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第13号 平成13年3月15日(木曜日)

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平成十三年三月十五日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第五号

  平成十三年三月十五日

    午後一時開議

 第一 踏切道改良促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 新産業都市建設促進法等を廃止する法律案(内閣提出)

 第三 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名

 日程第一 踏切道改良促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 新産業都市建設促進法等を廃止する法律案(内閣提出)

 日程第三 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 環境省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

 衆議院規則の一部を改正する規則案(議院運営委員長提出)

 衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案(議院運営委員長提出)

 経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名

議長(綿貫民輔君) 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名を行います。

小此木八郎君 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、中央選挙管理会委員に

      浅野大三郎君    石原  輝君

      田中 昭一君    浅井 美幸君

   及び 鷲野 忠雄君

を指名いたします。

 また、同予備委員に

      元宿  仁君    金井 和夫君

      西川  洋君    鳥居 一雄君

   及び 松井 繁明君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

 日程第一 踏切道改良促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 新産業都市建設促進法等を廃止する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、踏切道改良促進法の一部を改正する法律案、日程第二、新産業都市建設促進法等を廃止する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長赤松正雄君。

    ―――――――――――――

 踏切道改良促進法の一部を改正する法律案及び同報告書

 新産業都市建設促進法等を廃止する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、踏切道改良促進法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、最近における踏切事故の発生状況等にかんがみ、交通事故の防止及び交通の円滑化に寄与するため、所要の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、踏切道の改良措置を講ずる期間を平成十三年度以降さらに五カ年間延長すること、

 第二に、都道府県知事が、鉄道事業者、道路管理者及び関係市町村長の意見を聞いた上で、国土交通大臣に対して、本法に基づく踏切道の指定をすべき旨の申し出を行える制度を創設すること、

 第三に、鉄道事業者と道路管理者が協議して立体交差化計画または構造改良計画を作成するに際し、その協議が調わなかった場合の措置として、鉄道事業者または道路管理者からの申請に基づいて、国土交通大臣が裁定する制度を創設しようとするものであります。

 次に、新産業都市建設促進法等を廃止する法律案について申し上げます。

 本案は、産業構造の変化等にかんがみ、新産業都市建設促進法、工業整備特別地域整備促進法並びに新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律を廃止するとともに、本法の施行に伴う経過措置等、所要の規定を整備しようとするものであります。

 踏切道改良促進法の一部を改正する法律案は去る二月二十七日、新産業都市建設促進法等を廃止する法律案は去る三月七日、本委員会にそれぞれ付託され、同月九日扇国土交通大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、同日審査に入り、踏切道改良促進法の一部を改正する法律案につきましては、新設される都道府県知事の申し出制度及び国土交通大臣による裁定制度の円滑な踏切道改良事業に対する効果等について、新産業都市建設促進法等を廃止する法律案につきましては、いわゆる新産・工特制度の廃止後の地方産業振興策のあり方等について議論が行われました。

 同日質疑を終了し、採決いたしました結果、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、踏切道改良促進法の一部を改正する法律案に対し、政府は、特に、いわゆるボトルネック踏切を、今後十年間で半減することを目標に、当面五年間着実に実施できるよう努めること等を内容とする附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。

 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第三、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 関税定率法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、

 第一に、平成十三年三月三十一日に適用期限の到来する開発途上国に対する特恵関税制度について、その適用期限を十年延長するとともに、特定の鉱工業産品等に係る特恵関税の適用方式の変更、特恵税率の多様化、後発開発途上国に対する新たな特恵関税対象品目の創設等を行うこととしております。

 第二に、コーングリッツへの加工原料用等のトウモロコシの関税割り当て一次税率の引き下げ、紡織用繊維のフロック等の関税率の撤廃等を行うことにしております。

 第三に、旅客が輸入品を沖縄県から沖縄県以外の本邦へ携帯して出域をする際の関税の払い戻し制度を免税制度に変更すること等を行うことにいたしております。

 第四に、平成十三年三月三十一日に適用期限の到来する暫定税率、石油関係の関税の還付制度、ウルグアイ・ラウンド合意に基づく関税化農産品に係る特別緊急関税等について、その適用期限を一年延長することにしております。

 その他、税関手続の簡素化等、所要の改正を行うことにしております。

 本案は、去る七日当委員会に付託され、昨十四日宮澤財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、環境省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 環境省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 環境省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長五島正規君。

    ―――――――――――――

 環境省設置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔五島正規君登壇〕

五島正規君 ただいま議題となりました環境省設置法の一部を改正する法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。

 本案は、環境行政の一層の推進を図るため、環境省に地球環境審議官を設置し、及び地方における環境省の所掌事務に関する調査などの事務をつかさどる職員を配置しようとするものであります。

 本案は、去る二月六日本院に提出され、三月七日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、九日に川口環境大臣から提案理由の説明を聴取し、本日質疑を行った後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案、衆議院規則の一部を改正する規則案及び衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案の三案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

 衆議院規則の一部を改正する規則案(議院運営委員長提出)

 衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案(議院運営委員長提出)

議長(綿貫民輔君) 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案、衆議院規則の一部を改正する規則案、衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長藤井孝男君。

    ―――――――――――――

 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案

 衆議院規則の一部を改正する規則案

 衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔藤井孝男君登壇〕

藤井孝男君 ただいま議題となりました国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案、衆議院規則の一部を改正する規則案、衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案でありますが、これは、平成十三年四月一日から、金融庁にも国立国会図書館の支部図書館を置こうとするものであります。

 次に、衆議院規則の一部を改正する規則案でありますが、これは、議員が出産のため議院に出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができるものとするものであります。

 次に、衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程案でありますが、これは、衆議院の事務局及び法制局の職員の定員を、千七百九十九人を超えない範囲内で改定する場合には、議長が議院運営委員会に諮って定めようとするものであります。

 なお、本規程の制定に伴い、衆議院事務局職員定員規程及び衆議院法制局職員定員規程は廃止することとしております。

 本法律案、規則案及び規程案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出したものであります。

 何とぞ御賛同くださるようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 三案を一括して採決いたします。

 三案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも可決いたしました。

     ――――◇―――――

 経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣坂口力君。

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 現在、雇用情勢は依然として厳しい状況にあり、産業構造の転換等、経済社会の変化が進む中で、労働者が離職を余儀なくされる場合の円滑な再就職を可能とするとともに、労働者個人の自発的な能力開発を促進するなどにより、職業生活の全期間を通じてその職業の安定を図ることが重要となっております。

 政府といたしましては、必要な施策を整備充実するため、本法律案を作成し、ここに提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。

 第一に、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の廃止であります。

 特定の業種にかかわらず離職を余儀なくされる労働者について円滑な再就職を促進するための施策を講ずることを踏まえ、同法を期限どおり、平成十三年六月三十日をもって廃止することとしております。

 第二に、雇用対策法の一部改正であります。

 事業規模の縮小等を行おうとする場合に、事業主は、再就職援助計画を作成し、公共職業安定所長の認定を受けなければならないものとするとともに、政府は、認定を受けた計画に基づき対象労働者の再就職援助のための措置を講ずる事業主に対し必要な助成及び援助を行うこととしております。

 また、特に中高年齢者の再就職を促進するため、事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならないものとすることとしております。

 第三に、職業能力開発促進法の一部改正であります。

 労働者の職業生活の設計に即した自発的な職業能力開発を促進するため、関係者の責務及び事業主が必要に応じて講ずる措置を定めるとともに、技能検定試験に関する業務を行わせることができる民間試験機関の範囲及び当該民間試験機関に行わせることができる業務の範囲の拡大を通じて、職業能力評価制度を整備することとしております。

 第四に、雇用保険法の一部改正であります。

 雇用安定事業として、離職を余儀なくされる労働者の再就職を促進するために必要な措置を講ずる事業主に対して必要な助成及び援助を行うことができるものとすることとしております。

 第五に、地域雇用開発等促進法の一部改正であります。

 地域の主体性を最大限に生かしつつ、就職の促進その他の地域雇用開発を図る観点から新たに整理した雇用機会増大促進地域等四つの地域区分について、都道府県が策定する計画を厚生労働大臣が同意し、当該計画に基づき対策を講ずる方式に改めることとしております。

 第六に、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の廃止に伴い必要となる経過措置を定めるとともに、その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、一部を除き、平成十三年十月一日から施行することとしております。

 以上が、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案の趣旨でございます。

 よろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。加藤公一君。

    〔加藤公一君登壇〕

加藤公一君 民主党の加藤公一でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案につき、総理大臣、厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 初めに、森総理に伺います。

 国会は国権の最高機関でありますから、そこで与党の皆さんによって信任されたばかりの総理が、ちまたで言われるように、近々おやめになるなどということは、到底考えられません。しかし、もしもそれが事実であれば、これは大変ゆゆしき問題であります。国会の議決には意味がないと言うに等しいからであります。

 もうすぐやめるということがわかっている総理の答弁ではむなしいだけでありますから、まずは冒頭、国民の皆様に対して、御自身の進退を明確に表明していただきたいと存じます。(拍手)

 さて、現下の雇用情勢は依然、大変厳しい情勢にあります。失業率は四%台後半に高どまりし、失業者も三百十七万人という高い水準であります。また、二年近く改善を続けてきた有効求人倍率や、労働経済動向調査における労働者の過不足感にも陰りが見え始めています。堅調であったIT産業も、アメリカの株価の伸び悩みによって採用を手控えたり、一部の勝ち組を除いてはベンチャー企業の採用が鎮静化したり、この先、新たな求人の伸びは余り期待できません。

 さらに、構造的要因による雇用情勢の悪化も心配の種です。転職希望者が増加基調にあることや、これまで就職活動すらあきらめていた方々が求職活動を始める可能性、さらに人材の流動化による表面的な失業率の増加などを考慮すると、今後、失業率が五%台で推移する可能性も決して否定できません。さらに、近い将来、財政構造改革に着手すれば、その影響での失業者の増加も考慮すべきであります。

 雇用不安は今の日本を覆う閉塞感の中心的な要因であり、これを打破するために、将来にわたって、雇用不安増大のリスクを最大限回避するとともに、セーフティーネットの充実を図るべきだと考えます。また同時に、日本全体の適材適所の実現という究極の目標達成に向けて、今こそ抜本的な政策の方向転換が必要だと考えます。

 旧来型の対症療法の積み上げでは、決して国民の不安はぬぐえないし、日本の再生もあり得ない、そう申し上げても過言ではないと思いますが、総理御自身のお考えをお聞かせください。

 これまで我が国の雇用慣行で最大の特徴と言われてきた無期限の長期雇用、いわゆる終身雇用は、この先、ますますその比率が下がることが予想されます。固定的な雇用慣行は、労働者の企業内訓練を重視する日本企業にとって高い合理性を持ち合わせておりましたが、経済構造や人口構成の変化によってその合理性は薄れてきたのであります。つまり、流動的な雇用慣行の比率が高まること、そしてそれを望む労働者の比率がふえることは、もはや避けられないのであります。

 人材の流動化が進めば、求職者が速やかに次の職場を見つけられるよう、健全な労働市場の育成が必要になってまいります。しかし、これまでの労働行政の延長では、かえって市場の健全性を阻害するおそれがあります。その典型が助成金制度です。その全貌をだれ一人把握できないほど多数存在していながら、効果が証明されているものなど皆無に等しいのであります。現金をばらまいて不自然な需要をつくり出す、業績の悪い企業に無理やり雇用を維持させる、こうした時代おくれの発想では、本質的な雇用対策にはなり得ません。

 この際、非効率な助成のあり方を根本から改め、実効性の明らかな助成金以外は大胆に整理することが求められると考えますが、今進められている助成金の見直しが本質的な改革に値するのか、そして、いかにして健全な労働市場を築いていくおつもりか、厚生労働大臣の御所見を伺います。

 年齢や性別など、個人の力ではどうしようもないことで就業のチャンスを奪われている方がいらっしゃいます。差別によって、能力のある高齢者や女性たちが労働市場から追い出されているのです。こうした差別を解消することは、多くの人々に就業のチャンスを保障するという意味で、大変意義深いことです。

 私は、個人の自由意思が尊重され、個人が自立できる社会を目指すという観点から、あらゆる差別に反対します。年齢差別についても同様の考えです。年齢差別の禁止は、年功序列賃金や定年制の廃止など多くの課題、そして、日本の将来ビジョンとも深くかかわる重要な問題だと思いますが、総理は、我が国のトップリーダーとして、今後、年齢差別のないエージフリー社会を目指すのか、それとも、これまで同様の固定的な雇用慣行を維持するのか、いずれの道を進むおつもりか、その御意思を伺いたいと思います。

 今回の法案では、民間の事業主に、募集、採用において年齢差別をしないよう努力義務を課すことになります。確かに、年齢による理不尽な差別が横行する現状と比べれば、少しは進歩したと言えるでしょう。民間の事業主の皆様には、ぜひ、労働者の選考において、形式的な年齢ではなく、実質的なその人の能力を十分に吟味し、採用の可否を決定していただきたいと望むところであります。

 ところで、この法案を提出した政府は、公務員の募集、採用において、年齢で差別せず、能力だけで判断しているのでしょうか。大臣もよく御存じのとおり、一般職の公務員では、その受験に当たって年齢制限が存在をしています。ある年齢を過ぎれば、面接はおろか、筆記試験すら受験できません。

 公務員の募集、採用は年齢差別が残ったままで、民間の事業主だけが年齢に関係なく労働者を採用しようとするでしょうか。本気で年齢差別の撤廃に向けて踏み出すのであれば、政府みずから、つまり公務員の募集、採用から率先すべきだと考えますが、総理の御決意を伺いたいと存じます。(拍手)

 現在の失業の一因として、能力のミスマッチの問題が挙げられます。この問題を解決するには、適切な能力の評価システムが必要になります。労働市場で求められている職業能力を身につけようというインセンティブが働くからであります。しかし、これまで実施されてきた技能士検定やビジネスキャリア制度は、果たして十分にその機能を果たしてきたと言えるのでしょうか。甚だ疑問を持たざるを得ません。これに対する厚生労働大臣の評価をお聞かせいただきます。

 そもそも、職業能力の評価は、個々人の技能、すなわちスキルを測定するだけでは不十分であります。職業能力全体の適正な評価は、その業務を行っている現場が最も適切に実施できるはずです。その意味では、能力評価はすべて民間に任せるべきではないでしょうか。そもそも、国が主導していては、民間の技術革新や経営革新に追いつけず、適切な評価をすることができないのではないでしょうか。厚生労働大臣はいかがお考えになりますか。

 健全な労働市場が育成されても、そこへの参入に際して不利な状況を強いられている方々に対して何らかの支援が必要であります。私は、すべての人々が持って生まれた能力を最大限発揮できる社会を理想としていますが、その意味でも、障害者の皆さんに対する支援はまだまだ不十分だと言わざるを得ません。

 今回の法改正では、雇用対策法から障害者の職業の安定に関する規定を削除することになっています。雇用対策法は、職業安定関係法規の中で、法体系のベースとなる、いわば基本法ともいうべきものであり、この法律から障害者に関する規定を削除することについて、不安を感じざるを得ません。

 確かに、障害者の雇用の促進等に関する法律において、企業や国、地方自治体に障害者を雇うことを義務づけています。しかし、実際には、半分以上の企業が一・八%の法定雇用率を達成できておりません。また、二・一%の法定雇用率が適用される公団、事業団などの特殊法人でも、いまだ五分の一が未達成という現実があります。

 この改正によって、障害者の皆さんに働く機会を保障するという政府の取り組みが後退するものであるなら、これは看過できないのであります。

 そこで、総理にお尋ねいたします。

 職につきたいという意欲のある障害者の皆さんに働く機会を保障することは、政府の役割として必要だとお考えでしょうか。また、障害を持つ方々が、職につき、自立するための支援として、今後どのような取り組みを進めるおつもりですか。

 最後に、厚生労働大臣に伺います。

 昨日、KSDをめぐる調査結果及び処分についてが公表されました。しかし、接待については、その人数や回数が発表されただけであり、だれがどのような会食をしたのか、何一つ明らかにはなっておりません。これでは、今回の処分が適切かどうかも判断できないのであります。それぞれの宴席は、いつ、どこで行われ、だれが出席し、そのときの役職はどうであったか、だれが主導していたか、すべてを明らかにしていただきたいと思います。

 こうした政官業の癒着が、そしてKSDの疑惑が、指導監督を甘くしていた国の責任について疑惑を持たれ、国民に納得のいく説明を求められている現状を考えれば、これは正直に、そして、すべてを明らかにする、この姿勢をぜひとも示していただきたいと思います。この疑惑をすべて解明すること、この点を強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 初めに、私自身に関するお尋ねがございました。

 内外に課題が山積いたしております現在、私は、国政にはいっときの停滞も、また、空白も許されない状況であると考えております。私としては、先日、本院におきまして内閣不信任案の否決を受け、まずは、現在参議院で御審議をお願いしております平成十三年度予算やその関連法案、さらに、各般の改革を実施するための重要法案の一日も早い成立に全力を尽くすことが、現内閣の責務であると考えております。

 また、最近の厳しい経済情勢、株式市場動向にかんがみまして、政府・与党一体となって緊急経済対策本部を発足させたところでありまして、さきに提示されました与党三党によります緊急経済対策をしっかりと受けとめて、断固とした対応をとってまいる所存であります。

 さらに、月内に予定されております米国、ロシアとの首脳会談など、当面の外交課題にも全精力を傾けてまいります。

 私としては、目下、こうした諸課題に全力を挙げて取り組むことしか考えておらず、退陣などは、現在のところ全く念頭にはありません。

 雇用不安の解消に関するお尋ねであります。

 政府がこれまでに取り組んできた大胆かつ迅速な政策運営により景気は最悪期を脱しましたが、失業率が高水準で推移するなど、雇用情勢は依然として厳しい状況を脱しておりません。また、我が国の発展を支えてきた経済社会システムが、内外の厳しい経済変化によって従来のような役割を果たせなくなってきておりまして、これらが国民が不安を感じる要因となっていると考えられます。

 こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることを最重要課題として取り組んでまいりますとともに、二十一世紀を先取りした経済構造改革に大胆に取り組んでいるところであります。

 また、中長期的には、経済社会の変化が一層進展し、失業率が高どまりするおそれがあることから、セーフティーネットを充実する必要があり、新たなセーフティーネットの一環として、離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職を促進するなどの仕組みを設ける雇用対策法等改正法案を御提案申し上げました。こうした措置により、国民の雇用不安の払拭に努めてまいりたいと考えております。

 我が国の雇用慣行の将来ビジョンについてお尋ねでありました。

 少子高齢化が進展する中、将来にわたって経済社会の活力を維持していくためには、年齢にかかわりなく、すべての人がその意欲と能力に応じて働くことのできる社会を築いていく必要があります。このため、改正法案に、労働者の募集、採用について、事業主は、雇用慣行との調和に留意しつつ、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めることとする旨の努力義務を盛り込んでいるところであります。

 雇用全般のあり方については、我が国の雇用慣行にもかかわる大きな問題であることから、国民各層の参加を得て、幅広く議論を進めてまいります。

 公務員の募集、採用に係る年齢制限についてのお尋ねがありました。

 公務員の採用は、民間における取り扱いと同様とすることが基本と考えております。

 国家公務員の採用は、競争試験による場合には一定の年齢制限を設けておりますが、採用試験が各省庁の新入職員を採用するために行うものであり、我が国の雇用慣行のもと、新規学卒者を中心とする若年層からの採用を目的として行っていることによるものであります。また、新入職員以外のいわゆる中途採用については、選考により行われているところでありますが、年齢による制限は設けておりません。

 障害者の職業の安定のための取り組みについてのお尋ねであります。

 雇用対策法中の障害者の職業の安定にかかわる規定は、既に障害者雇用促進法に吸収されているところであります。今回、雇用対策法について規定の整備を行った後も、障害者雇用促進法に規定するノーマライゼーションの基本的理念の実現のため、障害者がその適性と能力に応じて職業につけるようにすることは、政府の重要な責務であると認識しております。

 このような認識のもと、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、職業リハビリテーションの推進を初め、各種施策を今後とも強力に推進してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 助成金制度の改革についてのお尋ねでございます。

 雇用保険三事業関係給付金につきましては、昨年の雇用保険法改正時の衆議院、参議院の委員会における附帯決議で整理合理化が求められているとともに、本法案を提出する契機となりました関係審議会の建議におきましても、今後の雇用政策の方向に沿って効果的、効率的な支援を行う観点から、支援内容の重点化及び簡素合理化を図る必要があるとの指摘を受けているところでございます。

 雇用保険三事業関係給付金の整理合理化に当たりましても、本法案の成立後施行までの間に、再度、関係審議会において議論いただくこととなっております。こうした考え方を十分に踏まえて措置する考えでございます。

 技能検定制度やビジネスキャリア制度が果たしてきた機能の評価についてのお尋ねでございます。

 技能検定は、現在、建設、製造系職種を中心に百三十三職種について実施をし、検定に合格した者が累計で約二百五十万人となっております。また、ビジネスキャリア制度は、ホワイトカラー職種にかかわる能力を認定する制度として十分野を設定、実施し、修了認定試験の合格者は累計で約三万人となっているところであります。

 これらの制度は、労働者の職業能力開発の目標として定着し、一定の機能を果たしてきたと考えております。しかしながら、近年における技術革新や産業構造の変化に伴い、労働者に求められる職業能力が急速に変化する中で、これらの制度を見直すことが必要となってきておることも事実でございます。このため、今回のこの法律案において、技能検定制度を見直し、民間のノウハウを活用して、実践的な職業能力を適正に評価するためのシステムの整備を積極的に進めることといたしております。

 職業能力評価の今後のあり方についてのお尋ねでございます。

 技術革新、産業構造の変化に対応し、円滑な再就職の促進に資する適切な職業能力評価システムを確立、普及するためには、業界団体等の民間機関が主体となった制度整備が必要であると考えております。

 しかしながら、すべてを民間に任せる場合には、職業能力評価制度が乱立し、労働者や企業の混乱により労働者の円滑な再就職に影響を与えるおそれがあることなどから、国が業種間、職種間で共通の横断的な職業能力評価の仕組みを提供する役割を果たしていくことが必要であると考えております。

 このため、今回の改正によりまして、技能検定試験に関する業務の民間機関への委託について、国が技能や知識の水準の統一的、横断的な基準を定めた上で、試験科目の設定を含む全部委託方式を導入することとしており、幅広い職種について、技術革新等に対応した能力評価制度の整備を図ってまいりたいと考えております。

 最後に、KSDの問題をお聞きいただきました。

 KSDをめぐる調査結果につきましてのお尋ねでございますが、今回の調査では、すべての処分対象者について、その氏名、役職及び個人別の調査の内容をともに明らかにしたところでございますので、ごらんをいただければと思います。

 国民に不信の念を抱かれているような事態を招いたことはまことに遺憾であり、厚生労働行政を預かる大臣として、深くおわびを申し上げる次第でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 都築譲君。

    〔都築譲君登壇〕

都築譲君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました雇用対策法等の一部を改正する等の法律案に関して質問をいたします。(拍手)

 初めに、世界同時株安が大きく報道される中で、既に影が薄くなった印象が否めませんが、森総理大臣は、三月十日の自民党五役会議において、次いで自民党大会において、自民党総裁選挙を前倒しする意向を表明され、これは事実上の退陣表明であると報道されております。じきにおやめになる総理大臣に御質問しても、今までに増して、責任のある御答弁をいただくことはできないのかなとも存じますが、実際のところ、平成十三年度予算案と予算関連法案が成立した後も本当に総理大臣を続けるおつもりがあるのか否か、まず明確にお示しをいただきたいのであります。(拍手)

 さて、雇用情勢は一向に回復いたしません。総務省が三月二日に発表した一月の労働力調査によれば、完全失業率は四・九%で、比較し得る中で戦後最悪を記録しております。この三月の高卒、大卒の就職内定率はいまだに七割から八割にとどまっており、四月には、学卒失業者として一層深刻な状況が予想されます。これは政治の責任であります。

 自民、公明、保守の与党三党は、昨年の総選挙の共通公約で、一年間に五十万人の雇用創出を挙げられました。我々は、助成金中心の小手先の政策ではとても大幅な雇用の創出にはつながらないと、これを批判いたしました。間もなく一年が経過いたしますが、結果は今申し上げたとおりであります。経済構造改革が不十分であることは明らかであり、官僚の起案した政策をそのまま進めるだけという小手先だけの対応を繰り返してきた政治の貧困が、過去最悪の失業率という今日の雇用情勢をもたらし、三百二十万人にもなんなんとする失業者をちまたにあふれさせているのであります。

 公約が実現できなかったことについて、与党三党は、みずからの不明を恥じ、国民の前に謝罪すべきであります。一体、森総理はこの責任をどのように感じておられるのか、まずお聞かせ願いたいのであります。

 我が国においては、あらゆる制度、仕組みが護送船団方式で運営されてまいりました。政治家と官僚、業界団体がもたれ合い、なれ合って、経済規制や補助金や公共事業の配分という利権を与える見返りに、金と票で政権が支えられるという手法を繰り返してまいりました。多くが何らかの形で既得権を与えられ、なあなあでそれを維持していさえすれば、痛みを伴う改革を行うことがなくても済んだ時代でありました。

 雇用慣行の面でも例外ではありません。いわゆる日本型雇用慣行により、新卒者は一斉に採用され、定年まで雇用が保障され、年功序列で賃金が上がっていく、この形態は、労使一体の企業別組合によって支えられてきたのであります。

 しかし、今日、雇用を取り巻く環境は大きく変化しております。国際競争、技術革新、情報化、消費者の価値観の多様化、少子高齢化、就業者意識の変化などに伴って雇用形態もさま変わりしつつあります。パート労働者は雇用労働者の二割を超えて、ふえ続けております。定職につかない若者が急増し、フリーターと言われる若者は二百万人と言われております。勤務形態においても、勤務時間を弾力的に設定するフレックスタイム制を採用する企業や、年齢ではなく成果や能力を重視して賃金を支給する企業がふえております。企業を襲う国際競争の荒波や急速に広がるIT化は、これまでの雇用のあり方の基本的な変更を迫っております。働く人の意識も、どこの企業で働くかから、どんな職種を選ぶかに移りつつあります。

 よき雇用慣行とも言われてきた、これまでの終身雇用を前提とした年功序列型の雇用形態、定年制、新卒一括採用といった慣行がこれからも維持されていくべきなのか、それともこれにかわる新たな雇用形態が構築されるべきなのか、その中でこの法案はどのような位置づけになるのか、その基本認識について総理にお答えいただきたいのであります。

 政府が提出された今回の法案の名称には、「経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進」という言葉が冠せられております。しかし、その内容を拝見すると、対症療法として行うことに意味はないではありませんが、とてもこの法律で経済社会の変化に対応した安定した雇用が確保されるとは考えられません。

 雇用の確保を労働行政の範囲でとらえようというお役人の発想にすがっている、そのこと自体が問題なのであります。政治家、また政党として、経済構造改革、財政改革、行政改革、政治改革の四つの分野で大胆な改革のビジョンを示し、果断に実行に移していくことが必要なのであり、それなくして経済の成長も、景気の回復も、雇用の確保もなし遂げることはできません。

 あらゆる分野での構造改革、すなわち、いわゆる業法と言われている法律は全廃するぐらいの民間の自由な活力を引き出す規制撤廃、社会保障や雇用の将来ビジョンを明確にした上で、それを実現していくための改革、高級官僚のキャリア組の大半が五十代前半で退職して特殊法人や公益法人に天下る早期退職の慣行の打破、また、補助金の地方一括交付、許認可の大幅削減など、国、地方あわせた行政改革、そして、これらの改革の前提となる、官僚主導から政治が主導して政策を立案し決定する政治改革、これらを総合的に推進する大胆な構造改革に今取り組まなければならないと考えますが、この点について総理の御所見を承りたいのであります。

 大胆な構造改革の一環として位置づけられるべきは、我が国の雇用戦略であります。

 世界には、明確な雇用戦略を示し、実現している国があります。オランダでは、雇用改革と社会保障改革を連携させて、労働時間が短くても年金が受給できるような仕組みに改め、パートタイマーの雇用をふやし、失業率を一〇%台から三%以下に改善させたと言われます。アメリカでは、クリントン大統領が、情報化社会に向けた人員と資本の集中投資により、一九九三年から六年間で雇用者数を二千万人増加させたと言われます。

 これに対して、我が国に政府が全体として中長期的に取り組む総合的な雇用戦略があるのでありましょうか。

 残業手当を当てにしなくても豊かに暮らせる社会、定年後も健康で働く意欲のある限り働ける社会、多様な年齢層の活用により企業が競争力を維持していくことができる社会、勤務形態に縛られなくても正社員でいられる社会、労働時間の長短ではなく仕事の質で評価される社会、老後生活の安心を保障するために雇用と年金が連携した社会、生きがいを持った仕事が見つけられるように子供のころから自己実現を大切にする社会、このような社会を目指しつつ、構造改革を前提とした雇用の将来ビジョンと具体的な目標を掲げ、それを実現する方策を明らかにする必要があると考えますが、総理の明快な御答弁を求めるものであります。

 次に、法案の具体的な内容について、何点かお伺いいたします。

 この法案は、これまでの、高度成長があって初めて成り立っていた、一時的な不況に伴う雇用維持中心の政策から、産業構造の転換を前提に、新産業での雇用創出、成長分野への労働力移動に重点を置いた政策への転換を進めることをねらいとしております。その意味では、特定不況業種雇用安定法を廃止することはむしろ当然であると考えますが、新たな施策が新産業の雇用創出や成長分野への労働力移動に本当に有効に機能していくのか、厚生労働大臣の御所見をお聞かせください。

 また、新たに再就職支援が行われる、離職を余儀なくされる者を相当数生じさせる事業とは、どのような事業を想定しており、対象となる事業所をどのぐらい見込んでおられるのか、厚生労働大臣にお答えいただきたいのであります。

 現在、中高年の失業者にとって、再就職を目指す上で高い障壁となっている年齢制限を緩和することがこの法案の目的の一つとなっておりますが、努力義務規定であります。実効性を上げるためにどういう施策が必要と考えておられるのか、厚生労働大臣にお聞かせいただきたいのであります。

 また、労働時間の短縮は雇用労働政策の中でも大きな課題であります。

 社会経済生産性本部の試算では、現在の実労働時間を五%削減すれば、二百五十万人の雇用が創出できるとの結果が出ております。平成十一年に一千八百四十二時間の年間総実労働時間を、政府目標である千八百時間に短縮すれば、百二十万人以上の雇用創出が可能となるのであります。しかも、事業所統計をもとにした千八百四十二時間という数字は、同年の労働力調査結果によれば二千二百時間を超えるとも言われており、長時間労働を新規の雇用機会にかえていく余地はまだまだ相当あると考えます。

 政府は、この国会で労働時間短縮促進法改正案の制定を目指しているようでありますが、この際、どのようにすれば労働時間短縮が可能になるとお考えなのか、あわせてお伺いいたします。

 特に、本当の時間短縮を妨げ、長時間労働の隠れみのとも言えるサービス残業の解消にどのように取り組まれるおつもりなのか、また、その背景にある大手企業による中小、下請いじめや過酷なまでのコスト削減要求、その結果としての中小企業の倒産による労働条件の悪化などの問題がありますが、厚生労働大臣の労働時間短縮に向けた御決意をお聞かせください。

 次に、地域雇用開発等促進法の運用に当たって、今回、国が一方的に地域を指定することをやめ、都道府県が提案し国が同意する方式に変更することといたしておりますが、これによって地方の自主性、主体性に基づいた地域の雇用開発につながると考えておられるのか、厚生労働大臣、総務大臣に、それぞれ御答弁をお願いしたいのであります。

 以上、政府の見解をただしてまいりましたが、雇用の安定を図ることこそ、国民生活の基盤を確立する政治の責任であるということを重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 最初に、私の進退についてお尋ねがございました。

 先ほども申し上げましたが、私といたしましては、KSD事件などにより損なわれました信頼を回復するため、自由民主党の新生を急がなければならないと考えており、一昨日の党大会において、清新にして開かれた政党を目指した党改革に全力を挙げることとあわせて、指摘どおり、今秋に予定されている党総裁選を繰り上げて実施することを提案いたしました。しかしながら、総裁選の具体的な実施時期等については追って協議してまいることといたしておりまして、現段階は、既に私が退陣表明をしたかのごときとらえ方をされるのはまことに不本意であります。

 改めて申すまでもなく、内外に課題が山積している現在、国政にはいっときの停滞、空白も許されません。私としては、まずは、現在参議院で御審議をお願いしております平成十三年度予算やその関連法案はもとより、各般の改革を実施するための重要法案の一日も早い成立に全力を尽くすことが、現内閣が国民に対して果たすべき責務であると考えておりまして、退陣などは現在のところ全く念頭にはありません。

 雇用創出の公約が果たせなかったのではないかとのお尋ねがございました。

 政府の雇用対策においては、昨年五月に策定したミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策を例にとれば、一年間に三十五万人程度の雇用就業機会の増大の現実化を図ることといたしておりました。この対策に基づき、これまで、創業や異業種進出を行う中小企業が労働者を雇い入れる際の支援については、昨年四月から本年一月までの雇い入れ予定労働者数が約十万四千人、各地方公共団体の創意工夫に基づき臨時応急の雇用就業機会の創出を図る事業につきましては、本年度の見込みは、新規雇用就業予定者約十五万七千人などの効果を上げているところであります。

 雇用問題は政府の最重要課題の一つであると認識しており、今後とも、新規産業の育成により雇用機会の創出を図るとともに、職業能力開発を通じ需給のミスマッチ解消に積極的に取り組むことにより雇用の安定を図り、雇用不安の払拭に万全を期してまいりたいと考えております。

 雇用慣行との関係での法案の位置づけについてお尋ねがありました。

 まず、雇用システム改革のあり方については、経済産業構造の変化の中で長期雇用のメリットを生かしつつ企業活力を維持する観点から、労使間で十分な話し合いがなされるべきものと考えておりますが、雇用システムの見直しに当たっては、個人の主体的な能力開発を促進しつつ、円滑な労働移動を可能とすることが不可欠であります。

 今回の法案は、こうした考え方に立って、現行の雇用対策の総合的な見直しを行い、離職を余儀なくされる労働者に対する在職中からの計画的な再就職支援の促進、個人の主体的な能力開発の促進等を図るためのものと位置づけております。

 雇用の確保のためには総合的な構造改革が必要ではないかとのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、私としても、雇用の確保は経済社会全体の構造改革の中で考えるべきものであり、こうした構造改革によって、時代の変化に合わなくなった仕組みを一つ一つ見直し、我が国が力強く発展できる新たな仕組みをつくり上げていくことが不可欠であると認識いたしております。

 具体的に申し上げれば、経済面での構造改革については、IT革命の推進を柱としつつ、我が国経済の潜在力を引き出すための各般の規制改革や新産業の育成等に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 財政構造改革につきましては、まずは、足元の景気を自律的回復軌道に乗せることに重点を置きつつも、平成十三年度予算において、公共事業の見直し、省庁再編による施策の融合化、効率化などの努力によって国債の新規発行額を削減するなどの準備を進めてきたところであります。今後、さらに本格的な議論を進めたいと考えております。

 さらに、行政改革につきましては、国民本位の行政の実現を目指して、本年一月に新たな府省体制を発足させたところでありますが、引き続き、昨年末決定されました行政改革大綱に沿って、特殊法人改革、公益法人改革、公務員制度改革に早急に取り組んでいくことといたしております。

 また、御指摘の、政治主導による政策決定を目指す政治改革につきましては、まさに今回の中央省庁再編の大きな目的の一つであり、内閣の機能強化や副大臣、政務官制度の導入等により、政治が強力なリーダーシップを発揮し得るようなシステムの確立を目指していくことといたしております。

 かねてから私が提唱してまいりました日本新生は、まさにこうした我が国経済社会全体の構造改革を目指すものであり、今申し上げた分野にとどまることなく、今後とも抜本的な構造改革に取り組んでまいる決意であります。

 構造改革を前提とした雇用の将来ビジョンを明らかにすべきとのお尋ねがございました。

 今後、中長期的な産業構造の変化や労働力人口の減少など経済社会の変化が進む中で、意欲と能力がある限り、年齢や性別にかかわりなく主体的に働き方を選択しつつ働くことができる社会、労働を通じて社会貢献と自己実現が両立できるような社会を実現することが重要であると認識いたしております。今般提案させていただいております雇用対策法等の改正法案も、この認識に立つものであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) 地域雇用開発等促進法の運用についてのお尋ねがございました。

 お話しのように、今回の改正は、これまでの国が地域指定を行うという方式を、都道府県が自主的に計画を作成して国が同意するという方式に改めたものであります。このことにより、地方団体の主体性や自主性を生かしながら、国と地方公共団体の連携による地域の実情に即した地域雇用開発が促進される、まことに結構な改正ではないかと考えております。その効果を期待いたしております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 新たな施策の有効性についてのお尋ねでございました。

 新たな施策といたしましては、在職中からの計画的な再就職支援の促進、それから、労働者の募集、採用時の年齢制限緩和に向けた取り組みの促進、個人の主体的な能力開発の促進などを柱として、離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の実現を図ろうとするものでありまして、経済構造改革への果敢な取り組みと相まって、新産業や成長分野への円滑な労働移動に資するものになっていると考えているところでございます。

 新たな再就職支援についてのお尋ねがございました。

 再就職援助計画は、離職を余儀なくされる者を相当数生じさせる場合には、事業内容を問うことなく、三十人程度以上の労働者が離職を余儀なくされる場合に作成されるべきものと考えております。対象となります事業所数の見込みは立てておりませんが、支援の対象となる離職者数につきましては、年間約五十万人程度を見込んでいるところでございます。

 年齢制限の緩和についてのお尋ねがございました。

 今回創設する年齢制限の緩和に関する努力義務規定につきましては、公共職業安定所が中心となって行う求人年齢制限の緩和の指導を一層積極的に進めるとともに、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた国民的な機運の醸成を図ることにより、実効を上げるように努めてまいりたいと考えております。

 労働時間の短縮についてのお尋ねがございました。

 労使の取り組みと行政の支援により、年間の総実労働時間は着実に減少しておりますけれども、いまだ目標とする年間総実労働時間千八百時間を達成できない状態にあります。このため、今後は、十分な成果を得られていない年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減に重点を置く取り組みが必要と考え、本年三月末に廃止期限を迎えます時短促進法の廃止期限を五年間延長する法案を国会に提出しているところでございます。

 サービス残業の解消につきましては、今後、使用者が労働者の労働時間を適正に把握する責務があることを改めて明確にし、事業主が労働時間の把握のために講ずべき措置として、タイムカードやICカードの適切な使用などによる把握の方法等を示した通達を発しまして、この通達の周知及び遵守のための適切な指導を行うことといたしております。ここにはもう少し英知を集める必要があると考えているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、豊かでゆとりある労働者生活の実現に向けて、引き続き労働時間の短縮に取り組んでまいりたいと考えます。

 最後に、地域雇用開発等促進法の運用についてお尋ねでございました。

 ただいま総務大臣からも御答弁がございましたが、国が指定する方式から都道府県が定める計画を国が同意する方式に改めることにより、地域の自主性や創意工夫を生かしつつ、地域の実情に即した地域雇用開発が促進されるものと考えている次第でございまして、こういう案をここに提案させていただいた次第でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 木島日出夫君。

    〔木島日出夫君登壇〕

木島日出夫君 私は、日本共産党を代表し、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案に関し、総理並びに厚生労働大臣に質問します。(拍手)

 まず、今日の雇用失業情勢についてです。

 本年一月の完全失業率は、五カ月連続で増加し、四・九%、三百十七万人となり、昨年の年間失業率四・七%、三百万人を超えています。さらに、今後五%を超えるとの懸念も出されており、まさに、日本の歴史上かつてない、極めて深刻な事態となっています。

 総理、あなたは、このような深刻な雇用失業状況を生み出した政府の責任についてどう考えているのですか。答弁を求めます。(拍手)

 今、我が国の大企業、大銀行では、企業の合併、分割等をてこに、人減らしが吹き荒れています。大企業のリストラ計画を見ると、日産自動車の二万一千人、三菱自動車の九千五百人、最も企業利益を上げているNTTでさえ二万七千五百人です。こうした人減らし合理化に加え、正規社員が大量に不安定雇用労働者に置きかえられています。その結果、今日、我が国では、パート労働者は一千万人をはるかに超え、派遣労働者も百万人を超えるに至っています。膨大な失業予備軍が生まれていると言わざるを得ません。

 こうした大企業のリストラ、人減らし合理化に対し、政府は、産業再生法や会社分割法などを制定し、これを支援、推進してきたのではありませんか。これが今日の深刻な雇用失業情勢を招いた根本的原因ではありませんか。答弁を求めます。

 今日、長期の不況にあえぐ国民の最大の要求は、失業の防止、雇用の安定、そして拡大にあります。

 ところが、総理、あなたは、昨年十二月二十六日の記者会見で、今日の高失業率はやむを得ないと述べ、さらに、今国会の冒頭、施政方針演説では、「雇用システム改革については、円滑な労働移動を実現し、」と述べるだけで、その言動からは、今日の深刻な雇用情勢を打開する熱意も姿勢も全く感じられませんでした。

 総理の言う円滑な労働移動の実現で、今日の深刻な失業を減らし、雇用を安定させ、さらに雇用を拡大することができると本当に考えているのですか。新しい雇用創出の具体策もない流動化政策では、失業者がますますふえてしまうのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 今、国のやるべき雇用対策の基本は三つであります。

 その第一は、リストラや解雇を規制するルールを確立して、雇用の安定を図ることであります。

 今日の失業の最大の原因は、企業の身勝手なリストラ、人減らしにあります。全労連の調査では、この九六年から九八年の三年間だけで三百七十六万人の雇用の削減が行われました。その多くが、解雇権の乱用や退職の強要などによるものです。

 今、政府に求められているのは、整理解雇の四要件や、転籍、出向の本人同意など、判例法理を国の法律として制度化することではありませんか。坂口厚生労働大臣の答弁を求めます。

 第二は、悪質な企業犯罪であるサービス残業を根絶して、雇用をふやすことであります。

 EUでは、労働時間に関する指令が出され、本格的に労働時間短縮と雇用の拡大が進んでいます。昨年二月に週三十五時間労働制を施行したフランスでは、大量の新規雇用が生まれ、この一年間で失業者が百万人も減っているのです。今こそ、残業時間の上限を法的に規制するとともに、明白な労働基準法違反であるサービス残業根絶が急務なのではないですか。

 昨年十一月末の中央労働基準審議会で、サービス残業の解消、とりわけ、仕事の始業時間、終業時間の把握と管理を企業に厳密にさせるよう厚生労働大臣に対して建議がなされました。そのための通達が近く出るとお聞きしておりますが、サービス残業の解消を本当に実現できるか否かのかぎは、企業による就業時間管理が正確に行われるかどうかを労働者がチェックできる仕組みをつくることであると考えます。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 第三は、国と自治体の責任で雇用の創出を図ることであります。

 日本の失業者の生活保障は、雇用保険以外にはありません。給付期間が過ぎて生活の糧を失った失業者など、失業保険を受給できない失業者は二百万人を超えているのです。不況の長期化ですぐには雇用改善が見込めないもとで、国自身の雇用対策が求められているのではありませんか。

 長野県では、新しい知事のもとで、荒廃した公有林の造林など、環境整備と担い手づくりを結びつけた県独自の対策を進め、この分野だけでも、臨時的雇用を含め二千人を超える雇用をつくり出そうとしております。

 政府としても、国民生活に不可欠な教育、保育、介護、医療、防災、環境保全などの分野で、人手不足の解消を図るために、速やかに公的雇用の創出をすべきではありませんか。

 ところが、政府は、行革リストラの名のもとに、国家公務員総数の二五%削減を目指すとしています。これでは、ますます雇用情勢を悪化させるばかりではないですか。総理の答弁を求めます。

 また、現在実施されている緊急地域雇用特別交付金事業を今年度で終わらせるのでなく、継続し、予算も大幅増額すべきではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、青年の雇用対策についてお聞きします。

 現状はまことに深刻であります。二十五歳までの青年の完全失業率は九%、総数で七十万人を超えています。本年四月には、未就職学生が加わり、さらに悪化すると見られています。女子学生に対する就職差別問題も解決されておりません。現在働いている青年労働者も、五人に一人、百五十万人が、フリーターと言われる身分保障のない不安定労働を余儀なくされているのです。

 二十一世紀の日本を背負う青年たちが働きたいのに働けない社会とは、一体どういう社会でしょうか。青年の雇用対策は、日本の将来を左右する重大問題であり、放置できない緊急最重要の政治課題ではありませんか。

 EU諸国では、本格的な青年の雇用対策を進めています。イギリスでは、五十五万人の若年失業者が若年者のためのニューディール政策に登録され、二十五万人の就労が実現しています。同じようにフランスでは、昨年、若年者雇用促進計画で、二十九万人の雇用が創出されました。さらにドイツでは、若年失業者削減のための緊急プログラムで、二十七万人の青年が登録され、十万人の就労が実現しています。

 このようなEU諸国に学び、我が国でも本格的な青年雇用対策に踏み出すべきです。それができないような政府では青年に希望を与えることはできないと考えますが、総理の答弁を求めます。

 次に、雇用対策法等の改正案についてお聞きします。

 現行の雇用対策法は、第一条で、雇用対策の目的を「完全雇用の達成」に置いています。ところが、今回の改正法案では、新たに第三条が追加され、雇用対策の基本的理念として、「円滑な再就職の促進」が盛り込まれました。本改正法案は、特定不況業種臨時措置法や高年齢者雇用安定法にあった、企業の人減らし合理化、再就職支援活動に対する国からの財政措置を拡大、一般化するものです。

 現に、大企業、大銀行が大規模な人減らし、リストラを進めているもとで、それを規制することなしに、再就職の促進のかけ声のもと、雇用の流動化だけを促進すれば、結果として、失業者を減らすどころか、逆に、増大させることになってしまうのではありませんか。法の目的にある「完全雇用の達成」など、言葉だけのものになってしまうのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 日経連は、九五年、新時代の日本的経営のあり方を発表し、労働力の流動化の名のもとに大リストラ、人減らし合理化を推し進めてきました。今回の改正法案は、このような財界のリストラ推進を、法制度の面から、財政の面から後押しするためのものではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 政府は、本改正法に、募集や採用について、年齢によって差別してはならないとの努力義務規定を置き、これを改正の目玉にしています。年齢による雇用差別があってはならないことは当然のことであります。しかし、現状は、政府の外郭団体の労働研究機構の調査でも、募集年齢の上限は全業種平均で三十七・三歳となっています。要するに、四十歳以上は募集も採用もほとんどないのが現実なのです。このような状況のもとで、単なる努力義務規定で、中高年労働者の再就職を促進する実効性が上がるとお考えですか。厚生労働大臣にお聞きします。

 二十一世紀の日本社会は、高齢化が一層進んでいきます。高齢者雇用の現状も極めて深刻です。これを打開し、高齢者の雇用を促進していくためには、アメリカの年齢差別禁止法にあるように、募集、採用における年齢の差別を許さない、実効ある措置をとるべきではありませんか。坂口厚生労働大臣の答弁を求めます。

 今日の我が国の深刻な雇用失業問題を本当に打開するためには、これまで政府がとってきた、大企業、大銀行の人減らし合理化への追随と支援の姿勢を根本的に転換し、大企業の身勝手な解雇を規制し、労働時間短縮とサービス残業の根絶による雇用の拡大、公的雇用の創出が急務です。日本共産党は、そのために全力を尽くす決意です。

 最後に、政権を担当する資格も能力もない森内閣には、雇用失業問題でも、国民の期待にこたえられないことは明らかです。速やかな退陣を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 雇用失業情勢の現状に対する責任についてのお尋ねがありました。

 我が国経済は、平成十年秋には、デフレスパイラルに陥るのではないかとの懸念がありました。しかしながら、政府がこれまで取り組んでまいりました大胆かつ迅速な政策運営の効果もありまして、こうした危機を乗り越えてまいりました。

 ただ、個人消費はおおむね横ばいであり、失業率は高水準で推移するなど、景気は厳しい状況を脱しておらず、また、景気の改善のテンポが緩やかになるなど、いわば踊り場的な状況にあります。

 こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることを最重要課題として取り組んでまいる所存であります。

 雇用対策におきましても、昨年五月に策定したミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策を例にとれば、一年間に三十五万人程度の雇用就業機会の増大の現実化を図ることとしており、この対策に基づき、これまで一定の下支え効果を上げているところであります。

 今後とも、新規産業の育成により雇用機会の創出を図るとともに、職業能力開発を通じ需給のミスマッチ解消に積極的に取り組むことにより、雇用の安定を図り、雇用不安の払拭に万全を期してまいる所存であります。

 産業再生法や会社分割法などが雇用失業情勢を悪化させたのではないかとのお尋ねであります。

 これらの対策は、経済社会の変化に対応した企業の創造的な経済活動と新規産業の創出を促進するために実施されているものであります。これらの対策も活用しつつ、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるとともに、経済構造改革を進めていくことが雇用の拡大につながるものと考えます。

 また、このような構造変化の中で離職を余儀なくされた方々への対応としては、円滑な労働移動を実現することが重要と考えており、御審議いただいている雇用対策法等改正法案において、円滑な再就職促進対策を提案いたしているところであります。

 円滑な労働移動の実現による雇用の安定についてのお尋ねであります。

 本法案では、雇用をめぐる環境変化に対応して、現行の雇用対策を総合的に見直し、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者についての在職中からの計画的な再就職支援を促進すること、労働者の募集、採用について、事業主は、雇用慣行との調和に留意しつつ、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めることとする等を盛り込んでいるところであり、現下の厳しい雇用失業情勢の改善に資するものと考えます。

 また、新規産業の育成により雇用機会の創出を図るとともに、職業能力開発を通じ需給のミスマッチ解消に取り組むことにより、雇用の安定を図ってまいりたいと考えております。

 公的雇用の創出についてのお尋ねがありました。

 教育、保育、介護、医療などの国民生活に不可欠な分野におけるサービスの維持、向上を図ることは確かに重要でありますが、そのための雇用対策としては、事業の効率性等の問題にも配慮し、民間企業の活力を生かしたサービスの供給を視野に置きつつ、的確に対処すべきものと考えております。

 国家公務員の定員削減についてお尋ねがありました。

 政府としては、十年間で二五%の純減を目指した定員削減に最大限努力することといたしているところであります。政府としては、今後とも、行政のスリム化のさらなる推進の観点から、この方針に従って定員削減に努めてまいる所存であります。

 こうした措置を通じ、スリムな政府を確立し、民間が自主性と創意を発揮できる環境を整備することにより、民間活力を最大限に引き出し、雇用機会の創出を図ることが今後の雇用の安定にも必要かと考えます。

 青年の雇用対策についてのお尋ねがありました。

 我が国の力強い発展は、豊かな個性と創造性を持ち、さまざまな可能性に果敢に挑戦していく人、わけても青少年が存分にその力を発揮できるかどうかにかかっております。

 このため、若年の雇用対策については、できる限り希望に即した雇用の場を確保するという視点に立って、全国のハローワーク等が学校との連携を密にしつつ、的確な就職支援を講ずるとともに、都市部を中心に増加しつつあるフリーターに対しては、マンツーマンでの職業相談や指導を行うなど積極的に対処してまいります。

 リストラの規制を欠いたまま雇用の流動化が進むことによる失業の増大の懸念についてのお尋ねがありました。

 本法案では、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者の再就職援助のための計画の作成に際しては、事業主は労働組合等の意見を聞かなければならないこととするなど、再就職の援助の仕組みが逆に安易なリストラを促進することのないように配慮しているところであります。こうした措置を通じて、離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職を実現することにより、職業生活の全期間を通じての職業の安定に資するものであると考えております。

 なお、リストラは、その過程においては痛みを伴うものでありますが、我が国経済の構造改革を進めていく上で、セーフティーネットに万全を期することなどにより、乗り越えなければならない課題であります。これにより創造的な企業活動が促進されることを通じて、新規雇用が創出されるものと期待をいたしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 整理解雇の四要件等の制度化についてのお尋ねがございました。

 解雇につきましては、その理由、態様等は多様でありますことから、いわゆる整理解雇の四要件を必要とするという裁判例の考え方を踏まえまして、具体的な事例に応じ、労使間で十分話し合っていただくべきものと考えており、一律に解雇を規制するような立法措置は適当ではないと考えております。

 また、いわゆる転籍や出向について、裁判例では本人の同意が必要とされており、このことは広く知られているものと考えております。

 残業時間の上限規制とサービス残業の解消についてお尋ねがございました。

 サービス残業を解消するためには、労働時間が正確に把握されることが必要であります。使用者は、労働時間を適正に管理する義務を負っており、昨年十一月の中央労働基準審議会の建議も踏まえ、個々人の始業終業時刻の把握が的確に行われるよう、使用者が講ずべき措置を具体的に示すべく、近々、通達を出すことといたしております。

 今後、適正な時間管理が行われるよう指導してまいりますが、同時に、時間外労働を行わせた場合に割り増し賃金を支払わないことは労働基準法違反であり、的確な監督指導を実施いたしまして、その是正に努めてまいります。

 緊急地域雇用特別交付金事業についてのお尋ねがございました。

 本事業は、臨時的な雇用就業機会の創出を図るために、平成十三年度末までの臨時応急の措置として創設したものでありまして、その活用を促進してまいりたいと思っております。

 改正法案がリストラを後押しするものとなるのではないかという懸念についてのお尋ねがございました。

 本法案では、雇用の維持は企業が事業活動を行う場合の大前提との考え方を踏まえ、労働者は、職業生活の全期間を通じて、その職業の安定が図られるよう配慮されるものとするとの基本的理念に係る条文を追加しております。

 その上で、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者が相当数生ずる場合には、事業主に対しまして、再就職援助計画を作成することを義務づけ、この計画に基づく在職中からの再就職援助措置を国が支援することといたしております。この計画の作成に際しましては、事業主は労働組合等の意見を聞かなければならないこととしているところでございます。

 年齢制限の問題についてのお尋ねでございます。

 厳しい雇用環境に置かれております中高年齢者の再就職を促進するため、今回、事業主は、労働者の募集、採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努める旨の努力義務規定を創設することとしております。

 今後は、この規定に基づき、公共職業安定所が中心となって行う求人年齢制限の緩和の指導を一層積極的に進めますとともに、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた国民的な機運の醸成を図ることにより、中高年労働者の再就職の促進が実効を上げるように努めてまいりたいと思います。

 最後に、募集、採用における年齢差別についてのお尋ねがございました。

 厳しい雇用環境に置かれております中高年齢者の再就職を促進するため、求人年齢制限の緩和を進めることが重要であると考えております。このため、改正法案におきましては、労働者の募集、採用につきまして、事業主は、雇用慣行との調和に留意をしつつ、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めることとする旨の努力義務を盛り込んだところでございます。

 アメリカの年齢差別禁止法にありますような、募集、採用における年齢差別を法律で禁止することにつきましては、我が国の雇用慣行にもかかわる大きな問題でありますことから、国民各層の参加を得て開催する有識者会議において幅広く議論していただくことも含め、社会全体の合意を形成しつつ、検討を進めていく問題であると考えているところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 中川智子君。

    〔中川智子君登壇〕

中川智子君 社会民主党・市民連合の中川智子です。

 私は、ただいま議題となりました再就職促進雇用対策法等の一部を改正する法律案に対しまして、総理及び坂口厚生労働大臣に御質問をいたします。(拍手)

 人間だれしも、幸せに生きていきたいと願っています。まして、みずからがみずからの命を絶つ、その自殺が本当にふえています。苦しみ悩み続けた結果、みずからの命を絶つようなことがますますふえていく社会を、私たちは決してつくってならないと思っています。

 でも、その自殺の原因が経済生活苦、その原因が大変ふえています。電車に乗っていても、人身事故によってしばらく電車がとまることが、本当に週に一回ぐらいあるのです。それはほとんどが自殺です。

 警察庁の統計によると、平成九年の自殺者二万四千三百九十一人のうち、生活苦が原因とされる人が三千五百五十六人、平成十年では、全体が三万二千八百六十三人にふえて、やはり生活苦が六千五十八人、十一年度は、三万三千四十八人のうち、生活苦は何と六千七百五十八人にも上っています。昨年はもっとふえています。

 総理、私たち政治家の仕事は、死にたくなるような社会をつくるのではなく、希望を持って生きていきたい社会をつくるのが仕事です。あなたは希望を絶望に変えてしまいました。その経済政策の失敗の責任をどのようにお考えでしょうか。そしてまた、失業率悪化の責任に対してどのようにお考えですか。明確にお答え願います。

 雇用対策法は、完全雇用の達成を国の目標として明らかにし、労働者の職業の安定と経済的、社会的向上を図ることを目的に、三十五年前につくられたと認識しています。そこにあった精神は、より積極的に雇用の質的改善を目指す、労働者本位の政策体系であったはずです。

 しかし、その後の産業経済構造の転換や日進月歩の技術革新、さらには労働者の意識変化などによって、雇用環境は大きく変わりました。失業情勢は最悪を記録している今、この改正が労働者の不安を増幅することのないよう、細心の配慮や措置が求められます。

 戦後の労働法の展開は、各国とも、企業、職場レベルでの使用者権限の規制と雇用責任の強化が立法の中心でした。日本では、企業別の内部労働市場を前提とした日本型雇用慣行が形成され、雇用の安定が追求されてきました。

 他方、敗戦直後の、使用者の一方的作成を認める就業規則制度が維持され、日本はアメリカと並んで、企業主が絶対的な権限を有する国の一つでもあります。その方法は、企業は労働者を安易にリストラなどしないものだという性善説に基づくものでした。しかし、今や、なりふり構わずのリストラのあらしです。

 その点、ドイツでは、労使共同決定制度を導入していますし、EU諸国では、職場での労働者の権利を拡大してまいりました。それに比して、日本が大きく立ちおくれている側面があることを事実としてきっちりと押さえるべきです。規制緩和論は、このような日本労働法制の基本的な特徴を意識的に無視していると断ぜざるを得ません。

 したがって、無定見な規制緩和に押し切られてしまい、退路を断たれたあげくの見切り発車ではないかという厳しい批判もあることを総理はしっかりと御認識でしょうか。その点、伺います。

 また、改正により、雇用対策法の理念、目的がなし崩し的に崩れ、本来の役割の変質を結果的に迫られる心配はないのか、明確な御答弁を求めます。

 また、本改正の意義は、労働者の幅広いキャリア形成を最重視するとともに、失業なき労働移動に対する支援策の整備こそ大切だと言えます。それだけに、単に労働力需要調整機能の強化や移動前後の助成強化にとどまらず、その大前提として、雇用にかかわるセーフティーネットの拡充が不可欠です。

 とりわけ、円滑な労働移動実現のための対策として打ち出された計画的な再就職援助については、安易な解雇の横行をいかに防ぐかが問われています。解雇回避の努力を十分行った上で、かつ、人員削減が避けられない場合にだけの労働移動支援策であることをそのために明確にする必要があると思いますし、その点をしっかりと法令に明文化することが大事だと思います。大臣の御答弁を求めます。

 改正案には、労働組合等の意見聴取が必要とされていますが、これだけでは労働者の意見が十分に反映される仕組みが担保されるとは思えません。

 実は、私も二十四年前、オイルショック後の構造不況の中で、五百人余りの従業者を百人に削減する、厳しい職場に身を置きました。真っ先にパートが、そして、女性が首を切られていきます。それから、労働者が働けなくなるような状況をじわじわとつくっていかれます。そのときには、労働組合さえも、企業の倒産を防ぐために、労働者の声を聞く力を持ち得ませんでした。労働組合も会社も、だれも頼りにならないときに、労働者一人一人のきっちりしたその解雇に至る経過、そしてまた、その後の善後策をこの法案の中に盛り込むべきだと思います。

 本当に悲しい、厳しい現実は、社長も涙し、やめていく者も涙します。だれもがつらい、そのことは身を置いた者でなければわからないと私はつくづく思います。その人の気持ちをしっかりわかってください。

 労働者の主体的なキャリア形成を支援していくことは、とても重要なことだと認識しています。しかし、事業主が担うべきことは、恒常的なキャリア形成への能力開発援助だと考えます。

 森総理が初めてパソコンをさわられてからかなりの月日が流れましたが、どの程度、技能を身につけられましたでしょうか。年をとればとるほど、技能を身につけるのはつらいし、困難です。事業主が担うべき能力開発の責任が労働者に転嫁されるおそれはなきにしもあらずです。国と雇用主が連携し、日常的な援助体制が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 また、当然のことながら、幾ら流動化が進もうと、企業が必要とする労働力を外部調達に頼ることを主としてはいけないのは当然のことです。日本経済が優位性を保ってきた原動力とも言える日本型長期雇用慣行、それにおける熟練、キャリア形成の果たす役割は引き続き中核的なものとして位置づけられるべきだと考えますが、その御認識について伺います。

 これまで述べてきたように、労働者の権利を保護した上での労働市場活性化が労働力需給のミスマッチを解消するための重要な一つになることは、私も否定しません。ただし、それはあくまで、機会均等の確保、差別禁止が明確に貫かれることを前提としています。せっかくの再就職が、能力開発支援策なども、求人側の年齢制限がある限り、ハローワークの入り口でそれらのものはこっぱみじんに吹き飛んでしまうのです。四十代からの男性の自殺者がふえているのも、就職したくても面接までたどり着けない現実があるからです。

 今回の政府案は、やっと求人の年齢差別禁止が努力義務のみとして盛り込まれたにすぎません。年齢制限をされて、そして面接にも行けない情けなさ、それも家族を抱えながら日々の生活に追い立てられての求職、そのような仕事探しならどんなにつらいでしょう。そのことをしっかりわかって、この法案に、単に努力義務だけではなく、しっかりとした裏打ちを私は望みます。

 次いで、大臣にぜひ提案したいことがございます。労働者が主体となる仕事興しの支援体制です。

 EUでは、雇用関係のない、みんなが一体となって働く協同労働があります。働く者が出資もし、維持管理をともに行う働き方です。生産分野やサービス分野でのワーカーズコープなどの協同労働に対し、体系的な法制や助成制度の確立に向けてぜひ取り組んでいただきたいと思うのですが、決意をお聞かせください。

 失業なき労働移動を掲げた本改正案は、結局のところ、多少お化粧をして、お色直しをして、あとはあなたの努力で勝手に頑張ってと、ほうり投げてしまうもののような気がしてならないのは私だけでしょうか。

 つい先週も、私は飯田橋のハローワークに行ってまいりました。職を求めて必死の思いでパソコンの画面に向き合っている人々でいっぱいでした。とてもその場で声をかけられる状況ではありませんでしたので、入り口のところで立って、聞いてみました。肩を落としながら出てくる人が、口々におっしゃっていました。一度リストラされたら、無用の人材としての烙印を押されてしまう、そしてまた、そのことによって再就職がとても困難だとおっしゃっていました。そして、どの企業でも即戦力を求めていて、多少勉強しただけではとてもその企業の要求にこたえられないともおっしゃっていました。

 大臣、企業が大変な状況にあるのはわかります。でも、企業は人材を育てる役目も負っているのではないでしょうか。安易にリストラしないのはもちろんですが、リストラせざるを得ない企業と需要のある企業が協力体制を持って、企業間の連携が大事ではないでしょうか。山一証券の社長が、泣きながら、社員をどこか雇ってくださいと言いました。社員が一度市場にほうり出されるのではなく、企業と企業が連係プレーをして、そして、失業なき労働移動ができるような体制をつくることはできないでしょうか。ぜひとも考えていただきたいと思います。

 ここで、ちょっと総理に一言、耳の痛いことを言いますが、あなたは某新聞社に、自分だけ入社試験に白紙答案を出して入社したと、堂々と御自分の著書で書かれておられます。でも、ほとんどの人はコネなどないんです。必死に就職活動をしているんです。この現状をわかってください。(拍手)

 総理に伺います。

 失業の人々が三百万人以上です。この状況を打破するには、企業努力のみに頼れなくなっているのが現実です。故小渕総理が百万人の雇用創出を提唱なさいました。あの百万人の雇用創出は、今どうなっているでしょうか。

 今国会に提出した、三十人学級の実現による教職員の拡大をぜひともお願いします。また、環境分野の人材の確保、そしてまた福祉面でのマンパワーの充実、ここに国が積極的に雇用創出を今こそ断行すべきではないでしょうか。御答弁をお願いいたします。

 本日最後に、ぜひともお願いしたいのですが、大規模災害の被災者の雇用問題、就職の困難について、総理にわかっていただきたいのです。特に三宅村の村民支援に対して伺います。

 三宅村の全島民が避難して半年がたちました。専門家によると、島にはいつ帰れるか予測がつかず、避難生活は長期になるだろうと言われています。三千七百九十七人、今、生活の不安をいっぱい抱えて暮らしています。雇用保険も切れました。また、義援金など支援金も底がついたと聞いています。このままでは、捨てられた民となることは必至です。

 阪神・淡路大震災も、一年目より二年目、二年目よりも三年目……

副議長(渡部恒三君) 中川智子君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。

中川智子君(続) 時を経るに従い、自殺者がふえ、病死もふえました。同じ悲惨を繰り返してはならないのです。村で生活実態の調査に乗り出したと聞いていますが、自治体からの要請を待つのではなく、国が支援策を打ち出してください。この日本のかけがえのない一人一人の国民です。どうか、命を、命を守ってください。

 政治のよしあしが日本の未来を左右することは自明の理です。政治の混迷が国民のあしたに暗い影を落としているのは明らかです。どうか、総理、人間引き際が肝心です。終わりよければすべてよしとなるには、あなたの失敗は余りにも重く、問題が多過ぎました。でも、あなたがその席に座っている時間が一分でも一秒でも、少なければ少ないほど事態は好転するのです。

 即刻、退陣を求めます。当然、内閣の総辞職をただいま直ちに求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 失業率の悪化等、我が国の経済社会の現状に対する責任についてお尋ねがありました。

 我が国経済は、平成十年秋には、デフレスパイラルに陥るのではないかとの懸念がありました。しかしながら、政府がこれまで取り組んでまいりました迅速な政策運営によりまして、一定の下支え効果もあって、こうした危機を乗り越えてまいりました。

 こうした中で、設備、雇用、債務のいわゆる三つの過剰という問題についても、総じて見れば、解消の方向に向かいつつあると考えております。

 ただ、個人消費はおおむね横ばいであり、失業率は高水準で推移するなど、景気は厳しい状況を脱しておりません。また、景気の改善のテンポが緩やかになるなど、いわば踊り場的な状況にあります。

 こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることを最重要課題として取り組んでまいる所存であります。

 また、我が国経済の発展を支えてきた経済社会システムが、内外の厳しい情勢変化により、従来のような役割を果たせなくなっていることから、多くの国民が経済社会の閉塞感を感じていることもあると思います。

 しかしながら、私は、こうした時代の新たな変化を、日本の発展システムに対する危機としてではなく、新たなチャンスとしてとらえ、改革によって、日本らしさを生かした新たな発展の道筋をつくり、世界じゅうの人々が日本で夢を実現したいと思える国家をつくっていきたいと考えており、このため、日本の経済社会全体の構造改革に全力で取り組んでいるところであります。

 今回の法案を提案した背景についてのお尋ねです。

 私は、我が国には大きな潜在力があると考えており、規制改革を初めとする経済構造改革を進めるとともに、我が国の産業競争力を向上させるための措置を強力に推進し、活力にあふれる経済社会を確実なものとしていく考えであります。

 今回の法案は、このような観点に立ちつつ、離職を余儀なくされる労働者に対する在職中からの計画的な再就職支援や、個人の主体的な能力開発の促進などにより、職業生活の全期間を通じて労働者の職業の安定を図ろうとするものであり、無定見な規制緩和論に押し切られたとの批判は当たらないと考えます。

 故小渕前総理が提唱した百万人の雇用創出・確保対策の効果についてお尋ねがありました。

 GDPの押し上げ効果から試算した雇用創出効果の目標約三十七万人について、教育など個々の分野別に具体的に検証することは困難でありますが、助成金の拡充等による雇用確保・維持効果については、同様に分野別の検証は困難なものの、全体としては目標の約六十四万人を達成しており、一定の下支え効果があったものと認識しております。

 なお、公立義務教育諸学校において、少人数指導等を可能とするため、今後五年間で約二万六千九百人の教職員定数の改善を実施することといたしております。

 今後とも、IT、医療、福祉などの成長分野を中心に、新規産業の育成により雇用機会の創出に努めてまいります。

 三宅村の村民の方々への生活支援についてお尋ねがありました。

 私も、三月三日、三宅島に渡り、泥流被害の実態等を視察してきたところでありますが、依然として活発な火山活動が継続し、火山ガスの放出は今後も続くと考えられる状況にあります。

 このような状況において、長期にわたる避難を余儀なくされている被災者の方々が、あすへの希望を持って毎日を生活できるような対策を講じることが最も重要であると認識しております。

 このため、被災者の方々の生活安定化のための支援として、都営住宅等の無償提供や生活必需品などの給付、被災者生活再建支援金の支給などの対策を講じるとともに、就労対策として、雇用相談窓口における就職先の紹介や、事業者に対する低利融資の実施等の対策を実施しているところであります。

 今後は、事態の長期化を踏まえ、被災者の方々の生活支援のために、国としてさらにどのような対策が可能かについて、阪神・淡路大震災の際に講じられたさまざまな措置等も参考にしつつ、東京都、三宅村とともに、緊密な連携を図りながら検討し、政府一丸となってできる限りの対策を行ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 最初に、失業なき労働移動についてのお尋ねがございました。

 労働移動が増加し、失業率の高どまりが懸念されますことから、今回の雇用対策法の改正案におきまして、離職を余儀なくされる労働者の在職中からの計画的な再就職援助の仕組みを設けることといたしたわけでございます。

 また、再就職援助計画の対象労働者を受け入れた事業主が早期定着のための講習等の費用を負担した場合には、助成の対象とすることとしております。

 さらに、産業雇用安定センターにおいて、送り出し企業と受け入れ企業の双方に対しまして、出向等による労働力移動に関しての必要な情報の提供、相談を行うこととしているところでございます。

 事業主に対する計画的な再就職援助についてのお尋ねでございます。

 今般新たに設けます再就職援助の仕組みは、離職を余儀なくされる労働者が生じる場合に、あらかじめ労働組合等の意見を聞いた上で、再就職援助のための計画を作成することを義務づけるものであることを法律上明らかにいたしております。

 再就職援助計画の作成に当たっての労働組合等の意見聴取についてのお尋ねでありますが、労働組合等の意見聴取は、再就職援助計画に、離職を余儀なくされるに至る諸事情を踏まえた労働者の意思が反映されるようにするための仕組みでございます。

 キャリア形成支援についてのお尋ねがございました。

 労働者が、企業内を含め、技術革新、職務内容の変化等に対応するためには、労働者の主体的なキャリア形成の支援が重要であると考えております。

 このため、改正法案におきましては、労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力開発の促進を事業主の責務とするとともに、具体的な措置として、事業主が必要に応じ、労働者に対する情報提供、相談等の援助や配置等についての配慮を行うこととしているところでございます。

 また、国におきましても、雇用・能力開発機構にキャリア形成支援コーナーを設置いたしまして、労働者や中小企業事業主に対し、必要な相談援助を行うための費用を来年度予算に盛り込んだところでございます。

 もう一つ、最後でございますが、雇用関係のない働き方の導入に向けた体制整備についてのお尋ねがございました。

 我が国においても、ワーカーズコレクティブなどを含め、多様な働き方を前提とした就業環境の整備は重要であると考えておりまして、人々の意欲と能力が生かされる社会の実現に向けて真剣に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上、御答弁申し上げました。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十分散会




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