衆議院

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第10号 平成28年10月31日(月曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十月三十一日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 うえの賢一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 菅原 一秀君 理事 西村 康稔君

   理事 森山  裕君 理事 今井 雅人君

   理事 篠原  孝君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      池田 道孝君    大西 英男君

      大西 宏幸君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    黄川田仁志君

      北村 誠吾君    佐々木 紀君

      坂本 哲志君    田所 嘉徳君

      田畑 裕明君    武部  新君

      武村 展英君    寺田  稔君

      中川 郁子君    中村 裕之君

      ふくだ峰之君    福田 達夫君

      福山  守君    古川  康君

      前川  恵君    宮川 典子君

      山下 貴司君   山本ともひろ君

      渡辺 孝一君    岸本 周平君

      近藤 洋介君    佐々木隆博君

      玉木雄一郎君    福島 伸享君

      升田世喜男君    村岡 敏英君

      稲津  久君    岡本 三成君

      中川 康洋君    梅村さえこ君

      笠井  亮君    斉藤 和子君

      畠山 和也君    小沢 鋭仁君

      河野 正美君    松浪 健太君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   環境大臣         山本 公一君

   国務大臣         松本  純君

   国務大臣         石原 伸晃君

   内閣府副大臣       松本 洋平君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本佐和子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   参考人

   (一橋大学名誉教授)   土肥 一史君

   参考人

   (弁護士・日本大学芸術学部客員教授)       福井 健策君

   参考人

   (弁護士)        鈴木五十三君

   参考人

   (弁護士)        岩月 浩二君

   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三十一日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     山下 貴司君

  古川  康君     大西 英男君

  前川  恵君     田畑 裕明君

  笠井  亮君     梅村さえこ君

  小沢 鋭仁君     河野 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     古川  康君

  田畑 裕明君     佐々木 紀君

  山下 貴司君     田所 嘉徳君

  梅村さえこ君     斉藤 和子君

  河野 正美君     小沢 鋭仁君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     前川  恵君

  田所 嘉徳君     武部  新君

  斉藤 和子君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会条約第八号)

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第四七号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 両案件審査のため、本日、参考人として、一橋大学名誉教授土肥一史君、弁護士・日本大学芸術学部客員教授福井健策君、弁護士鈴木五十三君、弁護士岩月浩二君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、知財、ISDS等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず土肥参考人にお願いいたします。

土肥参考人 ただいま御紹介を頂戴いたしました土肥でございます。

 私は、七月までは日本大学の大学院知財研究科というところに籍を置いておりましたけれども、つい最近定年を迎えまして、こちらには一橋大学名誉教授ということでお届けをさせていただいておる者でございます。

 私は、知的財産法を長年研究しておりましたけれども、環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP協定関連の著作権法改正の検討を行いました文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会において主査を務めさせていただきました経緯から、主として著作権法に関する法律案をどう考えるのかという意見を申し述べさせていただくため、さらには御質問にお答えいたしますためにお呼びいただいたものと承知をしております。本日は、かかる機会を頂戴いたしましたことに厚くお礼を申し上げます。

 まず、最初に結論から申し上げますと、私は、今回の著作権法改正案に賛成の立場でございます。

 TPP協定承認に係る著作権法の見直しは、御案内のように、大きく分けまして五項目に及んでおります。一つが、著作物等の保護期間の延長の問題、二つ目に、著作権等の侵害罪の一部を非親告罪化すること、三つ目に、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段、いわゆるアクセスコントロールを導入する、そういう問題、それから四つ目が、配信音源の二次使用において新たに使用料を認める件、それから最後に、法定の損害賠償に係る制度整備、この五項目でございます。

 いずれも著作権法の根幹にかかわる重要な問題であるわけでございますけれども、ここでは、しばしば巷間取り上げられておりますところの保護期間延長問題についてのみ意見を申し上げ、残る非親告罪化等々の問題につきましては、後ほど御質問にお答えする形で申し上げさせていただきたいと思っております。

 さて、これからの時代はメガFTAの時代とも言われておりますけれども、TPPは我が国が初めて締約国となる重大な協定と位置づけられております。また、TPPルールは、今後一層の交渉進展が期待されておりますRCEPのようなメガFTAルールの先駆けともなり、二十一世紀の国際基準となると予想されております。

 こうしたTPPルールの意味及びその重要性を受けまして、著作権法の改正における審議では、TPPルールを所与のものとしつつ、同時に、我が国の法制度及び法律上の慣行の範囲内で整合性を確保するという観点から検討を進めた結果が今回の著作権法改正案でございます。

 そこで、著作物等の保護期間の延長問題でございますけれども、この問題については、著作物が公有に落ちる期間を二十年先送りいたします。そういう結果になるところから、否定的な御意見とか消極的な評価も承知しているところでございます。

 例えば、著作物の利用に伴う権利処理コストを高める結果となりかねない。あるいは、ボランティア団体がパブリックドメインに落ちた著作物のデジタル化を進めておいでになるわけですけれども、この二十年の延長に伴いまして、そうした作業のインセンティブが失われてしまいかねない。こういったもので、いずれももっともな御心配であると承知をしております。

 権利処理コストの問題、ひいては孤児著作物の問題は確かに深刻な問題でございます。ドイツのさきの司法大臣であったザビーネ・ロイトホイサーシュナレンベルガーは、ベルリンの講演におきまして、二十世紀の文学作品の八〇%は権利者の探知が困難になる、このように指摘をしております。権利処理コスト、取引費用は少ないにこしたことはございません。

 現在、この問題を解決するために想定されておりますことは、権利者の許諾にかわる文化庁長官の裁定制度を一層改善するということでございます。

 この裁定制度を利用するためには、まず、権利者との連絡をとるために相当な努力を払っていただくことが求められております。裁定の前提となるこの相当な努力というのは、インターネット時代を迎えまして、一昔前に比べますと確かに格段に改善されてまいりましたし、現在利用されている制度でございますから、まずここから着手することに異論はございません。

 ですが、この制度は、年間数件という時代にあっては十分機能したと思いますけれども、これからはそうはいかないというふうにも思われるところがございます。何といいましても、文化庁長官の裁定という仕組み自体が重いというふうにも思われるからであります。

 思い切ったライセンススキームへの転換が必要ではないかとも思います。

 例えば、現状では、使用料は最終的に国庫に入ってまいります。しかし、こうした供託金というものは、当該著作物等を創作したクリエーターの属する部門の充実発展のために、特に、その部門の新たな人材育成の資金として考えられてもいいようなものではないかと思っております。世界の状況を見渡してみましても、こうしたことを可能にするようなパラダイムの変換が進められているように認識しております。

 また、著作権消滅後の文学作品のデジタル化を進めておられるボランティア団体の活動への影響でございますけれども、大事なことは、一般読者に文学作品へのアクセスが確保されているかどうかだと思っております。

 延長によりデジタル化ができなくなるということで御心配になっている作品のほとんどは、商業出版によるアクセスが依然として期待できるものが多いように思います。我が国には、よい文学作品でありながら、商業出版会社が振り向かず、現在アクセスできなくなっている作品はたくさんあるように思います。ボランティア団体の方々には、ひとまずこうした作品に注力いただいて、公衆の文学作品への一層のアクセス改善に御貢献いただけないものかと期待しておるところでございます。

 一方、TPP協定は、実質的には、太平洋を取り囲む十二の国から成る市場の形成を目的にした協定と言うことができましょう。市場の形成という目的のために必要なことは、商品やサービスが可及的自由に流通できる制度の枠組みでございます。各締約国の法制度はできるだけハーモナイズしていることが望ましい、このようなことが市場にとっては有益であると思っております。保護期間をできるだけそろえるということは、まさにこうしたことに資するものと考えております。

 多国間の国境を越える単一市場の例で恐縮ですけれども、欧州共同体の経験を申しますと、欧州の単一市場は一九九三年にスタートいたしましたけれども、ベルヌ条約、ローマ条約が著作権及び隣接権の保護期間の下限を定めておりますために、当時、ドイツやフランスでは七十年、残りの十の構成国は多くが五十年、一国だけが六十年だったんですけれども、こういった保護期間のハーモが確保されていないがゆえにコンテンツの自由流通を損なうような事態も生じ、結局、二〇〇六年に、欧州理事会の指令をもって著作権と隣接権の保護期間を七十年に統一しております。

 このとき、ドイツ、フランス以外の国は五十年の保護期間を採用しておったわけでありまして、数からすると五十年とする国の方が圧倒的に多かったのですけれども、現実的な問題といたしますと、保護が承認されている権利を切り捨てることはなかなか難しいということもございまして、七十年で統一されたというのが実情でございます。

 TPPでは、保護期間は著作者の生存期間及び著作者の死後少なくとも七十年としておりまして、保護期間の下限を定めているわけでございますけれども、それであっても、コンテンツの自由流通という市場の観点からいたしますと有益である、このように考えております。

 さらに、今回の著作権法改正によりまして七十年とすることで、OECD加盟全三十四国の保護期間がそろうということも、国際調和という観点から望ましいものと確信しておるところでございます。

 したがいまして、今後取り組むべきは、保護期間の延長に伴う不利益の解消でありましょう。これを解消することを通じて、文学作品を初めさまざまな著作物を、文化的な遺産とするのではなく、文化的な資源として、文化産業の創出に向けた活用がなされることが期待されるわけでございます。

 著作物に関する権利の帰属とその所在を明らかにして市場の透明性を高めるデータベースの充実を初め、拡大集中権利管理制度といった思い切ったライセンススキームの導入に向けた検討に着手すべきときではないかと考えております。

 また、保護期間問題に関して必ず取り上げられます我が国特有の問題であります戦時加算問題も、米国、カナダ、豪州及びニュージーランド政府との間で交換文書が取り交わされ、相当程度、問題の解決に向けた進展が期待されておるところでございます。この問題を解消するために、官民を挙げて関係者の一層の尽力を期待しておるところでございます。

 他の四つの改正事項を含め、いずれもTPP協定の求めるところを踏まえ、審議に当たっては、国内の関係二十六団体の要望も伺いながら今般の改正法案に取りまとめられたものでございまして、この改正法案の内容は、我が国の法制と法律上の慣行に照らし整合性を保つものとなっていることを御理解いただきますようお願い申し上げまして、冒頭の私の意見発表とさせていただきます。

 御清聴いただき、どうもありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、福井参考人にお願いいたします。

福井参考人 福井でございます。本日は、お招きいただきましてありがとうございます。

 TPP関連知財法案についての私見を述べよという御依頼をいただきまして、幾つかのポイントについてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 お手元の資料、ちょっと大き目に印刷されておりますが、一枚目に随分たくさんのメニューが並んでおりますが、一枚進めていただきまして、その前提として、まず、情報革命と知財制度という状況のお話を差し上げたいというふうに思います。

 少子高齢化を迎える我が国にとりまして、今後、情報・コンテンツ立国ということが非常に重要な課題であることは恐らく異論のないところだろうというふうに思います。そして、知財制度というのは、その情報・コンテンツ立国にとっては最も基幹的なルールと言っても過言ではないでしょう。

 翻って、世界を見ますと、現在、世界では、ITネットワーク革命と言えるようなかなり急速な変化が起きている状況にあろうと思います。

 資料でごらんいただいているのは、企業の時価総額の世界ランキングということになります。直近のものです。フィナンシャル・タイムズのデータですけれども、ちょっと驚くべき状況が生まれておりますね。ごらんいただくと、一位から五位までが全て、いわゆる米国西海岸発のITプラットホームと言われるようなネット関連企業で占められるという状況です。

 日本のトップはトヨタ自動車でありますけれども、今や残念ながら三十一位ということで、わずか二年前に抜き去られたフェイスブックの株価総額の半額以下という状況になってしまっております。まさに我々は、ITネットワーク革命と言えるような急速、激烈な変化の中に身を置いているということが言えようかと思います。

 さて、これをコンテンツの面から見ると、流通するコンテンツやデータの量がまさに爆発的に増大しているという現象がこのITネットワーク革命の特徴であります。

 右下の図は、世界最大の動画投稿サイト、ユーチューブでございますけれども、これに今どのぐらいの動画が投稿されているか、皆さん、御存じでしょうか。最新の推計で、少なく見て二十億という、ちょっと常識を超えるような数が上げられています。閲覧数も一日五十億というとんでもない数が上げられるわけでありまして、もうメガコンテンツを超えたギガ、いわゆる十億単位のコンテンツが現実に流通する状況に我々はごく短期間で急速に入ってしまった、そんな状況に今あるんだろうというふうに思います。

 そして、このITネットワーク革命にとって、権利の壁、いわば権利処理の壁というのが大きな課題であります。というのは、権利者を捜し出して許可をもらい、それから利用する、これは、一万というコンテンツならやりもするでしょう。しかし、十億はおろか、百万であっても到底できはしないわけですね。

 よって、この権利処理コスト、払うお金が嫌だというんじゃなくて、権利の処理のためのコストをいかに下げていくか、このことに一国のあるいは企業の競争力というものがかかっている時代に我々は今あります。だから、世界は、例えばEUなどでも著作権リフォームという議論が今盛んであります。日本においても、内閣知財本部で次世代知財システムの議論が活発に行われているところであります。

 さて、TPPに目を転じましょう。

 冒頭で挙げました多くのメニューは、日本にとっても必要性が高く、また、その悪影響をできるだけ抑え込もうとした、そういう工夫がなされたものとして、私は政府の努力は評価できると思います。

 しかしながら、気になる点を何点か申し上げるのがきょうの役割だろうと思いますので、それを申し上げますと、三枚目ということになります。保護期間の延長です。これは、恐らく、最も悪影響の大きいものがほぼセーフガードのない状況で入ってしまった、こんな状況かと思います。

 欧米では、確かに、九〇年代に保護期間を二十年延長し、死後七十年という超長期の時代に突入しました。しかしながら、その段階でも、著名な十七名の経済学者が、これは余りに経済合理性がないということで反対意見を提出するなど、激論になっているわけですね。しかも、これはネット時代の本格到来前、今のような課題がない時代だからできたんだということもその後指摘されているところであります。

 では、日本で今入れるとした場合の懸念点ということになりますが、まず一番目は、ストレートに、対外的なライセンス使用料の支払いが恐らく大幅にふえてしまう。

 というのは、米国はコンテンツの輸出大国であります。ですから、彼らにとって、世界じゅうの国に著作権をどんどん延ばしてもらいたいというのは、ある意味では合理性があるわけですね。しかし、残念ながら日本は真逆です。日本はコンテンツの超輸入超過国です。直近の日銀の数字によれば、その赤字額は年間七千五百億円という巨額に上っています。しかも、増加基調です。

 もちろんソフトウエアなどが多いわけですけれども、米国商務省のデータを見れば、文化的なコンテンツも決して少なくはない。延ばせば、当然、支払い額はふえ、その負担は民間に寄せられます。民間が負担するわけです。

 それだけではない。許可が必要だということは、ライセンス契約を結ぶということであり、契約条項によって拘束されるということです。これは、つまり海外にビジネスをコントロールされるということです。その負担は少なからぬものがあります。

 しかし、恐らくそれ以上に大きいのは、土肥先生もおっしゃった権利処理コストの増大ということであろうというふうに思います。

 著作権というのは、死後、相続されるわけです。相続人全員の共有になります。期間が長くなれば相続関係は複雑化し、権利者を捜し出し、交渉するコストは当然上がっていきます。権利処理コストを下げる時代に、それが死命を決すると言われる時代に、なぜか上げる話をしている。

 しかも、過去の全作品の半数かそれ以上は、捜しても最終的に権利者が見つからない、いわゆる世界的に孤児著作物と言われて大問題とされている作品である。であるならば、著作権の長期化は孤児著作物を当然ふやす方向にしか働かないわけです。

 実を言えば、米国で、著作権局長みずからが保護期間の部分短縮を提案したことがあります。ほんの二年ほど前の話です。それは、著作権を延ばしたら孤児著作物が激増してしまったというのが理由です。現在、もうそういう状況にあるわけですね。

 さて、これらは古い作品ですけれども、その大半は市場では売られていません。書籍でいえば、死後五十年たつ前に九八%以上の作品は市場から姿を消しているというデータが出ています。これらの作品というのは、電子図書館、電子博物館、デジタルアーカイブと言われるような活動によって次世代に語り継がれていく、これによって命脈を保つわけです。

 しかしながら、保護期間をふやし、権利処理コストが増大すれば、死蔵される作品がふえてしまう、こういうことが大変に懸念されます。これは、アーカイブ活動だけではなくて、AIネットワーク社会にとっては重大ないわゆるビッグデータ活用にとっても、当然、古い作品が入ってきてしまいますから、権利処理コストが増大すれば停滞しかねないわけで、何でそんな話をしているんだということも言える。

 国家的な、国際的なハーモナイゼーション。今現在、日本、ヨーロッパ、アメリカ、期間が全部不統一ですね。では、一体どれだけ困っているかというと、この仕事をしていて寡聞にして聞いたことがほとんどありません。

 プラットホームに関しては、ごらんいただいています今のページの右下、これがヨーロッパが総力を挙げているヨーロピアーナ、巨大電子博物館であります。ここでは実に五千三百万点のデジタルコンテンツが無料で公開されています。それは文化を育む活動であると同時に、当然、ITプラットホーム、グーグルなどへの対抗軸として行われている。こういう活動にとって保護期間の延長というのはかなり間違った判断だったのではないか、こんなふうに考えるところです。

 もう一つ参りましょう。非親告罪化です。次のページですね。

 これに関しては、告訴をしないと起訴、処罰できない親告罪だということで、パロディーなどの二次創作ばかりか、さまざまな、経済、教育、あるいは研究の現場で軽微な利用というのはたくさんあるわけです。その全部について事前に許可をとるというのは実際にはとても難しいことで、軽微利用というのは行っています。皆さんの現場でも恐らく行っています。

 それは何でできるかといえば、大した行為じゃないからです。お目こぼしです。大したことじゃないからできてしまう。これで社会は現実に回っています。

 これが第三者の告発でも起訴、処罰されるかもしれないとなれば、それは萎縮しかねません。残念ながら、今、炎上文化というのが大問題になっています。この告発ということとの相性が最悪ですね。

 こんな中で、現在の改正法案は、原作のまま利用するなどのセーフガードが十分に盛り込まれまして、こうした二次創作などへの懸念が減少したことは大いに評価したいと思います。これは人々の声を受けた政府の努力の成果だと思います。

 しかし、あえて申し上げれば、例えば企業や研究機関での資料の複製は、やはり事前の許可がとれない類いの資料も多いのです。ですから、行われています。あるいは、解析用のビッグデータを第三者に提供する。今後非常に重要になる部分ですけれども、実は、現行法では恐らくできません。あるいは、商用のアーカイブ、先ほど申し上げたとおり。商用のオンラインの講義、日本の教育を世界に向かって広げていくためにはとても重要な要素。これらに非親告罪化の影響が及ばないかどうか、今後の運用等についてなお注視が必要かなというふうに思います。

 さて、最後です。そうした中、我々は一体どういうふうにすべきか。

 ここで申し上げたいのは、個々のメニューについて賛成、反対、それぞれあるとしても、それを条約で知財制度が縛られるということはちょっと慎重になった方がいいということです。

 というのは、先ほど申し上げたように、世界は変化が余りに急速なんですね。ITネットワーク革命の状況というのは、もう三年先が到底読めません。ということは、今現在はいいと思えているような制度も、三年先にはこれはまずいねというふうになっている可能性は十分あるんです。

 三年前に現状を予測できた人はいないですね。アメリカに至っては、当のアメリカの人々自体が将来が全く見通せない状況に今なっている。こんなことも言えるんじゃないかというふうに思います。

 そうすると、これから制度を変えようというときに条約で縛られちゃうと、国会をもってしても、皆さんの力をもってしても変えられなくなるわけです。このことは検討してしかるべきだというふうに思います。

 特に、これからは、知財権で囲い込んでしっかり守っていく部分と、それから、開いてみんなに自由に使わせて広めていく部分、このオープン・クローズ戦略が国家や企業の浮沈を決定します。ITプラットホームは、要するにそれがうまかったわけです。そのときに我々が政策手段としてこうしたオープン・クローズの政策メニューをとれなくなるとしたら、これはなかなか重大な問題です。

 加えて言うと、条約の中には一時代前の相手国内のロビーイングの成果が盛り込まれちゃうということが往々にしてあるんですね。

 実を言うと、今のTPPの知財条項は、多くは米国提案に基づいていますが、五年以上前の米国内のロビーイングの成果です。今、米国内ではITプラットホームのロビー力は非常に強くなっていて、かなり状況が変わっているのはさっきも申し上げたとおりです。本当にこれで大丈夫かということも出てくる。

 海賊版対策のような協調のメリットが大きい部分に条約というのは今後絞り込んでいって、しっかりそこに注力していく、このことが必要ではないかなというふうに思うわけです。

 さて、最後に国内法の課題です。

 他方で、国内では、権利処理コストの低下などのためのさまざまな課題が山積しています。

 一番目としては、権利情報データベースです。権利情報をちゃんと集約しておいて、許可が欲しい人が連絡がとりやすく、ライセンスを受けられる状況をつくってやること、これは今急ピッチで進めようとしています。

 それから、先ほど申し上げた孤児著作物対策、これもどんどん進めていかなければいけません。あるいは、さらに思い切って、イギリスなどが行っていますけれども、特定ジャンルでのコンテンツは、もう委託がなくてもそのジャンルでの権利者団体が権利を管理して許可を与えられるという、いわゆる拡大集中許諾、ECLというものも、これは制度設計上いろいろな課題があるんですけれども、検討は十分価値がある、こんなふうに思います。こんなようにして、ライセンスを受けやすい状況をつくってあげる。

 しかし、それでもなお、到底ライセンス許可などはとれない利用というのは残ります。数が物すごくたくさん、百万、一億なんてあったらそんなことはできないよ、あるいはコスト、活動内容的にできないよ。あり得ます。そのときには、権利者に迷惑がないような利用であれば許可なしで使ってもいいよという、いわゆる柔軟な権利制限規定というものが今各国で議論されて、日本でも議論されている。権利者団体ではなお反対もありますが、もう落としどころを見つけて、しっかりと導入しなければいけない時代であろう。

 言うまでもないが、アメリカのITプラットホームがどう権利の壁を越えてきたかといえば、フェアユースと言われるある種の柔軟な規定で越えたわけであります。アーカイブ利活用もそうであります。

 以上は知財推進計画でも重点目標とされた内容でありますが、現在はなお道半ばであります。

 これを今後どんどん進めていかなきゃいけないというときに、日本からもともと提案したわけでもない保護期間の延長や非親告罪化だけを前倒しで立法する。果たしてバランスがいいのかな、それで三年先の状況に本当に対応できるのかな。この観点から、私は慎重な意見を申し上げたいというふうに思います。

 どうしても入れるのであるならば、先ほどの国内法の課題についてはこれまでの数倍のスピードで進めるぐらいの覚悟を持たなければ、ITネットワーク革命の中での日本の将来は到底見据えることはできないだろうというふうに思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 塩谷立特別委員長、それから委員の皆様方、本日、私に参考人としての意見を述べる機会をいただきまして、大変光栄に存じます。ありがとうございます。

 本日、私は、投資章におけるISDSの規定について発言させていただきたいと思います。

 ISDSは、投資家が、投資章の実体規定に違反する紛争について仲裁を申し立てることのできる制度であります。これまで、この制度が政府による正当な規制権限の行使を制約するのではないか、あるいは濫訴を誘発することを含む制度上の不備があるのではないかということで、さまざまな議論がなされてきたと思います。

 しかし、今回のTPPの投資章、ISDSの条項をあけてみますと、これらの懸念に対して多くの回答がなされているというのが私の最終的な意見の結論でございます。

 まず第一の、政府の正当な規制権限の行使に関しましては、少し実体規定を見ながら御説明させていただきたいと思います。

 御承知のように、投資章では、実体規定の各義務において、正当な規制権限による場合は義務違反にならないとの原則を取り入れております。

 実体規定は、大きく分けまして、投資財産設立の時点、言いかえれば、投資開始の時点での投資の自由を保障する自由化規定と、それから、投資が始まった後にその待遇を保護する規定、投資の保護規定の二つの規定があります。

 自由化義務のところでは、内国民待遇、最恵国待遇、そして特定履行要求の禁止、これに加えまして、経営幹部の国籍制限、あるいは移転の自由が定められています。投資開始後の保護義務といたしましては、明確に国際慣習法上の最低待遇及び収用補償を規定しております。

 内国民待遇について申し上げますと、御承知のように、受け入れ国に対して、外国投資家を自国の投資家よりも不利益に扱ってはならないという待遇の保障であります。例えば、投資の条件として、受け入れ国が会社の持ち分の外資保有率を一定の割合以下に制限するなどの措置がこの待遇に照らして問題になります。

 この場合には、外国投資家と自国投資家の利益を比較するということが起きるわけですが、その比較におきまして、外国投資家と内国投資家が同様の状況にあるかどうか、同様の状況テストと言われますが、それを適用することによって判断することになります。ところが、この同様の状況のテストにおきまして、内国投資家と違う措置が外国投資家にとられることが正当な規制権限行使に該当するかどうかを勘案するとされています。TPPではこのことを明示しています。

 また、自由化措置の一つである特定履行要求の禁止原則ですけれども、これも、現地調達、あるいは自国産品の購入要求、ライセンス料の設定、特定技術の移転要求など技術移転での条件を課すことを禁止するものです。この禁止では、やはり同様の状況テストが適用されないために、むしろ正当な規制権限行使保全のための規定が明文化されています。公共の福祉に係る正当な目的を保護するための措置を明示して、禁止から除外しているわけです。

 同じく投資後の保護である最低待遇基準の保障は、国際慣習法の原則に基づくものとされています。この中には、公正衡平待遇義務と言われます国際慣習法上確立された義務が含まれています。

 投資判断の先例によれば、この義務の内容は、恣意的で、大幅に不公正、不正義、差別と偏見、あるいは裁判拒否を含む適正手続の欠如によって行われた場合に該当するというふうにフレーズ化されています。

 そして、この公正衡平待遇義務に関する判断の先例では、ある措置が投資家の経済を害する場合であっても、目的の公共性、措置の合理性、適正手続による実施であれば、正当な規制権限行使として保護が図られています。判例法理ではポリスパワーと言われることで、この正当権限行使が認められています。

 収用ですけれども、これは多く議論のあるところですが、投資財産を収用または国有化するには、公共目的で、差別的でなく、速やかな補償がなされることが条件とされていますが、収用には間接収用ということが含まれています。

 間接収用は、収用と同等の措置と認められるということが条件でありまして、仲裁判断先例では、収用と認められる程度に相当な財産の剥奪がなければならないとされています。その上で、投資章では、正当な権限行使が間接収用に該当しないことの確認をしています。また、最近の判断先例では、明確に、この正当な権限行使は間接収用の適用を除外するということが宣言されています。

 以上が、実体規定においてそれぞれ確保されています政府による正当な権限行使の保護でございます。

 TPPの投資章にはBがありまして、そこにこそ本来のTPPの手続規定が置かれています。投資家は、投資受け入れ国との間に発生した紛争について、その解決のために国際仲裁に付託できるという制度であります。

 仲裁廷は、この違反があったかどうかを判断し、損害の発生を認定した場合には、損害賠償または原状回復を命じることになります。この決定は、ICSID条約またはニューヨーク条約などに基づいて執行することができることになっています。

 これまで、この手続をめぐりまして、その不透明性、非公開性、審理のおくれ、濫訴の誘発、あるいは上訴がないことなどが懸念として挙げられてまいりました。今回のTPPの規定は、これらの懸念に対して応えたものになっております。

 以下、順次羅列していきたいと思います。

 第一に、仲裁廷の審理は公開されます。また、当事者が提出した書面、審理の議事録及び仲裁廷の命令、決定は公に入手可能にするということが規定されました。手続の透明性が確保されたと言えます。

 さらに、TPPの締約国で紛争当事国でない国にも、規定の解釈について意見を述べ、あるいは意見書を提出することができることになりました。

 さらに、当事者でないNGOなどを含む第三者も、アミカスキュリエ、裁判所の友として仲裁廷が意見を聞くことができるということが規定されています。

 また、審理の促進を図るためには、被申し立ての国が提出する、明白に法的根拠を欠くような場合であるとの異議については、まず先決問題として判断をするということが規定されています。これも、仲裁先例においては、バイファケーション、二分化手続として発展してきた法理でございますが、このTPPにおいて明確に規定されることになりました。

 さらに、申立人の申し立て可能期間を三年半に限定したことなど、遅延の防止が図られています。

 また、投資協定の解釈につきましては、TPP委員会が決定した解釈は仲裁廷を拘束するということで、解釈の統一も図っています。

 濫訴の防止では非常に大きな要素になります仲裁手続費用の負担でございますが、今回の規定では、申し立て当事者が敗訴した場合、仲裁手続費用だけでなく、被申し立て国側の代理人報酬も申立人に負担させることができるとして、濫訴防止のための条項を費用負担の面からも手当てしております。

 なお、原状回復措置を命じた命令があった場合にも、国は、その措置として行われたことを撤回するのではなく、その選択によって賠償の支払いにかえることも許されるとされておりまして、金銭の支払いを第一義的な救済手段として位置づけております。ただ、この金銭の支払いも、判例法理で既に発展しておりますが、懲罰的損害賠償を含まないということが明文化されています。

 ISDSは、既に世界で締結されている三千を超える投資協定のほとんどにおいて規定されています。また、日本が加盟している投資協定を含む経済連携協定においてもほとんど規定されております。

 これまで、国家が公共政策の目的で行う権限行使が、仲裁に付託されることによって制限されるのではないか、萎縮されるのではないかという心配が表明されてきました。特に、最近では、オーストラリアのように、同国のたばこ規制が申し立ての対象になったということもありまして、その導入について慎重に検討することを表明する、そういう国々もあります。

 しかし、この間のオーストラリアに対する仲裁廷での判断、あるいは今回のTPPの手続条項の規定は、これらの懸念に対して応えた国際社会の誠実な反応を表明していると私は考えます。

 ISDSは紛争解決制度です。そこは、投資家と受け入れ国に対し論争の場を提供するフォーラムであります。仲裁判断によって紛争を解決するというわけで、これまで武力による解決にまで頼らざるを得なかった投資紛争が、法律論争に移しかえられることになりました。このようにして、世界は一歩一歩、法の支配に向けて進んでいっております。ISDSの仲裁手続は、この道に向けて、いわばジュリスプルーデンス、法理の体系を発展させてきたものと考えます。

 そして、現在、投資受け入れ国と投資家との利害のバランスを公平公正に図ることを目指して仲裁廷の先例は築き上げられてきているというのが私の感想です。そして、その先例を背景に今回のTPPは起草されております。その意味で、これからの投資仲裁の一層の発展に向けてのよき模範ともなり得る規定であると考えます。また、よき模範にしていくのがTPP加盟締約国の責務だというふうに思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、岩月参考人にお願いいたします。

岩月参考人 弁護士の岩月です。

 このような場で意見を述べさせていただく機会を与えていただいたことに、まずお礼を申し上げます。

 時間もありませんので、早速入らせていただきます。

 一応簡単な資料をつくっております。最初に挙げてあるのが、農林水産委員会での委員会決議、この中の五項がISDに関係しております。

 ただ、今の段階で私が一番心配しているのは、七項にむしろ心配があります。七項、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」このことを政府に求めたわけであります。

 ISD、この条項の問題点については、世界的にも大きな議論になってきています。

 伊勢志摩サミットに先立って、経済政策について意見を聞きたいということで、政府にジョセフ・スティグリッツというノーベル経済学者が招かれて、総理じきじきに意見をお聞きになったことがございます。このスティグリッツ教授、基本的にTPPには反対です。TPPは自由貿易ではない、グローバル企業のための管理貿易だというふうに言っております。その中で、スティグリッツは、TPPで最悪なのはISDだということも言っております。

 さらに、二〇一二年にさかのぼりますと、全米州立法者協議会、要するに全米の州議会の代表者が集まった協議会でも、TPPからISDを除くべきだという公開書簡が米国政府に送られています。そのように、基本的にどの貿易協定をとっても重大な問題として扱われているのがISDです。

 しかし、私の実感からいうと、ISDについて知らない国民が大半ではないか、国民的議論どころではないのではないかというふうに思います。

 食の安全について関心をお持ちになる消費者の方に呼ばれて、学習会でお話しすることがあります。その冒頭で私は、ISDを知っていますか、聞いたことはありますかということを尋ねます。多くて、多くてとは言いません、大抵二、三割です。ISDに関心を持って学習会に来よう、そういう熱意のある方で、せいぜい二、三割ですね。国民全体をとったらどれぐらい知っているでしょう。一%いくかいかないかではないかと、私は非常にその点について懸念しています。

 昨日、NHKの「日曜討論」で、田村憲久元厚生労働大臣が自民党を代表して出演されていました。そこで田村議員は、ISDN条項はどの貿易協定にも入っていると。えっ、電話回線の話……。まさか、鈴木先生がISDNなんて言いません。私も、ISDと言って、ISDSと言うところで間違えることはないんですね。だから、元大臣ですら十分な認識がない。十分な認識がないのに、国民がそれを知るはずがないということを私は改めて確信しました。

 このISD条項、非常に問題があるというふうに思うのは、国家の政策がたった三人の民間人によって事実上覆される、国会で苦労しておつくりになった法律がたった三人の民間人によって否定される、事実上変えていかなければならなくなる、そういう重大な効果がある。

 そういう重大な効果に鑑みた場合に、全く周知がされていない、国民的な議論が全くされていない。これは、先ほどの「国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」とする委員会決議に反するのではありませんかというふうに強く思います。十分に国民に知らせて、十分に国民が議論した上でこれを選ぶということをぜひ実行していただきたいというふうに思います。

 それから、七項の前段、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、」とあるところですね。

 もう交渉は終わりました。成文ができました。その成文を正確に国会に伝えているのかという問題がこのISD条項についてもございます。というか、調べていって、きのう気がついたんですけれども。

 先ほど鈴木先生の方からもお話がありました、間接収用という概念があります。経済活動に対する規制措置が収用と同等程度に及ぶ場合、それに対しては正当な補償をしなければならない。この補償の中には、逸失利益と言われて、将来に向かって失われる利益も含まれるんですが、この間接収用という概念について、今回のTPPでは、公共目的の規制は十分に守られるようになったというのが政府の立場です。

 この間接収用の定義の中に、公衆衛生とか環境を守る公共目的のための無差別な規制措置は間接収用には該当しませんと一応書いてあります。ただし、政府の訳では、公共目的の無差別な規制措置は、「極めて限られた場合」を除いては間接収用に該当しないと書いてあります。

 「極めて限られた場合」というのは一体何なのかなと思って、原文を当たってみました。日本文にも解説がありません。原文にも当たってみましたが、原文にも解説がないんです。

 解説がないから、やはり相変わらずこの「極めて限られた場合」はわからないなと思いながら、原文を見たところ、「イン・レア・サーカムスタンシーズ」、和製英語で済みませんけれども、「エクセプト」、除いては、「イン・レア・サーカムスタンシーズ」、まれな環境、まれな状況を除いてはというのが、私の語学力の程度だとスムーズにいくんですね。これを、政府の仮訳、正文ではない仮訳では、「極めて限られた場合」と、すごく狭いように翻訳しているんですよ。

 でも、イン・レア・サーカムスタンシーズ、普通に言えば、まれな環境では、まれな状況ではという程度が普通じゃないですか。極めて限られた場合というなら、私の語学力は大したことないけれども、ハードリー・エバー・ケースとか、イン・ハードリー・エバー・ケース、極めてハードリーとあるべきではないかというふうに思います。

 これは意図的ではないか、意図的な誤訳ではないか、議論を起こさせないための意図的な誤訳ではないか。公共の福祉を守るための規制措置がどれぐらい限定されているのか、それは非常に重要な問題であるのに、そうした誤訳で議論を誤った方向に導こうとしているというふうに私は思います。

 論点を変えます。

 それから、ISDは使う立場だということをよく言われます。これは多分、途上国を頭に入れている。私自身はISD条項を全面的に否定する立場ですが、戦略的に考えた場合、途上国を頭に入れていると思います。

 これは、もともと途上国の司法制度が不備だということで、相手国の司法を飛び越えて海外の仲裁に出す、そういう制度です。日本のような法制度が整備された国でこれを受け入れることは、私には屈辱的です。だけれども、TPPで新たにISD条項が活用できるという議論もされます。

 さて、では、これまでの投資協定を踏まえて、十一カ国でISD条項がない国はどこか。シンガポールもISD条項は既にあります。ベトナムは社会主義国だったけれども、ISD条項は日本との間であります。マレーシア、ブルネイ、あります。チリ、ペルー、メキシコについても、ISD条項は既にあります。ないのは、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、そしてアメリカ。

 御存じのとおり、アメリカは非常な訴訟社会です。NAFTAで、政府の統計ですが、ISDの係争件数、十月現在で六十九件というふうに外務省はまとめています。この六十九件のうち、アメリカ企業が起こしたのが五十件です。そして、勝訴した結果が出ているのはアメリカ企業だけです、八件。四件は、アメリカ企業は和解しています。アメリカ政府が負けた例はありません。三カ国、アメリカ、カナダ、メキシコの中でも、圧倒的にアメリカ企業が使っている。

 これを、カナダ以上に大きな市場である日本に対してアメリカ企業が使わないわけがない。そういう観点からこの問題を戦略的に考えるべきではないか。

 では、英米法と言われる国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、この英米法と言われる国の中で、ISD条項を使って日本企業が互角に戦っていけるのか、そういうことについての戦略的な観点はぜひ持って考えていただきたい。

 カナダは当初、米国と同じぐらいたくさんISDを使いました。だけれども、米国に対して勝てない。勝てないから、数年間、もうほとんど起こさないという状態になりました。圧倒的に今、アメリカ企業だけが使っている。つい最近、一兆五千億円規模の大きな賠償請求をカナダ企業が起こしていますけれども、実態としては、そんなアメリカ勝ちみたいな状態がNAFTAの中ですらあるということです。

 資料の三ページを簡単に見ておきます。

 投資仲裁の最も基本的な義務とされるのが、公正かつ衡平な待遇及び十分な保護及び保障を与える義務です。これは言葉そのままです。言葉そのままで、意味がよくわからないけれども、極めて標準的な国際経済法の教科書で、これがどういう意味があるかということが書いてありました。「外国投資家の投資財産保護に関する慎重な注意、適正手続、裁判拒否の禁止、恣意的な措置の禁止、投資家の正当な期待の保護」、これが公正衡平待遇義務。これが国際慣習法だというのが一般的な国際経済法における理解です。

 TPPの条文はこれを詳しく書いたと言われていますが、下を眺めても、この意味がわからないです。これを民間の三人の仲裁人がその都度判断しては解散するということを繰り返すのがISDです。

 厳密に考えると、条約上、国内法的にもこの条項は意味を持つわけです。意味を持つと何が起きるかというと、この最低待遇義務を実現するための立法をしなければならない。最低待遇義務を実現するための裁判をしなければならない。国内でもですよ、国内法的効力があるんですから。というような問題。これは全く議論されていませんが、そういう問題が起きる。これにどうやって対処していくのか、私にはよくわかりません。

 最後、主権侵害はないか。

 五ページですが、上に、韓国大法院、韓国の最高裁判所ですね、これが、米韓FTAを締結するときに、主権侵害ではないかという議論をしています。内部資料が公開されているんですね。

 その検討のときに、「このような紛争に関して国内の司法府が関与する余地がなくなり、国家の主権または司法権が侵害される素地があるという指摘がある。」しかし、「条約の批准等の手続を経て、国家が自発的に同意することに従うもので、国家はそのような選択をする主権を行使するものだと言えるという見解もある。」両論併記です。

 両論併記ですが、後を見ていただくと、主権の放棄も主権の行使であると言っているわけです。人ごとだからそう言っているわけで、自分のことになると、最後、どうなっているか。

 アンダーラインを引いてあります。最高裁としては、「司法府の裁判が無差別的に仲裁請求の対象になる場合には、いろいろな副作用を招くことがあるので、裁判を仲裁請求の対象から除外する方案や対象を制限して明確に規定する方案を検討する必要」がある。だから、ほかはいいよ、せめて裁判所は除いてくれよと。虫がいいと私は思いますけれども、自分のことになるとこんなことを言っている。

 最後、労働契約法なんかが書いてありますが、これは、労働者の保護を図るために、長年の判例を積み重ねてつくられてきた法律です。苦労しておつくりいただいたわけです。だけれども、こういう労働者保護法制が仮に外国企業に対する公正衡平待遇義務に反すると判断されると、賠償の対象になる。賠償の対象になるということを繰り返されないためには、これを改正しなければならない。

 国内の事情で議論して改正するならいいんです。だけれども、国際仲裁で三人の民間人に賠償させられるから変えなければならない、こんなことがあってはならないというふうに私は考えています。

 以上で私の方の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司です。

 冒頭、三笠宮殿下の薨去について、心から哀悼の意を表したいと思います。

 さて、本日、私は、自由民主党を代表して、TPP協定の中で最も大きな論点の一つであるISDS条項や、あるいは知的財産権の章について、参考人の先生方に質問させていただきます。

 まず、ISDS条項について鈴木先生に。

 鈴木先生は、アジア太平洋法律家協会、いわゆるLAWASIAの会長であり、特に国際仲裁の第一人者として国際的にも御高名であります。国際法務に携わった経験を持つ私も、法曹の後輩として、先生に質問の機会をいただくことを大変光栄に思っております。

 まず、ISDSについて、そもそも論なんですが、なぜ国際投資協定においてISDS条項が置かれるのか。ISDS条項がなければ、投資をめぐる紛争が起きたとき、例えば日本側が投資をしたとき、権利救済のため、投資家はどうすることを迫られるのでしょうか。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 もしISDSがない場合に投資家がどのような手続をとればいいのかということでございますが、投資家自身が直接とれる手続といたしましては、相手国において、相手の国を被告とした裁判を提起するということになります。

 それ以外の国では、現在、国際法上、免責特権が多くの国で認められておりますので、外国において提訴できない。そうすると、当該国でしか裁判を受けられないということになります。

 これは、各裁判所についての独立性、公平性を直接疑うわけではありませんが、恐らく、各地域における各裁判所の持っている当該地域との利害関係につきまして、これから離れた形で裁判手続を行うというのは、これまでの司法制度の発展の中でほぼ認められてきた制度であります。少なくともアメリカでも、ある州で事件が起きた場合、州外人は連邦裁判所に行きまして、州裁判所に行かなかったわけですね。

 同じように、投資受け入れ国だけの裁判になりますと、必ずしも投資家の利益が保護されないという危惧がある。そのことは、逆に言うと投資をちゅうちょさせる要因になるということで、今回の第三機関による投資仲裁制度というものが根拠を持っておるというふうに考えます。

山下委員 ありがとうございました。

 ISDS条項がないと、結局、投資家側は権利救済を求めるために現地の裁判所に行かなきゃいけないわけです。その現地の裁判所の裁判官が必ずしも国際法の知識があるかどうかはわからない、地裁、高裁が全員が持っているかどうかわからないわけですね。そして、国によっては、例えば陪審とかそういうこともある。公正な判断がされるかどうかというのは、外国の投資家からすれば非常に不安がある。そういったことでISDS条項が置かれているわけでございます。

 先ほど先生がおっしゃったように、このISDS条項が置かれているのは、三千を超える国際投資協定が世界じゅうにありますけれども、ほとんどに置かれている。日本においても、これまでISDS条項については、二十三の国際投資協定、そして十の経済連携協定に含まれているということでございます。

 含まれていないのはフィリピンとオーストラリアだけということですが、このフィリピン、オーストラリアについては、日本側が嫌がったんでしょうか、それとも相手側が嫌がったんでしょうか。鈴木先生、端的にお答えください。

鈴木参考人 相手国が嫌がったというふうに理解しております。

山下委員 ありがとうございます。

 そうなると、結局、我が国としては、ISDS条項を含めることをこれまで基本方針としてきた。そして、そのISDS条項を含んだ条約を何本も皆さんは批准しているんですよ。同意しているんですよ、皆さんが。そういうことでございます。

 そして、ISDS条項については、手続については、ICSID、投資紛争解決国際センター、あるいはUNCITRAL、国連国際商取引法委員会であるとか、その規則に従うということになっていますけれども、これらの条約、ICSID条約であるとか、あるいは外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約というのは、ICSID条約が締約国百四十四カ国によって、そしてニューヨーク条約は百五十カ国によって批准されているんですよ。いわば国際スタンダードなわけですね。日本は、これらの条約をもう半世紀以上にわたり批准して使っているわけでございます。

 先ほどお話にもありましたけれども、アメリカが特異だというふうに言われておりますが、実は、チェコとの国際仲裁において、日系企業がこの仲裁判断をやって勝っております。日本もそれなりのエクスパティーズがあるということでございます。

 そうだとすると、鈴木先生、ISDS条項は、国際投資協定については、多国間であろうと、あるいは先進国が相手であろうが発展途上国が相手であろうが、通常置かれる当たり前の条項と考えてよろしいんでしょうか。

鈴木参考人 通常置かれる当たり前の条項でございますけれども、通常置かれていましたBIT条項をめぐって解釈的に蓄積されてまいりました仲裁先例、いわゆるジュリスプルーデンスの発展を取り入れて最新のものにしております。

山下委員 ありがとうございました。

 ISDS条項に従えば、例えば、国際仲裁手続は三人の仲裁人によって行われるということでございます。そして、投資家と投資先国が各一名ずつ選び、残り一名は、両者が合意する者か、合意できない場合はICSIDの手続によるということでございますかね。

 先生は、日本政府が指名するICSIDの仲裁人の候補もされておられて、実情をよく御存じだと思うんですよ。そういった実情を御存じのところからして、こういった仲裁人による判断がアメリカに有利なんだ、あるいは大企業に有利なんだということはお考えでしょうか。

鈴木参考人 仲裁人につきましては、私、まだICSID自体の仲裁廷に関与したことはございません。まだ候補の段階にとどまっておりますが、ほかの事件で仲裁をした経験、あるいはICSID仲裁人のそれぞれの方々の書いておられる意見などを拝見しますと、やはり仲裁人は制度としての仲裁手続の正当性を求めて活動しておられると思います。

 したがいまして、決して自分を選定した一当事者あるいは自分の思い込みによって判断をするのではなくて、何らかの形で、先ほど申しましたジュリスプルーデンスと申しましょうか、普遍的な法的なものを求めて解決に当たっておられるというふうに思います。

 その意味では、裁判官が判断される裁判と、仲裁廷に選ばれました仲裁人がされる判断について、違いはないと思います。

山下委員 ありがとうございました。

 ところで、先日陳述された鈴木宣弘参考人は、陳述で、アメリカの企業が水銀を垂れ流すような設備で日本で操業しようとしたら、当然日本は規制をする、それに対してアメリカの企業は、それによって生じるアメリカの企業の損害を賠償しろと国際法廷に訴えて、損害賠償させられ、そのルールも取り壊されてしまうという、起こるはずもないようなことが起こるのがISDSだと述べられております。

 鈴木先生に改めて伺いたいんですが、本当にこんなことが起きるんでしょうか。

鈴木参考人 事実関係がかなり抽象化されておりますので、正しい答えになるかわかりませんが、ISDSが使える事態というのは限られております。先ほど申しましたように、内国民待遇、あるいは最恵国待遇、あるいは最低保障原則違反、あるいは収用、そのような場合に限られます。

 水銀の垂れ流しが規制されるとした場合には、恐らく、公衆衛生という正当な目的のために、日本の場合ですと、それにふさわしい形での手続を必ず経て行われるはずです。ですので、そのような事態が、仮に訴えられたとしても、問題はないと思います。

山下委員 鈴木参考人がおっしゃるとおり、そもそもTPP協定では、環境、健康等の正当な目的のために必要かつ合理的な規制を行うことは妨げられないと、投資章のA節でございますが、されています。

 水銀を垂れ流すような設備に対する規制は、日本の法人であっても当然規制されるわけです。だから、それは当然規制すると鈴木宣弘参考人は言っているわけですから、ということは、内国法人に適用される環境規制を適用しても、ISDS条項について損害賠償させられることはないというわけであります。

 そして、鈴木参考人がおっしゃったように、ISDS条項は損害賠償を求めるものであって、ルールの変更を直接求めるものではないということでございました。

 恐らく、先般陳述された鈴木宣弘参考人は、NAFTAで廃棄物処理施設が問題になったメタルクラッド対メキシコ事件というのを参考にされたのかなとちょっと素人ながら思いますけれども、その事案は、有害廃棄物処理施設について、国と州、連邦が、これは建てられますよ、市の許可は関係ないですよと太鼓判を押しておきながら、市の反対があったということで、結局、住民運動があって、それでだめになってしまった。そして、自然保護区域に指定して、結局、間接収用のようなことになってしまった。そういうことで賠償が認められた事案だというふうに私は理解しております。やはり事案について正確に検討する必要があるんですよ。そのことを申し上げたいと思います。

 この件に関しては、京大の浜本教授が日経新聞におきまして、現実の投資仲裁事例で、投資受け入れ国による公益措置が正当な目的で適正な手続に従ってなされたにもかかわらず損害賠償が命じられたことは皆無である、これまで、公益措置であるのに損害賠償が命じられた事例はことごとく、表向きは公益措置でありながら実際の意図は外国企業差別など別のところにあったことが証明された事例か、措置決定プロセスに不透明、不適切な点があった事例だというふうに述べておられるんですが、鈴木参考人はどのようにお考えでしょうか。

鈴木参考人 浜本教授は、投資協定におきましては最高に勉強しておられる方でありまして、その御説のとおりだと思いますが、一つ補足させていただきますと、先ほど私述べましたように、恐らく問題になりましたのはFETの義務ではないか、公正衡平待遇義務違反という問題が考えられます。

 そのときに定式化されております言葉では、非常に重要なのは、やはりその行為が恣意的であるかどうか、あるいは大幅な不公正、あるいは不正義、あるいは差別的、偏見であるかどうか、あとは裁判拒否の問題ですけれども、そのような場合に限られております。

 そのとおりだと思います。

山下委員 ありがとうございました。

 ISDS条項については、今お話があったように、国際投資協定ではもう国際スタンダードだということがわかりました。特に、TPP協定においては、濫訴防止にも配慮されている。だからこそ、これまで消極的だったオーストラリアも受け入れているというふうに私は理解しております。

 それでは次に、知的財産権の章について、土肥参考人に伺いたいと思います。

 土肥参考人は保護期間の延長についてお話がありましたが、今度は、著作権の非親告罪化について伺いたいと思います。

 TPP協定に定める著作権の非親告罪化について、日本の漫画文化を支えておりましたいわゆるコミケ文化について、二次利用が処罰されるのではないかと不安視する声がございました。この点について、土肥先生のお立場をお願いいたします。

土肥参考人 御質問ありがとうございました。

 御指摘の点は、いろいろなメディアを通じてつとに御心配いただいておるところでございますけれども、今回の著作権法の改正におきましては、この点を極めて慎重に検討してまいりました。

 特に、コミケ、コミックマーケットというんでしょうか、こういう分野における若い方々の創作、こういう点には十分配慮すべく、法案の中におきましては、有償著作物で原作のまま、そういう規定を設けておりますけれども、コミックマーケットにおける創作者の方々は、ベースになる原著作物に新たな創作を加えて、いわゆる二次創作をなさっておられます。

 したがいまして、コミックマーケットの分野の方々が有償著作物を原作のままで公開されるというようなことはないものというふうに考えておりますので、この原作のままでという部分によりまして、若い方々のコミックマーケットにおける創作活動には影響はないものというふうに考えております。

 また、あわせて、今回の改正では、著作権者の利益を不当に害さないというようなことも入れておりますので、したがいまして、権利者の方々は、この分野についてはいわゆる暗黙の了解をされているんだろうと思いますけれども、そういう権利者の利益を不当に害さないというところで、必ず権利者には問い合わせが入ってくるもの、このように考えております。

 以上でございます。

山下委員 ありがとうございます。

 コミケファンの皆様、御安心いただきたいと思います。原作のまま要件というのが入っております。ということで、今の御答弁を聞いて非常に安心されたと思います。

 次に、福井参考人の御指摘、本当に福井先生にはいろいろと御指導いただいているところでございますけれども、権利処理の円滑化の問題、あるいはビッグデータ時代にどうするかの問題、これは、TPPに加盟するかどうかにかかわらず、やはり、我が国の著作権法をどうするかについて、大変これから取り組まざるを得ないところだと思います。

 そういったことで、本来ちょっと質問したかったんですけれども、ぜひ、この点についても、私、知的財産権の調査会の事務局長をやっておりますので、しっかりやらせていただくということでお約束させていただきたいと思います。

 そして、岩月参考人にちょっとお伺いしたいんです。

 ISDS条項について憲法上の問題があるようなお話をされておりましたけれども、既に日本が締結したISDS条項を含む投資協定は二十三本あります。そして、経済連携協定は十本あります。さらに、半世紀ほど前に締結したICSID条約やニューヨーク条約がございます。これらについても、岩月参考人の立場では、やはり憲法上の疑義があるというお立場でしょうか。

岩月参考人 御指摘の協定等は、大半が途上国との間のものであって、今まで憲法違反の問題が顕在化しなかったというふうに理解しています。したがって、潜在的違憲状態にあるというのが私の考え方です。

山下委員 潜在的違憲状態かということについては、私も法律家の端くれでございますが、ちょっと見解を異にするということで、これまで日本がやってきた二十三本の投資協定、EPAが潜在的違憲状態だというのは、若干私は同意しかねる部分がございます。実は、それらの協定、EPAには野党の皆様の賛成も得ておるわけでございますから、そういったことを考えると、やはりちょっとどうかということは申し上げたいと思います。

 ただ、先生の見解は、やはり法曹の先輩として非常に私も尊重しておりますので、今後とも御指導いただきたいと思っております。

 なお、私、このTPPに関して、最後に日本の農業につきまして申し上げますと、二〇一三年、これはFAOの統計でございますが、日本の農業生産額は第九位なんです。日本は、農業生産額については世界の農業大国なんです。TPP参加国中では二位なんです。米国に次ぐ立場にあります。ところが、日本の農産物や食品の輸出額は、何と七十一位なんです。TPP参加国中、農産物、食品の輸出額は、何と十一位、ブルネイの上なんです。

 この状況をどうすべきかというのが私はTPPの審議についても問われておると思いますし、また、それに関して、ISDS手続、あるいは著作権や知的財産権についてもしっかり担保されているということを今回の参考人の御質疑の中で確認できたということを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 時間が限られておりますので、早速質問させていただきたいと思います。

 まず、著作権問題についてですけれども、土肥参考人は、文化的資源として不利益を解消していくんだと。ですけれども、福井参考人の話を伺っておりますと、著作権の保護期間を延ばしたけれども、遺族のメリットはそんなにないし、ほとんどが孤児著作物、あるいは、わからなくなっちゃう迷い子著作物というのがあるんだそうですね、そうなっていると。

 それから、アメリカは非常に訴訟社会だということで、それを反映して、みんな大体アメリカの言うとおりになっている部分が多いわけですけれども、非親告罪化しているわけですね。著作権者がそんなの大したことないやと思っているのを、第三者、ほかの人たちが罪だといって訴える。これはやはり日本の社会には圧倒的に合わない仕組みだと思うんですが、この点についていかがでしょうかということです。

 次に、福井参考人ですけれども、ちょっと触れられなかったんですが、アメリカの訴訟社会化、これはISDと関係するのでお伺いしたいんですけれども、あちらには、著作権をもとにもうけようということで、やたらそれを自分の権利として集めまくって、そして訴訟を起こしてもうけるという、コピーライトトロール、根こそぎ持っていく、こういう商売も成立している、みんな知らないで使っているので著作権を侵している、こういうことがあると聞いているんですが、その点について御紹介いただけたらと思います。

土肥参考人 御質問ありがとうございました。

 確かに、著作権保護期間が二十年延びるということにつきましては、影響があるものというふうに思っております。

 問題は、その保護期間を延長するという背後には、今回のTPPというもっと大きな問題がございまして、これによる相対的な利益というものを総合的に考慮いたしますと、市場におけるルールというものはできるだけ統一化していく必要がございますので、保護期間の延長問題というのはやむを得ないことではないかと思っておるところでございます。

 ただ、そこから生ずる不都合、不利益、こういったものはできるだけ解消に努めるということが必要なわけでございまして、それはできるのではないかなというふうに私は思っております。

 先ほど冒頭申し上げたところで申しますと、いわゆるコンテンツマーケットの透明性を確保するために、さまざまな手だて、例えば権利の所在とか著作物の内容を明らかにするような、そういうデータベースを確立すると同時に、いわゆる思い切ったライセンススキームというものを構築して、取引費用をできるだけかけないような形にしていくことによって、本来活用されるべき文化資源というものが、文学作品に限らず、利用されないまま残されているように思いますので、そういうものを大いに活用していきまして、先ほどユーロピアーナというような紹介がございましたけれども、それに匹敵するようなものをつくっていくことでこの著作権の保護期間の延長問題というものをクリアにしていくという努力が必要なのではないか、このように思っているところでございます。

篠原(孝)委員 土肥参考人、非親告罪化についてはいかがでしょうか。

土肥参考人 非親告罪化の問題でございますけれども、これは、現在、著作権の侵害は、親告罪のもとで処理されておるわけでございます。親告罪ということによりまして、いわゆる告訴がなければ公訴されない、そういうことがございますので、問題は、権利者が告訴するのかどうか、ここにかかるわけでございます。

 今般、非親告罪化ということで一部そういう制度を入れましたけれども、これについて、先ほどのことでいいますと、権利者の利益を不当に害さない限りということが入っております。そうすると、こういうことになるのではないかと思っております。

 つまり、明々白々、極めて悪質な海賊版の侵害行為、例えば、大量に、計画的に、意図的に、集中豪雨的にやって逃げるというようなこと、そういう海賊版の侵害行為の場合に、告訴を待っておったのではどうにもならないという事態が想定されますので、こういう部分については迅速に対応できる。けれども、御懸念になるようなものについては、先ほどの、権利者の利益を不当に害するかどうかということがございますので、いわゆる微妙なケースについては、検察官から必ず権利者の意思を確認する、つまり、不当に害されているのかどうかということの確認が当然ございましょうから、御心配になっておられるような問題というのはないのではないか、このように考えております。

福井参考人 御質問ありがとうございました。大変よいポイントであろうというふうに思います。

 TPP関連知財法案のメニューの中には、いわゆる著作権、商標権侵害に対する法定の損害賠償金と一般に言われる制度が導入されておりますが、これは米国では大変著名な制度でありまして、著作権の侵害では、賠償請求できるんですけれども、往々にして幾らにもならないんですね。ほとんどの侵害というのが極めて軽微な賠償額にしかならない。つまり、訴えを起こすと費用倒れを起こしてしまうわけです。なぜならば、我々弁護士はもうちょっと報酬をいただくからです。そんなことがあって、悪く言うと泣き寝入りが起きてしまう。これは確かに対処しなければいけない問題である。

 米国の法定損害賠償制度というのは、その意味でいうと非常に強力なものでありまして、故意に侵害を行った場合は、実損害の証明がなくても、裁判所の裁量によって、最高で一作品について十五万ドル、一千五百万円までの賠償金を命ずることができます。例えば、記事を十個ネットに上げるなんて、日本ではよく新聞記事について見られることでありますけれども、そうすると、最高でその十倍、一億五千万円までの賠償金を命ずることができる。などという大変強力な制度であります。実際にはそれよりはもうちょっと抑えぎみの賠償金を命じたりしますけれども、いずれにしても、賠償金額が高額化し、知財訴訟が頻発する主要な原因の一つであるというふうにも言われているわけです。

 日本でもアメリカ型のものが入ると、いわゆる濫訴や賠償金の高額化といった、それ自体はニュートラルなことであっても、日本の法文化や経済社会には影響の大きい事態が起きるのではないかということも懸念されました。しかし、ここは、日本政府、条約的にいうとぎりぎりかなというぐらいの工夫をされまして、言ってみればスモールパッケージで入れられたわけですね。

 現状は、例えば著作権侵害の場合、その分野で、著作権等の管理事業者、JASRACのような著作権の管理事業者がいる場合に、その使用料規程の金額をいわば実損害にかかわらず請求することができる、こういう内容になったわけですね。そうすると、そんなにべらぼうに高くなるということは基本的にはなかろうと。

 しかし、御質問のようなトロールビジネス、これに対してはちょっと注意が必要だと思います。トロール、パテントトロールという言葉が有名ですけれども、つまり、最初から金銭目的で知的財産権を集めておき、侵害しているかどうかやや怪しいようなものでも、とりあえず、侵害しているだろうということで高額の賠償金請求を行う。こういうモデルですね。

 著作権でも、日本でもちらちら見られるようになってきたというのは、これまたAIネットワーク化で効率をぐんと上げることができるので、こんなことが可能なんです。

 ネット上に画像をたくさん上げておきますね。ちょっとプロがつくったようなイラストです。今どきですから、グーグル等で検索をすると、その画像が上に上がってきますね。ああ、これはいいなと。本当は、これはいいなというだけで使っちゃだめなんですけれども、残念ながら、まだまだそれを使ってしまうユーザーというのは多いわけであります。よくないけれども使っちゃう。そうすると、それは画像一致検索ですぐ見つけ出すことができて、賠償金請求が来るんです。我々は実は、そういう画像、イラストの使用許諾を行っている、いわばストックフォトのようなライセンスを行う会社でした、我々の使用料規程に基づくと無断利用の場合には通常の十倍請求することになっておりますといって、数十万円の請求が来ちゃうわけですね。

 これを半自動化してどんどんどんどん賠償金を求めるというようなことが、実際、それがかなり疑われる特定業者まで出てきている状況なんですけれども、これが今後、AIネットワーク化の進展でさらに自動化して大規模化していくと、こういうふうに、言ってみればわなにかける形で、しかも、もとの使用料規程は非常に高額に規定されているなんということで請求してくるということが今危惧されています。

 そうすると、この法定賠償金制度は、それとの組み合わせだと、確かに悪用することができる。もちろん使用料規程は当然賠償できるんだよねということで、使用料規程を最初から高目にしておく。普通の利用者は真っ当にはとらないけれども、うっかりした人が無断で使っちゃったら、それに対して賠償金を請求するなんということが理論上考えられ、知財本部等でも議論されたところであります。

 よって、こういう法定賠償金が仮に導入されるのであるならば、そうしたダウンサイドを十分抑え込めるようなセーフガードが必要でありましょうし、この点は指摘する価値があろうかと思います。

 長くなりました。

篠原(孝)委員 TPPは大体アメリカが相当リードしていますから、これも多分、アメリカのコンテンツ産業が、例えばウォルト・ディズニーとかアメリカの映画協会が、利益をたくさん得よう、長もちさせようというのでやっているんだろうと思います。これは明らかだと思います。

 ところで、一つだけ伺いたいんです。

 先ほど福井参考人の話を聞いていましたら、IT関係のいろいろあって、ちょっと時代おくれになっている、みんな五年前の要求だと。ああ、そうなのかと思ったんですが、IT関係の皆さんは、今回の著作権についてのこのルールに大体賛成しているんでしょうか。こんなもの古いからだめだ、いろいろな、非親告罪化とか、保護期間の延長とか、延長は多分、古い人たちは望んでいるんだろうけれども、新しい人たちはこれは余りよくないと思っているんでしょうか。その点だけちょっと教えてください。

福井参考人 当然、余り賛成はしませんけれども、私、先ほど、米国議会の著作権局長が部分短縮を提案したのを二年ぐらい前と申し上げたが、正確には三年前、二〇一三年の三月でしたので、訂正させていただきます。

 こうしたことをきっかけにして、米国でも今、著作権リフォームの議論、ずっとヒアリングが続いています。常にシリコンバレーとハリウッドとの対決になります。ですから、基本的には、よりオープンな方にオープンな方に知財制度を動かしていきたい、それが国力、自分たちの企業の収益力につながるというシリコンバレーの要望と、いわば古いコンテンツをより囲い込んでいきたいというハリウッドとの対決になりがちでありますね。こんな事情はあろうと思います。

 それ以上の具体的なロビーイングの内容は存じ上げません。

篠原(孝)委員 鈴木参考人にお伺いしたいと思います。

 ISDは非常に合理的な制度になっているというお考えを承りましたけれども、アメリカが相当推進しているのは、この流れをよく見ますと、関税を引き下げろ、もう関税の勝負は終わったと。終わったので、ルールづくり、ルールをアメリカと同じものにしようと。それで、TPPをその手段にしている。

 もっとひどくて、もっとひどくてというのは、一番ひどいのがISDで、つくったはいいけれども、待っている間に、アメリカ的なルールにしようと言っていたって、なかなかそれは、また改正してやるのは面倒くさい、だから、訴訟を起こして文句を言って、文句というのはちょっと悪いですね、ここはおかしいんじゃないか、こんな仕打ちを受けておかしい、間接収用だ、我々の商売ができないじゃないか、我々の仕事ができないじゃないか、だから直せ、そう言ってくる。そういう延長線上にある非常にいかがわしい仕組みだと私は思っているんです。

 発展途上国との間でもって、裁判制度がきちんとしていないし、何をしでかすかわからないような国に対してはこういうのがあっても仕方がなかったと思いますけれども、オーストラリアが非常に嫌がっているのと同じように、先進国でそんなことがあり得るか、何で我々のところにそんなにクレームをつけるんだと。当然だと思います。

 それで、私が一番心配なのはチリングエフェクトですね。アメリカに変なことを言われるんじゃないか、また、日本国政府に迷惑をかけてはいけないということで、こういう新しい制度を仕組もうと思っていても、こんなことはやめておこうと、真面目な日本の優秀な官僚たちが萎縮してしまう、これが最大の弱点だと思うんですが、法律家のお立場からどのように思われるでしょうか。

 我々はつくる立場です。我々のつくったものにも難癖をつけられて、変えろと言われる、三人の仲裁人の裁定で。これは私はとても承服できないんです。この点についてどのようにお考えになるか。

 それから、岩月参考人に対しては、韓国の事例はわかりました。本家本元のアメリカも、先ほどちらっとおっしゃいましたが、カナダからアメリカ政府が訴えられて、私が得ている情報では、相当これがアメリカでは問題になっていると聞くんですが、この点についての状況が何かおわかりでしたら、教えていただきたいと思います。

 以上です。

鈴木参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 アメリカがこの制度を利用して、自国の政策、あるいは投資家に有利な政策を日本に押しつける、あるいは、そのことが心配で、日本政府が一種の萎縮効果を受けて、政策上の制約を受けるという御懸念だと思います。

 これにつきましては、実は、ISDS自体が、申し立てができる原因を限定しています。先ほど申しましたように、内国民待遇、つまり、日本国民に対して行っているのと同じ規制を外国の企業に行ったとしても、これは内国民待遇に違反しません。

 それから、それ以外に一番重要なのは、先ほど申しました最低待遇保障、その中における公正衡平待遇義務でございます。

 これにつきましても、現在発展しております法理、むしろアメリカも入った仲裁法理でございますけれども、そこでは、先ほども申しましたように、その規制当局が行う規制が、恣意的でない、差別的でない、適正手続に基づいている限りは、そのような違反のそしりを受けないということがほぼ確立しております。

 私は、今、アメリカから見て、日本の政策当局が行っている政策において、このような疑い、恣意的であり、あるいはアメリカ企業に対して差別的であったり、あるいは、それが適正な手続のもとで行われていない、そのような政策は恐らくないのではないかなというふうに思いまして、それほど心配しておりません。

 それからもう一つ、そのような事柄が三人の仲裁人によって定められてしまうということの御懸念でございます。

 確かに、先ほども申しましたように、古く仲裁問題は武力により解決され、その次が、場合によっては外交問題で解決され、そして今回、いわば非政治化されて、仲裁人の法理による理性的な議論によって解決しようというところまでおりてまいりました。そのことによって初めて、外国の投資というものがより発展し、それが受け入れ国の成長にも役に立つという意味でのバランスがとれてまいったと思います。

 そうなりますと、大きく先生方にお決めいただいている条約、あるいは大きく決められている原則、それが実際の事案の中に適用されるかどうか、どのように適用されるかについては、どうしても少数の法律家に依存せざるを得ません。そのようにしていわば司法手続というのは発展してきております。

 ですので、最後の司法手続の段階で三人の仲裁に任せるというのは、これは、この紛争解決制度の維持と、それがフォーラムとして果たす機能を発揮するためには必要なことではないかなというふうに思います。

 御質問ありがとうございます。

岩月参考人 アメリカが久々にカナダの企業から訴えられたケース、百五十億ドル、日本円で一兆五千億円強ぐらいでしょうかのケースがあります。

 これは、昨年十一月に、オバマ大統領が、気候変動を防止するということを実質的な理由として、パイプライン、これは非常に規模が壮大でありまして、カナダからメキシコ湾まで縦断するパイプラインの建設許可を拒絶した。これに対してトランスカナダ社が、実際は、そのパイプラインの計画のほかの部分などは、もう既に着工したり、できたりしている、その状態で今さら気候変動で計画を認めないなんということは許されないということで、百五十億ドルの賠償請求を、二カ月の期間がたってから起こすということがルールになっていますので、ことし一月六日早々に百五十億ドルの賠償請求をした。日本でいうと、例えば、リニアに外国企業が入っていて、何らかの政策変更でリニアをやめようといったときに、将来利益も含めて民間の企業が損害賠償請求をするというような事態が起きました。

 これは、アメリカでは非常に大きく報道されています。その中で、例えば、これまで明らかに自由貿易、FTA推進というふうな立場だったと思われるCNNは、一個人の見解であるとはいえ、ザ・リアル・デインジャー・イン・TPP、TPPの真実の危険というか、本当の危険という記事を掲載したり、この大統領選の中で、ウォーレンという有力な、大統領候補になるのではないかと言われた議員、これはハーバード大学の教授でもありますが、このウォーレン議員などもその事例を取り上げて、ISDというのはアメリカの主権に対しても非常に脅威をもたらしているというような議論が盛んにされていて、ISDに対する反発はアメリカでも高まってきているというふうに私は理解しています。

篠原(孝)委員 質問時間が過ぎておりますが、著作権についてだけ。

 お二人の先生は御存じないと思いますけれども、我々国会は非常に真面目でして、いろいろ午後の資料を出すんですけれども、出典を明らかにせよと非常に厳密にやっておりますことだけをPRいたしまして、終わらせていただきます。

塩谷委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 おはようございます。公明党の中川康洋でございます。

 私も冒頭、三笠宮殿下の御逝去に対し、心から哀悼の意を表します。

 きょうは参考人質疑ということで、先生方、お忙しい中お時間をお割きいただきまして、大変にありがとうございます。

 早速に質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、知的財産関係について、特に著作権について何点かお伺いをしたいと思っております。

 最初に土肥参考人にお伺いをしたいと思いますが、権利者不明著作物等の利用円滑化の方策について、具体的にお伺いをいたします。

 今回の法整備で、保護期間が著作者の死後七十年まで延長されるということになりましたが、権利者不明の孤児著作物等の増加が予想されるなど、著作物等の円滑な利用に一定の影響が生じることは避けられないというふうに私も思っておりますし、これは、土肥参考人、福井参考人も御指摘のとおりだというふうにも思っております。

 その対策として、海外では、例えばEUでは二〇一二年に孤児著作物指令を制定したり、さらには米国でも、一九九八年に保護期間を七十年に延長した際、保護期間の最後の二十年間に当たる著作物については権利制限規定を設けるなどしておりますが、我が国においても、この権利者不明著作物の利用円滑化に向けては、今後何らかの具体的な方策をやはり検討することが必要ではないかというふうに思いますが、先生のお考えをお伺いしたいと思います。

土肥参考人 ただいまの御質問、まさにそのとおりでございます。

 ただ、現在、こういう孤児著作物あるいは権利者不明の著作物について、利用者が利用したい、こういう場合に用意されておりますのは、文化庁長官の裁定制度でございます。

 裁定にかかわる使用料部会というのがございまして、私もかつて少しの間そこに委員として入っておったことがございますけれども、かつては、本当に一年間に数件程度でございまして、しかも、国立国会図書館と受験雑誌の利用者の方ぐらいがこの制度を利用しておいでになりました。

 それがその後、さまざまな著作物とか、利用者の方もかなり広がってまいりまして、この文化庁長官の裁定制度というのは、これまで利用してきて非常に結構な制度なんですけれども、若干重たいのではないか。

 つまり、例えば千円の著作物を利用するというときに文化庁長官の裁定制度を利用するということは、規定の上では一応相当な努力をする必要があることになっておりますので、そういうようなものをしていただく。これはかなり軽減されてはおります。しかし、千円の著作物を利用する場合については、もっとライセンススキームを大幅に見直して、そこで、例えば取引費用を非常に軽減した形で適正に利用していただくような、そういった方向を、先生がおっしゃったように米国や欧州はやっております。

 先ほど申し上げた我が国の著作権分科会の小委の中にはこういったこともぼつぼつ出てきておりますけれども、集中してこの議論をやるというふうにはまだ至っておりません。至っておりませんけれども、私は、そう遠からずこの問題には入っていかなければならないんだろうと思っております。そのときにぜひ御協力をいただきたい、このように思っています。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 次に、同じく土肥参考人に、いわゆる戦時加算についてもう少し具体的にお伺いをしたいんですが、この戦時加算については、過去にも撤廃を求める動きがありまして、今回の交渉の中でもさまざまな議論があったというふうに伺っております。私は、今回の議論の中で、ある程度の成果はあったというふうに見ることはできるんですが、しかし、この戦時加算解消の結論まで得たというふうにはまだ考え切ることができません。

 この戦時加算解消に向けての先生の改めてのお考えとか、例えば今後の見通し、こういったところについて御見解があればお教え願いたいというふうに思います。

土肥参考人 ありがとうございます。

 私、今回の戦時加算問題の解消についてはかなり期待をしております。

 といいますのは、これと同じようなことがかつて特許でございまして、利用発明の特許庁長官の裁定実施の制度がございますけれども、このときも、アメリカの商務長官と駐米大使との間で、日本はその制度を使わないというようなことを合意いたしました。

 しかし、この場合は個々の企業が単位になるわけでございまして、個々の企業がその制度を利用したいというふうに思ったときに、裁判所がそのことを聞いてくれるかどうかという問題があるわけです。

 しかし、戦時加算問題の場合は、個々の権利者というよりも権利管理団体同士の話になってくるのがまずございますので、いわゆる個々の権利者よりも、先ほど出てきたような権利管理団体の名前を出しますとJASRACとか、そういうものに相当する外国の権利管理団体との間でこのベースに基づいて話し合いが行われますと、いわゆる使用料をその分相殺してやればいいだけのことでございますので、これはかなり進むのではないかなというふうに期待をしておるところでございます。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

中川(康)委員 私も、この問題はやはり前に進めるべきだというふうに思っております。

 次に、著作権侵害罪の非親告罪化について、もうこれは既に何件か意見が出ておりますが、同じく土肥参考人にお伺いしたいと思います。

 今回のTPPにおけるこの非親告罪の規定については、当初、我が国では、アニメや漫画の二次創作への影響が出るのではないか、こういった心配が非常にされているところでございました。

 しかし、大筋合意後の平成二十七年十一月に開催された政府の知的財産戦略本部会合では、総理から、制度整備に当たり、特に著作権に関して二次創作が萎縮しないような留意をする旨の発言があったのとともに、総合的なTPP関連政策大綱にも、非親告罪の対象範囲を適切に限定する旨が記載されております。

 さらには、小委員会の報告書、また今回の改正案においても三つの要件を付しておりまして、この要件により、今後、我が国においては、海賊版対策、これは、取り締まるべきものは対策として取り締まる、これが確保され、そして、アニメや漫画の二次創作、これは守られた、このようなバランスがしっかりととれた内容になったというふうに私は理解をしておるんですが、先生の御見解をお伺いしたいと思います。

土肥参考人 ありがとうございます。

 私もそのように承知をしております。

 著作権の世界でいいますと、二次利用、翻案というのは、基本的には原著作物の本質的特徴部分が二次利用された作品の中に認められるわけでございまして、これは、厳密に言うと、やはり権利侵害という可能性が高くなってくるだろうと思います。

 しかし、なぜこれが許されているかといいますと、原著作物の著作者の方が黙認されておる、つまり、こういうものは大切なことであるということで、ある意味、法的に言うと、ライセンスをお与えになっているということなんだと思います。

 したがいまして、この中で、例えば突然、検察官によって公訴されるというようなことがないようにということで、今回、先生がおっしゃった三要件、有償著作物で、原作のまま、権利者の利益を不当に害さない、こういうことを入れております。

 一つは、有償著作物でない、つまり、既にもう絶版等々になっていて、有償で取引されていないようなものについて二次利用される。あるいは、パロディーとか、こういうコミケの作品というのは何らかの新たな創作的な部分が必ず加味されておりますので、こういったことを考えていきますと、突然、非親告罪ということで問題になるということは決してないというふうに私は思っています。

 先生がおっしゃるように、一方において海賊版というのは、非常に計画的に、本当に意図的に、実際に捕まえようとすれば逃げてしまうというようなことがございますので、迅速に対応しなければならぬ、そういう面がございますので、そういう部分と、それからコミケの二次創作のようなものが両立するような形で今回は法案化に努めた結果だ、このように考えております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 ここの部分は当初から非常に心配されたところであるんですが、今先生おっしゃっていただいたように、著作者がこれまである程度黙認をしているところの範囲だった、これはある意味のライセンスでもあったんだと。これはやはり、日本の寛容の文化というか、寛容の世界というんでしょうか、そこから人材を育てていくという、これに対して明確な要件が見事付されて、取り締まるものはしっかりと取り締まり、そして守るものは守る、こういったバランスがとれた内容になった。これは私は、非常に高く評価していいのではないかなというふうにも思っております。

 その上で、今回の議論の中で少しお伺いしたいのが、TPPにおける非親告罪化の規定には、最終的に締約国が適用範囲を限定できるとする、いわゆる注一三五が付されております。

 私は、この注一三五こそが、今回の我が国における二次創作を守ることができた大きな根拠になったというふうに考えておりますし、当初、日本が交渉に参加する前のTPP参加国の中では、この著作権侵害罪の非親告罪化を採用していなかった国はベトナムだけでありますので、そういったことを考えると、まさしく今回、日本がTPPに最後に参加する中で新たにこの項目を加えることができた、そういった高い交渉をしたのではないかなというふうにも思っております。

 この日本の交渉過程、そしてこの内容を入れさせた、ここの部分に対しての土肥参考人の見解なり評価があればお聞かせ願いたいと思います。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

土肥参考人 ある意味、特許とか、いわゆる産業財産権の部分については刑事罰が入っていて厳しく取り締まられておったわけでございますけれども、著作権のところは、いわゆる業としての要件がないがゆえに、ここまでこのような形で進んできたわけでございます。

 しかし、諸外国を見てみますと、いわゆる極端な海賊版行為というようなことで、既に極めて被害を出している。そういう国においては、いち早く海賊版に対する対策というものを法制度上とっております。

 そういうことでいいますと、日本は、ここまで来たということからいたしますと、少しおくれたかなとは思いますけれども、早晩こうしたことが必要になってきて、いわゆる阻止的な、団体によるこういう行為とか、あるいは、そうでなくても、適正に処理されるのであればもっともっと労働の職域が確保されるとか、そういうようなことを解決できるところにまた進んでいっておるわけでございまして、非常に結構なことか、このように思っております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 残り時間、ISD条項についてお伺いをしたいと思っております。

 鈴木参考人にお伺いをしますが、まず確認的に。

 我が国が既に締結しているEPAにおいて、そのほとんどにおいてISD条項があるというふうに思います。これはもう従前のとおりでございます。これまでに我が国がそのISD条項に基づいて訴えられたことはないと私は思っていますが、確認的にお教えください。

鈴木参考人 これまで訴えられた例はないと確認いたします。

中川(康)委員 同じく鈴木参考人に続けてお伺いしますが、この訴えられたことはないという事実、これは具体的には何を意味するものと考えられるのか、先生の御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木参考人 ISDS手続では、仲裁の申し立てによって手続が開始します。これまで仲裁申し立てが開始された例はございません。

中川(康)委員 その上で、同じく鈴木参考人に伺います。

 一般論として、これをお伺いする範囲ですけれども、今後、TPPにおいて、日本が、これは何度も説明に出てきていますが、内国民待遇や最恵国待遇といったTPP協定の重要な原則を遵守し、パフォーマンス要求規則などに違反しない法制度を持ち、さらには合理的な規制を行っていれば、たとえ他国の投資家から今後ISD条項により訴えられることがあったとしても、私は、日本が敗訴し、多額の賠償を求められるようなことはまずもってないのではないかというふうに認識をいたしておりますが、先生の御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木参考人 個別の事案によりますので、今、全てについてお答えさせていただけるわけではないんですが、現在、TPPで規定されております条項を遵守する前提であれば、敗訴する可能性はありません。

中川(康)委員 今、鈴木参考人からお話しいただいた件は、あくまでも一般論として、やはり具体的には訴えられた後で個別的に判断されていく問題であるので、今の状況のお話だと思うんですが、例えば内国民待遇とか最恵国待遇といったTPP協定に含まれた重要な原則、これがしっかりと遵守されている。さらには、パフォーマンス要求規則などに違反しない法制度、これは当然、日本はもう既に持っていることは十分あり得ると思います。さらには、合理的な規制を行っている。当然、日本は法治国家ですから、そういった状況にある。

 そうなると、やはり、おそれの部分としてさまざま言われている、また議論のところはあるんですけれども、冷静に、客観的に捉えると、日本は、他国の投資家から訴えることは自由ですので、訴えるなとは言えませんけれども、その訴えられた状況の中でどう仲裁がされるのかという部分においては、私は、過分に心配することはないのかなというふうにも思っておりますので、今先生からこういった御見解をいただいた部分は、これから日本においてもアメリカとのISD条項が生まれるわけですけれども、過分に心配する必要はないのかなというふうに私も理解をしています。

 他方、ここも鈴木参考人にお伺いしたいんですが、これから海外に進出をしようと考える日本の投資家及び企業の側から見た場合、我が国ほどの法制度の安定性を持っていない国に投資を行うのはやはり不安な面もあるのではないかな、これは正直な部分だというふうにも思っております。

 ゆえに、我が国としては、外国市場に進出する投資家を保護するという意味においても、彼ら投資家に安心を与え、そして海外に進出をしていただくという意味において、TPP協定にあるこのISD条項は、私は、非常に有益で、かつ実効性のあるものではないかというふうに思いますが、先生の御見解を賜りたいと思います。

鈴木参考人 このISDS条項のもとになります内国民待遇、あるいは最低保障待遇、その中にあります、恣意的で大幅に不公平、あるいは裁判の拒否になるような不適正な手続、こういうことが投資受け入れ国に存在する場合には、日本の投資家は、その投資受け入れ国を訴えることができます。これがISDS条項の、現在の日本の投資家にとってのメリットであるというふうに思います。

 そして、その条項が存在することによって、必ずしも申し立てに至らなくても、このISDS条項があるがゆえに、なお投資家は現地でもって相手国と交渉をして、みずからの投資を公平公正に行うことができるというふうに考えます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今回のISD条項、さまざまな議論の中で、他国の企業から日本が訴えられて、これがいわゆる主権侵害に当たるのではないかとか、過去の事例から見て、事例もさまざま、これは個別的な判断、先生が従前の説明の中で御報告していただいたとおりあるわけですけれども、多額の賠償を受けるのではないか、こういった懸念があるわけですけれども、私は、日本側がどうなるというよりも、やはり日本の投資家が外国市場に進出する意味において、このISD条項というのは非常に大きな意味があるというか、武器になると言ったら非常に言い過ぎになるかもしれませんが、安心して投資ができる、または企業進出ができる、その後ろ盾になっているのではないかなというふうに思います。

 私は今回、きょう、参考人質疑ということで各先生方からその御見解をいただいたわけですけれども、そのことをこれから海外に進出をしようという企業の皆さんにお知らせすることによって、今後具体的なところを検討していただく、このことが今回のTPP協定においては非常に重要な要素であるというふうにも私は思っておりますので、そのことを最後に確認させていただきまして、参考人の先生方への質問を終わらせていただきます。

 大変に貴重な時間をいただきました。ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 四人の参考人の先生、きょうお時間をとっていただきまして、本当にありがとうございます。私からも改めて感謝を申し上げます。

 早速、四人のお一人お一人に質問をさせていただきます。

 まず、土肥参考人にお伺いいたします。

 著作権の問題については、先ほど福井参考人からもありましたけれども、今、コンテンツ産業としてこのように市場としてもどんどん広がっている状況がある中で、日本は輸入超過、コンテンツの輸入大国となっているところから、支払い負担の問題は確かに存在しているというふうに思います。ですから、これが延長されるということにおいては、そのような作用が起こることは私もあり得ると思うんですね。もちろん、一般に著作権保護ということが重要であることは私たちも理解していますし、大事だと思っています。

 ですので、特に今日、このようにコンテンツ産業が盛んになる中において、そのバランスというのは、権利と産業のはざまでなかなか難しい判断は確かにあるかと思いますが、よく見ておく必要があるかと思います。その点の御見解についてお聞かせいただけますでしょうか。

土肥参考人 御質問ありがとうございます。

 確かに非常に難しいところなんですけれども、使用料の支払い超過というのは、これは主としてソフトウエアですよね。つまり、我々のパソコンの中に入っているソフトウエアを考えてみると、大体、アメリカのソフトウエアメーカーのものが入っておるわけでありまして、こういったようなものにかわるものを産業的に国全体でつくっていくということがなければ、なかなかこの状態は解消しないんだろうと思います。

 しかし、私が若いころ、ゼロックスは永久に不滅である、百年ぐらい先まで大丈夫だというふうに聞いたことがございますけれども、しかし、例えば、先ほど福井参考人が御紹介になった、外国の企業のトップファイブか何かが挙がっておりましたけれども、あの中にはありませんでしたよね。つまり、時代の経過の中でやはりこれも変わり得る。

 日本も、例えば、かつては「千と千尋の神隠し」みたいなものもございましたし、今は「君の名は。」というようなものが大変ヒットしております。つまり、これはまずい、まずいということよりも、この七十年になったことを利用してというか逆手にとって、そういう市場戦略、産業戦略を構築していただきたい、このように考えております。

畠山委員 ありがとうございます。

 そこで、福井参考人にも、似たような角度と、もう一つ、非親告罪化の問題についてお伺いしたいと思います。

 先ほど、福井参考人の資料で、今私が述べたような支払い負担の問題について記載がありました。こういう状況の中で、もちろん、知的財産においては、TPPの協定の議論の中で医療分野をめぐっても広く議論がされてきたところではありますが、そもそも、著作権のあり方と経済、産業とのあり方についてやはり根本的な考え方を据える必要があるのかなと思っています。

 そこで、その点の福井参考人の御見解をお聞かせいただきたいことが一つ。

 もう一つ、非親告罪化については、これはふたをあけてみないとわからないということを福井参考人がさまざまなところでも言われていらっしゃいます。これまでも、いろいろな形でよくも悪くも曖昧な処理をして、裁量に任せられていた部分があったんだろうと思いますが、非親告罪化することによってその裁量がどのような形で厳しくなるのかならないのかということは心配の一つの焦点だろうと思います。

 最後に、整理すべき問題があるとして、法定化にかかわって前倒ししていいのかという問題提起がありました。その関係なども含めて、御見解をお聞かせください。

福井参考人 ありがとうございます。

 いずれも非常に重要な問題であろうかというふうに思います。

 まず、大きなパラダイムの変換の話を冒頭で申し上げました。プラットホーム企業と言われる米国西海岸発の企業が世界の企業の時価総額のトップファイブを占める状況、これは確かに余りに急速に起きたわけであります。そのとき、しばしば、いや、こういうことはまたいずれ変化が起こるであろうということが言われるわけであります。

 ただし、このトップファイブに入っているプラットホーム企業は、フィナンシャル・タイムズ時価総額でのトップテンに入った時期は皆それぞれ数十年前から昨年に至るまでまちまちですが、いずれの企業も、一回入ったら最後、ただの一度たりともトップテンから外れたことはありません。極めて高い上位固定性を示しておりますね。

 これはインターネットのサイトのアクセス数も全く同じであります。もう上位のサイトは全く変更がありません。これはネットワーク効果という、テクノロジーの世界では大変有名な効果に基づくもので、大きくなれば大きくなるほど、そのこと自体が価値であるというテクノロジーの特質によります。

 よって、そう簡単に上位の変更は起きないかもしれない中で、我々はかなり真剣に対応を考えなければいけない。言ってみれば、それどころじゃないよという話がたくさんほかにある中で、このことの重要性は高いだろうというふうに思います。

 そうしたときに、二番目の問題点として輸入超過の話がありました。

 これは、確かにソフトウエアが項目として一番高いことは事実なんですが、我々はデータに基づいて議論すべきだと思うんですね。

 米国商務省が内訳を発表しております。それによるならば、オーディオビジュアルを初めとした文化的コンテンツだけで、日本は、米国一国からの輸出金額は八億八千二百万ドル、これが昨年の数字です。すなわち、九百億円近い輸入額ですね。それに対して輸出額は一億ドル台の前半ぐらいということで、文化的コンテンツ一つとっても極めて大幅な赤字であるということは直視すべきです。

 さて、米国は、ミッキーマウスに代表されるように、あるいはアメコミのヒーローたちに代表されるように、古い作品での輸出が極めて強い国です。ドラキュラ、フランケンシュタイン、こうしたことも挙げられますね。ですから、保護期間の延長は、彼らにとって、いわば著作権使用料の収入増加に大幅に寄与するでしょう。

 日本です。アニメ、ゲーム、確かに力強いものがあります。私も非常に心強く感じています。しかし、それらはごく最近の作品ばかりです。保護期間の延長によって海外からの収入はふえません。当面はそんな時期はやってきません。

 我々は、現実に即した話をすべきですね。今後、海外に打って出る、日本は輸出で、コンテンツで稼げる国になるんだとおっしゃるのなら、稼げるような制度をつくろうじゃないですか。それと逆行する制度をつくりながらコンテンツで稼ぐ、これはおかしいことだと私は思います。赤字が固定するような制度をつくりながらコンテンツ立国はできません。

 三番目、非親告罪化。

 確かに、個別で原作のまま利用する、しかし許可がなかなかとりようがないものというのはあるわけです。繰り返しになりますが、企業や研究機関あるいは教育機関での資料のコピーは、現実には許可のとりようのないものもたくさん入ってきているんです。複製権センターのようなところでは許可のとれないものもたくさん入ってくるから、現実に行われておりますね、原作のまま使われています。

 あるいは、解析用のビッグデータの第三者提供。さっき一言触れただけでしたが、恐らく、これが進まないとAIネットワーク化は到底産業振興できません。現行法の解釈上、恐らくこれはできません。四十七条の七というのがあるんですが、解釈上恐らくそこまではできないだろうと考えられている。商用アーカイブや商用オンライン講義もしかりです。これらに対しては、萎縮が進まないような運用が非常に重要になるだろうというふうに思います。

 最後の論点です。いろいろなことが議論できる中で、今それを前倒し立法する理由は果たして何だろうということですね。

 ほかの分野のことは、私は専門外ですからわかりません。しかし、知財に関しては日進月歩だということだけは申し上げられる。将来を見越した議論などはできない。

 非親告罪化の今の議論にしたところで、政府、政治家の皆さんの努力は我々は大いに感謝するが、最初に問題提起したのは我々です。我々が問題提起して、こんなことが大きな問題になってくるよと言って、その声を酌み上げていただいたんです。三年先の状況を読めていないじゃないですか。なら、なぜ今ルールをつくるのか。

 例えば、保護期間の延長に関して、なぜか孤児作品の対策だけすればいいというふうに議論が絞られてしまっていることを感じますけれども、先ほど来データが出ているように、孤児作品は過去の全作品の五〇%にしかすぎません。残りの五〇%は、捜せば権利者が見つかるんです。でも、メガコンテンツについて捜せますか、そのコストを負担できますかという話です。できません。ですから、ギガコンテンツ発信なんかはできないんです。孤児著作物対策だけではこれはできないんです。

 では、保護期間延長に対して本当にダウンサイドをとめるなら何をするか。

 アメリカでローレンス・レッシグという教授がかつて提唱したのは、登録した作品だけ保護期間を延長するというアイデアです。大変合理性のあるアイデアです。これはあと二年あればつくれるじゃないですか。

 長くなりました。こういう議論をぜひ推進派の皆さんとこそしたいなと思ってきょうは参りました。

畠山委員 ありがとうございました。

 ISDSにかかわって、鈴木参考人、岩月参考人、ちょっと時間の関係もありますので、お二人に初めに質問をさせていただきます。

 まず、鈴木参考人にですけれども、ISDSは国民的にもなかなかわからないと言われておりまして、先ほどからあるように、過去に条約で触れられていることではありますが、日本共産党としては、TPPに反対の立場ではありますけれども、やはり中身はこの機会に国民的によく知られておく必要はあると思っております。

 仲裁人が三人ということで、いわゆるそれぞれの当事者国と、合意に基づいて第三人目、合意されない場合は世界銀行などからですか、ということになりますが、法理による解決ということでこの条項がつくられてきた中で、いわば上告ができないような形になっている。つまり一発勝負のような形で裁定されていくという点では、これは、法理に基づいて考えれば、そういう解決すべき問題点はあるのではないかというのは素朴に思います。その点での御見解をお聞かせください。

 そして、岩月参考人にお伺いします。

 私は、間接収用の問題に非常に強い関心を持っています。

 そもそも収用自体は、直接収用が、途上国といいますか植民地支配がされていたときから、独立する際にいろいろ直接に収用される事態があったことに対して対抗するものとして始まったというふうに私は理解しております。

 それに比べて、間接まで収用が広がってきた経過といいますか、そこにやはり今回のISDSとかかわる本質があるのではないかと思います。間接収用をめぐれば濫訴防止の議論ともかかわってくると思いますので、間接収用とISDSの関係について、岩月参考人の御見解をお聞かせください。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 上訴制度がないということが御質問の趣旨であろうかと思います。

 確かに、ISDS、特に、仲裁に基づく判断プロセスにおいて不服申し立て審がないということは、これまでも懸念事項として挙げられてまいりました。いろいろな形でこれを補完しよう、あるいは修正しようという努力はなされておりますが、現在のところ、上訴制度は存在しないまま、通常の仲裁裁判と同じような形で進行しております。

 なお、幾つかの理由がございまして、一つは、上訴制度がないことによって判断の統一がとれないのではないかというのが批判の一つの原因でございました。

 ただ、今回のTPPにおきましては、御承知のように、その条項の中に、TPPの条項の解釈についてはTPP委員会が一定の解釈を示すことができ、それを示した場合には仲裁廷は拘束されるという形になっております。ですから、TPP加盟国の間では、その委員会を活用することによって一定の法的安定性が確保できる道がつくられたというふうに考えます。

 それからもう一つは、確かに個別事案でございますので、抽象的なルールの解釈の統一だけではなくて、個別事案についての上訴といいますか、レビューが必要になるというのが御質問の趣旨だと思います。

 おっしゃるとおりでございますが、このTPPでは、今、現状の仲裁制度を前提にしてつくり上げられておりまして、将来、上訴が設けられる可能性を否定しておりません。

 そして、中の規定では、上訴が構築される場合にはそれに従った検討を行うということが条文上明示されておりまして、将来、上訴制度を置くことについて道も開かれているということでございますが、現状は、今使われておりますICSIDあるいはUNCITRALの仲裁制度と同じ仲裁制度のもとで判断がされるという構造になっております。

 御質問ありがとうございます。

岩月参考人 御質問のとおり、ISD条項は、一九五八年に西ドイツとパキスタンの間で結ばれたものが最も古いとされています。途上国で直接の収用、没収のようなことがされて資産が奪われたときの最終的な救済手段として構想されました。

 それがどのように間接収用を含むように変貌していったかというと、一九九四年に発効したNAFTAで、米国の企業がカナダ、メキシコの環境規制にかかわる措置について相次いで提訴をする。負けたり勝ったりということを繰り返すわけですけれども、そういうことがされた結果、おお、このような場合にも収用と言えるんだと、事後的になっていくような経過をたどっています。

 アメリカの場合は、既に間接収用の法理というのはその前から確立しておりましたので、それが三国に広がっていったというような経過だと思うんですが、そういう次第で間接収用というのが広がっていったということです。

 だから、最終的に国際慣習法というふうな縛りがかかっておるというふうに言われますが、もともとの出自は、多分、アメリカの州と州の間の通商に関する慣習を国際慣習法というふうに呼んでいたんだと私は理解しております。

 以上です。

畠山委員 時間がまだ少しありますので、岩月参考人、もう一言お伺いしてよろしいでしょうか。

 過去のさまざまな事例が先ほど述べられましたけれども、主に一国、とりわけアメリカが勝利することが多くあったというふうな事実を述べられていましたが、一言で言ってその理由というのは何だとお考えですか。

岩月参考人 それはちょっとよくわかりません。訴訟社会で非常に鍛えられているということは、アメリカのローヤーについては言える。

 だから、なぜアメリカ企業だけが勝っているかということはちょっと言いにくいんですが、アメリカ政府が負けない理由だけはよくわかります。アメリカ政府を負かしてしまうと、ISDの本家本元で、ISDが嫌だということが完全に顕在化してしまうからであります。

 ちなみに、日本政府は、これまで投資協定を結んでいたけれども訴えられたことがないじゃないか、非常に公正な扱いをしているから訴えられる心配はないというような御意見がございますが、では、NAFTAのカナダを見てみましょう。三十八件訴えられています。そのうち、アメリカから三十七件、メキシコから一件でございます。カナダは非常に不公正なことをしている。全六十九件のうち、カナダが訴えられたのが三十八件でございます。そのことはちょっと御念頭に置いていただいた方がいいかというふうに思います。

畠山委員 ありがとうございました。

 北海道へ公聴会に行ったときに、知的財産にかかわりまして、陳述者の方から、さらに勉強会がしたいなということを中小企業の方の立場から言われました。

 模倣品対策などは、締約国以外の国で広く起きていることから、TPPにかかわる分野とそうでない分野の区別と整理をした議論が必要ではないですかと私は述べたんですけれども、そのとおりですという御発言で、国会ではまだそういう議論がされていませんので、やる必要があると思っています。

 また、ISDSにかかわっても、鈴木参考人からTPP委員会の性格についても御発言がありまして、これは今後、私も質疑したいと思っているんです。

 TPPは生きた協定と言われる中で、その司令塔や中身、組織の機構のあり方についても十分な議論が必要だと私は思っていますので、きょうの参考人の皆さんの御意見をもとに、さらに審議を深めていきたいということを述べまして、私の質問を終わります。

塩谷委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 私からも、四人の参考人の皆さん方の御参加、心から御礼、感謝を申し上げたいと思います。

 時間がありませんので早速入らせていただきたいと思いますが、知財、特に著作権の話で私が思い起こすのは、オリンピックのエンブレムの問題であります。

 最近、あれの結果はどうなったのかなと。エンブレムは変わりましたけれども、もともとの佐野さんがおつくりになったエンブレム、ベルギーのオリビエ・ドビ氏が訴えた、こういうことですが、結果はどうなったのかな。こういう話は、私も、本当にある意味では忘却のかなたに行っちゃっているんですけれども。

 福井参考人にお尋ねしたいと思います。

 福井参考人はブログの中でこの問題を扱われているというふうに承知をしているわけですが、福井参考人の意見がいいとか悪いとかではなくて、要は、これは本当に著作権に違反するのかそうでないのか、こういう判断が大変難しいですよね。ベルギーの場合は、TPPは関係ありませんけれども、万国著作権条約及びWTO協定ですか、こういった話で扱われているというふうに承知をしているわけですが、この判断をどこでTPPの場合はして、その判断の難しさということに関しては福井参考人はどのようにお感じになっているのか、お尋ねをしたいと思います。

福井参考人 大変深い御質問で、変化球が来たなというふうに思っているところであります。

 おっしゃるとおり、著作権というのは、何せ創作という人間の最も根源的な営みを扱っておりますので、その外縁の広さ、曖昧さ、ここに難しさも、そしてまたおもしろさ、深さも全部凝縮されています。だから我々を引きつけてやまないところがあるわけです。

 例えば、オリビエ・ドビさん、フランスのデザイナーでいらっしゃるが、裁判を起こされたのはベルギーであった。エンブレム騒動は、我々国民の間でもまだ、著作権の基本的な知識、こういうものは決して共有されていない、あるいは価値観が十分共有されていないということを感じさせる事件でした。なぜならば、ほとんどの知的財産権の専門家の間で、あれは著作権侵害ではないという意見が大勢だったからです。

 つまり、ある程度組み合わせが有限な単純なマークについては、類似性というのは厳しく見るのが世界的にも共通の考え方です。そういうものについて、イメージが似ているという程度で侵害にしてしまうと、使えないものばかりになってしまい、かえって文化、経済活動というのは停滞してしまうからです。

 そういう考え方があるにもかかわらず、事態が生じてからわずかほぼ四週間で、国家を挙げたプロジェクトのエンブレムすら撤回を余儀なくされた。なぜか。ネット世論の炎に焼き尽くされたからであります。

 こんなふうな、まだまだ曖昧で、社会の理解というものが変わり続けている、そこにおもしろさもあるし、ダイナミズムもあるけれども、難しさ、リスクもあるのが著作権というものであります。

 よって、我々は、例えば刑事罰ということに対しては謙抑的であるべきだ、こういう考え方が出てきます。外縁の曖昧なものによって処罰されるというようなことがあっては、これは表現の自由にとってももちろん重大でありますし、個人にとってとても安心して活動できる社会ではない。いわば、まさにITネットワーク化社会の活力がそがれてしまいかねないわけです。

 非親告罪化は、そういう点で重大な問題を抱えておりましたし、おります。

 また、法定賠償金という制度も、そういう点において難しい問題を抱えております。

 判断するのは各国の司法当局ということになります。その行為が問題視された各国での司法当局。インターネット、ボーダーレス化の中で、一体どこで裁判を起こされるか、だんだん曖昧になってきておりますが、本来は各国です。

 そこにおいて、非親告罪化、法定賠償金を余り無限定に拡大していかないことが我々の社会にとっても重要であるかなというふうに思います。

 これでお答えになりましたでしょうか。

小沢(鋭)委員 決して変化球でも何でもありませんので、今のお答えで本当に結構かと思います。

 それで、今回のそういう判断は各国の司法の場所で、こういう話になるわけですが、次に質問するISDSみたいに、そういう仲裁裁定みたいな話というのは起こり得なかったんでしょうか。土肥参考人にお尋ねしたいと思います。

 今回の著作権みたいな知財に関しての裁判に関して、TPPの中で、いわゆる仲裁裁定みたいな話というのはあり得なかったんでしょうか。

土肥参考人 仲裁裁定をもって例えば一般的な著作権侵害紛争を解決する、こういうことですか。それは十分あり得ると思います。

 知的財産仲裁センターというようなものもございますので、そういう場所を通じて、一般的に、知的財産権、特に著作権紛争について迅速に、いわゆるコストを余りかけないで解決を図るということは現にございますし、今後さらにそういったことが考えられていく必要があろうかと思っています。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 先ほど来お話が出ているように、TPPは生きている協定ということですから、そういった意味では、そういったことも御勘案をいただければ。我々自身も考えていけばいいのかな、こういうふうに思っています。

 もう一つ、変更過程のところですが、権利保護の期間の話で、これは福井参考人にお尋ねするんですが、いわゆる七十年にして、要は、IT企業あるいはネット企業からは、それはもうちょっと短くというのが基本的な要請である、こういうような話があったというふうに聞かせていただきました。

 ということは、これは、いわゆる見直し規定の中で、まさにアメリカは、ディズニーのように期間を長くしろという企業もある、でも、IT企業のようにもっと短くしろという企業もあり得る、こういう話で、アメリカがかなりこの分野ではリーダーシップをとっているということであれば、私なんかも、これだけ変化のスピードが速い時代はやはり七十年というのは長いんじゃないかなというふうに素人ながら感じるんですね。

 そういったことは今後の見直しの中で日本が提案して変えていける可能性というのはあるんでしょうか。見通しをお聞かせください。

福井参考人 これが、まだ条約が発効する前の再協議という御趣旨であるならば、それは十分あり得ると思います。

 先ほどのように、登録した作品だけを延長しようというのは、実は、二〇一三年に米国の著作権局長が議会で提案した内容そのものだからです。米国の議会で、登録作品だけを死後五十年以降は保護しようという提案が出ている。よって、そういうことをTPPの中に取り込んでいこうということは、再協議であるならば十分あり得ると思います。

 一方、一回TPPが発効してしまい、国内の保護期間が延びてしまった後ですと、既に死後七十年という保護が与えられて既得権益が生まれておりますので、短縮は非常に難しい。

 つまり、これは大変に不可逆的な制度変更なんです。ほかのものであるならば、トライ・アンド・エラーで大いに結構なんです。裁定制度にしても何にしても、それはできるんです。しかし、保護期間は、トライ・アンド・エラーは非常に難しい。そのこともあって、慎重な議論が必要なんだろうというふうに思います。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 時間もありませんので、ISDSの話に移らせていただきたいと思います。

 先ほども話題に出ておりましたけれども、このISDS、日本が外に出ていくに当たっては、ある意味では大変有効だというのが私の判断なんです。

 私の友人の中で海外投資をしている人間がいるんですけれども、その人間と話をしていたときに、特定の国は申し上げませんが、共産国というのはころころ法律が変わるから、そういう意味ではカントリーリスクが大きいんだよね、こういう話があって、そういうカントリーリスクという言葉が私の頭に残っているんです。カントリーリスクというのは、紛争だとかそういった問題もあろうかと思いますが、そういった法的な問題も確かにあるな、こう思っているんです。

 このISDSの条項というのは、そういったカントリーリスクを少なくとも法律的な面で減らす要因になっているのではないか、こう思うんですが、これは、鈴木先生と岩月先生、両方にお尋ねしたいと思います。

鈴木参考人 先ほど申しましたように、投資の設立時点、つまり、これから入っていこうという時点、それから、入った後に法制が変わるなどして投資が阻害されてしまう、二つの場面があると思います。

 恐らく先生が一番御懸念いただいているのは、投資をした時点と、それから投資をした後の時点で法制が変わってしまったということで被害を受けないか、そのことによって、予見がなかなか難しくて、日本側からの投資をためらう原因にならないかということだと思います。

 これは、先ほど来私ちょっと御説明させていただきましたが、一つは、内国民待遇といいますか、現地法制が外国企業と内国人を区別した形でつくられた場合は、このISDSによって、投資協定によって許されないことになっております。さらに、相手国の法制が恣意的で、あるいは差別的で、あるいは適正手続に基づかない場合、これも許されないことになっております。

 これまで、概括的な表現になっておりますけれども、この外枠で投資家が保護されているということは、私は十分なされていると思います。

岩月参考人 TPPのISD条項について言うと、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、アメリカということになります。投資保護のためにISDを使う必要があるのかといえば、私は、アメリカについてはあるだろうと思うんです。

 というのは、例えば、トヨタ自動車が大方五千億円ぐらい急発進の問題で賠償させられているわけですけれども、後で電子制御系には異常がなかったと。だから、かなりの部分がぬれぎぬなので、そういう問題についてはISDがあった方がいいかな。途上国はもう既にISDはあるわけですから、アメリカが対象で考えた方がいいと思うんです。

 ただし、アメリカ政府に勝った例はまだない。NAFTAの例でいえば十七件出ていますが、カナダが、十件、結果が出たもの全て敗訴、途中で取り下げたのが三件というような惨めな負け方をしている。

 だから、TPPに関してISD条項を設けてすることが一方的に逆な結果をもたらすのではないかということを私は大変懸念しております。

 あと、途上国については、私自身は、自分が嫌なことは相手にもしない方がいいんだというふうに考えておりますけれども、戦略的に必要だという考え方はあるかと思います。

 ただし、投資仲裁の代理人費用はばか高いです。韓国政府がまとめた政府側の代理人の仲裁費用は平均で一億円から二億円ぐらいはかかりますので、中小零細企業が使えるようなものではないだろうというふうに思います。

 以上です。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 岩月先生も、米国に関しては有効かもしれない、こういう御指摘がありました。これの根拠というか、よく言われる話は、アメリカは訴訟社会だし、それでビジネスモデルができているから、アメリカのビジネスモデルに従って今回のTPPの中でもこれが入ったんですよね、こう言われていて、そして、アメリカからの訴訟に日本は勝てない、ある意味ではこういう意見があるわけですね。

 岩月先生も先ほど、互角に戦っていけるのか、こういうお話があったやに思います。その互角に戦っていけるのかという話は、米国をある意味では念頭に置いているのかもしれません。

 ここは鈴木先生にお尋ねしますが、そういった意味で、今回のこのISDS条項、本当に日本は互角に戦っていけるのか、アメリカに一方的にやられてしまうのではないか、こういう説があります。特に米国の多国籍企業にやられてしまうのではないかという話があって、ついでに、時間もないのでもう一つつけ加えてお尋ねしますが、その中で、例えば、米国の多国籍企業から食品の問題で日本が訴えられて、いわゆる遺伝子組み換え食品なんかも日本はどんどん買わされるようになるんじゃないかとか、こういう話まであるわけですね。そういったことは、私は、特に食品に関しては制度的に違う、こうも思っておりますが、そのあたりについていかがお考えでしょうか。

鈴木参考人 問題は二つあります。

 一つは、食品に関する分野において日本が申し立てを受けるのではないか、そのときに負ける危険にさらされるのではないかということでございますが、これは、むしろ食品の問題というよりは、先ほど申しましたように、食品に関する規制が正当な権限行使に基づいているかどうか、そして差別的でない方法によって行われているかどうかによります。

 ですから、例えば、遺伝子組み換えについてどれだけ規制があるかということは、恐らく日本企業にも同じように適用のある規制の仕方になろうかと思いますので、特段恣意的でもないし差別的でもないということであれば、そのことを理由に申し立てるということはなかなか難しいというふうに思います。

 それで、申し立てられた後の話です。

 恐らく、紛争解決制度というのは、実は申し立てられることが前提になっています。申し立てを初めから禁じているのであれば、紛争解決制度は機能しないわけでございます。紛争解決制度が存在することによって初めて、そこに論争の場があるということで、紛争になる前に解決ができるということがやはりこの制度のメリットだと思います。

 なお、仮にアメリカの大企業が起こしたとしても、二つの点で守られています。

 一つは、なるべく迅速に手続を進めて、もしその訴訟が濫訴であれば、早目に解決してしまう。

 二つ目は、先ほど岩月先生が御指摘になったように、もし多額の弁護士費用あるいは仲裁費用がかかった場合には、これは敗訴者が負担するという形で今回のTPP条項は規定があります。

 ただ、これは現実には、御承知のフィリップ・モリスという大多国籍企業が起こした事件の二つの例が参考になると思います。

 一つはオーストラリアの事件で、これは、先決問題といいますか、管轄がないということでおしまいになっております。

 それから次は、ウルグアイに対して起こしました事件です。これは中まで行きまして、先ほどの、行政の正当な規制権限に該当するから違反ではないと認定をしておりますが、最終的には、国がかかった弁護士費用の大半を申立人に対して負担するよう命じております。

 以上です。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 時間がありますので、ちょっとまた著作権の話に戻らせていただいて、一点お尋ねしたいと思います。

 先ほどからちょっと聞きたいなと思っていたんですが、福井参考人のお話の中で、さっき、著作権を狙って裁判を起こして、それでまた賠償金を取るんだというビジネスモデル的なものがアメリカの社会にはありますね、こういうお話がありました。その説明の中で、例えば新聞記事をだっと出したりする、こういう話があったんですが、それが該当するか該当しないかに関しての結論のコメントがなかったと思うんですね。

 毎朝テレビを見ていれば、当然、朝のテレビの中でばんと、けさの朝刊はとやっていますよね。では、今のお話でいうと、あれは該当するのかしないのか。特に、ウォールストリート・ジャーナルとかニューヨーク・タイムズとかそういった話を今度は日本でどんどんどんどん勝手に我々がネットで交換したり、それをビジネスになるような形でしたら当たるのかどうか。そこの点はちょっと御見解をお尋ねさせてください。

福井参考人 ありがとうございます。

 これは整理に大変いい例を挙げていただいたと思うんですけれども、新聞記事等を無断で上げるのは、当然、著作権侵害を構成するケースが多くなると思います。

 そして、新聞メディアなどは、それを読んで対価をいただくビジネスであります。別に、最初から賠償金を取るためにそれらを上げているのではなくて、読んで対価をいただくのが彼らの正当なビジネスですね。

 よって、それ自体はトロールというような類いのものではなく、行き過ぎた侵害にいかに歯どめをかけていくか、いわば海賊版同然の行為にいかに歯どめをかけていくかという課題になるんだろうというふうに思います。

 よりトロール的なモデルで心配なのは、むしろ、ちょっと釣るような形でコンテンツを出しておいて、そして高額な賠償請求をしかけていくというようなモデルの方が心配ではあるわけです。

 とはいえ、言ってみれば、情報というのは、人々によって語られ、伝播されてこそ価値が上がる。だから、我々自身がそうしたネットワークの特質というのを生かすような法制度が必要である。

 と同時に、コンテンツホルダー、例えば新聞メディアなどにはちゃんと正当な対価が還元されるような仕組みをつくっていかなければいけない。

 これがまさにオープン・クローズ戦略ということであり、これらは時代とともに変わっていくものですから、余り変えられないような制度で縛ってしまうのではなく、時代の変化とともに柔軟にそれを設計していくことが重要であるんだろうなというふうに思います。

 お答えになりましたか。

小沢(鋭)委員 ありがとうございました。

 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

塩谷委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 この際、岸田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。岸田外務大臣。

岸田国務大臣 二十八日の衆議院TPP特別委員会で、玉木委員より、TPP協定第二章附属書二―Dの表題であるタリフエリミネーションを、関税の撤廃でなく、なぜ関税に係る約束と訳していたかとの質問があり、私から、関税に係る約束と訳していることは実態を適切に反映したものである旨答弁させていただきました。

 この点について、その後改めて事実関係を確認した結果、関税に係る約束との訳は適切であることを改めて確認いたしました。

 この点を、その後判明した事実関係とあわせ御説明をさせていただきます。

 御質問にありましたTPP協定第二章附属書二―Dの表題を協定の正文に当たって改めて確認しましたところ、TPP協定の英文では、当該部分は、タリフエリミネーションではなく、タリフコミットメンツでありました。和文においてはタリフコミットメンツを関税に係る約束と訳しているものであり、この訳は適切なものであります。

 一方、玉木委員より御指摘のありました内閣官房のホームページでは、協定の目次部分において、第二章附属書二―Dの表題がタリフエリミネーションとなっておりました。

 これは、このTPP協定はニュージーランドが寄託国でありますが、寄託国であるニュージーランド政府のホームページから引用したものでありましたが、引用いたしましたニュージーランド政府のホームページの記載が不正確でありました。

 また、同日の御質問では、玉木委員から、内閣官房ホームページにおけるジャパン・タリフエリミネーションスケジュールとの記載についても御指摘がありました。

 これもニュージーランド政府のホームページ上の不正確な記載を引用したものであり、TPP協定の英文ではタリフスケジュール・オブ・ジャパンとされており、これを日本国の関税率表と訳したものです。

 政府としましては、直ちに内閣官房ホームページの表記を正しいものに差しかえるとともに、ニュージーランド政府に対して訂正を申し入れたところであります。

 以上のような経緯であり、内閣官房のホームページの話ではありますが、政府の一員として、遺憾に思っております。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、公正取引委員会事務総局審査局長山本佐和子君、厚生労働省健康局長福島靖正君、厚生労働省医薬・生活衛生局長武田俊彦君、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長北島智子君、厚生労働省保険局長鈴木康裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党・無所属の会の赤澤亮正です。

 本日はTPPについて質問いたしますが、本題に入る前に、過去十日間に起きた出来事について触れさせていただきたいと思います。

 先週木曜日、二十七日の三笠宮親王殿下の薨去は、国民が大きな悲しみを共有する出来事でございました。今も国民は喪に服しております。

 加えて、十日前の二十一日朝には、私が心から敬愛をする小坂憲次元文部科学大臣がお亡くなりになりました。

 その同じ日の午後に、私の地元、鳥取県中部で大きな地震がございました。

 私には生涯忘れられない十日間となりました。

 三笠宮親王殿下そして小坂先生のみたまの安らかならんことを心からお祈りし、鳥取県中部地震で被災された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。

 安倍総理には、先週木曜日、二十七日に、官邸で平井鳥取県知事の鳥取県中部地震に関する風評被害対策などの要望をお受けいただきました。本当にありがとうございます。

 その場でも私から申し上げたことですが、国のもろもろの災害対策の制度は、災害全体の規模の大きさに応じて支援の手厚さが決まる仕組みになっています。しかしながら、被災者にとっては、災害全体の規模は関係ありません。お一人お一人にとって、いずれも耐えがたい被害ということであります。だからこそ、できる限り柔軟な制度運用、そして財政支援をお願いしたいと思いますが、安倍総理のお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 まず、今回の鳥取県中部を震源とする地震により被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 私自身、十月二十七日に、鳥取県知事を初め地元の皆様から直接被害の状況と御要望を伺ったところでございます。二十九日には、松本内閣府副大臣を団長とする政府調査団を派遣し、被害の調査や被災自治体との意見交換を行うなど、被災地の状況把握に努めてきたところであります。

 観光に関する風評被害対策については、国内外に向けて正確な情報発信を行うとともに、鳥取の魅力を発信するプロモーションを行うなど、できることは全て行うという精神で取り組んでいきます。

 公共土木、農林水産関係施設の復旧復興については、被災直後から国の職員を派遣し、被害状況の把握を行い、復旧事業への早期の着手を支援するとともに、査定前着工の周知徹底等を進めているところであります。

 住家被害に対しては、鳥取県による支援とともに、災害救助法に基づく応急修理や、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資等の支援スキームにより対応してまいります。

 また、農業被害に対しては、被災した農家の皆様の一日も早い営農再開を支援するため、共済金が早期に支払われるようにするとともに、農林漁業セーフティーネット資金の貸し付け等を行ってまいります。

 あわせて、被災自治体の実情を十分にお伺いいたしまして、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じることにより、その財政運営に支障が生じることがないように取り組んでいきます。

 また、罹災証明書については、その迅速な発行等に資する被災者支援に係るシステムについて、鳥取県に対し、その導入事例に係る情報提供も行ったところであります。

 政府としては、被災地の皆様と手を携えて、必要とされていることを的確に把握し、被災者の皆様が一日も早くもとの生活に戻れるよう、生活やなりわいの改善、復旧に向けて、スピード感を持って全力で取り組んでいく考えでございます。

赤澤委員 総理、ありがとうございました。くれぐれもよろしくお願いをいたします。

 それでは、本題に入ります。

 まず、今国会で政府が承認を求めているTPP協定については、世界銀行が、全体として我が国のGDPを二〇三〇年までに十三・一兆円押し上げる、その押し上げ効果は二・七%だ、TPP参加国の中で最大の効果、恩恵を我が国が享受するとの推計を行っているということを指摘しておきたいと思います。

 この推計は、我が国政府の約十四兆円、プラス二・六%、あるいはピーターソン研究所の実質所得二・五%とほぼ同水準にございます。この点は非常に重要なので、重ねて指摘する価値があると思います。要するに、TPP協定が全体として我が国経済に及ぼす効果がプラスであるという評価が定着をしているということであります。

 パネルの一を出してください。ちょっと、手書きといいますか、手づくり感満載のパネルで申しわけないんですが、TPP関連の政府の取り組みについて言えば、全体としてプラスであるけれども、プラスの影響、そしてマイナスの影響、両方あるわけですが、攻めるところは攻める、プラスの影響は政策総動員で最大化をする、そしてその点について国民の理解を求める、景気は気からでありますから、士気を高揚する、明るい気持ちになっていただくことが重要だと思っております。

 あわせて、マイナスの影響についてはそれを最小化する、政策総動員で取り組む、そして国民の理解を得る、不安の解消をしていくということが大事だと思います。

 私は、このパネルの中で、国民の皆様の理解、これを非常に重要視しております。

 さらにここで申し上げたいのは、TPP協定について、既に国を挙げて準備に入らなければならない段階に来ていると私は思うのであります。

 安倍総理、総理はこれまで、TPP協定の合意形成、その承認のための国会審議に心血を注いでこられました。それ以外にも、地球儀を俯瞰する外交といったことで、本当に国のために全力でこれまで頑張ってこられましたが、その総理にさらにもう一頑張りする時期ですと申し上げるのはまことに恐縮ではあるんですが、国全体がTPP協定が発効してから準備に取りかかるということではいかにもまずいというふうに思うんです。

 本日の質疑では、TPP協定の発効に向けて、国を挙げて準備すべき多くの事柄がある、かつ、相当数の国民がその準備に取りかかっているので国もしっかりと応援をしなければならない、政策を総動員して、国を挙げて最高の準備をしよう、それにより、日本経済を成長させ、国民お一人お一人の所得をしっかりとふやそうということを繰り返し申し上げたいと思っております。

 国民の理解を得る観点からは、特に今月十七日月曜日の当委員会における江藤理事の質疑が非常に重要でございました。

 TPPに係るこれまでの経緯、あるいはそのマイナスの影響を懸念する国民の皆様、特に農林水産業の関係者に与えている不安を解消するために、政府の取り組み、そして安倍総理の農林水産業に関する守っていくかたい決意、そして農林水産業を発展させる熱い思いが明らかにされたことは非常に重要でございます。

 その一端に触れさせていただけば、引用でございますけれども、安倍総理が、当然、その中で、農業は国の基である、この考え方はきっちりと中心に据えなければならない、こう考えておるわけであります。まだまだ不安を持っておられる方がたくさんいらっしゃるのは事実でありまして、その不安を解消していないことは私も総理大臣として申しわけない、こう思っている。これからもしっかりと、私たちの対策がいかに農家にとって有効であるか、大切なものであるかということを説明しながら、不安を解消していくべく汗を流していきたい、こういうことをおっしゃったわけであります。

 安倍総理が御答弁の中で、農家の不安に深い理解を示され、今なお十分にその不安を解消し得ていないことは申しわけない、今後も農家の不安解消のために汗を流していきたい、中山間地域も立ち行くことができるよう農地を維持していきたいとおっしゃった意味は非常に大きいと思います。

 その安倍総理の御答弁をしっかり裏づけるものとして、総合的なTPP関連政策大綱を実現するための予算は、これまでに、農林水産業だけで六千五百七十五億円、それ以外の予算も合わせれば、合計で一兆千九百六億円となっています。安倍総理の答弁はしっかりと予算で裏づけられているということでございます。

 ここで、先週までの当委員会における質疑で気になった部分についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、国民の皆様にとって非常に関心の高い分野、食の安全について質問をいたします。

 先週金曜日、当委員会において、野党の委員が松本食品安全担当大臣に、これだけ遺伝子組み換え食品が多く輸入されているにもかかわらず、遺伝子組み換えの表示を見かけない、なぜ遺伝子組み換えの表示が義務づけられていないものがあるのかと質問をされました。その際、松本大臣から必ずしも明確なお答えがなかったように私には思われたのです。

 本日、再度、松本大臣に同じ質問をお尋ねしたいと考えております。この遺伝子組み換え食品の表示については、国民の皆様も不安に思われた向きがあるかと思うので、しっかり御答弁をいただきたいと思います。

 まず、現在の制度では、遺伝子組み換え食品の中で、八種類の農作物と、それからその加工食品である三十三食品群について、遺伝子組み換えのもの及びこれと不分別のものに対して表示を義務づけております。ただ、食用油やしょうゆなどの一部の加工食品については、現在、表示を義務づけられていません。なぜでしょうか、松本大臣、御説明ください。

松本国務大臣 先生御指摘のとおり、食用油やしょうゆなど義務表示対象となっていない加工食品があることは事実でありますが、国内で流通する遺伝子組み換え農作物や、これらを用いて製造される加工食品の全ては、その安全性が確保されている、これを前提に先生からの御質問に回答させていただきたいと思います。

 遺伝子組み換え表示の義務表示の対象となる加工食品は、遺伝子組み換え農作物を含むものかどうか科学的に検証できることが前提となっております。食用油やしょうゆなどの一部の加工食品については、組み換えられたDNAやそれによって生じたたんぱく質が、加工工程において除去、分解され、最終製品において検出できないことから、表示義務の対象としていないわけでございます。

 しかしながら、現在、表示されていない食用油やしょうゆなどを含め、国内で流通する遺伝子組み換え農作物や、これらを用いて製造される加工食品の全ては、その安全性が確保されております。

 もちろん、我が国においては、分析技術が向上して、現在義務対象となっていないものについて組み換えられたDNA等の検出が可能になった場合は、当該加工食品も新たに義務表示の対象としていきたいと考えております。

 なお、TPP協定は、この義務表示対象の拡大などが、我が国が必要と考える食品表示制度の変更に新たな制約を加えるものではなく、TPP協定上何の問題もございません。

 今後とも、我が国の消費者が食品を選択する権利をしっかり守っていきたいと存じます。

赤澤委員 大変すっきりした答弁をいただいたと思います。

 食品の表示は、食品を選択する際の重要な判断材料であります。消費者が求める情報が適切に表示されることで、安心して食品を購入していただくことができます。ただ、食品表示の制度の実効性あるいは公平性といった観点も大変重要でございます。適切に、公平公正に制度を運用できるかという点も勘案しつつ、松本大臣が、食品安全の総合調整の旗振り役として、食品表示に関し責任とリーダーシップを持って前進していただきたいと思います。

 次に、二十八日の金曜日の審議で、野党の委員から、金額ベースで豚肉の輸入額の八割を占めるタリフラインが関税撤廃になるとの主張がなされました。国内の養豚農家を初め、数字やパネルのビジュアルインパクトもありまして、ショックを受けた方も多かったのではないかと思います。

 そこで、豚肉の関税制度を勉強してみて、私なりの理解や思う部分はありますが、まず山本農水大臣にお伺いをしたいと思います。

 金額ベースで八三%の豚肉について、数字は事実か。それが関税撤廃されたというのは、数字は事実でしょうか。そして、事実であるとした場合、そのタリフラインの関税撤廃は国内養豚業に大きな影響を及ぼすような内容なのかをお尋ねいたします。

山本(有)国務大臣 この豚肉のTPP合意につきましては、我が国には影響はないというように思っております。

 二〇一〇年度にTPP参加国から輸入された豚肉のうち従価税が適用されたものは八三%、これは事実でございます。TPP合意でこの従価税が撤廃されることは事実でございます。また、結論から申し上げると、大きな影響はないというように考えております。

 なぜなら、国産豚肉が競争力を持つ高価格部位に適用されております従価税は四・三%でございまして、比較的低いわけでございます。また、十年という長い期間をかけて撤廃されることで、国内対策が進むというように思っております。

 また、従価税を二・二%に半減させましたこれまでのEPAの発効後の輸入動向を見ましても、輸入解禁地域が段階的にふえたメキシコからこそ輸入が増加しておりますけれども、チリ、豪州からは逆に輸入が減少しております。

 あわせて、関税削減期間に体質強化対策を活用するなどして、さらに国産豚肉の競争力の向上が見込まれるというように思っております。

 したがって、従価税が撤廃されましても、大きな影響はありません。

赤澤委員 山本大臣の御答弁を伺って、私の理解と同じであることが理解できました。実際には野党が主張するような大きな影響はないということが確認できたと思います。

 準備したパネル、これも若干手づくり感満載で申しわけございませんが、これをごらんいただきたいと思います。

 豚肉の交渉結果については、ぎりぎりの交渉をしたわけであります。制度の核心に当たるのは、差額関税制度と分岐点価格、上の二つであります。差額関税制度、実は複雑で、専門家でもなかなか理解に苦労するような制度なのです。

 しかしながら、要すれば、この上の二つで、分岐点価格で輸入した場合に一番関税額が低くなる、そういう仕組みをつくることで、安い豚肉のみが大量に輸入されることを防いでおります。高い肉も必ず安い肉と一緒に入ってくるということであります。そのことが制度の核心ということなんです。これは、本当にぎりぎりの交渉の中で、ここの核心を残せば守り切れるという判断をした上でこういう交渉結果になったものでございます。

 先週、野党の委員は、上から三番目の行の従価税、三角をつけておりますけれども、これを取り上げて論じておられましたけれども、従価税率はもともと四・三%と比較的低い。金額ベースで八割ではあるけれども、過去に二・二%に下げたほかの自由貿易協定でも輸出はふえていないということでありますから、三角印ということであります。従価税率が高いか低いかは本質ではない、その撤廃によって大きな影響が出るものではない、大臣が答弁をされたとおりだと思います。

 そこで、改めて、心配をしている農家のために保険もかけたというお話をさせていただきたいと思うんです。

 十年という削減期間は確保されたものの、従量税や従価税が段階的に引き下げられていくということに対し、国内養豚農家の不安が大きいということで、国内養豚業の体質強化策、万が一価格が下落した場合の備え、万全の国内対策を求めたと思いますが、これも山本大臣に御説明いただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 御指摘の総合的なTPP関連政策大綱に基づき、赤澤委員が御指摘をされておられます、まず畜産クラスター事業を強化いたします。生産コスト削減など体質強化対策を講じるようにしております。次に、豚マルキンを法制化するとともに、補填割合を八割から九割に、国庫負担割合を国一、生産者一から、国三、生産者一にそれぞれ引き上げる等の経営安定対策の充実強化を図りまして、万全の対策を講じるというようにしております。

 交渉により獲得した措置とあわせまして、TPP協定発効後におきましても、国産豚肉が外国産豚肉と競争し、確実に再生産を確保していくことが可能になる、そう考えておるところでございます。

赤澤委員 山本大臣から明快な御答弁をいただきました。

 豚肉は重要な品目でございます。だからこそ、制度全体がどう機能しているかを見きわめて交渉結果を分析するということが必要であります。制度が複雑で難しいのをある意味いいことに、制度の一部分のみを誇張する形で取り上げて、国民の不安をあおるような野党の皆様の主張は、私は不誠実だと思っております。全体を理解していただきたいということをお願いいたします。

 豚肉は、良質なたんぱく質の供給源でございます。国民の日々の食生活を支える重要な食材であります。産出額は六千三百億円を上回り、飼料など関連産業への波及効果も大きい、日本の地域経済にとってなくてはならない産業の一つでございます。政府・与党が、これほど重要な国内の養豚業を壊すなんということをするはずがないということを御理解いただきたいと思います。

 養豚農家の皆様には、政府・与党をぜひ信頼していただきたい、前向きな意欲を持って生産に取り組んでいただきたいと申し上げます。

 ただいま質問した豚肉の交渉結果の評価に絡めて、当委員会におけるこれまでの議論について思うところに少しだけ触れさせていただきます。

 私は、運輸官僚の当時、実は運輸省航空局国際航空課で日米航空交渉の事務的な責任者を経験しました。当時は、今とは比較にならない超大国であった米国と、一国対一国のバイの交渉でございます。時には恫喝のような対応を受けながら、当時、我が国に残された最後の不平等条約と言われていた日米航空協定を平等なものに改定することに成功した交渉チームの一員を務めた結果、外国との交渉についていささかの知識と経験を有しています。

 その私の目から見て、外国との交渉について余りにも無理解な議論が当委員会で行われていると思う点を幾つか指摘したいんです。

 一点目は、自民党の議員が、民主党政権当時はTPPに反対していたのに、今は賛成なのはおかしいという議論です。

 私に言わせれば、これは全くおかしいことではありません。むしろ、交渉の常識にかなっています。

 というのは、外国との交渉に成功するために守るべき原則というのが幾つかあります。

 一番大事なものの一つが、国民からの支持の高い交渉力のある政府から代表チームを送るということです。

 交渉というのは不思議なもので、参加国の代表は皆、もちろん交渉をまとめようとしてテーブルに着きますが、いざとなると、交渉をまとめたい気持ちが強い代表ほど下手な交渉をしやすいということです。言いかえれば、国民から支持率の低い政党はどうしても交渉をまとめたがるため、自分の要求はすぐに取り下げ、相手の要求はすぐに受け入れてしまいます。政権末期にTPP交渉に臨もうとしていた民主党政権は、まさにこれでございます。とても交渉を任せられる状況ではなかったということであります。

 一方で、支持率の高い政府のチームは、必ずしも無理をしてまで交渉をまとめようとは考えません。そのために、余裕を持って交渉に臨み、よい成績をおさめることが期待できるんです。TPP交渉に臨んだ第二次安倍政権が、まさにこれに当たります。支持率の低い民主党政権がTPP交渉に乗り出すことには反対でも、安倍政権ならよかろうという判断は、交渉の常識に照らして極めてまともなものだと私は考えております。

 私も民主党政権がTPP交渉に臨むことは断固反対でしたし、さらに言えば、安倍政権になってからも、衆参両院の農水委員会の決議が行われるまでは、まだTPP交渉に反対をしておりました。

 外国との交渉に成功するために守るべき第二の原則に関係するんですが、要は、ここだけは絶対に譲れない、フォールバックラインという言い方をしますけれども、それをあらかじめ決めずに始めた交渉は、ずるずると思わぬ譲歩を重ねて失敗をするということであります。

 農産品五品目は守り抜くということを決めてから交渉に臨んだことは、交渉の常識に照らして非常に重要な点であります。私がTPP交渉賛成に転じる転機になった出来事でありました。

 守るべき原則、外国との交渉の常識を守って行われた我が国のTPP交渉は、だからこそ、全体として成功をおさめ、参加国の中で一番大きな経済効果の恩恵を受けるのは日本であるということについて、評価が定着をしているわけであります。

 最後に、TPPタリフラインを一つも変更せずに無傷で守られた聖域ゼロだから国会決議違反という類いの形式的批判についても申し上げておきます。

 これも、交渉の現場についての無理解からくる大変残念な議論です。

 交渉というのは不思議なもので、参加国が全て、自国に戻ると成功したと喧伝します。おかしいと思いませんか。

 なぜこのようなことが起こるかといえば、日本が、ぎりぎりここまで大丈夫と考えて、農産品五品目を守れるぎりぎりのラインを提案したときに、他の参加国が、その日本の提案について、しめた、日本が大きな譲歩をしたぞと認識をしたときに、相手国も日本に対して譲歩をし、合意が成立をいたします。美しき誤解といいますか、日本は守れたと思っているけれども、他の参加国は攻め込めると考えて合意が成り立つわけです。

 だからこそ見きわめが肝心で、その見きわめの巧拙によって、参加国の交渉結果について有利、不利が生まれます。

 交渉の結果により最大の成果を得るために、例えば豚肉について、慎重に見きわめ、ぎりぎりここまでは大丈夫という提案を日本が行い、その見きわめに狂いがなければ、実質的に国会決議がうたう除外または再協議は必要ないのでありますから、国会決議は実質的に守られたことになります。国会決議の除外または再協議という文言に拘泥をして、形式的な国会決議違反を批判している野党の皆様がもし交渉に臨んでいたとすれば、決して日本が最大の経済効果の恩恵を受けると評価されるような結果は得られなかったと言えます。

 だからこそ、私は、労を惜しまず、全てのタリフライン一つ一つについてぎりぎりここまでは大丈夫というラインの見きわめを慎重に行って、農産品五品目を実質的に守り抜きつつ、全体として日本が最大の経済効果の恩恵を受けると評価される交渉結果をもたらした日本政府の交渉チームを誇りに思い、たたえたいというふうに考えております。

 次にTPP協定について指摘をしておきたいのは、静かなる有事と言われる問題です。

 この静かなる有事、今話題になっておるのは、人口減少問題ということであります。今から八十四年後の二一〇〇年に日本の人口は今の半分以下になる。これは現在の出生率、死亡率を前提にしたことです。子供、子育てを応援し、出生率を上げる取り組みをして、今から五十年後にも人口一億人程度を維持する。もちろん目指すわけでありますが、なおGDPの大幅な落ち込みを回避するためには、大なり小なり急速に縮小する国内市場にとどまらず、国を挙げて海外に活路を見出さなければならないことは火を見るより明らかだと思います。

 そこで、八十四年後、まだ我々の子や孫は十分生きている、そういう時期でございます。その時期に豊かな日本を残すために、異次元の輸出拡大が必要不可欠であるということについて、石原大臣に伺いたいと思うんです。

 現時点の出生率と死亡率が続けば二一〇〇年に人口が半分以下になるという推計なども鑑み、我々の子や孫の世代に豊かな日本を引き継ぐために、現在の一五%前後の輸出依存度では全く不十分。今後、輸出を大幅にふやし、真に貿易立国を目指さないといけないと考えますけれども、お考えを伺います。

石原国務大臣 赤澤委員の御指摘は、まさに的を射ている御質問だと思います。

 TPPの協定によりまして、自由で公正なルールによる、規模でいうと四割の経済圏がつくられることになります。中小企業の中には、海外に展開したいと考えておりましても、さまざまなリスク、ルールが変わってしまうんじゃないか、新たに課税を強化されるんじゃないか、こういう懸念がありまして海外展開を踏み切れなかったというケースは、日本全国歩きましても多く聞くわけでございます。そんな中、中小・中堅企業についても、オープンな世界へ果敢に飛び出すチャンスというものがもたらされるわけでございます。

 そして、委員が御指摘になりましたように、大企業が、あるいは都会だけではなくて地方も含む日本全体が、貿易投資の国際中核拠点として発展する可能性を秘めているんだと思います。

 実際に調べてみたのでございますが、二〇一五年十二月に行った経済効果分析の結果は、委員も御指摘されておりますように、輸出額が〇・六%伸びる。また、日本の輸出額の三〇%を超えるものが、正確に申しますと三一%でございますけれども、TPP加盟国に向けたものである。輸出第二位が中国、第三位がEU、この中国とEUを二つ足しても三割に満たないわけですから、この経済圏というものがいかに大きいかと考えております。

 そして、昨年十一月に総合的なTPP関連政策大綱を決定させていただきました。これまで豚マルキン等々についての御議論がございました。日本の養豚業をしっかり守っていく。

 あるいは、先ほどお話をさせていただいております中小企業、中堅企業の方々が海外に進出しやすいように、ジェトロが中心になりまして、新輸出大国コンソーシアム、もう既に全国で千九百二十五社の方々の支援を行わせていただいているわけでございます。TPPの政策大綱で日本の農業をしっかり守り、そしてその一方で、もちろんこの中にも、二割の方は農業に関係、農林水産業、加工業に関係する方々も海外に出ていきたいと言っているわけでございますので、政府一丸となりまして、新輸出大国の実現を実施することによって、委員の御懸念、国民の皆さん方の多く抱えるこの少子高齢化社会の問題を克服していくための一助にさせていただければと考えております。

赤澤委員 そこで、実は字が多いのでパネルにはしておりませんけれども、配付資料の中に、政府が作成をした二〇一六年十月の内閣官房TPP政府対策本部、TPPに関するQアンドA全体版というもののQの二を出しています。

 これはちょっと、私は政府として広報が不十分だと思うのは、端的に言えば、「TPP協定で利益を受けるのは輸出関連の大企業だけで、地方の中小企業にはメリットがないのではないですか?」と聞かれて、答えが実は、中小企業の輸出も応援します。要は、輸出しなければTPPのメリットがないかのような、そういう想定問答になっていて不十分だと思います。

 したがって、私は、大企業についても、例えばパナソニックは二万五千社の取引先がある、中小企業は物すごく恩恵を受けます。加えて、中小企業が輸出しても、もちろんその周りに企業がある。しっかりとTPP協定発効後輸出がふえることで、本当に多くの中小企業が、そして働いている方たちが恩恵を受け、国民一人一人の給料が上がっていくということを国民にしっかり理解をしていただきたいと思うんです。

 そこで一つ紹介をしたいのは、パネルの三なんですけれども、RESASと言われるものがあります。地域経済分析システムですね。これは、ぜひ国民の皆さんにも知っていただきたいものなので、きょうはパネルにいたしましたが、政府の公的統計のデータに加えて、一定の条件を満たせば民間のデータも活用できて、しかもそれを十分にもう統計的に処理してあって、見える化がされています。学生の皆様がこれでいい政策をつくって、実際に市町村が採用して実施しているなんという例も出てきている制度です。

 私が思うところ、しっかりこういったRESASなどもつくって、特に、地域中核企業あるいはコネクターハブ企業と呼ばれますが、その地域で仕入れが多くて、なおかつ域外に売り上げをして大いにその地域にお金を持ってきている、そういう企業を応援する。その企業がTPPを通じて輸出をすれば、国内の経済は効率よく一気に改まるというふうに思うんです。

 そういう取り組みを進めるべきだと思いますが、石原大臣のお考えを伺いたいと思います。

石原国務大臣 この点は本当に委員の御指摘のとおり、QアンドAの中にも、輸出、出る企業だけではなくて、関連する、そこにいる企業の皆さん方にもどういう恩恵が生じるのかということをしっかり説明していかなければならないと考えております。

 今のRESASでございますけれども、自治体が輸出を応援すべきコネクターハブ企業、地域において、地域から多くのものを仕入れて地域外に多く販売している企業でございますけれども、こういう企業を効率的、効果的に検討するに当たって非常に有効な見える化のシステムだと私も思っております。

 TPPの効果を最大限に発揮する観点から、また、まち・ひと・しごと創生本部や、「TPPをチャンスに! 中小企業輸出支援ハンドブック」等を作成している中小企業庁などにもしっかりと委員の御指摘を申し伝えさせていただきまして、支援を充実していきたいと考えております。

赤澤委員 冒頭申し上げましたとおり、私は、TPP協定の発効を楽しみにしている国民の皆様や地方公共団体と力を合わせて、TPP協定の発効までの期間を最大限有効に活用して最高の準備をしなければならないというふうに思っております。そうでなければ、国際競争に出おくれるということだと思います。

 安倍政権の目玉政策でありますTPP協定あるいは地方創生の取り組み、その強力なツールであるRESASなどが有機的かつ相乗的に効果を発揮すれば、多くの中小企業が、そしてそこで働く非常に多くの国民がTPPの恩恵を受ける、国民一人一人の所得が向上するということを念頭に、最後に安倍総理に伺います。

 TPPの発効までの期間を最大限有効に活用して、農林水産業や中小企業の生産額を大幅にふやし、国民の所得を増大させ、国民お一人お一人の所得を増大させ、そして国富、国益を最大化するために、官民を挙げて最高の準備をしたいと思います。総理の御決意を伺います。

安倍内閣総理大臣 まさに、このTPPによって、多くの国民が利益を享受できるように、国民生活が豊かになるように、そして、地方がその地方の魅力を生かすことができるように、全力を傾けていく決意でございます。

赤澤委員 終わります。ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。

 本日も、国民の皆様がさらに理解が深まるようにわかりやすい質問に努めてまいりたいと思いますので、総理並びに閣僚の皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず初めに、TPP協定承認に向けた各国とのやりとりについてお伺いをいたします。

 総理や石原大臣は、最近においてもTPP各国首脳との会談や意見交換を精力的に重ねられております。例えば、総理は、九月二十八日に迎賓館においてシンガポールのリー・シェンロン首相と会談をされておりますし、石原大臣に至っては、八月にはニュージーランドのイングリッシュ副首相と、また、九月には、シンガポール、マレーシアの首脳との会談、それと十二日には、ケネディ駐日アメリカ大使を初め、在京TPP各国大使との意見交換を行っております。

 そこで、まず初めに石原大臣に伺いますが、そのときの各国首脳との会談や意見交換では、このTPP協定についてどのようなやりとりや確認がなされたのか、御紹介をいただきたいと思います。

石原国務大臣 総理がバイデン副大統領あるいはシンガポールのリー首相とお話しになられた件は、総理にお聞きいただきたいと思いますが。

 私、今、中川先生が御紹介いただいた方々と話して印象に残りましたのは、TPPの早期発効に向けて各国努力をしようと。そして、今、再協議の話がこの委員会でも再三議論になるわけですけれども、各国の代表が、もちろん、ケネディ駐日米国大使を含めて、再協議は行わない。印象的であったのは、ニュージーランドの担当大臣でございますけれども、向こうの方から、これはもうガラス細工なんだから、我々も乳製品のことで大変貴国と交渉に苦労した、もうこれ以上の再協議は行わないということを、我々が言うのではなくて、外国の方々から言っていただいた。

 そして、今、議論が大分進んでいると思います。いろいろな、多岐にわたってこのTPPの誤解を今同僚の赤澤議員が解いてくださるような御質問があったと思います。

 国民の皆様方の不安を払拭して、そして、外に出ていこうという中小・中堅企業、さらには、そうではない、日本にとどまっても、地域のまちづくり、地方創生という観点から、そういう人たちが恩恵をこうむれるように、そしてまた、日本のリーダーシップというものに対する各国の期待に応えていくように、当委員会での議論がさらに進んでいくこと、また、こういう御質問をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

中川(康)委員 ありがとうございました。非常に丁寧に、具体的な御説明をいただいたと思います。

 ここで改めて総理にお伺いをしたいと思うんですが、今回のTPP協定は、先ほども石原大臣から御紹介いただいた国も含め、参加十二カ国でともに進めてきたものであり、各国首脳も、このTPP協定発効に向けては前向きな強い意向を示しております。

 ゆえに、間違っても今回日本が、例えば今米国で大統領選を行っておりますが、この動向などで、承認手続の歩みを仮にも緩めたり、さらにはちゅうちょしてしまったならば、それは、これまでともに時間をかけ大変な議論を重ねてきたほかの参加国との信頼を大きく損ねてしまうのではないか、私はこのように考えるわけでございます。

 私は、日本がそのようにこれまでともに議論を重ねてきた各国に対して信頼を損ねるような態度は決してとるべきではないというふうにも思いますし、今回のTPPの手続については、この日本こそが参加国の中でリーダーシップを果たし、イニシアチブを発揮するべきである、このように思いますが、総理の御見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 日本が、敗戦の後、荒廃した国土を再建させて、経済の、まさにGDP第二位の国となったのは自由貿易の恩恵を受けてきたからであろう、このように思います。

 戦前は、まさに版図の広さが経済力であったわけでありますが、この版図の多くを失った日本、ドイツが発展した。これは自由貿易以外にはないわけでございます。ほっておけば、保護主義というのは世界に蔓延していくわけであります。この蔓延をしていくかもしれない保護主義の流れを食いとめ、しっかりと自由貿易を維持していく。そして、そのためにも、まさにこのアジア太平洋地域に四割のGDPを有する自由な経済圏をつくっていく。そして、この中で日本が主導してルールをつくってきた。このTPPを日本がまさに率先して実効あらしめていくことが大切であろう、このように思います。

 交渉をともに主導してきた米国も、TPPの発効に向けて努力を続けているのは事実であります。また、大統領選挙において、TPP協定に関するさまざまな声がある中で、現職のオバマ大統領は、自身の任期中にTPP協定の承認が得られるように米議会への強い働きかけを続けているという決意を表明しています。

 また、日本がTPP協定を承認することは、貿易・投資のルールづくりを主導していくという意思を世界に示すことになります。それは、日・EU経済連携協定、またRCEPなど、米国が参加をしていない枠組みの交渉も刺激をし、加速する契機となるわけであります。これに取り残されまいとする機運を米国の中に高めていくことが期待される、このように考えています。

 国会でTPP協定が承認され、そして整備法案が成立をすれば、再交渉はしないとの立法府も含めた我が国の意思が明確に示されることになります。このまま無為に時を過ごせば、むしろ再交渉を求められる事態を引き寄せることにもなりかねない、このように憂慮しているところであります。日本は、受け身で他国の動きを待つのではなくて、国益に合致する道をみずから進んでいくべきだと思います。

 他の署名国も、日本の動きに注目をしております。そして、日本にも期待をしているわけでありまして、九月には、先ほど御紹介いただきましたが、シンガポールのリー・シェンロン首相ともTPP協定の早期発効に向け協力することで一致をしたわけでありますし、マルチの会議の際に、豪州あるいはニュージーランドの首相ともしっかりとTPPの早期発効に向けて協力をしていこうということで一致をしたところであります。また、マレーシアのナジブ首相ともそういう話をしたところでございますが、日本はまさに、リードをしながらこのTPPを早期発効させていくために努力を重ねていきたい、このように考えております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今、総理のこのTPP協定に対する強い意思をお示しいただいたというふうにも思っております。私も、このTPPをてこに、いわゆるRCEP、FTAAPというふうに広がりを持っていく、そしてこの大きな経済圏のうねりを広げていく、そのいわゆる根拠になる、またスタートになるのがTPPであるというふうにも思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、少し具体的なことをお伺いします。農林水産業競争力強化プログラム、これについて農林大臣にお伺いをします。

 このプログラムについては、本年八月に閣議決定されました経済対策においてその策定が明記されておりますが、その中身については、農水省が本年三月にまとめた「農政新時代」の中にある検討の継続項目、これを具体的に行っていくものというふうに考えております。例えば、収入保険制度でありますとか、生産者の所得向上につながるような生産資材の価格形成の見直し、この十二項目が書き込まれるものと認識をいたしております。

 私は、今後あるべき農林水産業の姿において、TPP関連政策大綱が示され、それに関連したTPP関連補正予算が執行される流れの中でこの農林水産業競争プログラムが策定されることは、攻めの農林水産業を実現し、農林水産業の成長産業化を一層進める意味において大変に重要な意味があるというふうに思っておりますが、農林水産大臣にお伺いします。

 このプログラムの現在の検討状況、さらには策定のめどについてお伺いをしたいと思います。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、昨年十一月、総合的なTPP関連政策大綱で、新たな国際環境におきましても生産者が安心して再生産に取り組めますように、「攻めの農林水産業への転換」あるいは「経営安定・安定供給のための備え」というものが定められました。

 特に、体質強化対策につきましては、平成二十七年度補正予算において、攻めの農林水産業への転換に向けた緊急対策として三千百二十二億円を確保しております。また、先日、十月十一日に成立いたしました二十八年度第二次補正予算につきましても、産地の国際競争力強化などの対策として三千四百五十三億円を確保しておるところでございます。

 御指摘の、農業者の所得向上を図るために、農業者の努力によっては解決できない生産資材価格の引き下げや農産物の流通、加工構造の改革、また、土地改良制度の見直し、さらに、原料原産地表示の導入などにつきましても、公明党とも十分な連携をとりながら検討を進めているところでございます。これらの検討結果を踏まえて競争力強化プログラムを年内を目途に取りまとめることとしております。

 競争力強化プログラムによりまして、農業者の所得向上を実現し、次世代を担う生産者が、あしたの農林水産業に夢と希望を持って経営発展に積極的に取り組めるよう努めてまいりたいと存じております。

中川(康)委員 ありがとうございました。その策定のめどについて、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次に、ISDSについてお伺いをしたいと思います。

 投資家と政府間の紛争処理を規定するこのISDSについては、今回、さまざまな懸念の声も聞かれているところでございます。

 しかし、このISDSについては、日本が既に締結しているEPAにおいても、そのほとんどにおいてこの規定がありますが、この制度に基づいて日本がこれまで訴えられたことは、これはございません。

 なぜこれまで訴えられてきた事実がないのか。それは我が国が、例えば、内国民待遇や最恵国待遇といった協定の重要な原則を遵守し、パフォーマンス要求等に違反しない法制度を持つとともに、国内において合理的な規制を既に行ってきているからであります。

 ゆえに、あくまで一般論としてではありますが、今回、このTPP協定においても我が国が前述と同じようなルールを遵守した場合、将来的に、仮に我が国が他国の投資家から訴えられたとしても、私は、日本が敗訴し、多額の賠償を求められるようなことはまずもってないと認識をいたしますが、いかがでしょうか。大臣の御見解を伺います。

石原国務大臣 中川委員が御指摘になりましたこのISDS条項については、これまでも当委員会で懸念を示される方がいましたが、私は、ただいま中川委員の御説明された側に立つ立場でございます。

 と申しますのも、TPP協定の投資章、九章でございますけれども、規定されるISDS手続は、投資受け入れ国が公共の福祉にかかわる正当な目的のために必要かつ合理的な規制措置を差別的でない態様で講ずることを妨げるものではないと明記されております。

 このことはどういうことかと申しますと、投資章の複数の規定において確認されているんですけれども、例えば、投資章の第八条や附属書の九―Bですか、このような態様で行われる我が国の規制措置がISDS手続に基づき提訴されることは考えられませんし、委員の御指摘のとおりでございます、仮に訴えられたとしても、我が国は、今までの過去の例からして、既存協定に基づくISDS手続によって訴えられた事例というものは全くございません。

 私は、むしろ、このISDSの手続が投資家にとりまして、海外の投資先の国におけるビジネスのリスクを軽減できるツール、先ほどもちょっと議論になったんですけれども、税制を変えられる、あるいは新たな情報公開を求められる、こういうことに役に立つのではないか、投資したビジネスを行う上で、言ってみるならば、予見可能性が高まる、そういうことや、法的安定性が向上する、我が国企業の海外展開に重要な制度と認識をしているところでもございます。

 先般も、地方視察の中で中小小売事業者の意見交換をさせていただいたんですけれども、やはりこういう共通のルールができるということは小企業にとっても大変ありがたい、こんなことを話されていたことが印象に残りました。

 ちょっと訂正なんですが、先ほど私、もしかしますと、再交渉と言わないで再協議と言ってしまったかと存ずるんですけれども、再交渉をしないということで各国が合意したということでございます。ちょっと、言い間違いがありましたら、訂正をさせていただきます。

中川(康)委員 時間が迫ってまいりました。最後に、総理にお伺いをいたします。

 総理は、日本の美しい田園風景を守る、こういった発言を今回のTPP発言の中で何度も何度も行われております。私は、大変に重要な言葉だと思いますし、国民の皆さんは、この総理の言葉を聞くたびに、そのような日本の原風景がこれからも本当に残っていくんだろうか、いや、ぜひ残してほしい、大切にしてほしい、こういったふうに思っているのではないでしょうか。

 そこで、総理には、改めてこの機会に、その国民の皆さんの思いにいま一度応える意味で、ぜひ具体的、実質的な言葉として、この日本の原風景に対する強いメッセージを発していただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 ことし、伊勢志摩においてサミットを開催したわけでございますが、私が伊勢志摩に行ったときに、あの美しい入り江、そして豊かな自然を目にしたときに、これが日本の美しさだ、これを世界の人々に知っていただくことは、日本の文化に対する理解も深まるのではないか、こんなように思った次第でございます。

 私の地元も農村地帯でありまして、棚田が広がっているわけでありまして、決してそれは生産性が高いわけではないんですが、文化を守り、自然を守り、環境を守ってきた、伝統を守ってきたのはまさにそうした農村地帯、だからこそ、農は国の基であろう、守るべきものはしっかりと我々は守っていく決意でございます。

中川(康)委員 時間が参りました。

 以上で終わります。大変にありがとうございました。

塩谷委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 民進党の篠原孝でございます。

 冒頭ですけれども、赤澤委員の発言がありましたけれども、私と政治家観がかなり違うなというのをつくづく感じました。政治家というのはどうあるべきか。僕はそんな哲学は余り述べるつもりはありませんけれども、哲学じゃなくて、政党の支持率が高いか内閣の支持率が高いかとかなんとかかんとか言っておられましたけれども、私は、政治家たるもの、これが正しいとかこれがいいことだと思ったら、正しいものは正しい、だめなものはだめ、支持率がどうだろうと、与党だろうと野党だろうと。私なんかずっと終始一貫TPPには大反対しております。これが政治家の姿じゃないかと思います。それでもって有権者が判断して、この次また議員にしておくかどうかとやるというのじゃないかと私は思います。

 ただ、政党に属していますから、首班指名だとか不信任案とか予算とかは当然やりますけれども、あとは自由でいいんじゃないかと思います。

 釈迦に説法ですけれども、議院内閣制の本家のイギリスでは、条約は、政党にかかわりないので、党議拘束なしで、それぞれの議員の価値観でもって賛成、反対を決めるようになっているんです。日本もぜひそれをまねていただきたいと思います。

 それでは、まず一番最初に、審議についての希望というか、申し述べたいと思います。

 これは前の国会の合意事項なんですよ。三人の理事の皆さん、いろいろ考えておられて。

 このTPPの交渉、最初に入るときに保秘義務というのがあって、絶対秘密にするんだといって、かたくなに守っておられる。それはそれでいいことだと思います。それでしたら、この合意事項もぜひかたくなに守っていただきたい。

 守っているところと守っていないところがあるんですが、ちょっと見ていただいて、テレビもちゃんと映してください。

 それで、総理入りの集中審議というのは、きょうの四時間を入れると二十時間もやって、これはなかなか約束を果たしているんですけれども、全然果たしていないのは中央公聴会です。それから、テーマ別の集中審議というのを、きょう午前中、ISDと知的財産権をやりましたけれども、皆さん初めて議論を長く聞かれたんじゃないか、私はあれは一日かけてやるべきものだと思います。集中審議をぜひやらなければいけない。地方公聴会、何回とは書いていないんですけれども、一度、一日、北海道と宮崎でやりましたけれども、地方の声をもっともっと私は聞くべきではないかと思います。

 次のパネルにしてください。

 では、一体、今までどうやって議論してきたのか。これは、一度、同僚の今井議員が同じような表を出しています。

 重要法案、結構ちゃんと議論してきているんですね。安倍政権になってからは、長いのは三番目と四番目、二つありますね。ひょっとして五番目になるか、一番目になるかもしれないんですね、TPP。よく見てください。前国会で六日、今国会で七日。

 そして、今回の内訳、先ほど申し上げましたとおり、一般質疑七時間、集中審議十六時間、総理入りの審議時間の方が長い特殊な委員会は初めてじゃないかと思います。総理もなかなか大変だろうと思いますね。本会議では、総理はよく、残余の部分については関係大臣から答弁させますというふうになっているんですが、逆で、残余の質問につきましても、ちょっと危ういので、私が答弁した方が早いので答弁しますという感じでしていただいているのが見受けられました。

 やはりきちんと議論していただかなくちゃいけない。これを見ていただきたい。

 一番最初のときに、僕はここのところにばあっと書類、冊子、五つの日本文、それから十三冊の英文のを出しました。私は、繰り返しますけれども、相当長い間、霞が関と永田町をぶっ続けでやっていますけれども、こんなに内容が豊富な、バラエティーに富んだ案件はないと思います。それぞれ大事だったと思います。しかし、一番大事なのはこれだと思います。TPPです。内容が豊富過ぎるんです。だから、じっくり議論していただかなくちゃならない。ぜひこれを見てください。全然、均衡を失しているんです。こちらこそ百時間を超えてやらなくちゃいけないと私は思っております。

 その次のパネルを出してください。

 それで、よく見ていただきたいんですけれども、これは私がまた勝手な計算をしたものです。どれだけいろいろな内容が含まれているか、国民の皆さんはよく御存じないんだろうと思います。三十章三十章と言うのは、これだけあるんですよ。

 これは、右側を見ていただきたいんですが、客観的に判断して、一というのは日にちです。医療と保険、日本の医療が崩壊するかもしれない、一日。ISD、これもきょうやりましたけれども、一日。食の安全は相当やっていますけれども、一日やってもいい。見ていってください、環境、こうやってやっていくと、いろいろなものがあるんですよ。

 松本大臣、きょう、今おられませんけれども、食の安全のところで答弁されていました。いかにきちんと審議しなくちゃいけないかというと、我々同僚議員の質問によく答えられなくて、次の日に与党議員から聞かれて、もう一回質問して答えてもらわないとちゃんとわからない。だから、二回やらなくちゃいけないぐらい、それだけ内容が豊富なんですよ。それをよく心得ていただきたいと思うんですね。

 では、関係整備法案。この間の質問、テレビ中継ではありませんでしたけれども、農林水産大臣に一体何本の法案を担当されているんですかと。ぱっと出てこられなかった。なぜかというと、法案の審議、ほとんどしていないんです。

 松本大臣も食の安全で来ていただいていますけれども、実は違って、四番目のところの公取法、この改正もあるんですよ。公取と事業者の合意による解釈、確認の手続の効果、これらがややこしいから、二、三度答弁してもらわないとわからないんじゃないかと私は思いますよ。

 これをよく見ていただきたいんです。これでいくと、法案、〇・三というのは、半日、午前二時間半ぐらいということですよ、一日七時間の審議として。これは客観的にやっています。著作権のこと、特許のこと、まだ全然議論していないんですよね。これだけ多くあるんです。それで十二・六日必要なんじゃないかな。それで、先ほどの十三日ですけれども、そこに十二・六日足してやると、堂々一位に躍り出て、ちゃんと議論したということになるんじゃないかと思います。

 なぜそういうことを申し上げているかといいますと、きょう、共同通信の調査と日本経済新聞の調査が、二つ、新聞に出ていました。

 どうなっていたかというと、特に共同通信の方は、六六・五%が、今国会では成立させない、慎重にすべきだと。それから、成立させずというのは一〇・三。合計七六・八%が今国会で採決なんというのはとんでもないと。ただ、日経新聞は違っていまして、同じ調査でもどうしてこうなるのかなというので、今国会承認が三八、それで、共同通信が一七・七となっていますけれども、今国会でぜひという人はそんなに多くないということですよ。これをぜひわきまえていただきたいと思います。

 総理は、すぐ、それは国会でお決めになることだと言われますけれども、前、間違えて、私は立法府の長だと言われたことがある。だから、本音が出ているんじゃないかと思うんですね。

 国会で私が森山理事といろいろ話している、それが竹下委員長と山井委員長のところに行く、それからどこかもう一つ違うところに行くんですね。だから、なかなか決まらない。

 総理、今、赤澤委員も言われましたが、支持率は高いです。前、大宰相になると言ったじゃないですか。ちゃんと、もっと余裕を持ってきちんと議論してもらって、そして正々堂々と決めていこう、そういう指示を出していただけませんでしょうか。これは総理の役割だと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も立法府の一員ではありますが、もちろん、立法府の長ではございません。これは言い間違いでございまして、行政府の長としてここに立っているわけでございまして、委員会において、国会において決められることでありまして、これについて、日程等について私が指示を出すということは、これは僣越な行為でございます。また、三権分立でもございますので、ここはまさに委員会において御判断をいただきたい。

 まさに、篠原委員のような方が専門的に議論を大分深めていただいたと思いますよ。きょう、この後さらに深めていただくことによって大変充実した内容になっていくのではないか、このように期待をしております。

篠原(孝)委員 今の答えを国民の皆さんはどう感じられたんですかね。大半は、森山筆頭と私にお任せいただくというふうに私は理解させていただきたいと思います。

 それで、一番地方の人たちがいっぱい心配しているんですね。中川委員が今、総理のよく言われる、はっと息をのむ美しい田園風景、原風景とおっしゃられましたが、よく聞く言葉です。私もそれは本当に大事だと思います。

 地方公聴会、提案ですけれども、具体的な提案をさせていただきたいと思います。

 地方公聴会、僕は宮崎に行きました。よく来てくれたと。宮崎空港からバスに乗って二時間半ですよ。ですけれども、水田のことを、米のことをこれだけ議論しているんですが、余り水田が中心のところに行っていない。北海道は参りましたけれども、北海道は農業は何でもありますから。

 水田地帯の東北の秋田と、美しい田園風景は総理の人生観に結構影響を与えていると思うんですが、山口県と二つで、もう一回地方公聴会を開くのがいいと思うんですが、行政府の長としてどうお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 山口県で開くというのは、私は山口県ですから、これはありがたい話だなとは思いますが、しかし、それはまさに委員会でお決めいただきたい。秋田県であれ、長野県であれ、東北であれ、山口県であれ、まさに委員会においてお決めいただきたい、このように思う次第でございます。

篠原(孝)委員 では、農業問題に入ります。

 農村が一番心配して、そしてこの審議の状況を見ているんですよ。それで、影響はないないと言っていますが、過去の実績で、ちょっと絵でもってやりましたので、見ていただきたいんです。これからじゃなくて前、閣僚の皆さんや委員の皆さんには数字の入ったのも見ていただきたいと思います。これは視覚に訴えるように絵入りにしてありますけれども、わかりやすい色になっていますか。なっていますね。

 これを見てください。これは、過去、何年に自由化したか、それで現在どうなっているかというもの。大豆だと一九六一年、牛肉は一九九一年とみんな違います。それで、どれだけ減っているか。やはり激しいんです、減り方は。こうなってしまうんです。

 大豆は五八%。菜種は、黄色い色が春の景色から完璧に消えてしまいました。一一%に減っています。牛肉はさすがです。牛のマルキンがあって、これは基幹産業として、消費も伸びているし、バックアップしなくちゃといったら、九一%で済んでいるんです、もう二十五年もたっていますけれどもね。オレンジは壊滅ですよ。まあ、果物だからそれほど自給率に関係ないだろうというのでやっていると、マイナス四六%ですよ。だから、農林水産省はカロリー自給率に加えて金額自給率と言っていますけれども、オレンジに頼っていた人たちはがたがたになっているわけです。米も、これは基幹食料ですからちゃんと守っていますから、八五%。

 ですから、政府がいかにきちんとした政策をとるかどうかで変わってくるんですよ。ですけれども、これを見たら一目瞭然です。関税を下げた、自由化した、大丈夫だ大丈夫だ、影響ないなんて、そういうことはあり得ないんです。これだけ減ってしまうんです。これをぜひ認識していただきたいと思うんです。だから政策をきちんとやらなくちゃいけない。一番いいのは、関税を下げないことが一番いいんですけれどもね。

 それで、これはテレビをごらんの皆さんにはちゃんと見ていただくわけにはいかないんですけれども、皆さんには資料をお配りしてあります。これと同じもので、生産量、今のが今後どうなるかというのを出してみました、十年後。

 物によって違うんですけれども、十一年目とか六年目とか、物によって関税ゼロになるのは違うんです。例えばブドウなどは、生鮮、傷みやすいですから余り外国から来ないというので、だから即時撤廃してもいいんだというふうになっていますし、貯蔵のきくようなものは十一年目とか十六年目とかあります。

 だけれども、ほっておいたら、やはりここに書いてあるとおり、時間がないので余り詳しく申し上げませんけれども、減っていくんです。そして、農家の所得は減ってしまうんです。それをぜひ承知しておいていただきたいと思うんです。

 農林水産大臣、これを何とかしなくちゃいけないというのは農林水産大臣なんですよ。農林水産大臣が、これは大事だからきちんとしなくちゃいけないということで、きちんと守っていただかなくちゃいけない。

 はっと息をのむ美しい田園風景というと、景色だけ守るみたいな感じになるんですね。そうじゃないんですよ。自給率をちゃんと守っていかなくちゃいけない。食料の安全保障というのは非常に大事なんですよ。どうもその考え方が欠落しているような気がするんですが、農林水産大臣は。この点についていかがお考えでしょうか。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、貨幣経済が拡大し、グローバリズムが進展すれば、当然、自給率というものの概念で守るべきものが出てまいるわけでございます。

 今回、TPP協定のもとでも、意欲ある農林漁業者が安心して経営に取り組み、確実に再生産が可能となるよう、交渉で獲得した措置とあわせまして、総合的なTPP関連政策大綱に基づく国内対策が必要だというように考えております。

 この影響試算の結果を二十六年度の食料自給率に反映しましたところ、食料自給率がどのようになるかという結果が判明いたしました。平成二十六年度と同水準となり、TPPによる影響を大きく受けるものではないというように考えております。

 しかしながら、国内外での国産農産物の消費拡大、あるいは食育の推進、あるいは飼料用米の推進、消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大、優良農地の確保、担い手の育成の推進、こういった各種の施策を総合的、計画的に講ずることによりまして、食料自給率の向上に努めてまいりたいというように考えるところでございます。

篠原(孝)委員 それでは、医療についてちょっとお伺いしたいと思います。

 これは、なぜここで聞くかというと、農業のことばかりにいっぱい時間が費やされているんですけれども、国民皆保険も最初は狙い撃ちにされていたんです。これは守り切ったというふうになっているんですが、やはりここのところが危ういんじゃないかということで、通常国会でもちらっと時間不足の中でやったんですが、塩崎厚労大臣にお伺いしたいと思います。

 ここの表の中の特例市場拡大再算定というもの、これは国民の皆さんはよくおわかりにならないと思いますけれども、ここに丸をつけてあります。一千億円を超えると、いっぱいもうけているんだろうから薬の価格を下げろという非常にいい制度なんですよね。いい制度なんですけれども、ちょっと議論をし出すと、余り答えられないような感じになる。何で一千億以上がもうけているからで、九百億じゃないという、これはすぐ外国から言われたりするんですけれども、こういうのは準備できているんでしょうか。アメリカからすぐ言われると思うんですが。

塩崎国務大臣 御指摘の市場拡大再算定、特に特例、今、丸がついて一千億以上ということでございますけれども、これにつきましては、年間の販売額が一千億円を超えて一千五百億円以下であって、かつ、薬価収載時の予想の年間販売額の一・五倍以上となった医薬品、それから、年間販売額が千五百億円を超えて、かつ、薬価収載時の予想の年間販売額の一・三倍以上となった医薬品を対象としまして、それぞれ薬価を最大二五%から五〇%引き下げる、こういうものでございます。

 市場拡大再算定の特例の要件につきましては、従来、市場拡大再算定が平成十二年からありましたが、これは、年間販売額が百億円を超えて、かつ、薬価収載時の予想年間販売額の十倍以上となった医薬品、あるいは、年間販売額が百五十億円を超えて、かつ、薬価収載時の予想年間販売額の二倍以上となった医薬品であった中で、近年登場した年間販売額が極めて大きい医薬品への対応として、中医協において、過去に収載された新薬の年間予想販売額の分布等のデータに基づいて、日米欧の製薬業界の意見もしっかりヒアリングをして、その上で議論を行って決定をしてきたものでございます。

 これで、TPPになってどうなのかというお話でございましたが、TPP協定では、投資受け入れ国が公共の福祉に係る正当な目的のために必要かつ合理的な措置を講ずることが妨げられないことが投資章の複数の規定で確認をされております。例えば第九章の十六条、健康などの目的のために適当と認められる措置を行うことを妨げられない。

 それから、投資章の一部の規定と異なる措置を将来採用、維持していても協定違反とならない分野を定めた附属書の2というのがございますけれども、我が国は社会事業サービスを留保しております。その対象には、市場拡大再算定の特例なども当然含まれ得るというふうに考えています。

 市場拡大再算定の特例は、当然のことながら、これは国民皆保険を守るという、一番大事な公共福祉を守るということに資するものであり、中医協において外国の製薬業界の意見もしっかり聞きながら導入をしたということでありますので、ISDS条項を御心配される方もおられますけれども、これによって外国の投資家に訴えられることは想定されないと考えているところでございます。

篠原(孝)委員 次の質問まで答えていただきましたけれども、これは国民の皆さん、聞いておられてよくおわかりいただけなかったんじゃないかと思います。こういう高い薬も保険収載、保険の対象医薬になるんです、そのときに一つ議論があるわけですけれども。国が大きくかかわっている。それで値段を決める、価格を決める。

 この一番上のハーボニーというのはC型肝炎治療薬でして、一粒八万円だったんですよ。そういって議論をしていたら、一五年度トップなんですね。ですから、一六年度の四月からは、八万円がたしか五万四千円か五万六千円に下げられているんです。私はなかなかいい制度だと思うんです。

 ギリアド社というのは四番目にもあります。今のところは、はい、そうですかといって守りますけれども、多分、これは、ギリアド社からすれば、自分たちが営業努力をしてこれだけ売り上げを伸ばしたのに、日本国政府が口を挟んで、八万円を何で五万四千円に下げろと言うんだと。アメリカは訴訟社会です。人口比で弁護士が日本の十五倍もいるんです。そういう国が、私はほっておくわけがないと思うんです。

 では、次の、皆さんにお配りをしている表の方を見てください。主な抗がん剤の薬価というのが書いてあります。これは、最近二、三カ月、新聞に出っ放しの高額医薬品があります。一番下のオプジーボです。一カ月当たり三百二十一万と書いてあります。もうウン千万。これも保険対象医薬になってくると、そうするとどうなるかというと、社会保障費がかさむんです。

 いいですか、よく聞いてください。アメリカというのはなかなか巧妙な国です。交渉上手な自民党政権とか言っておられましたけれども、やはりアメリカはそこらじゅうの国とやっていますから上手ですよ、私もいろいろなところに携わってきましたけれども。

 例えば、日本の制度を攻撃するんです、食管制度、不公正だ、けしからぬと。それで米の市場をこじあけた、ミニマムアクセス米、そしてSBS米。ではどうしてできたかというと、アメリカが、そんな、みんな備蓄しておいて、後で飼料や加工品だけというのはだめだ、消費者に渡るようにしろと。もっともな言いぶりです。だから十万トンそうした。

 結果、どうなっているかというと、七十七万トンのミニマムアクセス米の大体半分ぐらいがアメリカになるようになっているんです。SBS米も、わかりませんよ、わかりませんけれども、調整金などの調整とかマークアップというのは、アメリカに有利なように働いたりする。

 つまり、どういうことかというと、アメリカはさんざん日本の制度をたたきますけれども、たたいているうちに、これはなかなかよくできた制度だなと気がつくんです。そうすると、今度、その制度を悪用しようと考えるんです。なかなかしたたかだと思います。

 もう皆さん御存じなのでは郵政です。郵政民営化しろ、民営化しろとさんざっぱら言っていた。国が金融をやり保険をやるのはけしからぬ、民間企業と同じ競争条件にしろと。した途端、アフラックが、郵便局二万四千のうちの二万局ぐらいで自分の生命保険を売れと言って、日本の制度を、そのまま乗っかって、乗っ取っているわけです。

 同じことがこの薬価について言えるんじゃないかと思うんです。さんざん国民皆保険を攻撃したけれども、やはりこれの方がいいと。オバマ政権、オバマさんの一期目、オバマ・ケアというのをやったって、あれは民間の保険です。サンダース上院議員は、日本型の保険を導入すべきだと言って、クリントン候補のライバルになっていったんです。

 ですから、気がついているんですよ、日本の保険制度はなかなかいい制度だと。では、自己負担が三分の一あるけれども、三分の二は医療保険から出してもらえる、こんないい制度はないというので、しばらく日本の医療保険制度を維持して、日本政府にちゃんと高い薬価を払ってもらう。

 だから、厚生労働大臣もお気づきでしょうけれども、僕は何回も行きました、閣僚会合についていきました。アメリカからは薬品メーカーのロビイストが来ますし、ここら辺の皆さん御存じだと思います、薬品の業界のロビイストが日本にしょっちゅういますよ。それで、アメリカの薬品会社の社長が来ると、大パーティーをその近くで開いています。皆さんにも招待状が来る。そういう図式になっているんです。

 日本の制度でもうけて、直接、国民皆保険は標的にされていませんけれども、これだけ、日本の高額の薬品もそうですけれども、これをみんな保険対象にしてやっていったら、保険はパンクする。だから、医療関係者もこれを心配し始めている。私は、真っ先にISDでこの仕組みを攻撃してくる、この特例市場拡大再算定、これをやってくると思っているんです。これはまた別途審議したいと思います。

 それで、時間がなくなりましたが、最後、総理にお伺いしたいと思います。

 総理は、地球儀俯瞰外交とおっしゃってきた。それでちゃんとやっているんだ、だからアメリカに対してもきちんとリーダーシップを発揮していると。しかし、地球儀俯瞰外交と言いつつ、パリ協定については余り俯瞰されていなかったので、何かほかの国がみんな入って、発効するのを見誤っているわけです。それで、わかりません、岸田外務大臣は、核兵器禁止条約の二〇一七年からの交渉開始の決議案、苦しい弁明をされていましたが、しかし、一般常識からすれば、唯一の被爆国はそれを推進していくべきじゃないかと言っている。唯一の被爆国として核保有国と非核保有国の橋渡しをする、日本はそうしていくべきだと思いますよ。

 総理にちょっとお伺いします。

 アメリカは正横綱です。さっきどなたかが、超大国じゃなくなったけれども大国だと。まあ、東の正横綱だと思いますが。日本は、世界の各国の中では、大相撲に例えればどのあたりの位置に属すると思われますか。

安倍内閣総理大臣 日本がどの辺かというのはなかなか難しいところなんですが、GDPでは第三位でございますし、と同時に、国連における貢献率も大変高い。分担金も米国に次ぐもので国連の活動を支えているわけでございますから、当然、最後、三役が土俵入りする一員ではあろう、このように思っております。

篠原(孝)委員 客観的に見て、GDP三位だと。そうしたら、大関ぐらいにはランクされて当然だろうと思いますね。

 私は、アメリカとの関係、大事じゃないとは言いません。しかし、横綱の土俵入りのときに太刀持ちがいますよね。私は、安保法制で太刀持ちの役割を日本は演じるようになったのではないかと。先頭に立って行きませんけれども、アメリカと一緒にやっていく、危険なことですけれどもね。

 ですけれども、どうも見ていると、アジアインフラ投資銀行もアメリカと一緒に入らなかった、TPPで中国を引き入れるんだとか、これを全部符合していくと、露払いも日本は務めているんじゃないかと思えてくるんです。だって、先に日本が行ってやりますよと。僕は、これはやはりよくないんじゃないかと思います。やはり日本は主体的に行くべきだと思います。

 前も申し上げましたけれども、総理は、日本が最初に入ればアメリカがついてくる、アメリカにそれを促すんだと。しかし、そういうことを言っている国は、先ほど出ましたシンガポールもオーストラリアもニュージーランドも、では、率先して承認したり、まあ、承認をする必要がない国もあるんですけれども、国内法を率先して整備しているか。みんな常識で、東の正横綱のアメリカの様子を見ているのが現実的な姿ですよ。日本がそんなに急いで行く必要がない。

 重ねて申し上げます。

 オバマ大統領のことを盛んに気にされていますけれども、後に控えている二人の大統領候補はやらないと言っているんです。そちらにも敬意を表すべきだし、私は、現実的にそちらの方に視点を置いて外交をやっていくのが大関国家の日本の役割じゃないかと思います。

 以上、申し述べまして、質問を終わらせていただきます。

塩谷委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民進党の近藤洋介です。

 早速質問に入ります。

 まず最初に、安倍内閣総理大臣に伺います。

 先週の週末、土曜日だと思うのですが、共同通信が、特だねだと思われるのですが、あるニュースを配信しております。私の地元の山形新聞でも、土曜日付の一面の頭記事で大きく報じられました。内容は、北方領土に関連しての記事なのですが、日本政府が、返還後の北方領土に関して、日米安全保障条約の適用の対象外とする案を検討したと関係筋が明らかにしたという特報でございました。

 安全保障条約は、御案内のとおり、日本の施政権の及ぶ地域での米国軍の活動を認めておるわけでありますが、米軍の活動を警戒するロシア政府に配慮することで北方領土交渉を進展させる狙いがあるとその記事は報じております。

 これが事実だとすれば大変大きなこと、方針だろう、こういうことであるわけでありますけれども、まず総理、こうしたことを検討されているのかどうか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 そのような事実は一切ございません。

近藤(洋)委員 検討されている事実もないということでお答えになられた、うなずかれているので、そのように受けとめます。

 では、続いて伺います。

 これは仮定の話でございます。手続の話を確認したいと思いますので、総理でも外務大臣でも結構でございます。

 返還後の北方領土を仮に日米安全保障条約の適用の外にする場合、日米安全保障条約を改定する必要があるのか否か。改定しない場合でも、基本的には米国政府の了解が必要となる、当然そうだと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

岸田国務大臣 まず、今、総理からお答えしたように、報道のような事実は全くないということを申し上げた上で、仮定の質問にお答えすることは控えなければなりませんが、いずれにせよ、我が国の施政下にある領域に対しては日米安全保障条約第五条が適用されることになると考えます。

近藤(洋)委員 いずれにしろ、米国政府との話が必要になる、こういうことだろうと理解をしたいと思うわけです。

 では、続いて伺います。

 ロシアとの関係で申し上げますと、いろいろな報道が最近相続いているんですが、こちらの方は、テレビをごらんの皆様にはちょっと資料が見られないのであれなんですけれども、委員の皆様には資料配付をしております。

 財務大臣にお伺いします。

 国際協力銀行、JBICが、ロシア最大の銀行ズベルバンクに、単独融資、円建てで四十億円を実行したとの報道がございます。配付をしている資料の七ページ目でございます。これは日本経済新聞の一面記事であります。ここだけではなくてほかの新聞も、もう既に実行したといった記事も出ておりますが、これは事実ですか。財務大臣、お答えください。

麻生国務大臣 報道は承知しております。

 加えて、本案件は、JBICが七月だったかに既に実行していると思っておりますので、融資実行済みのものだと理解をしております。

近藤(洋)委員 では、単独融資を実行していると。

 国際協力銀行というのは政府の金融機関であります。本来ならば民間と共同して融資をするのが本筋なのですが、単独で融資をするというのは、これは極めて異例の行動であります。大変なロシアへの協力、こういうことであろうかと思いますが、こうしたロシアに対する見方が厳しい中で日ロ関係の経済協力を深めていこうという政府の動きの一環だろう、こういうことだろうと思います。

 これに限らず、政府は、ロシアとの関係を強化すべく、経産大臣もきょうお見えでありますけれども、経済産業省関連の法案では、JOGMEC、資源を開発する政府機関の法案を先ほど衆議院で提案し、可決しておりますけれども、政府機関が出資できるという形で法案を改正いたしました。こちらの方も、与党の皆さん方への資料には、出資対象としてロシアの資源会社への出資も検討といった資料を経済産業省は提出しているようであります。

 いずれにしろ、これからの外交の季節、外交日程をにらんで、十二月の日ロの首脳会談に向けてさまざまな動きがございます。配付をさせていただいている資料の六ページ目に、主な外交日程を書かせていただいております。

 ここからちょっとTPPに関連をして、総理にまたお伺いをしたいと思います。

 先ほど来質問が出ておりますけれども、十一月八日は米国大統領選挙の投票日でございます。パネルにもあるとおりであります。同じ日に、米国議会の上院議員三分の一、そして下院議員全員の選挙も行われるわけであります。

 オバマ大統領は、TPP協定の米国における議会の可決、要するに批准に意欲を示している、これは総理も先ほど御答弁されたとおりなわけでありますが、次期大統領候補のヒラリー・クリントン候補及びトランプ候補は否定的である。

 総理はこの場でも、TPP協定について、日本が先に批准することで米国を含めた各国を後押ししたいといった趣旨の発言をされております。その趣旨は、現実問題、TPP協定が発効するためには日本、米国が批准をしなければ発効しませんから、とどのつまりは米国を後押ししたい、こういうことだろうと思うわけであります。

 その趣旨は、オバマ大統領の残任期間、すなわち、十一月中旬から一カ月程度で行われる米国議会、レームダックセッション、レームダック、まあ、日本語で言うと死に体というか、死んだアヒルというか、死に体議会と言ってもいいのでしょうか、いずれにしろ、レームダック期間で行われるこの議会において批准されることを期待しているということで、総理、よろしいんでしょうか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 いわゆるレームダックセッションにおいて、当然、このTPPの批准について議論がなされるわけでございます。

 その際、我が国において既にTPPが批准されたということになれば、これは後押しになる、批准に向けて後押しになると考えておりますが、もちろん、状況はそう簡単な状況ではないということは十分に承知をしております。

 と同時に、先ほども申し上げましたように、再交渉を防ぐ、いわば我々は議会としてももう再交渉はしないという意思にもつながっていく、このように考えているところでございます。

近藤(洋)委員 今総理に率直にお答えをいただきましたけれども、十一月の中旬から、十四日ごろと言われていますけれども、レームダックセッションが開かれる、米国議会が開かれる。この間、一カ月間ぐらいなわけですね。この間に批准をされなければ、次の大統領が一月の二十日に就任式を迎えられますから、現実問題、米国議会で批准されるのは非常に難しい。これはもう多くの人が認めるところです。

 ですから、この一カ月間に批准できるかどうか。先ほど総理に御答弁いただいたように、そこに日本が批准することで環境が整うのではないか、後押しになるのではないか、こうお答えになりました。ということは、おのずと国会日程というのが、与党の方々が急ぐ急ぐと。ちょっと急ぎ過ぎだと私どもは非常に憤っているわけでありますけれども、急いでいるわけですね。

 ただ、これは、現実問題、死に体の議会がこれだけ重要な協定を議論する、現在の米国議会でもTPP反対派が多数を占めているわけでありまして、しかも、選挙を終わった残任期間の議員たちがそんな国家の一大事を決めるなどということが現実的に起こり得るのかというのは、これは極めて非現実的な願望だとしか思えないんですね。

 これは本当に総理が真剣にそう信じ込んでいるとしたら、私はまさか安倍首相がそんなに米国のことを甘く見ているとは思えないわけであります。そんな非現実的な願望を持っているとは思えない、何か違う理由があるんだろう。これは違う理由がどうしてもあるとしか思えないわけですね。

 それは、まさにここ数日間のメディアの報道が明らかにしているわけであります。ロシアですよ。ロシアなんですね。

 ロシアをめぐっては、十二月の十五、十六と言われていますけれども、首脳会談がございます。大きな政治的な判断を迫られるのかもしれません。それは我々はわかりません。しかし、いずれにしろ、ロシアをめぐっては、欧米諸国がシリア情勢をめぐって対立を強めておる国であることは間違いございません。また、米国の民主党に対してサイバー攻撃をロシアが指揮したとして、米国政府が批判をしているわけであります。非常に同盟国のアメリカはロシア包囲網を築いている。そういう中で、唯一日本だけがロシアに急接近をしているわけでありますね、これは。

 まさに、そこのところをぐうっと見渡せば、度を越えた経済協力を、いや、私は経済協力は重要だと思いますよ。しかしながら、こうしたことを前のめりにされているという理由は一体何なんだと考えれば、TPP協定の採決をめぐって、総理が、できもしないと客観的に思えるアメリカの議会の批准に願望をつないで強行する、与党が強行する、しかも、我々の議会で審議が始まる前から強行採決を振りかざしているという異常事態、農林大臣も発言をする異常事態、何でこんなことが起こり得るんだということをひもとけば、この背景には、日ロ首脳会談でロシアに対して接近をしなければいけないことに対して、オバマ政権へのある意味で言いわけとして、オバマ政権が望むTPPを日本が早期に批准することを示すのだ、米国が第一だ、米国がファーストだということを送る外交上のサインではないかと指摘する向きもあるのですが、内閣総理大臣、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 その推測は、これは全く当たっていないと思います。

 米国は日本の同盟国であり、万が一日本が外国の侵略を受けた際に共同防衛する唯一の国と言ってもいいわけでございますから、まさに我が国の安全保障上そして外交上の日米同盟は基軸、基盤である、このように思っております。

 他方、ロシアとの関係においていえば、七十年以上たってもまだ平和条約がないというこの異常な状態に終止符を打つ必要があるわけでございまして、元島民の皆様もだんだん年をとられている中において、我々はこの問題を私たちの世代で解決していきたい、こう考えているわけでございます。

 そして、ロシアとの関係においては、日ロ関係というのは大きな可能性が眠っている関係であるのは事実でございまして、その中において、日本が経済的な関係を深めていくことは、これはロシアのみならず日本にとっても利益になる、裨益する、こう考えているわけでございます。

 もちろん、ウクライナの問題、クリミア半島の問題について、日本は、G7の議長国として、やるべき経済制裁は続けてしっかりと行っているところでございます。

近藤(洋)委員 総理、したがって、これだけ重要なTPPの協定そして法案について、ゆめゆめ日ロ交渉の道具などとして入場料のかわりに使うようなことのないようにお願いをしたい。今の総理の御答弁を信じたいと私は思います、我が国の内閣総理大臣ですから。

 それでは、TPP交渉について伺いたいと思うんです。

 配付させていただいた資料の一枚目をごらんいただければと思うんです。

 総理、私は自由貿易主義者であります。当然です。そのもとで日本が戦後発展してきた、そう信じております。

 我が国の通商交渉の歴史というのは、煎じ詰めれば、米国を相手にした通商交渉の歴史であります。古くは一九七〇年代の佐藤内閣の繊維交渉に始まり、八〇年代からの中曽根内閣、半導体交渉、林産物の個別の市場交渉がスタートして、そして竹下内閣、牛肉・オレンジが決まり、そして日米構造協議、宮沢内閣、橋本、小泉と歴代内閣は続いて、現在のTPP交渉に至るわけであります。

 総理、結果として、この日米の通商交渉というか経済交渉によって、やはり日本は大きな経済的な改革、また社会的な変革を迫られてきたという認識はお持ちですか。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 それは恐らく、近藤委員は、日米構造協議、あるいはまた日米包括経済協議のことも指しておられるんだろう、こう思います。

 この日米構造問題協議について言えば、日本側については貯蓄・投資パターン、流通等、米側については貯蓄・投資パターン、企業の投資活動と生産力等を中心に、双方向で、これは米側も日本に要望を出しますが、日本側も米側に対して今言ったような分野において日本の考え方を示しているわけでございまして、双方向の協議が行われ、この結果、一九九〇年に日米両国がとっていくべき措置に関する最終報告が発表されました。

 また、包括経済協議について言えば、一九九三年に開始された日米包括経済協議では、マクロ政策、政府調達、自動車・自動車部品等について議論が行われ、例えば、自動車・自動車部品では、米国の数値目標の要求を日本側は一貫して拒否をしております。

 そこで、日本の経済の構造にこういう課題があるなと米側が言って、日本がその指摘が正しいと思われた部分については対応してきたということであろう。他方、米側の要求が正しくないということについては、日本はその要求に対してはノーと言っているということではないか、このように思います。

近藤(洋)委員 麻生副総理、せっかく来ていただいているので、麻生副総理にお伺いしたいと思います。

 まさに、総理が今お答えいただいたように、九〇年代、日米の交渉のスタイルはがらっと変わっていくわけです。SII、日米構造協議、そして包括経済協議なわけであります。ここで、今までの物の話から、構造、政府調達や系列といった産業構造にかかわるようなものに幅がぐっと広がっていった。特に規制改革といったものにも広がっていくわけであります。

 バブル全盛のころ、日本の金融機関が米国の土地やビルを買い占めるほど膨張したことを背景に、金融やサービスの市場開放、会計基準の見直しといったルールの見直しも目立つようになってきたわけです。

 私ごとで恐縮ですけれども、今ちょっと齋藤健副大臣の姿も見えたので。

 齋藤健副大臣も当時、たしか経済産業省の米州課の補佐でいらっしゃいましたけれども、私も当時、日経新聞の記者で経産省の担当をしておりましたけれども、そのころ、たしか当時の通産省の通商担当の最高幹部がこんなことをおっしゃっておったんですね。米国の本当の狙いは日本の金融機関の弱体化である、これは注意しないと結構大変なことになるぞと。九〇年代初頭、そんなことをおっしゃっておりました。当時、半導体交渉とか自動車協議とかが華やかなりしころだったんですが、米国政府の狙いは実は日本の金融だ、こういうことを喝破されておりました。

 実際にその後の動きを見ますと、そのことがある意味で、経産省の当時の高官が危惧したとおり、日本の金融界というのは大きく変容を遂げるわけであります。

 副総理、日米の構造協議なり包括的経済協議、金融協議を通じて日本の金融制度が大きな変更を実施した結果として、バブル崩壊後に続いた日本の金融不況が他の先進国と比べて長引いた要因になった、すなわち、対外的な約束が日本の金融政策の、金融というか日本の政策の足かせになった面もあるという指摘もございますけれども、麻生副総理は、経済についても、また中小企業の金融についても、全般にわたって大変お詳しい重要閣僚であられますが、いかがお考えですか。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 日本は、これまでも金融分野の交渉において、基本的な考え方として、まず日本の実情を踏まえたものにする、また実体経済への影響というものも十分考えないと、金融と実体経済というのはかなりずれるところがあります。

 そういった意味では、金融サービスの自由化というものは基本的に促進していくにしても、今言った実体経済への影響に十分配慮すること、そして適正な市場競争というものを確保することなどといったさまざまな観点を踏まえて、日本の国益というものを考えて主張を行ってやってまいりましたので、別に、アメリカの言いなりになったなんという意識は全くないと思っております。

 また、こうした国際交渉の一員として、結果的に今見ますと、銀行などの健全性の基準というのはきちんと構築されておりまして、金融の安定性は、多分、世界の中で最も、一、二を争うぐらい内容はよくなってきていると思っております。

 また、国内はもちろんのことですけれども、外資系も問わずに適正な競争が行われていることも確かだと思っておりますので、金融サービスの提供につながるよう、これはきちんと国民のニーズに応えてきたものをやってきているんだと思っております。

 また、足元の大手の銀行、特に保険等々を見ますと、これは財務面でも国際的に高い水準を維持しておりますし、経済の持続的な成長とか国民生活の向上に向けた取り組みも進めまして、さらに、保険なんかの場合は、海外への進出とか、業務提携とか、買収、MアンドA、いろいろありますけれども、そういった積極的な展開を進めて、日本の金融というものは結果としてその存在感を世界の中で高めていると思っております。

 金融分野の交渉の結果は、日本として、振り返ってみましても、国益にかなう結果が達成できてきているのではないか、さように考えております。

近藤(洋)委員 これは、麻生副総理、本当にそのように思われているんでしょうか。私は、やや見解を異にいたします。

 この行き過ぎた自己資本比率規制、確かに、今を見れば、今の金融機関は一定程度、健全性を保っているでしょう。しかし、それは、バブル崩壊後の失われた十年が、十五年、二十年、二十五年になって何とかこの状態になったのであって、その間、数多くの中小企業が貸し渋り、貸し剥がしに遭って、塗炭の苦しみに遭ってきたという事実も我々は忘れてはいけないわけであって、その背景にさまざまな日米交渉の影があったということは、これは麻生副総理は実はわかっていらっしゃるんだろう、こう思います。それは、答弁はそういうふうな答弁にしかならないんだろうと思いますけれども。

 しかし、私がここで言いたいのは、日米交渉というのは、そういうさまざまなすさまじい駆け引きの中で、まさに経済戦争、自由貿易の枠の中ですよ、しかし、経済戦争とも言えるような厳しい交渉が行われているものなんだ、そして、そのことを我々はTPP協定の議論の中で議論するんだということを申し上げたかったわけであります。

 さて、では、自動車について、石原大臣にもう一度お伺いします。

 自動車でありますけれども、安倍政権が合意したTPP協定によると、日米間では、交渉入りの段階で、資料の五枚目を見ていただければと思うんですが、これは日米間の完成車、三十年以上も日本から米国向けの輸出に関税がかかり続けます。パネルで示しているとおりであります。

 ただ、石原大臣は、前回、私の質問に対して、米国での地産地消が進んでいるから、完成車の関税が二・五%でも大きな問題はない、このように答弁をされました。

 しかし、これは韓国との比較をちょっと見ていただければと思うんですが、ではどうか。これは米韓FTAの合意によって関税がゼロになった結果、この五年間で韓国の米国への輸出は倍増しているんです。倍増です。日本は横ばいですよ。横ばいです。これだけ大きな差がついているというのは事実です。

 百七十万、地産地消が続いているからどうといっても、この百七十万台というのは大きいです。部品は確かに、八割が即時撤廃だから一定の効果はあった。しかし、日本からの部品の輸出額は二・八兆円、完成車の輸出額は四・四兆円、一・六倍です。この一・六倍の完成車、雇用は八十一万人です。

 これだけの分野で韓国に大きなおくれをとったということは大変大きな問題ではないか、私はこのように思うんですが、なぜこのような不利な条件を入り口で受け入れたのか、石原大臣、お答えください。

石原国務大臣 地産地消ということは、北米での自動車売買のうち、四百五十万台等々はつくっているということでお話をさせていただきました。完成車の輸出が百五十万台。そして、やはり、日米自動車摩擦という大きなあつれきを抱えてやってきたわけであります。そのあつれきを乗り越えて、日本の各メーカーが、私もウェストバージニアのトヨタの工場を見てまいりましたけれども、完成車を、乗用車をつくられている。そして、それが主に東部海岸で走っている。

 こういうことを見ましても、企業の側も努力をして現在の体制をつくり、さらに、今、近藤委員の方が自動車の部品の話をされましたが、工業生産品全般にかかる関税も九割が即時撤廃される、国益全般を見てこのような決定になったというふうに御理解をいただきたいと考えております。

近藤(洋)委員 大臣、国益全体を見て私は申し上げているんです。

 この三十年間、プラザ合意以降、日本の自動車は常に輸出品目のナンバーワンなんですよ。三十年間ずっと、完成車輸出は、エースで四番は自動車だったんです。完成車なんですよ、ずっと。これはずっと、プラザ合意以降、数々の構造協議なりを経ても、日本の自動車、完成車メーカーは企業努力でナンバーワンの位置を守り続けてきているんです。

 他方、輸入品でどんどんふえているのは、ここには書いておりませんけれども、皆様方には資料配付しておりますが、牛肉、豚肉は、この十年間、めちゃくちゃふえているんです。めちゃくちゃふえているんですよ。その中で、牛肉、豚肉だけどんと額を下げているんです、関税の額を。

 強い部分のエースで四番に足かせをかけて、攻められるところだけどんどん緩くしている。こうなると、幾ら私の地元の米沢が米沢牛だから強いといっても、大丈夫かとこれは不安になるわけであります。やはりこれは、守るべきは守った、攻めるべきは攻めたと到底言えないということを言うわけです。

 やはり、完成車の分野では不本意な結果になった、また、牛肉、豚肉でも不本意な結果になったと正直に認めるべきだと思いますが、石原大臣、いかがですか。

石原国務大臣 まず、車の方からお話をさせていただくならば、ぜひ近藤委員に、御党を推薦しております自動車労連の方々ともお話をしていただきたいと思います。あるいは、自動車工業会の方々とお話をしていただきたいと思います。

 過去の自動車摩擦というものは大変なものがあった。近藤委員も経済の記者としてそれを見ていらっしゃったと思います。そんな形の中で、実利をとる、二兆八千億の部品の輸出がある、こういうものを通じて、日本の自動車というものが、いながらにして、中小企業が海外に進出しなくても部品を供給し続けることができる。

 こういうもろもろのメリット、額だけで見ないでいただいて、台数だけで見ないでいただいて、全体を見ていただきますと、おのずとこのTPPというものが、自動車業界にとっても、また、農業についても再三再四御議論がございましたけれども、豚、牛肉についてもしっかりとマルキンで守っていく。もちろん、弱いところに対しては手は差し伸べなければならないというのは、自然を相手にする農業の基本的な立場でありますけれども、そういう目で見ていただきますと、今、近藤委員が御開陳された意見と、政府がこれまで御答弁をさせていただいている意見と、どちらが理があるかということは国民の皆様が御判断いただけるものだと確信をしております。

近藤(洋)委員 私は、十分、経営者の方も、組合の方も、中小企業の方とも意見交換してこの場に立っておりますので、大臣、御心配は御無用でございます。

 大臣、事実はしっかり認めていただきたい。

 その上で、もうきょうは時間がないのでこの次に譲りますけれども、米国はしたたかです。貿易促進法で日本をことしの四月に為替の監視リストに加えております。しかも、TPPで、マクロ政策について、為替問題についてもしっかり触れているわけであります。米国はしたたかです。だけれども、米国とつき合わなければいけません。

 そういう非常にしたたかな米国と、いろいろな仕掛けをしているTPP協定の中身でありますから、しっかりした議論を、日ロ関係と関係ないというのであれば、まだ十一月でも十二月でも、きっちりした議論がこれからも必要だということを申し上げて、時間ですので、きょうは質問を終わります。

塩谷委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民進党の玉木雄一郎です。

 早速、岸田大臣にまずお伺いします。

 冒頭、前回の私の質問に対して、タリフエリミネーションという協定文の訳が関税に係る約束、どう考えてもそれはおかしいんじゃないかといって質問したら、いろいろなお答えをいただきましたけれども、結局、寄託国のニュージーランドのホームページが間違っていたという、私はニュージーランド政府から感謝されるかなと思うんですが、ただ、大丈夫かなと思いました。この点が一点、非常にびっくりしたこと。

 もう一つびっくりしたのは、昨年、現地時間十月五日の大筋合意の後、リーガルスクラブ、各国が法的なチェックをした後で条文が変わった部分があったということがわかったことです。私は、ある意味驚き、衝撃だったのは、十月五日に大筋合意したものが、あれが最終セットだと思ったら、その後いろいろ各国が法的なチェックをしたら条文が具体的に変わっているんですね。

 このことは、与党の先生にも我々野党にも多分一切説明がなかったと思いますが、今回、私が指摘した部分以外に、大筋合意以降、リーガルスクラブの中で条文が変わった部分はほかにありますか。

岸田国務大臣 整理して申し上げますと、まず、正文というのは、ことし二月、署名の段階で確認されているものであります。

 その前の段階で、十月の大筋合意から後、おっしゃるように十二カ国が各国ともリーガルチェック、法的なチェックを行ってきました。そして、二月に間に合う形でチェックを完了した。そこで、その部分で正文が確認をされていると考えます。よって、二月の署名までにおいては各国ともそれぞれチェックを行い、そのチェックに基づいて訂正、修正を行ってきたと認識をしております。

玉木委員 違うんです。ニュージーランドのホームページに今も書いていますが、昨年の十月五日に大筋合意した後、いろいろリーガルなチェックをした後、ことしの一月二十六日にアップデートしましたよと書いているところが間違っているんです。だから聞いているんです。

 委員長にお願いしたいのは、大筋合意、我々がこれだと思ってまとまった文章の後、そういったチェックの中で変わったところ、これは役人の皆さんは全部御存じだと思います。一度整理して、この委員会に提出をお願いしたいと思います。

 その差が何なのかをしっかり分析した上で、実は一番大事なところがそこの変わった部分に入っていると私は思います。ですから、それをぜひ提出いただいて、それに基づいて議論したいと思いますので、お取り計らいをよろしくお願いします。

塩谷委員長 わかりました。理事会で協議いたします。(岸田国務大臣「一言だけ」と呼ぶ)

 それでは、岸田外務大臣。

岸田国務大臣 あくまでも確定するのは二月の署名のときだということだけは強調したいと思います。

 その前の段階においては、各国ともいろいろな調整、修正が行われている。当然のことながら、それぞれの国において修正作業は行われた、修正されたところはあり得る、これは当然だということは御理解いただきたいと思います。

玉木委員 そこまでおっしゃるなら、もう一つ宿題というか委員長にお願いしたいのは、タリフエリミネーション、直訳すれば関税の撤廃ということをタリフコミットメンツという形に訳されました。それは理解をしました。しかしながら、第二の四条の見出しについては、関税の撤廃、英語でいうとエリミネーション・オブ・カスタム・デューティー、このエリミネーションという言葉は変えずに残しています。

 なぜ、これだけ、エリミネーションという、日本語で訳すと関税の撤廃ですが、残しているのか、このことはきちんと整理をして、では、提出をお願いします。お取り計らいをお願いします。

塩谷委員長 わかりました。理事会で協議いたします。

玉木委員 それでは、きょうは食の安全を中心に質問したいと思います。

 先ほど与党の先生から豚肉の話が出たので、私もちょっと一言申し上げたいんですが、前回お示しをしたように、日本を除くTPP十一カ国から日本に輸入される豚肉の八割を超える対象の関税が撤廃される。これは差額関税制度といって、豚肉は少し難しい関税制度になっていますが、高い部分にかかっている定率の税制が、多少時間はかかりますけれども撤廃されるということで、八割以上のものが撤廃の対象になるというふうに申し上げました。

 一部、いわゆる差額関税部分は、今度は従量税という形で、キロ五十円という形で残るのは確かに残ります。しかし、これが極めて安くなるので、今までやっていたような安いものと高いものを組み合わせてやるコンビネーションではなくて、キロ五十円だったら、むしろそこでどんどん安いものがこれから入ってくるんじゃないのかということが心配だということが一つ。

 あと、そもそも、今の現状を見てみると、定率のところと従量税、いわゆる今の従量税はほとんどゼロですけれども、差額関税のところを比べると、従価税のところがほとんどなんですよ。だから影響が大きいのではないかということを申し上げたわけでありまして、私は、全く影響がないというのは農林水産大臣が言う言葉ではないということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、豚肉についても牛肉についても、量的にこれは非常に輸入がふえると思います。そのときに心配なのは、やはり質の問題であります。

 前回の少しおさらいになりますけれども、資料一を出してください。

 日本では、いわゆる成長を速めるような肥育ホルモンでありますとか、あるいは飼料にまぜて使う飼料添加物、ラクトパミンが有名ですけれども、こういうものは国内の使用が認められておりません。ただ、そういったものを使った牛肉、豚肉の輸入は認めているというのが日本であります。

 例えば、アメリカ、カナダ、豪州は、使うこともいいし、そういったものを輸入することもオーケーだ。例えばEUは、逆に、使うこともできないし、あわせて、そういった成長ホルモン、肥育ホルモンや飼料添加物を使った牛肉、豚肉の輸入も禁止しているということです。これはマルマルかバツバツかどちらかなんですけれども、日本だけが、ごらんいただくとわかるように、国内では使えないのに、使った肉の輸入は可能にしているという、いわゆるダブルスタンダードです。

 心配なのは、これは必ずしも明確な科学的根拠が全てあるわけではありませんが、ただ一方で、こうした論文もあります。こうした肥育ホルモンを使った肉を食べることで、そのことが、いわゆるホルモン依存性がんと言われる乳がん、卵巣がん、男性でいえば前立腺がん、こうしたものの特に初期の発生に一定の関係があるのではないかという研究もございます。

 ですから、こうしたことを、やはりしっかりと安全性を確認することが必要だし、こうした日本のダブルスタンダードは、これからさらに牛肉や豚肉の輸入がTPPでふえるのであれば、しっかりとした対策を打つ必要があるのではないかというのが問題意識であります。

 そこで、まず松本大臣にお伺いいたします。

 これは、同僚議員からも、また他の議員からも質問があったと思いますが、今こうした状況になっている中で、せめて、EUのように禁止するのはなかなか難しいとしても、肥育ホルモンや飼料添加物を使ったお肉でありますよという表示の義務はかけて、それを消費者が選べるようにすることは、これからのTPPが発効した後を考えればやはり必要なのではないのかということを指摘する人もたくさんいました。

 そんな中で、これが難しいという御答弁をいただきましたが、なぜ難しいのか、簡単にお答えください。

松本国務大臣 肥育ホルモン等の使用に表示義務を課するに当たっては、この食品表示基準違反は罰則の対象となるということから、使用したことを科学的に証明できることが前提になると考えています。

 肥育ホルモンなどは、投与後十分な時間が経過すれば排せつをされ、検出できなくなってしまいます。仮に肥育ホルモン不使用との表示が虚偽であってもこれを検証できないということから、義務表示の対象としていないということでございます。

玉木委員 排出されてしまってなかなか検出できないから規制をかけることができないというのが、簡単に言うとそういうお答えだと思いますが、私、これを最初はそうかなと思って聞いていたんですけれども、ちょっとおかしいのかなと思うんです。何でかというと、検出できないから規制しないというのは言いわけにすぎないんじゃないかと思うんですね。

 例えばEUなどは、これは実は禁止していますけれども、逆に、ホルモンを使っていない肉の輸入は認めているんです。それをどうやって認めるかというと、水際でこれが大丈夫かどうかというのではなくて、アメリカの農務省ときちんと合意を結んで、生産過程や手続を全部認証して、アメリカのUSDAといって農務省の食品安全検査局がこれを認定します、そこの認定を受けたものだけをアメリカからEUに輸出する、そういう仕組みになっていますから、仕組みのつくり方によっては、私は幾らでもできると思うんですね。

 それで、今度は塩崎大臣に聞きたいと思います。

 検出できないから規制しないということで言っておられますけれども、そもそも今ちゃんと検査していますか。これは、前回、役所の方にお答えをいただきましたけれども、大臣に改めて伺います。

 今現在、日本に、この肥育ホルモンやラクトパミンのような飼料添加物を使ったお肉はどれぐらい入ってきていますか。

塩崎国務大臣 まず、もう先生も御案内の、モニタリング検査というのを当然輸入食品については行っているわけでありまして、今御指摘のラクトパミンとか、この間来お話が出ております酢酸メレンゲステロールとか、こういった動物用の医薬品とか残留農薬などについては、人の健康影響度などの危害度、過去の輸入時の違反事例に応じて検査件数を設定して、モニタリング検査を実施しております。

 当然、危害度が高い、過去の違反率が高いものは件数を多く設定し、また逆に、危害度が低い、過去の違反が少ない、そういうものは少なく選んでいるわけでございます。

 それで、今どれだけ入っているのかというお話でございますが、我々のところで、今、違反件数としては、米国、豪州ともにゼロということになっているところでございます。

玉木委員 私は違反件数を聞いているのではなくて、低いもの高いもの含めて、そういったものを使ったお肉が合法なものも含めてどれぐらい日本に入ってきているかを聞いています。

塩崎国務大臣 どれだけ入っているのかというお尋ねでございますが、これにつきましては、私どもは全体で牛肉の輸入というものを把握しているので、特にそれだけを使った、今の御指摘になったような特別の、特定の医薬品を使ったものなどについてどれだけかということについては把握をしていないというふうに理解しております。

 全体としては、当然これは、今アメリカとオーストラリア、これが多いわけでございますので、合計で、これは例えば二十七年度でいけば、重量でいけば五十六万三千四百三トンということになっております。

 先ほど申し上げたモニタリングの方は、これは、サンプリングですから、五千二百件のモニタリング検査の中で、先ほど申し上げたように、米国、豪州ともに違反件数はないというふうに理解をしているところでございます。

玉木委員 私は別に違法なものを聞いているのではなくて、およそこういう肥育ホルモンを使ったような肉が日本にどれぐらいの量入ってきているのかを、これは前回も聞きました。肉の総量を聞いているのではありません。今問題になっている肥育ホルモンや飼料添加物を使ったような肉が、アメリカやオーストラリアを中心にどれぐらいの量が入ってきていて、その中でどれぐらいをサンプリングしていて、検査率自体はどれぐらいなのかなということを知りたくて、前回も聞きましたし、今回も聞いたんです。

 もう一度伺います。日本には、一体この肥育ホルモンを使っているような肉はどれぐらい入ってきているんですか。把握していなければ、把握していないとお答えください。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、特定の、例えば酢酸メレンゲステロールを使った牛肉がどれだけ入っているのかという形では押さえていないので、先ほど申し上げたのは、輸入のトータルということで、牛肉全体ということで、米国、オーストラリア別のはもちろんございますが、合計ということであります。

 検査率ということで、輸入時において動物用医薬品の使用の有無を確認していないわけでございまして、例えば酢酸メレンゲステロールを使用した輸入牛肉の件数の把握を、特定に、それだけに限って言うとしていないわけであります。

 そういう意味で、今申し上げたとおり、検査率をお示しすることは難しいということでございますし、特定の薬品を使った牛肉がどれだけ入ってきているのかということについては把握をしていないということでございます。

玉木委員 驚きましたね。一体、どれぐらいのものに対してどれぐらいやっているかという検査率もわからない。

 塩崎大臣、私は、特定の、酢酸メレンゲステロールの使われているものを答えてくれとは聞いていません。厚生労働省のホームページにあるように、牛肉におけるホルモン剤の検査状況の中でも十種類ぐらいのホルモン剤があります。ですから、特定のものを選び出して言っているのではなくて、厚生労働省が把握している全てのホルモン剤、全てで結構です、この対象となる牛肉の輸入量はどれぐらいありますか。もう一度。

塩谷委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、一つ一つの例えば肥育ホルモンをどれだけ使ったものが入ってきているかということは把握をしておりませんので、全体でどれだけ検査をしているのかということであれば、例えば二〇一五年度であれば、検査率は八・七%とかそういうことであります。

 それで、動物用の医薬品や残留農薬の残留基準に違反する食品の有無をサンプルによって確認をするモニタリング検査をやっているということでございまして、それにおいては、対象となる食品や検査項目によって、さっき申し上げたとおり、危害度の高いもの、過去の違反率が高いものなどは多くの件数をサンプリングして、危害度の低いものや違反率の低いものは少ない件数でサンプリング調査をしているわけであります。

 こうした考え方に基づいて、過去十一年間の検査件数は、人工的に合成されたホルモンである例えばゼラノールというのがありますが、これで千六百九十八件、それから酢酸トレンボロンは三千百五十三件というような形で、それぞれ酢酸メレンゲステロール以外のホルモン剤について数字を挙げるということであれば挙げられるわけでありますが、そういうことで、何トン特定のもので入ってきているのがあるのかということについては把握をしていないというふうに理解をしているところでございます。

玉木委員 大丈夫ですか、これは。いや、私、全然難しいことを聞いていないし、前回も同じことを聞いています。

 サンプル調査数の統計的な有意差をきちんと定めるためには、全体の分母に対して統計的に有意なこれぐらいの数をとれば全体像を把握できるから、大数の法則が働くからとかいろいろなことがあるわけですね。

 だから、大体、アメリカやオーストラリアからどれぐらい肥育ホルモンを使ったお肉が入ってきて、そのうちどれぐらいサンプリング調査して大丈夫だから大丈夫だと言っているんだというその証拠を、きちんとここで国民の皆さんに安全性の証明をしてもらいたかったんですよ。でも、それが全くどれだけか把握していません、わかりません、これではTPP以前の問題ですよ。

 今こういう状況なのに、さらにこれでTPPで豚も牛も輸入がふえて、しかも肥育ホルモンを使っているのがどんどん入ってきて、国民の食の安全は大丈夫なんですか。

 ちょっとこれはもう一度、前回もお願いしましたが、一回数字をきちんと整理して出していただくように、委員長、取り計らいをお願いします。これをもう一回出していただいて議論したいと思います。

塩谷委員長 今の件については、理事会で協議して対応します。

玉木委員 それでは、次に行きたいと思います。

 私、これは大事な問題だと思うのは、今回のTPPでも、例えば対オーストラリア向けに和牛を輸出しましょうというときに、オーストラリアは関税を撤廃してくれていますね。でも、これは山本大臣、御存じですか。今、オーストラリアは日本から牛肉をどれだけ入れていますかね。(発言する者あり)いや、これは有名な話ですけれども、御存じないですか。

山本(有)国務大臣 まだ動物検疫の段取りが整っていないので、輸出できていないということです。

玉木委員 ありがとうございます。

 関税を上げ下げするよりも、実は貿易にとって極めて重要なのは、この動植物検疫なんです。各国、関税は下げても、自国民の健康と命を守るために動植物検疫は厳しくしているんですよ。だからオーストラリアは今に至っても、日豪EPAを結んでも、一グラムも日本から牛肉は入っていないんです。でも、オーストラリアからは日本はどんどん入れることを決めてきているんですね。

 こういうことをきちんとやるのがTPP交渉だったんじゃないんですか。攻めるものを攻めているように見せかけて、ちっとも攻められていない。守るべきところ、特に国民の健康や命のように、お金にかえられない大切なもの、このことが守れていないことが私は一番問題だと思うんです。

 資料二をごらんください。肉の話をしたので、ちょっと魚の話をします。

 これは、昨年の十一月、アメリカのFDAが、これは植物ではなくて、植物以外に初めて消費できる対象として認めた、遺伝子組み換えで二倍の速度で成長するサケです。まだこれは認可から一年たっていませんけれども、動物では世界初であります。

 大型のサケと深海魚、ゲンゲと言われていますが、この遺伝子を組み合わせて、通常は冬場は成長がとまるんですけれども、年がら年じゅう成長する、そういう遺伝子組み換えをしたサケでありまして、ここに写真がありますが、同じ十八カ月で倍の体重、倍の大きさになるんです。二倍以上に成長するんですが、これはアメリカ国内でも、例えばパブリックコメントをしたら二百万人の人が反対、ウォルマート以外のスーパーマーケット八千店が販売を拒否、非常に問題もあるんですね。

 TPPが発効すれば、遺伝子の組み換えをした、もう植物だけではありません、こうした魚、あるいは魚を使った製品の輸入を日本は禁止することができなくなるのではないですか。あるいは、少なくとも表示義務を課すことができなくなるのではないかと思われますが、いかがですか。

石原国務大臣 遺伝子組み換えの表示についてのお尋ねがございました。

 これはTPPの二十七条でございますけれども、この条のいかなる規定も、締約国に対して、自国の領域においていわゆる遺伝子組み換え製品を規制するための自国の法令、政策の修正を求めるものではない。

 ですから、これは厚労省の所管になりますのでお尋ねいただきたいと思いますが、ただいま委員が御懸念されたようなフランケンと言われるサケについて、認めるか認めないか、規制を強化して入れないということは十分に可能であると認識しております。

玉木委員 本当にそうですかね。

 松本大臣、これは規制ができなくなる。例えば、サケそのものもそうですけれども、この前あったように、加工してたんぱく質が分解されてしまって、かまぼこにする、すり身にするという形で輸入されたら、これは規制できませんね。

塩崎国務大臣 先ほど石原大臣から、輸入できるできないの話については厚労大臣から答えるということを申し上げたわけでありまして、当然、これは我が国において、輸入食品を含めて食品衛生法に基づいて食品安全委員会がリスク評価をして、その上で遺伝子組み換え食品の輸入、販売等を経ていなければ禁止をしているということでございますから、そこは明確にしておきたいというふうに思います。

 今、サケの話が出ました。このことについては、現在のところ、我が国では安全性審査の申請はなされておりません。仮に、遺伝子組み換えサケについて安全性審査の申請がなされた場合には、当然のことながら、さっき申し上げたとおり、食品衛生法に基づいて厚生労働省から食品安全委員会に対してリスク評価をお願いする、その上で、その結果が出てきたところで必要な対応を行うということになっていて、厚生労働省としては、その段に至れば、当然、科学的な根拠に基づいて食品の安全性の確保を行うということになるわけでございます。

 ちなみに、今のサケについては、まだ具体的な商業生産の予定が立っていないというふうに、在京の米国及びカナダの大使館に確認をいたしております。ですから、今の段階で日本への輸入はないというふうに認識をしております。

 なお、米国及びカナダにおける販売実態等が確認をされた際には、検疫所における輸入時の、先ほど来申し上げているモニタリング検査を当然実施するわけでございますし、引き続いて、両国政府との連携を密にして、未承認の遺伝子組み換え食品が輸入をされるようなことがないように、輸入時の検査を実施するなど、適切な輸入監視をしていかなければならないというふうに考えているところでございます。

玉木委員 危険性があるということを科学的に証明する責任は日本政府にありますね、輸入国側に。これは、私は非常に難しいのではないかと思うんです。

 一つお伺いしたいのは、予防原則というものがあります。これは、ここに書いていますけれども、人の健康や環境に対する深刻かつ不可逆的なリスクがあると予想される場合、因果関係について十分な科学的な確実性がなくとも、事前に予防的措置をとることを求めると。

 これは、WTOのSPS協定の中では、非常に条件は限定されますけれども、こうした予防原則が一定程度認められていると認識しています。しかし、TPPは、第七の九条の二項で、「科学的な証拠に基づいていることを確保」、英語で言うとエンシュアという言葉を使っていますが、このことを規制する側に厳しく求めるようになっています。

 これは、先ほどのような非常に高度なバイオテクノロジーを使っていたもの、それが危険なんだということを日本政府が科学的にきちんと証明した上で、この輸出を防ぐことは本当に可能でしょうか。

 今輸入のことを聞いたので、では最後に、松本大臣、表示義務についてお伺いしたいと思います。

 予防原則に基づいて、そうした、必ずしも科学的確実性がないけれども、やはり日本国民の健康を考えて予防的に表示義務を課すことは、TPPが入ってもこれはできますか、本当に。お答えください。(発言する者あり)

塩谷委員長 ちょっと時計をとめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 速記を起こして。

松本国務大臣 TPPに関しては、我が国で受け入れられるもの、この安全基準をしっかりと維持できるということを前提としてその対応ができるわけでございますから、安全ということについては、今後も維持がされるということにつながると思います。(玉木委員「いや、答えていないです。表示義務を課せられるんですか」と呼ぶ)

塩谷委員長 もう一度質問を、玉木さん。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 基本的な考え方として、既に答弁をさせていただいているわけでありますが、このTPP協定の貿易の技術的障害、TBT章は、WTOのTBT協定と同様でありまして、表示ルールなどを定める際の手続や透明性の確保等についても定めるものでありますが、我が国の制度にこれは何らもちろん変更を及ぼすものではなく、また、我が国が必要と考える制度の変更に新たな制約を加えるものではないわけでありまして、我々はそれを必要と考えて表示を求める、あるいは安全性において必要な措置を求めることについて、TPPにおいて変更を求めるものではないということであります。

 この議論において、安全かどうかという議論がありました。安全ではないものが一般家庭に届けられるということはまず絶対ないわけであります。

 その上において、表示義務においては、消費者の選択であります。これについては、先ほど松本大臣から答弁をさせていただきました。

 さらに、TPPでどういう変化があるかということについては、今申し上げましたように、TPPにおいてWTO上のルールが変わることはないということでございます。

玉木委員 もう時間なので終わりますけれども、聞けば聞くほど不安になりますね。

 一番最後の四枚目。よくWTOと同様だということをSPS、TBTの規定で言いますけれども、例えば、違いを一つ紹介しておきましょう。

 この第七の十七条に、協力的な技術的協議というのがあります。これはごらんいただければわかるように、自国の貿易に悪影響を及ぼすおそれがあると認めるものについて討議するために、協力的な技術的協議を求めることができるとなっていまして、さらに、その中身については、全ての連絡、全ての文書は秘密のものとして取り扱うということになっているんですよ。

 黒塗りで、これまでもいろいろなことが秘密でしたけれども、これから、我々の、国民の健康や安全に関することも、秘密裏に闇の中で決まったりやめられたりすることがTPPの中では条文上可能になっていることを指摘申し上げて、質問を終わりたいと思います。

塩谷委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享です。

 時間がないので、早速始めさせていただきます。

 まず、何度もこの場で質問してまいりました輸入米の価格偽装の問題でありますが、残念ながら、何度答弁しても大臣からは質問に対して的確な答えが返ってこず、役所が書いた的外れの、質問とは違う答えを読み上げるだけであります。

 多くの方が怒りの声を寄せております。特に、この調整金の仕組みも含めた不透明な仕組みは、もう初めから農水省はわかっていたじゃないか、農林水産省がつくった国家貿易の非合理的、経済原理に基づかない仕組みに逆に輸入業者や卸業者がつき合わされてきたのに、今さら知らないなんてひどいじゃないかという多くの怒りの声が寄せられております。マスコミの取材にも名前を挙げて答える人が複数出ております。

 私のところにも、農水省に電話したその録音、そうしたものも来ておりますし、実際に調整金が幾らあって、札貸し料、これは議論になりましたけれども、ただ名義貸しだけで札を入れる人にお金を払っているとか、そうしたことが記された具体的な紙、理事会に提出する許可もいただいております。

 ぜひ、この委員会でやってもなかなからちが明かない部分がありますから、理事会の場で、この資料を理事にお渡ししますので、もう一度しっかり調査をし直す、そうした議論を行っていただきたいと思いますけれども、委員長、お取り計らいをよろしくお願いします。

塩谷委員長 理事会で協議して対応いたします。

福島委員 ありがとうございます。

 この問題は、TPPで一番大きな関心のある米、三千億円以上も日本の国内生産が減る試算もある、そうした分野でありますので、この調査の結果をこのTPP協定の審議の途中に出していただくようにお願いいたします。これを出せないからといって、強行採決をするのはやめていただきたいと思っております。

 次に、除外、再協議、国会決議について。私は、この委員会として、国会として、国会決議が満たされているかどうかということをきちんと検証すべきであると考えております。(パネルを示す)

 下がTPPの国会決議であります。一番だけ挙げております。米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などは除外または再協議の対象とすること。これは明確であります。

 ところが、四月の通常国会の段階で、石原大臣は私に、除外、再協議というものの定義というものは定型的にはございませんとか、先週も玉木委員の問いに答えて山本大臣は、除外という概念は現在ございませんと。日豪EPAは除外がありますけれども、それは今もうないんですか。除外という概念は明確に、日本が結んでいる今有効な経済連携協定でもあります。除外、再協議のタリフラインという項目は、今、関税ではそれを置いておりませんと。決してそうではありません。

 本当にこんな答弁でいいんですか。国会決議をここまで無視して、除外、再協議なんて定義がないとか、そんなの今やっていないという答弁で国会を乗り切るつもりですか。総理、いかがですか。

石原国務大臣 外交交渉でございますので、もう再三再四、外務大臣から答弁させていただいておりますが、除外、再協議というものがこういう意味ですよというふうに確立したものはないわけであります。それぞれのときに除外は何を意味するのかということが決まっている、こういうことを申しておりますし、重要五品目については、国会決議を後ろ盾にして、かなり多くの例外を確保したということも御答弁させていただいております。

福島委員 本当にそうでしょうか。

 日豪EPAのときも同じような決議がありました。上段であります。ブルーの方です。米、小麦、うんたらかんたら農林水産物の重要品目が、除外または再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。

 我々の政権のときも当然この決議に従って交渉を行い、二〇一四年に調印をいたしました。その結果、どうなったのか。

 日豪EPA、日本・オーストラリア経済連携協定にはこう書いてあります。附属書一、二の四条、関税の撤廃または引き下げという条項です。ここにずらっといろいろ注釈が書いてあるんですね。その中で、いろいろなタリフラインのRを掲げた品目に分類される原産品は、うんたらかんたらの対象から除外され、この協定の発効後五年目の年に両締約国が交渉する。まず除外をして、五年後に協議をしましょうねと書いたのが、これが再協議です。(v)、Xを掲げた品目に分類された原産品は、関税に係る約束から除外される。それで終わっているもの、これが除外です。

 今まで日本が結んできたEPAにはこの項目が必ずあるんですよ。これを求めるために交渉せよというのが日豪EPAの国会決議であり、TPPの国会決議であったはずですよ。定義がないなんて言わないでください。みんな明らかなんです。今まで日本が結んできたあらゆる経済連携協定には、このような除外の規定、再協議の規定があるんですよ。定義がないなんというのはおかしいじゃないですか、石原大臣。

岸田国務大臣 先ほど石原大臣から答弁させていただきましたように、除外、再協議というもの、国際社会において確たる定義は存在しないとお答えしたわけですが、だからこそ、その協議ごとに議論を行って、除外、再協議など、さまざまな案件について、そういった言葉を使うかどうか、あるいは内容についてどうなのか、これを確認しているというのが現状であります。

 委員御指摘のように、過去の協議において除外という言葉を使った、あるいは再協議という言葉を使った、こういったことはあります。しかし、それも、それぞれの協議において議論が行われ、内容を確認したということであります。

 過去使った除外という言葉については、関税撤廃、削減等の対象とされない品目を除外されると説明し、そして、協定発効時点では関税撤廃、削減等の対象とされず、両国が合意した時期に改めて交渉する品目を再協議の対象とする、こういった説明をしているわけですが、いずれにしましても、それは一つ一つの協議によって内容が確定されるということであります。それがそのままTPP協定の際に適用されるものではない、こういった意味から、国際的な定義は存在しないという説明をさせていただいております。

福島委員 それは私はおかしいと思いますよ。

 国会決議というのは、国民によって選ばれた我々国会議員が国民に対してこれだけのことを政府に求めますよといってやるものです。そこに除外とか再協議の定義がありませんなんて言えないですよ。今までのあらゆる経済連携協定で獲得してきたものを当然とるだろうというのが国会決議であり、ほぼ全員の国民がそう理解すると思いますよ。我々が、除外または再協議を求めたけれども、その定義がわからないから、だから内容がわかりませんなんて言ったら、それはまさに、政府に入っている皆様方も国民に選ばれた国会議員です、国会の権威というのを失わせるものになると私は思います。

 そもそも、交渉したんですか。日本は確かに最後に交渉に入りましたけれども、いろいろな協定の骨格やそういうものを交渉に参加して見ることになったでしょう。そのときに、今も残っておりますが、第二・四条のタイトルは関税撤廃となっているわけです。第二項で、「各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、」「附属書二―D(関税に係る約束)の自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する。」と協定に書いてあるわけです。

 もし国会決議を守ろうとしているんだったら、この二の四条のタイトルと文章を変えるという交渉をやるべきであると思いますけれども、そのような交渉はやったんでしょうか。どうかお聞かせください。

石原国務大臣 もう委員は御存じのことだと思いますが、このTPP交渉には経緯があるわけでございます。

 民主党時代の野田政権、そして、私どもは当時野党でございましたけれども、聖域なき関税の全面撤廃を伴うTPPには反対である。そんな中で、総理がオバマ大統領と二十五年の二月にお会いになって、日米共同声明を発せられた。ここがそもそもスタートである。

 そこにどう記載されているかと申しますと、TPP交渉に参加する場合は全ての物品が交渉の対象とされること、それで、二番目が大切でございます、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことが確認された。ですから、私どもはこのTPP交渉に入った。

 その前の段階で、TPPは原則関税撤廃であるということが前提でありますので、委員が御説明をいただいたような形になっているものだと御理解をいただければと思います。

福島委員 いや、若干すれ違っていると思いますよ。国会決議を守ろうと思うのであれば、除外または再協議というのが先ほどの日豪EPAの条文のように入っていない。これは日本だけじゃなくて、ほかの国がほかの国同士で結んでいる経済連携協定にはみんなこういう条文が入っているんです。アメリカが韓国と結んでいる貿易協定にもこれと同様の条文は入っています。TPPだけなんですよ、ないのが。それがないのがわかったときに交渉しなかったとするのであれば、初めから国会決議を守ろうなんて思っていなかったとしか言いようがなくなっちゃいますよ。

 これをまた出すと、「TPPの真実」というゲラ、いずれ発行されるのかもしれませんけれども、最初のバリ会合のときに西川前TPP委員長は、二〇一三年の大筋合意が目標となっていて、タイムリミットが、間に合わないからもう日本がおりるしかないんだということを書いてあるんですよ。でも、結果としてまとまったのは二〇一五年ですよね。

 先ほど赤澤委員がおっしゃっていましたけれども、期限に追われて早くカードを切るというのは稚拙な交渉だみたいなことを言いましたけれども、まさにそれをやったって、本当の本かわかりませんよ、それらしきことがまことしやかに書かれているわけですよ。

 本当に除外、再協議を求める交渉をやったと言うんだったら、総理、ここで言ってください。除外、再協議を求めるためにきっちり交渉をやったけれども、交渉の結果、こういうふうになったと。それが、定義が違うとかなんとかと言うと、ごまかしているというふうに思われますよ。国会決議を守るために最善の努力をしたということをぜひ御答弁ください。

石原国務大臣 若干繰り返しになって恐縮ですけれども、第二の四条、関税の撤廃のところの第一項は、福島委員がお述べになられたとおりですが、これは二項もございまして、「この協定に別段の定めがある場合を除く」と明記をされているわけでございます。

 そして、国会決議についてでございますが、国会決議を交渉の中で配付して、こういう決議がなされたということで交渉を行ってきたと承知をしているところでございます。

福島委員 いや、びっくりですよ。だって決議の第一番目ですよ。国会決議を配るだけが交渉なんですか。それは交渉したと言いません。配った上でこれをどうするかをやるのが皆さん方の交渉じゃないですか。

 今、第二項の話をしました。では、この協定に別段の定めとするように求める交渉を行ったかどうか、お答えください。

石原国務大臣 何度も申させていただいておりますとおり、結果が全てでございます。

 そして、どのような交渉を行ったかという御質問に対して、国会決議でございましたので、こういう行為があったということを御開陳させていただいたところでございます。いずれにいたしましても、国益の最大化を図るべく努力をした。

 そして、このTPPは、その他のFTAと違いまして、マルチの会合でございます。そんな中で、私どもは、聖域なき撤廃を伴うTPPには反対、そういう形の中でこの議論を進めてきたと御理解をいただきたいと思います。

福島委員 結果を見た結果、決議が守られているとは思えません。この協定に別段の定めとあるにもかかわらず、それを盛り込むための交渉をしたかも言わない。ただ一つ言えることは、国会決議を配付したのが交渉の手段だったということがわかりました。

 国会決議を守る努力もしないで結果を見てくれと言われて、除外も再協議もないというのは、明確に国会決議を守るつもりがない交渉をしたと判断せざるを得ないと思います。

 次に、担保法の問題に行きます。

 今回、先ほど篠原委員からの質問でもありますけれども、TPP協定の実施を担保するために、十一本もの法律を束ねて国会に提出をしております。これは、さっきあったように、いろいろな問題があるんですよ。午前中の参考人質疑におきましても、福井先生から非常に示唆に富む御意見がございました。

 ぜひとも、例えば、知財とか医療関係とかあるいは農業関係、こうした問題については、所属、所管の委員会とともに丁寧に連合審査を行う、TPPを批准するかどうかだけではなくて、国内の制度や今後の日本のそれぞれの分野のあり方にかかわる問題でありますので、専門的な観点も交えて連合審査をすることを求めたいと思いますが、委員長のお取り計らいをよろしくお願いします。

塩谷委員長 理事会で協議して対応してまいりたいと思います。

福島委員 ありがとうございます。

 これは、この十一本の法律全部が成立しなければTPPの批准要件を満たさないと考えてよろしいでしょうか、いかがでしょうか。

石原国務大臣 寄託国に、国内法の整備をもって議会の方で承認をいただいたということを報告するということでございますので、委員の御指摘のとおりでございます。

福島委員 一本の法案とも欠くべからず、必要不可欠な要素でありますか。

石原国務大臣 先ほど御答弁させていただきましたとおり、全ての法律の成就をもちまして寄託国に御報告をさせていただくというのが条件になっております。

福島委員 例えば、畜産物の価格安定に関する法律、いわゆるマルキンの法案、これは、なければTPPの批准の要件を満たさないんでしょうか、どうでしょうか。

石原国務大臣 寄託国に全ての国内法の整備をもって報告することが条件でございます。

福島委員 本当ですか。

 では、このマルキンの法制化にかかわる条約の根拠条文を教えてください。(発言する者あり)

塩谷委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 速記を起こしてください。

 石原TPP担当大臣。

石原国務大臣 これも再三議論になっているところでございますが、やはり、農家の側に不安がある、そしてまた、その農家が地方で非常に基幹産業になっているわけでございます。こういうものをしっかり守っていこうという日本政府としての意思の表示がこの法律の改正でございます。

福島委員 意思の表示ということは、批准に対して必要な要素、必要条件ではないことでよろしいですね。

石原国務大臣 あくまでも、十一本の法律は、国内の対策に基づいてつくられているというふうに御理解をいただきたいと思います。

福島委員 いや、担当大臣がその認識でびっくりしました。一般的に、条約の審査とあわせて審査にかかる法律というのは、条約の条文によって我が国のルールを変えることを義務づけているものに対応するもののみを出してくるんですよ。首を振っていますけれども、そうですよ。それ以外にないです。

 では、今までの例であったんですか。

石原国務大臣 ニュージーランドへの報告というお話をさせていただいておりますが、これは、どうどうどういう法律案をどういうふうにするというような、例えば、今委員が御指摘されたマルキンについてどうどうどうするというようなことは入っておりません。国内で必要な手続を終了したという御報告をさせていただくということでございます。

福島委員 マルキンの法案がなくても、日本は批准をすることができますね。

石原国務大臣 私どもは、政府の意思としてこの十一本の法律が必要だと考えているところでございます。

 ちょっと正確に、長くなってしまいますが御説明をさせていただきたいと思います。

 TPP協定を実施するに当たりまして、必要不可欠なものとして国内法の整備を行うということをお話しさせていただきました。そして、ニュージーランドへ通報を行うということでございますが、協定の締結に当たりまして、取りまとめ国、いわゆる寄託国であるニュージーランドへ通報を行うことで、政府として、いずれも欠くべからざる政策である、措置であるというふうにこの十一本の法律を認識しているわけでございます。

 そして、改正案の内容を一覧的に十一本お示しさせていただいておりますけれども、一本の法律案として総合的に、一体的に今御審議をいただいているのが現状でございます。

 なお、TPPについては、交渉から実施まで一貫して、内閣官房のTPP政府対策本部を司令塔とした一元的な体制のもとで国内調整等々を行ってきた、そういう形でこの十一本の法律を整備させていただいていると御理解をいただきたいと思います。

福島委員 マルキン法案がなくても日本は批准することができますね。イエスかノーでお答えください。

安倍内閣総理大臣 ただいま石原大臣が答弁をさせていただきましたように、条約の発効に必要なものとしては、著作権法のように条約を担保するものがございますが、このマルキンにつきましては、まさにTPPを批准して、そして、それをしっかりと、農家を支援していくという政府の意思として、我々は必要として考えているわけでございます。

福島委員 総理、いつも明確な答弁をありがとうございます。全ての大臣を総理が兼ねても国会答弁が成り立つんじゃないかというような状況。

 つまり、TPPを批准するに当たって、必ず求められるものではないんですよ。(石原国務大臣「同じことを言っているから」と呼ぶ)いや、イエス、ノーで答えていないじゃないですか。まともに答えないで、何を言っているんですか。

 そして、このマルキンの法制化法案は、施行日がTPP協定の発効の日となっております。先日、山本大臣はマルキンの補填九割をやるということをきりっと珍しくおっしゃいましたけれども、これはいつからやられるんですか。

山本(有)国務大臣 マルキン法制化に係る成立そして施行、この日と同日に補填率をかさ上げするというようにしております。

福島委員 施行はいつですか。

山本(有)国務大臣 条約の発効日でございます。

福島委員 でも、おかしいですよね。この補填率は法律じゃないはずですよ。省令あるいは予算措置でもできるわけですよ。なぜ発効の日まで待つんですか。今すぐやればいいじゃないですか。来年度予算要求で要求をやればできますよね。法律をつくらなくても、来年度の予算で計上すれば、これを行うことはできますね。どうぞ。

山本(有)国務大臣 予算あるいは省令でできるようになっております。

福島委員 やれるんだから、やればいいんですよ。だって、関税が下がる前に、強化対策なんて早ければ早いほどいいじゃないですか。

 ウナギのかば焼きのにおいだけしてウナギが出てこない、アベノミクスはまさにそうなんですよ。株価だけ上がるけれども一向に景気の回復の実感がない、それと同じことをやっているんですよ。結局、政府の意思としてやっているといっても、農家のためにもなっていないことを格好つけてやっているだけなんですよ。法律を改正しなくてもできるものをこの法案に束ねてやっているだけなんです。

 そして、業界の人にはそう言っているけれども、すぐにもできるものをすぐやればいいじゃないですか。やりますか。どうぞ。

山本(有)国務大臣 現在、八割の補填率でございます。関税の引き下げに応じた対策として九割にするわけでございますから、発効後でなければ意味を持たないというように思っております。

福島委員 意味をなさないというのは、非常にけちくさい話だなと思います。

 いつでも予算措置をすればできることを、わざわざ法律に出して大げさにやるぐらいだったら、我々は、この国会、公布後すぐに施行される法案を出しております。(発言する者あり)財源がないとか言っているけれども、いっぱいあるじゃないですか、TPP対策でやっているのが。

 やればいいんです。意思があるかないか。結局ないんですよ。ぶら下げるだけぶら下げて、農業団体をなだめすかしておけば大丈夫だという法案にしかすぎないわけです。

 次に、食の安全。先ほど玉木さんがやったもので、一つだけお聞きしたいと思います。

 TPP協定とSPS協定。TPP協定は、七・九条で、自国の衛生措置が科学的な原則に基づくとされています。WTOのSPS協定は、大事なのは、入手可能な科学的証拠に基づく、あるいは七項で、加盟国は関連する科学的証拠が不十分な場合には暫定的にできるとなっていて、科学的知見、科学的知見と先ほどから言っておりますけれども、それは万全のものじゃないんですよ。

 五十年後、百年後どうなるかというのは現在の科学ではわからないものもあるから、そうしたものに暫定的に規制を入れましょうというのがいわゆる予防的措置、予防原則と言われるものなんです。これに基づいてやることがTPPだとできないんじゃないですか、入手可能な科学的証拠とか、関連する科学的証拠が不十分な場合は暫定的にというのがないわけですから。できるんですか、それは。

 先ほど玉木さんが言った例も含めて、予防的措置に基づく対応ができるかできないか、松本大臣、答弁をお願いいたします。

石原国務大臣 WTOのSPSには今予防措置というものがありますが、TPPにはございません。そのとおりでございます。しかし、暫定措置という形でこのものができるようになっているということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

福島委員 暫定措置という項目はあります。しかし、問題は、思想が違うんですよ。規制の思想は、WTOでは、科学的なものを原則としながら、科学の限界を認めた上で暫定的な措置を認めるというのがWTO上はある。TPPはこれがないんです。明確に規制の思想が違うという意味では、十分これは紛争処理の手続に従って訴えられるということを申し上げたいと思います。この問題は後でまたゆっくりやらせていただきます。

 そして、最後、外国人土地法というのがあります。

 投資章のところの附属書2において、留保事項というものがあります。この中で、附属書2において、投資章について、我が国の内国民待遇の留保事項を列挙している中に、外国人土地法に基づいて、政令により日本国における外国人または外国の法人による土地の取得または賃借を禁止し、または制限することができるとなっています。

 何でこの項目を入れたのか、教えてください。なぜ留保したか、外国人の土地の取得の制限について。

石原国務大臣 詳細は法務省からお聞き願いたいと思いますが、この法律でございますが、外国人等を差別しないといった自由貿易のルールに抵触する可能性のある現行法令の条項については、TPPを初めとするEPA等において留保をしていくことが一般的である、これはもう委員御指摘のとおりでございます。このため、TPPにおいても外国人土地法について留保を行っている。

 この運用についてどうなっているかということについては、法務省からお聞きいただきたいと思います。

福島委員 ありがとうございます。

 石原大臣、私の質問を先に言っていただいたんですが、では、この留保事項に従って、実際に基地周辺の土地を外国人が買うことを制限したり水源林を制限するということは今現在できるのかどうか、金田大臣、御答弁をお願いします。

金田国務大臣 外国人土地法に基づきます政令を指定することによって、我が国における外国人や外国法人による土地の取得または賃貸借を禁止し、または制限することは、現時点では法務省としては考えておりません。

福島委員 びっくりしました。何で考えていないことを留保事項に入れたんですか。考えたから入れたんじゃないんですか。

 しかも、これはどうでもいい事項ではありません。今、基地や離島など、日本の防衛に必要な土地を外国人が買うことはどうかという不安が物すごく広がっております。あるいは、水源林や農地だって買いまくられたら、その農地が、日本人のための食じゃなく外国の食のためにつくられることだってあり得るから、農地だってさまざまな権利を制限している国というのはあるんですよ。

 そういう問題に対応するために、TPPでわざわざ交渉してこの留保事項を入れたんじゃないんですか。法務省は全くやる気がないのに留保事項を入れた。一体何のためにこの交渉を行ったのか。

 もう一度、石原大臣、御答弁をお願い申し上げます。

石原国務大臣 お答えいたします。

 土地取引の留保条項、なぜ入れたかという御質問でございます。

 TPP協定の投資章では、締約国は、他の締約国の相手国投資家が財産、投資一般を取得する場合等に、差別的でない待遇を与える義務を負っております。

 ただし、相互主義の点から、我が国は、附属書2においてその義務を留保させていただく、これが留保ということでございます。すなわち、日本国の国民または法人が、外国において、土地の取得または賃貸借の禁止または制限を課されている場合には、我が国におけるその外国の国民または法人による土地の取得、賃貸借等について、投資章で規定される義務を負わないこととしております。

 このような内容の留保条項については、日豪EPAを初めとする他のEPAにおいても一般的な条項である、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。

福島委員 いや、一般的じゃないんです。役人的な整理で入れたまま、何にも本体の外国人土地法の政令を変えなかったり、外国人土地法というのを変えてこなかったのが私は問題だということを言っているんですよ。

 せっかく交渉して入れたんだから、それを実効性あらしめるようにしないと、先ほど金田大臣の答弁にあったようにやりませんというんだったら、何のためにやっているんですか。法律論上の役人的な整理のために入れたというんだったらおかしいじゃないですか。

 しかも、事は国防上のことにかかわる問題ですよ、領土にかかわる問題ですよ。そうしたものをせっかく条約上入れておきながら何もしないということ自体にも、いかにこのTPP交渉というものを真面目にやってこなかったかというのがあらわれると思っております。

 きょうも、同僚の委員も含めてさまざまな論点が多数出されました。今申し上げた外国人土地法の問題も、これまでTPPの議論の中でほとんど議論になることがなかった問題であります。数限りない論点がまだ残されております。そうした意味では、強行採決を今週にするなどということは絶対にありません。充実した審議を今後とも行うことを求めまして、質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 民進党最後のバッターとなります今井雅人でございます。

 前回の質疑で、私は、山本大臣に、新聞報道でもう違うことが出ておりますから、SBS米のこの問題を解決しましょうよ、はっきりさせましょうよということを申し上げました。

 それで、先週の理事会で、与党の理事から、私もそう思う、だから、この問題はやはり、農水省さん、ちゃんとはっきりさせて、決着をつけましょうと。私も、この話を早く決着して前に進めたいんですが、ずっと堂々めぐりなので申し上げてきたんですね。

 それで、金曜日の朝の理事会です。農水省の方から、理事会でいろいろ説明をしたいということでお話がありましたので、お伺いいたしますということで、話を聞きました。驚きました。

 まず出てきたのは、今までの報告書のコピーです、コピペです。そして、あとは口頭で説明しますというふうにおっしゃられたんですけれども、何を話されるのかと思って聞いておりましたら、この委員会でそれぞれの方が答弁されたことをそのまま整理してしゃべっているだけなんですよ。私は、もう少し、その前に伺っていたのは、新聞報道のものとの違いとか、そういうこともきちっと整理してお話ししますというふうに伺っていたんですね。ところが、出てきたものは、全く何も変わらないものしか出てこないんです。これは、与党の理事の皆さんの誠意すら私は裏切っていると思いますよ。

 大臣、もう何も出すなという指示をされたんですか、あれは。ちょっと聞かせてください。

山本(有)国務大臣 十月七日の調査、この調査に加えて何か資料を出せという御命令がございましたが、しかし、この調査の目的は十月七日の調査で完結をしておりまして、我々にとりまして、それ以外の調査をする、そういう必要性あるいは課題、そういったものを持ち合わせておりません。その意味において御要請にお応えできなかったということでございまして、御理解を賜りたいというように思っております。

今井委員 自分たちの報告書が正しいという上から目線なのか、もうこれ以上調査能力がない、そういうのを自分たちで認めているのか、どちらかわかりませんけれども、少なくとも、二つの新聞社が、十社以上のところから、そういう取引はあった、調整金を乗せて、その分だけ安くして売った例はあったというふうにおっしゃっていて、しかも、今、福島委員の方から、理事会の方で具体的な資料を出す、理事会で協議すると委員長も言っていただきました。そのことも理事会できちっと協議をしたいと思いますけれども、そういう事実もあるんです。

 ですから、理事会でまたその事実がはっきりしたら、農水省さんとしては、その事実を重く受けとめ、もう一度やはり調査し直すということをぜひやっていただきたいと思いますが、いかがですか。

山本(有)国務大臣 まず、二つの新聞に、この報告書についてのさらなる疑問というような、そうした見解の相違を示す報道がなされました。

 しかしながら、これにつきましては、農林水産省は、かかる報道機関の調査に何ら関与はしておりません。したがいまして、この調査がどういった調査であり、かつまた、正確性や対象、あるいは聞く内容等につきまして関与しておるわけではございませんので、内容にコメントする立場にございません。

 その意味におきまして、この報道は、報道として承知はしておりますけれども、再調査の必要に至る根拠にはなり得ないというように思っております。

今井委員 本当に、今皆さんも申し上げていますけれども、だんだん後退していっていますよ。もうこれ以上追及してもちょっと堂々めぐりだと思いますけれども、でも、この問題を解決しなかったら、衆議院の最終のところまで行きませんし、ましてや、参議院に行ってもずっとこの問題は続いてしまいます。だから、どこかでやはり決着をつけていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。

 そして、もう一点。今隣に村岡委員がおりますが、村岡委員が先日質問した内容も幾つかあったんですが、そのうちの一つなんですけれども、ヒアリング結果で金銭のやりとりの有無を確認したところ、買い受け業者の方で現在もあると言っているところが十一者ありました。そして、輸入業者の方で現在もあるというのは十者ありました。村岡委員の方から、今回、全部で千七百九十四件、実際の取引では行われているのを調査していますけれども、この千七百九十四件を調査して、現在も金銭のやりとりがあると言っているこの十一者と十者のシェアがどれだけであるかを教えてくださいということを申し上げました。

 それぞれ個々の取引の明細はあるわけですから、これを計算すれば単純なシェアは出るはずなんですけれども、これすら出していただけないんですね。なぜでしょうか。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のとおり、金銭のやりとり、買い受け業者については十一者、輸入業者も現在もあると答えられた方が十者であることは報告書のとおりでございます。

 そして、この十一者あるいは十者の取扱量と調整金なるものとの関係は必ずしもあるわけではありません。調整金が国内価格に与える影響をあくまで調査しておるわけでございまして、その意味で、このシェアあるいは取扱量というようなものをあえて聞く関係にはないというように考えております。

今井委員 もう時間がありませんので、これはまた別の機会にしますけれども、単純にこの数字で計算することはできるんです。計算した数字を出して、それにどういう意味があるかないかというのを議論すればいいわけであって、その数字すら出せないというのは、これは議論すらさせてもらえないということですから、それをすっかり出していただきたいということです。

 それと、もうあと三分ぐらいしかありませんので、ずっとやりたかったテーマなんですが、実は前も予算委員会でテーマになりましたけれども、今回、ITC、国際貿易委員会というアメリカの政府の機関ですけれども、そこが出しているTPPにかかわる調査の報告書のところで、これは業界の人たちが言っていることでありますけれども、今度ふえる六万トンの新たなSBS米のところで、アメリカは八〇%を保証されている、口約束でギャランティーしているということが出ています。

 口約束だということなんですけれども、これは似たようなことが実は前にありまして、ガット・ウルグアイ・ラウンドで米を輸入するようになったわけです、ミニマムアクセス米なんですが。これも、もともとは、今もそうなんですけれども、別に国別のシェアがあるわけじゃありません。入札によって、それぞれが競争で輸入をするわけなんですが、見てください。今、七十七万トンを全体で輸入していますが、アメリカだけはかったようにずっと三十六万トンです。

 これは、日本側はそういう密約はないと言っていますが、当時のアメリカの交渉人であったオメーラ交渉人やイスパイ農水長官が後に日本の取材に答えていますが、この交渉をしたときに、ミニマムアクセス米の約五割はアメリカから輸入してもらうことを口約束で保証してもらったということを証言しているんです。有名な話です。日本側はこれを否定していますが、現実が全てをあらわしています。よく総理は結果が大事だと言っていますが、結果に出ているんですね。四七%をはかったように輸入しています。

 ですから、先ほどの、これは業界の方からの期待というふうに書いてありますが、これは、まさにこういう交渉結果を聞いて業界側が言っているコメントなんですね。一度過去にこういうことがあるんですから、今回のだって信用できないわけです。

 前に、これは答弁で、このITCには抗議をしたというふうにコメントをされていますが、私は、当事者であるUSTRに、こんなものはないということをはっきり言ってくれということを日本側からしっかり伝えるべきだと思いますけれども、それをやってください。

山本(有)国務大臣 まず、文書化されていない約束は我々は全く存じ上げません。

 そして、この六万トン、この枠はTPPではなくてWTOの枠でございまして、したがって、米国に八割を保証した事実もありません。

 また、このITCの報告書に誤解等があってはならないというようなことから、我々としては、遺憾であるものでございますので、委員おっしゃるとおり、USTR、米国通商代表部に本年五月に遺憾の意を直接伝えたところでございます。

今井委員 もう時間ですから終わりますけれども、今、その抗議をしたときの文書を理事会に出していただくことと、それから、アメリカのUSTRからしっかり回答をいただきたいということを理事会で諮っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

塩谷委員長 理事会で諮って対応いたします。

今井委員 以上で終わります。

塩谷委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 共同通信による世論調査の結果が一斉に報じられました。TPPについては、今国会にこだわらず慎重に審議するべきだと答えた方が実に六六・五%です。依然として、慎重審議を求める声が根強いことは明らかです。

 先週は、北海道と宮崎県で地方公聴会を本委員会は行いました。私は北海道の会場に行きましたけれども、中小企業の役員さんからも、さらに勉強会が必要だという表現や、また、農業に関しても、北海道にとっては死活的問題で、慎重な議論をしてほしいとの言葉もありました。

 さらに地方の声を聞く必要はあると思いますし、昨年の安保法制の特別委員会でも中央公聴会は行われてもおります。あわせた開会なども必要ですし、さらなる参考人の質疑なども私たちは理事会でも要求してきました。

 改めてこの場でも主張、表明しておきたいと思いますし、委員長、理事会での協議をよろしくお取り計らいください。

塩谷委員長 理事会で協議して対応いたします。

畠山委員 それで、きょうは、TPPが医薬品の価格、薬価制度にどのような影響を与えるかについてじっくりと聞きたいと思います。

 十月六日の参議院予算委員会で、我が党の小池晃参議院議員が、抗がん剤オプジーボについて、高い薬価の問題を質問しました。オプジーボは、一昨年九月に薬価収載されております。薬価収載というのは、大臣はもちろん御存じですけれども、新しい薬が保険適用されることであり、当初は、百ミリグラム瓶で七十三万円という薬価でしたが、適用範囲が広がったために対象者も広がったことにより、薬価を本当に引き下げるべきではないかという質問でありました。

 本来、薬価は二年に一度改定を行います。先日、厚生労働省は、このオプジーボで最大二五%の引き下げを行う特例の報道がありました。薬価の引き下げは、患者にとっても保険財政にとっても、もちろんいいことであります。その際、これは特例で引き下げるというふうに報じられていましたが、それは具体的に何を指しているか、まず御答弁ください。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 今、畠山委員から御指摘のございましたオプジーボでございますけれども、これは、もともと京都大学の本庶先生がつくり出した我が国発のもので、世界で最初に日本で上市をされた。しかし、それが最初はメラノーマ、皮膚がん、約四百七十人ぐらいを対象とする予定でございましたが、それが肺がんにも適用になるということで、これが一万五千人まで広がった、こういうことで大幅な市場の拡大が見込まれたわけでございます。

 こうした状況を踏まえて、国民負担軽減の観点から、医療保険財政に与える影響を考慮して、今御指摘のあった、二年に一度の薬価改定の年ではございませんけれども、緊急的に薬価を引き下げるとともに、より効果的な使用を徹底することを、現在、中医協、中央社会保険医療協議会において検討してございます。

 従来、薬価算定のルールには、市場が大幅に拡大をした場合に適用する市場拡大再算定というのがございますが、これに加えて、その特例というのを既に導入いたしております。この仕組みがございますので、その仕組みを含めて、どういう適用があり得るのかということについて、緊急的に薬価を引き下げる方法について、現在、中医協において検討をさせていただいているということでございます。

畠山委員 きょう午後の質疑でも、この市場拡大再算定制度については取り上げられております。その是非についてはきょうは私の方からは触れませんが、ともかく、明らかに高いであろう薬価の引き下げにかかわる根拠となる国の制度であるということを確認しておきたいと思います。

 ところが、この制度が米国から目のかたきにされてきたことに心配があるということです。例えば、日米経済調和対話、二〇一一年二月ですが、「市場拡大再算定ルールが企業の最も成功した製品の価値を損なわないように同ルールを廃止もしくは少なくとも改正」ということを要求しております。

 ですから、日本の医療業界でも心配の声が上がっています。医療系の専門サイト、メディファクスでは、ことし二月に、日本医師会今村副会長が次のように述べております。「米国が以前から年次改革要望書などで、新薬創出加算の恒久化や市場拡大再算定の廃止などを要求していることも懸念材料。」と、業界でも心配の声がこのように上がっています。

 そこで、大臣に伺います。

 日本の薬価制度にTPPは何の影響も与えないと言えるのでしょうか。

塩崎国務大臣 これは何度もお答えを申し上げておりますけれども、そもそも、医療などの社会保障分野については、将来留保をまず大きな意味でかけているということでございまして、まさに今申し上げたように、医療保険財政そのものに大きな影響を与える、それをどう守っていくかということに関しては、国家主権において我が国がTPPのもとでも守り切れるというふうに考えているところでございます。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

畠山委員 それでは、なぜ心配の声が上がるのかといえば、根底には日本とアメリカの薬価制度の違いがあるからだと思うんですね。

 日本では、新しい薬価を決める際は、先ほどからありましたように、製薬企業からヒアリングを行って、中医協で算定案が了承されるという手続となります。いわば公定価格というふうに言えると思います。

 一方で、米国にはこのような仕組みはありません。基本は、製薬企業とそれから保険会社の協議による、間にいろいろなものが入るときはありますけれども、いわば自由価格と言えると思います。ですから、製薬業者が薬価の設定には大きな力を持っているわけです。

 基本的には、日本とアメリカの薬価の仕組み、このような違いということで、大臣、よろしいですね。

塩崎国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、薬価につきましては中医協で決めるということになって、事実上の公定価格というふうに表現されましたが、基本的にはそうであり、米国の場合には市場で薬の価格は決まるというふうに理解をしております。

畠山委員 そのことを確認した上で、この違いが浮き彫りになっているのが日米間のサイドレターだというふうに思います。

 保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡というサイドレターがあります。その「透明性」という項があります。ここでは、中医協も該当するであろう「審議会等」という表現がありますが、そのあり方については次のように書いています。「外国の関係者を含む全ての利害関係者に対し、審議会等の会合を傍聴し、又は審議会等の会合に出席し、若しくは意見書を提出することを認めること。」とあります。

 それに続けて、サイドレターでは、透明性の確保とはこういうことだと言わんばかりに米国のことが紹介されています。例えば、諮問委員会の設置の事前の通知、予定されている会合の事前の通知、諮問委員会の記録への同時のアクセス、情報提供の機会などなどが列挙されています。

 結局、中医協や日本の薬価制度も、透明性の名のもとに米国のルールに合わせよとサイドレターでは示しているということになっているのではありませんか。違いますか、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 いわゆるサイドレター、交換文書でございますが、ここに、今少しお話をいただきましたが、審議会等の設置及び運営に関する透明性の重要性を確認するとともに、外国の利害関係者が審議会等を傍聴する、または審議会等へ出席をし、もしくは意見書を提出するということを認めることが、おっしゃったように、記されているわけでございます。

 御指摘のこの交換文書というのは、これはもう何度も答弁を申し上げてきているところでございますけれども、法的拘束力があるわけではない文書であるということ、そして、本件は、日本政府と米国政府が、それぞれの審議会、諮問委員会等の設置、運営等について、国内法令に従った透明性の確保を確認したものだというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 我が国の中央社会保険医療協議会、中医協は、既に内資、外資を問わず、関係者は出席は自由でありますし、意見を表明する機会も与えられるわけであり、また、希望があれば当然会議の傍聴、これはもうフルオープンでやっていますので、そういうふうになっています。

 中医協の運用を見直す必要はないわけでございますので、御指摘の交換文書によって新たな義務が発生するものではないということでございます。

畠山委員 サイドレターの性格については、二十八日の本委員会で私も質問で取り上げさせていただきました。二〇一六年外国貿易障壁報告書に対する日本政府のコメントの中に、概観で、TPPについては、途中省略しますが、いわゆるサイドレターに従って着実に実施していく考えということが盛り込まれていました。

 しかも、私、きょうつけ加えたいのは、このサイドレターは、協定本文の第二十六章、透明性を受けてのものだということがきちんと書かれているんです。第二十六章に、では、何が書いてあるか。その第二条四項には、規則の案に対して製薬企業が事前に物言える仕組みが書かれているのではないかと私は思います。

 意見提出、今言われたような、意見を出す前の期限日の六十日前、または、利害関係者が規則の案を評価し、並びに意見を作成し、及び提出するための十分な時間を提供するものの間に公表せよと書いています。

 つまり、案の段階から製薬企業が口出しできる仕組みではないのか、それが第二十六章の透明性ではないか。その章に基づいてサイドレターで書いていますよというふうに、事実、そういうふうに書いているわけですから、多くの医療関係者が心配しているわけです。

 これは総理に伺いたい。

 この間、ずっとサイドレターの扱いや米国からの要求はさまざまあるということをこの委員会では指摘をしてきました。そして、今申し上げたように、サイドレターを見ても、協定本文を見ても、米国の製薬企業が日本の薬価、公定価格に対してどんどん口出し、介入して、変えていくということは可能ではないのですか。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘されました日米間の交換文書、サイドレターについてですが、御指摘の交換文書では、医薬品等に関する附属書に関するあらゆる事項について協議する用意がある旨を確認しています。しかし、これは米国政府の意見を受け入れることを約束するものではありません。

畠山委員 いや、そういうことだけではないと私は聞いたわけですけれども、本当に、アメリカ製薬企業から介入されるような仕組みに基づいて、日本の薬価制度は変わらない、それをきちんと、総理、断言できますか。

安倍内閣総理大臣 既に厚労大臣から答弁をさせていただいておりますが、薬価制度については、我が国の薬価制度を我々は極めて合理的に決めている、このように考えておりますので、我々がいわば、もちろんサイドレターはございますが、米国から要求されたとしても、我々は薬価を決めている今の仕組みを変える考えはございません。

畠山委員 まだもう少し実は議論したいんですよ。私たち自身は、薬価については、この透明性というときに、国民に安価な薬を提供するために、不当に高い薬価になっていないか情報の公開を求めることなどは必要だとは思うんです。ただ、TPP協定の言う透明性というのはそれと違うのではないかということを先ほどから述べているわけです。

 つまり、米国が要求するような自由価格を土俵にした米国の薬価の決め方、そのような製薬企業にとっての透明性ではないかということを私は指摘したいわけです。このサイドレターだけでなく、ずっと協定文書を読んでいくと、それにかかわるような仕組みの章がまだあるのではないか。

 では、続けて、またそれを聞きたいと思うんです。利害関係者が政策決定過程に関与できるのは、今言った透明性の章だけではありません。ほかの章にも仕掛けがあります。第二十五章、規制の整合性について、続けて聞きます。

 まず確認します。

 石原大臣、この章は何のための章ですか、説明してください。

石原国務大臣 お答えいたします。

 二十五章は、今委員が御開陳されました規制の整合性についての規定をしている章でございます。

 その内容は、各国が行う規制について、よい慣行、グッドプラクティスという言葉が用いられておりましたけれども、また、情報交換や協力など努力規定を定めたものと承知しております。

 その範囲についてでございますが、二十五章第三条におきまして、協定が発効した後一年以内に決定することとされております。今後、各国の状況も踏まえつつ検討する予定でございます。

畠山委員 今ありましたように、この章は、つまり各国の規制を差別なきものにする上でそれをどうするかということを示している章であります。ですから、日本の薬価制度も、米国の製薬企業側から見れば障壁と映る可能性はあります。

 そこで、今、石原大臣は早く答弁されましたが、問われるのが三条になると思います。この三条というのは、対象とすべき規制措置の範囲をどこまでとするかということについて書かれているわけですが、一年以内に各国が決めると、今、石原大臣は答弁されました。

 では、日本は、国内の規制のうちどこまでを範囲と定めるのでしょうか。

石原国務大臣 結論から申し上げますと、我が国で実施している政策評価の対象となっております規制措置が中心になるのではないかと考えております。

 先ほどもお話をさせていただきましたが、詳細につきましては、各国がどういうふうにやるか、動向を見きわめて決定をしていく、検討していく、こういう段取りになるものと承知しております。

畠山委員 一般的には、もちろん各国がこれから決めるということであり、それでは日本はどこまでがその範囲かということをやはり示してもらわないと、先ほどの薬価制度がこれに入るのか入らないのかということが問われてくると思うんです。

 しかも、この第三条は、その後に、目標とすべきは「相当な範囲」と書かれています。どこまでを相当とするかは各国にもしかしたら委ねられるかもしれません。だからこのように具体的に聞きたいわけです。

 石原大臣、この「相当な範囲」ということについての考え方をまず初めにお聞かせください。

石原国務大臣 今委員が御紹介いただきました二十五章の三条でございますが、「相当な範囲を対象とすることを目標とすべきである。」という努力義務規定になっております。

 そんな中で想定されるものでございますが、ざっくばらんな言い方をすると、かなり御議論のあった、多くのものが対象規制の措置とすることを求められているのではないかと認識をしているところでございます。

畠山委員 よくわからなくなってくるんですよね。だから具体的に、やはりここから話を詰めなければなりません。

 今示してもらわないと、議論してきた薬価制度は、政府はずっと守れる守れるということを言ってきたわけですけれども、では、その規制にかかわる範囲に入るのか入らないのか、このことがやはり焦点になると思うんですよね。薬価を決める今の日本の制度、仕組みまで、その規制が外される対象となるかどうか。どうするのか、ここに含まれるのか、はっきりとお答えください。

石原国務大臣 先ほど御答弁させていただきましたとおり、今、具体的にどこまでというものは決まっておりませんけれども、自国の厚生労働行政にネガティブな決定というものは、これは努力義務規定でありますから、我が国がとるということは想定しておりません。

畠山委員 もちろん、ネガティブなことは、それはそうなんですよ。

 一年以内に決めるということですが、批准を今もちろん議論しているわけでありまして、その前に、やはり何の範囲まで、留保を含めたことをずっと私は見てきました。何が日本にとって留保となり、外されるかということも一つ一つ見てきたつもりです。

 ただ、この章にひっかかるんですよ。統一のルールを決めることによって、政府は今は守られるということを言いますけれども、何年か後にそれが外されるという仕掛けがここにあるのではないかという強い問題意識を持っています。したがって、この薬価制度においても、きちんと入るのか入らないのか明確にしてもらわないと、やはり、業界の皆さん、患者の皆さん、心配は晴れないというふうに私は思うわけです。

 そこで、伺いたい。どの範囲まで決めずに、そもそも批准していいはずがないじゃありませんか。フリーハンドで政府に任せろということなのでしょうか。しかも、この規制の整合性に関しては、そのようなことを話し合える小委員会がつくられます。

 これは事務方で結構ですが、第八条には何と書いてあるか読み上げてください。

澁谷政府参考人 二十五章の第八条でございますが、「規制整合性小委員会は、締約国の利害関係者が規制の整合性の推進に関連する事項についての意見を提供する継続的な機会を与えるために適当な仕組みを設ける。」と規定してございます。

畠山委員 ここでも、やはり利害関係者が規制の整合性を進めるために、つまり、ルールを統一していくために、意見を提供する継続的な機会を与えるということが書かれているわけです。ですから、継続的なわけですから、政策立案過程も含めて入ってこれるのではないか、サイドレターで指摘されていたアメリカのようなことなどは実際にこのような中身において保障されているのではないかというふうに思うわけですよ。

 石原大臣、だから、もう一度戻って聞きます。この薬価制度の問題、冒頭に述べたように、高い薬価で大変苦しまれている方々がいます。事は命にかかわる問題です。一年以内にその対象をどうするかということを言いますけれども、フリーハンドでこのことを批准するわけにはいきません。薬価の問題をどうするか、もう一度答弁してください。

石原国務大臣 ただいま澁谷参考人の方から御答弁させていただいた、二十五章の八条をどう読むかということにかかってくるんだと思うんですが、これは、小委員会は協議機関として設けるということが決まっております。

 しかし、利害関係者が規制の整合性の推進に関連する事項について意見を提供する機会を与えるための適当な仕組みを設ける義務を小委員会が負っているわけでございまして、小委員会はどういう構成になるかというと、TPP協定の場合はコンセンサス方式でございます。サイドレターでバイの場合は相互主義。ですから、委員の御懸念の、我が国の厚生労働行政を根本的に変えてしまうような決定はなされないというふうに考えているところでございます。

畠山委員 それであるなら、薬価制度は入れませんと一言言ってください。そうなんじゃないですか。それでいいんですか。

澁谷政府参考人 規制の範囲でございますが、石原大臣が御答弁申し上げましたとおり、我が国で現在考えておりますのは、政策評価制度で事前影響評価が義務づけられておる規制がございます。政策評価法の政令におきまして、この対象となる規制は、「国民の権利を制限し、又はこれに義務を課する作用」というふうに書いてございまして、そういうものを現在我々は、影響評価、事前評価の対象にしてございます。

 この二十五章というのは、規制の中身というよりは、規制を制定する際のグッドプラクティス、例えば、このまさに事前影響評価のようなものをどの程度しているかということについてお互いに議論をする場でございますので、そういう意味でもこの政策評価の対象になっているものというふうに現時点では私どもは想定しているところでございます。

畠山委員 いや、これはやはり大臣が答弁するべき性格の問題だと思いますよ。

 それであるならば、総理に伺います。

 この規制の整合性という章は、今回、薬価制度を例にとりましたけれども、あらゆる規制に物言える章であります。そこの小委員会が、利害関係者が意見を言える仕組みとして、きちんと書いております。

 TPP交渉を通じても、米国から強い要望が出されてきたのは製薬会社であることは周知の事実です。医薬品データの取り扱いをめぐって最後まで議論が交わされたという報道もありました。当然、規制の整合性の章を通じた利害関係者として政策立案過程にまで関与できることになってしまうのではないのでしょうか。

 そこで、総理に、先ほどと同じようにもう一度聞きます。米国の製薬企業が日本の公定価格の薬価制度に対してどんどん口出し、介入して、変えていくことは本当にないと言い切れますか。

安倍内閣総理大臣 委員がおっしゃっているのは、第二十五章第八条では、TPP参加国の利害関係者が規制の整合性の推進に関する意見を提供する機会を与えるため、規制整合性小委員会が仕組みを設けることとしているということだろうと思いますが、その具体的なあり方は小委員会の設置後に議論されることになります。

 しかし、TPP協定で設置される小委員会の意思決定については全会一致方式によるものでありまして、全会一致方式でありますから、日本が反対するような内容が決定されることはないわけでございます。我々が納得できないようなことを、米国がこれやれと言って、わかりましたと言うことは、これはないわけであります。

 そういう意味におきましては、基本的に、私どもがとってきた薬価の決定方式について、そしてまた、先ほど、対象の方がふえたがために、非常に薬価の価格によって結局医療費の負担として大きくのしかかってきたものに対しまして見直しをするというようなことは、大変合理性があるものであろう、こう考えるわけでございます。

 我々が合理性があると考えるものを米国が自分たちの利益を優先させて日本に変えろと言うことについて、我々がそれを了解することはないということは申し上げておきたい、このように思います。

畠山委員 だから、そうであるなら、薬価制度は外しますと一言言えば済んだ話なんですよ。それが今までないところに医療業界の皆さんの心配があるのではありませんか。

 この規制の整合性は、実は歴史があります。二〇一一年の米日経済協議会のTPPへの日本参加の実現に向けてという文書をこの間見つけました。ここには、基本原則の六として、「規制の一貫性を高める協定」とTPPを位置づけております。こう書いています。「米国政府は、TPPの交渉において規制の一貫性を促進することに特に重点を置いており、これは米国ビジネス界からも強い支持を受けている。」そして、「利害関係のある全てのステークホルダーが自分たちの利害に影響をもたらす政策、法案、規制、手続、行政決定を認識し、ルール策定作業に参加できて初めて意味をなす。」こういうふうに書かれているわけです。

 ステークホルダー、利害関係者たる企業がどんどん介入しようとTPPが進められたことは明瞭です。

 そこで、総理、通告していませんけれども、実は、次の質問の機会で私はTPP委員会というものを取り上げたいと思っているんです。

 第二十七章にそれが書いてありまして、先ほど、コンセンサス方式、いろいろなことを決めるのはもちろんコンセンサス、一致して決めるということは、それは当たり前なんです。ただ、この第二十七章において、そのコンセンサスが一致しない場合においては書面において五日以内にその理由を出しなさい、そうでなければ認めませんというようなことが書かれております。

 実は、このTPP委員会は、三年後から協定自体の見直しも始まります。小委員会や作業部会も自由につくることができます。政府が生きた協定と言っている本質が、組織の面からここにあるというふうに思うんですよ。

 だから、きょうは触れませんけれども、実は関税撤廃に関する重要な内容もここに含まれていて、今度じっくりと第二十七章、TPP委員会について議論をさせていただきたいと思っています。

 今、現制度が維持されても将来にその保証はないというものです。薬価制度に介入して変更を迫り、国民の命にまで影響を与えるようなTPPならば到底認められないことを主張して、質問を終わります。

塩谷委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 本日は、質問の前に一言申し上げます。

 今回の委員会でありますけれども、これが決定したのが、正確には金曜日の午後五時を超えてからの理事会でありました。

 我々は以前から、役所の皆さんにもしっかりと働いていただくために、二営業日前には質問を出すべきだと。これは、国会でも地方議会でも当たり前で、各国の国会でも地方議会でも行われていることですけれども、これだけ日程闘争がひどいのは日本だけであります。

 しかも、通常、我々は、こうしたテレビ入りの質疑でも前日の十二時というのをリミットに一応しているわけですけれども、今回は、しかも五時を過ぎてから決めて、そして、役人の皆さんもおっしゃっていました、毎日毎日徹夜続きなんです、さらに土日も出ますと。

 ブラック企業をやめさせようという政府と、ブラック企業は許せないという野党、これが集まって、行政を申しわけないブラック企業にしてしまうというわけにはまいりませんので、この点については、委員長、また理事会から、議運で改善を求めるということをお願いしたいと思いますが、いかがですか。

塩谷委員長 今の意見について、理事会で協議して対応していきたいと思います。

松浪委員 ありがとうございます。

 与野党の先生方から今賛成の御意見をいただいたので、大変力強い思いであります。(発言する者あり)両方であります。

 とにかく、前回私がこの集中質疑に立たせていただきましたときに、TPP、我々は推進の立場でありますけれども、食の安全というものをしっかり守らないと、このTPP自体にも国民の皆さんの御理解は得られないということを申し上げてまいりました。かなりきつい質問をしたんですけれども、その質問後、自民党も、公明党の皆さんも、いい質問だと言っていただきました。共産党の先生からも、勉強になりましたと言っていただきました。民進党の皆さんからは、反対に回った方がいいんじゃないかというお褒めの言葉もいただきました。

 しかし、我々は、賛成の立場を一貫しておる政党であります。こうした問題をクリアしながらも、やはり全体を見なければなりません。

 そこで、我が国は、このTPP、その先にはFTAAP、アジア太平洋自由貿易圏を形成して、中国も、そしてアメリカも、これも両方入っていただいた上でのさらに高い目標を掲げているところであります。

 こうしたFTAAPの形成を視野に入れた場合、今回、TPPの加入によって我が国はどうした有利な立場に立てるのか、総理にまず伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPは、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々とともに、二十一世紀にふさわしい新たな自由、公正で開かれた国際経済システムをつくり上げ、経済面での法の支配を抜本的に強化するものであります。

 TPPによってつくられる新たな経済秩序は、単にTPPの中だけにとどまらず、ただいま委員が例として挙げられましたように、中国も参加するRCEPや、より大きな構想であるFTAAPにおいてルールづくりのたたき台となり、二十一世紀の世界のスタンダードになっていく大きな意義を有している、このように思っております。

 このように、TPPの早期発効により、中国が参加するRCEPや日中韓FTAといった交渉を促進する効果が期待され、新たな国際経済システムをつくり上げていく上で我が国が主導的な役割を果たしていくことにつながっていくと考えております。

松浪委員 ありがとうございました。

 我々はこれから、食の安全では厳しいことを言いますけれども、本当に、これからの、中長期的に我が国を見た場合には、政府と戦略をともにするものだということを確認いたしたいと思います。

 それでは、食の安全の問題に移りたいと思います。

 この委員会の冒頭、自民党議員の方が食の安全の問題を質問されました。科学的見地に立つものだということで、政府からいつも答弁をいただくわけです。TPPも、今までのルールは、科学的見地に立てば、科学的根拠があれば変えられるというんですけれども、私、その御答弁を聞いていて、あいたたたと思ってしまいました。

 なぜならば、遺伝子組み換えのDNAの検出について、松本大臣はもう普通におっしゃいました、新技術で新たにDNAが、可能になった場合は適用範囲を広げていくということであります。

 つまり、今使っているのは、私、役所の皆さんに伺うと、実に平成十一年の技術で今の検出技術というのは行われている。今新しいものが開発されているということでありますので、消費者の立場に立てば、これから検出技術が上がってさらに適用範囲が広がるんだったら、今食べているものはどうなるんだろう、私たち、本当にこれは遺伝子組み換えじゃないということがわからないというふうに思わざるを得ないんですね。

 三枚目の資料ですけれども、前回、大豆を私は例にとりました。これはまさに、存在しない表示義務の問題であります。我が国は、遺伝子組み換え食品については表示は義務化をしているけれども、では、その義務化した表示というのが使われているかどうかという問題であります。

 ここに表示義務と赤い部分で書いているんですけれども、その上、大豆が主に使われているしょうゆとかサラダ油の問題であります。この大豆としょうゆ、こうしたものが表示義務がないために、実際、豆腐では表示義務があるから、豆腐をつくるよりも、我が国はほとんど大豆を輸入していますから、それは目に見えないところにやっちゃいましょうよというのが我が国の仕組みであります。

 そして、さらに、もし遺伝子解析の、しょうゆとかサラダ油とか、なかなか難しいと思いますけれども、そういうところから抽出する技術ができれば、ここは表示義務になるわけですよ。すると、消費者の立場に立てば、これはちゃんと書いてくださいよというのが私は筋だと思うんですね。

 そこで、石原大臣に伺います。

 まず、よく科学的根拠というけれども、これはあくまで、私の解釈からいえば、現在の科学技術で立証できる根拠だと考えているんですけれども、大臣の見解を伺います。

石原国務大臣 大豆の話は、私も、松浪委員に言われた後、豆腐屋へ行きまして、相当調べたんですけれども、一つも発見することができませんでした。

 それと同じように、科学技術が、現在の、しかも検査を始めた平成十一年の基準であるということは、もうそれから相当な技術進歩が起こっておりますので、今調査をしたらどうなるのかということを想像しますと、本当にそれでいいのかというようなことは、消費者としては言えるのではないかと思っております。委員のお考えに大変近いことを常々考えさせていただいております。

松浪委員 期待しない、大変前向きな答弁をいただきました。(発言する者あり)いやいや、期待したよりですよ。

 それで、私、提案したいと思うんですね。表示義務を入れるからであって、非表示の部分が、これだと、しょうゆは表示義務がないんだな、豆腐は表示義務があるんだなと消費者が勉強しないといけない。

 私、きょうは提案します。一律に、使っていないものについては組み換えでないと。EUなんかは表示、非表示しかないんですけれども、日本の場合は不分別、分別していないですよというものも義務化しているわけですから、使っていないものについて、非表示になっている部分、使っていませんよというところを、今、遺伝子組み換えでないとか不分別とありますから、そこを義務化すれば、私は、この問題はかなりしっかりと消費者に、しょうゆはこうだから、それから豆腐はこうだからというところを、一律のルールにすれば消費者は迷わずに済むということをまず提案、指摘をしたいと思います。

 それに、科学の部分を今ちょっとお答えいただけなかったんですけれども、さんざん議論で出ていますラクトパミンなんかも、コーデックスで六十七対六十九で、これは多数決で決まった。普通、科学的というと、万有引力の法則があるとか、地球は太陽の周りを回っているんだ、太陽が地球の周りを回っていないんだという当たり前の、議論の余地のないものだと思うんですけれども、こういうときに、やはり科学的ということの使い方が我々は少し間違っているんじゃないかなと思います。

 こうした点で、前回は私はちょっと、日本人の精子が減っているなんと言って、厚労省の方がそういう事実を把握していないということはまさに思わなかったので、うまい答えが得られなかったんですけれども、今回はアレルギー。

 アレルギー疾患がふえている原因について、手短に厚労大臣に伺います。

塩崎国務大臣 御指摘のとおり、アレルギー疾患により医療機関を受診している患者の方々の増加傾向は、これは事実ございます。

 そして、アレルギー疾患は、人によって症状が大きく異なるわけでございまして、住環境あるいは食生活、こういったものの変化がさまざまな複合的な要因で作用している可能性が指摘をされています。このため、発症の原因が特定をされているものは比較的少なくて、増加の原因について一概に申し上げることはなかなか難しいというふうに思っております。

 厚労省としては、今後も、原因の究明、そしてアレルギー疾患の予防、治療のための調査研究を推進してまいりたいと思っておりますし、最近はいろいろ、結婚式の案内が来たときに、何のアレルギーですかということをお尋ねするような、そういうクエスチョネアも入っていたりするわけでありますけれども、我々も心して調べていかなきゃいけないと思っております。

松浪委員 そうですね。昨晩も同じ結婚式に参加をしておりましたので、大臣もよくおわかりだと思いますけれども。

 こうした中で、今大臣から答弁がありましたのは、日本人のアレルギーとか、それから先ほど申し上げた精子の低くなっている問題とか、いろいろな問題、体の変化の問題は、一つには、政府ですら特定できないわけでありますので、私は、消費者が不安に思うのはしようがないと思います。ですから、せめて選択の権利というものはしっかりと守っていくということが我が国に課せられた使命だと思います。特にTPPでこれからふえますので。

 そして、次に伺いますのは、私も前回取り上げました乳牛の乳量増加のホルモン剤、rBSTとか、肉をたくさん、一・五倍ぐらいのスピードで成長させる肥育ホルモン、それから飼料添加物、きょうも話題になっていましたラクトパミン。(パネルを示す)

 オレンジの部分、私、前回、カナダがどうなっているかわからないということで役所にも問い合わせていたんですが、二週間たってもまだ役所も確認中ということでありますので、役所の方もしっかりと、こうしたものは我々にも情報提供できるぐらいの体制をとっていただきたいなと思うわけであります。

 特に、こうした問題、EUが厳しいわけであります。成長ホルモンやこうした肥育ホルモン剤、飼料添加物については厳しいわけでありますけれども、EUがこれを厳しくしている理由について伺います。

塩崎国務大臣 御指摘の、乳量増加の目的で乳牛に使用されていますrBSTというもの、これにつきましては、EUが使用を禁止した当時の研究では、乳量増加に伴って搾乳回数がふえるということなどによって、乳牛が乳房炎にかかりやすくなってしまうという指摘がありました。そういうことで、食品の安全性の問題というよりは、いわば動物の福祉というか、アニマルウエルフェアというわけでありますが、この観点によって乳牛への使用を禁止しているというふうに承知をしているところでございます。

松浪委員 厚生大臣からアニマルウエルフェアの点も今指摘をされました。普通に、乳量をふやすとか、人間でいえばすさまじい勢いのドーピングを行っているわけですけれども、これはまさに動物に対する虐待に当たるんじゃないかと私は個人的には思っています。

 私、オートバイの排ガスの規制なんというのをずっとやってきたんですけれども、環境省の基準は常に世界の基準よりもすごく厳しいんですよ。それが厳しいことによって、日本の排ガスとかをクリーンにする技術が上がるんだということがあるんですけれども、こういうのは、環境省、世界に先駆けて本当に厳しい姿勢で臨んでいただきたいんですけれども、アニマルウエルフェアの観点から山本大臣に伺います。手短にお願いします。

山本(公)国務大臣 松浪議員にお答えいたしたいと思います。

 動物愛護管理法では、環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関する基準を定めることができるとされております。これに基づきまして産業動物の飼養保管基準を定めていますが、この中では、産業動物の使役等の利用に当たっては、産業動物の安全の保持に努めるとともに、産業動物に対する虐待を防止することや、扱う動物種に応じて、産業動物の快適性に配慮した飼養及び保管に努めることなどが規定をされております。

 環境省といたしましては、成長ホルモンの投与の有無にかかわらず、家畜の飼養保管に当たっては、産業動物の飼養保管基準に則した適切な取り扱いがなされる必要があると考えております。

松浪委員 いや、大臣、今、成長ホルモンの付加などにかかわらずとおっしゃいましたけれども、我々が欲しいのはそういう答弁ではなくて、本当に、日本としてこういうものは許さないんだという政治的な姿勢を大臣にはこれから示していただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、四枚目、先ほど私は消費者の立場から大豆を示したわけでありますけれども、きょうはトウモロコシを持ってまいりました。このトウモロコシもややこしいんですね。

 トウモロコシというのは、コーンフレークというのがありますね。コーンフレークは、もちろんトウモロコシからできています。しかし、コーンフレークはもともと、コーングリッツという、コーンを胚芽とかそういうものを除いて乾燥したものからつくるんですけれども、通常のコーングリッツは、検出できるかどうかという問題で、表示義務があります。そして、通常のトウモロコシ製品にもあります。そして、コーンフレークには表示義務がありません。

 さらに、スイートコーン、皆さん、スイートコーンを御存じですかね。スイートコーンというのは、この間、緒方先生が総理に、芯のついた遺伝子組み換えのコーンとそうでないもの、どちらを食べますかなんて言っていましたけれども、これは日本では年間二十四万トンつくられていまして、輸入が実は十七トンだけ、役所の現場の方も知りませんでしたけれども、十七トンだけある。ほとんど日本産ですけれども、これにもあると。

 私、ちょっとこれはわかりにくいなと思って、スイートコーンは実は、野菜出荷安定法で未成熟のコーンは野菜で、そして、乾燥すると穀物になると。ちょっと私、維新の控室でお医者さんも二人いる中で聞いてみたら、いや、そんなことは知らないよと言われたんですけれども、きょうは山本大臣には全然通告していないんですけれども、これは、農林族の先生方だと、野菜と穀物とトウモロコシで違うというのは大体御存じなんですかね。

山本(有)国務大臣 私は、農林族かどうかわかりませんが、存じ上げてはいません。

松浪委員 よかったです。我が党の政治家がみんな不勉強過ぎるのかと思いましたが、安心をいたしました。

 これも先ほど申し上げたのと同じ原理でありまして、通常は任意で不使用を明記と書いているんですけれども、日本では、不使用だということは、つまり遺伝子組み換えでないという表現は、先ほど石原大臣も山ほど見たと思います、これはどうして書けるかというと、実は、分別生産流通管理といって、生産、流通のところで分けられるから、組み換えでないと書けるんです。しかも、EUと違って、こっちは不分別ということまで書けるんですから、日本の仕組みは、改良するには極めて簡単、そして、極めて明快にすることが私はできると思います。

 ですから、このコーンフレークでも、わからなければ不分別と書いておけばいいだけで、この表でいう表示義務の上の部分を何かということではなくて、左側のところに、遺伝子組み換えでないのか、不分別なのかということさえしっかりと書けばいいんです。

 しかも、これは通告していないんですけれども、生産流通管理、実は、立入検査等をしているか、参考人も呼んでいますが、大臣でも結構ですけれども、これだけお答えください。

北島政府参考人 お答えいたします。

 食品に関しましては、食品衛生法に基づきまして、流通している食品の検査を行っているところでございます。

松浪委員 私が聞いているのは、この分別生産流通管理は書面でこれを許可するわけですけれども、これについて、それがうまくいっているかどうかというのを立入検査等をしていますか。

北島政府参考人 申しわけございません。厚生労働省でございますので、表示に関しては所管してございません。

松浪委員 違う、違う。表示じゃなくて、この分別生産流通管理というものについては、これは立ち入って検査というのはしていますか。

北島政府参考人 原則として、表示しているものについて、その内容と一致するかどうかということについては、一般論としては検査できる仕組みがございますけれども、どのくらい検査しているかということについては手元に資料がございません。

松浪委員 ごめんなさい。現場の人としゃべったんですけれども、実はこれはやっていないんですよね。やっていないんだったら、やっていないもので遺伝子組み換えでないと書いているぐらいなら、しっかりと立ち入りも、検査をして、そして、遺伝子組み換えでないというものを、今の遺伝子組み換えでないというのは、実はこの分別生産流通管理という最初の紙っぺら一枚の許可だけでやっているわけですから、ここのところをしっかりと強化すれば、私は、消費者の目線に立った非常にわかりやすいシステムに変えることができると思います。

 先般、スーパーで表示商品がない、西村康稔議員が私と一緒に議連をつくろうと言ってもらっていますから、これはもう逃げられないですよ。しっかりと議連をつくって我々もやりますので、今後ともの善処を政府にお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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