衆議院

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第5号 平成13年2月16日(金曜日)

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平成十三年二月十六日(金曜日)

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  平成十三年二月十六日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 永年在職の議員保岡興治君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)、法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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 永年在職議員の表彰の件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 本院議員として在職二十五年に達せられました保岡興治君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は、議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 表彰文を朗読いたします。

 議員保岡興治君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) この際、保岡興治君から発言を求められております。これを許します。保岡興治君。

    〔保岡興治君登壇〕

保岡興治君 激動の二十一世紀の幕が開き、このたび、今世紀初の本院永年在職議員として、院議をもって表彰を賜りましたことは、まことに光栄であり、感慨ひとしおであります。(拍手)

 二十五年にわたり国政に参画できましたのも、ひとえに私をはぐくんでいただいた、ふるさと奄美大島、鹿児島の皆様方の温かい御支援と、諸先輩、同僚議員各位の御指導、御鞭撻のたまものであります。また、今日まで一番身近で支えてくれた、後援会、家族並びに親戚、友人の励ましと協力や、事務所の諸君の厳しい選挙の最前線で流した汗と涙の積み重ねのおかげでもございます。本日、私が賜った栄誉は、これらの方々ともどもにいただくものであり、重ねて心より感謝申し上げる次第であります。(拍手)

 思えば、私の政治の第一歩は、ふるさと奄美のサトウキビ価格の大幅な引き上げの闘いでございました。遠い南の島々から船で上京した大勢の皆様と一緒に、早朝、時の総理大臣田中角栄先生の目白の私邸に大挙して押しかけたり、郷土の先輩二階堂進官房長官や山中貞則沖縄開発庁長官に必死で陳情した昔を、今、懐かしく思い出します。また、手づくりで零細な経営に苦しんでいた郷土の宝物、大島紬や川辺仏壇の振興のため、伝統工芸品産業振興法案を成立させました。これが私の手がけた最初の議員立法であります。(拍手)このように、私もまた多くの同僚議員と同じく、恵まれない人々や地域のために政治の光を当てたい、喜びをともにしたいとの一心で政治の道に入ったのであります。

 私は、昨年の七月、山崎拓君を初めとする皆様の温かい御推挙により、第二次森内閣の法務大臣に就任することができました。厳しかった選挙や苦難を乗り越えての就任であっただけに、本当にうれしく、感謝の心を持って、職責を全うすべく日々努力いたしました。(拍手)

 さて、IT革命や科学技術の目覚ましい進展は、人類社会にはかり知れない大きな影響を与えようとしています。この時代の急激な変化は、明治や戦後と同じように、国家国民のあり方を定める憲法を初め、教育、経済、その他あらゆる分野にわたり、洪水のように法の改変を求めています。今や、まさに大立法時代というべきときを迎えています。また、国内を官僚が効率よく治めた時代から、舞台は世界に広がり、ルールと自己責任のもとに、知恵と創意工夫を自由に競い合う時代になりました。国家の基本的インフラは、行政から司法へと大きく移りつつあります。法務大臣として、経済の基本法制や司法制度改革を初め、歴史的課題に取り組むことができましたことは、まことに幸せであり、誇りとするところであります。

 また、少年法が五十年ぶりに改正され、その審議に参画し、改めて、少年非行事件は世を映す鏡であることを痛感いたしました。今、政治、経済、社会のあらゆるところから、まるでうみが吹き出るように、重大な不祥事や目を覆いたくなるような事件が、これでもかこれでもかと襲いかかってきます。しかし、歴史的な大転換期には、古い社会から一気に問題が噴出し、新しい時代がそこから生まれるのであって、これは必ず通らなければならない歴史の厳しい試練でございます。我々政治家は、これをしっかり受けとめて、国家社会の理想を明確に描き、日本の再生のために全力を尽くさなければなりません。

 しかし、日本の過去の成功システムは、長年にわたり社会のさまざまな要因が重なり合い、極めて機能的にでき上がっており、その改革は、個々の問題ごとに答えを出す今までの手法では対応ができなくなっています。時代が求める新しい日本の理想や目標を実現するためには、戦略性のある総合的な観点から骨太に絵を描き、決断し、マネジメントをして、行政が持つ限界を克服することが必要不可欠であります。これこそが、時代の変化やスピードに対応できる真の政治の姿であります。

 私は、このような観点から、政治改革、金融危機の際の金融再生トータルプラン、教育現場の知恵と創意工夫を生かす日本版チャータースクール、定期借家制度の創設や自社株消却の緩和、ストックオプションの一般化の商法改正など、多くの議員立法を手がけてまいりました。

 今、二十世紀にはなかった全く新しいものを求める巨大なマグマが、日本じゅうからあふれ出そうといたしております。まれなる時代の大転換期に生かされた我々は、この激しいうねりを肝に深く刻み込んで、おのおの政治生命をかけて、新しい政治を求めなければならないと思います。

 明治維新の薩摩の伝統を今に生かし、二十一世紀のスタートラインに立ち、美しく生き生きした国づくりと、ふるさと鹿児島の未来のため、国民各位並びに議場の皆様方とともに力を合わせ、邁進することをお誓い申し上げ、私の感謝の言葉といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員小平忠君は、昨年十二月三日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 小平忠君に対する弔詞は、議長において去る一月十九日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに懲罰委員長の要職にあたられた正三位勲一等小平忠君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

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 平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)、法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣宮澤喜一君。

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 平成十三年度予算につきましては、二十一世紀の新たな発展基盤を構築しつつ、我が国経済を自律的回復軌道に乗せるとの観点に立って編成したところであります。あわせて、厳しさを増している財政状況にかんがみ、財政の効率化と質的改善を図ることといたしました。

 こうした中で、公債発行額につきましては、一方で、金融破綻への備えのための国債償還費の手当てを行う必要がなくなったという減要因があり、他方で、地方財政対策において新たに特例地方債を発行し、あわせて交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入額を増額する等の制度改正を行うことに伴う増要因がありますが、このような状況のもと、可能な限りの縮減を図ることといたしました。

 これらの結果、平成十三年度の公債発行額は前年度当初予算より四兆二千九百二十億円減額しましたが、なお、財政法の規定により発行する公債のほか、十九兆五千五百八十億円に上る多額の特例公債を発行せざるを得ない状況にございます。

 本法律案は、こうした厳しい財政事情のもと、平成十三年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置を定めるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、平成十三年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができることとしております。

 第二に、租税収入等の実績に応じて、特例公債の発行額をできる限り縮減するため、平成十四年六月三十日まで特例公債の発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以降発行される特例公債に係る収入は平成十三年度所属の歳入とすること等としております。

 次に、法人税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、商法改正による会社分割制度の創設に伴い、合併、分割等の企業の組織再編成に係る税制の整備等を行うものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、組織再編成により資産等を移転する法人について、企業グループ内の組織再編成や共同事業を行うための組織再編成の場合には、一定の要件のもとで、移転資産の譲渡損益の課税を繰り延べる措置を講ずるとともに、組織再編成を行う法人の株式を保有する株主について、株主が分割承継法人等の株式のみの交付を受けた場合には、株式の譲渡損益の課税を繰り延べる措置等を講ずることとしております。

 第二に、引当金等の引き継ぎについて、組織再編成の形態に応じて所要の措置を講ずるなどの改正を行うとともに、会社分割に係る商業登記に対する登録免許税の税率を定めるなど関係税目につき必要な措置を講じ、あわせて、国税通則法等の整備を図るなどの改正を行うこととしております。

 次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、最近の経済情勢等を踏まえ、住宅投資及び中小企業の設備投資の促進を図るとともに、社会経済情勢の変化に対応するなどの観点から所要の措置を講ずるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、住宅投資及び中小企業の設備投資の促進を図るため、新たな住宅ローン減税の実施、中小企業投資促進税制の適用期限の延長等を行うこととしております。

 第二に、金融関係税制について、上場株式等に係る譲渡所得等の源泉分離選択課税を存続する経過措置の延長等を行うこととしております。

 第三に、社会経済情勢の変化に対応するため、認定特定非営利活動法人に対する寄附に係る特例及び贈与税の基礎控除の特例の創設、個人の土地等に係る長期譲渡所得に対する税率軽減の特例の延長等の土地税制の改正、合併、分割等の企業の組織再編成に対応するための各種特別措置の整備等を行うこととしております。

 その他、既存の特別措置の整理合理化を行うとともに、住宅用家屋に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等、期限の到来する特別措置についてその適用期限を延長するなど、所要の措置を講ずることとしております。

 以上、平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し上げた次第であります。(拍手)

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 平成十三年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)、法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。五十嵐文彦君。

    〔五十嵐文彦君登壇〕

五十嵐文彦君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま趣旨説明のありました来年度の歳入関連三法案について、財務大臣及び関係大臣に質問いたします。

 本題に入る前に、このたびの宇和島水産高校実習船えひめ丸衝突事故の被害に遭われた方々、そして御家族の方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

 この際、事故にかかわる政府及び官邸の対応につきまして質問いたします。

 まず、私たちは、この事故の重大性にかんがみ、森総理の答弁が欠かせないと考え、要求してまいりましたが、総理がこの場での答弁を回避されたことに強い憤りを感じます。遺憾の意を表明いたします。

 森総理は、先日、会見で、危機管理の対象ではなく事故という発言をされております。これは極めてゆゆしきことです。この事故は、米原潜による我が国民間船への衝突沈没事故であり、米側の対応によっては、いざというときに米軍は本当に日本国民を守ってくれるのかという根本的な疑念を日本の国民に与えかねない、日米両国間の信頼関係に基づく同盟関係に深刻な影響を及ぼしかねない、その発展性を当初から持っていました。このことに気がつく米側は、異例の迅速な陳謝をいたしました。まさにそれを懸念したものであり、翻って、我が国総理に同等の懸念の感覚がないということはまことに恥ずべきことであります。総理発言は、事の本質がわかっておりません。

 福田官房長官、河野外務大臣、伊吹危機管理担当大臣の御所見を伺います。総理の判断を指導者として適切とお考えでしょうか。私であれば、もうおやめになったらどうかとお勧めしたいと思うわけであります。(拍手)

 政府の米国に対しての対応についてお尋ねします。

 民間人が操舵をしていたというような、にわかには信じがたい事実が判明したことを受けて、政府は米国政府に対し、今後どのような対応をするのでしょうか。また、被害者の方々への補償等について、どのような折衝、政府としての対策をなされるのか、官房長官、外務大臣にお答えをいただきたい。

 さらに、これに関連し、森総理が原潜事故発生の際にプレーしていた神奈川県下のゴルフクラブ、戸塚カントリー倶楽部の会員権を知人から無償で借り受け、自分名義としていた問題についてお尋ねします。

 多くの税務専門家が税法上贈与とみなすべき行為だと指摘しており、悪質な脱法行為の疑いを持たれております。国民に納税をお願いするべき立場の総理がこのような行為をすることについてどうお考えか、官房長官、宮澤財務大臣にお伺いをいたします。

 さて、特例公債法案についてお尋ねいたします。

 二〇〇一年度末の国債残高は三百八十九兆円、国、地方合わせた長期債務残高は六百六十六兆円に上るとされております。二兎を追う者は一兎をも得ずと景気優先を掲げた小渕内閣、その路線を継承した森内閣のもとで、債務残高は約百兆円も増加し、その結果、我が国の財政赤字や債務残高の対GDP比は、いずれも先進国中最悪の水準に達しております。

 政府・与党は将来世代に与える重荷をどのように考えているのか、第二臨調以降の赤字公債依存体質からの脱却というその努力は何だったのか、その責任感、使命感の欠如にも強い憤りを覚えます。

 これだけの財政赤字を垂れ流しながら進められてきた景気対策でありますが、結局、一兎を追いながら、その一兎さえも得られなかったのではありませんか。株価しかり、個人消費しかり、雇用情勢しかりであります。政府の楽観的な見通しとは正反対に、景気の下振れが懸念をされているわけであります。それもこれも、政府・与党が、我が国の経済構造改革や財政構造改革を先送りし続け、一時的な景気浮揚効果さえも怪しくなった公共事業中心のばらまき景気対策を繰り返してきたからにほかなりません。(拍手)

 財務省の「財政の中期展望」によると、このままの政策を継続すれば、公債発行額、公債依存度は十四年度以降再び急激に増加し、もはや手のつけようのない発散状況に陥ると言われております。

 宮澤財務大臣は、この中期展望は政策努力を加味しない機械的推計だと強調しておられますが、では一体、今後、どのような政策努力、政策転換をすればこの中期展望に描かれた将来試算のような状況から脱却できるとお考えなのか、ぜひとも示していただきたいと思います。

 次に、税制改正二法案についてお尋ねします。

 企業再編税制を盛り込んだ法人税法改正案につきましては、租税回避的な悪用には十分留意が必要でありますが、基本的には経済構造改革に資するものと考えております。

 他方、年度税制改正を中心とする租税特別措置法改正案につきましては、多々問題がございます。

 与党は、当面、景気回復に重点を置くとの立場から、株式譲渡益課税の源泉分離課税の二年延長、大型住宅ローン減税の二年半延長などを決めました。しかし、これらは、総じて、何らの改革理念も財政健全化への道筋も示さず、無責任な減税や朝令暮改、改革先送りを寄せ集めただけのものではありませんか。このような政府・与党の姿勢は、放漫な財政支出と相まって、近い将来の大増税を不可避にするものと言わざるを得ません。

 以下、具体的に申し上げます。

 第一に、株式譲渡益課税問題についてお尋ねします。

 改正案は、経過措置として二年間存続が認められた源泉分離選択課税制度をさらに二年間延長しようというものであります。この制度は、その時々の損益に応じて有利な方式を選択できること、実際の利益とは無関係に譲渡代金の五%を利益とするみなし課税であること、超過累進税率の適用されない分離課税である、この三重の意味で、主要国に類を見ない不公平税制であり、不公平是正の観点からその廃止が決定されたものだったのではありませんか。今回の改正案は、まさに改革先送りの典型ではないでしょうか。

 申告分離課税一本化の株価への影響を懸念する意見もありますが、株価の低迷は、基本的に、経済構造改革のおくれなど、我が国経済の現状と政府の経済運営への不信感を表明したものと言うべきであります。このような朝令暮改の税制改正が株価対策になるとは全く考えられません。個人投資家をはぐくみ、我が国企業の資金調達を直接金融にシフトさせるという証券市場改革の重要性は言うをまちませんが、そのためにも、むしろ安定的な税制の確立こそが必要と考えます。

 その意味でも、民主党は、納税者番号制度を早急に整備し、株式譲渡益等を他の所得と合算し総合課税する方向での抜本改革こそが求められていると考えております。また、総合課税化までの間は、多様な金融商品間のバランスに配慮しつつ、個人の資産投資における税制の中立性を確保するという観点に立ち、申告分離課税とした上で、利子配当と同じ二〇%の税率で課税することが適当と考えますが、これらの点につき、宮澤財務大臣の所見をお聞かせください。

 第二に、新住宅ローン減税制度についてお尋ねいたします。

 景気対策のため二年前に導入された大型ローン減税の期限が到来をいたします。そこで、控除期間を若干短縮するなどした上で、さらに二年半継続するという内容ですが、そもそも、期間を限ってこそ景気対策としての効果が期待をできるのであり、このような拡充措置をずるずると継続することはモラルハザードを生むと言わざるを得ません。また、持ち家取得政策のために長期にわたって毎年の所得税をゼロにするような税制上の優遇措置は、過去のローン返済に苦しんでいる多くの人々や民間賃貸住宅に住んでいる方々との間での負担の公平という観点から見ても問題があります。

 民主党は、当初の方針どおり、本年六月居住分までで現行制度を終了し、その後は景気中立型のローン減税制度に戻すべきと考えますが、これらの点につき、宮澤財務大臣の所見をお聞かせください。

 第三に、NPO支援税制についてお尋ねをいたします。

 価値観が多様化し、複雑化した現在の社会において、政府や行政の単一的、独占的な公益概念は崩れ、市民公益を実現する民間非営利、公益セクターの役割の重要性は今後ますます増大をしていきます。特定非営利活動法人、NPO法人については、市民のニーズに合致し、新しく多様できめ細やかな社会的サービスを供給する主体として、また、市民による自由な社会貢献活動として、その育成を支援しなければなりません。ところが、今回提案されたNPO税制案は、ほとんどのNPO法人がその認定を受けることができないような案となっており、全くもって不十分であります。

 民主党は、NPOとは多様な市民公益を実現する自立した組織であるとの認識から、幅広く税制支援措置を組み立て、現在、対案を作成しているところであります。一方、政府・与党の税制措置は、NPO活動とは無償のボランティア活動ではないか、財政的に自立する必要もないのではないかというような認識に立っているかのように思われます。

 今からでも遅くありません。NPO法人に対する税制支援措置、とりわけ認定NPO法人の要件を見直すつもりはありませんか。宮澤財務大臣の見解をお伺いいたします。

 最後に、消費税の今後の見直しについてお尋ねをいたします。

 消費税は、人口の超高齢化が一層進む中、増大する社会保障費等の負担を広く国民が分かち合う上で重要な税目であります。しかし、現在の消費税は、国民から信頼される公平な制度になっているとは言えません。免税点、簡易課税制度、滞納問題、そして逆進性の問題など、抜本的な改革が求められているのではないでしょうか。

 民主党は、仕入れ税額控除の仕組みについて欧州諸国のようなインボイス制度を導入し、免税点については大幅に引き下げ、簡易課税制度も適用事業者を大幅に限定すべきだと考えております。また、滞納を防止するため、一度滞納した事業者については毎月納付とすることが効果的ではないでしょうか。逆進性の解消策としては、カナダのGSTで行われているような世帯人員数等に応じた税額還付方式、その導入をすべきものと考えます。

 これらの点も含め、政府としては今後消費税の見直しを図るつもりがあるのかどうか、宮澤財務大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 五十嵐議員にお答えいたします。

 総理の発言に関する私の所感についてお尋ねがございました。

 総理としては、今回の事案について政府として行うべきことは、情報の収集と、米国の主権下における人命救助について万全の対応を図るよう米国政府に要請することであると認識しているところであり、総理が事故の報告に応じて、日米両国間の重要性をも念頭に置きつつ迅速かつ的確な指示を行っていることは、御承知のとおりでございます。

 次に、潜水艦グリーンビルへの民間人の乗艦についてのお尋ねですが、一部の人が浮上作業への参加の機会を与えられていたとの点につき、政府としても本件を重大視しております。

 十五日、河野外務大臣よりパウエル米国務長官に対し、民間人が事故当時に操舵席にいたことが速やかに日本側に伝えられなかったことは遺憾と言わざるを得ないと述べた上で、万が一民間人が浮上動作に参加したことが事故発生につながったのであれば、極めてゆゆしき事態と言わざるを得ないとして、我が方への早急な情報提供を要請したところであります。

 米側は、民間人の関与の問題を含め、今回の事故原因の解明に向けて引き続き徹底的な調査を行うとしております。政府としては、本件調査の結果を注視するとともに、昨十五日夜、衛藤外務副大臣を米国に派遣し、今回の事故に対する今後の対応につき協議することといたしたところでございます。

 次に、今回の事故の被害者の方々の補償につきお尋ねがありました。

 我が国としては、まずは捜索救助活動が重要と考えており、米側の活動の継続を引き続き申し入れております。補償の問題については、事故原因に関する調査結果等も見つつ、当然のことながら検討していくことといたします。

 被害者の方々に対する対策につきましては、生徒などの心のケアなど心身の健康管理に万全を期すことや、生徒の医療費の負担の軽減を図る災害救済給付制度を活用するなど、今後とも、愛媛県と密接な連携をとりつつ適切な対応に努めてまいります。

 次に、森総理名義のゴルフクラブの会員権についてお尋ねがありました。

 本件について、森総理に確認したところ、昭和六十年三月、戸塚カントリー倶楽部の会員権をたまたま会社として二口所有していた長年の友人が、当時、腰痛で悩んでいた森総理の健康を心配し、プレーが可能となるよう会員権の名義の貸与を申し出てくれたものだと聞いております。

 その友人との間では、書面により、会員権の所有権はその友人の会社にあること、及びその友人が会員権の名義貸与をとめたいという場合は三カ月以内に名義を移転することを確認していることから、森総理が本会員権の贈与を受けたものでないことは明白であると承知しております。

 本件については、当時、森事務所において税理士にも相談しましたが、特段税法上の問題を生じることはないとのことであったと聞いております。

 なお、総理としては、本件について、誤解を招くことがあってはならないので、今回、友人との合意を解消し、速やかに会員権の名義を友人に移転する手続を開始したものと承知しております。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 今回のえひめ丸の事故につきましての総理の御発言について、私の所感のお尋ねがございました。

 今回の事故は、米国の主権のもとでの原子力潜水艦による事案でありまして、御指摘のように、我が国の安全保障を揺るがしかねない、日米の信頼関係を損なう可能性を含む重大な事故ではあります。しかし、国民の生命が大規模に危険にさらされるという、内閣法十五条に言う危機管理の対象となる事案ではありません。

 しかしながら、今申し上げたような重大な事故として、また、行方不明者が出ているということにかんがみ、直ちに外務省及び防衛庁において、それぞれのチャネルを通じて米側に人命救助措置の迅速な展開を強く要請するように指示をいたしまして、同時に、総理からも同様の御指示をいただいて、的確な初動の措置がとられたと考えております。

 その後の情報の収集、整理と報告、連絡を行う必要から、官邸に連絡室を設置する一方で、外務省、文部科学省において対策本部を置いて、現在、鋭意対策中でございます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 外務省に対します総理からの御指示は、情報の収集と、アメリカの主権下における人命救助について万全の対応を図るよう米国政府に要請することである、こういうことでございました。外務省としては、まことに適切な指示だと考え、努力をした次第でございます。

 民間人が事故当時に操舵席にいたことが速やかに日本側に伝えられなかったことは、まことに遺憾と言わざるを得ません。また、万が一民間人が浮上動作に参加したことが事故発生につながったのであれば、極めてゆゆしき事態と言わざるを得ないと思います。

 昨十五日、パウエル・アメリカ国務長官に対しては電話で、また、フォーリー大使に対して直接、私より、民間人の関与の問題を含め、今回の事故原因の解明に向けて引き続き徹底的な調査を行い、我が方への早急な情報提供につき要請をいたしました。

 被害者の補償につきましては、先ほど官房長官御答弁のとおりでございます。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 最初に、戸塚カントリー倶楽部の会員権の問題でございますが、税務の観点から申しますと、詳細な事実関係が十分まだ明確でございませんので、答弁を差し控えさせていただきます。

 これまでの景気対策というものが効果がなかったのではないかというお尋ねでございます。

 御承知のように、平成九年秋以降、非常な経済の乱調、金融システムの不安等がございまして、平成十年度の実質GDPはマイナス〇・六でございます。したがいまして、政府としては、そのときから非常対策に入りまして、財政出動、減税、金融機関への公金の支出等々をいたしましたが、結果といたしまして、景気がスパイラル的に悪化すること、あるいは対外不信用を生ずることなどは防ぐことができたわけでございます。

 今日現在、しかし、経済は厳しい状態を脱出しておりませんで、企業設備投資は十分に回復しつつあると考えますけれども、雇用あるいは家計の回復は十分でございません。今日まで不況打開の政策が全部成功したとまだ申し切れないうらみがありますことは、御指摘のとおりでございます。

 それから、中期展望の関係でございますけれども、中期展望は、御承知のとおり、このまま特段の政策をしないときにどうなるかという展望でございますが、この中期展望を見て何を感ずるかということでございますが、歳出面について申しますならば、高齢化が進展をすることから生ずる例えば社会保障等々の諸経費の増が見込まれますし、また、金利が上昇すると申しますか普通になりますと、国債費の増がそれだけ見込まれるということが歳出面でございます。

 歳入面で申しますと、仮に景気が本格的な回復軌道に乗ったといたしましても、ただいまの五十兆という税収が、仮に弾性値を一・一といたしましても、毎年の増収の幅は大体知れておるわけでございますから、殊に減税が先行しておりますので、なかなかそれだけで歳出を稼ぐということは難しいということをこの中期展望は申しておるわけでございます。

 したがって、その点から見て、財政改革をしなければならないのはもう当然のことでございますが、これは前回にも申しましたが、まず足元の歳入が大体見当がつきませんと、なかなか改革のプランができない、毎年の税収見積もりが年度末に取れないで減額補正をお願いするというような状況が続いておりまして、このたびようやくやや増額見積もりができたような状況で、これで経済成長が自律過程に入ってくるというようなことになりますと、そこで本格的に財政再建をしなければなりませんが、これはもう御承知のように、すぐそれは税制の問題でもありますし、中央、地方の行財政の問題でもありますし、社会保障の問題でもございますので、そういうもろもろの矛盾した点を一つでとらえるシミュレーションをしますためにやはりマクロモデルが必要だということで、前回、経済財政諮問会議でそういうことを議論いたしまして、間もなく経済研究所でマクロモデルをつくって、そのシミュレーションで、今度は言葉でなく数値的に、一義的にこれしか解決がないという、そういうこの幾つかの問題の同時的な解決を見出さなければならない。これは恐らく、二十一世紀の最初の十年ぐらいの我が国の経済社会の姿を決することになるだろう。その作業にはどうしても入らなければならないと考えております。ちなみに、そのマクロモデルの作業はもう間もなく始めてもらうつもりでおります。

 それから、譲渡益課税でございますが、平成十三年の四月から実施することにしていました申告分離課税への一本化を二年間延長いたしました。それは、税制調査会などでもやはり、経済は緩やかな改善が続いているけれども、現在の景気情勢や最近における株式市場の状況等を踏まえれば、これもやむを得ないというようなことでございました。

 おっしゃいますように、総合課税に持っていきますときに納税番号が必要だろうとおっしゃることは、厳密に申しましたら、やはり私もおっしゃるとおりだろうと思いますが、納税番号そのものについてなかなか世評が分かれておりまして、これはもう何十年言われておりますが、その都度やはりこれについていろいろな批判があって、今のところ国民の合意を得るに至っていないという感じがいたしております。

 それからもう一つ、申告分離課税の税率の引き下げは利子と一緒でよかろうとおっしゃったのだと思いますけれども、株式等の譲渡所得と利子とは、もう御承知のように、利子は国民のほとんどが所有しております預貯金から生ずるものでありますし、株式の個人株主の数は大体七百万人ぐらいでございます。いろいろな意味で両方の所得はその性格が違うというふうに私どもは考えております。

 それから住宅ローンは、平成十一年度に創設されましたローン、これはあの当時の状況で二年間に限ってかなり思い切った措置を講じたつもりでございましたので、こういう状況になりましたので、今回これを、控除期間、控除率について見直しを行いまして、単年度の制度ではなく、新しい制度として創設をいたしたものでございます。

 それから、NPOについてのお尋ねでございますが、しばしば本院におきまして、NPOについての税制上の制度を新設せよということで、このたび、そういうことにいたしました。

 ただ、NPO自身がなるべく公の支配から自由になろうということでございますので、それを考えながら、このような税制をどのように適用するかということを、いろいろ問題がございます。

 そして、NPO自身が、やはり、例えば高齢者への福祉サービスである、あるいは会員相互の趣味、娯楽の活動等々いろいろございまして、少なくとも寄附金、税金の犠牲においてと申しますか、減税によって寄附金の優遇措置を受けるとすれば、それは公的なサービスがなされているということでなければならないだろう、そう考えますので、この措置を受ける法人にはそれなりの公益性が必要だと考えております。

 この行政は国一律でならなければなりませんし、税金に関するものでございますので、国税庁が行政をすることにいたしまして、その基準としては、事業活動について一定の情報公開をしてもらっていること、また、法人の運営組織や経理が適正であること、公益性のある事業が継続的に実施されていること、それから、資金について広く一般からの支援を受けている、いわゆるパブリックサポートがあるということ、それから、法人の活動が特定の者ではなく受益の範囲が広範にわたっていること等々を条件にいたしまして、この適用を受けるにふさわしい法人であることを確認いたしましてこの制度を適用いたしたい、こう考えております。

 それから最後に、消費税についてのお尋ねでございますが、今後どう考えるかということで、諸外国に例を見ない速さで少子高齢化が進んでおりますから、公的サービスに必要な費用負担を広く公平に分かち合っていくという観点からいたしますと、やはり消費税は一つの役割を果たしてもらわなければならないと考えておりますけれども、おっしゃいますように、仕入れ税額の控除方式、中小の特例措置、申告納付制度のあり方などいろいろ問題がございまして、今までも改善に努めておりましたが、まだまだ改善をすべき余地があると存じますが、それは恐らく、この制度全体を見直すときに、いろいろ今の問題を含めまして検討いたさなければならないと思います。

 所得に対して累進的かどうかということは、それ自身は累進的であるということを申し上げられませんけれども、税制全体で見まするならば、現状においても負担の累進性が確保されているということを申し上げることができると思います。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 中塚一宏君。

    〔中塚一宏君登壇〕

中塚一宏君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました平成十三年度の公債発行の特例に関する法律案外二案に対しまして質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、二月十日、米軍潜水艦に衝突されて沈没した愛媛県立宇和島水産高校の漁業実習船えひめ丸の乗組員、実習生の方、また、その御家族の皆様に心からお見舞いを申し上げます。また、現在も行方不明となっている乗組員、実習生の御家族の皆様には、心中いかばかりかとお察しを申し上げる次第であります。

 日米関係が重要であることは当然ですが、そうであればこそ、政府は、米国に対して毅然たる態度で、行方不明者の捜索、事件の真相、原因の徹底究明を要請し、日米両国民の間にわだかまりが残らないようにするべきであります。

 まず、公債発行特例法に関連して、財政のあり方について伺います。

 財務大臣は、昨年、本会議答弁において、税制のあり方あるいは社会保障のあり方、中央と地方の関係等々を総合的に、また、成長がはっきりして税収が少しずつでもふえ始めるという状況を確かめて財政改革に入りたいと述べておられますが、これは、景気が回復するまで、現在の財政、税制が持つ問題点をそのまま先送りをするものであります。

 景気が悪くなったから需要追加策や減税を行う、また、景気がよくなったから増税によって財政赤字削減に着手するというのではなくて、直ちに行政、税制を含めた改革に着手をし、そのことによって効率的な財政支出と簡素で公平な徴税を行えるようにしなければなりません。これこそが本来の財政構造改革であります。

 来年度予算における公債発行額は十二年度と比較して縮減をいたしておりますが、これは金融システム安定化のための交付国債償還の手当てを行う必要がなくなったためであり、むしろ、一般歳出は中身の変化のないままに膨張をいたしております。

 また、地方交付税特別会計に一般会計から繰り入れを行うとしたことは、今後の財政支出がどんどんとふえていく要因であります。一刻も早く、地方財政の仕組みそのものを抜本的に改革をしなければなりません。地方債の元利償還を国が負担するようなことなしに、地方自治体独自の信用力によって資金調達が可能となるようにしなければなりません。

 また、地方自治体の歳出そのものを削減するために、広域化、合併を図って、全国の市町村を三百程度の市に再編するべきであります。あわせて、地方自治体への事業補助金についてはこれを廃止し、その相当額を一括して交付する制度を創設して、身の回りのことはすべて地方に任せ、類似事業の是正等、むだを省いていかなければなりません。財務大臣の御所見を伺います。

 次に、税制改革について伺います。

 日本経済停滞の原因が構造問題にある以上、その構造問題に対応した新しい税制、税体系を構築することが求められており、これが経済構造改革にも資するものであります。少子高齢化、経済の成熟化、人、物、資本が地球規模で移動をする時代において、税制のあり方もこれに対応をするため、経済の担い手である個人や企業の活動を支え、その活力を引き出していくようにしていかなければなりません。

 近年、特に景気対策の名のもとに、もともと複雑な本則に特例措置が入り組んだ大変複雑な税体系になってしまっております。その内容も、目先の需要追加に重きを置いたものが余りにも多いと言わざるを得ません。優先するべきは、所得税制や証券税制、法人税制をいかに日本の活力を伸ばす方向に変化をさせるか、つまり、起業家を育成し、これらの企業の投資意欲を促進して、その資金を調達する資本市場を活性化させ、努力した人が報われるようにしていくべきであります。これらの方策なしでは将来の財政改善の可能性はないのであります。

 しかし、政府の税制改正は、経済構造改革に資するような税制を廃止するなど、支離滅裂な内容となっております。いわゆるパソコン減税について、臨時異例の措置として来年度から廃止し、耐用年数を四年または五年にするとしておりますが、これは構造変化への対応がおくれている企業に水準を合わせたものであります。情報革命の促進を続けるべきであって、即時償却を本則に取り込むべきであります。

 また、株式等の譲渡所得課税について、源泉分離選択課税制度を二年延長するといたしておりますが、これでは、将来に向けて、申告分離課税に一本化するのか、あるいは選択制をとり続けるのか、それとも総合課税制度に移行をするのか、そして税率をどのようにするのか、その姿が全く見えてまいりません。結局、二年たっても株価が回復をしていなければ同様の議論が蒸し返されるに違いないのであります。間接金融偏重を是正し、直接金融市場を育成するための税制はどうあるべきか、他の金融商品との公平なバランスをどのように確保するのかといった視点から立案をするべきであります。

 現在行われている所得課税の恒久的減税についても、抜本改革までの特例措置であります。来年度改正に盛り込まれている贈与税の基礎控除の拡充についても、租税特別措置であります。いつになったら、あるいはどのような状況になったらどのような税制に抜本的な改革をするのか、そのことを明らかにするべきであります。望ましい税制について議論をすることなく、ただ特例措置を続けるのは、厳しい財政状況と相まって、納税者の不安をあおることにほかなりません。

 所得税、住民税については、各種控除を原則廃止し、手当に改めた上で、税率構造の簡素化と税率の引き下げを実施し、たとえわずかな額であっても、国民全員が自分で納税できる、わかりやすい公平な税制とするべきであります。控除を手当に改めることによって、低所得者にも公平に恩恵が及び、あわせて政策目的がより明確となります。また、みずから申告し納税をすることによって納税者意識が高まり、政治、行政への関心を高め、我が国の民主主義を成熟させていくことにもつながります。経済構造改革であると同時に、社会構造改革のステップともしていかなければなりません。

 また、公需から民需への円滑なバトンタッチを目指すのであれば、法人税率のさらなる引き下げを行うべきであります。天然資源に恵まれず、また、頭脳流出もとまりそうにない我が国にあって、産業構造の改革を進めるためにも、世界でも最も低い実効税率とするべきです。財源は、公共事業の予算を単価の引き下げやむだの排除で圧縮するなり、あるいは償却制度の適正化など税制全体の均衡を図った上で、陳腐化している租税特別措置を廃止し、捻出をするべきであります。財務大臣の御所見を伺います。

 あわせて、どのような状況が整えば抜本的な税制改革に着手するのか、お聞かせいただきたいのであります。

 次に、社会保障制度について、税制と保険料に関連して伺います。

 将来の財政支出増要因の一つに、高齢化の進展による社会保障経費の増大があります。基礎年金について、将来、国庫負担率の引き上げが予定をされておりますが、国庫負担とは現在の課税または将来の増税や保険料引き上げの要因となる赤字国債のことであって、結局は税も保険料もどんどん上がっていくのではないかといった不安が社会に蔓延をいたしております。社会保険制度への不信や不況の影響によって、今後も保険料の未納、未加入者がふえることが予想をされるため、保険料負担は予想以上に重くなる可能性さえあります。

 消費税の使途を基礎年金、高齢者医療、介護の三分野に限定をし、負担の公平化と基礎的社会保障の財政基盤を強化して、給付水準引き下げに対する懸念と保険料負担増加に対する不安を解消するべきであります。

 完全捕捉困難な所得を賦課標準とし、高額所得者には頭打ちがある国民健康保険や、あるいは国民年金のように所得のない学生からも一定額を人頭税的に徴収する保険料方式よりも、賦課ベースの広い消費税方式の方がはるかに公平であり、そして、国民一人当たりの負担を抑制することが可能となります。あわせて、保険料徴収コストも抑制することが可能であり、少子高齢化社会にはふさわしい制度と考えます。

 世界に例を見ない速さで高齢化が進展する我が国は、世界に例を見ない制度を導入していかなければなりません。また、基礎的社会保障の財源として消費税方式を導入する場合には、簡易課税制度などは廃止して、益税問題を解消するべきと考えます。複雑な保険料方式ではなく、消費税方式によって給付と負担の関係をより明確化し、消費税率と給付水準について国民的な議論、判断が行われやすいようにするべきであります。財務大臣の御所見を伺います。

 最後に申し上げます。

 本日より確定申告が始まりました。今まさに納税の季節であり、税を身近に感じる瞬間です。税は社会への参加料であり、また、国民の三大義務の一つであります。同時に、納税義務者は自己が支払った租税の使途を監視し、違憲、違法な租税支出が国や地方自治体によってなされた場合には、積極的に是正する権利が保障されなければなりません。

 残念ながら、KSD事件や外務省の機密費横領事件など、補助金という名の税金、機密費という名の税金が私物化され、浪費されている事件が相次いでおります。これらの事件の真相は徹底的に究明をされなければなりません。そして、その上で、このような事件が二度と起こり得ないしっかりとした制度を構築すること、今まで我が国がとり続けてきたシステムにとらわれない、新しい時代にふさわしい新しいシステムを構築すること、すなわち、日本一新を行うことなしに我が国の将来はあり得ないことを申し述べまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 公債発行額についてお尋ねがございまして、おっしゃいますように、十二年度当初予算で、いわゆる金融破綻への備えをいたしますために、その国債を出しますと償還しなければなりませんから、その償還のための手当てとして四兆五千億円、これを国債整理基金特別会計に繰り入れました。

 これは既にそれで処置を終わりましたので、そして、これは支払われつつございますから、同じことはもう十三年度予算では必要がございませんで、それだけの負担が減った、それだけじゃないかと。そのとおりでございますが、それだけでは実はございませんで、他方で、地方財政制度に交付税の特別会計への繰入額一兆四千億円という新しい制度を設けましたので、これは今度、逆に増の要因になりました。

 それから、もう一つ、初めて歳入の、税収の見積もり増が可能になりまして、二兆円の税収増を見込んでおりますので、この点も国債の発行額を減らすことに貢献をいたしております。これを差し引きいたしまして、四兆二千九百二十億円の減額ということでございます。

 次に、地方団体のことでございますが、国、地方を通じて財政が極めて厳しい状況にあって、少子高齢化の進展など、市町村行政を取り巻く情勢が非常に厳しい。そういう意味では、基礎的な自治体である市町村の行政の対応力、あるいは効率性を高めるために市町村合併が行われるということは、財政の観点から申しましても大変に重要なことだというふうに考えております。

 それから、地方への事業補助のことでございますが、おっしゃいますように、第二次の地方分権推進計画がありまして、これに基づきまして統合補助金というものを平成十二年度から創設いたしました。十三年度におきましても九事業で新規の創設を図っております。

 他方で、公共事業全体について一括して地方に渡してしまえばいいということにつきましては、公共事業の整備水準あるいは費用対効果の分析等々、これをどうしても全国規模で考えなければならない問題がかなりございますので、すべての公共事業について地方公共団体に財源を一括交付すればよかろうということには問題がありそうに思います。必要なものは、おっしゃいますように、統合補助金を考えたらいいということはそう思っておりまして、そのとおりいたしております。

 それから、パソコンの減税でございますが、平成十一年度で、いわば一括償却といいますか、償却資産でない扱いをいたしました。これは一時的にいたしましたが、やや恒久的に考えますと、コンピューター等々は一年で消耗するものでございませんで、やはり減価償却資産であろう、企業会計でもそう扱っておるわけでございますから、ああいうことを臨時にいたしましたが、恒久措置としては、耐用年数の六年というのは厳しいかもしれないから、パソコンは四年、その他のものは五年に短縮するということにさせていただいたわけであります。

 それから、株式の譲渡所得につきましては、平成十一年度の税制改正をいたしましたときに、有価証券取引税を廃止することとして、十三年三月までの今の制度を設けたわけでございましたけれども、その後の景気情勢や株式市場の状況等がありまして、これをもう二年延ばさせていただく、平成十五年三月まで選択できることにいたした。これは税制調査会の意見などもございまして、そういうことにいたしたわけであります。

 それから、個人所得課税、所得税のあり方でございますけれども、今の制度は、御承知のように、個人の所得に担税力というものを見出しまして、それに従って累進がある、あるいは世帯の構成によっていろいろな人的控除を入れておる、そういう部分を税制の中に含んでおるわけでございます。

 そういうことを全部やめて、控除はやめてすべて手当にするということになりますと、私どもの考えでは、所得税という基幹的な制度が持っております国民の間の負担の調整であるとかあるいは所得再配分、理屈っぽいですが、そういう機能を持っているものを、それをやはり考えていかなければならないと思う気持ちがございますものですから、なかなかこれを手当に置きかえるということについては、いろいろ考え方に必ずしも私どもそう思えないところがあるという意味でございます。

 それからもう一つ、これは御指摘のあったところでございましたけれども、昨年の政府税調の答申の中で、個人所得課税の負担を、課税最低限が余り高いということはどうも望ましいことでない、税率は低くてもいいから、もう少し多くの、いわゆる幅を、すそ野を広くした方がいいという意見がありましたことは、私どもも実は同感しているところでございます。

 それから、法人税につきましては、平成十年度に減税をし、十一年度に減税をいたしました。それで、今我が国の法人税の負担は大体国際水準になっております。先ほどですか、上げろという御主張が一部にございますが、私どもは、上げることはない、しかし、この水準で大体国際水準になっておるというふうに考えますので、これ以上下げるという必要はどうであろうかと考えております。

 それからもう一つは、今後の税制をどう考えるかということでございますが、今申しましたような税の機能というものがございますし、それから、財政構造改革を議論してまいりますときには、どうしてもやはり税制の抜本的改正をいたさなければならないと思っていますが、その場合、目先の問題は、一つはやはり公的サービスの水準、いわゆる負担と給付というものをどういうふうにするかという国民的なコンセンサスが必要でございます。

 それから、少し長期的な意味では、やはり公的サービスを賄う租税を国民がみんななるべく広く分かち合っていただきたいという観点で、所得課税、消費課税、資産課税等々それぞれの機能を生かしながら、この抜本改正が必要になるというふうな見方をいたしております。

 それから、社会保障制度に関してお尋ねがございまして、今後さらに増大が見込まれる社会保障の費用をどのように賄うか。

 御指摘の消費税を初め、全額税で賄う方がいいという御意見がございますが、他方で、先般、これについて有識者会議が報告を出しておりまして、その点では、各人の自助努力を補う社会保障制度の基本は、制度への貢献に応じて給付が行われるという保険方式がいいのではないかという意見を出しておられます。

 私どもも、自己責任の原則に立ちますと、やはり社会保険方式というものは必要だろう、それを基本に、場合によって保険料と公費を組み合わせる、こういったようなことが大事ではないかというふうに思っております。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 吉井英勝君。

    〔吉井英勝君登壇〕

吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、租税特別措置法など三法案について質問します。

 これまで重要な予算の歳入にかかわる法案の質疑は総理出席のもとに行ってまいりましたが、今回、総理が本会議質疑に出席していないことは許せないことです。厳しく抗議をいたします。(拍手)

 まず最初に、米原潜によるえひめ丸衝突沈没事件の行方不明者の速やかな捜索と事故原因の究明を求め、被害者の皆さんにお見舞い申し上げます。

 米原潜がえひめ丸に衝突して沈没させた事件が発生し、行方不明となった人が九名も出ているという報告が、ゴルフ中の森総理に伝えられました。本来なら、最高責任者として国民の命のかかった緊急の捜索、救助をアメリカ政府に求めることなど、総理が直接あらゆる手だてを講じるべきであります。しかし、その報告を受けても、子供の命の重さを考えることなく、その後も二時間、ゴルフを続け、遊び興じていたことは、全く許しがたい事態であります。責任感も反省も何もない。官房長官、これで内閣の責任をきっちり果たしたと考えているのですか。

 第二に、海難事故が発生したときは、一分でも一秒でも早く救助に当たる初動活動が重要です。ところが、事故を起こした原潜は、海に投げ出された人たちを救助しないで見ているだけでした。アメリカ側でこのことも含めて調査中となっているときに、ハワイで桜田外務政務官は、政府を代表してアメリカに、潜水艦の救助活動は適切だった、落ち度はなかったと発言するなど、国民の立場と全く異なる発言を行いました。外務大臣、この発言を撤回して、国民に謝罪するべきではありませんか。

 第三に、民間の漁船や観光船などの航行の多い海域で、なぜ、マニュアルどおりの安全対策もとらずに緊急浮上訓練を行ったのか。こうした危険行動に厳しく抗議するとともに、日本政府としても徹底した原因究明に当たるべきであります。外務大臣の答弁を求めます。(拍手)

 さて、九〇年代不況の中で、政府は、九二年から総合経済対策などとして総額百三十六兆円を投入しましたが、景気回復につながらなかっただけでなく、財政破綻を生み出しました。それは、不況対策の中心が大型公共事業であり、八〇年代に比べて雇用創出効果は六七%に落ち込んで雇用拡大に役立たず、景気への乗数効果も以前に比べて低下しているからであります。

 景気回復のためになすべきことは、GDPの六割を占める個人消費が伸びるようにすることです。それには、一つは、解雇規制、残業規制で雇用不安をなくし、雇用を大幅にふやすことであります。もう一つは、年金、医療の改悪をやめて将来不安をなくして、消費マインドを温めることです。ところが、政府がやってきたことは、全くあべこべのことです。

 九九年には、産業活力再生法で政府が旗振って大企業のリストラを進め、金融庁は今、大臣が率先して、金融機関とその貸出先企業に徹底したリストラを要求し始めています。これでは、幾ら大企業のバランスシートがよくなっても、失業の拡大、国民所得の減少、将来不安の深刻化で景気が悪くなるのは当然ではありませんか。

 かつて与謝野元通産大臣は、一つの企業のリストラはそのバランスシートをよくするが、全部の企業がリストラをやれば不況大運動をやるのと同じだと答弁しました。柳澤大臣、あなたが今、経済産業省、国土交通省に呼びかけて借り手企業にリストラの強行を求めようとしているのは、不況運動を進めているのと同じであり、やめるべきではありませんか。

 財務大臣、個人消費が伸びるように国民の所得を伸ばし、将来不安を解消するために財政当局として一体具体的に何をしようと考えておられるのか、はっきり答えていただきたいと思います。(拍手)

 提案されている法人税法等改正案は、この数年来、財界の強い要求で進めてきた企業の合併や分割という再編、リストラを税制面から支援するものです。

 これまで政府は、景気対策として、法人税率の引き下げが企業の設備投資を進めるなどとしてきました。また、多国籍企業化した時代にあっては、高い法人税率では企業が海外へ逃げていくとしてきました。しかし、幾ら大企業の応援をしても、この間の通商白書やミニ経済白書などで、法人税率を下げても海外移転が進んでいる事実や、大企業の利益が国民の利益につながることは少なくなったという指摘など、経済実態と離れてきていることを政府自身が示しています。

 会社が合併、分割するときに、労働者は一たん全員解雇されて、再雇用の保障もないのが実態です。実際、企業のリストラ、再編は、日産自動車などの自動車、電機、鉄鋼、造船などの製造業から流通業、そして金融の分野では、大手から大阪弘容信組、不動信金、仲立証券など中小金融機関に至るまで広がり、どこでも労働者が筆舌に尽くしがたい苦痛を負わされています。

 この法案は、こうした労働者の生活や雇用の保障はないままに合併、分割などの手法で企業がリストラを進めるときに、新会社への資産の譲渡益などの課税を繰り延べしようとするものです。これによって、例えば二〇〇二年四月設立の金融持ち株会社傘下の日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行の三行によるみずほフィナンシャルグループは、報道によれば、二千億円を超える税負担が事実上免除を受けるとあります。だれが見ても、余りにも異常な大企業優遇そのものではありませんか。大企業がこうした優遇措置で受ける税負担の軽減措置は幾らになるのか、明らかにされたいと思います。

 改正案では、法の適格要件として、八〇%以上の労働者が引き続き業務に従事することを挙げています。しかし、みずほフィナンシャルグループは、二〇〇五年度までに六十拠点と百七十店舗を削減し、二〇%に当たる七千人もの人員削減を計画しています。現実には、この適格要件で、今後二割近い労働者を犠牲にするリストラ、人減らしを税制面から促進することは明確です。何か解雇を規制する歯どめはあるのか、答弁を求めます。

 税制面からのリストラ支援は、景気を一層冷え込ませることは明らかです。これは景気対策に逆行するものではありませんか。

 次に、租税特別措置法等改正案についてです。

 この中で重大なのは、株式譲渡益に係る源泉分離課税方式を、既に廃止と決まっているのに二年間存続しようとすることです。政府税調の資料でも、株式譲渡で源泉分離課税方式を選択すれば、給与収入と比べて、同じ収入でも所得税は極端に低くなります。例えば一千万円の収入で比較した場合、夫婦子供二人の標準世帯で見ると、給与収入の場合は四十八万九千円なのに対し、株の源泉分離課税では十万五千円です。汗水流して得た給料よりも不労所得の株によるキャピタルゲインの税金が五分の一で済むという不公平は、一刻も放置できません。

 今年三月末で廃止が決まっていた不平等な税制度を事もあろうに景気対策の名前で存続するなど、庶民の生活実感と余りにかけ離れたものではありませんか。所得の低い層への減税で個人消費を伸ばすことこそ景気対策として必要ではないのか、あわせて答弁を求めます。

 この法案にある特定非営利法人、NPO法人に対する支援税制について伺います。

 日本共産党は、さまざまな運動に自発的に参加し、社会に貢献したいという市民運動の潮流を各地で発展させていくことは、日本社会にとって健全で積極的なものと考えています。その立場から、今や三千二百を超えるNPO法人の皆さんに対し優遇措置を講じることは当然のことと考えます。

 この点で、第一に、何よりも多くのNPO法人が支援税制を受けることができるように、認定法人になるための要件緩和をするべきです。政府案では、多くのNPO法人は排除されるおそれがあり、これを見直すべきであります。

 第二に、NPOの育成を抑制もしくは阻害することのないように、国税庁に認定させるのでなく、政府から一定の独立性を持った第三者機関を設置して認定を行うようにするべきだと考えます。

 第三に、認証NPO法人の三分の二を占め、社会的に大きな役割を果たしている介護・医療事業分野については、非課税となっている社会福祉法人とのバランスも考慮し、非課税扱いにするべきであります。

 以上三点について答弁を求めます。

 次に、特例公債の発行に関する法律案であります。

 これは、来年度政府予算案で、財源不足を来すうちの十九兆六千億円を、財政法に特例を設けて、赤字公債の発行で賄おうとするものです。

 政府は、来年度末で国、地方を合わせて六百六十六兆円という長期債務残高を生み出します。この財政破綻の解決も、自民党政治のもとでは、悪性インフレ、消費税大増税、国民向け予算の大幅切り捨てという三重苦を国民に押しつけるしかないところへ来ています。

 日本がこれほど財政規律を失ったのは、八九年四月に消費税を導入してからのことです。八八年までの国債発行残高百五十七兆円が八九年から二〇〇一年までで三百八十九兆円へ、二・五倍に急増しました。財政がこれだけひどくなってもまだ国債発行を考えるのは、やはり参議院選挙が済んだら消費税の大増税を考えているからではありませんか。はっきり答えていただきたいと思います。(拍手)

 先日、財務省が発表した「財政の中期展望」によれば、政府の目標としている経済成長を達成できたとしても、三年後の二〇〇四年度は、国債残高が今より約百二十兆円ふえ、四百八十三兆円にもなります。対GDPは七五%から八七・七%に上昇します。深刻なのは、景気が回復して金利が一たん上がれば、単純計算した場合、仮に一ポイントの上昇で、二〇〇一年度なら約四兆円、二〇〇四年度は約五兆円の金利負担で、国債費が跳ね上がることです。その上、法人税率を引き下げているために、景気回復が法人税収の増加に余りつながりません。政府の税財政政策の誤りで、深刻な財政危機の解決を一層困難にしているのではありませんか。

 それでは、直面している財政赤字の解消に政府はどのような財政計画を持っているのか、消費税の増税なしに財政の破綻状態から立て直しを図ると約束するのか、明瞭に答弁されたいと思います。

 今、何よりもなすべきことは、公共事業の予算を削減して国債発行をこれ以上ふやさないこと、不況で法人税負担の少ない時期にこそ大企業の法人税率を欧米並みの水準に引き上げておくことであります。財務大臣の答弁を求めます。

 日本共産党は、財政再建の提案として、年間五十兆円の公共事業費を生活福祉型に重点化しながら段階的に半減する、軍事費を半減するなど、むだと浪費の構造に思い切ったメスを入れる歳出の改革、大企業、高額所得者優遇の不公平税制を是正する歳入の改革、国民生活予算を確保しながら計画的、段階的な目標を持って取り組む、この三つの原則に立って、国民本位の財政再建に踏み出すことが急務だと考えております。その実現のために奮闘することを表明し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) えひめ丸衝突事故に関する総理の対応についてお尋ねがございました。

 本件事故について連絡を受けた後、ゴルフ場にとどまったことについて、御批判があることは承知しておりますが、この種事案の初期情報に対して、いかなる場所からでも確実に情報を受けとめ、適時適切な指示を出すということが重要であります。

 このような観点からは、総理は、報告を受けて、直ちに情報収集に万全を期すとともに、米側に人命救助に関する最大限の協力を要請するよう関係省庁に指示したところであり、必要な初動措置をとられたものと考えます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 桜田外務政務官の発言は、現地において関係者の説明を受け、その印象を述べたものでありまして、私としては、さらに情報収集、分析に努めたいと考えております。

 ちなみに、原子力潜水艦グリーンビルの衝突後の動きについて、これまでの米側の説明を総合いたしますと、以下のとおりでございます。

 グリーンビルは、事故発生後直ちに沿岸警備隊に通報するとともに、えひめ丸の救命いかだを視認し、沿岸警備隊と連携しつつ捜索活動に従事した。ただし、そのとき洋上には三から六フィートくらいの大きなうねりがあり、ハッチを開くことができなかった。また、潜水艦の湾曲構造もあり、潜水艦で救命いかだにいた乗員を直接収容するよりも、現場に急行した沿岸警備隊の船で乗員を収容する方が安全であるとの判断があった。なお、グリーンビルは、その後も現場海域にとどまり、現地時間十日朝、港に戻ったと述べています。

 このアメリカ側の説明につき、防衛庁の見解を照会したところ、以下のとおりであります。

 状況次第で一概には言えないが、一般論としては、原子力潜水艦の乾舷は極めて低く、数フィートのうねりがある場合、ハッチをあけて救助活動を行うのは困難な場合があると承知している。また、潜水艦の円筒形の構造から、海上からの乗船は難しく、救助される人が既にいかだに乗っているときなどは、あえて原子力潜水艦側がこうした人たちを潜水艦に乗り移すよう試みないことが合理的な場合もあると考えられる。

 現在、米側の行っている調査は、グリーンビルの衝突直後の活動を対象とするものでありまして、米側の調査結果を待ちたいと考えます。

 原因究明については、アメリカ海軍は調査の担当官を任命し、アメリカ国家交通安全委員会も調査団をホノルルに派遣して調査を行っていると承知をいたしており、御質問の緊急浮上を行った理由についても、これらの調査において明らかにされるものと考えております。

 いずれにいたしましても、政府としては、米側に対し、一日も早い事故原因の究明、公開と再発防止を求めてまいりたいと考えます。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 最初に、吉井議員のお許しをいただきまして、先ほど五十嵐議員の御質問に対しますお答えが不十分であったということで、補足をさせていただきます。

 それは戸塚ゴルフクラブの会員権に関する件でございますが、税務の観点からは詳細の事実関係がわかりませんので申し上げられないということを申し上げましたが、税務の建前について説明せよということでございます。

 一般論として申し上げれば、他人の名義で不動産、株式等の資産の取得がなされた場合または名義変更がなされた場合には、これらの行為は原則としてその名義人に対する贈与として取り扱っており、贈与者が法人の場合には、その名義人が所得税の一時所得の課税対象になると承知しております。しかしながら、資産の取得の経緯、その後の管理の状況等から贈与の事実がないことが確認できる場合には、一時所得の課税は行われない。

 次に、法人の所有する資産を借り受けたことにより経済的利益が生じていると認められるときには、その借り受けた者が所有者から受けるその経済的利益については、原則として雑所得として所得税の課税対象となり得ると承知しています。しかし、借り受けた者の費用等の負担状況などを勘案して経済的利益が生じていないと認められる場合には、課税対象とはならないと承知しております。

 次に、吉井議員の御質問は十幾つにわたりますので、なるべく簡潔にお答えをさせていただきます。

 確かに、今の問題は、個人所得が伸びない、家計に問題があるんだろうとおっしゃるのは、私もそのとおりだと思います。これは従来の不況回復のときには見られなかったことでございますから、あるいはこの非情なリストラクチャリングが、我が国の雇用慣行というものを、やはり構造変化をもたらしているのかもしれないと思っております。

 しかし、国民が金を持っていないというわけではない、使うことに消極的であるということであるとすれば、それはやはり、二十一世紀の新たな発展基盤の確立を目指す努力で、人々の生活基盤の安定にそれがつながる、そういう施策を地道に進めていくということが私は答えであろうと思っております。

 現実にまた予算の中で、いわゆる総額七千億円の日本新生特別枠あるいは税制面あるいは雇用改善、あるいはまた将来不安を解消するという観点からは、社会保障制度等について政府が有識者会議を開いて施策を進めておる等々のことは御承知のとおりでございます。

 それから、法人税法の改正でございますが、会社の分割、合併等の企業組織再編に係る税制上の措置、これは大企業優遇ではないかというお尋ねでございましたけれども、経営環境が変わる中で企業活力が十分発揮できるように、商法などにおいて柔軟な企業組織再編ができるような法制改正がございましたから、税制としてもそれにそのままつき合ったということでございます。したがって、これは企業組織再編成全体の税制を整備するものでありまして、大企業優遇というようなことは当たらないのではないかと思います。

 なお、この制度が税収にどれだけ影響があるかということは、どのくらいな規模で企業組織再編が行われるかということがわかりませんので、影響額を試算することはちょっとただいまのところ困難だと思っております、結果としてはいずれわかることでございますけれども。

 それから、法人税法のこの改正案の中で、移転した資産の譲渡損益の計上の繰り延べを認める条件の一つとして、おおむね八〇%以上の従業者が引き続き業務に従事することが見込まれている場合という条件をつけました。これは普通の資産の移転と区別するためにこういう一つのクライテリアを設けたわけでございますが、これは別に労働に対して不当であるというふうには私は考えませんで、むしろ、こういうことをせずに、こういうことの有無を問わずに課税繰り延べが認められている場合が従来あるわけですから、今度はそれを条件としたという意味では、結果的に労働側に保護的な措置になるのではないか、どうも私にはそのように思われますが、いかがでございましょうか。

 それから、株式の譲渡益につきましては、先ほど申し上げましたようなことで、今の状況の中から延期をいたしたわけでございます。

 それから、まさに、個人消費を伸ばすということが非常に大事だ、そのとおりだと思っておりますけれども、現在、平成十一年度の大きな所得減税はそのまま現在行われておるわけでございます。また、今の個人所得税になりますと、何度か改正をいたしましたので税負担の水準は低下しておりまして、中低所得者の税負担は主要国の中では最も低いものになっている。むしろ、私などは、最初の所得税率は低くてもいいから、なるべくたくさんの人に所得税を納めてもらうために、課税最低限をもっと下げるべきではないかという感じを持っております。

 なお、続いて申しますけれども、我が国の財政状況は非常に悪い、主要国中でも悪いことになっておりまして、平成十三年度の国税収入の水準は昭和六十三年度まで逆転をしているというような状況でございます。

 それから、NPOにつきまして、先ほども申し上げかけましたが、NPOでも、高齢者への福祉サービスを行うといったようなところから、あるいは会員相互の親睦、趣味、娯楽等々にわたるものもございまして、公的な金を財源にする優遇措置でございますから、対象となる法人はそれにふさわしい公益性を持ってもらう必要がある、こういう考え方をいたしておりまして、また、クライテリアといたしましては、そのNPOが、事業活動について一定の情報公開を行っている、あるいは法人の運営組織や経理が適正である、公益性のある事業が継続的に行われている、資金について割に広く一般からのサポートがある、パブリックサポートがある、特定の者を対象とする受益ではないといったようなことが大事であるというふうに思っております。

 それから、もう一つの話は、法人が支出する認定NPO法人に対する寄附金については特定公益増進法人に対する寄附金と合わせて損金算入限度にすべきじゃないか、そういう理屈じゃないかとおっしゃいますけれども、実は、中小企業が大企業に比べて認定NPO法人に対する寄附を行いにくいとは考えておりませんのは、実際は非常に少ない、損金算入限度の四・五%しかなされておりませんで、限度額使われておりません。したがいまして、そういう制度を設けましても実益はないのではないかという意味でございます。

 もう一つの問題は、普通の公益法人の場合に、営業部門からこちらへ、収益部分からこちらへ移る部分の一定の寄附を認められておるということについてもお尋ねでございますけれども、まず、介護保険法の介護サービス等々は、一般に、営利企業、医療法人、協同組合、生協等々みんな全部、収益事業とみなしております。したがいまして、NPOもその例外ではない。これらの法人と一緒に扱っておりますわけでありまして、ただ、社会福祉法人だけが特典を与えられております。

 ここだけがそういう例外になっておりますが、それは、社会福祉法人が、やはり一般的に公益性が高い事業を営んでいる、あるいは生活困難者に対して無料または低額な料金での診療事業をすることを求められておるということから社会福祉法人だけを例外といたしておりますので、NPOは他の公益法人等と一緒の、並みの扱いを受けておるというのが事実でございます。

 それから、消費税の増税につきましてですが、我が国の財政がこういう状況でございますし、また、社会福祉関連の負担がますます年とともにふえていくということもございますので、そういう意味で、消費税についても、そういう負担に相応するものを消費税に背負ってもらいたいという気持ちはございますけれども、しかし、今後、そういう社会福祉関連につきましての根本的な結論を間もなく出さなければなりませんが、そのときに、この問題は国民的な問題として議論をしていただいて決定していただきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、景気が回復しましても、金利上昇によって国債費が増加する、そういうことになるではないかということは、確かにそういうことがございますので、むしろ、もう少し民間資金需要が起こることが望ましいというふうに考えております。

 なお、法人税率が引き下げられているので税の減収になっておるということでございますが、確かに法人税率は、今、国際水準になったと思います。これは、しかし、我が国の企業が国際的に活躍するために必要だということでございますので、ただ、これ以上引き下げる必要は恐らくない、国際的な水準に達しておると思っております。

 それから、財政赤字の解消あるいは財政改革でございますが、これも議場で何度か申し上げましたが、どうしても財政改革は税制改革、社会保障あるいは中央、地方の問題まで発展いたしますので、過般の経済財政諮問会議におきまして、それらの問題を含むマクロモデルをつくってシミュレーションをして、そして、幾つかの衝突するそういう諸要素に対して一義的に同時的な答えを出すようなシミュレーションをしなければならないだろう、こういうふうに考えておりまして、既にシミュレーションの準備を始めようとしているところでございます。

 それから、公共事業につきましては、いろいろ御議論はございますけれども、殊に公共事業予備費につきまして、十三年度に計上いたしましたのは、先ほど吉井議員もおっしゃいましたが、どうも消費の回復が十分はかばかしくないということをも考えまして、予備費を、前年度ほどではございませんでしたが、計上いたしておる、そういう用意をいたしておるということでございます。

 また、法人税につきましては、現在、もう既に国際水準になっております。それはしかし、決して高いということではございませんが、国際水準まで達しておりまして、これを引き上げるということは私は考えておりません。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 借り手企業のリストラの強行を求めているのではないかとの御指摘がございました。

 金融機関の不良債権の残高はこのところ横ばいで推移しておりますが、これにつきましては、適切な貸し倒れ引き当て等を行っておりますので、金融機関の健全性につきましては、かつてのような問題はないと考えております。

 しかし、金融機関が多額の不良債権を抱えていることは、その貸し出し態度を過度に慎重にさせること等とともに、借り手企業の側におきましても、収益分野への投資を困難にさせ、これらがひいては日本経済全体の再生、再活性化にとって大きな障害となることが懸念されよう、このように考えます。

 そこで、今般、金融サイドの不良債権のオフバランス化と産業サイドの過剰債務の解消に向けまして、金融庁と経済産業省、国土交通省で情報や意見の交換をすることとしたものでありまして、その目的は日本経済の再生であることをぜひ御理解賜りたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 日森文尋君。

    〔日森文尋君登壇〕

日森文尋君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、特例公債法案外二法案について質問をさせていただきます。

 質問に先立ちまして、えひめ丸の事故についてどうしても触れなければなりません。

 最初に、犠牲になられた方々やその御家族に心からお見舞いを申し上げたいと存じます。

 この事件に関して、国民は、いまだ行方不明の九名の方々の安否を気遣い、その無事を願うとともに、この信じがたい事故の原因究明を求めております。時間がたつにつれて、民間人がかじを握っていた事実、安全確認を原潜が怠っていた事実、このような事故当時のアメリカ原潜の余りにずさんな航行の実態が明らかになりつつあります。

 日米外交にも重大な影響を及ぼす非常事態にもかかわらず、森総理及び内閣の対応は全くお粗末と言うほかありません。とりわけ、ゴルフをしていて何が悪い、こう言わんばかりの総理の発言、そして先ほどのゴルフ会員権問題、こうした問題について多くの国民の怒りと反発を買っています。総理失格、こう言わなければなりません。

 残念なことに、本来ならば、総理はきょうこの場に来て、その事実について国民、国会に報告すべきでありますけれども、残念ながら出席をされておりません。ぜひ国会の場に出席をして、総理みずからの不明を恥じるとともに、この間の対応を国民に謝罪し、直ちに総理の座を退くことが森総理のとるべき唯一無二の選択肢であることを申し上げておきたいと思います。(拍手)

 次に、外務官僚による機密費流用疑惑についても申し上げなければなりません。

 この問題は、外務省の松尾元室長による個人的な公費流用あるいは横領などという次元の話ではありません。外務省自体の体質であり、システムに深く刻み込まれた構造的なものであると言わなければならない、こう思います。

 私は、この際、我が国の政と官の恥ずべきうみを徹底的に搾り出さなければならないと考えています。機密費とはいえ、国民の税金です。疑惑を持たれるような執行が行われていいはずがありません。この機密費横領事件については、内部の体制に徹底的にメスを入れ、詳細で厳重なチェック体制を確立すべきであります。そうすれば機密費の大幅な削減も実は可能になる、こう思っています。

 森総理は、この疑惑について、はっきり言えば細川内閣から小渕内閣までの話でしょ、こう語ったと報じられています。何か自分とは関係のない話だと言わんばかりですが、八百億円以上の経費をかけて、史上最大のむだ遣いと言われた昨年の九州・沖縄サミット、この準備事務局の次長がほかならぬ松尾元室長その人であるということは、紛れもない事実であります。したがって、この疑惑は森総理自身にも向けられていることを肝に銘じていただきたいと存じます。九州・沖縄サミットにおけるロジスティックス、これについても徹底的な調査が必要だということを特に強調しておきたいと思います。

 さて、機密費をめぐって、これは政官の裏金であり、国会対策や外遊のためのせんべつに使われている、だから、国会議員は与野党を問わず同罪なのだから徹底した追及はできないだろう、こんなことがまことしやかに語られていますが、これは全く恥ずべきことです。国会対策やらせんべつやら、もしそのようなあしき慣行があるのならば、きっぱりとやめればいいんです。きょうここに御出席の同僚議員の皆さん、いかがでしょうか。

 加えて、KSDの疑惑についても、自民党の政治、政策、立法行為が丸ごと金で買い取られている、この事実を明らかにしています。この際、自民党のためにもあえて申し上げますが、野党が要求する関係者の証人喚問を直ちに行うことを強調しておきたいと思います。(拍手)

 さて、来年度政府予算の歳出総額は八十二兆六千五百二十四億円、この予算総額に占める国債の新規発行額は赤字国債と建設国債を合わせて二十八兆三千百八十億円、過去最高だった昨年度より確かに四兆三千億円、一三・二%減額はされてはいますが、公債依存度は依然三四・三%、実に歳入の三分の一を占めております。二〇〇二年三月末には、国と地方を合わせた長期債務残高は六百六十六兆円に達します。もはや国の債務は限界であると言わなければなりません。

 消費がなかなか思うように回復しないという理由の一つには、間違いなく、巨額の財政赤字がいつ増税となってはね返ってくるかわからない、こういう国民の将来不安があることは明らかです。

 財務大臣、大臣は、私は最も多額の借金をした大臣として名前が残ることになるだろう、こう自嘲ぎみに語られたことがございます。時ここに至れば、国の債務が膨れ上がった政治の責任を自覚して、国民的課題として財政の健全化に向けて取り組むべきだと思いますが、まず、財務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

 もう一つ、財政健全化に関連して質問いたします。

 来年度の予算案においては、国の台所事情が極めて苦しい状態にもかかわらず、三千億円の公共事業予備費が計上されております。総選挙が行われた昨年度の予備費は五千億円でした。この予備費は使い道を明確にしなくていいだけに、いろいろなことに利用できるわけです。例えば選挙で、与党を応援しないところにはこの予算は回さない、こうおどして選挙を与党に有利にすることすらできるのじゃないでしょうか。しかし、こういう政治的思惑による予算を続けていく限り、財政の健全化が図れるはずはありません。

 この際ですからお伺いいたしますが、こうした政治的思惑による公共事業予備費について財務大臣はどのようにお考えになっておられるのか、明確にお答えをいただきたいと存じます。

 次に、租税特別措置法改正案について伺います。

 新しい世紀の始まりである来年度の税制改正において、多くの国民が求めていたものは、税の不公平を解消するとともに、納税者のだれもが税金を、払いがいがあり、受け取りがいのあるものとすることでした。しかしながら、株式譲渡益の源泉分離課税の存続に端的に示されているように、来年度税制改正案はこの国民の期待に背を向けたものでしかありません。しかも、政府は二十一世紀の税のあり方をどうしようとしているのか、この税制改正案ではそのビジョンが全く伝わってまいりません。

 財務大臣にお尋ねをいたしますが、なぜ株式の源泉分離課税が延長されたのでしょうか。先ほど御答弁いただきましたが、どうもはっきりわかりません。理由をもう一度説明していただきたいと存じます。

 既に、御存じのとおり、一九九九年の国会で、個人投資家の株式譲渡益の源泉分離課税は本年の三月末で廃止し、四月から申告分離課税に一本化する法改正が行われております。よもや忘れたとはおっしゃらないでしょうが、私は、実際の利益ではなく、みなし利益率で課税されるという不透明さを解消するためにも、予定どおり本年四月から申告分離課税に一本化すべきだ、こう思いますが、財務大臣のお考えを明らかにしていただきたいと存じます。

 次に、今回の法人税制改正案では、会社分割や合併、現物出資など、企業の組織再編を支援する措置が導入されました。企業サイドはこれによって、リストラ促進法とも言える産業再生法とあわせて、強力な手段を手に入れることになりました。しかし、大切なことが忘れられています。企業再編のもう一方の当事者である働く人々への対応です。このままでは、従業員は企業のなすがまま、思うがままにされかねません。

 私は、倒産に瀕する企業などに対して従業員がイニシアチブを発揮できるようにするための体制整備が緊急の課題だと思っております。具体的には、税制優遇や低利融資、債務保証などの支援を前提として、EUでも見られるような従業員による買い取り制度、この導入に積極的に取り組むべきだと思います。財務大臣としてはどのようにお考えなのか、御認識をお伺いしたいと存じます。

 次に、NPOへの税制優遇について伺います。

 今回の措置で、認定NPO法人に対する個人からの寄附金の控除と法人からの寄附金の損金算入が認められました。しかし、税制優遇を受けられる認定NPO法人の認定は国税庁長官が行うことになっております。

 これも何度も御答弁いただきましたが、社民党やNPO団体は、明確な基準を設けた上で行政から独立した第三者機関を設置してこの認定を行うべきだ、こう主張してまいりました。国税庁長官による認定が公正で信頼されるものとなるかどうかは大変疑問ですし、税務当局による恣意的な判断がなされるのではないか、そういう危惧が払拭できません。このことについて財務大臣の認識を伺いたいと存じます。

 また、認定NPO法人の収益事業による所得を非収益事業に支出した場合、これをみなし寄附金として損金算入を認める制度の創設が見送られたことについては、極めて残念だと思っています。NPO側からも強い要望が出ていましたが、寄附金の優遇だけでは、活動資金を事業活動で賄うしかないNPO法人にとってはメリットは余りありません。NPO法人の収益事業に関する優遇措置はぜひとも必要なんです。

 私は、NPO法人を無定見に優遇しろ、こう言っているわけではありません。まだ発展途上にあるNPO法人の経理能力を高めて、情報公開を促進することによってNPOの活動を真に公益に資するよう位置づけていくためには、税制等による優遇措置によって誘導することが不可欠だ、こう思っているのです。このことについての財務大臣の御認識を改めてお伺いしたいと存じます。

 また、地方税についての減免措置がなぜ考慮されなかったのか、この理由についてもお伺いをし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 最初に財政再建についてお話がございまして、確かに、おっしゃいますような財政の現状でございます。

 それで、先ほどもお答え申し上げましたが、ここに来まして初めて、四年ぶりでございますか、法人税が当初見込みを上回るような様子がございます、個人はまだそこまで参りませんけれども、経済の自律的回復があるいは始まるのかというような希望を持っておりますが、そういたしますと、財政再建の中で歳入の見積もりができるようになるのでございます。

 他方で、財政再建と申しましても、もう先ほど申し上げましたが、税制も、地方、中央の行財政も、あるいは社会保障も全部、当然それを議論いたしませんと財政再建の議論ができませんので、それらの問題が一義的に決定できるようなシミュレーションをしなければならない。そのために、マクロモデルをつくろうということを経済財政諮問会議で先般、決定をいたしました。

 これをいたしますと、ここはここ、あそこはあそこという解決はできませんで、負担も給付もみんな一義的に決定することになりますので、かなり厳しい選択を国民としてしていただかなければならないということになると思いますが、それはしかし、二十一世紀の最初の十年ぐらいのやはり我が国の経済社会のあり方を決定するものだと思いますので、厳しいことですが、やむを得ないことだということで、そういう基本的な準備を始めたところでございます。

 それから、公共事業予備費をなぜ設けたかというお尋ねでございまして、実は、昨年の途中で、私は、十三年度は予備費は要らないかなということをしばらくやや希望的に思っておりましたが、企業設備は回復いたしましたが、どうも家計消費がもう一つ十分思ったように出てこないという、いわばバトンタッチの片っ方が抜けておるという状況でございますので、また、現在もそのように見えますので、これはやはり予備費を計上しておいた方がいいのではないかな、五千億円は要らないかもしれないがと思って、いたしました。それはそういう経済の状況の判断からいたしましたものでありまして、もとより選挙云々ということには関係がございません。

 それから、株式の譲渡益課税について、引き延ばしたことについて御批判がございました。世間にも批判をされる向きが確かにございます。ただ、今の経済状況あるいは株式市場の状況から、これも一つの現実の方策としてやむを得ないだろうか、税制調査会などでもそういう意見がございまして延ばさせていただいたような次第でございます。

 それから、いわゆる企業の経営環境の関連でございますけれども、企業組織再編成を可能にするために商法等の整備ができましたので、税法としても、その際、不必要な負担がかかりませんような措置をいたしたわけでございます。企業組織再編成によりまして資産を移転する前後で経済実態に実質的に変更がない場合には、そのように即応するような税法の整備をした方がいいと考えたわけでございます。もちろん、企業に一方的なリストラの手段を与えるような性格のものではございません。

 なお、平成十一年に制定された産業活力再生特別措置法において、従業員等による株式取得を支援する措置として、一定の場合にストックオプションの付与可能額の上限を引き上げる措置等が講じられております。

 それから、NPOでございますが、なぜ国税庁が行政をするのかということにつきまして、NPOはなるべく役所の制約を受けないのが本意でございますから、どこの所管というものがございませんで、この行政が国税に関する行政でございますので、国税庁の行政といたしました。おまけに、全国一律にいたさなければなりませんので、そういうことをいたしたわけでございます。

 なお、認定基準については客観的、明確なものにいたしたい、そうでなければならないと思っておりまして、別に第三者機関を設けろということになりますと、それほど大きな行政ではございませんし、また、行政が煩瑣になるということからすれば、国税庁が間違いなく行政をしてくれればそれでよろしいと考えております。

 最後のお尋ねは、いわゆるみなし課税というお尋ねであったわけでありまして、それは、法人が収益事業を営んでいる場合にこれは課税になるわけでございますが、そうでないものは課税になりません。収益事業から一部寄附金として、その非収益事業に入れる、損金に算入するということを確かにやっております。やっておりますが、どうしてそういうみなし寄附金をNPOにもしないのかというお尋ねは、事務当局の調査をいたしておりますところでは、ほとんどのNPOが収益事業というものをやっていない、法人税を負担していないという現状で考えますと、そういう措置を設けましても、そこからみなし寄附をするような状況はない、こういうふうに考えておりまして、そういう措置をこの際には設けておらないというのが実情でございます。(拍手)

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) NPO法人に対する地方税の優遇措置についてのお尋ねでございますが、地方税の中で法人住民税、法人事業税におきましては、認定NPO法人に対します法人からの寄附金の損金算入措置が法人税に準じて行われております。これは国税と一緒でございます。

 個人住民税の寄附金控除はどうか、こういうことでございますが、個人住民税は、地域社会の会費として住民の方に広く薄く負担していただく、こういう性格の税でございますので、極力政策的な控除はしない、こういうことにしておりまして、例えば国なり特定公益増進法人に寄附する場合も控除いたしておりませんので、今回のNPO法人についても対象としない、こういうことにさせていただいたわけであります。御理解いただきます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十四分散会




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