衆議院

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第8号 平成13年2月22日(木曜日)

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平成十三年二月二十二日(木曜日)

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  平成十三年二月二十二日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 片山総務大臣の平成十三年度地方財政計画についての発言並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(平成十三年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、平成十三年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣片山虎之助君。

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) 平成十三年度地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 まず、平成十三年度の地方財政計画の策定方針について御説明申し上げます。

 平成十三年度においては、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえて、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化を推進する一方、景気対策への取り組み、IT革命の推進等、二十一世紀の発展基盤の構築など当面の重要政策課題に適切に対処し、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図ることを基本としております。

 地方税については、恒久的な減税を引き続き実施するとともに、自動車の環境負荷に応じた自動車税の特例措置の創設、被災住宅用地に係る固定資産税の特例措置の創設等、所要の措置を講ずることとしております。

 また、通常収支における地方財源不足見込み額については、これまでの交付税特別会計における借り入れ方式を見直し、国と地方の折半という考え方は堅持しつつ、国負担分については一般会計からの加算により、地方負担分については特例地方債の発行により対処するという考え方のもとに、地方財政の運営上支障が生じないよう補てん措置を講ずるとともに、恒久的な減税に伴う影響額については、国と地方のたばこ税の税率変更、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金及び減税補てん債の発行等により補てんすることとしております。

 さらに、地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、自主的、主体的な活力ある地域づくり、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安全な町づくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図るため、地方単独事業費の確保等、所要の措置を講ずることとしております。

 以上の方針のもとに、平成十三年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は八十九兆三千七十一億円、前年度に比べ三千七百七十一億円、〇・四%の増となっております。

 次に、地方税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成十三年度の地方税制改正に当たりましては、最近における社会経済情勢等にかんがみ、地方税負担の軽減及び適正化等を図るため、自動車の環境に及ぼす影響に応じた自動車税の特例措置の創設、被災住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置の創設、一定の者に関する輸入軽油に係る軽油引取税の課税の時期の見直し等の措置を講ずるほか、非課税等特別措置の整理合理化を行う等の所要の改正を行うこととしております。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、平成十三年度分の地方交付税の総額につきましては、一般会計から交付税特別会計への繰り入れ等により、二十兆三千四百九十八億円を確保することとしております。また、平成十五年度までの間における一般会計から交付税特別会計への繰り入れ及び地方債に関する特例を設けることとしております。

 さらに、単位費用につきまして所要の改定を行うほか、国庫負担金、国庫補助金の区分の明確化、公営企業金融公庫の資金の調達手段の多様化等を図るため、関係法律の改正を行うこととしております。

 次に、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、本年三月三十一日に期限切れを迎えることとなっております国の財政上の特別措置について、十年間の延長等を行おうとするものであります。

 以上が、地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。

 以上であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(平成十三年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの地方財政計画についての発言及び三法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。玄葉光一郎君。

    〔玄葉光一郎君登壇〕

玄葉光一郎君 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました三法案並びに喫緊の課題について質問をさせていただきます。

 まず、本題の三法案であります。

 この三法案の根本的な命題は、現在の仕組みで地方財政は持続可能、すなわち、サステーナブルなのかということではないかと思います。

 国民に身近な行政サービスを提供している地方の財政は年々悪化し、来年度末には百八十八兆円という巨額の借金残高に達するとされています。平成四年度末には借金残高は八十兆円でありましたから、この十年間で百兆円もふえたことになります。さらに、地方の財源不足を埋めるために国が重ねてきた借金の残高、いわゆる地方交付税特別会計の借り入れも四十二兆五千億円に達します。

 なぜ、ここまで地方の財政は悪化したのでしょうか。

 まず、国が地方に要請した景気対策に大きな原因があることは明らかであります。そして、より本質的には、地方財政の仕組みに原因があると考えます。

 国が地方に公共事業をやらせ、そのための地方債を発行させる。しかし、それらは十分な経済波及効果をもたらさず、税収増にはつながらない。さらに、地方交付税特会では、自治体が発行した地方債の元金や利子まで負担しますから、自治体の一部に、国が肩がわりしてくれるのだから借金しなければ損だという錯覚さえも与えています。

 本法案では、地方の財源不足を、従来の交付税特会にかえて、国負担分は一般会計より繰り入れ、そして、地方負担分については個別自治体に赤字地方債を発行させ、国、地方の財政責任を明確化するとしています。

 ところが、この赤字地方債について、地方交付税により元利償還を全額補てんするということであります。これでは、国の特別会計で行っていた借金を、見かけ上は自治体、実体的には国の赤字国債につけかえるだけであって、何ら根本的な解決にはなっておりません。このような制度改正をもって一体何を期待しているのか、片山総務大臣に伺います。

 さらに、宮澤財務大臣に伺います。

 国の政策意図のために地方財源が使われる現状をどう認識していますか。確かに、現在の経済対策の中心である公共事業については、そのおよそ八割が地方の歳出ですから、地方の協力なしの経済対策は成り立たない側面があるのでしょうが、今や節度を大きく超えていると考えますが、いかがでしょうか。宮澤財務大臣の個人的見解を伺います。

 結局、地方財政を持続可能にするためには、地方分権を通してそれを実現するしかないのではないでしょうか。それも、地方分権一括法で行った単なる事務権限の分権にとどまらず、事業と財源の分権によってであります。

 民主党は、第一段階の改革として、国と地方の役割分担を見直した上で、弊害の多い補助金を抜本的に改め、これを透明な基準で自治体に配分する一括交付金とすることを提唱しています。例えば、一号線から五十八号線以外の国道、農業農村整備事業、都市計画事業などに関する補助金は一括化して自治体に交付し、その後の事業選択を自治体にゆだねたいと考えています。そして、以上のことを行いつつ、国による義務づけや基準の設定を見直し、基準財政需要額を縮小するなどの交付税改革を行えばよいと私は考えます。

 地方交付税に頼る自治体にとって、現在の交付税制度にメスを入れることの影響は小さくないと思われます。しかし、交付税改革と同時に、補助金や負担金の一括交付金化が行われれば、地方自治体は真にその地域に必要な事業をみずからの発意と責任で行えるようになることで、交付税改革による影響を相殺できるばかりか、むしろ、地域住民の行政サービスに対する満足度や厚生水準は高まるのではないでしょうか。そして、補助金をめぐる利益誘導政治もなくなり、さらに、交付税改革は地方の財政の持続可能性を高めてくれるはずであります。(拍手)

 次に、第二段階として、国と地方の税収比率が一対一になるよう、国税の一定割合を自治体の自主財源へと移譲します。この場合、適切な財政調整は行いますが、自治体の自主財源を増加させることにより、住民の受益と負担の関係をより明確にさせます。

 さらに、第一段階、第二段階を通して、市町村合併を進めつつ、地域コミュニティー機能の充実を図り、その後、いわゆる道州制の導入を図るというのが民主党の基本的な考え方であります。

 片山総務大臣に、地方の財政を持続可能にするための道筋について、お考えを伺いたいと思います。

 さて、橋本行革担当大臣に伺います。

 地方分権推進委員会の公表された資料を見ると、首相在任当時、分権推進委員会は、公共事業等の国庫補助の見直しについて、従前の政府の姿勢からすれば、かなり踏み込んだ提言をなさろうとしていたことがわかります。しかし、関係省庁と自民党の関係部会の抵抗の末、それらは見事に骨抜きにされ、五次勧告が提出されるに至りました。橋本首相退任後、三カ月後のことであります。橋本行革担当大臣は、この一連の経過についてどのような感想をお持ちでしょうか。

 また、ことしの一月一日より中央省庁の再編が行われました。省庁の省という字には省くという意が込められておりますけれども、果たして、中央省庁の再編によって何が省かれたのでしょうか。中央省庁の再編が中途半端なものになっているのは、先ほど言及した、事業と財源の分権抜きの再編だからではないでしょうか。本来、中央省庁の再編は、地方分権と結びつけて初めて効果が上がるものなのではないでしょうか。橋本行革担当大臣のお考えを伺いたいと思います。

 片山総務大臣に伺います。

 国と地方の税源配分の見直しについて、政府は、少なくとも経済成長率が二%以上になることが前提という立場を堅持しています。経済成長率を持ち出すのは、国税の減収を前提にしているからだと思われます。

 しかし、国税の減収分について、改革された交付税や改革された補助金、負担金で調整することは可能であると考えます。すなわち、景気回復と切り離して国、地方の税源配分の見直しを行うべきではないでしょうか。地方への税源移譲についてのお考えをお聞かせください。

 また、昨年、任期を一年延長された地方分権推進委員会は、本年七月に任期が終了する予定であります。現在の分権推進委員会の任期が終了した後は、国、地方の税財源について抜本的に検討すると同時に、国、地方の役割分担の見直し、行政のスリム化を検討する専門の組織を設け、全省庁にわたる横断的な見直しを可能とするような権限を与えるなど、思い切った委員会の設置が必要ではないでしょうか。片山総務大臣のお考えを伺いたいと思います。

 さらに、公明党の神崎代表は、一昨年の代表質問において、地方消費税の二%への拡大を提唱されていましたので、国と地方の税源配分の見直しについての坂口厚生労働大臣のお考えもお聞かせいただきたいと思います。

 最後に、喫緊の課題について伺います。

 ローマ帝国末期の政策は、パンとサーカスの政策と呼ばれています。すなわち、御機嫌取りの政治が行われた結果、人々の自立心やプライドやモラルが失われ、ローマ帝国の衰退は加速されたと言われています。今、求められているのは、これまで申し上げてきたような国と地方の関係、財政、経済などの構造改革に真正面から立ち向かう勇気と覚悟であり、歴史の評価にたえ得る政策を断行するという気概と実行力であります。

 森首相の政治は、難しい問題を避け、御機嫌取りに終始する、にもかかわらず、国民の御機嫌を損ねてしまう政治であります。(拍手)国民からの支持率一けた台というのは、もはや絶望的です。恐らくは、この議場の中の支持率も一けた台なのではないかと思います。森首相が一刻も早く退陣すべきは当然のことであります。

 今や国民の関心は、次の首相がだれになるかということであります。そこで重要なのは、次の選択の方法であります。

 我が国の政治体制である議院内閣制は、言うまでもなく、国会で多数を占めた政党が党首を議会で首相に指名し、内閣を構成し、選挙で国民に訴えたみずからの政策を実行するという仕組みであります。

 したがって、政策の行き詰まりや失政等によって首相が辞職した場合には、解散により、国民の前に従来の政策にかわる新しい政策を提示し、野党と政策論争を展開し、国民の審判を受けるか、または、たとえ少数であっても野党に政権を渡すのが本来のあるべき姿ではないでしょうか。ましてや、小選挙区制は、国民による政権選択の機会を提供することが大眼目の一つであったはずであります。

 首相が交代をするならば、政権すなわち首相と政策は、国民に選挙を通して選んでもらう。このことをルール化することは、議院内閣制が十分に機能するための極めて大切な要件だと思いますが、どうお考えになられるか、橋本行革担当大臣、坂口厚生労働大臣に一般論としてお答えをいただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) 平成十三年度の地方財政対策及び制度改正の趣旨についてのお尋ねがありました。

 従来の特別会計借り入れ方式については、交付税特会の借入残高が既に平成十二年度末で三十八兆円となり、法定率分、いわば実力の三年分もの借金を抱えている状況下で、毎年度数兆円ずつ残高がふえていく方式を継続していくことは適当でないこと、また、財投改革等に伴い、多額の借入金については資金調達面からも制約が高まっていくこと、二つ目は、特別会計借り入れ方式は、いわば地方団体の共同の借金であるが、個々の地方団体には交付税という形で交付されるために、地方団体や住民に借金の実態がわかりにくいこと、さらには、国の予算上においても、特会借り入れは国の財政実態をわかりにくくしていること等の問題があるところであります。

 このため、今回は、国負担分は一般会計からの繰り入れ、地方負担分は個々の団体の特例地方債発行という方式により財源不足を補てんすることとしたものであります。これにより、国と地方の責任分担の明確化、財政の透明化等が図られるものと考えております。

 なお、この方式をとった結果、地方団体の財政運営に支障が生じてはならないので、特例地方債の元利償還金相当額については、その全額を後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入することとしたものであります。

 地方財政を持続可能とする道筋についてのお尋ねがありました。

 現在の地方財政は、大幅な財源不足が続くとともに、借入金が急増し、極めて厳しい状況であります。地方分権を支える財政基盤を確立するためにも、地方財政の健全化は重要な課題であると認識しております。

 平成十三年度の地方財政計画の策定に当たっても、経費全般について徹底した節減合理化を推進することを基本とし、地方一般歳出は対前年度比〇・六%減とするなど、一歩でも地方財政の健全化に向けての取り組みを図ったところであります。

 当面の財政運営としては、地方財政の立て直しのためにも、景気を自律的回復軌道に乗せることが必要と考えております。これにより、地方税等の地方一般財源の収入増を図るとともに、国、地方を通じる行財政の簡素効率化等を一層推進することにより、歳入歳出ギャップを縮小していくことが重要であります。

 今後、景気の状況を見きわめつつ、地方税の充実を基本とした国と地方の税財源配分の見直しなど、地方財政の諸課題について幅広くしっかりとした検討を行い、財政構造改革の必要性等をも十分踏まえつつ、地方団体がより自主的、自立的で持続可能な行財政運営を行えるよう、財政基盤の充実強化を図ってまいる所存であります。

 次に、地方への税源移譲についてのお尋ねであります。

 地方分権の進展に応じ、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方における歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、自主財源である地方税を充実し、国庫補助負担金など、国からの財源への依存度をできるだけ少なくすることが必要であります。

 今後、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、国、地方を通じる財政構造改革の論議の一環として、税源移譲なども含め、国と地方の税財源配分のあり方について幅広く検討を行ってまいる所存であります。

 最後に、地方分権推進委員会期限切れ後の地方分権推進体制についてのお尋ねがありました。

 現在、委員会においては、地方分権推進計画の実施状況等について監視活動を行っていただくとともに、地方税財源の充実確保策について精力的に御審議をいただいているところであります。

 お尋ねの、委員会期限切れ後の地方分権推進体制のあり方については、どのような体制が望ましいかは、地方分権推進委員会における今後の審議状況を踏まえつつ、関係省庁とも十分協議の上、検討してまいる所存でございます。御意見は参考にさせていただきます。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 景気対策におきまして、公共事業の追加を行う際には、各地域の要望等を踏まえた上で予算措置を行っておるつもりであります。また、地方負担に対して起債措置などを講じる等々、地方の財政事情もできるだけ配慮するよう努力をいたしてまいっておるつもりでございますが、しかし、実際問題として、地方財政は、近年の我が国経済の厳しい状況によりまして税収が伸び悩んでおりますし、全体経済の低迷、そうして、そのために景気対策を公共事業としていたしますと、その追加のための負担、あるいは特別減税等々がございますから、地方財政は結果として借入金が急増をいたしておりまして、おっしゃいますように極めて厳しい状況にありますことは、私どもも十分認識をいたしております。

 このような状況にかんがみまして、平成十三年度地方財政対策におきましては、新しく、地方に特例地方債を発行してもらう、また国は、交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入額を、これは国債を発行いたしましたが、そのために増額する等の制度改正を行いました。国、地方を通ずる財政のさらなる健全化と透明化に取り組みますとともに、地方財政の運営に支障を生ずることのないよう、所要の地方交付税総額を確保することとしております。しかし、依然として地方財政は非常な困難な状況にありますことは否定することができません。

 この問題でございますが、しょせんは国と地方を通じる行財政の再配分と申しますか、具体的に、国庫補助金、負担金あるいは地方交付税等々ございますが、そういう行財政全体の再配分、再編成を行わなければ、基本的に解決をすることは難しいのではないかと考えておりまして、かねて、財政改革を行いますときの一番大きな、社会保障と並んで一つの問題はこの問題であると認識しておりますので、その際に、正面から取り組まなければならないと思っております。(拍手)

    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕

国務大臣(橋本龍太郎君) 玄葉議員にお答えを申し上げます。

 私には三点の御質問がありました。

 まず第一に、地方分権推進委員会の第五次勧告についてのお尋ねがございました。

 この勧告におきまして、直轄公共事業などの基準の明確化と範囲の見直しのほかに、公共事業の補助事業について国が箇所づけをしない、これを基本として、具体の事業箇所、内容について地方公共団体が主体的に定められるような仕組みとして、統合補助金を創設することなどが勧告されております。この勧告を最大限尊重した第二次地方分権推進計画に基づきまして、平成十二年度から統合補助金制度が初めて導入されるなど、地方分権推進委員会の第五次勧告は一定の成果を上げていると私は考えます。

 また、中央省庁改革が地方分権と結びついて実施されることによって初めて効果が上がるのではないかという御指摘をいただきました。

 この点は、議員のお考えと私も基本的に異なるものではありません。そして、今回の中央省庁等改革を進めるに当たりまして、国と地方公共団体の役割分担のあり方に即した地方分権を推進することはその柱の一つとなっており、累次にわたる地方分権推進委員会の勧告を最大限尊重して、機関委任事務制度の廃止や統合補助金の創設など、総合的かつ計画的に地方分権の推進に取り組んできました。

 今後におきましても、中央省庁等改革の成果をより確実なものとするためにも、国と地方との関係を見直していく必要は続きますし、地方公共団体の自主性や自立性を高める観点から、さらなる地方分権の推進に取り組んでいくことが必要である、この点は議員の御指摘のとおりだと私も思います。

 最後に、総理が退陣をされた場合という、一般論でという御質問をいただきました。

 しかし、現職の閣僚として、私は今みずからに与えられた責務を全力を尽くして果たす以外のお答えはございません。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 玄葉議員にお答えを申し上げたいと思いますが、二問ちょうだいをいたしました。

 一つは、国と地方との財源配分の問題でございます。

 神崎代表の発言も紹介をされましたが、仕事とそれに必要な財源をセットにして地方に回すべきだという趣旨だというふうに思います。その趣旨には私も賛成でございます。

 地方分権も軌道に乗りつつあります昨今でありますから、税制全体に及ぶ問題でありまして、次の税制改革では大きな議論になるものと考えます。そのときを待ちたいと思います。

 もう一点の、内閣退陣後の考え方についてのお尋ねでございましたが、予算委員会でも御答弁を申し上げましたとおり、私は森総理に任命をされました一閣僚でございます。森総理を支え、最後の最後まで国家国民のために尽くすのが私に課せられた課題でございます。退陣後のことなど考えたこともございませんし、また、そのゆとりもございません。したがって、この問題にお答えすることはできません。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 藤島正之君。

    〔藤島正之君登壇〕

藤島正之君 私は、自由党を代表して、ただいま提案のありました地方税法等の一部を改正する法律案外三案につきまして質問いたします。(拍手)

 冒頭申し上げますが、地方経済を初め、日本経済は今や危機的な状況にあると思われます。最近の株価や各種の経済統計を見ますと、日本経済の先行きに対する警戒信号のみがあらわれており、景気が回復する兆しは全く見えておりません。中小零細企業や多くの国民は塗炭の苦しみを味わっているのであります。

 市場でささやかれている唯一の景気回復策が、KSD問題、外交機密費や米原子力潜水艦と漁業実習船えひめ丸の衝突沈没事故への対応で危機管理意識を問われている森総理大臣の退陣であるということは、余りにも情けない話であります。

 そこで、法案内容の質疑に先立ちまして、まず、森内閣の政治姿勢について質問させていただきます。

 先日の党首討論において、我が党の小沢党首は、森総理に対して、森総理は日本丸の船長なのだから、日本の行く先を明示し、強力に引っ張っていってもらわなければならない立場にある、しかし森総理は、行く先を示さず、ただ漫然とデッキに立っているだけであり、船長としての資質に欠けており、かわってもらわなければならないという趣旨のことを申し上げました。しかし、小沢党首が本当に申し上げたかったことは、事態はもっと深刻であり、たとえ森総理が交代しても、日本丸の行く末は全く不透明なものであり、漂流さえしかねない、そういうことであります。

 その理由は、最近の自民党及びその政権下で発生した、御承知のようなKSD事件あるいは外務省の機密費流用事件などのスキャンダルに見られるように、自民党の構造的な体質そのものに起因していると考えるからであります。

 つい最近の各種世論調査による森内閣の支持率は、ほとんど一〇%を割っております。私も、森内閣は即刻退陣すべきだと考えます。

 また、現在、与野党を問わず、森総理は交代すべきだ、後任にはだれがいい、あるいは悪い、そういったことが公然と言われておりますが、事態は、そのようなトカゲのしっぽ切りならぬトカゲの頭切りで済むというようなものではありません、もっと深刻なものであります。

 このような状況を船に例えて申し上げれば、建造した当初はどんなに頑丈で大きく立派な船であっても、半世紀近く休まずに航海し続ければ、船長が幾ら交代しても、もう現在、適当な交代要員となる船長は残っていないようですけれども、艦橋、機関、操舵機、ひいては船全体が疲弊し、がたがくるものであります。それも無理もないことかと思います。

 ところで、その場合どうすればいいのか。一たん航海を中止し、陸に揚げるか、あるいはドックに入れて船の形を含め大改修をし、出直すか、あるいはもう再航海をあきらめて、再利用できる部品だけを取り出して、時代に合った新しい船をつくるしかないのではないでしょうか。官房長官の御所見を賜りたい。

 次に、十三年度予算についてお伺いいたします。

 国の予算と地方財政が表裏一体のものであることは、言わずもがなであります。この十三年度予算案には、確かに幾つかの景気対策は見られます。しかし、いずれもが小手先だけの対策にすぎないものであります。しかも、それも時期を失したものばかりと言わざるを得ないのであります。戦に例えて申し上げれば、兵力の小出し投入は負け戦のもとであり、結局は全滅の憂き目を見ることになるのではないでしょうか。

 私ども自由党は、景気を確実な上昇軌道に乗せるためには、規制緩和、税制改革などを中心とする抜本的な構造改革、これこそが必要だと考えております。株価にも端的にあらわれているとおり、経済界及び市場も、現在審議されている予算案について否認しているのではないでしょうか。

 政府は、現在の予算案により我が国の景気及び地方財政の状況が本当によくなると確信しているのでしょうか。また、新年度になって、参議院選挙の前に、選挙対策を考えて補正予算を編成するというようなことは絶対にないと言い切れるのでしょうか。財務大臣の御所見を伺いたいと思います。

 政府・与党は、我が国景気の速やかな回復は予算の成立が大前提だ、そのためには、国民の不信、不満を背景とする野党の意見や抵抗を一切排除してでも、一日でも早く予算の衆議院通過を図るべきであるとしております。私は、これまで申し述べましたように、予算案の内容からしても、我が国の景気の回復のために一日も早い予算の成立が必要であるという主張は、全く理解できないものであります。KSD事件に関する証人喚問など、山積する緊急重要課題について、ともに審議を尽くすことを国民は求めているのではないかと考えます。

 しかるに、現在、与党の間では、予算案が衆議院を通過したら森内閣は交代だというような話が公然となされております。これは、党利党略の政権のたらい回しと重要な予算案審議を結びつけるという、まさに国民を愚弄するものではないでしょうか。国民はそれを納得するでしょうか。私も素朴な疑問を持たざるを得ないのであります。

 言わずもがなでありますが、憲法第八十六条は「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」と規定しておりますが、ここで言う内閣とは、与党ということでは決してありません。内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣から成る一体としての内閣のことであり、基本的には、その同一の内閣が予算の作成、提出、議決及び執行に責任を持つべきことを憲法は言っている、こう考えるべきであります。

 しかるに、現在なされている議論、すなわち予算が衆議院を通過したら森内閣を更迭するというのは、国民の理解を得られるのでしょうか。もし内閣をかえるのであれば、予算の衆議院通過前に交代させ、新しい内閣がその新内閣の責任において、現在の予算でいいのか、あるいは修正すべき部分があれば修正して提出し直すのがよいのかを判断して国会の審議を受けるのが正論であり、国民の理解を得られるのではないでしょうか。官房長官の所見を賜りたい。

 さて、本題に入ります。

 まず、政府・与党の地方自治に対する基本認識について伺います。

 政府・与党は、本当の意味で地方自治を尊重しているとは到底思われません。総理、閣僚を初めとする与党の方々は、口を開けば地方自治の推進などと唱えておりますが、実態は全く違っております。これまでの国政選挙のたびに、与党候補者は、声高々に、中央とのパイプを叫び、訴えております。また、その選挙に応援に行く総理、閣僚が堂々とおっしゃっておるのは、候補者当選の暁には何々事業の実現を約束します、こういう言葉は、まさに利益誘導政治と中央集権政治を如実に示しているのであります。

 本当に地方自治を尊重しているのであれば、まず、総理を初めとする閣僚の方々は、範を垂れて、このような地方自治を否定するような選挙応援をやめ、あるいはやめさせることから始めるべきであると考えますが、官房長官の所見を伺います。

 次に、地方財政について伺います。

 地方自治にとって最も大事なことは、何といっても、地方財政を健全化させるために地方財源を充実させることであります。しかし、今や、地方公共団体の借入金残高は、平成十三年度見込みで約百八十八兆円、地方交付税特別会計借入金は四十二兆五千億円、地方債依存度は一三・三%に上る見通しとなっておるわけであります。地方財政全体が破綻の危機に瀕しており、地方公共団体の自立性は弱体化するばかりとなっているわけであります。

 地方が自主性を発揮して地方財政を健全にするためにも、国と地方との財源の見直しと税収の適正化を図るとともに、例えば、私ども自由党が申し上げておりますように、公共事業補助金は一括して交付するというような改善を行うべきと考えますが、この点について、総務大臣及び財務大臣の御答弁を求めるものであります。

 次に、地方税について伺います。

 今回の地方税法等の改正の大きな柱の一つには、自動車のグリーン化税制があります。環境保全のため、排気ガスが少なく低燃費の、環境に優しい自動車の導入を進めるために、これら自動車に対して軽減税率を適用することとしておりますが、この点については、我々も全く賛成するものであります。

 しかし、この特例措置では、外国から輸入した中古車については、どんなに環境負荷の大きい自動車でも、輸入登録した時点で新車新規登録扱いになるために重課税を免れるという盲点があります。

 また他方、車齢十一年を超えたディーゼル車、車齢十三年を超えたガソリン車を、一口に環境負荷の大きい自動車として重課税を課すことになっておりますが、これは、実際の環境負荷の大きさに関係なく、あなたは古い車に乗っているからというだけで自動車税を特に重くします、こういうものであり、納得できるものではありません。

 これらの点につき、総務大臣の御所見を伺います。

 最後の質問になりますが、私は、我が国を、我が国のどこに住んでいても豊かな国民生活を享受できるようにする必要がある、そのように思います。

 そのためには、国と地方公共団体の役割を明確にし、両者が対等な関係になるような新たな行政体制を構築することが不可欠であり、また、地方公共団体が行財政基盤を強化し、地域における行政を一貫して、自主的、自立的に企画、立案、調整できるようにする必要があります。

 そして、これを実現するための具体策として、現在三千二百余りある市町村を、当面千程度、最終的には三百にまで統合して、市町村合併を強力に推進することが必要であると考えます。

 総務大臣のお考えをお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 藤島議員にお答えいたします。

 森内閣及び自民党のあり方、また、十三年度予算との関係について御質問がございました。

 目下の我が国の情勢は、景気の本格的回復を図ることを初め、IT革命への対応、教育改革、社会保障改革、財政構造改革、経済構造改革など、取り組まなければならない課題が山積しております。

 そのような状況の中で、日本新生を実現することが求められている現在、政治にひとときの停滞も許されません。これらの課題実現のためにも、森内閣としては、この通常国会において御審議をいただいております平成十三年度予算をできるだけ早く成立させ、景気の足取りを確かなものにするとともに、ただいま申し上げました諸改革を実現すべく全力を傾注することが現内閣に課せられた使命であり、また、責任であると考えております。

 また、自民党のあり方については、森総理が五日の本会議においてお答えしましたが、自民党は、責任ある政権政党として常に構造改革に取り組み、着実な政策の実現に取り組んでまいりました。そして、こうしたさまざまな努力の積み重ねを経て、ようやく日本新生に向けての道筋が明確となり、現在、経済社会全体の構造改革に取り組んでいるところでございます。

 今国会においてさまざまな御批判をいただいておりますが、これら御批判については厳粛に受けとめ、政府・与党一体となって、今まさに国民が求める改革に取り組み、国民の信頼を得られるよう全力を尽くしてまいります。

 次に、地方自治の問題について御質問がございました。

 地方自治の尊重が重要であることは申すまでもありません。地方分権を一層推進し、国と地方公共団体は、対等、協力の関係のもと、それぞれが役割を適切に分担しつつ、国民福祉の増進という共通の目的の実現に向けて、ともに努力していくものであると考えております。

 このような関係の上に立って、国政選挙等の機会に国の姿勢等を地方の方々に理解していただくことは重要であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) 国と地方の税財源の見直し、国庫補助負担金についてのお尋ねがありました。

 地方分権の進展に応じ、地方団体の財政基盤を充実強化していくこと、地方財政の健全化を進めていくことは重要な課題であると認識いたしております。地方分権一括法や地方分権推進計画に沿って、平成十二年度に創設されました統合補助金の対象事業の一層の拡充を図るとともに、今後は、景気の状況を見きわめながら、国と地方の役割分担を踏まえて、国と地方の税源配分のあり方、国庫補助負担金の整理合理化等、地方財政の諸問題について、幅広く、しっかりとした検討を行ってまいりたいと思っております。

 次に、グリーン化税制についてでございます。

 窒素酸化物や粒子状物質による地域環境汚染の社会問題化、環境汚染に係る自動車の寄与度の大きさ等にかんがみ、平成十三年度地方税法改正にグリーン化税制を盛り込んだところであります。

 重課の対象とする基準につきましては、新車として発売された時点における排出ガス性能が、現在のガソリン車の排出ガス規制値の二倍以上悪い車を対象とすることを基本的な考え方としながら、物を大切にする観点や早期廃車による環境負荷等の点を総合的に勘案して設定いたしたものであります。

 また、御指摘ありました輸入した中古自動車についてでございますけれども、一年間に新規登録される約四百万台のうち、輸入した中古自動車は約千台でございまして、その数が極めて少ないことや、課税技術上の問題等がございますので、特段の措置を講じなかったものであります。

 次に、市町村合併の推進についてのお尋ねがございました。

 市町村合併につきましては、政府としては、昨年の十二月に行政改革大綱を閣議決定いたしておりますけれども、与党における、市町村合併後の市町村数を千を目標とする、こういう方針を踏まえて現在取り組んでいるところでございまして、平成十二年度に続き、平成十三年度予算においても、新たに都道府県の体制整備等の補助金を計上いたしまして、幅広い支援措置を講ずることとしております。

 さらに、住民発議制度の拡充、住民投票制度の導入などを内容とする市町村合併特例法の改正案を、この国会に提出予定の地方自治法等の一部を改正する法律案に盛り込むなど、市町村合併特例法の期限であります平成十七年三月までに十分な成果が上げられるよう、自主的な市町村合併をより一層強力に推進してまいります。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 景気について最初お尋ねがございましたが、ごらんのように、企業関連は比較的順調に回復をいたしておりますけれども、雇用、殊に家計の消費が非常に振るわないという、これは大きなリストラの影響が一番きいておると思いますけれども、したがいまして、公需から民需へのいわゆる完全なバトンタッチが半分しか行われていないことでございますので、補正予算、並びにこの予算が成立いたしましたら必要な施策を遅滞なく行っていくことが一番大事な対応であろうと思っております。

 次に、補正予算についてお尋ねがございましたが、今、経済は自律的な回復軌道にございまして、過去の補正予算、並びに成立いたしましたらこの予算を遅滞なく執行することが一番の方法であると考えておりまして、選挙対策のための補正予算というようなものは考えておりません。

 それから、地方財政健全化のための国、地方の財源の見直し、税収の適正化、公共事業補助金のお尋ねでございました。

 国、地方を通じます税財源の問題につきましては、国と地方の役割分担を踏まえつつ、国庫補助負担あるいは地方交付税を含めた行財政制度全体のあり方を幅広く検討する中で、国、地方を通ずる行財政の再配分を財政構造改革の議論と一体として議論する必要があると思います。

 なお、平成十三年度予算案におきましては、地方公共団体の自主性を尊重する統合補助金、これを一層拡充するように積極的に見直しを行ってきております。

 同時に、公共事業の効率的で効果的な実施に当たりまして、各地域における整備水準というものはまちまちでございますので、やはり全国的に個別の事業を審査し、計画する必要がございます。こういう観点から申しますと、すべての公共事業について地方公共団体に財源を一括交付するということは問題があるのではないか。統合補助金の方向につきましては、十分さらに努めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 矢島恒夫君。

    〔矢島恒夫君登壇〕

矢島恒夫君 私は、日本共産党を代表して、二〇〇一年度地方財政計画ほか地方税財政関係三法案に対して、関係大臣に質問いたします。

 新年度末には、国と地方の借金が六百六十六兆円と見込まれ、そのうち、地方分が百八十八兆円にも達します。全国の市町村の六割が財政運営の危険状態にあります。二〇〇一年度の地方財政は、十兆円を超える財源不足額が見込まれています。問題は、こうした地方の財源不足と累積赤字に対して政府が有効な打開策を示すことができないことであります。危機的状況の打開の方向が政府から何ら示されないことであります。

 第一に必要なことは、財源不足と累積赤字の主な原因となっている開発型公共事業の地方への押しつけを根本から見直すことであります。

 例えば、地方財政白書でも、「公債費の構成比が高い水準にあるのは、昭和五十年度以降の巨額の財源不足、平成四年度以降の経済対策等に対処するため、国・地方を通じて大量の公債が発行されたことによるものである。」と、政府自身が認めているではありませんか。

 さらに、報道されているように、宮崎県のシーガイアが破綻しました。この第三セクターは、リゾート法第一号として進められ、施設建設には、当初計画の九百億円が最終的には二倍以上の二千億円にもなり、現在の借金は二千七百億円で破綻したものであります。このような開発型の第三セクターの破綻は、むつ小川原開発や苫小牧東部開発を初め全国至るところにあり、今後引き続き地方財政を圧迫することは間違いありません。

 開発型の第三セクターを全国的に展開、誘導してきたのは政府なのであります。シーガイアの破綻について、総務大臣は財政支援を検討していると報じられていますが、こうした開発型第三セクターを全国に誘導してきた政府の責任についてどう考えておられるのか、総務大臣の答弁を求めます。(拍手)

 このような状況のもとで、新年度の地方財政計画では、依然として開発中心の方針は変わらず、投資的経費を二十七兆円とし、そのうち、地方の単独事業は十七兆五千億円とされ、投資的経費のうち三分の二近くが地方の単独事業となっています。これらの単独事業の大部分は借金で賄われるもので、地方の借金がどんどんふえる仕組みは新年度でも全く変わっていません。このままでは、百八十八兆円の地方の借金はますます膨れ上がり、決定的な破綻を招くことは当然ではありませんか。しかも、この六年間連続して地方単独事業は決算額が計画額を下回り、今年度は計画額を四兆円近くも下回ると言われているのであります。

 今こそ、開発型公共事業を根本から見直し、地方財政再建の道に方針を転換するべきと考えますが、総務大臣の答弁を求めます。(拍手)

 この危機的な財政状況の中で、地方自治体は、住民の暮らしや福祉、教育を守るため懸命な努力をしています。今、国がやるべきことは、こうした自治体の努力を支援することであります。

 例えば、介護保険に対する高齢者やその家族の要望は緊急かつ重要であります。民主医療機関連合会の全国調査では、三千二百五十一自治体のうち、利用料または保険料の減免制度を行っている市町村は六百六十六自治体に広がり、全体の五分の一に及んでいます。これらの自治体は、苦しい財政のもとでも大変な努力をしています。

 ところが、厚生労働省は、これらの自治体の努力に背を向け、保険料の減免などに対して圧力をかけるなど、まさに国民の願いを踏みにじっています。

 今、国がやるべきことは、国民だれもが安心して長生きでき、家族も安心できるように、苦しい財政のもとで努力している地方自治体に対し、保険料や利用料の減免に対する財政的な裏づけを国の制度として確立することではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。(拍手)

 第二に、不況で税収減が続いている中で、所得税、住民税の最高税率の引き下げ、法人税、法人事業税の基本税率の引き下げなど、大企業・大金持ち減税を実施してきたことが地方財政に重大な影響を与えたことは軽視できません。

 政府は、日本の法人課税は諸外国に比べて重くなっているなどとして、法人関係税の税率引き下げを行ってきました。その中身は、減税総額の五五%、半分以上が大企業に集中する大企業減税、大金持ち減税です。大企業、大金持ちに対する減税をもとに戻して税収を確保することは、地方財政の危機を解決する重要な方法であります。その決意があるかどうか、総務大臣の答弁を求めます。

 単独事業の推進や公債の大量発行など、無責任な財政運営を地方に押しつけてきた結果がこのような財源不足を生じさせているわけです。地方交付税法は、こういう財源不足を生じさせないように、政府の責任で制度の改正とか交付税率の引き上げを求めているのです。ところが、政府は、こうした対策をとってきませんでした。地方財源不足に対し、場当たりで小手先の対策に終始してきたことこそ、巨額の債務残高を背負うことになった最大の要因であると考えますが、総務大臣の見解を求めます。(拍手)

 財政危機が生じる、こうした構造にメスを入れなければならない政府が、そのツケを地方自治体と住民に押しつけることは断じて許せません。その手法の最大のものが市町村合併の強制であります。

 昨年十二月の行革大綱には、千という数値を市町村合併の目標として明記し、あらゆる手段を講じて合併を推進しています。なぜ千なのか、これは政府の目標なのか、総務大臣の明確な答弁を求めます。

 また、総務省は、合併補助金を二〇〇一年度の予算で前年度比十八・八倍と大幅に増額いたしました。これは、国庫補助金は整理する、新設は厳に抑制するとの基本方針をみずから決めながら、合併のためにはその基本方針をもねじ曲げるというものであり、上からの合併誘導そのものではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。

 大蔵省は、この補助金の創設に当たって、地方分権の流れに逆行するものとして反対をしましたが、今でもその姿勢に変更はないのか、財務大臣の答弁を求めます。

 合併の是非を論じる協議会の設置の要望が住民から出され、それを議会が否決した場合にだけ住民投票制度を導入することが検討されていますが、これは、住民投票制度の御都合主義的つまみ食いというものであります。住民投票というなら、合併するかしないかを判断する最も適切な時期に、住民の最終判断を仰ぐために実施することが重要ではありませんか。答弁を求めます。

 また、ようやく市町村の合併パターンを策定し終えた知事に対して、また新たに合併重点支援地域を知事に設定させるなど、市町村合併の促進をさらに要請しようとしていることも自主性を損なうものではありませんか。

 政府は自主的を看板にしていますが、このような強引な手法の導入によって、対象となる多くの市町村は、ひしひしと圧力を感じると受け取っているのであります。それは、何よりも、こうした政府のやり方に対して全国町村会や議長会が、強制するなとの緊急決議を上げて、異議を唱えていることにはっきりあらわれています。総務大臣は、この緊急決議をどのように受けとめておられるのか。国と地方が対等、協力というなら、それこそ市町村が強制ととらえざるを得ない強引なやり方は、この際、きっぱり中止すべきであります。明確な答弁を求めます。

 次に、地方税法の改正に関連して質問いたします。

 今回、グリーン税制の導入ということで、保有税である自動車税に軽減あるいは重課の措置がとられることになりました。総務省は、これまで、自動車公害の対策について、保有税での軽減措置を拒否してきましたが、今回、自動車税に軽減措置を導入することになったのは、従来の考えを見直したのかどうか、答弁を求めます。

 また、こうしたグリーン税制導入の背景には、尼崎公害訴訟の和解、名古屋南部大気汚染訴訟の判決などがありますが、和解や判決が排気ガス対策などで求めた直接の当事者は国であります。そういうことから考えれば、グリーン税制は国の制度としてこそ導入されるべきではないでしょうか。制度の導入が見送られた理由について、財務大臣の答弁を求めます。

 また、軽減税率と重課税率は全体として税収中立となるように設定されていますが、これはなぜですか。誘導策をより効果的ならしめるためにも、軽減措置をもっと拡大すべきではありませんか。地方の税収減に配慮したと言うなら、既に決定されていた株式等譲渡益課税の申告分離の一本化を予定どおりに行えば、三百億円近い地方の増収が見込まれると言われます。なぜ、これを二年延長するのか。きっぱり来年度から実施すべきであります。

 ここにも、大金持ち優遇で、地方財政を顧みない政府の姿勢があらわれていると断ぜざるを得ません。これを財源にすれば、軽減措置をさらに拡大することも、逆に、重課の自動車については、その負担をもっと軽くできたはずであります。なぜそうしなかったのか、総務大臣の答弁を求めます。

 最後に、地方自治、地方財政にとって最も肝心なことは、地方への権限の移譲であり、そして税財源の移譲であります。これを抜きにした地方分権はありません。いつ実施するのか、明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) まず、第三セクターについてのお尋ねがございました。

 御指摘のように、地域開発、観光、レジャーの第三セクターというものは、国においていわゆる民活法やリゾート法が制定されたころから大変ふえたわけでありまして、そういう意味では、国の支援施策を背景にしてふえたという面は確かにあったと思います。

 しかしながら、第三セクターは、基本的には、地方団体を含む出資者の自主的、主体的な判断によってつくられ、また、その責任において運営がなされているものであり、国の責任という御指摘は私は当たらないと思います。

 それから、シーガイアについてのお尋ねがございましたが、シーガイアそのものについての財政支援は全く考えておりません。ただ、シーガイアに絡む関係自治体において、財政運営上、大きな支障が出るような場合には考えることもあると私は申した次第であります。

 公共事業の見直しと地方財政再建への方向転換についてのお尋ねがありました。

 当面の財政運営としては、地方財政の立て直しのためにも、景気を自律的回復軌道に乗せることが必要であります。このためには、公共事業や地方単独事業の適切な実施ということは必要であろう、こう考えておりますが、景気の回復を通じて地方税等の地方一般財源の収入増を図るとともに、行財政の簡素効率化を一層進めて歳入歳出ギャップを縮小していく、こういうことをやりたいと考えておりますし、地方税の充実を基本とした国、地方の税財源配分の見直しについては、何度も申し上げておりますように、今後とも十分な検討をしてまいりたいと考えております。

 減税についてのお尋ねがございました。

 なるほど、これまで景気に最大限の配慮をしつつ減税を実施してきたことは事実でございますが、具体的には、将来の抜本的な見直しを展望しつつ、個人所得課税については、国民の意欲を引き出す観点から、国際的に見ても高い水準となっておりました最高税率の引き下げや、中堅所得階層に配慮した定率減税を行ったわけでありますし、法人課税につきましても、国、地方を合わせた実効税率を国際的な水準並みに引き下げる、こういうものでございまして、御理解を賜りたいと思います。

 地方交付税法に絡む地方財政対策についてお尋ねがありました。

 地方財政は、毎年度多額の財源不足を生じており、地方交付税法第六条の三第二項の規定に該当する事態となっていることは私も承知いたしておりますが、この間、地方交付税法の趣旨を踏まえて、所要の法律改正を行いながら、一般会計からの加算と交付税特別会計における借入金によって措置してきたところでございます。

 いかなる内容の制度改正を行うべきかについては、地方交付税法は広い選択を許しているものでございまして、長期にわたる景気の低迷の中で、国、地方を通じて大変な財源不足が生じている状況の中で、直ちに地方交付税率の引き上げを行うということは現実的でありませんので、このような方式により、やむを得ず措置したものでございますが、今後とも、御趣旨を体して十分な検討をいたしたいと考えております。

 市町村合併の数値目標についてのお尋ねがありました。

 行革大綱で自治体数を千にと言いましたものは、与党がそういう数字をお出しになったわけでありますから、それを十分配慮して重く受けとめる、こういうことでございまして、政府としても、それを一つの目標として念頭に置きながら一生懸命努力してまいりたい、こう考えておりますが、千というのは、現在、三千二百二十七市町村がございますので、おおむね三分の一程度を想定したものと考えております。

 合併への補助金の創設は何だ、こういうお話がございました。

 これは、地方分権推進計画において、新規の国庫補助金の設定は抑制する、しかし、行政需要の変化等に即応して真にやむを得ず新設する場合はある、こういうことでございまして、市町村合併は大変重要な課題でございますから、行政需要の変化等に即応して真にやむを得ないものであるとの認識に立ちまして、平成十二年度において予算化し、平成十三年度においても、日本新生特別枠において予算措置に取り入れたものでございます。

 市町村の合併協議会設置についてのお話がございました。

 なるほど、住民投票制度の導入をいたしましたけれども、これは、昨年十一月二十七日に、地方分権推進委員会から、住民発議の一環としてこういうことを考えたらどうか、こういう御提言があったわけでありまして、それに従って住民投票をやろうというものでございますが、合併そのものの是非をやるわけじゃありません。合併協議会設置の是非について住民投票で諮るものでございまして、最終的に合併するかどうかは、これはまさに、市町村長さんと市町村議会が決めることでございます。最終判断は市町村長さんと議会さん、協議会という引き金を置くか置かないかを住民投票にかけよう、こういうものでございますので、御理解を承りたい。

 それから、全国町村会の緊急決議について、私も十分承知いたしておりますし、町村会長さんとも何度も話しておりますが、市町村合併は、地域のあり方にかかわり、地域の将来、住民の生活に大きな影響を及ぼす事柄でありますので、自主的、主体的にやるのは当たり前の話であります。

 国や都道府県が強制するものではありませんが、二十一世紀のあり方を考えたときに、地域社会の展望をして、私は、これからは地方の時代になり市町村の時代になる、地方分権を進めるためにも、税財源の移譲をするためにもしっかりとした受け皿が要るのではないか、今の市町村の規模、能力で十分か、こういうことを言っているわけでありまして、今後とも十分な啓蒙普及を図りたい、こう思っておる次第でございます。

 グリーン化税制についてのお尋ねがございました。

 なるほど、平成七年度改正において、電気自動車等について講じておりました自動車税の特例措置を自動車取得税に一本化した経緯がございます。これは、電気自動車等の取得価格が一般の車に比べて大変高うございますので、取得時の税負担を軽減する方がよかろう、こういうことでやったわけでありますが、今回は、地域環境対策の観点からぜひグリーン化税制を入れてほしい、こういう強い要望がありましたので、環境対策を加味いたしまして、税収中立の観点からこういうグリーン化税制を採用いたしたものでございまして、ぜひその点は御理解を賜りたい、こういうふうに思います。

 なぜ税収中立かというお尋ねでございますが、極めて厳しい地方財政の状況の中で、税制として最大限の工夫を凝らし、税収中立を採用いたしたわけでございます。

 株式等譲渡益課税のお話がございました。

 なるほど、源泉分離課税を選択しますと、地方税は非課税になるわけであります。これは我々は問題だと今まで思っておりまして、平成十三年四月から申告分離課税への一本化が法定化されたわけでありますが、平成十三年度税制改正の議論におきまして、景気動向等を勘案し、低迷している株式市場にいい影響を与えるためには、申告分離課税への一本化ということは二年間に限って延期したらどうだろうか、こういう意見が多数を占めまして、そういうことになった次第でございます。いずれにしても、平成十五年四月以降の株式等譲渡益課税のあり方についてはしっかりと議論してまいりたい、こう思っております。

 地方への権限や税財源の移譲についてのお尋ねがありました。

 地方分権一括推進法の施行によりまして、私は、地方分権の事務移譲や権限移譲は一区切りついたと思います。思いますけれども、さらなる事務移譲、権限移譲を行う必要があると思いますし、さらに、地方が一番要望しておりますのは税財源の移譲でございますから、我が国経済を自律的回復軌道に乗せながら、国、地方を通じる財政構造改革の論議の一環として、税源移譲を含めて、国、地方の税財源配分のあり方をしっかりと議論してまいりたい、こう思っております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 矢島議員から、介護保険につきましてのお尋ねがございました。

 介護保険につきましては、国民がみんなで支え合うという観点から、すべての被保険者に保険料を御負担いただきますとともに、サービスを受ける方と受けない方との負担の公平性といった観点から、サービス利用者には原則として一割の利用料を御負担いただいているところでございます。

 こうした御負担をいただくに当たっては、低所得の方に大きな負担とならないように、高齢者の保険料につきましては、所得段階別に五段階として設定しておりますし、また、利用料につきましては、月々の上限額や施設に入所した際の食費を二段階にわたって一般の方よりも低く設定するとともに、社会福祉法人による利用者負担の軽減といった施策を講じるなど、きめ細かな配慮も行っているところでございます。

 御指摘のように、一部の自治体において保険料や利用料の減免が行われていることは承知をいたしておりますが、国としましては、引き続き、こうした保険料や利用料に理解を求め、もう少し推移を見守らせていただきたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 市町村への補助金の問題でございますが、申し上げるまでもなく、一般的に、地方公共団体の自立の立場から申しますと、地方が行う事務はできるだけ地方の負担においてやってもらうのが原則だと思います。もちろん、新しい行政需要がございますときに補助金を新設することはございますけれども、一般的には、抑制すべきものではないかと考えております。

 他方で、市町村合併につきましては、国も地方も非常に、こういう財政状態でございます。また、少子高齢化というものも進んでまいりますから、市町村行政を取り巻く情勢からいいますと、財政基盤の強化は非常に必要であるように思われますので、それで、市町村合併を積極的に推進するということがその見地からも大事ではないか、こう考えられるものでございますので、国といたしましても、市町村の合併の推進を予算をもって支援することが大事だと考えまして、十三年度予算におきまして、そのような整備費補助金を計上したものでございます。これが活用されまして、市町村合併が進展することを期待いたしております。

 次に、自動車のいわゆるグリーン化の税制について、これが国税で行われずに地方税で行われた、自動車の保有に課されるということになりましたが、国税の関連で申しますと、税関係は揮発油税と自動車重量税でございますので、これらは揮発の燃料消費あるいは自動車の重量に応じて負担を求めておりますから、そういう意味では、CO2排出抑制の要請とこれらの税制は整合的になっていると考えております。

 このたび、別段、国税に関してグリーン化の要望はございませんでした。したがいまして、そういうことをいたしておりませんが、基本的に、揮発油税も自動車重量税も、そういう目的に整合的であるのではないかと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 菅野哲雄君。

    〔菅野哲雄君登壇〕

菅野哲雄君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案を初めとする地方財政関連三法案につきまして、片山総務大臣並びに関係閣僚に質問いたします。(拍手)

 地方財政関連三法案は、いずれも国民の負担する税に係る法律案です。一千二百万円ものゴルフ会員権にまつわる贈与税をほおかむりしてまかり通る人が一国の総理を務めている森政権のもとで、これらの法律案を審議するのにどういう意味があるのか、私は、心底から疑問と、そして怒りを覚えるものであります。

 主権者たる国民の意思があってこそ、初めて法律は法律たり得るのです。税は民主主義の基本であり、その根底には、政府に対する国民の信頼がなければなりません。その税に関する法律を執行する一国の総理がごまかしをやっている今日、これらの法律案の意味はなく、国民に対する説得力も持たないと言わざるを得ません。

 今回、自動車税のグリーン化が提案されていますが、森総理の行為は、車の名義は私だが、実際の使用は別の人なので、自動車税はあちらからもらってくれと言うのと等しいと言っても過言ではありません。私が仮に提案者であったら、国民に対して恥ずかしく申しわけなく、とても法律案を提案することはできません。

 総務大臣並びに財務大臣、税と国民の信頼のかかわりについて、政治家としての御所見をお伺いいたします。(拍手)

 さて、二〇〇一年度予算は、二十一世紀最初の予算であり、予算の内容や予算編成のあり方を大胆に改革すべきチャンスでありました。特に、予算編成に当たって森政権が政治主導を強調してきており、雇用や老後の不安など将来不安を解消するとともに、国民に痛みを一方的に押しつけるのではなく、生活の質的向上に直結するよう、歳出の重点化、構造自体の改革を進め、本当に庶民の生活実感を高めるための、生活再建のための予算とすべきでした。

 しかし、提案された二〇〇一年度予算案は、これら国民的要請にこたえる点では全く不十分であり、公債依存度は三四・三%と依然高水準で、二〇〇一年度末には国と地方を合わせた長期債務残高は六百六十六兆円にも達することが見込まれており、財政再建どころか、財政危機を一段と深めるものとなっています。

 一年間のGDPをはるかに上回る、これだけ積み上がった長期債務残高について、政府はどのように認識し、どう財政を再建しようとしているのですか。何よりも、利払いだけでも年間十数兆円を超えるものを本当に返済できるとお考えですか。これだけの財源を生み出すために、行革や福祉削減で捻出しようであるとか、消費税を引き上げようというのは非現実的な妄想です。もはや、借金を塩漬けにして返せるときに返すという債務管理しか道はないのではないでしょうか。財務大臣の御見解をお尋ねいたします。

 次に、地方財政危機について、総務大臣並びに財務大臣にお伺いします。

 地方財政の債務残高も、二〇〇一年度末には百八十八兆円に達すると見込まれています。大臣、この責任はだれにあるとお考えですか。よもや、自治体が悪いとは考えておりませんよね。

 地方の借金は、自治体がすべてつくり出した借金ではありません。地方債の発行を許可したのはだれなんですか。また、財源不足に対する国の責任をうたった地方交付税法第六条の三第二項に基づく対応をサボタージュして、本来、国が財源保障をしなければならないにもかかわらず、財源対策債等で措置したり、交付税特別会計借り入れで補てんしたりしてきた国の責任も極めて重いと言わざるを得ません。両大臣は、地方財政危機の原因と国の責任についてどう受けとめておられるのですか。

 また同時に、国は、少ない元手で大きな仕事ができます、やる気のある自治体を応援しますと言って、補助金と交付税と起債を組み合わせて基準財政需要額に算入する手法を駆使して、自治体の事業拡大を誘導してきたことも指摘しておかなければなりません。

 特に、公共投資十カ年戦略とその後の国の景気対策のために、政府は、補助率引き下げを行う一方で、地方分権を名目に、地域総合整備事業債などを使って地方単独事業をむやみと拡大したのです。

 確かに、地総債によって地域づくりの貴重な財産を残せたという自治体がある一方、自治体からは、金がなくても借金をして事業をやるようにと要請したのは国だ、借金は後で国が面倒見るという話だったが、負担は減らない、今はだまされたという思いがあるなどの恨み節も聞こえてきます。打ち出の小づちを前にして、事業の絞り込みや事業費抑制の発想は終始縮んでしまい、事業はどうしても計画より大きくなりがちだったのではないでしょうか。

 バブル後の景気対策に財源保障もなく協力させられてきたことは、自治体の責任でしょうか。これらの政府の誘導責任については、総務大臣、いかがお考えですか。

 この間、政府が進めてきた地方財政対策は、交付税特別会計借入金や財源対策債、減税補てん債の増発等、借金に依存した継ぎはぎだらけの対策であり、地方財政の硬直化を推し進めるものとなっています。

 例えば、今回も二度目の単独事業の規模是正が行われていますが、実は、自治体の実績ベースでも投資単独事業は縮小してきています。しかも、地方交付税も、基準財政需要額に占める地方債の元利償還金の割合も年々上昇し、硬直化、すなわち将来の交付税の先食いが進んでいます。結局、元利償還費を基準財政需要額に算入する有利な地方債を使って地方財政を公共事業型景気対策に動員する手法自体、限界に来ているのではないでしょうか。

 このような状況のもとで、地方財政計画も本来の計画となり得なくなっているとの危惧を抱いていますが、総務大臣の御見解をお伺いいたします。

 さて、二〇〇一年度から、財源不足のうち財源対策債等を除いた残余について、国と地方で折半し、国負担分は一般会計から繰り入れ、地方負担分は特例地方債によって補てんするという新ルールが実施されることになっています。

 こうした新たな補てん策は、赤字地方債をもって補てんするという点で、本来の制度改正に値するのか疑問であるし、地方財政法の趣旨にも反するという問題があると考えるのであります。しかも、特例地方債の元利償還を後年度の交付税の基準財政需要額に算入するのでは、結局、将来へのツケ回しには変わらないのではないでしょうか。

 赤字地方債発行に至った経緯と、なぜ地方交付税法第六条の三第二項に基づく本来の制度改正を行わなかったのかについて、総務大臣並びに財務大臣の御所見をお伺いします。

 来年度地方税制改正における最大の課題は、法人事業税への外形標準課税への転換でありました。しかしながら、経済界を中心とする猛烈な巻き返しによって、外形標準課税制度への転換は先送りされたのであります。私は、不況だからこそ制度化を図るべきであったと考えます。

 そもそも外形標準課税への転換は、一九七七年に全国知事会がまとめた外形標準課税の実施に関する提言、すなわち、都道府県の統一条例案もあり、都道府県財政にとっては長年の懸案事項であります。今回見送られたことは、今後二度と外形標準課税が俎上に上らない可能性があり、責任の第一は旧自治省にあるのではないでしょうか。

 同時に、地方分権の趣旨に立ち返ってこの問題を考えるならば、全国知事会も国の法改正を待つのではなく、本来の課税自主権に基づいて、全都道府県が協力し実施すべきことを期待したいと思うのであります。

 総務大臣、政府として外形標準課税導入についての今後への決意をお示しいただきたい。

 さて、昨年施行された地方分権一括法は、地方税源の充実確保について、経済情勢の推移を勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとし、地方における歳出規模と地方税収との乖離を縮小する観点から、国、地方を通じた税体系のあり方について抜本的な検討を行うとの附帯決議もなされています。

 地方財政の危機を解決するには、国、地方を通じた税財政の構造自体を転換させることが必要であり、地方の税源保障を中心とした根本的な見直しは避けては通れません。何よりも、歳入自治の観点から、自主財源である地方税を強化していくことが重要であり、大幅な税源移譲で自主財源を増加させ、住民の自己決定権を確立することが必要であると思います。

 国と地方の税源配分の見直し、抜本的な税源の移譲について、総務大臣並びに財務大臣の御決意をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 税と国民の信頼についてお尋ねがございましたが、申し上げるまでもないことでございますけれども、税は、国や社会を成立させるために必要な公的サービスを賄う財源でございます。また、税制は、個人や企業が経済活動を行う上でのいわばインフラストラクチャーのようなものでございます。

 したがいまして、我が国では租税法律主義でございますので、立法府に所要の法律案を提出し、御審議をいただき、必要な税制改正を行っていくことは、行政府に課されました責務であると考えております。

 次に、債務の残高でございますが、我が国の経済は、御承知のようなことで、企業はうまく来ておりますが、国民消費の伸びが悪い、税収も、法人関連は伸びておりますけれども、個人の方はそうでないという状況でございますから、我が国をいわば自律的な回復軌道に乗せたところで財政改革を行いたい、その場合には、中央、地方、社会保障制度等々いろいろな要素を含みますので、マクロモデルが必要ではないか、現在、経済財政諮問会議の場におきまして、そのようなことを御検討いただいております。

 また、地方財政は、確かに、数次の景気対策あるいは特別減税、公共事業の追加等によりまして、非常に厳しい状況にございます。したがって、先ほども御説明申し上げましたが、地方は平成十三年度に初めて特例地方債を発行し、国は交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入額を国債を発行して増額をいたしたようなところでございます。危機的な状況は国も地方も同じようなことでございますが、これらは一括して財政構造改革の対象にならなければならないと思っております。

 なお、二〇〇一年度より導入予定のただいまの赤字地方債発行は、これは本来、法律によれば、地方交付税法第六条の三第二項に基づく制度改正がなければならない事態ではないかとおっしゃいました。

 まさにそれに該当するような状況でございますから、このため、今度のような抜本的な対策をいたしましたわけでありまして、国負担分については一般会計からの加算をいたします。地方負担分は特例地方債を発行してもらっておりますので、第六条の三第二項に該当するような事項でどのような措置をとるかということは、これは国、地方として決定できるところでございますので、同項の趣旨にのっとりまして、地方財政の運営に支障が生じないように対応できたものと考えております。

 なお、国と地方の税源配分の問題は、ただいまも申し上げましたが、まさに行財政の再配分をしなければ地方財政の抜本的な立て直しということは難しいと判断されます。国にも同じような財政の問題がございますので、やはり財政構造改革の問題として処理をされなければならないのではないか、また、そうしなければならないと考えております。

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) まず、税と国民の信頼のかかわりについてのお尋ねでございます。

 財務大臣の御答弁にもありましたように、税は社会共通の費用を賄うものでございます。しかも、これを負担いただくのは国民の皆さんでございまして、最終的には国会で税は決めていく、こういうことでございますので、国民の信頼は極めて重要である、こういうふうに認識いたしております。

 特に、地方税法につきましては、これは地方自治の礎を支えるものでございまして、そういう意味で、国民の選んだ代表者で構成される国会の諸先生の十分なる御審議をお願いいたしたい、こういうことで提出させていただいた次第でございます。

 地方財政危機の原因と国の責任についてのお尋ねであります。

 地方財政悪化の原因の一つは、バブル以降の大変な景気の低迷があると思います。したがいまして、地方税収が入らない、国税もなかなか入りませんので、それを原資とします地方交付税も減ってくる、こういう中で、ただ、景気をよくするためには財政出動をしなければなりません。そのために、公共事業は単独事業をやる。収入が減るのに支出はふやさにゃいかぬ。私は、こういう連関の中で地方財政が悪化していった。また、高齢化社会に従いまして社会保障等の経費も増嵩いたしたわけでありますが、こういう総合的な要因で地方財政が悪化していったのではなかろうかと考えておりますが、そのためには、地方財政そのものの運営に支障が生じないように、地方債の増発や地方交付税特別会計による借入金によって措置してまいったわけでございます。

 そこで、地方交付税率を上げたらどうかというような御議論もあるいはあるわけでありますけれども、現在のような景気の中で、国、地方通じて相当な財源不足が生じている状況で交付税率云々は、これは現実的な議論でございませんので、当面の措置は私はやむを得ないものだと考えているわけでございます。

 公共事業拡大についてのお尋ねがございました。

 国土の均衡ある発展あるいは社会資本の充実あるいは景気の自律的回復のためには、私は、必要な公共事業、単独事業は行うべきである、こういうふうに考えておりまして、そのためには、公共事業に係る地方負担あるいは地方単独事業に必要な財源については、地方債と地方交付税と補助金とを組み合わせてやるのはやむを得ない措置である、こういうふうに思っておりまして、それについては、地方財政計画の策定を通じて国会にもお諮りして進めている次第でございます。

 地方単独事業についても若干お触れになりました。

 地方単独事業につきましては、これは決算との乖離が大きゅうございますので、計画策定上、所要の規模是正を行ってまいりましたが、基本的に、我々は、地方単独事業を減らしてほしいということは申しておりません。

 地方財政計画につきましては、これは機能を失いつつあるのではないかという御指摘がございましたが、地方財政計画というものは、全地方団体の歳入歳出の見積もりを行うものであること、しかも、すべての歳入歳出をとらえるものではなくて標準的な行政に要する財源を保障することを目的とするものであること、さらには、当初ベースで積算しているものでございまして、私は、決算と乖離したからといって、地方財政計画の役割がない、こういうものではないというふうに考えております。

 それから、平成十三年度地方財政対策において赤字地方債発行に至った経緯は何か、こういうことでございます。

 従来方式でございますと、交付税特会の借入残高が三十八兆円にもなる、こういうことを続けていくわけにはいかないということと、財投改革によりまして資金調達が大変な制約が出ている、資金運用部が廃止されまして、御承知のように、郵貯等も来年度の四月から自主運用になるわけでありますから、そういう制約が一つある。

 また、特別会計借り入れは、まとめて借りるわけでございますから、個々の地方団体にとりましては自分たちの借金という意識が余りありません。責任が大変不明確になる。国においても、特会借り入れは国の財政実態をわかりにくくする。

 こういう問題があるわけでありますので、国と地方の責任分担の明確化や財政の一層の透明化を図るためには、従来の方式でなくて、国負担分は一般会計からの加算、地方負担分は個々の団体が特例地方債、これは赤字地方債となるわけでありますけれども、それを発行して補てんする、責任を明らかにする、こういうことにいたしたわけでございますが、この元利償還の全額については、後年度、基準財政需要額に算入する、それによって地方財政の将来の運営に支障が出ないようにいたしたわけでございます。

 これは、平成十三年度から十五年度の間に一応そういうことを予定いたしておりまして、これについては、今後さらに三年の経過を見て検討してまいりたいと考えております。

 外形標準課税についてのお尋ねがありました。

 昨年十一月に、当時の自治省案を提示して御議論をいただきましたが、また、政府税制調査会の十二月の答申では、「景気の状況等を踏まえ、外形標準課税の早期導入を図ることが適当」だ、こういう御答申をいただきましたし、与党三党の税制改正大綱でも、「早期の導入を図る。」こうされたわけであります。

 御承知のように、地方税というのは応益の要素が大変強うございます。私は、国税は応能でいいけれども、地方税は応益だ、受益に応じて広く、薄く、公平に負担してもらう、そういう意味では、黒字、赤字にかかわりなく皆さんに外形標準で御負担いただくのがいい地方税制だ、こう思っておりますので、今後、この方向に沿いまして、課税団体である都道府県と連携しながら、反対をされました経済界その他と具体的な議論を深めて、十分な御理解を求めながら全力を挙げて来年度税制改正で実現を目指したい、こういうふうに考えております。

 最後に、国と地方の税源配分等の御議論がございました。

 何度も同じ答弁をさせていただいておりますけれども、今後、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、国、地方を通じる財政構造改革の議論の一環として、税源移譲など国と地方の税源配分のあり方について幅広く検討を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。よろしくお願いいたします。

 以上であります。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十分散会




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