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第12号 平成13年3月9日(金曜日)

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平成十三年三月九日(金曜日)

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  平成十三年三月九日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 高齢者の居住の安定確保に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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 高齢者の居住の安定確保に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、高齢者の居住の安定確保に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣扇千景君。

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) 高齢者の居住の安定確保に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国においては、急速な高齢化の進展に伴い高齢者が急速に増加することが見込まれる中、高齢者の身体機能の低下に対応したバリアフリー化された住宅ストックの形成が急がれております。また、高齢者世帯の増加の大部分を占める高齢者単身・夫婦世帯は、民間賃貸住宅市場において入居を敬遠される傾向にあり、高齢者が安心して居住できるように市場環境の整備を進めていくことが重要な課題となっております。

 この法律案は、このような状況を踏まえ、民間活力の活用と既存ストックの有効利用を図りつつ、良好な居住環境を備えた高齢者向けの住宅の効率的な供給を促進するとともに、高齢者の入居を受け入れることとしている賃貸住宅の情報を広く提供するための制度の整備等を図ることにより、高齢者が安心して生活できる居住環境を実現しようとするものでございます。

 次に、その要旨を御説明申し上げます。

 第一に、高齢者の賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、高齢者の入居を受け入れることとしている賃貸住宅の登録制度を創設するとともに、登録を受けた賃貸住宅の家賃に係る債務を高齢者居住支援センターが保証できることといたしております。

 第二に、民間主体が都道府県知事の認定を受けて供給するバリアフリー化された高齢者向け優良賃貸住宅について、国、地方公共団体等が補助等による支援を行うことといたしております。

 第三に、地方公共団体等が高齢者向けの優良な賃貸住宅を供給する場合に、国等が補助を行うことができることといたしております。

 第四に、バリアフリー化された賃貸住宅を高齢者の終身にわたって賃貸する場合に、借地借家法の特例として賃借人が死亡したときに終了する旨を定めることができる終身建物賃貸借制度を創設することにいたしております。

 第五に、高齢者がみずから居住する住宅について行うバリアフリー改良に対する住宅金融公庫の融資について死亡時に一括償還する方法を導入するとともに、高齢者居住支援センターがこのような償還方法による融資に係る債務を保証することができるものとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 これが、高齢者居住安定確保に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)

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 高齢者の居住の安定確保に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。井上和雄君。

    〔井上和雄君登壇〕

井上和雄君 井上和雄です。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、高齢者の居住の安定確保に関する法律案について質問いたします。

 まず、我が国の住宅に関して、現状認識についてお伺いします。

 我が国は経済大国と称されながらも、国民の住む住宅は、豊かさの中の住宅貧乏ともいうべきものです。先進国の人間にふさわしくないウサギ小屋です。特に、大都市では、多くの国民が劣悪な居住環境や重い住居費負担、満員電車の長時間通勤に耐えながら、馬車馬のように働いているのが現状です。

 安全で安心して住める住居なしに、生命の安全、健康の維持、生活の安定はなく、高齢社会も成立いたしません。六千人以上の死者を出した阪神大震災では、老朽家屋の倒壊などによる住宅災害による犠牲者が大部分であり、我が国の住宅の欠陥を暴露いたしました。戦後五十年目に起きたこの大災害は、住宅の安全を初めとする生活環境基盤の整備を怠ってきた自民党政治の責任と言っても言い過ぎではないと考えます。

 住居は人間生存の基本的基盤であり、国民の健康で文化的な生活は、人間にふさわしい住居の保証なしには不可能です。しかしながら、我が国の住宅政策は、自助努力、持ち家政策、質より量を基本として、年収の五倍以上という勤労者の支払い能力を超えた住宅取得を推進し、多くの勤労者をローン地獄に追い込んでいきました。本来は人間らしく生活するための基盤である住宅が、逆に、生活の豊かさを感じさせない重荷となってしまっているのです。

 そして、このような住宅政策の陰には、社会的弱者である高齢者、女性、母子家庭、低所得者、失業者、外国人などが住む場所を得られない現実があり、ホームレスの増加となってあらわれています。

 例えば、持ち家を持たない高齢者や無職の独身女性の賃貸住宅への入居というのは著しく困難であり、また、公的住宅に入居するための倍率というのは十倍以上であると聞いております。まさしく、このような戦後の住宅政策の失敗が今回の法案作成の背景になっていると考えます。

 そこで、扇大臣にお伺いいたしますが、これまでの我が国の住宅政策をどのように評価し、認識しておられますか。

 今回の法案には、その第三条に「国土交通大臣は、高齢者の居住の安定の確保に関する基本的な方針を定めなければならない。」とあります。つまり、住宅政策と福祉政策との連携によって、今回初めて高齢者のための住宅の基本方針を定めるということです。政府・与党のこれまでの高齢者の住宅問題に対する無関心また無策が、まさしく居住権という生活に保障されるべき最低限の権利が侵害される状況を生み出しているのです。

 そこで、扇大臣にお伺いしますが、一体、政府はこれまでどのような方針で高齢者の住宅問題に対応されてきたのか、お答えいただきたい。

 また、高齢者の方々が生き生きとして老後を過ごすことができるためには、地域で生活するさまざまな人たちとの交流は欠かすことができません。ともにコミュニティーを形成することで、本来の意味での高齢者対策、ひいては高齢者が充実した老後が送れるための環境整備が図れると考えます。

 したがって、高齢者のための単なる建物を供給することを主眼に置いて、住まいというハードウエアを整備すれば事足りるという考え方では、本当の意味での高齢者に優しい社会の建設はとてもおぼつかないと考えます。高齢者向けの住宅政策づくりには、国と自治体、民間と公的な施設の役割分担等の総合的な視点が求められるのです。特に住宅政策と福祉政策との連携が重要になりますが、どのように取り組んでいくおつもりなのか、扇大臣に積極的な答弁をお願いいたします。

 先ほども申し上げましたように、高齢者住宅の問題に関しては、ハードとソフトがそろって初めて本当の意味での高齢者のための住宅が整備できると私は考えます。介護保険制度の発足に伴って、政府は、特別養護老人ホームなどの建設を促進するゴールドプラン21を策定しています。また、住宅のバリアフリー化も重点施策としてされております。今回の高齢者住宅法案は、そうしたこれまでの施策とどのように関連しているのか、私にはこの点について理解できません。厚生労働省として、これまで住宅と福祉の連携にどのような方針で取り組んできたのか、また、今後、国土交通省とどのように連携して取り組んでいくのか、坂口大臣にお伺いいたします。

 高齢者の方々の身体的条件には大変差があります。したがって、高齢者住宅は、単に健康な高齢者だけを対象とした住宅というよりは、独力では生活できない高齢者や、また、介護を必要とする高齢者の方にも対応できるような住宅でなければならないと思います。

 また、前にも述べましたように、コミュニティーの形成といった観点から、コレクティブハウスとかグループホームなどの新しいタイプの住まい方が今まさに望まれているのです。阪神大震災の災害復興住宅がモダンな密室での孤立化というものを引き起こしていることは広く知られています。今回の制度は、このような新しいタイプの住まいにも対応できるのでしょうか、扇大臣にお伺いしたいと思います。

 次に、高齢者世帯の入居を拒まない賃貸住宅の登録・閲覧制度の創設及び滞納家賃の債務保証に関してお伺いします。

 私は、まず、この法案が、単なる空き家対策として、空き家だから高齢者を入れよう、そういった制度になってしまうのではないかと危惧しております。特に、ひとり住まいの高齢者が住んでいる住宅は、高齢者が十分なサービスを受けることがない場合には、住宅がスラム化していくことになります。既に大都市では、高齢者の方が孤独死しているケースが多々あります。先ほども述べましたように、コミュニティーの形成や福祉政策との連携なしに今回の制度も決して成功しないということを申し上げたいと思います。

 また、賃貸住宅の登録についてですが、法案によれば、都道府県知事もしくはその指定した者がこの登録を行うことができます。しかし、現在でも、賃貸住宅に関する情報は、不動産業者間のコンピューターを利用したネットワークや住宅情報雑誌など、さまざまな形で既に提供されています。また、滞納家賃の債務保証に関しても、国が拠出する基金で、国土交通省が管轄する高齢者居住支援センターを設立することになります。既存の団体を利用する計画と聞いておりますが、国土交通省は、このような債務保証になぜ民間の保証会社を活用することを考えないのですか。うがった見方をすれば、現在ある財団の存在意義がなくなっているので、新たな仕事をつくって存続させるという考えなのかとも推測できます。

 また、滞納家賃の六カ月分を保証するという仕組みですが、高齢者が収入を減らした場合に、半年間で回復するとは到底考えられません。国の役割は、まさしく、家賃を払えなくなった高齢者の住宅をどのように確保すべきかという点にあると思います。

 国土交通省は、これまでのように、すべて自分たち、官が面倒を見るという考え方から脱却して、とにかくまず民間でできるかよく検討してみて、どうしても民間でできない場合に初めて役所が乗り出すというように、時代に合った発想をしていただきたいと希望しますが、扇大臣はどのようにお考えでしょうか。

 今回の法案には、バリアフリーリフォームに対する融資制度の創設などについて、住宅金融公庫を活用することが盛り込まれています。高齢者に対するバリアフリーリフォームの必要性は切実なものがあり、この制度の必要性について、私、異論はありません。しかし、住宅金融公庫を初めとする特殊法人については、昨年末に閣議決定された行政改革大綱において、廃止、整理合理化、民営化などの措置を講ずるとされており、すべての特殊法人についてゼロベースから見直すという方針が決定されております。高齢者に対する新しい融資制度の創設にかこつけて、住宅金融公庫の温存を既成事実化する意思が明確にあらわれていると考えます。

 今回の法案に関連して、今国会には、住宅金融公庫法改正案が審議されようとしております。この法案は、特殊法人の改革を目指した行政改革の流れに反して、住宅金融公庫の温存を意図するものではないでしょうか。一体、国土交通省は、特殊法人改革に関するこれまでの閣議決定をどのように認識して、また、実行してきたのでしょうか、扇大臣にお伺いいたします。

 また、住宅金融公庫のあり方に関しては、民間金融機関の業務を圧迫しているという観点から見直すべきであるという意見も多くあります。規制緩和、官から民へという流れが定着しつつある今日において、住宅金融公庫のような公的主体が、莫大な財投資金と政府補助金を背景にして、巨額の住宅融資を行うという事実は、我が国の金融システムの健全な発展という観点から見れば、早急に改善すべきであります。

 また、住宅ローン債権市場の育成や税制上の措置の充実など、我が国の住宅政策をより市場に適合したものに根本的に転換すべきと考えます。

 最後にお伺いいたしますが、住宅金融公庫の廃止や民営化を、扇大臣はおやりになるおつもりがあるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) ただいま井上議員から、るるのお話が、御質問がございましたので、順次それにお答え申し上げたいと思います。

 まず第一に、今御質問ございましたけれども、これまでの住宅政策への認識と評価についてという御質問がございました。

 我が国の住宅事情は、一戸当たりの床面積が向上するなど着実に改善が見られる一方、大都市圏の借家を中心に、広さなど質の面ではまだ依然と立ちおくれている部分があると考えております。

 このために、これまでも、税制や融資による良質な持ち家取得の推進のみならず、ファミリー向けの良質な公共賃貸住宅の供給を図るとともに、定期借家制度の導入など、民間賃貸住宅の供給の促進を図ってきたところでございます。

 今後とも、私どもは、国民一人一人の住まい方のニーズに対応し、広さのみならず、バリアフリーなど住宅の性能面での充実を図ることによって、豊かな住生活が実現できるように、積極的に政策の展開を図っていく所存でございますし、現在も努力してきたつもりでございます。

 二つ目には、住宅政策と福祉政策との連携についての御質問がございました。

 高齢者の居住の安定のためには、私どもは、居住政策と福祉政策との連携を図るというのは、先生御指摘のことだけではなくて、私どももその重要性は特に考えているところでございます。

 このために、従来より、福祉部局による生活支援サービスつきの公共賃貸住宅であるシルバーハウジングプロジェクトというものを実施してまいりましたし、そのシルバーハウジングプロジェクトとあわせて、御存じのとおり、公営住宅等で六百団地ございますけれども、その中で八百七十二施設、それはデイサービスセンターですとか、あるいは特別養護老人ホームですとか老人保健施設というものを併設し、このシルバーハウジングプロジェクトの実施とあわせて、現在も実行してまいりましたし、今後もそれを推進してまいりたいと考えております。

 そういう意味におきまして、公共賃貸住宅の建てかえにおける社会福祉施設等の併設の推進、これは連携を図っていくというのが私どもの政策の大事な点でございます。

 高齢社会の進展を踏まえまして、本法案においては、新たに、高齢者のための住宅施策全般に関しまして、今おっしゃいました福祉との連携の基本方針を、今いらっしゃいました厚生労働大臣とともに、私たちは今後も協議の上で定めることとしておりまして、一層の連携を今後も推進してまいりたいと存じております。

 続きまして、三つ目の御質問がございましたけれども、これは、新しい住まい方への対応についてのお尋ねがございました。

 高齢者の住宅につきましては、ハード面におきましては、皆さんのおっしゃいますバリアフリー化を進めておりますし、また、単身の高齢者等がグループで共同生活を行うコレクティブハウス、今、井上先生がおっしゃったところでございますけれども、このコレクティブハウスにつきましては、御存じのとおり、阪神・淡路大震災のあの復興のために、公営住宅において八団地二百六十一戸の実績をつくりまして、これを推進してきたところでございます。

 このために、高齢者向け優良賃貸住宅につきましては、高齢者が共同で利用する食堂やリビングを設ける場合に補助対象とするとともに、コレクティブハウスなど多様な住まい方が可能になるように、今後とものこの補助による整備というものを充実してまいりたいと考えております。

 第四に、登録制度と家賃保証制度についてのお尋ねがございました。

 これにつきましても、高齢者は、民間賃貸住宅におきましても、家賃の滞納の不安というようなことが、今皆さん方が入居を拒まれている最大の重要な課題でございます。しかし、私どもは、現在民間で提供されている賃貸住宅に関する情報では、一般的には高齢者の入居の可否、断っているのがどの程度あるかということの有効な情報提供は今困難でございます。

 また、私どもは、この家賃保証は、民間の保証会社等で実施している例もございますけれども、高齢者は病気などに起因するリスクが大変高いと見られておりますので、一般的には家賃保証を利用することが困難な状況になっている現状であろうと思っております。

 そのために、高齢者のための賃貸住宅情報を提供するための登録制度と家賃債務保証制度を一体的に設けることが、私たちは高齢者の賃貸住宅への円滑な入居を支援できる一番大きなものであると思っておりますので、今後ともこれを私たちは推進してまいりたい、そのように考えております。

 五つ目に、住宅金融公庫のあり方についてお尋ねがございました。

 これまでの特殊法人改革に関する閣議決定では、特別割り増し融資額の段階的縮減や、バリアフリー化の推進など政策誘導機能の強化、これが指摘されております。今おっしゃったとおりでございますけれども、今後は、これを踏まえまして、平成十三年度の予算案におきましては、特別割り増し融資額を縮減するとともに、本法案におきまして、バリアフリー化のための融資を充実するなどの措置を講ずることとしているのは御存じのとおりでございます。

 また、金融動向にかかわらず、長期、固定そして低利の住宅資金を安定的に供給し、国民の住宅取得を支援する現在の公庫の役割は、なお今後とも必要であると思っております。公庫が民営化した場合、こうした今の役割を果たすことが私は困難であろうと考えておりますので、今後とも、私はこれを国民が必要としているという考えを持って今は勉強しているところでございますので、御理解を賜りたいと存じます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 井上議員から、住宅施策と福祉施策との連携についてのお尋ねがございました。

 これまで、高齢者用に整備されました公営住宅等に居住するお年寄りのもとに、福祉施策として、相談相手となる生活援助員を派遣することなどを行ってまいりましたし、また、公団住宅の建てかえの際に、デイサービスセンターなどの福祉施設あるいは医療施設の併設を推進してきたところでございます。また、元気な高齢者の話し合い、情報交換をする場をこれからも推進していきたいと考えております。

 厚生労働省として、こうしたこれまでの連携政策の実績を踏まえまして、高齢者が安心して生活できるような体制整備などの環境づくりに努めてまいりたいと考えております。

 今後、豊かな経験と知識を持った達人社会が訪れてまいります。この人たちに、達人に対する環境整備を進める必要がありますが、住環境からも生きがいのある日々を送っていただけるように、一層、創意工夫を進めてまいりたいと存じます。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。

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議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三十一分散会




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