衆議院

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第32号 平成13年5月25日(金曜日)

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平成十三年五月二十五日(金曜日)

    ―――――――――――――

  平成十三年五月二十五日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 税理士法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 確定給付企業年金法案(内閣提出)

 短期社債等の振替に関する法律案(内閣提出)、株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、参議院送付、税理士法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 税理士法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(綿貫民輔君) 税理士法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 税理士法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました税理士法の一部を改正する法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近の税理士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ、納税者利便の向上に資する、信頼される税理士制度を確立するため、税理士が裁判所において補佐人となる制度を創設すること、税理士試験の受験資格要件を緩和すること、税理士試験の試験科目の免除制度を見直すこと、税理士からの意見聴取制度を拡充すること、税理士法人制度を創設すること等、所要の改正を行うことにしております。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る四月十二日当委員会に付託され、五月二十三日塩川財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、本日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、確定給付企業年金法案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 確定給付企業年金法案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 確定給付企業年金法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 確定給付企業年金法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鈴木俊一君登壇〕

鈴木俊一君 ただいま議題となりました確定給付企業年金法案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。

 本案は、確定給付型の企業年金について、受給権保護等を図る観点から、労使の自主性を尊重しつつ、統一的な枠組みのもとに制度の整備を行おうとするもので、その主な内容は、

 第一に、確定給付企業年金は、事業主が、労使で合意した規約に基づき信託会社、生命保険会社等と年金資金を積み立てる契約を締結するか、または企業年金基金を設立することにより実施すること、

 第二に、加入者の受給権保護等を図る観点から、約束した給付に見合う積立金の積み立てを義務づけるとともに、確定給付企業年金の管理等にかかわる者の責任等の明確化、規約内容の周知、確定給付企業年金の実施状況の加入者への情報開示を行うこと、

 第三に、確定給付企業年金相互や厚生年金基金等との間で移行ができること

等であります。

 本案は、去る四月三日の本会議において趣旨説明が行われ、同日本委員会に付託となり、同月六日坂口厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、五月二十三日参考人から意見を聴取し、本日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六会派共同により、確定給付企業年金を実施する事業主等及び厚生年金基金は、加入者等に対して行う業務の概況についての情報提供を受給者に対しても行うように努める旨の規定を追加する修正案が提出されました。

 討論の後、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 短期社債等の振替に関する法律案(内閣提出)、株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、短期社債等の振替に関する法律案、株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案、地方税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣柳澤伯夫君。

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) ただいま議題となりました短期社債等の振替に関する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、短期社債等の振替に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、短期社債等について、券面を必要としない新たな流通、振替制度を創設するため、所要の法整備を図るものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、企業の短期資金調達手段であるコマーシャルペーパーについて、ペーパーレス化を図るため、これを短期社債として位置づけることとし、必要な商法の特例措置を設けることとしております。

 第二に、この短期社債に係る振替制度を創設することとし、券面の交付による権利移転の場合と同等の流通の保護を実現することとしております。

 第三に、短期社債の振替制度の担い手である振替機関について、監督等に係る所要の規定の整備を行うこととしております。

 第四に、この法律の制定に伴い必要となる関係法律の整備を図ることとしております。

 次に、株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、証券決済制度をより安全で効率性の高いものにしていくため、保管振替機関について所要の法整備を図るものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、証券決済制度の担い手である保管振替機関の組織形態について、資金調達方法の多様化や競争可能性の確保による業務運営の効率化を実現するため、現行の公益法人形態を株式会社形態に改める措置を講ずることとしております。

 第二に、保管振替機関について、監督等に係る所要の規定の整備を図ることとしております。

 以上、短期社債等の振替に関する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 総務大臣片山虎之助君。

    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕

国務大臣(片山虎之助君) 地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、最近の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等の観点から、個人住民税について、長期所有上場株式等の譲渡所得につき特別控除を行う特例措置を講ずるものであります。

 以上が、地方税法の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 財務大臣塩川正十郎君。

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、最近の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等の観点から、個人の長期所有上場株式等に係る少額の譲渡益を非課税とする特例措置を講ずるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 個人が、平成十三年十月一日から平成十五年三月三十一日までの間に、所有期間が一年を超える長期所有上場株式等を譲渡した場合における申告分離課税の適用については、その年分の長期所有上場株式等の譲渡所得の金額から百万円の特別控除を行うこととしております。

 以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 短期社債等の振替に関する法律案(内閣提出)、株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。麻生太郎君。

    〔麻生太郎君登壇〕

麻生太郎君 私は、自由民主党、公明党並びに保守党を代表し、ただいま議題となりました緊急経済対策関連法案に対し、総理大臣並びに関係大臣の御見解を伺いたいと存じます。(拍手)

 日本経済の再生を図る上で、不良債権問題の最終処理、証券市場の構造改革など、各般にわたる我が国経済の高コスト構造是正に取り組むことが不可欠であると存じます。緊急経済対策は、日本経済の再生を実現する上で必要な施策が盛り込まれたものであり、これを着実に実行することが大切であります。さらに、今回の緊急経済対策の実施は、改革断行内閣として位置づけられる小泉内閣が、どのような決意で一連の構造改革を断行しようとしておられるのか、それを明らかにするという意味で、その試金石でもあります。

 緊急経済対策関連法案の今国会提出に当たって、小泉内閣の一連の御尽力を多とします。さらに、法案の早期成立を図り、速やかに施行することが必要であるものと考えております。しかし、今後、緊急経済対策を実際に実施するためには、今回提出された法案だけでなく、さらに取り組むべき課題も多く残されておりますのは御存じのとおりです。

 そこでまず、提出された法案について議論を行う前提として、緊急経済対策をどのように実施しようとしているのかにつきまして、小泉内閣総理大臣の御決意を伺いたいと存じます。

 次に、本法案の具体的な内容について伺います。

 まず初めに、短期社債等の振替に関する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いをさせていただきます。

 両法案は、証券市場の決済システムの効率化、市場の国際競争力の向上を図ろうとするものとして支持いたしたいと存じます。

 しかしながら、両法案では、緊急経済対策に盛り込まれた事項のうち、ほんの一部しか実現が図られておりません。例えば、緊急経済対策に盛り込まれた国債、社債のペーパーレス化実現のための法制度の整備は、我が国証券市場の国際競争力を高めていくためにも不可欠なものだと存じます。このように国債、社債も含む統一的証券決済制度の創設に向けて、今後どのように取り組んでいこうとしておられるのか、柳澤金融担当大臣にお伺いをさせていただきます。

 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案についてもお伺いをいたします。

 両法案は、株式譲渡所得に係る特別控除制度により、個人投資家を証券市場に呼び込もうとするものであります。同時に、個人投資家の長期安定的な株式保有を通じて、証券市場の活性化、安定化に寄与するものであり、有益な改正であると評価をいたします。

 しかしながら、証券市場の活性化策というものは、この法改正にとどまるものであってはなりません。例えば、株式譲渡益の申告課税における税率二六%の扱いや譲渡損失の繰越損を認める問題など、いまだ手のついていない事項も多くあり、この点を与党としては検討を引き続き行おうといたしております。

 政府として、今後どのようなスケジュールで、証券市場等活性化対策中間報告に盛り込まれたような株式投資促進税制の検討を行い、法案化をしていこうと考えておられるのか、財務大臣にお伺いをいたします。

 次に、緊急経済対策に盛り込まれた項目の中で最も重要なものとして、銀行の株式取得に係る制限問題があります。

 銀行の株式取得を制限し、銀行が保有する株式の価格変動によるリスクを銀行が管理できる範囲内にとどめるものとする。これにより、我が国金融機関の健全性、安定性が確保されることになります。一方、これにあわせ、金融機関からの株式の放出が株式市場に不測の影響を与えないように、一時的な株式買い取りスキームの創設が緊急経済対策に盛り込まれております。

 これまで、我が国経済において、銀行の株式保有はそれなりの機能を発揮してまいりました。銀行の株式保有を制限することは金融再生上、必要な政策ではありますが、本問題は、我が国企業のコーポレートガバナンスの構造を大きく変化させる可能性があり、綿密な検討が不可欠であろうと存じます。

 その意味では、銀行の株式買い取りスキームの創設につきましては引き続き検討がされており、必要な法案も今国会へはいまだ提出されていないことは理解するところではありますが、しかし、緊急経済対策の策定後、金融審議会を初めとする一連のところでどのように検討が進捗しているのか、また、どのようなスケジュールで今後、法案化を図ろうとしておられるのかにつきまして、金融担当大臣にお伺いをいたします。

 次に、議員立法によって既に国会に提出されております、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案に関連してお伺いをさせていただきます。

 本法案により、健全な銀行の所有する不良債権について、整理回収機構による買い取り業務が延長されることになり、これは不良債権の流動化に大きく寄与するものであると評価をいたします。緊急経済対策においては、これにとどまらず、整理回収機構の機能が一層効果的に発揮されると承知をいたします。これらについては、今後どのようなスケジュールで具体化をしていこうとしておられるのか、柳澤金融担当大臣にお伺いをいたします。

 最後に、財務大臣に重ねて伺います。

 同じく議員立法として提出されております、債権管理回収に関する特別措置法の一部を改正する法律案であります。

 金融機関の不良債権の最終処理を進めていくためには、金融機関のバランスシートからオフバランス化した不良債権を流動化させることが不可欠であります。今般の法改正により、サービサーの取り扱える債権の範囲が拡大され、不良債権の流動化が大きく進むことが期待されております。一方、小泉内閣総理大臣も、二年から三年以内に不良債権の最終処理を行うとしておられますが、これは、現在の金融機関の体力を考えるとき、それほど容易なことではありません。政府も税制等により金融機関に対し支援を行うこともあると考えておりますが、この点について財務大臣の御見解を伺います。

 以上、幾つか御質問を申し上げましたが、私も、与党の立場から小泉内閣に協力し、緊急経済対策の実施及び本日提案のあった法律案の早期成立に向けて努力をしてまいりたいと存じます。

 政府の側でも、小泉総理のリーダーシップのもと、緊急経済対策の早急な実施に向け引き続き努力をしていただけますよう、最後に重ねてお願いを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 麻生議員にお答えいたします。

 緊急経済対策についてでございます。

 緊急経済対策は、本格的な景気回復をおくらせている構造問題の根本的な解決に取り組むために決定されたものでありまして、小泉内閣の第一の仕事として、速やかに実行に移すこととしております。

 本法案のみならず、既に都市再生本部の立ち上げなど、個々の施策ごとに具体的中身の検討が進んでおり、現在、実施の段階に入りつつあります。引き続き、着実な実施に努めていきたいと思います。

 残余の質問は、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) 株式譲渡益課税についてお尋ねがございました。

 先般、与党三党において取りまとめられました緊急経済対策に係る税制上の措置においては、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度を創設するとともに、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方等につき、引き続き協議の上、早急に結論を得るとされたところであります。

 また、政府税制調査会においては、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方を含め、今後の金融・証券税制のあり方等全般の問題として、新たに小委員会を設置いたしまして、幅広い観点から検討することになっております。

 また、不良債権の処理に伴うところの税制等につきましてお尋ねがございました。

 金融機関が行う債権放棄について、税務上の円滑な対応を図ることとしております。

 さらに、不動産の流動化が不良債権処理の促進に寄与するとの考え方によるものと思いますが、土地の流動化の促進については、都市再生本部等における関連施策の推進状況等を踏んまえ、真に有効かつ適切な税制措置を講じてまいりたいと検討いたしております。

 いずれにいたしましても、税制上の措置については、今後、政府及び与党の税制調査会において、専門的かつ幅広い見地から検討を進めていく予定でございますので、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 麻生議員から、まず、統一的な証券決済制度の創設に向けての今後の取り組みについてお尋ねがございました。

 今回の法案は、短期社債等、つまりペーパーレスCPを対象とする振替制度を構築するものでございますが、今後の対象商品の拡大などのいわば基礎をつくるものだと考えております。今後は、振替機関と投資家との間に仲介機関が介在する場合の法律構成等に係る問題点を解決いたしまして、社債や国債をも対象商品に加えた統一的な証券決済制度を速やかに完成するように目指してまいりたい、このように考えております。

 次に、銀行の株式保有制限と株式買い取りスキームについて御質問がございました。

 銀行の株式保有制限のあり方につきましては、金融システムのみならず、議員御指摘のとおり、株式発行会社のコーポレートガバナンスのあり方等に大きな影響を与えるものでございまして、そういうものとして多面的な検討が必要とされるものでありまして、金融審議会において、四月十三日以降、精力的に御審議をいただきながら、実務的な検討を鋭意行っているところであります。

 また、株式買い取りスキームにつきましては、銀行を不当に優遇することにならないか、市場をゆがめたり市場参加者に悪用されないか、公的支援についてどう考えるのか等の点をあわせ考えながら、必要な検討を鋭意進めているところであります。

 いずれにいたしましても、緊急経済対策にありますとおり、本件につきましては可及的速やかに、と申しますのは、十三年度から有価証券につきまして時価会計制度が導入されるということを念頭に置きまして、そういうものに間に合うように成案を得るように努力をしてまいりたい、このように考えております。

 三つ目の御質問は、緊急経済対策における整理回収機構の機能の一層の効果的な発揮に関するお尋ねでございました。

 整理回収機構の現行業務に加えまして、新たに民間金融機関より不良債権を受託する信託業務、これが開始されることが考えられているわけでございますが、その開始に向けまして、現在、機構におきまして、具体的なスキームや体制整備の検討等を鋭意進めているという現状でございます。

 以上でございます。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 原口一博君。

    〔原口一博君登壇〕

原口一博君 民主党の原口一博でございます。

 民主党・無所属クラブを代表して、総理並びに関係大臣に、今般の関連四法案について御質問させていただきます。(拍手)

 総理は、もともと、この緊急経済対策には批判的なスタンスだったのではないでしょうか。四月にこの対策が発表されたときに、本当に日本は改革をする気があるのか、日本はかつて資本主義の国であったと厳しく批判をされました。今、もう待ったなしの状況です。倒産や不況、そして失業、私たちは、その状況の中でこの審議をしていることをまず強く認識すべきではないかというふうに思います。

 その中で、緊急経済対策関連法案ということでどういうものが出てくるだろうと注視をしておりましたが、出てきたものは、緊急をとりあえずと読みかえ、経済対策を株価対策と読みかえた方がよい、そのような内容でありました。失望を禁じ得ません。どこが緊急なのか。九月の時価会計の導入、来年四月のペイオフ解禁に向けて、このようなことでいいのか、危惧を感じます。

 租税特別措置法をこのような細切れに出してくる、その意義は何なのか。平年で九百億円程度の減収になるというのであれば、補正予算が必要ではないでしょうか。CPについても、保管振替機関が新たな天下り先になるのではないか。

 手元に、財団法人証券保管振替機構の役員報酬というものをいただきました。全く競争がないにもかかわらず、この理事長の報酬は幾らなのか。あるいは専務理事や常務理事の報酬はどうなのか。三千万円を超えるお金をもらっている。同じようなものをつくるというのは、あなたがおっしゃっている構造改革と逆行するのではないですか。

 総裁選でおっしゃった総理のスタンスが後退する、そのことによってあなたの政策が不明確になっている。政策の不透明感が強まっているのです。こういう中で、経済の実態はむしろ悪化しているのではないでしょうか。総理は経済の現下の情勢をどのようにとらえていらっしゃるのか、率直にお答えください。

 二カ月前に、私はワシントンにおりました。ブッシュ新大統領と森前内閣総理大臣の会談がございました。その中で、どんなことが約束されたか。不良債権の最終処理と海外資本の直接投資、このことの推進が約束をされました。共同コミュニケにもはっきり書かれている。総理はこれをどのように進めるおつもりなんですか。

 現在、証券市場がまだ未整備で、証券市場というのは損失を分配するシステムであると私は考えていますが、そのシステムがまだまだ不十分な段階でこの不良債権の最終処理をやり、海外資本の日本への直接投資を推進すればどうなるのか。二、三年後には、私たちのこの日本の市場は海外資本に席巻されるのではありませんか。違うというのであれば、その根拠をお示しください。

 昨日、東京三菱グループが発表した二〇〇一年三月期決算では、資産査定を厳しくした結果、不良債権残高が四兆五千億円超という、一年間で一挙に五割増しです。これまで柳澤担当大臣がおっしゃってきたこととどう整合させればいいのか。私たち民主党は、実際に金融機関が出している公表不良債権の額、これは本当はもっと大きいのではないか、今のような対策で本当にいいのかということを再三再四やってきました。しかし、私たちは、ワイドショーでは楽しむことができたけれども、実際に政策の現場では何も変わっていない、その現実を目の当たりにする思いでございます。

 また、債権放棄のガイドラインをいつまでに作成するのか、教えてください。

 不良債権の最終処理を行うに際しては、証券市場の活性化をセットで考えるべきだ、先ほどの麻生さんの御意見と同じです。しかし、そのためにも公正な証券市場の整備が急務であると私は考えます。損失補てんやインサイダー取引などの不正取引をなくすこと、これが個人投資家を呼び戻す唯一の手段であり、日本版SECを設置して公正な市場監視を行う必要があると考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。

 民主党としては、セットで出しているのです。セットで出している。私たちはチームで出している。ところが、総理は本当にチームですか。この議場を見ると、あなたの英断に拍手をしているのは私たちじゃないですか。苦虫かみつぶしているのはどっちですか。(拍手)

 改革は過去との決別です。大化の改新から現在に至るまで、過去の勢力を一掃しないで改革に成功した人はいない。あなたの改革が本物であるとすれば、あなたは過去との決別を、そしてその総括を国民に約束する義務があるというふうに思いますが、総理はどのようにお考えでしょうか。

 財政の再建の道筋についても御質問申し上げます。

 三十兆円以下に国債発行額を抑える、このことは私たちも法案を出しています。しかし、来年は郵貯の大量満期の税、これが二兆円減ります。このままでもマイナス三兆円の減を覚悟しなければいけない。

 こういう中で、私は総理並びに財務大臣に明確にお答えをいただきたいのですが、竹中さんは、きょうはお見えになっていませんが、著書で一四%の消費税の増税を言っている。財務大臣は、きのうの参議院の委員会で、三年後の消費税のことについて言及されたということでございますが、歳入の構造改革に踏み込むということをもうお考えなのですか。あるいは地方にその赤字のツケを回したり、あるいは国民に税金のツケを回す、こういうことをなさらないと総理はお約束できるのか。

 私たちも、正直言ってここは随分苦労している。プライマリーバランスを回復するためには、一般歳出を十六兆から十七兆減らさなければいけない。物すごい痛みを国民の皆さんにお願いしなければいかぬ。そのことをしっかりと、痛みをはっきりと言葉に出す必要があるのではないかと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 道路特定財源についても、国税三税目のうちどれを対象として見直されるのか、明確な答弁をお願いいたします。

 特殊法人についてもそうでございます。一般会計、特別会計、地方政府、このグロスはGDPの六割を占めています。このような環境下では、政官財のもたれ合いが起こる。自由な経済活動よりも、公的な支出に政治を使って依存する、この方がましだ、こんなことを考える人たちがいる。現に、総理の政策秘書、現在、秘書官をなさっていらっしゃる方だと思いますが、月刊現代五月号でこんなふうに書いてあります。自民党は、利権の巣窟です。ここまで私は言い切る自信はございません。土地改良事業団体連合会が連盟会費や自民党費を肩がわりしていた事件も明るみになっています。総理は、このような実態をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。肩がわりした党費は返すべきじゃないでしょうか。

 石原行革大臣は、特殊法人改革もゼロベースで取り組むとしていますが、具体的な内容、スケジュールを示していただきたいというふうに思います。

 地方交付税についても言及されていますが、その中身、その真意が那辺にあるのか。これは地方交付税の一律削減を意味するのか、あるいはひもつきの財源である国庫支出金も含めるのか、総理の明快な答弁をお願い申し上げます。

 地方交付税の改革は、私たち民主党も必要だというふうに思っています。しかし、この問題についても、私たちが最も重要だと考える視点は、地方の自立に向けた地方分権の推進であり、そのための財政基盤の拡充です。その意味で、私たちは、地方に対する税源移譲と同時に、地方交付税の制度も含めた抜本的な改革を行うべきだと考えていますが、総理の御所見を伺います。

 総理、痛みをはっきりおっしゃってください。そして、敵は一体だれなのか、過去と決別する勇気があれば、私たちは、小泉総理が改革をされようとしているその中身を、その中身によってはしっかりと協力をしていく。しかし、それが、多くの疑惑を隠したまま、自民党の、政府・与党の延命につながるのであれば断固として戦っていく。このことをお訴えさせていただいて、古い政治体質からいかに解放されるかダイナミズムを競っていきたい、この決意を申し上げて、質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 原口議員にお答えいたします。

 緊急経済対策です。

 この緊急経済対策は、従来の需要追加型の政策から、不良債権処理や資本市場の構造改革を重視する政策へとかじ取りを行うものでありまして、構造改革なくして景気回復なしという私の従来からの主張に矛盾するものではありません。

 現下の経済情勢についてであります。

 我が国経済の現状を見ますと、アメリカ経済の減速から輸出が減少し、それに伴い生産が減少している中で在庫が増加しております。企業部門の自律的回復に向けた動きはなお続いていますが、このところ弱まっております。失業率は高水準で推移し、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いております。このように、現在、景気はさらに弱含んでおります。また、先行きについては、アメリカ経済の減速や設備投資に鈍化の兆しなど、懸念すべき点が見られます。

 日米首脳会談で話し合われた内容への取り組み及び外国直接投資についてであります。

 森前総理とブッシュ大統領との間で行われた日米首脳会談の共同声明に盛り込まれている事柄については、私は誠意を持って実施していく決意であります。

 共同声明で触れられている外国直接投資の促進は、日本経済に好影響を与えるのみならず、高度な相互依存関係にある日米経済関係を一層深化させ、日米両国にさらなる利益をもたらすことになると考えております。

 現下の世界経済情勢と不良債権の最終処理についてであります。

 世界経済は全体として成長に減速が見られており、特に米国を見ると、景気は、昨年末に比べれば減速が緩やかになっているものの、企業収益の悪化などで先行きに不透明感があります。

 このように世界経済が減速するという厳しい状況にあっても、我が国経済を再生させるためには、各般の構造改革を断行することが不可欠であります。中でも、不良債権の処理を最も重要な課題の一つととらえ、二年から三年以内に最終処理を目指すと決意いたしました。これにより、我が国経済の再生が図られ、本格的な景気回復が実現されるとともに、世界経済にもプラスに影響を与えるものと考えております。

 株式市場の信頼性を回復させるため、日本版SECをつくって不公正取引を厳しく正すべきではないかとのお尋ねであります。

 証券取引等監視委員会においては、日常的な市場監視活動の中で、強制調査権限等を行使することにより、取引の公正を害する悪質な違法行為が認められた場合には、告発をして刑事訴追を求めるなど厳正に対処しているところであり、今後も引き続き、不公正取引を厳しく取り締まることにより、証券市場の公正性確保の徹底に努めてまいります。

 雇用を中心としたセーフティーネットの構築についてです。

 雇用保険制度については、緊急経済対策の中で、倒産、解雇等による離職者に対して手厚い給付日数を確保した改正雇用保険法の円滑な施行を図ることとしたところであります。

 また、職業訓練に関しても、既に求職者に対しては無料で公共職業訓練を実施しているほか、雇用保険の教育訓練給付など、現行制度の効果的な運用を図っているところです。

 さらに、本日、第一回会合を開催した産業構造改革・雇用対策本部において、新市場、新産業の育成による雇用創出や人材育成、能力開発の推進などについて、具体的な施策に向けて精力的に検討してまいります。

 財政健全化についてです。

 平成十四年度予算では、財政健全化の第一歩として、国債発行を三十兆円以下に抑えることを目標としております。また、あらゆる歳出について、聖域を設けることなく、徹底した見直しに努めてまいります。その後、持続可能な財政バランスを実現するため、例えば、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないことを次の目標とするなど、本格的財政再建に取り組むこととしております。

 具体的には、公共事業については、規模を見直すと同時に、事業配分に思い切っためり張りをつけるなど、新しい時代に対応した公共事業の実施に努めます。

 社会保障については、給付の伸びと経済の伸びとのバランスを確保しつつ、世代間の給付と負担の均衡を図るなど、持続可能な制度を再構築していきます。

 国と地方の関係については、補助金の見直しを行うなど、国、地方の行財政制度のあり方の見直しに取り組みます。

 以上のような取り組みをいたしますが、我が国経済社会全体の諸課題を含め、経済財政諮問会議等の場でさまざまな御意見を踏まえつつ検討を進め、できる限り早く国民に示していきたいと考えております。

 なお、歳出の見直しに当たっては、隠れ借金を行っているなどの御指摘のないよう、財政の透明性の向上に努めてまいります。

 このような取り組みの際、歳出面にむだはないか等についての徹底的な見直しを行わないまま、安易に増税に頼るようなことは考えておりません。したがって、まずは、歳出の徹底した見直しを行います。その上で、公的サービスの水準と、それを賄うに足る国民負担の水準はどうあるべきかについての国民的な議論が必要であると考えております。

 土地改良区における自民党費などの肩がわりについてであります。

 農林水産省が実施した実態調査の中間報告によれば、調査した全土地改良区の一割に満たないものの、かなりの数の土地改良区において政治団体の会費や自民党の党費などの支出があったことは、極めて遺憾であります。

 政府としては、三月十九日に農林水産省から指導文書を発出し、都道府県を通じて再発防止の指導を行いました。立てかえられた党費などの土地改良区への返還も含めて、一層、指導の徹底を図ってまいります。

 また、自民党としても、都道府県連支部に対して、立てかえられた党費の土地改良区への返還と、こうした事態の再発防止の徹底について指導を行ったところであります。

 地方交付税と国庫支出金についてのお尋ねです。

 十四年度予算編成においては、国から地方に対する支出を含め、内閣が一体となって歳出を聖域なく見直し、その抑制を図っていくことにより、財政健全化の第一歩を踏み出してまいりたいと考えております。

 地方交付税について、一律に削減を行うのかとのお尋ねです。

 国から地方への支出の具体的な見直しの内容は今後詰めていくものであります。その際、国と地方は協力して徹底した行財政改革に取り組むことなどにより、国、地方それぞれの歳出全般を見直し、抑制することが必要であると考えます。

 地方交付税の見直しについて、国債発行額抑制のための便宜的措置か地方分権改革の一環なのかというお尋ねであります。

 地方交付税は、国債発行額を三十兆円以下にするという目標のもと、聖域なき歳出の見直しの例外ではなく、また、地方にできることは地方にゆだねるとの方針のもと、地方分権を積極的に進める中で、そのあり方についても検討を進めてまいります。

 構造改革に伴う痛みや改革のダイナミズムについてです。

 構造改革の過程では、非効率部門の淘汰が生じ、例えば離職者が発生するなどの痛みが生ずることもあります。構造改革に伴う痛みを事前に確定することはできませんが、これを和らげるための対策には万全を期していきたいと思います。いずれにせよ、国民の理解と問題意識の共有を図りながら改革を進める考えであります。

 また、古い政治体質からいかに解放されるかダイナミズムを競いたいという御指摘には、私も同感であります。野党の議員諸君も、改革の志を同じくするものであれば、競うのみではなくて、積極的に私の構造改革を御支援していただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 残余の質問は、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) 小泉総理から相当詳しく御説明がございましたので、私は、原口さんの御質問の中の御要点につきまして答弁いたしたいと存じます。

 なぜ今、租税特別措置法の改正かというお尋ねでございます。

 やはり税制はできるだけ年度間、安定した制度に置いておくのがよい、したがいまして、年度中に改正するということは、よほど緊急事態に備えてのことであると思っておりますが、しかしながら、今回出ました緊急経済対策の一環といたしまして、証券の活性化を図れということがございます。

 特に、証券への個人参加を積極的に進めるためにいかにあるべきかということにつきまして、従来、各党におきまして検討もされてきたのでございますが、そのうち、とりあえず、証券への市民参加を容易にするためには、小口の売買について優遇する必要があるだろうということでございまして、その意味において今回の特別な措置をいたしたのでございまして、それが、先ほど申しましたように、百万円の特別控除を設けたということでございます。

 証券の譲渡益につきまして、申告納税と源泉徴収との選択制になっておりますけれども、二年後におきましては、これを申告制一本にいたしたいと思っております。そのためのインセンティブを与えて、今から源泉制の方を申告制に誘導していく一つの措置として今回の特別措置法をつくったということでございますので、御理解をいただきたいと存じます。

 そしてなお、御質問の中にございました、九百億円の減税になるから、したがって、補正予算が必要ではないかという御質問でございます。

 年度途中の税制改正によって税収が当初見積もりに比べて減少する見込みとなっても、必ずしもこれを補正する必要はないと思っておりますし、また、今回のこの措置によりまして、平年度におきましては九百億近くになろうと思うのでございますけれども、本年度、初年度でございますので、四百四、五十億円になると思っております。したがいまして、今回の措置は補正予算の措置によらないことにいたしておる次第であります。

 それから、もう一つ重大な御質問がございましたのは、三年後には消費税を増税するのかというお話でございますが、これは誤解が含まれておると思っております。

 私たちは、回を重ねて申しておりますように、ここ当面の間は、景気回復と構造改善を並行して、同時に実施していきたいと思っております。

 それはなぜかというと、今までの景気回復の主体は、需要喚起、需要の拡大によって景気回復を図ろうとしておりました。もちろん、これも当然必要でございますので、今後とも続けていく予定でございますけれども、しかしながら、今まで右肩上がりでずっと続けてまいりました経済の中で、これから平面化していくとするならば、改正しなければならぬ点が多々ございます。それは規制緩和という形で行われてくるのでございまして、この規制緩和を通じて、経済を刺激し、民間資金の導入によって経済を回復しようというのが私たちの念願であります。といえども、今直ちにこれができるものではございません。

 したがいまして、来年度以降起こってくるところの当然増によります膨大な国債発行の増発を極力抑制していかなきゃならぬということでございますので、来年は国債発行の限度額を三十兆円に抑え、また、翌年におきましてもそのような方針をとる。そのうちに、規制緩和が進んでまいりまして、民間に活力が出てまいりますと、経済が回復してくると思っております。それによりまして、プライマリーバランスをとっていく道に入っていきたい。そのときに税制関係等もあわせて検討いたしたいと思うておりますので、今、当面は増税をするという考えは全くございませんで、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

国務大臣(石原伸晃君) 原口議員にお答え申し上げたいと思います。

 御質問は一点で、特殊法人改革の具体的な内容とそのスケジュールでございます。

 議員御承知のように、昨年の十二月に行革大綱を閣議決定させていただきまして、その中で、この特殊法人改革というものが最重要なところに位置づけられております。

 その大枠は、具体的に申しまして、特殊法人改革の方向性のようなものを六月中に中間取りまとめをさせていただきたいと思います。そして、今年度中に、大綱に示されました基準に沿って特殊法人ごとの整理合理化計画を策定する、そういうスケジュールで運ばせていただきたいと思っております。

 その内容につきましては、議員御承知のように、現在、特殊法人ごとに、一つ一つ事業の見直し、廃止すべきなのか、整理縮小すべきなのか、合理化するのか、そのようなことを調べている最中でございます。そして、この精査が終わった後に、この法人にはどういう組織形態がふさわしいのか、廃止すべきものは廃止する、民営化できるものは民営化する、しかし、政策的に何らかの措置が必要なものは、独立行政法人等に形態を改める。そういうものが、先ほどお話をさせていただきました特殊法人等整理合理化計画になると御理解をいただければ幸いでございます。

 具体的な見直しの方向でございますけれども、今、行革事務局において、これも議員既に御承知のことだと思いますけれども、十八の事業類型、公共事業に関係するもの、あるいは政策金融、こういうものを十八の類型ごとに整理いたしまして、これに対して七十六の見直しの論点。

 一番の論点は、存在意義があるのかないのか。二番目は、採算性ですね。どうしても、お役所仕事に代表されますように、採算性が全くとれてないものもあるのじゃないか。そして、税金であります。税金が一般会計、特別会計から補助金という形で入っているものもございますので、費用対効果の問題。さらには、これも総理がいつもおっしゃられていることでございますけれども、民間にできない理由があるのかないのか。

 こういうものを中心に、ゼロベースから見直させていただきまして、もちろん、批判がございますいわゆる特殊法人が出資している会社につきましても視野に入れまして、改革に取り組んでいきたい、こんなふうに考えております。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 原口議員から私へは、短期社債等の振替機関が新たな天下り先になるのではないかとのお尋ねがございました。

 振替機関の人的な陣容につきましては、公務員制度を含む、ただいま石原大臣るる御説明いただいた行政改革の趣旨を十分に踏まえまして整備することといたす考えでございます。

 次に、一部の金融機関から発表された十三年三月期決算における不良債権残高の増加についてのお尋ねがございました。

 十三年三月期決算は順次発表されているところでございますが、今後、その内容を全体として分析することといたしております。いずれにいたしましても、景気動向や個別債務者の業況に応じまして不良債権の残高等は常に変動をするものであります。

 金融機関におきましては、その保有資産について、検査マニュアルや公認会計士協会の実務指針をも踏まえ、個々の債務者ごとに自己査定を行い、監査法人等の監査のもとで適正に償却、引き当て等を行っておりまして、さらに、金融庁としても厳正な検査監督を行っているところでございます。このようなことから、公表されている不良債権の額が過少であったり、引当金が不足しているということはないと考えております。

 私的整理のガイドラインの作成時期についてのお尋ねと存じます。

 現在、政府の働きかけを受けて、全銀協を中心としまして、民間主導によるガイドライン検討の場の設置に向けた準備が精力的に行われているところであります。ガイドラインは、今後、この場におきまして検討がなされることになりますので、ガイドラインの取りまとめの時期については、現在、確たることを申し上げることはできないのでございますが、政府といたしましても、早急な作業を引き続き促してまいりたい、このように考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 松本剛明君。

    〔松本剛明君登壇〕

松本剛明君 民主党の松本剛明です。

 本日は、民主党・無所属クラブを代表して、租税特別措置法の一部を改正する法律案、地方税法の一部を改正する法律案、短期社債等の振替に関する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 本件はいずれも、緊急経済対策の一環として提案されたものと理解しておりますが、この対策は、先ほどもお話がありましたように、森前政権のもとで策定されたものであります。総理は、御自身の内閣を改革断行内閣と命名されておられるわけでありますが、そもそも、緊急経済対策という名前、そういった考え方は、まさに緊急に慌てて手当てをするという発想でありまして、構造改革というのには最も似合わないのではないか、このように思うわけであります。

 今、経済は大変厳しいと認識しております。その上で、総理は、構造改革なくして景気回復なし、財政改革を優先的に行うと言われました。前政権の考え方は違ったはずであります。だからこそ、総理は変えるとおっしゃったのではないでしょうか。緊急経済対策は構造改革型だという先ほどの御答弁がありましたけれども、それでは政策は変えないということになってしまいます。総理は何を変えるとおっしゃって御登場されたのか、御所見を伺いたいと思います。(拍手)

 次に、財政支出と経済の関係についてお尋ねをしたいと思います。

 この十年間、財政支出を拡大させて景気を支える、いわゆるケインズ効果を期待して、どんどん経済対策を積み重ねてまいりました。これをどう評価するのでしょうか。二十一世紀は、政策評価の時代であります。

 非ケインズ効果という言葉が、今あらわれてきております。すなわち、今の日本のように異常に国債残高が累増した状態の中で財政支出を拡大させると、将来への負担増の不安が大きくなって、個人消費がかえって冷え込んで、景気を悪化させてしまう、むしろ財政再建の道筋をきちんと示して、その方向へ一歩を踏み出すことによって、消費が回復して、景気回復への道筋が生まれてくる、これが非ケインズ効果でありますが、日本にもこれがあらわれるのではないか、こういう見方が出てきております。

 過去に大幅な赤字に苦しんだイタリアなどヨーロッパの諸国では、この非ケインズ効果の実証的、理論的な研究の成果が発表されています。賢者は歴史に学ぶであります。我が国でも、未来のために、ぜひこの十年間の政策をきちんと検証していただきたい、政府として検証していただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。

 過去を検証してみれば、これまでを清算しなくてはいけなくなる、そして、根本的に方針を変えなくてはいけなくなると確信をしております。まさに、このことこそが改革ということになろうと思いますが、当然、過去からのしがらみが断ち切れないところからは抵抗があるでありましょう。

 小泉政権成立後も、いまだに、経済のためには財政出動が必要だ、財政投融資等を活用して事業量を確保することが必要だ、こんな声が、従来と変わらない声が政権中枢から出てきております。一つ一つ取り上げませんが、各委員会においても、明らかに総理の意欲とは温度差のある発言が出てきておるわけであります。

 過日のハンセン病の訴訟についても、総理の控訴断念の御判断は、私も同僚議員も高く評価をするところであろうと思います。しかし、国会決議となると難航する。これがまさに今の状態ではないのでしょうか。

 総理は、抵抗勢力はやってみないとと言われましたが、一月近くになりました。そろそろ抵抗勢力が見えてこられたのではないでしょうか。恐れず、ひるまず、断固としてと言われましたが、この抵抗勢力にどう対峙していかれるおつもりなのか。

 私たちは、総理、自民党を応援するわけではありません。国民のための改革を力いっぱい応援していきたい、このように思います。(拍手)

 租税特別措置法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。

 両案の目的は、個人投資家の市場参加の促進であると御説明がありました。趣旨は理解できますが、内容はどうでしょうか。

 財務大臣、金融担当大臣にお伺いをいたします。

 個人の少額・長期保有株式の譲渡益の非課税は、私たち民主党が四月三日に発表した「経済対策」で提唱をいたしております。これを受けてかどうかは存じませんが、四月二十日の与党三党の「緊急経済対策に係る税制上の措置」にも盛り込んでいただきました。ですから、私たちもこのこと自身を否定するつもりはありません。しかし、税制として、ここだけ取り上げるというのは、いかにも形が悪いのではないでしょうか。

 株式についてだけでも、先ほど原口議員も申し上げたように、さまざまな課題が山積みになっています。私たちは、金融商品に関する税制全般の整合性をとりながら、抜本的な改革を行うべきだと主張してまいりました。そして、今、個人投資家の市場参加ということで目指すのは、個人の売買高をふやすことではなくて、むしろ保有残高をふやすことであります。今回、保有に関する税制に手をつけずに、売買のところだけというのは、いかにも旧来型と言わざるを得ません。

 個人投資家の市場参加拡大は、長期的な視点に立って進めるべきものであります。一番必要なことは、証券市場の信頼回復であります。個人の投資家は、大手投資家に対しての損失補てん等、これまでの不公正な取引を忘れていないはずであります。

 罰則の厳格化や監視体制の強化、情報開示の仕組みや投資家保護の体制を整備し、改善することこそが急務ではないでしょうか。その上で、個人の株式投資を促すいろいろな枠組みを用意し、長期的に育てていく、こういうことが重要だと考えますが、いかがでしょうか。今後の展開、取り組みの方針をお伺いいたしたいと思います。

 短期社債等の振替に関する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 短期資金を市場から直接調達するCPの発行・流通市場の拡大という意図には賛同いたします。そして、その点で、将来の決済期間を短縮しよう、また、CPをペーパーレス化しようということはお進めをいただくべきものと思いますが、その上で、振替機関についてお尋ねをいたします。

 この法案では、CPの振替機関は株式会社、従来公益法人であった株券等の保管振替機関も株式会社形態にする、このようになっているわけであります。資金調達方法の多様化、競争可能性の確保等による業務運営の効率化を図るためと御説明がありましたが、一方で、主務大臣の指定を受け、監督下に置かれるとのことであります。

 市場原理を適用するというなら、見せかけではなくて、競争の結果、振替機関が破綻して市場から退場するといったケースまで想定したシステムづくり、手当てが必要です。主務官庁の監督により健全性を担保するというなら、市場原理にゆだねられない株式会社になって、責任の所在がわからなくなります。

 もし株式会社にするメリットがあるとすれば、今行われている行政改革が、特殊法人、認可法人、公益法人と順々に来る中で、株式会社は一歩先へ逃げるということで、ひょっとするとメリットがあるのかもしれませんけれども、この形態、どのように評価されているか、御担当の大臣の御所見を伺いたいと思います。

 振替機関は、法律で業務が指定されている指定法人となります。指定法人については、特殊法人情報公開検討委員会でも議論され、問題も指摘されているようでありますが、こういった指定法人は、残念ながら、現段階では情報公開の対象からすら外れてしまいました。

 財政改革が一般会計だけではなくて特別会計、財政投融資、地方との関係も含めてきちっと議論されなければならないように、行政改革も政府の周辺、外延となる特殊法人、認可法人、公益法人から、さらにここから外れる今回のような指定法人まで対象として、抜け道のないようなものにぜひしていただきたいと思いますが、今の実情、お考え、今後の取り組みを担当の大臣にお伺いをさせていただいて、私の質問を結ばせていただきたいと思います。

 このような機会に感謝を申し上げ、総理初め各大臣の、国民のための改革に向かった前向きの御答弁をいただくことを期待して、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 松本議員にお答えいたします。

 緊急と構造改革という言葉は似合わないのではないかという質問でございますが、構造問題の根本的な解決に緊急に取り組むということでありまして、緊急ということと構造改革ということと、何ら矛盾するものではありません。

 これまでの経済対策の評価についてであります。

 九〇年代に入って以降の累次の経済対策は、民需の落ち込みを相殺する形で、景気がスパイラル的に悪化していくのを防止し、景気の下支えにはかなりの効果があったものと私は考えております。

 しかしながら、これは長くは続かない。我が国経済の再生を図り、景気の本格的な回復を図るためには、経済、財政の構造問題への取り組みが必要であると考えているわけであります。だからこそ、構造改革なくして景気回復なしということで、いろいろな改革に取り組んでいきたいと思いますので、よろしく御協力をお願いしたいと思います。

 改革の抵抗勢力にどう対処するのかというお尋ねであります。

 改革の抵抗勢力というのは一様ではありません。あるときには反対する勢力も、ある問題については協力してくれる可能性があります。また、一つの改革に協力する勢力も、別の問題が出てくると抵抗する場合があります。これは本当にやってみなきゃわからない。やっていくうちにはっきり見えてきますから、その抵抗を乗り越えて、恐れず、ひるまず、とらわれずで改革に取り組んでいきたいと思います。

 残余の質問は、関係大臣に答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) 松本さんにお答えいたしたいと存じます。

 まず最初に、財政再建をしようとするならば、中長期的な展望を示して財政再建に取り組んでいくべきではないかという御質問であったと思っております。このことにつきましては、再三にわたります委員会等におきまして、私は松本さんの御質問にもお答えしたと思っておりまして、改めてこの本会議場で申し上げさせていただきたいと思っております。

 もちろん、おっしゃるように、長期的な展望を示して財政改革に取り組むのが本筋でございまして、我々も、そのようなスケジュールを立てて、現在、取り組んでおります。

 しかし、現在の経済、景気状況等を見ました場合に、非常に底冷えしてきた状態でございまして、厳しい状態である。これを安定した、自律的回復に向けていく努力をまずしなきゃならぬ。そのことから、緊急経済対策を講じまして、それによって当面の財政措置を講じ、そして、経済が回復軌道に乗ってきたことを見て中期展望の実施に入っていく、そして、最終的に長期安定的な税制等を含めた改革に取り組んでいく、こういう手順でやっていこうということでございます。

 したがって、この緊急経済対策というのは、従来の需要追加型の経済対策に加えまして、さらに構造改善を含んだ対策を講じつつ、自律的な発展に向かっていきたい、こう思っておるのでございまして、これは小泉内閣の第一歩の仕事として取り組んでおるところでございます。

 その上で、数年、二、三年のうちに経済は必ず好転してくると私は思っております。そういたしますと、自然増収等もふえてまいりますし、その時期をつかまえてプライマリーバランスを図っていって、財政の根本的な健全化を図る、こういう予定でございます。その際に、いろいろな税制等の措置を講じなきゃならぬ。それが中期あるいは長期展望への基礎となってくるものと思っております。

 次にお尋ねがございました中で、ばらばらで税制改正しても効果が薄いのではないかというお話でございました。

 確かに、おっしゃるとおり、税制というものはやはり年度年度、きちっとやっていくべきものでございまして、昨年の暮れには、相当、減税等を含めました案を提示いたしまして、皆さんの御賛同を得て成立いたしておりますが、しかしながら、証券に関しましてさらに一層の活性化を図る必要があるということ等を考えまして、本当にちょっと緊急のところだけ提出させていただいて、現在御審議いただいておるということでございます。

 もちろん、証券の活性化ということは、ただ単に税制改正だけでできるものではございません。またさらに、企業の業績努力というものも必要でございますし、あるいは証券会社、金融機関等が、株式への市民参加の道にもっともっと積極的に取り組んでいくこともございます。要するに、経済界全体として取り組むべき問題だと思っておりますけれども、さらに研究を重ねまして、証券の活性化のために努力してまいりたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 松本議員からのお尋ねでございます、個人の株式投資の育成に関して今後の取り組み方はどうするのかということでございます。

 金融当局といたしましても、証券市場の信頼の回復のために、これまでも、ディスクロージャーの充実や市場の公正性、透明性を確保するための規制の強化、監視体制の充実等の市場インフラの整備等を行ってきたところでございます。

 今後におきましても、今般の緊急経済対策の内容を踏まえまして、直接金融を重視しようという観点から、投資家の市場参加を促進するための市場インフラの整備、証券市場の一層の公正性確保等のために積極的に取り組んでまいります。

 それから、振替機関を株式会社とすることについてのお尋ねが、責任の観点からございました。

 振替機関等の形態につきましては、近年の証券市場を取り巻く諸情勢の変化や利用者のニーズの多様化に的確に対応できるものとするため、資金調達手段の多様化や競争可能性の確保による業務の効率化等の観点から、これを株式会社とすることとしたものであります。

 振替機関等が営む業務は、確かに、基本的には民間が行うことで足りるものでありますが、一方、証券取引に伴う口座振替に民事法上の特別の効果を与えておりまして、このようなことから、必要最小限の行政からの規制及び監督を行う必要があるものでございまして、責任の所在があいまいになるとの見方は当たらないものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

国務大臣(石原伸晃君) 松本議員にお答えしたいと思います。

 本法律におきますところの主務大臣は内閣総理大臣と法務大臣でございますが、情報公開法の観点から御質問でございましたので、私からお答えをさせていただきます。

 松本議員は、指定法人は情報公開法の対象外であるが、このような法人は行政の外延としてとらえるべきではないかという御指摘だったと思いますが、まさにそのとおりだと思います。私どもとしても、やはり考えなきゃいけないことは、重要な国の施策の実施を担うようないわゆる指定法人についても、十分な情報公開を行って、常に国民の皆様方の目に届くようにすることが大切だと私どもも考えております。

 この点、政府といたしましては、いわゆる指定法人の情報公開について、昨年閣議決定いたしました行革大綱の中においても、指定法人の情報公開のあり方に関する検討を行うべしということがございまして、現在、総務省の方で鋭意検討中と聞いております。私といたしましても、松本議員と同じように、国民の目線に立って検討状況を注視してまいりたい、このように考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 中塚一宏君。

    〔中塚一宏君登壇〕

中塚一宏君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました緊急経済対策関連法案に対して質問をいたします。(拍手)

 日本経済の低迷は長引くばかりであります。私ども自由党は、構造改革なくして景気回復なしを、結党以来一貫して主張をいたしてまいりました。自由民主党の総裁選挙を機に、構造改革という言葉が乱れ飛んでおります。しかしながら、構造改革とは一体何なのか、明らかにはされていないようです。

 経済構造改革という言葉があります。しかし、望ましい経済構造を国が決めて、それを民間に押しつけるというのであれば、それは、従来の計画経済、護送船団行政と言われていたものと何ら変わるところはありません。そういった意味において、まず最初に行わなければならない構造改革というのは、財政、行政の構造改革にほかならないはずです。民間の活力が十二分に生かされるような、民間の創意工夫が十二分に生かされるような行財政のあり方、持続成長可能な経済をしっかりと支えていける行政、財政の仕組みを再構築していかなければなりません。

 間もなく、我が国は、世界に例を見ない少子高齢化社会に突入をいたします。少子高齢化社会、このこと一つをとってみても、そのインパクトは、社会保障関係予算の増大だけにとどまりません。我が国の人口が減り始めるということは、労働力人口が減って、同時に税収が落ち込んでいくということにほかなりません。今よりも少ない税収であっても、きちんとした行政サービスが提供できるよう、簡素で効率的な政府を今からつくっていく努力を始めるべきです。

 そういった意味におきまして、構造改革とは、いかに簡素で公平で中立な税制をつくっていけるか、そして、そうして徴収された税をいかに効率よく、むだなく使っていけるかということにほかならないと考えます。小泉総理の御所見を伺います。

 また、総理は、来年度予算から新規発行財源債を三十兆円以内に抑えること、そして増税はしないことを明言されております。また、その一方で、社会保障制度については、負担は軽く、給付は厚くとはいかないと述べられておりますが、お伺いしたいのは、社会保険料についてであります。

 社会保険料は、特定財源としての性格を持っておりますので、その意味において、税と何ら変わるところはありません。社会保険料についても税と同様に負担増を求めることをしないのか、あるいは、税と社会保険料は別物で社会保険料の負担増は別途求めるおつもりなのか、明確に御答弁をお願いしたいのであります。

 総理は、将来の財政支出増要因として、社会保障経費、地方へ支出される経費、そして公共事業費の三つを挙げておられます。

 具体的な削減方法を伺うには至っておりませんけれども、問題なのは、財政赤字の額もさることながら、たび重なる経済対策によって、国、地方とも財政システム全体に対する信用力が低下しているということであって、このままのシステムで資金のやりくりを続けるのはもはや限界であるということであります。一刻も早く、財政システムに対する信用を回復させていかなければなりません。

 また、財政の健全化とは、国民負担の増加によって財政赤字を埋めるというものではありません。財政の仕組み、お金の出し方を変える、そのことによって効率的な財政支出を行えるように、財政、行政、税制を含めて改革することであって、これこそが本来の財政構造改革であります。

 地方財政については、地方債の元利償還を国が負担するようなことなしに、保証するようなことなしに、地方自治体独自の信用力によって資金調達が可能になるようにしなければなりません。地方自治体の広域化、合併を図って、全国の市町村を三百程度の市に再編し、その上で独自税源を与えるべきであります。

 次に、公共事業については、政府のような統合補助金ではなくて、それを一歩進めて、事業補助金は廃止をし、その相当額を一括して交付する制度を創設して、身の回りのことはすべて地方に任せ、本当の地方分権を確立するべきであります。

 また、公共事業を実施する以上、その財源が公債であれ税金であれ、維持管理を含めた費用対効果の原則から公共事業評価の客観的な基準を明確にした評価法の制定を行って、社会的に有用な公共財、将来の成長に資するものに対して投資を行わなければなりません。

 これらの改革によって、我が国が間もなく直面する公務員の大量退職や社会資本の更新、いわゆるストック循環にも対応できるよう準備をしておくべきであります。

 次に、社会保障制度についてであります。

 総理は、五月十四日の予算委員会におきまして、公的年金は国庫負担があるから民間より有利だという趣旨の発言をされましたが、これはとんでもないことであります。

 国庫負担というのは、どこかからわいてくるお金ではありません。所得税、法人税を初めとする諸税のことにほかならず、近年においては、赤字国債がその大部分を占めているわけです。給付と負担を論じるときには、保険料と税をあわせて考えなければ、有権者に正しいメッセージを送っていることにはならないと思います。

 私どもは、基礎的な社会保障はナショナルミニマムとして国が保障をする、消費税の使途を基礎年金、高齢者医療、介護の三分野に限定し、負担の公平化と基礎的社会保障の財政基盤を強化するべきであると考えます。

 完全捕捉困難な所得を賦課標準とし、高額所得者には頭打ちなどがある保険料方式よりも、賦課ベースの広い消費税方式の方が公平であり、そして、国民一人当たりの負担を抑制することが可能になります。また、あわせて保険料徴収コストも抑制することが可能となって、少子高齢化社会にはふさわしい制度であるというふうに考えます。消費税方式とすることによって、給付と負担の関係を明確にすることができ、消費税率についても議論を行いやすい環境を整えることが可能になると考えます。

 以上について、総理の御所見をお伺いいたします。

 森総理は、平成十三年度予算案について、景気、経済構造改革、財政健全化に配慮をしたとしていました。しかるに、小泉総理は、自民党総裁選挙のさなか、構造改革なくして景気回復なし、一、二年はマイナス成長になっても構造改革を断行するとしていらっしゃいます。これは経済財政運営の方針を転換したということにほかならないと考えます。小泉内閣の支持率にいたしましても、今までとは違うのではないかという思いがこもっているはずです。であるにもかかわらず、小泉内閣成立後の実質的な初仕事が、前内閣の遺物である緊急経済対策関連法案であるのは、まことに皮肉で、残念なことであります。

 総理は、所信表明において、不良債権処理や資本市場の構造改革を重視する政策へとかじ取りを行うものであると述べておられますが、構造改革とはそもそも論、あるべき姿を論じなければならないにもかかわらず、不良債権の抜本的処理については盛り込まれておらず、資本市場の構造改革ともほど遠いものになってしまっております。

 まず、不良債権の処理についてお伺いいたします。

 現存する不良債権は、バブル崩壊だけが要因ではなく、グローバル化や情報通信技術革命が急速に進展していることなど、経済社会の環境変化に伴って、収益基盤が脆弱になっている企業が新たな不良債権を生み出してしまっていることも大きな問題です。つまり、金融機関が不良債権を処理しても次々と不良債権が生まれてしまう日本経済の現状にこそ、問題があるのであります。また、そうしてふえていく不良債権を償却することのできない金融機関の体力の弱さにも問題があります。行わなければならないのは、日本経済自体の収益性を改善していくこと、つまり、サプライサイド改革を促す税制、財政の政策であります。総理の御所見を伺います。

 次に、長期保有株式の譲渡益優遇措置について伺います。

 総理は、所信表明において、証券市場の活性化のために、個人投資家の積極的な市場参加を促進するための税制措置を含む幅広い制度改革を短期間に行うとしていましたが、結局、具体策としては、この特別控除制度の創設が主なものになってしまっており、看板倒れであります。

 譲渡益に対して百万円の特別控除を設けるとしておりますが、他の控除との兼ね合いを考えれば、額が大き過ぎるのではないかと思わざるを得ません。所得に関しての控除は、基礎控除が三十八万円であるにもかかわらず、なぜ不労所得である株式譲渡益に対する控除が百万円なのか、理解することができません。また、パートタイマーの非課税所得限度額が百三万円であることを考えても、余りにも株取引のみを優遇しているのではないかと思わざるを得ないのであります。

 結局のところ、政府・与党は、株式譲渡益課税について、源泉とするのか申告とするのか、また、総合課税とするのか分離課税とするのか、他の税制との整合性をも視野に入れて考えて、その上で税率をこそ見直さなければならないにもかかわらず、特別控除枠でもつくれば株価が上がるのではないかという、あくまでも思いつきにしかすぎない施策に終始しているのであります。また、この特別控除を時限措置としていること自体、その場しのぎ、場当たり、先送り的な手法であって、従来と全く変わるものではありません。構造改革とも全く関係がないのであります。それどころか、安易に控除を設けてしまうことは、今後の抜本的な税制、税率の見直しに大きな支障を来すことになりかねないということを指摘したいと思います。

 加えて、今回の減税措置によって、十三年度は四百億円の減収、平年度で九百億円の減収になると聞いておりますが、なぜ、補正予算案を同時に提出されないのでしょうか。必要があるとかないとかではなくて、財政規律の面からも問題であると考えます。財務大臣の御所見を伺います。

 CPのペーパーレス化についても、たびたび指摘をされてきたことでもあり、遅きに失しておりますけれども、なぜこれが緊急経済対策なのかということについて、疑問を持たざるを得ません。金融担当大臣の御所見を伺います。

 最後に、総理に一言申し上げます。

 ファースト・ハンドレッド・デーズという言葉があります。欧米においては、政権が発足してから百日間が一番パワフルな時期であり、リーダーは、この時期に自分のふだんから考えていることを勇気を持って実行いたします。小泉総理におかれましても、これから考えるのではなく、今こそが御自身のビジョンを実行できるときであること、逆に言えば、今を外せば実行することはできないことを申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 中塚議員にお答えいたします。

 財政、行政の構造改革を行うべきでないかという御指摘であります。

 私は、基本的に、中塚議員の考え方に異論を申し上げるつもりはございません。大方において、似通った点が非常に多いと思います。いろいろな構造改革がありますが、民間にできることは民間に任せる、地方にできることは地方に任せるという原則に基づいて、簡素で効率的な政府を実現していかなければならないという考えには、基本的に同感でございます。

 社会保険料についてのお尋ねであります。

 社会保険料は、その拠出が給付の根拠となっている点で、税と同じとは言えないと思います。今後増大する社会保障の費用については、社会保険方式を基本としながら、保険料と公費を適正に組み合わせることによって賄っていく必要があるのではないかと思います。

 世代間の給付と負担の均衡を図るという観点から、必要な給付の見直し、効率化を行った上で、保険料負担のあるべき姿についての国民的な議論を行い、能力に応じた適切な負担を求めていくことにより、持続可能な制度として社会保障制度も再構築を行うべきだと考えております。

 地方財政関連についてであります。

 まず、市町村合併特例法の期限である平成十七年三月までに十分な成果が上げられるよう、市町村合併後の自治体数を千を目標とするとの与党の方針を踏まえて、自主的な市町村の合併をより一層強力に推進していくとともに、地方公共団体が自主的、自立的な行財政運営を行えるよう、自主財源である地方税の充実確保を図り、地方財政基盤の強化に取り組んでまいります。

 公共事業に係る補助金の一括交付についてであります。

 公共事業に係る個別補助金等のあり方については、地方公共団体の自主性を尊重する統合補助金の一層の拡充を図るなどの取り組みを行っているところでありますが、個別補助金等の見直しについては、今後とも、社会経済情勢の変化、国と地方の役割分担のあり方等を踏まえつつ、地方分権を推進する観点から一層推進に努めていきたいと思います。

 公共事業の執行についてであります。

 真に必要な事業を実施するため、費用対効果分析を取り入れながら、事業を客観的に評価することが重要であると考えております。

 このため、事業実施前の新規事業採択時評価や実施中の事業に関する再評価等を行っておりますが、さらに、今国会に提出の行政機関が行う政策の評価に関する法律案においては、公共事業等について事前評価を義務づけるなど、より客観的かつ厳格な評価に努めてまいります。

 社会保障制度についてであります。

 社会保障制度の財政方式については、「自助と自律」の精神のもとに、社会保険方式を基本としつつ、保険料と公費を適正に組み合わせることによって給付に要する費用を賄っていく必要があると考えております。

 いずれにせよ、消費税の使途を含め、将来の税制、財政のあり方については、今後の少子高齢化の進展など経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえつつ、国民的な議論によって検討されるべき課題だと思っております。

 保険料方式がいいか、税方式がいいかとよく議論になりますが、これは、今、日本におきましては、全額税でもありませんし、全額保険でもありません。この組み合わせが大事ではないかと私は考えております。

 サプライサイド改革の重要性に関するお尋ねであります。

 まず重要なのは、我が国経済のおもしとなっている不良債権問題の解決だと思います。不良債権の最終処理を促進するための枠組みを整え、二年から三年以内での不良債権の最終処理を目指してまいります。

 また、二十一世紀の環境にふさわしい競争的な経済システムの構築も優先すべき課題でありますが、競争力ある産業社会を実現するため、新規産業や雇用の創出に向けて産業構造改革・雇用対策本部で精力的に検討を進めるとともに、総合規制改革会議を有効に機能させ、経済社会の全般にわたる徹底的な規制改革を推進してまいります。この結果、我が国経済本来の発展力を引き出すとともに、この潜在力を高めていきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) 私に対するお尋ねは、長期保有株式の百万円特別控除の導入について、他の控除と比べてこの制度は控除額が大き過ぎるではないか、こういうお尋ねでございます。

 今回創設いたします特別控除の水準は、長期保有株式に係る少額の譲渡益を非課税とすることにより個人投資家の株式市場への参加を促進するという政策的観点及び個人投資家の株式保有・取引の状況、現行の所得税制における本特例の位置づけ等を総合的に勘案いたしまして、百万円と決定した次第でございます。

 なお、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方につきましては、先般の与党三党の合意において、引き続き協議の上、早急に結論を得るものとしております。また、政府税制調査会においても、一本化後の株式譲渡益課税のあり方を含めて、今後の金融・証券の税制のあり方について、新たに小委員会が設置され、幅広い観点から検討を行うこととしております。

 政府といたしましては、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方等について、今後の与党の御議論並びに政府税制調査会におけるしっかりとした検討を踏んまえて決定いたしたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 中塚議員から、CPのペーパーレス化がなぜ緊急経済対策なのかというお尋ねでございました。

 先ほど総理が総括的にお答えになられたことでお答えができているのではないかと思いますけれども、私からつけ加えさせていただきます。

 企業の短期資金調達のために発行されているCPにつきましては、取引における券面の作成や移転について、例えば地理的な制約等、さまざまな実務上の問題が指摘され、各方面からそれの早期の改善が強く要望されてきたところでございまして、この点は中塚議員の御指摘のとおりでございます。

 今回、緊急経済対策というのは、緊急に着手すべき構造改革という位置づけでございますので、そのような意味で、証券市場の構造改革の一環としてこの措置に盛り込まれたもの、このように御理解を賜りたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、日本共産党を代表し、緊急経済対策関連法案について質問いたします。(拍手)

 まず第一は、日本経済の現状と個人消費の落ち込みの問題であります。

 昨年末からの急速な景気の落ち込みに対して、広範な国民の中に深刻な不安が広がっています。政府の月例経済報告は、景気判断を四カ月連続で下方修正し、政府の緊急経済対策は、「企業部門の復調にもかかわらず、所得・雇用環境の改善は遅れ、個人消費の回復は見られていない。」と述べています。

 したがって、日本経済の六割を占める個人消費をいかにして温めるか、ここに当面する最大の課題があります。総理、個人消費へのてこ入れの重要性をどう認識しておられるのか、答弁を求めます。

 今回の法案は、株式譲渡所得に対する百万円を上限とした少額非課税制度を設けるなどとしていますが、これがどうして個人消費の回復につながりますか。そもそも、政府の緊急経済対策には、個人消費低迷の原因に対するまともな分析はありません。

 九〇年代後半からの景気後退の最大の原因は、総理、あなたが厚生大臣を務められた橋本内閣のもとでの、消費税を五%に引き上げ、医療費の負担増など、九兆円の負担増にあったことは明らかです。また、昨年来の医療、介護、年金の給付削減と負担増、次々と実行される大企業の大規模なリストラ、人減らしとこれに対する政府の支援、これらが消費を一段と冷え込ませているのです。

 総理は、このことへの反省が全くないのでしょうか。答弁を求めます。

 総理は、構造改革なくして景気回復なし、不良債権の早期最終処理が最優先課題だとしています。

 不良債権の処理とは、大手ゼネコンなどに対しては、下請の切り捨て、人減らしを前提にした借金の棒引きであり、中小企業に対しては、融資の打ち切り、資金回収であります。この結果、大量の倒産、失業者を生み出すことになるのは明らかではありませんか。答弁を求めます。

 不良債権があるから景気が悪くなったのではありません。実体経済、特に消費が落ち込んでいるから、企業の業績が落ち込み、不良債権がふえているのです。一九九二年以降、六十八兆円の不良債権が処理されたと言われています。ところが、当時十三兆円だった不良債権は、三十二兆円にも膨れ上がっているではありませんか。実体経済をよくしなければ、新しい不良債権がふえ続けることは明らかです。

 総理は、不良債権が企業への貸し出しを抑制させ、景気低迷を招くと言います。しかし、超低金利、金融緩和で銀行にはお金があふれています。四月の日本銀行月報は、高収益を上げる大企業は手元資金が余って、資金需要が増加しにくいと述べています。全国銀行協会の西川前会長自身も、不良債権の残存により貸し出し余力を失っている状況はないと真っ向から否定しています。これでも、不良債権が企業貸し出しを抑制していると言うのですか。

 政府は、三月以来、日本経済の現状をデフレ局面と診断しています。奥田日経連会長も、一層の消費の減退を招き、深刻なデフレに突入し、回復困難なダメージとなる危険性が高いと危惧の声を上げています。この深刻なデフレの時代に、不良債権処理というデフレ政策で追い打ちをかけるなど、とんでもありません。答弁を求めます。(拍手)

 第二は、不良債権処理による中小企業切り捨ての問題です。

 総理、そもそも不良債権、主要行で十二兆七千億円、全国銀行ベースでは三十二兆円のうち、中小企業向け債権は一体何社で、何割を占めるのでしょうか。政府は、バブル期の不良債権処理は基本的に終わっていると宣言しています。そうであるなら、今、不良債権の最終処理の対象にしようとしているのは、圧倒的に、販売不振、営業難にあえいでいる中小企業ではありませんか。どのように把握しているのか、答弁を求めます。

 経済財政諮問会議の専門委員会は、不良債権を患部、患った部分と言い、切り捨てる対象としています。しかし、銀行の帳簿上では不良債権でも、実体は生きている会社であり、そこで働いているのは生身の人間です。それが、日本経済を底辺から支え、世界に誇る技術を持ち、地域経済を支えているのです。これらの方々がこの不況の中で懸命に経営努力をしている姿が、総理、あなたには見えないのですか。

 政府の統計でも、赤字中小企業は、九〇年の四八・四%から九九年には六九・九%、全体の七割にも及んでいます。また、担保の地価が下落したというだけで不良債権にカウントされてしまう、こんな不条理なことはないと中小企業家の方は怒りの声を上げています。懸命な経営努力をしているこれらの企業を、あなたは、不良債権として切り捨ててしまうのですか、非効率な部門として淘汰されるのは当然だと言うのですか。答弁を求めます。

 中小企業は全雇用者の八割を占めています。今日の雇用危機を打開するためにも、中小企業の経営を守ることは決定的です。

 総理は、中小企業に対し万全を期すと言いますが、新たな中身は何もありません。そればかりか、中小企業の命綱であった貸し渋り特別保証制度を三月末で打ち切り、また、中小企業の地域産業集積活性化補助金や商店街の空き店舗対策補助金への三分の一自己負担導入など、不況の中で懸命に頑張っている中小業者に対して余りにも冷たい仕打ちばかりです。連鎖倒産防止のための中小企業倒産防止共済制度も、全中小業者の一割にも満たない在籍状況で、しかも近年、加入者が激減し、解除者が増大しています。これでは、到底、セーフティーネットと言えるものではありません。

 第三は、不良債権処理と雇用の問題であります。

 不良債権の早期最終処理によって、どれくらいの失業が生まれるのか。竹中大臣は、数万人から数十万人くらいと、あいまいな答弁をしました。その一方、雇用創出は五百万人が期待できると、明確な数字を挙げました。しかし、それにどんな根拠があるというのでしょうか。

 実際、九八年以来、政府は合計二百五万人の雇用増大計画を出しましたが、その実績はわずか二十七万人、一三%にすぎません。特に、大企業のリストラ計画による雇用不安解消を目的とした特定地域・下請企業離職者雇用創出奨励金制度では、予算三百二十一億円に対し、実績はわずか〇・〇五%の千六百七十八万円、たった五十一人にすぎないではありませんか。こうした実績について、総理はどう反省されているのか、伺います。

 また、一九九六年十二月に閣議決定した「経済構造の変革と創造のためのプログラム」の新規・成長十五分野の雇用規模予測では、九五年の千六十万人が二〇一〇年には千八百万人にふえるとし、また、一九九四年六月の産業構造審議会の「新規・成長市場分野の将来像」では、十二分野を挙げ、九三年の八百四十九万人が二〇一〇年には千三百六十八万人になるとしていました。現状はどうなっているのか、明らかにしていただきたい。

 政府は、このようにいつもバラ色の予測を示しますが、現実に起きているのは、完全失業者は、九二年度の百四十六万人、二・二%から、二〇〇〇年度三百十九万人、四・七%と急激に悪化しているではありませんか。

 今回の五百万人という雇用創出見通しも、何の保証もない数字にすぎません。はっきりしているのは、不良債権処理によって数十万人から百万人の大量の失業が起こるということだけです。それだけでなく、竹中大臣が言う雇用の流動化は、企業にとって解雇の自由へ道を開くものであり、一層の不安定雇用と低賃金労働を生み出すものではありませんか。

 また、雇用保険の改悪で、政府の試算でも、給付見通しで五千億円の削減となるとしています。総理、これでどうして雇用面のセーフティーネットの拡充と言えるのですか。答弁を求めます。

 雇用の流動化を言う前に政府がやるべきことは、産業再生法によるリストラの旗振りではなく、ヨーロッパ各国のように解雇規制法やEUの既得権指令の法制化など、雇用を守るルールをつくることではありませんか。

 総理は、不良債権の処理、構造改革に痛みを伴うと言いますが、中小企業や労働者に対して痛みを強要する一方で、大銀行には、七十兆円の公的資金の枠組みに加え、この緊急経済対策で、無税償却と政府保証による保有株の買い取り、ゼネコン、大企業には借金棒引き、すなわち債権放棄という名の徳政令というのでは、到底、国民は納得できません。

 ところが、事もあろうに、この債権放棄を受けたゼネコン各社から自民党は多額の政治献金を受け取っています。総理、公的資金注入銀行による債権放棄を受けたゼネコン献金は、きっぱり拒否すべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)

 最後に、小泉内閣の行おうとしている財政構造改革の問題であります。

 総理は、当初、増税なき財政再建と言いながら、その後、安易な増税は避けると修正しました。あなたが任命された竹中経済財政担当大臣は、最近の著書で、財政再建のために二〇〇三年から段階的に消費税率を上げ、最低でも一四%にしなければならないと主張し、昨日、塩川財務大臣は、三年後には消費税増税を行う意向を示しました。総理、あなたの行う財政構造改革には消費税の引き上げがあるのではありませんか、ないと言えますか。明確な答弁を求めます。

 総理は、社会保障について、これまでのように、負担は少なく、給付は厚くとはいかないと言いますが、日本の社会保障給付の対国民所得比は一五・二%です。フランスやドイツ、イギリスのおよそ半分の水準です。これで、どうして給付は厚いと言えますか。

 総理、「聖域なき構造改革」と言うのなら、公共事業費に大胆にメスを入れるべきであります。我が国の公共事業費は、日本を除くサミット参加六カ国の合計よりも多いのであります。財政制度審議会の国民意識調査では、国の予算のうち生活に役立っていないもののトップは、公共事業費であります。これが国民の声です。この声に真正面からこたえ、浪費と自然破壊のゼネコン型公共事業費五十兆円、社会保障には二十兆円という逆立ち財政を改めるべきであります。総理の答弁を求めます。

 大銀行・ゼネコン応援から国民の暮らし応援の政治に切りかえることこそ、日本経済の危機打開への道である、このことを強調して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 塩川議員にお答えいたします。

 個人消費のてこ入れの重要性についてであります。

 御指摘のとおり、個人消費はGDPの約六割と大きな割合を占め、景気を左右する重要な要素でありますが、さらに弱含んでいる最近の景気の中で、おおむね横ばいの状態が続いております。

 景気の脆弱性の背景には構造問題の存在があり、聖域を設けず構造改革を強力に推進していく方針であります。国民にこうした改革に取り組む姿勢をはっきり示すことが、我が国経済に対する自信を取り戻すことにもつながるものと考えております。これにより、我が国経済の再生を図り、所得環境の改善や国民の不安感の解消を通じて、個人消費の回復と本格的な景気回復を実現してまいります。

 九〇年代後半の景気後退の原因と昨年来の消費の冷え込みについてであります。

 平成九年度後半以降における経済の停滞については、さまざまな要因が指摘されておりますが、同年秋以降の金融機関の相次ぐ経営破綻やアジア地域の通貨・経済危機などが実体経済に大きく影響を及ぼしたことに留意する必要があると考えております。

 いずれにせよ、消費税率の引き上げを含む平成六年秋の税制改革は、少子高齢化の進展という構造変化に税制面から対応したものであり、また、医療保険制度改革は、医療保険制度の破綻を防ぎ、安定した運営を確保していくために、給付と負担の見直し等を行ったものであります。これらの改革は、我が国の将来を考えたときに、極めて重要な改革であったと考えております。

 また、昨年度における社会保障の制度改正等においては、能力に応じた適切な負担と給付の必要な見直しを行ったところであり、雇用対策においては、雇用機会の創出を図るとともに職業能力開発を通じ、需給のミスマッチ解消に取り組んでいるところであります。これらの施策は、国民に安心を与え、個人消費の回復にも資するものと考えております。

 不良債権処理は、大量の倒産、失業者を生み出すのではないか、また、デフレに拍車をかけるのではないかとのお尋ねであります。

 不良債権の最終処理の方法については、個々の企業の実態等も十分踏まえつつ取り組む方針でありますが、こうした構造改革を実施する過程で、倒産や失業など、社会の中に痛みを伴う事態が生じる可能性も否定できません。しかしながら、暗い面ばかりを見るのではなく、新しい時代に新しい産業に立ち向かっていけるような対策を講ずるのが大事ではないかと考えております。

 このため、政府としては、中小企業に対する金融面での対応や雇用面のセーフティーネットを整備するための施策の実施等を講じるとともに、本日開催した産業構造改革・雇用対策本部において、新たな市場と雇用の創出に向けた具体的な施策を精力的に検討することなどを通じ、痛みを最小限にするための各般の対策に万全を期してまいります。

 景気と不良債権の関係についてです。

 金融機関の不良債権は、近年、その処理が進む一方、景気の低迷を背景とする融資先の財務内容の悪化等を背景に、その残高は横ばいで推移しております。他方、金融機関が引き当て処理のまま多額の不良債権をバランスシート上に抱えることは、その収益性を低下させたり、あるいは貸し出しを抑制させることにより景気低迷を招くといった弊害も考えられます。

 こうした観点等から、緊急経済対策においては、不良債権の最終処理と企業再建の円滑化を進めることとしています。このように金融と産業の一体的な再生を図ることにより、我が国経済の構造改革を進め、本格的な景気回復を実現させていきたいと思います。

 不良債権の最終処理の対象となっている中小企業を把握しているかとのお尋ねです。

 今回の緊急経済対策において、最終処理につながる措置を講ずることとなっている主要行の不良債権のうち、中小企業向け債権はおおよそ六割台となっております。

 懸命な経営努力をしている中小企業を不良債権として切り捨てるのかとのお尋ねです。

 債務者が赤字中小企業であっても、その返済能力について特に問題がないと認められる場合には、当該中小企業向け債権は必ずしも不良債権にはなりません。また、債権の元利払いが正常である限り、担保価値が下落しても、その債権が不良債権となるわけではありません。したがって、経営努力をしている中小企業を不良債権として切り捨てるとの御指摘は当たらないと考えます。

 なお、今般の経済対策においては、債務者が中小企業の場合であっても、各金融機関において、各貸出先の実態を踏まえつつ、企業の再建とこれに伴う不良債権の最終処理に取り組むことが要請されております。

 中小企業のセーフティーネットについてのお尋ねです。

 構造改革に伴い中小企業への悪影響が生じないよう、政府系金融機関や信用保証協会等を通じ中小企業への円滑な資金供給を図るとともに、連鎖倒産の危機などに対応すべく、信用保証制度の特例、倒産防止共済等のセーフティーネット対策を適切に実施していきます。

 これに加え、技術と経営にすぐれた企業が生き残り、伸びられる環境を整備するため、中小企業の経営革新に向けた支援に万全を期してまいります。

 平成十年以降、数次にわたり実施してきた雇用対策の実績についてお尋ねがありました。

 平成十年の緊急経済対策に盛り込まれた雇用活性化総合プランを中心とした百万人の雇用創出・確保対策については、GDPの押し上げ効果から試算した三十七万人の雇用創出効果を具体的に検証することは困難ですが、雇用確保・維持効果の目標約六十四万人については、特定求職者雇用開発助成金についての実績が約四十三万人となるなど、全体として六十五万人となり、目標を達成しております。

 また、今年度末までに七十万人の雇用・就業機会の増大を掲げた一昨年の緊急雇用対策については、地方における臨時応急の雇用・就業機会の創出について実績見込みが約二十三万人となるなど、四月末現在で約三十万人近くの雇用・就業機会が創出されております。

 さらに、昨年五月に策定した「ミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策」においては、平成十二年度を中心に三十五万人程度の雇用・就業機会の拡大の現実化を図ることとしておりますが、創業や異業種進出を行う中小企業への雇い入れ助成について約十一万人強となるなど、少なくとも三十一万人を超える雇用・就業機会が創出されております。

 このように、これまで実施した雇用対策は一定の効果を上げてきているところであります。

 産業構造審議会の報告書と「経済構造の変革と創造のためのプログラム」における新規産業成長分野の雇用規模予測についてのお尋ねであります。

 これらの報告書やプログラムに示された雇用規模は、あくまで参考値として示されたものであり、計画遂行による雇用創出規模を正確に示すことは困難ですが、新たな市場や雇用の創出に着実に結びついているものと確信しております。

 本日、私が本部長を務める産業構造改革・雇用対策本部を開催し、新規雇用の創出と雇用対策について具体策の策定を指示したところであり、新規産業と雇用の創出に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。

 雇用の流動化についてのお尋ねがありました。

 雇用形態も実際には変化してきており、企業が終身雇用制でなく短期間の雇用を望んだり、逆に、個人の方が短期間の雇用を望む場合があったり、終身雇用制が望ましいという今までの前提が崩れてきている場面が見られます。

 こうした点も含めて、企業も必要な雇用を速やかに受け入れることができ、個人も望んだ仕事につけ、あるいは転職できるといった、双方の条件が速やかにぴったりとマッチする形で、双方の希望の変化に対応できるような雇用形態をつくっていくことが重要課題であります。

 このため、過去のものにとらわれず、新しい時代に適応できるような雇用形態を模索しつつ、終身雇用制の利点も理解しながら雇用対策を考える必要があると思います。

 雇用面のセーフティーネットについてお尋ねです。

 御指摘の雇用保険法の改正は、給付の重点化を図る中で、倒産、解雇等による離職者に対して手厚い給付を行うこととしたものであります。

 さらに、離職を余儀なくされる労働者については、先般成立した改正雇用対策法に基づき、在職中からの再就職支援を充実することとするなど、雇用のセーフティーネットの拡充を図っております。

 また、本日、第一回会合を開催した産業構造改革・雇用対策本部において、新市場、新産業の育成による雇用創出や人材育成、能力開発の推進などについて、具体的な施策に向けて精力的に検討してまいります。

 解雇規制についてのお尋ねです。

 解雇については、EU既得権指令で対象としている営業譲渡の場合も含め、いわゆる整理解雇の四要件や合理的な理由を必要とするという裁判例の考え方を踏まえ、労使間で十分に話し合われるべき問題であり、一律に規制することは適切でないと考えております。

 ゼネコンからの政治献金についてです。

 私は、そもそも政治献金は一概に悪であるとは思っておりません。自由民主党は、建設業関係に限らず、我が党を支持していただいている各方面から広く寄附をいただいているところであります。また、建設業も含めた企業や団体の側も、政治資金の寄附などの政治活動の自由を当然に認められているものと考えます。最終的には、民主主義のコストをどういう形で国民が負担すべきかという問題であり、各党各会派でよく議論すべき問題であります。

 いずれにせよ、政治献金については、国民からいささかの誤解も招くことのないよう法令に沿って適正になされるべきものであることは、言うまでもありません。

 財政再建と消費税率の引き上げについてのお尋ねです。

 財政再建に取り組むに当たっては、歳出面にむだはないか等についての徹底した見直しを行わないまま、安易に増税に頼ることは考えておりません。

 したがって、まずは、歳出の徹底した見直しを行います。その上で、公的サービスの水準と、それを賄うに足る、消費税も含めた国民負担の水準はどうあるべきかについての国民的な議論が必要であると思います。

 社会保障給付についてのお尋ねと、公共事業との比較についてのお尋ねがありました。

 我が国の社会保障給付については、平成十二年度で、給付費は約七十八兆円、国民所得比で二〇・五%に達して、国際的にも遜色のない水準となっております。また、今世紀には少子高齢社会を迎える中で、現行制度を前提とすれば、平成三十七年度には、給付費は二百七兆円、国民所得比で三一・五%に達し、現在のドイツ、フランスとイギリスの間の水準に上昇すると見込まれております。

 社会保障には二十兆円との共産党の御主張は、社会保障の公費負担のみを取り上げたものでありますが、保険料も国民負担の一部であることから、保険料の部分も含めた給付費全体で見るべきであります。これは、先ほども申し上げたように、平成十二年度においては七十八兆円に達して、国、地方を合わせた公共事業費の約一・五倍程度となっており、逆立ちとの御指摘は当たらないものと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 保坂展人君。

    〔保坂展人君登壇〕

保坂展人君 社会民主党・市民連合を代表して、政府の緊急経済対策と関連法案に対して質問を行います。(拍手)

 その前に、緊急にお聞きしたいことがあります。

 まず、総理に伺います。

 本日、五月二十五日は、二週間前の五月十一日、熊本地方裁判所で下されたハンセン病訴訟で敗訴した国側の控訴期限となっておりました。一昨日、元患者の皆さんの強い訴えを官邸で聞いた直後の小泉総理が控訴断念を決めたことに、私たちはほっと胸をなでおろしました。土井党首は、熊本地裁判決を翌日に控えた代表質問の席で、小泉総理に対して、「人として死にたい、この叫びをしっかり受けとめて、判決が出ましたら潔く全面解決に向けて努力をすべきだと考えますが、いかがでございますか。」と、元患者さんの声と痛みを受けとめるように求めましたが、結果としてそうしていただいたことを喜びたいと思います。(拍手)

 その直前まで、控訴の後には和解という役所のメンツ最優先の厚生労働省、法務省を中心とした抵抗は、いわれなき差別と偏見に苦しみ抜いてきた元患者さんを絶望の奈落のふちの底に落とし込めることになるぎりぎりの線まで続きました。

 私たち国会議員も、立法の不作為を厳しく問われました。国会は、その責任を認め、謝罪をしなければならないと考えています。しかし、このことを認めまいとする与党との間で溝が埋まらずに、本日に至るまで、国会決議は与野党間で決着がついていません。なお努力は続けていきたいと思います。

 元患者さんたちへの誠実かつ迅速な立法措置と補償、そして恒久対策、差別を解消する取り組みなど課題は山積みです。これからの内閣の決意をしっかりとお聞きしたいと思います。(拍手)

 塩川財務大臣に率直にお答えいただきたいと思います。機密費をめぐる発言の忘却とその修正についてでございます。

 塩川大臣は、官邸機密費について、テレビ番組のインタビューに率直に答えています。その後、改めて問われると、「忘れました」。さらに、VTRを見て思い出すはずが、週刊誌に書いてあったのを、さも自分が経験したかのような錯覚に陥ってしゃべってしまったのかなという情けない釈明でございます。

 政治の場で、言葉は命ではありませんか。真実でないことやごまかしを述べることを、うそと申します。塩川大臣の答弁は、みずからの発言に背を向けて、ひたすら自己暗示をかけているようにさえ受けとめられますが、しっかり答弁していただきたいと思います。すぐに忘れたり、錯覚に陥るようにはお見受けできないのです。本当に忘れてしまったり、錯覚に陥るのでしょうか。ここをきちんとお答えいただきたいと思います。(拍手)

 さて、総理に伺います。

 今回の緊急経済対策には、まず最優先でつくり上げなければならない将来不安の解消、そして、国民の生活再建に向けたプログラムが示されていないのではないでしょうか。

 構造改革には痛みを伴うと予告されているその痛みとは、ずばりリストラという名の首切りであり、多くの失業者、離職者ではなく失業者が出るだろうと公然と言われています。これに対して、緊急雇用創出特別奨励金などの二、三の奨励金の拡充措置などでは、これは対策たり得ません。

 労働者保護、雇用の安定を図る雇用継続保障法などの法整備を怠って、企業再編、規制緩和のあらしを呼び込めば、生活破壊は一層ひどくなり、将来不安どころか現在不安に転じてしまいます。責任のある見解を求めたいと思います。

 国民に向けて痛みを伴う構造改革を求めるのであれば、どうしても明らかにしてほしいことがあります。バブルを仕掛け、土地投機を雪だるま式に肥大化させた金融機関の問題です。また、不良債権の処理をここまで放置し、資産を劣化させてきたのは一体だれなのか。そして、国会で真実を明らかにせず、しらを切り通した国、当時の大蔵省の責任も当然に問われるべきなんです。

 だれがいつ、今日の不良債権の巨大な負の遺産をつくり上げたのか。その詳細な追跡調査をもとに、国民の前に真実の公開によって反省とおわびをする勇気が必要ではないでしょうか。ただいまも、放漫経営と無責任融資を続けてきた企業と銀行が厳しく問われているようには見えません。さらに、監督官庁として機能せず、接待の海とまで呼ばれたほどの腐敗に甘んじた当時の大蔵省の責任、その責任を不問にして、国民にさらなる痛みを強いることが許されてよいはずがありません。徹底した調査を行うとともに、どのようにして国民の前に情報公開をしていくのか、具体的に示されたいと思います。

 総理並びに金融担当大臣に伺います。

 長い間、抜本的なメスが入らず、一体その総額が幾らに膨らんでいるのかもひた隠しにされてきた巨額の不良債権の問題の解決は、避けては通れない課題です。そのために、金融機関の抱える不良債権をこれ以上先送りにしないで直接償却を行うに当たっては、その激烈な副作用についても十分に備えておく必要があるのではないでしょうか。融資継続を前提としない直接償却を適用すれば、借り手企業倒産から子会社あるいは取引企業などの連鎖倒産が起こる事態も十分予想されます。そのクラッシュの渦の中で、現在の優良債権さえも不良債権に転じてしまい、不良債権処理の過程でまた新たな不良債権が誕生するという悪夢を招いてしまう心配があるのです。どのようにして安全策を講じるのか、はっきり示していただきたいと思います。

 九八年、九九年と二度にわたって注入された公的資金は、金融機関の経営基盤を強化しつつ、信用供与を拡大し、善意かつ善良な借り手保護や地域経済の安定に役立てることにありました。とりわけ、中小企業向け資金貸付枠を増大させることは、公的資金注入の可否を判定する金融機関の経営健全化計画の中核的な要素であったはずだと思います。

 したがって、直接償却を進める場合、善意かつ善良な中小企業を保護し除外する政策をとることは、あの公的資金投入の趣旨から見て当然であると思いますが、いかがお考えでしょうか。

 財務大臣に伺います。

 不良債権処理の対象となった企業の再建支援融資、DIPファイナンスについては、日本政策投資銀行の事業再生融資制度の活用だけではなく、中小企業に特化した仕組みを早急に整えるべきではないでしょうか。政府系金融機関、銀行などが再建過程の中小企業に運転資金を融資する仕組みを早く構築することが必要だと思います。

 こうした応急措置だけでは足りません。金融担当大臣にお聞きします。

 若い世代や女性、仕事がないのなら自分たちで仕事を生み出そうという、小さな資金で大きな夢を持って仕事を始めるベンチャー企業などへ支援策を考えることも重要です。NPOなどの非営利事業も含めて、地域に根差した、小規模だが夢のある、大きな夢を膨らませる事業に対して公正な融資を金融機関に義務づけ、地域経済を再建していく日本版地域再投資法の導入なども真剣に検討するべきではないかと考えますが、御見解を伺いたいと思います。

 総理に伺います。

 国が市場をコントロールするような発想から抜け出せない銀行保有株式取得機構は、銀行の株式の持ち合い解消に伴う株価の値崩れを防ぐことにその目的があると言われています。損失が生じたときに、預金保険機構の活用も含めて公的資金で保証するなどと語られていますが、金融機関だけは特別扱いし、国民の血税を使って損失補てんをしようということは、断じて許されるものではありません。

 この機構に持ち込まれるはずの株は、ずばり言って、将来性が乏しい株、株価の低落が予想されるものばかりにならないでしょうか。銀行が優良株をあえてこの機構に手放すはずがないではありませんか。株式評価損の金融機関本体への計上を避けるためにこの機構が使われるとすれば、本来なら持ち合い株の解消時に確定すべき損失額を目の前から消して凍結する、いわゆる飛ばし行為の損失補てんを税金投入で行おうということになるのではないかと疑問がわきます。明快にお答えいただきたいと思います。

 金融担当大臣に伺います。

 今、証券市場の活性化に必要なのは、公平かつまた厳格なルールを確立することではないでしょうか。多くの国民が証券投資に警戒の念を抱くのは、例えば、自社株消却をめぐるインサイダー取引疑惑、やみの勢力による株価操縦やいわゆる鉄砲行為、このような行為に象徴される株式市場の不透明さにあると考えます。

 こうした違法行為を取り締まる監視体制の強化、不正を二度と許さない厳格なルールの確立がしっかりしたものになって、ようやく証券市場活性化の入り口にビギナー投資家が立ちどまるのではないでしょうか。アメリカのSECの成果に学び、証券取引等監視委員会が金融Gメンとしての機能を実質的にきちんと果たしていくための人員増も含めた体制整備、権限強化に積極的に取り組むべきではないでしょうか。

 財務大臣に伺います。

 証券関連税制の見直しについては、現状の七百万人の株式投資家向け、既存の投資家や資産家向けの追加的優遇策の色彩が濃いもので、税制の最大の原則である公平性の追求をゆがめてまで拙速に行う意義を見出すことができません。経済政策としてより優先されるべきなのは、現行のエンゼル税制の仕組みを活用し、環境・福祉関連分野の特定中小、ベンチャーに投資する個人を対象とした優遇税制のさらなる拡充などが考えられてよいのではないでしょうか。

 総理と厚生労働大臣に伺います。

 さきに述べた最優先とすべき経済対策の、将来不安の解消、国民の生活再建に向けたプログラムとして、私は、年金制度の改革が必要不可欠だと考えます。年金制度の改革とは、わかりやすい公平な制度とすることであり、運営上のむだを徹底的に排除し、外部からのチェックが容易にできるように制度をガラス張りにすることです。

 例えば、厚生年金を管理運用している厚生保険特別会計の事務費の一部や、同特別会計の業務を担当する社会保険庁職員の共済年金の掛金、これは事業主負担金ですが、ここへ年金加入者の掛金、保険料を一般会計に雑収入や前年度剰余金などの形で投げ込んで流用、充当するということは、もうやめるべきではありませんか。この雑収入や前年度剰余金は、国民の年金掛金が生み出したものではありませんか。明確に答弁を願いたいと思います。

 また、巨額の年金積立金を市場で運用するということが始まります。旧年金福祉事業団における積立金の市場運用のあの失敗を総括するのであれば、百五十兆円の年金積立金という国民の長期にわたる大切な資産を引き継ぎ年金資金運用基金という特殊法人にゆだねることのリスクを真剣に考えなければならないはずです。

 余りにも巨大過ぎる投資家の存在は、証券市場の健全な発展を妨げます。年金、郵貯、簡保等、国が管理する資金がそれぞれ計画どおりに運用されると、五年後、十年後には四十兆円規模になると言われています。株式市場の時価総額四百兆円の一割に及ぶ国という名の巨大投資家の存在は、海外から見て、公平で信頼できる市場形成をみずから邪魔しているものとしか言えません。

 年金積立金の運用に関しては、アメリカ、イギリス、フランスで始まっているような物価連動国債を発行し、その購入のみに限定し、慎重を期するべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 年金積立金という大だるの底に入ったひびを修理し、その底から漏れ落ちてくる年金の流失をストップさせることから始めることが、今や急務と考えます。たるの底から自分の老後を支えてくれるはずの年金の掛金が漏れ続けていることを国民は感じているからこそ、公的年金制度への不信感、不安感、そして不満感がぬぐえないということをもっと認識すべきだと思います。

 この年金改革なくして、どんな経済政策をしても、個人消費は伸びず、株式市場は活性化していかないと思います。小泉総理が議長を務める経済財政諮問会議では……

副議長(渡部恒三君) 保坂展人君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。

保坂展人君(続) 高齢者の年金に対する課税を強化する方針を打ち出しているそうですが、まずは、抜本的な年金制度の改革をやるべきではないでしょうか。

 グリーンピアあるいは終生型老人ホームなどの重大な経営失敗、その老人たちのみならず、社会保障不信を倍加させてきたことも見逃せません。

 給付は厚く、負担は軽くと言われますが、国民の実感は、給付は薄く、負担が重いであることを御存じでしょうか。福祉からの撤退をあからさまに言うのでは景気は一向に改善しないことを最後に指摘して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 保坂議員にお答えいたします。

 ハンセン病訴訟についてであります。

 この問題の早期かつ全面的な解決を図るため、五月二十三日、控訴を行わないとの方針を決定いたしました。患者及び元患者の皆様方には、本日、閣議において決定した総理談話にもあるとおり、新たな補償措置を講じるとともに、名誉回復及び福祉増進のための各種の取り組みの実現に向けて、患者、元患者の方々と話し合いを行いながら、早急に検討を進めてまいります。

 緊急経済対策に対する姿勢についてであります。

 私は、かねてより、構造改革なくして景気回復なしと申し上げております。このため、聖域を設けず、構造改革を強力に推進していく決意です。国民に改革に取り組む姿勢をはっきりと示すことこそが、我が国経済に対する将来不安を払拭し、自信を取り戻すことにつながるものと考えております。

 まずは、緊急経済対策を着実に実行に移し、こうした構造改革を進めることで我が国経済の再生が図られ、本格的な景気回復の実現を通して国民生活の安定がもたらされるものと考えております。

 雇用対策の充実と労働者保護を図る法整備についてです。

 厳しい雇用情勢に対応するため、私が本部長を務める産業構造改革・雇用対策本部の第一回目の会合を本日、開催いたしました。今後、本部において、新市場、新産業の育成による雇用創出や人材育成、能力開発の推進などについて、具体的な施策に向けて精力的に検討してまいります。

 なお、労働者保護の法整備についてですが、解雇はいわゆる整理解雇の四要件や合理的な理由を必要とするという裁判例の考え方を踏まえ、労使間で十分に話し合われるべき問題であり、一律に規制することは適切でないと考えております。

 不良債権の処理についてです。

 不良債権については、これまで多額の処理が行われてきているところでありますが、景気回復の足取りがなお本格化しないこと等から、その残高は横ばいで推移しております。なお、金融機関が現在保有している不良債権は、基本的には、担保、引き当て等により適切に保全されております。

 今般、経済の構造改革を進めるために、不良債権の最終処理の促進を柱とする緊急経済対策を取りまとめたところであり、今後、この対策を着実に実施してまいります。

 不良債権処理による景気悪化懸念についてであります。

 不良債権の最終処理に伴い、倒産など社会の中に痛みを伴う事態が生じる可能性は否定できません。しかしながら、暗い面ばかりを見るのではなく、新しい時代に新しい産業に立ち向かっていけるよう対策を講ずるのが大事ではないかと考えております。

 このため、緊急経済対策に盛り込まれた中小企業対策あるいは雇用面のセーフティーネットを整備するための施策の効率的実施を図るとともに、今後、産業構造改革・雇用対策本部で早急に議論を深め、痛みを最小限とするための各般の対策に万全を期してまいります。

 株式買い取りスキームについてです。

 株式買い取りスキームについては、株式保有制限の導入に伴う銀行からの株式放出が、株価水準によっては金融システムの安定性や経済全般に好ましくない影響を与える可能性もあることから、一時的なものとして、そのスキームを検討しているものであります。今後、金融システムの安定化と市場メカニズムとの調和を念頭に具体策を講じることとし、しっかりとした検討を行ってまいります。

 年金積立金の運用についてです。

 年金積立金の運用は、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことが基本であり、国内債券を中心とした運用を行うものであります。また、株式の運用は、専門家の判断を経て、長期的に維持すべき資産構成割合を定め、これに基づき、多くの民間運用機関に委託して行うものであります。

 したがって、御指摘のように、物価連動国債を新たに発行し、これのみで運用を行う方法をとらなくとも、株式市場に悪影響を与えることのない市場運用を行うことができるものと考えております。

 年金改革についてです。

 年金改革につきましては、次期財政再計算を平成十六年までに行うこととされていることを踏まえ、国民の老後を支える公的年金の役割を将来にわたって果たしていくことができるよう、世代間の給付と負担の均衡を図り、お互いが支え合う、持続可能な制度を再構築していかなければならないと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) 私に対する御質問は二つあったと思っております。

 まず最初に、予算委員会等におきますところの内閣報償費についての私の答弁に関するお尋ねでございます。

 一月から二月にかけまして、幾つかのマスコミから取材を受けており、予算委員会等で、御質問のあったテレビのインタビューについて、突然の御質問がございました。どのような状況で何を聞かれたか、何を答えたか、覚えておりませんので、思わず、忘れたと答弁してしまいました。もちろん、テレビでインタビューを受けたということは覚えておりましたが、国会で質問を受けたときは、その内容を忘れていたものであります。

 その後、ビデオを見まして、その上で申し上げますが、私は、官房長官を宇野内閣のときに務めたのが十年以上前のことでございますし、わずか二カ月しか務めなかったので、正直言って、当時のことをよく覚えてはおりません。

 ことしになって、外務省機密費事件に関連してインタビューを新聞など数社から受け、そのころ、新聞、雑誌に出ていることなどを取りまぜて話をしたように思っております。何か、さも自分が経験したように言ったつもりで錯覚に陥ってしまいまして、ああいうことを言ってしまったのかなと思って、今は深く反省しておるところであります。

 それから、次の質問でございますが、不良債権処理の対象となった企業の再建支援融資についてであります。

 再建計画策定中の企業への融資につきましては、民間金融機関とあわせて公的金融機関においても、各種の融資制度の活用により、償還確実性の確保等に配慮しながら、可能な範囲で、積極的に資金を供給することとしております。

 このうち、法的整理において再建型倒産処理手続に入っている企業に対する融資、すなわち、いわゆるDIPファイナンスにつきましては、日本政策投資銀行におきまして、平成十三年度より事業再生融資制度として導入したところであり、その積極的な活用を図ることといたしております。

 さらに、政府系金融機関による中小企業向けDIPファイナンスにつきましては、民間金融機関の対応状況等も踏んまえまして、その償還確実性に十分留意しつつ検討してまいりたいと思っております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 保坂議員にお答えを申し上げたいと思います。

 厚生保険特別会計の事務費等についてのお尋ねがございました。

 御承知のとおり、厚生年金の事務費につきましては、国が制度運営を行うという観点から、厚生年金保険法の規定によりまして、予算の範囲内で国庫が負担することとなっております。また、平成九年に、財政構造改革の推進に関する特別措置法が制定されました際に、厚生保険特別会計法が改正されまして、平成十年度から平成十五年度までの間、厚生年金の事務費の一部に保険料財源を充てることとされたところでございます。

 これに基づきまして、現在、保険料の徴収や年金の給付などの事務の執行に要する費用の一部について保険料財源が充当されているところでありますけれども、今御指摘のありました社会保険庁職員の共済年金の掛金等の人件費につきましては、引き続き国庫で負担をしているところでございます。

 しかし、御質問は、雑収入やそれから前年度の剰余金があるではないか、こういう御指摘でございました。

 しかし、前年度の剰余金も、これは一般会計から来るものでございますし、そしてまた、雑収入の中にも年金加入者の保険料は入っておりません。したがいまして、保険料財源は含まれていないというふうに申し上げたいと存じます。

 しかし、わずかなこの事務費のために年金の信頼を崩すというようなことがあってはなりませんので、胸を張って国民の皆さんにお答えのできるように今後検討してまいりたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 保坂議員にお答え申し上げます。

 不良債権の最終処理の影響についてのお尋ねがございました。

 その中で、不良債権の最終処理につきまして御理解ある言葉をいただいたようにお聞きしまして、この点、感謝を申し上げます。

 不良債権の最終処理に当たりまして、どのような手法をとるかにつきましては、個々の企業の実態等も踏まえつつ取り組む方針でございます。しかし、こうした構造改革を実施する過程で、倒産など社会の中に痛みを伴う事態が生ずる可能性も否定できません。このため、政府としては、中小企業に対する金融面での対応や、雇用面での不安を解消する施策の実施等に取り組むことといたしておるわけでございます。

 九八年、九九年の二度にわたる公的資金の投入等を踏まえまして、中小企業向けの不良債権の最終処理についてのお尋ねでございます。

 緊急経済対策では、まず、中小企業向けであるか否かにかかわらず、善意かつ健全な債務者の債権ではなく、破綻懸念先以下の債務者の債権を対象に最終処理を行おうとしているわけでございます。また、債務者が中小企業の場合には、さらに各企業の実態等を十分に踏まえつつ、地域経済に与える影響等も総合的に勘案して判断することといたしておりますので、御理解を賜りたいと思います。

 日本版地域再投資法の導入を模索するべきではないかとのお尋ねでございます。

 中小企業庁の借り手側の意識に関する調査を見ても、民間金融機関の貸し出し態度は、昔、平成十年十月当時に比べれば、基本的に大幅な改善をいたしておりまして、最近もその状況は基本的に変わっていないというのが私どもの認識でございまして、円滑な地域金融に対して何か大きな障害があるというふうには認識をいたしておりません。

 金融機関に対し特定の分野への融資を義務づけることにつきましては、各金融機関の融資業務は、基本的には、自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであるというふうに考えておりまして、慎重に考えるべきものであろうというふうに存じます。

 それから、証券市場の不公正取引の取り締まりについてお尋ねがございました。

 証券市場の活性化の基盤は公正さの堅持であるとの御指摘には同感でございます。証券取引等監視委員会におきましては、日常的な市場監視活動の中で、取引の公正を害する悪質な違法行為に対しましては、刑事訴追を求めるなど厳正に対処しているところでございます。

 監視委員会の陣容の強化に対して、これまた御理解あるお言葉をいただきまして、感謝を申し上げます。そのような公正さ堅持についての機能に対する御期待にこたえまして、今後とも引き続き、業務体制の整備を図り、与えられた責務を適切に果たすよう努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十五分散会




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