衆議院

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第15号 平成13年3月22日(木曜日)

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平成十三年三月二十二日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  平成十三年三月二十二日

    午後一時開議

 第一 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 高齢者の居住の安定確保に関する法律案(内閣提出)

 第三 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

 第四 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)

 第五 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第八 沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 高齢者の居住の安定確保に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

 日程第四 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)

 日程第五 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第八 沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び農業者年金基金法の一部を改正する法律案(筒井信隆君外二名提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時四分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 高齢者の居住の安定確保に関する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案、日程第二、高齢者の居住の安定確保に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長赤松正雄君。

    ―――――――――――――

 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 高齢者の居住の安定確保に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、住宅金融公庫の行う融資制度及び住宅融資保険制度について所要の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、住宅市街地における土地の合理的かつ健全な利用に寄与する建築物の建てかえに係る高齢者に対する貸付金については、死亡時に一括償還をする方法によることができるものとすること、

 第二に、特別割り増し貸付制度の適用期限を平成十八年三月三十一日まで延長するものとすること、

 第三に、住宅金融公庫が承認した貸し付けに係る保険関係にあっては、住宅融資保険のてん補率を百分の九十から百分の百に引き上げるものとすること

であります。

 本案は、去る三月九日本委員会に付託され、同日扇国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、同月十四日から質疑に入りました。質疑におきましては、住宅金融公庫と民間金融機関のあり方及び返済困難者への対応等について議論が行われ、同月十六日質疑を終了し、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案には、住宅金融公庫の業務について、内外の社会経済情勢の変化を踏まえた整理合理化に努めること等を内容とする附帯決議が付されました。

 次に、高齢者の居住の安定確保に関する法律案について申し上げます。

 本案は、我が国における急速な高齢化の進展に対応して、主として賃貸住宅に入居する高齢者の居住の安定の確保を図るための措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、高齢者の入居を受け入れることとしている高齢者円滑入居賃貸住宅の登録制度を設け、当該住宅に入居する高齢者の家賃に係る債務保証制度を設けるものとすること、

 第二に、良好な居住環境を備えた高齢者向けの賃貸住宅の供給を促進するため、高齢者向け優良賃貸住宅の供給計画の認定制度を設けるとともに、国及び地方公共団体の補助等の支援措置を講じるものとすること、

 第三に、高齢者に適した良好な居住環境が確保され、高齢者が安定的に居住することができる賃貸住宅について賃貸借をする場合、高齢者等である賃借人が死亡したときに終了する旨を定めることができる終身建物賃貸借制度を設けるものとすること、

 第四に、加齢対応構造等にするために高齢者がみずから居住する住宅について行う改良に係る住宅金融公庫の貸付金については、死亡時に一括償還をする方法によることができるものとし、当該貸し付け等に係る債務保証制度を設けるものとすること

であります。

 本案は、去る三月九日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託され、扇国土交通大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。同月十四日質疑に入り、住宅部局と福祉部局との連携の必要性及び終身建物賃貸借制度、死亡時一括償還融資制度の運用上の留意点等について議論が行われ、同月十六日に質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案にも、特殊法人等への事務事業の委託等については真に必要なものに限定すること等を内容とする附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

議長(綿貫民輔君) 日程第三、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長御法川英文君。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔御法川英文君登壇〕

御法川英文君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本件は、日本放送協会の平成十三年度収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の承認を求めるものであります。

 まず、収支予算の概要について申し上げます。

 受信料の額は、前年度どおりとしております。

 一般勘定事業収支につきましては、受信料等の事業収入は六千六百三十億円、国内放送費等の事業支出は六千五百二億円となっており、事業収支差金百二十七億円は、全額を債務償還等に使用することとしております。

 一般勘定資本収支につきましては、収入、支出とも千十三億円となっており、放送設備の整備等の建設費に七百七十七億円を計上しております。

 次に、事業計画について、主なものを申し上げますと、障害者や高齢者に向けた放送サービスの充実、衛星デジタルハイビジョン放送の普及促進、デジタル放送の特性を生かしたサービスの実施、新しい放送技術の研究開発の推進等を図ることとしております。

 また、本件には、これらの収支予算等について、「適当なものと認める。」との総務大臣の意見が付されております。

 本件は、三月七日本委員会に付託され、去る十六日片山総務大臣から提案理由の説明を、海老沢日本放送協会会長から補足説明をそれぞれ聴取した後、質疑を行い、採決の結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと決しました。

 なお、本件に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第四 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)

 日程第五 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第四、山元勉君外四名提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第五、内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長高市早苗君。

    ―――――――――――――

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(山元勉君外四名提出)及び同報告書

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高市早苗君登壇〕

高市早苗君 ただいま議題となりました両案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、山元勉君外四名提出の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、公立の小中学校等の教育環境の整備充実を図るため、学級編制の標準を引き下げることにより児童または生徒に対するきめ細かな指導を実現するとともに、教職員定数の標準を改善する等の改正を行おうとするもので、その主な内容は、

 第一に、公立の小中学校等の学級編制の標準を四十人から三十人に引き下げること、

 第二に、都道府県教育委員会は、必要があると認める場合には、公立義務教育諸学校に係る学級編制の基準の設定及び公立高等学校に係る学級編制を弾力的に行うことができること、

 第三に、公立高等学校等の学級編制の標準を全日制課程三十人、定時制課程二十人及び本校の生徒の収容定員を二百四十人以上から百八十人以上に引き下げること、

 第四に、公立学校に高齢者再任用制度による短時間勤務職員を教職員定数に換算して任用できること

としております。

 次に、内閣提出の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、公立の小中学校等の教職員の配置の適正化を図るため、これらの学校の教職員定数の標準を改める等の改正を行おうとするもので、その主な内容は、

 第一に、都道府県教育委員会は、特に必要があると認める場合には、公立義務教育諸学校に係る学級編制の基準の設定及び公立高等学校に係る学級編制を弾力的に行うことができること、

 第二に、公立の小中学校等について、学級とは異なる学習集団により少人数指導が行われる場合には、教職員の数を加算することができること、

 第三に、公立高等学校の教職員定数の算定基礎を学級数から収容定員に改めるとともに、少人数指導等を行う教諭等の数を改善すること、

 第四に、公立学校に再任用短時間勤務職員及び公立義務教育諸学校等に非常勤講師を置く場合には、教職員定数を換算して任用することができること

としております。

 山元勉君外四名提出の法律案は三月六日、内閣提出の法律案は二月九日にそれぞれ提出され、去る八日の本会議において両案について趣旨説明を聴取した後、質疑を行い、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、去る九日町村文部科学大臣及び提出者山元勉君からそれぞれ提案理由の説明を聴取した後、両案を一括して質疑を行い、去る十四日には参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を重ねてまいりました。

 かくて、去る十六日質疑終局後、山元勉君外四名提出の法律案に対して、国会法第五十七条の三の規定に基づき、内閣の意見を聴取いたしましたところ、町村文部科学大臣より、政府としては反対である旨の意見が述べられました。

 次いで、討論の後、採決の結果、山元勉君外四名提出の法律案は賛成少数をもって否決され、内閣提出の法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。

 まず、日程第四、山元勉君外四名提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第五、内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第六、犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案、日程第七、宮内庁法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長横路孝弘君。

    ―――――――――――――

 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案及び同報告書

 宮内庁法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔横路孝弘君登壇〕

横路孝弘君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、人の生命または身体を害する犯罪行為により不慮の死を遂げた被害者の遺族または重傷病を負いもしくは障害が残った被害者が受けた心身の被害の早期の軽減に資するため、犯罪被害者等給付金として、新たに重傷病給付金を支給することとするとともに、障害給付金の支給対象となる障害の範囲を拡大するための規定等を整備するほか、警察本部長等がこれらの者に対してとるべき援助の措置及び当該被害の早期の軽減に資する事業を行う犯罪被害者等早期援助団体の指定等に関する規定を整備しようとするものであります。

 本案は、去る三月十四日本委員会に付託され、翌十五日伊吹国家公安委員会委員長から提案理由の説明を聴取し、翌十六日及び昨二十一日の両日質疑を行い、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 次に、宮内庁法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、香淳皇后崩御に伴い、宮内庁の皇太后に関する事務をつかさどる皇太后宮職を廃止することとするほか、皇太后宮職に置かれる皇太后宮大夫を廃止しようとするものであります。

 本案は、去る三月十九日本委員会に付託され、昨二十一日福田内閣官房長官から提案理由の説明を聴取し、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。

 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第八 沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第八、沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。沖縄及び北方問題に関する特別委員長大木浩君。

    ―――――――――――――

 沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔大木浩君登壇〕

大木浩君 ただいま議題となりました法律案につきまして、沖縄及び北方問題に関する特別委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。

 本案は、旅客が、空港内旅客ターミナル施設内で輸入品を購入し、携帯して沖縄から出域する場合の関税の扱いについて、輸入の際に関税を賦課して後に払い戻す措置を免税措置に改めるものであります。

 本案は、去る二月九日本院に提出され、三月十六日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、昨二十一日橋本沖縄及び北方対策担当大臣から提案理由の説明を聴取した後、直ちに質疑を行い、質疑終局の後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 災害対策特別委員長提出、地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

議長(綿貫民輔君) 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長赤羽一嘉君。

    ―――――――――――――

 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 ただいま議題となりました地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 六千四百有余名のとうとい犠牲を出し、未曾有の大災害をもたらした阪神・淡路大震災発生より、六年の月日が経過をいたしました。あの大震災で、御家族を亡くされ、自宅が崩壊し、職場を失うことにより、人生の大転換を余儀なくされた被災者にとって、幾ら月日が経過しても、決して消し去ることのできない大きな傷跡が残っております。

 あの悲劇を繰り返さぬよう、日本各地の防災体制を整えることによってその被害をできるだけ食いとめたいとの教訓から、地震防災対策特別措置法は、平成七年六月、災害対策特別委員会提出による法律として制定されたのであります。

 本法は、地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護し、社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的としております。そのために、地震防災緊急事業五箇年計画の作成及びこれに基づく事業に係る国の財政上の特別措置について定めるとともに、地震に関する調査研究の推進のための体制の整備等について定めております。

 本案は、この地震防災対策特別措置法に基づく各都道府県の地震防災緊急事業五箇年計画の実施状況が、昨今の厳しい財政事情等によりその進捗率が低い状況にある一方、鳥取県西部地震を初めとする現下の頻発する国内外の地震災害の発生状況をかんがみ、国民の生命、身体及び財産を震災から守るため、地震防災緊急事業に係る国の負担または補助の特例等の措置を平成十八年三月三十一日までとするとともに、その他所要の規定の整備を行おうとするものであります。

 この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 本案は、本日の災害対策特別委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ速やかに御可決くださいますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び農業者年金基金法の一部を改正する法律案(筒井信隆君外二名提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び筒井信隆君外二名提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。農林水産大臣谷津義男君。

    〔国務大臣谷津義男君登壇〕

国務大臣(谷津義男君) 農業者年金基金法の一部を改正する法律案の趣旨につきまして、御説明申し上げます。

 農業者年金制度は、昭和四十六年一月に発足して以来、経営移譲年金等の給付を行うことにより、専業的農業者の老後生活の安定とともに、適期の経営移譲を通じた農業経営の近代化と農地保有の合理化の促進に寄与してまいりました。

 他方、農村における高齢化が著しく進展していることにかんがみ、経営移譲を通じて農業経営の若返りを促進するよりも、中高年齢者を含めた幅広い農業者を確保することが重要となっております。

 また、現行制度においては、加入者数に対する受給者数の割合が高まり、今後、受給者を支える加入者の負担が著しく大きくなることが見通されております。

 このような最近の農業を取り巻く情勢の変化、年金財政の現状に対応して、農業者年金制度を農業者の確保に資するものに改めるとともに、現行制度の受給者等に係る年金給付について適正化措置を講じた上で、その費用を国庫で負担する等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、目的規定の改正であります。

 農業者年金基金の目的を、農業者の老齢について必要な年金等の給付の事業を行うことにより、その老後の生活の安定及び福祉の向上を図るとともに、農業者の確保に資することに改めることとしております。

 第二に、加入要件の変更であります。

 農業者を幅広く確保する観点から、農業経営者のみならず、農業に従事する者にも加入資格を認めることとするとともに、農業者からの申し出に基づく任意加入制とすることとしております。

 第三に、財政方式の変更であります。

 加入者数等に左右されにくい安定した年金とするため、年金給付に必要な費用をその時々の現役世代の保険料で賄う賦課方式から、将来の年金給付に必要な原資をあらかじめ積み立てておく積立方式に改めることとしております。

 第四に、農業者老齢年金の支給要件の変更であります。

 農業者老齢年金については、保険料納付済み期間を有する者が原則として六十五歳に達したときに支給することとしております。

 第五に、特例付加年金の創設であります。

 効率的かつ安定的な農業経営を担うべき者として、長期間農業に従事する加入者について、通常の保険料の下限額を下回る額の特例保険料の納付を認めることとします。一方、国庫は、毎年度、農業者年金基金に対し、通常の保険料の下限額と特例保険料の差額を補助し、農業者年金基金は、この国庫から補助された額を積み立て、特例保険料を納付した者に特例付加年金として支給することとしております。

 第六に、制度の変更に伴う経過措置であります。

 財政方式の変更に伴い、受給者等に係る年金給付について適正化措置を講じ、具体的には、受給者について平均九・八%の年金額の引き下げを行うとともに、加入者について、いかなる世代においても掛け損防止が図られるよう措置することとします。その上で、現行制度に関する給付の財源を国庫で負担することとしております。

 また、現行制度が継続したとすれば年金の受給資格を得たであろう現行制度の加入者に対し、その者の選択により、年金給付にかえて、納付済み保険料総額の八割に相当する額を特例脱退一時金として支給することとしております。

 以上、農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 提出者筒井信隆君。

    〔筒井信隆君登壇〕

筒井信隆君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました農業者年金基金法の一部を改正する法律案について、なぜ政府案に反対をして対案を提出しているのか、その趣旨と主な内容について御説明を申し上げます。

 農業者年金は、担い手の若返りと規模の拡大を政策目的として創設をされました。しかし、担い手は、若返りするどころか、逆に大幅に高齢化をいたしました。経営規模もほとんど拡大をしておりません。今まで二兆円余りの税金を使いながら、そしてこれから三兆六千億円の国の債務を負いながら政策誘導に失敗した、この政治的な責任は極めて大きい、こう言わざるを得ません。そもそも年金制度による政策誘導には無理があった、こうも言わざるを得ません。

 農業者年金の財政は早い段階から破綻をいたしました。平成三年から経営移譲年金のすべてを国庫補助に依存する、支給年金額の五割以上を国庫補助に依存せざるを得ない、こういう状況が続いてまいりました。

 この直接の原因は、加入者が三十万人弱なのに受給者が七十五万人もいる、こういう状況にございます。政府の加入者見込みが余りにもいいかげん過ぎたわけでございます。例えば、平成七年の財政再計算において、平成十一年度新規加入者を一万四千人と見込んでおりました。しかし、実績は千六百人にすぎませんでした。

 そして、規模拡大という政策目的が実現すればするほど農地が集中して農業従事者は減少しますから、加入者、保険料の支払い者が減って、財政破綻を招くことになります。規模拡大という政策目的と農業者年金制度は初めから本質的な矛盾を内在していた、こうも言わざるを得ません。

 このように、財政的には破綻をして、政策誘導にも失敗したのに、また政府は新たな政策年金制度を提案しております。政策目的を担い手の確保に今度は変更いたしました。しかし、年金制度によっては政策誘導はできない、無理がある、これは既に証明済みではないでしょうか。

 新しい積立方式の提案をしております。しかし、積立方式ですから、運用によっては元本割れのおそれがございます。これをきちんと説明した上で募集をしなければなりません。しかし、現在の公的年金への不信、農業従事者の減少の中で、元本割れの危険性を説明したならば、多くの加入者はほとんど見込めません。

 そして、保険料月二万円程度のうちの二割から五割を、十年から二十年間、国庫助成するとも提案をしております。年百四十四億円に上るこの国庫助成、費用対効果を考えてもやめるべきでございます。

 現行制度の経過措置として、年金支給額を九・八%カットする、脱退一時金を二〇%カットする、これも提案をしております。既に年金をもらっている人を含めて、支給額をカットするというのは初めてのことでございます。(発言する者あり)これは、今やじにありましたように、政府の約束違反でもありますし、憲法二十九条、財産権の侵害にも当たります。

 政府は、憲法違反ではない、財産権の侵害に当たらない、こう言って、その最大の根拠として昭和五十三年の最高裁判所の判決を挙げております。しかし、その判例は、当初の予想をはるかに超える著しい経済的な、社会的な事情の変化があって、当初の約束どおり支給したならば極めて不合理、不適正になる、こういう事情がある場合のみ当初の約束を変更してもいい、こう認定しているものでございます。

 今度の農業者年金の場合には、そういう事情は全くございません。政府の提案が違憲、違法であることははっきりしております。このような提案は直ちに撤回すべきでございます。

 だから、私たちは、積立方式の新しい年金制度は創設しない、こう提案をしております。

 現在、みどり年金という国民年金基金がございます。このみどり年金を普及、定着させて、それと全国民共通の基礎年金との二階建て体制にすべきでございます。

 現行制度は平成十四年の一月一日をもって凍結をして、現行加入者からの保険料の徴収も新規加入も停止をして、今までの保険料支払いに対応した年金支給業務だけを存続させます。年金のカットもしない、九・八%のカットもしない、脱退一時金二〇%のカットもしない、政府の約束は一〇〇%約束どおり支給する、これを提案しております。

 担い手の確保という政策目的は、別の政策で実現すべきでございます。

 現在、なぜ農業経営の担い手の確保がなかなかできないのか、最大の原因は減反にございます。全農地の三割以上、百万ヘクタールを超える減反を事実上強制しているから、なかなか担い手の確保ができないわけでございます。この減反を直ちにやめるべきでございます。

 しかし、同時に、もちろん減反をやめれば米の値段が大幅に下がり、農家の所得も下がります。だから、本格的な、そして循環型農業経営を優遇した所得補償政策を導入すべきでございます。この所得補償の財源は、現在三兆四千億円になる農林省予算の中で賄うことができます。現在、減反補助や稲作経営安定対策で年間三千億円を使っております。WTO農業交渉の中で削減を要求されている農業保護助成額が七千六百億円ございます。この積立方式を創設しなければ年百四十四億円の予算が浮いてまいります。ちなみに、ことしから始まりました中山間地の所得補償、年七百億円、そのうち三百三十億円が国庫負担分でございます。

 もちろんアメリカのまねをする必要はありませんが、アメリカも減反、つまり生産調整をやめて、本格的な所得補償政策を導入しました。現在、農家の所得の三割から五割は所得補償によるものでございます。

 このように、所得補償を導入しても、もちろん減反をやめれば大量の余剰米が出てくることは確実でございましょう。しかし、現在、開発途上国を中心に、八億人以上の飢餓人口、栄養不足人口が存在をしております。その上に、自然災害や経済危機により、大量の食糧援助の需要がございます。この食糧援助の需要にいつでも直ちに対応できるように、本格的な食糧援助体制、国際備蓄の体制を創設すべきでございます。ODA予算による食糧援助体制、国際備蓄の制度、これも提案をするところでございます。

 私たちは、この農業者年金の改正、二段階で提案をしております。第一段階目は、現行法律の附則に施行法の制定と制定期日を入れて改正する、第二段階目は、平成十四年の一月一日までに改正法を制定する、こういう二段階でございます。

 ぜひ、慎重審議の上、速やかに可決されんことをお願い申し上げまして、私の趣旨説明とさせていただきます。(拍手)

     ――――◇―――――

 農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び農業者年金基金法の一部を改正する法律案(筒井信隆君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。古賀一成君。

    〔古賀一成君登壇〕

古賀一成君 民主党の古賀一成でございます。

 ただいま議題となりました農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、政府案及び民主党提出の改正案について質問をいたします。

 まず、農林水産大臣に、これまでの農業者年金の破綻についての基本的認識をお伺いいたします。

 今、日本は、社会経済、行財政のあらゆるところで破綻や危機に立ち至っております。政治が次の時代へ向けて政策転換の方向を示し、行政が新たな政策体系を構築すべき時代にありながら、官主導と族政治に埋没し、身内の甘えとばらまき、あるいは先送りが横行し、その結果、人類史上まれなると言っても過言ではない巨大な長期債務六百六十六兆円を後世に残したのであります。

 この際申し上げますが、長期債務はこの表に出ました六百六十六兆円だけではございません。かつての国鉄債務のように責任の所在がはっきりしないまま存在している借金、あるいは、いずれ赤字国債で処理し、子孫へのツケ回しに化けなければならない赤字というものが、あちこちの行政分野に存在しているのであります。地方交付税特別会計の四十二・五兆円の借入金しかりであります。不良機関へ投入された財投資金等も同様であります。

 本日問題となっております農業者年金も、予想された破綻がついに現実化し、将来三・六兆円の赤字国債上乗せ、すなわち、後世への負担転嫁を余儀なくするものであります。

 さて、これまでの農業者年金制度は、二階建て部分に国庫補助が入っている唯一の制度でございました。しかも、経営移譲年金というこの二階建て部分は、全額国庫という極めて恵まれた制度として運用されてきたのであります。これまで投入されてきた政策補助は、先ほど民主党の方の提案者からございましたように、一・八兆円に上っております。そして、その上に先ほど申し上げました三・六兆円の後年度負担を残したのであります。

 国庫補助の論拠、それは何か。それは、この制度は、老後の生活の安定を図るだけでなく、農業経営の近代化や農地保有の合理化も図る、いわゆる農業構造の改善政策である、そういう点にありました。しかし、世代交代や若い就農者の確保あるいは経営規模の拡大あるいは農地細分化の防止という構造改善は、本当に進んだのでありましょうか。

 そこで、農林水産大臣にお伺いをいたします。農業者年金の破綻について、根本原因と反省すべき点をどう認識しておられるか、この際、真摯なる答弁をいただきたいのであります。

 次に、新しい積立方式による年金制度の見通しについて伺います。

 今回の改正案は、政策目的から構造改革を外し、担い手の確保に目的を絞った積立方式による年金制度に衣がえをするというものであります。この点はすっきりしたと思いますが、問題は、このような農業をめぐる環境、農政全体に対する不信、年金に対する不安の中で、果たして積立方式による新しい年金制度が本当に機能するのかということでございます。

 現行制度は、強制加入でありながら未加入が多かったのです。新制度は任意加入です。私は、加入者の大幅な見込み違い等によって再び新しい年金制度が行き詰まるのではないかと危惧します。政府は新しい年金制度の加入者をどのように見込んでいるのか、その論拠はどういうものか、説明を求めたいと思います。

 次に、財政再試算の見込み違いと制度改正のおくれについて伺います。

 私は、この破綻はもっと以前から予測されていたにもかかわらず、五年ごとの財政再試算をやりくりし、対応を先送りしてきたのではないかと指摘せざるを得ません。再試算において、新規加入者を平成十一年度は一万四千人と見込んでいたのに、その実績はわずか千六百九人であります。惨たんたる実績と言わざるを得ません。また、制度存立の重要条件である保険料収納率、経営移譲率あるいは運用利回りも、すべて制度維持の根幹にかかわるものでありますが、見込みがすべて狂ったのであります。

 私は、平成元年前後には破綻は不可避と判断できたのではないか、こう判断しますが、なぜここまで放置してきたのでありましょうか。今後の年金政策の教訓とすべきものでございまして、その理由について農林水産大臣の責任ある説明を願います。

 さて、法案の具体的問題に移りたいと思います。

 まず、今回の改正で最大の問題とされる、既に裁定を受けた者に対する受給額のカットの問題についてであります。

 今回の政府案は、これまでの賦課方式をやめ、来年一月より積立方式に年金を変える、そして、これまでの年金受給者については、受給額を平均九・八%カットするというものであります。

 本件について、民主党は、二月八日、鉢呂吉雄議員より九点に及ぶ質問主意書を発したところでありますが、それに対する回答は必ずしも明快なものではありませんでした。ここで改めて確認しますが、政府が設計し、農業者が保険料を営々として納付し、かつ政府が運用してきた年金制度について、事後に法律を改正し、既に裁定を見た、権利とも言っていい受給金額を減額できるのでありましょうか。憲法が保障する財産権の侵害に当たるのではないでしょうか。当たらないとすれば、その論拠は何でしょうか。お伺いをいたします。極めて重要な論点であろうと思います。

 次に、政府答弁書は、受給額減額を許す一つの根拠として、公的年金制度における既裁定者と保険者の権利義務は、契約により設定されるものではなく、法律に基づいて直接設定されるものと回答しております。厚生年金、国民年金等、他の公的年金制度についても同様の考えに立たれるのか、そして今後、既裁定の年金額を減額するということがあり得るのか、所管大臣である厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 次に、質問主意書に対する政府答弁書が、既裁定の年金をカットすることの合憲性の根拠として昭和五十三年の最高裁大法廷判決を引用していることについて、この際、疑問を呈したいと思います。結論から言えば、この大法廷判決は、既裁定の年金減額の根拠となり得ないと我々は判断をいたします。

 詳しくは申し上げませんが、この判決は、いわゆる買収農地の政府売り払いの対価を、当初、当時買った時価相当額で旧地主に売り戻すという法律であったのを、事後の法律によりまして時価相当の七掛けで売り払うという法律改正をした、その合憲性が問われたものでありますが、私は、土地の異常な値上がりによる不労所得の判例を、この長年にわたって保険料を払ってきた年金受給という権利問題と同列視して合憲の根拠としていることに対して、大変な疑問を呈さざるを得ません。

 農林水産大臣に改めてお聞きしますけれども、以上の私の指摘を受けても、さきの最高裁大法廷判決が本当に理論的根拠になるとお考えでしょうか。答弁を願います。

 また、民主党の提案者にもお聞きしますけれども、憲法の財産権保護や年金政策のあり方をどのように判断されて、民主党案は、年金のカットをせず、既裁定の年金を全額支給としておられますけれども、どのように判断されてそのような措置をとられたのでしょうか。お伺いをいたします。

 引き続き、民主党提案の改正案についても、対案についても提案者に質問します。

 民主党は、既裁定の年金は約束どおり全額支給とし、新たな年金制度は設けず、みどり年金の充実と移行で措置すると理解されますが、既裁定の受給者は期待権が守られます、しかしながら、一方で、これから農業をやろうとする若手の人たちには制度がなくなり、老後の不安が残るじゃないか、こういう指摘があります。これにどう答えられますか。また、民主党案は、既裁定の年金は全額支給するとしており、国家財政の負担が政府案よりも過大になるのではないかとの懸念も指摘されておりますが、国の財政負担の点についての見通しを伺います。

 以上、農業者年金制度の改正について主な点だけを質問しましたけれども、この際、農政全般について指摘したいと思います。

 土地改良を進め、負担金を一方で徴収しながら、四割近い減反政策を強いる。法人化や規模拡大という農政の一つの目標も、一方で農協政策や農業者年金制度とは相入れない。農業は国の大本である、自給率向上と言いながら、農業に光を与える総合的なビジョンが提示されていない。こうした一貫性を欠く、縦割りの事業を束ねたような農政、あるいは農業の核心部分に展望が見えない農政こそが、後継者を減らし、加入者を減らし、結果として農業者年金の破綻をもたらしたのではないでしょうか。

 今、大臣が着任早々苦労しておられます有明海の大混乱、これも、環境や生態の論理を軽んじ、事業最優先で総合的検討を怠ってきた結末ではないでしょうか。防潮堤防の開門を迫る福岡や佐賀や熊本の漁民の皆さんも、そして、一方で開門阻止を叫ぶ長崎の皆さんも、ともに私はその犠牲者のように思えてならないのであります。

 行政改革の大きな目的というものは、政治主導にあったはずであります。今こそ、農業再生や有明海再生へ向けて、縦割りを超えた政治の強力なリーダーシップが必要であります。

 この際、諫早湾干拓堤防の開門問題にどう対処しようとしておられるのかも含め、農林水産大臣のリーダーシップの発揮についての決意をここでお伺いしたいのであります。

 最後に申し上げたいと思います。

 私は、農業者年金制度の破綻は、見込み違いだけではなく、そもそも設計ミスにあったのではないかと今考えております。年金で老人の引退を促すような弱々しい構造改善政策というものは見事に破綻したというべきではないでしょうか。構造改革は、年金政策ではなく、これならやれると農家や若者がやる気を起こす大きな農政ビジョンで推進すべきものであると私は思います。

 その関連で、余った時間を生かして、一つ私は提言をさせていただきたいと思います。私は、この際、アジア食糧安全保障構想ともいうべき一つの案を提案いたしたいと思います。

 いずれ起こる食料危機に当たって、飢餓に悩む国々を救うアジア食糧安全保障基地というものを寒冷地に建設し、余剰米を長期的に保存のきくもみで貯蔵する、この構想を実現するために、減反政策を撤廃するという構想であります。政府買い上げのコストは当然大きいものがありますが、減反政策に伴う転作補助金、稲作経営安定資金等もろもろの今かかっておるコスト、そしてこの構想が生み出す国際貢献や安全保障上の効果、そして何よりも農業にやりがいと誇りがよみがえることを考えれば、検討すべき構想と確信をいたしております。

 私は、縦割りと小さな族政治を超えた、総合的でダイナミックな構想こそが日本の農業を再生させると確信するものですが、農林水産大臣はこの構想をどう評価されるのでありましょうか。政治家らしい御答弁を期待し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣谷津義男君登壇〕

国務大臣(谷津義男君) 古賀議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、農業者年金の破綻の根本原因と反省すべき点について、この認識についてのお尋ねでございます。

 農林水産省は、農業者年金制度を設計、運営する立場にあるため、不断に農業者年金をめぐる財政状況等について整理、点検をし、必要な制度改善を行いながら、健全な制度運営を図っていく責務があると考えております。

 このため、これまでにも、五年ごとの財政再計算等を契機に、その置かれた農政上、年金財政上の課題のもとで、加入促進、給付体系の見直し、保険料引き上げ等で、できる限りの運営改善を図るための制度改正を行ってきており、その過程では国会での御審議をお願いしてきたところでございます。

 しかしながら、新規加入者の激減、保険料収納率の低下等が続き、平成十二年の財政再計算の結果を見ると、過去行ってきたような現行制度の継続を前提とした制度改善では年金財政の破綻を免れることはあり得ないと認識するに至ったものであります。

 このような経緯の中で、農林水産省がその置かれた状況のもとでできる限りの制度改善努力をしてきたとしても、結果的に見れば、農業構造の変化や年金加入者数等の見通しが十分でなかった面があったと認識せざるを得ないと考えております。

 今般、国民の皆様や加入者、受給者の方々に負担をおかけし、その御協力を得る形で抜本的改革を進めざるを得ない事態に至ったことにつきましては、率直に申し上げて、申しわけなく思っております。

 また、新しい農業者年金制度の加入者数の見込みについてのお尋ねでございます。

 新しい農業者年金制度は、我が国農業の担い手を幅広く確保する観点から、加入資格を緩和し、農地の権利名義を有しなくとも農業に従事する者であれば加入できることとしております。

 このため、新制度移行後の当面の加入者数については、現行制度からの移行予定者として、保険料継続的支払い者等の約二十五万人に、新制度に新たに加入する者として、現行制度未加入認定農業者等の約四万人を加え、全体で約三十万人を見込んでおります。

 今後、新制度の基本的な仕組み、メリット等を農業者の方々に御理解いただけるよう制度の普及に努めてまいります。

 続いて、農業者年金の破綻は予測可能であったのに放置してきたとのお尋ねがございました。

 先ほど御答弁申し上げましたとおり、農林水産省は、これまでにも、五年ごとの財政再計算等を契機に、その置かれた農政上、年金財政上の課題のもとで、加入促進、給付体系の見直し、保険料の引き上げ等、できる限りの運営改善を図るための制度改正を行ってきたところであります。その過程で国会にも御審議をお願いしたところでもあり、関係団体による運営改善努力とも相まって、収支均衡が図られるものと見通していたところであります。

 しかしながら、新規加入者の激減、保険料収納率の低下等が続き、このままでは年金財政の破綻を免れないと認識するに至ったところでございます。

 このため、新しい農業者年金制度においては、これまでの反省に立って、長期的に安定した制度となるよう、財政方式を賦課方式から積立方式に変更するとともに、幅広い農業者の確保に資するよう、加入資格を緩和し、農地の権利名義を有する者から農業に従事する者であればだれでも加入できることとし、こうした改善措置を講ずることにより、二度と同じ轍を踏まぬよう努力する考えであります。

 次に、既に裁定を見た受給金額を減額するのは憲法が保障する財産権の侵害に当たるのではないかとのお尋ねがございました。

 一般に、財産権は基本的人権として保障されていますが、公共の福祉を実現しあるいは維持するために必要がある場合には、法律により合理的な範囲内で財産権に制約を加えることは憲法上許容されるという基本的考え方が、累次にわたる最高裁判所の判例により示されております。

 このうち、昭和五十三年七月十二日の最高裁判所大法廷判決は、財産権の事後的な制約について、原則的な基準を示しております。

 すなわち、この判決では、法律で一たん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもって違憲の立法ということができず、その場合、当該変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは、一たん定められた法律に基づく財産権の性質や、その内容を変更する程度、さらには、これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって判断すべき旨、判示しております。

 今回の年金額の引き下げ措置について、この最高裁判決で示された基準に沿って検討しますと、年金額引き下げの対象となる年金は経営移譲年金のみとしていますが、これは、老後の生活の安定への寄与のみならず、農業経営の近代化や農地保有の合理化といった農業上の政策目的の達成という特別の性格を有し、その財源を専ら国庫助成で賄っているものであること、年金額引き下げの水準は、月額二千円から四千円で、高齢夫婦世帯の消費支出の一%程度にとどまり、農業者の老後の生活の安定が直ちに脅かされるものではないこと、年金額引き下げ措置を講じることによって、加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅引き上げや、国民一般の負担のさらなる増加を避けることができることから、今回の引き下げ措置は、財産権に対する合理的な制約として、憲法第二十九条に照らしても許容されるものと考えております。

 次に、既裁定の年金減額の論拠として、昭和五十三年最高裁大法廷判決を引用することについてのお尋ねがございました。

 昭和五十三年七月十二日の最高裁判決は、国が買収により取得した農地を、自作農の創設等の目的に供しなくなり、もとの所有者に売り戻す場合の対価について、農地法上は買収の対価相当額となっていたものを事後の特別措置法において時価の七割に改めたことが憲法第二十九条で保障する財産権の侵害に当たるかどうかが争われた事案に関するものであります。

 今回の農業者年金の既裁定年金額の引き下げ措置にかかわる財産権は、この最高裁判決で争われた事案における財産権と具体的な内容等は異なるものの、この判決は、財産権を事後に変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるかどうかという論点の原則的な判断基準を示したものであることから、この基準自体は今回の措置にも適用できるものと考えております。

 また、農政全般に関するお尋ねとして、農業再生に向けた政治のリーダーシップについてのお尋ねがありました。

 我が国農業につきましては、経済社会情勢の著しい変化等の中で、食料自給率の低下、農業就業人口の減少と高齢化の急速な進展といった問題が生じているところであります。

 こうした状況を踏まえ、今後の我が国農政の基本理念を明確に示すため、平成十一年七月に食料・農業・農村基本法が新たに制定され、さらに、翌年三月には、新基本法の理念を具体化するため、今後十年間の農政のビジョンともいうべき基本計画を策定したところであります。

 また、本年一月の中央省庁等改革において、新基本法に対応して、食料政策、農業政策及び農村政策のそれぞれを効率的に推進し得るよう、農林水産省の内部部局の抜本的な再編を行い、大臣、副大臣及び大臣政務官の指揮のもと、食料・農業・農村政策を効率的かつ強力に推進する体制が整備されたところでございます。

 このような新たな政策理念、組織体制のもと、私みずからが先頭に立って、二十一世紀における我が国農業の持続的な発展と農村の振興を通じ、国民に対する食料の安定供給の確保と多面的機能の発揮が十分に図られるよう、食料自給率の向上に向けた取り組みを初め、各種の施策を総合的かつ積極的に推進していく考えであります。

 あわせて、有明海のノリの不作に関連して、諫早湾干拓堤防の開門についてのお尋ねがございました。

 今般の有明海のノリの不作の原因につきましては、現時点では明らかではなく、まず予断を持たないで徹底的に調査を行うよう事務方に指示したところであります。私としては、調査のために設置した第三者委員会の結論を最大限に尊重して対応してまいりたいと考えております。

 最後に、減反政策を撤廃して余剰米をもみで貯蔵する、アジア食糧安全保障構想についてのお尋ねがございました。

 米の生産調整は、需要に応じた計画的生産を行い、米の価格の安定を図り、稲作経営の安定を実現していく上で必要な措置でありまして、引き続き推進していかなければならないものと考えております。

 議員御指摘のアジア食糧安全保障基地構想は、多額の費用を要すること、我が国稲作農業の構造調整にはつながらない等の問題点があるのではないかと思います。

 しかしながら、国際的な食糧安全保障の立場からは検討すべき課題であり、昨年決定したWTO農業交渉日本提案におきましても、開発途上国の食糧安全保障上の要請に対応する観点から、二国間援助のスキームを補完する手法として国際備蓄の枠組みを検討すべきであるということを提案しているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 厚生年金、国民年金等の既裁定者と保険者の権利義務につきましては、厚生年金保険法、国民年金法等の年金各法の規定に基づき設定されているものでございます。

 厚生年金、国民年金等につきましては、社会保険方式のもとで、現役世代が納付する保険料財源を基本として給付に必要な費用を賄う世代間扶養の仕組みで運営しており、成熟度も農業者年金のように著しく高い状況ではありません。

 農業者年金は、農業上の政策目的を有し、給付に必要な財源を専ら国庫助成で賄っており、その成熟度も著しく高い状況にあります。厚生年金、国民年金とは置かれている状況が著しく異なっているところでありまして、既裁定年金額の取り扱いにつきましては、このような状況の違いを十分念頭に置いて考える必要があると考えます。

 厚生年金、国民年金を守り抜く決意でありますことを申し述べて、答弁といたします。(拍手)

    〔津川祥吾君登壇〕

津川祥吾君 民主党の津川祥吾でございます。

 ただいまの古賀議員からの御質問に対し、私の方から二点についてお答え申し上げます。

 まず、既裁定の年金をカットすることの、憲法で保障する財産権との関連についてお尋ねがございました。

 この問題は、政府の立場からいえば、国が法律によって一定額の年金支給を約束したが、財政的理由から、約束を破って一部カットすることも許されるのかどうかという問題であり、逆に国民の立場からいえば、国に対する年金請求権という財産権が国の事情によってカットされてしまうのは、財産権を保障する憲法に違反するのではないかという問題でございます。

 このような問題に関連しまして、ただいま農水大臣からも例に挙げられましたとおり、昭和五十三年の最高裁判決は、私どもの趣旨説明でも申し上げましたとおりでございますが、当初の予想をはるかに超える著しい事情の変化があり、かつ、当初の約束どおり履行したならば極めて不合理、不適正となるという事情がある場合にのみ許されるとしているものでございます。

 しかし、この農業者年金については、財政が厳しくなったという事情の変化は以前から指摘をされてきたことでありますし、予想をはるかに超える事情の変化とは全く言えるものではございません。また、九・八%のカットをしないで一〇〇%の約束を履行した場合、極めて不合理、不適正になるかといえば、そういう事情が生まれると言われるものでもございません。

 したがいまして、この昭和五十三年の最高裁判決は、古賀議員の言われるとおり、政府案の合憲性の根拠にならないどころか、逆に違憲性の根拠となる判決と判断するところでございます。

 しかも、既裁定者の年金請求権が、具体的な財産権となっており、単に将来発生することが予定される抽象的な期待権としての財産権とは意味合いが大きく異なります。そのような具体的な財産権を侵害する場合には、より厳しい条件がクリアされなければなりません。

 民主党は、政策的に既裁定の年金額を全額支給するべきであると考えて提出をしております。そうしなければ憲法違反になるという法律解釈上の問題が、民主党・無所属クラブ提案のもう一つの根拠でございます。

 次に、民主党案は政府案より国家財政の負担が過大になるのではないかという御質問に対しお答えいたします。

 御指摘のとおり、民主党・無所属クラブの案では、既裁定の年金について今後も全額支給することとしておりますが、政府案では、既裁定の年金を九・八%カットすることとしており、その差額は約三千億円と試算されております。

 また、この農業者年金制度からの脱退一時金について、政府案では、年金加入者がこれまで納めてきた支払い済み保険料の八〇%相当額としておりますが、民主党・無所属クラブの案では、支払い済み保険料の一〇〇%に相当する額としております。

 しかし、この脱退一時金については、私どもの案では、未裁定者の方々が他の年金基金制度へ移行することを考慮しており、多くの方が他の制度に移行することによりまして、現在の未裁定者の方々に対して将来支払われると想定される国家財政負担による年金支給額が減少することになります。

 さらに、政府案では、新たな農業者年金基金の政策支援として、年間百四十四億円の支出を予定しております。つまり、政府案にあります新たな制度では、二十年で約三千億円、現在二十歳の方が現在の平均寿命であります八十歳までこの制度を利用すると仮定すれば、その間の国家財政負担総額は九千億円にも達するものでございます。したがいまして、長期的な視点に立てば、民主党・無所属クラブの案の方が国家負担は大幅に少なくなると判断するものでございます。

 私は、民主党最年少の二十九歳の議員でございます。私と同世代であります二十代、三十代の若者の多くは、自分の将来の年金に対して強い不安感を抱いております。また、現在、若者が年金保険料を納めないという年金の空洞化が問題になっておりますが、国あるいは年金制度に対する信用の低下は、その空洞化を加速させ、年金制度全体に対して大きなマイナスとなり、この農業者年金と同様の問題が他の制度においても発生する可能性は否定できません。

 昨年まで、国が保障しているから安全だと言って農家の方々を勧誘しておきながら、今になって、農業構造が大きく変化したとか担い手が不足しているなど、以前から指摘されてきた事由を理由に既裁定者に支払われる年金を約一割カットするということは、政府の失政の責任を受給者個人に負わせるものであり、国家に対する信用が低下することは避けられません。

 仮に、やむを得ず年金支給額を減額するとしても、例えば、全く想定できなかった急激な社会情勢の変化等、相当の正当性、妥当性がなければならないでしょうが、今回の問題に関してはそれが認められません。

 さらに、事実上破綻した農業者年金制度は政策年金であり、今後も新たな制度で政策年金として維持し続けることは大きなリスクを伴うことにもなり、今後発生する国庫負担額は、先ほど指摘した金額でとどまるとさえ言い切れないわけであります。

 私ども民主党・無所属クラブの当法案は、これまで国が保障してきた部分に関しては今後もその責任を果たした上で、過去の失政を清算し、国に対する国民の信頼を回復させる、また、信頼性の高い年金制度に一本化し、国民の将来に対する不安を払拭するということを目的とするものであり、これらの視点から見ても、結果的には国家財政の負担額は少なくなることにつながると判断しているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔三村申吾君登壇〕

三村申吾君 無所属クラブの三村申吾でございます。

 古賀先生御質問の、担い手の部分につきましてお答えいたします。

 さて、私は青森の小さな町で町長をいたしておりました。この農業者年金基金につきましては、加入者激減を感じていたにもかかわらず、私は、これこれもらえるから、得だからちゃんと入れ、入れと督励し、また、させました。したがって、今回、政府案の約一割カット、そして脱退一時金八〇%返還では、自分自身も農業者に約束したことを守れないのであります。

 もはや町長ではないのだからあのときのことは忘れたというのでは、自分にとりましても道理を失うことでありまして、一政治家としてみずからの責任と政治的良心を示すべく、カットなし、一〇〇%返還、みどり基金有効活用の本案提出者に名を連ねた次第でございます。(拍手)

 農家が公的に納めるものには、ざっと、国、県、市町村民税、消費税、国保税、国民年金、改良区の負担金等々あるところに、介護保険料がふえまして、そこに年四万円前後の減額ということになりますと、地方の感覚では、これは大変に大きな額なのでございます。

 加えて、先が見えぬままに引き続く減反、低い米価、MA米の輸入増、転作に協力して一息つけると思った野菜の中国からの輸入急増など、ただでさえ先々の不安ばかりなところに、国会で政治家が決めたのに守んねえのかとなり、ああ、またかと失望感が生じる。この失望感こそ、農業者の元気とその後継者たちを失っていく本当の原因になると強く危惧するのでございます。(拍手)

 民主党・無所属クラブの案では、農業者年金基金の加入者に対しまして、納付済み保険料の一〇〇%に相当する脱退一時金と、保険料納付済み期間を他の年金基金制度に移行する際に組み入れる措置を講ずることといたしております。

 移行先といたしまして御指摘ありましたみどり年金基金は、農業従事者の老後の生活のためにつくられたものであり、政府が今回の改正案で提示したものと同様の積立方式の年金制度でございます。

 私どもの案は、農業者年金基金を清算し、新規の加入者こそ受け付けませんが、既存の農業者のための年金基金制度を活用し、複雑化した制度の整理を図っています。

 従来の農業者年金基金が担っていたところの農業の構造改革、新制度における担い手対策などの政策支援制度もなくなるという御指摘につきましては、年金の手法という形はとりませんが、しかし、例えて言えば、新しい農業経営体系の創設支援や減反の見直し、また、直接補償のような骨太な施策等、政治が一時しのぎではなく本気で農業者に向かい合っていると信じられるような、農業者のやる気を引き出し、活力ある農業を育て、その活力ある農業を見て新たな担い手が集まってくるような政策を提案していきます。

 何とぞ、この旨を御理解いただき、当案に御賛同願いまして、答弁といたします。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十七分散会




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