわけで、食料安全保障上も、また、TPPで外国から日本に投資してくれという話をするわけで、そういう意味では、ホテルを建てるにしろ、何か開発するにしろ、土地の取引というのは非常に重要です。

 でも、残念ながら、今、日本の土地、国土のうち、所有者が不明な土地が余りにも多いんです。これについて、国交副大臣、来られていると思いますので、所有者が不明な土地というのはきちんと把握されているんですか。お伺いできますでしょうか。

田中副大臣 お答えいたします。

 不動産登記簿等の所有者台帳によって、所有者が直ちに判明しないですとか、あと、連絡がつかない、所有者の所在把握が大変難しい土地については、やはり、具体的に個々の土地の利用ニーズが生じて初めて問題として顕在化するというものでありまして、その全体像については、残念ながら把握はできておりません。

丸山委員 残念ながら把握はできていないじゃだめなんですよ。非常に重要な問題で、時間がありませんのでお聞きできないんですが、法務省に聞いても、残念ながら、戸籍を管理していますが、その所有者が誰かという観点ではほとんど把握ができていないというお答えをきのういただいています。

 これは安全保障上ももちろんそうなんです。基地、防衛の施設の周辺は誰が持っているのかと把握をまずしないと規制もできませんから把握するのが必要なんですけれども、食料安全保障上も、今後、農地をしっかりとふやしていくとか効率的な運営をしていくという意味では、誰が把握しているのかわからなければ、相続とかでどんどんばらばらになってしまって、それで結局、管理者がわからず、開発するにも時間がかかってしまうという非常に非効率な状態になっています。

 問題だというふうに私は思いますけれども、総理、この現状についてどうお考えか、そして改善策も含めて対応をお伺いしたいんです。

安倍内閣総理大臣 安全保障上重要な防衛施設周辺等における外国人や外国資本における土地の取得に関しては、国家安全保障にかかわる重要な問題と認識をしております。また、食料自給力を維持していく上においてもそれは重要な観点なんだろうと私も思います。

 このため、安倍政権発足後、我が国として初めて策定いたしました国家安全保障戦略において、「国家安全保障の観点から国境離島、防衛施設周辺等における土地所有の状況把握に努め、土地利用等の在り方について検討する。」と明記をしたところであります。現在、これに従い、防衛施設周辺等における土地所有の状況について、防衛省を中心として計画的に把握に努めております。

 一方、明治時代の登記がそのまま残っている土地も散見されるなど、所有者の所在の把握が難しい土地が少なからず存在しており、公共事業用地の取得のほか、一般の土地取引にも支障を来しております。

 このため、関係府省等が連携をして、土地所有者の把握、探索方法についてのガイドラインを作成し、活用するとともに、相続発生時における相続登記の促進などに努めているところであります。

 今後、これらの取り組みについてフォローアップを行うとともに、長期的な国土管理のあり方についてもしっかりと検討していきたいと思います。

丸山委員 もう時間がないので終わりたいと思いますが、今、非常に大事な問題だというふうにおっしゃいました。土地が、我が国の領土が、誰が持っているかわからないというのは本当に問題です。基本的な部分ですから、しっかりこちらもやっていただくことで今お話のあった防衛施設をきっちり守っていくということにもつながっていきますので、しっかり総理そして各大臣にお願い申し上げまして、私、丸山穂高からの質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次回は、明二十八日金曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十八年十月二十六日(水)

二、場所

   京王プラザホテル札幌

三、意見を聴取した問題

   環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会、内閣提出)及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百九十回国会、内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 塩谷  立君

       うえの賢一郎君   勝沼 栄明君

       菅原 一秀君   武部  新君

       中川 郁子君   今井 雅人君

       佐々木隆博君   稲津  久君

       畠山 和也君   小沢 鋭仁君

 (2) 意見陳述者

    株式会社東和電機製作所専務取締役       浜出 滋人君

    北海道農業ジャーナリストの会幹事

    酪農学園大学名誉教授  中原 准一君

    北海道漁業協同組合連合会代表理事専務     崎出 弘和君

    北海道農民連盟書記長  山居 忠彰君

 (3) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   澁谷 和久君

    外務省大臣官房参事官  宇山 智哉君

    財務省大臣官房参事官  堀田 秀之君

    水産庁漁政部長     大杉 武博君

    経済産業省通商政策局通商機構部参事官     飯田 博文君

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

塩谷座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会派遣委員団団長の塩谷立でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、両案件の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当札幌市におきましてこのような会議を開催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党・無所属の会の菅原一秀君、うえの賢一郎君、勝沼栄明君、武部新君、中川郁子君、民進党・無所属クラブの今井雅人君、佐々木隆博君、公明党の稲津久君、日本共産党の畠山和也君、日本維新の会の小沢鋭仁君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。株式会社東和電機製作所専務取締役浜出滋人君、北海道農業ジャーナリストの会幹事・酪農学園大学名誉教授中原准一君、北海道漁業協同組合連合会代表理事専務崎出弘和君、北海道農民連盟書記長山居忠彰君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず浜出滋人君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

浜出滋人君 このたび当公聴会の意見陳述に参加させていただくことになりました株式会社東和電機製作所の浜出と申します。よろしくお願いいたします。

 弊社は、ことしで創業五十四年目を迎える漁業用省力機器の開発、製造、販売を行っている会社でございます。資本金は九千九百万円、従業員はパート、アルバイトを含めて約八十名の北海道函館市に本社を置く会社でございます。前年度の売り上げは約三十一億円で、ここ数年は同程度の売り上げにて推移しております。

 主な製品は、なかなかなじみがないと思うんですが、イカ釣り漁船にて使われる全自動のイカ釣り機械、これは現在確認される限り世界シェアで約七五%を誇っております。

 次に、ホタテの養殖用の機器、こちらもなかなかなじみがないと思うんですが、北海道の噴火湾と呼ばれる地区、耳づり養殖というのが非常に盛んな地区でございまして、そういったところで使用されている製品となっております。また、特殊な機械、さらにマーケットがそれほど大きくないということもあって、世界シェアでいうと約九〇%近くを誇っております。

 また、近年力を入れております水産業、特に漁船上での省エネ化という観点から、LEDの漁灯の開発に力を入れております。LED漁灯に関して言いますと、既存のメタルハライドランプという灯具に比較して約九〇%以上の省エネを達成し、特に棒受け網のサンマ漁船に関して申し上げますと約六〇%程度のシェアを保有しております。

 その他、イカ釣り機を応用したマグロの一本釣りの機械、また海外向けの水中灯等のシステムの製造、販売を行っております。

 当社は、三十年以上前から製品の輸出を開始いたしました。最初に輸出を開始したのは台湾で、当時は商社を介し製品の提供を行っておりましたが、しかしながら、特殊な製品ということもあり、アフターの対応、現地での試運転、また技術指導等の関係上、少しずつ直接輸出の方にシフトしていきました。

 直近の実績で申し上げますと、当社の売り上げ全体における海外の売上比率は約五〇%、輸出先は中国、韓国、台湾が直近でいいますと主ではございますが、南米、チリ、ペルー、アルゼンチン等にも輸出を行っております。南米向けに関しては、ここ数年に関してはそれほど多くはないんですが、最近の現地での水産状況を鑑みますと、今後、TPPの影響もあり、非常に有望なマーケットになり得るのかなと考えております。そういう意味では、今後TPPに加盟する国がふえていくことによりまして、当社のマーケットも拡大していくのではないかということで期待しております。

 あと、本当に最近の話ではございますが、メキシコだとか中米、そちらからの引き合いが非常に多く来ておりまして、今まさにメキシコも該当する国ということもありまして、非常に期待しているところでございます。

 一方、国内販売での影響に関してですが、海外に競合する企業がほとんど存在しないということもございまして、国内においては弊社のほかにもう一社、あと韓国の方にも一社ございましたが、最近はほとんど日本の二社のみで世界じゅうの製品の提供を行っているような状況でございます。また、当社の機械の対象とならない魚種も含め、国内漁業の売り上げが全体的に落ちますと、漁具の買い控え等であったり、そういう形での影響が出ると懸念しております。

 一次産業はもちろん、漁業においても高齢化、後継者不足により廃業する方等、非常にふえておりますので、国内における漁業マーケット自体が縮小化が急速に進んでいる中で、具体的提案はなかなか難しいとは思うんですが、国内漁業への影響が出ない、または少しでも影響が少なくなるような御処置をぜひ御検討いただきたいと思います。

 次に、知的財産関係の問題なんですが、今回の件で一番心配しているのは係争関係になります。

 既に当社におきましては、先ほどお話しさせていただきましたように、地方の一企業としては、比較的早い段階から海外輸出を始めていたということもあり、知財戦略を推し進めていたこともあり、国際特許の取得を含め、戦略的に動いていたところではございます。

 海外に当社製品が出回ると同時に、必ずと言っていいほど、模倣品であったり、サードメーカーによる極めて類似性の高い商品等が市場に出回る。また、そういった中で、仮に悪意のある製造者が、豊富な財力等を背景に、当社に対して知財の観点から係争等に持ち込むことも想定され、我々中小企業はなかなか太刀打ちできない可能性がございます。

 また、仮に係争に負けた場合、これまで以上に高額の補償金等を要求されることに加え、懲罰的補償金等が課せられる可能性もあると懸念しております。

 これらに関し、TPP発効によって海外における特許出願手続の迅速化が図られ、知財保護の観点で安心して海外展開できる環境となることを期待するとともに、ぜひ中小企業対象の知財保険的なバックアップ体制を御検討賜りたいと願っております。

 私どもの主力製品の対象でもありますイカの漁獲量も年々厳しくなっております。特にことしは、もう近年類を見ないほど全体的な魚種に関して不漁という状況になっておりまして、また世界的にも、さまざまな予期し得ぬ天災等により、漁場においても生態系が大きく変わっているようでございます。特定の要因が原因とはなかなか言えない部分はあるんですが、いろいろな要素の結果、また大きく漁場が変動しております。

 例えば、ここ二、三年のイカの主要漁場でございました北海道道東の羅臼地区でも、ことしはイカの集積が全く見られないというような状況になっております。ここ数日に関してはちょっといい話も聞いて、多少回復してきたというような話もございますが、依然、例年と比べると非常に厳しい状況でございます。

 当社としても、今後、漁場の変動予測システム、また、漁業におけるIoT化や巻き上げ機械を含む漁船上における包括的なシステムの開発等を進めてまいります。特許重視の製品開発を進めているということもあり、さきにお話しさせていただきました国際的な知財戦略というのがなお一層重要になってまいります。一次産業においても、さらなる開発及び知財戦略のバックアップ等、手厚い支援を賜れれば幸いでございます。

 私に限らず、日々の実務に追われている中小企業にとって、実際のところ、いかなる影響が出るか具体的にしっかりと把握されている企業というのはまだまだ多くはないのかなと感じております。既にさまざまな勉強会等を催されていることとは存じますが、さらに業種を少し細分化して、改めてきめ細やかな勉強会等の開催などをお願いできれば幸いでございます。

 また、当社の方では、今回TPPに参加する東南アジアの国々の方からもいろいろと引き合いが今来ているような状況でございますので、そういった観点から、関税率の撤廃等、非常に大きな期待を持っておりますので、そういった意味でも、ぜひ、中小企業として、小さな会社ではございますが、いろいろな形で頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 簡単ではございますが、以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

塩谷座長 ありがとうございました。

 次に、中原准一君にお願いいたします。

中原准一君 ただいま御紹介いただきました北海道農業ジャーナリストの会会員の中原でございます。また、五年前まで酪農学園大学に勤務しておりました。

 それでは、早速問題に入りたいと思います。

 私が最初に申し上げたいのは、例えば北海道の農業者三万八千戸、これはほとんど専業的な、農業以外に所得を上げる道を持たない専門的な農業者たちです。かつては二十数万戸おりました。しかし、経済成長の中で今日このような数になっております。しかし、残った農家は試し済みの腕のしっかりした農業者です。これをどう守っていくのか。国会の先生方はよくごらんになっていただきたいと思います。

 きのうの北海道新聞の夕刊は、JR北海道が三線廃止、その横のトップ見出しにJR九州が上場したと対照的な見出しを立てております。このように北海道の死活的な利害にかかわるTPPでございますので、しっかりと現状を掌握していただきたいというふうに思っております。

 この三万八千戸の農家は、百十五万ヘクタールの農地を経営しております。結局、一戸当たりの規模にいたしますとEU並みの経営スケールを持っておりますけれども、しかし、それを支える体制、そこが問われる。そうなってまいりますと、今回のTPPの特別委員会でも、農業対策が打ち出され、関連法案があるようですけれども、それらも子細に見て検討していただきたいというのが現場の声ではないか。私もひしひしと受けとめているところです。

 それから、ひとり農業者だけではなくて、北海道の製造業の出荷額の三五%は農業関連の食品工業の出荷額です。そこには製造業従業員の四〇%が集中しております。ですから、農業が単に産業としての農業だけではなくて、裾野の広い関連産業と一体となって存立しているのが北海道の姿でございます。その点もよくごらんになっていただきたいと思っております。

 いずれにしても、私は、死活的な利害がこの一瞬にかかっている、したがって、慎重審議を国会でお願いしておきたい、きっちりと利害得失、国民に納得のいく形でお示しをしていただきたい。苦労するのは現場の農業者です。その人たちに国会はどう応えていただけるんでしょうか。その点、よろしくお願いをしたいと思っております。

 それで、もう一つ申し上げたいのは、やはり、最近の、一カ月ほど前でしょうか、共同通信が世論調査を行いまして、これは九月十七、十八日でございますけれども、TPP協定関連法案について、臨時国会で成立を望むとおっしゃっている方が回答者の一一・九%、成立にこだわらず慎重審議を求めるというのが七三・二%。国民の声は圧倒的に慎重に審議をしろということでございます。まかり間違っても強行採決というようなことはなさらないように、特に政府・与党の側にはお願いをしたいと思っております。

 つまり、国民は知る権利があります。これは、ケネディ大統領が消費者の権利として提起した問題でもあります。そういった意味で、国民にわかりやすい、決して、ノリ弁当の資料で、そして強行採決で終わるというような形にはしていただきたくないというのが率直な気持ちでございます。

 もう一つ、気になる点がございます。北海道の農業に引き戻しますと、TPP交渉でもセンシティビティーズということで、重要五農産物ということで、米、小麦、乳製品、牛肉・豚肉の食肉、それから北海道でいえば、非常に利害がかかわっておりますビートを抱える甘味資源作物、これら重要品目については除外または例外、こういう国会決議も衆参の委員会でなされております。

 このような点から見てまいりまして、今回、確かに関税は一部残っているかもしれないけれども、中身は大変です。

 これは、森山前農林水産大臣が、TPPの衆議院の特別委員会で御答弁になっておりますけれども、野党議員の質問に対してこのようにお答えになっております。変更を加えていないものがあったかと問われれば、それはない。これは言いかえますと、全ての生産品について、TPP協定では関税率や制度面でいろいろなところにくさびを入れられているということなんです。そこのところを御理解いただきたい。

 そうすると、この重要五品目は、北海道農業のそれぞれの地帯を代表する作目で、どれをとっても欠かせないものなんです。これがもろにかぶってきている。ここのところを御理解いただきたいというふうに思っております。

 そういう意味で、本当にバイタルな、死活的な、百五十年に一度かそこらという非常に危機的な状況の中に北海道農業は来ているということを御理解賜りたいと思っております。

 それから、もう一つ申し上げたいのは、消費者が、やはり食の安全、安心ということで、大変心配をされております。

 ところが、今度のTPPの本協定の第八章、全三十章なのでございますけれども、その第八章は貿易の技術的障害、いわゆるTBTということでいろいろ決められておりまして、これが国会審議において、一部触れられているのかもしれませんけれども、消費者の利害とすれば、もっと解明していただきたい問題があります。

 この第八章のところではどういうことが問題かということになりますと、国産表示をしようとする場合に、例えば、この第八章では、必要とされる記載を超える負担のある表示というようなレッテルが張られて、不当な貿易障害である、そういう非関税障壁のルールにひっかかって、ここがやはり責め立てられるだろう、そういう予測をせざるを得ません。

 ですから、この点についても、日本の食品は大丈夫だよと政府はおっしゃるんだけれども、では、その大丈夫さというのは、国際交渉の厳しいシリアスな場面で、どういうことを担保して大丈夫と言えるのか、これを国会で明らかにしていただきたいというふうに思っております。

 北海道は、遺伝子組み換え作物についても厳しい条例をつくって排除しようとしておりますけれども、この点についても、第八章の七条一項というところで、各締約国は、他の締約国に対して、強制規格、任意規格及び適合性評価手続の作成に参加することを認める、つまり、多国籍大企業がやはり日本の遺伝子組み換え規制は邪魔であるという判断をして、協議をしろ、そういう、単純にルールではなくて、そのルールを決める協議組織まで今度の条項に入っているわけです。ですから、ここで、多国籍企業の介入の中で日本がどれだけ踏ん張れるのか、消費者が築いてきた貴重な成果を踏ん張れるのか、そこが心配であります。

 最後に一言。EUでは、科学的に因果関係が十分証明されていない状況でも規制を行えるんだということで、TTIPでは、EUと合衆国との間で物すごくちょうちょうはっしな対立があって、ドイツやフランスの産業大臣は、こんな協定は結びたくないということで尻をまくっております。

 つまり、この予防原則というのは、そういう点で、日本の四大公害裁判の中で、被害者をどうやって救済するか、全く黒と決めつける材料を科学的に証明できなくても、危害が予想されるという場合にはリリーフ、救済しよう、これは何も日本の独擅場ではなくて、OECDというパリに本部があるそこで、それを環境規制のルールにしましょうと、国際標準、これをEUはかたくなに守っています。

 ですから、例えばGMなんかも、大丈夫ですよという国会答弁があったとしても、それはどこで担保されているのかということを追及していただきたいというふうに思っております。

 そういうことで、ともかく、慎重に審議をしてやっていただきたい、国民の負託に応えていただきたいということを切にアピールして、終わりたいと思います。(拍手)

塩谷座長 ありがとうございました。

 次に、崎出弘和君にお願いいたします。

崎出弘和君 私は、北海道漁連で北海道の漁業の方に携わっております。

 お配りした資料がございます。「道産水産物の輸出の現状と課題」ということで、我々は相当昔から水産物輸出に取り組んでまいりました。その背景ですとか今起きている課題ですとか、その後、TPP、これが閣僚会合でも署名もされていますし、その方向性の中で、いかに北海道水産物を、これを使わせていただきながら、さらに輸出していくか、そのようなことをお話しさせていただきたい、そう思っています。

 まず、この水色の資料がありますけれども、下の方に「北海道の漁業生産動向」と書いてあります。その前に、世界の水産物がどのような状況にあるか、そういう背景の中で貿易が伸びてきている、我々もその中で北海道水産物の輸出を伸ばしてきているということをお話しさせていただきます。

 今、世界の漁業生産というのは大体一億九千万トンという数字で、ちょっと横ばいです。特に海面漁業のものは漸減傾向、もう限界に来ているなという気がします。

 世界の水産物の輸入動向でありますが、例えば、一九七五年ですから今から四十年ほど前、世界の水産物貿易というのは百億ドルであります。一番最近時点で新しいのは二〇一三年でありますが、千三百五十四億ドルと相当な伸びであります。世界的に水産物の需要はふえております。特に、中国の伸び、それからEU、米国等、肉食が盛んな国においても非常に水産物の消費量が伸びてきているというのがあります。

 例えば、一九六一年から二〇一一年、大体五十年の間で、世界では一〇%の伸びとなっています、アフリカ関係は余り伸びていないんですが。日本は、たった二%の伸びです。非常に消費が減退傾向であります。ただし、中国のような十三億もいる国では、五八八%掛ける人口ですから、相当な絶対量がふえてきている。また、インドにおきましても、これも十三億ぐらいの人口がおりますけれども、一七八%。また、米国、EUにおきましても六〇%以上の伸びを示している。このような背景の中で、世界で水産物の貿易は相当広範囲にわたって行き来しているのが現状であります。

 その中で、まず北海道の漁業を説明させていただきたいんですが、この資料の一番下の方でありますけれども、漁業生産推移でありますが、最近、北海道は非常に不調であります。ことしは特に、全道の水揚げは百万トンを切るだろう。常に、多いときは三百万トン、大体百五十万トンから百二十万トンという数字でありましたが、去年あたりから百万トンぎりぎり、ことしはそれさえもいかない。ただし、供給が減る分だけ単価が上がりますので金額はふえていますけれども、これは非常に消費拡大の上ではマイナスになってくるという傾向はあります。

 北海道の漁業の中心というのは、やはり増養殖の成功例としてのホタテ、アキサケであります。この円グラフを見ていただきますと、この二つの魚種で五〇%ほどを占めるというのが実態であります。

 次のページをお開きいただきますと、このようなアキサケ、ホタテが世界の水揚げの中でどのような位置づけにあるかということをちょっとお示ししたいと思っております。

 上の方はサケでありますが、世界の鮭鱒関係の水揚げであります。上の円グラフの左側が天然でありますし、右側は養殖であります。日本では養殖は、ギンザケはありますが、まだ少ないので、この円グラフにはあらわれておりませんが、天然サケであれば、三陸がありますけれども、これは圧倒的に北海道が中心でありまして、こう見ますと、北アメリカとロシアは海岸線も長いので非常に大きいんですが、日本、特に北海道の位置づけ、天然の中では大きなシェアを占めておると言えると思います、この海岸線の中では。

 そしてまた、ホタテを見ていただきたいんですが、下の方にはやはり同じように天然と養殖に分けております。天然を見ていただきますと、日本、これはほぼ北海道です、世界の天然ホタテの約五割は北海道のオホーツク、根室で水揚げされております。そして、あとは同じように北米大陸ですね、アメリカ、カナダで二七%ほどの水揚げ。もちろん、養殖の方におきましては、噴火湾ですとか陸奥湾で養殖されています。中国が圧倒的に多いんですが、基本的に大きさが違う種類でありますので、大きなホタテといえば、やはり養殖ホタテであっても、世界で北海道、青森が占める要素は大きい。こういうものがいわゆる我々の輸出余力を高めているという思いであります。

 下の方には、道産水産物の輸出動向を記してございます。道内港と道外港でありますが、道内港からは、主にアキサケのドレスですとか中国向け等の原材料輸出、それから、活貝ですとかそのようなものが輸出されていますが、これは平成二十七年で六百八十九億。隣は道外港でありますが、三百七億でありますから、約一千億円近い北海道の水産物を使ったものが輸出されておる。道外港からはホタテが多いんです。これは、冷凍ホタテでアメリカに行く、フランスに行くというものですね。それから、干し貝柱はほぼ香港に行くというもので、合わせますと一千億近い輸出を、もう既に実績を上げている。

 今、農水省さんも食料輸出一兆円という目標を挙げておりまして、水産物でいえば、平成三十二年度までに三千五百億円でしたか、そういう中で、北海道は、ホタテだけ見ましても、多いときは八百億円という、非常に水産物輸出の先頭を切っておるなという思いはあります。

 次のページをめくっていただきまして、道産主要魚種の輸出動向でありますが、ホタテは大きく伸びております。ただ、これは水色の中国がちょっと問題でありまして、これは数量ですので、これは原料輸出でありますので貝殻を含んでいますので、実態はこれほど大きな金額にはなりません。ただ、やはり海外の需要が北海道産ホタテに対しては非常に大きくて、伸び続けている。

 それから、アキサケにつきましては、これはちょっと減っております。これは水揚げの減少であります。あと、為替の問題もありますけれども、そういう面では減っておりますが、やはり輸出が、以前は五万トン近い輸出をしておりますが、やはりこれも、先ほど示したとおり、天然のアキサケであれば、サケというものを見れば、世界でもアメリカ、ロシアに次ぐような水揚げを持っている。パーセンテージは少ないんですけれども、そのような輸出余力を持っているというのが北海道のアキサケであります。

 また、スケソウにつきましては中国、韓国ということで、韓国は主に鮮スケソウ、中国は冷凍スケソウ。ただ、一番問題なのは、韓国がどんどん減っています。これは放射性物質による風評被害ですから、なかなか韓国国内では流通しにくいということでこのようなデータになっております。

 この三つの魚種が、主に原材料系が中心ですが、北海道の輸出の主要魚種であります。

 その下に、我々、道産水産物の輸出形態をちょっとまとめております。

 先ほどから言っていますが、昔から輸出しているのは加工原料向け冷凍品なんです。これは原料のホタテですとかアキサケ、スケトウ等ですね。それから、最近我々が特に力を入れているのは、原材料輸出から加工品輸出、それを海外の末端の業者に販売していく、量販店なり業務筋なりに売っていく、それに今相当力を込めております。

 なぜかというと、原料輸出というのは現状では非常に問題があります。これは、大体一〇〇あれば九五%は現地産に化けてしまいます。道産のホタテ、道産のアキサケという認知がほぼされないというのがありまして、やはり今、農林水産省もそうですが、世界には日本レストランは約九万店ほどありますが、そういう中で本当に日本食、和食を普及させるためにも、我々はこれからはこういう加工品にさらに力を入れて、付加価値を北海道で高めて、そして輸出していきたいという考えであります。

 それからもう一つ、北海道の一番弱い点ですが、鮮魚輸出ですね。鮮魚というのもやはり末端の消費者、海外の消費者にお届けできるものでありますので、これも力を入れていきたい。今、長崎県が相当先行して進んでいる県でありますので、北海道としてもさらに北海道の鮮度のいい魚、鮮魚を海外のマーケットに広めていきたいという考えであります。

 次のページをめくっていただきますと、今、道漁連はいろいろな輸出関係協議会に入っておりまして、このような協議会の中で我々の輸出をさらに伸ばすという意味でいろいろな協力を得ておりますし、下の方には課題が書いてあります。

 ただ、今、私の方からは、輸出をさらに伸ばしていくという話、マーケティングをしながら伸ばしているのはいるんですが、基本的には国内マーケットをしっかり伸ばしていった上で、さらに輸出をしていく、いわゆる国内の消費と海外消費のバランスを図りながら輸出を伸ばしていくという基本的な考えのもとにこの事業を進めているということは御了解いただきたいなと思っております。

 下の方には、我々が今輸出を実際していてどのような課題があるのか、解決してほしいというものがここに並べてありますが、一番大きいのはやはり、いろいろな国、放射性物質の問題もそうですし、中国の場合はいろいろな証明書類が多様にありまして非常に煩雑であります。こういう問題も解決していただければさらに輸出を伸ばしていけるかなと思っています。国内の手続においてもそうです。衛生証明なり原産地証明なり放射性物質の証明なり、こういうものも迅速にやることによってさらに輸出の伸長に寄与するだろうと思っております。

 あとは、北海道の場合は物流上やはりなかなか不便なところが今あります。千歳空港も相当今は伸びてきておりますが、そういう面ではまだまだ、世界各国に空輸するなり、また船の面でも航路が少ない、そういうことで物流の整備も必要だと思っております。

 ただ、今、下の方にいろいろ書いておりますが、農林水産省さん、それから水産庁さん、輸出の促進事業という意味でいろいろな事業費をつけていただきまして、我々も相当使わせていただきながら輸出の進捗を図っております。

 我々、TPPという形が今ある程度各国との合意になっている中では、このTPPの制度を我々の道産水産物の輸出にいかに使わせていただきながら、さらにこれをどう伸ばしていくかということが今我々がやることかなと思っておりますので、そういう御了解をいただきたいと思っています。

 今、TPPは我が国を含めまして十二カ国という形になっています。特に注目するのは東南アジアですね。ASEANは今十カ国で約六億人の人口がおります。その中でTPPでは四カ国ありますので、その国を起爆剤にして、さらに将来、この六億人のマーケットを使いながら道産水産物の販路拡張、それによって魚価を維持していくという、我々生産者団体としての役割を果たしていきたい、そういう考えでおります。

 以上であります。(拍手)

塩谷座長 ありがとうございました。

 次に、山居忠彰君にお願いいたします。

山居忠彰君 私は、全道約二万二千戸の農業者で構成している北海道農民連盟の書記長をしております山居忠彰といいます。

 私どもの組織は、政府がTPP交渉への参加検討を表明して以来、これまで一貫して断固反対の運動を続けてまいりました。そのスタンスは、TPP合意となった今も変わっておりません。本日は、TPP協定承認案には断固反対との立場から意見を述べたいと思います。

 政府・与党は、TPP承認案と関連法案をこの臨時国会で批准、成立させようとしておりますが、私はこれに強く反対いたします。

 既に、森山前農林水産大臣が、重要農産品で無傷なものは一つもないと認めているように、この協定は、TPP断固反対とした自由民主党みずからの公約にも、また重要農産品の除外を求めた国会決議にも著しく反することは明々白々であります。

 こうした中、今回明らかとなったSBS輸入米の不透明な取引問題、価格偽装について、政府は国産米価格への影響はないと説明していますが、極めて不十分かつ不誠実な調査であって、TPP影響試算の正当性を根底から失わせるものです。農業者は、TPPによる米への影響はないとの説明も含めて、誰一人信じている者はおりません。

 ことし三月に、私どもがNPO法人と協力して、稲作農家一千名を対象に、米政策に関するアンケート調査を行いました。その中で、TPPの米に対する影響を尋ねたところ、有効回答数七百六十七名中、政府の試算に示されたとおり、生産量、価格ともに影響はないと答えたのはわずか二%にすぎず、生産量への影響はないが、価格への影響はある、価格下落圧力として働くが七七%と、約八割の人が影響を受けるとしております。なお、わからないが一五%、その他が六%でした。

 したがって、TPPに対する影響調査を初めSBS米の不透明な取引問題の調査結果について、影響はなく心配御無用とする一方的な政府の姿勢に対し、農業者を初め多くの国民は強く疑念を抱いております。

 さきの通常国会での黒塗りの資料に象徴される政府の徹底した秘密主義に加え、協定文の誤訳やSBS米の輸入価格偽装問題、さらに食の安全への懸念や強行採決を示唆する山本農相の問題発言などが次々と出てきて国民の不信感を増大させ、もはや国会審議の前提条件が崩れていると言わざるを得ません。

 国民、農業者は、TPPにまつわる数々の疑問や不安に対し、冷静沈着で建設的な国会審議を求めております。TPP特別委員会においては、承認ありきの姿勢で審議するのではなく、TPP協定の逐条審査など、本質的な論議に十分な時間をかけて丁寧に審議されることを強く要望するものであります。

 九月に共同通信社が行った世論調査、九月十七日から十八日では、TPP協定承認案について、臨時国会にこだわらず慎重に審議すべきが七三・二%に対し、臨時国会で成立させるべきは一一・九%。十月にNHKが行った世論調査、十月八日から十日、回答九百七十九人でも、今国会でのTPP承認に賛成は一九%、反対は一七%と拮抗しておりますが、どちらでもないが五二%となっています。

 このように、世論調査を見ても、依然として国民理解は深まっていないと思うわけであります。

 協定の内容がいまだに多くの国民に知らされず、さらには、米国を初め参加各国の承認手続も不透明さを増す中で、今、日本だけが批准を急ぐ理由はありません。交渉経過を含めて情報をしっかり開示して、文字どおり、国会を含めた国民的論議を行うべきです。どう考えても、今臨時国会で拙速にTPP協定を批准すべきではない。国民の命と暮らしにかかわるだけに、国会の機能を十分発揮させ、まだまだ徹底的に審議を積み重ねるべきだと思います。

 国会議員の皆さんは、国家安全保障の観点から、食料自給の重要性を当然認識されておられるわけですから、食料生産や地域の担い手である家族農業者を守るとのかたい意思のもと、みずからの責任で行った国会決議を遵守することに全力を挙げるべきです。国会決議に反していないという政府、官僚の説明をうのみにせず、自分たち自身で協定内容をしっかりと確かめてもらいたいと思います。

 そのためにも、今国会でのわずかな審議時間で拙速に承認するのではなく、慎重かつ丁寧に本質的な論議を行っていただきたいと思います。

 最後に、北海道農業について若干述べたいと思います。

 北海道は、専業的な家族経営を中心に土地利用型農業を展開し、我が国最大の農業地帯としてその役割を果たしてきました。TPP協定の合意内容では、本道農業の基幹作目である米や酪農、畜産、畑作、野菜などに甚大な影響を及ぼし、農業経営の継続が困難となること必至であります。

 道庁の影響試算では、農畜産物の生産減少額はマイナス約三百三十七億からマイナス約四百七十億円と、当初試算のマイナス四千七百六十二億円より小さくなっておりますが、これは国の試算方法に即して、しかも米の影響はゼロとするものであり、極めて恣意的な前提条件のもとで、過小な影響額評価であると言わざるを得ません。

 特に、米価暴落に苦しむ稲作農家や生産基盤の弱体化が進む酪農、畜産農家にとってはさらなる離農に追い打ちをかけるものであり、改めてTPP批准に反対するものであります。

 また、食料自給率二〇〇%を超える北海道農業の崩壊は、我が国の食料安全保障の瓦解につながるとともに、地域経済社会の衰退に拍車をかけ、政府が掲げる地方創生どころか地方崩壊の道をたどることになります。

 そうしたことにならないよう、ぜひとも、若い次の世代の人たちが地域の仲間たちと安心して農業が続けられるよう、我が国の食料・農業政策、経済政策を進めていってほしいと思います。

 北海道では、ことし八月の相次ぐ台風の上陸などによる大雨等の影響で甚大な被害を受けました。農業関係でも、被害推計額の総額は五百四十三億円にも及んでいます。多くの農作物を初め、農地、施設などに大きな影響をこうむっております。農業者は、来年度の営農が果たして続けていけるのだろうかと不安な毎日を過ごしております。被害を直接受けなかった農業者も、大雨の影響による品質の低下や収量の減少などで、経営的にもはかり知れない影響を受けております。

 こうした精神的、経済的ダメージが深刻の度合いを深める中で、TPPによる農業等への影響について国会議論が十分に深まらないままに、TPP協定承認案を強行採決されるということは決してあってはならないと思います。

 改めまして、TPP協定承認案には断固反対であることを再度申し上げます。

 本日は、このような意見を述べる機会を与えてくれましたことに深く感謝申し上げ、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

塩谷座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。うえの賢一郎君。

うえの委員 自由民主党のうえの賢一郎でございます。

 それぞれの意見陳述者の皆様におかれましては、貴重な御意見を頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。御多用の中、お時間を頂戴しておりますことにも改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。

 それぞれの御専門の分野、御見識に基づいてお話をいただきました。全ての皆様に質問をさせていただければよいのですが、時間の兼ね合いもございますので、そうならない可能性もございまして、あらかじめ御了承をいただきたいというふうに思います。

 それでは、最初に、東和電機製作所の浜出さんにお話をお伺いしたいと思います。

 お話をお伺いしておりまして、御社が、今海外売上高が約五割ということで、また、世界シェアが、ホタテ関連については九割という非常に高いシェアを誇っていらっしゃるということを知りました。

 そうした中で、これまで、いろいろ現場で御苦労をいただきながら、技術開発、技術革新を続け、また、特許等についてもしっかりと保護をしながら事業を進めてこられたと思うんですが、浜出さんが、海外で頑張っていこう、勝負をしていこうと思われるようになったきっかけ、あるいは、今現在海外で仕事をされている中で、こういったところが不安がある、あるいは、こういった点が障害だ、障壁だとお考えになられているようなことがあれば教えていただきたいというふうに思います。

浜出滋人君 弊社は、今海外に比重を、まあ重きを置いているというほどではないんですが、先ほどお話しさせていただきましたように、国内は後継者不足、さらに高齢化、実際のお客様の方でも自分の代で廃業するという方が非常にふえている。一方で、先ほどいろいろお話が出ておりましたが、国内における水産業の消費量というのは年々少しずつ減ってはきているんですが、世界的に見ますと、水産資源は消費量は年々ふえてきているというような状況。

 ですから、そういった意味で申し上げますと、もちろん、国内の水産従事者の方々がしっかり喜ぶようなサービスであったり製品は継続的に提供しつつ、かつ、製造業のメーカーとして、企業としての意見として考えますと、やはり生き残っていくためには、海外のマーケットをしっかり注視しながら、海外での需要、それに応える製品の開発を進めていく必要があるというところで、ここ数年に関しては売上比率が大体半分くらいだったんですが、これから先、向こう三年後、五年間、長いスパンで見ると、恐らく海外の売上比率の方が高くなっていくだろう、会社としてはそのように考えております。

 そういった中で、あくまで製造業という立場からのお話にはなるんですが、いろいろな国々から引き合いがある中で、国によって、要は、漁法、先ほどホタテの養殖の件でお話しさせていただいたんですが、御質問もありましたが、基本的には、ホタテの養殖というのは、耳づり養殖という漁法と、あと、かご養殖、基本的には二つに分類されるところが多くて、その中で、かごというのは、小さな稚貝というものを網のようなものにたくさん入れて海に置いて、それで成長を促して、大きくなったところで回収する。これは、北海道でいうと道東とか、あと、青森、東北の方が比較的、どちらかというと多くの漁家がやられている養殖です。

 先ほど、弊社の製品として利用されているのが耳づり養殖用の、耳づり養殖、なかなか聞いたことがないとは思うんですが、小さな貝、要は、二枚貝なんですが、ピンポイントのある特定の場所に穴をあけて、特殊なピンをそこに刺し、そして、特殊なロープにそのピンを刺したまま稚貝を何個も固定する、そして、その一方のロープにたくさんの稚貝が乗ったものをブイにつけて、噴火湾というか、要は海に置いて、成長を促して、大きくなったところで回収する、北海道ではそういう耳づり養殖というのが基本的には盛んなところになっております。

 そういった意味でいうと、ホタテの養殖も、先ほどお話がありましたように、中国等で非常に消費がふえてきております。輸入量も実際多いということもあり、同時に、中国自国内でもホタテの養殖にさらに力を入れていきたいというような国家的な動きもございまして、当社の製品の購入等、話はあるんですが、一方で、やはり中国といいますと、イカ釣り機で、当社が三十年ほど前に輸出を開始したときからいろいろ苦労したところではあるんですが、やはり模倣品、あと、全て製品をばらされて、全く同じようなものを安いコストで当然つくられる、全ての製造業の大きな悩みになっていると思うんです。

 そこで、では、どうやって差別化をするかというところで非常に苦労したところがございまして、当社でいうと、イカ釣り機というのは船の上で使われる機械で、当時、イカ釣り機を輸出開始したときには、同じような模倣品が、韓国もしくは中国、そういったところでほぼ同じような機械が半値以下で販売、うちが輸出を開始して多分一年以内に新しく製品が市場に出回りました。

 ただ、当社として非常にありがたかったのは、要は、徹底した現場主義ということで、お客様からのニーズにとにかく応えたいということで、何かあったときにはすぐ北海道からわざわざ、中国であっても、もしくは本当に地球の裏側、アルゼンチンであってもチリであってもペルーであっても、現地に出向いたということ。

 そして、あと、一般商材ではなく産業機械だったので、その機械に故障等が発生した場合は、当然、それを使っている漁師の方々は、例えば遠洋漁業に出た場合、半月もしくは一カ月くらいかけて漁場に移動して、実際に漁を開始しようとしたときに機械が壊れて動かない、そういったことも多々起こったという背景もございまして、やはり品質というところが非常に重要視された。

 そういった中で、先ほど申し上げましたように、徹底した現場主義ということもあって、海外市場で高く評価され、そういった結果として、もともと、当時、イカ釣り機でいうと、大手も含めて四十社ぐらいいた中で、どんどん淘汰されていって、最後に生き残っていたのは当社と、国内だともう一社の二社だけという状況なので、そういう背景もあって、何とか海外の方で高い評価をいただき、結果、高いシェアをとることができたのかなと考えております。

うえの委員 ありがとうございます。

 引き続き、浜出さんにお伺いをしたいと思います。

 今回のTPPにつきましては、GDPベースでいえば世界全体の四割が、批准された場合には、発効した場合には加盟するということになります。センシティビティーに一定の配慮をしながら、大きな自由貿易の市場ができるということでございます。

 まず、総論として、そうしたことに対してどのような評価をされているのかということをお伺いしたいのと、もう一つは、先ほどまさにおっしゃられました模倣品対策、これにつきましても、TPPの中で、レベルの高い、水準の高い保護措置を、水際対策をしっかりやっていくということが位置づけられているわけであります。今回、中国はTPPに関係はありませんけれども、中国から出ていく模倣品についてはそれぞれの加盟国の水際で対応できるような、そういったことをしっかりやっていくというような内容になっているかと思いますが、そうしたことについてのお考えも含めて、全体的な評価についてお伺いをしたいというふうに思います。

浜出滋人君 先ほどもお話しさせていただいたんですが、今後のマーケットとして東南アジアは非常に大きな、重要な位置にあると考えております。

 実際に、弊社の製品でいいますと、一本釣りの機械になります。ですから、国によっては、まき網であったりトロール、そういったものをメーンで行っているような国よりかは、どちらかというと、先進国と言うのが正しいかどうかはわからないんですが、一本釣りで、ある特定の魚種に限定して漁を行う、そして資源をしっかり管理しながら行うという国に基本的にはマーケットがその段階で発生する形になります。

 ですから、マーケットとして将来的に、例えば東南アジアでいうと、実際にその国々での水産資源の消費量が少しずつふえているものの、実際にその国においては、例えばベトナムであったりインドネシアというのは、本当に小さな小船を使って、船外機でちょっと外に出て網を引いて魚をとってくる、そういった船がほとんどというような状況でございます。

 ですから、そういった意味で、実際に、将来的にこれから少しずつ伸びていく部分はあるんですが、弊社の製品に関して言いますと、当然、船の上で発電機等も必要になってまいりますので、それなりの設備が必要となってまいります。ですから、そういう意味で申し上げますと、それなりの設備を持った国が、まず直近で申し上げますと、開拓すべきマーケットになっていくだろう。

 そういった意味でいいますと、長いスパンで考えますとベトナムだとか、ちょっとシンガポールは水産業自体がなかなか難しいところがあるんですが、実際に漁をするという国で考えますと、先ほど最初に申し上げましたように、メキシコだとか中米、あと、チリ、ペルー、そちらの方がすぐに結果を出すことができるマーケットにはなり得るのかな。

 そういった中で、関税率の撤廃等というのは、私どもにとっては非常に追い風になる部分が多くありまして、そういった意味では非常に期待しているところでございます。

 東南アジアのそれ以外の国に関しては、これから長い形で、いろいろ計画を練りながら戦略的に進めていこうということで会社としては考えているところでございます。

うえの委員 ありがとうございます。

 浜出さんに最後の質問をさせていただきたいと思います。

 TPPを契機として、仮に我が国が批准をして発効した場合ですが、中堅・中小企業がどんどん海外に出ていこう、あるいは海外に輸出をしようという企業がふえてくるのではないかと思います。実際に、中小企業庁なりが調査をしたデータによりますと、中堅・中小企業で約四割の企業が海外に関心があるというようなデータもあります。

 御社については、最初から志を持って、独自にいろいろな努力をされてきたと思うんですが、やはりこれから中堅・中小企業が海外に出ていく場合には、いろいろな専門家の皆さんの意見を聞いて、それで海外進出をやっていく、商品開発から販路開拓まで長いプロセスがありますので、そのそれぞれの段階においていろいろな人の知恵を生かしていくということが必要ではないかなというふうに思っていまして、実際、既に中小企業庁あるいは政府なりにおいてそういった対応をやり始めたところであります。

 こうした動きに対して、それぞれの中堅・中小企業に寄り添いながら政府が支援をしていく、そういったことについての評価なりお考えなりがございましたら、教えていただきたいと思います。

浜出滋人君 なかなかちょっと回答が難しいところではあるんですが、国によっては、やはり文化も違いますし、言語、歴史背景も当然異なるわけですから、私ども日本人という位置づけでお話をする上で、やはり一番大きな問題は、どこの国に関してもそうなんですが、いかに信頼できるパートナーを見つけるか、極端な話、そこに尽きるのかな。

 技術的な問題の解決であったり、そういったものはどうにでもなるんですが、やはりビジネスという観点から考えますと、そういう意味では、人の問題、これがこれから海外に展開していく企業の方にとって一番大きな障壁といいますか、問題になり得るのかな。

 ですから、そこは国としてのフォローというのはなかなか難しい部分ではあると思うんですが、要は、本当に右も左もわからない中で、これから新しく海外に展開していこうという企業はたくさんあると思いますし、そういった意味では、特に、先ほど何度もお話がありましたが、北海道の水産資源というのは世界的に非常に高い評価を得ています。なかなか話題には出ないんですが、例えば、漁師の方が船で魚を実際に釣った後、箱詰めするまでの作業、そこには衛生管理とか、なかなか論じられることは少ないんですが、実はそこが世界でも高く評価されている部分、イコール、世界の中で日本、特に北海道の水産物は非常においしくて新鮮で安全だ、そういうのが長い間、時間をかけてでき上がったという経緯もあります。

 そういったところで、特にこれから海外に展開していこうという企業がたくさんあるところで、よく、うちの会社もいろいろ御相談を受けることがあるんですが、やはり新しい国、最近でいうと、中国、韓国、台湾はまだいいんですが、例えばインドだとか、そういったところにこれから販路を進めていこう、あと、まさに最近の話なんですが、ベトナムの方に水産加工品を輸出したい、そういう中で、ベトナムとビジネスをやる上で注意点はどういうところがあるだろうかという、そういった質問もよくいただくんですが、正直なところ、具体的にどうこうというのはなかなかちょっと回答が難しいところがありまして、そういった企業さんには必ず押しなべて伝えるんですが、やはり信頼できるパートナーを見つける、そこに尽きますよということで一応勧めております。

 要は、現地で動くのに一番大事なのは、やはり文化を知ることと、そういった中でパートナーをどうやって見つけるか、そういったところが、ある意味企業にとっては一番重要なところなのかなとは思います。

うえの委員 ありがとうございました。

 それでは、崎出専務にお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほど資料を拝見いたしまして、北海道の漁業が輸出の面においてもすごく頑張っていただいているということを改めて勉強させていただきましたし、とりわけ、先ほど来お話があったホタテ、これは恐らく長い歴史があるんだと思います。そうした歴史も踏まえて、これまで輸出が世界的にも成功してきたと言えると思いますが、その理由についてお示しをいただきたいと思います。

崎出弘和君 北海道のホタテ、これは、北海道の漁業の中で、先ほどの円グラフにもありましたけれども、非常に大きなシェアを占めている今一番の基幹魚種になっています。これもやはり増養殖事業の成功例の最もよい例ですね。

 昭和五十年代の初めというのは、大体十万トンもいかない水揚げだったんです。それが今、最近はちょっと水揚げが減少になっちゃって、しけとかそういう天候不順でなっているんですが、おととしまでは四十八万トンまでふえてきたという、北海道にとっては、地域経済にとっても、非常に主要な魚種であり、産業になっております。結果的に、そういうような水揚げがどんどんどんどん増養殖の成功でふえてきた、それがやはり輸出余力を高めてきた。

 それからもう一つは、昭和五十年代というのは、アメリカ、フランスに我々は既に輸出していました。フランス輸出というのはもう昭和四十九年から始めていますし、アメリカ輸出はもう昭和五十五年当時から今のレベルで輸出しているんですね。三千トン以上の輸出をしていました。

 そもそも、フランスもアメリカもホタテを食べる国なんですよ。そういうマーケットが既にあった。そこに北海道の水揚げがどんどんふえていく。商社はやはりそこら辺に目をつけて、その当時から北海道産ホタテの輸出がどんどん伸びていったという経緯はあります。

 一時的に円高になったことはありますが、七十八円とか八十円がありました。そのときは大きく減ったんですが、やはり、百円前後の為替、去年までは百二十二円とかがありましたけれども、その中でどんと伸びてきたという経緯はあります。ですから、ホタテを消費する非常に大きなマーケットがあり、北海道では増養殖の成功でどんどん水揚げをふやすことができた。

 それからもう一つは、やはり品質問題なんです。

 今、浜出さんも言われましたけれども、北海道のホタテというのは沿岸漁業で、水揚げしてから一時間以内に入ってきて、すぐ加工してしまう。でも、アメリカなんというのは、漁に出て一週間もかかりますからね、船上加工して氷蔵で持ってくるような状況ですから。そういう面では、高品質である、高鮮度であるということも非常に各国に認められてきた。特にアメリカ、フランスでは当時はそういう経過があります。

 それでこのような輸出の中心になってきた、日本の国においても先頭を切って輸出する商品になってきたということが言えると思います。

うえの委員 ありがとうございます。

 今、ホタテのお話を興味深く受けとめました。

 そのほか、今後、先ほどお話のありました輸出形態、加工原料から、今後は加工製品、あるいは場合によっては鮮魚、そうした流れというようなお話がございましたけれども、そうしたことを今後進めるに当たりまして、今、障壁じゃないかなともし感じていらっしゃるようなことがあれば、御教示をいただきたいと思います。

崎出弘和君 今、浜出さんもおっしゃったんですが、模倣品というのがありましたよね。

 我々も、ホタテを原材料で輸出しちゃうと、アメリカの場合はいいんですが、中国への輸出、これは相当伸びてきまして、本当に、水揚げしたホタテを、貝がついたまま、加工屋さんが処理するようなもので輸出するのがどんどんふえてきたんです。あれがすごい量になってきていますね、最近。

 ところが、一方では、冷凍の貝柱だけで中国に、これは相当また伸びてきています。アメリカ並みにふえているんです、三千五百トンとかそういう数量が行っている。

 これは、いわゆる原材料なんですね。中国に行って、また水漬け加工をして、また中国から東南アジアとか各国に輸出されていくわけですね。そこに模倣品が出てくるわけです。結局、北海道でつくったホタテ製品の同じパッケージを模倣して使う。国内での流通には安全シールが要ります、これは貝毒を持っていますので。それまでも模倣していく。この取り締まりが全くできないです。

 そして、もっとひどいのは、我々がきれいな箱に入れて輸出したものを、中身を抜いて水漬けして、それをまたもとに戻す。パッケージは本物、中がにせもの、こういうものもあるわけです。我々は今、道産水産物、これは高品質という中で輸出を伸ばしてきた、それをうたい文句にやってきた、海外の消費者に訴求してきたという中で、これが非常に足を引っ張る。

 我々は今、ジェトロさんですとかそれから経済産業省もそういう模倣品対策のいろいろな施策がありまして、その中で非常に協力してもらっています。でも、これは根っこが絶てないんですね、どうしても。原産地は中国になってきます。これは言うのは非常に申しわけないんですが、非常にそこら辺が伸びていく、原材料は伸びていくんですが、一方では、そういうマイナス面が大きく出てきているんです。この二年間でも相当ひどくなってきています。ですから、そういう対策をぜひしてほしい。

 それからもう一つ。アメリカにも三千トン以上輸出していますし、五千トンのときもありました。アメリカは、あそこもやはり水漬けしちゃうんですね。でも、そこはちゃんと表示をして、アメリカのマーケットも受け入れて、そういうものとして売っていますから、それはちゃんと衛生基準にも合っていますし、アメリカの流通基準にも合っているんですよ。でも、これもアメリカのシースキャロップという形でもって流通していくんです。ですから、北海道産のホタテとして末端に行くのはほんの少しですね。

 我々、今そういう面では、直貿という形で、この資料にもありますが、漁連の二枚目の裏になりますが、ここに、我々の子会社が輸出している中で、オレンジ色の部分がありますね。これは加工製品、商品なんですよ。これはまさにそのまま外食産業なり量販店に納める形。これは我々、国内、道内で加工して、高品質のまま消費者に届けるという形で、そちらの方に力を入れていく。そして、粗悪品を駆逐していく。ただ、海外には値段で来ますので、それは水漬け、水を含ませますとコストが下がりますので、こういうものもなかなか、今度は販売に苦戦するという現状があります。

 ですから、やはり我々としては、今切実に感じるのは模倣品対策ですね。なかなか根を切れないというのが非常に悩みですね。そういうことが今課題としては大きく感じております。

 それからもう一つ、鮮魚輸出がありますね。今先生がおっしゃったとおり、我々は今度鮮魚の輸出を伸ばしていきたい。

 この問題というのは、国によって違うんですが、輸出手続、証明書手続が非常に煩雑なんです。今、農水省さんも、これを簡素化しようじゃないか、ワンストップ化しようじゃないかということで取り組んでいただいています。それがなかなか、我々も要請しながら、現場では、各地方では、それがうまくいっているところ、いっていないところが結構あります。

 やはりこれから、鮮魚というのはそのまま消費者に届けられるものですし、その品質を訴求できるものですから、北海道としてもこれはまだまだ少ないです。これに力を入れて、鮮魚であれば、今、国内の消費者ではなかなか消費が進まないカレイですとか、いろいろなそういう一般鮮魚も海外マーケットには送り込んでいける、それによって漁価を維持できるということができますので、そういう面では、この問題はやはり手続上の問題がまだまだ解決できていないかなという気はしております。

うえの委員 興味深いお話をありがとうございました。

 残念ながら、時間が来ましたので、私の質問はこれで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。

塩谷座長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民進党の佐々木でございます。

 きょうは、それぞれ皆さん多用の中、こうして我々の地方公聴会に御意見をいただいたこと、まず感謝を申し上げたいというふうに思います。

 限られた時間でありますので、今のうえの委員のと少しかぶるところもありますが、お許しをいただいて、できるだけ四人の皆さん方にお伺いをしたいというふうに思いますので、御協力をいただくようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 最初に、浜出さんと、それから崎出さんにお伺いをいたします。

 お二人とも輸出ということがメーンなので、内容がやや似ているということで、一緒にお伺いをさせていただきます。

 先ほど浜出さんの方からは、係争のことにちょっと具体的に触れていただきました。今日まで輸出をする経験をされて、お互いに今日の状況をつくってこられたという努力の中での経験からして、こういうところが大変困ったところだ、それがTPPによってこういうふうにスムーズになる、あるいは、今まで苦労してきたけれども、ここは今度は楽になるんだというようなものが具体的にあれば、ぜひ教えていただきたいなというふうに思っております。

 特に、模倣品の話がお二人ともから出たんですが、これは、原料原産地表示はむしろちょっとアメリカの方は抑制的でありますので、そんなことも含めて、今までの輸出の経験の中から、あるいはこのTPPに関してこれから期待すること、TPPという制度を使ってどうなるのかというようなことを、具体があれば一点ずつでも結構ですから、お教えいただきたいと思います。

浜出滋人君 なかなか回答が難しいところではあるんですが、弊社でいいますと、どちらかというと模倣品対策といいますか、特にアジア圏、今回のTPPの対象国ではないんですが、中国とかあの辺に関して言いますと、正直に申し上げますと、結局イタチごっこになってしまいます。国際特許で現地で特許を取得したとしても、それをまねして、こちらの方で例えば製品の差し押さえ等を行ったとしても、例えば中国であれば、結局イタチごっこになってしまって、どんどん時間が延びてしまって対応ができないというような状況。

 ですから、そういった意味で申し上げますと、輸出する国々によって対策を変える必要はあるんですが、今回対象となっている国に関して言いますと、例えばアメリカとかであれば、どちらかというとお客様の方から引き合い等が来て、機械の購入を行いたいという話は結構あったんですが、アメリカに関して言いますと、いろいろ技術的なところで、特に知財に関しては日本以上に非常に細かく見ているところもあって、ちょっと進め方を間違えてしまうと、まさに今懸念しているように、技術的なところでの、要は、特許に触れているといいますか、自社製品を守るということが非常に厳しくなってくるところがございます。

 そういった意味で、国によって、対策といいますか、どういうふうに押さえればいいのかというのは異なるのでなかなか難しいところではあるんですが、例えば税関の手続だとか通関手続とか、そういったところでの円滑化というのは非常に期待している部分ではございます。

 模倣品対策の観点から申し上げますと、何度も言いますが、やはり国によって対応等が違いますので、一口でどうこうとお答えするのはなかなか難しいところではあるんですが、そこは、民間企業の努力も自社努力も含めていろいろ進めていきながら、これからいろいろな形で意見等が出てくる可能性もあると思いますので、そうしたときには、何らかの形での対策であったり、そうしたときに即座に対応できるような、そういった組織といいますか、対策をとれるような体制にしていただけると非常にありがたいというような回答になります。

崎出弘和君 やはり我々が期待するのは、先ほど説明させていただいたんですが、輸出入の各国の手続の問題ですよね。いろいろな証明書が、東南アジアでも、例えば香港でも、シンガポールでも、台湾でも、それぞれ違うのがあります。これは、TPPに入った国が、少なくともこれによって、我々は輸出する、あちらが輸入する、手続関係が統一化されて簡素化されているということは期待できることかなという気はしております。それが一つですね。

 関税は、例えばASEANであれば、ベトナム以外は関税がゼロになっているところが多いので、今は加盟四カ国についてはそれほどないんですが、そういう手続問題の統一化。これが非常に今煩雑ですから、我が国と相手国との間の統一化がされていけば、非常にやりやすくなるし、伸ばせるなと。

 それからもう一つ、やはりマーケットの問題です。

 先ほど、最後にお話させていただきましたけれども、ASEANというのは十カ国ありまして、今回、四カ国が加盟しております。一億二千万の消費市場でございまして、ASEAN全体では六億人。

 そういう中で、やはり今、ベトナムというのは、我々、道産水産物の委託加工とか加工という面で中国からベトナムに移行している面もあります。このベトナムがTPPに入って、そして我々もそこで一部加工しながら、その国でまた再輸出していくということも、取り組みがいろいろ範囲が広がってくるのかなという気もしております。

 ベトナムは関税が高いので、一〇から一五ぐらいの関税がかかっていて、魚種によっては即時撤廃ですとか四年後撤廃とかありますけれども、そういう面では、ASEANが今後このTPPに入った場合に、インドネシアなんて二億五千万という消費者人口がいますので、そういう中では、これらにマーケットを広げるいい機会になってくるのではないか、そう思っております。

 一番大きいのは、やはり手続の関係の統一化、簡略化だと思います。

佐々木(隆)委員 それでは、中原先生にお伺いをさせていただきます。

 急遽、いろいろお繰り合わせ、陳述をいただきましたこと、お礼を申し上げたいというふうに思います。

 幾つかお伺いしたいところがあるんですが、まず一つは、重要五品目に先生触れられてございました。重要五品目というのは、かかって北海道の作物なわけでありまして、ここにも結構、結果として手が加えられたということによる影響というのは、先生御自身もいろいろ、先生の立場から感じておられること、そのことが一つ。

 もう一つは、残念ながら、きょう、ちょっと消費者をお呼びすることができなかったので、先生の方から、先ほど食の安心、安全に触れられておられました、GMの話なんかもしていただきましたので、広い先生のつき合いの中で、消費者という立場でこのTPPに対する懸念みたいなものがあれば。

 この二つ、まずお伺いします。

中原准一君 ありがとうございます。

 お答えする前に、私、ちょっと上がっていまして、私関連の資料をお渡ししておりました。一つは、北海道農業ジャーナリストの会の緊急声明、これはA4で三枚とじです。それから私どものジャーナリストの会と連携して各地で学習会等をしておられます北海道弁護士会連合会理事長先生の声明です。これはA4裏表。これも私の関連資料ということで、後でお読みいただきたいと思います。

 それで、まさに重要五品目ということで、関連する、例えば牛肉なんかを見ましても、オーストラリアとの間では、フローズンでは一九%とか関税を残していたんです。それからアメリカと二国間交渉をやると、それは九%までいっちゃうという。これはもうTPPの枠組みですから、最恵国待遇で、一方に、こちら側にこれということはできないんです。やはり九%に収れんしていく。

 だから、フロマン代表はTPPが何か高いレベルの貿易交渉だと。全然高くないですね。つまり、超多国籍企業が最もビジネスをしやすい環境を関税障壁を全部飛ばしてやりたい、そういうことになって、日本のおいしいマーケットがこじあけられた。

 だから、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授じゃありませんけれども、自由貿易ではなくて管理貿易である、自由貿易に逆行することがやられようとしている。このことをやはり北海道の場合、注意していきたい。

 例えば北海道は、主要品目でも大変厳しいので、蔬菜園芸で頑張ろう、蔬菜というか野菜ですね。例えばタマネギなんかも、三年から六年ということで関税撤廃とか、そういうふうになっている。非常に有望な代替品目もそういう形でもう関所が取っ払われてきている。これが、五品目だけではなくて、非常に私は厳しいと思っております。

 それから、先ほど言い忘れたんですけれども、国会決議。国会議員の方を悪く言うつもりは全然ないんですけれども、せっかくあそこの決議で、例外や除外を設けるべしとか、もしそれが不可能ならば離脱しろ、こうでしょう。そこまでおっしゃっているその流れの中で受けとめたいんですけれども、国際交渉の常套手段として、日本が関税の例外なき撤廃と規制緩和をちょっと横に置きたいと言った場合に必ず代償を求められる。その代償がアメリカに対して完全開放すると七万トンというお米の特別枠、オーストラリアに八千四百トンという形、完全に市場をプライベートに分けるという、そういうことが約束させられるというのは自由貿易ではないし。

 しかし、今のSBSの問題を見ても、MA米で本当に苦労しているわけだから、山居さんがおっしゃったように、やはり稲作農家は心配で、全然懸念はなくなっていかないと思います。そういう重い課題を北海道は背負っているということが一つです。

 それから一つは、やはり今回のTPP、一筋縄でいかないのは、交渉が始まるときに、持参金を出したのかよとかいろいろ言われているんですけれども、日本郵政は、新商品は出さないということを約束して、裏で、本当は日本生命とゆうちょ、かんぽが提携して新種のがん保険を出そうとしていたんだけれども、それをどこかに蹴飛ばして、やはりアフラックがここへ入ってくる。

 そういうことを、個別のことをやった上で、では、センシティビティーの、アメリカは自動車で譲ってくれたかといったら、全然譲らないわけですね。二十五年間、なるべく後ろ倒しして、関税二・五%を乗用車で引っ張っていく、そういうものでがんじがらめになっている。これはもう不平等条約だと私は思います。明治政府は、半世紀以上、六十年近くかけて関税自主権の回復ということをやったのだけれども、我々がここでのんでしまうと、大変な禍根を後世の世代に残すだろう。

 消費者も、やはりそういう意味では、食の安全、安心ということで、先ほど私は予防原則と、あれは日本の公害の被害の救済策、それを国際的なOECDが取り上げていただいて、そして国際標準にまでしたレベルなんですね。そこは大事だと思います。

 それから、日本の法体系で注意しなければならないのは、日本の消費者運動が一生懸命詰めて、保存料についてはこうだとか、食品の安全、安心と、きめ細かにやってきたんですけれども、それが、例えば、日本の法体系が、食品衛生法とかいろいろなそういう中で、コーデックス委員会、FAOとWHOの合同委員会、これがやはりモンサントが入っていたり、牛耳っているのは、そこの意見でコードが出てくるので非常に緩いわけです。だから、それをもっと強めたいというのが消費者の願いなんだけれども、それさえも聞き入れてくれないだろうし、今まで日本の消費者が築いた陣地というものが削られるのではないか、そのことを率直に不安に思っております。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。

 私も同感でありますが、それを話していると時間がなくなってしまいますので、次に、現場で農業者としても御奮闘いただいている山居公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 ここは、今の中原先生と同じ質問なんですが、いわゆる五品目、言いかえると基幹作物ですよね。この基幹作物に手がついた。特に、山居さんがおっしゃられていた酪畜なんかは大変な影響が出てくるというふうに思うんですが、そのことを含めて、現場の皆さん方と一緒に御奮闘いただいている山居さんとしてのお考えをまずお伺いをさせていただきたいということであります。

 それと、先ほど世論調査を幾つか引き合いに出していただきましたが、山居さんのところ自身でも世論調査をされていると思うんですが、そのことも含めて、北海道の声というものをどのように捉えておられるかという二点についてお願いします。

山居忠彰君 ありがとうございます。

 私どもも、TPP、衆議院の特別委員会、大変関心を持って毎日注視しているところでありますけれども、どうも、今、森山先生なんかの与党系の皆さん方は、農家も含めて国民の不安を払拭する、これが一番大事だというふうに言われております。また、篠原先生を初め野党の方は、やはりまず問題の解明が先じゃないか、こういうふうに言われています。

 私どもの受けとめ方としては、実は、この不安の払拭は全然されていない。それは何でかというと、やはり問題の解明がされていない。これは本当につながるんですけれども、そこは何が問題なんだと。もちろん、TPPは農業だけが問題じゃないわけですけれども、ちょっとわかりやすく農業だけで言えば、日本の農業粗生産は八兆五千億ありますけれども、北海道は一兆一千億、断トツの一位なんです。二位は、千葉だとか茨城、栃木、宮崎といったところがありますけれども、これはもう四千億、五千億で、半分以下ということで、やはりこの北海道が一番影響を受けるということがまず一つあります。

 そこで、不安払拭のところで、与党の先生方にももちろん何度も、あるいは官僚の方々の説明会にも私も行きましたけれども、皆さん御安心ください、国内対策をとったので一切心配はありません、こうおっしゃるわけですね。

 心配はないって、本当に影響がないのかと言いますと、いや、影響はあっても限定的だと言うわけですね。その限定的というのはどこなのかということなんですね。

 結局、限定的というのは、日本全国津々浦々に影響があるわけではないけれども、この限定的というところは、やはり非常に農業生産の高いところだ。特に北海道は、今、佐々木先生も言われましたように、米、麦、それから牛肉、豚肉、乳製品、甘味資源、非常に生産が高いところですから、この影響をストレートに受けるということですよね。

 そういったことを私たちは、先ほど世論調査というお話もしましたけれども、自分たち自身でも、米づくり農家の方々、主要な、これからも頑張っていきたい、北海道の農家も数が多く減っていますけれども、よく言われるんですけれども、意欲と能力のある農業に選択と集中して、こう言われますけれども、北海道の農家は、かつて、戦後は二十五万戸ぐらいありました。十万戸、八万戸のときが農業生産が盛んでしたけれども、今現在、三万八千ということで非常に減っているんですけれども、この時点でもう意欲と能力のある人しか残っていないということです。

 だから、ここでまだそういうふうに言われると、もう乾いた雑巾を絞れというような話になってくるわけですけれども、これはなかなか大変な問題になって、我々が今現場では非常に不安に思っている。国内対策で十分だとは思えない、それが先ほど申し上げたようないろいろな問題が出てくる。

 やはり、その問題の根底にあるのは、このTPPそのものが、先ほどもちょっとお話ありましたけれども、やはり、自由貿易と名を打っているんだけれども、実は、がんじがらめに、いろいろ決まりがたくさんあって、規制がいっぱいあって、規制撤廃の反対ですよね。A4の英文のページで八千四百ページもある。それに全部規定が書いてあるわけですから、これは自由貿易じゃなくて不自由貿易じゃないか、そういうところもあります。

 また、よく言われますけれども、八億人の、しかも、世界のGDPの四割のと言いますけれども、その大半は日本とアメリカということで、ほかの国はほとんど数が少ない。これはもう調べてもらえばすぐわかることですけれども、これも誇大に強調され過ぎているんじゃないか。

 それと、言語の問題があります。

 昨年の十月五日、大筋合意、ことしの二月四日に正式署名ということになりましたけれども、このときに幹事国のニュージーランドが発表していますけれども、これは英語で公表しています。しかも、この公式言語は、英語とスペイン語とフランス語しかない。これもちょっとおかしいと思うんですね。これだけGDPの大きな、しかも大きなマーケットを持っている日本、日本語が入っていないというのは非常におかしい。

 ですから、アメリカでは全くTPPに関心がなかったのに、このアメリカの大統領選挙になって急に皆さんが関心を持ったというのは、何のことはないんですね。これが公表されて、英語で発表されているからです。日本では発表されていないんですね。概要しか発表されていませんから、ほんの一部ですし、その中では、とてもじゃないですが、中身がわからないというようなこともあります。

 そして、このTPPの交渉が我々も不思議に思うのは、やはり、国と国の貿易だったら、これは対等な貿易でいいと思うんですけれども、あくまでも、これはグローバル企業と国ですよね。フロマンさんもカトラーさんも企業の代弁者ですから、そこら辺のところもおかしいなというふうに思います。

 それから、この影響も、五年後、特に十年後、十五年後、先ですよね、出てくるのは。だから、今現在は確かに影響がないかもしれないけれども。そうすると、我々はもう既に、投資して、借金して、いろいろしていますけれども、これは果たして息子や孫の代に後を継がせていいものかと非常に悩むんです。

 そして、しかも、この協定が、ISDSやラチェットで戻れない、引き返しはできないというようなこともありますから、どうもこれはおかしいという疑念ですね。不安、そして我々が本当にやっていけるんだろうかという将来不安、こういうところで非常に不安が増長されているわけですね。

 こういう貿易については、もっと多様性だとか代替性だとか持続性、こういったものがあっていいんじゃないか。このまま引き続いていくと、何のことはない、日米FTAに収れんされるんじゃないか、ここが一番危惧しているところです。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、まだまだお伺いしたいんですが、終わらせていただきますが、先ほど中原先生からありました予防規制は大変重要なテーマだというふうに思っています。逆に、今度、アメリカは証明がない限り予防規制はだめという仕組みですから、それが導入されるのではないかということと、関税の課題が崎出さんからも出ましたけれども、実は、輸出はしやすくなるかわりに、今度、輸入もしやすくなるときに、チェック体制が日本は全く今できていないので、そこの体制もどういうふうにするのかということは論議がまだまだ不十分ですので、きょうお伺いさせていただいたことを参考に、しっかり議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

塩谷座長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 まず、きょうのこの地方公聴会に、陳述者の皆様に、大変お忙しいところ、御臨席を賜り、貴重な意見を頂戴いたしましたことに対して、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきますけれども、まず、お一方、崎出陳述者にお聞きした後に、その後、共通テーマで浜出陳述者、中原陳述者にお伺いしたいと思っています。そして、時間があれば、さらにまたそれぞれの方々にお伺いしたいと思っています。

 まず、きょう、崎出陳述者からもお話がありました貿易の関係、輸出の関係です。

 北海道の水産物の輸出は年々伸びてきておりまして、とりわけ、その中の半分ぐらいの輸出額は今ホタテが占めているというふうに承知しておりますが、北海道のホタテの生産、そして輸出に当たっては、大変御苦労されて今日来ていると認識しています。それは、養殖が出る場合は、いろいろ気候に変動があったり生産量が落ちたり、あるいは、それを打開するためにアメリカに冷凍の貝柱を輸出して、それが今度はいわゆる需給のギャップに発展していって、さらに生産拡大しなきゃいけないということもある。もちろん、一次産業ですから自然との闘いというのもあると思うんです。

 今回のTPPの参加ということになっていけば、先ほど来お話はいただいていますけれども、改めて、輸出に対して、北海道は、漁業面だけでも構いませんから、どんなことがさらに期待されるのか。

 それと、先ほど、手続の関係の簡素化が一番やっていただきたいことだという話がありました。あわせて、輸出拡大のための環境改善ということを考えていくと、GIの制度もそうですし、それからHACCPの認証のこともそうですし、SPSの検疫のこともあります。もちろん、関税の撤廃ということもあると思うんです。これらのことについて、また改めて、先ほどお話ありましたけれども、どういう点を重点的に政府に求めていくか、この二点についてお伺いしたいと思うのですけれども。

崎出弘和君 ホタテとアキサケ、相当これは歴史を持って輸出しております。

 最初に申し上げましたけれども、ホタテの輸出というのは、アメリカ、フランスという大きなマーケットがあって、今からもう三十五年も前から輸出していたという経緯があります。ただ、途中、ホタテはどんどん生産がふえてきた。アキサケも、昭和五十年当時というのは三万トンぐらいの水揚げ、今ちょっと不調ですが、一時二十万トンまで揚がったときがありますね。そのとき、我々、生産者と一体となって、やはり需給調整という形でもって輸出に取り組んだというのも大きくあります。

 特に、平成十四年、十五年ですね。平成十五年はアキサケが二十万トン揚がった、ホタテも当時は四十五万トンという、まだまだ国内マーケットが中心のときに、相当やはりこれは国内マーケットからあふれ出てしまったというときに、この二年間、アキサケの輸出対策、ホタテの輸出対策をやったという部分では、輸出機能というのが需給調整という部分では非常に大きな機能を占めている。

 今は非常に減産傾向の中で、そうでもないところがあるんですが、やはりこれは、それぞれのマーケットも変化していけば、いつかはこういうことがあります。特に一次産業というのは気候変動によって大きく生産が減ったりふえたりありますので、やはり、輸出というルートを一つ持っておくことで、我々生産者団体としては、生産者価格をある程度一定に保っていくという大きな効果があります。そういう面では、TPP、これはこういうふうに決まった中では、これをうまく活用できる場面が大きく広がるだろうと思っております。決まった以上、我々はそれを有為に使わせていただいて、浜の価格を維持していくという部分ではそういう考えで取り組んでいきたいと思っています。

 それから、先ほど稲津先生がおっしゃった中でもありますが、輸出というのは、例えばHACCPがありますよね。これは今、EU・HACCP、アメリカHACCP。今、国の方からもいろいろな補助金をいただきながらも、加工業者さんはいろいろ設備投資をしています。ただ、我々がいつも思ったことは、やはり日本の食品加工の衛生基準というのは相当レベルが高いと思っています。

 MSCもそうなんですよね。我々は資源の持続性という部分で、今、ロンドンのMSCをホタテは取り組んでいますよね。でも、日本の漁業者というのは、そもそも資源を大事にしながら、沿岸漁業は特に自然を持続しながらやっているということもありますしね。

 それから、HACCPの問題にしても、やはり日本の加工場の衛生管理。いわゆる生鮮流通というのを日本人は好みますよね、刺身、刺身グレードがありますから。そういう中では非常に進んでいます。

 我々は、やはり日本の資源持続性の考え方、それからHACCPについての日本の加工の衛生基準の考え方、これをもっと統一化して、世界に訴えていくような形でもって。

 我々は全部受け身になっていますよ、今。EUも、アメリカHACCPも、MSCも、全てが。MSCについてはMELという形で取り組んでいますけれども。そういう形をもっと我々は発信していくような制度をつくっていくべきかなと思っています。

 今、衛生証明というのは、いろいろな手続の煩雑化がありますが、これでもう、それぞれの国、いろいろな手続がありまして、我々は全てそれに従っていく。

 我々としたら、輸入水産物に対してそれだけやっているかというと、税関で衛生管理チェックが中心になるかなという気がしまして、相手の国でどういう工程管理をして、それを我々が認めながら輸入しているかというと、なかなかそこまで日本はいっていませんよね。

 もっとそこは積極的に、我々自身が我々の生産体制ですとか加工体制をしっかり認識して、世界に訴えていくべき体制を、より強く言っていくべきじゃないかなということは思います。そうしなきゃ、TPP、これは統一化されたときに、まさにますますそういうことを言われっ放しになっちゃう可能性もあるのかな、いいチャンスかなという気はします。

 ちょっと御質問に対してずれているところがあったかもしれませんが、そういう感じはしております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、浜出陳述者と中原陳述者にお伺いしたいと思います。

 非常に根源的な話で恐縮なんですけれども、それは人口問題とこの輸出を含めたTPPということになると思うんですけれども、御案内のとおり、日本の人口というのは今一億二千数百万と言われていますが、人口減少にいよいよなりました。それで、きょう、私、手元に持ってきていますけれども、国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、もう来年あるいは再来年ぐらいから生産年齢人口が六〇%を割り込む、こういう問題がある。

 この人口減少というのは、今のところ、歯どめがきく状況でなくて、これは厚労省の推計ですけれども、二〇六〇年には日本の人口は九千万を割り込むだろう、あわせて、六十五歳以上の高齢者の方の占める割合が四〇%ぐらいになると。もちろん、先ほどの生産年齢人口もずっと縮小します。そこでどういうことが起きてくるかというと、日本の国内市場というマーケットが小さくなっていかざるを得ないだろう。

 これまで、戦後、マーケットを広げるというのは、まさに人口がふえていって、そして、さらにそこで生産量を上げて、技術革新をして、今度は輸出をしていくということが、ある意味非常にいい効果を得て今日まで来て、世界のGDP二位、三位になった日本という国があると思うんですが、今後のことを考えていったときに、この人口問題とそれからマーケット、市場の問題、そこで、先ほど来お話のある、世界経済の四割を占めているこのTPPについての議論になってきたと思うんです。

 本源的なところの質問になって恐縮なんですけれども、この人口問題と、それから、いわゆるマーケット、そこをTPPに求めていくという、この点についての御意見をいただければなと思います。

浜出滋人君 今お話しいただきましたように、たびたび申し上げましたが、水産業界におきましても、高齢化、廃業する方が非常にふえてきている。一方で、日本人といいますか、日本に関して言いますと、生鮮食材、イカ、刺身、おすし等、非常に好きだという言い方が適切かどうかわからないんですが、当然、消費は非常に多い。ですから、そういった中で、要は、実際に現場にて漁をする人が総体的に減ってくるわけですから、イコール、国内に流通する純粋たる国産の魚というのが年々間違いなく減っていきます。

 そういった中で、弊社、製造業という位置づけで考えますと、例えばの話、今まで一隻の船に例えば二人もしくは三人で漁に出ていた、そういった方々が仮に一人で漁に出てもしっかり同等の漁獲量を得ることができる、そういうような製品の開発、システム等の開発等を今まさに進めているところでございます。

 三十年、四十年前のように、若い方がたくさん漁に出ていきたいというような状況ではもちろんございませんので、これはもう状況的にどうしようもない部分はありますので、そういった中で、私どもの方でできることをしっかりやっていくしかないのかなと考えております。

 先ほどお話しさせていただいたとは思うんですが、要は、漁業におけるIoT化であったり、つまるところは、無人で漁に出て、操業して魚をとってきたら、そのまま戻ってくるような、そういったところも含めて技術開発を継続的に進めていくような形で考えてはおります。

中原准一君 ありがとうございます。

 短期的には、日本は、このまま何も手を打たなければ人口減というのはやはり進んでいくかとは思うんですけれども、しかし、限られた条件の中でも、東京都の世田谷区なんかでは、行政の子育て支援だとか、行政がやはり住民のニーズに寄り添っていろいろなケアをしていく、そのことによって夫婦共働きが円滑に進む。それは保育所の問題とかいろいろかぶってくると思うんですけれども、地域自治体レベルで改善しているところではやはり人口はふえてきているんですね、出生率が。

 だから、日本の場合、片方で、内部留保ということで、三百兆円を超えるような、何も使わないでじっとしているようなお金じゃなくて、それを賃金の方に回してやっていくと、本当に、結婚して、そして夫婦共働きでも、共稼ぎでもやっていける、やはりそれを保障しないと展望は出てこないような気がします。

 それから、外部条件を見ると、今、人口は七十億を超えて、これが二〇五〇年ですか、九十億を超えるというようなテンポで来ているので、この中で日本が食料を海外に明け渡すようなことが本当に賢明なのかというのは、本当に消費者の方も考えていただきたい。

 ですから、給与所得者の水準で、一九八九年が一番ピークで、大体お一人当たり五百万ぐらいもらっていたんです。今、ならしちゃうと四百万弱ですよ。これぐらい格差というか、いろいろな人々の働き方が、非正規が多くなるとか、そういう中でレベルダウンしている。

 日本の全体のマーケットの八一%から八三%は内需なんです。だから、TPPの議論として、国内がもうけが少ないから、もうかっているアジアに出ていこうという話なんですけれども、それはちょっとないだろうと。国内のいろいろな資源とか、それを活用すれば、まだまだ再生の余地はある。それは政治に課せられた課題であると私は思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 続けて中原陳述者にお伺いしたいと思うんです。

 先ほど国内対策のことに触れていただきました。詳細な御発言はなかったと思うんですけれども。

 今回、政府からいろいろと法律案が出てきている中で、当然、国内対策も、種々言われていることですが、例えばマルキンの法制化ですとか、そういったことも出てまいりました。この国内対策の強化ということをどのように受けとめておられるか、御意見いただきたいと思います。

    〔座長退席、うえの座長代理着席〕

中原准一君 先ほどは舌足らずで申しわけなかったんですけれども、北海道農業の経営規模は、EUよりも物量的にはレベルが高い。ただ、どうやってその政策的な下支えがされているかというと、やはりEUの場合は、直接所得補償方式。消費者が高い農産物を購入して、それで農業を保護するのではなくて、消費者が納税者として、そして消費者がその農村で便益を共有できる、そういう消費者と農業者のウイン・ウインの関係をEU加盟国の中でつくって、それが国内市場の発展にもつながっている。

 例えばデンマークなどは、大企業はないんですけれども、そこそこに地域に中小企業があって、それがヴェスタスという風力発電のメーカーをつくり上げた。技術の裾野が広いんです。日本もやはり圧倒的に中小企業なんですから、そういうものを生かしながらやっていく。だから、基本農政も、私は、世界標準である直接的な所得補償というのは必要だと思う。

 アメリカの場合は、クリントン政権の時代に一旦不足払いを取っ払って、しかし、市場競争の中で価格変動で損失が出るから損失補填ということで、国庫でまた補填していったんですね。ブッシュ・ジュニア政権でも、同じだろうということで、不足払いが復活して、かなり強固なものができているわけです。

 ですから、やはり、日本の北海道は国際標準並みの経営規模なんだけれども、それを支える社会的インフラとしても私は政策をもっと強めるべきだと。民主党政権の時代に戸別所得補償という、品目ごとに出てきて期待していたんですけれども、これがまた、政権がかわるとがらっと変わってしまった。これは農業者にとって非常に打撃だと私は思っております。

 ですから、そういった意味で、基盤、本当の農業政策、世界標準の農業政策というものを、日本の農政も先進国型にして、日本型の先進国型というか、そういう農政が必要だというふうに思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 時間も参りましたので、最後の質問になりますけれども、これは浜出陳述者にお伺いしてよろしいですか。

 日本政府の交渉における評価について伺いたいと思うんです。

 本来、このTPPについて、これは関税で見ると、関税は全部撤廃だというのが基本的ルールというか、ところが、今回は、そのTPPの最大の特徴の中から、一部関税撤廃を例外として認める、いわゆる撤廃しないということを認めた。これに対していろいろな評価があります。

 そこで、自動車の部品のことについていろいろよく言われます。例えば、自動車そのものは関税二・五%撤廃にならなかったじゃないかと。しかし、業界の方からは逆に、いやいや、アメリカの自動車は、実際には、アメリカで生産する二百五十万台は、ほとんど日本の部品を向こうに持っていっているから、この八十数%の部品のところの関税を撤廃するのは非常によろしかったという評価もあり、ちょっと難しいことかもしれませんけれども、そういう機材も輸出するということが大変重要なことだと先ほど来陳述者のお話がありましたので、この点の関税についてお伺いしておきたいと思います。

浜出滋人君 輸出と輸入、両方バランスを見ながら当然考える必要があるとは思うんですが、当社に関して言いますと、基本的に輸入商品はほとんどなく、輸出がほぼ一〇〇%、ほとんどとなっています。原材料に関しても、鋼材等、部品等、そういうものは全て国内で調達し、さらにその大もとというのはまた、鋼材等は中国から入っているのかもしれないんですが、基本的には国内で材料は全て調達し、輸出を行っているというような形になります。

 ただ一方で、国内における中小企業、製造業においては、ほとんど輸入部材を多く使っている企業はたくさんあると思いますので、その企業が、そこはもう中小企業の企業努力という部分ももちろん入ってくるとは思うんですが、そこはバランスをどういうふうに捉えるかというところで、これはちょっと回答が変わってくるとは正直思うんですが、そういう意味で申し上げますと、今、例えで話がありましたが、そういったハイテク機器、車等、日本の技術もしくは部品というのは非常に多く使われているところがございますので、そういった観点から考えると、製造業においては非常に評価されるべきところかなと考えてはおります。

稲津委員 時間が参りました。

 御協力いただきましたことに心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

うえの座長代理 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 四人の陳述者の皆さんには、お時間をとっていただき、このような御意見を聞く機会をつくっていただいたことに、私からも初めに心から感謝を申し上げます。四人の皆さんそれぞれにお聞きしたいと思いますので、陳述のお時間について御協力をお願いいたします。

 初めに浜出専務さんにお伺いいたします。

 台風被害で、噴火湾の方に私が調査に行ったときに、耳つりですとか、かごも含めて実態を見る中で、事前に資料をいただいて、御社の技術がかなり現場を支えているということも知りまして、非常に感銘を受けました。改めて敬意を表したいと思っていますが、お聞きしたいことは特許保護についてです。

 特許一般でいえば、TPPの協定交渉において、このようなさまざまな製造業にかかわる内容であったり、医薬品のデータ問題などでも議論があったなどの報道がありました。特許を保護することの重要性はもちろん私たちも当然だと思っているんですが、医薬品のデータのように、それが期限切れになった後、活用されて多くの国民の利益になることなども問題としてはあるかと思うので、実際はそのバランスをどうするかということが問われてくるんだろうと思います。

 それで、先ほどから議論があったように、模倣品の対策については、TPP締約国以外に対する対応についても議論があるところです。したがって、この特許問題とTPPをめぐっては、まだ区別と関連が議論として必要な段階だろうと私は思うんですね。国会でも、率直に言って、まだ特許問題についての議論は始まっておりません。

 そこで、浜出専務さんにお聞きしたいのは、先ほどお伺いしたときに、最後に、勉強会なども丁寧にやっていただきたいという御要望がありました。そのような整理した議論が必要だろうというふうに、国会でも、それから国民的にも今必要であろうかと思うんですが、そのような点についての御意見があれば、お聞かせください。

浜出滋人君 済みません、御丁寧にどうもありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおり、私ども、私も含めて、まだまだ深くしっかりと認識していない面も多々あると思います。特に地方、私どもは北海道函館市になりますが、地方の中小企業の経営者、私どもの中でも、結構いろいろ、皆さん集まってTPPに関する議論等をすることもあるんですが、やはり深い部分ではしっかりと認識していないような、どういった形で問題が自分たちの会社に入ってくるのかというのをしっかり認識されていない企業の方もまだ数多くいらっしゃいます。

 言ってしまえばあれなんですが、先ほどお話にあったように、噴火湾、特に今回は台風で非常に大きな被害を受けた地域、そういったところの水産加工業の経営者の方とかとも話すことがあったんですが、具体的にどういう形で影響があって、かつ、その影響に対して、どうすれば自分たちのダメージであったり、少しでも影響を抑えることができるかということを論じたいのはやまやまなんですが、それ以前の情報、もしくはデータ等、やはりしっかりそこがわからない。言い方が適切かは、済みません、ちょっとわからないんですが、そういったところがあるので、そうした、要は、行政によって、より細分化して、具体的にこういうような形でやってはどうでしょうかというような勉強会等を開いていただけると非常に私どもとしてはありがたい。

 私どもの会社は製造業の、ものをつくる、ものづくりの会社ではございますが、北海道でいいますと、水産加工の会社であったり、そういったところは、当然、より直接的に影響がわかりやすい部分もあるんですが、私ども製造業に関しては、ある程度、現時点では影響は限定的かなと捉えている部分はあるんですが、やはりふたをあけてみないとわからない部分もございます。

 先ほどおっしゃられたように、知財、特許関係に関しては、TPPだけではなく、当然、該当しない国に関してもそれは該当される問題になってきますので、その辺も含めて、そういったことを論ずる、もしくは教えていただくような場というのがなかなか少ないというのが、特に地方に関しては正直なところでございますので、もし可能であれば、そういうのを少しでもふやしていただいて、特に若い経営者等たくさんいると思いますので、そういった人たちがしっかり勉強できるような場を設けていただけると非常にありがたく思います。

    〔うえの座長代理退席、座長着席〕

畠山委員 ありがとうございました。

 続いて、中原先生にお伺いします。お聞きしたいのは、酪農、畜産にかかわってです。

 北海道酪農は、つい先日まで、三年連続酪農家が二百戸、年間離農、離脱するという状況などもありました。それで、TPPがあろうがなかろうが、生産基盤の強化、対策が必要だということも言われてきました。

 私も、比例北海道選出で、多くの酪農などの現場は見させていただいたつもりではありますけれども、TPPのもとで勝てる農家というイメージが率直に言って私は湧きません。

 規模拡大やコスト削減なども政府、農水省から言われていますが、おのずとそれは投資の拡大を生むことになります。ただ、先ほどからあるように自然災害ですとか、あるいは牛を相手にすれば病気なども起こるわけであって、その場合、被害が広がったときに、年に一頭しか産めない牛ですから、生産基盤を大きくしていくということが急速にできるものではないというふうに思うわけです。

 ですから、こういう特徴がある酪農、畜産等ですから、その中において、今回のTPPにおいてかなり関税などは削減されていき、政府は乳製品や畜産対策のセーフガードもあるということを言いますが、これは国会で私も議論しましたが、その実効性については議論になっているところです。

 このような状況を踏まえて、政府の酪農、畜産の対策実効性について御見解をお聞かせください。

中原准一君 やはり、酪農というのは固定資本装備が大きくて、単年度でもうかるもうからないという問題ではなくて、かなり長期のスパンでやっていかないとリターンが来ない、そういう産業だと思います。

 ただ、消費地のサイクルというのは非常に短くて、日本の場合、まだ飲用乳中心のマーケットなものですから、そこで厳しい状況が出てくる。ただ、今、府県の方はやはり北海道以上にリタイアしていく店舗がありまして、北海道は残った酪農家で三百八十万トンぐらい年間搾って全国の生乳の五二%ぐらいは引き受けているんですけれども、これは限界ですね。つまり、別海のあさひ農協さんに伺いますと、農協自身が介護のケアをしないと集落がやっていけない、こういうお話です。

 ですから、やはり、単に規模拡大で搾ればいいだけではなくて、本当に人々の毎日の生活、そして人々のライフサイクルに対してどうケアをしていくのか、そういうような地域政策というのは北海道から発信していく必要があるだろうと私は思います。それは、TPPあるなしにかかわらず、大事な問題だと思います。

 全国の減産を一手に北海道は引き受けているんですけれども、残念ながら、北海道も水害で、直接的なダメージはあれなんですけれども、やはり十勝、新得とか十勝清水、これは巨大酪農地帯なので、ここのダメージはやはり大きいわけで、もう九月から減産になっちゃっているんですよね。だから、農水省でも、年明けにバターを七千トン輸入しなきゃいけない、こういうような状況ですから、本当にもう大変な状況です。

畠山委員 ありがとうございました。

 続けて、崎出専務さんにお伺いいたします。聞きたいテーマは、国内向けと輸出向けをどう考えるか、基本的なことについて伺いたいと思っています。

 冒頭に、台風被害で噴火湾の方を回ったということを私述べましたけれども、今回の台風被害のみならず、ことしはへい死が多かったというふうに聞きました。ザラボヤも、一旦とまったものも、ことしはまた発生が多かったということもあわせて伺いました。

 噴火湾ですから二年とか三年で出荷する。オホーツクなどでは天然物を含め四年とか五年ということで、酪農ともこれは関連もするでしょうけれども、その一年で、稚貝であったり、物が入ってこなかったり、そこで脱落したりすれば、二年後や三年後においての生産量に影響が出てくるのではないかということが養殖ホタテなどの構造であろうというふうに思います。そこで安定供給をどうするかということは、現場の皆さんと漁連の皆さん、いつも御苦労されているというふうに私は感じています。

 そこで、以前に水産経済新聞で崎出専務さんのインタビューを拝見したときに、国内販売を主体としつつ、その際いろいろな変動が起こり得ますので、輸出を需給調整として行うという役割分担についての考え方を拝見いたしました。もちろん輸出自体は伸びてきていることもありますし、ただ、きょうも一言、途中で、国内と海外向けについては両軸でという一文も資料の方には書かれております。

 私たちは、輸出の戦略性については否定することはもちろんないんですけれども、この間のTPPの議論をめぐって、第一次産業における国内の安定供給と輸出そのものについての何か議論が逆転したり、軽重が少し反対になっている側面もないのかなということは率直に感じることがあります。

 そこで、国内の安定供給と輸出向けのバランスやTPPにおけるこの間の議論で、崎出専務さんの御見解をお聞かせください。

崎出弘和君 今、畠山先生の方からの御質問で、最初に一つは、安定供給の体制をどうするかという問題がありますね。

 噴火湾とオホーツク、両地区が今非常に大減産になっております。オホーツクについては、平成二十六年度、冬の大しけで、新規漁場が中心なんですが、その前の年にオホーツク地区で三十二万トンあったホタテが、二十二万トンに一気に十万トン減ってしまった。ことしは十八万トンということで、さらに減ってしまった。四年間続くと。ですから、来年まで水揚げ減少が続いて、再来年揚げる場所につきましては従来どおりの稚貝放流をしていますから、しけ被害だとかそういうものがなければ三年後にはまた戻ってくるとは思っているんですが、やはり、適正漁場、それからしけに強い漁場をどうつくるかというのが非常に大切なんですね。

 今、各漁協さんというのは、相当海底調査をしながら、今回の冬のしけというのは、やはり適正漁場でないところの貝が多く死んでいる面もありますので、そこら辺を再度見直ししながら、しけに強い漁場をつくりながら生産回復、そして、最近のしけなんというのは非常に温暖化の傾向が強くて、流氷が来ないとかいろいろありまして、そこで大きな被害が出ていますので、改めて、浜もそこら辺を意識しながら、また、道の水産試験場とも我々一体となってしけに強い漁場づくりをやっていますので、そういうような対応をしてきております。この回復というのは、何もなければ平成三十年、そこら辺から戻ってくるのかなと思っています。

 それで、噴火湾ですね。噴火湾も、去年が十万トン、ことしが五万トン、そして来年は三万トンぐらいという計画、三万から三万五千トンかなと思っています。これは高水温があったり、ことしの場合は台風被害があったり、相当、噴火湾の漁業者もつるす貝の枚数とかを調整しながらきちっとやっておるんですが、やはりこれも、天然の海水が、噴火湾というのは入れかわるんですよね、親潮と対馬暖流が。それがなかなか入れかえが遅くて、水温が下がらない。

 ホタテは高水温に弱いですから、二十四度、五度以上になっちゃうとへい死しやすくなる、活動がとまって餌をとれなくなってへい死していくという要素がありますので、そこら辺も、噴火湾の漁協それから水産試験場とも、へい死対策ということで、水温が高い場合にはどのような漁場に持っていって、水温が低いところに移設しながらへい死を防いでいくかということもやっています。

 これは長い歴史の中で既にやってきたはずなんですが、やはり最近の極端な天候変動でこのようなことが起きていますので、改めて、この極端な天候変動に対応するような、天然の地まきのものも垂下養殖のものも、今対応策を行政と一体となってやっている状態にあります。

 私は、水産経済新聞にもいろいろしゃべりまして、漁連としては、やはり国内消費者を最優先するというのは当然なんですね。日本の一億二千万という、世界でもGDPが三位の裕福な、ある意味、日本というのは裕福な国だと思います、まだまだ所得も高いし。その中で、魚食文化があって、そのマーケットを無視して、まだまだ日本よりも少ない魚介類購入量、供給量の国に売っていくのは、順番としてはやはり国内供給をしっかりつくり上げていくというのが大事だと思っています。

 ただ、やはり今現実論として、日本の消費者が魚介類の購入をどんどん減らしてきている。それは、海外の輸入水産物を、今はなかなか買い負けしていますので何でもかんでも買えるという状況ではないんですが、やはりそういう中で、末端量販店さん、小売店さんも売りやすい、消費者が買いやすいような製品は、輸入ならできるんですよね、定規格、定量とかいろいろありますので。そういう面では、国内の水産物はなかなかそういう面に行かないということもありますが。

 そういう中では、我々、そういうような形に対して、天然ですとか、ふぞろいでもいろいろ国内で買ってもらう、値段は今高いですけれども、それをどう消費者にふやしてもらうかということは、食育ですとか、それから北海道産の優位性ですとか、高鮮度ですとか、そういうものを持ち合いながら国内消費者をふやしていきたいと思っています。

 輸出というのは、これはなぜ先行していくかというと、国内というのは、やはり我々供給者側、サプライヤーが在庫を持ちながら、末端、東京でも大阪でも大消費地で在庫を持ちながら売っていくという非常に経費のかかる商売をやらなきゃいけないです。これは当然ですね、今の日本の物流という中では。輸出というのは、ロットをまとめてどんと輸出できちゃうんですね、コンテナごとに。それで現金決済していくという流れ。今のホタテでもサケでもそうなんですが、輸出価格が先行して出てしまうんです。去年までは、百二十円台という一年間通しての円安ですから、その中でどんどん出ていってしまったという経緯はあります。

 それに対して、我々、経済原則の中で、これはどうしてもとめながら、値段を、ついているコストのものを安くということにできないのはあるんですが、これは今の、国民が魚をなかなか食べてもらえないという傾向の中で、また輸出がどんどん高い値段で持っていってしまうという、世界的に需要が伸びていますので、その中で、今試行錯誤をしながら、漁連としては、やはり国内の大きなマーケットで、販促事業なり食育なり、特に昆布なんてそうなんですよね、こういうものもどんどん減っていっています、そういう中で、何とか国民の魚食に対する意識を高めていきながら、子供たちにも食べてもらいながら、維持して、そして国内供給を少しでもふやしていきたいと思います。

 これは難しいんですよ。やはりアメリカ、中国が二千円で買ってくれる、それが国内では千五百円だとなれば、これはどうしても、とめて売っていくというのはなかなか難しいんです。こういう地道な努力しか私はないと思っています。ただ、ひたすら輸出にどんどん出していって、先ほど問題点を説明させてもらいました、粗悪品をつくられて、日本産の水産物の高品質なものの品質を落とされてそれで日本産で売られてしまうというのは非常にゆゆしき問題でありますので、やはりそこら辺は地道な努力が必要なんですが、国内消費というのを第一に考えて、そして需給バランスという基本的な考えの中で輸出をやっていく。

 先ほど、原材料輸出から加工品輸出に変えていくということがありました。もちろん、これはもう本当に、品質普及という形でもって北海道産の水産物をさらに認知度を高めて売っていきたいというのはありますけれども、基本にあるのは国内消費であり、その次に輸出であるという考えであります。ただ、国内消費の今の傾向の中で伸ばしていくのは非常に厳しい面があるということは、御理解いただきたいと思います。

畠山委員 ありがとうございました。

 最後に、山居書記長さんにお伺いいたします。

 かつてウルグアイ・ラウンドから、当時のことも御存じであろうというふうに思います。TPPでは、除外になったとか対策がどうだとかということはあるんですけれども、農産物でいえば、過去最大の輸入が見込まれる関税撤廃等であること自体は事実であります。セーフガードの撤廃なども、それぞれの年は違いますけれども、あることからもそれは明らかです。

 そこで、山居書記長さんからは、少し歴史を振り返って御見解を伺いたいんですが、ウルグアイ・ラウンド、ガット以降も、例えば米の対策について言えば、当時もコスト削減ですとか規模拡大ということが言われました。基本は今とそう変わらないんだろうと思うんです。ですから、当時から含めて、TPPでもまた同じようなことが繰り返されるのではないかという点では私も不安を感じる者の一人ですが、今回の米をめぐるTPPの対策を、過去の経緯も含めてどのようにお考えか、お聞かせください。

山居忠彰君 ありがとうございます。

 先生のおっしゃるとおりで、歴史的に振り返ってみると、WTOは、多様な農業のあり方ということで交渉していたんですけれども、でも、やはり国内においては、構造改革、いわゆる近代化、機械化、規模拡大というようなことで、どうもデジャビュというか、同じものを繰り返している、そんなような気がしています。

 ことしの五月十八日に、アメリカの国際貿易委員会がちょっと興味深い内容を公表しているんですけれども、今回のTPPで、アメリカが輸出がふえて利益をこうむる、この利益を上げるうちの四分の三は日本からだということで、日本がターゲットになっている。

 ということは、日本の中でも、先ほど申し上げたように、やはり北海道が一番影響を受けるということになってくると、これは歴史的に見ても、今、NAFTAで、アメリカからトウモロコシが安く入って、メキシコの農家が総崩れになっちゃって、結局、アメリカに難民、移民になって入っていって、トランプさんじゃないけれども、壁をつくらなきゃならなくなってしまう、こういうことを考えていくと、非常に危惧もするんですけれども。

 我々は、北海道の農民が影響を受けて困るというのは、やはり農業というのは土地と一体化している、あるいは自然条件と一体化している。ですから、災害も当然受けます。それと、季節、春夏秋冬、これらとも一体化しているということです。

 さらに言えば、生活と営農、これも一体化しているということで、しかも、北海道は専業農家が多いということで、近くに大きな都市がないものですから、どこかに逃げる、農家をやめてそっちに行ってという移動が簡単にできない。そして、離農がふえていくとやはり農村コミュニティーも崩れていく。その中で、総合農協だって崩されちゃうと成り立たない。我々は、唯一の頼りの綱が、やはり命綱は総合農協なんですけれども、農協を頼りにしていても、これは何か難しい問題になっていきそうだ。

 さらに、もっと言えば、北海道は、半分雪が降って耕作ができない、その中で、病虫害に強いという利点もありますけれども、輪作体系を組んでいる、これは歴史的にもそうなんですけれども、この輪作体系が崩れるのではないかという心配も出てきます。

 そして、もっと言えば加工ですね、加工分野。先ほどもお話ありましたように、北海道は加工に従事する人、会社が非常に多いんです。ここのところも影響を受ける。

 もとをただせば、農業というのは、種子、肥料、農薬、農機具、それから輸送、そしてまた小売に至るまで非常に裾野が広くて、こういうところにも全部影響してくるのではないか。

 そして、これも先ほどお話ありましたけれども、TPPがあろうがなかろうがということで、これは本来は、TPPがあろうがなかろうが、日本の農業をしっかり強くして世界に打って出る、強い農業、攻めの農業、所得倍増というのは、それをやってからするべきであって、それをしないうちにいきなりやれということは、さあ、潰れなさいというのと、あるいは離農促進というのと同じことなんですね、イコールなんですね。現場の受けとめがそういうことになるものですから、非常に不安が募って、やはりこれが、このままの政策ではいかぬということが不満にもなって行動に移っているわけなんですね。

 これをまずしっかり解決して、従来からの農業対策の費用を全てTPP対策という冠をつけること自体おかしいんじゃないか、そういうようなことも含めて、まず、順序が逆でないか、本末転倒でないかということなんですけれども、それをしっかりやっていただいて、次のステップに進んでいただきたいということを申し上げたいと思います。

畠山委員 貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。

 国会の審議も、今お伺いしたテーマだけでもまだまだ議論が必要だということも改めて痛感しましたので、国会での議論を深めていく立場で頑張りたいと思います。

 ありがとうございました。

塩谷座長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 まず、四人の陳述人の皆様方、大変貴重な御意見を私からも御礼、感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 私どもの維新の会は、このTPPに関しては基本的に積極推進という立場であります。でありますから、アメリカの大統領選で反対論が二人の候補から出ているという話があっても、逆に、我々は、もっと我々が積極的にリーダーシップをとって進めていくべきだ、こういう立場でございます。そしてまた、その最大の理由は、このTPPの問題、総合的に、トータルに考えて、日本経済にとって、成長にとってプラスである、こういう判断をしているからであります。

 同時にまた、しかし、そういった政策を進めることによって、大変厳しい立場に置かれる産業だとか、あるいは人々だとか、そういう人々が出てくる。これは私どもも十分認識をしているわけでありまして、そういった産業、そういった人々に対しては、でき得る限りの個別的な対応をとっていくべきだというのが基本的な私どもの立場であるし、政治は、そういったトータルに考えてプラスであるならば勇気を持って進め、そして個別の対応に関してはきちんと温かい気持ちを持って対応する、これが原則だろう、こういうふうに思っているからでございます。

 そこで、まず山居陳述人に申し上げるんですが、攻めの農業というのは順序が逆なんじゃないか、こういうお話がありました。逆に言うと、ガット・ウルグアイ・ラウンド、私、当選、九三年でございますので、ちょうどそのときからでありますけれども、何も変わっていないというのは、逆にその順序を変えなかったからではないか、こういうふうに思っています。

 一つの意見として、米農家の話がありましたので、それを例にとりますと、二〇一四年で米の内外価格差がほぼ解消された、こういう状況になっていく中で減反政策をして米の価格を上げるというのは、競争的な立場でいうと弱い立場になるわけですね。米の価格を安くして海外に輸出するという話は攻めの農業ですよ。

 ということで考えると、まさにそういったTPPをある意味ではきっかけにして、そして減反政策はやめて、米をもっと自由につくってもらって、そして、内外価格差はほぼないんですから、どんどん外に売ってもらう、世界のGDPの四割を占めているのがTPP関係国ですから。そういったことによって米は最大の輸出産業になれる、そういう意見がありますけれども、山居陳述人、いかがでございましょうか。

山居忠彰君 ありがとうございます。

 米は最大の輸出産業になるというお話ですけれども、この内外価格差というのが一つくせ者です。

 何でそういう内外価格差が生まれるのか。これはもちろん、先ほどのお話にあるように、為替レートだとか、それからそれぞれの国の、開発途上国、先進国、それから所得水準、全て違いますよね。こういう中で、よく最近、日本のお米が高いのは、韓国の肥料よりも二倍の値段だとか、あるいは農薬が三倍だとか、農機具が三・五倍だとかというお話が出てまいります。しかし、これを比較すること自体が本当は実はおかしいんですね。

 ということは、物が違うといいますか品質がまるっきり違うんですね。実は日本は本当にすぐれた国だと思うんですが、肥料も農薬も非常に精度がいい、性能がいいんです。そして、各作物ごとに肥料があるんですね。ですから、そういうふうに分類して数が多くなるから価格も高くなるということも一つあります。

 こういうことを言うと非常に問題があるかもしれませんけれども、韓国の肥料なんかは日本のと比べると非常に粗悪なんですね。機械でまいても途中で詰まったり、機械を壊したりするんですね。これは全く違うということ。そしてまた、米の生産したものも、日本は大体、北海道のお米が一万二千円ぐらい、日本全国平均でならすと一万五千円ぐらいですけれども、韓国のお米というのは、六十キロじゃなくて八十キロですけれども、大体七、八千円ぐらいなんですよね。売る価格も半分なんだから、別に肥料が半分でも不思議じゃないんですよね。

 だから、そういうことを全て考えていくときに、全て、品質だとか、それから販売価格だとか、あるいは生活水準だとか、いろいろなことを比べて、比較してほしいなというようなことがあります。

 そして、海外と比較するなら、海外は二百国もあるんですから、韓国とだけ比較して物を言われるのはちょっと困るかなということと、最近よく出てくるのは、固有名詞を出してちょっと恐縮なんですけれども、ホーマックというホームセンターのくわだとか鎌だとかスコップだとか、これは非常に安い。確かに安いんです。九百八十円ぐらいで売っているんです。そして、農協へ行くと、これが二千九百八十円ぐらいなんですね。三倍もするんですね。

 しかし、ホームセンターの鎌やくわやスコップは、二、三時間使ったら壊れちゃうんですね。これは農協の方が高いんですけれども、やはり五年、十年使えるんですよ。そうすると、町場の町内会の草取りの出役でちょっと二、三時間草取りするんですよというふうな、そういうときは安い方がいいですから、それはホームセンターのものがいいんですけれども、やはり職業として毎日、何年もするには、それでは全然間に合わないわけなんですね。そういう大きな差があるということです。

小沢(鋭)委員 ちょっと意見がかみ合わなかったようなんですけれども、山居さんは日本の米は高いという前提でおっしゃっていましたが、私は、輸入米との内外価格差がほぼ均一になってきている中で、今おっしゃったように、日本のお米はおいしいんですから、高品質なんですから、だから、もっと売れるんじゃないですかということを申し上げたつもりでいます。

 そこで、あと、中原陳述人にお尋ねしたいと思います。

 私どもは、でき得る限り国際標準、あるいはまた経済学的にできるだけコンシスタントな政策、こういう話を考えておりまして、先ほど中原陳述人からもそういうお話がありました。要は、直接支払い制度の話ですね。

 ですから、我々は、冒頭申し上げましたように、日本の国民にとって、国にとってトータルとしてプラスになることは進めて、そして個別の問題に関してはきちっと温かい気持ちで対応しようじゃないか、こう言っているわけで、直接支払い制度という話は私は十分あり得る話だし、それこそ本当に国際標準だし、経済学的に正しい。

 しかし、広げていくという話がまず原則ですよね。広げていって、入ってくる、まさに価格と生産コストの差を直接支払いで埋めていく、これが正解だと私は思っているんですが、それは違うんでしょうか。それをすることによって、国民にとっては安い安全な食料品を口にすることができる、だから、いわゆる国民経済的にはそれが最も有効だ、こう思っているんですが。

中原准一君 やはり北海道農業は、非常に厳しい条件の中でも、規模拡大ということで客観的にやってきたんですよ。しかし、それは、人口は流出しちゃいましたし、もう資源はほとんど払底したと言っていいぐらいです。ですから、そこをやはり補完してやっていかなきゃならない。やはり直接所得補償、そういう形で、家族農業をどうするのか。アメリカのウィスコンシンに行ったって、ニューヨーク州に行ったって、酪農家はいっぱいいますからね。ペンシルベニアに行ったって、ファミリーファーム、家族農業なんですよ。

 では、日本の今日の農政、ファミリーファームというのが生きているかといったら、私は違うと思う。というのは、TPPの議論と一緒に、規制改革、今、推進会議とかあるいは産業競争力会議とか、そこが一つの政策提案をして、それが無媒介的に出てきているところに民主主義の怖さを感じています。

 やはり国民的な議論で、家族農業をどうするんだと。それは集落があって、家族があってという共同体なんですよ。そこをやはり、アメリカのオバマ大統領は、自分のレガシーとして、レームダックになってもTPPと言っているんだけれども、彼ははっきりとミドルクラスを重視しろと。ここが大事。日本の政策は、全部、ミドルクラスをもう引き剥がして引き剥がして、所得が五百万から四百万に切り下げられているんです。これを切りかえていかないと、僕は立ち上がれないと思っています。

小沢(鋭)委員 だから、要は、強い農業をつくるということと、今おっしゃられた家族農業を守るということをどうやって両立させていくかということを考えなきゃいけないわけですね。その場合には、要は、今、日本の農業は平均年齢が六十六歳以上になっていて、全国的に見ればどんどん減少しています。

 ということを考えると、我々は、新たな人たちを入れていかなきゃいけないということで、農地法の改正を今国会に提案しています、維新の会として。これは強い農業をつくるためです。強い産業としての農業をつくるためです。ただ、同時に、そういったファミリー農業を守らなきゃいけないという話は、これはこれで、直接支払い制度で守っていったらいい。これが政策の両立だと私どもは思っているということです。

 一つの話だけで集中しちゃうとだめなので、私どもの思いは、今意見を聞かせていただいて、そういうことだということを申し上げたいと思います。

 それから、浜出陳述人にお尋ねします。

 外に向かって頑張っていらっしゃって心強い限りであります。先ほど、その中でも、要は、中小企業の海外進出にとってはいわゆる現地での人、信頼できるパートナーを見つけることが大事だ、こういうお話がありました。

 今回のTPPの一つの課題は、中小企業の皆さんたちがどれだけ外に出ていけるか、そのサポートをどれだけできるか、やれているかというところにあると思っていて、浜出陳述人は、先ほど通関制度がかなりよくなりそうだ、こういう話がありまして、それが一つ。それからもう一つ。現地の信頼できるパートナーではありませんけれども、例えば金融機関、日本の銀行などが外に出ていく機会は物すごくふえるわけですね。現地に日本の金融機関があるというような話は、中小企業の皆さんにとっては大変心強い話だと思いますが、いかがでしょうか。

浜出滋人君 今お話ありましたように、外に出ていくといいますか、そういった意味では、各企業においてどういった商品であったりサービスを提供しているかによって回答は異なってくるとは思うんですが、例えば当社で申し上げますと、物づくりの会社ということで、例えば現在国内で使われているサンマ漁船向けのLEDの灯具がございますが、これは今基本的には国内使用限定にしているんですが、海外の方からも話がいろいろございまして、この商品が一度台湾の方で使われることになった場合、現地のお客様の方からの要望は、色を赤色にしてくださいと。ですから、そういった意味で見ると、その地域地域によって、同じ商品であっても仕様の変更もしくは新規に開発を進めなければならないケースも発生してきます。

 そういった意味で申し上げますと、例えば日本でいいますと、サンマの棒受け網で使われているのは基本的には白と緑色の明かりが使われているんですが、同じ灯具なんですが、台湾であれば真っ赤、なかなかちょっと日本では考えられないんですが。その国々によって、仕様であったり、もうそもそも抜本的に変更してくれというようなケースもございますので、その国々もしくは輸出先によって、再度、製品の再開発を進めることが必要になってくる場合もありますので、そういった意味では、例えば開発費用が非常にかさむという部分がございますので、特に中小企業にとってそういった大きな開発費、開発負担というのは非常に大きな課題になっておりますので、そういった面でのフォローであったりバックアップ等を検討いただければありがたいということが一つ。

 その後に金融機関のお話がございましたが、今、国の方でも例えばJICAとかそういったものを使っていて、私どもも、多くは活用がまだできていない部分はあるんですが、いろいろと御協力をいただいたり、例えば新しく行く現地の社会情勢であったり、実際に水産関係に関する情報等、なかなか入りづらいところもございます。

 そういった意味で、もう既にJICAの制度であったり、あと、国内取引先の金融機関が結構、最近であれば例えばタイのバンコクであったり、中国は大連、上海、大きいところは大体現地の駐在所という形で既に進出しているところもあるんですが、なかなかやはり一部の大きな都市部に限定されてしまうというところもあって、金融機関と実際に海外の、仮に現地で輸出をしたとしても、海外送金、送金はこちらは被仕向けという形で受け取る側になるんですが、要は、その海外送金の簡素化だとかそうしたところで金融機関も含めた形でいろいろな簡素化が実現するのであれば、そういった意味では非常にありがたい。

 情報をとるという観点から申し上げますと、今金融機関が各国にいろいろ進めているのは、私ども物づくりの輸出を行うような会社にとっては非常にありがたいところ。ですから、そうした意味では、今後、大きな都市部だけではなく、もう少し広いところに、まさに今回TPPの対象となる国にまだ駐在所がないというような日本の金融機関等ございますので、そういったところもこれから広がっていくと非常にありがたいと考えております。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 最後に、崎出陳述人に御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、水産物の輸出が伸びている、こういうお話があって、さらに伸ばしていきたいというお話もございました。確かに、今、アジアの国々は、高品質の水産物を、ある意味でだんだん豊かになってどんどん食べるようになってきたというのは、そういった意味では大いなるチャンスかな、こう思います。

 ただ、何か最近、どこかの国がマグロをいっぱい食べ過ぎちゃっていて日本にマグロが少なくなってきたなんというと、若干、余り食べ過ぎられても心配だななんという話もありますが、これは半分冗談でありますが。

 そこでお尋ねするんですが、生産量が減少しているというお話がありましたよね。それで、気候変動の話もありました。同時に、生産量の減少は、要は、気候変動で魚がいなくなったりして減っているのか、とる人、漁師になる人たちが、農業と一緒で余り入ってこなくて、漁師になる人たちが少なくなり高齢化になって生産量が減っているのか。これは、まあ両方といえば両方なんでしょうが、やはりそういう漁師の人たちが減っているという問題もありますか。

崎出弘和君 漁協の組合員、当初は、まあ十年ぐらい前は二万人ぐらいの組合員さんというカウントでいきますと、今はもう一万六千人とか、年々減っていくんです、三百人ずつ減っていくという状況です。

 その地区によって違うんですね。例えばオホーツクだとかそれから根室地区ですとか、ある程度水揚げが多い地区、ここら辺は逆に若い後継者もふえてきています。逆に、日本海に行くと、非常に資源量が少なくて、漁をやめていく、後継者が引き継いでいかないという数が多くなっています。そういう地域の差が非常に北海道は大きいです。これは、北海道を縦に割りまして、東側と西側では相当差があると思います。

 これは、漁業者が少なくなって漁獲数が減っているというのも少しはあるかもわかりませんけれども、それ以前に、地域によって、漁獲量があるところはやはりふえていきますよ。ないところはどんどん減っていきます。もう先行き、将来性がないというふうになってきますので。

 だから、やはり今大事なことは、資源をきちっとつくり上げていくということが大事なんですよね。特に日本海対策が非常に重要だと思っています。

 それから、例えば昆布なんかは、例年なら一万九千トン、一万八千トンというのがこの十年間を見ればあったんです。その前はもう二万トン以上の水揚げがあったんです。ことしは一万四千二百トンという数字で、この五年間を見ると、一万八千トン、九千トンという昆布の生産量さえ全く維持できない状況になっています。これは、一つは気候変動もあるんです。ただ、最も大きいのは、やはりとる人がいなくなっているという要素が非常に大きいと思います。

 だから、昆布とその他の魚種、それから地域によっても違うんですが、昆布あたりを見ると、非常に日本食の基本になる海産物ですので、これが今、一万四千トン台になるというのは、本当に漁業者が大きく減っている、それから高年齢化です。特に日本海地区に行けば、組合員さんの平均年齢が六十を超えて七十ぐらいになってしまうということがある。十年後にどうなっちゃうんだろう、とる人がほとんどいなくなっちゃうんじゃないかなというぐらいの危機感を持っています。

 ですから、地域、魚種によってそれぞれ違いますけれども、やはり今、漁業者が減っていくというのは非常に大きな問題です。

 それから、もう一つあります。加工業者、そこで働く従業員、これも相当今減ってきています。それから、各地区、札幌は人口が今百九十五万ぐらいいまして、北海道のこの地区で四〇%を占めますよね。そんなことで、地方はどんどんどんどん減っていく。

 そうなると、漁業者の問題、加工業者の問題、加工業者がなくなればやはり水揚げだって大変になりますよね。価値もつかなくなってくるということがありますので、両輪で、水産関係に携わる人が減ってきているというのは極めて北海道にとっては大きな問題だ、そういう認識をしております。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 昆布の話は、私は、温暖化が進んで海水のCO2の濃度がかなり上がっていますから、それが最大の原因だろうと個人的には思っていますけれども、それはおいて。

 漁業者の方が減っているということは、一言で言うと、先行きの見通しが立たない、こうおっしゃいました。だから、わかりやすく言えば、もうからないということだと思います。マーケットが小さくなっているんですから、もうからないんです。これは農業もそうです。ですから、外に打って出ないとだめなんだということだと思いますが、いかがですか。

崎出弘和君 そのとおりです。だから、今、畠山先生からも、輸出と内販という形で、我々は内販はもちろん重視します。この大きなマーケットを無視することはできませんから、大事にしていく。でも、輸出と内販のバランスをとりながら、やはり我々は生産者団体なので、漁業者の所得をある程度確保していかなきゃこれは継続できませんから、再生産の維持ですよね。そういう中では、輸出も有効に使いながら、我々生産者の生活、経営を守っていく事業をしていきたいと思っております。それがまた後継者につながっていくと思いますし、非常に大事な考え方だと思っております。

小沢(鋭)委員 ありがとうございました。

 時間ですから終わります。ありがとうございました。

塩谷座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の宮崎県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十八年十月二十六日(水)

二、場所

   ゆめゆめプラザ・TAC

三、意見を聴取した問題

   環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会、内閣提出)及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百九十回国会、内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 森山  裕君

       江藤  拓君   加藤 寛治君

       北村 誠吾君   西村 康稔君

       古川  康君   篠原  孝君

       升田世喜男君   上田  勇君

       田村 貴昭君   松浪 健太君

 (2) 意見陳述者

    宮崎県知事       河野 俊嗣君

    NPO法人手仕事舎そうあい代表理事

    もちなが邸       蒲生 芳子君

    農業(和牛繁殖業)   興梠 哲法君

    元宮崎大学学長

    宮崎大学名誉教授    藤原 宏志君

 (3) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   牧元 幸司君

    内閣官房内閣参事官   吉田 竹志君

    内閣官房内閣参事官   明珍  充君

    外務省経済局経済連携課長           岩本 桂一君

    財務省関税局総務課長  小宮 義之君

    農林水産省大臣官房審議官           大角  亨君

    経済産業省通商政策局経済連携課長       金子 知裕君

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

森山座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会派遣委員団団長の森山裕でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、両案件の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、紀元前四千年から人間の営みがあり、天孫降臨の神話のあります当高千穂町におきましてこのような会議を開催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党・無所属の会の江藤拓君、西村康稔君、加藤寛治君、北村誠吾君、古川康君、民進党・無所属クラブの篠原孝君、升田世喜男君、公明党の上田勇君、日本共産党の田村貴昭君、日本維新の会の松浪健太君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 宮崎県知事河野俊嗣君、NPO法人手仕事舎そうあい代表理事・もちなが邸蒲生芳子さん、農業(和牛繁殖業)興梠哲法君、元宮崎大学学長・宮崎大学名誉教授藤原宏志君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず河野俊嗣君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

河野俊嗣君 宮崎県知事の河野でございます。

 まずは、本特別委員会の先生方には、宮崎県で地方公聴会を開催いただき、ここ高千穂までお運びいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。また、地方の声、宮崎の実情をお聞き取りいただきますことに重ねて感謝を申し上げるところであります。

 おいでいただきましたこの高千穂町は、本県を代表する中山間地でございます。熊本地震の際も震度五強を観測し、先日の台風十六号も直撃がございましたが、それぞれ大きな被害までには至らず、いろいろな地域づくりに取り組んでいるところでございます。

 いただいた時間は十分でございますので、手短に、三点の柱を立ててお話を申し上げます。一点目はTPP協定についての基本的な考え方について、二点目はTPP協定による影響について、三点目はTPP協定に大きくかかわってくると想定されます産業分野別の考え方についてということで、お話を申し上げるところであります。

 まず、一点目でありますが、昨年十月、関係十二カ国の間でTPP協定の大筋合意に至ったわけでありますが、政府におかれましては、国会の決議や国民の声を踏まえて、国益をかけてぎりぎりの交渉を行った結果でありまして、私としても重く受けとめておるところであります。

 一方で、TPP協定が発効されれば、グローバル経済の中で、地方の産業、県民の暮らしに大きな影響が出てくることも想定されますので、国におかれては、地方の意見にも十分に耳を傾けていただきたいと考えております。

 お手元にお配りしておりますが、宮崎県TPP対応基本方針、これは一月に取りまとめたところであります。TPP協定交渉の大筋合意を受けて、県としての考え方をまとめたものであります。後ほど御参照いただければと思います。これの抜粋を私が口頭で申し上げたいというふうに思っておるところであります。

 我が国が、人口減少、高齢化ということで、経済発展を図るためには、拡大、発展する海外の成長を取り込むことは大変重要であろうと考えております。宮崎県としても、経済交流の拡大に取り組み、外貨の獲得、ビジネスチャンスの創出を図ってまいりたいということで取り組んでおるところであります。

 TPP協定は、世界のGDPの四割を占める大規模な経済圏をカバーする経済連携でありまして、人口八億人という巨大なマーケットが創出されるということであります。

 域内での関税が撤廃、削減をされ、貿易手続の迅速化、簡素化等が図られることによりまして、製品の輸出割合の高い企業や、海外輸出に取り組もうとする企業や生産者にとっては追い風となり、事業拡大も期待されるというふうに考えておるところであります。

 一方で、海外から安価な製品が輸入され、価格競争が生じることも予想されますので、特に本県の基幹産業であります畜産を初めとします農林水産業では、県産品の価格下落による生産額の減少などを懸念しているところであります。

 TPP協定につきましては、まずはこうしたマイナスの影響を最小限にとどめ、その上でプラスの効果を最大限にしていただきたいというふうに考えているところであります。

 二つ目の柱、TPP発効によります本県経済への影響についてでございます。

 国が公表しましたTPP協定の経済効果分析を踏まえて、これを本県に当てはめて試算したものでありますが、国の実質GDPに占める本県の割合を用いて試算すれば九百七十九億円、また、国の輸出輸入額全体に占める本県の割合を用いて試算しますと二百四億円となりますが、本県の産業構造を考えますと、製造業は全国と比べても割合が低いという状況がございます。具体的にどれほどの経済効果が出るかというのは、現時点ではなかなか見通しが難しいのではないかというふうに考えております。

 昨年の大筋合意後、県内企業の八百五十社に対しまして、この協定の影響についてのアンケートを実施しております。二百三十一社から回答がありまして、大きくプラス、ややプラスと回答した企業が二二%、ややマイナス、大きくマイナスと回答した企業は一二%、影響なし、あるいはわからないと回答した企業が六六%ということであります。本県企業にとりましても、その影響についてはまだ不透明であるというのが正直な声であろうかというふうに考えております。

 また、農林水産物の影響額につきまして、これも国の試算を踏まえて本県の試算を行いましたところ、約四十七億円から九十三億円のマイナスという結果になったところであります。その大部分が本県の農林水産物の主要品目であります牛肉、豚肉でありまして、そういう意味でも懸念を抱いているところであります。

 この影響額を最小限にとどめることができるかどうかは、まさに国内対策の効果によるところが大きいものと考えているところであります。

 次に、三つ目の柱であります、TPP協定にかかわってくると想定される産業分野、二つについて、農林水産業と商工業の分野について申し上げたいというふうに考えております。

 ここ高千穂を含めた中山間地域は、県全体の八八%を占めておるところでございます。

 この高千穂におきましては、昨年、世界農業遺産に認定をされたところであります。来てごらんになっていただいてわかるかと思いますが、標高千五百メートル級の山地に囲まれた険しい山間地、この必ずしも恵まれた条件ではないところで、農林業の複合経営を行ってきたということであります。この山間地の特徴を生かして、放牧を取り入れた畜産でありますとか、寒暖差を生かした夏秋野菜、花卉などの生産を盛んにしております。

 また、総延長五百キロに及ぶ山腹水路、また道路を地域のコミュニティーがつくってきた、長年にわたりこれを維持してきたという経緯があります。共同作業を通じて地域コミュニティーがこういう複合経営というものを支えてきた、そしてそのコミュニティーの核となるのが神楽などの伝統文化である、そのトータルが世界農業遺産として認定をされたところであります。

 ちなみに、高千穂の夜神楽は、昨日、国立能楽堂で、自治体の神楽として初めて公演を行ったところであります。

 こういった状況の中で、先祖から代々受け継がれたこういう複合経営につきまして、若い農業者も意欲を持って取り組んでいるところであります。

 TPP協定、先が見えないという不安がある中ではありますが、こうした後継者というものが前を向いていくことができるよう、将来にわたって夢と希望を持って農林水産業を続けていくことができるよう、守るべきは守り、その上で攻めの対策を展開する必要があるのではないかというふうに考えております。

 本県におきましても、海外戦略としましては、直行便が三つほどあります。ソウル、台北、香港とあります。アジアを中心に取り組んでまいりましたが、今後は、アメリカを初めとしてEUにも、世界市場を視野に入れて取り組みを進めてまいりたい。また、人材育成などにも積極的に取り組んでおるところであります。

 きょうお昼、本県を代表する宮崎牛を召し上がっていただいたところでありますが、日本からアメリカに輸出されております牛肉の四割以上を本県産が占めているというような状況もございます。こういった強みも生かしながら、積極的に攻めるべきところは攻めていきたい。ただ、生産現場の中ではいろいろな不安が広がっておりますので、いろいろな面での国の対策、御支援をお願いしたいというふうに考えております。

 次に、商工業分野につきましては、海外の成長をいかに取り込んでいくかというのが大きな課題であろうというふうに考えております。

 TPPが発効しますれば、貿易・投資の拡大を通じ、生産性を向上させ、県内企業全体の競争力、経営力の強化や雇用創出につなげ、本県経済産業の活性化につながることも期待されると考えております。

 本県は、先ほども申しましたように東アジアを中心に取り組んでおりましたが、ことし三月に、みやざきグローバル戦略ということで、視野を広げた戦略を策定したところであります。

 例えば、県の成長産業であります焼酎を初めとするフードビジネス関連。焼酎は、本格焼酎の出荷額が今、日本一になったところでもあります。また、部品を初めとします自動車産業などにつきましては、今後、全加盟国においてほぼ一〇〇%関税が撤廃されるということになる予定でありますので、輸出の拡大に向けて戦略的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 まだまだ海外戦略に取り組む事業者というものが本県ではそれほど多くない状況でありますので、ジェトロ宮崎貿易情報センターとの連携等、また産学金官が一体となって本県の強みやポテンシャルを最大限発揮するよう努めてまいりたい、そのように考えておるところであります。

 以上、三つの柱に沿って県の取り組み、また考え方について述べさせていただいたところであります。

 冒頭申し上げましたように、TPPを前に進める前提といたしましては、プラス効果を最大限にし、マイナスの影響を最小限にとどめるよう、国が定められました総合的なTPP関連政策大綱の確実な実施に向けまして、中長期的な視点も含めて必要な制度の創設、拡充や予算の確保を図っていただきたいというふうに考えております。

 また、大綱等につきましては、情勢の変化もあろうかというふうに思います、世界経済の状況また為替の状況、本県のような畜産が大きな割合を占めるところにおきましては飼料価格なども非常に大きなものがございます、そういった情勢の変化に応じてきめ細かく必要な見直しを行っていただきたいというふうに考えておるところであります。

 また、TPP協定が発効すれば、人、物、金の動きは今以上に活発になると予想されるところであります。輸入食品の安全性や、中小企業にとって海外企業との競争の激化などさまざまな不安があると感じておるところであります。引き続き、こうした形で地域の実情を丁寧に酌み取っていただき、国内への影響等につきまして継続的に把握をいただき、また万全の対策を講じていただきたいと考えております。

 以上、私の陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

森山座長 ありがとうございました。

 次に、蒲生芳子さんにお願いいたします。

蒲生芳子君 私は、隣が知事で行政の立場ですけれども、国や行政の立場ではなく、本当に命を守る、TPPで食べ物がどういうふうになっていくのかという生活者の視点でちょっと述べさせていただきます。

 とりあえず、肩書のNPO法人手仕事舎って何だろうということなんですけれども、庄内というところが都城にあるんです。そこで古い建物の利活用のために町家カフェもちなが邸という、ちょっと資料があると思いますけれども、そういう建物を生かしながら、食の提供をしているところのものです。

 そのもちなが邸のコンセプトが、日本人が日本人になるための食というのが大きなコンセプトなんです。日本人が日本人になるための食といったら、やはり米と豆と発酵食だろうということで、そういうことをやっています。

 先日も、子供たちと一緒にみそづくり体験をしました。お米、こうじが一キロ、大豆が一キロ、塩が四百なんですね、そして手づくりみそをつくっているんですけれども、お米は、何とかうちのアイガモ米でできました。大豆は、お隣、九州内の佐賀県の大豆を使いました。

 というようなことで、実際、日本の伝統食のお米を中心にした食事、私たち日本の食が世界に認められているんですけれども、その原材料になるもの、しょうゆ、みそ、豆腐、納豆、私たちの食べ物の一番大事なところの原材料はではどうなんだろうかというところを考えるわけですね。

 TPPということで、いろいろな国から来ます。その中の食べ物の価値というか、命というのを次の世代につなぐときに、果たして本物を子供たちに伝えていけるんだろうかと危惧しております。

 その中で、みそ汁と御飯というところの中で、よく言うんですけれども、自分でつくるときはちゃんと材料がわかってつくれるんですけれども、今、コスト中心、TPPも同じだと思うんですけれども、大きな経済の戦略の中でやられる。この経済優先の競争の中で、企業がもしそういうものをつくるとすると、一番安い材料というようなことを選ぶと思うんですね。そのときに、例えば大豆、果たして大豆は国産が使えるか。

 日本で、インターネットで調べたのでちょっと定かではないんですけれども、二六%国内でということになると、ではほかのものはどうなんだろうかというと、今、ほとんど輸入されている。その中で私が心配するのは、果たして、それが日本のように規定がぴしっとなっていろいろなことが規制されていなくて、その辺の枠が外されていって企業のコスト優先ということでいったときに、海外から入ってくる大豆は大丈夫なんだろうか。GM、遺伝子組み換えのいろいろな大豆が入ってきています。

 私がちょっとヨーロッパに行ったときにEUなんかの調査をすると、かなりそれはきつく規定されているんですけれども、今回、ちょっと大きなテーマで、アメリカなんかほとんどそれがされていないという中で、私たちが簡単にこういう食べ物を輸入していって大丈夫だろうかということをすごく危惧しているところです。

 けさの宮日にもお米のことがちょっと書いてあったんですけれども、きのう二十五日、TPPの特別委員会があったときに、こういう安全性はちゃんと守られているからというある大学の先生のコメントが特別委員会でありましたけれども、その辺がちょっとどうなんだろうかという危惧もあります、そういういろいろな事例を見たときに。

 それと、先ほど知事も言われましたように、宮崎県は農業県です、今回のTPPに対する損害とかはどういうふうかというと、四十七億から九十三億の影響があるだろう、前回のあれでは三十九億とかと書いてあったんですけれども。宮崎県は農業県ですので、本当にもろにこのTPPの問題を受けるんじゃないだろうか。

 例えば、口蹄疫がありました。口蹄疫のときは、農業だけの問題でなく、商店街もそうですし、地域のいろいろなことが、農業がだめになると地域もだめになる。本当にもろに体験した宮崎県なんですね。だから、宮崎県が農業県であればこそ、やはりこのTPPの場合はもう少し真剣に考えていかないと、予想以上のことが起こるんじゃないかなというふうに思っているところです。

 口蹄疫からの復興は、本当に皆さん、いろいろ関係者の努力で明るい兆しはあるんですけれども、例えばTPPがあれされると、私たちは消費者ですので、食べ物、お肉は、今でも安い肉があるとそっちの方に行くという感じで、世代間格差がありますので、若い家庭の場合は、高い肉よりも安い肉ということになります。その若い家庭というのは、子育てをしている世代です。その子育ての世代は、そこにホルモン剤が入って飼育されているときに、日本では規制がちゃんとしてあるんですけれども、それが外国から来たときに、大丈夫だろうかという不安があるんです。

 それこそ、ある情報からなんですけれども、アメリカの貧困家庭に肥満児が多いというのは、結局、お肉の中とか牛乳にいろいろな成長ホルモン、そういうのが入っているから太るんじゃないかというような情報が流れてきたりすると、ますます、果たして大丈夫なんだろうかと。それこそ、お米のこともありましたけれども、大豆とかが輸入されてくる中に、私たちの毎日食べている、命をつなぐ食べ物の中にいろいろなものが入ってくる。果たして、それはちゃんと管理するだけのことがあるんだろうかと。

 TPPの場合は、やはり強い経済力をつけるということで、知事も言われたように、グローバル的に攻める、若い農業者を立ててやっていこう、海外に進出していこうということもあるんですけれども、足元を見てみれば、結局、私たちの毎日の食事はそういうわけにはいかないんですね。できるだけ近くのものを食べて、近くのもので支え合っていこうというようなことを日々していますけれども、大きい経済の流れではどうしてもそうはいかないことが多々あるわけです。

 今、私は中山間地域に住んでいるわけです。結局、吉之元という山の中にいるんですけれども、あと五年すると、農業をする人はどんどん少なくなっていくんですね。田んぼ、畑が荒れて、そこはイノシシとかいろいろなものが入ってきて、農業をしているのか野生動物を飼っているのかわからないということで、自分たちが網を張って、そこで家庭菜園をつくっている、農業をしているという状態が本当に多々あるわけです。

 そういう意味では、地域は本当に、攻める農業といっても、地域の農村、農業、その景観なり農村を守るのはやはり一人一人の地域の住民なんですね。農業者だけでなく農業以外の人も一緒に地域を守っている状態、高齢化が進んでいくと、どんどん崩壊していくその農村の中で、農村、農業の多面的機能というのを果たしていけるだろうか、生態系を守ったりとか地域の景観を守ったり。本当においしい食べ物、外国に旅行に行ったりすると、食べ物と同時にその風景もいただくわけですね。その風景が、果たして、今のような状態でどんどん高齢化が進んでいって、またもやTPPのショックを受けたときに耐えられるだろうかというようなことが私はとても不安です。

 TPPで言う農業生産物となると、それは私は工業製品と一緒じゃないかなと思うんですね。車と一緒なんです、TPPで捉えている農産物は。結局そこを、私たちの暮らし、命を守る食べ物ではなく、工業製品と同じ捉え方をして果たして大丈夫かな。

 確かに、もう待ったなしで、これは流れの中に来ています。だけれども、ちょっと一どまり、立ちどまっていただいて、本当に、TPPの中で、農業の分野だけしか言っていませんけれども、命を守れるんだろうか、食の安全保障というのは大丈夫なんだろうかというのを今危惧しております。

 そして、私は、きのうまでこの高千穂にいました。小さな商店街の商工会のおばさんたちと一緒に、二十一人で先ほど言われた世界農業遺産の椎葉と高千穂に旅行に参りました。きのうはすばらしい雲海が見えました。ああ、やったと思ったんですね。

 そして、その二十一人のメンバーに、急遽、私、TPPの話をこうして言わなくちゃいけないのよね、あなたたち、TPPって知ってると聞いたんですね。そうしたら、二十一人の中で、聞いたことがあるというのが五人なんですよ、商店街の人で。農業の方は結構、農協さんも一生懸命、JAでTPPを言っています。でも、ちっちゃな商店街の中で、二十一人のうち五人なんです。果たしてTPPって何なの、わかると言ったら、一人しかいませんでした。

 要するに、このTPPは、まだまだ検討し話をしないと大変なことになる。次代の子供たちにどうつないで、命をつないでいく大事な食べ物を本当にグローバルの土壌で果たして上げていけるのかという危機感をすごく感じているんです。

 私の持ち時間もなくなりました。そういう面で、TPPは、数で押し切るんじゃなくて、もう少しゆっくりと検討していただいて、みんなが、ああ、じゃあやらないかぬね、そして、できなかったところをみんなでどう支えていくかというところの議論までぜひ進めてほしい。私は、きょう、こうしてやらせていただいて、これが言いたかったというふうに思っています。

 ありがとうございました。

森山座長 ありがとうございました。

 次に、興梠哲法君にお願いいたします。

興梠哲法君 興梠です。よろしくお願いいたします。

 TPPに関連して、中山間地の現状と、私のふるさと高千穂への思いを伝えさせていただきます。

 初めに、全国二カ所という貴重な公聴の場にここ宮崎、高千穂町を選んでいただき、まことにありがとうございます。

 昨年農業遺産に認定されたこの高千穂の棚田の風景は、委員の皆さん、いかがでしょうか。

 古くからこの地は、民は牛を愛し、牛はまた民を愛すという言葉が伝わっております。これは、昔から、人と牛とが棚田を耕し、峠の道伝いに荷を積んで運ぶなど、人と牛とがともにこの厳しい環境の中で生きてきたことのあかしであります。また、今でも歌い継がれる刈干切唄は、厳しい冬場の牛の貴重な餌を刈り取る仕事唄でした。

 先人の時代から棚田や草地が大事に守られ、牛が大切に飼われてきたこの高千穂町で、私は、和牛繁殖業を妻と両親の四人で営んでおります。また、地域に貢献したいと、高齢者や兼業農家の農作業の手助けとなる受託組織を四人で構成しております。

 そして、私には三人の息子がおります。高校三年生になる三男は、全国的にも有数の畜産地帯、宮崎県南西部に位置する都城市に下宿をしながら、県立都城農業高校畜産科に学んでおります。

 息子は、昨年十月、群馬県で開催された、全国の農業高校生が日ごろの研究と夢を発表する第六十六回日本学校農業クラブ全国大会に出場し、見事、最優秀賞、農林水産大臣賞をいただきました。規模拡大が難しい山間部で収益性を高める内容を発表し、結びに、人口も牛も減っている現状があるからこそ、将来は地元に帰り、地域の仲間と力を合わせて高千穂の農業を守ると力強く決意を述べてくれました。

 私は、その発表の場に居合わせて、厳しい環境であってもこの地に帰って農業を継いでくれるという息子の姿とふるさとを思う心に、改めて、今私がこの中山間地でしっかりと農業を引き継いでいかなければという気持ちを新たにしました。

 さて、安倍総理は、総理就任時に、美しい国日本、日本の農村の原風景と棚田の姿をしっかりと受け継いでいくと表明をされました。私はその言葉に、やっと農村に光の当たる時代が来たと、大きな期待を寄せました。しかし、その後のTPPへの対応、本当にTPP締結が農村を守ることにつながるのでしょうか。

 現在、日本の食料自給率は、カロリーベースで四〇%を切ったと言われます。政府は今、自給率を四五%に上げる計画をされていますが、本当にTPP締結が自給率を上げることにつながるのでしょうか。

 私たちに伝わるTPPの情報が少ない中、日本の農業はどうなるのでしょうか。この中山間地にどんな影響が与えられるのでしょうか。そのことが不安なんです。

 そして、政府は、攻めの農業、規模拡大、競争力の強化、輸出ばかりを強調されます。私も、国際化の今、そのことの意味はよくわかります。

 しかし、行き過ぎた国際化は、外国の例を見ても心配になります。また、経済とは、人々の暮らしを守るものであり、成長と発展を目的とするものではないのではないでしょうか。この中山間地では、攻めることよりも守っていかなければならないことの方が多いのです。見ていただいているとおりに、土地の集積が難しく、大型機械が使えない。何より、農業の担い手が足りないのです。

 私は、TPP締結の動きが進められようとしている今、今度こそ政府に、日本の農業、農村を守る約束をしてもらいたいんです。国内にもっと目を向けていただきたいのです。

 第一に、国内対策の充実、セーフティーネットの構築です。

 TPPの影響が考えられる事項を、前倒しでその各種施策を行ってほしいのです。私たちが安心して農業に取り組んでいける、自信を持って後継者に引き継いでいける現行の価格補償の拡充や、現在検討している保険制度の現実的な構築を図ってほしいのです。

 例えば、私が取り組んでいる畜産においては、肉用牛繁殖支援事業発動基準を五十万円に、マルキン制度においては一〇〇%補填への拡充が現場の声です。

 現在要望の多い畜産クラスター事業、産地パワーアップ事業においては、全国押しなべたような条件ではなくて、中山間地の実情に合った条件にして、中山間地枠として継続して手厚く予算を確保してほしいのです。

 食料自給率を上げる取り組みについても、私たちも、今まで以上に食の安全性に細心の注意を払いながら農産物を生産していきます。ぜひ国からも、国民、消費者の国内産農産物の消費への機運を高めていただき、国民全体で応援してほしいのです。

 厳しい現状ではありますが、私たちも新たな挑戦を始めております。現在私が行っている受託作業や集落営農だけでは到底中山間地の農地を守ることは困難、限界に来ております。

 そういった中、隣の日之影町では、町が農業生産法人を立ち上げて、行政が主体になり、農地を守る取り組みが始まろうとしています。私は、この取り組みは、中山間地生き残りの模範になる事例だと思います。

 また、JA高千穂地区においても、ピーク時、平成十九年には六千五百頭いた繁殖母牛が、現在四千五百頭になり、二千頭減少しております。その一番の要因は、生産者の高齢化です。高齢者支援の一端として、JA繁殖センターで母牛を預かったり、一番手のかかる育成期の管理を請け負い、受胎させて農家に戻す取り組みが行われております。この取り組みで母牛頭数の減少に歯どめがかかり、今は増頭に転じ、成果を上げております。高千穂町では育成費用の補助制度があり、五ケ瀬町でも増頭に向けて若手農家に研修費用を助成するなど、JAと行政と農家が一体となり今の現状を乗り越えようと頑張っております。

 これからの中山間地振興策は、JAや行政、地域の他産業、農家が一体となって課題に取り組むケースがふえることがあると思います。ぜひ国からも、中山間地の必死なこの取り組みに目を向けていただき、支援をお願いしたいと思うのです。

 そして、強くお願いしたいことは、農業の人づくりです。中山間地が生き延びていくためには、農業の担い手の確保、後継者の育成が必須であり、それを含めた人づくりが急務です。

 現在、JA高千穂地区管内の農業就業者の平均年齢は六十七歳です。このことは、全国的にも同じことが言えると思います。このままであれば、十年後、一体どんな時代が来ているのでありましょうか。だからこそ今、国も地方も中山間地の日本農業の人づくりに力を注いでほしいのです。

 現行の後継者育成事業を手厚くしていただき、新たな事業の開発も必要だと思います。特に、畜産を一からスタートする就農者は、初期投資が大きく、収入を得るまでに二年近くもかかることから、その期間の運転資金や素牛導入など、今まで以上に手厚く育ててほしいのです。

 そして、新たな農業の人づくりの私からの提案として、国と自治体とJAが出資して、仮称農業人材育成基金を設立してはどうでしょうか。

 中学生や高校生といった若年層、農家、非農家の関係なく、農業を職業として、選択肢の一つとしてもらえるような教育現場からの農業教育をしていただきたいのです。そして、一人でも多くの子供を農業の担い手として育てていただきたいのです。もし私たちがその力になれるようなことがあれば、ぜひ協力をさせてください。

 私の夢のような提案かもしれませんが、実際に県内の農業高校の実例として、JAと地元自治体、学校PTAが基金を設立して、農業後継者を学校の授業の中で育てる取り組みがあります。毎週、授業の二時間と放課後を使い、実際に地元の農家に出向いて実習を行い、デュアルシステム、働きながら学ぶ、学びながら働くの授業を展開し、学校、地域、行政、JAが一緒になって農業後継者を育てる取り組みです。

 私は、この取り組みは、必ず後継者がふえる取り組みだと考えております。これから、新たな農業の人づくりをみんなで考えていこうではありませんか。

 終わりに、中山間地には多くの課題があります。しかし、地方は必死になって生き残り策を模索し、日々努力をしております。ぜひ、私たちがどうしても手が届かない問題を政治の力で後押ししてもらいたいのです。

 私たちには中山間地を守り抜く使命と強い信念があることをここに表明し、私の発表とさせていただきます。

 ありがとうございました。

森山座長 ありがとうございました。

 次に、藤原宏志名誉教授にお願いいたします。

藤原宏志君 まず、団長及び委員の皆さん、さらに関係職員の皆さん、遠路はるばる宮崎までお越しいただき、ありがとうございます。

 私は、稲作の起源や伝播と、それが社会に及ぼす影響について五十年間勉強してまいりました。そういう立場から、今問題になっているTPP、いわゆる環太平洋経済連携協定については、次に述べる理由で日本の将来を危うくするおそれがあり、これに反対せざるを得ないということを申し上げたいと思います。

 まず初めに、手続の問題で恐縮なんですけれども、TPPを国会で批准する手続として、主権者である国民の意見を聞く公聴会が北海道とこの宮崎で開かれています。ただ、その陳述人はそれぞれ四人。これで公聴会が終わるということになりますと、国民の意見を聞くというのは一体どこへ行ったんだろうかと。そういう意味で非常に残念に思います。また、公表されている資料というのが非常に少なく、そういう意味ではその全体像を把握するのが非常に難しい、よくわからないという部分がたくさんございます。

 そういう意味では、国の将来を左右しかねない重要な協定がこういう状況で審議、決定されるということについても大いに不安を覚えます。

 次に、内容についてでございますが、TPPは経済全般にわたる広範なものであり、原文は六千三百ページに及ぶ膨大なものです。限られた発言時間の中でTPP全体について述べることは不可能です。したがって、ここでは、私の仕事にかかわりの深い農産物に限って意見を述べたいと思います。

 まず、米についてです。

 TPPが実施されますと、アメリカからだけでも、アメリカだけでもWTOの輸入枠というのが三十六万トンあるわけです、それにTPPが加わると五十万トンに増加します。これにオーストラリアあるいはその他の国が加わるわけですから、かなりの数になります。

 問題は、例えばアメリカから輸入される米価格の問題です。日本では、御承知のように、六十キログラム当たり大体一万二千円から一万三千円という値段でございます。これに対して、アメリカから持ち込まれるお米の値段というのは六十キログラム当たり約四千円。

 問題は、実は、アメリカも日本も生産コストそのものがそんなに大きく違うはずはないんです。六十キロ当たり大体一万四千円ぐらいのコストのはずです。ところが、アメリカの米が日本へ入ってくると四千円になる。一万四千円が四千円になるということ、この差額一万円というのはどうしているかというと、アメリカの場合、目標価格の設定というシステムで、ほとんど、約一万円がアメリカの国の税金で賄われている。ここが非常に大きく違うわけです。

 日本では採算がとれない価格で買い上げられている。一方、アメリカの農家は一万円の補助を受けている。これではとても競争になりません。もう火を見るより明らかであります。

 牛肉についてであります。

 先ほど興梠さんからお話がありましたように、ここも畜産地帯です。牛肉の関税は現在三八・五%、これがTPPが通れば九%になる。セーフガードがあるからいいんだという意見がありますけれども、このセーフガードというのはその基準輸入量が非常に大きくて、ほとんどまずひっかからないだろうというふうに予測されています。こういう状況では、畜産業も非常に厳しい状況にならざるを得ないということであります。

 このように、例を挙げていきますといわゆる枚挙にいとまがないわけなんですけれども、消費者が非常に関心を持つ、いわゆる農産物の安全性についてであります。

 遺伝子組み換え作物、いわゆるGM作物でございますが、これは、自然界にない、人間がつくった作物なんです。これがつくられ始めてからまだ日が浅い。これが人間にどういう影響を及ぼすかというのは定かでない、よくわかっていないんです。

 また、例えばアメリカのモンサント社という大きな企業がございますが、ここでは、トウモロコシに除草剤に抵抗性を持つ遺伝子を組み込んだ、そういう遺伝子組み換えトウモロコシというのをつくっております。

 この場合、そのトウモロコシの種をモンサント社でつくった除草剤とセットで売っているんですね、ラウンドアップという除草剤なんですが。これは、このトウモロコシが強い遺伝子を持っているわけですから、雑草が多少生えても強い除草剤を使えば草を枯らすことができる、そういうふれ込みなんです。

 私もラウンドアップを使ってみたことがあるんですが、これは極めて強い。恐らく、何らかの形で人間に影響を及ぼすだろうというふうに直観的に思いました。

 国会で、主要農産物五品目は死守するという国会決議というのは一体どこへ行ったんでしょうか。これでは、日本農業は壊滅的な打撃をこうむることは明らかであるとともに、国民は安全性に不安のある輸入農産物を食べさせられることになってしまいます。

 このようなTPPの狙いは一体どこにあるのかということなんですが、関税障壁やあるいは非関税障壁を除去することによって誰がどんな利益を得るのか、なぜ今TPPが必要なのか、TPPの文書を読んでもよくわかりません。

 ところが、十月十日付、新浪剛史氏が宮崎日日新聞の現論という欄に投稿しておられます。新浪氏はサントリーホールディングスの社長で、安倍首相の経済財政諮問会議の民間委員です。いわば安倍ブレーンと言っていいでしょう。この方がこういうふうに言っているんです。「日本は付加価値が低い産業は途上国に任せ、研究開発に支えられた製造業やIT産業、ファッションなどソフト産業を中心に付加価値の高い経済構造に転換を迫られている。TPPがその契機になるのは間違いない。」これは原文のままです。

 これを読みますと、非常に率直でわかりやすい。付加価値が低い産業とは、一次産業、とりわけ農業であります。確かに、新浪氏の考え方は、これを読んでみますと、経済効率を最優先とする国際分業論であり、新自由主義の典型であります。これで、TPPというのも多国籍企業の国際戦略であることがよくわかります。

 確かに、農業は太陽光をエネルギーとし、作物の光合成機能を利用して生産する産業ですから、経済的な効率が悪い産業であります。しかし、人間は食料がなくては生きていけません。

 最近、FAOは、気候変動によって人類は狩猟、採集生活を行っていた不確実な時代に引き戻される、作付したものが収穫できなくなることは確実だと、世界食料農業白書で非常に端的に述べているんですね。そういう状況の中で食料の自給体制を確保するということは、日本にとって焦眉の課題ではないかと思います。

 私の結論といたしまして、農業は太陽光と土地に依拠する産業であり、工業製品とは本質的に違います。生産性を上げるにしても、光のエネルギー、太陽の光をふやすことはできませんし、土地面積をふやすこともできません。おのずと限界があり、したがって、農産物を工業製品と同列に見ることはできません。

 それから、ヨーロッパの国々で農業者の所得補償制度というのが確立しているのは、安全な食料の安定供給に関する国民的合意ができているからです。先ほど来発言がありましたけれども、やはり非常に日本で欠けている点はこの点だというふうに思います。

 人間以外の自然界では、生物は自分の行動範囲の中でしか餌をとることができません。これで食物連鎖が成り立ち、生態系が維持される。いわゆる自然の法則です。自然の法則は経済法則に優先します。自然を無視した人間の行為は、いずれ何らかの形で自然から大きなしっぺ返しを食らうことになるでしょう。

 アメリカのように輸出農産物に国費を投入するのは論外として、安全な食料自給のため、国民的な合意に基づき国費を投入し、食料自給体制を確立することが独立国として必要不可欠だと思います。

 また、TPPでは農業の環境機能がほとんど考慮されていません。これは先ほどの発言の中にもありましたので、繰り返しませんが。

 水田稲作は水管理の合理的なシステムです。もし農業、農村が崩壊すれば、集中的な降雨により、都市部を含め、大規模な災害につながるおそれが多分にあります。

 さらに、水田稲作を中心にした農業は、弥生時代以降の社会、文化の基盤をなすものであります。これを失った日本の社会、文化はいわば根なし草になります。

 日本人は、弥生時代以降、縄文文化の遺産を継承しながら、日本人的な物の考え方、文化、さらには社会制度に至るまで、いわゆる水田稲作文化を農耕によって育んでまいりました。今、農村社会が崩壊すれば、日本の社会、文化に大きな負の影響を及ぼすことになることを恐れます。

 以上の観点から、私はこの協定案の批准に反対いたします。

 お聞きいただきまして、ありがとうございました。以上です。

森山座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

森山座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。

 きょうは、日程が変更になったにもかかわりませず、河野知事初め関係団体、関係の皆様方の御尽力でこうして宮崎県で地方公聴会を開けますことを、本当に感謝申し上げたいと思います。

 私も、内閣府の副大臣で交渉に直接携わっておりました。本当に厳しい交渉の中で激しいやりとりもやってまいりましたけれども、最後の結果は、日本の農業の基盤を守るぎりぎりのところで我々は例外措置も確保しておりますし、関税を削減していくのも長い期間をとっておりますし、それからセーフガードも用意をするということで、ぎりぎりのところで踏ん張ったものというふうに思っております。

 しかし、きょうも幾つか不安なお声もお聞きしました。私の地元は兵庫県の淡路島と明石でありまして、特に淡路島は農業、水産業の地域でありますので、いろいろな声もお聞きをしております。

 今回、地方公聴会をするに当たって、ぜひ中山間地域でお話を伺おうと。一つは北海道で、割合大規模農業であったり、あるいは、札幌で開かれますので都市の方もおられます。今回、我々は、宮崎のこの高千穂の地域で、中山間地域で頑張っておられる皆さん方、あるいは不安に思っておられる皆さん方のお声を聞こうということで、地元の江藤拓委員の御尽力もあり、こうして開かせていただいているわけであります。

 いろいろな不安の声と、それから新たなチャレンジ、地産地消の取り組み、あるいは興梠さんからは、日之影町の新たな生産法人の話とか、地元での人づくりの基金のお話なんかも御指摘をいただきました。大変参考になるお話でありますので、今後、TPP対策として、もう既に補正予算を組み、本予算を組み、さらにまた補正予算を組みやっておりますけれども、さらにまた参考にしながら、我々も勉強してやっていきたいというふうに思っております。

 来る途中も本当に、安倍総理の言われる息をのむ棚田を見ながらやってまいりまして、小さな棚田で苦労されながらやっておられるんだなということを改めて感じましたけれども、世界農業遺産として指定をされて、観光面でも恐らく頑張っておられるんだろうと思います。斜面を利用したクリの生産なんかもやっているといって、江藤さんからも伺いましたけれども、いろいろな工夫をしながら頑張っておられる、その集落共同体、農業の文化、これを守っていくというお話もいただきました。

 ぜひ、もちろん、グローバルの中で競争する部分と地域をしっかり守っていく部分、これは両方やっていかなきゃいけないと思いますので、我々も、きょうのお話を参考にして、しっかり対策も含めてまた検討していきたいというふうに思います。

 質問に入りたいと思います。

 まず、河野知事にぜひお伺いをしたいと思います。

 私が交渉している副大臣のときも何度も東京に来られて、意見交換をさせていただきました。当時から畜産を中心に農業に対する不安、心配も述べられておられましたので、私もそのことを念頭に置いて、ずっとこの交渉にもかかわってまいりました。

 きょう、基本的な考え方で述べられましたけれども、繰り返しになりますが、我々政府・与党としてはぎりぎりのところで踏ん張って、例外措置も設けて、農業基盤を維持していける、そういうところで踏ん張り、かつ、幾つか御指摘がありました、畜産クラスターとか産地パワーアップとか、いろいろな形で対策を講じて、いわばピンチをチャンスに変えてやっていこうということで、いろいろな対策を組んでいるところであります。

 まず、知事に、TPP全体の評価と、この対策についての御評価をお伺いしたいと思います。

河野俊嗣君 今の御質問についてであります。

 先ほどもお話をしたところでありますが、本県は、畜産も含めて農業というものの比重が非常に大きい、またさまざまな影響分野というものが懸念されるというところの中で、TPPについてさまざまな情報開示を求めながら、また県内でもいろいろな議論をしながら、さっきの不安の声もありました、そういう中で国の交渉に対していろいろな意見を申し上げてきたところであります。こうした国民の声を受けとめ、また国会の決議等を踏まえながら、今委員がおっしゃいましたように、やはり国としてもぎりぎりの交渉を行われたものと、その結果については重く受けとめておるところであります。

 その後、国におきましては、TPP関連政策大綱ということで、包括的なさまざまな対策を打たれるということで示されたところであります。それをもって今後全て安心、不安が解消されるということではなしに、やはり中長期的に見ていく必要がある、その影響というものが段階的に出ていくということもございますので。

 先ほど申し上げましたように、やはり国におかれましては継続的に地方の実態また現場の実態というのを把握いただきたい、そして手厚い制度、予算の確保等に努めていただきたい、そのように考えております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 政府も既に、私も副大臣をしておりましたときから、できるだけ情報開示すべきだということで、そういうふうに取り組んできたわけであります。

 実は、公表した資料を積み上げれば五十センチぐらいになって、毎回毎回の交渉のときにも、確かにどの国のどの人が何を言ったかというのは開示できないんですが、これは交渉事ですからできないんですけれども、しかし、どういう議論をしているかというのは毎回、甘利大臣なりあるいは担当の審議官なりができるだけ丁寧に説明もしておりますし、これは今でも内閣官房のTPPのホームページで見ることができます。

 といったことを初めとして、相当程度の資料も開示しておりますが、先ほど蒲生さんからも知らない方が多いということでありましたので、もちろん我々自民党としてもいろいろな説明会をやったりしておりますし、政府も何百回とやってきておりますけれども、さらにこれは努力をしなきゃいけないなと改めて感じました。

 ただ、幾つか、これは藤原公述人のお話で、私も交渉に携わっておりましたけれども、先ほど三十六万トンから五十万トンにふえるというお話がありましたけれども、今回合意したのは、米については七万八千四百トン入れる、枠をつくるということであります。そういったこととか、アメリカの政策で、輸出補助金、あるいは目標を設定してそれに合わすために補助金を出すといったことについてはWTOで禁じられておりますので、これまでも我々は何度も交渉をいろいろなことで国際社会の場でやってきておりますので今はそんな制度はないんじゃないかと思うんですけれども、等々の誤解なりがまだありますので、これはもっともっと政府もしっかりとやってほしいと思いますし、我々の立場でもぜひ説明をしっかりとやっていかなきゃいけないなということを改めて感じました。

 二つ目に、これは河野さんと興梠さんにちょっとお伺いしたいんですけれども、攻めの農業というお話もいただきました。新しくチャレンジするというお話もいただきました。

 知事は輸出も一生懸命やっておられるんだと思いますけれども、例えば、今回、牛肉にしても、アメリカの関税もやがて十五年目にゼロになりますけれども、それまでの間に、輸出枠なる二百トン、今アメリカに輸出している二百トン、これが一気に三千トンまで無税枠が初年度から広がります。やがては六千四百トンぐらいまで広がりますので、そういう意味では物すごく輸出の可能性が広がるということだと思うんですけれども、そういった輸出支援を、これは国もいろいろな形で支援を行う予算を組んでおりますが、県としてぜひそういった応援していく体制を組まれたらどうかと思うんです。そのことが一つ。

 それから、あわせて、今回のTPPでは、原産地表示といういわゆる地域ブランド、これをお互いに保護し合おうという項目が入っています。例えば、私の兵庫県でいえば神戸ビーフとか、九州でいえば福岡の八女茶とかですね。こういう地域のブランドを認定することによってこれをお互い保護し合おう、これは協定を結んでやろうということになっておりますので、地域ブランドを活用して、地理的表示という制度を活用して輸出をふやすという仕組みは、これをやればかなり効果を発揮するんじゃないかと思いますので、宮崎でもそういう取り組みをされたらどうかということをぜひお伺いしたいと思います。

 興梠さんには、確かに中山間の小さな規模でやっておられる方には輸出とか規模拡大と言われてもぴんとこないし、そんなのは俺たちの話じゃないと思われる方が多いと思いますけれども、興梠さんは中山間であってもかなりの規模の、私が事前にいただいた資料によりますと、六十頭ぐらいを家族四人でやっておられるというふうに伺っております。私の地元の淡路でも家族経営でたくさん畜産業をやっていますけれども、大体二十頭とか、せいぜい三十頭ぐらい。家族でやるには限界がある中でそれだけやっておられますし、さらに、すけっと牧場というのをつくられて、後継者のいない、牛なんかにも支援をしておられると伺っています。

 規模拡大もやりながら、輸出というものにもっとこう、先ほど宮崎牛は輸出の四割を占めているというお話もありました、そういうところのチャレンジについてどういうふうにお考えか、ぜひお二人にお伺いをしたいと思います。

河野俊嗣君 TPPにつきましては、守るべきは守りながらも攻めるときは攻めるという基本的な考え方の中で、もしこの協定が発効しますれば本県の誇る農産物が海外へもっと打って出る、そのチャンスも広がる、その代表例が先ほどお話をした牛肉ではないかということであります。

 例えば、アメリカでありますと、平成二十七年度はアメリカへ二百十三・六トンの牛肉が輸出をされておりますが、本県からの輸出量が八十九・三トン、四割以上を占めているという状況がございます。そういう中で、この合意内容によりますと関税が撤廃をされるということで、それはチャンスが広がるというふうに考えようではないかということで、今、和牛関係者とは議論をしているところであります。

 全国和牛能力共進会、五年に一度開催される大会で二連覇をして、来年が三連覇に向けた大きな大会でありますので、まずはそこをかち取るということに向けて今生産者と一体となって取り組んでおりますし、輸出に向けてのさまざまな工夫というものは、これからもいろいろな事業者との連携を図りながら進めてまいりたいというふうに考えておるところであります。牛肉のみならず、スイートピーも含めて花卉などの輸出も今進んでおるところであります。

 地理的表示につきましては、宮崎牛なども今検討を進めておるところであります。ぜひとも、いろいろなことを参考にしながら、本県でも積極的に今後取り組んでいきたいというふうに考えております。

興梠哲法君 私からは、牛肉の輸出のことについて答えさせていただきます。

 私が先ほど言った、輸出だけを強調されているということは、ただ、もう少し海外に目を向けろということもいいんですけれども、やはり、目を向けられない農村地帯とか、そういったものに対しても、まあ、攻めの農業は攻めの農業でいいんです。でも、それをできない地域、そういったものに対しての農業振興策を私は先ほど提案したつもりなんですが、牛肉の輸出は私は奨励してどんどん攻めていただきたいと思います。しかし、私たち全てがそのような農家ではないということを知っていただきたいんですよね。

 牛肉は、そのように順調に輸出の路線に乗って今拡大の方向、輸出の四〇%を宮崎産が占めているわけです。でも、みんなが牛をやっているわけじゃないので、いろいろな品目をこの中山間地でつくっているわけですから、やはりそこに目を向けていただきたいという意味でのさっきの発言でした。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、輸出に向けた取り組みを県としてもバックアップしていただければと思いますし、興梠さんがおっしゃるように、みんながみんな輸出ができて規模拡大ができるわけではないんだと思います。うちの地元淡路島でもそうであります。そういったところの中山間の人たちにやはりしっかり目配りしながら、そうした方々の声に我々は寄り添いながらいろいろな対策を講じていかなきゃいけないと思うんです。

 今回の補正でも、中山間の所得向上の対策で、まさに産地パワーアップとか畜産クラスターとか、そういったものの枠を中山間につくってやっていこう、応援していこうという取り組みもありますので、そういったところもぜひ活用していただければなというふうに思います。

 蒲生さんにぜひお伺いをしたいんですけれども、実は私、経済産業省、当時通産省に入ったとき、二年先輩に持永さんという方がおられて、この宮崎で立候補もされたりしたんですけれども、お互い政治を志すということで非常に親しくしてもらったんです、残念ながらお亡くなりになられたんですが。

 きょうは、もちなが邸、ああ、そうですかということで、大変御縁も感じまして、お話も伺って、非常に共感できるところもございます。食の安全について、これは国会でも非常に議論になっておりまして、我々も多くの皆さんから心配の声も聞いておりますので、ぜひ。

 安倍総理は答弁の中で、いわゆる輸入食料品の監視体制、検査の人員も強化をするということも答弁されておられますし、農水大臣あるいは厚労大臣から答弁があったことを簡単に紹介しますと、日本の食の基準を輸入品も全て守って流通されていますので、日本の基準をしっかり、我々がこれまでやってきた基準が何か変わるとか、その基準を満たさない輸入品が入ってくるということではありませんので、そこは安心してくださいということです。

 ただ、表示がやはりちゃんとしないと、これは輸入品なのか国産品なのか、あるいは輸入品で何を使っているのかというところの表示、これは科学的に検出できるもの、できないものがあるようですけれども、常に新しい科学的な見地に従って表示をやってほしいということも我々は申し上げているんです。

 その一番のところは、やはり表示をきっちりやるというところで消費者の皆さんに選択してもらう。まずは、日本の基準を全部守ったものしか入ってきていませんけれども、消費者が選択で、輸入品か国産品か、何が使われているかと見て判断するということが大事だと思うんですけれども、そのあたり、消費者というか主婦の感覚から見ると、今の制度について何か、その点についてございましたら教えていただければと思います。

蒲生芳子君 率直に言って、今の制度じゃやはり心配ということがありますよね。政府としてはそういう対応をなさるということですけれども、その辺の監視体制とか、表示の問題もありますけれども、今でも、表示の仕方、そのものにはあれだけれども加工には表示をしなくてもいいとかいろいろありますので、そっちの方はぜひ厳しい監視の中で、今まで以上の監視をしないと大変だということをお願いしたいと思います。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 我々も日本の食の安全はしっかり守るという前提で交渉もしてまいりましたし、その後の結果を受けて、体制を強化しながらやっていこう、何か食の安全を損なうものじゃないという方針で政府も臨んでいると思いますので、ぜひ強く我々も求めたいと思います。

 何かあれば。

蒲生芳子君 その中で、やはり、いろいろな方が委員会に入ってこられるときに、開かれた委員会として、いろいろ調査、検査したり、いろいろなことを決めていくときにぜひいろいろな角度の方たちを入れて、消費者の団体の方とかですね、その専門家も一般の、私はNPOをやっているんですけれども、やはりそういう開かれた視野でやっていけるような方を入れてほしいということを希望します。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 専門家は科学的な見地から判断をされるわけですけれども、その際に消費者の皆さん方の声もしっかり聞いてということだと思いますので、我々もそういったことをしっかり求めていきたいと思います。

 最後になりますが、世界農業遺産ということでこの地域は指定をされていて、かつ、観光、インバウンドもふやしていこうということで我々はやっていますが、農村地域で、世界農業遺産、美しい棚田もあります。それから、地産地消のおいしい農産物もあります。きょうは、お昼はおいしい和牛をいただきました、高千穂牛をいただきました。観光振興で検討して取り組んでおられること、あるいは国として望まれることがありましたら、知事にお伺いをしたいと思います。

河野俊嗣君 この高千穂を中心としたエリアは、本県を代表する観光地でもあります。年間百六十一万人ほどの観光客を集めるわけでありますが、それ以前、二、三年前は百四、五十万というところでありました。実は、高速道路、東九州道が開通をしたという効果が非常に大きくございます。

 やはり、基本的なインフラ整備の効果というものを今我々は実感しておりますし、世界農業遺産というブランドを得たこと、それをしっかり活用していこう、これは今からがスタートであります。統一のロゴマークを今回新たに作成したところでありまして、関係五町村がこのエリアに入っておりますので、連携しながら魅力を発信していこう。

 そして、外からの注目を集め、また観光客も引き入れることが農業も含めた地域の皆さんの頑張りを支えることになる。また、神楽を能楽堂でということを申し上げましたが、そういう伝統文化を発信して、それが地域の誇りにもつながるということ、そういうよいサイクルをつくっていきたいというふうに考えております。

西村(康)委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。

森山座長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 民進党の篠原でございます。

 順番を逆に質問させていただきたいと思います。

 その前に、ちょっと今の皆さんの御意見を承った感想でございますけれども、蒲生さんと興梠さんには、皆さん御存じだと思いますが、我々TPP対策特別委員会は余り審議が進んでおらないんですけれども、ぜひ来ていただいて質問していただいた方がいいんじゃないかと。特に、安倍総理に興梠さんから率直に聞いていただきたい。それから、食の安全については蒲生さんから問いただしていただくのがいいんじゃないかなとつくづく感じ入っておりました。

 質問ですけれども、藤原さんの方から始めさせていただきたいと思います。

 御専門の立場からなんですが、今、パリ協定、気候変動防止の協定ですけれども、これをそっちのけにしてTPPを急いでいるわけですけれども、みんな、このまま地球が温暖化していったら作物ができにくくなるんじゃないかと。そんな時代はなかったわけですけれども、相当なスピードで温暖化が進んでいる。すると、米を新しく品種改良したりして地域に定着するのにはどのぐらいかかって、温度の影響というのはどの程度あるんでしょうか。これは専門的な立場からでございます。

 それからもう一つ、輸出についてですけれども、余り賛成じゃない、自分の行動範囲のものを食べてきたんだ、その自然の法則を壊しているんだということをおっしゃいました。この点について、多分、蒲生さんも言われました、食べ物と工業製品は違うんじゃないかと。

 しかし、我々は、食べ物も同じように行き来して当然だと考えているわけですけれども、これはやはり長期的に見たら、科学者の立場、我々はきょう、あした、あさってぐらい、数年先しか考えないわけですけれども、地質学者なんというのは何億年先、何万年先なんですが、生物の、植物の研究者の目からしても、過度に外国に依存したりしていること、それから、気候変動というものはどの程度危険なのかということをちょっと御意見を承りたいと思います。

藤原宏志君 御質問にお答えいたします。

 二点ございました。

 まず最初に、温暖化が稲作にどういう影響を及ぼすかということについてなんですが、これは率直に言って諸説あります。

 温暖化の影響というのがとにかくはかりにくいんですね。例えばことしの台風をごらんになってもわかるように、台風が北から南へ行って、また南から北へ戻ってくるなんという、あんな動きをしたことはないわけですね。それぐらいやはり大きな変化が起こっています。そういう意味で、気候変動が作物に影響を及ぼすだろうということは十分考えられておりまして、FAOがごく最近、世界食料農業白書というのを出したところなので私も実は原文をまだ手に入れることはできておりません、ただ、その中では、先ほど申しましたように非常に厳しい見方をしているということが一つ。

 それからもう一つは、やはり人口がふえているわけなんですね。日本が減っているから世界も減るだろうというふうに考えがちなんですけれども、世界人口はまだふえているわけなんです。しかも、飢えている人がまだまだ世界にはたくさんいる。そういう状況の中で、将来の農業、食料ということを考えた場合は、やはりこれは守らなきゃいけない。

 率直に言って、日本だけです、いわゆる主要国と言われる国の中で主食を確保しないという国は日本だけです。本当に今の状況というのを真摯にお考えいただいているのかという点で不安を覚えます、危ないと思います。これは、私だけじゃなくて、農業関係の人であれば恐らくそう言われると思う。

 それから、二番目の問題なんですが、農産物と工業製品の関係なんですけれども、農産物というのは、光のエネルギーをエネルギー源として、土地を使って、しかも作物の光合成能力を使ってでん粉を生産するというのが基本的なパターンなんです。

 光のエネルギー、つまり太陽光をふやすことはできません。土地面積もふやせません。それから、光合成能力というのも、これは、いろいろ遺伝子操作なんか最新のテクニックを使ったとしても、今、大体、日本で十アール当たり米の生産量というとざっと五百キロ、それを最大見積もって千キロまではいけるかもしれないと言われています。中国では八百キロまでいっていますから、それも夢ではないのかなという気はしますけれども。ただ、では、その千キロを千五百に、二千に上げられるか。それは絶対にあり得ません。

 それに対して工業製品というのは、エネルギー源は石油です。石油というのは、古代の生物が集めたものなんです、ためたものなんです。それを今、短い期間にだっと掘り出して集中的に使っている。だからエネルギーはあるんです。足りなければ掘ればいい。それから、機械化の、いわゆる技術革新の効果が非常に典型的に出てくる。十倍、百倍、千倍なんというのは珍しくないわけなんですね。農業の場合は、せいぜい二倍にするのが精いっぱいなんです。

 そういう基本的な違いがあるわけですから、そういう意味では、工業製品と農産物を経済的に同列で見るのは間違いだと思います。

 以上です。

篠原(孝)委員 それでは次に、興梠さんにお伺いしたいと思います。

 息子さん、三男の方が非常にふるさとを愛しておられて、農業高校に行っておられて後継ぎが確保されているにもかかわらず、地域全体の後継ぎを確保するために、国と県とJAが共同して地方の人材センターをつくれと。私はやはり、いろいろお金でやっていますけれども、キーポイントは人だと思いますから、興梠さんのその提案は本当に大事で、国も真剣に受けとめてやったらいいと思っております。

 それで、ちょっとお聞きしたいんですが、蒲生さんのところは二十一人のおばさんグループの中で五人しか知らなかったと。私のことでちょっと恐縮ですが、私の弟は跡をとって農業をやっているんですが、おいっ子がいまして、私がTPPにかかわっていると言うと、孝おじちゃん、TPPやるようになったら僕は跡を継がないよ、TPPやらなかったら僕は跡を継ぐ、そういうことを言っているんです、どの程度わかっているかは知りませんけれども。息子さんは、TPPをこれだけやって話題になっていますので、TPPについて不安とかそういうのを何かおっしゃっておられますでしょうかというのが一つ。

 次に、話を伺っていて、さっき西村委員がちょっと聞かれましたけれども、余りにも行き過ぎた国際化はよくないんじゃないかと。実は私も安倍総理にそういう質問をしているんです。グローバルファティーグというのを外国では言って、もうグローバリゼーションは懲り懲りだ、もう疲れたと。イギリスのEUの離脱なんかもそうなんですが。

 農業は余り縁がなかったんです。それで、輸出、輸出とかけ声をしている、それについてネガティブなことをおっしゃっているのはよくわかるんです。気持ちはよくわかるんです。自分の農産物を外国に輸出する、外国の人に食べてもらうよりは周りの人に食べてもらうという方が普通だと思うんです。

 これもちょっとお伺いしたいんですが、興梠さん自身もそうですし、周りの人たちが本当に輸出を目指して農業をやっているのか。それよりも、周りの人たち、まずは宮崎県の皆さん、九州の皆さん、日本の皆さんに食べていただくという方が普通のような気がするんですが、一気にそれを飛ばしてやっているような気がするんです。生産者の立場として、この輸出、輸出というかけ声をどのように感じておられますでしょうか。

興梠哲法君 最初に質問いただいた、息子がTPPのことをどれぐらい知っているかということですが、恐らく中身自体は詳しくは知らないと思います。でも、こういう問題があって日本の畜産にも影響がある、そういうことは知識としてあるかとは思いますが、数字的なこととか、そういったことは十分認識はしていないと思います。しかし、それをはね返すためにやっていく、そちらの方の気持ちしか今は、高校生としてないと思います。

 また、周りとしては、農業関係者であれば、このTPPにはかなりの関心もありますし、十分中身等についても、わかる範囲では周知されているんじゃないかなと思います。

 それから、輸出に関して、行き過ぎた国際競争という話がありましたが、私が思ったのは、二〇一二年でしたか、アメリカと韓国がFTAを結びましたよね。そして一気に、数字として約七割ぐらいアメリカの輸出がふえたんじゃないか、そういったニュースを聞いたことがあるんですけれども、やはり、しっかりしたルールというか、上限とか、そういうようなものを決めた上での妥結でないと、始まって一遍に入ってきて韓国の農家の方も困っているようなニュースをそのとき見たんですが、だから、そういった意味での行き過ぎた国際化という意味で私は提案をさせていただきました。

 牛肉の輸出については、私はやはり、今牛肉とか輸出できるものは、それはもう当然、牛肉が輸出されることで私たちにもメリットというんですか、高千穂の牛も恐らくそういった中にこれから入っていくわけですから、そういった意味では歓迎なんです。ただ、全ての農作物が輸出向けになるわけではないので、そういった意味で、規模拡大とかそういったこととあわせて、全てが全てそういうことができるわけではないんですよというような考えで先ほど意見として述べさせていただいたわけで、牛肉自体の輸出がふえていくということは、私としては期待しているところであります。

篠原(孝)委員 次は蒲生さんにお伺いしたいと思います。

 話を承っていて、TPPの目指す社会と全く正反対の生きざまを求めておられるんじゃないかなという気がいたしました。地元のものをちゃんと食べる。日本人は、大事なのは米と豆だと。

 おそば屋さんを経営されている、地元のものにこだわっておられるというのを資料で伺いました。かなり前からやっておられると思いますけれども、地元へのこだわりというのは消費者が学習をすればするほど出てきて、そんな遠くのどこかで誰がつくったかわからない、どんな添加物かわからない、蒲生さんも言われましたけれども、どんな成長ホルモンが使われている肉かわからない、近くの興梠農場できちんと育った牛の肉だったら食べられるけれども、これが普通だと思うんです。

 昔、五年前、十年前と比べて、地元のもの、多分、外国産の原材料を使っているよりは高いはずなんです。これについてのこだわりが、昔と今と比べてどうなったでしょうか。多分ふえているんじゃないかなと思いますけれども、しかし、やはり安い方に目が行って、安い方に行ってしまうという人もいっぱいいるんじゃないかと思います。経営者の立場から、消費者の動向はいかがでしょうか。

 次に、二番目なんですが、TPPについての情報不足、そのとおりだと思います。私は、そういう点では、こういう会合、今言われましたけれども、あと二、三回、地方公聴会を開かなくちゃいけないと思っているぐらい、そういうことを議論しております。

 NPO活動をされてこられて、いろいろ発信をされてきているんだと思いますが、農業者は自分の仕事にかかわるから関心を持つのも当然ですけれども、そうでない人はなかなか難しい。だけれども、影響はあるんですね、みんな。商店街が潰れたりしていくのも原因があるし、医療なんかも問題になる。余り関心がない方々に日本の重大問題についてわかっていただくための手法として、NPO活動をされていて、どんな手段がありますでしょうか。我々がやっています地方公聴会、これが一つなんですが、ほかにどんなことを思い当たられるでしょうか。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

蒲生芳子君 その最後の方から行きます。

 うちもNPOなり、それをする前はそば屋さんをやって、今息子がそば屋を開いているんですけれども、結局、食べるところを、食の大切さというのを、はっきり言って私たち世代はもう何を食べてもいいんですよ。すぐ私も七十になります。体がどうなっていこうとも、もうあと何年かなという感じですけれども、まずは今子供たちに何を食べさせてどうするのかということを常々ずっと本当に私のライフワークにしているんですね。それの中心が、やはり食と農をどう自分たちの暮らしの中に入れていくか。

 農業をしている人だけの問題ではなくて、それを食べさせていただいている私たちがそこをどう理解するかということからすると、やはり、つくること、農を体験し、五感で感じ合って、作物が育つ、さっき藤原先生が言われたように、太陽のあれを生かして土から種を一個まくことによってこれだけの食べ物、私たちが生きる力をいただいているんだということを、やはりできるだけちっちゃいころから体験するということを私のライフワークにしてきました。

 そば体験とか、食農塾とか、そして発酵食を子供と一緒につくるとかというようなことをしながら、私は、まずは若いお母さんの食生活が変わっていくことが、次の世代というか、農業に対してもですし、次の世代が農に対して、食べることに対して意識が変わっていくと、多分変わっていくんじゃないかなというふうに思って続けてまいりました。

 それと、商売をしている人もいろいろな人もかかわっていくということになると、そこで、うちのNPO法人は手仕事舎そうあいとつけているんですね。手仕事舎というのは、手に仕事を持って、それを地域でお金を回しましょうということなんです。NPO活動をボランティアではなく、ちっちゃなお金を地域で回しましょうというのが私たちのNPOの理念で、働き方も私たちにこうして来るけれども、つくった作物がここに来ることによって小銭が回っていく、ちっちゃいお金ですけれども、地域でくるくる回っていくことによって、それが大切さというか助け合うというところにつながっていく。

 多分、資料の最後のところに、何かエコの券、シェアの券ができてきていると思います。これはこの前できたばかりなんです。そうあいべっぴんシェアの会というのを去年から始めました。これはどういうことかというと、自分でつくったもの、自分でこの料理、ケーキをつくったよ、私のおいしいのよ、漬物をつくっているのよというのをお互いに物々交換し合うという会を最初は三人で始めたんですけれども、この前、十回目でちょうど一年になったんですね、もう二十人近く。近くの人がモチ米を持ってきて、お餅をついて一周年をお祝いしたんですけれども、このカードが意味するものは、昔から農村にあった助け合い、お互いにシェアし合っていく、そういう地域のつながりというのをとても大事にしているんですね。

 さっきTPPのことを知らないと言ったけれども、実は、食べ物の大切さからこのシェアの話をその後にしたんですね。TPPというのはこういうことなんだけれども、私たちが今やっているシェアの会はこういうことで食べ物を地域でくるくる回していくと。

 確かに、外貨を稼いでよそからのお金を入れてくることも大事ですけれども、まず地域、宮崎なら宮崎の食の自給。もちろん、大きく国の自給があると思うんです。国の自給率をあれだけ一生懸命、国の方はかけ声をかけていたんですけれども、TPPの話になりますと、少しそっちの方が。本当にこれで自給率は上がるのかとかというところまで持っていきますけれども、その大きい国の話よりも、まず宮崎県、そして私の住んでいるところの食の自給というのをみんなで考えていこうというのが大きな柱です。

 だから、よそからのお金を入れる、地域活性化もそうだと思うんですね、よそから売り出していくこともいいですけれども、地域でお金がくるくる回るシステムをどうにかしてつくっていくと、多分、お年寄りにはお年寄りの知恵が、ある意味ではお金としてというか、物々交換になっていくし、若い人は若い人でいろいろなことでいろいろなシェアの仕方がある。そういうのを、うちのもちなが邸ではやっています。

 そういうことの仕掛けが、食農塾であったりとか、子供の放課後教室とか、開かれた公民館として、そこの拠点づくりがやはり大事だと思うんですね。そういうことをやりながら、商売というか、三方よしと言われるように、売り手よし、買い手よし、世間よしといいますけれども、それにプラス、私は未来よしというのを四方よしとしてやっております。

篠原(孝)委員 時間がなくなりましたので、知事には要請だけさせていただきたいと思います。

 高千穂はダブルでTPPの影響を非常に受ける、農業、畜産県であるというのと、中山間地域ですね。資料の八ページにもありますけれども、影響試算、やはり畜産が相当影響を受けるわけです。ぜひ声を上げていただきたいと思います。

 私は、地方はやはり大変な影響を受けると思います。ほかにもあるんですけれども、まずは地方だと思います。アメリカでは、ISDSという、皆さん、なじみにくい仕組みですけれども、それで州政府が企業に訴えられて賠償金を払う、とんでもないといって、地方の知事さん、あるいはでかい市の市長さんたちが反対されているんですね。

 これはなかなか、与党は、与党の元大臣とか元副大臣とかは反対できませんけれども、私は、地方の声を代弁して知事さんには率直に意見を申し述べていただいて、できれば、私なんか反対しているので、一緒に宮崎県の声を代弁して大反対していただくことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

森山座長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、四名の公述人の皆様には、大変お忙しい中こうやって御出席をいただきまして貴重な御意見をいただきましたこと、改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。

 私も、農業遺産に指定をされているここ高千穂に来させていただきまして、改めてこの宮崎県の関係の皆様方からさまざまな立場からの御意見を伺うことができたこと、非常にすばらしい機会を設けることができたんじゃないかと受けとめております。

 まず、河野知事にお伺いをしたいと思います。

 知事も、このTPPについて、そのプラスの効果を最大限に生かすんだ、そしてマイナスの効果を最小限に抑えていく、そこが重要だという御意見をいただきました。

 私たちも全く同じ考えでございまして、やはり経済交渉というのはどうしても、こちら側の主張を通すとすれば、譲らなきゃいけない部分もある。そのプラスとマイナス両方が成り立って初めて世界の経済、貿易というのが成り立つという意味で、そういう中で、どうやったら我が国にとってのプラスを最大限にするか、そしてマイナスを最小限にするかということで国と国が交渉してきて、今回この合意に至ったという経緯でございます。

 私たち与党の立場といたしまして、政府が交渉してきたその結果は、かなりプラスの効果が期待できるし、マイナスの面についても、今回この協定と一緒に提出させていただいている法案や、さまざまな予算などでかなりカバーすることができているというふうに受けとめております。

 もちろん、それぞれが相手のある交渉でありますから、一〇〇%の結果とはなかなかいかないんですけれども、その中にあって、かなり評価できる内容になっているのではないかというふうに考えております。

 知事にお伺いしたいのは、この宮崎県は、農業生産額では全国第五位という、日本を代表する農業県でございます。しかも、知事も強調されているように、生産額、量という面だけじゃなくて、非常に質の高い農産物を生産している農業県なんだという点は、そのとおりなんだというふうに思っております。であるから、先ほどから、質の高い農産物の輸出に非常に力を入れているということを伺ってきました。

 先ほど牛肉のお話もございましたし、以前、どこかの記事で見たときには、この宮崎からのキャビアの輸出にも力を入れているというような話も伺って、これは農産物ではなくて水産物かもしれませんけれども、非常に多様に力を入れているわけでございます。

 今、日本は、人口減少・高齢社会になってくると、やはり農業のマーケットというもの、国内のマーケットが縮小していくことはもう避けられないことであります。

 そうすると、農業生産を拡大して所得を向上する、もちろんこれはベースになるのは国内のマーケットであることは間違いがありませんけれども、生産を拡大していくためには、やはり世界にも目を向けていくことが重要だというふうに考えております。

 国でも、この農産物の輸出戦略を先日まとめて、まだまだ枠組みというところでありますけれども、力を入れてこうした取り組みを行っているんだけれども、まだまだ実績は十分上がっていないのが現状だというふうに思います。量の面でも質の面でもそうなんだろうと思います。

 知事からも多分、もう農水省や関係機関にはさまざまな機会でいろいろな御意見を言っていただいているんだと思うんです。非常にたくさん御意見があるかと思うんですけれども、特にここの部分は、ぜひここに国として力を入れてほしい、そういった強調したい点があれば御意見を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

河野俊嗣君 ありがとうございます。

 いろいろな御指摘をいただき、また本県の農業についてお褒めの言葉をいただき、大変うれしく思っておるところでございます。

 今、輸出という話がありました。本県の農業生産額は、平成二十六年で三千三百二十六億、全国第五位というところであります。それは本県にとって一つの強みであろうということで、しっかりとその農業生産額を生かした幅広い展開でフードビジネスなどにも取り組み、そして、将来的に縮小する国内市場ということの中で、世界にももっと目を向けて展開していこうという、ちょうどそれを始めたような状況であります。

 今、農産物の輸出額でありますが、二十五億円程度になっております。その前が十七億円、そしてそのしばらく前は数億円でありましたので、ぐんぐんと伸びたところでありますが、実は、二十五億のうち約二十億は牛肉であります。牛肉、畜産の話が先ほど来多いということと、本県の農業生産額の実は約六割が畜産、二割が野菜というような構成になっておりまして、畜産というのは非常に重要であろうかというふうに思います。

 先ほど来いろいろ議論がありますが、畜産クラスターですとか産地パワーアップ事業、国がいろいろな対策を打っていただいている。それを、この対策要綱また国の方針に従って、しっかり財源も確保していただきながら、今後、地方の実情を踏まえて手厚く措置していただきたいということが一つと、輸出に向けてのさまざまな支援策というもの、サポートもお願いできればというふうに思っております。

 今、本県は牛肉がかなり多いという話をしましたが、実は、EUに向けては本県で屠畜ができないというようなものがあります。本県で屠畜できるようなものの市場に向けてのいろいろな支援というものをまた今お願いしているところでありますし、本県の強みを生かした海外戦略等も今展開をする中で、しっかりとそうしたサポートをお願いできればというふうに考えております。

上田委員 大変ありがとうございます。

 私たちも、今いただきましたそうした屠畜場の整備などの御要望もしっかりと取り組んでいければというふうに思っております。

 もう一点、知事にお伺いをいたします。

 先ほど、知事の御意見の中で、中小企業についてのお話もございました。このTPPというのは、もちろん国際的に活動している大企業にとってもそうなんですけれども、それだけじゃなくて、中小企業、小規模事業者にとっても、海外展開する大きなチャンスが広がることは間違いがないというふうに思っております。

 これはやはりそういう機会が広がることは確かなんですけれども、ただ、それで成功が保証されるというわけではなくて、今の中小企業の現状を考えると、海外へ展開する意欲はあるし技術もある、製品もあるんだけれども、なかなかそれをうまくつなげられるノウハウが必ずしも十分でないという面があるんじゃないかというふうに思います。

 国としても、輸出大国コンソーシアムということで、全国八百カ所ぐらいにそういう機関を設置して取り組みが始まったばかりなんですけれども、そういった中小企業の海外展開をどういうふうに効果的に支援していくことができるのかがこれから極めて重要だというふうに思っております。

 この点、また特に強調したい御意見があれば伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

河野俊嗣君 先ほど農産物等を中心にお話をしたわけでありますが、商工業を幅広く製造業と捉えてみますと、本県の輸出に取り組む企業というのは、都市部の状況と比べますと、まだまだそれほど多くはない状況であろうかというふうに思っております。

 例えば、数字の上で言いますと、TPPに関係します十一カ国向けの輸出でありますが、今、アメリカを中心に二百八十一億程度というところであります。プラスチック等の化学製品でありますとか自動車部品などでそういう数字になるわけであります。輸出総額の約二〇%程度がこの関係十一カ国ということであります。

 今回、自由化といいますか、そういう状況になればいろいろな追い風になるのではないかというふうに思っておりますが、一方で、やはり為替の要因も非常に大きいものがありますので、一概にこのTPP協定だけの影響では見きわめが難しいというふうに考えております。まだまだそういう海外への取り組みというものがこれから拡大をするという状況の中で、実は、昨年初めて本県にジェトロの事務所が設置をされたところであります。そういう意味で、情報の面等でのサポートもいただいておるところであります。

 また、商工業分野での新しい、例えばものづくり補助金でありますとか、いろいろな支援策というものがあるところでありまして、そういった補助金制度等によります支援なども引き続き手厚く御配慮をお願いできればというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、興梠さんにお伺いしたいと思います。

 事前に資料等を拝見させていただきまして、興梠さんは品評会等で大変すばらしい成績を残しているということで、本当にそこは敬意を表したいというふうに思います。

 そういう意味では、まさに地域の農業者の代表的な立場ということもあるんだと思いますのでお伺いしたいんですけれども、先ほど御意見の中で、やはり重要なのは担い手の確保それから後継者の育成であるということを伺いました。

 確かに御意見にあったとおり、農業というのは、最初に参入するときにはやはりいろいろな設備の投資をしなければ、初期投資が大変でありますし、なお、農業を経営するということは、リスクも自分で負わなければならない。それは自然災害のリスクもありますし、価格変動などのリスクも負うという意味では、大変難しい仕事であるというのは理解をいたしております。

 そこで、若い人たちにもっと農業に新規参入してもらうには、そうしたリスクに対応する法人化を進めていこうというのを今進めさせていただいております。

 先ほどお話の中で法人化への取り組みについても言及があったんですけれども、やはり若い人たちが農業に新たに参入しようとすれば、最初はそんなに資金も要らない、なおかつ経営のリスクといったものもある程度分散できるような農業生産法人、あるいはもっと違う形の法人もあるかもしれませんけれども、そこにいわば就職するというんじゃないんですけれども、社員として参加をするところから始めるという方法が手法として一つあるんじゃないかというふうに思います。

 こうした法人化にどういうような形で取り組まれているのか、また、それに対してこれからどういうふうにしていけばいいのか、御意見を伺えればと思います。

興梠哲法君 法人化についてですが、私たち、こちらの方で法人に取り組んでいる団体というのはそうないわけです。ですから、もっと国の方から、法人のメリットであるとかそういったものを勉強する場をまず私たちにつくっていただきたいと思います。法人化した人たちの中にも、やはりよかったという人と、もっと勉強して始めればよかったという人が実際周りに、友達の中にもいますので、まず、私たちはその内容を知るところから始めさせていただいて、勉強会なりそういったところでスタートさせていただければと思っています。

 また、新規者がまず法人で勉強してということがありましたが、今、青年給付金の準備型とか給付型とか二本立てで行われていますけれども、準備型を受けた農大校生なんかは、まず法人に行って二年、三年勉強してから自分の経営を始めている例が数多くあります。

 そういった中で、法人で学んで新規で独立してやるという方法は、私もいい方法じゃないかと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 それでは、蒲生さんにお伺いしたいと思います。

 先ほど御意見の中で、TPPの内容については、女性のグループの方々とお話しすると、ほとんど知らなかったと。それが現実だと思うんですね。私もいろいろな市民の方々とお話ししていても、断片的には何か名前は聞いたことがあるけれども、どんなことなのかわからないというのが現実なんだと思います。

 これをもっと、これは賛成、反対両方あるかもしれませんけれども、的確な情報があって初めて判断できるんだというふうに思うので、情報というか、その理解をどういうふうに進めていくかというのはなかなか難しい問題だと思います。

 情報の量があればわかるかというと、そうではないんですね。ある意味、これ以上見てもわからないというぐらい量は豊富かもしれませんけれども、今、政府のホームページとかを見ると文字がいっぱい出てきていて、量としてはこれ以上ふやしても理解を得られるものではないんだろうというふうに思います。

 そうなると、情報の量というよりも、それをどうやったらわかりやすく的確に、どういうチャンネルを使っていけば理解が深まるのかということが重要なんだと思うんですね。

 先ほど、いろいろなところでお話をされているということでございましたので、一つは、どういうふうに情報を加工して、それをどういうチャンネルで提供することが一番理解が広がるのか、サジェスチョンがあれば教えていただければと思います。

蒲生芳子君 なかなか難しいことなんですね。情報がいっぱいあふれているんですけれども、結局、それが自分の暮らしにどうつながっているのかというのがわからないところが出てきますので、きょうの公聴会というのは本当に、私は初めて体験しましたけれども、政党の方、いろいろなことがあって、いろいろするんですけれども、やはりこういうじかにいろいろな話を聞くという場所が今回一回ではあれだし、もう少し身近なところで膝を突き合わせてお話ができるような場所を積み上げていくしか、本当の意味ではできないんじゃないかなというふうに思います。

 TPPというある意味では特殊な政策の中で、自分たちの暮らしの中に不安を持っている、そこら辺をどう解決するかというところ、いいところ、悪いところというのを本当に、政党で反対、賛成の問題以前の話で進めていかないと、反対のところからいったらそっちの情報ばかり、賛成の国の方からいうとそっちだけじゃなくて、いろいろな角度で話が聞ける場じゃないとなかなか難しいし、政治的ないろいろなかかわりは暮らしのところでどこに落としどころがあるのかといったときには、やはりコミュニティーの中で常にそういう情報をキャッチしながら、私なんかはシェアの会とかいろいろなグループで食のことやらいろいろな話をしながら出てくるので、そんな場所が必要なのかなというのがあります。

 そうなると、きょうもマスコミの方がたくさん来ていらっしゃいますけれども、そういうメディアの関係、やはりああいうのは結構見ているんですね、テレビとかでも。それは、偏ったものじゃなくて、本当に公平な形でそういう意見が聞けたり、こういうところがいいよ、こういうところがあれだよねというような、本当に開かれた情報の開示があるといいんじゃないかな。でないと、もう最初から反対のところ、最初のところの引き込み方がちょっと難しいところがあるので、だから、そうなると、公に報道できるマスメディア、それはテレビとか新聞とかですね、そういうことでしかやはり伝えられていかないのかなというところはあります。

 大変難しい質問だなというふうに思っておるところです。

上田委員 ありがとうございます。

 実は、そこは我々もすごく苦悩しているところでございまして、特にこういう貿易や投資にかかわることというのは、専門的なことも多いですし、なおかつ非常に幅広い分野にわたっているので御関心の向きも異なってくる、それをどういうふうに伝えていく、そういうチャンネルがあるのかというのは非常に苦労しているところでございます。そういう意味では、引き続き我々としても勉強していきたいと思っておりますし、またいろいろな御意見をいただければというふうにお願いいたします。

 きょうは、もうちょっといろいろと各公述人の皆さんにお伺いしたいこともあったんですけれども、時間になりましたのでここで終わらせていただきますけれども、このTPPの議論はずっと進んでまいりました。冒頭申し上げたとおり、私たちは、このTPPの交渉は政府がずっと行ってきて、やはりこれからの日本は世界に目を向け、世界と協調し、世界とともに成長していくような経済にならなければならない、その土台になっていくのがこのTPPではないかというふうに考えておりますので、ぜひ前進をさせていきたいという立場でございます。そのことを申し上げまして、発言とさせていただきます。

 きょうは、どうもありがとうございました。

森山座長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 意見陳述者の皆さん、きょうはどうもありがとうございます。

 私は、北九州です。国会との往復はほとんど飛行機です。飛行機に乗ってあちこち行くわけなんですけれども、窓から下を見おろしたときに見える景色というのは、いつもやはり感動します。それはやはり、この国の国土を形成しているのは山であり、川であり、田んぼであり、畑であり、ほとんどがこうではないかなと思います。

 それで、最初に藤原先生にお伺いしたいと思います。

 先生は、水田耕作は水管理の合理的システムというふうに御主張されます。農業や農村が失われることは災害を引き起こすし、そして環境にも影響を与えていく。こうした点についての解説をしていただければというふうに思います。

藤原宏志君 今御質問のありましたいわゆる水田稲作における水管理システムについてなんですが、これは農家の方はよく御存じなんですけれども、まず、日本というのは本来、水田稲作に実は向かないところなんです。水田稲作が発展したところというのはいわゆる沖積地、例えば中国のような、あの広い水田地帯のあるようなところで最初に水田稲作がやはり発展してきているんですね。

 その中で、日本はそういう大きな平野というのを持たない。ほとんど日本の場合は傾斜地であります。大なり小なり傾斜地なんです。その傾斜をうまく利用して水田をやる、これは日本だけではないんですけれども、やはり、そういう技術を日本に導入した、稲というもともと日本にない植物を主食に選んだというのは、本当に私は奇跡と言ってもいいぐらい、日本人にとって大きな出来事だったと思うんです。

 水田稲作というのは、例えばこの高千穂を見ていただくとわかりますけれども、山から水を引いて一番上の田んぼに入れて、その田んぼの水が今度は下の田んぼに移っていく。同じ水が何回も何回にもわたって使われるわけなんです、いわゆる循環しているわけなんです。平野の場合だと、こんなことはできないんですね。地下浸透しちゃったら、そのまま海に流れてしまうわけなんです。

 ところが、傾斜地の場合は、それは中間流出というような形でまた下流域で利用される。実際に、そういう合理的な循環システムで最大限に水を利用しているんですね。さらに、水田は田んぼの中に水をためるわけですから、この総貯水量というのは、日本のダムの総貯水量の二倍の貯水量が計算上はあるんですね。

 そういう意味では、水資源を有効に使うという意味でも極めて合理的なシステムであるというふうに言っていいと思います。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 もう一問、藤原先生にお願いしたいと思います。

 きょうは食料自給率のお話も出てまいりましたけれども、同じ先進国でも日本とヨーロッパでは食料自給率が大きく違います。それはなぜなんでしょうか。農業に対する国の考え方の違いがあるのではないか、私はそういうふうに思っているんですけれども、先生の御所見はいかがでしょうか。

藤原宏志君 おっしゃるとおりで、国、政府というよりも、国民が違うんですね。つまり、ヨーロッパの国というのは今はEUで統一されていますけれども、あのEUをつくったというのは、一つは戦争をもうしたくないということがあるんです、単なる経済的な原因だけではないんです。それぐらい戦乱に明け暮れた歴史なんです。その中で、食料をとめられたらもうお手上げだということはよく知っているわけなんですね、国民が知っているんです。

 そういう意味で、それぞれの国で食料は基本的には自給するんだ、これは農民だけじゃなくて国民全体でそういう合意がある、だから、いわゆる所得補償方式、あるいはそういう制度が成り立つんですね。つまり、それは税金を投入する以外はないわけなんですけれども、そのことを国民がよしとする、やはりそういうコンセンサスがあるということだと思います。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 農業そして稲作が国土の形成につながっているし、安全対策上も非常に重要だ、それから、食料というのは安全保障であると。それはやはり国民が考えていかなければいけないというふうに私も受けとめました。

 陳述者の方にそれぞれお伺いしたいと思います。

 政府の対応とか国会での審議をどのようにごらんになっておられるんだろうか。

 例えば、今国会の冒頭は、SBS米の価格が公表より安く販売されていた、いわゆる価格偽装疑惑というのがあったわけであります。それから、合意文書の問題ですけれども、六千ページにわたる英訳の協定書の一部しか和訳されていない。これでは交渉過程がよくわからないし、ノリ弁当というふうに言われているわけであります。それから、きょうも陳述者の方からそれぞれありましたけれども、やはり、よくわからない、そもそもわからないといったお話が続きました。

 こうした中で、やはり情報開示が必要だ、それから徹底審議が必要だ、何よりも国民の声をよく聞いていく。きょうのような公聴会は、中央公聴会もしかるべきだし、地方の公聴会だって、ここと北海道にとどまらず、全国各地でもっとやったらいいじゃないかというふうに私は思うわけであります。

 そこで、審議に入る前から強行採決みたいな言葉も出てきて、それがまた新聞やテレビでも報道されるというような状況が続いているわけなんですけれども、お尋ねしたいのは、政府はこのTPPについて国民に十分情報を開示しているだろうかといった点について。そして、国会は今、衆議院で特別委員会なんですけれども、国会での審議というのはし尽くされているだろうかといったところについて皆さん方はどういうふうに受けとめておられるか、これについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。知事からで結構です。

河野俊嗣君 今の御質問についてであります。

 このTPP協定の交渉、大筋合意の内容自体も大変膨大なものであろうかというふうに思っております。我々はやはり、聖域なき関税撤廃というところを最初に聞いたときに非常に不安に思ったということはこれまでもお話があったところでありますが、途中、国との交渉事でもあり、なかなか思ったような情報が出なかった部分はありますが、国に対し十分な情報開示、説明をお願いしたいということを繰り返しお願いしてきて、いろいろな形で説明会を行っていただき、そして大筋合意の後もいろいろな、農業分野は農業分野でということでそういう場を重ねていただいたというふうには受けとめております。

 なかなか、全てが全て、それをそしゃくし理解するというところまで、全ての国民が、住民が、また農家の方がというところまでに至っているかどうかというところはありますが、いろいろな意味での努力というものはされたというものを私は受けとめておるところであります。

 国会においても、長い期間をかけて、今の段階を踏んで、さまざまな形で議論をされたものと私は受けとめております。

蒲生芳子君 先ほどから言っているように、やはり広く情報の開示というのはまだまだだろうというふうに思っているところです、私の周囲を見ても。だから、今回のようなこういう場所もですけれども、もっと地域に入っていって、いろいろな話を聞いていってほしいな。

 そうなると、ちょっと時間がどうなんだろうか。それこそ先ほど言われたように強行採決なんて言われると、国民はすごく、えっ、どんどん知らぬうちに決まっちゃって嫌だということになるとやはり不安になるので、そこら辺の情報を広く、そしてわかりやすい言葉でやってほしい、オブラートで包んだ形じゃなくて。

 TPPというのは広い分野ですので、農業だけに限らず、分野分野でやはり問題を、保険とか医療とか働き方とかいろいろなところにかかわってきているTPPですので、こういう農村地帯、山間地帯では食とか農のところですけれども、広く全体にわかりやすいところに、こういうふうな意見を聞いたりとかという積み重ね、やはり国民の総意でこういうものが決まっていくのが本当かなというふうに、本当に素人感覚で私はそう思います。

 やはり、大事な次の世代にかかわることを急いだらいかぬのではないかな。もうちょっと大切に審議したり、いろいろな意見を入れて、国民の合意のもとにいろいろなことが進められるといいかなというふうに思います。

興梠哲法君 交渉事ですから、相手あっての協議ということで、やはりなかなか私たちに伝わってこないという部分があるというのは十分認識しております。ですから、私は、与えられた十分間の時間で、周りが不安がっているような懸案をきょうこの場で述べさせていただきました。

 そして、この場にきょう出るということで、TPPの特別委員会の議論も、テレビや新聞、至るところから情報を、ここ二、三日、集めて見てきました。与党、野党の方の質問を見ていて、国会の中でも本当にやはり農業のことを考えてくれていらっしゃるんだということを、私は今回のこの場にいさせていただくことで、そういった国会内で農業がこれだけ議論されていることを本当にうれしく思いました。

藤原宏志君 最初にお話ししましたように、私は極めて不十分だと。不十分というのは、開示されていない部分があるわけですね。これは、TPPそのものの中に四年間は伏せるという項目、内容があるわけなので、どうしようもないところがあるんですけれども、そういう協定であるがゆえに、やはり私は素直に賛成できないということでもあります。

 それから、それ以上に国民の理解が進んでいない。これは、今までほかの陳述者の方々が言われたとおりであります。そういう点では、もっと時間をかけて十分に説明する責任が政府、国会にはあるというふうに私は思います。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 興梠さんに一つお伺いしたいと思います。

 先ほど、いろいろなお話の中で、攻めは攻めでもいいかもわからないけれども、そうはできない地域があるんだ、そして全てがそんな農家ではないというお話がありました。

 中山間地で農業そして畜産を営む興梠さんにとってみての一番の御苦労というのはどこにあるんでしょうか。

興梠哲法君 個人的としてですかね。

 私は畜産経営ですので、生き物を相手にしていますから、仕事的にはそういったことになるかと思いますけれども、全体的に地域を見た場合には、きょう述べさせていただいたように、高齢化が進み後継者がいないという今の現状を何とか打破していかなければならない、それが一番の今の悩みであります。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 そういう苦しみ、心配、懸念がいっぱいあるという中でのこの論議だと思うんです。

 河野知事にお伺いしたいと思います。

 宮崎県は宮崎県で、TPPの試算を額として発表されています。また、JA宮崎の試算もこれまた独自に発表されていて、農業の生産減少額が約六百八十六億円ですか、県全体の農産額の二割にも相当するというような試算もあります。

 国の試算、県の試算、そしてJAさんの試算ともに、やはり農林水産業の生産減少額というのがある、そして雇用にも影響が出てくるといったところで、知事は、守るべきものは守り、攻めるものは攻めていくというふうに言われたんですけれども、やはりトータルとすると、こうした輸入農産物の拡大そして関税撤廃という流れの中においては、特に宮崎県においては大きな影響が出るのではないかなと私は懸念するものであります。いま一度、知事の御所見をお伺いできればと思います。

河野俊嗣君 このTPP協定をめぐる、さまざまなこれまでの本県内での議論があるところであります。

 先ほど言いましたように、聖域なき関税撤廃、それはもう宮崎の農業はもたないのではないか、大変な心配が広がったところでありますが、この大筋合意に至るまで、さまざまなぎりぎりの交渉を経て、段階的な削減でありますとかセーフガード、いろいろな措置といいますか、そんなものが講じられているということに加えて、国の対策要綱に示されたさまざまな、今後とも我が国の農業というのをしっかり守っていくんだというような対策というものを我々としては受けとめて、それをいかに本県に取り込み活用していくかというのが重要ではないかというふうに思っております。

 いろいろな変化はその時代、その時代であろうかというふうに思っておりますが、その中でいかにこれまで築いてきた農業をしっかり守っていくのか、それが我々の課題だというふうに考えております。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 今、セーフガードというお話も出ました。牛肉の関税引き下げ、十六年かけて九%になっていく。そして、その十六年後のセーフガードが発動されるときの供給というのはどのぐらいなんだろうか。これは国会でも審議があったんですけれども、国内供給量の九割に当たる七十三万トンぐらいにならなければセーフガードは発動されないということです。それは自給率一〇%程度の状況においてのセーフガード発動ですので、それには意味があるのかなという思いもするところであります。

 攻めの農業、攻めの和牛、その輸出戦略を政府の方は描くわけでありますけれども、果たして、畜産大国宮崎県の牛、豚、そして鳥、こうした畜産というのは成長、発展していくのでしょうか。農業の専門家であります藤原先生に、この宮崎、畜産とするところの農業がこのTPPによって成長、発展できるのだろうか、これについて御所見を賜りたいと思います。

藤原宏志君 畜産の問題というのは、非常に難しい問題がございます。というのは、特に牛、豚というのは歴史的に言うと明治以降の話なんですね。そういう意味で、穀類の生産から比べると時間的に短いわけです。そういう意味では、いろいろな意味での蓄積がまだなされていない、あるいは、ほかの穀類生産に比べて文化として日本の国の中に、あるいは国民の中に落ち込んでいる、しみ込んでいる、沈み込んでいる部分がやはり少ない、そういう産業であろうと思います。

 そういう中で、畜産の将来ということなんですが、政府の方で言われております、例えば牛肉について言えば、高級肉の輸出ということを言っておられる。先ほど河野知事さんからは約九十数トンの輸出があったということなんですけれども、それは全体からいえばごく一部なんですね。しかも、そういう高級肉が食べられる人というのはそんなにたくさんいるわけではないんです。圧倒的に多いのは、できるだけ安全で、しかも安い肉が欲しいというのが消費者の要望ですから。そういう点では、今のいわゆる日本の畜産は高級牛肉でやっていくんだと言わんばかりの政策、これは興梠さんも先ほど指摘しておられましたけれども、やはりそれは違うんじゃないかと。

 本当に、日本の国民の胃袋を日本の畜産物で満たしていく、先ほども言いましたけれども、やはり自分の国でつくっていくんだということが私は食料の基本だというふうに思っておりますので、そういう点では、外に打って出るというお話には、そういう部分があっちゃいけないとまでは言いませんけれども、少なくとも主流ではないだろうというふうに思っております。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 四人の陳述者の皆さんからの御意見、御要望、思いなどが、国会での豊かな審議、そして徹底審議につながっていくことを心から願って、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

森山座長 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 本日は、先般の総括質疑で地元の江藤拓先生がお触れになりました棚田を私も見せていただいて、これは本当に守らなければならないなという思いを新たにしてこの場に座らせていただいております。

 また、このTPPの問題、国民の皆さんには大変な政治不信を招いたと私は思います。

 TPP、野党時代は反対だと言っていた自民党が今積極的にこれを進め、そしてTPPを始めた民進党が審議拒否、一貫して反対をされているのが共産党で、一貫して賛成をしているのが我々日本維新の会、政治はろくでもないな、選択肢がないじゃないかというような思いがあると思います。特に傍聴人の皆さんも、賛成の人は来ないんですよね。やはり懸念を持っておられるからこそ、ここにこうやって座っておられるんだと思います。

 こうした中で、野党唯一の賛成に回ると宣言をしている日本維新の会だからこそ、我々は国民の不安を払拭しなければならないという思いで私もこれまで質問に立ってまいりました。あんた、反対に回った方がいいんじゃないのと民進党の方にもよく言われる質問を繰り返してきたわけであります。

 特に、国民の不安。我々はもともとおおさか維新の会ですから、大阪には、私の選挙区にも専業農家は一軒もありません。しかし、都会の人間も飯は食います。ですから、今のTPP、そうした面から、消費者の面からということで、きょうは特に質問させていただこうというふうに思っております。

 政府の方は、基準を満たしているからこれは安全なんだというような話をするんですけれども、アレルギーになる人なんというのがどんどんどんどんふえているなという実感は皆さんもあると思いますし、私は、先般の質疑では厚労省に、日本人の精子の数も減っているじゃないか、半減という報道が出ているじゃないかと。残念ながら厚労省は、こうしたことは我々は確認しておりませんと言いますけれども、幾ら安全、安全と言っても、我々は、物事が変わってきている、我々の健康を取り巻く状況が変わっているということで、こうしたものを丸のみするというようなことはできないわけであります。

 先般も、賛成派で呼んだ参考人の先生も、全ての食べ物にはリスクがあるということをおっしゃっておりました。こうした中で、私は、リスクは最低限に低減していくべきだというふうに思います。

 先般の質疑の中でも、特に私は大豆の問題を取り上げさせていただきました。遺伝子組み換え大豆には表示義務はあるけれども、しょうゆ、サラダ油にはない。これによって結局どういうことが起きているかというと、私もスーパーマーケットを随分めぐりましたけれども、遺伝子組み換えという表示がある食べ物をついぞ私は発見できませんでした。

 遺伝子組み換えでないということは書いているけれども、我が国の大豆は既に輸入が九割、そして九割の輸入のうちのおよそ九割が遺伝子組み換えだと言われている、我が国に八割もの大豆が入っているにもかかわらず、こうした表示を国民が見ることができなくて、逆に、遺伝子組み換えでないと書かれている表示しかない。

 私は、これは国民をだましている、欺いている今の食品表示の現状だと思いますけれども、これについて蒲生さんに、今の食品表示についてのこうした状況をどう考えていらっしゃるか、まず伺いたいと思います。

蒲生芳子君 こっちから質問したらいけないということですけれども、TPP反対ですか、賛成ですかと言いたいぐらい、私の言いたいことを言っていただいているんですけれども、本当に、もうずっと常々不安に思っている表示の問題ですよね。

 言われるとおり、ほとんど、外国から輸入されているのは遺伝子組み換えというのが入っていて、表示の中に、お豆腐等の中にも国産大豆使用というふうにちょっと書いてあれば、それを消費者はぱっと見て、あっ、国産大豆でつくられている豆腐だわと買うんですけれども、その実は、ほとんど外国の大豆が入っているという現状。そういうふうな誤解をされるぐらいの表示。消費者はすごくそこをぱっと見るんですけれども、国産大豆使用というところをもう本当に信じてしまうというところが出てくるんですよね。

 だから、やはりそこら辺も、表示の問題はもう少し私たちも勉強しなくちゃいけないし、これからそういうことを考えていかなくちゃいけないというふうに思っています。

松浪委員 多分、国産表示の場合は、組み換えは、国内ではグリホサート使用のものとかも使えないようにはなっているので、国産とあるものは、恐らく遺伝子組み換えでないものがほぼ全て、まあ、全てであって、特に、大豆と書かれているものが、組み換えでないと書かれていないものが、逆に、ほとんどの場合、外国産、特に遺伝子組み換えだというところを私も指摘させていただいているところなんです。

 これに加えて、特に畜産とかの分野で、私も先日、これはちょっと興梠さんに伺いたいんですけれども、海外では、アメリカもカナダも、ヨーロッパでは禁止されているけれども、ラクトパミンであるとか、肥育飼料であるとか、それから肥育成長ホルモンを使ったものは、我が国ではつくらないけれども輸入していいというダブルスタンダードの状況にあるというのは、これはヨーロッパと日本の大きな違いだというふうに思うんです。

 こういう現状、一種のダブルスタンダードな状況について、生産者として、これはフェアトレードじゃないんじゃないかと思うのか、それとも、日本国内ではこれを使わないことが日本のブランドだと思われるのか、興梠さんに伺いたいと思います。

興梠哲法君 今私たちに求められているのは食の安心、安全、それがテーマになっていますので、国民に何か、消費者に影響があるようなものは、やはり国としてもしっかり規制していっていただければいいんじゃないかなと考えています。

松浪委員 私が最初に指摘したのは、国の基準は、世界規格のコーデックスとかの規格によって一つ一つは基準以下ですよということは言っているけれども、それでも、アレルギーの問題とか、さっきも精子の問題とかさまざまなところで、複雑系で恐らく今の我々の健康というのは害されるというか、変化をしていっているので、こうした中で、アメリカでも、例えばオーガニックスーパーマーケットといって、ホルモンフリーのお肉なんかを金持ちはこぞって求めるようになってきているというふうに伺っているんです。

 こうした中で、今私が伺ったのは、肥育飼料とか、ラクトパミンとか、肥育成長ホルモンとか、こういったものは、海外で使ったものが日本に入ってくるけれども、日本ではこれは使えないというような状況について。ヨーロッパの場合は、もうきっちりとこれについては特別プログラムを組んで、オーストラリアもアメリカもヨーロッパにはホルモンフリーの肉を輸出している、日本には成長ホルモンを使ったものが入ってくる、こうした中途半端な状況についていかがお考えですかということをもう一度お願いします。

興梠哲法君 私は、一番は消費者の安全ですから、その安全を重視していただければ、私はそこを一番願っているところですけれども。

松浪委員 ですから、日本では使ってはいけないそうした肥育ホルモンとか、ラクトパミンとか、そういう肥育飼料が入ってきている現状については、別に、それはそれで構わないということですかね。

興梠哲法君 いや、そういう意味で私はさっき言ったのではなくて、それはいけないと思います。やはり安全なものを入れていただきたいと思います。

松浪委員 ありがとうございました。

 次は藤原先生に伺いたいんですけれども、特に稲作の文化とか日本人の精神文化にお詳しいということだと思います。

 ヨーロッパ等は、非常に、成長ホルモンとかは健康に悪いという考えに立って日本より厳しい基準を課しているということであります。

 そもそも、先生がさっき名前を出してモンサント社のラウンドアップにお触れになりましたけれども、私は先般は、グリホサートを使った大豆。まさに日本では除草剤として使っているものをどうして遺伝子組み換えするかというと、除草剤をぶっかけても枯れない大豆をつくると。私は、これは本末転倒で、非常に人類としてグロテスクなことをやっているなと思います。

 また、オリンピックではドーピングはだめだと言いながら、牛にドーピングをして、しまくって、異常な牛肉をつくってくるというのも、私はこれは人の道として間違っていると思うんです。

 宗教も精神文化とすれば、イスラム圏に豚を輸出しようという人もいないわけでありまして、日本人の精神性として、こうしたGM作物とかそれから成長ホルモンといったものについて、私は個人的には、鯨をとっちゃいけないなんて言っている人らがこういうものを使っているというのは非常に矛盾しているとは思うんですけれども、日本の精神文化から見て、こうしたものに対して先生はどのようにお考えですか。

藤原宏志君 私は精神文化の専門家ではございませんので、そういう意味での専門的な答えをするわけではないんですけれども、先ほど意見の中でも述べましたけれども、自然の法則というのは経済法則より優先するんです。人間というのは生き物なんですから、だから、自然の法則を無視した経済法則なんていうのは、そんなものは成り立つはずがないんです。それは、経済法則だけじゃなくて、どんなことでもそうだろうと思います。

 そういう意味で、自然界にない生物を人間がつくり出すということについては、これは宗教的な意味ではなくて、やはり十分慎重であらねばならない。それを特に産業として、産業的に利用するという場合には大量生産するわけですから、それは慎重の上にも慎重であるべきだ。

 どんなことが起こるかわからない。まだ遺伝子組み換えの作物ができてから間がないんです。今は起こっていないけれども、後で、ああ、しまったというようなことが起こっては困る。そういう可能性があるわけですね。いわばエイリアンみたいなものを人間がつくっちゃっているわけですから。いわゆる細菌の遺伝子を人間の中に取り込むなんということだってできるわけですからね。それはとんでもないことをやっているわけで、そういう意味では、やはり謙虚でなければならない。そういう点では、少しおごり高ぶっているところがあるのではないかという懸念は持っております。

松浪委員 ありがとうございます。

 TPPの議論をやっていて、科学的見地、科学的見地ということが第一に出てくるわけですね。私もこれは抑制的でなくてはならないと思いますし、特に、宗教を離れて神の摂理に反しているというふうに私は思います。

 今、現実的に国民の安心を見ていて、先ほどからヨーロッパの例を随分出しましたけれども、先日も、成長ホルモンでBSTとか、お乳も余っているのに特に乳量を多くするためのもの、オーストラリアもそれからカナダも使ってはいけない、アメリカだけが使っていいというようなものも、やはりこれから入ってくるのは仕方がない、もうこれが通ってしまえば仕方がないことになってくると思います。

 そこで、私は、唯一、こうしたものについて、やはり国民は知る権利があるんだろうと思います。

 先ほどから議論をしていると、遺伝子組み換え作物というものがどういうものであるのか国民も知らないし、私も恥ずかしながら、こうして質疑に立って自分で勉強するまで、こんなに恐ろしいものだったんだということは知らなかった。また、ヨーロッパ、アメリカ、日本のそれぞれの制度の違いというのも知らなかったわけでありますけれども、こうしたことは、私は、日本人はやはり正常な感覚を持っていると思うので、特に、今の豚マルキンとかこういう制度でやるとWTOにひっかかってくる可能性が非常に高まっていると私は認識をしておりますし、そうした面からしても、やはり国民の消費文化がこれからの日本の農業を守っていくんだろうと私は思います。

 こうした点で、特に、牛の成長ホルモンはどういうものなのかとか、それから遺伝子組み換え作物はどういうものなのかというのは、この農業先進国である宮崎でこそ、教育に組み込んで子供たちにしっかりと教えるべきだと思いますけれども、河野知事、何か宮崎でこういう教育に取り組んでいるというような例はありますでしょうか。

河野俊嗣君 先ほど来議論があります食の安全、安心、これは大変重要なテーマであります。消費者の関心も高い、また生産地としてもしっかりそこを守っていかなくてはならない、そういうふうに思っております。

 今の御質問は子供たちへのということでありますが、本県は全国でもトップクラスの残留農薬の検査技術がありまして、そういったものも利用しながら、トップクラスの安全、安心な農産物を提供している、そういう自負があるわけであります。そういったことも、食育また農育というような視点の中でしっかり子供に伝える必要があると思いますし、今の御指摘のようなことも含めて、安全、安心な食を選ぶということ、そして先ほど来言っているのは、地元でとれるものをしっかり食べていく、安全、安心なものを食べていく、やはりそこを含めたトータルでの食育ということが非常に重要であろうというふうに考えております。

松浪委員 ありがとうございます。

 そこで、今、TPPの議論がこうやって進んで、地方公聴会をたくさん、それもわかるんですけれども、冷徹な政治の原理としては、我が国の日本の政治というのは当然数の原理でできているわけでありまして、今のルールは通っていくわけであります。それは私、粛々と今国会でもう通ってしまうことになると思います。どこを修正するのかというような法律の修正というのも、私はほぼない状況だなと。冷静に考えればそうなんですね。

 それであれば、今我々ができるのは、附帯決議は拘束力はないけれども、これから採決に向けて附帯決議は我々はまだ組み込むことができますので、我が党としてはやはり、食品表示を強化するとか、それから食育、今こうした表示義務がつくられたものはどうしてこういうふうに表示義務ができているのか、どういうものなのかということをしっかりと子供たちそれから消費者に教えていくような、TPPを契機にこうしたことを進めていくべきだというふうに思いますけれども、こうした附帯決議のあり方について、河野知事、御要望がありましたら、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

河野俊嗣君 これまでもさまざまな議論がなされたというふうに思います。

 我々としては、いろいろな形で不安が広がっているというのを今、地元の声としてお伝えしたところでありまして、やはり万全の国内対策を進めていただくというところを特に強調をお願いしたいというふうに思っております。守るべきところは守り、攻めるべきところは攻めるというところをめり張りをつけて、しかも中長期的な視点からこれを行っていただく、そこはぜひともお願いをしたいと考えております。

松浪委員 まだあと一点。

 先ほど申し上げた食品表示とかそれから食育について、具体的なお考えがあれば河野知事に伺いたいと思います。

河野俊嗣君 その点も大変重要なことであろうかというふうに思っております。

 本県としても、全国を代表する食の生産供給基地ということでしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思いますし、国全体としても、これを機にさらに強力に進めていただくことができればというふうに考えております。

松浪委員 最後になりますが、我が党に河野と書いてカワノという議員がおりまして、たびたび間違えましたことをおわび申し上げまして、これで質問を終わります。ありがとうございました。

森山座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様には、御多忙の中、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。

 また、終始真摯な態度で傍聴いただきました傍聴者の皆様、御協力ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会


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