衆議院

メインへスキップ



第11号 平成13年3月8日(木曜日)

会議録本文へ
平成十三年三月八日(木曜日)

    ―――――――――――――

  平成十三年三月八日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)の趣旨説明及び質疑




このページのトップに戻る

    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案及び山元勉君外四名提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。文部科学大臣町村信孝君。

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 社会経済や科学技術の急速な発展が予想される二十一世紀を迎え、豊かな人間性と創造性に富み、みずからの能力、適性、興味、関心等に応じて主体的に行動できる人材を育成していくためには、学校教育において、基礎学力の定着の上に児童生徒一人一人の可能性を余すところなく発揮できるよう、個に応じたきめ細かな指導を推進することが不可欠であります。

 この法律案は、児童生徒の基礎学力の向上ときめ細かな学習指導の充実を図るため、平成十三年度から平成十七年度までの五年間で、少人数指導の実施のための教員配置等を主な内容とする教職員定数の改善を図ることとするとともに、教育の地方分権を推進し、児童生徒の実態に応じた学校教育の充実を図るため、都道府県教育委員会の判断により、学級編制の基準の弾力的な設定等を特例的に可能とし、また、常勤の教職員定数を活用して非常勤の講師等を配置できるようにするものであります。

 次に、この法律案の概要について御説明を申し上げます。

 まず第一は、公立の義務教育諸学校及び公立の高等学校等の教職員定数の改善であります。公立の小中学校の教職員定数の標準について、学級とは異なる学習集団により少人数指導が行われる場合には教職員の数を加算できることとするとともに、公立の高等学校の教職員定数の標準についても、少人数指導を充実するための教職員の数の改善等を行うこととし、あわせて、公立学校の教頭及び養護教諭の複数配置基準、公立の小中学校の学校栄養職員の配置基準、公立の特殊教育諸学校の教職員の配置基準の改善等を行うこととしております。

 第二に、公立の義務教育諸学校の学級編制の基準について、都道府県教育委員会の判断により、児童生徒の実態を考慮して特に必要があると認める場合には、国の定める学級編制の標準により定められる数を下回る数を、その場合の基準として特例的に設定できることとするとともに、公立の高等学校等の学級編制については、設置者の判断により、生徒の実態を考慮して特に必要があると認める場合には、国の定める学級編制の標準を下回る数により学級編制を特例的に行うことができるようにすることとしております。

 第三に、公立の義務教育諸学校に非常勤の講師を置く場合には教員の定数を活用できることとし、その報酬等は都道府県が全額を負担し、国がその二分の一を負担することとするとともに、公立学校に再任用短時間勤務職員を置く場合にも教職員の定数を活用できることとする規定を整備することとしております。

 このほか、公立の高等学校の設置主体を都道府県及び一定の基準に該当する市町村に限定する規定を削除するなど所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律案は、平成十三年四月一日から施行することとしておりますが、その実施については、改正後のこの法律の標準に漸次近づけることを旨として、必要な経過措置を設けることとしております。

 以上が、法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 提出者山元勉君。

    〔山元勉君登壇〕

山元勉君 民主党の山元勉でございます。

 私は、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合の提出者を代表いたしまして、ただいま議題となりました公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨及び主な内容について御説明申し上げます。

 現下の我が国の社会構造は、グローバル化や科学技術の高度化、複雑化等に伴う価値観の多様化など、大きな変革の中にあります。この社会の変革の波は、当然のように学校教育にも押し寄せてきており、新たな時代に適合した今後の教育のあり方が模索されてきているところであります。

 これまで我が国の学校教育は、画一的に知識を教え込むことに重点が置かれ、知識の量を競う受験競争がこれを一層助長してまいりました。そのため、子供たちがみずから学び、思考力や判断力、創造力を養う教育、豊かな人間性をはぐくむことへの取り組みが見失われてきました。

 また、このようなことを背景に、校内暴力やいじめなどが頻発し、不登校の子供の数が急増するとともに、近年では、いわゆるキレる子供による暴力行為や、授業が成立しない学級崩壊などの現象も発生し、学校教育が深刻の度合いを深めていることは御存じのとおりであります。

 このような状況にどのように対応していくのか、このことに我が国の将来がかかっていると申し上げても過言ではありません。

 中央教育審議会の答申では、今後における学校教育のあり方を、ゆとりの中で子供たちに生きる力をはぐくむことであるとし、みずから学び、みずから考える教育への転換を掲げるとともに、学校が子供たち一人一人を大切にし、子供たちが自分のよさを見出し、それを伸ばし、存在感や自己実現の喜びを実感できることが重要であると指摘しております。

 学校が教育効果を高め、子供たちが学校生活を通して喜びや楽しさを実感するには、教職員と子供たちとの全人格的な触れ合い、きめ細かな生活指導、生徒指導、丁寧でわかりやすい授業などが不可欠であります。

 そのためには、現行の四十人学級を見直し、その規模の縮小を図ることが先決であり、あわせて、教育職員の専門的力量を高めるための人的確保とその適正配置を図ることが喫緊の課題であります。

 また、それとともに、地方自治体の自主性、教育現場の要請を十分反映させた学校運営、学級編制等が行われるよう、地域に根差した教育環境の整備を進め、教育の地方分権を図る必要があります。教育は未来への先行投資であります。現在を将来につなぐ営みであり、未来への希望と期待の具体化であります。

 二十一世紀を迎え、我が国は今、一大転換点に立っております。このようなときであればこそ、なお、未来を担う子供たちのために教育の問題を最優先課題とし、適切な諸施策を早急に講じていかなければならないのであります。

 ここで、政府から提案されました部分的な二十人授業への改革案について一言申し述べておきたいと思います。

 今や先進諸国の中では見ることのできない四十人という大規模学級をそのままに、特定教科だけは学級の子供を分割して授業を行うという小手先の改善は、子供たちと学校に混乱を持ち込むだけの方策であります。

 森総理が、この国会の冒頭の施政方針演説で「子供一人一人、国民一人一人が、学校がよくなる、教育が変わるという実感が持てるような本格的な教育改革に取り組んでまいります。」と胸を張って述べられたこととはほど遠いものであり、二十一世紀の日本の学校教育のありようを指し示すものでは全くないというふうに申し上げておきたいというふうに思います。

 以上のような認識に立って、公立の小学校、中学校及び高等学校等に関し、三十人以下学級の実現と教職員の配置の適正化を図るために本案を提出した次第であります。

 次に、本案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正であります。

 まず、公立義務教育諸学校の学級編制の標準に関して、小中学校の同学年の児童または生徒で編制する一学級の児童または生徒数の標準を四十人から三十人に引き下げることとするなどの改善を図ることといたしております。

 次に、各都道府県教育委員会は、公立の義務教育諸学校の学級編制について、児童または生徒の実態を考慮して必要があると認める場合については、標準により定めた数を下回る数を学級の児童または生徒の数の基準として定めることができるものといたしております。

 また、都道府県教育委員会は、公立義務教育諸学校を設置する地方公共団体が弾力的な学級編制を行うことができるよう配慮しなければならないものといたしております。

 さらに、複数指導、多様な選択教科等に係る加配に加え、通常の学級に障害を持つ児童または生徒が在籍する場合の加配など、教諭等の配置基準の改善を図ることといたしております。

 また、教職員定数を新たに導入される高齢者再任用制度による短時間勤務教職員の数に換算することができるものといたしております。

 第二に、公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の一部改正であります。

 まず、公立高等学校において、現在四十人とされている学級編制の標準を、全日制については三十人に、定時制については二十人にそれぞれ引き下げるとともに、設置者が、生徒の実態を考慮して必要があると認める場合には、標準として定める数によらない学級編制をすることができるものとすることといたしております。

 次に、公立高等学校の設置主体を、都道府県及び政令において基準に該当する市町村に限定している規定を削除するとともに、本校の学校規模について、生徒の収容定員を二百四十人以上から百八十人以上に引き下げることといたしております。

 さらに、通信制の課程及び生徒指導担当の教諭等の配置基準の改善に加え、通常の学級に障害を持つ生徒が在籍する場合などの加配を行うものといたしております。

 また、教職員定数を新たに導入される高齢者再任用制度による短時間勤務教職員の数に換算することができるものといたしております。

 本法案の施行期日は、平成十三年四月一日とし、施行のための経過措置を定め、今後十年間の年次計画で実施することといたしております。

 現今の財政状況はまことに厳しいものがあります。だからこそ、公共事業のばらまきや官房機密費にも見られた不適切、不透明な予算は大幅に削減することを私どもは強く求めているところであります。しかし、子供たちの教育費は、あすの日本への先行投資であり、より積極的な確保が必要不可欠だと考えます。そして、これは圧倒的多数の国民の理解するところであります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。牧義夫君。

    〔牧義夫君登壇〕

牧義夫君 牧義夫でございます。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案の政府案並びに民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合の三会派共同提出の法律案、両法案について質問いたします。

 まずは、教育改革についての現状認識についてお伺いをいたします。

 社会の急激な変容の中で、また長引く不況と将来への不安の中で、また国民の意識から大きく乖離した政治、そして政治家への根の深い不信感の中で、今、我が国の社会全般にわたって著しいモラルの低下が散見されるわけでございます。

 教育も例外ではございません。いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊、そして凶悪犯罪の低年齢化、絶望の低年齢化が間違いなく進んでおり、大きな社会問題となっております。教育に対する閉塞感は日に日に強まっております。教育の現場をもうこれ以上荒廃させてはならない、二十一世紀の日本を担う健全な青少年を育成するための確固たる基盤をもう一度きちっと整備したい、そんな国民の切なる希望と期待を受けて、政府が教育改革を打ち出してもう何年もたちますが、一向にその成果が見えてきません。教育の現状に対して、町村文部科学大臣はどのような認識を持っていらっしゃいますか。

 また、先般、新聞のインタビューで、これまでの教育改革が目標どおりにいかなかった理由について、これは社会全体の意識の問題なんだと文部大臣はコメントしておられました。確かに、国民の意識は大切な要素でございます。しかしながら、教育行政を預かる文部科学大臣が、改革が進まなかった理由を社会の意識という一言で片づけてしまうのは、余りに無責任ではないでしょうか。改めてお尋ねいたしますが、町村大臣、今までの教育改革がうまくいかなかった原因はどこにあるとお考えでしょうか。

 次に、教育予算の配分についてお尋ねいたします。

 今、政府に問われているのは、国における教育の位置づけです。国家全体で抜本的な構造改革を行い、教育を名実ともに国の第一の重要課題に位置づけるべきだと私は思います。今の教育が抱える問題の深刻さを考えれば当然のことであります。

 GNPに対する公財政支出における学校教育費の割合は、日本の三・六%に対し、アメリカは五・〇%、イギリスは四・六%、フランスは五・六%、ドイツは四・六%となっており、それら先進諸国と比べて、我が国は一%以上の開きがございます。一方で、日本の公共投資額は、対GDP比約六%でございます。他の先進諸国はほぼ二%から四%でございますから、景気対策という名目のもとに、いかにむだの多いばらまき投資がまかり通っているかが、これでわかるわけでございます。

 教育は未来への先行投資です。これだけ教育が問題視され、教育改革を標榜していながら、従来の予算配分を踏襲するだけでは、文教族を自認する森総理の名が泣くのではないでしょうか。この点について、町村大臣、総理とはどのようなお話をされているのでしょうか。

 これまで政府は、財政的負担を理由に挙げて、学級編制基準の引き下げを拒んでまいりました。さきに述べましたように、諸外国と比較しても日本の教育予算は大変貧弱であります。教育現場の荒廃を食いとめるための思い切った財政的な措置も念頭に置いた抜本的改革が、今、求められていると私は考えます。

 少人数学級を実現することにより、子供たち一人一人への目配りが行き届き、子供たちへの理解が深まること、また、個に応じた学習指導が行われるようになることは確かでございます。他に有効な手段や対策が見つからない現段階では、まず、財政的負担を覚悟の上で、教員の数をふやすことは有効な手だての一つだと思われます。この点、町村大臣はどのようにお考えでしょうか。

 教育予算のあり方、位置づけについて、財務大臣にお聞きいたします。

 教育改革のために財政措置が必要であれば予算をつけるおつもりがあるのか、財政難の今、教育であっても予算をつけることはできないとお考えなのか、また、冒頭に述べましたように、公共投資と学校教育費予算は他の先進諸国に比べて著しくバランスを欠いておりますが、その点、いかがお考えでしょうか。

 これまで文部省は、学級編制は四十名という基準に固執し、それ以外を認めてまいりませんでした。全国一律、画一的な文部省の教育行政をまさに象徴していると言えます。今回は、単に地方の負担で少人数学級を実現したいならそれを許しますよというだけのことで、国は何の負担も痛みも負っていません。少人数指導と聞こえのいいことを言いながら、政府は痛みを伴わない小手先の改革に終始している印象を持ちますが、その点、文部科学大臣はどのようにお考えでしょうか。

 続きまして、少人数指導と少人数学級の違いについて質問いたします。

 政府案について、例えば、公立小中学校で二十人授業とか、公立三十人学級可能になどの報道がなされております。あたかも教員の数がふえるような印象を持ってしまいますが、何度も述べているとおり、学級編制の基準は、現行の四十名を二十年間も堅持しているわけでございます。従来の枠の中で、自然減の教職員を改善計画として打ち出したにすぎません。つまりは、子供の数が減った分だけ教員を首にするわけにもいかないので、そのつじつまを合わせただけの、場当たり的な帳じり合わせにすぎないわけでございます。

 しかし、今、教育改革の一環として求められていることは、そういうことではございません。今こそ教育そのものの抜本改革が求められているわけでございます。

 来月より総合学習が始まります。一方的な授業ではなく、体験を通じて一人一人みずから考える力をはぐくむ、そういう趣旨であると私なりに理解をいたしておりますが、四十人学級という規模ではその効果も低くなるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 実際、政府案では、主要科目において少人数指導をうたっており、政府も、少人数でなければやっていけない、そういう意識を持ち始めたことを推察いたします。

 なぜ少人数指導が必要だと考えるのか、さらに、少人数指導は必要だが少人数学級は不要と判断し、学級編制の標準を下げなかった理由を文部科学大臣にお聞きいたします。

 また、三会派提出法案に対しては、少人数指導だけでなく、少人数学級が必要なんだ、そう考えた、その背景にあると思われる教育現場の実情について詳しくお聞きいたしたいと存じます。

 さらに、心配される教育の地方格差についてもお伺いをいたします。

 両法案とも、いずれも地方自治体の判断による弾力的運用を認めております。文部科学大臣は、教育行政における地方分権の青写真をどのように描かれておられるのか。国の役割、都道府県の役割、そして、市区町村の役割をどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。

 教育の地方分権は中央教育審議会でも明確に打ち出されておりますが、政府が考える地方分権教育とはいかなるものでしょうか。将来、教育の権限を地方自治体と学校に移譲する徹底した地方分権まで目指しておられるのでしょうか。それとも、今回のように、財政支出という痛みを伴うものは地方に押しつけ、しかし権限は依然政府が抱え込むといった、そんな中途半端な地方分権で終わらせるおつもりなのでしょうか。文部科学大臣並びに三会派案提出者に見解を伺います。

 地方の財政負担による少人数学級を認めた場合、財政的に余裕のある自治体では、教育に予算がつぎ込まれ、恵まれた教育環境が整備され、一方、余裕のない自治体では、教育予算がつかず、地方により格差が生じることが予想されますが、政府はそれを是認したと考えてよろしいのでしょうか。文部科学大臣にお聞きいたします。

 続いて、教育改革関連法案について質問いたします。

 文部大臣を経験している総理は、今国会を教育改革国会と名づけておられましたが、KSD事件、外務省機密費事件などで、教育の名は吹っ飛んでしまった感がございます。文部科学大臣は今でも本国会が教育改革国会であると認識されていらっしゃいますでしょうか。その意図、意気込みを御確認いたします。

 今国会では、昨年末に出された教育改革国民会議の最終報告に基づき、教育改革関連法案が審議されます。今国会提出予定の法案には、いわゆる不適格教師を本人の同意なしに他の職種へ異動させる、問題を起こす子供の出席停止要件を定めるなど、見方によっては切り捨ての発想ともとれる内容が含まれております。根本治療ができないので、ひとまず患部を切り捨てていくようにもとれます。

 確かに、教育の荒廃した現状を考えたとき、このような手段が必要な場合もあり得るとは思います。しかし、立法趣旨、その要件がはっきり国民に明示され、コンセンサスを得ることが不可欠でございます。どのような発想でこのような法案を考えておられるのか、文部科学大臣のお考えをお聞かせください。

 そして、最後に一言申し添えさせていただきます。

 依然回復の兆しすら見られない経済情勢、また、国と地方の深刻な財政状況については、私も十分に認識しているつもりでございます。その中で今、少人数学級を実現することは決して容易ではないとの認識も持ち合わせているつもりでございます。

 しかし、国民の皆さんの家庭を見ていただきたい。苦しい家計の中でも、子供の教育のためなら最大限の無理をしているというのが現状ではないでしょうか。それがどうしてこの国にはできないのか。

 もっとも、教育に限らず、将来世代への責任を一切放棄しているという点では、現在の歳出構造は見事に整合性がとれていると言ってしまえばそれまででございますが、ぜひとも、二十年先、三十年先を見据え、議論を深め、審議を進めていただきたく希望を申し上げまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 牧議員から数多くの御質問をいただきましたので、若干のお時間をいただきまして、お答えを申し上げます。

 まず、教育の現状及び教育改革に関してのお尋ねがございました。

 日本の戦後の教育は、機会均等の理念ということから、国民の教育水準を高め、経済社会の発展の原動力となってまいりました。しかし、近年、先ほど御指摘のあった、いじめ、学級崩壊等々、非常に厳しい現実を抱えておりまして、我が国の教育は危機に瀕している、こう考えております。

 なぜそうなるかということを考えてみたときに、やはり一つの大きな要因では、個人の尊厳を強調し過ぎる余りに公を軽視する傾向が広がってきたことや、あるいは平等ということを強調する余りに行き過ぎた平等主義による教育の画一化でありますとか、過度の知識の詰め込みなどが指摘されているところであります。

 なぜ国民の意識ということを言ったかといいますと、多少の制度を変えてみたり、あるいは教員の数を多少増減させてみても根本的な教育改革にはならない、こう私は考えるわけでありまして、国民の意識変革なくして真の意味の教育改革はあり得ない、そういう意味から、私は意識ということを申し上げたわけであります。

 いずれにいたしましても、教育改革を進めるためには、国民全体の幅広い御支援が必要だということで、今、この教育改革を一大国民運動にしていこうということで努力をしているところであります。

 次に、教育予算の配分についてのお尋ねがございました。

 公財政支出における学校教育費のGNPとの比較、これは、国によりましていろいろな条件が違っております。どのくらい地方分権が進んでいるか等々、さまざまな状況がございますから、単純な比較は非常に難しいわけであります。

 いずれにいたしましても、議員御指摘のとおり、教育は未来への先行投資という意識は私どもも共通をして持っておりますので、日本の二十一世紀において心の豊かな美しい国家を実現するためには、思い切った教育改革を断行していき、また、必要な施策に必要な予算を着実に確保していくということが必要であると考えます。この点につきましては、総理も同様の考え方を持っているところであります。

 次に、財政負担を覚悟の上で少人数学級を実施し、教員の数をふやすべきではないかという御指摘がございました。

 きめ細かな指導の充実のために、教職員定数の改善など、教育指導体制の充実を図ることはとても重要なことだと考えております。

 しかし、教育指導体制の充実方策につきましては、教育指導を効果的に行うためには、固定的な学級にとらわれないで、教科等に応じて少人数指導を行うなど、きめ細かな工夫が必要であること、また、個々の児童生徒にとって多数の教員がかかわることが個性をはぐくんでいく上で効果的であるといったような点から、少人数学級の実施よりもより効果的な手段を選択する必要がある、かように考えております。

 このため、新しい改善計画においては、教科等に応じて少人数指導を行うなど、わかる授業づくりを進めることとしております。これにより、五年後には、教員一人当たりの児童生徒数が、小学校では十八・六人、中学校では十四・六人と欧米並みの水準になり、教育環境の改善には大変有効な手だてになると考えております。

 次に、国は何の負担も負わずに小手先の改革に終始しているのではないかという御指摘がございました。

 今回の改正案におきましては、基礎学力の向上のため、教科等に応じた少人数指導の実施のための定数改善を行うとともに、地方分権の推進の観点から、各都道府県の判断により弾力的な学級編制を行うことを可能とすることとしております。

 この少人数指導の実現を含め、新たな改善計画では、義務教育諸学校について二万六千九百人の改善を行うこととしており、従来の国庫負担額約三兆円に加えまして、初年度、平成十三年度においては、国として、五千三百八十人、約二百二十三億円の財政負担をすることといたしております。

 なお、学級編制の引き下げに要する教職員については、教職員定数の総数を活用してある程度対応することが可能でありますが、それを超える部分への国庫負担につきましては、国庫負担制度が義務教育の妥当な規模と内容とを全国的に保障するものである、この趣旨から困難であると考えております。

 全国一律に学級編制の標準を引き下げるというお尋ねがございました。

 これにつきましては、いわゆる学級王国と言われる状況は変わらないこと、あるいは集団の中での人間関係の形成や切磋琢磨という面から、一学級当たりの人数はある程度の規模が必要であると考えられることなどから、必ずしも有効な手段であるとは考えておりません。

 このため、今回の改正では、例えば小学校の国語、算数、理科、中学校の英語、数学、理科など、習熟度に差がつきやすいような教科や、あるいは小学校の低学年、一年生、二年生などについて、二十人程度の集団による指導が行えるようにするための定数改善や、特に必要があると都道府県が判断する場合には特例的に学級編制の引き下げを可能とする制度改正を行うこととしているのであります。

 なお、総合的な学習の時間についてお触れがございましたが、取り扱う内容に応じて、学級の枠を超えたグループ別の活動や、あるいは学年を超えた異なる年齢集団での活動など、必ずしも学級の枠にとらわれないさまざまな学習形態が考えられます。このため、学級規模が大きくなると教育効果が低くなるということは、一概には言えないと考えております。

 次に、教育行政における地方分権についてのお尋ねであります。

 教育行政においては、国と地方公共団体が、それぞれの責任と役割を果たしていくことが大切だと考えております。国は、基本的な制度の枠組みや全国的な基準の制定、必要な財政援助等の役割を担い、次に地方公共団体の方は、学校を設置するなど、さまざまな教育事業を実施する役割を担っているわけであります。

 こうした国と地方の役割分担のもと、地方分権を推進するために、いわゆる地方分権一括法によりまして、教育長の任命承認制度の廃止などの制度改正を既に行ったところでありますが、また、教育課程についても、基準の大綱化、弾力化を行ってきたところであります。

 今回の学級編制基準の弾力化につきましても、地方分権を推進する観点から、各都道府県が、必要に応じ、国の定める標準を下回る基準を定めることができるようにするものであり、今後とも、教育の地方分権をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

 次に、地方の財政負担による少人数学級を認めることは、財政的な格差に基づく自治体間の格差を是認することになるのではないかとのお尋ねでございます。

 御指摘のように、都道府県が、児童生徒の実態に応じ、特に必要があると判断する場合には学級編制基準を弾力的に設定することを可能とすることにより、各都道府県ごとの学級編制基準が異なるということが予想されるわけであります。

 しかしながら、今回の改正は、国としては、従来どおり義務教育の妥当な規模と内容とを全国的に保障することを前提としながら、各都道府県の主体的な判断と責任に基づいて、実態に即した創意工夫ある取り組みを一層推進できるようにすることを目的とするものであり、教育の地方分権の趣旨にのっとったものであると考えておりまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 それから、この国会を教育改革国会とする、その意気込みがあるのか、こういうお尋ねでございました。

 もちろん、あるわけであります。文部科学省におきましては、昨年十二月の教育改革国民会議の最終報告を踏まえまして、ことしの一月二十五日に、二十一世紀教育新生プランを決定いたしました。今後、このプランに基づきまして、教育の新生を目指しまして、学校がよくなる、教育が変わるという実感が持てるような教育改革を、スピーディーに、果断に実行してまいることとしております。

 私としては、今国会を教育改革国会と位置づけて、まずは緊急に対応すべき事項として、ただいま御審議をいただいております公立学校の学級編制、教職員定数等に関する法律の改正など六本の教育改革関連法案を提出を、一部しましたし、また予定をしておりますが、また、教育改革関連予算を盛り込んだ平成十三年度予算案の成立に、今、参議院で御審議をいただいているところでありますので、この成立に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。KSD、その他の議論よりはもっともっと教育改革を御議論いただきたいと心からお願いをする次第でございます。(拍手)

 最後に、児童生徒への指導が不適切な教員や、出席停止に関する法案についてのお尋ねであります。

 教員の職務は、児童生徒の人格形成に大きな影響を与えます。このため、指導が不適切な小中学校の教員が都道府県の教員以外の職に転職できるように、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を改正する法律案を国会に提出いたしました。

 また、問題行動を起こす児童生徒について、学校が最大限に努力しても他の児童生徒の教育を妨げる場合には、やむなく出席停止の措置を講ずるということが必要な場合もございます。このような児童生徒に一層適切に対応できるように、出席停止制度について、要件の明確化、手続規定の整備、出席停止期間中の児童生徒の学習支援等を内容とする学校教育法の改正を予定しているところであります。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 教育予算のあり方についてのお尋ねでございましたが、我が国が、今後、創造的で活力に富んだ国家を目指していくために、教育の果たす役割は非常に重要であります。

 教育予算については、時代に応じたあるべき教育の実現に資するため、必要な経費について十分配慮してきており、その結果、例えば、教員一人当たりの児童生徒数が欧米と遜色ない水準となるなど、教育環境の改善が十分図られてきていると考えております。

 また、十三年度教育予算におきましても、教育改革の推進のための環境整備として、現在お諮りしております法案に基づきまして、少人数指導の実施等を推進しておりますほか、教員の指導力、資質の向上やいわゆるいじめ、不登校等の諸課題への取り組みの推進、育英奨学事業の充実、高等教育、学術研究の推進などを行うこととしておるところであります。

 なお、我が国の公共投資と学校教育予算は他の先進諸国に比べてバランスを欠いているとの御指摘でございましたが、我が国の場合、公共事業費については、極めて厳しい自然条件、地理的条件、あるいは都市部における高額な地価や複雑な権利関係などが存在いたしますために、建設コスト、用地費、調整コストがかなりかさむという事情がございますが、他方、学校教育予算については、教育予算の基礎の一つである児童生徒数の総人口に占める割合が各国に比べて小そうございます。また、私立学校の比率が高いといった教育制度の相違があることなど、公共投資、教育をめぐる各国の状況に相当な違いがございますので、単純な比較は困難であると思います。

 いずれにせよ、今後とも、予算の配分につきましては、時代のニーズや経済社会のあるべき姿を踏まえつつ、効率的、重点的な措置を講じていくことが肝要であると考えております。(拍手)

    〔山内惠子君登壇〕

山内惠子君 社会民主党・市民連合の山内惠子でございます。

 少人数指導だけではなくて、少人数学級が必要と考えたその背景にある教育現場の実情と、三十人以下学級の必要性についてお答えいたします。

 子供たちをめぐる状況は、今、いじめ、不登校、学級崩壊、そしていわゆる十七歳少年問題等々、深刻な状況にあります。不登校は全国で十三万人を、高校中退は十一万人を超えていると言われています。むかつく、キレるという言葉の裏に、子供たちの悲鳴が聞こえるような気がいたします。

 高度経済成長の入り口で、何もないけれども希望だけがあったという戦後教育のシステムが、今これほど耐用年数を切らして、子供とミスマッチしていることはありません。最も遊びの必要な低学年に過重な負担を負わせる学習指導要領の責任も大きいと思います。三割削減で許されるようなものではありません。子供の人権が本当に尊重されてきた時代があったのでしょうか。平等が本当に実現されてきたのか、疑問です。

 学校といえば、子供たちが思い浮かべるのは、テスト、通知表、入試、校則等々です。こういう学校に対するすくみ現象が不登校の最大の原因ではないかと思います。事実、学校現場は、特に担任は、授業の準備、それから授業、そして評価、各種行事等々に追われ、一人一人の子供たちとゆっくり向き合えるような現状にないのです。

 中高生に、人間として大切にされるということはどういうことか、人間として大切にされるということはどういうことかと質問をしましたら、成績で差別されない、このことをトップに挙げています。中学生の六一・五%がこれを挙げているのです。子供たちは、習熟度別の少人数グループを願っているのではありません。

 第二番目に、言い分をきちんと聞いてほしいと言っています。担任や友人に自分の言い分をきちんと聞いてほしいと願っているのです。それには、一クラス四十人では多過ぎます。

 子どもの権利条約第十二条には、子供の意見表明権というのがあります。大人は子供の声に耳を傾ける責任があるということです。問題行動を起こす子供たちを出席停止にするのではなく、悩みを聞き、問題解決に向けての支援をしなければならないと思います。そのために少人数学級は有効です。教育にお金をかけないということはもう限界に来ています。小手先だけの改革で片づけられるようなときではありません。

 子供が輝ける二十一世紀にするために、ともに学び、ともに生きることのできる三十人以下学級の実現こそが、子どもの権利条約の言う最善の利益の重要な一つであるということを申し上げて、答弁といたします。(拍手)

    〔石井郁子君登壇〕

石井郁子君 教育の地方分権化についてのお尋ねがありました。

 学校は、本来、地域に根差し、地域によってはぐくまれるものです。その地域に住む住民によって支えられ、その期待を担って学校そのものがはぐくまれてきたのは、そう遠い昔の話ではありません。教育基本法の制定当時の教育行政は、地方分権の原理のもとに進められたのです。そうした考えで公選制の教育委員会制度が発足しましたが、教育内容も含めて、相当の部分を地方の教育行政に移していくという徹底した地方分権の構想に基づいて進められました。

 ところが、任命制の教育委員会制度に変えるなど、我が国の学校教育は文部省に縛られ、学校が息苦しい暗い場に、そして画一化し、個性や特徴のないものに変えられていったのです。地方自治体が少人数学級に踏み出そうとしても、それにストップをかけてきたのが文部省でした。

 今必要なのは、地域に根差した教育であり、一人一人が大切にされ、個性を豊かにはぐくむ教育です。何よりも、子供たちに基礎的な学力を保障することが求められています。どの子にも行き届いた教育のために、三十人以下学級の実施はどうしても不可欠です。

 そのために、教育の地方分権を進め、各地域の実情に応じて教育が行われることが重要です。教育行政の主体的担い手は地方自治体であり、教育委員会は、地域に根差した民主的な教育行政を推進すべきなのです。そして、国は、教育の機会均等確保のために、条件整備に最大限の支援を行うことに徹しなければなりません。

 政府案は、四十人学級はそのままで、少人数学級をやりたければ地方自治体が全額負担せよというのでは、余りにも無責任です。管理と統制は強化し、一方で財政支出を地方に押しつける、そうしたやり方は教育の地方分権に逆行するものと言わなければなりません。

 以上をもって答弁とさせていただきます。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十二分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.